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特表2024-539930頂端側ナトリウム依存性輸送体阻害剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】頂端側ナトリウム依存性輸送体阻害剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241024BHJP
   A61K 31/4995 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/7042 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/554 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/426 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/4174 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/4995
A61P43/00 111
A61K31/7042
A61K31/554
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/24
A61K47/20
A61K47/02
A61K9/08
A61P43/00 121
A61K31/575
A61K31/496
A61P1/16
A61P17/00
A61P7/00
A61K31/195
A61K31/192
A61K31/426
A61K31/5375
A61K31/495
A61K31/4174
A61P11/00
A61P1/12
A61P1/18
A61P1/00
A61P27/16
A61P35/00
A61P3/02
A61P1/14
A61P13/02
A61P13/12
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524412
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022047719
(87)【国際公開番号】W WO2023076260
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/271,857
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358246
【氏名又は名称】ミルム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MIRUM PHARAMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】コミュル,シルマラ
(72)【発明者】
【氏名】ブリテン,ジェイソン イー
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィグ,パメラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB01
4C076CC10
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC27
4C076DD24S
4C076DD37R
4C076DD37S
4C076DD38R
4C076DD39R
4C076DD39S
4C076DD41R
4C076DD45R
4C076DD48R
4C076DD51S
4C076DD55S
4C076DD56S
4C076DD59S
4C076DD60R
4C076DD65R
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF51
4C076FF52
4C084AA17
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA52
4C084NA03
4C084NA14
4C084ZA34
4C084ZA51
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA72
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZB26
4C084ZC21
4C084ZC41
4C084ZC51
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086BC50
4C086BC73
4C086BC82
4C086BC91
4C086CB25
4C086DA11
4C086EA07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZA34
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA72
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZC21
4C086ZC41
4C086ZC42
4C086ZC51
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA30
4C206GA07
4C206GA28
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA72
4C206NA03
4C206NA14
4C206ZA34
4C206ZA51
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZA72
4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZB26
4C206ZC21
4C206ZC41
4C206ZC51
4C206ZC75
(57)【要約】
本出願で提供されるのは、頂端側ナトリウム依存性輸送体阻害剤(ASBTI)を含む医薬組成物、及び上記医薬組成物を胆汁うっ滞性肝疾患の治療に使用する方法である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASBTI、防腐剤、及び抗酸化剤を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記ASBTIは、
【化1】
又はこれらの薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ASBTIは、
【化2】
である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ASBTIは、ボリキシバット又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ASBTIは、オデビキシバット又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ASBTIは、エロビキシバット又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ASBTIは、GSK2330672又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ASBTIは、前記組成物の約0.1mg/mL~約500mg/mLの量で存在する、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ASBTIは、前記組成物の約1mg/mL~約250mg/mLの量で存在する、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ASBTIは、前記組成物の約2mg/mL~約100mg/mLの量で存在する、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ASBTIは、前記組成物の約5mg/mL~約50mg/mLの量で存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ASBTIは、前記組成物の約8mg/mL~約20mg/mLの量で存在する、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ASBTIは、前記組成物の約9mg/mL~約10mg/mLの量で存在する、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記防腐剤は抗菌性防腐剤である、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗菌性防腐剤は、プロピレングリコール、エチルアルコール、グリセリン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、セトリミド(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、エチルパラベン、メチルパラベン、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、チメロサール、チモール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記防腐剤はプロピレングリコールである、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記防腐剤は、前記組成物の少なくとも約30w/w%の量で存在する、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記防腐剤は、前記組成物の約30%~約40%の量で存在する、請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記防腐剤は、前記組成物の約32%~約37%の量で存在する、請求項1~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記防腐剤は、前記組成物の約33%~約36%の量で存在する、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記防腐剤は、前記組成物の約33%の量で存在する、請求項1~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記防腐剤は、前記組成物の約34%の量で存在する、請求項1~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記防腐剤は、前記組成物の約35%の量で存在する、請求項1~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記抗酸化剤は、アミノカルボン酸、アミノポリカルボン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、BHT、BHA、重亜硫酸ナトリウム、ビタミンE又はその誘導体、没食子酸プロピル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記抗酸化剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、EGTA(エチレングリコール‐ビス(β‐アミノエチルエーテル)‐N,N,N’,N’‐四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、BAPTA(1,2‐ビス(o‐アミノフェノキシ)エタン‐N,N,N’,N’‐四酢酸)、NOTA(2,2’,2’’‐(1,4,7‐トリアゾナン‐1,4,7‐トリイル)三酢酸)、DOTA(テトラカルボン酸)、及びEDDHA(エチレンジアミン‐N,N’‐ビス(2‐ヒドロキシフェニル酢酸)から選択されるアミノポリカルボン酸である、請求項1~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記抗酸化剤はEDTAである、請求項1~25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記抗酸化剤は、前記組成物の約0.001w/w%~約1w/w%の量で存在する、請求項1~26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記抗酸化剤は、前記組成物の約0.005w/w%~約0.75w/w%の量で存在する、請求項1~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記抗酸化剤は、前記組成物の約0.01w/w%~約0.5w/w%の量で存在する、請求項1~28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記抗酸化剤は、前記組成物の約0.05w/w%~約0.25w/w%の量で存在する、請求項1~29のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記抗酸化剤は、前記組成物の約0.075w/w%~約0.2w/w%の量で存在する、請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記抗酸化剤は、前記組成物の約0.1w/w%の量で存在する、請求項1~31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記組成物は室温で少なくとも1か月にわたって安定している、請求項1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記組成物は室温で少なくとも2か月にわたって安定している、請求項1~33のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記組成物は室温で少なくとも3か月にわたって安定している、請求項1~34のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記組成物は室温で少なくとも6か月にわたって安定している、請求項1~35のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記組成物は室温で少なくとも1年にわたって安定している、請求項1~35のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記組成物は室温で少なくとも2年にわたって安定している、請求項1~35のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記組成物は、経口投与用の液体組成物である、請求項1~38いずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記組成物は水溶液である、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項41】
甘味料、味をマスキングする成分、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項42】
a.約5mg/mL~約50mg/mLのマラリキシバット;
b.約300mg/mL~約400mg/mLのプロピレングリコール;
c.約1mg/mLの二ナトリウムEDTA;
d.甘味料、味をマスキングする成分、又はこれらの組み合わせ;及び
e.水
を含む、医薬組成物。
【請求項43】
a.約8mg/mL~約20mg/mLのマラリキシバット;
b.約330mg/mL~約380mg/mLのプロピレングリコール;
c.約1mg/mLの二ナトリウムEDTA;
d.甘味料、味をマスキングする成分、又はこれらの組み合わせ;及び
e.水
を含む、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
マラリキシバットはマラリキシバット塩化物として存在する、請求項1~43のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
第2の治療剤を更に含む、請求項1~43のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記第2の治療剤は、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、リファンピシン、抗ヒスタミン薬、又はFXR標的薬である、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項47】
請求項1~46のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、経口投与用の医薬剤形。
【請求項48】
治療有効量の、請求項1~46のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項47に記載の医薬剤形を、小児対象に投与するステップを含む、小児胆汁うっ滞性肝疾患を治療又は改善する方法。
【請求項49】
前記小児胆汁うっ滞性肝疾患は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)、PFIC1型、PFIC2型、PFIC3型、アラジール症候群(ALGS)、胆道閉鎖症(BA)、葛西手術術後胆道閉鎖症、肝移植後胆道閉鎖症、Dubin‐Johnson症候群、肝移植後胆汁うっ滞、肝移植後関連肝疾患、腸不全関連肝疾患、胆汁酸媒介性肝損傷、小児原発性硬化性胆管炎(PSC)、MRP2欠損症候群、新生児硬化性胆管炎、小児胆道閉鎖性胆汁うっ滞、小児非胆道閉鎖性胆汁うっ滞、小児肝外胆汁うっ滞、小児肝内胆汁うっ滞、小児原発性肝内胆汁うっ滞、小児続発性肝内胆汁うっ滞、良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC)、BRIC1型、BRIC2型、BRIC3型、完全非経口栄養法関連胆汁うっ滞、傍腫瘍性胆汁うっ滞、Stauffer症候群、薬剤関連胆汁うっ滞、感染症関連胆汁うっ滞、又は胆石症である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記小児胆汁うっ滞性肝疾患は、PFIC、ALGS、BA、又は小児PSCである、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
前記小児胆汁うっ滞性肝疾患は、黄疸、掻痒、硬変、高胆汁酸血症、新生児呼吸窮迫症候群、肺炎、胆汁酸の血清濃度の上昇、胆汁酸の肝内濃度の上昇、ビリルビンの血清濃度の上昇、肝細胞損傷、肝臓の瘢痕化、肝不全、肝腫大、黄色腫、吸収不良、脾腫、下痢、膵炎、肝細胞壊死、巨細胞形成、肝細胞癌、消化管出血、門脈圧亢進、難聴、疲労、食欲不振、拒食症、独特の臭気、暗色の尿、明色の便、脂肪便、発育不良、及び腎不全から選択される1つ以上の症状を特徴とする、請求項48~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
治療有効量の、請求項1~46のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項47に記載の医薬剤形を、小児対象に投与するステップを含む、掻痒を治療又は改善する方法。
【請求項53】
治療有効量の、請求項1~46のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項47に記載の医薬剤形を、小児対象に投与するステップを含む、高胆汁酸血症を治療又は改善する方法。
【請求項54】
治療有効量の、請求項1~46のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項47に記載の医薬剤形を、小児対象に投与するステップを含む、黄色腫を治療又は改善する方法。
【請求項55】
治療有効量の、請求項1~46のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項47に記載の医薬剤形を、小児対象に投与するステップを含む、対象の血清又は肝内胆汁レベルを低下させる方法。
【請求項56】
前記小児対象の年齢は6か月~18歳である、請求項48~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
第2の治療剤を投与するステップを更に含む、請求項48~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記第2の治療剤は、UDCA、リファンピシン、抗ヒスタミン薬、FXR標的薬、PPARアゴニスト、又はこれらの組み合わせである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の治療剤は、亜臨床的治療有効量で投与される、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
治療有効量の、請求項1~46のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項47に記載の医薬剤形を、UDCA、リファンピシン、抗ヒスタミン薬、FXR標的薬、及びPPARアゴニストからなる群から選択される亜臨床的治療有効量の第2の治療剤と組み合わせて、小児対象に投与するステップを含む、小児胆汁うっ滞性肝疾患を治療又は改善する方法。
【請求項61】
前記第2の治療剤の前記亜臨床的治療有効量は、単剤療法として投与される前記第2の治療剤の量より少なくとも10%少ない、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第2の治療剤の前記亜臨床的治療有効量は、単剤療法として投与される前記第2の治療剤の量より少なくとも20%少ない、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記第2の治療剤はUDCA又はリファンピシンである、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記対象は、掻痒を強めることなく前記第2の治療剤の投与を中断する、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記第2の治療剤はPPARアゴニストである、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記PPARアゴニストは、ベザフィブラート、セラデルパル(MBX‐8025)、GW501516(カルダリン)、フェノフィブラート、エラフィブラノール、REN001、KD3010、ASP0367、及びCER‐002から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記PPARアゴニストはPPARδアゴニストである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記PPARδアゴニストは、セラデルパル(MBX‐8025)、REN001、KD3010、ASP0367、及びCER‐002から選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
治療有効量のマラリキシバットを治療有効量のPPARアゴニストと組み合わせて小児対象に投与するステップを含む、小児胆汁うっ滞性肝疾患を治療又は改善する方法。
【請求項70】
前記PPARアゴニストは、ベザフィブラート、セラデルパル(MBX‐8025)、GW501516(カルダリン)、フェノフィブラート、エラフィブラノール、REN001、KD3010、ASP0367、及びCER‐002から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記PPARアゴニストはPPARδアゴニストである、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記PPARδアゴニストは、セラデルパル(MBX‐8025)、REN001、KD3010、ASP0367、及びCER‐002から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記小児胆汁うっ滞性肝疾患は硬化性胆管炎である、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記小児胆汁うっ滞性肝疾患はPSC及びPBCから選択される、請求項69に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年10月26日出願の米国仮特許出願第63/271,857号に対する優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の開示は、その全体が参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、頂端側ナトリウム依存性輸送体阻害剤(apical sodium‐dependent transporter inhibitor:ASBTI)を含む医薬組成物、及び胆汁うっ滞性肝疾患の治療のためにこれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高胆汁酸血症(hypercholemia)及び胆汁うっ滞性肝疾患は、肝細胞における胆汁酸/胆汁酸塩の細胞内蓄積に関連し、またそこから派生することが多い、胆汁分泌障害(即ち胆汁うっ滞)に関連する肝疾患である。高胆汁酸血症は、胆汁酸又は胆汁酸塩の血清濃度の上昇を特徴とする。胆汁うっ滞は、臨床病理学的に、胆道閉鎖性の、多くの場合肝外の胆汁うっ滞と、非胆道閉鎖性又は肝内の胆汁うっ滞との2つの主要なカテゴリに分類できる。非胆道閉鎖性肝内胆汁うっ滞は更に、胆汁分泌の構成的欠陥に起因する原発性肝内胆汁うっ滞と、肝細胞の損傷に起因する続発性肝内胆汁うっ滞との2つの主要なサブグループに分類できる。原発性肝内胆汁うっ滞は、主に類似した臨床症状を示す成人型である良性反復性肝内胆汁うっ滞、並びに小児が罹患する疾患である進行性家族性肝内胆汁うっ滞1型、2型、及び3型といった疾患を含む。新生児呼吸窮迫症候群及び肺炎は、妊娠期間の肝内胆汁うっ滞に関連することが多い。積極的な治療及び予防には限界がある。これまでの高胆汁酸血症及び胆汁うっ滞性肝疾患の有効な治療としては、手術や肝移植、そして稀にウルソジオールの投与が挙げられる。
【0004】
小児胆汁うっ滞性肝疾患に罹患する小児の割合は少ないが、治療には毎年多額の医療費がかかる。現在、小児胆汁うっ滞性肝疾患の多くには、肝移植及び手術といった侵襲的で高額の治療が必要である。
【0005】
小児の治療上のニーズは成人のものとは異なっているため、小児の薬物療法に特有の研究が必要となることは、十分に理解されており、受け入れられている。例えば、固形剤形の薬物の経口投与は、ほとんどの成人患者にとって苦痛がなく簡単であるが、小児患者集団にとっては、成人用に製造された経口固形剤形を飲み込むことは問題となり得る。更に、固形剤形に使用される薬剤の味は不快なものであることが多い。更に重要なことには、胆汁うっ滞性肝疾患を標的とする成人用薬物の経口投与は、下痢、及び腸の不快感といった副作用を生じる場合がある。このような問題は安全上のリスクをもたらし、適合性に影響を及ぼす。効果的かつ許容可能な形態の、小児胆汁うっ滞性肝疾患のための小児用薬物が必要とされている。
【0006】
回腸終末部にある頂端側ナトリウム依存性輸送体(ASBT)タンパク質は、胆汁酸の腸肝循環において重要な生理学的役割を果たすため、胆汁酸のホメオスタシスにとって必須のものである。これを目的として、ASBTの薬理学的阻害が、興味深い標的として急速に浮上している。
【0007】
一部のASBT阻害剤(ASBTI)は、個体による全身吸収を制限するように設計されている。この点に関して、場合によっては、これらの化合物を安定した効果的な組成物へと製剤することは困難であることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、ASBTIを含む安全で効果的な製剤及び組成物に対する、満たされていない需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の様々な非限定的態様及び実施形態を以下に説明する。
【0010】
一態様では、本発明は、ASBTI、防腐剤、及び抗酸化剤を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
一実施形態では、上記防腐剤は抗菌性防腐剤である。一実施形態では、上記防腐剤はプロピレングリコールである。
【0012】
一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の少なくとも30%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約30%~約40%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約32%~約37%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約33%~約36%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約33%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約34%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約35%の量で存在する。
【0013】
一実施形態では、上記抗酸化剤はアミノカルボン酸又はアミノポリカルボン酸である。一実施形態では、上記抗酸化剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、EGTA(エチレングリコール‐ビス(β‐アミノエチルエーテル)‐N,N,N’,N’‐四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、BAPTA(1,2‐ビス(o‐アミノフェノキシ)エタン‐N,N,N’,N’‐四酢酸)、NOTA(2,2’,2’’‐(1,4,7‐トリアゾナン‐1,4,7‐トリイル)三酢酸)、DOTA(テトラカルボン酸)、及びEDDHA(エチレンジアミン‐N,N’‐ビス(2‐ヒドロキシフェニル酢酸)から選択される、アミノポリカルボン酸である。一実施形態では、上記抗酸化剤はEDTAである。
【0014】
一実施形態では、上記ASBTIは、
【化1】
又はこれらの薬学的に許容可能な塩である。
【0015】
一実施形態では、上記ASBTIは、
【化2】
である。
【0016】
一実施形態では、上記ASBTIは、ボリキシバット又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0017】
一実施形態では、上記ASBTIは、オデビキシバット又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0018】
一実施形態では、上記ASBTIは、エロビキシバット又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0019】
一実施形態では、上記ASBTIは、GSK2330672又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0020】
一実施形態では、上記ASBTIは、上記組成物の約0.1mg/mL~約500mg/mLの量で存在する。一実施形態では、上記ASBTIは、上記組成物の約1mg/mL~約250mg/mLの量で存在する。一実施形態では、上記ASBTIは、上記組成物の約2mg/mL~約100mg/mLの量で存在する。一実施形態では、上記ASBTIは、上記組成物の約5mg/mL~約50mg/mLの量で存在する。一実施形態では、上記ASBTIは、上記組成物の約8mg/mL~約20mg/mLの量で存在する。一実施形態では、上記ASBTIは、上記組成物の約9mg/mL~約10mg/mLの量で存在する。一実施形態では、上記ASBTIは、上記組成物の約10mg/mLの量で存在する。一実施形態では、上記ASBTIは、上記組成物の約9.5mg/mLの量で存在する。
【0021】
一実施形態では、上記防腐剤は抗菌性防腐剤である。
【0022】
一実施形態では、上記抗菌性防腐剤は、プロピレングリコール、エチルアルコール、グリセリン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、セトリミド(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、エチルパラベン、メチルパラベン、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、チメロサール、チモール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
一実施形態では、上記防腐剤はプロピレングリコールである。
【0024】
一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の少なくとも約30w/w%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約30%~約40%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約32%~約37%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約33%~約36%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約33%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約34%の量で存在する。一実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約35%の量で存在する。
【0025】
一実施形態では、上記抗酸化剤は、アミノカルボン酸、アミノポリカルボン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、BHT、BHA、重亜硫酸ナトリウム、ビタミンE又はその誘導体、没食子酸プロピル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0026】
一実施形態では、上記抗酸化剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、EGTA(エチレングリコール‐ビス(β‐アミノエチルエーテル)‐N,N,N’,N’‐四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、BAPTA(1,2‐ビス(o‐アミノフェノキシ)エタン‐N,N,N’,N’‐四酢酸)、NOTA(2,2’,2’’‐(1,4,7‐トリアゾナン‐1,4,7‐トリイル)三酢酸)、DOTA(テトラカルボン酸)、及びEDDHA(エチレンジアミン‐N,N’‐ビス(2‐ヒドロキシフェニル酢酸)から選択されるアミノポリカルボン酸である。
【0027】
一実施形態では、上記抗酸化剤はEDTAである。
【0028】
一実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.001w/w%~約1w/w%の量で存在する。一実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.005w/w%~約0.75w/w%の量で存在する。一実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.01w/w%~約0.5w/w%の量で存在する。一実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.05w/w%~約0.25w/w%の量で存在する。一実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.075w/w%~約0.2w/w%の量で存在する。一実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.1w/w%の量で存在する。
【0029】
一実施形態では、上記組成物は室温で少なくとも1か月にわたって安定している。一実施形態では、上記組成物は室温で少なくとも2か月にわたって安定している。一実施形態では、上記組成物は室温で少なくとも3か月にわたって安定している。一実施形態では、上記組成物は室温で少なくとも6か月にわたって安定している。一実施形態では、上記組成物は室温で少なくとも1年にわたって安定している。一実施形態では、上記組成物は室温で少なくとも2年にわたって安定している。
【0030】
一実施形態では、上記組成物は、経口投与用の液体組成物である。一実施形態では、上記組成物は水溶液である。
【0031】
一実施形態では、上記組成物は、甘味料、味をマスキングする成分、又はこれらの組み合わせを更に含む。
【0032】
別の態様では、本発明は:
a.約5mg/mL~約50mg/mLのマラリキシバット;
b.約300mg/mL~約400mg/mLのプロピレングリコール;
c.約1mg/mLの二ナトリウムEDTA;
d.甘味料、味をマスキングする成分、又はこれらの組み合わせ;及び
e.水
を含む医薬組成物を提供する。
【0033】
一実施形態では、上記医薬組成物は:
a.約8mg/mL~約20mg/mLのマラリキシバット;
b.約330mg/mL~約380mg/mLのプロピレングリコール;
c.約1mg/mLの二ナトリウムEDTA;
d.甘味料、味をマスキングする成分、又はこれらの組み合わせ;及び
e.水
を含む。
【0034】
一実施形態では、マラリキシバットはマラリキシバット塩化物として存在する。
【0035】
一実施形態では、上記医薬組成物は、第2の治療剤を更に含む。
【0036】
一実施形態では、上記第2の治療剤は、ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid:UDCA)、リファンピシン、抗ヒスタミン薬、又はFXR標的薬である。
【0037】
別の態様では、本発明は、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物を含む、経口投与用の医薬剤形を提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、上述の実施形態のいずれかの治療有効量の医薬組成物又は医薬剤形を小児対象に投与するステップを含む、小児胆汁うっ滞性肝疾患を治療又は改善する方法を提供する。
【0039】
一実施形態では、上記小児胆汁うっ滞性肝疾患は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)、PFIC1型、PFIC2型、PFIC3型、アラジール症候群(ALGS)、胆道閉鎖症(BA)、葛西手術術後胆道閉鎖症、肝移植後胆道閉鎖症、Dubin‐Johnson症候群、肝移植後胆汁うっ滞、肝移植後関連肝疾患、腸不全関連肝疾患、胆汁酸媒介性肝損傷、小児原発性硬化性胆管炎(PSC)、MRP2欠損症候群、新生児硬化性胆管炎、小児胆道閉鎖性胆汁うっ滞、小児非胆道閉鎖性胆汁うっ滞、小児肝外胆汁うっ滞、小児肝内胆汁うっ滞、小児原発性肝内胆汁うっ滞、小児続発性肝内胆汁うっ滞、良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC)、BRIC1型、BRIC2型、BRIC3型、中心静脈栄養法関連胆汁うっ滞、傍腫瘍性胆汁うっ滞(paraneoplastic cholestasis)、Stauffer症候群、薬剤関連胆汁うっ滞、感染症関連胆汁うっ滞、又は胆石症である。
【0040】
一実施形態では、上記小児胆汁うっ滞性肝疾患は、PFIC、ALGS、BA、又は小児PSCである。
【0041】
一実施形態では、上記小児胆汁うっ滞性肝疾患は、黄疸、掻痒、硬変、高胆汁酸血症、新生児呼吸窮迫症候群、肺炎、胆汁酸の血清濃度の上昇、胆汁酸の肝内濃度の上昇、ビリルビンの血清濃度の上昇、肝細胞損傷、肝臓の瘢痕化、肝不全、肝腫大、黄色腫、吸収不良、脾腫、下痢、膵炎、肝細胞壊死、巨細胞形成、肝細胞癌、消化管出血、門脈圧亢進、難聴、疲労、食欲不振、拒食症、独特の臭気、暗色の尿、明色の便、脂肪便、発育不良、及び腎不全から選択される1つ以上の症状を特徴とする。
【0042】
別の態様では、本発明は、上述の実施形態のいずれかの治療有効量の医薬組成物又は医薬剤形を小児対象に投与するステップを含む、掻痒を治療又は改善する方法を提供する。
【0043】
別の態様では、本発明は、上述の実施形態のいずれかの治療有効量の医薬組成物又は医薬剤形を小児対象に投与するステップを含む、高胆汁酸血症を治療又は改善する方法を提供する。
【0044】
別の態様では、本発明は、上述の実施形態のいずれかの治療有効量の医薬組成物又は医薬剤形を小児対象に投与するステップを含む、黄色腫を治療又は改善する方法を提供する。
【0045】
別の態様では、本発明は、上述の実施形態のいずれかの治療有効量の医薬組成物又は医薬剤形を小児対象に投与するステップを含む、対象の血清又は肝内胆汁レベルを低下させる方法を提供する。
【0046】
上述の方法のいずれかの一実施形態では、上記小児対象の年齢は6か月~18歳である。
【0047】
上述の方法のいずれかの一実施形態では、上記方法は、第2の治療剤を投与するステップを更に含む。
【0048】
一実施形態では、上記第2の治療剤は、UDCA、リファンピシン、抗ヒスタミン薬、FXR標的薬、又はこれらの組み合わせである。
【0049】
一実施形態では、上記第2の治療剤は、亜臨床的治療有効量(subclinical therapeutically effective amount)で投与される。
【0050】
更に別の態様では、本発明は、上述の実施形態のいずれかの治療有効量の医薬組成物又は医薬剤形を、UDCA、リファンピシン、抗ヒスタミン薬、及びFXR標的薬からなる群から選択される亜臨床的治療有効量の第2の治療剤と組み合わせて、小児対象に投与するステップを含む、小児胆汁うっ滞性肝疾患を治療又は改善する方法を提供する。
【0051】
一実施形態では、上記第2の治療剤の上記亜臨床的治療有効量は、単剤療法として投与される上記第2の治療剤の量より少なくとも10%少ない。一実施形態では、上記第2の治療剤の上記亜臨床的治療有効量は、単剤療法として投与される上記第2の治療剤の量より少なくとも20%少ない。
【0052】
一実施形態では、上記第2の治療剤はPPARアゴニストである。一実施形態では、上記PPARアゴニストは、ベザフィブラート、セラデルパル(MBX‐8025)、GW501516(カルダリン)、フェノフィブラート、エラフィブラノール、REN001、KD3010、ASP0367、及びCER‐002から選択される。
【0053】
一実施形態では、上記PPARアゴニストはPPARδアゴニストである。一実施形態では、上記PPARδアゴニストは、セラデルパル(MBX‐8025)、REN001、KD3010、ASP0367、及びCER‐002から選択される。
【0054】
更に別の態様では、本発明は、治療有効量のマラリキシバットを治療有効量のPPARアゴニストと組み合わせて小児対象に投与するステップを含む、小児胆汁うっ滞性肝疾患を治療又は改善する方法を提供する。
【0055】
一実施形態では、上記PPARアゴニストは、ベザフィブラート、セラデルパル(MBX‐8025)、GW501516(カルダリン)、フェノフィブラート、エラフィブラノール、REN001、KD3010、ASP0367、及びCER‐002から選択される。
【0056】
一実施形態では、上記PPARアゴニストはPPARδアゴニストである。一実施形態では、上記PPARδアゴニストは、セラデルパル(MBX‐8025)、REN001、KD3010、ASP0367、及びCER‐002から選択される。
【0057】
一実施形態では、上記小児胆汁うっ滞性肝疾患は硬化性胆管炎である
【0058】
一実施形態では、上記小児胆汁うっ滞性肝疾患はPSC及びPBCから選択される。
【0059】
本発明の上述の態様及び他の態様は、添付の特許請求の範囲を含む以下の本発明の詳細な説明を読めば、当業者には明らかになるだろう。
【0060】
本特許又は出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれる。1つ以上のカラー図面を含むこの特許又は特許出願公開のコピーは、それを要求し、必要な手数料を支払えば、特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、25℃、60%相対湿度(RH)における、マラリキシバット経口溶液の安定性のプロットである。
図2図2は、25℃及び40℃における、マラリキシバット経口溶液中の酸化不純物デスメチルマラリキシバット塩化物レベルに対する、二ナトリウムEDTA二水和物濃度の影響のプロットである。
図3A図3A~3Eは、LUM001~501研究に登録された5人の例示的なPFIC患者に関する、ItchROと、マラリキシバット(MRX)及び選択された鎮痒薬の用量とのプロットである。図3Aは、患者がリファンピシン(Rif)及びUDCA(Urso)を中止しても優れた掻痒の制御を維持したことを示す。
図3B図3Bは、患者がリファンピシン(Rif)を中止しても優れた掻痒の制御を維持したことを示す。
図3C図3Cは、患者がリファンピシン(Rif)を中止しても優れた掻痒の制御を維持したことを示す。
図3D図3Dは、患者がUDCA(Urso)を中止しても掻痒の制御を維持したことを示す。
図3E図3Eは、患者がUDCA(Urso)を中止しても掻痒の制御を維持したことを示す。
図4図4は、ビヒクルで処置したMDR2-/-マウスにおける平均値との関係で示された、平均肝内及び血清胆汁酸濃度、ALT濃度、総ビリルビン濃度、並びにALP濃度を示す。一元配置分散分析を適用して、治療群と「ビヒクル対照」との間の差を決定し、****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05であった。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の詳細な実施形態を本明細書中で開示するが、開示される実施形態は、様々な形態で具現化され得る本発明の単なる例示であることを理解されたい。更に、本発明の様々な実施形態に関連して与えられる各実施例は、例示を意図したものであり、限定を意図したものではない。従って、本明細書中で開示される具体的な構造及び機能の詳細は、限定として解釈してはならず、本発明が様々に使用されることを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるものとする。
【0063】
特段の定義がない限り、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。
【0064】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「ある(a、an)」及び「上記、前記(the)」は、文脈によってそうでないことが明示されていない限り、複数の指示対象を含む。従って例えば、「ある方法(a method)」への言及は、1つ以上の方法、並びに/又は本明細書に記載の及び/若しくは本開示を読めば当業者には明らかになるであろうタイプの複数のステップを含む。
【0065】
状態、障害、又は体調に関する、用語「治療する(treat)」又は「治療(treatment)」は:
(1)上記状態、障害、若しくは体調に罹患している可能性がある対象における、上記状態、障害、若しくは体調の少なくとも1つの臨床若しくは準臨床症状の発生率、及び/又は上記状態、障害、若しくは体調に罹患しやすくなっている可能性があるものの上記状態、障害、若しくは体調の臨床若しくは準臨床症状を体験若しくは発症していない対象における、上記状態、障害、若しくは体調の少なくとも1つの臨床若しくは準臨床症状の出現の可能性を、防止する、遅延させる、又は低減すること;あるいは(2)上記状態、障害、又は体調を阻止すること、即ち疾患の発症又はその再発若しくはその少なくとも1つの臨床若しくは準臨床症状を、阻止する、低減する、又は遅延させること;あるいは(3)疾患を軽減すること、即ち、上記状態、障害、若しくは体調、又はその臨床若しくは準臨床症状のうちの少なくとも1つを退行させることを含む。治療対象の対象にとっての利益は、統計的に有意なものであるか、又は少なくとも患者若しくは医師が認識できるものである。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「対象(subject)」、又は「患者(patient)」、又は「個体(individual)」、又は「動物(animal)」は、ヒト、家畜動物(例えばネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ等)、及び疾患の実験動物モデル(例えばマウス、ラット)を指す。ある好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0067】
本明細書中で使用される場合、用量又は量に適用される用語「有効(effective)」は、それを必要とする対象に投与したときに所望の活性をもたらすために十分な、化合物又は医薬組成物の量を指す。複数の活性成分の組み合わせを投与する場合、上記組み合わせの有効量は、個別に投与した場合に有効であった各成分の量を含む場合も、含まない場合もあることに留意されたい。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、及び全身状態、治療される状態の重症度、採用される1つ以上の特定の薬剤、投与形態等に応じて、対象ごとに異なるものとなる。
【0068】
本発明の組成物に関連して使用される場合、句「薬学的に許容可能な(pharmaceutically acceptable)」は、生理学的忍容性を有し、哺乳類(例えばヒト)への投与時に不都合な反応を通常生成しない、上記組成物の分子実体及び他の成分を指す。好ましくは、本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な」は、哺乳類、より詳細にはヒトでの使用について、連邦若しくは州政府の規制当局によって承認されている、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。
【0069】
本明細書中では、「約(about)」若しくは「およそ(approximately)」ある特定の値から、及び/又は「約」若しくは「およそ」別の特定の値までとして、範囲が表現され得る。このような範囲が表現されている場合、別の実施形態は、上記ある特定の値から、及び/又は上記別の特定の値までを含む。本明細書中で使用される場合、いずれの数値又は範囲に関する用語「約」又は「およそ」は、構成要素の一部又は集合を、本明細書に記載されているその所望の目的のために機能させることを可能にする、適切な寸法公差を示す。より具体的には、「約」又は「およそ」は、記載されている値の±20%の値の範囲を指すことができ、例えば「約90%」は71%~99%の値の範囲を指すことができる。
【0070】
「含む(comprising)」、又は「含有する(containing)」、又は「含む(including)」は、組成物又は物品又は方法の中に、そこで挙げられている化合物、要素、粒子、又は方法ステップが少なくとも存在することを意味しているが、他の化合物、材料、粒子、又は方法ステップの存在を排除するものではなく、それは、このような他の化合物、物質、粒子、又は方法ステップが、挙げられているものと同一の機能を有する場合であっても同様である。
【0071】
本発明の化合物は、本明細書全体に記載されているものを含み、また本明細書で開示される分類、下位分類、及び種によって更に説明される。本明細書中で使用される場合、特段の指示がない限り、以下の定義が適用されるものとする。本発明の目的のために、化学元素は、CASバージョンの元素周期表(Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed.)に従って識別される。更に、有機化学の一般的原理は、“Organic Chemistry”, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999、及び“March's Advanced Organic Chemistry”, 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001に記載されており、これらの文献の内容は、その全体が参照により本出願に援用される。
【0072】
1つ以上の方法ステップへの言及は、明示的に特定されているステップの間の、追加の方法ステップ又は介在方法ステップの存在を排除するものではないことも理解されたい。同様に、あるデバイス又はシステムの1つ以上の構成要素への言及は、明示的に特定されている構成要素の間の、追加の構成要素又は介在構成要素の存在を排除するものではないことも理解されたい。
【0073】
特に明記されていない限り、本発明の化合物及びその塩の全ての結晶形態もまた、本発明の範囲内である。本発明の化合物は、無水、水和、非溶媒和、又は溶媒和の形態を含むがこれらに限定されない様々な非晶質及び結晶形態で、単離できる。例示的な水和物としては、半水和物、一水和物、二水和物等が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は無水であり、溶媒和されていない。「無水(anhydrous)」は、化合物の結晶形態が結晶格子構造内に結合した水を実質的に含有しないこと、即ち化合物が結晶水和物を形成しないことを意味する。
【0074】
本明細書中で使用される場合、「結晶形態(crystalline form)」は、結晶質物質のある特定の格子構造を指すことを意図している。同じ物質の異なる複数の結晶形態は、典型的には異なる結晶格子(例えば単位格子)を有するが、これは各結晶形態に特徴的な異なる複数の物理的特性に起因するものである。場合によっては、格子構造が異なると水又は溶媒の含有量も異なる。これらの異なる結晶格子は、粉末X線回折(PXRD)によるもの等の固体特性決定方法によって特定できる。示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、動的蒸気収着(DVS)、固体NMR等といった他の特性決定方法は、結晶形態の特定に更に役立ち、また安定性及び溶媒/水含有量の決定にも役立つ。
【0075】
物質の結晶形態には、溶媒和(例えば水和)形態と非溶媒和(例えば無水)形態の両方が含まれる。水和形態は、結晶格子内に水が含まれる結晶形態である。水和形態は、半水和物、一水和物、二水和物等に関するように、水が特定の水/分子比で格子内に存在する化学量論的水和物であってよい。水和形態は非化学量論的なものであってもよく、この場合、水含有量は可変であり、湿度等の外的条件に依存する。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は実質的に単離されている。「実質的に単離されている(substantially isolated)」は、ある特定の化合物が不純物から少なくとも部分的に単離されていることを意味する。例えばいくつかの実施形態では、本発明の化合物は、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約2.5%未満、約1%未満、又は約0.5%未満の不純物を含む。不純物は一般に、実質的に単離された上記化合物ではないあらゆるもの、例えば他の結晶形態及び他の物質を含む。
【0077】
用語「ベースライン(baseline)」又は「投与前ベースライン(pre‐administration baseline)」は、本明細書中で使用される場合、研究の開始時に収集された情報、又は後のデータとの比較に使用される初めから既知の値を指す。ベースラインは、早期の時点で得られた、ある測定可能な状態の初期測定値であり、上記測定可能な状態の変化を探すための経時的な比較に使用される。例えば、薬剤の投与前(ベースライン)、及び薬剤の投与後の、患者の血清胆汁酸濃度。ベースラインは、測定可能な品質の正常又は初期レベルを表す観察結果又は値であり、これは介入又は環境刺激に対する反応を表す値との比較に使用される。ベースラインは、研究の参加者が実験用作用剤若しくは介入を受ける前の時点「ゼロ」、又は陰性対照である。例えば「ベースライン」は、いくつかの例では:1)臨床研究の開始直前の、測定可能な品質の状態;又は2)患者に投与される投薬量レベル若しくは組成物を、第1の投薬量レベル若しくは組成物から第2の投薬量レベル若しくは組成物に変更する直前の、測定可能な品質の状態を指すことができる。
【0078】
用語「レベル(level)」と「濃度(concentration)」とは、本明細書中で使用される場合、相互交換可能なものとして使用される。例えば「ビリルビンの高い血清レベル」は、「ビリルビンの高い血清濃度」と言い換えることもできる。
【0079】
用語「正常化された(normalized)」又は「正常範囲(normal range)」は、本明細書中で使用される場合、健康な個体に対応する範囲内にある、年齢固有の値(即ち正常値又は正常化された値)を指す。例えば、「血清ビリルビン濃度は3週間以内に正常化された」という句は、血清ビリルビン濃度が、当該技術分野において健康な個体のものに対応することが知られている範囲内(即ち正常で、例えば上昇したものではない範囲内)に、3週間以内に収まったことを意味する。様々な実施形態において、正常化された血清ビリルビン濃度は、約0.1mg/dL~約1.2mg/dLである。様々な実施形態において、正常化された血清胆汁酸濃度は、約0μmol/L~約25μmol/Lである。
【0080】
本明細書中で使用される場合、用語「ITCHRO(OBS)」及び「ITCHRO」(あるいは「ItchRO(Pt)」)は、ITCHRO(OBS)スケールが18歳未満の小児の掻痒の重症度を測定するために使用され、ITCHROスケールが少なくとも18歳の成人の掻痒の重症度を測定するために使用されるという条件で、相互交換可能なものとして使用される。従って、成人患者に関してITCHRO(OBS)スケールが言及されている場合、示されているスケールはITCHROスケールである。同様に、小児患者に関してITCHROスケールが言及されている場合、示されているスケールは多くの場合ITCHRO(OBS)スケールである(一部の年長の小児については、彼らのスコアをITCHROスコアとして報告することが許可されていた)。ITCHRO(OBS)スケールは0~4であり、ITCHROスケールは0~10である。
【0081】
本明細書中で使用される場合、用語「胆汁酸(bile acid又はbile acids)」は、動物(例えばヒト)の胆汁中に見られるステロイド酸(及び/又はそのカルボン酸アニオン)並びにその塩を含み、非限定的な例としては、コール酸、コール酸塩、デオキシコール酸、デオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸塩、グリココール酸、グリココール酸塩、タウロコール酸、タウロコール酸塩、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、ウルソジオール、タウロウルソデオキシコール酸、グリコウルソデオキシコール酸、7‐B‐メチルコール酸、メチルリトコール酸、ケノデオキシコール酸塩、リトコール酸、リトコール酸塩等が挙げられる。タウロコール酸及び/又はタウロコール酸塩は、本明細書中ではTCAと呼ばれる。本明細書中で使用される、胆汁酸に対するあらゆる言及には、胆汁酸、1つだけの胆汁酸、1つ以上の胆汁酸、又は少なくとも1つの胆汁酸に対する言及が含まれる。従って、用語「胆汁酸」、「胆汁酸塩」、「胆汁酸/胆汁酸塩」は、特段の指示がない限り、本明細書中では相互交換可能なものとして使用される。本明細書中で使用される、胆汁酸に対するあらゆる言及には、胆汁酸又はその塩に対する言及が含まれる。更に、本明細書に記載の「胆汁酸」として任意に、薬学的に許容可能な胆汁酸エステル、例えばアミノ酸(例えばグリシン又はタウリン)と結合した胆汁酸/胆汁酸塩が使用される。他の胆汁酸エステルとしては例えば、置換若しくは非置換アルキルエステル、置換若しくは非置換ヘテロアルキルエステル、置換若しくは非置換アリールエステル、又は置換若しくは非置換ヘテロアリールエステル等が挙げられる。例えば、用語「胆汁酸」は、グリシン又はタウリンと結合したコール酸:それぞれグリココール酸塩及びタウロコール酸塩(並びにこれらの塩)を含む。本明細書中で使用される、胆汁酸に対するあらゆる言及には、天然の又は合成によって調製された同一の化合物に対する言及が含まれる。更に、本明細書中で使用される、ある成分(胆汁酸又はその他)に対するあらゆる単数形での言及には、1つだけの、1つ以上の、又は少なくとも1つのこのような成分に対する言及が含まれることを理解されたい。同様に、本明細書中で使用される、ある成分に対するあらゆる複数形での言及には、特段の注記がない限り、1つだけの、1つ以上の、又は少なくとも1つのこのような成分に対する言及が含まれる。
【0082】
本明細書中で使用される場合、用語「組成物(composition)」は、ある組成物と、本明細書に記載の方法で投与される組成物との、両方の開示を含む。更に、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載の「製剤(formulation)」、経口剤形、若しくは直腸剤形であるか、又はこれらを含む。
【0083】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量(effective amount)」又は「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、投与される少なくとも1つの作用剤(例えば治療用活性作用剤)の、対象又は個体において所望の結果を達成するため、例えば治療される疾患又は体調の1つ以上の症状をある程度軽減するために十分な量を指す。特定の例では、上記結果は、疾患の兆候、症状、若しくは原因の減少及び/若しくは軽減、又は生体システムの他の何らかの望ましい変化である。特定の例では、治療用途のための「有効量」は、本明細書に記載の作用剤を含む組成物の、疾患の臨床的に有意な低減を提供するために必要な量である。いずれの個別のケースにおける適切な「有効」量は、用量漸増研究といったいずれの好適な技法を用いて決定される。いくつかの実施形態では、ASBTIの「治療有効量」又は「有効量」は、対象又は個体の胆汁うっ滞又は胆汁うっ滞性肝疾患を治療するために十分な、ASBTIの量を指す。
【0084】
本明細書中で使用される場合、用語「投与する(administer、administering)」、「投与(administration)」等は、所望の生物学的作用部位へと作用剤又は組成物を送達できるようにするために使用できる、方法を指す。これらの方法としては、限定するものではないが、経口経路、十二指腸内経路、非経口注入(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内、又は点滴を含む)、局所及び直腸投与が挙げられる。本明細書に記載の作用剤及び方法と共に任意に採用される投与技法は、例えばGoodman and Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, current ed.; Pergamon;及びRemington's, Pharmaceutical Sciences (current edition), Mack Publishing Co., Easton, Paといったソースで確認され、これらの文献は全て、あらゆる目的のためにその全体が参照により本出願に援用される。特定の実施形態では、本明細書に記載の作用剤及び組成物は経口投与される。
【0085】
用語「ASBT阻害剤」は、頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送又はいずれの回復性胆汁酸塩輸送を阻害する化合物を指す。用語「頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体(ASBT)」は、用語「回腸胆汁酸輸送体(Ileal Bile Transporter:IBAT)」と相互交換可能なものとして使用される。
【0086】
胆汁酸
胆汁は、水、電解質、並びに胆汁酸、コレステロール、リン脂質、及びビリルビンを含む多数の有機分子を含有する。胆汁は肝臓から分泌されて胆嚢に貯蔵され、脂肪分の多い食事の摂取によって胆嚢が収縮すると、胆汁は胆管を通って腸に入る。胆汁酸/胆汁酸塩は、小腸での脂肪及び脂溶性ビタミンの消化及び吸収に重要である。成人は1日400~800mLの胆汁を産生する。胆汁の分泌は、2段階で生じると考えることができる。最初に、肝細胞が胆汁を小管内へと分泌し、胆汁は小管から胆管に流れ込み、この肝胆汁は、多量の胆汁酸、コレステロール、及び他の有機分子を含有する。次に、胆汁が胆管を通って流れる際、胆汁は、胆管上皮細胞からの水様で重炭酸塩に富む分泌物が添加されることによって、変化する。胆汁は、胆嚢内に貯蔵されている間に典型的には5倍に濃縮される。
【0087】
胆汁の流れは絶食中に最も少なくなり、その大半は濃縮のために胆嚢へと向けられる。摂取した食事からの糜粥が小腸に入ると、酸、並びに部分的に消化された脂肪及びタンパク質が、胆汁の分泌及び流れにとって重要なコレシストキニン及びセクレチンの分泌を刺激する。コレシストキニン(コレシスト(cholecysto)=胆嚢、キニン(kinin)=動き)は、胆嚢及び総胆管の収縮を刺激して、腸内への胆汁の送達を引き起こすホルモンである。コレシストキニンの放出のための最も強力な刺激は、十二指腸内の脂肪の存在である。セレクチンは、十二指腸内の酸に応答して分泌されるホルモンであり、胆管細胞を刺激して重炭酸塩及び水を分泌させ、胆汁の体積を増やし、腸内への胆汁の流出量を増加させる。
【0088】
胆汁酸/胆汁酸塩は、コレステロールの誘導体である。食事の一部として摂取された、又は肝臓での合成に由来するコレステロールは、肝細胞内で胆汁酸/胆汁酸塩に変換される。このような胆汁酸/胆汁酸塩の例としては、コール酸及びケノデオキシコール酸が挙げられ、これらはその後、アミノ酸(グリシン又はタウリン等)と結合して結合型をもたらし、これは小管内へと活発に分泌される。ヒトの体内に最も豊富に存在する胆汁酸塩は、コール酸塩及びデオキシコール酸塩であり、これらは通常、グリシン又はタウリンと結合して、それぞれグリココール酸塩又はタウロコール酸塩となる。
【0089】
遊離コレステロールは水溶液中では実質的に不溶性であるが、胆汁中では、胆汁酸/胆汁酸塩及び脂質の存在によって可溶性となる。胆汁酸/胆汁酸塩の肝臓での合成は、体内のコレステロール分解の大半を占める。ヒトでは、毎日おおよそ500mgのコレステロールが胆汁酸/胆汁酸塩に変換され、胆汁中に排出される。従って、胆汁中への分泌は、コレステロールの排出の主要な経路である。毎日多量の胆汁酸/胆汁酸塩が腸内に分泌されるが、身体から失われるのは比較的少量だけである。これは、十二指腸に送達される胆汁酸/胆汁酸塩のおよそ95%が、「腸肝再循環」として知られるプロセスによって、回腸内の血液に再び吸収されるためである。
【0090】
回腸からの静脈血は門脈に直接入るため、肝臓の類洞を通過する。肝細胞は、類洞血液から胆汁酸/胆汁酸塩を極めて効率的に抽出し、健康な肝臓から全身循環への流出はほとんどない。そして胆汁酸/胆汁酸塩は肝細胞を通って輸送され、小管内へと再分泌される。この腸肝再循環の最終的な効果は、各胆汁酸塩分子が1回の消化段階中に約20回、多くの場合は2回又は3回再使用されることである。胆汁の生合成は、コレステロールの主要な代謝運命を表しており、平均的な成人が代謝プロセスで消費するおよそ800mg/日のコレステロールのうち半分超を占める。これに比べて、ステロイドホルモンの生合成は1日に約50mgのコレステロールしか消費しない。1日に400mgをはるかに超える胆汁酸塩が必要とされ、腸内に分泌されるが、これは胆汁酸塩の再循環によって達成される。小腸の上部領域に分泌される胆汁酸塩の大半は、小腸の下端で乳化された食事性脂質と共に吸収される。これらは食事性脂質から分離され、再使用のために肝臓へと戻される。従って再循環により、毎日20~30gの胆汁酸塩を小腸内へと分泌できる。
【0091】
胆汁酸/胆汁酸塩は両親媒性であり、コレステロール由来部分は疎水性(脂溶性)部分及び極性(親水性)部分の両方を含有するが、アミノ酸抱合は一般に極性かつ親水性である。この両親媒性によって、胆汁酸/胆汁酸塩は2つの重要な機能、即ち脂質凝集物の乳化と、水性環境における脂質の可溶化及び輸送とを実行できる。胆汁酸/胆汁酸塩は、食事性脂質の粒子に対する洗浄作用を有し、これは脂肪滴の破壊又は乳化を引き起こす。乳化は、脂肪滴の内側にアクセスできないリパーゼによる消化に利用できる脂肪の表面積を大幅に増大させるため、重要である。更に、胆汁酸/胆汁酸塩は脂質キャリアであり、ミセルを形成することによって多くの脂質を可溶化でき、脂溶性ビタミンの輸送及び吸収に重要である。
【0092】
本明細書中で使用される場合、用語「非全身性(non‐systemic)」又は「最小限しか吸収されない(minimally absorbed)」は、投与された化合物の、全身バイオアベイラビリティ及び/又は吸収が低いことを指す。いくつかの実施形態では、非全身性化合物は、実質的に全身吸収されない化合物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTI組成物は、ASBTIを全身ではなく遠位回腸、大腸、及び/又は直腸に送達する(例えば、ASBTIのほとんどの部分は全身吸収されない)。いくつかの実施形態では、非全身性化合物の全身吸収は、投与された用量の0.1%未満、0.3%未満、0.5%未満、0.6%未満、0.7%未満、0.8%未満、0.9%未満、1%未満、1.5%未満、2%未満、3%未満、又は5%未満(重量%又はモル%)である。いくつかの実施形態では、非全身性化合物の全身吸収は、投与された用量の10%未満である。いくつかの実施形態では、非全身性化合物の全身吸収は、投与された用量の15%未満である。いくつかの実施形態では、非全身性化合物の全身吸収は、投与された用量の25%未満である。代替的なアプローチでは、非全身性ASBTIは、全身性ASBTI(例えば化合物100A、100C)の全身バイオアベイラビリティに比べて低い全身バイオアベイラビリティを有する化合物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非全身性ASBTIの全身バイオアベイラビリティは、全身性ASBTI(例えば化合物100A、100C)の全身バイオアベイラビリティの30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、又は70%未満である。
【0093】
別の代替的なアプローチでは、本明細書に記載の組成物は、投与されたASBTIの用量の10%未満を全身に送達するように製剤される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、投与されたASBTIの用量の20%未満を全身に送達するように製剤される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、投与されたASBTIの用量の30%未満を全身に送達するように製剤される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、投与されたASBTIの用量の40%未満を全身に送達するように製剤される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、投与されたASBTIの用量の50%未満を全身に送達するように製剤される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、投与されたASBTIの用量の60%未満を全身に送達するように製剤される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、投与されたASBTIの用量の70%未満を全身に送達するように製剤される。いくつかの実施形態では、全身吸収は、総循環量又は投与後にクリアされた量等を含むいずれの好適な方法で決定される。
【0094】
ASBTI
一態様では、本発明の組成物は活性作用剤としてASBTIを含む。様々なASBTIが、本開示の組成物との併用に好適である。
【0095】
いくつかの実施形態では、上記ASBTIは、
【化3】
又はこれらの薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態では、ASBTIはマラリキシバット又はその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態では、ASBTIはマラリキシバット塩化物又はその薬学的に許容可能な別の塩である。様々な実施形態において、ASBTIはボリキシバット又はその薬学的に許容可能な塩である。様々な実施形態において、ASBTIはオデビキシバット又はその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態では、ASBTIはエロビキシバット又はその薬学的に許容可能な塩である。様々な実施形態において、ASBTIはGSK2330672又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0096】
様々な実施形態において、ASBTIは、本明細書で開示される化合物の遊離塩基又は薬学的に許容可能な塩であってよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化4】
又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0098】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化5】
(マラリキシバット塩化物、LUM‐001、SHP625、ロピキシバット塩化物)、又はその薬学的に許容可能な別の塩である。
【0099】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化6】
(ボリキシバット、(2R,3R,4S,5R,6R)‐4‐ベンジルオキシ‐6‐{3‐[3‐((3S,4R,5R)‐3‐ブチル‐7‐ジメチルアミノ‐3‐エチル‐4‐ヒドロキシ‐1,1‐ジオキソ‐2,3,4,5‐テトラヒドロ‐1H‐ベンゾ[b]チエピン‐5‐イル)‐フェニル]‐ウレイド}‐3,5‐ジヒドロキシ‐テトラヒドロ‐ピラン‐2‐イルメチル)硫酸水素塩)、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0100】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化7】
(LUM‐002;SHP626;SAR548304;ボリキシバットカリウム)、又はこれらの薬学的に許容可能な別の塩である。
【0101】
様々な実施形態において、ASBTIは、
【化8】
(オデビキシバット;AZD8294;WHO10706;AR‐H064974;SCHEMBL946468;A4250;1,1‐ジオキソ‐3,3‐ジブチル‐5‐フェニル‐7‐メチルチオ‐8‐(N‐{(R)‐a‐[N‐((S)‐1‐カルボキシプロピル)カルバモイル]‐4‐ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)‐2,3,4,5‐テトラヒドロ‐1,2,5‐ベンゾチアジアゼピン)、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0102】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化9】
(エロビキシバット;2‐[[(2R)‐2‐[[2‐[(3,3‐ジブチル‐7‐メチルスルファニル‐1,1‐ジオキソ‐5‐フェニル‐2,4‐ジヒドロ‐1λ6,5‐ベンゾチアゼピン‐8‐イル)オキシ]アセチル]アミノ]‐2‐フェニルアセチル]アミノ]酢酸)、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0103】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、
【化10】
(GSK2330672;リネリキシバット;3‐((((3R,5R)‐3‐ブチル‐3‐エチル‐7‐(メチルオキシ)‐1,1‐ジオキシド‐5‐フェニル‐2,3,4,5‐テトラヒドロ‐1,4‐ベンゾチアゼピン‐8‐イル)メチル)アミノ)ペンタン二酸)、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTIは、例えば国際公開第96/05188号、米国特許第5,994,391号、米国特許第7,238,684号、米国特許第6,906,058号、米国特許第6,020,330号、及び米国特許第6,114,322号に記載されているように合成される。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明の方法又は組成物において使用されるASBTIは、マラリキシバット(SHP625)、ボリキシバット(SHP626)、若しくはオデビキシバット(A4250)、又はこれらの薬学的に許容可能な塩である。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明の方法又は組成物において使用されるASBTIは、マラリキシバット、又はその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態では、本発明の方法又は組成物において使用されるASBTIは、マラリキシバット塩化物である。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明の方法又は組成物において使用されるASBTIは、ボリキシバット、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明の方法又は組成物において使用されるASBTIは、オデビキシバット、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明の方法又は組成物において使用されるASBTIは、エロビキシバット、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明の方法又は組成物において使用されるASBTIは、GSK2330672、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0111】
いくつかの実施形態では、ASBTIは異なる複数のASBTIの混合物を含んでよく、例えばASBTIは、マラリキシバット(例えばマラリキシバット塩化物)、ボリキシバット、オデビキシバット、GSK2330672、エロビキシバット、又はこれらの様々な組み合わせを含む組成物であってよい。
【0112】
小児投薬用製剤及び組成物
本明細書において提供されるのは、特定の実施形態では、本明細書に記載のいずれかの化合物を治療有効量だけ含む、小児投薬用製剤又は組成物である。特定の例では、上記医薬組成物は、ASBT阻害剤(例えば本明細書に記載のいずれかのASBTI)、防腐剤、及び抗酸化剤を含む。
【0113】
防腐剤
特定の実施形態では、本発明の組成物は防腐剤を含む。特定の実施形態では、上記防腐剤は抗菌性防腐剤である。
【0114】
特定の実施形態では、上記抗菌性防腐剤は、プロピレングリコール、エチルアルコール、グリセリン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、セトリミド(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、エチルパラベン、メチルパラベン、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、チメロサール、チモール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0115】
特定の実施形態では、上記防腐剤はプロピレングリコールである。
【0116】
特定の実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の少なくとも約10w/w%の量で存在する。特定の実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の少なくとも約20w/w%の量で存在する。特定の実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の少なくとも約25w/w%の量で存在する。特定の実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の少なくとも約30w/w%の量で存在する。
【0117】
特定の実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約30%~約40%の量で存在する。
【0118】
特定の実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約32%~約37%の量で存在する。特定の実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約33%~約36%の量で存在する。
【0119】
特定の実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約33%の量で存在する。特定の実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約34%の量で存在する。特定の実施形態では、上記防腐剤は、上記組成物の約35%の量で存在する。
【0120】
抗酸化剤
特定の実施形態では、本発明の組成物は抗酸化剤を含む。特定の実施形態では、上記抗酸化剤は、アミノカルボン酸、アミノポリカルボン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、BHT、BHA、重亜硫酸ナトリウム、ビタミンE又はその誘導体、没食子酸プロピル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0121】
特定の実施形態では、上記抗酸化剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、EGTA(エチレングリコール‐ビス(β‐アミノエチルエーテル)‐N,N,N’,N’‐四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、BAPTA(1,2‐ビス(o‐アミノフェノキシ)エタン‐N,N,N’,N’‐四酢酸)、NOTA(2,2’,2’’‐(1,4,7‐トリアゾナン‐1,4,7‐トリイル)三酢酸)、DOTA(テトラカルボン酸)、及びEDDHA(エチレンジアミン‐N,N’‐ビス(2‐ヒドロキシフェニル酢酸)から選択されるアミノポリカルボン酸である。
【0122】
特定の実施形態では、上記抗酸化剤はEDTAである。
【0123】
特定の実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.001w/w%~約1w/w%の量で存在する。特定の実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.005w/w%~約0.75w/w%の量で存在する。特定の実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.01w/w%~約0.5w/w%の量で存在する。特定の実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.05w/w%~約0.25w/w%の量で存在する。特定の実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.075w/w%~約0.2w/w%の量で存在する。特定の実施形態では、上記抗酸化剤は、上記組成物の約0.1w/w%の量で存在する。
【0124】
特定の実施形態では、小児投薬用製剤又は組成物に好適な剤形として、液体剤形が挙げられる。非限定的な例として、液体剤形は:水性又は非水性の経口分散剤、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁液、及び溶液;制御放出製剤;持続放出製剤;並びに即効性製剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書において提供されるのは、上記小児剤形が溶液、シロップ、懸濁液、及びエリキシルから選択される、医薬組成物である。
【0125】
別の態様では、本明細書において提供されるのは、少なくとも1つの賦形剤が香味料又は甘味料である、医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書において提供されるのは、コーティングである。いくつかの実施形態では、本明細書において提供されるのは:噴霧乾燥、湿式造粒、流動床、及びマイクロカプセル化による、味に特色のないポリマーを用いた薬物粒子のコーティング;溶融ワックスを用いた、溶融ワックスと他の医薬アジュバントとの混合物のコーティング;水性ポリマー分散液の錯体化、凝結又は凝固による、薬剤粒子の封入(entrapment);樹脂及び無機支持体上での薬剤粒子の吸着;並びに薬剤と、1つ以上の味に特色のない化合物とを溶融させて冷却した、又は溶媒の蒸発によって共沈させた、固体分散物から選択される、味をマスキングする技術である。いくつかの実施形態では、本明細書において提供されるのは、速度制御ポリマー又はマトリックス中の薬剤粒子又は顆粒を含む、遅延放出又は持続放出製剤である。
【0126】
好適な甘味料としては、スクロース、グルコース、フルクトース、又は強力甘味料、即ちスクロースに比べて高い甘味度を有する(例えばスクロースより少なくとも10倍甘い)作用剤が挙げられる。好適な強力甘味料としては、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム又はカリウム又はカルシウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、キシリトール、チクロ、ネオテーム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン又はこれらの混合物、ソーマチン、パラチニット、ステビオシド、レバウジオシド、Magnasweet(登録商標)が挙げられる。甘味料の合計濃度は、液体組成物をベースにして実質的に0mg/mLから約300mg/mLまでであってよい。
【0127】
水性媒体による再構成時の上記液体組成物の嗜好性を高めるため、1つ以上の味をマスキングする作用剤を上記組成物に添加して、ASBT阻害剤の味をマスキングしてよい。味をマスキングする作用剤は、甘味料、香味料、又はこれらの組み合わせとすることができる。味をマスキングする作用剤は、典型的には上記医薬組成物全体の重量の約0.1%又は5%である。本発明のある好ましい実施形態では、上記組成物は、1つ以上の甘味料及び1つ以上の香味料の両方を含有する。
【0128】
本明細書における香味料は、組成物の味又は香りを強化できる物質である。好適な天然又は合成香味料を、標準的な参考書、例えばFenaroli’s Handbook of Flavor Ingredients、3rd edition (1995)から選択できる。本明細書に記載の製剤に使用できる香味料及び/又は甘味料の非限定的な例としては、例えばアカシアシロップ、アセスルファムK、アリテーム、アニス、リンゴ、アスパルテーム、バナナ、ババロア、ベリー、クロスグリ、バタースコッチ、クエン酸カルシウム、樟脳、キャラメル、サクランボ、サクランボクリーム、チョコレート、シナモン、バブルガム、シトラス、シトラスパンチ、シトラスクリーム、コットンキャンディ、ココア、コーラ、クールチェリー、クールシトラス、チクロ、シラメート(cylamate)、デキストロース、ユーカリ、オイゲノール、フルクトース、フルーツポンチ、ショウガ、グリチルレチン酸塩、カンゾウ(リコリス)シロップ、ブドウ、グレープフルーツ、ハチミツ、イソマルト、レモン、ライム、レモンクリーム、グリチルリチン酸モノアンモニウム(MagnaSweet(登録商標))、マルトール、マンニトール、メープル、マシュマロ、メンソール、ミントクリーム、ミックスベリー、ネオヘスペリジンDC、ネオテーム、オレンジ、ナシ、モモ、ペパーミント、ペパーミントクリーム、Prosweet(登録商標)粉末、ラズベリー、ルートビア、ラム、サッカリン、サフロール、ソルビトール、スペアミント、スペアミントクリーム、イチゴ、イチゴクリーム、ステビア、スクラロース、スクロース、サッカリンナトリウム、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、マンニトール、タリン、シリトール、スクラロース、ソルビトール、スイスクリーム(Swiss cream)、タガトース、タンジェリン、タウマチン、トゥッティフルッティ、バニラ、クルミ、スイカ、ワイルドチェリー、ウィンターグリーン、キシリトール、又はこれらの香味成分のいずれの組み合わせ、例えばアニス‐メンソール、サクランボ‐アニス、シナモン‐オレンジ、サクランボ‐シナモン、チョコレート‐ミント、ハチミツ‐レモン、レモン‐ライム、レモン‐ミント、メンソール‐ユーカリ、オレンジ‐クリーム、バニラ‐ミント、及びこれらの混合物が挙げられる。香味料は単独で、又は2つ以上を組み合わせて、使用できる。いくつかの実施形態では、上記組成物は、上記組成物の体積の約0.001%~約5.0%の濃度の甘味料又は香味料を含む。一実施形態では、上記組成物は、上記水性分散液の体積の約0.001%~約1.0%の濃度の甘味料又は香味料を含む。別の実施形態では、上記組成物は、上記組成物の体積の約0.002%~約0.5%の濃度の甘味料又は香味料を含む。更に別の実施形態では、上記組成物は、上記組成物の体積の約0.003%~約0.25%の濃度の甘味料又は香味料を含む。更に別の実施形態では、上記組成物は、上記組成物の体積の約0.005%~約0.1%の濃度の甘味料又は香味料を含む。
【0129】
特定の実施形態では、本明細書に記載の小児用医薬組成物は、本明細書に記載の1つ以上の化合物を、活性成分として、遊離酸若しくは遊離塩基の形態、又は薬学的に許容可能な塩の形態で含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、N‐オキシドとして、又は結晶若しくは非晶質形態で利用される(即ち多形)。状況によっては、本明細書に記載の化合物は互変異性体として存在する。全ての互変異性体が、本明細書で提示される化合物の範囲内に含まれる。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和又は溶媒和形態で存在し、ここで溶媒和形態は、いずれの薬学的に許容可能な溶媒、例えば水、エタノール等を含む。本明細書で提示される化合物の溶媒和形態もまた、本明細書中に記載されているものとみなされる。
【0130】
小児用医薬組成物の「キャリア(carrier)」としては、いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤が挙げられ、ASBTI等の本明細書に記載の化合物との適合性、及び所望の剤形の放出プロファイル特性に基づいて選択される。例示的なキャリア材料としては例えば、結合剤、懸濁剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、潤滑剤、湿潤剤、希釈剤等が挙げられる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa. 1975; Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980; and Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)を参照されたい(これらの文献は全て、あらゆる目的のためにその全体が参照により本出願に援用される)。
【0131】
更に、特定の実施形態では、本明細書に記載の小児用医薬組成物は剤形として製剤される。従っていくつかの実施形態では、本明細書において提供されるのは、本明細書に記載の化合物を含む、個体への投与に好適な剤形である。特定の実施形態では、好適な剤形は、非限定的な例として、水性の経口分散剤、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁液、液体経口剤形、制御放出製剤、即効性製剤、遅延放出製剤、長期放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、及び即時放出製剤と制御放出製剤との混合物を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTI又は他の化合物は、遠位消化管(例えば遠位回腸、結腸、及び/又は直腸)への送達に好適なキャリアと関連付けて、経口投与される。
【0133】
特定の実施形態では、本明細書に記載の小児用組成物は、回腸の遠位部分及び/又は結腸での活性作用剤の制御放出を可能にするマトリックス(例えばヒプロメロースを含むマトリックス)と関連付けられた、本明細書に記載のASBTI又は他の化合物を含む。いくつかの実施形態では、組成物はpH感受性のポリマー(例えばCosmo Pharmaceuticals製MMX(商標)マトリックス)を含み、回腸の遠位部分における活性作用剤の制御放出を可能にする。制御放出に好適なこのようなpH感受性ポリマーの例としては、酸性基(例えば-COOH、-SOH)を含み、腸内の塩基性pH(例えば約7~約8のpH)において膨潤する、ポリアクリル酸ポリマー(例えばメタクリル酸及び/又はメタクリル酸エステルの陰イオン性ポリマー、例えばCarbopol(登録商標)ポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、遠位回腸での制御放出に好適な組成物は、マイクロ微粒子活性作用剤(例えば微粉化された活性作用剤)を含む。いくつかの実施形態では、非酵素的に分解されるポリ(dl‐ラクチド‐コ‐グリコシド)(PLGA)コアは、遠位回腸への、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の送達に好適である。いくつかの実施形態では、腸内分泌ペプチド分泌促進剤を含む剤形は、遠位回腸及び/又は結腸への部位特異的送達のために、腸溶性ポリマー(例えばEudragit(登録商標)S‐100;フタル酸酢酸セルロース;フタル酸ポリ酢酸ビニル;フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;メタクリル酸又はメタクリル酸エステル等の陰イオン性ポリマー)でコーティングされる。いくつかの実施形態では、細菌によって活性化される系が、回腸の遠位部分への標的化された送達に好適である。細菌叢によって活性化される系の例としては、ペクチン、ガラクトマンナン、並びに/又は活性作用剤のアゾヒドロゲル及び/若しくはグリコシド抱合(例えばD‐ガラクトシド若しくはβ‐D‐キシロピラノシド等)を含む、剤形が挙げられる。消化管細菌叢酵素の例としては、例えばD‐ガラクトシダーゼ、β‐D‐グルコシダーゼ、α‐L‐アラビノフラノシダーゼ、又はβ‐D‐キシロピラノシダーゼ等といった、細菌性グリコシダーゼが挙げられる。
【0134】
本明細書に記載の小児用医薬組成物は任意に、本明細書に記載の更なる治療用化合物、及び1つ以上の薬学的に許容可能な添加剤、例えば適合性を有するキャリア、結合剤、充填剤、懸濁剤、香味料、甘味料、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、潤滑剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑化剤、安定剤、浸透促進剤、湿潤剤、消泡剤、抗酸化剤、防腐剤、又はこれらの1つ以上の組み合わせを含む。
【0135】
液体剤形
本発明の医薬液体剤形は、薬学分野において公知の技法に従って調製できる。
【0136】
「溶液(solution)」は、活性成分を液体中に溶解させた、液体医薬製剤を指す。本発明の医薬溶液としては、シロップ及びエリキシルが挙げられる。「懸濁液(suspension)」は、活性成分が液体中の沈殿物となっている、液体医薬製剤を指す。
【0137】
液体剤形では、ある特定のpHを有すること、及び/又はある特定のpH範囲内に維持されることが望ましい。pHを制御するために、好適な緩衝系を使用できる。更にこの緩衝系は、所望のpH範囲を維持する十分な能力を有していなければならない。本発明で使用できる緩衝系の例としては、限定するものではないが、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、又は当該技術分野において公知の他のいずれの好適な緩衝液が挙げられる。好ましくは、上記緩衝系は、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、及びリン酸二水素カリウム等を含む。最終的な懸濁液中の上記緩衝系の濃度は、液体剤形に必要な緩衝系の強度及びpH/pH範囲等の因子に応じて変化する。一実施形態では、上記濃度は最終的な液体剤形の0.005~0.5w/v%の範囲内である。
【0138】
本発明の液体剤形を構成する医薬組成物は、活性材料の沈降を防止するための懸濁剤/安定剤も含むことができる。長い時間が経過すると、沈降によって活性材料が製品パックの内壁に粘結し、再分散及び正確な分配が困難になる。好適な安定剤としては、限定するものではないが、キサンタンガム、グアガム、及びトラガカントガム等の多糖類安定剤、並びにセルロース誘導体HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、メチルセルロース、及びAvicel RC‐591(微結晶セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム)が挙げられる。別の実施形態では、ポリビニルピロリドン(PVP)も安定剤として使用できる。
【0139】
上述の成分に加えて、ASBTI経口組成物は任意に、医薬組成物中に一般的に見られる他の賦形剤、例えば別の溶媒、味をマスキングする作用剤、抗酸化剤、充填剤、酸性化剤、酵素阻害剤、及びHandbook of Pharmaceutical Excipients, Rowe et al., Eds., 4th Edition, Pharmaceutical Press (2003)(この文献はあらゆる目的のためにその全体が参照により本出願に援用される)に記載されている他の成分を含有することもできる。
【0140】
別の溶媒の添加は、液体剤形中の活性成分の可溶性の向上、そしてその結果として対象の体内での吸収及びバイオアベイラビリティの向上に役立ち得る。好ましくは、上記別の溶媒としては、メタノール、エタノール、又はプロピレングリコール等が挙げられる。
【0141】
別の態様では、本発明は、液体剤形を調製するためのプロセスを提供する。上記プロセスは、ASBTI又はその薬学的に許容可能な塩を、グリセロール若しくはシロップ又はこれらの混合物、防腐剤、緩衝系、及び懸濁剤/安定剤等を含む成分と、液体媒体中で混合するステップを含む。一般に上記液体剤形は、これらの様々な成分を液体媒体中で均一かつ十分に混合することによって調製される。例えば、グリセロール若しくはシロップ又はこれらの混合物、防腐剤、緩衝系、及び懸濁剤/安定剤等の成分を、水に溶解させて水溶液を形成でき、続いて活性成分をこの水溶液中に分散させて、懸濁液を形成できる。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される液体剤形の体積は、約0.001ml~約50mlとすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書において提供される液体剤形の体積は、約0.01ml~約20mlとすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書において提供される液体剤形の体積は、約0.05ml~約10mlとすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書において提供される液体剤形の体積は、約0.1ml~約5mlとすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書において提供される液体剤形の体積は、約0.1ml~約3mlとすることができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される液体剤形の体積は、約0.1ml、又は約0.15ml、又は約0.2ml、又は約0.25ml、又は約0.3ml、又は約0.35ml、又は約0.4ml、又は約0.45ml、又は約0.5ml、又は約0.55ml、又は約0.6ml、又は約0.65ml、又は約0.7ml、又は約0.75ml、又は約0.8ml、又は約0.85ml、又は約0.9ml、又は約0.95ml、又は約1.00ml、又は約1.05ml、又は約1.1ml、又は約1.2ml、又は約1.25ml、又は約1.5ml、又は約1.75ml、又は約2.00ml、又は約2.25ml、又は約2.5ml、又は約2.75ml、又は約3.00mlとすることができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、ASBTIの量は、総体積の約0.001%~約90%の範囲の量とすることができる。いくつかの実施形態では、ASBTIの量は、総体積の約0.01%~約80%の範囲の量とすることができる。いくつかの実施形態では、ASBTIの量は、総体積の約0.1%~約50%の範囲の量とすることができる。いくつかの実施形態では、ASBTIの量は、総体積の約0.2%~約25%の範囲の量とすることができる。いくつかの実施形態では、ASBTIの量は、総体積の約0.5%~約10%の範囲の量とすることができる。いくつかの実施形態では、ASBTIの量は、総体積の約0.5%~約5%の範囲の量とすることができる。
【0145】
一実施形態では、本明細書に記載の組成物の液体体積は、約0.01ml~約50ml、又は約0.1ml~約5mlとすることができ、また活性成分(例えばマラリキシバット)の量は、約0.001mg/ml~約500mg/ml、又は約0.5mg/ml~約100mg/ml、又は約1mg/ml~約80mg/ml、又は約5mg/ml~約50mg/ml、又は約5mg/ml、又は約9.5mg/ml、又は約10mg/ml、又は約15mg/ml、又は約20mg/ml、又は約25mg/ml、又は約30mg/ml、又は約35mg/ml、又は約40mg/ml、又は約50mg/mlとすることができる。
【0146】
非限定的な一実施形態では、上記組成物中のマラリキシバットの濃度は、マラリキシバット塩化物ベースで10mg/mlである。
【0147】
非限定的な一実施形態では、上記組成物中のマラリキシバットの濃度は、マラリキシバット遊離塩基ベースで9.5mg/mlである。
【0148】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、室温で少なくとも1か月にわたって安定している。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、室温で少なくとも2か月にわたって安定している。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、室温で少なくとも3か月にわたって安定している。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、室温で少なくとも6か月にわたって安定している。一実施形態では、上記組成物は、室温で少なくとも1年にわたって安定している。一実施形態では、上記組成物は、室温で少なくとも18か月にわたって安定している。一実施形態では、上記組成物は、室温で少なくとも2年にわたって安定している。
【0149】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、経口投与用の液体組成物である。
【0150】
投与経路、剤形、及び投薬計画
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物、及び本明細書に記載の方法で投与される組成物は、胆汁酸の再取り込みを阻害する、又は血清若しくは肝内胆汁酸レベルを低減するように製剤される。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、経口投与のために製剤される。いくつかの実施形態では、上記製剤は経口投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、経口投与及び結腸への腸内送達のために製剤される。
【0151】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物又は方法は非全身性である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、ASBTIを、遠位回腸、結腸、及び/又は直腸に送達し、全身には送達しない(例えば、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の大半が全身に吸収されない)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の経口組成物は、ASBTIを、遠位回腸、結腸、及び/又は直腸に送達し、全身には送達しない(例えば、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の大半が全身に吸収されない)。
【0152】
特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち90w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち80w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち70w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち60w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち50w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち40w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち30w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち25w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち20w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち15w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち10w/w%未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、ASBTIのうち5w/w%未満を全身に送達する。いくつかの実施形態では、全身吸収は、総循環量又は投与後にクリアされた量等を含むいずれの好適な方法で決定される。
【0153】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び/又は製剤は、1日に少なくとも1回投与される。特定の実施形態では、ASBTIを含有する上記製剤は1日に少なくとも2回投与されるが、他の実施形態では、ASBTIを含有する上記製剤は1日に少なくとも3回投与される。特定の実施形態では、ASBTIを含有する上記製剤は、1日に最高5回投与される。特定の実施形態では、本明細書に記載のASBTIを含有する組成物の投薬計画は、患者の年齢、性別、及び食事等の様々な因子を考慮して決定されることを理解されたい。
【0154】
本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約0.1mM~約1Mである。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約1mM~約750mMである。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約1mM~約500mMである。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約1mM~約500mMである。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約1mM~約250mMである。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約5mM~約100mMである。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約7mM~約70mMである。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるASBTIの濃度は、約7mM、又は約10mM、又は約15mM、又は約20mM、又は約25mM、又は約30mM、又は約40mM、又は約50mM、又は約60mM、又は約70mMである。
【0155】
特定の実施形態では、遠位消化管(例えば遠位回腸、結腸、及び/又は直腸)を標的とすることにより、本明細書に記載の組成物及び方法は、(例えば遠位消化管を標的としない経口用量に比べて)低用量の腸内分泌ペプチド分泌促進剤で、(例えば微生物の増殖の低減、及び/又は胆汁うっ滞若しくは胆汁うっ滞性肝疾患の症状の緩和において)効能を提供する。
【0156】
本開示の特定の実施形態では、所与の作用剤の有効量は、特定の化合物、疾患又は体調及びその重症度、治療を必要とする対象又は宿主の個別情報(例えば体重)といった多数の因子のうちの1つ以上に応じて変化し、例えば投与される特定の作用剤、投与経路、治療される体調、及び治療される対象又は宿主を含む、症例を取り巻く特定の状況に応じて決定される。いくつかの実施形態では、投与される用量は、最大耐用量までの用量を含む。いくつかの実施形態では、投与される用量は、新生児又は乳児の最大耐用量までの用量を含む。
【0157】
本開示の様々な実施形態において、望ましい用量は、単回用量として、又は同時に(若しくは短期間に)、若しくは適切な間隔で、例えば1日あたり2回、3回、4回、若しくはそれ以上の部分用量で投与される分割用量として、都合のよいように提示される。様々な実施形態において、単回用量のASBTIは、6時間ごとに、12時間ごとに、24時間ごとに、48時間ごとに、72時間ごとに、96時間ごとに、5日ごとに、6日ごとに、又は週1回、投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIの合計単回用量は、以下に記載される範囲内である。
【0158】
本開示の様々な実施形態において、患者の状態が改善した場合、医師の裁量により任意に、ASBTIを継続的に投与するか、あるいは投与される薬剤の用量を一時的に削減する、若しくは一定期間にわたって一時的に中止する(即ち「休薬期間(drug holiday)」。休薬期間の長さは2日~1年の間で任意に変更され、単なる例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、又は365日を含む。休薬期間中の薬剤の削減は、元の用量の10%~100%を含み、単なる例として、元の用量の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%を含む。いくつかの実施形態では、ASBTIの合計単回用量は、以下に記載される範囲内である。
【0159】
患者の体調の改善が起こった後、必要に応じて維持用量が投与される。その後、投薬量又は投与の頻度又はその両方が、症状に応じて、改善された疾患、障害、又は体調が保持されるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、何らかの症状の再発時に、患者は長期にわたる断続的な治療を必要とする。
【0160】
特定の例では、個別の治療計画に関して多数の変数が存在し、またこれらの推奨値からの大幅な逸脱が、本明細書に記載された範囲内で考慮される。本明細書に記載の投薬量は、非限定的な例として、使用される化合物の活性、治療対象の疾患又は体調、投与の態様、個々の対象の要件、治療される疾患又は体調の重症度、及び医師の判断といった多数の変数に応じて、任意に変更される。
【0161】
このような治療計画の毒性及び治療効能は、LD50(集団の50%にとって致死的な用量)及びED50(集団の50%にとって治療上有効な用量)の決定を含むがこれに限定されない、細胞培養物又は実験動物における薬学的手順によって、任意に決定される。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、これは、LD50とED50との間の比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。特定の実施形態では、細胞培養物アッセイ及び動物研究から得られたデータを、ヒトでの使用のための投薬量の範囲の策定に使用する。具体的な実施形態では、本明細書に記載の化合物の投薬量は、最小限の毒性でED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、採用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で任意に変化する。
【0162】
投薬量
様々な実施形態において、患者は、1歳未満、2歳未満、3歳未満、4歳未満、5歳未満、6歳未満、7歳未満、8歳未満、9歳未満、10歳未満、11歳未満、12歳未満、13歳未満、14歳未満、15歳未満、16歳未満、17歳未満、又は18歳未満の小児患者である。特定の実施形態では、上記小児対象は、新生児、早産新生児、乳児、幼児、未就学児、学齢児童、思春期前児童、思春期後児童、青年、又は18歳未満のティーンエイジャーである。いくつかの実施形態では、上記小児対象は、新生児、早産新生児、乳児、幼児、未就学児、又は学齢児童である。いくつかの実施形態では、上記小児対象は、新生児、早産新生児、乳児、幼児、又は未就学児である。いくつかの実施形態では、上記小児対象は、新生児、早産新生児、乳児、又は幼児である。いくつかの実施形態では、上記小児対象は、新生児、早産新生児、又は乳児である。いくつかの実施形態では、上記小児対象は新生児である。いくつかの実施形態では、上記小児対象は乳児である。いくつかの実施形態では、上記小児対象は幼児である。
【0163】
様々な実施形態において、ASBTIは、マラリキシバット若しくはボリキシバット、又はこれらの薬学的に許容可能な塩である。
【0164】
様々な実施形態において、患者へのASBTI投与の効能及び安全性は、7α‐ヒドロキシ‐4‐コレステン‐3‐オン(7αC4)の血清レベル、sBA濃度、7αC4とsBAとの比(7αC4:sBA)、血清総コレステロール濃度、血清LDL‐Cコレステロール濃度、血清ビリルビン濃度、血清ALT濃度、血清AST濃度、又はこれらの組み合わせを測定することによって監視される。様々な実施形態において、ASBTI投与の効能は、観察者報告掻痒アウトカム(observer‐reported itch reported outcome:ITCHRO(OBS))スコア、HRQoL(例えばPedsQL)スコア、CSSスコア、黄色腫スコア、身長Zスコア、体重Zスコア、又はこれらの様々な組み合わせを監視することによって測定される。様々な実施形態において、上記方法は、7α‐ヒドロキシ‐4‐コレステン‐3‐オン(7αC4)の血清レベル、sBA濃度、7αC4とsBAとの比(7αC4:sBA)、血清総コレステロール濃度、血清LDL‐Cコレステロール濃度、血清ビリルビン濃度、血清ALT濃度、血清AST濃度、又はこれらの組み合わせを監視するステップを含む。様々な実施形態において、上記方法は、観察者報告掻痒アウトカム(ITCHRO(OBS))スコア、HRQoL(例えばPedsQL)スコア、CSSスコア、黄色腫スコア、身長Zスコア、体重Zスコア、又はこれらの様々な組み合わせを監視するステップを含む。
【0165】
ASBTIの投与用量は、化合物遊離塩基としての、又は薬学的に許容可能な塩としての、ASBTIの分子量に基づいて計算できる。一実施形態では、ASBTIの投与用量は、薬学的に許容可能な塩としての化合物に基づく。一実施形態では、ASBTIの投与用量は、化合物遊離塩基に基づく。
【0166】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、約又は少なくとも約0.5μg/kg、1μg/kg、2μg/kg、3μg/kg、4μg/kg、5μg/kg、6μg/kg、7μg/kg、8μg/kg、9μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、85μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、240μg/kg、280μg/kg、300μg/kg、250μg/kg、280μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、560μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1,000μg/kg、1,100μg/kg、1,200μg/kg、1,300μg/kg、1,400μg/kg、1500μg/kg、1,600μg/kg、1,700μg/kg、1,800μg/kg、1,900μg/kg、又は2,000μg/kgの用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約1μg/kg以下、2μg/kg以下、3μg/kg以下、4μg/kg以下、5μg/kg以下、6μg/kg以下、7μg/kg以下、8μg/kg以下、9μg/kg以下、10μg/kg以下、15μg/kg以下、20μg/kg以下、25μg/kg以下、30μg/kg以下、35μg/kg以下、40μg/kg以下、45μg/kg以下、50μg/kg以下、55μg/kg以下、60μg/kg以下、65μg/kg以下、70μg/kg以下、75μg/kg以下、80μg/kg以下、85μg/kg以下、90μg/kg以下、100μg/kg以下、140μg/kg以下、150μg/kg以下、200μg/kg以下、240μg/kg以下、280μg/kg以下、300μg/kg以下、250μg/kg以下、280μg/kg以下、300μg/kg以下、400μg/kg以下、500μg/kg以下、560μg/kg以下、600μg/kg以下、700μg/kg以下、800μg/kg以下、900μg/kg以下、1,000μg/kg以下、1,100μg/kg以下、1,200μg/kg以下、1,300μg/kg以下、1,400μg/kg以下、1,500μg/kg以下、1,600μg/kg以下、1,700μg/kg以下、1,800μg/kg以下、1,900μg/kg以下、2,000μg/kg以下、又は2,100μg/kg以下の用量で投与される。
【0167】
様々な実施形態において、ASBTIは、約又は少なくとも約0.5mg/日、1mg/日、2mg/日、3mg/日、4mg/日、5mg/日、6mg/日、7mg/日、8mg/日、9mg/日、10mg/日、11mg/日、12mg/日、13mg/日、14mg/日、15mg/日、16mg/日、17mg/日、18mg/日、19mg/日、20mg/日、30mg/日、40mg/日、50mg/日、60mg/日、70mg/日、80mg/日、90mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、300mg/日、500mg/日、600mg/日、700mg/日、800mg/日、900mg/日、1000mg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約1mg/日以下、2mg/日以下、3mg/日以下、4mg/日以下、5mg/日以下、6mg/日以下、7mg/日以下、8mg/日以下、9mg/日以下、10mg/日以下、11mg/日以下、12mg/日以下、13mg/日以下、14mg/日以下、15mg/日以下、16mg/日以下、17mg/日以下、18mg/日以下、19mg/日以下、20mg/日以下、30mg/日以下、40mg/日以下、50mg/日以下、60mg/日以下、70mg/日以下、80mg/日以下、90mg/日以下、100mg/日以下、150mg/日以下、200mg/日以下、300mg/日以下、500mg/日以下、600mg/日以下、700mg/日以下、800mg/日以下、900mg/日以下、1,000mg/日以下、1,100mg/日以下の用量で投与される。
【0168】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、約140μg/kg/日~約1400μg/kg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約又は少なくとも約0.5μg/kg/日、1μg/kg/日、2μg/kg/日、3μg/kg/日、4μg/kg/日、5μg/kg/日、6μg/kg/日、7μg/kg/日、8μg/kg/日、9μg/kg/日10μg/kg/日、15μg/kg/日、20μg/kg/日、25μg/kg/日、30μg/kg/日、35μg/kg/日、40μg/kg/日、45μg/kg/日、50μg/kg/日、100μg/kg/日、140μg/kg/日、150μg/kg/日、200μg/kg/日、240μg/kg/日、280μg/kg/日、300μg/kg/日、250μg/kg/日、280μg/kg/日、300μg/kg/日、400μg/kg/日、500μg/kg/日、560μg/kg/日、600μg/kg/日、700μg/kg/日、800μg/kg/日、900μg/kg/日、1,000μg/kg/日、1,100μg/kg/日、1,200μg/kg/日、又は1,300μg/kg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約1μg/kg/日以下、2μg/kg/日以下、3μg/kg/日以下、4μg/kg/日以下、5μg/kg/日以下、6μg/kg/日以下、7μg/kg/日以下、8μg/kg/日以下、9μg/kg/日以下、10μg/kg/日以下、15μg/kg/日以下、20μg/kg/日以下、25μg/kg/日以下、30μg/kg/日以下、35μg/kg/日以下、40μg/kg/日以下、45μg/kg/日以下、50μg/kg/日以下、100μg/kg/日以下、140μg/kg/日以下、150μg/kg/日以下、200μg/kg/日以下、240μg/kg/日以下、280μg/kg/日以下、300μg/kg/日以下、250μg/kg/日以下、280μg/kg/日以下、300μg/kg/日以下、360μg/kg/日以下、380μg/kg/日以下、400μg/kg/日以下、500μg/kg/日以下、560μg/kg/日以下、600μg/kg/日以下、700μg/kg/日以下、800μg/kg/日以下、880μg/kg/日以下、900μg/kg/日以下、1,000μg/kg/日以下、1,100μg/kg/日以下、1,200μg/kg/日以下、1,300μg/kg/日以下、又は1,400μg/kg/日以下の用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約0.5μg/kg/日~約500μg/kg/日、約0.5μg/kg/日~約250μg/kg/日、約1μg/kg/日~約100μg/kg/日、約10μg/kg/日~約50μg/kg/日、約10μg/kg/日~約100μg/kg/日、約0.5μg/kg/日~約2000μg/kg/日、約280μg/kg/日~約1400μg/kg/日、約420μg/kg/日~約1400μg/kg/日、約250~約550μg/kg/日、約560μg/kg/日~約1400μg/kg/日、700μg/kg/日~約1400μg/kg/日、約560μg/kg/日~約1200μg/kg/日、約700μg/kg/日~約1200μg/kg/日、約560μg/kg/日~約1000μg/kg/日、約700μg/kg/日~約1000μg/kg/日、約800μg/kg/日~約1000μg/kg/日、約200μg/kg/日~約600μg/kg/日、約300μg/kg/日~約600μg/kg/日、約360μg/kg/日~約880μg/kg/日、約400μg/kg/日~約500μg/kg/日、約400μg/kg/日~約600μg/kg/日、約400μg/kg/日~約700μg/kg/日、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日、約500μg/kg/日~約800μg/kg/日、約500μg/kg/日~約900μg/kg/日、約600μg/kg/日~約900μg/kg/日、約700μg/kg/日~約900μg/kg/日、約200μg/kg/日~約600μg/kg/日、約800μg/kg/日~約900μg/kg/日、約100μg/kg/日~約1500μg/kg/日、約300μg/kg/日~約2,000μg/kg/日、又は約400μg/kg/日~約2000μg/kg/日の用量で投与される。
【0169】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、1用量あたり約30μg/kg~約1400μg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、1用量あたり約0.5μg/kg~約2000μg/kg、1用量あたり約0.5μg/kg~約1500μg/kg、1用量あたり約100μg/kg~約700μg/kg、1用量あたり約5μg/kg~約100μg/kg、1用量あたり約10μg/kg~約500μg/kg、1用量あたり約50μg/kg~約1400μg/kg、1用量あたり約300μg/kg~約2,000μg/kg、1用量あたり約60μg/kg~約1200μg/kg、1用量あたり約70μg/kg~約1000μg/kg、1用量あたり約70μg/kg~約700μg/kg、1用量あたり80μg/kg~約1000μg/kg、1用量あたり80μg/kg~約800μg/kg、1用量あたり100μg/kg~約800μg/kg、1用量あたり100μg/kg~約600μg/kg、1用量あたり150μg/kg~約700μg/kg、1用量あたり150μg/kg~約500μg/kg、1用量あたり200μg/kg~約400μg/kg、1用量あたり200μg/kg~約300μg/kg、又は1用量あたり300μg/kg~約400μg/kgの用量で投与される。
【0170】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、約0.5mg/日~約550mg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約1mg/日~約500mg/日、約1mg/日~約300mg/日、約1mg/日~約200mg/日、約2mg/日~約300mg/日、約2mg/日~約200mg/日、約4mg/日~約300mg/日、約4mg/日~約200mg/日、約4mg/日~約150mg/日、約5mg/日~約150mg/日、約5mg/日~約100mg/日、約5mg/日~約80mg/日、約5mg/日~約50mg/日、約5mg/日~約40mg/日、約5mg/日~約30mg/日、約5mg/日~約20mg/日、約5mg/日~約15mg/日、約10mg/日~約100mg/日、約10mg/日~約80mg/日、約10mg/日~約50mg/日、約10mg/日~約40mg/日、約10mg/日~約20mg/日、約20mg/日~約100mg/日、約20mg/日~約80mg/日、約20mg/日~約50mg/日、又は約20mg/日~約40mg/日、又は約20mg/日~約30mg/日の用量で投与される。
【0171】
いくつかの実施形態では、ASBTIは、1用量あたり約200μg/kg~約400μg/kgの量で、1日2回(BID)投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約280μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約360μg/kg/日~約880μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約20mg/kg/日~約50mg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約5mg/kg/日~約15mg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約560μg/kg/日~約1,400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約700μg/kg/日~約1,400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約700μg/kg/日~約900μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約560μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約700μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約200μg/kg/日~約600μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、ASBTIは、約400μg/kg/日~約600μg/kg/日の量で投与される。
【0172】
様々な実施形態において、ASBTIの上記用量は、初回用量レベルである。様々な実施形態において、ASBTIの上記用量は、2回目用量レベルである。いくつかの実施形態では、上記2回目用量レベルは上記初回用量レベルより高い。いくつかの実施形態では、上記2回目用量レベルは上記初回用量レベルより、約又は少なくとも約1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100倍高い。いくつかの実施形態では、上記2回目用量レベルは、上記初回用量レベルの約1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、又は150倍を超えない。
【0173】
様々な実施形態において、ASBTIは、上述の用量のうちの1つで、又は上述の用量範囲のうちの1つの中で、1日1回(QD)投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、上述の用量のうちの1つで、又は上述の用量範囲のうちの1つの中で、1日2回(BID)投与される。様々な実施形態において、1回のASBTI用量が、毎日、2日1回、週2回、又は週1回投与される。
【0174】
様々な実施形態において、ASBTIは、約又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、48、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、又は800週の期間にわたって、定期的に投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、48、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、又は1000週以下にわたって投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約又は少なくとも約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10年の期間にわたって、定期的に投与される。様々な実施形態において、ASBTIは、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は15年以下の期間にわたって、定期的に投与される。
【0175】
回腸終末部又は結腸への送達のための経口投与
特定の態様では、本明細書に記載の1つ以上の化合物を含有する組成物又は製剤は、ASBTI、即ち本明細書に記載の化合物の、回腸終末部、結腸及び/又は直腸への局所的送達のために、経口投与される。上記組成物の単位剤形は、回腸終末部及び/又は結腸への腸内送達のために製剤された液体剤形を含む。特定の実施形態では、上記液体剤形、例えば溶液、懸濁液、又はエリキシルは、マイクロスフェア内に封入又は埋入された本明細書に記載の組成物を含有する。いくつかの実施形態では、マイクロスフェアとしては、非限定的な例として、キトサンマイクロコア、HPMCカプセル、及び酪酸酢酸セルロース(CAB)マイクロスフェアが挙げられる。特定の実施形態では、経口剤形は、医薬製剤の分野の当業者に公知である従来の方法を用いて、調製される。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTIは、遠位消化管(例えば、遠位回腸及び/若しくは回腸終末部、結腸、並びに/又は直腸)への送達に好適なキャリアに関連付けられて、経口投与される。
【0177】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、回腸の遠位部分及び/又は結腸での活性作用剤の制御放出を可能にするマトリックス(例えばヒプロメロースを含むマトリックス)と関連付けられた、本明細書に記載のASBTI又は他の化合物を含む。いくつかの実施形態では、組成物はpH感受性のポリマー(例えばCosmo Pharmaceuticals製MMX(商標)マトリックス)を含み、回腸の遠位部分における活性作用剤の制御放出を可能にする。制御放出に好適なこのようなpH感受性ポリマーの例としては、酸性基(例えば-COOH、-SOH)を含み、腸内の塩基性pH(例えば約7~約8のpH)において膨潤する、ポリアクリル酸ポリマー(例えばメタクリル酸及び/又はメタクリル酸エステルの陰イオン性ポリマー、例えばCarbopol(登録商標)ポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、遠位回腸での制御放出に好適な組成物は、マイクロ微粒子活性作用剤(例えば微粉化された活性作用剤)を含む。いくつかの実施形態では、非酵素的に分解されるポリ(dl‐ラクチド‐コ‐グリコシド)(PLGA)コアは、遠位回腸への、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の送達に好適である。いくつかの実施形態では、腸内分泌ペプチド分泌促進剤を含む剤形は、遠位回腸及び/又は結腸への部位特異的送達のために、腸溶性ポリマー(例えばEudragit(登録商標)S‐100;フタル酸酢酸セルロース;フタル酸ポリ酢酸ビニル;フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;メタクリル酸又はメタクリル酸エステル等の陰イオン性ポリマー)でコーティングされる。いくつかの実施形態では、細菌によって活性化される系が、回腸の遠位部分への標的化された送達に好適である。細菌叢によって活性化される系の例としては、ペクチン、ガラクトマンナン、並びに/又は活性作用剤のアゾヒドロゲル及び/若しくはグリコシド抱合(例えばD‐ガラクトシド若しくはβ‐D‐キシロピラノシド等)を含む、剤形が挙げられる。消化管細菌叢酵素の例としては、例えばD‐ガラクトシダーゼ、β‐D‐グルコシダーゼ、α‐L‐アラビノフラノシダーゼ、又はβ‐D‐キシロピラノシダーゼ等といった、細菌性グリコシダーゼが挙げられる。
【0178】
本明細書に記載の医薬組成物は任意に、本明細書に記載の更なる治療用化合物、及び1つ以上の薬学的に許容可能な添加剤、例えば適合性を有するキャリア、結合剤、充填剤、懸濁剤、香味料、甘味料、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、潤滑剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑化剤、安定剤、浸透促進剤、湿潤剤、消泡剤、抗酸化剤、防腐剤、又はこれらの1つ以上の組み合わせを含む。
【0179】
胆汁酸封鎖剤
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は例えば、不安定な胆汁酸封鎖剤に関連付けられたASBTIである。不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸に対して不安定な親和性を有する胆汁酸封鎖剤である。特定の実施形態では、本明細書に記載の胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸及び/又はその塩を隔離(例えば吸収又は荷電)する作用剤である。
【0180】
具体的な実施形態では、上記不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸及び/又はその塩を隔離(例えば吸収又は荷電)して、吸収若しくは荷電された胆汁酸及び/又はその塩の少なくとも一部分を、遠位消化管(例えば結腸、上行結腸、S字結腸、遠位結腸、直腸、又はこれらのいずれの組み合わせ)内で放出する、作用剤である。特定の実施形態では、上記不安定な胆汁酸封鎖剤は、酵素依存性胆汁酸封鎖剤である。具体的な実施形態では、酵素は細菌酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、ヒトの小腸内で確認される濃度に比べて結腸又は直腸内において高い濃度で確認される、細菌酵素である。細菌叢によって活性化される系の例としては、ペクチン、ガラクトマンナン、並びに/又は活性作用剤のアゾヒドロゲル及び/若しくはグリコシド抱合(例えばD‐ガラクトシド若しくはβ‐D‐キシロピラノシド等)を含む、剤形が挙げられる。消化管細菌叢酵素の例としては、例えばD‐ガラクトシダーゼ、β‐D‐グルコシダーゼ、α‐L‐アラビノフラノシダーゼ、又はβ‐D‐キシロピラノシダーゼ等といった、細菌性グリコシダーゼが挙げられる。いくつかの実施形態では、上記不安定な胆汁酸封鎖剤は、時間依存性胆汁酸封鎖剤である(即ち胆汁酸封鎖剤は胆汁酸及び/又はその塩を隔離し、一定時間後に上記胆汁酸及び/又はその塩の少なくとも一部分を放出する)。いくつかの実施形態では、時間依存性胆汁酸封鎖剤は、水性環境下で時間の経過と共に分解される作用剤である。特定の実施形態では、本明細書に記載の不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸及び/又はその塩に対して低い親和性を有する胆汁酸封鎖剤であるため、上記胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸/胆汁酸塩及び/又はその塩が高濃度で存在する環境下では胆汁酸及び/又はその塩を封鎖し、胆汁酸/胆汁酸塩及び/又はその塩が低い相対濃度で存在する環境下ではこれらを放出できる。いくつかの実施形態では、上記不安定な胆汁酸封鎖剤は、原発性胆汁酸に対して高い親和性を有し続発性胆汁酸に対して低い親和性を有するため、上記胆汁酸封鎖剤は、原発性胆汁酸又はその塩を封鎖し、その後、原発性胆汁酸又はその塩が続発性胆汁酸又はその塩へと変換(例えば代謝)されると、続発性胆汁酸又はその塩を放出できる。いくつかの実施形態では、上記不安定な胆汁酸封鎖剤は、pH依存性胆汁酸封鎖剤である。いくつかの実施形態では、上記pH依存性胆汁酸封鎖剤は、pHが6以下の胆汁酸に対して高い親和性を有し、pHが6を超える胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態では、上記pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6を超えるpHにおいて分解される。
【0181】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸/胆汁酸塩及び/又はその塩を何らかの好適なメカニズムによって封鎖できるいずれの化合物、例えばマクロ構造化合物を含む。例えば特定の実施形態では、胆汁酸封鎖剤は、イオン相互作用、極性相互作用、静電気的相互作用、疎水性相互作用、親油性相互作用、親水性相互作用、又は立体構造的相互作用等によって、胆汁酸/胆汁酸塩及び/又はその塩を封鎖する。特定の実施形態では、マクロ構造化合物は、胆汁酸/胆汁酸塩及び/又はその塩をマクロ構造化合物のポケット内に捕捉すること、並びに任意選択で、上述のもの等の他の相互作用によって、胆汁酸/胆汁酸塩及び/又はその塩を封鎖する。いくつかの実施形態では、胆汁酸封鎖剤(例えば不安定な胆汁酸封鎖剤)としては、非限定的な例として:リグニン;修飾リグニン;ポリマー;ポリカチオンポリマー及びコポリマー;N‐アルケニル‐N‐アルキルアミン残基、1つ以上のN,N,N‐トリアルキル‐N‐(N’‐アルケニルアミノ)アルキル‐アザニウム残基、1つ以上のN,N,N‐トリアルキル‐N‐アルケニル‐アザニウム残基、1つ以上のアルケニル‐アミン残基、若しくはこれらの組み合わせのうちのいずれの1つ以上を含む、ポリマー及び/若しくはコポリマー;又はこれらのいずれの組み合わせが挙げられる。
【0182】
薬剤とキャリアとの共有結合
いくつかの実施形態では、結腸標的送達に使用される戦略としては、非限定的な例として:本明細書に記載のASBTI又は他の化合物を、キャリアと共有結合させること;結腸のpH環境に到達したときに送達を行うために、剤形をpH感受性ポリマーでコーティングすること;酸化還元感受性ポリマーの使用;徐放性製剤の使用;結腸の細菌によって特異的に分解されるコーティングの利用;生体付着性システムの使用;及び浸透圧制御型薬剤送達システムの使用が挙げられる。
【0183】
本明細書に記載のASBTI又は他の化合物を含有する組成物の上述のような経口投与の特定の実施形態は、キャリアへの共有結合を含み、経口投与時、この結合部分は胃及び小腸内で無傷のまま保たれる。結腸に入ると、上記共有結合がpHの変化、酵素、及び/又は腸内細菌叢によって破壊される。特定の実施形態では、ASBTIとキャリアとの間の共有結合としては、非限定的な例として、アゾ結合、グリコシド抱合、グルクロン酸抱合、シクロデキストリン抱合、デキストラン抱合、並びにアミノ酸抱合(キャリアアミノ酸の高い親水性及び長い鎖長)が挙げられる。
【0184】
ポリマーでのコーティング:pH感受性ポリマー
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTI又は他の化合物の、結腸及び/又は直腸への送達を促進するために、本明細書に記載の経口剤形を腸溶性コーティングでコーティングする。特定の実施形態では、腸溶性コーティングは、胃内の低pH環境下では無傷のまま保たれるものの、腸溶性コーティングの化学的組成に応じた、特定のコーティングの最適な溶解pHに到達すると、容易に溶解されるようなものである。コーティングの厚さはコーティング材料の可溶特性に依存する。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で使用されるコーティング厚さは、約25μm~約200μmである。
【0185】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物又は製剤をコーティングすることにより、上記組成物又は製剤の、本明細書に記載のASBTI又は他の化合物が、腸の上部で吸収されずに結腸及び/又は直腸まで送達される。ある具体的な実施形態では、結腸及び/又は直腸への特異的送達は、結腸のpH環境下でしか分解されないポリマーを用いた、剤形のコーティングによって達成される。代替実施形態では、上記組成物は、腸のpHで溶解される腸溶性コーティングと、腸内でゆっくりと浸食される外層マトリックスとでコーティングされる。このような実施形態の一部では、腸内分泌ペプチド分泌促進剤(及びいくつかの実施形態では、作用剤の吸収阻害剤)を含むコア組成物だけが残るまで、上記マトリックスはゆっくりと浸食され、そして上記コアが結腸及び/又は直腸へと送達される。
【0186】
特定の実施形態では、pH依存性の系は、胃(pH1~2、消化中は4まで上昇)から小腸の消化部位(pH6~7)、そして遠位回腸(pH7~8)に至るまで、ヒトの消化管(gastrointestinal tract:GIT)に沿って漸増するpHを活用する。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物の経口投与のための剤形を1つ以上のpH感受性ポリマーでコーティングすることにより、遅延放出を提供し、また胃液から腸内分泌ペプチド分泌促進剤を保護する。特定の実施形態では、胃及び小腸近位部分の比較的低いpH値には耐えることができるが、回腸終末部及び/又は回盲部の中性又は弱アルカリ性pHにおいて崩壊する。従って特定の実施形態では、本明細書において提供されるのは、コーティングを備えた経口剤形であり、上記コーティングはpH感受性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、結腸及び/又は直腸の標的化に使用されるポリマーとしては、非限定的な例として、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸及びメチルメタクリレートコポリマー、Eudragit L100、Eudragit S100、Eudragit L‐30D、Eudragit FS‐30D、Eudragit L100‐55、フタル酸ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート50、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート55、トリメット酸酢酸セルロース、フタル酸酢酸セルロース及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0187】
特定の実施形態では、結腸及び/又は直腸への送達に好適な経口剤形は、生分解性及び/若しくは細菌分解性ポリマー、又は結腸内の細菌叢(細菌)によって分解されるポリマーを含む、コーティングを備える。このような生分解性の系において、好適なポリマーとしては、非限定的な例として、アゾポリマー、アゾ基を含有する直鎖状セグメント化ポリウレタン、ポリガラクトマンナン、ペクチン、グルタルアルデヒド架橋デキストラン、多糖類、アミロース、グアガム、ペクチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ローカストビーンガム、コンドロイチン硫酸、キトサン、ポリ(‐カプロラクトン)、ポリ乳酸、及びポリ(乳酸‐グリコール酸)が挙げられる。
【0188】
本明細書に記載の1つ以上のASBTI又は他の化合物を含有する組成物の、上述のような経口投与の特定の実施形態では、結腸内の細菌叢(細菌)によって分解される酸化還元感受性ポリマーで剤形をコーティングすることにより、上記組成物は、腸の上部で吸収されずに結腸まで送達される。このような生分解性の系において、上記ポリマーとしては、非限定的な例として、骨格にアゾ結合及び/又はジスルフィド結合を含有する酸化還元感受性ポリマーが挙げられる。
【0189】
いくつかの実施形態では、結腸及び/又は直腸への送達のために製剤される組成物は、徐放性となるように製剤される。いくつかの実施形態では、徐放性製剤は、胃の酸性環境に耐えることにより、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の放出を、剤形が結腸及び/又は直腸に入るまで遅延させる。
【0190】
併用療法
臨床診療では、ALGSの患者の大半が、掻痒症状の制御又は低減のために、適応外の作用剤、最も一般的にはUDCA及びリファンピシンで治療される。これらの薬物は通常、ALGS又はPFIC等の胆汁うっ滞性肝疾患に関連する掻痒の軽減には、部分的又は一時的にしか有効でない。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、1つ以上の追加の作用剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、本発明は、化合物(例えばASBTI)と1つ以上の追加の作用剤とを含む組成物も提供する。いくつかの実施形態では、単剤療法として投与されるASBTI及び/又は第2の治療剤の量/投薬量に比べて、ASBTI及び/又は第2の治療剤の量/投薬量の低減が達成される。
【0192】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤の量/投薬量の低減が達成される。いくつかの実施形態では、単剤療法として投与される第2の治療剤の量/投薬量に比べて少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%の、第2の治療剤の量/投薬量の低減が達成される。
【0193】
いくつかの実施形態では、対象は、第2の治療剤による治療を中止できる。即ち、第2の治療剤の量/投薬量の100%の低減が達成される。
【0194】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、ASBTI(例えばマラリキシバット)と、UDCA、リファンピシン、抗ヒスタミン薬、及びFXR標的薬からなる群から選択される亜臨床的治療有効量の第2の治療剤との組み合わせを含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTIの組成物は、UDCA、リファンピシン、抗ヒスタミン薬、及びFXR標的薬からなる群から選択される亜臨床的治療有効量の第2の治療剤と、組み合わせて投与される。
【0196】
脂溶性ビタミン
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、1つ以上のビタミンを更に含む。いくつかの実施形態では、上記ビタミンは、ビタミンA、B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、レチノール、β‐カロテン、ピリドキシン、アスコルビン酸、コレカルシフェロール、シアノコバラミン、トコフェロール、フィロキノン、メナキノンである。
【0197】
いくつかの実施形態では、上記ビタミンは、ビタミンA、D、E、K、レチノール、β‐カロテン、コレカルシフェロール、トコフェロール、フィロキノンといった、脂溶性ビタミンである。ある好ましい実施形態では、上記脂溶性ビタミンは、トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸塩(TPGS)である。
【0198】
部分的胆汁外瘻術(Partial External Biliary Diversion:PEBD)
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物の使用方法は、まだ硬変を発症していない患者の治療として、部分的胆汁外瘻術を使用するステップを含む。この治療は、肝内での胆汁酸/胆汁酸塩の循環を削減するのに役立ち、これにより、多くの患者において合併症が低減され、早期移植の必要が回避される。
【0199】
この外科的技法は、腸の残りの部分から胆汁導管(胆汁を通過させるチャネル)として使用するために、長さ10cmの腸のセグメントを分離することを伴う。導管の一端は胆嚢に取り付けられ、他端は皮膚から引き出されてストーマ(老廃物の通過を可能にするために外科的に構築される開口)が形成される。部分的胆汁外瘻術は、あらゆる薬物療法に応答しない患者、特に高齢で体格が大きな患者に使用できる。この手順は、乳児等の若齢の患者には役立たない場合がある。部分的胆汁外瘻術は、掻痒の強さ、及び異常に低い血中コレステロールレベルを低減できる。
【0200】
ASBTI及びPPARアゴニスト
様々な実施形態において、本開示は、ASBTIとPPAR(peroxisome proliferator‐activated receptor:ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)アゴニストとの組み合わせを提供する。様々な実施形態において、PPARアゴニストはフィブラート系薬剤である。いくつかの実施形態では、上記フィブラート系薬剤は、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、シプロフィブラート、ベンザフィブラート、フェノフィブラート、又はこれらの様々な組み合わせである。様々な実施形態において、上記PPARアゴニストは、アレグリタザール、ムラグリタザール、テサグリタザール、サログリタザール、GW501516、GW‐9662、チアゾリジンジオン(TZD)、NSAID(例えばIBUPROFEN)、インドール、又はこれらの様々な組み合わせである。いくつかの実施形態では、上記PPARアゴニストは、ベザフィブラート、セラデルパル(MBX‐8025)、GW501516(カルダリン)、フェノフィブラート、エラフィブラノール、REN001、KD3010、ASP0367、又はCER‐002である。
【0201】
様々な実施形態において、本開示のASBTIと併用されるPPARアゴニストは、汎PPARアゴニスト、又はPPARα、PPARγ、PPARβ、若しくはPPARδアゴニストである。
【0202】
非限定的な一実施形態では、上記PPARアゴニストはPPARδアゴニストである。一実施形態では、上記PPARδアゴニストは、セラデルパル(MBX‐8025)、GW501516(カルダリン)、REN001、KD3010、ASP0367、又はCER‐002である。
【0203】
ASBTI及びFXR薬剤
様々な実施形態において、本開示は、ASBTIと、ファルネソイドX受容体(farnesoid X receptor:FXR)標的薬との組み合わせを提供する。様々な実施形態において、上記FXR標的薬は、アベルメクチンB1a、ベプリジル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、GW4064、グリキドン、ニカルジピン、トリクロサン、CDCA、イベルメクチン、クロロトリアニセン、トリベノシド、モメタゾンフランカルボン酸エステル、ミコナゾール、アミオダロン、ブトコナゾール、ブロモクリプチンメシル酸塩、ピゾチフェンリンゴ酸塩、又はこれらの様々な組み合わせである。いくつかの実施形態では、単剤療法として投与されるASBTI及び/又はFXR標的薬の量/投薬量に比べて、ASBTI及び/又はFXR標的薬の量/投薬量の低減が達成される。
【0204】
ASBTI及び抗ヒスタミン薬
様々な実施形態において、本開示は、ASBTIと抗ヒスタミン薬との組み合わせを提供する。様々な実施形態において、上記抗ヒスタミン薬は、アゼラスチン、カルビノキサミン、シプロヘプタジン、デスロラタジン、エメダスチン、ヒドロキシジン、レボカバスチン、レボセチリジン、ブロムフェニラミン、セチリジン、クロルフェニラミン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、ロラタジン、又はこれらの様々な組み合わせである。いくつかの実施形態では、単剤療法として投与されるASBTI及び/又は抗ヒスタミン薬の量/投薬量に比べて、ASBTI及び/又は抗ヒスタミン薬の量/投薬量の低減が達成される。
【0205】
ASBTI及びウルソジオール/UDCA
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、ウルソジオール、又はウルソデオキシコール酸(UDCA)、ケノデオキシコール酸、コール酸、タウロコール酸、ウルソコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロコール酸塩、グリコケノデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、遠位腸における胆汁酸/塩の濃度の上昇は、腸の再生、腸の損傷の軽減、バクテリアルトランスロケーションの低減、フリーラジカル酸素の放出の阻害、炎症性サイトカインの産生の阻害、又はこれらのいずれの組み合わせを誘導する。
【0206】
特定の実施形態では、患者は、約又は少なくとも約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、36mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、又は3,000mgの1日用量で、ウルソジオールを投与される。特定の実施形態では、患者は、約10mg以下、15mg以下、20mg以下、25mg以下、30mg以下、35mg以下、36mg以下、40mg以下、45mg以下、50mg以下、55mg以下、60mg以下、65mg以下、70mg以下、75mg以下、80mg以下、85mg以下、90mg以下、95mg以下、100mg以下、150mg以下、200mg以下、250mg以下、300mg以下、350mg以下、400mg以下、450mg以下、500mg以下、550mg以下、600mg以下、650mg以下、700mg以下、750mg以下、800mg以下、850mg以下、900mg以下、950mg以下、1,000mg以下、1,250mg以下、1,500mg以下、1,750mg以下、2,000mg以下、2,250mg以下、2,500mg以下、2,750mg以下、3,000mg以下、又は3,500mg以下の1日用量で、ウルソジオールを投与される。様々な実施形態において、患者は、約又は少なくとも約3mg~約300mg、約30mg~約250mg、約36mg~約200mg、約10mg~約3000mg、約1000mg~約2000mg、又は約1500~約1900mgの1日用量で、ウルソジオールを投与される。
【0207】
様々な実施形態において、ウルソジオールは錠剤として投与される。様々な実施形態において、ウルソジオールは懸濁液として投与される。様々な実施形態において、懸濁液中のウルソジオールの濃度は、約10mg/mL~約200mg/mL、約50mg/mL~約150mg/mL、約10mg/mL~約500mg/mL、又は約40mg/mL~約60mg/mLである。様々な実施形態において、懸濁液中のウルソジオールの濃度は、約又は少なくとも約20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、又は80mg/mLである。様々な実施形態において、懸濁液中のウルソジオールの濃度は、約25mg/mL以下、30mg/mL以下、35mg/mL以下、40mg/mL以下、45mg/mL以下、50mg/mL以下、55mg/mL以下、60mg/mL以下、65mg/mL以下、70mg/mL以下、75mg/mL以下、80mg/mL以下、又は85mg/mL以下である。
【0208】
特定の実施形態では、患者は、約又は少なくとも約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、36mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、又は3,000mgの1日用量で、UDCAを投与される。特定の実施形態では、患者は、約10mg以下、15mg以下、20mg以下、25mg以下、30mg以下、35mg以下、36mg以下、40mg以下、45mg以下、50mg以下、55mg以下、60mg以下、65mg以下、70mg以下、75mg以下、80mg以下、85mg以下、90mg以下、95mg以下、100mg以下、150mg以下、200mg以下、250mg以下、300mg以下、350mg以下、400mg以下、450mg以下、500mg以下、550mg以下、600mg以下、650mg以下、700mg以下、750mg以下、800mg以下、850mg以下、900mg以下、950mg以下、1,000mg以下、1,250mg以下、1,500mg以下、1,750mg以下、2,000mg以下、2,250mg以下、2,500mg以下、2,750mg以下、3,000mg以下、又は3,500mg以下の1日用量で、UDCAを投与される。様々な実施形態において、患者は、約又は少なくとも約3mg~約300mg、約30mg~約250mg、約36mg~約200mg、約10mg~約3000mg、約1000mg~約2000mg、又は約1500~約1900mgの1日用量で、UDCAを投与される。
【0209】
様々な実施形態において、UDCAは錠剤として投与される。様々な実施形態において、UDCAは懸濁液として投与される。様々な実施形態において、懸濁液中のUDCAの濃度は、約10mg/mL~約200mg/mL、約50mg/mL~約150mg/mL、約10mg/mL~約500mg/mL、又は約40mg/mL~約60mg/mLである。様々な実施形態において、懸濁液中のUDCAの濃度は、約又は少なくとも約20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、又は80mg/mLである。様々な実施形態において、懸濁液中のUDCAの濃度は、約25mg/mL以下、30mg/mL以下、35mg/mL以下、40mg/mL以下、45mg/mL以下、50mg/mL以下、55mg/mL以下、60mg/mL以下、65mg/mL以下、70mg/mL以下、75mg/mL以下、80mg/mL以下、又は85mg/mL以下である。
【0210】
ASBTI及び第2の活性成分は、この組み合わせが治療有効量で存在するように使用される。この治療有効量は、ASBTIと他の活性成分(例えばウルソジオール又はUDCA)との組み合わせの使用から生じ、これらはそれぞれ治療有効量で使用されるか、又は併用から生じる相加若しくは相乗効果によって、これらはそれぞれ亜臨床的治療有効量、即ち単独で使用した場合には本明細書に記載の治療目的のための有効性が低減されるような量でも使用できる(ただし、併用が治療上有効であることを条件とする)。いくつかの実施形態では、ASBTIと本明細書に記載の他のいずれの活性成分との組み合わせの使用は、これらの相加又は相乗効果によって併用が治療上有効となることを条件として、ASBTI又は他の活性成分が治療有効量で存在し、かつ他方が亜臨床的治療有効量で存在する組み合わせを包含する。本明細書中で使用される場合、用語「相加効果(additive effect)」は、2つ(以上)の薬学的活性作用剤の複合効果であって、単独で投与した各作用剤の効果の合計に等しい、複合効果を説明するものである。相乗効果(synergistic effect)とは、2つ(以上)の薬学的活性作用剤の複合効果であって、単独で投与した各作用剤の効果の合計より高い、複合効果である。ASBTIと、上述の他の活性成分のうちの1つ以上、及び任意に1つ以上の他の薬理学的活性物質との、いずれの好適な組み合わせが、本明細書に記載の方法の範囲内にあるものとして企図される。
【0211】
いくつかの実施形態では、単剤療法として投与されるASBTI及び/又はUDCAの量/投薬量に比べて、ASBTI及び/又はUDCAの量/投薬量の低減が達成される。
【0212】
いくつかの実施形態では、化合物の特定の選択は、担当医師の診断、並びに個体の状態及び適切な治療プロトコルに関する担当医師の判断に左右される。化合物は、任意に、疾患、障害、又は体調の性質、個体の状態、及び使用される化合物の実際の選択に応じて、並行して(例えば同時に、略同時に、若しくは同一の治療プロトコル内に)、又は逐次的に、投与される。特定の例では、ある治療プロトコル中における各治療剤の投与順序及び投与反復回数の決定は、治療される疾患及び個体の状態の評価に基づく。
【0213】
いくつかの実施形態では、薬剤が治療用の組み合わせで使用される場合、治療有効投薬量は変化する。併用療法計画で使用するための薬剤及び他の作用剤の治療有効投薬量を実験で決定する方法は、文献に記載されている。
【0214】
本明細書に記載の併用療法のいくつかの実施形態では、共投与される化合物の投薬量は、採用される併用薬物(co‐drug)のタイプ、採用される特定の薬物、治療される疾患又は体調等に応じて変化する。更に、1つ以上の生体活性薬剤と共投与される場合、本明細書において提供される化合物は任意に、1つ以上の上記生体活性薬剤と同時に又は逐次的に投与される。特定の例にでは、逐次投与の場合、担当医師は、本明細書に記載の治療用化合物と追加の治療薬との適切な順序を決定する。
【0215】
複数の治療剤(そのうちの少なくとも1つが本明細書に記載の治療用化合物である)が、任意選択で、いずれの順序で又は同時に投与される。同時投与の場合、上記複数の治療剤は、任意選択で、1つにまとめられた形態又は複数の形態で(単なる例として単一の丸剤として又は2つの別個の丸剤として)提供される。特定の例では、上記治療剤のうちの一方を、任意選択で、複数回の投薬で投与する。他の例では、任意選択で、両方を複数回の投薬で投与する。同時投与でない場合、これら複数回の投薬の間のタイミングはいずれの適切なタイミングであり、例えば0週より長く4週より短い。更に、組み合わせ方法、組成物、及び製剤は、2つの作用剤のみの使用に限定されず、治療用組み合わせを複数使用することも想定される(本明細書に記載の2つ以上の化合物が含まれる)。
【0216】
特定の実施形態では、軽減することが求められる1つ以上の状態の治療、予防、又は改善のための投薬計画は、多様な因子に応じて修正される。これらの因子としては、対象が罹患している障害、並びに対象の年齢、体重、性別、食事、及び病状が挙げられる。従って、様々な実施形態において、実際に採用される投薬計画は様々であり、本明細書に記載の投薬計画からずれる。
【0217】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の併用療法を構成する医薬品は、1つに組み合わされた剤形で、又は略同時に投与することを目的とした別個の剤形で、提供される。特定の実施形態では、併用療法を構成する医薬品は逐次投与され、治療用化合物は2段階投与を必要とする計画によって投与される。いくつかの実施形態では、2段階投与計画は、活性作用剤の逐次逐次投与、又は別個の活性作用剤の、間隔を空けた投与を必要とする。特定の実施形態では、複数回の投与ステップの間の期間は、各医薬品の特性、例えば医薬品の力価、可溶性、バイオアベイラビリティ、血漿半減期、及び動態プロファイルに応じて、限定するものではないが例えば数分から数時間まで様々である。
【0218】
特定の実施形態において本明細書において提供されるのは、併用療法である。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、追加の治療剤を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、追加の治療剤を含む第2の剤形の投与を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、ある計画の一部として投与される。従って、追加の治療剤及び/又は追加の医薬剤形は、本明細書に記載の組成物及び製剤に伴われて、又はこれらと逐次的に、患者に対して直接的又は間接的に適用できる。
【0219】
キット
別の態様では、本明細書において提供されるのは、本明細書に記載の医薬組成物が事前に充填された投与用デバイスを内包するキットである。特定の実施形態では、キットは、経口投与用デバイスと、本明細書に記載の医薬組成物とを内包する。特定の実施形態では、上記キットは、経口投与用の事前充填済みサシェ又はボトルを含むが、他の実施形態では、上記キットは、ゲルの投与のための事前充填済みバッグを含む。特定の実施形態では、上記キットは、経口注腸剤の投与用の事前充填済みシリンジを含む。
【0220】
いくつかの実施形態では、上記キットは、事前にインストールされたアダプタとチャイルドレジスタンスキャップとを備えたボトルを含む。いくつかの実施形態では、上記ボトルの容積は、10mL、又は20mL、又は30mL、又は40mL、又は50mL、又は60mL、又は80mL、又は100mL、又は200mL、又は250mLであってよい。
【0221】
いくつかの実施形態では、上記キットは、1つ以上の経口投薬用ディスペンサ、例えば経口用シリンジを含む。いくつかの実施形態では、上記経口用シリンジの容積は、0.1mL、又は0.2mL、又は0.25mL、又は0.5mL、又は1mL、又は2mL、又は3mL、又は5mL、又は10mLであってよい。
【0222】
非限定的な一実施形態では、上記キットは、容積が30mLのボトルと、容積が0.5mL、1mL、及び3mLの3つの経口用シリンジとを、二次コンテナ閉鎖システム内に共にパッケージングされた状態で含む。
【0223】
遠位回腸及び/又は結腸での放出
特定の実施形態では、組成物及び/又は剤形は、遠位空腸、近位回腸、遠位回腸及び/又は結腸での活性作用剤の制御放出を可能にするマトリックス(例えばヒプロメロースを含むマトリックス)を含む。いくつかの実施形態では、組成物及び/又は剤形はpH感受性のポリマー(例えばCosmo Pharmaceuticals製MMX(商標)マトリックス)を含み、回腸及び/又は結腸における活性作用剤の制御放出を可能にする。制御放出に好適なこのようなpH感受性ポリマーの例としては、酸性基(例えば-COOH、-SOH)を含み、腸内の塩基性pH(例えば約7~約8のpH)において膨潤する、ポリアクリル酸ポリマー(例えばメタクリル酸及び/又はメタクリル酸エステルの陰イオン性ポリマー、例えばCarbopol(登録商標)ポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、遠位回腸での制御放出に好適な組成物及び/又は剤形は、マイクロ微粒子活性作用剤(例えば微粉化された活性作用剤)を含む。いくつかの実施形態では、非酵素的に分解されるポリ(dl‐ラクチド‐コ‐グリコシド)(PLGA)コアは、遠位回腸へのASBTIの送達に好適である。いくつかの実施形態では、ASBTIを含む剤形は、回腸及び/又は結腸への部位特異的送達のために、腸溶性ポリマー(例えばEudragit(登録商標)S‐100;フタル酸酢酸セルロース;フタル酸ポリ酢酸ビニル;フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;メタクリル酸又はメタクリル酸エステル等の陰イオン性ポリマー)でコーティングされる。いくつかの実施形態では、細菌によって活性化される系が、回腸への標的化された送達に好適である。細菌叢によって活性化される系の例としては、ペクチン、ガラクトマンナン、並びに/又は活性作用剤のアゾヒドロゲル及び/若しくはグリコシド抱合(例えばD‐ガラクトシド若しくはβ‐D‐キシロピラノシド等)を含む、剤形が挙げられる。消化管細菌叢酵素の例としては、例えばD‐ガラクトシダーゼ、β‐D‐グルコシダーゼ、α‐L‐アラビノフラノシダーゼ、又はβ‐D‐キシロピラノシダーゼ等といった、細菌性グリコシダーゼが挙げられる。
【0224】
本明細書に記載の医薬組成物及び/又は剤形は任意に、本明細書に記載の更なる治療用化合物、及び1つ以上の薬学的に許容可能な添加剤、例えば適合性を有するキャリア、結合剤、充填剤、懸濁剤、香味料、甘味料、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、潤滑剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑化剤、安定剤、浸透促進剤、湿潤剤、消泡剤、抗酸化剤、防腐剤、又はこれらの1つ以上の組み合わせを含む。いくつかの態様では、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition (2000)に記載されているもの等の標準的なコーティング手順を用いて、ASBTIの製剤の周りにフィルムコーティングが設けられる。一実施形態では、本明細書に記載の化合物は粒子の形態であり、化合物の粒子の一部又は全てがコーティングされる。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子の一部又は全てがマイクロカプセル化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子はマイクロカプセル化されず、またコーティングもされない。
【0225】
ASBT阻害剤は、胆汁うっ滞又は胆汁うっ滞性肝疾患の予防的及び/又は治療的処置のための医薬の調製に使用できる。本明細書に記載の疾患又は体調のうちのいずれかの治療を、このような治療を必要とする個体において実施するための方法は、本明細書に記載の少なくとも1つのASBT阻害剤、又はその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能なN‐オキシド、薬学的活性を有する代謝物、薬学的に許容可能なプロドラッグ、若しくは薬学的に許容可能な溶媒和物を治療有効量で含有する医薬組成物を、上記個体に投与することを含んでいてよい。
【0226】
小児胆汁うっ滞性肝疾患の分類
本開示の一態様では、本明細書に記載のASBTIを含む組成物及び剤形は、小児胆汁うっ滞性肝疾患の治療又は改善に好適である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTIを含む組成物及び剤形は、掻痒の治療又は改善に好適である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTIを含む組成物及び剤形は、高胆汁酸血症の治療又は改善に好適である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のASBTIを含む組成物及び剤形は、黄色腫の治療又は改善に好適である。
【0227】
特定の実施形態では、上記胆汁うっ滞性肝疾患は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)、PFIC1型、PFIC2型、PFIC3型、アラジール症候群、Dubin‐Johnson症候群、胆道閉鎖症、葛西手術術後胆道閉鎖症、肝移植後胆道閉鎖症、肝移植後胆汁うっ滞、肝移植後関連肝疾患、腸不全関連肝疾患、胆汁酸媒介性肝損傷、小児原発性硬化性胆管炎、MRP2欠損症候群、新生児硬化性胆管炎、小児胆道閉鎖性胆汁うっ滞、小児非胆道閉鎖性胆汁うっ滞、小児肝外胆汁うっ滞、小児肝内胆汁うっ滞、小児原発性肝内胆汁うっ滞、小児続発性肝内胆汁うっ滞、良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC)、BRIC1型、BRIC2型、BRIC3型、中心静脈栄養法関連胆汁うっ滞、傍腫瘍性胆汁うっ滞、Stauffer症候群、薬剤関連胆汁うっ滞、感染症関連胆汁うっ滞、又は胆石症である。いくつかの実施形態では、上記胆汁うっ滞性肝疾患は、肝疾患の小児性形態である。
【0228】
特定の実施形態では、上記胆汁うっ滞性肝疾患は、黄疸、掻痒、硬変、高胆汁酸血症、新生児呼吸窮迫症候群、肺炎、胆汁酸の血清濃度の上昇、胆汁酸の肝内濃度の上昇、ビリルビンの血清濃度の上昇、肝細胞損傷、肝臓の瘢痕化、肝不全、肝腫大、黄色腫、吸収不良、脾腫、下痢、膵炎、肝細胞壊死、巨細胞形成、肝細胞癌、消化管出血、門脈圧亢進、難聴、疲労、食欲不振、拒食症、独特の臭気、暗色の尿、明色の便、脂肪便、発育不良、及び/又は腎不全から選択される1つ以上の症状を特徴とする。
【0229】
特定の実施形態では、本発明の方法は、治療有効量のASBTIの非全身投与を含む。特定の実施形態では、上記方法は、それを必要とする個体の遠位回腸及び/又は結腸及び/又は直腸を含む消化管を、ASBTIと接触させるステップを含む。様々な実施形態において、本発明の方法は、吸収上皮細胞内の胆汁酸の減少、又は胆汁うっ滞若しくは胆汁うっ滞性肝疾患によって引き起こされる肝細胞若しくは腸構造への損傷の減少をもたらす。
【0230】
様々な実施形態において、上記対象は、BSEP欠損症に関連する、BSEP欠損症を原因とする、又はBSEP欠損症を原因の一部とする、ある状態にある。特定の実施形態では、BSEP欠損症に関連する、BSEP欠損症を原因とする、又はBSEP欠損症を原因の一部とする上記状態は、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、PFIC2、良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC)、妊娠性肝内胆汁うっ滞(ICP)、薬剤誘発性胆汁うっ滞、経口避妊薬誘発性胆汁うっ滞、胆道閉鎖症、又はこれらの組み合わせである。
【0231】
様々な実施形態において、本発明の方法は、治療有効量の、本明細書に記載のいずれのASBTIを、個体の回腸又は結腸へと送達するステップを含む。
【0232】
本明細書中で使用される場合、「胆汁うっ滞」は、胆汁形成及び/又は胆汁の流れの障害を含む疾患又は症状を意味する。本明細書で使用される場合、「胆汁うっ滞性肝疾患」は、胆汁うっ滞に関連する肝疾患を意味する。胆汁うっ滞性肝疾患は多くの場合、黄疸、倦怠感、及び掻痒を伴う。胆汁うっ滞性肝疾患のバイオマーカーとしては、血清胆汁酸濃度の上昇、血清アルカリホスファターゼ(AP)の増加、γ‐グルタミルトランスペチダーゼの増加、抱合型ビリルビンの増加、及び血清コレステロールの増加が挙げられる。
【0233】
胆汁うっ滞性肝疾患は、臨床病理学的に、胆道閉鎖性の、多くの場合肝外の胆汁うっ滞と、非胆道閉鎖性又は肝内の胆汁うっ滞との2つの主要なカテゴリに分類できる。前者では、胆石若しくは腫瘍によって起こるように、又は肝外胆道閉鎖症におけるように、胆汁の流れが機械的に遮断された場合に、胆汁うっ滞が生じる。
【0234】
非胆道閉鎖性肝内胆汁うっ滞を含む後者のグループは、更に2つのサブグループに分類される。第1のサブグループでは、胆汁分泌及び修飾のプロセス、又は胆汁の成分の合成のプロセスが、胆汁形成を補助する機能を含む多くの機能の非特異的障害が予想され得るほど重症の肝細胞損傷に二次的に巻き込まれた場合に、胆汁うっ滞が生じる。第2のサブグループでは、肝細胞損傷の推定原因を特定できない。そのような患者の胆汁うっ滞は、胆汁分泌若しくは修飾のステップ、又は胆汁の成分の合成のステップのうちの一方が、構成的損傷を受けている場合に、生じるようである。このような胆汁うっ滞は原発性であるとみなされる。
【0235】
従って、本明細書において提供されるのは、胆汁うっ滞及び/又は胆汁うっ滞性肝疾患を有する個体の腸における、上皮増殖及び/若しくは腸内壁の再生の刺激、並びに/又は適応プロセスの強化のための、方法及び組成物である。このような実施形態の一部では、上記方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度及び/又はGLP‐2濃度を上昇させるステップを含む。
【0236】
高胆汁酸血症、並びにAP(アルカリホスファターゼ)、LAP(白血球アルカリホスファターゼ)、γ‐GT(γ‐グルタミルトランスペプチダーゼ)、及び5’‐ヌクレオチダーゼのレベルの上昇は、胆汁うっ滞及び胆汁うっ滞性肝疾患の生化学的な証拠である。従って、本明細書において提供されるのは、高胆汁酸血症、並びにAP(アルカリホスファターゼ)、LAP(白血球アルカリホスファターゼ)、γ‐GT(γ‐グルタミルトランスペプチダーゼ、又はGGT)、及び5’‐ヌクレオチダーゼのレベルの上昇を有する個体の腸における、上皮増殖及び/若しくは腸内壁の再生の刺激、並びに/又は適応プロセスの強化のための、方法及び組成物である。このような実施形態の一部では、上記方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を上昇させるステップを含む。本明細書において更に提供されるのは、胆汁酸を糞便中に排泄することによって、全体的な血清胆汁酸負荷を低減するステップを含む、高胆汁酸血症、並びにAP(アルカリホスファターゼ)、LAP(白血球アルカリホスファターゼ)、γ‐GT(γ‐グルタミルトランスペプチダーゼ)、及び5’‐ヌクレオチダーゼのレベルの上昇を低減するための方法及び組成物である。
【0237】
小児胆汁うっ滞及び小児胆汁うっ滞性肝疾患には掻痒が伴うことが多い。掻痒は、胆汁酸塩が末梢疼痛求心性神経に作用することによって生じると示唆されている。掻痒の程度は個体によって様々である(即ち、一部の個体は胆汁酸/胆汁酸塩のレベルの上昇に対して敏感である)。血清胆汁酸濃度を低下させる作用剤の投与によって、特定の個体の掻痒が低減されることが示されている。従って、本明細書において提供されるのは、掻痒を有する個体の腸における、上皮増殖及び/若しくは腸内壁の再生の刺激、並びに/又は適応プロセスの強化のための、方法及び組成物である。このような実施形態の一部では、上記方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を上昇させるステップを含む。本明細書において更に提供されるのは、胆汁酸を糞便中に排泄することによって、全体的な血清胆汁酸負荷を低減するステップを含む、掻痒を治療するための方法及び組成物である。
【0238】
小児胆汁うっ滞及び小児胆汁うっ滞性肝疾患の別の症状は、抱合型ビリルビンの血清濃度の上昇である。抱合型ビリルビンの血清濃度の上昇は、黄疸及び暗色の尿を生じさせる。上昇の大きさは診断上重要ではない。というのは、抱合型ビリルビンの血清レベルと胆汁うっ滞及び胆汁うっ滞性肝疾患の重症度との間の関係が確率されていないためである。抱合型ビリルビン濃度が30mg/dLを超えることはめったにない。従って、本明細書において提供されるのは、抱合型ビリルビンの血清濃度の上昇を有する個体の腸における、上皮増殖及び/若しくは腸内壁の再生の刺激、並びに/又は適応プロセスの強化のための、方法及び組成物である。このような実施形態の一部では、上記方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を上昇させるステップを含む。本明細書において更に提供されるのは、胆汁酸を糞便中に排泄することによって、全体的な血清胆汁酸負荷を低減するステップを含む、抱合型ビリルビンの血清濃度の上昇を治療するための方法及び組成物である。
【0239】
非抱合型ビリルビンの血清濃度の上昇も、胆汁うっ滞及び胆汁うっ滞性肝疾患の診断とみなされる。血清ビリルビンの一部は、アルブミンと共有結合する(デルタビリルビン又はビリタンパク質)。この画分は、胆汁うっ滞性黄疸を有する患者の総ビリルビンの大部分を占めている可能性がある。多量のデルタビリルビンの存在は、長期にわたる胆汁うっ滞を示す。臍帯血又は新生児の血液中のデルタビリルビンは、出生前からの小児胆汁うっ滞/胆汁うっ滞性肝疾患の指標である。従って、本明細書において提供されるのは、非抱合型ビリルビン又はデルタビリルビンの血清濃度の上昇を有する個体の腸における、上皮増殖及び/若しくは腸内壁の再生の刺激、並びに/又は適応プロセスの強化のための、方法及び組成物である。このような実施形態の一部では、上記方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を上昇させるステップを含む。本明細書において更に提供されるのは、胆汁酸を糞便中に排泄することによって、全体的な血清胆汁酸負荷を低減するステップを含む、非抱合型ビリルビン又はデルタビリルビンの血清濃度の上昇を治療するための方法及び組成物である。
【0240】
小児胆汁うっ滞及び胆汁うっ滞性肝疾患は、高胆汁酸血症をもたらす。代謝性胆汁うっ滞の間、肝細胞は胆汁酸塩を保持する。胆汁酸塩は肝細胞から血清中へと逆流し、それによって末梢循環中の胆汁酸塩の濃度が上昇する。更に、肝臓に入る胆汁酸塩の門脈血中での取り込みは非効率的であるため、胆汁酸塩が末梢循環に流出してしまう。従って、本明細書において提供されるのは、高胆汁酸血症を有する個体の腸における、上皮増殖及び/若しくは腸内壁の再生の刺激、並びに/又は適応プロセスの強化のための、方法及び組成物である。このような実施形態の一部では、上記方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を上昇させるステップを含む。本明細書において更に提供されるのは、胆汁酸を糞便中に排泄することによって、全体的な血清胆汁酸負荷を低減するステップを含む、高胆汁酸血症を治療するための方法及び組成物である。
【0241】
高脂血症は、全てではないが一部の胆汁うっ滞性疾患の特徴である。胆汁うっ滞では、コレステロールの代謝及び分解に寄与する循環胆汁酸塩の減少により、血清コレステロールが増加する。コレステロールの保持は、膜コレステロール含有量の増加、並びに膜流動性及び膜機能の低下に関連している。更に、胆汁酸塩はコレステロールの代謝産物であるため、コレステロール代謝の低下により、胆汁酸/胆汁酸塩合成が減少する。胆汁うっ滞の小児において観察される血清コレステロールは、約1,000mg/dL~約4,000mg/dLである。従って、本明細書において提供されるのは、高脂血症を有する個体の腸における、上皮増殖及び/若しくは腸内壁の再生の刺激、並びに/又は適応プロセスの強化のための、方法及び組成物である。このような実施形態の一部では、上記方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を上昇させるステップを含む。本明細書において更に提供されるのは、胆汁酸を糞便中に排泄することによって、全体的な血清胆汁酸負荷を低減するステップを含む、高脂血症を治療するための方法及び組成物である。
【0242】
小児胆汁うっ滞及び小児胆汁うっ滞性肝疾患に罹患した個体では、過剰な循環コレステロールの真皮への沈着から、黄色腫が発症する。黄色腫の発症は、肝細胞性胆汁うっ滞に比べて閉塞性胆汁うっ滞において、より特徴的である。扁平黄色腫は、まず目の周りに発生し、続いて手のひら及び足の裏のしわに発生し、その後、頸部に発生する。結節性黄色腫は、慢性及び長期の胆汁うっ滞に関連している。従って、本明細書において提供されるのは、黄色腫を有する個体の腸における、上皮増殖及び/若しくは腸内壁の再生の刺激、並びに/又は適応プロセスの強化のための、方法及び組成物である。このような実施形態の一部では、上記方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を上昇させるステップを含む。本明細書において更に提供されるのは、胆汁酸を糞便中に排泄することによって、全体的な血清胆汁酸負荷を低減するステップを含む、黄色腫を治療するための方法及び組成物である。
【0243】
慢性胆汁うっ滞の小児では、小児胆汁うっ滞及び小児胆汁うっ滞性肝疾患の主な結果の1つは、発育不良である。発育不良は、腸への胆汁酸塩の送達の減少の結果であり、これは脂肪の非効率的な消化及び吸収、並びにビタミンの取り込みの減少につながる(胆汁うっ滞では、ビタミンE、D、K、及びAの全てで吸収不良が発生する)。更に、結腸への脂肪の送達により、結腸での分泌及び下痢が生じる可能性がある。発育不良の治療は、食事の代替、並びに長鎖トリグリセリド、中鎖トリグリセリド、及びビタミンの補給を含む。従って、本明細書において提供されるのは、発育不良の個体(例えば小児)の腸における、上皮増殖及び/若しくは腸内壁の再生の刺激、並びに/又は適応プロセスの強化のための、方法及び組成物である。このような実施形態の一部では、上記方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を上昇させるステップを含む。本明細書において更に提供されるのは、胆汁酸を糞便中に排泄することによって、全体的な血清胆汁酸負荷を低減するステップを含む、発育不良を治療するための方法及び組成物である。
【0244】
慢性胆汁うっ滞の小児では、小児胆汁うっ滞及び小児胆汁うっ滞性肝疾患の更なる結果は、小児胆汁うっ滞又は小児胆汁うっ滞性肝疾患に罹患していない小児と比較した場合の成長の減少である。従って、本明細書において提供されるのは、成長が減少している個体(例えば小児)の腸における、上皮増殖及び/若しくは腸内壁の再生の刺激、並びに/又は適応プロセスの強化のための、方法及び組成物である。このような実施形態の一部では、上記方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を上昇させるステップを含む。本明細書において更に提供されるのは、胆汁酸を糞便中に排泄することによって、全体的な血清胆汁酸負荷を低減するステップを含む、成長の減少を治療するための方法及び組成物である。
【0245】
進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)
PFICは珍しい遺伝性疾患であり、これは典型的には肝不全につながる進行性肝疾患を引き起こす。PFIC患者では、肝細胞の、胆汁を分泌する能力が低下する。その結果として生じる胆汁の蓄積は、罹患した個体において肝疾患を引き起こす。PFICの兆候及び症状は、乳児期から見られるのが典型的である。患者は、重度の掻痒、黄疸、期待される速度で成長しないこと(発育不良)、及び肝臓の機能不全の亢進(肝不全)を経験する。この疾患は、米国及び欧州では出生者50,000~100,000人あたり1人が罹患すると推定されている。6種のPFICが遺伝的に同定されており、その全てが同様に、胆汁の流れの障害及び進行性肝疾患を特徴とする。
【0246】
PFIC1
PFIC1(バイラー病又はFICl欠損症としても公知)は、ATP8B1遺伝子(FIClとも呼ばれる)の変異に関連する。P型ATPaseをコードするこの遺伝子は、ヒト18番染色体上に位置し、より軽度の表現型である良性反復性肝内胆汁うっ滞1型(BRIO)及びグリーンランド家族性胆汁うっ滞でも変異する。FIClタンパク質は肝細胞の毛細胆管側膜上に位置するが、肝臓内では主に胆管細胞で発現する。P型ATPaseは、細胞膜の外葉に比べで内葉においてホスファチジルセリン及びホスファチジルエタノールアミンが豊富な状態を維持する役割を担う、アミノリン脂質輸送体であると思われる。膜二重層における脂質の非対称な分布は、毛細胆管内腔の高い胆汁酸塩濃度からの保護の役割を果たす。タンパク質機能の異常は、胆汁酸の胆汁分泌を間接的に妨害するおそれがある。胆汁酸/胆汁酸塩の異常な分泌は、肝細胞の胆汁酸過負荷につながる。
【0247】
PFIC1は典型的には乳児(例えば6~18か月齢)に現れる。乳児は、掻痒、黄疸、腹部膨張、下痢、栄養不良、及び低身長の兆候を示す場合がある。生化学的には、PFIC1に罹患した個体は、血清トランスアミナーゼの増加、ビリルビンの増加、血清胆汁酸レベルの上昇、及び低いγGTレベルを有する。上記個体は肝線維症を有する場合もある。PFIC1に罹患した個体では、典型的には胆管の増殖がない。PFIC1に罹患した大半の個体は、10歳までに末期肝疾患を発症することになる。PFIC1の長期治療に有益であることが証明されている医学的治療法は存在しない。肝外症状(例えば栄養不良及び発育不良)を低減するためには、小児に中鎖トリグリセリド及び脂溶性ビタミンを投与することが多い。ウルソジオールはPFIC1に罹患した個体に有効であるとは実証されていない。
【0248】
PFIC2
PFIC2(バイラー症候群、BSEP欠損症としても公知)は、ABCB11遺伝子(BSEPとも呼ばれる)の変異に関連する。ABCB11遺伝子はヒト肝臓のATP依存性毛細胆管胆汁酸塩輸送ポンプ(BSEP)をコードし、ヒト2番染色体上に位置する。肝細胞毛細胆管側膜で発現するBSEPタンパク質は、極端な濃度勾配に対抗する、一次胆汁酸/胆汁酸塩の主要な輸送体である。このタンパク質の変異は、罹患した患者で説明される胆汁酸塩分泌の原因であり、これは、進行する重度の肝細胞損傷を伴う、胆汁の流れの減少、及び肝細胞内での胆汁酸塩の蓄積につながる。
【0249】
PFIC2は典型的には乳児(例えば6~18か月齢)に現れる。乳児は掻痒の兆候を示す場合がある。生化学的には、PFIC2に罹患した個体は、血清トランスアミナーゼの増加、ビリルビンの増加、血清胆汁酸レベルの上昇、及び低いγGTレベルを有する。上記個体は門脈炎及び巨細胞性肝炎を有する場合もある。更に、個体は肝細胞癌を発症することが多い。PFIC2の長期治療に有益であることが証明されている医学的治療法は存在しない。肝外症状(例えば栄養不良及び発育不良)を低減するためには、小児に中鎖トリグリセリド及び脂溶性ビタミンを投与することが多い。PFIC2患者の集団は、PFICの集団のおよそ60%を占める。
【0250】
PFIC3
PFIC3(MDR3欠損症としても公知)は、7番染色体上に位置するABCB4遺伝子(MDR3とも呼ばれる)の遺伝子欠陥によって引き起こされる。クラスIII多剤耐性(MDR3)P‐糖タンパク質(P‐gp)は、肝細胞の毛細胆管側膜における胆汁リン脂質(ホスファチジルコリン)の排出に関与するリン脂質トランスロケーターである。PFIC3は、界面活性剤である胆汁酸塩がリン脂質によって不活性化されていない胆汁の毒性(これは毛細胆管及び胆管上皮の損傷につながる)によって生じる。
【0251】
PFIC3もまた、幼児期に現れる。PFIC1及びPFIC2とは対照的に、個体のγGTレベルは上昇する。個体はまた、門脈炎、線維症、硬変、及び大量の胆管増殖を有する。個体は肝内胆石症も発症する。ウルソジオールはPFIC3の治療又は改善に有効である。
【0252】
良性反復性肝内胆汁うっ滞(BRIC)
BRIC1
BRIC1は、肝細胞の毛細胆管側膜におけるFIC1タンパク質の遺伝子欠陥によって引き起こされる。BRIC1は典型的には、血清コレステロール及びγ‐グルタミルトランスペプチダーゼレベルが正常である一方で、血清胆汁酸塩が増加した状態に関連する。残存FIC1の発現及び機能が、BRIC1に関連する。胆汁うっ滞又は胆汁うっ滞性肝疾患の発作の頻発にもかかわらず、大半の患者では慢性肝疾患には進行しない。発作中、患者には重度の黄疸が生じ、また掻痒、脂肪便、及び体重減少が生じる。一部の患者には腎結石、膵炎、及び糖尿病も生じる。
【0253】
BRIC2
BRIC2はABCB11の変異によって引き起こされ、これは、肝細胞の毛細胆管側膜における、欠陥を有するBSEPの発現及び/又は機能につながる。
【0254】
BRIC3
BRIC3は、肝細胞の毛細胆管側膜における、MDR3の不完全な発現及び/又は機能に関連する。MDR3欠損症に罹患した患者は通常、胆汁酸レベルが正常であるか又はわずかに上昇した状態で、血清γ‐グルタミルトランスペプチダーゼレベルの上昇を示す。
【0255】
Dubin‐Johnson症候群(DJS)
DJSは、MRP2の遺伝性機能不全による抱合型ビリルビンの増加を特徴とする。罹患した患者において、肝機能は維持される。複数の異なる変異がこの状態に関連しており、これらは、罹患した患者における、免疫組織化学的に検出可能なMRP2の完全な不在、又はタンパク質の成熟及び選別の障害のいずれかをもたらす。
【0256】
後天性胆汁うっ滞性疾患
小児原発性硬化性胆管炎(PSC)
小児PSCは、罹患した患者の大半において末期肝不全までゆっくりと進行する、慢性炎症性肝障害である。小児のPSC炎症では、大型及び中型の肝内及び肝外胆管の、線維症及び閉塞が顕著である。
【0257】
胆石症
胆石症は、あらゆる消化器疾患の中で最も一般的かつ最も費用がかかる疾患の1つであり、白人女性の有病率は最大で17%である。コレステロールを含有する胆石は胆石の主要な形態であり、従ってコレステロールによる胆汁の過飽和が、胆石の形成の前提条件である。コレステロール胆石症の発病にはABCB4の変異が関与し得る。
【0258】
薬剤誘発性胆汁うっ滞
薬剤によるBSEP機能の阻害は、薬剤誘発性胆汁うっ滞の重要な機序であり、これは肝臓での胆汁酸塩の蓄積と、それに続く肝細胞損傷につながる。複数の薬剤がBSEPの阻害に関係している。リファンピシン、シクロスポリン、グリベンクラミド、又はトログリタゾンといったこれらの薬剤の大半は、ATP依存性タウロコール酸塩輸送を競合的な様式で直接的にシス阻害し、その一方で、エストロゲン及びプロゲステロン代謝物は、MRP2による毛細胆管への胆汁の分泌後に、BSEPを間接的にトランス阻害する。あるいは、MRP2の薬剤仲介性刺激は、胆汁組成物を変化させることによって、胆汁うっ滞又は胆汁うっ滞性肝疾患を促進する可能性がある。
【0259】
中心静脈栄養法(Total Parenteral Nutrition)関連胆汁うっ滞
TPNACは最も深刻な臨床的シナリオの1つであり、胆汁うっ滞又は胆汁うっ滞性肝疾患が急速に発生し、早期死亡と強く関連する。通常は未熟児であり腸の切除を受けている乳児は、成長のためにTPNに依存し、頻繁に胆汁うっ滞又は胆汁うっ滞性肝疾患を発症し、これは通常、生後6か月までに、線維症、硬変、及び門脈圧亢進へと急速に進行する。これらの乳児における胆汁うっ滞又は胆汁うっ滞性肝疾患の程度、及び生存の可能性は、腸粘膜を横断するバクテリアルトランスロケーションの頻発によって開始される可能性がある敗血症エピソードの数に関連する。これらの乳児では静脈内製剤による胆汁うっ滞の影響も存在するが、敗血症メディエーターが肝機能の変化に最も寄与すると思われる。
【0260】
アラジール症候群
アラジール症候群は、肝臓及び他の器官に影響を及ぼす遺伝性障害である。これは乳児期(例えば6~18か月)から幼児期(3~5歳)に現れることが多く、10歳以降に安定する場合がある。症状としては、慢性進行性胆汁うっ滞、胆管減少症、黄疸、掻痒、黄色腫、先天性心疾患、肝内胆管の不足、線形成長の不良、ホルモン抵抗性、後部胎生環、アクセンフェルド奇形、網膜色素変性症、瞳孔異常、心雑音、心房中隔欠損症、心室中隔欠損、動脈管開存症、及びファロー四徴症が挙げられる。アラジール症候群と診断された個体は、ウルソジオール、ヒドロキシジン、コレスチラミン、リファンピシン、及びフェノバルビタールで治療される。脂溶性ビタミンの吸収能力が低下するため、アラジール症候群に罹患した個体には、高用量のマルチビタミンが更に投与される。
【0261】
胆道閉鎖症
胆道閉鎖症は、肝臓内又は外の胆管が正常な開口を有しない、乳児の生命を脅かす状態である。胆道閉鎖症では、胆汁が閉じ込められて蓄積され、肝臓に損傷を与える。この損傷は、瘢痕、肝組織の喪失、及び硬変につながる。治療しなければ肝臓は最終的に機能不全となり、乳児は生存のために肝移植を必要とする。胎児期及び周産期の2種類の胆道閉鎖症がある。胎児期胆道閉鎖症は、胎児が子宮内にいる間に現れる。周産期胆道閉鎖症ははるかに一般的であり、生後2~4週まで明らかにならない。
【0262】
葛西手術術後胆道閉鎖症
胆道閉鎖症は、葛西手術と呼ばれる手術、又は肝移植によって治療される。通常は葛西手術が胆道閉鎖症の最初の治療である。葛西手術中、小児外科医は乳児の損傷した胆管を除去し、腸のループを持ち上げて上記胆管を交換する。葛西手術は胆汁の流れを回復させ、胆道閉鎖症によって引き起こされる多くの問題を修正できるが、この手術は胆道閉鎖症を治癒させるものではない。葛西手術が失敗すると、乳児は通常、1~2年位内に肝移植を必要とする。手術の成功後であっても、胆道閉鎖症に罹患した大半の乳児では、硬変が数年にわたってゆっくりと発症し、成人期までに肝移植が必要となる。葛西手術後に発生し得る合併症としては、腹水症、細菌性胆管炎、門脈圧亢進、及び掻痒が挙げられる。
【0263】
肝移植後胆道閉鎖症
閉鎖症が完全なものとなってしまうと、肝移植が唯一の選択肢となる。肝移植は一般的に、胆道閉鎖症の治療に有効であるが、肝移植には臓器拒否反応等の合併症がある場合がある。また、ドナー肝臓が入手できない場合もある。更に一部の患者では、肝移植が胆道閉鎖症の治癒に有効でない場合がある。
【0264】
黄色腫
黄色腫は胆汁うっ滞性肝疾患に関連する皮膚の状態であり、皮膚表面の下に特定の脂肪が蓄積する。胆汁うっ滞は、脂質代謝の妨害を複数引き起こし、これらは、血中での、リポタンパク質Xと呼ばれる異常な脂質粒子の形成をもたらす。リポタンパク質Xは、肝臓から血中への胆汁の脂質の逆流によって形成され、正常なLDLのように、コレステロールを全身の細胞へと送達するLDL受容体に結合しない。リポタンパク質Xは、肝臓のコレステロール産生を5倍増加させ、肝臓による、血液からのリポタンパク質粒子の正常な除去を遮断する。
【0265】
本明細書中のどこかで引用されているあらゆる参考文献は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本出願に援用される。
【0266】
本明細書では本発明の好ましい実施形態が図示及び説明されているが、これらの実施形態は単なる例として提供されたものであることは、当業者には明らかであろう。
【0267】
本明細書における値の範囲の記載は、特段の指示がない限り、該範囲内の個々の値と各終点とに対する個別の言及を簡略化した方法として機能することを単に目的としたものであり、個々の値及び終点は、これらが本明細書中で個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0268】
ここで、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換が当業者には想起されるだろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替例を、本発明の実施にあたって採用してよいことを理解されたい。以下の特許請求の範囲によって本発明の範囲が規定されること、並びにこれらの特許請求の範囲内の方法及び構造、並びにその均等物が、本発明の範囲に包含されることが意図されている。
【実施例
【0269】
以下の実施例は、本説明の具体的な態様を例示するものである。これらの実施例は限定として解釈してはならない。というのは、これらの実施例は単に、実施形態及びその様々な態様の具体的な理解及び実践を提供するものであるためである。
【0270】
実施例1:マラリキシバットの製剤
この実施例は、本開示の実施形態によるASBTIであるマラリキシバットの様々な製剤について概説する。上記製剤を表1に示す。
【0271】
【表1】
【0272】
実施例2:ALGSの治療のための鎮痒薬
ALGSに罹患した患者は、典型的にはUDCA及びリファンピシンと、掻痒症状を制御又は低減するための他の保険適用外の作用剤とを用いて治療される。これらの薬物は通常、掻痒の低減には部分的又は一時的にしか有効でない。
【0273】
マラリキシバットの研究の適格性のためには、バックグラウンドでの鎮痒療法に関係なくItchRO(Obs)機器で2以上のスコアで測定されるような、中等度から重症の掻痒が必要であった。研究LUM001‐304では、参加者には22週まで、鎮痒療法に対するいかなる変更も許可されなかった。研究LUM001‐301及びLUM001‐302では、13週までの一次分析の期間全体にわたって、鎮痒併用薬物に対する変更が許可された。従って全ての研究で、参加者にはランダム化比較期間全体を通して(体重に基づく用量の調整を除いて)安定した用量の鎮痒薬を投与しなければならなかった。
【0274】
LUM001‐301の参加者は、70μg/kg/日、140μg/kg/日、又は280μg/kg/日のマラリキシバットを(マラリキシバット塩化物として)投与された。LUM001‐302の参加者は、140μg/kg/日、又は280μg/kg/日のマラリキシバットを(マラリキシバット塩化物として)投与された。長期間のLUM001‐303の投薬は、280μg/kg QD及び280μg/kg BIDであった。長期間のLUM001‐305の投薬は、280μg/kg/日であった。
【0275】
長期延長研究中のこれらの安定用量期間の後、鎮痒薬に対する変更が許可された。5年間の研究の経過にわたって、鎮痒薬の体重ベースの用量の調整が予定された。
【0276】
表2は、ベースラインにおいて1つ以上の併用鎮痒薬を投与されている参加者の割合を示す。
【0277】
【表2】
【0278】
研究LUM001‐304の22週目の後、長期延長中の29人の参加者のうち10人の参加者の併用鎮痒薬を減少させた。これら10人の参加者のうち、3人の参加者ではUDCAを中止し;3人の参加者ではリファンピシン及びUDCAを中止し;1人の参加者ではリファンピシンを中止してUDCAを減少させ;3人の参加者ではリファンピシンを中止した。2人の参加者については、リファンピシンの停止とUDCAの増加とが組み合わされた薬物の変更を実施した。更に、3人の参加者ではUDCAの用量を増加させ;1人の参加者ではUDCAを中止してリファンピシンを開始し;1人の参加者ではリファンピシンを増加させた。残りの参加者では、併用鎮痒薬の変更は全く又は最小限しか実施されなかった。
【0279】
研究LUM001‐303の安定投薬期間では、長期延長中の19人の参加者のうち、2人の参加者では併用鎮痒薬を減少させ:1人の参加者ではUDCA及びリファンピシンの両方を中止し;1人の参加者ではリファンピシンを中止してUDCAを減少させた。5人の参加者では併用鎮痒薬を増加させ:1人の参加者ではUDCA及びリファンピシンの用量を増加させ;1人の参加者ではリファンピシンを開始し;1人の参加者ではUDCAを増加させ;2人の参加者ではUDCAを変化させずにリファンピシンの用量を増加させた。残りの12人の参加者では、併用鎮痒薬の変更は全く又は最小限しか実施されなかった。
【0280】
研究LUM001‐305の安定投薬期間では、長期延長中の34人の参加者のうち、10人の参加者では併用鎮痒薬を減少させた。これら10人の参加者のうち、1人の参加者ではUDCAを中止し;1人の参加者ではUDCA及びリファンピシンを中止し;2人の参加者ではリファンピシンを中止し;1人の参加者ではUDCAを減少させてリファンピシンを継続し;1人の参加者ではリファンピシンを減少させてUDCAを少量だけ増加させ;1人の参加者ではUDCAを中止してリファンピシンを継続し;1人の参加者ではリファンピシンを中止してUDCAを継続し;2人の参加者ではリファンピシンを中止してUDCAを増加させた。7人の参加者では併用鎮痒薬を増加させ:2人の参加者ではUDCA及びリファンピシンの用量を増加させ;1人の参加者ではリファンピシンを開始し;2人の参加者ではリファンピシンの用量を増加させ;2人の参加者ではUDCAを増加させた。残りの17人の参加者では、併用鎮痒薬の変更は全く又は最小限しか実施されなかった。
【0281】
ほとんど全ての参加者が1~3つの鎮痒薬を用いたALGS研究に参加し、中等度から重症の掻痒という参加基準を依然として満たしていた。全体として、長期追跡調査にわたって、マラリキシバットを用いた治療中に掻痒スコアは一貫して改善された。研究LUM001‐304では、400μg/kgというマラリキシバットの用量で、掻痒が最も大きく低減され、併用鎮痒薬を減少させる参加者の割合が最も高くなることが実証された。より低用量での補助ALGS研究でも、程度はより低いものの同様の効果が示された。
【0282】
これらの研究により、マラリキシバットをUDCA及び/又はリファンピシンと組み合わせて投与された多くの患者が、UDCA及び/又はリファンピシンの量を減少させることができたことが実証される。これは、UDCA又はリファンピシンを用いた単剤療法と比較して、併用療法によって各薬物の投薬量の削減が達成されたことを示している。
【0283】
実施例3:PFICの治療のための鎮痒薬
PFICに罹患した患者は、典型的にはUDCA及びリファンピシンと、掻痒症状を制御又は低減するための他の保険適用外の作用剤とを用いて治療される。これらの薬物は通常、掻痒の低減には部分的又は一時的にしか有効でない。
【0284】
胆汁うっ滞性肝疾患
進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)に罹患している患者の胆汁うっ滞性肝疾患の治療におけるマラリキシバット(LUM001)の効能及び長期安全性を評価するためのオープンラベル研究(研究LUM001‐501)では、参加者には13週の治療期間中、鎮痒療法に対するいかなる変更も許可されなかった。掻痒の治療に使用される新規の薬物は、13週の治療期間中に全く追加されなかった。従って、参加者には13週の治療期間中、(体重に基づく用量の調整を除いて)安定した用量の鎮痒薬を投与しなければならなかった。
【0285】
長期曝露期間に、鎮痒薬に対する変更が許可された。
【0286】
表3は、PFIC疾患の病歴の一部として報告された、ベースラインにおいて1つ以上の併用鎮痒薬を投与されている参加者の割合を示す。
【0287】
【表3】
【0288】
マラリキシバット集団(N=33)における研究LUM001‐501からの事前及び併用鎮痒薬データの事後分析により、ベースラインにおいて26人の参加者(83.9%)に鎮痒薬が投与されていたことが示された。
【0289】
研究中、5人の参加者では鎮痒薬の用量を増加させ、3人の参加者ではリファンピシンを増加させ(ItchRO(Obs)=1~3)、1人の参加者ではUDCA及びリファンピシンを増加させ(ItchRO(Obs)=1)、1人の参加者ではUDCAを増加させた(ItchRO(Obs)=2~4)。
【0290】
研究中、5人の参加者では鎮痒薬の修正(増加、減少、又は中断)を実施し、3人の参加者ではリファンピシンを中止してUDCAを増加させ(ItchRO(Obs)=0~2)、1人の参加者ではリファンピシンを増加させてUDCAを減少させ(ItchRO(Obs)=3~4)、1人の参加者ではリファンピシンを減少させてUDCAを増加させた(ItchRO(Obs)=3~4)。
【0291】
研究中、13人の参加者では鎮痒薬の用量を減少させるか中断し、3人の参加者ではリファンピシンを中止し(ItchRO(Obs)=0~2)、4人の参加者ではUDCAを中止し(ItchRO(Obs)=0~3)、2人の参加者ではUDCA及びリファンピシンを中止し(ItchRO(Obs)=0~3)、1人の参加者ではリファンピシンを減少させ(ItchRO(Obs)=1)、2人の参加者ではUDCAを減少させ(ItchRO(Obs)=1)、1人の参加者ではリファンピシンを中止してUDCAを減少させた(ItchRO(Obs)=2)。
【0292】
図3A~3Eは、LUM001~501研究に登録された5人の例示的なPFIC患者に関する、ItchROと、マラリキシバット及び選択された鎮痒薬の用量とのプロットである。これらの図は、患者が、1つ以上の鎮痒薬の投薬量を削減しただけでなく完全に中断しながら、マラリキシバットで掻痒の制御を依然として維持できたことを実証している。具体的には、図3Aは、患者がリファンピシン及びUDCAの両方を中止しても優れた掻痒の制御を維持したことを示す。図3B及び3Cは、患者がリファンピシンを中止しても優れた掻痒の制御を維持したことを示す。図3D及び3Eは、患者がUDCAを中止しても掻痒の制御を維持したことを示す。
【0293】
全体として、より多くの参加者が鎮痒薬の削減及び/又は中断を実施しながら、持続的な追跡調査期間にわたるItchRO(Obs)スコアの低下によって実証されるような掻痒の全体的改善を得た。これは、併用療法によって薬物の投薬量の削減が達成されたことを示している。
【0294】
実施例4:マラリキシバット経口溶液の開発
提案されている胆汁うっ滞性疾患の標的患者集団が小児患者であるため、患者の体重に基づく用量の調整の柔軟性、そして幼児がこのタイプの製剤を好むことを理由として、経口溶液製剤が選択された。マラリキシバット塩化物は水溶性が高く、100mg/mLを超える水への溶解度を有するため、溶液製剤の優れた候補である。
【0295】
従って、最終的な市販医薬製品の製剤をサポートするために、マラリキシバット塩化物を用いた経口溶液(固定投薬体積(fixed dosage volume)、即ち「FDV」製剤、及び固定薬剤物質濃度(fixed drug substance concentration)、即ち「FDSC」製剤)を開発した。これらの経口溶液製剤の開発について以下で説明する。
【0296】
実施例4:固定投薬体積(FDV)製剤
可溶性
早期小児臨床試験について、望ましいマラリキシバット溶液濃度は0.02~20mg/mL(マラリキシバット塩化物をベースとした濃度)であった。初期の製剤研究を実施して、3つの液体経口投薬ビヒクル、即ち:水、ペディアライト(Pedialyte)(登録商標)(経口補水剤)、及びオーラスイート(Ora‐Sweet)(登録商標)SF(経口調製物用の無糖・無アルコールシロップビヒクル)中でのMRX薬剤物質の可溶性及び安定性を決定した。これら3つのビヒクルを用いて、3つの異なる濃度(マラリキシバット塩化物ベースで0.02mg/mL、2.0mg/mL、及び4.0mg/mLの濃度の)MRX薬剤物質でサンプルを作成した。ボルテックスミキサーを用いて液体ビヒクル中に薬剤を分散させた後、薬剤の溶解状態を目視で確認し、表4のように記録した。
【0297】
【表4】
【0298】
表4で提示されているように、結果は、3つのビヒクルのうち水だけが、マラリキシバット薬剤物質の許容可能な可溶性を提供する溶媒であることを示した。Ora‐Sweet(登録商標)の、味をマスキングする特性を利用するために、ビヒクルを4.0mg/mLのMRX水溶液の一部分と混合した。添加するとゲル形成及び材料の相分離が観察された。混合物を水浴で加熱しても、製剤の外観の改善は観察されなかった。
【0299】
溶媒系
市販の経口ビヒクルだけでは、所望の濃度のMRX薬剤物質に十分な可溶性を提供できないことが判明した。MRX物質に最適なビヒクルを見つけるために、異なる複数の溶媒及びそれらの組み合わせを検討した。ポリエチレングリコール(PEG)300、プロピレングリコール、グリセリン、水、及びエタノールを評価した。様々な溶媒を用いた、濃度4mg/mLでのMRX薬剤物質の可溶性の目視観察結果を、表5で提供する。
【0300】
【表5】
【0301】
表5で提示されている結果に基づくと、プロピレングリコール、水、及びエタノールの組み合わせが、マラリキシバットの溶液製剤の開発のための最も好ましい選択肢を提供した。しかしながら、製剤は小児の使用を目的としたものであるため、エタノールは溶媒系から除かれた。スクラロース及び香味料(ブドウ香味料F‐9924 PFC)を、それぞれ甘味料、及び味をマスキングする作用剤として添加した。
【0302】
表6で提示されているように、マラリキシバット薬剤物質のために5つのプロトタイプ溶媒系を検討した。
【0303】
【表6】
【0304】
プロトタイプ溶媒系は、複数の溶媒を混合して溶媒混合物を作成した後、スクラロース及びブドウ香味料を撹拌しながら添加することによって作成された。活性のある溶液を製造するために、プロトタイプ溶媒系のアリコートを、(所望の用量を達成するための)特定の量のMRX薬剤物質を内包したバイアルに加え、手動で混合した。開発のための最高用量として、まず4.0mg/mLの濃度(マラリキシバット塩化物)を目標とした。プロトタイプ5は、更なる薬剤製品製剤の開発のための希釈剤として選択された。
【0305】
希釈剤
プロトタイプ5のバルク希釈剤を調製し、これを用いて、0.02mg/mL及び4.0mg/mLの2つのMRX経口溶液製剤を製造した(濃度はマラリキシバット塩化物として表されている)。短期安定性に関する結果(以下の表7及び表8)によって示唆されるように、2℃~8℃及び25℃/60%RHで最大14日間保管された両方の溶液について、アッセイ、pH、及び不純物プロファイルの変化は観察されなかった。臨床開発が進むにつれて、提案される投薬計画の変更を考慮するために、より多量のMRX薬剤物質が必要となった。ブドウ香味料の含有量も、製剤中で0.75w/w%から0.5w/w%まで削減された。MRX経口溶液のためにMRX薬剤物質と共に使用できる希釈剤の最終的な組成を、表9で提示する。
【0306】
【表7】
【0307】
【表8】
【0308】
【表9】
【0309】
可溶性
より広い濃度範囲のマラリキシバット溶液を評価するために、追加の研究を実施した。
表9に記載した希釈剤を用いて、10mg/mL~50mg/mL(マラリキシバット塩化物をベースとした濃度)の濃度でMRX経口溶液を調製して評価した。室温で数時間混合すると、全ての溶液は透明になった。調製されたこれらの溶液は、固定投薬体積(FDV)製剤と呼ばれる。
【0310】
25℃/60%RHにおける、MRX経口溶液のための希釈剤の代表的な長期安定性を、以下の表10Aで提示する。
【0311】
【表10A】
【0312】
この安定性試験の結果は、試験時に適用可能な許容基準を満たしていた。従ってこれらの結果は、MRX経口溶液のための希釈剤の全ての品質属性が、25℃/60%RHで保管した場合に最大24か月間安定していることを示している。
【0313】
これらのFDV製剤は、2℃~8℃及び25℃/60%RHにおいて最大24か月にわたって安定状態に置かれた。表10Bは、FDV製剤のための安定性の設計を提供する。表11は、製造されたバッチに関する、溶液、容器閉鎖、及び安定性保管条件の概要を提供する。安定性データは試験時に適用可能な許容基準を満たしていたため、この時点で適用可能な臨床研究のための、最高50mg/mLの濃度(マラリキシバット塩化物として示されている)でのFDV製剤の使用をサポートするものであった。
【0314】
【表10B】
【0315】
【表11】
【0316】
【表12】
【0317】
【表13】
【0318】
【表14】
【0319】
【表15】
【0320】
【表16】
【0321】
【表17】
【0322】
【表18】
【0323】
凍結融解研究
10mg/mL(マラリキシバット塩化物をベースとした濃度)のFDV製剤を用いて、凍結融解研究を実施した。溶液を-20℃、24時間から室温、5時間までのサイクルに供し、5回目のサイクルの終了時にサンプルを試験した。結果は表19で提供されており、FDV製剤が最大5回の凍結融解サイクルで安定していることが実証されている。
【0324】
【表19】
【0325】
FDV製剤の開発についての結論
以上の結果に基づき、表20で提示されているようにFDV製剤を確立して、臨床研究に使用した。MRX経口溶液は元々、Quotient Sciences社で患者の体重及び標的用量に基づいて患者ごとに調製された。必要な量のマラリキシバット塩化物を、30mLのブドウ香味付き希釈剤(表9)を内包した透明のボロシリケートガラスバイアルに加えて混合し、透明な溶液を形成した。投与前に、各バイアルについて透明な溶液の目視確認を実施した。調製された溶液を内包したバイアルは、該当する研究投薬指示に従った投与のために、冷蔵状態(2℃~8℃)で臨床現場へと発送された。
【0326】
FDV製剤を、提案された適応症の臨床研究を含む第2相臨床研究で使用した。第2相臨床供給用の希釈剤はFormex社(カリフォルニア州サンディエゴ)で製造され、薬剤はQuotient Sciences社(英国)で調製された。
【0327】
【表20】
【0328】
実施例5:固定薬剤物質濃度(FDSC)製剤
進行中の臨床研究のために、また登録キャンペーン(一次安定性)のための準備において、複数の強度(5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、40mg/mL、及び50mg/mL;マラリキシバット塩化物をベースとした濃度)の、使用準備ができた状態のMRX経口溶液が、Unither社で開発及び製造され;4つ(5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、及び20mg/mL;マラリキシバット塩化物をベースとした濃度)が、Halo社において、より大規模に製造された。この使用準備ができた状態のMRX経口溶液は、FDV製剤(実施例4)をベースとして開発された固定薬剤物質濃度(FDSC)製剤である。
【0329】
マラリキシバットは最小限しか吸収されず、また投与される液体製剤の体積は小さい(1用量あたり3.0mL以下)ため、FDV製剤とFDSC製剤との間での賦形剤の修正は、バイオアベイラビリティ又は効能に影響を及ぼすことはないと予想される。市販製剤は、目標を上回るアッセイに対するわずかな偏りを補償するため、及び開発中の複数の製剤強度にわたって賦形剤レベルを正常化するために、FDSC製剤の組成量にわずかな調整を加えることによって開発された。
【0330】
プロピレングリコールレベル調整
プロピレングリコールは、液体及び半固体調製物中の有効な抗菌・抗真菌剤として認識されている。FDV製剤(実施例4)の場合と同様に、この賦形剤は、MRX経口溶液において以下の二重の機能:共溶媒及び防腐剤を果たす。FDV製剤の抗菌効力(antimicrobial effectiveness:AET)を評価するために、5mg/mL(マラリキシバット塩化物をベースとした濃度)のMRX経口溶液を、25w/w%、30w/w%、及び35w/w%のプロピレングリコールレベルで調製した。このAET研究は、米国薬局方<51>及び欧州薬局方5.1.3に従って実施された。
【0331】
表21に示されている結果は、最大30w/w%のプロピレングリコールを含む製剤が、経口溶液のAET試験に関する米国薬局方許容基準を満たすものの、欧州薬局方許容基準を満たさなかったことを実証している(表22)。米国薬局方及び欧州薬局方の許容基準はいずれも、プロピレングリコールレベルを35w/w%まで増加させた場合にしか満たされなかった。従って、MRX経口溶液中のプロピレングリコールの量は、FDV製剤中の25%から、35w/w%へと調整された。
【0332】
【表21】
【0333】
【表22】
【0334】
実施例4にまとめられている安定性に関する結果は、FDV製剤が臨床使用に関して許容可能な安定性を有することを示していたが、酸化分解物、不純物であるデスメチルマラリキシバット塩化物のレベルは、FDV製剤中で時間の経過と共に上昇する。デスメチルマラリキシバット塩化物は、薬剤物質合成、薬剤製品安定性、及び強制分解の研究においても一貫して観察される、酸化分解物である。
【0335】
開発の初期プロセスでは、ガラス及びステンレス鋼の2つのタイプの、溶液配合用混合容器を使用し、製品安定性への潜在的影響に関して比較した。MRX経口溶液(50mg/mL)をガラス又はステンレス鋼製容器中で配合し、室温で最大14日間保管した場合に、デスメチルマラリキシバット塩化物レベルの上昇が観察された。しかしながら、ステンレス鋼製容器で保管された溶液は、ガラスジャーで保管されたものに比べて高いデスメチルマラリキシバット塩化物レベルを有することが分かった(表23)。これは、金属製コンテナが酸化分解を促進する可能性があることを示唆している。
【0336】
【表23】
【0337】
各時点において2回の反復測定を実施した。
【0338】
薬剤の酸化を阻止するために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム二水和物を、MRX経口溶液の潜在的な抗酸化剤として評価した。実験室規模の安定性研究を実施し、ここでは、二ナトリウムEDTA二水和物を0w/w%、0.01w/w%、及び0.05w/w%のレベルでMRX経口溶液(50mg/mL、マラリキシバット塩化物をベースとした濃度)に添加し、酸化不純物(デスメチルマラリキシバット塩化物)のレベルを25℃及び40℃で最大1か月間監視した。この研究の結果(図2)は、MRX経口溶液中のデスメチルマラリキシバット塩化物のレベルが、二ナトリウムEDTA二水和物の濃度の上昇に伴って低下することを示した。0.05w/w%の二ナトリウムEDTA二水和物濃度では、デスメチルマラリキシバット塩化物レベルの有意な上昇は、溶液を25℃で4週間保管しても観察されず、40℃で2週間保管するとわずかな上昇が観察された。MRX経口溶液の安定性を更に確かなものとするために、0.1w/w%の二ナトリウムEDTA二水和物を、薬剤製品に含めるものとして選択した。
【0339】
エデト酸二ナトリウム二水和物が、溶液をステンレス鋼製容器内で配合した場合のマラリキシバット塩化物の酸化分解の阻止に有効であることを確認するために、研究を実施し、エデト酸二ナトリウム二水和物含む場合と含まない場合とで、MRX経口溶液中のデスメチルマラリキシバット塩化物の分解産物のレベルを比較した。簡潔に述べると、エデト酸塩を含むMRX経口溶液と、エデト酸塩を含まないMRX経口溶液とを、ステンレス鋼製容器内で配合し、最悪のシナリオとして30℃で少なくとも2時間撹拌した。MRX経口溶液を、チャイルドレジスタンスキャップ及びインダクションシールを備えた30mLのポリエチレンテレフタレート(PET)製ボトルに包装した。40℃/75%RHにおける、包装された薬剤製品中のデスメチルマラリキシバット塩化物のレベルを、経時的に監視した。上記2つの溶液の組成を表24で提供し、研究の結果を表25にまとめる。
【0340】
【表24】
【0341】
【表25】
【0342】
研究の結果は、時点ゼロにおいて、エデト酸二ナトリウム二水和物を含む溶液が、この賦形剤を含まない溶液に比べてはるかに低いデスメチルマラリキシバット塩化物酸化不純物のレベルを有することを示している(0.07%対0.69%)。加速劣化条件で保管すると、エデト酸二ナトリウム二水和物を含む溶液中のデスメチルマラリキシバット塩化物のレベルは、5か月で0.07%から1.52%までゆっくりと上昇した。しかしながら、エデト酸二ナトリウム二水和物を含まない溶液では、デスメチルマラリキシバット塩化物のレベルは5か月で0.69%から23.15%へと大幅に上昇した。結論として、0.1w/w%のエデト酸二ナトリウム二水和物の添加により、配合設備としてステンレス鋼製容器を使用した場合であっても、溶液製剤中のMRXの分解を効果的に阻止できる。
【0343】
FDSC 製剤の組成
プロピレングリコールの抗菌効果の研究、及び二ナトリウムEDTA二水和物の抗酸化剤効果の研究の結果に基づいて、MRX経口溶液製剤を最適化し、表26に示されているような組成を確立した。MRX経口溶液は、直接使用可能な、使用準備ができた状態の固定薬剤物質濃度(FDSC)製剤として製造された。
【0344】
プロピレングリコールレベルの上昇、及び溶液製剤への二ナトリウムEDTAの添加に加えて、FDSC製剤中の甘味料(スクラロース)のレベルをわずかに上昇させた(0.75w/w%から1.0w/w%へ)。
【0345】
【表26】
【0346】
【表27】
【0347】
FDSC製剤の開発に関する結論
結論として、提案された適応症の第2相研究を含む初期小児臨床研究で使用されたFDV製剤の組成に基づいて、MRX経口溶液の、使用準備ができた状態のFDSC製剤が開発された。開発中に以下の3つの組成変更が行われた:
1.プロピレングリコールレベルを25w/w%から35w/w%に上昇させ、製剤の抗菌効果を効果的に向上させた。
2.0.1w/w%のレベルのエデト酸二ナトリウム二水和物を抗酸化剤として添加することにより、分解物であるデスメチルマラリキシバット塩化物の増殖を効果的に阻害した。
3.一般的な甘味料であるスクラロースのレベルを、0.75w/w%から1w/w%に上昇させた。
【0348】
結果として得られたFDSC製剤は、広範な濃度範囲において、2℃~8℃及び25℃/60%RHでの保管に対して安定していることが実証されている。ボトルの配向及び凍結融解サイクルは、薬剤製品の溶液安定性及び全体としての性能に有意な影響を及ぼさなかった。
【0349】
実施例6:硬化性胆管炎の前臨床モデルでの、ASBT阻害剤及びPPARアゴニストを用いた併用療法の効能の評価
胆汁酸(BA)の腸肝循環を遮断する回腸胆汁酸輸送体(IBAT)の阻害と、BAの合成、抱合、及び輸送を制御するペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)の活性化との両方が、PSC及びPBCを含む硬化性胆管炎(SC)の潜在的な治療法として浮上している。ここでは、これらの治療モダリティの組み合わせによって、SCのMDR2-/-マウスモデルにおいて効能が単剤療法を上回るように向上するという仮説を試験する。
【0350】
方法:30日齢のメスのMDR2-/-マウス(FVBバックグラウンド)を、ビヒクル対照(コリフォール及びCMC)、100mg/kg/日のベザフィブラート(汎PPARアゴニスト)、100mg/kg/日のフェノフィブラート(PPARαアゴニスト)、10mg/kgのセラデルパル(PPARδアゴニスト)、飼料に混合した0.008%のSC‐435(非吸収性IBAT阻害剤)、又はSC‐435とPPARアゴニストとの組み合わせを用いた経口胃管栄養法で、14日間にわたって毎日処置した。
【0351】
結果:野生型(WT)マウスと比較して、肝臓対体重の比はMDR2-/-マウスにおいてほぼ2倍であり、これはPPARアゴニスト単剤療法では減少しなかったが、IBATi及び併用療法によって軽減された。肝臓及び血清BA、並びに生化学(biochemistry)は、WTに比べてビヒクル処置MDR2-/-マウスで大きく上昇した(平均±SEは、肝臓BA:930±84nmol/g、血清BA:336±40μM、ALT:1275±47IU/L、総ビリルビン[TB]:2.0±0.4mg/dL、ALP:296±17IU/L)(図4)。PPARアゴニスト及びIBATiは肝臓内でのBAの保持を大幅に低減したが、フェノフィブラート及びIBATiだけが、単独で又はPPARアゴニストとの組み合わせで、血清BA濃度を低下させた。フェノフィブラート以外の全ての処置が、血清ALTレベルを低下させた。IBATi処置は血清TB濃度を低下させたが、PPARアゴニストでの単剤療法は血清TB濃度を低下させなかった。他のバックグラウンドのマウスでの研究とは対象的に、このFVBバックグラウンドのマウスでは、血清ALPはIBATi処置のみによって上昇し、フィブラートとの組み合わせによって更に上昇した。ALPは、IBATiとPPARδアゴニストトの組み合わせでは上昇しなかった。CK19免疫組織化学によって評価されるように、血清ALPレベルは胆汁量及び胆管増殖と相関関係を有していた。
【0352】
結論:IBATiは、胆汁うっ滞のマーカーである血清総BA及びTBレベルの低減において、PPARアゴニストよりも強力である。IBATiとPPARδアゴニストとの併用療法は、SCの上述のマウスモデルで相乗効果を示す。更なる前臨床調査が、この相乗効果及び潜在的な副作用の根底にある機序をよりよく理解し、臨床試験での使用をガイドするのに役立つ可能性がある。
【0353】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、上述の主題に様々な変更を加えることができるため、以上の説明に含まれる又は添付の特許請求の範囲に定義されている全ての主題は、本発明の説明及び例示として解釈されることが意図されている。上述の教示から、本発明の多数の修正及び変形が可能である。従って本説明は、添付の特許請求の範囲の範囲内のあらゆる代替例、修正例、及び変形例を包含することを意図したものである。
【0354】
本明細書に引用されている全ての特許、特許出願、刊行物、試験方法、文献、及びその他の資料は、これらが本明細書中に物理的に存在するかのように、その全体が参照により本出願に援用される。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
【国際調査報告】