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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】血管アクセス部位の識別
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20241024BHJP
   G16H 40/60 20180101ALI20241024BHJP
   G16H 30/00 20180101ALI20241024BHJP
【FI】
A61B34/10
G16H40/60
G16H30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523849
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2022079847
(87)【国際公開番号】W WO2023072973
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/272,251
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21218158.0
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】シンハ アユシ
(72)【発明者】
【氏名】フレクスマン モリー ララ
(72)【発明者】
【氏名】グプタ アトゥル
(72)【発明者】
【氏名】パンセ アシシュ サッチャヴラト
(72)【発明者】
【氏名】サレヒ レイリ
(72)【発明者】
【氏名】トポレク グルゼゴルス アンジャジ
(72)【発明者】
【氏名】エルカムプ ラモン クイード
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
5L099AA26
(57)【要約】
血管系内の標的部位に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別するコンピュータ実施方法が、提供される。この方法は、複数の潜在的な血管アクセス部位に対する成功メトリックを計算することを含む。成功メトリックは、血管アクセス部位から血管系を介して標的部位に介入装置をナビゲートする容易さを表し、画像データに基づいて計算される。血管アクセス部位は、計算された成功メトリックに基づいて識別される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管系内の標的部位に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別するコンピュータ実施方法であって、
前記標的部位を示す入力を受信するステップと、
前記血管系の少なくとも一部分を表す画像データを受信するステップと、
複数の潜在的な血管アクセス部位について、
前記画像データに基づいて、前記血管系を介して前記血管アクセス部位から前記標的部位に前記介入装置をナビゲートする容易さを表す成功メトリックを計算するステップであって、前記成功メトリックを計算するステップは、
前記血管アクセス部位を用いて前記標的部位において血管介入を実行する結果に影響を及ぼす複数の成功係数の値を計算し、
前記成功メトリックを提供するように前記計算された値を重み付けする、
ことを含む、ステップと、
前記潜在的な血管アクセス部位について計算された前記成功メトリックに基づいて、前記複数の潜在的な血管アクセス部位から血管アクセス部位を識別するステップと、
を有するコンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記成功係数は、以下の特徴、すなわち、
前記血管アクセス部位と前記標的部位との間の前記血管系の一部分の蛇行性、
前記血管アクセス部位と前記標的部位との間の前記血管系における狭窄を通過させる困難性、
前記血管アクセス部位と前記標的部位との間の前記血管系における埋め込み装置を通過させる困難性、
前記血管アクセス部位と前記標的部位との間の前記血管系における石灰化を通過させる困難性、
のうちの1つ又は複数を表す、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記血管アクセス部位を識別するステップは、前記潜在的な血管アクセス部位のランク付けを提供することを含み、
前記ランク付けは、前記計算された成功メトリックに基づくと、請求項1又は2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記潜在的な血管アクセス部位のランク付けを提供することは、
前記標的部位及び前記潜在的な血管アクセス部位を表す解剖学的画像を出力すること、及び各潜在的な血管アクセス部位について、前記解剖学的画像において、前記成功係数のうちの1つ又は複数に影響を及ぼす少なくとも支配的な特徴の位置を識別すること、
を含む、請求項3に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記血管アクセス部位を識別するステップは、
グラフィカルユーザインタフェース上の前記潜在的な血管アクセス部位の前記ランク付けを提供することと、
前記成功係数のうちの1つ又は複数に影響を及ぼす少なくとも支配的な特徴の位置を示すユーザ入力を受信することと、
前記ユーザ入力に応答して、前記支配的な特徴に関する患者データを前記グラフィカルユーザインタフェースに出力することと、
を含む、請求項4に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記成功メトリックを計算するステップ及び/又は前記血管アクセス部位を識別するステップは、前記標的部位、及び前記血管系の前記少なくとも一部分を表す前記画像データを少なくとも1つのニューラルネットワークに入力することによって決定され、
前記少なくとも1つのニューラルネットワークは、前記入力された標的部位及び前記画像データに基づいて、前記成功メトリックを予測する、及び/又は前記血管アクセス部位を識別するように訓練される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのニューラルネットワークは、電子健康記録データに更に基づいて、前記成功メトリックを予測する、及び/又は前記血管アクセス部位を識別するように訓練され、 前記方法は、
前記血管系に関する電子健康記録データを受信することと、
前記電子健康記録データを前記少なくとも1つのニューラルネットワークに入力することと、
を更に含む、請求項6に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記電子健康記録データを前記少なくとも1つのニューラルネットワークに入力することは、処置結果及び/又はそれらの相対的重み付けに影響を及ぼす前記複数の成功係数のうちの1つ又は複数についての前記計算された値の変化を引き起こす、請求項7に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記電子健康記録データは、前記電子健康記録データを前記少なくとも1つのニューラルネットワークに入力する前に、自然言語処理技術を使用して処理される、請求項7に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記成功メトリックを計算するステップは、前記標的部位、及び前記血管系の少なくとも一部分を表す前記画像データを、複数のニューラルネットワークに入力することによって決定され、
別個のニューラルネットワークは、前記入力された標的部位及び前記画像データに基づいて、前記成功係数の各々を予測するように訓練される、
請求項6乃至9のいずれかに記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
前記画像データが、前記介入装置を前記識別された血管アクセス部位に挿入する前に生成された超音波画像データを含む、請求項6乃至10のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのニューラルネットワークは、前記介入装置が前記潜在的な血管アクセス部位の各々から前記血管系内の前記標的部位に到達するためのシミュレートされた経路を予測するように更に訓練され、
前記少なくとも1つのニューラルネットワークは、前記介入装置を用いて前記潜在的な血管アクセス部位の各々から前記血管系内の前記標的部位に到達する困難性を表す複雑性メトリックに更に基づいて、前記成功メトリックを計算する、及び/又は前記血管アクセス部位を識別するように訓練される、
請求項6乃至11のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのニューラルネットワークは、
複数の対象の各々について、血管系の一部分及び対応する標的部位を表す画像データを含む訓練データを受信し、
前記訓練データ内の前記標的部位の各々について、前記血管アクセス部位から前記血管系の前記一部分を介して前記標的部位に前記介入装置をナビゲートする容易さを表すグラウンドトゥルースデータを受信し、
複数の前記対象について、
前記訓練データ及び前記グラウンドトゥルースデータを入力し、
前記ニューラルネットワークによって予測される成功メトリックと前記ニューラルネットワークによって予測される血管アクセス部位との間の差を表す損失関数の値が停止基準を満たすまで、前記ニューラルネットワークのパラメータを調整する、
ことによって、前記成功メトリックを予測する、及び/又は前記血管アクセス部位を識別するように訓練される、
請求項6乃至12のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項14】
前記グラウンドトゥルースデータは、前記標的部位の各々に対する血管アクセス部位のランク付けを含み、
前記ニューラルネットワークは、各入力された標的部位に対する前記血管アクセス部位のランク付けを予測するように訓練され、
前記ニューラルネットワークのパラメータを調整することは、前記ニューラルネットワークによって予測される前記血管アクセス部位のランク付けと前記アクセス部位のグラウンドトゥルースランク付けとの間の差を表す損失関数の値が停止基準を満たすまで、繰り返される、
請求項13に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項15】
血管系内の標的部位に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別するシステムであって、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように構成された1つ以上のプロセッサを含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血管系内の標的部位に到達するために介入(interventional)装置を挿入するための血管アクセス部位(access site)を識別することに関する。コンピュータ実施方法、コンピュータプログラム製品、及びシステムが開示される。
【背景技術】
【0002】
血管系における介入処置は、多くの場合、意図された標的部位に到達するために複数の血管アクセス部位のうちの1つを選択することによって実行されることができる。例えば、経皮的冠動脈介入「PCI」処置は、多くの場合、橈骨アクセス又は大腿部アクセスのいずれかで実行されることができる。アクセス部位の選択は、典型的には医師によって行われ、アクセス部位から標的部位まで介入装置をナビゲートする容易さ、及び血管アクセス部位を使用して標的部位において血管介入を実行することの予想される結果などの複数の要因に基づく。
【0003】
一例として、Jolly, S.他による文献、題"Radial versus femoral access for coronary angiography or intervention and the impact on major bleeding and ischemic events: A systematic review and meta-analysis of randomized trials," American Heart Journal 157(1): 132-140 (2009)は、橈骨アクセスを伴うPCI処置が、大腿部アクセスを伴うものと比較して、出血の可能性が73%低く、入院期間が0.4日短く、脳卒中の発生が減少する傾向にある、23件のランダム化試験のメタ分析を報告している。しかしながら、このメタ分析は、また、橈骨アクセスを用いる処置が、ワイヤ、バルーン、又はステントを用いて標的病変を横切ることができなくなることの増加傾向を示したことを示した。
【0004】
したがって、標的部位の位置、標的部位につながる血管系の蛇行、標的部位へのナビゲーションを妨ぎ得る血管系における狭窄又は石灰化などの閉塞の存在を含む、複数の要因が、血管アクセス部位の医師の選択に影響を及ぼし得る。
【0005】
標的部位において介入処置を行うための血管アクセス部位の選択に影響を及ぼす多数の要因のために、医師は、どのアクセス部位を使用するかに関して直感的な決定を下し得る。しかしながら、様々な供給源からの関連情報の全てを、血管アクセス部位の最適な選択に心の中で分解することは、複雑で時間がかかり、一方、血管アクセス部位の不十分な選択は、例えば、処置時間に影響を及ぼし得る。これは、標的部位が到達可能ではないかもしれず、処置が新しいアクセス部位から再開されなければならないかもしれず、処置時間を長くするためである。したがって、血管アクセス部位の医師の選択を支援するシステムの必要性が存在する。
【0006】
WO2017/139894A1は、血管内/神経介入処置を必要とする患者における頸動脈(又は椎骨動脈)へのより効率的なアクセスを可能にするための個別化された解決策を可能にするシステム及び方法に関する。特に、そのようなシステムは、血管の走査に基づいて身体内の血管の経路を決定するように構成された走査データリーダと、1つ又は複数の血管線の物理的特性を記憶するように構成されたメモリと、決定された血管経路に基づいて血管線を使用して血管内の目的地点に到達する経路と、記憶された血管線の各々について目的地点に到達することが可能であるかどうかとを決定するように構成されたプロセッサとを有し得る。したがって、ユーザは、血管線、例えば、決定された血管経路に沿って目的地点に到達することができるカテーテル及びガイドワイヤを含むカテーテルシステムを選択する際に支持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それでも、介入処置を実行するために血管アクセス部位を選択するタスクを改善する余地が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、血管系内の標的部位に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別するコンピュータ実施方法が、提供される。本方法は、
標的部位を示す入力を受信するステップと、
血管系の少なくとも一部分を表す画像データを受信するステップと、
複数の潜在的な(potential)血管アクセス部位に対して、
画像データに基づいて、血管アクセス部位から血管系を介して標的部位に介入装置をナビゲートすることの容易さを表す成功メトリックを計算するステップであって、成功メトリックを計算することは、血管アクセス部位を使用して標的部位において血管介入を実行することの結果に影響を及ぼす複数の成功係数の値を計算することと、計算された値を重み付けして成功メトリックを提供することとを含む、ステップと、
潜在的な血管アクセス部位について計算された成功メトリックに基づいて、複数の潜在的な血管アクセス部位から血管アクセス部位を識別するステップと、
を含む。
【0009】
これらの動作の結果は、標的部位のための最適な血管アクセス部位を識別することである。特に、「最適な」血管アクセス部位については、標的部位が到達可能であるだけでなく、合併症のリスクも可能な限り低い。例えば、血管系が重度に石灰化しているか、又は偏心したプラークもしくは血栓を有する場合、介入装置のナビゲーションは、出血、解離、溢出及び破裂を含む血管損傷、又は塞栓のような合併症の危険性がある。したがって、血管アクセス部位の準最適な選択は、患者を傷つける可能性さえある。
【0010】
この目的のために、請求項1に記載の方法では、血管介入を実行する結果に影響を及ぼす成功係数、特に合併症のリスクを低減する要因が、考慮され、重み付けされる。成功係数は、1つ又は複数の潜在的なアクセス部位について個別に決定され、結果として得られる成功メトリックは、潜在的な血管アクセス部位のランク付けを決定するための基礎として使用されることができる。したがって、識別された最適な血管アクセス部位は、医師に推奨され得る。最適な血管アクセス部位は、一貫した効率的な方法で提供され、血管介入中の合併症のリスクを低減しながら、最適なアクセス部位を決定する際の既存の課題のうちのいくつかを未然に防ぐ
【0011】
本開示の更なる態様、特徴、及び利点は、添付の図面を参照してなされる例の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示のいくつかの態様による、血管系内の標的部位に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別する方法の一例を示すフローチャートである。
図2】本開示のいくつかの態様による、血管系内の標的部位に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別するためのシステム200の一例を示す概略図である。
図3】本開示のいくつかの態様による、成功係数のうちの1つ又は複数に影響を及ぼす支配的(dominant)な特徴の位置の識別を含む解剖学的画像の一例を示す概略図である。
図4】本開示のいくつかの態様による、潜在的な血管アクセス部位のランク付けを提供するためのグラフィカルユーザインタフェース160の一例を示す概略図である。
図5】本開示のいくつかの態様による、血管系内の標的部位130に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別する際に使用するためのニューラルネットワーク170の第1の例を示す概略図である。
図6】本開示のいくつかの態様による、血管系内の標的部位130に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別する際に使用するためのニューラルネットワーク170の第2の例を示す概略図である。
図7】本開示のいくつかの態様による、成功メトリックを予測するために、及び/又は血管アクセス部位を識別するためにニューラルネットワークを訓練する方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の例は、以下の説明及び図面を参照して提供される。この説明では、説明の目的のために、特定の例の多くの具体的な詳細が、説明される。本明細書において、「例」、「実施態様」、又は同様の言語への言及は、例に関連して説明される特徴、構造、又は特性が少なくともその1つの例に含まれることを意味する。また、1つの例に関連して説明された特徴は、別の例においても使用され得、すべての特徴が簡潔さのために各例において必ずしも繰り返されないことを理解されたい。例えば、コンピュータ実施方法に関連して説明される特徴は、対応する形で、システムにおいて実装され得る。
【0014】
以下の説明では、血管系内の標的部位に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別することを含む、コンピュータ実施方法が、参照される。冠状動脈に到達するために大腿部又は橈骨アクセスが使用されるPCI処置の例が、参照される。しかしながら、本開示は、冠動脈介入処置を実行する際の使用、又はこれらの例示的なアクセス部位と共に使用することに限定されないことを理解されたい。したがって、標的部位は、血管系のどこにあってもよい。
【0015】
血管アクセス部位は、一般に、血管系の動脈又は静脈へのアクセスを提供する、身体上の表面位置である。血管アクセス部位の例は、大腿血管アクセス部位、すなわち、大腿動脈へのアクセスを提供する身体上の表面位置、橈骨血管アクセス部位、すなわち、橈骨動脈へのアクセスを提供する身体上の表面位置、上腕動脈アクセス部位、腋窩動脈アクセス部位、及び頸静脈アクセス部位を含む。しかしながら、本開示は、アクセス部位のこれらの例での使用に限定されず、アクセス部位が、代替的に、動脈又は血管系の静脈へのアクセスを提供する身体上の任意の適切な表面位置にあり得ることを理解されたい。
【0016】
本明細書では、標的部位において実行される介入処置の一例として、PCI処置を参照する。PCI処置は、冠動脈への血流を回復させるために使用され、典型的には大腿部又は橈骨部アクセス部位から冠動脈内の標的部位へのバルーンカテーテルの挿入を伴う。バルーンは、動脈を開くために、標的部位においてステントの内部で膨張される。しかしながら、本明細書に開示される方法は、この例示的なPCI処置、又は介入装置のこの例に限定されないことを理解されたい。したがって、本方法は、様々なタイプの介入処置とともに、及び適切な場合、限定はしないが、ガイドワイヤ、カテーテル、バルーンカテーテル、アテレクトミー装置、血管内超音波「IVUS」撮像装置、光干渉断層撮影「OCT」撮像装置、血圧装置及び/又は流量センサ装置などの様々なタイプの介入装置とともに使用され得る。
【0017】
本明細書で開示されるコンピュータ実施方法は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサに方法を実行させる、コンピュータ可読命令を記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体として提供され得ることに留意されたい。言い換えれば、コンピュータ実施方法は、コンピュータプログラム製品において実装され得る。コンピュータプログラム製品は、専用ハードウェア、又は適切なソフトウェアと関連してソフトウェアを実行することができるハードウェアによって提供されることができる。プロセッサによって提供されるとき、方法の特徴の機能は、単一の専用プロセッサによって、又は単一の共用プロセッサによって、又はそのうちのいくつかが共有されることができる複数の個々のプロセッサによって提供されることができる。方法特徴のうちの1つ又は複数の機能は、例えば、クライアント/サーバアーキテクチャ、ピアツーピアアーキテクチャ、インターネット、又はクラウドなどのネットワーク化された処理アーキテクチャ内で共有されるプロセッサによって提供され得る。
【0018】
「プロセッサ」又は「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアを排他的に指すものとして解釈されるべきではなく、デジタル信号プロセッサ「DSP」ハードウェア、ソフトウェアを記憶するための読取専用メモリ「ROM」、ランダムアクセスメモリ「RAM」、不揮発性記憶装置などを暗黙的に含むことができるが、これらに限定されない。更に、本開示の例は、コンピュータ使用可能記憶媒体、又はコンピュータ可読記憶媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形態をとることができ、コンピュータプログラム製品は、コンピュータ又は任意の命令実行システムによって、又はそれらと関連して使用するためのプログラムコードを提供する。本説明の目的のために、コンピュータ使用可能記憶媒体又はコンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、機器、又は装置によって、又はそれに関連して使用するためのプログラムを有する、記憶する、通信する、伝播する、又は移送することができる任意の装置であることができる。媒体は、電子、磁気、光学、電磁、赤外、又は半導体システム又は装置又は伝搬媒体であることができる。コンピュータ可読媒体の例は、半導体又はソリッドステートメモリ、磁気テープ、リムーバブルコンピュータディスク、ランダムアクセスメモリ「RAM」、読取専用メモリ「ROM」、剛体磁気ディスク、及び光ディスクを含む。光ディスクの現在の例は、コンパクトディスク読取専用メモリ「CD-ROM」、コンパクトディスク読取/書込「CD-R/W」、Blu-Ray(登録商標)、及びDVDを含む。
【0019】
上述のように、複数の要因が、標的部位において介入処置を実行するための血管アクセス部位の医師の選択に影響を及ぼし得る。その結果、医師は、どのアクセス部位を使用するかに関して直感的な決定を下し得る。代替的に、医師は、より多くの情報に基づいた選択を行うために、患者の電子健康記録データを検索してもよい。しかしながら、このプロセスは、様々な情報源から全ての関連情報を抽出し、情報を血管アクセス部位の最適な選択に心の中で分解することが、複雑であり、時間がかかるので、非効率的である。
【0020】
図1は、本開示のいくつかの態様による、血管系内の標的部位に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別する方法の一例を示すフローチャートである。図1を参照すると、本方法は、
標的部位130を示す入力を受信するステップS110と、
血管系の少なくとも一部分を表す画像データ140を受信するステップS120と、
複数の潜在的な血管アクセス部位1101..nに対して、
画像データ140に基づいて、血管系を介して血管アクセス部位110から標的部位130に介入装置120をナビゲートする容易さを表す成功メトリック150を計算するステップS130であって、成功メトリック150を計算するステップS130は、 血管アクセス部位110を使用して標的部位110において血管介入を実行することの結果に影響を及ぼす、複数の成功係数1501..kの値を計算すること、及び 計算された値を重み付けして成功メトリック150を提供すること、を含む、ステップと、
潜在的な血管アクセス部位について計算された成功メトリックに基づいて、複数の潜在的な血管アクセス部位から血管アクセス部位110を識別するステップS140と、
を含む。
【0021】
これらの動作の結果は、標的部位に対する最適な血管アクセス部位を識別することである。特に、「最適な」血管アクセス部位については、標的部位が到達可能であるだけでなく、合併症のリスクも可能な限り低い。次いで、最適な血管アクセス部位が、医師に推奨され得る。また、最適な血管アクセス部位は、一貫した効率的な方法で提供され、最適なアクセス部位を決定する際の既存の課題のいくつかを回避する。
【0022】
上述の方法は、また、本開示のいくつかの態様による、血管系内の標的部位に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別するためのシステム200の一例を示す概略図である、図2に示されるシステム200によって実装され得る。図1に示されるフローチャートに関連して説明される動作は、図2に示されるシステム200によって実行されてもよく、逆もまた同様である。
【0023】
図1を参照すると、動作S110において、標的部位130を示す入力が、受信される。一例として、標的部位は、例えば、PCI処置などの介入処置を実行することが意図される冠動脈内の位置であってもよい。入力は、図1に示される1つ又は複数のプロセッサ210によって受信され得る。入力は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、ジョイスティックなどのユーザ入力装置(図1には図示せず)から受信されてもよい。ユーザは、例えば、ドロップダウンメニューを使用して、可能な標的部位のリストから標的部位を選択するために、ユーザ入力装置を使用してもよい。別の例として、ユーザは、生体構造の一部分を表す画像内の位置で、マウスを介してクリックすることによって、又はタッチスクリーンを介してタッチすることによって、標的部位を識別してもよい。入力は、有線通信、光通信、及び無線通信を含む、任意の形態のデータ通信を介して受信され得る。いくつかの例として、有線又は光通信が使用されるとき、通信は、電気又は光ケーブル上で送信される信号を介して行われ得、ワイヤレス通信が使用されるとき、通信は、例えば、RF又は光信号を介し得る。
【0024】
動作S120において、血管系の少なくとも一部分を表す画像データ140が、受信される。この点に関して、画像データ140は、例えば、血管内超音波「IVUS」画像データ、光コヒーレンストモグラフィ「OCT」画像データ、コンピュータ断層撮影血管造影「CTA」画像データ、磁気共鳴「MR」画像データ、MR血管造影「MRA」画像データ、デジタルサブトラクション血管造影「DSA」画像データ、及び陽電子放出断層撮影「PET」画像データなどの1つ又は複数のタイプの画像データを含み得る。画像データ140は、図2に示される1つ又は複数のプロセッサ210によって受信され得る。画像データ140は、標的部位130を示す入力に関して上述したように、任意の形態のデータ通信を介して受信され得る。
【0025】
動作S130では、成功メトリック150が、画像データ140に基づいて、複数の潜在的な血管アクセス部位1101..nについて、計算される。 潜在的な血管アクセス部位は、例えば、大腿アクセス部位、橈骨アクセス部位、上腕動脈アクセス部位、腋窩動脈アクセス部位、及び頸静脈アクセス部位などの部位を含み得る。成功メトリックは、血管アクセス部位110から血管系を介して標的部位130に介入装置120をナビゲートすることの容易さを表す。
【0026】
一例として、介入装置120は、バルーンカテーテルであってもよい。成功メトリックは、血管アクセス部位110から血管系を介して標的部位130に介入装置をナビゲートする容易さに影響を及ぼす1つ又は複数の成功係数の値に基づいて計算され得る。この点に関して、成功係数は、
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系の部分の蛇行性、
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における狭窄を通過させる困難性、
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系に埋め込み装置を通過させる困難性、
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系に石灰化を通過させることの困難性、
のような特徴を表し得る。
【0027】
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系の一部分の蛇行を表す成功係数は、例えば、CTA、MRA、及びDSA画像データなどの受信された画像データ140から決定されることができる。蛇行血管セグメントは、全曲率の計算、曲率符号変化の計算、又は機械学習技術を含む他の技術などの検出技法を使用して、そのような画像データ内で検出され得る。蛇行血管は、また、ニューラルネットワークを使用して識別されてもよい。ニューラルネットワークは、教師なしの方法で訓練されてもよい。例えば、変分オートエンコーダ「VAE」などの生成ニューラルネットワークは、非蛇行血管を含むデータセット上で訓練され得る。VAEは、訓練データの潜在的表現(latent representation)にわたる分布を学習する。したがって、非蛇行血管上でVAEを訓練することによって、VAEによって学習された分布は、蛇行性を持たない血管系の良好な表現を提供することができる。推論において、蛇行のない血管系がVAEに入力される場合、その潜在的表現は、学習された分布においてインライア(inlier)であるだろう。しかしながら、訓練データに表されるよりも高い蛇行性を有する血管系がVAEに入力される場合、その潜在的表現は、学習された分布における外れ値(outlier)であるだろう。したがって、潜在的アクセス部位と標的部位との間の血管系内の蛇行セグメントは、VAEの外れ値予測を検出することによって識別されることができる。
【0028】
血管系の一部分の蛇行は、各潜在的な血管アクセス部位1101..nと標的部位130との間の、蛇行セグメントの総数のカウント及び/又は蛇行性の大きさに基づいて決定され得る。 次いで、蛇行性は、血管アクセス部位110から血管系を介して標的部位130に介入装置をナビゲートする容易さに影響を及ぼす成功係数を決定するために使用され得る。この例では、成功係数は、蛇行の減少に伴って増加し得、したがって、成功係数は、血管系の部分の蛇行性に逆相関であり得る。
【0029】
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における狭窄を通過させることの困難性を表す成功係数も、また、画像データに基づいて計算され得る。狭窄を越えて介入装置をナビゲートすることは、複雑である可能性があり、狭窄材料の除去を回避する必要性を考慮して、処置時間を増加させるかもしれない。狭窄の位置は、画像データ内の管腔の狭窄領域を検出することによって、IVUS、OCT、CTA、及びMRAなどの画像データ内で識別され得る。
【0030】
血管系における狭窄の通過の困難性は、狭窄の総数のカウント、及び/又は狭窄/複数の狭窄の全長、及び/又は血管アクセス部位110と標的部位130との間の狭窄/複数の狭窄の最小直径に基づいて決定され得る。狭窄を通過させるこの困難性は、血管アクセス部位110から血管系を介して標的部位130に介入装置をナビゲートする容易さに影響を及ぼす成功係数を決定するために使用され得る。この例では、成功係数は、狭窄の総数のカウントが増加するにつれて減少し得、したがって、成功係数は、血管系内の狭窄を通過する困難性に逆相関し得る。
【0031】
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系内の埋め込み装置を通過させることの困難性を表す成功係数も、画像データに基づいて計算され得る。埋め込み装置を通過して介入装置をナビゲートすることは、また、複雑である可能性があり、したがって、処置時間を増加させる可能性がある。埋め込み装置の存在は、ステントストラットなどの画像データ内の埋め込み装置の特徴的なパターンを検出することによって、IVUS、OCT、CTA、及びMRA画像データなどの画像データ内で検出され得る。埋め込み装置を通過させることの困難性を表す成功係数は、狭窄の場合と同様の方法で計算されることができ、同様に成功係数を計算するために使用されることができる。
【0032】
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における石灰化を通過させる困難性を表す成功係数も、画像データに基づいて計算され得る。血管石灰化は、血管を収縮させ、介入装置のナビゲーションを妨げ、患者の合併症のリスクを増大させる。石灰化を通過する介入装置のナビゲーションは、石灰化を破壊させ、下流の塞栓及び血管虚血を生じる可能性がある。石灰化の位置は、IVUS、OCT、CTA、PET、及びMRA画像データなどの画像データにおいて識別され得る。石灰化は、U-Net、領域成長、及び閾値化などのセグメンテーション技法を使用して、又は特徴検出技法を使用して、そのような画像データにおいて識別されることができる。ニューラルネットワークは、様々な患者に関する臨床研究からの画像データを使用して、教師ありの方法で石灰化を検出するように訓練され得、その場合、グランドトゥルースが注釈付けされる。
【0033】
動作S140において、血管アクセス部位110は、計算された成功メトリックに基づいて識別される。これは、潜在的な血管アクセス部位1101..nの各々について計算された成功メトリック150を比較することと、最も高い成功メトリックを有する血管アクセス部位110を識別することとを含み得る。したがって、これらの動作の結果は、標的部位に対する最適な血管アクセス部位を識別することである。次いで、最適な血管アクセス部位が、医師に推奨され得る。最適な血管アクセス部位は、一貫した効率的な様式で提供され、それによって、最適なアクセス部位を決定する際の既存の課題のいくつかを未然に防ぐ。
【0034】
最適な血管アクセス部位110は、動作S140において様々な方法で識別され得る。例えば、最適な血管アクセス部位110の成功メトリック、及び/又は潜在的な血管アクセス部位1101..nの各々の成功メトリック150は、ディスプレイに出力され得る。 成功メトリックは、図2に示されるディスプレイ230に、又はタブレットのディスプレイ、又は拡張/仮想現実装置などの別のディスプレイに出力され得る。成功メトリックは、図4に示されるグラフィカルユーザインタフェースを介して出力され得る。成功メトリックは、数値的に、又はグラフィカルに出力され得る。例えば、最も高い成功メトリックを有する血管アクセス部位は、この血管アクセス部位を他の血管アクセス部位と区別するために、色で識別されてもよい。最適な血管アクセス部位は、また、解剖学的画像において識別されてもよい。
【0035】
血管アクセス部位110を識別する動作S140は、計算された成功メトリック150に基づいて、潜在的な血管アクセス部位1101..nのランク付けを提供することを含み得る。このようなランク付けを提供することは、医師が最高ランクのアクセス部位と下位ランクのアクセス部位との間で選択することを可能にする。ランク付けは、表、又はランク付けにおける階層を示す番号順の形で提供されてもよい。ランク付けは、代替的に、潜在的な血管アクセス部位1101..nを解剖学的画像上に表示し、解剖学的画像上でそれらのランク付けを示すことによって、グラフィカルに示されてもよい。関連する例では、潜在的な血管アクセス部位1101..nのランク付けを提供する動作は、
【0036】
標的部位130及び潜在的な血管アクセス部位1101..nを表す解剖学的画像を出力すること、各潜在的な血管アクセス部位について、解剖学的画像において、成功係数1501..kのうちの1つ又は複数に影響を及ぼす少なくとも支配的な特徴の位置を識別すること、を含む。
【0037】
そのような支配的な特徴は、例えば、血管系の蛇行部分であり得る。支配的な特徴は、例えば、アテンションマップ、又は境界ボックスを用いて識別されてもよい。そのような境界ボックスの一例が、図3に示され、これは、本開示のいくつかの態様による、成功係数のうちの1つ又は複数に影響を及ぼす支配的な特徴の位置の識別を含む解剖学的画像の一例を示す概略図である。図3を参照すると、比較的高いレベルの蛇行を有する脈管構造の部分は、破線を有する境界ボックスによって識別され、比較的低いレベルの蛇行を有する脈管構造の部分は、実線の白線を有する境界ボックスにおいて識別される。このように解剖学的画像を出力することは、特定の血管アクセス部位が低い成功係数を有するとみなされる理由をユーザが理解するのを助け得る。
【0038】
関連する例において、血管アクセス部位110を識別する動作S140は、
グラフィカルユーザインタフェース160上の潜在的な血管アクセス部位1101..nのランク付けを提供すること、
成功係数1501..kのうちの1つ又は複数に影響を及ぼす少なくとも支配的な特徴の位置を示すユーザ入力を受信すること、及び
ユーザ入力に応答して、支配的な特徴に関する患者データ190をグラフィカルユーザインタフェース160に出力すること、
を含む。
【0039】
この例は、本開示のいくつかの態様による、潜在的な血管アクセス部位のランク付けを提供するためのグラフィカルユーザインタフェース160の一例を示す概略図である図4を参照して示される。図4を参照すると、グラフィカルユーザインタフェースGUI160は、図面の左側に向かう解剖学的画像を含む。この例では、標的部位130が、正方形の記号を用いて解剖学的画像上で識別され、潜在的な血管アクセス部位は、円を用いて識別される。潜在的な血管アクセス部位も、それらの成功メトリックに基づいて1..4としてランク付けされる。成功係数1501..kのうちの1つまたは複数に影響を及ぼす支配的な特徴の位置も、シンボル「A」を用いて図4に示される。この例では、ユーザは、シンボル「A」によって表される支配的な特徴を選択するために、マウス又はタッチスクリーンなどのユーザ入力装置を使用してもよい。その結果、支配的な特徴に関する患者データ190が、図4の右側に向かうGUIに表示されるように、GUIに出力される。出力される患者データ190は、例えば、成功メトリックがアクセス部位に対して計算された画像データを含んでもよい。代わりに、出力された患者データは、この位置で実行された以前の介入処置に関する医師の報告などの電子健康記録データを含んでもよい。
【0040】
上述のように、潜在的な血管アクセス部位1101..nの成功メトリックは、1つ又は複数の成功係数に基づいてもよい。成功メトリックが、例えば血管系の部分の蛇行などの単一の成功係数に基づく場合、成功メトリックは、単に成功係数と等しくてもよい。成功メトリックは、次いで、血管アクセス部位について単純に比較されてもよく、最も高い成功メトリックを有する血管アクセス部位110は、最適な、又は推奨される血管アクセス部位110として出力されてもよい。しかしながら、潜在的な血管アクセス部位1101..nの成功メトリックが複数の異なる成功係数1501..kに基づく場合、個々の成功係数は、潜在的な血管アクセス部位の成功メトリック150を提供するように重み付けされてもよい。 次いで、成功メトリック150は、血管アクセス部位について比較されてもよく、最も高い成功メトリックを有する血管アクセス部位110は、最適な、又は推奨される血管アクセス部位110として出力されてもよい。
【0041】
一例では、成功係数は、個々の成功係数の重みの値を固定値に設定することによって重み付けされてもよい。重みの値は、石灰化及び埋め込み装置の存在が比較的低い成功メトリックを生じる一方で、高い蛇行性の不在が、例えば、比較的高い成功メトリックを生じるように設定されてもよい。別の例では、重みの値が、可変値を有してもよい。例えば、重みの値は、個々の成功係数1501.kの各々の値に基づいてルールを設計することによって設定されてもよく、その結果、結果として得られる成功メトリック150は、血管系を介して血管アクセス部位から標的部位に介入装置をナビゲートする容易さの専門家による評価と一致する。ニューラルネットワークは、個々の成功係数1501.kの各々の値に基づいて、又は個々の成功係数1501.kが生成される画像データに基づいて、重みの値を生成するように訓練されてもよく、その結果、結果として得られる成功メトリック150は、血管系を介して血管アクセス部位から標的部位に介入装置をナビゲートする容易さの専門家評価と一致する。教師あり学習アプローチは、結果として得られる成功メトリック150に影響を及ぼす様々な個々の成功係数1501.kを専門家がどのように考慮するかに基づいて、結果として得られる成功メトリック150を生成するようにニューラルネットワークを訓練するのに使用されてもよい。
【0042】
動作S130において計算される成功メトリック150は、また、血管アクセス部位110を使用して標的部位130において血管介入を実行する結果を表す。したがって、例えば、血管介入の持続時間、出血及び虚血事象などの合併症のリスク、処置を繰り返さなければならない可能性、ならびに血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系をナビゲートすることから生じる他の要因など、結果に影響を及ぼす成功係数も、また、成功メトリック150を計算する際に考慮に入れられてもよい。これらの成功係数の各々の値は、Jolly, S.他による上で述べられた文献、題"Radial versus femoral access for coronary angiography or intervention and the impact on major bleeding and ischemic events: A systematic review and meta-analysis of randomized trials," American Heart Journal 157(1): 132-140 (2009)で報告されているように、臨床試験から得られてもよい。これらの成功係数は、これらの係数のうちの1つ又は複数を重みで重み付けすることによって成功メトリック150に含められてもよく、重みの値は、上で成功係数1501..kについて説明されたように決定される。 血管アクセス部位110を使用して標的部位130で血管介入を実行する結果を、このように成功メトリックに組み込むことによって、最適な血管アクセス部位のより証拠に基づく推奨が、提供され得る。
【0043】
いくつかの例では、ニューラルネットワークが、成功メトリック150を決定するために、及び/又は最適な血管アクセス部位110を識別するために使用される。一例では、成功メトリック150を計算する動作S130a及び/又は血管アクセス部位110を識別する動作S140は、標的部位130と、血管系の少なくとも一部分を表す画像データ140とを少なくとも1つのニューラルネットワーク170に入力することによって決定される。少なくとも1つのニューラルネットワーク170は、入力された標的部位130及び画像データ140に基づいて、成功メトリック150を予測し、及び/又は血管アクセス部位110を識別するように訓練される。
【0044】
図5は、本開示のいくつかの態様による、血管系内の標的部位130に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別する際に使用するためのニューラルネットワーク170の第1の例を示す概略図である。図5を参照すると、この例では、単一のニューラルネットワーク170が、潜在的な血管アクセス部位1101..nごとの成功メトリック150を予測するのに使用され、成功メトリックは、単一の成功係数「CI」に基づいて計算される。 ニューラルネットワーク170は、畳み込みニューラルネットワーク「CNN」、リカレントニューラルネットワークRNN」、変分自動エンコーダ「VAE」、トランスフォーマなどの1つ以上のアーキテクチャを含んでもよい。この例では、成功係数は、血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系内の石灰化を通過させることの困難性を表す。この例では、血管系の少なくとも一部を表す画像データ140、及び標的部位130の識別が、ニューラルネットワーク170に入力され、複数の潜在的な血管アクセス部位1101..nの各々の成功係数を予測するために使用される。上述のように、画像データ140は、IVUS、OCT、CTA又はMRA画像データなどの画像データを含みうる。画像データ140は、血管アクセス部位、標的部位、又は血管アクセス部位と標的部位との間の血管系の一部を表し得る。
【0045】
次いで、予測された成功係数150は、最適な血管アクセス部位110を識別するために、図5に示されるランク付けコントローラによってランク付けされ得る。ランク付けコントローラは、最適な血管アクセス部位110を識別し、及び/又は血管アクセス部位のランク付けを生成するために、個々の成功係数の各々を比較する。ランク付けコントローラの機能性は、図2に示される1つ又は複数のプロセッサ210などの1つ又は複数のプロセッサによって提供され得る。
【0046】
この例では、石灰化は、ニューラルネットワークが認識するように訓練され得る特徴のタイプを示すのに使用された。しかしながら、単一のニューラルネットワークは、石灰化、狭窄、蛇行などを含む、血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系を通るナビゲーションの困難性を表す複数の特徴を認識するように訓練され得る。より一般的には、成功係数を予測するために単一のニューラルネットワークを使用する利点は、成功メトリック150に関連付けられた関連特徴を暗黙的に学習することである。したがって、ニューラルネットワークは、訓練段階で予期されておらず、したがって、石灰化データなどの単一のタイプのデータに基づいてニューラルネットワークを訓練することによって考慮されなかった成功係数に関連する特徴を学習してもよい。
【0047】
図6は、本開示のいくつかの態様による、血管系内の標的部位130に到達するために介入装置を挿入するための血管アクセス部位を識別する際に使用するためのニューラルネットワーク170の第2の例を示す概略図である。図6を参照すると、この例では、複数の成功係数1501..kが、各潜在的な血管接近部位1101..nについて、対応するニューラルネットワーク1701..kによって予測される。この例では、複数の成功係数、すなわちk>1は、血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系の一部分の蛇行、すなわち「TI」、血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における狭窄の通過の困難性、血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における埋め込み装置の通過の困難性、及び血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における石灰化の通過の困難性、すなわち「CI」などの特徴を表し得る。図6に示されるように、AIコントローラが、様々なニューラルネットワーク1701..kの動作を制御するために使用されてもよい。AIコントローラは、潜在的な血管アクセス部位の各々に対するニューラルネットワークへのデータの入力を制御し得る。AIコントローラの機能性は、図2に示される1つ又は複数のプロセッサ210などの1つ又は複数のプロセッサによって提供され得る。
【0048】
図6に示される例では、血管系の少なくとも一部を表す画像データ140及び標的部位130の識別は、AIコントローラに入力され、その後、関連するニューラルネットワーク1701..kに入力され、複数の潜在的な血管アクセス部位1101..nの各々について複数の成功係数1501..kを予測するために使用される。 次いで、異なる特徴についての予測された成功係数1501..kは、各潜在的な血管アクセス部位1101..nについての成功メトリックを提供するようにランク付けコントローラーによって重み付けされる。次いで、ランク付けコントローラは、最適な血管アクセス部位110を識別するために、及び/又は血管アクセス部位のランク付けを生成するために、潜在的な血管アクセス部位1101..nのための成功メトリックを比較する。
【0049】
このように、図6に示される例では、成功メトリック150は、標的部位130と、血管系の少なくとも一部を表す画像データ140とを、複数のニューラルネットワーク1701..kに入力することによって、決定され、別個のニューラルネットワークが、入力された標的部位130及び画像データ140に基づいて、成功係数1501..kの各々を予測するように訓練される。このように各成功係数を別々に予測するように別個のニューラルネットワークを訓練することは、それらの訓練を単純化し得る。
【0050】
図5及び図6を参照して上述したニューラルネットワークは、それぞれの信頼値を出力し得る。信頼値は、ニューラルネットワーク170によって行われた予測の信頼度を表し、それによって、予測された成功係数に基づいて決定が行われることを可能にする。ニューラルネットワークの信頼度は、血管アクセス部位に対して、その部位についての画像データが不十分である場合に、低くなり得る。一例として、信頼度が最適な血管アクセス部位に対して低い場合、このアクセス部位に依存せず、代わりに、より高い信頼値を有する代替のアクセス部位を使用することが決定され得る。
【0051】
ニューラルネットワークの予測に関連する信頼値を生成するための技術の例は、Ramalho, T.による文献、題"Density estimation in representation space to predict model uncertainty"に開示されている。ニューラルネットワークは、ニューラルネットワークがその訓練データセットとは非常に異なる画像とともに提示される場合に、ニューラルネットワークがこれを認識することができ、ニューラルネットワークが低い信頼値を出力するように、信頼値を生成するために、この技術に従って訓練され得る。この文献に記載されている技法は、表現空間における訓練データ密度を推定し、訓練されたネットワークが、入力と訓練セットにおける最も近い近隣との間の表現空間における距離を測定することによって、入力に対して正しい予測を行うことが期待されるかどうかを決定することによって、信頼値を生成する。代替技術が、ニューラルネットワークの予測に関連する信頼値を生成するために使用されてもよい。ドロップアウト技術が、例えば、使用されてもよい。ドロップアウト技法は、同じデータをニューラルネットワークに反復的に入力し、ニューラルネットワークの出力を決定する一方で、各反復においてニューラルネットワークからある割合のニューロンをランダムに除外することを伴う。次いで、ニューラルネットワークの出力が、平均値及び分散値を提供するように分析される。平均値は、最終出力を表し、分散の大きさは、ニューラルネットワークがその予測において一貫しているかどうか、この場合、分散が小さいかどうか、又はニューラルネットワークがその予測において一貫していないかどうか、この場合、分散が大きいかどうかを表す。
【0052】
図5及び図6を参照して上述されたニューラルネットワークは、また、電子健康レコーダEHRデータを含む追加のデータに基づいて、成功メトリックを予測し得る。これは、図5及び図6のそれぞれにおいて、破線の輪郭で「EHRデータ」とラベル付けされた項目180によって示される。一例では、少なくとも1つのニューラルネットワーク170は、電子健康記録データ180に更に基づいて、成功メトリック150を予測し、及び/又は血管アクセス部位110を識別するように訓練され、図1を参照して説明される方法は、
血管系に関する電子健康記録データ180を受信するステップと、
電子健康記録データを少なくとも1つのニューラルネットワーラ170に入力するステップと、
を含む。
【0053】
EHRデータは、アクセス部位の選択をより良く知らせることができる過去の処置からの情報、特に合併症のリスクに関して悪影響を有する情報を含んでもよい。例えば、過去の処置の結果に関する報告は、出血の以前の事例、又は埋め込み装置に関する詳細を示し得る。
【0054】
更に、EHRデータは、ボディマスインデックス、喫煙歴、年齢、性別などに関する情報を含んでもよい。EHRデータは、また、血管特性、蛇行、厚さ、石灰化などの血管内のアーチファクト、ステントなどの埋め込み装置の存在などの、患者に関する臨床調査からの情報を含み得る。EHRデータは、血管内ナビゲーション中に遭遇する可能性のある潜在的な困難について医師に知らせる助けとなることができる情報を含み得る。例えば、喫煙は、Ambrose, J.他による文献、題"The pathophysiology of cigarette smoking and cardiovascular disease: an update", J. Am. Coll. Cardiol. 43(10): 1731-1737 (2004). Doi: 10.1016/j.jacc.2003.12.047に記載されるように、血管を収縮させ、血管の動脈硬化性変化、すなわちプラークの蓄積と高い相関関係があることが示されている。したがって、血管幅及び血管蛇行性などの特徴は、患者の喫煙歴に基づいて異なるレベルの重症度を提示し得る。
【0055】
したがって、特定の例では、患者の喫煙歴などの関連するEHRデータが、処置結果及び/又はそれらの相対的重み付けに影響を及ぼす1つ又は複数の成功係数についての計算値の変化を引き起こし得る。したがって、成功メトリックを計算するように訓練されたニューラルネットワークにそのようなEHRデータを入力することによって、患者固有の過去のデータが、成功メトリックを計算する際に使用されることができ、それによって、ユーザに推奨される識別された血管アクセス部位の信頼性を更に改善する。
【0056】
EHRデータは、画像保管通信システム「PACS」システムなどのデータベースに記憶され得る。したがって、この例では、EHRデータは、データベースから受信されてもよい。EHRデータは、図2に示される1つ又は複数のプロセッサ210などのプロセッサによって受信され得る。電子健康記録データ180は、少なくとも1つのニューラルネットワーク170に電子健康記録データを入力する前に、自然言語処理「NLP」技法を使用して処理され得る。NLPは、人工知能の一分野であり、コンピュータが人間とほぼ同じ方法でテキストを理解することを可能にする。NLP技術は、テキスト又は画像データをコンピュータ可読データに変換し、テキストを理解するために単語曖昧性除去などのタスクを実行するのに使用され得る。NLPは、アクセス部位の選択について医師により良く知らせることができるキーワードを識別するために使用され得る。NLPは、また、単語と付随する画像との間のコンテキスト関係を学習するために使用され得る。NLPの使用は、有利には、医師がそのようなデータを手動でラベル付け又はレビューするための作業負荷を低減し得、また、潜在的に重大な患者情報が見落とされる可能性を低減し得る。
【0057】
一例では、ニューラルネットワーク170に入力される画像データは、識別された血管アクセス部位に介入装置(120)を挿入する前に生成される超音波画像データを含む。超音波画像データは、アクセス部位の周りの血管構造を可視化するために、介入処置の開始直前にますます使用されている。例えば、大腿動脈アクセスのために、超音波プローブが、総大腿動脈を見つけるのに使用され得る。この例では、追加の超音波撮像情報も、識別された最適な血管アクセス部位を再評価するためにニューラルネットワークによって処理される。例えば、血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における石灰化の通過の困難性、すなわち「CI」を評価する際に、石灰化又はプラークがこのアクセス部位付近で識別される場合、これは、現在の潜在的アクセス部位1101..nにおける成功メトリック150を低下させる可能性があり、これは異なる血管アクセス部位が最適であることをもたらし得る。 代わりに、超音波プローブが最適なアクセス部位の近くを移動されるときに成功メトリック150の変化を観察し、最も高い成功メトリック150を有する正確な位置を選択することによって、アクセス部位における切開のための正確な位置が、識別されることができる。
【0058】
同様に、一例では、例えば超音波又はX線画像データなどの介入処置中に生成される画像データが、1つ又は複数のニューラルネットワーク170に入力され、潜在的な血管アクセス部位の予測された成功係数を周期的に更新するために使用され得る。そうすることで、この画像データからの追加情報が、最新の情報に基づいて、最適な血管アクセス部位を使用して介入処置が実行されていることを確認するために、又はそうでなければ代替の血管アクセス部位を推奨するために使用され得る。この例では、最初に選択されたアクセスポイントの適合性は、ユーザが血管系を通して介入装置をナビゲートする間、繰り返し再評価されてもよい。
【0059】
一例では、ニューラルネットワークは、また、介入装置のシミュレートされた経路を予測するように訓練される。シミュレートされた経路は、次いで、介入装置をナビゲートするための複雑性メトリックを計算するために使用される。次に、複雑性メトリックが、成功メトリックを計算するのに使用される。この例では、少なくとも1つのニューラルネットワーク170は、潜在的な血管アクセス部位1101..nの各々から血管系内の標的部位130に到達するための介入装置に対するシミュレートされた経路を予測するように更に訓練され、少なくとも1つのニューラルネットワーク170は、更に、介入装置を用いて潜在的な血管アクセス部位1101..nの各々から血管系内の標的部位130に到達する困難性を表す複雑性メトリックに基づいて、成功メトリック150を計算するために、及び/又は血管アクセス部位110を識別するために訓練される。
【0060】
成功メトリックの計算において複雑性メトリックを使用することは、潜在的な血管アクセス部位と標的部位との間の経路に沿って特定の介入装置をナビゲートする能力を考慮に入れる。複雑性メトリックは、成功メトリックに肯定的に影響を及ぼす係数、例えば、標的部位に向かってステップをとること、及び成功メトリックに否定的に影響を及ぼす係数、例えば、介入装置が管腔壁に接触する回数のカウント、標的部位に到達するためにとられるステップの総数などに基づいてもよい。介入装置が管腔壁に頻繁に接触する場合、これは、狭い又は蛇行した管腔を示す。多数のステップが標的部位に到達するために使用される場合、これは、また、蛇行管腔及び/又は血管アクセス部位と標的部位との間のより長い経路長を示し得る。
【0061】
ここで、ニューラルネットワーク170の訓練が、以下に詳述される。
【0062】
一般に、ニューラルネットワークの訓練は、訓練データセットをニューラルネットワークに入力することと、訓練されたニューラルネットワークが正確な出力を提供するまでニューラルネットワークのパラメータを反復的に調整することとを伴う。訓練は、多くの場合、グラフィックス処理装置「GPU」又はニューラル処理ユニット「NPU」又はテンソル処理ユニット「TPU」などの専用ニューラルプロセッサを使用して実行される。訓練は、多くの場合、クラウドベース又はメインフレームベースのニューラルプロセッサがニューラルネットワークを訓練するために使用される、集中型アプローチを採用する。訓練データセットを用いたその訓練に続いて、訓練されたニューラルネットワークは、推論中に新しい入力データを分析するための装置に展開され得る。推定中の処理要件は、訓練中に必要とされるものよりも著しく少なく、ニューラルネットワークがラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話などの様々なシステムに展開されることを可能にする。推論は、例えば、中央処理ユニット「CPU」、GPU、NPU、TPUによって、サーバ上で、又はクラウド内で実行され得る。
【0063】
したがって、上述のニューラルネットワーク170を訓練するプロセスは、そのパラメータを調整することを含む。パラメータ、より具体的には重み及びバイアスは、ニューラルネットワークにおける活性化関数の動作を制御する。教師付き学習では、訓練プロセスは、入力データを提示されるときに、ニューラルネットワークが、対応する期待出力データを正確に提供するように、重み及びバイアスを自動的に調整する。これを行うために、損失関数又は誤差の値は、予測出力データと期待出力データとの間の差に基づいて計算される。損失関数の値は、負の対数尤度損失、平均二乗誤差、又はフーバー損失、又はクロスエントロピー損失などの関数を使用して計算され得る。訓練中、損失関数の値は、典型的には最小化され、訓練は、損失関数の値が停止基準を満たすときに終了される。場合によっては、訓練は、損失関数の値が複数の基準のうちの1つ以上を満たすときに、終了される。
【0064】
勾配降下法、準ニュートン法など、損失最小化問題を解決するための様々な方法が既知である。確率的勾配降下「SGD」、バッチ勾配降下、ミニバッチ勾配降下、ガウス・ニュートン法、レーベンバーグ・マルカート法、モーメンタム法、Adam、Nadam、Adagrad、Adadelta、RMSProp、及びAdamax「オプティマイザ」を含むが、これらに限定されない、これらの方法及びそれらの変形を実装するために、様々なアルゴリズムが開発されてきた。これらのアルゴリズムは、連鎖法を使用して、モデルパラメータに対する損失関数の導関数を計算する。このプロセスは、導関数が最後の層又は出力層において開始して第1の層又は入力層に向かって移動して計算されるので、逆伝搬(backpropagation)と称される。これらの導関数は、誤差関数を最小化するためにモデルパラメータがどのように調整されなければならないかをアルゴリズムに知らせる。すなわち、モデルパラメータに対する調整は、出力層から開始し、入力層が到達されるまでネットワーク内で後方に動作するように行われる。第1の訓練反復において、初期重み及びバイアスは、しばしばランダム化される。次いで、ニューラルネットワークは、同様にランダムである出力データを予測する。次いで、逆伝搬が、重み及びバイアスを調整するために使用される。訓練プロセスは、各反復において重み及びバイアスを調整することによって反復的に実行される。訓練は、誤差、又は予測出力データと期待出力データとの間の差が、訓練データ又は検証データについて許容可能な範囲内にあるときに、終了される。その後、ニューラルネットワークが、展開され得、訓練されたニューラルネットワークは、そのパラメータの訓練された値を使用して、新しい入力データについて予測を行う。訓練プロセスが成功した場合、訓練されたニューラルネットワークは、新しい入力データから期待出力データを正確に予測する。
【0065】
一例では、少なくとも1つのニューラルネットワーク170が、
訓練データを受信するステップS210であって、訓練データは、複数の対象の各々について、血管系の一部分を表す画像データ140’と、対応する標的部位130’とを含む、ステップ、
グラウンドトゥルースデータを受信するステップS220であって、グラウンドトゥルースデータは、訓練データ内の標的部位の各々について、血管アクセス部位110から血管系の一部を介して標的部位130’に介入装置をナビゲートすることの容易さを表す、ステップ、並びに
複数の対象について、
訓練データ及びグラウンドトゥルースデータを入力するステップS230、及びニューラルネットワーク170によって予測された成功メトリック150及び/又はニューラルネットワーク170によって予測された血管アクセス部位110とグラウンドトゥルースデータとの間の差を表す損失関数の値が停止基準を満たすまで、ニューラルネットワークのパラメータを調整するステップS240、
によって、成功メトリック150を予測し、及び/又は血管アクセス部位110を識別するように訓練される。
【0066】
この訓練方法は、本開示のいくつかの態様による、成功メトリックを予測し、及び/又は血管アクセス部位を識別するためにニューラルネットワークを訓練する方法の一例を示すフローチャートである図7に示される。血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における石灰化の通過の困難性に基づいて単一の成功係数を予測するようにニューラルネットワークを訓練するための一例が、提供される。この例では、訓練データは、例えば、複数の患者について、血管アクセス部位と標的部位との間の血管系の部分についてのIVUS画像データを含んでもよい。石灰化は、IVUS画像データにおいてしばしば注釈付けされる。石灰化に関するデータは、データを評価し、血管アクセス部位に対するグランドトゥルース成功係数を提供する医師に提示されてもよい。グランドトゥルース成功係数は、石灰化の位置、全長、タイプ、及び最小直径などの特徴に基づき得る。グランドトゥルース成功係数は、血管アクセス部位110から標的部位130’まで介入装置をナビゲートすることの容易さを表す。次いで、ニューラルネットワーク170は、複数の患者についての訓練データに対する成功係数を予測するために、上述の逆伝搬方法に従って訓練される。
【0067】
同様に、複数の成功係数が考慮されるとき、単一のニューラルネットワークは、複数の係数を考慮に入れる医師に評価された全体的な成功メトリックを予測するように訓練され得る。単一のニューラルネットワークは、また、専門医又は医師によって評価されるように、血管アクセス部位110から標的部位130’まで介入装置をナビゲートすることの困難性に関連する特徴を含まないか、又は無視できる程度の特徴を含む血管系の部分の画像とともに変分オートエンコーダ「VAE」のような生成ニューラルネットワークを使用して、教師なしの方法で訓練され得る。したがって、VAEは、蛇行又は石灰化又は狭窄などを伴わない血管系を含む訓練データの潜在的表現にわたる分布を学習する。蛇行又は石灰化又は狭窄などを伴わない血管系が訓練されたVAEに入力されるとき、これらの入力の潜在的表現は、学習された分布の中のインライアであるだろう。しかしながら、蛇行又は石灰化又は狭窄などを伴う血管系が、訓練されたVAEに入力される場合、それらの潜在的表現は、学習された分布における外れ値であるだろう。更に、VAEは、入力されたデータを再構成するように訓練されるので、訓練されたVAEは、訓練データ中に存在しなかった特徴を含む画像の領域中に再構成誤差を含み、高い再構成誤差のそのような領域の識別を可能にする。血管系が蛇行しているほど(又は同様に、石灰化又は狭窄が大きいほど)、再構成誤差は大きくなる。これらの誤差及び/又は誤差を含む領域の数の定量化は、単一のニューラルネットワークが複数の要因を考慮に入れた全体的な成功メトリックを予測することを可能にする。加えて、これは、ネットワークが予期されなかった成功係数に関連する特徴を学習することを可能にする。
【0068】
複数のニューラルネットワークが成功メトリックを予測するために訓練されるとき、各個々のニューラルネットワークは、
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系の部分の蛇行性、
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における狭窄を通過させる困難性、
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における埋め込み装置を通過させる困難性、
血管アクセス部位110と標的部位130との間の血管系における石灰化を通過させることの困難性、
のような特定の特徴に対する医師に評価されたグランドトゥルース成功係数を用いて個別に訓練され得る。
【0069】
いくつかの例では、グラウンドトゥルースデータは、血管アクセス部位110から標的部位130’まで介入装置をナビゲートすることの困難性、例えば石灰化又は狭窄など、を表すバイナリマスク又は境界ボックスの形態の画像特徴の注釈を含み得る。この例では、ニューラルネットワーク170又はネットワーク1701..kは、これらの注釈を予測するように訓練されてもよく、ニューラルネットワーク170又はネットワーク1701..kのパラメータを調整することは、ニューラルネットワーク170又はネットワーク1701..kによって予測される注釈とグラウンドトゥルース注釈との間の差を表す損失関数の値が停止基準を満たすまで、繰り返される。 いくつかの例では、グラウンドトゥルースデータは、複数の潜在的な血管アクセス部位のランク付けを含み得る。例えば、蛇行又は石灰化など、血管アクセス部位110から標的部位130’まで介入装置をナビゲートすることの困難性を表す識別された係数は、ナビゲーション及び/又は処置成功に対する識別された特徴の影響に基づいて様々なアクセス部位をランク付けすることができる専門家に提示され得る。このランク付けは、また、血管アクセス部位のランク付けを予測するようにニューラルネットワークを訓練するのに使用され得る。したがって、一例では、グラウンドトゥルースデータは、標的部位130の各々に対する血管アクセス部位110のランク付けを含む。この例では、ニューラルネットワーク170は、入力された各標的部位130’について血管アクセス部位のランク付けを予測するように訓練され、ニューラルネットワーク170のパラメータの調整は、ニューラルネットワークによって予測された血管アクセス部位のランク付けとアクセス部位のグラウンドトゥルースランク付けとの間の差を表す損失関数の値が停止基準を満たすまで、繰り返される。いくつかの例では、グランドトゥルースは、どの画像が血管アクセス部位110から標的部位130’まで介入装置をナビゲートすることの困難性を表す特徴、例えば、蛇行又は石灰化などを含むか、及びどの画像がそのような特徴を含まないかを決定するエキスパートラベルを含む。この例では、ニューラルネットワーク170又はネットワーク1701..kが、血管アクセス部位110から標的部位130’まで介入装置をナビゲートする困難性を表す特徴を含まない画像を用いて、教師なしの方法で訓練されてもよい。例えば、VAEは、再構成された画像と入力された画像との間の差を表す損失関数の値が停止基準を満たし、入力された訓練データの潜在的表現にわたる分布の予測されたコンポーネントと基準分布のコンポーネントとの間の差を表す損失関数の値が停止基準を満たすまで、ニューラルネットワーク170又はネットワーク1701..kのパラメータを調整することによって、入力された訓練データを再構成するように訓練されてもよい。血管アクセス部位110から標的部位130’に介入装置をナビゲートすることの困難性を表す特徴を含む画像は、そのような訓練されたニューラルネットワークに入力されるとき、それらは、訓練データの潜在的表現にわたる学習された分布における外れ値として識別される。
【0070】
一例では、コンピュータプログラム製品が、提供される。コンピュータプログラム製品は、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、1つ又は複数のプロセッサに、添付の請求項のいずれかに記載の方法を実行させる命令を含む。
【0071】
上述のように、コンピュータ実施方法の特徴は、システムにおいて実装されてもよい。したがって、一例では、血管系内の標的部位130に到達するために介入装置120を挿入するための血管アクセス部位110を識別するためのシステム200が、提供される。システムは、添付の請求項のいずれかに記載の方法のステップを実行するように構成された1つ以上のプロセッサ210を含む
【0072】
このシステム200の一例が、図2に示される。システムは、1つ又は複数のプロセッサ210を含む。1つ又は複数のプロセッサは、図1のフローチャートを参照して上述した1つ又は複数の追加の動作を実行してもよい。システム200は、また、画像データ140を提供するための投影X線撮像システム220と、計算された成功メトリック150、識別された最適血管アクセス部位110、グラフィカルユーザインタフェース160などを表示するためのディスプレイ230と、血管系に挿入するための介入装置120と、キーボード、マウス、タッチスクリーン、ジョイスティックなどのユーザ入力(図2には図示せず)を受信するように構成されたユーザ入力装置とのうちの1つ又は複数を含み得る。システム200は、また、最適アクセス部位から標的部位まで介入装置をナビゲートするように構成された血管内ロボットを含んでもよい。
【0073】
上記の例は、本開示を説明するものであり、限定するものではないとして理解されるべきである。更なる例も、企図される。例えば、コンピュータ実施方法に関連して説明した例は、対応する形で、コンピュータプログラム製品によって、又はコンピュータ可読記憶媒体によって、又はシステム200によって提供されてもよい。任意の1つの例に関して記載された特徴は、単独で、又は他の記載された特徴と組み合わせて使用されてもよく、例のうちの別のものの1つ又は複数の特徴、又は他の例の組み合わせと組み合わせて使用されてもよいと理解されたい。更に、上で説明されていない均等物及び修正物も、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲から逸脱することなく使用され得る。請求項において、単語「有する」は、他の要素又は動作を排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を排除するものではない。特定の特徴が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、それらの範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】