(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】洋上太陽光発電パネルを設置するための浮体装置及び設置方法
(51)【国際特許分類】
B63B 35/00 20200101AFI20241024BHJP
B63B 35/38 20060101ALI20241024BHJP
B63B 59/02 20060101ALI20241024BHJP
B63B 27/14 20060101ALI20241024BHJP
B63B 21/20 20060101ALI20241024BHJP
B63B 75/00 20200101ALI20241024BHJP
B63J 99/00 20090101ALI20241024BHJP
【FI】
B63B35/00 T
B63B35/38
B63B59/02 L
B63B27/14 104
B63B21/20
B63B75/00
B63J99/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024524575
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 ES2021070759
(87)【国際公開番号】W WO2023067205
(87)【国際公開日】2023-04-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524151473
【氏名又は名称】ブルーニューアブルズ・ソシエダッド・リミターダ
【氏名又は名称原語表記】BlueNewables SL
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】コウニャゴ ロレンソ,ベルナルディーノ
(72)【発明者】
【氏名】サインス アビラ,オスカル
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス ヒル,イスマエル
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス ブランコ,セルヒオ
(72)【発明者】
【氏名】バラオーナ オビエド,セシリオ
(72)【発明者】
【氏名】ビガラ マルティン,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア サインス,クララ
(57)【要約】
本発明は、浮体装置に関する。当該浮体装置は、合計で少なくとも80立方メートルの水を移動するように構成された複数の主浮体(1)と、複数の主浮体(1)を共に接合するように構成された複数の浮体支持部(2)と、柱(3)の各々が主浮体(1)に接合された第1端部及び前記第1端部と反対側の第2端部を有する複数の柱(3)と、柱(3)の第2端部に接合され、少なくとも100平方メートルの表面を有する支持被覆部(4)と、少なくとも1つのアンカー部材(5)と、主浮体(1)及び/又は複数の浮体支持部(2)をアンカー部材(5)と接合するように構成された係留構造体とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体平面を規定するように配置され、合計で少なくとも80立方メートルの水を移動するように構成された複数の主浮体(1)と、
複数の前記主浮体(1)を共に接合するように構成された複数の浮体支持部(2)と、
前記主浮体(1)の各々に配置された複数の柱(3)であって、前記柱(3)の各々が前記主浮体(1)に接合された第1端部及び前記第1端部と反対側の第2端部を有する複数の柱(3)と、
前記柱(3)の前記第2端部に接合され、少なくとも100平方メートルの表面を有する支持被覆部(4)と、
少なくとも1つのアンカー部材(5)と、
前記主浮体(1)及び/又は複数の前記浮体支持部(2)を前記アンカー部材(5)と接合するように構成された係留構造体と、
を備え、
最も離れた前記主浮体同士は、他方から少なくとも10メートルの距離を空けて位置し、
前記柱(3)の各々は、少なくとも5メートルである、
洋上太陽光発電パネルを設置するための浮体装置。
【請求項2】
船舶の接岸部材を更に備え、
前記船舶の接岸部材は、
接岸時に船舶の衝撃を受けるのに適した少なくとも2つの衝撃構造体(12)と、
前記衝撃構造体の平面とは異なる平面に位置する立ち入り階段(13)と、
を有する、
請求項1に記載の浮体装置。
【請求項3】
前記浮体支持部(2)は、前記主浮体(1)によって規定される前記浮体平面に収まり、
前記浮体支持部の各々と前記主浮体(1)との接合部は、前記浮体支持部の各々が前記浮体(1)に直交性及び斜めに取り付けられるように、等間隔に配置されている、
請求項1又は2に記載の浮体装置。
【請求項4】
前記柱(3)のうち一部は、前記浮体平面に対して垂直に配置されている、請求項1~3のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項5】
前記柱(3)のうち一部は、前記浮体平面に対して5度と60度との間の角度を形成するように配置されている、請求項4に記載の浮体装置。
【請求項6】
前記浮体平面に対して垂直な前記柱(3)の少なくとも1つと、前記浮体平面に対して5度と60度との間の角度を形成する前記柱(3)の少なくとも1つとは、前記浮体平面における基点部を共有する、請求項5に記載の浮体装置。
【請求項7】
前記主浮体(1)と、前記浮体支持部(2)と、前記柱(3)と、前記支持被覆部(4)とは、一体的に接合された基部を形成している、請求項1~6のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項8】
少なくとも10個の傾斜調整可能な構造体(7)を更に備え、
前記傾斜調整可能な構造体(7)の全部は、前記支持被覆部(4)に接合され、
前記傾斜調整可能な構造体(7)の各々は、太陽光発電パネルを受け、前記支持被覆部(4)に対する向きを調整するように構成されている、
請求項1~7のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項9】
前記浮体装置からエネルギーを受け取り、前記エネルギーを前記浮体装置の外部へ伝送するのに適した電流インバータ又は変圧部材(11)を更に備える、請求項1~8のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項10】
前記主浮体(1)は、互いに隔てられた複数の漏れのない区画を有する、請求項1~9のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項11】
前記係留構造体は、合成繊維ロープ又はチェーンの格子(10)を有し、
前記格子の各頂点は、副係留部材(8)によって前記主浮体(1)及び/又は前記浮体支持部(2)に接合され、
ロープ又はチェーンの前記格子は、前記浮体平面以外の面に位置し、
前記主浮体(1)及び/又は複数の前記浮体支持部(2)に対する前記副係留部材(8)の取付部は、亜鉛メッキのシャックル、ステンレス鋼のシャックル、又は旋回式のシャックルを有する、
請求項1~10のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項12】
前記格子の前記頂点のうち少なくとも2つは、浮きブイ(9)に接合されている、請求項11に記載の浮体装置。
【請求項13】
前記格子を前記アンカー部材(5)と接続する主係留部材(6)を更に備える、請求項12に記載の浮体装置。
【請求項14】
前記アンカー部材(5)は、錨又は重りを有する、請求項1~13のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項15】
前記主浮体(1)は、前記主係留部材(6)を受けるのに適し、且つ/又は牽引索に連結するのに適した少なくとも1つのアンカー部材を有する、請求項1~14のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項16】
複数の、請求項1~15のいずれか1つに記載の浮体装置と、
前記浮体装置の各々の前記支持被覆部(4)に連結された複数の太陽光発電パネルであって、各太陽光発電パネルが電流出力部を有する複数の太陽光発電パネルと、
少なくとも2つの浮体装置を互いに接合するように構成された横接合部材と、
を備える、
浮体式太陽光発電設備。
【請求項17】
各浮体装置は、少なくとも1つの電流出力部(14)を有し、
前記太陽光発電設備は、各浮体装置からの電流出力部を受ける電流総出力ケーブル(15)を備え、
前記電流総出力ケーブル(15)は、浮体部材(16)を有する、
請求項16に記載の浮体式太陽光発電設備。
【請求項18】
各浮体装置の電流出力部に接続された入力部と、前記電流総出力ケーブルに接続された出力部とを有するグローバルインバータ又は変圧部材を更に備える、請求項17に記載の浮体式太陽光発電設備。
【請求項19】
有義波高を検討することと、
請求項1~15のいずれか1つに記載の浮体装置を1つ以上設けることと、
複数の太陽光発電パネルを設けることと、
前記浮体装置の前記主浮体(1)又は前記浮体支持部(2)を、前記アンカー部材(5)によって水中に位置する設置場所に固定することと、
前記浮体装置の前記支持被覆部(4)に、複数の前記太陽光発電パネルを配置することと、
を技術的に可能な任意の順序で行うことを含み、
前記浮体平面と前記支持被覆部(4)との間の距離は、少なくとも有義波高と等しい、
複数の太陽光発電パネルの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に設置される再生可能エネルギーの分野に属する。より具体的には、本発明は、洋上太陽光発電パネルを設置するための浮体装置、並びに関連する設置方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの電気への変換は、費用対効果及び効率が更に増しつつある工程である。しかし、このような大規模な変換は、例えば農業用に使用可能な広い土地の占有を伴う。この問題の解決法として、近年、浮体式太陽光発電設備が開発されている。
【0003】
浮体式太陽光発電設備は、水面に浮いた太陽光発電システムによって、太陽エネルギーから電気を発生する。当該システムには、陸上の一般的なシステムと同じ太陽光発電パネルが装備されている。しかし、当該システムは、特殊な技術を用いて、内陸及び保護された水域(貯水池、ため池、人造湖、農業灌漑池、下水処理場の沈殿池等)と海水域(海及び海洋)との両方における安定性及び浮力をより確実にしている。
【0004】
浮体式太陽光発電システムには、陸上の太陽光発電システムと比較して、一連の利点を提供する。当該一連の利点とは、例えば、
外洋、港及びマリーナ用地(marina easements)、湖又は水力発電設備によって発電するための水域である、その他に役に立たない場所を使用すること、
当該浮体式太陽光発電システムが水に浮いており、有用な土壌を破壊しない(一般送電網への接続に使用される部分を除く)ので、土壌破壊が最小限であること、
太陽光への暴露が大きく影の影響を受けにくい水面への配置と、周囲の水の蒸発により生じ、太陽光線の入射によるパネルの加熱に抗う冷却効果とによって、高効率であること、
風によって巻き上げられて移動する粉塵の量が減少するので、必要とされる太陽光発電パネルの清掃頻度が少ないこと、及び陸上のシステムでは通常パネルの下に生える植物の刈り込みがほとんどないことにより、メンテナンスが低減されること、
主に鉄鋼及びアルミニウムであるリサイクル可能な素材を高い比率で使用することにより、持続可能性が良好であること、
及び設置前の整地作業が不要であるので、環境への影響が最小限であること(パネルは、設置場所に輸送され、岸で組み立てられ、水に入れられる)、
である。
【0005】
これに関連して、海上の浮体式太陽光発電設備は、外洋の条件がその設計にもたらす追加の課題のために、淡水に設置されるものよりもまだ初期段階にある。風、波、及び/又は海流の影響によって太陽光発電パネルが受ける高さ及び支持面の大きな変動、及びパネルを支持する構造に生じる応力によって、これらの浮体式システムの設計において、係留、錨泊、動的負荷への耐性は、より重要な要素となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既知の装置よりも流体力学的挙動が改善された新規な浮体装置によって、前述の不足に対する解決策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前項に記載された従来技術における問題を踏まえ、本発明の目的は、主に、洋上太陽光発電パネルを設置するための浮体装置、及び関連する設置方法及び使用に関するが、これに限定されない。
【0008】
特に規定されない限り、本文書で使用される全ての用語(科学用語と技術用語との両方)は、当業者がそれらの用語を解釈するように解釈されるものとする。したがって、一般的な用法の用語は、当業者がそれらの用語を解釈するように解釈されるべきであり、理想的に又は厳密に形式的な様式で解釈されるべきではないことが理解される。
【0009】
本文全体を通じて、「備える」(comprises)との用語は、排除的な様式に理解されてはならず、むしろ規定されるものが追加の部材又は工程を含んでもよい可能性を許容するという意味で理解されなければならない。
【0010】
発明の第1態様において、本発明は、洋上太陽光発電パネルを設置するための浮体装置に関する。当該装置は、浮体平面を規定するように配置され、合計で少なくとも80立方メートルの水を移動する(displace)ように構成された複数の主浮体と、複数の主浮体を共に接合するように構成された複数の浮体支持部と、主浮体の各々に配置された複数の柱であって、柱の各々が主浮体に接合された第1端部及び第1端部と反対側の第2端部を有する複数の柱と、柱の第2端部に接合され、少なくとも100平方メートルの表面を有する支持被覆部と、少なくとも1つのアンカー部材と、主浮体及び/又は複数の浮体支持部をアンカー部材と接合するように構成された係留構造体とを備える。最も離れた前記主浮体同士は、他方から少なくとも10メートルの距離を空けて位置する。柱の各々は、少なくとも5メートルである。
【0011】
これにより、本発明は、多数の太陽光発電パネルに耐え、当該太陽光発電パネルを海水位よりも上方の相当な高さに維持することのできる装置を提供する。柱の高さは、有義波高よりも大きいと規定され得る。これにより、多数の太陽光発電パネルを、洋上に安全な様式で設置することができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態において、浮体装置は、船舶の接岸部材を更に備える。船舶の接岸部材は、接岸時に船舶の衝撃を受けるのに適した少なくとも2つの衝撃構造体と、衝撃構造体の平面とは異なる平面に位置する立ち入り階段とを有する。
【0013】
この船舶の接岸部材によって、検査及び修理を簡単に行うことができる。太陽光発電パネルのための多数の支持部を備えた浮体装置の大きさを考慮すると、適切な船舶が危険なく浮体装置に接近できる方法を提供することが有利である。
【0014】
本発明の好適な実施形態において、浮体支持部は、主浮体によって規定される浮体平面に収まっている。浮体支持部の各々と主浮体との接合部は、浮体支持部の各々が浮体に直交性及び斜めに接合されるように、等間隔に配置されている。この構成は、水の動きに耐えるのに必要な剛性、すなわち、波による水平な動きと水位変動による縦の動きとの両方に耐えるのに必要な剛性を装置に提供する。
【0015】
本発明の他の好適な実施形態において、柱のうち一部は、浮体平面に対して垂直に、主浮体に配置されている。他の柱は、浮体平面に対して5度と60度との間の角度を形成するように配置されている。任意に、浮体平面に対して垂直な柱の少なくとも1つと、浮体平面に対して5度と60度との間の角度を形成する柱の少なくとも1つとは、浮体における浮体平面において、基点部を共有する。この構成により、前記柱に設置された支持被覆部に対する支持面が大きくなり、支持被覆部の安定性が向上する。
【0016】
本発明の他の好適な実施形態において、主浮体と、浮体支持部と、柱と、支持被覆部とは、一体的に接合された基部を形成している。この構成により、装置に当たる風、波、及び/又は海流の動きに対する耐性が向上するので、装置の流体力学的挙動が改善される。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態において、本発明の浮体装置は、少なくとも10個の傾斜調整可能な構造体を更に備える。傾斜調整可能な構造体の全部は、支持被覆部に接合されている。傾斜調整可能な構造体の各々は、太陽光発電パネルを受け、支持被覆部に対するその向きを調整するように構成されている。これにより、風、波、及び/又は海流の動きによって装置に作用する荷重は、主浮体、浮体支持部、柱、及び支持被覆部によって支えられる一方、調整可能な構造体によっては支えられない。調整可能な構造体により、太陽光発電パネルは、太陽に対して適切な向きとなり得る。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態において、浮体装置は、浮体装置からエネルギーを受け取り、当該エネルギーを浮体装置の外部へ伝送するのに適した電流インバータ又は変圧部材を更に備える。
【0019】
本発明の浮体装置に設置可能な太陽光発電パネルの数が多いため、太陽光発電パネルによって発生する全てのエネルギーを整然と出力することを提供することが適切である。各浮体部材に位置するインバータ又は変圧部材によって、発生した全てのエネルギーを適切に出力することができる。
【0020】
本発明の他の好適な実施形態において、主浮体は、互いに隔てられた複数の漏れのない区画を有する。これにより、一区画が損傷して当該区画に水が浸入した場合にも、残りの区画は、引き続き漏れがなく、動作の継続に必要な浮力を装置に与える。したがって、悪条件の洋上においても更に安定し且つ耐久性のある装置が実現される。
【0021】
本発明の他の好適な実施形態において、係留構造体は、合成繊維ロープ又はチェーンの格子を有する。前記格子の各頂点は、副係留部材によって主浮体及び/又は浮体支持部に接合されている。ロープ又はチェーンの格子は、浮体平面以外の面に位置する。主浮体及び/又は複数の浮体支持部に対する副係留部材の接合部は、亜鉛メッキのシャックル、ステンレス鋼のシャックル、又は旋回式のシャックルを有する。格子の頂点のうち少なくとも2つは、浮きブイに接合されていることが好ましい。これにより、格子に沿った荷重の最適な分布が実現され、安定性及び耐久性が向上し、浮体部材及びアンカー部材が最適に利用される。
【0022】
各装置のサイズが大きいため、本件に規定されるような適切な浮体構造、例えば、浮体平面よりも下方の平面に位置するチェーン又はロープの格子を備えることが有利である。当該構造は、複数の装置が互いに接続されている場合、異なる荷重を相殺する。当該構造は、浮きブイに接続され得る。
【0023】
本発明の他の好適な実施形態において、主浮体及び/又は複数の浮体支持部に対する主係留部材の接合部、アンカー部材に対する主係留部材の接合部、及び/又は主浮体及び/又は複数の浮体支持部に対する副係留部材の接合部は、亜鉛メッキのシャックル、ステンレス鋼のシャックル、又は旋回式のシャックルを有する。
【0024】
本発明の他の好適な実施形態において、アンカー部材は、錨又は例えばコンクリートブロックのような重りを有する。
【0025】
本発明の他の好適な実施形態において、主浮体は、主係留部材を受けるのに適し、且つ/又は牽引に連結するのに適した少なくとも1つのアンカー部材を有する。
【0026】
本発明の第2の目的は、浮体式太陽光発電設備に関する。当該浮体式太陽光発電設備は、複数の、本発明に係る上述の実施形態のいずれか1つに記載の浮体装置と、浮体装置の各々の支持被覆部に連結された複数の太陽光発電パネルであって、各太陽光発電パネルが電流出力部を有する複数の太陽光発電パネルと、少なくとも2つの浮体装置を互いに接合するように構成された横接合部材とを備える。
【0027】
各浮体装置は、少なくとも1つの電流出力部を有する。太陽光発電設備は、各浮体装置からの電流出力部を受ける電流総出力ケーブルを備える。前記電流総出力ケーブルは、浮体部材を有する。これにより、ケーブルは、自重によって張った状態になることがより確実になく、波が浮体装置に与える荷重の影響を受けにくくなっている。
【0028】
特定の実施形態において、浮体式太陽光発電設備は、各浮体装置の電流出力部に接続された入力部と、電流総出力ケーブルに接続された出力部とを有するグローバルインバータ又は変圧部材を更に備える。
【0029】
本発明の第3の目的は、複数の太陽光発電パネルの設置方法に関する。当該方法は、有義波高を検討することと、本発明に係る上述の実施形態のいずれか1つに記載の浮体装置を1つ以上設けることと、複数の太陽光発電パネルを設けることと、浮体装置の主浮体又は浮体支持部を、アンカー部材によって水中に位置する設置場所に固定することと、浮体装置の支持被覆部に、複数の太陽光発電パネルを配置することとを技術的に可能な任意の順序で行うことを含む。浮体平面と支持被覆部との間の距離は、少なくとも有義波高と等しい。
【0030】
しかし、ただし、本発明の装置及び太陽光発電設備は、海、海洋、港において太陽光発電パネルを設置するために特別に設計されていることに留意されたい。この理由のため、支持被覆部を波の力に影響されない十分な高さに設置できるように、有義波高が考慮される。しかし、本発明に係る発電設備は、貯水池、湖、灌漑用水路、又は池等の内水面での使用にも適する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
説明を完結させ、本発明をより理解しやすくするために、一連の図面が説明に追加されている。これらの図面は、説明の一部であり、本発明の特定の例を示している。当該図面は、範囲を限定するものとして解釈されてはならず、むしろ本発明の実施方法の単なる一例として解釈されなければならない。一連の図面は、以下の図面を含む。
【0032】
【
図1】
図1は、洋上太陽光発電パネルを設置するための本発明に係る浮体装置の特定の例を示す図であって、当該浮体装置が双胴船形式であるものを示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の浮体装置の支持被覆部の詳細を示す図である。
【
図3】
図3は、太陽光発電パネルが組み込まれた浮体装置の全体図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すような浮体装置を6基備える浮体式太陽光発電設備を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4の太陽光発電設備のケーブルの一つにおける浮体部材の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、洋上太陽光発電パネルを設置するための本発明に係る浮体装置の特定の例を示す図であって、当該浮体装置が双胴船形式であるものを示す図である。
【0034】
図には、双胴船形式に配置された2つの主浮体1が見られる。これら2つの主浮体1は、装置の残りの部分を安定して十分に浮かせるために必要な水の移動を担っている。
【0035】
これらの主浮体1は、複数の浮体支持部2によって接合されている。これらの浮体支持部2は、主浮体によって規定される平面に配置されている。当該平面は、浮体平面と呼ばれ、浮体装置が洋上に設置されたときの穏やかな状態における水位をほぼ反映することにより規定される。
【0036】
これらの浮体支持部2は、主浮体を、主浮体に対する直交方向と斜め方向との両方で共に接合している。浮体支持部2は、10メートルの長さを有する。当該長さは、2つの隣り合う浮体の間の距離である。斜めの支持部は、主浮体の更に離れた部分同士を接合するので、更に長い長さを有する。
【0037】
装置の基部の骨組み(主浮体1及びそれらを接合する支持部2)が一度明らかになると、浮体平面から突出した一連の柱も注目される。これらの柱3のうち一部は、浮体平面に対して垂直方向に突出している一方、他の柱3は、当該平面に対して30度又は45度の角度をなして突出している。これらの柱3は、支持被覆部4を設置するための複数の支持部分を形成する。支持被覆部4は、浮体平面と平行であり且つ浮体平面から6メートル上方の平面に配置されている。よって、支持被覆部4は、最も一般的な波に対してより確実に安全となり、装置を洋上に設置することができる。
【0038】
主浮体1、浮体支持部2、柱3、及び支持被覆部4によって形成されたシステムは、一体的に接合された基部を形成している。これにより、組立体の剛性が得られる。
【0039】
さらに、主浮体1は、互いに隔てられた複数の漏れのない区画を有する。これにより、一区画が損傷して当該区画に水が浸入した場合にも、残りの区画は、引き続き漏れがなく、動作の継続に必要な浮力を装置に与える。したがって、悪条件の洋上においても更に安定し且つ耐久性のある装置が実現される。
【0040】
図2は、支持被覆部の詳細を示す図である。
図2では、太陽光発電パネルを受ける構造体7の詳細が注目され得る。当該構造体7の各々は、傾斜の調整が可能である。構造体4が波によって生じる応力から生じる全ての機械的負荷に耐える一方、構造体7は、これらの要求を受けず、機械的な要件がより少ない状態で設計され得る。
【0041】
図3は、太陽光発電パネルが組み込まれた浮体装置の全体図である。
【0042】
第1に、浮体装置に位置する変圧器11が見られる。この変圧器11によって、太陽光発電パネルによって発生したエネルギーを適切に出力することができる。
【0043】
第2に、船舶の接岸を受けるのに適した部材が見られる。当該部材は、接岸時に船舶の衝撃を受けるために配置された2つの衝撃構造体12を用いている。さらに、接岸部材は、衝撃構造体の平面とは異なる平面に位置する立ち入り階段13も有する。これにより、人が浮体装置に立ち入ることができる。
【0044】
図4は、
図3に示すような浮体装置を6基備える浮体式太陽光発電設備を示す図である。これらの浮体装置の各々には、一連の太陽光発電パネルが設置されている(各柱に20枚のパネルを有する7つの柱が見られる)。各パネルは、
図2に示す構造体のうち1つに設置されている。
【0045】
装置の各主浮体1は、副ケーブル8によってケーブルの格子10に接合されている。ケーブルの格子10は、格子の各結節部に接続された一連のブイ9によって保持されている。これにより、組立体の全体に安定した浮力が得られる。
【0046】
システムを安定した位置に留めるために、錨又はコンクリートウェイト等の一連のアンカー部材5と、ケーブルの格子10をアンカー部材5と接合する主係留部材6とが存在する。これにより、ケーブルの格子10は、波の前後移動にも拘わらず安定した位置に留まる。
【0047】
この発電設備は、有義波高を選択して組み立てられる。当該波高は、発電設備の設置場所の特定の条件に依存する。有義波高が一度選択されると、前記の図に示すような一連の浮体装置が設けられる。当該浮体装置の支持被覆部は、浮体平面から少なくとも有義波高と同じ距離だけ離れて位置する。これにより、支持被覆部は、波の影響を常には受けないような十分な高さにより確実に留まる。
【0048】
支持被覆部の高さが一度選択されると、各浮体装置の主浮体は、アンカー部材5によって設置場所に固定される。
【0049】
最後に、一連の太陽光発電パネルが支持被覆部に設置される。傾斜を調整可能な構造体の各々に、1枚のパネルが設置される。
【0050】
図5は、
図4に示す発電設備を形成する浮体装置におけるエネルギー出力に関する詳細を示す図である。当該図には、各浮体装置が電流出力部14を備える態様、及び太陽光発電設備が電流総出力ケーブル15を備える態様が見られる。電流総出力ケーブル15は、各浮体装置からの電流出力部を受ける。当該図では、各装置の電流出力部と前記電流総出力ケーブルとの両方が浮体部材16を備える態様が見られる。これにより、海流の力によってケーブルが張った状態になることが妨げられる。
【符号の説明】
【0051】
本発明の技術的特徴の更なる理解を補助するために、前記図面は、一連の符号を含む。当該一連の符号について、以下の符号が例示的且つ非限定的な様式で示されている。
【0052】
1 主浮体
2 浮体支持部
3 柱
4 支持被覆部
5 アンカー部材
6 主係留部材
7 傾斜を調整可能な構造体
8 副係留部材
9 浮きブイ
10 横接合部材
11 変圧器
12 船舶を受ける部材
13 階段
14 電流出力部
15 総出力ケーブル
16 浮体部材
【手続補正書】
【提出日】2024-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体平面を規定するように配置され、合計で少なくとも80立方メートルの水を移動するように構成された複数の主浮体(1)と、
複数の前記主浮体(1)を共に接合するように構成された複数の浮体支持部(2)と、
前記主浮体(1)の各々に配置された複数の柱(3)であって、前記柱(3)の各々が前記主浮体(1)に接合された第1端部及び前記第1端部と反対側の第2端部を有する複数の柱(3)と、
前記柱(3)の前記第2端部に接合され、少なくとも100平方メートルの表面を有する支持被覆部(4)と、
少なくとも1つのアンカー部材(5)と、
前記主浮体(1)及び/又は複数の前記浮体支持部(2)を前記アンカー部材(5)と接合するように構成された係留構造体と、
を備え、
最も離れた前記主浮体同士は、他方から少なくとも10メートルの距離を空けて位置し、
前記柱(3)の各々は、少なくとも5メートルであ
り、
前記主浮体(1)は、互いに隔てられた複数の漏れのない区画を有する、
洋上太陽光発電パネルを設置するための浮体装置。
【請求項2】
船舶の接岸部材を更に備え、
前記船舶の接岸部材は、
接岸時に船舶の衝撃を受けるのに適した少なくとも2つの衝撃構造体(12)と、
前記衝撃構造体の平面とは異なる平面に位置する立ち入り階段(13)と、
を有する、
請求項1に記載の浮体装置。
【請求項3】
前記浮体支持部(2)は、前記主浮体(1)によって規定される前記浮体平面に収まり、
前記浮体支持部の各々と前記主浮体(1)との接合部は、前記浮体支持部の各々が前記浮体(1)に直交性及び斜めに取り付けられるように、等間隔に配置されている、
請求項1又は2に記載の浮体装置。
【請求項4】
前記柱(3)のうち一部は、前記浮体平面に対して垂直に配置されている、請求項1~3のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項5】
前記柱(3)のうち一部は、前記浮体平面に対して5度と60度との間の角度を形成するように配置されている、請求項4に記載の浮体装置。
【請求項6】
前記浮体平面に対して垂直な前記柱(3)の少なくとも1つと、前記浮体平面に対して5度と60度との間の角度を形成する前記柱(3)の少なくとも1つとは、前記浮体平面における基点部を共有する、請求項5に記載の浮体装置。
【請求項7】
前記主浮体(1)と、前記浮体支持部(2)と、前記柱(3)と、前記支持被覆部(4)とは、一体的に接合された基部を形成している、請求項1~6のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項8】
少なくとも10個の傾斜調整可能な構造体(7)を更に備え、
前記傾斜調整可能な構造体(7)の全部は、前記支持被覆部(4)に接合され、
前記傾斜調整可能な構造体(7)の各々は、太陽光発電パネルを受け、前記支持被覆部(4)に対する向きを調整するように構成されている、
請求項1~7のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項9】
前記浮体装置からエネルギーを受け取り、前記エネルギーを前記浮体装置の外部へ伝送するのに適した電流インバータ又は変圧部材(11)を更に備える、請求項1~8のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項10】
前記係留構造体は、合成繊維ロープ又はチェーンの格子(10)を有し、
前記格子の各頂点は、副係留部材(8)によって前記主浮体(1)及び/又は前記浮体支持部(2)に接合され、
ロープ又はチェーンの前記格子は、前記浮体平面以外の面に位置し、
前記主浮体(1)及び/又は複数の前記浮体支持部(2)に対する前記副係留部材(8)の取付部は、亜鉛メッキのシャックル、ステンレス鋼のシャックル、又は旋回式のシャックルを有する、
請求項1~
9のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項11】
前記格子の前記頂点のうち少なくとも2つは、浮きブイ(9)に接合されている、請求項
10に記載の浮体装置。
【請求項12】
前記格子を前記アンカー部材(5)と接続する主係留部材(6)を更に備える、請求項
11に記載の浮体装置。
【請求項13】
前記アンカー部材(5)は、錨又は重りを有する、請求項1~
12のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項14】
前記主浮体(1)は、前記主係留部材(6)を受けるのに適し、且つ/又は牽引索に連結するのに適した少なくとも1つのアンカー部材を有する、請求項1~
13のいずれか1つに記載の浮体装置。
【請求項15】
複数の、請求項1~
14のいずれか1つに記載の浮体装置と、
前記浮体装置の各々の前記支持被覆部(4)に連結された複数の太陽光発電パネルであって、各太陽光発電パネルが電流出力部を有する複数の太陽光発電パネルと、
少なくとも2つの浮体装置を互いに接合するように構成された横接合部材と、
を備える、
浮体式太陽光発電設備。
【請求項16】
各浮体装置は、少なくとも1つの電流出力部(14)を有し、
前記太陽光発電設備は、各浮体装置からの電流出力部を受ける電流総出力ケーブル(15)を備え、
前記電流総出力ケーブル(15)は、浮体部材(16)を有する、
請求項
15に記載の浮体式太陽光発電設備。
【請求項17】
各浮体装置の電流出力部に接続された入力部と、前記電流総出力ケーブルに接続された出力部とを有するグローバルインバータ又は変圧部材を更に備える、請求項
16に記載の浮体式太陽光発電設備。
【請求項18】
有義波高を検討することと、
請求項1~
14のいずれか1つに記載の浮体装置を1つ以上設けることと、
複数の太陽光発電パネルを設けることと、
前記浮体装置の前記主浮体(1)又は前記浮体支持部(2)を、前記アンカー部材(5)によって水中に位置する設置場所に固定することと、
前記浮体装置の前記支持被覆部(4)に、複数の前記太陽光発電パネルを配置することと、
を技術的に可能な任意の順序で行うことを含み、
前記浮体平面と前記支持被覆部(4)との間の距離は、少なくとも有義波高と等しい、
複数の太陽光発電パネルの設置方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に設置される再生可能エネルギーの分野に属する。より具体的には、本発明は、洋上太陽光発電パネルを設置するための浮体装置、並びに関連する設置方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの電気への変換は、費用対効果及び効率が更に増しつつある工程である。しかし、このような大規模な変換は、例えば農業用に使用可能な広い土地の占有を伴う。この問題の解決法として、近年、浮体式太陽光発電設備が開発されている。
【0003】
浮体式太陽光発電設備は、水面に浮いた太陽光発電システムによって、太陽エネルギーから電気を発生する。当該システムには、陸上の一般的なシステムと同じ太陽光発電パネルが装備されている。しかし、当該システムは、特殊な技術を用いて、内陸及び保護された水域(貯水池、ため池、人造湖、農業灌漑池、下水処理場の沈殿池等)と海水域(海及び海洋)との両方における安定性及び浮力をより確実にしている。
【0004】
浮体式太陽光発電システムには、陸上の太陽光発電システムと比較して、一連の利点を提供する。当該一連の利点とは、例えば、
外洋、港及びマリーナ用地(marina easements)、湖又は水力発電設備によって発電するための水域である、その他に役に立たない場所を使用すること、
当該浮体式太陽光発電システムが水に浮いており、有用な土壌を破壊しない(一般送電網への接続に使用される部分を除く)ので、土壌破壊が最小限であること、
太陽光への暴露が大きく影の影響を受けにくい水面への配置と、周囲の水の蒸発により生じ、太陽光線の入射によるパネルの加熱に抗う冷却効果とによって、高効率であること、
風によって巻き上げられて移動する粉塵の量が減少するので、必要とされる太陽光発電パネルの清掃頻度が少ないこと、及び陸上のシステムでは通常パネルの下に生える植物の刈り込みがほとんどないことにより、メンテナンスが低減されること、
主に鉄鋼及びアルミニウムであるリサイクル可能な素材を高い比率で使用することにより、持続可能性が良好であること、
及び設置前の整地作業が不要であるので、環境への影響が最小限であること(パネルは、設置場所に輸送され、岸で組み立てられ、水に入れられる)、
である。
【0005】
これに関連して、海上の浮体式太陽光発電設備は、外洋の条件がその設計にもたらす追加の課題のために、淡水に設置されるものよりもまだ初期段階にある。風、波、及び/又は海流の影響によって太陽光発電パネルが受ける高さ及び支持面の大きな変動、及びパネルを支持する構造に生じる応力によって、これらの浮体式システムの設計において、係留、錨泊、動的負荷への耐性は、より重要な要素となる。
【0006】
いくつかの文献には、洋上において太陽光発電パネルを支持するために使用される張力係留式浮体生産設備(TLPs: Tension Leg Platforms)が開示されている。
【0007】
中国実用新案第211893593号明細書には、太陽光発電パネルを支持するための半浸水装置(semi-submergible device)が開示されている。当該装置は、上部プレートに取り付けられて浸水した下部プレートを備える。上部プレートには、太陽光発電パネルが取り付けられる。下部プレートは、腱部(tendons)によって固定されている。
【0008】
韓国公開特許第20160017555号公報には、太陽光発電パネルを支持するための半浸水装置が開示されている。この場合、太陽光発電パネルが取り付けられるプレートは、中間部材に接続する交差した円材によって支持されている。
【0009】
韓国登録特許第102105173号公報には、同様の装置ではあるものの、水中における装置の深さを変更する補償機構を更に備えた装置が開示されている。当該補償機構は、プーリを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、既知の装置よりも流体力学的挙動が改善された新規な浮体装置によって、前述の不足に対する解決策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前項に記載された従来技術における問題を踏まえ、本発明の目的は、主に、洋上太陽光発電パネルを設置するための浮体装置、及び関連する設置方法及び使用に関するが、これに限定されない。
【0012】
特に規定されない限り、本文書で使用される全ての用語(科学用語と技術用語との両方)は、当業者がそれらの用語を解釈するように解釈されるものとする。したがって、一般的な用法の用語は、当業者がそれらの用語を解釈するように解釈されるべきであり、理想的に又は厳密に形式的な様式で解釈されるべきではないことが理解される。
【0013】
本文全体を通じて、「備える」(comprises)との用語は、排除的な様式に理解されてはならず、むしろ規定されるものが追加の部材又は工程を含んでもよい可能性を許容するという意味で理解されなければならない。
【0014】
発明の第1態様において、本発明は、洋上太陽光発電パネルを設置するための浮体装置に関する。当該装置は、浮体平面を規定するように配置され、合計で少なくとも80立方メートルの水を移動する(displace)ように構成された複数の主浮体と、複数の主浮体を共に接合するように構成された複数の浮体支持部と、主浮体の各々に配置された複数の柱であって、柱の各々が主浮体に接合された第1端部及び第1端部と反対側の第2端部を有する複数の柱と、柱の第2端部に接合され、少なくとも100平方メートルの表面を有する支持被覆部と、少なくとも1つのアンカー部材と、主浮体及び/又は複数の浮体支持部をアンカー部材と接合するように構成された係留構造体とを備える。最も離れた前記主浮体同士は、他方から少なくとも10メートルの距離を空けて位置する。柱の各々は、少なくとも5メートルである。
【0015】
これにより、本発明は、多数の太陽光発電パネルに耐え、当該太陽光発電パネルを海水位よりも上方の相当な高さに維持することのできる装置を提供する。柱の高さは、有義波高よりも大きいと規定され得る。これにより、多数の太陽光発電パネルを、洋上に安全な様式で設置することができる。
【0016】
本発明の好適な実施形態において、浮体装置は、船舶の接岸部材を更に備える。船舶の接岸部材は、接岸時に船舶の衝撃を受けるのに適した少なくとも2つの衝撃構造体と、衝撃構造体の平面とは異なる平面に位置する立ち入り階段とを有する。
【0017】
この船舶の接岸部材によって、検査及び修理を簡単に行うことができる。太陽光発電パネルのための多数の支持部を備えた浮体装置の大きさを考慮すると、適切な船舶が危険なく浮体装置に接近できる方法を提供することが有利である。
【0018】
本発明の好適な実施形態において、浮体支持部は、主浮体によって規定される浮体平面に収まっている。浮体支持部の各々と主浮体との接合部は、浮体支持部の各々が浮体に直交性及び斜めに接合されるように、等間隔に配置されている。この構成は、水の動きに耐えるのに必要な剛性、すなわち、波による水平な動きと水位変動による縦の動きとの両方に耐えるのに必要な剛性を装置に提供する。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態において、柱のうち一部は、浮体平面に対して垂直に、主浮体に配置されている。他の柱は、浮体平面に対して5度と60度との間の角度を形成するように配置されている。任意に、浮体平面に対して垂直な柱の少なくとも1つと、浮体平面に対して5度と60度との間の角度を形成する柱の少なくとも1つとは、浮体における浮体平面において、基点部を共有する。この構成により、前記柱に設置された支持被覆部に対する支持面が大きくなり、支持被覆部の安定性が向上する。
【0020】
本発明の他の好適な実施形態において、主浮体と、浮体支持部と、柱と、支持被覆部とは、一体的に接合された基部を形成している。この構成により、装置に当たる風、波、及び/又は海流の動きに対する耐性が向上するので、装置の流体力学的挙動が改善される。
【0021】
本発明の他の好適な実施形態において、本発明の浮体装置は、少なくとも10個の傾斜調整可能な構造体を更に備える。傾斜調整可能な構造体の全部は、支持被覆部に接合されている。傾斜調整可能な構造体の各々は、太陽光発電パネルを受け、支持被覆部に対するその向きを調整するように構成されている。これにより、風、波、及び/又は海流の動きによって装置に作用する荷重は、主浮体、浮体支持部、柱、及び支持被覆部によって支えられる一方、調整可能な構造体によっては支えられない。調整可能な構造体により、太陽光発電パネルは、太陽に対して適切な向きとなり得る。
【0022】
本発明の他の好適な実施形態において、浮体装置は、浮体装置からエネルギーを受け取り、当該エネルギーを浮体装置の外部へ伝送するのに適した電流インバータ又は変圧部材を更に備える。
【0023】
本発明の浮体装置に設置可能な太陽光発電パネルの数が多いため、太陽光発電パネルによって発生する全てのエネルギーを整然と出力することを提供することが適切である。各浮体部材に位置するインバータ又は変圧部材によって、発生した全てのエネルギーを適切に出力することができる。
【0024】
本発明の他の好適な実施形態において、主浮体は、互いに隔てられた複数の漏れのない区画を有する。これにより、一区画が損傷して当該区画に水が浸入した場合にも、残りの区画は、引き続き漏れがなく、動作の継続に必要な浮力を装置に与える。したがって、悪条件の洋上においても更に安定し且つ耐久性のある装置が実現される。
【0025】
本発明の他の好適な実施形態において、係留構造体は、合成繊維ロープ又はチェーンの格子を有する。前記格子の各頂点は、副係留部材によって主浮体及び/又は浮体支持部に接合されている。ロープ又はチェーンの格子は、浮体平面以外の面に位置する。主浮体及び/又は複数の浮体支持部に対する副係留部材の接合部は、亜鉛メッキのシャックル、ステンレス鋼のシャックル、又は旋回式のシャックルを有する。格子の頂点のうち少なくとも2つは、浮きブイに接合されていることが好ましい。これにより、格子に沿った荷重の最適な分布が実現され、安定性及び耐久性が向上し、浮体部材及びアンカー部材が最適に利用される。
【0026】
各装置のサイズが大きいため、本件に規定されるような適切な浮体構造、例えば、浮体平面よりも下方の平面に位置するチェーン又はロープの格子を備えることが有利である。当該構造は、複数の装置が互いに接続されている場合、異なる荷重を相殺する。当該構造は、浮きブイに接続され得る。
【0027】
本発明の他の好適な実施形態において、主浮体及び/又は複数の浮体支持部に対する主係留部材の接合部、アンカー部材に対する主係留部材の接合部、及び/又は主浮体及び/又は複数の浮体支持部に対する副係留部材の接合部は、亜鉛メッキのシャックル、ステンレス鋼のシャックル、又は旋回式のシャックルを有する。
【0028】
本発明の他の好適な実施形態において、アンカー部材は、錨又は例えばコンクリートブロックのような重りを有する。
【0029】
本発明の他の好適な実施形態において、主浮体は、主係留部材を受けるのに適し、且つ/又は牽引に連結するのに適した少なくとも1つのアンカー部材を有する。
【0030】
本発明の第2の目的は、浮体式太陽光発電設備に関する。当該浮体式太陽光発電設備は、複数の、本発明に係る上述の実施形態のいずれか1つに記載の浮体装置と、浮体装置の各々の支持被覆部に連結された複数の太陽光発電パネルであって、各太陽光発電パネルが電流出力部を有する複数の太陽光発電パネルと、少なくとも2つの浮体装置を互いに接合するように構成された横接合部材とを備える。
【0031】
各浮体装置は、少なくとも1つの電流出力部を有する。太陽光発電設備は、各浮体装置からの電流出力部を受ける電流総出力ケーブルを備える。前記電流総出力ケーブルは、浮体部材を有する。これにより、ケーブルは、自重によって張った状態になることがより確実になく、波が浮体装置に与える荷重の影響を受けにくくなっている。
【0032】
特定の実施形態において、浮体式太陽光発電設備は、各浮体装置の電流出力部に接続された入力部と、電流総出力ケーブルに接続された出力部とを有するグローバルインバータ又は変圧部材を更に備える。
【0033】
本発明の第3の目的は、複数の太陽光発電パネルの設置方法に関する。当該方法は、有義波高を検討することと、本発明に係る上述の実施形態のいずれか1つに記載の浮体装置を1つ以上設けることと、複数の太陽光発電パネルを設けることと、浮体装置の主浮体又は浮体支持部を、アンカー部材によって水中に位置する設置場所に固定することと、浮体装置の支持被覆部に、複数の太陽光発電パネルを配置することとを技術的に可能な任意の順序で行うことを含む。浮体平面と支持被覆部との間の距離は、少なくとも有義波高と等しい。
【0034】
しかし、ただし、本発明の装置及び太陽光発電設備は、海、海洋、港において太陽光発電パネルを設置するために特別に設計されていることに留意されたい。この理由のため、支持被覆部を波の力に影響されない十分な高さに設置できるように、有義波高が考慮される。しかし、本発明に係る発電設備は、貯水池、湖、灌漑用水路、又は池等の内水面での使用にも適する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
説明を完結させ、本発明をより理解しやすくするために、一連の図面が説明に追加されている。これらの図面は、説明の一部であり、本発明の特定の例を示している。当該図面は、範囲を限定するものとして解釈されてはならず、むしろ本発明の実施方法の単なる一例として解釈されなければならない。一連の図面は、以下の図面を含む。
【0036】
【
図1】
図1は、洋上太陽光発電パネルを設置するための本発明に係る浮体装置の特定の例を示す図であって、当該浮体装置が双胴船形式であるものを示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の浮体装置の支持被覆部の詳細を示す図である。
【
図3】
図3は、太陽光発電パネルが組み込まれた浮体装置の全体図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すような浮体装置を6基備える浮体式太陽光発電設備を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4の太陽光発電設備のケーブルの一つにおける浮体部材の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、洋上太陽光発電パネルを設置するための本発明に係る浮体装置の特定の例を示す図であって、当該浮体装置が双胴船形式であるものを示す図である。
【0038】
図には、双胴船形式に配置された2つの主浮体1が見られる。これら2つの主浮体1は、装置の残りの部分を安定して十分に浮かせるために必要な水の移動を担っている。
【0039】
これらの主浮体1は、複数の浮体支持部2によって接合されている。これらの浮体支持部2は、主浮体によって規定される平面に配置されている。当該平面は、浮体平面と呼ばれ、浮体装置が洋上に設置されたときの穏やかな状態における水位をほぼ反映することにより規定される。
【0040】
これらの浮体支持部2は、主浮体を、主浮体に対する直交方向と斜め方向との両方で共に接合している。浮体支持部2は、10メートルの長さを有する。当該長さは、2つの隣り合う浮体の間の距離である。斜めの支持部は、主浮体の更に離れた部分同士を接合するので、更に長い長さを有する。
【0041】
装置の基部の骨組み(主浮体1及びそれらを接合する支持部2)が一度明らかになると、浮体平面から突出した一連の柱も注目される。これらの柱3のうち一部は、浮体平面に対して垂直方向に突出している一方、他の柱3は、当該平面に対して30度又は45度の角度をなして突出している。これらの柱3は、支持被覆部4を設置するための複数の支持部分を形成する。支持被覆部4は、浮体平面と平行であり且つ浮体平面から6メートル上方の平面に配置されている。よって、支持被覆部4は、最も一般的な波に対してより確実に安全となり、装置を洋上に設置することができる。
【0042】
主浮体1、浮体支持部2、柱3、及び支持被覆部4によって形成されたシステムは、一体的に接合された基部を形成している。これにより、組立体の剛性が得られる。
【0043】
さらに、主浮体1は、互いに隔てられた複数の漏れのない区画を有する。これにより、一区画が損傷して当該区画に水が浸入した場合にも、残りの区画は、引き続き漏れがなく、動作の継続に必要な浮力を装置に与える。したがって、悪条件の洋上においても更に安定し且つ耐久性のある装置が実現される。
【0044】
図2は、支持被覆部の詳細を示す図である。
図2では、太陽光発電パネルを受ける構造体7の詳細が注目され得る。当該構造体7の各々は、傾斜の調整が可能である。構造体4が波によって生じる応力から生じる全ての機械的負荷に耐える一方、構造体7は、これらの要求を受けず、機械的な要件がより少ない状態で設計され得る。
【0045】
図3は、太陽光発電パネルが組み込まれた浮体装置の全体図である。
【0046】
第1に、浮体装置に位置する変圧器11が見られる。この変圧器11によって、太陽光発電パネルによって発生したエネルギーを適切に出力することができる。
【0047】
第2に、船舶の接岸を受けるのに適した部材が見られる。当該部材は、接岸時に船舶の衝撃を受けるために配置された2つの衝撃構造体12を用いている。さらに、接岸部材は、衝撃構造体の平面とは異なる平面に位置する立ち入り階段13も有する。これにより、人が浮体装置に立ち入ることができる。
【0048】
図4は、
図3に示すような浮体装置を6基備える浮体式太陽光発電設備を示す図である。これらの浮体装置の各々には、一連の太陽光発電パネルが設置されている(各柱に20枚のパネルを有する7つの柱が見られる)。各パネルは、
図2に示す構造体のうち1つに設置されている。
【0049】
装置の各主浮体1は、副ケーブル8によってケーブルの格子10に接合されている。ケーブルの格子10は、格子の各結節部に接続された一連のブイ9によって保持されている。これにより、組立体の全体に安定した浮力が得られる。
【0050】
システムを安定した位置に留めるために、錨又はコンクリートウェイト等の一連のアンカー部材5と、ケーブルの格子10をアンカー部材5と接合する主係留部材6とが存在する。これにより、ケーブルの格子10は、波の前後移動にも拘わらず安定した位置に留まる。
【0051】
この発電設備は、有義波高を選択して組み立てられる。当該波高は、発電設備の設置場所の特定の条件に依存する。有義波高が一度選択されると、前記の図に示すような一連の浮体装置が設けられる。当該浮体装置の支持被覆部は、浮体平面から少なくとも有義波高と同じ距離だけ離れて位置する。これにより、支持被覆部は、波の影響を常には受けないような十分な高さにより確実に留まる。
【0052】
支持被覆部の高さが一度選択されると、各浮体装置の主浮体は、アンカー部材5によって設置場所に固定される。
【0053】
最後に、一連の太陽光発電パネルが支持被覆部に設置される。傾斜を調整可能な構造体の各々に、1枚のパネルが設置される。
【0054】
図5は、
図4に示す発電設備を形成する浮体装置におけるエネルギー出力に関する詳細を示す図である。当該図には、各浮体装置が電流出力部14を備える態様、及び太陽光発電設備が電流総出力ケーブル15を備える態様が見られる。電流総出力ケーブル15は、各浮体装置からの電流出力部を受ける。当該図では、各装置の電流出力部と前記電流総出力ケーブルとの両方が浮体部材16を備える態様が見られる。これにより、海流の力によってケーブルが張った状態になることが妨げられる。
【符号の説明】
【0055】
本発明の技術的特徴の更なる理解を補助するために、前記図面は、一連の符号を含む。当該一連の符号について、以下の符号が例示的且つ非限定的な様式で示されている。
【0056】
1 主浮体
2 浮体支持部
3 柱
4 支持被覆部
5 アンカー部材
6 主係留部材
7 傾斜を調整可能な構造体
8 副係留部材
9 浮きブイ
10 横接合部材
11 変圧器
12 船舶を受ける部材
13 階段
14 電流出力部
15 総出力ケーブル
16 浮体部材
【国際調査報告】