(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)を用いたパージ回復の制御
(51)【国際特許分類】
A61M 60/829 20210101AFI20241024BHJP
A61M 60/139 20210101ALI20241024BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20241024BHJP
A61M 60/416 20210101ALI20241024BHJP
A61M 60/804 20210101ALI20241024BHJP
A61M 60/824 20210101ALI20241024BHJP
A61M 60/825 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
A61M60/829
A61M60/139
A61M60/237
A61M60/416
A61M60/804
A61M60/824
A61M60/825
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520920
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 US2022048229
(87)【国際公開番号】W WO2023076603
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー,ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ダス,ソウメン
(72)【発明者】
【氏名】コーベット,スコット,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】シップ,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD10
4C077DD16
4C077FF04
(57)【要約】
血液ポンプの制御されたパージの方法と、この方法を実施するための血液ポンプアセンブリとが提供される。血液ポンプは、パージデバイスと流体連通する。パージデバイスは、パージリザーバと、血液ポンプに流体的に接続されるように構成された補助リザーバとを含む。パージリザーバは、パージ流体を収容するように構成され、補助リザーバは、補助パージ流体を収容するように構成されている。血液ポンプの少なくとも一部分は、患者に挿入され、動作される。パージ流体の流れは、パージリザーバから血液ポンプに供給される。血液ポンプにおけるパージフローパラメータは、測定デバイスを使用して測定され、パージフローパラメータが所定の閾値を満たすとコントローラによって判定されると、修復プロトコルが特定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液ポンプをパージする方法であって、
パージデバイスと流体連通する血液ポンプを用意することであって、前記パージデバイスは、
前記血液ポンプに流体的に接続され、パージ流体を収容するように構成されたパージリザーバと、
前記血液ポンプに流体的に接続され、補助パージ流体を収容するように構成された補助リザーバと、
を含む、血液ポンプを用意することと、
前記血液ポンプの少なくとも一部分を患者に挿入することと、
前記血液ポンプを動作させることと、
前記パージ流体の流れを前記パージリザーバから前記血液ポンプに供給することと、
測定デバイスによって、前記血液ポンプにおけるパージフローパラメータを測定することと、
前記血液ポンプにおける前記パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを満たすとコントローラによって判定されると修復プロトコルを特定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記修復プロトコルは、
前記パージリザーバから前記血液ポンプへの前記パージ流体の前記流れを停止し、前記補助リザーバから前記血液ポンプへの前記補助パージ流体の流れを開始することと、
前記測定デバイスによって、前記血液ポンプにおける補助パージフローパラメータを測定することと、
前記血液ポンプにおける前記補助パージフローパラメータが、前記補助パージ流体がもはや必要でないことを示す前記所定の閾値パージフローパラメータを下回った又は上回ると前記コントローラによって判定されると前記補助リザーバから前記血液ポンプへの前記補助パージ流体の前記流れを停止することと、前記パージリザーバから前記血液ポンプへの前記パージ流体の前記流れを再開することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液ポンプにおける前記補助パージフローパラメータが前記所定の閾値パージフローパラメータを上回ると前記コントローラによって判定されると、前記補助パージ流体の前記流れは停止され、前記パージ流体の前記流れは再開される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記血液ポンプにおける前記補助パージフローパラメータが前記所定の閾値パージフローパラメータを所定量だけ上回ると前記コントローラによって判定されると、前記補助パージ流体の前記流れは停止され、前記パージ流体の前記流れは再開され、前記所定量は、24時間で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記パージフローパラメータは、パージ流量であり、前記所定の閾値パージフローパラメータは、前記パージ流量の所定量の減少であり、前記所定量は、24時間以内で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パージフローパラメータは、パージ流量であり、前記所定の閾値パージフローパラメータは、6時間以内で3mL/時未満への前記パージ流量の減少である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記パージフローパラメータは、パージ圧力であり、前記所定の閾値パージフローパラメータは、前記パージ圧力の所定量の増加であり、前記所定量は、24時間以内で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記パージフローパラメータは、パージ圧力であり、前記所定の閾値パージフローパラメータは、24時間以内で700mmHg超への前記パージ圧力の増加である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記血液ポンプに前記補助パージ流体を供給する前に前記補助パージ流体を脱気することを更に含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記血液ポンプ及び前記パージデバイスの1つ以上のチューブにキンクがないことを検出することを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記パージ流体は、水性ブドウ糖を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記パージ流体は、抗凝固剤、pH調整及び緩衝剤、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗凝固剤は、ワルファリン、クマリン、ヘパリン、又は直接トロンビン阻害剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗凝固剤は、ヘパリンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記直接トロンビン阻害剤は、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、ビバリルジン、又はそれらの混合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はピルビン酸ナトリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウムである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記補助パージ流体は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記補助パージ流体は、ブドウ糖を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
tPAは、凍結乾燥tPAである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
tPAの濃度は、2mg/50mL~4mg/50mLである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記血液ポンプは、モータ部分及びポンプ部分を含み、前記パージ流体及び前記補助パージ流体は、前記モータ部分に供給される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
血液ポンプと、
前記血液ポンプと流体連通するパージデバイスであって、前記パージデバイスは、
前記血液ポンプに流体的に接続され、パージ流体を収容するように構成されたパージリザーバと、
前記血液ポンプに流体的に接続され、補助パージ流体を収容するように構成された補助リザーバと、
を含む、パージデバイスと、
前記血液ポンプにおけるパージフローパラメータを測定するように構成された測定デバイスと、
コントローラであって、
前記血液ポンプにおける前記パージフローパラメータを監視し、
前記血液ポンプにおける前記パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを満たすと判定すると修復プロトコルを特定する
ように構成されている、コントローラと、
を含む、血液ポンプアセンブリ。
【請求項24】
前記コントローラは更に、前記パージデバイスを、
前記パージリザーバから前記血液ポンプへの前記パージ流体の流れを停止し、前記補助リザーバから前記血液ポンプへの前記補助パージ流体の流れを開始し、
前記測定デバイスによって、前記血液ポンプにおける補助パージフローパラメータを測定し、
前記血液ポンプにおける前記補助パージフローパラメータが、前記補助パージ流体がもはや必要でないことを示す前記所定の閾値パージフローパラメータを下回った又は上回ると判定されると、前記補助リザーバから前記血液ポンプへの前記補助パージ流体の前記流れを停止し、前記パージリザーバから前記血液ポンプへの前記パージ流体の前記流れを再開する
ように制御することによって前記修復プロトコルを実施するように構成されている、
請求項23に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項25】
前記血液ポンプにおける前記補助パージフローパラメータが前記所定の閾値パージフローパラメータを上回ると前記コントローラによって判定されると、前記補助パージ流体の前記流れは停止され、前記パージ流体の前記流れは再開される、請求項24に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項26】
前記血液ポンプにおける前記補助パージフローパラメータが前記所定の閾値パージフローパラメータを所定量だけ上回ると前記コントローラによって判定されると、前記補助パージ流体の前記流れは停止され、前記パージ流体の前記流れは再開され、前記所定量は、24時間で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である、請求項24又は25に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項27】
前記パージフローパラメータは、パージ流量であり、前記所定の閾値パージフローパラメータは、前記パージフローパラメータの所定量の減少であり、前記所定量は、24時間以内で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である、請求項23~26のいずれか一項に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項28】
前記パージフローパラメータは、パージ圧力であり、前記所定の閾値パージフローパラメータは、前記パージ圧力の所定量の増加であり、前記所定量は、24時間以内で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である、請求項23~26のいずれか一項に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項29】
前記パージデバイスは、
前記パージリザーバを前記血液ポンプに流体的に接続するパージ流体供給ラインと、
前記補助リザーバを前記パージ流体供給ラインに流体的に接続する補助パージ流体供給ラインと、
を更に含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項30】
前記パージ流体は、水性ブドウ糖を含む、請求項23~29のいずれか一項に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項31】
前記パージ流体は、抗凝固剤、pH調整及び緩衝剤、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項30に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項32】
前記抗凝固剤は、ワルファリン、クマリン、ヘパリン、又は直接トロンビン阻害剤である、請求項31に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項33】
前記抗凝固剤は、ヘパリンである、請求項32に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項34】
前記直接トロンビン阻害剤は、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、ビバリルジン、又はそれらの混合物である、請求項32に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項35】
前記pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はピルビン酸ナトリウムである、請求項31に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項36】
前記pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウムである、請求項35に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項37】
前記補助パージ流体は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含む、請求項23~36のいずれか一項に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項38】
前記補助パージ流体は、ブドウ糖を更に含む、請求項37に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項39】
前記tPAは、凍結乾燥tPAである、請求項37に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項40】
tPAの濃度は、2mg/50mL~4mg/50mLである、請求項37に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項41】
前記血液ポンプは、モータ部分及びポンプ部分を含み、前記パージ流体及び前記補助パージ流体は、前記モータ部分に供給される、請求項23~26のいずれか一項に記載の血液ポンプアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる、2021年10月29日に出願された米国特許仮出願第63/273,424号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
技術分野
[0002] 本発明は、患者の血管内の血流をサポートするための血液ポンプ、特に血管内血液ポンプを含む血液ポンプアセンブリ、及びそのような血液ポンプを患者に挿入された状態で動作中にパージする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 軸流血液ポンプ、遠心血液ポンプ、又は血流が軸方向力及び半径方向力の両方によって引き起こされる混合型血液ポンプなどの様々なタイプの血液ポンプが知られている。血液ポンプの一例は、Danvers,MAのAbiomedの製品であるImpella(登録商標)ラインの血液ポンプ(例えば、Impella 2.5(登録商標)、Impella CP(登録商標)、Impella 5.5(登録商標)等)である。血管内血液ポンプは、カテーテルによって大動脈などの患者の血管に挿入される。
【0004】
[0004] 一部のポンプ設計では、血液がポンプ機構に入るのを妨げ、血液及び生物的沈着物の蓄積がポンプ機構に及ぼす影響を緩和するために、パージ流体が配置される。例えば、ポンプ構成要素の開存性を維持するために、ヘパリン(典型的には、ヘパリンのナトリウム塩)などの抗凝固剤が使用される。ヘパリンは、インペラシャフト及びハウジングなどのポンプ構成要素の間の間隙内で血液が凝固するのを妨げると考えられる。ヘパリンは、典型的には制御された用量で投与される、一般的に使用される抗凝固剤である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
[0005] 本明細書中に記載されるのは、血液ポンプの制御されたパージの方法と、この方法を実施するための血液ポンプアセンブリである。記載される方法によれば、パージデバイスと流体連通する血液ポンプが用意される。パージデバイスは、パージリザーバと、血液ポンプに流体的に接続されるように構成された補助リザーバとを含む。パージリザーバは、パージ流体を収容するように構成され、補助リザーバは、補助パージ流体を収容するように構成されている。血液ポンプの少なくとも一部分は、患者に挿入される。本方法はまた、血液ポンプを動作させるステップと、パージ流体の流れをパージリザーバから血液ポンプに供給するステップと、測定デバイスによって、血液ポンプにおけるパージフローパラメータを測定するステップと、血液ポンプにおけるパージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを満たすとコントローラによって判定されると修復プロトコルを特定するステップとを含む。
【0006】
[0006] 本開示の別の態様は、血液ポンプと、血液ポンプと流体連通するパージデバイスと、血液ポンプにおけるパージフローパラメータを測定するように構成された測定デバイスと、コントローラとを含む血液ポンプアセンブリに関する。パージデバイスは、パージリザーバと、血液ポンプに流体的に接続されるように構成された補助リザーバとを含む。パージリザーバは、パージ流体を収容するように構成され、補助リザーバは、補助パージ流体を収容するように構成されている。コントローラは、血液ポンプにおけるパージフローパラメータを監視し、血液ポンプにおけるパージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを満たすと判定すると修復プロトコルを特定するように構成されている。
【0007】
[0007] いくつかの実施形態では、血液ポンプは、モータ部分及びポンプ部分を含み、パージ流体及び補助パージ流体は、モータ部分に供給される。
【0008】
[0008] 修復プロトコルは、パージリザーバから血液ポンプへのパージ流体の流れを停止し、補助リザーバから血液ポンプへの補助パージ流体の流れを開始することと、測定デバイスによって、血液ポンプにおける補助パージ測定値を測定することと、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが、補助パージ流体がもはや必要でないことを示す所定の閾値パージフローパラメータを下回った又は上回るとコントローラによって判定されると、補助リザーバから血液ポンプへの補助パージ流体の流れを停止することと、パージリザーバから血液ポンプへのパージ流体の流れを再開することとを含む。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態では、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを上回るとコントローラによって判定されると、補助パージ流体の流れは停止され、パージ流体の流れは再開される。いくつかの実施形態では、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを所定量だけ上回るとコントローラによって判定されると、補助パージ流体の流れは停止され、パージ流体の流れは再開され、所定量は、24時間で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である。
【0010】
[0010] 他の実施形態では、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを下回ったとコントローラによって判定されると、補助パージ流体の流れは停止され、パージ流体の流れは再開される。いくつかの実施形態では、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを所定量だけ下回ったとコントローラによって判定されると、補助パージ流体の流れは停止され、パージ流体の流れは再開され、所定量は、24時間で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態では、パージフローパラメータは、パージ流量であり、所定の閾値パージフローパラメータは、パージ流量の所定量の減少であり、所定量は、24時間以内で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である。いくつかの実施形態では、パージフローパラメータは、パージ流量であり、所定の閾値パージフローパラメータは、6時間以内で3mL/時未満へのパージ流量の減少である。いくつかの実施形態では、パージフローパラメータは、パージ圧力であり、所定の閾値パージフローパラメータは、パージ圧力の所定量の増加であり、所定量は、24時間以内で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である。いくつかの実施形態では、パージフローパラメータは、パージ圧力であり、所定の閾値パージフローパラメータは、24時間以内で700mmHg超へのパージ圧力の増加である。
【0012】
[0012] いくつかの実施形態では、本方法は、血液ポンプに補助パージ流体を供給する前に補助パージ流体を脱気することを更に含む。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態では、補助パージ流体は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含む。補助パージ流体は、ブドウ糖も含み得る。いくつかの実施形態では、tPAの濃度は、2mg/50mLである。tPAは、パージ流体と組み合わされる前に凍結乾燥させてもよい。
【0014】
[0014] いくつかの実施形態では、パージ流体は、水性ブドウ糖を含む。例えば、パージ流体は、5%ブドウ糖水溶液を含み得る。いくつかの実施形態では、パージ流体はまた、抗凝固剤、pH調整及び緩衝剤、又はそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ワルファリン、クマリン、ヘパリン、又は直接トロンビン阻害剤である。いくつかの実施形態では、直接トロンビン阻害剤は、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、ビバリルジン、又はそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はピルビン酸ナトリウムである。
【0015】
図面の簡単な説明
[0015] 以下、本発明を、添付図面を参照しながら例として説明する。添付図面は、縮尺通りに描かれることを意図していない。明瞭化のため、全ての図面で全ての構成要素に符号が付されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】[0016]血液ポンプのシャフトとハウジングとの間の間隙を通る血流及びパージ流を示す。
【
図2】[0017]その流入カニューレが左心室内に配置されている、左心室の前に挿入された血管内血液ポンプの概略図である。
【
図3】[0018]例示的な先行技術の血液ポンプの概略長手方向断面図である。
【
図4】[0019]
図3の血液ポンプの一部の拡大図である。
【
図5】[0020]先行技術の血液ポンプアセンブリの概略図である。
【
図6】[0021]本発明のパージ用カセットの一実施形態である。
【
図7】[0021]修復プロトコルの実施中における本発明のパージ用カセットの一実施形態である。
【
図8】[0022]パージ圧力とパージ流量との間の関係の一例を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
[0023] 本開示の実施形態を、同様の参照符号が同様又は同一の要素を識別する図面を参照ながら詳細に説明する。開示される実施形態は、様々な形態で具現化され得る本開示の単なる例に過ぎないことを理解されたい。周知の機能又は構造については、本開示を不必要な詳細で曖昧にすることを避けるため、詳細には説明しない。したがって、本明細書に開示される特定の構造的及び機能的な詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、単に、特許請求の範囲の基礎として、及び本開示を事実上あらゆる適切に詳細な構造に様々に採用するために当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0018】
[0024] 血液ポンプは、重要な救命処置を必要とする患者に適用される。したがって、ポンプの動作に悪影響を及ぼす可能性のあるデバイスのあらゆる態様を修復することが重要である。本明細書中に開示されるのは、血液ポンプの動作の一態様の自動化である。特に、パージ条件がコントローラによって監視され、パージ流体を、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含むパージ流体などの補助パージ流体と交換する必要性が検出される。
【0019】
[0025] 前述のタイプの血液ポンプは、参照により本明細書中に組み込まれる例えば欧州特許第0961621(B1)号から周知である。
図1を参照すると、駆動部110と、駆動部110の近位端120(臨床医に近い方の駆動部の端部又は駆動部の「後端」)に取り付けられ、駆動部110への電源供給のためにそこを通って延びるラインを有するカテーテル115と、駆動部の遠位端125に締結されたポンプ部分130とを有するポンプ100である。駆動部110は、電動モータ151がその中に配置されたモータハウジング150を含み、電動モータのモータシャフト160は、駆動部110からポンプ部分130へと遠位に突出している。ポンプ部分130は、更には、管状ポンプハウジング165を含み、管状ポンプハウジング165は、その中で回転するインペラ170を有し、インペラ170は、モータハウジング150から突出したモータシャフト160の端部上に着座している。モータシャフト160は、モータハウジング内で2つの軸受171、172に取り付けられており、2つの軸受171、172は、ポンプハウジング150内でのインペラ170の真の、厳密に中心に位置決めされた案内を保証するために、互いに最大限に離されている。異なるポンプ設計には異なる軸受タイプが用いられる。
図1に示されるように、軸受171はラジアル玉軸受であり、軸受172はアキシャルラジアル滑り軸受である。
図1に示されるように、血液140は、ポンプハウジング165の流出ケージを出る。モータハウジング150に入るはずの血液は、更に、モータハウジング及びインペラ側シャフトシール軸受を通過するパージ流体135によって妨げられる。したがって、パージ流体は、血液がハウジングに入ることを防ぐために、インペラ側ラジアル滑り軸受の間隙を通過する。これは、血液中に存在する圧力よりも高いパージ圧力で行われる。
【0020】
[0026]
図1に示されるように、パージ流体135は、ポンプのモータハウジング150を満たして、ポンプの軸受171、172に潤滑膜を形成する。参照により本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第20150051436号に記載されているように、パージ流体135は、ポンプのアキシャルスライド軸受の軸受間隙180内に潤滑膜を形成することができる。パージ流体は、パージ流体供給ラインを通って供給され、モータハウジング150の遠位端に位置するラジアル軸受171を通って流れ、その後、また、アキシャル滑り軸受の軸受間隙180を通って流れると記載されている。このようにして供給されるパージ流体は、血液希釈を担い、インペラ170下での血液滞留時間を減少させる。
【0021】
[0027] パージ流体135が、存在する血圧よりも高い圧力で遠位側ラジアル軸受172に到達することを確実にするために、アキシャル滑り軸受の軸受間隙を形成する表面の少なくとも1つに、軸受間隙180を半径方向外側から半径方向内側に貫通するチャネルが設けられており、そのため、パージ流体は、このチャネルを通って遠位側ラジアル軸受に流れることができる。このチャネルは、必ずしも軸受間隙表面にある必要はなく、別個のチャネル又はボアとして実現することもできる。しかしながら、軸受間隙表面の1つにチャネルを設けることには、潤滑膜の一部が後から流入するパージ流体に絶えず入れ替わることが理由で軸受間隙内の潤滑膜があまり加熱されないという利点がある。好ましくは、チャネルは、半径方向の搬送能力を最小限にするために、静止軸受間隙表面に位置する。
【0022】
[0028] 典型的には、そのようなパージ流体はヘパリンを含む。しかしながら、臨床医は、多くの場合、パージ流体を介して患者の血液にヘパリンを投与することを望まない。例えば、何らかの外科的処置中にヘパリンを投与することは、血液の凝固を妨げ、ひいては治癒又は止血を妨げるため、逆効果になる可能性がある。また、パージ流体と共に患者の血液に投与されるヘパリンの量は、様々な理由から制御が困難である。特に、ヘパリンの量は、臨床医が望む量を超えることが多く、患者に投与されるヘパリンの量は、正確に制御することが困難である。したがって、臨床医は、多くの場合、血液ポンプの動作とは別に、必要に応じて(したがって、必要な量だけ)患者にヘパリンを供給することの方を好む。更に、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)に罹患しやすいことでヘパリン不耐性の患者もいる。そのため、ヘパリンを含むパージは、これらの患者には全く適さない。したがって、血管内血液ポンプは、必要に応じて、ヘパリンを含まない又は含まれるヘパリンの量を少なくとも減らしたパージ流体を用いて動作されることがある。
【0023】
[0029] 別の一般的な問題は、ヘパリンがパージ流体に典型的に混合されることに関して生じる。パージ流体は、シャフトとハウジングの開口部との間に形成された間隙を通って流れ、それにより、そのような間隙を通ってハウジングに入りがちな血液を押し戻すにもかかわらず、間隙への血液の侵入を完全に防止することはできない。特に、一部の血液又は血液成分は、そのような間隙の少なくとも遠位部分に常に入る可能性がある。ヘパリンは、間隙内での血液の凝固又は表面への血液の付着を防止するのに役立ち、したがって、シャフトの回転が阻止されるのを防止する。
【0024】
[0030] 参照により本明細書中に組み込まれる欧州特許出願公開第3542837(A2)号は、血液ポンプパージ流体を介した患者へのヘパリンの投与の結果を緩和するために、パージ流体の使用を少なくとも断続的に制限するポンプについて記載している。これを達成するために、欧州特許出願公開第3542837(A2)号は、滑り軸受の少なくとも1つの表面に、間隙表面に対して比較的高い熱伝導率を有する材料を使用することを提案している。そのような材料の例としては、炭化ケイ素が挙げられる。対向する表面は、より低い熱伝導率を有するセラミック材料(例えば、アルミナ強化ジルコニア)で作製され得る。記載したように、シャフトは、アルミナ強化ジルコニアで作製され、シャフトが軸支されるスリーブは炭化ケイ素で作製される。したがって、ポンプ構成要素に特殊な材料を使用することは、ヘパリン含有パージ流体の使用を制限する、又は更には排除する1つの解決策である。
【0025】
[0031]
図2は、この特定の例では、左心室を支持するための血液ポンプの利用を示す。血液ポンプは、カテーテル14と、カテーテル14に取り付けられたポンピングデバイス10とを含む。ポンピングデバイス10は、同軸上に連なって配置され、ロッド状の構造形態をもたらすモータ部分11及びポンプ部分12を有する。ポンプ部分12は、多くの場合「カニューレ」と呼ばれる可撓性吸引ホース13の形態の延長部を有する。インペラが、血流入口から血流出口への血流を生じさせるためにポンプ部分12内に設けられており、インペラの回転は、モータ部分11に配置された電動モータによって発生させる。血液ポンプは、主に上行大動脈15b内に位置するように配置される。大動脈弁18は、閉じた状態において、ポンプ部分12又はその吸引ホース13の外側に位置するようになっており、ポンプ部分12又はその吸引ホース13は、ポンプが配置されると、左心室17に近接する。吸引ホース13を前方に有する血液ポンプは、任意選択的にガイドワイヤを用いてカテーテル14を前進させることによって図示の位置に前進させる。その際、吸引ホース13は、大動脈弁18を逆行的に通過するため、血液は、吸引ホース13を通して吸い込まれ、大動脈弓15aを介して大動脈16に送り込まれる。
【0026】
[0032] 血液ポンプの使用は、単に典型的な用途例を含む
図2に示される用途に限定されない。したがって、ポンプは、鎖骨下動脈などの他の末梢血管を通して挿入することもできる。或いは、右心室に対する逆にした適用も想定され得る。
【0027】
[0033]
図3は、参照により本明細書中に組み込まれ、「I」の符号が付された丸で囲まれた前端部が変更され得る(このような変更は
図4に示される)こと以外は、同様に本発明の状況において使用するのに適した米国特許出願公開第2015/0051436(A1)号に記載されている血液ポンプの例示的実施形態を示す。したがって、モータ部分11は、電動モータ21が収容され得る細長いハウジング20を有する。電動モータ21のステータ24は、通常の手法で、周方向に分布する多くの巻線と、長手方向の磁気帰路28とを有し得る。磁気帰路28は、細長いハウジング20の外側円筒状スリーブを形成し得る。ステータ24は、モータシャフト25に接続されており、有効方向に磁化された永久磁石からなるロータ26を囲み得る。モータシャフト25は、モータハウジング20の全長にわたって延び、開口部35を通ってモータハウジング20から遠位に突出し得る。そこには、インペラ34が保持されており、インペラ34は、そこから突出するポンプベーン36を有し、ポンプベーン36は、モータハウジング20にしっかりと接続され得る管状ポンプハウジング32内で回転し得る。
【0028】
[0034] モータハウジング20の近位端は、それに密閉的に取り付けられた可撓性カテーテル14を有する。カテーテル14を通って、電動モータ21への電源供給及びその制御のための電気ケーブル23が延び得る。更に、パージ流体ライン29がカテーテル14を通って延び、モータハウジング20の近位端壁22を貫通し得る。パージ流体は、パージ流体ライン29を通ってモータハウジング20の内部に供給され、モータハウジング20の遠位端にある終壁30を通って出ることができる。パージング圧力は、用途例に応じて300~1400mmHgと、存在する血圧よりも高くなるように選択され、それによって血液がモータハウジングに侵入することを防止する。
【0029】
[0035] 前述したように、同パージシールは、可撓性駆動シャフト及びリモートモータによって駆動されるポンプと組み合わせることができる。
【0030】
[0036] インペラ34が回転すると、血液は、ポンプハウジング32の遠位開口部37を通って吸い込まれ、ポンプハウジング32内で軸方向に後方に搬送される。血液は、ポンプハウジング32の半径方向出口開口部38を通り、ポンプ部分12から出て、更に、モータハウジング20に沿って流れる。これにより、モータ内に生成される熱が除去されることを確実にする。血液がモータハウジング20に沿って吸い込まれ、ポンプハウジング32の遠位開口部37から出る逆の搬送方向でポンプ部分を動作させることも可能である。
【0031】
[0037] モータシャフト25は、一方ではモータハウジング20の近位端にあり、他方ではモータハウジング20の遠位端にあるラジアル軸受27、31内に取り付けられている。モータハウジングの遠位端にある開口部35内のラジアル軸受、特にラジアル軸受31は、滑り軸受として構成されている。更に、モータシャフト25はまた、モータハウジング20内に軸方向に取り付けられており、アキシャル軸受40も同様に、滑り軸受として構成されている。アキシャル滑り軸受40は、インペラ34が遠位から近位に血液を搬送する際に遠位方向に作用するモータシャフト25の軸方向の力を受ける役割を果たす。血液ポンプが血液を逆方向にも又は逆方向にのみ搬送するために使用される場合、対応するアキシャル滑り軸受40(対応するアキシャル滑り軸受40もまた、又は対応するアキシャル滑り軸受40のみ)が、対応する手法でモータハウジング20の近位端に設けられてもよい。
【0032】
[0038]
図4は、
図3で「I」の符号が付された部分をより詳細に示すが、これは、構造的に変更されたものである。特に、ラジアル滑り軸受31及びアキシャル滑り軸受40を見ることができる。ラジアル滑り軸受31の軸受間隙は、一方ではモータシャフト25の周囲表面25Aによって、他方ではモータハウジング20の終壁30のブシュ又はスリーブ33内の貫通ボアの表面33Aによって形成され、約1mmの間隙外径を画定するが、間隙外径はまた、これよりも大きくてもよい。一例では、ラジアル滑り軸受31の軸受間隙は、間隙の前端部又はインペラ側だけではなくその全長にわたって2μm以下の間隙幅を有する。好ましくは、間隙幅は、1μm~2μmである。軸受間隙の長さは、1mm~2mm、好ましくは1.3mm~1.7mmの範囲、例えば1.5mmであり得る。ラジアル滑り軸受31の間隙を形成している表面は、0.1μm以下の表面粗さを有する。これらの寸法は、ポンプの種類によって異なり、例として示されるものであり、限定するものではない。
【0033】
[0039] アキシャル滑り軸受40の軸受間隙は、一方では終壁30の軸方向内側の表面41と、それに対向する表面42とによって形成されている。この対向する表面42は、ロータ26の遠位側でモータシャフト25上に着座し、ロータ26と共に回転するセラミックディスク44の一部である。終壁30の軸受間隙表面41内のチャネル43により、パージ流体が、アキシャル滑り軸受40の軸受間隙表面41と軸受間隙表面42との間を通ってラジアル滑り軸受31に流れ、モータハウジング20から遠位に出ることができることを確実にする。
図3に示されるアキシャル滑り軸受40は、通常の滑り軸受である。この表現とは異なり、アキシャル滑り軸受40の軸方向の間隙は非常に小さく、数μmである。
【0034】
[0040] アキシャル滑り軸受40及びラジアル滑り軸受31の代わりに、凸状の軸受面が延びる凹状の軸受胴を有する複合ラジアルアキシャル滑り軸受40も実現することができる。そのような変形形態は、
図4に球面滑り軸受40により示されている。軸受間隙表面41は、球面凹状の設計のものであり、対向する軸受間隙表面42は、対応する球面凸状の設計のものである。チャネル43は、この場合も、終壁30の静止軸受間隙表面41内に位置する。或いは、終壁30の静止軸受間隙表面41は、凸状構成のものであり得、対向する軸受間隙表面42は、凹状構成のものであり得る。表面42、43はまた、球形ではなく円錐形とすることもできる。好ましくは、対応するラジアルアキシャル滑り軸受は、シャフト25の軸方向移動時に半径方向のオフセットを可能にしないように、モータハウジング20の両側に設けられる。複合アキシャルラジアル滑り軸受の利点は、荷重容量が高くなることにある。しかしながら、欠点は、摩擦直径が大きくなることである。
【0035】
[0041] いくつかの実施形態では、血液ポンプは、シースを通して患者の血管に挿入される。いくつかの実施形態では、シースは使用されない。他の実施形態では、血液ポンプは、ガイドワイヤを使用して挿入される。
【0036】
[0042]
図5に示すように、血液ポンプアセンブリ200は、パージデバイス250に流体的に接続された血液ポンプ210を含み得る。血液ポンプアセンブリ200はまた、コントローラ230(例えば、Abiomed,Inc.,Danvers,MAによるAutomated Impella Controller(登録商標))と、ディスプレイ240と、コネクタケーブル260と、プラグ270と、位置変換ユニット280とを含む。図示のように、コントローラ230は、ディスプレイ240を含む。コントローラ230は、血液ポンプ210を監視及び制御する。動作中、パージデバイス250は、カテーテルチューブ217を通して血液ポンプ210にパージ流体を送達し、モータハウジング216内のモータ(図示せず)に血液が入ることを阻止する。いくつかの実施形態では、パージ流体は、ブドウ糖溶液(例えば、25又は50IU/mLのヘパリンを含む5%ブドウ糖水溶液)を含む。コネクタケーブル260は、血液ポンプ210とコントローラ230との間に電気接続を提供する。プラグ270は、カテーテルチューブ217とパージデバイス250とコネクタケーブル260とを接続する。いくつかの実施形態では、プラグ270は、患者を別のコントローラに移す必要がある場合に動作パラメータを格納するためのメモリを含む。位置変換ユニット280は、血液ポンプ210を位置変換するために使用され得る。
【0037】
[0043] 図示のように、パージデバイス250は、リザーバ251と、パージ流体供給ライン252と、パージカセット253と、パージディスク254と、パージチューブ255と、逆止弁256と、圧力リザーバ257と、注入フィルタ258と、サイドアーム259とを含む。リザーバ251は、例えばバッグ又はボトルであり得る。パージ流体は、リザーバ251内に収容される。パージ流体供給ライン252の端部にあるパージ流体スパイクを使用してリザーバ251を穿刺し、リザーバ251内のパージ流体をパージ流体供給ライン252に接続することができる。パージ流体供給ライン252により、パージ流体をリザーバ251からパージカセット253に搬送する。パージチューブ255は、パージ流体をパージカセット253から血液ポンプ210に搬送する。
【0038】
[0044] パージカセット253は、リザーバ251内のパージ流体が血液ポンプ210及びリザーバ251から血液ポンプ210へのパージ流体の流路にどのように送達されるかを制御する。例えば、パージカセット253は、パージ流体の圧力及び/又は流量を制御するための1つ以上のバルブ(例えば、パージ経路ダイバータ)を含み得る。パージ流体を送達するための構成要素を含むことに加え、パージカセット253は、血液と血液ポンプ210のモータとの間に圧力バリアも維持して、血液がモータに入ることを防止する。パージカセット253は、ピストンに取り付けられたラック及びピニオンを含み得る。パージディスク254は、血液ポンプ210におけるパージ流体のパージ圧力を測定するための圧力センサ(例えば、圧力感知ダイアフラム)などの1つ以上の測定デバイスを含む。コントローラ230は、パージカセット253及びパージディスク254に接続されている。パージディスク254は、パージチューブ255内のパージ圧力に基づいてコントローラ230に圧力を伝達する。コントローラ230のセンサがこの圧力を測定し、画面240上に表示することができる。コントローラ230は、ステッピングモータを含み得る。刻み(又はステップ)は、マイクロステップ単位でのステッピングモータの位置を表し、パルスとも呼ばれる。いくつかの実施形態では、対応するパージ流量を計算するために、パージ圧力/パージ流量曲線アルゴリズムが、ステッピングモータのステップ数/分及びパージディスク254による圧力測定値と共に、コントローラ230によって適用される。
【0039】
[0045] 上述のように、パージチューブ255は、パージカセット253を通過して血液ポンプ210に至る流体接続を提供する。いくつかの実施形態では、Yコネクタ及び/又は黄ルアーコネクタも設けられ、連続的な流体路又はパージ流体路を容易にする。Yコネクタは、パージチューブ255を血液ポンプ210に接続するアダプタである。黄ルアーコネクタは、パージチューブ255を血液ポンプ210の逆止弁(黄ルアーロック)に接続する。圧力リザーバ257は、パージ流体交換時に追加の充填容量を提供する。いくつかの実施形態では、圧力リザーバ257は、拡張チャンバによって追加の充填容量を提供する可撓性ゴム製ダイアフラムを含む。注入フィルタ258は、細菌汚染及びカテーテルチューブ217への空気の侵入を防止するのに役立つ。サイドアーム259は、注入フィルタ258とプラグ270との間に流体接続を提供する。
【0040】
[0046] 動作中、コントローラ230は、パージディスク254から測定値を受け取り、ステッピングモータの刻み数を制御し、パージ圧力を制御する。いくつかの実施形態では、動作中、パージカセット253は、コントローラ230内に配置され、血液ポンプ210と接続されている。上記のように、コントローラ230は、パージ圧力を制御及び測定し、パージカセット253及び/又はパージディスク254を通るパージ流量を計算する。コントローラ230は、パージ流体供給も制御し得る。動作中、サイドアーム259を通ってパージデバイス250を出た後、パージ流体は、カテーテルチューブ217及びプラグ270内のパージ管腔(図示せず)を通して導かれる。カテーテルチューブ217、コネクタケーブル260、及びプラグ270内のセンサケーブル(図示せず)は、パージディスク254とコントローラ230との間に電気的な接続を提供する。カテーテルチューブ217、コネクタケーブル260、及びプラグ270内のモータケーブル(図示せず)は、モータハウジング216内のモータとコントローラ230との間に電気的な接続を提供する。動作中、コントローラ230は、センサケーブルを介してパージディスク254から測定値を受け取り、モータケーブルを介してモータハウジング216内のモータに供給される電力を制御する。モータハウジング216内のモータに供給される電力を制御することにより、コントローラ230は、モータハウジング216内のモータの速度を制御することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ230は、空気がパージチューブ255に入るのを防止するための安全機能を含む。コントローラ230は、ライン内に空気があることを示すモータの電流の低下を監視するための回路を含んでもよい。コントローラ230は、ラインへの空気の導入を生じさせる可能性のあるパージチューブ255の切断又は破損をオペレータに通知するための警告音、光、又はインジケータを含んでもよい。
【0041】
[0047] 血液ポンプアセンブリ200及びその構成要素の1つ以上に様々な変更を施すことができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるAbiomed,Impella(登録商標)Ventricular Support Systems for Use During Cardiogenic Shock and High-Risk PCI:Instructions for Use and Clinical Reference Manual,Document No.0042-9028 rG(Apr.2020)に詳述されるように、血液ポンプアセンブリ200は、Impella 2.5(登録商標)、Impella LD(登録商標)、及びImpella CP(登録商標)カテーテルなどの他のタイプの血液ポンプに対応するように変更することができる。別の例として、1つ以上の追加の測定デバイスが血液ポンプ210に追加され得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2020/0288988(A1)号に記載されるように、モータハウジング216内のモータの回転速度を示す信号を発生させるための信号発生器が、血液ポンプ210に追加されてもよい。別の例として、左心室血圧を測定するように構成された、圧力センサである第2の測定デバイスが、入口領域212の近辺で血液ポンプ210に追加されてもよい。そのような実施形態では、追加のセンサケーブルが、1つ以上の追加の測定デバイスとコントローラ230との間に電気的な接続を提供するために、カテーテルチューブ217、コネクタケーブル260、及びプラグ270内に配置され得る。更に別の例として、血液ポンプアセンブリ200の1つ以上の構成要素は、分離されていてもよい。例えば、ディスプレイ240は、コントローラ230と(例えば、無線で、又は1つ以上の電気ケーブルを介して)通信する別のデバイスに組み込まれてもよい。
【0042】
[0048] ディスプレイ240は、血液ポンプアセンブリ200の使用者に有用な情報を提供することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2020/0376183(A1)号は、血液ポンプアセンブリの特徴(例えば、血液ポンプタイプ、シリアル番号、ソフトウェアバージョン等)だけでなく、血液ポンプアセンブリの動作(例えば、現在の血液ポンプ速度(性能)設定、血液ポンプ流量測定値、パージデバイス測定値、状態インジケータ等)にも関連し得る、表示することができるいくつかの種類の情報を記載及び図示している。この情報の一部は、上述のパージディスク254から取得され得る。ディスプレイ240はまた、使用者に通知を提供することができる。例えば、通知は、アラートとして機能することができ、アラートの原因を説明する文を含み得る。いくつかの実施形態では、ディスプレイ240は、タッチスクリーンであってもよく、使用者は、ディスプレイ240上のボタンラベルをタップすることにより画面間で切り替えることができる。いくつかの実施形態では、使用者は、画面間で切り替えるために、マウス又はキーボードなどの別個の入力デバイスを使用してもよい。
【0043】
[0049] コントローラ230などの複数の医療デバイスコントローラを監視及び/又は制御するためのシステムが、米国特許出願公開第2020/0376183(A1)号に記載及び図示されている。システムは、医療デバイスコントローラ、コンピュータネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、リモートリンクモジュール、ルータ、無線アクセスポイント、基地局、サーバ、データストア、OCRエンジン、及び/又は監視ステーションを含み得る。コンピュータネットワークは、有線及び/又は無線セグメント及び/又はネットワークを含んでもよい。医療デバイスコントローラは、様々な既知の技術を使用してコンピュータネットワークに接続することができる。例えば、医療デバイスコントローラは、コンピュータネットワークに直接、リモートリンクモジュールを介して、又はLAN、ルータ、及び無線アクセスポイントを介して接続することができる。サーバは、コンピュータネットワークを介して医療デバイスコントローラにステータス情報を要求するように構成され得る。いくつかの実施形態では、サーバは、ステータス情報を自動的に及び/又は繰り返し要求する。サーバはまた、受け取ったステータス情報を処理するように構成され得る。
【0044】
[0050] データストアは、未処理及び/又は処理済みのステータス情報を格納するように構成され得る。データストアはまた、要求に応じて、未処理及び/又は処理済みのステータス情報の少なくとも一部を監視ステーションに提供するように構成され得る。監視ステーションは、例えば、電話、タブレット及び/又はコンピュータであってもよい。いくつかの実施形態では、監視ステーションは、未処理及び/又は処理済みのステータス情報の少なくとも一部を対応するディスプレイ上に確実に及び遠隔的に表示するためにクラウドベースの技術を用いてもよい。例えば、監視ステーションは、未処理及び/又は処理済みのステータス情報の少なくとも一部を確実に及び遠隔的に表示するために、Abiomed,Inc.,Danvers,MAのImpella Connect(登録商標)などのオンラインデバイス管理システムを使用してもよい。いくつかの実施形態では、サーバ及び/又は監視ステーションはまた、システム内の1つ以上の医療デバイスコントローラにコマンドを遠隔的に送信するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、システム内の1つ以上の医療デバイスコントローラは、1つ以上の計算をサーバ及び/又は監視ステーションにオフロードし得る。例えば、コントローラ230がシステムに追加されている場合、コントローラ230は、複雑な計算(例えば、機械学習アルゴリズム)をサーバ及び/又は監視ステーションにオフロードし得る。待ち時間を削減するために、コントローラ230は、そのような計算を同じLAN上の別のコンピューティングデバイスにもオフロードしてよい。
【0045】
[0051] 動作中、血液ポンプは、パージ流体源(パージ流体リザーバなど)に取り付けられており、流体は、パージ流体ラインを通ってモータハウジングに入る。その後、パージ流体は、アキシャル滑り軸受を通って流れ、更に、遠位側ラジアル軸受を通って流れる。アキシャル滑り軸受において、パージ流体は、軸受間隙内の潤滑膜を形成する。パージ流体がモータハウジングを通って流れる際の圧力は、しかしながら、軸受間隙の幅に悪影響を及ぼす。具体的には、パージ圧力が高いほど、必要とする軸受間隙幅が小さくなり、摺動面間の潤滑膜が薄くなる。潤滑膜が薄くなるほど、摩擦力に打ち勝つために電動モータを駆動するのに必要なモータ電流が大きくなる。これにより、血液ポンプの制御が複雑になる。なぜなら、電流搬送量は、通常、モータ電流及び回転速度(両方とも既知の量)のみに基づいて、格納された特性曲線によって確立されるからである。パージ圧力もモータ電流に影響を及ぼす場合、この要素も考慮に入れなければならない。同じ血液ポンプタイプを、300mmHg~1400mmHgの異なるパージ圧力を有する多種多様な用途で動作させることができることを鑑みると、モータ電流がパージ圧力に依存することを避けることが重要である。
【0046】
[0052] そのような依存は、水の粘度(37℃でη=0.75mPas)よりも大幅に高い粘度を有するパージ流体が選択される場合に避けられる。ブドウ糖を含むパージ流体では、パージ流体の粘度は、パージ流体中のブドウ糖の濃度によって制御される。ブドウ糖水溶液は、様々な理由から患者に広く投与されている。水溶液中のブドウ糖の量は、約5%~約50%である。一実施形態では、パージ流体は、5%ブドウ糖水溶液(即ち、278mmol/リットル)を含む。粘度は、ブドウ糖の濃度がより高い水溶液(例えば、D20W、D40W等)を含むことによって増加させることができる。高粘度のパージ流体が使用される場合、流体膜は、高い圧力でも維持され、したがって、アキシャル滑り軸受の摩擦はパージ圧力と無関係になる。いくつかの実施形態では、パージ流体が37℃で約1.2mPas以上の粘度を有する場合、アキシャル滑り軸受は、単純な滑り軸受として構成することができ、流体力学的な滑り軸受として構成される必要はない。したがって、ヘパリンを含まない又はより少ないヘパリンを含むパージ流体が考慮される場合、そのようなパージ流体の粘度をなお考慮する必要がある。
【0047】
[0053] ポンプインペラは、ポンプを通過する血液にせん断応力を誘発させる。せん断応力は、インペラとセラミック軸受の外面との間の間隙、及びインペラシャフトと軸受(例えば、セラミック軸受、玉軸受等)の内輪との間の間隙に主に誘発される。血液が受けるせん断応力のせいで、血液タンパク質は血液がポンプを通過する際に変性し、重合する。変性し、凝集したタンバク質の沈着は、凝固カスケードの活性化を引き起こし、これが更に、ポンプ機構(例えば、インペラ、流出ケージ等)における生物的沈着物の蓄積を引き起こす。生物的沈着物の蓄積は、ポンプの動作に必要なモータ電流を増加させる。増加したモータ電流又は生物的沈着物は、ポンプの性能を低下させる可能性がある、又はポンプ停止を引き起こす可能性さえあり得る。
【0048】
[0054] 上記のように、ポンプを通って流れる血液に対するせん断の悪影響を緩和するために、又はパージ流体経路内に血液残渣が集まることに起因する生物的沈着物の蓄積を緩和するために、パージされる血液ポンプ内で使用されるパージ流体は、典型的には、5%ブドウ糖(D5W)中に抗凝固剤ヘパリン(例えば、50単位/mL)を含む。ブドウ糖濃度は、パージ流体の粘度を決定し、したがって、パージ流量に影響する。パージ流体のブドウ糖濃度が低いほど、粘性が低くなり、パージシステム内を低い圧力でより速く流れる。パージ流体のブドウ糖濃度が高いほど(より粘性が高い)、パージ流量が低くなり、必要とするパージ圧力が大きくなる。ブドウ糖濃度を20%から5%に低下させると、パージ流量は約30%~40%増加する。
【0049】
[0055] パージ流量は、
図8に示されるように、典型的には、約2mL/時~約30mL/時の範囲である。これは、約1,000mmHg~約300mmHgのパージ圧力をもたらす。本明細書中に記載される血液ポンプ、例えば、Impella CP(登録商標)、Impella 2.5(登録商標)、Impella 5.0(登録商標)、Impella LD(登録商標)、及びImpella RP(登録商標)の典型的なパージ流量は、約5mL/時~約20mL/時である。これらのポンプは全て、同様のパージ動作範囲につながる同様の許容差を有する玉軸受ロータ/ステータシステムを有する。Impella 5.5(登録商標)の典型的なパージ流量は、約2mL/時~約10mL/時である。この低い流量は、患者に送達されるヘパリンの量を低減又は排除するために低減されたパージ間隙(半径方向の)を有して設計されたセラミック軸受ロータ/ステータシステムを配置することによる。外科の患者に関して、外科医は、術後最初の数日間はヘパリンを投与しないことの方を好む。したがって、これらの患者については、ヘパリンを含まないパージ流体が好ましい。
【0050】
[0056] 2つの重要領域、即ち1)ロータシャフトとスリーブ軸受との間の間隙、及び2)スリーブ軸受とインペラとの間の間隙に残渣が入らないようにするために、一定のパージ流が使用される。拡散及び流れの共混合により、一部の血液成分はこれらの間隙に到達する可能性がある。パージ溶液中のヘパリンは、血液成分の侵入、吸着、沈着、及び凝固に対する保護を向上させる。パージ溶液中のヘパリンはまた、少なくとも以下に述べる理由から、軸受の動作寿命を向上させる。
【0051】
[0057] 具体的には、パージ路の周囲の表面上へのヘパリンの連続的及び動的な物理的吸着(物理吸着)により、血液成分の吸着が減少し、したがって、軸受及び他のポンプ構成要素に対する血液残渣の生物的沈着を防止する。また、ヘパリンは、弱酸性のD5W溶液を部分的に中和し、前述の間隙内の生理学的pHの維持を助け、したがって、血液タンパク質の変性のリスクを低下させる。インペラの下及びスリーブ軸受間隙の内側の両方におけるヘパリンの局所的に高い濃度もまた、これらの領域における血液凝固のリスクを低下させる可能性がある。ヘパリンの添加により、パージ流体の導電性が上昇し、したがって、軸受の動作寿命に対する静電気放電の負の影響が低減される。
【0052】
[0058] したがって、ヘパリンは、せん断により誘発される生物的物質又は生物的沈着物の形成、及び結果として生じる、高せん断領域におけるインペラシャフトと軸受の内輪との間などのポンプ内の生物学的物質の望ましくない沈着/蓄積を防止するためにパージ流体中に提供される。しかしながら、上記のように、パージ流体へのヘパリンの添加に関連する課題がある。具体的には、ヘパリンは、a)系統的な抗凝固剤の管理を複雑にする(即ち、パージ流体を介して患者が受けるヘパリンの用量を考慮する必要がある)、b)ヘパリンは、抗凝固剤として、患者の出血の傾向を増加させる、c)ヘパリンは、特に外科用デバイスが患者に使用される場合に、術後のそのような患者の出血の制御をより困難にする、及びd)ヘパリンは、ヘパリン起因性血小板減少症の患者に使用することはできない。
【0053】
[0059] パージ流体がヘパリンを有しない又は低濃度のヘパリンを有する場合にポンプ性能の課題を緩和するために、異なるパージ流体/パージ流体添加剤の使用が以前に提案されている。例えば、参照により本明細書中に組み込まれる2020年4月29日に出願された米国特許仮出願第63/017,445号は、pH調整及び緩衝剤を含むパージ流体を使用することを提案している。適切なpH調整及び緩衝剤の非限定的な例としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はピルビン酸ナトリウムが挙げられる。いくつかの実施形態では、pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウムである。一例では、炭酸水素ナトリウムのpHは、約7.4~約9.1である。他の範囲には、約7.5~約9.1、7.6~約9.1、7.7~約9.1、7.8~約9.1、7.9~約9.1、8.0~約9.1、8.1~約9.1、8.2~約9.1、8.3~約9.1、8.4~約9.1、8.5~約9.1、8.6~約9.1、8.7~約9.1、8.8~約9.1、8.9~約9.1、及び9.0~約9.1を含むが、これらに限定されない。
【0054】
[0060] pH調整及び緩衝剤は、ブドウ糖を単独で又は低減された量のヘパリンと組み合わせて含むパージ流体に添加される。ブドウ糖水溶液中のpH調整及び緩衝剤の濃度は、上記に規定した範囲内のpHを有する溶液を提供するように選択される。一実施形態では、重炭酸塩を含む溶液が、5%ブドウ糖水溶液(D5W)、20%ブドウ糖水溶液(D20W)、40%ブドウ糖水溶液(D40W)等などのブドウ糖溶液と混合される。ブドウ糖溶液と重炭酸塩とを混合した溶液中の重炭酸塩の量は、約1.5ミリグラム当量/リットル(mEq/L)~約50mEq/Lである。いくつかの実施形態では、パージ流体溶液は、上述のpH調整及び緩衝剤と共に、低減された量のヘパリンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヘパリンの約12.5単位/mL以下の低減された濃度が企図される。いくつかの実施形態では、約6.25単位/mL以下の低減された濃度も企図される。いくつかの実施形態では、約1単位/mL~約6.25単位/mLの範囲の低減された濃度も企図される。
【0055】
[0061] 患者が、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)によりヘパリン不耐性ではあるが、pH調整及び緩衝剤と水性ブドウ糖とを組み合わせたパージ溶液に抗凝固剤を添加する必要性が依然としてある場合、直接トロンビン阻害剤(DTI)が溶液に添加され得る。パージ溶液にDTIが添加される場合、パージ溶液中のDTIの濃度は、約0.01mg/kg/時~約0.012mg/kg/時の用量当量であるべきである。用量当量は、約40~50秒の部分トロンボプラスチン試験(PTT)時間を提供するように選択される。適切なDTIの非限定的な例としては、例えば、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、ビバリルジン、又はそれらの混合物が挙げられる。パージ溶液中のDTIの濃度は、約20mg/500mL~約60mg/500mLである。
【0056】
[0062] ポンプ内の生物学的物質の望ましくない沈着/蓄積によるポンプ性能の課題を緩和するために以前に提案された別の解決策には、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含む補助パージ流体の使用を含む。例えば、Sorensen,E.N.et al.,“Use of Tissue Plasminogen Activator to Resolve High Purge System Pressure in a Catheter-based Ventricular-assist Device,“The J.of Heart&Lung Transplantation,33(4):457-8(Apr. 2014)(以後、「Sorensen」);Oetken H.et al.,“Use of Tissue Plasminogen Activator Via Purge System in a Catheter-based Ventricular Assist Device,” Proceedings of the 48th Critical Care Congress,San Diego,CA(Feb.17-20,2019),Critical Care Medicine, Abstract No. 159(Jan.2019)(以下、「Oetken」)を参照されたい。tPAは、血栓の分解に関与するタンバク質である。tPAは、内皮細胞、即ち血管を覆う細胞に存在するセリンプロテアーゼである。tPAは、酵素として、血栓分解を担う主要酵素であるプラスミンへのプラスミノーゲンの変換を触媒する。Sorensenは、血液ポンプが左心室に挿入された患者に関して、パージ圧力が700mmHg超に上昇したとき、2mgのtPAを50mLの生理食塩水で希釈したものを、適時、ヘパリン添加パージ溶液の代わりに用いたことを開示している。これは、高いパージ圧力の解決に役立った。Oetkenは、血液ポンプが心臓に挿入された患者に関して、パージ圧力が900mmHg超に上昇し、パージ流量が1~3mL/時に減少したとき、4mgのtPAを100mLの5%ブドウ糖滅菌水で希釈したものを、適時、ヘパリン添加パージ溶液の代わりに用いたことを開示している。これにより、高いパージ圧力及び低いパージ流量の解決に役立った。Sorensenの著者らは、tPAが、血栓中のフィブリンに結合し、プラスミノーゲンをプラスミンに変換することによって局所的な線維素溶解を開始すると考えている。Sorensen及びOetkenにおけるtPAの適時使用に対する代替案は、挿入された血液ポンプを新たなものと交換するための緊急手術であったであろう。
【0057】
[0063] Sorensen及びOetkenは、ポンプ内での生物学的物質の蓄積により、正常値と比較してパージ流量が減少する又はパージ圧力が上昇する場合、tPAの投与が課題の解決に役立つ可能性があることを実証している。しかしながら、tPAは、それが有効となるためには、適時投与される必要がある。現在、血液ポンプの使用者は、パージ流量及び/又はパージ圧力を手動で監視しなければならず、異常と思われる場合には、使用者は、tPAをいつ投与するかについての判断を下さなければならない。しかしながら、課題は、tPAをいつ送達するかを決定することである。パージ圧力が高すぎる場合にtPAの投与が遅れると、生物学的物質の蓄積部位又は血栓に送達されるtPAの濃度が不十分であるために、パージ回復の可能性が低下する。使用者が最初にtPAを入手し、その後、パージ流体を、tPAを含むパージ流体と交換するという現在の手順も、tPAの投与の望ましくない遅延につながる可能性がある。
【0058】
[0064] 本開示は、制御されたパージ回復を、適時に、便利な手法で可能にする方法及び血液ポンプアセンブリを提供する。本開示の一態様は、生物的物質の蓄積に起因するポンプモータの潜在的な機械的課題を示す可能性のある特定のパージフローパラメータを監視し、tPAの投与を適時特定して、パージ回復の可能性を最大化する自動化プロセスに関する。本開示の別の態様は、tPAを遅延なく簡便に投与するための血液ポンプアセンブリに関する。
【0059】
[0065] 血液ポンプアセンブリ300は、パージデバイス350に流体的に接続される血液ポンプ210を含み得る。血液ポンプアセンブリ300はまた、コントローラ230(例えば、Abiomed, Inc., Danvers, MAのAutomated Impella Controller(登録商標))と、ディスプレイ240と、コネクタケーブル260と、プラグ270と、位置変換ユニット280とを含み、これらは全て、
図5に示される血液ポンプアセンブリ200に置換されてもよい。
【0060】
[0066] パージデバイス350は、パージ流体リザーバ351と、パージ流体供給ライン352と、パージカセット353と、パージディスク354と、パージチューブ355と、逆止弁356とを含み、これらは全て、
図5に示されるパージデバイス250に置換されてもよい。
図6及び
図7は、本開示の一実施形態の例示的なパージカセット353を示す。しかしながら、パージカセット353はまた、補助パージ流体リザーバ380と、補助パージ流体供給ライン385と、第1のパージ経路ダイバータ371と、第2のパージ経路ダイバータ372とを含む。リザーバ351(
図5のリザーバ251に類似)は、例えば、バッグ又はボトルであってもよい。パージ流体は、リザーバ251に収容されている。パージ流体供給ライン352は、リザーバ351とパージカセット353との間に流体接続を提供する。いくつかの実施形態では、ピストン及びシリンダ374を使用して、パージ流体の流れを、リザーバ351からパージ流体供給ライン352を通してパージカセット353へと駆動する。パージカセット353は、リザーバ351内のパージ流体が血液ポンプ210及びリザーバ351から血液ポンプ210までのパージ流体の流路にどのように供給されるかを制御する。例えば、パージカセット353は、図示のように、パージ流体の圧力及び/又は流量を制御するための第1のパージ経路ダイバータ371及び第2のパージ経路ダイバータ372(例えば、1つ以上のバルブ)を含む。
図5を再度参照すると、パージディスク254は、パージ圧力を測定するための圧力センサ(例えば、圧力感知ダイアフラム)などの1つ以上の測定デバイスを含む。コントローラ230は、パージカセット353とパージディスク254とに接続されている。パージカセット353は、ピストンに取り付けられたラック及びピニオンであるアクチュエータを含み得る。パージディスク254は、パージチューブ255内のパージ圧力に基づいてコントローラ230に圧力を送信する。コントローラ230のセンサがこの圧力を測定し、画面240上に表示することができる。コントローラ230は、ステッピングモータを含み得る。刻み(又はステップ)は、マイクロステップ単位でのステッピングモータの位置を表し、パルスとも呼ばれる。いくつかの実施形態では、コントローラは、対応するパージ流量を計算するために、パージ圧力/パージ流量曲線アルゴリズムを、ステッピングモータのステップ数/分及びパージディスク254による圧力測定と共にデプロイする。
【0061】
[0067] 図示のように、パージチューブ355は、パージカセット353を通過して血液ポンプ210に至る流体接続を提供する。パージ流体は、チューブ373を通って血液ポンプ210に入る。いくつかの実施形態では、Yコネクタ及び/又は黄ルアーコネクタも設けられている。Yコネクタは、パージチューブ255を血液ポンプ210に接続するアダプタである。黄ルアーコネクタは、パージチューブ255を血液ポンプ210の逆止弁(黄ルアーロック)に接続する。圧力リザーバ257は、パージ流体交換時に追加の充填容量を提供する。いくつかの実施形態では、圧力リザーバ257は、拡張チャンバによって追加の充填容量を提供する可撓性ゴム製ダイアフラムを含む。注入フィルタ258は、細菌汚染及びカテーテルチューブ217への空気の侵入を防止するのに役立つ。サイドアーム259は、注入フィルタ258とプラグ270との間に流体接続を提供する。
【0062】
[0068] 動作中、
図5に関して上記したように、コントローラ230は、パージディスク254から測定値を受け取り、ステッピングモータの刻み数を制御し、パージ圧力を制御する。いくつかの実施形態では、動作中、パージカセット253は、コントローラ230内に配置され、血液ポンプ210と接続されている。上記のように、コントローラ230は、パージ圧力を制御及び測定し、パージカセット253及び/又はパージディスク254を通るパージ流量を計算する。コントローラ230は、パージ流体供給も制御し得る。動作中、サイドアーム259を通ってパージデバイス350を出た後、パージ流体は、カテーテルチューブ217及びプラグ270内のパージ管腔(図示せず)を通して導かれる。カテーテルチューブ217、コネクタケーブル260、及びプラグ270内のセンサケーブル(図示せず)は、パージディスク254とコントローラ230との間に電気的な接続を提供する。カテーテルチューブ217、コネクタケーブル260、及びプラグ270内のモータケーブル(図示せず)は、モータハウジング216内のモータとコントローラ230との間に電気的な接続を提供する。動作中、コントローラ230は、センサケーブルを介してパージディスク254から測定値を受け取り、モータケーブルを介してモータハウジング216内のモータに供給される電力を制御する。
【0063】
[0069] 血液ポンプアセンブリの動作前に、所定の閾値パージフローパラメータが決定され、コントローラ230にプログラムされる。所定の閾値パージフローパラメータは、この値が満たされると修復プロトコルが特定されるようなものである。いくつかの実施形態では、所定の閾値パージフローパラメータは、血液ポンプ製造者によって設定される。いくつかの実施形態では、所定の閾値パージフローパラメータは、臨床医などの血液ポンプアセンブリの使用者によって設定される。いくつかの実施形態では、所定の閾値パージフローパラメータは、血液ポンプ製造者によって設定され、血液ポンプアセンブリの使用者は、血液ポンプの動作前に、所定の閾値パージフローパラメータの値を承認又は変更するように促される。
【0064】
[0070] 所定の閾値パージフローパラメータは、所定の閾値パージ流量及び/又は所定の閾値パージ圧力であり得る。いくつかの実施形態では、所定の閾値パージフローパラメータは、所定の閾値パージ流量である。血液ポンプの動作中、血液ポンプにおける正常パージ流量(即ち、血液ポンプでの生物学的物質の蓄積によるポンプ性能の問題がないとき)は、使用される血液ポンプのタイプに応じて、約2mL/時~約30mL/時の範囲である。例えば、Impella 5.5(登録商標)(Abiomed,Inc.,Danvers,MA)の場合、血液ポンプにおける正常パージ流量は、典型的には、約2mL/時~約10mL/時の範囲である。しかしながら、血液ポンプにおける生物学的物質の蓄積がある場合、血液ポンプにおけるパージ流量は減少する。一例では、所定の閾値パージ流量は、24時間以内で少なくとも30%の、血液ポンプにおけるパージ流量の減少である。24時間以内で、少なくとも35%、少なくとも40%、又は少なくとも45%の、血液ポンプにおけるパージ流量の減少を含むが、これらに限定されない他の例が企図される。更に他の例では、血液ポンプにおける所定の閾値パージ流量は、24時間以内で2mL/時未満への血液ポンプにおけるパージ流量の減少である。6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、又は24時間以内で3mL/時未満への血液ポンプにおけるパージ流量の減少を含むが、これらに限定されない他の例が企図される。
【0065】
[0071] いくつかの実施形態では、所定の閾値パージフローパラメータは、所定の閾値パージ圧力である。血液ポンプの動作中、血液ポンプにおける正常パージ圧力(即ち、血液ポンプでの生物学的物質の蓄積によるポンプ性能の問題がないとき)は、典型的には、約300mmHg~約1,000mmHgの範囲である。しかしながら、血液ポンプにおける生物学的物質の蓄積がある場合、血液ポンプにおけるパージ圧力は増加する。一例では、所定の閾値パージ圧力は、24時間以内で少なくとも30%の、血液ポンプにおけるパージ圧力の増加である。24時間以内で、少なくとも35%、少なくとも40%、又は少なくとも45%の、血液ポンプにおけるパージ圧力の増加を含むが、これらに限定されない他の例が企図される。更に他の例では、血液ポンプにおける所定の閾値パージ圧力は、24時間以内で700mmHg超への、血液ポンプにおけるパージ圧力の増加である。6時間、8時間、12時間、16時間、又は18時間以内で700mmHg超への、血液ポンプにおけるパージ圧力の増加を含むが、これらに限定されない他の例が企図される。
【0066】
[0072]
図6は、血液ポンプにおける生物学的物質の蓄積のない、パージデバイスを通って血液ポンプに至るパージ流体の流れの方向を示す。上記のように、コントローラ230は、パージディスク254から、パージ圧力及び/又はパージ流量などのパージフローパラメータを受け取り、計算し、監視する。コントローラ230は、パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータに達したことを検出すると、臨床医などの血液ポンプアセンブリの使用者に対して修復プロトコルを特定する。
図8に示されるように、パージ流アラームは、2ml/hr以下又は30ml/hr超に接近する流量においてであり得る。流量が30ml/hr超えた場合、ポンプは遮断される。いくつかの実施形態では、血液ポンプ210に関連付けられたディスプレイ(例えば、ディスプレイ140)は、臨床医が適切に応答することができるように、修復プロトコルを表示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ディスプレイは、アラートを示し得、「tPAの適用を考慮」などのメッセージを任意選択的に含んでもよい。更に別の例として、メッセージは、説明文などの異なるタイプの情報に替えてもよい。例えば、通知がアラートとして機能し、アラートの原因を説明する文を含んでもよい。上記のように、いくつかの実施形態では、監視ステーションは、対応するディスプレイ(例えば、ディスプレイ140)上に推奨事項の少なくとも一部を確実に及び遠隔的に表示するために、クラウドベースの技術を用いてもよい。例えば、監視ステーションは、推奨事項の少なくとも一部を確実に及び遠隔的に表示するために、Abiomed,Inc.,Danvers,MAのImpella Connect(登録商標)などのオンラインデバイス管理システムを使用してもよい。
【0067】
[0073] 修復プロトコルメッセージを受け取ると、使用者は、修復プロトコルを開始するかどうかを決定する。いくつかの実施形態では、使用者は、パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータに達する原因となった可能性のある、ライン圧力又は生物学的物質の蓄積を引き起こした可能性のある血液ポンプ及びパージデバイスの1つ以上のチューブにキンクがあるかどうかを確認するために点検することができる。一実施形態では、使用者は、修復プロトコルを開始する前に点検を実施してもよい。血液ポンプ及びパージデバイスの1つ以上のチューブにキンクがないことが検出されると、使用者は、修復プロトコルを開始してもよい。例えば、使用者は、修復プロトコルを開始するディスプレイ(例えば、ディスプレイ140)上のボタンを押してもよい。
【0068】
[0074] 修復プロトコルは、パージの課題の解決を助け、血液ポンプの制御されたパージを可能にする。コントローラ230は、パージチューブ355を通って血液ポンプ201に至るパージ流体の流れを停止し、パージ流体の流れを、補助リザーバ380を介して血液ポンプ210に分流させる。コントローラ230は、第1のパージ経路ダイバータ371を動作させて、パージカセット353内のパージ流体(例えば、ブドウ糖溶液)の流れを補助パージライン385及び補助リザーバ380(ここでパージ流体が補助パージ添加剤(例えば、tPA)と組み合わされて補助パージ流体が形成される)に分流させることによって分流ステップを実施する。補助リザーバ380に入るパージ流体の量は、血液ポンプ201に搬送されるtPAの量が調整されるように制御され得る。補助パージ流体(例えばtPAを搬送する)は、補助リザーバ380から、補助パージ流体供給ライン385を通り、第2のパージ経路ダイバータ372及びチューブ373を経由して血液ポンプ210に流れる。いくつかの実施形態では、血液ポンプ210は、モータ部分及びポンプ部分を含み、パージ流体及び補助パージ流体は、モータ部分に供給される。いくつかの実施形態では、補助パージ流体は、血液ポンプに供給される前に脱気される。
図7は、上述の補助パージ流体流路を示し、これは、使用者が修復プロトコルに進むと決定した場合にのみ実施される。
【0069】
[0075] いくつかの実施形態では、補助パージ流体は、tPA及びブドウ糖を含む。tPAは、パージ流体と混合される前に凍結乾燥させることが好ましい。凍結乾燥tPAは、その活性をかなり長時間にわたって保持するため、パージカセット353は、製造直後に使用される必要はない。いくつかの実施形態では、ブドウ糖溶液は、パージ流体供給ライン352を通過して補助パージ流体供給ライン385に至り、補助リザーバ380に至って、そこで凍結乾燥tPAを溶解する。例えば、4mgのtPAを100mLの5%ブドウ糖水溶液に溶解させることができる。補助パージ流体中のtPAの濃度は、2mg/50mL~4mg/50mLである。いくつかの実施形態では、補助パージ流体中のtPAの濃度は、2mg/50mLである。補助パージ流体の濃度の上限も、血液ポンプの動作前に設定することができる。例えば、コントローラは、物質の量及び補助リザーバの容積によって決定される補助パージ流体の濃度を監視するようにプログラムされ得る。いくつかの実施形態では、補助パージ流体の濃度が所定の閾値に達すると、コントローラは、血液ポンプへの補助パージ流体の流れを自動的に停止し得る、又は血液ポンプへの補助パージ流体の流れを停止させる修復を使用者に対して特定し得る。
【0070】
[0076] パージ流体と正に同様に、コントローラ230は、パージディスク254から、血液ポンプにおける補助パージ流体の圧力及び/又は流量などの補助パージフローパラメータを受け取り、計算し、監視する。補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを下回る(パージ流量の場合)又は上回る(パージ圧力の場合)とコントローラ230が判定すると、いくつかの実施形態では、コントローラ230は、補助リザーバ380から血液ポンプ210への補助パージ流体の流れを自動的に停止し、パージカセット353から血液ポンプ210への通常のパージ流体の流れ(即ち、
図6に示され、上述した、修復プロトコルが実施される前のパージ流体路)を再開する。いくつかの他の実施形態では、血液ポンプ210への補助パージ流体の流れを自動的に停止する代わりに、コントローラ230は、血液ポンプ210への補助パージ流体の流れの停止を開始する推奨プロトコルを使用者に対して特定する。使用者が推奨事項に進むことを決定した場合、コントローラ230は、血液ポンプ210への補助パージ流体の流れを停止し、パージカセット353から血液ポンプ210への通常のパージ流体の流れを再開する。
【0071】
[0077] コントローラ230は、第1のパージ経路ダイバータ371及び第2のパージ経路ダイバータ372を動作させ、パージチューブ355を通るパージ流体の流れを回復することにより、パージカセット353から血液ポンプ210への通常のパージ流体の流れを再開する。血液ポンプ210へのパージ流体の流れの方向は、
図6に示す通りである。いくつかの実施形態では、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを上回るとコントローラ230が判定すると、補助パージ流体の流れは停止され、通常のパージ流体の流れは再開される。いくつかの実施形態では、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを所定量だけ、例えば24時間で少なくとも30%又は12時間で少なくとも20%上回るとコントローラ230が判定すると、補助パージ流体の流れは停止され、通常のパージ流体の流れは再開される。
【0072】
[0078] 他の実施形態では、血液ポンプ210における補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを下回ったとコントローラ230が判定すると、補助パージ流体の流れは停止され、パージ流体の流れは再開される。いくつかの実施形態では、血液ポンプ210における補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを所定量だけ、例えば24時間で少なくとも30%又は12時間で少なくとも20%下回ったとコントローラ230が判定すると、補助パージ流体の流れは停止され、パージ流体の流れは再開される。上述したように、流量が例えば30ml/hrの閾値を上回る場合、ポンプが問題の原因であると考えられ、ポンプは交換され得る。
【0073】
[0079] いくつかの実施形態では、パージ流体は、水性ブドウ糖を含む。いくつかの実施形態では、パージ流体は、抗凝固剤、pH調整及び緩衝剤、又はそれらの組み合わせを更に含む。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ワルファリン、クマリン、ヘパリン、又は直接トロンビン阻害剤である。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリンである。いくつかの実施形態では、直接トロンビン阻害剤は、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、ビバリルジン、又はそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はピルビン酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウムである。
【0074】
[0080] いくつかの実施形態では、パージ流体はまた、ヘパリンを含まない、又は低減された量のヘパリンを含む。パージ流体中のヘパリンの量は、約0~約12.5単位/ミリリットルである。いくつかの実施形態では、パージ流体中のヘパリンの量は、約0~約6.25単位/ミリリットルである。いくつかの実施形態では、パージ流体中のヘパリンの量は、約1単位/ミリリットル~約6.25単位/ミリリットルである。
【0075】
[0081] 上記のように、パージ流体中にヘパリンが存在しない(例えば、5%ブドウ糖のみ又はDTIを含む5%ブドウ糖等)又はパージ流体中に低減された濃度のヘパリンが存在する場合、血液ポンプのモータ内に生物学的物質が蓄積する可能性が高まり、パージ圧力及びモータ電流が増加する一方で、パージ流量が減少し、血液ポンプの機械的破損を生じさせる。本開示の方法及び血液ポンプアセンブリは、血液ポンプの動作中にパージ流量及び/又はパージ圧力などのパージフローパラメータを監視し、所定の閾値パージフローパラメータが満たされている場合に使用者に対して修復プロトコルを特定することによって、制御されたパージ回復を可能にする。tPAを含むパージ流体などの補助用パージ流体の投与により、血液ポンプのモータ内の生物学的物質の蓄積を溶解し、したがって高パージ圧力及び/又は低パージ流量を解決して、ポンプを意図したように動作させることができる。上記のように、tPAの投与のタイミングが、患部に必要な濃度で適時到達することによってそれが有効となるためには重要である。tPAによる介入が必要となり得る場合の条件の監視とそのような介入を開始するための推奨事項の特定の両方を自動化することにより、臨床医などの使用者に、適時に介入し、問題を適切に緩和する機会が与えられる。更に、本明細書に開示されるパージデバイスの変更により、パージ流体を、過度の遅延なく、tPAを含むパージ流体などの補助用パージ流体と入れ替える迅速で簡単な手法を使用者に提供する。
【0076】
[0082] 一態様では、i)パージデバイスと流体連通する血液ポンプを用意するステップであって、パージデバイスは、血液ポンプに流体的に接続され、パージ流体を収容するように構成されたパージリザーバと、血液ポンプに流体的に接続され、補助パージ流体を収容するように構成された補助リザーバとを含む、血液ポンプを用意するステップと、ii)血液ポンプの少なくとも一部分を患者に挿入するステップと、iii)血液ポンプを動作させるステップと、iv)パージ流体の流れをパージリザーバから血液ポンプに供給するステップと、v)測定デバイスによって、血液ポンプにおけるパージフローパラメータを測定するステップと、vi)血液ポンプにおけるパージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを満たすとコントローラによって判定されると修復プロトコルを特定するステップと、を含む、血液ポンプをパージする方法が記載されている。
【0077】
[0083] 一態様では、修復プロトコルは、i)パージリザーバから血液ポンプへのパージ流体の流れを停止し、ii)補助リザーバから血液ポンプへの補助パージ流体の流れを開始することと、iii)測定デバイスによって、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータを測定することと、iv)血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが、補助パージ流体がもはや必要でないことを示す所定の閾値パージフローパラメータを下回った又は上回るとコントローラによって判定されると、補助リザーバから血液ポンプへの補助パージ流体の流れを停止することと、パージリザーバから血液ポンプへのパージ流体の流れを再開することと、を含む。
【0078】
[0084] 上記態様のいずれかにおいて、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを上回るとコントローラによって判定されると、補助パージ流体の流れは停止され、パージ流体の流れは再開される。
【0079】
[0085] 上記態様のいずれかにおいて、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを所定量だけ上回るとコントローラによって判定されると、補助パージ流体の流れは停止され、パージ流体の流れは再開され、所定量は、24時間で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である。
【0080】
[0086] 上記態様のいずれかにおいて、パージフローパラメータは、パージ流量であり、所定の閾値パージフローパラメータは、パージ流量の所定量の減少であり、所定量は、24時間以内で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である。
【0081】
[0087] 上記態様のいずれかにおいて、パージフローパラメータは、パージ流量であり、所定の閾値パージフローパラメータは、6時間以内で3mL/時未満のパージ流量の減少である。
【0082】
[0088] 上記態様のいずれかにおいて、パージフローパラメータは、パージ圧力であり、所定の閾値パージフローパラメータは、パージ圧力の所定量の増加であり、所定量は、24時間以内で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である。
【0083】
[0089] 上記態様のいずれかにおいて、パージフローパラメータは、パージ圧力であり、所定の閾値パージフローパラメータは、24時間以内で700mmHg超のパージ圧力の増加である。
【0084】
[0090] 上記態様のいずれかにおいて、本方法は、血液ポンプに補助パージ流体を供給する前に補助パージ流体を脱気することを更に含む。
【0085】
[0091] 上記態様のいずれかにおいて、本方法は、血液ポンプ及びパージデバイスの1つ以上のチューブにキンクがないことを検出することを更に含む。
【0086】
[0092] 上記態様のいずれかにおいて、パージ流体は、水性ブドウ糖を含む。
【0087】
[0093] 上記態様のいずれかにおいて、パージ流体は、抗凝固剤、pH調整及び緩衝剤、又はそれらの組み合わせを更に含む。
【0088】
[0094] 上記態様のいずれかにおいて、抗凝固剤は、ワルファリン、クマリン、ヘパリン、又は直接トロンビン阻害剤である。
【0089】
[0095] 上記態様のいずれかにおいて、抗凝固剤は、ヘパリンである。
【0090】
[0096] 上記態様のいずれかにおいて、直接トロンビン阻害剤は、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、ビバリルジン、又はそれらの混合物である。
【0091】
[0097] 上記態様のいずれかにおいて、pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はピルビン酸ナトリウムである。
【0092】
[0098] 上記態様のいずれかにおいて、pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウムである。
【0093】
[0099] 上記態様のいずれかにおいて、補助パージ流体は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含む。
【0094】
[0100] 上記態様のいずれかにおいて、補助パージ流体は、ブドウ糖を更に含む。
【0095】
[0101] 上記態様のいずれかにおいて、tPAは、凍結乾燥tPAである。
【0096】
[0102] 上記態様のいずれかにおいて、tPAの濃度は、2mg/50mL~4mg/50mLである。
【0097】
[0103] 上記態様のいずれかにおいて、血液ポンプは、モータ部分及びポンプ部分を含み、パージ流体及び補助パージ流体は、モータ部分に供給される。
【0098】
[0104] 別の態様では、i)血液ポンプと、ii)血液ポンプと流体連通するパージデバイスであって、パージデバイスは、血液ポンプに流体的に接続され、パージ流体を収容するように構成されたパージリザーバと、血液ポンプに流体的に接続され、補助パージ流体を収容するように構成された補助リザーバと、を含む、パージデバイスと、iii)血液ポンプにおけるパージフローパラメータを測定するように構成された測定デバイスと、iv)コントローラであって、血液ポンプにおけるパージフローパラメータを監視し、血液ポンプにおけるパージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを満たすと判定すると修復プロトコルを特定するように構成されている、コントローラと、を含む、血液ポンプアセンブリが記載されている。
【0099】
[0105] 別の態様では、コントローラは更に、パージデバイスを、i)パージリザーバから血液ポンプへのパージ流体の流れを停止し、補助リザーバから血液ポンプへの補助パージ流体の流れを開始し、ii)測定デバイスによって、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータを測定し、iii)血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが、補助パージ流体がもはや必要でないことを示す所定の閾値パージフローパラメータを下回った又は上回ると判定されると、補助リザーバから血液ポンプへの補助パージ流体の流れを停止し、パージリザーバから血液ポンプへのパージ流体の流れを再開するように制御することによって修復プロトコルを実施するように構成されている。
【0100】
[0106] 上記別の態様のいずれかにおいて、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを上回るとコントローラによって判定されると、補助パージ流体の流れは停止され、パージ流体の流れは再開される。
【0101】
[0107] 上記別の態様のいずれかにおいて、血液ポンプにおける補助パージフローパラメータが所定の閾値パージフローパラメータを所定量だけ上回るとコントローラによって判定されると、補助パージ流体の流れは停止され、パージ流体の流れは再開され、所定量は、24時間で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である。
【0102】
[0108] 上記別の態様のいずれかにおいて、パージフローパラメータは、パージ流量であり、所定の閾値パージフローパラメータは、パージフローパラメータの所定量の減少であり、所定量は、24時間以内で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である。
【0103】
[0109] 上記別の態様のいずれかにおいて、パージフローパラメータは、パージ圧力であり、所定の閾値パージフローパラメータは、パージ圧力の所定量の増加であり、所定量は、24時間以内で少なくとも30%、又は12時間で少なくとも20%である。
【0104】
[0110] 上記別の態様のいずれかにおいて、パージデバイスは、i)パージリザーバを血液ポンプに流体的に接続するパージ流体供給ラインと、ii)補助リザーバをパージ流体供給ラインに流体的に接続する補助パージ流体供給ラインと、を更に含む。
【0105】
[0111] 上記別の態様のいずれかにおいて、パージ流体は、水性ブドウ糖を含む。
【0106】
[0112] 上記別の態様のいずれかにおいて、パージ流体は、抗凝固剤、pH調整及び緩衝剤、又はそれらの組み合わせを更に含む。
【0107】
[0113] 上記別の態様のいずれかにおいて、抗凝固剤は、ワルファリン、クマリン、ヘパリン、又は直接トロンビン阻害剤である。
【0108】
[0114] 上記別の態様のいずれかにおいて、抗凝固剤は、ヘパリンである。
【0109】
[0115] 上記別の態様のいずれかにおいて、直接トロンビン阻害剤は、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、ビバリルジン、又はそれらの混合物である。
【0110】
[0116] 上記別の態様のいずれかにおいて、pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はピルビン酸ナトリウムである。
【0111】
[0117] 上記別の態様のいずれかにおいて、pH調整及び緩衝剤は、炭酸水素ナトリウムである。
【0112】
[0118] 上記別の態様のいずれかにおいて、補助パージ流体は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含む。
【0113】
[0119] 上記別の態様のいずれかにおいて、補助パージ流体は、ブドウ糖を更に含む。
【0114】
[0120] 上記別の態様のいずれかにおいて、tPAは、凍結乾燥tPAである。
【0115】
[0121] 上記別の態様のいずれかにおいて、tPAの濃度は、2mg/50mL~4mg/50mLである。
【0116】
[0122] 上記別の態様のいずれかにおいて、血液ポンプは、モータ部分及びポンプ部分を含み、パージ流体及び補助パージ流体は、モータ部分に供給される。
【0117】
[0123] 本明細書において、「含む(comprising)」という語は、「オープンな」意味、即ち「含む(including)」の意味で理解されるべきであり、したがって、「クローズド」の意味、即ち「のみからなる(consisting only of)の意味に限定されるものではない。対応する語である「含む(comprise)」、「含まれる(comprised)」及び「含む(comprises)」が現れる場合には、対応する意味が付与されるものとする。
【0118】
[0124] 本技術の特定の実施について説明してきたが、本技術が、その本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で具現化され得ることは、当業者には明らかであろう。したがって、本実施形態及び例は、あらゆる点において例示的なものであり、限定的なものではないと考えるべきである。更に、本明細書において、当該技術分野で周知の主題に言及することは、反対の指示がない限り、そのような主題が、本技術が関連する分野の当業者に一般的に知られていることを認めるものではないことが理解されよう。
【国際調査報告】