(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】回転可能コンポーネント用の潤滑及び冷却システム
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20241024BHJP
【FI】
F16H57/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523787
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 US2022077668
(87)【国際公開番号】W WO2023076798
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515301041
【氏名又は名称】アティエヴァ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アボッシュ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ドララ、エマド
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、バーナビー ジェームス ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】マフムーディ、モハマド
(72)【発明者】
【氏名】スレイメノフ、アザト
(72)【発明者】
【氏名】テベ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パルファイ、バラズス
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ジアジュン
(72)【発明者】
【氏名】ビスカップ、リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー、ジェレミー
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AB13
3J063AC11
3J063BA11
3J063CA05
3J063XD03
3J063XD28
3J063XD33
3J063XD43
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE14
3J063XE22
(57)【要約】
回転可能シャフトアセンブリ用の流体流動システムは、回転可能シャフト内に設置された第1の流体流動デバイス、及び、第1の流体流動デバイスから軸方向に離間して回転可能シャフト内に設置された第2の流体流動デバイスを備える。第1の流体流動デバイスは、回転可能シャフト内に油を保持する半径方向寸法を有する壁部分を有する。第2の流体流動デバイスは、半径方向シャフトからの油の排出を促進する半径方向寸法を有する壁部分を有する。第1及び第2の流体流動デバイスはそれぞれ、そのそれぞれの壁部分上に複数のバッフルを有する。複数のバッフルは、第1及び第2の流体流動デバイスが回転可能シャフトと共に回転するのに伴い、第1の流体流動デバイスから第2の流体流動デバイスに向かって軸方向における流体の流れを駆動する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能シャフトアセンブリ用の流体流動システムであって、
回転可能シャフトの第1の部分内に結合されるように構成された第1の流体流動デバイス、前記第1の流体流動デバイスは、前記回転可能シャフト内に油を保持し、前記回転可能シャフト内の軸方向に前記油を駆動するように構成された少なくとも1つの物理的特徴を有する;及び
前記回転可能シャフトの第2の部分内に結合され、前記第1の流体流動デバイスから軸方向に離間するように構成された第2の流体流動デバイス、前記第2の流体流動デバイスは、前記第1の流体流動デバイスから前記第2の流体流動デバイスに向かって、前記回転可能シャフトを通じて軸方向に前記油を引き込み、少なくとも1つの排出経路に沿って前記回転可能シャフトから前記油を排出するように構成された少なくとも1つの物理的特徴を有する
を備える、流体流動システム。
【請求項2】
前記第1の流体流動デバイスの前記少なくとも1つの物理的特徴は:
前記回転可能シャフトに前記油を導入するための、かつ、前記回転可能シャフト内に前記油を保持するための入口を画定する第1の物理的特徴;及び
前記回転可能シャフト内の軸方向に前記油を駆動するように構成された第2の物理的特徴;
を含み、
前記第2の流体流動デバイスの前記少なくとも1つの物理的特徴は:
前記第1の流体流動デバイスから前記第2の流体流動デバイスに向かって、前記回転可能シャフトを通じて軸方向に前記油を引き込むように構成された第1の物理的特徴;及び
前記少なくとも1つの排出経路に沿って前記回転可能シャフトから前記油を排出するように構成された第2の物理的特徴
を含む
請求項1に記載の流体流動システム。
【請求項3】
前記第1の流体流動デバイスは:
その中心部分において開口部が形成された壁部分、前記壁部分は前記第1の流体流動デバイスの前記第1の物理的特徴を画定する;
前記壁部分の周囲部分から延在するリム部分、前記リム部分は、前記回転可能シャフトの嵌合面に結合されるように構成された嵌合面を画定し、前記第1の流体流動デバイスが前記回転可能シャフトと共に回転するようになっている;及び
前記リム部分及び前記壁部分の対応する部分に沿って円周状に配置された複数のバッフル、前記複数のバッフルは、前記第1の流体流動デバイスの前記第2の物理的特徴を画定する
を有する、請求項2に記載の流体流動システム。
【請求項4】
前記壁部分の前記開口部は、前記回転可能シャフトに油を導入するための前記入口を画定し、前記壁部分の半径方向寸法は、前記回転可能シャフトからの油の逆流を抑制する、請求項3に記載の流体流動システム。
【請求項5】
前記第1の流体流動デバイスの前記複数のバッフルは、前記リム部分から前記開口部に向かって、前記壁部分に沿って半径方向内側に延在し、前記第1の流体流動デバイスの前記複数のバッフルは、前記回転可能シャフトの回転に応じて、前記第2の流体流動デバイスに向かって軸方向に前記油を駆動するように構成されている、請求項3に記載の流体流動システム。
【請求項6】
前記第2の流体流動デバイスは:
その中心部分において開口部が形成された壁部分;
前記壁部分の周囲部分から延在し、前記第2の流体流動デバイスが前記回転可能シャフトと共に回転するよう、前記回転可能シャフトの嵌合面に結合されるように構成された嵌合面を画定するリム部分;
前記リム部分及び前記壁部分の対応する部分に沿って円周状に配置された複数のバッフル、前記複数のバッフルは、前記第2の流体流動デバイスの前記第1の物理的特徴を画定する;及び
前記壁部分において形成された、前記開口部と流体連通する複数の流路、前記複数の流路は、前記第2の流体流動デバイスの前記第2の物理的特徴を画定する
を有する、請求項2に記載の流体流動システム。
【請求項7】
前記第2の流体流動デバイスの前記壁部分の半径方向寸法により、油が前記第2の流体流動デバイスの前記開口部を通じて前記軸方向に流れ、前記回転可能シャフトからの排出のために、隣接する軸受に至ることが可能になる、請求項6に記載の流体流動システム。
【請求項8】
前記第2の流体流動デバイスの前記複数のバッフルは、前記第2の流体流動デバイスの前記リム部分から前記第2の流体流動デバイスの前記開口部に向かって、前記第2の流体流動デバイスの前記壁部分に沿って半径方向内側に延在し、前記第2の流体流動デバイスの前記複数のバッフルは、前記回転可能シャフトの回転に応じて、前記第1の流体流動デバイスから前記軸方向に前記油を引き込むように構成されている、請求項7に記載の流体流動システム。
【請求項9】
前記第2の流体流動デバイスの前記複数の流路は、前記第2の流体流動デバイスの前記開口部を通じて前記軸方向に流れる前記油の一部を受容し、前記油の前記一部を、前記回転可能シャフトからの排出のために、前記回転可能シャフトの内側表面に導くように構成されている、請求項7に記載の流体流動システム。
【請求項10】
前記第1の流体流動デバイスは、第1の外側軸受及び第1の内側軸受の間に組み立てられた前記回転可能シャフト内に中間嵌めされるように構成され、前記第2の流体流動デバイスは、第2の内側軸受及び第2の外側軸受の間に組み立てられた前記回転可能シャフト内に中間嵌めされて、前記組み立てられた第1の外側軸受、第1の流体流動デバイス、及び第1の内側軸受から離間するように構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の流体流動システム。
【請求項11】
前記流体流動システムは、前記第1の流体流動デバイス及び前記第2の流体流動デバイスの間に形成される空間内の差動コンポーネントの冷却又は潤滑のうちの少なくとも一方のために、前記第1の流体流動デバイス及び前記第2の流体流動デバイスの間で前記油を循環させるように構成されている、請求項10に記載の流体流動システム。
【請求項12】
回転可能シャフトアセンブリの第1の部分内に結合された第1の流体流動デバイス、前記第1の流体流動デバイスは:
壁部分;
前記回転可能シャフトアセンブリへの冷却媒体の導入のために前記壁部分の中心部分において画定された入口、前記壁部分は、前記冷却媒体を前記回転可能シャフトアセンブリ内に保持するように構成されている;及び
前記壁部分の周囲部分に沿って延在するリム部分、前記リム部分は、前記回転可能シャフトアセンブリの外側シャフトの嵌合面に結合されるように構成された嵌合面を画定する
を有する;及び
前記回転可能シャフトアセンブリの第2の部分内に結合され、前記第1の流体流動デバイスから軸方向に離間した第2の流体流動デバイス、前記第2の流体流動デバイスは:
壁部分;
前記壁部分の中心部分において画定された開口部、前記開口部は、前記冷却媒体を、前記回転可能シャフトアセンブリからの排出のために、少なくとも1つの排出経路に誘導するように構成されている;及び
前記壁部分の周囲部分に沿って延在するリム部分、前記リム部分は、前記回転可能シャフトアセンブリの前記外側シャフトの嵌合面に結合されるように構成された嵌合面を画定する
を有する
を備える、流体流動システム。
【請求項13】
前記第1の流体流動デバイスの前記壁部分の半径方向寸法は、前記冷却媒体を前記回転可能シャフトアセンブリ内に保持するために、前記冷却媒体の逆流を抑制する、請求項12に記載の流体流動システム。
【請求項14】
前記第1の流体流動デバイスは、前記第1の流体流動デバイスの前記リム部分の一部及び前記壁部分の対応する部分に少なくとも1つのバッフルを有し、前記少なくとも1つのバッフルは、前記第2の流体流動デバイスに向かって、前記回転可能シャフトアセンブリを通じて前記冷却媒体を軸方向に駆動するように構成されている、請求項13に記載の流体流動システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのバッフルは、前記第1の流体流動デバイスの前記リム部分及び前記壁部分の対応する部分に沿って配置され、前記第1の流体流動デバイスの前記リム部分から前記開口部に向かって半径方向内側に延在する複数のバッフルを含み、前記複数のバッフルは、前記第2の流体流動デバイスに向かって、前記回転可能シャフトアセンブリを通じて軸方向に前記冷却媒体を駆動するように構成されている、請求項14に記載の流体流動システム。
【請求項16】
前記第2の流体流動デバイスの前記壁部分の半径方向寸法は、前記第1の流体流動デバイスの前記壁部分の半径方向寸法よりも小さく、前記第2の流体流動デバイスの前記壁部分における前記開口部は、第1の排出経路を通じて前記回転可能シャフトアセンブリから前記冷却媒体の第1の部分を排出するように構成されている、請求項12に記載の流体流動システム。
【請求項17】
前記第2の流体流動デバイスの前記リム部分において形成された少なくとも1つの流路を更に備え、前記少なくとも1つの流路は、第2の排出経路を通じて前記回転可能シャフトアセンブリから前記冷却媒体の第2の部分を排出するように構成されている、請求項16に記載の流体流動システム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの流路は、前記第2の流体流動デバイスの前記リム部分において形成された複数の半径方向流路を有し、前記複数の半径方向流路は、前記第2の排出経路を通じて前記回転可能シャフトアセンブリから前記冷却媒体の前記第2の部分を排出するように構成されている、請求項17に記載の流体流動システム。
【請求項19】
前記第1の排出経路は、前記外側シャフトの前記嵌合面に沿って前記冷却媒体の前記第1の部分を排出し、前記第2の排出経路は、隣接する軸受に前記冷却媒体の前記第2の部分を排出する、請求項18に記載の流体流動システム。
【請求項20】
前記第2の流体流動デバイスは、前記第2の流体流動デバイスの前記リム部分の一部及び前記壁部分の対応する部分に、前記第2の流体流動デバイスの前記リム部分から前記開口部に向かって半径方向内側に延在する少なくとも1つのバッフルを有し、前記少なくとも1つのバッフルは、前記第1の流体流動デバイスから前記第2の流体流動デバイスに向かって、前記回転可能シャフトアセンブリを通じて軸方向に前記冷却媒体を引き込むように構成されている、請求項12から19のいずれか一項に記載の流体流動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年10月27日に出願された「LUBRICATION AND COOLING SYSTEM FOR ROTATABLE COMPONENTS」と題する米国仮特許出願第63/263,150号に対する優先権を主張するものであり、その開示内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
これは潤滑及び冷却に関し、特に、電気車両のパワートレインコンポーネントの潤滑及び冷却に関する。
【背景技術】
【0003】
高性能電気車両は、周囲条件及び/又は運転条件及び/又は運転慣行にかかわらず、所望のレベルの性能及び信頼性を実現するために、効率的かつ効果的な潤滑及び冷却に依拠している。電気車両のパワートレインコンポーネントを冷却するための現在の技法の多くの有効性は、個々のコンポーネントに一貫して効果的に潤滑及び冷却を提供するには若干不十分である。これは、パワートレイン及び/又はドライブトレインの性能及び/又は信頼性の低下をもたらし得、ひいては電気車両の全体的な性能及び/又は信頼性を低下させ得る。
【発明の概要】
【0004】
一般的な一態様において、回転可能シャフトアセンブリ用の流体流動システムは、回転可能シャフトの第1の部分内に結合されるように構成された第1の流体流動デバイス、第1の流体流動デバイスは、回転可能シャフト内に油を保持し、回転可能シャフト内の軸方向に油を駆動するように構成された少なくとも1つの物理的特徴を有する;及び、回転可能シャフトの第2の部分内に結合し、第1の流体流動デバイスから軸方向に離間するように構成された第2の流体流動デバイス、第2の流体流動デバイスは、第1の流体流動デバイスから第2の流体流動デバイスに向かって、回転可能シャフトを通じて軸方向に油を引き込み、少なくとも1つの排出経路に沿って回転可能シャフトから油を排出するように構成された少なくとも1つの物理的特徴を有する、を備える。
【0005】
幾つかの実装形態において、第1の流体流動デバイスの少なくとも1つの物理的特徴は、回転可能シャフトに油を導入するための、かつ、回転可能シャフト内に油を保持するための入口を画定する第1の物理的特徴;及び、回転可能シャフト内の軸方向に油を駆動するように構成された第2の物理的特徴、を含む。幾つかの実装形態において、第2の流体流動デバイスの少なくとも1つの物理的特徴は、第1の流体流動デバイスから第2の流体流動デバイスに向かって、回転可能シャフトを通じて軸方向に油を引き込むように構成された第1の物理的特徴;及び、少なくとも1つの排出経路に沿って回転可能シャフトから油を排出するように構成された第2の物理的特徴、を含む。
【0006】
幾つかの実装形態において、第1の流体流動デバイスは、その中心部分において開口部が形成された壁部分、壁部分は第1の流体流動デバイスの第1の物理的特徴を画定する;壁部分の周囲部分から延在するリム部分、リム部分は、第1の流体流動デバイスが回転可能シャフトと共に回転するよう、回転可能シャフトの嵌合面に結合されるように構成された嵌合面を画定する;及び、リム部分及び壁部分の対応する部分に沿って円周状に配置された複数のバッフル、複数のバッフルは、第1の流体流動デバイスの第2の物理的特徴を画定する、を有する。
【0007】
幾つかの実装形態において、壁部分の開口部は、回転可能シャフトに油を導入するための入口を画定し、壁部分の半径方向寸法は、回転可能シャフトからの油の逆流を抑制する。
【0008】
幾つかの実装形態において、第1の流体流動デバイスの複数のバッフルは、リム部分から開口部に向かって、壁部分に沿って半径方向内側に延在し、第1の流体流動デバイスの複数のバッフルは、回転可能シャフトの回転に応じて、第2の流体流動デバイスに向かって軸方向に油を駆動するように構成されている。
【0009】
幾つかの実装形態において、第2の流体流動デバイスは、その中心部分において開口部が形成された壁部分;壁部分の周囲部分から延在し、第2の流体流動デバイスが回転可能シャフトと共に回転するよう、回転可能シャフトの嵌合面に結合されるように構成された嵌合面を画定するリム部分;リム部分及び壁部分の対応する部分に沿って円周状に配置された複数のバッフル、複数のバッフルは、第2の流体流動デバイスの第1の物理的特徴を画定する;及び、壁部分において形成された、開口部と流体連通する複数の流路、複数の流路は、第2の流体流動デバイスの第2の物理的特徴を画定する、を有する。
【0010】
幾つかの実装形態において、第2の流体流動デバイスの壁部分の半径方向寸法により、油が第2の流体流動デバイスの開口部を通じて軸方向に流れ、回転可能シャフトからの排出のために、隣接する軸受に至ることが可能になる。
【0011】
幾つかの実装形態において、第2の流体流動デバイスの複数のバッフルは、第2の流体流動デバイスのリム部分から第2の流体流動デバイスの開口部に向かって、第2の流体流動デバイスの壁部分に沿って半径方向内側に延在し、第2の流体流動デバイスの複数のバッフルは、回転可能シャフトの回転に応じて、第1の流体流動デバイスから軸方向に油を引き込むように構成されている。
【0012】
幾つかの実装形態において、第2の流体流動デバイスの複数の流路は、第2の流体流動デバイスの開口部を通じて軸方向に流れる油の一部を受容し、油の一部を、回転可能シャフトからの排出のために、回転可能シャフトの内側表面に導くように構成されている。
【0013】
幾つかの実装形態において、第1の流体流動デバイスは、第1の外側軸受及び第1の内側軸受の間に組み立てられた回転可能シャフト内に中間嵌め(transition fit)されるように構成され、第2の流体流動デバイスは、第2の内側軸受及び第2の外側軸受の間に組み立てられた回転可能シャフト内に中間嵌めされて、組み立てられた第1の外側軸受、第1の流体流動デバイス、及び第1の内側軸受から離間するように構成されている。
【0014】
幾つかの実装形態において、流体流動システムは、第1の流体流動デバイス及び第2の流体流動デバイスの間に形成される空間内の差動コンポーネントの冷却又は潤滑のうちの少なくとも一方のために、第1の流体流動デバイス及び第2の流体流動デバイスの間で油を循環させるように構成されている。
【0015】
別の一般的な態様において、流体流動システムは、回転可能シャフトアセンブリの第1の部分内に結合された第1の流体流動デバイス、及び、回転可能シャフトアセンブリの第2の部分内に結合され、第1の流体流動デバイスから軸方向に離間した第2の流体流動デバイス、を備える。第1の流体流動デバイスは、壁部分;回転可能シャフトアセンブリへの冷却媒体の導入のために壁部分の中心部分において画定された入口、壁部分は、冷却媒体を回転可能シャフトアセンブリ内に保持するように構成されている;及び、壁部分の周囲部分に沿って延在するリム部分、リム部分は、回転可能シャフトアセンブリの外側シャフトの嵌合面に結合されるように構成された嵌合面を画定する、を有し得る。第2の流体流動デバイスは、壁部分;壁部分の中心部分において画定された開口部、開口部は、冷却媒体を、回転可能シャフトアセンブリからの排出のために、少なくとも1つの排出経路に誘導するように構成されている;及び、壁部分の周囲部分に沿って延在するリム部分、リム部分は、回転可能シャフトアセンブリの外側シャフトの嵌合面に結合されるように構成された嵌合面を画定する、を有し得る。
【0016】
幾つかの実装形態において、第1の流体流動デバイスの壁部分の半径方向寸法は、冷却媒体を回転可能シャフトアセンブリ内に保持するために、冷却媒体の逆流を抑制する。
【0017】
幾つかの実装形態において、第1の流体流動デバイスは、第1の流体流動デバイスのリム部分の一部及び壁部分の対応する部分に少なくとも1つのバッフルを有し、少なくとも1つのバッフルは、第2の流体流動デバイスに向かって、回転可能シャフトアセンブリを通じて冷却媒体を軸方向に駆動するように構成されている。
【0018】
幾つかの実装形態において、少なくとも1つのバッフルは、第1の流体流動デバイスのリム部分及び壁部分の対応する部分に沿って配置され、第1の流体流動デバイスのリム部分から開口部に向かって半径方向内側に延在する複数のバッフルを含み、当該複数のバッフルは、第2の流体流動デバイスに向かって、回転可能シャフトアセンブリを通じて軸方向に冷却媒体を駆動するように構成されている。
【0019】
幾つかの実装形態において、第2の流体流動デバイスの壁部分の半径方向寸法は、第1の流体流動デバイスの壁部分の半径方向寸法よりも小さく、第2の流体流動デバイスの壁部分における開口部は、第1の排出経路を通じて回転可能シャフトアセンブリから冷却媒体の第1の部分を排出するように構成されている。
【0020】
幾つかの実装形態において、少なくとも1つの流路は、第2の流体流動デバイスのリム部分において形成され、当該少なくとも1つの流路は、第2の排出経路を通じて回転可能シャフトアセンブリから冷却媒体の第2の部分を排出するように構成されている。
【0021】
幾つかの実装形態において、少なくとも1つの流路は、第2の流体流動デバイスのリム部分において形成された複数の半径方向流路を有し、当該複数の半径方向流路は、第2の排出経路を通じて回転可能シャフトアセンブリから冷却媒体の第2の部分を排出するように構成されている。
【0022】
幾つかの実装形態において、第1の排出経路は、外側シャフトの嵌合面に沿って冷却媒体の第1の部分を排出し、第2の排出経路は、隣接する軸受に冷却媒体の第2の部分を排出する。
【0023】
幾つかの実装形態において、第2の流体流動デバイスは、第2の流体流動デバイスのリム部分の一部及び壁部分の対応する部分に、第2の流体流動デバイスのリム部分から開口部に向かって半径方向内側に延在する少なくとも1つのバッフルを有し、当該少なくとも1つのバッフルは、冷却媒体を、第1の流体流動デバイスから第2の流体流動デバイスに向かって、回転可能シャフトアセンブリを通じて軸方向に引き込むように構成されている。
【0024】
1つ又は複数の実装形態の詳細が、添付図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴は、説明及び図面から、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
実際的なあらゆる場合において、図面内の同様の参照符号又は番号は、同様の要素を示すために使用される。
【0026】
【
図1A】回転可能シャフトアセンブリ用の潤滑及び冷却システムの例示的な部分の概略断面図である。
【
図1B】回転可能シャフトアセンブリ用の潤滑及び冷却システムの例示的な部分の概略断面図である。
【
図1C】回転可能シャフトアセンブリ用の潤滑及び冷却システムの例示的な部分の概略断面図である。
【
図1D】回転可能シャフトアセンブリ用の潤滑及び冷却システムの例示的な部分の概略断面図である。
【0027】
【
図1E】
図1A~
図1Dにおいて示される潤滑及び冷却システムの例示的な部分の分解斜視図である。
【0028】
【
図2A】例示的な第1の流体流動デバイスの第1の軸方向端面図である。
【
図2B】例示的な第1の流体流動デバイスの第2の軸方向端面図である。
【0029】
【
図3A】例示的な第2の流体流動デバイスの第1の軸方向端面図である。
【
図3B】例示的な第2の流体流動デバイスの第2の軸方向端面図である。
【0030】
【
図4A】例示的な第1の流体流動デバイスの第1の軸方向端面図である。
【
図4B】例示的な第1の流体流動デバイスの第2の軸方向端面図である。
【0031】
【0032】
【
図5A】例示的な第2の流体流動デバイスの第1の軸方向端面図である。
【
図5B】例示的な第2の流体流動デバイスの第2の軸方向端面図である。
【0033】
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書で説明される実装形態による潤滑及び冷却システムは、概して、電気車両(electric vehicle:EV)用のパワートレイン及び/又はドライブトレイン及び/又はモータコンポーネントに適用可能である。以下、EVという用語は、全電気式車両、プラグインハイブリッド車両、電気駆動システムを含むハイブリッド車両、及び、少なくとも1つの電気モータを有する他の用途を指すために使用され得る。
【0035】
本明細書で説明されるシステム及び方法は、電気車両のパワートレイン及び/又はドライブトレインの様々なコンポーネントに、改善された潤滑及び/又は冷却を提供することができる。本明細書で説明されるシステム及び方法は、潤滑及び/又は冷却されることになるコンポーネントに潤滑及び/又は冷却媒体を効率的かつ効果的に導くことができ、当該コンポーネントを通じて冷却媒体を分散する又は循環させることができ、かつ当該コンポーネントから冷却媒体を排出することができる、流動管理及び制御特徴を利用する。本明細書で説明されるシステム及び方法によって提供される潤滑及び/又は冷却は、潤滑及び/又は冷却されることになるコンポーネントの動作条件に応じて適合可能であり得る。
【0036】
図1A~
図1Dは、本明細書で説明される実装形態による、潤滑及び冷却システムを利用するシステムの例示的な部分の概略図である。
図1Eは、
図1A~
図1Dにおいて示されるコンポーネントの一部の分解斜視図である。本主題は、コンポーネント、例えば、潤滑及び冷却の一貫した一様な分散から恩恵を受け得る回転可能コンポーネントの他のシステムに適用され得る。
図1A~
図1Eに示されるパワートレインシステムの例示的な部分は、単に論述及び例示を目的とした、電気車両のパワートレインシステム、及び特に、電気車両のギアボックスの例示的な部分である。本明細書で説明されることになる原理は、コンポーネント、例えば、潤滑及び冷却の一貫した一様な分散から恩恵を受け得る回転可能コンポーネントの他のシステムに適用され得る。
【0037】
図1Aは、例示的な回転可能シャフトアセンブリ100の概略断面図である。例示的な回転可能シャフトアセンブリ100は、外側シャフト190内に結合されたギアセット170を含む。第1の流体流動デバイス110は、外側シャフト190内に位置決めされた第2の流体流動デバイス120から軸方向に離間して、外側シャフト190内に位置決めされており、第1及び第2の流体流動デバイス110、120が外側シャフト190と共に回転するようになっている。第1の流体流動デバイス110は、第1の内側軸受130A及び第1の外側軸受140Aの間に位置決めされている。第2の流体流動デバイス120は、第2の内側軸受130B及び第2の外側軸受140Bの間に位置決めされている。第1の内側軸受130A、第1の外側軸受140A、第1の流体流動デバイス110、第2の内側軸受130B、第2の外側軸受140B及び第2の流体流動デバイス120は、シャフト支持構造184によって支持された出力シャフト180上に取り付けられている。
図1A内に示される例において、スペーシングデバイス150は、第2の流体流動デバイス120及び第2の外側軸受140Bの間に位置決めされている。スペーシングデバイス150は、図示されている通り、コンポーネントの相対位置を維持するためのシム(shim)として作用し得る。例えば、スペーシングデバイス150は、外側シャフト190に対するコンポーネントの相対位置及び/又は嵌合を維持するために、力、例えば、
図1A内に示される配向における軸力を及ぼす、板ばねのような付勢デバイスであり得る。すなわち、第1の流体流動デバイス110及び第2の流体流動デバイス120は、外側シャフト190の内部に中間嵌め又は締り嵌め(interference fit)され得、第1の流体流動デバイス110及び第2の流体流動デバイス120が外側シャフト190と共に回転するようになっている。この配置において、スペーシングデバイス150は、組み立てられたコンポーネントの相対位置を維持するように位置決めされ得る。
【0038】
図1A内に示される例において、スペーシングデバイス150は、単に論述及び例示を目的として、第2の流体流動デバイス120及び第2の外側軸受140Bの間に位置決めされている。スペーシングデバイス150は、組み立てられた通りのコンポーネントの相対位置を維持するために、他のコンポーネントの間に位置し得る。
図1A内に示される例において、ギアセット170は、単に論述及び例示を目的として、第1及び第2の流体流動デバイス110、120の間に例示的な差動コンポーネントを含む。第1及び第2の流体流動デバイス110、120によって提供される潤滑及び/又は冷却特性は、他のタイプのコンポーネント、例えば、以下で説明されることになる様式で潤滑及び/又は冷却から恩恵を受けるであろう回転可能コンポーネントに適用され得る。
【0039】
例えば油などの潤滑及び/又は冷却媒体は、回転可能シャフトアセンブリ100を通じて
図1A内の矢印Aによって示される軸方向において流れるために、回転可能シャフトアセンブリ100に導入され得る。幾つかの例において、第1の流体流動デバイス110の特徴、例えば物理的特徴は、油の逆流、すなわち、軸方向Aとは反対の方向における油の流れを抑制し、従って、油が回転可能シャフトアセンブリ100から出ることを防止し得る、及び/又は、コンポーネントの潤滑及び/又は冷却のために回転可能シャフトアセンブリ100内に油を維持し得る。幾つかの例において、第1の流体流動デバイス110の特徴、例えば、1つ又は複数の物理的特徴は、軸方向Aにおける油の流れを誘導し得る又は導き得る、及び/又は、回転可能シャフトアセンブリ100を通じた循環のために油の流れを駆動し得る。幾つかの例において、第2の流体流動デバイス120の1つ又は複数の物理的特徴は、回転可能シャフトアセンブリ100からの排出のために、軸方向Aにおける油の流れを誘導し得る。幾つかの例において、1つ又は複数の物理的特徴は、1つ又は複数の排出口からの排出のために、油の軸方向流れを誘導し得る。
【0040】
幾つかの例において、潤滑及び/又は冷却媒体、すなわち油などの流体は、
図1B内の矢印F1によって示される通り、シャフト支持構造184における1つ又は複数の開口部182を通じて、第1の流体流動デバイス110の開放部分112(
図1Eを参照;
図1A及び
図1Bにおいては詳細に示されていない)を通じて、第1の内側軸受130A内へと、回転可能シャフトアセンブリ100に導入され得る。第1の内側軸受130Aから、潤滑及び/又は冷却媒体、又は油は、ギアセット170内に受容された回転可能コンポーネント(すなわち、
図1A及び
図1B内に示される例示的な配置における差動コンポーネント)を通じた循環のために、ギアセット170を通じて流れる。次に、油は、第2の内側軸受130Bを通じて第2の流体流動デバイス120に向かって流れ、そこで、油の第1の部分は、回転可能シャフトアセンブリ100からの、矢印F1'に沿った第2の外側軸受140Bを通じた排出のために、第1の開口部122(
図1Eを参照;
図1A及び
図1Bにおいては詳細に示されていない)を通じて流れる。油の第2の部分は、矢印F1"に沿った外側シャフト190の表面を経由する排出のために、1つ又は複数の第2の開口部124(
図1Eを参照;
図1A及び
図1Bにおいては詳細に示されていない)を通じて流れる。幾つかの例において、第1の流体流動デバイス110及び/又は第2の流体流動デバイス120の特徴、例えば物理的特徴は、回転可能シャフトアセンブリ100を通じた、軸方向における油の流れを駆動し、かつ、回転可能シャフトアセンブリ100内に受容された回転可能コンポーネントを通じた油の分散及び/又は循環を促進する。例えば、第1の流体流動デバイス110の物理的特徴及び/又は第2の流体流動デバイス120の物理的特徴は、油の層L(
図1B内に示される断面図内の影において図示されている)を、回転可能シャフトアセンブリ100内で分散させて、例えば実質的に一様に分散させて、回転可能シャフトアセンブリ100全体に油の循環を提供し、かつ、回転可能コンポーネントに潤滑及び/又は冷却を提供し得る。
【0041】
幾つかの例において、潤滑及び/又は冷却媒体、すなわち油などの流体は、
図1Cにおける矢印F2によって示される通り、第1の外側軸受140A内に油を噴霧又は噴射することにより、回転可能シャフトアセンブリ100に導入され得る。このようにして導入された油は、ギアセット170の回転可能コンポーネント(すなわち、
図1A~1C内に示される例示的な配置における差動コンポーネント)を通じた循環のために、第1の流体流動デバイス110の開放部分112を通じて、かつ、第1の内側軸受130Aを通じて流れる。次に、油は、第2の内側軸受130Bを通じて第2の流体流動デバイス120に向かって流れ、そこで、油の第1の部分は、回転可能シャフトアセンブリ100からの、矢印F2'に沿った第2の外側軸受140Bを通じた排出のために、第1の開口部122を通じて流れる。油の第2の部分は、矢印F2"に沿った外側シャフト190の表面を経由する排出のために、1つ又は複数の第2の開口部124を通じて流れる。幾つかの例において、第1の流体流動デバイス110及び/又は第2の流体流動デバイス120の特徴、例えば物理的特徴は、回転可能シャフトアセンブリ100を通じた、軸方向における油の流れを駆動し、かつ、回転可能シャフトアセンブリ100内に受容された回転可能コンポーネントを通じた油の分散及び/又は循環を促進する。例えば、第1の流体流動デバイス110の物理的特徴及び/又は第2の流体流動デバイス120の物理的特徴は、油の層Lを、回転可能シャフトアセンブリ100内で分散させて、例えば実質的に一様に分散させて、回転可能シャフトアセンブリ100全体に油の循環を提供し、かつ、回転可能コンポーネントに潤滑及び/又は冷却を提供し得る。
【0042】
幾つかの例において、潤滑及び/又は冷却媒体、すなわち油などの流体は、
図1Dにおける矢印F3によって示される通り、出力シャフト180内の流路188を通じて回転可能シャフトアセンブリ100に導入され得る。このようにして導入された油は、ギアセット170の回転可能コンポーネント(すなわち、
図1A~1Dにおいて示される例示的な配置における差動コンポーネント)を通じた循環のために、第1の流体流動デバイス110の開放部分112を通じて、かつ、第1の内側軸受130Aを通じて流れる。次に、油は、第2の内側軸受130Bを通じて第2の流体流動デバイス120に向かって流れ、そこで、油の第1の部分は、回転可能シャフトアセンブリ100からの、矢印F3'に沿った第2の外側軸受140Bを通じた排出のために、第1の開口部122を通じて流れる。油の第2の部分は、矢印F3"に沿った外側シャフト190の表面を経由する排出のために、1つ又は複数の第2の開口部124を通じて流れる。幾つかの例において、第1の流体流動デバイス110及び/又は第2の流体流動デバイス120の特徴、例えば物理的特徴は、回転可能シャフトアセンブリ100を通じた、軸方向における油の流れを駆動し、かつ、回転可能シャフトアセンブリ100内に受容された回転可能コンポーネントを通じた油の分散及び/又は循環を促進する。例えば、第1の流体流動デバイス110の物理的特徴及び/又は第2の流体流動デバイス120の物理的特徴は、油の層Lを、回転可能シャフトアセンブリ100内で分散させて、例えば実質的に一様に分散させて、回転可能シャフトアセンブリ100全体に油の循環を提供し、かつ、回転可能コンポーネントに潤滑及び/又は冷却を提供し得る。
【0043】
図2A及び
図2Bは、例示的な第1の流体流動デバイス200(例えば、
図1A~
図1Eに関して上記で説明された第1の流体流動デバイス110など)を示す。特に、
図2Aは、例示的な第1の流体流動デバイス200の第1の軸方向端面図であり、
図2Bは、例示的な第1の流体流動デバイス200の第2の軸方向端面図である。
図2A及び
図2Bにおいて示される例示的な第1の流体流動デバイス200は、
図1A~
図1Eにおいて示される例示的な回転可能シャフトアセンブリ100に組み込まれ得る。
【0044】
図2A及び
図2Bにおいて示される通り、例示的な第1の流体流動デバイス200は、リム部分220が壁部分210の外周(outer peripheral)部分215、又は、外側周囲(outer circumferential)部分215から延在している壁部分210を含む。リム部分220は、外側シャフト190(例えば、
図1A~1Dを参照)の内側周囲(inner circumferential)表面に対して位置決め又は嵌合され得る。例えば、第1の流体流動デバイス200は、リム部分220及び外側シャフト190の嵌合面で、外側シャフト190に中間嵌め又は締り嵌めされ得、第1の流体流動デバイス200が外側シャフト190と共に回転するようになっている。壁部分210及びリム部分220は、第1の流体流動デバイス200の流体流動領域290を画定する。壁部分210の内周(inner peripheral)部分211又は内側周囲部分211は、壁部分210の中心部分で開口部212を画定し、第1の流体流動デバイス200の壁部分210の内周部分211から外周部分215までの半径方向寸法D1を壁部分210が有するようになっている。開口部212は、それを通じて油などの冷却媒体が導入され得る入口を画定する。
【0045】
第1の流体流動デバイス200の壁部分210の半径方向寸法D1は、開口部212を通じて導入される油を壁部分210が回転可能シャフトアセンブリ100内に保持するようなものであり得る。例えば、壁部分210の半径方向寸法D1は、回転可能シャフトアセンブリ100内からの油の逆流を抑制するのに十分な大きさである。従って、第1の流体流動デバイス200の壁部分210の半径方向寸法D1は、回転可能シャフトアセンブリ100内に油を保持し、逆流を抑制する、第1の物理的特徴を画定し得る。回転可能シャフトアセンブリ100内で油を保持することにより、回転可能シャフトアセンブリ100のコンポーネントの潤滑及び/又は冷却のために、回転可能シャフトアセンブリ100を通じた循環用の油の可用性が促進され得る。
【0046】
図3A及び
図3Bは、例示的な第2の流体流動デバイス300(例えば、
図1A~
図1Eに関して上記で説明された第2の流体流動デバイス120など)を示す。特に、
図3Aは、例示的な第2の流体流動デバイス300の第1の軸方向端面図であり、
図3Bは、例示的な第2の流体流動デバイス300の第2の軸方向端面図である。
図3A及び
図3Bにおいて示される例示的な第2の流体流動デバイス300は、
図1A~
図1Eにおいて示される例示的な回転可能シャフトアセンブリ100に組み込まれ得る。
【0047】
図3A及び
図3Bにおいて示される通り、例示的な第2の流体流動デバイス300は、リム部分320が壁部分310の外周部分315から延在している壁部分310を含む。壁部分310及びリム部分320は、第2の流体流動デバイス300の流体流動領域390を画定する。リム部分320は、外側シャフト190の内側周囲表面に対して位置決め又は嵌合され得る。例えば、第2の流体流動デバイス300は、リム部分320及び外側シャフト190の嵌合面で外側シャフト190に中間嵌め又は締り嵌めされ得、第2の流体流動デバイス300が外側シャフト190と共に回転するようになっている。壁部分310の内周部分311は、壁部分310の中心部分で開口部312を画定し、第2の流体流動デバイス300の壁部分310の内周部分311から外周部分315までの半径方向寸法D2を壁部分310が有するようになっている。
【0048】
幾つかの例において、第2の流体流動デバイス300の壁部分310の半径方向寸法D2は、第1の流体流動デバイス200の壁部分210の半径方向寸法D1よりも小さい。第2の流体流動デバイス300の壁部分310の半径方向寸法D2は、回転可能シャフトアセンブリ100内からの(特に、第2の内側軸受130Bからの)油が、回転可能シャフトアセンブリ100からの排出のために、隣接する第2の外側軸受140Bに向かって流れることを壁部分310が可能にするようなものであり得る。例えば、壁部分310の半径方向寸法D2は、(例えば、第2の内側軸受130Bからの)油の第1の部分が開口部312を通じて流れることを可能にするのに十分な小ささであり、壁部分310が、(例えば、
図1B内に示される矢印F1での)回転可能シャフトアセンブリ100からの最終的な排出のための第2の外側軸受140Bへの油の流れを抑制しないようになっている。
【0049】
幾つかの例において、1つ又は複数の流路330は、スペーシングデバイス150及び第2の外側軸受140Bに面する壁部分310の側面に形成される。1つ又は複数の流路330は、開口部312と連通、例えば流体連通している。第2の流体流動デバイス300の開口部312を通じて流れる油の第2の部分は、外側シャフト190の対応する部分での(例えば、
図1B~
図1Dにおいてそれぞれ示される矢印F1"、F2"及びF3"での)排出のために、1つ又は複数の流路330を通じて導かれ得る。
図3A及び
図3B内に示される例において、1つ又は複数の流路330は半径方向流路である。本明細書で説明された原理は、他の配向及び/又は配向の組み合わせを有する流路に適用され得る。
【0050】
本明細書で説明された実装形態による流体流動システムは、半径方向寸法D1を有する壁部分210を伴う第1の流体流動デバイス200、及び、半径方向寸法D2を有する壁部分310を伴う第2の流体流動デバイス300を用いて潤滑及び/又は冷却を提供することができ、その場合、上記で説明された通り、回転可能シャフトアセンブリを通じた、潤滑及び/又は冷却媒体、すなわち油などの流体の軸方向流れを促進するために、D1はD2よりも大きい。
【0051】
図4A~
図4Cは、例示的な第1の流体流動デバイス400を示す。特に、
図4Aは、例示的な第1の流体流動デバイス400の第1の軸方向端面図であり、
図4Bは、例示的な第1の流体流動デバイス400の第2の軸方向端面図であり、
図4Cは、例示的な第1の流体流動デバイス400の斜視図である。
図4A~
図4Cにおいて示される例示的な第1の流体流動デバイス400は、
図1A~
図1Eにおいて示される例示的な回転可能シャフトアセンブリ100に組み込まれ得る。
【0052】
図4A~
図4Cにおいて示される通り、例示的な第1の流体流動デバイス400は、リム部分420が壁部分410の外周部分415又は外側周囲部分415から延在している壁部分410を含む。リム部分420は、外側シャフト190の内側周囲表面に対して位置決め又は嵌合され得る。例えば、第1の流体流動デバイス400は、リム部分420及び外側シャフト190の嵌合面で外側シャフト190に中間嵌め又は締り嵌めされ得、第1の流体流動デバイス400が外側シャフト190と共に回転するようになっている。壁部分410及びリム部分420は、第1の流体流動デバイス400の流体流動領域490を画定する。壁部分410の内周部分411又は内側周囲部分411は、壁部分410の中心部分で開口部412を画定し、第1の流体流動デバイス400の壁部分410の内周部分411から外周部分415までの(
図2A及び
図2Bに関して上記で説明された第1の流体流動デバイス200と同様の)半径方向寸法D1を壁部分410が有するようになっている。開口部412は、それを通じて油が導入され得る入口を画定する。
【0053】
図4A~
図4Cにおいて示される例示的な第1の流体流動デバイス400は、リム部分420及び壁部分410の対応する部分から開口部412に向かって半径方向内側に、流体流動領域490へと延在する1つ又は複数の突出部450、すなわちバッフル450を含む。1つ又は複数のバッフル450の各々は、
図4Cにおいて示される通り、高さH1、幅W1、及び長さL1を有し得る。バッフル450の高さH1、幅W1、及び長さL1は、バッフル450の数、バッフル450の配置、流体流速、潤滑及び冷却要件、システムサイジング、及び他のそのような要因に基づき、第1の流体流動デバイス400の異なる実装形態間で変化し得る。
【0054】
図2A及び
図2Bに関して上記で説明された第1の流体流動デバイス200と同様に、第1の流体流動デバイス400の壁部分410の半径方向寸法D1は、壁部分410が回転可能シャフトアセンブリ100内からの油の逆流を抑制するのに十分な大きさを有するようなものであり得る。従って、第1の流体流動デバイス400の壁部分410の半径方向寸法D1は、回転可能シャフトアセンブリ100内に油を保持し、逆流を抑制する、第1の物理的特徴を画定し得る。回転可能シャフトアセンブリ100内で油を保持することにより、回転可能シャフトアセンブリ100のコンポーネントの潤滑及び/又は冷却のために、回転可能シャフトアセンブリ100を通じた循環用の油の可用性が促進され得る。1つ又は複数の突出部450、すなわちバッフル450は、軸方向における油の駆動、及び、油が回転可能シャフトアセンブリ100内を軸方向に移動する際のその分散及び/又は循環を更に促進し得る。
【0055】
図4A~
図4C内に示される例示的な配置において、第1の流体流動デバイス400は複数のバッフル450を含み、全てが実質的に同じ高さ及び/又は幅及び/又は長さを有し、複数のバッフル450は、単に論述及び例示を目的として、第1の流体流動デバイス400の軸方向中心線を中心として円周状に配置されており、かつ、第1の流体流動デバイス400の中心平面を中心として対称的に配置されている。幾つかの例において、第1の流体流動デバイス400は、第1の流体流動デバイス400の軸方向中心線及び/又は中心平面を中心とした、
図4A~
図4Cにおいて示されているものに比べてより多い又はより少ないバッフル450、及び/又はバッフル450のサイズの組み合わせ、及び/又はバッフル450の配置を含み得る。第1の流体流動デバイス400のリム部分420に沿った複数のバッフル450のサイズ、及び/又はサイズの組み合わせ、及び/又は配置は、回転可能シャフトアセンブリ100を通じた循環のために、開口部412からの油の流れを軸方向において駆動するように選択され得る。すなわち、第1の流体流動デバイス400のリム部分420に沿ったバッフル450のサイズ及び/又は数及び/又は配置は、バッフル450によって油に付与される作用が所望の方向における油の流れを駆動するように選択され得る。従って、バッフル450は、第1の流体流動デバイス400が外側シャフト190と共に回転し、バッフル450が回転可能シャフトアセンブリ100内の油に作用している状態で、回転可能シャフトアセンブリ100を通じて軸方向に油を駆動し、油が軸方向に移動するのに伴い油を循環させる/分散する、第1の流体流動デバイス400の第2の物理的特徴を画定し得る。
【0056】
図5A~
図5Cは、例示的な第2の流体流動デバイス500を示す。特に、
図5Aは、例示的な第2の流体流動デバイス500の第1の軸方向端面図であり、
図5Bは、例示的な第2の流体流動デバイス500の第2の軸方向端面図であり、
図5Cは、例示的な第2の流体流動デバイス500の斜視図である。
図5A~
図5Cにおいて示される例示的な第2の流体流動デバイス500は、
図1A~
図1Eにおいて示される例示的な回転可能シャフトアセンブリ100に組み込まれ得る。
【0057】
図5A~
図5Cにおいて示される通り、例示的な第2の流体流動デバイス500は、リム部分520が壁部分510の外周部分515から延在している壁部分510を含む。壁部分510及びリム部分520は、第2の流体流動デバイス500の流体流動領域590を画定する。リム部分520は、外側シャフト190の内側周囲表面に対して位置決め又は嵌合され得る。例えば、第2の流体流動デバイス500は、リム部分520及び外側シャフト190の嵌合面で外側シャフト190に中間嵌め又は締り嵌めされ得、第2の流体流動デバイス500が外側シャフト190と共に回転するようになっている。壁部分510の内周部分511は、壁部分510の中心部分で開口部512を画定し、壁部分510が第2の流体流動デバイス500の壁部分510の内周部分511から外周部分515までの(
図3A及び
図3Bに関して上記で説明された第2の流体流動デバイス300と同様の)半径方向寸法D2を有するようになっている。
【0058】
図5A~
図5Cにおいて示される例示的な配置において、第2の流体流動デバイス500は、リム部分520及び壁部分510の対応する部分から開口部512に向かって半径方向内側に、流体流動領域590へと延在する1つ又は複数の突出部550、すなわちバッフル550を含む。1つ又は複数のバッフル550の各々は、
図5Cにおいて示される通り、高さH2、幅W2、及び長さL2を有し得る。バッフル550の高さH2、幅W2、及び長さL2は、バッフル550の数、バッフル550の配置、流体流速、潤滑及び冷却要件、システムサイジング、及び他のそのような要因に基づき、変化し得る。
【0059】
図3A及び
図2Bに関して上記で説明された第2の流体流動デバイス300と同様に、第2の流体流動デバイス500の壁部分510の半径方向寸法D2は、第1の流体流動デバイス400の壁部分410の半径方向寸法D1よりも小さい。第2の流体流動デバイス500の壁部分510の半径方向寸法D2は、回転可能シャフトアセンブリ100内からの(特に、第2の内側軸受130Bからの)油が、回転可能シャフトアセンブリ100からの排出のために、隣接する第2の外側軸受140Bに向かって流れることを壁部分510が可能にするようなものであり得る。例えば、壁部分510の半径方向寸法D2は、(例えば、第2の内側軸受130Bからの)油の第1の部分が開口部512を通じて流れることを可能にするのに十分な小ささであり、壁部分510が、(例えば、
図1B~
図1Dにおいてそれぞれ示される矢印F1'、F2'及びF3'での)回転可能シャフトアセンブリ100からの最終的な排出のための第2の外側軸受140Bへの油の流れを抑制しないようになっている。
【0060】
幾つかの例において、1つ又は複数の流路530は、1つ又は複数のバッフル550に対向する壁部分510の側面に形成される。1つ又は複数の流路530は、開口部512と連通、例えば流体連通している。第2の流体流動デバイス500の開口部512を通じて流れる油の第2の部分は、外側シャフト190の対応する部分での(例えば、
図1B~
図1Dにおいてそれぞれ示される矢印F1"、F2"及びF3"での)排出のために、1つ又は複数の流路530を通じて導かれ得る。
図5A~
図5C内に示される例において、1つ又は複数の流路530は半径方向流路である。本明細書で説明された原理は、他の配向及び/又は配向の組み合わせを有する流路に適用され得る。
【0061】
図5A~
図5C内に示される例示的な配置において、第2の流体流動デバイス500は複数のバッフル550を含み、全てが実質的に同じ高さ及び/又は幅及び/又は長さを有し、複数のバッフル550は、単に論述及び例示を目的として、第2の流体流動デバイス500の軸方向中心線を中心として円周状に配置されており、かつ、第2の流体流動デバイス500の中心平面を中心として対称的に配置されている。幾つかの例において、第2の流体流動デバイス500は、第2の流体流動デバイス500の軸方向中心線及び/又は中心平面を中心とした、
図5A~
図5Cにおいて示されているものに比べてより多い又はより少ないバッフル550、及び/又はバッフル550のサイズの組み合わせ、及び/又はバッフル550の配置を含み得る。第2の流体流動デバイス500のリム部分520に沿った複数のバッフル550のサイズ、及び/又はサイズの組み合わせ、及び/又は配置は、第2の内側軸受130Bから軸方向に油の流れを駆動し続けるように選択され得、第1の部分は、第2の外側軸受140B(すなわち、
図1B~1Dにおいてそれぞれ示される矢印F1'、F2'及びF3'によって識別される排出経路)を通じた排出のために開口部312を通じて流れ、かつ、第2の部分は、排出のために外側シャフト190(すなわち、矢印F1''、F2''及びF3''によって識別される排出経路)に導かれている。すなわち、第2の流体流動デバイス500のリム部分520に沿ったバッフル550のサイズ及び/又は数及び/又は配置は、バッフル550によって油に付与される作用が所望の方向における油の流れを駆動するように選択され得る。同様に、壁部分510において画定された流路530のサイズ及び/又は数及び/又は配置は、排出のための油の効果的かつ効率的な流れを促進するように選択され得る。従って、バッフル550は、第2の流体流動デバイス500が外側シャフト190と共に回転し、バッフル550が回転可能シャフトアセンブリ100内の油に作用するのに伴い、第2の外側軸受140Bを通じた排出のために回転可能シャフトアセンブリ100を通じて軸方向に油を引き込む第2の流体流動デバイス500の第1の物理的特徴を画定し得る。流路530は、第2の流体流動デバイス500が外側シャフト190と共に回転するのに伴い、第2の流体流動デバイス500の開口部512から油を半径方向に引き込む第2の物理的特徴として作用する。
【0062】
本明細書で説明された実装形態による潤滑及び/又は冷却システムは、回転可能シャフトアセンブリの第1の軸方向端部における第1の流体流動デバイス、及び、回転可能シャフトアセンブリの第2の端部における第2の流体流動デバイスを備える。第1の流体流動デバイスは、回転可能シャフトアセンブリへの潤滑及び/又は冷却媒体、すなわち油などの流体の導入を促進する。第1の流体流動デバイスの1つ又は複数の特徴は、導入された流体を軸方向において駆動し、当該流体が回転可能シャフトアセンブリを通じて軸方向に駆動されるのに伴い、当該流体を実質的に一様に分散及び循環させるよう、当該流体に作用する。第2の流体流動デバイスは、流体を軸方向に引き込み、回転可能シャフトアセンブリを通じて当該流体を循環させ、かつ回転可能シャフトアセンブリからの当該流体の排出を促進する1つ又は複数の特徴を有する。第1の流体流動デバイス及び第2の流体流動デバイスの回転によってもたらされる作用により、回転可能シャフトアセンブリの効率的かつ効果的な潤滑及び/又は冷却が提供される。回転可能シャフトアセンブリの改善された潤滑及び/又は冷却は、全体的なシステム性能及び信頼性を向上させ得る。
【0063】
本明細書において使用される「実質的に」及び「約」などの用語は、処理時のばらつきなどに起因する小さな変動について説明及び報告するために使用される。また、本明細書において使用されるとき、「a」又は「an」などの不定冠詞は、「少なくとも1つの」を指し得る。
【0064】
上述の概念及び以下でより詳細に論述される追加の概念の全ての組み合わせが(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件として)、本明細書で開示された本発明の主題の一部であると企図されていることを理解されたい。特に、本開示の最後に現れる特許請求される主題の全ての組み合わせが、本明細書で開示される本発明の主題の一部であると企図されている。
【0065】
幾つかの実装形態について説明してきた。とは言え、本明細書の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正が行われ得ることが理解されるであろう。
【0066】
加えて、本明細書で示される任意の論理フローは、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序、又は一連の順序を必要としない。加えて、他のプロセスが提供され得る、又は、説明されたフローからプロセスが除外され得る、及び、説明されたシステムに他のコンポーネントが追加され得る、及び/又は、説明されたシステムから他のコンポーネントが除去され得る。従って、他の実装形態が以下の特許請求の範囲に記載の範囲内に含まれる。
【0067】
説明された実装形態の特定の特徴が、本明細書で説明された通りに示されてきたが、今や多くの修正、置換、変更、及び均等物が当業者に想起されるであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、これらの実装形態の範囲内に属する全てのそのような修正及び変更を包含するように意図されていることが理解されるべきである。それらは限定ではなく例としてのみ提示されており、形態及び詳細に様々な変更が行われ得ることを理解されたい。相互に排他的な組み合わせを除き、本明細書で説明される装置及び/又は方法の任意の部分が任意の組み合わせで組み合わされ得る。本明細書で説明される実装形態は、説明された異なる実装形態の機能、コンポーネント、及び/又は特徴の様々な組み合わせ及び/又は副次的組み合わせを含み得る。
【国際調査報告】