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  • 特表-二次電池及び電気使用装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】二次電池及び電気使用装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20241024BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M4/587
H01M4/133
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519368
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 CN2022141187
(87)【国際公開番号】W WO2024066087
(87)【国際公開日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】202211175108.5
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520434178
【氏名又は名称】欣旺達動力科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Sunwoda Mobility Energy Technology Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ペン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユン
(72)【発明者】
【氏名】リー マン
(72)【発明者】
【氏名】ルー グオシャン
(72)【発明者】
【氏名】チュー チュンボー
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ08
5H029HJ14
5H029HJ19
5H029HJ20
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050DA03
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA19
(57)【要約】
本願は、二次電池及び電気使用装置を開示する。二次電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解液とを含み、負極シートの非ファラデー容量値は、Cdl nFであり、1≦Cdl≦5を満たす。電解液は添加剤を含み、添加剤はシリコン含有化合物を含む。本願は、負極シートの非ファラデー容量値と電解液における添加剤の含有量との関係を適切に調節することによって、得られたリチウムイオン二次電池に高容量且つ高速充電の特徴を持たせた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解液とを含み、前記負極シートの非ファラデー容量値は、Cdl nFであり、1≦Cdl≦5を満たし、前記電解液は、添加剤を含み、前記添加剤はシリコン含有化合物を含む、
二次電池。
【請求項2】
前記シリコン含有化合物は、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシラン)ホスファイト、トリメチルフルオロシラン、又はトリス(トリメチルシラン)ボレートのうち少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記電解液の総質量を基準として、前記シリコン含有化合物の質量百分率はA%であり、0.01≦A≦5を満たす、
請求項1~2のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項4】
前記電解液の総質量を基準として、前記シリコン含有化合物の質量百分率はA%であり、0.01≦10×Cdl×A%≦2.5を満たす、
請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記負極シートの圧縮密度は、PD g/cmであり、1.1≦PD≦1.7を満たす、
請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極シートのOI値は2~25である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電解液は、室温での表面張力がF mN/mであり、20≦F≦40を満たし、前記室温が20℃~25℃である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記二次電池の内部抵抗はR mΩであり、0.02≦R≦0.8を満たす、
請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記電解液は、室温での表面張力がF mN/mであり、前記二次電池の内部抵抗はR mΩであり、1.1≦Cdl+R×F/10≦8を満たす、
請求項1~8のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記負極シートは、負極集電体と、負極集電体に配置された負極活物質層とを含み、前記負極活物質層は負極活物質を含み、前記負極活物質は人造黒鉛、天然黒鉛、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、又はメソカーボンマイクロスフェアのうち1つ以上を含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の二次電池を含む、
電気使用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年09月26日に中国専利局に出願された出願番号202211175108.5、発明の名称が「二次電池及び電気使用装置」である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願のすべての内容は引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は二次電池技術分野に関し、具体的には、二次電池及び電気使用装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、リチウムイオン電池などの二次電池は、新エネルギー分野で主導的な地位を占めており、市場需要は年々高速に増加している。高エネルギー密度と高電圧のリチウムイオン二次電池が注目されている。例えば、電気自動車に充電時間が短く、航続時間が長いという特徴を持たせるために、リチウムイオン二次電池に高速充電と高容量の特性を要求する必要がある。
【0004】
従って、上記の課題を改善することができる二次電池を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、二次電池及び電気使用装置を提供し、それらは二次電池の高速充電と高容量との両立が難しい課題を改善した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1実施例に係る二次電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解液とを含み、負極シートの非ファラデー容量値は、Cdl nFであり、1≦Cdl≦5を満たす。電解液は添加剤を含み、添加剤はシリコン含有化合物を含む。
【0007】
好ましくは、本願の他の実施例では、シリコン含有化合物は、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシラン)ホスファイト、トリメチルフルオロシラン、又はトリス(トリメチルシラン)ボレートのうち少なくとも一方を含む。
【0008】
好ましくは、本願の他の実施例では、電解液の総質量を基準として、シリコン含有化合物の質量百分率はA%であり、0.01≦A≦5を満たす。
【0009】
好ましくは、本願の他の実施例では、電解液の総質量を基準として、シリコン含有化合物の質量百分率はA%であり、0.01≦10×Cdl×A%≦2.5を満たす。
【0010】
好ましくは、本願の他の実施例では、負極シートの圧縮密度は、PD g/cmであり、1.1≦PD≦1.7を満たす。
【0011】
好ましくは、本願の他の実施例では、負極シートのOI値は2~25である。
【0012】
好ましくは、本願の他の実施例では、電解液は、室温での表面張力がF mN/mであり、20≦F≦40を満たし、室温が20℃~25℃である。
【0013】
好ましくは、本願の他の実施例では、二次電池の内部抵抗はR mΩであり、0.02≦R≦0.8を満たす。
【0014】
好ましくは、本願の他の実施例では、1.1≦Cdl+R×F/10≦8である。
【0015】
好ましくは、本願の他の実施例では、負極シートは、負極集電体と、負極集電体に配置された負極活物質層とを含み、負極活物質層は負極活物質を含み、負極活物質は人造黒鉛、天然黒鉛、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、又はメソカーボンマイクロスフェアのうち1つ以上を含む。
【0016】
本願の第2実施形態における電気使用装置は、上記の二次電池を含む。
【発明の効果】
【0017】
本願の実施例に係る二次電池によれば、少なくとも以下の技術的効果を有する。
【0018】
(1)本願は、負極シートの非ファラデー容量値Cdlを調整することによって、負極シートの非ファラデー過程を加速させ、反応活性を向上させ、さらに優れた動力学性能を提供した。
【0019】
(2)電解液にシリコン含有化合物の添加剤を添加することによって、同時に正負極界面に安定したパッシベーション膜を形成し、電解液と界面のインピーダンスを低減することができ、負極シートの非ファラデー容量値Cdlが上記の範囲にあり、且つ電解液にシリコン含有化合物を添加すると、負極シートと電解液との間の副反応を効果的に抑制することができ、負極シートの反応活性点と電解液の反応を適切な範囲内にさせ、電池に高速充電能力を持たせ、充電時間帯を最適化させることができるとともに、優れた電力性能を提供した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本願の実施例における技術的解決手段をより明瞭に説明するために、実施例の記載において用いられる図面を以下に簡単に説明するが、以下の説明における図面は、本願の実施例に過ぎず、当業者にとっては発明的な努力を伴わずにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができることは明らかである。
【0021】
図1】本願の実施例1が製造した負極シートの走査速度-電流散布図を示すフィッティング曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願の実施例における技術案を、添付の図面と合わせて明確かつ完全に説明するが、記載された実施例は、本願の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではないことは明らかである。本願における実施例に基づき、当業者が発明的な努力を伴わずに得られる他の全ての実施例は、本願の保護の範囲内にある。
【0023】
本願の実施例は、二次電池及び電気使用装置を提供する。以下、それぞれについて詳しく説明する。なお、以下の実施例の記載順序は、実施例の好ましい順序を限定するものではない。
【0024】
具体的な説明及び特許請求の範囲において、用語「少なくとも一方」によって連結された項目のリストは、列挙された項目の任意の組合せを意味し得る。例えば、項目A及びBをリストする場合、「A及びBのうち少なくとも一方」という語句は、Aのみ、Bのみ、又はA及びBを意味する。他の実施例では、項目A、B、及びCをリストする場合、「A、B、及びCのうち少なくとも一方」という語句は、Aのみ、又はBのみ、Cのみ、A及びB(Cを除く)、A及びC(Bを除く)、B及びC(Aを除く)、又はA、B、及びCの全てを意味する。項目Aは、単一要素又は複数の要素を含むことができる。項目Bは、単一要素又は複数の要素を含むことができる。項目Cは、単一要素又は複数の要素を含むことができる。用語「少なくとも1つ」は、用語「少なくとも一方」と同じ意味を有する。
【0025】
本明細書において、「~」を用いて示す数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値とする範囲を含むことを示す。
【0026】
一実施例において、本願は二次電池を提供し、この二次電池は正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解液とを含む。
【0027】
I、負極シート
負極シートは、負極集電体と、負極集電体に配置された負極活物質層とを含む。
【0028】
本願の一部の実施例では、負極シートの非ファラデー容量値はCdl nFであり、1≦Cdl≦5を満たす。現在、二次電池の高エネルギー密度を満たすために、コーティング重量を増加させることは、電池のエネルギー密度を増加させるが、電池の長期信頼性に影響を与える恐れがある。リチウムイオン電池などの二次電池は、高速充電又は高率放電時に、リチウムイオンが負極活物質に高速に吸蔵、放出されない場合、リチウム析出を招き、リチウムデンドライトが形成され、ポリマー微孔のセパレータを突き破って内部短絡を引き起こす可能性がある。負極シートのリチウム析出は、電池におけるリチウムイオンを消耗するため、電池容量を急速に減衰させ、電池のサイクル性能を劣化させる。充放電の電流が大きいため、電池の内部抵抗による発熱量も大きくなり、熱暴走による燃焼や爆発などの安全問題を引き起こす可能性がある。本願は負極シートの非ファラデー容量値Cdlを調整することによって、負極シートの非ファラデー過程を加速させ、反応活性が高くになり、動力学性能がさらに優れた。本願の負極シートは、高容量、高倍率性能を有し、且つ電解液と副反応が発生しにくく、それによりリチウムイオン電池に高い耐久性とサイクル安定性を持たせる。負極シートの非ファラデー容量値Cdlを、負極活物質形態、負極シートの圧縮密度、負極シートのOI値、負極シートの構成、負極スラリーの工程などの方式を調整することによって変更することができ、それにより負極シートの反応活性点の数量を調整し、電池の性能に影響を与える。上記の調整方式により、負極シートの非ファラデー容量が上記の範囲にあることをできればよい。
【0029】
具体的には、Cdlは、1、1.5、1.9、2.2、2.7、3.1、3.4、3.6、4.5、5のいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。本願の一部の実施例では、1.5≦Cdl≦4.5である。本願の一部の実施例では、1.9≦Cdl≦3.6である。電気化学反応は、活性物質の酸化状態の変化、活性物質内部への電荷移動のファラデー反応、及び活性物質表面におけるイオンの物理的吸着、離脱による電荷の貯蔵、放出のファラデー反応を含む。ファラデー反応とは、活性物質の酸化状態が変化し、電荷が二重電荷層を通過して電極界面を通って活性物質の内部に移動することである。非ファラデー反応とは、電極界面を通過する電荷移動を起こさず、イオンが電極表面で物理的に吸着離脱することにより電荷を貯蔵放出する反応である。Cdlが上記の範囲内にある場合、負極シートの非ファラデー過程を加速させ、反応活性が高くなり、動力学性能がさらに優れた。製造されたリチウムイオン電池は大倍率で高速充電することができ、且つ優れた安全性能を有するとともに、優れたサイクル性能を有する。
【0030】
負極シートの非ファラデー容量値を、非ファラデー容量値の試験方法によって二次電池中の負極シート突出(overhang)領域を試験して得ることができる。負極シートoverhang領域とは、負極シートの長さ及び幅方向が正極シートからはみ出している部分を意味する。負極シートの非ファラデー容量値を、電池として組み立てられていない負極シートを試験することによって得ることができる。
【0031】
圧縮密度
本願の一部の実施例では、負極シートの圧縮密度は、PD g/cmであり、1.1≦PD≦1.7を満たし、例えば、1.1、1.2、1.3、1.5、1.6、1.7のいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。本願の一部の実施例では、1.3≦PD≦1.6である。圧縮密度が上記の範囲にある場合、負極活物質顆粒の完全性がさらに高くなり、圧延後の顆粒破砕現象の出現を低減し、電池のサイクル過程における副反応の増加を低減し、電池のサイクル寿命の影響を受けることを回避し、また、負極シートの非ファラデー容量値が1nF~5nFであり、且つ圧縮密度が上記の範囲にある場合、負極活物質顆粒間の電気的接触がより良くなり、リチウムイオンの移動に有利であり、負極シートの電流の一致性を増大させ、電池の分極を遅らせ、同時に負極活物質顆粒間の隙間を適切な範囲内にさせることができ、負極活物質顆粒の構造を比較的完全な状態にさせ、且つ電解液の浸潤性をより良くすることができ、動力学性能を向上させた。負極シートの圧縮密度が変わると、負極シートにおいて顆粒同士の間の物理的接触が変化し、負極シートにおいて顆粒同士の間の孔隙が変化し、ひいては負極シートの非ファラデー容量に影響する。
【0032】
OI値
本願の一部の実施例では、負極シートのOI値は2~25である、例えば、OI値は、2、4、5、6、7、10、11、15、20、25のいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。本願の一部の実施例では、負極シートのOI値は4~20であってもよい。本願の一部の実施例では、負極シートのシートOI値は5~15であってもよい。X線回折(XRD)技術によって負極シートのOI値(C004/C110)を試験することができる。負極シートのOI値は負極活物質層の結晶配向性指数を表すことができ、ここで、C004は、負極活物質層のX線回折パターンにおける004特徴回折ピークのピーク強度であり、C110は、負極活物質層のX線回折パターンにおける110特徴回折ピークのピーク強度である。負極シートのOI値を変更することによってリチウムイオンの輸送経路に影響を与えることができる。リチウム吸蔵過程において、リチウムイオンは負極材料黒鉛の端面から層間に入り、層間に固相拡散を行い、リチウム吸蔵過程を完成し、そのため高等方性の黒鉛端面は負極シートの表面に露出され、リチウムイオンの遷移経路を短縮し、リチウムイオンの迅速な移動に有利であり、電気化学反応動力学を加速し、それによりリチウムイオンの大倍率放電性能をさらに実現する。また、優れた等方性は黒鉛層間の膨張を抑制し、サイクル性能を向上させることができる。従って、OI値が上記の範囲にあると、高速充電の向上、膨れの低減、サイクル改善の効果を実現することができる。
【0033】
非ファラデー容量の試験方法
負極シートの非ファラデー容量を試験することは、以下のステップを含む。
【0034】
S1:非ファラデー電位範囲の確認では、負極シートをボタン式半電池(ボタン電池と略称する)に組み立てサイクリックボルタモ法(CV)の試験を行い、ここで、電圧範囲は0.005~3.0Vであり、走査速度は0.1~1mV/sである。
【0035】
S2:非ファラデー区間のカソード走査では、S1の電位範囲を選んで線形走査ボルタモグラム(LSV)試験を行い、走査方向は高電位から低電位まで、電圧電流曲線を採集し、ここで、電圧範囲は2.5V~2.6Vであり、走査速度は0.05mV/s~5mV/sである。さらに、ある特定の走査速度Vで電位範囲の中央値Uを選択し、対応する電流値を取得する。
【0036】
S3:非ファラデー容量の計算では、ステップS2で採集された走査速度-電流の散布図に基づいて、フィッティングして線形関数を得、該線形関数の勾配Kは該負極シートのカソード走査方向のCdl値である。
【0037】
さらに、ボタン電池は、正極ハウジングと、負極シートと、セパレータと、電解液と、リチウムシートと、負極ハウジングとを含む。
【0038】
さらに、得られた負極シートを乾燥して小さい円シートに裁断して秤量した後、真空オーブンに移し、90℃~110℃で7h~9hで乾燥し、次にアルゴンガスが満たしたグローブボックスに移して半電池の組み立てを行い、ボタン電池を得る。ボタン電池の組み立てステップは、当技術分野において通常の組み立て方式である。
【0039】
負極集電体
一部の実施例では、負極集電体は、金属箔、金属円筒、金属テープロール、金属板、金属薄膜、金属板メッシュ、スタンピング金属、発泡金属等を含むが、これらに限らない。一部の実施例では、負極集電体は金属箔である。一部の実施例では、負極集電体は、アルミニウム箔又は銅箔である。本明細書の場合、用語「銅箔」は、銅合金箔を含む。
【0040】
一部の実施例では、負極集電体は導電性樹脂である。一部の実施例では、導電性樹脂は、ポリプロピレン膜に銅を蒸着して得られた膜を含む。
【0041】
負極活物質層
負極活物質層は、単層又は多層であってもよく、多層の負極活物質層のそれぞれは、同一又は異なる負極活物質を含んでもよい。負極活物質は、リチウムイオン等の金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な任意の物質である。一部の実施例では、充電中に負極にリチウム金属が析出されることを防止するために、負極活物質の充電可能容量は正極活物質の放電容量よりも大きい。
【0042】
一部の実施例では、負極活物質層の厚さは、負極集電体の片側にコーティングされた負極活物質層の厚さを指す。一部の実施例では、片面の負極活物質層の厚さは15μm以上である。一部の実施例では、負極活物質層の厚さは20μm以上である。一部の実施例では、負極活物質層の厚さは、30μm以上である。一部の実施例では、負極活物質層の厚さは、150μm以下である。一部の実施例では、負極活物質層の厚さは、120μm以下である。一部の実施例では、負極活物質層の厚さは、100μm以下である。一部の実施例では、負極活物質層の厚さは、上記のうちいずれか2つの数からなる範囲内にある。負極活物質層の厚さが上記の範囲内にある場合、電解液が負極集電体の界面近傍まで浸透することができ、電気化学装置の高電流密度での充放電特性を向上させる。同時に、負極活物質に対する負極集電体の体積比を適当な範囲内にさせることにより、二次電池の容量を確保することができる。
【0043】
負極活物質層は、負極活物質と、導電剤と、粘着剤と、添加剤と、溶剤とを含む。
【0044】
1、導電剤
本願の一部の実施例では、導電剤は、導電性カーボンブラック、導電性黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、又はグラフェンのうち1つ以上を含む。
【0045】
2、負極活物質
本願の一部の実施例では、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、軟質炭、硬質炭素、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、又はメソカーボンマイクロスフェアのうち1つ以上を含む。
【0046】
3、粘着剤
負極活物質層は負極粘着剤を含み、この負極粘着剤は負極活物質間の密着性を向上させる。粘着剤の種類は特に制限されず、電解液や電極の製造時に用いられる溶剤に対して安定な材料であればよい。
【0047】
負極シートの製造
本願の二次電池における負極シートは、任意の公知の方法を用いて製造することができる。例えば、負極活物質、導電剤、粘着剤、添加剤及び溶剤を特定の割合で負極スラリーを製造し、負極スラリーを負極集電体にコーティングし、圧延及び切断を行い、負極シートを得ることができる。
【0048】
II、電解液
電解液は、リチウム塩と、有機溶剤と、添加剤とを含み、添加剤は、シリコン含有化合物を含む。本願は、負極シートの非ファラデー容量値と電解液における添加剤の含有量との関係を適切に調節することによって、得られたリチウムイオン二次電池に高容量且つ高速充電の特徴を持たせた。
【0049】
添加剤
本願の二次電池は、電解液にシリコン含有化合物を含む添加剤を添加することによって、同時に正負極界面に安定したパッシベーション膜を形成することができ、電解液と界面の抵抗を低減し、正極シートあるいは負極シートと電解液との間の副反応を効果的に抑制した。負極シートの非ファラデー容量値が1nF~5nFであり、且つ電解液がシリコン含有化合物を含む場合、シリコン含有化合物は求核性とアルカリ性の孤立電子対を有し、フッ化水素(HF)含有量を調整する役割を果たし、電池の内部抵抗を低減し、充電速度を向上させる。一方、電子欠乏の中心原子の作用で、シリコン含有化合物は負極に成膜することができるため、固体電解質界面(SEI)膜のイオン導電率を増加し、リチウムイオン輸送を加速し、電池に高速充電能力を持たせ、リチウム析出の時間帯を最適化させ、且つ優れた電力性能を提供する。本願の電解液は、本願の負極シートと一緒にリチウムイオン電池に応用された後、リチウムイオン電池のサイクル性能を向上させることができるだけでなく、リチウムイオン電池の倍率性能を向上させることができた。
【0050】
本願の一部の実施例では、シリコン含有化合物は、トリス(トリメチルシラン)ホスフェート(TMSP)、トリス(トリメチルシラン)ホスファイト(TMSPi)、トリメチルフルオロシラン、又はトリス(トリメチルシラン)ボレート(TMSB)のうち少なくとも一方を含む。該シリコン含有化合物は負極シートとより良く作用することができ、リチウムイオン電池の負極シートの表面に性質が安定して且つ特定の緻密性を有するパッシベーション膜を形成することができ、電極-電解液の副反応を効果的に抑制し、電解液表面張力を低下させ、電極と電解液界面との相容性を向上させ、リチウムイオン電池のサイクル性能を改善し、リチウムイオン電池の安全性を向上させた。
【0051】
本願の一部の実施例では、電解液の総質量を基準として、シリコン含有化合物の質量百分率はA%であり、0.01≦A≦5を満たし、例えば、0.01、0.1、0.5、0.7、1、1.5、1.8、2.2、2.7、3、4、5のいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。本願の一部の実施例では、0.1≦A≦4である。本願の一部の実施例では、0.5≦A≦3である。シリコン含有化合物の質量百分率が0.01%以下である場合、成膜能力が不足してリチウムイオンに対する性能改善に限界がある。シリコン含有化合物の質量百分率が5%以上である場合、成膜が緻密になり過ぎてリチウムイオンの放出速度が低下になり、分極現象が増加し、リチウムイオン電池のサイクル性能が悪化する。
【0052】
本願の一部の実施例では、電解液の総質量を基準として、シリコン含有化合物の質量百分率はA%であり、0.01≦10×Cdl×A%≦2.5を満たし、例えば、0.02、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.8、1.1、2.2のいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。本願の一部の実施例では、0.02≦10×Cdl×A%≦2.2である。本願の一部の実施例では、0.1≦10×Cdl×A%≦1.1である。
【0053】
表面張力
本願の一部の実施例では、電解液の表面張力は、室温でF mN/mであり、20≦F≦40を満たし、室温は20℃~25℃である。例えば、Fは、20、25、30、35、40のいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。本願の一部の実施例では、25≦F≦35である。液体の表面に作用して液体の表面積を縮小させる力を液体の表面張力という。電解質の浸潤程度は、リチウムイオン電池の性能に影響を与え、改善方法は溶剤系の変更と添加剤の使用とを含む。電解液の表面張力が上記の範囲にある場合、シートの浸潤効果を加速することができ、電解液の分布均一性及び動的平衡能力を向上させ、浸透速度を向上させ、電池抵抗を低減することに役立ち、電池の反応動力学を向上させ、リチウムイオン電池に良好な倍率性能を持たせた。上記の表面張力を有する電解液は、負極のコーティング層に良好な界面を提供し、電気化学装置のサイクル性能を向上させることに有利である。また、湿潤時間の短縮は生産性の向上にもつながる。電解液の表面張力は、SY/T5370-2018表面及び界面張力測定法によって測定されることができる。試験設定は、総時間10.0s、開始休止0.0s、最終フレーム10%(33FPS)、ピペットチップ寸法300μL、液滴ボリューム6μLである。
【0054】
本願の一部の実施例では、1.1≦Cdl+R×F/10≦8は、例えば、1.1、1.5、2、3、5、7、8のいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。本願の一部の実施例では、1.5≦Cdl+R×F/10≦6である。本願の一部の実施例では、1.9≦Cdl+R×F/10≦4.5である。負極シートの非ファラデー容量値、二次電池の内部抵抗及び電解液の表面張力が該数値範囲を満たす場合、負極シートは比較的高い電子及びリチウムイオンの輸送性能を有するため、電池が高倍率で比較的高い充電と放電性能を有することを実現し、ひいてはリチウムイオン電池性能に優れた総合性能を持たせる。
【0055】
有機溶剤
本願の一部の実施例では、電解液は、電解液の溶剤として作用し得る当技術分野で公知の任意の有機溶剤をさらに含む。一部の実施例では、有機溶剤はカーボネート系溶剤を含み、このカーボネート系溶剤は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ポリカーボネートの少なくとも2つを含む。
【0056】
リチウム塩
本願の一部の実施例では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、有機ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、スルホンイミドタイプのリチウム塩の少なくとも1つを含む。
【0057】
リチウム塩の含有量は、本願の効果を損なわない限り、特に制限されない。本願の一部の実施例では、電解液の全体積を基準として、リチウム塩のモル濃度は0.5mol/L~2mol/Lであってもよく、1mol/L~1.8mol/Lであってもよく、又は1.2mol/L~1.5mol/Lであってもよい。リチウム塩の濃度が上記の範囲内にあると、荷電イオンであるリチウムイオンが過少とならず、粘度を適切な範囲にさせることができるため、優れた導電率を確保しやすくなる。
【0058】
添加剤
本願の一部の実施例では、添加剤は、1,3-プロパンスルトン、硫酸ビニル、亜硫酸ビニルなどの硫黄-酸素二重結合含有化合物を含む。
【0059】
本願の一部の実施例では、添加剤は、ビニレンカーボネート、エチレンビニルカーボネートなどの不飽和二重結合含有環状カーボネートを含む。
【0060】
III、正極シート
正極シートは、正極集電体と、正極集電体に配置された正極活物質層とを含む。
【0061】
正極活物質層
正極活物質層は、単層又は多層であってもよい。多層の負極活物質層のそれぞれは、同一又は異なる正極活物質を含んでもよい。正極活物質は、リチウムイオン等の金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な任意の物質である。
【0062】
正極活物質層は、正極活物質と、正極導電剤と、正極粘着剤と、溶剤とを含む。
【0063】
1、正極活物質
正極活物質の種類は特に制限されず、電気化学的方式で金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵及び放出できるものであればよい。本願の一部の実施例では、正極活物質は、リン酸鉄リチウム(LFP)及び三元材料のうち1つ以上を含む。
【0064】
本願の一部の実施例では、正極活物質は三元材料を含み、前記三元材料はリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及び/又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物を含む。
【0065】
本願の一部の実施例では、前記リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物における、ニッケル元素とコバルト元素とマンガン元素のモル比は1:1:1とし、そのうち、前記ニッケル元素の含有量は0.5以上である。
【0066】
本願の一部の実施例では、前記リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物における、ニッケル元素とコバルト元素とマンガン元素のモル比は1:1:1とし、そのうち、前記ニッケル元素の含有量は0.85以下である。
【0067】
本願の一部の実施例では、前記正極活物質はドーピング元素及び/又はコーティング元素をさらに含む。
【0068】
本願の一部の実施例では、正極活物質層の重量を基準として、正極活物質の含有量は、80%~98%であってもよく、85%~96%であってもよく、又は90%~95%であってもよい。一部の実施例では、正極活物質層の重量を基準として、正極活物質の含有量は、上記のいずれか2つの数からなる範囲にある。正極活物質の含有量が上記の範囲にあると、正極活物質層における正極活物質の含有量を確保しつつ、正極シートの強度を保つことができる。
【0069】
2、正極導電剤
正極導電剤の種類は特に制限されず、公知の導電剤をいずれも用いることができる。正極導電剤の例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、針状コークス、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの炭素材料を含むが、これらに限らない。上記の正極導電剤は単独で用いられてもよく、任意の組み合わせで用いられてもよい。
【0070】
3、正極粘着剤
正極活物質層の製造において用いられる正極粘着剤の種類は、特に制限されず、コーティング法の場合、電極の製造時に用いられる液媒体に溶解又は分散可能な材料であればよい。正極粘着剤の例としては、以下のうち1つ以上を含むことができるが、これらに限らない。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ポリブタジエン、エチレン-プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体もしくはその水素化物、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体もしくはその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等である。上記の正極粘着剤は単独で用いられてもよく、任意の組み合わせで用いられてもよい。
【0071】
4、溶剤
正極スラリーを形成するための溶剤の種類は制限されず、正極活物質、正極導電剤、正極粘着剤を溶解又は分散できる溶剤であればよい。正極スラリーを形成するための溶剤の例としては、水系溶剤及び有機系溶剤のいずれを用いてもよい。水系媒体の例としては、水、アルコールと水との混合媒体等を含むが、これらに限らない。有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、キノリン、ピリジンなどの複素環化合物、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類、ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、ヘキサメチルフォスファミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤等の溶剤を含むが、これらに限らない。
【0072】
正極集電体
正極集電体の種類は特に制限されず、正極集電体として好適である公知の材質であればよい。正極集電体の例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料、炭素布、炭素紙等の炭素材料を含むが、これらに限らない。一部の実施例では、正極集電体はアルミニウムである。
【0073】
正極集電体の形態は特に制限されない。正極集電体が金属材料である場合、正極集電体の形態は、金属箔、金属円筒、金属テープロール、金属板、金属薄膜、金属板メッシュ、スタンピング金属、発泡金属等を含むが、これらに限らない。正極集電体が炭素材料である場合、正極集電体の形態は、炭素板、炭素薄膜、炭素円筒を含むが、これらに限らない。一部の実施例では、正極集電体は金属箔である。一部の実施例では、金属箔は網状である。金属箔の厚さは特に制限されない。一部の実施例では、金属箔の厚さは、1μm以上、3μm以上、又は5μm以上である。一部の実施例では、金属箔の厚さは、1mm以下、100μm以下、又は50μm以下である。一部の実施例では、金属箔の厚さは、上記のうちいずれか2つの数からなる範囲にある。
【0074】
IV、セパレータ
短絡を防止するため、正極と負極との間には、通常、セパレータが配置されている。セパレータの材料及び形状は、本願の効果を損なわない限り、特に制限されない。セパレータは、本願の電解液に安定した材料で形成された樹脂、ガラス繊維、無機物等であってもよい。一部の実施例では、セパレータは、保液性に優れた多孔性シート状又は不織布状の形態の物質等を含む。樹脂又はガラス繊維セパレータの材料の例としては、ポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン等を含むが、これらに限らない。一部の実施例では、前記ポリオレフィンはポリエチレン又はポリプロピレンである。一部の実施例では、前記ポリオレフィンはポリプロピレンである。上記のセパレータの材料は単独で用いられてもよく、任意の組み合わせで用いられてもよい。
【0075】
二次電池の内部抵抗
本願の一部の実施例では、二次電池の内部抵抗は、R mΩであり、0.02≦R≦0.8を満たし、例えば、0.02、0.05、0.1、0.3、0.5、0.7、0.8のいずれか、又はそのうちいずれか2つの数からなる範囲としてもよい。本願の一部の実施例では、0.05≦R≦0.7である。本願の一部の実施例では、0.1≦R≦0.5である。二次電池の内部抵抗は、電気化学ワークステーションの交流インピーダンス試験によって測定することができる。ここで、干渉電圧は5mVであり、周波数範囲は100kHz~100mHzである。
【0076】
V、応用
本願の実施例は電気使用装置をさらに提供し、この電気使用装置は上記の二次電池パックを含む。
【0077】
本願の電気使用装置は、バックアップ電源、モータ、電気自動車、電動オートバイ、アシスト自転車、自転車、電動工具、家庭用大型蓄電池等に用いられることができるが、これらに限らない。
【0078】
以下、具体的な実施例と合わせて説明する。
実施例1
本実施例が提供する電池の製造方法は、以下のステップを含む。
【0079】
1)正極シートの製造ステップでは、正極活物質(NCM811)、正極導電剤(カーボンブラック)、正極粘着剤(ポリフッ化ビニリデン)を質量比96:2:2で混合し、その後、溶剤と混合して正極スラリーを製造し、溶剤はN-メチルピロリドン(NMP)である。得られた正極スラリーを正極集電体アルミ箔の両側に均一にコーティングし、次に120℃で乾燥、圧延、切断を行い、正極シートを得る。
【0080】
2)負極シートの製造ステップでは、負極活物質、導電剤、粘着剤、添加剤を質量比96.5:1.5:1.5:0.5で均一に混合し、その後、脱イオン水の溶剤と混合して負極スラリーを製造し、負極活物質は人造黒鉛であり、導電剤はカーボンブラックであり、粘着剤はスチレンブタジエンゴムであり、添加剤はカルボキシメチルセルロースナトリウムである。真空攪拌機の作用で撹拌して負極スラリーを得、調製された負極スラリーを負極集電体の銅箔の両側に均一にコーティングし、焼成乾燥した後に、圧延及び切断を行い、負極シートを得、焼成温度を90℃~110℃とし、圧延の圧縮密度を1.55g/cmに調整し、負極シートのOI値を6.5とする。負極シートにおける負極活物質の様態、攪拌工程、圧延条件などの方法を調整することにより、負極シートの非ファラデー容量値を表1に示す値に達すればよい。
【0081】
3)電解液の製造ステップでは、エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(EDC)を質量比3:4:3で混合し、0.1%のトリス(トリメチルシリル)リン酸エステル、1%のビニレンカーボネートを添加し、次に1mol/LのLiPFを添加して均一に混合し、電解液を調製し、その表面張力は35 mN/mである。
【0082】
4)リチウムイオン電池の製造ステップでは、上記のステップを利用して製造された負極シート、正極シートは乾燥された後、セパレータと一緒に電気コアを巻き、製造された電気コアをハウジングに入れ、前記セパレータはPPフィルムを用いる。注液、化成定容を経てリチウムイオン電池が製造される。
【0083】
5)非ファラデー容量値の試験ステップは、以下の通りである。ステップ1では、リチウムイオン電池をグローブボックス内又は乾燥室で分解し、負極overhang領域のシートを得てジメチルカーボネート(DMC)溶液で浸漬し、切断した後、それを金属リチウムシートとボタン式半電池に組み立て、又は電池に組み立てられていない負極シートを取って切断した後、金属リチウム片とボタン式半電池に組み立てる。ステップ2では、ボタン電池に対し電圧範囲0.005V~3.0Vでサイクリックボルタモ法(CV)の試験を行い、走査速度は0.1mV/sであり、非ファラデー電位範囲が2.5V~2.6Vであることを確保する。ステップ3では、次に2.6Vから2.5Vまで線形走査ボルタモグラム(LSV)試験を行い、走査速度はそれぞれ0.1mV/s、0.2mV/s、0.5mV/s、1mV/s、2mV/sであり、電位範囲の中央値2.55Vを選択し、対応する電流値-7.87E-07A、-9.94E-07A、-1.80E-06A、-3.03E-06A、-4.99E-06Aを取得する。ステップ4では、走査速度-電流散布図をプロットし、フィッティングして線形関数を得、図1に示すように、該線形関数の勾配-2.22E-06は、該負極シートのカソード走査方向Cdlが2.22nFであることを表す。
【0084】
本実施例で製造された電池のパラメータは以下の通りである。圧延された後の負極シートの圧縮密度は1.55g/cmであり、シートOI値は6.5である。電解液に0.1%のトリス(トリメチルシラン)リン酸エステルを添加して電解液を調製し、その表面張力は35mN/mであり、リチウムイオン電池の非ファラデー容量値は2.22である。
【0085】
実施例2~実施例20
実施例2~実施例20は、以下の表1に示すような相違点を除き、実施例1の方法によるリチウムイオン電池を製造する。
【0086】
比較例1
比較例1は、以下の相違点を除き、実施例1の方法によるリチウムイオン電池を製造する。
【0087】
圧延された後の負極シートの圧縮密度は1.05g/cmであり、シートOI値は20である。電解液にいかなる添加剤も添加せず、その表面張力は45mN/mである。リチウムイオン電池の非ファラデー容量値は0.8である。
【0088】
比較例2
比較例2は、以下の相違点を除き、実施例1の方法によるリチウムイオン電池を製造する。
【0089】
圧延された後の負極シートの圧縮密度は1.3g/cmであり、シートOI値は27である。電解液に5.5%のトリス(トリメチルシラン)リン酸エステルを添加して電解液を調製し、その表面張力は15mN/mである。リチウムイオン電池の非ファラデー容量値は5.3である。
【0090】
実施例1~実施例20及び比較例1~比較例2におけるCdl値は、負極活物質の様態、負極シートの圧縮密度、負極シートのOI値を調整することによって変更され、本願で例示する値になればよい。
【0091】
実施例1~実施例20及び比較例1~比較例2で得られた電池に対し動力学性能試験を行い、試験方法は以下の通りである。
【0092】
リチウムイオン電池に対し、25℃で30minで静置、5Cで満充電、30minで静置、1Cで満放電、10minで静置、充放電サイクルを10回循環した後、再びリチウムイオン電池を5Cで満充電して10minで静置し、終了する。リチウムイオン電池を分解し、負極シート表面の界面状況を観察し、リチウムが析出した部分の面積を記録する。リチウムが析出した部分の面積の百分率=リチウムが析出した部分の面積/負極シートの総面積×100%。ここで、リチウム析出の程度は、リチウム析出無し、軽度リチウム析出、中度リチウム析出及び重度リチウム析出に分類される。リチウム析出無しは、負極シートの表面においてリチウム析出の領域が3%未満であることを表す。軽度リチウム析出とは、負極シートの表面においてリチウム析出の領域が3%以上、且つ全体領域の20%より小さいであることを表す。中度リチウム析出とは、負極シートの表面においてリチウム析出の領域が全体領域の20%~70%であることを表す。重度リチウム析出とは、負極シートの表面においてリチウム析出の領域が全体領域の70%を超えることを表す。
【0093】
サイクル性能の試験方法
二次電池に対し、25℃で30min静置、定電流1Cで放電、10minで静置、定電流定電圧1Cで充電、10minで静置の満充電と満放電のサイクル試験を行い、2000サイクルで循環した容量保持率を記録する。
【0094】
電解液の表面張力の試験方法
電解液の表面張力の試験方法は、SY/T5370-2018表面及び界面張力測定方法を参照する。
【0095】
電池の内部抵抗の試験方法
リチウムイオン電池に対し、25℃で30minで静置し、定電流定電圧1Cで充電し、カットオフ電流は0.05Cであり、次に容量1Cで30minで放電し、50%の充電状態(SOC)に変更し、その後、電気化学ワークステーションで交流インピーダンス測定を行い、ここで、干渉電圧は5mVであり、周波数範囲は100kHz~100mHzである。
【0096】
試験結果を以下の表に示す。
【表1(1)】
【表1(2)】
【表1(3)】
【0097】
表1の結果を参考すると、比較例1では、電解液にシリコン含有化合物を添加せず、且つ非ファラデー容量値が本願の範囲より低く、比較例2では、電解液にシリコン含有化合物を過剰に添加し、且つ非ファラデー容量値が本願の範囲より高く、それは、実施例が比較例に比べて、電解液に本願の範囲内にあるシリコン含有化合物を添加し、且つ非ファラデー容量値が本願の範囲内にあると、電池の動力学性能が優れることを示す。
【0098】
実施例の電池のサイクル性能は比較例に比べて著しく改善され、比較例1では、電解液にシリコン含有化合物を添加せず、且つ非ファラデー容量値が本願の範囲より低く、比較例2では、電解液にシリコン含有化合物を過剰に添加し、且つ非ファラデー容量値が本願の範囲より高く、それは、実施例が比較例に比べて、電解液に本願の範囲内にあるシリコン含有化合物を添加し、且つ非ファラデー容量値が本願の範囲内にあると、電池が優れたサイクル性能を有することを示す。
【0099】
本願は二次電池を提供し、この二次電池は大倍率で高速充電が可能であり、且つこの二次電池は高容量を有するとともに、優れたサイクル性能を有する。
【0100】
以上、本願が提供した二次電池及び電気使用装置について詳しく説明したが、本明細書では具体的な例示を用いて本願の原理及び実施形態について述べたが、以上の実施例の説明は本願の方法及びその核心思想の理解を助けるためであるに過ぎない。また、当業者は、本願の思想に照らして、具体的な実施形態及び適用範囲において変形を加えることができ、従って、本明細書の記載は、本願を限定することを意図するものではないことを理解されるべきである。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解液とを含み、前記負極シートの非ファラデー容量値は、Cdl nFであり、1≦Cdl≦5を満たし、前記電解液は、添加剤を含み、前記添加剤はシリコン含有化合物を含む、
二次電池。
【請求項2】
前記シリコン含有化合物は、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシラン)ホスファイト、トリメチルフルオロシラン、又はトリス(トリメチルシラン)ボレートのうち少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記電解液の総質量を基準として、前記シリコン含有化合物の質量百分率はA%であり、0.01≦A≦5を満たす、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記電解液の総質量を基準として、前記シリコン含有化合物の質量百分率はA%であり、0.01≦10×Cdl×A%≦2.5を満たす、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項5】
前記負極シートの圧縮密度は、PD g/cmであり、1.1≦PD≦1.7を満たす、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極シートのOI値は2~25である、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電解液は、室温での表面張力がF mN/mであり、20≦F≦40を満たし、前記室温が20℃~25℃である、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項8】
前記二次電池の内部抵抗はR mΩであり、0.02≦R≦0.8を満たす、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項9】
前記電解液は、室温での表面張力がF mN/mであり、前記二次電池の内部抵抗はR mΩであり、1.1≦Cdl+R×F/10≦8を満たす、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項10】
前記負極シートは、負極集電体と、負極集電体に配置された負極活物質層とを含み、前記負極活物質層は負極活物質を含み、前記負極活物質は人造黒鉛、天然黒鉛、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、又はメソカーボンマイクロスフェアのうち1つ以上を含む、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の二次電池を含む、
電気使用装置。
【国際調査報告】