(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】弾性挙動が強化された高速超吸収体の調製
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20241024BHJP
C08F 220/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
C08F220/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520847
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2022078808
(87)【国際公開番号】W WO2023066852
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】321014366
【氏名又は名称】エボニック スーパーアブソーバー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ロイック
(72)【発明者】
【氏名】アクセル メスシェル
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ダークス
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ガルツ
(72)【発明者】
【氏名】スコット スミス
(72)【発明者】
【氏名】ディードリッヒ シュミッド
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ファウラー
【テーマコード(参考)】
4F070
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA29
4F070AC20
4F070AC36
4F070AC42
4F070AC43
4F070AC66
4F070AE08
4F070DA48
4F070DA50
4F070DB06
4F070DB09
4F070DC15
4F070GA06
4F070GA08
4J100AJ00P
4J100AJ00Q
4J100AJ02P
4J100AJ02Q
4J100AJ09Q
4J100AM21Q
4J100BA56Q
4J100CA04
4J100DA37
4J100EA03
4J100FA02
4J100FA03
4J100GC25
4J100GC32
4J100GC37
4J100JA60
(57)【要約】
本発明は、吸水性ポリマー、いわゆる超吸収体の調製方法に関する。本発明は、複雑な設計ルールを有する穴あきプレート(13)を通して、ヒドロゲルを押し出すことにより、チキソトロピーの悪影響が減少し、そのヒドロゲルから作製された超吸収体の吸収速度が上昇するという発見に基づいている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)‐酸基を有し、必要に応じて少なくとも部分的に中和されている少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、
‐水と、
‐少なくとも1つの架橋剤と、
‐少なくとも1つの開始剤、または開始剤系の少なくとも1つの要素と、
‐必要に応じて、前記モノマーと重合可能な少なくとも1つのエチレン性不飽和コモノマーと、
‐必要に応じて、少なくとも1つの水溶性ポリマーと、
‐必要に応じて、少なくとも1つの発泡剤前駆体と、
‐必要に応じて、追加成分と、
を含むモノマー混合物を準備する工程と、
(b)反応容器を有する反応器を準備する工程と、
(c)押出容器を有する押出機を準備し、前記押出容器は穴あきプレートで蓋をされ、前記穴あきプレートは複数の貫通穴を有し、前記貫通穴の各々は相当直径dと軸方向長さlを有し、前記貫通孔により形成される、穴あきプレートの総空隙面積はVであり、空隙面積を含めた穴あきプレートの総面積はAである工程と、
(d)前記モノマー混合物の成分を転化することにより、反応容器内で重合を実施し、架橋ポリマーヒドロゲルを得る工程と、
(e)必要に応じて、前記ヒドロゲルの化学的および/または物理的修飾を行い、前記ヒドロゲルの娘生成物を得る工程と、
(f)前記ヒドロゲルまたはその娘生成物を前記押出容器に移す工程と、
(g)必要に応じて、前記押出容器内で前記ヒドロゲルまたはその娘生成物を細断する工程と、
(h)前記ヒドロゲルまたはその娘生成物を前記穴あきプレートを通して前記押出容器から押し出し、前記ヒドロゲルまたはその娘生成物を軸方向に前記貫通孔を通過させ、押出ヒドロゲルを得る工程と、
(i)必要に応じて、前記押出ヒドロゲルの化学的および/または物理的修飾を行い、前記押出ヒドロゲルの娘生成物を得る工程と、
(k)前記押出ヒドロゲルまたはその娘生成物を乾燥させ、固体ポリマー材料を得る工程と、
(l)前記固体ポリマー材料を粉砕してポリマー粉末を得る工程と、
(m)前記ポリマー粉末を篩にかけ、前記ポリマー粉末の少なくとも1つの分粒フラクションを得る工程と、
(n)前記分粒フラクションを後処理し、吸水性ポリマーを得る工程であり、この「後処理」工程は、少なくとも1つの表面架橋工程を包含する工程と、
を含み、
前記穴あきプレートの形状は、要件:
5.5<2.10686036×(l/d)
0.774457×(V/A)
-0.117802<13.3
を満たすように選択される、吸水性ポリマーの調製方法。
【請求項2】
前記モノマー混合物は、以下:
‐少なくとも部分的に中和されたアクリル酸:10重量%~70重量%
‐水:30重量%~80重量%
‐架橋剤:0.05重量%~5重量%
‐開始剤:0.1重量%~1重量%
‐コモノマー:0重量%
‐水溶性ポリマー:0重量%
‐発泡剤前駆体:0重量%~1重量%
‐追加成分:0重量%~20重量%
のレシピに従って準備され、
所与の割合は、合計で100重量%となり、
所与の割合は、前記モノマー混合物の総重量に対する割合である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記モノマー混合物は、発泡剤前駆体を含み、前記前駆体の量は、前記モノマー混合物の重量に対し、1000ppm~1500ppmの範囲内であり、前記前駆体は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、3-オキソペンタン二酸、尿素からなる群から選択される少なくとも1つの要素である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記モノマー混合物内の架橋剤の総量は、前記モノマーの1モルを基準として、10ミリモルを超え、50ミリモル未満である、請求項2または請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記表面架橋工程は、
少なくとも1つの表面架橋剤と、必要に応じて少なくとも1つの追加成分とを、前記ポリマー粉末の前記分粒フラクションまたはその娘生成物に添加し、混合物を得る工程と、
前記ポリマー粉末の表面積における架橋密度を上げるために、前記混合物に熱処理を施工程と、
を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記反応器と前記押出機は、構造的に別個に設けられる、請求項1~請求項5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
本明細書で定義されるゲル床レオロジー法に従って測定される降伏応力(YS)が180Pa~254Paの範囲内であり、請求項1~請求項6の少なくとも1つに記載の方法により得られる吸水性ポリマー。
【請求項8】
以下:
(A)本明細書で定義されるFSR法に従って測定される自由膨潤速度(FSR)が0.48秒を超え0.88秒未満
(B)本明細書で定義されるk(t)法に従って測定される20g/g(T20)の吸収が62秒を超え125秒未満
のすべての性能パラメータを累積的に満たす、請求項7記載の吸水性ポリマー。
【請求項9】
本明細書で定義されるゲル床レオロジー法に従って測定される貯蔵係数(G’)を有し、貯蔵係数と自由膨潤速度(G’×FSR)の積が2666Pa・sを超え、5106Pa・s未満である、請求項8記載の吸水性ポリマー。
【請求項10】
以下:
(A)EDANA標準試験WSP241.2(5)に従って測定される25.8g/g~29.9g/gの遠心分離保持容量(CRC)が25.8g/g~29.9g/g
(B)EDANA WSP 242.2(5)に従って測定される、4.83kPaの圧力下での吸光度(AUP)が23.0g/g~25.6g/g
の性能パラメータを累積的に満たす、請求項8または請求項9記載の吸水性ポリマー。
【請求項11】
篩い分けにより以下:
‐600μm~710μm:0重量%を超え10重量%未満、目標は5重量%
‐500μm~600μm:20重量%を超え40重量%未満、目標は30重量%
‐300μm~500μm:40重量%を超え60重量%未満、目標は50重量%
‐150μm~300μm:5重量%を超え25重量%未満、目標は15重量%
の粒度分布に調整され、
所与の割合は、合計で100重量%となる、請求項7、請求項8、請求項9または請求項10の少なくとも1項記載の吸水性ポリマー。
【請求項12】
EDANA標準NWSP 230.0.R2(19)に準拠した含水率が最大で10重量%、または最大で7重量%、または最大で5重量%、または最大で3重量%である、請求項7~請求項11の少なくとも1項記載の吸水性ポリマー。
【請求項13】
モノリス粒子と凝集粒子とを含み、凝集粒子の数に対するモノリス粒子の数の比rが20を超え、または32を超え、または50を超え、または80を超え、または126を超え、または200を超え、または500を超え、前記比は明細書で定義されるように測定される、請求項7~請求項12の少なくとも1項記載の吸水性ポリマー。
【請求項14】
せん断応力(σ)とせん断ひずみ(ε)が直線関係であり、前記直線関係は、せん断応力値(σ)が降伏応力(YS)よりも低い場合に有効であり、せん断応力(σ)およびせん断ひずみ(ε)は、明細書で定義されるように測定される、請求項7~請求項13の少なくとも1項記載の吸水性ポリマー。
【請求項15】
貯蔵係数(G’)と損失係数(G’’)とを有し、両者は、明細書で定義されるゲル床レオロジー法に従って測定され、吸水性ポリマーが0.1%~1000%または1%~100%の範囲でひずむ限り、貯蔵係数(G’)が損失係数(G’’)よりも大きく、せん断ひずみ(ε)は、明細書で定義されるように測定される、請求項7~請求項14の少なくとも1項記載の吸水性ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性ポリマーの調製方法、およびそれによって得られる吸水性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
「超吸収体」は、圧力下で水を放出することなく、大量の水を吸収できるポリマー粒子を指す一般的な商業用語である。その他の一般的な用語は、「超吸収性材料」(SAM)、「超吸収性ポリマー」(SAP)、または「吸収性ゲル化材料」(AGM)である。
【0003】
超吸収体は、水を吸収すると、勢いよく膨張する。水は、ポリマーネットワーク内に閉じ込められ、水を含んだ超吸収体がヒドロゲルを形成する。水と同様に、超吸収体は、生理食塩水やさまざまな種類の体液を吸収する。この能力により、超吸収体は、赤ちゃん用おむつや女性用ケア用品、失禁用品などのパーソナル衛生用品の重要な構成要素として機能している。
【0004】
超吸収体は、大規模な工業規模で生産されており、世界的生産量は、年間100万トンを超える。
【0005】
吸水性ポリマーの技術については、以下から導出できる。
マーカス・フランク:超吸収体、ウルマン工業化学百科事典、オンライン公開: 2003年1月15日、DOI:10.1002/14356007.f25_f01
【0006】
広く普及している超吸収体製造工業プロセスは、次の基本的な工程から構成されている。
モノマー混合物を準備する。その必須成分は、モノマー、架橋剤、および開始剤である。主に、アクリル酸がモノマーとして選択される。溶媒として、水もモノマー混合物中に存在する。他の成分、例えば、その後のポリマーに含まれるコモノマー、またはその後のポリマーの一部にはならない補助成分も含有され得る。
【0007】
モノマー混合物を反応器に供給し、開始剤の種類に応じて、適切な手段により、重合を開始する。重合時、モノマーがポリマー鎖を構築し、架橋剤によって架橋され、三次元ポリマーネットワークが形成される。水は、ネットワーク内に閉じ込められる。したがって、反応生成物は、ヒドロゲルである。
【0008】
ヒドロゲルを分解する必要がある。これは、撹拌機(混練反応器)を用いて反応容器内で直接行ってもよく、および/または1つまたは複数の別個の装置、いわゆる押出機またはチョッパー内で行ってもよい。
【0009】
いずれの場合も、分解プロセスの最後には、穴あきプレートで蓋がされた少なくとも1つの押出容器があり、そこを通して、(事前に粉末状にした)ヒドロゲルを押し出す。押出時、貫通穴に対し、ヒドロゲルを軸方向に通過させ、押出ヒドロゲルを得る。
【0010】
ポリマーネットワークから水を排出するために、押出ヒドロゲルを乾燥させる。そうして、固体ポリマー材料を得る。次いで、ポリマー材料の粒径を調整する必要がある。これについては、固体ポリマー材料を粉砕し、篩にかけ、150μm~850μmの特定の粒径を持つ粉末を得ることで実行する。
【0011】
このポリマー粉末は、乾燥工程の逆転プロセスとして、水を吸収することができる。ただし、パフォーマンスを向上させるには、さらなる仕上げ工程が必要である。
【0012】
具体的には、粉末に表面架橋処理を施す。表面架橋中に、個々の粒子の表面近傍領域の架橋密度が上昇する。したがって、各粒子は、同程度の低い架橋密度を有する柔らかいコアと、より高い程度の架橋密度を有する硬いシェルとを備えた卵状のコア/シェル構造を得る。コア/シェル構造は、SAPの吸収特性に大きく影響する。
【0013】
吸収特性の他に、他の機能、例えば臭気制御、色安定性、良好な保管および輸送特性を後処理中に調整する。これは、ポリマー粉末にさらなる成分を添加することにより行う。
【0014】
超吸収体は通常、パーソナル衛生用品の製造業者によって購入される。購入を決める際、超吸収体の全体的な性能プロファイルが重要である。必要な性能プロファイルは、衛生用品の種類および目的によって大きく異なる。過去数十年にわたり、さまざまなSAP品質の用途への適合性を比較するために、市場参入者によって多数の性能パラメータが確立されてきた。これらの性能パラメータの中には、独立した当局により標準化されているものもあれば、特定の衛生用品製造業者により彼らの個別ニーズのみに合わせて定義されているものもある。実際、現実のSAP市場では、両者の性能パラメーターが重要である。それに加えて、特許文献には、特定の特許権以外にはまったく影響を及ぼさないパラメータがぎっしり記載されている。
【0015】
本発明では、以下の性能パラメータが関係する。
【0016】
貯蔵係数(G’)
貯蔵係数は、弾性固体のせん断ひずみ(変形)に対するせん断応力(力) の比を表す。したがって、G’は弾性を数値化したものである。単位は、パスカルである。値が大きいほど、材料は硬くなる。弾性は、含水量に大きく依存する。乾燥SAPは比較的固形化しているが、水膨潤SAP(ヒドロゲル)は粘弾性挙動を示す。したがって、G’は、膨潤状態で測定される。プローブが吸収する液体の量は、関連する方法により定義される。吸収量は方法によって大きく異なるため、異なる方法で得られた値を比較するのは難しい。さらに、粘弾性特性は、別のパラメータの影響を受けた振動測定値を用いて記録される。本明細書で使用される方法は、以下の「ゲル床レオロジー」のセクションで定義される。(特許)文献では、SAPヒドロゲルの弾性を説明するために、貯蔵係数の代わりに、次の用語が使用されている:弾性係数、貯蔵弾性係数、ゲル強度、ゲル床弾性。
【0017】
降伏応力(YS)
ヒドロゲルの粘弾性は、時間と応力(チキソトロピー)に依存する。応力が増加するか、または時間の経過に伴って絶え間なく応力を受けると、弾性は急激に減少する。降伏応力は、ヒドロゲルの弾性が崩壊する瞬間に加えられる機械的負荷である。したがって、降伏応力によって、ゲル床が破壊され、粒子が相互に移動してゲルの弾性が失われる点が特定される。YSが大きいほど、材料の弾性は高くなり、YSが小さいほど、材料の弾性は低くなる。降伏応力の単位はパスカルである。
【0018】
降伏応力の測定を扱う一般的な記事は、以下から入手できる。
https://cdn.technologynetworks.com/TN/Resources/PDF/WP120416UnderstandYieldStressMeas.pdf
【0019】
本明細書で使用される降伏応力の測定方法は、以下の「ゲル床レオロジー」のセクションで定義される。実際の器具では、降伏応力は、信頼性を示す重要な値である。値が高いほど、チキソトロピー挙動による粘度損失のリスクが低くなる。降伏応力が低いということは、チキソトロピーの悪影響が見られにくいことを意味する。
【0020】
自由膨潤速度(FSR)
これは、外圧がない場合のSAPの吸収速度に関するパラメータである。これは、SAPの質量単位あたりの吸収された尿の質量速度として構成されている。単位は秒で、g/g*sと表記される場合もある。数値が大きいほど、吸収速度が速くなる。このパラメータは、おむつの大手製造業者によって確立された。試験手順は、欧州特許出願公開第0443627号明細書の第12頁の第24行目~第44行目に開示されている。
【0021】
20g/g(T20)の吸収
これは、外圧がない場合のSAPの吸収速度に関するパラメータである。SAP(1g)の場合に、一定量の尿(20g)を吸収する時間として構成されている。単位は秒である。値が小さいほど、吸収速度が速くなる。このパラメータは、別の大手おむつ製造業者によって確立された。試験手順は、欧州特許出願公開第2535697号明細書の段落[0027]~段落[0071]に開示されている。
【0022】
遠心分離保持容量(CRC)
SAPの最も古い性能パラメータの1つである。尿を吸収する容量を指す。単位はg/gまたは[-]である。値が大きいほど、容量が大きくなる。試験方法において、公式にSAPを充填するティーバッグが使用されるため、この値は、「ティーバッグ容量」と呼ばれることが多い。試験方法には、充填されたプローブの遠心分離が含まれる。ただし、選択される回転速度、つまり遠心力Gは、その時々で異なる。したがって、この値は、特定の回転速度または G力の場合にのみ信頼できる。この方法は、企業団体EDANAにより、標準試験WSP 241.2(05)として標準化されている。
【0023】
加圧下での吸収性(AUP)
外圧を受けたときに尿を吸収する容量を指す。単位はg/gまたは[-]である。値が大きいほど、容量が大きくなる。プローブにかかる圧力が異なる。4.83kPa(=0.7psi、したがってAUP0.7と名付けられる)の圧力を使用するものもあれば、2.07kPa(=0.3psi、したがってAUP0.3と名付けられる)の圧力を好むものもある。したがって、この値は、所与の圧力が加えられた場合にのみ参考になる。本明細書では、AUPは4.83kPaで測定された。AUP値は「荷重下吸収性(AUL)」とも呼ばれる。この方法は、企業団体EDANAにより、標準試験WSP 242.2(05)として標準化されている。
【0024】
性能パラメータの定義は、時が経つにつれて変化するため、その期間以前の正確な測定方法を考慮することなしに、特定の値を比較することは不可能である。
【0025】
個々の性能パラメータ間には、目的の関係性と矛盾があることが知られている。例えば、AUPを強化するための措置によって、CRCが減少することがある(上で引用したフランクの
図7を参照)。このため、特性Xに関する挙動が改善された超吸収体を開発することは、特性Yを損なわないことも付加的に意味する。SAPの意図された目的に対して最適化された、バランスのよい特性プロファイルが重要である。
【0026】
矛盾する特性のバランスを判断する一般的な数学的アプローチは、多数の特性パラメータの算術関数としての指数を定義することである。最も簡単なケースでは、指数は、2つのパラメータの積として定義される。指数の値が特定の範囲内にある場合、2つのパラメータによって表される特性プロファイルは、バランスが取れている。
【0027】
本発明の場合、チキソトロピー挙動と吸収速度が興味の対象であった。具体的には、少なくとも0.4g/g/s以上のFSR値を達成する超高速超吸収体が要求されていた。このような超高速超吸収体は、超薄型おむつの構造に必要とされる。浸透性とともに速い吸収速度が、おむつ構造中の多量の綿毛を置き換える鍵となる。粘弾性に関しては、製造時に加えられる荷重下でヒドロゲルがチキソトロピー挙動を示さない場合、SAP製造時の処理効率が向上するため有益である。それに加えて、荷重がかかったおむつ内でゲル床がチキソトロピー特性を示すのは好ましくない。長期にわたる外圧下では、膨潤したゲル床が突然その安定性を失い得る。これにより、漏れが生じたり、逆戻り(リウェット)挙動が低下したりする可能性があります。したがって、膨潤状態でチキソトロピーを示さない超吸収体は、パーソナル衛生用品の信頼性を向上させるのに役立つ。関連する荷重下でチキソトロピーを示さない膨潤超吸収体は、ニュートン流体のように挙動する。このような粘弾性挙動は、上記の理由により望ましい。
【0028】
吸収速度値FSRを向上させるために、ヒドロゲルを収容する際にかかる質量比エネルギーを特定の範囲内に調整することが欧州特許第2557095号明細書によって提案されている。比エネルギーは、粉砕機のモーターの消費電力と効率係数から計算される。電力消費量は簡単に測定できるが、欧州特許第2557095号明細書には、粉砕機の機械効率の測定方法に関する情報が何も記載されていない。段落[0049]において、ゲル粉砕装置の製造業者に効率を問い合わせることができると述べられているが、これは事実ではない。したがって、欧州特許第2557095号明細書は、所望の効率をもたらす粉砕装置の特定の設計の詳細を当業者に教示していない。
【0029】
欧州特許第2951212号明細書の目的は、FSRとCRCが改善されたSAPを提供することである。押出時の比エネルギーインプットは、60kWh/tに制限されている。比エネルギーインプットは、押出機の長さと直径の比率に影響を受ける。押出機ダイスの寸法がいくつか示されているが、それらのFSRへの影響については議論されていない。
【0030】
欧州特許出願公開第3070114号明細書は、SAPの吸収性、すなわちCRCとAULの向上を目的としている。これを達成するために、チョッパーダイスの設計ルールが開示されている。ただし、吸収速度またはチキソトロピーに影響を与える手段は、示されていない。
【0031】
国際公開第2016/105119号パンフレットでは、チョッパーダイスの設計も扱っている。押出時のせん断応力は、抽出可能物に与える影響を少なくするために、低減されなければならない。ただし、その後のSAPの粘弾性挙動に関する記述はない。
【0032】
欧州特許第3067370号明細書は、特定のゲル強度を有するSAPの調製方法を開示している。CRC、AUL、およびFSRは、バランスが取れていなければならない。使用する押出機の出口直径とゲル強度の関係を確立している。押出機の出口の数は示されていない。
【0033】
米国特許出願公開第2021/298962号明細書は、女性用衛生吸収用品の製造を扱っている。この過程では、ポリマーゲルは、穴径8mmの穴が12個あいた多孔板を有する製麺機を用いて、押し出される。多孔板の厚さは16mmであった。多孔板の全体直径は開示されていない。押出機の内径に対する内のり長さの比(L/D)は4であった。この値は、製麺機の押出機バレルの口径に関係する。ただし、穴の長さと直径の比率は示されていない。
【0034】
欧州特許出願公開第2565211号明細書は、最近の炭素源をベースにした超吸収剤に関する。例示的な製造において、ヒドロゲルは、穴径8mmのミートチョッパーによって細かく粉砕された。穴の長さとプレートの直径は示されていない。ミートチョッパーの穴の数も記載されていない。
【0035】
欧州特許出願公開第3248993号明細書は、渦値が低い高速超吸収体を開示している。その調製時、ヒドロゲルは、ミートチョッパーを使用して塊に切断される。ミートチョッパーに関するさらなる情報は記載されていない。
【0036】
米国特許出願公開第2007/060691号明細書は、ヒドロゲルを小片に粉砕するための、MADO GmbH社製の実験室押出機の使用を述べている。機械パラメータに関する詳細情報は、記載されていない。
【0037】
米国特許出願公開第2014/312273号明細書は、全体の品質、そしてより具体的には高い透過性を同時に維持しながら、膨潤速度が向上され、液体吸収速度がより速まった吸水性ポリマーの製造を目的としている。このプロセスの過程において、ゲルは、ミートグラインダーで粉砕される。ミートグラインダーのパラメータは開示されていない。
【0038】
欧州特許出願公開第3406655号明細書中、バランスのとれた特性は、T20、CRC、およびAUPである。切断指数は、使用される穴あきプレートの開口率、スクリュー速度、および押出されたヒドロゲルの固形分により構成されている。
【0039】
欧州特許出願公開第2944376号明細書および米国特許第10130527号明細書は両者とも、より小さなポリマー粒子の2つのフラクションの強制凝集による高速超吸収体(T20=104秒)の製造方法を開示している。したがって、得られた超吸収体は、主に凝集体であると考えられる。凝集超吸収体の構造上の欠点は、機械的強度が低下する点である。凝集粒子には、必然的に粒界が含まれる。このような粒界は、粒子内に破断点を形成する。機械的応力が高まると、凝集物は、粒界が壊れて解凝集する傾向がある。したがって、強制凝集によって調製された超吸収体は、通常の非凝集一体型超吸収体よりも安定性が劣る。欧州特許出願公開第2944376号明細書および米国特許第10130527号明細書に開示されているような強制凝集のさらなる欠点は、より高速な製品を製造するために、押出/膨潤/再押出の工程を集約した方法である点である。工場でこれを実施すると、明らかな資本経費となるであろう。一見したところ、現在の従来技術では、超吸収体の吸収速度と対応するヒドロゲルのチキソトロピーとの両方に対し、どのようにプラスの影響を与えられるかについては教示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0443627号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2535697号明細書
【特許文献3】欧州特許第2557095号明細書
【特許文献4】欧州特許第2951212号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第3070114号明細書
【特許文献6】国際公開第2016/105119号パンフレット
【特許文献7】欧州特許第3067370号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2021/298962号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第2565211号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第3248993号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2007/060691号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2014/312273号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第3406655号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第2944376号明細書
【特許文献15】米国特許第10130527号明細書
【非特許文献】
【0041】
【非特許文献1】マーカス・フランク:超吸収体、ウルマン工業化学百科事典、オンライン公開: 2003年1月15日、DOI:10.1002/14356007.f25_f01
【非特許文献2】https://cdn.technologynetworks.com/TN/Resources/PDF/WP120416UnderstandYieldStressMeas.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
したがって、本発明の目的は、吸収速度が改善され、チキソトロピー挙動が少ない吸水性ポリマー、およびそのようなポリマーの工業規模での製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本目的は、以下の方法により解決された。
(a)‐酸基を有し、必要に応じて少なくとも部分的に中和されている少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、
‐水と、
‐少なくとも1つの架橋剤と、
‐少なくとも1つの開始剤、または開始剤系の少なくとも1つの要素と、
‐必要に応じて、前記モノマーと重合可能な少なくとも1つのエチレン性不飽和コモノマーと、
‐必要に応じて、少なくとも1つの水溶性ポリマーと、
‐必要に応じて、少なくとも1つの発泡剤前駆体と、
‐必要に応じて、追加成分と、
を含むモノマー混合物を準備する工程と、
(b)反応容器を有する反応器を準備する工程と、
(c)押出容器を有する押出機を準備し、押出容器は穴あきプレートで蓋をされ、穴あきプレートは複数の貫通穴を有し、貫通穴の各々は相当直径dと軸長lを有し、貫通穴により形成される、穴あきプレートの総空隙面積はVであり、空隙面積を含めた穴あきプレートの総面積はAであり、穴あきプレートの形状は要件:
5.5<2.10686036×(l/d)0.774457×(V/A)-0.117802<13.3
を満たすように選択される工程と、
(d)前記モノマー混合物の成分を転化することにより、反応容器内で重合を実施し、架橋ポリマーヒドロゲルを得る工程と、
(e)必要に応じて、前記ヒドロゲルの化学的および/または物理的修飾を行い、前記ヒドロゲルの娘生成物を得る工程と、
(f)前記ヒドロゲルまたはその娘生成物を前記押出容器に移す工程と、
(g)必要に応じて、前記押出容器内で前記ヒドロゲルまたはその娘生成物を細断する工程と、
(h)前記ヒドロゲルまたはその娘生成物を前記穴あきプレートを通して前記押出容器から押し出し、前記ヒドロゲルまたはその娘生成物を軸方向に前記貫通穴を通過させ、押出ヒドロゲルを得る工程と、
(i)必要に応じて、前記押出ヒドロゲルの化学的および/または物理的修飾を行い、前記押出ヒドロゲルの娘生成物を得る工程と、
(k)前記押出ヒドロゲルまたはその娘生成物を乾燥させ、固体ポリマー材料を得る工程と、
(l)前記固体ポリマー材料を粉砕してポリマー粉末を得る工程と、
(m)前記ポリマー粉末を篩にかけ、前記ポリマー粉末の少なくとも1つの分粒フラクションを得る工程と、
(n)前記分粒フラクションを後処理し、吸水性ポリマーを得る工程であり、この「後処理」工程は、少なくとも1つの表面架橋工程を包含する工程と、
を含む吸水性ポリマーの調製方法。
このような方法が本発明の第1の目的である。
【0044】
より正確には、従来のSAP製造工程における従来の穴あきプレートを、次の要件を満たす新規な穴あきプレートに置き換えると、従来の穴あきプレートを使用する従来の製造工程により得られる超吸収体と比較して、降伏応力がより高い吸水性ポリマーが得られる。
要件:
5.5<2.10686036×(l/d)0.774457×(V/A)-0.117802<13.3
(上記要件中、lは、穴あきプレートの穴の軸方向の長さを表し、
dは、穴あきプレートの穴の相当直径を表し、
Vは、穴あきプレートの空隙面積を表し、
Aは、空隙面積を含む穴あきプレートの総面積を表す。)
したがって、本発明で得られる超吸収体の弾性は、より高い荷重まで維持される。したがって、従来よりも高い荷重下で、チキソトロピー挙動による弾性の崩壊が見られることが予想される。本発明の製造方法により得られる吸水性ポリマーの降伏応力は、180Pa~254Paの範囲内である。
【0045】
押出機ダイスの形状に関するこれまでの教示とは対照的に、現在の設計ルールには、2つの要素、すなわち、穴の細さ(l/d)と穴全体の空隙率(V/A)とが組み込まれている。このような複雑な仕様により、粘弾性挙動を非常に正確に調整するための、押出時のヒドロゲル内の応力を適切に定義することができる。
【0046】
現在の設計ルールは、さまざまな穴あきプレートとそのSAPへの影響に関する包括的な研究に基づいて評価された。多数の穴形状と多数の異なる穴数でヒドロゲルを押し出した。さまざまな穴あきプレートを使用して押し出したヒドロゲルから吸水性ポリマーを作製し、その吸水性ポリマーの性能パラメータとレオロジーを調査した。それにより、所望の性能パラメータにプラスの影響を与えるいくつかの穴あきプレートを経験的に発見した。
【0047】
次に、特定された穴あきプレートの幾何学的特徴を知的に分析し、類似点と関連パラメータを発見した。選択したアプローチは、Edgar Buckingham(1867~1940年)によって唱えられたπ定理に従い、無次元数を用いて物理的効果を記述する原理を基礎とした。穴の細さl/dと空隙率V/Aは、降伏応力と吸収速度に最も影響を与える無次元数であることが分かった。両数値は、べき関数の形で組み合わされ、各数値は、定数係数と指数を有する。定数係数と指数の数値は、実験室で発見した有益な穴あきプレートの形状に合わせて、最小二乗法を用いて調整した。最後に、整列近似品の品質は、以前に得られた実験データを使用して検証した。示唆された近似品は、驚くほど実現可能で簡単であることが分かった。
【0048】
本発明の発見によれば、降伏応力および吸収速度は、穴あきプレートの2つの幾何学的特性、すなわち、穴の細さl/dおよび空隙率V/Aによって実質的に影響を受ける。
【0049】
「空隙率」は、プレート内の空隙面積Vとヒドロゲルに露出した穴あきプレート全体の面積Aの比率である。
【0050】
押出容器に蓋をする穴あきプレートには、必ず穴が開けられている。それには、押出時、ヒドロゲルが押出容器から出る際に通過する少なくとも1つのオリフィスが含まれる。穴あきプレートは、そのような穴を複数有し得る。これが通常の状況のはずである。本明細書では、単一のオリフィスであるか、または多数の穴の配列であるかに関係なく、すべての穴全体を貫通穴と呼ぶ。
【0051】
空隙面積は、ヒドロゲルが押し出される穴の全体面積の合計である。(穴あきプレートは、ヒドロゲルが押し出されない別の穴を有し得る。例えば、それは、穴あきプレートを押出機に固定するためのネジ穴であり得る。そのようなネジ穴からはヒドロゲルは押し出されないため、ネジ穴は、レオロジーにも吸収性にも影響を及ぼさない。したがって、空隙面積を合計する際、そのような穴は考慮されない。)
【0052】
穴の断面は、軸方向に一定である必要はない。穴は、テーパー状であり得る。その場合、穴の面積は、狭い位置で判断される。
【0053】
ヒドロゲルに露出される穴あきプレートの面積Aは、穴あきプレートにおいてヒドロゲルの水圧を受ける部分、つまりヒドロゲルと接触する部分の面積である。ハイドロゲルと接触していない部分、つまりその座面は含まれない。ただし、貫通穴は面積の一部である。したがって、面積値は常に、空白面積値より大きくなる。したがって、空白割合は常に1未満になる。
【0054】
本発明は、穴あきプレートが平面であることを前提としている。したがって、すべての面積は単純に平面で測定される。ただし、場合により、穴あきプレートは、例えば半球状などの三次元デザインを有し得る。その場合、面積は平面投影法ではなく空間領域で計算される。その理由は、ヒドロゲルの圧力プロファイルが投影法ではなく空間的に実施されるためである。
【0055】
穴の細さは、降伏応力と吸収速度に影響を与える穴あきプレートの第2の特徴である。細さは、穴あきプレートの穴の軸方向長さlと、穴あきプレートの穴の相当直径dとの比として定義される。l/d比が高くなるほど、穴は細くなる。ほとんどの場合、細さは1より大きくなるが、l/dが1未満のずんぐりした穴も同様にあり得る。
【0056】
穴が穴あきプレートを通って垂直に延びる場合、軸方向長さは、穴あきプレートの厚さに等しくなる。
【0057】
穴の断面は、必ずしも円形である必要はない。穴の断面は、他の形状であってもよい。あらゆる形状のオリフィスのサイズを特徴付けるために、相当直径が使用される。単一穴の相当直径dは、実際の穴の断面と同じ面積を有する仮想の円の直径として定義される。プレートの穴が円形の場合、相当直径は、穴の実際の直径に等しくなる。プレートの穴が非円形の場合は、穴の断面積を測定する。次に、実際の内径と同じ面積を有する想像上の円を画像化する。計算した想像円の直径を、実際の形状の相当直径として定義する。例えば、穴が辺長をsとする正方形の場合、相当直径は、d=1.1288×sと計算される。穴が辺長をaとする六角形の場合、相当直径は、d=1.8188*×aと計算される。
【0058】
最も簡単な場合、すべての穴の相当直径は等しい。ただし、異なるサイズの穴を有する穴あきプレートを提供することも可能である。このような場合、個々の穴ごとに、個々の相当直径を確認する必要がある。貫通穴全体の相当直径は、すべての個々の相当直径の算術中央値である。貫通穴が異なる形状の穴を含む場合にも、同じアプローチが適用される。
【0059】
最も簡単な場合、押出機は、ちょうど1つの単一穴あきプレートで構成される。ただし、押出容器の下流側に配置された一連の穴あきプレートを備えた公知のチョッパーが存在する。このような場合、下流の最後の穴あきプレートでの圧力降下が最も大きいため、押出容器に実際に蓋をする最後の穴あきプレートの形状のみが本発明の設計ルールの適用に関係する。
【0060】
本発明の設計ルールのおかげで、押出時に規定の応力体系を生じさせる穴あきプレートを提供することが可能になった。したがって、さらなる試行実験を行うことなく、超吸収体の粘弾性挙動を所望の方法で簡単に制御することができる。
【0061】
押出時の規定の応力体系のさらなる影響は、高圧と摩擦熱による、ポリマーネットワーク内に捕捉された水の蒸発である。ヒドロゲル内で発生した蒸気が膨張し、多孔質構造が形成される。後者は乾燥時に保たれ、その結果、後の超吸収体が多孔質形態を得る。多孔性のおかげで、超吸収体の表面積が拡大され、最終的に吸収速度が向上する。
【0062】
本発明の好ましい実施形態によれば、モノマー混合物は、以下の配合で作製される:
‐少なくとも部分的に中和されたアクリル酸:10重量%~70重量%
‐水:30重量%~80重量%
‐架橋剤:0.05重量%~5重量%
‐開始剤:0.1重量%~1重量%
‐コモノマー:0重量%
‐水溶性ポリマー:0重量%
‐発泡剤の前駆体:0重量%~1重量%
‐その他の成分:0重量%~20重量%
【0063】
上記のすべての割合は、モノマー混合物の総重量に基づいている。すべての割合を合計すると100重量%になる。含有量が0の場合は、モノマー混合物に関連成分が添加されていないことを意味する。含有量が0から0を超える割合までの範囲である場合は、関連成分が必要に応じて含まれ得ることを意味する。用語「さらなる成分」は、モノマーでも、水でも、架橋剤でも、開始剤でも、コモノマーでも、水溶性ポリマーでも、発泡剤の前駆体でもない成分を包含する。
【0064】
この好ましい配合は、降伏応力が高く、吸収速度が速く、そしてさらなる有益な特性を有する吸水性ポリマーをもたらすことが十分に証明されている。
【0065】
好ましくは、モノマー混合物は、発泡剤の前駆体を含む。前駆体の量は、モノマー混合物の重量に対し、1000ppm~1500ppmの範囲内とする。 単位ppmは、10-6を表す。前駆体は、重合時に反応してガスを生成する物質である。そのガスは、重合時にモノマー混合物を吹き飛ばし、泡状のヒドロゲルを生成する。ガスは、ヒドロゲルの細孔に閉じ込められる。したがって、有効な発泡剤は、その前駆体ではなく、生成されたガスである。前駆体は、ポリマー鎖に組み込まれるモノマーまたはコモノマーと反応してはならない。むしろ、前駆体は、重合反応とは独立して反応することが意図されている。これらの要件を満たす前駆体は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、3-オキソペンタン二酸、尿素からなる群から選択される。これらの前駆体によって生成され、発泡剤として作用するガスは、ほとんどの場合、二酸化炭素である。
【0066】
発泡剤によって発泡されたヒドロゲルの多孔質構造は、後の超吸収体においても保たれる。多孔性により吸収速度が向上する。したがって、発泡剤により、押出時の水の蒸発効果が向上する。
【0067】
本発明の方法内では、モノマー混合物の配合には、架橋剤として作用する少なくとも1つの化合物が含まれる。そうでなければ、三次元ポリマーネットワークが形成されない。それぞれが架橋剤として作用するいくつかの異なる物質を使用することが可能である。モノマー混合物中のすべての架橋剤の総量は、モノマー1モルを基準として、10ミリモルを超え、50ミリモル未満であることが好ましい。単位ミリモルは、10-3モルを表す。たった1つの架橋剤が含まれる場合、架橋剤の総量は、単一の架橋剤の量に等しい。架橋剤の総量が10ミリモル未満の場合、架橋密度が不十分となり、ゲルの強度が損なわれ得る。逆に、架橋剤の総量が50ミリモルを超えると、ゲル強度が異常に高くなり得る。非常に硬いヒドロゲルを本発明の穴あきプレートを通過させて押し出すには、膨大なエネルギーが必要となる。摩擦が増え、ヒドロゲルが熱損傷を受け得る。
【0068】
本発明の方法は、表面架橋工程を含み、その工程では、ポリマー粉末の架橋密度を、個々の粉末粒子の表面付近の領域において増加させる。したがって、粒子はコア/シェル構造を取得する。このようなコアシェル構造を達成するための高吸水性ポリマー製造技術の分野では、いくつかの方法が知られている。本プロセスに最もよく適合する表面架橋方法には、少なくとも1つの表面架橋剤と、必要に応じて少なくとも1つのさらなる成分とを、ポリマー粉末のサイズ分けされたフラクションまたはその娘生成物に添加し、混合物を得る工程と、その混合物に熱処理を施し、ポリマー粉末の表面領域の架橋密度を増加させる工程と、が含まれる。
【0069】
本発明の方法では、重合を行うための少なくとも1つの反応器と、ヒドロゲルを押し出すための少なくとも1つの押出機を使用する。本発明の好ましい実施形態によれば、反応器と押出機は、構造的に別個に設けられる。したがって、重合工程と押出工程のそれぞれを行うために、専用の装置が使用される。好ましくは、反応容器として機能する、エンドレスランベルトを有するベルト反応器が重合に使用され、ミートチョッパーが押出工程の実施に使用される。あるいは、反応機能と押出機能の両方が1つの複合装置で行われてもよい。反応工程と押出工程の両方を一体化する装置のよく知られているタイプは、混練反応器である。
【0070】
本発明の第2の目的は、降伏応力(YS)が180Pa~254Paの範囲内の吸水性ポリマーである。この吸水性ポリマーは、本発明の方法により得られる。降伏応力は、本明細書中で定義されるゲル床レオロジー法に従って測定される。上記の範囲内の降伏応力は、従来の製造方法でも同様に得られ得ることを指摘しておく。しかしながら、本発明の穴あきプレートを使用すれば、モノマー混合物の配合を変更することなく、より高い降伏応力が得られる。
【0071】
本発明の方法により得られる超吸収体は、押出時の水の蒸発により、多孔質構造を有する。その多孔性のおかげで、超吸収体の吸収速度が向上する。具体的には、本発明の方法によって得られる吸水性ポリマーは、以下の性能パラメータをすべて満たす。
(a)本明細書中で定義されるFSR法に従って測定される自由膨潤速度(FSR)が0.48秒を超え0.88秒未満であること。
(b)本明細書中で定義されるk(t)法に従って測定される20g/g(T20)の取り込みが62秒を超え125秒未満であること。
この範囲内のFSR値およびT20値を達成する超吸収体は、「超高速」とみなされる。
【0072】
本発明の方法によって得られる超吸収体のさらなる特徴は、ゲル強度および吸収速度の面でバランスのとれた特性プロファイルである。ゲル強度は、本明細書中で開示されるゲル床レオロジー法に従って測定される貯蔵係数G’によって定量化される。有益な特性バランスは、貯蔵係数と自由膨潤速度の積(G’×FSR)が2666Pa・sを超え、5106Pa・s未満であることにより示される。
【0073】
本発明の方法に従って調製された超吸収体は、速度および弾性の面で良好な特性を得るが、他の性能パラメータに悪影響を及ばさない。例えば、本発明の方法により得られる吸水性ポリマーは、以下の両方の性能パラメータを満たす。
(a)EDANA標準試験WSP241.2(5)に従って測定される遠心分離保持容量(CRC)が25.8g/g~29.9g/gであること。
(b)EDANA WSP 242.2(5)に従って測定される、4.83kPa(0.7psi)での加圧下吸収性(AUP)が23.0g/g~25.6g/gであること。
【0074】
得られた吸水性ポリマーの粒度分布は、以下の粒度分布に調整されることが好ましい。
‐600μm~710μm:5重量%
‐500μm~600μm:30重量%
‐300μm~500μm:50重量%
‐150μm~300μm:15重量%
【0075】
上記割合は目標値である。上記目標値からの合理的な偏差が許容されるため、粒度分布は以下の通りであってもよい。
‐600μm~710μm:0重量%を超え10重量%未満
‐500μm~600μm:20重量%を超え40重量%未満
‐300μm~500μm:40重量%を超え60重量%未満
‐150μm~300μm:5重量%を超え25重量%未満
どちらの場合も、粒度分布内のすべての割合を合計すると100重量%になる。
上記の粒度分布は、篩い分けにより調整される。
【0076】
本発明に従って調製された吸水性ポリマーは、乾燥工程を経ているため、ほぼ乾燥している。具体的には、重合直後のポリマーネットワーク内に閉じ込められた水分は、乾燥中に追い出されている。したがって、乾燥後、材料はもはやヒドロゲルとはみなされない。水分が完全になくなるまで乾燥させると大量のエネルギーを消費するため、工業プロセスでは、ヒドロゲルを完全に乾燥させることはない。したがって、最終製品には、ある程度の水分が残る。最終製品のべたつきを避けるために、含水量を制限する必要がある。好ましい実施形態では、本発明の吸水性ポリマーの含水量は、最大10重量%、または最大7重量%、または最大5重量%、または最大3重量%である。超吸収体の分野では通常、含水量は、EDANA標準NWSP230.0.R2(19)に従って測定される。
【0077】
本発明の方法によって得られる吸水性ポリマーは、2種類の粒子タイプ、すなわち、モノリス粒子と凝集粒子を含むことに言及する価値がある。モノリス粒子は、1つだけのポリマー粒子から構成されるが、凝集粒子は、少なくとも 2つのポリマー粒子が付着して構成される。この過程では、ポリマーに付着した無機粒子は考慮されない。したがって、凝集体は、ポリマー粒子間の目に見える粒界によって特定できるが、モノリス粒子にはポリマー粒界が全くない。粒子の凝集は、超吸収体における悪名高い現象である。ただし、超吸収体の当業者は、より小さな粒子(微粒子)を避けるための強制凝集と、粒子の過大化につながる望ましくない凝集とを区別して使用する。
【0078】
本方法は、凝集を避けることを目的としている。したがって、本発明の吸水性粒子内の凝集体部分は非常に小さい。具体的には、凝集粒子の数に対するモノリス粒子の数の比rは、20を超え、または32を超え、または50を超え、または80を超え、または126を超え、または200を超え、または500を超える。比rを計算する方法は、以下の通りである。
【0079】
モノリス粒子が大部分を占めるおかげで、本発明の超吸収体は、適切な機械的強度を有する。
【0080】
さらに、本発明の方法では、凝集に費用を費やすことなく、一度きりの押し出しだけで速度を達成できる状態を押出機内に作り出す。したがって、本発明の方法により、より少ない資本支出で高速超吸収体の製造が可能となる。
【0081】
本発明の方法のさらなる利点は、押出時にヒドロゲルに加えられるせん断応力が後の超吸収体のチキソトロピー挙動を引き起こさない程度に小さくなるように、押出条件が調整される点である。穴あきプレートの形状を決めるための本発明の設計ルールに従うことにより、せん断応力が、チキソトロピーを引き起こす臨界せん断応力よりも確実に小さくなる。したがって、本発明の方法によって調製された吸水性ポリマーは、(膨潤状態で)ニュートン流体のように挙動する。
【0082】
ニュートン流体として、本発明の方法によって調製された超吸収体は、せん断応力が降伏応力より小さい限り、せん断応力とひずみとの間に線形関係を示す。降伏応力を超えるレベルの応力が加えられると、膨潤した超吸収体はチキソトロピー挙動を示す。しかしながら、本発明の超吸収体は、高い降伏応力を達成するため、衛生用品での用途では、ニュートン挙動が予想される。
【0083】
したがって、本発明の吸水性ポリマーは、せん断応力とひずみとの間の線形関係を特徴とし、この線形関係は、降伏応力よりもせん断応力値が低い場合に有効である。せん断応力とひずみは、以下に定義されるゲル床レオロジー法に従って測定される。
【0084】
ニュートン流体のように挙動する粘弾性物質のさらに別の特性は、ひずみに対する貯蔵係数と損失係数の関係を示す図から導き出すことができる。非チキソトロピー性物質の場合、貯蔵係数と損失係数の線は交差しない。具体的には、貯蔵係数は損失係数よりも大きい。ひずみが増加すると、両方の曲線が互いに近似する。ひずみが貯蔵係数と損失係数の曲線の交点を超える場合、チキソトロピー挙動が予想される。交点の位置は、100%のひずみ、またはさらに良い場合は1000%のひずみになり得る。チキソトロピー性が見られないひずみの下限は、1%、さらには0.1%である。
【0085】
したがって、本発明の吸水性ポリマーは、吸水性ポリマーが0.1%~1000%、または1%~100%の範囲で歪む限り、貯蔵係数(G’)が損失係数(G’’)よりも大きいことも特徴として有する。ひずみは、以下に定義されるゲル床レオロジー法に従って測定される。
【0086】
プロセス全体の説明
次に、本発明を以下の図を用いて例示し、詳細に説明する。
図1:本発明の吸水性ポリマーの製造方法のフローチャート
図2:本発明の穴あきプレートの図、すなわち正面図と断面図
図3:本発明の方法によって得られたSAP粒子のSEM画像
図4:従来の方法(従来技術)によって得られたSAP粒子のSEM画像
【0087】
図1は、吸水性ポリマーを調製するための本発明の方法のプロセスフローチャートを示す。これは、本発明の方法を実施するための製造プラントの概略図とも見なされる。
【0088】
最小構成では、プラントは、7つの機能ユニット(a)~(g)で構成され、それらは、製造ストランドを構築するように配置されている。各機能ユニットは、実質的に方法の1工程を行う。方法中の工程と関連する機能ユニットとの概要を表1に示す。
表1:方法中の工程と機能ユニットとの概要
【0089】
【0090】
基本的に、全ての機能ユニットは、専用の装置として構造的に分離して設けられる。ただし、一部の機能ユニットでは、複数の製造工程を1つの多機能装置に統合する場合がある。その場合は、別途説明する。すべての機能ユニット間には、ユニットからユニットへの材料輸送を行うために、適切な搬送手段が配置されている。超吸収体の製造技術において知られている従来のコンベヤが選択される。
図1では、搬送手段は矢印で表されている。
【0091】
まず、エチレン性不飽和モノマー1と、少なくとも1つの架橋剤2と、少なくとも1つの開始剤3とを受器(a)内で混合し、モノマー混合物4を得る。エチレン性不飽和モノマー1は、液体の形で、すなわち、モノマー水溶液として投与される。架橋剤2および開始剤3も溶液の形で投与される。活性成分用の溶媒として水を使用するため、モノマー混合物はかなりの量の水分を含んでいる。
【0092】
好ましいエチレン性不飽和モノマーは、α-、β-不飽和酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸および2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸を含むα-、β-不飽和カルボン酸またはスルホン酸である。これらの酸は、酸性形態で使用することができるが、α-、β-エチレン性不飽和酸を、ナトリウム塩およびカリウム塩を含むアルカリ金属塩および/またはアンモニウム塩として、少なくとも部分的に中和された形で使用することがより好ましい。
【0093】
中和は、モノマー水溶液を、酸モノマー中に存在する酸性基の10%~95%を中和するのに十分な量の塩基と接触させることにより、好都合に達成される。 中和は、受器1内で行ってもよいし、事前に行ってもよい。さらに、重合後に中和、いわゆるゲル中和を行ってもよい。好ましくは、塩基の量は、モノマー中に存在する基の40%~85%、最も好ましくは55%~80%を中和するのに十分な量である。モノマーの酸性基を中和するのに有用な適切な化合物には、重合プロセスに悪影響を及ぼすことなく酸性基を十分に中和する塩基が含まれる。このような化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ金属重炭酸塩が挙げられる。
【0094】
本発明の方法において、モノマー混合物は、少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約25重量%、さらにより好ましくは約45重量%~約99.9重量%のα-、β-不飽和カルボン酸および/またはスルホン酸を含む。上記の酸性基は、好ましくは、少なくとも部分的に、ナトリウム塩および/またはカリウム塩および/またはアンモニウム塩の形で存在し得る。
【0095】
酸性基は、好ましくは、少なくとも約25モル%、より好ましくは少なくとも約50モル%、さらにより好ましくは約50モル%から90モル%未満、より好ましくは約50モル%から80モル%未満まで中和される。
【0096】
モノマー混合物は、上記の好ましいモノマーの混合物も含み得る。さらに、モノマー混合物は、追加のエチレン性不飽和モノマーを最大60重量%の量で含み得る。例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、無水マレイン酸、上記のモノマーのアルキルエステルまたはアミド(例えば、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコールメチルエーテルの(メタ)アクリレートなど)が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも1つの追加モノマーが含まれる場合、そのようなモノマーは、本明細書では「コモノマー」と呼ばれる。
【0097】
モノマー混合物は、ポリマーネットワークを架橋するための少なくとも1つの架橋剤2、つまりネットワーク架橋剤をさらに含む。適切な架橋剤は、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有するもの、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合と酸性基に対して反応性の少なくとも1つの官能基とを有するもの、および酸性基に対して反応性の少なくとも2つの官能基を有するもの、またはそれらの混合物である。
【0098】
適切な共有結合性ネットワーク架橋剤としては、1分子中に、CH2=CHCO-、CH2=C(CH3)CO-およびCH2=CH-CH2-からなる群から選択される2~4個の基を有する化合物が挙げられる。架橋剤の例としては、ジアリルアミン;トリアリルアミン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールのジアクリレートおよびジメタクリレート;トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールのトリアクリレートおよびトリメタクリレート;ペンタエリスリトールのテトラアクリレートおよびテトラメタクリレート;アリルメタクリレート;テトラアリルオキシエタン、および3~30個のエチレンオキシド単位を有するトリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールの高度にエトキシル化された誘導体のアクリレート、例えばペンタエリスリトールの高度にエトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレートまたはテトラアクリレートおよびテトラメタクリレートが挙げられる。他の適切な架橋剤は、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルアクリレート(PEG-MAE-AE)などのモノアリルエーテルポリエーテルモノアクリレートである。特に好ましいのは、1分子あたり約3個~約30個の範囲のEO単位を有する高度にエトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレート(HE-TMPTA)などのエステル型架橋剤、アリル型架橋剤、および同じ分子内にアクリレート官能基とアリル官能基との両方を有する架橋剤、例えば、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルアクリレート(PEG-MAE-AE)である。
【0099】
高温でポリマー骨格の酸性基と反応して架橋を形成できる二官能性または多官能性の薬剤として、ポリエチレングリコール、好ましくは室温(21℃~25℃)で液体またはペースト状であるポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEG600などが使用され得る。
【0100】
これらのネットワーク架橋剤は、以下で説明する表面架橋剤とは区別され、混同されない。前述のネットワーク架橋剤の混合物も同様に使用され得る。
【0101】
前記ネットワーク架橋剤は、吸水性ポリマーを、水膨潤性にもかかわらず、水不溶性にする。架橋剤の好ましい量は、所望の吸収能力度合いおよび吸収した液体を保持する所望の強度、つまり、それぞれ、所望の加圧下吸収性(AUP)または荷重下吸収性(AUL)によって決定される。架橋剤は、有利には、使用されるエチレン性不飽和モノマーの総重量に対し、0.05~5重量%の範囲の量で使用される。より好ましくは、その量は0.4重量%~0.5重量%の範囲である。通常、約5重量%を超える量が使用されると、ポリマーの架橋密度が高くなりすぎ、吸収能力が低下する。架橋剤が0.05重量%未満の量で使用される場合、通常、ポリマーの架橋密度が低くなりすぎるため、吸収されるべき液体と接触するとポリマーは粘着性になり、初期吸収速度が落ちる。
【0102】
ネットワーク架橋剤は、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの水溶液に可溶であってよいが、場合により分散剤の存在下で、単に前記溶液中に分散させるだけでもよい。適切な分散剤の例としては、カルボキシメチルセルロース懸濁助剤、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびポリビニルアルコールが挙げられる。このような分散剤は、有利には、エチレン性不飽和モノマーの総重量に対し、0.0005~0.1重量%の濃度で提供される。
【0103】
好ましくは、前述の1つまたは複数の架橋剤は、かなり少量の多価アルコールと組み合わせて使用され得る。好ましくは、モノマー混合物は、追加の架橋剤として、少なくとも1つの多価アルコールを、エチレン性不飽和モノマーの総重量に対し、少なくとも50ppm、より好ましくは100~1000ppmの量でさらに含む。多価アルコールは、エチレン性不飽和モノマーの総重量に対し、好ましくは100~1000ppmの量で使用されるグリセリンを含むことが好ましく、より好ましくは前記グリセリンのみを含む。
【0104】
モノマー混合物4は、少なくとも1つの重合開始剤3をさらに含む。
【0105】
水溶性モノマーと架橋剤との重合には、慣用のビニル付加重合開始剤が使用され得る。重合を開始するには、モノマー溶液中で十分に溶解できるフリーラジカル重合開始剤が好ましい。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、さらにはアルカリ金属過硫酸塩などの水溶性過硫酸塩、過酸化水素、および2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロパン)塩酸塩などの水溶性アゾ化合物が使用され得る。いわゆるレドックス開始剤系は、2つの要素、すなわち、酸化要素および還元要素から構成される。モノマー混合物は、第1工程では開始剤系の1つの要素のみで構成されてよく、第2工程において、重合を開始するために開始剤系の第2要素が添加される。レドックス開始剤系の酸化要素として使用可能な過酸化水素または過硫酸ナトリウムは、亜硫酸塩、アミン、またはアスコルビン酸などの還元要素と組み合わされ得る。使用される開始剤の量は、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの総重量に対し、0.1重量%~約1重量%、好ましくは約0.1重量%~約0.5重量%の範囲であり得る。
【0106】
さらに、モノマー混合物は、開始および重合の速度を制御するために、1つまたは複数のキレート剤を含んでもよく、さもなければ、モノマー混合物中に存在する不純物、例えば重金属イオン、特に鉄イオンのせいで、望ましくないレベルまで上昇し得る。キレート剤は、好ましくは、有機ポリ酸、リン酸ポリ酸、およびそれらの塩から選択され得る。好ましくは、キレート剤は、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレングリコール-ビス-(アミノエチルエーテル)-N,N,N’-三酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-三酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、酒石酸、クエン酸、イミノ二コハク酸、グルコン酸、およびそれらの塩から選択され得る。市販されているキレート剤は、ジエチレントリアミン五酢酸の五ナトリウム塩である。
【0107】
さらに、モノマー混合物4は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリグリコール、ポリアクリル酸、デンプン、デンプン誘導体、および水溶性または水膨潤性セルロースエーテルなどの水溶性ポリマーを含み得る。ポリビニルアルコール(PVA)が使用される場合、後者は部分的にまたは完全に加水分解されていてよい。水溶性ポリマーが使用される場合、それらは、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーに対し、約10重量%までの量で使用され得る。このような水溶性ポリマーは、重合対象のモノマーのグラフト基としても使用できる。
【0108】
さらに、モノマー混合物4は、再生微粒子11を含み得る。微粒子11は、本方法で製造される粒子とみなされる。それらは、製品仕様により定義される所望の用途には小さすぎる。250μm未満、好ましくは200μm未満の粒径を有するポリマー粒子は、本発明によれば微粒子として定義される。ほとんどの微粒子11は、重合後の固体ポリマー材料7の粉砕(e)によって、または乾燥ポリマーの磨耗によって生成される。したがって、前記の望ましくない生成物フラクションは、ポリマーから除去されるが、それを重合前にモノマー混合物4に添加することにより再利用され得る。
【0109】
さらに、モノマー混合物4は、発泡剤の前駆体を含み得る。特に、炭酸塩または炭酸水素塩は有用な前駆体である。重合中、このような物質は二酸化炭素に分解し、実際の発泡剤は重合混合物を発泡させることができる。発泡剤前駆体の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、3-オキソペンタン二酸、尿素が挙げられる。前駆体は、粒形態で添加されてもよく、または水溶液に溶解されてもよい。
【0110】
さらに、他の添加剤がモノマー混合物に添加され得る。前記他の添加剤は、例えば、アルカリ金属塩素酸塩、シリカまたは酸化亜鉛などの水不溶性金属酸化物のような水不溶性有機または無機粉末、界面活性剤、分散助剤、銀塩、硫酸アルミニウムまたは乳酸アルミニウムなどの水溶性金属塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩のような臭気制御剤、または変性非イオン性ポリプロピレンワックスのようなさらなる加工助剤から選択され得るが、これらに限定されない。
【0111】
モノマー混合物4が上記の成分から生成されるとすぐに、それは反応器(b)の反応容器に移される。
【0112】
モノマー混合物4は、受器(a)の代わりに、反応容器内で作製されてもよいことに留意されたい。モノマー混合物は、部分的に受器(a)内で作製され、部分的に反応器(b)内で作製されることも可能である。特に、開始剤3は、反応容器に添加され得る。レドックス開始剤系が使用される場合、開始剤系の 一要素が受器(a)に添加され、第2要素が反応器(b)に添加される。
【0113】
さらに、1つの装置内で受器(a)と反応器(b)の両方が一体化された機器を使用することも可能であり、さらには好ましい。このような統合装置の例としては、ベルト反応器または混練反応器が挙げられる。これらの反応器タイプは、冒頭で引用した百科事典の記事で参照されている。
【0114】
本発明の場合、受器(a)と反応器(b)が構造的に分離されているか一体化されているかは関係ない。ただし、理解を容易にするために、本明細書では、両方の機能ユニットを別々に示している。
【0115】
反応器(b)の反応容器内で、液体モノマー混合物が重合してペースト状のヒドロゲル5が得られる。この反応の過程で、モノマーはポリマー鎖に結合し、架橋剤によって三次元ネットワークに架橋される。最初にモノマーの溶媒として使用された水は、ネットワーク内に閉じ込められる。内部に水を捕捉したポリマーネットワークをヒドロゲル5とみなす。モノマー混合物の配合に応じて、ヒドロゲル5は、最大で70重量%の水を含み得る。あるいは、ヒドロゲル5は、30重量%~70重量%の水、または40重量%~60重量%の水を含み得る。
【0116】
場合により、ヒドロゲル5は、ヒドロゲル5の娘生成物を得るために、さらなる物理的および/または化学的処理が施されてもよい。モノマーが酸性形態で使用された場合、そのような処理は中和であり得る。それに加えて、機能性添加剤が添加され得る。本発明の場合、そのような処理は関係ない。
【0117】
しかし、本発明の方法の重要な工程は、次の押出である。この目的のために、ヒドロゲル5(またはその娘生成物)を押出機(c)に供給する。押出機(c)の機能は、ヒドロゲル5を小さな断片に分解し、その後の吸水性ポリマー12の弾性および吸収速度に影響を与えるために、それに所定の応力レジームを加えることである。
【0118】
この機能を果たすために、押出機には、複数の貫通穴を有する穴あきプレートで蓋がされた押出容器が設けられている。穴あきプレートについては、以下に詳細に開示する。ヒドロゲルは、入口から押出容器に導入される。押出容器内には、穴あきプレートに向かってヒドロゲルに圧力を加える少なくとも1 つの機械的アクチュエータがある。貫通穴は、圧力方向における押出容器の唯一の出口であるため、ヒドロゲルは、貫通穴を通って押出容器から押し出される。
【0119】
最も簡単なケースでは、単一のウォームがアクチュエータとして使用される。ウォームは、押出容器を通って軸方向に伸び、穴あきプレートに到達する。ウォームは、その飛行によりヒドロゲルを穴あきプレートに向かって運ぶように回転している。飛行ピッチは下流で増加して、ヒドロゲルの圧縮を徐々に強め得る。必要に応じて、ヒドロゲルを分解するために、ウォームの軸に垂直な平面内で回転するナイフがウォームに装備されていてもよい。このような回転ナイフは、ウォームの軸方向に沿ったさまざまな位置、例えば、押出容器の入口のすぐ後ろ、穴あきプレートの前の押出容器の端、さらには穴あきプレートの後ろの押出容器の外側に配置され得る。1つのウォームと場合により回転ナイフとを備えた押出機の構造は、食品業界においてひき肉を加工するために使用されるミートチョッパー(別名:ミートミンサー)に非常に似ている。
【0120】
あるいは、押出機は、プラスチックを混ぜ合わせるために使用されるような、1つまたは2つのスクリューを有する押出機と同様に構成され得る。このような押出機は、構造的に混練型反応器と組み合わされることが多い。その場合、反応器および押出機の両方として機能する装置は、反応容器と押出容器の機能を統合する単一のキャビティを備えている。
【0121】
最後に、ヒドロゲルを押し出すために、射出成形機と同様の装置を使用することが可能である。このような機器のアクチュエータは、ヒドロゲルを穴あきプレートに向かって押す軸方向に移動可能なプランジャーとして構成されている。プランジャーは、軸方向に回転可能であり、フライトを備え得る。このようなアクチュエータは、軸方向に移動可能なウォームとして使用でき、プランジャーのシネマティクスとウォームのシネマティクスを統合する。
【0122】
アクチュエータが穴あきプレートに向かってヒドロゲルに圧力を加えることができる限り、アクチュエータの選択される設計は、本発明には関係ない。穴あきプレートは、押出容器下流のヒドロゲルの粘弾性流においてヒドロゲルに対する最も強力な水圧抵抗器として機能するため、ヒドロゲルにかかる応力は、実質的に穴あきプレートの形状によって定義される。アクチュエータの影響は比較的小さい。これが、アクチュエータの設計がそれほど重要ではない理由である。押出時の強い圧縮は、後の超吸収体の降伏応力が強化されるという形で、ヒドロゲルの粘弾性挙動に影響を与える。それに加えて、ヒドロゲルのポリマーネットワークに含まれる水の一部は蒸発する。ヒドロゲルが貫通穴を通過するとすぐに、蒸気はヒドロゲルから大気中に放出される。蒸気は、押出されたヒドロゲル6に、速度を速めるための多孔質構造を与える発泡剤として作用する。この効果は、観察したり聞いたりすることもできる。オリフィスから出たヒドロゲルは、焼けるような音を発しながら顕著に膨張している。
【0123】
必要に応じて、押出されたヒドロゲル6に追加の物理的および/または化学的修飾を施して、その娘生成物を得てもよい。
【0124】
次の工程では、押出されたヒドロゲル6(またはその娘製品)は、乾燥機 (d) に供給される。乾燥機(d)内では、捕捉された水がポリマーネットワークから追い出され、固体ポリマー材料7が得られる。乾燥は完全には行われない。乾燥機(d)から出る固体ポリマー材料7の残留水分量は、好ましくは4重量%~7重量%である。乾燥機の設計は、本発明の方法にとって何の意味も持たない。例えば、循環ベルト乾燥機を使用することができる。この乾燥機タイプについては、冒頭に引用した百科事典の記事で参照されている。
【0125】
次に、乾燥機(d)を出た固体ポリマー材料7は、粉砕機(e)に供給される。粉砕機(e)内で、固体ポリマー材料7は、ポリマー粉末8に粉砕される。ポリマー粉末8の粒度分布は非常に広く、非常に細かい粒子から非常に粗い粒子までを含み得る。
【0126】
衛生用品内で使用する場合、吸水性ポリマーは、例えば150μm~850μmの範囲の限定された粒度分布を有する必要がある。ポリマー粉末8をこの例示的仕様に適合させるために、篩(f)が使用される。最も簡単な設定では、篩(f)は、垂直に配置された水平に延びる2つの篩デッキを含み、それらは最も細かい粒径と最も粗い粒径を定義する。例えば、上部の第1の篩は、粒径が850μm未満の粒子をすべて通過させるようなメッシュサイズを有している。下部の第2の篩デッキは、粒径が150μm未満の微粒子を通過させるメッシュを有している。ポリマー粉末8は、第1篩デッキ上に供給される。第2篩デッキの上部から、150μm~850μmの範囲の所望の粒度分布を有するポリマー粉末のフラクション9が篩(9)から回収される。第1篩を通過できなかった粗粒10は、粉砕機(e)に戻される。第2篩デッキを通過した微粒子11は、モノマー混合物4に再循環される。あるいは、微粒子11は、ヒドロゲル5に混合されるか、または別のプロセス(図示せず)内で凝集され得る。
【0127】
所望の粒度分布を有するポリマー粉末のフラクション9は、基本的に吸収剤として使用できる。しかし、そのような基本材料は、超吸収体として現代の衛生製品に含まれるべき要件を満たしていない。具体的には、加圧下吸収性および浸透性がまだ十分ではない。所望の性能プロファイルを達成するために、フラクション9は、後処理セクション(g)に送られる。
【0128】
後処理セクション(g)内で、ポリマー粉末のフラクション9に、いくつかの化学的および/または物理的処理を施し、最終特性を有する吸水性ポリマー12を得てもよい。
【0129】
後処理セクション(g)内で、少なくとも1つの表面架橋操作が実施される。表面架橋は、顆粒の表面近くの領域におけるポリマーの架橋密度を増加させる化学反応である。この手順により、粒子は、卵のようなコア/シェル構造を取得する。SAP粒子のコアは、比較的低い架橋密度を保持しているため、比較的柔らかい。しかし、シェルは、架橋度がより高いため、比較的硬い。ポリマー粒子のコア/シェル構造により、吸水性ポリマー12の加圧下吸収性および浸透性が向上する。
【0130】
表面架橋では、ポリマー粒子を、好ましくは有機の化学的表面架橋剤と接触させる。表面架橋剤は、特にそれが表面架橋条件下で液体でない場合、表面架橋剤と溶媒を含む液体表面架橋カクテルの形で、ポリマー粒子と接触させることが好ましい。水に加えて、適切な溶媒は、特に水混和性の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、イソ-ブタノール、または有機溶媒の混合物、または水と1つまたは複数のこれらの有機溶媒との混合物である。溶媒として水が最も好ましい。表面架橋カクテル中には、表面架橋剤は、表面架橋カクテルの総重量に対し、5~75重量%、特に10~50重量%、さらに特に15~40重量%の範囲の量で存在するものとする。
【0131】
ポリマー粒子は、好ましくは、カクテルとポリマー粒子とを完全に混合することによって、液体表面架橋カクテルと接触させられる。表面架橋カクテルをポリマー粒子上に適用するための適切な混合装置は、パターソン・ケリー・ミキサー、DRAIS乱流ミキサー、レーディゲ・ミキサー、ルベルグ・ミキサー、スクリューミキサー、プレートミキサー、または流動床ミキサー、ならびに回転ブレードによってポリマー構造が高周波で混合される連続作動垂直ミキサー(Schugiミキサー)である。さらに、加熱パドルを備えた混合装置(ナラ・ミキサー)を使用してもよい。
【0132】
表面架橋では、ポリマー粒子は、好ましくは、最大20重量%、特に最大15重量%、さらに特に最大10重量%、非常に特に最大5重量%の溶媒と接触させられる。所与の割合は、ポリマー粒子の重量を基準としている。
【0133】
本発明による方法で使用される表面架橋剤は、好ましくは、縮合反応(=縮合架橋剤)、付加反応、または開環反応において、ポリマー構造の官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を有する化合物であると理解される。これらの官能基の例としては、アルコール官能基、アミノ官能基、アルデヒド官能基、グリシド官能基、イソシアネート官能基、カーボネート官能基、またはエピクロロ官能基が挙げられる。本発明による方法における表面架橋剤としては、以下の化合物が好ましい:
【0134】
ポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールなどのポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールまたはテトラプロピレングリコールなどのポリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレン-ブロックコポリマー、ソルビタン-脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン-脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコールおよびソルビトール、アミノアルコール、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたはプロパノールアミン、ポリアミン化合物、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミンまたはペンタエチレンヘキサアミン、ポリグリシジルエーテル化合物、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエーテル、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、グリシドール、ポリイソシアネート、好ましくは2,4-トルエンジオイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサメチル-エンジエチレン尿素およびジフェニルメタン-ビス-4,4’-N,N’-ジエチレン尿素などのポリアジリジン化合物、エピクロロ-およびエピブロモヒドリンならびにα-メチルエピクロロヒドリンなどのハロゲンエポキシド、アルキレンカーボネート、例えば、1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカーボネート)、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキソラン-2-オン、ポリ-1,3-ジオキソラン-2-オン、ジメチルアミンおよびエピクロロヒドリンからの縮合生成物などのポリ第四級アミン。
さらに好ましい表面架橋剤は、さらに、1,2-エチレンビスオキサゾリンなどのポリオキサゾリン、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシランおよびγ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン基を有する架橋剤、2-オキサゾリジノン、ビス-およびポリ-2-オキサゾリジンなどのオキサゾリジノン、ならびにジグリコールシリケートである。
【0135】
これらの化合物のうち、表面架橋剤としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、ソルビトール、1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカーボネート)、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オンおよび1,3-ジオキソラン-2-オンなどの縮合架橋剤が特に好ましい。
【0136】
ポリマー粒子を表面架橋剤と接触させた後、それらを50℃~300℃、好ましくは75℃~275℃、特に150℃~250℃の範囲の温度に加熱する。 その結果、好ましくは、ポリマー構造の外側領域が内側領域に比べてより高度に架橋される。熱処理の継続時間は、熱の作用によりポリマー構造の所望の特性プロファイルが破壊されるリスクによって制限される。
【0137】
表面架橋を過ぎて、後処理セクション(g)は、吸水性ポリマー12の最終特性を向上させるさらなる物理的および/または化学的処理を含み得る。そのような任意の操作の例は、再湿潤または特殊な添加剤の添加である。再湿潤は、水および/またはポリエチレングリコールで行うことができる。特殊な添加剤の例としては、臭気制御剤、透過性向上剤、カッキング防止添加剤、流れ調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、尿安定性促進剤、防塵添加剤、色安定剤が挙げられる。
【0138】
臭気制御剤の例としては、シクロデキストリン、ゼオライト、無機塩または有機塩が挙げられる。過酸化亜鉛は、さらに別の臭気制御剤である。
【0139】
さらなる添加剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリル(メチレン)トリホスホン酸、エチレンジアミン-テトラ(メチレンホスホン酸(EDTMP)、ジエチレン-トリアミン-ペンタ(メチレンホスホン酸 (DTPMP)、1,3-ジアミノプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸、Na2-エタンジグリシン(HEIDA)、Baypure CX100、クエン酸などのキレート剤である。
【0140】
さらなる添加剤としては、過酸化水素、過酸化亜鉛、過酸化カリウム、尿素過酸化水素、過炭酸塩、過硫酸塩、Eureco LX、Eureco誘導体などの弱酸化剤が挙げられる。
【0141】
さらに別の添加剤は、有機酸、無機酸などのpH調整剤、臭気制御添加剤(サリチル酸およびその塩、銀、亜鉛塩、グルタミン酸、酒石酸、安息香酸、乳酸、システイン塩酸塩、ゼオライト、シクロデキストリン)、天然臭気制御添加剤(1,2,3,4,6-ペンタ-O-{3,4-ジヒドロキシ-5-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ベンゾイル}-D-グルコピラノース(タンニン酸)、没食子酸、Catappa抽出物(termeria catappa)、クルミの葉、セイヨウサンザシ茶、イチョウ)である。
【0142】
さらに、ポリマーの白色度、または黒ずみ、黄変、または褐変などに対する長期の色安定性を高める添加剤が、後処理中に添加され得る。このような添加剤は当技術分野で周知であり、酸化防止剤、硫黄含有化合物およびリン含有化合物、キレート剤、蛍光増白剤などが挙げられる。色安定性のための好ましい添加剤は、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸、重亜硫酸塩、ホスホネート、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、ジエチレンジアミン五酢酸、それらの塩および誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0143】
透過性促進剤の例は、金属の二価以上のカチオンと、アニオンとして少なくとも1つの有機塩基とを含む塩である。金属の2価以上のカチオンは、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ga3+、Ti4+、Zr4+、Cu2+およびZn2+からなる群から選択され、最も好ましくはAl3+である。有機塩基は、少なくとも部分的に脱プロトン化されたモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはトリカルボン酸であり、脱プロトン化モノカルボン酸が特に好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸も好ましく、少なくとも部分的に脱プロトン化されたモノ-、ジ-またはトリ-ヒドロキシカルボン酸が特に好ましく、モノヒドロキシカルボン酸が特に好ましい。特に好ましいアニオンは、特に以下の酸の対応する塩基である:アニス酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリオキシル酸、グリコール酸、グリセロールリン酸、グルタル酸、クロロ酢酸、クロロプロピオン酸、桂皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、フマル酸、プロピオン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、マロン酸、マレイン酸、酪酸、イソ酪酸、イミジノ酢酸、リンゴ酸、イソチオン酸、メチルマレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、クロトン酸、シュウ酸、サリチル酸、グルコン酸、没食子酸、ソルビン酸、グルコン酸、脂肪酸、特にステアリン酸およびアジピン酸、ならびにp-オキシ安息香酸。これらの塩基のうち、酒石酸塩および乳酸塩が非常に好ましく、乳酸塩が最も好ましい。最も好ましい透過性促進剤は、乳酸アルミニウムである。硫酸アルミニウムも好ましい多価金属塩である。多価金属塩は、水和硫酸アルミニウムなどの硫酸アルミニウム(例:12~14の水和水を有する硫酸アルミニウム)であり得る。多価金属塩は、乳酸アルミニウムであり得る。多価金属塩の混合物が使用され得る。
【0144】
有機塩基とは異なるさらなるアニオンが透過性促進剤内に存在することが好ましい。アニオンは好ましくは無機塩基である。その無機塩基は、好ましくは脱プロトン化された無機酸である。このような酸としては、特に2つ以上のプロトンを放出できる酸が考えられる。これらには、特に硫黄、窒素またはリンを含む酸が含まれ、硫黄またはリンを含む酸が特に好ましい。硫黄を含む酸、特に硫酸、従ってその塩としての硫酸塩が、塩基として特に満足できることが証明されている。透過性促進剤として、硫酸アルミニウムを含むさらなる塩を使用することが好ましい。好ましくは、その塩の少なくとも50重量%、特に少なくとも75重量%、さらに特に100重量%が硫酸アルミニウムをベースとする。2つの異なるアニオンは、1:100~100:1の比率で、好ましくは1:10~10:1の比率で、特に1:5~5:1の比率で使用することができる。
【0145】
色を安定化するための添加剤は、アルカリ金属の亜硫酸塩または重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸アンモニウム、スルフィン酸、2-ヒドロキシ-2-スルフィナト酢酸、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸、またはスルホン酸、および前述の塩または誘導体から選択され得る。
【0146】
再湿潤または特殊添加剤の添加は、表面架橋前および/または架橋中および/または表面架橋後に行われ得る。後処理セクション(g)が終了すると、販売可能な吸水性ポリマー12が得られる。
【0147】
すでに上で述べたように、穴あきプレートの幾何学的形状が本発明の成功の鍵である。穴あきプレート13の簡略図を
図2に示す。左側は正面図、右側は断面図である。
【0148】
穴あきプレート13は、略平坦な円形である。スチール製である。穴プレート13は、その中心に穴14を有する。穴14は、押出機(図示せず)のウォームの軸受として使用される。さらに、穴あきプレート13は、穴あきプレート13によって蓋がされた押出容器からヒドロゲルを排出するためのオリフィスとして機能する複数の貫通穴15を有する。穴あきプレート13は、フランジカラー16によって囲まれている。フランジカラー16は、押出機の押出容器に蓋をするために、穴あきプレート13を押出機に固定するように設計されている。この目的のために、フランジカラー16には、円形に配置されたフランジ穴17が設けられている。このフランジ穴17を通って延びるボルト(図示せず)により、フランジカラー16が押出機に固定される。
【0149】
本発明によれば、穴あきプレート13は、次の設計ルールに従う。
5.5<2.10686036×(l/d)0.774457×(V/A)-0.117802<13.3
【0150】
式中、lは貫通穴15の軸方向の長さを表す。
図2のように、貫通穴15は、穴あきプレート13を通ってその平面に垂直に延び、貫通穴15の軸方向の長さlは、穴あきプレート13の厚さと同じである。
【0151】
貫通穴の相当直径dは、式中の2番目の変数値である。
図2に例示した穴あきプレート13は、円形断面の貫通穴を備えているため、貫通穴の相当直径dは、貫通穴の円直径に等しい。貫通穴が非円形であるか、サイズが異なる場合、dは、一般的開示のセクションに記載されているように計算される必要がある。
【0152】
変数Vは、穴あきプレートの空隙面積を表す。これは、ヒドロゲルが通過するすべての貫通穴の断面積の合計である。中央穴14にはヒドロゲルが通過しないため、穴14の断面積は空隙面積の一部とはみなされない。
図2に例示される穴あきプレート13の場合、それぞれ直径dを有する円形貫通穴が5個あるため、空隙面積はV=5/4×π×d
2と計算される。
【0153】
最後に、穴あきプレート13の総面積Aは、設計ルールの変数である。総面積は、空隙面積を含む、ヒドロゲルと接触する穴あきプレートの面の面積である。
図2に例示される穴あきプレート13の場合、総面積Aは、穴あきプレート(フランジカラー16なし)の直径をD、中央穴14の直径をWとして、A =1/4×π×(D-W)
2と計算される。フランジカラー16および中央穴14は、ヒドロゲルと接触しないため、総面積の一部とはみなされない。
【0154】
図2に例示される穴あきプレート13の場合、条件式2.10686036×(l/d)
0.774457×(V/A)
-0.117802は、7.94となる。したがって、この穴あきプレート13は、本発明の設計ルールを満たしており、したがって、本発明の吸水性ポリマーを製造するための本発明の方法で使用するのに適している。
【0155】
倍率500倍の走査型電子顕微鏡(SEM)で捉えられた本発明の吸水性ポリマー粒子の画像を
図3に再現する。その構造は、本発明の製造方法の押出工程において水が蒸発することにより生じる特定の多孔性によって特徴付けられる。吸収速度が向上する理由としては、この細孔が考えられる。ただし、粘弾性挙動は、SEM画像からは導き出せない。これを評価するには、ゲル床レオロジー測定が必要である。
【0156】
図4は、従来の製造方法(従来技術)に従って調製された従来のSAP粒子のSEM画像を再現したものである。この粒子は、多孔質性が低いため、
図3に示す本発明のSAP粒子ほど高速ではない。
【0157】
試験手順の定義
本開示内では、製品特性を測定するために次の手順を使用する。
【0158】
遠心分離保持容量(CRC)を測定するCRC法
EDANA標準試験WSP241.2(05)に規定されている通りである。この手順は、edana.org/publicationsで入手できる。
【0159】
加圧下での吸光度(AUP)を測定するAUP法
EDANA標準試験WSP242.2(05)に規定されている通りである。この手順は、edana.org/publicationsで入手できる。適用されるべき圧力は、4.83kPa(=0.7psi)になる。
【0160】
自由膨潤速度(FSR)を測定するFSR法
欧州特許出願公開第0443627号明細書の第12頁の第24行目~第44行目に規定されている通りである。
【0161】
20g/g(T20)の取り込みを測定するK(t)法
欧州特許出願公開第2535697号明細書の段落[0027]~段落[0071]に規定されている通りである。
【0162】
貯蔵係数G’、損失係数G’’、ひずみε、せん断応力σ、降伏応力YSを測定するゲル床レオロジー法
ゲル床レオロジーは、建築材料セルと対応するベーン(ツール)を備えたAnton Paar社製レオメーターを使用して行った。
【0163】
他の値に加えて、レオメーターは、ひずみε、貯蔵係数G’、損失係数G’’、およびせん断応力σを測定することができる。
【0164】
SAPプローブの規定粒度分布は、5%が600μm~710μmより大きく、30%が500μmより大きく、50%が300μmより大きく、15%が150μmより大きくなるように調整した。上記の粒度分布を有する乾燥SAPを建築材料セル(BMC)に添加し、生理食塩水で膨潤させる前にレオメーターに取り付けた。SAPを添加した後、底部に均一で水平なSAP床を作るために、BMCを軽く叩いた。SAPの添加量は、合計で250gの0.9%生理食塩水を使用した試料のCRC値の90%の膨潤に相当した。SAP量は次のように計算した:CRC=29g/gの場合、SAP量=(250g)/(29g/g×90%)=9.58g。
【0165】
BMC中のSAPへの生理食塩水の添加は、分液漏斗を用いて、約10g/秒の速度で、ベーンシャフトに加えられた。これは、SAP床の乱れを最小限に抑え、データのノイズを低減し、添加時に生理食塩水を確実に過剰に供給する(生理食塩水の添加速度をSAPの膨潤速度よりも速くする)ために重要であった。生理食塩水をベーンシャフトに加えたときに、レオメーター試験プロファイルを開始した。生理食塩水の添加から降伏応力を測定する振幅スイープインターバル部分までに合計50分が経過した。
【0166】
2つの異なるレオメーター試験プロファイルを2つのテストラン間で使用したが、非常に類似していた。
【0167】
インターバル1:時間スイープ、ひずみ0.1%、1Hz発振、5.6秒ごとに270 データポイント(=25分)
インターバル2:時間スイープ、ひずみ/発振なし、5.6秒ごとに270データポイント(=25分)
インターバル3:振幅スイープ、0.1~10,000Paの対数せん断応力ランプ、8.6秒ごとに150データポイント(=22分)、ひずみが400%を超える場合は、テスト終了の条件付き。
【0168】
最大垂直抗力F_Nmaxおよび最大貯蔵係数G’は、時間スイープから直接抽出でき、試験で得られた最大値として定義される。降伏応力は、応力の増加に伴う貯蔵係数の低下を分析することにより決定される。貯蔵係数の低下が25 Pa(絶対)および1%(相対)以上で、どちらも一貫した基準に基づいている場合、対応するせん断応力が降伏応力(YS)として考慮される。
【0169】
モノリス粒子と凝集粒子の比率
プローブされるべき吸水性ポリマーの塊から、各10gのランダム試料を3つ採取した。すなわち、塊内の互いに離れた場所から、つまり塊内の異なる場所から採取する。
【0170】
第1試料から、少なくとも501個の粒子をランダムに選択する。選択した粒子を、光学顕微鏡を用いて視覚的に検査する。検査者は、粒子ごとに、粒子が凝集しているように見えるか、モノリシックに見えるかを判断する。凝集粒子n1とモノリス粒子m1の数を数えて記録する。m1とn1の比r1を計算する。第2試料のr2を計算し、第3試料のr3を計算するために、この手順をそれぞれ繰り返す。
【0171】
凝集粒子に対するモノリス粒子の比rは、r1、r2、r3の算術平均として定義する。
r=(r1+r2+r3)/3
【0172】
実験データ
吸水性ポリマーのプローブの調製
吸水性ポリマーのプローブを、以下に開示する一般的な手順に従って調製した。プロセスパラメータが変化している限り、変化したパラメータは、$nという名前の変数で表す。nは1~12の自然数である。
【0173】
一般的な手順
水酸化ナトリウム溶液(1848.5g、32%水酸化ナトリウム溶液)で 74モル%まで中和した1440gのアクリル酸と、$1gの脱イオン水と、$2gのポリエチレングリコール300ジアクリレート(62.1%)と、$3gのポリエチレングリコール450モノアリルエーテルアクリレート(68.6%)と、$4gの10%炭酸ナトリウム水溶液とを含むモノマー混合物を調製する。窒素で脱気することによってモノマー混合物から溶存酸素を除去し、約4℃の開始温度まで冷却する。
【0174】
開始温度に達した後、開始剤溶液(10gの脱イオン水中の1.35gの過硫酸ナトリウムと、2gの脱イオン水中の0.315gの35%過酸化水素溶液と、5gの脱イオン水中の0.068gのアスコルビン酸)を添加する。発熱重合反応が生じる。最終温度は約105℃になる。
【0175】
20分間の反応後時間の後、得られたヒドロゲルを実験室用ミートミンサー(Mado(登録商標)Primus、モーター出力:約2.2kW)で細かく刻んだ。得られたヒドロゲルの約5%を、類似した円筒形の穴を多数有する円形穴あきプレート(プレート直径:80mm、穴直径:$6mm、穴長さ:$7、穴数:$8)を用いて、ミートミンサーから押し出した。
【0176】
その後、ミートミンサーから押し出されたヒドロゲルを、実験室用ベルト乾燥機(FAU型-2-430/200/2800/250、SO3045;LINN HIGH TERM GmbH WERK II)内で170℃で20分間乾燥させた。
【0177】
乾燥したポリマー材料を粗粉砕し、その後、全幅1.5mmのカッティングミル(Retsch lab catting mill SM 100)を使用して粉砕し、篩にかけ、粒径150μm~700μm(d50:約350μm)の粉末にした。それぞれの試料から、規定粒度分布を調整した:5%が600μm~710μmより大きく、30%が500μmより大きく、50%が300μmより大きく、15%が150μmより大きい。その後、試料を乱流式オーバーヘッドシェーカーで少なくとも3分間均質化した。
【0178】
それぞれ、これらの混合物の各50gを、3個に分けて、$9gの表面架橋剤$10と、1.5gの脱イオン水と、$11gの乳酸アルミニウム(30%水溶液)と、12gの硫酸アルミニウム×14水和物とを含む溶液でコーティングした。この手順によれば、シリンジ(0.45mm針)を使用して、ミキサー内にあるポリマー材料粉末に溶液を適用する。その後、コーティング済み粉末を、乾燥キャビネット内で180℃の温度で30分間加熱する。続いて、3個の表面架橋ポリマー材料を組み合わせる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【
図1】吸水性ポリマーを調製するための本発明の方法のプロセスフローチャートを示す。
【
図2】本発明の穴あきプレートの図、すなわち正面図と断面図である。
【
図3】本発明の方法によって得られたSAP粒子のSEM画像である。
【
図4】従来の方法(従来技術)によって得られたSAP粒子のSEM画像である。
【
図5-1-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-2-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-3-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-4-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-5-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-6-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-7-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-8-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-9-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-10-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-11-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-12-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-13-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-14-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【
図5-15-A】せん断応力/ひずみを示す図である。
【実施例】
【0180】
この実験例は、表2に従って、前述の一般的プロセスのパラメータ$1~$12を変更することにより得られた。変更したパラメータは次のとおりである。
$1 脱イオン水の量[g]
$2 架橋剤ポリエチレングリコール(PEG)の量[g]
$3 架橋剤モノアリルエーテルアクリレート(MAE-AE)の量[g]
$4 発泡剤前駆体炭酸ナトリウムの量[g]
(発泡剤なしの場合は、$4=0)
$5 この実験例で使用したレシピから得られたゲルの量[%]
(1つのレシピから2つの実験例を作製した場合は、$5=50、
(1つのレシピから1つの実験例を作製した場合は、$5=100)
$6 穴の直径[mm](=相当直径d)
$7 穴長さ[mm](=軸方向長さl)
$8 穴あきプレートの穴の量[-](=n)
$9 表面架橋剤の量[g]
$10 表面架橋剤として使用した物質の名前[-]
$11 使用した透過性促進剤乳酸アルミニウムの量[g]
$12 使用した透過性促進剤硫酸アルミニウム14水和物の量[g]
【0181】
実験例の特徴付け
一般的な手順は、本発明の方法のすべての必須工程を含むため、実験例の特徴付けには、穴あきプレートの形状のみが決定的である。特定の実験例の形状パラメータが本発明の設計ルールの要件を満たす場合、その実験例は発明性がある。そうでない場合、それぞれの実験例は比較例である。
【0182】
相当直径d、軸方向長さl、穴数を表す変数$6、$7、$8に基づいて、条件式2.10686036×(l/d)0.774457×(V/A)-0.117802を計算する。空隙面積Vは、式n×π/4×d2で求められ、面積Aは、式 π/4×802mm2で求められる。したがって、空隙割合V/Aは、n×d2/6400mm-2と計算される。
【0183】
この条件式の計算値を、各実験例の発明性を評価するために使用した。条件式の値が 5.5より大きく13.3より小さい場合、その実験例は発明性がある。それ以外の場合、その実験例は比較例である。結果を表3に示す。
【0184】
性能データの評価
実験例1~15で得られた吸水性ポリマー粒子の性能パラメータCRC、AUP、T20、FSR、YSおよびG’を、上で定義した方法に従って測定した。貯蔵係数と自由膨潤速度の積(G’×FSR)を各実験例について計算した。結果を表4に示す。
【0185】
YSおよびG’に加えて、すべての実験例の損失係数G’ ’、せん断応力σおよびひずみεをゲル床方法論に従ってレオメーターで測定した。各実験例について、得た値を2種類の図にプロットした。第1の図は、ひずみに対するせん断応力の変化(せん断応力-ひずみ図)を示し、第2の図は、ひずみに対する貯蔵係数および損失係数の変化(係数-ひずみ図)を示す。
【0186】
図は、
図5にまとめられている。実際の図の名前、図のタイプ、および実験例の間の相関関係は、表5から導出できる。
【0187】
考察
実施例は、同じレシピから作製された比較例よりも高い降伏応力を達成することが示された。したがって、穴あきプレートの形状は、実際に製品の弾性にプラスの影響を与える。本発明の方法によって得られた超吸収体は、同じレシピから作製されたが本発明の方法ではない方法で押出された超吸収体よりも、崩壊する前により高い荷重に耐えることが予想される。
【0188】
さらに、本発明のプローブのT20値は、同じレシピから作製された比較例よりも低い。したがって、穴あきプレートの発明性のある形状は、製品の吸収速度に影響する。
【0189】
最後に、実施例の貯蔵係数G’と自由膨潤速度FSRの積は、同じレシピから作製された比較例と比較して、向上している。これは、本発明の穴あきプレートを使用して作製されたSAPの製品特性のバランスがより優れていることを示している。
【0190】
これらの発見は、さまざまなレシピのモノマー混合物に当てはまる。したがって、穴あきプレートの形状の影響は、決定的なものと考えられる。
【0191】
さらに、図は、調製した実験例が広範囲のひずみにわたってニュートン流体のように挙動することを示している:
【0192】
ニュートン性または非チキソトロピー性の材料では、せん断応力とせん断速度またはひずみの間に線形の関係があるが、チキソトロピー性の材料では、非線形の関係がある。
【0193】
例えば、M.Dinkgreveらの論文は、チキソトロピー性材料の応力-ひずみ曲線が、低せん断力およびひずみにおいて、どのように高度に非線形になるかを示している。例えば、Dinkgreveらの
図11を参照してほしい。
M.Dinkgreveら:降伏応力を測定するさまざまな方法について、Journal of Non-Newtonian Fluid Mechanics 238(2016年)、233~241頁、DOI10.1016/j.jnnfm.2016.11.001。
【0194】
実験例によって得られた材料は、この挙動を示さない。これらの材料はすべて、せん断応力とひずみの間に線形の関係を示す。
【0195】
図5-*-Aの各グラフの水平線は、各試料のテストランについて計算された降伏応力を表す。これらのグラフからわかるように、せん断応力対ひずみ曲線は、線形領域(水平線より下の曲線)ではチキソトロピー挙動を示さないため、降伏応力の標準定義が適用できる。いずれの場合も、せん断応力は、降伏応力の後(水平線)でのみ非線形になる。降伏応力を超えると、材料はもはやニュートン的な挙動を示さない。実施例は、より高いYSを達成するので、本発明の材料は、発明性のない材料よりも高い荷重下でニュートン運動をする。
【0196】
実験例で調製した材料は、貯蔵係数(G’)および損失係数(G’’)対ひずみ曲線によって証明されるように、チキソトロピー挙動も示さない。チキソトロピー材料は通常、材料の粘度がせん断または応力によって変化するにつれて交差する貯蔵係数曲線および損失係数曲線を有する。これはG’=G’’である。これは、M.Dinkgreveらによる引用論文の
図10aおよび
図10bに示されている。これらの図では、チキソトロピー性材料はすべて、貯蔵係数と交差する損失係数を示している。これは、その論文で試験された材料のチキソトロピー挙動の結果である。実験例で調製された材料の貯蔵係数曲線と損失係数曲線は、この挙動を示していない。
図5-*-Bは、15個の実験例すべてのG’およびG’’曲線を示している。ゲルの「破損」により、試験が実質的に終了となる高いひずみ値の場合にのみ、G’とG’’が交差し得る点が存在する。これは、論文で説明されている
図10aおよび
図10bの動作とは対照的である。
【0197】
さらに、試料の繰り返し測定は、非常に再現性が高く、一貫性があることがわかる。非常に低いひずみ値の測定にはノイズが含まれるが、これは、低いひずみ値での振動測定の典型的な現象である。各試料に対して、3回のテストランを実施し、各テストランの降伏応力を測定した。次に、値を平均して表4に示した。
【0198】
したがって、開示された設計ルールに従う穴あきプレートを通過させて、ヒドロゲルを押し出すと、チキソトロピーの悪影響が減少し、そのヒドロゲルから作製される超吸収体の吸収速度が速まることが証明された。
表2:現実験例による変数の値
【0199】
【0200】
EC:エチレンカーボネートPD:1,3-プロパンジオール
表3:穴あきプレートの特性の計算結果
【0201】
【0202】
表4:性能データの評価結果
【0203】
【0204】
(比較例):比較例、(実施例):実施例
【0205】
表5:図と実験例の相関関係
【0206】
【0207】
符号
a 受器
b 反応器
c 押出機
d 乾燥機
e 粉砕機
f 篩
g 後処理セクション
1 モノマー
2 架橋剤
3 開始剤
4 モノマー混合物
5 ヒドロゲル
6 押出ヒドロゲル
7 固体ポリマー材料
8 ポリマー粉末
9 ポリマー粉末のフラクション
10 粗粒
11 微粒子
12 吸水性ポリマー
13 穴あきプレート
14 穴
15 貫通穴
16 フランジカラー
17 フランジ穴
d 貫通穴の相当直径
l 貫通穴の軸方向長さ
D 穴あきプレートの直径
W 穴の直径
【国際調査報告】