(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】個人の眼の相対的周辺屈折を判定するためのシステム及び眼の画像を取り込むための光学装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/103 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A61B3/103
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523744
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022082200
(87)【国際公開番号】W WO2023089000
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・エルナンデス-カスタニェーダ
(72)【発明者】
【氏名】ジルダ・マラン
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・ドローブ
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・プルー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ブティノン
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316FY02
4C316FY10
(57)【要約】
個人の眼の画像を取り込むための光学装置であって、第1の測定チャネル及び第2の測定チャネルを含む光学装置。第1の測定チャネル(102-a)は、眼に向かって且つ第1の軸に沿って方向付けられた少なくとも1つの第1の照明ビームを生成することと、少なくとも1つの第1の照明ビームによって照射されたとき、眼の少なくとも1つの第1の画像を取り込むこととを行うように構成される。第2の測定チャネルは、眼に向かって且つ第1の軸から少なくとも5°、例えば少なくとも10°、好ましくは少なくとも20°だけ離された第2の軸に沿って方向付けられた少なくとも1つの第2の照明ビームを生成することと、少なくとも1つの第2の照明ビームによって照射されたとき、眼の少なくとも1つの第2の画像を取り込むこととを行うように構成される。第1の測定チャネル(102-a)及び第2の測定チャネル(102-b)は、一緒に同期される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の眼の画像を取り込むための光学装置(102)であって、第1の測定チャネル(102-a)及び第2の測定チャネル(102-b)を含み、
前記第1の測定チャネル(102-a)は、
- 前記眼に向かって且つ第1の軸に沿って方向付けられた少なくとも1つの第1の照明ビームを生成することと、
- 前記少なくとも1つの第1の照明ビームによって照射されたとき、前記眼の少なくとも1つの第1の画像を取り込むことと、
を行うように構成され、
前記第2の測定チャネル(102-b)は、
- 前記眼に向かって且つ前記第1の軸から少なくとも5°、例えば少なくとも10°、好ましくは少なくとも20°だけ離された第2の軸に沿って方向付けられた少なくとも1つの第2の照明ビームを生成することと、
- 前記少なくとも1つの第2の照明ビームによって照射されたとき、前記眼の少なくとも1つの第2の画像を取り込むことと、
を行うように構成され、
前記第1の測定チャネル(102-a)及び前記第2の測定チャネル(102-b)は、一緒に同期される、光学装置(102)。
【請求項2】
前記第1の測定チャネル(102-a)は、第1のカメラを含み、及び前記第2の測定チャネル(102-b)は、第2のカメラを含む、請求項1に記載の光学装置(102)。
【請求項3】
前記第1のカメラ及び/又は前記第2のカメラは、照射ビームの反射の強度分布を判定するようにも構成される、請求項2に記載の光学装置(102)。
【請求項4】
前記第1の測定チャネル(102-a)は、第1の複数の第1の光源、例えば第1のLEDを含み、前記第2の測定チャネルは、第2の複数の第2の光源、例えば第2のLEDを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学装置(102)。
【請求項5】
前記第1の光源の1つ及び次いで前記第2の光源の1つを順次発光させるか、又は前記第1の光源の少なくとも2つ、例えば全部及び次いで前記第2の光源の少なくとも2つ、例えば全部を順次発光させるように構成される、請求項4に記載の光学装置(102)。
【請求項6】
前記第1の測定チャネル(102-a)及び前記第2の測定チャネル(102-b)は、同じモジュールに配置され、及び前記光学装置(102)は、ミラーを含み、前記ミラー及び前記同じ単一のモジュールは、前記第1の照明ビーム及び前記第2の照明ビームを生成するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学装置(102)。
【請求項7】
前記第1の照明ビームを反射し、且つ前記第2の照明ビームが通過することを可能にするように構成されたホットミラーも含む、請求項6に記載の光学装置。
【請求項8】
前記第1の照明ビームは、第1の光波長を有し、及び前記第2の照明ビームは、前記第1の光波長と異なる第2の光波長を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記第1の光波長は、800nm~899nmに含まれ、及び前記第2の光波長は、901nm~1000nmに含まれる、請求項8に記載の光学装置。
【請求項10】
個人の眼の相対的周辺屈折を判定するためのシステム(101)であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学装置(102)と、メモリ(103-a)及びプロセッサ(103-b)を含む計算モジュール(103)とを含み、前記プロセッサ(103-b)は、
- 前記少なくとも1つの第1の画像に少なくとも基づいて、前記眼の第1の光屈折を測定するステップと、
- 前記少なくとも1つの第2の画像に少なくとも基づいて、前記眼の第2の光屈折を測定するステップと、
- 前記第1の光屈折及び前記第2の光屈折に基づいて、前記相対的周辺屈折を判定するステップと、
を実行するように構成される、システム(101)。
【請求項11】
モバイル装置であり、及び前記光学装置(102)は、前記モバイル装置の筐体に取り外し可能に固定されるように構成され、且つ前記計算モジュール(103)は、前記モバイル装置に組み込まれる、請求項10に記載のシステム(101)。
【請求項12】
前記光学装置(102)は、自動屈折計又は収差計であり、及び前記計算モジュール(103)は、前記自動屈折計又は前記収差計に連結されたコンピュータである、請求項10に記載のシステム(101)。
【請求項13】
個人の眼の相対的周辺屈折を判定する方法であって、
- 前記眼の画像を取り込むための光学装置(102)の第1の測定チャネル(102-a)を使用して、前記眼の少なくとも1つの第1の画像を取り込むステップ、
- 前記光学装置(102)の第2の測定チャネル(102-b)を使用して、前記眼の少なくとも1つの第2の画像を取り込むステップと、
- 前記少なくとも1つの第1の画像に少なくとも基づいて、前記眼の第1の光屈折を測定するステップと、
- 前記少なくとも1つの第2の画像に少なくとも基づいて、前記眼の第2の光屈折を測定するステップと、
- 前記第1の光屈折及び前記第2の光屈折に基づいて、前記相対的周辺屈折を判定するステップと、
を含み、前記第1の画像を取り込む前記ステップ及び前記第2の画像を取り込む前記ステップは、同期される、方法。
【請求項14】
前記第1の画像を取り込む前記ステップ及び前記第2の画像を取り込む前記ステップは、
- 前記第1の測定チャネル(102-a)の複数の第1の光源の1つを使用する、前記眼の第1の照明ステップと、
- 前記第1の照明ステップが終了すると、前記第2の測定チャネル(102-b)の複数の第2の光源の1つを使用する、前記眼の第2の照明ステップと、
- 前記第1の照明ステップ及び前記第2の照明ステップを繰り返すステップと、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の画像を取り込む前記ステップ及び前記第2の画像を取り込む前記ステップは、
- 前記第1の測定チャネル(102-a)の複数の第1の光源の少なくとも2つ、例えば全部を使用する、前記眼の第1の照明ステップと、
- 前記第1の照明ステップが終了すると、前記第2の測定チャネル(102-b)の複数の第2の光源の少なくとも2つ、例えば全部を使用する、前記眼の第2の照明ステップと、
を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の様々な態様は、概して、個人の眼の画像を取り込むための装置及び個人の眼の相対的周辺屈折を判定するためのシステムに関する。個人は、対象、患者又は使用者とも呼ばれ得る。
【背景技術】
【0002】
本明細書は、近視進行の初期段階のスクリーニング又は近視を抑制するように設計されたレンズのカスタマイズに役立ち得る周辺屈折測定に関する。周辺屈折測定は、周辺視覚を向上させるメガネレンズの個人化も可能にし、これは、特にスポーツ用眼鏡レンズにとって重要である。
【0003】
このスクリーニング又はカスタマイズを実現するために、本開示は、光屈折装置の使用を提案する。
【0004】
光屈折装置の基本機能は、光刺激に対する眼球反応の収集及び解析である。外部光源からの光は、瞳孔を通して眼球に入り、集光されて網膜上に小さい照射スポットを生成する。この網膜スポットからの光の一部は、眼球の異なる層との相互作用後に瞳孔を通して眼球の外に戻る。瞳孔から出る光のパターンは、眼の光学系及び光屈折装置のカメラの光学機械特性によって判定される。このパターンは、対象の屈折異常(眼の結像誤差)によって支配される。
【0005】
屈折測定を実現する場合、光刺激は、個人の視線軸に沿って送られるが、視線軸と平行でない軸に沿って光刺激を送ることにより、測定を実現することも興味深いであろう。第2の種類の測定は、軸外と呼ばれ、眼の周辺屈折又は相対的周辺屈折を判定可能にする。
【0006】
眼の周辺屈折によって眼の屈折誤差の判定精度を向上させることができ、従って相対的周辺屈折を判定する解決策が必要とされている。
【0007】
周辺屈折は、軸外屈折である一方、相対的周辺屈折は、周辺屈折-中心屈折、すなわち網膜の中心窩から軸外点までの屈折の変化である。更に、これは、網膜上の他の2つの位置の一方を基準点として考える限り、2つの他の位置間の差であり得る。これは、例えば、偏心固視の場合にも機能し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下では、本開示の様々な態様の基本的な理解を提供するために、簡素化された概要を示す。本概要は、全ての想定される態様の網羅的な概要ではなく、全ての態様の主な又は必須の要素を識別することも、いずれか又は全ての態様の範囲を画定することも意図しない。唯一の目的は、後に提示する詳細な説明の導入部として、1つ以上の態様のいくつかの概念を簡素化した形式で提示することである。
【0009】
本開示の一態様は、個人の眼の画像を取り込むための光学装置である。本光学装置は、第1の測定チャネル及び第2の測定チャネルを含む。第1の測定チャネルは、眼に向かって且つ第1の軸に沿って方向付けられた少なくとも1つの第1の照明ビームを生成することと、少なくとも1つの第1の照明ビームによって照射されたとき、眼の少なくとも1つの第1の画像を取り込むこととを行うように構成される。第2の測定チャネルは、眼に向かって且つ第1の軸から少なくとも5°、例えば少なくとも10°、好ましくは少なくとも20°だけ離された第2の軸に沿って方向付けられた少なくとも1つの第2の照明ビームを生成することと、少なくとも1つの第2の照明ビームによって照射されたとき、眼の少なくとも1つの第2の画像を取り込むこととを行うように構成される。第1の測定チャネル及び第2の測定チャネルは、一緒に同期される。
【0010】
本開示の別の態様は、個人の眼の相対的周辺屈折を判定するためのシステムである。本システムは、光学装置と、メモリ及びプロセッサ含む計算モジュールとを含み、プロセッサは、少なくとも1つの第1の画像に少なくとも基づいて、眼の第1の光屈折を測定するステップと、少なくとも1つの第2の画像に少なくとも基づいて、眼の第2の光屈折を測定するステップと、第1の光屈折及び第2の光屈折に基づいて、相対的周辺屈折を判定するステップとを実行するように構成される。
【0011】
本開示の別の態様は、個人の眼の相対的周辺屈折を判定する方法である。本方法は、眼の画像を取り込むための光学装置の第1の測定チャネルを使用して、眼の少なくとも1つの第1の画像を取り込むステップ、光学装置の第2の測定チャネルを使用して、眼の少なくとも1つの第2の画像を取り込むステップ、少なくとも1つの第1の画像に少なくとも基づいて、眼の第1の光屈折を測定するステップ、少なくとも1つの第2の画像に少なくとも基づいて、眼の第2の光屈折を測定するステップ、第1の光屈折及び第2の光屈折に基づいて、相対的周辺屈折を判定するステップを含む。第1の画像を取り込むステップ及び第2の画像を取り込むステップは、同期される。
【0012】
本開示では、オープンフィールドシステム及び光学装置が提案される。本システム及び光学装置は、位置決めに大きい制約がなく、更に合理的なコストを有する。
【0013】
本明細書で提供する説明及びその利点のより詳細な理解のために、同様の参照番号が同様の部分を表す添付図面及び詳細な説明と合わせて以下の簡単な説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図6】両方の測定チャネルが単一のモジュールに配置された一実施形態を示す。
【
図7】第1の測定チャネルの1つのLED及び第2の測定チャネルの1つのLEDから同時に発せられた光ビームを示す。
【
図8】網膜から測定チャネルに伝播する光ビームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面に関連して以下に開示する詳細な説明は、様々な可能な実施形態を説明することを意図され、本明細書に記載する概念が実施され得る唯一の実施形態を表すものではない。詳細な説明は、様々な概念の十分な理解を提供することを目的として特定の詳細を含む。しかし、これらの概念は、これらの特定の詳細なしに実施され得ることが当業者に明らかであろう。いくつかの場合、このような概念が不明瞭にならないように公知の構造及び要素をブロック図の形式で示す。
【0016】
図1に示す1つの実施形態は、個人の眼の相対的周辺屈折を判定するためのシステム101に関する。
【0017】
システム101は、眼の画像を取り込むための光学装置102及び計算モジュール103を含む。
図2に示すように、計算モジュール103は、メモリ103-aと、メモリ103-aに結合されたプロセッサ103-bとを含む。
【0018】
一実施形態では、システム101は、モバイル装置であり、及び光学装置102は、モバイル装置の筐体に取り外し可能に固定されるように構成され、且つ計算モジュール103は、モバイル装置に組み込まれる。
【0019】
一実施形態では、光学装置102は、自動屈折計又は収差計であり、及び計算モジュールは、自動屈折計又は収差計に連結されたコンピュータである。
【0020】
プロセッサ103-bの例は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、グラフィック処理装置(GPU)、中央処理装置(CPU)、アプリケーションプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、縮小命令セットコンピューティング(RISC)プロセッサ、システムオンチップ(SoC)、ベースバンドプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブル論理素子(PLD)、状態機械、ゲート論理、離散ハードウェア回路及び本開示全体を通して説明する様々な機能を実行するように構成された他の適当なハードウェアを含む。
【0021】
メモリ103-aは、コンピュータ可読媒体である。非限定な一例として、このようなコンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、他の磁気記憶装置、上述の種類のコンピュータ可読媒体の組み合わせ又はコンピュータがアクセス可能な命令若しくはデータ構造の形式でコンピュータ実行可能コードを保存するために利用できる他の任意の媒体を含み得る。
【0022】
図3に示すように、光学装置102は、第1の測定チャネル102-a及び第2の測定チャネル102-bを含む。別の実施形態では、光学装置102は、3つ以上の測定チャネルを含む。
【0023】
第1の測定チャネル102-aは、
- 眼に向かって且つ第1の軸に沿って方向付けられた第1の照明ビームを生成することと、
- 第1の照明ビームによって照射されたとき、眼の第1の画像を取り込むことと
を行うように構成される。
【0024】
第2の測定チャネル102-bは、
- 眼に向かって且つ第1の軸から少なくとも10°だけ離された第2の軸に沿って方向付けられた第2の照明ビームを生成することと、
- 第2の照明ビームによって照射されたとき、眼の第2の画像を取り込むことと
を行うように構成される。
【0025】
第1の測定チャネル102-aは、軸上屈折に使用され、及び第2の測定チャネル102-bは、軸外屈折に使用される。
【0026】
第1の軸は、個人の視線軸であり得る。
【0027】
第1の測定チャネル102-a及び第2の測定チャネル102-bは、(有線又は無線で)同期され、同じ調節状態で2つの屈折を同時に測定して、2つの位置間の正確な屈折、例えば等価球面度数の変化を取得する。
【0028】
メモリ103-aは、プロセッサ103-bによって実行されると、計算モジュール103-bに、
- 第1の画像に基づいて、眼の第1の光屈折を測定するステップ、
- 第2の画像に基づいて、眼の第2の光屈折を測定するステップ、
- 第1の光屈折及び第2の光屈折に基づいて、相対的周辺屈折を判定するステップ
を実行させる命令を含むコンピュータプログラムを記憶するように構成される。
【0029】
システム101により、高速且つ快適な検査で相対的周辺屈折が判定可能になり、特に子供のために適合される。システム101は、特にシステム101がモバイル装置である場合にオープンフィールド解決策であり得、位置決めに関して制約が少ない。
【0030】
システム101が自動屈折計である場合、システム101は、軸上及び軸外屈折測定のために設計される。
【0031】
システム101により、軸上測定及び軸外測定を行う間の調節が管理可能になる。
【0032】
本システムにより、網膜中央部の屈折及び網膜周辺部の屈折又は網膜の他の任意の2つの部分間の屈折の差も判定可能になる。
【0033】
図4は、光学装置102の一実施形態を示し、標準屈折を得るために第1の測定チャネル102-aが軸上にあり、第1の測定チャネル102-aは、注視点に整列される(直接注視点であり得る)。第2の測定チャネル102-bは、第1の軸と角度をなす位置、典型的には25°又は30°且つ眼からほぼ等距離に配置される。この角度は、5°~40°であり得る。
図4では、第2の測定チャネル102-bは、水平方向にずれているが、別の方向(例えば、垂直方向)であり得る。第2の測定チャネル102-bは、この構成によって軸外(又は周辺)屈折を測定し得る。
【0034】
図5-a及び
図5-bは、光源の局所化の典型的な構成を示す。測定チャネルは、中央の近赤外線(NIR)カメラ及びカメラ開口部の端から4つの距離に配置された12個の光源で構成される。これらの光源は、異なる経線をカバーして異なる経線上の視力を測定し、次いで球面パラメータ、円柱パラメータ、軸又はSE、J0、J45及び/又はより高次の収差を用いて標準屈折を計算する位置にも配置される。パラメータSE、J0、J45は、Thibos LN、Wheeler W、Horner,D.が1997年に発表した論文「Power Vectors:An Application of Fourier Analysis to the Description and Statistical Analysis of Refractive Error.Optometry and Vision Science」(journal Optom Vis Sci.1997 Jun;74(6):367-75)に記載されている。
【0035】
図5-a及び
図5-bでは、光源は、4つのリングr
1~r
4に配置される。同じリングの光源は、カメラの開口部の境界から等距離に配置される。この距離は、偏心としても知られる。
図5-a及び
図5-bでは、各リングは、光源を含むが、リングr
3及びr
4の光源のみが示されている。リングr
3は、3つの光源r
3,1、r
3,2及びr
3,3を含む。リングr
4は、3つの光源r
4,1、r
4,2及びr
4,3を含む。要するに、r
i,jは、リングiの光源jを指す。
【0036】
従って、本実施形態では、第1の測定チャネル102-aは、第1のカメラを含み、及び第2の測定チャネル102-bは、第2のカメラを含む。第1のカメラ及び/又は第2のカメラは、照射ビームの反射の強度分布を判定するようにも構成され得る。
【0037】
本実施形態では、第1の測定チャネル102-aは、複数の第1の光源、例えば第1のLEDを含み、第2の測定チャネル102-bは、第2の複数の第2の光源、例えば第2のLEDを含む。第1の測定チャネル102-aは、8~14個の光源、好ましくは12個の光源を含む。第2の測定チャネル102-bは、8~14個の光源、好ましくは12個の光源を含む。
【0038】
第1の測定チャネル102-a及び第2の測定チャネル102-bは、同期される。先の実施形態では、機器は、第1の測定チャネル102-aの第1の光源の1つ及び次いで第2の測定チャネル102-bの第2の光源の1つを順次発光させるか、又は第1の光源の少なくとも2つ、例えば全部及び次いで第2の光源の少なくとも2つ、例えば全部を順次発光させるように構成される。
【0039】
この同期化により、測定時間中に調節が変化することが避けられる。実際に、周辺屈折の最も興味深いパラメータの1つは、軸外と軸上との間の等価球面度数の変動であり、測定の精度は、調節の変動によって直接影響を受け得る。システム101により、この誤差を回避するために同時(又は非常に迅速な)測定を可能にする。更に、両方の測定値間の差に注目しているため、調節が周辺屈折の僅かな変化を生じさせる場合でも、通常の屈折と同様に、測定のために調節を制御する(又は個人が見ている距離を知る)ことは、必須ではない。
【0040】
12個の光源を用いる全測定時間は、通常、250ミリ秒(光源の1つを用いて画像を取り込むのに~20ミリ秒)であるため、全シーケンス(軸上及び軸外)は、500ミリ秒を要する。調節の微小な揺らぎ(通常、0.1~4Hz、振幅1ディオプター未満)が実際に処理に影響を及ぼし得る。本開示の実施形態を用いることで、2つの測定チャネル間の同期を最適化して、調節の微小な揺らぎの影響を軽減することができる。
【0041】
一実施形態では、2つの測定を迅速に切り替える。システム101は、2つの測定チャネル102-a及び102-bの通信及び同期を可能にするように構成される。システム101は、第1の測定チャネル102-aと第2の測定チャネル102-bとの測定を迅速に切り替えるように構成される。例えば、第1の測定チャネル102-aのLED1、第2の測定チャネル102-bのLED1、第1の測定チャネル102-aのLED2、第2の測定チャネル102-bのLED2等である。このような測定の切り替えにより、軸外(第2の測定チャネル102-b経由)と軸上(第1の測定チャネル102-a経由)との間のタイミングを同じ測定に比べて40ミリ秒以上短縮することができる。同じ測定とは、カメラに対して同じ光源からの測定を意味する。
【0042】
一実施形態では、以下のステップを実現する。
- 第1の測定チャネル102-aを介した完全測定。完全測定とは、第1の測定チャネル102-aの全ての第1の光源を連続的に用いる測定を意味する。
- 屈折に基づいて最適なリングriを選択する。
- 代替的な高速測定:第1の測定チャネル102-aのリングriの第1のLEDri,1を用いる測定に続いて、第2の測定チャネル102-bのリングriの第1のLEDri,1を用いる測定に続いて、第1の測定チャネル102-aのリングriの第2のLEDri,2を用いる測定を行う。
- 又は第1の測定チャネル102-aLEDのリングriの全てのLEDri,1、ri,2、ri,3を連続的に用いる測定に続いて、第2の測定チャネル102-bLEDのリングriの全てのLEDri,1、ri,2、ri,3を連続的に用いる測定を行う。
【0043】
一実施形態では、以下のステップを実現する。
- 調節制御(軸上)による軸外測定
- 軸上完全測定
- 調節を監視するモジュール1の最適なLEDの選択
- 軸上で調節を測定しながら軸外での測定
【0044】
一実施形態では、第1の測定チャネル102-aの第1の照明ビームは、第1の光波長を有し、及び第2の測定チャネル102-bの第2の照明ビームは、第1の光波長と異なる第2の光波長を有する。
【0045】
例えば、第1の光波長は、800nm~899nmに含まれ、及び第2の光波長は、901nm~1000nmに含まれる。さもなければ、光波長の一方は、赤色光であり得、及び他方は、緑色光であり得る。
【0046】
より正確には、第1の測定チャネル102-aは、860nmで第1の光ビームを発光するLEDを含み得、及び第1の測定チャネル102-aのカメラは、限定された帯域幅(±30nm)で光ビームをフィルタリングするレンズを含み得る。(軸外測定のための)第2の測定チャネル102-bは、900nmよりも長い第2の光波長を有するLEDを含み得る。従って、第2の測定チャネル102-bは、第1の測定チャネル102-aと干渉しないため、両方の測定チャネルの測定を同時に実現することが可能である。
【0047】
有利には、システム101は、波長に起因する度数のずれを補正する。このずれは、可視域での屈折(860nmにおける約-0.9D)を計算するために既に860nmで補正されている。Larry N Thibos、Ming Ye,Xiaoxiao Zhang及びArthur Bradleyの論文「The chromatic eye:a new reduced-eye model of ocular chromatic aberration in humans.」(AppliedOptics 31,19(1992),3594-3600に発表)は、測定された波長からの550nm(中心可視)における屈折を得るための補正を特に
図6に記載している。
【0048】
図6に記載する一実施形態では、両方の測定チャネルは、2つの異なる波長に対応する少なくとも2つの取得チャネルをセンサが有する単一のモジュールである。光学装置102は、第1の光波長に対して透過的であり、且つ第2の光波長に対して反射的である1つのホットミラー601を含む。光学装置102は、第1の光波長及び第2の光波長に対して反射的な1つの通常のミラーも含む。これらの2つのミラーにより、第1の照明ビーム及び第2の照明ビームの生成及び受光が可能になる。本実施形態は、同期を簡素化するという利点を有する。
【0049】
一実施形態では、2つの測定チャネルは、同時に同じ波長を有する光ビームを生成する。2つの測定チャネルは、同期され、第1の光ビームの方向軸及び第2の光ビームの方向軸が20°超だけ離されている場合、それらは、互いに干渉しない。
【0050】
図7は、第1の測定チャネル102-aの1つのLED及び第2の測定チャネル102-bの1つのLEDから同時に発せられた光ビームを示す。ここで、光は、「照射経路」を伝播する。測定距離(眼と光学装置102との間の距離)をdとし、2つの測定チャネル間の角度をθとする。極めて単純な眼モデルにより、水晶体が過度に収束する(近視眼)長さd
e,eの眼を考える。ここでの眼は、水晶体と網膜との間の空気から作られる。1つのLEDから発せられた光は、水晶体の後方の距離d’に集光され、網膜上に直径Φ
oのスポットを形成する。目的は、各測定チャネルに関連付けられた両方のスポットが重ならないことを確認することである。
【0051】
個人が正しく見るために必要な球面をSとする。Φ
oは、|S|及び目の瞳孔径Φ
pと共に増大することが分かる。幾何学的な近軸光学系に基づき、以下の式となる。
【数1】
【0052】
Pe,eは、正視眼のジオプトリ度数に対応し、Peは、近視眼のジオプトリ度数であり、Pe=Pe,e-Sである。
【0053】
S=-10δ,Φp=8mm,Pe,e=60δ,d=1mとして、Φo=1.2mmが得られる。この値をθ=20°でde,e×tanθ=6.1mmと比較する。従って、この極端な場合でもΦo<de,e×tanθであるため、2つのスポットが重ならないことが分かる。
【0054】
図8は、網膜から測定チャネルに伝播する光ビームを示す。ここでの光は、「観察経路」を伝播する。簡潔のため、網膜上の第1のスポットから発せられた光ビームのみを考慮する。これらの光ビームは、モジュールの平面内でLEDを中心とする直径Φ
zの束を形成する。個人の眼のモジュールによって観察される輝度パターンは、この束とカメラの開口部との交差の結果である。第1の測定チャネル102-aから発せられたビームが第2の測定チャネル102-bに入射する場合、個人の眼の輝度パターンが影響を受けるため、光屈折の測定結果を予想できる。
【0055】
従って、目的は、Φ
z/2がd×tanθよりも小さいか否かを確認することである。第1の測定チャネル102-aから発せられて、第2の測定チャネル102-bに到達する可能性がある光線を考えるが、推論に際して測定チャネルを反転させ得る。Φ
1を、眼の瞳孔の中心にあるピンホールを通過してモジュール面に到達する網膜上のスポットサイズの像の大きさとし、Φ
2を、網膜上の点のモジュール面内の像の大きさとする。Φ
z=Φ
1+Φ
2と考えるのが合理的である。瞳孔の距離d
R=-1/Sにある遠点(PR)を考えて、以下の式を示し得る。
【数2】
【0056】
Φ1=Φ2、S=-10δ、Φp=8mm、Pe,e=60δ、d=1mと考えて、Φz=144mmとなる。この値をθ=20°でのd×tanθ=364mmと比較する。従って、この極端な場合でもΦz/2<<d×tanθとなるため、一方のモジュールから発せられた光が他方のモジュールに影響を与えないことが分かる。
【0057】
図9は、光学装置102の一実施形態を示す。簡潔のため、この図では、第1の測定チャネル102-aのみが示されている。他の実施形態と同様に、第1の測定チャネル102-aは、第1の光源901-a及びカメラ901-bを含む。本実施形態では、第1の測定チャネル102-aは、ホットミラー901-cを含む。ホットミラー901-cは、赤外(IR)光を反射して可視光を透過させるビームスプリッタである。本実施形態では、第1の光源901-aは、赤外光を発光した。この光は、ホットミラー901-cによって反射されて眼901-dを照射する。眼901-dの写真がカメラ901-bによって撮影され、ホットミラー901-cは、可視光を透過させる。測定中、個人は、目標901-eを凝視している。これが可能であるのは、可視光がホットミラー901-cを通過し得るためである。本実施形態では、第1の光源901-a及びカメラ901-bは、同じ位置に配置される。本実施形態では、ホットミラー901-cにより、目標901-eを眼から異なる距離に配置できるため、眼の調節をより良好に制御することができる。
【0058】
本実施形態は、2つの主な利点を有する:測定チャネルがよりコンパクトになり、機器調節を低減する遠方注視点が可能になる。これは、極めて精密な測定が必要であるか、又は遠方視及び近方視で周辺屈折を測定する必要がある場合に興味深い。本実施形態により、固視目標の距離を簡単に変更することができる。
【国際調査報告】