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特表2024-539893感染性障害を治療する方法で使用するためのブチロフィリン(BTN)3A活性化抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】感染性障害を治療する方法で使用するためのブチロフィリン(BTN)3A活性化抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241024BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523568
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2022080048
(87)【国際公開番号】W WO2023073084
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21306505.5
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520098187
【氏名又は名称】イムチェック セラピューティクス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】IMCHECK THERAPEUTICS SAS
(71)【出願人】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】515267792
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ エクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】58 Boulevard Charles Livon F-13284 Marseille Cedex 07 France
(71)【出願人】
【識別番号】509016944
【氏名又は名称】セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(シー.エヌ.アール.エス.)
(71)【出願人】
【識別番号】520098202
【氏名又は名称】インスティテュート ジャン パオリ アンド イレーヌ カルメット
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT JEAN PAOLI & IRENE CALMETTES
(71)【出願人】
【識別番号】520271517
【氏名又は名称】アシスタンス パブリック-オピトークス デ マルセイユ(エーピー‐エイチエム)
(71)【出願人】
【識別番号】524146561
【氏名又は名称】インスティテュート デ ルシェルシュ プア レ デヴロップマン(アイアールディー)
【氏名又は名称原語表記】Institut de Recherche pour le Developpement (IRD)
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オリーヴ, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】メズアル, ソラヤ
(72)【発明者】
【氏名】メージュ, ジャン‐ルイ
(72)【発明者】
【氏名】フローナ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】トルーネ, アレムセゲド
(72)【発明者】
【氏名】ゲイ, レティシア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB112
4C084ZB33
4C084ZB332
4C084ZB352
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB42
4C085EE03
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA29
4H045EA53
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、感染性障害を治療する方法に関する。特に、本開示は、BTN3A活性化抗体、および、感染性障害の治療を必要とするヒト対象における、例えば、SARS-Cov2またはCoxiella burnetii感染によって引き起こされる感染性障害の治療におけるBTN3A活性化抗体の使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染性障害の治療を必要とするヒト対象における、好ましくは、(i)SARS-Cov2感染によって引き起こされる障害、典型的にはCOVID-19、および(ii)Coxiella burnetii感染によって引き起こされる障害、典型的にはQ熱からなる群から選択される感染性障害の治療における使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項2】
以下の特性のうちの1つまたは複数を有する、請求項1に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体:
(i)前記BTN3A活性化抗体が、フローサイトメトリーアッセイで測定した場合に、50μg/ml以下、好ましくは10μg/ml以下のEC50でヒトPBMCに結合する;
(ii)前記BTN3A活性化抗体が、脱顆粒アッセイで測定した場合に、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、BTN3を発現する細胞との共培養において、γδ-T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化をインビトロで誘導する;
(iii)前記BTN3A活性化抗体が、Vγ9Vδ2 T細胞の存在下での単球の共培養物を用いてインビトロで測定した場合に、C.burnetii細菌量の減少をインビトロで増強する;
(iv)前記BTN3A活性化抗体が、典型的には4時間の共培養後、感染した単球の共培養物を用いてインビトロで測定した場合に、C.burnetiidに対するVγ9Vδ2 T細胞のインビトロ細胞傷害活性を増加させる;および/または
(v)前記BTN3A活性化抗体が、感染した細胞とVγ9Vδ2 T細胞との共培養物においてインビトロで測定した場合に、SARS-Cov2に感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞のインビトロ細胞傷害活性を増加させる。
【請求項3】
配列番号5~7のHCDR1~3および配列番号8~10のLCDR1~3を含む、請求項1または請求項2に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項4】
前記BTN3A活性化抗体が、
(i)配列番号11~13のHCDR1~3および配列番号14~16のLCDR1~3を含むか;
(ii)配列番号17~19のHCDR1~3および配列番号20~22のLCDR1~3を含むか;
(iii)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)ポリペプチド、および配列番号2と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)ポリペプチドを含むか;
(iv)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)ポリペプチド、および配列番号4と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)ポリペプチドを含むか;
(v)寄託番号I-4401の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマによって産生されるmAb20.1と、結合について競合するか;または
(vi)寄託番号I-4402の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマによって産生されるmAb7.2と、結合について競合する、
のいずれかである、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項5】
配列番号1の可変重鎖VHおよび配列番号2の軽鎖VLを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体であって、前記BTN3A活性化抗体が、変異体または化学的に改変されたIgG1定常領域を含み、前記変異体または化学的に改変されたIgG1定常領域が、野生型IgG1アイソタイプ定常領域を有する対応する抗体と比較した場合に、Fcγ受容体への結合を有しないかまたは減少した結合を付与し、好ましくは、前記BTN3A活性化抗体が、変異L247F L248EおよびP350Sを有するIgG1三重変異Fcである変異体IgG1定常領域を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項7】
前記活性化BTN3A抗体が、配列番号23の重鎖および配列番号24の軽鎖を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項8】
好ましくはレムデシビル、バリシチニブ、バムラニビマブ、バムラニビマブ/エテセビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、デキサメタゾン、ブデソニドおよびトシリズマブからなる群から選択される、抗ウイルスまたは抗炎症治療と組み合わせて、同時にまたは別個に投与される、SARS-Cov2感染によって引き起こされる障害を治療するための請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項9】
前記対象が、SARS-Cov2陽性であると診断されているヒト対象である、SARS-Cov2感染によって引き起こされる障害を治療するための請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項10】
前記対象が、軽度または中程度のCOVID-19を有するか、または重度のCOVID-19に進行する高いリスクがあるヒト対象である、SARS-Cov2感染によって引き起こされる障害を治療するための請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項11】
前記対象が重度COVID-19を有する、SARS-Cov2感染によって引き起こされる障害を治療するための請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項12】
好ましくはドキシサイクリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、オフロキサシン、およびヒドロキシクロロキンから選択される抗生物質から選択される抗菌治療と組み合わせて、同時にまたは別個に投与される、Coxiella Burnetii感染によって引き起こされる障害を治療するための請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項13】
前記対象がCoxiella Burnetii感染に陽性であると診断されている、Coxiella Burnetii感染によって引き起こされる障害を治療するための請求項1~8および12のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項14】
前記対象がQ熱を有する、Coxiella Burnetii感染によって引き起こされる障害を治療するための請求項1~8および12~13のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【請求項15】
静脈内注入によって、好ましくは1mg~1g含まれる用量で、例えば1mg~200mg含まれる用量で、それを必要とする対象に投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感染性障害を治療する方法に関する。特に、本開示は、BTN3A活性化抗体、および、感染性障害の治療を必要とするヒト対象における感染性障害、例えば、SARS-Cov2またはCoxiella burnetii感染によって引き起こされる障害の治療におけるBTN3A活性化抗体の使用を提供する。
【背景】
【0002】
新興の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされたコロナウイルス疾患2019の世界的なパンデミックは、今日までに世界中で2億2000万超の症例をもたらし、480万超が死亡している。一部の感染者は無症候性のままであり、一部の感染者は医学的注意なしにまたはほとんど医学的注意なしに消散する軽度の呼吸器疾患を発症するが、他の感染者(症候性の人の10~20%)は、呼吸不全および患者の死亡につながる可能性がある多臓器合併症に関連する(Gupta et al.,2020、Schultze and Aschenbrenner,2021)、最初の症候の発症から約11日後の突然の悪化(Chen et al.,2020)がしばしば生じる重度の疾患を経験する。ワクチン接種は、疾患を予防するためのウイルスおよびウイルスのバリアントに対するアセットのままであるが、現在は対症的な治療のみが提供されている。この文脈において、薬物治療を開発する必要性のある疾患との戦いでは、努力を続けなければならない。別の文脈において、Q熱の場合には、免疫療法が考えられ得る。この世界的な人獣共通感染症は、細菌Coxiella burnetiiによって引き起こされ、ヒトでは症例の40%において症候性である一次感染症(急性Q熱)を引き起こす。限局性持続感染への進行も症例の1~5%で観察され、主に心血管症状および骨関節症状を伴う。現在、急性Q熱の主な治療はドキシサイクリンである。心内膜炎などのいくつかの場合では、ドキシサイクリンおよびヒドロキシクロロキンを用いた数ヶ月間の長期治療が処方される。
【0003】
COVID-19の現在の臨床的管理は、予防、社会的距離などの制御手段、ならびに指示された場合には酸素補給および機械的換気補助を含む支持療法からなる。これまでに、FDAは、少なくとも体重40kgの12歳以上の入院患者におけるCOVID-19の治療のために、1つの薬物レムデシビル(ベクルリー)を承認している。
【0004】
末梢血T細胞の2~5%を占めるヒトVγ9Vδ2 T細胞は、マイコバクテリア疾患、リステリア症、サルモネラ症、ブルセラ症、野兎病、レジオネラ症およびQ熱の患者について報告されているように(Morita et al Immunol Rev 2007;215:59-76;Balbi et al.Am Rev Respir Dis 1993;148:1685-90;Jouen-Beades F,et al.Infect Immun 1997;65:4267-72;Hara T,Mizuno Y,Takaki K,et al.J Clin Invest 1992;90:204-10;Bertotto A,Gerli R,Spinozzi F,et al.Eur J Immunol 1993;23:1177-80;Poquet Y,Kroca M,Halary F,et al.Infect Immun 1998;66:2107-14;Kroca M,Johansson A,Sjostedt A,Tarnvik A.Clin Diagn Lab Immunol 2001;8:949-54;Schneider T,Jahn H-U,Liesenfeld O,et al.Clin Infect Dis 1997;24:261-4)、感染中に広範囲の微生物エージェントによって増殖し、循環T細胞プールの50%超を占めること(Chen ZW.Cell Mol Life Sci 2011;68:2409-1)が見出されている。さらに、Vγ9Vδ2 T細胞の局所的な増殖は、活動性肺結核患者からの気管支肺胞洗浄液および細菌性髄膜炎患者からの脳脊髄液においても報告されている(Chen ZW,Letvin NL.Microbes Infect 2003;5:491-8;Dieli F,Sireci G,Di Sano C,et al.Mol Med 1999;5:301-12;Caccamo N,La Mendola C,Orlando V,et al.Blood 2011;118:129-38)。
【0005】
病原体感染細胞に対する細胞傷害活性およびサイトカイン産生に基づく細胞媒介性非細胞溶解活性を含む、様々なウイルス、原虫および細菌に対するVγ9Vδ2 T細胞の2つの直接的な抗菌作用が報告された(Bonneville M,Scotet E.Curr Opin Immunol 2006;18:539-46;Chen ZW.Cell Mol Immunol 2013;10:58-64;Poccia F,Agrati C,Martini F,Capobianchi MR,Wallace M,Malkovsky M.Microbes Infect 2005;7:518-28;Dong P,Ju X,Yan Y,et al.Front Immunol 2018;9.DOI:10.3389/fimmu.2018.02812)。インビトロ研究により、γT細胞が、M.tuberculosis、L.monocytogenes、およびBrucella suisなどの細胞内病原体を効果的に死滅させることができることが示されている。Ryan-Payseur B,Frencher J,Shen L,Chen CY,Huang D,Chen ZW.J Immunol 2012;189:1285-93;Spencer CT,Abate G,Sakala IG,et al.PLOS Pathog 2013;9:e1003119;Dieli F,Troye-Blomberg M,Ivanyi J,et al.J Infect Dis 2001;184:1082-5;Martino A,Casetti R,Sacchi A,Poccia F.J Immunol Baltim Md 1950 2007;179:3057-64;Oliaro J,Dudal S,Liautard J,Andrault J-B,Liautard J-P,Lafont V.J Leukoc Biol 2005;77:652-60。
【0006】
いくつかのエビデンスは、細胞内寄生細菌Coxiella burnetiiによって引き起こされる感染性疾患であるQ熱におけるVγ9Vδ2 T細胞の鍵となる役割を強調している。(1)疾患の急性期中に、Vγ9Vδ2 T細胞の数および割合が増加し、(2)活性化マーカーHLA-DRは有意に発現しているがCD25は発現していないことが見出された。Schneider T,Jahn H-U,Liesenfeld O,et al.Clin Infect Dis 1997;24:261-4。
【0007】
国際公開第2012/080351号は、Vγ9Vδ2 T細胞の増殖およびサイトカイン分泌を誘導する能力を有する、マウスmAb7.2またはmAb20.1などのBTN3A活性化抗体を報告している。
【0008】
国際公開第2020/025703号は、特にがん障害の治療におけるヒト化BTN3A活性化抗体の使用のための、特定のヒト化BTN3A活性化抗体をさらに報告している。
【0009】
国際公開第2020/136218号はまた、抗BTN3A抗体mAb103.2のFab断片に由来する断片、ならびにVγ9Vδ2 T細胞の増殖およびサイトカイン分泌を誘導するためのBTN3A活性化抗体としての該Fab断片に由来する断片の使用を開示している。
【0010】
しかしながら、本発明者らの知る限りでは、Coxiella burnetiiまたはSARS-Cov2によって引き起こされる感染性障害を治療するための、Vγ9Vδ2 T細胞の活性化化合物、特にBTN3A活性化抗体の説得力のある使用のエビデンスはない。
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、mAb20.1を用いた治療などのBTN3A活性化抗体を用いた治療が、SARS-CoV-2およびCoxiella burnetiiに感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞応答を増強して、特にウイルスおよび細菌量をそれぞれ減らすことを見出した。
【概要】
【0012】
本開示の第1の態様は、感染性障害の治療を必要とするヒト対象における感染性障害の治療で使用するための、特に、SARS-Cov2感染またはCoxiella Burnetii感染によって引き起こされる障害を治療するための、BTN3A活性化抗体に関する。
【0013】
特定の実施形態では、前記BTN3A活性化抗体は、mAb20.1またはmAb20.1のヒト化形態である。
【0014】
本開示の別の態様は、mAb20.1の新規なヒト化形態または該新規なヒト化形態の医薬組成物、特に、SARS-Cov2感染またはCoxiella Burnetii感染によって引き起こされる障害の治療での該新規なヒト化形態および該医薬組成物の使用に関する。
【0015】
他の特定の態様および特定の実施形態は、以下に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】単球、MDMおよび肺上皮細胞株におけるSARS-CoV-2-感染に応答したBTN2AおよびBTN3Aの発現
図1B】単球、MDMおよび肺上皮細胞株におけるSARS-CoV-2-感染に応答したBTN2AおよびBTN3Aの発現 (A、B)単球、MDM、BEAS-2BおよびMRC-5細胞を、SARS-CoV-2 IHU-MI6株(1 MOI)で24時間刺激した。BTN2A(A)およびBTN3A(B)発現の平均蛍光強度(MFI)を、健康なドナー単球およびMDM、ならびに肺上皮細胞株BEAS-2BおよびMRC-5(n=3)に対して調べた。2つのBTN2Aアイソフォーム(A1、A2)(A)および3つのBTN3Aアイソフォーム(A1、A2、A)(B)の遺伝子発現を、ハウスキーピング遺伝子を内在性対照として用いて正規化した後、qRT-PCRによって調べた。24時間の刺激での調査した遺伝子の相対発現を、単球およびMDM(n=6)、ならびにBEAS-2BおよびMRC-5細胞(n=3)について評価した。
図2】Vγ9Vδ2 T細胞の生存率に対するSARS-CoV-2の影響。Vγ9Vδ2 T細胞(3人の健康なボランティアから単離した)を、SARS-CoV-2 IHU-MI6株(0.25、0.5または1 MOI)で刺激した。24時間後、Vγ9Vδ2 T細胞の生存率を、Vγ9Vδ2 T細胞集団における生細胞のパーセンテージとしてフローサイトメトリーによって評価した。値は、平均±平均の標準誤差を表す。
図3A】Vγ9Vδ2 Tリンパ球の抗SARS-CoV-2応答の評価。
図3B】Vγ9Vδ2 Tリンパ球の抗SARS-CoV-2応答の評価。(A、B)単球、MDM、BEAS-2BおよびMRC-5細胞(n=6)をSARS-CoV-2 IHU-MI6株(1 MOI)で刺激し、抗BTN3A 20.1 Ab(0、0.1、1または10μg/ml)の存在下で、Vγ9Vδ2 T細胞と1:1のエフェクター対標的(E:T)比で24時間共培養した。(A)24時間後、SARS-CoV-2ウイルス量を、RT-PCRによって定量した。データを、以下の式2^-(Ct anti-BTN3A ICT01-Ct diluent)によって分析し、ウイルスコピー%で表した。細胞傷害性を、標的細胞集団におけるカスパーゼ3/7細胞のパーセンテージとして、フローサイトメトリーによって評価した。(B)共培養物からの培養上清を、IFN-γの存在について、ELISAによって分析した。値は平均±標準誤差を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001および****p<0.0001。
図4A】C.burnetii感染は、BTN3AおよびBTN2Aの発現を調節する。
図4B】C.burnetii感染は、BTN3AおよびBTN2Aの発現を調節する。
図4C】C.burnetii感染は、BTN3AおよびBTN2Aの発現を調節する。
図4D】C.burnetii感染は、BTN3AおよびBTN2Aの発現を調節する。
図4E】C.burnetii感染は、BTN3AおよびBTN2Aの発現を調節する。
図4F】C.burnetii感染は、BTN3AおよびBTN2Aの発現を調節する。健康なドナー(n=4)から単離した単球を、C.burnetii株(50 MOI)で24時間感染させた。(A)BTN3Aアイソフォーム(A1、A2、A3)の相対遺伝子発現および(B)BTN3Aのタンパク質発現を、それぞれqRT-PCRおよびフローサイトメトリーによって調べた。(D)BTN2Aアイソフォーム(A1、A2)の相対遺伝子発現および(E)BTN2Aのタンパク質発現を、それぞれqRT-PCRおよびフローサイトメトリーによって調べた。(C)BTN3Aおよび(F)BTN2Aのタンパク質発現を、Q熱患者(n=6)または健康なドナー(n=3)由来のPBMCについて調べた。値は平均±標準誤差を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001および****p<0.0001。
図5A】C.burnetii感染におけるBTN3AおよびBTN2Aの関与。
図5B】C.burnetii感染におけるBTN3AおよびBTN2Aの関与。BTN3AまたはBTN2AのCRISPR-Cas9媒介性不活性化を、THP-1細胞株において行った。すべてのBTN2Aアイソフォーム(BTN2AKO)もしくはすべてのBTN3Aアイソフォーム(BTN3AKO)を標的とするガイド、または対照細胞のための無関係なCRISPRガイド(モック)を形質導入したTHP-1細胞を、C.burnetii NM1(50 MOI)で感染させた(n=3)。(A)感染の4時間後および24時間後、THP-1細胞内の細菌DNAコピー数をqPCRによって評価した。(B)THP-1細胞をC.burnetiiと共に4時間(0日目)インキュベートし、次いで洗浄して遊離細菌を除去し、4日間インキュベートした。毎日、細菌のDNAコピー数をqPCRによって評価した。
図6A】C.burnetii感染に対する炎症応答におけるBTN3AおよびBTN2Aの関与。
図6B】C.burnetii感染に対する炎症応答におけるBTN3AおよびBTN2Aの関与。無関係なCRISPRガイド(モック)またはすべてのBTN2Aアイソフォーム(BTN2AKO)もしくはすべてのBTN3Aアイソフォーム(BTN3AKO)を標的とするガイドを形質導入したTHP-1細胞を、C.burnetii NM1(100 MOI)で感染させた(n=3)。24時間の感染後、炎症性(TNF、IL1B、IL6、IFNG、CXCL10)または免疫調節性(IL10、TGFB1、IL1RA、CD163)応答に関与する遺伝子の発現を、ハウスキーピングアクチン遺伝子を内在性対照として用いて正規化した後、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応によって調べた。データを、(A)調査した遺伝子の相対発現(RQ)として示す。(B)24時間の感染後、培養上清におけるTNF-α、IL-1β、IFN-γ、IL-6、IL-10、およびTGF-βの放出を、ELISAアッセイによって評価した。値は平均±標準誤差を表す。*p<0.05および**p<0.01。
図7A】C.burnetiiによる感染は、Vγ9Vδ2 Tリンパ球のBTN3AおよびBTN2依存的活性化をもたらす。
図7B】C.burnetiiによる感染は、Vγ9Vδ2 Tリンパ球のBTN3AおよびBTN2依存的活性化をもたらす。
図7C】C.burnetiiによる感染は、Vγ9Vδ2 Tリンパ球のBTN3AおよびBTN2依存的活性化をもたらす。
図7D】C.burnetiiによる感染は、Vγ9Vδ2 Tリンパ球のBTN3AおよびBTN2依存的活性化をもたらす。
図7E】C.burnetiiによる感染は、Vγ9Vδ2 Tリンパ球のBTN3AおよびBTN2依存的活性化をもたらす。
図7F】C.burnetiiによる感染は、Vγ9Vδ2 Tリンパ球のBTN3AおよびBTN2依存的活性化をもたらす。
図7G】C.burnetiiによる感染は、Vγ9Vδ2 Tリンパ球のBTN3AおよびBTN2依存的活性化をもたらす。
図7H】C.burnetiiによる感染は、Vγ9Vδ2 Tリンパ球のBTN3AおよびBTN2依存的活性化をもたらす。(A)C.burnetii NM1(50または100 MOI)で予め24時間感染させた、健康なドナー(n=3)から単離した単球を、健康なドナー由来の増殖させたVγ9Vδ2 T細胞と共培養した(E:T比1:1)。Vγ9Vδ2 T細胞の脱顆粒(CD107ab+細胞%)を、共培養の4時間後にフローサイトメトリーによって評価した。(B、C、F)C.burnetii株(50 MOI)で予め24時間感染させた、健康なドナー(n=4)から単離した単球を、(B)抗BTN2A抗体(クローン7.48)、(C)抗BTN3A抗体(クローン103.2)または(F)抗BTN3A抗体(クローン20.1)(10μg/ml)の存在下で、健康なドナー由来の増殖させたVγ9Vδ2 T細胞と共培養した(E:T比1:1)。Vγ9Vδ2 T細胞の脱顆粒(CD107ab+細胞%)を、共培養の4時間後にフローサイトメトリーによって評価した。(G)細胞傷害性を、参照抗BTN3A 20.1抗体(10μg/ml)の存在下で4時間共培養した後の標的細胞集団におけるカスパーゼ3/7細胞のパーセンテージとして、フローサイトメトリーによって評価した。(D、E、H)健康なドナー由来の増殖させたVγ9Vδ2 T細胞を、(D)抗BTN2A抗体(クローン7.48)、(E)抗BTN3A抗体(クローン103.2)または(F)抗BTN3A抗体(クローン20.1)(10μg/ml)の存在下で、Q熱患者(n=6)または健康なドナー(n=3)由来のPBMCと共培養した(E:T比1:1)。Vγ9Vδ2 T細胞の脱顆粒(CD107ab+細胞%)を、共培養の4時間後にフローサイトメトリーによって評価した。値は平均±標準誤差を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001および****p<0.0001。
図8A】参照20.1 BTN3A活性化抗体は、C.burnetiiに感染した単球に対するVγ9Vδ2 T細胞の抗菌活性を増加させる。
図8B】参照20.1 BTN3A活性化抗体は、C.burnetiiに感染した単球に対するVγ9Vδ2 T細胞の抗菌活性を増加させる。(A、B)C.burnetii NM1(50 MOI)で予め24時間感染させた、健康なドナー(n=4)から単離した単球を、抗BTN3A 20.1抗体(0~10μg/ml)の存在下で、健康なドナー由来の増殖させたVγ9Vδ2 T細胞と共培養した(E:T比1:1)。4時間の共培養後、C.burnetii量を、(A)フローサイトメトリーおよび(B)qPCRによって測定した。値は平均±標準誤差を表す。*p<0.05、**p<0.01および***p<0.001。
図9A】参照20.1 BTN3A活性化抗体は、Vγ9Vδ2 T細胞/感染した単球の共培養物において、サイトカインおよび細胞傷害性分子の分泌を増加させる。
図9B】参照20.1 BTN3A活性化抗体は、Vγ9Vδ2 T細胞/感染した単球の共培養物において、サイトカインおよび細胞傷害性分子の分泌を増加させる。C.burnetii NM1(50 MOI)で予め24時間感染させた、健康なドナー(n=4)から単離した単球を、抗BTN3A抗体(クローン20.1)(0~10μg/ml)の存在下で、健康なドナー由来の増殖させたVγ9Vδ2 T細胞と共培養した(E:T比1:1)。4時間の共培養後、培養上清を、ELISAアッセイによってサイトカイン(A、左パネル)および細胞傷害性分子(B、右パネル)の存在について分析した。値は平均±標準誤差を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001および****p<0.0001。
【詳細な説明】
【0017】
定義
本開示がより容易に理解され得るように、ある特定の用語を最初に定義する。追加の定義は、詳細な説明を通して記載されている。
【0018】
「アゴニスト」という用語は、本明細書では、受容体に結合し、受容体を活性化して生物学的応答を生じる分子(例えば、小さい有機分子またはポリペプチド、例えば抗体)に使用される。選択的アゴニストは、特定の種類の受容体に対して選択的である。受容体への結合は、例えば、生物学的に関連のある濃度での表面プラズモン共鳴によって求められる特異的結合であり得る。
【0019】
本明細書で使用される「ポリペプチド」、「タンパク質」または「ペプチド」という用語は、「ポリペプチド」、「タンパク質」または「ペプチド」の長さまたは翻訳後修飾(グリコシル化など)にかかわらず、アミノ酸残基の任意の鎖を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「BTN3A」という用語は、当技術分野における「BTN3A」の一般的な意味を有する。特定の実施形態では、「BTN3A」は、配列番号32のBTN3A1、配列番号33のBTN3A2または配列番号34のBTN3A3のいずれかを含むヒトBTN3Aポリペプチドを指す。
【0021】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は同じ意味を有し、本開示では等しく使用される。したがって、抗体という用語は、抗体分子の全体だけではなく、抗体断片および抗体のバリアント(誘導体を含む)も包含する。本明細書で使用される「抗体」という用語はまた、二重特異性または多重特異性分子も含む。抗体は、誘導体化または別の機能性分子、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)に連結されて、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を生成することができる。抗体は、実際には、誘導体化または2つ以上の他の機能性分子に連結されて、2つを超える異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性分子を生成することができる。そのような多重特異性分子はまた、本明細書で使用される「二重特異性分子」という用語に包含されることが意図される。二重特異性分子を作出するために、本開示の抗体は、二重特異性分子が生じるように、1つまたは複数の他の結合分子、例えば別の抗体、抗体断片、ペプチドまたは結合模倣物に、(例えば、化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合的会合または他の方法によって)機能的に連結され得る。加えて、二重特異性分子が多重特異性である実施形態の場合、分子は、第1および第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含み得る。
【0022】
げっ歯類および霊長類の天然抗体では、2本の重鎖がジスルフィド結合によって互いに連結されており、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている。軽鎖には、ラムダ(λ)およびカッパ(κ)の2種類がある。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主な重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEが存在する。各鎖は、異なる配列ドメインを含む。典型的なIgG抗体では、軽鎖は2つのドメイン、可変ドメイン(VL)および定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、可変ドメイン(VH)および3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3、集合的にCHと称される)を含む。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の両方の可変領域は、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖の会合、分泌、経胎盤移動性、補体結合、およびFc受容体(FcR)への結合などの重要な生物学的特性を付与する。
【0023】
Fv断片は、免疫グロブリンのFab断片のN末端部分であり、1本の軽鎖および1本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性にある。抗体結合部位は、主に超可変または相補性決定領域(CDR)に由来する残基で構成される。時折、非超可変またはフレームワーク領域(FR)由来の残基が、抗体結合部位に関与し得るか、または全体のドメイン構造、したがって結合部位に影響を及ぼし得る。相補性決定領域またはCDRとは、天然の免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性および特異性を一緒に定義するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖の各々は、L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3およびH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3とそれぞれ指定される3つのCDRを有する。したがって、抗原結合部位は、典型的には、重鎖V領域および軽鎖V領域の各々に由来するCDRセットを含む6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)とは、CDR間に介在するアミノ酸配列を指す。したがって、軽鎖および重鎖の可変領域は、典型的には、以下の配列:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の4つのフレームワーク領域および3つのCDRを含む。
【0024】
抗体可変ドメインの残基は、従来、Kabatらによって考案されたシステムに従ってナンバリングされる。このシステムは、Kabat et al.,1987,Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services,NIH,USA(Kabat et al.,1992、以下“Kabat et al.”)に記載されている。このナンバリングシステムは、本明細書で使用される。Kabatの残基表記は、配列番号(SEQ ID)の配列のアミノ酸残基の線状ナンバリングと必ずしも直接対応しない。実際の線状アミノ酸配列は、基本の可変ドメイン構造のフレームワークまたは相補性決定領域(CDR)にかかわらず、構造構成成分の短縮または構造構成成分への挿入に対応して、厳密なKabatナンバリングよりも少ないまたは追加のアミノ酸を含み得る。残基の正しいKabatナンバリングは、抗体の配列における相同性の残基と「標準的な」Kabatナンバリングされた配列とのアラインメントによって、所与の抗体に対して決定され得る。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムに従って、残基31~35H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)および残基95~102(H-CDR3)に位置する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムに従って、残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)および残基89~97(L-CDR3)に位置する。
【0025】
哺乳動物抗体の非CDR領域は、通常は元の抗体のエピトープ特異性を保持しながら、同種特異性または異種特異性抗体の類似の領域で置き換えられ得る。このことは、非ヒトCDRがヒトFRおよび/またはFc/pFc’領域に共有結合的に連結されて機能性抗体を生じる「ヒト化」抗体の開発および使用において最も明確に示されている。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ヒト化」は、ヒト対象における免疫原性を低下させるために、CDR領域外のアミノ酸のいくつか、大部分またはすべてが、ヒト免疫グロブリン分子由来の対応するアミノ酸で置き換えられている抗体を記述する。ヒト化の方法には、限定されないが、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,816,567号明細書、同第5,225,539号明細書、同第5,585,089号明細書、同第5,693,761号明細書、同第5,693,762号明細書および同第5,859,205号明細書に記載されているものが含まれる。上記の米国特許第5,585,089号明細書および同第5,693,761号明細書、ならびに国際公開第90/07861号はまた、ヒト化抗体を設計する際に使用され得る4つの可能な基準も提案している。第1の提案は、アクセプターについて、ヒト化されるドナー免疫グロブリンと異常に相同な特定のヒト免疫グロブリン由来のフレームワークを使用すること、または多くのヒト抗体由来のコンセンサスフレームワークを使用することであった。第2の提案は、ヒト免疫グロブリンのフレームワークのアミノ酸が異常であり、その位置のドナーアミノ酸がヒト配列に典型的である場合、アクセプターではなくドナーアミノ酸を選択することができるということであった。第3の提案は、ヒト化免疫グロブリン鎖の3つのCDRに直接隣接する位置において、アクセプターアミノ酸ではなくドナーアミノ酸を選択することができるということであった。第4の提案は、抗体の三次元モデルにおいてCDRの3Å以内に側鎖原子を有すると予測され、CDRと相互作用することができると予測される、フレームワーク位置にあるドナーアミノ酸を使用することであった。上記の方法は、当業者がヒト化抗体を作製するために用いることができる方法のいくつかの単なる例示である。当業者は、抗体のヒト化のための他の方法に精通しているであろう。いくつかのヒト化形態の抗体では、CDR領域外のアミノ酸のいくつか、大部分またはすべてをヒト免疫グロブリン分子由来のアミノ酸で置き換えることができるが、1つまたは複数のCDR領域内のアミノ酸のいくつか、大部分またはすべては変化しない。アミノ酸のいくつかの付加、欠失、挿入、置換または改変は、所与の抗原に結合する抗体の能力を無効にしない限り、許容可能である。適したヒト免疫グロブリン分子には、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgM分子が含まれる。「ヒト化」抗体は、通常、元の抗体と類似の抗原特異性を保持する。しかしながら、ヒト化のある特定の方法を使用すると、抗体の結合の親和性および/または特異性は、Wu et al.,Mol.Biol.294:151,1999(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような「指向進化(directed evolution)」の方法を使用して増加し得る。
【0027】
完全ヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖の遺伝子座の大部分についてトランスジェニックのマウスを免疫化することによって調製され得る。例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,591,669号明細書、同第5,598,369号明細書、同第5,545,806号明細書、同第5,545,807号明細書、同第6,150,584号明細書、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。これらの動物は、内因性(例えば、マウスの)抗体の産生において機能的欠失が存在するように遺伝的に改変されている。動物は、これらの動物の免疫化が目的の抗原に対する完全ヒト抗体の産生をもたらすように、ヒト生殖系列の免疫グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部を含むようにさらに改変されている。これらのマウス(例えば、XenoMouse(Abgenix)、HuMAbマウス(Medarex/GenPharm))の免疫化後、モノクローナル抗体は、標準的なハイブリドーマ技術に従って調製され得る。これらのモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有することになり、したがって、ヒトに投与された場合、ヒトの抗マウス抗体(KAMA)応答を引き起こさないことになる。
【0028】
ヒト抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するためのインビトロ方法も存在する。これらには、ファージディスプレイ技術(米国特許第5,565,332号明細書および同第5,573,905号明細書)またはヒトB細胞のインビトロ刺激(米国特許第5,229,275号明細書および同第5,567,610号明細書)が含まれる。これらの特許の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
抗体の「抗原結合断片」(または単に「抗体断片」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原(例えば、上で定義されたようなBTN3Aタンパク質)に特異的に結合する能力および抗体のBTN3A活性化特性を保持する、抗体の全長または1つもしくは複数の断片を指す。特定の実施形態では、本明細書に開示されているような感染性障害の治療で使用するためのBTN3A活性化抗体は、抗体断片、より具体的には本明細書に開示されているようなBTN3A活性化抗体の抗原結合ドメインを含む任意のタンパク質である。周知の抗体断片には、以下が含まれる:Fab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片;F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546)、またはそのような抗原結合断片を含む任意の融合タンパク質;2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片を指すダイアボディ、この断片は、同じポリペプチド鎖で軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同じ鎖の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対形成し、2つの抗原結合部位を作出することを強いられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別個の遺伝子によってコードされるが、該2つのドメインは、組換え法を使用して、VLおよびVH領域が対合して一価分子を形成する一本鎖タンパク質として作製することを可能にする合成リンカーによって連結され得る(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423-426;およびHuston et al.,1988 Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照されたい)。そのような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合断片」(本明細書では抗体断片とも略称される)という用語内に包含されることが意図される。より一般的には、本明細書において意図されるような抗体断片は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部を含む抗体断片である単一ドメイン抗体も包含する。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、MA;例えば、米国特許第6,248,516号明細書を参照されたい)。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技法を使用して得られ、断片は、インタクトな抗体と同じ様式で、有用性についてスクリーニングされる。よく適した抗体断片には、限定されないが、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2およびダイアボディが含まれる。抗体断片は、限定されないが、インタクトな抗体のタンパク質消化、および本明細書に記載されているような組換え宿主細胞による産生を含む様々な技法によって作製され得る。
【0030】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一特異性の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来するもしくはヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に基づく、または完全な合成配列に由来する可変領域および定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を指す。モノクローナル抗体を調製する方法は、結合特異性に関係しない。
【0031】
「組換え抗体」は、組換え手段によって産生、発現、生成、または単離される抗体、例えば宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体;組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離される抗体;ヒト免疫グロブリン遺伝子に起因するトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離される抗体;または、特定の免疫グロブリン遺伝子配列(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列)が他のDNA配列とアセンブルされている、任意の他の様式で産生、発現、生成、または単離される抗体である。組換え抗体には、例えば、キメラおよびヒト化抗体が含まれる。いくつかの実施形態では、本開示に従って使用するための組換えヒト抗体は、対応する天然に存在するヒト抗体と同じアミノ酸配列を有するが、前記天然に存在するヒト抗体とは構造的に異なる。例えば、いくつかの実施形態では、グリコシル化パターンは、組換えヒト抗体の組換え産生の結果として異なる。いくつかの実施形態では、組換えヒト抗体は、ヒトにおいて天然に生じるヒト抗体の構造に対して、少なくとも1つの共有化学結合の付加または削除によって化学的に改変される。
【0032】
「単離された抗体」とは、本明細書で使用される場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない(例えば、BTN3Aに特異的に結合する単離された抗体は、BTN3A以外の他の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)抗体を指す。しかしながら、BTN3Aに特異的に結合する単離された抗体は、他の種由来の関連するBTN3A分子などの他の抗原に対する交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0033】
「抗原を認識する抗体」および「抗原に対して特異性を有する抗体」という語句は、本明細書では「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。「抗BTN3A抗体」または「BTN3A抗体」という用語はまた、本明細書では「BTN3Aを認識する抗体」の意味で簡単に使用される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「活性化抗体」という用語は、エフェクター細胞の免疫機能を直接的または間接的に誘導することができる抗体を指す。特に、本明細書で使用される場合、BTN3A活性化抗体は、脱顆粒アッセイ(そのような脱顆粒アッセイは、以下の実施例に記載されている)で測定した場合に、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導する能力を少なくとも有する。
【0035】
本明細書で使用される場合、所定の抗原またはエピトープ、特にBTN3Aへの抗体の結合の文脈における「結合」という用語は、典型的にはリガンドとして抗原の可溶性形態および分析物として抗体を使用するBIAcore機器で、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定される場合に、約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、または約10-11M以下のKに対応する親和性での結合を典型的には意味する。BIACORE(登録商標)(GE Healthcare、Piscaataway、NJ)は、モノクローナル抗体のパネルをエピトープビニングするために日常的に使用されている様々な表面プラズモン共鳴アッセイ形式のうちの1つである。典型的には、抗体は、所定の抗原に、同一にも密接にも関連していない非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に対するKよりも少なくとも10分の1低い、例えば少なくとも100分の1低い、例えば少なくとも1,000分の1低い、例えば少なくとも10,000分の1低い、例えば少なくとも100,000分の1低いKに対応する親和性で結合する。抗体のKが非常に低い(すなわち、抗体は高い親和性を有する)場合、抗体が抗原に結合するKは、典型的には、非特異的抗原に対するKよりも少なくとも10,000分の1低い。抗体は、そのような結合が検出できない(リガンドとして抗原の可溶性形態および分析物として抗体を使用するBIAcore 3000機器で、例えばプラズモン共鳴(SPR)技術を使用して)か、またはその抗体および異なる化学構造もしくはアミノ酸配列を有する抗原もしくはエピトープによって検出される結合よりも100分の1、500分の1、1000分の1もしくは1000分の1超低い、のいずれかの場合、抗原またはエピトープに本質的に結合しないと言われる。
【0036】
「親和性」という用語は、抗体の文脈において本明細書で使用される場合、エピトープへの抗体の結合の強度を意味する。
【0037】
「Kon」または「Kass」(Ka)という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すことが意図される一方、「Kdis」(Kd)または「Koff」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。
【0038】
「K」という用語は、本明細書で使用される場合、koffとkonの比(すなわち、koff/kon)から得られ、モル濃度(M)として表される平衡解離定数を指すことが意図される。K値は抗体の濃度(特定の実験に必要な抗体の量)に関連するので、K値がより低い(より低い濃度)ほど、抗体の親和性はより高い。抗体のK値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。mAbのK値を求めるための好ましい方法は、Harlow,et al,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988)、Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)、およびMuller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)に見出すことができ、これらの参考文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。抗体のKを求める方法は、表面プラズモン共鳴を使用することによるか、またはBiacore(登録商標)(親和性評価に関する詳細情報については、Rich RL,Day YS,Morton TA,Myszka DG.High-resolution and high-throughput protocols for measuring drug/human serum albumin interactions using BIACORE(登録商標).Anal Biochem.2001 Sep 15;296(2):197-207も参照されたい)もしくはOctet(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを使用することによるものである。Octet(登録商標)プラットフォームは、バイオレイヤー干渉法(BLI)技術に基づいている。BLI技術の原理は、2つの表面(固定化されたタンパク質の層および内部参照層)から反射された白色光の光学的干渉パターンに基づく。バイオセンサチップ表面に固定化されたリガンドと溶液中の分析物との間の結合は、バイオセンサチップでの光学的厚さの増加を生じ、ナノメートル単位で測定される干渉パターンのシフトをもたらす。波長シフト(Δλ)は、生物学的層の光学的厚さの変化の直接的な尺度であり、このシフトをある期間にわたって測定し、該シフトの大きさを時間の関数としてプロットすると、古典的な会合/解離曲線が得られる。この相互作用はリアルタイムで測定され、結合特異性、会合速度および解離速度、および濃度をモニタリングすることを可能にする。(Abdiche et al.2008を参照されたい)。親和性の測定は、典型的には25℃で行われる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「特異性」という用語は、BTN3Aなどの抗原に提示されたエピトープに、検出可能に結合する抗体の能力を指す。いくつかの実施形態では、実施例に記載されているように、フローサイトメトリーによって求めた場合に、好ましくは50μg/ml未満、より好ましくは10μg/ml未満のEC50で、末梢血髄細胞(PBMC)に発現するヒトBTN3Aに結合する抗体を指すことが意図される。他の実施形態では、抗体は、実施例に記載されているように、)SPR測定によって測定した場合に、100nM以下、10nM以下、1nM以下、100pM以下、または10pM以下のKで抗原組換えポリペプチドに結合する。
【0040】
「BTN3A以外の抗原と交差反応する」抗体とは、10nM以下、1nM以下、または100pM以下のKでBTN3A以外の抗原に結合する抗体を指すことが意図される。「特定の抗原と交差反応しない」抗体とは、1μM以上のK、または10μM以上のKでその抗原に結合する抗体を指すことが意図される。ある特定の実施形態では、抗原と交差反応しないそのような抗体は、標準的な結合アッセイにおいて、これらのタンパク質に対する本質的に検出不能な結合を示す。
【0041】
特異性はさらに、例えば、特異的抗原への結合(この場合、特異的抗原はBTN3Aポリペプチドである)対他の無関係な分子への非特異的結合における親和性/結合活性の約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1またはそれを超える比によって示され得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、すべての脊椎動物、例えば哺乳動物および非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。
【0043】
本明細書で使用される場合、「最適化される」という用語は、ヌクレオチド配列が、産生細胞または生物、一般に真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはヒト細胞における好ましいコドンを使用してアミノ酸配列をコードするように変更されていることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、出発ヌクレオチド配列によって元々コードされたアミノ酸配列を完全にまたは可能な限り多く保持するように操作されている。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列はまた、最適化されたとも称される。
【0044】
ポリペプチド配列に関して本明細書で使用される「同一性」という用語は、2つの分子間のアミノ酸配列の同一性を指す。両方の分子のアミノ酸位置が同じアミノ酸によって占められている場合、分子はその位置で同一である。2つのポリペプチド間の同一性は、同一の位置の数の直接的な関数である。一般に、配列は、(必要に応じてギャップを含めて)最も高い一致が得られるように整列される。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数×100)の関数である。2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、以下に記載されているように、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0045】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.,4:11-17,1988)を使用して求めることができる。あるいは、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、公開されている技法および広く利用可能なコンピュータプログラム、例えば、BLASTP、FASTA(Atschul et al.,J.Molecular Biol.215:403,1990)、またはGCGソフトウェアパッケージ(Devereux et al.,Nucleic Acids Res.12:387,1984、通常はhttp://www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunsch(J.Mol,Biol.48:444-453,1970)アルゴリズムで入手可能であり、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重みおよび1、2、3、4、5、または6の長さ重みを使用することによって求めることができる。
【0046】
一般に、必ずしもそうとは限らないが、CDR領域などの参照ポリペプチドに関するアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換であることが好ましい。
【0047】
本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」とは、所与のアミノ酸が、類似の物理化学的特徴を有する残基、例えばある脂肪族残基を別の脂肪族残基に置換すること(例えば、互いに、Ile、Val、Leu、またはAla)、またはある極性残基を別の極性残基に置換すること(例えば、LysとArg;GluとAsp;またはGlnとAsnとの間)によって置き換えられ得ることを意味する。他のそのような保存的置換、例えば、類似の疎水性の特徴を有する領域全体の置換が既知である。保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドは、本明細書に記載のアッセイのいずれか1つで試験して、天然型または参照ポリペプチドの所望の活性、例えば抗原結合活性および特異性が保持されていることを確認することができる。アミノ酸は、アミノ酸の側鎖の特性の類似性に従って、以下のようにグループ分けされ得る(A.L.Lehninger,Biochemistry,second ed.,pp.73-75,Worth Publishers,New York(1975)):(1)非極性:Gly(G)、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非電荷極性:Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。代替的に、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて以下のようなグループに分けられ得る:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。特定の保存的置換には、例えば、AlaからGlyもしくはSerへ;ArgからLysへ;AsnからGlnもしくはHisへ;AspからGluへ;CysからSerへ;GlnからAsnへ;GluからAspへ;GlyからAlaもしくはProへ;HisからAsnもしくはGlnへ;IleからLeuもしくはValへ;LeuからIleもしくはValへ;LysからArg、GlnもしくはGluへ;MetからLeu、TyrもしくはIleへ;PheからMet、LeuもしくはTyrへ;SerからThrへ;ThrからSerへ;TrpからTyrへ;TyrからTrpへ;および/またはPheからVal、IleもしくはLeuへ、が含まれる。
【0048】
2つのヌクレオチドアミノ酸配列間の同一性パーセントはまた、例えば、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両方の鎖の比較を使用する核酸配列のためのBLASTNプログラムなどのアルゴリズムを使用して求めることができる。
【0049】
本開示の使用のための活性化BTN3A抗体
本開示は、感染性障害の治療を必要とする対象における感染性障害、より具体的には、Coxiella burnetii感染によって引き起こされる障害、例えばQ熱、またはSARS-Cov2によって引き起こされる障害、例えばCOVID-19を治療する方法におけるBTN3A活性化抗体の使用に関する。
【0050】
特定の実施形態では、本開示に従って使用するためのBTN3A活性化抗体は、以下の特性を呈する:
(i)活性化抗体は、例えば実施例に記載されているように、SPRによって測定した場合に、10nM以下のKで、好ましくは1nM以下のKでBTN3Aに結合する;
(ii)活性化抗体は、例えば実施例に記載されているように、フローサイトメトリーアッセイで測定した場合に、50μg/ml以下、好ましくは10μg/ml以下のEC50でヒトPBMCに結合する;および、
(iii)活性化抗体は、例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、BTN3を発現する細胞との共培養において、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導する。
【0051】
以下の特定の実施形態と組み合わせることができるある特定の実施形態では、本開示の使用のためのBTN3A活性化抗体は、以下に開示されているような特定の抗体の抗体断片である。抗体断片には、限定されないが、例えば、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、ユニボディ、およびscFv断片、ダイアボディ、単一ドメインまたはナノボディおよび他の断片が含まれる。好ましくは、活性化抗体は、scFv断片のFabなどの一価抗体である。特に、活性化抗体は、mAb103.2の6つすべてのCDRを有するFab断片などの一価BTN3A活性化抗体である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示の使用のための抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体である。本開示の好ましい実施形態では、BTN3A活性化抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体と少なくとも同じ親和性(または優れた親和性)を有しながら、ヒトに対する免疫原性を低下させるようにヒト化されている。より具体的には、BTN3A活性化抗体は、国際公開第2012080351号に開示されている抗体20.1または7.2のヒト化形態である。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、非ヒト抗体、例えばマウスmAb20.1または7.2の6つすべてのCDR、および免疫原性を低下させるための1つ以上の変異を有するマウス抗体配列に由来するFR(またはその一部)を含む。他の特定の実施形態では、活性化抗体は、mAb103.2の6つすべてのCDRを有するヒト化Fab断片などの一価ヒト化BTN3A活性化抗体である。
【0053】
ヒト化抗体は、場合により、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。好ましくは、本開示による組換え抗体は、ヒト化サイレント抗体、典型的にはヒト化サイレントIgG1またはIgG4抗体である。
【0054】
本明細書で使用される場合、「サイレント」抗体という用語は、国際公開第2020/025703号に記載されているものなどの、結合アッセイで測定した場合に、FcγR結合および/もしくはC1q結合を示さないか、または低いFcγR結合および/もしくはC1q結合を示す抗体を指す。一実施形態では、「FcγRおよび/もしくはC1q結合がないかまたは低い」という用語は、サイレント抗体が、野生型ヒトIgG1またはIgG4アイソタイプを有する対応する抗体で観察されるFcγRおよび/またはC1q結合の少なくとも50%未満、例えば80%未満のFcγRおよび/またはC1q結合を示すことを意味する。
【0055】
BTN3A活性化抗体の例は、以下の段落に記載されている。いくつかの実施形態では、BTN3A活性化抗体は、国際特許出願第2012/080769号、同第2012/080351号、および同第2020/025703号および同第2020/136218号に記載されているものなどのBTN3A活性化抗体からなる群から選択される。
【0056】
いくつかの特定の実施形態では、BTN3A活性化抗体は、国際公開第2020025703号に記載されているヒト化抗体から選択されるか、または国際公開第2012/080769号、同第2012/080351号および同第2020/136218号に記載されているBTN3A活性化抗体のヒト化バージョンである。
【0057】
いくつかの実施形態では、BTN3A抗体は、国際公開第2012080769号および同第2012080351号に記載されているようなCNCM寄託番号I-4401およびI-4402の下でアクセス可能なハイブリドーマまたはそれらのヒト化バージョンのうちの1つから得ることができるmAb20.1およびmAb7.2から選択され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、BTN3A活性化抗体は、国際公開第2012080769号および同第2012080351号に記載されている抗体20.1もしくは7.2、または国際公開第2020025703号に記載されているようなmAb1~5のいずれか、国際公開第2020/136218号に記載されているようなmAb103.2の一価断片の6つのCDR(CDR1(HCDR1とも呼ばれる)、VH CDR2(HCDR2とも呼ばれる)、VH CDR3(HCDR1とも呼ばれる)、VL CDR1(LCDR1とも呼ばれる)、VL CDR2(LCDR2とも呼ばれる)、VL CDR3(HCDR3とも呼ばれる))を含む。
【0059】
特定の実施形態では、BTN3A活性化抗体は、以下の表1に示されるようなHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびHCDR3を含む。
【0060】
【表1】
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているように使用するための抗体は、表1に記載されているようなmAb20.1、mAb7.2またはヒト化mAb103.2、特にmAb20.1の6つのCDR領域とそれぞれ100%同一である6つのCDR領域を含む。
【0062】
本明細書に開示されているような他の抗体には、アミノ酸の欠失、挿入または置換によって変異されているが、国際公開第2012080769号および同2012080351号に記載されている抗体20.1もしくは7.2、または国際公開第2020/136218号に記載されているヒト化mAb103.2の6つのCDR領域と比較して、特に表1に定義されている6つのCDR領域と比較して、CDR領域において少なくとも60、70、80、90、95、96、97、98、99または100パーセントの同一性を有するアミノ酸を有するものが含まれる。
【0063】
本開示の使用のためのBTN3A活性化抗体には、表2に定義されているVHおよびVL領域と少なくとも90%、特に少なくとも95、96、97、98、99または100%の同一性を有するものも含まれる。より具体的には、本開示の使用のためのBTN3A活性化抗体には、以下の表2に記載されているようなそれらの可変重鎖および軽鎖アミノ酸配列ならびにヒト定常領域(アイソタイプ)により構造的に特徴付けられている、選択されたヒト化組換え抗体mAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5およびmAb6が含まれる。
【0064】
【表2】
【0065】
mAb1~mAb6を生成するために使用されるIgG1、IgG4ならびにそれらの変異バージョンIgG1 L247F/L248E/P350SおよびIgG4 S241P/L248Eの定常アイソタイプ領域の対応するアミノ酸およびヌクレオチドコード配列は、当技術分野で周知である(Oganesyan et al.,2008;Reddy et al.,2000)。
【0066】
IgGに見出されるC末端リジンは天然に切断されてもよく、この改変は抗体の特性に影響を及ぼさない。したがって、この残基は、mAb1~mAb6の構築物において追加的に欠失されてもよい。
【0067】
本開示の使用のための好ましいヒト化抗体mAb1およびmAb3を作製するための全長軽鎖および重鎖ならびにコード配列を以下の表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
本開示に従って使用するための、mAb20.1、mAb7.2またはmAb103.2のBTN3A活性化断片の機能的バリアント
エピトープマッピングの分析は、参照mAb20.1が配列番号32のヒトBTN3A1の79、83および88位の残基に結合することを示す。したがって、本開示は、配列番号32の79~88位に位置するアミノ酸残基を含むエピトープに結合し、先に定義され、さらに以下で再認識されるような機能的特性のうちの1つまたは複数を有する、特に参照mAb20.1または参照mAb20.1のヒト化形態mAb3の機能的特性のうちの1つまたは複数を有するBTN3A抗体の使用を包含する。
【0070】
またエピトープマッピング分析によって示されるように、参照mAb7.2は、配列番号32のヒトBTN3A1の73、79、83、88、90、93位の残基に結合する。したがって、本開示は、配列番号32の73~93位に位置するアミノ酸残基を含むエピトープ、最も具体的には、配列番号32の73、79、83、88、90および93位のアミノ酸残基を含むエピトープに結合し、先に定義され、さらに以下で再認識されるような機能的特性のうちの1つまたは複数を有する、特に参照mAb7.2または参照mAb7.2のヒト化形態mAb1の機能的特性のうちの1つまたは複数を有するBTN3A抗体の使用を包含する。
【0071】
さらに他の実施形態では、本開示の機能的バリアント抗体は、全長の重鎖および軽鎖アミノ酸配列、あるいは可変領域重鎖および軽鎖アミノ酸配列、あるいは上記の参照抗体mAb20.1もしくはmAb7.2またはmAb20.1もしくはmAb7.2のヒト化形態(それぞれmAb3またはmAb1)のいずれか1つの対応するアミノ酸配列と相同であるか、またはより具体的には同一である6つすべてのCDR領域アミノ酸配列を有し、そのような機能的バリアント抗体は、前記参照抗体の所望の機能的特性を保持する。
【0072】
さらに他の実施形態では、本開示の機能的バリアント抗体は、可変領域重鎖および軽鎖アミノ酸配列、あるいは上記の任意の参照抗体mAb103.2もしくはmAb103.2のヒト化形態の対応するアミノ酸配列と相同であるか、またはより具体的には同一である6つすべてのCDR領域アミノ酸配列を有するFab断片などのmAb103.2のBTN3A活性化断片であり、そのような機能的バリアント抗体は、前記参照抗体の所望の機能的特性を保持する。
【0073】
参照mAb20.1抗体もしくはmAb20.1抗体のヒト化形態mAb3、または参照抗体mAb7.2、もしくはmAb7.2のヒト化形態mAb1、またはmAb103.2の参照活性化断片もしくは該活性化断片のヒト化形態の機能的バリアント、特にVHおよびVL、または本開示のモノクローナル抗体の文脈で使用される6つすべてのCDRを有する機能的バリアントは、親抗体(例えば、mAb3またはmAb1)の親和性(典型的には表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定されるKによって評価される)の少なくともかなりの割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%)を抗体が保持することを依然として可能にし、いくつかの場合では、そのような機能的バリアントは、参照抗体(例えば、mAb3またはmAb1またはmAb103.2のFab断片)よりも高い親和性、選択性および/または特異性で会合し得る。
典型的には参照抗体がmAb3もしくはmAb1もしくはmAb103.2のFab断片である場合の参照抗体の、または本明細書に開示されている任意の例示的な参照抗体の所望の機能的特性は、以下からなる群から選択され得る:
(i)BTN3A1に対する特異性、特に、例えば実施例に記載されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって測定した場合のヒトBTN3A1への結合特性;
(ii)例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化のインビトロでの誘導;
(iii)Vγ9Vδ2 T細胞の存在下での単球のC.burnetii細菌量の減少;
(iv)4時間の共培養後、C.burnetiiに感染した単球に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞傷害活性のインビトロでの増加、
(v)C.burnetii感染患者由来の末梢血単核細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞の脱顆粒のインビトロでの増加;および/または、
(vi)例えば、感染した細胞とVγ9Vδ2 T細胞との共培養物においてインビトロで測定した場合に、SARS-Cov2に感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞傷害活性のインビトロでの増加。
【0074】
典型的には、参照mAb3もしくは1またはmAb103.2の活性化断片の機能的バリアントの上記の点(i)~(vi)による機能的特性は、上記の対応する参照抗体mAb3またはmAb1またはmAb103.2の活性化断片の対応する機能的特性と実質的に等しいかまたはそれよりも優れている。実質的に等しいとは、本明細書では、機能的バリアントが、参照mAb3またはmAb1またはmAb103.2の活性化断片の対応する機能的特性の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を保持することが意図される。
【0075】
特定の実施形態では、本開示に従って使用するためのBTN3A活性化抗体は、それぞれ抗体20.1もしくは7.2またはmAb103.2の活性化断片のCDR配列と比較して、あるいはより具体的にはmAb20.1のCDR配列と比較して、1つまたは複数のCDRにおいて1、2、3または4つ以下のアミノ酸変化(欠失、挿入、または置換を含む)を有する、mAb20.1もしくはmAb3のヒト化形態、またはmAb7.2もしくはmAb1のヒト化形態、またはmAb103.2の活性化断片もしくはそのヒト化形態の機能的バリアントである。
例えば、本開示は、可変重鎖(V)および可変軽鎖(V)配列を含む、参照mAb20.1またはmAb20.1のヒト化形態mAb3の機能的バリアント抗体に関し、ここで、CDR配列、すなわち6つのCDR領域;HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号5~10で定義されるように、mAb20.1またはmAb20.1のヒト化形態mAb3参照抗体の対応するCDR配列と少なくとも60、70、90、95または100パーセントの配列同一性を共有し、前記機能的バリアント抗体はBTN3Aに特異的に結合し、抗体は以下の機能的特性i)~iii)のうちの少なくとも1つを呈する:
(i)BTN3A1に対する特異性、特に、例えば実施例に記載されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に、10nM以下のK、好ましくは5nM以下のK、または5nM以下のKでヒトBTN3A1に結合する特性;
(ii)例えば実施例に記載されているように、フローサイトメトリーアッセイで測定した場合に、50μg/ml以下、好ましくは10μg/ml以下のEC50でヒトPBMCに結合すること;
(iii)例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導すること。
【0076】
最も好ましくは、機能的バリアント抗体は、特性i)~iii)を呈する。
本開示はまた、可変重鎖(V)および可変軽鎖(V)配列を含む、参照mAb7.2またはmAb7.2のヒト化形態mAb1の機能的バリアント抗体に関し、ここで、CDR配列、すなわち6つのCDR領域;HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号11~16で定義されるように、mAb7.2またはmAb1参照抗体の対応するCDR配列と少なくとも60、70、90、95または100パーセントの配列同一性を共有し、前記機能的バリアント抗体はBTN3A1に特異的に結合し、抗体は以下の機能的特性のうちの少なくとも1つを呈する:
(i)BTN3A1に対する特異性、特に、例えば実施例に記載されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に、10nM以下のK、好ましくは5nM以下のK、または5nM以下のKでヒトBTN3A1に結合する特性;
(ii)例えば実施例に記載されているように、フローサイトメトリーアッセイで測定した場合に、50μg/ml以下、好ましくは10μg/ml以下のEC50でヒトPBMCに結合すること;
(iii)例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導すること。
【0077】
好ましくは、前記機能的バリアントは、すべての機能的活性i)~iii)を呈する。
本開示はまた、可変重鎖(V)および可変軽鎖(V)配列を含む、参照Fab断片mAb103.2またはFab断片mAb103.2のヒト化形態の機能的バリアント抗体に関し、ここで、CDR配列、すなわち6つのCDR領域;HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号17~22で定義されるように、mAb103.2の参照Fab断片の対応するCDR配列と少なくとも60、70、90、95または100パーセントの配列同一性を共有し、前記機能的バリアント抗体はBTN3A1に特異的に結合し、抗体は以下の機能的特性のうちの少なくとも1つを呈する:
(i)BTN3A1に対する特異性、特に、例えば実施例に記載されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に、10nM以下のK、好ましくは5nM以下のK、または5nM以下のKでヒトBTN3A1に結合する特性;
(ii)例えば実施例に記載されているように、フローサイトメトリーアッセイで測定した場合に、50μg/ml以下、好ましくは10μg/ml以下のEC50でヒトPBMCに結合すること;
(iii)例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導すること。
【0078】
好ましくは、前記機能的バリアントは、すべての機能的活性i)~iii)を呈する。
本発明はさらに、配列番号1および2にそれぞれ定義されるような前記mAb3参照抗体の対応する重鎖および軽鎖可変領域と少なくとも80%、90%、または少なくとも95、96%、97%、98%、99%または100%同一である重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、mAb3参照抗体の機能的バリアント抗体に関し、機能的バリアント抗体は、BTN3Aに特異的に結合し、以下の機能的特性のうちの少なくとも1つを呈する:
(i)BTN3A1に対する特異性、特に、例えば実施例に記載されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に、10nM以下のK、好ましくは5nM以下のK、または5nM以下のKでヒトBTN3A1に結合する特性;
(ii)例えば実施例に記載されているように、フローサイトメトリーアッセイで測定した場合に、50μg/ml以下、好ましくは10μg/ml以下のEC50でヒトPBMCに結合すること;
(iii)例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導すること。
【0079】
好ましくは、機能的バリアント抗体は、特性i)~iii)を呈する。
本発明はさらに、配列番号3および4にそれぞれ定義されるような前記mAb1参照抗体の対応する重鎖および軽鎖可変領域と少なくとも80%、90%、または少なくとも95、96%、97%、98%、99%または100%同一である重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、mAb1参照抗体の機能的バリアント抗体に関し、機能的バリアント抗体は、BTN3Aに特異的に結合し、以下の機能的特性のうちの少なくとも1つを呈する:
(i)BTN3A1に対する特異性、特に、例えば実施例に記載されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に、10nM以下のK、好ましくは5nM以下のK、または5nM以下のKでヒトBTN3A1に結合する特性;
(ii)例えば実施例に記載されているように、フローサイトメトリーアッセイで測定した場合に、50μg/ml以下、好ましくは10μg/ml以下のEC50でヒトPBMCに結合すること;
(iii)例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導すること。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記機能的バリアントは、すべての機能的活性i)~iii)を呈する。
本発明はさらに、配列番号63および64にそれぞれ定義されるようなmAb103.2の前記Fab断片の対応する重鎖および軽鎖可変領域と少なくとも80%、90%、または少なくとも95、96%、97%、98%、99%または100%同一である重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、mAb103.2の参照Fab断片の機能的バリアント抗体に関し、機能的バリアント抗体は、BTN3Aに特異的に結合し、以下の機能的特性のうちの少なくとも1つを呈する:
(i)BTN3A1に対する特異性、特に、例えば実施例に記載されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に、10nM以下のK、好ましくは5nM以下のK、または5nM以下のKでヒトBTN3A1に結合する特性;
(ii)例えば実施例に記載されているように、フローサイトメトリーアッセイで測定した場合に、50μg/ml以下、好ましくは10μg/ml以下のEC50でヒトPBMCに結合すること;
(iii)例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導すること。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記機能的バリアントは、すべての機能的活性i)~iii)を呈する。
【0082】
典型的には、参照mAb3またはmAb1またはmAb103.2のFab断片の機能的バリアントの上記の点(i)~(iii)による機能的特性は、上記の対応する参照抗体mAb3またはmAb1またはmAb103.2のFab断片の対応する機能的特性と実質的に等しいかまたはそれよりも優れている。実質的に等しいとは、本明細書では、機能的バリアントが、参照mAb3またはmAb1またはmAb103.2のFab断片の対応する機能的特性の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を保持することが意図される。
【0083】
CDRバリアントの配列は、大抵は保存的置換により親抗体配列のCDRの配列と異なり得る。例えば、バリアントにおける置換の少なくとも10個、例えば、少なくとも9、8、7、6、5、4、3、2または1個が保存的アミノ酸残基の置換えである。
【0084】
変異アミノ酸配列を有する機能的バリアント抗体は、コード核酸分子の変異誘発(例えば、部位特異的またはPCR媒介性変異誘発)、続いて本明細書に記載の機能アッセイを使用して、保持された機能(すなわち、上記の機能)についてコードされた変化した抗体を試験することによって得ることができる。
参照mAb3またはmAb1またはmAb103.2のFab断片と交差競合する抗体.
本明細書に開示されているような参照mAb3または参照mAb1またはmAb103.2のFab断片と同様の有利な特性を有する追加の抗体は、標準的なBTN3A1結合アッセイにおいて、統計学的に有意な様式で、上記の前記参照mAb3またはmAb1またはmAb103.2のFab断片と交差競合する(例えば、前記参照mAb3またはmAb1またはmAb103.2のFab断片の結合を競争的に阻害する)能力に基づいて同定することができる。
【0085】
試験抗体は、最初に、例えば、ヒト組換え抗体ライブラリーから、例えば、ファージディスプレイ技術を使用して、または実施例において典型的に評価されるようにBTN3A1抗原で免疫化されたヒト可変領域抗体を発現するトランスジェニックマウスから、BTN3A1に対するそれらの結合親和性についてスクリーニングされ得る(材料および方法の節を参照されたい)。
【0086】
別の実施形態では、本開示に従って使用するための抗体は、少なくとも上記の参照mAb3または参照mAb1またはmAb103.2のFab断片と同じエピトープに結合する抗体を含む。
【0087】
ヒトBTN3A1に対する本開示の抗体の結合と交差競合するかまたは該結合を阻害する試験抗体の能力は、試験抗体がヒトBTN3A1への結合についてその抗体と競合することができることを実証する。そのような抗体は、非限定的な理論によれば、該試験抗体が競合する抗体と同じまたは関連する(例えば、構造的に類似または空間的に近位)ヒトBTN3A1のエピトープに結合し得る。
【0088】
例えば、以下の試験を使用して、mAb3参照抗体と交差競合する能力についてBTN3A1抗体をスクリーニングすること、および/または前記参照抗体と同じエピトープに結合する能力について抗BTN3A1抗体をスクリーニングすることができる。ヒトBTN3A1でトランスフェクトしたBTN3KO細胞(典型的にはHEK293T)を飽和濃度(例えば、10μg/mL)の参照抗体mAb3で染色することができる。次いで、異なる用量の試験BTN3A1 mAbが、mAb3参照抗体との競合的可能性について試験され得る。参照抗体と競合するmAbは、そのような参照抗体の存在下ではBTN3A1を認識することができない。データは、平均蛍光強度として表すことができる。代替的に、競合アッセイを、実施例の節に記載されるようなビニングアッセイで行うことができる。典型的には、ビニング実験は、組換えヒトBTN3A1をバイオセンサに固定化し、参照抗体、続いて競合抗体を提示することによって行うことができる。
【0089】
選択された抗体は、特に前に詳述したように、mAb3またはmAb1またはmAb103.2のFab断片と比較して、有利なBTN3A活性化特性について、さらに試験および選択され得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示の使用のための抗体は、上記のBTN3A抗体への結合について競合し、特に本開示の使用のための抗体は、国際公開第2012/080769号および同第2012/080351号に記載されているようなCNCM寄託番号I-4401およびI-4402の下でアクセス可能なハイブリドーマのうちの1つから、ならびに国際公開第2020025703号に記載されているmAb1~6から得ることができる、mAb20.1およびmAb7.2から選択される抗体との結合について競合する。より具体的な実施形態では、本開示の使用のための抗体は、寄託番号I-4401の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマによって産生されるmAb20.1、ならびに配列番号23の重鎖および配列番号24の軽鎖を有する抗体から選択される抗体との結合について競合する。
したがって、一実施形態では、本開示は、本明細書に開示されているような感染性障害の治療で使用するための単離された抗体を提供し、前記単離された抗体は、BTN3A1への結合から参照mAb3または参照mAb1またはmAb103.2のFab断片と競合し、前記抗体は、以下の特性のうちの1つまたは複数を有する:
(i)BTN3A1に対する特異性、特に、例えば実施例に記載されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって測定した場合のヒトBTN3A1への結合特性;
(ii)例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化のインビトロでの誘導;
(iii)Vγ9Vδ2 T細胞の存在下での単球のC.burnetii細菌量の減少;
(iv)4時間の共培養後、C.burnetiiに感染した単球に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞傷害活性のインビトロでの増加、
(v)C.burnetii感染患者由来の末梢血単核細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞の脱顆粒のインビトロでの増加;および/または、
(vi)例えば、感染した細胞とVγ9Vδ2 T細胞との共培養物においてインビトロで測定した場合に、SARS-Cov2に感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞傷害活性のインビトロでの増加。
【0091】
特定の実施形態では、参照mAb3またはmAb1またはmAb103.2のFab断片とBTN3A1への結合について競合する抗体の上記の点(i)~(vi)による機能的特性は、上記のように、それぞれ参照抗体mAb1またはmAb3またはmAb103.2のFab断片の対応する機能的特性と実質的に等しいかまたはそれよりも優れている。実質的に等しいとは、本明細書では、機能的バリアントが、参照mAb1またはmAb3またはmAb103.2のFab断片の対応する機能的特性の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%を保持することが意図される。
【0092】
ある特定の実施形態では、クロスブロッキング抗体または参照mAb1もしくはmAb3もしくはmAb103.2のFab断片とBTN3A1への結合について競合する抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト組換え抗体である。
【0093】
フレームワークまたはFc工学
本開示の使用のためのBTN3A活性化抗体は、該活性化抗体の免疫原性を低下させるために、VHおよびVL内のフレームワーク残基に行われた改変を含み得る。
【0094】
いくつかの具体的な実施形態では、本開示の使用のための抗体は、親マウス抗体mAb20.1のヒト化モノクローナル抗体であり、VHフレームワーク領域に(VH親フレームワーク領域と比較して)少なくとも以下のアミノ酸変異:V5Q;V11L;K12V;V20L;R66K;M69L;T75S;M80I;E81Q;R83T;T87S;L108A;およびVκフレームワーク領域に少なくとも以下のアミノ酸変異(Vκフレームワーク領域と比較して):T5N;V15L;R18T;V19I;K39R;K42N;A43I;D70G;F73L;V104Lを含む。
【0095】
フレームワーク領域内で行われる改変に加えて、本開示の抗体は、典型的には、血清中の半減期、補体結合、Fc受容体結合および/または抗原依存性細胞傷害などの、抗体の1つまたは複数の機能的特性を変化させるために、Fc領域内に改変を含むように操作され得る。
【0096】
さらに、本開示の使用のための抗体は、化学的に改変(例えば、1つまたは複数の化学的部分は、抗体に付着され得る)されてもよく、または該抗体のグリコシル化を変化するように改変されてもよく、ここでも抗体の1つまたは複数の機能的特性を変化する。これらの実施形態の各々を、以下でさらに詳細に説明する。
【0097】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ定常領域」または「Fc領域」という用語は、天然型配列のFc領域およびバリアントのFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を明示するために互換的に使用される。ヒトIgG重鎖Fc領域は、一般に、C226位またはP230位からIgG抗体のカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むものとして定義され、ナンバリングはEUナンバリングシステムに従う。Fc領域のC末端リジン(残基K447)は、例えば、抗体の産生または精製中に、除去され得るか、または組換え構築物において該リジンに対応するコドンが欠失させる。したがって、本開示の抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、ならびにK447残基を有するおよび有しない抗体の混合物を有する抗体集団を含み得る。
【0098】
他の実施形態では、Fc領域は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体の能力を低下させるように、および/または1つもしくは複数のアミノ酸を改変することによってFcγ受容体に対する抗体の親和性を低下させるように改変される。エフェクター機能が低下した、特にADCCが低下したそのような抗体には、サイレント抗体が含まれる。
【0099】
ある特定の実施形態では、IgG1アイソタイプのFcドメインが使用される。いくつかの具体的な実施形態では、IgG1 Fc断片の変異バリアント、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介するおよび/またはFcγ受容体に結合する融合ポリペプチドの能力を低下または排除するサイレントIgG1 Fcが使用される。
【0100】
ある特定の実施形態では、IgG4アイソタイプのFcドメインが使用される。いくつかの具体的な実施形態では、IgG4 Fc断片の変異バリアント、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介するおよび/またはFcγ受容体に結合する融合ポリペプチドの能力を低下または排除するサイレントIgG4 Fcが使用される。
【0101】
サイレンシングされたエフェクター機能は、抗体のFc定常部分の変異によって得ることができ、当技術分野において記載されている(Baudino et al.,2008;Strohl,2009)。サイレントIgG1抗体の例としては、三重変異バリアントIgG1 L247F L248E P350Sが挙げられる。サイレントIgG4抗体の例としては、二重変異バリアントIgG4 S241P L248Eが挙げられる。
【0102】
ある特定の実施形態では、Fcドメインは、Fcドメインの314位でのグリコシル化を防止するサイレントFc変異体である。例えば、Fcドメインは、314位でのアスパラギンのアミノ酸置換を含む。そのようなアミノ酸置換の例は、グリシンまたはアラニンによるN314の置換えである。
【0103】
さらに他の実施形態では、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、非グリコシル化抗体が作製され得る(すなわち、抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加させるように変更され得る。そのような糖質の改変は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つまたは複数の部位を変化させることによって達成することができる。例えば、1つまたは複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位の排除をもたらす1つまたは複数のアミノ酸置換を行うことにより、その部位でのグリコシル化を排除することができる。そのような非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る。そのようなアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号明細書および同第6,350,861号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0104】
本開示に従って使用するために企図される本明細書の抗体の別の改変は、ペグ化またはヘシル化または関連技術である。抗体をペグ化して、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清中)半減期を延長することができる。抗体をペグ化するために、抗体、抗体またはその断片は、典型的には、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に付着するようになる条件下で、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応する。ペグ化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行うことができる。本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-もしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなどの、他のタンパク質を誘導体化するために使用されている任意の形態のPEGを包含することが意図される。ある特定の実施形態では、ペグ化される抗体は非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化する方法は当技術分野で公知であり、本開示の抗体に適用することができる。例えば、Nishimuraらによる欧州特許第0154316号明細書およびIshikawaらによる欧州特許第0401384号明細書を参照されたい。
【0105】
ある特定の実施形態では、ヒトIgG重鎖定常ドメインに一般的に存在するC末端リジンは、製造または貯蔵中に一般的に観察されるこの低減の切断による不均一性を低減するように操作される。そのような改変は、これらの分子に安定性の利益を与えながら、これらの抗体の望ましい機能を知覚可能には変化させない。
本開示の抗体をコードする核酸分子
本開示に従って使用するためのBTN3A活性化抗体をコードする核酸分子も本明細書に開示する。可変軽鎖および重鎖ヌクレオチド配列の例は、上に開示された例示的なBTN3A活性化抗体、特にmAb7.2、mAb20.1およびmAb7.2、mAb20.1のヒト化形態、例えばmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5、およびmAb6のいずれか1つの可変軽鎖および重鎖アミノ酸配列をコードするものであり、mAb7.2、mAb20.1およびmAb7.2、mAb20.1のヒト化形態のいくつかは表1および表2から容易に誘導され、遺伝暗号を使用し、場合により宿主細胞種に応じてコドンの偏りを考慮する。
【0106】
本開示はまた、哺乳動物細胞、例えばCHO細胞株におけるタンパク質発現に対して最適化された後者の配列に由来する核酸分子に関する。
【0107】
配列番号23のmAb20.1のヒト化形態の重鎖および配列番号24のmAb20.1のヒト化形態の軽鎖をそれぞれコードする核酸分子を、本明細書にさらに開示する。
【0108】
特定の実施形態では、本開示の使用のための抗体は、配列番号28によってコードされるVHおよび配列番号29によってコードされるVLを有するmAb20.1のヒト化形態である。
【0109】
mAb20.1のヒト化形態のVHおよびVLをそれぞれコードする配列番号28および配列番号29の核酸分子を、本明細書にさらに開示する。
【0110】
核酸は、全細胞中、細胞溶解物中に存在してもよく、または部分的に精製された形態もしくは実質的に純粋な形態の核酸であってもよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当技術分野で周知の他のもの(Ausubel et al.,1988)を含む標準的な技法によって、他の細胞構成成分または他の夾雑物、例えば他の細胞核酸またはタンパク質から精製された場合、「単離される」または「実質的に純粋にされる」である。本開示の核酸は、例えばDNAまたはRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。一実施形態では、核酸は、ファージディスプレイベクターなどのベクター中、または組換えプラスミドベクター中に存在し得る。
【0111】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学技法を使用して得ることができる。例えば、VHおよびVLセグメントをコードするDNA断片が得られると、これらのDNA断片は、標準的な組換えDNA技法によってさらに操作されて、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子またはscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作では、VLまたはVHをコードするDNA断片(例えば、表2に定義されるVLおよびVH)は、別のDNA分子、または抗体の定常領域もしくはフレキシブルリンカーなどの別のタンパク質をコードする断片に作動可能に連結される。「作動可能に連結される」という用語は、この文脈において使用される場合、例えば、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、またはタンパク質が所望のプロモーターの制御下で発現されるように、2つのDNA断片が機能的様式で連結されることを意味することが意図される。
【0112】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(Kabat et al.,1992)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgDの定常領域であり得る。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、IgG1アイソタイプ、例えばヒトIgG1アイソタイプの中から選択される。他の実施形態では、重鎖定常領域は、IgG4アイソタイプ、例えばヒトIgG4アイソタイプの中から選択される。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0113】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(Kabat et al.,1992)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であり得る。
【0114】
scFv遺伝子を作出するために、VH-およびVL-をコードするDNA断片は、フレキシブルリンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)をコードする別の断片に作動可能に連結されて、VHおよびVL配列が、VLおよびVH領域がフレキシブルリンカーによって連結された連続した一本鎖タンパク質として発現され得るようにする(Bird et al.1988;Huston et al.,1988;McCafferty et al.,1990)。
【0115】
本開示に従って使用するための組換え抗体を産生する方法
本開示の抗体は、例えば、当技術分野で周知の組換えDNA技法と遺伝子トランスフェクション方法との組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生され得る(Morrison,1985)。
【0116】
例えば、抗体またはその抗体断片を発現させるために、部分的または全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAは、標準的な分子生物学または生化学の技法(例えば、DNA化学合成、PCR増幅または目的の抗体を発現するハイブリドーマを使用するcDNAクローニング)によって得ることができ、DNAを、遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、発現ベクターに挿入することができる。この文脈において、「作動可能に連結される」という用語は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を調節する意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターにライゲーションされることを意味することが意図される。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選定される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別個のベクターに挿入され得るか、またはより典型的には、両方の遺伝子は同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。本明細書に記載の抗体の軽鎖および重鎖可変領域は、VHセグメントがベクター内のCHセグメント(1つまたは複数)に作動可能に連結され、VLセグメントがベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターに該軽鎖および重鎖可変領域を挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を作出するために使用され得る。追加的または代替的に、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0117】
抗体鎖遺伝子に加えて、本明細書に開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。「調節配列」という用語は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような調節配列は、例えば、Goeddelの刊行物(Goeddel,1990)に記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選定、所望のタンパク質の発現レベルなどの因子に依存し得ることが当業者には理解されよう。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列には、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメントが含まれる。代替的に、ユビキチンプロモーターまたはP-グロビンプロモーターなどの非ウイルス調節配列を使用してもよい。なおさらに、ヒトT細胞白血病ウイルス1型のSV40初期プロモーターおよび長い末端反復からの配列を含む、SRaプロモーター系などの異なる供給源からの配列で構成される調節エレメント(Takebe et al.,1988)。
【0118】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択可能マーカー遺伝子などの追加の配列を有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、すべてAxelらによる米国特許第4,399,216号明細書、同第4,634,665号明細書および同第5,179,017号明細書を参照されたい)。例えば、典型的には、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を伴うdhfr宿主細胞での使用のため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が含まれる。
【0119】
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクター(複数可)は、標準的な技法によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語の様々な形態は、原核生物または真核生物の宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に使用される多種多様な技法、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。本開示の抗体を、原核生物または真核生物の宿主細胞のいずれかにおいて発現させることが理論的に可能である。真核細胞、例えば哺乳動物の宿主細胞、酵母または糸状真菌における抗体の発現は、そのような真核細胞、特に哺乳動物細胞が、適切に折り畳まれて免疫学的に活性な抗体を集合させ分泌する可能性について、原核細胞よりも高いためと考えられている。
【0120】
1つの具体的な実施形態では、本開示によるクローニングまたは発現ベクターは、適したプロモーター配列に作動可能に連結されたmAb1またはmAb3のいずれか1つの重鎖および軽鎖のコード配列のうちの1つを含む。
【0121】
本開示の組換え抗体を発現するための哺乳動物の宿主細胞には、DHFR選択可能マーカー(Kaufman and Sharp,1982に記載されているように)と共に使用されるdhfr-CHO細胞(Urlaub and Chasin,1980に記載)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、CHOK1 dhfr+細胞株、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞、例えばGS Xceed(商標)遺伝子発現系(Lonza)と一緒のGS CHO細胞株が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物の宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞における抗体の発現、および場合により、宿主細胞が増殖される培養培地への抗体の分泌に十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、例えば、標準的なタンパク質精製方法を使用して、該抗体の分泌後の培養培地から回収および精製することができる(Shukla et al.,2007)。
【0122】
1つの具体的な実施形態では、本開示の宿主細胞は、適したプロモーター配列に作動可能に連結された、mAb1またはmAb3またはmAb103.2のFab断片の発現にそれぞれ適したコード配列を有する発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞である。
【0123】
例えば、本開示は、mAb3のVHおよびVLをそれぞれコードする配列番号28および29の核酸を少なくとも含む宿主細胞に関する。
【0124】
次いで、後者の宿主細胞は、それぞれmAb1、またはmAb3、またはmAb103.2のFab断片からなる群から選択される本開示の抗体の発現および産生のための適した条件下でさらに培養されてもよい。
【0125】
代替的に、無細胞発現系を、mAb3またはmAb1のいずれかの産生のために使用することができる。典型的には、タンパク質または抗体の無細胞発現の方法は既に記載されている(Stech et al.,2017)。
【0126】
医薬組成物
別の態様では、本開示は、薬学的に許容される担体と一緒に製剤化された、BTN3A活性化抗体、特に、mAb20.1、配列番号5~10のmAb20.1の6つのCDRを有するBTN3A活性化抗体、配列番号1のVHおよび配列番号2のVLを有するBTN3A活性化抗体、mAb20.1のヒト化形態であるBTN3A活性化抗体、ならびに配列番号23の重鎖および配列番号24の軽鎖を有するmAb3、ならびにそれらの抗原結合部分からなる群から選択されるBTN3A活性化抗体を含む、以下に開示されているような感染性障害の治療で使用するための組成物、例えば医薬組成物を提供する。
【0127】
そのような組成物は、上記のように、1つまたは組合せの(例えば、2つ以上の異なる)BTN3A活性化抗体を含み得る。
【0128】
本明細書に開示の医薬組成物はまた、追加の活性な治療剤を含み得る。例えば、医薬組成物は、本開示の抗BTN3A抗体、例えば、mAb20.1、配列番号5~10のmAb20.1の6つのCDRを有するBTN3A活性化抗体、配列番号1のVHおよび配列番号2のVLを有するBTN3A活性化抗体、mAb20.1のヒト化形態であるBTN3A活性化抗体、ならびに配列番号23の重鎖および配列番号24の軽鎖を有するmAb3、またはそれらの抗原結合部分からなる群から選択される1つの抗体を、少なくとも1つの抗ウイルス剤、抗炎症剤または抗菌剤と組み合わせて含み得る。使用することができるそのような他の活性な治療剤の例は、本開示の抗体の使用に関する節において以下でより詳細に記載されている。
【0129】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性のあるありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入によって)に適しているべきである。一実施形態では、担体は、皮下経路または静脈内経路に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわちBTN3A活性化抗体は、化合物を不活性化し得る酸の作用および他の自然条件から化合物を保護するための材料でコーティングされてもよい。
【0130】
滅菌リン酸緩衝生理食塩水は、薬学的に許容される担体の一例である。他の適した担体は当業者に周知である。(Remington and Gennaro,1995)製剤は、1種または複数の賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面でのタンパク質損失を防ぐためのアルブミンなどをさらに含み得る。
【0131】
医薬組成物の形態、投与経路、投与量およびレジメンは、治療される状態、病気の重症度、患者の年齢、体重、および性別などに必然的に依存する。
【0132】
本開示による使用のための医薬組成物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下または眼内投与などのために製剤化され得る。
【0133】
好ましくは、医薬組成物は、注射可能な製剤に対して薬学的に許容されるビヒクルを含む。医薬組成物は、特に等張性の滅菌生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウムもしくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムなど、またはそれらの塩の混合物)、または場合に応じて、滅菌水もしくは生理食塩水を添加すると注射可能な溶液の構成を可能にする乾燥組成物、特にフリーズドライ組成物であり得る。
【0134】
投与に使用される用量は、様々なパラメータの関数として、特に使用される投与様式、関連する病態、または代替的に所望の治療期間の関数として適合され得る。
【0135】
医薬組成物を調製するために、有効量のBTN3A活性化抗体は、薬学的に許容される担体または水性媒体に溶解または分散され得る。
【0136】
注射使用に適した医薬形態には、滅菌水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末または凍結乾燥物が含まれる。すべての場合において、形態は無菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流動性でなければならない。医薬組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0137】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中ならびに油中で調製され得る。貯蔵および使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために保存剤を含む。
【0138】
本開示に従って使用するためのBTN3A活性化抗体は、中性または塩形態で組成物に製剤化され得る。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)が含まれ、無機酸、例えば塩酸もしくはリン酸、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などを用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄、および有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどから誘導することもできる。
【0139】
微生物の作用の予防は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用によってもたらされ得る。
【0140】
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上に列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒に取り込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基本的な分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに取り込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分+任意の追加の所望の成分の粉末を、その前もって滅菌濾過された溶液から得る真空乾燥およびフリーズドライ技法である。
【0141】
直接注射のための、より多くのまたは高濃度の溶液の調製物も企図され、溶媒としてのDMSOの使用は、極めて迅速な浸透をもたらし、高濃度の活性薬剤を小さな腫瘍領域に送達させることが想定される。
【0142】
製剤の場合、溶液は、投与製剤と適合する様式で、治療上有効な量で投与される。製剤は、様々な剤形、例えば上記の注射用溶液の種類で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなどが用いられてもよい。
【0143】
水溶液での非経口投与の場合、例えば、溶液は、必要に応じて適切に緩衝されるべきであり、液体希釈剤は、まず十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、用いることができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知であろう。例えば、1回の投与量は、1mlの等張性NaCl溶液に溶解され、1000mlの皮下注入液に添加されるか、または提案された注入部位で注射され得る(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」15th Edition,pages 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。治療される対象の状態に応じて、投与量のいくらかの変動が必然的に生じるであろう。投与の責任者が、いずれにしても、個々の対象に対する適切な用量を決定する。
【0144】
本開示に従って使用するためのBTN3A活性化抗体は、約0.001~1グラム/投与、または約1~400ミリグラム/投与、または約1~200ミリグラム/投与を含むように治療用混合物内に製剤化され得る。複数回投与することもできる。
【0145】
抗体の注入または皮下注射のための溶液に適した製剤は当技術分野で記載されており、例えばCuiら(Drug Dev Ind Pharm 2017,43(4):519-530を参照されたい)に概説されている。
【0146】
本開示に従って使用するためのBTN3A活性化抗体、それらの医薬組成物およびそれらを調製する方法の好ましい実施形態
#1.配列番号1の可変重鎖ポリペプチドVHおよび配列番号2の可変軽鎖ポリペプチドVLを含む単離されたBTN3A活性化抗体。
【0147】
#2.配列番号5~10の6つのCDR、および配列番号1と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖ポリペプチドVH、および配列番号2と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖ポリペプチドVLを含む単離されたBTN3A活性化抗体。
【0148】
#3.場合により、ヒトIgG1定常領域は、変異または化学的に改変され、前記変異体または化学的に改変されたIgG1定常領域が、野生型ヒトIgG1アイソタイプの定常領域を有する対応する抗体と比較した場合に、Fcγ受容体への結合を有しないかまたは減少した結合を付与するように、変異されるかまたは化学的に改変されているヒトIgG1定常領域を含む、#1または#2に記載の単離されたBTN3A活性化抗体。
#4.前記抗体が、以下の特性のうちの1つまたは複数を呈する、#1~#3のいずれかに記載の単離されたBTN3A活性化抗体:
(i)抗体が、例えば実施例に記載されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に、10nM以下のK、好ましくは5nM以下のK、または5nM以下のKでヒトBTN3A1に結合する;
(ii)抗体が、例えば実施例に記載されているように、フローサイトメトリーアッセイで測定した場合に、50μg/ml以下、好ましくは10μg/ml以下のEC50でヒトPBMCに結合する;
(iii)抗体が、例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化をインビトロで誘導する。
【0149】
#5.配列番号23の重鎖ポリペプチドおよび配列番号24の軽鎖ポリペプチドを含む、#1~#4のいずれかに記載の単離されたBTN3A活性化抗体。
【0150】
#6.例えば、配列番号28および配列番号29のヌクレオチド配列を含む、#1~#5のいずれかに記載のBTN3A活性化抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸。
【0151】
#7.宿主細胞における#1に記載のBTN3A活性化抗体の組換え産生のための発現ベクターであって、前記BTN3A活性化抗体をコードする少なくとも1つの核酸を含む、発現ベクター。
【0152】
#8.請求項7に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【0153】
#9.#1~#5のいずれか1つに定義される抗BTN3A抗体を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体のうちの1つまたは複数と組み合わせて含み、場合により他の活性成分、例えばIL-2もしくはIL-15などのサイトカイン、または該サイトカインの機能的誘導体およびペグ化バージョンを含む医薬組成物。
【0154】
#10.凍結乾燥製剤、事前充填されたシリンジ中の溶液またはバイアル中の溶液である、請求項#9に記載の医薬組成物。
【0155】
#11.治療薬としての使用のための、#1~#5のいずれか1つに記載の単離されたBTN3A活性化抗体、または請求項#9もしくは#10に記載の医薬組成物。
【0156】
#12.#1~#5のいずれか1つに記載のBTN3A抗体の産生のための方法であって、(i)宿主細胞による前記抗体の発現のために#8に記載の宿主細胞を培養するステップ、場合により(ii)前記抗体を精製するステップ;および(iii)前記抗体を回収するステップを含む、方法。
【0157】
感染性障害の治療におけるBTN3A活性化抗体の使用
本発明者らは、以下の能力を有する、mAb20.1などのBTN3A活性化抗体を見出した:
(i)Vγ9Vδ2 T細胞の存在下で単球のC.burnetii細菌量の減少をインビトロで増強する、
(ii)典型的には4時間の共培養後、感染した単球の共培養物を用いてインビトロで測定した場合に、C.burnetiiに感染した単球に対するVγ9Vδ2 T細胞のインビトロ細胞傷害活性を増加させる、および/または
【0158】
本発明者らはまた、例えば、感染した細胞とVγ9Vδ2 T細胞との共培養物においてインビトロで測定した場合に、mAb20.1などのBTN3A活性化抗体が、SARS-Cov2複製の阻害を増強する能力を有することを見出した。
【0159】
したがって、本開示は、感染性障害、より具体的にはウイルス性または細菌性感染性障害から選択される感染性障害の治療で使用するためのBTN3A活性化抗体、特に上記のような特定のBTN3A活性化抗体に関する。
【0160】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」という用語は、(1)疾患を阻害すること、例えば、疾患、状態または障害の病態または症候を経験または示している個体における疾患、状態または障害を阻害すること(すなわち、病状および/または症候のさらなる進展を阻止すること);ならびに(2)疾患を緩和すること、例えば、疾患、状態または障害の病態または症候を経験または示している個体における疾患、状態または障害を緩和すること(すなわち、病態および/または症候を逆転させること)、例えば、疾患の重症度を低下させること、または疾患の1つもしくは複数の症候を軽減または低減することのうちの1つまたは複数を指す。特に、感染性障害の治療に関して、「治療」という用語は、感染因子による感染の予防、感染因子の複製の阻害、感染に関連する1つもしくは複数の症候の重症度の低下、または感染因子の根絶を指し得る。
【0161】
好ましい実施形態では、対象はヒト対象である。
【0162】
上記で開示されるような使用のためのBTN3A活性化抗体は、唯一の活性成分として、または例えばアジュバントとして併せて、または上記の疾患の治療もしくは予防のための他の薬物、例えばサイトカイン、抗ウイルス剤、抗炎症剤と組み合わせて投与され得る。
【0163】
例えば、上記で開示されるような使用のための抗体は、サイトカイン、抗ウイルス剤、抗菌剤、または抗炎症剤と組み合わせて使用され得る。
【0164】
サイトカインの例としては、限定されないが、インターロイキン2(IL-2)(Choudhry H et al,2018,Biomed Res Int.2018 May 6)、インターロイキン15(IL-15)(Patidar M et al.,Cytokine Growth Factor Rev.2016 Oct;31:49-59)、またはそれらの誘導体を含む、インビボでVγ9Vδ2 T細胞を増殖および/または活性化するためのサイトカインが挙げられる。誘導体という用語は、ペグ化(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)鎖へのコンジュゲーション)、アミノ酸の欠失、置換もしくは挿入などの変異、または増強剤(例えば、IgG1 Fcに融合したIL15/IL15Ra複合体、ここでは、IL-15が追加で変異しており(asn72asp)、生物学的活性をさらに増加させ、この複合体をIL-2およびIL-15Rβγスーパーアゴニストにする(Rhode PR et al,Cancer Immunol Res.2016;4(1):49-60))との会合に依り得る任意のサイトカイン改変に使用される(Barroso-Sousa R et al,Curr Oncol Rep.2018 Nov 15;21(1):1)。
【0165】
「IL-2」という用語は、IL-2の一般的な意味を有し、ヒトインターロイキン-2を指す。IL-2は、身体の自然免疫応答の一部である。IL-2は、主に、IL-2受容体に結合することによってリンパ球活性を調節する。
【0166】
「IL-15」という用語は、IL-15の一般的な意味を有し、ヒトインターロイキン-15を指す。IL-2と同様に、IL-15は、IL-2/IL-15受容体ベータ鎖(CD122)および共通ガンマ鎖(ガンマ-C、CD132)から構成される複合体に結合し、それを介してシグナル伝達する。IL-15は、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の活性化および増殖を調節する。
【0167】
したがって、本明細書で定義される使用方法は、治療有効量のBTN3A活性化抗体と、少なくとも1つの第2の薬物物質との共投与、例えば同時または逐次投与を含み得、前記第2の薬物物質は、抗ウイルス性もしくは抗細菌性、抗炎症性もしくはサイトカイン、例えばIL-2もしくはIL-15、または例えば上に示されるような細胞療法製品(γδ T細胞など)である。
【0168】
SARS Cov2感染によって引き起こされる障害の治療におけるBTN3A活性化抗体の使用
特定の実施形態では、本開示は、SARS-Cov2感染によって引き起こされる障害の治療を必要とする対象、典型的にはCovid-19において、その治療で使用するためのBTN3A活性化抗体、特に上記のような特定のBTN3A活性化抗体に関する。
【0169】
特定の実施形態では、本開示は、SARS-Cov2感染によって引き起こされる障害の治療を必要とする対象、典型的にはCovid-19において、それを治療する方法に関し、前記方法は、前記対象に治療有効量の抗BTN3A活性化抗体を投与するステップを含む。
【0170】
特定の実施形態では、本開示は、SARS-Cov2感染、典型的にはCovid-19によって引き起こされる障害の治療を必要とする対象において、その障害を治療するための医薬の調製におけるBTN3A活性化抗体の使用に関する。
【0171】
特定の実施形態では、そのような治療に適格な対象は、SARS-Cov2に感染していると診断されている。
【0172】
特定の実施形態では、対象は、軽度または中程度のCOVID-19を有する対象の中から選択される。
【0173】
特定の実施形態では、対象は、重度のCOVID-19に進行する高いリスクがある対象の中から選択される。リスク因子には、限定されないが、リスク因子には、(アルファベット順に列挙)年齢(50歳以降の各年代でのリスク増加)、がん、心血管疾患、慢性腎臓疾患、慢性肺疾患、糖尿病、免疫障害状態または免疫抑制薬の投与、肥満(ボディマス指数≧30)、妊娠、および鎌状赤血球症が含まれる。
【0174】
特定の実施形態では、抗ウイルス薬または抗炎症薬は、SARS-Cov2によって引き起こされる前記障害を治療するために、BTN3A活性化抗体と組み合わせて使用され得る。SARS-Cov2の治療に有用なそのような抗ウイルス薬または抗炎症薬の例としては、限定されないが、レムデシビル、バリシチニブ、バムラニビマブ、バムラニビマブ/エテセビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、デキサメタゾン、ブデソニドおよびトシリズマブが挙げられる。
【0175】
Coxiella burnetiiによって引き起こされる障害の治療におけるBTN3A活性化抗体の使用
特定の実施形態では、本開示は、Coxiella burnetii感染によって引き起こされる障害の治療を必要とする対象、典型的にはQ熱において、その治療で使用するためのBTN3A活性化抗体、特に上記のような特定のBTN3A活性化抗体に関する。
【0176】
特定の実施形態では、本開示は、Coxiella burnetii感染によって引き起こされる障害の治療を必要とする対象、典型的にはQ熱において、それを治療する方法に関し、前記方法は、前記対象に治療有効量のBTN3A活性化抗体を投与するステップを含む。
【0177】
特定の実施形態では、本開示は、Coxiella burnetii感染、典型的にはQ熱によって引き起こされる障害の治療を必要とする対象において、その障害を治療するための医薬の調製におけるBTN3A活性化抗体の使用に関する。
【0178】
特定の実施形態では、そのような治療に適格な対象は、Coxiella burnetiiに感染していると診断されている。
【0179】
特定の実施形態では、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、オフロキサシン、およびヒドロキシクロロキンを含むがこれらに限定されない抗菌薬(抗生物質など)または抗炎症薬は、Coxiella burnetiiによって引き起こされる前記障害を治療するために、BTN3A活性化抗体と組み合わせて使用され得る。
【0180】
BTN3A活性化抗体の使用のための他の特定の実施形態は、限定されないが以下に開示されている。
【0181】
BTN3A活性化抗体の使用のための具体的な実施形態
#1.感染性障害の治療を必要とするヒト対象における感染性障害の治療における使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0182】
#2.前記感染性障害が、Coxiella burnetii感染によって引き起こされる障害、典型的にはQ熱である、#1に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0183】
#3.前記感染性障害が、SARS-Cov2によって引き起こされる障害、典型的にはCOVID-19である、#1に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0184】
#4.例えば実施例に記載されているように、SPRによって測定した場合に、10nM以下のKで、好ましくは1nM以下のKでBTN3Aに結合する、#1~#3のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0185】
#5.以下の特性のうちの1つまたは複数を有する、#1~#4のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体:
(i)抗体が、例えば実施例に記載されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に、10nM以下のKで、好ましくは5nM以下のKで、または1nM以下のKでBTN3A1に結合する;
(ii)抗体が、例えば実施例に記載されているように、フローサイトメトリーアッセイで測定した場合に、50μg/ml以下、好ましくは10μg/ml以下のEC50でヒトPBMCに結合する;および、
(iii)抗体が、例えば実施例に記載されているように、脱顆粒アッセイで測定した場合に、BTN3Aを発現する細胞との共培養において、5μg/ml未満、好ましくは1μg/ml以下のEC50で、γδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導する。
【0186】
#6.以下の特性のうちの1つまたは複数を有する、#1~#5のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体:
(i)抗体が、Vγ9Vδ2 T細胞の存在下で単球のC.burnetii細菌量の減少をインビトロで増強する、
(ii)抗体が、典型的には4時間の共培養後、C.burnetiiに感染した単球に対するVγ9Vδ2 T細胞のインビトロ細胞傷害活性を増加させる。
【0187】
#7.例えば、感染した細胞とVγ9Vδ2 T細胞との共培養物においてインビトロで測定した場合に、SARS-Cov2に感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞のインビトロ細胞傷害活性を増加させる、#1~#5のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0188】
#8.配列番号5~7のHCDR1~3および配列番号8~10のLCDR1~3を含む、#1~#7のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0189】
#9.配列番号11~13のHCDR1~3および配列番号14~16のLCDR1~3を含む、#1~#7のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0190】
#10.配列番号17~19のHCDR1~3および配列番号20~22のLCDR1~3を含む、#1~#7のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0191】
#11.(a)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)ポリペプチド、および(b)配列番号2と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)ポリペプチドを含むか;
(a)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)ポリペプチド、および(b)配列番号4と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)ポリペプチドを含むか;
(a)配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)ポリペプチド、および(b)配列番号64と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)ポリペプチドを含むか;
-寄託番号I-4401の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマによって産生されるmAb20.1と、BTN3A1への結合について競合するか;または、
-寄託番号I-4402の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマによって産生されるmAb7.2と、BTN3A1への結合について競合する
のいずれかである、請求項#1~#10のいずれか一項に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0192】
#12.配列番号1の可変重鎖VHおよび配列番号2の軽鎖VLを含む、#1~#11のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0193】
#13.前記BTN3A活性化抗体が、変異体または化学的に改変されたIgG1定常領域を含み、前記変異体または化学的に改変されたIgG1定常領域が、野生型IgG1アイソタイプ定常領域を有する対応する抗体と比較した場合に、Fcγ受容体への結合を有しないかまたは減少した結合を付与する、#1~#12のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0194】
#14.前記変異IgG1定常領域が、IgG1三重変異L247F L248EおよびP350Sである、#13に記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0195】
#15.配列番号23の重鎖および配列番号24の軽鎖を含む、#1~#8および#11~#14のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0196】
#16.インビボでのVγ9Vδ2 T細胞増殖のためのサイトカイン、例えば、IL2もしくはIL15サイトカインまたはそれらのペグ化誘導体と組み合わせて、同時に、順次または別個に投与される、#1~#15のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0197】
#17.前記抗BTN3A抗体が、好ましくはレムデシビル、バリシチニブ、バムラニビマブ、バムラニビマブ/エテセビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、デキサメタゾン、ブデソニドおよびトシリズマブからなる群から選択される抗ウイルスまたは抗炎症治療と組み合わせて、同時にまたは別個に投与される、SARS-Cov2のウイルス性感染性障害を治療するための#1~#16のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0198】
#18.前記対象が、SARS-Cov2陽性であると診断されているヒト対象である、SARS-Cov2のウイルス性感染性障害を治療するための#1~#17のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0199】
#19.前記対象が、軽度または中程度のCOVID-19を有するヒト対象である、SARS-Cov2のウイルス性感染性障害を治療するための#1~#18のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0200】
#20.前記対象が、重度のCOVID-19に進行する高いリスクがある、SARS-Cov2のウイルス性感染性障害を治療するために使用するための#1~#18のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0201】
#21.前記対象が、重度のCOVID-19を有する、SARS-Cov2のウイルス性感染性障害を治療するための#1~#18のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0202】
#22.好ましくはドキシサイクリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、オフロキサシン、およびヒドロキシクロロキンから選択される抗生物質から選択される抗菌治療と組み合わせて、同時にまたは別個に投与される、Coxiella Burnetii感染によって引き起こされる障害を治療するための#1~#15のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0203】
#23.前記対象がCoxiella Burnetii感染に陽性であると診断されている、Coxiella Burnetii感染によって引き起こされる障害を治療するための#1~#15および#22のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0204】
#24.前記対象がQ熱を有する、Coxiella Burnetii感染によって引き起こされる障害を治療するための#1~#15および#22~#23のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【0205】
#25.静脈内注入によって、例えば1mg~1g、例えば1mg~200mg含まれる用量で、それを必要とする対象に投与される、#1~24のいずれか1つに記載の使用のためのBTN3A活性化抗体。
【実施例
【0206】
抗BTN3A活性化抗体の機能的特性を試験するためのアッセイ
1.BTN3A活性化抗体のSPRによる結合親和性を求めるためのアッセイ
マルチサイクルキネティクス解析は、Biacore T200評価ソフトウェアV2.0.1(Uppsala、Sweden)を実行するBiacore T200(シリアル番号1909913)機器を使用して、任意のBTN3A抗体候補を行い得る。
【0207】
精製した抗体を、2%BSA/PBSで2μg/mlの濃度に希釈する。各サイクルの開始時に、各抗体を約146.5RU(約50RUのRMaxを得るための理論値)の密度(RL)でプロテインA上に捕捉する。捕捉後、BTN3A1抗原(Sino Biologicalカタログ番号15973-H08H)の注射前に表面を安定化させる。BTN3A1を、25~0.78nMの二倍希釈範囲で0.1%BSA/HBS-P+(ランニング緩衝液)中で滴定する。会合段階を400秒間、解離段階を35分間(2100秒間)モニタリングする。潜在的な物質移動効果を最小限に抑えるために、キネティクスデータは、流速50μl/分を使用して得る。プロテインA表面の再生は、各サイクルの終了時に10mMグリシン-HCL pH1.5の2回の注入を用いて実施する。2つのブランク(BTN3A1なし)および単一濃度の分析物の反復を各試験抗体について行い、キネティクスサイクルにわたって表面および分析物の安定性を確認した。参照チャネルFc1からのシグナルをFc2、Fc3およびFc4のシグナルから差し引いて、参照表面に対する非特異的結合の差を補正する。加えて、ドリフトなどのあらゆる抗原非依存性シグナル変動を補正するために、各Fcに対してブランクランが差し引かれる。センサーグラムを、グローバルRMaxパラメータおよびバルクシグナルなし(定数RI=0RU)の1対1結合数学モデルを使用してフィッティングした。
【0208】
2.BTN3A活性化抗体のヒトPBMCについて、フローサイトメトリーによって結合を求めるためのアッセイ
本開示に従って使用するためのBTN3A活性化抗体は、健康なドナーの血液から単離されたヒトPBMCで発現されるBTN3Aへのそれらの結合について特徴付けられ得る。PBMCを、Lymphoprep(Axis-shield、Dundee、UK)密度遠心分離を使用して、バフィーコートから単離する。次いで、PBMCを凍結し、必要になるまで-80℃または液体窒素中で貯蔵する。
【0209】
1×10細胞/mlの100μl細胞を、新鮮なU字形底部96ウェルプレートの各ウェルに移し、次いで、プレートを遠心分離し、上清を廃棄する。
【0210】
0.001μg/ml~150μg/mlの抗体の段階希釈液を、PBS 2mM EDTAで調製する。ヒトPBMCを、調製した50μlの希釈試験抗体滴定シリーズに再懸濁する。
【0211】
4℃、暗所で30分間のインキュベーション後、プレートを遠心分離し、150μl/ウェルのPBS 2mM EDTAで2回洗浄し、その後、ウェルを、50μlのPBS 2mM EDTAで1/100希釈したヤギ抗ヒト抗体(PE標識)および1/500希釈したライブ/デッドニートIRで構成される混合物に再懸濁する。
【0212】
4℃、暗所で15分間のインキュベーション後、プレートを遠心分離し、150μl/ウェルのPBS 2mM EDTAで1回洗浄し、その後、ウェルを、200μlのPBS 2mMのEDTAに再懸濁する。細胞を、BD LSR Fortessa Cytometerで分析する。データを、FlowJoソフトウェア(バージョン10、FlowJo,LLC、Ashland、USA)を使用して分析する(データは示さず)。
【0213】
カニクイザルPBMCおよびDaudiバーキットリンパ腫細胞株から発現したカニクイザルBTN3Aに対する結合を試験するために、同じプロトコルを実施することができる。
【0214】
3.インビトロでの機能的有効性:γδ-T細胞の脱顆粒アッセイ
アッセイは、Daudiバーキットリンパ腫細胞株(Harly et al.,2012)に対するγδ-T細胞の脱顆粒に関するBTN3A抗体の活性化効果を測定することからなる。健康なドナーのPBMC由来のγδ-T細胞を、ゾレドロン酸(1μM)およびIL2(200Ui/ml)を用いて11~13日間培養することによって増殖させる。IL2を、5日目、8日目およびその後2日ごとに添加する。γδ-T細胞のパーセンテージを培養の開始時に求め、少なくとも80%に達するまでフローサイトメトリーによって培養時間に関して評価する。次いで、凍結または新鮮なγδ-T細胞をDaudi細胞株(E:T比1:1)に対する脱顆粒アッセイで使用し、それにより細胞を10μg/mlの7.2および20.1のヒト化バリアント、ならびに7.2および20.1のキメラバージョンの存在下、37℃で4時間共培養する。PMA(20ng/ml)+イオノマイシン(1μg/ml)による活性化が、γδ-T細胞の脱顆粒の陽性対照として機能し、培地単独が陰性対照として機能した。4時間の共インキュベーションの終了時に、細胞をフローサイトメトリーによって分析して、CD107a(LAMP-1、リソソーム関連膜タンパク質-1)+CD107b(LAMP-2)について陽性のγδ-T細胞のパーセンテージを評価する。CD107は、活性化誘導の顆粒エキソサイトーシスに続いて細胞表面に動員されるので、表面CD107の測定は、脱顆粒したばかりの細胞溶解性T細胞を同定するための感受性マーカーである。
【0215】
4.BTN3A活性化抗体の存在下、SARS-Cov2に感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞傷害活性を求めるためのアッセイ
単球、MDM、BEAS-2BおよびMRC-5を、10μMの細胞増殖色素eFluor(登録商標)670(Invitrogen)で標識し、次いでウイルスで刺激する。標的細胞を、候補抗BTN3A活性化抗体または対照mAb20.1(0、0.1、1または10μg/ml)の存在下で、エフェクター対標的(E:T)比1:1でVγ9Vδ2 T細胞(エフェクター)と共培養する。24時間後、細胞を、CellEventカスパーゼ-3/7グリーン(Invitrogen)で染色して、死細胞を同定する。細胞傷害性を、標的細胞集団におけるカスパーゼ3/7+細胞のパーセンテージとして、フローサイトメトリーによって評価する。データをBD Canto II機器(BD Biosciences)で収集し、FlowJoソフトウェア(FlowJo v10.6.2)を用いて分析する。
【0216】
5.BTN3A活性化抗体の存在下、SARS-Cov2に感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞のIFN-γ分泌を求めるためのアッセイ
単球、MDM、BEAS-2BおよびMRC-5をウイルスで刺激し、候補抗BTN3A活性化抗体または対照mAb20.1(0、0.1、1または10μg/ml)の存在下で、エフェクター対標的(E:T)比1:1でVγ9Vδ2 T細胞(エフェクター)と共培養する。24時間後、共培養物から培養上清を回収し、IFN-γの分泌を、製造業者の説明書に従って、ヒトIFN-γイムノアッセイキット(R&D Systems)を用いて検出する。
【0217】
6.BTN3A活性化抗体の存在下、Coxiella burnetiiに感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞の脱顆粒を求めるためのアッセイ
C.burnetiiに感染した単球を、候補抗BTN3A活性化抗体または対照mAb20.1ならびに蛍光色素標識したCD107aおよびCD107b(BD Biosciences)の存在下で、エフェクター対標的(E:T)比1:1でVγ9Vδ2 T細胞と共培養する。4時間後、細胞を回収し、蛍光色素標識したTCR特異的mAb(Miltenyi Biotec)および生存マーカー(Live/Dead Near IR、Invitrogen)で染色する。脱顆粒を、γδ T細胞集団におけるCD107a/b細胞パーセンテージとして、フローサイトメトリーによって評価する。データをNavios機器(Beckman Coulter)で収集し、FlowJoソフトウェア(FlowJo v10.6.2)を用いて分析する。
【0218】
7.BTN3A活性化抗体の存在下、Coxiella burnetiiに感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞傷害活性を求めるためのアッセイ
C.burnetiiに感染した単球を10μMの細胞増殖色素eFluor(登録商標)670(Invitrogen)で標識し、次いで、候補抗BTN3A活性化抗体または対照mAb20.1の存在下で、E:T比1:1でVγ9Vδ2 T細胞と共培養する。4時間後、細胞を、CellEventカスパーゼ-3/7グリーン(Invitrogen)で染色して、死細胞を同定する。細胞傷害性を、標的細胞集団におけるカスパーゼ3/7細胞のパーセンテージとして、フローサイトメトリーによって評価した。データをBD Canto II機器(BD Biosciences)で収集し、FlowJoソフトウェア(FlowJo v10.6.2)を用いて分析した。
【0219】
実施例1:mAb20.1のヒト化および特徴付け
1.ヒト化戦略の説明
a.Composite Human Antibody(商標)可変領域配列の設計
マウス7.2および20.1抗体のV領域の構造モデルを、Swiss PDBを使用して作製し、抗体の結合特性に必須である可能性が高いV領域の重要な「拘束(constraining)」アミノ酸を同定するために分析した。CDR内に含まれる大部分の残基(KabatおよびChothiaの両方の定義を使用)は、いくつかのフレームワーク残基と共に重要であると考えられた。上記の分析から、7.2および20.1抗体のComposite Human配列を作製した。
【0220】
b.CD4+T細胞エピトープの回避
構造解析に基づいて、7.2および20.1のヒト化バリアントを作出するために使用することができる配列セグメントの大きな予備的セットを、ヒトMHCクラスII対立遺伝子へのペプチド結合のインシリコ分析のためのiTope(商標)技術を使用して(Perry et al.,2008)、および既知の抗体配列関連T細胞エピトープのTCED(商標)を使用して(Bryson et al.,2010)、選択し、分析した。ヒトMHCクラスIIに対する有意な非ヒト生殖細胞系バインダーとして同定された、またはTCED(商標)に対する有意なヒットを記録した配列セグメントを破棄した。これにより、セグメントのセットが減少し、これらの組合せを上記のように再び分析して、セグメント間の接合部が潜在的なT細胞エピトープを含まないことを確実にした。選択された配列セグメントを、有意なT細胞エピトープを欠くと予測される完全なV領域配列にアセンブルした。次いで、いくつかの重鎖および軽鎖配列を、mAb7.2および20.1について哺乳動物細胞における遺伝子合成および発現のために選定した。
【0221】
2.ヒト化バリアントの作製および予備的特徴付け
a.ヒト化バリアントプラスミドの構築
7.2および20.1のヒト化バリアントを、ヒトIgG4(S241P、L248E)重鎖およびカッパ軽鎖について、発現ベクター系にクローニングするために、フランキング制限酵素部位を用いて合成した。すべての構築物を配列決定によって確認した。
【0222】
b.抗体の発現
キメラ7.2および20.1(VH0/Vκ0)、2つの対照の組合せ(VH0/Vκ1、VH1/Vκ0)ならびにヒト化重鎖および軽鎖の組合せを、対応するエンドトキシン不含DNAからのMaxCyte STX(登録商標)エレクトロポレーションシステム(MaxCyte Inc.、Gaithersburg、USA)を使用してFreeStyle(商標)CHO-S細胞(ThermoFisher、Loughborough、UK)に一過性にトランスフェクトした。OC-400プロセシングアセンブリを使用して、各抗体についてトランスフェクションを行った。細胞回収後、細胞を、8mMのL-グルタミン(ThermoFisher、Loughborough、UK)および1xのヒポキサンチン-チミジン(ThermoFisher、Loughborough、UK)を含有するCD Opti-CHO培地(ThermoFisher、Loughborough、UK)に3x10細胞/mLまで希釈した。トランスフェクションの24時間後、培養温度を32℃に下げ、1mMの酪酸ナトリウム(Sigma、Dorset、UK)を添加した。培養物に、(出発体積の)3.6%のフィード(2.5%CHO CD Efficient Feed A(ThermoFisher、Loughborough、UK)、0.5%Yeastolate(BD Biosciences、Oxford、UK)、0.25mMのGlutamax(ThermoFisher、Loughborough、UK)および2g/Lのグルコース(Sigma、Dorset、UK))を毎日添加してフィードした。IgG上清の力価をIgG ELISAによってモニタリングし、上清を回収する前にトランスフェクションを最長14日間培養した。
【0223】
c.mAb3(mAb20.1のヒト化形態)の選択
mAb20.1の2つのヒト化バリアントを、さらなる特徴付けのために、20種のヒト化候補から選択した。
【0224】
以下の表4は、マウス親抗体mAb7.2、mAb20.1、ならびに配列番号1のVHおよび配列番号2のVLを有するmAb20.1のヒト化バージョンとの間の比較データを要約している。
【0225】
【表4】
【0226】
実施例2:SARS-Cov2感染症を治療するための活性化BTN3A抗体の使用のエビデンス
材料および方法
細胞の単離および細胞株の培養
15人の健康なボランティアからの血液サンプルは、地元の血液バンク(合意N°7828、「Etablissement Francais du Sang」、Marseille、France)から得た。末梢血単核細胞(PBMC)を、バフィーコートからの密度勾配遠心分離によって(Ficoll(Eurobio、Les Ulis、France)を使用する密度勾配遠心分離によって単離した。
【0227】
単球を、MACS磁気ビーズ(Miltenyi Biotec、Bergisch Glabach、Germany)を使用するCD14選択によってPBMCから精製し、10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco、Life Technologies)、2mMのL-グルタミン、100U/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies)を含有するRoswell Park Memorial Institute-1640培地(RPMI、Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)中で培養した。単球に由来するマクロファージ(MDM)については、細胞を、10%不活化ヒトAB血清(MP Biomedicals、Solon、OH)、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシンを含有するRPMI-1640中で培養した。3日後、培地を、10%FBSおよび2mMのグルタミンを含有するRPMI-1640に置き換え、細胞をさらに4日間マクロファージに分化させた。
【0228】
Vγ9Vδ2 T細胞を、新鮮なPBMCから増殖させた。簡潔には、PBMCを、10%FBS、インターロイキン-2(IL-2、最終濃度200UI/mlまで)およびゾレドロン酸一水和物(最終濃度1μM)を補充したRPMI-1640培地中で増殖させた。IL-2を、5日目に開始して2日ごとに添加した。12日間培養した後、Vγ9Vδ2 T細胞の純度をフローサイトメトリー分析によって評価し、次いで凍結させた。Vγ9Vδ2 T細胞をさらに精製し、TCRγ/δ+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用して最大98%の純度まで濃縮した。
【0229】
正常ヒト気管支上皮細胞(BEAS-2B細胞、ATCC(登録商標)CRL-9609(商標))をLHC-9培地(Life Technologies)中で培養し、正常ヒト肺線維芽細胞(MRC-5細胞、ATCC(登録商標)CCL-171(商標))を、4%FBSおよび2mMのL-グルタミンを補充した最小必須培地(MEM、Life Technologies)中、37℃、5%COの雰囲気で培養した。
【0230】
ウイルス産生および細胞感染
SARS-CoV-2株IHU-MI6を、以前記載されたように(Boumaza et al.,2020)、4%FBSを補充したMEMでのVero E6細胞(ATCC(登録商標)CRL-1586(商標))感染後に得た。健康なドナーのPBMCから単離した単球およびMDM、ならびにBEAS-2BおよびMRC-5細胞を、加湿インキュベータ内で5%COおよび95%空気の存在下、37℃で24時間、感染多重度(MOI)1でのウイルス懸濁液で感染させた。
【0231】
RNAの単離およびqRT-PCR
全RNAを、以前記載されたように(Mezouar et al.,2019c)、DNA夾雑物を排除するためにDNase I処理を伴うRNeasyミニキット(Qiagen、Courtaboeuf、France)を使用して細胞(2.10細胞/ウェル)から抽出した。抽出されたRNAの品質および量を、NanoDrop分光光度計(Nanodrop Technologies、Wilmington、USA)を使用して評価した。単離されたRNAの逆転写を、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素キット(Life Technologies)およびオリゴ(dT)プライマーを使用して行った。BTN3Aの発現レベルを定量するために、リアルタイムq-PCRを、Smart SYBR Green fast Masterキット(Roche Diagnostics、Meylan、France)および特異的プライマーを使用して行った(表5)。BTN2Aの発現レベルを定量するために、リアルタイムq-PCRを、TaqMan(登録商標)Fast Advanced Master Mix(Applied Biosystems、Life Technologies)および特異的プローブを使用して行った(表5)。すべてのq-PCRは、CFX TouchリアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad)を使用して行った。結果を、以前記載されたように(Mezouar et al.,2019a)、ACTBまたはGAPDHハウスキーピング遺伝子を使用して正規化し、調査した遺伝子の相対発現、ΔCt=Ct標的-Ctハウスキーピング遺伝子で表す。閾値サイクル(Ct)は、蛍光シグナルを検出するために必要なサイクル数と定義した。
【0232】
【表5】
【0233】
フローサイトメトリー染色およびデータ取得および分析
インビトロでのSARS-CoV-2に感染した細胞の分析のために、細胞を、1%FBSおよび2mMのEDTA(Sigma-Aldrich)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(Life Technologies)に懸濁した。細胞を、抗BTN3A(103.2)もしくは抗BTN2A(7.48)mAbを用いてまたはアイソタイプ対照(Miltenyi Biotech)を用いて生存色素(LIVE/Dead Near IR、Invitrogen)で標識した。30分のインキュベーション後、一次抗体の結合をAlexa Fluor 488抗マウス(Invitrogen)で検出した。データをBD Canto II機器(BD Biosciences)で収集し、FlowJoソフトウェア(FlowJo v10.6.2、Ashland、OR)を用いて分析した。
【0234】
ウイルスRNAの抽出およびqRT-PCR
ウイルスRNAは、NucleoSpin(登録商標)ウイルスRNA単離キット(Macherey-Nagel、Hoerdt、France)を製造業者の推奨に従って使用して、感染細胞から抽出した。ウイルス検出は、One-Step RT-PCR SuperScript(商標)III Platinum(商標)キット(Life Technologies)を使用して行った。熱サイクルは、LightCycler 480リアルタイムPCRシステム(Roche、Rotkreuz、Switzerland)を使用して、逆転写のために55℃で10分間、続いて95℃で3分間、次いで95℃で15秒間および58℃で30秒間の45サイクルで達成した。プライマーおよびプローブは、E遺伝子に対して設計した(Boumaza et al.,2020)。
【0235】
細胞傷害性アッセイ
単球、MDM、BEAS-2BおよびMRC-5を、10μMの細胞増殖色素eFluor(登録商標)670(Invitrogen)で標識し、次いでウイルスで刺激した。標的細胞を、抗BTN3A 20.1 mAb(0、0.1、1または10μg/ml)の存在下で、エフェクター対標的(E:T)比1:1でVγ9Vδ2 T細胞(エフェクター)と共培養した。24時間後、細胞を、CellEventカスパーゼ-3/7グリーン(Invitrogen)で染色して、死細胞を同定した。細胞傷害性を、標的細胞集団におけるカスパーゼ3/7+細胞のパーセンテージとして、フローサイトメトリーによって評価した。データをBD Canto II機器(BD Biosciences)で収集し、FlowJoソフトウェア(FlowJo v10.6.2)を用いて分析した。
【0236】
IFN-γ分泌アッセイ
単球、MDM、BEAS-2BおよびMRC-5をウイルスで刺激し、抗BTN3A 20.1 mAb(0、0.1、1または10μg/ml)の存在下で、エフェクター対標的(E:T)比1:1でVγ9Vδ2 T細胞(エフェクター)と共培養した。24時間後、共培養物から培養上清を回収し、IFN-γの分泌を、製造業者の説明書に従って、ヒトIFN-γイムノアッセイキット(R&D Systems)を用いて検出した。
【0237】
統計分析
統計分析は、スチューデントのt検定またはノンパラメトリックマンホイットニーのU検定を使用した転写分析、およびクラスカルワリス検定を使用したスペクトル型サイトメトリーに対して、GraphPad Prism(バージョン8.0、La Jolla、CA)を用いて行い、続いてダンの多重比較およびマンホイットニー検定を行った(有意差の境界:p<0.05)。
【0238】
結果
BTN3AおよびBTN2Aの発現に対するSARS-CoV-2感染の影響
最初に、本発明者らは、SARS-CoV-2感染が、骨髄由来の細胞(単球または単球由来のマクロファージ(MDM)の初代細胞培養物)または肺起源の細胞(正常な上皮肺細胞株:BEAS-2BまたはMRC-5)のBTN3AおよびBTN2Aの発現に影響を及ぼすかどうかを評価した。BTN2Aの転写(アイソフォーム遺伝子2A1、2A2)またはタンパク質発現に対する影響は観察されなかった(図1A)。対照的に、BTN3Aの3つのアイソフォーム(3A1、3A2、3A3)の遺伝子発現は、ウイルスを含まない培養物と比較して、MDM培養物中のSARS-CoV-2の存在で有意に増加した。実際、BTN3Aの3つのアイソフォームの相対発現は、非刺激MDMと比較して、SARS-CoV-2刺激MDMで約5倍増加した(3A1 p=0.012、3A2 p=0.006、3A3 p=0.028)(図1B)。単球または肺細胞培養物において、BTN3A転写産物の統計学的に有意な差は観察されなかった。しかしながら、本発明者らは、SARS-CoV-2刺激により、MDM、BEAS-2B、MRC-5のBTN3Aタンパク質発現の有意な増加を観察した(図1B)。BTN3Aのタンパク質発現は、SARS-CoV-2で刺激した後、MDMでは3.5倍、BEAS-2BおよびMRC-5細胞では約2倍増加した(それぞれp=0.048、p=0.012およびp=0.002)。
【0239】
インビトロでのSARS-CoV-2に感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞応答の特徴付け
次いで、本発明者らは、参照抗BTN3Aモノクローナル抗体20.1で活性化した場合の、インビトロでのSARS-CoV-2の複製を阻害するVγ9Vδ2 T細胞の能力を研究した。ウイルス感染がVγ9Vδ2 T細胞の生存率に影響を及ぼさないことを確認した後(図2)、本発明者らは、SARS-CoV-2 IHU-MI6株および漸増濃度の参照20.1 mAbの存在下で、Vγ9Vδ2 T細胞を骨髄または肺細胞と共培養した。参照抗BTN3A 20.1は、ウイルス複製の用量依存的阻害をもたらした(10μg/mlで、単球培養物において28.4%、MDMにおいて42.4%、MRC-5において33.7%およびBEAS-2B培養物において53.0%)(図3A)。Vγ9Vδ2 Tリンパ球の細胞傷害性(カスパーゼ3/7)は、骨髄細胞に対してよりもSARS-CoV-2に感染した肺細胞に対して高いようであり、参照抗BTN3A 20.1抗体の濃度と共に増加した。差異は、4つの標的細胞培養物のそれぞれにおいて0.1および10μg/mlの用量間で統計学的に有意であった(表6)。
【0240】
最後に、本発明者らは、参照抗BTN3A 20.1で活性化されたVγ9Vδ2 T細胞が、IFN-γ媒介性非細胞溶解性抗SARS-CoV-2活性を発揮したかどうかを調べた。抗BTN3Aの濃度の増加は、4つの細胞培養物の上清中のIFN-γの有意かつ用量依存的な増加と関連した(図3Bおよび表6)。
【0241】
【表6】
【0242】
実施例3:Coxiella burnetii感染症を治療するための活性化抗BTN3A抗体の使用のエビデンス
材料および方法
細胞の単離
本発明者らの研究で使用した血液サンプル(ロイコパック)は、ドナー受入れ、インフォームドコンセント、およびサンプル採取を行うフランス血液機関(Etablissement Francais du sang、EFS)からのものである。本発明者らの研究室とEFS(N°7828)との間で確立された協定により、バフィーコートを得て、末梢血単核細胞(PBMC)を以前記載されたように単離した。
【0243】
単球を、MACS磁気ビーズ(Miltenyi Biotec、Bergisch Glabach、Germany)を使用するCD14選択によってPBMCから精製し、10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco、Life technologies)、2mMのL-グルタミン、100U/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies)を含有するRoswell Park Memorial Institute-1640培地(RPMI、Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)中で培養した。
【0244】
Vγ9Vδ2T細胞を、以前記載されたように、新鮮なPBMCから増殖させた。簡潔には、PBMCを、10%FBS、インターロイキン-2(IL-2、最終濃度200UI/mlまで)およびゾレドロン酸一水和物(Zometa、最終濃度1μMまで)を補充したRPMI-1640培地中で増殖させた。IL-2を、5日目に開始して12日間にわたって2日ごとに添加し、Vγ9Vδ2 T細胞の純度をフローサイトメトリー分析によって評価(>85%)し、次いで、10%ジメチルスルホキシド(Sigma-Aldrich、Saint-Quentin-Fallavier、France)および90%FBS中、-80℃で凍結させた。
【0245】
細菌産生
Coxiella burnetii細菌フェーズI(Nine Mile株、RSA493およびギアナ株、MST17)を、L929細胞中で10日間培養した。簡潔には、感染した細胞を超音波処理し、10,000×gで10分間遠心分離し、次いで洗浄し、-80℃で貯蔵した。細菌の濃度は、ヒメネス染色を使用して求め、細菌生存率は、Live/Dead BacLight細菌生存率キット(Molecular Probes、Eugene、OR、USA)を、製造業者の説明書に従って使用して評価した。
【0246】
細菌検出
DNAを、DNAミニキット(Qiagen、Courtaboeuf、France)を使用して、C.burnetiiに感染した細胞から抽出した。感染は、以前記載されたように、C.burnetii COM-1遺伝子を標的とする特異的プライマーF(5’-GCACTATTTTTAGCCG-GAACCTT-3’ [配列番号43])およびR(5’-TTGAGGAGAAAAACTGGATTGAGA-3’ [配列番号44])を用いて行ったリアルタイム定量PCR(qPCR)によって定量した。
【0247】
細胞内のC.burnetiiの存在もフローサイトメトリーによって評価した。簡潔には、感染した細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%Triton X-100(Sigma-Aldrich)で透過処理した。洗浄後、細胞をC.burnetiiに対し指向する抗ウサギと共に30分間インキュベートし、次いでAlexa647抗ウサギ抗体(Invitrogen)と共にインキュベートした。データをBD Canto II機器(BD Biosciences、Le Pont-de-Claix、France)で収集し、FlowJoソフトウェア(FlowJo v10.6.2、Ashland、OR)を用いて分析した。
【0248】
RNAの単離およびqRT-PCR
全RNAを、以前記載されたように、DNA夾雑物を排除するためにDnase I処理を伴うRNeasyミニキット(Qiagen)を使用して細胞(2.10細胞/ウェル)から抽出した。抽出されたRNAの品質および量を、NanoDrop分光光度計(Nanodrop Technologies、Wilmington、USA)を使用して評価した。単離されたRNAの逆転写を、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素キット(Life Technologies)およびオリゴ(dT)プライマーを使用して行った。M1/M2応答に関与する遺伝子、ならびにBTN3Aアイソフォーム遺伝子の発現レベルを、リアルタイムqPCR、Smart SYBR Green fast Masterキット(Roche Diagnostics、Meylan、France)および特異的プライマーを使用して評価した(表7)。BTN2Aの発現レベルを、リアルタイムqPCR、TaqMan(登録商標)Fast Advanced Master Mix(Applied Biosystems、Life Technologies)および特異的プローブを使用して評価した(表7)。すべてのqPCRは、CFX TouchリアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad、Marnes-la-Coquette、France)を使用して行った。結果を、以前記載されたように、ACTBまたはGAPDHハウスキーピング遺伝子を使用して正規化し、ΔCt=Cttarget-Cthousekeeping geneである2-ΔCtを用いて調査した遺伝子の相対発現として表す。閾値サイクル(Ct)は、蛍光シグナルを検出するために必要なサイクル数と定義した。
【0249】
【表7】
【0250】
BTN3AおよびBTN2Aのタンパク質発現
細胞を、1%FBSおよび2mMのEDTA(Sigma-Aldrich)を含有するPBS(Life Technologies)に収集し、生存色素(Live/Dead Near IR、Invitrogen)、抗BTN3A(クローン103.2)もしくは抗BTN2A(クローン7.48)mAbまたは適切なアイソタイプ対照(Miltenyi Biotech)で標識した。30分のインキュベーション後、一次抗体の結合をPE抗マウス抗体(Invitrogen)で検出し、データをNavios機器(Beckman Coulter)で収集し、FlowJoソフトウェア(FlowJo v10.6.2)を用いて分析した。
【0251】
脱顆粒アッセイ
単球を、抗BTN2A mAb(クローン7.48)または抗BTN3A mAb(クローン20.1または103.2)ならびに蛍光色素標識したCD107aおよびCD107b(BD Biosciences)の存在下で、エフェクター対標的(E:T)比1:1でVγ9Vδ2 T細胞と共培養した。4時間後、細胞を回収し、蛍光色素標識したTCR特異的mAb(Miltenyi Biotec)および生存マーカー(Live/Dead Near IR、Invitrogen)で染色した。脱顆粒を、γδ T細胞集団におけるCD107a/b細胞パーセンテージとして、フローサイトメトリーによって評価した。データをNavios機器(Beckman Coulter)で収集し、FlowJoソフトウェア(FlowJo v10.6.2)を用いて分析した。
【0252】
細胞傷害性アッセイ
単球を、10μMの細胞増殖色素eFluor(登録商標)670(Invitrogen)で標識し、次いで、抗BTN3A mAb(クローン20.1)の存在下で、E:T比1:1でVγ9Vδ2 T細胞と共培養した。4時間後、細胞を、CellEventカスパーゼ-3/7グリーン(Invitrogen)で染色して、死細胞を同定する。細胞傷害性を、標的細胞集団におけるカスパーゼ3/7細胞のパーセンテージとして、フローサイトメトリーによって評価した。データをBD Canto II機器(BD Biosciences)で収集し、FlowJoソフトウェア(FlowJo v10.6.2)を用いて分析した。
【0253】
イムノアッセイ
腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(R&D Systems)、グランザイムB、パーフォリンおよびグラニュライシン(Abcam)のレベルを、特異的イムノアッセイキットを使用して単球/Vγ9Vδ2 T細胞共培養物の上清で定量した。TNF-α、IFN-γ、インターロイキン(IL)-1β、IL-6、IL-10およびトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)(R&D Systems)のレベルを、C.burnetii感染後のBTNKO細胞の上清で定量した。アッセイの感度は、TNF-αについては6.2pg/mL、IFN-γについては5.7pg/mL、IL-1βについては1.0pg/mL、IL-6については0.7pg/mL、IL-10については3.9pg/mL、TGF-βについては15.4pg/mL、GM-CSFについては3.0pg/mL、グランザイムBについては20pg/mL、パーフォリンについては40pg/mL、およびグラニュライシンについては10pg/mLであった。
【0254】
統計分析
統計分析は、転写分析に対してマンホイットニーのU検定、ならびにフローサイトメトリーおよびELISAの結果に対してt検定を使用して、GraphPad Prism(8.0、La Jolla、CA)を用いて行った。遺伝子発現の階層的クラスタリングを、ClustVisウェブツールを使用して分析した。有意性の境界を、p<0.05に設定した。
【0255】
結果
C.burnetii感染は、BTN3AおよびBTN2Aの発現を調節する
C.burnetii感染がBTNの発現に影響を及ぼすかどうかを評価するために、健康なドナーからの単球を単離し、参照株NM1またはより毒性が強いと記載されているギアナ株に感染させた。C.burnetii NM1株感染の24時間後、BTN3A3ではなく、BTN3A1およびBTN3A2アイソフォームの両方の転写発現の増加が見出された。ギアナ株感染は、3つのアイソフォームを誘導した(図4A)。興味深いことに、C.burnetii NM1感染とこの株の熱不活化型との間に有意差が観察され(p=0.0374)、毒性因子がBTN3A1の発現に関与していることが示唆された。BTN3Aタンパク質発現の有意な増加が、C.burnetii NM1およびギアナ株に感染した単球において見出された(それぞれp=0.0021およびp=0.0096)(図4B)。最後に、BTN3Aの発現を、C.burnetii感染を有するQ熱患者由来のPBMCにおいて、BTN3Aの活性または持続形態で評価した。BTN3Aのタンパク質発現は、健康なドナーと比較して、Q熱を有する患者において有意に高く(p=0.0185)、疾患形態に従って同様の発現を有した(図4C)。
【0256】
BTN2AはVγ9Vδ2 T細胞の活性化に関与しているので、本発明者らはまた、C.burnetii感染がBTN2Aの発現に影響を及ぼすかどうかを調べた。感染の24時間後、両アイソフォーム(2A1および2A2)のBTN2A転写発現は、非感染細胞と比較して、C.burnetii NM1およびギアナ感染後に有意に増加し(2A1、それぞれp=0.0170およびp=0.0021;ならびに2A2、それぞれp=0.0054およびp=0.0463)、熱不活化型との比較では有意な調節はなかった(図4D)。BTN2Aのタンパク質発現に関して、C.burnetiiに感染した単球では、非感染細胞と比較して、有意な増加(NM1株、p=0.0160、およびギアナ株、p=0.0018)が観察された(図4E)。BTN3Aと同様に、Q熱患者由来のPBMCは、疾患の臨床形態による調節なしで、健康なドナーと比較して、有意に高いBTN2Aの発現を示した(p=0.0125)(図4F)。
【0257】
全体として、C.burnetii感染は、インビトロ感染後の宿主、ならびに感染患者由来のサンプル中のBTN3AおよびBTN2Aの発現の増加をもたらす。
【0258】
C.burnetii感染におけるBTN3AおよびBTN2Aの関与
次に、本発明者らは、BTNがC.burnetiiの取込みまたは複製に関与し得るかどうかを調べた。この目的のために、本発明者らは、THP-1細胞株において3つのBTN3A遺伝子または2つのBTN2A遺伝子のCRISPR-Cas9ノックアウトを行った。細胞に、BTN2A1およびBTN2A2(BTN2AKO)またはBTN3A1、BTN3A2およびBTN3A3(BTN3AKO)アイソフォームのいずれかを標的とするガイド、または無関係のCRISPRガイド(モック)を形質導入した。BTN3A-またはBTN2Aで無効化した(KO)細胞をC.burnetii NM1に感染させ、細菌量をqRT-PCRによって評価した。BTN3AKOまたはBTN2AKOとモック細胞(図5A)との間の細菌取込み(図5A)または複製(図5B)に差異は観察されず、BTN3AおよびBTN2Aが、C.burnetiiの細胞感染のプロセスに直接関与しないことを示唆した。
【0259】
C.burnetii感染に対する炎症応答におけるBTN3AおよびBTN2Aの関与
次いで、本発明者らは、C.burnetii感染後の宿主免疫応答におけるBTNの関与を調べた。図3で観察されるように、C.burnetii感染は、THP-1細胞における炎症促進性および抗炎症性遺伝子の両方の調節をもたらす。C.burnetiiに感染した場合、階層的クラスタリングは、細胞型に依存するクラスタリングを明らかにした。BTN3AKOおよびBTN2KO細胞は、モック細胞から離れてクラスタリングされた(図6A)。BTN3AKOおよびBTN2KO細胞は、C.burnetii感染後に炎症応答の抑制を示した。実際、炎症性遺伝子TNFおよびIL1Bの発現は、モック細胞と比較して、それぞれBTN3AKOおよびBTN2AKO細胞で3分の1および2分の1に有意に減少した(図6B)。さらに、減少した免疫調節応答は、BTN3AKO細胞においてのみ、感染後に観察された。実際、IL10遺伝子の転写発現は、モック細胞と比較して、2分の1に有意に減少した(p=0.0435)(図6B)。タンパク質レベルに関して、BTN3AKOおよびBTN2AKO細胞は、モック細胞と比較して、C.burnetii感染後のTNF-a(それぞれ50%および30%)およびIL-1β(最大20%)放出に有意な減少を示した(図6C)。IL-10などの抗炎症性サイトカインのレベルに有意差は観察されなかった。
【0260】
まとめると、これらのデータにより、BTN3AおよびBTN2Aの両方がC.burnetii感染に対する炎症応答に関与することを報告した。炎症応答がBTN3AのみまたはBTN2Aのみの存在下で抑制されるという事実は、BTN3AおよびBTN2Aが独立して作用し得ることを示唆する。
【0261】
C.burnetii感染は、BTN3AおよびBTN2Aに依存的な様式で、Vγ9Vδ2細胞の活性化をもたらす
本発明者らは、C.burnetii感染後にBTNが単球において過剰発現されることを示したので、本発明者らは、このプロセスがVγ9Vδ2 T細胞活性化を増強し得ると仮定した。4時間の共培養後、単球のC.burnetii感染は、細菌:標的細胞の比に応じた用量応答で、CD107の原形質膜発現の増加によって示されるように、脱顆粒の増加(最大5倍)をもたらす(図7A)。次いで、本発明者らは、抗BTN3Aアンタゴニスト(クローン103.2)および抗BTN2Aアンタゴニスト(クローン7.48)を含む特異的アンタゴニスト抗体を使用して、C.burnetiiに感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞活性化がBTNに依存するかどうかを調べた。両方の抗体は、C.burnetii感染後のVγ9Vδ2 T細胞脱顆粒の抑止をもたらし、両方のBTNがC.burnetii感染時のVγ9Vδ T細胞活性化に関与することを示す(図7Bおよび図7C)。興味深いことに、抗体処理なしの健康なドナーと比較して、Q熱を有する患者由来のPBMCの共培養物において、Vγ9Vδ2 T細胞のより高い脱顆粒の傾向(10%対3%、p=0.173)が見出された。この脱顆粒はまた、抗BTN3A 103.2および抗BTN2A 7.48アンタゴニスト抗体の存在下で阻害された(図7Dおよび図7E)。まとめると、C.burnetii感染は、BTN3AおよびBTN2Aに依存的な様式で、Vγ9Vδ2 T細胞の活性化をもたらす。
【0262】
次に、本発明者らは、C.burnetiiに感染した細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞活性化が、BTN3A活性化抗体(クローン20.1)によって増強され得、pAg誘導性Vγ9Vδ2 T細胞活性化を模倣すると仮定した。図7Fおよび表8に示すように、本発明者らは、BTN3A活性化抗体が、4時間の共培養後、CD107の発現(図7F)およびC.burnetiiに感染した単球に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞傷害活性(図7G)の増加をもたらすことを観察した。同様の効果が、すべてのC.burnetii株に対して観察され、参照20.1抗体がより毒性の高い細菌に対してさえもVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導できることを示唆した。最後に、参照20.1抗体の使用はまた、C.burnetii患者および健康なドナー由来のPBMCからのVγ9Vδ2 T細胞の脱顆粒を増加させることができた(それぞれ平均24.13%および3.243%、p=0.0002、それぞれn=3)(図7H)。これらのデータは、BTN3A活性化抗体を用いてVγ9Vδ2 T細胞を標的化することが、Vγ9Vδ2 T細胞のエフェクター機能の活性化をもたらすことを示す。
【0263】
【表8】
【0264】
BTN3A 20.1活性化抗体は、Vγ9Vδ2 T細胞の抗菌活性を増加させる
参照BTN3A活性化20.1抗体はVγ9Vδ2 T細胞活性化を増加させるので、本発明者らは、参照BTN3A活性化20.1抗体がVγ9Vδ2 T細胞の抗菌活性をブーストすることができるのではないかと考えた。この目的のために、単球をC.burnetii NM1に24時間感染させ、次いで、20.1抗体(0、0.1、1または10μg/ml)の存在下で、Vγ9Vδ2 T細胞と4時間共培養し、細菌量をフローサイトメトリーおよびqPCRによって測定した。Vγ9Vδ2 T細胞の共インキュベーションは、感染した単球およびVγ9Vδ2 T細胞の共培養物におけるC.burnetti染色に関連するMFIの有意な減少(図8A)および感染した単球およびVγ9Vδ2 Tリンパ球の共培養物における5.10から6.10コピーへの減少(p=0.0021)(図8B)によって示されるように、C.burnetii量の有意な減少をもたらした。参照BTN3A活性化20.1抗体は、単球におけるC.burnetii量の用量依存的減少をもたらし、6.10から4.2.10コピーに達した(それぞれ0対10μg/ml、p=0.0501)(図8B)。全体として、参照BTN3A 20.1活性化抗体は、Coxiella burnetiiに感染した単球に対するVγ9Vδ2 Tリンパ球の抗菌活性を増加させる。
【0265】
参照BTN3A 20.1抗体は、Vγ9Vδ2 T細胞によるサイトカインおよび細胞傷害性分子の分泌を増加させる
BTN3A活性化抗体は細菌量の抑制を可能にするので、本発明者らは、このことが活性化Vγ9Vδ2 T細胞によって強く産生されるサイトカインおよび細胞傷害性分子の分泌に関連し得るかどうかを調べた。実際、Vγ9Vδ2 T細胞/C.burnetiiに感染した単球の共培養物の参照20.1抗体による処理は、TFN-α、IFN-γおよびGM-CSFの分泌を用量依存的な様式で増加させた(図9A、左パネル)。さらに、C.burnetiiギアナによる感染の場合、IFN-γ、TFN-αおよびGM-CSF分泌について0.1μg/mlおよび10μg/ml用量間に有意差が観察された(それぞれp=0.0260、p=0.0443およびp=0.0265)。細胞傷害性分子に関して、グランザイムBおよびパーフォリンの分泌は、C.burnetii NM1およびギナに感染した単球の場合、ならびにまた非感染単球の場合、10μg/mlの20.1抗体の存在下で有意に高かった(図9B、右パネル)。全体として、参照20.1抗体の存在は、活性化Vγ9Vδ2 T細胞によって両方とも産生されるサイトカインおよび細胞傷害性分子の分泌増加を可能にする(表9)。
【0266】
【表9】
【0267】
【表10】






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図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A
図8B
図9A
図9B
【配列表】
2024539893000001.xml
【国際調査報告】