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▶ ウルリッチ,トーマスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】浮力利用装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 17/02 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F03B17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024521245
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2022080310
(87)【国際公開番号】W WO2023073223
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021128405.8
(32)【優先日】2021-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】LU500836
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524130836
【氏名又は名称】ウルリッチ,トーマス
【氏名又は名称原語表記】ULLRICH, Thomas
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッチ,トーマス
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA10
3H074BB10
3H074CC03
(57)【要約】
本発明は、運動浮力エネルギーおよび/または位置エネルギーを電気エネルギーおよび/または機械エネルギーに変換する浮力利用装置と、遮温装置と、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する方法とに関し、この際、本発明は、電気エネルギーを提供するために、流体内での浮力体の周期的な浮揚および落下を利用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動浮力エネルギーおよび/または位置エネルギーを利用して、これを機械エネルギーおよび/または電気エネルギーに変換する浮力利用装置(1.0)であって、以下の構成部品を具備し、すなわち、
a)第1媒体(2.1)で充填された第1室(1.1)と、
b)第2媒体(2.2)で充填された第2室(1.2)と、
c)少なくとも1つの浮力体(3.0)と、
d)周回するガイド部(4.0)であって、前記周回するガイド部(4.0)に沿って少なくとも1つの浮力体(3.0)の移動が行われる、周回するガイド部と
を具備し、
前記周回するガイド部(4.0)は、前記第1室(1.1)および前記第2室(1.2)を通って延在する、浮力利用装置において、
前記周回するガイド部(4.0)は、無限レールシステムを具備し、
前記第1室(1.1)および前記第2室(1.2)は、水門システム(1.3)によって少なくとも一か所で互いから分離されていて、
前記水門システム(1.3)は永久的な開口部を有し、
前記浮力体は、その平均密度とその浮力とが温度に応じるように構成されていて、
前記第1媒体(2.1)および前記第2媒体(2.2)の温度は互いに異なり、
外部エネルギー源が前記第1室(1.1)および/または前記第2室(1.2)との間の温度差を誘発するように、前記装置が備えられている
ことを特徴とする、浮力利用装置。
【請求項2】
前記浮力体(3.0)が中空体として形成されていて、前記中空体の材料が金属、プラスチック、ガラスまたは有機材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記中空体が気体および/またはポリマーを含み、
前記浮力体(3.0)の前記平均密度が前記気体および/または前記ポリマーの膨張によって影響されることができ、
前記気体および/または前記ポリマーの前記膨張は、前記第1室および/または前記第2室内の温度変化に応じる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1媒体(2.1)および/または前記第2媒体(2.2)側にある前記浮力体(3.0)の表面が、輪郭部(5.0)を具備する、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも前記1室および/または前記第2室中での温度変化を誘発するために、熱交換器(1.7)および/または加熱素子が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
下側反転点(1.4)の直近で、および/または上側反転点(1.9)の直近で、および/または前記浮力体(3.0)の直近で、前記熱交換器または前記加熱素子によって前記温度変化の誘発を可能にすることができる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記熱交換器が一次回路および二次回路を具備し、両回路が互いに対して流体連通されていない、請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
太陽集熱器および/または廃熱生成プロセスが、前記一次回路と作動的に接続され、その結果第3媒体の温度が可変となる、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の第1室(1.1)を第2室(1.2)から熱的に減結合するための、または請求項1~7のいずれか1項に記載の第1媒体(2.1)を第2媒体(2.2)から熱的に減結合するための遮温装置であって、
前記遮温装置が、請求項1~7のいずれか1項に記載の少なくとも1つの開口部を備えた水門システム(1.3)と、請求項1~7のいずれか1項に記載の浮力体(3.0)とを具備し、
前記水門システム(1.3)および前記浮力体(3.0)は、前記浮力体(3.0)が前記水門システム(1.3)の前記開口部を貫通して案内可能なように具備されていて、
前記水門システム(1.3)の前記開口部には、少なくとも1つの密閉部材が配置されていて、前記密閉部材は前記浮力体(3.0)に当接し、これにより、前記第1媒体(2.1)の前記第2媒体(2.2)中への入り込み、または前記第2媒体(2.2)の前記第1媒体(2.1)中への入り込み、および/または前記第1媒体(2.1)と前記第2媒体(2.2)との間の温度交換が防止され、
前記浮力体(3.0)は、前記第1室(1.1)から前記第2室(1.2)への方向で、または前記第2室(1.2)から前記第1室(1.1)への方向で、熱的に絶縁されて形成されているように備えられている、遮温装置。
【請求項10】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する方法であって、以下の工程を含み、すなわち、
a)請求項5から7のいずれか1項に記載の浮力利用装置を提供する工程と、
b)前記浮力体(3.0)の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するように備えられた変換器を提供する工程と
を含む方法において、
前記浮力体(3.0)が前記無限レールシステム(4.0)に沿って移動し、
前記熱交換器および/または前記加熱素子が、前記第1室と前記第2室との間に温度差を誘発し、
前記浮力体(3.0)の前記平均密度および前記浮力が、前記温度差によって増加または減少し、
前記第1室および前記第2室中の前記浮力体(3.0)が、前記周囲にある媒体の密度と関連での前記浮力体の平均密度に応じて、前記無限レールシステムに沿って前記移動を実施し、
前記移動が、前記変換器によって電気エネルギーに変換される
ことを特徴とする、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動浮力エネルギーおよび/または位置エネルギーを電気エネルギーおよび/または機械エネルギーに変換する装置、遮温装置、ならびに熱エネルギーを電気エネルギーに変換する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術からは、少なくとも1つの大抵中空の浮力体の浮力エネルギーを利用可能にすることを目的とした多数の装置が公知である。このような装置は、浮力発電所としても公知である。
【0003】
したがって、特許文献1は、球状の浮力体が、水で充填された容器から空気で充填された容器中に交互に移動する装置を開示している。この際、球状浮力体はチェーンを介して互いに連結されている。この移動が、発電機に接続された車輪を駆動する。この場合の欠点は、密閉部材が水の漏れ出るのを防止することができないため、不可避的に損失が発生する点である。
【0004】
同様の原理が特許文献2中にも開示されている。この場合、浮力体は、車輪を介して発電機を駆動するベルトコンベアに配置されている。浮力体が静水圧に逆らって、水で充填された容器中に入ることができるように、この装置はポンプシステムを具備し、このポンプシステムによって水が水収集容器から高圧で加圧水室中にポンプで送り込まれる。この場合の欠点は、ポンプシステムがエネルギーを消費するため、装置の効率が最低限になってしまう点である。
【0005】
特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9および特許文献10には、同じ動作原理によるさらなる類似の装置が記載されている。これらの装置全てに共通しているのは、浮力体が部材(チェーン、紐状部など)を介して互いに機械的に結合されている点である。この結果、連結部材(チェーン、ロープ、コンベアベルトなど)のさらに後方に置かれた浮力体の摩擦力/慣性力が、さらに前方に取り付けられた浮力体に伝達され、このようにして効率が低下する。
【0006】
特許文献11/特許文献12は、浮遊体の浮力エネルギーを利用する装置を開示している。この浮遊体は、回転可能に軸支された搬送装置に固定されていて、上の旋回点と下の旋回点とを周回する。さらに、この装置は、下部領域中に水門装置を具備し、この水門装置が、異なる液面水位を有する2つの水盤を連結している。浮遊体はチェーンに沿って走行するが、この際、チェーンをどのように水門を通って導くべきで、その結果として十分な密閉性を確保するかは明確ではない。さらに、水門を操作させるためにはエネルギーが必須であり、これにより設備の効率が低下する。
【0007】
特許文献13は、液体で充填された容器内の浮力を利用してエネルギーを発生させる装置を開示していて、この場合、浮力体はチェーンで互いに連結されていて、2つの水門を通って案内される。ここでも、チェーンがどのように水門を通って案内されるかが不明確であり、水門の操作が装置の効率を低下させる。
【0008】
特許文献14には、永久エネルギー発生機器が記載されているが、この場合、浮力と重力とが利用されている。この装置は、互いに連結された気体で充填された浮力体を利用する。気体で充填されたこの浮力体は、下から水門を通って、液体で充填された室中に侵入し、ここで浮力を受ける。ここでも、気体で充填された浮力体は互いに連結されていて、これにより追加的に摩擦損失が発生し、これが装置の効率を低下させる。
【0009】
特許文献15は、エネルギーを提供するために浮力と重力とを利用する重力モーターを開示している。パワーピストンは、円を描くように管系内を循環し、かつ2つの水門を通過するが、この2つの水門は、媒体(空気、水)が混合しうるのを防止するためのものである。ある実施形態では、このパワーピストンは、ガイドレールに沿って移動するが、このガイドレールは水門領域中で中断されている。水門を操作するのに加えて、水門領域中のガイドレールが閉じているように旋回可能なガイド部品を動かすためにもエネルギーを消費せねばならない。さらに欠点となるのは、旋回可能なガイド部品のようなさらなる機械部品が、装置に対する機械的な影響を大きくする点である。
【0010】
特許文献16は、エネルギーを発生させるための、制御された浮力設備を開示していて、この設備では、体積が可変の気密中空体(バルーン)が、無限牽引手段によって常に液体容器を通って案内される。このバルーンどうしがホースを介して流体連通されていて、その結果、先行するバルーンが、これを圧縮する領域を通過すると、このバルーンの気体状の中身が後続のバルーン中に押し込まれる。この場合も、浮力体が互いに連結されている点が欠点となる。さらに、浮力体を機械的に圧縮せねばならず、効率が極めて低下する。
【0011】
浮力体どうしが互いに機械的に結合されていない装置も公知である。特許文献17、特許文献18、特許文献19および特許文献20は、浮力体が管系または室系内で案内される装置を開示している。しかし、この場合の欠点は、機械的結合がないので、水門システムを通って浮力体を個別に案内せねばならず、この場合も効率が低下する点である。
【0012】
特許文献21は、材料(浮力体)からの運動エネルギーを、発電機を駆動するための回転エネルギーに変換する方法を開示している。この場合も、互いに連結されていない浮力体が水門システムを通って案内されるため、この水門システムを相応に駆動せねばならず、効率が低下する。
【0013】
特許文献22は、浮力と重力とを利用してエネルギーを発生させる装置を開示している。互いに連結されていない浮力体が、密度の異なる流体を通って交互に案内される。この際、密度がより高く、したがってより重い流体は、その重力によって、より軽い流体に対して押し付けられて、このより軽い流体がより重い流体よりも液面水位がより高くすることが可能になる。重力によって下方に沈む浮力体は、前方の浮力体をより重い流体中に押しやり、かつ次に軽い流体中に到達し、そこで、浮力によって上方に押しやる。欠点は、浮力体が移動するので、必然的に流体の混合を引き起こしてしまい、効率を低下させる点である。
【0014】
従来技術には、電気エネルギー獲得のために毛細管上昇の利用を提案するさらなる刊行物も公知である。例えば、特許文献23および特許文献24には、それぞれ、前後に連続して置かれた水盤と毛細管部材とのシステムが記載されていて、この場合、毛細管上昇の助けを借りて、液体を下方の水盤からより上方に置かれた水盤中に搬送することが記載されている。しかし、どちらのシステムにおいても、毛細管流が、上方の水盤中で中断され、その結果途切れるという欠点がある。
【0015】
特許文献25にも同様に、毛細管力を利用するシステムが記載されているが、この場合、毛細管中に含まれる水を気化させるために、毛細管を含む部材を加熱する。さらに、水は毛細管に入る前にすでに加熱される。このシステムの欠点は、毛細管内で気体が形成され、この場合も毛細管の流れが途切れてしまいうる点である。さらに、加熱と気化とに必要なエネルギーがどのように提供されるのかも記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国実用新案出願公開第8510493U1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2557746A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102016010718A1号明細書
【特許文献4】独国実用新案出願公開第9300674U1号明細書
【特許文献5】独国実用新案出願公開第202010011168U1号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第102016009649A1号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102009037452A1号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第4029150A1号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第0022693A1号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第2606160A1号明細書
【特許文献11】国際公開第2003058058A1号パンフレット
【特許文献12】独国実用新案出願公開第202004009597U1号明細書
【特許文献13】独国特許出願公開第102017007471A1号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第20150267677A1号明細書
【特許文献15】独国実用新案出願公開第9404819U1号明細書
【特許文献16】独国特許出願公開第102014000866A1号明細書
【特許文献17】独国特許出願公開第102010015667A1号明細書
【特許文献18】独国特許出願公開第102013009842A1号明細書
【特許文献19】独国特許出願公開第102011003099A1号明細書
【特許文献20】独国特許出願公開第102010051596A1号明細書
【特許文献21】独国特許出願公開第102006007738A1号明細書
【特許文献22】大韓民国特許出願公開第1020030848A号明細書
【特許文献23】墺国特許出願公開第520053A1号明細書
【特許文献24】特開昭58-13172A号公報
【特許文献25】独国特許出願公開第10257375A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の課題は、浮力体の機械的結合がなく、同時に可動の機械部材(例えばフラップ、ドア)を備えた水門システムがない、浮力エネルギーを利用するための浮力利用装置を提供することである。この装置は、従来から公知である浮力発電装置よりも高い効率を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、独立特許請求項に記載された対象物および方法によって達成される。さらなる有利な構成は、従属請求項、明細書および実施形態から読み取ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による浮力体は機械的に互いに結合されていないので、下流側で接続された連結部材および下流側で接続された浮力体の摩擦力/慣性力が、上流側で接続された連結部材および浮力体に伝達されえず、これにより、効率が向上する。
【0020】
さらに、本発明による水門システムがあるゆえに、連結部材は必須ではない。これにより、全体として必要となる構成部品が少なくなり、軽量化および摩耗の減少を伴う。
【0021】
毛細管吸引気化装置は、太陽エネルギーの利用を可能にし、この際、本願中に開示されたシステムは、毛細管流が途切れないので有利である。
【0022】
さらなる利点は、詳細な説明および実施形態から読み取ることができる。
【0023】
発明の説明
本発明は、運動浮力エネルギーおよび位置エネルギーを利用できる浮力利用装置を含む。
【0024】
一般に、エネルギーとは、仕事を遂行したり、熱を発したりまたは光を放射したりする能力のことであると理解される。何かを動かしたり、加速させたり、持ち上げたり、加熱したり、または照らしたりするには、エネルギーが必要である。機械的仕事(W)は、力(F)と、仕事を行う物体が移動した距離(s)との積である。
【0025】
本発明によれば、運動浮力エネルギーは、物体の静的浮力によって機械的な仕事を遂行する能力として理解される。この静的浮力は、液体または気体中にある物体にかかる力で重力に対抗する力である。静的浮力は、周囲の媒体を押しのけることによって生じる。浮力が発生する理由は、静水圧が観察される場所の高さに応じるからである。物体の下面にはその上面よりも高い圧力が作用する。静的浮力は、流体の相応の変形に対応する重量力に相当する。この関係はアルキメデスの原理として知られている。したがって、密度(p)を有する流体中に浸された物体には、浮力(F)が作用する。これは、物体によって押しのけられた流体の体積(V)と、その密度(p)と、重力加速度(g)との積として産出される。したがって、押しのけられた流体の重量力(F)と浮力(F)とは、FA/G=g×p×Vで計算できる。この式から、流体の密度が高いほど、また物体によって押しのけられる容積が大きいほど、浮力が大きくなることが明らかである。しかし、物体の重量力は浮力と逆方向であるため、可能な限り大きな浮力を得るためには、実質的に中空の物体が好ましく、その結果、物体が流体よりも平均密度が低くなる。
【0026】
位置エネルギーは、重力加速度の方向での仕事の遂行を可能にする。地球の重力場では、位置エネルギーとは、物体がその高さによって持つエネルギーのことである。ある物体が20メートルの高さから落下した場合、10メートルの高さから落下した場合の2倍の仕事を遂行することができる。落下中、位置エネルギーは運動エネルギーまたはこれとは別のエネルギーに変換され、減少する。水力発電所では、貯水池の水の位置エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0027】
本発明によれば、物体の位置エネルギーおよび/または運動浮力エネルギーを電気エネルギーおよび/または機械エネルギーに変換することができる。例えば、浮力体の浮揚または落下は、例えば機械的結合を介して、さらなる物体を移動させるために利用することができる。従って、本発明による装置は、運動浮力エネルギーを機械エネルギーおよび/または電気エネルギーに変換するように備えられた変換器を具備する。この変換器は、電気エネルギーを提供するための発電機として設計することができる。当業者には、機械部材と発電機との結合の様々な実施形態が公知である。
【0028】
本発明によれば、物体は、流体中で移動可能な少なくとも1つの浮力体を含む。流体は、液体(例えば、水、油)または気体(例えば、空気、水素、ヘリウム)を含みうる。
【0029】
本願中では、室とは、以下でさらに定義する媒体を含む領域として定義されうる。室は、境界を設けられた領域(例えば、容器)でもありえる。室はまた、境界のない領域(例えば、海または湖のような海洋系または石灰系)でもありえる。
【0030】
本発明による装置は、第1媒体で充填された少なくとも1つの第1室であって、第1媒体が流体を含む第1室と、第2媒体で充填された少なくとも1つの第2室であって、第2媒体が流体を含む第2室とを具備する。本発明の好ましい構成では、第1媒体は第2媒体よりも大きい平均密度を有し、第2媒体は浮力体よりも低い平均密度を有する。
【0031】
浮力利用装置のある実施形態によれば、この浮力利用装置は、運動浮力エネルギーおよび位置エネルギーを利用し、機械および/または電気エネルギーに変換する役割を果たし、この際、この装置は、構成部品として、第1媒体で充填された第1室と、第2媒体で充填された第2室と、少なくとも1つの浮力体と、周回するガイド部とを具備し、周回するガイド部に沿って少なくとも1つの浮力体の移動が行われ、第1媒体の平均密度が第2媒体の平均密度よりも大きく、周回するガイド部は、第1室および第2室を通って延在し、周回するガイド部は、無限レールシステムを具備し、第1室および第2室は、水門システムによって少なくとも一か所で互いから分離されていて、水門システムは永久的な開口部を有し、水門システムの開口部が浮力体の最小横方向断面に正確に適合するように形成されている。
【0032】
特に、本発明は、運動浮力エネルギーおよび/または位置エネルギーを利用して、これを機械エネルギーおよび/または電気エネルギーに変換する浮力利用装置に関し、この装置は、構成部品として、第1媒体で充填された第1室と、第2媒体で充填された第2室と、少なくとも1つの浮力体と、周回するガイド部であって、これに沿って少なくとも1つの浮力体の移動が行われる周回するガイド部とを具備し、この周回するガイド部は、第1室および第2室を通って延在し、この周回するガイド部は、好ましくは無限レールシステムを具備し、第1室および第2室は、少なくとも一か所で水門システムによって互いから分離されていて、水門システムは永久的な開口部を有し、浮力体は、その平均密度とその浮力とが、本願中で記載するように温度に応じるように構成されていて、第1媒体および第2媒体の温度は互いに異なり、外部エネルギー源が第1室および/または第2室中での温度差を誘発するように、装置が備えられていて、この際、第1媒体は第1室中に配置されていて、かつ第2媒体は第2室中に配置されている。
【0033】
ある構成では、第1媒体の温度は第2媒体の温度と、少なくとも5K、好ましくは少なくとも10K、特に好ましくは少なくとも15K、非常に特に好ましくは少なくとも20K、さらに好ましくは少なくとも25K、さらに特に好ましくは30K異なる。
【0034】
温度変化は、第1室および/または第2室から熱を供給または導き出すことによって達成することができる。好ましくは、温度変化は外部エネルギー源によって誘発される。外部エネルギー源は、熱エネルギーを排出する装置(例えば、燃焼機関、太陽集熱器)でありうる。同様に、地熱プロセスもエネルギー源に含めることができる。
【0035】
特に、第1媒体の平均密度は第2媒体の平均密度よりも低くすることもでき、この際、密度は以下に説明する熱交換器によって誘導される。このようにして、媒体が以下に示すように同じ化学構造を有し、かつ熱交換器が第1媒体中の温度変化を引き起こすが、第2媒体中の温度変化を引き起こさない場合、第1媒体の密度は第2媒体の密度に対して低下する。特に、この浮力体の構成がゆえに生じる第1室および/または第2室中の温度変化が、どの室中に浮力体があるかに応じて、浮力体の密度および浮力の変化を引き起こす。この際、浮力体の平均密度および浮力は、浮力体がどの室を通って移動するかに応じる。これについては以下で詳しく説明する。
【0036】
特に好ましいある実施形態によれば、浮力体の平均密度は、温度の上昇時に減少または増加する。好ましくは、浮力体の平均密度は、本願中に記載されるように減少する。
【0037】
特に好ましいある構成では、両方の室が周回するガイド部を具備する。これは、浮力体の移動を三次元から二次元に制限する制限設定であると理解される。特に好ましくは、浮力体の移動も、無限レールシステムに沿った浮力体の横方向への膨張も、無限レールシステムによって制限されている。
【0038】
実質的に、浮力体は、浮揚することによって地球の中心から遠ざかり、落下することによって地球の中心に向かって移動することができる。上方に向かう移動から下方に向かう移動への交代、すなわち地球の中心方向への移動、およびその逆の移動を可能にするためには、少なくとも2つの反転点が必須であり、本発明は、上側反転点および下側反転点を具備する。本発明によれば、浮力体の上方に向かう移動から下方に向かう移動への交代は、上側反転点の後で生じる。浮力体の下方へ向かう移動から上方へ向かう移動への交代は、下側反転点で起こる。
【0039】
ある実施形態によれば、無限レールシステムは、下側反転点および上側反転点を具備している。特に、無限レールシステムをこの箇所で中断または開放できるように、反転点の少なくとも1つ、好ましくは上側反転点が構成されている。このようにして、浮力体を、無限レールシステムから取り外しうる、または無限レールシステムに挿入されうることが有利に達成されうる。
【0040】
装置の配向はデカルト座標系内で記述できる。この際、負のz軸は地球の中心に向かう方向を指し、正のz軸は地球の中心から離れる方向を指す。「下方」または「下方に」および「上方」または「上方に」との用語は、デカルト座標系内での物体の空間位置を指し、これにより、下方の位置は上方の位置よりも地球の中心に近い。
【0041】
周回するガイド部は、第1室および第2室を通って延在し、かつ無限レールシステムを具備し、これは、少なくとも1つの浮力体がその中で案内可能なように構成されている。無限レールシステムは、互いに平行に配向された少なくとも2つのガイドレールが、第1室および第2室を通って、z軸に平行に伸びるように構成することができる。第1室から第2室への移行部、および第2室から第1室への移行部では、ガイドレールの湾曲部が必要であり、したがって、ガイドレールは、この領域ではz軸に平行に延在していない。ガイドレールの湾曲部は、その中で浮力体ができる限り摩擦を小さくして案内されうるように造形されていなければならない。無限レールシステムを使用することにより、浮力体がこのレールシステムを通って連続的に移動可能であるので有利である。さらに、無限レールシステムは可動部品がないため、摩耗がない。
【0042】
特に、無限レールシステムは、この無限レールシステムに沿った浮力体の移動について、その横方向の膨張が制限されるように構成されている。このようにして、浮力体が第1室および第2室を通る定められた経路上で移動することができるので有利である。無限レールシステムは、浮力体が第1室および/または第2室を通って直線路上を移動するのではなく、例えば波状のパターンで移動するように構成することができる。このようにして、第1室および/または第2室中の浮力体の滞留時間を長くすることができ、このようにして、第1媒体および/または第2媒体からの浮力体の熱吸収の時間および/または熱放出の時間を長くすることができるので有利である。
【0043】
浮力体が無限レールシステム内でできる限り少ない摩擦で移動できるようにするために、浮力体は摩擦低減部材を具備することができる。したがって、摩擦低減部材は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような摩擦低減プラスチックからなりうる。この摩擦低減部材はガイドレールに接触し、有利な場合には、浮力体が低摩擦で無限レールシステムを通って摺動することが可能になる。さらに、無限レールシステムは、車輪部材またはローラ部材をも具備することもでき、これらは、中空体を無限レールシステムから離し、摩擦を低減させうる。
【0044】
第1室および第2室は、少なくとも1つのさらなる第3室(移行領域とも称される)によって互いから切り離すこともでき、この場合、第3室が水門システムを具備する。好ましくは、この水門システムは下側反転点に配置されている。本発明のある実施形態では、水門システムの開口部は、浮力体の最小横方向の断面に正確に適合するように形成されている。
【0045】
ある好ましい実施形態によれば、水門システムは第1室と第2室との間の下側反転点に配置されている。また、この水門システムが上側反転点、または、上側および下側反転点に配置されているように設けることも可能である。これにより、後述する遮温部が上側反転点および下側反転点に形成されているため、第1室および第2室の媒体の温度が均一化されるのが予防され、装置の効率の向上が達成できるので有利である。
【0046】
ある好ましい実施形態によれば、浮力体は、第1室から第2室へと交互に移動し、少なくとも第1室と第2室との間の移行領域中で、水門システムを通って、特に水門システムに含まれる開口部を通って移動するが、これは本願に記載されている通りである。
【0047】
ある実施形態によれば、水門システムは、これを通って浮力体が連続的に移動できるように造形されている。この連続的な移動により、例えば水門ドアのような可動部品を使用することなく、この水門システムを通って浮力体が中断することなく移動することが可能になるので、有利である。
【0048】
本発明のさらなるある実施形態では、水門システムは、少なくとも1つの密閉部材を具備するが、これは、例えばリップ密閉部として構成することができる。本発明によれば、この密閉部材は、浮力体の最小横方向断面に正確に適合するように形成されていて、その結果、浮力体が正確に適合してその中を貫通して案内されうる。浮力体の構成が円筒形の場合、これの最小横方向断面は円筒の外被面に対して垂直となる。浮力体が球形である場合、最小横方向断面は、球形の構成(または大円)の最大直径に相当する。
【0049】
この際、正確に適合するとは、浮力体が水門を通って妨げられることなく移動でき、かつ浮力体が水門内で傾かないことであると理解される。
【0050】
複数の密閉部材が前後に連続して置かれていることもできる。当業者であれば、これらを貫通して浮力体の低摩擦移動が可能となるように、密閉部材の数、その寸法およびその材料を選択するだろう。
【0051】
本発明によれば、無限レールシステムは、物理的な意味では、少なくとも1つの密閉部材によって中断される。しかし、密閉部材間にガイドレールも配置されていて、浮力体の連続的な移動がこれらを通って行われるので、不連続レールシステム」という用語の方がより適切ではあるが、無限レールシステムと呼ばれ続けるべきである。
【0052】
従来技術に記載されたシステムとは逆に、水門システムは永久的な開口部を有し、これは、第1室および第2室が、ゲートまたはフラップを備えた水門システムによって切り離されていないことを意味する。永久的な開口部が存在する点と、可動部品を備えた水門システムがない点とにより、本発明による装置は低摩耗運転が可能になるので有利である。さらに、水門を開閉するためにエネルギーを消費するにはおよばない。
【0053】
浮力体が流体内で上昇するためには、その平均相対密度が、浮力体を取り囲む流体の相対密度よりも低くなければならない。浮力体は、好ましくは中空体として形成されていて、この際、この中空体の材料は、金属(例えばアルミニウム、ステンレス鋼)、好ましくは熱可塑性のある材料(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ガラス、有機材料(例えば木材)または半合成プラスチック)も含む。さらに、中空体の材料には、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)を含むことができる。
【0054】
好ましくは、浮力体は、熱エネルギーを容易に吸収および放出できるように構成されている。
【0055】
ある実施形態では、浮力体の平均密度およびしたがってその浮力は、温度変化に応じる。このために、浮力体は、温度可変媒体、および/または空間膨張が温度変化に応じる技術部材を含む。この空間膨張の変動によって、浮力体の体積、平均密度、およびしたがって浮力は、影響を受けうる。本発明によれば、温度の変化とは、温度の低下、および好ましくは温度の上昇であると理解される。
【0056】
中空体の内部空間は、温度可変媒体として、気体および/またはポリマーを含むことができ、その膨張が中空体の平均密度に影響を与える。このようにして、流体の温度に応じて膨張が変化する気体を使用することができる。この際、中空体は、少なくとも部分的に柔軟性を有するように構成することができ、その結果気体の膨張によって浮力体の体積が増加し、したがって浮力が増加する。
【0057】
特に、浮力体の平均密度は、この気体および/またはポリマーの膨張によって影響を受けることができ、この気体および/またはポリマーの膨張は、第1室および/または第2室中の温度変化に応じる。この温度変化により、第1室および/または第2室中に含まれた媒体はより冷たく、または好ましくはより温かくなる。したがって、この浮力体は、より温かい室中で熱を吸収し、より冷たい室で再び熱を放出することができる。この際、浮力体の体積を小さくすれば浮力は減少し、体積を大きくすれば浮力は増加する。ここで、媒体のうち、より温かい媒体を含む室を温かい室とも称することができると理解される。
【0058】
有利なある構成によれば、浮力体は、より温かい室の中で下方に移動するが、この理由は、その体積が熱によって減少するからである。したがって浮力は、浮力体を取り囲むより温かい媒体によっても、浮力体の体積が小さくなることによっても減少する。これにより、下向きの加重力が浮力よりも大きくなる。これにより、浮力体の下方への動きを支持するので有利である。より冷たい室中では浮力体の体積がより大きくなるため、上方への移動を支持し、逆も該当する。
【0059】
ある好ましい実施形態では、浮力体は熱で膨張し、より温かい室で上向きの移動を実施するように設けられている。好ましくは、この際、浮力体の体積がより大きくなることによる浮力の増加が、媒体がより温かくなることによる浮力の減少の効果を上回るように、浮力体を形成する材料が選択される。
【0060】
ある実施形態では、浮力体は中空体として構成されていて、その中心には、少なくとも1つの持ち上げシリンダが配置されていて、このシリンダが、中空体の内部空間を含む。この持ち上げシリンダは、この持ち上げシリンダの長軸の方向で中空体に対して相対的に前後に移動することができ、この移動は、内部空間中に含まれた温度可変媒体の温度に応じる膨張によって引き起こされる。浮力体をこのように構成することにより、水門システムの開口部が浮力体の最小横方向断面に正確に適合する場合、浮力体が水門システムを通って正確に適合して移動できることを意味する。このようにして、中空体は円筒形に構成されていることができ、この場合、水門システムの開口部の直径は、中空体の外径に正確に適合して一致する。これにより、水門システムの開口部の寸法に制限されることなく、持ち上げシリンダを前後に移動させることができるので有利である。言い換えれば、持ち上げシリンダの移動は、無限レールシステムを通る浮力体の移動と平行である。
【0061】
水門システムの開口部を正確に適合するように構成することにより、この水門システムが浮力体と作動的に接続して、遮蔽部となることを達成でき、この遮蔽部が、第1室の媒体と第2室の媒体とが混合するのを防止するので有利である。特に、この作動的な接続により、第1室および第2室に含まれる媒体の温度が等しくなるのを防止する遮温部を可能になる。好ましくは、浮力体を少なくとも部分的に形成する材料は、本願で定義されるように、(以下に定義する熱伝導係率を有する)熱伝導性が悪いまたは絶縁性を有する材料を含み、これは、本願中で定義するようなプラスチックまたは木材を含む。
【0062】
浮力体が遮温部内で絶縁性を有する部材として機能する限り、この浮力体は、一方では、より温かい室からより冷たい室への熱伝達を予防するように構成されなければならず、他方では、本願に記載されているようにその平均密度を変化させるために、短時間(例えば5分以内)で熱エネルギーを吸収または放出することができることは当然理解される。これは、例えば、以下のようにして達成できるが、すなわち、例えば、浮力体を円筒形で構成し、この円筒の端面を熱伝導性の悪い材料から形成し、逆に円筒の外被面を熱伝導率の良い材料から形成し、この熱伝導率を少なくとも20Wm-1-1、好ましくは少なくとも50Wm-1-1、特に好ましくは少なくとも100Wm-1-1、非常に特に好ましくは少なくとも200Wm-1-1、さらに好ましくは少なくとも300Wm-1--1、さらに特に好ましくは少なくとも400Wm-1-1にする。例えば、この円筒の外被面は、熱伝導性の良い材料として銅を含むことができる。この際、銅の使用は、頻繁に行われ、好都合な金属であるため、特に有利である。
【0063】
従って、遮温部は、第1室と第2室とを特に熱的に減結合し、かつ特に第1媒体と第2媒体とを互いに熱的に減結合する。特に、第1媒体と第2媒体とが化学的に同一である場合、水門システムまたは遮温部は、小さな漏れ、すなわち第1媒体が第2媒体中に少し入り込む、または第2媒体が第1媒体中に少し入り込むように構成することができる。この際注意せねばならないのは、装置の効率が、特に媒体の入り込みにより、特に媒体間の熱交換により、わずかのみ影響するまたは低下するほどの漏れの程度であり、その結果これにより、温度変化が、好ましくは1時間当たり1K未満、特に好ましくは1時間当たり0.5K未満、非常に特に好ましくは1時間当たり0.1K未満のみ引き起こされるようにする点である。したがって、本発明による熱的な減結合は絶対的なものとして理解されるべきではなく、熱的な減結合によって引き起こされる第1媒体の第2媒体からの絶縁は、浮力体と水門システムとの間の間隙がどの程度広いかに、決定的に応じる。好ましくは、浮力体と水門システムとの間の間隙の面積は、水門システムの開口部の面積の最大5%、好ましくは最大2%、特に好ましくは最大1%に相当する。間隙の面積が小さいほど、媒体間の相互への漏れがより少なくなり、熱的な減結合がより良好になるので有利である。
【0064】
さらに、第1室と第2室との充填状態が等しいことによって、媒体間の相互移行が予防される。
【0065】
当然、無限レールシステムを形成する材料は、少なくとも水門の周囲で、熱伝導率の悪い材料、好ましくは熱伝導率が最大1Wm-1-1、好ましくは最大0.5Wm-1-1、特に好ましくは最大0.01Wm-1-1の材料(例えば、セラミック、特に摩擦低減部材で被覆されたセラミック、またはプラスチック)を含み、これにより、無限レールシステムを介した第1室から第2室中への熱伝達またはその逆の熱伝達を防止する。
【0066】
特に、本発明は、第1室を第2室から熱的に減結合するため、または第1媒体を第2媒体から熱的に減結合するための遮温装置を具備し、この遮温装置は、水門システムおよび浮力体を具備し、この水門システムおよび浮力体は、第1媒体の第2媒体中への入り込みまたは第2媒体の第1媒体中への入り込みが防止されるように作動的に接続されている。ここでは、防止とは絶対的な概念とはみなされない。当業者は、一方では少量の媒体しか他方の媒体中に入り込むことができず、他方では浮力体の移動に大きな決定的な影響を与えないように、浮力体と水門システムとの間の間隙を選択することが好ましい。したがって、当業者は、浮力体ができる限り摩擦なく水門システムを通って滑ることができ、媒体どうしができる限り互いの中に移行しないことを確実にするように、遮温装置を構成せねばならない。
【0067】
本発明はさらに、遮温装置を含み、これは、第1室を第2室から熱的に減結合するための、または第1媒体を第2媒体から熱的に減結合するための遮温装置であって、この遮温装置が、少なくとも1つの開口部を備えた水門システムと、浮力体とを具備し、この水門システムおよび浮力体は、浮力体が水門システムの開口部を貫通して案内されうるように構成されていて、水門システムの開口部には、少なくとも1つの密閉部材が配置され、この密閉部材は浮力体に当接し、好ましくは、浮力体に正確に適合するように当接し、これにより、第1媒体から第2媒体中への入り込み、または第2媒体から第1媒体中への入り込み、および/または第1媒体と第2媒体との間の温度交換が防止されている。上述したように、第1室から第2室への方向で、または第2室から第1室への方向で、熱的に絶縁されて形成されているように、浮力体は備えられているのが好ましく、これにより、より温かい媒体からより冷たい媒体への熱伝達が予防されている。さらなる形態では、室どうしまたは媒体どうしを互いに熱的に絶縁することに加えて、熱を効率的に吸収するように、浮力体は備えられている。
【0068】
この場合、第1室から第2室への方向、または第2室から第1室への方向とは、より温かい媒体からより冷たい媒体への熱放射の方向であると理解されるべきである。この際、水門システムの開口部は、本願で説明したように構成されることができ、その結果、この開口部が浮力体に対して正確に適合するように当接し、または間隙は上述のように構成されている。
【0069】
ここで、水門システムが、浮力体に対して柔軟性をもって当接する、例えば柔軟性のあるリップ部を介して当接するように構成されている場合、媒体が互いの中に少し入り込むのを特に良好に予防することができる。さらに、好ましくは、密閉部材も少なくとも部分的に熱伝導性の悪い材料(例えばプラスチック)から構成されているように、水門システムが構成されている。
【0070】
中空体の内部空間が、技術部材として、熱応答性ポリマーを含むことも考えられうるが、この熱応答性ポリマーは、流体の温度に応じて体積が変化する。さらに、浮力体の体積に影響を与えるために、形状記憶ポリマーも考えられうる。こうして、当業者には、温度が作用すると元の形状に戻る形状記憶ポリマー(例えばポリ乳酸)が公知である。例えば、浮力体の内部空間にバネ部材または空気圧部材が配置されていて、このバネ部材または空気圧部材が2つの対向する壁部間に配置されていて、かつこれらの壁部と形状記憶ポリマー部材とを押し開き、浮力体の体積を増加させるように、浮力体が構成されていることができる。温度の影響を受けて収縮するこの形状記憶ポリマー部材は、長さ方向でバネと平行に配置されていて、バネの外向きの力に対抗して作用し、浮力体の体積を減少させ、およびしたがって比浮力を減少させることができる。あるいは、温度に応じて浮力体の平均密度を変化させるために、中空体の内部空間が発泡性の形状記憶ポリマーで構成されていることもできる。
【0071】
これに代わるある実施形態では、浮力体は、形状記憶金属からなる少なくとも1つの部材を具備する。形状記憶金属の材料は、例えばニチノールを含む。この形状記憶金属は、例えば、コイル状に形成されていて、上述したようなバネ部材または空気圧部材と作動的に接続された態様で浮力体内に配置されていて、その結果、浮力体が加熱されたときにこの形状記憶金属製のコイルが収縮し、バネ部材または空気圧部材の力に対抗し、その結果、浮力体の体積が減少するようにすることができる。有利な場合、形状記憶金属を使用することにより、浮力体の磨耗の少ない利用となる。
【0072】
形状記憶金属からなる少なくとも1つの部材と、形状記憶ポリマーからなる少なくとも1つの部材とを組み合わせた実施形態も考えられうる。
【0073】
さらなるある実施形態では、形状記憶ポリマー製のポリマー網目組織が浮力体を包含する。この際、浮力体は、温度に応じて、または温度に応じず、浮力体の壁部を外側に押圧する気体を含むことができる。ポリマー網目組織は、温度の上昇時に収縮し、かつ浮力体の体積を減少させ、その結果その平均密度を低下させることができる。ポリマー網目組織を周囲の流体から境界付けるために、このポリマー網目組織を柔軟なさらなる層で密閉するか、または外被部で周囲の流体から境界付けることができる。これにより、ポリマー網目組織をより迅速に加熱または冷却できるので有利であることがわかる。
【0074】
さらに、光に応じてその形状を変化させる形状記憶ポリマーも考えられうる。そして、従来技術からは光依存性ポリマーが公知であるが、これは、光照射によってイオン化し、これにより内部浸透圧が発生し、これによりポリマーを膨潤させる。光照射が止まるとすぐにゲルは崩壊する。特に、光依存性ポリマーを利用する実施形態では、浮力体がガラスまたは他の透明材料を含み、その結果光が浮力体の外壁を通ってその背後にある光依存性ポリマーに到達できるようにすると有利である。
【0075】
上述したすべての実施形態の組み合わせも考えられうる。このようにして、ある実施形態では、外側のポリマー網目組織を、浮力体内にあるバネ部材および/または形状記憶金属部材および/または形状記憶ポリマー部材と組み合わせることができる。さらなるある実施形態では、温度が上昇すると膨張する形状記憶ポリマーを使用することができる。
【0076】
浮力体の体積を温度に応じて変化可能にするためには、浮力体が、第1室中では第2室中とは異なる温度にさらされることが必須である。この際、当業者は、浮力体で使用される材料、特に形状記憶金属または形状記憶ポリマーに応じて、必要不可欠である温度差を決定し、例えば熱交換器または加熱素子を用いてこの温度差を提供することができる。この点で、利用可能となる熱エネルギーが、浮力エネルギーに変換されることができ、かつその結果、機械エネルギーおよび/または電気エネルギーに変換されうる。特に、熱交換器は、外部エネルギー源を利用して、第1室および/または第2室を温めるのに必須の熱量を提供することができる。
【0077】
形状記憶ポリマーまたは形状記憶金属の上述の機能には、第1室と第2室との間にわずかな温度差があれば十分であるため、浮力利用装置は、少ない熱エネルギーの取り込みで作動させることができる。これにより、少量の熱しか放出しないプロセスからの温度変化を利用可能にすることができるので、有利である。したがって、例えば、生物学的プロセス(例えば、バイオガスプラント中の発酵)からの廃熱を、少なくとも第1室および/または第2室中に導き、その中で温度変化を引き起こすことが考えられうる。バイオガスプラントは、しばしば中温性(20~45℃)領域または好熱性(50℃を上回る)領域で作動されることが多い。あるいは、燃焼プロセスからの廃熱で本発明による装置を作動させることもできる。
【0078】
ある実施形態によれば、浮力体は、浮力体を安定させるためにガイドレール中に係合するように備えられた少なくとも1つの輪郭部を具備している。この輪郭部は、上述の摩擦低減部材を含むことができる。
【0079】
ある実施形態によれば、浮力体の、第1媒体および/または第2媒体側にある表面は、ある輪郭部を具備する。特に、浮力体の、第1媒体および/または第2媒体側にある浮力体の表面は、無限レールシステムが水門システムの開口部を通って途切れることなく案内されることを可能にする輪郭部として構成されていて、これにより、無限レールシステムは中断されるにはおよばない。
【0080】
浮力体の形状は、実質的に円筒形、楕円形、円錐形、球形、洋ナシ形および/または流線型として構成することができ、これらの組み合わせも考えられうる。浮力体は、少なくとも第1室および/または第2室中で、平均密度が浮力体の平均密度よりも大きい流体中を移動するので、浮力体の形状は流線型が好ましい。さらに、浮力体の下面には、その上面よりも高い静水圧が作用し、これが浮力の理由となる。この点で、浮力体の形状は実質的に円錐形が好ましい。この際、浮力体の正確な形状および大きさは、使用する流体と材料とに応じて当業者が選択できる。
【0081】
ある実施形態では、特に第2室中での浮力体の移動は、重力の影響を受けることができる。これは、第1室内の浮力体が、第1室内に含まれる流体中を重力の力に逆らって浮力によって上方に移動すると理解されうる。浮力体は、反転点を通過した後、浮力体の平均密度よりも平均密度が低い流体が中にある第2室中に入る。したがって、第2室中では、浮力体は重力に従い(落下ともいう)、進んだ距離に応じて仕事を遂行することができるが、これは、上述のように、変換器により位置エネルギーを電気的または機械エネルギーに変換することにより行われる。
【0082】
さらなるある実施形態では、浮力体は少なくとも1つの磁気部材を具備し、この際、少なくとも1つのコイルが、無限レールシステムに沿ってこのレールシステムの周囲に配置されている。したがって、浮力体は、浮揚中も落下中も、コイルを通過して移動し、コイル中で電流を誘導することができ、この電流を取り出すことができる。
【0083】
特に好ましいある実施形態によれば、少なくとも第1室および/または第2室中で温度変化を誘発するために、この装置には、熱交換器および/または加熱素子が設けられている。好ましくは、この熱交換器は、室のうちの1つ中でのみ、例えば第1室中で温度変化を引き起こす。この温度変化、好ましくは温度上昇は、浮力体の温度上昇を引き起こし、これにより浮力体の平均密度が低下し、したがって加熱されない浮力体と比較して浮力が増加する。その後、加熱された浮力体は、上側反転点に達して再び第2室中に到達するまで、加熱された室内を上昇する。第2室中では、温度は、好ましくは第1室中よりも低く、これにより、浮力体の平均密度は再び変化し、下側反転点に到達するまで下方に沈み、再び第1室の温度上昇にさらされ、この過程が繰り返される。
【0084】
熱交換器または加熱素子によって引き起こされる温度変化は、可能な限り下側反転点または上側反転点のすぐ近く、および/または浮力体のすぐ近くで起こり、この際、浮力体に対する熱交換器または加熱素子の位置決めおよび距離は、当業者によって決定されうる。この位置決めおよび距離の選択は、浮力体の最も効率的な温度変化が誘発されるように、同時に、熱交換器がどの室に置かれるかに応じて、第1室または第2室中の温度変化が、第2室または第1室中の温度変化を引き起こさないか、またはわずかしか引き起こさないことが確保されるようになされるべきである。温度変化を一定の範囲に制限するために、第1室および/または第2室が絶縁性を有する部材を具備せねばならないことは当然理解される。
【0085】
第1室または第2室中での温度変化を誘発するために、本発明のある実施形態は、一次回路と二次回路とを具備する熱交換器を備え、この際、この両回路は互いに流体連通していない。熱交換器は第1室内に配置されていることができ、この際、二次回路は第1室の媒体を含む一方で、熱交換器の一次回路は、第3媒体/流体を導き、この第3媒体/流体は、熱を発生する生物学的プロセス(例えば発酵)の廃熱、および/または物理学的プロセス(例えば太陽熱)の廃熱、および/または化学的プロセス(例えば燃焼)の廃熱を導く。これに代わるある実施形態では、熱交換器を第2室中に配置することもできる。さらに、熱交換器が、第1室および/または第2室中の温度低下を誘発することも考えられうるが、これは、熱交換器の一次回路が、浮力体よりも冷たい流体を導くことにより行われる。
【0086】
ある実施形態によれば、この一次回路は、第1室の第1媒体よりも高い温度を有する第3媒体を含み、この際、この第3媒体は、第1媒体と流体連通することができない。第3媒体は、第1媒体または第2媒体の沸点の少なくとも2倍高い沸点を有する流体でありえる。例えば、第3媒体は液体の塩でありえる。この第3媒体の使用は、第1媒体および/または第2媒体のより効果的な加熱を可能にするので有利である。
【0087】
本発明のある構成では、熱交換器が省かれ、第1媒体および/または第2媒体が、異なる温度を有する媒体で置換されうるように、室のうちの少なくとも1つが構成される。このようにして、例えば、熱交換器の代わりに、第1媒体および/または第2媒体が、好ましくは第1媒体が、第1室および/または第2室を貫流して導かれることが想定されうる。この場合、第1媒体および/または第2媒体は、外部から、すなわち第1室および/または第2室の外部から供給され、かつ再び外部へ排出される。このようにして、熱交換器の構造を省くことができるので有利である。貫流する第1媒体または第2媒体は、例えば、冷却回路からの水、または排出される水の廃熱とすることができる。
【0088】
ある実施形態では、第1媒体は、地熱プロセスによって加熱され、かつ第1室中に導かれ、そこで浮力体を加熱する一方で、第1媒体よりも冷たい(好ましくは少なくとも20K低温、特に好ましくは少なくとも30K低温、非常に特に好ましくは少なくとも40K低温)第2媒体は、第2室を通って導かれるが、そこで、浮力体が冷却される。さらなるある実施形態では、この装置の構成は、第2媒体が、第2室を通過した後、例えば地熱プロセスによって第2媒体を加熱する役割を果たす装置中に供給され、その後、第2媒体が次に第1室中に導かれ、そこで熱エネルギーを浮力体に放出するようになされている。
【0089】
有利なある実施形態によれば、熱交換器は、第3媒体も導くが、この第3媒体は、第1および/または第2室内の温度を下げるために、冷却剤として構成されている。あるいは、冷却剤が第1室および/または第2室、好ましくは双方のうちいずれか一方のみを貫流することができ、その結果室中にある浮力体が冷却される。
【0090】
本発明のある構成では、第1媒体および第2媒体は同じ化学構造を有する。したがって、第1室および第2室は、水または油を含有することができる。浮力体は両方の室を通って移動することができ、この際、移行領域は第1室と第2室とに流体連通もしている。第1室と第2室との間には水門システムを配置することができ、これにより第1室から第2室への熱拡散を防止または困難にすることができる。浮力体の体積およびしたがって浮力に影響を与えるために、浮力体が指定された室中で初めて最大の温度変化にさらされているので有利である。これに代わるある実施形態では、水門システムを省くことができる。
【0091】
さらなるある実施形態では、熱交換器の一次回路、すなわち熱交換器の第3媒体は、上述の太陽集熱器またはこれ以外の上述の廃熱生成プロセスの廃熱を導き、この際、第3媒体の温度は可変である。
【0092】
本発明は、浮力利用装置の利用方法に関し、この方法は、浮力によって浮力体を第1室中で移動させる工程と、この浮力体を重力によって第2室内で移動させる工程とを含み、この際、浮力体の移動は、無限レールシステムに沿って行われる。
【0093】
特に、本発明は、浮力利用装置を作動させ、かつ熱エネルギーを電気エネルギーおよび/または機械エネルギーに変換する方法に関し、この方法は、第1室および第2室と、少なくとも1つの浮力体と、第1媒体と、第2媒体と、熱交換器と、無限レールシステムと、浮力体の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するように備えられた変換器とを提供する。この方法は、熱交換器によって第1室および/または第2室に導入された熱エネルギーを電気エネルギーに変換する工程を含む。これは、上述のように、熱エネルギーの取り込みによって浮力体の平均密度に影響を与えることによって行われる。
【0094】
さらに、本発明は、浮力利用装置を作動させ、かつ熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための方法に関し、この方法は、工程として、第1室および第2室と、少なくとも1つの浮力体と、第1媒体および第2媒体と、熱交換器と、無限レールシステムと、変換器とを提供する工程を含み、この変換器は、浮力体の浮揚によって引き起こされる浮力体の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するよう備えられていて、この際、この浮力体の移動は、無限レールシステムに沿って行われ、第1室および/または第2室中への熱エネルギーの取り込みが熱交換器を介して行われ、本願で説明するように浮力体の平均密度が熱エネルギーの取り込みによって影響を受ける。
【0095】
さらに、本発明は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する方法に関し、この方法は、本願で定義される浮力利用装置と、変換器とを提供する工程を含み、この変換器は、浮力体の運動エネルギー、特に浮力体の浮力によって引き起こされる運動エネルギーを電気エネルギーに変換するように備えられていて、この際、特に無限レールシステムによって案内される浮力体の移動が無限レールシステムに沿って行われ、この際、第1室と第2室との間の温度差が、熱交換器によって誘導され、浮力体の平均密度および浮力が、この温度差によって増加または減少し、浮力体が、その平均密度に応じて、第1室中および第2室中で移動、好ましくは無限レールシステムに沿った移動を実施し、この移動が、変換器によって電気エネルギーに変換される。
【0096】
好ましくは、熱エネルギーは第1室中に導入される。しかし、熱エネルギーは、第1室の代わりに第2室中に導入することもできる。媒体のうちの少なくとも1つ、好ましくは媒体の1つのみ、すなわち第1媒体または第2媒体、さらに好ましくは第1媒体の熱エネルギー取り込みにより、浮力体は加熱され、その結果、本願中で説明するように、その平均密度が変化する。浮力体は、第1室から第2室中へと交互に移動し、この際、室間、特にこれらの室により含まれた媒体間の温度差は、少なくとも5Kより大きく、好ましくは10Kより大きく、特に好ましくは20Kより大きく、非常に特に好ましくは30Kより大きく、さらに好ましくは40Kより大きい。温度差が大きいほど、浮力体のより効率的な冷却または加熱が行われるので有利である。
【0097】
本方法のある実施形態では、第1室および/または第2室への熱エネルギー取り込みは、地熱プロセスおよび/もしくは太陽熱および/もしくは廃熱生成プロセス、または本願中に記載のさらなるプロセスによって提供される。
【0098】
さらに、本発明は、毛細管上昇を利用して、流体の位置エネルギーを提供し、位置エネルギーを電気エネルギーに変換する毛細管吸引気化装置に関する。
【0099】
特に、本発明は、流体の毛細管上昇を利用し、位置エネルギーを電気エネルギーに変換するための毛細管吸引気化装置に関し、この際、流体は、少なくとも1つの毛細管内で、下部容器から上部容器の方向に重力方向に逆らって搬送されることができ、この搬送が行われた後、流体は、上部容器中で気相に移行することができ、この際、流体は、上部容器中で気相から凝縮し、かつ凝縮された流体は、上部容器から下部容器内に落下する。
【0100】
さらに、本発明は、特に、流体の毛細管上昇を利用し、位置エネルギーを電気エネルギーに変換するための毛細管吸引気化装置に関し、この際、流体は、少なくとも1つの毛細管内で、下部容器から上部容器の方向に重力方向に逆らって搬送されることができ、この搬送が行われた後、流体は、上部容器中で気相に移行することができ、この際、流体は、上部容器中で気相から凝縮し、かつ凝縮された流体は、上部容器から下部容器内に落下し、この際、この上部容器は、流体を気化させるのに必要不可欠であるエネルギーを提供するように備えられた電磁放射線を受信するように、配置および形成されている。
【0101】
流体を気化させるのに必要不可欠なエネルギーは、太陽から放たれる放射線、特に赤外線によって提供することができる。
【0102】
流体の上昇により、この流体はより高い高さまで上昇し、これにより、より大きな位置エネルギーをうることができ、この位置エネルギーは変換器によって、利用可能な電気エネルギーに変換することができる。流体を気化させるのに必須であるエネルギーは、好ましくは太陽から放たれる放射線(例えば可視光線、赤外線)によって提供される。
【0103】
好ましくは、低温(例えば温度<30℃、好ましくは温度<50℃、特に好ましくは温度<80℃、さらに好ましくは温度<110℃)ですでに気相に移行する流体が使用される。低温で沸点を有する流体を使用すると、気化に必要なエネルギーが、より高い沸点を持つ流体の場合よりも低くできるという利点がある。
【0104】
毛細管上昇とは、液体が毛細管容器(毛細管とも呼ばれる)の材料を濡らす際に起こる。したがって、例えば水はガラス管中を上昇し、凹表面(メニスカス)を形成する。この挙動は、2つの物質間の接着力に帰するものである。この毛細管上昇を利用して、流体を(地球の中心までの距離に対して)より高い位置まで搬送することができ、この際、流体はより高い位置エネルギーを得て、この位置エネルギーは電気エネルギーへの変換に利用することができる。
【0105】
本発明のある構成では、装置は毛細管束を具備し、これは、2本以上の毛細管束、特に好ましくは50本以上、非常に特に好ましくは100本以上の毛細管を含む。この際、当業者は毛細管の直径を決定することができる。この際、毛細管の内径が小さいほど、流体の毛細管上昇の高さが高くなる。
【0106】
流体は液体を含み、この液体は、エネルギー取り込み下で気化可能な液体である。ある構成では、流体は極性化合物(例えば水)を含む。極性液体は毛細管壁への接着が高まるので、流体の上昇高さが高くなるという利点がもたらされる。
【0107】
好ましい実施形態では、流体は毛細管または毛細管束を通って、下部容器から重力に逆らって上部容器中へと上昇する。したがって、両容器は互いに流体連通している。上部容器内では、流体を気相に移行することができる。水の代わりに、水よりも沸点の低い別の流体を選択可能である点に注意すべきである。これにより、流体を気相に移行するために、流体を気化させるために必要不可欠な熱エネルギー取り込みがより少なくて済むので有利である。
【0108】
上部容器は、気相状態の流体がこの上部容器中に保持され、その中で凝縮するように構成されている。核生成プロセスの種類によって、凝縮には2つの基本的なタイプの違いがある。いずれの場合も、凝縮成分に対して気相が過飽和であることが条件となる。個々の気体粒子が気体内で出会ったときに一体化する場合、これは均一凝縮と呼ばれる。これには、界面の関与なしに、十分に遅い粒子が集まってより大きな構造を形成することが必須である。これとは逆に、不均一凝縮は非常に低い過飽和度しか必要ではない。この形式の凝縮は、既存の表面、すなわち通常は気相中に浮遊する固体粒子、凝縮核またはエアロゾル粒子上で起こる。これらは、それぞれの気体に対して一種の粒子補足器として作用し、この際、粒子の半径と化学的性質とが、気体粒子がどの程度これに良好に付着するかを実質的に決定する。同様に、この点は非粒子体の表面にも該当し、この場合はフォギングと呼ばれる。
【0109】
したがって、本発明のある実施形態では、上部容器は、少なくとも1つの凝縮部材を含み、この凝縮部材は、最も単純な場合では、流体の気相に接触する上部容器の壁部である。さらなるある構成では、この壁は、全体的または部分的に、気体状の流体の凝縮の改善を可能にするので有利である構造が設けられていてまたはこれで被覆されている。
【0110】
凝縮が起こった後、流体は上部容器から下部容器に戻ることができ、この際、この過程は重力によって起こるため、落下と称することができる。落下中、位置エネルギーは変換器によって電気エネルギーに変換されうる。
【0111】
ある実施形態では、変換器は、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の摩擦電気素子を含んでいる。摩擦電気素子は、表面上の流体の移動が静電荷を引き起こすという物理的効果を利用する。摩擦電気素子は、例えば、半導体であるインジウムスズ酸化物(ITO)の層を具備し、この上に、電気絶縁性ポリマーであるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が塗布されている。PTFEはいわゆるエレクトレットで、電荷を蓄積する、または、例えば摩擦によって電荷を収集することができる。小さなアルミニウム片が2つの層を連結し、かつ電極として機能する。PTFE層上に水滴が落ちると、この水滴が、撥水性のPTFE表面に広がり、かつ電気化学的相互作用によって帯電が発生し、この際、発生した水滴の数が増えることにより、表面の電荷も大きくなる。その後、この帯電を、電流を発生させるのに利用することができる。
【0112】
さらなるある構成では、流体は、摩擦電気素子を用いて電流の発生を有利に改善するために、脱イオン液体(例えば、塩を含まない水)を含むが、この理由は、流体中に含有される塩により、摩擦電気素子の効率が悪影響を受けうるからである。
【0113】
好ましいある実施形態では、上部容器内に配置されている上部毛細管端部は、平坦な部材(人工シートともいう)として形成され、この際、上部容器の内部空間が間隙開口を介して毛細管内部空間と流体連通しているように、この平坦な部材は構成されている。これは、たとえば微細な穴によって引き起こすことができる。その結果、流体は間隙開口を通って毛細管から上部容器中に到達することができる。間隙開口の構成は任意である。例えば、平坦な部材内に配置された細長い空隙、または円形または長方形の穴も考えられうる。穴または空隙の大きさは可変的に選択できる。例えば、間隙開口部の直径は5μm~2cmの間とすることができる。この直径は、平坦な部材の構成と空間的な方向付けとに応じている。これが例えば垂直方向に方向付けられている場合、流体の表面張力を十分に高くするために、例えば、100μm未満の間隙開口部が有利であり、その結果、流体が、重力によってもはや間隙開口部を通過しない。しかし、この点も使用する材料に応じる。この際、当業者は、説明したような効果を得るために、平坦な部材と間隙開口とをどのように構成せねばならないかを決定する。
【0114】
ある実施形態では、この平坦な部材は、熱吸収および/または光吸収被覆部を具備し、および/または熱吸収および/または光吸収材料から製造されている。この場合の利点は、この被覆部または材料に入射する光、例えば太陽光が、可能な限り効率的に熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーが、流体を平坦な部材の表面で気化させることにより得られる。
【0115】
上部容器は、流体密封で構成されていて、その結果、流体が気体または液体の状態で好ましくは漏れ出ない。しかし、この上部容器は、少なくとも1つの開口部を具備していて、これにより、流体が制御されて上部容器から漏れ出ることが可能になる。上部容器は、さらに気体室を具備していてもよく、その内容物は気体状流体と流体連通していない。ある実施形態では、気体室は浮揚用気体(例えばヘリウムのような不活性気体)で充填されていて、これにより上部容器は大気中で浮力を増加させることができる。
【0116】
上部容器および/または気体室の壁部が、電磁スペクトルを通過させる材料から製造されていることは当然理解される。
【0117】
理想的には、透明な材料が選択され、この材料は、太陽光、特に赤外線を、30%未満、好ましくは20%未満、特に好ましくは10%未満、非常に特に好ましくは5%未満遮蔽する。
【0118】
この透明素材の透明性により、さらに上部容器内の温度発生が改善され、かつしたがって流体の気化をより効率的にする。これはいわゆる温室効果によるもので、この効果は、温室でも観察されうる。
【0119】
毛細管または毛細管束は、柔軟性のない部材を具備することができるが、これは、この部材が、屈曲することができないか、または非常に限られた範囲までしか屈曲できないことを意味する。これに代わるある実施形態では、毛細管または毛細管束は、柔軟性のある部材(例えば、繊維)を具備する。好ましいある実施形態では、毛細管の材料はプラスチックで、この際、当業者は、毛細管の材料を、流体が可能な限り高く上昇する毛細管を生成するのに適した様々なプラスチックから選択することができる。当業者は、毛細管の内径を自由に選択できる。しかし、可能な限り高い流体の毛細管上昇を可能にする内径が好ましい。
【0120】
柔軟性のある毛細管または柔軟性のある毛細管束により、装置の機械的安定性を高めることができる。さらに、これに関連する柔軟性を利用して、追加の電気エネルギーを提供することができる。
【0121】
ある実施形態では、少なくとも1つの毛細管または毛細管束が、柔軟性のある包囲する流路中に配置されていることができ、この流路が、上部容器を下部容器と接続し、凝縮された流体を上部容器から下部容器に戻すことを可能にする。この柔軟性のある流路は、摩擦電気素子を具備することができる。
【0122】
さらに、この柔軟性のある流路または毛細管束は、少なくとも1つの圧電素子を具備することができる。例えば、圧電素子は、柔軟性のある流路に平行に配置されている柔軟性のある繊維を具備することができる。この繊維はプラスチックと金属化合物(例えばポリイミドおよび酸化亜鉛)とを含むことができる。この柔軟性のある繊維を伸ばすと電流が発生する。したがって、上部容器が浮揚用気体を含み、これが、上部容器に正の浮力を与え、かつさらに毛細管束または柔軟性のある流路を支持することが考えられうる。風の動きにより、柔軟性のある流路または毛細管束と、その上に配置された圧電繊維とが伸び、これにより、電流が発生する。
【0123】
平坦な部材を触媒部材として構成し、その結果、流体が水である場合に限り、太陽照射によって、流体を水素と酸素とに分解し、水素を浮揚用気体として使用できるようにすることも考えられうる。この場合の利点は、太陽に照射されたときに浮揚用気体が連続的に生成される点であるとわかる。水素と酸素とは上部容器から別々に導き出すことができ、したがって、この装置は、水素をエネルギー源として生成するために使用することができる。
【0124】
平坦な部材は、太陽集熱器気化器モジュールと称することもできる。その機能は、太陽から放射される放射線を用いて流体を気化させ、これにより、まだ気化していない流体の毛細管上昇を支持することである。
【0125】
さらに、本発明は、毛細管吸引気化装置を作動させるための方法に関し、特に、電気エネルギーを提供するための方法に関し、この方法は、以下を含み、すなわち、毛細管上昇を用いて流体を下部容器から上部容器中に移動させる工程と、太陽から放射される放射線(例えば可視光線、赤外線)によって上部容器中の流体を気化させる工程と、上部容器内で流体を凝縮させる工程と、凝縮された流体を重力によって上部容器から移動させる工程とを含み、この際、流体の気化は、平面である部材における太陽エネルギーを用いて行われ、凝縮された流体は、電気エネルギーを提供するための少なくとも1つの変換器を作動させる。
【0126】
最後に、本出願書面中、特に従属請求項中で挙げられた全ての特徴は、1つまたは複数の特定の請求項で正式に引用されているかに関わらず、個々に、または任意の組み合わせで、独立した保護に適している点に留意すべきである。
【0127】
本発明のさらなる利点、特徴および適用の可能性は、以下の実施形態の説明および図面からも明らかである。この際、記載されたおよび/または図示された全ての特徴は、特許請求項またはそれらの引用におけるそれらの概要とは無関係に、個々に、または任意の組み合わせで、本発明の対象物を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0128】
図1A】浮力利用装置のある実施形態を示す図である。
図1B】浮力利用装置のある実施形態を示す図であり、水門システムを拡大した図である。
図1C】浮力利用装置のある実施形態を示す図であり、図1Bに示した断面S-Sの図である。
図2A】浮力体のある実施形態を示す図である。
図2B】浮力体のある実施形態を示す図である。
図2C】浮力体のある実施形態を示す図である。
図2D図2Bに示した浮力体をガイドレールと共に示す図である。
図2E図2Dを変形した実施形態を示す図である。
図3A】浮力体のさらなるある実施形態を示す図であり、減圧された浮力体を示す図である。
図3B】浮力体のさらなるある実施形態を示す図であり、圧縮された浮力体を示す図である。
図3C】浮力体のさらなるある実施形態を示す図であり、減圧された浮力体を示す図である。
図3D】浮力体のさらなるある実施形態を示す図であり、圧縮された浮力体を示す図である。
図4A】浮力利用装置のある実施形態を示す図である。
図4B】浮力利用装置のある実施形態を示す図であり、図4Aを若干変形した実施形態を示す図である。
図5】毛細管吸引気化装置のある実施形態を示す図である。
図6A図5の毛細管吸引式気化装置を変形した実施形態を示す図である。
図6B図6Aの変形実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0129】
以下の図および実施形態を参照して、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0130】
様々な図において、機能的に同等な部品には常に同じ参照記号を付けているため、通常一度しか説明しない。
【0131】
図1A-Cは、浮力利用装置(1.0)のある実施形態を示していて、この装置は、第1媒体(2.1)(ここでは水)で充填された第1室(1.1)と、第2媒体(2.2)(ここでは空気)で充填された第2室(1.2)とを具備している。さらに、この装置は浮力体(3.0)を具備し、これらの浮力体は無限レールシステムとして構成された周回するガイド部(4.0)内で案内されることができる。第1室(1.1)と第2室(1.2)とは水門システム(1.3)によって互いに切り離されており、この水門システムは下側反転点(1.4)に配置されている。図1B中で拡大して示した水門システム(1.3)は、前後に連続して置かれた複数のリップ密閉部(1.5)を具備し、これらの内径は浮力体(3.0)の断面に正確に適合するように構成されている。浮力体(3.0)はポリエチレン製の中空体として製造されていて、ポリテトラフルオロエチレンで包み込まれているので、その結果、浮力体(3.0)はできる限り摩擦を少なくして無限レールシステム(4.0)を通って案内されることができる。不図示の変換器が無限レールシステム(4.0)に沿って配置されていて、浮力体(3.0)の運動エネルギーを、第1室(1.1)中での上昇時、および第2室(1.2)中での落下時に、電気エネルギーに変換する。図1Cは、図1Bに示した断面S-Sの図である。この場合、周回するガイド部(4.0)は、第1ガイドレール(4.1)、第2ガイドレール(4.2)および第三ガイドレール(4.3)を具備し、これらのガイドレールは互いに対して120°の角度で配置されている。リップ密閉部(1.5)の内径は、浮力体(3.0)の断面に正確に適合するように構成されていて、その結果、浮力体(3.0)とリップ密閉部(1.5)との間に第1媒体(2.1)が入り込めないので有利である。ガイドレール(4.1、4.2、4.3)は、一方ではリップ密閉部を安定させ、他方では周回するガイド部(4.0)を通って浮力体(3.0)を連続的にガイドする役割を果たす。あるいは、互いに180°の角度で配置された2本のみのガイドレールを使用することもできる。
【0132】
図2A図2Bおよび図2Cはそれぞれ、浮力体(3.0)のある実施形態を示していて、これらの浮力体は実質的に断面が円形の輪郭を有する。浮力体(3.0)は、3本のガイドレール(4.1、4.2、4.3)内に配置されていて、その結果、浮力体(3.0)はガイドレール(4.1、4.2、4.3)の長手方向にのみ移動可能である。図2Dは、図2Bに示した浮力体(3.0)をガイドレール(4.1、4.2、4.3)と共に示していて、この際、これらのガイドレールは互いに120°の角度で配置されている。図2Eはこれから変形された実施形態を示し、この際、浮力体(3.0)の外側は、ガイドレール(4.1、4.2、4.3)がその中に係合して案内される輪郭部(5.0)を有するように構成されている。この輪郭部により、浮力体(3.0)が、浮力体の長軸の周りで回転移動するのを防止することができるので有利である。
【0133】
図3Aおよび図3Bは、浮力体(3.0)のさらなる実施形態を示すが、この浮力体の平均密度、およびしたがってその浮力は温度変化に応じる。この際、浮力体(3.0)は、中心に配置された空気圧部材(3.1)を具備し、その機能は、浮力体(3.0)の平均密度を下げ、それによって浮力を増加させるために、成形用鉢状部(3.2)どうしを互いから離れて移動させることである。浮力体(3.0)が加熱されるとすぐに、これらの成型用鉢状部(3.2)を包み込む熱応答性ポリマー外被部(3.3)が収縮し、この際、この熱応答性ポリマー外被部(3.3)の収縮によって作用する力が空気圧部材の力に対抗する。空気圧部材(3.1)内にはバネを配置することもできる。この際、空気圧部材(3.1)の最大の力は、転移温度に達するとすぐに、熱応答性ポリマー外被部(3.3)の力がより大きくなるように設定されている。熱応答性ポリマー外被部(3.3)を収縮させることにより、浮力体(3.0)の平均密度、およびしたがってこの浮力体の浮力が減少する。再び温度が低下すると、空気圧部材(3.1)の外向きの力が勝り、浮力は再び増加する。この場合、熱応答性ポリマー外被部(3.3)は、さらに、伸縮性プラスチック製の撥液性を有する外被部(3.4)で取り囲まれている。完全に圧縮された浮力体の浮力は最も低い。完全に減圧された浮力体の浮力は最大である。この際、図3Aは減圧された浮力体(3.0)を示し、かつ図3Bは圧縮された浮力体(3.0)を示す。
【0134】
図3Cおよび図3Dは、浮力体(3.0)のさらなるある実施形態を示す。ここで、浮力体(3.0)は、気体で充填された空気圧中空体(3.5)を具備し、この中空体は、熱応答性ポリマー網目組織(3.6)と撥液性を有する外被部(3.4)とに包み込まれている。機能の原理は上述の原理と同じで、図3Cは減圧浮力体(3.0)を示し、かつ図3Dは圧縮浮力体(3.0)を示している。
【0135】
図4Aは、浮力利用装置(1.0)のある実施形態を示し、ここでは、浮力体(3.0)が示されていて、この浮力体(3.0)の平均密度は、上述のように温度により変化する。ここでは、無限レールシステムは図示されていないが、圧縮浮力体(3.7)と減圧浮力体(3.8)とが無限レールシステム内で移動可能であるように実施されている。したがって、好ましくは、無限レールシステムと浮力体との間に十分な遊びがあり、減圧浮力体と圧縮浮力体とを無限レールシステム内でガイド可能である。ここで、浮力利用装置(1.0)は、絶縁性を有する仕切り壁(1.6)によって互いに対して境界を設けられた第1室(1.1)と、第2室(1.2)とを具備し、この際、両方の室中に同じ媒体(ここでは水)が含有されている。第2室(1.2)中には熱交換器(1.7)が配置されていて、これが、バイオガスプラントからの廃熱を導く。熱交換器(1.7)は、これを通って案内される浮力体(3.0)の温度上昇を引き起こし、この温度上昇は、その平均密度を低下させるように構成されている。下側反転点(1.4)に到達すると、浮力が再び増加し、これにより浮力体(3.0)が上方に上昇する。第1室(1.1)と第2室(1.2)との上端には、空気室(2.3)が配置されている。これは、第2室(1.2)から第1室(1.1)中への熱伝達を最小限にするための絶縁体として機能する。変換器は図示していないが、これが浮力体の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。図4Bは、図4Aを若干変形した実施形態を示していて、この実施形態では空気室が存在しない。その代わりに、第1室(1.1)と第2室(1.2)とが、絶縁性を有する仕切り壁(1.6)によって互いに切り離されていて、この場合、この仕切り壁は、第2室(1.2)から第1室(1.1)中への熱拡散が予防されるように実施されているが、これは、例えば、絶縁性を有する仕切り壁(1.6)と浮力体(3.0)との間で、できる限り少ない水が拡散できるように、仕切り壁開口部(1.8)が構成されていることにより実施されている。仕切り壁開口部(1.8)は、本発明による水門システムのある実施形態とすることができる。
【0136】
図5は、毛細管吸引気化装置(6.0)のある実施形態を示す。毛細管束(6.1)、すなわち互いに平行に配置された毛細管が、流体(ここでは水)を流体密封の下部容器(7.1)から上部容器(7.2)中に送り込む。簡略化のため、ここでは1本の毛細管のみを示す。上部容器(7.2)では、毛細管束の上端は、間隙開口(8.1)を備えた平坦な部材(8.0)として構成されている。間隙開口は、ここでは細長い空隙として構成されている。さらに、間隙開口(8.1)は互いに平行に配置されている。上部容器(7.2)も流体密封に構成されていて、透明な部材(7.3)を具備する。入射する太陽光(7.4)は透明な部材(7.3)を透過し、平坦な部材(8.0)に当たってこの部材が熱を帯び、これにより、間隙開口(8.1)を介して水が気化する。この気化は波線の矢印で示されている。上部容器(7.2)が流体密封で構成されているので、水蒸気が上部容器(7.2)の壁部で凝縮し、上部水盤(7.5)中で収集される。ここから凝縮物(7.6)が縦樋(6.2)中を通って再び下部容器(7.1)中に戻る。縦樋(6.2)内には変換器(8.2、8.3)が配置されていて、これが、水の位置エネルギーまたは運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。この際、変換器を、回転素子(8.2)または摩擦電気素子(8.3)として構成することができる。水の代わりに、沸点の低い別の流体も考えられう、その結果、太陽光入射が弱くても流体の気化が確保される。
【0137】
図6Aは、図5の毛細管吸引式気化装置(6.0)を変形した実施形態を示す図である。この場合、上部容器(7.2)は、内側バルーン(9.0)と外側バルーン(9.1)とを具備する。内側バルーン(9.0)内では、間隙開口を備えた平坦な部材(8.0)が配置されていて、この平坦な部材は、ここでは紐状部として構成された吊り下げ具(9.2)を介して内側バルーン(9.0)の壁部に接続されている。内側バルーン(9.0)は、外側バルーン(9.1)の内部に吊り下げ具(9.2)を介して吊り下げられている。両バルーン(9.0、9.1)は、透明でかつ流体密封性を有するプラスチックから作られている。内側バルーン(9.0)の壁部と外側バルーン(9.1)との間に配置されている気体室(9.3)中には、浮揚用気体(ここではヘリウム)があり、これが大気圏内で上部容器(7.2)に対して浮力を増加させる。毛細管束(6.1)内の流体(ここでは水)の上昇と、平坦な部材(8.0)の間隙開口を介した流体の気化と、縦樋(6.2)を通る下部容器(7.1)中への凝縮および移動との動作原理は、図5で説明した過程に相当する。
【0138】
図6Bは、図6Aの変形実施形態を示し、この場合、毛細管束(6.1)も縦樋(6.2)も可撓性を有して構成されていて、包囲する柔軟性のある流路(6.3)中に配置されている。圧電繊維(6.4)は、縦樋(6.2)と、毛細管束(6.1)と、柔軟性のある流路(6.3)の内壁との間に配置されている。したがって、柔軟性のある流路(6.3)が伸縮または圧縮すると、電気エネルギーを取り出すことができる。
【0139】
記載された構成部品のサイズの比率は、縮尺通りには図示されていない。さらに、示された本発明の実施形態は、それぞれ例示的なものとして理解され、かつ限定的なものではないと理解される。本発明は、これから変形するように実施することもできる。例えば、さらなるある代替となる構成では、平坦な部材と毛細管束と縦樋とを省くことができる。その代わりに、圧電繊維を、浮揚用気体で充填されたバルーンによって支持された可撓性を有する部材に沿って配置することができる。
【符号の説明】
【0140】
1.0 浮力利用装置
1.1 第1室
1.2 第2室
1.3 水門システム
1.4 下側反転点
1.5 密閉部材/リップ密閉部
1.6 絶縁性を有する仕切り壁
1.7 熱交換器/加熱素子
1.8 仕切り壁開口部
1.9 上側反転点
2.1 第1媒体
2.2 第2媒体
2.3 空気室
3.0 浮力体
3.1 空気圧素子
3.2 成形用鉢状部
3.3 熱応答性ポリマー外被部
3.4 撥液性を有する外被部
3.5 空気圧中空体
3.6 熱応答性ポリマー網目組織
3.7 圧縮浮力体
3.8 減圧浮力体
4.0 周回するガイド部/無限レールシステム
4.1 第1ガイドレール
4.2 第2ガイドレール
4.3 第3ガイドレール
5.0 輪郭部
6.0 毛細管吸引気化装置
6.1 毛細管/毛細管束
6.2 縦樋
6.3 包囲する流路
6.4 圧電素子/圧電繊維
7.1 下部容器
7.2 上部容器
7.3 透明な部材
7.4 太陽光
7.5 上部水盤
7.6 凝縮物/凝縮された流体
8.0 平坦な部材
8.1 間隙開口
8.2 変換器(回転素子)
8.3 変換器(摩擦電気素子)
9.0 内部バルーン
9.1 外部バルーン
9.2 吊り下げ具
9.3 気体室


図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】