(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】換気装置によって所定の換気パラメータを設定するための、および/または、食道バルーン圧に基づいて機械的換気に関する情報を自動表示するための装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20241024BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61M16/00 370Z
A61M16/00 332A
A61B5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524981
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022078957
(87)【国際公開番号】W WO2023072676
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021128269.1
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515233591
【氏名又は名称】ハミルトン メディカル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェニンガー,ダーヴィト
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038ST09
4C038SU06
(57)【要約】
【解決手段】本発明に係る装置(15)は、食道バルーン圧(Peso)を判定するためのバルーンプローブ(46)を含み、食道(34)内に挿入可能な食道バルーンカテーテル(45)に基づいて、経肺圧(Ptp)、特に呼気相の終わりの経肺圧(Ptp_ee)、および/または吸気相の終わりの経肺圧(Ptp_ei)を判定する圧力判定システム(300)と、生体内での食道バルーンカテーテル(45)のバルーンプローブ(46)の適切な充填を自動監視、および/または設定する食道バルーン制御システム(400)と、換気コントローラ(180)と、が設けられる。換気コントローラ(180)は、換気装置(10)によって指定される換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)を調整し、および/または、圧力判定システム(300)によって判定された経肺圧(Ptp)に基づいて、機械的換気に関する情報を表示するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気装置(10)によって予め定められた換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)、特に圧力、特に呼気終末陽圧(PEEP)、および/または最大気道圧(Paw_max)を自動設定するため、および/または、機械的換気に関する情報、特に経肺圧(Ptp)を自動表示するための装置(15)であって、
食道バルーン圧(Peso)を判定するためのバルーンプローブ(46)を含み、食道(34)内に挿入可能な食道バルーンカテーテル(45)に基づいて、経肺圧(Ptp)、特に呼気相の終わりの経肺圧(Ptp_ee)、および/または吸気相の終わりの経肺圧(Ptp_ei)を判定する圧力判定システム(300)と、
生体内での前記食道バルーンカテーテル(45)の前記バルーンプローブ(46)の適切な充填を自動監視、および/または設定する食道バルーン制御システム(400)と、
換気コントローラ(180)と、
を備え、
前記換気コントローラ(180)は、前記換気装置(10)によって指定される前記換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)を設定し、および/または、前記圧力判定システム(300)によって判定された前記経肺圧(Ptp)に基づいて、機械的換気に関する前記情報を表示するように構成され、
前記換気コントローラ(180)は、さらに、前記食道バルーン制御システム(400)を自動制御するように構成され、および/または、前記食道バルーン制御システム(400)は、さらに、前記換気コントローラ(180)を自動制御するように構成される、
ことを特徴とする装置(15)。
【請求項2】
前記換気コントローラ(180)は、前記圧力判定システム(300)によって供給される圧力値に従って、前記食道バルーン制御システム(400)を制御/調整するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置(15)。
【請求項3】
前記食道バルーン制御システム(400)は、前記換気コントローラ(180)によって提供される制御コマンドに従って、食道バルーン制御手順(100、500、600)を実行するように構成される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の装置(15)。
【請求項4】
前記食道バルーン制御システム(400)は、前記換気コントローラ(180)に所定の食道バルーン制御信号を送信するように構成され、
前記換気コントローラ(180)は、前記食道バルーン制御信号に従って、所定の換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)および/または換気モード(190A、190B、190C、190D)を設定/制御/調整/表示するように構成される、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項5】
前記換気コントローラ(180)は、食道バルーン制御手順(100、500、600)の起動または開始後、前記食道バルーン制御手順(100、500、600)が終了するまで、所定の換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)および/または換気モード(190A、190B、190C、190D)の変更を許容しないように構成される、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項6】
前記換気コントローラ(180)は、食道バルーン制御手順(100、500、600)の起動または開始前の所定の時間から、前記食道バルーン制御手順(100、500、600)が終了するか、または所定の時間内に開始されなかったときまで、所定の換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)および/または換気モード(190A、190B、190C、190D)の変更を許容しないように構成される、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の装置(15)。
【請求項7】
前記換気コントローラ(180)および/または前記食道バルーン制御システム(400)は、所定の換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)および/または換気モード(190A、190B、190C、190D)の変更が、食道バルーン制御手順(100、500、600)の開始前の所定の時点より後に強制される場合に、警告が生成されるように構成され、
前記変更は、特に対応するユーザ入力によって強制される、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項8】
前記換気コントローラ(180)および/または前記食道バルーン制御システム(400)は、
食道バルーン制御手順(100、500、600)が、1つ以上の所定の時点において開始されるように構成され、
所定の換気パラメータ(192A、192B、192D)および/または換気モード(190A、190C、190D)の変更が、食道バルーン制御手順(100、500、600)の開始前の所定の期間内に行われる場合、前記換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)および/または前記換気モード(190A、190B、190C、190D)の前記変更が完了するまで、前記食道バルーン制御手順(100、500、600)の開始を延期するように構成される、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項9】
前記換気コントローラ(180)および/または前記食道バルーン制御システム(400)は、食道バルーン制御手順(100、500、600)の起動または開始後に行われる所定の換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)および/または換気モード(190A、190B、190C、190D)の変更が、前記食道バルーン制御手順(100、500、600)が完了するまで延期されるように構成される、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項10】
前記換気コントローラ(180)および/または前記食道バルーン制御システム(400)は、食道バルーン制御手順(100、500、600)が所定の時間間隔に従って開始されるように構成され、
所定の換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)および/または換気モード(190A、190B、190C、190D)の延期可能な変更が、食道バルーン制御手順(100、500、600)の開始前の所定の期間内に行われる場合、前記換気コントローラ(180)は、前記食道バルーン制御手順(100、500、600)が完了するまで、前記換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)および/または前記換気モード(190A、190B、190C、190D)の変更の開始を延期するように構成される、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項11】
前記圧力判定システム(300)は、前記食道バルーン圧を判定するように構成されたセンサを備え、
前記センサは、特に、食道(34)内に挿入可能である食道バルーンカテーテル(45)を有し、
前記食道バルーンカテーテル(45)は、バルーンプローブ(46)と、生体内で前記バルーンプローブ(46)内の圧力を検出する装置とを含む、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項12】
前記食道バルーン制御システム(400)は、前記バルーンプローブ(46)を測定用流体で充填するため、および/または、前記バルーンプローブ(46)が食道(34)内に配置された後に前記バルーンプローブ(46)から測定用流体を除去するための装置(430)、特に、ポンプ装置を含む、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項13】
前記食道バルーン制御システム(400)は、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の各設定量を徐々に変更するように構成され、
前記食道バルーン制御システム(400)は、特に、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の量を1段階、または複数段階で変更し、段階的に設定された前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の量について、それぞれ、食道バルーン圧(Pesoi)を、測定点(S1、S2、M1、M2、・・・、M7、E1、E2、E3)として検出し、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の前記各設定量(Vi)に割り当てるように構成される、
ことを特徴とする請求項12に記載の装置(15)。
【請求項14】
前記食道バルーン制御システム(400)および/または前記換気コントローラ(180)は、流体量監視部(470)、充填コントローラ(490)を有する流体充填システム、および較正コントローラ(450)のうちの少なくとも1つを備え、
少なくとも、前記食道バルーン制御システム(400)が、流体量監視部(470)、充填コントローラ(490)、および較正コントローラ(450)のうちの少なくとも1つを備える場合、前記換気コントローラ(180)は、前記食道バルーン制御システム(400)を制御して、所定の流体量監視手順(500)、流体充填手順(600)、および/または較正手順(100)を開始し、および/または、流体量監視手順(500)、流体充填手順(600)、および/または較正手順(100)の実行を制御するように、前記流体量監視部(470)、前記充填コントローラ(490)、および前記較正コントローラ(450)のうちの少なくとも1つと双方向で相互作用する、
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項15】
前記換気コントローラ(180)および/または前記食道バルーン制御システム(400)は、
(i)設定値の変更:呼気終末陽圧(PEEP)の変更、所定の最大気道圧(pawmax)の変更、1回換気量(Vt)の変更、1回換気ストローク(IE)の変更、換気率(BR)の変更、
(ii)実際の値の変化:呼気終末圧(Pes_ee)、吸気終末圧と呼気終末圧との差(Pes_ei-Pes_ee)、呼吸ごとの食道(34)の圧力の変動、胸壁コンプライアンス(Ccw=Vt/(Pes_ei-Pes_ee))、
のパラメータのうち、一つが所定の値以上変化したことに応じて、較正手順(100)、流体量監視手順(500)、および/または流体充填手順(600)を開始させる、
ことを特徴とする請求項14に記載の装置(15)。
【請求項16】
前記食道バルーン制御システム(400)は、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の量を段階的に変更するように構成された較正コントローラ(450)を備え、
前記較正コントローラ(450)は、前記バルーンプローブ(46)内の、段階的に設定された測定用流体の量(V
i)について、それぞれ、前記圧力センサによって検出された食道バルーン圧(Peso
i)を、測定点(S1、S2、M1、M2、・・・、M7、E1、E2、E3)として記録し、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の前記各設定量に割り当てるように構成される、
ことを特徴とする請求項14または15に記載の装置(15)。
【請求項17】
前記食道バルーン制御システムは、充填コントローラ(490)を備え、
前記充填コントローラ(490)は、制御された後、前記バルーンプローブ(46)に所定量の測定用流体を充填するための流体充填手順(600)を実行するように構成される、
ことを特徴とする請求項14~16のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項18】
前記充填コントローラ(490)は、前記バルーンプローブ(46)を充填するための流体充填手順を開始する前に、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体を除去する排出手順(610)を実行するように構成される、
ことを特徴とする請求項17に記載の装置(15)。
【請求項19】
測定用流体の前記排出手順(610)は、ゼロ体積(V
Null)を設定する手順(620a、620b)を含む、
ことを特徴とする請求項18に記載の装置(15)。
【請求項20】
ゼロ体積(V
0)を設定するための前記手順(620a)は、
(i)前記バルーンプローブ(46)内が第1所定負圧(up
1)に達するまで、前記バルーンプローブ(46)から測定用流体を除去すること(621a)、
(ii)前記バルーンプローブ(46)内が、前記第1所定負圧(up
1)よりも大きい第2所定負圧(up
2)に達するまで、前記バルーンプローブ(46)内に測定用流体を導入すること(622a)、
(iii)前記バルーンプローブ(46)内に所定量の測定用流体を導入すること(623a)、
を含む、
ことを特徴とする請求項19に記載の装置(15)。
【請求項21】
前記充填コントローラは、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体を除去する前記排出手順(610)に続いて、前記バルーンプローブ(46)内が所定の過圧(op)に達するまで、前記バルーンプローブ(46)内に測定用流体を導入する手順(630)を実行するように構成される、
ことを特徴とする請求項18~20のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項22】
前記食道バルーン制御システム(400)は、基準食道バルーン圧(Peso
base)を検出し、前記基準食道バルーン圧(Peso
base)が所定量以上低下した場合に、前記バルーンプローブ(46)に測定用流体を充填するための前記流体充填手順(600)を実行するよう、前記充填コントローラを制御する、
ことを特徴とする請求項18~21のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項23】
前記食道バルーン制御システム(400)は、流体量監視部(470)を備え、
前記流体量監視部(470)は、作動後に、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の所望の充填を確認するための流体量監視手順(500)を実行するように構成される、
ことを特徴とする請求項14~22のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項24】
前記流体量監視部(470)は、
前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の所望の充填を確認するための前記手順を開始した後、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の既存の量を徐々に変更し、
このように設定された前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の各比較量において、関連する比較食道バルーン圧を比較測定点として検出し、
それを、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の前記各比較量に割り当てるように構成される、
ことを特徴とする請求項23に記載の装置(15)。
【請求項25】
前記流体量監視部(470)は、前記流体量監視手順(500)の開始後、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の所望の充填を確認するために、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の既存の量(V
0)を、測定用流体の既存の量(V
0)よりも大きい、第1比較測定点(M
1)として設定された測定用流体の第1比較量(V
1)に変更する、
ことを特徴とする請求項24に記載の装置(15)。
【請求項26】
前記流体量監視部は、前記流体量監視手順(500)の開始後、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の所望の充填を確認するために、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の既存の量(V
0)を、測定用流体の既存の量(V
0)よりも小さい、比較測定点(M
2)として設定された測定用流体の第2比較量(V
2)に変更する、
ことを特徴とする請求項24または25に記載の装置(15)。
【請求項27】
前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の前記第1比較量(V
1)において検出された比較食道バルーン圧(Peso
1)と、測定用流体の前記第2比較量(V
2)において検出された比較食道バルーン圧(Peso
2)とが、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の既存の量に関連付けられた前記食道バルーン圧(Peso
0)を中心とする所定範囲内にあるとき、前記流体量監視部は、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の既存の量が、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の所望の量に対応すると判定する、
ことを特徴とする請求項25または26に記載の装置(15)。
【請求項28】
前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の前記第1比較量(V
1)において記録された前記第1比較食道バルーン圧(Peso
1)と、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の既存の量(V
0)において記録された前記食道バルーン圧(Peso
0)と、によって定義される第1勾配(grad
1)と、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の前記第2比較量(V
2)において記録された前記比較食道バルーン圧(Peso
2)と、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の既存の量(V
0)において記録された前記食道バルーン圧(Peso
0)と、によって定義される第2勾配(grad
2)とが、所定の第1閾値(grad
limit1)を超えない場合、前記流体量監視部は、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の既存の量が、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の所望の量に対応すると判定する、
ことを特徴とする請求項25~27のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項29】
前記流体量監視部(470)が、前記第1勾配(grad
1)および前記第2勾配(grad
2)のうち少なくとも一方が前記第1閾値(grad
limit1)よりも大きいと判定したとき、前記流体量監視部(470)は、前記流体充填システムの前記充填コントローラ(490)を制御して、請求項17~22のいずれか1つに記載の、前記バルーンプローブ(46)に測定用流体の所定量を充填する前記流体充填手順(600)を実行させるように構成され、
前記2つの勾配(grad
1)、(grad
2)のうち大きい方と判定された前記第1および第2比較量(V
1、V
2)から、充填の方向に、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の既存の量(V
0)に対してシフトされる新しい所定の充填が設定される、
ことを特徴とする請求項23~28のいずれか一項に記載の装置(15)。
【請求項30】
前記流体量監視部(470)が、前記第1勾配(grad
1)および前記第2勾配(grad
2)のうち少なくとも一方が第2閾値(grad
limit2)より大きいと判定した場合に、前記較正コントローラ(450)は、請求項16に記載の較正手順(100)を実行するように構成され、
前記第2閾値(grad
limit2)は、前記第1閾値(grad
limit1)より大きい、
ことを特徴とする請求項23~29のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項31】
前記食道バルーン制御システム(400)は、換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)の変更に応じて前記流体量監視部(470)を制御し、前記バルーンプローブ(46)内の測定用流体の所定の充填を確認するための流体量監視手順(500)を実行させるように構成される、
ことを特徴とする請求項23~30のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項32】
前記換気装置(10)によって予め定められた換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)、特に圧力、特に呼気終末陽圧(PEEP)および/または最大気道圧(Paw_max)を自動設定するための、および/または、機械的換気に関する情報、特に経肺圧(Ptp)を自動表示するための、請求項1~31のいずれか1項に記載の装置(15)を備える、
ことを特徴とする換気装置(10)。
【請求項33】
食道(34)に挿入可能な食道バルーンカテーテル(45)用の食道バルーン制御システム(400)であって、
特に、請求項1~31のいずれか1項に記載の装置(15)において、食道バルーン圧(Peso)を判定するためのバルーンプローブ(46)を備え、
前記装置(15)は、換気装置(10)によって指定される換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)、特に圧力、特に呼気終末陽圧(PEEP)および/または最大気道圧力(Paw_max)を自動設定するため、および/または、機械的換気、特に経肺圧(Ptp)に関する情報を自動表示するため装置であり、
前記食道バルーン制御システム(400)は、装置(410)、特にセンサを備え、
前記装置(410)は食道バルーン圧を検出し、経肺圧(Ptp)、特に呼気相の終わりおよび/または吸気相の終わりにおける経肺圧(Ptp_ee)を、検出した前記食道バルーン圧(Peso)に基づいて判定する圧力判定システム(300)へ、検出した前記食道バルーン圧を送信するように構成され、
前記食道バルーン制御システム(400)は、生体内で前記食道バルーンカテーテル(45)の前記バルーンプローブ(46)の動作充填を自動監視および/または調整するように構成され、
前記食道バルーン制御システム(400)は、さらに、前記食道バルーン制御システム(400)を自動制御する前記換気コントローラ(180)から制御信号を受信し、および/または、前記換気コントローラ(180)を自動制御するように構成される、
ことを特徴とする食道バルーン制御システム(400)。
【請求項34】
前記食道バルーン制御システム(400)は、前記換気装置(10)の前記換気コントローラ(180)によって提供される制御コマンドに従って動作するように、および/または前記換気コントローラ(180)を制御するように構成される、
ことを特徴とする請求項33に記載の食道バルーン制御システム(400)。
【請求項35】
患者の食道(34)に挿入した後、生体内で食道バルーン圧(Peso)を判定するための食道バルーンカテーテル(45)であって、
換気装置(10)によって指定される換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)、特に圧力、特に呼気終末陽圧(PEEP)および/または最大気道圧(Paw_max)を自動設定するための、および/または、機械的換気に関する情報、特に経肺圧(Ptp)を自動表示するための、食道(34)に挿入可能な食道バルーンカテーテル(45)を備えた請求項1から31に記載の装置(15)において、
前記食道バルーン圧(Peso)を判定するためのバルーンプローブ(46)と、
請求項33または34に記載の食道バルーン制御システム(400)と、を備える、
ことを特徴とする食道バルーンカテーテル(45)。
【請求項36】
換気装置(10)によって指定される換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)、特に圧力、特に呼気終末陽圧(PEEP)および/または最大気道内圧(Paw_max))を自動設定するため、および/または、機械的換気に関する情報、特に経肺圧(Ptp)を自動表示するための、請求項1から31のいずれか1項に記載の装置(15)のための換気コントローラ(180)であって、
前記換気コントローラ(180)は、食道バルーンカテーテル(45)によって判定された経肺圧(Ptp)に基づき、前記換気装置(10)によって指定される前記換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)を設定するように構成され、
前記換気コントローラ(180)は、さらに、前記食道バルーン制御システム(400)を自動制御し、および/または、前記換気コントローラ(180)を自動制御する前記食道バルーン制御システム(400)からの制御信号を受信するように構成される、
ことを特徴とする換気コントローラ(180)。
【請求項37】
前記食道バルーンカテーテル(45)の前記食道バルーン制御システム(400)と双方向に相互作用するように構成される、
ことを特徴とする請求項36に記載の換気コントローラ(180)。
【請求項38】
食道バルーン圧(Peso)を判定するためのバルーンプローブ(46)を含み、食道(34)内に挿入可能な前記食道バルーンカテーテル(45)に基づいて、経肺圧(Ptp)、特に呼気相終了時の経肺圧(Ptp_ee)および/または吸気相終了時の経肺圧(Ptp_ei)を判定するように構成される圧力判定システム(300)を備える、
ことを特徴とする請求項36または37に記載の換気コントローラ(180)。
【請求項39】
前記食道バルーン制御システム(400)によって提供される食道バルーン制御信号に従って、所定の換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)および/または換気モード(190A、190B、190C、190D)を設定/制御/調整するように構成される、
ことを特徴とする請求項36~38のいずれか1項に記載の換気コントローラ(180)。
【請求項40】
請求項36~39のいずれか1項に記載の換気コントローラ(180)を備える換気装置(10)。
【請求項41】
換気装置(10)によって予め決められた換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)、特に圧力、特に呼気終末陽圧(PEEP)および/または最大気道圧(Paw_max)を自動設定するための、および/または、機械的換気に関する情報、特に経肺圧(Ptp)を自動表示するための方法であって、
-食道バルーン圧(Peso)を判定するためのバルーンプローブ(46)を含み、食道(34)に挿入可能な食道バルーンカテーテル(45)に基づき、経肺圧(Ptb)、特に呼気相の終わりの経肺圧(Ptp_ee)および/または吸気相の終わりの経肺圧(Ptp_ei)を、圧力判定システム(300)によって判定するステップと、
-生体内で前記食道バルーンカテーテル(45)の前記バルーンプローブ(46)の動作充填を、食道バルーン制御システム(400)によって自動監視および/または設定するステップと、
-前記換気装置(10)によって指定される前記換気パラメータ(192A、192B、192C、192D)を、換気コントローラ(180)によって設定し、および/または、前記圧力判定システム(300)によって判定された前記経肺圧(Ptp)に基づき、機械的換気に関する情報を換気コントローラ(180)によって表示するステップと、
を含み、
前記換気コントローラ(180)は、さらに、前記食道バルーン制御システム(400)を自動制御するように構成され、および/または、食道バルーン制御システム(400)は、さらに、前記換気コントローラ(180)を自動制御するように構成される、
ことを特徴とする方法。
【請求項42】
-前記換気コントローラ(180)による、前記食道バルーン制御システム(400)の自動制御、および/または
-前記食道バルーン制御システム(400)による、前記換気コントローラ(180)の自動制御、
を含む、
ことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気装置によって所定の換気パラメータを設定するための、および/または、食道バルーン圧に基づいて機械的換気に関する情報を自動表示するための装置に関する。本発明は、さらに、食道バルーン圧を判定するためのバルーンプローブを有する食道バルーンカテーテルを備えた換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食道バルーン圧を判定するためのバルーンプローブを備えた食道バルーンカテーテルは、特に、経肺圧を判定するための機械的換気中に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Mojoli et al.Crit.Care(2016) 20:98
【非特許文献2】Hotz et al.Respir.Care(2018)63(2):177-186
【非特許文献3】Benditt J. Resp.Care 2005,50:68-77
【非特許文献4】Lotti I.A et al.Intensive Care Med. 1995,21:406-413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今日の機械的換気の一般的な形態では、呼吸ガスは過圧で患者に供給される。したがって、換気中、気道圧または肺胞圧は、少なくとも吸気相の間、肺胞を取り囲む胸膜腔内の圧力よりも大きくなる。呼気相の間、気道は換気装置によって加圧されず、その結果、肺組織は弛緩し、気道圧または肺胞圧は低下する。特定の状況下では、このタイプの陽圧換気により、呼気相の終わりの気道内または肺胞内の圧力状態は、肺胞の一部が虚脱してしまうなどの好ましくない状態を引き起こすことがある。この場合、その後の呼吸サイクルでは、肺容量の虚脱してしまった箇所を再び広げる必要があり、肺の機能的な残存容量が著しく損なわれ、その結果、酸素飽和度が低下し、肺組織が永久的な損傷を受けてしまう虞がある。
【0006】
呼気相の終わりに肺胞が虚脱してしまうことを防ぐために、一般的にはPEEPと略称されるいわゆる呼気終末陽圧が、通常、機械的陽圧換気中に設定される。多くの場合、この措置により酸素飽和度を改善することができる。
【0007】
PEEPを設定して換気する場合、換気装置により、永続的、すなわち吸気相および呼気相のいずれにおいても、所定の過圧、すなわちPEEPが、気道に対して適用される。したがって、PEEPは、呼気相の終了後もなお存在することになる。
【0008】
理想的には、PEEPを、呼気相において肺胞内圧が胸膜腔の圧力を下回らないか、または、少なくともその程度の高さに設定し、胸膜の間隙の圧力の影響で肺胞組織が虚脱しないようにする。換言すると、PEEPにより、肺胞内圧と胸膜腔の圧力との間の圧力差である経肺圧がゼロ未満になってしまう状態、または、肺胞の一部が虚脱し始める負の下限値を下回る状態が起こらないようにしている。
【0009】
一方で、PEEPの値が高すぎると、特に吸気相において悪影響を及ぼすリスクがある。これは、吸気相の間に気道内圧が非常に高くなると、肺組織が過度に引っ張られてしまうためである。また、PEEPを高く設定すると、心臓への静脈還流が阻害され、それに伴い、心血管系にも悪影響が及ぶことが、多くの研究で示されている。
【0010】
原則として、PEEPは、一般的な経肺圧に設定するべきである。しかしながら、換気中の患者の経肺圧を判定することは容易ではない。そこで、食道用カテーテルを用いて、換気を必要とする患者の食道にバルーンプローブを留置して圧力測定を行うようにする。バルーンを適切に位置決めして構成することにより、バルーン内で測定した圧力に基づき、胸膜腔内の圧力をおおよそ知ることができる。
【0011】
国際公開第2014/037175号(特許文献1)には、経肺圧、すなわち、肺胞内圧と胸膜腔内の圧力との間の指標と考えられる、食道バルーン圧に基づく、換気装置によって設定される圧力、特に、呼気終末陽圧(PEEP)および最大気道内圧を、自動設定する技術が開示されている。
【0012】
実際には、食道に挿入したバルーンカテーテル内で測定した圧力と、胸膜腔内の圧力との間の関係は、換気中に変化することがある。その原因は多岐にわたり、通常、詳しく特定することができない。
【0013】
Mojoli et al.Crit.Care(2016)20:98(非特許文献1)、および、Hotz et al.Respir.Care(2018)63(2):177-186(非特許文献2)では、食道内圧の測定用に設計されたバルーンカテーテルを用いて食道バルーンカテーテルを較正するための手順を推奨している。較正の目的は、バルーンプローブに空気を最適に充填することであり、それにより、バルーンプローブが、食道に作用する胸膜腔内の圧力の変化にできるだけ敏感に反応し、胸膜腔内の圧力をできるだけ反映できるようにすることである。しかしながら、示されている較正用測定手順は比較的複雑かつ高感度であるため、実際には、バルーンプローブへの最適な充填のみが、換気の開始前に判定されて設定される。その後、この最適な充填は換気中維持され、変更されることはない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
特定の換気パラメータは、特に、圧力、例えば、呼気終末陽圧(PEEP)や最大気道圧(以下、Paw_maxとも称する)、すなわち、一般的な換気モード、特に、換気の大幅な自動化の実現を目的として閉制御ループで動作する換気モード用の、典型的な換気パラメータであってもよい。閉制御ループで動作する換気モードとして、例えば、本出願人によって開発された適応型補助換気(ASV換気)やINTELLiVENT-ASVモードが挙げられる。
【0015】
追加的または代替的に、本発明による装置を、機械的換気に関する情報を自動表示するように設計してもよい。そのような情報は、特に、他の換気パラメータの設定や換気モードの選択に関連する量、例えば圧力などである。このような情報や大きさは直接測定できないことが多いが、食道バルーンカテーテルを用いることで測定することが可能になる。このような量の例としては、経肺圧(以下、Ptpとも称する)があり、これは、換気中に肺胞虚脱が懸念されるかどうかを判断するために使用することができる。胸膜腔内の圧力もこの量に該当し、ディスプレイ上に自動表示することで、胸郭または胸壁の状態に関する有用な情報を提供することができる。
【0016】
換気に関する情報の提示の他の例としては、手術担当者への治療の推奨、特に、食道バルーンカテーテルから提供される情報から得られる治療の推奨が挙げられる。治療の推奨は、換気中に記録された換気状態を考慮して、換気中に使用される換気パラメータ、例えば、呼気終末陽圧(PEEP)、最大気道圧(Paw_max)、換気量、換気圧などの変更または再調整の推奨に関連する。必要に応じて、治療の推奨は、採用する換気モードの変更を含んでもよい。
【0017】
監視を容易にするために、本発明によれば、このような関連する量または情報は、さらなる情報、例えば、このような換気パラメータの決定が現在どの程度確実に実施できるかを示す情報などとともに、必要に応じて自動的に表示することができる。
【0018】
本発明に係る装置は、食道バルーン圧を判定するためのバルーンプローブを含み、食道に挿入可能な食道バルーンカテーテルに基づいて、経肺圧、特に、呼気相の終わりの経肺圧および吸気相の終わりの経肺圧、または、そのいずれか一方を判定するための圧力判定システムと、生体内の食道バルーンカテーテルのバルーンプローブへの適切な充填を自動監視や調整を行うための食道バルーン制御システム(400)と、換気コントローラ(180)と、を備える。
【0019】
換気コントローラは、通常、換気の制御や調整を行うこと、特に選択された換気モードでの換気プロセスの制御や調整や監視を行うことを目的としており、必要に応じて、換気モードの選択や変更を行うことも目的とする。ここで、換気モードには、例えば、適応型補助(ASV)換気モードやIN-TELLiVENT-ASVの場合のように、換気中に重要な換気パラメータを継続的に調節するための閉制御ループに基づく、大幅に自動化された換気モードも含まれる。換気コントローラは、特に、換気装置が指定した換気パラメータの調整や、圧力判定システムが判定した経肺圧に基づく換気に関する情報の表示を行うように設計される。
【0020】
圧力感知システムは、食道バルーン内の流体圧力を感知し、その圧力を表す信号を提供するように構成される。このような食道バルーン圧信号は、一般に、換気中、特に、患者の生理学的状態に適合するように、呼気終末陽圧(PEEP)および最大気道圧(Paw_max)などの特定の換気パラメータを調整する際に考慮される必要がある。したがって、圧力検出システムは、検出された食道バルーン圧の特徴である食道バルーン圧信号を換気コントローラに提供するように設計される。そして、換気コントローラは、圧力検出システムからそのような信号を受信するように構成される。
【0021】
圧力感知システムは、換気装置や食道バルーンカテーテル内の少なくとも1つのセンサ、多くの場合、複数の異なるセンサによって提供される情報を組み合わせる。したがって、本発明の実施形態によれば、圧力検出システムは、また、食道バルーン制御システムを制御するための適切な基盤を提供するものである。
【0022】
圧力検出システムは、少なくとも部分的に、換気コントローラに割り当てられてもよい。圧力検出システムは、また、全体として、または部分的に、食道バルーン制御システムに割り当てられてもよい。例えば、食道バルーンカテーテルのバルーンプローブ内の圧力を検出する圧力検出システムの構成要素を、食道バルーン制御システムに割り当ててもよい。食道カテーテルのバルーンプローブにおいて検出された食道バルーン圧に基づいて経肺圧を判定する際に使用する追加の構成要素を、食道バルーン制御システムまたは換気制御システムに関連付けてもよい。圧力検出システムは、また、換気コントローラや食道バルーン制御システム用の適切なインターフェースのみを備えた、ほぼ独立したシステムとして設計してもよい。圧力検出システムを、換気制御システムに割り当てるか、食道バルーン制御システムに割り当てるか、または大部分を独立したシステムとするかにかかわらず、圧力検出システムを独立したサブシステムとして説明することにより、本発明がよりよく理解される。
【0023】
本発明によれば、換気コントローラは、また、食道バルーン制御システムの自動制御を行うように設計される。追加的または代替的に、食道バルーン制御システムは、また、換気制御システムを自動的に制御するように設計されてもよい。食道バルーン制御システムは、特に、換気コントローラを制御して所定の操作を行わせるように設計されてもよい。このような操作には、例えば、いわゆるホールド操作などがあり、これにより、吸気終末および呼気終末の食道圧の準静的な値を測定することが可能となる。
【0024】
換気コントローラおよび食道バルーン制御システムは、特に、互いに双方向に相互作用できるように設計されてもよい。
【0025】
換気コントローラが食道バルーン制御システムの自動制御を行うように設計されるという表現は、換気コントローラが、換気装置自体に関するその意図された制御や調整機能に加えて、食道バルーンカテーテル、特に、そのバルーンプローブに関する制御や調整機能も有することを表している。換気コントローラは、食道バルーン制御システムを制御して所定の手順、特に、バルーンプローブを測定用流体で充填すること、バルーンプローブを較正すること、および、バルーンプローブの充填状態を連続的に監視すること、またはそのうちいずれかを開始することができる。追加的に、または代替的に、換気コントローラは、食道バルーン制御システムにおけるこのような手順の経過に対して、制御や調整の影響を及ぼすことができる。制御や調整の影響は、例えば、換気コントローラが、現在設定されている換気パラメータの値を食道バルーン制御システムに提供し、それに基づいて、食道バルーン制御システムが食道バルーンの所定の制御手順(上述の手順など)を制御することにより実現する。このようにして、2つの制御システム、換気コントローラ、および食道バルーン制御システムの間の最適な相互作用が実現し、その結果、2つのシステムによって実行される手順が調整され、同期される。
【0026】
食道バルーン制御システムが換気制御システムを自動的に制御するように設計されるという表現は、食道バルーン制御システムが、検出された食道バルーン圧力を表す信号を伝達することに加えて、換気コントローラのために制御や調整を行う機能を有することを表している。食道バルーン制御システムは、換気コントローラを制御して所定の手順を開始させることができる。追加的または代替的に、食道バルーン制御システムは、例えば、食道バルーン制御システムの「凍結」または現在設定されている換気パラメータの固定値によって、制御や調整により換気コントローラ内の特定の手順の経過に影響を及ぼすことができ、すなわち、そのような換気パラメータが、換気コントローラによって一定期間変更されないようにする。このようにして、2つの制御システム、換気コントローラ、および食道バルーン制御システムの間の最適な相互作用が実現し、その結果、2つのシステムによって実行される手順が調整され、同期される。
【0027】
換気コントローラは、食道バルーン制御システムを制御して、所定の制御手順を開始させることができる。このような制御手順の例として、食道バルーンカテーテルのバルーンプローブに測定用流体(空気など)が正しく充填されているかを確認すること、必要であれば、バルーンプローブを空にした後、測定用流体を再充填すること、バルーンプローブへの最適な充填に必要な測定用流体の量を設定するためにバルーンプローブを完全に較正すること、が挙げられる。追加的または代替的に、換気コントローラは、食道バルーン制御システム内の所定の制御手順のシーケンスに介入してもよく、または、そのような制御手順のシーケンスの制御を完全に引き継いでもよい。このようにして、2つの制御システム、換気コントローラ、および食道バルーン制御システムの間の最適な相互作用が実現し、その結果、2つのシステムによって実行される手順が調整され、同期される。また、このようにして、換気を行いながら、食道バルーンカテーテルの制御手順を行うことができる。換気は、食道バルーンカテーテルの制御手順を妨げないようにして、食道バルーンカテーテルの制御手順中に行うことができる。これには、例えば、食道バルーンカテーテルの制御手順が実行されている間は、換気コントローラが換気中である換気パラメータの変更を抑制することを含むことがある。
【0028】
特に、本発明に係る装置により、食道バルーンカテーテルによる胸膜腔内の圧力をより正確に考慮することができ、また、特に、ほぼ自動化された換気の場合に、食道バルーンカテーテルによる測定値を、連続換気中の環境条件の変化により柔軟に適応させることができる。換気装置に属する換気制御システムと食道バルーンカテーテルに属する食道バルーン制御システムが互いに双方向通信できるように設計されている場合には、手動介入や、特定の機能を再構成または再起動するために換気を中断する必要なく、2つの制御システムの継続的な相互監視と、換気の継続中に変化する環境条件へのシステム全体の適応とが可能になる。特に、バルーンプローブへの測定用流体の充填レベルの調整は、換気を中断することなく行うことができる。システム全体の適応には、換気を中断することなく食道バルーンカテーテルを完全に(再)較正することも含まれる。これは、例えば、本出願人が開発した適応型補助(ASV)換気モードやIN-TELLiVENT-ASVの場合のように、大幅に自動化された換気モードを使用して換気を行う場合にも当てはまる。
【0029】
また、換気コントローラは、食道バルーンカテーテル用の特定の制御手順の実行に重要な情報を提供するように構成されてもよい。これにより、食道バルーン制御システムにおいて制御手順を実行する際に、換気中に生じる換気パラメータや測定変数の変化を考慮することができる。一例として、換気モードによっては、換気コントローラは、呼吸ごとに、機械換気中に適用される換気量を調整またはリセットする。このような場合、換気量は、換気中の一定の換気パラメータではなく、呼吸ごとに変化する変数である。換気モードによっては、呼吸の代わりに、換気ストローク、呼吸サイクル、換気サイクルという言い方もする。以下では、呼吸、換気ストローク、呼吸サイクル、換気サイクルを同義語として使用する。換気モードに応じて、呼吸の代わりに、換気ストローク、呼吸サイクル、または換気サイクルとも呼ばれる。以下では、呼吸、換気ストローク、呼吸サイクル、および換気サイクルを同義語として使用する。しかしながら、各呼吸に適用される換気量は、吸気相の終わりと呼気相の終わりの間の肺の圧力差を表す換気圧など、他の量に影響を及ぼす。また、適用される換気量が、食道バルーン制御システムにおける制御手順に影響を及ぼすことも起こり得る。例えば、生体内で食道バルーンカテーテルのバルーンプローブ内の測定用流体の量を較正する場合は、較正中に換気圧が変化しないことが前提となる。これは、較正中であっても、呼吸ごとに適用される換気量はできるだけ一定に保たれるべきであることを意味する。このため、食道バルーンカテーテルのバルーンプローブの較正は、適用される換気量が一定に保たれる換気モードでのみ可能である。本発明により提案される装置では、換気コントローラが呼吸ごとに適用される換気量を食道バルーン制御システムに送信することができるため、食道バルーンカテーテルを較正する際にバルーンプローブに適用される換気量の変化を考慮することができる。これは、例えば、吸気相の終わりにおける食道バルーン圧と、呼気相の終わりにおける食道バルーン圧の差の記録値を、それぞれの呼吸で適用される換気量に関連付けること、例えば、換気量を分母として比率を形成することによって行うことができる。これにより、換気量が固定されていない換気モードでも、換気継続中にバルーンプローブを較正することが可能になる。
【0030】
上述したとおり、PEEPや最大気道圧などの換気パラメータの自動設定に加えて、換気に関連する情報をほぼ自動的に表示するように設計されている場合もある。このような情報の表示には、換気装置のディスプレイ上に経肺圧などの特定の換気パラメータを表示することも含まれる。この場合、食道バルーンカテーテルが通常モードで作動しているか、較正手順や充填手順などの特殊モードで作動しているかなどの追加情報を表示することもできる。
【0031】
ここで提案する装置の特別な実施形態は、以下に示す1つ以上の任意の特徴を有することができる。特徴が代替設計に関連する限りにおいて以下に明確に示す。したがって、以下の特徴は、明示的に除外されない限り、上述または後述する特徴と任意に組み合わせることができる。
【0032】
換気コントローラは、換気コントローラが圧力検出システムによって提供される圧力値に従って食道バルーン制御システムを制御/調整するように、食道バルーン制御システムとの相互作用を制御/調整するように設計されてもよい。相互作用は、特に、双方向であってもよい。システム全体の知能は、主に、食道バルーンカテーテルの較正、食道バルーン内の流体の量の監視、食道バルーン内の流体の量の再充填など、食道バルーンカテーテルに関する制御手順を含む、すべての制御手順を実行する換気コントローラにあってもよい。この場合、食道バルーン制御システムは、換気制御システムによって提供される制御/調節コマンドを実行するようにのみ設計される。圧力感知システムが食道バルーン制御システムと少なくとも部分的に関連付けられる実施形態では、食道バルーン制御システムはまた、食道バルーン内で感知された圧力を表す信号を提供するように構成されてもよい。
【0033】
また、食道バルーン制御システムは、換気コントローラによって提供される制御コマンドに従って食道バルーン制御手順を実行するように、換気コントローラとの相互作用を制御/調整するように設計されてもよい。この相互作用はまた、双方向であってもよい。食道バルーン制御システム自体は、いずれの場合も、食道バルーンカテーテルに関する制御/調節手順、特に、食道バルーンカテーテルを較正するための手順、食道バルーン内の流体の量を監視するための手順、または食道バルーン内の流体の量を補充するための手順などの制御/調節手順を独立して実行することができる十分な知能を有してもよい。その場合、換気コントローラは、食道バルーン制御システムにそのような手順を作動させるためのコマンドを提供するのみであり、食道バルーン制御システムは次いで、これらの手順を独立して実行、すなわち、これらの手順を制御および/または調節する。さらに、圧力検出システムが食道バルーン制御システムに少なくとも部分的に関連付けられている実施形態では、食道バルーン制御システムは、食道バルーン内で検出された食道バルーン圧を反映する信号を提供することもできる(以下、簡単にPesoともいう)。これらの測定信号は、例えば、さらに、換気コントローラのために送信された信号が経肺圧をすでに反映しているように、すでに実行されていてもよい。
【0034】
上述の実施形態に追加またはその代替として、食道バルーン制御システムは、所定の食道バルーン制御信号を換気コントローラに送信するように構成されてもよい。次いで、換気コントローラは、これらの食道バルーン制御信号に従って、所定の換気パラメータおよび/または換気モードを設定、制御、および/または表示するように構成されてもよい。そのような実施形態では、特に、食道バルーン制御システムおよび換気コントローラは互いに双方向通信するように設計されてもよい。本明細書で言及される食道バルーン制御信号は、食道バルーンによって感知される圧力値またはそのような圧力値を表す信号を指さない。むしろ、本明細書で言及される意味における食道バルーン制御信号は、食道バルーン圧に関する信号(以下、食道バルーン圧信号ともいう)に加えて、食道バルーン制御システムによって生成され、換気制御システムに利用可能にされる制御信号である。そのような食道バルーン制御信号に基づいて、換気制御システムは、換気中に生じる換気モードを制御/調整し、および/または特定の換気パラメータを制御/調整する。「影響の制御/調整を行使すること」とは、換気コントローラが換気パラメータに変化をもたらすこと、または換気コントローラが少なくとも特定の期間、特定の換気パラメータのそのような変化を防止することを意味する。これは、例えば、食道バルーンのための較正手順が開始されたことを示す食道バルーン制御信号を食道バルーン制御システムが送信した後に、換気コントローラが換気モードの変化を防止し、および/または、換気パラメータの変化をブロックするように行われてもよい。換気モードのそのような「凍結」、または換気パラメータの保持は、食道バルーン制御システムが(さらなる)食道バルーン制御信号を送信した後に、開始された較正手順が完了されたまたは中止された後に、キャンセルされてもよい。同様に、換気コントローラは、換気パラメータの(たとえば、換気装置のディスプレイ上への)表示を制御/調整するため、または、そのような換気パラメータを完全に表示するために、そのような食道バルーン制御信号を使用してもよい。例えば、許容される仕様外にある、食道バルーンカテーテルのバルーンプローブの臨界経肺圧または充填レベルが存在する場合、バルーンプローブの記録された経肺圧または充填レベルと共に、対応するメッセージが表示されてもよい。追加的または代替的に、例えば、食道バルーンによって測定された経肺圧が臨界範囲内にある場合、または、バルーンプローブが許容できない充填状態にある場合、治療の推奨、または、他の手段を表示することもできる。さらに、食道バルーン較正手順が現在作動されていることを示す食道バルーン制御信号を食道バルーン制御システムが送信した直後に、警告を換気装置のディスプレイに表示させてもよい。
【0035】
換気コントローラは、食道バルーン制御手順の起動または開始後、食道バルーン制御手順が終了するまで、所定の換気パラメータおよび/または換気モードの場合、いかなる変更も許容しないように構成されてもよい。特に、食道バルーン制御信号により、食道バルーン制御手順が終了したことを換気コントローラに表示して、換気コントローラがそのような食道バルーン制御信号を受信した後、通常モードに戻るようにしてもよい。
【0036】
換気または自動換気の制御に直接関係しないデータ/パラメータは、食道バルーン制御システムと換気制御システムとの間で送信されてもよい。例えば、周囲温度および/または周囲圧力を、食道バルーン制御システムおよび換気制御システムのいずれかにおいて測定し、換気制御システムまたは食道バルーン制御システムに送信し、各パラメータを決定するように設計されたセンサが1回だけ存在する必要があるようにしてもよい。
【0037】
さらに、食道バルーン制御手順の起動または開始前の所定の時間から、食道バルーン制御手順が終了するか、または所定の時間内に開始しなくなるまで、換気コントローラは、所定の換気パラメータおよび/または換気モードの変更を許可しないように構成されてもよい。終了は、食道バルーン制御手順の完了と、食道バルーン制御手順の終了と、の両方を意味してもよい。本実施形態では、一方での換気パラメータの変更および/または換気モードの変更と、他方での食道バルーン制御手順(特に較正手順)と、の間の同期は、係属中の食道バルーン制御手順が成功または不成功に完了するか、あるいは所定の待機時間中に開始されなくなるまで、それぞれの換気パラメータの変更および/または換気モードの変更を待機することによって達成されてもよい。これにより、各食道バルーン制御手順が可能な限り一貫した換気条件下で実行される一方で、食道バルーン制御手順の間、換気が継続することが確実になる。
【0038】
さらなる実施形態では、換気コントローラおよび/または食道バルーン制御システムは、食道バルーン制御手順の開始前であって所定の時点の後に、特に対応するユーザ入力によって、所定の換気パラメータおよび/または換気モードの変更が強制された場合に、警告が生成されるように構成されてもよい。アラートは、(例えば、ユーザ入力によって)強制される所定の換気パラメータ/換気モードの変更が有効になる前に、アラートに応答してさらなる確認が必要とされるように、変更の中断を伴って構成されてもよい。これにより、操作者による入力が少なくとも意図せずに食道バルーン制御手順を妨害し、結果として、その正しい実行を損なうことが無いことが確実になる。そのような警告を、食道バルーン制御手順の完了または終了まで生成できるようにしてもよい。
【0039】
さらに、換気コントローラおよび/または食道バルーン制御システムは、食道バルーン制御手順が所定の時間に開始されるように構成されてもよく、ここでは、所定の換気パラメータおよび/または換気モードの変更が、食道バルーン制御手順の開始前の所定の期間内に行われる場合、食道バルーン制御システムは、換気パラメータおよび/または換気モードの変更が完了するまで食道バルーン制御手順の開始を延期する。この手段は、また、一方での換気中の換気パラメータおよび/または換気モードの変更と、他方での食道バルーン制御手順(例えば、較正手順)と、の間の効果的な同期を提供してもよい。この場合、同期は、換気パラメータの変更または換気モードの変更がそれぞれ生じるまで、食道バルーン制御手順の開始を延期することによって達成される。これにより、食道バルーン制御手順中に換気が継続する場合、食道バルーン制御手順が、この場合の新しい換気パラメータおよび/または新しい換気モードに従って、同じ条件下で実行されることが確実になる。
【0040】
さらなる実施形態では、換気コントローラおよび/または食道バルーン制御システムは、食道バルーン制御手順の起動後または開始後に生じる所定の換気パラメータおよび/または換気モードの変更が、食道バルーン制御手順の完了まで延期されるように構成されてもよい。ある程度までは、換気と食道バルーン制御手順との間の優先順位付けは、少なくとも食道バルーン制御手順の開始後、または食道バルーン制御手順の過程中に、食道バルーン制御手順が換気、特にPEEPまたはPaw_maxなどの換気パラメータの変更、または換気モードの変更よりも優先されるように決定される。この意味で、換気コントローラは、食道バルーン制御手順が作動中である限り、換気パラメータおよび/または換気モードの設定値を「凍結」すると言うことができる。
【0041】
換気パラメータまたは換気モードの特定の変更がすぐになされる場合は、これらの変更は除外されてもよく、上述した変更の延期は、延期され得る換気パラメータまたは換気モードのみに限定されてもよい。
【0042】
さらなる実施形態では、換気コントローラおよび/または食道バルーン制御システムは、食道バルーン制御手順が所定の時間間隔に従って開始されるように構成されてもよく、ここでは、所定の換気パラメータおよび/または換気モードの延期可能な変化が食道バルーン制御手順の開始前の所定の期間内に行われる場合、換気コントローラは、食道バルーン制御手順が完了するまで換気パラメータおよび/または換気モードの変更の開始を延期する。この構成では、換気コントローラと食道バルーン制御システムとの間の調整は、計画された将来の食道バルーン制御手順に関して既に行われている。例えば、食道バルーン制御システムは、計画された食道バルーン制御手順の開始前の所定の期間、換気コントローラに制御信号を送信し、この信号が、所定の期間の満了後に食道バルーン制御手順が開始することを知らせるようにしてもよい。そのような制御信号の受信に応答して、換気制御システムは、換気パラメータおよび/または換気モードの凍結を(起動時間が経過してすぐに、または、好ましくは起動時間が経過した後に)すでに起動しておくことができ、その結果、食道バルーン制御手順が開始するときに安定した換気条件が存在することが保証される。食道バルーン制御手順が換気コントローラによって開始される場合、換気コントローラは、食道バルーン制御システムから対応する制御信号を事前に受信することなく、換気パラメータおよび/または換気モードの凍結を作動させてもよい。
【0043】
所定の時間間隔に従って食道バルーン制御手順を開始することは、連続する食道バルーン制御手順の間に、必ずしも規則的または均一な時間間隔を必要としないことに留意されたい。例えば、この表現は、また、食道バルーン制御システムがそれぞれの食道バルーン制御手順の開始前の適切な時間に、対応する制御信号を換気制御システムに送信し、信号が、所定の期間の満了後に食道バルーン制御手順の開始を知らせる限り、食道バルーン制御手順が不規則な時間間隔で続く実施形態を含むことが意図される。食道バルーン制御手順が換気制御システムによって開始される場合にも、同じことが適用される。
【0044】
さらなる実施形態では、圧力検出システムは、食道内に挿入されるバルーンプローブを含む食道バルーンカテーテルと、生体内でバルーンプローブ内の圧力を検出するための装置と、を有する、食道バルーン圧を判定するために設計されたセンサを有してもよい。圧力検出システムは、特に、肺胞内圧を判定し、肺胞内圧と食道バルーン圧との間の差に基づいて経肺圧を判定するように設計されたセンサを含んでもよい。肺胞内圧を判定するためのセンサシステムは、気道抵抗を判定するように設計されてもよく、気道内の、特に呼気相の終わりおよび/または吸気相の終わりにおけるガス流を検出するためのセンサを有してもよい。次いで、センサは、ガス流および気道抵抗に基づいて肺胞内圧を判定してもよい。肺胞内圧を判定するためのセンサシステムは、例えば、吸気側の気道圧を検出するために、換気装置のチューブの先端に配置、または、換気装置の気道入口弁に関連付けられた気道圧センサを有してもよい。
【0045】
さらなる実施形態では、食道バルーン制御システムは、バルーンプローブを測定用流体で充填するため、および/または、バルーンプローブを食道に配置した後にバルーンプローブから測定用流体を除去するための装置を有してもよい。そのような装置は、測定用流体をバルーンプローブ内にポンプで送り込むことができるポンプ装置を有してもよい。必要に応じて、ポンプ装置を用いて測定用流体をバルーンプローブから汲み出してもよい。このようにして、所望の量の測定用流体によるバルーンプローブへの迅速かつ正確な充填、および/または、バルーンプローブからの所望の量の測定用流体の除去を実現してもよい。特に、バルーンプローブを周囲圧に対して負圧でポンプへ送ることが可能である。しかしながら、バルーンプローブがその環境に対して過剰な圧力下にある場合には、ポンプ装置の補助なしにバルーンプローブから測定用流体を除去してもよい。そのような場合、バルーンプローブから流出する測定用流体の流れを判定するための装置が提供され、また、この測定用流体の流れがポンプ装置を制御することによってまだ十分に判定されていない場合にも提供される。
【0046】
さらなる実施形態では、バルーンプローブからの測定用流体の導入および/または除去が段階的に行われてもよい。この目的のために、食道バルーン制御システムは、バルーンプローブ内の測定用流体の設定された量を徐々に変化させるように、特に、バルーンプローブ内の測定用流体の量を1ステップまたは複数のステップで変化させるように設計され、このように徐々に測定点として設定されるバルーンプローブ内の測定用流体の量で食道バルーン圧を検出し、検出された食道バルーン圧をバルーンプローブ内の測定用流体の設定された量に割り当てる。このようにして、測定用流体をバルーンプローブに導入する、および/または測定用流体をバルーンプローブから除去する各工程中に、少なくとも一対の測定値、特に複数対の測定値を、導入/除去された量の測定用流体およびそれぞれ関連する食道バルーン圧から取得してもよい。これらの測定値の対に基づいて、バルーンプローブの充填状態についての情報を取得することができ、対応する制御手順を作動させて実行してもよい。
【0047】
さらなる実施形態では、食道バルーン制御システムおよび/または換気コントローラは、流体量監視システム、流体充填システム、および較正システムのうちの少なくとも1つを備えてもよい。特に、食道バルーン制御システムが、流体量監視システム、流体充填システム、および較正システムのうちの少なくとも1つを備える場合、換気コントローラは、流体量監視システム、流体充填システム、および較正システムのうちの少なくとも1つとの双方向相互作用のために設計されてもよい。このようにして、換気コントローラは、食道バルーン制御システムを制御して、所定の監視手順、流体充填手順および/または較正手順を開始し、および/または監視手順、流体充填手順および/または較正手順の順序を制御してもよい。食道バルーン制御システムと、流体量監視システム、流体充填システム、および較正システムのうちの少なくとも1つとの間の双方向相互作用によって実現される可能性に関して、上述した例を参照されたい。特に、食道バルーン制御システムを換気コントローラと完全に同期させること、または、それを換気コントローラに組み込むことも可能である。このようにして、換気制御システムは、食道バルーンカテーテルによって提供される情報、特に胸膜腔内の圧力をほぼ反映する食道バルーン圧について、患者の換気をより長い期間にわたって制御/調整することができる。これは、バルーンプローブへの測定用流体の正しい充填を監視すること、バルーンプローブへ測定用流体を補充または再注入すること、バルーンプローブから測定用流体を抜き取る、および/またはバルーンプローブを較正して、バルーンプローブに充填すべき測定用流体の量を決定すること、といった、食道バルーンカテーテルに対して特定の制御手順を実行する能力を含む。
【0048】
実施形態では、換気コントローラおよび/または食道バルーン制御システムは、換気中に所定の閾値以上検出された以下の換気パラメータのうちの1つまたは以下の変数のうちの1つの変化に応じて、食道バルーン制御システムにおいて、較正手順または流体量監視手順、および所望であれば流体充填手順を開始してもよい。
(i)所定の閾値以上による以下の換気パラメータのうち、少なくとも1つについての設定点の変化に応答する。所定の呼気終末陽圧(PEEP)、所定の最大気道圧(Paw_max)、与えられる一回換気量(Vt)、与えられる一回ストローク量(IE)、設定換気速度(BR)、
(ii)(換気パラメータとして指定されていない場合)以下の変数のうち少なくとも1つについて、閾値以上の変化の検出に応答する。呼気終末圧(Pes_ee)、吸気終末圧と呼気終末圧との差(Pes_ei-Pes_ee)、食道圧の変動(Pes)、胸壁コンプライアンスCcw=Vt/(Pes_ei-Pes_ee)。
(i)で言及された変数は、これらの変数が特定の換気モードにおいて換気パラメータとして特定されていないが、自由に調整される、または特定の限度内で調整され得るという条件で、記録された変数とみなしてもよい。
【0049】
呼気終了時に食道バルーンプローブに記録された圧力(Pes_ee)は、この種の判定のための基準圧力としてよく使用される。この圧力は、「基準圧力」または「基準食道バルーン圧」とも呼ばれる。
【0050】
上記較正システムは、特に、食道バルーンカテーテルのバルーンプローブへの適切な充填を自動調整するために設計される。このような較正において、正確な充填レベルは、食道バルーンカテーテルのバルーンプローブ内の測定用流体の充填レベルとして求められ、この充填レベルでは、バルーンプローブ内の圧力を検出するための圧力検出システムまたは圧力センサによって判定される信号は、胸膜腔内に広がる圧力を可能な限り正確に反映する。
【0051】
較正によって動作充填を決定するために、上記較正システムはバルーンプローブ内の測定用流体の量を段階的に変化させるように設計された較正コントローラを備え、この較正コントローラは、バルーンプローブセット内の測定用流体の量について、関連する食道バルーン圧を、このように測定点として段階的に記録し、バルーンプローブ内の測定用流体の設定された量に割り当てる。食道バルーン圧は、圧力検出システムによって、または較正システムに含まれる圧力センサによって測定してもよい。
【0052】
換気および/または食道バルーンカテーテルの状態が経時的に変化しない場合、正常な充填は、通常、呼気相の終わりに記録される食道バルーン圧と、吸気相の終わりに記録される食道バルーン圧との間の差が所与の呼吸に対して最大であるときに達成される。
【0053】
実施形態では、較正システムは、以下の構成要素を有する。
-バルーンプローブを食道内に配置した後、測定用流体をバルーンプローブに充填する装置、
-バルーンプローブ内に存在する食道バルーン圧を検出する圧力センサ、
-バルーンプローブ内の測定用流体の量を段階的に変化させるように設計された較正コントローラであって、較正コントローラは、バルーンプローブ内の測定用流体の量のそれぞれにおいて圧力センサにより検出された食道バルーン圧を記録し、バルーンプローブ内の測定用流体の量は、バルーンプローブ内の測定点としてこのように段階的に設定され、バルーンプローブ内の測定用流体のそれぞれの設定量に割り当てられる。「食道バルーン圧を記録する」という表現では、特に、吸気相の終わりに記録されたバルーンプローブ内の圧力と、呼気相の終わりに記録された圧力と、の差圧を記録することが意図される。
【0054】
換気コントローラが、換気中に換気装置によって実行される換気モードまたは換気手順を制御/調整するその実際の機能に加えて、食道バルーン制御システムを自動的に制御するように設計されている場合、較正システムは、食道バルーンカテーテルのバルーンプローブの正しい充填を決定するための較正を実行するために、および、必要であれば、換気中に時間変動条件が発生する条件下でも十分な精度でバルーンプローブを測定用流体で新たに充填または再充填するために、使用されてもよい。これは、換気中に記録される所定の換気パラメータまたは変数が、較正工程中に変化する場合に特に当てはまる。この場合、換気コントローラは、これらの変化を食道バルーン制御システムに伝達するように設計されてもよい。
【0055】
例えば、所定の換気工程において与えられる1回換気量Vtが一定ではなく、換気工程から換気工程で変化する換気モードがある。1回換気量Vtのこの変化は、通常、吸気相の終わりに測定された食道バルーン圧Peso_eiと呼吸の呼気相の終わりに測定された食道バルーン圧Peso_eeとの間の差dPesoに影響を及ぼす。この影響は、1回換気量Vtの変化が較正中に最大化されるべき差の決定に含まれる場合に埋め合わせされてもよい。したがって、本発明の一実施形態では、較正コントローラが吸気相Peso_eiの終わりにおける食道バルーン圧と呼気相Peso_eeの終わりにおける食道バルーン圧との間の差dPesoを、それぞれの換気工程において与えられる1回換気量Vtに関連付け、バルーンプローブの動作充填として、このようにして得られる商dPeso/Vtが最大になるバルーンプローブ内の測定用流体の量を決定することができる。結果として、比dPesoA/tの最大化は、dPesoよりも呼吸対呼吸変動にあまり依存しない。しかしながら、一定の1回換気量Vtでは、それはdPesoの最大化に対応する。
【0056】
1回換気量Vtが呼吸毎に変化する場合、これは、圧力差dPesoの記録された値がそれぞれ適用された1回換気量Vtに関連することを意味する。これにより、換気の深さに依存しない食道バルーン圧の圧力差の値を得ることができる。この手段は、較正の精度を向上させる。1回換気量Vtは換気コントローラによって提供される量であるので、ここで提案される換気コントローラ(換気装置の一部)と、較正システム(食道バルーン制御の一部)と、の間の双方向通信は、以前は不可能であった条件下での食道バルーンカテーテルの較正を可能にする。換気装置は較正システムに追加の情報(1回換気量)を提供するので、較正の精度を向上させることができ、したがって、食道に挿入されたバルーンカテーテルによって提供される圧力測定の精度も向上させることができる。較正システムは、バルーンカテーテルを通して胸膜腔内に広がる圧力のより正確な再現、および、連続換気中に変化する環境条件に対する測定値のより速い応答を可能にする。これにより、換気を中断する必要なく、換気中にバルーンカテーテルを較正することができる。これは、例えば、本出願人が開発した適応型補助(ASV)換気モードやIN-TELLiVENT-ASVの場合のように、大幅に自動化された換気モードを使用して換気を行う場合にも当てはまる。
【0057】
実施形態では、較正コントローラは、それぞれの測定点に近づくために、測定用流体の量を、開始値から開始して単調な方法で、最終値に達するまで、少なくとも2つのステップで変化させるように設計される。
【0058】
較正システムは、特に、バルーンプローブを食道に配置した後、バルーンプローブ(流体放出装置)から測定用流体を除去するための装置を有してもよい。バルーンプローブを食道内に配置した後測定用流体でバルーンプローブを充填するための装置と、バルーンプローブが食道内に配置された後バルーンプローブから測定用流体を除去するための装置は共に、バルーンプローブと流体連通している流体を測定するための搬送ライン内に配置された1つ以上の弁を有してもよい。バルーンプローブ内の測定用流体が過剰圧力下にある場合、流体放出装置は単に、バルーンプローブと流体連通している流体ライン内の弁を制御することによって実施されてもよい。
【0059】
バルーンプローブを食道内に配置した後バルーンプローブを測定用流体で充填するための装置は、測定用流体をバルーンプローブ内に送り入れるポンプ装置を有してもよい。この場合、ポンプ装置は、バルーンプローブから測定用流体を除去(汲み出す)するように設計されてもよい。流体吐出装置は、ポンプ装置を有してもよい。
【0060】
さらなる実施形態では、バルーンプローブに測定用流体を充填するための装置および/またはバルーンプローブから測定用流体を除去するための装置は、バルーンプローブに導入される測定用流体の量および/またはバルーンプローブから除去される測定用流体の量を判定するように設計された流量センサ、特に質量流量センサを有してもよい。例えば、開始時間と終了時間との間の期間にわたって流量センサによって測定された流量を統合することによって、バルーンプローブに導入される、またはバルーンプローブから除去される測定用流体の量を判定してもよい。差圧に基づいて測定用流体の流量を判定する流量センサを使用する場合、流量センサを、また、バルーンプローブ内に広がる食道バルーン圧を検出するために使用してもよい。別個の圧力センサを設けることも可能である。
【0061】
較正コントローラは、「ハードウェア内」の独立した構成要素として実装されてもよい。あるいは、較正コントローラは、また、コンピュータプログラム製品として、すなわち、プロセッサ、特に、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ上で実行される対応するソフトウェアプログラムによって実施されてもよい。この場合、ソフトウェアは、適切なローカルまたはネットワークアクセス可能な記憶媒体上に記憶されてもよい。ソフトウェアはコンピュータプログラムとして符号化された命令を含み、コンピュータプログラムは、プロセッサのメモリにロードされ、機械言語に翻訳されると、プロセッサに、本明細書でより詳細に説明される手順を実行させる。もちろん、ハードウェアにおける実装と、ソフトウェアにおける実装と、の混合形態も考えられる。マイクロプロセッサまたはマイクロコンピュータは、較正システムの制御システムの一部であってもよい。
【0062】
「単調」という表現では、バルーンプローブ内の測定用流体の量が、測定サイクル中に常に同じ方向に変化することが意図されている。これは、測定用流体の量が開始値と終了値との間の測定サイクル中、減少し続けるか、または増加し続けて、各後続の測定点に達することを意味する。開始値と終了値との間の測定点に近づくことで、測定サイクルが定義される。測定サイクルの開始値および終了値は、バルーンプローブに供給されるかまたはバルーンプローブから流出する所定量の測定用流体によって定義されてもよい。あるいは、バルーンプローブで測定された圧力の所定の値によって開始値および終了値を定義することも考えられる。測定サイクルの開始値と終了値との間に接近する個々の測定点にも同じことが当てはまる。少なくとも、開始値と終了値との間の連続する測定点に近づくとき(開始値および終了値が含まれる可能性がある場合)、バルーンプローブから所定量の測定用流体を常に排出するか、またはバルーンプローブに導入することがより容易かつ迅速であることがわかっている。
【0063】
本発明によって提案される測定サイクル内の開始値と終了値との間の測定範囲を単調に通過することにより、較正は大幅に加速される。これは、特に、測定サイクル内の連続する測定点が開始値から開始して少なくとも終了値まで、次々に直接近づくという事実に起因する。特に、バルーンプローブを排気するための中間ステップ、および/または、較正中に個々の測定点のための正確に再現可能な初期条件を設定するための中間ステップは、もはや必要とされない。さらに、均圧または緩和工程を待つ必要はなくなる。驚くべきことに、較正は、各測定点について同じ初期条件を有する同一の手順を省略することによって、少なくとも容認できないほど大きな、いかなる悪影響も受けないことが示されている。特に、(存在する場合)ヒステリシス効果は、測定サイクル内のすべての測定点に対してほぼ同じ効果を有するように見え、したがって、較正を妨げない。
【0064】
本明細書で提案される較正システムの特別な実施形態は、以下に述べる任意選択の特徴のうちの1つまたは複数を有してもよい。その特徴が代替設計のみに関連する限り、これは以下に明確に示される。したがって、以下の特徴は、明示的に除外されない限り、上記または下記に示される特徴と任意の方法で組み合わされ得ることが理解される。
【0065】
上述したように、較正システムは、バルーンプローブから測定用流体を排出するように設計された流体排出装置をさらに備えてもよい。較正コントローラは、バルーンプローブ内の測定用流体の量が開始値から最終値に達するまで、少なくとも2つのステップで単調に減少するように、それぞれの測定点に近づくように流体吐出装置を制御する。制御は例えば、バルーンプローブと流体接続している送達ライン内の弁を一時的に開くことによって実行されてもよい。適切なポンプ装置を使用する能動的汲み出しも考えられる。
【0066】
較正コントローラは、さらに、バルーンプローブに導入される測定用流体の量が開始値と終了値との間の測定サイクルに割り当てられた測定範囲の上限よりも大きくなるように、バルーンプローブを測定用流体で充填するための装置を、少なくとも第1測定サイクルにおいて制御して、バルーンプローブに測定用流体を充填するように設計されてもよい。この場合、測定サイクルの開始を規定する開始値は、第1量の測定用流体がバルーンプローブから放出された後にのみ到達される。較正コントローラは、開始値に対応する測定用流体の量よりも多い量の測定用流体でバルーンプローブを最初に充填するように、バルーンプローブを充填するための装置を制御してもよい。次に、較正コントローラは、バルーンプローブ内の測定用流体の量が開始値に対応するまで、バルーンプローブから測定用流体を放出するように、流体放出装置を制御してもよい。
【0067】
これらの動作により、次回の測定サイクルの開始前に、バルーンプローブは所定の過伸張状態となる。これにより、測定サイクルが、バルーンプローブによって測定される圧力がバルーンプローブ内の測定用流体の量とほぼ直線的に変化する際に使用可能な測定範囲全体を、実際にカバーすることができる。開始値に近づく前にバルーンプローブを過度に伸張する手順では、バルーンプローブで測定された圧力は、少なくとも中間範囲において、測定サイクル中のバルーンプローブ内の測定用流体の量と共にほぼ直線的に減少する。この線形減少は、バルーンプローブ内の測定用流体の上部充填と、バルーンプローブ内の測定用流体の下部充填との間の食道バルーンカテーテルの測定範囲として、一般に使用される範囲を定義する。
【0068】
測定は生体内で、すなわち患者の食道内に配置されたバルーンプローブを用いて行われるので、測定範囲として使用される線形部分における食道バルーン圧/測定用流体量曲線の勾配は、食道の膨張性によってより大きく、バルーンプローブの膨張性によってより小さく判定される。食道は、ほぼ同じ伸張性を保ちながら、測定用流体の量が減少するにつれて線形部分において伸びが少なくなり、および/または測定用流体の量が減少するにつれてその断面が減少する。
【0069】
測定範囲の直線部分より上の領域では、少なくともバルーンプローブの直径が十分に大きい場合、食道の最大膨張値に達する。その後、バルーンプローブは、流体中に充填される量が増加する場合、それ以上膨張しない。その結果、食道バルーン内の圧力は、測定範囲の直線部分よりも測定用流体量の増加に伴って急激に増加する。原則として、少なくとも第1測定サイクルにおいて、測定用流体量の開始値は、測定された食道バルーン圧の開始値が測定範囲の直線部分より上の範囲にあるように設定される。
【0070】
さらなる実施形態では、較正コントローラは、少なくとも2つの測定サイクルを連続して実行するように設計されてもよい。少なくとも2つの連続した測定サイクルの測定範囲は、異なっていてもよい。特に、前の測定サイクルは、後続の測定サイクルの測定範囲を定めてもよい。
【0071】
例えば、先行する測定サイクルにおいて、第1開始値と第1終了値との間の第1測定範囲は、食道の膨張性がほぼ同じままであるほぼ線形の範囲を見つけるために通過されてもよい。その後、後続の測定サイクルにおいて、測定点のより細かい階調が、両方とも線形範囲内にある第2開始値と第2終了値との間で実行されてもよい。
【0072】
較正コントローラは、さらに、先行する測定サイクルと後続の測定サイクルとで連続する測定点間の距離を異なって設定するように設計されてもよい。「測定点間の距離」という表現は、バルーンプローブ内の対応する量の測定用流体間の差を示す。
【0073】
例えば、先行する測定サイクルでは、食道バルーンカテーテルにおいて判定された食道バルーン圧がバルーンプローブ内の測定用流体の量とほぼ直線的に変化する範囲を識別するために、連続する測定点間の比較的大きな距離が設定されてもよい。その後の測定サイクルでは、食道バルーンカテーテル用の測定用流体の最適充填量を見つけるために、対応する最大量の測定用流体と最小量の測定用流体との間のこの線形範囲を、より小さいステップサイズで通過させてもよい。
【0074】
さらに、較正コントローラは、測定サイクルにおける測定範囲内の連続する測定点間のステップサイズを適応的に決定するように設計されてもよい。ステップサイズのそのような適応的決定は、例えば、ニュートンアルゴリズムなどの勾配法を使用して実装されてもよい。
【0075】
複数の連続する測定サイクルの場合、バルーンプローブの特定の「オーバーストレッチ」、すなわち、各測定サイクルの前に、それぞれの測定サイクルの開始値に対応する、測定用流体の量よりも大きい、測定用流体の量の最初の導入を、開始時に行うことが有利である。次いで、較正コントローラは、バルーンプローブからの測定用流体が先行する測定サイクルと後続の測定サイクルとの間で完全に空にならないように設計されてもよい。そのような実施形態では、連続する測定サイクルの間でも、バルーンプローブによって囲まれた空洞または容積の完全な排出は特にない。むしろ、任意の初期値から始め、バルーンプローブに初期値に必要な量よりも多い量の測定用流体が最初に導入される場合には、それぞれの測定サイクルの開始前のバルーンプローブ中の測定用流体の正確な量は重要ではない、という事実を利用する。なぜなら、このようにして生じる過伸張は、充填が開始された最初の状態よりも、バルーンプローブ中に導入される測定用流体の量にはるかに依存するからである。加えて、測定用流体がバルーンプローブから除去されて、後続の測定サイクルの開始値を達成するとき、それぞれの測定サイクルのための所望の開始値は記録された食道バルーン圧から判定されるため、多くの場合、バルーンプローブの正確な過伸張の程度は全く重要ではない。
【0076】
しかし、精度を向上させるために、例えば、所定の負圧(例えば、周囲圧力に対して-20hPa)に達するまでバルーンプローブから測定用流体を汲み出すか、または排出することによって、測定サイクルの開始前に、または連続した複数回の測定サイクルの場合には、少なくとも第1測定サイクルの開始前に、バルーンプローブを所定の「ゼロ状態」に設定してもよい。このようにして、例えば、バルーンプローブが完全に折り畳まれる構成を有する状態で、較正手順がバルーンプローブの所定の初期状態から開始することを確実にすることができる。このゼロ状態から開始して、バルーンプローブが第1測定サイクルの開始値を上回る所定の圧力まで過充填されるまで、測定用流体をバルーンプローブに導入またはポンプで送り込んでもよい。この状態から、較正手順は、次いで、開始値と終了値との間で単調な方法でいくつかの測定点に連続的に近づくことによって、上述の方法で実行されてもよい。
【0077】
さらなる実施形態では、較正コントローラは、吸気相の終わりの食道バルーン圧の測定値と、呼気相の終わりの食道バルーン圧の測定値と、を、測定点ごとに、すなわち、測定サイクルの開始値と終了値との間のバルーンプローブ内の測定用流体の設定量ごとに(所望であれば、開始値と終了値とを含む)判定し、次いで、吸気相の終わりの食道バルーン圧と呼気相の終わりの食道バルーン圧との間の差を決定するように設計されてもよい。
【0078】
較正コントローラは、バルーンプローブ内の測定用流体の量の開始値と、バルーンプローブ内の測定用流体の量の終了値との間の範囲(所望であれば、開始値および終了値を含む)と、について、吸気相の終わりの食道バルーン圧と呼気相の終わりの食道バルーン圧との差の最大値(最大圧力)を判定するように設計されてもよい。そうすると、最大圧力に対応するバルーンプローブ内の測定用流体の量は、バルーンプローブの最適充填、すなわち、換気が行われるべきバルーンプローブ内の測定用流体の量に対応する。
【0079】
さらに、較正コントローラは、吸気相の終わりの食道バルーン圧の測定値と、呼気相の終わりの食道バルーン圧の測定値と、を、換気が開始値と終了値との間のそれぞれの測定点に対して継続する間に判定するように設計されてもよい。
【0080】
したがって、進行中の換気サイクルまたは呼吸サイクルを、食道バルーン圧の測定値を判定するために中断する必要がない。特に、これらの測定値を判定するために、換気ガスまたは呼吸ガスの流れが停止するように、気道が閉じられているデッドタイムを設定する必要はない。したがって、患者の換気を、食道バルーンカテーテルの較正または再較正を実行している間、何ら変化することなく継続することができる。これは、患者の観点から、換気の中断または妨害が回避されるべきであるだけでなく、食道バルーンカテーテルの較正が可能な限り現実に近い条件下で実行されるため、大きな利点となる。
【0081】
さらに、較正コントローラは、吸気相の終わりの食道バルーン圧と呼気相の終わりの食道バルーン圧との間の測定点について判定された差を比較し、次いで、測定点について判定された圧力差が複数の連続する測定点についての圧力差の最大値に対して所定の変動範囲内にある場合、バルーンプローブの最適充填に対応する測定用流体の量を、検出された圧力差が変動範囲内にあるバルーンプローブ内の測定用流体の最小量(下縁)から、および/またはバルーンプローブ内の測定用流体の最大量(上縁)から、所定の距離を有する測定用流体の量として決定するように設計されてもよい。
【0082】
例えば、バルーンプローブの最適な充填に対応する測定用流体の量は、上縁よりも最大値付近のほぼ等しい圧力差を有するそのような範囲の下縁により近いことが特定されてもよい。バルーンプローブの最適充填(「最適充填」)に対応するバルーンプローブ内の測定用流体の量は、例えば、ほぼ同じ圧力差を有する領域の下縁に対応する測定用流体の量よりも、ほぼ同じ圧力差を有する領域の上縁に対応するバルーンプローブ内の測定用流体の量と、ほぼ同じ圧力差を有する領域の下縁に対応するバルーンプローブ内の測定用流体の量と、の間の距離の1/3だけ大きくしてもよい。
【0083】
特に、較正コントローラは、開始値と終了値(該当する場合、開始値と終了値を含む)との間の各測定点について、複数の測定値、特に、吸気相の終わりの食道バルーン圧および呼気相の終わりの食道バルーン圧についての複数の対の測定値を判定するように設計されてもよい。これは、通常、連続した換気サイクルで起こる。そして、較正コントローラは、測定点ごとの複数の測定値に基づいて、測定値の平均および統計的分散、または、測定値から導出された量、特に、吸気相の終わりの食道バルーン圧と呼気相の終わりの食道バルーン圧との差(圧力差)を判定し、得られた平均が統計的に有意であるとみなすことができるように、測定点ごとの測定数を判定してもよい。
【0084】
一般に、得られた測定値の統計的変動が大きいほど、特定の測定点に割り当てられた圧力差の測定値を判定するために、より多くの呼吸サイクルが使用される。例えば、ここでは、心原性振動または運動が役割を果たすことがある。そのような効果は、測定当たりの呼吸サイクルの数を増加させることによって、より良好に区別されてもよい。特に、算術平均を平均として使用することができる。しかし、他のタイプの平均化、例えば幾何平均を使用してもよい。
【0085】
統計的分散は、特にガウス標準偏差によって表すことができる。そのため、2シグマレベルを統計的に有意であると定義すること、すなわち、95%以上のガウス標準偏差を有意であるとみなすことが考えられる。別の変形例では、例えば、新しい測定値の後の平均値の変化を、特定の測定点に対する有意性の尺度として使用することによって、分散を判定するように適応的に進めることができる。特定の測定後の平均値の変化が小さいほど、有意性は高くなる。最後の測定後の平均値の変化が所定の閾値より小さくなるまで、各測定点について測定を繰り返してもよい。次いで、例えばバルーンプローブから所定量の測定用流体を除去することによって、次の測定点に進むことができる。
【0086】
さらなる実施形態では、較正コントローラは、開始値と終了値との間の各測定点について、(測定点当たりの圧力差がこれらの測定値のそれぞれについて数回測定される場合)それぞれの測定値が外部状況の影響を受けるかどうかを監視し、そのような外部状況が検出された場合にそれぞれの測定値を拒否するように設計されてもよい。そのような外部状況は、例えば、患者の嚥下努力を含んでもよい。較正全体が廃棄または中止されるのではなく、外部状況によって影響を受ける測定値のみが廃棄されるようにしてもよい。特に、測定点についての新しい測定値が、直後に判定されてもよい。次いで、較正手順を、通常通り継続してもよい。したがって、人工的な測定値は、較正手順をより長い期間中断または中断する必要なく、「リアルタイムで」排除される。外部状況を検出した後に較正全体を再開することは、著しく長くなり、例えば、1つまたは複数の測定中に患者による嚥下努力の場合、患者において嚥下努力が再びトリガされることにつながる可能性がある。既知のアプローチでは、自動化を不可能にするオペレータの決定を必要とするか、または、外部状況を考慮することなく自動化された較正を実行しなければならないか、のいずれかであるため、これは、既知のアプローチと比較して膨大な進歩である。較正は、データの分析が問題の較正に含まれた測定値のうちの少なくとも1つまたはいくつかが、嚥下努力などの外部要因によって影響を受けた可能性があることを示す場合にのみ、完全に廃棄される。したがって、較正を開始する前に、この較正が有効であるかどうか、または廃棄される必要があるかどうか、について確実に言及することは不可能である。
【0087】
患者による嚥下努力などの異常な外部状況は、食道バルーン制御システムによって、例えば、食道バルーン圧の時間的経過を監視することによって、特に、圧力信号の変化が機械規定の吸気相の終わりおよび/または機械規定の呼気相の終わりに生じるときに、検出されてもよい。
【0088】
換気コントローラは、換気の不規則性を検出し、そのような検出にしたがって、患者による嚥下努力などの換気の不規則性が生じたときに、食道バルーン制御システムに適切な制御信号を提供してもよい。
【0089】
較正コントローラは、そのような障害が発生したときに較正を中断し、さらなる障害が発生しないと判断されるときにのみ継続するように設計されてもよい。そのような判断は、例えば、記録された食道バルーン圧および/または気道圧に基づいて行うことができる。この文脈において、換気コントローラが対応する制御信号を提供してもよい。
【0090】
さらに、較正コントローラは、較正手順中に判定されたデータに基づいて品質指数を計算するように設計されてもよい。品質指数は、様々な要因の影響の重み付けされた要約を表すことができる。そのような実施形態では、品質指数が食道バルーン圧データに基づいて換気パラメータの変更を可能にするか否かを決定するために使用されてもよい。品質指標に関連する基準は、測定データの統計的散乱、または食道バルーン圧/測定用流体体積曲線の異常な経過であってもよい。品質指数の尺度として、例えばガウス標準偏差として表される、測定値の散乱を使用することができる。さらに、品質指数に含まれる特定のルールが定義されてもよい。そのようなルールは、例えば、較正手順中に患者の嚥下が検出された場合、品質指数が低減されることであってもよい。吸気の終わりにおける記録された食道バルーン圧と、測定点における呼気の終わりにおける記録された食道バルーン圧との間の差の最大値が、食道バルーン圧とバルーンプローブ内の測定用流体の量との間の関係についての曲線の線形領域の外側、特に上にある場合、品質指数は低下する。基礎圧力、すなわち、呼気相の終わりにおける食道バルーン圧が、連続的な測定の過程にわたって同じままではなく、または連続的に変化するが急上昇する場合、品質指数は低下する。バルーンプローブ内の流体体積のより高い値で測定される食道バルーン圧が、バルーンプローブ内のより低い流体体積で測定される値よりも低い場合、品質指数は低下する。
【0091】
さらに、較正コントローラは、食道バルーン圧が所定の最大圧力を超えてはならないように設計されてもよい。例えば、食道バルーン圧は、換気中の最大気道圧力の2倍を超えないことが指定されてもよい。この圧力に達すると、さらなる流体はバルーンプローブに供給されず、および/または流体はバルーンプローブから排出される。これは、食道組織の過剰な伸張を回避することを意図している。これはまた、損傷をもたらし得る、バルーンプローブの過剰な伸張を防止するのに役立つ。
【0092】
最後に、較正コントローラは、上述したように、開始値から始まるバルーンプローブ内の測定用流体の量が所定の最小呼気終末食道バルーン圧、例えば-5hPaに達するか、またはその手前に達するまで、徐々に減少するように、それぞれの測定点が接近されるときに、測定用流体をバルーンプローブから排出する排出装置を制御してもよい。
【0093】
さらなる実施形態では、較正コントローラは、換気されている患者の呼吸器系を記述し、それが、特にそれぞれの回帰法によって、気道抵抗、肺組織の伸張性、および/または、胸郭の伸張性などの食道バルーン圧に関する関連パラメータを判定するために、各測定点について、すなわち開始値と終了値との間のバルーンプローブ内の測定用流体の設定量について、モデルおよび既存の測定値を使用し、それから、最適化タスクとして、バルーンプローブのための意図された充填を導出するように設計される、数学的モデルを備えてもよい。例えば、較正コントローラは、回帰手順から生じる胸部の膨張性が最小のときのバルーンプローブ内の測定用流体の最適充填量を決定してもよい。
【0094】
さらなる実施形態では、上述の食道バルーン制御システムは、食道バルーン制御システムおよび/または換気コントローラによって制御された後、所定量の測定用流体でバルーンプローブを充填するための流体充填手順を実行するように設計された充填コントローラを有する流体充填システムを有してもよい。所定量の測定用流体は、バルーンプローブに導入される測定用流体の量が調節されるときの目標流体量の意味で、測定用流体の所望の充填物であることが意図される。所定量の測定用流体は、多くの場合、最適であると考えられる充填物であり、例えば、上述のように先行して実行された較正手順によって決定されてもよい。
【0095】
充填コントローラは、「ハードウェア内」の独立した構成要素として実装されてもよい。あるいは、充填コントローラは、コンピュータプログラム製品として、すなわち、プロセッサ、特にマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ上で実行される対応するソフトウェアプログラムによって実施されてもよい。この場合、ソフトウェアは、適切なローカルまたはネットワークアクセス可能な記憶媒体上に記憶されてもよい。ソフトウェアは、コンピュータプログラムとして符号化された命令を含み、コンピュータプログラムはプロセッサのメモリにロードされ、機械言語に翻訳されると、プロセッサに、本明細書でより詳細に説明される手順を実行させる。もちろん、ハードウェアにおける実装とソフトウェアにおける実装との混合形態も考えられる。マイクロプロセッサまたはマイクロコンピュータは、流体充填システムの制御の一部であってもよく、流体充填システムの設計に応じて、食道バルーン制御および/または換気コントローラに割り当てられてもよい。
【0096】
充填工程の完了後に達成されるバルーンプローブの充填状態の比較可能性および再現性を確実にするために、充填コントローラは、バルーンプローブを充填するための流体充填手順の開始前に、バルーンプローブ内に位置する測定用流体を除去するための排出手順を実行するように設計されてもよい。排出手順は、圧力が環境と等しくなるまで、加圧された測定用流体をバルーンプローブから流出させることによって、最も容易に実行されてもよい。しかしながら、バルーンプローブは、能動ポンプ装置を使用してより容易かつ迅速に空にすることができ、それによって、測定用流体は、所定の最終圧力に達するまで、バルーンプローブから汲み出される。この場合、最終圧力は、負圧、すなわち周囲圧力よりも低い圧力であってもよい。
【0097】
さらなる実施形態では、バルーンプローブ内に位置する測定用流体を空にするための排出手順がゼロ体積を設定するための手順を含んでもよい。「ゼロ体積」という表現は、食道バルーンカテーテル内の測定用流体の所定の充填を示し、測定用流体はバルーンプローブへの供給ラインのみを本質的に充填するが、バルーンプローブ自体は依然として完全に折り畳まれている。このゼロ体積は、各充填工程の再現可能な開始点としての役割を果たす。このゼロ体積を特定の圧力、例えば周囲圧力に関連させてもよい。
【0098】
ゼロ体積を設定するための手順は、例えば、(i)バルーンプローブ内で第1所定負圧に達するまで測定用流体をバルーンプローブから引き出すステップと、(ii)バルーンプローブ内で第2所定負圧に達するまで測定用流体をバルーンプローブ内に導入するステップであって、第2所定負圧が第1所定負圧よりも大きいステップと、(iii)バルーンプローブ内に所定の体積の測定用流体を導入するステップと、を含んでもよい。特に、バルーンは、第1および第2の負圧の両方の間に完全に折りたたまれるべきである。
【0099】
特定の食道バルーンカテーテルに関連する「死体積」が分かる場合、最初に食道バルーンカテーテルを大幅に排出し、すなわち可能な限り低い負圧まで汲み出し、次いで、到達した状態から始まり、食道バルーンカテーテルに所定量の測定用流体を導入することによって、ゼロ体積を提供することもでき、それによって、所定量の測定用流体は、死体積にゼロ体積の基準圧力(例えば、周囲圧力)を乗じたものに対応する。死体積は、特定の食道バルーンカテーテルの特定の特性(例えば、チューブの長さ)に依存し、したがって、通常、特定の食道バルーンカテーテルについて実験的に決定されなければならない。
【0100】
さらなる実施形態では、充填コントローラは、バルーンプローブ内に位置する測定用流体を除去するための上述した空にする手順の後、バルーンプローブ内で所定の過圧に達するまで、測定用流体をバルーンプローブ内に導入するための流体充填手順を実行するように設計されてもよい。次いで、所定の過圧までの測定用流体の導入が、バルーンプローブ内の所定の量の測定用流体の実際の設定の前に行われる。そのため、それは、バルーンプローブを空にすることと、バルーンプローブ内に所定量の測定用流体を設定することとの間の中間ステップである。
【0101】
中間ステップにおいて所定の過圧に達した後、所定の充填に対応する所定のバルーン圧力に達するまで、バルーンプローブから(それを流出させることによって受動的に、またはそれを汲み出すことによって能動的に)多くの測定用流体を除去することができる。
【0102】
さらなる実施形態では、食道バルーン制御システムは、基準食道バルーン圧を検出し、基準食道バルーン圧が基準レベルと比較して所定量以上低下したときに、バルーンプローブに測定用流体を充填するための流体充填手順を実行するように充填コントローラを制御するように設計されてもよい。
【0103】
「基準食道バルーン圧」という表現では、多くの連続する換気サイクルにわたって変化せず、したがって、バルーンプローブの充填状態の変化の尺度として機能し得る圧力または圧力差を示す。この目的のために、連続する換気サイクル中の個々の換気プロファイルによる食道バルーン圧の変化を反映しない値を基準食道バルーン圧として使用することが有用である。換言すれば、基準食道バルーン圧は、換気中の吸気および呼気事象を反映する換気プロファイルが重畳されていない記録された食道バルーン圧であるべきである。実際には、例えば、基準食道バルーン圧を判定するために、連続する換気サイクルの呼気相の終わりの食道バルーン圧を判定することができる。あるいは、連続換気サイクルの吸気相の終わりの食道バルーン圧を基準食道バルーン圧として定義してもよい。
【0104】
上述した食道バルーン制御は、基準レベルを基準とした基準食道バルーン圧の所定値以上の変化が検出された場合に、バルーンプローブの一旦設定された充填状態(これは、例えば、上記の較正手順によって決定されてもよい)が安定したままであり、バルーンプローブ内の測定用流体の充填の対応する補正と反応するかどうかを連続的に監視する。これにより、バルーンプローブ内の測定用流体の漏出率および/または損失が特定の限界内に留まる限り、特に、漏出によるバルーンプローブ内の測定用流体の損失を補償することが可能になる。例えば、基準食道バルーン圧が所定量以上低下する期間を監視することによって、または、基準食道バルーン圧が所定期間後にどの程度低下したかを監視することによって、漏出率を推定することが考えられる。測定用流体の損失量または漏出率が分かっている場合、漏出は、予め選択された量の測定用流体をバルーンプローブに再充填することによって補償され、これは損失量または漏出率に対応する期間を乗じた結果として生じる。あるいは、測定用流体の補充は、バルーンプローブへの測定用流体の導入に関する食道バルーン圧の増加が監視され、所定の食道バルーン圧に達したときに補充が終了するように実行されてもよい。
【0105】
上述した手段により、食道バルーンカテーテルの漏出率を監視すること、または少なくとも推定することが可能になる。この監視に基づいて、例えば、再充填手順の開始、バルーンプローブの収縮の開始、バルーンプローブの完全な再較正など、さらに措置が必要かどうか、また、必要な場合は、どのような措置が必要かを決定する。後者は、記録された食道バルーン圧の変化が漏出のみに起因するものではなく、例えば、食道内のバルーンカテーテルの位置の変化も役割を果たすと仮定しなければならない場合、常に適切である。そのような他の証拠がある場合、食道バルーンカテーテルの完全な再較正、または場合によってはバルーンプローブの交換が考慮されてもよい。
【0106】
漏出率が高すぎる場合、連続する充填手順間の時間間隔は非常に短くなる。バルーンプローブを備えた食道バルーンカテーテルが再較正または交換される必要があるという警告が、操作従事者に表示されてもよい。そのような手段は、例えば、食道バルーン圧が所定の分だけ、例えば、5分以内に2cmH2O、またはそれ以上、低下する場合に提供されてもよい。
【0107】
バルーンプローブを備えた食道カテーテルのための流体充填システムを提供する本明細書に記載される可能性、ならびにそのような流体充填システムの様々な可能な実施形態は、出願人の見解において、保護に値する最先端技術に独立した貢献をすることに留意されたい。この寄与は特に、請求項1に含まれるさらなる特徴、または上記でより詳細に説明されたさらなる特徴とは無関係に見られるべきである。出願人は本発明の審査手続の更なる過程において、流体充填システムを対象とする独立クレームを策定する権利、または適切な場合には分割出願においてそのようなクレームを追求する権利を留保する。
【0108】
さらなる実施形態では、上記の流体量監視システムは、作動された後に、バルーンプローブ内の測定用流体の所望のまたは動作可能な量を確認するための手順を実行するように設計された流体量監視部を備えてもよい。バルーンプローブ内の測定用流体の所望量または動作量は、特に、バルーンプローブが食道バルーン圧を検出するための最適な信号を送出するバルーンプローブ内の測定用流体の量であってもよく、このため、バルーンプローブは、排出された食道バルーンカテーテルから始まる動作充填物としてバルーンプローブ内に充填される。測定用流体のこの所望量または動作量は、例えば、食道バルーンカテーテルのバルーンプローブの操作可能な充填の自動調整のための較正システムに関して上述したように、較正の結果として得てもよい。バルーンプローブ内の流体量の監視は、特に、バルーンプローブの所望のまたは操作上の充填状態が、いったん設定されると、安定したままであるかどうか、または経時的な変化を受けるかどうかを判定することを意図している。そのような変化が上述した流体体積監視システムによって検出される場合、それらは、測定用流体でバルーンプローブを再充填することによって、または特にバルーンプローブの新しい動作充填を設定するために、食道バルーンカテーテルの完全な再較正を作動させることによって、応答されてもよい。
【0109】
流体量監視は、「ハードウェア内」の独立した構成要素として実装されてもよい。あるいは、流体量監視は、コンピュータプログラム製品として、すなわち、プロセッサ、特にマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ上で実行される対応するソフトウェアプログラムによって実施されてもよい。この場合、ソフトウェアは、適切なローカルまたはネットワークアクセス可能な記憶媒体上に記憶されてもよい。ソフトウェアは、コンピュータプログラムとして符号化された命令を有し、コンピュータプログラムは、プロセッサのメモリにロードされ、機械言語に翻訳されると、プロセッサに、本明細書でより詳細に説明される手順を実行させる。もちろん、ハードウェアでの実装と、ソフトウェアでの実装との混合形態も考えられる。マイクロプロセッサまたはマイクロコンピュータは、流体量監視システムの制御の一部であってもよく、流体量監視システムの設計に応じて、食道バルーン制御および/または換気コントローラに割り当てられてもよい。
【0110】
さらなる実施形態では、流体量監視システムは、バルーンプローブ内の測定用流体の所望の充填を確認するための手順を開始した後、バルーンプローブ内の測定用流体の存在量を徐々に変化させ、このようにして測定点として設定されたバルーンプローブ内の測定用流体のそれぞれの量で食道バルーン圧を検出し、測定点として設定されたバルーンプローブ内の測定用流体のそれぞれの量にそれを割り当てるようにしてもよい。「食道バルーン圧を検出する」という表現では、特に、吸気相の終わりに検出されたバルーンプローブ内の圧力と、呼気相の終わりに検出された圧力と、の間の差圧を検出することを意図している。
【0111】
流体量監視システムは、液体量監視システムと較正システムとの両方のシステムにおいて、吸気相の終わりに記録されたバルーンプローブ内の圧力と換気サイクルの呼気相の終わりに記録された圧力との間の差圧が判定され、それぞれの較正(食道バルーンカテーテルのバルーンプローブの正常な充填の設定)またはバルーンプローブの充填状態の監視が基礎として使用されるという点で、較正システムと同様に機能することができる。しかしながら、ここで説明した流体量監視システムによる充填状態の監視は、主に、バルーンプローブの充填状態を監視するために提供される測定点の数が、較正中に提供される測定点の数よりもはるかに少ないという点で、上述した較正システムとは異なる。
【0112】
特に、流体量監視システムは、バルーンプローブ内の測定用流体の所望のまたは動作上の充填を確認するための手順を開始した後、バルーンプローブ内の測定用流体の既存の量を、測定用流体の既存の量よりも大きい測定点として設定した測定用流体の第1比較量に変化するようにしてもよい。測定用流体の第1比較量が設定されると、第1比較食道バルーン圧が記録され、その結果、第1(上側)比較測定値対が、バルーンプローブ内の測定用流体の第1比較量と、関連する第1比較食道バルーン圧と、から生じる。
【0113】
さらに、流体量監視システムは、バルーンプローブ内の測定用流体の所望の充填を確認するための手順を開始した後、バルーンプローブ内の測定用流体の既存の量を、測定用流体の既存の量よりも小さい測定点として設定された測定用流体の第2比較量に変更するようにしてもよい。測定用流体の第2比較量のために、第2食道バルーン圧が記録され、その結果、第2比較測定値対は、バルーンプローブ内の測定用流体の第2比較量と、関連する第2の比較食道バルーン圧と、から生じる。
【0114】
全体として、測定用流体によるバルーンプローブの現在の充填のための測定値の3つの対がある。バルーンプローブ内の既存の測定用流体の量および既存の食道バルーン圧から現在の充填に割り当てられた実際の測定値の対、バルーンプローブ内のより大量の測定用流体にそれぞれ割り当てられた第1比較測定値の対、バルーンプローブ内のより少量の測定用流体にそれぞれ割り当てられた第2比較測定値の対、である。
【0115】
必要に応じて、複数の第1比較測定値対および複数の第2比較測定値対を生成し、バルーンプローブ内の測定用流体の所望の充填を確認するための基礎として使用してもよい。
【0116】
バルーンプローブ内の測定用流体の所望のまたは動作上の充填を確認するための手順において、個々の比較測定値対が決定される順序もまた、異なるように選択されてもよいことに留意されたい。特に、第1ステップにおいて、バルーンプローブ内の測定用流体の存在量は、バルーンプローブ内のより少量の測定用流体に関連する第2比較測定値対を得るために、測定用流体の第2比較量に低減されてもよい。その後にのみ、第2ステップにおいて、バルーンプローブ内の測定用流体の存在量は、バルーンプローブ内のより大量の測定用流体に割り当てられる第1比較測定値対を得るために、測定用流体の第1比較量まで増加されてもよい。
【0117】
ある実施形態では、第1比較測定値対に記録された食道バルーン圧および第2比較測定値対に記録された食道バルーン圧が実際の測定値対に関連する食道バルーン圧(すなわち、バルーンプローブ内の測定用流体の既存の量に関連する食道バルーン圧)の周囲の所定の範囲内にあるとき、流体量監視システムは、バルーンプローブ内の測定用流体の既存の量がバルーンプローブ内の測定用流体の所望のまたは動作量に対応すると判定するようにしてもよい。
【0118】
「検出された食道バルーン圧」という表現では、特に、吸気相の終わりにおける検出された食道バルーン圧と、換気サイクルの呼気相の終わりにおける検出された食道バルーン圧との間の差圧を示している。この差圧は、バルーンプローブ内の測定用流体の所望の充填時(すなわち、実際の測定値対時)に最大となる。流体量監視システムは、検証手順中に、バルーンプローブ内の測定用流体の既存の量が変更される(すなわち、増加または減少する)ときに、この差圧が所定の値以上増加することを判定する場合、これは、バルーンプローブ内の測定用流体の所望のまたは動作上の充填が実際の測定値対にないが、差圧が増加する方向に変化していることを意味する。この場合、対策を講じることができる。これらの対策は、第1または第2比較測定値対に記録された差圧が実際の測定値対に割り当てられた差圧とどれだけ異なるかに依存してもよい。
【0119】
例えば、流体量監視システムは、第1比較測定値対に記録された食道バルーン圧(すなわち、比較測定点として設定された第1測定用流体量)と、実測定値対に記録された食道バルーン圧(すなわち、バルーンプローブ内の既存の測定用流体量)とによって定義される第1勾配と、第2比較測定値対に記録された食道バルーン圧(すなわち、比較測定点として設定された第2測定用流体量)と、実測定値対に記録された食道バルーン圧とによって定義される第2勾配とが、少なくともその量に関して、所定の第1閾値を超えないときに、バルーンプローブ内の既存の測定用流体量がバルーンプローブ内の測定用流体の所望の量または動作量に対応すると判定するようにしてもよい。
【0120】
勾配は、例えば、第1比較測定対または第2比較測定対において記録された食道バルーン圧と、実測定対において記録された食道バルーン圧との差として、第1比較測定対または第2比較測定対において設定されたバルーンプローブにおける測定用流体の量と、実測定対において設定されたバルーンプローブにおける測定用流体の量と、のそれぞれの差に基づいて定義されてもよい。必要に応じて、勾配は基準値(例えば、バルーンプローブ内の測定用流体の既存の量について測定された食道バルーン圧)に関連してもよい。あるいは、これらの値の比を勾配として使用することができる。
【0121】
上述したように定義された勾配は、実際の測定値対におけるバルーンプローブ内の測定用流体量、すなわちバルーンプローブ内の既存の測定用流体量が、吸気終了時の圧力差と呼気終了時の圧力差が最大となるときの望ましい測定用流体量または動作測定用流体量に対応する場合、第1比較測定値対および第2比較測定値対の両方についてゼロ未満となる。第1比較測定値対および第2比較測定値対のうちの少なくとも1つについての勾配がゼロよりも大きい場合、この値は、いずれの場合も、すべての測定値対についての所定の第1閾値よりも小さい。所定の第1閾値は、圧力差の変化が重要でないとみなされる圧力差範囲を定義してもよい。
【0122】
このようにして検出された両方の勾配が所定の第1閾値を下回る場合、バルーンプローブ内の既存の測定用流体の量は、所望の充填を表すか、または少なくとも、第1比較測定値対または第2比較測定値対のために設定された測定用流体の量によって定義される、バルーンプローブ内の既存の測定用流体の量の周囲の範囲内にあると仮定することができる。この場合、操作は必要とされない。特に、バルーンプローブ内の測定用流体の既存の量は、バルーンプローブ内の測定用流体の所望のまたは動作量として使用されてもよい。所定の第1閾値は例えば、ゼロであってもよいし、ゼロよりわずかに大きい値であってもよい。
【0123】
さらなる実施形態では、流体充填システムは、流体量監視システムが第1勾配および第2勾配のうちの少なくとも1つが第1閾値よりも大きいと判定したときに、バルーンプローブに所定量の測定用流体を充填するための手順を実行するように、上述の充填コントローラを起動または制御するように設計されてもよい。
【0124】
この場合、特に、流体量監視システムは、充填コントローラに、バルーンプローブを充填するための流体充填手順を実行させて、バルーンプローブのための新たな所定の充填を設定させ、これは、より大きな勾配が判定された第1および第2比較測定値対から、バルーンプローブ内の測定用流体の量の方向において、バルーンプローブ内の既存の測定用流体の量に対して変更される。したがって、バルーンプローブの新たな所望のまたは操作上の充填が決定され、将来の換気のために設定される。
【0125】
例えば、バルーンプローブの新たな所望のまたは動作上の充填は、より大きな勾配が判定された第1比較測定値対および第2比較測定値対の一方に割り当てられたバルーンプローブ内の測定用流体の量に対応してもよい。
【0126】
さらに、較正システムは、流体量監視システムが、第1勾配および第2勾配のうちの少なくとも1つが第1閾値よりも大きい第2閾値よりも大きいことを判定するとき、測定用流体によるバルーンプローブの所望のまたは動作上の充填をリセットするための較正手順を実行するように、較正システムが上記の較正コントローラを起動または制御するように、設計されてもよい。
【0127】
流体容積監視システムによって検出された食道バルーン圧が離れすぎている場合、バルーンプローブがさらされている条件が大きく変化したため、新しい較正が望ましいとされる。
【0128】
さらなる実施形態では、食道バルーン制御システムは、バルーンプローブ内の測定用流体の所定の充填を確認するための手順を実行するために、換気パラメータの変化に応答して流体量監視を制御するように設計されてもよい。このようにして、換気パラメータ、例えば、PEEP、最大気道圧、1回換気量、または換気頻度を変更した後、この換気条件の変更、または換気モードが、食道バルーンカテーテルのバルーンプローブの所望のまたは動作上の充填に影響を及ぼすかどうかが確認してもよい。そのような影響が検出された場合、充填は直ちに補正されてもよく、または食道バルーンカテーテルの完全な新しい較正が実行されてもよい。換気は操作者によるいかなる手動介入も必要とせずに、自動化された方法で継続することができる。
【0129】
それであっても、食道バルーンカテーテルによって提供される情報、特に胸膜腔内の圧に関する情報は、常に可能な限り正確なままである。
【0130】
本明細書に記載されるようなバルーンプローブを備えた食道カテーテルのための流体量監視システムを提供する可能性、ならびにそのような流体量監視システムの様々な可能な実施形態は、保護に値する最新技術への独立した寄与を表す。特に、この寄与は、請求項1に含まれる特徴、または上記でより詳細に説明されたさらなる特徴とは無関係に見られるべきである。出願人は本発明の審査手続の更なる過程において、流体充填システムを対象とする独立請求項を策定する権利、または適切な場合には分割出願においてそのような請求項を追求する権利を留保する。
【0131】
本発明は、また、機械的換気装置に関し、この装置は換気装置によって予め定められた換気パラメータ、特に、圧力、特に、呼気終末陽圧(PEEP)および/または最大気道圧(Paw_max)の自動設定のための装置、および/または、上記の実施形態の1つによる、人工呼吸に関する情報の自動表示のための装置を含む。
【0132】
別の態様では、本発明は、食道バルーン圧を判定するためのバルーンプローブを用いて患者の食道に挿入可能な食道バルーンカテーテル用の食道バルーン制御システムに関する。そのような食道バルーン制御システムは、上述の実施形態のうちの1つに従って、換気装置によって予め定められた換気パラメータ、特に、圧力、特に、呼気終末陽圧(PEEP)および/または最大気道圧(Paw_max)を自動設定するための装置において、および/または、機械的換気に関する情報を自動表示するために、特に、使用されるように提供され、設計される。
【0133】
したがって、そのような食道バルーン制御システムは、食道バルーン圧を検出し、検出された食道バルーン圧に基づいて、経肺圧、特に呼気相の終わりにおける経肺圧および/または吸気相の終わりにおける経肺圧を決定するための圧力検出システムに検出された食道バルーン圧を圧力検出システムへ転送するための装置、特にセンサを備える。食道バルーン制御システムは、生体内で食道バルーンカテーテルのバルーンプローブの適切な充填を自動監視および/または調整するために設計され、さらに、換気装置の換気コントローラとの双方向相互作用のために設計される。
【0134】
そのような食道バルーン制御システムは、「ハードウェア内」のスタンドアロンの構成要素として実装され得る。あるいは、そのような食道バルーン制御システムは、また、コンピュータプログラム製品として、すなわち、プロセッサ、特にマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ上で実行される対応するソフトウェアプログラムによって実現されてもよい。この場合、ソフトウェアは、適切なローカルまたはネットワークアクセス可能な記憶媒体上に記憶される。ソフトウェアは、コンピュータプログラムとして符号化された命令を含み、コンピュータプログラムは、プロセッサのメモリにロードされ、機械言語に翻訳されると、プロセッサに、本明細書でより詳細に説明される手順を実行させる。もちろん、ハードウェアでの実装と、ソフトウェアでの実装との混合形態も考えられる。マイクロプロセッサまたはマイクロコンピュータはバルーンプローブを有する食道バルーンカテーテルの制御システムに属してもよく、および/または食道バルーンカテーテルの設計に応じて、機械的換気のための装置の換気制御システムに割り当てられてもよい。
【0135】
特に、食道バルーン制御システムは、換気装置の換気コントローラによって提供される制御コマンドに従って動作するように設計されてもよい。
【0136】
食道バルーン制御システムは、所定の食道バルーン制御信号を換気コントローラに送信するようにさらに構成されてもよい。これは、換気コントローラが食道バルーン圧および/または経肺圧を表す信号を食道バルーン制御システムから受信するように設計されるだけでなく、制御信号を食道バルーン制御システムから受信するようにも設計されることを意味する。さらに、換気コントローラは、少なくとも食道バルーン制御システムの特定の機能および/または処置を開始および/または実行することに関して、食道バルーン制御システムの自動制御のためにさらに設計されてもよい。この場合、食道バルーン制御システムは、特に、これらの特徴が食道バルーン制御システムを特徴付けるのに適している限り、上記の実施形態を参照して述べた特徴のうちのいくつかの特徴の少なくとも1つまたは組み合わせを有してもよい。
【0137】
さらなる態様によれば、本発明は、患者の食道への挿入後に生体内で食道バルーン圧を判定するための食道バルーンカテーテルに関する。そのような食道バルーンカテーテルは、特に、換気装置によって所定の換気パラメータ、特に、圧力、特に、呼気終末陽圧(PEEP)および/または最大気道圧(Paw_max)の自動設定のための、および/または上記実施形態のうちの1つによる機械的換気に関する情報の自動表示のための装置において使用されるように意図され、設計される。食道カテーテルは、食道バルーンカテーテルを備え、食道バルーンカテーテルは、食道バルーン圧を判定するためのバルーンプローブと、上記タイプの食道バルーン制御システムとを含み、患者の食道に挿入可能である。
【0138】
食道バルーン制御システムは、感知された食道バルーン圧を表す信号を換気コントローラに提供するように構成される。したがって、換気コントローラは、食道バルーン制御システムからそのような信号を受信するように構成される。
【0139】
本発明によれば、換気コントローラは、また、食道バルーン制御システムの自動制御用に設計される。この意味で、換気コントローラは、食道バルーン制御システムとの双方向相互作用のために設計される。換気コントローラは、食道バルーン制御システムを制御して、所定の処置を開始することができる。追加的または代替的に、換気コントローラは、食道バルーン制御システムにおける所定の手順の順序を制御してもよい。このようにして、2つの制御システム、換気制御システムと食道バルーン制御システムとの2つの制御システム間の最適な相互作用を達成してもよく、その結果、2つのシステムによって実行される手順が調整され、同期される。
【0140】
このため、さらなる態様によれば、本発明はまた、換気装置によって指定される換気パラメータ、特に、圧力、特に、呼気終末陽圧(PEEP)および/または最大気道圧(Paw_max)を自動設定するための、および/または、特に、上記実施形態のうちの1つによる、機械的換気に関する情報を自動表示するための、装置のための換気コントローラに関する。換気コントローラは、特に、食道バルーンカテーテルによって決定される経肺圧に基づいて、換気装置によって指定される換気パラメータを調整するように設計される。
【0141】
換気コントローラは、食道バルーン圧を判定するためのバルーンプローブを用いて患者の食道に挿入可能な食道バルーンカテーテルに基づいて、経肺圧、特に、呼気相の終わりの経肺圧および/または吸気相の終わりの経肺圧を判定するための圧力検出システムを有してもよい。
【0142】
換気コントローラは、換気コントローラが、特に圧力検出システムによって供給される圧力値に従って、食道バルーン制御システムを制御するように、食道バルーン制御システムとの双方向相互作用のために設計されてもよい。
【0143】
換気コントローラは、食道バルーン制御システムによって提供される食道バルーン制御信号に従って、所定の換気パラメータおよび/または換気モードを設定/制御/調整するように構成されてもよい。
【0144】
換気制御は、特に、上記実施形態を参照して述べた換気制御の特徴のうち、複数の特徴のうちの1つまたは組合せを有する可能性があることが理解される。
【0145】
これは、特に、他の実施形態を参照してより詳細に説明される圧力検出装置に関する。
【0146】
さらなる態様によれば、本発明は、上記換気コントローラを備えた換気装置にさらに関する。
【0147】
さらなる態様によれば、本発明はさらに、換気装置による所定の換気パラメータ、特に、陽圧、特に、呼気終末陽圧(PEEP)および/または最大気道圧(Paw_max)の自動設定のための、および/または、機械的換気に関する情報、特に、経肺圧(Ptp)の自動表示のための方法に関する。この手順は、以下のステップを含む。
―圧力検出システムによって食道バルーン圧を判定するためのバルーンプローブを用いて食道内に挿入可能な食道バルーンカテーテルに基づいて、経肺圧、特に呼気相の終わりにおける経肺圧および/または吸気相の終わりにおける経肺圧を決定するステップ、
―食道バルーンカテーテルのバルーンプローブの適切な充填を、食道バルーン制御システムにより生体内で自動監視および/または自動調整するステップ、および
―換気装置によって指定された換気パラメータを設定するステップ、および/または換気コントローラによって圧力判定システムによって決定された経肺圧に基づいて機械的換気に関する情報を表示するステップ。
【0148】
本発明による方法は、換気コントローラおよび食道バルーン制御システムが互いに双方向に相互作用することを提供する。双方向の相互作用は、特に、換気コントローラが食道バルーン制御システムの自動制御のためにも設計され、および/または食道バルーン制御システムが換気コントローラの自動制御のためにも設計されることを意味する。
【0149】
経肺圧を判定する目的で、食道バルーン圧を判定するために食道に挿入されるバルーンプローブを含む、食道バルーンカテーテルの換気装置および/または食道バルーン制御システムの換気コントローラに割り当てられる圧力検出システムが提供されてもよい。
【0150】
繰り返しを避けるために、本発明による方法のさらなる実施形態に関しては、本明細書に記載されている方法にも準用される、先行する実施形態のより詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【
図1】換気中の患者の挿管された気管および胸郭を含む、本発明に係る装置の一実施形態による換気装置の基本的要素を、ブロック図の形で高度に概略的に示す図である。
【
図2】閉塞操作を含む機械的換気中の連続した呼吸サイクルにおける、気道入口圧Paw(上)、食道バルーン圧Peso(中)、および両圧力の差Paw-Pesoの時間経過を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による食道バルーンカテーテルを、生体内で較正する手順を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態による較正中に食道バルーンカテーテルのバルーンプローブ内にセットされる測定用流体の量と、食道バルーンカテーテルのバルーンプローブ内の検出圧力とを模式的に示す図である。
【
図5】測定サイクル中のバルーンプローブ内の測定用流体の各設定量について、吸気相の終わりにバルーンプローブ内でそれぞれ検出された圧力、呼気相の終わりにバルーンプローブ内でそれぞれ検出された圧力(部分画像a))、および、吸気相の終わりのバルーンプローブ内の圧力と呼気相の終わりのバルーンプローブ内の圧力との間の結果として生じる差圧(部分画像b))を、部分画像a)およびb)に模式的に示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による食道バルーンカテーテル内の流体を生体内で監視する処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態による食道バルーンカテーテルの充填手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0152】
本発明のさらなる実施形態を、図面を参照して以下に詳述する。
【0153】
図1は、換気中の患者の挿管された気管12および胸郭を含む、本発明に係る装置の一実施形態による換気装置10の基本的要素を、ブロック図の形で高度に概略的に示す図である。本発明の一実施形態によれば、換気装置10は、換気装置10によって予め設定された換気パラメータの設定、および/または食道バルーン圧に基づいて機械的換気に関する情報を自動表示するための装置15を備える。
【0154】
図1に示すように、換気装置10は、換気中の患者の気管12に挿管している状態である。
図1では、患者の気管12に加え、肺28、30、心臓32、食道34、胸郭壁42が極めて概略的に示されている。換気装置10のチューブ14は、気道に呼吸ガスを供給するために、通常、患者の口(図示せず)から気管12に短い距離で挿入される。また、呼気もチューブ14を介して排出され、チューブ14は、その上流端または遠位端で第一端16と第二端22に分岐する。第一端16は、気道入口弁18を介して、換気装置10の呼吸ガスシステム200の気道入口接続部に接続される。吸気相の間、換気のための呼吸ガスは、吸気圧Plnspとして知られる過圧下で気道入口ポートを介して肺に供給される。したがって、吸気相の間、気道入口弁18の開位置において、気道入口接続部は、換気コントローラ180からの制御指令にしたがって呼吸ガスシステム200により生成される吸気圧Plnspを受ける。第二端22は、気道出口弁24を介して、換気装置10の呼吸ガスシステム200の気道出口ポートに接続される。気道出口弁24の開位置において、気道は呼気圧Pexpを受ける。吸気圧Plnspと呼気圧Pexpは共に、換気装置10の圧力判定システム300によって検出される。
【0155】
圧力判定システム300は、食道バルーン圧を判定するように設計されたセンサシステムを備え、食道34に挿入可能なバルーンプローブ46を有する食道バルーンカテーテル45と、生体内でバルーンプローブ46内の圧力を検出するための少なくとも1つの装置と、を備える。圧力判定システム300は、特に、肺胞内圧Palvを判定し、肺胞内圧Palvと食道バルーン圧Pesoとの間の差に基づいて、経肺圧Ptpを判定するように設計されたセンサシステムを備える。肺胞内圧Palvを判定するためのセンサシステムは、気道抵抗Rを判定するように設計することができ、特に、呼気相の終わりや吸気相の終わりに、気道内のガス流を検出するためのセンサを有してもよい。センサは、呼吸流量と気道抵抗Rとに基づいて、肺胞内圧Palvを判定することができる。肺胞内圧Palvを検出するためのセンサシステムは、例えば、換気装置10のチューブの始端に配置された、または換気装置10の気道入口弁18に関連付けられた、入口側の気道圧を検出するための気道圧センサを備えてもよい。
【0156】
吸気圧Plnspは、
図1の矢印20で示されるように、患者の肺28、30の方向の所定の時間的パターンに従って吸気相中に吸気されるべき呼吸ガスが流れるように、換気コントローラ180からの制御コマンドに従って、換気装置10、特に呼吸ガスシステム200によって生成される。呼気は矢印26で示されるように、呼気相中に呼吸ガスが肺28、30から気道出口ポートに流出することを受動的に可能にすることによって生じてもよい。呼気圧Pexpは、次いで、患者の生理学的特徴および呼気相の開始時に広がる最大吸気圧に基づいて、呼気相の間に判定される。必要であれば、呼気はまた、換気コントローラ180からの制御コマンドに従って、換気装置10によって、特に呼吸ガスシステム200によって、サポートされるか、または完全に生成され、その結果、所定の時間的パターンに対応する呼吸ガス流および/または呼気圧Pexpの経過が、呼気相中に生じる。
【0157】
通常、吸気相の間、気道入口弁18は開いたままであり、気道出口弁24は閉じたままである。気道入口は、吸気圧Plnspを受ける。呼気相の間、気道入口弁18は閉じられ、気道出口弁24は開いている。次いで、気道は、呼気圧Pexpを受ける。
【0158】
呼吸ガスは周囲空気を含むことができるが、通常、周囲空気の酸素含有量よりも高い所定の割合の純酸素を含む。呼吸ガスは加湿することもできる。
【0159】
吸気相中の気道入口における呼吸ガスの流れは、気道入口流量センサ36を使用して判定される。気道入口流量センサ36は、入口容積38と、入口容積38に接続された出口容積40との間の圧力差dPを検出することに基づいており、気道入口における呼吸ガス質量流量を判定する。同時に、気道入口圧Pawの値は、出口容積40内の圧力信号から容易に導出することができる。入口容積38と出口容積40との間の圧力差dPならびに気道入口圧Pawも、換気装置10の圧力判定システム300によって検出される。
【0160】
気道入口流量センサ36は、また、呼気相中の気道出口における呼吸ガス流量Fおよび気道出口圧Pawを検出するためにも使用される。この点に関して、呼吸ガス流の方向が逆になった結果として、入口容積および出口容積スワップの役割、すなわち、40で示した容積が入口容積であり、38で示した容積が出口容積であるという条件で、前述の説明を参照する。
【0161】
吸気相中の吸気ガスおよび呼気相中の呼気ガスの制御は、換気装置10の換気コントローラ180によって実行される。換気コントローラ180は、吸気圧Plnspの供給を制御/調整するために、および/または気道への呼気圧Pexpを用いて、呼吸ガスシステム200と通信する。必要に応じて、換気コントローラ180は、換気コントローラ180と呼吸ガスシステム200との間の通信接続が双方向であるように、呼吸ガスシステム200から信号を受信してもよい。換気コントローラ180は、換気に関連する変数を表す信号、特に圧力センサからの信号を受信するために、圧力判定システム300と通信する。例えば、換気コントローラ180は、以下の変数、すなわち、吸気圧Plnsp、呼気圧Pexp、気道入口における呼吸ガス流F、気道圧Paw、および食道バルーン圧Pesoのうちの少なくとも1つに関連する圧力判定システム300から信号を受信することができ、これについては、以下でより詳細に説明する。必要に応じて、換気コントローラ180は、換気コントローラ180と圧力検出システムとの間の通信接続が双方向であるように、信号、特に制御信号を圧力判定システム300に送信することもできる。
【0162】
換気コントローラ180は、
図1においてブロック180として概略的に示されているに過ぎず、本発明を理解するためにその機能が必要である限りにおいてのみ、本明細書においてより詳細に説明される。
【0163】
換気コントローラ180のさらなる態様に関して、既知の換気装置、特に、異なる換気形態または換気モードにおける換気の制御を含む換気装置が参照される。例えば、本出願人の換気装置におけるASV換気モード(「適応型補助換気」)およびINTELLiVENT-ASV換気モードなどの閉制御ループによって換気が制御される換気モードを含む既知の換気装置が参照される。
【0164】
これは、
図1に示す他のサブシステム、呼吸ガスシステム200、圧力判定システム300、食道バルーン制御システム400にも同様に当てはまる。
【0165】
図1の換気コントローラ180、呼吸ガスシステム200、圧力判定システム300、および食道バルーン制御システム400を別々のシステムとして示すことは、単なる一例として理解されるべきであり、それぞれのシステムに割り当てられた機能をより良く表すために選択されたものである。以下に明示的には述べないが、実際に実現される実施形態ではこれらのシステムのいくつか、またはさらにはこれらのシステムのすべてを組み合わせて、それぞれの機能を備えるシステム全体を形成してもよいことを理解されたい。
【0166】
本発明と組み合わせて、任意の形態の既知の換気方法または換気モード、例えば、圧力制御された換気、体積制御された換気、または圧力制御された側面と体積制御された側面とが組み合わされた換気モードを使用してもよい。吸気圧Plnspの時間的経過、およびおそらく呼気圧Pexpの時間的経過が、換気装置10によって、特に換気コントローラ180によって判定される、純粋に機械制御された形態の換気に加えて、患者の自発呼吸努力が機械的換気をサポートすることができるか、または機械的換気が患者の自発呼吸努力をサポートするように働く、換気の形態も考えられる。このような換気の形態では、吸気圧Plnspまたは呼気圧Pexpの時間的経過、および、多くの場合、気道入口弁18または出口弁24の位置は、換気装置10のみによって予め定められているわけではないが、換気コントローラ180は、患者の自発呼吸努力が吸気圧Plnspおよび/または呼気圧Pexpの時間的経過、気道入口弁18および/または出口弁24の位置などの変数に影響を及ぼし得るように構成される。
【0167】
図1では、換気コントローラ180が、ユーザ設定および/または検出信号に基づいて、複数の換気モード190A、190B、190C、190Dのうちの1つを能動的換気モードとして選択し、それぞれ能動的換気モード190A、190B、190C、190Dによって供給される制御信号に基づいて、呼吸ガスシステム200を制御して、それぞれの吸気圧Plnspおよび/またはそれぞれの呼気圧Pexpを気道にかける、調整ユニット185を備えることが概略的に示されている。
【0168】
換気モード190A、190B、190C、および190Dは、
図1において、それぞれ参照番号192A、192B、192C、および192Dによって示される換気パラメータ(呼気終末陽圧PEEPまたは最大気道圧Paw_maxなど)を設定するためのユニットを有する。換気モード190A、190B、190C、および190Dはまた、
図1において、それぞれ参照番号194A、194B、194C、および194Dによって示される、経肺圧Ptpなどの換気に関する情報および/または設定の自動表示のためのユニットを含む。
【0169】
調整ユニット185により、アクティブ換気モード190A、190B、190C、190Dによって決定される換気パラメータ192A、192B、192C、192Dの値の設定、または、アクティブ換気モードによって決定される情報および/または設定194A、194B、194C、および194Dは、換気装置10のディスプレイ、インジケータ、または他の出力装置上に表示される。出力装置は、
図1には明示的に示されていない。調整ユニット185は、また、異なる換気モード190A、190B、190C、および190D間を切り替える。表示される情報194A、194B、194C、および194Dと同様に、設定される換気パラメータ192A、192B、192C、192D、および/または、それらのパラメータ値は、換気モード190A、190B、190C、190Dの間で切り替えが行われる際、それに応じて変化する。
【0170】
図1には、食道バルーン圧または食道圧と呼ばれる、食道(食物パイプ)34内の圧力を測定するためのバルーンプローブ46を有する追加の食道バルーンカテーテル45が概略的に示されている。バルーンプローブ46はバルーン形状を有し、食道34に挿入可能なカテーテルチューブ48に取り付けられている。
図1は、換気される患者の食道34内にその測定位置で挿入されたバルーンプローブ46を備えた食道バルーンカテーテル45を概略的に示す。この測定位置では、食道バルーンカテーテル45は、バルーンプローブ46内の食道バルーン圧Pesoを検出するように設計されており、そこから経肺圧Ptpを推定することができる。バルーンプローブ46は、食道34の内壁に当接する。バルーンプローブ46内の食道バルーン圧Pesoは、適切な較正の後、バルーンプローブ46の位置で食道34に作用する食道圧を提供する。患者が適切に配置されている場合、食道圧は、胸膜腔内の圧力Pplに密接に対応する。食道圧を測定するためのバルーンプローブ46およびこのプローブの取り扱いは、例えば、Benditt J. Resp.Care 2005,50:68-77(非特許文献3)に記載されている。
【0171】
食道バルーンカテーテル45は、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46を測定用流体で監視、較正および/または充填するように設計された食道バルーン制御システム400と関連付けられる。換気装置10および食道バルーン制御システム400は、換気コントローラ180と食道バルーン制御システム400との間に双方向通信が存在するように設計される。これは、換気コントローラ180が食道バルーン制御システム400の自動制御のためにも設計されること、および/または食道バルーン制御システム400が換気コントローラ180の自動制御のためにも設計されることを意味する。
【0172】
図1において、換気コントローラ180と食道バルーン制御システム400との間のこの双方向通信は、矢印150および160によって示される。このような構成は、特に、例えば、出願人によって開発された適応型補助換気(ASV換気)および同様に出願人によって開発されたINTELLiVENT-ASV換気において使用される閉制御ループによる換気の場合に、完全自動換気モードによって換気が実行される換気の形態に合わせて調整される。このような換気の形態は、操作者によって最小限の手動介入しか必要とされないという事実によって特徴付けられ、換気装置は適切な閉鎖制御ループの助けを借りて、所定の値範囲内で、呼気終末陽圧PEEPまたは最大気道圧Paw_maxなどの10の重要な換気パラメータを自動的に設定または調整する。
【0173】
食道バルーン制御システム400は、また、食道バルーン制御システム400が圧力判定システム300によって判定された圧力Pinsp、Pexp、dP、Paw、およびPesoにアクセスできるように、圧力判定システム300との通信、特に双方向通信140、140′のために設計される。
【0174】
「肺胞内圧」とも呼ばれる肺28、30の肺胞に広がる圧力は、
図1においてPalvと記号化されている。肺胞内圧Palvは、気道入口圧Paw、気道抵抗R、および肺へのまたは肺からの呼吸ガスVの流れに依存する。気道入口と肺胞との間の完全な均圧の場合、肺胞内圧Palvは、気道入口圧Pawに等しい(Palv=Paw)。
【0175】
このような完全な圧力均等化により、呼吸ガス流Fが停止する。例えば、気道入口弁18および気道出口弁24が同時に閉じられる、短い気道閉塞操作により、圧力均等化をもたらしてもよい。閉塞操作は、気道内のガス流Fを止めるのにちょうど十分な程度に長く続かなければならない。これは、通常、1秒~5秒である。この状態では、気道入口圧Pawを判定することによって、肺胞内圧Palvを判定することができる。
【0176】
生理学的呼吸および機械的換気の両方の間、呼吸ガスの流れFは、肺胞内圧Palvと気道入口圧Pawとの間の圧力差Δp=Palv-Pawによって定められる。
【0177】
純粋に生理学的な呼吸の場合、胸部42の拡張による吸気中に、肺胞内圧Palvと気道入口圧Pawとの間に負圧差、すなわち負圧が発生する。これは、胸部42と肺28、30との間に形成される胸膜腔44内の圧力Pplの減少に関連する。呼気は、胸部42の弛緩および肺組織の弾性回復を通して受動的に起こる。このため、生理学的呼吸の間、胸膜腔Ppl内の圧力は常に、肺胞内圧Palvよりも小さい(Ppl>Palv)。したがって、肺胞内圧Palvと胸膜腔Ppl内の圧力との間の差として定義される経肺圧Ptp=Palv-Pplは一般に正であり、完全な均圧の場合にはゼロになる。
【0178】
機械的換気の間、呼吸ガスは、陽圧下で肺にポンプで送り込まれる。このため、機械的換気の過程において、吸気相の間、気道入口圧Paw=Plnspは肺胞内圧Palvよりも大きく、これは胸膜腔Ppl内の圧力よりも大きい。
Paw>Palv>Ppl
【0179】
これらの圧力条件から、経肺圧Pplは、吸気中の機械的換気の過程において陽圧である(Ppl>0)ことになる。呼気中、気道入口は、肺胞内圧Palvよりも低い気道圧Pexp(Pexp<Palv)を受け、呼吸ガスが肺胞から流出する。非常に低い気道圧Pexpの場合、呼気の終わりに、肺に非常に少ないガスが残っているとき、肺の肺胞の一部が虚脱する程度にまで胸膜腔Ppl内の圧力が肺胞内圧Palvを超えることがある。その場合、経肺圧Ptpは負圧である(Ptp<0)。
【0180】
肺胞の望ましくない有害な虚脱は、呼気相中に気道入口に追加の陽圧を加えることによって防ぐことができる。次いで、気道入口に、すなわち吸気相中に、また呼気相中に、永続的な気道陽圧が存在する。この気道陽圧は、呼気終末陽圧PEEPと呼ばれる。
【0181】
したがって、経肺圧Ptpは、PEEPを設定するのに適した値である。しかしながら、経肺圧Ptpは直接測定することができず、上述のように、機械的換気中に定期的に測定される圧力から判定することができない。
【0182】
経肺圧Ptpを判定するためには、胸膜腔Ppl内の圧力に加えて、肺胞内圧Palvに関する情報が必要である。特定の時間tにおける肺胞内圧Palv(t)を判定するための方法は、気道入口流量センサ36を使用して行うことができる呼吸ガス流量F(t)を測定することである。
【0183】
呼吸ガス流F(t)を測定した後、時間tにおける肺胞内圧は、Palv(t)=Paw(t)-R*V(t)(式中、Rは気道抵抗を表す)の関係を使用して判定することができる。気道抵抗Rは、本質的に変化しないか、または同じ患者に対して比較的ゆっくりしか変化しない変数であり、例えば、Lotti I.A et al.Intensive Care Med. 1995,21:406-413(非特許文献4)のような最新技術で知られている方法によって判定することができる。適切なPEEPの判定は、主に、呼気相Ptp_eeの終わりの経肺圧に依存するので、PEEPの自動調整と併せて、肺胞内圧Palvは、好ましくは、肺胞内圧Palvは、呼気終末期に、以下の式に従って測定する。
Ptp_ee=Palv_ee-Peso_ee=Paw_ee-R*V_ee-Peso_ee
【0184】
PEEPは、Ptp_eeが常に正のままであり、ゼロを大幅に下回らないように設定されるべきである。
【0185】
残念ながら、自動換気装置10において非常に容易に実施することができる、肺胞内圧Palvを決定するための記載された方法によって可能なのは、適切なPEEPの比較的大まかな推定のみである。これは、主に、気道抵抗Rが相対的に不正確にしか推定できず、一般に、治療の過程にわたって特定の傾向にさらされるという事実による。
【0186】
肺胞内圧Palvを判定するための代替的な方法は、気道入口弁18と気道出口弁24の両方を同時に閉じたままにする短期閉塞操作に基づく。この閉塞状態では、気道内の圧力の均等化が生じる。このような閉塞操作が呼気相の終わりに実行される場合、十分に長い閉塞の後に気道内で生じる圧力は、呼気相の終わりの肺胞内圧Palvに等しい良好な近似値になる。次いで、この圧力は、気道圧力Pawを測定するために気道入口に配置された圧力プローブを使用して容易に測定することができる。
図2では、この状況が参照番号50で示される位置で示されている。
【0187】
図2は、気道圧Paw(
図2(a))の経時変化、バルーンプローブ46(
図2(b))で測定した食道バルーン圧Peso、および複数の連続した呼吸サイクルの間の2つの圧力の差Paw-Pesoを示しており、それらの間で閉塞操作も行われた。
図2において、個々の呼吸サイクルは、それぞれ、吸気相(
図2(a)における高上昇気道圧Paw)および呼気相(下降気道圧Paw)を伴って、明確に見ることができる。
【0188】
食道バルーン圧Pesoは気道圧Pawに従うが、弱められた形態である。下の曲線(
図2(c))に示されている差圧Paw-Pesoは、呼吸ガスの流れが十分に遅く、圧力均等化が常に行われる場合、経肺圧Ptpにかなりよく対応する。しかしながら、実際には、この要件が呼気相の終わりに短期閉塞が実行された(参照番号50、約8秒~12秒)、または吸気相の終わりに短期閉塞が実行された(参照番号52、約18.5秒~24.5秒)、参照番号50および52によって指定される場所を除いて、呼吸ガス流が強く変化するために、概して満たされない。どちらの場合も、閉塞は約4秒間続いた。選択された例では、これは1回の呼吸サイクルの持続時間にほぼ対応する。一般に、閉塞は気道内の完全な圧力均等化が生じるのに十分に長く続き、気道内のガス流が停止するのに十分であるべきである。
【0189】
時間プロファイルにおいて50と示された位置の終わり(およそ11秒から12秒の間、例えば閉塞の最後のおよそ200msにおいて)において、
図2の第3線に示される圧力Paw-Pesoは、呼気相Ptp_eeの終わりにおける経肺圧にかなり良好に近似する。Ptp_eeを判定するために、例えば、言及された期間にわたるPaw-Pesoを平均してもよい。時間プロファイルにおいて52とマークされた位置の終わり(約21.5秒から22.5秒の間、例えば、閉塞の最後の約200msにおいて)において、第3の線に示される圧力Paw-Pesoは、吸気相Ptp_eiの終わりにおける経肺圧にかなり良好に近似する。Ptp_eiを決定するために、例えば、言及された期間にわたるPaw-Pesoを平均してもよい。Ptp_eiを判定するために、例えば、言及された期間にわたるPaw-Pesoを平均してもよい。
【0190】
上述の閉塞操作を用いた経肺圧Ptpの判定は、気道抵抗Rを用いた上述の方法よりも正確である。しかしながら、呼気相の終わりまたは吸気相の終わりに閉塞操作を行う必要がある。したがって、この方法は、呼吸サイクルを自然に中断させ、閉塞の持続時間が呼吸サイクルの持続時間と長く比較されるほど、中断がより多く生じる。したがって、本質的に、この方法は呼吸サイクルを妨げることになり、閉塞の持続時間が呼吸サイクルの持続時間と比較される場合は、より顕著になる。このため、気道抵抗法を用いて、PEEPの設定値および/または最大気道圧の設定値が依然として仕様内にあるかどうか、または結果として得られる経肺圧Ptp_eeの値が正規化経肺圧Ptp_ee_idealの特定の仕様内にあるかどうかを、例えば、各呼吸の後、またはn回の呼吸ごとに(n>1)、かなり頻繁に確認するように進めることが望ましい。
【0191】
この検査は、これが事例ではないことを明らかにし、したがって、PEEPおよび/または最大気道圧についての新しい(より高いまたはより低い)値が設定されるべきであることを明らかにした場合、呼気相の終わりに、次の呼吸サイクルにおいて閉塞操作が実行され、PEEPについての新しい値が上述のように、この閉塞に基づいて決定される。あるいは、記載したように、閉塞操作は、n>1、例えば、n=10、50、または100で、n回の呼吸サイクルごとに繰り返されてもよい。
【0192】
バルーンプローブ46を有する食道バルーンカテーテル45を用いた経肺圧Ptpの判定のための前提条件は、経肺圧Ptpとバルーンプローブ46内で検出された食道バルーン圧Pesoとの間に固定された関係があることである。理想的にはバルーンプローブ46内で検出される食道バルーン圧Pesoが胸膜腔Ppl内の圧力にほぼ対応すべきであり、その結果、経肺圧Ptpは気道圧Pawと食道バルーン圧Pesoとの間の差から計算される。しかし、実際には、食道34にバルーンプローブ46を導入した食道バルーンカテーテル45で測定される食道バルーン圧Pesoと、換気中の胸膜腔内の圧力Pplとの関係が変化することが定期的に発生する。このような変化は、通常、特定の原因または事象に明確に帰することはできず、徐々に起こることが多い。
【0193】
このため、食道バルーンカテーテル45を連続的に監視することは、必要に応じて、測定用流体をバルーンプローブ46に充填または補充することと併せて、場合によっては意図されるように選択されるべき食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46内の測定用流体の量の(再)較正と併せて、しばしば有利である。
【0194】
しかしながら、生体内で機械的換気のために現在使用されている食道バルーンカテーテル45は非常に敏感であり、その使用は看護スタッフにとって複雑であり、時間がかかる。したがって、食道バルーンカテーテル45は、現在、患者の換気の過程で、特に長期換気の過程で、換気中の経肺圧Ptpを連続的にモニタリングするために、および、必要であれば、不正確な充填を修正するために、使用するのに特に適していない。特に、医師および看護スタッフは、現在、換気中に食道バルーンカテーテルによって提供され、したがって、現在の換気中に換気パラメータを監視および/または調整するために実際に利用可能である測定データへのアクセスが非常に限られている。
【0195】
本発明は、食道34内に挿入されたバルーンプローブ46を備えた食道バルーンカテーテル45によって提供される圧力測定の精度を改善するための装置および方法を提供する。特に、本発明による装置および本発明による方法は、食道バルーンカテーテル45を通して胸膜腔内に広がる圧力Pplのより正確な再現を可能にし、連続換気中の変化する環境条件に対する測定値のより速い反応を可能にする。
【0196】
このように、本発明によれば、食道バルーンカテーテル45の連続的かつ大幅に自動化された動作が可能になり、それにより、設定の連続的な監視、および、必要に応じて、換気を中断する必要なく、再充填またはバルーンプローブ46を測定用流体で再充填することができる。進行中の換気中にバルーンプローブ46を較正または再較正すること、および/または、経肺圧Ptpを測定するためにバルーンプローブ46内の測定用流体の最適充填量を判定することも可能である。これは、換気が、例えば、閉制御ループを使用する換気の場合、特に、出願人によって開発された「適応型補助換気」(ASV換気)および同様に出願人によって開発されたINTELLiVENT-ASV換気の場合、完全自動換気モードを使用して実施される場合にも適用される。
【0197】
食道バルーン制御システム400は、食道バルーンカテーテル45と関連付けられる。食道バルーン制御システム400は、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46に測定用流体を供給する特定の機能を有する。通常、測定用流体として空気が使用されるが、他の流体、特にガスを使用することもできる。
【0198】
原則として、食道34への挿入およびバルーンプローブ46の食道34への配置後、バルーンプローブ46は、所定量の測定用流体Voptで満たされ、バルーンプローブ46で測定された圧力が、バルーンプローブ46上の食道34の外壁を介して胸膜腔44の圧力変化にできるだけ敏感に反応するように寸法設定される。この目的のために、バルーンプローブ46は食道34内の位置に配置され、可能であれば、胸膜腔44内の圧力を受ける。同時に、バルーンプローブ46は、食道34の内壁に対して可能な限り均等に適合するように、十分な測定用流体で満たされる。バルーンプローブ46内の圧力は、食道34の壁がバルーンプローブ46内に広がる圧力の下で、外向きに拡張することができない程度に大きくなるべきではない。測定用流体によるバルーンプローブ46の適切なまたは最適な充填を設定するために、バルーンプローブの較正が提供される。食道バルーン制御システム400は、このような較正を時系列的に実行するように設計されている。この目的のために、食道バルーン制御システム400は、較正コントローラ450を含む。
【0199】
較正コントローラ450は、バルーンプローブ46内の測定用流体の液量Vi(i=1、2、3、・・・)を段階的に変化させることにより、複数の測定点を設定するように構成されている。このように、計測点として段階的に設定されたバルーンプローブ46内の計測流体の量Viについて、較正コントローラ450は、食道バルーン圧Pesoiを記録し、この設定された計測流体の量Viをバルーンプローブ46に割り当てる。このために、バルーンプローブ46によって検出された圧信号Pesoiは、較正コントローラ450にも送信される。
【0200】
食道バルーン制御システム400は、また、バルーンプローブ46内に測定用流体を導入し、バルーンプローブ46が食道34内に配置された後にバルーンプローブ46から測定用流体を除去するように構成されたポンプ装置430を含む。ポンプ装置430は、ポンプ425と、バルーンプローブ46と流体連通する流体を測定するための送達線66に配置された弁420とを有する。バルーンプローブ46内の測定用流体が過剰な圧力下にある場合、弁420を開くことによって、実際のポンプ425を使用することなく測定用流体をバルーンプローブ46から除去してもよい。
【0201】
食道バルーン制御システム400は、流量センサ410、特に、バルーンプローブ46に導入される測定用流体の量、および/またはバルーンプローブ46から除去される測定用流体の量を判定するように設計された質量流量センサ410をさらに有する。バルーンプローブ46内に導入された、またはバルーンプローブ46から除去された測定用流体の量は、例えば、開始時間と終了時間との間の期間にわたって、流量センサ410によって測定された流量を統合することによって判定することができる。流量センサ410は、例えば、差圧に基づいて測定用流体の質量流量を判定するように設計することができる。そのような流量センサ410は、また、バルーンプローブ46内の食道バルーン圧Pesoを検出するために使用することができる。
【0202】
較正コントローラ450は、「ハードウェア内」の独立した構成要素として実装することができる。あるいは、較正コントローラ450は、コンピュータプログラム製品として、すなわち、プロセッサ、特にマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ上で実行される対応するソフトウェアプログラムによって実装されてもよい。この場合、ソフトウェアは、適切なローカルまたはネットワークアクセス可能な記憶媒体に記憶することができる。ソフトウェアは、コンピュータプログラムとして符号化された命令を含み、コンピュータプログラムはプロセッサのメモリにロードされ、機械言語に翻訳されると、プロセッサに、本明細書でより詳細に説明される手順を実行させる。もちろん、ハードウェアでの実装と、ソフトウェアでの実装との混合形態も考えられる。マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラは食道バルーン制御システム400の制御に関連付けられてもよく、特に、食道バルーン制御システム400の制御の一部であってもよい。
【0203】
図3は、本発明の一実施形態による食道バルーンカテーテル45を生体内で較正する手順をフローチャートで示す。
【0204】
図4は、本発明の一実施形態による較正時に設定された食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46の測定用流体量V
bの経時変化と、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46で検出された食道バルーン圧Pesoを模式的に示す。
【0205】
較正コントローラ450は、各測定点S1、S2、M1、M2、・・・、M7、E1、E2、E3に近づくために、開始値S2から開始して最終値E3に達するまで、少なくとも2段階で、バルーンプローブ46内の測定用流体Vbの量を単調に変化させるように設計される。
【0206】
測定用流体は特に空気、または、別の流体、特に別のガスであってもよい。
【0207】
図3に示す較正手順100は、ステップ102から始まる。まず、ステップ104において、測定用流体は、バルーンプローブ46内に所定の初期圧力が生じるまで、バルーンプローブ46から汲み出される。ステップ104で到達した状態は、
図4において「N」と示される。
【0208】
その後、ステップ106において、バルーンプローブ46内の圧力が測定サイクルの予想測定範囲を上回る所定の正圧になるまで、測定用流体を再びバルーンプローブ46内に送り込む。ステップ104の状態は、
図4において「D1」と示される。
【0209】
以下のステップ108~130で近づいた他のすべての測定点は、
図4においてS1、S2、M1~M7、E1、E2、E3と示される。
【0210】
ステップ106で設定された状態において、バルーンプローブ46は、著しく過伸張している。これは、
図4において、バルーンプローブ46において検出された食道圧Pesoの値が他の全ての測定点S1、S2、M1~M7、E1、E2、E3よりも著しく高いという事実から分かる。
【0211】
図4、
図5において、測定範囲の上限をO、
図4、
図5において、測定範囲の下限をUと示す。
図4および
図5に示す較正手順では、測定範囲の下限Uは測定点M7にあり、測定範囲の上限Oは測定点M1にあることが分かる。上限値Oおよび下限値Uについては、バルーンプローブ46内の測定用流体の対応する量V
bを基準値として選択した。したがって、Oは、測定範囲の上限に対応する測定点M1におけるバルーンプローブ46内の測定用流体の量を示す。Uは、測定範囲の下限に対応する測定点M7におけるバルーンプローブ46内の測定用流体の量を示す。
【0212】
ステップ106から開始して、ステップ108において、所定量の測定用流体がバルーンプローブ46から汲み出される。これにより、測定範囲内で予想される食道圧をわずかに上回る食道バルーン圧Pesoが検出される、バルーンプローブ46内の測定用流体の量を設定する(測定点M1~M7を参照)。この状態を、
図4および
図5において「S1」と示す。あるいは、測定範囲内で予測される食道バルーン圧Pesoよりわずかに高い食道バルーン圧Pesoの所定値が検出されるまで、測定用流体をバルーンプローブ46から汲み出すことができる(測定点M1~M7を参照)。
【0213】
「S1」の状態の間、食道バルーン圧Pesoは、複数の呼吸サイクルにわたってバルーンプローブ46内で検出される。
図4から分かるように、食道バルーン圧Pesoは個々の呼吸サイクルを反映するが、非常にわずかな程度であり、これはバルーンプローブ46の感度が低いことを示す。
【0214】
ステップ108から開始して、ステップ110において、
図4および
図5において「S2」と指定された状態に達するまで、所定量の測定用流体がバルーンプローブ46から汲み出される。ステップ110では、状態「S2」について、ステップ108に関して説明した手順と同じ手順が繰り返される。やはり、わずかに顕著な呼吸サイクルしか見ることができず、したがって、バルーンプローブ46の感度は低い。
【0215】
ステップ110の完了後、ステップ112において、
図4および
図5において「M1」と示された状態に達するまで、所定量の測定用流体が再びバルーンプローブ46から汲み出される。ステップ112では、ステップ108に関連して説明した手順と同じ手順が状態「M1」について繰り返される。
【0216】
図4および
図5において、測定点M1の状態(および測定点M2~M7の後続の状態)では、食道バルーン圧Pesoが個々の呼吸サイクルを明確に反映していることが分かる。Peso曲線の最大値は各吸気相の終わりに検出されるバルーンプローブ46内の食道バルーン圧Peso_eiに割り当てられ、Peso曲線の最小値は、各呼気相の終わりに検出されるバルーンプローブ46内の食道バルーン圧Peso_eeに割り当てられる。
【0217】
その後、この手順を数回繰り返して(ステップ114~130参照)、さらなる測定点M2~M7、E1、E2に到達する。さらなる測定点M2~M7、E1、E2の各々において、バルーンプローブ46内の食道バルーン圧Pesoは、ステップ108、110、および112を参照して説明したのと同じ方法で、複数の呼吸サイクルにわたって検出され、Peso曲線の最大値はそれぞれの吸気相の終わりに検出されたバルーンプローブ46内の食道バルーン圧Peso_eiに割り当てられ、Peso曲線の最小値はそれぞれの呼気相の終わりに検出されたバルーンプローブ46内の食道バルーン圧Peso_eeに割り当てられる。
【0218】
各ステップ110~130は、
図3のフローチャートに詳細には示されていない。
【0219】
図4に基づいて、これらのステップはそれぞれ、測定点S1、S2、M2~M7、E1、E2として指定される、バルーンプローブ46内の特定の量の測定用流体に属することが分かる。バルーンプローブ46内の測定用流体の量は測定点S1、S2、M1~M7、E1、E2のうちの1つから次の測定点への遷移中に、常に単調に変化し、特に常に減少する。
【0220】
ステップサイズ、すなわち、測定点のうちの1つから次の測定点に移動するときにバルーンプローブ46内の測定用流体の量が変化する量は、常に同じであってもよい。しかしながら、バルーンプローブ46内の測定用流体の量が変化する量は変化が常に同じ方向に生じる限り、すなわち、その量が常に減少するか、または常に増加する限り、各ステップにおいて異なるように選択されることも可能である。バルーンプローブ46内のそれぞれの測定点と関連する測定用流体の量との間の割り当ては明確であるので、説明を簡潔にするため、測定点だけでなく、バルーンプローブ46内の関連する測定用流体の量も、以下ではD1、S1、S2、M1~M7、E1、E2などと呼ぶ。
【0221】
例えば、M1は、測定点M1と、バルーンプローブ46内の対応する量の測定用流体との両方を示す。同様に、例えば、M7は、測定点M7と、バルーンプローブ46内の対応する測定用流体の量との両方を示す。測定系列の他の測定点M2~M6についても同様である。バルーンプローブ46内の測定用流体の量M1は、測定範囲の上限値Oも表す。バルーンプローブ46内の測定用流体の量M7も、測定範囲の下限値Uを表す。
【0222】
図4では、測定点M1~M7について、食道バルーン圧Pesoの検出信号は個々の呼吸サイクルを明確に示しているが、測定点E1から開始して、検出された食道圧信号Pesoが不安定になり始めることが分かる。これは、バルーンプローブ46が測定用流体で充分に満たされておらず、したがって、個々の呼吸サイクルによって引き起こされる圧力変化にもはや適切に反応することができない領域に進入していることを示す。測定点E2およびE3ではバルーンプローブ46が完全に潰れており、食道バルーン圧Pesoは呼吸サイクルをほとんど示さないと仮定することができる。測定サイクルは、測定点E3に達したときに終了する。測定点E3では、食道バルーン圧Pesoは検出されず、割り当てることができない。
【0223】
状態M1は、測定サイクルに使用可能な測定範囲の上限値Oを示す。したがって、実際の較正は、測定点M1~M7によって定義されるこの測定範囲に限定される。
図4から分かるように、測定範囲内の全ての測定点M1~M7について、バルーンプローブ46内で検出される食道バルーン圧Pesoは、本質的に同じ範囲内にある。これは、バルーンプローブ46がこの領域の食道壁と共に、バルーンプローブ46内の測定用流体の量に応じて膨張または収縮する実質的に弾性のシステムを形成することを示している。これらの条件は、測定点M7に達したときに測定範囲の下限Uに達するまで同じままである。
【0224】
測定点M1とM7との間、したがって、バルーンプローブ46内の測定用流体の量の上限値Oから下限値Uまでの間の測定範囲において、バルーンプローブ46からの測定用流体のそれぞれの所定量と、それぞれ検出された食道バルーン圧Pesoとの間には、ほぼ線形の関係が存在する。この直線関係を表す直線の傾きは、呼気相の終わりに検出された食道バルーン圧Peso_eiとバルーンプローブ46内の所定量の測定用流体との関係、および呼気相の終わりに検出された食道バルーン圧Peso_eeとバルーンプローブ46内の所定量の測定用流体との関係についてほぼ同じである。
【0225】
測定範囲外の領域(測定点S1、S2、または測定点E1、E2)では、バルーンプローブ46内のそれぞれの所定量の測定用流体と、それぞれの検出された食道バルーン圧Pesoと、の関係が大きく変化する。この関係はもはや測定範囲外の領域においてほぼ線形ではなく、検出された食道バルーン圧Pesoのはるかに強い増加および減少を示し、バルーンプローブ46内の測定用流体の量は、それぞれ、より大きく、より小さくなる。呼気相の終わりのバルーンプローブ46において所定量の測定用流体について検出された食道バルーン圧Peso_eiと、呼気相の終わりに検出された食道バルーン圧Peso_eeと、の差は、測定点S1、S2、S3、E1、E2bにおける実際の測定範囲(測定点M1~M7)外の領域において急速に小さくなる。
【0226】
図5(a)と
図5(b)に示すグラフは、測定結果の較正手順の重要性を示す。
図5(a)は測定周期中に測定点S1、S2、M1~M7、E1、E2として設定されたバルーンプローブ46内の測定用流体V
bごとに、吸気相の終わりにそれぞれ検出されたバルーンプローブ46内の検出食道バルーン圧Peso_eiと、呼気相の終わりにそれぞれ検出されたバルーンプローブ46内の検出食道バルーン圧Peso_eeと、を模式的に示している。
図5bは、各測定点S1、S2、M1~M7、E1、E2について、吸気相の終わりにおける食道バルーン圧Peso_eiと、呼気相の終わりにおける食道バルーン圧Peso_eeと、の間の結果として生じる差圧dPを示す。
【0227】
測定点M1~M7の範囲において、呼気相の終わりのバルーンプローブ46の検出食道バルーン圧Peso_eiの変化と、呼気相の終わりのバルーンプローブ46の検出食道バルーン圧Peso_eeの変化と、は、バルーンプローブ46の測定用流体V
bの変化と略直線的になることがわかる。結果として得られる2つの曲線Peso/V
bの勾配は非常に平坦であり、吸気相Peso_eiの終わりの食道圧値と呼気相Peso_eeの終わりの食道圧値とで本質的に同じである。したがって、
図5(b)において、吸気相の終わりにバルーンプローブ46内で検出された食道バルーン圧Peso_eiと呼気相の終わりにバルーンプローブ46内で検出された食道バルーン圧Peso_eeとの差dPは測定点M1~M7によって定義される測定範囲内で本質的に一定のままであるが、この差dPは測定点S1、S2、およびE1、E2が位置するこの測定範囲外の領域では急速に非常に小さくなる。
【0228】
このことから、食道バルーンカテーテル45の最適な較正は、
図5(a)に示す2つの縦の点線OとUとの間で、測定点M1~M7によって規定される測定範囲内、すなわち、バルーンプローブ46内の測定用流体の量V
bの範囲内にある、バルーンプローブ46内の測定用流体の量V
bによって達成される。これにより、較正コントローラ450は、測定点M1~M7によって規定される測定範囲内にあるバルーンプローブ46内の測定用流体の分量V
bを選択する。この設定V
bは、
図5(a)および
図5(b)の縦線Kで表される。これは、
図4の右側のKで示されるV
bカーブの横部分に見られるように、較正処置の完了後のバルーンプローブ46内の液体のV
bとして設定される。
【0229】
図5(b)は、測定点M1~M7によって規定される測定範囲内で、バルーンプローブ46内の測定用流体の最適V
optの選択がどのように行われるかを示す。測定範囲内では、まず、吸気相の終わりのバルーンプローブ46における検出食道圧Peso_inspと、呼気相の終わりのバルーンプローブ46における検出食道圧Peso_expと、の差dPが最大となる測定点を探す。
図5(b)に示す例では、これは測定点M4における場合である。その後、この最大差dPmax付近の許容変動範囲を定義する。この変動範囲内の差dPの値は、最大値dPmaxと大きく異なるものではないと考えられる。
図5(b)に示す例では、許容変動範囲が測定点M4で求められる最大差dPmaxの10%である。この範囲は、
図5(b)において破線rによって表される。測定点M3、M4、M5、M6、およびM7について決定された差dPは、変動範囲内にある。
【0230】
これら全ての測定点は測定点M4の近傍にあり、互いに隣接している。したがって、測定点M3とM7との間にあるバルーンプローブ46内の測定用流体の量の範囲は、測定用流体によるバルーンプローブ46の充填に関して同等であると考えられる。この領域は、
図5(b)の垂直破線aおよびbによって区切られている。バルーンプローブ46内の測定用流体の最適量V
optは、線aと線bとの間の領域の中心となるように選択される。このようにして、バルーンプローブ46内の測定用流体の最適量V
optが、較正によって得られる。
図5(b)の縦線Kを参照されたい。この量V
opt=Kは、較正が完了した後のバルーンプローブ46内の液量として設定される。
図4のV
optカーブの右端部分を参照されたい。
【0231】
較正手順が完了した後、較正コントローラ450は、ステップ132(
図3参照)において、測定範囲の測定点M1~M7に対応する量を大幅に上回る量の測定用流体をバルーンプローブ46に再び供給する。このステップ132において、バルーンプローブ46は再度過伸張し、
図4において、この状態は「D2」として示される。その後、ステップ134において、先行する手順において決定された較正状態が、バルーンプローブ46から適切な量の測定用流体を除去することによって設定され、これは
図4において「K」として示され、バルーンプローブ46は最適な量V
opt=Kの測定用流体で満たされる。
【0232】
任意選択的に、較正状態V
opt=Kが設定される以前に、
図3~
図5に示される測定サイクルの後に、少なくとも1つのさらなる測定サイクルが続くことも想定される。そのような場合、手順はステップ134からステップ108に戻り、第1測定サイクルのステップ110~130と同様に、さらなる測定サイクルのステップを繰り返す。
図3において、これを線138によって示す。
【0233】
較正コントローラ450は、バルーンプローブ46内の測定用流体の量を、開始値S1から開始して最終値E3に達するまで、少なくとも2つのステップで単調に変化させるので、それぞれの測定点S1、S2、M1~M7、E1、E2に近づくために、較正手順100は、短時間で、例えば数分以内に完了することができる。これにより、バルーンプローブ46の最適な充填Voptが換気の過程で変化したとしても、食道バルーンカテーテル45を常に正しく較正するために、較正手順100を継続的な換気の間繰り返すことができる。これにより、自動換気モードでの患者の換気を長期間にわたり行うことが可能になる。
【0234】
本発明による食道バルーン制御システム400は、また、流体量監視部470を備える。流体量監視部470は、バルーンプローブ46内の測定用流体の充填量Vを少なくとも1回、特に数回、段階的に変更し、このようにして測定点として設定された測定用流体の充填量Vのそれぞれにおいてバルーンプローブ4内で検出された食道バルーン圧Pesoを記録し、バルーンプローブ46内の測定用流体のそれぞれ設定された充填量Vに割り当てるように設計されている。このために、バルーンプローブ46によって検出された圧力信号Pesoは、換気コントローラ180だけでなく、流体量監視部470にも送信される。
【0235】
流体量監視部470は、較正コントローラ450について前述したように、ポンプ装置430(ポンプ425および弁420)および食道バルーン制御システム400の流量センサ410にアクセスすることができる。すなわち、流体量監視部470は、ポンプ装置430のポンプ425および弁420を制御し、流量センサ410から信号を受信することができる。
【0236】
流量センサ410は、気管12に配置された気道入口流量センサ36と同様に設計することができる。そのように構成することで、流量を判定するだけでなく、バルーンプローブ46内の食道バルーン圧Pesoを判定することも可能になる。
【0237】
流体量監視部470は、「ハードウェア」の独立した構成要素として実現することができる。あるいは、流体量監視部470は、コンピュータプログラム製品として、すなわち、プロセッサ、特にマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ上で実行される対応するソフトウェアプログラムによって実施することもできる。この場合、ソフトウェアは、適切なローカルまたはネットワークアクセス可能な記憶媒体に記憶することができる。ソフトウェアは、コンピュータプログラムとして符号化された命令を含み、コンピュータプログラムはプロセッサのメモリにロードされ、機械言語に翻訳されると、プロセッサに、本明細書でより詳細に説明される手順を実行させる。もちろん、ハードウェアでの実装と、ソフトウェアでの実装との混合形態も考えられる。マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラは食道バルーン制御システム400の制御と関連付けられてもよく、特に、食道バルーン制御システム400の制御の一部であってもよい。
【0238】
図6は、本発明の一実施形態に係る流体量監視部470による食道バルーンカテーテル45の流体量の生体内監視処理を示すフローチャートである。
【0239】
図6に示すフローチャートによる、食道バルーンカテーテル45内の流体量Vを監視するための流体量監視手順500は、ステップ502において、流体量監視部470が食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46内に存在する流体量(「初期流体量」)V
0で食道バルーン圧Pesoを測定し、それを初期食道バルーン圧Peso
0として記憶することから開始する。
【0240】
第2ステップ504において、流体量監視部470は、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46の測定用流体の既存の量Vを、第1比較測定点として特定される測定用流体の第1比較量V1に変更する。第1比較測定点として特定される測定用流体の比較量V1は、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46に現在存在する測定用流体の量V0よりも大きくても小さくてもよい。
【0241】
第2ステップでは、バルーンプローブ46内の測定用流体の量を増加させるために、バルーンプローブ46内に追加の測定用流体を送り出してもよい(V1>V0)。あるいは、第2ステップでは、バルーンプローブ46から測定用流体を排出または汲み出して、バルーンプローブ46内の測定用流体の分量を減少させてもよい(V1<V0)。
【0242】
バルーンプローブ46内の測定用流体量が、比較測定点として指定された測定用流体の第1比較量V1に設定された後、バルーンプローブ46内の食道バルーン圧Pesoがステップ506で測定され、第1比較食道バルーン圧Pesoiとして記憶される。
【0243】
次のステップ508において、流体量監視部470は、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46内の測定用流体の量を、第2比較測定点として指定された測定用流体の第2比較量V2に変更し、それにより、測定用流体の第1および第2比較量V1、V2同様、最初の流体量V0を含む一連の測定は、最初に食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46に存在した測定用流体V0の量よりも多い測定用流体の比較量V1,2と、最初に食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46に存在した測定用流体V0の量よりも少ない測定用流体の比較量V2,1との両方を含む。
【0244】
すなわち、第1比較測定点として指定された測定用流体の第1比較量V1が食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46に最初に存在する測定用流体V0の量よりも大きい(V1>V0)場合(ステップ502)、第2比較測定点として指定された測定用流体の第2比較量V2は、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46に最初に存在する測定用流体V0の量よりも小さい(V2<V0)ことが好ましく、つまりV2<V0<V1である。
【0245】
第1比較測定点として特定される測定用流体の第1比較量V1が、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46に最初に存在する測定用流体V0量よりも小さい(V1<Va)場合(ステップ502)、第2比較測定点として特定される測定用流体の第2比較量V2は、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46に最初に存在する測定用流体V0の量よりも大きい(V2>V0)ことが好ましく、V1<V0<V2である。
【0246】
バルーンプローブ46内の測定用流体の量が第2比較測定点として指定された測定用流体V2の第2比較量に設定された後、バルーンプローブ46内の食道バルーン圧Pesoがステップ510において測定され、第2比較食道バルーン圧Peso2として記憶される。
【0247】
次のステップ512において、第1および第2比較食道バルーン圧Peso
1、Peso
2は、最初の食道バルーン圧Peso
0と比較される。特に、第1および第2比較食道バルーン圧Peso
1、Peso
2と最初の食道バルーン圧Peso
0との間の差を判定する。
Δ
1=|Peso
1-Peso
0|
Δ
2=|Peso
2-Peso
0|
第1および第2比較食道バルーン圧Peso
1、Peso
2が初期食道バルーン圧Peso
0を中心とする所定範囲内にある場合、すなわち、第1比較食道バルーン圧p
1と初期食道バルーン圧Peso
0との差Δ
1と、第2比較食道バルーン圧Peso
2と初期食道バルーン圧Peso
0との差Δ
2と、が、所定の制限値よりも小さい場合、
Δ
1<Δ
Limit
および
Δ
2<Δ
Limit
また、初期食道バルーン圧Peso
0は、したがって初期状態の流体充填量V
0も、
図5b)の線aおよびbで区切られた測定点M3とM7との間の「最適範囲」にあり、圧力差dPは、バルーンプローブ46内の流体充填量の(小さな)変化に対して本質的に一定である。
【0248】
したがって、バルーンプローブ46内の流体充填量V0は、基本的に、最初の段階での所望の最適な流体充填量Voptに対応した。したがって、バルーンプローブ46内の流体充填量Vを調整する必要はない。
【0249】
したがって、次のステップ514では、バルーンプローブ46内の流体充填量Vが最初の段階でバルーンプローブ46内に存在する流体充填量V0に戻される。
【0250】
バルーンプローブ46内の流体充填量Vがバルーンプローブ46内に存在する流体充填量V0に初期状態で到達した後、流体量監視部470は、次のステップ516において、バルーンプローブ46内の流体充填量Vの調節が不要であることを換気コントローラ180に報告し、バルーンプローブ46内の流体充填量Vを変更することなく換気を継続することができる。
【0251】
あるいは、または、第1または第2比較食道バルーン圧Peso1,2と初期食道バルーン圧Peso0との間の差分Δ1,2を判定することに加えて、流体量監視部470は、ステップ510において、第1比較食道バルーン圧Pesoiと初期食道バルーン圧Peso0との間の変化の第1勾配grad1=Δp/ΔV、および第2比較食道バルーン圧Peso2と初期食道バルーン圧Peso0との間の変化の第2勾配grad2=Δp/ΔVを判定し、ステップ512においてこのように判定された勾配grad1,2を所定の勾配閾値gradlimitと比較してもよい。
【0252】
第1および第2勾配の絶対値が所定の勾配閾値よりも小さい場合、
|grad
1,2|<grad
limit
最初の食道バルーン圧Peso
0は、したがって、最初の状態における流体充填量V
0も、
図5b)の線aおよびbによって区切られる測定点M3およびM7の間の「最適範囲」にあり、ここで、圧力差dPは、バルーンプローブ46における流体充填量Vの(小さな)変化と共に本質的に一定であると仮定される。
【0253】
したがって、初期状態におけるバルーンプローブ46における流体の測定V0は、所望の流体充填量Voptに対応するので、バルーンプローブ46における流体充填量Vの調整は不要である。この場合も、ステップ514では、バルーンプローブ46内の流体充填量Vを、バルーンプローブ46内に存在する流体充填量V0に戻す。その後、流体量監視部470は、ステップ514において、バルーンプローブ46内の流体充填量Vの調整が不要であり、バルーンプローブ46内の流体充填量Vを変更せずに換気を継続できることを換気コントローラ180に通知する。
【0254】
しかしながら、第1または第2比較食道バルーン圧Peso
1,2と初期食道バルーン圧Peso
0との差Δ
1,2の少なくとも1つが所定の限界値Δ
limitよりも大きい場合、および/または、勾配grad
1,2の少なくとも1つが所定の勾配閾値よりも大きい(grad
1,2>grad
limit)場合、これは、初期状態におけるバルーンプローブ46内の液体充填量V
0が
図5b)の線aおよびbによって区切られる測定点M3とM7との間の好都合な範囲外であったことを示す。
【0255】
バルーンプローブ46内の流体充填量Vが、再度、
図5b)のa線とb線によって制限され、有利であると認識される測定点M3とM7との間の領域にあるように、バルーンプローブ46内の流体充填量Vを調整するために、このケースにおける流体量監視部470は、食道バルーン制御システム400の一部でもある流体充填システムの充填コントローラ490を、ステップ518において、充填コントローラ490によってバルーンプローブ46内の流体量Vが所定値V
optに再設定されるように制御する。所定流体充填量V
optは、初期状態の流体充填量V
0よりも大きくても小さくてもよい。
【0256】
バルーンプローブ46内の流体量Vを調整するためには、バルーンプローブ46内の流体量Vが、第1および第2比較量V1、V2の向きに、初期状態においてバルーンプローブ46内に存在する流体量V0に対して相対的にずれるように、充填コントローラ490を制御することが好ましく、この場合、より大きい絶対値|grad1,2|を有する勾配grad1,2が決定されている。
【0257】
さらに、ステップ520において、流体量監視部470は、バルーンプローブ46内の流体充填量Vの調整が必要であることを換気コントローラ180に報告する。次いで、換気コントローラ180は、換気を一時的に中断するか、または、バルーンプローブ46内の液体充填量Vが充填コントローラ490によって新しい所望の量Voptに変更されるまで、換気モードまたは換気パラメータを変更せずにそれを継続することができる。
【0258】
バルーンプローブ46内の流体充填量Vを調整した後、流体量監視手順500を繰り返して、流体量Vを監視してもよい。その結果、再び、バルーンプローブ46内の流体充填量Vを調整しなければならない場合、バルーンプローブ46内の流体充填量Vは、充填コントローラ490によって再度調整することができる。
【0259】
あるいは、
図3を参照して説明したように、食道バルーンカテーテル45の再較正100を行ってもよい。
【0260】
食道バルーンカテーテル45の新しい較正100は、特に、第1または第2比較食道バルーン圧Peso1,2と最初の食道バルーン圧Peso0との間の差Δ1,2のうちの少なくとも1つが、前述の(第1)限界値Δlimitよりも大きい第2所定限界値Δlimit2(Δlimit2>Δlimit)よりも大きい(Δ1,2>Δlimit2)場合、または、勾配grad1,2のうちの少なくとも1つが、前述の(第1)閾値gradlimitよりも大きい第2所定勾配閾値gradlimit2(gradlimit2>gradlimit)よりも大きい(grad1,2>gradlimit2)場合に実施してもよい。
【0261】
食道バルーンカテーテル45の再較正100は、充填コントローラ490によるバルーンプローブ46内の流体充填量Vの繰り返しの調整が所望の結果をもたらさない場合にも実行してもよい。
【0262】
食道バルーンカテーテル45の、繰り返すことのできる新たな較正100が所望の結果をもたらさない場合、食道バルーン制御システム400は、食道バルーンカテーテル45が交換されなければならないことを示す。
【0263】
図7は、所定V
defの測定用流体をバルーンプローブ46に充填するために、食道バルーン制御システム400および/または換気コントローラ180によって制御された後に、本実施形態による流体充填システムの充填コントローラ490によって実行される流体充填手順600の順序を示すフローチャートである。
【0264】
測定用流体の所定量V
defは、バルーンプローブ46に導入される測定用流体の量を調節するときの目標流体量の意味で、測定用流体のそれぞれの所望の充填量Vである。所定量の測定用流体は、最適な充填物であると考えられるものである。測定用流体の所定量V
defは、例えば、
図3に関連して前述したように、以前に実行された較正手順100によって決定されてもよい。
【0265】
充填コントローラ490は、「ハードウェア内」の独立した構成要素として実装することができる。あるいは、充填コントローラ490は、コンピュータプログラム製品として、すなわち、プロセッサ、特にマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ上で実行される対応するソフトウェアプログラムによって実装することもできる。この場合、ソフトウェアは、適切なローカルまたはネットワークアクセス可能な記憶媒体に記憶することができる。ソフトウェアは、コンピュータプログラムとして符号化された命令を含み、コンピュータプログラムはプロセッサのメモリにロードされ、機械言語に翻訳されると、プロセッサに、本明細書でより詳細に説明される手順を実行させる。もちろん、ハードウェアでの実装と、ソフトウェアでの実装との混合形態も考えられる。マイクロプロセッサまたはマイクロコンピュータは、流体充填システムの制御の一部であってもよく、流体充填システムの設計に応じて、食道バルーン制御システム400および/または換気コントローラ180に関連付けられてもよい。
【0266】
充填工程の完了後に達成されるバルーンプローブ46の充填状態の比較可能性および再現性を保証するために、充填コントローラ490は、バルーンプローブ46内に存在する測定用流体をバルーンプローブ46から除去するために、バルーンプローブを測定用流体で充填する前に空にする手順610を実行するように設計されてもよい。
【0267】
排出手順610は、例えば、環境との均圧が生じるまで、食道バルーン制御システム400(
図1参照)の弁420を開くことによって、加圧された測定用流体がバルーンプローブ46から流出することを可能にする充填コントローラ490を含んでもよい。
【0268】
バルーンプローブ46は、食道バルーン制御システム400のポンプ装置430(
図1参照)を使用して、より容易かつ迅速に空にすることができ、これは、所定の最終圧力に達するまでバルーンプローブ46から測定用流体を汲み出すために、流体充填システムの充填コントローラ490によって制御される。最終圧力は、負圧、すなわち周囲圧力よりも低い圧力であってもよい。
【0269】
バルーンプローブ46内に位置する測定用流体を除去するための排出手順610は、また、いわゆるゼロ体積VNullを設定するための手順620aを含んでもよい。「ゼロ体積VNull」とは、食道バルーンカテーテル45を測定用流体で所定に満たすことを指し、バルーンプローブ46への供給管のみが測定用流体で満たされるが、バルーンプローブ46自身は完全に折り畳まれており、測定用流体を含まない。
【0270】
ゼロ体積VNullが決定されると、ゼロ体積VNullは、それぞれの充填ステップにおいて再現可能な出発点としての役割を果たすことができる。ゼロ体積VNullは、特定の所与の圧力、例えば周囲圧力を指すことが考えられる。
【0271】
ゼロ体積VNullを設定するための手順620aは、特に、以下のステップを備えてもよい。
ステップ621a:バルーンプローブ46内の第1所定負圧up1に達するまで、バルーンプローブ46から測定用流体を引き抜くステップ、
ステップ622:第1所定負圧よりも大きく(up2>up1)、すなわち、より小さい負圧である、バルーンプローブ46内の第2所定負圧up2に達するまで、バルーンプローブ46内に測定用流体を導入するステップ、および、
ステップ623:所定の量の測定用流体をバルーンプローブ46内に導入するステップ。
バルーンプローブ46のバルーンは、ステップ621aにおいて第1負圧up1を設定するとき、およびステップ622aにおいて第2負圧up2を設定するときの両方において、完全に折り畳まれる。
【0272】
使用される食道バルーンカテーテル45の「死体積Vtot」が分かる場合、流体充填システムの充填コントローラ490は、ゼロ体積VNullを設定するための代替手順620bにおいて進んでもよく、これにより、食道バルーンカテーテル45は、最初のステップ622aで、可能な限り低い負圧up0まで食道バルーンカテーテル45、例えば、ポンプ装置430によって大部分が排出され、こうして達成された状態から、所定量の測定用流体V’defが食道バルーンカテーテル45に導入される(ステップ622b)。所定量の測定用流体V’defは、死体積Vtotに、ゼロ体積に対する基準圧力、例えば周囲圧力pambientを乗じたものに対応する。
V’def=Vtotxpambient
【0273】
死体積Vtotは、食道バルーンカテーテル45の具体的なパラメータ、例えば、食道バルーンカテーテル45の送達線66の長さおよび径に依存する。したがって、死体積Vtotは、一般に、それぞれの食道バルーンカテーテル45について、またはそれぞれの一連の食道バルーンカテーテル45について、事前に実験的に決定される。
【0274】
充填コントローラ490は、また、バルーンプローブ46内に位置する測定用流体を除去するための前記手順620a、620bのうちの1つが実行された後、バルーンプローブ46内で所定の過圧に達するまで、任意の後続のステップ630において、流体充填手順600がバルーンプローブ46内に測定用流体を導入するように設計されてもよい。
【0275】
所定の過圧opに達するまで、バルーンプローブ46内への測定用流体の導入は、バルーンプローブ46内の測定用流体の所定のVrefの実際の設定に先立って行われる。したがって、これは、前述のようにバルーンプローブ46を空にすることと、ステップ640においてバルーンプローブ46内の測定用流体の所定Vdefを設定することと、の間で実行される中間ステップ630である。
【0276】
この中間ステップ630において所定の過圧opに達した後、次のステップ640において、弁420を開いた状態で測定用流体を汲み出すことによって受動的に、または測定用流体を送り出すことによって能動的に、多くの測定用流体をバルーンプローブ46から除去して、バルーンプローブ46内の測定用流体の所定のVdetに対応する所定のバルーン圧pdefに達することができる。
【0277】
さらなる実施形態では、食道バルーン制御システム400は、基準食道バルーン圧Pesobaseを連続的にまたは繰り返し検出し(ステップ650)、検出された基準食道バルーン圧Pesobaseを所定の基準レベルPesoPNと比較し(ステップ660)、基準食道バルーン圧Pesobaseが所定の基準レベルPesoPNと比較して少なくとも所定の量だけ低下したと判定されたときに、バルーンプローブ46を測定用流体で充填するための前述の流体充填手順600を実行するように充填コントローラ490を制御するように設計されてもよい。基準食道バルーン圧Pesobaseが食道バルーン圧Pesoの基準として常時使用される場合、バルーンプローブ46は、持続換気中に充填されてもよい。
【0278】
「基準食道バルーン圧Pesobase」とは、多数の連続した通気周期にわたって変化せず、したがって、バルーンプローブの充填状態の変化の尺度となることができる圧力または圧力差を指す。
【0279】
基準食道バルーン圧Pesobaseは、特に、圧力判定装置300によって検出され、換気中の吸気および呼気過程を反映する換気プロファイルと重ね合わされない食道バルーン圧Pesoである。
【0280】
例えば、連続する換気周期の呼気相の終わりに測定される食道バルーン圧Peso_eeは、「基準食道バルーン圧」Pesobaseとして定義することができる。あるいは、連続する換気周期の吸気相の終わりに測定される食道バルーン圧Peso_eiを、基準食道バルーン圧Pesobaseとして定義してもよい。
【0281】
このように設計された充填コントローラ490は、例えば、前述の較正手順100によって決定され設定されたバルーンプローブ46の充填状態が安定したままであるかどうかを連続的に監視する。充填コントローラ490は、現在決定されている基準食道バルーン圧Pesobaseが所定の基準値PesoPNから所定以上ずれている場合に、バルーンプローブ46における液体充填量Vの対応する修正に反応する。
【0282】
このようにして、少なくとも、バルーンプローブ46からの測定用流体の損失が所定の限界を超えない限り、漏れに起因して生じるような、バルーンプローブ46内の測定用流体の損失を補償することができる。
【0283】
このような充填コントローラ490は、例えば、測定された基準食道バルーン圧Pesoが所定量以上減少する期間を監視することによって、または、測定された基準食道バルーン圧Pesobaseが所定期間後にどれだけ減少したかを監視することによって、喪失を検出すること、または漏出率を推定することもできる。
【0284】
測定用流体の損失量または漏出率が分かる場合、バルーンプローブ46内の測定用流体の損失は、所定量の測定用流体をバルーンプローブ46内に再充填することによって補償することができる。所定量は、予め決定された損失量または漏出率から得てもよく、特に、所定量は所定の損失量または漏出率に、損失が判定された対応する期間を乗算することから得てもよい。
【0285】
測定用流体の補充は、また、バルーンプローブ46への測定用流体の導入に関連する食道バルーン圧Pesoの上昇が監視され、所定の食道バルーン圧Pesosollに達するとすぐに補充が終了するように実行されてもよい。
【0286】
判定された損失量または漏出率が、交換できない所定の閾値を超える場合、食道バルーン制御システム400は、食道バルーンカテーテル45を交換する必要があることを示す。
【0287】
上述した通り、本発明による換気装置10の換気コントローラ180および食道バルーン制御システム400は、換気コントローラ180が食道バルーン制御システム400を自動的に制御できるように、および/または食道バルーン制御システム400が換気コントローラ180を自動的に制御できるように設計される。
【0288】
換気コントローラ180および食道バルーン制御システム400は、特に、互いに双方向に通信し、特に相互作用するように設計されてもよい。
【0289】
換気コントローラ180が食道バルーン制御システム400の自動制御のために設計されるという構成は、換気コントローラ180が、換気それ自体に関して意図された制御および/または調整機能に加えて、特にそのバルーンプローブ46に関して、食道バルーンカテーテル45の制御および/または調整機能も有することを意味する。
【0290】
これは、特に、換気コントローラ180が食道バルーン制御システム400を制御して、食道バルーン制御システム400が所定の手順を開始することを含む。これらの所定の手順は、特に、前述のように、バルーンプローブ46を較正するための手順(較正コントローラ450)、バルーンプローブ46に測定用流体を充填するための手順(充填コントローラ490)、および/または、バルーンプローブの充填状態を連続的に監視するための手順(流体量監視部470)を含んでもよい。
【0291】
追加的または代替的に、換気コントローラ180は、食道バルーン制御システム400によって処理される手順の順序に対して、制御および/または調整の影響を及ぼしてもよい。そのような制御または調整の影響は、例えば、換気コントローラ180が現在設定されている換気パラメータの値を食道バルーン制御システム400に提供し、食道バルーン制御システム400が、これらの値に基づいて、バルーンプローブ46の食道バルーンに作用する所定の制御手順、特に、上述の制御手順の少なくとも1つを開始、制御、調整、および/または終了することを含んでもよい。
【0292】
換気コントローラ180と食道バルーン制御システム400との間の双方向通信および/または相互作用によって、換気コントローラ180と食道バルーン制御システム400との間の最適な相互作用を達成することができ、実行されるそれぞれの手順が調整され、同期される。特に、食道バルーンカテーテル45に作用する食道バルーン制御システム400によって実行される制御手順は、継続的な換気を中断することなく実行することができる。
【0293】
また、換気コントローラ180は、双方向接続150を介して、食道バルーンカテーテル45のための特定の制御手順の実行に重要な情報を食道バルーン制御システム400に提供してもよい。これにより、食道バルーン制御システム400において制御手順を実行するときに、換気パラメータの変更または換気中に生じる検出された変数を考慮に入れることが可能になる。制御手順は、特に、バルーンプローブ46を較正するための、バルーンプローブ46を充填するための、およびバルーンプローブ46内の流体の量を監視するための、上記制御手順を含んでもよい。
【0294】
バルーン制御装置400において制御処置を実行する際、換気中に検出された換気パラメータまたは変数の変化をどのように考慮することができるかについては、例えば、複数の換気モードにおいて、換気コントローラ180が呼吸から呼吸までの機械的換気中に適用される1回換気量Vtidalを調整または再設定することがあげられる。したがって、これらの換気方式では、1回換気量Vtidalは、換気時間全体にわたって一定のままである換気パラメータではなく、呼吸から呼吸の間で変化する数値である。
【0295】
換気モードに応じて、呼吸の代わりとして、換気ストローク、呼吸サイクル、または換気サイクルが言及される。したがって、以下では、呼吸、換気ストローク、呼吸サイクル、および換気サイクルという表現を同義語として使用する。
【0296】
各呼吸に適用される1回換気量Vtidalは、吸気相の終わりと呼気相の終わりとの間の肺の圧力差を表す1回換気圧ptidalなどの他の量にも影響する。それぞれ与えられる1回換気量Vtidalは、食道バルーン制御システム400の制御手順の実行に影響を及ぼしてもよい。
【0297】
例えば、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46内の測定用流体の最適Voptの生体内較正では、較正中に呼気圧ptidalが変化しないと仮定する。したがって、較正中、それぞれの呼吸に適用される1回換気量Vtidalは、できるだけ一定のままとなる。
【0298】
このため、食道バルーンカテーテル45のバルーンプローブ46の較正は、適用される一回換気量Vtidalが一定に保たれる換気モードにおいてのみ可能である。
【0299】
しかしながら、換気コントローラ180と食道バルーン制御システム400との間の双方向通信を用いて本発明の実施形態に従って設計された換気装置10では、換気コントローラ180が、それぞれの呼吸において与えられる1回換気量Vtidalの大きさを食道バルーン制御システム400に送信することができる。その結果、バルーンプローブ46に供給される1回換気量Vtidalの変化を、食道バルーンカテーテル45の較正の際に考慮してもよい。
【0300】
これは、例えば、呼気相の終わりの食道バルーン圧Peso_eiと呼気相の終わりの食道バルーン圧Peso_eeとの差分の検出値を、それぞれの呼気に適用される1回換気量Vtidalに関連付けることによって行うことができる。特に、圧力差分と1回換気量Vtidalとの商を基準として用いることができる。これにより、一回換気量Vtidalが一定ではない換気モードでの継続的な換気中であっても、バルーンプローブ46の較正が可能になる。
【0301】
呼気終末陽圧PEEPまたは最大気道圧Paw_maxなどの換気パラメータの自動設定に加えて、換気装置10は、換気に関する情報の大部分が自動化された表示のために設計されてもよい。例えば、経肺圧Ptpなどの特定の換気パラメータを、換気装置10のディスプレイ上に表示してもよい。任意選択的に、食道バルーンカテーテル45が通常モードで操作されるか特殊モードで操作されるか、特に、較正手順100、流体量監視手順500、および/または流体充填手順600で操作されるかの情報などの追加の情報を表示してもよい。
【0302】
換気コントローラ180は、特に、圧力判定システム300によって提供される圧力値に従って、食道バルーン制御システム400を制御および/または調節するように設計されてもよい。この相互作用は、特に、双方向であってもよい。この場合、換気コントローラ180および食道バルーン制御システム400を含むシステム全体の知能は、大部分が換気コントローラ180の側に位置してもよく、この場合、換気コントローラ180は、食道バルーンカテーテル45に関する制御および/または調整手順、例えば、食道バルーンカテーテル45の較正100、バルーンプローブ46の食道バルーン内の流体の量の監視(流体量監視手順500)、およびバルーンプローブ46の食道バルーンを流体で補充または充填すること(流体充填手順600)を含む、すべての制御および/または調整手順を実行する。そのような構成では、食道バルーン制御システム400は、換気コントローラ180によって食道バルーン制御システム400に提供される制御および/または調節コマンドを実行するようにのみ構成される。
【0303】
他の実施形態では、システム10全体の知能のより大きな部分が食道バルーン制御システム400において実現されてもよい。特に、そのような実施形態では、食道バルーン制御システム400は、食道バルーンカテーテル45に関連する制御/調整手順、例えば、食道バルーンカテーテル45の較正100、流体量監視部470によるバルーンプローブ46の食道バルーン内の流体量の監視500、および充填コントローラ490によるバルーンプローブ46の食道バルーン内の流体量の可能な補充600を、換気コントローラ180によって行うように要求された(「トリガされた」)後に、大部分を独立して実行してもよい。
【0304】
これは、特に、前述のように、換気コントローラ180から食道バルーン制御システム400に送信され、食道バルーンカテーテル45に関する制御および/または調整手順を実行するときに、食道バルーン制御システムによって考慮されるパラメータおよび測定変数を含んでもよい。逆に、前述のように、食道バルーン制御システム400から換気コントローラ180に送信されるパラメータおよび測定値に基づいて換気を制御し、必要に応じて調整するために、パラメータおよび測定値を食道バルーン制御システム400から換気コントローラ180に送信してもよい。
【0305】
圧力判定システム300が食道バルーン制御システム400と少なくとも部分的に関連付けられる実施形態では、食道バルーン制御システム400は、バルーンプローブ46内で検出された食道バルーン圧pesoを反映する信号を換気コントローラ180に提供するように構成されてもよい。
【0306】
さらなる実施形態では、システム全体の知能および制御のさらに大きな部分を、食道バルーン制御システム400において実現してもよい。
【0307】
したがって、食道バルーン制御システム400が換気コントローラ180の自動制御のために設計されているという特徴は、食道バルーン制御システム400がバルーンプローブ46内で検出された食道バルーン圧pesoを表す信号の伝達に加えて、換気コントローラ180に対して制御/調整機能を実行することを表す。
【0308】
例えば、食道バルーン制御システム400は、換気コントローラ180を制御して、所定の手順を開始してもよい。追加的または代替的に、食道バルーン制御システム400は、換気コントローラ180によって実行される特定の手順の過程を制御および/または調整してもよい。例えば、食道バルーン制御システム400は、換気コントローラ180に、現在設定されている換気パラメータの値を一定期間「凍結」または保持するように命令してもよい。
【0309】
現在設定されている換気パラメータを「凍結」またはロックすることによって、食道バルーン制御システム400は、食道バルーン制御システム400が特定の手順、特にバルーンプローブ46を較正するための100、バルーンプローブ46を充填するための(流体充填手順600)、および/またはバルーンプローブ46内の流体の量を監視するための前述の手順(流体量監視手順500)のうちの1つを実行している間に、一定時間、換気コントローラ180によって凍結/ロックされた換気パラメータを変更できないようにする。
【0310】
この目的のために、食道バルーン制御システム400は、食道バルーン制御手順100、500、600の起動後または開始後に、食道バルーン制御手順が終了するまで、所定の換気パラメータおよび/または換気モードの変更を許容しないように、換気コントローラ180を制御してもよい。このようにして、実行された食道バルーン制御手順100、500、600と、食道バルーン制御手順100、500、600の実行および/または進行中の換気に影響を及ぼし得る換気パラメータおよび/または換気モードの同時変化と、の間の望ましくない相互作用を回避してもよい。
【0311】
また、換気コントローラ180は、予定された食道バルーン制御手順100、500、600が完了するまで、食道バルーン制御手順100、500、600の予定された起動または開始の前の所定の時間に開始する、所定の換気パラメータ192A、192B、192C、192Dおよび/または換気モード190A、190B、190C、190Dの変更を可能にしないように構成されてもよい。換気コントローラ180の遮断を防止するために、換気コントローラ180は、食道バルーン制御手順100、500、600が所定の時間内に開始されていない場合、所定の換気パラメータ192A、192B、192C、192Dおよび/または換気モード190A、190B、190C、190Dの変更を再び可能にしてもよい。
【0312】
所定の換気パラメータ192A、192B、192C、192Dおよび/または換気モード190A、190B、190C、190Dの変更が食道バルーン制御手順100、500、600の開始前の所定の時間に、例えば、対応するユーザ入力によって強制される場合、換気コントローラ180および/または食道バルーン制御システム400は、警告を生成することができる。追加的または代替的に、食道バルーン制御システム400は、食道バルーン制御手順100、500、600の開始を遅らせて、食道バルーン制御手順100、500、600が換気パラメータ192A、192B、192C、192Dおよび/または換気モード190A、190B、190C、190Dの変更によって乱されることなく進行するようにしてもよい。
【0313】
換気コントローラ180および/または食道バルーン制御システム400は、特に、食道バルーン制御手順100、500、600を1つ以上の所定の時間または所定の時間間隔で開始するように構成されてもよい。このようにして、換気装置10の動作をさらに自動化することができ、動作信頼性を向上させることができる。
【0314】
換気コントローラ180および/または食道バルーン制御システム400は、特に、食道バルーン制御手順100、500、600の開始前の所定の期間内に所定の換気パラメータ192A、192B、192Cおよび/または換気モード190A、190B、190C、190Dの変更が生じた場合に、換気パラメータ192A、192B、192C、192Dおよび/または換気モード190A、190B、190Dの変更が完了するまで食道バルーン制御手順100、500、600の開始を延期し、食道バルーン制御手順100、500、600が、換気パラメータ192A、192B、192C、192Dおよび/または換気モード190A、190B、190C、190Dの変更による影響および/または妨害を受けることなく実施することができるように構成されてもよい。
【0315】
また、換気コントローラ180および/または食道バルーン制御システム400は、食道バルーン制御手順100、500、600が、少なくとも1つの所定の換気パラメータ192A、192B、192C、192Dおよび/または換気モード190A、190B、190C、190Dの変更によって影響を受けることを抑制するために、選択された、および、すでに開始された食道バルーン制御手順100、500、600が完了するまで、選択された食道バルーン制御手順100、500、600の前、またはそれらの手順の間に所定の時間間隔で行われることになる、少なくとも1つの所定の換気パラメータ192A、192B、192C、192Dおよび/または換気モード190A、190B、190C、190Dの変更を延期してもよい。
【0316】
食道バルーン制御システム400と換気コントローラ180との間の通信は、それを通して食道バルーン制御システム400が換気コントローラ180に作用し、換気コントローラ180と食道バルーン制御システム400との間の相互作用を改善する。これは、換気コントローラ180および食道バルーン制御システム400によって実行される手順を互いに協調させ、同期された方法で実行させるためである。
【0317】
また、本発明に従って設計された換気装置10により、食道バルーンカテーテル45によって胸膜腔44に広がる圧力Pplをより正確に考慮し、食道バルーンカテーテル45によって供給される測定値の、連続換気中、特に大幅に自動化された連続換気中に変化する環境条件へ柔軟に適合できるようになる。
【0318】
本発明によれば、換気装置10に属する換気コントローラ180と、食道バルーンカテーテル45に属する食道バルーン制御システム400と、が双方向に通信するように設計されている場合、換気コントローラ180と食道バルーン制御システム400との連続的な相互監視が可能である。これにより、誤動作を早期に検出し、訂正することができる。
【0319】
さらに、換気パラメータ、制御および調整変数を、手動介入を必要とせずに、継続的な換気中に環境条件の変化に適合させてもよい。特に、本発明による換気装置10では、換気の特定の機能および/または手順を再較正および/または再開するために、換気を中断する必要はない。また、継続的な換気を中断することなく、バルーンプローブ46内の測定用流体の充填量Vを調整することも可能である。
【0320】
また、換気および換気を実行する全体的なシステムの適応により、進行中の換気を中断することなく、較正手順100の一部として、食道バルーンカテーテル45を完全に再較正してもよい。継続的な換気を中断することのないこのような再較正は、本発明による換気装置10を用いて実現可能であり、換気が、例えば、本出願人によって開発された適応型補助換気(ASV換気)やINTELLiVENT-ASVモードのような、閉制御ループによる換気の完全自動換気モードによって実施される場合であっても実現可能である。
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-07-01
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【国際調査報告】