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特表2024-539986ハイドロゲルスキャフォールドを印刷する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ハイドロゲルスキャフォールドを印刷する方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/16 20060101AFI20241024BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20241024BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20241024BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241024BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241024BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20241024BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61L27/16
B29C64/129
B29C64/40
B33Y10/00
B33Y80/00
A61L27/22
A61L27/36 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524746
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 US2022047384
(87)【国際公開番号】W WO2023076111
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/271,670
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346377
【氏名又は名称】ラング バイオテクノロジー ピービーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル バックマン
(72)【発明者】
【氏名】モハマドアリ サファビエ
(72)【発明者】
【氏名】アマン カウル
(72)【発明者】
【氏名】デレク モリス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス エム.アルバレズ
【テーマコード(参考)】
4C081
4F213
【Fターム(参考)】
4C081AB31
4C081CA081
4C081CA181
4C081CD111
4C081CD34
4F213AA43
4F213AA44
4F213AB03
4F213AB19
4F213AC05
4F213AH63
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL06
4F213WL14
4F213WL23
4F213WL24
4F213WL25
4F213WL43
4F213WL62
4F213WL67
4F213WL74
4F213WL76
4F213WL82
(57)【要約】
ハイドロゲルスキャフォールドを印刷する方法であって、インクと、インクと非混和性の液体とを含有する容器を用意し、ハイドロゲルスキャフォールドの一部を形成するために、光源からの光をインクに当て、そしてハイドロゲルスキャフォールドの1つ又は2つ以上のさらなる部分を生産するために、1回又は2回以上のさらなる回数にわたって、光源からの光を当てる、ことを含む、ハイドロゲルスキャフォールドを印刷する方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロゲルスキャフォールドを印刷する方法であって、
インクと、前記インクと非混和性の液体とを含有する容器を用意し、
前記ハイドロゲルスキャフォールドの一部を形成するために、光源からの光を前記インクに当て、そして
前記ハイドロゲルスキャフォールドの1つ又は2つ以上のさらなる部分を生産するために、1回又は2回以上のさらなる回数にわたって、光源からの光を当てる、
ことを含む、ハイドロゲルスキャフォールドを印刷する方法。
【請求項2】
前記ハイドロゲルスキャフォールドが、前記容器内に沈められる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハイドロゲルスキャフォールドが、前記インク、又は前記インクと非混和性の液体によって完全に沈められる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
印刷中に消費され、又はその他の形で失われた前記インクの少なくとも一部と置き換えるために、前記インクと非混和性の液体を添加することをさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記インクの蒸発を防止するために、前記インクと非混和性の液体が前記容器内に位置決めされる、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記インクと非混和性の液体が疎水性である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記インクと非混和性の液体が、少なくとも5cPの粘度を有する油、又は100℃超の沸点を有する有機溶媒を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記インクと非混和性の液体が、鉱物油、ブチルアセテート、ブチルエーテルと鉱物油との混合物、及び石油エーテルと鉱物油との混合物から成る群から選択される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記石油エーテルと鉱物油との混合物が、25%(w/w)~50%(w/w)の石油エーテルを含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記インクがポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーを含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーの重量平均分子量(M)が、約400~約20,000である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーのMが、約2000~約7000である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記インクが少なくとも1種の光開始剤をさらに含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記光開始剤が、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)、トリメチルベンゾイル系の光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュア類の光開始剤、ルテニウム、リボフラビン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記インクがDI水を含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記インクが約50%~約90%のDI水(w/w?)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記インクが、タンパク質、ペプチド、及び/又は細胞外マトリックス材料を含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ハイドロゲルスキャフォールドが人間スケールサイズである、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ハイドロゲルスキャフォールドの印刷済み部分が、光を当てている間、前記インクと非混和性の液体中に浸漬される、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ハイドロゲルスキャフォールドを形成するためのデジタル光投影印刷プロセス中に使用されるインクの量を低減する方法であって、
インクと、前記インクと非混和性の液体とを含む容器を用意し、
前記ハイドロゲルスキャフォールドの一部を形成するために、光源からの光を前記インクに当て、そして
前記ハイドロゲルスキャフォールドの1つ又は2つ以上のさらなる部分を生産するために、1回又は2回以上のさらなる回数にわたって、光源からの光を当てる、
ことを含み、
前記ハイドロゲルスキャフォールドを形成するために使用されるインクの量が、前記インクと非混和性の液体が存在しないときに同じハイドロゲルスキャフォールドを形成するために必要とされるインクの量よりも少なくとも50%少ない、
インクの量を低減する方法。
【請求項21】
前記ハイドロゲルスキャフォールドが、前記容器内に沈められる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ハイドロゲルスキャフォールドが、前記インク、又は前記インクと非混和性の液体によって完全に沈められる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記印刷中に消費され、又はその他の形で失われた前記インクの少なくとも一部と置き換えるために、前記インクと非混和性の液体を添加することをさらに含む、請求項20から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記インクの蒸発を防止するために、前記インクと非混和性の液体が前記容器内に位置決めされる、請求項20から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記インクと非混和性の液体が疎水性である、請求項20から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記インクと非混和性の液体が、少なくとも5cPの粘度を有する油、又は100℃超の沸点を有する有機溶媒を含む、請求項20から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記インクと非混和性の液体が、鉱物油、ブチルアセテート、ブチルエーテルと鉱物油との混合物、又は石油エーテルと鉱物油との混合物である、請求項20から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ブチルエーテルと鉱物油との混合物が、25%(w/w)~50%(w/w)の石油エーテルを含有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記インクがポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーを含む、請求項20から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーの重量平均分子量(M)が、約400~約20,000である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーのMが、約2000~約7,000である、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記インクが光開始剤を含む、請求項20から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記光開始剤が、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)、トリメチルベンゾイル系の光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュア類の光開始剤、ルテニウム、及びリボフラビンから成る群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記インクがDI水を含む、請求項20から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記インクが約50%~約90%のDI水を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記インクが、タンパク質、ペプチド、及び/又は細胞外マトリックス物質をさらに含む、請求項20から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ハイドロゲルスキャフォールドが人間スケールサイズである、請求項20から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1から37に記載の方法のいずれか1つによって形成されたハイドロゲルスキャフォールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月25日付けで出願された米国仮出願第63/271,670号の優先権を主張する。前記出願はその全体を参照することにより援用される。
【背景技術】
【0002】
生体適合性構造のために使用される物体を形成するために、ハイドロゲルを含む組成物が使用されることがある。これらの物体は、3次元(3D)印刷技術を用いて形成され得る。
【0003】
伝統的な3D印刷では、大型物品の印刷時でさえ、満杯の容器(full container)のインクが使用される。このことの理由には、余剰のインクが、印刷済み物体の変形を防止し、そしてビルドプラットフォームとの付着の維持を助ける浮力を提供することが含まれる。加えて、インクは、印刷済みハイドロゲルの脱水及び収縮を防止するのを助ける。このような脱水及び収縮は、ビルドプラットフォームの脱離を潜在的に引き起こすおそれがある。しかしながら、大量のインクを使用することには多くの欠点がある。例えばインクは高価である。加えて、3L容器のための材料の調達は、製剤開発と大型印刷との間に長いリードタイムを有し得る。
【0004】
いくつかの事例では、インクを再使用することができるものの、これにも欠点がある。インクを再使用すると、望まれないばらつきがもたらされることがある。このばらつきは定量化するのが難しい場合がある。加えて、インクを再使用すると、単一バッチのインクが、多くの人々及びプロジェクトの間で共有されるのを必要とする可能性が高くなる。加えて、インクを再使用すると、所要の印刷体積を作成するために、さらなるインクを製剤し、これを再使用済みインクに加えることがしばしば必要となる。このことは、最適とは言えない相互依存性をもたらす。これらの相互依存性はプロジェクトを計画する際に複雑さを増す。
【0005】
このようなことを背景にして、本明細書中に記載された実施態様を開発する必要が生じた。
【発明の概要】
【0006】
この問題を克服するために、本明細書のある特定の実施態様は、フィラー材料を含むより少量のインクを使用する。このことの利点は、インクの使用量がより少なく、そしてこれに続いてコストが節減されることである。加えて、インクを印刷毎に新たに製造することができる。これにより、材料印刷履歴によって引き起こされるバッチのばらつき(印刷物の数、材料齢、調達元の成分のばらつき、及びさらなるインクを製造する者、を含む変数を有する)を取り除くことができる。加えて、製剤成分をより少ない体積で調達することができる。
【0007】
さらなる利点は、インクが種々異なる印刷運転間で共有される必要がなく、相互依存性を取り除くことである。このことは、新しいインク開発と大型印刷との間の時間を短縮する。大型印刷は、再使用可能なインクだけでなく、ほとんどあらゆる製剤によって行うことができる。加えて、一回限りの(one-off)印刷も、残留インクの廃棄を懸念することなしにいつでも行うことができる。再使用される材料をどのように使用するかを考えるための長期にわたる計画も必要でない。このことは印刷作業サイクルのモデルをスピードアップすることができる。
【0008】
本明細書中に開示された実施態様は、大型の、ハイドロゲルを基材とする物体、例えばハイドロゲルスキャフォールドを、逆(inverted)デジタル光投影(digital light projection:DLP)3d印刷システムによって印刷するプロセスを含む。印刷中、ハイドロゲル物体は、印刷時間全体にわたって液体中に浸漬されてよい。所要のインク量を減らすために、過剰のインクは代わりの液体で置き換えることができる。代わりの液体はインクと非混和性である。代わりの液体は、3d印刷されたスキャフォールドに浮力を提供し、そして印刷中の脱水を防止することにより、印刷を成功させることを可能にする。
【0009】
本開示の実施態様は、ハイドロゲルスキャフォールドを印刷する方法に関する。方法は、インクと、前記インクと非混和性の液体とを含有する容器を用意し、前記ハイドロゲルスキャフォールドの一部を形成するために、光源からの光を前記インクに当て、そして前記ハイドロゲルスキャフォールドの1つ又は2つ以上のさらなる部分を生産するために、1回又は2回以上のさらなる回数にわたって、光源からの光を当てる、ことを含む。
【0010】
ハイドロゲルスキャフォールドは、この方法の実施中、前記インクと非混和性の液体中に浸漬されたままであってよい。いくつかの実施態様では、前記インクと非混和性の液体は、1種又は2種以上の疎水性物質から選択される。いくつかの実施態様では、疎水性物質は、少なくとも5cPの粘度を有する油、又は100℃超の沸点を有する有機溶媒を含んでよい。いくつかの実施態様では、油の粘度は、少なくとも10、15、20、又は50cPであってよい。いくつかの実施態様では、油の沸点は、120℃、150℃、又は200℃を上回ってよい。いくつかの実施態様では、前記インクと非混和性の液体は、鉱物油、ブチルアセテート、ブチルエーテルと鉱物油との混合物、石油エーテル(並びに、ブチルエーテル、ブチルアセテート、石油エーテルと同様の化学特性、又は非混和性液体の密度を有する液体)、及び鉱物油組成物であって、石油エーテルの組成が25%(w/w)~50%(w/w)であるものである。いくつかの実施態様では、インクはポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーを含む。いくつかの実施態様では、ポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーの重量平均分子量(M)が、約400~約20,000である。いくつかの実施態様では、ポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーのMは、約2000~約7000である。
【0011】
いくつかの実施態様では、インクは光開始剤を含む。光開始剤は、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)、ナトリウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(NAP)、トリメチルベンゾイル系の光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュア(Irgacure)クラスの光開始剤、ルテニウム、リボフラビン、又はこれらの混合物を含んでよい。インクはDI水を含んでよい。インクは約50%~約90%のDI水を含んでよい。前記インクは、タンパク質、ペプチド、及び/又は細胞外マトリックス材料をさらに含んでよい。
【0012】
本開示の実施態様は、ハイドロゲルスキャフォールドを形成するためのデジタル光投影印刷プロセス中に使用されるインクの量を低減する方法に関し得る。方法は、インクと、前記インクと非混和性の液体とを含む容器を用意し、前記ハイドロゲルスキャフォールドの一部を形成するために、光源からの光を前記インクに当て、そして前記ハイドロゲルスキャフォールドの1つ又は2つ以上のさらなる部分を生産するために、1回又は2回以上のさらなる回数にわたって、光源からの光を当てる、ことを含んでよく、前記ハイドロゲルスキャフォールドを形成するために使用されるインクの量が、前記インクと非混和性の液体が存在しないときに同じハイドロゲルスキャフォールドを形成するために必要とされるインクの量よりも少なくとも50%少ない。
【0013】
前記ハイドロゲルスキャフォールドを形成するために使用されるインクの量は、前記インクと非混和性の液体が存在しないときに同じハイドロゲルスキャフォールドを形成するために必要とされるインクの量よりも少なくとも50%少なくてよい。前記インクと非混和性の液体は、1種又は2種以上の疎水性物質から選択されてよい。前記1種又は2種以上の疎水性物質は、少なくとも5cPの粘度を有する油、又は100℃超の沸点を有する有機溶媒を含んでよい。前記インクと非混和性の液体は、鉱物油、ブチルアセテート、ブチルエーテルと鉱物油との混合物、石油エーテル又は鉱物油の組成物であってよい。石油エーテルの組成は25%(w/w)~50%(w/w)であってよい。
【0014】
インクはポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーを含んでよい。ポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーの重量平均分子量(M)は、約400~約20,000であってよい。ポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーのMは、約2000~約7000であってよい。インクは光開始剤を含んでよい。光開始剤は、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)、ナトリウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(NAP)、トリメチルベンゾイル系の光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュア類の光開始剤、ルテニウム、リボフラビン、又はこれらの混合物を含んでよい。インクはDI水を含んでよい。インクは約50%~約90%のDI水を含んでよい。前記インクは、タンパク質、ペプチド、及び/又は細胞外マトリックス材料をさらに含んでよい。
【0015】
本開示の実施態様は、開示された方法によって形成されたハイドロゲルスキャフォールドに関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、青色の非混和性液体と、黄色のインクとを用いた二相印刷プロセス設定の実施態様を示す図である。
図2図2(a)は、85%超のDI水を有するインクの組成の実施態様を示す図である。図2(b)は、第2相としての鉱物油中で印刷された、印刷済み物体の実施態様を示す画像である。図2(c)は、インク外部で印刷され、結果として失敗したハイドロゲルの実施態様を示す図である。図2(d)は、一相及び二相印刷の実施態様に使用されるインクの量を示す図であり、インク消費量の80%超の節約を示している。
図3図3は、コラーゲンなし(対照)の印刷済みインク、コラーゲン(AC42)を有する印刷済みインク、及びコラーゲン及び鉱物油(AC42鉱物油)を有する二相型の印刷済みバイオインクの実施態様の機械特性であるモジュラス、応力、及び歪みを示す図である。
図4図4(A~E)は、鉱物油第2相を用いてモデルを二相印刷する実施態様を示す図である。
図5図5(A~B)は、フィッシャーボトル(Fischer bottle)構造を二相印刷する実施態様を示す図である(5Aはデジタルモデルである)。
図6図6(A~B)は、小型立方体構造を二相印刷する実施態様を示す図である。
図7図7(A~B)は、成形された葉(lobe)構造を二相印刷する実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書中に使用されるように、「3D印刷」は、光重合性インクを使用して層をビルドすることにより、当該物体のデジタルモデルを使用して3次元物体を製造するために用いられる任意の技術を意味する。
【0018】
本明細書に使用されるように、「印刷可能インク」及び「印刷可能組成物」は、3D印刷技術を用いて物体を形成するために使用し得る任意の組成物を意味する。「インク」は、1つ又は2つ以上の所期の機械特性、膨潤特性、及び/又は生体適合特性を有する材料を形成する印刷可能インクである。バイオインク(「バイオ・インク(bio ink)」及び「バイオ-インク(bio-ink)」とも呼ばれる)は、天然又は合成にかかわらず、生物学的成分を含み、且つ/又は生物学的適合性のために設計されているタイプのインクである。生物学的成分はペプチドを含んでよい。インクは、所期の細胞型の接着及び増殖を容易にする1種又は2種以上の材料を含有してよい。印刷された物体は、初代細胞及び誘導多能性幹細胞の付着、増殖、及び拡散を支持し得る。いくつかの実施例では、インクはハイドロゲルに形成することができる。
【0019】
印刷/インク使用量の低減のためのプロセス
本明細書中に開示されるのは、大型の、ハイドロゲルを基材とする物体を、逆(inverted)デジタル光投影(DLP)3d印刷システムによって印刷するプロセス、デジタル光投影印刷プロセス中に使用されるインクの量を低減する方法、及びこれらのプロセスによって形成されたハイドロゲルスキャフォールドである。ハイドロゲル物体はインクから成っていてよい。インクは水溶性且つ光硬化性であってよい。インクはある特定の成分、例えばタンパク質、ペプチド、及び細胞外マトリックスを含有してよい。インクは長時間の印刷プロセス中に蒸発してよい。言うまでもなく、「光(light)」は広義に使用され、そしてインク内部で(光開始剤を用いて又は用いずに)重合反応を引き起こし得る電磁放射線を含むことができる。
【0020】
印刷中、ハイドロゲル物体は、印刷時間全体にわたって液体中に浸漬されてよい。この浸漬は脱水を防止し、浮力を提供することができる。ハイドロゲルを印刷時間全体を通して浸漬させておくために、大きな体積のインクが必要とされる。大量のインクをコスト効率的に製造することは難関であり得る。本明細書中に開示される二相印刷のためのシステム及び方法は、大型の物体の印刷を成功させるためのインクの量を80%も低減することができる。
【0021】
したがって、いくつかの実施態様は、ハイドロゲルスキャフォールドを印刷する方法であって、方法は、インクと、前記インクと非混和性の液体とを含む容器を用意し、前記ハイドロゲルスキャフォールドの一部を形成するために、光源からの光を前記インクに当て、そして前記ハイドロゲルスキャフォールドの1つ又は2つ以上のさらなる部分を生産するために、1回又は2回以上のさらなる回数にわたって、光源からの光を当てる、ことを含む。
【0022】
さらに本明細書中に開示されているのは、過剰のインクを代わりの液体で置き換える(replace)ことにより、所要のインク量を減らす方法である。代わりの液体はインクと非混和性であってよい。代わりの液体は、3d印刷されたスキャフォールドに浮力を提供し、そして印刷中の脱水を防止することにより、印刷を成功させることを可能にし得る。いくつかの実施態様では、液体は疎水性液体、例えば油であってよい。いくつかの実施態様では、液体はアルコールであってよい。いくつかの実施態様では、液体は両親媒性液体であってよい。
【0023】
したがって、いくつかの実施態様は、ハイドロゲルスキャフォールドを形成するためのデジタル光投影印刷プロセス中に使用されるインクの量を低減する方法であって、インクと、前記インクと非混和性の液体とを含む容器を用意し、前記ハイドロゲルスキャフォールドの一部を形成するために、光源からの光を前記インクに当て、そして前記ハイドロゲルスキャフォールドの1つ又は2つ以上のさらなる部分を生産するために、1回又は2回以上のさらなる回数にわたって、光源からの光を当てる、ことを含んでよく、前記ハイドロゲルスキャフォールドを形成するために使用されるインクの量が、前記インクと非混和性の液体が存在しないときに同じハイドロゲルスキャフォールドを形成するために必要とされるインクの量よりも少なくとも50%少ない(少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%少なく、又はこれらの間の範囲だけ少ない)。
【0024】
いくつかの実施態様では、インクと非混和性の液体は、1種又は2種以上の疎水性物質から選択されてよい。例えば、いくつかの実施態様では、非混和性の液体は、鉱物油、ブチルアセテート、石油エーテル、及びこれらの混合物から選択される。いくつかの実施態様では、混合物は約25%(w/w)~約50%(w/w)の石油エーテル(例えば約25%、30%、35%、40%、45%、又は50%(w/w)の石油エーテル)を含む。いくつかの実施態様では、混合物は、約25%(w/w)~約50%(w/w)のブチルアセテート(例えば約25、30、35、40、45、又は50%(w/w)の石油エーテル)を含む。いくつかの実施態様では、混合物は、例えば約50%(w/w)~約90%(w/w)(例えば約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%(w/w)、又はこれらの間の範囲)の鉱物油を含む。いくつかの実施態様では、前記1種又は2種以上の疎水性物質は、25℃における粘度が少なくとも5cP(例えば少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25cP、又はこれらの間の範囲)の油、及び/又はSTPにおける沸点が100℃を超える(例えば105、110、120、130、140、150、160、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650℃を超える、又はこれらの間の範囲を超える)有機溶媒を含む。
【0025】
本実施態様のインクは特に限定されない。いくつかの実施態様では、インクはポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーを含む。いくつかの実施態様では、ポリ(エチレングリコール)ジ-(メト)アクリレートモノマーの重量平均分子量(M)は、約400~約20,000(例えば約400、500、100、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、10500、11000、11500、12000、12500、13000、13500、14000、14500、15000、15500、16000、16500、17000、17500、18000、18500、19000、19500、又は20000、又はこれらの間の範囲)である。
【0026】
いくつかの実施態様では、インクは、ヒドロキシC1-2アルキル(メト)アクリレート、ポリ(アルキレンオキシド)アルキルエーテル(メト)アクリレート、N-ヒドロキシC1-2アルキル(メト)アクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(PEGMEA)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA 3-ヒドロキシプロピルアクリレート及び/又は2-ヒドロキシプロピルアクリレート)、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリ(アルキレンオキシド)ジ(メト)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メト)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メト)アクリレート、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)、(ポリ)乳酸ジ(メト)アクリレート、(ポリ)グリコール酸ジ(メト)アクリレート、(ポリ)乳酸-コグリコシドジ(メト)アクリレート、(ポリ)カプロラクトンジ(メト)アクリレート、(ポリ)ジオキサノンジ(メト)アクリレート、(ポリ)フマレートジ(メト)アクリレート、(カルボキシ)(メチル)セルロースジ(メト)アクリレート、ヒアルロン酸ジ(メト)アクリレート、ヘパランスルフェートジ(メト)アクリレート、デキストランジ(メト)アクリレート、アルギネートジ(メト)アクリレート、ペクチンジ(メト)アクリレート、トリ-アクリレート、又はコラーゲンジ(メト)アクリレート、又はこれらの混合物、のうちの1種又は2種以上を含む。
【0027】
いくつかの実施態様では、インクは光開始剤をさらに含む。光開始剤は特に限定されることはなく、そして任意の適宜の光開始剤を使用することができる。適宜の光開始剤の例は、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)、ナトリウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(NAP)、トリメチルベンゾイル系の光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュア類の光開始剤、ルテニウム、リボフラビン、又はこれらの混合物を含む。
【0028】
いくつかの実施態様では、インクは溶媒、例えば水をさらに含む。いくつかの実施態様では、水は脱イオン化されている。ある特定の実施態様では、インクは約50~約90%(例えば約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%のDI水、又はこれらの間の範囲)のDI水を含む。
【0029】
いくつかの実施態様では、インクは、タンパク質、ペプチド、及び/又は細胞外マトリックス材料をさらに含んでよい。いくつかの実施態様では、ペプチドは、RGD、KQAGDV、YIGSR、REDV、IKVAV、RNIAEIIKDI、KHIFSDDSSE、VPGIG、FHRRIKA、KRSR、APGL、VRN、AAAAAAAAA、GGLGPAGGK、GVPGI、LPETG(G)n、IEGR、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。適宜のさらなる成分の他の例は、ECM又はECM様材料、例えばプロテアーゼに対して感受性のアミノ酸配列を含む。プロテアーゼは、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、BNPS-スカトール、カスパーゼ1-10、キモトリプシン-高特異性(Pの前ではない、[FYW]側のC末端)、キモトリプシン-低特異性(Pの前ではない、[FYWML]側のC末端)、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、CNBr、エンテロキナーゼ、因子Xa、ギ酸、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、LysC、好中球エラスターゼ、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)、ペプシン、プロリン-エンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビン、及びトリプシン、から選択されてよい。
【0030】
いくつかの実施態様では、ハイドロゲルスキャフォールドは、人間の器官と同様の形状及び寸法である。いくつかの実施態様では、ハイドロゲルスキャフォールドは、この方法の実施中、前記インクと非混和性の液体中に浸漬された又は沈められた(又は部分的に浸漬された)ままである。いくつかの実施態様では、ハイドロゲルスキャフォールドは容器内に沈められる。いくつかの実施態様では、ハイドロゲルスキャフォールドは容器内に沈められる。いくつかの実施態様では、方法は、前記印刷中に消費され、又はその他の形で失われた前記インクの少なくとも一部と置き換えるために、前記インクと非混和性の液体を添加することをさらに含む。いくつかの実施態様では、前記インクの蒸発を防止するために、前記インクと非混和性の液体が前記容器内に位置決めされる。
【0031】
印刷可能組成物(ハイドロゲルスキャフォールド又は構造)
本明細書中に記載された印刷可能組成物(ハイドロゲルスキャフォールド又は構造)は、器官又は器官の一部を模倣又は複製する3次元物体に形成することができる。例えば、いくつかの実施態様では、本明細書中に記載された印刷可能組成物は、例えば3D印刷技術を用いることにより、肺のアーキテクチャを模倣又は複製する構造に形成される。印刷可能組成物は、細胞の接着及び成長のためのスキャフォールドを形成し、その結果、器官の1つ又は2つ以上の所期特性を有する構造、例えば肺のガス交換機能を果たし得る構造をもたらすために、使用することができる。これらの物体はハイドロゲルを含むことができる。器官又は器官の一部は、好ましい実施態様では人間の肺であり得る。
【0032】
いくつかの実施態様では、ハイドロゲル構造の3D形状は、器官又は器官の断片と実質的に同じ形状、サイズ、及び/又は同じ相対寸法である。ある特定の実施態様では、器官又は器官の断片は、血管、気管、気管支、食道、尿管、尿細管、胆管、腎管(renal duct)、胆管、肝管、神経導管(nerve conduit)、CSFシャント、肺、腎臓、心臓、肝臓、脾臓、脳、胆嚢、胃、膵臓、膀胱、リンパ管、骨格骨、軟骨、皮膚、腸、筋肉、喉頭、又は咽頭を含む。さらなる実施態様では、血管形状は、肺動脈、腎動脈、冠動脈、末梢動脈、肺静脈、又は腎静脈を含む。ある特定の実施態様では、構造は血液透析グラフトを含む。他の実施態様は、構造が実質的にある場所では、肺葉、肺、肺の気道管、肺血管系、又はこれらの組み合わせの形状を含む。いくつかの実施態様では、補強は、外圧が構造に加えられたときに、構造を通る空気流又は血(又は液体)流を維持することを含む。
【0033】
3次元(3D)ハイドロゲル構造は、特に限定されることはなく、例えば1種又は2種以上の異なる重合モノマーから成る複合構造であり得る。本発明において使用し得るハイドロゲル材料は、これを製造する方法がそうであるように、当業者に知られている。例えば、Calo et al., European Polymer Journal Volume 65, April 2015, Pages 252-267に記載されたハイドロゲルが使用されてよい。いくつかの実施態様では、ハイドロゲル構造は重合(メト)アクリレート及び/又は(メト)アクリルアミドハイドロゲルを含む。いくつかの実施態様では、構造は、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メト)アクリレート、重合ポリ(エチレングリコール)ジ(メト)アクリルアミド、重合ポリ(エチレングリコール)(メト)アクリレート/(メトアクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸の塩、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリ無水物、例えばポリ(メタクリル酸)無水物、ポリ(アクリル酸)無水物、ポリセバシン酸無水物、コラーゲン、ポリ(ヒアルロン酸)、ヒアルロン酸含有ポリマー、及びコポリマー、ポリペプチド、デキストラン、デキストランスルフェート、キトサン、キチン、アガロースゲル、フィブリンゲル、大豆由来ハイドロゲル、アルギネート系ハイドロゲル、ポリ(ナトリウムアルギネート)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)、及びこれらの組み合わせ、を含むポリマーを含む。いくつかの実施態様では、ハイドロゲルポリマーのMは、約400Da、500Da、600Da、700Da、800Da、900Da、1000Da、1100Da、1200Da、1300Da、1400Da、1500Da、1600Da、1700Da、1800Da、1900Da、2000Da、2100Da、2200Da、2300Da、2400Da、2500Da、2600Da、2700Da、2800Da、2900Da、3000Da、3100Da、3200Da、3300Da、3400Da、3500Da、3600Da、3700Da、3800Da、3900Da、4000Da、4100Da、4200Da、4300Da、4400Da、4500Da、4600Da、4700Da、4800Da、4900Da、5000Da、5100Da、5200Da、5300Da、5400Da、5500Da、5600Da、5700Da、5800Da、5900Da、6000Da、6100Da、6200Da、6300Da、6400Da、6500Da、7000Da、7500Da、8000Da、8500Da、9000Da、9500Da、10000Da、15000Da、又は20000Daである。
【0034】
いくつかの実施態様では、ハイドロゲルは架橋ポリマーを含む。いくつかの実施態様では、ポリマーは、ポリマー中の架橋可能部分のパーセンテージを基準として、約0%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、又は約90%~約100%架橋されている。架橋可能部分は、例えば(メト)アクリレート基を含んでよい。
【0035】
硬化性インクは特に限定されない。いくつかの実施態様では、インクは、組成が3次元(3D)ハイドロゲル構造において使用されるモノマーと同じ又は同様である。いくつかの実施態様では、硬化性インクは光硬化性インク、例えばUVスペクトル範囲100~400nmにおいて光硬化され得るインクである。考えられるインクは、100~400nmで反応し光を吸収する光開始剤及び/又は色素を含有する組み合わせを含む。光開始剤は例えばベンゾフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン)、2,2’-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、リチウムフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート(LAP)、ナトリウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(NAP)、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、を含んでよい。
【0036】
3D印刷技術の中でも効率的な技術は、デジタル光プロセス(digital light process:DLP)法又はステレオリソグラフィ(SLA)である。DLP法又はSLA法を用いる3Dプリンタ内では、インク材料は容器上に層形成され、又はシート上に広げられ、そしてインクの所定の領域又は表面が紫外-可視(UV/Vis)光に暴露される。この光はデジタルマイクロ-ミラーデバイス又は回転ミラーによって制御される。DLP法において、さらなる部分が繰り返し又は連続的に置かれ、そして所期の3D物品が形成されるまで、それぞれの層が硬化される。SLA法は、インクが放射ビームラインによって凝固させられる点でDLP法とは異なる。Michael Degnan, Dec 2017, Cavendish Square Publishing, LLC,による3D Printing Techniques and Processesにおいて他の3D印刷法を見出すことができる。前記文献は参照することにより本明細書中に援用することができる。
【0037】
印刷中、ハイドロゲル物体は、印刷時間全体にわたって液体中に浸漬されてよい。このような浸漬は、脱水を防止し、浮力を提供することができる。ハイドロゲルを印刷時間全体を通して浸漬させておくために、大きな体積のインクが必要とされる。大量のインクをコスト効率的に製造することは難関であり得る。本明細書中に開示される二相印刷のためのシステム及び方法は、大型の物体の印刷を成功させるためのインクの量を80%も低減することができる。図1は、青色の非混和性液体と、黄色のインクとを用いた相印刷プロセス設定の実施態様を示す図である。
【0038】
図2は、開示の一実施態様を示している。図2(a)は、インクの一例の組成を示す図である。インクは85%超のDI水を含み、これによりインクは、疎水性液体、例えば鉱物油と非混和性にされる。図2(b)は、第2相としての鉱物油中で印刷された、印刷済み物体の画像を示している。これとは異なり、図2(c)は、インク外部で印刷され、結果として破壊したハイドロゲルを示している。図2(d)は、一相及び二相印刷に使用されるインクの量を示す図であり、インク消費量の80%超の節約を示している。
【0039】
下記実施例は、当業者に対して例示し説明するために、本開示のいくつかの実施例の具体的な態様を記述するものである。実施例は本開示のいくつかの実施態様を理解し実施する上で有用な具体的な方法を提供するにすぎないため、実施例は本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
【0040】
実施例1
図3は、一相又は二相印刷によって形成されたドッグボーン形状の試料の機械特性を示している。グラフは、3種の異なる試料のモジュラス、応力、及び歪みを示す。第1試料は、一相印刷を用いた、コラーゲンなしの印刷済みインク(対照)を示す。第2試料は、一相印刷を用いた、コラーゲンを有する印刷済みインク(AC42)を示す。第3試料は、第2相のために鉱物油(AC42鉱物油)を利用する二相印刷を用いた、コラーゲンを有するインクを示す。印刷済みのドッグボーン構造を使用して、インク、及び鉱物油で覆われたインクを満たされたバット内部で印刷された試料間で、引張試験材料特性の分析を完成させた。一軸引張試験を用いて、破壊応力、破壊歪み、及び引張モジュラスのような機械特性を測定した。ある特定の暴露時間及びプリンタの出力を含むある特定の印刷特性に関して、対照試料を試験した。図3に示された寸法でドッグボーンを印刷した。ドッグボーンをInstron機械に接続することにより、引張材料特性を測定した。図3から判るように、鉱物油とより少量のインクとを使用して形成されたドッグボーンのモジュラス、応力、及び歪みは、インク単独の容器から形成されたドッグボーンと比較すると、許容し得るモジュラス、応力、及び歪みを有した。
【0041】
実施例2
図4A及びBに示されているように、インクをバット内へ注ぎ込み、そして鉱物油をバットに添加した。印刷を行った後、図4C及びDに示されているように、物体を移した。印刷済み物体の画像を図Eに示す。
【0042】
デジタル光投影(DLP)3d印刷システムに、平らな印刷プラットフォームを据え付けた。PEGDA、LAP、及びUV386A(登録商標)(QCR Solutions Corp.によって生産されたUV色素)を含む600mlの504Nを含むインクを生成した。図4Aは3-Dプリンタの設定を示している。プリンタが降下した後、100ml/minの鉱物油をインクの上部に添加した。図4Bは、インクと鉱物油との界面のクローズアップを示す。
【0043】
印刷中、層100μm当たり35秒の印刷時間を用いて、10の部分から成る基底部を印刷した。層20μm当たり7秒の速度で、本体を印刷した。1.8~2.7mW/cm又は2.0~2.5mW/cm又は2.1~2.3mW/cm、例えば2.22mW/cmで、200~400ワット又は250~350ワット又は275~325ワット、例えば300WのLEDを使用して、光硬化を完成させた。
【0044】
モデルが印刷されるのに伴って、印刷済みモデルはインクを通って、そして鉱物油内へ立ち上がった。図4Cは、3-D印刷インクから形成された、印刷に成功した物体を示している。図4Dは、3-D印刷後に残された少量のインクのクローズアップである。図4Eは、鉱物油中で被覆された、3-D印刷後の完成済み物体を示す。
【0045】
実施例3
図5は、PEGDA、LAP、及びUV色素を含むインクを使用して印刷された、3D印刷済みの通気フィッシャーボトル(ventilation Fischer bottle)モデルを示す。プリンタが降下した後、50ml/minの鉱物油をインクの上部に添加した。
【0046】
印刷中、層100μm当たり25秒の印刷時間を用いて、10の部分から成る基底部を印刷した。層50μm当たり4秒の速度で、本体を印刷した。2.5~4.5mW/cm又は3.0~4.0mW/cm又は3.25~3.75mW/cm、例えば3.5mW/cmで、300~600ワット又は350~550ワット又は400~500ワット又は425~475ワット、例えば450WのLEDを使用して、光硬化を完成させた。
【0047】
図5Aは、フィッシャーボトル構造のモデルを示す。図5Bは、インクと油との2つの相における、大型バットDLPプリンタ内での印刷中のフィッシャーボトル構造を示す。
【0048】
実施例4
実施例4は、葉様モデル「物体3」の大型ハイドロゲル構造を印刷することを示す。G3~G4接合部の立方切り欠きを、図6Aに示されているようにモデル化した。主入口の直径はほぼ400μmであった。主出口の直径はほぼ350μmであった。血管網の直径はほぼ200μmであった。立方体の寸法は3立方cmであった。
【0049】
3D印刷のためには、DLPプリンタを使用した。望ましくない反応を回避するために、プラスチック・ビルドプラットフォームを使用した。3D印刷の前に、300nm厚のチタン層をプラスチック・ビルドプラットフォーム上へスパッタリング被覆した。チタン層をシランで被覆した。
【0050】
PEGDA、LAP、及びUV色素を含むインクを生成した。インクを容器内へ装入した。図6Bに示された容器は、黒色の浴と、青色のガスケットと、AF2400シート(図示せず)と、クロム金属クランプとから成った。インクと金属容器との接触がインクの着色をもたらすことが見出された。色素と金属容器との接触を防止するために、図6Bに示された容器の黒色表面にPDMS層を添加した。PDMSは、Sylgard 184 PDMSベースを硬化剤と10:1の比で混合し、2分間にわたってスピード混合し、次いでPDMS混合物が部分的に硬化されてより高粘度になるまで、80℃で30分間にわたって混合物を部分的に硬化することによって調製した。ほぼ30グラムのPDMSを図4の容器の黒色表面に被着した。容器を使用前に3~4時間にわたって80℃で硬化した。
【0051】
ビルド層厚20μmで、250ワットのDLPプリンタを使用して、立方体を3-D印刷した。いくつかの実施態様では、インク製剤が印刷前に容器に添加されてよく、そして3-D印刷されるのに伴って葉を覆うために非混和性液体、例えば油又はアルコールが添加されてもよい。葉を沈めておくために、必要に応じてさらなる非混和性液体が添加されてよい。成形された3-D立方体の一例が、図6Cの写真に示されている。
【0052】
3D印刷のために、NextDentプリンタを使用した。望ましくない反応を回避するために、プラスチック・ビルドプラットフォームを使用した。3D印刷の前に、300nm厚のチタン層をプラスチック・ビルドプラットフォーム上へスパッタリング被覆した。印刷プラットフォームに対するハイドロゲルの接着を改善するために、チタン層をシランメタクリレートで被覆した。
【0053】
1%のLAP、及び0.1%のUV386A(登録商標)色素(QCR Solutions Corp.によって生産されたUV色素)と組み合わされた503Nからインクを生成した。インクを容器内へ装入した。図6Bに示された容器は、黒色の浴と、青色のガスケットと、AF2400シート(図示せず)と、クロム金属クランプとから成った。インクと金属容器との接触がインクの着色をもたらすことが見出された。色素と金属容器との接触を防止するために、図6Bに示された容器の黒色表面にPDMS層を添加した。PDMSは、Sylgard 184 PDMSベースを硬化剤と10:1の比で混合し、2分間にわたってスピード混合し、次いでPDMS混合物が部分的に硬化されてより高粘度になるまで、80℃で30分間にわたって混合物を部分的に硬化することによって調製した。ほぼ30グラムのPDMSを図4の容器の黒色表面に被着した。容器を使用前に3~4時間にわたって80℃で硬化した。
【0054】
ビルド層厚20μmで、250照射mWのDLPプリンタを使用して、ローブ構造を3-D印刷した[上記のものが、葉構造並びに立方構造にとって正確であることも確認されたい]。
【0055】
いくつかの実施態様では、インク製剤が印刷前に容器に添加されてよく、そして3-D印刷されるのに伴って葉を覆うために非混和性液体、例えば油又はアルコールが添加されてもよい。葉を沈めておくために、必要に応じてさらなる非混和性液体が添加されてよい。成形された3-D立方体の一例が、図6Cの写真に示されている。
【0056】
図7Bに示されているように、成形された葉構造から、microCt画像を撮影した。
【0057】
本明細書中に使用されるように、単数形の用語「a」、「an」、及び「the」という単数形の用語は、文脈が明確に他の意味を示すのでない限り複数形を含むことがだる。したがって、例えば物体に言及するときには、これは文脈が明確に他の意味を示すのでない限り、複数の物体を含むことがある。
【0058】
本明細書中に使用されるように、「実質的に(substantially)」及び「約(about)」という用語は、小さなばらつきを記述し考慮に入れるために使用される。事由又は状況との関連において使用される場合、これらの用語は、事由又は状況が正確に発生する事例、並びに事例又は状況が極めて近似して発生する事例を意味することができる。数値との関連において使用されるときには、これらの用語は、その数値の±10%以下、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下のばらつき範囲を意味することができる。第2数値と「実質的に(substantially)」又は「およそ(about)」同じ第1数値に言及するときには、これらの用語は、第1数値が第2数値の±10%以下、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、±0.05%以下の変動範囲内にあることを意味し得る。
【0059】
加えて、量、比、及び他の数値が範囲形式で本明細書中に定義されることがある。言うまでもなく、このような範囲形式は便宜上、そして簡潔にするために使用され、範囲の限界として明示的に指定された数値を含むように、しかしまた、あたかもそれぞれの数値及び部分範囲が明示的に指定されているかのように、その範囲内に包含されるすべての個々の数値又は部分範囲をも含むように、理解されるべきである。例えば、約1~約200の範囲における比は、約1及び約200の明示された限界を含むように、しかしまた個々の比、例えば約2、約3、及び約4、及び部分範囲、例えば約10~約50、約20~約100などをも含むように理解されるべきである。
【0060】
開示をその特定の実施態様を参照しながら説明してきたが、当業者には言うまでもないことであるが、添付の請求項によって定義された開示の真の思想及び範囲を逸脱することなしに、種々の変更を加え同等のものを置換することができる。加えて、具体的な状態、材料、物質の組成、方法、操作を開示の目的、思想及び範囲に適合させるように、数多くの変更を加えてもよい。すべてのこのような変更は、添付の請求項の範囲内に含まれるように意図される。具体的には、ある特定の方法が特定の順序で実施される特定の操作に関連して記載されてはいるものの、言うまでもなく、これらの操作は組み合わせ、さらに分割し、又は再順序付けすることにより、開示の教示内容を逸脱することなしに、同等の方法を形成することができる。したがって、具体的に本明細書中で示されるのではない限り、操作の順序及びグループ分けは開示内容を限定するものではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
【国際調査報告】