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特表2024-539989抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/13 20060101AFI20241024BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C07K1/13
A61K47/68
A61P35/00
A61P37/06
A61P31/00
A61P29/00
A61P35/02
A61P1/00
A61P11/00
A61P15/00
A61K39/395 C
A61K39/395 L
C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524766
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2022079787
(87)【国際公開番号】W WO2023072934
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21204588.4
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523096827
【氏名又は名称】アラリス バイオテック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】アッティンガー-トラー、イザベラ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン、ロマン
(72)【発明者】
【氏名】シュタルク、ラモナ
(72)【発明者】
【氏名】グラブロウスキ、ドラガン
(72)【発明者】
【氏名】スピッヒャー、フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA22
4C085DD81
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA70
(57)【要約】
本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-ペイロードコンジュゲートを作製する方法に関する。方法は、構造(N→C方向に示す)(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、式中、(Sp)は化学的スペーサーであるか又は存在せず;(Sp)は化学的スペーサーであるか又は存在せず;(Sp)は化学的スペーサーであるか又は存在せず;Kは、リジン又はリジン誘導体又はリジン模倣体であり;Bは、連結部分又はペイロードであり;該リンカーは、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;該抗体を、80モル当量未満の該リンカーと接触させる。更に、本発明は、リジン残基を含む抗体-リンカーコンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲート、及びリンカーコンストラクトに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
前記リンカーが、前記リジン残基、前記リジン誘導体、又は前記リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して前記抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
前記抗体を、80モル当量未満の前記リンカーと接触させる方法。
【請求項2】
前記リンカーをコンジュゲートするGln残基が、IgG抗体のC2ドメインのGln残基Q295(EU付番)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IgG抗体が、グリコシル化IgG抗体であり、特に、前記IgG抗体が、C2ドメインの残基N297(EU付番)でグリコシル化されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体を、20モル当量又は20モル当量未満の前記リンカーと接触させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体を、2~20モル当量の前記リンカーと接触させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、1~50mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記トランスグルタミナーゼが、1~20U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体への前記リンカーのコンジュゲーションが、6~8.5の範囲のpHで達成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び(Sp)が、それぞれ独立して、0~12個のアミノ酸残基を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記リンカーが、25個、20個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個以下のアミノ酸残基を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記リンカーの正味電荷が、中性又は正である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記リンカーが、負に荷電したアミノ酸残基を含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Bが、連結部分である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記連結部分Bが、
・生体直交型マーカー基、又は
・架橋のための非生体直交型実体
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生体直交型マーカー基又は前記架橋のための非生体直交型実体が、
・-N-N≡N又は-N
・Lys(N);
・テトラジン;
・アルキン;
・歪みシクロオクチン;
・BCN;
・歪みアルケン;
・光反応性基;
・アルデヒド;
・アシルトリフルオロボレート;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・シクロペンタジエン/スピロロシクロペンタジエン;
・チオ選択的求電子剤;
・-SH;及び
・システイン
からなる群から選択される少なくとも1つの分子又は部分からなるか又は含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上のペイロードを前記連結部分Bにコンジュゲートする更なる工程を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上のペイロードが、クリック反応を介して前記連結部分Bにコンジュゲートされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Bが、ペイロードである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ペイロードが、
・毒素;
・サイトカイン;
・成長因子;
・放射性核種;
・ホルモン;
・抗ウイルス剤;
・抗菌剤;
・蛍光色素;
・免疫調節/免疫賦活剤;
・半減期延長部分;
・溶解度増大部分;
・ポリマー-毒素コンジュゲート;
・核酸;
・ビオチン又はストレプトアビジン部分;
・ビタミン;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・標的結合部分;及び/又は
・抗炎症剤
のうちの少なくとも1つを含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記毒素が、
・ピロロベンゾジアゼピン(例えば、PBD);
・アウリスタチン(例えば、MMAE、MMAF);
・マイタンシノイド(例えば、マイタンシン、DM1、DM4、DM21);
・デュオカルマイシン;
・ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)阻害剤;
・ツブリシン;
・エンジイン(例えば、カリケアマイシン);
・アントラサイクリン誘導体(PNU)(例えば、ドキソルビシン);
・ピロールベースのキネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤;
・クリプトフィシン;
・薬物排出ポンプ阻害剤;
・サンドラマイシン;
・アマニチン(例えば、α-アマニチン);及び
・カンプトテシン(例えば、エキサテカン、デルクステカン)
からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化学的スペーサー(Sp)が、自壊性部分を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記自壊性部分が、前記ペイロードBに直接結合している、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記自壊性部分が、p-アミノベンジルカルバモイル(PABC)部分又は自壊性アミノメチレンスペーサーを含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、IgG抗体、特にIgG1抗体である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、ブレンツキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、イノツズマブ、アベルマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ダラツムマブ、ペルツズマブ、ベドリズマブ、オクレリズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ゴリムマブ、オビヌツズマブ、サシツズマブ、ベランタマブ、ポラツズマブ、及びエンホルツマブからなる群から選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記リンカーが、前記抗体に含まれるGln残基のγ-カルボキサミド基にコンジュゲートされる、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記リンカーが、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%のコンジュゲーション効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートするのに好適である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記トランスグルタミナーゼが、微生物トランスグルタミナーゼであり、好ましくはストレプトマイセス属の種、特にストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)に由来する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法で生成された抗体-リンカーコンジュゲート。
【請求項30】
請求項29に記載の抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物。
【請求項31】
少なくとも1つの追加の治療的に活性のある剤を含む、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
治療及び/又は診断において使用するための、請求項29に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は請求項30若しくは31に記載の医薬組成物であって、特に前記抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つのペイロードを含む、抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項33】
腫瘍性疾患、神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、又は感染性疾患
・に罹患している、
・を発症するリスクがある、及び/又は
・と診断された
患者の治療において使用するための、請求項29に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は請求項30若しくは31に記載の医薬組成物であって、特に前記抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つの毒素を含む、抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項34】
前記抗体-リンカーコンジュゲートがポラツズマブを含み、前記腫瘍性疾患がB細胞関連がんである、請求項33に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項35】
前記B細胞関連がんが非ホジキンリンパ腫であり、特に前記B細胞関連がんがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、請求項34に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項36】
前記抗体-リンカーコンジュゲートがトラスツズマブを含み、前記腫瘍性疾患がHER2陽性がん、特にHER2陽性の乳がん、胃がん、卵巣がん、又は肺がんである、請求項33に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項37】
前記抗体-リンカーコンジュゲートがエンホルツマブ又はエンホルツマブバリアントを含み、前記腫瘍性疾患がネクチン-4陽性がん、特にネクチン-4陽性の膵臓がん、肺がん、膀胱がん、又は乳がんである、請求項33に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを作製する方法に関する。本発明は更に、抗体-リンカーコンジュゲート、及び本発明の抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物、並びにそれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、通常、抗体と、化学リンカーを介して該抗体にコンジュゲートする低分子薬物とで構成される。数十年にわたる前臨床及び臨床研究の結果、再発性ホジキンリンパ腫及び全身性未分化大細胞リンパ腫に対するブレンツキシマブ・ベドチン(Adcetris(登録商標))、急性骨髄性白血病に対するゲムツズマブ・オゾガマイシン(Mylotarg(登録商標))、HER2陽性転移性乳がんに対するアドトラスツズマブ・エムタンシン(Kadcyla(登録商標))、B細胞悪性腫瘍に対するイノツズマブ・オゾガマイシン(Besponsa(登録商標))、そして最近ではポラツズマブ・ベドチン-piiq(Polivy(登録商標))等の一連のADCが特定の腫瘍型の治療について承認されている。最も最近では、エンホルツマブ・ベドチン(Padcev(登録商標))、トラスツズマブ・デルクステカン(Enhertu(登録商標))、サシツズマブ・ゴビテカン(Trodelvy(登録商標))、及びベランタマブ・マファドチン(Blenrep(登録商標))が販売承認を受けている。ADCに関する総説については、例えば(Zhao P.et al.,2020,Acta Pharmaceutica Sinica B,10,1589-1600)を参照されたい。多くのADCが印象的な抗がん作用を示す一方で、多くの患者がこれら治療に応答しなかったり、有効性の兆候が現れる前に重度の副作用を経験したり、一定期間後に再発を経験したりするため、好ましい薬物様特性を有し、薬物開発を支援するために十分な量及び質を合理的なコストで生産することができ、治療薬として好適な新規ADCフォーマットに対する医療上のニーズは依然として大きい。
【0003】
ADCの調製における重要な工程は、ペイロードの抗体への共有結合性コンジュゲート工程である。現在臨床開発されているADCのほとんどは、平均薬物対抗体比(DAR)が3.5~4.0の範囲になるように平均修飾度を慎重に制御しながら、抗体の内因性のリジン又はシステインの残基にコンジュゲートすることによって作製されている。この比は、歴史的には、(a)非コンジュゲート抗体の量の最小化と、(b)疎水性が高く溶解度が低いことから製造及び製剤化において問題となる可能性があり(Lambert JM and Berkenbilt A.,2018,Annu.Rev.Med.69,191-207)、典型的には、その結果薬物動態学的特性が悪化する(Lyon RP,et al.,2015,Nat Biotechnol,33,733-735)、混合物中のDARの非常に高い分子種の回避に基づいて選択されており、最近、部位特異的コンジュゲーションのための様々な遺伝的、化学的、及び酵素的な方法が開発され、抗体の未修飾又は過剰の修飾を避けながらDARを2(又は4)にすることができるようになっている。これら方法論の概要は、Yamadaらによって報告されている(Kei Yamada and Yuji Ito,2019,ChemBioChem,20,2729-2739に概説)。
【0004】
酵素的コンジュゲーションが大きな関心を集めているが、その理由は、これらコンジュゲーション反応が通常迅速であり、部位特異的であり、かつ生理学的条件下で行うことができるためである。利用可能な酵素の中でも、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)という種由来の微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)は、抗体を含む機能性部分の従来の化学的タンパク質コンジュゲーションに代わる魅力的な選択肢として関心が高まっている。MTGは、生理学的条件下で、タンパク質又はペプチドの「反応性」グルタミンとタンパク質又はペプチドの「反応性」リジン残基との間のトランスアミド化反応を触媒するが、後者は5-アミノペンチル基等の単純で低分子量の第一級アミンであってもよい(Jeger S.et al.,2010,Angew.Chem.Int.Ed.,49,9995-9997)。
【0005】
Jegerらは、トランスグルタミナーゼを酵素として用いた抗体のコンジュゲーションはQ295残基で起こるが、PNGase Fでアスパラギン残基297(N297)の糖鎖部分を除去した際にのみコンジュゲーションが可能であり、グリコシル化抗体を効率的にコンジュゲートすることはできなかった(コンジュゲーション効率20%未満)と述べている(Jeger S.et al.,2010,Angew.Chem.Int.Ed.,49,9995-9997;Mindt T.et al.2008,Bioconj Chem,9,271-278)。
【0006】
MTGを用いてADCを作製する他のアプローチは、残基N297がグリコシル化を受けることができないアミノ酸残基で置換されている、アグリコシル化抗体の使用に基づくものである。しかし、N297を別のアミノ酸で置換すると、Fcドメイン全体の全体的な安定性(Subedi GP and Barb AW.,2015,Structure,23,1573-1583)及びコンジュゲート全体の有効性に影響を及ぼす可能性があるため、望ましくない効果をもたらす可能性がある。その結果、抗体の凝集が増加し、溶解度が低下する可能性があり、このことは特に疎水性ペイロードにとって重要になる。更に、N297に存在する糖鎖は、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)等のエフェクター機能を誘発するので、重要な免疫調節効果を有する。これら免疫調節効果は、脱グリコシル化、又はアグリコシル化抗体を得るための上述した他のアプローチのいずれかによって失われてしまう。更に、確立された抗体の任意の配列を修飾すると規制上の問題につながる可能性があり、これは、多くの場合、承認され、臨床的に検証された抗体がADCコンジュゲーションの出発点として使用されることから問題となる。
【0007】
近年、Spycherらによって、ペイロードをコンジュゲートするために抗体を事前に脱グリコシル化する必要のないトランスグルタミナーゼベースのコンジュゲーションアプローチが開示された(Spycherら、国際公開第2019/057772号)。ネイティブなグリコシル化抗体をコンジュゲートできることは、製造面で大きな利点をもたらす:酵素的脱グリコシル化工程は、適正製造プロセス(GMP)の観点からは望ましくないが、その理由は、脱グリコシル化酵素(例えば、PNGase F)及び切断された糖鎖の両方が反応混合物から除去されていることを確認しなければならないためである。更に、ペイロードを結合させるために抗体を遺伝子操作する必要がないため、免疫原性を増大させ、抗体の全体的な安定性を低下させる可能性のある配列の挿入を避けることができる。
【0008】
以上に鑑みて、当技術分野では、高いコンジュゲーション効率でADCを作製するための改良された方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、本明細書で提供される実施形態及び特許請求の範囲において特徴付けられる。具体的には、本発明は、とりわけ以下の実施形態に関する:
【0010】
1.トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、80モル当量未満の該リンカーと接触させる方法。
【0011】
2.該抗体を、20モル当量又は20モル当量未満の該リンカーと接触させる、実施形態1に記載の方法。
【0012】
3.該抗体を、2~20モル当量の該リンカーと接触させる、実施形態1又は2に記載の方法。
【0013】
4.該抗体が、1~50mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0014】
5.該トランスグルタミナーゼが、1~20U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0015】
6.該抗体への該リンカーのコンジュゲーションが、6~8.5の範囲のpHで達成される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
7.該化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び(Sp)が、それぞれ独立して、0~12個のアミノ酸残基を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
8.該リンカーが、25個、20個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個以下のアミノ酸残基を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0018】
9.該リンカーの正味電荷が、中性又は正である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
10.該リンカーが、負に荷電したアミノ酸残基を含まない、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0020】
11.Bが、連結部分である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
12.該連結部分Bが、
・生体直交型マーカー基、又は
・架橋のための非生体直交型実体
を含む、実施形態11に記載の方法。
【0022】
13.該生体直交型マーカー基又は該架橋のための非生体直交型実体が、
・-N-N≡N又は-N
・Lys(N);
・テトラジン;
・アルキン;
・歪みシクロオクチン;
・BCN;
・歪みアルケン;
・光反応性基;
・アルデヒド;
・アシルトリフルオロボレート;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・シクロペンタジエン/スピロロシクロペンタジエン;
・チオ選択的求電子剤;
・-SH;及び
・システイン
からなる群から選択される少なくとも1つの分子又は部分からなるか又は含む、実施形態12に記載の方法。
【0023】
14.1つ以上のペイロードを該連結部分Bにコンジュゲートする更なる工程を含む、実施形態11~13のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
15.該1つ以上のペイロードが、クリック反応を介して該連結部分Bにコンジュゲートされる、実施形態14に記載の方法。
【0025】
16.Bが、ペイロードである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
17.該ペイロードが、
・毒素;
・サイトカイン;
・成長因子;
・放射性核種;
・ホルモン;
・抗ウイルス剤;
・抗菌剤;
・蛍光色素;
・免疫調節/免疫賦活剤;
・半減期延長部分;
・溶解度増大部分;
・ポリマー-毒素コンジュゲート;
・核酸;
・ビオチン又はストレプトアビジン部分;
・ビタミン;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・標的結合部分;及び/又は
・抗炎症剤
のうちの少なくとも1つを含む、実施形態14~16のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
18.該毒素が、
・ピロロベンゾジアゼピン(例えば、PBD);
・アウリスタチン(例えば、MMAE、MMAF);
・マイタンシノイド(例えば、マイタンシン、DM1、DM4、DM21);
・デュオカルマイシン;
・ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)阻害剤;
・ツブリシン;
・エンジイン(例えば、カリケアマイシン);
・アントラサイクリン誘導体(PNU)(例えば、ドキソルビシン);
・ピロールベースのキネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤;
・クリプトフィシン;
・薬物排出ポンプ阻害剤;
・サンドラマイシン;
・アマニチン(例えば、α-アマニチン);及び
・カンプトテシン(例えば、エキサテカン、デルクステカン)
からなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態17に記載の方法。
【0028】
19.該化学的スペーサー(Sp)が、自壊性部分を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
20.該自壊性部分が、該ペイロードBに直接結合している、実施形態19に記載の方法。
【0030】
21.該自壊性部分が、p-アミノベンジルカルバモイル(PABC)部分又は自壊性アミノメチレンスペーサーを含む、実施形態19又は20に記載の方法。
【0031】
22.該抗体が、IgG抗体、特にIgG1抗体である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
23.該リンカーをコンジュゲートするGln残基が、該抗体のFcドメインに含まれ、特に、該リンカーをコンジュゲートするGln残基が、IgG抗体のC2ドメインのGln残基Q295(EU付番)である、実施形態22に記載の方法。
【0033】
24.該リンカーをコンジュゲートするGln残基が、分子工学によって該抗体の重鎖又は軽鎖に導入されている、実施形態22に記載の方法。
【0034】
25.分子工学によって抗体の重鎖又は軽鎖に導入されているGln残基が、アグリコシル化IgG抗体のC2ドメインのN297Q(EU付番)である、実施形態24に記載の方法。
【0035】
26.分子工学によって抗体の重鎖又は軽鎖に導入されているGln残基が、(a)該抗体の重鎖若しくは軽鎖に組み込まれているか又は(b)該抗体の重鎖又は軽鎖のN末端若しくはC末端に融合しているペプチドに含まれる、実施形態24に記載の方法。
【0036】
27.該Gln残基を含むペプチドが、該抗体の重鎖のC末端に融合している、実施形態26に記載の方法。
【0037】
28.該IgG抗体が、グリコシル化IgG抗体であり、特に該IgG抗体がC2ドメインの残基N297(EU付番)でグリコシル化されている、実施形態22~24又は26~27のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
29.該抗体が、ブレンツキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、イノツズマブ、アベルマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ダラツムマブ、ペルツズマブ、ベドリズマブ、オクレリズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ゴリムマブ、オビヌツズマブ、サシツズマブ、ベランタマブ、ポラツズマブ、及びエンホルツマブからなる群から選択される、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
30.該リンカーが、該抗体に含まれるGln残基のγ-カルボキサミド基にコンジュゲートされる、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
31.該リンカーが、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%のコンジュゲーション効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートするのに好適である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
32.該トランスグルタミナーゼが、微生物トランスグルタミナーゼであり、好ましくはストレプトマイセス属の種、特にストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)に由来する、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
33.実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法で生成された抗体-リンカーコンジュゲート。
【0043】
34.実施形態33に記載の抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物。
【0044】
35.少なくとも1つの追加の治療的に活性のある剤を含む、実施形態34に記載の医薬組成物。
【0045】
36.治療及び/又は診断において使用するための、実施形態33に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は実施形態34若しくは35に記載の医薬組成物であって、特に該抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つのペイロードを含む、抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【0046】
37.腫瘍性疾患、神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、又は感染性疾患
・に罹患している、
・を発症するリスクがある、及び/又は
・と診断された
患者の治療において使用するための、実施形態33に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は実施形態34若しくは35に記載の医薬組成物であって、特に該抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つの毒素を含む、抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【0047】
38.該抗体-リンカーコンジュゲートがポラツズマブを含み、該腫瘍性疾患がB細胞関連がんである、実施形態37に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【0048】
39.該B細胞関連がんが非ホジキンリンパ腫であり、特に該B細胞関連がんがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、実施形態38に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【0049】
40.該抗体-リンカーコンジュゲートがトラスツズマブを含み、該腫瘍性疾患がHER2陽性がん、特にHER2陽性の乳がん、胃がん、卵巣がん、又は肺がんである、実施形態37に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【0050】
41.該抗体-リンカーコンジュゲートがエンホルツマブ又はエンホルツマブバリアントを含み、該腫瘍性疾患がネクチン-4陽性がん、特にネクチン-4陽性の膵臓がん、肺がん、膀胱がん、又は乳がんである、実施形態37に記載の抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0051】
従って、一実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、80モル当量未満の該リンカーと接触させる方法に関する。
【0052】
すなわち、本発明は、少なくとも部分的には、最適化された反応条件下では、リジンベースのリンカーを極めて高い効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートすることができるという驚くべき知見に基づく。特に、リンカー対抗体比を最適化すると、驚くほど高いコンジュゲーション効率が得られることが本発明者らによって示された。
【0053】
国際公開第2019/057772号において、リジンベースのペプチドリンカーをグリコシル化抗体にコンジュゲートできることが初めて実証された。効率的なコンジュゲーションを達成するためには、グリコシル化抗体を大過剰のリンカーと接触させなければならないと当技術分野では考えられていた。その結果、国際公開第2019/057772号では、コンジュゲーションを達成するために、グリコシル化抗体を80モル当量のリジンベースのリンカーと接触させている。これまでの考えに反して、本発明者らは、驚くべきことに、リンカー対抗体比を下げるとグリコシル化抗体のコンジュゲーションが著しくより効率的になることを見出した。その結果、嵩高いペイロードを含む様々なリンカーの定量的なコンジュゲーションが一段階で達成された。
【0054】
特に、抗体を80モル当量未満のリンカーと接触させると、コンジュゲーション効率が向上することが実証された。好ましい実施形態においては、抗体を70モル当量未満のリンカーと接触させる。より好ましい実施形態においては、抗体を60モル当量未満のリンカーと接触させる。更に好ましい実施形態においては、抗体を50モル当量未満のリンカーと接触させる。更に好ましい実施形態においては、抗体を40モル当量未満のリンカーと接触させる。更に好ましい実施形態においては、抗体を30モル当量未満のリンカーと接触させる。更に好ましい実施形態においては、抗体を20モル当量未満のリンカーと接触させる。更に好ましい実施形態においては、抗体を15モル当量未満のリンカーと接触させる。最も好ましい実施形態においては、抗体を10モル当量未満のリンカーと接触させる。
【0055】
あるいは、抗体を2~80モル当量のリンカー、好ましくは2~70モル当量のリンカー、より好ましくは2~60モル当量のリンカー、更により好ましくは2~50モル当量のリンカー、更により好ましくは2~40モル当量のリンカー、更により好ましくは2~30モル当量のリンカー、更により好ましくは2~25モル当量のリンカー、更により好ましくは2~20モル当量のリンカー、更により好ましくは2~15モル当量のリンカー、更により好ましくは2~10モル当量のリンカー、最も好ましくは2~8モル当量のリンカーと接触させてもよい。
【0056】
あるいは、抗体を2.5~80モル当量のリンカー、好ましくは2.5~70モル当量のリンカー、より好ましくは2.5~60モル当量のリンカー、更により好ましくは2.5~50モル当量のリンカー、更により好ましくは2.5~40モル当量のリンカー、更により好ましくは2.5~30モル当量のリンカー、更により好ましくは2.5~25モル当量のリンカー、更により好ましくは2.5~20モル当量のリンカー、更により好ましくは2.5~15モル当量のリンカー、更により好ましくは2.5~10モル当量のリンカー、最も好ましくは2.5~8モル当量のリンカーと接触させてもよい。
【0057】
抗体は、任意の濃度でコンジュゲーション反応に添加してよい。しかし、抗体を0.1~50mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加することが好ましい。すなわち、特定の実施形態においては、本発明は、抗体を0.1~50mg/mL、好ましくは1~50mg/mL、より好ましくは1~25mg/mL、より好ましくは2.5~20mg/mL、更により好ましくは5~20mg/mL、最も好ましくは5~17mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加する、本発明に係る方法に関する。
【0058】
本発明に係る方法は、好ましくは6~9の範囲のpHで実施される。従って、好ましい実施形態においては、本発明は、リンカーの抗体へのコンジュゲーションが6~8.5の範囲のpHで、より好ましくは6.5~8の範囲のpHで、更により好ましくは7~8の範囲のpHで達成される、本発明に係る方法に関する。最も好ましい実施形態においては、本発明は、リンカーの抗体へのコンジュゲーションがpH7.6で達成される、本発明に係る方法に関する。
【0059】
本発明の方法は、ペイロードのリンカーへのコンジュゲーションに適した任意のバッファ中で実施することができる。本発明の方法に適したバッファとしては、Tris、MOPS、HEPES、PBS、又はBisTrisのバッファが挙げられるが、これらに限定されない。バッファの濃度は、特に抗体及び/又はリンカーの濃度に依存し、10~1000mM、10~500mM、10~400mM、10~250mM、10~150mM、又は10~100mMの範囲であってよい。更に、バッファは、本発明の方法を実施するのに適した任意の塩濃度を有していてもよい。例えば、本発明の方法において使用されるバッファは、≦150mM、≦140mM、≦130mM、≦120mM、≦110mM、≦100mM、≦90mM、≦80mM、≦70mM、≦60mM、≦50mM、≦40mM、≦30mM、≦20mM、又は≦10mMの塩濃度を有していてもよく、又は塩を有していなくてもよい。特定の実施形態においては、本発明の方法は、50mM Tris(pH7.6)中、好ましくは無塩で実施される。
【0060】
最適な反応条件(例えば、pH、バッファ、塩濃度)はペイロードによって異なり得、リンカー及び/又はペイロードの物理化学的特性にある程度依存することに留意しなければならない。しかし、本発明の方法を実施するのに適した反応条件を特定するために、当業者が過度の実験を行う必要はない。
【0061】
トランスグルタミナーゼは、抗体とリンカーとを効率的にコンジュゲートさせることができる任意の濃度でコンジュゲーション反応に添加してよい。特定の実施形態においては、コンジュゲーション反応におけるトランスグルタミナーゼの濃度は、同じ反応において使用される抗体の量に依存し得る。例えば、トランスグルタミナーゼは、100U/mg抗体未満、90U/mg抗体未満、80U/mg抗体未満、70U/mg抗体未満、60U/mg抗体未満、50U/mg抗体未満、40U/mg抗体未満、30U/mg抗体未満、20U/mg抗体未満、10U/mg抗体未満、又は6U/mg抗体未満の濃度でコンジュゲーション反応に添加してよい。特定の実施形態においては、トランスグルタミナーゼを1U/mg抗体、3U/mg抗体、5U/mg抗体、又は6U/mg抗体の濃度でコンジュゲーション反応に添加してよい。
【0062】
すなわち、特定の実施形態においては、トランスグルタミナーゼは、1~20U/mg抗体、好ましくは1~10U/mg抗体、より好ましくは1~7.5U/mg抗体、更により好ましくは2~6U/mg抗体、更により好ましくは2~4U/mg抗体、最も好ましくは3U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加してよい。
【0063】
本発明に係る方法は、好ましくは微生物トランスグルタミナーゼによって触媒される。しかし、非微生物起源のトランスグルタミナーゼ活性を有する酵素によって同等の反応を実施できることに留意されたい。従って、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲートは、非微生物起源のトランスグルタミナーゼ活性を有する酵素を用いて作製することができる。
【0064】
本出願は、上に開示したリンカー、抗体、トランスグルタミナーゼ、及び/又はバッファ濃度の任意の組み合わせを包含することを理解されたい。
【0065】
好ましい実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、2~70モル当量の該リンカーと接触させ;及び/又は該抗体を、0.1~50mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加し;そして任意で、該トランスグルタミナーゼを1~20U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加する方法に関する。
【0066】
より好ましい実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、2~50モル当量の該リンカーと接触させ;及び/又は該抗体を、1~50mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加し;そして任意で、該トランスグルタミナーゼを1~20U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加する方法に関する。
【0067】
更により好ましい実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、2~25モル当量の該リンカーと接触させ;及び/又は該抗体を、2.5~25mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加し;そして任意で、該トランスグルタミナーゼを1~15U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加する方法に関する。
【0068】
更により好ましい実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、2~20モル当量の該リンカーと接触させ;及び/又は該抗体を、2.5~20mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加し;そして任意で、該トランスグルタミナーゼを1~15U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加する方法に関する。
【0069】
更により好ましい実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、2.5~15モル当量の該リンカーと接触させ;及び/又は該抗体を、2.5~20mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加し;そして任意で、該トランスグルタミナーゼを1~10U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加する方法に関する。
【0070】
更により好ましい実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、2.5~10モル当量の該リンカーと接触させ;及び/又は該抗体を、5~20mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加し;そして任意で、該トランスグルタミナーゼを2~10U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加する方法に関する。
【0071】
最も好ましい実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、2.5~8モル当量の該リンカーと接触させ;及び/又は該抗体を、5~17mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加し;そして任意で、該トランスグルタミナーゼを2~10U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加する方法に関する。
【0072】
別の実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、5~40モル当量の該リンカーと接触させ;及び/又は該抗体を、5~17mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加し;そして任意で、該トランスグルタミナーゼを2~10U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加する方法に関する。
【0073】
別の実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、5~20モル当量の該リンカーと接触させ;及び/又は該抗体を、5~17mg/mLの範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加し;そして任意で、該トランスグルタミナーゼを2~10U/mg抗体の範囲の濃度でコンジュゲーション反応に添加する方法に関する。
【0074】
本発明において好ましいのは、リンカーが構造(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)を含み、リンカーの残基Kに含まれる第一級アミンを介してリンカーが抗体中のグルタミン残基にコンジュゲートすることである。特定の実施形態においては、残基Kはリジン残基である。しかし、特定の実施形態においては、残基Kはリジン模倣体又はリジン誘導体であってもよいが、ただし、該リジン模倣体又は該リジン誘導体は、そのアミノ酸側鎖に第一級アミンを含む。
【0075】
従って、特定の実施形態においては、残基Kはリジン模倣体であってもよい。「リジン模倣体」という用語は、本明細書で使用される場合、リジンと異なる構造を有するが、リジンと類似の特性を有し、従って、ペプチド又はタンパク質の機能及び/又は構造を大きく変化させることなく該ペプチド又はタンパク質中のリジンを置換するために使用することができる化合物を指す。特定の実施形態においては、リジン模倣体は、第一級アミンとα-炭素原子とを接続する脂肪族鎖の長さ又は組成がリジンと異なる場合がある。従って、特定の実施形態においては、リジン模倣体は、オルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、2,5-ジアミノペンタン酸、2,6-ジアミノヘキサン酸、又は2,7-ジアミノヘプタン酸であり得る。特定の実施形態においては、リジン模倣体は、β-ホモリジン等のβ-アミノ酸であってもよい。
【0076】
特定の実施形態においては、残基Kはリジン誘導体であってもよい。「リジン誘導体」という用語は、本明細書で使用される場合、リジン又はリジン模倣体に含まれる1つ以上の官能基が修飾又は置換されているリジン又はリジン模倣体を指す。本発明では、リジン誘導体の側鎖におけるアミノ基は修飾されず、その結果、タンパク質におけるグルタミン残基へのコンジュゲートに利用可能になることが好ましい。実施形態においては、残基KがリンカーのC末端位置に位置する場合、Kは、α-カルボキシル基が修飾又は置換されたリジン誘導体となり得る。特定の実施形態においては、リジン模倣体のα-カルボキシル基はアミド化されてもよい。
【0077】
本発明において、リジンベースのリンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)を有し得る。すなわち、リンカーは、1つ以上の化学的スペーサー(Sp)を含んでいてよい。「化学的スペーサー」という用語は、本発明で使用される場合、リンカーの化学残基に共有結合している及び/又はリンカーの2つの化学残基の間に介在している化学部分を表す。
【0078】
特定の実施形態においては、本発明は、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び(Sp)が、それぞれ独立して、0~12個のアミノ酸残基を含む、本発明に係る方法に関する。
【0079】
すなわち、特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)及び/又は(Sp)は、存在していてもよく、存在していなくてもよい。(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)が存在する実施形態においては、(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、1つ以上のアミノ酸残基を含み得る。そのような実施形態においては、(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)はそれぞれ、0~12個のアミノ酸残基を含み得る。化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、非アミノ酸残基を含んでいてもよいことに留意しなければならず、これについては以下により詳細に開示する。
【0080】
化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)に含まれる「アミノ酸残基」は、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体であってよい。アミノ酸という用語は、α-アミノ酸だけでなく、β-、γ-、又はδ-アミノ酸等の他のアミノ酸も包含することを理解されたい。α-アミノ酸残基は、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)中にそのL-又はD-形態で存在し得る。実施形態においては、(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)がキラルβ-、γ-、又はδ-アミノ酸を含む場合、キラルβ-、γ-、又はδ-アミノ酸は、そのS-又はR-形態で存在し得る。従って、その最も広義の意味において、「アミノ酸残基」という用語は、本明細書で使用される場合、アミノ基(-NH)及びカルボキシル基(-COOH)を含有する任意の有機化合物を指し得る。従って、本開示を通して「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」に言及するときは常に、アミノ酸残基という用語は、アミノ酸の模倣体又は誘導体も包含し得ることを理解されたい。
【0081】
更に、アミノ酸残基という用語は、タンパク質原性アミノ酸の既知のセット、すなわち、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンに限定されるものではなく、非標準アミノ酸及び非天然アミノ酸も包含する。「非標準アミノ酸」とは、本発明で使用される場合、タンパク質を構成するアミノ酸(proteinogenic amino acid)のセットの一部ではないが、天然源から得ることができる任意のアミノ酸であり得る。しかし、非標準アミノ酸の中には、天然に存在するペプチド及び/又はタンパク質中にみられるものもあることに留意しなければならない。
【0082】
「非天然アミノ酸」又は「合成アミノ酸」は、本発明で使用される場合、アミノ酸の一般的な定義に該当する、すなわち、アミノ基及びカルボキシル基を含むが、自然界にはみられない任意の分子であり得る。従って、非天然アミノ酸は、化学合成によって得られることが好ましい。非標準アミノ酸と非天然アミノ酸との区別は、場合によっては不確実である場合もあることを理解されたい。例えば、非天然アミノ酸として定義されたアミノ酸が、後の時点で自然界において同定され、非標準アミノ酸として再分類されることもある。
【0083】
非標準アミノ酸又は非天然アミノ酸の例は、D-アミノ酸(D-アラニン、D-アルギニン、D-メチオニン等)、ホモアミノ酸(ホモセリン、ホモアルギニン、ホモシステイン、α-アミノアジピン酸等)、N-メチル化アミノ酸(サルコシン、N-Me-ロイシン等)、α-メチルアミノ酸(α-メチル-ヒスチジン、α-アミノイソ酪酸等)、β-アミノ酸(β-アラニン、D-3-アミノイソ酪酸、L-β-ホモアラニン等)、γ-アミノ酸(γ-アミノ酪酸等)、アラニンの模倣体又は誘導体(β-シクロプロピルアラニン、フェニルグリシン、デヒドロ-アラニン、β-シアノアラニン、β-(3-ピリジル)-アラニン、β-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)-アラニン、β-(1-ピペラジニル)-アラニン等)、フェニルアラニンの模倣体又は誘導体(4-ヨードフェニルアラニン、ペンタフルオロ-フェニルアラニン、ナフチル-アラニン、4-アミノフェニルアラニン等)、アルギニンの模倣体又は誘導体(β-ウレイドアラニン、ω-メチルアルギニン等)、リジンの模倣体又は誘導体((3-(3-メチル-3H-ジアジリン-3-イル)プロパミノ)カルボニル-L-リジン、Nε,Nε,Nε-トリメチルリジン等)、ヒスチジンの模倣体又は誘導体(2,5-ジ-ヨードヒスチジン、1-メチルヒスチジン等)、チロシンの模倣体又は誘導体(3-アミノチロシン、チロニン、3,5-ジニトロチロシン、3-ヒドロキシ-メチル-チロシン、O-ホスホ-L-チロシン等)、トリプトファンの模倣体又は誘導体(5-ヒドロキシトリプトファン、1-メチルトリプトファン等)、セリンの模倣体又は誘導体(β-(2-チエニル)-セリン、β-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-セリン、O-ホスホセリン等)、スレオニンの模倣体又は誘導体(アロ-スレオニン、O-ホスホスレオニン等)、プロリンの模倣体又は誘導体(ヒドロキシプロリン、3,4-デヒドロ-プロリン、ピログルタミン酸、チアプロリン、シス-オクタヒドロインドール-2-カルボン酸等)、ロイシン及びイソロイシンの模倣体又は誘導体(アロ-イソロイシン、ノルロイシン、4,5-デヒドロロイシン、(4S)-4-ヒドロキシ-L-イソロイシン等)、バリンの模倣体又は誘導体(ノルバリン、γ-ヒドロキシバリン等)、シトルリンの模倣体又は誘導体(チオシトルリン、ホモシトルリン等)、システインの模倣体又は誘導体(ペニシラミン、セレノシステイン、ブチオニン-スルホキシミン等)、メチオニンの模倣体又は誘導体(S-メチルメチオニン、L-メチオニンスルホン、L-メチオニンスルホキシド、L-メチオニンスルホ-キシミン、セレノメチオニン等)、アスパラギン酸の模倣体又は誘導体(DL-スレオ-β-ヒドロキシアスパラギン酸、L-アスパラギン酸β-メチルエステル等)、グルタミン酸の模倣体又は誘導体(γ-メチレングルタミン酸、γ-カルボキシグルタミン酸等、γ-ヒドロキシグルタミン酸、L-グルタミン酸5-メチルエステル、L-2-アミノヘプタン二酸等)、アスパラギンの模倣体又は誘導体(L-スレオ-3-ヒドロキシアスパラギン、N,N-ジメチル-L-アスパラギン、L-2-アミノ-2-カルボキシエタンスルホンアミド、5-ジアゾ-4-オキソ-L-ノルバリン等)、グルタミンの模倣体又は誘導体(4-F-(2S,4R)-フルオログルタミン、γ-グルタミルメチルアミド、テアニン、L-グルタミン酸γ-モノヒドロキサメート等)、環状部分を含むアミノ酸(4-アミノピペリジン-4-カルボン酸、アゼチジン-2-カルボン酸、ピペコリン酸、1-アミノシクロペンタンカルボン酸、スピナシン等)、又は生体直交型部分を含むアミノ酸(プロパルギルグリシン、α-アリルグリシン、L-アジド-ホモアラニン、p-ベンゾイル-l-フェニルアラニン、p-2-フルオロアセチル-l-フェニルアラニン、(S)-2-アミノ-3-(4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)プロパン酸等)であり得るが、これらに限定されない。
【0084】
上述のα-アミノ酸の他に、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、1つ以上のβ-、γ-、δ-、又はε-アミノ酸を含んでいてもよい。従って、特定の実施形態においては、リンカーはペプチド模倣体であってもよい。ペプチド模倣体は、2つのα-アミノ酸間に形成される古典的なペプチド結合のみを含むのではなくてもよく、それぞれα-アミノ酸とβ-、γ-、δ-、若しくはε-アミノ酸との間又は2つのβ-、γ-、δ-、若しくはε-アミノ酸の間に形成される1つ以上のアミド結合を追加的に又は代わりに含んでいてもよい。従って、リンカーがペプチドであると記載されている本発明のいずれの例においても、リンカーはペプチド模倣体であってもよく、従って、α-アミノ酸のみからなるのではなく、代わりに1つ以上のβ-、γ-、δ-、若しくはε-アミノ酸又はアミノ酸として分類されない分子を含んでいてもよいことを理解されたい。本発明のリンカーに含まれ得るβ-、γ-、δ-、又はε-アミノ酸の例としては、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、6-アミノヘキサン酸、及びスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
更に、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、アミノ酸誘導体及び/又はアミノ酸模倣体を含み得る。(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)が1つ以上のアミノ酸誘導体を含む実施形態においては、アミノ酸誘導体は、ペプチド結合又はイソペプチド結合の形成を受けることができるように遊離アミノ基及びカルボキシル基を有することが好ましい。(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)が1つ以上のアミノ酸模倣体を含む実施形態においては、アミノ酸模倣体は、ペプチド結合又はイソペプチド結合の形成を受けることができるように遊離アミノ基及びカルボキシル基を有し得る。しかし、特定の実施形態においては、アミノ酸の模倣体又は誘導体は、ペプチド結合の形成を妨げない置換アミノ基を有していてもよい。このようなアミノ酸の模倣体又は誘導体の例は、サルコシン又はN-Me-ロイシン等のN-メチル化アミノ酸であってよい。
【0086】
(Sp)又は(Sp)に含まれるアミノ酸残基が末端アミノ酸残基である実施形態においては、末端アミノ酸残基は、修飾、保護、又は置換されたN末端アミノ基又はC末端カルボキシル基を含み得る。
【0087】
更に、アミノ酸の模倣体又は誘導体は、誘導体化されたアミノ基を含むアミノ酸、例えば、プロリン、又はアゼチジン-2-カルボン酸、ピペコリン酸、若しくはスピナシン等の他の環状アミノ酸の模倣体又は誘導体であってもよい。更に、アミノ酸模倣体は、標準的なアミノ酸のアミノ基及び/又はカルボキシル基に置き換わる他の官能基を含んでいてもよく、これにより、アミノ酸模倣体は、隣接するアミノ酸、アミノ酸誘導体、及び/又はアミノ酸模倣体との別の結合の形成を受け、ペプチド模倣体を形成することができるようになる。
【0088】
「アミノ酸模倣体」という用語は、本発明で使用される場合、特定のアミノ酸とは異なる構造を有するが、該特定のアミノ酸と同様に機能するので、該特定のアミノ酸を置換するために使用することができる化合物を指す。アミノ酸模倣体は、それが模倣するアミノ酸と少なくともある程度類似した構造的及び/又は機能的特徴を満たす場合、特定のアミノ酸と同様に機能するといわれる。「アミノ酸誘導体」という用語は、アミノ酸に含まれる1つ以上の官能基(複数可)が修飾又は置換されている、本明細書で定義されるアミノ酸を指す。アミノ酸誘導体は、タンパク質を構成するアミノ酸(proteinogenic amino acid)又は非標準アミノ酸の誘導体であることが好ましい場合がある。アミノ酸誘導体の任意の官能基が置換又は修飾されていてもよい。
【0089】
リンカーが1つ以上の末端アミノ酸残基(複数可)を含む実施形態においては、末端アミノ酸残基が保護されていてもよい。例えば、(Sp)がN末端アミノ酸残基を含む実施形態においては、N末端アミノ基が保護されていてもよい。例えば、特定の実施形態においては、スペーサー(Sp)に含まれるN末端アミノ酸残基がアセチル化されていてもよい。他の実施形態においては、リジン残基Kは、リンカーのN末端アミノ酸であり得る。そのような実施形態においては、リジン、リジン模倣体、又はリジン誘導体のN末端アミノ基は、例えばアセチル化によって保護されていてよい。特定の実施形態においては、連結部分B又はペイロードBは、アミノ酸であってもよく、又はアミノ酸をベースにしていてもよい。そのような実施形態においては、アミノ酸ベースのペイロード又は連結部分BのN末端アミノ基は、例えばアセチル化によって保護されていてよい。
【0090】
同様に、(Sp)がC末端アミノ酸残基を含む実施形態においては、C末端カルボキシル基が保護されていてもよい。例えば、特定の実施形態においては、スペーサー(Sp)のC末端アミノ酸残基がアミド化されていてもよい。他の実施形態においては、K残基はリンカーのC末端アミノ酸であり得る。そのような実施形態においては、リジン、リジン模倣体、又はリジン誘導体のC末端カルボキシル基は、例えばアミド化によって保護されていてよい。特定の実施形態においては、連結部分B又はペイロードBは、アミノ酸であってもよく、又はアミノ酸をベースにしていてもよい。そのような実施形態においては、アミノ酸ベースのペイロード又は連結部分BのC末端カルボキシル基は、例えばアミド化によって保護されていてよい。
【0091】
特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)はそれぞれ、アミノ酸誘導体及びアミノ酸模倣体を含む、0~12個のアミノ酸残基を含み得る。すなわち、特定の実施形態においては、(Sp)は、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、又は12個のアミノ酸残基を含んでいてよく、(Sp)は、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、又は12個のアミノ酸残基を含んでいてよく、(Sp)は、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、又は12個のアミノ酸残基を含んでいてよい。
【0092】
特定の実施形態においては、本発明は、リンカーが25個、20個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個以下のアミノ酸残基を含む、本発明に係る方法に関する。
【0093】
すなわち、特定の実施形態においては、リンカーは、アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含む、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、又は2個のアミノ酸残基を含み得る。アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含むリンカーに含まれるアミノ酸残基は、好ましくは、K残基中、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)中、並びに特定の実施形態においては、Bがアミノ酸ベースの連結部分又はペイロードである場合にはB中にも含まれるアミノ酸残基であることを理解されたい。
【0094】
特定の実施形態においては、リンカーは、アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含む、2~25個のアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態においては、リンカーは、2~20個の、アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含むアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態においては、リンカーは、2~15個の、アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含むアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態においては、リンカーは、2~10個の、アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含むアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態においては、リンカーは、3~10個の、アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含むアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態においては、リンカーは、3~8個の、アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含むアミノ酸残基を含み得る。他の実施形態においては、リンカーは、3~6個の、アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含むアミノ酸残基を含み得る。
【0095】
特定の実施形態においては、本発明は、リンカーの正味電荷が中性又は正である、本発明に係る方法に関する。
【0096】
特定の実施形態においては、リンカーは、ペプチドリンカー(又は本明細書に開示されるペプチド模倣体)である。すなわち、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、存在する場合、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体のみからなる。ペプチドの正味電荷は、通常、中性pH(7.0)で計算される。最も単純なアプローチでは、正に荷電したアミノ酸残基(Arg及びLys、及び任意でHis)の数と負に荷電したアミノ酸残基(Asp及びGlu)の数を足し、2つの群の差を計算することによって正味電荷を求める。リンカーが、荷電官能基が修飾又は置換されている非標準アミノ酸又はアミノ酸誘導体を含む場合、当業者は、中性pHにおける非標準アミノ酸又はアミノ酸誘導体の荷電を求める方法について認識している。
【0097】
特定の実施形態においては、ペイロード若しくは連結部分B、又は(Sp)、(Sp)、及び/若しくは(Sp)に含まれる任意の非アミノ酸部分もまた、リンカーの正味電荷に寄与し得る。しかし、当業者は、好ましくは中性pH(7.0)で、任意の非アミノ酸部分を含むリンカー全体の正味電荷を計算する方法について認識している。
【0098】
特定の実施形態においては、リンカーの正味電荷は、アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含むリンカーに含まれるアミノ酸残基のみに基づいて計算される。従って、特定の実施形態においては、本発明は、リンカーに含まれるアミノ酸残基の正味電荷が中性又は正である、本発明に係る方法に関する。
【0099】
特定の実施形態においては、本発明は、リンカーが負に荷電したアミノ酸残基を含まない、本発明に係る方法に関する。
【0100】
すなわち、リンカーは、アミノ酸模倣体及びアミノ酸誘導体を含む、負に荷電したアミノ酸残基を含んでいなくてもよい。負に荷電した有するアミノ酸残基とは、中性pH(7.0)で負電荷を有するアミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体である。負に荷電した標準アミノ酸は、グルタミン酸及びアスパラギン酸である。しかし、負に荷電した非標準アミノ酸、アミノ酸模倣体、及びアミノ酸誘導体は当技術分野で公知である。
【0101】
特定の実施形態においては、本発明は、リンカーが、残基K以外に少なくとも1つの正に荷電したアミノ酸残基を含む、本発明に係る方法に関する。すなわち、(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、少なくとも1つの正に荷電したアミノ酸を含み得る。特定の実施形態においては、(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、少なくとも1つのヒスチジン又はアルギニンの残基を含む。しかし、本明細書では、リンカーが配列モチーフRK(式中、Rは、アルギニン、アルギニン模倣体、又はアルギニン誘導体であり、Kは、リジン、リジン模倣体、又はリジン誘導体である)を含まないことが好ましい。すなわち、特に好ましい実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体を、80モル当量未満の該リンカーと接触させ;
該残基Kが、N末端のアルギニン、アルギニン模倣体、又はアルギニン誘導体に直接カップリングされていない方法に関する。
【0102】
特定の実施形態においては、(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、少なくとも1つのヒスチジン残基を含む。特定の実施形態においては、ヒスチジン残基は、リジン残基、リジン模倣体、又はリジン誘導体に直接連結される。すなわち、特定の実施形態においては、本発明に係るリンカーは、モチーフHKを含む。
【0103】
特定の実施形態においては、本発明は、トランスグルタミナーゼを用いて抗体-リンカーコンジュゲートを生成する方法であって、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むか又はからなるリンカーを抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートする工程を含み、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該抗体が、80モル当量未満の該リンカーと接触させられ;
該リンカーが、少なくとも1つのヒスチジン残基を含み、特に、該少なくとも1つのヒスチジン残基が、残基Kに直接連結され、特に、該リンカーが、配列モチーフHKを含む方法に関する。
【0104】
特定の実施形態においては、本発明は、以下の構造(N→C方向に示す):
(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp
を含むか又はからなるリンカーを含む抗体コンジュゲートであって、
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・(Sp)が、化学的スペーサーであるか又は存在せず;
・Kが、リジン、又はリジン誘導体、又はリジン模倣体であり;
・Bが、連結部分又はペイロードであり;
該リンカーが、該リジン残基、該リジン誘導体、又は該リジン模倣体の側鎖に含まれる第一級アミンを介して該抗体中に含まれるGln残基にコンジュゲートされ;
該リンカーが、少なくとも1つのヒスチジン残基を含み、特に、該少なくとも1つのヒスチジン残基が、残基Kに直接連結され、特に、該リンカーが、配列モチーフHKを含むコンジュゲートに関する。
【0105】
アミノ酸の模倣体及び誘導体を含むアミノ酸残基の他に又はその代わりに、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、非アミノ酸部分を含んでいてもよく、又はからなっていてもよい。
【0106】
すなわち、特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体のみからなっていなくてもよい。すなわち、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、非アミノ酸成分を含んでいてもよく、非アミノ酸成分のみからなっていてもよい。特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、アミノ酸成分及び非アミノ酸成分を含み得る。
【0107】
例えば、限定するものではないが、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)はそれぞれ、1~200個の原子の骨格を含む炭素、任意で、1つ以上の原子において置換された少なくとも10個の原子、例えば10~100個の原子又は20~100個の原子の骨格を含む炭素を含んでいてよく、任意で、該骨格を含む炭素は、直鎖状炭化水素であるか、あるいは環状基、対称若しくは非対称に分岐した炭化水素、単糖、二糖、直鎖状若しくは分岐したオリゴ糖(非対称に分岐又は対称に分岐)、他の天然の直鎖状若しくは分岐状オリゴマー(非対称に分岐又は対称に分岐)、又はより一般的には、任意の連鎖成長若しくは段階成長重合プロセスから得られる任意の二量体、三量体、若しくはそれ以上のオリゴマー(直鎖状、非対称に分岐、又は対称に分岐)を含む。
【0108】
(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、任意の直鎖状、分岐状及び/又は環状のC2-30アルキル、C2-30アルケニル、C2-30アルキニル、C2-30ヘテロアルキル、C2-30ヘテロアルケニル、C2-30ヘテロアルキニル(任意で、1つ以上の同素環式芳香族化合物ラジカル又は複素環式化合物ラジカルが挿入されていてもよい);特に、任意の直鎖状若しくは分岐状のC2-5アルキル、C5-10アルキル、C11-20アルキル、-O-C1-5アルキル、-O-C5-10アルキル、-O-C11-20アルキル、又は(CH-CH-O-)1-24、又は(CHx1-(CH-O-CH1-24-(CHx2-基(式中、x1及びx2は、独立して、0~20の範囲から選択される整数である)、アミノ酸、オリゴペプチド、糖鎖、サルフェート、ホスフェート、又はカルボキシレートであってよい。幾つかの実施形態においては、(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、C2-6アルキル基を含み得る。
【0109】
特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、ポリ(カルボキシベタインメタクリレート)(pCBMA)、ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリビニルピロリドン、又はポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)等の1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分又は同等の縮合ポリマーを含み得る。ポリエチレングリコール(PEG)は、工業製造から医薬品にいたる多くの用途を有するポリエーテル化合物である。PEGは、その分子量によってポリエチレンオキシド(PEO)又はポリオキシエチレン(POE)としても知られている。PEGの構造は、一般にH-(O-CH-CH-OHと表される。当業者は、縮合ポリマーをアミノ酸残基又はペイロードにカップリングすることができるように官能化する方法を認識している。
【0110】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、リンカーが1つ以上のPEG部分を含む、本発明に係る方法に関する。特定の実施形態においては、PEG部分は、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)中に含まれ得る。特定の実施形態においては、リンカー中に含まれる各PEG部分は、2~20個のエチレングリコールモノマー、2~15個のエチレングリコールモノマー、2~10個のエチレングリコールモノマー、又は2~5個のエチレングリコールモノマーを含み得る。特定の実施形態においては、PEG部分は、連結部分又はペイロードをK残基に直接接続させるために(Sp)に含まれる。特定の実施形態においては、PEG部分は、連結部分又はペイロードを(Sp)に含まれるアミノ酸残基に接続させるために(Sp)に含まれる。特定の実施形態においては、PEG部分は、K残基を自壊性部分に接続させ、次にペイロードに接続させるために(Sp)に含まれる。特定の実施形態においては、PEG部分は、(Sp)に含まれるアミノ酸残基を自壊性部分に接続させ、次にペイロードに接続させるために(Sp)に含まれる。
【0111】
特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、デキストランを含み得る。「デキストラン」という用語は、本発明で使用される場合、様々な長さの鎖で構成される複雑な分岐グルカンである複合体を指し、3~2000kDaの範囲の重量を有し得る。直鎖は、典型的には、グルコース分子間のα-1,6グリコシド結合からなるが、分枝はα-1,3結合から始まる。デキストランは、例えば乳酸菌によってスクロースから合成され得る。本発明の文脈において、担体として使用されるデキストランは、好ましくは約15~1500kDaの分子量を有し得る。
【0112】
特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、オリゴヌクレオチドを含み得る。「オリゴヌクレオチド」という用語は、本発明で使用される場合、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)のいずれかのオリゴマー又はポリマー、並びに天然には存在しないオリゴヌクレオチドを指す。安定性が高いことから、オリゴヌクレオチドは、好ましくはDNAのポリマーである。
【0113】
特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、存在する場合、アミノ酸の模倣体及び誘導体を含むアミノ酸残基とPEG部分とのみからなる。特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、存在する場合、アミノ酸の模倣体及び誘導体を含むアミノ酸残基のみからなる。特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)に含まれる全てのアミノ酸残基は、α-L-アミノ酸である。すなわち、特定の実施形態においては、ペイロード又は連結部分Bを除くリンカーは、アミノ酸残基のみからなる。特定の実施形態においては、ペイロード又は連結部分Bを除くリンカーは、α-L-アミノ酸残基のみからなる。このようなペプチドベースのリンカーは、N末端及び/又はC末端に保護基を含んでいてもよい。すなわち、N末端アミノ基はアセチル化されていてもよい及び/又はC末端カルボキシル基はアミド化されていてもよい。
【0114】
化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、(Sp)は、同一の構造を有していてもよいことに留意しなければならない。しかし、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/若しくは(Sp)のそれぞれが異なる構造を有すること並びに/又は化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/若しくは(Sp)の全てが同時には存在しないことが好ましい。すなわち、特定の実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)のうちの1つ又は2つだけがリンカー中に存在していてよい。
【0115】
特定の実施形態においては、K残基は、1つ以上の小さな疎水性アミノ酸残基に直接接続されてよい。例えば、特定の実施形態においては、K残基は、1つ以上のアラニン残基に直接接続されてよい。
【0116】
本発明では、リンカーは、残基Kの側鎖に含まれる第一級アミンを介して抗体にコンジュゲートすることが好ましい。従って、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、及び/又は(Sp)は、トランスグルタミナーゼベースのコンジュゲーション反応において追加のアミン供与体として機能し得る追加のリジン残基、リジン模倣体、又はリジン誘導体を含まないことが好ましい。他の実施形態においては、リンカーに含まれる任意の遊離N末端アミノ基は、トランスグルタミナーゼの基質として機能することができないように置換、例えばアセチル化されていてもよい。
【0117】
本発明に係るリンカーは、少なくとも1つの連結部分又はペイロードBを更に含む。本発明に係るリンカーは、一段階コンジュゲーションプロセスでペイロードを抗体に直接コンジュゲートさせるために使用することができる。他の実施形態においては、第1の段階で1つ以上の連結部分を含むリンカーを抗体にコンジュゲートさせ、次いで、第2の段階で1つ以上のペイロードを抗体-リンカーコンジュゲートに連結させてよい。以下の表1は、本明細書で使用される場合の2つの用語を明確にしたものである。
【0118】
【表1】
【0119】
特定の実施形態においては、リンカーは、1つ以上の連結部分Bを含み得る。従って、特定の実施形態においては、本発明は、Bが連結部分である、本発明に係る方法に関する。
【0120】
「連結部分」とは、本発明で使用される場合、一般に、少なくとも二官能性の分子を指す。本発明では、連結部分は、連結部分を本発明のリンカーにカップリングさせる第1の官能基と、リンカーが抗体にコンジュゲートする前又は後に追加の分子をリンカーにカップリングさせるために使用することができる第2の官能基とを含む。特定の実施形態においては、本発明の連結部分は、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体である。そのような実施形態においては、連結部分は、好ましくはそのアミノ基を介してリンカーに接続されるが、アミノ酸側鎖に含まれる官能基は、追加の分子をリンカーにカップリングするために使用することができる。あるいは、連結部分は、そのカルボキシル基を介してリンカーに接続されてもよいが、アミノ酸側鎖に含まれる官能基は、追加の分子をリンカーにカップリングするために使用することができる。
【0121】
特定の実施形態においては、本発明は、連結部分Bは、
・生体直交型マーカー基、又は
・架橋のための非生体直交型実体
を含む、本発明に係る方法に関する。
【0122】
「生体直交型マーカー基(bioorthogonal marker group)」という用語は、ネイティブな生化学的プロセスを妨げることなく生物系内で化学反応を起こすことができる反応性基を命名するためにSletten及びBertozzi(A Bioorthogonal Quadricyclane Ligation.J Am Chem Soc 2011,133(44),17570-17573)によって確立された。「架橋のための非直交型実体(non-bio-orthogonal entity for crosslinking)」とは、適合性のある第2の官能基を含むペイロードに化学的又は酵素的に架橋され得る第1の官能基を含むか又はからなる任意の分子であってよい。架橋反応が非生体直交型反応である場合であっても、反応によってペイロードのリンカーへの架橋以外の付加的な修飾が抗体に導入されないことが好ましい。上記の観点から、連結部分Bは、「生体直交型マーカー基」又は「非生体直交型実体」からなっていてもよく、「生体直交型マーカー基」又は「非生体直交型実体」を含んでいてもよい。例えば、連結部分Lys(N)の場合、Lys(N)全体及びアジド基のみの両方を本発明における生体直交型マーカー基とみなすことができる。Lys(N)とは、6-アジド-L-リジンを指し、K(N)と略されることもある。
【0123】
特定の実施形態においては、本発明は、生体直交型マーカー基又は架橋のための非生体直交型実体が、
・-N-N≡N又は-N
・Lys(N);
・テトラジン;
・アルキン;
・歪みシクロオクチン;
・BCN;
・歪みアルケン;
・光反応性基;
・アルデヒド;
・アシルトリフルオロボレート;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・シクロペンタジエン/スピロロシクロペンタジエン;
・チオ選択的求電子剤;
・-SH;及び
・システイン
からなる群から選択される少なくとも1つの分子又は部分からなるか又は含む、本発明に係る方法に関する。
【0124】
リンカー中に含まれる生体直交型マーカー基又は架橋のための非生体直交型実体は、例えば、表2に示す結合反応のいずれかに関与し得る。
【0125】
【表2】
【0126】
連結部分Bは、表2において「結合パートナー1」又は「結合パートナー2」と呼ばれるものであってもよく、又は含んでいてもよい。
【0127】
特定の実施形態においては、連結部分Bは、遊離スルフヒドリル基を有するシステイン、システイン模倣体、又はシステイン誘導体であり得る。
【0128】
このようなCys残基(又は模倣体又は誘導体)の遊離スルフヒドリル基は、マレイミド等のチオ選択的求電子剤を含むペイロードコンストラクトにコンジュゲートすることができる。マレイミド部分を含む毒素コンストラクトは、Adcetrisのように高頻度で使用されており、医療当局に承認もされている。従って、MMAE毒素を含む毒素コンストラクトは、本発明のリンカーにおけるCys残基の遊離スルフヒドリル基にカップリングされ得る。
【0129】
本発明の方法では、マレイミドの代わりに3-アリールプロピオニトリル(APN)又はホスホンアミデート等の他のチオ選択的求電子剤を使用してもよいことに留意しなければならない。
【0130】
従って、本発明に係るリンカーにおいてCys残基を提供することは、既製品の毒素-マレイミドコンストラクトを用いて抗体-ペイロードコンジュゲートを作製することができるようになる又はより一般的には、Cys-マレイミド結合化学の利点を十分に活用することができるという利点がある。同時に、脱グリコシル化する必要がない既製品の抗体を使用することもできる。特定の実施形態においては、Cys残基は、アミノ酸ベースのリンカーにおいてC末端又は鎖内に存在してよい。
【0131】
別の実施形態においては、連結部分Bは、アジド基を含んでいてもよい。当業者は、6-アジド-リジン(Lys(N))又は4-アジド-ホモアラニン(Xaa(N))等の、本発明に係るリンカーに組み込むことができるアジド基を含む分子について認識している。アジド基を含む連結部分は、例えば、歪み促進型アジド-アルキン環化付加(SPAAC)、銅触媒アジド-アルキン環化付加(CuAAC)、又はシュタウディンガーライゲーション等の様々な生体直交型反応において基質として使用することができる。例えば、特定の実施形態においては、DBCO、DIBO、BCN、又はBARAC等のシクロオクチン誘導体を含むペイロードをSPAACによってアジド基を含むリンカーにカップリングすることができる。
【0132】
更に別の実施形態においては、連結部分Bは、テトラジン基を含んでいてもよい。当業者は、本発明に係るリンカーに組み込むことができるテトラジンを含む分子、好ましくはテトラジン基を含むアミノ酸誘導体について認識している。テトラジンを含む連結部分は、生体直交型テトラジンライゲーションにおいて基質として使用することができる。例えば、特定の実施形態においては、シクロプロペン、ノルボレン、ノルボレン誘導体、又はビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)等のシクロオクチン基を含むペイロードを、テトラジン基を含むリンカーにカップリングさせることができる。
【0133】
特定の実施形態においては、連結部分Bは、シクロペンタジエン誘導体等の環状ジエンを含んでいてもよい。マレイミドを含むペイロード分子に連結させることができる可能性のあるシクロペンタジエン誘導体は、Amant et al.,Tuning the Diels-Alder Reaction for Bioconjugation to Maleimide Drug-Linkers;Bioconjugate Chem.2018,29,7,2406-2414及びAmant et al.,A Reactive Antibody Platform for One-Step Production of Antibody-Drug Conjugates through a Diels-Alder Reaction with Maleimide;Bioconjugate Chem.2019,30,9,2340-2348によって記載されている。
【0134】
特定の実施形態においては、連結部分Bは、光反応性基を含んでもよい。「光反応性基」という用語は、本発明で使用される場合、活性種の生成を受けるために、適用される外部エネルギー源に応答し、その結果、隣接する化学構造(例えば、引き抜き可能な水素)に共有結合する化学基を指す。光反応性基の例は、限定されるものではないが、アリールアジド、例えば、フェニルアジド、o-ヒドロキシフェニルアジド、m-ヒドロキシフェニルアジド、テトラフルオロフェニルアジド、o-ニトロフェニルアジド、m-ニトロフェニルアジド、又はアジド-メチルクマリン、ジアジリン、ソラレン、又はベンゾフェノンである。
【0135】
特定の実施形態においては、本発明は、連結部分Bに1つ以上のペイロードをコンジュゲートする更なる工程を含む、本発明に係る方法に関する。
【0136】
本発明は、一段階プロセスで1つ以上のペイロードを含むリンカーを抗体に直接コンジュゲートする代わりに、特定の実施形態においては、第1の段階で少なくとも1つの連結部分Bを含むリンカーを抗体にコンジュゲートさせ、続いて第2の段階で1つ以上のペイロードを連結部分Bにカップリングさせ得る二段階プロセスに言及する。
【0137】
「ペイロード」という用語は、本発明で使用される場合、化学的に合成可能な低分子量の分子又は化学的実体、及び宿主細胞の発酵によって生成する必要があるか又は化学的に合成することも可能でありかつ抗体に新規の機能性を付与するより大きな分子又は生物学的実体を含む、任意の天然に存在するか又は合成的に生成される分子を表す。ペイロードは、リンカーに含まれる連結部分あるいは化学的スペーサー(Sp)及び/若しくは(Sp)又はK残基等のリンカーの他の部分にペイロードをカップリングすることを可能にする更なる構造又は官能基を含んでいてもよいことを理解されたい。
【0138】
二段階コンジュゲーションプロセスにおいて、ペイロードは、当技術分野で公知の任意の好適な方法によって連結部分に連結され得る。好ましくは、ペイロードは、本明細書に開示された生体直交型マーカー基又は架橋のための非生体直交型実体のいずれかに連結され得る。すなわち、ペイロードは、好ましくは、少なくとも1つの連結部分Bに含まれる生体直交型マーカー基又は架橋のための非生体直交型実体と適合性のある官能基を含む。
【0139】
ペイロードを連結部分Bに含まれる生体直交型マーカー基に連結させるために使用され得る幾つかの生体直交型反応は、当技術分野で公知である。例えば、アジドとシクロオクチンとの間(銅フリークリックケミストリーとも呼ばれる、Baskin et al(“Copper-free click chemistry for dynamic in vivo imaging”.Proceedings of the National Academy of Sciences.104(43):16793-7))、ニトロンとシクロオクチンとの間(Ning et al(“Protein Modification by Strain-Promoted Alkyne-Nitrone Cycloaddition”.Angewandte Chemie International Edition.49(17):3065))の1,3-双極性付加環化、アルデヒド及びケトンからのオキシム/ヒドラゾン形成(Yarema,et al(“Metabolic Delivery of Ketone Groups to Sialic Acid Residues.Application To Cell Surface Glycoform Engineering”.Journal of Biological Chemistry.273(47):31168-79))、テトラジンライゲーション(Blackman et al(“The Tetrazine Ligation:Fast Bioconjugation based on Inverse-electron-demand Diels-Alder Reactivity”.Journal of the American Chemical Society.130(41):13518-9))、イソニトリルベースのクリック反応(Stockmann et al(“Exploring isonitrile-based click chemistry for ligation with biomolecules”.Organic & Biomolecular Chemistry.9(21):7303))、そして最も最近では、クアドリシクランライゲーション(Sletten & Bertozzi(JACS,A Bioorthogonal Quadricyclane Ligation.J Am Chem Soc 2011,133(44),17570-17573))、銅(I)触媒アジド-アルキン付加環化(CuAAC、Kolb & Sharpless(“The growing impact of click chemistry on drug discovery”.Drug Discov Today.8(24):1128-1137))、歪み促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC、Agard et al(“A Comparative Study of Bioorthogonal Reactions with Azides”.ACS Chem.Biol.1:644-648))、又は歪み促進型アルキン-ニトロン付加環化(SPANC、MacKenzie et al(“Strain-promoted cycloadditions involving nitrones and alkynes-rapid tunable reactions for bioorthogonal labeling”.Curr Opin Chem Biol.21:81-8))を含む、生体直交性の要件を満たす化学的ライゲーション戦略が数多く開発されている。これらの文書は全て、十分に実施可能な程度の開示を提供し、冗長な繰り返しを避けるために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0140】
ペイロードは、好ましくは、トランスグルタミナーゼを用いて本発明に係るリンカーが抗体のGln残基にコンジュゲートされた後に、該リンカーに含まれる生体直交型マーカー基又は架橋のための非生体直交型実体にカップリングされることを理解されたい。しかし、本発明は、第1の段階で少なくとも1つの連結部分Bを含むリンカーに1つ以上のペイロードをカップリングさせ、第2の段階で、得られたリンカー-ペイロードコンストラクトを抗体にトランスグルタミナーゼによってコンジュゲートさせる、抗体-リンカーコンジュゲートも包含する。
【0141】
特定の実施形態においては、本発明は、1つ以上のペイロードがクリック反応を介して連結部分Bにコンジュゲートされる、本発明に係る方法に関する。
【0142】
すなわち、1つ以上のペイロードは、クリック反応、特に本明細書に開示されたクリック反応のいずれかにおいて、連結部分Bに連結され得る。
【0143】
特に好ましい実施形態においては、少なくとも1つのペイロードは、チオール-マレイミドコンジュゲーションを介してリンカーに含まれる連結部分Bにコンジュゲートされ得る。すなわち、特定の実施形態においては、ペイロードはマレイミド基を含んでいてよく、連結部分Bはチオール基を含む分子、例えば限定するものではないが、システイン残基又はホモシステイン等のシステイン模倣体であってよい。しかし、Bは、遊離チオール基を含む非アミノ酸分子であってもよい。別の実施形態においては、ペイロードは遊離チオール基を含んでいてよく、連結部分Bはマレイミド基を含んでいてよい。
【0144】
別の特に好ましい実施形態においては、少なくとも1つのペイロードは、歪み促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)を介してリンカーに含まれる連結部分Bにコンジュゲートされ得る。すなわち、特定の実施形態においては、ペイロードはアルキン基、例えば限定するものではないがシクロオシチン基を含んでいてよく、連結部分Bはアジド基を含む分子、例えば限定するものではないが、本明細書に開示されるリジン誘導体Lys(N)であってよい。しかし、Bは、遊離アジド基を含む非アミノ酸分子であってもよい。別の実施形態においては、ペイロードはシクロオクチン基等のアルキン基を含んでいてよく、連結部分Bはアジド基を含んでいてよい。
【0145】
リンカーにおける連結部分とペイロードにおける官能基との間のクリック反応の他に、ペイロードは、当技術分野で公知の任意の酵素的又は非酵素的反応によって連結部分に共有結合することができる。
【0146】
ペイロードは共有結合を介して連結部分に連結されることが好ましい。しかし、特定の実施形態においては、ペイロードは、強力な非共有結合を介して連結部分に連結されてもよい。すなわち、特定の実施形態においては、連結部分Bは、限定するものではないが、リジン誘導体ビオシチン等のビオチン部分を含んでいてよい。このような実施形態においては、ストレプトアビジン部分を含むペイロードをビオチン部分を含むリンカーに連結させてよい。
【0147】
特定の実施形態においては、本発明は、Bがペイロードである、本発明に係る方法に関する。
【0148】
特定の実施形態においては、ペイロードを一段階プロセスで抗体にコンジュゲートすることができるように、ペイロードは予めリンカーの一部であってもよい。このような実施形態においては、リンカーは、好ましくは化学合成によってリンカーにカップリングされる。ペイロードは、好ましくは、リンカーに含まれる化学的スペーサーに又はK残基に直接カップリングされる。ペイロードがアミノ酸の模倣体及び誘導体を含むアミノ酸残基にカップリングされる実施形態においては、ペイロードは、アミノ酸残基のC末端カルボキシル基又はN末端アミノ基にカップリングし得る。あるいは、ペイロードは、アミノ酸残基の側鎖に含まれる官能基にカップリングしてもよい。当業者は、カルボキシル基、アミノ基、又はアミノ酸側鎖とカップリングすることができるようにペイロードを官能化する方法を認識している。
【0149】
更に、当業者は、化学合成によってペイロードをアミノ酸ベースのリンカーにカップリングさせる方法を認識している。例えば、アミンを含むペイロード、又はチオールを含むペイロード(例えば、マイタンシン類似体の場合)、又はヒドロキシルを含有するペイロード(例えば、SN-38類似体の場合)は、化学合成によってアミノ酸ベースのリンカーのC末端に結合させることができる。しかし、当業者は、化学合成によってペイロードをアミノ酸又はアミノ酸誘導体のN末端、C末端、又は側鎖にカップリングするために利用することができる更なる反応及び反応性基を認識している。化学合成によってペイロードをアミノ酸ベースのリンカーにカップリングさせるために使用することができる典型的な反応としては、限定するものではないが、ペプチドカップリング、活性化エステルカップリング(NHSエステル、PFPエステル)、クリック反応(CuAAC、SPAAC)、マイケル付加(チオールマレイミドコンジュゲーション)が挙げられる。ペイロードのペプチドへのカップリングについては、例えば、Costoplus et al.(Peptide-Cleavable Self-immolative Maytansinoid Antibody-Drug Conjugates Designed To Provide Improved Bystander Killing.ACS Med Chem Lett.2019 Sep 27;10(10):1393-1399)、Sonzini et al.(Improved Physical Stability of an Antibody-Drug Conjugate Using Host-Guest Chemistry.Bioconjug Chem.2020 Jan 15;31(1):123-129)、Bodero et al.(Synthesis and biological evaluation of RGD and isoDGR peptidomimetic-α-amanitin conjugates for tumor-targeting.Beilstein J.Org.Chem.2018,14,407-415)、Nunes et al.(Use of a next generation maleimide in combination with THIOMABTM antibody technology delivers a highly stable,potent and near homogeneous THIOMABTM antibody-drug conjugate(TDC).RSC Adv.,2017,7,24828-24832)、Doronina et al.(Enhanced activity of monomethylauristatin F through monoclonal antibody delivery:effects of linker technology on efficacy and toxicity.Bioconjug Chem.2006 Jan-Feb;17(1):114-24)、Nakada et al.(Novel antibody drug conjugates containing exatecan derivative-based cytotoxic payloads.Bioorg Med Chem Lett.2016 Mar 15;26(6):1542-1545)、及びDickgiesser et al.(Site-Specific Conjugation of Native Antibodies Using Engineered Microbial Transglutaminases.Bioconjug Chem.2020 Mar 12.doi:10.1021/acs.bioconjchem.0c00061)によって、先行技術において広範囲に記載されている。
【0150】
ペイロードは、本発明に係るペプチドベースのリンカー又はペプチドを含むリンカーのN末端又はC末端にカップリングできることを理解されたい。特定の実施形態においては、ペイロードは、ペプチド又はアミノ酸残基のN末端アミノ基又はC末端カルボキシル基に直接カップリングし得る。
【0151】
当業者は、ペイロードをアミノ酸残基にカップリングするのに適した反応性基を認識している。例えば、アミンを含むペイロードは、アミド結合を介してアミノ酸残基のC末端カルボキシル基にカップリングすることができる。あるいは、チオール基又は及びヒドロキシル基を含むペイロードは、それぞれチオエステル又はエステル結合を介してアミノ酸のC末端カルボキシル基にカップリングすることができる。カルボン酸基を含むペイロードは、アミド結合を介してアミノ酸残基のN末端アミノ基にカップリングすることができる。
【0152】
特定の実施形態においては、ペイロードは、本発明に係るリンカーに含まれるペプチド又はアミノ酸残基のN末端又はC末端に間接的にカップリングすることができる。当業者は、ペイロードを本発明に係るリンカーに含まれるアミノ酸残基のN末端アミノ基又はC末端カルボキシル基にカップリングするために使用することができるリンカー分子について認識している。
【0153】
特定の実施形態においては、ヒドロキシル基を含むペイロードは、リンカー分子を介してアミノ酸残基のN末端にカップリングすることができる。例えば、ヒドロキシル基を含むペイロードは、カルバメートリンカー分子を介してN末端アミノ基にカップリングすることができる。
【0154】
特定の実施形態においては、チオール基を含むペイロードは、リンカー分子を介してアミノ酸残基のN末端にカップリングすることができる。例えば、チオール基を含むペイロードは、チオカルバメートリンカー分子を介してN末端アミノ基にカップリングすることができる。あるいは、チオール基を含むペイロードは、カルボキシル基及びチオール基を含むアルキルリンカー分子を介してN末端アミノ基にカップリングすることもできる。特定の実施形態においては、アルキルリンカー分子は、ペイロードが3-メルカプトプロピオン酸リンカー分子に含まれるチオール基とジスルフィド結合を形成する3-メルカプトプロピオン酸リンカー分子であってもよい。
【0155】
特定の実施形態においては、アミド基を含むペイロードは、リンカー分子を介してアミノ酸残基のN末端にカップリングすることができる。例えば、アミン基を含むペイロードは、ペイロード及びN末端アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成するジカルボン酸リンカー分子を介してN末端アミノ基にカップリングすることができる。本発明でリンカー分子として使用することができるジカルボン酸の例は、限定するものではないが、コハク酸又はピメリン酸である。
【0156】
本発明に係るリンカーに含まれるアミノ酸残基のN末端にペイロードを間接的にカップリングするための代替リンカー分子又は本発明に係るリンカーに含まれるアミノ酸残基のC末端にペイロードを間接的にカップリングするのに適したリンカー分子は、当技術分野において記載されており、本発明に包含される。
【0157】
特定の実施形態においては、本発明は、ペイロードが
・毒素;
・サイトカイン;
・成長因子;
・放射性核種;
・ホルモン;
・抗ウイルス剤;
・抗菌剤;
・蛍光色素;
・免疫調節/免疫賦活剤;
・半減期延長部分;
・溶解度増大部分;
・ポリマー-毒素コンジュゲート;
・核酸;
・ビオチン又はストレプトアビジン部分;
・ビタミン;
・タンパク質分解剤(「PROTAC」);
・標的結合部分;及び/又は
・抗炎症剤
のうちの少なくとも1つを含む本発明に係る方法に関する。
【0158】
本明細書に開示されるペイロードのいずれか1つを、本明細書に開示される一段階コンジュゲーションプロセスで使用するためにリンカーに直接カップリングさせてもよく、又は本明細書に開示される二段階プロセスの一部として作製された抗体-リンカーコンジュゲートに含まれる連結部分に連結させてもよい。
【0159】
特定の実施形態においては、ペイロードはサイトカインであってもよい。「サイトカイン」という用語は、本発明で使用される場合、他の細胞の機能に影響を与え、免疫又は炎症応答における細胞間の相互作用を調節する任意の分泌ポリペプチドを意味する。サイトカインとしては、それを生成する細胞にかかわらず、モノカイン、リンホカイン、及びケモカインが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、モノカインは、一般に単球によって産生及び分泌されるといわれているが、ナチュラルキラー細胞、線維芽細胞、好塩基球、好中球、内皮細胞、脳星状細胞、骨髄間質細胞、表皮ケラチノサイト、及びBリンパ球等の他の多くの細胞もモノカインを産生する。リンホカインは、一般にリンパ球細胞によって産生されるといわれている。サイトカインの例としては、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、及び腫瘍壊死因子β(TNFβ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
特定の実施形態においては、ペイロードは抗炎症剤であってもよい。「抗炎症剤」という用語は、本発明で使用される場合、その主な作用機序及び使用が炎症を治療する領域におけるものである剤のクラスに加えて、有用な抗炎症効果を有する別の治療クラスからの任意の他の剤も意味する。このような抗炎症剤としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、マクロライド系抗生物質、及びスタチン等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、NSAIDとしては、サリチル酸塩(例えば、アスピリン)、アリールプロピオン酸(例えば、イブプロフェン)、アントラニル酸(例えば、メフェナム酸)、ピラゾール(例えば、フェニルブタゾン)、環状酢酸(インドメチシン)、及びオキシカム(例えば、ピロキシカム)が挙げられる、これらに限定されない。好ましくは、本発明の方法において使用するための抗炎症剤としては、スリンダク、ジクロフェナク、テノキシカム、ケトロラク、ナプロキセン、ナブメトン、ジフルニサル、ケトプロフェン、アリールプロピオン酸、テニダップ、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、エトリコキシブ、バルデコキシブ、メトトレキサート、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、エリスロマイシン、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ベノキサプロフェン、デクスケトプロフェン、トルフェナム酸、ニメスリド、及びオキサプロジンが挙げられる。
【0161】
特定の実施形態においては、抗炎症剤は、抗炎症性サイトカインであってもよく、これは、標的特異的抗体にコンジュゲートしたとき、例えば自己免疫疾患によって引き起こされる炎症を改善することができる。抗炎症活性を有するサイトカインは、特に限定されないが、IL-1RA、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、又はTGF-βであってよい。
【0162】
特定の実施形態においては、ペイロードは成長因子であってもよい。「成長因子」という用語は、本発明で使用される場合、細胞の成長、増殖、細胞分化、及び/又は細胞成熟を刺激することができる天然に存在する物質を指す。成長因子は、タンパク質又はステロイドホルモンの形態で存在する。成長因子は、様々な細胞プロセスを制御するために重要である。成長因子は、典型的には、細胞間のシグナル伝達分子として作用する。しかし、細胞の成長、増殖、細胞分化、及び細胞成熟を促進する能力は成長因子によって異なる。成長因子の例の非限定的なリストには、塩基性線維芽細胞成長因子、アドレノメデュリン、アンジオポエチン、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質、脳由来神経栄養因子、表皮成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、成長分化因子-9、肝細胞成長因子、肝細胞がん由来成長因子、インスリン成長因子、インスリン様成長因子、遊走刺激因子、ミオスタチン、神経成長因子、及び他のニューロトロフィン、血小板由来成長因子、トランスフォーミング成長因子α、トランスフォーミング成長因子β、腫瘍壊死因子α、血管内皮成長因子、胎盤成長因子、ウシ胎児ソマトトロフィン、及びサイトカイン(例えば、IL-3及びIL-6についてはIL-1-補因子、IL-2-t細胞成長因子、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、並びにIL-7等)が含まれる。
【0163】
特定の実施形態においては、ペイロードはホルモンであってもよい。「ホルモン」という用語は、本発明で使用される場合、生物の他の部分の細胞に影響を与えるメッセージを発信する、身体のある部分における細胞又は腺によって放出される化学物質を指す。本発明において有用なホルモンの例は、限定されるものではないが、メラトニン(MT)、セロトニン(5-HT)、チロキシン(T4)、トリヨードチロニン(T3)、エピネフリン又はアドレナリン(EPI)、ノルエピネフリン又はノルアドレナリン(NRE)、ドーパミン(DPM又はDA)、抗ミュラー管ホルモン又はミュラー管抑制ホルモン(AMH)、アディポネクチン(Acrp30)、副腎皮質刺激ホルモン又はコルチコトロピン(ACTH)、アンジオテンシノーゲン及びアンジオテンシン(AGT)、抗利尿ホルモン又はバソプレシン(ADH)、心房性ナトリウム利尿ペプチド又はアトリオペプチン(ANP)、カルシトニン(CT)、コレシストキニン(CCK)、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、エリスロポエチン(EPO)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ガストリン(GRP)、グレリン、グルカゴン(GCG)、ゴナドトロフィン放出ホルモン(GnRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヒト絨毛性ゴナドトロフィン(hCG)、ヒト胎盤性ラクトゲン(HPL)、成長ホルモン(GH又はhGH)、インヒビン、インスリン(INS)、インスリン様成長因子又はソマトメジン(IGF)、レプチン(LEP)、黄体形成ホルモン(LH)、メラノサイト刺激ホルモン(MSH又はα-MSH)、オレキシン、オキシトシン(OXT)、副甲状腺ホルモン(PTH)、プロラクチン(PRL)、リラキシン(RLN)、セクレチン(SCT)、ソマトスタチン(SRIF)、トロンボポエチン(TPO)、甲状腺刺激ホルモン又はサイロトロピン(TSH)、サイロトロピン放出ホルモン(TRH)、コルチゾール、アルドステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン(DHT)、エストロン、エストリオール(E3)、プロゲステロン、カルシトリオール、カルシジオール、プロスタグランジン(PG)、ロイコトリエン(LT)、プロスタサイクリン(PGI2)、トロンボキサン(TXA2)、プロラクチン放出ホルモン(PRH)、リポトロピン(PRH)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、神経ペプチドY(NPY)、ヒスタミン、エンドセリン、膵臓ポリペプチド、レニン、並びにエンケファリンである。
【0164】
特定の実施形態においては、ペイロードは抗ウイルス剤であってもよい。「抗ウイルス剤」という用語は、本発明で使用される場合、哺乳動物におけるウイルスの形成及び/又は複製を阻害するのに有効な剤(化合物又は生物学的)を意味する。これには、哺乳動物におけるウイルスの形成及び/又は複製に必要な宿主又はウイルスの機構のいずれかに干渉する剤が含まれる。抗ウイルス剤としては、例えば、リバビリン、アマンタジン、VX-497(メリメポディブ、Vertex Pharmaceuticals)、VX-498(Vertex Pharmaceuticals)、レボビリン、ビラミジン、セプレン(マキサミン)、XTL-001及びXTL-002(XTL Biopharmaceuticals)が挙げられる。
【0165】
特定の実施形態においては、ペイロードは抗菌剤であってもよい。「抗菌剤」という用語は、本発明で使用される場合、(i)細菌の成長を阻害、低減、若しくは防止する、(ii)対象において感染を生じさせる細菌の能力を阻害若しくは低下させる、又は(iii)環境において増殖又は感染性を維持する細菌の能力を阻害若しくは低下させることが可能な任意の物質、化合物、物質の組み合わせ、又は化合物の組み合わせを指す。「抗菌剤」という用語は、細菌の感染性又は病原性を低下させることができる化合物も指す。
【0166】
特定の実施形態においては、ペイロードは免疫調節剤であってもよい。「免疫調節剤」という用語は、併用療法について本発明で使用される場合、宿主の免疫系を抑制、マスク、又は増強する作用を有する物質を指す。免疫調節剤の例としては、サイトカイン、ペプチド模倣体、及び抗体(例えば、ヒト、ヒト化、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、Fv、ScFv、Fab若しくはF(ab)2の断片、又はエピトープ結合断片)等のタンパク質性剤、核酸分子(例えば、アンチセンス核酸分子、iRNA、及び三重らせん)、低分子、有機化合物、並びに無機化合物が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、免疫調節剤としては、メトトレキサート、レフルノミド、シクロホスファミド、サイトキサン、イムラン、シクロスポリンA、ミノサイクリン、アザチオプリン、抗生物質(例えば、FK506(タクロリムス))、メチルプレドニゾロン(MP)、コルチコステロイド、ステロイド、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナール、マロノニトリロアミン(例えば、レフルナミド)、T細胞受容体調節因子、及びサイトカイン受容体調節因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
特定の実施形態においては、免疫調節剤は免疫賦活剤であってもよい。「免疫賦活剤」という用語は、本発明で使用される場合、好ましくは、免疫応答(例えば、特定の病原体に対する免疫応答)を惹起し得る任意の物質又は物質を指す。免疫細胞活性化化合物としては、Toll様受容体(TLR)アゴニストが挙げられる。このようなアゴニストとしては、病原体関連分子パターン(PAMP)、例えば細菌由来の免疫調節因子(別名、危険シグナル)等の感染模倣組成物、及び損傷関連分子パターン(DAMP)、例えばストレス又は損傷を受けた細胞を模倣する組成物が挙げられる。TLRアゴニストとしては、核酸又は脂質組成物(例えば、モノホスホリルリピドA(MPLA))が挙げられる。一例では、TLRアゴニストは、シトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)、PEI-CpG-ODN等のポリ(エチレンイミン)(PEI)-縮重オリゴヌクレオチド(ODN)、又は二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)等のTLR9アゴニストを含む。別の例では、TLRアゴニストは、ポリイノシン-ポリシチジル酸(ポリ(I:C))、PEI-ポリ(I:C)、ポリアデニル-ポリウリジル酸(ポリ(A:U))、PEI-ポリ(A:U)、又は二本鎖リボ核酸(RNA)等のTLR3アゴニストを含む。他の例示的なワクチン免疫賦活化合物としては、リポ多糖(LPS)、ケモカイン/サイトカイン、真菌β-グルカン(レンチナン等)、イミキモド、CRX-527、及びOM-174が挙げられる。
【0168】
特定の実施形態においては、ペイロードは、半減期延長部分又は溶解度増大部分であってもよい。半減期延長部分は、例えば、PEG部分(ポリエチレングリコール部分;PEG化)、他のポリマー部分、PAS部分(プロリン、アラニン、及びセリンを含むオリオゴペプチド;PAS化)、又は血清アルブミン結合剤である。溶解度増大部分は、例えば、PEG部分(PEG化)又はPAS部分(PAS化)である。
【0169】
特定の実施形態においては、ペイロードはポリマー-毒素コンジュゲートであってもよい。ポリマー-毒素コンジュゲートは、多くのペイロード分子を運ぶことができるポリマーである。このようなコンジュゲートは、例えばMersana therapeuticsによって販売されている通りフレキシマーと呼ばれることもある。ポリマー-毒素コンジュゲートは、本明細書に開示される毒素のいずれを含んでいてもよい。
【0170】
特定の実施形態においては、ペイロードはヌクレオチドであってもよい。核酸ペイロードの一例は、MultiCell Technologies,Inc.によって開発された、腫瘍溶解特性及び免疫活性化特性を有する非常に小さな非コード二本鎖RNAであるMCT-485である。
【0171】
特定の実施形態においては、ペイロードは蛍光色素であってもよい。「蛍光色素」という用語は、本発明で使用される場合、第1の波長で光を吸収し、該第1の波長よりも長い第2の波長で発光する色素を指す。特定の実施形態においては、蛍光色素は、650~900nmの波長で発光する近赤外蛍光色素である。この領域では、組織の自家蛍光が少なく、蛍光消光が少ないため、バックグラウンド干渉を最小限に抑えながら、組織の深部への透過が強化される。従って、近赤外蛍光イメージングを用いて、本発明の抗体-ペイロードコンジュゲートが結合している組織を手術中に可視化することができる。「近赤外蛍光色素」は当技術分野で公知であり、市販されている。特定の実施形態においては、近赤外蛍光色素は、IRDye 800CW、Cy7、Cy7.5、NIR CF750/770/790、DyLight 800、又はAlexa Fluor 750であり得る。
【0172】
特定の実施形態においては、ペイロードは放射性核種を含んでいてもよい。「放射性核種」という用語は、本発明で使用される場合、例えば、Y、In、Tb、Ac、Cu、Lu、Tc、Re、Co、Fe等の放射性金属の正に荷電したイオンを含む医学的に有用な放射性核種、例えば90Y、111In、67Cu、77Lu、99Tc、161Tb、225Ac等に関する。放射性核種は、DOTA又はNODA-GA等のキレート剤に含まれていてもよい。更に、放射性核種は、治療用放射性核種であってもよく、後述する通りイメージング技術において造影剤として使用することができる放射性核種であってもよい。放射性核種又は放射性核種を含む分子は当技術分野で公知であり、市販されている。
【0173】
特定の実施形態においては、ペイロードはビタミンであってもよい。ビタミンは、葉酸を含む葉酸塩、フォラシン、及びビタミンB9からなる群から選択することができる。
【0174】
特定の実施形態においては、本発明は、毒素が
・ピロロベンゾジアゼピン(例えば、PBD);
・アウリスタチン(例えば、MMAE、MMAF);
・マイタンシノイド(例えば、マイタンシン、DM1、DM4、DM21);
・デュオカルマイシン;
・ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)阻害剤;
・ツブリシン;
・エンジイン(例えば、カリケアマイシン);
・アントラサイクリン誘導体(PNU)(例えば、ドキソルビシン);
・ピロールベースのキネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤;
・クリプトフィシン;
・薬物排出ポンプ阻害剤;
・サンドラマイシン;
・アマニチン(例えば、α-アマニチン);及び
・カンプトテシン(例えば、エキサテカン、デルクステカン)
からなる群から選択される少なくとも1つである、本発明に係る方法に関する。
【0175】
すなわち、本発明の方法で生成される抗体-リンカーコンジュゲートは、好ましくは、毒素ペイロードを含む。「毒素」という用語は、本発明で使用される場合、生きている細胞又は生物によって生成され、細胞又は生物にとって有毒な任意の化合物に関する。従って、毒素は、例えば、低分子、ペプチド、又はタンパク質であってよい。具体例は、神経毒、壊死毒、血液毒、及び細胞毒である。特定の実施形態においては、毒素は、腫瘍性疾患の治療において使用される毒素である。すなわち、本発明の方法で毒素を抗体にコンジュゲートし、抗体の標的特異性により悪性細胞に送達することができる。
【0176】
特定の実施形態においては、毒素は、アウリスタチンであってもよい。「アウリスタチン」という用語は、本発明で使用される場合、有糸分裂阻害剤のファミリーを指す。アウリスタチン誘導体も用語「アウリスタチン」の定義に含まれる。アウリスタチンの例としては、アウリスタチンE(AE)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、及びドラスタチンの合成類似体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
特定の実施形態においては、毒素は、マイタンシノイドであってもよい。本発明の文脈において、「マイタンシノイド」という用語は、最初にアフリカの低木メイテヌス・オバツス(Maytenus ovatus)から単離された一群の高度細胞毒性薬、更にはマイタンシノール(Maytansinol)及び天然マイタンシノールのC-3エステル(米国特許第4,151,042号);合成マイタンシノールのC-3エステル類似体(Kupchan et al.,J.Med.Chem.21:31-37,1978;Higashide et al.,Nature 270:721-722,1977;Kawai et al.,Chem.Farm.Bull.32:3441-3451;及び米国特許第5,416,064号);単純カルボン酸のC-3エステル(米国特許第4,248,870号;同第4,265,814号;同第4,308,268号;同第4,308,269号;同第4,309,428号;同第4,317,821号;同第4,322,348号;及び同第4,331,598号);並びにN-メチル-L-アラニンの誘導体とのC-3エステル(米国特許第4,137,230号;同第4,260,608号;及びKawai et al.,Chem.Pharm Bull.12:3441,1984)を指す。本発明の方法において使用され得る又は本発明の抗体-ペイロードコンジュゲートに含まれ得る例示的なマイタンシノイドは、マイタンシン、DM1、DM3、DM4、及び/又はDM21である。
【0178】
特定の実施形態においては、毒素は、デュオカルマイシンであってもよい。好適なデュオカルマイシンは、例えば、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンBl、デュオカルマイシンB2、デュオカルマイシンCI、デュオカルマイシンC2、デュオカルマイシンD、デュオカルマイシンSA、デュオカルマイシンMA、及びCC-1065であり得る。「デュオカルマイシン」という用語は、デュオカルマイシンの合成類似体、例えばアドゼレシン、ビゼレシン、カルゼレシン、KW-2189、及びCBI-TMIも指すことが理解されるべきである。
【0179】
特定の実施形態においては、毒素は、NAMPT阻害剤であってもよい。「NAMPT阻害剤」及び「ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ阻害剤」という用語は、本発明で使用される場合、NAMPTの活性を低下させる阻害剤を指す。「NAMPT阻害剤」という用語には、NAMPT阻害剤のプロドラッグも含まれ得る。NAMPT阻害剤の例としては、FK866(APO866とも呼ばれる)、GPP78塩酸塩、ST118804、STF31、ピリジルシアノグアニジン(CH-828とも呼ばれる)、GMX-1778、及びP7C3が挙げられるが、これらに限定されない。追加のNAMPT阻害剤は当技術分野で公知であり、本明細書に記載される組成物及び方法において使用するのに好適であり得る。例えば、国際公開第2015/054060号、米国特許第8,211,912号、及び同第9,676,721号を参照、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。幾つかの実施形態においては、NAMPT阻害剤はFK866である。幾つかの実施形態においては、NAMPT阻害剤はGMX-1778である。
【0180】
特定の実施形態においては、毒素は、ツブリシンであってもよい。ツブリシンは、細胞毒性ペプチドであり、9つのメンバー(A~I)を含む。ツブリシンAは、抗がん剤としての潜在的な用途を有している。それは、細胞をG2/M期で停止させる。ツブリシンAは、ビンブラスチンよりも効率的に重合を阻害し、単離された微小管の脱重合を誘導する。ツブリシンAは、様々な腫瘍細胞株に対して強力な細胞分裂阻害効果を有し、そのIC50はピコモル範囲である。本発明の方法で使用することができる他のツブリシンは、ツブリシンEであり得る。
【0181】
特定の実施形態においては、毒素は、エンジインであってもよい。「エンジイン」という用語は、本発明で使用される場合、二重結合によって分離されている2つの三重結合を含有する9員及び10員環のいずれかを特徴とする一群の細菌天然物を指す(例えば、K.C.Nicolaou;A.L.Smith;E.W.Yue(1993).“Chemistry and biology of natural and designed enediynes”.PNAS 90(13):5881-5888を参照;その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)。幾つかのエンジインはベルグマン環化を受けることができ、その結果生じるジラジカル、1,4-デヒドロベンゼン誘導体はDNAの糖骨格から水素原子を引き抜くことができ、その結果、DNA鎖が切断される(例えば、S.Walker;R.Landovitz;W.D.Ding;G.A.Ellestad;D.Kahne(1992).“Cleavage behavior of calicheamicin gamma 1 and calicheamicin T”.Proc Natl Acad Sci U.S.A.89(10):4608-12を参照;その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)。DNAとの反応性により多くのエンジインに抗生物質の特徴が付与され、幾つかのエンジインは、抗がん抗生物質として臨床的に研究されている。エンジインの非限定的な例は、ジネミシン、ネオカルチノスタチン、カリケアマイシン、エスペラミシンである(例えば、Adrian L.Smith and K.C.Bicolaou,“The Enediyne Antibiotics” J.Med.Chem.,1996,39(11),pp 2103-2117;及びDonald Borders,“Enediyne antibiotics as antitumor agents,” Informa Healthcare;1st edition(Nov.23,1994,ISBN-10:0824789385を参照;その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)。特定の実施形態においては、毒素は、カリケアマイシンであってもよい。
【0182】
特定の実施形態においては、毒素は、ドキソルビシンであってもよい。「ドキソルビシン」は、本発明で使用される場合、ストレプトマイセス属の細菌であるストレプトマイセス・ペウセチウス(Streptomyces peucetius)変種カエシウス(caesius)に由来するアントラサイクリンファミリーのメンバーを指し、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンを含む。
【0183】
特定の実施形態においては、毒素は、キネシン紡錘体タンパク質阻害剤であってもよい。「キネシン紡錘体タンパク質阻害剤」という用語は、細胞分裂中に双極紡錘体の組み立てに関与するキネシン紡錘体タンパク質を阻害する化合物を指す。キネシン紡錘体タンパク質阻害剤は、がんの治療薬として研究されている。キネシン紡錘体タンパク質阻害剤の例としては、イスピネシブが挙げられる。更に、「キネシン紡錘体タンパク質阻害剤」という用語には、GlaxoSmithKline製のSB715992又はSB743921、及びCombinatoRx製のペンタミジン/クロルプロマリンが含まれる。
【0184】
特定の実施形態においては、毒素は、参照により組み込まれる米国特許出願公開第20180078656A1号に記載されているクリプトフィシンであってもよい。
【0185】
特定の実施形態においては、毒素は、サンドラマイシンであってもよい。サンドラマイシンは、ノカルジオイデス属(Nocardioides)の種(ATCC 39419)から初めて単離されたデプシペプチドであり、細胞毒性及び抗腫瘍活性を有することが示されている。
【0186】
特定の実施形態においては、毒素は、アマトキシンであってもよい。アマトキシン(アルファアマニチン、ベータアマニチン、及びアマニチンを含む)は、8個のアミノ酸で構成される環状ペプチドである。これらはタマゴテングタケ(Amanita phalloides)というキノコから単離することもでき、合成によって構成単位から調製することもできる。アマトキシンは、哺乳類細胞のDNA依存性RNAポリメラーゼIIを特異的に阻害し、これによって細胞の転写及びタンパク質の生合成に影響を及ぼす。細胞内の転写が阻害されると、成長及び増殖が停止する。共有結合はしていないが、アマニチンとRNAポリメラーゼIIとの複合体は非常に強固である(KD=3nM)。酵素からアマニチンが解離するのは非常に緩徐なプロセスであるため、影響を受けた細胞が回復する可能性は低い。細胞内で転写阻害が長く続きすぎると、細胞はプログラム細胞死(アポトーシス)を受ける。好ましい一実施形態においては、「アマトキシン」という用語は、本発明で使用される場合、例えば、国際公開第2010/115630号、同第2010/115629号、同第2012/119787号、同第2012/041504号、及び同第2014/135282号に記載されているようなα-アマニチン又はそのバリアントを指す。
【0187】
特定の実施形態においては、毒素は、カンプトテシンであってもよい。「カンプトテシン」という用語は、本発明で使用される場合、トポイソメラーゼI阻害剤として機能するカンプトテシン又はカンプトテシン誘導体を意味することが意図される。例示的なカンプトテシンとしては、例えば、トポテカン、エキサテカン、デルクステカン、イリノテカン、DX-8951f、SN38、BN80915、ルルトテカン、9-ニトロカンプトテシン、及びアミノカンプトテシンが挙げられる。ヒトがん患者を治療するために使用されるカンプトテシンも含む様々なカンプトテシンが報告されている。幾つかのカンプトテシンについては、例えば、Kehrer et al.,Anticancer Drugs,12(2):89-105,(2001)又はLi et al.,ACS Med.Chem.Lett.2019,10,10,1386-1392)に記載されている。
【0188】
本発明の意味での毒素は、薬物排出トランスポーターの阻害剤であってもよい。毒素と薬物排出トランスポーターの阻害剤とを含む抗体-ペイロードコンジュゲートは、細胞内部に移行したとき、薬物排出トランスポーターの阻害剤が毒素の細胞外への排出を防ぐという利点を有し得る。本発明において、薬物排出トランスポーターは、P-糖タンパク質であってもよい。P-糖タンパク質の幾つかの一般的な薬理学的阻害剤としては、アミオダロン、クラリスロマイシン、シクロスポリン、コルヒチン、ジルチアゼム、エリスロマイシン、フェロジピン、ケトコナゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、及び他のプロトンポンプ阻害剤、ニフェジピン、パロキセチン、レセルピン、サキナビル、セルトラリン、キニジン、タモキシフェン、ベラパミル、及びデュロキセチンが挙げられる。エラクリダール及びCP100356は、他の一般的なP-gp阻害剤である。ゾスキダル及びタリキダルも、これを念頭に開発された。最後に、バルスポダル及びリベルサンは、そのような剤の他の例である。
【0189】
本明細書で定義されるペイロードBは、実際のペイロードとしてのみ理解されるのではなく、むしろペイロード分子として理解されることを理解されたい。ペイロード分子は、本発明で使用される場合、例えば、化学合成を介したペイロードの連結部分B又はK残基又は化学的スペーサーへのカップリングを容易にするために、付加的な構造を含んでいてもよい。
【0190】
すなわち、特定の実施形態においては、実際のペイロードは、本発明のリンカーに連結されるペイロード分子中に含まれ得る。ペイロード分子は、以下の構造:
X-(スペーサー)-ペイロード、
(式中、ペイロードは、実際のペイロード、例えば、本明細書に開示される化合物のうちの1つを表し、Xは、ペイロード分子を連結部分(二段階プロセス)又は化学的スペーサー若しくはリンカーのK残基(一段階プロセス)における適合性官能基に結合させるのに好適な反応性基を表し、(スペーサー)は、実際のペイロードを反応性基Xから空間的に分離する化学的スペーサーを表す)を有し得る。しかし、特定の実施形態においては、反応性基Xは、スペーサー又は実際のペイロードの一部であってもよいことを理解されたい。例えば、スペーサーは、ペプチド又はアミノ酸残基を含み得、反応性基Xは、該スペーサーに含まれるN末端アミノ酸残基のアミノ基であり得る。他の実施形態においては、スペーサーは存在しなくてもよい。スペーサーが存在しない実施形態においては、官能基は実際のペイロードに含まれ得る。特定の実施形態においては、スペーサーを使用して、対象となる官能基、すなわち、連結部分に含まれる官能基と適合性のある官能基を実際のペイロードに結合させることができる。特定の実施形態においては、反応性基Xは、マレイミド基、又はDBCO基若しくはBCN基等であるがこれらに限定されないシクロオクチン基であり得る。
【0191】
特定の実施形態においては、本発明は、化学的スペーサー(Sp)が自壊性部分を含む、本発明に係る方法に関する。
【0192】
すなわち、リンカーは、標的の細胞又は組織におけるペイロードの放出を促進するために、自壊性部分を含んでいてもよい。自壊性部分は、リンカーのいずれの部分に含まれていてもよい。しかし、自壊性部分は、好ましくは、ペイロードをK残基から分離する化学的スペーサー(Sp)に含まれる。あるいは、自壊性部分は、上に定義した通り、ペイロード分子に含まれる(スペーサー)に含まれていてもよい。
【0193】
「自壊性部分」という用語は、本発明で使用される場合、リンカーに含めることができ、最初の反応が起こった後に自然に分解し、それによってペイロードを放出する、少なくとも二官能性の分子を指す。最初の反応は、自壊性部分とアミノ酸残基との間の共有結合の加水分解であり得る。特定の実施形態においては、自壊性部分とアミノ酸残基との間の共有結合は、アミノ酸のα-カルボキシル基と自壊性部分に含まれるアミン基との間に形成されるアミド結合であり得、最初の反応は、ペプチダーゼ又はプロテアーゼによって触媒され得る。しかし、他の化学物質も本発明に包含される。
【0194】
特定の実施形態においては、本発明は、自壊性部分がペイロードBに直接結合する、本発明に係る方法に関する。
【0195】
より好ましくは、自壊性部分はペイロードBに直接結合し、その結果、自壊性部分の分解時にペイロードが放出される。特定の実施形態においては、自壊性部分は、ペイロードとリンカーに含まれるK残基との間に位置する。すなわち、自壊性部分は、K残基のN末端又はK残基のC末端にカップリングし得る。あるいは、自壊性部分は、ペイロードと化学的スペーサー(Sp)に含まれるアミノ酸残基との間、好ましくは、該アミノ酸残基のN末端又はC末端に位置してもよい。更に、自壊性部分は、当技術分野で公知の任意の方法によってペイロードと化学的スペーサー(Sp)に含まれる非アミノ酸残基との間に位置する場合もある。
【0196】
自壊性部分の選択は、特にペイロード分子で利用可能な官能基に依存することを理解されたい。
【0197】
特定の実施形態においては、本発明は、自壊性部分がp-アミノベンジルカルバモイル(PABC)部分又はアミノメチレンスペーサーを含む、本発明に係る方法に関する。
【0198】
すなわち、特定の実施形態においては、リンカーは、自壊性部分p-アミノベンジルカルバモイル(PABC)を含んでいてもよい。PABCは、アミノ酸残基又はペプチドのC末端にカップリングするのに適した遊離アミン基と、それを介してペイロード、特にアミンを含むペイロードにカップリングすることができるカルバモイル基とを含む。しかし、当業者は、アミン基を含むようにペイロードを官能化する方法を認識している。自壊性部分PABCは、好ましくは、ペイロードとリンカーに含まれるアミノ酸残基との間に位置する。アミノ酸残基は、好ましくは、残基K又は化学的スペーサー(Sp)に含まれるアミノ酸である。特定の実施形態においては、自壊性部分PABCは、ペイロードと化学的スペーサー(Sp)に含まれるアラニン残基との間に位置する。特定の実施形態においては、自壊性部分は、ペイロードとペプチダーゼ切断部位との間に位置し得る。特定の実施形態においては、自壊性部分は、ペイロードとカテプシン切断部位との間に位置し得る。すなわち、自壊性部分は、ペイロードとカテプシンによって切断可能であることが知られているモチーフとの間に位置し得る。
【0199】
「カテプシン」という用語は、本発明で使用される場合、プロテアーゼのファミリーを指す。カテプシンという用語は、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンF、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンK、カテプシンL1、カテプシンL2、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンW、及びカテプシンZを含む。特定の実施形態においては、切断可能な部分は、バリン-アラニン、バリン-シトルリン、又はアラニン-アラニン等のカテプシンBによって特異的に加水分解されるモチーフであってよい。ペプチダーゼによって特異的に加水分解され得る更なるモチーフは、Salomon et al.,Optimizing Lysosomal Activation of Antibody-Drug Conjugates(ADCs)by Incorporation of Novel Cleavable Dipeptide Linkers,Mol Pharm.2019,16(12),p.4817-4825によって開示されている。
【0200】
ADCリンカーにおいて使用される典型的なジペプチド構造の一つは、例えばブレンツキシマブ・ベドチンに提供されているようなバリン-シトルリンモチーフであり、Dubowchik and Firestone;Cathepsin B-labile dipeptide linkers for lysosomal release of doxorubicin from internalizing immunoconjugates:model studies of enzymatic drug release and antigen-specific in vitro anticancer activity;Bioconjug Chem;2002;13(4);p.855-69で論じられている。このリンカーは、カテプシンBによって切断されて、疾患部位で実際のペイロードを放出することができる。例えばSGN-CD33Aに提供されているバリン-アラニンモチーフにも同じことが当てはまる。
【0201】
従って、特定の実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-Val-Cit-(自壊性部分)-ペイロードを含み得る。特定の実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-Val-Cit-ペイロードを含み得る。特定の実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-Val-Cit-PABC-ペイロードを含み得る。
【0202】
特定の実施形態においては、リンカーは、構造K-Val-Cit-(自壊性部分)-ペイロードを含んでいてもよく、又はからなっていてもよい。特定の実施形態においては、リンカーは、構造K-Val-Cit-PABC-ペイロードを含んでいてもよく、又はからなっていてもよい。特定の実施形態においては、リンカーは、構造K-Val-Cit-PABC-MMAEを含んでいてもよく、又はからなっていてもよい。特定の実施形態においては、リンカーは、構造K-Val-Cit-PABC-マイタンシンを含んでいてもよく、又はからなっていてもよい。
【0203】
ペプチドの切断部位は、カスパーゼ3、レグマイン、若しくは好中球エラスターゼ等の他のペプチダーゼによって切断可能なモチーフであってもよく、Dal Corso et al.,Innovative Linker Strategies for Tumor-Targeted Drug Conjugates;Chemistry;25(65);p.14740-14757に記載されているようなモチーフであってもよいことに留意しなければならない。
【0204】
しかし、細胞は広範囲にわたる細胞性ペプチダーゼを含むこと、また、あまり保存されていない他のアミノ酸モチーフもペプチダーゼによって効率よく切断され得ることに留意しなければならない。従って、特定の実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-PABC-ペイロード(式中、(Sp)は、存在しないか又はアミノ酸残基からなる)を含み得る。
【0205】
特定の実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-PABC-ペイロード(式中、(Sp)は、PABC部分と(Sp)又はK残基に含まれる最もC末端側のアミノ酸残基との間のPEG部分を含む)を含み得る。
【0206】
特定の実施形態においては、自壊性部分PABCを含むリンカーは、アミンを含むペイロード、特に第一級又は第二級アミンを含むペイロードにカップリングされる。特定の実施形態においては、アミンを含むペイロードは、MMAE等のアウスリスタチンである。特定の実施形態においては、アミンを含むペイロードは、マイタンシン等のマイタンシノイドである。
【0207】
ペイロードは、追加のリンカー分子を介して自壊性PABC部分にカップリングできることに留意しなければならない。例えば、アミンを含むペイロードは、p-ニトロフェノール(PNP)基を介してPABC部分にカップリングすることができる。アミン以外の反応性基を含むペイロードをPABC部分にカップリングさせることができる更なるリンカー分子は、Su et al.,Bioconjugate Chem.2018,29,4,1155-1167;及びDokter et al.,Mol Cancer Ther.2014 Nov;13(11):2618-29に開示されている。例えば、アルコール又はフェノール基を含むペイロードは、エチレンジアミン(EDA)リンカーを介してPABCにカップリングすることができる。
【0208】
特定の実施形態においては、本発明は、自壊性部分がメチルアミン基を含む、本発明に係る方法に関する。メチルアミン基は、ADCのペプチドベースのリンカーにおいて自壊性部分として使用できることが既に実証されている(Costoplus et al.,ACS Med.Chem.Lett.,2019,10,10,1393-1399及びLi et al.,ACS Med.Chem.Lett.2019,10,10,1386-1392)。
【0209】
特に、メチルアミン基を含む自壊性部分は、アミノ酸残基のα-カルボキシル基とメチルアミン基に含まれるアミンとの間に形成されるアミド結合を介してアミノ酸残基のC末端にカップリングし得る。アミノ酸残基は、(Sp)又は残基Kに含まれるアミノ酸残基であってよい。メチルアミン基に含まれるメチル基は、エーテル結合又はチオエーテル結合によってペイロードにカップリングし得る。従って、ペイロードがヒドロキシル基又はチオール基を含む場合、メチルアミン基を自壊性基として使用することが好ましい。特定の実施形態においては、ヒドロキシルを含むペイロードは、エキサテカン誘導体Dxd等のカンプトテシン又はPNU-159682等のアントラサイクリンであり得る。特定の実施形態においては、チオールを含むペイロードは、DM1、DM4、又はDM21等のマイタンシノイドであってよい。
【0210】
アミノメチレンスペーサーを含むリンカーは、分子構造C-(NH)-(CH)-O-C又はC-(NH)-(CH)-S-Cを含み得る。
【0211】
アミノ酸残基のC末端カルボキシル基にペイロードをカップリングさせるためには、アミノメチレンスペーサーを含むPABC及び自壊性部分が好ましく用いられることを理解されたい。
【0212】
ペイロードをアミノ酸残基のC末端カルボキシル基にカップリングするために使用することができる他の自壊性部分は、フェノールを含むペイロードをアミノ酸残基のC末端カルボキシル基にカップリングするためのp-アミノベンジルエタノール(PABE)リンカー(Zhang et al.,Bioconjugate Chem.2018,29,6,1852-1858)又は第三級アミン若しくはヘテロアリール部分を含むペイロードをアミノ酸残基のC末端カルボキシル基にカップリングするためのパラメチルアニリン(PMA)リンカー(Staben et al.,Nature Chemistry volume 8, pages 1112-1119(2016))を含む。フェノール基を含むペイロードの非限定的な例は、デュオカルマイシンGA又はピロロベンゾジアゼピンPBDである。第三級アミンを含むペイロードの非限定的な例は、デュオカルマイシンGAである。
【0213】
しかし、ペイロードは、自壊性部分を介してN末端アミノ基にカップリングすることもできる。例えば、ペイロードは、オルトヒドロキシ保護されたアリール硫酸を含む自壊性部分を介してアミノ酸残基のN末端アミノ基にカップリングすることができる。例えば、PBD等のフェノール性ペイロードをアミノ酸残基のN末端アミノ基にカップリングさせるために、オルトヒドロキシ保護されたアリール硫酸(OHPAS)を使用することができる。OHPAS部分は、好ましくはカルボキシル基を含み、それを介してアミノ酸残基のN末端アミノ基に直接カップリングすることができる。あるいは、OHPAS部分は、官能化PEGリンカー、例えば、限定するものではないが、官能化(PEG)リンカーを介してアミノ酸残基のN末端アミノ基にカップリングしてもよい。好ましくは、PEGリンカーは、OHPAS部分に含まれるカルボキシル基へのカップリングを可能にするために一端がアミノ基で官能化され、アミノ酸残基のN末端アミノ基へのカップリングを可能にするために他端がカルボキシル基で官能化される(Park et al.,Bioconjugate Chem.2019,30,7,1957-1968)。
【0214】
あるいは又はそれに加えて、非フェノール性ペイロードのOHPASへのカップリングを可能にするために、リンカー分子をOHPASの硫酸基とペイロードとの間に配置してもよい。例えば、カルバメートの形成を通じて第一級又は第二級のアミンを含むペイロードをOHPAS部分にカップリングさせるために、パラヒドロキシベンジル(PHB)リンカー分子を使用することができる。第三級アミンを含むペイロードは、第四級アンモニウムの形成を通じてリンカーを含むOHPASにカップリングすることができる。更に、カルバメートの形成を通じてヒドロキシル基を含むペイロードをOHPAS部分にカップリングさせるために、パラヒドロキシベンジルエチレンジアミン(PHB-EDA)リンカー分子を使用することができる(Park et al.,Bioconjugate Chem.2019,30,7,1957-1968)。
【0215】
特定の実施形態においては、ペイロードは、切断可能な部分を介してリンカーに含まれるアミノ酸残基にカップリングすることができる。「切断可能な部分」とは、本発明で使用される場合、酵素的又は非酵素的加水分解によって実際のペイロードから分離することができる化学単位である。特定の実施形態においては、切断可能な部分は、ペプチダーゼ又はプロテアーゼによって加水分解可能なアミノ酸モチーフであり得る。
【0216】
他の実施形態においては、リンカーに含まれる切断可能な部分は、炭水化物部分であってもよい。そのような実施形態においては、切断可能な部分は、グルコシダーゼによって切断可能な部分であってよい。従って、特定の実施形態においては、切断可能な部分は、β-グルクロニダーゼ又はβ-ガラクトシダーゼによって切断可能な部分であってよい。
【0217】
他の実施形態においては、リンカーに含まれる切断可能な部分は、リン酸部分であってもよい。そのような実施形態においては、切断可能な部分は、ホスファターゼによって切断可能な部分であってもよい。従って、特定の実施形態においては、切断可能な部分は、βリソソーム酸ピロホスファターゼ又は酸ホスファターゼによって切断可能な部分であってもよい。
【0218】
リンカー分子からペイロードを放出させるのに使用され得る更なる切断可能な部分についての例は、Bargh et al.,Cleavable linkers in antibody-drug conjugates;Chem Soc Rev.2019 Aug 12;48(16):4361-4374によって記載されている。特定の実施形態においては、リンカーは、構造(切断可能な部分)-(自壊性部分)-ペイロードを含み得る。そのような実施形態においては、自壊性部分は、切断可能な部分の切断時に分解され、ペイロードを放出し得る。
【0219】
特定の実施形態においては、リンカーは単一の連結部分又はペイロードを含み得る。
【0220】
特定の実施形態においては、リンカーは、2つ以上の連結部分及び/又はペイロードBを含んでいてもよい。すなわち、特定の実施形態においては、リンカーは、以下の構造を含み得る:
a)(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)-B-(Sp)、
b)(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)、
c)(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)、又は
d)(Sp)-B-(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)。
【0221】
そのような実施形態においては、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、(Sp)、及びK残基は、上に定義したのと同じ特徴を有することができる。更に、部分B及びBは、上に定義した連結部分及び/又はペイロードのいずれか1つであってもよい。更に、化学的スペーサー(Sp)は、化学的スペーサー(Sp)、(Sp)、又は(Sp)と同じ特徴を有していてもよく、存在しなくてもよい。
【0222】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、リンカーが第2の連結部分又はペイロードBを含み、特にBが化学的スペーサー(Sp)又は(Sp)を介してリンカーに接続される、本発明に係る方法に関する。
【0223】
すなわち、ペイロード又は連結部分Bは、化学的スペーサー(Sp)又は(Sp)に接続されてもよく、ペイロード又は連結部分Bに直接接続されてもよい。ペイロード又は連結部分Bは、Bを(Sp)、(Sp)、又はBに含まれる官能基にカップリングするのに適した任意の官能基を含み得る。
【0224】
特定の実施形態においては、ペイロード又は連結部分Bは、それを用いてBが(Sp)又はBに接続するアミノ基を含んでいてよい。すなわち、Bは、該アミノ基を介して(Sp)又はBに含まれるカルボキシル基に接続し得る。特定の実施形態においては、(Sp)に含まれるカルボキシル基は、化学的スペーサー(Sp)のC末端アミノ酸残基に含まれるカルボキシル基であってよい。特定の実施形態においては、Bに含まれるカルボキシル基は、アミノ酸ベースのペイロード又は連結部分のα-カルボキシル基であってよい。特定の実施形態においては、Bは、リンカー分子を介して(Sp)又はBに含まれるカルボキシル基にカップリングされ得る。特定の実施形態においては、リンカー分子は、自壊性部分を含んでいてもよい。
【0225】
特定の実施形態においては、ペイロード又は連結部分Bは、それを用いてBが(Sp)又はBに接続するカルボキシル基を含んでいてよい。すなわち、Bは、該カルボキシル基を介して(Sp)又はBに含まれるアミン基に接続し得る。特定の実施形態においては、(Sp)に含まれるアミン基は、化学的スペーサー(Sp)のN末端アミノ酸残基に含まれるアミン基であってよい。特定の実施形態においては、Bに含まれるアミン基は、アミノ酸ベースのペイロード又は連結部分のα-アミノ基であってよい。特定の実施形態においては、Bは、リンカー分子を介して(Sp)又はBに含まれるアミン基にカップリングされ得る。特定の実施形態においては、リンカー分子は、自壊性部分を含んでいてもよい。
【0226】
しかし、Bは、アミン又はカルボキシル基以外の官能基を含んでいてもよいことに留意しなければならない。このような実施形態においては、Bは、直接又はリンカー若しくは自壊性基を介して、当技術分野で公知の任意の方法によって(Sp)、(Sp)、又はBにカップリングすることができる。
【0227】
特定の実施形態においては、ペイロード又は連結部分Bは、(Sp)又は(Sp)に含まれるアミノ酸側鎖にカップリングされ得る。すなわち、Bは、適合性官能基を介して(Sp)又は(Sp)に含まれるアミノ酸側鎖の官能基に接続され得る。
【0228】
特定の実施形態においては、(Sp)、(Sp)、(Sp)、及びK残基は、アミノ酸、アミノ酸模倣体、及び/又はアミノ酸誘導体のみからなる。特定の実施形態においては、B及び/又はBもアミノ酸骨格を含む。このような実施形態においては、リンカーは、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体であってよい。Bがアミノ酸、アミノ酸模倣体。又はアミノ酸誘導体である実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-Bを有し得、(Sp)-K-(Sp)-Bは、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体である。Bが、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体である実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)を有し得、(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)は、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体である。Bが、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体である実施形態においては、リンカーは、構造K-(Sp)-B-(Sp)を有し得、K-(Sp)-B-(Sp)は、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体である。Bが、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体である実施形態においては、リンカーは、構造K-(Sp)-Bを有し得、K-(Sp)-Bは、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体である。Bが、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体である実施形態においては、リンカーは、構造K-B-(Sp)を有し得、K-B-(Sp)は、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体である。Bが、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体である実施形態においては、リンカーは構造K-Bを有し得、K-Bは、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体である。
【0229】
及びBが、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体である実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)-B-(Sp)を有し得、(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)-B-(Sp)は、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体である。B及びBが、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体である他の実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)を有し得、(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)は、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体である。B及びBが、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体である他の実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-B-(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)を有し得、(Sp)-B-(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)は、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体である。
【0230】
が、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体ではない実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)を有し得、(Sp)-K-(Sp)は、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体であり、Bは、(Sp)に含まれるC末端カルボキシル基に接続される。Bが、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体ではない実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)を有し得、(Sp)-K-(Sp)は、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体であり、Bは、(Sp)に含まれるN末端アミノ基に接続される。しかし、Bは必ずしもペプチド又はペプチド模倣体に直接カップリングする必要はないことに留意しなければならない。その代わり、Bは、リンカー分子及び/又は自壊性部分を介してペプチド又はペプチド模倣体にカップリングしてもよい。
【0231】
がアミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体であり、Bがアミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体ではない実施形態においては、リンカーは、構造(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)-B-(Sp)、(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)、(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)、又は(Sp)-B-(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)を有し得、(Sp)-K-(Sp)-B-(Sp)又は(Sp)-B-(Sp)-K-(Sp)は、直鎖状ペプチド又はペプチド模倣体であり、Bは、(Sp)、B、若しくはK残基に含まれるC末端カルボキシル基に、又は(Sp)、B、若しくはK残基のN末端アミノ基にカップリングされる。
【0232】
このような実施形態においては、例えば、抗体対ペイロード比が2又は4である、例えば、各Q295残基に1個又は2個のペイロードがコンジュゲートしている抗体-ペイロードコンジュゲートが作製され得る。
【0233】
特定の実施形態においては、本発明は、B及びBが同一であるか又は互いに異なる、本発明に係る方法に関する。
【0234】
すなわち、ペイロード又は連結部分B及びBは、同一であってもよく、すなわち同じ化学構造を有していてもよく、又は構造的に異なっていてもよい。特定の実施形態においては、B及びBは、両方ともペイロードであるか又は両方とも連結部分である。B及びBが両方ともペイロードである実施形態においては、ペイロードB及びBは同一であってもよく、異なるペイロードであってもよい。B及びBが両方とも連結部分である実施形態においては、連結部分B及びBは、同一又は異なる連結部分であってよい。特定の実施形態においては、Bが連結部分であり、Bがペイロードであってもよく、その逆であってもよい。
【0235】
全てのペイロード又は連結部分がBの位置で鎖内のペイロード又は連結部分として機能できるわけではないが、その理由は、例えば、一端で(Sp)又はK残基と、他端で(Sp)、(Sp)、又はBと共有結合を形成するための官能基を有しないためであることを理解されたい。従って、Bが鎖内のペイロード又は連結部分である実施形態においては、Bは二価又は多価の分子であることが好ましい。例えば、Bは、アミノ酸、アミノ酸模倣体、又はアミノ酸誘導体であってよい。そのような実施形態においては、Bは、そのアミノ基を介して(Sp)又はKのC末端カルボキシル基に、そして、そのカルボキシル基を介して(Sp)又はBのN末端アミノ基にカップリングされ得る。あるいは、Bは、そのカルボキシル基を介して(Sp)又はKのN末端アミノ基に、そして、そのアミノ基を介して(Sp)又はBのC末端カルボキシル基にカップリングされ得る。
【0236】
特定の実施形態においては、リンカーは、2つの連結部分B及びBを含み得る。
【0237】
すなわち、特定の実施形態においては、本発明は、2つの生体直交型マーカー基及び/又は非生体直交型実体を含むリンカーを包含する。例えば、本発明に係るリンカーは、Lys(N)又はXaa(N)等のアジドを含む連結部分と、システイン等のスルフヒドリルを含む連結部分とを含み得る。特定の実施形態においては、本発明に係るリンカーは、Lys(N)又はXaa(N)等のアジドを含む連結部分と、テトラジン修飾アミノ酸等のテトラジンを含む連結部分とを含み得る。特定の実施形態においては、本発明に係るリンカーは、システイン等のスルフヒドリルを含む連結部分と、テトラジン修飾アミノ酸等のテトラジンを含む連結部分とを含み得る。2つの異なる生体直交型マーカー基及び/又は非生体直交型実体を含むリンカーは、2つの異なるペイロードを受容することができるという利点を有するので、1つを超えるペイロードを含む抗体-ペイロードコンジュゲートが得られる。
【0238】
このようにして、2+2の抗体ペイロード比を得ることができる。第2のペイロードを用いることにより、有効性及び効力に関して現在の治療アプローチを超える、まったく新しいクラスの抗体ペイロードコンジュゲートの開発が可能になるかもしれない。
【0239】
このような実施形態は、特に、例えばDNA及び微小管のような細胞内の2つの異なる構造を標的とすることを可能にし得る。がんの中には微小管毒素のようなある薬物に対して耐性を有するものもあるので、DNA毒素は、依然としてがん細胞を殺傷することができる。
【0240】
別の実施形態によれば、同じ時点で同じ組織において放出された場合にのみ十分な効力を発揮する2つの薬物を使用することができる。これにより、抗体が健常組織で部分的に分解されたり、ある薬物が早期に失われたりした場合に、オフターゲット毒性が軽減される可能性がある。
【0241】
更に、非侵襲的イメージング及び療法又は術中/術後のイメージング/手術に二重標識プローブを使用してもよい。このような実施形態においては、非侵襲的イメージングを用いて腫瘍患者を選択することができる。その後、手術中に外科医又はロボットが全てのがん性組織を特定するのに役立つ他方の造影剤(例えば、蛍光色素)を用いて腫瘍を外科的に切除することができる。
【0242】
特定の実施形態においては、B及びBの一方は、システイン等のチオール基を含む連結部分であってよく、B及びBの他方は、Lys(N)等のアジド部分を含む連結部分であってよい。このような実施形態においては、一方はチオール-マレイミドコンジュゲーションを介して、他方はSPAAC反応を介して、2つの異なるペイロードをリンカーにカップリングさせてよい。
【0243】
特定の実施形態においては、リンカーは2つのペイロードを含んでいてよい。ペイロードのみで連結部分を含まないリンカーは、一段階プロセスで抗体にコンジュゲートすることができる。
【0244】
及びBが両方ともペイロードである実施形態においては、B及びBは同一であってもよく、構造が異なっていてもよいことを理解されたい。特定の実施形態においては、1つ以上のペイロードを含むリンカーは、化学的に合成することができる。あるいは、リンカーを抗体にコンジュゲートする前に、本明細書に開示される方法のいずれかによって1つ以上のペイロードをリンカーに含まれる連結部分にカップリングさせてもよい。
【0245】
特定の実施形態においては、本発明のリンカーにより、抗体のC2ドメインの残基Q295に2つの異なるペイロードをコンジュゲートすることが可能になり得る。第2のペイロードを用いることにより、有効性及び効力に関して現在の治療アプローチを超える、まったく新しいクラスの抗体-ペイロードコンジュゲートの開発が可能になる。また、イメージング及び療法又は術中/術後の手術のためのデュアルタイプのイメージング等、新たな応用分野も想定されている(Azhdarinia A.et al.,Dual-Labeling Strategies for Nuclear and Fluorescence Molecular Imaging:A Review and Analysis.Mol Imaging Biol.2012 Jun;14(3):261-276を参照)。例えば、術前陽電子放射断層撮影(PET)用の分子造影剤及び切除縁のガイド描写用の近赤外蛍光(NIRF)色素を包含する二重標識抗体は、がんの診断、病期分類、及び切除を大幅に向上させることができる(Houghton JL.et al.,Site-specifically labeled CA19.9-targeted immunoconjugates for the PET,NIRF,and multimodal PET/NIRF imaging of pancreatic cancer.Proc Natl Acad Sci U S A.2015 Dec 29;112(52):15850-5を参照)。PET及びNIRF光イメージングは、それぞれ疾患の位置を特定し、手術中に腫瘍縁を同定するための非侵襲的な全身イメージングを可能にする補完的な臨床応用を提供する。しかし、これまでこのような二重標識プローブの作製は、好適な部位特異的方法がないことから困難であった。化学的手段によって2つの異なるプローブを結合させると、プローブがランダムにコンジュゲートするため、解析及び再現性がほとんど不可能になる。
【0246】
更に、Levengood M.らの研究(Orthogonal Cysteine Protection Enables Homogeneous Multi-Drug Antibody-Drug Conjugates.Angewandte Chemie,Volume56,Issue3,January 16,2017)では、2つの異なるアウリスタチン毒素(異なる物理化学的特性を有し、補完的な抗がん活性を発揮する)が結合している二重薬物標識抗体は、個々のアウリスタチン成分で構成されたADCに抵抗性であった細胞株及び異種移植モデルにおいて活性を付与した。このことは、二重標識ADCによって、単一の従来型ADC単独よりも効果的にがんの不均一性及び耐性に対処できるようになることを示唆している。ADCに対する耐性機序の1つにはがん細胞からの細胞毒性部分の能動的なポンピングアウトが含まれるので、別の二重薬物応用は、細胞毒性薬の排出機序を特異的に遮断する薬物を追加的にかつ同時に送達することを含み得る。従って、このような二重標識ADCは、従来のADCよりも効果的にADCに対するがんの耐性を克服するのに役立つ可能性がある。
【0247】
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で用いられ、具体的には、所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を網羅する。「抗体」及び「抗体(複数)」という用語は、天然に存在する形態の抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)を広く包含する。
【0248】
抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。抗体はヒト起源であってもよいが、同様にマウス、ラット、ヤギ、ロバ、ハムスター、又はウサギ由来であってもよい。コンジュゲートが治療用である場合、マウス又はウサギの抗体は、任意でキメラ化又はヒト化されてもよい。
【0249】
2ドメインを含む抗体の断片又は組換えバリアントは、例えば、
・単なる重鎖ドメインを含む抗体フォーマット(サメ抗体/IgNAR(V-C1-C2-C3-C4-C5)又はラクダ抗体/hcIgG(V-C2-C3)
・scFv-Fc(VH-VL-C2-CH3)2
・Fcドメイン及び1つ以上の受容体ドメインを含むFc融合ペプチド
であってよい。
【0250】
抗体はまた、二重特異性(例えば、DVD-IgG、crossMab、付加IgG-HC融合体)又は二重パラトープ性(biparatopic)であってもよい。概要については、Brinkmann and Kontermann;Bispecific antibodies;Drug Discov Today;2015;20(7);p.838-47を参照。
【0251】
特定の実施形態においては、本発明は、抗体がIgG抗体、特にIgG1抗体である、本発明に係る方法に関する。
【0252】
「IgG」とは、本発明で使用される場合、認識された免疫グロブリンガンマ遺伝子によって実質的にコードされている抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。ヒトでは、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のサブクラス又はアイソタイプを含む。マウスでは、IgGは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3を含む。完全長IgGは、2本の免疫グロブリン鎖の同一の2対からなり、各対は1本の軽鎖及び1本の重鎖を有し、各軽鎖は免疫グロブリンドメインVL及びCLを含み、各重鎖は免疫グロブリンドメインVH、Cγ1(CH1とも呼ばれる)、Cγ2(CH2とも呼ばれる)及びOγ3(CH3とも呼ばれる)を含む。ヒトIgG1の文脈では、KabatのEUインデックスに従って、「CH1」は、118~215位を指し、CH2ドメインは231~340位を指し、CH3ドメインは341~447位を指す。IgG1はヒンジドメインも含み、これはIgG1の場合216~230位を指す。
【0253】
本発明の方法又は本発明の抗体-ペイロードコンジュゲートで使用される抗体は、任意の抗体、好ましくは任意のIgG型抗体であってもよく、又は含んでいてもよい。例えば、抗体は、これらに限定するものではないが、ブレンツキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、イノツズマブ、アベルマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ダラツムマブ、ペルツズマブ、ベドリズマブ、オクレリズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ゴリムマブ、オビヌツズマブ、サシツズマブ、ベランタマブ、ポラツズマブ、及びエンホルツマブであってよい。
【0254】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、抗体がブレンツキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、イノツズマブ、アベルマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ダラツムマブ、ペルツズマブ、ベドリズマブ、オクレリズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ゴリムマブ、オビヌツズマブ、サシツズマブ、ベランタマブ、ポラツズマブ、及びエンホルツマブからなる群から選択される、本発明に係る方法に関する。
【0255】
好ましい実施形態においては、本発明は、抗体ブレンツキシマブ、ゲムツズマブ、トラスツズマブ、イノツズマブ、ポラツズマブ、エンホルツマブ、サシツズマブ、及びベランタマブからなる群から選択される、本発明に係る方法に関する。
【0256】
より好ましい実施形態においては、本発明は、抗体がポラツズマブ又はトラスツズマブ又はエンホルツマブである、本発明に係る方法に関する。
【0257】
すなわち、特定の実施形態においては、本発明は、抗体がポラツズマブであり、リンカーが本明細書に開示されるリンカーのいずれか1つである、抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0258】
別の実施形態においては、本発明は、抗体がトラスツズマブであり、リンカーが本明細書に開示されるリンカーのうちのいずれか1つである、抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0259】
別の実施形態においては、本発明は、抗体がエンホルツマブであり、リンカーが本明細書に開示されるリンカーのうちのいずれか1つである、抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0260】
本発明に係る方法において使用するための抗体は、グリコシル化抗体、脱グリコシル化抗体、又はアグリコシル化抗体であってよい。
【0261】
すなわち、特定の実施形態においては、抗体は、好ましくは残基N297でグリコシル化されたIgG抗体であってよい。従って、特定の実施形態においては、本発明は、IgG抗体がグリコシル化IgG抗体であり、特にIgG抗体がC2ドメインの残基N297(EU付番)でグリコシル化されている、本発明に係る方法に関する。
【0262】
本明細書で論じるように、残基N297でグリコシル化されたIgG抗体は、非グリコシル化抗体に比べて幾つかの利点を有する。
【0263】
しかし、抗体は、好ましくは残基N297の糖鎖が酵素PNGase Fで切断されている脱グリコシル化抗体であってもよい。更に、抗体は、好ましくは残基N297が非アスパラギン残基で置換されているアグリコシル化抗体であってもよい。抗体を脱グリコシル化する方法及びアグリコシル化抗体を作製する方法は当技術分野で公知である。
【0264】
特定の実施形態においては、本発明のリンカーは、抗体のFcドメインにおける内因性Gln残基又は分子工学によって抗体に導入されたGln残基にコンジュゲートすることができる。
【0265】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、リンカーをコンジュゲートするGln残基が抗体のFcドメインに含まれ、特に、リンカーをコンジュゲートするGln残基がIgG抗体のC2ドメインのGln残基Q295(EU付番)である、本発明に係る方法に関する。
【0266】
本発明のリンカーは、トランスグルタミナーゼの基質として機能し得る抗体のFcドメインにおける任意のGln残基にコンジュゲートすることができる。典型的には、Fcドメインという用語は、本発明で使用される場合、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン(C2及びC3)、並びにIgE、IgY、及びIgMの最後の3つの定常領域ドメイン(C2、C3、及びC4)を指す。すなわち、本発明に係るリンカーは、抗体のC2、C3、及び適用可能な場合はC4のドメインにコンジュゲートすることができる。
【0267】
特定の実施形態においては、内因性Gln残基は、IgG抗体のC2ドメインのGln残基Q295(EU付番)であってもよい。従って、特定の実施形態においては、本発明は、抗体のFcドメインにおけるGln残基がIgG抗体のC2ドメインのGln残基Q295(EU付番)である、本発明に係る方法に関する。特に好ましい実施形態においては、抗体のFcドメインにおけるGln残基は、グリコシル化IgG抗体、特に未修飾の定常領域を有するグリコシル化IgG抗体のCH2ドメインのGln残基Q295(EU付番)である。
【0268】
Q295はIgG型抗体において極めてよく保存されたアミノ酸残基であることを理解することが重要である。特に、ヒトのIgG1、2、3、4、並びにウサギ及びラットの抗体において保存されている。従って、Q295を使用できることは、治療用抗体-ペイロードコンジュゲート又は抗体が非ヒト起源であることが多い診断用コンジュゲートを作製する上で大きな利点となる。従って、本発明に係る方法は、極めて汎用性が高く、広く適用可能なツールを提供する。残基Q295はIgG型抗体の中でも極めてよく保存されているにもかかわらず、マウス及びラットのIgG2a抗体等、この残基を有しないIgG型抗体もある。従って、本発明の方法で使用される抗体は、好ましくはC2ドメインの残基Q295(EU付番)を含むIgG型抗体であると理解されたい。
【0269】
更に、ペイロードの結合にQ295を用いる遺伝子操作された人工コンジュゲートが良好な薬物動態及び有効性を示し(Lhospice et al.,Site-Specific Conjugation of Monomethyl Auristatin E to Anti-Cd30 Antibodies Improves Their Pharmacokinetics and Therapeutic Index in Rodent Models,Mol Pharm;2015;12(6),p.1863-1871)、分解されやすい不安定な毒素でも保有し得る(Dorywalska et al.;Site-Dependent Degradation of a Non-Cleavable Auristatin-Based Linker-Payload in Rodent Plasma and Its Effect on ADC Efficacy.PLoS ONE ;2015;10(7):e0132282)ことが示されている。従って、グリコシル化抗体であることを除いて同じ残基が修飾されるため、この部位特異的手法でも類似の効果がみられると予測される。グリコシル化は、ADC全体の安定性に更に寄与する可能性があり、前述のアプローチと同様に糖鎖部分を除去すると、安定性の低い抗体が得られることが示されている(Zheng et al.;The impact of glycosylation on monoclonal antibody conformation and stability.Mabs-Austin;2011,3(6),p.568-576)。
【0270】
トランスグルタミナーゼを用いたリンカーのC2のGln残基へのコンジュゲートについて論じた文献では、小さな低分子量の基質に焦点が当てられてきた。しかし、先行技術の文献では、このようなコンジュゲーションを達成するためには、N297位における脱グリコシル化工程又はアグリコシル化抗体の使用が常に必要であると記載されている(国際公開第2015/015448号、同第2017/025179号、同第2013/092998号)。
【0271】
しかし、かなり驚くべきことに、そして全ての予想に反して、上述のリンカー構造を用いることにより、グリコシル化抗体のQ295への部位特異的コンジュゲーションが実際に効率的に可能になる。特に、毒素分子を含むリンカーのカップリングは80%を超えるコンジュゲーション効率で達成された。
【0272】
Q295がN297に非常に近接しており、N297はネイティブの状態ではグリコシル化されているにもかかわらず、本発明に係る方法では、指定のリンカーを用いると、依然としてリンカー又はペイロードをそれにコンジュゲートさせることができる。
【0273】
示されているように、本発明に係る方法は、グリコシル化を防ぐためにN297を前もって酵素的に脱グリコシル化することも、アグリコシル化抗体を使用することも、N297を別のアミノ酸に置換することも、T299A変異を導入することも必要としない。
【0274】
これら2点は、製造面において大きな利点となる。酵素的脱グリコシル化工程はGMPの観点から望ましくないが、その理由は、脱グリコシル化酵素(例えば、PNGase F)及び切断された糖鎖の両方を培地から確実に除去しなければならないからである。
【0275】
更に、ペイロードを結合させるために抗体を遺伝的に操作する必要がないため、免疫原性を増大させ、抗体の全体的な安定性を低下させる可能性のある配列の挿入を避けることができる。
【0276】
N297の別のアミノ酸への置換も望ましくない作用を有するが、その理由は、Fcドメイン全体の全体的な安定性(Subedi et al,The Structural Role of Antibody N-Glycosylation in Receptor Interactions.Structure 2015,23(9),1573-1583)及びコンジュゲート全体の有効性に影響を及ぼす可能性があり、その結果、抗体の凝集が増加し、溶解度が低下する可能性がある(Zheng et al.;The impact of glycosylation on monoclonal antibody conformation and stability.Mabs-Austin 2011,3(6),568-576)ためであり、このことは、PBD等の疎水性ペイロードにとって特に重要になる。更に、N297に存在する糖鎖は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)等を惹起することから、重要な免疫調節効果を有する。これら免疫調節効果は、脱グリコシル化、又はアグリコシル化抗体を得るための上述の他のアプローチのいずれかによって失われてしまう。更に、確立された抗体の任意の配列改変は規制上の問題につながる可能性があり、これは、ADCコンジュゲーションの出発点として承認され、臨床的に検証された抗体が使用されることが多いため問題となる。
【0277】
従って、本発明に係る方法は、部位特異的にペイロードが結合している化学量論的に明確に規定されたADCを容易にかつ不利益なく作製することを可能にする。
【0278】
上記に鑑みて、本発明の方法は、好ましくは、C2ドメインの残基N297(EU付番)においてグリコシル化されている抗体のC2ドメインの残基Q295(EU付番)におけるIgG抗体のコンジュゲーションに使用されることが記載される。しかし、本発明の方法は、残基Q295又は抗体の任意の他の好適なGln残基における脱グリコシル化又はアグリコシル化抗体のコンジュゲーションも包含し、該Gln残基は内因性Gln残基であってもよく、分子工学によって導入されたGln残基であってもよいことが明示される。
【0279】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、リンカーをコンジュゲートするGln残基が分子工学によって抗体の重鎖又は軽鎖に導入されている、本発明に係る方法に関する。
【0280】
「分子工学」という用語は、本発明で使用される場合、核酸配列を操作するための分子生物学的方法の使用を指す。本発明では、分子工学を用いて抗体の重鎖又は軽鎖にGln残基を導入することができる。一般に、抗体の重鎖又は軽鎖にGln残基を導入するための2つの異なる戦略が本発明では想定されている。第1に、抗体の重鎖又は軽鎖の単一残基をGln残基で置換してよい。第2に、2つ以上のアミノ酸残基からなるGln含有ペプチドタグを抗体の重鎖又は軽鎖に組み込んでよい。そのために、ペプチドタグを重鎖又は軽鎖の内部位置、すなわち重鎖若しくは軽鎖の2つの既存のアミノ酸残基の間に組み込んでもよく、又はそれらを置き換えることによって組み込んでもよく、又はペプチドタグを抗体の重鎖若しくは軽鎖のN末端若しくはC末端に融合(付加)させてもよい。
【0281】
例えば、得られた抗体がトランスグルタミナーゼによって本発明のリンカーとコンジュゲートすることができる限り、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ残基をGln残基で置換してもよい。特定の実施形態においては、抗体は、IgG抗体のC2ドメインのアミノ酸残基N297(EU付番)が置換されている抗体であり、特に、置換はN297Q置換である。N297Q変異を含む抗体は、抗体の重鎖1本あたり1つを超えるリンカーにコンジュゲートし得る。例えば、N297Q変異を含む抗体は、4つのリンカーにコンジュゲートすることができ、1つのリンカーは抗体の第1の重鎖の残基Q295にコンジュゲートし、1つのリンカーは抗体の第1の重鎖の残基N297Qにコンジュゲートし、1つのリンカーは抗体の第2の重鎖の残基Q295にコンジュゲートし、1つのリンカーは抗体の第2の重鎖の残基N297Qにコンジュゲートする。当業者は、IgG抗体の残基N297をGln残基で置換するとアグリコシル化抗体が得られることを認識している。
【0282】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、分子工学によって抗体の重鎖又は軽鎖に導入されているGln残基がアグリコシル化IgG抗体のC2ドメインのN297Q(EU付番)である、本発明に係る方法に関する。
【0283】
特定の実施形態においては、本発明は、分子工学によって抗体の重鎖又は軽鎖に導入されているGln残基が、(a)抗体の重鎖若しくは軽鎖に組み込まれているか又は(b)抗体の重鎖若しくは軽鎖のN末端若しくはC末端に融合しているペプチドに含まれる、本発明に係る方法に関する。
【0284】
抗体の単一アミノ酸残基を置換する代わりに、トランスグルタミナーゼがアクセス可能なGln残基を含むペプチドタグを抗体の重鎖又は軽鎖に導入してもよい。このようなペプチドタグは、抗体の重鎖又は軽鎖のN末端又はC末端に融合させてよい。あるいは、ペプチドタグを抗体の重鎖又は軽鎖の好適な位置に挿入してもよい。好ましくは、トランスグルタミナーゼがアクセス可能なGln残基を含むペプチドタグを抗体の重鎖のC末端に融合させる。更により好ましくは、トランスグルタミナーゼがアクセス可能なGln残基を含むペプチドタグをIgG抗体の重鎖のC末端に融合させる。抗体の重鎖のC末端に融合し、トランスグルタミナーゼの基質として機能し得る幾つかのペプチドタグが、国際公開第2012/059882号及び同第2016/144608号に記載されている。
【0285】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、Gln残基を含むペプチドが抗体の重鎖のC末端に融合している、本発明に係る方法に関する。
【0286】
抗体の重鎖又は軽鎖に導入され得る、特に抗体の重鎖のC末端に融合し得る例示的なペプチドタグは、LLQGG(配列番号1)、LLQG(配列番号2)、LSLSQG(配列番号3)、GGGLLQGG(配列番号4)、GLLQG(配列番号5)、LLQ,GSPLAQSHGG(配列番号6)、GLLQGGG(配列番号7)、GLLQGG(配列番号8)、GLLQ(配列番号9)、LLQLLQGA(配列番号10)、LLQGA(配列番号11)、LLQYQGA(配列番号12)、LLQGSG(配列番号13)、LLQYQG(配列番号14)、LLQLLQG(配列番号15)、SLLQG(配列番号16)、LLQLQ(配列番号17)、LLQLLQ(配列番号18)、LLQGR(配列番号19)、EEQYASTY(配列番号20)、EEQYQSTY(配列番号21)、EEQYNSTY(配列番号22)、EEQYQS(配列番号23)、EEQYQST(配列番号24)、EQYQSTY(配列番号25)、QYQS(配列番号26)、QYQSTY(配列番号27)、YRYRQ(配列番号28)、DYALQ(配列番号29)、FGLQRPY(配列番号30)、EQKLISEEDL(配列番号31)、LQR、及びYQRである。
【0287】
当業者は、例えばSambrook,Joseph.(2001).Molecular cloning:a laboratory manual.Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されているような分子クローニングの方法によって抗体のアミノ酸残基を置換する又はペプチドタグを抗体に導入する方法を認識している。
【0288】
一般に、当業者は抗体のどの位置にリンカーがコンジュゲートするかを決定する方法を認識している。例えば、コンジュゲーション部位は、抗体-ペイロードコンジュゲートのタンパク質分解消化及び得られた断片のLC-MS分析によって決定することができる。例えば、サンプルを、それぞれ取扱説明書に従ってGlyciNATOR(Genovis)で脱グリコシル化し、その後トリプシンゴールド(質量分析グレード、Promega)で消化してよい。従って、1μgのタンパク質を50ngのトリプシンと共に37℃で一晩インキュベートしてよい。LC-MS分析は、Synapt-G2質量分析計(Waters)に連結したnanoAcquity HPLCシステムを用いて行ってよい。そのためには、100ngのペプチド溶液をAcquity UPLC Symmetry C18トラップカラム(Waters、部品番号186006527)にロードし、流速5μL/分の1%バッファA(水、0.1%ギ酸)及び99%バッファB(アセトニトリル、0.1%ギ酸)で3分間トラップしてよい。次いで、ペプチドを25分以内に3%→65%バッファBへの直線勾配で溶出してよい。データは、正極性の分離モード及び50~2000m/zの質量範囲で取得することができる。他の機器の設定は以下の通りであってよい:キャピラリー電圧3.2kV、サンプリングコーン40V、抽出コーン4.0V、ソース温度130℃、コーンガス35L/h、ナノフローガス0.1bar、及びパージガス150L/h。質量分析計は、[Glu1]-フィブリノペプチドで較正してよい。
【0289】
更に、当業者は、抗体-ペイロードコンストラクトの薬物対抗体(DAR)比又はペイロード対抗体比を求める方法を認識している。例えば、DARは、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)又はLC-MSによって求めることができる。
【0290】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)では、サンプルを0.5M硫酸アンモニウムに調整し、MAB PAK HIC Butylカラム(5μm、4.6×100mm、Thermo Scientific)を介してA(1.5M硫酸アンモニウム、25mM Tris HCl、pH7.5)からB(20%イソプロパノール、25mM Tris HCl、pH7.5)へのフル勾配を用いて、1mL/分及び30℃で20分間にわたって評価してよい。通常、40μgのサンプルを使用してよく、280nmにおけるシグナルを記録してよい。相対HIC保持時間(HIC-RRT)は、2種のADC DARの絶対保持時間をそれぞれの非コンジュゲートmAbの保持時間で除することにより算出することができる。
【0291】
LC-MS DARを求める場合、最終濃度が0.025mg/mLになるようにADCをNHHCOで希釈してよい。その後、40μLのこの溶液を室温で5分間1μLのTCEP(500mM)で還元し、次いで、10μLのクロロアセトアミド(200mM)を添加することによってアルキル化し、続いて、暗所において37℃で一晩インキュベートしてよい。逆相クロマトグラフィーについては、Dionex U3000システムをソフトウェアChromeleonと組み合わせて使用してよい。システムは、70℃に加熱されたRP-1000カラム(1000Å、5μm、1.0×100mm、Sepax)及び波長214nmに設定されたUV検出器を備えていてよい。溶媒Aは0.1%のギ酸を含む水からなり得、溶媒Bは0.1%のギ酸を含む85%のアセトニトリルを含み得る。還元及びアルキル化されたサンプルをカラムにロードし、14分かけて30→55%の溶媒Bの勾配によって分離してよい。DAR種を同定するために、液体クロマトグラフィーシステムをSynapt-G2質量分析計に連結してもよい。質量分析計のキャピラリー電圧は3kV、サンプリングコーンは30Vに設定してよく、抽出コーンは合計5Vの値になるようにしてよい。ソース温度は150℃に、脱溶媒温度は500℃に、コーンガスは20l/hに、脱溶媒ガスは600l/hに設定してよく、取得は600~5000Daの質量範囲においてポジティブモードで1秒のスキャンタイムで行ってよい。機器はヨウ化ナトリウムで較正してよい。MassLynxのMaxEnt1アルゴリズムで収束するまでスペクトルのデコンボリューションを実行してよい。クロマトグラフィーのピークにDAR種を割り当てた後、逆相クロマトグラムの積分ピーク面積に基づいてDARを計算することができる。
【0292】
特定の実施形態においては、本発明は、抗体に含まれるGln残基のγ-カルボキサミド基にリンカーをコンジュゲートする、本発明に係る方法に関する。
【0293】
すなわち、本発明に係るリンカーは、好ましくは、抗体に含まれるGln残基、好ましくは本明細書に開示されるGln残基のいずれか1つ、より好ましくはGln残基Q295(EU付番)の側鎖のアミド基にコンジュゲートする。
【0294】
特定の実施形態においては、本発明は、リンカーが少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%のコンジュゲーション効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートするのに好適である、本発明に係る方法に関する。
【0295】
すなわち、特定の実施形態においては、リンカーは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%の効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートすることができるリンカーであり得る。好ましい実施形態においては、リンカーは、少なくとも70%の効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートすることができるリンカーであり得る。別の好ましい実施形態においては、リンカーは、少なくとも75%の効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートすることができるリンカーであり得る。別の好ましい実施形態においては、リンカーは、少なくとも80%の効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートすることができるリンカーであり得る。別の好ましい実施形態においては、リンカーは、少なくとも85%の効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートすることができるリンカーであり得る。別の好ましい実施形態においては、リンカーは、少なくとも90%の効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートすることができるリンカーであり得る。別の好ましい実施形態においては、リンカーは、少なくとも95%の効率でグリコシル化抗体にコンジュゲートすることができるリンカーであり得る。好ましくは、グリコシル化抗体はグリコシル化IgG抗体であり、より好ましくは残基N297(EU付番)でグリコシル化されたIgG抗体である。
【0296】
当業者は、抗体と特定のリンカーとのコンジュゲーション効率を求める方法を認識している。例えば、コンジュゲーション効率は、本明細書に記載の通り求めることができる。すなわち、抗体、特にIgG1抗体を、本明細書で定義する条件下でインキュベートしてよい。インキュベーション期間後、還元条件下でLC-MS分析によりコンジュゲーション効率を求めることができる。トランスグルタミナーゼは、Zedira(ドイツ)から入手可能なストレプトマイセス・モバラエンシス由来の微生物トランスグルタミナーゼ(MTG)であってよい。好適なバッファは、Tris、MOPS、HEPES、PBS、又はBisTrisのバッファであってよい。しかし、バッファ系の選択は異なっていてもよく、リンカーの化学的性質に大きく依存し得ることを理解されたい。しかし、当業者であれば、本発明の開示に基づいて最適なバッファ条件を特定することができる。あるいは、コンジュゲーション効率は、Spycherら(Dual,Site-Specific Modification of Antibodies by Using Solid-Phase Immobilized Microbial Transglutaminase,ChemBioChem 2019 18(19):1923-1927)に記載の通り求め、Benjaminら(Thiolation of Q295:Site-Specific Conjugation of Hydrophobic Payloads without the Need for Genetic Engineering,Mol.Pharmaceutics 2019,16:2795-2807)に従って分析してもよい。
【0297】
特定の実施形態においては、抗体は、実施例1に記載の通りコンジュゲートし得る。すなわち、5U/mg抗体の濃度の微生物トランスグルタミナーゼ(MTG、Zedira)及び5モル当量の指定のリンカーペイロードを含む50mM Tris pH7.6中で、5mg/mLのネイティブなグリコシル化モノクローナル抗体を37℃で24時間、回転サーモミキサーでインキュベートしてよい。
【0298】
特定の実施形態においては、本発明は、微生物トランスグルタミナーゼがストレプトマイセス属の種、特にストレプトマイセス・モバラエンシスに由来する、本発明に係る方法に関する。
【0299】
すなわち、本発明の方法において使用される微生物トランスグルタミナーゼは、ストレプトマイセス属の種、特に、ストレプトマイセス・モバラエンシスに由来していてよく、優先的にはネイティブな酵素に対して80%の配列同一性を有する。従って、MTGはネイティブな酵素であってもよく、ネイティブな酵素の遺伝子操作されたバリアントであってもよい。
【0300】
このような微生物トランスグルタミナーゼの一つは、Zedira(ドイツ)から市販されている。それは、大腸菌(E.coli)で組換え的に産生される。ストレプトマイセス・モバラエンシストランスグルタミナーゼは、配列番号32に開示されているアミノ酸配列を有する。他のアミノ酸配列を有するS.モバラエンシスMTGバリアントが報告されており、これも本発明に包含される(配列番号33及び34)。
【0301】
別の実施形態においては、ストレプトマイセス・ラダカヌム(Streptomyces ladakanum)(以前はストレプトベルチキリウム・ラダカヌム(Streptoverticillium ladakanum)として知られていた)由来の微生物トランスグルタミナーゼを使用してもよい。ストレプトマイセス・ラダカヌムトランスグルタミナーゼ(米国特許第6,660,510 B2号)は、配列番号35に開示されているアミノ酸配列を有する。
【0302】
上記のトランスグルタミナーゼはいずれも、配列が改変されていてもよい。幾つかの実施形態においては、配列番号32~35のいずれか1つと80%、85%、90%、又は95%以上の配列同一性を有するトランスグルタミナーゼを使用することができる。
【0303】
ACTIVA TGと呼ばれる別の好適な微生物トランスグルタミナーゼがAjinomotoから市販されている。Zedira製のトランスグルタミナーゼと比較すると、ACTIVA TGはN末端のアミノ酸を4つ欠いているが、類似の活性を有する。
【0304】
本発明の文脈において使用され得る更なる微生物トランスグルタミナーゼは、Kieliszek及びMisiewicz(Folia Microbiol(Praha).2014;59(3):241-250)、国際公開第2015/191883 A1号、同第2008/102007 A1号、及び米国特許出願公開第2010/0143970号に開示されており、これらの内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0305】
特定の実施形態においては、微生物トランスグルタミナーゼの変異体バリアントを、リンカーの抗体へのコンジュゲートに使用することができる。すなわち、本発明の方法において使用される微生物トランスグルタミナーゼは、配列番号32又は33に記載のS.モバラエンシストランスグルタミナーゼのバリアントであってもよい。特定の実施形態においては、配列番号32に記載の組換えS.モバラエンシストランスグルタミナーゼは、変異G254Dを含み得る。特定の実施形態においては、配列番号32に記載の組換えS.モバラエンシストランスグルタミナーゼは、変異G254D及びE304Dを含み得る。特定の実施形態においては、配列番号32に記載の組換えS.モバラエンシストランスグルタミナーゼは、変異D8E及びG254Dを含み得る。特定の実施形態においては、配列番号32に記載の組換えS.モバラエンシストランスグルタミナーゼは、変異E124A及びG254Dを含み得る。特定の実施形態においては、配列番号32に記載の組換えS.モバラエンシストランスグルタミナーゼは、変異A216D及びG254Dを含み得る。特定の実施形態においては、配列番号32に記載の組換えS.モバラエンシストランスグルタミナーゼは、変異G254D及びK331Tを含み得る。
【0306】
特定の実施形態においては、本発明は、本発明に係る方法で生成された抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0307】
すなわち、本発明は、前述の工程のいずれかを経て作製された抗体-リンカーコンジュゲートに関する。
【0308】
更に、本発明は、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物に関する。
【0309】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物であって、特に、該抗体-リンカーコンジュゲートが、少なくとも1つのペイロードと、少なくとも1つの薬学的に許容し得る成分とを含む医薬組成物に関する。
【0310】
医薬組成物は、本明細書に開示される一段階又は二段階のプロセスで生成された抗体-ペイロードコンジュゲートを含み得ることを理解されたい。
【0311】
医薬組成物に含まれる抗体-ペイロードコンストラクトに含まれるペイロードの種類は、医薬組成物の用途によって異なる。医薬組成物が疾患の治療に使用される実施形態においては、ペイロードは、好ましくは薬物である。疾患が腫瘍性疾患である場合、ペイロードは好ましくは毒素である。医薬組成物が診断に使用される実施形態においては、ペイロードは好ましくは造影剤である。
【0312】
特定の実施形態においては、本発明は、少なくとも1つの追加の治療的に活性のある剤を含む、本発明に係る医薬組成物に関する。
【0313】
本発明に係る医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容し得る成分を含み得る。
【0314】
薬学的に許容し得る成分とは、対象に対して非毒性である、医薬製剤中の活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容し得る成分としては、バッファ、賦形剤、安定剤、又は保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0315】
凍結乾燥製剤又は水溶液の形態の本明細書に記載される抗体-リンカーコンジュゲートの医薬製剤は、所望の純度を有するこのようなコンジュゲートを1つ以上の任意の薬学的に許容し得る成分と混合することにより調製される(Flemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Oslo,A.Ed.(1980))。薬学的に許容し得る成分は、一般に、使用される投与量及び濃度でレシピエントにとって無毒であり、そして、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等のバッファ;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容し得る成分としては、更に、間質性(insterstitial)薬物分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が挙げられる。rHuPH20を含む特定の例示的なsHASEGP及びその使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。例えば、sHASEGPをコンドロイチナーゼ等の1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせてもよい。
【0316】
特定の実施形態においては、本発明は、特に抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つのペイロードを含む本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート、又は治療及び/若しくは診断において使用するための本発明に係る医薬組成物に関する。
【0317】
すなわち、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、対象の治療又は対象における疾患若しくは病態の診断において使用することができる。個体又は対象は、好ましくは、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びマカク等の非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態においては、個体又は対象はヒトである。本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物を治療に使用する場合、リンカーが薬物を含むことが好ましい。本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物を診断に使用する場合、リンカーが少なくとも1つの造影剤を含むことが好ましい。
【0318】
特定の実施形態においては、本発明は、特に抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つのペイロードを含む本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート、又は腫瘍性疾患、神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、若しくは感染性疾患
・に罹患している、
・を発症するリスクがある、及び/若しくは
・と診断された
患者の治療において使用するための本発明に係る医薬組成物に関する。
【0319】
特定の実施形態においては、本発明は、特に抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つのペイロードを含む本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート、又は腫瘍性疾患に罹患している患者の治療において使用するための本発明に係る医薬組成物に関する。
【0320】
「腫瘍性疾患」という用語は、本発明で使用される場合、細胞の制御不能な異常成長を特徴とする状態を指す。腫瘍性疾患にはがんも含まれる。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このようながんのより具体的な例としては、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、頸部がん、消化器がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、唾液腺がん、腎臓がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん、皮膚がん、黒色腫、脳腫瘍、卵巣がん、神経芽細胞腫、骨髄腫、各種頭頸部がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、及び末梢神経上皮腫が挙げられる。好ましいがんとしては、肝臓がん、リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、及び末梢神経上皮腫が挙げられる。
【0321】
すなわち、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲートは、好ましくはがんの治療に使用される。このように、特定の実施形態においては、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲートは、腫瘍細胞上に存在する抗原に特異的に結合する抗体を含む。特定の実施形態においては、抗原は、腫瘍細胞の表面上の抗原であってよい。特定の実施形態においては、腫瘍細胞の表面上の抗原は、抗体-リンカーコンジュゲートが抗原に結合すると、抗体-リンカーコンジュゲートと共に細胞内部に移行し得る。
【0322】
本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲートをがんの治療に使用する場合、抗体-リンカーコンジュゲートは、抗体-リンカーコンジュゲートが結合する腫瘍細胞を殺傷するか又は増殖を阻害する能力を有する少なくとも1つのペイロードを含むことが好ましい。特定の実施形態においては、少なくとも1つのペイロードは、抗体-リンカーコンジュゲートが腫瘍細胞内部に移行した後に細胞毒性活性を示す。特定の実施形態においては、少なくとも1つのペイロードは毒素である。
【0323】
炎症性疾患は、自己免疫疾患であってよい。感染性疾患は、細菌感染であってもウイルス感染であってもよい。
【0324】
特定の実施形態においては、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート及び/又は医薬組成物は、B細胞関連がんの治療において使用することができる。
【0325】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、本発明に従って使用するための抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物であって、医薬組成物中に含まれる抗体-リンカーコンジュゲートがポラツズマブを含み、腫瘍性疾患がB細胞関連がんである抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物に関する。
【0326】
このためには、抗体-リンカーコンジュゲートが本明細書に開示される抗CD79b抗体を含むことが好ましく、好ましくは、抗CD79b抗体はCD79bに結合すると標的細胞内部に移行する。特定の実施形態においては、抗CD79b抗体は、配列番号36に記載の重鎖及び配列番号37に記載の軽鎖を有するポラツズマブである。更に、抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つの毒素を含むことが好ましい。
【0327】
B細胞関連がんは、高、中、及び低悪性度のリンパ腫(例えば、粘膜関連リンパ組織B細胞リンパ腫及び非ホジキンリンパ腫(NHL)等のB細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、並びにホジキンリンパ腫、並びにT細胞リンパ腫を含む)、並びに白血病(続発性白血病、B細胞白血病(CD5+Bリンパ球)等の慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病等の骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)等のリンパ性白血病、及び骨髄異形成を含む)、並びに好塩基球、好酸球、好中球、及び単球等の多形核白血球、樹状細胞、血小板、赤血球、並びにナチュラルキラー細胞を含む追加の造血細胞のがんを含む他の血液学的がん及び/又はB細胞若しくはT細胞の関連がんからなる群から選択されるいずれか1つであってよい。また、以下から選択されるがん性B細胞増殖障害も含まれる:リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、侵襲性NHL、再発性侵襲性NHL、再発性低悪性度NHL、難治性NHL、難治性低悪性度NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリーセル白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、及びマントル細胞リンパ腫。
【0328】
特定の実施形態においては、本発明は、B細胞関連がんが非ホジキンリンパ腫であり、特にB細胞関連がんがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、本発明に従って使用するための抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物に関する。
【0329】
更に、抗CD79b抗体-リンカーコンジュゲート及び/又は抗CD79b抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物は、B細胞関連がんの治療に適した他の治療法と併用してもよい。
【0330】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、本発明に従って使用するための抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物であって、ベンダムスチン及び/又はリツキシマブと組み合わせて投与される抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物に関する。
【0331】
抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、ベンダムスチン及び/又はリツキシマブ等の追加の治療剤と必ずしも同時に投与される必要はないことを理解されたい。その代わり、抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、同じ疾患の治療に使用される他の治療剤と異なる投与スケジュールで、その結果、異なる日に投与されてもよい。
【0332】
特定の実施形態においては、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート及び/又は医薬組成物は、HER2陽性がんの治療において使用することができる。
【0333】
従って、特定の実施形態においては、本発明に従って使用するための抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物であって、医薬組成物中に含まれる抗体-リンカーコンジュゲートがトラスツズマブを含み、腫瘍性疾患がHER2陽性がん、特にHER2陽性の乳がん、胃がん、卵巣がん、又は肺がんである抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物に関する。
【0334】
このためには、抗体-リンカーコンジュゲートが本明細書に開示される抗HER2/neu抗体を含むことが好ましく、好ましくは、抗HER2/neu抗体はHER2/neuに結合すると標的細胞内部に移行する。特定の実施形態においては、抗HER2/neu抗体は、配列番号38に記載の重鎖及び配列番号39に記載の軽鎖を有するトラスツズマブである。更に、抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つの毒素を含むことが好ましい。
【0335】
HER2陽性がんは、本明細書で使用される場合、限定するものではないが、HER2陽性の乳がん、胃がん、卵巣がん、又は肺がんであり得る。当業者であれば、がんがHER2陽性がんであるかどうかを判定することができる。例えば、腫瘍細胞は生検で単離され得、HER2/neuの存在は当技術分野で公知の任意の方法で判定され得る。
【0336】
更に、抗HER2/neu抗体-リンカーコンジュゲート及び/又は抗HER2/neu抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物は、HER2細胞陽性がんの治療に適した他の治療法と併用してもよい。
【0337】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、本発明に従って使用するための抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物であって、ラパチニブ、カペシタビン、及び/又はタキサンと組み合わせて投与される、抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物に関する。
【0338】
抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、ラパチニブ、カペシタビン、及び/又はタキサン等の追加の治療剤と必ずしも同時に投与される必要はないことを理解されたい。その代わり、抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、同じ疾患の治療に使用される他の治療剤と異なる投与スケジュールで、その結果、異なる日に投与されてもよい。
【0339】
特定の実施形態においては、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート及び/又は医薬組成物は、ネクチン-4陽性がんの治療に使用することができる。
【0340】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、本発明に従って使用するための抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物であって、医薬組成物中に含まれる抗体-リンカーコンジュゲートがエンホルツマブ又はエンホルツマブバリアントを含み、腫瘍性疾患が、ネクチン-4陽性がん、特にネクチン-4陽性の膵臓がん、肺がん、膀胱がん、又は乳がんである抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物に関する。
【0341】
このためには、抗体-リンカーコンジュゲートが本明細書に開示される抗ネクチン-4抗体を含むことが好ましく、好ましくは、抗ネクチン-4抗体はネクチン-4に結合すると標的細胞内部に移行する。特定の実施形態においては、抗ネクチン-4抗体は、配列番号40又は配列番号42に記載の重鎖及び配列番号41に記載の軽鎖を有するエンホルツマブである。更に、抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つの毒素を含むことが好ましい。
【0342】
ネクチン-4陽性がんは、本明細書で使用される場合、限定されるものではないが、ネクチン-4陽性の膵臓がん、肺がん、膀胱がん、又は乳がんであり得る。当業者であれば、がんがネクチン-4陽性がんであるかどうかを判定することができる。例えば、腫瘍細胞は生検で単離され得、ネクチン-4の存在は当技術分野で公知の任意の方法で判定され得る。
【0343】
更に、抗ネクチン-4抗体-リンカーコンジュゲート及び/又は抗ネクチン-4抗体-リンカーコンジュゲートを含む医薬組成物は、ネクチン-4細胞陽性がんの治療に適した他の治療法と併用してもよい。
【0344】
従って、特定の実施形態においては、本発明は、本発明に従って使用するための抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物であって、シスプラチンベースの化学療法剤及び/又はペンブロリズマブと組み合わせて投与される、抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物に関する。
【0345】
抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、シスプラチンベースの化学療法剤及び/又はペムブロリズマブ等の追加の治療剤と必ずしも同時に投与される必要はないことを理解されたい。その代わり、抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、同じ疾患の治療に使用される他の治療剤と異なるスケジュールで、その結果、異なる日に投与されてもよい。
【0346】
特定の実施形態においては、本発明は、特に抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つのペイロードを含む本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲートの使用、又は腫瘍性疾患、神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、若しくは感染性疾患
・に罹患している、
・を発症するリスクがある、及び/若しくは
・と診断された
患者を治療するための医薬を製造するための本発明に係る医薬組成物の使用に関する。
【0347】
特定の実施形態においては、本発明は、腫瘍性疾患を治療又は予防する方法であって、特に抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つのペイロードを含む本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は本発明に係る医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
【0348】
特定の実施形態においては、本発明は、術前、術中若しくは術後のイメージングに使用するための、特に抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つのペイロードを含む本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は本発明に係る医薬組成物に関する。
【0349】
すなわち、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲートは、医療用イメージングにおいて使用することができる。そのために、特定の標的分子、細胞、又は組織に結合している間に抗体-リンカーコンジュゲートを可視化することができる。特定のペイロードを可視化するために、当技術分野では様々な技術が知られている。例えば、ペイロードが放射性核種である場合、抗体-リンカーコンジュゲートが結合する分子、細胞、又は組織をPET又はSPECTによって可視化することができる。ペイロードが蛍光色素の場合、抗体-リンカーコンジュゲートが結合する分子、細胞、又は組織は蛍光イメージングによって可視化することができる。特定の実施形態においては、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲートは、2つの異なるペイロード、例えば放射性核種及び蛍光色素を含む。この場合、抗体-リンカーコンジュゲートが結合する分子、細胞、又は組織は、PET/SPECT及び蛍光イメージング等の2つの異なる及び/又は補完的なイメージング技術を用いて可視化することができる。
【0350】
抗体-リンカーコンジュゲートは、術前、術中、及び/又は術後のイメージングに使用することができる。
【0351】
術前イメージングは、特定の疾患又は病態を診断する際に特定の標的分子、細胞、又は組織を可視化し、任意で手術のガイダンスを提供するために手術前に実施され得る全てのイメージング技術を包含する。術前イメージングは、腫瘍上の抗原に特異的に結合し、放射性核種を含むペイロードにコンジュゲートする抗体を含む抗体-リンカーコンジュゲートを用いることによって、手術前にPET又はSPECTにより腫瘍を可視化する工程を含んでいてもよい。
【0352】
術中イメージングは、特定の標的分子、細胞、又は組織を可視化し、手術のガイダンスを提供するために手術中に実施され得る全てのイメージング技術を包含する。特定の実施形態においては、近赤外蛍光イメージングによって手術中に腫瘍を可視化するために、近赤外蛍光色素を含む抗体-リンカーコンジュゲートを使用することがる。術中イメージングにより、外科医は手術中に特定の組織、例えば腫瘍組織を特定することができるようになるため、腫瘍組織を完全に除去できるようになる。
【0353】
術後イメージングは、特定の標的分子、細胞、又は組織を可視化し、手術の結果を評価するために手術後に実施され得る全てのイメージング技術を包含する。術後イメージングは術前の手術と同様に行うことができる。
【0354】
特定の実施形態においては、本発明は、2つ以上の異なるペイロードを含む抗体-リンカーコンジュゲートに関する。例えば、抗体-リンカーコンジュゲートは、放射性核種及び近赤外蛍光色素を含み得る。このような抗体-ペイロードコンジュゲートは、PET/SPECT及び近赤外蛍光イメージングによるイメージングに使用することができる。このような抗体の利点は、PET又はSPECTによって手術の前及び後に標的組織、例えば腫瘍を可視化するために使用できることである。同時に、手術中に近蛍光赤外イメージングによって腫瘍を可視化することもできる。
【0355】
特定の実施形態においては、本発明は、術中画像誘導がん手術において使用するための、特に抗体-リンカーコンジュゲートが少なくとも1つのペイロードを含む本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は本発明に係る医薬組成物に関する。
【0356】
上述したように、本発明の抗体-リンカーコンジュゲートは、標的分子、細胞、又は組織を可視化し、手術中に外科医又はロボットを誘導するために使用することができる。すなわち、抗体-リンカーコンジュゲートは、例えば近赤外イメージングによって手術中に腫瘍組織を可視化し、腫瘍組織を完全に除去することを可能にするために使用することができる。
【0357】
本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、疾患を効率的に治療するか又は診断目的に十分な量又は投与量で、ヒト又は動物の対象に投与してよい。
【0358】
本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、非経口、肺内、及び経鼻、並びに局所治療が望ましい場合には、病巣内、子宮内、又は膀胱内投与を含む任意の好適な手段によって投与することができる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下への投与を含む。投与が短期間であるか慢性的であるかに一部依存するが、任意の好適な経路、例えば静脈内注射又は皮下注射等の注射によって投薬を行ってもよい。単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投薬スケジュールが本明細書において企図される。
【0359】
本発明に合致した方法で製剤化、投薬、及び投与することができる本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、適正医療行為に合致した方法で製剤化、投薬、及び投与することができる。この状況において考慮すべき要因は、治療される具体的な障害、治療される具体的な哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師に公知の他の要因を含む。本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、必ずしもそうである必要はないが、任意で、対象となる障害を予防又は治療するために現在使用されている1つ以上の剤と共に製剤化される。このような他の剤の有効量は、製剤中に存在する抗体-リンカーコンジュゲートの量、障害又は治療の種類、及び上で論じた他の要因に依存する。これらは、一般的に、本明細書に記載するのと同じ投与量及び投与経路で、又は本明細書に記載する投薬量の約1~99%で、又は任意の投薬量で、そして、実験的に/臨床的に適切であると判定された任意の経路によって用いられる。
【0360】
疾患を予防又は治療するため、本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物の適切な投薬量(単独で使用又は1つ以上の他の追加の治療剤と併用するとき)は、治療される疾患の種類、抗体-ペイロードコンジュゲートの種類、疾患の重症度及び経過、抗体-リンカーコンジュゲートが予防目的で投与されるか又は治療目的で投与されるか、薬歴、患者の臨床歴及び抗体-リンカーコンジュゲートに対する応答、並びに主治医の裁量に依存する。本発明に係る抗体-リンカーコンジュゲート又は医薬組成物は、好適には一度に又は一連の治療にわたって患者に投与される。
【実施例
【0361】
一般法
抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Roche、薬局で購入)、並びにペプチド-リンカー及びリンカー-ペイロード(それぞれLifeTein及びLevena Biopharmaによってカスタム合成)は全て市販されていた。配列番号36及び37の配列からなる重鎖及び軽鎖を有するポラツズマブを浮遊適応性のCHO-K1細胞に一過的にトランスフェクトし、無血清/動物成分不含培地で発現させた。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(Mab Select Sureカラム;GE Healthcare)によって上清からタンパク質を精製した。
【0362】
ネイティブのグリコシル化されたモノクローナル抗体、微生物トランスグルタミナーゼ(MTG、Zedira)、及び指定のペプチド-リンカー又はリンカー-ペイロードを回転サーモミキサー内のバッファ中で混合することによって、コンジュゲーション反応を行った。DTT還元条件下でLC-MSによりコンジュゲーション効率を評価した。50mM DTT(最終)及び50mM Trisバッファ中37℃で15分間サンプルをインキュベートすることにより、サンプルの還元を達成した。Acquity UPLC H-Class System(Waters)及びACQUITY UPLC BEH C18カラムに連結されたXevo G2-XS QTOF(Waters)でプローブを分析した。デコンボリューションしたスペクトルからコンジュゲーション効率(CE)を計算し、%で提示した。以下の式による計算のために、両糖型(G1F及びG0F)から得られる強度を考慮した。
【0363】
【数1】
【0364】
式中、cj=コンジュゲートされている、ncj=コンジュゲートされていない。
【0365】
実施例1:最適化された反応条件の特定
方法
2つの異なる反応条件セットを用いて反応を行った:条件1:Tris 50mM pH7.6中1mg/mLのネイティブのグリコシル化されたトラスツズマブ抗体、6U/mgの濃度のMTG、及び80モル当量の指定のペプチド-リンカー又はリンカー-ペイロードを回転サーモミキサーにおいて37℃で20時間、又は条件2:Tris 50mM pH7.6中5mg/mLのネイティブなグリコシル化されたトラスツズマブ抗体、5U/mgの濃度のMTG、及び5モル当量の指定のペプチド-リンカー又はリンカー-ペイロードを回転式サーモミキサーにおいて37℃で24時間。一般法に記載の通りLCMSによってコンジュゲーション効率を評価した。
【0366】
結果
驚くべきことに、表3に示すように、ペプチドリンカー及びリンカーペイロードの当量が実質的に少なく(80モル当量対5モル当量)、MTG濃度が低い(5U/mg対6U/mg)場合、優れたコンジュゲーション効率が得られた。更により際立ったことに、官能化されたペプチド又はリンカーペイロードを用いると、条件2、すなわちペプチド-リンカー又はリンカー-ペイロードを80ではなく5モル当量使用することでコンジュゲーション効率が著しく向上した。この所見は、様々なリンカーだけでなく、様々なペイロードクラス(3種の細胞毒素:MMAE、マイタンシン、及びエキサテカン、並びに1種のステロイド:コルチゾール)についても当てはまり、これは非常に驚くべきことである。
【0367】
【表3】
【0368】
実施例2:更なる反応条件の特定
リジン-リンカー-ペイロードを用いたコンジュゲーションが多種多様な反応条件に耐えることを実証するために、パラメータを変化させた様々な反応条件を用いてリンカー-ペイロードのポラツズマブへのコンジュゲーションを行った。
【0369】
方法
標準条件として、以下のパラメータを使用した:Tris 50mM pH7.6中5mg/mLのネイティブなグリコシル化されたポラツズマブ抗体、5U/mgの濃度のMTG、及び5モル当量のRKAA-PABC-MMAEを回転式サーモミキサーにおいて37℃で24時間。
【0370】
可変パラメータを表4に示す。
【0371】
LCMSで以下の通りコンジュゲーション効率を評価した:デコンボリューションしたスペクトルからコンジュゲーション効率(CE)を計算し、%で提示した。以下の式による計算のために、両糖型(G1F及びG0F)から得られる強度を考慮した。
【0372】
【数2】
【0373】
式中、cj=コンジュゲートされている、ncj=コンジュゲートされていない。
【0374】
結果
RKAA-PABC-MMAEリンカー-ペイロードは、非常に広い範囲の反応条件にわたって非常に高いコンジュゲーション効率でコンジュゲートした:抗体濃度5~17mg/mL、抗体濃度に対するMTG濃度(U/mg)2~10U/mgで、80%を超えるコンジュゲーション効率が得られた。更に、リンカー対抗体のモル濃度(2~8当量)及び非常に広範囲のpHでも高いコンジュゲーション効率が得られた(pH6.0でのコンジュゲーション効率67%からpH8では86%)。
【0375】
驚くべきことに、抗体に対するリンカーペイロード過剰が低下するほど、より高いコンジュゲーション効率が得られた、すなわち、2~20当量のリンカーペイロードからは80当量のリンカーペイロードを用いた場合よりも高いコンジュゲーション効率が得られ、これは予想に反していた(表4)。
【0376】
【表4】
【0377】
実施例3:更なる反応条件の特定
リンカー濃度の重要性を実証するために、様々な配列及びペイロードを有する更なるリンカーを、様々な濃度で抗体ポラツズマブ及びトランツズマブにコンジュゲートした。
【0378】
方法
標準条件として、以下のパラメータを使用した:Tris 50mM pH7.6中3.5mg/mLのネイティブなグリコシル化されたポラツズマブ又はトラスツズマブ抗体及び5U/mgの濃度のMTGを回転式サーモミキサーにおいて37℃で24時間。リンカーRKAA-PABC-MMAE、KAR-PABC-MMAE、及びAHK-PABC-Exaを様々な濃度で反応混合物に添加した。
【0379】
可変パラメータを表5に示す。
【0380】
以下の通りRPLCによってコンジュゲーション効率を評価した:還元後、BioResolve RP mAb Polyphenylカラムを用いたUHPLC Dionex UltiMate 3000(Thermo Fisher)でサンプルを分析した。式に従ってRPLCクロマトグラムから抽出した相対ピーク面積を用いてコンジュゲーション効率(CE)を計算し、%で提示した。
【0381】
【数3】
【0382】
式中、cj=コンジュゲートされている、ncj=コンジュゲートされていない。
【0383】
結果
試験した全てのリンカーで、5~20当量のリンカーペイロードを反応に添加すると、並外れて高いコンジュゲーション効率が得られた。
【0384】
【表5】
【配列表】
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【国際調査報告】