(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTI)の投薬方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20241024BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/4995 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P1/16
A61K31/4995
A61K31/7048
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524411
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 US2022047694
(87)【国際公開番号】W WO2023076243
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358246
【氏名又は名称】ミルム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MIRUM PHARAMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】ピーツ,クリストファー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA52
4C084NA06
4C084ZA751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086EA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA06
4C086ZA75
(57)【要約】
本発明は、概して、頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTI)の投与に関連する1つまたは複数の副作用を低減、最小化、予防、改善または排除するための方法に関する。本発明はまた、それを必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、食物の摂取前に治療有効量のASBTIを対象に投与することを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象における頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTI)の投与に関連する1つまたは複数の副作用を低減、最小化、予防、改善、または排除するための方法であって、食物の摂取前に治療有効量のASBTIを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
ASBTIの投与に関連する1つまたは複数の副作用は、ASBTIが食物の摂取後、食物と同時に、または食物と混合して投与される場合の副作用と比較して低減、最小化、予防、改善、または排除される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
必要とする対象におけるASBTIの消化管(GI)忍容性を改善する方法であって、食物の摂取前に治療有効量のASBTIを対象に投与することを含む、方法。
【請求項4】
GI忍容性の改善は、1つまたは複数のGI有害事象の低減、最小化、予防、改善、または排除を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
GI忍容性の改善は、下痢、軟便、吐き気、腹痛、および肛門直腸不快感のうちの1つまたは複数の低減、最小化、予防、改善、または排除を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
GI忍容性は、ASBTIが食事時または食物の摂取直後に投与される場合のGI忍容性と比較して改善される、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
GI忍容性は、ASBTIが食事時または食物の摂取直後に投与される場合のGI忍容性と比較して少なくとも10%改善される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
GI忍容性は、ASBTIが食事時または食物の摂取直後に投与される場合のGI忍容性と比較して少なくとも20%改善される、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
GI忍容性は、ASBTIが食事時または食物の摂取直後に投与される場合のGI忍容性と比較して少なくとも50%改善される、請求項3~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、食物の摂取前に治療有効量のASBTIを対象に投与することを含み、前記対象は、ASBTIの投与に関連する1つまたは複数の副作用の頻度および/または重症度の低減を経験する、方法。
【請求項11】
副作用の頻度および/または重症度は、ASBTIが食物の摂取後、食物と同時に、または食物と混合して投与される場合の副作用と比較して低減される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は小児胆汁うっ滞性肝疾患である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は、成人胆汁うっ滞性肝疾患である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は、非閉塞性胆汁うっ滞、肝外胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞、原発性肝内胆汁うっ滞、続発性肝内胆汁うっ滞、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)、PFIC1型、PFIC2型、PFIC3型、良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC)、BRIC1型、BRIC2型、BRIC3型、中心静脈栄養関連胆汁うっ滞、腫瘍随伴性胆汁うっ滞、Stauffer症候群、妊娠性肝内胆汁うっ滞、避妊薬関連胆汁うっ滞、薬物関連胆汁うっ滞、感染関連胆汁うっ滞、デュビン・ジョンソン症候群、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、胆石症、アラジール症候群、胆管閉鎖症、葛西手術後の胆管閉鎖症、肝移植後の胆管閉鎖症、肝移植後の胆汁うっ滞、肝移植後関連肝疾患、腸管不全合併肝障害、胆汁酸媒介性肝損傷、MRP2欠損症候群、または新生児硬化性胆管炎である、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は、アラジール症候群、PFIC、BRIC、PSC、PBC、または胆道閉鎖症である、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つまたは複数の副作用は、下痢、軟便、吐き気、胃腸痛、腹痛、痙攣、肛門直腸不快感、またはそれらの組み合わせである、請求項1、2、および10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ASBTIは、絶食状態で前記対象に投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ASBTIは、食物の摂取の約60分未満前に投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ASBTIは、食物の摂取の約30分未満前に投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ASBTIは、食物の摂取直前に投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ASBTIは、最後の食事の少なくとも4時間後に投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ASBTIは、1日1回投与される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ASBTIは、1日2回投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ASBTIは、1回あたり約0.1mg~約100mgの量で投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ASBTIは、1回あたり約10mg~約100mgの量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ASBTIは、1回あたり約20mg~約80mgの量で投与される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
ASBTIは、約100μg/kg/日~1400μg/kg/日の量で投与される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ASBTIは、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日の量で投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ASBTIは、
【化1】
またはそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ASBTIは、
【化2】
である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ASBTIは、ボリキシバットまたはその薬学的に許容される塩である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記対象は、ASBTIの投与前に約0.5~約16時間食物を摂取していない、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象は小児対象である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記小児対象は0~18歳である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ASBTIは経口投与される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
ASBTIの10%未満が全身的に吸収される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ASBTIの30%未満が全身的に吸収される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年10月26日に出願された米国仮出願第63/271,916号、2021年11月17日に出願された米国仮出願第63/280,470号、および2022年6月22日に出願された米国仮出願第63/354,424号に対する優先権を主張し、それらの開示内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して、食物の摂取前に治療有効量のASBTIを対象に投与することによって、それを必要とする対象における頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTI)の投与に関連する1つまたは複数の副作用を低減、最小化、予防、改善、または排除するための方法に関する。本発明はまた、対象における胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、食物の摂取前および/または絶食状態で、治療有効量のASBTIを対象に投与することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患は、肝細胞における胆汁酸/塩の細胞内蓄積に関連しかつしばしばそれに続発する、胆汁分泌障害(すなわち、胆汁うっ滞)に関連する肝疾患である。高胆汁血症は、胆汁酸または胆汁塩の血清濃度の増加を特徴とする。胆汁うっ滞は、臨床病理学的に、閉塞性のしばしば肝外である胆汁うっ滞と、非閉塞性または肝内の胆汁うっ滞の2つの主要なカテゴリーに分類することができる。非閉塞性肝内胆汁うっ滞はさらに、構成的に欠陥のある胆汁分泌に起因する原発性肝内胆汁うっ滞と、肝細胞損傷に起因する続発性肝内胆汁うっ滞の2つの主要な亜群に分類することができる。原発性肝内胆汁うっ滞には、主に同様の臨床症状を有する成人型である良性反復性肝内胆汁うっ滞、ならびに小児に影響を及ぼす疾患である進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)1型、2型および3型などの疾患が含まれる。
【0004】
小児の胆汁うっ滞性肝疾患は、わずかな割合の小児に影響を及ぼすが、治療には毎年かなりの医療費がかかる。現在、小児胆汁うっ滞性肝疾患の多くは、肝移植や手術などの侵襲的で費用のかかる処置を必要とする。小児集団に適した最小限の消化器系有害作用(gastrointestinal adverse effect)での投薬で有効かつ低侵襲性の利用可能な処置はない。
【0005】
近年、頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTI)は、血清および/または肝臓の胆汁酸を減少させ、したがって胆汁うっ滞を軽減させることができる重要な新規クラスの治療薬として発展してきた。ASBTIの有害作用を低減することおよび/または低減された有害作用で胆汁うっ滞および胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法を開発することのさらなる緊急の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の様々な非限定的な態様および実施形態を以下に説明する。
【0007】
一態様では、本発明は、それを必要とする対象における頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTI)の投与に関連する1つまたは複数の副作用を低減、最小化、予防、改善、または排除するための方法であって、食物の摂取前に治療有効量のASBTIを対象に投与することを含む方法を提供する。
【0008】
特定の実施形態では、ASBTIの投与に関連する1つまたは複数の副作用は、ASBTIが食物の摂取後、食物と同時に、または食物と混合して投与される場合の副作用と比較して、低減、最小化、予防、改善、または排除される。
【0009】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象におけるASBTIの消化管(GI)忍容性(gastrointestinal tolerability)を改善する方法であって、食物の摂取前に治療有効量のASBTIを対象に投与することを含む方法を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、GI忍容性の改善は、1つまたは複数のGI有害事象の低減、最小化、予防、改善、または排除を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、GI忍容性の改善は、下痢、軟便、吐き気(悪心)、腹痛、および肛門直腸不快感のうちの1つまたは複数の低減、最小化、予防、改善、または排除を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、GI忍容性は、ASBTIが食事時または食物の摂取直後に投与される場合のGI忍容性と比較して改善される。
【0013】
いくつかの実施形態では、GI忍容性は、ASBTIが食事時または食物の摂取直後に投与される場合のGI忍容性と比較して、少なくとも10%改善される。
【0014】
いくつかの実施形態では、GI忍容性は、ASBTIが食事時または食物の摂取直後に投与される場合のGI忍容性と比較して、少なくとも20%改善される。
【0015】
いくつかの実施形態では、GI忍容性は、ASBTIが食事時または食物の摂取直後に投与される場合のGI忍容性と比較して、少なくとも50%改善される。
【0016】
一態様では、本発明は、それを必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、食物の摂取前に治療有効量のASBTIを対象に投与することを含み、対象はASBTIの投与に関連する1つまたは複数の副作用の頻度および/または重症度の低減を経験する方法を提供する。
【0017】
特定の実施形態では、副作用の頻度および/または重症度は、ASBTIが食物の摂取後、食物と同時に、または食物と混合して投与される場合の副作用と比較して、低減される。
【0018】
特定の実施形態では、胆汁うっ滞性肝疾患は小児胆汁うっ滞性肝疾患である。特定の実施形態では、胆汁うっ滞性肝疾患は成人胆汁うっ滞性肝疾患である。特定の実施形態では、胆汁うっ滞性肝疾患は、非閉塞性胆汁うっ滞、肝外胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞、原発性肝内胆汁うっ滞、続発性肝内胆汁うっ滞、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)、PFIC1型、PFIC2型、PFIC3型、良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC)、BRIC1型、BRIC2型、BRIC3型、中心静脈栄養関連胆汁うっ滞(total parenteral nutrition associated cholestasis)、腫瘍随伴性胆汁うっ滞(paraneoplastic cholestasis)、スタウファー(Stauffer)症候群、妊娠性肝内胆汁うっ滞、避妊薬関連胆汁うっ滞、薬物関連胆汁うっ滞、感染関連胆汁うっ滞、デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、胆石症、アラジール症候群、胆道閉鎖症、葛西手術後の胆道閉鎖症、肝移植後の胆道閉鎖症、肝移植後の胆汁うっ滞、肝移植後関連肝疾患、腸管不全合併肝障害(intestinal failure associated liver disease)、胆汁酸媒介性肝損傷、MRP2欠損症候群、または新生児硬化性胆管炎である。特定の実施形態では、胆汁うっ滞性肝疾患は、アラジール症候群、PFIC、BRIC、PSC、PBC、または胆道閉鎖症である。
【0019】
特定の実施形態では、ASBTIは、絶食状態で対象に投与される。特定の実施形態では、ASBTIは、食物の摂取の約60分未満前に投与される。特定の実施形態では、ASBTIは、食物の摂取の約30分未満前に投与される。特定の実施形態では、ASBTIは、食物の摂取直前に投与される。特定の実施形態では、ASBTIは、最後の食事の少なくとも4時間後に投与される。
【0020】
特定の実施形態では、ASBTIは、1日1回投与される。特定の実施形態では、ASBTIは、1日2回投与される。
【0021】
特定の実施形態では、ASBTIは、1回あたり(per dose)約0.1mg~約100mgの量で投与される。特定の実施形態では、ASBTIは、1回あたり約10mg~約100mgの量で投与される。特定の実施形態では、ASBTIは、1回あたり約20mg~約80mgの量で投与される。特定の実施形態では、ASBTIは、約100μg/kg/日~1400μg/kg/日の量で投与される。特定の実施形態では、ASBTIは、約400μg/kg/日~800μg/kg/日の量で投与される。
【0022】
特定の実施形態では、ASBTIは、
【化1】
またはそれらの薬学的に許容される塩から選択される。特定の実施形態では、ASBTIは、
【化2】
である。特定の実施形態では、ASBTIはボリキシバットまたはその薬学的に許容される塩である。特定の実施形態では、ASBTIはボリキシバットカリウムである。
【0023】
特定の実施形態では、対象は、ASBTIの投与前約0.5~約16時間、食物を摂取していない。
【0024】
ある態様において、対象は小児対象である。特定の実施形態では、小児対象は0~18歳である。
【0025】
特定の実施形態では、ASBTIは経口投与される。
【0026】
特定の実施形態では、ASBTIの10%未満が全身的に吸収される。特定の実施形態では、ASBTIの30%未満が全身的に吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本開示による特定の実施形態についての研究デザイン、薬物(MRX=マラリキシバット、VLX=ボリキシバット)、用量および食事時/絶食時のタイムラインを示す。
*絶食はMRX投与の10~12時間以上前に開始した。**患者を2つのコホートに1:1で無作為に割り当て、絶食後に食事時投与、または食事時の後に絶食投与を順次行った。
【
図2】3つの試験のそれぞれについて、食事時または絶食状態でASBTIを投与した後に消化管(GI)の治療下で発現した有害事象(AE)(treatment-emergent adverse event)を経験した健康な参加者の割合(%)を示す円グラフである。
【
図3】イヌにおける糞便胆汁酸(fBA)排泄に対するマラリキシバット(MRX)の効果を示す:治験薬、および投薬/食事時間スケジュール。
【
図4】イヌにおける糞便胆汁酸(fBA)に対するマラリキシバット(MRX)の効果の棒グラフである:処置前から7日目までのfBA排泄の変化。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の詳細な実施形態を本明細書に開示する;しかしながら、開示された実施形態は、様々な形態で具体化され得る本発明の単なる例示であることを理解されたい。さらに、本発明の様々な実施形態に関連して与えられた実施例の各々は、限定的ではなく例示的であることが意図されている。したがって、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明を様々に使用するために当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0029】
胆汁酸/塩は、消化酵素を活性化し、脂肪および脂溶性ビタミンを可溶化するのに重要な役割を果たし、肝臓、胆道および腸の疾患に関与する。胆汁酸は、多段階の複数の細胞小器官(multiorganelle)の経路によって肝臓で合成さる。ステロイド構造上の特定部位にヒドロキシル基が付加され、コレステロールのB環の二重結合が還元され、炭化水素鎖が3炭素原子短縮され、鎖の末端にカルボキシル基をもたらす。最も一般的な胆汁酸は、コール酸およびケノデオキシコール酸(「一次胆汁酸」)である。肝細胞を出て胆汁を形成する前に、胆汁酸は、(グリココール酸またはグリコケノデオキシコール酸を生成するために)グリシンに抱合されるかまたは(タウロコール酸もしくはタウロケノデオキシコール酸を生成するために)タウリンに抱合される。抱合胆汁酸は胆汁酸塩と呼ばれ、その両親媒性により、胆汁酸よりも効率的な界面活性剤になる。胆汁酸ではなく胆汁酸塩が胆汁中に見出される。
【0030】
胆汁酸塩は肝細胞によって毛細胆管(canaliculi)に分泌されて胆汁を形成する。毛細胆管は左右の肝管に流れ込み、胆汁は胆嚢に流れる。胆汁は胆嚢から放出され、十二指腸に移動し、そこで脂肪の代謝および分解に寄与する。胆汁酸塩は回腸末端で再吸収され、門脈を介して肝臓に戻される。胆汁酸塩は、糞便を介して排泄される前に、複数回の腸肝循環を経験することが多い。ごく一部の胆汁酸塩は、受動輸送または担体媒介輸送のいずれかのプロセスによって近位腸で吸収され得る。ほとんどの胆汁酸塩は、頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体(ASBT)と呼ばれるナトリウム依存性の頂端側に位置する胆汁酸輸送体(トランスポーター)によって、遠位回腸で再利用される。腸細胞の側底面では、ASBTの短縮型(truncated version)が胆汁酸/塩の門脈循環へのベクトル輸送に関与する。腸肝循環の完了は、主にナトリウム依存性胆汁酸輸送体によって媒介される輸送プロセスによって肝細胞の側底面で起きる。腸の胆汁酸輸送は、胆汁酸塩の腸肝循環において重要な役割を果たす。このプロセスの分子分析は、最近、腸の胆汁酸輸送の生物学、生理学、および病態生理学の理解に重要な進歩をもたらした。
【0031】
腸管腔内において、胆汁酸濃度は、遠位腸で生じる大量の再取込みに応じて変動する。本明細書では、腸管腔内の胆汁酸の濃度を制御し、それによって肝臓における胆汁酸蓄積によって引き起こされる肝細胞損傷を制御し、さらに消化管系有害作用を最小限に抑えるために絶食状態で投薬する、特定の組成物および方法が記載される。
【0032】
本開示の主題は、少なくとも部分的には、食物の摂取前にASBTIをそれを必要とする対象に投与することが、予想外に、ASBTIの投与に関連する1つまたは複数の副作用の低減、最小化、予防、改善、および/または排除をもたらすことの発見に基づく。
【0033】
胆汁うっ滞および胆汁うっ滞性肝疾患のクラス
本明細書で使用される場合、「胆汁うっ滞」は、胆汁形成および/または胆汁の流れの障害を含む疾患または症状を意味する。本明細書で使用される場合、「胆汁うっ滞性肝疾患」は、胆汁うっ滞に関連する肝疾患を意味する。胆汁うっ滞性肝疾患は、黄疸、倦怠感、掻痒症(かゆみ)を伴うことが多い。胆汁うっ滞性肝疾患のバイオマーカーには、血清胆汁酸濃度の上昇、血清アルカリホスファターゼ(AP)の上昇、γ-グルタミルトランスペチダーゼの上昇、抱合型高ビリルビン血症の上昇、および血清コレステロールの上昇などが含まれる。
【0034】
胆汁うっ滞性肝疾患は、臨床病理学的に、閉塞性のしばしば肝外の胆汁うっ滞と、非閉塞性のまたは肝内の胆汁うっ滞の、2つの主要なカテゴリーに分類できる。前者では、胆石や腫瘍によって、または肝外胆道閉鎖症においてなど、胆汁の流れが機械的に遮断されたときに胆汁うっ滞が生じる。
【0035】
非閉塞性の肝内胆汁うっ滞を有する後者の群は、さらに2つの主要な亜群に分類される。第1の亜群では、胆汁の分泌および修飾のプロセスまたは胆汁成分の合成のプロセスが、胆汁形成を補助するものを含む多くの機能の非特異的障害が予想され得るほど重篤な肝細胞障害に二次的に巻き込まれた場合に、胆汁うっ滞が生じる。第2の亜群では、肝細胞損傷の推定される原因が特定できない。そのような患者における胆汁うっ滞は、胆汁の分泌または修飾あるいは胆汁成分の合成のステップの1つが構成的に損傷した場合に生じると思われる。このような胆汁うっ滞は原発性と見なされる。
【0036】
したがって、本明細書では、高胆汁血症および/または胆汁うっ滞性肝疾患を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセス(adaptive process)の増強を刺激するための方法および組成物が提供される。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度および/またはGLP-2濃度を増加させることを含む。
【0037】
胆汁酸レベルの上昇、ならびにAP(アルカリホスファターゼ)、LAP(白血球アルカリホスファターゼ)、γGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)、および5’-ヌクレオチダーゼのレベルの上昇は、胆汁うっ滞および胆汁うっ滞性肝疾患の生化学的特徴である。したがって、本明細書では、高胆汁血症、ならびにAP(アルカリホスファターゼ)、LAP(白血球アルカリホスファターゼ)、γGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼまたはGGT)、および/または5’-ヌクレオチダーゼのレベルの上昇を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物が提供される。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書では、胆汁酸を糞便中に排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷(overall serum bile acid load)を低減することを含む、高胆汁血症、ならびにAP(アルカリホスファターゼ)、LAP(白血球アルカリホスファターゼ)、γGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼまたはGGT)、および/または5’-ヌクレオチダーゼのレベルの上昇を軽減するための方法および組成物が提供される。
【0038】
掻痒症は、しばしば、高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患に関連する。掻痒症は、末梢痛求心性神経に作用する胆汁酸塩に起因することが示唆されている。掻痒症の程度は個体によって異なる(すなわち、一部の個体は胆汁酸/塩のレベルの上昇に対してより感受性である)。
【0039】
血清胆汁酸の濃度を低減させる薬剤の投与は、特定の個体の掻痒症を軽減することが示されている。したがって、本明細書で提供されるのは、掻痒症を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減することを含む、掻痒症を処置するための方法および組成物が提供される。
【0040】
高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患の別の症状は、抱合型ビリルビンの血清濃度の増加である。抱合型ビリルビンの血清濃度が上昇すると、黄疸および暗色尿が生じる。抱合型ビリルビンの血清レベルと高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患の重症度との間に関係は確立されていないため、上昇の大きさは診断上重要ではない。抱合型ビリルビン濃度が30mg/dLを超えることはめったにない。したがって、本明細書で提供されるのは、抱合型ビリルビンの血清濃度が上昇した個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減させることを含む、抱合型ビリルビンの血清濃度の上昇を処置するための方法および組成物が提供される。
【0041】
非抱合型ビリルビンの血清濃度の増加も、高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患の徴候であると考えられる。血清ビリルビンの一部は、アルブミン(デルタ(δ)ビリルビンまたはビリタンパク質)に共有結合している。この画分は、胆汁うっ滞性黄疸を有する患者において総ビリルビンの大部分を占め得る。大量のδ-ビリルビンの存在は、長期にわたる胆汁うっ滞を示す。臍帯血または新生児の血液中のδ-ビリルビンは、出生前に起こる胆汁うっ滞/胆汁うっ滞性肝疾患の指標である。したがって、本明細書で提供されるのは、非抱合型ビリルビンまたはδ-ビリルビンの血清濃度が上昇した個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減することを含む、非抱合型ビリルビンおよびδ-ビリルビンの血清濃度の上昇を処置するための方法および組成物が提供される。
【0042】
胆汁うっ滞および胆汁うっ滞性肝疾患は、高胆汁血症を引き起こす。代謝性胆汁うっ滞中、肝細胞は胆汁酸塩を保持する。胆汁酸塩は肝細胞から血清に逆流し、その結果、末梢循環中の胆汁酸塩の濃度が増加する。さらに、門脈血中の肝臓に入る胆汁酸塩の取り込みは非効率的であり、その結果、胆汁酸塩が末梢循環にこぼれる。したがって、本明細書で提供されるのは、高胆汁血症を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を減少させることを含む、高胆汁血症を処置するための方法および組成物が提供される。
【0043】
高脂血症は、すべてではないが一部の胆汁うっ滞性疾患の特徴である。血清コレステロールは、コレステロールの代謝および分解に寄与する循環胆汁酸塩の減少により、胆汁うっ滞において上昇する。コレステロールの保持は、膜コレステロール含有量の増加と膜流動性および膜機能の低下に関連する。さらに、胆汁酸塩はコレステロールの代謝産物であるため、コレステロール代謝の低下は胆汁酸/塩合成の減少をもたらす。胆汁うっ滞の小児で観察される血清コレステロールは、約1,000mg/dL~約4,000mg/dLの間の範囲である。したがって、本明細書で提供されるのは、高脂血症を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減させることを含む、高脂血症を処置するための方法および組成物が提供される。
【0044】
高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患を有する個体において、黄色腫は、過剰な循環コレステロールの真皮への沈着から発症する。黄色腫の発症は、肝細胞性胆汁うっ滞よりも閉塞性胆汁うっ滞に特徴的である。平面黄色腫は、最初に目の周りに発生し、次に手のひらや足の裏のしわに発生し、次に首に発生する。結節性黄色腫は、慢性および長期の胆汁うっ滞に関連する。したがって、本明細書で提供されるのは、黄色腫を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減することを含む、黄色腫を処置するための方法および組成物が提供される。
【0045】
慢性胆汁うっ滞を有する小児において、高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患の主な影響の1つは成長障害(failure to thrive)である。成長障害は、腸への胆汁酸塩の送達の減少の結果であり、それは、脂肪の非効率的な消化および吸収、ならびにビタミンの摂取の減少に寄与する(ビタミンE、D、K、およびAはすべて胆汁うっ滞で吸収不良となる)。さらに、結腸への脂肪の送達は、結腸の分泌および下痢を引き起こす可能性がある。成長障害の処置には、長鎖トリグリセリド、中鎖トリグリセリド、およびビタミンによる食事療法(dietary substitution)および補給が含まれる。ウルソデオキシコール酸は一部の胆汁うっ滞状態を処置するために使用されるが、混合ミセルを形成せず、脂肪吸収に対する効果はない。したがって、本明細書で提供されるのは、成長障害を有する個体(例えば、小児)において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減することを含む、成長障害を処置するための方法および組成物が提供される。
【0046】
原発性胆汁性肝硬変(PBC)
原発性胆汁性肝硬変は、胆管の破壊を特徴とする肝臓の自己免疫疾患である。胆管への損傷は、肝臓における胆汁の蓄積(すなわち胆汁うっ滞)をもたらす。肝臓における胆汁の保持は、肝臓組織を損傷し、瘢痕化、線維症、および肝硬変をもたらし得る。PBCは、通常、成人期(例えば、40歳以上)に発症する。PBCを有する個体は、疲労、掻痒症および/または黄疸を呈することが多い。PBCは、個体が、少なくとも6か月間AP濃度の上昇、γGTレベルの上昇、血清中の抗ミトコンドリア抗体(AMA)(>1:40)、および胆管破壊病変(florid bile duct lesions)を有する場合に診断される。血清ALTおよび血清ASTおよび結合ビリルビンも上昇し得るが、これらは診断的であるとは考えられない。PBCに関連する胆汁うっ滞は、ウルソデオキシコール酸(UDCAまたはウルソジオール)の投与によって処置または改善されている。コルチコステロイド(例えば、プレドニゾンおよびブデソニド)および免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロスポリンA、メトトレキサート、クロラムブシルおよびミコフェノール酸エステル)は、PBCに関連する胆汁うっ滞を処置するために使用されている。スリンダク(Sulindac)、ベザフィブラート(bezafibrate)、タモキシフェン(tamoxifen)、およびラミブジン(lamivudine)も、PBCに関連する胆汁うっ滞を処置または改善することが示されている。
【0047】
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)
PFICは、典型的には肝不全をもたらす進行性肝疾患を引き起こす稀な遺伝性疾患である。PFICの人々では、肝細胞は胆汁を分泌する能力が低い。結果として生じる胆汁の蓄積は、罹患した個体において肝疾患を引き起こす。PFICの徴候および症状は、典型的には乳児期に始まる。患者は、重度のかゆみ、黄疸、期待される速度で成長しないこと(発育不良)、および肝臓の機能不全の亢進(肝不全)を経験する。この疾患は、米国およびヨーロッパにおいて5万~10万人に1人が罹患すると推定される。6つのタイプのPFICが遺伝的に同定されており、そのすべてが同様に胆汁の流れの障害および進行性肝疾患を特徴とする。
【0048】
PFIC1
PFIC1(バイラー病またはFIC1欠損症としても知られる)は、ATP8B1遺伝子(FIC1とも呼ばれる)における変異に関連する。P型ATPaseをコードするこの遺伝子は、ヒト18番染色体上に位置し、軽度の表現型、良性反復性肝内胆汁うっ滞症1型(BRIO)およびグリーンランド家族性胆汁うっ滞症でも変異している。FIC1タンパク質は肝細胞の毛細胆管側膜(canalicular membrane)に位置しているが、肝臓内では主に胆管細胞で発現している。P型ATPaseは、外葉と比較して、原形質膜の内葉にホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールアミンを豊富に維持する役割を果たすアミノリン脂質輸送体であると思われる。膜二重層における脂質の非対称的な分布は、毛細胆管内腔における高い胆汁酸塩濃度に対して保護的な役割を果たす。異常なタンパク質機能は、胆汁酸の胆汁分泌を間接的に妨害し得る。胆汁酸/塩の異常な分泌は、肝細胞の胆汁酸の過負荷につながる。
【0049】
PFIC1は、典型的には、乳児(例えば、6~18か月齢)に現れる。乳児は、掻痒症、黄疸、腹部膨満、下痢、栄養不良、および低身長の兆候を示すことがある。生化学的には、PFIC1の個体は、血清トランスアミナーゼの上昇、ビリルビンの上昇、血清胆汁酸レベルの上昇、および低いγGTレベルを有する。個体はまた、肝線維症も有し得る。PFIC1の個体は、典型的には、胆管増殖がない。PFIC1のほとんどの個体は、10歳までに末期肝疾患を発症する。PFIC1の長期処置に有益であることが証明されている医学的処置はない。肝外症状(例えば、栄養不良や成長障害など)を軽減するために、小児に中鎖トリグリセリドおよび脂溶性ビタミンがしばしば投与される。ウルソジオールは、PFIC1の個体において有効であることは実証されていない。
【0050】
PFIC2
PFIC2(バイラー症候群、BSEP欠損症としても知られる)は、ABCB11遺伝子(BSEPとも呼ばれる)の変異に関連する。ABCB11遺伝子は、ヒト肝臓のATP依存性毛細胆管胆汁酸塩排出ポンプ(ATP-dependent canalicular bile salt export pump)(BSEP)をコードし、ヒト2番染色体上に位置する。肝細胞毛細胆管側膜において発現するBSEPタンパク質は、極端な濃度勾配に対する一次胆汁酸/塩の主要な輸出体である。このタンパク質の変異は、罹患患者において説明される胆汁酸塩分泌の減少の原因であり、進行中の重度の肝細胞損傷を伴う胆汁流量の減少および肝細胞内への胆汁酸塩の蓄積をもたらす。
【0051】
PFIC2は、典型的には、乳児(例えば、6~18か月齢)に現れる。乳児は掻痒症の兆候を示し得る。生化学的には、PFIC2の個体は、血清トランスアミナーゼの上昇、ビリルビンの上昇、血清胆汁酸レベルの上昇、および低いγGTレベルを有する。個体はまた、門脈の炎症および巨細胞性肝炎も有し得る。さらに、個体はしばしば肝細胞癌を発症する。PFIC2の長期処置に有益であることが証明されている医学的治療法はない。肝外症状(例えば、栄養不良や成長障害など)を軽減するために、小児に中鎖トリグリセリドおよび脂溶性ビタミンがしばしば投与される。PFIC2患者集団は、PFIC集団の約60%を占める。
【0052】
PFIC3
PFIC3(MDR3欠損症としても知られている)は、7番染色体上に位置するABCB4遺伝子(MDR3とも呼ばれる)の遺伝的欠損によって引き起こされる。クラスIII多剤耐性(MDR3)P-糖タンパク質(P-gp)は、肝細胞の毛細胆管側膜における胆汁リン脂質(ホスファチジルコリン)の排出に関与するリン脂質トランスロケーターである。PFIC3は、界面活性剤の胆汁酸塩がリン脂質によって不活化されず、毛細胆管および胆管上皮の損傷を引き起こす、胆汁の毒性によって生じる。
【0053】
PFIC3は幼児期にも発症する。PFIC1およびPFIC2とは対照的に、個体はγGTレベルの上昇を有する。個体はまた、門脈の炎症、線維症、肝硬変、および大量の胆管増殖を有する。個体はまた、肝内胆石症も発症し得る。ウルソジオールは、PFIC3の処置または改善に有効である。
【0054】
良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC)
BRIC1
BRIC1は、肝細胞の毛細胆管側膜におけるFIC1タンパク質の遺伝的欠損によって生じる。BRIC1は、典型的には、正常な血清コレステロールおよびγ-グルタミルトランスペプチダーゼのレベルであるが、血清胆汁酸塩の上昇を伴う。残存FIC1の発現および機能がBRIC1に関連する。胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の反復性発作にもかかわらず、大多数の患者において慢性肝疾患への進行はない。発作中、患者は重度の黄疸を生じ、掻痒症、脂肪便、体重減少が見られる。一部の患者はまた、腎結石、膵炎、および糖尿病も有する。
【0055】
BRIC2
BRIC2は、ABCB11の変異によって引き起こされ、肝細胞の毛細胆管側膜における不完全なBSEPの発現および/または機能をもたらす。
【0056】
BRIC3
BRIC3は、肝細胞の毛細胆管側膜における不完全なMDR3の発現および/または機能に関連している。MDR3欠損症の患者は通常、正常またはわずかに上昇した胆汁酸レベルの存在下で、血清γ-グルタミルトランスペプチダーゼレベルの上昇を示す。
【0057】
デュビン・ジョンソン症候群(DJS)
DJSは、MRP2の遺伝性機能障害による抱合型高ビリルビン血症を特徴とする。肝機能は罹患患者において維持される。いくつかの異なる変異がこの状態に関連しており、その結果、罹患患者における免疫組織化学的に検出可能なMRP2の完全な欠如、またはタンパク質の成熟および選別の障害のいずれかをもたらす。
【0058】
後天性胆汁うっ滞性疾患
原発性胆汁性肝硬変(PBC)
PBCは慢性炎症性肝障害であり、罹患患者のほとんどにおいて末期肝不全にゆっくりと進行する。PBCにおいて、炎症プロセスは主に細胆管に影響を及ぼす。
【0059】
原発性硬化性胆管炎(PSC)
PSCは、罹患患者のほとんどにおいて末期肝不全にゆっくりと進行する慢性炎症性肝障害である。PSC炎症では、大規模および中規模の肝内胆管および肝外胆管の線維化および閉塞が優勢である。
【0060】
PSCは進行性胆汁うっ滞を特徴とする。胆汁うっ滞はしばしば、生活の質を著しく損なう重篤な掻痒症をもたらし得る。
【0061】
妊娠性肝内胆汁うっ滞症症(ICP)
ICPは、エストロゲンの循環レベルが高い場合に、典型的には妊娠の第3期に生じる、妊婦における一過性胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の発生を特徴とする。ICPは、そう痒症および生化学的胆汁うっ滞または様々な重症度の胆汁うっ滞性肝疾患に関連し、未熟児および子宮内胎児死の危険因子を構成する。遺伝的素因は、強い地域クラスター形成、ICP患者の家族の女性における高い有病率、および経口避妊薬などの他のホルモンチャレンジ下でICP患者が肝内胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患を発症しやすいことに基づいて疑われてきた。MDR3遺伝子欠損の不均一な状態は、遺伝的素因を表している可能性がある。
【0062】
胆石症
胆石症は、すべての消化器疾患の中で最も一般的で費用のかかるものの1つであり、白人女性の有病率は17%までにもなる。コレステロールを含む胆石は胆石の主要な形態であり、したがってコレステロールによる胆汁の過飽和は胆石形成の前提条件である。ABCB4変異は、コレステロール胆石症の病因に関与し得る。
【0063】
薬物誘発性胆汁うっ滞症
薬物によるBSEP機能の阻害は、薬物誘発性胆汁うっ滞症の重要なメカニズムであり、胆汁酸塩の肝臓蓄積とそれに続く肝細胞損傷をもたらす。いくつかの薬物がBSEP阻害に関与している。リファンピシン、シクロスポリン、グリベンクラミド、またはトログリタゾンなどのこれらの薬剤のほとんどは、競合的な様式でATP依存性タウロコール酸輸送を直接的にシス阻害するが、エストロゲンおよびプロゲステロン代謝物は、Mrp2による毛細胆管への分泌後にBSEPを間接的にトランス阻害する。あるいは、MRP2の薬物媒介性刺激は、胆汁組成を変化させることによって胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患を促進させることができる。
【0064】
中心静脈栄養(Total Parenteral Nutrition)関連胆汁うっ滞
TPNACは、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患が急速に発生し、早期死亡と高度に関連する最も深刻な臨床シナリオの1つである。通常は未熟児で腸切除を受けた乳児は、成長のためにTPNに依存し、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患を頻繁に発症し、通常は生後6か月より前に、線維症、肝硬変、門脈圧亢進症に急速に進行する。これらの乳児における胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の程度および生存の可能性は、おそらく繰り返す腸粘膜を横切るバクテリアルトランスロケーションによって開始される敗血症エピソードの数に関連している。これらの乳児において、静脈内製剤からの胆汁うっ滞の影響もあるが、敗血症メディエータが肝機能の変化に最も寄与する可能性が高い。
【0065】
中心静脈栄養関連胆汁うっ滞症
TPNACは、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患が急速に発生し、早期死亡と高度に関連する最も深刻な臨床シナリオの1つである。通常は未熟児で腸切除を受けた乳児は、成長のためにTPNに依存し、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患を頻繁に発症し、通常は生後6か月の前に、線維症、肝硬変、門脈圧亢進症に急速に進行する。これらの乳児における胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の程度および生存の可能性は、おそらく繰り返す腸粘膜を横切るバクテリアルトランスロケーションによって開始される敗血症エピソードの数に関連している。これらの乳児において、静脈内製剤からの胆汁うっ滞の影響もあるが、敗血症メディエータが肝機能の変化に最も寄与する可能性が高い。
【0066】
アラジール症候群(ALGS)
アラジール症候群は、肝臓および他の臓器に影響を及ぼす遺伝性疾患である。ALGSは、症候性肝内胆管減少症または動脈肝異形成としても知られている。ALGSは、胆管が異常に狭く、形成不良であり、数が減少し、肝臓における胆汁蓄積および最終的に進行性の肝疾患をもたらす稀な遺伝性障害である。ALGSは、JAG1(症例の>90%)またはNOTCH2における変異によって引き起こされる常染色体優性である。ALGSの推定発生率は、米国およびヨーロッパにおいて30,000または50,000人に1人である。ALGS患者では、肝臓、心臓、腎臓および中枢神経系を含む複数の臓器系が変異の影響を受け得る。胆汁酸の蓄積は、血流からの老廃物を排除するために肝臓が適切に機能することを妨げ、患者の15%~47%において最終的に肝移植を必要とする進行性肝疾患をもたらす。ALGSにおける肝臓損傷から生じる徴候および症状には、黄疸、掻痒症および黄色腫、ならびに成長の低下が含まれ得る。ALGS患者が経験する掻痒症は、慢性肝疾患の中で最も重篤なものの1つであり、生後3年までにほとんどの罹患小児に存在する。
【0067】
ALGSは、乳児期(例えば、6~18か月)から幼児期(例えば、3~5歳)に現れることが多く、10歳を過ぎると安定し得る。症状には、慢性進行性胆汁うっ滞症、胆管減少症、黄疸、掻痒症、黄色腫、先天性心臓障害、肝内胆管の不足、線形成長不良、ホルモン抵抗性、後部胎生環、アクセンフェルト異常、色素性網膜炎、瞳孔異常、心雑音、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症、およびファロー四徴症などが含まれ得る。アラジール症候群と診断された個体は、ウルソジオール、ヒドロキシジン、コレスチラミン、リファンピシン、およびフェノバルビタールで処置されてきた。脂溶性ビタミンを吸収する能力が低下するため、アラジール症候群の個体には高用量のマルチビタミンがさらに投与される。
【0068】
胆道閉鎖症
胆道閉鎖症は、肝臓の内側または外側の胆管に正常な開口がない乳児における生命を脅かす状態である。胆道閉鎖症では、胆汁が閉じ込められ、蓄積し、肝臓に損傷を与える。損傷は、瘢痕化、肝臓組織の喪失、および肝硬変につながる。処置をしなければ、肝臓は最終的に機能しなくなり、乳児は生存を維持するために肝移植が必要になる。2つのタイプの胆道閉鎖症は、胎児期と周産期である。胎児期の胆道閉鎖症は、赤ちゃんが子宮内にいる間に現れる。周産期の胆道閉鎖症はより一般的であり、出生後2~4週まで明らかにならない。
【0069】
葛西手術後の胆道閉鎖症
胆道閉鎖症は、葛西手術と呼ばれる外科手術または肝移植で処置される。葛西手術は通常、胆道閉鎖症の第1の処置方法である。葛西手術中に、小児外科医は乳児の損傷した胆管を取り除き、腸のループを持ち上げてそれらを交換する。葛西手術は胆道の流れを回復させ、胆道閉鎖症によって引き起こされる多くの問題を修正することができるが、その手術は胆道閉鎖症を治さない。葛西手術がうまくいかない場合、乳児は通常1~2年以内に肝移植が必要になる。手術が成功した後でも、胆道閉鎖症のほとんどの乳児は、何年にもわたってゆっくりと肝硬変を発症し、成人期までに肝移植を必要とする。葛西手術後に起こり得る合併症としては、腹水症、細菌性胆管炎、門脈圧亢進症、および掻痒症が挙げられる。
【0070】
肝移植後の胆道閉鎖症
完全に閉鎖すると、肝移植が唯一の選択肢である。肝移植は一般的に胆道閉鎖症の処置に成功するが、肝移植は臓器拒絶反応などの合併症を引き起こす可能性がある。また、ドナーの肝臓が利用できなくなる場合もある。さらに、一部の患者では、肝移植が胆道閉鎖症の治癒に成功しない場合がある。
【0071】
黄色腫
黄色腫は、特定の脂肪が皮膚の表面下に蓄積する、胆汁うっ滞性肝疾患に関連する皮膚の状態である。胆汁うっ滞は脂質代謝のいくつかの妨害を引き起こし、血中においてリポタンパク質Xと呼ばれる異常な脂質粒子の形成をもたらす。リポタンパク質Xは、肝臓から血液への胆汁脂質の逆流によって形成され、正常なLDLのようにコレステロールを全身の細胞に送達するためにLDL受容体に結合することはない。リポタンパク質Xは、肝臓のコレステロール産生を5倍増加させ、肝臓による血液からのリポタンパク質粒子の正常な除去を遮断する。
【0072】
一般的な定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0073】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形の参照を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、1つまたは複数の方法、および/または本明細書に記載のタイプのステップ、および/または本開示を読むと当業者に明らかになるであろうステップを含む。
【0074】
本明細書で使用される「ベースライン」または「投与前ベースライン」という用語は、試験の開始時に収集された情報、または後のデータとの比較に使用される既知の初期値を指す。ベースラインは、初期の時点で取得され、測定可能な状態の変化を探すために経時的に比較するために使用される、測定可能な状態の初期測定値である。例えば、薬物投与前(ベースライン)および薬物投与後の患者の血清胆汁酸濃度。ベースラインは、介入または環境刺激に対する反応を表す値との比較に使用される、測定可能な質の正常レベルまたは開始レベルを表す観測値または値である。ベースラインは、試験の参加者が実験薬剤または介入、あるいは陰性対照を受ける前の時間「ゼロ」である。例えば、「ベースライン」は、一部の例では、1)臨床試験の開始直前の測定可能な量の状態、または2)患者に投与される投薬量レベルもしくは組成物を第1の投薬量レベルもしくは組成物から第2の投薬量レベルもしくは組成物に変更する直前の測定可能な量の状態を指すことができる。
【0075】
本明細書で使用される「レベル」および「濃度」という用語は交換可能に使用される。例えば、「高血清ビリルビンレベル」は、「高血清ビリルビン濃度」と言い換えることができる。
【0076】
本明細書で使用される「正常化された(normalized)」または「正常範囲」という用語は、健康な個体に該当する範囲内にある年齢特異的な値(すなわち、正常値または正常化された値)を示す。例えば、「血清ビリルビン濃度は3週間以内に正常化された」という語句は、血清ビリルビン濃度が、3週間以内に、健康な個体の濃度に該当することが当技術分野で知られている範囲内(すなわち、正常範囲内であり、例えば上昇した範囲ではない)に入ったことを意味する。様々な実施形態において、正常化された血清ビリルビン濃度は、約0.1mg/dL~約1.2mg/dLである。様々な実施形態において、正常化された血清胆汁酸濃度は、約0μmol/L~約25μmol/Lである。
【0077】
本明細書で使用される「ITCHRO(OBS)」および「ITCHRO」(あるいは、「ItchRO(Pt)」)という用語は、ITCHRO(OBS)スケールが18歳未満の小児における掻痒症の重症度を測定するために使用され、ITCHROスケールが18歳以上の成人における掻痒症の重症度を測定するために使用されるという条件付きで交換可能に使用される。したがって、ITCHRO(OBS)スケールが成人患者に関して言及されている場合、ITCHROスケールが指示されているスケールである。同様に、ITCHROスケールが小児患者に関して言及されている場合は通常、ITCHRO(OBS)スケールが指示されているスケールである(一部の年長の小児は、自分のスコアをITCHROスコアとして報告することが許可された)。ITCHRO(OBS)スケールの範囲は0~4であり、ITCHROスケールの範囲は0~10である。
【0078】
本明細書で使用される「胆汁酸(単数または複数)」という用語には、動物(例えば、ヒト)の胆汁中に見出されるステロイド酸(および/またはそのカルボン酸アニオン)、およびそれらの塩が含まれ、非限定的な例として、コール酸、コール酸塩、デオキシコール酸、デオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸塩、グリココール酸、グリココール酸塩、タウロコール酸、タウロコール酸塩、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ウルソジオール、タウロウルソデオキシコール酸、グリコウルソデオキシコール酸、7-B-メチルコール酸、メチルリトコール酸、ケノデオキシコール酸塩、リトコール酸、リトコール酸塩などが含まれる。タウロコール酸および/またはタウロコール酸塩は、本明細書ではTCAと呼ばれる。本明細書で使用される胆汁酸への任意の言及は、胆汁酸、1つおよび1つだけの胆汁酸、1つまたは複数の胆汁酸、あるいは少なくとも1つの胆汁酸への言及を含む。したがって、「胆汁酸」、「胆汁酸塩」、「胆汁酸/塩」、「胆汁酸(複数)」、「胆汁酸塩(複数)」、および「胆汁酸/塩(複数)」という用語は、特に明記しない限り、本明細書で交換可能に使用される。本明細書で使用される胆汁酸への任意の言及は、胆汁酸またはその塩への言及を含む。さらに、薬学的に許容される胆汁酸エステルは、任意選択で、本明細書に記載の「胆汁酸」、例えば、アミノ酸(例えば、グリシンまたはタウリン)に抱合された胆汁酸/塩として利用される。他の胆汁酸エステルには、例えば、置換または非置換のアルキルエステル、置換または非置換のヘテロアルキルエステル、置換または非置換のアリールエステル、置換または非置換のヘテロアリールエステルなどが含まれる。例えば、「胆汁酸」という用語は、グリシンまたはタウリンのいずれかと抱合されたコール酸:それぞれ、グリココール酸およびタウロコール酸(およびそれらの塩)を含む。本明細書で使用される胆汁酸への任意の言及は、天然にまたは合成的に調製された同一の化合物への言及を含む。さらに、本明細書で使用される成分(胆汁酸またはその他)への任意の単数の言及は、そのような成分の1つおよび1つだけ、1つまたは複数、あるいは少なくとも1つへの言及を含むことを理解されたい。同様に、本明細書で使用される構成要素への複数の言及は、特に断りのない限り、そのような構成要素の1つおよび1つだけ、1つまたは複数、あるいは少なくとも1つへの言及を含む。
【0079】
「対象」、「患者」、「参加者」、または「個体」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、例えば、本明細書に記載の障害に罹患している哺乳動物および非哺乳動物を指す。哺乳動物の例には、哺乳網の任意のメンバー:ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、および他の類人猿およびサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、およびネコなどの飼育動物;ラット、マウス、モルモットなどのげっ歯類を含む実験動物が含まれるが、これらに限定されない。非哺乳動物の例には、鳥類、魚類などが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で提供される方法および組成物の一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0080】
本明細書で使用される「約」という用語は、記載された値の10%以内の任意の値を含む。
【0081】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、組成物と本明細書に記載の方法で投与される組成物の両方の開示を含む。さらに、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載の「製剤」、経口剤形または直腸剤形であるか、あるいはそれらを含む。
【0082】
「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」という用語、および本明細書で使用される他の文法上の同等物には、症状を緩和、抑制または軽減する、疾患または状態の重症度を軽減または抑制する、疾患または状態の発生を低減する、疾患または状態の再発を低減または抑制する、疾患または状態の発症を遅らせる、疾患または状態の再発を遅らせる、疾患または状態を軽減または改善する、症状の根本的な原因を改善する、疾患または状態を阻害する、例えば、疾患または状態の進行を阻止する、疾患または状態を緩和する、疾患または状態の退行を引き起こす、病気や状態によって引き起こされた状態を緩和する、または病気や状態の症状を停止させることが含まれる。これらの用語はさらに、治療効果(therapeutic benefit)を達成することを含む。治療効果とは、治療されている基礎疾患の根絶または改善、および/または患者に改善が観察されるような基礎疾患関連の1つまたは複数の生理学的症状の根絶または改善を意味する。
【0083】
本明細書で使用される「有効量」または「治療有効量」という用語は、例えば、処置されている疾患または状態の1つまたは複数の症状をある程度緩和するなど、対象または個体において所望の結果を達成する、投与されている少なくとも1つの薬剤(例えば、治療活性物質)の十分な量を指す。特定の例において、結果は、疾患の徴候、症状、または原因の減少および/または緩和、あるいは生物学的システムの任意の他の所望の変化である。特定の例において、治療的使用のための「有効量」は、疾患の臨床的に有意な軽減を提供するために必要とされる、本明細書に記載の薬剤を含む組成物の量である。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、用量漸増試験などの任意の適切な手法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、ASBTIの「治療有効量」または「有効量」は、対象または個体における胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患を処置するのに十分なASBTIの量を指す。
【0084】
本明細書で使用される「投与する」、「投与すること」、「投与」などの用語は、生物学的作用が所望される部位への薬剤または組成物の送達を可能にするために使用され得る方法を指す。これらの方法には、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内または注入を含む)、局所投与および直腸投与が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の薬剤および方法とともに任意選択で使用される投与技術は、例えば、Goodman and Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, current ed.; Pergamon; and Remington's, Pharmaceutical Sciences (current edition), Mack Publishing Co., Easton, Paにおいて見られ、これらはすべて、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、本明細書に記載される薬剤および組成物は経口投与される。
【0085】
「ASBT阻害剤」という用語は、頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送または任意の回復性胆汁酸塩輸送を阻害する化合物を指す。頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体(ASBT)という用語は、回腸胆汁酸輸送体(IBAT)という用語と交換可能に使用される。
【0086】
本発明の組成物に関連して使用される場合、「薬学的に許容される」という句は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与されたときに、生理学的に忍容性のあるものでありかつ通常は有害な反応を生じないそのような組成物の分子実体および他の成分を指す。好ましくは、本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」とは、連邦政府または州政府の規制当局によって承認された、または哺乳動物、より具体的にはヒトで使用するために米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方に掲載されていることを意味する。
【0087】
様々な実施形態において、本明細書に記載の薬学的に許容される塩には、非限定的な例として、硝酸塩、塩化物、臭化物、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、亜サリチル酸塩、マレイン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、アムソン酸塩(amsonate)、パモ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メシル酸塩などが含まれる。さらに、薬学的に許容される塩には、非限定的な例として、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム依存性またはカリウム)、アンモニウム塩などが含まれる。
【0088】
本明細書で使用する場合、「絶食状態(fasted state)」という用語は、対象が最後の食事を完全に消化吸収し、対象のインスリンレベルが低レベルまたはベースラインレベルである状態として定義される。いくつかの実施形態では、絶食状態は、18歳以上の対象について少なくとも4時間食物を摂取していない状態として定義される。いくつかの実施形態では、絶食状態は、小児対象について少なくとも2時間食物を摂取していない状態として定義される。いくつかの実施形態では、絶食状態は、食事の約30分前の状態として定義される。
【0089】
本明細書で使用される場合、絶食患者は、いかなる食物も食べていない患者、すなわち、ASBTIの投与前少なくとも4時間(18歳以上の対象について)またはASBTIの投与前少なくとも2時間(小児対象について)、およびASBTIの投与の少なくとも30分後に、絶食している患者として定義される。ASBTIは、任意選択で、絶食期間中に水と共に投与され、水は自由に摂取することができる。
【0090】
本明細書で使用される場合、忍容性(tolerability)とは、薬物の有害作用が患者によって耐容され得る程度を指す。特定の実施形態では、消化管(GI)忍容性とは、患者がGI有害作用を許容する程度を指す。いくつかの実施形態では、GI忍容性の改善は、1つまたは複数のGI有害作用の低減、最小化、予防、改善、または排除を含む。
【0091】
胆汁酸
胆汁は、水、電解質、および多数の有機分子(胆汁酸、コレステロール、リン脂質、およびビリルビンなど)を含む。胆汁は肝臓から分泌されて胆嚢に貯蔵され、脂肪分の多い食事を摂取することにより胆嚢が収縮すると、胆汁は胆管を通過して腸に入る。胆汁酸/塩は、小腸での脂肪および脂溶性ビタミンの消化および吸収に重要である。成人は、一日に400~800mLの胆汁を生成する。胆汁の分泌は2段階で生じると考えることができる。最初に、肝細胞が胆汁を毛細胆管に分泌し、そこから胆汁が胆管に流れ込み、この肝胆汁は、大量の胆汁酸、コレステロール、およびその他の有機分子を含有する。次に、胆汁が胆管を通って流れるときに、胆管上皮細胞からの水っぽい重炭酸塩に富む分泌物の添加によって胆汁が修飾される。胆汁は、胆嚢に貯蔵されている間に、通常5倍に濃縮される。
【0092】
胆汁の流れは絶食時に最も少なく、その大部分は濃縮のために胆嚢に向けられる。摂取した食事の粥状液が小腸に入ると、酸ならびに部分的に消化された脂肪およびタンパク質がコレシストキニンおよびセクレチンの分泌を刺激し、これらは両方とも胆汁の分泌および流れに重要である。コレシストキニン(コレシスト=胆嚢およびキニン=運動)は、胆嚢および総胆管の収縮を刺激し、結果として腸への胆汁の送達をもたらすホルモンである。コレシストキニンの放出のための最も強力な刺激は、十二指腸における脂肪の存在である。セクレチンは十二指腸の酸に反応して分泌されるホルモンであり、胆管細胞を刺激して重炭酸塩および水を分泌し、それによって胆汁の量を増やして腸への流出を増加させる。
【0093】
胆汁酸/塩はコレステロールの誘導体である。食事の一部として摂取されるかあるいは肝臓での合成に由来するコレステロールは、肝細胞において胆汁酸/塩に変換される。このような胆汁酸/塩の例には、コール酸およびケノデオキシコール酸が含まれ、これらは次にアミノ酸(グリシンまたはタウリンなど)に抱合され、毛細胆管に能動的に分泌される抱合形態を生成する。ヒトで最も豊富な胆汁酸塩はコール酸塩およびデオキシコール酸塩であり、それらは通常、グリシンまたはタウリンのいずれかと抱合され、それぞれグリココール酸塩またはタウロコール酸塩を生成する。
【0094】
遊離コレステロールは、水溶液中では実質的に不溶性であるが、胆汁中では胆汁酸/塩および脂質の存在によって可溶性になる。胆汁酸/塩の肝臓合成は、体内でのコレステロール分解の大部分を占める。ヒトの場合、毎日およそ500mgのコレステロールが胆汁酸/塩に変換され、胆汁中に排出される。したがって、胆汁への分泌は、コレステロールを除去するための主要な経路である。毎日大量の胆汁酸/塩が腸に分泌されるが、体から失われるのは比較的少量である。これは、十二指腸に送達された胆汁酸/塩の約95%が、「腸肝循環」として知られるプロセスによって回腸内の血液に吸収されて戻るからである。
【0095】
回腸からの静脈血はまっすぐに門脈に入り、したがって肝臓の類洞を通過する。肝細胞は、類洞血液から胆汁酸/塩を非常に効率的に抽出し、健康な肝臓から体循環に逃れることはほとんどない。次に、胆汁酸/塩は肝細胞を横切って輸送され、毛細胆管に再分泌される。この腸肝循環の正味の効果は、各胆汁酸塩分子が約20回、多くの場合1回の消化段階中に2~3回再利用されることである。胆汁生合成はコレステロールの主要な代謝運命を表し、平均的な成人が代謝過程で消費するコレステロールの約800mg/日の半分超を占める。これに比べて、ステロイドホルモンの生合成は、1日あたり約50mgのコレステロールしか消費しない。1日あたり400mgをはるかに超える胆汁酸塩が必要であり、腸に分泌され、これは、胆汁酸塩をリサイクルさせることによって達成される。小腸の上部領域に分泌される胆汁酸塩のほとんどは、小腸の下端でそれらが乳化させた食事性脂質とともに吸収される。それらは食事性脂質から分離され、再利用のために肝臓に戻される。このように、リサイクルされることにより、毎日20~30gの胆汁酸塩が小腸に分泌されることが可能となる。
【0096】
胆汁酸/塩は両親媒性であり、コレステロール由来の部分は疎水性(脂溶性)部分と極性(親水性)部分の両方を含むが、アミノ酸抱合体は一般に極性で親水性である。この両親媒性により、胆汁酸/塩が2つの重要な機能:脂質凝集体の乳化と、水性環境への脂質の可溶化および輸送:を果たすことが可能となる。胆汁酸/塩は、食事性脂肪の粒子に対して洗剤作用を有し、脂肪球を分解または乳化させる。乳化は、脂肪滴の内部にアクセスできないリパーゼによる消化に利用可能な脂肪の表面積を大幅に増加させるので重要である。さらに、胆汁酸/塩は脂質担体であり、ミセルを形成することによって多くの脂質を可溶化することができ、脂溶性ビタミンの輸送および吸収に重要である。
【0097】
本明細書で使用される「非全身性」または「最小限に吸収される」という用語は、投与された化合物の低い全身性バイオアベイラビリティおよび/または吸収を指す。いくつかの実施形態において、非全身性化合物は、実質的に全身的に吸収されない化合物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTI組成物は、ASBTIを遠位回腸、結腸、および/または直腸に送達し、全身に送達しない(例えば、ASBTIのかなりの部分は全身的に吸収されない)。いくつかの実施形態において、非全身性化合物の全身吸収は、投薬量の<0.1%、<0.3%、<0.5%、<0.6%、<0.7%、<0.8%、<0.9%、<1%、<1.5%、<2%、<3%、または<5%(重量%またはmol%)である。いくつかの実施形態において、非全身性化合物の全身吸収は、投薬量の10%未満(<10%)である。いくつかの実施形態において、非全身性化合物の全身吸収は、投薬量の15%未満(<15%)である。いくつかの実施形態において、非全身性化合物の全身吸収は、投薬量の25%未満(<25%)である。別のアプローチでは、非全身性ASBTIは、全身性ASBTI(例えば、化合物100A、100C)の全身性バイオアベイラビリティと比較してより低い全身性バイオアベイラビリティを有する化合物である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非全身性ASBTIのバイオアベイラビリティは、全身性ASBTI(例えば、化合物100A、100C)のバイオアベイラビリティの<30%、<40%、<50%、<60%、または<70%である。
【0098】
別の代替アプローチでは、本明細書に記載の組成物は、ASBTIの投与された用量の10%未満を全身に送達するように製剤化(処方)される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、ASBTIの投与された用量の20%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、ASBTIの投与された用量の30%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、ASBTIの投与された用量の40%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、ASBTIの投与された用量の50%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、ASBTIの投与された用量の60%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、ASBTIの投与された用量の70%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、全身吸収は、総循環量、投与後にクリアランスされた量などを含む、任意の適切なやり方で決定される。
【0099】
ASBT阻害剤
本発明の方法の様々な実施形態において、ASBT阻害剤が対象に投与される。ASBT阻害剤(ASBTI)は、遠位回腸、結腸および/または直腸を含む消化管(GI)遠位部での胆汁酸のリサイクルを低減または阻害する。頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送の阻害は、胆汁酸の腸肝循環を妨害し、結果的により多くの胆汁酸が糞便に排泄され、全身における胆汁酸レベルの低下をもたらし、それによって胆汁酸媒介肝障害および関連する影響及び合併症を低減する。特定の実施形態では、ASBTIは全身的に吸収される。特定の実施形態では、ASBTIは全身的に吸収されない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるASBTIは、非全身性になるように修飾または置換される。
【0100】
特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、1つまたは複数のキラル中心を有する。したがって、すべての立体異性体が本明細書において想定される。様々な実施形態において、本明細書に記載の化合物は、光学活性体またはラセミ体の形態で存在する。本発明の化合物は、本明細書に記載の治療上有用な特性を有する、ラセミ体、光学活性体、位置異性体および立体異性体の形態、またはそれらの組み合わせを包含することを理解されたい。光学活性体の調製は、任意の適切な方法で達成され、非限定的な例として、再結晶技術によるラセミ体の分割によって、光学活性出発物質からの合成によって、キラル合成によって、またはキラル固定相を使用するクロマトグラフィー分離によって達成される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の異性体の混合物が、本明細書に記載の治療化合物として利用される。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、1つまたは複数のキラル中心を含む。これらの化合物は、エナンチオ選択的合成および/またはエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物の分離を含む、任意の手段によって調製される。化合物およびその異性体の分割は、非限定的な例として、化学的プロセス、酵素的プロセス、分別結晶、蒸留、クロマトグラフィーなどを含む、任意の手段によって達成される。
【0101】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化3】
である。
【0102】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化4】
(マラリキシバット塩化物、LUM-001、SHP625、ロピキシバット塩化物)、またはその代替の薬学的に許容される塩である。
【0103】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化5】
(ボリキシバット(volixibat)、(2R,3R,4S,5R,6R)-4-ベンジルオキシ-6-{3-[3-((3S,4R,5R)-3-ブチル-7-ジメチルアミノ-3-エチル-4-ヒドロキシ-1,1-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]チエピン-5-イル)-フェニル]-ウレイド}-3,5-ジヒドロキシ-テトラヒドロ-ピラン-2-イルメチル)硫酸水素塩)、またはその薬学的に許容される塩である。
【0104】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化6】
(LUM-002;SHP626;SAR548304;ボリキシバットカリウム)、またはその代替の薬学的に許容される塩である。
【0105】
様々な実施形態において、ASBTIは、
【化7】
(オデビキシバット(odevixibat);AZD8294;WH010706;AR-H064974;SCHEMBL946468;A4250;1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-a-[N-((S)-1-カルボキシプロピル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン)、またはその薬学的に許容される塩である。
【0106】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化8】
(エロビキシバット(elobixibat);2-[[(2R)-2-[[2-[(3,3-ジブチル-7-メチルスルファニル-1.1-ジオキソ-5-フェニル-2,4-ジヒドロ-1λ6,5-ベンゾチアゼピン-8-イル)オキシ]アセチル]アミノ]-2-フェニルアセチル]アミノ]酢酸)、またはその薬学的に許容される塩である。
【0107】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化9】
(GSK2330672;リネリキシバット(linerixibat);3-((((3R,5R)-3-ブチル-3-エチル-7-(メチルオキシ)-1,1-ジオキシド-5-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-8-イル)メチル)アミノ)ペンタン二酸)、またはその薬学的に許容される塩である。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物に使用されるASBTIは、マラリキシバット(例えば、マラリキシバット塩化物として)、ボリキシバット(例えば、ボリキシバットカリウムとして)、またはオデビキシバット(A4250)、またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物に使用されるASBTIは、マラリキシバット、またはその薬学的に許容される塩である。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物に使用されるASBTIは、ボリキシバット、またはその薬学的に許容される塩である。
【0111】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物に使用されるASBTIは、オデビキシバット、またはその薬学的に許容される塩である。
【0112】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物において使用されるASBTIは、エロビキシバット、またはその薬学的に許容される塩である。
【0113】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物において使用されるASBTIは、GSK2330672、またはその薬学的に許容される塩である。
【0114】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、異なるASBTIの混合物を含み得る;例えば、ASBTIは、マラリキシバット、ボリキシバット、オデビキシバット、GSK2330672、エロビキシバット、またはそれらの様々な組み合わせを含む組成物であり得る。
【0115】
胆汁うっ滞を処置し、かつ消化器系有害作用を最小限にするための方法
本明細書では、肝疾患を有する対象における胆汁うっ滞を処置するための方法が提供される。この方法は、処置を必要とする対象に頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTI)を投与することを含む。ASBTIは、マラリキシバットまたはボリキシバット、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。ASBTIは、約100μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。
【0116】
必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患を処置するための方法であって、食物の摂取前に治療有効量のASBTIを対象に投与することを含み、対象がASBTIの投与に関連する1つまたは複数の副作用の頻度および/または重症度の低減を経験する方法が本明細書において提供される。この方法は、食物の摂取前に、処置を必要とする対象にASBTIを投与することを含む。特定の実施形態では、ASBTIは、マラリキシバットまたはボリキシバット、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。ASBTIは、約100μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。
【0117】
必要とする対象におけるASBTIの投与に関連する1つまたは複数の副作用を低減、最小化、予防、改善、または排除するための方法であって、食物の摂取前に治療有効量のASBTIを対象に投与することを含む方法が本明細書において提供される。特定の実施形態では、ASBTIが食物の摂取後、食物と同時にまたは食物と混合して投与される場合の副作用と比較して、ASBTIの投与に関連する1つまたは複数の副作用が低減、最小化、予防、改善、または排除される。
【0118】
特定の実施態様では、1つまたは副作用は、下痢、軟便、吐き気(悪心)、胃腸痛、腹痛、痙攣、肛門直腸不快感、またはそれらの組み合わせである。
【0119】
特定の実施形態では、ASBTIは、絶食状態で対象に投与される。特定の実施形態では、ASBTIは、食物の摂取の約1分未満前、約5分未満前、約10分未満前、約15分未満前、約20分未満前、約30分未満前、または約60分未満前に投与される。特定の実施態様において、ABSTIは、食物の摂取直前に投与される。
【0120】
様々な実施形態において、肝疾患は胆汁うっ滞性肝疾患である。いくつかの実施形態では、肝疾患は、PFIC、ALGS、PSC、胆道閉鎖症、妊娠性肝内胆汁うっ滞症、PBC、上述の胆汁うっ滞性肝疾患のいずれか、またはそれらの様々な組み合わせである。
【0121】
特定の実施形態において、胆汁うっ滞性肝疾患は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)、PFIC1型、PFIC2型、PFIC3型、アラジール症候群、デュビン・ジョンソン症候群、胆道閉鎖症、葛西手術後の胆道閉鎖症、肝移植後の胆道閉鎖症、肝移植後の胆汁うっ滞症、肝移植後関連肝疾患、腸管不全合併肝障害(intestinal failure associated liver disease)、胆汁酸媒介性肝損傷、小児原発性硬化性胆管炎、MRP2欠損症候群、新生児硬化性胆管炎、小児閉塞性胆汁うっ滞症、小児非閉塞性胆汁うっ滞症、小児肝外胆汁うっ滞症、小児肝内胆汁うっ滞症、小児原発性肝内胆汁うっ滞症、小児続発性肝内胆汁うっ滞症、良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC)、BRIP1型、BRIC2型、BRIC3型、中心静脈栄養関連の胆汁うっ滞症、腫瘍随伴性胆汁うっ滞症、スタウファー(Stauffer)症候群、薬剤関連の胆汁うっ滞症、感染関連の胆汁うっ滞症、または胆石症である。いくつかの実施形態では、胆汁性肝疾患は、小児型の肝疾患である。いくつかの実施形態では、対象は、妊娠性肝内胆汁うっ滞(ICP)を有する。
【0122】
特定の実施形態において、胆汁うっ滞性肝疾患は、黄疸、掻痒症、肝硬変、高胆汁血症、新生児呼吸窮迫症候群、肺炎、胆汁酸の血清濃度の増加、胆汁酸の肝濃度の増加、ビリルビンの血清濃度の増加、肝細胞損傷、肝瘢痕化、肝不全、肝肥大、黄色腫、吸収不良、脾腫、下痢、膵炎、肝細胞壊死、巨細胞形成、肝細胞癌、消化管出血、門脈圧亢進症、聴力損失、倦怠感、食欲不振、無食欲症(anorexia)、特異臭、暗色尿、薄い便(light stool)、脂肪便、成長障害、および/または腎不全から選択される1つまたは複数の症状を特徴とする。
【0123】
様々な実施形態において、肝疾患はPFIC2であり、対象はABCB11遺伝子に非短縮型変異(non-truncating mutation)を有する。様々な実施形態において、ABCB11遺伝子における非短縮型変異は、ミスセンス変異である。様々な実施形態において、ミスセンス変異は、Byrne, et al., “Missense Mutations and Single Nucleotide Polymorphisms in ABCB11 Impair Bile Salt Export Pump Processing and Function or Disrupt Pre-Messanger RNA Splicing,” Hepatology, 49:553-567 (2009)に列挙されている変異の1つから選択することができ、この文献はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
様々な実施形態において、対象は、BSEP欠損症に関連する、それによって引き起こされる、または部分的に引き起こされる状態を有する。特定の実施形態において、BSEP欠損症に関連する、それによって引き起こされる、または部分的に引き起こされる状態は、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、PFIC2、良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC)、妊娠性肝内胆汁うっ滞症(ICP)、薬物誘発性胆汁うっ滞症、経口避妊薬誘発性胆汁うっ滞症、胆道閉鎖症、またはそれらの組み合わせである。
【0125】
様々な実施形態において、患者は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18歳未満の小児患者である。特定の実施形態では、小児対象は、新生児、早産児、乳児、幼児、未就学児、学齢期の子供、思春期前の子供、思春期後の子供、青年期の若者、または18歳未満のティーンエイジャーである。いくつかの実施形態では、小児対象は、新生児、早産児、乳児、幼児、未就学児、または学齢期の子供である。いくつかの実施形態では、小児対象は、新生児、早産児、乳児、幼児、または未就学児である。いくつかの実施形態では、小児対象は、新生児、早産児、乳児、または幼児である。いくつかの実施形態では、小児対象は、新生児、早産児、または乳児である。いくつかの実施形態では、小児対象は新生児である。いくつかの実施形態では、小児対象は乳児である。いくつかの実施形態では、小児対象は幼児である。様々な実施形態では、小児患者は、PFIC2、PFIC1、またはALGSを有する。いくつかの実施形態では、患者は、18、20、30、40、50、60、または70歳を超える成人である。いくつかの患者において、成人患者はPSCを有する。いくつかの実施形態では、小児患者は、正常未満の成長、身長、または体重をもたらす小児の胆汁うっ滞状態を有する。
【0126】
特定の実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のASBTIの非全身投与を含む。特定の実施形態では、方法は、それを必要とする個体の遠位回腸および/または結腸および/または直腸を含む消化管をASBTIと接触させることを含む。様々な実施形態において、本発明の方法は、腸細胞内(intraenterocyte)の胆汁酸の減少、あるいは胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患によって引き起こされる肝細胞または腸構造への損傷の減少を生じさせる。
【0127】
様々な実施形態において、本発明の方法は、治療有効量の本明細書に記載のいずれかのASBTIを個体の回腸または結腸に送達することを含む。
【0128】
様々な実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のASBTIの投与を含む、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患による肝細胞または腸の構造もしくは細胞への損傷を低減することを含む。特定の実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のASBTIを、それを必要とする個体に投与することによって、腸細胞内の胆汁酸/塩を減少させることを含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、本明細書に記載の化合物のいずれかを個体に投与することにより、胆汁酸塩のリサイクルの阻害を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるASBTIは、投与すると全身的に吸収される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTIは全身的に吸収されない。いくつかの実施形態では、本明細書のASBTIは、個体に経口投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTIは、個体の遠位回腸に送達されおよび/またはそこで放出される。
【0130】
様々な実施形態において、個体の遠位回腸にASBTI(例えば、本明細書に記載の任意のASBTI)を接触させることにより、胆汁酸の再取り込みが阻害され、遠位回腸および/または結腸および/または直腸のL細胞の近傍における胆汁酸/塩の濃度が増加し、それによって腸細胞内の胆汁酸が減少し、血清および/または肝臓の胆汁酸レベルが低下し、全体の血清胆汁酸負荷が減少し、および/または胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患によって引き起こされる回腸構造への損傷が減少する。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、血清および/または肝臓の胆汁酸レベルの低下は、高胆汁血症および/または胆汁うっ滞性疾患を改善する。
【0131】
本明細書に記載の化合物の投与は、非限定的な例として、経口、腸内(enteric)、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)、鼻腔内、頬側(buccal)、局所、直腸、または経皮投与経路による方法を含む、任意の適切な方法で達成することができる。本明細書に記載の任意の化合物または組成物は、新生児または乳児を処置するのに適切な方法または製剤で投与され得る。本明細書に記載の任意の化合物または組成物は、新生児または乳児を処置するために経口製剤(例えば、固体または液体)で投与され得る。本明細書に記載の任意の化合物または組成物は、食物の摂取前、食物と共に、または食物の摂取後に投与され得る。
【0132】
特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物または化合物を含む組成物は、予防的および/または治療的処理のために投与される。治療的適用において、組成物は、疾患または状態の症状を治癒させるか、または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で、すでに疾患または状態に罹患している個体に投与される。様々な場合において、この使用に有効な量は、疾患または状態の重症度および経過、以前の治療、個体の健康状態、体重、および薬物に対する反応、ならびに処置する医師の判断に依存する。
【0133】
予防的用途において、本明細書に記載の化合物または化合物を含む組成物は、特定の疾患、障害または状態に罹患しやすいか、そうでなければそのリスクがある個体に投与され得る。この使用の特定の実施形態において、投与される化合物の正確な量は、個体の健康状態、体重などに依存する。さらに、いくつかの場合において、本明細書に記載の化合物または組成物が個体に投与される場合、この使用のための有効量は、疾患、障害または状態の重症度および経過、以前の治療、個体の健康状態および薬物への反応、および処置する医師の判断に依存する。
【0134】
本発明の方法の特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物または組成物の選択された用量の投与後に、個体の状態が改善しない場合、医師の裁量により、本明細書に記載の化合物または組成物が任意選択で慢性的に投与され、すなわち、個体の障害、疾患、または状態の症状を改善するか、さもなければ制御または制限するために、個体の生涯にわたる期間を含む、長期間にわたり投与される。
【0135】
本発明の方法の特定の実施形態において、所与の薬剤の有効量は、特定の化合物、疾患または状態およびその重症度、処置を必要とする対象または宿主の個性(例えば、体重)などのいくつかの因子のうちの1つまたは複数に応じて変動し、例えば、投与されている特定の薬剤、投与経路、処置されている状態、および処置されている対象または宿主などの、症例を取り巻く特定の環境に従って決定される。いくつかの実施形態において、投与される用量は、最大耐用量までの用量を含む。いくつかの実施形態において、投与される用量は、新生児または乳児による最大耐用量までの用量を含む。
【0136】
本発明の方法の様々な実施形態において、所望の用量は、単回投与で、あるいは同時に(または短期間にわたって)または適切な間隔で、例えば1日に2回、3回、4回またはそれ以上のサブ用量として投与される分割投与で、都合よく提供される。様々な実施形態において、単回用量(single dose)のASBTIが、6時間ごと、12時間ごと、24時間ごと、48時間ごと、72時間ごと、96時間ごと、5日ごと、6日ごと、または週に1回、投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIの総単回用量(total single dose)は、以下に記載される範囲内である。
【0137】
本発明の方法の様々な実施形態において、患者の状態が改善する場合、医師の裁量により、ASBTIが任意選択で継続的に与えられる;あるいは、投与されている薬物の用量が、特定の期間(すなわち、「休薬」)の間、一時的に減らされるか、または一時的に中断される。休薬期間の長さは、任意選択で、2日~1年の間で変動し、単なる例示として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、または365日が含まれる。休薬期間中の用量減少は、元の用量の10%~100%を含み、単なる例示として、元の用量の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%が含まれる。いくつかの実施形態において、ASBTIの総単回用量は、以下に記載される範囲内である。
【0138】
患者の状態の改善が生じると、必要に応じて維持用量を投与する。その後、投薬量または投与頻度、あるいはその両方が、症状の関数として、改善された疾患、障害または状態が保持されるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、患者は、あらゆる症状の再発時に長期的に間欠的な処置を必要とする。
【0139】
特定の例では、個々の治療レジメンに関して多数の変数があり、これらの推奨値からのかなりの逸脱が、本明細書に記載される範囲内であると考えられる。本明細書に記載の投薬量は、非限定的な例として、使用される化合物の活性、処置される疾患または状態、投与様式、個々の対象の要件、処置される疾患または状態の重症度、および開業医の判断などの、多くの変数に応じて任意選択で変更される。
【0140】
このような治療レジメンの毒性および治療有効性は、LD50(母集団の50%致死量)およびED50(母集団の50%治療有効用量)の決定を含むがこれらに限定されない、細胞培養物または実験動物における薬学的手順によって任意選択で決定される。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50とED50の比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。特定の実施形態において、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータが、ヒトで使用するための投薬量の範囲を策定する際に使用される。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物の投薬量は、最小限の毒性を有するED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、任意選択でこの範囲内で変動する。
【0141】
特定の実施形態において、使用または投与される組成物は、吸収阻害剤、担体、ならびにコレステロール吸収阻害剤、腸内分泌ペプチド(enteroendocrine peptide)、ペプチダーゼ阻害剤、展着剤(spreading agent)、および湿潤剤のうちの1つまたは複数を含む。
【0142】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、経口剤形を調製するために使用されるまたは経口投与される組成物は、吸収阻害剤、経口的に適切な担体、任意選択のコレステロール吸収阻害剤、任意選択の腸内分泌ペプチド、任意選択のペプチダーゼ阻害剤、任意選択の展着剤、および任意選択の湿潤剤を含む。特定の実施形態において、経口投与された組成物は、肛門直腸反応を誘発する。特定の実施形態において、肛門直腸反応は、結腸および/または直腸における細胞(例えば、結腸、回腸、直腸、またはそれらの組み合わせの上皮層におけるL細胞)による1つまたは複数の腸内分泌物の分泌の増加である。いくつかの実施形態では、肛門直腸反応は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間持続する。他の実施形態では、肛門直腸反応は、24時間~48時間持続するが、他の実施形態では、肛門直腸反応は、48時間を超える期間持続する。
【0143】
投薬量(Dosage)
様々な実施形態において、ASBTIは、マラリキシバットまたはボリキシバット、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0144】
様々な実施形態において、ASBTIは、食物の摂取前に対象に投与される。
【0145】
様々な実施形態において、患者へのASBTI投与の有効性および安全性は、7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(7αC4)の血清レベル、sBA濃度、7αC4のsBAに対する比(7αC4:sBA)、血清抱合型ビリルビン濃度、血清オートタキシン濃度、血清ビリルビン濃度、血清総コレステロール濃度、血清LDL-C濃度、血清ALT濃度、血清AST濃度、またはそれらの組み合わせを測定することによって監視される。様々な実施形態において、ASBTI投与の有効性は、観察者が報告する痒み報告アウトカム(ITCHRO(OBS))スコア、HRQoL(例えば、PedsQL)スコア、CSSスコア、黄色腫スコア、身長Zスコア、体重Zスコア、またはそれらの様々な組み合わせを監視することによって測定される。様々な実施形態において、この方法は、7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(7αC4)の血清レベル、sBA濃度、7αC4のsBAに対する比(7αC4:sBA)、血清抱合型ビリルビン濃度、血清総コレステロール濃度、血清LDL-C濃度、血清オートタキシン濃度、血清ビリルビン濃度、血清ALT濃度、血清AST濃度、またはそれらの組み合わせを監視することを含む。様々な実施形態において、この方法は、観察者が報告したかゆみ報告アウトカム(ITCHRO(OBS))スコア、体重Zスコア、HRQoL(例えば、PedsQL)スコア、黄色腫スコア、CSSスコア、身長Zスコア、またはそれらの様々な組み合わせを監視することを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、約または少なくとも約0.5μg/kg、1μg/kg、2μg/kg、3μg/kg、4μg/kg、5μg/kg、6μg/kg、7μg/kg、8μg/kg、9μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、85μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、240μg/kg、250μg/kg、280μg/kg、300μg/kg、360μg/kg、380μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、560μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、880μg/kg、900μg/kg、1,000μg/kg、1,100μg/kg、1,200μg/kg、1,300μg/kg、1,400μg/kg、1500μg/kg、1,600μg/kg、1,700μg/kg、1,800μg/kg、1,900μg/kg、または2,000μg/kgの用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約1μg/kg、2μg/kg、3μg/kg、4μg/kg、5μg/kg、6μg/kg、7μg/kg、8μg/kg、9μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、85μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、240μg/kg、250μg/kg、280μg/kg、300μg/kg、360μg/kg、380μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、560μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、880μg/kg、900μg/kg、1,000μg/kg、1,100μg/kg、1,200μg/kg、1,300μg/kg、1,400μg/kg、1,500μg/kg、1,600μg/kg、1,700μg/kg、1,800μg/kg、1,900μg/kg、2,000、または2,100μg/kgを超えない用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約または少なくとも約0.5mg/日、1mg/日、2mg/日、3mg/日、4mg/日、5mg/日、6mg/日、7mg/日、8mg/日、9mg/日、10mg/日、11mg/日、12mg/日、13mg/日、14mg/日、15mg/日、16mg/日、17mg/日、18mg/日、19mg/日、20mg/日、30mg/日、40mg/日、50mg/日、60mg/日、70mg/日、80mg/日、90mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、300mg/日、500mg/日、600mg/日、700mg/日、800mg/日、900mg/日、1000mg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約1mg/日、2mg/日、3mg/日、4mg/日、5mg/日、6mg/日、7mg/日、8mg/日、9mg/日、10mg/日、11mg/日、12mg/日、13mg/日、14mg/日、15mg/日、16mg/日、17mg/日、18mg/日、19mg/日、20mg/日、30mg/日、40mg/日、50mg/日、60mg/日、70mg/日、80mg/日、90mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、300mg/日、500mg/日、600mg/日、700mg/日、800mg/日、900mg/日、1,000mg/日、1,100mg/日以下の用量で投与される。
【0147】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、約140μg/kg/日~約1400μg/kg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約または少なくとも約0.5μg/kg/日、1μg/kg/日、2μg/kg/日、3μg/kg/日、4μg/kg/日、5μg/kg/日、6μg/kg/日、7μg/kg/日、8μg/kg/日、9μg/kg/日10μg/kg/日、15μg/kg/日、20μg/kg/日、25μg/kg/日、30μg/kg/日、35μg/kg/日、40μg/kg/日、45μg/kg/日、50μg/kg/日、100μg/kg/日、140μg/kg/日、150μg/kg/日、200μg/kg/日、240μg/kg/日、280μg/kg/日、300μg/kg/日、250μg/kg/日、280μg/kg/日、300μg/kg/日、360μg/kg/日、380μg/kg/日、400μg/kg/日、500μg/kg/日、560μg/kg/日、600μg/kg/日、700μg/kg/日、800μg/kg/日、880μg/kg、900μg/kg/日、1,000μg/kg/日、1,100μg/kg/日、1,200μg/kg/日、または1,300μg/kg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約1μg/kg/日、2μg/kg/日、3μg/kg/日、4μg/kg/日、5μg/kg/日、6μg/kg/日、7μg/kg/日、8μg/kg/日、9μg/kg/日10μg/kg/日、15μg/kg/日、20μg/kg/日、25μg/kg/日、30μg/kg/日、35μg/kg/日、40μg/kg/日、45μg/kg/日、50μg/kg/日、100μg/kg/日、140μg/kg/日、150μg/kg/日、200μg/kg/日、240μg/kg/日、280μg/kg/日、300μg/kg/日、250μg/kg/日、280μg/kg/日、300μg/kg/日、360μg/kg/日、380μg/kg/日、400μg/kg/日、500μg/kg/日、560μg/kg/日、600μg/kg/日、700μg/kg/日、800μg/kg/日、880μg/kg/日、900μg/kg/日、1,000μg/kg/日、1,100μg/kg/日、1,200μg/kg/日、1,300μg/kg/日、または1,400μg/kg/日を超えない用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約0.5μg/kg/日~約500μg/kg/日、約0.5μg/kg/日~約250μg/kg/日、約1μg/kg/日~約100μg/kg/日、約10μg/kg/日~約50μg/kg/日、約10μg/kg/日~約100μg/kg/日、約0.5μg/kg/日~約2000μg/kg/日、約280μg/kg/日~約1400μg/kg/日、約420μg/kg/日~約1400μg/kg/日、約250~約550μg/kg/日、約560μg/kg/日~約1400μg/kg/日、from700μg/kg/日~約1400μg/kg/日、約560μg/kg/日~約1200μg/kg/日、約700μg/kg/日~約1200μg/kg/日、約560μg/kg/日~約1000μg/kg/日、約700μg/kg/日~約1000μg/kg/日、約800μg/kg/日~約1000μg/kg/日、約200μg/kg/日~約600μg/kg/日、約300μg/kg/日~約600μg/kg/日、約400μg/kg/日~約500μg/kg/日、約400μg/kg/日~約600μg/kg/日、約400μg/kg/日~約700μg/kg/日、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日、約500μg/kg/日~約800μg/kg/日、約500μg/kg/日~約900μg/kg/日、約600μg/kg/日~約900μg/kg/日、約700μg/kg/日~約900μg/kg/日、約200μg/kg/日~約600μg/kg/日、約800μg/kg/日~約900μg/kg/日、約100μg/kg/日~約1500μg/kg/日、約300μg/kg/日~約2,000μg/kg/日、または約400μg/kg/日~約2000μg/kg/日の用量で投与される。
【0148】
いくつかの実施形態において、ASBTIは、1回あたり約30μg/kg~約1400μg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、1回あたり約0.5μg/kg~約2000μg/kg、1回あたり約0.5μg/kg~約1500μg/kg、1回あたり約100μg/kg~約700μg/kg、1回あたり約5μg/kg~約100μg/kg、1回あたり約10μg/kg~約500μg/kg、1回あたり約50μg/kg~約1400μg/kg用量、1回あたり約300μg/kg~約2000μg/kg、1回あたり約60μg/kg~約1200μg/kg、1回あたり約70μg/kg~約1000μg/kg、約70~1回あたりμg/kg~約700μg/kg、1回あたり80μg/kg~約1000μg/kg、1回あたり80μg/kg~約800μg/kg、100μg/kg~約800μg/1回あたりkg、1回あたり100μg/kg~約600μg/kg、1回あたり150μg/kg~約700μg/kg、1回あたり150μg/kg~約500μg/kg、1回あたり200μg/1回あたりkg~約400μg/kg、1回あたり200μg/kg~約300μg/kg、または1回あたり300μg/kg~約400μg/kgの用量で投与される。
【0149】
いくつかの実施形態において、ASBTIは、約0.5mg/日~約550mg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約1mg/日~約500mg/日、約1mg/日~約300mg/日、約1mg/日~約200mg/日、約2mg/日~約300mg/日、約2mg/日~約200mg/日、約4mg/日~約300mg/日、約4mg/日~約200mg/日、約4mg/日~約150mg/日、約5mg/日~約150mg/日、約5mg/日~約100mg/日、約5mg/日~約80mg/日、約5mg/日~約50mg/日、約5mg/日~約40mg/日、約5mg/日~約30mg/日、約5mg/日~約20mg/日、約5mg/日~約15mg/日、約10mg/日~約100mg/日、約10mg/日~約80mg/日、約10mg/日~約50mg/日、約10mg/日~約40mg/日、約10mg/日~約20mg/日、約20mg/日~約100mg/日、約20mg/日~約80mg/日、約20mg/日~約50mg/日、または約20mg/日~約40mg/日、または約20mg/日~約30mg/日の用量で投与される。
【0150】
いくつかの実施形態において、ASBTIは、1回あたり約200μg/kg~約400μg/kgの量で1日2回(BID)投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、約280μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、約20mg/日~約50mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、約5mg/日~約15mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、約560μg/kg/日~約1,400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約700μg/kg/日~約1,400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約700μg/kg/日~約900μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、約560μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、700μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、約200μg/kg/日~約600μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、ASBTIは、約400μg/kg/日~約600μg/kg/日の量で投与される。
【0151】
様々な実施形態において、ASBTIの用量は、第1の用量レベルである。様々な実施形態において、ASBTIの用量は、第2の用量レベルである。いくつかの実施形態において、第2の用量レベルは、第1の用量レベルよりも高い。いくつかの実施形態において、第2の用量レベルは、第1の用量レベルよりも約または少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍または100倍高い。いくつかの実施形態において、第2の用量レベルは、第1の用量レベルの約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、または150倍を超えない。
【0152】
様々な実施形態において、ASBTIは、上記の用量のうちの1つで、または上記の用量範囲のうちの1つの範囲内で、1日1回(QD)投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、上記の用量のうちの1つで、または上記の用量範囲のうちの1つの範囲内で、1日2回(BID)投与される。様々な実施形態において、ASBTIの用量は、毎日、隔日で、週に2回、または週に1回投与される。
【0153】
様々な実施形態において、ASBTIは、約または少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、48、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、または800週間、定期的に投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、48、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、または1000週間を超えない期間投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約または少なくとも約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、または10年の期間、定期的に投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または15年を超えない期間、定期的に投与される。
【0154】
胆汁うっ滞性肝疾患の症状の軽減または疾患関連検査値の変化
本発明の上記の方法の様々な実施形態において、ASBTIの投与は、胆汁うっ滞性肝疾患の症状の軽減または疾患関連検査値(disease-relevant laboratory measure)の変化(すなわち、患者の状態の改善)をもたらし、それは、約または少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、6か月、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、1年、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、23か月、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、4.5年、5年、5.5年、6年、6.5年、7年、8年、9年、または10年の間維持される。様々な実施形態において、症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、sBA濃度の減少、血清7αC4濃度の増加、7αC4:sBA比の増大、fBA排泄の増加、掻痒症の軽減、血清総コレステロール濃度の減少、血清LDL-Cコレステロール濃度の減少、ALTレベルの低減、生活の質尺度スコア(quality of life inventory score)の増加、倦怠感に関する生活の質尺度スコアの増加、黄色腫スコアの減少、血清オートタキシン濃度の減少、成長の増加、またはそれらの組み合わせを含む。様々な実施形態において、症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、ベースラインレベルと比較して決定される。すなわち、症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、1)患者に投与されるASBTIの用量レベルの変更の前、2)患者が従う投与レジメンの変更の前、3)ASBTIの投与の開始前、または4)患者における症状の軽減または疾患関連検査値の変化を目的として行われるその他のさまざまな変更の前の、症状の測定値または疾患関連検査値の変化と比較して決定される。様々な実施形態において、症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、統計的に有意な低減である。
【0155】
様々な実施形態において、胆汁うっ滞性肝疾患の症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、約または少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、6か月、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、1年、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、23か月、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、4.5年、5年、5.5年、6年、6.5年、7年、8年、9年、または10年の間、症状の漸進的な軽減または疾患関連検査値の変化として測定される。
【0156】
いくつかの実施形態では、患者は小児患者であり、症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、成長の増加または改善を含む。いくつかの実施形態では、成長の増加は、ベースラインと比較して測定される。様々な実施形態において、成長の増加は、身長Zスコアまたは体重Zスコアの増加として測定される。様々な実施形態において、身長Zスコアまたは体重Zスコアの増加は統計的に有意である。様々な実施形態において、身長Zスコア、体重Zスコア、またはその両方は、ベースラインに対して、少なくとも0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17.、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.6、0.7、0.8、または0.9増加する。いくつかの実施形態では、身長Zスコア、体重Zスコア、またはその両方は、約または少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、48、50、60、70、または72週間の期間、ASBTIの投与中に漸進的に増加する。
【0157】
様々な実施形態において、ASBTIの投与は、血清7αC4濃度の増加をもたらす。様々な実施形態において、血清7αC4濃度は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、または500倍に増加する。様々な実施形態において、血清7αC4濃度は、ベースラインに対して、約または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1,000%、または10,000%増加する。
【0158】
様々な実施形態において、ASBTIの投与は、7αC4:sBA比をベースラインに対して、約1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍または倍に高める。
【0159】
様々な実施形態において、ASBTIの投与は、fBA排泄の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、ASBTIの投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約100%、110%、115%、120%、130%、150%、200%、250%、275%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、1,000%、5,000%、10,000%または15,000%のfBA排泄の増加をもたらす。様々な実施形態において、fBA排泄は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100倍増加する。いくつかの実施形態では、fBA排泄は、ベースラインに対して、約または少なくとも約100μmol、150μmol、200μmol、250μmol、300μmol、400μmol、500μmol、600μmol、700μmol、800μmol、900μmol、1,000μmol、または1,500μmol増加する。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、fBA排泄の用量依存的な増加をもたらし、より高い用量のASBTIの投与は、対応するより高いレベルのfBA排泄をもたらす。様々な実施形態において、ASBTIは、ベースラインに対して少なくとも約または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100倍の胆汁酸分泌の増加をもたらすのに十分な用量で投与される。
【0160】
様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、31%、35%、40%、45%、50%、55%、57%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%のsBA濃度の減少をもたらす。
【0161】
いくつかの実施形態において、ASBTIの投与は、掻痒症の重症度の軽減をもたらす。様々な実施形態において、掻痒症の重症度は、ITCHRO(OBS)スコア、ITCHROスコア、CSSスコア、またはそれらの組み合わせを使用して測定される。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.25、2.5、または3の、1~4のスケールでのITCHRO(OBS)スコアの減少をもたらす。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、約または少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または10の、1~10のスケールでのITCHROスコアの減少をもたらす。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ITCHRO(OBS)スコア、ITCHROスコア、またはその両方のゼロへの減少をもたらす。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ITCHRO(OBS)スコアまたはITCHROスコアの1.0以下への減少をもたらす。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.25、2.5、または3の、CSSスコアの減少をもたらす。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、CSSスコアのゼロへの減少をもたらす。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のCSSスコア、ITCHRO(OBS)スコア、ITCHROスコア、またはそれらの組み合わせの減少をもたらす。様々な実施形態において、CSSスコア、ITCHRO(OBS)スコア、ITCHROスコア、またはそれらの組み合わせのベースラインと比較して減少した値が、日数の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%で観察される。
【0162】
いくつかの実施形態では、より高いベースラインITCHRO(OBS)スコアを有する患者は、より低いベースラインITCHRO(OBS)スコアを有する患者よりも、より大きな症状の軽減または疾患関連検査値の変化を示す。いくつかの実施形態では、少なくとも2、3、もしくは4のベースラインITCHRO(OBS)スコアまたは少なくとも4、5、6、7、8、9、もしくは10のITCHROスコアを有する患者は、掻痒スコアのより低いベースライン重症度を有する患者におけるより低い減少よりも、ベースラインと比較して症状のより大きな軽減または疾患関連検査値の大きな変化を有する。様々な実施形態において、PSCおよび少なくとも4のベースラインITCHROスコアを有する患者は、4未満のベースラインITCHROスコアを有する患者よりも、より大きな症状の軽減または疾患関連検査値の変化を示す。様々な実施形態において、本方法は、4未満のベースラインITCHROスコアを有する患者と比較して、患者のベースラインITCHROスコアが少なくとも4である場合に、その患者が、より大きな症状の軽減または疾患関連検査値の変化を有するであろうと予測することを含む。様々な実施形態において、より低い低減は、より大きい低減の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%もしくはそれら未満である。様々な実施形態において、ベースラインで少なくとも4のITCHROスコアを有する患者とベースラインで4未満のITCHROスコアを有する患者との間の症状の軽減または疾患関連検査値の変化の差(すなわち、より大きい低減とより小さい低減との間の差)は、第1の用量または第2の用量でのASBTIの初回投与の約または少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、6か月、25週間、26週間、27週間、28週間。29週間、30週間、31週間、32週間、33週間、34週間、35週間、36週間、37週間、38週間、39週間、40週間、41週間、42週間、43週間、44週間、45週間、46週間、47週間、48週間、49週間、50週間、51週間、52週間、1年、13か月。14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、23か月、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、4.5年、5年、5.5年、6年、6.5年、7年、8年、9年または10年後に測定される。
【0163】
様々な実施形態において、患者へのASBTIの投与によってもたらされる掻痒症の重症度の軽減は、患者におけるsBA濃度の減少と正に相関する。様々な実施形態において、患者におけるsBA濃度のより大きな減少は、そう痒症の重症度の対応するより大きな軽減と相関する。
【0164】
様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ベースラインと比較して、血清LDL-C濃度の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、血清LDL-C濃度は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%減少する
【0165】
いくつかの実施形態では、ASBTIの投与は、ベースラインと比較して、血清総コレステロール濃度の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、ASBTIの投与は、ベースラインと比較して、血清LDL-Cレベルの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、血清総コレステロール濃度、血清LDL-Cレベル、または両方は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%減少する。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1mg/dL、2mg/dL、3mg/dL、4mg/dL、5mg/dL、10mg/dL、12.5mg/dL、15mg/dL、20mg/dL、30mg/dL、40mg/dLまたは50mg/dLの血清総コレステロール濃度、血清LDL-Cレベル、またはその両方の減少をもたらす。
【0166】
様々な実施形態において、ASBTIの投与は、血清オートタキシン濃度の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、ASBTIの投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%のオートタキシン濃度の減少をもたらす。
【0167】
様々な実施形態において、ASBTIの投与は、生活の質尺度スコアの増加、または倦怠感に関する生活の質尺度スコアの増加をもたらす。生活の質尺度スコアは、健康関連の生活の質(HRQoL)スコアであり得る。いくつかの実施形態では、HRQoLスコアは、PedsQLスコアである。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、45%、または50%のPedsQLスコアまたは倦怠感に関するPedsQLスコアの増加をもたらす。
【0168】
様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ベースラインと比較して、黄色腫スコアの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、黄色腫スコアは、ベースラインに対して、約または少なくとも約2.5%、5%、10%、15%、20%、35%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%減少する。
【0169】
様々な実施形態において、ASBTIの投与は、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12、日、13日、14日、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年までに、症状の軽減または疾患関連検査値の変化をもたらす。
【0170】
様々な実施形態において、血清ビリルビン濃度は、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、1か月、5週、6週、7週、8週、2か月、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、4か月、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年の時点であるいはそれまでに、投与前ベースラインレベルまたは正常レベルである。
【0171】
様々な実施形態において、血清ALT濃度は、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、4か月、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年の時点であるいはそれまでに、投与前ベースラインレベルまたは正常レベルである。いくつかの実施形態において、ASBTIの投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、または15%のALTレベルの減少をもたらす。
【0172】
様々な実施形態において、血清ALT濃度、血清AST濃度、血清ビリルビン濃度、血清抱合型ビリルビン濃度、またはそれらの様々な組み合わせは、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、4か月、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年の時点であるいはそれまでに、正常範囲内であるか、または投与前ベースラインレベルである。様々な実施形態において、ASBTIの投与は、少なくとも約または約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、4か月、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年の期間、血清ビリルビン濃度、血清AST濃度、血清ALT濃度、血清アルカリホスファターゼ濃度、またはそれらのいくつかの組み合わせのベースラインからの統計的に有意な変化をもたらさない。様々な実施形態において、ベースラインで少なくとも4のITCHROスコアを有する成人患者について、ASBTIの投与は、少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、4か月、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週。32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年の期間、血清抱合型ビリルビン濃度のベースラインからの有意な変化をもたらさない。
【0173】
本発明の上記の方法の様々な実施形態において、ASBTIの投与は、それを必要とする対象におけるASBTIの投与に関連する1つまたは複数の副作用の低減、予防、改善または排除をもたらす。様々な実施形態において、副作用の頻度および/または重症度は、ASBTIが食物の摂取後、食物と同時に、または食物と混合して投与される場合の副作用と比較して低減される。様々な実施形態において、1つまたは複数の副作用は、下痢、軟便、吐き気、胃腸痛、腹痛、痙攣、肛門直腸不快感、またはそれらの組み合わせである。
【0174】
本発明の上記の方法の様々な実施形態において、ASBTIの投与は、ASBTIのGI忍容性の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、改善は、ASBTIが食事時にまたは食物の摂取直後に投与される場合のGI忍容性と比較される。
【0175】
いくつかの実施形態では、GI忍容性は、ASBTIが食事時もしくは食物の摂取直後に投与された場合のGI忍容性と比較して、少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%改善される。
【0176】
用量調節
様々な実施形態において、この方法は、患者に投与されるASBTIの投薬量を調節することを含む。調節は、ベースライン(例えば、ASBTIの投与前またはASBTIの投薬量を調節する(例えば、増加させる)前)での患者の7αC4:sBA比を決定すること、および第1の用量でASBTIを投与した後またはASBTIの投薬量を第2の用量に調節した(例えば、増加させた)後に7αC4:sBA比をさらに決定することを含む。7αC4:sBA比が、ベースラインから少なくとも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加しない場合、その比がベースラインに対して、少なくとも約1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加するまで、ASBTIの用量が増加される。様々な実施形態において、ASBTIの用量は、特定の7αC4:sBA比を達成および維持するように増減される。
【0177】
様々な実施形態において、調節することは、7αC4:sBA比が、最初にベースラインから少なくとも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加し、その後、減少し始めるか、あるいはベースラインよりも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍未満高い程度まで減少した場合、ASBTIの用量を第1の用量レベルから、第1の用量レベルよりも高い第2の用量レベルに増加させることを含む。用量レベルは、7αC4:sBA比が、ベースラインから、少なくとも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加するまで増やされる。
【0178】
いくつかの実施形態において、調節は、第1の用量のASBTIを患者に投与することを含む。7αC4:sBA比が増加しない場合、またはベースラインから少なくとも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加しない場合、患者は、次に、第1の用量よりも多い第2の用量のASBTIを投与される。患者に投与される用量は、7αC4:sBA比が、ベースラインから、少なくとも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加するまで増やされ続ける。
【0179】
様々な実施形態において、7αC4:sBA比は、ほぼ毎日、隔週、毎週、隔月、毎月、2か月ごと、3か月ごと、4か月ごと、5か月ごと、6か月ごと、または毎年測定され、ASBTIの用量は、その比が測定されるたびに必要に応じて調節される。
【0180】
医薬組成物
いくつかの実施形態において、ASBTIは、ASBTIを含む医薬組成物(組成物または医薬組成物)として投与される。本明細書に記載の任意の組成物は、回腸、直腸および/または結腸送達用に製剤化され得る。より具体的な実施形態では、組成物は、直腸および/または結腸への非全身送達または局所送達用に製剤化される。本明細書で使用される場合、結腸への送達は、S状結腸、横行結腸、および/または上行結腸への送達を含むことを理解されたい。さらにより具体的な実施形態では、組成物は、直腸および/または結腸への非全身送達または局所送達用に製剤化され、直腸に投与される。他の特定の実施形態では、組成物は、直腸および/または結腸への非全身送達または局所送達用に製剤化され、経口投与される。
【0181】
特定の実施形態において、治療有効量の本明細書に記載の任意の化合物を含む医薬組成物が本明細書で提供される。特定の例において、医薬組成物は、ASBT阻害剤(例えば、本明細書に記載の任意のASBTI)を含む。
【0182】
特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、医薬用途に適した調製物への活性化合物の処理を容易にする賦形剤および助剤を含む、1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用して、従来の方法で製剤化される。特定の実施形態において、適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。本明細書に記載の医薬組成物の概要は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Mareel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見ることができ、これらはすべて、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0183】
本明細書で使用される医薬組成物は、本明細書に記載の化合物と、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。特定の例において、医薬組成物は、個体または細胞への化合物の投与を容易にする。本明細書で提供される処置または使用の方法を実施する特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物の治療有効量は、医薬組成物中において、処置される疾患、障害、または状態を有する個体に投与される。特定の実施形態では、個体はヒトである。本明細書で論じられるように、本明細書に記載される化合物は、単独で、または1つまたは複数の追加の治療薬と組み合わせて利用される。
【0184】
特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬製剤は、非限定的な例として、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)、鼻腔内、頬側、局所、直腸、または経皮投与経路など、多様な投与経路の1つまたは複数を含む、任意の方法で個体に投与される。
【0185】
特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、遊離酸もしくは遊離塩基の形態、または薬学的に許容される塩の形態で、有効成分として本明細書に記載の1つまたは複数の化合物を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、N-オキシドとして、または結晶もしくは非晶質形態(すなわち、多形)で利用される。いくつかの状況では、本明細書に記載の化合物は互変異性体として存在する。すべての互変異性体が、本明細書に提示される化合物の範囲内に含まれる。特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和形態または溶媒和形態で存在し、溶媒和形態は、任意の薬学的に許容される溶媒、例えば、水、エタノールなどを含む。本明細書に提示される化合物の溶媒和形態もまた、本明細書に記載されていると見なされる。
【0186】
「担体」は、いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤を含み、式I~VIのいずれかの化合物などの本明細書に記載の化合物との適合性、および所望の剤形の放出プロファイル特性に基づいて選択される。例示的な担体材料には、例えば、結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などが含まれる。たとえば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Mareel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 1999)を参照されたい;これらはすべて、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0187】
さらに、特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、剤形として製剤化される。したがって、いくつかの実施形態では、個体への投与に適した本明細書に記載の化合物を含む剤形が本明細書において提供される。特定の実施形態において、適切な剤形には、非限定的な例として、水性経口分散液、液体、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、懸濁液、固体経口剤形、エアロゾル、制御放出製剤、速溶製剤、発泡製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、粉末、丸剤、糖衣錠(dragee)、カプセル、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、ならびに混合即時放出および制御放出製剤が含まれる。
【0188】
いくつかの実施形態において、腸内分泌ペプチド分泌促進剤(enteroendocrine peptide secretion enhancing agent)、および任意選択で薬学的に許容される担体を含む、個体における胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の症状を緩和するための組成物が本明細書において提供される。
【0189】
特定の実施形態では、組成物は、腸内分泌ペプチド分泌促進剤、および吸収阻害剤を含む。特定の実施形態において、吸収阻害剤は、それが組み合わされる特定の腸内分泌ペプチド分泌促進剤(またはその少なくとも1つ)の吸収を阻害する阻害剤である。いくつかの実施形態において、組成物は、腸内分泌ペプチド分泌促進剤、吸収阻害剤、および担体(例えば、意図される投与方法に応じて、経口投与に適切な担体または直腸投与に適切な担体)を含む。特定の実施形態において、組成物は、腸内分泌ペプチド分泌促進剤と、吸収阻害剤と、担体と、コレステロール吸収阻害剤、腸内分泌ペプチド、ペプチダーゼ阻害剤、展着剤、および湿潤剤のうちの1つまたは複数とを含む。
【0190】
他の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、S状結腸、横行結腸、および/または上行結腸を含む、直腸および/または結腸へのASBTIの非全身送達のために経口投与される。特定の実施形態では、経口投与用に製剤化された組成物は、非限定的な例として、錠剤および/またはカプセルなどの、腸溶性コーティングされたまたは腸溶性製剤とされた経口剤形である。
【0191】
吸収阻害剤
特定の実施形態において、ASBTIの非全身送達用に製剤化されるとして本明細書に記載される組成物は、吸収阻害剤をさらに含む。本明細書で使用される場合、吸収阻害剤には、胆汁酸/塩の吸収を阻害する薬剤または薬剤群が含まれる。
【0192】
適切な胆汁酸吸収阻害剤(本明細書では吸収阻害剤としても記載される)には、非限定的な例として、陰イオン交換マトリックス、ポリアミン、第四級アミン含有ポリマー、第四級アンモニウム塩、ポリアリルアミンポリマーおよびコポリマー、コレセベラム、コレセベラム塩酸塩、コレスタゲル(CholestaGel)((クロロメチル)オキシランと、2-プロペン-1-アミンと、N-2-プロペニル-1-デカンアミン塩酸塩とのN,N,N-トリメチル-6-(2-プロペニルアミノ)-1-ヘキサンアミニウムクロリドのポリマー)、シクロデキストリン、キトサン、キトサン誘導体、胆汁酸と結合する炭水化物、胆汁酸と結合する脂質、胆汁酸と結合するタンパク質およびタンパク質性物質、ならびに胆汁酸と結合する抗体およびアルブミンが含まれ得る。適切なシクロデキストリンには、非限定的な例として、β-シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどの胆汁酸/塩と結合するものが含まれる。適切なタンパク質には、非限定的な例として、ウシ血清アルブミン、卵アルブミン、カゼイン、α-酸性糖タンパク質、ゼラチン、大豆タンパク質、ピーナッツタンパク質、アーモンドタンパク質、および小麦植物タンパク質などの、胆汁酸/塩と結合するものが含まれる。
【0193】
特定の実施形態では、吸収阻害剤はコレスチラミンである。特定の実施形態では、コレスチラミンは胆汁酸と結合する。イオン交換樹脂であるコレスチラミンは、ジビニルベンゼンによって架橋された第四級アンモニウム基を含むスチレンポリマーである。他の実施形態では、吸収阻害剤はコレスチポールである。特定の実施形態では、コレスチポールは胆汁酸と結合する。イオン交換樹脂であるコレスチポールは、ジエチレントリアミンと1-クロロ-2,3-エポキシプロパンとの共重合体である。
【0194】
本明細書に記載の組成物および方法の特定の実施形態では、ASBTIは吸収阻害剤に連結されるが、他の実施形態では、ASBTIおよび吸収阻害剤は別個の分子実体である。
【0195】
コレステロール吸収阻害剤
特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、任意選択で、少なくとも1つのコレステロール吸収阻害剤を含む。適切なコレステロール吸収阻害剤には、非限定的な例として、エゼチミブ(SCH58235)、エゼチミブアナログ、ACT阻害剤、スティグマスタニルホスホリルコリン(stigmastanyl phosphorylcholine)、スティグマスタニルホスホリルコリンアナログ、β-ラクタムコレステロール吸収阻害剤、硫酸化多糖類、ネオマイシン、植物スポニン、植物ステロール、フィトスタノール調製物FM-VP4、シトスタノール、β-シトステロール、アシル-CoA:コレステロール-O-アシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、アバシミブ(Avasimibe)、インプリタピド(Implitapide)、ステロイド配糖体などが含まれる。適切なエンゼチミブアナログには、非限定的な例として、SCH48461、SCH58053などが含まれる。適切なACT阻害剤には、非限定的な例として、Cl-976、3-[デシルジメチルシリル]-N-[2-(4-メチルフェニル)-1-フェニルエチル]-プロパンアミド、メリナミドなどの、トリメトキシ脂肪酸アニリドが含まれる。β-ラクタムコレステロール吸収阻害剤には、非限定的な例として、(3R,4S)-1,4-ビス-(4-メトキシフェニル)-3-β-フェニルプロピル)-2-アゼチジノンなどが含まれる。
【0196】
ペプチダーゼ阻害剤
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、任意選択で、少なくとも1つのペプチダーゼ阻害剤を含む。そのようなペプチダーゼ阻害剤には、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤(DPP-4)、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、および変換酵素阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。適切なジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤(DPP-4)には、非限定的な例として、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、(2S)-1-{2-β-ヒドロキシ-1-アダマンチル)アミノ]アセチル}ピロリジン-2-カルボニトリル、シタグリプチン(Sitagliptin)、(3R)-3-アミノ-1-[9-(トリフルオロメチル)-1,4,7,8-テトラアザビシクロ[4.3.0]ノナ-6,8-ジエン-4-イル]-4-(2,4,5-トリフルオロフェニル)ブタン-1-オン、サキサグリプチン(Saxagliptin)、および(1S,3S,5S)-2-[(2S)-2-アミノ-2-β-ヒドロキシ-1-アダマンチル)アセチル]-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボニトリルが含まれる。そのような中性エンドペプチダーゼ阻害剤には、カンドキサトリラト(Candoxatrilat)およびエカドトリル(Ecadotril)が含まれるが、これらに限定されない。
【0197】
展着剤/湿潤剤
特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、任意選択で、展着剤(spreading agent)を含む。いくつかの実施形態において、展着剤は、結腸および/または直腸における組成物の拡展性を改善するために利用される。適切な展着剤には、非限定的な例として、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、コロイド状二酸化ケイ素、プロピレングリコール、シクロデキストリン、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチル化グリセリド、ポリカルボフィル、ジ-n-オクチルエーテル、Cetiol(商標)OE、脂肪アルコールポリアルキレングリコールエーテル、Aethoxal(商標)B、2-エチルヘキシルパルミテート、Cegesoft(商標)C24、およびイソプロピル脂肪酸エステルが含まれる。
【0198】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、任意選択で湿潤剤を含む。いくつかの実施形態において、湿潤剤は、結腸および直腸における組成物の湿潤性を改善するために利用される。適切な湿潤剤には、非限定的な例として、界面活性剤が含まれる。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、非限定的な例として、ポリソルベート(例えば、20または80)、ヘプタン酸ステアリル、鎖長C12~C18の飽和脂肪アルコールのカプリル/カプリン脂肪酸エステル、ジグリセロールイソステアリン酸イソステアリル(isostearyl diglycerol isostearic acid)、ドデシル硫酸ナトリウム、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、およびミリスチン酸イソプロピル/ステアリン酸イソプロピル/パルミチン酸イソプロピルの混合物から選択される。
【0199】
ビタミン
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、1つまたは複数のビタミンを投与することをさらに含む。
【0200】
いくつかの実施形態において、ビタミンは、ビタミンA、B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、レチノール、ベータカロチン、ピリドキシン、アスコルビン酸、コレカルシフェロール、シアノコバラミン、トコフェロール、フィロキノン、メナキノンである。
【0201】
いくつかの実施形態において、ビタミンは、ビタミンA、D、E、K、レチノール、βカロテン、コレカルシフェロール、トコフェロール、フィロキノンなどの脂溶性ビタミンである。好ましい実施形態において、脂溶性ビタミンは、トコフェロールポリエチレングリコールサクシネート(TPGS)である。
【0202】
胆汁酸封鎖剤/結合剤
いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤(labile bile acid sequestrant)は、酵素依存性胆汁酸封鎖剤である。特定の実施形態では、その酵素は細菌酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、小腸に見られる濃度と比較して、ヒトの結腸または直腸に高濃度で見られる細菌酵素である。ミクロフローラ(微生物叢)活性化システムの例には、ペクチン、ガラクトマンナン、および/またはAzoヒドロゲルおよび/または活性薬剤のグリコシドコンジュゲート(例えば、D-ガラクトシド、β-D-キシロピラノシドなどのコンジュゲート)を含む剤形が含まれる。消化管ミクロフローラ酵素の例には、例えば、D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロピラノシダーゼなどの細菌性グリコシダーゼが含まれる。
【0203】
特定の実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、時間依存性の胆汁酸封鎖剤である。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10秒の封鎖後に胆汁酸を放出するか、または分解される。いくつかの実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、15、20、25、30、35、40、45、50、または55秒の封鎖後に、胆汁酸を放出するか、または分解される。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10分の封鎖後に、胆汁酸を放出するか、または分解される。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、約15、20、25、30、35、45、50、または55分の封鎖後に、胆汁酸を放出するか、または分解される。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11,12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24時間の封鎖後に、胆汁酸を放出するか、または分解される。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、1、2、または3日の封鎖後に、胆汁酸を放出するか、または分解される。
【0204】
いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、一次胆汁酸に対して高い親和性を有し、二次胆汁酸に対して低い親和性を有する。
【0205】
いくつかの実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、pH依存性の胆汁酸封鎖剤である。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、6より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6.5以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、6.5より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.1以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.1より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.2以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.2より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.3以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.3より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.4以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.4より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.5以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.5より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.6以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.6より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.7以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.7より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.8以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.8より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6.5より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.1より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.2より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.3より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.4より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.5より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.6より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.7より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.8より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.9より高いpHで分解する。
【0206】
特定の実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、リグニンまたは修飾リグニンである。いくつかの実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、ポリカチオン性ポリマーまたはコポリマーである。特定の実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、1つまたは複数のN-アルケニル-N-アルキルアミン残基;1つまたは複数のN,N,N-トリアルキル-N-(N’-アルケニルアミノ)アルキル-アザニウム残基;1つまたは複数のN,N,N-トリアルキル-N-アルケニル-アザニウム残基;1つまたは複数のアルケニルアミン残基;またはそれらの組み合わせ残基を含むポリマーまたはコポリマーである。いくつかの実施形態において、胆汁酸結合剤は、コレスチラミン、およびコレスチラミンを含む様々な組成物であり、これらは、例えば、米国特許第3,383,281号;同第3,308,020号;同第3,769,399号;同第3,846,541号;同第3,974,272号;同第4,172,120号;同第4,252,790号;同第4,340,585号;同第4,814,354号;同第4,874,744号;同第4,895,723号;同第5,695,749号;および同第6,066,336号に記載されており、これらはすべて、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、胆汁酸結合剤は、コレスチポール(cholestipol)またはコレセベラム(cholesevelam)である。
【0207】
投与経路、剤形、および投与レジメン
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物、および本明細書に記載の方法で投与される組成物は、胆汁酸の再取り込みを阻害するか、あるいは血清または肝臓の胆汁酸レベルを低下させるように製剤化される。特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、直腸または経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、そのような製剤は、それぞれ、直腸投与または経口投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、直腸および/または結腸(S状結腸、横行結腸、または上行結腸)への組成物の局所送達のためのデバイスと組み合わされる。特定の実施形態において、直腸投与のために、本明細書に記載の組成物は、浣腸剤、直腸ゲル、注腸フォーム剤、直腸用エアロゾル、坐剤、ゼリー坐剤、または停留浣腸剤として製剤化される。いくつかの実施形態において、経口投与のために、本明細書に記載の組成物は、経口投与および結腸への腸管送達用に製剤化される。
【0208】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物または方法は非全身性である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、ASBTIを、遠位回腸、結腸、および/または直腸に送達し、全身に送達しない(例えば、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の実質的な部分は全身吸収されない)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の経口組成物は、ASBTIを、遠位回腸、結腸、および/または直腸に送達し、全身に送達しない(例えば、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の実質的な部分は全身吸収されない)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の直腸用組成物(rectal composition)は、ASBTIを、遠位回腸、結腸、および/または直腸に送達し、全身に送達しない(例えば、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の実質的な部分は全身吸収されない)。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの90%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの80%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの70%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの60%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの50%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの40%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの30%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの25%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの20%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの15%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの10%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIの5%w/w未満を全身に送達する。いくつかの実施形態において、全身吸収は、総循環量、投与後にクリアランスされる量などを含む、任意の適切やり方で決定される。
【0209】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物および/または製剤は、少なくとも1日1回投与される。特定の実施形態では、ASBTIを含む製剤は、少なくとも1日2回投与され、他の実施形態では、ASBTIを含む製剤は、少なくとも1日3回投与される。特定の実施形態において、ASBTIを含む製剤は、最大1日5回投与される。特定の実施形態では、本明細書に記載のASBTIを含む組成物の投与レジメンは、患者の年齢、性別、および食事などの様々な因子を考慮することによって決定されることを理解されたい。
【0210】
本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約1mM~約1Mの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約1mM~約750mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約1mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約5mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約10mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与される濃度は、約25mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約50mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約100mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約200mM~約500mMの範囲である。
【0211】
特定の実施形態において、遠位消化管(例えば、遠位回腸、結腸、および/または直腸)を標的とすることにより、本明細書に記載の組成物および方法は、(例えば、遠位消化管を標的としない経口用量と比較して)腸内分泌ペプチド分泌促進剤の低減された用量で有効性(例えば、微生物増殖の低減および/または胆汁うっ滞もしくは胆汁うっ滞性肝疾患の症状の緩和における有効性)を提供する。
【0212】
結腸送達のための経口投与
特定の態様では、本明細書に記載の1つまたは複数の化合物を含む組成物または製剤は、ASBTI、または本明細書に記載の化合物を結腸および/または直腸に局所送達するために経口投与される。そのような組成物の単位剤形には、結腸への腸内送達用に製剤化された丸剤、錠剤またはカプセルが含まれる。特定の実施形態において、そのような丸剤、錠剤またはカプセルは、マイクロスフェアに封入または埋め込まれた本明細書に記載の組成物を含む。いくつかの実施形態において、マイクロスフェアには、非限定的な例として、キトサンマイクロコアHPMCカプセルおよび酢酸酪酸セルロース(CAB)マイクロスフェアが含まれる。特定の実施形態において、経口剤形は、医薬製剤の分野で既知の従来の方法を使用して調製される。例えば、特定の実施形態では、錠剤は、標準的な錠剤加工手順および装置を使用して製造される。錠剤を形成するための例示的な方法は、上記の活性薬剤を、単独でまたは1つまたは複数の担体、添加剤などと組み合わせて含む粉末状、結晶状、または粒状の組成物を直接圧縮することによる。代替の実施形態において、錠剤は、湿式造粒または乾式造粒プロセスを使用して調製される。いくつかの実施形態において、錠剤は、湿ったまたはそうでなければ扱いやすい材料から出発して、圧縮されるのではなく成形される。
【0213】
特定の実施形態において、経口投与用に調製された錠剤は様々な賦形剤を含み、それには、非限定的な例として、結合剤、希釈剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、安定化剤、界面活性剤、防腐剤、着色剤、香味剤などが含まれる。いくつかの実施形態では、錠剤に凝集性を付与し、圧縮後も錠剤が無傷のままであることを確実にするために結合剤が使用される。適切な結合剤材料には、非限定的な例として、デンプン(コーンスターチおよびアルファ化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロースおよびラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ワックス、ならびに天然および合成ガム、例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系ポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含む)、ビーガム(Veegum)、およびそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態において、実用的なサイズの錠剤が提供されるように錠剤の嵩を増やすために希釈剤が利用される。適切な希釈剤には、非限定的な例として、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、粉末糖、およびそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態において、錠剤の製造を容易にするために滑沢剤が使用される;適切な滑沢剤の例には、非限定的な例として、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびテオブロマの油などの植物油、グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、およびそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、錠剤の崩壊を促進するために崩壊剤が使用され、非限定的な例として、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ガム、架橋ポリマー、およびそれらの組み合わせが含まれる。充填剤には、非限定的な例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および微結晶性セルロースなどの材料、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールなどの可溶性材料が含まれる。特定の実施形態では、薬物の分解反応を阻害または遅延させるために安定化剤が使用され、そのような反応には、例示として、酸化反応が含まれる。特定の実施形態において、界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性の界面活性剤である。
【0214】
いくつかの実施形態において、ASBTI、または本明細書に記載の他の化合物は、遠位消化管(例えば、遠位回腸、結腸、および/または直腸)への送達に適した担体を伴って経口投与される。
【0215】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、回腸の遠位部分および/または結腸における活性薬剤の制御放出を可能にするマトリックス(例えば、ヒプロメロース(hypermellose)を含むマトリックス)を伴ってASBTIまたは本明細書に記載の他の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、pH感受性であるポリマー(例えば、Cosmo PharmaceuticalsからのMMX(商標)マトリックス)を含み、回腸の遠位部分における活性薬剤の制御放出を可能にする。制御放出に適したそのようなpH感受性ポリマーの例には、酸性基(例えば、-COOH、-SO3H)を含み腸の塩基性pH(例えば、約7~約8のpH)で膨潤するポリアクリル酸ポリマー(例えば、メタクリル酸および/またはメタクリル酸エステルのアニオン性ポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)ポリマー)が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、遠位回腸での制御放出に適した組成物は、微粒子活性薬剤(例えば、微粉化された活性薬剤)を含む。いくつかの実施形態において、非酵素的に分解するポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コアは、遠位回腸への腸内分泌ペプチド分泌促進剤の送達に適している。いくつかの実施形態において、腸内分泌ペプチド分泌促進剤を含む剤形は、遠位回腸および/または結腸への部位特異的送達のために、腸溶性ポリマー(例えば、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)S-100、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸のアニオン性ポリマー、メタクリル酸エステルなど)でコーティングされる。いくつかの実施形態では、細菌活性化システムは、回腸の遠位部分への標的化送達に適している。ミクロフローラ活性化システムの例には、ペクチン、ガラクトマンナン、および/またはAzoヒドロゲルおよび/または活性薬剤のグリコシドコンジュゲート(例えば、D-ガラクトシド、β-D-キシロピラノシドなどのコンジュゲート)を含む剤形が含まれる。消化管ミクロフローラ酵素の例には、例えば、D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロピラノシダーゼなどの細菌性グリコシダーゼが含まれる。
【0216】
本明細書に記載の医薬組成物は、任意選択で、本明細書に記載の追加の治療化合物、ならびに適合性担体、結合剤、充填剤、懸濁化剤、香味剤、甘味料、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑剤、安定化剤、浸透促進剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせなどの1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤を含む。いくつかの実施形態において、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition (2000)に記載されているような、標準的なコーティング手順を使用して、式Iの化合物の製剤の周囲にフィルムコーティングが提供される。一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、粒子の形態であり、化合物の粒子の一部またはすべてがコーティングされる。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子のいくつかまたはすべては、マイクロカプセル化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子は、マイクロカプセル化されておらず、かつコーティングされていない。
【0217】
さらなる実施形態において、ASBTIまたは本明細書に記載の他の化合物を含む錠剤またはカプセルは、消化管内の標的部位への送達のためにフィルムコーティングされる。腸溶性フィルムコーティングの例には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール3350、4500、8000、メチルセルロース、シュードエチルセルロース(pseudoethylcellulose)、アミロペクチンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0218】
小児用製剤および組成物
特定の実施形態において、治療有効量の本明細書に記載の任意の化合物を含む小児用製剤または組成物が本明細書で提供される。特定の例において、医薬組成物は、ASBT阻害剤(例えば、本明細書に記載の任意のASBTI)を含む。
【0219】
特定の実施形態では、小児用製剤または組成物に適した剤形には、非限定的な例として、水性または非水性の経口分散液、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁液、溶液、制御放出製剤、速溶性製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、チュアブル錠、グミキャンディー、口腔内崩壊錠、懸濁液または溶液として再構成するための粉末、スプリンクル (sprinkle)経口粉末または顆粒、糖衣錠、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、ならびに混合即時放出および制御放出製剤が含まれる。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、小児用剤形が、溶液、シロップ、懸濁液、エリキシル、懸濁液または溶液として再構成するための粉末、分散性/発泡性錠剤、チュアブル錠剤、グミキャンディー、ロリポップ、フリーザーポップ、トローチ、経口薄片、口腔内崩壊錠、口腔内崩壊ストリップ、サシェ(sachet)、およびスプリンクル経口粉末または顆粒から選択される、医薬組成物である。
【0220】
別の態様では、少なくとも1つの賦形剤が香味剤または甘味料である医薬組成物が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、コーティングが本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、噴霧乾燥、湿式造粒、流動床、およびマイクロカプセル化によるニュートラルな味の(taste-neutral)ポリマーによる薬物粒子のコーティング;溶融ワックスと他の医薬補助剤との混合物の溶融ワックスによるコーティング;水性ポリマー分散液の複合体化、凝集または凝固による薬物粒子の捕捉(entrapment);樹脂および無機支持体への薬物粒子の吸着;および薬物と1つまたは複数のニュートラルな味の化合物とが溶融および冷却されるか、または溶媒蒸発によって共沈される固体分散;から選択される矯味(味マスキング)技術が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、速度制御ポリマーまたはマトリックス中に薬物粒子または顆粒を含む遅延放出または持続放出製剤である。
【0221】
適切な甘味料には、スクロース、グルコース、フルクトース、または高甘味度甘味料、すなわち、スクロースと比較して高い甘味力(例えば、スクロースより少なくとも10倍甘い)を有する薬剤が含まれる。適切な高甘味度甘味料には、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウムまたはカリウムまたはカルシウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、キシリトール、シクラメート、ネオメート、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンまたはそれらの混合物、タウマチン、パラチニット、ステビオシド、レバウディオシド、Magnasweet(登録商標)が含まれる。甘味料の総濃度は、再構成したときの液体組成物に基づき、実質的にゼロ~約300mg/mlの範囲であり得る。
【0222】
水性媒体で再構成したときの液体組成物の嗜好性を高めるために、1つまたは複数の矯味剤を組成物に添加して、ASBT阻害剤の味をマスキングすることができる。矯味剤(taste-masking agent)は、甘味料、香味剤、またはそれらの組み合わせであり得る。矯味剤は、典型的には、医薬組成物全体の最大約0.1重量%または5重量%を提供する。本発明の好ましい実施形態では、組成物は甘味料と香味剤の両方を含む。
【0223】
本明細書における香味剤(flavoring agent)は、組成物の味または香りを増強することができる物質である。適切な天然または合成の香味剤は、標準的な参考書、例えば、Fenaroli's Handbook of Flavor Ingredients, 3rd edition (1995)から選択することができる。本明細書に記載の製剤に有用な香味剤および/または甘味料の非限定的な例には、例えば、アカシアシロップ、アセスルファムK、アリテーム、アニス、リンゴ、アスパルテーム、バナナ、ババロアクリーム、ベリー、クロスグリ(ブラックカラント)、バタースコッチ、クエン酸カルシウム、カンファー、カラメル、チェリー、チェリークリーム、チョコレート、シナモン、バブルガム、シトラス、シトラスパンチ、シトラスクリーム、綿菓子、ココア、コーラ、クールチェリー、クールシトラス、シクラメート、シラメート(cylamate)、デキストロース、ユーカリ、オイゲノール、フルクトース、フルーツパンチ、ジンジャー(生姜)、グリチルレチネート、甘草(glycyrrhiza)(リコリス)シロップ、ブドウ、グレープフルーツ、ハチミツ、イソマルト、レモン、ライム、レモンクリーム、グリチルリチン酸モノアンモニウム(MagnaSweet(登録商標))、マルトール、マンニトール、メープル、マシュマロ、メントール、ミントクリーム、ミックスベリー、ネオヘスペリジンDC、ネオテーム、オレンジ、ナシ、ピーチ、ペパーミント、ペパーミントクリーム、Prosweet(登録商標)Powder、ラズベリー、ルートビア、ラム、サッカリン、サフロール、ソルビトール、スペアミント、スペアミントクリーム、ストロベリー、ストロベリークリーム、ステビア、スクラロース、スクロース、サッカリンナトリウム、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、マンニトール、タリン、シリトール、スクラロース、ソルビトール、スイスクリーム、タガトース、タンジェリン、タウマチン、トゥッティフルッティ、バニラ、クルミ、スイカ、野生チェリー、ウィンターグリーン、キシリトール、またはこれらの香味料成分の任意の組み合わせ、例えば、アニス-メントール、チェリー-アニス、シナモン-オレンジ、チェリー-シナモン、チョコレート-ミント、ハチミツ-レモン、レモン-ライム、レモン-ミント、メントール-ユーカリ、オレンジ-クリーム、バニラ-ミント、およびそれらの混合物が含まれる。香味剤は、単独で、または2つ以上の組み合わせで使用することができる。いくつかの実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の体積の約0.001%~約5.0%の範囲の濃度で甘味料または香味剤を含む。一実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の体積の約0.001%~約1.0%の範囲の濃度で甘味料または香味剤を含む。別の実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の体積の約0.005%~約0.5%の範囲の濃度で甘味料または香味剤を含む。さらに別の実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の体積の約0.01%~約1.0%の範囲の濃度で甘味料または香味剤を含む。さらに別の実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の体積の約0.01%~約0.5%の範囲の濃度で甘味料または香味剤を含む。
【0224】
特定の実施形態では、本明細書に記載の小児用医薬組成物は、遊離酸もしくは遊離塩基の形態、または薬学的に許容される塩の形態で、有効成分として本明細書に記載の1つまたは複数の化合物を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、N-オキシドとして、または結晶または非晶質形態(すなわち、多形)で利用される。いくつかの状況では、本明細書に記載の化合物は互変異性体として存在する。すべての互変異性体が、本明細書に提示される化合物の範囲内に含まれる。特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和形態または溶媒和形態で存在し、溶媒和形態は、任意の薬学的に許容される溶媒、例えば、水、エタノールなどを含む。本明細書に提示される化合物の溶媒和形態もまた、本明細書に記載されているとみなされる。
【0225】
小児用医薬組成物の「担体」は、いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤を含み、式I~VIのいずれかの化合物などの本明細書に記載の化合物との適合性、および所望の剤形の放出プロファイル特性に基づいて選択される。例示的な担体材料には、例えば、結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などが含まれる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa. 1975; Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)を参照されたい;これらはすべて、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0226】
さらに、特定の実施形態では、本明細書に記載の小児用医薬組成物は、剤形として製剤化される。したがって、いくつかの実施形態では、個体への投与に適した、本明細書に記載の化合物を含む剤形が本明細書で提供される。特定の実施形態において、適切な剤形には、非限定的な例として、水性経口分散液、液体、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、懸濁液、固体経口剤形、エアロゾル、徐放性製剤、速溶性製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、粉末、丸剤、糖衣錠、カプセル、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、および混合即時放出および制御放出製剤が含まれる。
【0227】
特定の態様では、1つまたは複数の本明細書に記載の化合物を含む小児用組成物または製剤は、ASBTI、または本明細書に記載の化合物を結腸および/または直腸に局所送達するために経口投与される。そのような組成物の単位剤形には、結腸への腸内送達用に製剤化された丸剤、錠剤またはカプセルが含まれる。
【0228】
いくつかの実施形態において、ASBTI、または本明細書に記載の他の化合物は、遠位消化管(例えば、遠位回腸、結腸、および/または直腸)への送達に適した担体を伴って経口投与される。
【0229】
特定の実施形態では、本明細書に記載の小児用組成物は、回腸の遠位部分および/または結腸における活性薬剤の制御放出を可能にするマトリックス(例えば、ヒプロメロース(hypermellose)を含むマトリックス)を伴ってASBTIまたは本明細書に記載の他の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、pH感受性であるポリマー(例えば、Cosmo PharmaceuticalsからのMMX(商標)マトリックス)を含み、回腸の遠位部分における活性薬剤の制御放出を可能にする。制御放出に適したそのようなpH感受性ポリマーの例には、酸性基(例えば、-COOH、-SO3H)を含み腸の塩基性pH(例えば、約7~約8のpH)で膨潤するポリアクリル酸ポリマー(例えば、メタクリル酸および/またはメタクリル酸エステルのアニオン性ポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)ポリマー)が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、遠位回腸での制御放出に適した組成物は、微粒子活性薬剤(例えば、微粉化された活性薬剤)を含む。いくつかの実施形態において、非酵素的に分解するポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コアは、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の遠位回腸への送達に適している。いくつかの実施形態において、腸内分泌ペプチド分泌促進剤を含む剤形は、遠位回腸および/または結腸への部位特異的送達のために、腸溶性ポリマー(例えば、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)S-100、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸のアニオン性ポリマー、メタクリル酸エステルなど)でコーティングされる。いくつかの実施形態では、細菌活性化システムは、回腸の遠位部分への標的化送達に適している。ミクロフローラ活性化システムの例には、ペクチン、ガラクトマンナン、および/またはAzoヒドロゲルおよび/または活性薬剤のグリコシドコンジュゲート(例えば、D-ガラクトシド、β-D-キシロピラノシドなどのコンジュゲート)を含む剤形が含まれる。消化管ミクロフローラ酵素の例には、例えば、D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロピラノシダーゼなどの細菌性グリコシダーゼが含まれる。
【0230】
本明細書に記載の小児用医薬組成物は、任意選択で、本明細書に記載の追加の治療化合物、ならびに適合性担体、結合剤、充填剤、懸濁化剤、香味剤、甘味料、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑剤、安定化剤、浸透促進剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせなどの、1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤を含む。いくつかの態様において、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition (2000)に記載されているような、標準的なコーティング手順を使用して、式Iの化合物の製剤の周りにフィルムコーティングが提供される。一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、粒子の形態であり、化合物の粒子の一部またはすべてがコーティングされる。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子のいくつかまたはすべては、マイクロカプセル化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子は、マイクロカプセル化されておらず、かつコーティングされていない。
【0231】
液体剤形
本発明の液体医薬剤形は、薬学の分野で周知の技術に従って調製することができる。
【0232】
溶液は、有効成分が液体に溶解している液体製剤を指す。本発明の医薬溶液には、シロップおよびエリキシル剤が含まれる。懸濁液は、有効成分が液体中の沈殿物にある液体製剤を指す。
【0233】
液体剤形では、特定のpHを有すること、および/または特定のpH範囲内に維持されることが望ましい。pHを制御するために、適切な緩衝系を使用することができる。さらに、緩衝系は、所望のpH範囲を維持するのに十分な能力を有する必要がある。本発明で有用な緩衝系の例には、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、または当技術分野で知られている他の任意の適切な緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、緩衝系は、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸二水素カリウムなどを含む。最終懸濁液中の緩衝液系の濃度は、液体剤形に必要な緩衝液系の強度およびpH/pH範囲などの因子によって異なる。一実施形態では、濃度は、最終液体剤形において0.005~0.5w/v%の範囲内である。
【0234】
本発明の液体剤形を含む医薬組成物はまた、活性物質の沈降を防止するために懸濁化剤/安定化剤を含むことができる。時間の経過とともに、沈降により、活性物質が製品パックの内壁に固まり、再分散および正確な分注が困難になる可能性がある。適切な安定化剤には、キサンタン、グアーおよびトラガカントガムなどの多糖類安定化剤、ならびにセルロース誘導体HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、メチルセルロースおよびアビセル(Aviccel)RC-591(微結晶性セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム)が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、ポリビニルピロリドン(PVP)も安定化剤として使用することができる。
【0235】
前述の成分に加えて、ASBTI経口懸濁液形態は、任意選択で、代替溶媒、矯味剤 、抗酸化剤、充填剤、酸性化剤、酵素阻害剤、およびHandbook of Pharmaceutical Excipients, Rowe et al., Eds., 4th Edition, Pharmaceutical Press (2003)(あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている他の成分など、医薬組成物に一般的に見られる他の賦形剤を含むことができる。
【0236】
代替溶媒の添加は、液体剤形中の有効成分の溶解性を高め、その結果、対象の体内での吸収およびバイオアベイラビリティを高めるのに役立ち得る。好ましくは、代替溶媒には、メタノール、エタノールまたはプロピレングリコールなどが含まれる。
【0237】
別の態様では、本発明は、液体剤形を調製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、ASBTIまたはその薬学的に許容される塩を、液体媒体中、グリセロールまたはシロップあるいはそれらの混合物、防腐剤、緩衝系および懸濁化剤/安定化剤などを含む成分と混合するステップを含む。一般に、液体剤形は、これらの様々な成分を液体媒体中において均一かつ均質に混合することによって調製される。例えば、グリセロールまたはシロップあるいはそれらの混合物などの成分、防腐剤、緩衝系および懸濁化剤/安定化剤等を水に溶解して水溶液を形成し、次いで有効成分を水溶液に分散させて懸濁液を形成することができる。
【0238】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約0.1ml~約50mlの間の体積であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約0.2ml~約40mlの間の体積であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約0.5ml~約30mlの間の体積であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約1ml~約20mlの間の体積であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約0.1ml~約20mlの間の体積であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約0.1ml~約20mlの体積であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIの量は全体積の約0.001%~約90%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約0.01%~約80%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約0.1%~約70%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約1%~約60%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約1%~約50%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約1%~約40%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約1%~約30%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約1%~約20%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約1%~約10%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約5%~約70%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約5%~約60%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約5%~約50%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約5%~約40%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約5%~約30%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約5%~約20%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約5%~約10%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約10%~約50%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約10%~約40%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約10%~約30%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、ASBTIは全体積の約10%~約20%の範囲の量であり得る。一実施形態では、得られる液体剤形は、0.1ml~30ml、好ましくは0.1ml~20mlの液体体積であり、有効成分は、約0.001mg/ml~約16mg/ml、または約0.025mg/ml~約8mg/ml、または約0.1mg/ml~約4mg/mlの範囲の量であるか、あるいは約0.25mg/ml、または約0.5mg/ml、または約1mg/ml、または約2mg/ml、または約4mg/ml、または約5mg/ml、または約8mg/ml、または約9mg/ml、または約10mg/ml、または約12mg/ml、または約14mg/ml、または約16mg/mlの量であり得る。
【0239】
胆汁酸封鎖剤
特定の実施形態では、本明細書に記載の任意の方法で使用するための経口製剤は、例えば、不安定な胆汁酸封鎖剤を伴うASBTIである。不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸に対して不安定な親和性を有する胆汁酸封鎖剤である。特定の実施形態では、本明細書に記載の胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸および/またはその塩を封鎖する(例えば、吸着させる、または装填する)薬剤である。
【0240】
特定の実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸および/またはその塩を封鎖し(例えば、吸着させ、または装填し)、遠位消化管(例えば、結腸、上行結腸、S状結腸、遠位結腸、直腸、またはそれらの任意の組み合わせ)において、吸着または装填された胆汁酸および/またはそれらの塩の少なくとも一部を放出する。特定の実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、酵素依存性胆汁酸封鎖剤である。特定の実施形態では、酵素は細菌酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、小腸に見られる濃度と比較して、ヒトの結腸または直腸に高濃度で見られる細菌酵素である。ミクロフローラ活性化システムの例には、ペクチン、ガラクトマンナン、および/またはAzoヒドロゲルおよび/または活性薬剤のグリコシドコンジュゲート(例えば、D-ガラクトシド、β-D-キシロピラノシドなどのコンジュゲート)を含む剤形が含まれる。消化管ミクロフローラ酵素の例には、例えば、D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロピラノシダーゼなどの細菌性グリコシダーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、時間依存性胆汁酸封鎖剤である(すなわち、胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸および/またはその塩を封鎖し、ある時間の後に、胆汁酸および/またはその塩の少なくとも一部を放出する)。いくつかの実施形態において、時間依存性胆汁酸封鎖剤は、水性環境において経時的に分解する薬剤である。特定の実施形態において、本明細書に記載の不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸および/またはその塩に対して低い親和性を有する胆汁酸封鎖剤であり、それにより、胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸/塩および/またはその塩が高濃度で存在する環境では胆汁酸および/またはその塩を封鎖し続け、胆汁酸/塩および/またはその塩がより低い相対濃度で存在する環境ではそれらを放出することを可能にする。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、一次胆汁酸に対して高い親和性を有し、二次胆汁酸に対してより低い親和性を有し、胆汁酸封鎖剤は一次胆汁酸またはその塩を封鎖し、一次胆汁酸またはその塩は二次胆汁酸またはその塩に変換される(例えば、代謝される)ため、その後、二次胆汁酸またはその塩を放出する。いくつかの実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、pH依存性胆汁酸封鎖剤である。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、6より高いpHで胆汁酸に対してより低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6より高いpHで分解する。
【0241】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の不安定な胆汁酸封鎖剤は、任意の適切なメカニズムを介して、胆汁酸/塩および/またはその塩を封鎖することができる任意の化合物、例えば、マクロ構造化合物を含む。例えば、特定の実施形態において、胆汁酸封鎖剤は、イオン相互作用、極性相互作用、静的相互作用、疎水性相互作用、親油性相互作用、親水性相互作用、立体相互作用などを介して、胆汁酸/塩および/またはその塩を封鎖する。特定の実施形態において、マクロ構造化合物は、マクロ構造化合物のポケットに胆汁酸/塩および/またはその塩を捕捉することによって、および任意選択で、上記のものなどの他の相互作用によって、胆汁酸/塩および/または封鎖剤を封鎖する。いくつかの実施形態において、胆汁酸封鎖剤(例えば、不安定な胆汁酸封鎖剤)には、非限定的な例として、リグニン;修飾リグニン;ポリマー;ポリカチオン性ポリマーおよびコポリマー;N-アルケニル-N-アルキルアミン残基、1つまたは複数のN,N,N-トリアルキル-N-(N’-アルケニルアミノ)アルキル-アザニウム残基、1つまたは複数のN,N,N-トリアルキル-N-アルケニル-アザニウム残基、1つまたは複数のアルケニルアミン残基、またはそれらの組み合わせのいずれか1つまたは複数を含むポリマーおよび/またはコポリマー;あるいはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0242】
薬物と担体の共有結合
いくつかの実施形態において、結腸標的化送達に利用される戦略には、非限定的な例として、ASBTIまたは本明細書に記載の他の化合物の担体への共有結合、結腸のpH環境に達したときに送達させるためのpH感受性ポリマーでの製剤のコーティング、レドックス(酸化還元)感受性ポリマーの使用、タイムリリース(time-released)製剤の使用、結腸細菌によって特異的に分解されるコーティングの使用、生体接着システムの使用、および浸透圧制御薬物送達システムの使用が含まれる。
【0243】
ASBTIまたは本明細書に記載の他の化合物を含む組成物のそのような経口投与の特定の実施形態では、担体への共有結合が含まれ、経口投与時に、結合した部分は胃および小腸で無傷のままである。結腸に入ると、pHの変化、酵素、および/または腸内ミクロフローラによる分解によって共有結合が切断される。特定の実施形態において、ASBTIと担体との間の共有結合には、非限定的な例として、アゾ結合、グリコシドコンジュゲート、グルクロニドコンジュゲート、シクロデキストリンコンジュゲート、デキストランコンジュゲート、およびアミノ酸コンジュゲート(担体アミノ酸の高い親水性および長い鎖長)が含まれる。
【0244】
ポリマーでのコーティング:pH感受性ポリマー
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の経口剤形は、結腸および/または直腸へのASBTIまたは本明細書に記載の他の化合物の送達を容易にするために腸溶性コーティングでコーティングされる。特定の実施形態において、腸溶性コーティングは、胃の低pH環境では無傷のままであるが、腸溶性コーティングの化学組成に依存する特定のコーティングの最適溶解pHに達すると容易に溶解するコーティングである。コーティングの厚さは、コーティング材料の溶解特性に依存する。特定の実施形態では、本明細書に記載のそのような製剤で使用されるコーティングの厚さは、約25μm~約200μmの範囲である。
【0245】
特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物または製剤は、組成物または製剤のASBTIまたは本明細書に記載の他の化合物が、腸の上部で吸収されることなく結腸および/または直腸に送達されるようにコーティングされる。特定の実施形態において、結腸および/または直腸への特異的送達は、結腸のpH環境においてのみ分解するポリマーで製剤をコーティングすることによって達成される。代替の実施形態では、組成物は、腸のpHで溶解する腸溶性の被覆(coat)および腸内でゆっくりと侵食される外層マトリックスでコーティングされる。そのような実施形態のいくつかでは、腸内分泌ペプチド分泌促進剤(および、いくつかの実施形態では、薬剤の吸収阻害剤)を含むコア組成物のみが残るまでマトリックスはゆっくりと侵食され、コアは結腸および/または直腸に送達される。
【0246】
特定の実施形態において、pH依存性システムは、胃(pHは1~2、消化中に4に上昇する)から、消化部位の小腸(pH6~7)、および遠位回腸での7~8へと、ヒト消化管(GIT)に沿って漸進的に上昇するpHを利用する。特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物の経口投与のための剤形は、遅延放出を提供し、胃液から腸内分泌ペプチド分泌促進剤を保護するために、pH感受性ポリマーでコーティングされる。特定の実施形態において、そのようなポリマーは、胃および小腸の近位部分のより低いpH値に耐えることができるが、回腸末端および/または回盲部の中性またはわずかにアルカリ性のpHで崩壊する。したがって、特定の実施形態では、コーティングを含む経口剤形が本明細書で提供され、コーティングは、pH感受性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、結腸および/または直腸標的化に使用されるポリマーには、非限定的な例として、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルコポリマー、オイドラギット(Eudragit)L100、Eudragit S100、Eudragit L-30D、Eudragit FS-30D、Eudragit L100-55、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート50、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート55、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートフタレートおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0247】
特定の実施形態において、結腸および/または直腸への送達に適した経口剤形は、結腸内のミクロフローラ(細菌)によって分解される生分解性および/または細菌分解性ポリマー(1つまたは複数)を有するコーティングを含む。そのような生分解性システムにおいて、適切なポリマーには、非限定的な例として、アゾポリマー、アゾ基を含む直鎖型のセグメント化ポリウレタン、ポリガラクトマンナン、ペクチン、グルタルアルデヒド架橋デキストラン、多糖類、アミロース、グアーガム、ペクチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ローカストビーンガム、コンドロイチン硫酸、キトサン、ポリ(-カプロラクトン)、ポリ乳酸およびポリ(乳酸-co-グリコール酸)が含まれる。
【0248】
1つまたは複数のASBTIまたは本明細書に記載の他の化合物を含む組成物のそのような経口投与の特定の実施形態において、組成物は、結腸のミクロフローラ(細菌)によって分解されるレドックス(酸化還元)感受性ポリマーで製剤をコーティングすることにより、腸の上部で吸収されることなく結腸に送達される。そのような生分解性システムにおいて、そのようなポリマーには、非限定的な例として、主鎖にアゾおよび/またはジスルフィド結合を含むレドックス感受性ポリマーが含まれる。
【0249】
いくつかの実施形態において、結腸および/または直腸への送達用に製剤化された組成物は、タイムリリース用に製剤化される。いくつかの実施形態において、タイムリリース製剤は、胃の酸性環境に抵抗し、それによって製剤が結腸および/または直腸に入るまで腸内分泌ペプチド分泌促進剤の放出を遅らせる。
【0250】
特定の実施形態では、本明細書に記載のタイムリリース製剤は、ヒドロゲルプラグを有するカプセル(腸内分泌ペプチド分泌促進剤および任意選択の吸収阻害剤を含む)を含む。特定の実施形態では、カプセルおよびヒドロゲルプラグは水溶性キャップで覆われ、ユニット全体が腸溶性ポリマーでコーティングされる。カプセルが小腸に入ると、腸溶性コーティングが溶解し、ヒドロゲルプラグが膨潤して一定期間後にカプセルから外れ、組成物がカプセルから放出される。ヒドロゲルの量を用いて内容物を放出する期間を調整する。
【0251】
いくつかの実施形態では、多層の被覆を含む経口剤形が本明細書で提供され、被覆は、異なるpH感受性を有するポリマーの異なる層を含む。コーティングされた製剤がGITに沿って移動すると、遭遇するpHに応じて異なる層が溶解する。そのような製剤で使用されるポリマーには、非限定的な例として、適切なpH溶解特性を有するポリメタクリレート、Eudragit(登録商標)RLおよびEudragit(登録商標)RS(内層)、およびEudragit(登録商標)FS(外層)が含まれる。他の実施形態では、剤形は、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)の外殻を有する腸溶性コーティング錠剤である。
【0252】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるのは、セルロースブチレートフタレート、フタル酸水素セルロース、セルロースプロプリオネートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ジオキシプロピルメチルセルロースサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート;アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの組み合わせから形成されるポリマーおよびコポリマー;でのコーティングを含む経口剤形である。
【0253】
併用療法
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、1つまたは複数の追加の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載の化合物(例えば、ASBTI)または組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、本発明はまた、1つまたは複数の追加の薬剤とともに化合物(例えば、ASBTI)を含む組成物を提供する。
【0254】
脂溶性ビタミン
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、1つまたは複数のビタミンを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、ビタミンは、ビタミンA、B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、レチノール、βカロテン、ピリドキシン、アスコルビン酸、コレカルシフェロール、シアノコバラミン、トコフェロール、フィロキノン、メナキノンである。
【0255】
いくつかの実施形態において、ビタミンは、ビタミンA、D、E、K、レチノール、βカロテン、コレカルシフェロール、トコフェロール、フィロキノンなどの脂溶性ビタミンである。好ましい実施形態では、脂溶性ビタミンは、トコフェロールポリエチレングリコールサクシネート(TPGS)である。
【0256】
ASBTIおよびPPARアゴニスト
様々な実施形態において、本発明は、ASBTIと、PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(peroxisome proliferator-activated receptor))アゴニストとの組み合わせの使用方法を提供する。様々な実施形態において、PPARアゴニストはフィブラート系薬である。いくつかの実施形態において、フィブラート系薬は、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、シプロフィブラート、ベンザフィブラート、フェノフィブラート、またはそれらの様々な組み合わせである。様々な実施形態において、PPARアゴニストは、アレグリタザール、ムラグリタザール、テサグリタザール、サログリタザール、GW501516、GW-9662、チアゾリジンジオン(TZD)、NSAID(例えば、イブプロフェン(IBUPROFEN))、インドール、またはそれらのさまざまな組み合わせである。
【0257】
ASBTIおよびFXR薬
様々な実施形態において、本発明は、ASBTIと、ファルネソイドX受容体(FXR)標的化薬物との組み合わせの使用方法を提供する。様々な実施形態において、FXR標的化薬物は、アベルメクチンB1a、ベプリジル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、GW4064、グリキドン、ニカルジピン、トリクロサン、CDCA、イベルメクチン、クロロトリアニセン、トリベノシド、モメタゾンフランカルボン酸エステル、ミコナゾール、アミオダロン、ブトコナゾール、ブロモクリプチンメシル酸塩、ピゾチフェンリンゴ酸塩、またはそれらの様々な組み合わせである。
【0258】
部分的胆汁外瘻術(Partial External Biliary Diversion)(PEBD)
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、肝硬変をまだ発症していない患者の処置として部分的胆汁外瘻術を使用することをさらに含む。この処置方法は、合併症を減らし、多くの患者における早期移植の必要性を防ぐために、肝臓での胆汁酸/塩の循環を減らすのに役立つ。
【0259】
この外科的技術は、腸の残りの部分から、胆汁の導管(胆汁の通過のための通路)として使用するために長さ10cmの腸の部分を隔離することを含む。導管の一端は胆嚢に取り付けられ、他端は皮膚に引き出されてストーマ(排泄物の通過を可能にするために外科的に構築された開口部)を形成する。部分的胆汁外瘻術は、すべての医学的治療に反応しない患者、特に高齢のより大きな患者に使用され得る。この手法は、乳児などの若い患者には役立たない可能性がある。部分的胆汁外瘻術は、かゆみの強さを軽減し、血中コレステロールレベルを異常に低くし得る。
【0260】
ASBTIおよびウルソジオール
いくつかの実施形態において、ASBTIは、ウルソジオールまたはウルソデキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸、タウロコール酸、ウルソコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸と組み合わせて投与される。いくつかの例において、遠位腸における胆汁酸/塩の濃度の増加は、腸の再生、腸の損傷の軽減、バクテリアルトランスロケーションの減少、フリーラジカル酸素の放出の阻害、炎症性サイトカインの産生の阻害、またはそれらの任意の組み合わせを誘導する。
【0261】
特定の実施形態において、患者は、約または少なくとも約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、36mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、または3,000mgの1日用量でウルソジオールを投与される。特定の実施形態において、患者は、約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、36mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、または3,500mgあるいはそれら以下の1日用量でウルソジオールを投与される。様々な実施形態において、患者は、約または少なくとも約3mg~約300mg、約30mg~約250mg、約36mg~約200mg、約10mg~約3000mg、約1000mg~約2000mg、または約1500~約1900mgの1日用量でウルソジオールを投与される。
【0262】
様々な実施形態において、ウルソジオールは錠剤として投与される。様々な実施形態において、ウルソジオールは懸濁液として投与される。様々な実施形態において、懸濁液中のウルソジオールの濃度は、約10mg/mL~約200mg/mL、約50mg/mL~約150mg/mL、約10mg/mL~約500mg/mL、または約40mg/mL~約60mg/mLである。様々な実施形態において、懸濁液中のウルソジオールの濃度は、約または少なくとも約20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、または80mg/mLである。様々な実施形態において、懸濁液中のウルソジオールの濃度は、約25mg/mL以下、30mg/mL以下、35mg/mL以下、40mg/mL以下、45mg/mL以下、50mg/mL以下、55mg/mL以下、60mg/mL以下、65mg/mL以下、70mg/mL以下、75mg/mL以下、80mg/mL以下、または85mg/mL以下である。
【0263】
ASBTIおよび第2の有効成分は、組み合わせが治療有効量で存在するように使用される。その治療有効量は、ASBTIと他の有効成分(例えば、ウルソジオール)の組み合わせの使用から生じ、それぞれが治療有効量で使用されるか、または併用から生じる相加効果または相乗効果により、併用が治療上有効であるという条件で、それぞれが亜臨床的治療有効量(subclinical therapeutically effective amount)、すなわち、単独で使用された場合に本明細書に記載の治療目的の有効性が低下する量で使用されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のASBTIと任意の他の有効成分との組み合わせの使用は、それらの相加効果または相乗効果により、併用が治療上有効であることを条件に、ASBTIまたは他の有効成分が治療有効量で存在し、もう一方が亜臨床的治療有効量で存在する組み合わせを包含する。本明細書で使用される場合、「相加効果」という用語は、単独で与えられる各薬剤の効果の合計に等しい、2つ(またはそれ以上)の薬学的に活性な薬剤の併用効果を説明する。相乗効果とは、2つ(またはそれ以上)の薬学的に活性な薬剤の併用効果が、単独で与えられた各薬剤の効果の合計よりも大きい効果である。ASBTIと、前述の他の有効成分の1つまたは複数、ならびに任意選択で他の1つまたは複数の薬理学的に活性な物質との任意の適切な組み合わせは、本明細書に記載の方法の範囲内であると考えられる。
【0264】
いくつかの実施形態において、化合物の特定の選択は、主治医の診断、ならびに個体の状態および適切な処置プロトコルに関する主治医の判断に依存する。化合物は、疾患、障害、または状態の性質、個体の状態、および使用される化合物の実際の選択に応じて、任意選択で、同時に(例えば、同時に、本質的に同時に、または同じ処置プロトコル内で)あるいは逐次的に(sequentially)投与される。特定の例において、投与の順序の決定、および処置プロトコル中の各治療薬の投与の繰り返しの回数は、処置されている疾患および個体の状態の評価に基づく。
【0265】
いくつかの実施形態において、治療有効投薬量は、薬物が治療の組み合わせで使用される場合に変化する。併用療法レジメンで使用するための薬物および他の薬剤の治療有効投薬量を実験的に決定する方法は、文献に記載されている。
【0266】
本明細書に記載の併用療法のいくつかの実施形態において、共投与される(co-administered)化合物の投薬量は、使用されるコドラッグ(co-drug)のタイプ、使用される特定の薬物、処置される疾患または状態などに応じて変化する。さらに、1つまたは複数の生物学的に活性な薬剤と共投与される場合、本明細書で提供される化合物は、任意選択で、生物学的に活性な薬剤と同時にまたは逐次的に投与される。特定の例において、逐次的に投与される場合、主治医は、追加の治療薬と組み合わせて本明細書に記載の治療化合物の適切な順序を決定する。
【0267】
複数の治療薬(そのうちの少なくとも1つは本明細書に記載の治療化合物である)が、任意選択で、任意の順序でまたは同時に投与される。同時に投与される場合、複数の治療薬は、任意選択で、単一の統合された形態、または複数の形態で(単なる例として、単一の丸剤または2つの別個の丸剤のいずれかとして)提供される。特定の例において、治療薬の1つは、任意選択で、複数回投与で与えられる。他の例では、両方が、任意選択で、複数回投与として与えられる。同時でない場合、複数回投与の間のタイミングは、任意の適切なタイミングであり、例えば、0週間超~4週間未満である。さらに、組み合わせ方法、組成物および製剤は、2つの薬剤のみの使用に限定されない;複数の治療的組み合わせを使用することも想定される(本明細書に記載の2つ以上の化合物を含む場合も含まれる)。
【0268】
特定の実施形態において、軽減が求められる状態を処置、予防、または改善するための投与レジメンは、様々な因子に従って変更される。これらの因子には、対象が患う障害、ならびに対象の年齢、体重、性別、食事、および病状が含まれる。したがって、様々な実施形態において、実際に使用される投与レジメンは変化し、本明細書に記載される投与レジメンから逸脱する。
【0269】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の併用療法を構成する医薬品は、配合剤形(combined dosage form)で、または実質的に同時投与を目的とした別個の剤形で提供される。特定の実施形態において、併用療法を構成する薬剤は逐次投与され、いずれかの治療化合物が、2段階投与を要求するレジメンによって投与される。いくつかの実施形態では、2段階投与レジメンは、活性薬剤の連続投与または別個の活性薬剤の間隔を空けた投与を要求する。特定の実施形態では、複数の投与ステップ間の期間は、非限定的な例として、医薬品の効力、溶解度、バイオアベイラビリティ、血漿半減期、および動態プロファイルなどの各医薬品の特性に応じて、数分から数時間まで変動する。
【0270】
特定の実施形態では、併用療法が本明細書で提供される。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、追加の治療薬を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、追加の治療薬を含む第2の剤形の投与を含む。併用療法の特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、レジメンの一部として投与される。したがって、追加の治療薬および/または追加の医薬剤形は、本明細書に記載の組成物および製剤と、直接的または間接的のいずれかで、同時にまたは逐次的に患者に適用され得る。
【0271】
キット
別の態様では、本明細書において、経口投与のためのデバイスおよび本明細書に記載の医薬組成物を含むキットが提供される。特定の実施形態では、キットは、経口投与用の予め充填された(プレフィルド)サシェまたはボトルを含む。特定の実施形態では、キットは、経口・注腸投与用のプレフィルドシリンジを含む。
【0272】
遠位回腸および/または結腸での放出
特定の実施形態において、剤形は、遠位空腸、近位回腸、遠位回腸および/または結腸における活性薬剤の制御放出を可能にするマトリックス(例えば、ヒプロメロースを含むマトリックス)を含む。いくつかの実施形態において、剤形は、pH感受性であるポリマー(例えば、Cosmo PharmaceuticalsからのMMX(商標)マトリックス)を含み、回腸および/または結腸での活性薬剤の制御放出を可能にする。制御放出に適したそのようなpH感受性ポリマーの例には、酸性基(例えば、-COOH、-SC3H)を含み、腸の塩基性pH(例えば、約7~約8のpH)で膨潤するポリアクリル酸ポリマー(例えば、メタクリル酸および/またはメタクリル酸エステルのアニオン性ポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)ポリマー)が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、遠位回腸での制御放出に適した剤形は、微粒子活性薬剤(例えば、微粉化された活性薬剤)を含む。いくつかの実施形態では、非酵素的に分解するポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コアは、遠位回腸へのASBTIの送達に適している。いくつかの実施形態において、ASBTIを含む剤形は、回腸および/または結腸への部位特異的送達のために、腸溶性ポリマー(例えば、Eudragit(登録商標)S-100、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸やメタクリル酸エステルなどのアニオン性ポリマー)でコーティングされる。いくつかの実施形態では、細菌活性化システムは、回腸への標的化送達に適している。ミクロフローラ活性化システムの例には、ペクチン、ガラクトマンナン、および/またはAzoヒドロゲルおよび/または活性薬剤のグリコシドコンジュゲート(例えば、D-ガラクトシド、β-D-キシロピラノシドなどのコンジュゲート)を含む剤形が含まれる。消化管ミクロフローラ酵素の例には、例えば、D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロピラノシダーゼなどの細菌性グリコシダーゼが含まれる。
【0273】
本明細書に記載の医薬固体剤形は、任意選択で、本明細書に記載の追加の治療化合物、ならびに適合性担体、結合剤、充填剤、懸濁化剤、香味剤、甘味料、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑剤、安定化剤、浸透促進剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせなどの1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤を含む。いくつかの態様では、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition (2000)に記載されているような、標準的なコーティング手順を使用して、ASBTIの製剤の周囲にフィルムコーティングが提供される。一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、粒子の形態であり、化合物の粒子の一部またはすべてがコーティングされる。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子のいくつかまたはすべては、マイクロカプセル化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子は、マイクロカプセル化されておらず、かつコーティングされていない。
【0274】
ASBT阻害剤は、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の予防的および/または治療的処置のための医薬の調製に使用され得る。そのような処置を必要とする個体において本明細書に記載の疾患または状態のいずれかを処置する方法は、本明細書に記載の少なくとも1つのASBT阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN-オキシド、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、または薬学的に許容される溶媒和物を含む医薬組成物を治療有効量で前記個体に投与することを含み得る。
【実施例】
【0275】
以下の実施例は、本明細書に開示される実施形態のいくつかをさらに説明するために提供される。実施例は、開示された実施形態を例示することを意図しており、限定することを意図していない。
【0276】
実施例1.絶食状態での頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTI)の投与は、薬力学的効果を維持しながら消化器系有害作用を最小限に抑える
回腸胆汁酸輸送体阻害剤(IBATi)としても知られる頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTI)は、胆汁酸(BA)の再吸収を減少させ、糞便BA(fBA)排泄を増加させることによって、胆汁酸(BA)の腸肝循環を減少させる。マラリキシバット(MRX;最近、>1歳のアラジール症候群[ALGS]の患者における胆汁うっ滞性掻痒症の処置について承認された)およびボリキシバット(VLX)などのASBTIは、肝臓におけるBAの毒性蓄積を減少させ、胆汁うっ滞を軽減する。GI有害作用(AE;下痢、腹痛)は、ASBTIの潜在的な副作用であるが、MRXおよびVLXは、GIAEを最小限にし得る食事の30分前に絶食状態で摂取することができる。この分析の目的は、食事時間に対するASBTI投与のタイミングが薬力学的(PD)効果および消化器系有害事象(gastrointestinal adverse event)(GIAE)に及ぼす影響を理解することであった。
【0277】
健康な参加者におけるMRXおよびVLXに関する3つの別々の第1相臨床試験からのAEデータを集計し、GIAEに対するASBTI投与対食事時間の影響を評価した(表1、
図1)。各臨床試験において、ASBTIを摂食状態および絶食状態の両方で投与し、GIAEの割合を比較した。別個に、MRXを食事の30分前に投与されたALGS患者におけるプラセボ(PBO)対照試験からのAEデータは、MRX対PBOのGIAE割合の比較を可能にする。
【0278】
3つの第1相臨床試験を通して、摂食状態でまたは食事時に投与した場合(試験1、2および3においてそれぞれ、75%、33%および100%)と比較して、絶食状態でASBTIを投与した場合(試験1、2、および3においてそれぞれ、0%、0%、および50%のGIAEを報告した)に、GI有害事象(AE)の割合が低かった(
図2)。MRXが食事の30分前に絶食状態で投与されたALGS患者におけるPBO対照試験では、薬物を投与された患者とPBOを投与された患者において同様の頻度で下痢が報告された(MRXについて43.6%、PBOについて44.4%)。
【0279】
食事時間に対するASBTIの投与時間のPDの影響を健康なイヌにおいて調べた(
図3)。健康なイヌにおいて、MRXは、毎日の食事に対する投与時間に関係なく、fBA排泄を有意に増加させた(対応のあるt検定による処置前のベースラインに対してp<0.01)。fBA排泄の最大増加は、食事の30分前(231%増加)から食事の4時間後(229%増加)に投与した場合に見られ、最大PD効果を維持するための食事時間に対するASBTI投与のタイミングに柔軟性があることを示した(
図4)。対応のある片側t検定により、処置前に対してP<0.01。データは、±SEM(n=7~8)として提示される。%=処置前の値と比較した変化。各群は、示された時間に投与された。糞便試料は、処置開始の48時間前、および7日間の処置期間の最後の72時間の間採取し、胆汁酸含有量について分析した。
【0280】
本明細書で実証された動物PDデータは、fBA排泄を増加させるための食事に対するASBTIの投与に柔軟性があることを示した。健康な個体におけるASBTI投与の最適なGI忍容性は、絶食状態での投薬によって達成される。絶食状態でMRXを投与したALGS患者におけるGIAEの割合は、PBOと同様であった。将来の研究は、食物、ASBTI投与、GIAE、および有効性の間の関係のより詳細な解明を可能にし得る。
【0281】
これらのデータは、食事時または食物の摂取直後の投与と対比して、絶食状態でASBTIを投与した場合に、GI忍容性が改善されることを実証する。動物データは、食事時間に対する投与時間に関係なくPD効果が維持されることを示し、GI作用を最小限に抑えながら有効性を維持することができることを示唆する。
【0282】
【0283】
本明細書内のいずれかで引用される全ての参考文献は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0284】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、そのような実施形態は例示としてのみ提供されることが当業者に明らかであろう。
【0285】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内に入る各別個の値および各終点を個々に言及する簡潔な方法としての役割を果たすことを単に意図しており、各別個の値および終点は、あたかもそれらが本明細書において個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0286】
多数の変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく当業者に考え付くであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替形態が、本発明を実施する際に採用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物がそれによって包含されることが意図される。
【国際調査報告】