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特表2024-539969バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20241024BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20241024BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241024BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20241024BHJP
   H01M 8/04992 20160101ALI20241024BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R31/389
H01M8/04 Z
H01M8/04537
H01M8/04992
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524705
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2022078527
(87)【国際公開番号】W WO2023072611
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111243951.8
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グオジェン ズー
(72)【発明者】
【氏名】ペン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】リャン ユー
(72)【発明者】
【氏名】シャオユン ヅァン
(72)【発明者】
【氏名】シューダン リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンビン タオ
【テーマコード(参考)】
2G028
2G216
5H127
【Fターム(参考)】
2G028BE04
2G028CG08
2G028DH04
2G216BA56
5H127AB04
5H127AC05
5H127AC07
5H127AC13
5H127DB53
5H127DB63
5H127DB68
(57)【要約】
本発明は、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法に関する。バッテリは、DC-DCコンバータを介して電力を出力する。制御方法は、
DC-DCコンバータの導通モードが設定されるべきことを示す第1の信号を送信することであって、導通モードは、不連続導通モード又は臨界導通モードを含む、ことと、バッテリの出力端で電流測定値及び電圧測定値を受信することと、受信された電流測定値及び受信された電圧測定値に基づいて、バッテリのインピーダンススペクトルを計算することと、を含む。本発明は、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御装置及びシステム、コンピュータ可読記憶媒体、コンピュータプログラム製品、車両電子制御ユニット、並びに、車両に更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC-DCコンバータを介して電力を出力するバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法であって、前記制御方法は、
前記DC-DCコンバータの導通モードが設定されるべきことを示す第1の信号を送信することであって、前記導通モードは、不連続導通モード又は臨界導通モードを含む、ことと、
前記バッテリの出力端で電流測定値及び電圧測定値を受信することと、
受信された前記電流測定値及び受信された前記電圧測定値に基づいて、前記バッテリのインピーダンススペクトルを計算することと、
を含むことを特徴とする、制御方法。
【請求項2】
前記導通モードは、連続導通モードを更に含み、
前記バッテリ、前記DC-DCコンバータ、及び、前記バッテリの負荷のうちの少なくとも1つが所定の基準を満たす場合、前記第1の信号は、前記DC-DCコンバータが前記不連続導通モード又は前記臨界導通モードに設定されるべきことを示し、
そうでない場合、前記第1の信号は、前記DC-DCコンバータが前記連続導通モードに設定されるべきことを示す、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
異なる導通モードで計算された前記インピーダンススペクトルを融合すること
を更に含む、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記所定の基準は、
前記バッテリの前記負荷の電流が所定の閾値未満であること、及び/又は、
前記バッテリがパージフェーズにあること
を含む、請求項2に記載の制御方法。
【請求項5】
前記DC-DCコンバータが前記臨界導通モードに設定される場合、前記制御方法は、
前記DC-DCコンバータのスイッチング周波数が変化するように、前記バッテリの前記負荷を変化させるべきことを示す第2の信号を送信することと、
異なるスイッチング周波数において前記バッテリの前記出力端で前記電流測定値及び前記電圧測定値を受信することと、
前記異なるスイッチング周波数において受信された前記電流測定値及び受信された前記電圧測定値に基づき、前記異なるスイッチング周波数における前記バッテリのインピーダンススペクトルを計算することと、
を更に含む、請求項1に記載の制御方法。
【請求項6】
前記異なるスイッチング周波数における前記計算されたインピーダンススペクトルを融合すること、
を更に含む、請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御装置であって、
前記制御装置は、
メモリと、
プロセッサと、
前記メモリに格納され、前記プロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラムと、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、前記プロセッサによって実行されるときに、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法における前記ステップを実施する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御装置を備えることによって特徴づけられる、車両電子制御ユニット。
【請求項9】
その上に格納されたコンピュータプログラムを有するコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されるときに、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法における前記ステップを実施する、
ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、
前記コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されるときに、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法における前記ステップを実施する、
ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
バッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステムであって、
前記バッテリの出力電力を変換し、前記変換された電力を負荷に伝達するように構成されたDC-DC変換装置であって、前記DC-DC変換装置の導通モードが、不連続導通モード又は臨界導通モードを含む、DC-DC変換装置と、
前記バッテリの出力電流値及び出力電圧値を測定するように構成された測定装置と、
測定された前記出力電流値及び測定された前記出力電圧値に基づいて、前記バッテリのインピーダンススペクトルを計算する計算装置と、
を備えることによって特徴づけられるシステム。
【請求項12】
前記DC-DC変換装置の前記導通モードは、連続導通モードを更に含み、
前記システムは、
前記バッテリ、前記DC-DC変換装置及び前記負荷のうちの少なくとも1つが所定の基準を満たす場合、前記DC-DC変換装置を前記不連続導通モード又は前記臨界導通モードに切り替え、そうでない場合、前記DC-DC変換装置を前記連続導通モードに切り替えるように構成された切替装置
を更に備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記計算装置は、異なる導通モードで計算された前記インピーダンススペクトルを融合するように更に構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記所定の基準は、
前記負荷の電流が所定の閾値未満であること、及び/又は、
前記バッテリがパージフェーズにあること
を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
送信装置を更に備え、
前記送信装置は、前記DC-DC変換装置が前記臨界導通モードに設定されている場合に第2の信号を送信するように構成され、前記第2の信号は、前記DC-DC変換装置のスイッチング周波数が変化するように、前記負荷を変化させるべきことを示し、
前記測定装置は、異なるスイッチング周波数において前記バッテリの前記出力電流値及び前記出力電圧値を測定するように更に構成され、
前記計算装置は、測定された前記出力電流値及び測定された前記出力電圧値に基づき、前記異なるスイッチング周波数における前記バッテリの前記インピーダンススペクトルを計算するように更に構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記計算装置は、前記異なるスイッチング周波数における前記計算されたインピーダンススペクトルを融合するように更に構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記バッテリ及び/又は前記負荷を更に備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
請求項11乃至17のいずれか一項に記載の、バッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステムを搭載することを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの分野に関し、特に、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法及び装置、車両電子制御ユニット、コンピュータ可読記憶媒体、コンピュータプログラム製品、バッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステム、並びに、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学インピーダンススペクトル測定においては、交流外乱又は交流電圧外乱を電気化学系に印加し、交流信号に対する交流電圧信号の比を測定することにより、周波数の関数としての、電気化学系のインピーダンス(インピーダンスの振幅値やインピーダンスの位相角などのパラメータ)を計算する。
【0003】
燃料電池の継続的な開発に伴い、燃料電池の電気化学インピーダンススペクトル測定にますます注目が集まっている。燃料電池の電気化学インピーダンススペクトルを測定することによって、燃料電池の動作状態に関する多くの詳細を反映することができる。
【0004】
現在、燃料電池のインピーダンススペクトル特性は、実験室において測定することができるが、実験室におけるこのような測定方法は、特定の測定装置の準備及び特定の試験プラットフォームの構築を必要とし、これは高価であり、燃料電池のオンラインインピーダンス特性を反映することができない。
【0005】
加えて、バッテリのインピーダンススペクトル測定は、外乱をバッテリに注入するようにバッテリの出力端における電力電子装置を制御することによって実施されることがある。しかしながら、この解決策により測定を行うことができる最高周波数は、非常に限られている。更に、システム電流が小さいとき(すなわち、低電流条件において)、外乱電流は、バッテリによって電力電子装置に出力される電流が負になることを可能にする場合があり、すなわち、電流逆流現象が発生し、これは、バッテリには、しばしば耐え得るものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法が提供される。バッテリは、DC-DCコンバータを介して電力を出力する。本制御方法は、DC-DCコンバータの導通モードが設定されるべきことを示す第1の信号を送信することであって、導通モードは、不連続導通モード又は臨界導通モードを含む、ことと、バッテリの出力端で電流測定値及び電圧測定値を受信することと、受信された電流測定値及び受信された電圧測定値に基づいて、バッテリのインピーダンススペクトルを計算することと、を含む。
【0007】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態による制御方法においては、導通モードは、連続導通モードを更に含む。バッテリ、DC-DCコンバータ、及び、バッテリの負荷のうちの少なくとも1つが所定の基準を満たす場合、第1の信号が、DC-DCコンバータが不連続導通モード又は臨界導通モードに設定されるべきことを示し、そうでない場合、第1の信号が、DC-DCコンバータが連続導通モードに設定されるべきことを示す。
【0008】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態による制御方法は、異なる導通モードで計算されたインピーダンススペクトルを融合することを更に含む。
【0009】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態による制御方法においては、所定の基準は、バッテリの負荷の電流が所定の閾値未満であること、及び/又は、バッテリがパージフェーズにあることを含む。
【0010】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態による制御方法においては、DC-DCコンバータが臨界導通モードに設定される場合、本制御方法は、DC-DCコンバータのスイッチング周波数が変化するように、バッテリの負荷を変化させるべきことを示す第2の信号を送信することと、異なるスイッチング周波数においてバッテリの出力端で電流測定値及び電圧測定値を受信することと、異なるスイッチング周波数における受信された電流測定値及び受信された電圧測定値に基づき、異なるスイッチング周波数におけるバッテリのインピーダンススペクトルを計算することと、を更に含む。
【0011】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態による制御方法は、異なるスイッチング周波数における計算されたインピーダンススペクトルを融合することを更に含む。
【0012】
本発明の他の態様によれば、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御装置が提供される。制御装置は、メモリと、プロセッサと、メモリに格納され、プロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラムと、を備える。コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されるときに、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための上記制御方法におけるステップを実施するためのものである。
【0013】
本発明の他の態様によれば、車両電子制御ユニットが提供される。車両電子制御ユニットは、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための上記制御装置を備える。
【0014】
本発明の他の態様によれば、コンピュータ可読記憶媒体が提供される。コンピュータ可読記憶媒体は、その上に格納されたコンピュータプログラムを有する。コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されるときに、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための上記制御方法におけるステップを実施するためのものである。
【0015】
本発明の他の態様によれば、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されるときに、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための上記制御方法におけるステップを実施するためのものである。
【0016】
本発明の他の態様によれば、バッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステムが提供される。インピーダンススペクトル測定のためのシステムは、バッテリの出力電力を変換し、変換された電力を負荷に伝達するように構成されたDC-DC変換装置であって、DC-DC変換装置の導通モードが不連続導通モード又は臨界導通モードを含む、DC-DC変換装置と、バッテリの出力電流値及び出力電圧値を測定するように構成された測定装置と、測定された出力電流値及び測定された出力電圧値に基づいて、バッテリのインピーダンススペクトルを計算する計算装置と、を備える。
【0017】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態によるシステムにおいては、DC-DC変換装置の導通モードは、連続導通モードを更に含む。インピーダンススペクトル測定のためのシステムは、バッテリ、DC-DC変換装置及び負荷のうちの少なくとも1つが所定の基準を満たす場合、DC-DC変換装置を不連続導通モード又は臨界導通モードに切り替え、そうでない場合、DC-DC変換装置を連続導通モードに切り替えるように構成された切替装置を更に含む。
【0018】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態によるシステムにおいては、計算装置が、異なる導通モードで計算されたインピーダンススペクトルを融合するように更に構成されている。
【0019】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態によるインピーダンススペクトル測定のためのシステムにおいては、所定の基準が、負荷の電流が所定の閾値未満であること、及び/又は、バッテリがパージフェーズにあることを含む。
【0020】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態によるシステムは、送信装置を更に含む。送信装置は、DC-DC変換装置が臨界導通モードに設定されている場合に第2の信号を送信するように構成され、第2の信号は、DC-DC変換装置のスイッチング周波数が変化するように、負荷を変化させるべきことを示す。測定装置が、異なるスイッチング周波数においてバッテリの出力電流値及び出力電圧値を測定するように更に構成されている。計算装置は、測定された出力電流値及び測定された出力電圧値に基づき、異なるスイッチング周波数におけるバッテリのインピーダンススペクトルを計算するように更に構成されている。
【0021】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態によるシステムにおいては、計算装置は、異なるスイッチング周波数における計算されたインピーダンススペクトルを融合するように更に構成されている。
【0022】
上記の解決策の代替又は追加として、本発明の実施形態によるシステムは、バッテリ及び/又は負荷を更に含む。
【0023】
本発明の更なる態様によれば、車両が提供される。車両は、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための上記システムを装備する。
【0024】
本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御の解決策においては、DC-DCコンバータの導通モードを設定することによって、DC-DCコンバータの固有リップルを使用して、低電流条件でバッテリのインピーダンススペクトルを測定することが可能であり、それによって、測定プロセスにおいてDC-DCコンバータからバッテリへの電流逆流の問題を回避する。制御の解決策は、付加的な高調波電源をバッテリ又はDC-DCコンバータに追加する必要も、高調波外乱を生成するためにDC-DCコンバータを追加的に制御する必要もない。制御の解決策は、操作が簡単であり、実施が容易であり、高周波数におけるバッテリの電気化学インピーダンス値を測定することができる。
【0025】
更に、本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御の解決策においては、DC-DCコンバータの導通モードは、バッテリ、DC-DCコンバータ及び負荷の実際の動作状態に基づいて柔軟に切り替えられて、電流反転を回避することを前提として、システムに対する測定によって引き起こされる外乱を可能な限り低減することができる。更に、本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御の解決策において、測定周波数の範囲は、より多くの周波数範囲におけるバッテリの電気化学インピーダンス情報を取得するために、臨界導通モードにおける負荷を変更することによって変更され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の上記及び他の目的及び利点は、同一又は類似の要素が同一の参照符号によって示される添付の図面と併せて以下の詳細な説明から、より完全かつ明確になるであろう。
図1】一実施形態に係る単一燃料電池の膜電極コンポーネント1000の概略図である。
図2図1に示される燃料電池の膜電極コンポーネント1000の等価回路2000の概略図である。
図3】ある状態における図2の等価回路2000のインピーダンススペクトル3000をナイキストプロットの形態で示した図である。
図4】インピーダンススペクトルが測定される必要があるバッテリの動作環境を示す図である。
図5】本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法5000のフローチャートである。
図6】本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法におけるバッテリの出力端の電流値を示す図である。
図7】本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御装置7000のブロック図である。
図8】本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステム8000の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、本発明の様々な例示的な実施形態によるモータ巻線を形成するための技術的解決策が、添付の図面を参照して以下において詳細に説明される。本明細書において説明される特定の実施形態は、本発明を説明するために使用されるにすぎず、本発明を限定するために使用されるものではないことが理解されるであろう。
【0028】
本発明の文脈において、「第1」及び「第2」などの用語は、類似の対象を区別するために使用され、時間、空間、大きさなどの順序を説明することは意図されていないことを理解されたい。更に、「含む/備える」、「有する」などの用語及び類似の表現は、別段に明確に言及しない限り、非排他的な包含を意味することが意図されている。
【0029】
本発明の文脈において、用語「車両」又は他の同様の用語は、乗用車(スポーツユーティリティ車、バス、トラックなどを含む)、様々な商用車などの一般的な自動車を含み、ハイブリッド車、電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車などを含む。ハイブリッド車は、ガソリンエンジンと電気モータとによって出力が与えられる車両など、2つ以上の出力源を有する車両である。
【0030】
図1は、実施形態に係る単一燃料電池の膜電極コンポーネント1000の概略図である。図1から、燃料電池が多層構造を有し、特定の固有インピーダンス特性(固有抵抗及び固有キャパシタンスなど)を有することがわかる。図2は、図1に示した燃料電池の等価回路2000を示している。図中、Rは、膜抵抗、Rは、アノード抵抗、Cは、アノード容量、Rは、カソード抵抗、Cは、カソード容量、Zは、ガス移動阻害等価インピーダンスである。当業者は、等価回路における上記パラメータが、燃料電池の動作状態、健康状態、周波数などによって変化し得ることを容易に理解することができる。一例として、図3は、ある状態における周波数の関数としての図2の等価回路のインピーダンスの変化特性、すなわち、インピーダンススペクトル3000をナイキストプロットの形態で示したものである。
【0031】
バッテリの出力端にあるDC-DCコンバータの固有リップルを外乱電流として用いてバッテリのインピーダンススペクトルを測定する測定方法がある。このような測定方法においては、通常、DC-DCコンバータは連続導通モードに設定される。これは、DC-DCコンバータが、連続導通モードにおいて、より小さい高調波成分及びより低い高調波振幅値を有するからである。
【0032】
しかしながら、このような測定方法には、いくつかの欠点があることが分かった。例えば、システムが低電流状態にある場合、上記の測定方法を実施することは困難である。これは、システムの直流電流が小さい場合、連続導通モードで動作するDC-DCコンバータの固有のリップルによって引き起こされる交流外乱によって、全システム電流が負になることを可能にする、すなわち、電流がDC-DCコンバータから燃料電池に逆流することを可能にする場合があるためである。これは、燃料電池には、しばしば耐え得るものではない。このため、本発明は、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための改善された解決策を提案する。
【0033】
図4は、インピーダンススペクトルが測定される必要があるバッテリの動作環境を示している。図4に示すように、バッテリ410の出力電力は、DC-DCコンバータ420を介して負荷430に伝達される。DC-DCコンバータ420は、バッテリ410が出力する直流電力を交流電力に変換した後、負荷430の必要に応じて交流電力を直流電力に変換する。例えば、DC-DCコンバータ420は、(図4に示すように)出力電流基準値irefに基づいて、バッテリ410から受領した電力を変換する。
【0034】
図5は、本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法5000のフローチャートである。バッテリ410の電気化学インピーダンススペクトルを測定するために制御方法5000を使用する特定のステップは、図4及び図5を参照して以下に詳細に説明される。
【0035】
ステップS510においては、第1の信号が送信される。第1の信号は、DC-DCコンバータ420の導通モードが設定されるべきことを示す。導通モードは、不連続導通モード又は臨界導通モードであるものとしてもよい。
【0036】
ステップS520においては、ステップS510で不連続導通モード又は臨界導通モードに設定されたバッテリ410の出力端の電圧測定値VFC及び電流測定値iFCを受信する。電圧測定値VFC及び電流測定値iFCは、例えば、バッテリ410の出力端に設けられた電流トランス又は電圧トランスなどの測定装置によって得られる。
【0037】
ステップS530においては、ステップS520で受信した電流測定値iFC及び電圧測定値VFCに基づいて、バッテリのインピーダンススペクトルを計算する。具体的には、時間領域で測定された電流及び電圧の値は、時間-周波数変換(例えば、フーリエ変換(FT)、高速フーリエ変換(FFT)、又は、Z変換)によって周波数領域における電流及び電圧の値に変換されるものとしてもよく、次いで、異なる周波数におけるバッテリのインピーダンス値がそれぞれ計算されて、バッテリの電気化学インピーダンススペクトル(EIS)測定結果を形成する。
【0038】
したがって、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法5000は、電流逆流によって制限されることなく、低電流条件においてDC-DCコンバータの固有リップルを使用することによってバッテリのインピーダンススペクトル測定を実施する。これは、不連続導通モード及び臨界導通モードにおいてバッテリがDC-DCコンバータに出力する電流値が常に0より大きいためである。したがって、2つの導通モードで動作するDC-DCコンバータの固有のリップルを、バッテリのインピーダンススペクトル測定に対する外乱電流として使用することは、DC-DCコンバータからバッテリへの電流逆流の問題を引き起こさない。
【0039】
バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法5000は、任意の付加的な測定装置を追加することなく、又は、任意の追加の電圧及び電流を生成するようにDC-DCコンバータを制御することなく、様々なシナリオ、特にオンライン測定シナリオに柔軟に適用することができる。これにより、制御方法の操作が簡単になり、実施が容易になり、投資コストが低くなる。バッテリのインピーダンスを測定するために追加の外乱電流を生成するようにDC-DCコンバータを追加的に制御する解決策と比較して、制御方法5000は、より高い周波数においてインピーダンス値を測定することができる。
【0040】
任意選択的に、ステップS510において第1の信号によって示される導通モードは、連続導通モードを更に含む。バッテリ410、DC-DCコンバータ420及び負荷430の少なくとも1つが所定の基準を満たす場合、第1の信号は、DC-DCコンバータ420が不連続導通モード又は臨界導通モードに設定されるべきことを示す。バッテリ410、DC-DCコンバータ420及び負荷430のいずれも所定の基準を満たさない場合、第1の信号は、DC-DCコンバータ420が連続導通モードに設定されるべきことを示す。
【0041】
一例として、所定の基準は、負荷430が低電流状態にあること、例えば、負荷430の電流が所定の電流閾値未満であることであってもよい。この場合、バッテリ410の出力端における電流測定値iFCの波形例は、図6に示すようになる。時刻t乃至tにおいて、電流値iFCが比較的小さい場合(具体的には、所定の電流閾値未満)、第1の信号は、DC-DCコンバータ420が臨界導通モードに設定されるべきことを示す。一方、時刻t乃至tにおいて、電流値iFCが比較的大きい場合(具体的には、所定の電流閾値以上である場合)、第1の信号は、DC-DCコンバータ420が連続導通モードに設定されるべきことを示す。
【0042】
図6から分かるように、DC-DCコンバータが連続導通モードである場合(すなわち、時刻t乃至tにおいて)、電流iFCのリップル振幅値は比較的小さく、したがって、測定によって生成される損失及び外乱は比較的小さく、DC-DCコンバータが臨界導通モードである場合(すなわち、時刻t乃至tにおいて)、電流iFCのリップル振幅値は比較的大きいが、電流iFCは常に正の値に保たれ、したがって、バッテリへの電流逆流の問題は生じない。
【0043】
ここで、電流閾値は、0.2A、0.5A、1A、又は、システムが低電流状態にあることを示すことができる任意の他の電流値であるものとしてもよい。
【0044】
他の例として、所定の基準は、代替的に、システム全体が任意の他の適当な状態にあること、例えば、バッテリ410がパージフェーズにあることであってもよい。
【0045】
任意選択的に、異なる導通モードで計算されたバッテリ410のインピーダンススペクトルが融合される。例えば、異なる導通モードで計算されたバッテリのインピーダンススペクトルが周波数に関して重複しない場合、これらのインピーダンススペクトルは、1つのインピーダンススペクトルに直接結合される。異なる導通モードで計算されたバッテリのインピーダンススペクトルが周波数に関して重複するとき、スクリーニング、重み付け再結合、及び、他の操作が、重複する周波数におけるインピーダンスに対して実行され得る。したがって、複数のインピーダンススペクトルを融合することにより、より精度の高いバッテリのインピーダンススペクトル測定結果を得ることができる。
【0046】
したがって、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法5000において、DC-DCコンバータの導通モードは、バッテリのインピーダンススペクトル測定を実施するために適当な導通モードを選択するために、システムの実際の動作条件に従って柔軟に切り替えられ得る。例えば、図6に示されるように、DC-DCコンバータの導通モードは、バッテリの出力電流の値に基づいて柔軟に切り替えられ、その結果、制御方法5000は、バッテリへの電流逆流を回避することができるだけでなく、測定プロセスにおいて生成される外乱及び損失を最小化することもできる。
【0047】
一例として、ステップS510における第1の信号が、DC-DCコンバータ420の導通モードが臨界導通モードに設定されるべきことを示す場合、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法5000は、以下のステップを更に含むものとしてもよい。
【0048】
ステップS540(図示せず)においては、第2の信号を送信する。第2の信号は、DC-DCコンバータ420のスイッチング周波数が変化するように、負荷430が変化されることを示す。
【0049】
本発明の文脈において、「負荷を変化させる」とは、負荷430の様々なパラメータ、例えば、電力、電圧、電流、及び、DC-DCコンバータ420のスイッチング周波数を変更することができる任意の他のパラメータを変更することを意味するように意図されている。臨界導通モードにおいては、DC-DCコンバータ420のスイッチング周波数が負荷430に応じて変化し得るので、DC-DCコンバータ420の固有リップル周波数もそれに応じて変化し得、すなわち、バッテリ410の測定周波数もそれに応じて変化し得る。
【0050】
ステップS550(図示せず)において、異なるスイッチング周波数におけるバッテリの出力端の電圧測定値VFC及び電流測定値iFCを受信する。また、ステップS560(図示せず)において、異なるスイッチング周波数における受信した電圧測定値VFC及び受信した電流測定値iFCに基づいて、異なるスイッチング周波数におけるバッテリ410のインピーダンススペクトルをそれぞれ計算する。上記と同様に、異なるスイッチング周波数におけるバッテリのインピーダンススペクトルを融合することができる。
【0051】
したがって、DC-DCコンバータが臨界導通モードにあるとき、負荷を変化させることによってDC-DCコンバータのスイッチング周波数を変化させることができ、それにより、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法5000によってより豊富で正確なインピーダンススペクトル情報を取得することができるように、バッテリの測定周波数を変化させる。
【0052】
図7は、本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御装置7000のブロック図である。制御装置7000は、メモリ710とプロセッサ720とを含む。図7には示されていないが、制御装置7000は、前述の実施形態におけるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法のステップを実施するために、メモリ710上に記憶され、プロセッサ720上で実行可能なコンピュータプログラムを更に含む。
【0053】
メモリ710は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、電気的プログラマブル読取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EEPROM)、又は、光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、又は、機械実行可能命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを搬送若しくは記憶することが可能であり、プロセッサ720によってアクセスされ得る任意の他の媒体であり得る。プロセッサ720は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は、デジタル信号プロセッサ(DSP)など、任意の適当な専用又は汎用プロセッサであり得る。
【0054】
当業者は、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための上記制御装置7000が車両に組み込まれ得ることを容易に理解することができる。例えば、被試験バッテリは、車載バッテリであるものとしてもよく、DC-DCコンバータは、車載バッテリの高電圧直流電力を車両負荷が必要とする低電圧直流電力に変換するDC-DCコンバータである。制御装置7000は、バッテリのインピーダンススペクトル測定に使用される独立した制御装置であるものとしてもよく、又は、電子制御ユニット(ECU)若しくはドメイン制御ユニット(DCU)などの別の制御装置に統合されるものとしてもよい。
【0055】
加えて、当業者は、本発明の実施形態のうちの1つ又は複数において提供されるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法がコンピュータプログラムによって実施され得ることを容易に理解する。例えば、コンピュータプログラムを格納したコンピュータ記憶媒体(例えば、USBフラッシュドライブ)がコンピュータに接続された場合に、当該コンピュータプログラムを実行することにより、本発明の1つ又は複数の実施形態の制御方法を実行することができる。
【0056】
図8は、本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステム8000の概略図である。バッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステム8000は、DC-DC変換装置820と、測定装置840と、計算装置850とを含む。また、バッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステム8000は、被試験バッテリ810、負荷830などを更に含むものとしてもよい。
【0057】
DC-DC変換装置820は、バッテリ810の出力電力を変換し、変換された電力を負荷830に伝達するように構成される。DC-DC変換装置820の導通モードは、不連続導通モード、臨界導通モードなどを含む。測定装置840は、バッテリ810の出力電流値iFC及び出力電圧値VFCを測定し、測定された電流値iFC及び測定された電圧値VFCを計算装置850に送信するように構成される。測定装置840は、バッテリ810の出力ポートにおける電流値及び電圧値を測定することができる任意の測定装置、例えば、電圧トランス又は電流トランスを含む。計算装置850は、測定された出力電流値iFC及び測定された電圧値VFCに基づいてバッテリ810のインピーダンススペクトルを計算するように構成される。例えば、時間領域で測定された出力電流及び電圧の値は、時間-周波数変換(例えば、フーリエ変換(FT)、高速フーリエ変換(FFT)、又は、Z変換)によって周波数領域における電流及び電圧の値に変換されるものとしてもよく、次いで、異なる周波数におけるバッテリのインピーダンス値がそれぞれ計算されて、バッテリ810の電気化学インピーダンススペクトル測定結果を形成する。
【0058】
システム8000内のDC-DC変換装置820が不連続導通モード又は臨界導通モードに設定されるとき、DC-DC変換装置820の電流は常に正である。したがって、バッテリがDC-DC変換装置820に出力する電流は、低電流状態においてさえも負にならない。このようにして、バッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステム8000は、低電流条件においてDC-DC変換装置の固有リップルを使用してバッテリのインピーダンススペクトル測定を実施することができる。
【0059】
任意選択的に、システム8000は、切替装置860を更に含み、DC-DC変換装置820の導通モードは、連続導通モードを更に含む。切替装置860は、バッテリ810、DC-DC変換装置820及び負荷830のうちの1つ又は複数が所定の基準を満たす場合、DC-DC変換装置820を不連続導通モード又は臨界導通モードに切り替え、基準を満たさない場合、DC-DC変換装置820を連続導通モードに切り替えるように構成される。計算装置850は、異なる導通モードにおけるバッテリのインピーダンススペクトルを融合するように更に構成されるものとしてもよい。
【0060】
所定の基準は、例えば、負荷830の電流が所定の電流閾値未満であることであってもよい。例えば、負荷830の電流は、所定の電流閾値未満である。ここで、電流閾値は、0.2A、0.5A、1A、又は、システムが低電流状態にあることを示すことができる任意の他の電流値であるものとしてもよい。加えて、所定の基準は、代替として、システム全体が任意の他の好適な状態にあること、例えば、バッテリ810がパージフェーズにあることであってもよい。
【0061】
任意選択的に、システム8000は、送信装置870を更に含む。送信装置870は、DC-DC変換装置820が臨界導通モードにあるときに第2の信号を送信するように構成される。第2の信号は、DC-DC変換装置820のスイッチング周波数が変化するように、負荷が変化されることを示す。上述のように、「負荷を変化させる」とは、負荷830のパラメータ、例えば、電力、電圧、電流、及び、DC-DCコンバータ820のスイッチング周波数を変化させることができる負荷830の任意の他のパラメータを変化させることを意味することが意図される。臨界導通モードにおいては、DC-DCコンバータ820のスイッチング周波数が負荷830に応じて変化し得るので、DC-DCコンバータ820の固有リップル周波数もそれに応じて変化し得、すなわち、バッテリ810の測定周波数もそれに応じて変化し得る。
【0062】
これに関して、測定装置840は、異なるスイッチング周波数においてバッテリ810の出力電流値及び出力電圧値を測定するように更に構成されるものとしてもよい。計算装置850は、測定された出力電流値及び測定された出力電圧値に基づいて、異なるスイッチング周波数におけるバッテリ810のインピーダンススペクトルを計算するように更に構成され得る。更に、計算装置850は、異なるスイッチング周波数におけるインピーダンススペクトルを融合するように更に構成されるものとしてもよい。
【0063】
当業者は、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための上記システム8000が車両に組み込まれ得ることを容易に理解することができる。例えば、被試験バッテリは、車載バッテリであるものとしてもよく、DC-DC変換装置は、車載バッテリの高電圧直流電力を車両負荷が必要とする低電圧直流電力に変換するDC-DCコンバータであるものとしてもよい。システム8000は、バッテリと負荷との間に構成されたDC-DCコンバータの導通モードを切り替えることによって、低電流条件における車載バッテリの電気化学インピーダンススペクトルのオンライン試験を実施することができる。
【0064】
本発明の添付図面に示されるブロック図のいくつかは、機能的エンティティであり、必ずしも物理的又は論理的に独立したエンティティに対応しないことを理解されたい。これらの機能エンティティは、ソフトウェアの形態において、1つ又は複数のハードウェアモジュール又は集積回路において、又は、異なるネットワーク及び/又はプロセッサ装置及び/又はマイクロコントローラ装置において実施されるものとしてもよい。
【0065】
いくつかの代替実施形態においては、上記の方法に含まれる機能/ステップは、フローチャートに示された順序とは異なる順序で行われるものとしてもよいことも理解されたい。例えば、連続して示される2つの機能/ステップは、実質的に同時に実行されるものとしてもよく、又は、更には逆の順序で実行されるものとしてもよい。これは特に、関与する機能/ステップに依存する。
【0066】
結論として、本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御の解決策においては、DC-DCコンバータの導通モードを設定することによって、DC-DCコンバータの固有リップルを使用して、低電流条件でバッテリのインピーダンススペクトルを測定することが可能であり、それによって、DC-DCコンバータからバッテリへの電流逆流の問題を効果的に回避する。更に、制御の解決策は、追加の高調波電源をバッテリ又はDC-DCコンバータに追加する必要も、高調波外乱を生成するためにDC-DCコンバータを追加的に制御する必要もない。制御の解決策は、操作が簡単であり、実施が容易であり、高周波数におけるバッテリの電気化学インピーダンス値を測定することができる。
【0067】
更に、本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御の解決策においては、DC-DCコンバータの導通モードは、バッテリ、DC-DCコンバータ及び負荷の実際の動作状態に基づいて柔軟に切り替えることができる。更に、本発明の実施形態によるバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御の解決策において、測定周波数の範囲は、より多くの周波数範囲におけるバッテリの電気化学インピーダンス情報を取得するために、臨界導通モードにおける負荷を変更することによって変更され得る。
【0068】
本発明の実施態様のうちのいくつかのみが本明細書において上記で説明されたが、当業者は、本発明がその趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの他の形態において実施され得ることを理解すべきである。したがって、提示された例及び実施態様は、限定的なものではなく、概略的なものであると考えられ、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明は、様々な変更及び置換を包含し得るものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-05-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC-DCコンバータを介して電力を出力するバッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法であって、前記制御方法は、
前記DC-DCコンバータの導通モードが設定されるべきことを示す第1の信号を送信することであって、前記導通モードは、不連続導通モード又は臨界導通モードを含む、ことと、
前記バッテリの出力端で電流測定値及び電圧測定値を受信することと、
受信された前記電流測定値及び受信された前記電圧測定値に基づいて、前記バッテリのインピーダンススペクトルを計算することと、
を含むことを特徴とする、制御方法。
【請求項2】
前記導通モードは、連続導通モードを更に含み、
前記バッテリ、前記DC-DCコンバータ、及び、前記バッテリの負荷のうちの少なくとも1つが所定の基準を満たす場合、前記第1の信号は、前記DC-DCコンバータが前記不連続導通モード又は前記臨界導通モードに設定されるべきことを示し、
そうでない場合、前記第1の信号は、前記DC-DCコンバータが前記連続導通モードに設定されるべきことを示す、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
異なる導通モードで計算された前記インピーダンススペクトルを融合すること
を更に含む、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記所定の基準は、
前記バッテリの前記負荷の電流が所定の閾値未満であること、及び/又は、
前記バッテリがパージフェーズにあること
を含む、請求項2に記載の制御方法。
【請求項5】
前記DC-DCコンバータが前記臨界導通モードに設定される場合、前記制御方法は、
前記DC-DCコンバータのスイッチング周波数が変化するように、前記バッテリの前記負荷を変化させるべきことを示す第2の信号を送信することと、
異なるスイッチング周波数において前記バッテリの前記出力端で前記電流測定値及び前記電圧測定値を受信することと、
前記異なるスイッチング周波数において受信された前記電流測定値及び受信された前記電圧測定値に基づき、前記異なるスイッチング周波数における前記バッテリのインピーダンススペクトルを計算することと、
を更に含む、請求項1に記載の制御方法。
【請求項6】
前記異なるスイッチング周波数における前記計算されたインピーダンススペクトルを融合すること、
を更に含む、請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御装置であって、
前記制御装置は、
メモリと、
プロセッサと、
前記メモリに格納され、前記プロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラムと、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、前記プロセッサによって実行されるときに、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法を前記プロセッサに実施させるためのものである、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御装置を備えることを特徴とする、車両電子制御ユニット。
【請求項9】
ンピュータプログラムを格納しているコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されるときに、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法を前記プロセッサに実施させるためのものである、
ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
コンピュータプログラムあって、
前記コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されるときに、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の、バッテリのインピーダンススペクトル測定のための制御方法を前記プロセッサに実施させるためのものである、
ことを特徴とするコンピュータプログラム
【請求項11】
バッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステムであって、
前記バッテリの出力電力を変換し、前記変換された電力を負荷に伝達するように構成されたDC-DC変換装置であって、第1の信号により設定される前記DC-DC変換装置の導通モードが、不連続導通モード又は臨界導通モードを含む、DC-DC変換装置と、
前記バッテリの出力電流値及び出力電圧値を測定するように構成された測定装置と、
測定された前記出力電流値及び測定された前記出力電圧値に基づいて、前記バッテリのインピーダンススペクトルを計算する計算装置と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
前記DC-DC変換装置の前記導通モードは、連続導通モードを更に含み、
前記システムは、
前記バッテリ、前記DC-DC変換装置及び前記負荷のうちの少なくとも1つが所定の基準を満たす場合、前記DC-DC変換装置を前記不連続導通モード又は前記臨界導通モードに切り替え、そうでない場合、前記DC-DC変換装置を前記連続導通モードに切り替えるように構成された切替装置
を更に備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記計算装置は、異なる導通モードで計算された前記インピーダンススペクトルを融合するように更に構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記所定の基準は、
前記負荷の電流が所定の閾値未満であること、及び/又は、
前記バッテリがパージフェーズにあること
を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
送信装置を更に備え、
前記送信装置は、前記DC-DC変換装置が前記臨界導通モードに設定されている場合に第2の信号を送信するように構成され、前記第2の信号は、前記DC-DC変換装置のスイッチング周波数が変化するように、前記負荷を変化させるべきことを示し、
前記測定装置は、異なるスイッチング周波数において前記バッテリの前記出力電流値及び前記出力電圧値を測定するように更に構成され、
前記計算装置は、測定された前記出力電流値及び測定された前記出力電圧値に基づき、前記異なるスイッチング周波数における前記バッテリの前記インピーダンススペクトルを計算するように更に構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記計算装置は、前記異なるスイッチング周波数における前記計算されたインピーダンススペクトルを融合するように更に構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記バッテリ及び/又は前記負荷を更に備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
請求項11乃至17のいずれか一項に記載の、バッテリのインピーダンススペクトル測定のためのシステムを搭載することを特徴とする車両。
【国際調査報告】