(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】難燃性感圧接着剤及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/40 20060101AFI20241024BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20241024BHJP
C07F 9/655 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C08F8/40
C09J133/04
C07F9/655
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524978
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 IB2022059781
(87)【国際公開番号】W WO2023073470
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ピュン,ユーミ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヘ-スン ハリー
【テーマコード(参考)】
4H050
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4H050AA03
4H050AB46
4J040DF021
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4J040JB09
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4J100HC75
4J100JA03
(57)【要約】
ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを製造する方法、及びホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを含有する感圧接着剤が提供される。本方法は、ペンダントカルボン酸基を有する前駆体(メタ)アクリレートコポリマーをエポキシ官能化ホスフェート化合物と反応させることを含む。反応生成物上のホスフェートを含有するペンダント基は、感圧接着剤のための難燃剤として機能することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを形成する方法であって、前記方法が、
ペンダントカルボン酸基を含むモノマー単位を有する前駆体(メタ)アクリレートコポリマーを提供することと、
前記前駆体(メタ)アクリレートコポリマーとエポキシ官能化ホスフェート化合物とを含む反応混合物を形成することと、
前記エポキシ官能化ホスフェート化合物を前記前駆体(メタ)アクリレートコポリマーの前記ペンダントカルボン酸基と反応させて、前記ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを形成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ホスフェートを含有するペンダント化合物を有する(メタ)アクリレートコポリマーが、感圧接着剤の成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エポキシ官能化ホスフェート化合物が、単一のエポキシ基及び1~3個のホスフェート基を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エポキシ官能化ホスフェート化合物が、式(I)
【化1】
(式中、
R
1は、水素又はメチルであり、
R
2は、C1~C8アルキレン又はC3~C8エーテル基であり、
R
3は、C1~C4アルキル、ベンジルであるか、又はR
4と一緒になって、C1~C3アルキルで任意に置換された、5若しくは6環員を有する環式基を形成し、
R
4は、C1~C4アルキル、ベンジルであるか、又はR
3と一緒になって、C1~C3アルキルで任意に置換された、5若しくは6環員を有する環式基を形成する)
のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記式(I)のエポキシ官能化ホスフェート化合物が、式(I-A)
【化2】
のものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記式(I)のエポキシ官能化ホスフェート化合物が、式(I-B)
【化3】
(式中、
R
1は、水素又はC1~C3アルキルであり、
R
5は、水素又はC1~C3アルキルであり、
R
6は、C1~C3アルキルである)
のものである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記式(I)のエポキシ官能化ホスフェート化合物が、式(I-C)
【化4】
(式中、
R
9は、水素又はC1~C3アルキルであり、
R
10は、C1~C3アルキルであり、
R
11は、C1~C3アルキルである)
のものである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記エポキシ官能化ホスフェート化合物が、式(II)
【化5】
(式中、
R
12は、1~2個の炭素原子を有するアルキレンであり、
R
13は、2~4個の炭素原子を有するアルキレンであり、
R
14は、C1~C4アルキルであるか、又はR
15と一緒になって、C1~C3アルキルで任意に置換された、5若しくは6環員を有する環式基を形成し、
R
15は、C1~C4アルキルであるか、又はR
14と一緒になって、C1~C3アルキルで任意に置換された、5若しくは6環員を有する環式基を形成する)
のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記前駆体(メタ)アクリレートが、前記前駆体(メタ)アクリレートの総重量に基づいて、1~20重量パーセントの、前記カルボン酸基を含むモノマー単位を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記前駆体(メタ)アクリレート中の前記カルボン酸基を含むモノマー単位の少なくとも50パーセントが、前記エポキシ官能化ホスフェート化合物と反応する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを含む感圧接着剤であって、前記ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーが、
a)ペンダントカルボン酸基を含むモノマー単位を有する前駆体(メタ)アクリレートコポリマーと、
b)エポキシ官能化ホスフェート化合物と、
を含む反応混合物の反応生成物であり、前記エポキシ官能化ホスフェート化合物のエポキシ基は、(メタ)アクリル酸モノマー単位との開環反応を経ている、感圧接着剤。
【請求項12】
永久的又は一時的な基材と、
前記永久的又は一時的な基材に隣接して配置された、請求項11に記載の感圧接着剤組成物と、を含む、物品。
【請求項13】
前記基材が、ポリイミドフィルムであり、前記物品が、UL94 VTM-0の燃焼性等級を有する、請求項12に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
感圧接着剤(PSA)などのポリマー材料は、火災リスクが主要な懸念である様々な用途、例えば、航空機、自動車、列車、船舶、建築構造物で、また電子機器及び電気配線と共に使用されている。多くのポリマー材料は燃焼性であることから、それらの使用に伴う火災リスクを最小限に抑えるために様々な難燃剤が添加される。難燃剤は、様々な機構、例えば、気相中のフリーラジカルをクエンチすること、燃焼している材料の化学的フラグメントと反応してチャー形成を開始すること、又は燃焼している材料内にバリア層を形成することによって、様々な材料の燃焼性を低減し得る。
【0002】
一般に使用される難燃剤としては、ポリハロゲン化ジフェニルエーテルなどのハロゲン化化合物が挙げられる。これらの難燃剤は、よく知られており、可燃性材料の難燃処理に効果的であり得る。しかしながら、このクラスの難燃剤の多くの化合物が有害物質と見なされている。最も効果的なハロゲン化難燃剤のいくつかは、RoHS(特定有害物質使用制限)指令に基づき、2006年7月1日から欧州連合により禁止されている。諸外国及び米国の個々の州も同様のRoHS指令に従っている。
【0003】
リン系化合物は、非ハロゲン化難燃剤の主要な部類であり、これは多くの用途でハロゲン化難燃剤を置き換えるために使用されている。ポリリン酸アンモニウム(APP)は、中でも最も効果的な非ハロゲン化難燃剤であるが、それらは感圧接着剤などのポリマー材料との適合性が限定されている。例えば、難燃剤として有効に機能させるために、添加される量は、多くの場合、接着性不良、剪断保持力低下、及び加工性不良につながる傾向がある。
【0004】
金属水酸化物、ホウ酸亜鉛、及びメラミン粒子も有効な非ハロゲン化難燃剤であるが、標準的な燃焼性試験に合格するためには高充填レベルで添加する必要があり、これは接着性不良及び機械的特性の不良につながることがある。
【発明の概要】
【0005】
ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーの製造方法、及びホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを含有する感圧性接着剤が提供される。ホスフェートを含有するペンダント基は、難燃剤として機能することができる。
【0006】
第1の態様では、ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーの製造方法が提供される。本方法は、ペンダントカルボン酸基を含む前駆体(メタ)アクリレートコポリマーを提供することと、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーとエポキシ官能化ホスフェート化合物とを含む反応混合物を形成することと、を含む。本方法は、エポキシ官能化ホスフェート化合物のエポキシ基を前駆体(メタ)アクリレートコポリマーのペンダントカルボン酸基と反応させて、ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを形成することを更に含む。
【0007】
第2の態様では、上記の第1の態様に記載の方法に従って調製された、感圧接着剤が提供される。
【0008】
第3の態様では、(a)永久的又は一時的な基材と、(b)永久的又は一時的な基材に隣接して配置された上記第2の態様に記載の感圧接着剤とを含む、物品が提供される。
【0009】
感圧テープ協議会(the Pressure-Sensitive Tape Council)によると、感圧性接着剤(PSA)は以下の特性:(1)強力かつ永久的な粘着性、(2)指圧以下での接着、(3)被着体に対する充分な保持能力、及び(4)被着体からきれいに剥離されるだけの充分な凝集力(cohesive strength)を有すると定義されている。PSAとして良好に機能することが見出されている材料としては、所望のバランスの粘着性、剥離接着性、及び剪断保持力をもたらす、必要不可欠な粘弾性特性を示すように設計及び配合されたポリマーが挙げられる。PSAは、通常、室温(例えば、20℃)で粘着性であることを特徴とする。表面に対して単に粘着性である又は接着する材料はPSAを構成せず、PSAという用語は、追加の粘弾性特性を有する材料を包含する。
【0010】
PSAは、室温での粘着性についてのダルキスト基準を満たす接着剤であり、典型的には、室温で、接着、凝集、コンプライアンス、及び弾性を示す。この基準は、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」,Donatas Satas(Ed.),2nd Edition,p.172,Van Nostrand Reinhold,New York,N.Y.,1989に記載されているように、感圧接着剤を、1×10-6cm2/dyne超の1秒クリープコンプライアンスを有する接着剤として規定する。あるいは、弾性率が一次近似でクリープコンプライアンスの逆数であることから、感圧接着剤は1x106dyne/cm2未満のヤング率を有する接着剤として規定されてもよい。
【0011】
本出願において、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図したものではなく、その説明のために具体的な例が使用され得る全般的な部類を含む。
【0012】
用語「及び/又は(and/or)」は、一方又は両方を意味する。例えば、表現A及び/又はBは、A単独、B単独、又はAとBとの両方を意味する。
【0013】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」は、互換的に使用され、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを指し得る。用語「コポリマー」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマー単位を有するポリマーを指すために使用される。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「モノマー」は、(メタ)アクリロイル基又はビニル基などのエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を指す。
【0015】
用語「モノマー単位」は、ポリマーを形成するために使用される重合性組成物中に含まれるモノマーから誘導されるポリマー中の単位を指す。例えば、モノマーアクリル酸(CH
2=CH-(C=O)-OH)に対応するモノマー単位は、下記であり、
【化1】
式中、各アスタリスク(*)は、別のモノマー単位又はポリマーの末端基への結合部位を示す。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「ペンダント」は、(メタ)アクリレートコポリマーの炭素-炭素骨格鎖に結合した基を指す。ペンダントカルボン酸含有基は、任意に、カルボン酸基(-(C=O-OH又はその塩)に加えて追加の基を含有することができる。同様に、ホスフェートを含有するペンダント基は、ホスフェート基に加えて他の基を含有することができる(典型的には含有する)。
【0017】
用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを指し、用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「ペンダントカルボン酸基を有する第1の(メタ)アクリレートコポリマー」、「第1の(メタ)アクリレートコポリマー」、「ペンダントカルボン酸基を有する前駆体(メタ)アクリレートコポリマー」、「前駆体(メタ)アクリレートコポリマー」、及び同様の表現は、互換的に使用される。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「第2の(メタ)アクリレートコポリマー」、「ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマー」、及び他の同様の表現は、互換的に使用される。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「ホスフェート含有基」は、式Aの基を含有する基を指す。
【化2】
式Aにおいて、基R
3は、C1~C4アルキル、ベンジルであるか、又はR
4と一緒になって、少なくとも1つのC1~C3アルキルで任意に置換され得る、5若しくは6環員を有する環式基を形成する。基R
4は、
C1~C4アルキル、ベンジルであるか、又はR
3と一緒になって、少なくとも1つのC1~C3アルキルで任意に置換され得る、5若しくは6環員を有する環式基を形成する。
【0021】
基に言及する用語「C1~C4」は、基が1~4個の炭素原子を含有することを意味する。他の数を有する類似の表現は、同様に、基中の炭素原子の数を示す。
【0022】
用語「アルキル」は、アルカンの基である一価の基を指し、直鎖(straight-chain)、分岐鎖、環状、及び二環式の基、並びにこれらの組み合わせを含む。別段の指示がない限り、アルキル基は、典型的には、1個~20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1個~10個の炭素原子、2~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、2~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は2~4個の炭素原子を含有する。環状アルキル基及び分岐鎖アルキル基は、少なくとも3個の炭素原子を有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、n-オクチル、n-ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、イソオクチル、イソボルニル、アダマンチル、ノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
用語「アルキレン」は、アルカンの基である二価の基を指し、直鎖状(linear)、分岐鎖、環状、二環式、又はこれらの組み合わせである基を含む。別段の指示がない限り、アルキレン基は、典型的には、1~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレン基は、1~10個の炭素原子、2~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、2~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は2~4個の炭素原子を有する。環状及び分岐鎖アルキレン基は、少なくとも3個の炭素原子を有する。好適なアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、1,4-ブチレン、1,4-シクロヘキシレン、及び1,4-シクロヘキシルジメチレンが挙げられる。
【0024】
用語「エーテル基」は、アルキレン-オキシ-アルキレン基を指す。
【0025】
用語「含む(comprise)」、「含む(contain)」、及び「含む(include)」及びその変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲において現れるところでは、限定的な意味を有するものではない。このような用語は、記述される1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群が含まれることを示唆するが、いかなる他の1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群も除外されないことを示唆すると理解される。「からなる(consisting of)」は、この語句「からなる」の前のあらゆるものを含み、これらに限定することを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」は、この語句の前に列挙されるあらゆる要素を含み、これらの列挙された要素に関して本開示で特定した作用若しくは機能に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意によるものであり、列挙された要素の作用若しくは機能に実質的に影響を及ぼすかどうかに応じて存在してもよく又は存在しなくてもよいことを示す。オープンエンド言語(例えば、含む(comprise)、含む(include)、含む(contain)、及びそれらの派生語)で本明細書に記載される、要素のいずれか又は要素の組み合わせは、クローズドエンド言語(例えば、「からなる」とその派生語)及び部分的クローズドエンド言語(例えば、「から本質的になる」とその派生語)で更に記載されると考える。
【0026】
また、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数並びにその端点(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)及び任意の部分範囲(例えば、1~5は、1~4、1~3、2~4などを含む)を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「室温」は、20℃~25℃又は22℃~25℃の温度を指す。
【0028】
用語「の範囲(in the range)」又は「の範囲内(within a range)」(及び類似の記載)は、その記載された範囲の端点を含む。
【発明を実施するための形態】
【0029】
少なくとも1つのホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーの製造方法、並びにこのコポリマーを含有する感圧接着剤組成物が提供される。ホスフェート含有基は難燃剤として機能することができる。ホスフェート含有基は、(メタ)アクリレートコポリマーに共有結合しているので、多くの既知のリン含有難燃剤の典型的な基のように、経時的に浸出しない。
【0030】
ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーは、ペンダントカルボン酸含有基を有する第1の(メタ)アクリレートコポリマー(すなわち、前駆体(メタ)アクリレートコポリマー)から形成される。第1の(メタ)アクリレートコポリマーは、エポキシ官能化ホスフェート化合物と反応する。より具体的には、第1の(メタ)アクリレートコポリマーのペンダントカルボン酸含有基は、エポキシ官能化ホスフェート化合物のエポキシ基を開環して、ホスフェートを含有するペンダント基を有する第2の(メタ)アクリレートコポリマーの形成をもたらすことができる。ホスフェート含有基は、第2の(メタ)アクリレートコポリマーに共有結合している。前駆体(メタ)アクリレートコポリマーのカルボン酸基とエポキシ官能化ホスフェート化合物との間の反応は、副生成物形成が最小限であり非常に効果的である傾向がある。
【0031】
ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを形成するこの方法は、ペンダントリン含有基をポリマー材料に導入する他の既知の方法よりも多くの利点を提供する。例えば、リン含有モノマーの調製は困難である場合があり、リン含有モノマーの存在下で他のモノマーを重合することは、望まれ得るよりも低い分子量のポリマー材料をもたらし得る。すなわち、リン含有モノマーはラジカル重合プロセスを妨害する可能性がある。
【0032】
エポキシ官能化ホスフェート化合物、ペンダントカルボン酸含有基を有する前駆体(メタ)アクリレートコポリマー、ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを形成する方法、及びホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーが、各々以下に更に記載される。
【0033】
エポキシ官能化ホスフェート化合物
エポキシ官能化ホスフェート化合物は、典型的には、単一のエポキシ基(オキシラン基)及び少なくとも1つのホスフェート基を有する。任意の既知のエポキシ官能化ホスフェート化合物を使用することができる。エポキシ官能化ホスフェート化合物中のホスフェート基の数は、多くの場合、1、2、又は3個に等しいが、ホスフェート基の数は、所望であればより多くてもよい。単一のエポキシ基は、典型的には、エポキシ官能化ホスフェート化合物と反応するとき、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーの架橋反応を回避するのに好ましい。
【0034】
好適なエポキシ官能化ホスフェート化合物は、多くの場合、式(I)
【化3】
のものである。
式(I)において、R
1基は、水素又はメチルである。基R
2は、C1~C8アルキレン又はC3~C8エーテル基である。基R
3は、C1~C4アルキル、ベンジルであるか、又はR
4と一緒になって、C1~C3アルキルで任意に置換され得る、5若しくは6環員を有する環式基を形成する。基R
4は、C1~C4アルキル、ベンジルであるか、又はR
3と一緒になって、C1~C3アルキルで任意に置換され得る、5若しくは6環員を有する環式基を形成する。
【0035】
式(I)のいくつかの具体的なエポキシ官能化ホスフェート化合物は、式(I-A)
【化4】
のものである。
式(I-A)において、式(I)の基R
1は水素であり、式(I)の基R
2はメチレンである。基R
3及びR
4は、式(I)について定義されたものと同一である。
【0036】
式(I-A)のエポキシ官能化化合物の例としては、R3及びR4が両方ともメチルである、リン酸、ジメチルオキシラニルメチルエステル;R3及びR4が両方ともエチルである、リン酸、ジエチルオキシラニルメチルエステル;R3及びR4が両方ともプロピルである、リン酸、ジプロピルオキシラニルメチルエステル;R3がメチルであり、R4がエチルである場合のリン酸、エチルメチルジメチルオキシラニルメチルエステル;R3及びR4が両方ともイソプロピルである、リン酸、ビス(1-メチルエチル)オキシラニルメチルエステル;R3とR4が一緒になって5員環を形成する、1,3,2-ジオキサホスホラン、2-(2-オキシラニルメトキシ)-、2-オキシド;R3とR4が一緒になって隣接する炭素原子上の2つのメチル基で置換された5員環を形成する、1,3,2-ジオキサホスホラン、4,5-ジメチル-2-(2-オキシラニルメトキシ)-、2-オキシド;R3とR4が一緒になって6員環を形成する、1,3,2-ジオキサホスホリナン、2-(2-オキシラニルメトキシ)-、2-オキシド;R3とR4が一緒になって同じ炭素原子上の2つのアルキル基で置換された6員環を形成する、1,3,2-ジオキサホスホリナン、5,5-ジメチル-2-(2-オキシラニルメトキシ)-、2-オキシド;並びにR3及びR4が両方ともベンジルである、リン酸、オキシラニルメチルビス(フェニルメチル)エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
式(I)の他のエポキシ官能化化合物は、式(I-B)
【化5】
のものである。
式(I-B)において、基R
1は、水素又は式(I)について記載したC1~C3アルキルである。式(I-B)の基
-CH(R
5)-CH(R
6)-において、R
5は水素又はC1~C3アルキルであり、R
6はC1~C3アルキルである。この基は、式(I)の基R
2についてのアルキレン基の選択に対応する。式(I-B)における基R
7及びR
8は各々、式(I)におけるそれぞれ基R
3及びR
4のサブセットであり、式(I-B)におけるR
7及びR
8は各々C1~C3アルキルである。
【0038】
式(I-B)のエポキシ官能化化合物の例としては、R1が水素であり、R5がメチルであり、R6がメチルであり、R7がエチルであり、R8がエチルである、キシリトール、1,2-アンヒドロ-3,5-ジデオキシ-3-メチル-、リン酸ジエチル;R1がメチルであり、R5が水素であり、R6がプロピルであり、R7がエチルであり、R8がエチルである、リン酸、ジエチル1-[(3-メチルオキシラニル)メチル]プロピルエステル;R1が水素であり、R5が水素であり、R6がメチルであり、R7がエチルであり、R8がエチルである、ペンチトール、1,2-アンヒドロ-3,5-ジデオキシ-、4-(リン酸ジエチル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
式(I)の更に他のエポキシ官能化化合物は、式(I-C)
【化6】
のものである。
式(I-C)において、基R
9は、水素又はC1~C3アルキルであり、式(I-C)における基-CH
2-O-CH(R
9)-CH
2-は、式(I)におけるR
2についてのC3~C8エーテル基の選択に対応する。式(I-C)における各基R
10及びR
11は、式(I)の基R
3及びR
4のサブセットに対応するC1~C3アルキルである。
【0040】
式(I-C)のエポキシ官能化化合物の例としては、R9、R10、及びR11が各々メチルであるCAS番号2620837-91-2;並びにR9が水素であり、R10がメチルであり、R11がメチルであるCAS番号2620837-90-2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
更に他のエポキシ官能化化合物は、式(II)
【化7】
のものである。
式(II)において、R
12は、1~2個の炭素原子を有するアルキレンであり、R
13は、2~4個の炭素原子を有するアルキレンであり、R
14は、C1~C4アルキルであるか、又はR
15と一緒になって、C1~C3アルキルで任意に置換された、5若しくは6環員を有する環式基を形成し、R
15は、C1~C4アルキルであるか、又はR
14と一緒になって、C1~C3アルキルで任意に置換された、5若しくは6環員を有する環式基を形成する。式(II)に示される構造はカチオンであり、式に示されていないカチオンに付随するアニオンが存在する。アニオンは、典型的にはハロゲン化物であるが、また他のアニオンであってもよい。
【0042】
式(II)の例は、以下に示されるような2-(オキシランメタンアンモニウム)、N,N,N-トリス(2-ヒドロキシエチルジエチルホスフェート)である。
【化8】
この化合物は、R
12がメチレンであり、R
13がメチレンであり、R
14がエチルであり、R
15がエチルである、式(II)の化合物である。
【0043】
多くの実施形態では、エポキシ官能化ホスフェート化合物は、式(I)のものである。高い接着強度が必要とされるいくつかの用途では、式(II)のものなどの塩は、感圧接着剤として使用される場合、第2の(メタ)アクリレートコポリマーの接着特性に悪影響を与え得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、エポキシ官能化ホスフェート化合物は、式(II)のものであり、難燃性の改善を促進し得るより高いホスフェート含有量から有利に使用される。
【0044】
ペンダントカルボン酸含有基を有する前駆体(メタ)アクリレートコポリマー
前駆体(メタ)アクリレートコポリマーは、エポキシ官能化ホスフェート化合物と反応することができるペンダントカルボン酸含有基を有する。カルボン酸含有基を有する任意の好適なモノマーが、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーを形成するために使用されるモノマー混合物中に含まれ得る。
【0045】
カルボン酸含有基を有するモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、及び2-カルボキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。ほとんどの実施形態では、カルボン酸含有基を有するモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの混合物である。
【0046】
カルボン酸含有基を有するモノマーは、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーを形成するために使用されるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、0.1~25重量%の範囲の量で存在し得る。同様に述べると、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーは、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーの総重量に基づいて、0.1~25重量パーセントの、ペンダントカルボン酸含有基を有するモノマー単位を含有する。この量は、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量パーセント、かつ最大25重量%、最大20重量%、最大15重量%、最大10重量%、又は最大5重量パーセントであり得る。この範囲は、例えば、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーの総重量に基づいて、及び/又はモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、0.1~20重量%、1~20重量%、0.1~15重量%、1~15重量%、0.1~10重量%、1~10重量%であり得る。
【0047】
前駆体(メタ)アクリレートは、多くの場合、得られるホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマーも感圧接着剤となるように、感圧接着剤となるように選択される。すなわち、モノマーは、エラストマー材料である前駆体(メタ)アクリレートコポリマーを形成するように選択される。エラストマー材料は、典型的には、20℃以下、10℃以下、0℃以下、-10℃以下、-20℃以下、-30℃以下、-40℃以下、又は-50℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定及び動的機械分析などの技術を用いて測定することができる。あるいは、ガラス転移温度は、Fox式を使用して推定することができる。ホモポリマーのガラス転移温度のリストは、BASF Corporation(Houston,TX,USA)、Polyscience,Inc.(Warrington,PA,USA)、及びAldrich (Saint.Louis,Missouri,USA)などの複数のモノマーサプライヤ、並びに例えば、Mattioniら,J.Chem.Inf.Comput.Sci.,2002,42,232-240などの様々な刊行物から入手可能である。
【0048】
エラストマー前駆体(メタ)アクリレートコポリマーを形成するために、モノマー組成物は、多くの場合、少なくとも1つの低Tgモノマーを含有する。本明細書で使用される場合、用語「低Tgモノマー」は、単独重合される場合に20℃以下のTgを有するモノマーを指す(すなわち、低Tgモノマーから形成されたホモポリマーが20℃以下のTgを有する)。好適な低Tgモノマーは、多くの場合、アルキル(メタ)アクリレート、ヘテロアルキル(メタ)アクリレート、アリール置換アルキルアクリレート、及びアリールオキシ置換アルキルアクリレートから選択される。
【0049】
低Tgアルキル(メタ)アクリレートモノマーの例は、多くの場合、非三級アルキルアクリレートであるが、少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基を有するアルキルメタクリレートであってもよい。アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸2-メチルブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸4-メチル-2-ペンチル、アクリル酸2-メチルヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-デシル、アクリル酸イソデシル、メタクリル酸n-デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソトリデシル、アクリル酸n-オクタデシル、アクリル酸イソステアリル、及びメタクリル酸n-ドデシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
低Tgヘテロアルキル(メタ)アクリレートモノマーの例は、多くの場合、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも6個の炭素原子を有しており、最大30個以上、最大20個、最大18個、最大16個、最大12個、又は最大10個の炭素原子を有し得る。ヘテロアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、及び(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
例示的なアリール置換アルキルアクリレート又はアリールオキシ置換アルキルアクリレートとしては、アクリル酸2-ビフェニルヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-フェノキシエチル、及びアクリル酸2-フェニルエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
前駆体(メタ)アクリレートコポリマーを形成するために使用されるモノマー混合物は、多くの場合、前駆体(メタ)アクリレートを形成するために使用されるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、少なくとも40重量パーセントの低Tgモノマーを含有する。いくつかの実施形態では、第2のモノマー組成物は、少なくとも45重量パーセント、少なくとも50重量パーセント、少なくとも60重量パーセント、少なくとも65重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、少なくとも75重量パーセント、又は少なくとも80重量パーセント、かつ最大99.9重量パーセント、最大99重量パーセント、最大98重量パーセント、最大95重量パーセント、最大90重量パーセント、最大85重量パーセント、最大80重量パーセント、又は最大75重量パーセントの低Tgモノマーを含有する。
【0053】
前駆体を形成するために使用されるモノマー混合物は、任意に高Tgモノマーを含むことができる。本明細書で使用される場合、「高Tgモノマー」という用語は、単独重合される場合に、30℃超、40℃超、又は50℃超のTgを有するモノマーを指す(すなわち、モノマーから形成されたホモポリマーが、30℃超、40℃超、又は50℃超のTgを有する)。いくつかの好適な高Tgモノマー、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、及びそれらの混合物は、単一の(メタ)アクリロイル基を有する。他の好適な高Tgモノマー、例えば、様々なビニルエーテル(例えば、ビニルメチルエーテル)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、スチレン、置換スチレン(例えば、a-メチルスチレン)、ハロゲン化ビニル、及びこれらの混合物などは、(メタ)アクリロイル基ではない単一のビニル基を有する。極性モノマーに特徴的な基を有するビニルモノマーは、本明細書では極性モノマーであるとみなされる。
【0054】
高Tgモノマーの量は、(メタ)アクリレートコポリマーのTgが20℃以下であるという条件で、最大50重量%又は更にそれ以上であってもよい。いくつかの実施形態では、この量は、最大40重量パーセント、最大30重量パーセント、最大20重量パーセント、最大15重量パーセント、又は最大10重量%であり得る。この量は、少なくとも0.1重量パーセント、少なくとも0.5重量パーセント、少なくとも1重量パーセント、少なくとも2重量パーセント、又は少なくとも5重量パーセントであり得る。例えば、この量は重量パーセント、0~50重量パーセント、0~40重量パーセント、0~30重量パーセント、0~20重量パーセント、0~10重量パーセント、1~30重量パーセント、1~20重量パーセント、又は1~10重量パーセントの範囲であり得る。この量の値は、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーを形成するために使用されるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。
【0055】
モノマー混合物は、カルボン酸含有基を有するモノマーに加えて、他の極性モノマーを含むことができる。非酸性極性基は、ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、又はエーテル基であり得る。極性基を有することにより、様々な基材への感圧接着剤の接着が促進され得る。極性基は、典型的には、ペンダントカルボン酸含有基と反応して前駆体(メタ)アクリレートコポリマーの架橋をもたらし得るエポキシ基ではない。
【0056】
例示的なヒドロキシル基を有する極性モノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド)、エトキシル化ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、Sartomer(Exton,PA,USA)からCD570、CD571、及びCD572という商品名で市販されているモノマー)、及びアリールオキシ置換ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシ-2-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
第一級アミド基を有する例示的な極性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。二級アミド基を有する例示的な極性モノマーとしては、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-オクチル(メタ)アクリルアミド、又はN-オクチル(メタ)アクリルアミドなどのN-アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
第三級アミド基を有する例示的な極性モノマーとしては、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、並びにN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジブチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
アミノ基を有する極性モノマーとしては、様々なN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。例としては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びN,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
エーテル結合を有する極性モノマーとしては、ポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレンオキシド)(メタ)アクリレート、ポリ(テトラメチレンオキシド)(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル(メタ)アクリレートなどのポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含有するものが挙げられる。任意の好適な分子量のモノマーを使用することができる。
【0061】
任意による非酸性極性モノマーの量は、多くの場合、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーを形成するために使用されるモノマー混合物中のモノマーの重量に基づいて、0~15重量%の範囲である。存在する場合、モノマー混合物中の非酸性極性モノマーの量は、多くの場合、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、少なくとも0.1重量パーセント、0.2重量パーセント、0.5重量パーセント、又は1重量パーセントである。この量は、最大15重量パーセント、最大10重量パーセント、又は最大5重量%であり得る。例えば、この量は、多くの場合、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、0~15重量パーセント、0.1~10重量パーセント、0.5~5重量パーセント、又は1~5重量パーセントの範囲である。
【0062】
全体として、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーは、0.1~25重量パーセントの、カルボン酸含有基を有するモノマー、40~99.9重量パーセントの低Tgモノマー、0~50重量パーセントの高Tgモノマー、及び0~15重量パーセントの非酸性極性モノマーを含有するモノマー混合物から形成することができる。他の実施形態では、モノマー混合物は、1~20重量パーセントの、カルボン酸含有基を有するモノマー、50~99重量パーセントの低Tgモノマー、0~40重量パーセントの高Tgモノマー、及び0~10重量パーセントの非酸性極性モノマーを含有する。更に他の実施形態では、モノマー混合物は、5~20重量パーセントの、カルボン酸含有基を有するモノマー、50~95重量パーセントの低Tgモノマー、0~30重量パーセントの高Tgモノマー、及び0~10重量パーセントの非酸性極性モノマーを含有する。更に他の実施形態では、モノマー混合物は、5~15重量パーセントの、カルボン酸含有基を有するモノマー、60~95重量パーセントの低Tgモノマー、0~20重量パーセントの高Tgモノマー、及び0~10重量パーセントの非酸性極性モノマーを含有する。全てのモノマーの合計は100重量パーセントである。
【0063】
(メタ)アクリレートコポリマーの重量平均分子量は、多くの場合、10,000Da~1,000,000Daの範囲であり、又は(メタ)アクリレートコポリマーが架橋されている場合には更に高い。例えば、重量平均分子量は、少なくとも20,000Da、少なくとも30,000Da、少なくとも40,000Da、又は少なくとも50,000であり得、かつ最大1,000,000Da、最大900,000Da、最大800,000Da、最大700,000Da、又は最大600,000Daであり得る。
【0064】
典型的には、開始剤をモノマー混合物に添加して、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーを調製する。開始剤の量は、多くの場合、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて0.01~1重量パーセントの範囲である。
【0065】
例示的な熱開始剤としては、Chemours Co.(Wilmington, DE,USA)から商標名VAZOで市販されているものなどの様々なアゾ化合物、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)であるVAZO 67、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)であるVAZO 64、(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)であるVAZO52、及び1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)であるVAZO88;ベンゾイルパーオキシド、シクロヘキサンパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジ-tert-アミルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-クミルパーオキシド、及びAtofina Chemical,Inc.(Philadelphia,PA,USA)から商標名LUPERSOL(例えば、2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンであるLUPERSOL 101、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシンであるLUPERSOL 130)で市販されているパーオキシドなどの様々なパーオキシド;tert-アミルヒドロパーオキシド及びtert-ブチルヒドロパーオキシドなどの様々なヒドロパーオキシド;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
いくつかの例示的な光開始剤は、ベンゾインエーテル(例えばベンゾインメチルエーテル又はベンゾインイソプロピルエーテル)、又は置換ベンゾインエーテル(例えばアニソインメチルエーテル)である。他の例示的な光開始剤は、2,2-ジエトキシアセトフェノン又は2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(iGM Resins(Charlotte,NC,USA)から商標名OMNIRAD 651で市販されているもの、又はSartomer(Exton,PA,USA)から商標名ESACURE KB-1で市販されているもの)などの置換アセトフェノンである。更に他の例示的な光開始剤は、置換α-ケトール、例えば2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、芳香族スルホニルクロリド、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリド、及び光活性オキシム、例えば1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムである。他の好適な光開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商標名OMNIRAD 184で市販されている)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(商標名OMNIRAD 819で市販されている)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(商標名OMNIRAD 2959で市販されている)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(商標名OMNIRAD 369で市販されている)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(商標名OMNIRAD 907で市販されている)、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商標名DAROCUR 1173でBASF Corp.(Florham Park,NJ,USA)から市販されている)が挙げられる。
【0067】
前駆体(メタ)アクリレートは、調製後にエポキシ官能化ホスフェート化合物と容易に反応することができるように、有機溶媒中で調製されることが多い。好適な溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、トルエン、キシレン、エチレングリコールアルキルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は単独で使用しても、混合物として使用してもよい。反応混合物は、反応混合物の総重量に基づいて最大80重量パーセント、最大70重量パーセント、最大60重量パーセント、最大50重量パーセント、最大40重量パーセント、又は最大30重量パーセントなどの任意の好適な量の有機溶媒を含有することができる。
【0068】
ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマー
ペンダントカルボン酸含有基を有する前駆体(メタ)アクリレートコポリマー(すなわち、第1の(メタ)アクリレートコポリマー)は、エポキシ官能化ホスフェート化合物と反応して、ホスフェートを含有するペンダント基を有する第2の(メタ)アクリレートコポリマーを形成する。この反応は、多くの場合、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーの形成中に存在する有機溶媒の存在下で行われる。あるいは、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーが有機溶媒の非存在下で、又は少量の有機溶媒の存在下で調製される場合、ホスフェートを含有するペンダント基を有する第2の(メタ)アクリレートコポリマーを形成するために使用される反応混合物に有機溶媒を添加することができる。好適な有機溶媒及び量は、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーの調製に使用するために上に列挙したものと同じである。
【0069】
前駆体(メタ)アクリレートコポリマーが(メタ)アクリル酸モノマー単位を有する場合、式(I)のエポキシ官能化ホスフェート化合物の反応によって形成されるモノマー基は、反応スキームAに示されるような式(III)のものである。
【0070】
反応スキームA
【化9】
式(III)において、基R
20は、水素又はメチルである。基R
1は、水素又はC1~C3アルキルである。基R
2は、C1~C8アルキレン又はC3~C8エーテル基である。基R
3は、C1~C4アルキル、ベンジルであるか、又はR
4と一緒になって、C1~C3アルキルで任意に置換され得る、5若しくは6環員を有する環式基を形成する。基R
4は、C1~C4アルキル、ベンジルであるか、又はR
3と一緒になって、C1~C3アルキルで任意に置換され得る、5若しくは6環員を有する環式基を形成する。
【0071】
エポキシ官能化ホスフェート化合物が式(I-A)のものである場合、(メタ)アクリルモノマー単位との反応後の反応生成物は、式(III-A)
【化10】
のモノマー単位である。
式(III-A)において、基R
20、R
3、及びR
4は、上記のものと同じである。
【0072】
式(III-A)におけるペンダント基は、-(C=O)-O-CH2-CH(OH)-CH2-O-(P=O)(OR3)(OR4)である。同様に、(メタ)アクリルモノマー単位と、式(I-B)のエポキシ官能化ホスフェート化合物との反応生成物のペンダント基は、-(C=O)-O-CHR1-CH(OH)-CHR5-CHR6-O-(P=O)(OR7)(OR8)であり、式(I-C)のエポキシ官能化ホスフェート化合物との反応生成物は、-(C=O)-O-CH2-CH(OH)-CH2-O-CHR9-CH2-O-(P=O)(OR10)(OR11)である。基R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、上記と同じである。
【0073】
同様に、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーが(メタ)アクリル酸モノマー単位を有する場合、式(II)のエポキシ官能化ホスフェート化合物の反応によって形成されるモノマー基は、式(IV)
【化11】
のものである。
基R
20、R
12、R
14、及びR
15は、上記と同じである。
【0074】
典型的には、前駆体(メタ)アクリレートコポリマー中のカルボン酸含有基を有するモノマー単位の約25~100モルパーセントが、エポキシ官能化ホスフェート化合物と反応して、ホスフェートを含有するペンダント基を有する(メタ)アクリレートコポリマー(すなわち、第2の(メタ)アクリレートコポリマー)を生成する。ペンダントカルボン酸含有基を有するモノマー単位の、ホスフェートを含有するペンダント基を有するモノマー単位への変換は、前駆体(メタ)アクリレートコポリマー中のペンダントカルボン酸含有基を有するモノマー単位の総モルに基づいて、少なくとも25モルパーセント、少なくとも30モルパーセント、少なくとも35モルパーセント、少なくとも40モルパーセント、少なくとも50モルパーセント、少なくとも60モルパーセント、少なくとも70モルパーセント、又は少なくとも75モルパーセントであり、かつ最大100モルパーセント、最大95モルパーセント、最大90モルパーセント、最大85モルパーセント、最大80モルパーセント、最大75モルパーセント、最大70モルパーセント、最大65モルパーセント、最大60モルパーセント、最大55モルパーセント、又は最大50モルパーセントであり得る。ペンダントカルボン酸含有基を有するモノマー単位の少なくとも一部を保持して、感圧接着剤組成物の様々な基材への接着性を強化することが有利であり得る。一方、ホスフェート含有基の量が多くなると、感圧接着剤の難燃性は強化される傾向がある。これら2つの特性は、特定の用途のためのペンダント基の最良のバランスを決定すると考えられる。
【0075】
いくつかの実施形態では、ホスフェートを含有するペンダント基を有する第2の(メタ)アクリレートコポリマーは、第2の(メタ)アクリレートコポリマーの総重量に基づいて0.1~10重量%のリン含有モノマー単位を含有する。この量は、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%、かつ最大10重量%、最大9重量%、最大8重量%、最大7重量%、最大6重量%、最大5重量%、最大4重量%、最大3重量%、又は最大2重量%であり得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、ホスフェートを含有するペンダント基を有する第2の(メタ)アクリレートコポリマーは、ハロゲンを含まない。これらの実施形態では、エポキシ官能化ホスフェート化合物は、塩化物塩ではない。
【0077】
第2の(メタ)アクリレート化合物は、式(A)のホスフェート含有基以外の他のリン含有基を含まない。すなわち、第2の(メタ)アクリレートコポリマーは、ホスフィネート基及びホスホネート基を含まないか、又は実質的に含まない。ホスフィネート及び/又はホスホネート基に関して本明細書で使用される場合、第2の(メタ)アクリレートコポリマーは、0.1重量パーセント未満の、これらのリン含有ペンダント基を有するモノマー単位を含有する。この量は、多くの場合、第2の(メタ)アクリレートコポリマーの総重量に基づいて、0.05重量パーセント未満又は0.01重量パーセント未満である。
【0078】
コーティング組成物
ホスフェートを含有するペンダント基を有する第2の(メタ)アクリレートコポリマーを含有する感圧接着剤物品を形成するために、コーティング組成物は、基材に隣接して配置される。コーティング組成物は、典型的には、第2の(メタ)アクリレートコポリマーと、上述したものなどの有機溶媒とを含む。これらのコーティング組成物は、目で見て透明であるように調製することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、任意による粘着付与剤を更に含む。有用な粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、及び炭化水素樹脂が挙げられる。任意による粘着付与剤の量は、多くの場合、コーティング組成物の固形分に基づいて、0~30重量パーセントの範囲である。存在する場合、粘着付与剤の量は、コーティング組成物中の固形分の総重量に基づいて、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量パーセント、かつ最大40重量%、最大35重量%、最大30重量%、最大25重量%、又は最大20重量%であり得る。
【0080】
感圧接着剤に共通して添加される他の成分をコーティング組成物に含めることができる。そのような成分としては、例えば、酸化防止剤、充填剤、顔料などが挙げられる。コーティング組成物が乾燥時に感圧接着剤である限り、任意の好適な量を使用することができる。
【0081】
感圧接着剤物品
コーティング組成物は、典型的には、基材に隣接して適用されて、感圧接着剤物品を提供する。用語「隣接する」は、コーティング組成物が基材に接触するか、又は接着促進層などの別の層によって分離されていることを意味する。感圧接着剤物品は、典型的には、永久的又は一時的な基材の層を含む。
【0082】
任意の好適な基材を使用することができる。例えば、基材は、可撓性であっても非可撓性であってもよく、ポリマー材料、ガラス若しくはセラミック材料、金属(様々な合金を含む)、又はこれらの組み合わせから形成することができる。多くの実施形態では、基材は、ガラス、セラミック材料、又は金属である。他の実施形態では、基材は、例えば、ポリマーフィルム又はプラスチック複合体(例えば、ガラス又は繊維充填プラスチック)などのポリマー材料である。ポリマーフィルムは、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらのコポリマー)、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、又はポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート、ポリメチル(メタ)アクリレート(polymethyl(meth)acrylate、PMMA)、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、セルロース系材料(例えば、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、及びエチルセルロース)などから調製することができる。これらの基材は、感圧接着剤組成物から容易に除去することができないので、永久的な基材である。
【0083】
いくつかの実施形態では、基材は剥離ライナーなどの一時的な基材である。一時的な基材の役割は、感圧接着剤組成物が永久的な基材に適用されるまで感圧接着剤組成物を支持することである。このような物品は、転写テープと呼ばれることが多い。剥離ライナーは、感圧接着剤層の一方又は両方の外側表面であり得る。好適な剥離ライナーは、典型的には、感圧接着剤硬化性組成物に対する低い親和性を有する。例示的な剥離ライナーは、紙(例えば、クラフト紙)、又は他の種類のポリマー材料から調製可能である。いくつかの剥離ライナーは、シリコーン含有材料又はフルオロカーボン含有材料(例えば、ポリフルオロポリエーテル又はポリフルオロエチレン)などの剥離剤の外層でコーティングされている。
【0084】
コーティング組成物が有機溶媒を含有する場合、コーティングは、永久的又は一時的のいずれかであり得る基材に適用され、次いで乾燥されて有機溶媒が除去される。乾燥温度は、室温(例えば、摂氏20~25度)以上であり得る。
【0085】
得られた物品は、難燃性を有することができる。例えば、物品は、UL94VTM-0の燃焼性等級を有することができる。
【実施例】
【0086】
別段の記載がない限り、実施例及び本明細書の他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量基準である。調製例は、ラベル接頭辞「PE」によって識別され、比較例は、ラベル接頭辞「CE」によって識別され、実施例は、ラベル接頭辞「EX」によって識別される。
【0087】
別段の指示がない限り、他の全ての試薬は、MilliporeSigma,Burlington,MA,USAなどのファインケミカル業者から入手したか、若しくは入手可能であり、又は公知の方法で合成することができる。表1(以下)に、実施例で使用した材料及びそれらの供給元を一覧で示す。
【表1】
【0088】
試験方法
UL94 VTM燃焼性試験
接着剤試料を、0.05mmの厚さのKaptonポリイミドフィルムの間に積層した。積層された試料(2つのポリイミドフィルムの間に配置された接着剤)は、約0.25mmの厚さであった。UL,LLC(Northbrook,IL,USA)によって開発されたUL94 VTM試験を使用して、これらの積層体試料の燃焼性を等級付けし、ただし、試料はいかなる前処理も受けなかった。各試料をマンドレルに巻き付けた後、スタンドに固定した。この試験では、Bunsenバーナーからの火炎を3秒(s)間、2回適用した。2回目の火炎適用時間は、1回目の燃焼時間が終了するとすぐに始まる。火炎の高さは20mmであった。UL94 VTM試験で可能な燃焼性等級を以下の表2に記載する。
【表2】
【0089】
90°角剥離接着強度試験(90° Angle Peel Adhesion Strength Test)
剥離接着強度は、305mm/分(12インチ/分)の剥離速度において、IMASS SP-200滑り/剥離試験器(IMASS,Inc.,Accord MA,USAから入手可能)を使用して、90°の角度で測定した。イソプロピルアルコール(IPA)で濡らしたティッシュにより基材パネルを拭い、手で強く押しながらパネルを8~10回拭うことによって、試験パネルを準備した。この手順を、その溶媒で濡らした清潔なティッシュを用いて更に2回繰り返した。洗浄したパネルを乾燥させた。接着テープを約1.27cm×20cm(1/2インチ×8インチ)のストリップに切り出し、洗浄したパネルに対しこのストリップを2.0kg(4.5lb.)のゴムローラーにより2回延ばした。準備した試験片を、23℃かつ相対湿度50%で24時間保管した後、試験した。各実施例について2つの試料を試験し、平均値をN/cmで表した。破壊モードに注目し、COH-凝集モード(すなわち、接着剤が裂けてテープ及び試験表面の両方に残留物を残した)、ADH-接着モード(すなわち、接着剤が試験表面からきれいに剥離した)、及び/又は2-B(2-結合)-接着剤が裏材から剥離した、として記録した。
【0090】
【0091】
エポキシ官能化モノホスフェート(難燃性反応性添加剤1又はFRRA1)を、ジエチルクロロホスフェートとグリシドールとを反応させることによって合成した。250mLの丸底フラスコに、20.63gのジエチルクロロホスフェート(0.22mol)、40.48gのトリエチルアミン(0.4mol)、及び100gのトルエンを入れた。フラスコを氷浴(0℃)に入れ、混合物を磁気攪拌器で撹拌して、均一な溶液を作製した。次に、14.82gのグリシドール(0.2mol)を、溶液に30分間かけて滴下した。添加終了後、混合物を室温にし、室温で保って、1日間撹拌して反応を終了させた。1日後、不溶性白色固形分を、焼結フリットディスク漏斗(孔径10~20μm)を用いた単純濾過によって除去した。反応溶媒及び未反応試薬をロータリーエバポレーターにより減圧下で除去した。わずかに黄色の透明な液体が得られた。
【0092】
調製例PE2:FRRA2
エポキシ官能化トリホスフェート添加剤(難燃性添加剤2又はFRRA2)の合成を、2つの主要なステップで行った。最初に、第三級アミン官能化トリホスフェート(TATP)を合成し、合成中間体として単離した。2番目に、TATPをエピクロロヒドリンと反応させて、最終生成物としてFRRA2を得た。
【化13】
【0093】
第三級アミン官能化トリホスフェート(TATP)を以下のように合成した。第1のステップは、ジエチルクロロホスフェートとトリエタノールアミンとを反応させることであった。250mLの丸底フラスコに、56.94gのジエチルクロロホスフェート(0.33mol)、60.71gのトリエチルアミン(0.6mol)、及び100gのトルエンを入れた。フラスコを氷浴(0℃)に入れ、混合物を磁気攪拌器で撹拌して、均一な溶液を作製した。次いで、14.92gのトリエタノールアミン(0.1mol)を、溶液に30分間かけて滴下した。添加終了後、混合物を室温にし、室温で保って、1日間撹拌して反応を終了させた。1日後、不溶性白色固形分を、焼結フリットディスク漏斗(孔径10~20μm)を用いた単純濾過によって除去した。反応溶媒及び未反応試薬をロータリーエバポレーターにより減圧下で除去した。TATPを、わずかに黄色の透明な液体として得た。
【化14】
【0094】
エポキシ官能化トリホスフェート添加剤(難燃性反応性添加剤2又はFRRA2)を以下のように合成した。最初に、11.15gのTATP(0.02mol)及び1.85g(0.02mol)のエピクロロヒドリンを40mLバイアルに入れた。バイアルを混合ローリングミル上に置き、室温で24時間混合した。最終生成物(FRRA2)を1H及び13C NMRによって分析し、その化学構造を確認した。
【0095】
調製例PE3:前駆体コポリマー
前駆体(メタ)アクリレートコポリマーは、2つのモノマー:2-EHA(186.0g)及びAA(14.0g)のラジカル重合によって調製した。モノマーを、40.0重量%のモノマー濃度に達するように重合溶媒(酢酸エチル、300.0g)及び熱ラジカル開始剤(VAZO67、全モノマーに対して0.2重量%、0.4g)と、琥珀色の細口パイントボトル内で、室温で混合した。溶液を室温で5分間の窒素パージによって脱気した。ボトルにしっかりと蓋をし、LAUNDER-O-METER(SDL Atlas USA,RockHill,SC,USA)に60℃で24時間入れた。ボトルを室温に冷却し、得られたコポリマー溶液を実施例の配合で使用した。
【0096】
実施例EX1~EX4及び比較例CE1~CE3
表3の組成物を40mLバイアル中で合わせ、混合ローラー上に置いた。溶液を、ローラー上で室温にて少なくとも24時間混合した。反応性添加剤(FRRA1、FRRA2)を含む配合物は、前駆体(メタ)アクリレートコポリマーとエポキシ官能化ホスフェート化合物との間の開環反応により、混合中に粘度上昇を示した。全てのコーティング溶液は、透明かつ均一であった。
【表3】
【0097】
コーティングは、PET(接着試験用)及びKAPTON HN(燃焼性試験用)裏材上に正方形のアプリケータ(ウェットギャップ厚さ:0.2mm)を使用することによって調製した。コーティングを対流式オーブン内で70℃にて少なくとも30分間乾燥させた。乾燥したコーティングを、少なくとも24時間、制御された温度及び湿度(23℃、相対湿度50%)下で保管した後、評価した。
【0098】
表3の材料の乾燥したコーティング(KAPTON HNフィルム上のもの)を調製し、UL94 VTM燃焼性試験の手順に従って試験した。結果を表4に示す。
【表4】
【0099】
難燃剤を含まない接着剤及び非反応性難燃剤を含む接着剤は全て、火炎の1回目の適用で上部まで燃えた。反応性モノホスフェート及びトリホスフェートを含有するコーティングは、火炎が試料の末端に達する前に、急速に燃え止んだ。2回目の適用時であっても、火炎は10秒前に消え、VTM0等級を達成した。
【0100】
表3の材料の乾燥したコーティング(PETフィルム上のもの)を調製し、90°剥離接着強度試験の手順に従って試験した。結果を表5に示す。
【表5】
【国際調査報告】