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特表2024-539928改変CACNG1遺伝子座を含む非ヒト動物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】改変CACNG1遺伝子座を含む非ヒト動物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241024BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20241024BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0735
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524401
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 US2022079336
(87)【国際公開番号】W WO2023081847
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/275,582
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スティット, トレバー
(72)【発明者】
【氏名】ブリッジズ, スザンナ
(72)【発明者】
【氏名】ムジカ, アレクサンダー オー.
(72)【発明者】
【氏名】アリー, ロクサーヌ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
(57)【要約】
ヒト化Cacng1遺伝子座を含む非ヒト動物細胞および非ヒト動物、ならびに当該非ヒト動物細胞および非ヒト動物を使用する方法が提供される。ヒト化Cacng1遺伝子座を含む非ヒト動物細胞または非ヒト動物は、ヒトCACNG1タンパク質またはその断片を発現する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒト動物細胞であって、該非ヒト動物細胞が、異種の電位依存性カルシウムチャネル補助サブユニットガンマ1(CACNG1)タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を含む、非ヒト動物細胞。
【請求項2】
当該異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、または
(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせ、を含む、請求項1に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項3】
当該異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(vii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、
(viii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)を含む核酸配列、または
(ix)(i)~(viii)の任意の組み合わせ、を含む、請求項1または請求項2に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項4】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、配列番号5として記載される核酸配列、配列番号27として記載される核酸配列、および配列番号28として記載される核酸配列からなる群から選択される核酸配列を含む、本質的に前記核酸配列からなる、または前記核酸配列からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項5】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、内在性Cacng1遺伝子座にある、請求項1から4のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項6】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードするオルソロガスな内在性核酸配列に取って代わる、請求項1から5のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項7】
前記非ヒト動物細胞が、内在性Cacng1遺伝子座を含み、また該内在性Cacng1遺伝子座が、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする内在性核酸配列の、前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列とのヘテロ接合性またはホモ接合性の置換を含み、
前記内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記内在性核酸配列と前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列とは、オルソロガスである、請求項1から6のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項8】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、ヒトCACNG1タンパク質またはその一部のアミノ酸配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項9】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、
(i)配列番号8として記載されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号10として記載されるアミノ酸配列、
(iii)配列番号12として記載されるアミノ酸配列、
(iv)配列番号14として記載されるアミノ酸配列、
(v)配列番号16として記載されるアミノ酸配列、
(vi)配列番号18として記載されるアミノ酸配列、
(vii)配列番号20として記載されるアミノ酸配列、
(viii)配列番号22として記載されるアミノ酸配列、
(ix)配列番号24として記載されるアミノ酸配列、または
(x)(i)~(ix)の任意の組み合わせ、を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項10】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、配列番号4として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1から3または5から9のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項11】
前記非ヒト動物細胞が、哺乳動物細胞である、請求項1から10のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項12】
前記哺乳動物細胞が、齧歯類細胞である、請求項1から11のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞0。
【請求項13】
前記齧歯類細胞が、ラット細胞またはマウス細胞である、請求項1から12のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項14】
前記異種CACNG1タンパク質が全長ヒトCACNG1タンパク質であり、また0
前記非ヒト動物細胞が、その細胞表面上に前記全長ヒトCACNG1タンパク質を発現する、請求項1から13のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項15】
前記非ヒト動物細胞が、その細胞表面上に前記異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現する非ヒト動物骨格筋細胞である、請求項1から14のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項16】
前記非ヒト動物細胞が、その細胞表面上に前記異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現しない非ヒト動物細胞である、請求項1から13のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項17】
前記非ヒト動物細胞が、その細胞表面上に前記異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現せず、また前記非ヒト動物細胞が、骨格細胞でない、請求項1から13および16のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項18】
前記非ヒト動物細胞が、その細胞表面上に前記異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現せず、また前記非ヒト動物細胞が、多能性細胞である、請求項1から13および16から17のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項19】
前記非ヒト動物細胞が、その細胞表面上に前記異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現せず、また前記非ヒト動物細胞が、胚性幹細胞である、請求項1から13および16から18のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項20】
前記非ヒト動物細胞が、その細胞表面上に前記異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現せず、また前記非ヒト動物細胞が、生殖細胞である、請求項1から13および16から18のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項21】
前記非ヒト動物細胞が、マウス細胞である、請求項1から21のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項22】
前記非ヒト動物細胞はマウス細胞であり、また異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、配列番号6として記載される核酸配列を含む、本質的に前記核酸配列からなる、または前記核酸配列からなる、請求項1から21のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項23】
非ヒト動物であって、異種の電位依存性カルシウムチャネル補助サブユニットガンマ1(CACNG1)タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を含む、非ヒト動物。
【請求項24】
当該異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、または
(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせ、を含む、請求項23に記載の非ヒト動物。
【請求項25】
当該異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(vii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、
(viii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)を含む核酸配列、または
(ix)(i)~(viii)の任意の組み合わせ、を含む、請求項23または請求項24に記載の非ヒト動物。
【請求項26】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、配列番号5として記載される核酸配列、配列番号27として記載される核酸配列、および配列番号28として記載される核酸配列からなる群から選択される核酸配列を含む、本質的に前記核酸配列からなる、または前記核酸配列からなる、請求項23から25のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項27】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、内在性Cacng1遺伝子座にある、請求項23から26のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項28】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードするオルソロガスな内在性核酸配列に取って代わる、請求項23から27のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項29】
前記非ヒト動物が、内在性Cacng1遺伝子座を含み、また前記内在性Cacng1遺伝子座が、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする内在性核酸配列の、前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列とのヘテロ接合性またはホモ接合性の置換を含み、
前記内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記内在性核酸配列と前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列とは、オルソロガスである、請求項23から28のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項30】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、ヒトCACNG1タンパク質またはその一部のアミノ酸配列を含む、請求項23から29のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項31】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、
(i)配列番号8として記載されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号10として記載されるアミノ酸配列、
(iii)配列番号12として記載されるアミノ酸配列、
(iv)配列番号14として記載されるアミノ酸配列、
(v)配列番号16として記載されるアミノ酸配列、
(vi)配列番号18として記載されるアミノ酸配列、
(vii)配列番号20として記載されるアミノ酸配列、
(viii)配列番号22として記載されるアミノ酸配列、
(ix)配列番号24として記載されるアミノ酸配列、または
(x)(i)~(ix)の任意の組み合わせ、を含む、請求項23から30のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項32】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、配列番号4として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項23から31のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項33】
前記非ヒト動物が、哺乳動物である、請求項23から32のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項34】
前記哺乳動物が齧歯類である、請求項23から33のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項35】
前記齧歯類がラットまたはマウスである、請求項23から34のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項36】
前記非ヒト動物が、その細胞表面上に全長ヒトCACNG1タンパク質を発現する非ヒト筋細胞を含む、請求項23から35のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項37】
前記非ヒト動物が、その細胞表面上に前記異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現する非ヒト動物骨格筋細胞を含む、請求項23から36のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項38】
前記異種CACNG1タンパク質が全長ヒトCACNG1タンパク質を含み、また
前記非ヒト動物が、細胞表面上に全長ヒトCACNG1タンパク質を発現する非ヒト動物骨格筋細胞を含む、請求項23から37のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項39】
前記非ヒト動物が、細胞表面上に前記異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現しない非ヒト動物細胞を含む、請求項23から38のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項40】
前記非ヒト動物が、その骨格細胞の細胞表面上に前記異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現しない非ヒト動物生殖細胞を含む、請求項23から35および39のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項41】
前記非ヒト動物が、ラットまたはマウスである、請求項23から40のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項42】
非ヒト動物ゲノムであって、該非ヒト動物ゲノムが、異種の電位依存性カルシウムチャネル補助サブユニットガンマ1(CACNG1)タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を含む、非ヒト動物ゲノム。
【請求項43】
当該異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、または
(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせ、を含む、請求項42に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項44】
当該異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(vii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、
(viii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)を含む核酸配列、または
(ix)(i)~(viii)の任意の組み合わせ、を含む、請求項42または請求項43に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項45】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、配列番号5として記載される核酸配列、配列番号27として記載される核酸配列、および配列番号28として記載される核酸配列からなる群から選択される核酸配列を含む、本質的に前記核酸配列からなる、または前記核酸配列からなる、請求項42から44のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項46】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、内在性Cacng1遺伝子座にある、請求項42から45のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項47】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードするオルソロガスな内在性核酸配列に取って代わる、請求項42から46のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項48】
前記非ヒト動物ゲノムが、内在性Cacng1遺伝子座を含み、また前記内在性Cacng1遺伝子座が、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする内在性核酸配列の、前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列とのヘテロ接合性またはホモ接合性の置換を含み、
前記内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記内在性核酸配列と前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列とは、オルソロガスである、請求項42から47のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項49】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、ヒトCACNG1タンパク質またはその一部のアミノ酸配列を含む、請求項42から48のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項50】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、
(i)配列番号8として記載されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号10として記載されるアミノ酸配列、
(iii)配列番号12として記載されるアミノ酸配列、
(iv)配列番号14として記載されるアミノ酸配列、
(v)配列番号16として記載されるアミノ酸配列、
(vi)配列番号18として記載されるアミノ酸配列、
(vii)配列番号20として記載されるアミノ酸配列、
(viii)配列番号22として記載されるアミノ酸配列、
(ix)配列番号24として記載されるアミノ酸配列、または
(x)(i)~(ix)の任意の組み合わせ、を含む、請求項42から49のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項51】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、配列番号4として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項42から50のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項52】
前記非ヒトゲノムが、哺乳動物核酸である、請求項42から51のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項53】
前記哺乳動物が齧歯類核酸である、請求項42から52のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項54】
前記齧歯類がラットゲノムまたはマウス核酸である、請求項42から53のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項55】
前記非ヒト動物ゲノムが、マウス核酸である、請求項42から54のいずれか一項に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項56】
キメラ核酸分子であって、(a)CACNG1タンパク質をコードして、(b)該CACNG1タンパク質またはその一部をコードする配列の、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする相同配列との置換を含むように改変される、非ヒト動物Cacng1遺伝子の核酸配列を含み、
前記キメラ核酸分子が、機能性CACNG1タンパク質をコードする、キメラ核酸分子。
【請求項57】
当該キメラ核酸の配列が、前記非ヒト動物Cacng1遺伝子のプロモーター配列および/または調節配列をさらに含む、請求項56に記載のキメラ核酸分子。
【請求項58】
前記相同核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部の核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部の核酸配列、
(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部の核酸配列、
(vii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、
(viii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)の核酸配列、または
(ix)(i)~(viii)の任意の組み合わせ、を含む、請求項57に記載のキメラ核酸分子。
【請求項59】
改変された非ヒト動物Cacng1遺伝子が、薬剤選択カセットをさらに含む、請求項57または請求項58に記載のキメラ核酸分子。
【請求項60】
(i)前記改変された非ヒト動物Cacng1遺伝子の上流の5’相同アーム、および
(i)前記改変された非ヒト動物Cacng1遺伝子の下流の3’相同アーム、をさらに含む、請求項57から59のいずれか一項に記載のキメラ核酸分子。
【請求項61】
前記5’相同アームおよび3’相同アームが、関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座との相同組換えを受け、また
関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座との相同組換えの後、前記改変された非ヒト動物Cacng1遺伝子が、関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座において非ヒト動物Cacng1遺伝子に取って代わり、そして関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座において非ヒト動物Cacng1遺伝子の発現を駆動する内在性プロモーターに動作可能に連結される、請求項60に記載のキメラ核酸。
【請求項62】
(i)前記5’相同アームが、配列番号25として記載される核酸配列を含むか、または
(ii)前記3’相同アームが、配列番号26として記載される核酸配列を含む、請求項60または請求項61に記載のキメラ核酸。
【請求項63】
前記キメラ核酸の前記核酸配列が、配列番号6として記載される核酸配列を含む、請求項57から62のいずれか一項に記載のキメラ核酸分子。
【請求項64】
請求項1から22のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞を作製する方法であって、前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列を、前記非ヒト動物細胞のゲノムに挿入することを含む、方法。
【請求項65】
前記非ヒト動物細胞は、非ヒト動物胚性幹(ES)細胞であり、また
前記挿入することが、前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列を前記非ヒト動物ES細胞のゲノムに挿入して、前記非ヒト動物ES細胞のゲノム中に前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列を含む改変された非ヒト動物ES細胞を形成することを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
当該異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、内在性Cacng1遺伝子座に挿入される、請求項64または請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記挿入することの工程が、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする内在性核酸配列を、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列と置換することを含み、
前記内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記内在性核酸配列と前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列とは、オルソロガスである、請求項64から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、または
(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせ、を含む、請求項64から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部の核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部の核酸配列、
(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部の核酸配列、
(vii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、
(viii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)の核酸配列、または
(ix)(i)~(viii)の任意の組み合わせ、を含む、請求項64から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列は、配列番号5として記載される核酸配列、配列番号27として記載される核酸配列、および配列番号28として記載される核酸配列からなる群から選択される核酸配列を含む、本質的に前記核酸配列からなる、または前記核酸配列からなる、請求項64から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、ヒトCACNG1タンパク質またはその部分のアミノ酸配列を含む、請求項64から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、
(i)配列番号8として記載されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号10として記載されるアミノ酸配列、
(iii)配列番号12として記載されるアミノ酸配列、
(iv)配列番号14として記載されるアミノ酸配列、
(v)配列番号16として記載されるアミノ酸配列、
(vi)配列番号18として記載されるアミノ酸配列、
(vii)配列番号20として記載されるアミノ酸配列、
(viii)配列番号22として記載されるアミノ酸配列、
(ix)配列番号24として記載されるアミノ酸配列、または
(x)(i)~(ix)の任意の組み合わせ、を含む、請求項64から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記異種CACNG1タンパク質が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項64から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記非ヒト動物細胞が哺乳動物細胞である、請求項64から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記哺乳動物細胞が齧歯類細胞である、請求項64から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記齧歯類細胞が、マウス細胞またはラット細胞である、請求項64から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記非ヒト動物細胞はマウス細胞であり、また異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、配列番号6として記載される核酸配列を含む、本質的に前記核酸配列からなる、または前記核酸配列からなる、請求項64から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
挿入することが、前記非ヒト動物細胞のゲノムを、請求項55から63のいずれか一項に記載の前記キメラ核酸分子と接触させることを含む、請求項64から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
挿入することが、前記非ヒト動物細胞のゲノムを、請求項56から63のいずれか一項に記載の前記キメラ核酸分子と接触させることを含む、請求項64から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
請求項23から41のいずれか一項に記載の非ヒト動物を作製する方法であって、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を、非ヒト動物胚性幹(ES)細胞のゲノムに挿入して、該非ヒト動物ES細胞のゲノム中に異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を含む改変された非ヒト動物ES細胞を形成することと、
前記非ヒト動物ES細胞を、in vitroで宿主胚細胞に導入することと、
非ヒト代理母動物において、改変された非ヒト動物ES細胞を含む宿主胚細胞を懐胎させることと、を含み、該懐胎させることの後で、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を含む生殖細胞を含む非ヒト動物子孫が、非ヒト代理母動物により出生されるものである、方法。
【請求項81】
当該異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、内在性Cacng1遺伝子座に挿入される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記挿入することの工程が、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする内在性核酸配列を、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列と置換することを含み、
前記内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記内在性核酸配列と前記異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列とは、オルソロガスである、請求項80または請求項81に記載の方法。
【請求項83】
異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、または
(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせ、を含む、請求項80から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列が、
(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、
(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部の核酸配列、
(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、
(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部の核酸配列、
(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、
(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部の核酸配列、
(vii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、
(viii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)の核酸配列、または
(ix)(i)~(viii)の任意の組み合わせ、を含む、請求項80から83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする前記核酸配列は、配列番号5として記載される核酸配列、配列番号27として記載される核酸配列、および配列番号28として記載される核酸配列からなる群から選択される核酸配列を含む、本質的に前記核酸配列からなる、または前記核酸配列からなる、請求項80から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、ヒトCACNG1タンパク質またはその部分のアミノ酸配列を含む、請求項80から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記異種CACNG1タンパク質またはその一部が、
(i)配列番号8として記載されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号10として記載されるアミノ酸配列、
(iii)配列番号12として記載されるアミノ酸配列、
(iv)配列番号14として記載されるアミノ酸配列、
(v)配列番号16として記載されるアミノ酸配列、
(vi)配列番号18として記載されるアミノ酸配列、
(vii)配列番号20として記載されるアミノ酸配列、
(viii)配列番号22として記載されるアミノ酸配列、
(ix)配列番号24として記載されるアミノ酸配列、または
(x)(i)~(ix)の任意の組み合わせ、を含む、請求項80から86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記異種CACNG1タンパク質が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項80から87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記非ヒト動物が哺乳動物である、請求項80から88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記哺乳動物が齧歯類である、請求項80から89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記齧歯類細胞が、マウス細胞またはラット細胞である、請求項80から90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記非ヒト動物はマウスであり、また異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、配列番号6として記載される核酸配列を含む、本質的に前記核酸配列からなる、または前記核酸配列からなる、請求項80から91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記異種CACNG1タンパク質に結合する抗原結合タンパク質を含み、前記非ヒト動物が、前記異種CACNG1タンパク質またはその細胞外ドメインを骨格筋細胞の表面上に発現する、請求項23から40のいずれか一項に記載の非ヒト動物、または請求項80から92のいずれか一項に記載の方法に従って作製された非ヒト動物。
【請求項94】
前記異種CACNG1タンパク質がヒトCACNG1タンパク質である、請求項93に記載の非ヒト動物。
【請求項95】
前記非ヒト動物は、マウスである、請求項93または請求項94に記載の非ヒト動物。
【請求項96】
内在性Cacng1遺伝子のノックアウト変異を含む、非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノム。
【請求項97】
前記ノックアウト変異が、前記Cacng1遺伝子またはその一部の欠失を含む、請求項96に記載の非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノム。
【請求項98】
前記ノックアウト変異が、前記Cacng1遺伝子のコード配列全体の欠失を含む、請求項96または請求項97に記載の非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノム。
【請求項99】
前記非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムが、いかなるCACNG1タンパク質も発現しない、請求項96から98のいずれか一項に記載の非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノム。
【請求項100】
前記非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムが、いかなる肉眼的な変異表現型も呈さない、請求項96から99のいずれか一項に記載の非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノム。
【請求項101】
前記非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムが、配列番号29として記載される配列を含む内在性Cacng1遺伝子座を含む、請求項96から100のいずれか一項に記載の非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノム。
【請求項102】
CACNG1ノックアウト非ヒト動物を作製する方法であって、非ヒト動物の内在性Cacng1遺伝子座がノックアウト変異を含むように改変されることを含む、方法。
【請求項103】
標的化ベクターであって、
(i)5’相同アーム、および
(ii)3’相同アームを含むものであり、
前記5’相同アームおよび3’相同アームが、関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座との相同組換えを受け、また
前記関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座との相同組換え後、前記標的化ベクターが、前記関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座において前記非ヒト動物Cacng1遺伝子にノックアウト変異を挿入する、標的化ベクター。
【請求項104】
本開示の任意の方法に従って作製された、非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年11月4日出願の米国仮特許出願第63/275,582号に対する優先権の利益を主張するものであり、その仮特許出願の全体が、参照により組み込まれる。
【0002】
配列表
ファイル11102WO01_ST26.txtに記述されている配列表は79キロバイトであり、これは2022年11月4日に作成され、その全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
遺伝子的に改変された非ヒト動物(例えば、マウスまたはラットなどの齧歯類)であって、そのゲノム中に、ヒト電位依存性カルシウムチャネル補助サブユニットガンマ1(CACNG1)タンパク質またはその一部をコードする核酸を含む、当該非ヒト動物が記述される。したがって、ヒトCACNG1タンパク質またはその一部を、例えば骨格筋細胞表面上で発現する遺伝子改変非ヒト動物もまた記述される。ヒトCACNG1タンパク質またはその一部を例えば骨格筋細胞表面上で発現するかかる遺伝子改変非ヒト動物は、CACNG1に基づく療法、例えばCACNG1に基づく抗体、の前臨床試験のためのモデルとして使用できる。
【背景技術】
【0004】
骨格筋は、人体における三種の有意な筋組織のうちの一つである。各骨格筋は、結合組織鞘によって一緒に囲まれた数千の筋線維を含有する。人間は、骨格筋により、動作して日常の活動を行うことが可能になる。骨格筋は呼吸機構において重要な役割を果たし、姿勢とバランスの維持に役立つ。骨格筋はまた、体内の重要な臓器を保護する。
【0005】
骨格筋の機能異常の結果、無数の病状が発生する可能性があるので、例えば筋肉特異的表面タンパク質をターゲティングすることによって、異常な筋肉機能の治療に向けた療法を試験することができる好適な動物モデルが、骨格筋に関連する病状の研究に役立ち得る。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、ヒト電位依存性カルシウムチャネル補助サブユニットガンマ1(CACNG1)タンパク質をコードする組換え遺伝子座を有する遺伝子的に改変された非ヒト動物が提供される。また本明細書では、かかる改変非ヒト動物を生成および使用するための組成物および方法も提供される。
【0007】
異種(例えば、ヒト)のCacng1遺伝子またはその一部を含む、遺伝子操作された非ヒト動物のゲノム、操作された細胞、および非ヒト動物を、本明細書に記載する。一部の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子操作された動物は、所望の遺伝子座から(例えば、内在性Cacng1のセグメントから)、異種(例えば、ヒト)のCACNG1タンパク質を発現する。非ヒト動物は、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)などの哺乳動物であり得る。非ヒト動物細胞は、齧歯類細胞(例えば、マウス細胞またはラット細胞)などの哺乳動物細胞であり得る。非ヒト動物ゲノムは、齧歯類核酸(例えば、マウス核酸またはラット核酸)などの哺乳動物核酸であり得る。
【0008】
一部の実施形態では、非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムが、異種(例えば、ヒト)のCACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を含む。
【0009】
一部の実施形態では、異種(例えば、ヒト)のCACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、(ii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、(iv)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、異種(例えば、ヒト)のCACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部の核酸配列、(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部の核酸配列、(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部の核酸配列、(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、(vii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)の核酸配列、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、配列番号5として記載される核酸配列、配列番号27として記載される核酸配列、および配列番号28として記載される核酸配列からなる群から選択される核酸配列を含む、本質的に該核酸配列からなる、または該核酸配列からなる。
【0010】
一部の実施形態では、異種(例えば、ヒト)CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、(ゲノム、細胞、または非ヒト動物の)内在性Cacng1遺伝子座に組み込まれる。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードするオルソロガスな内在性核酸配列に(非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物の内在性遺伝子座において)取って代わる。一部の実施形態では、内在性Cacng1遺伝子座が、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする内在性核酸配列の、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列とのヘテロ接合性またはホモ接合性の置換を含むものであり、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする内在性核酸配列と異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列とは、オルソロガスである。
【0011】
一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部が、ヒトCACNG1タンパク質またはその一部のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部が、(i)配列番号8として記載されるアミノ酸配列、(ii)配列番号10として記載されるアミノ酸配列、(iii)配列番号12として記載されるアミノ酸配列、(iv)配列番号14として記載されるアミノ酸配列、(v)配列番号16として記載されるアミノ酸配列、(vi)配列番号18として記載されるアミノ酸配列、(vii)配列番号20として記載されるアミノ酸配列、(viii)配列番号22として記載されるアミノ酸配列、(ix)配列番号24として記載されるアミノ酸配列、または(x)(i)~(ii)の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、異種CACNG1タンパク質は、配列番号4として記載されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物細胞が、その細胞表面上に全長ヒトCACNG1タンパク質であり得る異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現する。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物細胞は、その細胞表面上に異種(例えば、ヒト)CACNG1タンパク質またはその一部を発現する非ヒト動物骨格筋細胞である。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物細胞は、その細胞表面上に異種(例えば、ヒト)CACNG1タンパク質またはその一部を発現しない非ヒト動物細胞であるものであり、例えば非ヒト動物細胞は骨格細胞ではない、および/または、例えば非ヒト動物細胞は多能性細胞、胚性幹細胞、生殖細胞などである。
【0014】
一部の実施形態では、非ヒト動物細胞はマウス細胞であり、そして異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、配列番号6として記載される核酸配列を含む、本質的に該核酸配列からなる、または該核酸配列からなる。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物細胞が、その細胞表面上に異種CACNG1タンパク質またはその一部を発現する骨格筋細胞を含む。一部の実施形態では、非ヒト動物細胞が、その細胞表面上に異種CACNG1タンパク質またはその一部(例えば、全長ヒトCACNG1)タンパク質を発現する非ヒト動物骨格筋細胞を含む。一部の実施形態では、非ヒト動物が、異種(例えば、ヒト)Cacng1遺伝子またはその一部を含み、かつ、その細胞表面上で該異種(例えば、ヒト)Cacng1遺伝子またはその一部からコードされたその異種(例えば、ヒト)CACNG1タンパク質またはその一部を発現しない、非ヒト動物細胞を含むものであり、例えば非ヒト動物細胞は、骨格細胞ではない、および/または、非ヒト動物細胞は、多能性細胞、胚性幹細胞、生殖細胞などである。
【0016】
一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、マウスであり、本明細書に記載の非ヒト動物細胞は、マウス細胞であり、または本明細書に記載の非ヒト動物ゲノムは、マウス核酸であり、また異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、配列番号6として記載される核酸配列を含む、本質的に該核酸配列からなる、または該核酸配列からなる。
【0017】
また本明細書には、非ヒトCACNG1タンパク質またはその一部をコードする改変非ヒト動物Cacng1遺伝子の核酸配列を含む機能性CACNG1タンパク質をコードするキメラ核酸分子も記載されるものであり、改変非ヒト動物Cacng1遺伝子は、非ヒト動物CACNG1タンパク質の一部をコードする核酸配列の、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする相同核酸配列との置換を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されるキメラ核酸分子が、(a)CACNG1タンパク質をコードし、かつ(b)CACNG1タンパク質またはその一部をコードする配列の、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする相同配列との置換を含むように改変された非ヒト動物Cacng1遺伝子の核酸配列を含むものであり、該キメラ核酸分子は、機能性CACNG1タンパク質をコードし、随意に該キメラ核酸配列は、非ヒト動物Cacng1遺伝子のプロモーター配列および/または調節配列をさらに含むものである。一部の実施形態では、相同核酸配列が、(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部の核酸配列、(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部の核酸配列、(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部の核酸配列、(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、(vii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)の核酸配列、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、改変Cacng1遺伝子は、薬剤選択カセットをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されるキメラ核酸分子は、(i)改変非ヒト動物Cacng1遺伝子の上流の5’相同アーム(homology arm)、および(ii)改変非ヒト動物Cacng1遺伝子の下流の3’相同アーム(homology arm)をさらに含む。一部の例では、5’相同アームおよび3’相同アームは、関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座との相同組換えを受けることができ、該関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座との相同組換え後、改変Cacng1遺伝子は、関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座における非ヒト動物Cacng1遺伝子に置き換わることができ、また関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座において非ヒト動物Cacng1遺伝子の発現を駆動する内在性プロモーターに動作可能に連結される。特定の実施形態では、本明細書に記載されるキメラ核酸は、(i)配列番号25として記載される核酸配列を含む5’相同アーム、および/または(ii)配列番号26として記載される核酸配列を含む3’相同アームを有する。一部の実施形態において、核酸配列は、配列番号6として記載される核酸配列を含む。
【0018】
また、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を、非ヒト動物のゲノム、非ヒト動物細胞のゲノム、または非ヒト動物ゲノムに挿入することによって、本明細書に記載される非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムを作製する方法も記載される。一部の実施形態では、非ヒト動物細胞は、非ヒト動物胚性幹(ES)細胞であり、また挿入することは、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を非ヒト動物ES細胞のゲノムに挿入して、そのゲノム中に異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を含む改変非ヒト動物ES細胞を形成することを含む。一部の実施形態では、方法は、改変非ヒト動物ES細胞を、in vitroで宿主胚細胞に導入することを含む。一部の実施形態では、方法は、適切な非ヒト代理母動物において、改変非ヒト動物ES細胞を含む宿主胚細胞を懐胎することと、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を含む生殖細胞を含む非ヒト動物子孫を、非ヒト代理母動物が出生可能であるようにすることと、を含む。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、内在性Cacng1遺伝子座に挿入される。かかる実施形態では、挿入することの工程は、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする内在性核酸配列の、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列との置換を含むものであり、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードする内在性核酸配列と異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列とは、オルソロガスである。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、(ii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、(iv)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含む。一部の例では、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部の核酸配列、(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部の核酸配列、(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部の核酸配列、(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、(vii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)の核酸配列、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列が、配列番号5として記載される核酸配列、配列番号27として記載される核酸配列、および配列番号28として記載される核酸配列からなる群から選択される核酸配列を含む、本質的に該核酸配列からなる、または該核酸配列からなる。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部が、ヒトCACNG1タンパク質またはその一部のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部が、(i)配列番号8として記載されるアミノ酸配列(ヒト細胞質ドメイン1)、(ii)配列番号10として記載されるアミノ酸配列(ヒト膜貫通1)、(iii)配列番号12として記載されるアミノ酸配列(ヒト細胞外ドメイン1)、(iv)配列番号14として記載されるアミノ酸配列(ヒト膜貫通2)、(v)配列番号16として記載されるアミノ酸配列(ヒト細胞質ドメイン2)、(vi)配列番号18として記載されるアミノ酸配列(ヒト膜貫通3)、(vii)配列番号20として記載されるアミノ酸配列(ヒト細胞外ドメイン3)、(viii)配列番号22として記載されるアミノ酸配列(ヒト膜貫通4)、(ix)配列番号24として記載されるアミノ酸配列(ヒト細胞質ドメイン4)、または(x)(i)~(ii)の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、異種CACNG1タンパク質は、配列番号4として記載されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、(i)非ヒト動物は、齧歯類などの哺乳動物であるか、(ii)非ヒト動物細胞は、齧歯類細胞などの哺乳動物細胞であるか、または(iii)非ヒト動物ゲノムは、齧歯類核酸などの哺乳動物核酸である。一部の実施形態では、(i)非ヒト動物はラットもしくはマウスであり、(ii)非ヒト動物細胞はラット細胞もしくはマウス細胞であり、または(iii)非ヒト動物ゲノムはラット核酸もしくはマウス核酸である。一部の実施形態では、非ヒト動物は、マウスであり、非ヒト動物細胞は、マウス細胞であり、または非ヒト動物ゲノムは、マウス核酸であり、また異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、配列番号6として記載される核酸配列を含む、本質的に該核酸配列からなる、または該核酸配列からなる。
【0019】
一部の実施形態では、核酸を挿入することは、非ヒト動物のゲノム、非ヒト動物細胞のゲノム、または非ヒト動物ゲノムを、本開示の任意のキメラ核酸分子と接触させることを含む。
【0020】
非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムは、本開示の任意の方法に従って作製することができる。
【0021】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、異種CACNG1タンパク質に結合する抗原結合タンパク質を含むものであり、該非ヒト動物は、骨格筋細胞の表面上に異種CACNG1タンパク質またはその細胞外ドメインを発現する。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質は、ヒトCACNG1タンパク質である。一部の実施形態では、非ヒト動物は、マウスである。
【0022】
一部の実施形態では、非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムは、内在性Cacng1遺伝子のノックアウト変異を含む。一部の例では、ノックアウト変異は、Cacng1遺伝子またはその一部の欠失を含む。特定の実施形態では、ノックアウト変異は、Cacng1遺伝子のコード配列全体の欠失を含む。
【0023】
また本明細書においては、いずれのCACNG1タンパク質も発現しない非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムも提供する。
【0024】
また、骨格筋に特異的なタンパク質を発現しない非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムも本明細書において提供されるが、該非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムは、いかなる肉眼的な変異表現型も呈さない。
【0025】
一部の実施形態では、本開示は、(i)5’相同性アームおよび(ii)3’相同性アームを含む標的化ベクターを提供するものであり、該5’相同性アームおよび3’相同性アームは、関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座との相同組換えを受け、また当該関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座との相同組換え後、標的化ベクターは、関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座において非ヒト動物Cacng1遺伝子内にノックアウト変異を挿入する。
【0026】
一部の実施形態では、本開示は、CACNG1ノックアウト非ヒト動物を作製する方法であって、非ヒト動物の内在性Cacng1遺伝子座をノックアウト変異を含むように改変することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、CACNG1発現(GTEx Portal)を示すグラフである。
【0028】
図2図2は、CACNG1ノックアウトの生成のための戦略(正確な縮尺ではない)を示す。
【0029】
図3A図3Aは、マウスにおけるCACNG1遺伝子欠失(CACNG1-/-)が、野生型(WT)対照動物と比較して骨格筋重量を変えないことを示すグラフである。
【0030】
図3B図3Bは、マウスにおけるCACNG1遺伝子欠失(CACNG1-/-)が、野生型(WT)対照動物と比較して、単収縮(1Hz)または強縮(125Hz)での収縮力を変えないことを示すグラフである。
【0031】
図4A図4Aは、CACNG1hu/huマウスのヒト化の概略図(正確な縮尺ではない)を示す。アスタリスクは、アレル獲得(gain-of-allele)アッセイのための上流プライマー(7450hTU)および下流プライマー(7450hTD)の位置を示す。図の上部は、非動物ゲノムのヒト化のためのヒトCACNG1に由来する12,484bpの配列を示す。図の下部は、欠失の標的となるCacng1遺伝子座上の12,795bpのマウスゲノム配列を示す。
【0032】
図4B図4Bは、Neo(ネオマイシン)自己欠失カセットが含まれる7450アレルのCACNG1ヒト化のための戦略(正確な縮尺ではない)を詳述する。コードエクソン1、イントロン1、コードエクソン2~4(および介在するイントロン)、および82bpの3’非翻訳領域(UTR)のマウスCacng1の部分が、ヒトCACNG1の対応する部分であるコードエクソン1配列、イントロン1、コードエクソン2~4(および介在するイントロン)、完全3’UTR、および3’UTRの後の追加の158bpで置換される。コード配列の開始部分の15bpは、マウス配列が残ったままである。loxP-mPrm1-Crei-pA-hUb1-em7-Neo-pA-loxPカセット(4,805bp)が、ヒト配列より下流に示されており、これに残りのマウス3’UTRが続く。
【0033】
図4C図4Cは、カセットが欠失し、LoxP部位は残るものである7451アレルのCACNG1ヒト化のための戦略(正確な縮尺ではない)を詳述している。コードエクソン1、イントロン1、コードエクソン2~4(および介在するイントロン)、および82bpの3’非翻訳領域(UTR)のマウスCacng1の部分が、ヒトCACNG1の対応する部分であるコードエクソン1配列、イントロン1、コードエクソン2~4(および介在するイントロン)、完全3’UTR、および3’UTRの後の追加の158bpで置換される。コード配列の開始部分の15bpは、マウス配列が残ったままである。loxP-mPrm1-Crei-pA-hUb1-em7-Neo-pA-loxPカセット(4,805bp)が、ヒト配列より下流に示されており、これに残りのマウス3’UTRが続く。カセット欠失後は、LoxPおよびクローニング部位(77bp)が残り、それにヒト3’UTRが続く。
【0034】
図5図5は、ヒトhCACNG1タンパク質(hCACNG1、配列番号4)、および7451アレルによってコードされたCACNG1タンパク質(7451、配列番号4)の、マウスCACNG1タンパク質(mCACNG1、配列番号2)とのアライメントを示す。アスタリスクは、変化しないままの残基を示す。太い実線は膜貫通ドメインを示す。下線が引かれた残基は、導入されたヒトエクソンによりコードされる残基である。細胞質ドメインおよび細胞外ドメインは標識され、図示されている。
【0035】
図6A図6Aは、マウスCACNG1(mCACNG1)の発現が、CACNG1hu/huマウス筋肉においてqPCRでは検出できないことを実証するグラフであり(左グラフ)、一方でヒトCACNG1(hCACNG1)は、CACNG1hu/huにおいて発現されるが、野生型(WT)マウス筋肉では発現されないことを実証するグラフである(右グラフ)。
【0036】
図6B図6Bは、100nMのAlexa 647複合ヒト特異的α-CACNG1抗体での単一骨格筋筋線維の生細胞染色(live staining)を示す画像であり、CACNG1hu/huマウスから単離された筋線維への結合は見られるが、野生型(WT)マウスから単離された筋線維への結合は見られない。
【0037】
図6C図6Cは、10mg/kgのAlexa 647複合ヒト特異的α-CACNG1抗体で注射したCACNG1hu/huマウスのクライオ蛍光断層撮影(CryoFT)画像を示す画像であり、注射の6日後、アイソタイプ対照抗体と比較して骨格筋に高い特異性を示す。
【0038】
図7図7は、10mg/kgのAlexa 647複合ヒト特異的α-CACNG1抗体を投与したCACNG1hu/huマウスの組織切片を示す画像であり、注射の6日後、骨格筋への結合を示す。上方の図は、in vivoで注射した抗体からの内在性Alexa 647シグナルを示し、下方の図は、筋形態を可視化する共染色のラミニンおよびDAPIを伴うAlexa647抗体の結合のオーバーレイを示す。
【0039】
図8A図8Aは、NP_031608.1として示したマウスCacng1タンパク質の、細胞質ドメイン(アミノ酸1~10、131~135、および206~223)、膜貫通ドメイン(アミノ酸11~29、110~130、136~156、および181~205)、および細胞外ドメイン(アミノ酸30~109、および157~180)のアノテーションを提供する。
【0040】
図8B図8Bは、マウスコードDNA配列(CDS)の、細胞質ドメイン(核酸1~30、391~405、および616~669)、膜貫通ドメイン(核酸31~87、328~390、406~468、および541~615)、および細胞外ドメイン(核酸88~327、および469~540)をコードする核酸配列のアノテーションを提供する。
【0041】
図9A図9Aは、NP_000718.1として示したヒトCACNG1タンパク質の、細胞質ドメイン(アミノ酸1~10、130~134、および205~222)、膜貫通ドメイン(アミノ酸11~29、109~129、135~155、および180~204)、および細胞外ドメイン(アミノ酸30~108、および156~179)のアノテーションを提供する。
【0042】
図9B図9Bは、ヒトコードDNA配列(CDS)の、細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞外ドメインをコードする核酸配列のアノテーションを提供する。
【0043】
図10A図10Aは、7451アレルによってコードされたCACNG1タンパク質の例示的な配列を提供する。
【0044】
図10B図10Bは、3’非翻訳配列を含む、マウス/ヒトCACNG1核酸コード配列(CDS)の例示的な配列を提供する。
【0045】
図11-1】図11は、7450アレルの核酸配列を提供する。Neo自己欠失カセットを有するCACNG1ヒト化領域=マウス(小文字)_ヒト_XhoI_LoxP_Prm_Crei_sv40 polya(小文字)-hUbi-em7(小文字)-NEO-PGK polyA_LoxP_ICeUI_マウス(小文字)。
図11-2】同上。
図11-3】同上。
【0046】
図12-1】図12は、7450アレルの核酸配列を提供する。Neo自己欠失カセットを有するCACNG1ヒト化領域=
【化1】
図12-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0047】
定義
「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、本明細書において相互交換可能に使用され、またコードアミノ酸および非コードアミノ酸、ならびに化学的に改変されたアミノ酸もしくは生化学的に改変されたアミノ酸または誘導体化アミノ酸を含むアミノ酸の任意の長さの多量体形態を含む。この用語はさらに、例えば改変されたペプチド主鎖を有するポリペプチドなど、改変がなされた多量体も含む。ドメインという用語は、特定の機能または構造を有するタンパク質またはポリペプチドの任意の部分を指し得る。
【0048】
タンパク質は、「N末端」および「C末端」を有すると考えられている。「N末端」という用語は、タンパク質またはポリペプチドの開始と関連しており、遊離アミン基(-NH)を有するアミノ酸により終結する。「C末端」という用語は、アミノ酸鎖(タンパク質またはポリペプチド)の末端と関連しており、遊離カルボキシル基(-COOH)により終結する。
【0049】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において相互交換可能に使用され、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはその類似体もしくは改変型を含むヌクレオチドの任意の長さの多量体形態を含む。核酸およびポリヌクレオチドには、一本鎖、二本鎖および多重鎖のDNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、ならびにプリン塩基、ピリミジン塩基または他の天然ヌクレオチド塩基、化学的に改変されたヌクレオチド塩基、生化学的に改変されたヌクレオチド塩基、非天然ヌクレオチド塩基もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含む多量体が含まれ得る。
【0050】
核酸は、「5’末端」と「3’末端」を有すると考えられており、一つのモノヌクレオチドのペントース環の5’リン酸がホスホジエステル結合を介して、ある一方の方向において自身に隣接する3’酸素に結合されるようにモノヌクレオチドが反応して、オリゴヌクレオチドが生成されることに由来する。オリゴヌクレオチドの末端は、その5’リン酸が、モノヌクレオチドのペントース環の3’酸素に連結されていない場合、「5’末端」と呼ばれる。オリゴヌクレオチドの末端は、その3’酸素が、別のモノヌクレオチドのペントース環の5’リン酸に連結されていない場合、「3’末端」と呼ばれる。核酸配列は、内側がより大きなオリゴヌクレオチドであっても、5’末端と3’末端を有すると考えられ得る。直鎖状または環状のDNA分子のいずれにおいても、分散する要素が、「下流」または3’要素の「上流」または5’要素であると呼称される。
【0051】
「ゲノム的に統合された」という用語は、ヌクレオチド配列が細胞のゲノム内に統合され、その子孫に遺伝することができるように細胞内に導入された核酸を指す。任意のプロトコルを用いて、細胞ゲノム内への核酸の安定的組み込みがなされ得る。
【0052】
「標的化ベクター」という用語は、相同組み換え、非相同末端結合によるライゲーション、または任意の他の細胞ゲノム内の標的位置への組み換え手段により導入されることができる組み換え核酸を指す。
【0053】
「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の要素を少なくとも一つ含み、またウイルスベクター粒子内へのパッキングに充分な、または許容可能な要素を含む組み換え核酸を指す。DNA、RNA、またはその他の核酸をex vivoまたはin vivoのいずれかで細胞内へ移入させることを目的として、ベクターおよび/または粒子を利用することができる。多くの形態のウイルスベクターが公知である。
【0054】
「野生型」という用語には、(変異体、疾患状態、変化した状態などに比して)正常な状態または背景下で存在する構造および/または活性を有する実体が含まれる。野生型の遺伝子およびポリペプチドはしばしば複数の異なる形態(例えば、アレル)で存在する。
【0055】
「肉眼的な変異表現型(gross mutant phenotype)」という表現は、本開示の操作された非ヒトマウスと「野生型」との間の表現型の有意な差異または変化を指す。
【0056】
「内在性(endogenous)」という用語は、細胞または非ヒト動物内で自然に生じる核酸配列を指す。例えば、非ヒト動物の内在性Cacng1配列とは、該非ヒト動物のCacng1遺伝子座において自然に生じる天然のCacng1配列を指す。
【0057】
「外来性(exogenous)」の分子または配列には、その形態での細胞には通常存在しない分子または配列が含まれる。通常の存在には、細胞の特定の発生段階および環境条件に関する存在が含まれる。外来性の分子または配列は、例えば、細胞内の対応する内在性配列の変異形態、例えば内在性配列のヒト化形態、を含み得るか、または細胞内ではないが異なる形態内にある(すなわち、染色体内にはない)内在性配列に対応する配列を含み得る。対照的に、内在性の分子または配列には、特定の環境条件下の特定の発生段階にある特定の細胞中で、その形態で通常存在する分子または配列が含まれる。
【0058】
核酸またはタンパク質に関して使用される場合、「異種」という用語は、当該核酸またはタンパク質が、同じ分子内では自然には一緒に生じない少なくとも二つの部分を含むことを示す。例えば、「異種」という用語は、核酸部分またはタンパク質部分に関して使用される場合、当該核酸またはタンパク質が、自然には相互に同じ関係性で存在しない(例えば一緒には結合しない)二つ以上のサブ配列を含むことを示す。一例として、核酸ベクターの「異種」領域は、別の核酸分子内の核酸のセグメントであるか、または該別の核酸分子に結合されている核酸のセグメントであり、これは自然にはもう一方の分子と結合して存在しない。例えば、核酸ベクターの異種領域は、あるコード配列であって自然には該コード配列と結合して存在しない配列が隣接しているコード配列を含み得る。同様に、タンパク質の「異種」領域は、別のペプチド分子内のアミノ酸のセグメントまたは該別のペプチド分子に結合されているアミノ酸のセグメントであり、該ペプチド分子は自然にはもう一方のペプチド分子(例えば融合タンパク質またはタグ付きタンパク質)と結合して存在しないものである。同様に、核酸またはタンパク質は、異種のラベル、または異種の分泌配列もしくは局在配列を含み得る。
【0059】
「コドン最適化」は、アミノ酸を規定する三塩基対のコドンの組み合わせの多重性で見られるとおり、コドン縮重を利用したものであり、これは通常、天然アミノ酸配列を維持しながら、宿主細胞の遺伝子においてより高頻度に、または最も高頻度に使用されるコドンで、天然配列のコドンを少なくとも一つ置換することにより、特定の宿主細胞における発現を強化するために核酸配列を改変するプロセスを含む。例えば、Cas9タンパク質をコードする核酸を、例えば細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、齧歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、もしくはその他の任意の宿主細胞を含む所与の原核細胞または真核細胞において、天然核酸配列と比較してより高頻度である使用頻度のコドンへと置換するように改変することができる。コドン使用頻度に関する表は、例えば「Codon Usage Database」で容易に入手することができる。これら表は、多くの方法に適合させることができる。Nakamura et al.(2000)Nucleic Acids Research 28:292を参照されたく、当該文献は全ての目的に対し、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。特定の宿主における発現のための特定の配列のコドン最適化を目的としたコンピュータアルゴリズムも利用可能である(例えば、Gene Forgeを参照のこと)。
【0060】
「遺伝子座(locus)」という用語は、生物体のゲノムの染色体上の、遺伝子(または重要な配列)、DNA配列、ポリペプチドをコードする配列または位置の特定の場所を指す。例えば、「Cacng1遺伝子座」は、かかる配列が存在する場所について特定されている生物体のゲノムの染色体上の、Cacng1遺伝子、Cacng1のDNA配列、Cacng1コード配列またはCacng1の位置の特定の場所を指し得る。「Cacng1遺伝子座」は、Cacng1遺伝子の調節因子を含み得、例えば、エンハンサー、プロモーター、5’および/または3’非翻訳領域(UTR)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0061】
「遺伝子」という用語は、産物(例えば、RNA産物および/またはポリペプチド産物)をコードする染色体中のDNA配列を指し、また非コードイントロンが間に入るコード領域、ならびに5’および3’の両末端上のコード領域に隣接する配列を含むことから、当該遺伝子は、全長mRNA(5’および3’の非翻訳配列を含む)に相当することとなる。「遺伝子」という用語はまた、調節配列(例えばプロモーター、エンハンサーおよび転写因子結合部位)、ポリアデニル化シグナル、内側リボソーム侵入部位、サイレンサー、インスレーター配列(insulating sequence)、およびマトリックス結合領域をはじめとする他の非コード配列も含む。これら配列は、遺伝子のコード領域に近接していても(例えば10kb以内)、離れた部位にあってもよく、これらは遺伝子の転写および翻訳のレベルまたは速度に影響を与える。
【0062】
「アレル」という用語は、ある遺伝子の変異体形態を指す。一部の遺伝子は多様な異なる形態を有しており、それらは染色体上の同じ位置にあるか、または同じ遺伝子座にある。二倍体生物体は、各遺伝子座に二つのアレルを有する。アレルの各ペアは、特定の遺伝子座の遺伝子型を表す。遺伝子型は、ある特定の遺伝子座に二つの同一アレルがある場合にはホモ接合性として、また二つのアレルが異なる場合にはヘテロ接合性として記載される。
【0063】
「プロモーター」はDNAの調節領域であり、通常、TATAボックスを含み、TATAボックスは、特定のポリヌクレオチド配列に対して適切な転写開始部位においてRNA合成を開始させる指示をRNAポリメラーゼIIに出すことができる。プロモーターはさらに、転写開始速度に影響を与える他の領域を含むことができる。本明細書に開示されるプロモーター配列は、操作可能に連結されたポリヌクレオチドの転写を調節する。プロモーターは、本明細書に開示される細胞型(例えば、真核細胞、非ヒト哺乳動物細胞、ヒト細胞、齧歯類細胞、多能性細胞、一細胞期の胚、分化細胞、またはそれらの組み合わせ)のうちの一以上において活性であり得る。プロモーターは、例えば、構造的に活性なプロモーター、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、時間的に制限されたプロモーター(例えば、発生的に制御されたプロモーター)、または空間的に制限されたプロモーター(例えば、細胞特異的または組織特異的なプロモーター)であり得る。プロモーターの例は、例えば、国際公開第2013/176772号で見ることができ、当該文献は全ての目的に対しその全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
「操作可能な連結」または「操作可能に連結される」とは、二つ以上の構成要素(例えば、あるプロモーターおよび別の配列の要素)が、両方の構成要素が正常に機能して当該構成要素の少なくとも一つが機能を介在し、もう一方の構成要素のうち少なくとも一つに影響を及ぼすことが可能となるように、近接して並ぶことを含む。例えばプロモーターが一つまたは複数の転写調節因子の存在または不存に応じてコード配列の転写レベルを制御するならば、プロモーターは、コード配列に操作可能に連結され得る。操作可能な連結は、互いに連続的な配列、またはトランスで作用する配列など(例えば、ある調節配列が、コード配列の転写を制御する距離で作用することができる)を含み得る。
【0065】
「変異体」という用語は、集団において最も多い配列とは異なっているヌクレオチド配列(例えば1ヌクレオチドだけ異なる)、または集団において最も多い配列とは異なっているタンパク質配列(例えば1アミノ酸だけ異なる)を指す。
【0066】
タンパク質に言及する場合において「断片」という用語は、全長タンパク質よりも短いタンパク質、またはアミノ酸が少ないタンパク質を意味する。核酸に言及する場合において「断片」という用語は、全長核酸よりも短い核酸、またはヌクレオチドが少ない核酸を意味する。断片は、例えばN末端断片(すなわちタンパク質のC末端部分が除去されている)、C末端断片(すなわちタンパク質のN末端部分が除去されている)または内側断片であってもよい。
【0067】
二つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」または「同一性」は、規定の比較ウィンドウで最大限対応するように整列させたときに同一である二つの配列中の残基を指す。タンパク質に関して配列同一性の百分率を用いる場合、同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換により異なっている場合が多く、この場合のアミノ酸残基は、類似した化学特性(例えば電荷または疎水性など)を有する他のアミノ酸残基と置換されており、したがって当該分子の機能的特性は変わっていない。保存的置換で配列が異なる場合、配列同一性の百分率を上向きに調整し、置換の保存性に関して補正してもよい。そのような保存的置換が異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると考えられている。この調整を行う手段は周知である。典型的には、当該手段は、全長ミスマッチではなく部分的ミスマッチとして保存的置換を格付けし、それによって配列同一性の百分率を増加させることを含む。したがって例えば同一アミノ酸にスコア1を与えて、非保存的置換にはスコアゼロが与えられる場合、保存的置換にはゼロと1の間のスコアを与える。保存的置換の格付けは、例えばPC/GENEプログラム(Intelligenetics社、カリフォルニア州マウンテンビュー)で実施されるように算出される。
【0068】
「配列同一性の百分率」には、最適に整列した(完全合致残基の数が最も多い)二つの配列をある比較ウィンドウで比較することにより決定された値を含み、この場合において該比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列部分は、二つの配列の最適な整列のための参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含む場合がある。百分率は、両方の配列中で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、合致位置数を出し、その合致位置数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除算し、その結果に100を掛け、配列同一性の百分率を出すことにより算出される。別段の指定(例えば短い方の配列が、連結した異種配列を含むなど)が無い限り、比較ウィンドウは、比較しようとする二つの配列の短い方の配列の全長となる。
【0069】
別段の記載がない限り、配列同一性/類似性の値には、以下のパラメータを使用したGAP Version10または同等の任意のプログラムを使用して得られた値を使用して得た値が含まれ、パラメータとしては、GAP Weightを50およびLength Weightを3、ならびにnwsgapdna.cmpスコア行列を使用したヌクレオチド配列に対する同一性%および類似性%;GAP Weightを8およびLength Weightを2、およびBLOSUM62スコア行列を使用したアミノ酸配列に対する同一性%および類似性%がある。「同等のプログラム」には、任意の配列比較プログラムが含まれ、それらは対象となる任意の二つの配列に関して、GAP Version10により生成された対応アライメントと比較したときに、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の合致を有するアライメントと、配列同一性の一致率とを生成する。
【0070】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、配列中に通常に存在するアミノ酸と、類似したサイズ、電荷または極性を有する異なるアミノ酸との置換を指す。保存的置換の例としては、非極性(疎水性)残基、例えばイソロイシン、バリンまたはロイシンと、別の非極性残基の置換が挙げられる。同様に保存的置換の例としては、一つの極性(親水性)残基と、別の極性残基の置換が挙げられ、例えばアルギニンとリシン間、グルタミンとアスパラギン間、またはグリシンとセリン間の置換が挙げられる。さらには塩基性残基と、例えばリシン、アルギニンもしくはヒスチジンと、別の塩基性残基の置換、または一つの酸性残基と、例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸と、別の酸性残基の置換も、保存的置換のさらなる例である。非保存的置換の例としては、非極性(疎水性)アミノ酸残基と、例えばイソロイシン、バリン、ロイシン、アラニンもしくはメチオニンと、極性(親水性)残基、例えばシステイン、グルタミン、グルタミン酸もしくはリシンの置換、および/または極性残基と非極性残基の置換が挙げられる。典型的なアミノ酸分類を下記に要約する。
【表2】
【0071】
「相同」配列(例えば核酸配列)は、既知の参照配列と同一、または実質的に類似のいずれかである配列を含み、例えば既知の参照配列に対し、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列であるようになる。相同配列は例えばオルソロガスな配列およびパラロゴスな配列を含み得る。相同遺伝子は、例えば典型的には種分化事象を介して(オルソロガス遺伝子)、または遺伝子複製事象を介して(パラロゴス遺伝子)、共通の先祖DNA配列に由来するものである。「オルソロガス」遺伝子には、種分化により共通の先祖遺伝子から進化した、異なる種の遺伝子が含まれる。オルソログ同士は、典型的には進化の過程で同じ機能を保持している。「パラロゴス」遺伝子は、ゲノム内複製で関連する遺伝子を含む。パラログは、進化の過程で新たな機能を発達させ得る。
【0072】
「in vitro」という用語には、人工的な環境が含まれ、人工的な環境(たとえば試験管)内で生じたプロセスまたは反応に対するものである。「in vivo」という用語には、自然の環境(例えば細胞または生物体または身体)が含まれ、自然の環境内で生じたプロセスまたは反応に対するものである。「ex vivo」という用語には、個体の身体から採取された細胞が含まれ、当該細胞内で生じたプロセスまたは反応に対するものである。
【0073】
「レポーター遺伝子」という用語は、異種プロモーターおよび/またはエンハンサーの要素に操作可能に連結されたレポーター遺伝子配列を含む構築物が、当該プロモーターおよび/またはエンハンサー要素の活性化に必要な因子を含有する(またはそれらを含有するように作製され得る)細胞内に導入されたときに、容易かつ定量的に評価される遺伝子産物(典型的には酵素)をコードする配列を有する核酸を指す。レポーター遺伝子の例としては、限定されないが、β-ガラクトシダーゼ(lacZ)をコードする遺伝子、細菌のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、β-グルクロニダーゼ(GUS)をコードする遺伝子、および蛍光タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。「レポータータンパク質」とは、レポーター遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。
【0074】
「蛍光レポータータンパク質」という用語は本明細書で使用される場合、蛍光に基づいて検出可能であるレポータータンパク質を意味するものであり、この蛍光は、レポータータンパク質に直接由来するか、蛍光発生基質に対するレポータータンパク質の活性に由来するか、または蛍光タグを付した化合物への結合の親和性を有するタンパク質に由来するかのいずれかであり得る。蛍光タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、eGFP、Emerald、Azami Green、単量体Azami Green(Monomeric Azami Green)、CopGFP、AceGFPおよびZsGreenl)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、Citrine、Venus、YPet、PhiYFPおよびZsYellowl)、青色蛍光タンパク質(例えば、BFP、eBFP、eBFP2、Azurite、mKalamal、GFPuv、SapphireおよびT-sapphire)、シアン蛍光タンパク質(例えば、CFP、eCFP、Cerulean、CyPet、AmCyanlおよびMidoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、RFP、mKate、mKate2、mPlum、DsRed単量体、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-単量体、HcRed-Tandem、HcRedl、AsRed2、eqFP611、mRaspberry、mStrawberryおよびJred)、橙色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、単量体Kusabira-Orange(Monomeric Kusabira-Orange)、mTangerineおよびtdTomato)、および細胞中でのその存在がフローサイトメトリー法により検出可能である任意の他の適切な蛍光タンパク質が挙げられる。
【0075】
「組み換え」という用語は、二つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換のあらゆるプロセスを含み、任意の機序によって発生することができる。二本鎖切断(DSB:double-strand break)に応じた組み換えは主に二つの保存的DNA修復経路、非相同末端結合(NHEJ)および相同組換え(HR)を介して発生する。Kasparek&Humphrey(2011)Seminars in Cell & Dev.Biol.22:886-897を参照されたく、当該文献は全ての目的に対しその全体で参照により本明細書に組み込まれる。同様に、外来ドナー核酸が介在する標的核酸の修復は、二つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換のあらゆるプロセスを含むことができる。
【0076】
NHEJは、相同な鋳型を必要とせずに、互いに対するまたは外来配列に対する切断末端の直接的なライゲーションによる、ある核酸内の二本鎖切断の修復を含む。NHEJによる非連続配列のライゲーションは多くの場合、二本鎖切断部位近くの欠失、挿入、または転座を生じさせ得る。例えばNHEJは、切断末端と外来ドナー核酸の末端との直接的ライゲーションを介して、外来ドナー核酸の狙った統合を生じさせることもできる(すなわち、NHEJによる捕捉)。こうしたNHEJによる狙った統合は、相同組換え修復(HDR:homology directed repair)経路が容易には使用できない場合(例えば非分裂細胞、初代細胞、および相同性に基づくDNA修復がほとんど実施されない細胞)の外来ドナー核酸の挿入に好ましい場合がある。加えて、相同組換え修復とは対照的に、開裂部位に隣接する配列同一性の大領域に関する知識は必要ではないため、ゲノム配列に関する知識が制限されているゲノムを有する生物体への狙った場所への挿入を試みる場合に有益であり得る。この統合は、外来ドナー核酸と開裂ゲノム配列との間の平滑末端のライゲーションを介して、または開裂ゲノム配列内でヌクレアーゼ剤により生成された末端と適合するオーバーハングにより隣接される外来ドナー核酸を使用した付着末端(すなわち5’または3’のオーバーハングを有する末端)のライゲーションを介して、進行させることができる。例えば、米国特許出願公開第2011/020722号、国際公開第2014/033644号、国際公開第2014/089290号、およびMaresca et al.(2013)Genome Res.23(3):539-546を参照されたく、当該文献の各々が参照によりその全体で全ての目的に対して本明細書に組み込まれる。平滑末端がライゲーションされるならば、断片結合に必要な微小相同性の生成領域に対して、標的および/またはドナーのリセクションが必要となる場合があり、これが標的配列において望ましくない変化を生じさせる場合がある。
【0077】
組み換えはまた、相同組換え修復(HDR)または相同組換え(HR)を介して発生させることができる。HDRまたはHRには、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし得る核酸修復の形態が含まれ、「標的」分子(すなわち二本鎖切断を経た分子)の修復用の鋳型として「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝子情報の伝達を誘導する。いかなる特定の学説にも拘束されることは望まないが、こうした伝達には、切断した標的とドナーとの間で形成するヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ修復、および/または合成依存性鎖アニーリング(synthesis-dependent strand annealing)であって、ドナーが遺伝情報の再合成に使用され、これが標的の一部となることとなる合成依存性鎖アニーリング、および/または関連のプロセスを含むことができる。一部の例では、ドナーであるポリヌクレオチド、ドナーであるポリヌクレオチドの一部、ドナーであるポリヌクレオチドのコピー、またはドナーであるポリヌクレオチドのコピーの一部が標的DNA内に統合される。Wang et al.(2013)Cell 153:910-918、Mandalos et al.(2012)PLOS ONE 7:e45768:1-9、およびWang et al.(2013)Nat Biotechnol.31:530-532を参照されたく、それら各々が参照によりその全体で全ての目的に対して本明細書に組み込まれる。
【0078】
「抗原結合タンパク質」という用語は、抗原に結合するあらゆるタンパク質を含む。抗原結合タンパク質の例としては、抗体、抗体の抗原結合断片、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、scFV、bis-scFV、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、V-NAR、VHH、VL、F(ab)、F(ab)、DVD(二重可変ドメイン抗原結合タンパク質)、SVD(単一可変ドメイン抗原結合タンパク質)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、またはDavisbody(米国特許第8,586,713号、全ての目的に対し本明細書において参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0079】
抗原結合タンパク質に関連する「多重特異性」または「二重特異性」という用語は、そのタンパク質が、同一の抗原上または異なる抗原上のどちらかにおいて異なるエピトープを認識することを意味する。多重特異性抗原結合タンパク質は、単一の多機能性ポリペプチドであり得るか、または相互に共有結合もしくは非共有結合で結合した二つ以上のポリペプチドの多量体複合体であり得る。例えば、抗体またはその断片は、一つまたは複数の他の分子実体、例えばタンパク質またはその断片などに、(例えば、化学的結合、遺伝子融合、非共有結合による結合、またはその他により)機能的に連結して、第二の結合特異性を有する二重特異性または多重特異性の抗原結合分子を産生することができる。
【0080】
「抗原」という用語は、分子全体または分子内のドメインのいずれかによらず物質を指すものであり、その物質に対する結合特異性を有する抗体の産生を惹起させることができる。抗原という用語は、野生型の宿主生物体においては自己認識を理由として抗体産生を惹起しないが、免疫寛容が破綻するように適切に遺伝子操作された宿主動物においてはかかる反応を惹起させることができる物質も含む。
【0081】
「エピトープ」という用語は、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続的なアミノ酸から形成されることができ、または一つもしくは複数のタンパク質の三次フォールディングによって近接して並んだ非連続的なアミノ酸から形成されることもできる。連続的なアミノ酸から形成されたエピトープ(線状エピトープとしても知られる)は、典型的には、変性溶媒への暴露でも保持されるのに対して、三次フォールディングにより形成されたエピトープ(構造的エピトープとしても知られる)は、典型的には、変性溶媒を用いた処理で失われる。典型的にはエピトープは、固有の空間的コンホメーションで少なくとも3個、より一般的には少なくとも5個、または8~10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的コンホメーションを決定する方法としては、例えばX線結晶構造解析および2次元核磁気共鳴法が挙げられる。例えば、Epitope Mapping Protocols,in Methods in Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed.(1996)を参照されたく、当該文献は参照によりその全体で全ての目的に対して本明細書に組み込まれる。
【0082】
本明細書に記載の抗体パラトープは、概して、異種エピトープを特異的に認識する相補性決定領域(CDR)を少なくとも含む(例えば、重鎖および/または軽鎖可変ドメインのCDR3領域)。
【0083】
「抗体」という用語には、四つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互接続された二つの重(H)鎖と二つの軽(L)鎖)を含む、免疫グロブリン分子が含まれる。各重鎖は、重鎖可変ドメインおよび重鎖定常領域(C)を含む。重鎖定常領域は、C1、C2、およびC3の三つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常領域(C)を含む。重鎖および軽鎖可変ドメインはさらに、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存的な領域が点在している相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分化することができる。各重鎖および軽鎖可変ドメインは、三つのCDRおよび四つのFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(重鎖CDRは、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3として省略され得、軽鎖CDRは、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3として省略され得る)、で配列される。「高親和性」抗体という用語は、その標的エピトープに対して約10-9M以下(例えば約1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、または約1×10-12M)のKを有する抗体を指す。一実施形態では、Kは、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって測定され、別の実施形態では、Kは、ELISAによって測定される。
【0084】
「二重特異性抗体」という用語は、二つ以上のエピトープを選択的に結合することができる抗体を含む。二重特異性抗体は、概して、二つの異なる重鎖を含み、各重鎖は、異なるエピトープ、すなわち二つの異なる分子(例えば二つの異なる抗原)上または同一分子(例えば同一抗原)上の異なるエピトープに特異的に結合している。二重特異性抗体が二つの異なるエピトープ(第一のエピトープおよび第二のエピトープ)を選択的に結合することができる場合、第一のエピトープに対する第一の重鎖の親和性は、概して、第二のエピトープに対する第一の重鎖の親和性よりも少なくとも一桁から二桁、または三桁もしくは四桁低く、その逆もまた同様である。二重特異性抗体により認識されるエピトープは、同一の標的の上にも異なる標的の上にも(例えば、同一のタンパク質の上、または異なるタンパク質の上)あり得る。二重特異性抗体は、例えば、同一の抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作製することができる。例えば、同一の抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列は、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合可能であり、こうした配列は、イムノグロブリン軽鎖を発現する細胞内で発現することができる。典型的な二重特異性抗体は、三つの重鎖CDRとそれに続いて(N末端からC末端へ)CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを各々が有する二つの重鎖と、抗原結合特異性を付与しないが各重鎖と結合可能であるか、または各重鎖と結合できかつ重鎖抗原結合領域により結合されるエピトープのうちの一以上を結合できるか、または各重鎖と結合できかつ重鎖の一方もしくは両方をエピトープの一方もしくは両方に結合させることができるイムノグロブリン軽鎖とを有する。
【0085】
「重鎖」または「イムノグロブリン重鎖」という用語には、任意の生物体由来の、例えばイムノグロブリン重鎖定常領域配列などであるイムノグロブリン重鎖配列が含まれる。別段の指定のない限り、重鎖可変ドメインは、三つの重鎖CDRと四つのFR領域とを含む。重鎖の断片としては、CDR、CDRおよびFR、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。典型的な重鎖は、可変ドメインに続いて(N末端からC末端へ)、C1ドメイン、ヒンジ、C2ドメイン、およびC3ドメインを有する。重鎖の機能性断片には、エピトープを特異的に認識する(例えば、エピトープをマイクロモル濃度、ナノモル濃度、またはピコモル濃度範囲のKで認識する)ことができ、発現できかつ細胞から分泌可能であり、および少なくとも一つのCDRを含む断片が含まれる。重鎖可変ドメインは、可変領域ヌクレオチド配列によってコードされるものであり、概して、生殖系細胞に存在するV、D、およびJセグメントのレパートリー由来の、V、D、およびJセグメントを含む。様々な生物体に関するV重鎖セグメント、D重鎖セグメント、およびJ重鎖セグメントの配列、位置、および命名は、IMGTデータベースで見ることができるが、これは、ワールドワイドウェブ(www)でインターネットを介してURL「imgt.org」でアクセス可能である。
【0086】
「軽鎖」という用語は、任意の生物体由来の免疫グロブリン軽鎖配列を含み、別段の規定がない限り、代替軽鎖のみならず、ヒトカッパ(κ)軽鎖およびラムダ(λ)軽鎖、ならびにVpreBを含む。軽鎖可変ドメインは、典型的には、別段の規定がない限り、三つの軽鎖CDRおよび四つのフレームワーク(FR)領域を含む。概して、完全長軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含む可変ドメイン、および軽鎖定常領域アミノ酸配列を含む。軽鎖可変ドメインは、軽鎖可変領域ヌクレオチド配列によってコードされるものであり、概して、生殖系細胞に存在する軽鎖VおよびJ遺伝子セグメントのレパートリーに由来する、軽鎖Vおよび軽鎖J遺伝子セグメントを含む。様々な生物体の軽鎖V遺伝子セグメントおよび軽鎖J遺伝子セグメントの配列、位置、および命名は、IMGTデータベースで見ることができるが、これは、ワールドワイドウェブ(www)でインターネットを介してURL「imgt.org」でアクセス可能である。軽鎖には、例えば、該軽鎖が含まれるエピトープ結合タンパク質に選択的に結合する第一のエピトープと第二のエピトープのいずれにも選択的に結合することのない軽鎖が含まれる。軽鎖にはまた、該軽鎖が含まれるエピトープ結合タンパク質に選択的に結合する一つ以上のエピトープを結合かつ認識しながら、重鎖を結合かつ認識、または補佐する軽鎖が含まれる。
【0087】
本明細書において使用される場合、「相補性決定領域」または「CDR」という用語には、生物体の免疫グロブリン遺伝子の核酸配列でコードされるアミノ酸配列が含まれるものであり、当該アミノ酸配列は、通常(すなわち、野生型動物で)は免疫グロブリン分子(例えば、抗体またはT細胞受容体)の軽鎖または重鎖の可変領域における二つのフレームワーク領域の間に存在する。CDRは、例えば生殖系列配列または再構成された配列によって、かつ、例えばナイーヴB細胞もしくは成熟B細胞またはT細胞によって、コードされ得る。CDRは、体細胞変異され得る(例えば動物生殖細胞系でコードされた配列と異なる)、ヒト化され得る、および/または、アミノ酸置換、付加もしくは欠失で改変され得る。一部の状況では(例えばCDR3に関して)、CDRは、二つ以上の配列(例えば生殖系列配列)によってコードされ得るが、それら配列は、(例えば、再構成されていない核酸配列においては)連続していないが、例えばこれら配列のスプライシングまたは接続(例えば、重鎖CDR3を形成するV-D-J再構成)の結果として、B細胞の核酸配列においては連続している。
【0088】
標的抗原への抗原結合タンパク質の特異的結合は、親和性が少なくとも10、10、10、10、または1010-1である結合を含む。特異的結合は、少なくとも一つの非関連標的に対して発生する非特異的結合とは規模が検出可能により高く、また該非特異的結合と区別可能である。特異的結合は、特定の官能基または特定の空間的な嵌合(例えば錠と鍵のタイプ)の間に結合が形成された結果であり得、一方で非特異的結合は通常、ファンデルワールス力の結果である。しかしながら特異的結合は、抗原結合タンパク質がただ一つの標的に結合することを必ずしも意味するものではない。
【0089】
「任意の」または「任意で」は、それの後に記載される事象または状況が起こる場合もあれば起こらない場合もあることを意味すると共に、この記載には、前述の事象または状況が起こる場合の例および起こらない場合の例が包含されることを意味する。
【0090】
値の範囲の指定には、その範囲内の全ての整数または範囲を規定する全ての整数、ならびに範囲内の整数により規定される全ての下位範囲が含まれる。
【0091】
文脈から別途明らかでない限り、「約」という用語は、指定された値の測定の標準誤差(例えば、SEM)内の値を包含する。
【0092】
「および/または」という用語は、関連する列記された項目のうちの一つまたは複数の任意の、および全ての可能性のある組み合わせ、ならびに選択的に解釈される場合(「または」)の組み合わせの欠落を意味して包含する。
【0093】
「または」という用語は、特定の一覧の任意の一構成員を指し、その一覧の構成員の任意の組み合わせも含む。
【0094】
単数形の冠詞「a」、「an」、および「the」は、文脈で別途明確に指示されない限り、複数への言及を含む。例えば、「あるタンパク質」または「少なくとも一つのタンパク質」という用語は、それらの組み合わせを含めて、複数のタンパク質を含み得る。
【0095】
統計的に有意とは、p≦0.05を意味する。
(発明を実施するための形態)
【0096】
I.概要
本明細書においては、骨格筋で特異的に発現されることが見出された外来性配列を含む非ヒト動物細胞、非ヒト動物、および非ヒトゲノム、ならびにそれを作製するための試薬が開示される。一部の実施形態では、外来性配列が、遺伝子の内在性遺伝子座に組み込まれる。
【0097】
骨格筋は、人体における三種の有意な筋組織のうちの一つである。各骨格筋は、結合組織鞘によって一緒に囲まれた数千の筋線維からなる。骨格筋の筋線維の個々の束は、筋膜(fasciculi)として知られている。筋肉全体を囲む最も外側の結合組織鞘は、筋肉鞘(epimysium)として知られている。各筋膜を覆う結合組織鞘は、節周膜として知られており、個々の筋線維を囲む最も内側の鞘は、筋内膜として知られている。各筋線維は、複数の筋フィラメントを含有する筋原線維を含有する。
【0098】
一緒に束ねられると、全ての筋原線維が、骨格筋の基本収縮単位であるサルコメアを形成する固有の横紋模様で並べられる。二つの最も有意な筋フィラメントは、骨格筋上に様々な帯を形成するように特徴的に並べられたアクチンフィラメントおよびミオシンフィラメントである。成熟筋線維へと分化する幹細胞は、基底膜と筋線維鞘(横紋筋線維細胞を囲む細胞膜)との間に存在し得る筋衛星細胞として知られている。幹細胞は、成長因子によって刺激されると、分化および増殖して、新しい筋線維細胞を形成する。
【0099】
骨格筋の主な機能は、骨格筋の固有の興奮収縮連関プロセスを介して行われる。筋肉が骨腱に結合しているので、筋肉の収縮は、特定の運動の実行を可能にするその骨の動きにつながる。骨格筋はまた、構造的な支持を提供し、身体の姿勢を維持するのに役立つ。骨格筋はまた、器官特異的タンパク質を合成するために身体の異なる器官によって使用され得るアミノ酸の貯蔵源として作用する。骨格筋はまた、恒常性(thermostasis)を維持する上で中心的な役割を果たし、飢餓中のエネルギー源として作用する。CACNG1タンパク質は、骨格筋で特異的に発現することが見出された。
【0100】
一部の実施形態では、本明細書において、本明細書で提供する非ヒト動物細胞または非ヒト動物のゲノム中に異種Cacng1配列を有する非ヒト動物細胞および非ヒト動物が提供される。異種Cacng1配列は、内在性Cacng1遺伝子座に挿入することができ、したがって、遺伝子的に改変した内在性Cacng1遺伝子座を有する非ヒト動物細胞および非ヒト動物を提供する。
【0101】
一部の実施形態では、本明細書において、Cacng1配列の少なくとも一部をコードする異種配列をコードする核酸、およびかかる核酸を有する非ヒト動物細胞および非ヒト動物を作製する方法が提供される。一部の実施形態では、かかる核酸は、Cacng1遺伝子をコードする配列に隣接する非ヒト動物(例えば、loxP部位)の編集を促進する配列を有する。
【0102】
一部の実施形態では、本明細書において、本開示の非ヒト動物細胞および/または非ヒト動物によって産生されるキメラCACNG1タンパク質に対する抗体が提供される。
【0103】
一部の実施形態では、本開示は、かかる非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウスなどである齧歯類)、かかる非ヒト動物に由来する細胞および/組織、ならびにヌクレオチド(例えば、標的化ベクター、ゲノムなど)を作製するために使用され得る方法を提供する。
【0104】
一部の実施形態では、本開示はまた、異種Cacng1配列を有する遺伝子的に改変した内在性CACNG1遺伝子座を含む非ヒト動物ゲノムを提供する。一部の実施形態では、異種Cacng1配列は、ヒトCACNG1タンパク質配列をコードする。一部の例では、CACNG1ドメインの全てまたは一部は、欠失して異種Cacng1配列で置換された内在性Cacng1遺伝子座のセグメントによってコードされる。
【0105】
一部の実施形態では、ヒト化Cacng1遺伝子座を含み、当該ヒト化Cacng1遺伝子座からヒト化またはキメラCACNG1タンパク質を発現する非ヒト動物が提供されるのみならず、当該非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウスなどの齧歯類)、当該非ヒト動物から誘導された細胞および組織、ならびに当該動物の作製に有用なヌクレオチド(例えば標的化ベクター、ゲノムなど)の使用方法が提供される。
【0106】
一部の実施形態では、本明細書において、改変されたCACNG1タンパク質をコードする遺伝子的に改変されたCacng1遺伝子座を含む非ヒト動物が記載されるものであり、該改変されたCACNG1タンパク質は、ヒトCACNG1配列のドメインを含み、またドメインの全てまたは一部は、欠失してオルソロガスなヒトCACNG1配列で置換された内在性Cacng1遺伝子座のセグメントによってコードされ、また非ヒト動物は、改変されたCacng1タンパク質を発現する。
【0107】
一部の実施形態では、ヒトCACNG1配列のドメインは、欠失して異種配列で置換された内在性Cacng1遺伝子座のセグメントによってコードされる。かかるドメインは、ヒトCacng1細胞外ドメインであり得る。本開示によって企図される細胞外ドメインをコードする適切な配列としては、ある細胞内での翻訳の上でのCACNG1タンパク質のアミノ酸30~108(配列番号12)、アミノ酸156~179(配列番号20)、またはその両方に対応するヒト細胞外ドメインが挙げられる。
【0108】
一部の実施形態では、ヒトCACNG1配列の少なくとも二つのドメインは、ヒト化マウスモデルにおいて内在性Cacng1遺伝子座のセグメントによってコードされる。ヒトCACNG1配列の非限定的なドメインの例示的な実施例としては、細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞外ドメインを含有する。一部の例では、各ドメインの全てまたは一部は、欠失してオルソロガスなヒトCACNG1配列で置換された内在性Cacng1遺伝子座のセグメントによってコードされ得る。他の例では、細胞質ドメインおよび細胞外ドメインは、任意に内在性ゲノムによってコードされ得る。一部の実施形態では、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインの両方の全てまたは一部は、欠失してオルソロガスなヒトCACNG1配列で置換された内在性Cacng1遺伝子座のセグメントによってコードされる。一部の実施形態では、細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞外ドメインの全ては、欠失してオルソロガスなヒトCACNG1配列で置換された内在性Cacng1遺伝子座のセグメントによってコードされる。後者は、ヒトCACNG1遺伝子の複数のヒト化ドメインを非ヒトゲノムに組み込み、前者は、膜内および細胞内に位置すると理解されるドメインの内在性ドメインを保存しながら、細胞外膜のヒト化を可能にする。本開示の細胞質ドメインをコードする適切な配列は、ある細胞内での翻訳時の上で、CACNG1タンパク質のアミノ酸1~10(配列番号8)、アミノ酸130~134(配列番号16)、アミノ酸205~222(配列番号24)、またはそれらの任意の組み合わせに対応するヒト細胞質ドメインを産生する。本開示の膜貫通ドメインをコードする適切な配列は、ある細胞内での翻訳の上で、CACNG1タンパク質のアミノ酸11~29(配列番号10)、アミノ酸109~129(配列番号14)、アミノ酸135~155(配列番号18)、アミノ酸180~204(配列番号22)、またはそれらの任意の組み合わせに対応するヒト膜貫通ドメインを産生する。結果として、一部の代替的な実施形態では、細胞質ドメインまたは膜貫通ドメインの全てまたは一部は、非ヒト動物の内在性Cacng1配列によってコードされる。
【0109】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物ゲノムは、マウスの内在性Cacng1配列の代わりにオルソロガスなヒトCACNG1配列をコードする。一部の実施形態では、非ヒト動物または非ヒト動物ゲノムは、配列番号5として記載される核酸配列、配列番号27として記載される核酸配列、および配列番号28として記載される核酸配列からなる群から選択される配列を含む。
【0110】
一部の実施形態では、ヒトCACNG1配列は、欠失して、電位依存性カルシウムチャネルのγ1ドメイン全長をコードするヒトCacng1配列で置換された内在性Cacng1遺伝子座のセグメントによってコードされるヒトCACNG1配列である。
【0111】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物ゲノムは、遺伝子的に改変された内在性Cacng1遺伝子座に対してヘテロ接合である。一部の実施形態では、非ヒト動物または非ヒト動物ゲノムは、遺伝子的に改変された内在性Cacng1遺伝子座に対してホモ接合である。
【0112】
一部の実施形態では、内在性Cacng1遺伝子座のセグメントは、欠失して外来性Cacng1配列で置換される。これら例の一部では、欠失した内在性Cacng1遺伝子座は、3’非翻訳領域のセグメント、コードエクソン1のセグメント、イントロン1のセグメント、コードエクソン2のセグメント、イントロン2のセグメント、コードエクソン3のセグメント、イントロン3のセグメント、コードエクソン4のセグメント、または内在性Cacng1遺伝子座の前述のセグメントの組み合わせを含み得る。
【0113】
一部の実施形態では、ヒトCACNG1配列を使用して、非ヒト動物または非ヒト細胞内の遺伝子座を置き換えてもよい。かかる実施形態では、内在性遺伝子座のセグメントに取って代わるオルソロガスなヒトCACNG1配列は、ヒトCACNG1配列の3’非翻訳領域、ヒトCACNG1配列のエクソン1、ヒトCACNG1配列のイントロン1、ヒトCACNG1配列のエクソン2、ヒトCACNG1配列のイントロン2、ヒトCACNG1配列のエクソン2、ヒトCACNG1配列のイントロン3、ヒトCACNG1配列のエクソン3、ヒトCACNG1配列のイントロン4、ヒトCACNG1配列のエクソン4、またはそれらの任意の組み合わせのいずれか一つのセグメントを含み得る。
【0114】
一部の実施形態では、非ヒト動物は哺乳動物であるか、または非ヒト動物ゲノムは哺乳動物ゲノムである。一部の実施形態では、非ヒト動物は齧歯類であり得るか、または非ヒト動物ゲノムは齧歯類ゲノムであり得る。一部の実施形態では、非ヒト動物はラットまたはマウスであり得るか、または非ヒト動物ゲノムはラットゲノムまたはマウスゲノムであり得る。
【0115】
一部の実施形態では、非ヒト動物または非ヒト動物ゲノムのゲノムに組み込まれる異種配列は、ヒトCacng1細胞外ドメイン、ヒトCacng1膜貫通ドメイン、およびヒトCacng1ドメインをコードする。
【0116】
一部の実施形態では、非ヒト動物または非ヒト動物ゲノムのゲノムに組み込まれる異種配列は、ヒトCACNG1配列の少なくとも二つのドメインをコードする。二つ以上のドメインの非限定的な例としては、第一の細胞質ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、第一の細胞外ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、第二の細胞質ドメイン、第三の膜貫通ドメイン、第二の細胞外ドメイン、第四の膜貫通ドメイン、第三の細胞質ドメインが挙げられる。
【0117】
一部の実施形態では、非ヒト動物または非ヒト動物ゲノムのゲノムに組み込まれる異種配列は、アミノ酸1~10(細胞質ドメイン)、アミノ酸11~29(膜貫通ドメイン)、アミノ酸30~108(細胞外ドメイン)、アミノ酸109~129(膜貫通ドメイン)、アミノ酸130~134(細胞質ドメイン)、アミノ酸135~155(膜貫通ドメイン)、アミノ酸156~179(細胞外ドメイン)、アミノ酸180~204(膜貫通ドメイン)、アミノ酸205~222細胞質ドメイン、またはそれらの任意の適切な組み合わせをコードするための適切な配列を含む。
【0118】
一部の実施形態では、本明細書において、改変されたCACNG1タンパク質をコードする遺伝子的に改変された内在性Cacng1遺伝子座を含む非ヒト動物細胞が提供されるものであり、該改変されたCacng1タンパク質は、ヒトCACNG1配列のドメインを含み、また該ドメインの全てまたは一部は、欠失してオルソロガスなヒトCACNG1配列で置換された内在性Cacng1遺伝子座のセグメントによってコードされる。非ヒト動物細胞は、骨格筋細胞、多能性細胞、ES細胞、または生殖細胞であり得る。
【0119】
一部の実施形態では、本開示はさらに、本明細書に記載される非ヒト動物を作製するために必要な任意の非ヒト動物または試薬を作製する方法を提供する。
【0120】
A.電位依存性カルシウムチャネル補助サブユニットガンマ1(CACNG1)
本明細書に記載される細胞および非ヒト動物は、概して、CACNG1タンパク質のセグメント(例えば、ヒトCACNG1タンパク質ドメイン)をコードする外来性配列を含有する。電位依存性カルシウムチャネルは、概して、五つのサブユニットから構成される。CACNG1遺伝子によってコードされるタンパク質は、これらサブユニットのうちの一つを表す。さらに、CACNG1遺伝子ガンマによってコードされるタンパク質は、二つの既知のガンマサブユニットタンパク質のうちの一つである。この特定のガンマサブユニットは、骨格筋1,4-ジヒドロピリジン感受性カルシウムチャネルの一部であり、興奮収縮連関において役割を果たす不可欠な膜タンパク質である。この遺伝子は、PMP-22/EMP/MP20ファミリーの機能的に多様な八つの構成員のタンパク質サブファミリーの一部であり、膜貫通AMPA受容体調節タンパク質(TARP)として機能する二つのファミリー構成員を有するクラスター内に位置する。
【0121】
ヒトCACNG1(CACNG1)をコードする遺伝子は、17番染色体の長腕上に位置する。CACNG1は、4つのエクソンを含み、約12,244塩基の長さである。
【0122】
ヒトCACNG1の例示的な配列は、NCBIアクセッション番号NM_0007582.2が割り当てられている(図4Aを参照)。マウスCacng1の例示的な配列は、NCBIアクセッション番号NM_000727.4が割り当てられている(図4Aを参照)。例示的なヒトCACNG1タンパク質は、UniProtアクセッション番号O70578が割り当てられている(図4Aおよび図5を参照)。例示的なマウスCACNG1タンパク質は、UniProtアクセッション番号Q06432が割り当てられている(図4Aおよび図5を参照)。改変された非ヒトCacng1遺伝子座(例えば、7451)によってコードされるヒトまたはヒト化CACNG1タンパク質の例を図5に記載する。例示的なラットCACNG1タンパク質は、NCBI参照配列:NP_062128.1が割り当てられている。例示的なオランウータンCacng1タンパク質は、NCBI参照配列:XP_002827789.2が割り当てられている。
【0123】
一部の実施形態では、本開示は、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を含む、非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムを提供する。異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードするかかる核酸配列は、(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、(ii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、(iv)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含み得る。
【0124】
さらに、本明細書に記載される非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムのゲノムに組み込まれた核酸配列は、イントロンを含み得る。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部の核酸配列、(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部の核酸配列、(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部の核酸配列、(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、(vii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)の核酸配列、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含む。
【0125】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムは、CACNG1タンパク質のヒト化コード領域(すなわち、一部のマウス調節領域および精選のヒト非コード/コード領域)をコードする。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、配列番号5として記載される核酸配列、配列番号27として記載される核酸配列、および配列番号28として記載される核酸配列からなる群から選択される核酸配列などである、ヒト化マウス/ヒトCACNG1タンパク質をコードする核酸配列を含み得る、本質的に該核酸配列からなり得る、または該核酸配列からなり得る。任意のかかる核酸は、内在性Cacng1遺伝子座において組み込まれ得る。一部の実施形態では、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列は、内在性CACNG1タンパク質またはその一部をコードするオルソロガスな内在性核酸配列に取って代わり得る。
【0126】
一部の実施形態では、本開示は、非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムであって、異種CACNG1タンパク質またはその一部が、(i)配列番号8として記載されるアミノ酸配列、(ii)配列番号10として記載されるアミノ酸配列、(iii)配列番号12として記載されるアミノ酸配列、(iv)配列番号14として記載されるアミノ酸配列、(v)配列番号16として記載されるアミノ酸配列、(vi)配列番号18として記載されるアミノ酸配列、(vii)配列番号20として記載されるアミノ酸配列、(viii)配列番号22として記載されるアミノ酸配列、(ix)配列番号24として記載されるアミノ酸配列、または(x)(i)~(ii)の任意の組み合わせを含むものである、非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムを提供する。
【0127】
B.改変Cacng1非ヒト動物
本開示は、CACNG1タンパク質が機能喪失した非ヒト動物、およびキメラ動物(例えば、ヒト化CACNG1タンパク質を発現する遺伝子導入齧歯類)を提供する。ヒト化Cacng1遺伝子座は、Cacng1遺伝子全体が、対応するオルソロガスなヒトCACNG1配列で置換されているCacng1遺伝子座であり得るか、またはCacng1遺伝子の一部のみが、対応するオルソロガスなヒトCACNG1配列で置換されているCacng1遺伝子座(すなわちヒト化されている)であり得る。任意で、対応するオルソロガスなヒトCACNG1配列は、非ヒト動物におけるコドン使用頻度に基づきコドン最適化されるように改変される。置換された(すなわち、ヒト化された)領域は、例えばエクソンなどのコード領域、例えばイントロンなどの非コード領域、非翻訳領域、または調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、または転写リプレッサー結合要素)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。一例としては、ヒトCACNG1遺伝子の1個、2個、3個、4個、または4個すべてのエクソンに対応するエクソンをヒト化することができる。例えば、ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1~4に対応するエクソンをヒト化することができる。あるいは、抗ヒトCACNG1抗原結合タンパク質に認識されるエピトープをコードするCacng1の領域を、ヒト化することができる。別の例としては、N末端細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、または細胞内ドメインのうちの一つまたは複数または全てをヒト化することができる。例えば、細胞外ドメインをコードするCacng1遺伝子座の領域の全てもしくは一部をヒト化することができ、細胞質ドメインをコードするCacng1遺伝子座の領域の全てもしくは一部をヒト化することができ、および/または膜貫通ドメインをコードするCacng1遺伝子座の領域の全てもしくは一部をヒト化することができる。一実施例では、膜貫通ドメインをコードするCacng1遺伝子座の領域の全てもしくは一部のみをヒト化、細胞質ドメインをコードするCacng1遺伝子座の領域の全てもしくは一部のみをヒト化、または細胞外領域(すなわち、エピトープとして利用可能な領域)をコードするCacng1遺伝子座の領域の全てもしくは一部のみをヒト化する。例えば、細胞外ドメインをコードするCacng1遺伝子座の領域は、キメラCacng1タンパク質が内在性N末端細胞質ドメイン、内在性膜貫通ドメイン、およびヒト化膜貫通ドメイン(エピトープ)を伴って産生されるようにヒト化され得る。同様にヒトCACNG1遺伝子の1個、2個、3個、または4個すべてのイントロンに対応するイントロンをヒト化することができる。調節配列を含めた隣接し合う非翻訳領域もヒト化することができる。例えば、5’非翻訳領域(UTR)、3’UTR、もしくは5’UTRと3’UTRの両方をヒト化することができ、または5’UTR、3’UTR、もしくは5’UTRと3’UTRの両方が内在性のままであり得る。一つの特定の例では、3’UTRをヒト化するが、5’UTRは内在性のままである。オルソロガス配列による置換の程度に応じて、例えばプロモーターなどである調節配列は、内在性であり得るか、または置き換わったヒトオルソロガス配列が供給され得る。例えばヒト化Cacng1遺伝子座は、内在性の非ヒト動物Cacng1プロモーターを含み得る。
【0128】
ヒト化Cacng1遺伝子座によりコードされるCacng1タンパク質は、哺乳動物CACNG1タンパク質(例えば、ヒト)由来の一以上のドメインを含み得る。例えば、Cacng1タンパク質は、ヒト細胞外ドメイン、ヒトCACNG1膜貫通ドメイン、およびヒトCACNG1細胞質ドメインのうちの一以上または全てを含み得る。一例として、Cacng1タンパク質は、ヒトCACNG1細胞外ドメインのみを含み得る。任意で、ヒト化Cacng1遺伝子座によりコードされるCacng1タンパク質はまた、内在性(すなわち天然)の非ヒト動物Cacng1タンパク質由来の一以上のドメインをさらに含み得る。
【0129】
ヒトCACNG1タンパク質由来のドメインは、完全ヒト化配列(すなわち、当該ドメインをコードする配列全体が、オルソロガスなヒトCACNG1配列で置換されている)によりコードされ得るか、または部分的にヒト化された配列によりコードされ得る(すなわち、当該ドメインをコードする配列の一部が、オルソロガスなヒトCACNG1配列で置換され、そして当該ドメインをコードする残りの内在性(すなわち天然)配列が、オルソロガスなヒトCACNG1配列と同じアミノ酸をコードし、それにより当該コードドメインが、ヒトCACNG1タンパク質中の当該ドメインと同一となる)。
【0130】
一例として、ヒト化Cacng1遺伝子座によってコードされるCacng1タンパク質は、ヒトCACNG1細胞外ドメイン(例えば、ヒトエピトープ)を含み得る。任意で、ヒトCACNG1膜貫通ドメインは、図9Aに示される配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を含むか、本質的に該配列からなるか、または該配列からなり、そしてCACNG1タンパク質が、天然CACNG1の活性を保持する(すなわち、骨格筋においてその機能を保持する)。
【0131】
別の例としては、ヒト化Cacng1遺伝子座によってコードされるCACNG1タンパク質は、ヒト膜貫通または細胞質CACNG1ドメインを含み得る。任意で、ヒトCACNG1細胞外ドメインは、図9Aに対し、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である配列を含む、本質的に当該配列からなる、または当該配列からなり、そしてCacng1タンパク質は、天然CACNG1の活性を保持する。
【0132】
任意で、ヒト化Cacng1遺伝子座は、他の要素を含み得る。そのような要素の例としては、選択カセット、レポーター遺伝子、リコンビナーゼ認識部位、または他の要素が挙げられ得る。あるいは、ヒト化Cacng1遺伝子座は、他の要素を欠いてもよい(例えば選択マーカーまたは選択カセットを欠いてもよい)。適切なレポーター遺伝子およびレポータータンパク質の例は、本明細書において別に開示されている。適切な選択マーカーの例としては、ネオマイシンホスフォトランスフェラーゼ(neo)、ハイグロマイシンBホスフォトランスフェラーゼ(hyg)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(puro)、ブラストサイジンSデアミナーゼ(bsr)、キサンチン/グアニンホスフォリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、または単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-k)が挙げられる。リコンビナーゼの例としては、Cre、Flp、およびDreリコンビナーゼが挙げられる。Creリコンビナーゼ遺伝子の一例は、Creiであり、該Creリコンビナーゼをコードする二つのエクソンはイントロンによって分離され、原核細胞中でのその発現が妨げられている。こうしたリコンビナーゼは、核への局在化を促進するための核内移行シグナルをさらに含み得る(例えばNLS-Crei)。リコンビナーゼ認識部位は、部位特異的リコンビナーゼにより認識されるヌクレオチド配列を含み、また組み換え事象の基質として機能することができる。リコンビナーゼ認識部位の例としては、FRT、FRT11、FRT71、attp、att、rox、ならびにlox部位、例えばloXp、lox511、lox2272、lox66、lox71、loxM2、およびlox5171が挙げられる。
【0133】
例えばレポーター遺伝子または選択カセットなどの他の要素は、リコンビナーゼ認識部位に隣接した自己欠失カセットであり得る。例えば、米国特許第8,697,851号および米国特許出願公開第2013/0312129号を参照されたく、それら各々が参照によりその全体で全ての目的に対し本明細書に組み込まれる。一実施例として、自己欠失カセットは、マウスPrm1プロモーターに操作可能に連結されたCrei遺伝子(Creリコンビナーゼをコードする二つのエクソンを含み、それらはイントロンにより分離されている)、およびヒトユビキチンプロモーターに操作可能に連結されたネオマイシン耐性遺伝子を含み得る。Prm1プロモーターを採用することで、自己欠失カセットは、F0動物のオスの生殖細胞において特異的に欠失され得る。選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、標的となっている細胞において活性なプロモーターに操作可能に連結され得る。プロモーターの例は、本明細書において別に記載されている。別の特定の例としては、自己欠失選択カセットは、一つまたは複数のプロモーター(例えばヒトユビキチンプロモーターとEM7プロモーターの両方)に操作可能に連結されたハイグロマイシン耐性遺伝子コード配列、それに次ぐポリアデニル化シグナル、それに次ぐ一つまたは複数のプロモーター(例えばmPrm1プロモーター)に操作可能に連結されたCreiコード配列、それに次ぐ別のポリアデニル化シグナルを含有し得、この場合においてカセット全体がloxP部位に隣接している。
【0134】
ヒト化Cacng1遺伝子座の一例(例えば、ヒト化マウスCacng1遺伝子座)は、コードエクソン1~4がNeo自己欠失カセットが隣接した対応するヒト配列で置換されている遺伝子座である。これらエクソンは、Cacng1のコードドメインをコードする。コードエクソン1、イントロン1、コードエクソン2~4(および介在するイントロン)、および82bpの3’非翻訳領域(UTR)のマウスCacng1の一部が、ヒトCACNG1の対応する部分であるコードエクソン1配列、イントロン1、コードエクソン2~4(および介在するイントロン)、完全3’UTR、および3’UTRの後の追加の158bpで置換され、コード配列の開始部分の15bpはマウス配列のままであり、当該置換によりかかる非ヒト動物が提供される。図4Bおよび図4Cを参照されたい。
【0135】
Cacng1hu/huマウス
【0136】
本開示は、外来性Cacng1遺伝子座を含む細胞および非ヒト動物を企図する。一部の実施形態では、異種Cacng1遺伝子座を含む細胞または非ヒト動物は、異種CACNG1タンパク質、または天然Cacng1タンパク質の一以上の断片が、異種CACNG1配列(例えば、細胞外ドメインの全てまたは一部、CACNG1コード領域の全て)からの対応する断片で置換されたキメラCACNG1タンパク質を発現することができる。
【0137】
一部の実施形態では、本明細書に開示される細胞および非ヒト動物は、ヒトCACNG1タンパク質の、アミノ酸1~10、アミノ酸11~29、アミノ酸30~108、アミノ酸109~129、アミノ酸130~134、アミノ酸135~155、アミノ酸156~179、アミノ酸180~204、アミノ酸205~222、および/またはそれらの組み合わせをコードする外来性核酸配列を含む。
【0138】
機能喪失Cacng1-/-マウス
【0139】
遺伝子編集技術を用いてCACNG1-/-マウスを生成し、CACNG1の欠失が骨格筋の質量または機能に影響を及ぼすか否かを決定した。本明細書に記載される非ヒト動物の一部はCacng1遺伝子座を欠くため、かかる非ヒト動物は、全体論的な様式でのCacng1タンパク質に対する機能喪失の影響の理解を提供することができる。
【0140】
一部の実施形態では、内在性Cacng1遺伝子のノックアウト変異を含む非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムを提供する。一部の実施形態では、こうしたノックアウト変異は、Cacng1遺伝子またはその一部の欠失を含み得る。一部の例では、ノックアウト変異は、Cacng1遺伝子のコード配列全体の欠失を含み得る。一部の実施形態では、Cacng1-/-ヒト動物ゲノムは、いかなるCACNG1タンパク質も発現しない。
【0141】
一部の実施形態では、非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムは、いかなる肉眼的な変異表現型も呈さない(すなわち、野生型の対応物から統計的に有意であるような、いかなる測定可能な特性、特に筋肉の強度、構造、または機能的形質も示さない)。
【0142】
C.異種Cacng1遺伝子座を含む非ヒト細胞および非ヒト動物
本明細書において記載されるヒト化Cacng1遺伝子座を含む非ヒト動物細胞および非ヒト動物を提供する。当該細胞または非ヒト動物は、ヒト化Cacng1遺伝子座に対してヘテロ接合性またはホモ接合性であり得る。二倍体生物体は、各遺伝子座に二つのアレルを有する。アレルの各ペアは、特定の遺伝子座の遺伝子型を表す。遺伝子型は、ある特定の遺伝子座に二つの同一アレルがある場合にはホモ接合性として、また二つのアレルが異なる場合にはヘテロ接合性として記載される。
【0143】
本明細書に提供される非ヒト動物細胞は、例えば、ヒトCACNG1遺伝子座に対して相同もしくはオルソロガスなCacng1遺伝子座またはゲノム遺伝子座を含む任意の非ヒト細胞であり得る。細胞は真核細胞であり得、これには例えば、真菌細胞(例えば酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞およびヒト細胞などが含まれる。動物は、例えば、哺乳動物、魚類、または鳥類とすることができる。哺乳動物細胞は、例えば、非ヒト哺乳動物細胞、齧歯類細胞、ラット細胞、マウス細胞、またはハムスター細胞であり得る。他の非ヒト哺乳動物としては、例えば、非ヒト霊長類のサル、類人猿、オランウータン、ネコ、イヌ、ウサギ、ウマ、雄ウシ、シカ、バイソン、家畜類(例えば、ウシ、去勢ウシなどのウシ種;例えばヒツジ、ヤギなどのヒツジ種;ならびに例えばブタおよび雄ブタなどのブタ種)が挙げられる。鳥類としては、例えば、ニワトリ、七面鳥、ダチョウ、ガチョウ、アヒルなどが挙げられる。家畜化動物および農業用動物も含まれる。「非ヒト」という用語は、ヒトを除外する。
【0144】
細胞はまた、任意の種類の未分化状態または分化状態であり得る。例えば、細胞は、全能細胞、多能性細胞(例えば、ヒト多能性細胞、またはマウス胚性幹(ES)細胞もしくはラットES細胞などの非ヒト多能性細胞)、または非多能性細胞であり得る。全能細胞には、あらゆる細胞型を生じさせ得る未分化細胞が含まれ、また多能性細胞には、複数の分化細胞型へと発達する能力を保有する未分化細胞が含まれる。こうした多能性細胞および/または全能細胞は、例えば、人工多能性幹(iPS)細胞などのES細胞またはES様細胞であり得る。ES細胞には、胚へ導入することで、発達段階の胚の任意の組織の一因となることができる、胚誘導性の全能細胞または多能性細胞が含まれる。ES細胞は、胚盤胞の内部細胞塊から誘導することができ、そして三種の脊椎動物胚葉(内胚葉、外胚葉、および中胚葉)のいずれかの細胞に分化することができる。
【0145】
本明細書に提供される細胞は、生殖細胞(例えば精子または卵母細胞)であり得る。細胞は、有糸分裂能力のある細胞または有糸分裂的に不活性状態の細胞、減数分裂能力のある細胞または減数分裂的に不活性状態の細胞であり得る。同様に、本明細書に開示される細胞はまた、初代体細胞であり、または初代体細胞ではない細胞であり得る。体細胞には、配偶子、生殖細胞、生殖母細胞、または未分化幹細胞ではない任意の細胞が含まれる。例えば、本明細書に開示される細胞は、骨格筋細胞などの筋細胞であり得る。
【0146】
本明細書に提供される適切な細胞には、初代細胞も含まれる。初代細胞には、生物体、器官または組織から直接単離された細胞または細胞培養物が含まれる。初代細胞には、形質転換も不死化もされていない細胞が含まれる。初代細胞には、過去に組織培養で継代されなかった、または過去に組織培養で継代されたが組織培養で無制限に継代されることはできない、生物体、器官または組織から取得された任意の細胞が含まれる。当該細胞は、従来の技術によって単離することができ、例えば、筋細胞(例えば、骨格筋(skeletal mucle)細胞)を含む。
【0147】
本明細書に提供される他の適切な細胞としては、不死化細胞が挙げられる。不死化細胞には、通常は無制限に増殖しないが、変異または改変によって通常の細胞老化を回避し、その代わりに分裂し続けることができる多細胞生物体由来の細胞が含まれる。かかる変異または改変は、自然に発生、または意図的に誘導され得る。不死化細胞株の例には、筋線維細胞株がある。不死化細胞または初代細胞には、細胞培養に使用できる細胞、または組み換え遺伝子もしくは組み換えタンパク質の発現に使用できる細胞が含まれる。
【0148】
本明細書に提供される細胞には、一細胞期の胚(すなわち受精卵母細胞または受精卵)も含まれる。かかる一細胞期の胚は、任意の遺伝的背景(例えばマウスに関してはBALB/c、C57BL/6、129、またはそれらの組み合わせ)由来であってもよく、新鮮または凍結状態であってもよく、そして自然交配またはin vitroでの受精から誘導されてもよい。
【0149】
本明細書に提供される細胞は、正常で健康な細胞であり得るか、または疾患性細胞もしくは変異を有する細胞であってもよい。
【0150】
本明細書に記載されるヒト化Cacng1遺伝子座を含む非ヒト動物は、本明細書において別に記載される方法により作製することができる。動物は、例えば、哺乳動物、魚類、または鳥類とすることができる。非ヒト哺乳動物としては例えば、非ヒト霊長類のサル、類人猿、オランウータン、ネコ、イヌ、ウマ、雄ウシ、シカ、バイソン、ヒツジ、ウサギ、齧歯類(例えばマウス、ラット、ハムスターおよびモルモット)および家畜類(例えば、ウシおよび去勢ウシなどのウシ種;例えばヒツジおよびヤギなどのヒツジ種;ならびに例えばブタおよび雄ブタなどのブタ種)が挙げられる。鳥類としては、例えば、ニワトリ、七面鳥、ダチョウ、ガチョウおよびアヒルが挙げられる。家畜化動物および農業用動物も含まれる。「非ヒト動物」という用語は、ヒトを除外する。好ましい非ヒト動物としては、例えばマウスおよびラットなどの齧歯類が挙げられる。
【0151】
非ヒト動物は、任意の遺伝的背景由来であり得る。例えば、適切なマウスは、129系、C57BL/6系、129系とC57BL/6系の雑種、BALB/c系、またはSwiss Webster系由来であり得る。129系の例としては、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1 (例えば129S1/SV、129S1/Svlm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6 (129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1および129T2が挙げられる。例えば、Festing et al. (1999) Mammalian Genome 10:836を参照されたく、当該文献は参照によりその全体で全ての目的に対して本明細書に組み込まれる。C57BL系の例としては、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/Kal_wN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10CrおよびC57BL/Olaが挙げられる。適切なマウスは、前述の129系と前述のC57BL/6系の雑種由来であってもよい(例えば50%が129系で50%がC57BL/6系)。同様に、適切なマウスは、前述の129系と前述のBL/6系の雑種由来であり得る(例えば129S6 (129/SvEvTac)系)。
【0152】
同様に、ラットは、例えばACIラット系、Dark Agouti(DA)ラット系、Wistarラット系、LEAラット系、Sprague Dawley(SD)ラット系、または例えばFisher F344もしくはFisher F6などのFischerラット系をはじめとする任意のラット系統由来であり得る。ラットは、上記の二種以上の系統の雑種に由来する系から取得することができる。例えば、適切なラットは、DA系またはACI系由来であり得る。ACIラット系は、ダークアグーチ色であり、腹部と足は白色で、RT1av1ハプロタイプであることが特徴である。当該系統は、Harlan Laboratories社をはじめとする様々な供給元から入手可能である。Dark Agouti(DA)ラット系は、アグーチ色の毛を有し、RT1av1ハプロタイプであることが特徴である。当該ラットは、Charles River社およびHarlan Laboratories社をはじめとする様々な供給元から入手可能である。一部の適切なラットは、同系交配のラット系統由来であり得る。例えば、米国特許出願公開第2014/0235933号を参照されたく、当該文献は参照によりその全体で全ての目的に対して本明細書に組み込まれる。
【0153】
III.異種Cacng1遺伝子座を含む非ヒト動物を作製する方法
本明細書において別に開示されるように、異種Cacng1遺伝子座を含む非ヒト動物を作製するための様々な方法が提供される。遺伝子的に改変した生物体を産生するための任意の簡便な方法またはプロトコルが、かかる遺伝子的に改変された非ヒト動物の産生に適している。例えば、Cho et al.(2009)Current Protocols in Cell Biology 42:19.11:19.11.1-19.11.22およびGama Sosa et al.(2010)Brain Struct.Funct.214(2-3):91-109を参照されたく、それら各々が参照によりその全体で全ての目的に対して本明細書に組み込まれる。かかる遺伝子的に改変された非ヒト動物は、例えば狙ったCacng1遺伝子座における遺伝子ノックインを介して生成され得る。
【0154】
例えば、ヒト化Cacng1遺伝子座を含む非ヒト動物の産生方法は、(1)ヒト化Cacng1遺伝子座を含むように多能性細胞のゲノムを改変すること、(2)ヒト化Cacng1遺伝子座を含む遺伝子的に改変された多能性細胞を特定または選択すること、(3)遺伝子的に改変された多能性細胞を、非ヒト動物宿主の胚細胞へとin vitroで導入すること、および(4)宿主胚細胞を代理母に移植し懐胎させること、を含み得る。任意で、改変された多能性細胞を含む宿主胚(例えば非ヒトES細胞)を胚盤胞期までインキュベートし、その後に代理母に移植し懐胎させ、F0の非ヒト動物を産生してもよい。その後、代理母はヒト化Cacng1遺伝子座を含むF0世代の非ヒト動物を産生し得る。
【0155】
当該方法は、改変された標的ゲノム遺伝子座を有する細胞または動物を特定することをさらに含み得る。様々な方法を使用して、狙った遺伝子改変を有する細胞および動物を特定してもよい。
【0156】
スクリーニング工程には、例えば、親染色体のアレル改変(MOA)を評価するための定量的アッセイが含まれ得る。例えば、定量的アッセイは、例えばリアルタイムPCR(qPCR)などの定量的PCRを介して実施されてもよい。リアルタイムPCRは、標的遺伝子座を認識する第一のプライマーセットと、非標的参照遺伝子座を認識する第二のプライマーセットとを利用することができる。プライマーセットは、増幅された配列を認識する蛍光プローブを含み得る。
【0157】
適切な定量的アッセイの他の例としては、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション、等温DNA増幅、固定化プローブに対する定量的ハイブリダイゼーション、INVADER(登録商標)プローブ、TAQMAN(登録商標)分子ビーコンプローブ、またはECLIPSE(商標)プローブ法(例えば、米国特許出願公開第2005/0144655号を参照されたく、当該文献は参照によりその全体で全ての目的に対して本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0158】
適切な多能性細胞の例は、胚性幹(ES)細胞である(例えばマウスES細胞またはラットES細胞)。改変された多能性細胞は、例えば、(a)5’および3’の標的部位に対応する5’および3’相同性アームに隣接した挿入核酸を含む一以上の標的化ベクターを、細胞内に導入することであって、該挿入核酸は、異種Cacng1遺伝子座を含むものである、導入することと、(b)そのゲノム中に標的ゲノム遺伝子座において統合された挿入核酸を含む少なくとも一つの細胞を特定することとによる、組み換えを介して生成され得る。あるいは、改変された多能性細胞は、(a)細胞内に、(i)ヌクレアーゼ剤であって、該ヌクレアーゼ剤が標的のゲノム遺伝子座内の認識部位においてニックまたは二本鎖切断を誘導するものである、ヌクレアーゼ剤と、(ii)認識部位に充分に近接して配置された5’および3’の標的部位に対応する5’および3’相同アームに隣接した挿入核酸を含む一以上の標的化ベクターであって、該挿入核酸は、異種Cacng1遺伝子座を含むものである、該標的化ベクターとを導入すること、ならびに(c)標的ゲノム遺伝子座において改変(例えば挿入核酸の統合)を含む少なくとも一つの細胞を特定することによって、生成され得る。所望の認識部位内にニックまたは二本鎖切断を誘導する任意のヌクレアーゼ剤を使用することができる。適切なヌクレアーゼの例としては、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、およびCRISPR(Clustered Regularly Interspersed Short Palindromic Repeats)/CRISPR-関連(Cas)システム、またはかかるシステムの構成要素(例えばCRISPR/Cas9)が挙げられる。例えば、米国特許出願公開第2013/0309670号および米国特許出願公開第2015/0159175号を参照されたく、それら各々が参照によりその全体で全ての目的に対し本明細書に組み込まれる。
【0159】
ドナー細胞は、任意の細胞期で、例えば胚盤胞期または桑実胚期前(すなわち4細胞期または8細胞期)などで、宿主胚に導入され得る。生殖細胞系列を介して遺伝子改変を伝達することができる子孫が生成される。例えば、米国特許第7,294,754号を参照されたく、当該文献は、参照によりその全体で全ての目的に対して本明細書に組み込まれる。
【0160】
あるいは、本明細書において別に記載される非ヒト動物を産生する方法は、(1)多能性細胞の改変に関する上述の方法を使用して、異種Cacng1遺伝子座を含むように一細胞期の胚のゲノムを改変すること、(2)遺伝子的に改変された胚を選択すること、および(3)遺伝子改変された胚を代理母に移植して懐胎させること、を含み得る。生殖細胞系列を介して遺伝子改変を伝達することができる子孫が生成される。
【0161】
核移植技術を使用して、非ヒト哺乳動物を生成することもできる。簡潔に述べると、核移植のための方法は、(1)卵母細胞を除核する工程、または除核された卵母細胞を提供する工程、(2)除核された卵母細胞と組み合わされるドナー細胞またはドナー核を単離または提供する工程、(3)当該細胞または核を、除核された卵母細胞に注入し、再構成細胞を形成する工程、(4)再構成細胞を動物の子宮に移植して胚を形成する工程、および(5)胚を発生させる工程、を含み得る。当該方法において、卵母細胞は、概して、死亡した動物から採取されるが、生きた動物の卵管および/または卵巣のいずれかから単離することもできる。除核卵母細胞にドナー細胞またはドナー核を注入して再構成細胞を形成することは、融合前に透明帯の下でのドナー細胞のマイクロインジェクションによってなされ得る。融合は、接触/融合面の全体にわたりDC電気パルスを印加すること(電気融合)によるか、例えばポリエチレングリコールなどの融合促進化学物質に細胞を暴露することによるか、または例えばセンダイウイルスなどの不活化ウイルスを用いることにより、誘導され得る。再構成細胞は、核ドナーとレシピエントである卵母細胞との融合の前、融合の間、および/または融合の後に、電気的および/または非電気的な手段により活性化され得る。活性化の方法としては、電気パルス、化学的に誘発される衝撃、精子による侵入、卵母細胞中の二価カチオン値の増加、および卵母細胞中の細胞タンパク質のリン酸化の低減(キナーゼ阻害物質によるものとして)が挙げられる。活性化された再構成細胞または胚は、培地中で培養され、その後、動物の子宮に移植され得る。例えば、米国特許出願公開第2008/0092249号、国際公開第1999/005266号、米国特許出願公開第2004/0177390号、国際公開第2008/017234号、および米国特許第7,612,250号を参照されたく、当該文献の各々が参照によりその全体で全ての目的に対し本明細書に組み込まれる。
【0162】
本明細書に提示される様々な方法により、遺伝子改変された非ヒトF0動物の生成が可能となり、この場合において当該遺伝子改変されたF0動物の細胞は、ヒト化Cacng1遺伝子座を含む。F0動物を生成するために使用された方法に応じて、異種Cacng1遺伝子座を有するF0動物内の細胞数が異なることとなると認識される。対応する生物体(例えば8細胞期のマウス胚)から、例えばVELOCIMOUSE(登録商標)法を介して、桑実胚期前の胚内にドナーES細胞を導入することにより、狙った遺伝子改変を含む関心のヌクレオチド配列を有する細胞を含むF0動物の細胞群の割合が増大することとなる。例えば、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、85%、86%、87%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の細胞寄与の非ヒトF0動物が、狙った改変を有する細胞群を含み得る。
【0163】
遺伝子改変されたF0動物の細胞は、異種Cacng1遺伝子座に対してヘテロ接合性であり得、または異種Cacng1遺伝子座に対してホモ接合性であり得る。
【0164】
上記または下記に引用される全ての特許出願、ウェブサイト、他の公開公報、アクセッション番号などは、それぞれの個々の項目が具体的に、および個々に参照により組み込まれると示されるのと同程度にまで、全ての目的に対しその全体で参照により組み込まれる。ある配列の様々な型が、異なる時点でのアクセッション番号と関連付けられている場合、本願の有効な出願日の時点でのアクセッション番号と関連付けられた型を意図する。有効な出願日は、必要に応じて、実際の出願日、またはアクセッション番号を参照する優先権出願の出願日の早い方が意図される。同様に、公開公報、ウェブサイトなどの異なる版が別時点で公開された場合、別段の示唆が無い限り、本願の有効な出願日の時点で最も直近に公開された版が意図される。本発明のあらゆる特徴、工程、要素、実施形態または態様は、別段の具体的な示唆が無い限り、任意の他のものと組み合わせて使用され得る。本発明は、明確性および理解を目的として、説示および例示により幾分詳細に記載しているが、特定の変更および変形が、添付の請求の範囲の範囲内で実施してよいことが明白であろう。
【0165】
一部の実施形態では、本開示により、本明細書に記載される非ヒト動物、非ヒト動物細胞、または非ヒト動物ゲノムを作製する方法であって、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする核酸配列を、非ヒト動物のゲノム、非ヒト動物細胞のゲノム、または非ヒト動物ゲノムに挿入することを含む、方法が提供される。
【0166】
様々なキメラ核酸を、かかる目的のために特異的に使用することができる。一部の実施形態では、改変非ヒト動物Cacng1遺伝子の核酸配列を含む機能性CACNG1タンパク質をコードするキメラ核酸分子であって、改変非ヒト動物Cacng1遺伝子は、非ヒト動物CACNG1タンパク質の一部をコードする核酸配列の、異種CACNG1タンパク質またはその一部をコードする相同核酸配列との置換を含むものである、キメラ核酸分子を、本明細書に記載の細胞またはゲノムの遺伝子編集で使用することができる。一部の例では、当該キメラ核酸分子は、(i)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン1もしくはその一部を含む核酸配列、(ii)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン1もしくはその一部の核酸配列、(iii)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン2もしくはその一部を含む核酸配列、(iv)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン2もしくはその一部の核酸配列、(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン3もしくはその一部を含む核酸配列、(vi)ヒトCACNG1遺伝子のイントロン3もしくはその一部の核酸配列、(v)ヒトCACNG1遺伝子のエクソン4もしくはその一部を含む核酸配列、(vii)ヒトCACNG1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)の核酸配列、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含む。一部の例では、キメラ分子は薬剤選択カセットを提供する。
【0167】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるキメラ核酸分子は、(i)改変非ヒト動物Cacng1遺伝子の上流の5’相同アーム、および(ii)改変非ヒト動物Cacng1遺伝子の下流の3’相同アームを含む。一部の実施形態では、5’相同アームおよび3’相同アームは、関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座との相同組換えを受けるように構成され、該関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座との相同組換え後、改変Cacng1遺伝子が、関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座において非ヒト動物Cacng1遺伝子に取って代わり、そして関心の非ヒト動物Cacng1遺伝子座において非ヒト動物Cacng1遺伝子の発現を駆動する内在性プロモーターに動作可能に連結される。一部の実施形態では、キメラ核酸分子は、(i)配列番号25として記載される核酸配列を含む5’相同アーム、および/または(ii)配列番号26として記載される核酸配列を含む3’相同アームを有する。一部の実施形態では、キメラ核酸分子は、核酸配列であって配列番号6として記載される核酸配列を含む。
【0168】
配列の簡単な説明
添付の配列表に列挙されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基に関しては標準的な文字の略語を使用して示し、アミノ酸に関しては3文字コードを使用して示している。ヌクレオチド配列は、配列の5’末端で始まり、3’末端へと進む(すなわち各行で左から右へ)、標準的な慣例に従っている。各ヌクレオチド配列の一つの鎖のみが示されているが、提示された鎖に対する任意の参照によって相補鎖も含まれると理解される。アミノ酸配列は、配列のアミノ末端で始まり、カルボキシ末端へと進む(すなわち各行で左から右へ)、標準的な慣例に従っている。
【0169】
【表1】
【実施例
【0170】
実施例1.CACNG1は骨格筋で特異的に発現する
骨格筋ジヒドロピリジン受容体(DHPR)は、興奮収縮連関に関与するL型カルシウムチャネルである。骨格筋DHPRは、5つのサブユニットからなり、α1sサブユニットは、筋小胞体からのカルシウム放出を調節するリアノジン受容体との物理的相互作用を介して筋収縮において重要な役割を果たしている。γ1サブユニット(CACNG1)は、骨格筋において高度かつ特異的に発現することが見出された(図1A)。ゆえに、多くの様々な方法を利用して、様々な治療剤の肝臓特異的送達の検証での使用のためのヒト化Cacng1のマウスを生成した。
【0171】
実施例2.CACNG1ノックアウトマウス(CACNG1-/-)の生成および分析
発明者らでCACNG1-/-マウスを生成および繁殖し、CACNG1の欠失が骨格筋の質量または機能に影響を及ぼすか否かを決定した。Cacng1アブレーション構築物を、以下のように設計した。Cacng1ゲノム配列を含有する細菌人工染色体が、ヒトUBC(ユビキチン)プロモーターの制御下でネオマイシン耐性遺伝子を含有するloxP導入lacZレポーターカセットが、開始ATGの直後で始まるCacng1コードエクソン1の224bpに置き換わるように改変された。lacZコード配列が開始ATGとインフレームであり、当該カセットに続いて3’の5bpのCacng1コードエクソン1が残ったままとなるように、カセットをクローニングした。(図2を参照されたい)この構築物を、100%C57Bl/6NTac胚性幹細胞にエレクトロポレーションした。首尾よく目指したクローンが、TaqMan解析によって同定された。Cacng1-/+マウスを、VelociGene(コピーライト)法(Valenzuela 2003 Nat Biotech PMID:12730667、Poueymirou 2007 Nat Biotech PMID:17187059)を使用して生成し、必要に応じてホモ接合(CACNG1-/-)へと交配させた。F0生殖細胞系列においては、自己欠失技術を使用して耐性カセットは除去された。
【0172】
成体(5~7カ月齢)のオスの野生型(WT)マウスおよびCACNG1-/-マウスの筋組織を慎重に解剖し、重量を測定して筋肉量を評価し、また単離した長指伸筋(EDL)の筋肉をex vivoで収縮性を測定して筋肉機能を評価した。筋収縮性測定は、Aurora Scientific社の装置1300Aを使用して実施した。EDL筋を慎重に切除し、縫合糸を介してこの筋肉の生理機能装置に取り付けた。次いで、95%O/5%COで酸化したKrebs-Henseleit緩衝液中で、筋肉を最適な長さで平衡化し、その後、超最大二相電流で刺激して、単収縮応答を惹起させた。単収縮刺激後、刺激間に2分間の休止を入れながら40Hz、60Hz、80Hz、100Hzおよび125Hzでの刺激を介して、力-収縮頻度の強縮曲線を生成した。最大力の生成を100Hzで記録した。CACNG1は、野生型(WT)マウスとCACNG-/-マウスとの間で単収縮力と強縮力(tetanus force)は類似していたため、筋機能の調節に主要な役割を果たすとは思われない。図3Aおよび3Bを参照されたい。
【0173】
実施例3.CACNG1ヒト化マウス(CACNG1hu/hu)の生成および分析
Cacng1標的化構築物を、以下のように設計した。完全マウスCacng1ゲノム配列を含有する細菌人工染色体を、Cacng1遺伝子座をヒト化するように改変した。コードエクソン1、イントロン1、コードエクソン2~4(および介在するイントロン)、および82bpの3’非翻訳領域(UTR)のマウスCacng1の部分が、ヒトCACNG1の開始の15bpを除いたコードエクソン1配列(この開始配列はマウスが残ったままとなる)、イントロン1、コードエクソン2~4(および介在するイントロン)、完全3’UTR、および3’UTRの後の追加の158bpからなるヒトCACNG1配列で置き換えられる。図2A~2Cを参照されたい。自己欠失ネオマイシン耐性カセットがヒト配列の下流に挿入され、マウス3’UTRの残りがそれに続いた。自己欠失ネオマイシン耐性カセットの欠失後の標的部位を示す図2A~2Cを参照されたい。次いで、この標的化ベクターを、50%のC57Bl/6NTac/50%の129SvEvTac胚性幹細胞株にエレクトロポレーションした。首尾よく目指したクローンが、TaqMan解析によって同定された。Cacng1+/+マウスを、VelociGene(コピーライト)法(Valenzuela 2003 Nat Biotech PMID:12730667、Poueymirou 2007 Nat Biotech PMID:17187059)を使用して生成し、必要に応じてC57Bl/6NTacへと戻し交配した。抗生物質耐性カセットは、自己欠失技術を使用してF0雄生殖細胞系列において除去された。
【0174】
遺伝子発現解析
【0175】
全RNAを、TRIzol均質化およびクロロホルム相分離を経て、組織から単離し、続いて、Microarrays社の全RNA単離キット用のMagMAX-96で精製した。RNAseを含まないDNAseセットを使用してゲノムDNAを除去し、SuperScript VILO Master Mixを使用してmRNAをcDNAに逆転写した。cDNAを、12K Flex Systemを使用してSensiFAST Probe Lo-Roxで増幅した。Taqman遺伝子発現アッセイを使用して、m18S(内在性対照)と比較したヒト(h)およびマウス(m)のCACNG1発現を決定し、比較CT法(ΔΔCt)を使用してデータを分析した。Taqmanプライマー/プローブ配列は、hCACNG1はfwd- GGCGAGAGCTCGGAGATC(配列番号30)、rev-GGCTGCCCAGGATGATGAAG(配列番号31)、probe-TCGAATTCACCACTCAGAAGGAGTACA(配列番号32)、mCACNG1はfwd-CCGTGCACAACAAAGACAAGAG(配列番号33)、rev-GCTCTCCCCTGGGTTGAAG(配列番号34)、probe-TGTGAGCACGTCACACCATCAGG(配列番号35)とした。図3Aは、マウスCACNG1(mCACNG1)の発現が、CACNG1hu/huマウス筋肉でのqPCRでは検出できず(左グラフ)、一方でヒトCACNG1(hCACNG1)は、CACNG1hu/huマウス筋肉で発現されるが、野生型(WT)マウス筋肉では発現されない(右グラフ)ことを実証するグラフである。
【0176】
単一筋線維の単離および生細胞染色
【0177】
単一筋線維を、成体オスのCACNG1hu/huマウスの腓腹筋から単離した。筋肉を慎重に切除し、DMEM中の700U/mLコラゲナーゼで60分間消化した。単一筋線維を口焼加工したガラスパスツールピペットで単離し、数ラウンドの消化および洗浄の後、筋線維を低接着組織培養プレートに一晩播種した。翌朝、ヒト特異的なAlexa 647複合CACNG1抗体を、100nM濃度で30分または4時間のいずれかの間、生きた単一筋線維に添加した。次いで、筋線維をDMEMで洗浄し、4%PFAに固定し、DAPIで染色した。次いで、単一筋線維を顕微鏡スライドに移し、Fluoromountと共に載置し、LSM880共焦点顕微鏡で撮像した。図3Bを参照されたい。当該実験で、100nMのAlexa 647複合ヒト特異的α-CACNG1抗体での単一骨格筋筋線維の生細胞染色(live staining)を示しており、当該抗体はCACNG1hu/huマウスから単離された筋線維への結合を示すが、野生型(WT)マウスから単離された筋線維への結合は示さない。
【0178】
抗体分布のクライオ蛍光断層撮影(CryoFT)撮像
【0179】
成体オスのCACNG1hu/huマウスに、10mg/kgのヒト特異的なAlexa 647複合CACNG1抗体、Alexa 647複合アイソタイプ対照抗体、または生理食塩水を尾静脈注射した。注射の六日後、マウスをCOで安楽死させ、全身凍結させ、CryoFT処理および撮像を使用して評価した。図3Cを参照されたい。10mg/kgのAlexa 647複合ヒト特異的α-CACNG1抗体で注射したCACNG1hu/huマウスの画像が、注射の6日後のアイソタイプ対照抗体と比較して骨格筋に高い特異性を示している。
【0180】
抗体分布の免疫蛍光撮像
【0181】
成体オスのCACNG1hu/huマウスに、10mg/kgのヒト特異的なAlexa 647複合CACNG1抗体、Alexa 647複合アイソタイプ対照抗体、または生理食塩水を皮下注射した。注射の六日後、マウスをPBSで経心的に灌流し、腓腹筋/足底筋/ヒラメ筋複合体をOCT包埋培地に浸漬し、液体窒素で冷却したイソペンタン中で凍結させた。組織を12μmの厚さで凍結切片化し、その後、4%PFAで固定し、ラミニンおよびDAPIで染色した。スライドをFluoromountと共に載置し、Axioscanスライドスキャナで撮像した。図3Dを参照されたい。上方の図は、in vivoで注射した抗体からの内在性Alexa 647シグナルを示し、下方の図は、筋形態を可視化するための共染色のラミニンおよびDAPIとのAlexa647抗体の結合のオーバーレイを示す。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12-1】
図12-2】
【配列表】
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【国際調査報告】