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特表2024-539903反応性熱可塑性ポリマーで作製された多孔質層を含む強化材及び関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】反応性熱可塑性ポリマーで作製された多孔質層を含む強化材及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20241024BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20241024BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B32B5/28 101
B29C70/48
B29C70/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523801
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 FR2022051976
(87)【国際公開番号】W WO2023067282
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2111188
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2111190
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515306965
【氏名又は名称】ヘクセル ランフォルセマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベネトゥイリエール、ティボー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアール、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ピノー、クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】ダン、パトリック
【テーマコード(参考)】
4F100
4F205
【Fターム(参考)】
4F100AD11B
4F100AG00B
4F100AK46A
4F100AK46B
4F100AK46C
4F100AK47B
4F100AK53A
4F100AK53B
4F100AK53C
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
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4F100DC16C
4F100DG12B
4F100DG15B
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4F100DH01B
4F100DH01C
4F100DH02A
4F100DH02B
4F100DH02C
4F100DJ00A
4F100DJ00C
4F100EC032
4F100EC08B
4F100EC09B
4F100EH36A
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4F100EH36C
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4F100EJ422
4F100EJ82B
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4F100JA04C
4F100JA07A
4F100JA07C
4F100JB12A
4F100JB12C
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JK07B
4F100JL13A
4F100JL13C
4F205AA39
4F205AC05
4F205AD16
4F205HA12
4F205HA22
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA44
4F205HB01
4F205HF05
4F205HG01
4F205HK05
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した少なくとも1つの繊維強化材を含む強化材であって、前記1つまたは複数の熱可塑性多孔質層が、強化材の総質量の最大10%、好ましくは強化材の総質量の0.5~10%、より好ましくは強化材の総質量の2~6%を占める強化材に関し、前記熱可塑性多孔質層又は複数の前記熱可塑性多孔質層の各々が、いわゆる反応性熱可塑性ポリマーを含むか、又は1つもしくは複数の反応性熱可塑性ポリマーからなり、反応性熱可塑性ポリマーが、反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基を有する及び/又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を有することを特徴とする強化材に関する。また、本発明は、そのような強化材を製造するための方法、プリフォーム、そのような強化材を使用して複合部品を製造するための方法、ならびに、そのような強化材を使用する複合部品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性多孔質層(4、5)を繊維強化材(2)の面のうちの少なくとも1つに接合した少なくとも1つの繊維強化材(2)を含む強化材(1)であって、前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)(4、5)が、強化材(1)の総質量の最大10%、好ましくは強化材(1)の総質量の0.5~10%、より好ましくは強化材(1)の総質量の2~6%を占め、前記繊維強化材(2)が、強化糸(3)の一方向ウェブ、強化糸の織物、又はニードリングもしくは任意の他の物理的手段によって互いに結合された強化糸の一方向ウェブのスタックであって、存在する前記多孔質熱可塑性層(4、5)もしくは複数の前記多孔質熱可塑性層(4、5)の各々がいわゆる反応性熱可塑性ポリマーを含むか、又は1つもしくは複数の反応性熱可塑性ポリマーからなり、反応性熱可塑性ポリマーは、反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基を有する及び/又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を有することを特徴とする、強化材(1)。
【請求項2】
前記反応性熱可塑性ポリマーが、反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の、好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~1meq/gの範囲の、より好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~0.95meq/gの範囲の-NH官能基を有し、及び/又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の、好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~1meq/gの範囲の、より好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~0.95meq/gの範囲の-COOH官能基を有することを特徴とする、請求項1に記載の強化材(1)。
【請求項3】
前記強化材(1)内に存在する前記多孔質熱可塑性層(4、5)の前記反応性熱可塑性ポリマーが、100~140℃の範囲、好ましくは100~130℃の範囲の溶融温度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の強化材(1)。
【請求項4】
前記反応性熱可塑性ポリマーが、前記-NH官能基及び/又は-COOH官能基を有するポリアミド又はコポリアミドであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の強化材(1)。
【請求項5】
存在する前記熱可塑性多孔質層(4、5)が、多孔質層の0.15meq/gを超える量の-NH官能基及び/又は多孔質層の0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の強化材(1)。
【請求項6】
前記反応性熱可塑性ポリマーが、4000g/molを超える数平均分子量Mnを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の強化材(1)。
【請求項7】
前記繊維強化材(2)が、ガラス繊維、アラミド繊維、又は好ましくは炭素繊維からなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の強化材(1)。
【請求項8】
前記強化材(1)が、請求項1~6のいずれか一項に定義されるような熱可塑性多孔質層(4、5)を前記繊維強化材(2)の面のうちの少なくとも1つに接合した繊維強化材(2)に対応する強化糸(3)の一方向ウェブからなり、好ましくは、前記強化材(1)が、請求項1~6のいずれか一項に定義されるような熱可塑性多孔質層(4、5)を前記繊維強化材(2)の面の各々に接合した、前記繊維強化材(2)に対応する強化糸(3)の一方向ウェブからなり、強化糸(3)の前記一方向ウェブの面の各々に存在する前記熱可塑性多孔質層(4、5)が、同一であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の強化材(1)。
【請求項9】
前記熱可塑性多孔質層(4、5)が、高温粘着性を有し、前記熱可塑性多孔質層(4、5)の前記高温粘着性のおかげで、前記繊維強化材(2)と前記多孔質層との接合が達成されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の強化材(1)。
【請求項10】
前記強化材(1)が、異なる方向に配向された、繊維強化材(2)としての強化糸(3)の一方向ウェブのスタックからなり、請求項1~5のいずれか一項に定義されるような少なくとも1つの熱可塑性多孔質層(4、5)が、強化糸(3)の2つの一方向ウェブの間に介在し、及び/又は前記スタックの表面に存在していることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の強化材(1)。
【請求項11】
前記強化材(1)が、請求項1~5のいずれか一項に定義されるような熱可塑性多孔質層(4、5)を示すCPを有する一連の(CP/R)(CP)又は(CP/R/CP)に対応する層の重ね合わせからなり、Rが一方向ウェブであり、nが1以上の整数であり、mが0又は1であることを特徴とする、請求項10に記載の強化材(1)。
【請求項12】
強化糸(3)の前記一方向ウェブが、縫製、ニッティング、もしくはニードリングによって、互いに、又は前記少なくとも1つの多孔質熱可塑性層(4、5)と接合されていることを特徴とする、請求項10又は11に記載の強化材(1)。
【請求項13】
存在する前記多孔質熱可塑性層(4、5)が、多孔質フィルム、格子、粉末堆積物、織物、又は好ましくは不織布若しくはベールであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の強化材(1)。
【請求項14】
以下の逐次的な工程:
a1)繊維強化材(2)を提供する工程、
a2)いわゆる反応性熱可塑性ポリマーを含むか、又は1つもしくは複数の反応性熱可塑性ポリマーからなり、反応性熱可塑性ポリマーが反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基を有する、及び/又は反応性熱可塑性ポリマーが反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を有する、少なくとも1つの熱可塑性多孔質層(4、5)を提供する工程、ならびに
a3)前記繊維強化材と前記少なくとも1つの多孔質熱可塑性層(4、5)とを接合する工程、
を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の強化材(1)を作製する方法。
【請求項15】
工程a3)の前記接合が、前記少なくとも1つの多孔質熱可塑性層(4、5)を前記繊維強化材(2)に適用することによって達成され、前記適用に伴って、又は前記適用後、前記反応性熱可塑性ポリマーは、その軟化又は溶融を引き起こす加熱を施され、次いで冷却され、前記加熱が、好ましくは170℃未満、又は更には150℃未満、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲の温度で行われることを特徴とする、請求項14に記載の調製方法。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の1つ又は複数の強化材(1)から少なくとも部分的になるプリフォーム。
【請求項17】
エポキシ熱硬化性樹脂が、前記強化材(1)、請求項1~13のいずれか一項に記載のいくつかの強化材(1)のスタック、又は請求項16に記載のプリフォームに、射出又は注入されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの強化材(1)から複合部品を製造する方法。
【請求項18】
前記製造方法が、前記エポキシ熱硬化性樹脂が前記強化材もしくは前記スタックに射出又は注入されると、前記エポキシ樹脂の架橋及び前記複合部品の圧密化をもたらす温度Taへの加熱を含む、加熱処理工程を含み、その間に前記エポキシ樹脂が、前記熱可塑性多孔質層(4、5)の前記反応性熱可塑性ポリマー上に存在する-NH官能基及び/又は-COOH官能基の少なくとも一部と反応することを特徴とする、請求項17に記載の複合部品の製造方法。
【請求項19】
前記エポキシ樹脂のゲル化が前記加熱処理工程中に起こり、-NH官能基及び/又は-COOH官能基が、それのゲル化の前に、前記樹脂と反応することを特徴とする、請求項18に記載の複合部品の製造方法。
【請求項20】
前記温度Taが、前記少なくとも1つの多孔質熱可塑性層(4、5)の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも高いことを特徴とする、請求項17~19のいずれか一項に記載の複合部品の製造方法。
【請求項21】
前記温度Taが、前記少なくとも1つの多孔質熱可塑性層(4、5)の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度未満であり、好ましくは、エポキシ熱硬化性樹脂のゲル化が、それが加熱処理工程に単独で供された場合よりも早く起こることを特徴とする、請求項17~19のいずれか一項に記載の複合部品の製造方法。
【請求項22】
前記温度Taが、120~220℃の範囲、好ましくは160~220℃の範囲、より好ましくは170~190℃の範囲であり、典型的には180℃に等しいことを特徴とする、請求項17~21のいずれか一項に記載の複合部品の製造方法。
【請求項23】
前記エポキシ熱硬化性樹脂が、90℃の温度で1000mPa.s未満の粘度を有することを特徴とする、請求項17~22のいずれか一項に記載の複合部品の製造方法。
【請求項24】
前記製造方法が、前記エポキシ熱硬化性樹脂の注入又は射出の前に、前記強化材(1)の堆積又は成形を含み、好ましくは前記強化材(1)中に存在する前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層(4、5)の高温粘着性を利用し、好ましくは170℃未満、又は更には150℃未満、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲の温度で行われる加熱を実施することを特徴とする、請求項17~23のいずれか一項に記載の複合部品の製造方法。
【請求項25】
請求項17~24のいずれか一項に定義されるような製造プロセスによって得られる複合部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部品の作製のために適した強化材の技術分野に関する。より具体的には、本発明の主題は、射出されるか又は注入された樹脂と組み合わせて複合部品を製造するために適した強化材である。
【背景技術】
【0002】
複合部品又は物品の製造、すなわち一方では1つ又は複数の繊維強化材、特に一方向繊維ウェブタイプのものを含み、他方ではマトリックス(これは、ほとんどの場合、主に熱硬化性タイプであり、1つ又は複数の熱可塑性物質を含んでもよい)を含む製造は、例えば、いわゆる「直接」又は「LCM」(英語「Liquid Composite Molding」から)プロセスによって行うことができる。直接プロセスは、1つ又は複数の繊維強化材が、「乾燥」状態(すなわち、最終マトリックスなし)で処理され、樹脂又はマトリックスが、例えば、繊維強化材を含むモールドへの射出(英語「Resin Transfer Molding」からの「RTM」プロセス)によって、繊維強化材の厚みを介した注入(液体樹脂注入又は樹脂フィルム注入)によって、又は形状に連続的に適用された繊維強化材の個別の層のそれぞれにローラ若しくはブラシを使用した手動コーティング/含浸によって、別々に処理されるという事実によって定義される。複合部品の製造、特に航空産業では、大量生産率が高くなり得る。例えば、単通路航空機の製造に関して、航空契約業者は、月に数十機の航空機を製造できることを望んでいる。注入又は射出成形などの直接プロセスは、この要件を満たすために非常に重要である。
【0003】
RTM、LRI又はRFIプロセスは、一般に、最初に所望の完成品の形状の繊維プリフォーム又はスタックを製造し、次いでこのプリフォーム又はスタックに樹脂を含浸させてマトリックスを形成することを含む。樹脂は、温度圧力差によって射出又は注入され、次いで、必要とされる樹脂の全量がプリフォームに含まれると、アセンブリは、重合/架橋サイクルを実施するためにより高い温度にされ、それによって硬化をもたらす。
【0004】
自動車、航空及び船舶産業で使用される複合部品は、特に機械的特性に関して特に厳しい要件を受ける。燃料を節約し、部品のメンテナンスを容易にするために、航空産業は、多くの金属材料をより軽量の複合材に置き換えてきた。
【0005】
特に射出又は注入によって部品を製造するために使用される樹脂は、エポキシ(エポキシドとしても知られる)などの熱硬化性樹脂であり得る。これらの樹脂の主な欠点は、それらの脆性であり、その結果、製造された複合部品の耐衝撃性が低くなる。したがって、従来技術では、繊維強化材層を多孔質熱可塑性ポリマー層、特に熱可塑性繊維の不織布(ベールとしても知られる)と接合することが提案されている。そのような解決策は、特に以下の文献:EP1125728、US6,828,016、US2010/003881、WO00/58083、WO2007/015706、WO2006/121961、US6,503,856、US2008/7435693、WO2010/046609、WO2010/061114、EP2547816、US2008/0289743、US2007/8361262、US2011/9371604及びWO2011/048340で提案されている。
【0006】
一般に非クリンプファブリック(non-crimp fabric、NCF)と呼ばれる多軸強化材も、直接プロセスに理想的に適している。いくつかの配向に配置され、互いに縫い付けられた強化繊維(特に、炭素、ガラス又はアラミド)のいくつかの一方向ウェブのスタックからなるこのような多軸強化材は、特にEP2547816及びWO2010/067003に記載されている。ここでもまた、多孔質ポリマー層は通常、製造された複合部品の機械的特性を改善するためにNCFに挿入される。
【0007】
しかしながら、これらの解決策にはいくつかの欠点がある。使用される多孔質熱可塑性層は、通常、特に150℃を超える高い融点を有し、これにより、これらの強化材の製造プロセスが高価になる。更に、多孔質層を構成する熱可塑性材料は、複合部品の製造中に射出される熱硬化性樹脂と相互作用することがあり、これは多孔質層を構成する熱可塑性材料の融点が低いほど顕著である。
【0008】
とりわけ、これらの多孔質熱可塑性層は、通常、複合部品の硬化中に樹脂中で溶融し得る。その結果、熱可塑性多孔質層は熱硬化性樹脂の局所的な化学量論を変化させることがあり、繊維強化材が熱硬化性樹脂に含浸されたときに、それは繊維強化材に広がり得る。これは、得られる部品の耐熱特性の変化をもたらすので、回避したいことである。したがって、熱可塑性多孔質層がそのまま維持されるか又はそれの変化が生じるかに応じて、熱可塑性多孔質層の溶融温度より低い又は高い温度で樹脂がゲル化し、得られる部品の異なる最終特性をもたらすことを可能にする適切な硬化サイクル(部品の硬化温度までの温度上昇速度及び硬化温度での保持時間として定義される)を見出すことが必要である。
【0009】
最後に、従来技術で提案されている多孔質熱可塑性層の別の欠点は、温度への長時間の暴露に使用される熱可塑性樹脂の感度である。
【0010】
これらの欠点を克服する試みにおいて、従来技術では他の解決策が提案されており、より低コストでより短い時間で繊維強化成形工程を実行できるようにするために、本出願人は、熱可塑性多孔質層の代わりに、参照Hexcel Primetex 43098 S 1020 S E01 1Fの下で開発された織物に使用されるものなどのエポキシ粉末を使用することを提案している。軟化温度が約100℃のエポキシ粉末を堆積(デポジット)させることによって得られるこのような熱硬化性層は、低温プリフォームを行うことができるため、複合部品をより迅速かつより安価に、特により低温で製造することを可能にする。それにもかかわらず、そのような技術は、使用される自動分配装置の分配ヘッドを詰まらせる傾向がある粉末の使用に起因して実用的な問題を提起し、とりわけ、機械的強度に関して満足できる特性を達成することを可能にしない。
【0011】
特許出願WO2019/102136において、本出願人はまた、多孔質熱可塑性層を含む強化材を使用するときに観察される機械的性能に対する有益な効果を保持するために、繊維強化材層を照射下で部分的に架橋された多孔質熱可塑性ポリマー層と接合することを提案した。特に、その部分的に架橋された箇所のために、多孔質層は、熱硬化性樹脂中で部分的にのみ溶融可能であり、又は完全に溶融不可能でさえあり、したがって、温度及び耐湿性の変化を回避する。更に、照射下で部分的に架橋されたこのような多孔質熱可塑性ポリマー層の使用は、130℃未満、好ましくは120℃未満の温度で、複合部品の製造中に強化材の製造プロセス及びその成形を実施する可能性を提供する。しかしながら、熱可塑性材料を部分的に架橋するために照射プロセスを使用すると、プロセス全体が長くなり、コストが増加する。
【0012】
本発明の目的は、特にRTMタイプの直接プロセスによる複合部品の製造のための新しい強化材を提供することであり、これにより、特に航空宇宙産業及び航空産業で必要とされる満足のいく機械的性能、及び温度応力に対する良好な耐性を、WO2019/102136で以前に提案された従前の解決策によってもたらされる技術的制約なしに達成することが可能になる。
【発明の概要】
【0013】
発明の目的
本発明は、熱可塑性多孔質層を、繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合(結合)した少なくとも1つの繊維強化材を含む強化材であって、前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)が、強化材の総質量の最大10%、好ましくは強化材の総質量の0.5~10%、より好ましくは強化材の総質量の2~6%を占める強化材に関し、存在する前記熱可塑性多孔質層又は複数の前記熱可塑性多孔質層の各々が、いわゆる反応性熱可塑性ポリマーを含むか、又は1つもしくは複数の反応性熱可塑性ポリマーからなり、反応性熱可塑性ポリマーが、反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基を有する及び/又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を有する。
【0014】
本発明の文脈において、強化材中に存在する多孔質層の反応性熱可塑性ポリマー上に十分な量で存在する反応性-NH官能基及びCOOH官能基のために、それは硬化中にエポキシ樹脂と制御された様式で反応することができ、これにより、熱可塑性層中で一定の結着性を維持することが可能になり、したがって、温度暴露に対する感度が低下し、並びに航空宇宙産業で使用される材料の温度特性が改善される。
【0015】
有利には、本発明による強化材において、前記反応性熱可塑性ポリマーが、反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の、好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~1meq/gの範囲の、より好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~0.95meq/gの範囲の-NH官能基を有し、及び/又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の、好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~1meq/gの範囲の、より好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~0.95meq/gの範囲の-COOH官能基を有する。
【0016】
好ましい実施形態によれば、強化材内に存在する前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)の前記反応性熱可塑性ポリマーは、170℃未満、又は更には150℃未満の溶融温度を有し、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲である。
【0017】
実際、多孔質層の熱可塑性ポリマーの射出又は注入された樹脂との反応は、低い溶融温度を有する多孔質層の使用を可能にし、結果として、強化材の製造中及び成形中にも低温の使用を可能にし、したがってコスト及び時間の観点からの節約につながる。更なる利点は、多孔質層の反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度を170℃未満、又は更には150℃以下にすることができ、部品を製造するために(乾燥材料の調製から、その堆積及びプリフォームを通して)最終的に必要とされる樹脂の添加前の製造プロセスのすべての段階を170℃未満、更にはより良好には150℃未満、又は更にはそれを下回る温度で行うことができることである。より低い融点(溶融温度)を有する反応性熱可塑性ポリマーを含むこのような多孔質層は、(単数または複数の)多孔質層と(単数または複数の)繊維強化材とを接合する強化材が、自動製造プロセス、特に繊維配置及びフラットレイドプリフォームの熱成形に適合する温度で製造されることを可能にする。
【0018】
したがって、本発明の第二の目的は、耐衝撃性能に対する熱可塑性多孔質層を使用する有益な効果と、樹脂の注入又は射出前の製造プロセスにおけるすべての工程を170℃未満、又は更には150℃未満もしくは140℃未満の温度で実施する可能性とを組み合わせることであり、これらの温度は場合によっては100~130℃、又は更には80~140℃もしくは80~130℃の範囲でさえある。
【0019】
本発明の文脈において、強化材において、反応性熱可塑性ポリマーは、前記-NH及び/又は-COOH官能基を有するポリアミド又はコポリアミドであることが特に好ましい。
【0020】
特に、存在する前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、多孔質層の0.15meq/gを超える量の-NH官能基及び/又は多孔質層の0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を含む。
【0021】
特定の実施形態によれば、反応性熱可塑性ポリマーは、4000g/molを超える数平均分子量Mnを有する。
【0022】
本発明による強化材では、繊維強化材は異なる形態をとることができる。いくつかの実施形態では、繊維強化材は、強化糸の一方向ウェブ、強化糸の織物、又は縫製若しくはニードリングなどの任意の他の物理的手段によって互いに結合された強化糸の一方向ウェブのスタックである。
【0023】
繊維強化材は、特に、ガラス繊維、アラミド繊維、又は好ましくは炭素繊維からなることができる。
【0024】
特定の実施形態によれば、本発明による強化材は、本発明の文脈内で定義されるような熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した繊維強化材に対応する強化糸の一方向ウェブからなり、好ましくは、前記繊維強化材が、本発明の文脈内で定義される熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のそれぞれに接合した繊維強化材に対応する強化糸の一方向ウェブからなり、強化糸の一方向ウェブの面のそれぞれに存在する熱可塑性多孔質層が、同一である。
【0025】
本発明による強化材の前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、高温粘着性を有することができ、前記熱可塑性多孔質層の高温粘着性のおかげで、繊維強化材と前記多孔質層との接合を達成することができる。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、本発明による強化材は、異なる方向に配向された繊維強化材としての強化糸の一方向ウェブのスタックからなり、本発明の文脈内で定義されるような少なくとも1つの熱可塑性多孔質層が、強化糸の2つの一方向ウェブの間に介在し、及び/又はスタックの表面に存在する。そのようなスタックは、配列(CP/R)(CP)又は(CP/R/CP)に対応する層の重ね合わせからなってよく、CPは、本発明の文脈内で定義されるような多孔質熱可塑性層を示し、Rは一方向ウェブであり、nは1以上の整数であり、mは0又は1である。このようなスタックでは、強化糸の一方向ウェブは、縫製、ニッティング又はニードリングによって、互いに、又は少なくとも1つの熱可塑性多孔質層と接合させることができる。
【0027】
本発明による強化材では、存在する前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、特に多孔質フィルム、格子、粉末堆積物(デポジション)、織物、又は好ましくは不織布若しくはベールである。
【0028】
本発明の別の目的は、以下の逐次的な工程:
a1)繊維強化材を提供する工程と、
a2)いわゆる反応性熱可塑性ポリマーを含むか、又は1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマーからなり、反応性熱可塑性ポリマーが反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基を有する、及び/又は反応性熱可塑性ポリマーが反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を有する、少なくとも1つの多孔質熱可塑性層を提供する工程と、
a3)繊維強化材と少なくとも1つの多孔質熱可塑性層とを接合する工程と、
を含むことを特徴とする、本発明による強化材を調製するプロセスである。
【0029】
そのような調製プロセスにおいて、工程a3)の接合は、有利には、少なくとも1つの多孔質熱可塑性層を繊維強化材に適用することによって達成され、前記適用は、前記反応性熱可塑性ポリマーの加熱を伴うか、又は適用に続いて加熱してその軟化又は溶融を引き起こし、次いで冷却し、前記加熱は、好ましくは170℃未満、又は更には150℃未満、より好ましくは80~140℃、特に100~140℃の範囲、好ましくは80~130℃、特に100~130℃の範囲の温度で行われる。もちろん、熱可塑性多孔質層の熱可塑性ポリマー(単一種または複数種)は、そのような温度で軟化又は溶融するように選択される。
【0030】
本発明の別の目的は、本発明による1つ又は複数の強化材から少なくとも部分的になるプリフォームである。
【0031】
本発明の別の目的は、本発明による少なくとも1つの強化材から複合部品を製造するプロセスであって、エポキシ熱硬化性樹脂が、本発明による前記強化材、本発明によるいくつかの強化材のスタック、又は本発明によるプリフォームに射出又は注入されるプロセスに関する。
【0032】
有利には、本発明による複合部品を製造するプロセスは、エポキシ熱硬化性樹脂が前記強化材又は前記スタックに射出又は注入されると、エポキシ樹脂の架橋及び複合部品の圧密化をもたらす温度Taへの加熱を含む加熱処理工程を含み、その間にエポキシ樹脂は、熱可塑性多孔質層(単数または複数)の反応性熱可塑性ポリマー上に存在する-NH官能基及び/又は-COOH官能基の少なくとも一部と反応する。
【0033】
特に、エポキシ樹脂のゲル化は、加熱処理工程中に起こり、-NH官能基及び/又は-COOH官能基は、前記樹脂がゲル化する前にその樹脂と反応する。
【0034】
本発明による複合部品の製造プロセスの第1の変形例によれば、前記温度Taは、前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度より高い。特に、前記温度Taへの加熱は、加熱処理工程の間に5分~2時間行われる。ほとんどの場合、加熱処理工程は、特に0.1~10℃/分の速度で、前記温度Taまでの温度上昇段階を含む。好ましくは、エポキシ熱硬化性樹脂の粘度は、前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融とエポキシ熱硬化性樹脂の架橋の開始との間で高まる。より厳密には、高まる粘度は、熱可塑性多孔質層の反応性ポリマーとエポキシ樹脂との間の反応から生じる系の粘度であると言うことができる。
【0035】
第1の実施変形例によれば、加熱処理工程中に、エポキシ熱硬化性樹脂のゲル化が、それが単独で加熱処理工程に供された場合よりも早く起こる。特に、温度Taへの加熱時には、5分~60分の加熱時間後にエポキシ熱硬化性樹脂のゲル化が生じる。
【0036】
温度Taが前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも高い、本発明による複合部品の製造プロセスの第1の変形例によれば、熱硬化性樹脂は、好ましくは、150℃より高いガラス転移温度Tgを有する。
【0037】
本発明による複合部品の製造プロセスの第2の変形例によれば、前記温度Taは、前記熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度未満であり、前記温度Taでの加熱が行われる。特に、前記温度Taでの5分~5時間の加熱は、加熱処理工程中に行われる。好ましくは、熱硬化性エポキシ樹脂のゲル化は、それが加熱処理工程に単独で供された場合よりも早く起こる。ここでも、加熱処理工程は、一般に、特に0.1~10℃/分の速度で、前記温度Taまでの温度上昇段階を含む。
【0038】
温度Taが前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度未満である、本発明による複合部品の製造プロセスの第2の変形例によれば、熱硬化性樹脂は、好ましくは、少なくとも100℃に等しい、有利には100~150℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する。
【0039】
また有利には、温度Taが前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度未満である、本発明による複合部品の製造プロセスの第2の変形例によれば、前記反応性熱可塑性ポリマーは120℃より高い溶融温度を有する。
【0040】
本発明による複合部品を製造するために使用される変形例が何であれ、温度Taは、120~220℃の範囲、好ましくは160~220℃の範囲、より好ましくは170~190℃の範囲であり、典型的には180℃である。
【0041】
有利には、本発明による複合部品を製造するためのプロセスにおいて、エポキシ熱硬化性樹脂は、90℃の温度で1000mPa.s未満の粘度を有する。
【0042】
加えて、本発明による複合部品を製造するためのプロセスは、前記エポキシ熱硬化性樹脂の注入又は射出の前に、好ましくは前記強化材(複数可)中に存在する前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の高温粘着性を利用し、好ましくは170℃未満、又は更には150℃未満、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲の温度で行われる加熱を実施する、前記強化材(複数可)の堆積又は成形を含んでもよい。
【0043】
本発明はまた、本発明の文脈内で定義されるような製造プロセスによって得られる複合部品を包含する。
【0044】
したがって、本発明は、熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した少なくとも1つの繊維強化材を含む少なくとも1つの強化材が含まれる熱硬化性エポキシマトリックスを含む複合部品に関し、前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、強化材の総質量の最大で10%、好ましくは強化材の総質量の0.5~10%、より好ましくは強化材の総質量の2~6%を占める。前記複合部品では、熱可塑性多孔質層(単数または複数)内に存在する熱可塑性ポリマーと熱硬化性エポキシマトリックスとの間に共有結合が存在し、前記共有結合は、前記熱可塑性ポリマー及びエポキシ樹脂上に存在した-NH官能基及び/又は-COOH官能基の反応から生じる。
【0045】
定義
「多孔質層」とは、樹脂などの液体が、プリフォーム又は複合部品の作製中にそこへ射出又は注入されるときに材料を通過することを可能にする透過性層を意味する。特に、そのような層の開口率は、30~99%、好ましくは40~70%の範囲である。そのような多孔質層を特徴付けるための従来のパラメータであるそのような開口率は、当業者に知られている任意の技法を使用して、特にWO2011/086266に記載されている方法を使用して測定することができる。多孔質層の例として、多孔質フィルム、織り交ぜ糸によって作られた格子、粉末堆積物によって得られた層、織物及び不織布が挙げられる。しかしながら、本発明の文脈において、記載された方法が何であれ、ベールとしても知られる不織布の形態の多孔質層を使用することが好ましく、これにより、特に十分な機械的特性を有する複合部品を製造することが可能になる。
【0046】
多孔質層は、熱可塑性ポリマーを含有し、有利には、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのブレンドから本質的に又は単独でなるので、熱可塑性であると言われる。多孔質層がいくつかのポリマーを含む場合、これらは、層内、特に多孔質層を形成する多孔質フィルム、粉末、又は繊維内の混合物中に存在し得る。多孔質層を形成するために、コア及びコアの周りのシーズを有する繊維を使用することも可能であり、コア及びシーズは異なるポリマーにて存在し、特に、本発明の文脈内で定義される1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマーはシーズを形成する。多孔質層はまた、本発明の文脈内で定義される1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマー中に、特に多孔質層を形成するポリマー(単一種または複数種)の残りの部分よりも低い融点を有する熱可塑性結合剤を含んでもよい。多孔質層は、熱可塑性ポリマー又はこのようなポリマーのブレンドが熱可塑性多孔質層の質量の少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%を占める場合、熱可塑性ポリマー又はこのようなポリマーのブレンドから本質的になると言われる。本明細書では、熱可塑性多孔質層を簡略化のために、単に「多孔質層」と称する場合がある。特に、多孔質層は、反応性熱可塑性ポリマー、特にポリエステル、コポリエステル、ポリアミド-イミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリエーテル、ポリアミド及びコポリアミドから選択され、反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基及び/又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を有する反応性熱可塑性ポリマー、又はそのようなポリマーの混合物から本質的に又は単独でなってもよい。したがって、そのようなポリマーは、反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基のみ、又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基のみ、又は反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基及び反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基のいずれかを含むことができる。
【0047】
本発明の文脈において、反応性熱可塑性ポリマーのmeq/gに言及する場合、反応性熱可塑性ポリマーの質量は、前記ポリマー上に存在する反応性官能基を含む。
【0048】
本発明の文脈において、簡単にするために、特にポリエステル、コポリエステル、ポリアミド-イミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリエーテル、ポリアミド及びコポリアミドから選択され、反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基及び/又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量-COOH官能基を有する反応性熱可塑性ポリマーは、単に反応性熱可塑性ポリマーと呼ぶことができる。したがって、上記の反応性熱可塑性ポリマーは、反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基を有するか、若しくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を有するか、又は反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基及び反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基の両方を有することができる。本発明の文脈で使用される反応性熱可塑性ポリマーでは、遊離官能基又は反応性官能基として説明することができる-NH及び/又は-COOH官能基は、熱可塑性多孔質層の結着性又は特定の結着性を維持するか、又は複合部品の後続の製造中に注入又は射出される樹脂中のその移動度を少なくとも制限するために、複合部品の製造中に使用されるエポキシ樹脂との共有結合反応を達成するのに十分な量で前記熱可塑性ポリマー上に存在する。このようにして、得られる複合部品の機械的特性に悪影響はない。
【0049】
特に、本発明の文脈において使用される反応性熱可塑性ポリマーは、反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の、特に反応性熱可塑性ポリマーの0.22meq/g以上、0.25meq/g以上、0.30meq/g以上又は0.40meq/g以上の量の、好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~1meq/gの範囲の、より好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~0.95meq/gの範囲の、とりわけ反応性熱可塑性ポリマーの0.20~0.60meq/gの範囲の、反応性熱可塑性ポリマーの0.20~0.50meq/gの範囲の、又は更により好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.22~0.46meq/gの範囲の遊離-COOH官能基を含む。特に、本発明の文脈において使用される反応性熱可塑性ポリマーは、反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の、特に反応性熱可塑性ポリマーの0.25meq/g以上、0.30meq/g以上又は0.34meq/g以上の量の、好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~1meq/gの範囲の、より好ましくは0.20~0.95meq/gの範囲の、特に反応性熱可塑性ポリマーの0.20~0.60meq/gの範囲の、反応性熱可塑性ポリマーの0.30~0.50meq/gの範囲の、反応性熱可塑性ポリマーの0.30~0.40meq/gの範囲の、又は更により好ましくは、反応性熱可塑性ポリマーの0.32~0.36meq/gの範囲の遊離-NH官能基を含む。前記量の-COOH又は-NH官能基は、反応性熱可塑性ポリマー上に単独で又は任意の可能な組み合わせで一緒に存在することができる。
【0050】
多孔質層が、別のいわゆる追加の熱可塑性ポリマーとブレンドされた1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマーから本質的に又は単独でなることも可能である。この場合、好ましくは、反応性熱可塑性ポリマー(単一種または複数種)の質量は、熱可塑性多孔質層の総質量の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも70%を表す。反応性熱可塑性ポリマー以外のポリマーの例としては、ポリアミド、コポリアミド、ポリエステル、コポリエステル、ポリアミド-イミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、及び芳香族ポリエーテル(-NH若しくは-COOH官能基を含まないか、又は本発明の文脈で想定されるものよりも少ない量でそのような官能基を含む)が挙げられる。
【0051】
前記追加の熱可塑性ポリマーは、170℃未満、又は更には150℃未満、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲の溶融温度を有し得る。そのような場合、有利には、反応性多孔質層は、本発明の文脈において定義されるような少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%の1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマーからなる。
【0052】
170℃未満、又は更には150℃未満、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲の溶融温度を有する、1つ又は複数のいわゆる追加の熱可塑性ポリマーで作成されたコアを有する繊維を使用することも可能であり、前記コアはシーズによって取り囲まれており、本発明の文脈内で定義された1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマーがシーズを構成する。前記追加の熱可塑性ポリマーはまた、170℃超、又は更には180℃超、好ましくは180~220℃の範囲の溶融温度を有し得る。そのような場合、有利には、本発明の文脈内で定義されるような反応性熱可塑性ポリマー(単一種または複数種)は、結合剤として機能するために、特に熱可塑性多孔質層を繊維強化材に結合するために多孔質層内に存在してもよく、本発明の文脈内で定義されるような反応性熱可塑性ポリマー(単一種または複数種)は、多孔質層内により少量で、特に多孔質層の質量の10~30%に相当する量で存在してもよい。
【0053】
本発明の文脈において、多孔質層を構成するポリマー材料は、好ましくは反応性熱可塑性ポリマー又はそのような反応性熱可塑性ポリマーのブレンドであり、1つ又は複数のこれらのポリマーと別の熱可塑性ポリマーとのブレンドではない。
【0054】
本発明の文脈において、及び実施変形例が何であれ、反応性熱可塑性ポリマーは、好ましくはポリアミド又はコポリアミドであり、反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基及び/又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を有し、特に、反応性熱可塑性ポリマーのより一般的な説明において先に指定された量の-NH官能基及び/又は-COOH官能基を有する。
【0055】
本発明の文脈で使用される反応性熱可塑性ポリマーは、複合部品の製造に従来使用されているエポキシ熱硬化性樹脂と反応することを可能にするのに十分な量の反応性官能基を有する。実施例から明らかになるように、そのような反応は、得られた複合部品に特に有利な特性を付与すること、特に温度に対する耐久性及び耐湿性を改善することを可能にする一方で、航空機及び航空宇宙産業向けの複合部品にとって重要な満足のいく機械的特性を保持する。
【0056】
存在する反応性-COOH官能基又は-NH官能基の量は、電位差滴定によって評価することができる。-COOH官能基の量は、アルコール溶液中のテトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド((COH)を用いた多孔質層の酸塩基アッセイによって測定され、-NH官能基の量は、実施例に詳述されているように、酢酸中の過塩素酸(HClO)を用いたアッセイによって測定される。結果をmeq/g(ミリ当量/グラム)で表す。
【0057】
本発明の文脈において使用される反応性熱可塑性ポリマーは、有利にはポリアミド又はコポリアミドである。特に、反応性熱可塑性ポリマーは、本発明の文脈内で目標とされる官能基の量を達成するように、分岐鎖の末端に-NH又は-COOH官能基を有する分岐ポリアミド又はコポリアミドの形態である。特に、ポリアミド6(ポリカプロラクタム)、ポリアミド6.6(ナイロン)、ポリアミド6.10(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド6.12(ポリヘキサメチレンドデカンジアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリラウロアミド)が挙げられる。有利には、反応性熱可塑性ポリマーは、コポリアミドファミリー、特にカプロラクタム及び/又はラウリルラクタム及び/又はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とのコポリマーに属する。
【0058】
このようなポリマーは、特に、Platamid(登録商標)HX2598及びH2651の商標名で、ARKEMA Franceによって、また、Platamid(登録商標)HX2598及びH2651の商標名で、Evonik Industries AG(ドイツ)によって、Solvay(ベルギー)によって、及びEMS-Grivory(スイス)によって市販されている。
【0059】
従来、EP3197974、FR2883878及びUS2010/0032629に記載されているように、ポリアミド又はコポリアミドは、ラクタム、アミノカルボン酸、ジアミン又はトリアミン、ジカルボン酸などのいくつかの原料から得ることができる。コポリアミドの製造には、これらの生成物の少なくとも2つの選択が必要である。使用されるジアミン及びジカルボン酸の量は、ポリアミド又はコポリアミド中に存在するアミン及び酸官能基を調節する。
【0060】
ラクタムの例は、置換され得る、主環上に3~12個の炭素原子を有するものである。例としては、カプロラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム、アミロラクタムなどが挙げられる。
【0061】
アミノカルボン酸としては、アミノ-ウンデカン酸、アミノドデカン酸等が挙げられる。
【0062】
ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、セラフタル酸などが挙げられる。
【0063】
ジアミンの例としては、6~12個の炭素原子を有するもの、アリール及び飽和環が挙げられる。例えば、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。
【0064】
コポリアミド結合の例としては、カプロラクタム及びラウリルラクタム(6/12)、カプロラクタム、ラウリルラクタム及びアミノ11-ウンデカン酸(6/11/12)、カプロラクタム、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミン(6/66)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミン(6/12/66)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、アミノ11-ウンデカン酸、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミン(6/66/11/12)が挙げられる。
【0065】
特に、所望の数の反応性官能基を調整して達成するために、(-COOH官能基の導入のための)アジピン酸などの酸及び/又は(アミン官能基の導入のための)ヘキサメチレンジアミンなどのアミンが適切な量で作用する。
【0066】
より一般的には、すべての熱可塑性ポリマーについて、アミン-NH又は酸-COOH官能基を導入するための好ましい解決手段はプラズマ処理である。このような処理の実施は、特に以下の文献に記載されている:RFプラズマ処理によるポリマーへの化学基のグラフト化(Grafting of Chemical Groups onto Polymers by Means of RF Plasma Treatments):生物医学応用技術(a Technology for Biomedical Applications)、P.Favia、R.d’Agostino、F.Palumbo、J.Phys.IVフランス07(1997)C4-199-C 4-208;刊行物プラズマグラフト化(Plasma grafting)-単官能性表面を得る方法(a method to obtain monofunctional surfaces)、C.Oehr、M.Muller、B.Elkin、D.Hegemann、U.Vohrer、表面とコーティング技術(Surface and Coatings Technology)116-119巻、1999年9月、25-35ページ;US2021/0086226;又はWO2019/243631。
【0067】
所望の数の-NHアミン及び/又は-COOH酸官能基を有する、又は所望の数のアミン及び/又は酸官能基がプラズマ処理によって調整又は導入され得る熱可塑性ポリマーが市販されている。
【0068】
ポリエステル及びコポリエステルの場合、そのようなポリマーは、Evonik Industries AG(ドイツ)、Eastmann Chemical Company(USA)、Arkema(フランス)、EMS-Grivory(スイス)及び東洋紡株式会社(日本)によって市販されている。
【0069】
ポリアミド-イミドの場合、例えば、そのようなポリマーはSolvay(ベルギー)、東洋紡株式会社(日本)及びMitsubishi Chemical(スイス)によって市販されている。
【0070】
ポリエーテルスルホンの場合、そのようなポリマーは、BASF(ドイツ)、住友化学株式会社(日本)及びEnsinger Plastics(ドイツ)によって市販されている。
【0071】
ポリイミドの場合、そのようなポリマーは、DuPont(USA)、Evonik Industries AG(Germany)及びHuntsmann Corporation(USA)などの会社によって市販されている。
【0072】
ポリエーテルケトンの場合、そのようなポリマーは、Arkema(フランス)、Solvay(ベルギー)、Evonik Industries AG(ドイツ)及びVictrex(英国)によって市販されている。
【0073】
最後に、ポリメチルメタクリレートの場合、そのようなポリマーはEvonik Industries AG(ドイツ)及び株式会社クラレ(日本)によって市販されている。
【0074】
多孔質層中の反応性熱可塑性ポリマーは、非晶質ポリマーであり得るが、好ましくは半結晶性ポリマーである。半結晶性ポリマーは、その融点より低いガラス転移温度を有し、これにより軟化しやすく、したがって繊維強化材に結合しやすく、又は本発明に従う強化材をプリフォーム及び/もしくは堆積(デポジット)することが容易になる。更に、半結晶性ポリマーは、特に、鎖が整列した組織化された分子構造を有し、分子構造が組織化されていない非晶質ポリマーよりも優れた機械的特性を与える。
【0075】
熱可塑性ポリマー又は多孔質層の溶融温度について説明するにあたり、10℃/分の温度上昇での示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)によって測定されるピーク溶融温度について述べる。
【0076】
「多孔質層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した繊維強化材」とは、繊維強化材がその面の1つに適用された少なくとも1つの多孔質層に結合していることを意味する。特に、この結合は、その熱可塑性に起因する多孔質層の高温粘着性のおかげで、接着結合によって達成される。特に、いくつかの繊維強化材及びいくつかの多孔質層を含むスタックの場合、この結合を、縫製又はニッティングタイプの機械的結合によって、又は任意の他の物理的手段(ニードリング等)によって完成又は置き換えることも可能である。
【0077】
本発明による強化材は、複合部品の製造のために、結合剤、特に熱硬化性樹脂と接合されることが意図されているため、「乾燥」と説明することができる。また、本発明による強化材中に存在する多孔質層(単数または複数)の質量は、強化材の総質量の10%を超えず、好ましくは本発明による強化材の総質量の0.5~10%、より好ましくは2~6%を占める。
【0078】
より一般的には、本発明による強化材は、いわゆるドライ材料であり、すなわち、樹脂、特に熱硬化性エポキシ系樹脂と接合した複合部品を製造するのに適している。本発明による強化材は、強化材の総質量の最大10%、好ましくは強化材の総質量の0.5~10%、より好ましくは強化材の総質量の2~6%を占めるポリマー部分を含む。このポリマー部分は、本発明による強化材中に存在する多孔質熱可塑性層(単数または複数)を含むか、又はそれからなる。
【0079】
特に、本発明によれば、強化材中に存在する熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、特に本発明の文脈内で定義されるポリエステル、コポリエステル、ポリアミド-イミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリエーテル、ポリアミド及びコポリアミドから選択される1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマー、好ましくは本発明の文脈内で定義されるようなポリアミド及びコポリアミドから選択される1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマーからなる。
【0080】
「ベール」とも呼ばれ得る「不織布」という用語は、一般的に、ランダムに配置された連続繊維又は短繊維のセットを意味するように解釈される。これらの不織布又はベールを、例えばドライレイド、ウェットレイド又はスパンレイド法によって、例えば押出(「スパンボンド」)、メルトブローン押出(「メルトブローン」“Meltblown”)、繊維化スプレーアプリケータ(「メルトブローン」)又は溶媒スピニング(「エレクトロスピニング」、「フラッシュスピニング」、「フォーセスピニング」)によって製造することができ、これらはすべて当業者に周知である。特に、不織布を構成する繊維は、0.5~70μm、好ましくは0.5~20μmの範囲の平均直径を有することができる。不織布は、短繊維、又は好ましくは連続繊維からなることができる。短繊維不織布の場合、繊維は、例えば、1~100mmの間の長さであり得る。不織布は、ランダムな、好ましくは等方性の被覆を提供する。
【0081】
有利には、本発明による強化材に存在する不織布又は不織布(複数)は、0.2~20g/mの範囲の単位面積当たりの質量を有する。本発明による強化材中の不織布の厚みは、繊維強化材との接合の態様に従って変化し得る。好ましくは、本発明による強化材に存在する不織布又は不織布のそれぞれは、不織布の高温粘着性を利用するために、熱及び圧力を加えることによって接合が行われる場合、繊維強化材との接合後に0.5~50ミクロン、好ましくは3~35ミクロンの厚みを有する。接合が縫製、ニッティング又はニードリングなどの機械的手段によって達成される場合、不織布の厚みは、50ミクロン超、特に50~200ミクロンの範囲であり得る。これらの不織布の特性は、WO2010/046609に記載されている方法に従って測定することができる。
【0082】
「繊維強化材」とは、特に強化繊維の織物又は一方向ウェブの形態であり得る強化繊維の層を意味する。強化繊維は、一般に、ガラス、炭素、アラミド又はセラミック繊維であり、炭素繊維が特に好ましい。
【0083】
一般的に、この分野において、「一方向ウェブ又は強化繊維の層」という用語は、互いに実質的に平行に延びるように、同じ方向に堆積された強化繊維又は糸から単独になるか、又はほぼ単独になるウェブを指す。強化糸のウェブの場合、それは、平行又は実質的に平行な全般的な方向に延びる。特に、本発明の特定の実施形態によれば、一方向ウェブは、強化糸又は繊維を編み込む緯糸、又は別の層、特に熱可塑性多孔質層と接合する前に一方向ウェブに凝集力を与えることを目的とする継ぎ目さえも含まない。特に、これにより、一方向ウェブ内のいかなるうねりも回避される。強化繊維の一方向ウェブは、単糸からなることができるが、より頻繁には、並んで配置されたいくつかの整列した糸からなる。糸は、ウェブの表面全体にわたって全体的又はほぼ全体的な被覆を提供するように配置される。この場合、中間材料を構成するウェブの各々において、糸は、好ましくは、ギャップ又は重なりを最小限にするか、又は更には回避するように縁部間に配置される。
【0084】
一方向ウェブでは、強化糸(単数または複数)は、好ましくはポリマー結合剤と接合しておらず、したがって乾燥していると説明されている、すなわち、強化糸は、熱可塑性多孔質層(単数または複数)と接合する前に含浸、コーティングされておらず、いかなるポリマー結合剤とも接合していない。しかしながら、強化繊維は、通常、重量で最大2%の標準的なサイジング率を特徴とする。これは、直接プロセスを使用した樹脂拡散による複合部品の製造に特に適している。一方向ウェブでは、強化糸(単数または複数)は撚糸とすることができる。
【0085】
本発明の文脈で使用される繊維強化材を構成する繊維は、好ましくは連続的である。繊維強化材は、一般に、いくつかの糸からなる。
【0086】
特に、炭素糸は一組のフィラメントからなり、一般に1,000~80,000フィラメント、有利には12,000~24,000フィラメントを含む。本発明の文脈内で特に好ましいのは、1~24K、例えば3K、6K、12K又は24K、好ましくは12及び24Kの炭素糸である。例えば、本発明の文脈で使用される繊維強化材内に存在する炭素糸は、60~3800Tex、好ましくは400~900Texのタイター(titre)を有する。繊維強化材は、任意の種類の炭素糸、例えば、引張弾性率が220~241GPaであり、破断時の引張応力が3450~4830MPaである高抵抗(HR)糸、引張弾性率が290~297GPaであり、破断時の引張応力が3450~6200MPaである中間弾性率(Intermediate Modulus、IM)糸、及び引張弾性率が345~448GPaであり、破断時の引張応力が3450~5520Paである高弾性率(High Modulus、HM)糸(ASM Handbook,ISBN 0-87170-703-9,ASM International 2001による)で作製することができる。一方向強化ウェブが炭素糸で作られる場合、一方向強化ウェブは、126g/m~500g/m、特に126~280g/mの範囲の坪量を有することができる。
【0087】
本発明による強化材
本発明は、異なる種類の強化材、すなわち、互いに積み重ねられるように意図された単一の繊維強化材を含む単純な強化材、又は、単独でもしくは積み重ねられた形態でも使用することができるいくつかの積み重ねられた繊維強化材を含むより複雑な強化材に適用することができる。
【0088】
特に、単純な強化材の例としては、本発明の文脈内で提供されるような反応性熱可塑性ポリマーを含むか、又は反応性熱可塑性ポリマーからなる多孔質熱可塑性層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した、繊維強化材に対応する強化繊維の一方向ウェブからなるものが挙げられる。図1に示す対称的な材料1を有するために、繊維強化材、特に強化繊維3の一方向ウェブ2は、本発明の文脈内で提供されるような1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマーを含むか又はそれからなる熱可塑性多孔質層4、5が、強化繊維の一方向ウェブの面のそれぞれに接合されており、強化繊維の一方向ウェブの各面上に存在する多孔質層は、好ましくは同一である。本発明の文脈において、1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマーを含むか又はそれからなる熱可塑性多孔質層は、高温粘着性を有し、繊維強化材と熱可塑性多孔質層との接合は、多孔質層の高温粘着性のおかげで有利に達成される。この粘着性は、多孔質層の熱可塑性に起因する。無論、多孔質層の高温粘着性を使用して、縫製若しくはニッティングによって、又は物理的結合タイプ(ニードリング等)の任意の他の手段によって、この接合を置き換える又は完了することも可能であり得る。
【0089】
強化材はまた、このような強化材のスタックの形態をとることができ、すなわち、(CP/R/CP)であり、CPは、本発明の文脈内で定義されるような1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマー、特に不織布を含むか又はそれからなる熱可塑性多孔質層を示し、Rは一方向ウェブを示し、nは1以上の整数である。好ましくは、すべての多孔質熱可塑性CP層は、同じであるか又は更には同一の坪量を有し、及び/又はすべてのR繊維強化材は、同じであるか又は更には同一の坪量を有する。スタックの2つの外側CP層が、他の内側CP層の坪量の2倍に等しい坪量を有することも可能である。
【0090】
より複雑な強化材の例としては、異なる方向に配向された一方向強化繊維ウェブのスタックからなるものが挙げられ、少なくとも1つの多孔質熱可塑性層は、本発明の文脈内で提供されるような1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマーを含むか又はそれからなり、2つの一方向強化繊維ウェブの間に挿入され、及び/又はスタックの表面に存在する。第1の変形例によれば、そのような材料は、配列(CP/R)又は(CP/R)/CPに対応するスタックからなることができ、CPは、本発明の文脈内で定義されるような反応性熱可塑性ポリマーを含むか又はそれからなる多孔質熱可塑性層を示し、Rは、本発明の文脈内で説明される一方向ウェブを示し、nは整数を示し、好ましくはすべてのCP層は同一の坪量を有するか、又は同一でさえある。特に、このようなスタックでは、繊維強化材Rは、強化繊維、特に炭素繊維、好ましくは同じ坪量の一方向ウェブである。このような材料は、NCF(ノンクリンプファブリック)として知られている。一般的に、NCFの場合、強化繊維の一方向ウェブは、互いに、及び存在する多孔質熱可塑性層(単数または複数)と、縫製又はニッティングによって接合される。もちろん、この接合を、縫製又はニッティングによって、熱可塑性多孔質層の高温粘着性により達成される接着によって、又は物理的結合タイプの任意の他の手段(ニードリングなど)によって置き換えるか、又は更には完全にすることが可能であり得る。
【0091】
特に、NCFの場合、本発明による強化材は、角度0°、30°、45°、60°、90°、120°、135°から選択される異なる配向に沿って延びる一方向ウェブから構成される。一方向ウェブの全部又は一部は、異なる配向を有してもよい。例として、本発明による強化材は、以下のスタック:0°/90°、90°/0°、45°/135°、135/45°、90°/0°/90°、0°/90°/0°、135°/45°/135°、45°/135°/45°、0°/45°/90°、90°/45°/0°、45°/0°/90°、90°/0°/45°、0°/135°/90°、90°/135°/0°、135°/0°/90°、90°/0°/135°、45°/0°/135°、135°/0°/45°、45°/135°/0°、0°/135°/45°、45°/135°/90°、90°/135°/45°、135°/45°/0°、0°/45°/135°、135°/45°/90°、90°/45°/135°、60°/0°/120°、120°/0°/60°、30°/0°/150°、150°/0°/30°、135°/0°/45°/90°、90°/45°/0°/135°、45°/135°/0°/90°、90°/0°/135°/45°、0°/45°/135°/90°、90°/135°/45°/90°、90°/135°/0°/45°、45°/0°/135°/90°で製造することができ、0°は、本発明に係る強化材を製造するための機械送り方向に相当する。縫製又はニッティングによる接合の場合、縫製又はニッティング糸の一般的な方向もまた、一般に0°に相当する。このような多軸の製造は、周知であり、例えば、Tsu Wei Chou&Franckによる書籍「繊維構造複合材、複合材料シリーズ第3巻(Textile Structural Composites,Composite Materials Series Volume 3)」K.Ko、ISBN 0-444-42992-1、Elsevier Science Publishers B.V.、1989、第5章、段落3.3、又は特許FR2761380に記載されているような一般的な技術を含み、これらには多軸繊維ウェブを製造するためのプロセス及び装置が記載されている。特に、一方向ウェブは、多軸が作成される前に形成され得るか、又はインラインで堆積され得る。一方向ウェブは、互いに平行に延びるステッチを使用して一緒に縫製又はニッティングすることができる。特に、縫製又はニッティングステッチは、1~20mm、より好ましくは2~12mmのピッチにて、好ましくは同一のピッチで同じライン内で間隔を空ける。同様に、2つの連続する縫製又はニッティング線は、例えば、2~50mm、好ましくは5~15mmだけ間隔を空ける。好ましくは、一連の平行線におけるすべての連続する縫製ラインは、同じ距離で間隔を空ける。ポリエステル、コポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)、ポリケトン、ポリアミド、架橋性熱可塑性樹脂、炭素、ガラス、玄武岩、シリカ及びそれらの混合物は、本発明の文脈内で特に適した縫製糸材料の例である。ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸及びそれらの共重合体が使用できるポリエステルの例である。糸は、例えば、規格EN ISO 2060に従って測定される場合、5~150dTexの範囲、特に30dTex未満の繊度を有する。NCFタイプ材料で使用できる構造の詳細については、EP2547816又はWO2010/067003などの文献を参照されたい。
【0092】
本発明による強化材の配置が何であれ、特定の実施形態によれば、存在する前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、多孔質層の0.15meq/gを超える量の-NH官能基及び/又は多孔質層の0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を含む。特に、存在する前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、熱可塑性多孔質層の0.20meq/gを超える量で、特に熱可塑性多孔質層の0.22meq/g以上、0.25meq/g以上、0.30meq/g以上又は0.40meq/g以上の量で、好ましくは熱可塑性多孔質層の0.20~1meq/gの範囲の、より好ましくは熱可塑性多孔質層の0.20~0.95meq/gの範囲の、とりわけ熱可塑性多孔質層の0.20~0.60meq/gの範囲の、熱可塑性多孔質層の0.20~0.50meq/gの範囲、又は更により好ましくは熱可塑性多孔質層の0.22~0.46meq/gの範囲の遊離-COOH官能基を含む。特に、存在する前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、熱可塑性多孔質層の0.20meq/gを超える量で、特に熱可塑性多孔質層の0.25meq/g以上、0.30meq/g以上又は0.34meq/g以上の量で、好ましくは熱可塑性多孔質層の0.20~1meq/gの範囲の、より好ましくは熱可塑性多孔質層の0.20~0.95meq/gの範囲の、特に熱可塑性多孔質層の0.20~0.60meq/gの範囲の、熱可塑性多孔質層の0.30~0.50meq/gの範囲の、熱可塑性多孔質層の0.30~0.40meq/gの範囲の、又は更により好ましくは、熱可塑性多孔質層の0.32~0.36meq/gの範囲の遊離-NH官能基を含む。-COOH官能基又は-NH官能基の前記量は、熱可塑性多孔質層上に単独で又は任意の可能な組み合わせで一緒に存在することができる。
【0093】
本発明による強化材を調製するプロセス
本発明の文脈において、本発明による強化材は、以下の逐次的な工程:
a1)繊維強化材を提供する工程、
a2)本発明の文脈内で定義されるような反応性熱可塑性ポリマーを含むか又はそれからなる少なくとも1つの熱可塑性多孔質層を提供する工程、
a3)繊維強化材と少なくとも1つの熱可塑性多孔質層とを接合する工程、
を実施することによって調製することができる。
【0094】
特に、工程a3)は、少なくとも1つの熱可塑性多孔質層を繊維強化材に適用することによって達成することができ、前記適用は、ほとんどの場合、前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの軟化又は溶融を引き起こす加熱を伴うか、または前記適用に続いてそのように加熱が施され、次いで冷却される。特に、そのような接合は、22~200℃、好ましくは50~180℃の温度で達成することができ、周囲空気下で、熱可塑性多孔質層を繊維強化材に適用することによって、例えばそれに圧力を加えることによって、行われる。有利には、強化材内に存在する前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)の前記反応性熱可塑性ポリマーは、170℃未満、更には150℃未満、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲の溶融温度を有する。特に、存在する前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、170℃未満、更には150℃未満の溶融温度を有し、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲である。このような反応性熱可塑性ポリマーを用いた、熱可塑性多孔質層の高温粘着性に因る熱可塑性多孔質層と繊維強化材との接合は、170℃未満、又は更には150℃未満の温度まで加熱することによって達成することができ、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲である。
【0095】
工程a3)はまた、繊維強化材と熱可塑性多孔質層とを互いに結合するための縫製、ニッティング、ニードリング又は任意の他の適切な手段によって実施することができる。
【0096】
特に、本発明による繊維強化材が、特にニードリングタイプの縫製又は任意の他の物理的手段によって互いに接合された強化糸の一方向ウェブのスタックに対応する場合、工程a1)は、強化糸の一方向ウェブであるいくつかの繊維強化材を提供することからなり、工程a3)、その間、前記繊維強化材及び少なくとも1つの熱可塑性多孔質層は、強化糸の一方向ウェブのスタック及び前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の生成を含み、特にニードリングタイプの縫製又は任意の他の物理的手段によって互いに結合した強化糸の一方向ウェブのスタックを製造する。工程a’’は、繊維強化材と熱可塑性多孔質層とが互いに結合されることを可能にする縫製、ニッティング、ニードリング、又は任意の他の適切な手段によって達成される接合と、少なくとも1つの熱可塑性多孔質層を強化糸の一方向ウェブの少なくとも1つに適用することによって達成される接合の両方を含むことができ、前記適用は、通常、前記少なくとも1つの多孔質熱可塑性層の前記反応性熱可塑性ポリマーを軟化又は溶融するために加熱を伴うか、または前記適用に続いてそのように加熱が施され、前記加熱に続いて冷却が行われる。本発明の文脈内で、2つの繊維強化材の間に、特にNCFの場合に、提供されるような1つ又は複数の反応性熱可塑性ポリマーを含むか又はそれからなる少なくとも1つの熱可塑性多孔質層を含むより複雑な材料の場合、本プロセスは、特に先に定義されたようなシーケンス(CP/R)又は(CP/R)/CPに従って、様々な層のスタックを作製することを含み、nは1を超え、異なる層の互いの接合は、縫製、ニッティング、ニードリング又は他の機械的アセンブリ操作によって完了又は達成することができる。
【0097】
当然のことながら、使用される調製プロセスが何であれ、多孔質層及び強化材は、最終的に熱可塑性多孔質層(単数または複数)が強化材の総質量の最大10%、好ましくは強化材の総質量の0.5~10%、より好ましくは得られる強化材の総質量の2~6%を占めるように選択される。
【0098】
プロセスの特徴は、本発明の文脈内で説明されるような強化材の特徴に関連する。
【0099】
プリフォーム又は複合部品の製造のための、本発明による強化材の使用、およびこれを使用するプロセス
本発明の強化材は、本発明の文脈内で定義されるような反応性熱可塑性ポリマー、特に、ポリエステル、コポリエステル、ポリアミド-イミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリエーテル、ポリアミド及びコポリアミドから選択され、反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基、及び/又は熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を有する、反応性熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した繊維強化材を含み、エポキシ熱硬化性樹脂と接合したプリフォーム又は複合部品の製造に完全に適している。
【0100】
本発明による強化材又は強化材のスタックに拡散又は射出される樹脂は、熱硬化性エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂の例としては、芳香族ジアミン、単芳香族第一級アミン、アミノフェノール及びポリカルボン酸のポリグリシジル誘導体が挙げられる。他の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びビスフェノールKなどのビスフェノールのポリグリシジルエーテルが挙げられる。複合部品の直接製造に適した多数のエポキシ樹脂が、特にSolvay、Hexion及びHexcel Compositesから市販されている。例としては、Hexcel Composites製のRTM6及びHF620樹脂、並びにSolvay製のEP2400及びEP2410樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、エポキシ樹脂の混合物から構成され、1つ又は複数の硬化剤及び場合により1つ又は複数の耐衝撃性改良剤の混合物と合わされる。
【0101】
他の市販のエポキシ樹脂としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(Huntsman MY9663、MY720、MY721)、p-アミノフェノールトリグリシジルエーテル(HuntsmanのMY0510など)、m-アミノフェノールトリグリシジルエーテル(HuntsmanのMY0600など)又は二官能性エポキシド(HuntsmanのGY285、及びCY184など)が挙げられる。
【0102】
エポキシ熱硬化性樹脂は、四官能性、三官能性又は二官能性であり得、エポキシ官能性の数の増加は、必然的により高い架橋反応速度をもたらす。このようなエポキシ熱硬化性樹脂は、通常、選択されたエポキシタイプ熱硬化性ポリマーと共に使用するための当業者に周知の1つ又は複数の硬化剤を含む。好ましい硬化剤の例としては、シアノグアニジン、芳香族、脂肪族及び脂環式アミン、酸無水物、ルイス酸、置換尿素、イミダゾール、ヒドラジン及びシリコーンが挙げられる。エポキシ樹脂はまた、当業者により通常用いられる、コア-シェル耐衝撃性改良剤又は強化剤を含んでもよい。例としては、株式会社カネカ(日本)製のKane Ace MX耐衝撃性改良剤、又はArkema France製のClearstrength耐衝撃性改良剤が挙げられる。本発明によるプロセスは、射出又は注入された樹脂がエポキシタイプの熱硬化性樹脂である場合に特に興味深い。エポキシ樹脂は、本発明による材料の多孔質熱可塑性層中に十分な量で存在する-NH官能基又は-COOH官能基と反応する能力を有する。このような反応は、多孔質層(複数可)中の熱可塑性ポリマーが射出又は注入された樹脂中に広がり、特に耐熱性に関して、樹脂の特性を変化させるのを防ぐ。
【0103】
好ましくは、エポキシ樹脂は、場合により三官能性エポキシ、1つ又は複数の硬化剤及び1つ又は複数の耐衝撃性改良剤と混合された四官能性エポキシを含む本発明の文脈において使用される。
【0104】
有利には、本発明の文脈で使用される熱硬化性エポキシ樹脂は、100℃以上、又は150℃を超えるTgを有する。使用される樹脂のTgの選択は、実施されるプロセス工程次第で、及び、反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度より低い温度又はそれより高い温度Taで加熱することを望むかどうかに応じて、当業者によって最適化され得る。
【0105】
通常、複合部品は、開放モールド又は閉鎖モールドで製造される。モールドに導入する前に、樹脂を予熱することができる。特に、強化材、スタック又はプリフォームに注入又は射出する前に、樹脂を60~90℃の温度に予熱することができる。
【0106】
射出又は注入された樹脂は、樹脂がモールドに導入される温度で1000mPa.s未満の粘度を有することが好ましい。好ましくは、使用される熱硬化性樹脂は、90℃の温度で1000mPa.s未満の粘度を有する。一般に、複合部品を製造する場合、熱硬化性樹脂がモールド内に注入又は射出される温度は、90~180℃の間で最も頻繁に変化する。本発明の文脈において、粘度は、規格EN6043に従って動的剪断レオメータを用いて測定することができ、その差は、変形が10%ではなく4%であることである。特に、測定は、空隙0.5mm、変形制御4%、周波数10rad/sで行い、等温の加熱速度は2℃/分である。
【0107】
通常、本発明による少なくとも1つの強化材からプリフォーム又は複合部品を製造するためのプロセスでは、特に本発明の文脈内で定義されるような熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物、特に熱硬化性エポキシ樹脂が、前記強化材、又はいくつかの強化材のスタック、又は前記材料から作製されたプリフォームに射出又は注入される。プリフォームとは、複合部品を製造するために使用されるモールド又は工具に配置される前に、事前の成形操作を受けた強化材、又は強化材のセットを意味する。
【0108】
複合部品を製造するために、本発明による強化材が積み重ね又はドレープされる(プライとしても知られる)。通常、本発明による強化材は、得られるべき部品、プライ、スタック又はプリフォームを製造するために所望のサイズに切断される。スタックでは、いくつかの強化材又はプライが互いに積み重ねられる。
【0109】
プライは、所望の部品を製造するのに十分な幅であり、部品があまり複雑でない場合、本発明による単一の強化材からなることができる。しかしながら、より多くの場合、大型又は複雑な部品の場合、プライは、所望の部品を製造するのに必要な表面全体を覆うように並んで配置された本発明による強化材のセットからなる。
【0110】
本発明の文脈では、強化材中に存在する多孔質層の熱可塑性のために、樹脂の注入又は射出の前に、強化材中に存在する前記少なくとも1つの多孔質層の高温粘着性を使用する堆積又は成形作業を、プリフォーム又は複合部品の製造中に行うことができる。有利には、プリフォーム又は複合部品を製造するプロセスは、本発明による材料を堆積又は成形する工程を含み、多孔質層は、本発明の文脈内で定義される多孔質層(単数または複数)の前記反応性熱可塑性ポリマーの少なくとも部分的な溶融を引き起こす温度まで、特に170℃未満、又は更には150℃未満まで加熱され、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲で加熱される。
【0111】
複合部品を製造するために使用される工程は、当業者にとって極めて一般的である。平坦なプリフォーム又は所望の三次元形状を有するプリフォームさえも、その間に製造することができる。特に、本発明による強化材の堆積(デポジション)は、堆積表面に垂直な圧力の印加により連続的に実施して、それに適用することができる。AFP(Automated Fiber Placement、自動繊維配置)又はATL(Automated Tape Lay-up、自動テープレイアップ)という略語で知られているそのようなプロセスは、例えば、WO2014/076433A1及びWO2014/191667の文献に記載されている。本発明による材料の異なるストリップは、製造されるプリフォームに応じて、平行又は非平行の堆積経路に沿って互いに隣接して配置され、互いに重なって配置された一連のプライを形成することができる。堆積操作と同時に、多孔質層の熱可塑性材料は、材料の高温粘着性を利用するように活性化される、すなわち軟化される。プライが完全に堆積されると、配向が変更され、その結果、次のプライは前のプライとは異なる堆積軌道に沿って堆積される。各ストリップは、(製造される部品の幾何学的形状に応じて)前のストリップと平行又は非平行に、ストリップ間ギャップの有無にかかわらず、及び表面全体にわたって結合して堆積される。この堆積プロセスは、3~300mmの間の、好ましくは幅のばらつきが小さい(<0.25mm)強化材幅に特に適している。強化材がより広い幅を有する場合、強化材は、任意の他の適切な手段によって堆積させることができる。
【0112】
一般に、熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した少なくとも1つの繊維強化材、および、エポキシタイプの熱硬化性樹脂に対応する樹脂を含む少なくとも1つの強化材から複合部品を製造することは、以下の逐次的な工程:
i)典型的には90℃~180℃の範囲の温度で、モールド内に配置された前記強化材内に前記樹脂を射出又は注入する工程と、
ii)加熱処理サイクルにおける強化材/樹脂アセンブリの圧密化と、
iii)工程ii)から生じる前記圧密化された複合部品の冷却と、
を含む。
【0113】
通常、工程i)の上流で、本発明による複合部品を製造するためのプロセスは、本発明による熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した少なくとも1つの繊維強化材を含む少なくとも1つの強化材をモールド内に配置する工程を含む。
【0114】
したがって、複合部品の製造は、注入又は射出による、本発明による強化材又は強化材のスタック内の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、若しくは熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の混合物の拡散工程と、その後、加温及び任意選択的に加圧下での所定のサイクルに続く重合/架橋工程による所望の部品の圧密化工程と、冷却工程とを含む。本発明に関連して説明したすべての実施変形例にも適している特定の実施形態によれば、拡散又は射出、圧密化及び冷却工程は、開放又は閉鎖モールドで実行される。
【0115】
上述のように、本発明の文脈において、非常に特に好ましい方法では、射出又は注入される樹脂はエポキシ樹脂である。
【0116】
工程i)について、言及される温度は、樹脂が強化材に射出又は拡散されるときのモールド内の温度である。
【0117】
樹脂の射出又は注入は、通常、樹脂が射出又は注入される強化材、スタック又はプリフォームが110~180℃の温度である間に行われる。この射出又は注入段階は、通常、製造される複合部品のサイズに応じて、2分~5時間続く。
【0118】
複合部品を製造するために、樹脂は、減圧下、特に大気圧未満、特に1バール未満、好ましくは0.1~1バールの間の圧力で注入されることが好ましい。注入は、好ましくは、例えば真空バッグ注入によって、開放モールド(特に真空バッグが取り付けられたもの)内で行われる。加熱処理段階中、大気圧より低い圧力、特に1バール未満、好ましくは0.1~1バールの圧力を加えることもできる。
【0119】
本発明による他のプロセスでは、樹脂は射出によって添加され、本発明による強化材、そのような材料のスタック又はプリフォームは、特に樹脂がモールドを充填するのに十分な量で射出された後、閉鎖されるように意図されたモールド(一般的に、閉鎖モールドと呼ばれる)内に配置される。そのような場合、樹脂が射出される際、加熱処理工程は、一般的な方法で、特に1~150バール、好ましくは1~10バールの圧力下で行われる。これは、当業者に周知のRTM、C-RTM及びHP-RTMプロセスの場合である。
【0120】
次いで、複合部品は、加熱処理に対応する圧密化工程の後に得られる。工程ii)は、樹脂/強化材(単数または複数)のアセンブリのための加熱処理工程であり、熱硬化性樹脂の架橋及び複合部品の圧密化をもたらす。この工程は、一般的に複合部品の硬化温度と呼ばれる温度Taまで加熱することを含む。この温度Taは、工程i)の温度以上であってもよい。そのような場合であって、温度Taが樹脂注入又は射出温度よりも高い場合には、工程ii)は、温度Taまでの温度上昇段階を含む。
【0121】
複合部品は、一般に、用いられる樹脂の供給者によって推奨される加熱処理サイクルを使用して、当業者に知られている実施手法に従って、加熱を伴う通常の圧密化工程によって得られる。所望の部品を圧密化するこの工程は、重合(熱可塑性樹脂の場合)又は架橋(熱硬化性樹脂の場合)を含む。熱硬化性樹脂の場合、硬化/架橋の前に樹脂のゲル化が起こる。処理サイクル中に加えられる圧力は、大気圧又は減圧下で注入する場合は低く(特に0.1ミリバール~1バール)、RTMモールドに射出する場合は高くなる(特に1~150バール)。一般に、エポキシ樹脂は、0.1ミリバール~15バール、より一般的には1~10バールの圧力で添加される。
【0122】
ほとんどの場合、圧密化工程としても知られる加熱処理工程中に、加熱処理サイクルは、2つの段階、すなわち、温度Taまでの温度上昇段階と、一般に硬化又は後硬化工程として知られる前記温度Taでの加熱工程とを含む。温度Taは、熱硬化性樹脂が架橋可能な温度である。温度Ta及びこの温度での加熱時間は、選択されたエポキシ熱硬化性樹脂の完全な架橋を達成するように選択される。特に、温度Taは、射出又は注入される樹脂に依る。一般に、温度Taは、特に航空宇宙産業用の複合部品を製造するために使用されるエポキシ樹脂について、120~220℃、好ましくは160~220℃、より好ましくは170~190℃の範囲であり、典型的には180℃である。このような温度での加熱時間は、通常、30分~5時間、典型的には1~2時間である。加熱時間は、当業者によって温度Taに適合される。温度Taが低いほど、樹脂を完全に硬化させるために必要な加熱時間が長くなる。
【0123】
従来、温度を、毎分0.1~10℃、特に毎分1~3℃、典型的には毎分2℃上昇させる。
【0124】
第1の実施変形例によれば、加熱処理工程は、本発明による強化材中に存在する前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも高い温度Taまで、特に0.1~10℃/分の速度で昇温段階を含み、前記温度Taで特に5分~2時間の間加熱する。熱硬化性樹脂(又はより厳密には、熱可塑性多孔質層との反応後に改質された熱硬化性樹脂系)の粘度は、熱可塑性多孔質層(単数または複数)の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融とエポキシ熱硬化性樹脂の架橋の開始との間で高まる。この粘度の高まりは、エポキシ樹脂と、強化材の多孔質熱可塑性層中の反応性熱可塑性ポリマーの反応性-NH官能基及び/又は-COOH官能基との間で起こる反応を反映している。
【0125】
エポキシ樹脂と、強化材の多孔質熱可塑性層中の反応性熱可塑性ポリマーの反応性-NH官能基及び/又は-COOH官能基との反応は、加熱処理工程中に、エポキシ熱硬化性樹脂のゲル化が、それが単独で加熱処理工程に供された場合よりも早く起こるという効果も有し得る。
【0126】
特定の実施形態によれば、熱硬化性樹脂のゲル化は、温度Taへの加熱中、および温度Taでの5分~60分の加熱時間後に起こる。エポキシ樹脂がゲル化する時間は、特に、エポキシ樹脂の反応性、エポキシ樹脂の射出/注入の温度、温度Taへの上昇速度及び選択された温度Taに依存する。
【0127】
温度Taが前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも高い、本発明による複合部品の製造プロセスの第1の変形例によれば、エポキシ熱硬化性樹脂は、好ましくは、150℃より高いガラス転移温度Tgを有する。
【0128】
第2の実施変形例によれば、加熱処理工程は、前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度未満の温度Taまで、特に0.1~10℃/分の速度で昇温段階を含み、前記温度Taで特に5分~5時間の間加熱する。この場合、エポキシ樹脂の完全な架橋重合を達成するための加熱をより低い温度Taで行う際には、この温度での加熱時間は、より長くてもよい。これは、使用される樹脂に応じて当業者によって調整される。ここでも、エポキシ樹脂と、強化材の多孔質熱可塑性層の反応性熱可塑性ポリマーの反応性-NH官能基及び/又は-COOH官能基との反応は、加熱処理工程中に、エポキシ熱硬化性樹脂のゲル化が、それが単独で加熱処理工程に供された場合よりも早く起こるという効果も有し得る。
【0129】
温度Taが前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度未満である、本発明による複合部品の製造プロセスの第2の変形例によれば、エポキシ熱硬化性樹脂は、好ましくは、少なくとも100℃に等しい、有利には100~150℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する。
【0130】
また有利には、温度Taが前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度未満である、本発明による複合部品の製造プロセスの第2の変形例によれば、前記反応性熱可塑性ポリマーは120℃より高い溶融温度を有する。
【0131】
本発明の文脈において、及びプロセスがどのように実施されるかにかかわらず、加熱処理段階中に、強化材の多孔質熱可塑性層の反応性熱可塑性ポリマーの反応性官能基がエポキシ熱硬化性樹脂と反応した後に、熱硬化性樹脂のゲル化が起こる。一方、樹脂の完全な架橋中に他の反応が依然として起こり得る。
【0132】
加熱処理が完了すると、冷却は、冷却材として作用する流体、特に水又は水と空気との混合物を循環させることによって行われ、加熱は中断される。加圧は、通常、冷却中、特に40℃未満の温度に達したときに中断される。
【0133】
当然のことながら、本発明による強化材に関連して説明したのと同じ特性及び用途が、本発明の文脈内で説明したプロセス及び使用に適用される。
【0134】
本発明の文脈で使用される反応性熱可塑性ポリマーは、複合部品の製造に一般的に使用されているエポキシタイプ樹脂と反応することを可能にするのに十分な量の反応性-NH官能基及び/又は-COOH官能基を有する。例から明らかになるように、そのような反応は、得られた複合部品に特に有利な特性を付与すること、特に耐温性及び耐湿性を改善することを可能にする一方で、航空及び航空宇宙産業向けの複合部品にとって重要な満足のいく機械的特性を保持する。
【0135】
他の発明の他の態様
本発明は、エポキシ系樹脂以外の熱硬化性樹脂にも適用することができる。
【0136】
他の使用可能な熱硬化性樹脂は、特に、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、ベンゾオキサジン、シアネートエステル、及びそれらの混合物から選択される。そのような樹脂はまた、選択された熱硬化性ポリマーと共に使用するための当業者に周知の1つ又は複数の硬化剤を含んでもよい。
【0137】
次いで、反応性ポリマー上に存在する反応性官能基は、射出又は注入された熱硬化性樹脂と反応するように当業者によって適合される。特に、不飽和ポリエステル又はビニルエステル樹脂、並びにビスマレイミドの場合、反応性熱可塑性ポリマーは、これらの樹脂と反応することを可能にする不飽和を含有し得る。
【0138】
フェノール樹脂の場合、反応性熱可塑性ポリマーは、例えば、このタイプの樹脂と反応することを可能にするアルコール、アルデヒド又はケトン官能基を含有し得る。
【0139】
エポキシ樹脂の使用のための上記の説明は、これらのタイプのプロセスに置き換えることができる。
【0140】
したがって、本明細書はまた、以下の態様に関する。
【0141】
本説明は、以下の逐次的な工程:
0)熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した少なくとも1つの繊維強化材を含む少なくとも1つの強化材をモールド内に配置する工程;
i)モールド内に配置された前記強化材内に、特に90~180℃の範囲に及びうる温度で、熱硬化性樹脂を射出又は注入する工程;
ii)前記熱硬化性樹脂の架橋及び前記複合部品の圧密化をもたらす温度Taまで加熱することを含む、前記樹脂/強化材(単数種または複数種)のアセンブリのための加熱処理工程;ならびに
iii)工程ii)から生じる圧密化複合部品の冷却を含み、
前記熱可塑性多孔質層が、前記加熱処理工程中に前記熱硬化性樹脂と反応する反応性官能基を有することを特徴とする、複合部品を製造するためのプロセスに関する。
【0142】
特に、このようなプロセスでは、前記強化材の前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、強化材の総質量の最大10%、好ましくは強化材の総質量の0.5~10%、より好ましくは強化材の総質量の2~6%を占める。
【0143】
このようなプロセスでは、強化材中に存在する多孔質層は熱硬化性樹脂と反応し、複合部品の製造に一般的に使用される熱硬化性樹脂、特にエポキシタイプの熱硬化性樹脂では、多孔質層が部分的にしか溶融可能でないか、又は完全に溶融可能でない。本発明による方法の一部として、熱可塑性多孔質層は、加熱処理段階中に熱硬化性樹脂と反応する反応性官能基を有し、それにより、温度暴露に対する感度を低下させ、航空宇宙産業で使用される材料の温度特性を改善する。
【0144】
そのような複合部品製造プロセスの第1の変形例によれば、前記温度Taは、前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも高い。特に、前記温度Taへの加熱は、工程ii)の間に5分~2時間にわたって行われる。ほとんどの場合、加熱処理工程は、特に0.1~10℃/分の速度で、前記温度Taまでの温度上昇段階を含む。
【0145】
熱硬化性樹脂の粘度は、熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融と熱硬化性樹脂の架橋の開始との間で高まり得る。特に、熱可塑性多孔質層との溶融反応後の変性熱硬化性樹脂系の粘度が高まる。
【0146】
加熱処理工程中に、熱硬化性樹脂のゲル化が、それが加熱処理工程のみに供された場合よりも早く起こることもあり得る。
【0147】
熱硬化性樹脂のゲル化は、温度Taへの加熱中、特に温度Taで5分~60分の加熱時間後に起こり得る。
【0148】
温度Taが前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも高い、複合部品を製造するためのそのようなプロセスの第1の変形例によれば、熱硬化性樹脂は、好ましくは、150℃より高いガラス転移温度Tgを有する。
【0149】
そのような複合部品製造プロセスの第2の変形例によれば、温度Taは、前記熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度未満である。特に、工程ii)の間に、前記温度Taまで5分~5時間加熱する。好ましくは、熱硬化性樹脂のゲル化は、それが加熱処理工程に単独で供された場合よりも早く起こる。ここでも、加熱処理工程は、一般に、特に0.1~10℃/分の速度で、前記温度Taまでの温度上昇段階を含む。
【0150】
温度Taが前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度未満である、複合部品を製造するためのそのようなプロセスの第2の変形例によれば、熱硬化性樹脂は、好ましくは、少なくとも100℃に等しい、有利には100~150℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する。
【0151】
また有利には、温度Taが前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度未満である、複合部品を製造するためのそのようなプロセスの第2の変形例によれば、前記反応性熱可塑性ポリマーは120℃より高い溶融温度を有する。
【0152】
複合部品を製造するためのこのようなプロセスでは、実施のそれらの変形例にかかわらず、温度Taは、一般に、120~220℃の範囲、好ましくは160~220℃の範囲、より好ましくは170~190℃の範囲であり、典型的には180℃に等しい。
【0153】
複合部品を製造するための前記プロセスでは、それらの実施変形例が何であれ、加熱処理工程中に、有利には、熱硬化性樹脂のゲル化は、反応性官能基が前記熱硬化性樹脂と反応した後に起こる。
【0154】
更に、多孔質層の熱可塑性ポリマーと射出又は注入された樹脂との反応は、低い溶融温度を有する多孔質層の使用を可能にし、結果として、強化材の製造中及び成形中にも低温の使用を可能にし、したがってコスト及び時間の観点からの節約になる。更なる利点は、熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度を170℃未満、又は更には150℃未満にすることができ、したがって、部品を製造するために(乾燥材料の調製から、その堆積及びプリフォームを通して)最終的に必要とされる樹脂の添加前の製造プロセスのすべての段階を170℃未満、更にはより良好には150℃未満、又は更にはそれ未満の温度で行うことができることである。したがって、より低い融点を有する反応性熱可塑性ポリマーを含むこのような多孔質層は、多孔質層(単数または複数)と繊維強化材(単数または複数)とを接合する強化材が、自動製造プロセス、特に繊維配置及びフラットレイドプリフォームの熱成形に適合する温度で製造されることを可能にする。
【0155】
したがって、そのようなプロセスの第二の目的は、耐衝撃性能に対する熱可塑性多孔質層を使用する有益な効果と、樹脂の注入又は射出の前の製造プロセスのすべての段階を150℃未満又は更には140℃未満の温度で、場合によっては80~130℃又は100~130℃の範囲で実施するのが可能であることとを組み合わせることである。
【0156】
したがって、有利には、複合部品を製造する前記プロセスにおいて、強化材内に存在する前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーは、170℃未満、更には150℃未満、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは100~130℃の範囲の溶融温度を有する。
【0157】
前記熱硬化性樹脂の注入又は射出の前に、複合部品を製造するための前記プロセスは、前記強化材の堆積又は成形を含むことができ、前記強化材に存在する前記少なくとも1つの熱可塑性多孔質層の高温粘着性を利用し、前記熱可塑性多孔質層の前記反応性熱可塑性ポリマーの溶融温度に相関させて選択される、170℃未満、又は更には150℃未満、好ましくは80~140℃、特に100~140℃の範囲、より好ましくは80~130℃、特に100~130℃の範囲の温度に加熱することを含む。
【0158】
複合部品を製造するこれらの方法は、射出又は注入される樹脂がエポキシ樹脂である場合に特に適している。
【0159】
有利には、前記エポキシ樹脂は、90℃の温度で1000mPa.s未満の粘度を有する。
【0160】
特に好ましいエポキシ樹脂には、場合により三官能性エポキシと混合された四官能性エポキシ、1つ又は複数の硬化剤及び1つ又は複数の耐衝撃性改良剤を含むものが包含される。
【0161】
特に、複合部品を製造するための前記プロセスでは、熱可塑性多孔質層は、いわゆる反応性熱可塑性ポリマーを含むか、又は1つ若しくは複数の反応性熱可塑性ポリマーからなり、反応性熱可塑性ポリマーは、反応性熱可塑性ポリマーの0.15meq/gを超える量の-NH官能基、及び/又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を有する。そのような多孔質熱可塑性層は、射出又は注入された樹脂がエポキシ樹脂、特に上述の樹脂の1つである場合に特に適している。
【0162】
有利には、前記反応性熱可塑性ポリマーが、反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の、好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~1meq/gの範囲の、より好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~0.95meq/gの範囲の-NH官能基を有し、及び/又は反応性熱可塑性ポリマーの0.20meq/gを超える量の、好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~1meq/gの範囲の、より好ましくは反応性熱可塑性ポリマーの0.20~0.95meq/gの範囲の-COOH官能基を有する。
【0163】
特に、反応性熱可塑性ポリマーは、前記官能基を有するポリアミド又はコポリアミドである。
【0164】
特に、複合部品を製造するための前記プロセスにおいて、前記少なくとも1つの多孔質層は、多孔質層の0.15meq/gを超える量の-NH官能基及び/又は多孔質層の0.20meq/gを超える量の-COOH官能基を含む。ここでも、このような熱可塑性多孔質層は、射出又は注入された樹脂がエポキシ樹脂、特に前述の樹脂の1つである場合に特に適している。
【0165】
特定の実施形態によれば、反応性熱可塑性ポリマーは、4000g/molを超える数平均分子量Mnを有する。
【0166】
特定の実施形態によれば、工程i)は、樹脂射出によって実施され、工程iii)の加熱処理は、閉鎖モールド内で1~150バールの圧力下で実施される。
【0167】
他の特定の実施形態によれば、配置工程0)は、特に真空カバーが取り付けられた開放モールド内で行われ、工程i)は、減圧下、特に0.1~1バールの圧力下で行われる。
【0168】
このようなプロセスで使用される強化材では、繊維強化材は異なる形態をとることができる。いくつかの実施形態では、繊維強化材は、強化糸の一方向ウェブ、強化糸の織物、又は縫製若しくはニードリングなどの任意の他の物理的手段によって互いに結合された強化糸の一方向ウェブのスタックである。
【0169】
繊維強化材は、特に、ガラス繊維、アラミド繊維、又は好ましくは炭素繊維からなることができる。
【0170】
そのようなプロセスのいくつかの実施形態によれば、使用される強化材は、本発明の文脈内で定義されるような熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した、繊維強化材に対応する強化糸の一方向ウェブからなり、好ましくは、前記強化材が、本発明の文脈内で定義されるような熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のそれぞれに接合した、繊維強化材に対応する強化糸の一方向ウェブからなり、強化糸の一方向ウェブの面のそれぞれに存在する熱可塑性多孔質層が、同一である。
【0171】
いくつかの実施形態によれば、前記プロセスで使用される強化材は、異なる方向に配向された繊維強化材としての強化糸の一方向ウェブのスタックからなり、本発明の文脈内で定義されるような少なくとも1つの熱可塑性多孔質層が、強化糸の2つの一方向ウェブの間に介在するか、及び/又はスタックの表面に存在する。そのようなスタックは、配列(CP/R)(CP)又は(CP/R/CP)に対応する層の重ね合わせからなってよく、CPは、本発明の文脈内で定義されるような多孔質熱可塑性層を示し、Rは一方向ウェブであり、nは1以上の整数であり、mは0又は1である。このようなスタックでは、強化糸の一方向ウェブは、縫製、ニッティング又はニードリングによって、互いに接合するか、又は少なくとも1つの熱可塑性多孔質層と接合させることができる。
【0172】
前記プロセスで使用される強化材において、存在する前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、特に多孔質フィルム、格子、粉末堆積物(デポジット)、織物、又は好ましくは不織布若しくはベールである。
【0173】
説明の別の態様はまた、本明細書で定義されるような製造プロセスによって得られる複合部品に関する。
【0174】
したがって、本明細書は、熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂マトリックスを含む複合部品であって、熱可塑性多孔質層を繊維強化材の面のうちの少なくとも1つに接合した少なくとも1つの繊維強化材を含む少なくとも1つの強化材を含む、複合部品に関する。前記複合部品では、熱硬化性エポキシマトリックスと熱可塑性多孔質層(単数または複数)内に存在する熱可塑性ポリマーとの間に共有結合が存在し、前記共有結合は、前記熱可塑性ポリマーに存在する反応性官能基と熱硬化性樹脂、特にエポキシとの反応から生じる。特に、このような複合部品では、前記強化材の前記熱可塑性多孔質層(単数または複数)は、強化材の総質量の最大10%、好ましくは強化材の総質量の0.5~10%、より好ましくは強化材の総質量の2~6%を占める。
【0175】
添付の図面を参照して、以下の例により本発明を例示するが、限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0176】
図1】本発明による強化材の一例の製造プロセスの概略図である。
【0177】
図2】本発明による強化材の一例の概略図である。
【0178】
図3】異なるベール及びRTM6エポキシ樹脂を2枚のガラススライドの間に配置し、180℃の加熱に供した場合に光学顕微鏡下で得られた画像を示す。
【0179】
図4】ハードナー(硬化剤)を含まないHuntsman四官能性エポキシ樹脂中の異なるベールについて、1時間120℃+2時間180℃で2℃/分の昇温を伴うサイクルに処した際の、2℃/分の温度上昇による可逆的及び非可逆的熱流を、調節された示差走査熱量測定法によって示す。
【0180】
図5】硬化中のRTM6樹脂単独の粘度、本発明に適合するCP1多孔質層のスタック内で拡散した場合のRTM6樹脂の粘度、及び油中のCP1多孔質層の同じスタックの粘度の変化を示す。
【0181】
図6】RTM6樹脂単独(温度上昇とそれに続く硬化)の粘度、及び、本発明に適合した-COOH官能基を有する多孔質層CP1若しくはCP8、又は本発明外のCP9のスタック内で拡散された場合の、RTM6樹脂の粘度の変化を示す。
【0182】
図7】RTM6樹脂の加熱処理工程(温度上昇とそれに続く硬化)中の、RTM6樹脂が、本発明に適合したCP8多孔質層又は本発明外のCP9のスタック内で拡散される場合の、時間及び温度の関数としての弾性率G’及びG’’の変化を示す。
【0183】
図8】RTM6樹脂が、本発明に適合した-NH官能基を有するCP2若しくはCP5多孔質層又は本発明外のCP4のスタック内で拡散される場合の、加熱処理工程(温度上昇とそれに続く硬化)中のRTM6樹脂単独の粘度の変化を示す。
【0184】
図9】ハードナー(硬化剤)を含まないHuntsman四官能性エポキシ樹脂の加熱処理段階(温度上昇とそれに続く硬化)中の、RTM6樹脂が、本発明に適合するCP1、CP2、CP5若しくはCP8多孔質層、又は本発明外のCP9のスタック内で拡散される場合の、RTM6樹脂単独の粘度の変化を示す。
【0185】
図10】ハードナー(硬化剤)を含まないHuntsman四官能性エポキシ樹脂の、加熱処理段階(温度上昇とそれに続く硬化)中の、本発明に適合するCP8多孔質層のスタック内で拡散した場合の、時間及び温度の関数としての粘度ならびに弾性率G’及びG’’の変化を示す。
【0186】
図11】樹脂が本発明に適合するCP10多孔質層のスタック、又は同じポリマーから作製された非多孔質フィルムの層のスタック内で拡散される場合の、加熱処理工程(温度上昇とそれに続く硬化)中のRTM6樹脂の粘度の変化を示す。
【0187】
図12】RTM6樹脂が本発明に適合するCP8多孔質層のスタック内で拡散されるときの、RTM6樹脂の等温温度Ta(樹脂注入及び硬化に使用される温度)に応じたゲル化時間(ゲル化点に達するまで温度Taで加熱する時間)の変化を示す。
【0188】
図13】異なる層のスタック(本発明及び本発明外によるもの)中に異なるエポキシ樹脂が拡散した場合に、2℃/分で120℃から180℃まで昇温+180℃にて2時間の加熱にて、樹脂のゲル化(G’及びG’’弾性率の交差)を達成するために必要な180℃での加熱時間を示す。
【0189】
図14】強化材2(本発明外)の場合において、図14は、RTM6樹脂の射出によって得られた複合部品について、25℃から270℃まで2℃/分で温度を上昇させたときに、70℃で14日間のコンディショニング(状態調整)を行ったときと行わなかったときに得られたDMA曲線を示す。
【0190】
図15】強化材5(本発明による)の場合において、図15は、RTM6樹脂の射出によって得られた複合部品について、25~270℃まで2℃/分で温度を上昇させたときに、70℃で14日間のコンディショニング(状態調整)を行ったときと行わなかったときに得られたDMA曲線を示す。
【0191】
図16】強化材6(本発明による)の場合において、図16は、RTM6樹脂の射出によって得られた複合部品について、25℃から270℃まで2℃/分で温度を上昇させたときに、70℃で14日間のコンディショニング(状態調整)を行ったときと行わなかったときに得られたDMA曲線を示す。
【実施例
【0192】

使用した強化材、多孔質層及び樹脂
すべての場合に使用される繊維強化材は、参照IMA 12Kの下でHexcel Composites、Dagneux Franceによって市販されている炭素繊維から製造された210g/mの一方向ウェブである。これらの12K繊維の特性を以下の表1に要約する。
【表1】
【0193】
研究した多孔質ポリマー層を以下の表2に示す。
【表2】
【0194】
*meq/gポリマー=meq/g多孔質層
【0195】
表3は、多孔質層を形成するために使用されるポリマーのいくつかの詳細を示す。
【表3】
【0196】
比較のために使用された多孔質層は、以下から作製された:
1)CP9:Protechnic(66,rue des Fabriques,68702-CERNAY Cedex-France)によって市販され、160℃の溶融温度を有する1R8D04熱可塑性ベール-このベール(以下、1R8D04ベールと称する)は、メルトブローン(溶融紡糸)され、繊維強化材への積層前に4g/mの単位面積当たりの質量及び100μmの厚みを有する。その繊維は、15μmの直径を有する。このような層の開口率は50%程度である。
2)CP7:Arkemaによって市販され、117℃の溶融温度を有する、(UV、ガンマ又はベータ処理下で三次元ネットワークを得ることを可能にする末端不飽和を有するコポリアミド)Platamid(登録商標)HX2632ポリマーから製造された繊維ベール-このベール(以下、HX2632ベールと称する)は、メルトブローンされ、繊維強化材に積層する前に4g/mの単位面積当たりの質量、及び100μmの厚みを有する。その繊維は、15μmの直径を有する。このような層の開口率は50%程度である。
CP7a:Arkemaによって市販され、109℃の溶融温度を有する、Platamid(登録商標)HX2632ポリマーで作製され、ベータ処理(WO2019/102136に記載されている100kGy)下で架橋された、繊維ベール。このメルトブローンベールは、単位面積当たりの質量が4g/mであり、繊維強化材に積層する前の厚みが100μmであり、ベータ処理下で部分的に架橋されている。その繊維は、15μmの直径を有する。このような層の開口率は50%程度である。
3)CP6:Hexcel Composites、Dagneux Franceによって市販され、Primetex 43098 S 1020 S E01 1F fabricで使用されるエポキシ粉末の層を堆積させることによる製品。粉末は、51μm(D50、中央値)の平均直径、及び54~65℃の範囲のガラス転移温度を有する。
4)CP3:Arkemaによって市販され、Platamid(登録商標)ポリマーから作製され、103℃の溶融温度を有する繊維ベール-このベールはメルトブローンされ、繊維強化材と積層する前に4g/mの単位面積当たりの質量及び100μmの厚みを有する。その繊維は、15μmの直径を有する。このような層の開口率は50%程度である。
5)CP4:Arkemaによって市販され、Platamid(登録商標)ポリマー製の繊維ベールであって、126℃の溶融温度を有する繊維ベール-このベールは、メルトブローンされ、繊維強化材への積層前に4g/mの単位面積当たりの質量及び100μmの厚みを有する。その繊維は、15μmの直径を有する。このような層の開口率は50%程度である。
【0197】
本発明による多孔質層は、以下から作製された:
1)CP1:Arkemaによって市販され、Platamid(登録商標)ポリマーから作製され、146℃の溶融温度を有する繊維ベール-このベールはメルトブローンされ、繊維強化材と積層する前に4g/mの単位面積当たりの質量及び100μmの厚みを有する。その繊維は、15μmの直径を有する。このような層の開口率は50%程度である。
2)CP2:Arkemaによって市販され、Platamid(登録商標)ポリマー製の繊維ベールであって、106℃の溶融温度を有する繊維ベール-このベールは、メルトブローンされ、繊維強化材への積層前に4g/mの単位面積当たりの質量及び100μmの厚みを有する。その繊維は、15μmの直径を有する。このような層の開口率は50%程度である。
3)CP5:128℃の溶融温度を有する、Arkema製のコポリアミドベール-このベールはメルトブローンされ、繊維強化材と積層する前に4g/mの単位面積当たりの質量及び100μmの厚みを有する。その繊維は、15μmの直径を有する。このような層の開口率は50%程度である。
4)CP8:121℃の溶融温度を有し、Arkema製のコポリアミドベール-このベールはメルトブローンされ、繊維強化材と積層される前に4g/mの単位面積当たりの質量及び100μmの厚みを有する。その繊維は、15μmの直径を有する。このような層の開口率は50%程度である。
5)CP10:125℃の溶融温度を有する、Arkema製コポリアミドベール-このベールはメルトブローンされ、繊維強化材と積層する前に4g/mの単位面積当たりの質量及び100μmの厚みを有する。その繊維は、15μmの直径を有する。このような層の開口率は50%程度である。
【0198】
複合部品を製造するために使用される熱硬化性樹脂を以下の表4に示す。
【表4】
【0199】
-NH官能基及び-COOH官能基の量を測定するための方法:
【0200】
存在する反応性-COOH官能基又は-NH官能基の量は、電位差滴定によって評価することができる。-COOH官能基の量は、アルコール溶液中の水酸化テトラ-n-ブチルアンモニウム((COHTBAOH)を用いた多孔質層の酸塩基滴定によって測定され、-NH官能基の量は、酢酸中の過塩素酸(HClO)を用いた滴定によって測定される。結果は、評価したポリマーのmeq/gで表す。Metrohmによる「Potentiometric determination of carboxyl and amino end groups in polyesters and polyamides」と題する文献AB-068に記載されている方法は、存在するカルボン酸及びアミン官能基を測定するために使用される電位差滴定手順を詳述している。
【0201】
アッセイに使用される試薬は以下の通りである:
・TBAOH(イソプロパノール中濃度0.1mol/L)=COOH反応性官能基のための反応性滴定剤、
・HClO(氷酢酸中濃度0.1mol/L)=NH反応性官能基のための反応性滴定剤、
・ベンジルアルコール。
【0202】
COOH反応性官能基の量を測定するため、0.5~1.5gの試料をビーカーに秤量し、100mLのベンジルアルコールと混合し、沸点まで加熱することによって希釈する。約80~100℃に冷却した後、TBAOHで滴定を行う。ビュレットの端部を溶液にわずかに浸漬する。同じ条件でブランク値(すなわち、試料を添加しない)を求める。
【0203】
NH反応性官能基の量を測定するため、0.5~1.0gの試料をビーカーに秤量し、100mLのベンジルアルコールと混合し、沸点まで加熱することによって希釈する。約80~100℃に冷却した後、過塩素酸HClOを用いて滴定を行う。ビュレットの端部を溶液にわずかに浸漬する。ブランク値は、同じ条件下で測定される。
【0204】
次いで、反応性官能基の量は、以下の式に従って計算される。
【0205】
反応性官能基の量(COOH又はNH、μeq/kg)=
【数1】
【0206】
上記式中、Aは試料滴定剤消費量(mL)、Bはブランク滴定剤消費量(mL)、tは滴定剤の力価(titre:タイター)、Eは試料質量(g)である。
【0207】
滴定剤の力価(titre:タイター)は、Metrohm bulletin 206/5 e「Titer determination in potentiometry」に従って電位差測定によって測定される。TBAOHの場合、安息香酸が一般的に使用される。HClOについては、TRIS((トリス-ヒドロキシメチル)-アミノ-メタン)が一般的に使用される。
【0208】
ベールの積層-ベール化したUD強化材の取得
【0209】
ベールは、WO2010/061114に記載されるように、図1を参照して、以下に詳述される機械を使用する製造ラインを使用して、炭素糸の一方向ウェブに接合される。得られた強化材1は、図2に概略的に示されている。強化材1は、ベール4、5で炭素糸3の一方向ウェブ2の面のそれぞれに接合された一方向ウェブ2からなり、接合は、熱可塑性ベール4、5の高温粘着性のおかげで達成されている。
【0210】
炭素糸3は、クリール40上に固定された炭素糸の対応するスプール30から巻き出され、コーム50を通過し、ガイドローラ60、コーム70、及びガイドバー80aによって装置の軸に導入される。
【0211】
炭素糸3は、加熱バー90によって予熱された後、一方向ウェブ2の単位面積当たりの所望の炭素質量まで拡開バー80b及び加熱バー100によって拡開される。ベール4及び5のロール13a及び13bは、張力なしで巻き戻され、自由回転非電動ロール14a、14b、14c、14dと加熱バー12a、12bとの間に固定された連続ベルト15a及び15bによって搬送される。ベール4及び5は、炭素糸3と接触する前にゾーン11a及び11bで予熱され、空隙が制御された2つの加熱バー12a及び12bの両側に積層される。冷却され得るカレンダ16は、次いで、両側にベールを有する一方向ウェブに圧力を加え、リボン形態の強化材1をもたらす。戻りローラ18は、上記のように形成された強化材1からロールを形成するために、モータ駆動の巻取り19及び巻取りトリオ20を備える牽引システムに強化材1を向け直す。
【0212】
実施した試験
I.測定
DSC:示差走査分析。分析は、フランスのガイアンコートにあるTA Instruments製のDiscovery 25装置で行った。
【0213】
DMA:動的機械分析。分析は、規格EN 6032(1Hz、1℃/分、振幅15μm)に従って、フランス、GuyancourtのTA Instruments製のQ800機器で行った。
【0214】
高温顕微鏡分析:分析は、Linkam Scientific Instruments(Tadworth、英国)製の加熱システムを備えたZeiss(Marly-le-Roi、フランス)製のAxio M2m Microscope Imagerで行った。
【0215】
レオロジー:粘度分析は、フランス、CourtaboeufのThermofisher Scientific製のHAAKE Mars 60レオメータで行った。分析は、EN6043に従って2℃/分、10rad/秒で行ったが、歪みは10%ではなく4%であった。
【0216】
II.RTM6樹脂中の移動度に対する反応性官能基のレベルの影響
研究する多孔質層(CP)及び前記多孔質層に適用されたRTM6エポキシ樹脂を2枚のガラススライドの間に置き、全体を光学顕微鏡下に配置する。次いで、アセンブリ全体を、複合部品の製造中にRTM6エポキシ樹脂が注入又は射出されるときの最終温度に対応する180℃の温度まで2℃/分の温度上昇に供する。これは、樹脂の予備架橋が使用されないため、CP層の温度抵抗性に対する臨界的なサイクルである。
【0217】
図3は、180℃、すなわち樹脂の後架橋で得られた画像を示す。本発明の定義に対応しないCP3、CP4及びCP7層の場合、ベールが樹脂中で溶解するか又は完全に一体性(integrity:結着性、完全性)を失うことが分かる。また、本発明に対応するCP8層の場合、ベールが樹脂中で一体性を失うように見受けられ、多孔質層の反応性と一体性とが非相関であるという兆候がある。しかしながら、依然として樹脂中の多孔質層の移動度の低下が観察され、それで十分である。
【0218】
一方では、0.15meq/gを超える量に相当する多孔質層中の-NH官能基の存在が、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーで形成された多孔質層CP7aと同様に、到達温度が多孔質層の融点をはるかに超える場合(多孔質層CP2及びCP5)でも、エポキシ樹脂と接触して多孔質層の一体性を保持することを可能にすることは、非常にはっきりしている。この一体性の保持は、多孔質層と樹脂との間で反応が起こったことを明らかに示している。
【0219】
同様に、多孔質層中の0.20meq/gを超える-COOH官能基の量が、エポキシ樹脂との接触における反応性のために必要とされる(多孔質層CP1、CP8、CP10)が、これはその一体性の保持を必然的にもたらすのではない。それにもかかわらず、移動度の低下及び樹脂中の多孔質層の溶解が観察され、これは多孔質層と樹脂との間で反応が起こったことを明確に示している。したがって、これらの観察結果は、多孔質層とエポキシ樹脂との間の反応が、多かれ少なかれ多孔質層の一体性の顕著な保持をもたらし得るという事実を強調している。試験された多孔質層と樹脂の間の反応の有無を決定するために、さらなる研究が行われた。
【0220】
III.エポキシ官能基に対する多孔質層の反応性の実証
ハードナー(硬化剤)を含まないHuntsman四官能性エポキシ及び多孔質層を用いて様々な結果が得られた:
・調節された示差走査熱量測定(Modulated differential scanning calorimetry、MDSC:変調示差走査熱量測定)
・平面レオロジー。
【0221】
調節された示差走査熱量測定(MDSC:変調示差走査熱量測定)
約2mgの多孔質層に約18mgのエポキシを含浸させ、アセンブリを密閉アルミニウムDSCカプセルに入れ、次いでこれに穴を開けた。次いで、得られたカプセルをオーブンに入れ、注入又は射出による複合部品の製造中に使用される従来のサイクルと同等の温度サイクルに供した:1時間120℃+2時間180℃、2℃/分の温度上昇。硬化後、試料を室温までゆっくりと自然冷却した。
【0222】
次いで、得られた試料を2℃/分でMDSCによって分析して、可逆的現象(エポキシ及びベールガラス転移、ベール溶融)と不可逆的現象(発熱性樹脂架橋)とを区別した。結果を図4に示す。
【0223】
最初の観察は、MDSC曲線が-15/-20℃程度のガラス転移で不変のままであるので、硬化サイクルがエポキシに影響を及ぼさないことである。一方、硬化サイクル中に多孔質層とエポキシとが反応した場合、多孔質層はもはや再結晶することができず、したがってMDSC分析ではもはや融点を示さないことは明らかである(多孔質層CP1及びCP2)。逆に、多孔質層がエポキシと反応しない場合、約150℃で可視的な多孔質層CP9の融点によって示されるように、冷却時に再結晶することができる。
【0224】
第2の観察は、高温でのエポキシ架橋の開始であり、これは、樹脂が多孔質層と部分的に反応することができたときに10~20℃早く起こる。
【0225】
最後に、多孔質層がエポキシと反応することができる場合、約10~20℃でわずかなガラス転移が観察される。このガラス転移は、多孔質層との架橋を開始したエポキシの一部のガラス転移であり得る。
【0226】
平面レオロジー
0.12gの多孔質層を有する直径35mmのディスクを、多孔質層のいくつかのプライを積み重ねることによって調製した。次いで、得られたディスクをRTM6エポキシ樹脂に浸漬して完全に含浸させ、次いでレオメータの底板上に配置した。次いで、エポキシ樹脂が含浸された多孔質層試料が位置する0.5mmの空隙が得られるまで、上部プレートを下げるにつれて余分な樹脂を除去した。
【0227】
規格EN6043によれば、課された歪みは4%であり、剪断周波数は10rad/sであり、硬化サイクルは120℃で1時間の等温、続いて2時間に渡って2℃/分で180℃までの昇温であった。
【0228】
図5は、硬化中の粘度の変化を示しており、CP1多孔質層の溶融後、粘度は徐々に増加するが、多孔質層が存在しない場合、RTM6樹脂の粘度は安定なままであり、架橋が起こる前に温度が上昇するにつれてわずかに低下することさえ明らかである。CP1多孔質層の存在下での系粘度の増加が多孔質層のみによるものであることを確実にするために、多孔質層を120℃でRTM6と同一の粘度の油(PMX-50油)に浸漬することによっても同じ試験を行った。次いで、CP1多孔質層は、より大きな程度まで溶融し(粘度レベルは、RTM6において10倍の低下であったのと比べてより大きく20倍の低下であった)、次いで混合物の粘度が一定のままであることが観察された。したがって、この観察により、多孔質層の溶融に続いて観察されたRTM6多孔質層/樹脂系の粘度の増加は、RTM6樹脂(より具体的にはそのエポキシ官能基)とCP1多孔質層(より具体的にはその反応性官能基-COOH)との間の反応によるものであることが確認された。
【0229】
図6は、同じタイプの結果を示すが、-COOH官能基を有する異なる多孔質層の存在下にて:CP1及びCP8は本発明に適合し、CP9は0.10meq/gの-COOH官能基及び0.12meq/gの-NH官能基のみを有し、したがって本発明の範囲外である。
【0230】
これらの結果は、多孔質ポリアミド層中の-COOH官能基の量を制御することによって、-COOH官能基とエポキシ樹脂との反応レベルを制御することが可能であることを明確に示している。
【0231】
ゲル化点(gel point又はgelling point)では貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’が同等であるため、剪断レオロジーを使用して架橋を監視することもできる。したがって、ゲル化点は、2つの曲線G’とG’’との間の交点に対応する。
【0232】
多孔質層(CP8)の-COOH官能性のレベルを増加させることによって、50分の実験後及び158℃でのG’及びG’’弾性率の交差によって示されるように、多孔質層とRTM6樹脂との間の架橋を達成することが可能である(図7)。CP9多孔質層の存在下では、RTM6のゲル化点は実質的に変化しないままであり、多孔質層が樹脂と反応しないことが確認される。
【0233】
同様に、図8は、-NH官能基を有する異なる多孔質層の存在下での粘度の変化を示す。ここでも、多孔質ポリアミド層中の-NH官能基のレベルを増加させることによって、-NH官能基とエポキシ樹脂との間の反応のレベルを制御することが可能である。
【0234】
これらの結果は、試験される多孔質層をRTM6樹脂ではなく、ハードナー(硬化剤)を含まないHuntsman四官能性エポキシに浸漬する第2の一連の実験によって補完され、これは、エポキシ/ハードナー反応の反応速度がエポキシ単独の反応速度より速いことによりRTM6樹脂内のハードナーの存在によってマスキングされ得るポリアミドの反応性官能基とエポキシ間の反応をより強調する。試験条件は、それ以外は厳密に同一であり、得られた結果を図9に示すが、これはエポキシ/ポリアミド系のゲル化を監視することを可能にした。CP8層では、温度上昇に伴って粘度の明確な増加が観察されるが(図9)、155℃で28分間の温度上昇後にG’及びG’’弾性率が交差するようにも見える(図10)。エポキシ樹脂のみが180℃で11時間超後にゲル化することに留意することが重要であり、これはまた、図10で観察されるゲル化点が多孔質層とエポキシとの間の反応に起因することを裏付けている。他のCP1、CP2及びCP5層については、エポキシのゲル化点の変化は観察されないが、多孔質層の溶融の制限並びに混合物の粘度の増加が観察され、反応性官能基とエポキシとの間の反応を示している。対照的に、CP9層は著しく溶融し、混合物の粘度は試験中一定のままであり、相互作用又は反応性がないことを示している(図9)。
【0235】
IV.RTM6樹脂のエポキシ反応性に対する多孔質層構造の影響の非存在
使用したポリアミド層の構造がRTM6樹脂のエポキシとの反応性に何らかの影響を及ぼすかどうかを評価するために、不織布形態の多孔質層10(CP10)のポリアミドについても、厚み100μmの非多孔質フィルムの形態で試験した。図11(多孔質層又はポリアミドフィルムの構造によるエポキシ/ポリアミド試料の120℃から180℃まで2時間の2℃/分の温度上昇中の粘度の変化を示す)は、層の構造がエポキシとの反応性に影響を及ぼさないことを示す。したがって、ポリアミドの-COOH官能基の接触可能性は、不織布(CP10)の形態であっても非多孔質フィルムの形態であっても同じままである。
【0236】
V.融点未満の温度での多孔質層の反応性
多孔質層がその融点未満でRTM6樹脂と反応する能力を、CP8多孔質層を用いて検証した。図12は、RTM6試料及びRTM6/多孔質層CP8試料の試験中に適用された等温温度Ta(樹脂注入及び硬化に使用される温度)によるゲル化時間(ゲル化点に達するまで温度Taで加熱する時間)の変化を示す。図12は、多孔質層が反応し、RTM6のゲル化点を、その融点未満でさえも改良(改変)することができることを示す。したがって、CP8/RTM6多孔質層の反応速度は、2つの材料が多孔質層の融点を超えて接触すると加速されることが明らかである(多孔質層の移動度がより大きくなり、従ってポリアミドの-COOH官能基の接触可能性が増加する)が、融点未満でも反応が可能である。
【0237】
VI.様々な市販の樹脂への適用
様々な多孔質層を上記の4つの市販の樹脂、すなわちRTM6、HF620、EP2400及びEP2410に浸漬した。次いで、ゲル化点を、120℃から180℃に2℃/分で昇温+180℃にて2時間でのG’及びG’’弾性率の交点として測定した。図13は、得られた結果を示す。180℃の加熱段階中にゲル化が起こる場合、違いはゲル化を達成するのに必要な加熱時間であり、これは図13の上部に示されている。
【0238】
一方ではRTM6樹脂とHF620樹脂との反応性の違い、他方ではEP2400樹脂とEP2410樹脂との反応性の違いは明らかであり、180℃でゲル化を達成するのに必要な非常に異なる時間に反映される。樹脂の反応性が低下すると、多孔質層が反応する時間が長くなる。したがって、反応性官能基とエポキシとの間の反応は以前に実証されたように起こるが、多孔質層CP1(本発明に適合して-COOH官能基を有する)及びCP5(本発明に適合して-NH官能基を担持する)は、RTM6のゲル化点に影響を及ぼさない。一方、これらの同じ層では、ゲル化点は、HF620樹脂について改良され、EP2400及びEP2410樹脂については更に大幅に改良される。したがって、HF620、EP2400及びEP2410樹脂の場合のエポキシ/ハードナー(硬化剤)反応速度が遅いため、反応性官能基とエポキシとの間の反応は、樹脂のゲル化点により大きな影響を与える。いずれの場合も、ゲル化点が、RTM6樹脂の場合、本発明による多孔質層で改良されているか否かにかかわらず、前述のように、前記層によって有される反応性官能基とエポキシ樹脂との間に反応が存在し、これは、以下の段落IVに示されるように、機械的特性の維持においても実現する。逆に、CP4及びCP9多孔質層(本発明の範囲外)では、樹脂:EP2400及びEP2410又はRTM6及びHF620にかかわらず、ゲル化点に変化はない。このことから、この場合、エポキシ樹脂との反応がないことが確認される。
【0239】
これらの結果はまた、試験した樹脂に対するエポキシ官能性の影響を強調している。RTM6及びHF620樹脂の場合、エポキシは四官能性であるが、EP2400及びEP2410樹脂の場合、それらは三官能性である。これは、後者の2つの樹脂の場合に接触可能なエポキシ基が少なく、その結果、RTM6及びHF620樹脂と特に迅速に反応した多孔質層CP8の場合に特に見られるように、多孔質層との反応性がより遅くなることを意味する。しかしながら、これは、他の多孔質層(CP1、CP5)が反応する時間を残す。
【0240】
VII.複合材の機械的特性に対する多孔質層の反応性の影響
表5に示すように、7つの強化材、本発明による4つの材料、および、比較目的のための4つの材料を比較した。
【表5】
【0241】
両側の多孔質層に接合する一方向性カーボンウェブを製造するために使用される条件を以下の表6に示す。
【表6】
【0242】
炭素坪量に適合した積重ね順序からなる340mm×340mmのプリフォームをプレス下で射出成形モールドに配置した。プリフォームを囲む既知の厚みのフレームは、所望の繊維体積比FVRを得ることを可能にした。
【0243】
参照HexFlow RTM6としてHexcelによって市販されているエポキシ樹脂を、プレス内で120℃に維持したプリフォームを通して2バール下、80℃で射出した。プレスによって加えられた圧力は5.5バールであった。プリフォームが充填され、樹脂がモールドから出た後、出口パイプを閉じ、加熱処理サイクルを開始した:180℃まで3℃/分、続いて180℃に2時間加熱し、5℃/分に冷却した。
【0244】
次いで、試験片を適切な寸法に切断して、表7に要約されている衝撃後圧縮試験(CAI)、面内剪断試験(IPS)、及び開孔圧縮試験(OHC)を行った。
【表7】
【0245】
これらすべての試験で得られた結果を表8~表10に示す。提示された機械的結果は、本発明による結果が、特に耐衝撃性(CAI)に関して最適な特性で複合部品を得ることを可能にし、機械的特性は、開孔圧縮(open hole compression、OHC)又は面内剪断(in-plane shear、IPS)などの孔に対する感度を示すことを実証している。
【0246】
一方、エポキシ粉末(比較材料1)は、80~130℃の間の温度でドライプリフォーム製造プロセスのすべての工程を実行するという問題を解決するが、最適な機械的特性を有する複合部品を製造しない。一方、従来のポリアミドベール(比較材料2)は、最適な機械的特性を与えるが、製造及び成形のためにより高い温度を必要とする。対照的に、本発明による材料は、両方の問題に対処する。
【0247】
したがって、本発明による材料3~6は、130℃未満の温度での製造及び成形プロセスと、複合部品の最適な機械的特性との両方を組み合わせることを可能にする。多孔質層の一体性が失われ、多孔質層の移動度のみが低下した場合(CP8層を有する材料6)であっても、又は、多孔質層がRTM6樹脂のゲル化時間を変更しない場合(CP1層を有する材料3又はCP5層を有する材料5)であっても、本発明で使用される材料が何であるかにかかわらず、機械的性能は同等であることも強調されるべきである。したがって、すべての場合において、本発明による材料では、反応性官能基/エポキシ官能基反応は、その低い融点にもかかわらず、多孔質層の存在に起因して、得られた複合部品の機械的特性の低下を防止するのに十分である。同様に、本発明による材料では、機械的特性は、熱可塑性CP7a層が部分的に架橋されている比較材料7aで得られた特性と同等であることが分かる。
【0248】
IPS性能もまた、比較材料7よりも改善される。
【表8】

【表9】
【0249】
表9から分かるように、OHC性能は、本発明による材料と同じ又は更に良好である。
【表10】
【0250】
本発明による材料では、表10に示すCAI性能は、同等の融点を有する比較材料1及び7で得られたものよりも良好である。一方、これらは、より高温の成形を必要とする比較材料2で得られたものと同等である。
【0251】
VIII.温度コンディショニング(状態調整)中の安定性に対する多孔質層の反応性の影響
実施された試験は、熱可塑性多孔質層を含む強化材とRTM6樹脂とを接合して得られた複合部品が、温度応力を受けたときに2つの転移を有することを示した。第1の転移は、エポキシ樹脂で富化された多孔質熱可塑性層のガラス転移に対応し、100℃未満の温度で起こり、一方、第2の転移は、エポキシマトリックスのガラス転移に対応し、約200℃の温度で起こる。
【0252】
攻撃的な流体と接触する複合材料のほとんどのエージングは、70℃までの温度で、様々な長さの接触時間で行われる。比較材料2(CP9-1R8D04多孔質層を伴う)を70℃でエージングすると、エポキシ樹脂の硬化及び相分離により、エポキシ樹脂が豊富な熱可塑性多孔質層のガラス転移の変化が観察された。結果の一例が図14に示されており、これはDMAストレス(70℃で14日間のコンディショニングの有無で得られたDMA曲線:25℃から270℃まで2℃/分)に対する材料の応答を示す。転移は、70℃でエージングするとき約60℃から約100℃に著しく変化するが、RTM6のガラス転移は変化しない(図示せず)。
【0253】
逆に、本発明による材料5及び6に本発明による多孔質層を使用する場合(それぞれ図15及び図16)、エポキシ樹脂と反応した可能性がある熱可塑性多孔質層のガラス転移は、70℃でエージングした場合に比較的安定なままであることは明らかである。これは、RTM6樹脂が硬化したときに、2つの化学反応した材料の間に相分離がないためである。
【0254】
これは、光学顕微鏡法によって得られた結果を確認し、本発明による多孔質層と樹脂との間の反応が、その低い融点にもかかわらず、樹脂の特性に対する前記多孔質層の存在の影響を最小限に抑えることを示す。本発明で推奨される多孔質層の存在は熱硬化性樹脂の熱機械的特性に影響を及ぼさないと思われるので、これは本発明の利点の1つである。
図1
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【国際調査報告】