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特表2024-539887低斑点および低減されたアイスフラワー欠陥を有するポリマー中間層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】低斑点および低減されたアイスフラワー欠陥を有するポリマー中間層
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20241024BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241024BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B32B7/023
B32B27/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523405
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 US2022046981
(87)【国際公開番号】W WO2023069406
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/262,702
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】マ,イーノン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ケユアン
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK23
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA21A
4F100BA21B
4F100EH17
4F100EH17A
4F100EH17B
4F100GB32
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JK13
4F100JK14
4F100JK14B
4F100JN30A
4F100JN30B
4F100YY00A
4F100YY00B
4G061AA02
4G061AA11
4G061AA20
4G061AA25
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB16
4G061CB19
4G061CB20
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
光学的欠陥に抵抗するポリマー中間層。ポリマー中間層は、第1のポリマー層および第2のポリマー層を備える。第1のポリマー層は、第2のポリマー層の第1の側に配置される。第2のポリマー層の第1の側の非エンボス加工表面は、40ミクロン超のR値により定義される表面粗度を含む。ポリマー中間層は、1.0未満の斑点値を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層であって、
第1のポリマー層;および
第2のポリマー層
を備え、
前記第1のポリマー層が、前記第2のポリマー層の第1の側に配置され、
前記第2のポリマー層の第1の側の非エンボス加工表面が、40ミクロン超のR値により定義される表面粗度を含み、
前記ポリマー中間層が、1.0未満の斑点値を有する、
ポリマー中間層。
【請求項2】
光学的欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層であって、
第1のポリマー層;および
第2のポリマー層
を備え、
前記第1のポリマー層が、前記第2のポリマー層の第1の側に配置され、
前記第2のポリマー層の第1の側の表面が、500ミクロン超のRSM値により定義される表面粗度を含み、
前記ポリマー中間層が、1.0未満の斑点値を有する、
ポリマー中間層。
【請求項3】
表面粗度が、メルトフラクチャーにより形成された規則的パターン表面粗度である、請求項1または2に記載のポリマー中間層。
【請求項4】
値が、50ミクロン超、60ミクロン超、もしくは70ミクロン超である、および/またはR値が、40~70ミクロン、40~60ミクロン、40~50ミクロン、50~70ミクロン、50~60ミクロン、もしくは60~70ミクロンである、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー中間層。
【請求項5】
前記第2のポリマー層の第1の側の表面が、500ミクロン超のRSM値により定義される表面粗度を含む、請求項1に記載のポリマー中間層。
【請求項6】
SM値が、600ミクロン超、700ミクロン超、もしくは800ミクロン超である、および/またはRSM値が、500~800ミクロン、500~700ミクロン、500~600ミクロン、600~800ミクロン、600~700ミクロン、もしくは700~800ミクロンである、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー中間層。
【請求項7】
斑点値が、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満もしくは0.5未満である、および/または斑点値が、0.5~1.0、0.5~0.9、0.5~0.8である、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマー中間層。
【請求項8】
第1のポリマー層が、第1の貯蔵弾性率を有し、第2のポリマー層が、第2の貯蔵弾性率を有し、第1の貯蔵弾性率と第2の貯蔵弾性率との間の差が、約45,000Pa未満、40,000Pa未満、35,000Pa未満、30,000Pa未満、25,000Pa未満、20,000Pa未満、15,000Pa未満、10,000Pa未満、または5,000Pa未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリマー中間層。
【請求項9】
第3のポリマー層をさらに備え、前記第1のポリマー層が、前記第2のポリマー層と前記第3のポリマー層との間に位置付けられる、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリマー中間層。
【請求項10】
前記第1のポリマー層の厚さが、前記ポリマー中間層の長さに沿って略一定である、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマー中間層。
【請求項11】
前記第1のポリマー層の厚さが、前記第1のポリマー層が楔形を有するように前記ポリマー中間層の長さに沿って変動する、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリマー中間層。
【請求項12】
光学的欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層を形成する方法であって、
(a)同時押出ダイを通して第1のポリマー層を押出すステップと;
(b)同時押出ダイを通して第2のポリマー層を押出すステップと;
(c)同時押出ダイを通して第3のポリマー層を押出すステップと
を含み、
前記ステップ(a)、(b)、および(c)の押出時に、第1のポリマー層が、第2のポリマー層と第3のポリマー層との間に位置付けられ、
前記ステップ(a)の押出中に、前記第1のポリマー層が、第1の貯蔵弾性率値を有し、前記ステップ(b)の押出中に、前記第2のポリマー層が、第2の貯蔵弾性率値を有し、第1の貯蔵弾性率値と第2の貯蔵弾性率値との間の差が、約45,000Pa未満であり、
前記ステップ(a)、(b)、および(c)の押出時に、ポリマー中間層が、1.0未満の斑点値を有する、
方法。
【請求項13】
第1の貯蔵弾性率値と第2の貯蔵弾性率値との間の差が、40,000Pa未満、35,000Pa未満、30,000Pa未満、25,000Pa未満、20,000Pa未満、15,000Pa未満、10,000Pa未満、または5,000Pa未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第2のポリマー層の表面の表面粗度が、R値により定義され、R値が、40ミクロン超、50ミクロン超、60ミクロン超、もしくは70ミクロン超である、および/またはR値が、40~70ミクロン、40~60ミクロン、40~50ミクロン、50~70ミクロン、50~60ミクロン、もしくは60~70ミクロンである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
第2のポリマー層の表面の表面粗度が、RSM値により定義され、RSM値が、500ミクロン超、600ミクロン超、700ミクロン超、もしくは800ミクロン超である、および/またはRSM値が、500~800ミクロン、500~700ミクロン、500~600ミクロン、600~800ミクロン、600~700ミクロン、もしくは700~800ミクロンである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
斑点値が、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満もしくは0.5未満である、および/または斑点値が、0.5~1.0、0.5~0.9、0.5~0.8である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(a)、(b)、および(c)の押出が、同時に行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(a)、(b)、および(c)の押出が、同時押出により行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
光学的欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層であって、請求項12から18のいずれか一項に記載の方法に従って形成される、ポリマー中間層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、ポリマー中間層、およびポリマー中間層を備える複数層パネルの分野に関する。より詳細には、本発明は、複数の熱可塑性ポリマー層を備えるポリマー中間層の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]複数層パネルは、基板(例えば、これらに限定されないが、ガラス、ポリエステル、ポリアクリレート、またはポリカーボネート)の2枚のシートで構成され、それらの間に1つまたは複数のポリマー中間層が挟まれている。建築窓用途および自動車や航空機の窓、ならびに太陽光発電ソーラーパネルには、ラミネート複数層ガラスパネルが一般的に利用される。最初の2つの用途は、一般にラミネート安全ガラスと呼ばれる。ラミネート安全ガラスにおける中間層の主な機能は、ガラスに加えられた衝撃または力から生じるエネルギーを吸収すること、ガラスに力が加えられてガラスが破壊された場合であってもガラスの層を結合された状態に維持すること、およびガラスが鋭い破片に砕けるのを防止することである。さらに、中間層は、ガラスに優先的な遮音等級を付与し、UVおよび/またはIR光透過を低減し、関連する窓の美的魅力を高めることができる。例えば、より静かな内部空間をもたらす望ましい音響特性を有するラミネートガラスパネルが製造されている。
【0003】
[0003]さらに、ラミネートガラスパネルは、インストルメントクラスタの像または他の重要な情報を車両の操作者の目の高さのフロントガラス上の場所に投影する、ヘッドアップディスプレイ(「HUD」)システム(ヘッドアップシステムとも呼ばれる)を備えた車両に使用されている。そのようなディスプレイは、運転者が、視覚的にダッシュボード情報にアクセスしながら、その後の走行路への集中を保つことを可能にする。一般に、自動車または航空機におけるHUDシステムは、車両ウィンドスクリーンの内側表面を使用して、投影像を部分的に反射する。しかしながら、車両ウィンドスクリーンの外側表面で二次反射が生じ、これが弱い二次像または「ゴースト」像を形成する。これらの2つの反射像は位置がオフセットしているため、二重像がしばしば観察され、これは運転者にとって望ましくない視認体験をもたらす。均一な一定の厚さを有するフロントガラス上に像が投影された場合、ガラスの内側および外側表面から反射される際の投影像の位置の差に起因して、干渉性の二重像または反射ゴースト像が形成される。
【0004】
[0004]これらの二重またはゴースト像に対応する1つの方法は、内側および外側ガラスシートを互いに角度を付けて配向することである。これは反射像の位置を単一点に整列させ、それにより単一像を形成する。典型的には、これは、少なくとも1つの不均一な厚さの領域を含む楔形または「テーパ型」中間層を使用することによって、外側シートを内側シートに対してずらすことにより行われる。多くの従来のテーパ型中間層は、HUD領域全体にわたり一定の楔角度を含むが、最近では、HUD領域にわたり複数の楔角度を含むいくつかの中間層が開発されている。
【0005】
[0005]ガラスパネルの必要な性質および性能特性を達成するために、複数層または多層中間層を利用することが一般的な慣例となっている。本明細書において使用される場合、「多層」および「複数層」という用語は、2つ以上の層を有する中間層を意味し、多層および複数層は交換可能に使用され得る。複数層中間層は、典型的には、少なくとも1つの軟質層および少なくとも1つの硬質層を含有する。上述のように、ガラスパネルの遮音特性を有する、2つのより剛性または硬質の「スキン」層の間に挟まれた1つの軟質「コア」層を有する中間層が設計されている。逆の構成、すなわち2つのより軟質の層の間に挟まれた1つの硬質層を有する中間層は、ガラスパネルの衝撃性能を改善することが見出されており、また遮音用にも設計され得る。いずれにしても、軟質「コア」層は、一般に音響層と呼ばれ(軟質層は音響透過を有益に低減するため)、一方硬い「スキン」層は、従来の層、または非音響層と呼ばれる。
【0006】
[0006]中間層の層は、一般に、ポリ(ビニルブチラール)等のポリマー樹脂を1種または複数種の可塑剤と混合し、押出を含むがこれに限定されない任意の適用可能なプロセスまたは当業者に知られている方法により混合物をシートに溶融加工することによって製造され、層は、同時押出およびラミネーション等のプロセスによって組み合わされる。三層中間層では、コア層が比較的硬いスキン層より軟質となるように、コア層はスキン層より多くの可塑剤を含んでもよい。他の追加の成分が、様々な他の目的で任意選択で添加されてもよい。中間層シートが形成された後、中間層シートは、典型的には、以下で議論されるように、輸送および保管のため、ならびに複数層ガラスパネルにおける後の使用のために収集され、巻かれる。
【0007】
[0007]以下は、複数層ガラスパネルが中間層と組み合わせて一般に製造される様式の単純化された説明を提供する。まず、複数層中間層は、複数マニホールド同時押出デバイスを使用して同時押出され得る。デバイスは、各マニホールドから押出開口部に向けてポリマー溶融物を同時に押出すことによって動作する。層の特性は、押出開口部におけるダイリップの属性(例えば温度および/または開口寸法)を調節することによって変化させることができる。中間層シートは、形成されたら、2枚のガラス基板の間に設置され得、いかなる過剰の中間層も端部から切り取られてアセンブリが形成される。複数のポリマー中間層シートまたは複数層を有するポリマー中間層シート(またはその両方の組合せ)が2枚のガラス基板内に設置されて、複数のポリマー中間層を有する複数層ガラスパネルが形成されることは、めずらしいことではない。次いで、適用可能なプロセスまたは当業者に知られている方法によって、例えばニップローラ、真空バッグまたは別の脱気機構を介して、アセンブリから空気が除去される。さらに、中間層は、当業者に知られている任意の方法によって基板に部分的に圧着される。最後のステップにおいて、最終的な一体構造を形成するために、この予備的結合は、高温および高圧ラミネーションプロセス、または当業者に知られている任意の他の方法、例えばこれに限定されないがオートクレーブ処理等によってより永久的にされる。
【0008】
[0008]軟質コア層および2つのより硬質のスキン層を有する三層中間層等の多層中間層は、有益な音響減衰特性を提供することが知られている。しかしながら、これらの多層音響中間層を含有するガラスパネルは、極限条件下において、一般にアイスフラワーとして知られる(スノーフレークとしても知られる)欠陥を発達し得、これはパネル内の過剰の残留捕捉空気およびガラス内の応力の存在下で開始する。具体的には、ラミネート複数層ガラスパネル構築物の製造プロセス中、基板と中間層との間、または多層中間層の個々の層の間の間隙空間内に、これらの層が一緒にスタックされて多層中間層を形成する際に空気および他のガスがしばしば捕捉される。この捕捉空気は、一般に、グレージングまたはパネル製造プロセスにおいて真空または構築物を脱気するニップロールによって除去される。しかしながら、これらの技術は、基板間の間隙空間内に捕捉された空気の全てを除去する上で必ずしも効果的であるとは限らない。これらの空気のポケットは、ガラスの曲率が一般に空気のギャップをもたらす、整合していないガラス(例えば強化ガラス、熱強化ガラス、および厚いアニールガラス)ならびにフロントガラスで特に明らかである。フロントガラスにおけるこれら空気のギャップは、一般に「屈曲ギャップ」と呼ばれる。さらに、オートクレーブ処理中に屈曲ギャップが存在する場合、熱および圧力がガラスを圧縮し、中間層に適応させてギャップを狭め、元のギャップ領域のガラスに高い応力をもたらす。
【0009】
[0009]上記のように、脱気技術は、ガラスパネルアセンブリから空気の全てを除去する上で必ずしも効果的であるとは限らない。その結果、ガラスと中間層との間に残留空気が存在する。オートクレーブ処理中、残留空気は、熱および圧力下で中間層に、ほとんどの場合スキン層に溶け込む。スキン層に位置する残留空気は、コア層またはスキン-コア界面内に移動し得、最終的にスキン層とコア層との間を分割して平衡状態に達する。大量の残留空気(例えば過剰の残留空気)が中間層に存在する場合、特に高温で、中間層が軟らかくなり核形成に対する抵抗性が低くなった際に気泡が核形成し得る。
【0010】
[00010]2つのより硬質のスキン層に挟まれた軟質コア層を有する多層音響中間層では、例えば軟質層が2つのより硬質の層の間に拘束されている場合、核形成はより粘性の低い媒体で有利であるため、気泡は一般にまず軟質コア層内に形成する。温暖から高温の気候において、例えば夏季の間、ガラスの温度は、建物および車両に取り付けられたラミネートガラスでは50℃~100℃に上昇し得る。これらの高い温度では、ガラスパネルまたはフロントガラス内の応力に起因する力がガラスに対してその面に垂直に、および反対方向に圧力を加え、ガラスパネルはその元の状態に戻ろうとして互いから離れる方向に引っ張られる。応力は、核形成および膨張する空気の抵抗性を低減し、コア層内にバブルを成長させる。
【0011】
[00011]高い温度(例えば50℃~100℃)では、屈曲ギャップまたはガラス不整合による応力は、バブルをコア層内で無作為な半径方向に最も抵抗性の低い経路で膨張させる。欠陥が半径方向の膨張を続けると、分岐および樹枝状の特徴が形成し、望ましくないアイスフラワーの光学的外観をもたらす。さらに、コア層内でのアイスフラワーの形成は、典型的には、層間の分離をもたらし、パネルの構造的完全性を低減する。
【0012】
[00012]多層ラミネートガラスパネルの製造におけるさらなる問題は、最終的な一体構造における斑点の存在である。「斑点」という用語は、最終的な一体構造における不快な視覚的欠陥、すなわち不均一な点の外観を指す。換言すれば、斑点は、内側ポリマー中間層(複数可)の表面領域の粒状性またはテクスチャの尺度である。これは、光学的ひずみの形態である。斑点は、異なる屈折率を有するラミネートの層間の界面の小規模な表面変動によって引き起こされると考えられる。層の屈折率は、その物質を通過する光の速度の尺度である。斑点は、層の間に十分に大きい屈折率の差があり、ある程度の界面変動がある限り、理論的にはいかなる複数層中間層でも可能である。多層ラミネートガラスパネルの商業的応用(例えば、車両、航空機および建築における応用)の最終用途の(ほとんどではなくとも)多くにおいて、ある程度の光学的品質が必要とされるため、多層ラミネートガラスパネルの最終的な一体構造における斑点の存在は問題となり得る。
【0013】
[00013]上記を鑑みて、従来の多層中間層の他の光学的特性、機械的特性および音響特性を低減することなく、これらの光学的欠陥(すなわちアイスフラワーおよび斑点)の形成に抵抗する多層中間層を開発することが、当技術分野において必要とされている。より具体的には、許容され得る斑点値をも有しながら、アイスフラワーを形成する空気の核形成および膨張に抵抗する、少なくとも1つの軟質コア層および1つの硬質スキン層を有する多層中間層を開発することが、当技術分野において必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】[00014]ポリマー中間層に対向する1対のガラスプレートを備えるガラスラミネートパネルの概略図である。ポリマー中間層は三層を備え、1対のスキン層がコア層に対向している。
図2】[00015]ポリマー中間層に対向する1対のガラスプレートを備えるガラスラミネートパネルの別の概略図である。ポリマー中間層は楔形を有する。
図3】[00016]ダイおよび/または1対のダイリップにより画定される開口部を有する同時押出ダイの概略断面図である。ダイは多層ポリマー中間層を同時押出するように構成される。
図4】[00017]メルトフラクチャーによりポリマー中間層の表面上に形成されたタイヤ跡パターンの形態の規則的表面粗度パターンを有するポリマー中間層の拡大図である。
図5】[00018]ポリマー中間層の表面上に形成された無作為表面パターンを有するポリマー中間層の拡大図である。
図6】[00019]本発明の実施形態に従って形成された、複数のスタックされた本発明の三層中間層の写真である。本発明の三層中間層は、アイスフラワー形成がないことを示している。
図7】[00020]先行技術のプロセスに従って形成された、複数のスタックされた対照三層中間層の写真である。対照三層中間層は、アイスフラワー形成の存在を示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
[00021]本発明の一態様は、光学的欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層に関する。ポリマー中間層は、第1のポリマー層および第2のポリマー層を備える。第1のポリマー層は、第2のポリマー層の第1の側に配置される。第2のポリマー層の第1の側の非エンボス加工表面は、40ミクロン超のR値により定義される表面粗度を含む。ポリマー中間層は、1.0未満の斑点値を有する。
【0016】
[00022]本発明の別の態様は、光学的欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層に関する。ポリマー中間層は、第1のポリマー層および第2のポリマー層を備える。第1のポリマー層は、前記第2のポリマー層の第1の側に配置される。第2のポリマー層の第1の側の表面は、500ミクロン超のRSM値により定義される表面粗度を含む。ポリマー中間層は、1.0未満の斑点値を有する。
【0017】
[00023]本発明のさらなる態様は、光学的欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層を作製するさらなる方法に関する。方法の1つのステップは、同時押出ダイを通して第1のポリマー層を押出すステップを含む。さらなるステップは、同時押出ダイを通して第2のポリマー層を押出すステップを含む。さらなるステップは、同時押出ダイを通して第3のポリマー層を押出すステップを含む。押出ステップ時に、第1のポリマー層は、第2のポリマー層と第3のポリマー層との間に位置付けられる。第1のポリマー層の押出中、第1のポリマー層は、第1の貯蔵弾性率値を有する。第2のポリマー層の押出中、第2のポリマー層は、第2の貯蔵弾性率値を有する。第1の貯蔵弾性率値と第2の貯蔵弾性率値との間の差は、約45,000Pa未満である。第1、第2、および第3のポリマー層が押出された後、ポリマー中間層は、1.0未満の斑点値を有する。
【0018】
[00024]本発明のさらなる態様は、以下のステップを含む方法を用いて形成された光学的欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層に関する。1つのステップは、同時押出ダイを通して第1のポリマー層を押出すステップを含む。さらなるステップは、同時押出ダイを通して第2のポリマー層を押出すステップを含む。さらなるステップは、同時押出ダイを通して第3のポリマー層を押出すステップを含む。押出ステップ時に、第1のポリマー層は、第2のポリマー層と第3のポリマー層との間に位置付けられる。第1のポリマー層の押出中、第1のポリマー層は、第1の貯蔵弾性率値を有する。第2のポリマー層の押出中、第2のポリマー層は、第2の貯蔵弾性率値を有する。第1の貯蔵弾性率値と第2の貯蔵弾性率値との間の差は、約45,000Pa未満である。第1、第2、および第3のポリマー層が押出された後、ポリマー中間層は、1.0未満の斑点値を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[00025]本発明の実施形態は、複数層パネルおよび複数層パネルを作製する方法に関する。一般に、複数層パネルは、ガラスまたは他の適用可能な基板の2枚のシートで構成され、それらの間に1つまたは複数のポリマー中間層シートが挟まれている。複数層パネルは、一般に、少なくとも1つのポリマー中間層シートを2つの基板の間に設置してアセンブリを形成することによって製造される。図1は、1対のガラスシート12およびそれらの間に挟まれた多層中間層を備える複数層パネル10を示す。多層中間層は、軟質コア層14、およびコア層14のいずれかの側に位置付けられた2つの比較的硬質のスキン層16を含む、3つの個別のポリマー中間層シートを有する3層中間層として構成される。
【0020】
[00026]いくつかの実施形態において、中間層(例えばコア層14およびスキン層16)は、中間層の長さにわたり略一定または均一な厚さを有する。しかしながら、代替の実施形態において、図2に示されるように、中間層は、少なくとも1つの不均一な厚さの領域を有してもよい。例えば、コア層14およびスキン層16で構成される中間層は、中間層の厚さが中間層の長さにわたり(例えば直線的または非直線的に)変化するような楔形であってもよい。いくつかのそのような実施形態において、中間層の厚さは、コア層14の厚さの変化により変化してもよい(すなわちスキン層16は略一定の厚さを有する)。代替として、中間層の厚さは、スキン層16の厚さの変化により変化してもよい(すなわちコア層14は略一定の厚さを有する)。さらなる代替例において、中間層の厚さは、コア層14およびスキン層16の両方の厚さの変化により変化してもよい。
【0021】
[00027]本明細書に開示される中間層および複数層パネルのより包括的な理解を容易にするために、本出願において使用されるある特定の用語の意味が定義される。これらの定義は、当業者により理解されるようなものにこれらの用語を制限するものとして解釈されるべきではなく、単に、ある特定の用語がどのようにして本明細書において使用されるかの理解の向上を提供するものとして解釈されるべきである。
【0022】
[00028]「ポリマー中間層シート」、「中間層」、「ポリマー層」および「ポリマー溶融物シート」という用語は、本明細書において使用される場合、単層シートまたは多層中間層を指し得る。「単層シート」は、その名前が示唆するように、1つの層として押出された単一ポリマー層である。一方、多層中間層は、別個に押出された層、同時押出された層、または別個に押出された層および同時押出された層の任意の組合せを含む、複数の層を備え得る。したがって、多層中間層は、例えば、互いに組み合わされた2つ以上の単層シート(「複層シート」)、互いに同時押出された2つ以上の層(「同時押出シート」)、互いに組み合わされた2枚以上の同時押出シート、少なくとも1枚の単層シートおよび少なくとも1枚の同時押出シートの組合せ、ならびに少なくとも1つの複層シートおよび少なくとも1枚の同時押出シートの組合せを備えてもよい。本発明の様々な実施形態において、多層中間層は、互いに直接接触して配置された少なくとも2つのポリマー層(例えば、単一層または同時押出された複数層)を備え、各層は、ポリマー樹脂を含む。「樹脂」という用語は、本明細書において利用される場合、以下でより十分に議論されるもの等の、プロセスから除去されるポリマー成分(例えばPVB)を指す。一般に、可塑化ポリマーを得るために、以下でより十分に議論されるもの等の可塑剤が樹脂に添加される。さらに、樹脂は、以下でさらに議論されるように、ポリマーおよび可塑剤に加えて他の成分を有してもよい。
【0023】
[00029]ポリ(ビニルブチラール)(「PVB」)中間層がしばしば本出願においてポリマー中間層のポリマー樹脂として具体的に議論されるが、PVB中間層以外の他の熱可塑性中間層が使用されてもよいことが理解されるべきであることにも留意されたい。企図されるポリマーは、これらに限定されないが、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ(エチレン酢酸ビニル)およびそれらの組合せを含む。これらのポリマーは、単独で、または他のポリマーと組み合わせて利用され得る。したがって、本出願においてPVB中間層に関して範囲、値および/または方法(例えば、可塑剤成分のパーセンテージ、厚さおよび特徴を向上させる添加剤)が与えられる場合、それらの範囲、値および/または方法はまた、該当する場合、本明細書で開示される他のポリマーおよびポリマーブレンドにも適用されるか、または、当業者に知られるように、異なる材料に適用されるように修正され得る。
【0024】
[00030]本明細書において使用される場合、「分子量」という用語は、重量平均分子量(Mw)を指す。PVB樹脂の分子量は、約50,000~約600,000、約70,000~約450,000、または約100,000~約425,000ダルトンの範囲内であってもよい。さらに、いくつかの実施形態において、中間層のポリマー層の1つまたは複数が、単峰型Mw分布を有することが好ましくなり得る。例えば、単峰型Mw分布を含むPVB樹脂からスキン層が形成されることが好ましくなり得るが、これは、以下で議論されるように、そのような樹脂が規則的メルトフラクション(melt fraction)パターンの生成を補助し得るためである。
【0025】
[00031]PVB樹脂は、酸触媒の存在下でポリビニルアルコール(「PVOH」)をブチルアルデヒドと反応させることによる既知の水性または溶媒アセタール化プロセス、分離、安定化、および樹脂の乾燥により生成され得る。そのようなアセタール化プロセスは、例えば、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第2,282,057号および米国特許第2,282,026号、ならびにWade,B.(2016)、「Vinyl Acetal Polymers」、Encyclopedia of Polymer Science and Technology、1~22頁(John Wiley & Sons,Inc.)に開示されている。
【0026】
[00032]本明細書に記載の樹脂は、本明細書において一般に「ポリ(ビニルアセタール)」または「ポリ(ビニルブチラール)」と呼ばれるが、以前に議論されたイソブチルアルデヒドを含むがこれに限定されない任意の好適なアルデヒドの残渣を含み得る。いくつかの実施形態において、1種または複数種のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、少なくとも1種のC~C10アルデヒド、または少なくとも1種のC~Cアルデヒドの残渣を含み得る。好適なC~Cアルデヒドの例は、これらに限定されないが、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、およびそれらの組合せを含み得る。
【0027】
[00033]多くの実施形態において、ポリマー層または中間層を形成するために、ポリマー樹脂に可塑剤が添加される。可塑剤は、一般に、得られるポリマー中間層の柔軟性および耐久性を増加させるためにポリマー樹脂に添加される。可塑剤は、ポリマー鎖の間に埋め込まれ、ポリマー鎖を離間させ(「自由体積」を増加させ)、ひいてはポリマー樹脂のガラス転移温度(T)を大幅に低下させて、材料をより軟質にすることによって機能する。これに関して、中間層中の可塑剤の量は、ガラス転移温度(T)に影響するように調節され得る。ガラス転移温度(T)は、中間層のガラス状態からゴム状態への転移を示す温度である。一般に、より多量の可塑剤投入量は、より低いTをもたらし得る。
【0028】
[00034]企図される可塑剤は、これらに限定されないが、多塩基酸のエステル、多価アルコール、トリエチレングリコールジ-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキソネート)(「3-GEH」として知られる)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチルアジペートおよびノニルアジペートの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、ならびにポリマー可塑剤、例えば油変性セバシン酸アルキド、ならびにホスフェートおよびアジペートの混合物、ならびにそれらの混合物および組合せを含む。3-GEHが特に好ましい。好適な可塑剤の他の例は、これらに限定されないが、テトラエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)(「4-GEH」)、ジ(ブトキシエチル)アジペート、およびビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)アジペート、ジオクチルセバケート、ノニルフェニルテトラエチレングリコール、およびそれらの混合物を含み得る。
【0029】
[00035]他の好適な可塑剤は、上述の可塑剤を含むがそれらに限定されない2種以上の異なる可塑剤のブレンドを含み得る。さらに他の好適な可塑剤、または可塑剤のブレンドは、芳香族の群、例えばポリアジペート、エポキシド、フタレート、テレフタレート、ベンゾエート、トルエート、メリテート、および他の特殊可塑剤から形成されてもよい。さらなる例は、これらに限定されないが、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、ジエチレングリコールベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールベンゾエートイソブチレート、1,3-ブタンジオールジベンゾエート、ジエチレングリコールジ-o-トルエート、トリエチレングリコールジ-o-トルエート、ジプロピレングリコールジ-o-トルエート、1,2-オクチルジベンゾエート、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート、ジ-2-エチルヘキシルテレフタレート、ビス-フェノールAビス(2-エチルヘキサノエート)、エトキシレート化ノニルフェノール、およびそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態において、可塑剤は、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0030】
[00036]一般に、本出願のポリマー中間層の可塑剤含有量は、重量/重量ベースでの樹脂100部当たりの部(「phr」)で測定される。例えば、30グラムの可塑剤が100グラムのポリマー樹脂に添加される場合、最終的な可塑化ポリマーの可塑剤含有量は30phrとなる。本出願においてポリマー層の可塑剤含有量が示される場合、特定の層の可塑剤含有量は、その特定の層を製造するのに使用された溶融物中の可塑剤のphrを参照して決定される。いくつかの実施形態において、高剛性中間層は、約35phr未満および約30phr未満の可塑剤含有量を有する層を備える。
【0031】
[00037]本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の1つまたは複数のポリマー層は、少なくとも約20phr、少なくとも約25phr、少なくとも約30phr、少なくとも約35phr、少なくとも約38phr、少なくとも約40phr、少なくとも約45phr、少なくとも約50phr、少なくとも約55phr、少なくとも約60phr、少なくとも約65phr、少なくとも約67phr、少なくとも約70phr、少なくとも約75phrの1種または複数種の可塑剤の全可塑剤含有量を有し得る。いくつかの実施形態において、ポリマー層はまた、約100phr以下、約85phr以下、80phr以下、約75phr以下、約70phr以下、約65phr以下、約60phr以下、約55phr以下、約50phr以下、約45phr以下、約40phr以下、約38phr以下、約35phr以下、または約30phr以下の1種または複数種の可塑剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのポリマー層の全可塑剤含有量は、約20~約40phr、約20~約38phr、または約25~約35phrの範囲内であってもよい。他の実施形態において、少なくとも1つのポリマー層の全可塑剤含有量は、約38~約90phr、約40~約85phr、または約50~70phrの範囲内であってもよい。
【0032】
[00038]中間層が複数層中間層を含む場合、中間層内の2つ以上のポリマー層は、実質的に同じ可塑剤含有量を有してもよく、および/または、ポリマー層の少なくとも1つは、他のポリマー層の1つまたは複数とは異なる可塑剤含有量を有してもよい。中間層が異なる可塑剤含有量を有する2つ以上のポリマー層を含む場合、2つの層は互いに隣接してもよい。いくつかの実施形態において、隣接するポリマー層の間の可塑剤含有量の差は、少なくとも約1phr、少なくとも約2phr、少なくとも約5phr、少なくとも約7phr、少なくとも約10phr、少なくとも約20phr、少なくとも約30phr、少なくとも約35phrおよび/または約80phr以下、約55phr以下、約50phr以下、もしくは約45phr以下、または約1~約60phr、約10~約50phr、もしくは約30~45phrの範囲内であってもよい。中間層に3つ以上の層が存在する場合、中間層のポリマー層の少なくとも2つは、例えば、互いに10phr以内、5phr以内、2phr以内、または1phr以内に収まる類似した可塑剤含有量を有してもよく、一方ポリマー層の少なくとも2つは、上記範囲に従う互いに異なる可塑剤含有量を有してもよい。
【0033】
[00039]いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つまたは複数のポリマー層または中間層は、例えば上に列挙された可塑剤の2種以上を含む、2種以上の可塑剤のブレンドを含んでもよい。ポリマー層が2種以上の可塑剤を含む場合、ポリマー層の全可塑剤含有量および隣接するポリマー層の間の全可塑剤含有量の差は、上記範囲の1つまたは複数に収まり得る。中間層が複数層中間層である場合、ポリマー層の1つまたは2つ以上が2種以上の可塑剤を含んでもよい。中間層が複数層中間層である場合のいくつかの実施形態において、可塑剤のブレンドを含むポリマー層の少なくとも1つは、従来の可塑化ポリマー層のガラス転移温度より高いガラス転移温度を有してもよい。これは、いくつかの場合において、例えば複数層中間層における外側「スキン」層として使用され得る層に、追加的な硬度を提供し得る。
【0034】
[00040]可塑剤に加えて、ポリマー中間層を形成するために接着調整剤(「ACA」)がポリマー樹脂に添加されてもよいこともまた企図される。ACAは、一般に、中間層への接着を改変するように機能する。企図されるACAは、これらに限定されないが、米国特許第5,728,472号に開示されるACA、残留酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、および/またはマグネシウムビス(2-エチルブチレート)を含む。
【0035】
[00041]最終生成物におけるその性能を向上させるために、および中間層にある特定の追加の特性を付与するために、他の添加剤が中間層に組み込まれてもよい。そのような添加剤は、当業者に知られている添加剤の中でも、これらに限定されないが、染料、顔料、安定剤(例えば紫外線安定剤)、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、IR吸収剤または遮断剤(例えばインジウムスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物、六ホウ化ランタン(LaB)およびセシウムタングステン酸化物)、加工助剤、流動促進剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、核形成剤、熱安定剤、UV吸収剤、UV安定剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、補強添加剤、および充填剤を含む。
【0036】
[00042]本出願のポリマー中間層のポリマー樹脂成分を説明するために使用される1つのパラメータは、残留ヒドロキシル含有量(ビニルヒドロキシル含有量またはポリ(ビニルアルコール)(「PVOH」)含有量として)である。残留ヒドロキシル含有量は、加工が完了した後のポリマー鎖上の側基として残るヒドロキシル基の量を指す。例えば、PVBは、ポリ(酢酸ビニル)をポリ(ビニルアルコール)に加水分解し、次いでポリ(ビニルアルコール)をブチルアルデヒドと反応させてPVBを形成することによって製造され得る。ポリ(酢酸ビニル)の加水分解プロセスにおいて、典型的には、酢酸側基の全てがヒドロキシル基に変換されるとは限らない。さらに、典型的には、ブチルアルデヒドとの反応によってヒドロキシル基の全てがアセタール基に変換されるとは限らない。結果として、任意の最終的なPVBにおいて、典型的には残留酢酸基(例えば酢酸ビニル基)および残留ヒドロキシル基(例えばビニルヒドロキシル基)がポリマー鎖上の側基として存在する。一般に、ポリマーの残留ヒドロキシル含有量は、ポリマー製造プロセスにおける他の変量の中でも、反応時間および反応物質濃度を制御することによって調整され得る。本明細書においてパラメータとして利用される場合、残留ヒドロキシル含有量は、ASTM D-1396に従い重量パーセントベースで測定される。
【0037】
[00043]様々な実施形態において、ポリ(ビニルブチラール)樹脂は、約8~約35重量パーセント(wt.%)のPVOHとして計算される残留ヒドロキシル基、約13~約30wt.%のPVOHとして計算される残留ヒドロキシル基、約8~約22wt.%のPVOHとして計算される残留ヒドロキシル基、または約15~約22wt.%のPVOHとして計算される残留ヒドロキシル基を含み、本明細書に開示される高剛性中間層のいくつかの場合では、層の1つまたは複数において、ポリ(ビニルブチラール)樹脂は、約19wt.%超のPVOHとして計算される残留ヒドロキシル基、約20wt.%超のPVOHとして計算される残留ヒドロキシル基、約20.4wt.%超のPVOHとして計算される残留ヒドロキシル基、および約21wt.%超のPVOHとして計算される残留ヒドロキシル基を含む。
【0038】
[00044]いくつかの実施形態において、中間層の少なくとも1つのポリマー層において使用されるポリ(ビニルブチラール)樹脂は、上述のように測定される少なくとも約18wt.%、少なくとも約18.5wt.%、少なくとも約18.7wt.%、少なくとも約19wt.%、少なくとも約19.5wt.%、少なくとも約20wt.%、少なくとも約20.5wt.%、少なくとも約21wt.%、少なくとも約21.5wt.%、少なくとも約22wt.%、少なくとも約22.5wt.%、および/または約30wt.%以下、約29wt.%以下、約28wt.%以下、約27wt.%以下、約26wt.%以下、約25wt.%以下、約24wt.%以下、約23wt.%以下、もしくは約22wt.%以下の残留ヒドロキシル含有量を有するポリ(ビニルブチラール)樹脂を含んでもよい。
【0039】
[00045]さらに、本明細書に記載の中間層における1つまたは複数の他のポリマー層は、より低い残留ヒドロキシル含有量を有する別のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、中間層の少なくとも1つのポリマー層は、上述のように測定される少なくとも約8wt.%、少なくとも約8.5wt.%、少なくとも約9wt.%、少なくとも約9.5wt.%、少なくとも約10wt.%、少なくとも約10.5wt.%、少なくとも約11wt.%、少なくとも約11.5wt.%、少なくとも約12wt.%、少なくとも約13wt.%および/または約16wt.%以下、約15wt.%以下、約14wt.%以下、約13.5wt.%以下、約13wt.%以下、約12wt.%以下、もしくは約11.5wt.%以下の残留ヒドロキシル含有量を有するポリ(ビニルブチラール)樹脂を含んでもよい。
【0040】
[00046]中間層が2つ以上のポリマー層を含む場合、層は、実質的に同じ残留ヒドロキシル含有量を有するポリ(ビニルブチラール)樹脂を含んでもよく、または、各層におけるポリ(ビニルブチラール)樹脂の残留ヒドロキシル含有量は、互いに異なってもよい。2つ以上の層が実質的に同じ残留ヒドロキシル含有量を有するポリ(ビニルブチラール)樹脂を含む場合、各層におけるポリ(ビニルブチラール)樹脂の残留ヒドロキシル含有量の間の差は、約2wt.%未満、約1wt.%未満、または約0.5wt.%未満であってもよい。本明細書において使用される場合、「重量パーセント異なる」および「~の間の差は少なくとも~重量パーセントである」という用語は、1つの数字を他の数字から差し引くことにより計算される、2つの所与の重量パーセンテージの間の差を指す。例えば、12wt.%の残留ヒドロキシル含有量を有するポリ(ビニルアセタール)樹脂は、14wt.%の残留ヒドロキシル含有量を有するポリ(ビニルアセタール)樹脂と2wt.%異なる残留ヒドロキシル含有量を有する(14wt.%-12wt.%=2wt.%)。本明細書において使用される場合、「異なる」という用語は、別の値より高い、または低い値を指し得る。別段に指定されない限り、本明細書における全ての「差」は差の数値を指し、数字が差し引かれる順番に起因する値の特定の符号を指すものではない。したがって、別段に記されない限り、本明細書における全ての「差」は、2つの数の間の差の絶対値を指す。
【0041】
[00047]2つ以上の層が異なる残留ヒドロキシル含有量を有するポリ(ビニルブチラール)樹脂を含む場合、ポリ(ビニルブチラール)樹脂の残留ヒドロキシル含有量の間の差は、上述のように測定される少なくとも約2wt.%、少なくとも約3wt.%、少なくとも約4wt.%、少なくとも約5wt.%、少なくとも約6wt.%、少なくとも約7wt.%、少なくとも約8wt.%、少なくとも約9wt.%、少なくとも約10wt.%、少なくとも約12wt.%、少なくとも約15wt.%であってもよい。
【0042】
[00048]樹脂はまた、ポリビニルエステル、例えばアセテートとして計算される35wt.%未満の残留エステル基、30wt.%未満、25wt.%未満、15wt.%未満、13wt.%未満、11wt.%未満、9wt.%未満、7wt.%未満、5wt.%未満、または1wt.%未満の残留エステル基を含んでもよく、残りはアセタール、好ましくはブチルアルデヒドアセタールであるが任意選択で微量の他のアセタール基、例えば2-エチルヘキサナール基を含んでもよい(例えば、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,137,954号を参照されたい)。樹脂の残留アセテート含有量はまた、ASTM D-1396に従って決定され得る。
【0043】
[00049]いくつかの実施形態によれば、2つのポリマー層、典型的には中間層内の隣接するポリマー層のガラス転移温度の間の差は、少なくとも約5℃、少なくとも約10℃、少なくとも約15℃、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、少なくとも約40℃、または少なくとも約45℃であってもよく、他の実施形態において、2つ以上のポリマー層は、互いの約5℃以内、約3℃以内、約2℃以内、または約1℃以内のガラス転移温度を有してもよい。一般に、より低いガラス転移温度の層は、中間層内のより高いガラス転移温度の層よりも低い硬度を有し、最終的な中間層構造体においてより高いガラス転移温度のポリマー層の間に位置してもよい。
【0044】
[00050]例えば、本出願のいくつかの実施形態において、軟質層の増加した音響減衰特性が、硬質/剛性層の機械的強度と組み合わされて、多層中間層を形成する。これらの実施形態において、中央の軟質層は、2つの硬質/剛性外側層の間に挟まれる。この(硬質)//(軟質)//(硬質)の構成は、取扱いが容易で、従来のラミネーション法に使用され得、また比較的薄く軽量の層で構築され得る多層中間層を形成する。軟質層は、一般に、より低い残留ヒドロキシル含有量(例えば16wt.%以下、15wt.%以下、もしくは12wt.%以下、もしくは上で開示された範囲のいずれか)、より高い可塑剤含有量(例えば約48phr以上、もしくは約70phr以上、もしくは上で開示された範囲のいずれか)および/またはより低いガラス転移温度(例えば30℃未満、もしくは10℃未満、もしくは上で開示された範囲のいずれか)を特徴とする。
【0045】
[00051]本明細書に記載のポリマー中間層シートは、複数層パネル(例えばガラスラミネート)において使用され得るポリマー中間層シートを製造する、当業者に知られている任意の好適なプロセスによって製造され得ることが企図される。例えば、ポリマー中間層シートは、溶液キャスト、圧縮成形、射出成形、溶融押出、メルトブロー、または、当業者に知られているポリマー中間層シートの生成および製造のための任意の他の手順により形成され得ることが企図される。さらに、複数のポリマー中間層が利用される実施形態において、これらの複数のポリマー中間層は、同時押出、ブローフィルム、ディップコーティング、溶液コーティング、ブレード、パドル、エアナイフ、印刷、粉末コーティング、スプレーコーティング、または当業者に知られている他のプロセスにより形成され得ることが企図される。当業者に知られているポリマー中間層シートの製造のための全ての方法が、本明細書に記載のポリマー中間層シートを製造するための可能な方法として企図されるが、本出願は、押出および/または同時押出プロセスにより製造されたポリマー中間層シートに注目する。本開示の最終的な複数層ガラスパネルラミネートは、当技術分野において知られているプロセスを使用して形成され得る。
【0046】
[00052]押出プロセスにおいて、上述の樹脂および可塑剤のいずれかを含む熱可塑性樹脂および可塑剤は、一般に事前に混合され、押出機デバイス内に供給される。着色剤およびUV阻害剤等の添加剤(液体、粉末またはペレット形態)が使用されてもよく、押出機デバイスに到達する前に熱可塑性樹脂または可塑剤中に混合され得る。これらの添加剤は、熱可塑性ポリマー樹脂中、また押出により最終的なポリマー中間層シート中に組み込まれて、ポリマー中間層シートのある特定の特性および最終的な複数層ガラスパネル製品におけるその性能を高める。
【0047】
[00053]押出機デバイスにおいて、上述の樹脂、可塑剤および他の添加剤のいずれかを含む熱可塑性原材料および可塑剤の粒子はさらに混合および溶融され、温度および組成が略均一な溶融物を生成する。溶融物が押出機デバイスの末端に到達したら、溶融物は押出機ダイに押し込まれる。押出機ダイは、最終的なポリマー中間層シート生成物にその外形を付与する押出機デバイスの部品である。ダイは、一般に、リップにより画定される開口部を有し、その1つの寸法は垂直寸法より大幅に大きい。一般に、ダイは、溶融物が円筒形の外形から一様に流動してダイから出て生成物の最終外形形状になるように設計される。連続的プロファイルが存在する限り、ダイによって、最終ポリマー中間層シートに複数の形状が付与されてもよい。一般に、その最も基本的な意味において、押出は、固定された断面プロファイルの物体を形成するために使用されるプロセスである。これは、最終生成物の所望の断面のダイを通して材料を押出すまたは引き出すことによって達成される。
【0048】
[00054]いくつかの実施形態において、同時押出プロセスが利用され得る。同時押出は、ポリマー材料の複数の層が同時に押出されるプロセスである。一般に、この種の押出は、異なる粘度または他の特性の異なる熱可塑性溶融物の安定した処理体積を溶融し、同時押出ダイを通して所望の最終形態として送達するために、2つ以上の押出機を利用する。例えば、本発明の複数層中間層(例えば三層中間層の形態)は、好ましくは、第1のダイマニホールド、第2のダイマニホールド、および第3のダイマニホールドを含む複数マニホールド同時押出デバイスを使用して同時押出され得る。同時押出デバイスは、図3によって示されるように、3つの押出溶融物ストリームを同時押出デバイスのダイ22の単一の開口部20に収束させる各マニホールドからポリマー溶融物を同時に押出すことによって動作し得る。開口部20は、少なくとも部分的に、ダイ22の第1の部分24(例えば上部分)と第2の部分26(例えば下部分)との間に存在する空間またはギャップとして画定され得る。いくつかの実施形態において、開口部20はさらに、開口部20の出口に位置付けられた1対の離間したダイリップ(すなわち第1のダイリップ28および第2のダイリップ30)によって画定され得る。したがって、同時押出デバイスは、3つの個々のポリマー層(例えば、1対のスキン層16の間に挟まれたコア層14)の複合体を備える三層中間層を押出すように構成され得る。特に、開口部20を通して複合三層中間層が同時押出され得、第1のスキン層16は、ダイ22の第1の部分24(例えば上部分)および/または第1のダイリップ28(例えば上ダイリップ)に隣接して位置付けられ、第2のスキン層16は、ダイ22の第2の部分26(例えば下部分)および/または第2のダイリップ30(例えば下ダイリップ)に隣接して位置付けられ、コア層14は、2つのスキン層16の間に挟まれてダイ22を通して同時押出される。したがって、同時押出中、コア層14は一般に、ダイ22の第1もしくは第2の部分24、26および/または第1もしくは第2のダイリップ28、30のいずれにも接触しない。
【0049】
[00055]同時押出プロセスにおいて押出ダイ22から出る複数ポリマー層の厚さは、一般に、押出ダイ22を通る溶融物の相対速度の調節、および/またはダイ開口部20のサイズの調節によって制御され得る。ある特定の実施形態において、ダイリップ28、30の一方または両方の位置は、開口部20のサイズを増加または減少させるように互いに対してずらされてもよい。いくつかの実施形態によれば、複数層中間層の全厚は、少なくとも約13ミル、少なくとも約20ミル、少なくとも約25ミル、少なくとも約27ミル、少なくとも約30ミル、少なくとも約31ミルおよび/または約75ミル以下、約70ミル以下、約65ミル以下、約60ミル以下であってもよく、または、約13~約75ミル、約25~約70ミル、もしくは約30~60ミルの範囲内であってもよい。中間層が2つ以上のポリマー層を備える場合、層のそれぞれは、少なくとも約2ミル、少なくとも約3ミル、少なくとも約4ミル、少なくとも約5ミル、少なくとも約6ミル、少なくとも約7ミル、少なくとも約8ミル、少なくとも約9ミル、少なくとも約10ミルおよび/または約50ミル以下、約40ミル以下、約30ミル以下、約20ミル以下、約17ミル以下、約15ミル以下、約13ミル以下、約12ミル以下、約10ミル以下、約9ミル以下の厚さを有してもよい。いくつかの実施形態において、層のそれぞれは、ほぼ同じ厚さを有してもよく、他の実施形態において、1つまたは複数の層が、中間層内の1つまたは複数の他の層と異なる厚さを有してもよい。
【0050】
[00056]中間層が少なくとも3つのポリマー層を備えるいくつかの実施形態において、内側層の1つ以上は、他の外側層に比べて比較的薄くてもよい。例えば、複数層中間層が三層中間層であるいくつかの実施形態において、最内層は、約12ミル以下、約10ミル以下、約9ミル以下、約8ミル以下、約7ミル以下、約6ミル以下、約5ミル以下の厚さを有してもよく、または、約2~約12ミル、約3~約10ミル、もしくは約4~約9ミルの範囲内の厚さを有してもよい。同じまたは他の実施形態において、外側層のそれぞれの厚さは、少なくとも約4ミル、少なくとも約5ミル、少なくとも約6ミル、少なくとも約7ミルおよび/もしくは約15ミル以下、約13ミル以下、約12ミル以下、約10ミル以下、約9ミル以下、約8ミル以下であってもよく、または、約2~約15ミル、約3~約13ミル、もしくは約4ミル~約10ミルの範囲内であってもよい。中間層が2つの外側層を含む場合、これらの層は、少なくとも約9ミル、少なくとも約13ミル、少なくとも約15ミル、少なくとも約16ミル、少なくとも約18ミル、少なくとも約20ミル、少なくとも約23ミル、少なくとも約25ミル、少なくとも約26ミル、少なくとも約28ミル、もしくは少なくとも約30ミル、および/または約73ミル以下、約60ミル以下、約50ミル以下、約45ミル以下、約40ミル以下、約35ミル以下、または約9~約70ミル、約13~約40ミル、もしくは約25~約35ミルの範囲内の合計厚さを有してもよい。
【0051】
[00057]いくつかの実施形態によれば、複数層中間層における内側層の1つに対する外側層の1つの厚さの比は、少なくとも約1.4:1、少なくとも約1.5:1、少なくとも約1.8:1、少なくとも約2:1、少なくとも約2.5:1、少なくとも約2.75:1、少なくとも約3:1、少なくとも約3.25:1、少なくとも約3.5:1、少なくとも約3.75:1、または少なくとも約4:1であってもよい。中間層が、1対の外側スキン層の間に配置された内側コア層を有する三層中間層である場合、コア層の厚さに対するスキン層の1つの厚さの比は、上記範囲の1つまたは複数に収まり得る。いくつかの実施形態において、内側層に対する外側層の合計厚さの比は、少なくとも約2.25:1、少なくとも約2.4:1、少なくとも約2.5:1、少なくとも約2.8:1、少なくとも約3:1、少なくとも約3.5:1、少なくとも約4:1、少なくとも約4.5:1、少なくとも約5:1、少なくとも約5.5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約6.5:1、もしくは少なくとも約7:1、および/または約30:1以下、約20:1以下、約15:1以下、約10:1以下、約9:1以下、または約8:1以下であってもよい。
【0052】
[00058]本明細書に記載の複数層中間層は、シートの長さもしくは最も長い寸法、および/または幅もしくは2番目に長い寸法に沿って実質的に同じ厚さを有する略平坦な中間層を備えてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、本発明の複数層中間層は、楔形外形を有する少なくとも1つのテーパ型ゾーンを備えるテーパ型または楔形中間層であってもよい。テーパ型中間層は、例えば中間層の少なくとも1つの端部が他方の端部より大きい厚さを有するように、シートの長さおよび/または幅の少なくとも一部に沿って変化する厚さの外形を有する。中間層がテーパ型中間層である場合、個々の樹脂層の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたはそれ以上が、少なくとも1つのテーパ型ゾーンを含んでもよい。テーパ型中間層は、例えば、自動車および航空機用途でのヘッドアップディスプレイ(HUD)パネルにおいて特に有用となり得る。
【0053】
[00059]ある特定の実施形態において、表面粗度は、中間層の1つまたは複数の層に形成されてもよい。一般に、そのような表面粗度は、メルトフラクチャーまたはエンボス加工により付与され得る。メルトフラクチャーは、溶融物の組成の制御、ダイリップの温度の制御、ならびに/または押出された中間層の冷却速度および冷却方法(例えば、中間層は、押出直後に冷却浴に浸漬されてもよい)の制御によって、ポリマー中間層の層の表面上に粗度を形成するプロセスである。(例えば、参照によりその全開示が本明細書に組み込まれる米国特許第5,595,818号および米国特許第4,654,179号を参照されたい。)いくつかの実施形態において、中間層の1つまたは複数の層が「規則的メルトフラクチャーパターン」を有するように形成されることが好ましくなり得る。本明細書において使用される場合、「規則的メルトフラクチャーパターン」または「規則的パターン」という用語は、一般的に反復される、または反復可能であるパターンを意味するように使用される。規則的パターンの例は、これらに限定されないが、平行チャネル、鋸歯パターン、幾何学的形状、例えば矩形、錐体等、またはパターンの組合せを含む。図4は、「タイヤ跡」パターンと呼ばれるポリマー層上に形成された規則的メルトフラクチャーパターンを示す。対照的に、無作為パターンは、表面全体にわたり規則的または反復パターンを有さないパターンを指す。図5は、ポリマー層上に形成された無作為パターンを示す。
【0054】
[00060]互いにラミネートされて三層中間層を形成する3つの個々の層の場合、3つの層の表面のいずれかは、層のアセンブリの前またはその間に、メルトフラクチャーにより規則的パターン表面粗度を有するように形成され得る。様々な実施形態において、三層中間層の外側スキン層16を形成する個々のポリマー層の2つの表面のうちの1つまたは両方が、メルトフラクチャーにより規則的パターン表面粗度を有するように形成されてもよい。
【0055】
[00061]本発明の実施形態によれば、外側スキンポリマー層の一方または両方の表面が、「R」または「Rsm」値により測定され得る所望の規則的パターン表面粗度を有するポリマー層を生成するように、制御メルトフラクチャーを用いて修飾される。Rは、ポリマー層の表面トポグラフィーの尺度であり、平面(例えば、ポリマー層の平坦化された表面により示される仮想平面)からの表面の逸脱の指標である。Rsmは、ポリマー層の表面のトポグラフィーにおけるピーク間の距離の尺度である。両方の測定値は、以下で詳細に説明される。本明細書において使用される場合、RおよびRsmに関して、「メルトフラクチャーにより付与される」とは、RおよびRsmにより測定される表面テクスチャが、押出の時点でメルトフラクチャー現象によって生成されることを意味する。
【0056】
[00062]典型的な表面パターンでは、表面粗度、または平坦化されたポリマー層の表面の仮想平面からの粗面化表面上の特定ピークの高さが、表面のR値である。本出願に記載される場合、ポリマー中間層シートの表面の表面粗度またはRは、国際標準化機構のDIN ES ISO-4287、および米国機械学会のASME B46.1に従う10点平均粗度によって測定されるように、ミクロン(μm)で表現される。一般に、これらのスケールにおいて、Rは、連続的基準長さの単一の粗度深さRzi(すなわち、基準長さ内での最高ピークと最深溝との間の垂直距離)の算術平均値として計算される。
【0057】
[00063]
【0058】
【数1】
【0059】
[00064]記載および測定される別の表面パラメータは、平均間隔Rsmである。平均間隔Rsmは、ポリマー中間層シートの表面上のピーク間のミクロン(μm)で表現される平均幅を記載している。一般に、RsmおよびR値を利用して、エンボス加工および非エンボス加工ポリマー中間層シートの両方の表面トポグラフィーを測定することができる。しかしながら、一般に、本明細書においてポリマー層の表面上に付与されるものとして記載される表面粗度は、非エンボス加工プロセスにより、例えばメルトフラクチャーにより付与される。
【0060】
[00065]個々のポリマー層が指定のRおよび/またはRsmを有する得られる中間層は、ガラス等の2つのグレージング層の間で容易にラミネートされ得る。メルトフラクチャーにより形成され、三層中間層の外側層の少なくとも一方、好ましくは両方の表面に存在する、上で示されたRおよびRsm値は、ガラス層に接触して配置されラミネートされた後に、例えばニップロールまたは真空リング脱気プロセスを用いて容易に脱気され得る外側表面をもたらす。
【0061】
[00066]しかしながら、上述のように、多層中間層を含むガラスパネルは、最終的な一体構造に不快な視覚的欠陥および/または光学的ひずみを含み得る。そのような欠陥/ひずみは斑点と呼ぶことができ、これはポリマー中間層の表面領域の粒状性またはテクスチャの尺度である。斑点は、異なる屈折率を有するラミネートの層間の界面の小規模な表面変動によって引き起こされると考えられる。
【0062】
[00067]従来、多層ガラスパネルにおける斑点の程度または量の評価は、シャドウグラフに基づく技術を用いて決定された。シャドウグラフは、空気、水、またはガラス等の透明媒体中の不均一性を明らかにする光学的方法である。原則として、補助なしでの人間の目は、透明な空気、水またはガラスにおける差または乱れを直接見分けることはできない。しかしながら、全てのこれらの乱れ/差は光線を屈折させ、したがってそれらは影を落とすことができる。シャドウグラフは、影を落とすことができるラミネートの乱れまたは差の能力のこの特性を利用し、それを用いてラミネートの不均一性の像をスクリーン上に投影する。
【0063】
[00068]斑点を確認するための従来のプロセスでは、斑点の度合いは、0~4の範囲の一連の斑点値またはスケールを表す一組の標準的ラミネートシャドウグラフ(例えば、0~4のスケールによるCMS2.5標準ラミネート)による多層試験ラミネートのシャドウグラフ投影の、横に並べた定性的比較によって評価および分類され、0は、斑点なしを表し(例えば中間層を有さないガラス片)、1は、低い斑点の基準を表し(すなわち少数の乱れ)、4は、高い斑点の基準を表し(すなわち多数の乱れ)、これは光学的に不快である。いくつかの実施形態において、定性的比較は、人間の目またはコンピュータにより実行される試験により行われてもよい。例えば、カメラが反射スクリーンに対して略垂直に位置し、スクリーン上にシャドウグラフが描写される、斑点分析器デバイスが使用されてもよい。カメラはシャドウグラフ(複数可)の像を撮影することができ、コンピュータデバイスが必要な比較を実行して、試験されている試料の斑点値を得ることができる。
【0064】
[00069]例えば、本明細書に記載の斑点値は、キセノンアーク灯、試料ホルダ、投影スクリーン、およびデジタルカメラを含むクリアモトルアナライザー(Clear Mottle Analyzer)(CMA)を使用して決定された。キセノンアーク灯は、ラミネート試料のシャドウグラフをスクリーン上に投影するために使用され、カメラは、得られたシャドウグラフの像を撮影するように構成される。次いで、コンピュータ画像化ソフトウェアを使用して像がデジタル分析され、以前に撮影された標準試料の像と比較されて、試料の斑点が決定される。CMAを使用した斑点の測定方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,311,699号に詳細に記載されている。
【0065】
[00070]同様に上で開示されたように、アイスフラワーとして知られる光学的欠陥は一般に、多層中間層を含むガラスパネルラミネートに見られる。三層音響PVBラミネートにおけるアイスフラワーの形成は、フロントガラスおよび他のグレージングにおける現実世界での状況をシミュレートすることによって試験され得、大きな屈曲ギャップおよび不十分な脱気の組合せが、当該分野におけるアイスフラワーの発達の根本的原因の1つであることが知られている。以下のステップは、中間層におけるアイスフラワーの形成を測定するために使用され得るアイスフラワー試験を説明している。まず、中央に配置されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム環(7.5cmの内径、14cmの外径、および0.10mm~0.18mmの厚さを有する)を有する30cm×30cmの三層中間層が、2枚の30cm×30cmガラス片の間に挟まれる。次いで、構築物は予備ラミネートおよびオートクレーブ処理される。得られたラミネートは、室温で48時間調整され、従来のオーブン(80℃)内で48時間ベーキングされ、次いで冷却される。次いで、ラミネートは、ラミネート内でのアイスフラワー形成の割合(例えばアイスフラワー欠陥を発達させたラミネートのパーセンテージ)、およびアイスフラワー欠陥を有するPET環内での面積のパーセンテージを決定するために目視検査され得る。さらに、ラミネートは、ラミネート全体(PETフィルム領域の内側および外側の両方を含む)内のアイスフラワー形成のパーセンテージを決定するために目視検査され得る。
【0066】
[00071]上記を鑑みて、本発明の実施形態は、低減された斑点を有し、アイスフラワー欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層を含む。ポリマー中間層は、第1のポリマー層(例えばコア層)および第2のポリマー層(例えばスキン層)を備えてもよく、第1のポリマー層は、第2のポリマー層の第1の側に配置されている。第2のポリマー層の第1の側の非エンボス加工表面は、40ミクロン超のR値により定義される表面粗度を含む。さらに、ポリマー中間層は、1.0未満の斑点値を有する。いくつかの実施形態において、第2のポリマー層の第2の側(第1の側の反対)もまた、40ミクロン超のR値により定義される表面粗度を含んでもよい。第2のポリマー層のそのような第2の側は、ポリマー中間層の外部表面を形成し得る。いくつかの実施形態において、ポリマー中間層は、第2および第3のポリマー層が第1のポリマー層を挟むように第1のポリマー層の第2の側に配置された第3のポリマー層(例えばスキン層)を有する中間層であってもよい。いくつかの実施形態において、第3のポリマー層の第1および/または第2の側もまた、40ミクロン超のR値により定義される表面粗度を含んでもよい。第3のポリマー層の第1の側は、第1のポリマー層と接触してもよく、一方第3のポリマー層の第2の側(第1の側と反対)は、中間層の外部表面を形成し得る。第2および第3のポリマー層のそのような上述の表面粗度は、メルトフラクチャーにより形成された規則的パターンを有してもよい。
【0067】
[00072]いくつかの実施形態において、第2のポリマー層(すなわちスキン層の1つ)の第1および/または第2の表面の表面粗度は、メルトフラクチャーにより形成される。いくつかの実施形態において、R値により定義される表面粗度は、40ミクロン超、50ミクロン超、60ミクロン超、もしくは70ミクロン超であり、ならびに/またはR値は、40~70ミクロン、40~60ミクロン、40~50ミクロン、50~70ミクロン、50~60ミクロン、もしくは60~70ミクロンである。いくつかの実施形態において、第2および第3のポリマー層(すなわちスキン層)の第1および第2の側の表面のそれぞれが、上で議論された表面粗度を有するように形成され得る。そのような表面粗度に加えて、中間層は、いくつかの実施形態において、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、もしくは0.5未満の斑点値を有してもよく、および/または斑点値は、0.0~1.0、0.25~1.0、0.5~1.0、0.5~0.9、0.5~0.8であってもよい。さらに、ポリマー中間層が1対のガラスパネルの間にラミネートされて複数層パネルを形成する場合、複数層パネルは、本質的にアイスフラワー形成を有さないことが可能である。
【0068】
[00073]それに加えて、またはそれと併せて、ポリマー中間層は、第1のポリマー層(例えばコア層)および第2のポリマー層(例えばスキン層)を備えてもよく、第1のポリマー層は、第2のポリマー層の第1の側に配置されている。第2のポリマー層の第1の側の非エンボス加工表面は、500ミクロン超のRsm値により定義される表面粗度を含む。さらに、ポリマー中間層は、1.0未満の斑点値を有する。いくつかの実施形態において、第2のポリマー層の第1の側は、第1のポリマー層と接触してもよい。さらに、第2のポリマー層の第2の側(第1の側の反対)もまた、500ミクロン超のRsm値により定義される表面粗度を含んでもよい。第2のポリマー層のそのような第2の側は、中間層の外部表面を形成し得る。いくつかの実施形態において、ポリマー中間層は、第2および第3のポリマー層が第2のポリマー層を挟むように第1のポリマー層の第2の側に配置された第3のポリマー層(例えばスキン層)を有する中間層であってもよい。いくつかの実施形態において、第3のポリマー層の第1および/または第2の側もまた、500ミクロン超のRsm値により定義される表面粗度を含んでもよい。第3のポリマー層の第1の側は、第1のポリマー層と接触してもよく、一方第3のポリマー層の第2の側(第1の側と反対)は、中間層の外部表面を形成し得る。第2および第3のポリマー層のそのような上述の表面粗度は、メルトフラクチャーにより形成された規則的パターンを有してもよい。
【0069】
[00074]いくつかの実施形態において、第2のポリマー層(すなわちスキン層)の第1の側の表面の表面粗度は、非エンボス加工プロセスにより、例えばメルトフラクチャーにより形成される。いくつかの実施形態において、Rsm値により定義される表面粗度は、400ミクロン超、500ミクロン超、600ミクロン超、700ミクロン超、もしくは800ミクロン超であり、および/またはRsm値は、400~800ミクロン、500~800ミクロン、400~700ミクロン、500~700ミクロン、400~600ミクロン、500~600ミクロン、600~700ミクロン、600~700ミクロン、もしくは700~800ミクロンである。いくつかの実施形態において、第2および第3のポリマー層(すなわちスキン層)の第1および第2の側の表面のそれぞれが、上で議論された表面粗度を有するように形成され得る。そのような表面粗度に加えて、中間層は、いくつかの実施形態において、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、もしくは0.5未満の斑点値を有してもよく、および/または斑点値は、0.0~1.0、0.25~1.0、0.5~1.0、0.5~0.9、もしくは0.5~0.8である。さらに、ポリマー中間層が1対のガラスパネルの間にラミネートされて複数層パネルを形成する場合、複数層パネルは、本質的にアイスフラワー形成を有さないことが可能である。
【0070】
[00075]上述のポリマー中間層は、同時押出プロセスの温度属性を制御することによって形成され得る。例えば、本発明の実施形態は、光学的欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層を形成する方法を含む。方法は、同時押出ダイを通して第1のポリマー層(例えばコア層)を押出すステップを含む。さらなるステップは、同時押出ダイを通して第2のポリマー層(例えばスキン層)を押出すステップを含む。第2のポリマー層の押出中、第2のポリマー層は、同時押出ダイのダイリップに接触する。さらなるステップは、同時押出ダイを通して第3のポリマー層(例えば別のスキン層)を押出すステップを含む。押出ステップ時に、第1のポリマー層は、第2のポリマー層と第3のポリマー層との間に位置付けられ、第2のポリマー層の第1の側に配置される。第2のポリマー層の押出中に、第2のポリマー層の第1の側の表面は、メルトフラクチャーにより表面粗度を有するように形成される。押出ステップ中、ダイリップの温度は、第1のポリマーの温度より少なくとも10℃高い。さらに、押出ステップ時に、ポリマー中間層は、1.0未満の斑点値を有する。
【0071】
[00076]上記プロセスはまた、第1のポリマー層(例えばコア層)を形成する溶融物ストリームが、第2および/または第3のポリマー層(例えばスキン層)を形成する溶融物ストリームとは異なる温度で同時押出機を通して押出されるものとして説明され得る。したがって、ポリマー層の押出中、第2のポリマー層の第1の側の表面は、メルトフラクチャーにより表面粗度を有するように形成される(例えば、上で議論されたRおよび/またはRsm値を有する)。特に、そのようなメルトフラクチャーは、第2のポリマー層を形成する溶融物ストリームと接触しているダイリップの温度を制御することによって制御され得る。したがって、第1のポリマー層(すなわち、ダイリップに接触しないコア層)と第2のポリマー層(すなわち、ダイリップに接触しないスキン層)との間の温度差は、押出中に制御され得る。例えば、いくつかの実施形態において、ポリマー層がダイから出る際にダイリップの温度が第1のポリマー層(すなわちコア層)の形成に使用される溶融物ストリームの温度より少なくとも10℃高いことを確実にすることによって、中間層の低い斑点を維持しながら、アイスフラワー形成の有益な低減に必要とされる、第2のポリマー層(すなわちスキン層)の第1の側の表面の必須表面粗度(例えば、40ミクロン超のRおよび/または500ミクロン超のRsm)が達成され得る。第2のポリマー層の第2の表面もまた、上で議論されたのと同様の様式で(すなわち同時押出機のダイリップの温度を制御することによって)メルトフラクチャーにより表面粗度を有するように形成され得る。いずれにしても、第1および第2のポリマー層の押出時に、本発明の実施形態は、1.0未満の斑点値を有するポリマー中間層を提供する。さらに、ポリマー中間層が1対のガラスパネルの間にラミネートされて複数層パネルを形成する場合、複数層パネルは、本質的にアイスフラワー形成を有さないことが可能である。
【0072】
[00077]いくつかの実施形態において、第3のポリマー層(すなわち中間層の残りのスキン層)の第1および/または第2の側もまた、メルトフラクチャーにより形成された規則的パターン表面粗度を有するように形成され得る。第3のポリマー層の表面(複数可)上のそのようなメルトフラクチャーは、上で議論されたのと同様の様式で、第3のポリマー層を形成する溶融物ストリームと接触しているダイリップの温度を制御することによって制御され得る。
【0073】
[00078]例えば、ダイリップの一方または両方の温度は、押出プロセス中、第1の溶融物ストリームおよび/または第1のポリマー層(すなわちコア層)の温度より少なくとも10℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃または少なくとも50℃高くてもよい。それに加えて、またはそれと併せて、ダイリップの一方または両方の温度は、第2および/または第3のポリマー層(すなわちスキン層)の押出中、160℃超であってもよい。いくつかの実施形態において、ダイリップの一方もしくは両方の温度は、第2および/もしくは第3のポリマー層の押出中、170℃超、180℃超、190℃超、200℃超または210℃超である、ならびに/または、ダイリップの一方もしくは両方の温度は、第2および/もしくは第3のポリマー層の押出中、160℃~210℃、160℃~200℃、170℃~200℃、180℃~200℃、190℃~210℃、または200℃~210℃である。第1のポリマー層(すなわちコア層)の形成に使用される第1の溶融物ストリームの温度は、第1のポリマー層(例えばコア層)の押出中、140℃~170℃であってもよい。
【0074】
[00079]本発明の中間層の押出中、第2および第3のポリマー層の表面上(すなわちスキン層上)に形成される規則的パターン表面粗度は、ダイリップの温度を制御することによって制御され得るが、一方、得られる中間層の斑点は、ダイリップと、第1のポリマー層(すなわちコア層)の形成に使用される第1の溶融物ストリームの温度との温度差を制御することによって制御され得る。そのような温度差の制御は、中間層の斑点特性を改善するように、スキン層とコア層との間のレオロジー的類似性を向上させることができる。例えば、中間層の押出中、ダイリップの一方または両方と第1の溶融物ストリームの温度との間の温度差は、少なくとも10℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃、もしくは少なくとも50℃、および/または50℃以下、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下、もしくは5℃以下であってもよい。同様に、いくつかの実施形態において、中間層の押出中、ダイリップの一方または両方と第1の溶融物ストリームの温度との間の温度差は、5℃~50℃、10℃~50℃、10℃~40℃、10℃~30℃、10℃~20℃、20℃~50℃、20℃~40℃、20℃~30℃、30℃~50℃、30℃~40℃、または40℃~50℃であってもよい。
【0075】
[00080]上で議論された中間層の好ましい斑点値(例えば1.0未満)は、スキン層(例えば第2または第3のポリマー層)およびコア層(例えば第1のポリマー層)の1つに関する特定のデルタG’値および/またはデルタG’範囲に関連し得る。デルタG’は、2つの層の貯蔵弾性率値の間の差である。貯蔵弾性率は、変形に対する材料の抵抗性の尺度であり、一般にパスカル単位(Pa)で示される。本明細書に記載の中間層の各層の貯蔵弾性率は、ASTM D-4065に従って測定され得る。例えば、貯蔵弾性率値は、動的機械熱分析(DMTA)を使用して、例えばTA DHR-2レオロジー機器を使用することによって得ることができる。ポリマー層の試料は、試験セル内でクランプし張力下に置くことができる。試験セルの温度は、最初に75℃に設定され得る。ある温度範囲にわたり試料に所与の周波数で正弦引張ひずみが印加され得、得られる応力応答が測定される。例えば、試料の温度が20℃~200℃にシフトされ得る一方で、試料に1Hzで正弦引張ひずみが印加され得る。温度の上昇速度は毎分約3℃とすることができ、データ(すなわち試料の応力)は10秒毎に収集され得る。貯蔵弾性率は、応力対ひずみの比率から得ることができ、所与の試料の貯蔵弾性率値は、一般に試料に加えられる温度と共に変動することが理解される。振動引張変形の場合、貯蔵弾性率は、複素弾性率の実部である。スキン層の1つおよびコア層の貯蔵弾性率値が得られたら、そのような貯蔵値の間の差を計算して、デルタG’値を得ることができる。
【0076】
[00081]本発明の実施形態は、光学的欠陥の形成に抵抗するポリマー中間層、および/またはポリマー中間層を作製する方法を含み、そのようなポリマー中間層は、好ましいデルタG’値を有するポリマー層を有する。例えば、本発明の実施形態は、以下の方法に従って形成されたポリマー中間層を含み得る。1つのステップは、同時押出ダイを通して第1のポリマー層(例えばコア層)を押出すステップを含む。さらなるステップは、同時押出ダイを通して第2のポリマー層(例えばスキン層)を押出すステップを含む。さらなるステップは、同時押出ダイを通して第3のポリマー層(例えばスキン層)を押出すステップを含む。押出ステップ時に、第1のポリマー層は、第2のポリマー層と第3のポリマー層との間に位置付けられる。第1のポリマー層の押出中、第1のポリマー層は、第1の貯蔵弾性率値を有する。第2のポリマー層の押出中、第2のポリマー層は、第2の貯蔵弾性率値を有する。第1の貯蔵弾性率値と第2の貯蔵弾性率値との間の差(すなわちデルタG’値)は、約45,000Pa未満であってもよい。押出ステップ時に、ポリマー中間層は、1.0未満の斑点値を有する。
【0077】
[00082]本発明の実施形態は、同時押出デバイスを通した中間層の同時押出中に測定される、60,000Pa未満、55,000Pa未満、50,000Pa未満、45,000Pa未満、40,000Pa未満、35,000Pa未満、30,000Pa未満、25,000Pa未満、20,000Pa未満、15,000Pa未満、10,000Pa未満、または5,000Pa未満の、スキン層の1つ(例えば第2または第3のポリマー層)とコア層(例えば第1のポリマー層)との間のデルタG’値を有する中間層を提供し得る。いくつかの実施形態において、スキン層の1つとコア層との間のデルタG’値は、5,000~60,000Pa、5,000~50,000Pa、5,000~40,000Pa、5,000~30,000Pa、10,000~50,000Pa、10,000~40,000Pa、10,000~30,000Pa、15,000~50,000Pa、15,000~40,000Pa、15,000~30,000Pa、20,000~50,000Pa、20,000~40,000Pa、または20,000~30,000Paであってもよい。
【0078】
実施例1
[00083]中間層のそれぞれが1対のスキン層の間に挟まれたコア層を備える2つの三層中間層を形成した。スキン層の形成に使用されるダイのリップのリップ温度を制御することによって、規則的メルトフラクチャーパターンを有するスキン層を形成した。スキン層は、単峰型分子量分布および3.0未満の多分散性指数を有するPVB樹脂から形成した。スキン層樹脂は、38phrの可塑剤、ならびに接着調整剤およびUV安定剤を必要に応じて含んでいた。コア層樹脂はPVBを含み、75phrの可塑剤、ならびに接着調整剤およびUV安定剤を必要に応じて含んでいた。中間層は、同時押出プロセスにより形成した。ダイリップボルトが30%出力で動作する押出中の高温ダイリップギャップは、41ミル(1.04mm)に設定した。押出速度は、550lb/時(250kg/時)に設定した。溶融パイプ、EAMFフィルタ、スキン層用のダイリップ、および本体温度は、204℃に設定した。コア層のコア溶融物温度は、170℃~180℃の間に設定した。
【0079】
[00084]第1の三層中間層EX1-IIL1は、第2の3層中間層EX2-IIL2より低い表面粗度を有するように形成された。EX1-IIL1およびEX1-IIL2のそれぞれの両方の外部側(すなわち関連するスキン層の両方の外部表面)の表面粗度測定値を、以下の表1に記載する。MDは、流れ方向における表面粗度を指し、CMDは、幅方向における表面粗度を指す。各三層中間層の斑点もまた測定した。
【0080】
【表1】
【0081】
[00085]実施例1からのデータにより示されるように、メルトフラクチャーにより付与されるスキン層の規則的パターン表面粗度を制御することによって、好ましい斑点値(例えば1.0未満の斑点値)が得られた。特に、40~60ミクロンの表面粗度値Rおよび/または400~700ミクロンのRsmを有するスキン層を有する三層中間層、例えばEX1-IIL1は、1.0未満の好ましい斑点値を有する三層中間層を提供する。対照的に、60ミクロン超の表面粗度値Rおよび/または800ミクロン超のRsmを有するスキン層を有する三層中間層は、1.0超の好ましくない斑点値を有するそのような中間層を示した。
【0082】
実施例2
[00086]実施例1においてEX1-IIL1およびEX1-IIL2について上述したプロセスと同じプロセスに従って、2つの本発明の三層中間層(実施例2の本発明の中間層:EX2-IIL1およびEX2-IIL2)を形成した。したがって、それぞれの本発明の中間層EX2-IIL1およびEX2-IIL2は、1対のスキン層の間に挟まれたコア層を含んでおり、スキン層の形成に使用されるダイのリップのリップ温度を制御することによって規則的メルトフラクチャーパターンを有するスキン層を形成した。得られた本発明の三層中間層EX2-IIL1およびEX2-IIL2は、40~60ミクロンの表面粗度値Rおよび400~700ミクロンのRsm、ならびに1.0未満の斑点値を含んでいた。
【0083】
[00087]エンボス加工を用いてスキン層に表面粗度を形成する標準的な先行技術のプロセスを使用して、2つの対照三層中間層(実施例2の対照中間層:EX2-CIL1およびEX2-CIL2)を形成した。本発明の中間層とは対照的に、対照中間層のスキン層の表面は、メルトフラクチャーにより形成されなかった。その代わりに、対照中間層は、エンボス加工により形成されたスキン層上の表面パターンを含んでいた。
【0084】
[00088]以下に示される表2は、EX2-IIL1、EX2-IIL2、EX2-CIL1およびEX2-CIL2のそれぞれの測定斑点値を示す。そのような斑点値は、中間層の形成直後(例えば時間ゼロ)、および中間層が形成されてから35日後に測定された。表2はまた、本発明の中間層および対照中間層の平均斑点値を示す。
【0085】
【表2】
【0086】
[00089]実施例2からのデータにより示されるように、メルトフラクチャーにより付与されるスキン層の規則的パターン表面粗度を制御することによって、優れた極めて望ましい斑点値(例えば1.0未満の斑点値)を得ることができる。そのような斑点値は、本発明の中間層EX2-IIL1およびEX2-IIL2のそれぞれにおいて、形成直後および形成から35日後に、最適に1.0未満に維持された。対照的に、対照中間層EX2-CIL1およびEX2-CIL2(エンボス加工により形成された表面粗度を含んでいた)は、形成直後には1.0未満の斑点値を含んでいたものの、35日後には対照中間層は1.0超の好ましくない斑点値を有していた。
【0087】
実施例3
[00090]実施例1においてEX1-IIL1およびEX1-IIL2について上述したプロセスと同じプロセスに従って、10個の本発明の三層中間層(実施例3の本発明の中間層:EX3-IIL1、EX3-IIL2、・・・、EX3-IIL10)を形成した。したがって、それぞれの本発明の中間層EX3-IIL1~EX3-IIL10は、1対のスキン層の間に挟まれたコア層を含んでおり、スキン層の形成に使用されるダイのリップのリップ温度を制御することによって規則的メルトフラクチャーパターンを有するスキン層を形成した。得られた本発明の三層中間層EX3-IIL1~EX3-IIL10は、40~60ミクロンの表面粗度値Rおよび400~700ミクロンのRsm値、ならびに1.0未満の斑点値を含んでいた。
【0088】
[00091]さらに、エンボス加工を用いてスキン層に表面粗度を形成する標準的な先行技術のプロセスを使用して、10個の対照三層中間層(実施例3の対照中間層:EX3-CIL1、EX3-CIL2、・・・、EX3-CIL10)を形成した。本発明の中間層とは対照的に、対照中間層のスキン層の表面は、メルトフラクチャーにより形成されなかった。その代わりに、対照中間層は、エンボス加工により形成されたスキン層上の表面パターンを含んでいた。
【0089】
[00092]上述のアイスフラワー試験に従って、本発明の三層中間層および対照中間層のそれぞれを試験した。特筆すべきことに、本発明の三層中間層(EX3-IIL1、EX3-IIL2、・・・、EX3-IIL10)で形成されたラミネートはいずれも、いかなるアイスフラワー形成も示さなかった。具体的には、図6は、1対のガラスシートの間にラミネートされた本発明の三層中間層(EX3-IIL1、EX3-IIL2、・・・、EX3-IIL10)の1つをそれぞれ備えるラミネートのスタックの写真である。示されるように、そのようなラミネートのいずれも、いかなるアイスフラワー形成も示さない。対照的に、対照三層中間層(EX3-CIL1、EX3-CIL2、・・・、EX3-CIL10)で形成されたラミネートはそれぞれ、対照三層中間層で形成されたラミネートのスタックの写真である図7に示されるように、様々な程度のアイスフラワー形成を含むことが判明した。具体的には、図7に示されるように、対照三層中間層で形成されたラミネートのより低い部分が、アイスフラワー形成を含むことが判明した。
【0090】
実施例4
[00093]実施例1においてEX1-IIL1およびEX1-IIL2について上述したプロセスと同じプロセスに従って、2つの本発明の三層中間層(実施例4の本発明の中間層:EX4-IIL1およびEX4-IIL2)を形成した。したがって、それぞれの本発明の中間層EX4-IIL1およびEX4-IIL2は、1対のスキン層の間に挟まれたコア層を含んでおり、スキン層の形成に使用されるダイのリップのリップ温度を制御することによって規則的メルトフラクチャーパターンを有するスキン層を形成した。得られた本発明の三層中間層EX4-IIL1およびEX4-IIL2は、40~60ミクロンの表面粗度値Rおよび/または400~700ミクロンのRsm、ならびに1.0未満の斑点値を含んでいた。
【0091】
[00094]エンボス加工を用いてスキン層に表面粗度を形成する標準的な先行技術のプロセスを使用して、2つのエンボス加工対照三層中間層(実施例4の対照中間層:EX4-CIL1およびEX4-CIL2)を形成した。本発明の中間層とは対照的に、対照中間層のスキン層の表面は、メルトフラクチャーにより形成されなかった。その代わりに、対照中間層は、エンボス加工により形成されたスキン層上の表面パターンを含んでいた。
【0092】
[00095]さらに、先行技術のプロセスを使用して、2つの無作為メルトフラクチャー対照三層中間層(実施例4の対照中間層:EX4-RIL1およびEX4-RIL2)を形成した。本発明の中間層とは対照的に、対照中間層のスキン層の表面は、メルトフラクチャーにより規則的パターン表面粗度を有するように形成されなかった。その代わりに、無作為対照中間層は、メルトフラクチャーにより形成されたスキン層上の無作為表面パターンを含んでいた。
【0093】
[00096]中間層試料のそれぞれを、真空バッグ脱気後に光透過について試験した。真空バッグ脱気は、オートクレーブ処理の最終ステップの前に試料から空気を排出するために使用される技術である。これは、商業的運転においてオートクレーブ収率を改善するためにしばしば使用され得る。中間層試料のそれぞれを2枚のガラス板の間に設置し、ラミネートしてラミネートパネルを形成した。試料のそれぞれの一方は平坦な非成形ガラスパネル(表3において「非成形」と称される)でラミネートされ、試料のそれぞれの他方は成形(例えば湾曲)ガラスパネル(表3において「成形」と称される)でラミネートされたことに留意されたい。次いで、ラミネートパネルを弾力性のあるゴム製の袋に入れ、次いでこれをバッグに接続された真空ホースによって排気した。バッグを真空下で約50℃の温度に昇温して60分間保持し、次いで120℃に20分間保持した。次いでバッグを冷却し、得られたパネルを取り出してオートクレーブ内に設置し、最終的な仕上げを行った。
【0094】
[00097]真空バッグ脱気後、およびオートクレーブ処理前に、光透過測定値をパーセンテージとして計測した。低い光透過パーセンテージ値は不十分な脱気を示し、一方高い光透過パーセンテージ値は許容され得る脱気を示す。光透過は、分光光度計を用いて試験した。各ラミネートを、ラミネート全体にわたって分散した場所で8回試験し、8つの結果を平均して図3に示されるような光透過値を得たが、表中、LTは光透過率である。
【0095】
【表3】
【0096】
[00098]上記の表3から分かるように、2つのエンボス加工対照三層中間層EX4-CIL1およびEX4-CIL2は、最良の光透過特性(最も高い光透過パーセンテージ、これはより良好な、または許容され得る脱気を示していた)を示し、一方2つの無作為対照三層中間層EX4-RIL1およびEX4-RIL2は、最低または最悪の光透過特性(最も低い光透過パーセンテージ、これは許容され得ない脱気を示していた)を示した。2つの本発明の三層中間層EX4-IIL1およびEX2-IIL4は、2つの無作為対照三層中間層EX4-RIL1およびEX4-RIL2に勝る改善された光透過特性(すなわち、改善されたまたはより高い光透過パーセンテージ、これは許容され得る脱気を示していた)を示した。したがって、本実施例は、本発明の三層中間層は標準的な真空バッグ脱気プロセスにより十分に脱気され得るが、無作為メルトフラクチャーパターンで形成された無作為三層中間層はそのような標準的な真空バッグ脱気プロセスにより十分に脱気され得ないことを示している。具体的には、無作為三層中間層はまた、十分に脱気されるために(対照三層中間層の場合のように)エンボス加工されなければならないが、本発明の三層中間層は、十分な脱気のためにさらにエンボス加工される必要がない。
【0097】
実施例5
[00099]4つのポリマー層(実施例5のポリマー層:EX5-PL1、EX5-PL2、EX5-PL3、およびEX5-PL4)を形成した。次いで、以下で議論されるようにASTM D-4065に従って実施例5のポリマー層を試験し、様々な温度でポリマー層の貯蔵弾性率値を決定した。そのような貯蔵弾性率を決定したら、デルタG’値を計算して、EX5-PL4をEX5-PL1、EX5-PL2、およびEX5-PL3のそれぞれと比較した。
【0098】
[000100]EX5-PL1、EX5-PL2、およびEX5-PL3ポリマー層については、そのようなポリマー層はPVB樹脂および38phrの可塑剤を混合することによって形成された。EX5-PL1ポリマー層の樹脂は150Kダルトンの分子量を有し、一方EX5-PL2およびEX5-PL3ポリマー層の樹脂は160Kダルトンの分子量を有していた。
【0099】
[000101]EX5-PL4ポリマー層については、ポリマー層はPVBおよび75phrの可塑剤を含んでいた。EX5-PL4ポリマー層の樹脂は、250~300Kダルトンの分子量を有していた。上述の実施例5のポリマー層の組成を考慮すると、EX5-PL4は、概して音響三層中間層のコア層に対応し、一方EX5-PL1、EX5-PL2、およびEX5-PL3は、概して音響三層中間層のスキン層に対応した。
【0100】
[000102]前述したように、動的機械熱分析(DMTA)を用いて、実施例5のポリマー層のそれぞれの貯蔵弾性率値を得た。次いで、以下の表4に示すように、様々な温度でポリマー層の貯蔵弾性率値を得た。EX5-PL1およびEX5-PL2ポリマー層については、140℃~200℃の温度に対して10℃間隔で貯蔵弾性率値を得た。EX5-PL3ポリマー層については、200℃の温度に対して貯蔵弾性率値を得た。EX5-PL4ポリマー層については、170℃~180℃の温度に対して貯蔵弾性率値を得た。
【0101】
[000103]実施例5のポリマー層の貯蔵弾性率を得たら、EX5-PL1、EX5-PL2、およびEX5-PL3のそれぞれと比較してEX5-PL4のそのような貯蔵弾性率値の差を計算し、そのような試料の(示された温度での)デルタG’値を得た。得られたデルタG’値を、以下の表4に示す。デルタG’値は、EX5-PL1、EX5-PL2、および/またはEX5-PL3の貯蔵弾性率値をそれぞれEX5-PL4の貯蔵弾性率値から差し引くことによって得られたことに留意されたい。したがって、正のデルタG’値は、EX5-PL4ポリマー層(すなわちコア層)がEX5-PL1、EX5-PL2、および/またはEX5-PL3ポリマー層(すなわちスキン層)よりも比較的軟らかいことを示していた。対照的に、負のデルタG’値は、EX5-PL4ポリマー層がEX5-PL1、EX5-PL2、および/またはEX5-PL3ポリマー層よりも比較的硬いことを示している。
【0102】
【表4】
【0103】
[000104]表4により示されるように、EX5-PL1およびEX5-PL4ポリマー層を比較して得られたデルタG’値は、EX5-PL1ポリマー層のDMTA試験温度が約160℃以上である場合(およびEX5-PL4ポリマー層の温度が約170℃または180℃である場合)、約30,000Pa以下であった。EX5-PL1およびEX5-PL4ポリマー層で形成された中間層の斑点値は、EX5-PL1ポリマー層のDMTA試験温度が約160℃以上である場合、1.0以下であると推定された。対照的に、EX5-PL1およびEX5-PL4ポリマー層で形成された中間層の斑点値は、EX5-PL1ポリマー層のDMTA試験温度が160℃未満である場合、1.0超であると推定された。したがって、表4のデルタG’値および対応する推定斑点値は、デルタG’値が約30,000Pa以下であった場合、EX5-PL1およびEX5-PL4ポリマー層で形成された中間層が好ましい斑点値(すなわち1.0以下)を有することを示している。対照的に、表4は、デルタG’値が約50,000Pa以上であった場合、EX5-PL1およびEX5-PL4ポリマー層で形成された中間層が好ましくない斑点値(すなわち1.0超)を有することを示している。
【0104】
[000105]さらに表4により示されるように、EX5-PL2およびEX5-PL4ポリマー層を比較して得られたデルタG’値は、EX5-PL2ポリマー層のDMTA試験温度が約160℃以上である場合(およびEX5-PL4ポリマー層の温度が約170℃または180℃である場合)、約42,000Pa以下であった。EX5-PL2およびEX5-PL4ポリマー層で形成された中間層の斑点値は、EX5-PL2ポリマー層のDMTA試験温度が約160℃以上である場合、1.0以下であると推定された。対照的に、EX5-PL2およびEX5-PL4ポリマー層で形成された中間層の斑点値は、EX5-PL2ポリマー層のDMTA試験温度が160℃未満である場合、1.0超であると推定された。したがって、表4のデルタG’値および対応する推定斑点値は、デルタG’値が約42,000Pa以下であった場合、EX5-PL2およびEX5-PL4ポリマー層で形成された中間層が好ましい斑点値を有することを示している。対照的に、表4は、デルタG’値が約60,000Pa以上であった場合、EX5-PL2およびEX5-PL4ポリマー層で形成された中間層が好ましくない斑点値を有することを示している。
【0105】
[000106]さらに表4により示されるように、EX5-PL3およびEX5-PL4ポリマー層を比較して得られたデルタG’値は、EX5-PL3ポリマー層のDMTA試験温度が約200℃に等しい場合(およびEX5-PL4ポリマー層の温度が約170℃または180℃である場合)、約-3,300Pa以下であった。EX5-PL3およびEX5-PL4ポリマー層で形成された中間層の斑点値は、EX5-PL3ポリマー層のDMTA試験温度が約200℃以上である場合、1.0以下であると推定された。したがって、表4のデルタG’値および対応する推定斑点値は、デルタG’値が約-3,300Pa以下であった場合、EX5-PL3およびEX5-PL4ポリマー層で形成された中間層が好ましい斑点値を有することを示している。上で議論されたように、負のデルタG’値は、EX5-PL4ポリマー層(すなわちコア層)がEX5-PL3ポリマー層(すなわちスキン層)よりも硬いことを示している。負のデルタG’値はEX5-PL3ポリマー層(スキン層)がEX5-PL4ポリマー層(すなわちコア層)より軟らかいことを示し、したがってEX5-PL3ポリマー層がそのメルトフラクチャーをEX5-PL4ポリマー層に刻み込む能力が低減されることに一部起因して、EX5-PL3およびEX5-PL4ポリマー層を備えるポリマー中間層の上述の好ましい斑点値が得られたと考えられる。
【0106】
[000107]現在好ましい実施形態であると考えられているものを含むある特定の実施形態の説明と併せて本発明を開示したが、発明を実施するための形態は例示的であることを意図し、本開示の範囲を限定するように理解されるべきではない。当業者に理解されるように、本明細書において詳細に説明されているもの以外の実施形態が、本発明に包含される。本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、説明された実施形態の修正および変形が行われてもよい。
【0107】
[000108]さらに、本開示の任意の単一の構成要素について示された範囲、値または特徴はいずれも、本開示の他の構成要素のいずれかについて示された任意の範囲、値または特徴と交換可能に使用されて、適合する場合には、本明細書全体に示されるような構成要素のそれぞれに対する定義された値を有する実施形態を形成し得ることが理解される。
【0108】
[00109]例えば、残留ヒドロキシル含有量について示された範囲のいずれかに加えて、示された範囲のいずれかの可塑剤含有量を含むポリマー層が形成されて、適切な場合には、本発明の範囲内であるが列挙するには煩雑な多くの置き換えを形成し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】