(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】システイン変異抗体を含むTLRアゴニスト免疫複合体、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241024BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241024BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
A61K45/00
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K31/55
A61K31/4745
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524982
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022048224
(87)【国際公開番号】W WO2023076599
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519211672
【氏名又は名称】ボルト バイオセラピューティクス、インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アッカーマン, シェリー エリン
(72)【発明者】
【氏名】アロンソ, マイケル エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】グリューネバルト, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】クディルカ, ロマス
(72)【発明者】
【氏名】サフィナ, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】サルマ, ガナパティ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA17
4C084MA65
4C084MA66
4C084MA70
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZC512
4C085AA13
4C085BB11
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC31
4C086CB05
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA11
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA41
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、1つ以上のTLRアゴニスト部分にリンカーによって共有結合したシステイン変異抗体を含む免疫複合体を提供する。本発明はさらに、免疫複合体によりがんを治療する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のTLRアゴニスト部分にリンカーによって共有結合したシステイン変異抗体を含む、免疫複合体。
【請求項2】
前記システイン変異抗体は、ヒンジ領域にシステイン変異を含む、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項3】
前記システイン変異抗体は、EU方式に従って番号が付けられたK145C、S114C、E105C、S157C、L174C、G178C、S159C、V191C、L201C、S119C、V167C、I199C、T129C、Q196C、A378C、K149C、K188C、及びA140Cから成る群から選択されるシステイン変異を含む、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項4】
前記システイン変異抗体は、以下からなる群から選択される配列に軽鎖システイン変異を含む、請求項3に記載の免疫複合体。
【表1】
【請求項5】
前記システイン変異抗体の重鎖は、配列番号20の配列を有する、請求項4に記載の免疫複合体。
【請求項6】
前記システイン変異抗体の軽鎖は、配列番号24、25、26、27、28、29、30、31、及び32から選択される、請求項4に記載の免疫複合体。
【請求項7】
前記システイン変異抗体は、以下からなる群から選択される配列に重鎖システイン変異を含む、請求項3に記載の免疫複合体。
【表2】
【請求項8】
前記システイン変異抗体の軽鎖は、配列番号21の配列を有する、請求項7に記載の免疫複合体。
【請求項9】
前記システイン変異抗体の重鎖は、配列番号33、34、35、36、37、38、39、40、及び41から選択される、請求項7に記載の免疫複合体。
【請求項10】
前記システイン変異抗体は、以下からなる群から選択される配列に軽鎖システイン変異を含む、請求項3に記載の免疫複合体。
【表3】
【請求項11】
前記システイン変異抗体の重鎖は、配列番号22の配列を有する、請求項10に記載の免疫複合体。
【請求項12】
前記システイン変異抗体の軽鎖は、配列番号42、43、及び44から選択される、請求項10に記載の免疫複合体。
【請求項13】
前記システイン変異抗体は、以下の配列に重鎖システイン変異を含む、請求項3に記載の免疫複合体。
【表4】
【請求項14】
前記システイン変異抗体の軽鎖は、配列番号23の配列を有する、請求項13に記載の免疫複合体。
【請求項15】
前記システイン変異抗体の重鎖は、配列番号45の配列を有する、請求項13に記載の免疫複合体。
【請求項16】
前記システイン変異抗体は、PD-L1、HER2、CEA、及びTROP2から選択される抗原に結合する、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項17】
前記システイン変異抗体は、HER2に結合し、
配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR-L3と、配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR-H3とを含む、請求項16に記載の免疫複合体。
【請求項18】
前記システイン変異抗体は、TROP2に結合し、
a)配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR-L3と、配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR-H3とを含むか、または
b)配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号77のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号79のアミノ酸配列を含むCDR-L3と、配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号84のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H3とを含む、請求項16に記載の免疫複合体。
【請求項19】
前記システイン変異抗体は、PD-L1に結合し、
配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号93のアミノ酸配列を含むCDR-L3と、配列番号96のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号98のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号100のアミノ酸配列を含むCDR-H3とを含む、請求項16に記載の免疫複合体。
【請求項20】
前記システイン変異抗体は、CEAに結合し、
配列番号103のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号105のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号107のアミノ酸配列を含むCDR-L3と、配列番号110のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号112のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号114のアミノ酸配列を含むCDR-H3とを含む、請求項16に記載の免疫複合体。
【請求項21】
式I:
Ab-[L-D]
p I
またはその薬学的に許容される塩を有し、
式中、
Abは、前記システイン変異抗体であり;
pは、1~8の整数であり;
Lは、前記リンカーであり;
Dは、式a~f:
【化1】
から選択される前記TLRアゴニスト部分であり;
X
1、X
2、X
3及びX
4は、独立して、結合、C(=O)、C(=O)N(R
5)、O、N(R
5)、S、S(O)
2、及びS(O)
2N(R
5)から成る群から選択され;
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
3~C
12カルボシクリル、C
6~C
20アリール、C
2~C
9ヘテロシクリル、及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、及びヘテロアリールは、独立して、任意に
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-OR
5;
-(C
3~C
12カルボシクリル);
-(C
3~C
12カルボシクリル)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-NR
5-C(=NR
5)NR
5-*;
-(C
6~C
20アリール);
-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-C
1~C
12アルキルジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-(C
2~C
20ヘテロシクリル);
-(C
2~C
20ヘテロシクリル)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-NR
5-C(=NR
5a)NR
5-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-NR
5-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリール);
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-NR
5-C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)-*;
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-C(=O)N(R
5)
2;
-C(=O)N(R
5)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)N(R
5)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=O)R
5;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=O)N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)CO
2R
5;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=NR
5a)N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5C(=NR
5a)R
5;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
8アルキルジイル)-NR
5(C
2~C
5ヘテロアリール);
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;
-N(R
5)
2;
-N(R
5)-*;
-N(R
5)C(=O)R
5;
-N(R
5)C(=O)-*;
-N(R
5)C(=O)N(R
5)
2;
-N(R
5)C(=O)N(R
5)-*;
-N(R
5)CO
2R
5;
-N(R
5)CO
2(R
5)-*;
-NR
5C(=NR
5a)N(R
5)
2;
-NR
5C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-NR
5C(=NR
5a)R
5;
-N(R
5)C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-N(R
5)-(C
2~C
5ヘテロアリール);
-N(R
5)-S(=O)
2-(C
1~C
12アルキル);
-O-(C
1~C
12アルキル);
-O-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-O-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-OC(=O)N(R
5)
2;
-OC(=O)N(R
5)-*;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;及び
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-OHから選択される1つ以上の基で置換され;
またはR
2及びR
3は、一緒に5もしくは6員ヘテロシクリル環を形成し;
R
5は、H、C
6~C
20アリール、C
3~C
12カルボシクリル、C
2~C
20ヘテロシクリル、C
6~C
20アリールジイル、C
1~C
12アルキル、及びC
1~C
12アルキルジイルから成る群から選択されるか、または2つのR
5基は一緒に5員もしくは6員ヘテロシクリル環を形成し;
R
5aは、C
6~C
20アリール及びC
1~C
20ヘテロアリールから成る群から選択され;
ここで、アスタリスク*はLの結合部位を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4の1つがLに結合し;
Lは、
-C(=O)-PEG-;
-C(=O)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-C(=O)-PEG-O-;
-C(=O)-PEG-O-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N
+(R
6)
2-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2-C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C
1-C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-;
-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-;
-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O);
-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-N(R
6)C(=O)-(C
2-C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-SS-(C
1-C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-;及び
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-から成る群から選択される前記リンカーであり;
R
6は、独立してHまたはC
1~C
6アルキルであり;
PEGは、式:-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-を有し;mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり;
Glucは、式:
【化2】
を有し;
PEPは、式:
【化3】
を有し、AAは独立して天然のまたは非天然のアミノ酸側鎖から選択され、またはAAの1以上と隣接する窒素原子とが5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示し;
Cycは、F、Cl、NO
2、-OH、-OCH
3及び以下の構造を有するグルクロン酸から選択される1以上の基によって任意で置換されるC
6-C
20アリールジイル及びC
1-C
20ヘテロアリールジイルから選択され、
【化4】
R
7は-CH(R
8)O-、-CH
2-、-CH
2N(R
8)-、及び-CH(R
8)O-C(=O)-から成る群から選択され、R
8はH、C
1-C
6アルキル、C(=O)-C
1-C
6アルキル、及び-C(=O)N(R
9)
2から選択され、R
9は独立してH、C
1-C
12アルキル、及び-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-OHから成る群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR
9基は一緒に5もしくは6員環のヘテロシクリル環を形成し;
yは2~12の整数であり;
zは0または1であり;
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール及びヘテロアリールジイルは任意に、F、Cl、Br、I、-CN、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH=CH
2、-C≡CH、-C≡CCH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2OH、-CH
2OCH
3、-CH
2CH
2OH、-C(CH
3)
2OH、-CH(OH)CH(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CH
2OH、-CH
2CH
2SO
2CH
3、-CH
2OP(O)(OH)
2、-CH
2F、-CHF
2、-CF
3、-CH
2CF
3、-CH
2CHF
2、-CH(CH
3)CN、-C(CH
3)
2CN、-CH
2CN、-CH
2NH
2、-CH
2NHSO
2CH
3、-CH
2NHCH
3、-CH
2N(CH
3)
2、-CO
2H、-COCH
3、-CO
2CH
3、-CO
2C(CH
3)
3、-COCH(OH)CH
3、-CONH
2、-CONHCH
3、-CON(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CONH
2、-NH
2、-NHCH
3、-N(CH
3)
2、-NHCOCH
3、-N(CH
3)COCH
3、-NHS(O)
2CH
3、-N(CH
3)C(CH
3)
2CONH
2、-N(CH
3)CH
2CH
2S(O)
2CH
3、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH
3、-NHC(=NH)NH
2、-NHC(=O)NH
2、-NO
2、=O、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-OCH
2CH
2OCH
3、-OCH
2CH
2OH、-OCH
2CH
2N(CH
3)
2、-O(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
mCO
2H、-O(CH
2CH
2O)
nH、-OP(O)(OH)
2、-S(O)
2N(CH
3)
2、-SCH
3、-S(O)
2CH
3、及び-S(O)
3Hから独立して選択される1以上の基で置換される、請求項1~20のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項22】
前記TLRアゴニスト部分は、式a:
【化5】
を有する、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項23】
前記TLRアゴニスト部分は、式b:
【化6】
を有する、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項24】
前記TLRアゴニスト部分は、式c:
【化7】
を有する、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項25】
前記TLRアゴニスト部分は、式d:
【化8】
を有する、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項26】
前記TLRアゴニスト部分は、式e:
【化9】
を有する、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項27】
前記TLRアゴニスト部分は、式f:
【化10】
を有する、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項28】
X
1は結合であり、R
1はHである、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項29】
X
2は結合であり、R
2はC
1~C
8アルキルである、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項30】
X
2及びX
3はそれぞれ結合であり、R
2及びR
3は、C
1~C
8アルキル、-O-(C
1~C
12アルキル)、-(C
1~C
12アルキルジイル)-OR
5、-(C
1~C
8アルキルジイル)-N(R
5)CO
2R
5、-(C
1~C
12アルキル)-OC(O)N(R
5)
2、-O-(C
1~C
12アルキル)-N(R
5)CO
2R
5、及び-O-(C
1~C
12アルキル)-OC(O)N(R
5)
2から独立して選択される、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項31】
R
2は、C
1~C
8アルキルであり、R
3は、-(C
1~C
8アルキルジイル)-N(R
5)CO
2R
4であることを含む、請求項30に記載の免疫複合体。
【請求項32】
R
2は、-CH
2CH
2CH
3であり、R
3は、-CH
2CH
2CH
2NHCO
2(t-Bu)、-OCH
2CH
2NHCO
2(シクロブチル)、及び-CH
2CH
2CH
2NHCO
2(シクロブチル)から選択される、請求項30に記載の免疫複合体。
【請求項33】
R
2及びR
3は、それぞれ独立して-CH
2CH
2CH
3、-OCH
2CH
3、-OCH
2CF
3、-CH
2CH
2CF
3、-OCH
2CH
2OH、及び-CH
2CH
2CH
2OHから選択される、請求項30に記載の免疫複合体。
【請求項34】
R
2及びR
3は、それぞれ-CH
2CH
2CH
3である、請求項30に記載の免疫複合体。
【請求項35】
R
2は、-CH
2CH
2CH
3であり、R
3は、-OCH
2CH
3である、請求項30に記載の免疫複合体。
【請求項36】
X
3-R
3は、
【化11】
から成る群から選択される、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項37】
R
2またはR
3は、Lに結合している、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項38】
X
3-R
3-Lは、
【化12】
から成る群から選択され、波線はNとの結合点を示す、請求項37に記載の免疫複合体。
【請求項39】
R
4は、C
1~C
12アルキルである、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項40】
R
4は、-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*であり、アスタリスク*は、Lの結合部位を示す、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項41】
Lは、-C(=O)-PEG-または-C(=O)-PEG-C(=O)-である、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項42】
Lは、前記抗体のシステインチオールに結合している、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項43】
前記PEGについて、mは1または2であり、nは2~10の整数である、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項44】
nは10である、請求項43に記載の免疫複合体。
【請求項45】
Lは、PEPを含み、PEPはジペプチドであり、式:
【化13】
を有する、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項46】
AA
1及びAA
2は、H、-CH
3、-CH(CH
3)
2、-CH
2(C
6H
5)、-CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2、-CH
2CH
2CH
2NHC(NH)NH
2、-CHCH(CH
3)CH
3、-CH
2SO
3H、及び-CH
2CH
2CH
2NHC(O)NH
2から独立して選択されるか、またはAA
1及びAA
2は、5員環プロリンアミノ酸を形成する、請求項45に記載の免疫複合体。
【請求項47】
AA
1は、-CH(CH
3)
2であり、AA
2は、-CH
2CH
2CH
2NHC(O)NH
2である、請求項45に記載の免疫複合体。
【請求項48】
AA
1及びAA
2は、GlcNAcアスパラギン酸、-CH
2SO
3H、及び-CH
2OPO
3Hから独立して選択される、請求項45に記載の免疫複合体。
【請求項49】
PEPは、式:
【化14】
を有し、ここでAA
1及びAA
2は独立して、天然に存在するアミノ酸の側鎖から選択される、請求項45に記載の免疫複合体。
【請求項50】
Lは、PEPを含み、PEPはトリペプチドであり、式:
【化15】
を有する、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項51】
Lは、PEPを含み、PEPはテトラペプチドであり、式:
【化16】
を有する、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項52】
AA
1はAbu、Ala及びValから成る群から選択され;
AA
2はNle(O-Bzl)、Oic及びProから成る群から選択され;
AA
3はAla及びMet(O)
2から成る群から選択され;
AA
4はOic、Arg(NO
2)、Bpa、及びNle(O-Bzl)から成る群から選択される、請求項51に記載の免疫複合体。
【請求項53】
Lは、PEPを含み、PEPはAla-Pro-Val、Asn-Pro-Val、Ala-Ala-Val、Ala-Ala-Pro-Ala、Ala-Ala-Pro-Val、及びAla-Ala-Pro-Nvaから成る群から選択される、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項54】
Lは、PEPを含み、PEPは、構造:
【化17】
から選択される、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項55】
Lは、構造:
【化18】
から選択され、波線はR
5との結合を示す、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項56】
TLRアゴニスト-リンカー化合物とのシステイン変異抗体のコンジュゲーションによって調製される、免疫複合体。
【請求項57】
前記TLRアゴニスト-リンカー化合物は、式a~f:
【化19】
から選択され;
X
1、X
2、X
3及びX
4は、独立して、結合、C(=O)、C(=O)N(R
5)、O、N(R
5)、S、S(O)
2、及びS(O)
2N(R
5)から成る群から選択され;
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
3~C
12カルボシクリル、C
6~C
20アリール、C
2~C
9ヘテロシクリル、及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、及びヘテロアリールは、独立して、任意に
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-OR
5;
-(C
3~C
12カルボシクリル);
-(C
3~C
12カルボシクリル)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-NR
5-C(=NR
5)NR
5-*;
-(C
6~C
20アリール);
-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-C
1~C
12アルキルジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-(C
2~C
20ヘテロシクリル);
-(C
2~C
20ヘテロシクリル)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-NR
5-C(=NR
5a)NR
5-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-NR
5-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリール);
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-NR
5-C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)-*;
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-C(=O)N(R
5)
2;
-C(=O)N(R
5)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)N(R
5)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=O)R
5;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=O)N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)CO
2R
5;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=NR
5a)N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5C(=NR
5a)R
5;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
8アルキルジイル)-NR
5(C
2~C
5ヘテロアリール);
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;
-N(R
5)
2;
-N(R
5)-*;
-N(R
5)C(=O)R
5;
-N(R
5)C(=O)-*;
-N(R
5)C(=O)N(R
5)
2;
-N(R
5)C(=O)N(R
5)-*;
-N(R
5)CO
2R
5;
-N(R
5)CO
2(R
5)-*;
-NR
5C(=NR
5a)N(R
5)
2;
-NR
5C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-NR
5C(=NR
5a)R
5;
-N(R
5)C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-N(R
5)-(C
2~C
5ヘテロアリール);
-N(R
5)-S(=O)
2-(C
1~C
12アルキル);
-O-(C
1~C
12アルキル);
-O-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-O-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-OC(=O)N(R
5)
2;
-OC(=O)N(R
5)-*;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-S(=O)
2-(C
2-C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1-C
12アルキルジイル)-NR
5-*;及び
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-OHから選択される1つ以上の基で置換され;
またはR
2及びR
3は、一緒に5もしくは6員ヘテロシクリル環を形成し;
R
5は、H、C
6~C
20アリール、C
3~C
12カルボシクリル、C
2~C
20ヘテロシクリル、C
6~C
20アリールジイル、C
1~C
12アルキル、及びC
1~C
12アルキルジイルから成る群から選択されるか、または2つのR
5基は一緒に5員もしくは6員ヘテロシクリル環を形成し;
R
5aは、C
6~C
20アリール及びC
1~C
20ヘテロアリールから成る群から選択され;
ここで、アスタリスク*はLの結合部位を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4の1つがLに結合し;
Lは、
Q-C(=O)-PEG-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
Q-C(=O)-PEG-O-;
Q-C(=O)-PEG-O-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-N(R
6)-;
Q-C(=O)-PEG-N(R
6)-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-N
+(R
6)
2-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
Q-C(=O)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-SS-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-;
Q-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-;
Q-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O);
Q-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-N(R
6)C(=O)-(C
2-C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-C(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-C(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-SS-(C
1-C
12アルキルジイル-OC(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-;及び
Q-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル-から成る群から選択されるリンカーであり;
R
6は、独立してHまたはC
1~C
6アルキルであり;
PEGは、式:-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-を有し;mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり;
Glucは、式:
【化20】
を有し;
PEPは、式:
【化21】
を有し、AAは独立して天然のまたは非天然のアミノ酸側鎖から選択され、またはAAの1以上と隣接する窒素原子とが5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示し;
Cycは、F、Cl、NO
2、-OH、-OCH
3及び以下の構造を有するグルクロン酸から選択される1以上の基によって任意で置換されるC
6-C
20アリールジイル及びC
1-C
20ヘテロアリールジイルから選択され、
【化22】
R
7は-CH(R
8)O-、-CH
2-、-CH
2N(R
8)-、及び-CH(R
8)O-C(=O)-から成る群から選択され、R
8はH、C
1-C
6アルキル、C(=O)-C
1-C
6アルキル、及び-C(=O)N(R
9)
2から選択され、R
9は独立してH、C
1-C
12アルキル、及び-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-OHから成る群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR
9基は一緒に5もしくは6員環のヘテロシクリル環を形成し;
yは2~12の整数であり;
zは0または1であり;
Qは、マレイミド、ブロモアセトアミド、及びピリジルジスルフィドから成る群から選択され;
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール及びヘテロアリールジイルは任意に、F、Cl、Br、I、-CN、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH=CH
2、-C≡CH、-C≡CCH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2OH、-CH
2OCH
3、-CH
2CH
2OH、-C(CH
3)
2OH、-CH(OH)CH(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CH
2OH、-CH
2CH
2SO
2CH
3、-CH
2OP(O)(OH)
2、-CH
2F、-CHF
2、-CF
3、-CH
2CF
3、-CH
2CHF
2、-CH(CH
3)CN、-C(CH
3)
2CN、-CH
2CN、-CH
2NH
2、-CH
2NHSO
2CH
3、-CH
2NHCH
3、-CH
2N(CH
3)
2、-CO
2H、-COCH
3、-CO
2CH
3、-CO
2C(CH
3)
3、-COCH(OH)CH
3、-CONH
2、-CONHCH
3、-CON(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CONH
2、-NH
2、-NHCH
3、-N(CH
3)
2、-NHCOCH
3、-N(CH
3)COCH
3、-NHS(O)
2CH
3、-N(CH
3)C(CH
3)
2CONH
2、-N(CH
3)CH
2CH
2S(O)
2CH
3、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH
3、-NHC(=NH)NH
2、-NHC(=O)NH
2、-NO
2、=O、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-OCH
2CH
2OCH
3、-OCH
2CH
2OH、-OCH
2CH
2N(CH
3)
2、-O(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
mCO
2H、-O(CH
2CH
2O)
nH、-OP(O)(OH)
2、-S(O)
2N(CH
3)
2、-SCH
3、-S(O)
2CH
3、及び-S(O)
3Hから独立して選択される1以上の基で置換される、請求項56に記載の免疫複合体。
【請求項58】
Qは、マレイミドである、請求項57に記載の免疫複合体。
【請求項59】
請求項1に記載の免疫複合体を調製する方法であって、TLRアゴニスト-リンカー化合物は、前記システイン変異抗体とコンジュゲートされる、前記方法。
【請求項60】
前記TLRアゴニスト-リンカー化合物は、請求項57に記載のTLRアゴニスト-リンカー化合物である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
治療有効量の請求項1~58のいずれか1項に記載の免疫複合体と、1つ以上の薬学的に許容される希釈剤、ビヒクル、担体または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項62】
がんを治療するための方法であって、治療有効量の請求項1~58のいずれか1項に記載の免疫複合体を、それを必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
前記がんは、TLR7及び/またはTLR8アゴニズムによって誘発される炎症誘発性応答に感受性である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記がんは、PD-L1発現がんである、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記がんは、HER2発現がんである、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記がんは、CEA発現がんである、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記がんは、TROP2発現がんである、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
前記がんは、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、尿路癌、尿路上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、メルケル細胞癌、結腸癌、大腸癌、胃癌、及び乳癌から選択される、請求項62~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記乳癌は、トリプルネガティブ乳癌である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記メルケル細胞癌は、転移性メルケル細胞癌である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記胃癌は、HER2過剰発現胃癌である、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記がんは、胃食道接合部腺癌である、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記免疫複合体は、前記患者に静脈内、腫瘍内、または皮下投与される、請求項62に記載の方法。
【請求項74】
前記免疫複合体は、体重1kg当たり約0.01~20mgの用量で前記患者に投与される、請求項62に記載の方法。
【請求項75】
がんを治療するための、請求項1~58のいずれか1項に記載の免疫複合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本非仮出願は、2021年10月29日に出願された米国仮出願第63/273,379号に対する優先権の利益を主張するものであり、参照によってその全体が組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、Patent Centerを介してXML形式で提出されており、参照により全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2022年10月28日に作成された上記XMLコピーは、ST26-17019.019WO1.xmlという名前であり、40,668バイトのサイズである。
【0003】
発明の分野
本発明は、概して、1つ以上のToll様受容体(TLR)アゴニスト部分にコンジュゲートされたシステイン変異抗体を含む免疫複合体に関する。
【背景技術】
【0004】
アクセスできない腫瘍に到達するため、及び/またはがん患者及び他の対象の治療選択肢を拡大するために、抗体及び免疫アジュバントを送達するための新規の組成物及び方法が必要とされている。本発明は、そのような組成物及び方法を提供する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、概して1つ以上のTLRアゴニスト部分にリンカーによって共有結合したシステイン変異抗体を含む免疫複合体に関する。
【0006】
本発明の別の態様は、システイン変異抗体との1つ以上のTLRアゴニスト-リンカー化合物のコンジュゲーションによって免疫複合体を調製する方法である。
【0007】
本発明の別の態様は、1つ以上のTLRアゴニスト部分にリンカーによって共有結合したシステイン変異抗体を含む、治療有効量の免疫複合体と、1つ以上の薬学的に許容される希釈剤、ビヒクル、担体または賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0008】
本発明の別の態様は、1つ以上のTLRアゴニスト部分にリンカーによって共有結合したシステイン変異抗体を含む、治療有効量の免疫複合体を投与することを含むがんを治療するための方法である。
【0009】
本発明の別の態様は、疾病、特にがんの治療における1つ以上のTLRアゴニスト部分にリンカーによって共有結合したシステイン変異抗体を含む免疫複合体の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】システイン変異免疫複合体Lys IC-1(表11)、IC-2、IC-3、IC-4、IC-8、IC-10、IC-13、IC-16、IC-17及びIC-18(表10)ならびに非コンジュゲート抗体、トラスツズマブを用いたヒト血液から新たに単離され、HCC1954腫瘍細胞と共培養された濃縮ヒトcDC(従来型樹状細胞)の活性化後のIL-12p70分泌を示すグラフを示す。IL-12p70の対数産生は、免疫複合体及びトラスツズマブの濃度増加とともにプロットされる。
【
図2】システイン変異免疫複合体IC-1、IC-12、IC-6、IC-11、IC-5、IC-9、IC-7、IC-14、及びIC-15(表10)、Lys IC-1(表11)、ならびに非コンジュゲート抗体、トラスツズマブを用いたヒト血液から新たに単離され、HCC1954腫瘍細胞と共培養された濃縮ヒトcDC(従来型樹状細胞)の活性化後のIL-12p70分泌を示すグラフを示す。IL-12p70の対数産生は、免疫複合体及びトラスツズマブの濃度増加とともにプロットされる。
【
図3】システイン変異抗HER2免疫複合体IC-8、IC-13、IC-17、及びIC-10、ならびに対照アミド結合抗HER2複合体Lys IC-1を用いたヒト血液から新たに単離され、HCC1954腫瘍細胞と共培養された濃縮ヒトcDC(従来型樹状細胞)の活性化後のIL-12p70分泌を示すグラフを示す。
【
図4】システイン変異抗-PD-L1免疫複合体IC-30、IC-31、及び対照アミド結合抗-PD-L1複合体Lys IC-3を用いたヒト血液から新たに単離され、PD-L1を過剰発現する改変されたHCC1954細胞株と共培養された濃縮ヒトcDC(従来型樹状細胞)の活性化後のIL-12p70分泌を示すグラフを示す。
【
図5】システイン変異抗-TROP2免疫複合体IC-27、IC-28、IC-29、IC-32、及び対照アミド結合抗-TROP2複合体Lys IC-2を用いたヒト血液から新たに単離され、HPAF II膵臓癌腫瘍細胞と共培養された濃縮ヒトcDC(従来型樹状細胞)の活性化後のIL-12p70分泌を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
これより本発明の特定の実施形態を詳細に参照するが、それらの例は、添付の構造及び式に例証されている。本発明は、列挙される実施形態と組み合わせて説明されるが、それらは、本発明をそれらの実施形態に限定することを意図するものではないことを理解されたい。逆に、本発明は、すべての代替形、修正形、及び同等物を網羅することが意図されており、それらは、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得る。
【0012】
当業者であれば、本発明の実施に使用することができる、本明細書に記載されているものに類似または同等である多くの方法及び材料を理解するであろう。本発明は、決して記載されている方法及び材料に限定されるものではない。
【0013】
定義
「Toll様受容体」及び「TLR」という用語は、病原体関連分子パターンを認識し、自然免疫における重要なシグナル伝達要素として機能する、高度に保存された哺乳動物タンパク質のファミリーのメンバーを指す。TLRポリペプチドは、ロイシンリッチリピートを有する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及びTLRシグナル伝達に関与する細胞内ドメインを含む、特徴的な構造を共有している。
【0014】
「Toll様受容体7」及び「TLR7」という用語は、公的に入手可能なTLR7配列、例えば、ヒトTLR7ポリペプチドのGenBank受入番号AAZ99026またはマウスTLR7ポリペプチドのGenBank受入番号AAK62676に対して、少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上の配列同一性を共有する核酸またはポリペプチドを指す。
【0015】
「Toll様受容体8」及び「TLR8」という用語は、公的に入手可能なTLR8配列、例えば、ヒトTLR8ポリペプチドのGenBank受入番号AAZ95441またはマウスTLR7ポリペプチドのGenBank受入番号AAK62677に対して、少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上の配列同一性を共有する核酸またはポリペプチドを指す。
【0016】
「TLRアゴニスト」は、TLR(例えば、TLR7及び/またはTLR8)に直接的または間接的に結合して、TLRシグナル伝達を誘導する化合物である。TLRシグナル伝達におけるあらゆる検出可能な差異は、アゴニストがTLRを刺激または活性化することを示すことができる。シグナル伝達の差異は、例えば、標的遺伝子の発現の変化、シグナル伝達成分のリン酸化の変化、核因子-κB(NF-κB)などの下流要素の細胞内局在の変化、特定の成分(IL-1受容体関連キナーゼ(IRAK)など)と他のタンパク質もしくは細胞内構造との関連の変化、またはキナーゼなどの成分(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)など)の生化学的活性の変化として現れる可能性がある。
【0017】
「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子またはその断片からの抗原結合領域(相補性決定領域(CDR)を含む)を含む、ポリペプチドを指す。「抗体」という用語は具体的には、所望の生物活性を示す、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対で構成され、各対は、ジスルフィド結合によって接続される、1つの「軽鎖」(約25kDa)及び1つの「重鎖」(約50~70kDa)を有する。各鎖は、免疫グロブリンドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは、例えば、軽鎖及び重鎖の可変ドメインまたは領域(それぞれVL及びVH)、軽鎖及び重鎖の定常ドメインまたは領域(それぞれCL及びCH)など、サイズと機能によって様々なカテゴリーに分類される。各鎖のN-末端は、抗原認識を主に担う、パラトープと称される、約100~110個以上のアミノ酸の可変領域、すなわち抗原結合ドメインを画定する。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεとして分類され、そして、これらの重鎖によって、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEという免疫グロブリンの分類が定められる。IgG抗体は、4つのペプチド鎖で構成される約150kDaの大きな分子である。IgG抗体は、約50kDaの2つの同一のクラスγ重鎖と約25kDaの2つの同一の軽鎖を含み、したがって四量体の四次構造を含む。2つの重鎖は互いに結合され、それぞれジスルフィド結合によって軽鎖に結合されている。得られた四量体は2つの同じの半分部分を持ち、これらが一緒になってY字型の形状を形成する。枝分かれした両端には、同じの抗原結合ドメインが含まれている。ヒトには4つのIgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)があり、血清中の存在量の順に名前がつけられている(つまり、IgG1が最も豊富である)。通常、抗体の抗原結合ドメインは、がん細胞への結合の特異性及び親和性において最も重要である。
【0018】
「二重特異性」抗体(bsAb)は、2つの異なるエピトープをがんに結合する抗体である(Suurs F.V.et al(2019)Pharmacology&Therapeutics201:103-119)。二重特異性抗体は、免疫細胞に係合して腫瘍細胞を破壊し、ペイロードを腫瘍に送達することができ、及び/または腫瘍シグナル伝達経路を遮断することができる。特定の抗原を標的にする抗体は、特定の抗原を標的にする少なくとも1つの抗原結合領域を有する二重特異性または多重特異性抗体を含む。いくつかの実施形態では、標的モノクローナル抗体は、腫瘍細胞を標的とする少なくとも1つの抗原結合領域を有する二重特異性抗体である。そのような抗原としては、メソテリン、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、HER2、TROP2、CEA、EGFR、5T4、ネクチン4、CD19、CD20、CD22、CD30、CD70、B7H3、B7H4(08Eとしても公知)、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、グリピカン3、RG1、フコシルGMl、CTLA-4、及びCD44(WO2017/196598)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
「抗体コンストラクト」とは、(i)抗原結合ドメイン及び(ii)Fcドメインを含む、抗体または融合タンパク質を指す。
【0020】
「免疫複合体」という用語は、リンカーを介してアジュバント部分に共有結合している抗体コンストラクトを指す。免疫複合体は、標的抗原が結合している間に、活性アジュバント部分を標的とした送達を可能にする。
【0021】
「アジュバント」とは、アジュバントに曝露された対象において免疫応答を誘発することができる物質を指す。「アジュバント部分」という用語は、本明細書に記載されているように、例えば、リンカーを介して抗体コンストラクトに共有結合されるアジュバントを指す。アジュバント部分は、抗体コンストラクトに結合している間、または対象への免疫複合体の投与後の抗体コンストラクトからの切断(例えば、酵素的切断)後に免疫応答を誘発することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗体コンストラクトは、抗原結合抗体「断片」であり、これは、抗体の少なくとも抗原結合領域を、単独で、または抗体コンストラクトを一緒に構成する他の成分とともに含む。例えば、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片からなる二価の断片であるF(ab’)2断片、(iii)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(iv)軽度の還元条件を使用してF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を破壊することから生じるFab’断片、(v)ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、及び(vi)2つのドメインが、単一のポリペプチド鎖として合成されることを可能にする合成リンカーによって結合される、Fv断片の2つのドメイン(すなわち、VL及びVH)からなる一価の分子である単一鎖(scFv)を含む、多くの異なる種類の抗体「断片」が、当該技術分野で知られている。
【0023】
抗体または抗体断片は、より大きなコンストラクト、例えば、抗体断片の追加の領域との結合または融合コンストラクトの一部であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗体断片は、本明細書に記載されているようにFc領域に融合することができる。他の実施形態では、抗体断片(例えば、FabまたはscFv)は、例えば、膜貫通ドメインへの融合(任意選択で介在するリンカーまたは「ストーク」(例えば、ヒンジ領域)により)及び任意選択の細胞間シグナル伝達ドメインへの融合によって、キメラ抗原受容体またはキメラT細胞受容体の一部であり得る。例えば、抗体断片は、t細胞受容体のγ鎖及び/またはδ鎖に融合され、PD-L1を結合するT細胞受容体様コンストラクトを提供し得る。更に別の実施形態では、抗体断片は、CD1またはCD3結合ドメイン及びリンカーを含む二重特異性T細胞誘導(BiTE)の一部である。
【0024】
「システイン変異抗体」とは、抗体の1つ以上のアミノ酸残基がシステイン残基で置換されている抗体である。システイン変異抗体は、抗体工学法により親抗体から調製することができる(Junutula,et al.,(2008b)Nature Biotech.,26(8):925-932;Dornan et al.(2009)Blood114(13):2721-2729;米国特許第7521541号;同第7723485号;同第2012/0121615号;WO2009/052249)。システイン残基は、操作されたシステイン部位での反応性システインチオール基を介した抗体へのTLRアゴニストなどのアジュバントの部位特異的コンジュゲーションを提供するが、免疫グロブリンの折り畳み及びアセンブリーを妨害しないか、または抗原結合及びエフェクター機能を変化させない。システイン変異抗体は、免疫複合体の均一な化学量論(例えば、単一の操作された変異システイン部位を有する抗体における抗体1つ当たり最大2つのTLRアゴニスト部分)により、TLRアゴニストリンカー化合物にコンジュゲートすることができる。TLRアゴニスト-リンカー化合物は、システイン変異抗体の遊離システインチオール基と特異的に反応する反応性求電子基を有する。
【0025】
「エピトープ」とは、抗原結合ドメインが結合する抗原の任意の抗原決定基またはエピトープ決定基(すなわち、抗原結合ドメインのパラトープで)を意味する。抗原決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性がある表面群化から成り、通常、特定の3次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。
【0026】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。Fc受容体には3つの主要なクラス:(1)IgGに結合するFcγR、(2)IgAに結合するFcαR、及び(3)IgEに結合するFcεRがある。FcγRファミリーには、FcγI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16A)及びFcγRIIIB(CD16B)のようないくつかのメンバーが含まれる。Fcγ受容体はIgGに対する親和性が異なり、IgGサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)に対する親和性も異なる。
【0027】
核酸またはアミノ酸配列「同一性」は、本明細書で言及される場合、対象の核酸またはアミノ酸配列を、参照核酸またはアミノ酸配列と比較することによって判定することができる。同一性パーセントは、最適に整列された対象の配列と最長の配列の長さ(すなわち、対象の配列または参照配列のいずれかの長さ、いずれか長い方)で割った参照配列との間で同じ(すなわち、同一)であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数である。配列のアラインメント及び同一性パーセントの計算は、利用可能なソフトウェアプログラムを使用して実行することができる。そのようなプログラムの例としては、CLUSTAL-W、T-Coffee、及びALIGN(核酸及びアミノ酸配列のアラインメントのため)、BLASTプログラム(例えば、BLAST2.1、BL2SEQ、BLASTp、BLASTnなど)、及びFASTAプログラム(例えば、FASTA3x、FASTM及びSSEARCH)(配列アラインメント及び配列相似性検索のため)が挙げられる。配列アラインメントアルゴリズムはまた、例えば、Altschul et al.,J.Molecular Biol.,215(3):403-410(1990),Beigert et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,106(10):3770-3775(2009),Durbin et al.,eds.,Biological Sequence Analysis:Probalistic Models of Proteins and Nucleic Acids,Cambridge University Press,Cambridge,UK(2009),Soding,Bioinformatics,21(7):951-960(2005),Altschul et al.,Nucleic Acids Res.,25(17):3389-3402 (1997)及びGusfield,Algorithms on Strings,Trees and Sequences,Cambridge University Press,Cambridge UK(1997)に開示されている。配列の同一性パーセント(%)はまた、例えば、100×[(同一の位置)/min(TGA、TGB)]として計算することができ、TGA及びTGBは、TGA及びTGBを最小化するアラインメントにおけるペプチド配列A及びBにおける残基及び内部ギャップ位置の数の合計である(Russell et al.,J.MolBiol.,244:332-350(1994))。
【0028】
「抗体コンストラクト」または「結合剤」は、一緒に抗原結合部位を形成するIg重鎖及び軽鎖可変領域ポリペプチドを含む。重鎖及び軽鎖可変領域の各々は、フレームワーク領域によって連結された3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含むポリペプチドである。抗体コンストラクトは、Ig重鎖及び軽鎖を含む、当該技術分野で既知の様々な種類の結合剤のいずれかであり得る。例えば、結合剤は、抗体、抗原結合抗体「断片」、またはT細胞受容体であり得る。
【0029】
「バイオシミラー」とは、例えば、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標)、Genentech,Inc.)、デュルバルマブ(IMFINZI(商標)、AstraZeneca)及びアベルマブ(BAVENCIO(商標)、EMDSerono、Pfizer)などの以前に承認されたPD-L1標的化抗体コンストラクト;トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)、Genentech、Inc.)及びペルツズマブ(PERJETA(商標)、Genentech、Inc.)などの以前に承認されたHER2標的化抗体コンストラクト;またはラベツズマブ(CEA-CIDE(商標)、MN-14、hMN14、Immunomedics)CAS登録番号219649-07-7)などのCEA標的化抗体と同様の活性特性を有する、承認された抗体コンストラクトを指す。
【0030】
「バイオベター」とは、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ及びラベツズマブなどの以前に承認された抗体コンストラクトを改善したものである、承認された抗体コンストラクトを指す。バイオベターは、以前に承認された抗体コンストラクトに対して1つ以上の修飾(例えば、変更されたグリカンプロファイル、または固有のエピトープ)を有することができる。
【0031】
「アミノ酸」とは、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に組み込むことができる任意のモノマー単位を指す。アミノ酸には、天然に存在するα-アミノ酸及びその立体異性体、ならびに非天然(天然に存在しない)アミノ酸及びその立体異性体が含まれる。所与のアミノ酸の「立体異性体」は、同じ分子式及び分子内結合を有するが、結合及び原子の異なる三次元配置を有する異性体(例えば、L-アミノ酸及び対応するD-アミノ酸)を指す。アミノ酸は、グリコシル化(例えば、N-結合型グリカン、O-結合型グリカン、ホスホグリカン、C-結合型グリカン、またはグリピケーション)または脱グリコシル化することができる。アミノ酸は、本明細書では、広く知られている3文字の記号、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている1文字の記号のいずれかによって表され得る。
【0032】
天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるもの、ならびに後で修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリンである。天然に存在するα-アミノ酸としては、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。天然に存在するα-アミノ酸の立体異性体としては、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リシン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(Dプロ)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-トレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
天然に存在するアミノ酸には、シトルリン(Cit)などの翻訳後修飾によってタンパク質中に形成されるものが含まれる。
【0034】
非天然(天然に存在しない)アミノ酸としては、限定されないが、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するLまたはD構成のいずれかのアミノ酸類似体、アミノ酸模倣物、合成アミノ酸、N置換グリシン、及びN-メチルアミノ酸が挙げられる。例えば、「アミノ酸類似体」は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基に結合した炭素)を有するが、修飾された側鎖基または修飾されたペプチド骨格を有する非天然アミノ酸、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、及びメチオニンメチルスルホニウムであり得る。「アミノ酸模倣物」とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能する化合物を指す。
【0035】
「リンカー」とは、化合物または材料の2つ以上の部分を共有結合する官能基を指す。例えば、連結部位は、アジュバント部分を免疫複合体の抗体コンストラクトに共有結合させるのに役立つことができる。
【0036】
「連結部位」とは、化合物や材料中の2つ以上の部分を共有結合させる官能基を指す。例えば、連結部位は、アジュバント部分を免疫複合体の抗体に共有結合させる役割を果たすことができる。連結部位をタンパク質及び他の材料に接続するための有用な結合には、アミド、アミン、エステル、カルバミン酸、尿素、チオエーテル、チオカルバミン酸、チオカーボネート、及びチオ尿素が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
「二価」とは、2つの官能基を連結するための2つの結合点を含む、化学部位を指す。多価連結部位は、さらなる官能基を連結するための追加の結合点を有することができる。二価ラジカルは、接尾辞「ジイル」で示され得る。例えば、二価連結部位には、二価ポリ(エチレングリコール)、二価シクロアルキル、二価ヘテロシクロアルキル、二価アリール、及び二価ヘテロアリール基のような二価ポリマー部位が含まれる。「二価シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基」とは、分子または材料中の2つの部分を共有結合させるための2つの結合点を有するシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基を指す。シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基は、置換型または非置換型であり得る。シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1以上の基で置換することができる。
【0038】
波線(「
【化1】
」)は、特定の化学部位の結合点を表す。特定の化学部位に2本の波線(「
【化2】
」)が存在する場合、化学部位は双方で、つまり左から右または右から左に読み取って使用できることが理解される。いくつかの実施形態では、存在する2つの波線(「
【化3】
」)を有する特定の部位は、左から右へと読み取られるように使用されると見なされる。
【0039】
「アルキル」とは、示された炭素原子の数を有する、直鎖(線状)または分岐した飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキルには、例えば1~12つの任意の数の炭素を含むことができる。アルキル基の例としては、メチル(Me、-CH3)、エチル(Et、-CH2CH3)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CH2CH2CH2CH3)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CH2CH(CH3)2)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH3)CH2CH3)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH3)3)、1-ペンチル(n-ペンチル、-CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH2CH3)、3-ペンチル(-CH(CH2CH3)2)、2-メチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH2CH3)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH3)CH(CH3)2)、3-メチル-1-ブチル(-CH2CH2CH(CH3)2)、2-メチル-1-ブチル(-CH2CH(CH3)CH2CH3)、1-ヘキシル(-CH2CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ヘキシル(-CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3-ヘキシル(-CH(CH2CH3)(CH2CH2CH3))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CH3)2CH2CH2CH3)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH(CH3)2)、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH3)(CH2CH3)2)、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CH2CH3)CH(CH3)2)、2,3-ジメチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH(CH3)2)、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH3)C(CH3)3、1-ヘプチル、1-オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、置換型でも非置換型でもよい。「置換アルキル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1つ以上の基で置換することができる。
【0040】
「アルキルジイル」という用語は、二価のアルキル基を意味する。アルキルジイル基の例としては、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)などが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルジイル基は、「アルキレン」基とも呼ばれることがある。
【0041】
「アルケニル」とは、示された炭素原子の数及び少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、spを有する、直鎖(線状)または分岐した不飽和脂肪族ラジカルを指す。アルケニルは、2~約12以上の炭素原子を含むことができる。アルケニル基は、「シス」及び「トランス」配向、代替的に「E」及び「Z」配向を有するラジカルである。例としては、エチレニルまたはビニル(-CH=CH2)、アリル(-CH2CH=CH2)、ブテニル、ペンテニル、及びこれらの異性体を含むが、これらに限定されない。アルケニル基は、非置換型または置換型であり得る。「置換アルケニル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1つ以上の基で置換することができる。
【0042】
「アルケニレン」または「アルケニルジイル」という用語は、直鎖または分岐鎖の二価の炭化水素ラジカルを指す。例としては、エチレニレンまたはビニレン(-CH=CH-)、アリル(-CH2CH=CH-)などがあるが、これらに限定されない。
【0043】
「アルキニル」とは、示された炭素原子の数及び少なくとも1つの炭素-炭素三重結合、spを有する、直鎖(線状)または分岐した不飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキニルは、2~約12個以上の炭素原子を含むことができる。例えば、C2-C6アルキニルには、エチニル(-C≡CH)、プロピニル(プロパルギル、-CH2C≡CH)、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、及びこれらの異性体が含まれるが、これらに限定されない。アルキニル基は置換型または非置換型であり得る。「置換アルキニル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、及びアルコキシから選択される1以上の基で置換することができる。
【0044】
「アルキニレン」または「アルキニルジイル」という用語は、二価のアルキニルラジカルを指す。
【0045】
「カルボサイクル」、「カルボシクリル」、「炭素環」及び「シクロアルキル」という用語は、3~12個の環原子または示された原子数を含む、飽和もしくは部分的に不飽和の単環式、縮合二環式または架橋多環集合体を指す。飽和単環式炭素環には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチルが含まれる。飽和二環式及び多環式炭素環には、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン及びアダマンタンが含まれる。炭素環式基は部分的に不飽和であり、環に1以上の二重結合または三重結合を有する場合もある。部分的に不飽和である代表的な炭素環式基には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-及び1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-及び1,5-異性体)、ノルボルネン、及びノルボルナジエンが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
「シクロアルキルジイル」という用語は、二価のシクロアルキルラジカルを指す。
【0047】
「アリール」とは、親の芳香環系の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって誘導される、6~20個の炭素原子(C6-C20)の一価の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。アリール基は、単環式である、縮合して二環式もしくは三環式基を形成する、または結合によって連結してビアリール基を形成することができる。代表的なアリール基には、フェニル、ナフチル、ビフェニルが含まれる。他のアリール基には、メチレン連結基を有するベンジルが含まれる。フェニル、ナフタレンまたはビフェニルなど、一部のアリール基には6~12個の環員がある。他のアリール基には、フェニルまたはナフチルのような6~10個の環員がある。
【0048】
「アリーレン」または「アリールジイル」とは、親の芳香環系の2個の炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される、6~20個の炭素原子(C6-C20)の二価の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。いくつかのアリールジイル基は、例示的構造で「Ar」と表される。アリールジイルは、飽和環、部分的不飽和環、または芳香族炭素環と縮合した芳香環を含む、二環式ラジカルを含む。典型的なアリールジイル基としては、ベンゼン(フェニレン)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニレン、インデニレン、インダニレン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフチルなどに由来するラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。アリールジイル基は「アリーレン」とも称され、任意選択で、本明細書に記載される1つ以上の置換基で置換される。
【0049】
「複素環」、「ヘテロシクリル」及び「複素環式環」という用語は、本明細書において同義で用いられ、3~約20個の環原子の飽和または部分的に不飽和(すなわち1つ以上の二重及び/または三重結合を環の中に有する)の炭素環式ラジカルを指し、少なくとも1つの環原子は、窒素、酸素、リン、及び硫黄から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子はCであり、1つ以上の環原子は、任意選択で、以下に記載される1つ以上の置換基で独立して置換される。複素環は、3~7員環(2~6個の炭素原子ならびにN、O、P、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子)の単環または7~10員環(4~9個の炭素原子ならびにN、O、P、及びSから選択される1~6個のヘテロ原子)の二環、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]、もしくは[6,6]系であってよい。複素環は、Paquette,Leo A.,″Principles of Modern Heterocyclic Chemistry″(W.A.Benjamin,New York,1968)の特に第1章、第3章、第4章、第6章、第7章、及び第9章、″The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs″(John Wiley&Sons,New York,1950~現在)の特に第13巻、第14巻、第16巻、第19巻、及び第28巻、ならびにJ.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566に記載されている。「ヘテロシクリル」は、複素環ラジカルが、飽和環、部分的不飽和環、または芳香族炭素環式環もしくは複素環式環と縮合したラジカルも含む。複素環式環としては、例えば、モルホリン-4-イル、ピペリジン-1-イル、ピペラジニル、ピペラジン-4-イル-2-オン、ピペラジン-4-イル-3-オン、ピロリジン-1-イル、チオモルホリン-4-イル、S-ジオキソチオモルホリン-4-イル、アゾカン-1-イル、アゼチジン-1-イル、オクタヒドロピリド[1,2-a]ピラジン-2-イル、[1,4]ジアゼパン-1-イル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリニルイミダゾリニル、イミダゾリニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H-インドリルキノリジニル、及びN-ピリジルウレアが挙げられるが、これらに限定されない。スピロヘテロシクリル部位も、本定義の範囲内に含まれる。スピロヘテロシクリル部位の例には、アザスピロ[2.5]オクタニル及びアザスピロ[2.4]ヘプタニルが挙げられる。2つの環原子がオキソ(=O)部位で置換された複素環式基の例は、ピリミジノニル及び1,1-ジオキソ-チオモルホリニルである。本明細書の複素環基は、任意選択で、本明細書に記載されている1以上の置換基で独立して置換される。
【0050】
「ヘテロシクリルジイル」という用語は、3~約20個の環原子の二価の飽和または部分的に不飽和(すなわち1以上の二重及び/または三重結合を環の中に有する)の炭素環式ラジカルを指し、少なくとも1つの環原子は、窒素、酸素、リン、及びイオウから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子はCであり、1以上の環原子は、任意選択で、記載されている1以上の置換基で、独立して置換される。5員及び6員のヘテロシクリルジイルとしては、モルホリニルジイル、ピペリジニルジイル、ピペラジニルジイル、ピロリジニルジイル、ジオキサニルジイル、チオモルホリニルジイル、及びS-ジオキソチオモルホリニルジイルが挙げられる。
【0051】
「ヘテロアリール」という用語は、5、6または7員環の一価の芳香族ラジカルを指し、窒素、酸素及びイオウから独立して選択される1以上のヘテロ原子を含む5~20個の原子の縮合環系(その少なくとも1つは芳香族である)を含む。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば2-ヒドロキシピリジニルを含む)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば4-ヒドロキシピリミジニルを含む)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルである。ヘテロアリール基は、任意選択で、本明細書に記載されている1以上の置換基で独立して置換される。
【0052】
「ヘテロアリールジイル」という用語は、5、6または7員環の二価の芳香族ラジカルを指し、窒素、酸素及びイオウから独立して選択される1以上のヘテロ原子を含む5~20個の原子の縮合環系(その少なくとも1つは芳香族である)を含む。5員及び6員のヘテロアリールジイルの例には、ピリジルジイル、イミダゾリルジイル、ピリミジニルジイル、ピラゾリルジイル、トリアゾリルジイル、ピラジニルジイル、テトラゾリルジイル、フリルジイル、チエニルジイル、イソオキサゾリルジイル、チアゾリルジイル、オキサジアゾリルジイル、オキサゾリルジイル、イソチアゾリルジイル及びピロリルジイルが含まれる。
【0053】
複素環またはヘテロアリール基は、可能であれば、炭素(炭素結合した)または窒素(窒素結合した)結合してもよい。例として、限定されないが、炭素結合した複素環またはヘテロアリールは、ピリジンの2、3、4、5もしくは6位、ピリダジンの3、4、5もしくは6位、ピリミジンの2、4、5もしくは6位、ピラジンの2、3、5もしくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール、もしくはテトラヒドロピロールの2、3、4もしくは5位、オキサゾール、イミダゾール、もしくはチアゾールの2、4もしくは5位、イソキサゾール、ピラゾール、もしくはイソチアゾールの3、4もしくは5位、アジリジンの2もしくは3位、アゼチジンの2、3もしくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7もしくは8位、またはイソキノリンの1、3、4、5、6、7もしくは8位で結合される。
【0054】
例として、限定されないが、窒素結合した複素環またはヘテロアリールは、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H-インダゾールの1位、イソインドールまたはイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾ-ルまたはβ-カルボリンの9位で結合される。
【0055】
単独または別の置換基の一部としての「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を指す。
【0056】
単独でまたは別の置換基の一部としての「カルボニル」という用語は、C(=O)また-C(=O)-、すなわち、酸素に二重結合し、カルボニルを有する部分の他の2つの基に結合した炭素原子を指す。
【0057】
本明細書で使用する場合、「第四級アンモニウム塩」という語句は、アルキル置換基(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはブチルのようなC1-C4アルキル)で四級化された第三級アミンを指す。
【0058】
「治療する」、「治療」及び「治療すること」という用語は、傷害、病態、状態(例えば、がん)もしくは症状(例えば、認知障害)の治療または寛解における任意の成功の兆候を指し、緩解、寛解、症状の軽減、もしくは症状、傷害、病態もしくは状態を患者にとってより耐えられるものにする、症状の進行速度の減少、症状もしくは状態の頻度、もしくは期間の減少、または状況によっては症状の発症の防止など、任意の客観的または主観的パラメータが含まれる。症状の治療または寛解は、身体検査の結果を含む、任意の客観的または主観的パラメータに基づくことができる。
【0059】
「がん」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語は本明細書で、細胞増殖の制御を著しく失うことを特徴とする異常な増殖表現型を示すような、自律的で制御されない増殖を示す細胞を指すために使用される。本発明の文脈において検出、分析、及び/または治療の対象となる細胞には、がん細胞(例えば、がんを有する個体からのがん細胞)、悪性がん細胞、前転移性がん細胞、転移性がん細胞、及び非転移性がん細胞が含まれる。実質的にすべての組織のがんは、知られている。「がん負荷量」という語句は、対象中のがん細胞量またはがん体積を指す。したがって、がん負荷量を減少させることは、対象中のがん細胞数またはがん細胞体積を減少させることを指す。本明細書で使用される「がん細胞」という用語は、がん細胞(例えば、個体を治療することができる任意のがんから、例えば、がんを有する個体から単離された)である、またはがん細胞に由来する任意の細胞(例えば、がん細胞のクローン)を指す。例えば、がん細胞は、確立されたがん細胞株からのものであってもよく、がんを有する個体から単離された初代細胞であってもよく、がんを有する個体から単離された初代細胞からの子孫細胞であってもよい、などである。いくつかの実施形態では、この用語はまた、がん細胞の細胞内部分、細胞膜部分、または細胞溶解物のようながん細胞の一部を指すことができる。細胞腫、肉腫、膠芽腫、メラノーマ、リンパ腫及び骨髄腫のような固形腫瘍、ならびに白血病のような循環癌を含む、多くの種類のがんは、当業者に知られている。
【0060】
本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、これらに限定されないが、固形腫瘍がん(例えば、皮膚、肺、前立腺、乳房、胃、膀胱、結腸、卵巣、膵臓、腎臓、肝臓、神経膠芽腫、髄芽腫、平滑筋肉腫、頭頸部扁平上皮癌、黒色腫、及び神経内分泌)、及び液状がん(例えば、血液癌);がん腫;軟部組織腫瘍;肉腫;奇形腫;黒色腫;白血病;リンパ腫;ならびに脳癌を含み、微小残存病変を含み、ならびに原発腫瘍と転移腫瘍の両方を含む、任意の形態のがんを含む。
【0061】
「PD-L1発現」とは、細胞表面にPD-L1受容体を有する細胞を指す。本明細書で使用する場合、「PD-L1過剰発現」とは、対応する非がん細胞と比較してより多くのPD-L1受容体を有する細胞を指す。
「HER2」とは、タンパク質ヒト上皮成長因子受容体2を指す。
【0062】
「HER2発現」とは、細胞の表面にHER2受容体を有する細胞を指す。例えば、細胞は、細胞の表面上に約20,000~約50,000のHER2受容体を有し得る。本明細書で使用する場合、「HER2過剰発現」は、約50,000を超えるHER2受容体を有する細胞を指す。例えば、細胞は、対応する非がん細胞(例えば、約100万または200万のHER2受容体)と比較して、HER2受容体の数の2、5、10、100、1,000、10,000、100,000、または1,000,000倍である。HER2は、乳癌で約25%~約30%過剰発現していると推定される。
【0063】
がんの「病態」には、患者の健康状態を損なうすべての現象が含まれる。これには、異常または制御不能な細胞増殖、転移、隣接する細胞の正常な機能の阻害、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌物の放出、炎症または免疫反応の抑制または悪化、新生物、前悪性、悪性腫瘍、及びリンパ節のような周辺または遠隔組織または器官への浸潤が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書で使用する場合、「がん再発」及び「腫瘍再発」という語句、ならびにそれらの文法的変形は、がんの診断後の腫瘍またはがん細胞のさらなる増殖を指す。特に、がん組織でさらなるがん細胞増殖が起こると再発が起こり得る。同様に「腫瘍の広がり」は、腫瘍の細胞が局所または遠隔組織や臓器に散在するときに発生し、したがって、腫瘍の広がりには腫瘍の転移が含まれる。「腫瘍浸潤」は、腫瘍の増殖が局所的に広がり、正常な臓器機能を圧迫、破壊または阻止することによって関係する組織の機能を損なうときに発生する。
【0065】
本明細書で使用する場合、「転移」という用語は、がん腫瘍のある器官に直接接続していない、器官または身体部分で癌腫瘍が増殖することを指す。転移は、がん腫瘍のある器官に直接接続していない器官または身体部分での検出不可能な量のがん細胞の存在である、微小転移を含むと理解されるであろう。転移は、がん細胞が元の腫瘍部位から離れること、がん細胞が身体の他の部位に移動及び/または浸潤することなど、いくつかの段階のプロセスとして定義することもできる。
【0066】
「有効量」及び「治療有効量」という語句は、それが投与される治療効果を生み出す免疫複合体のような物質の投与量または量を指す。実際の投与量は、治療の目的に依存し、また当業者であれば既知の技術を使用して確認可能であろう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar,Dosage Calculations(1999);Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,11th Edition(McGraw-Hill,2006);and Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,(Pharmaceutical Press,London,2012)を参照)。がんの場合、治療有効量の免疫複合体は、がん細胞の数を低下、腫瘍サイズを低下、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍増殖をある程度阻害、及び/またはがんに関連する症状のうちの1以上をある程度軽減し得る。免疫複合体が、存在するがん細胞の増殖を阻害し得る、及び/またはそれらを死滅させ得る限り、それは、細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。がん療法に関して、有効性は、例えば、疾患進行までの時間(TTP)の評価及び/または奏効率(RR)の決定によって測定することができる。
【0067】
「レシピエント」「個体」「対象」「宿主」及び「患者」という用語は同じ意味で使用され、診断、処置または治療が所望される任意の哺乳類対象(例えば、ヒト)を指す。治療目的のための「哺乳動物」とは、ヒト、飼育動物及び畜産動物、動物園、競技用、愛玩動物、例えば犬、馬、猫、牛、羊、山羊、豚、ラクダなどを含む哺乳動物に分類される任意の動物を指す。特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0068】
本発明の文脈における「相乗的アジュバント」または「相乗的組み合わせ」という語句は、受容体アゴニスト、サイトカイン、及びアジュバントポリペプチドのような2つの免疫調節因子の組み合わせを含み、これらは組み合わせて、単独で投与される場合と比較して免疫に対する相乗効果を誘発する。特に、本明細書に開示される免疫複合体は、特許請求されたアジュバント及び抗体コンストラクトの相乗的組み合わせを含む。投与時のこれらの相乗的組み合わせは、例えば、抗体コンストラクトまたはアジュバントが他の部分の非存在下で投与される場合と比較して、免疫に対してより大きな効果を誘発する。さらに、抗体コンストラクトまたはアジュバントのいずれかと単独で投与した場合と比較して、減少した量の免疫複合体を投与してもよい(免疫複合体の一部として投与される抗体コンストラクトの総数またはアジュバントの総数によって測定される)。
【0069】
本明細書で使用する場合、「投与する」という用語は、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、病巣内、鼻腔内もしくは皮下投与、経口投与、座薬としての投与、局所接触、クモ膜下投与、または徐放出装置、例えば小型浸透ポンプを対象に埋め込むことを意味する。
【0070】
本明細書で数値を修正するために使用される「約」及び「およそ」という用語は、その数値の周囲にある近い範囲を示す。したがって、「X」が値である場合、「約X」または「およそX」は、0.9X~1.1X、例えば、0.95X~1.05X、または0.99X~1.01Xの値を示す。「約X」または「およそX」への言及は特に、少なくとも値X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、及び1.05Xを示す。したがって、「約X」及び「およそX」は、例えば「0.98X」のクレーム限定について本明細書のサポートを教示及び提供することを意図している。
【0071】
抗体標的
いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体は、5T4、ABL、ABCF1、ACVR1、ACVR1B、ACVR2、ACVR2B、ACVRL1、ADORA2A、アグレカン、AGR2、AICDA、AIF1、AIGI、AKAP1、AKAP2、AMH、AMHR2、ANGPT1、ANGPT2、ANGPTL3、ANGPTL4、ANPEP、APC、APOC1、AR、アロマターゼ、ATX、AX1、AZGP1(亜鉛-a-糖タンパク質)、B7.1、B7.2、B7-H1、BAD、BAFF、BAG1、BAI1、BCR、BCL2、BCL6、BDNF、BLNK、BLR1(MDR15)、BIyS、BMP1、BMP2、BMP3B(GDFIO)、BMP4、BMP6、BMP8、BMPRTA、BMPR1B、BMPR2、BPAG1(プレクチン)、BRCA1、C19orflO(IL27w)、C3、C4A、C5、C5R1、CANT1、CAPRIN-1、CASP1、CASP4、CAV1、CCBP2(D6/JAB61)、CCLI(1-309)、CCLI1(エオタキシン)、CCL13(MCP-4)、CCL15(MIP-Id)、CCL16(HCC-4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MIP-3b)、CCL2(MCP-1)、MCAF、CCL20(MIP-3a)、CCL21(MEP-2)、SLC、エクソダス-2、CCL22(MDC/STC-1)、CCL23(MPIF-I)、CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン-3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CCL3(MIP-Ia)、CCL4(MIPIb)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP-3)、CCL8(mcp-2)、CCNA1、CCNA2、CCND1、CCNE1、CCNE2、CCR1(CKR1/HM145)、CCR2(mcp-IRB/RA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6)、CCR7(CKR7/EBI1)、CCR8(CMKBR8/TERI/CKR-L1)、CCR9(GPR-9-6)、CCRL1(VSHK1)、CCRL2(L-CCR)、CD164、CD19、CDIC、CD2、CD20、CD21、CD200、CD-22、CD24、CD27、CD28、CD3、CD33、CD35、CD37、CD38、CD3E、CD3G、CD3Z、CD4、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45RB、CD47、CD52、CD69、CD72、CD74、CD79A、CD79B、CD8、CD80、CD81、CD83、CD86、CD137、CD152、CD274、CDH1(エカドヘリン)、CDH1O、CDH12、CDH13、CDH18、CDH19、CDH2O、CDH5、CDH7、CDH8、CDH9、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK9、CDKN1A(p21Wap1/Cip1)、CDKN1B(p27Kip1)、CDKN1C、CDKN2A(p16INK4a)、CDKN2B、CDKN2C、CDKN3、CEBPB、CERI、CHGA、CHGB、チチナーゼ、CHST1O、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、CLDN3、CLDN7(クラウジン-7)、CLDN18.2(クラウジン18.2)、CLN3、CLU(クラステリン)、CMKLR1、CMKOR1(RDC1)、CNR1、COL18A1、COLIA1、COL4A3、COL6A1、CR2、Cripto、CRP、CSF1(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(GCSF)、CTL8、CTNNB1(b-カテニン)、CTSB(カテプシンB)、CX3CL1(SCYD1)、CX3CR1(V28)、CXCL1(GRO1)、CXCL1O(IP-IO)、CXCLI1(1-TAC/IP-9)、CXCL12(SDF1)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、CXCL2(GRO2)、CXCL3(GRO3)、CXCL5(ENA-78/LIX)、CXCL6(GCP-2)、CXCL9(MIG)、CXCR3(GPR9/CKR-L2)、CXCR4、CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo)、CYB5、CYC1、CYSLTR1、DAB2IP、DES、DKFZp451J0118、DNCL1、DPP4、E2F1、エンゲル、エッジ、フェンネル、EFNA3、EFNB2、EGF、EGFR、ELAC2、ENG、エノラ、ENO2、ENO3、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHA9、EPRA10、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5、EPHB6、EPHRIN-A1、EPHRIN-A2、EPHRINA3、EPHRIN-A4、EPHRIN-A5、EPHRIN-A6、EPHRIN-B1、EPHRIN-B2、EPHRIN-B3、EPHB4、EPG、ERBB2(Her-2)、EREG、ERK8、エストロゲン受容体、Earl、ESR2、F3(TF)、FADD、ファメシルトランスフェラーゼ、FasL、FASNf、FCER1A、FCER2、FCGR3A、FGF、FGF1(aFGF)、FGF10、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF2(bFGF).FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3(int-2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST-2)、FGF7(KGF)、FGF8、FGF9、FGFR3、FIGF(VEGFD)、FILI(EPSILON)、FBL1(ZETA)、FLJ12584、FLJ25530、FLRT1(フィブロネクチン)、FLT1、FLT-3、FOS、FOSL1(FRA-1)、FY(DARC)、GABRP(GABAa)、GAGEB1、GAGEC1、GALNAC4S-6ST、GATA3、GD2、GDF5、GFI1、GGT1、GM-CSF、GNAS1、GNRH1、GPR2(CCR10)、GPR31、GPR44、GPR81(FKSG80)、GRCC1O(C1O)、GRP、GSN(ゲルソリン)、GSTP1、HAVCR2、HDAC、HDAC4、HDAC5、HDAC7A、HDAC9、ヘッジホッグ、HGF、HIF1A、HIP1、ヒスタミン及びヒスタミン受容体、HLA-A、HLA-DRA、HLA-E、HM74、HMOXI、HSP90、HUMCYT2A、ICEBERG、ICOSL、ID2、IFN-a、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、EFNA6、BFNA7、IFNB1、IFNγ、IFNW1、IGBP1、IGF1、IGFIR、IGF2、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP6、DL-1、ILIO、ILIORA、ILIORB、IL-1、IL1R1(CD121a)、IL1R2(CD121b)、IL-IRA、IL-2、IL2RA(CD25)、IL2RB(CD122)、IL2RG(CD132)、IL-4、IL-4R(CD123)、IL-5、IL5RA(CD125)、IL3RB(CD131)、IL-6、IL6RA、(CD126)、IR6RB(CD130)、IL-7、IL7RA(CD127)、IL-8、CXCR1(IL8RA)、CXCR2、(IL8RB/CD128)、IL-9、IL9R(CD129)、IL-10、IL10RA(CD210)、IL10RB(CDW210B)、IL-11、IL11RA、IL-12、IL-12A、IL-12B、IL-12RB1、IL-12RB2、IL-13、IL13RA1、IL13RA2、IL14、IL15、IL15RA、IL16、IL17、IL17A、IL17B、IL17C、IL17R、IL18、IL18BP、IL18R1、IL18RAP、IL19、ILIA、ILIB、ILIF10、ILIF5、IL1F6、ILIF7、IL1F8、DL1F9、ILIHYI、ILIR1、ILIR2、ILIRAP、ILIRAPLI、ILIRAPL2、ILIRL1、IL1RL2、ILIRN、IL2、IL20、IL20RA、IL21R、IL22、IL22R、IL22RA2、IL23、DL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL30、IL3RA、IL4、IL4、IL6ST(糖タンパク質130)、ILK、INHA、INHBA、INSL3、INSL4、IRAK1、IRAK2、ITGA1、ITGA2、ITGA3、ITGA6(α6インテグリン)、ITGAV、ITGB3、ITGB4(β4インテグリン)、JAG1、JAK1、JAK3、JTB、JUN、K6HF、KAI1、KDR、KITLG、KLF5(GC Box BP)、KLF6、KLK10、KLK12、KLK13、KLK14、KLK15、KLK3、KLK4、KLK5、KLK6、KLK9、KRT1、KRT19(ケラチン19)、KRT2A、KRTHB6(毛髪特異的II型ケラチン)、LAMA5、LEP(レプチン)、Lingo-p75、Lingo-Troy、LPS、LRRC15、LTA(TNF-b))、LTB、LTB4R(GPR16)、LTB4R2、LTBR、MACMARCKS、MAGまたはOMgp、MAP2K7(c-Jun)、MCP-1、MDK、MIB1、ミッドカイン、MIF、MISRII、MJP-2、MK、MKI67(Ki-67)、MMP2、MMP9、MS4A1、MSMB、MT3(メタロチオネクチン-UI)、mTOR、MTSS1、MUC1(ムチン)、MYC、MYD88、NCK2、ニューロカン、ネクチン-4、NFKBI、NFKB2、NGFB(NGF)、NGFR、NgR-Lingo、NgRNogo66、(Nogo)、NgR-p75、NgR-Troy、NMEI(NM23A)、NOTCH、NOTCH1、NOX5、NPPB、NROB1、NROB2、NRID1、NR1D2、NR1H2、NR1H3、NR1H4、NR112、NR113、NR2C1、NR2C2、NR2E1、NR2E3、NR2F1、NR2F2、NR2F6、NR3C1、NR3C2、NR4A1、NR4A2、NR4A3、NR5A1、NR5A2、NR6A1、NRP1、NRP2、NT5E、NTN4、ODZI、OPRDI、P2RX7、PAP、PART1、PATE、PAWR、PCA3、PCDGF、PCNA、PDGFA、PDGFB、PDGFRA、PDGFRB、PECAMI、ペグ-アスパラギナーゼ、PF4(CXCL4)、PGF、PGR、ホスファカン、PIAS2、PI3キナーゼ、PIK3CG、PLAU(uPA)、PLG、PLXDCI、PKC、PKC-ベータ、PPBP(CXCL7)、PPID、PR1、PRKCQ、PRKD1、PRL、PROC、PROK2、PSAP、PSCA、PTAFR、PTEN、PTGS2(COX-2)、PIN、RAC2(P21Rac2)、RANK、RANKリガンド、RARB、RGS1、RGS13、RGS3、RNFI1O(ZNF144)、Ron、ROBO2、RXR、S100A2、SCGB1D2(リポフィリンB)、SCGB2A1(マンマグロビン2)、SCGB2A2(マンマグロビン1)、SCYE1(内皮単球活性化サイトカイン)、SDF2、SERPENA1、SERPINA3、SERPINB5(マスピン)、SERPINEI(PAI-I)、SERPINFI、SHIP-1、SHIP-2、SHB1、SHB2、SHBG、SfcAZ、SLC2A2、SLC33A1、SLC43A1、SLIT2、SPP1、SPRR1B(Spr1)、ST6GAL1、STAB1、STATE、STEAP、STEAP2、TB4R2、TBX21、TCP1O、TDGF1
、TEK、TGFA、TGFB1、TGFB1I1、TGFB2、TGFB3、TGFBI、TGEBR1、TGFBR2、TGFBR3、THIL、THBS1(トロンボスポンジン-1)、THBS2、THBS4、THPO、TIE(Tie-1)、TIMP3、組織因子、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TNF、TNF-a、TNFAIP2(B94)、TNFAIP3、TNFRSF11A、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF21、TNFRSF5、TNFRSF6(Fas)、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFSF1O(TRAIL)、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNSF14(HVEM-L)、TNFRSF14(HVEM)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド).TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4-1BBリガンド)、TOLLIP、Toll様受容体、TOP2A(トポイソメラーゼ1ia)、TP53、TPM1、TPM2、TRADD、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、TRKA、TREM1、TREM2、TROP2、TRPC6、TSLP、TWEAK、チロシナーゼ、uPAR、VEGF、VEGFB、VEGFC、ベルシカン、VHLC5、VLA-4、Wnt-1、XCL1(チムホタクチン)、XCL2(SCM-Ib)、XCRI(GPR5/CCXCR1)、YYI、ZFPM2、CLEC4C(BDCA-2、DLEC、CD303、CLECSF7)、CLEC4D(MCL、CLECSF8)、CLEC4E(ミンクル)、CLEC6A(デクチン-2).CLEC5A(MDL-1、CLECSF5)、CLEC1B(CLEC-2)、CLEC9A(DNGR-1)、CLEC7A(デクチン-1)、PDGFRa、SLAMF7、GP6(GPVI)、LILRA1(CD85I)、LILRA2(CD85H、ILT1)、LILRA4(CD85G、ILT7)、LILRA5(CD85F、ILT11)、LILRA6(CD85b、ILT8)、NCR1(CD335、LY94、NKp46)、NCR3(CD335、LY94、NKp46)、NCR3(CD337、NKp30)、OSCAR、TARM1、CD300C、CD300E、CD300LB(CD300B)、CD300LD(CD300D)、KIR2DL4(CD158D)、KIR2DS、KLRC2(CD159C、NKG2C)、KLRK1(CD314、NKG2D)、NCR2(CD336、NKp44)、PILRB、SIGLEC1(CD169、SN)、SIGLEC14、SIGLEC15(CD33L3)、SIGLEC16、SIRPB1(CD172B)、TREM1(CD354)、TREM2、及びLRF1(NKp80)から選択される1以上の標的に結合することができる(例えば、それらから選択される標的に特異的に結合する)。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗体はFcR.ガンマ結合受容体に結合する。いくつかの実施形態では、FcR.ガンマ共役受容体は、GP6(GPVI)、LILRA1(CD85I)、LILRA2(CD85H、ILT1)、LILRA4(CD85G、ILT7)、LILRA5(CD85F、ILT11)、LILRA6(CD85b、ILT8)、NCR1(CD335、LY94、NKp46)、NCR3(CD335、LY94、NKp46)、NCR3(CD337、NKp30)、OSCAR及びTARM1から成る群から選択される。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗体はDAP12共役受容体に結合する。いくつかの実施形態では、DAP12共役受容体は、CD300C、CD300E、CD300LB(CD300B)、CD300LD(CD300D)、KIR2DL4(CD158D)、KIR2DS、KLRC2(CD159C、NKG2C)、KLRK1(CD314、NKG2D)、NCR2(CD336、NKp44)、PILRB、SIGLEC1(CD169、SN)、SIGLEC14、SIGLEC15(CD33L3)、SIGLEC16、SIRPB1(CD172B)、TREM1(CD354)、及びTREM2から成る群から選択される。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヘムITAM含有受容体に結合する。いくつかの実施形態では、当該ヘムITAM含有受容体はKLRF1(NKp80)である
【0075】
いくつかの実施形態では、抗体は、CLEC4C(BDCA-2、DLEC、CD303、CLECSF7)、CLEC4D(MCL、CLECSF8)、CLEC4E(ミンクル)、CLEC6A(デクチン-2)、CLEC5A(MDL-1、CLECSF5)、CLEC1B(CLEC-2)、CLEC9A(DNGR-1)及びCLEC7A(デクチン-1)から選択される1以上の標的に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体はCLEC6A(デクチン-2)またはCLEC5Aに結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体はCLEC6A(デクチン-2)に結合することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗体は、ATP5I(Q06185)、OAT(P29758)、AIFM1(Q9Z0X1)、AOFA(Q64133)、MTDC(P18155)、CMC1(Q8BH59)、PREP(Q8K411)、YMEL1(O88967)、LPPRC(Q6PB66)、LONM(Q8CGK3)、ACON(Q99KI0)、ODO1(Q60597)、IDHP(P54071)、ALDH2(P47738)、ATPB(P56480)、AATM(P05202)、TMM93(Q9CQW0)、ERGI3(Q9CQE7)、RTN4(Q99P72)、CL041(Q8BQR4)、ERLN2(Q8BFZ9)、TERA(Q01853)、DAD1(P61804)、CALX(P35564)、CALU(O35887)、VAPA(Q9WV55)、MOGS(Q80UM7)、GANAB(Q8BHN3)、ERO1A(Q8R180)、UGGG1(Q6P5E4)、P4HA1(Q60715)、HYEP(Q9D379)、CALR(P14211)、AT2A2(O55143)、PDIA4(P08003)、PDIA1(P09103)、PDIA3(P27773)、PDIA6(Q922R8)、CLH(Q68FD5)、PPIB(P24369)、TCPG(P80318)、MOT4(P57787)、NICA(P57716)、BASI(P18572)、VAPA(Q9WV55)、ENV2(P11370)、VAT1(Q62465)、4F2(P10852)、ENOA(P17182)、ILK(O55222)、GPNMB(Q99P91)、ENV1(P10404)、ERO1A(Q8R180)、CLH、(Q68FD5)、DSG1A(Q61495)、AT1A1(Q8VDN2)、HYOU1(Q9JKR6)、TRAP1(Q9CQN1)、GRP75(P38647)、ENPL(P08113)、CH60(P63038)、及びCH10(Q64433)から選択される1以上の標的に結合することができる(例えば、それらから選択される標的に特異的に結合する)。先行するリストでは、受入番号を括弧内で示す。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗体は、CDH1、CD19、CD20、CD29、CD30、CD38、CD40、CD47、EpCAM、MUC1、MUC16、EGFR、Her2、SLAMF7及びgp75から選択される抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗原はCD19、CD20、CD47、EpCAM、MUC1、MUC16、EGFR、及びHer2から選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、Tn抗原及びトムゼン-フリーデンライヒ抗原から選択される抗原に結合する。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗体またはFc融合タンパク質は、アバゴボマブ、アバタセプト(ORENCIA(登録商標)としても知られている)、アブシキシマブ(REOPRO(登録商標)としても知られている)、c7E3Fab)、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標)としても知られている)、アデカツムマブ、アレンツズマブ(CAMPATH(登録商標)としても知られている)、MabCampathまたはCampath-1H)、アルツモマブ、アフェリモマブ、アナツモマブ、マフェナトックス、アネツムマブ、アンルキズマブ、アポリズマブ、アクチルモマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、バピネズマブ、バシリキシマブ(SIMULECT(登録商標)としても知られている)、バビツキシマブ、ベクツモマブ(LYMPHSCAN(登録商標)としても知られている)、ベリムマブ(LYMPHO-STAT-B(登録商標)としても知られている)、ベルチリムマブ、ベシリソマブ、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)しても知られている)、ビシロマブ、ブラロバルビタール、ビバツズマブメルタンシン、カムパス、カナキヌマブ(ACZ885としても知られている)、カンツズマブメルタンシン、カプロマブ(PROSTASCINT(登録商標)としても知られている)、カツマキソマブ(REMOVAB(登録商標)としても知られている)、セデリズマブ(CIMZIA(登録商標)としても知られている)、セルトリズマブペゴール、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)としても知られている)、クレノリキシマブ、デカツズマブ、ダクリキシマブ、ダクリズマブ(ZENAPAX(登録商標)としても知られている)、デノスマブ(AMG162としても知られている)、デツモマブ、ドリモマブアリトックス、ドリキシズマブ、ダンツマブ、デュリムルマブ、デュルムマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標)としても知られている)、エドバコマブ、エドレコロマブ(Mab17-1A、PANOREX(登録商標)としても知られている)、エファリズマブ(RAPTIVA(登録商標)としても知られている)、エフンギュマブ(MYCOGRAB(登録商標)としても知られている)、エルシリモマブ、エンリモマブペゴール、エピツモマブシツキセタン、エファリズマブ、エピツモマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ(REXOMUN(登録商標)としても知られている)、エタネルセプト(ENBREL(登録商標)としても知られている)、エタラシズマブ(エタラツズマブ、VITAXIN(登録商標)、ABEGRIN(登録商標)としても知られている)、エクスビビルマブ、ファノレソマブ(NEUTROSPEC(登録商標)としても知られている)、ファラリモマブ、フェリズマブ、フォントリズマブ(HUZAF(登録商標)としても知られている)、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ(ABXCBL(登録商標)としても知られている)、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)としても知られている)、ゴリムマブ(CNTO148としても知られている)、ゴミリキシマブ、イバリズマブ(TNX-355としても知られている)、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN(登録商標)としても知られている)、イゴボマブ、イムシロマブ、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標)としても知られている)、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101としても知られている)、イラツムマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レマレソマブ、レブリリズマブ、レルデリムマブ、レクサツムマブ(HGS-ETR2、ETR2-ST01としても知られている)、レキシツムマブ、リビビルマブ、リンツズマブ、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ(HGSETR1、TRM-1としても知られている)、マスリモマブ、マツズマブ(EMD72000としても知られている)、メポリズマブ(BOSATRIA(登録商標)としても知られている)、メテリムマブ、ミラツムマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モロリムマブ、モタビズマブ(NUMAX(登録商標)としても知られている)、ムロモナブ(OKT3としても知られている)、ナコロマブタフェナトックス、ナプツモマブエスタフェナトックス、ナタリズマブ(TYSABRI(登録商標)、ANTEGREN(登録商標)としても知られている)、ネバクマブ、ネレリモマブ、ニモツマブ(THERACIM hR3(登録商標)、THERA-CIM-hR3(登録商標)、THERALOC(登録商標)としても知られている)、ノフェツモマブメルペンタン(VERLUMA(登録商標)としても知られている)、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標)としても知られている)、オレゴボマブ(OVAREX(登録商標)としても知られている)、オテリキシズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ(SYNAGIS(登録商標)としても知られている)、パニツムマブ(ABX-EGF、VECTIBIX(登録商標)としても知られている)、パスコリズマブ、ペムツモマブ(THERAGYN(登録商標)としても知られている)、ペルツズマブ(2C4、OMNITARG(登録商標)としても知られている)、ペクセリズマブ、ピンツモマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標)としても知られている)、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、MabTHERA(登録商標)としても知られている)、ロベリズマブ、ルピズマブ、サツモマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ(MEDI-507としても知られている)、ソンツズマブ、スタムルマブ(MYO-029としても知られている)、スレソマブ(LEUKOSCAN(登録商標)としても知られている)、タカツズマブ、テトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タプリツモマブ、パプトックス、テフィバズマブ(AUREXIS(登録商標)としても知られている)、テリモマブアリトックス、テネリキシマブ、テプリズマブ、チシリムマブ、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)としても知られている)、トラリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)としても知られている)、トレメリムマブ(CP-675,206としても知られている)、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ(CNTO1275としても知られている)、バパリキシマブ、ベルツズマブ、バパリモマブ、ビシリズマブ(NUVION(登録商標)としても知られている)、ボロシキシマブ(M200も知られている)、ボツムマブ(HUMASPECT(登録商標)としても知られている)、ザルツムマブ、ザノリムマブ(HuMAX-CD4としても知られている)、ジルアリムマブ、ゾリモマブアリトックス、ダラツムマブ、エロツクスマブ、オビンツンズマブ、オララツマブ、ブレンツキシマブベドチン、アフィベルセプト、アバタセプト、ベラタセプト、アフィベルセプト、エタネルセプト、ロミプロスチム、SBT-040(US2017/0158772にて列挙された配列)から選択される。いくつかの実施形態では、抗体はリツキシマブである。
【0079】
システイン変異抗体
本発明の免疫複合体は、システイン変異抗体を含む。
【0080】
免疫複合体の例示的な実施形態は、EU方式に従って番号が付けられたK145C、S114C、E105C、S157C、L174C、G178C、S159C、V191C、L201C、S119C、V167C、I199C、T129C、Q196C、A378C、K149C、K188C、及びA140Cから成る群から選択されるシステイン変異を有するシステイン変異抗体を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、システイン変異抗体は、抗体または抗体断片の重鎖の特定の位置から選択される1つ以上のアミノ酸のシステインによる置換を含み、以下に限定されないが、表3、4、7のものが挙げられ、この位置は、EU方式に従って番号が付けられている。
【0082】
いくつかの実施形態では、システイン変異抗体は、抗体または抗体断片の軽鎖の特定の位置から選択されるその定常領域に1つ以上のアミノ酸のシステインによる置換を含み、以下に限定されないが、表1、2、5、6のものが挙げられ、この位置は、EUシステムに従って番号が付けられており、軽鎖は、ヒトκ軽鎖である。
【0083】
一実施形態では、ヒンジ領域のシステイン残基の数が変えられる、増加または減少させられるよう、CH1のヒンジ領域が修飾される(US5677425)。CH1のヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖の組み立てを促進するか、または抗体の安定性を増加もしくは低下させるために変えられてもよい。システイン置換の部位は、安定で均一な複合体が得られるように選択される。修飾された抗体または断片は、2つ以上のシステイン置換を有してもよく、これらの置換は、本明細書に記載されるとおり他の抗体修飾及びコンジュゲーション方法と組み合わせて使用されてもよい。抗体の特定の位置にシステインを挿入するための方法は当該技術分野において知られており、例えば、Lyons et al,(1990)Protein Eng.,3:703-708、WO2011/005481、WO2014/124316、WO2015/138615を参照されたい。
【0084】
本発明の実施形態の範囲には、本明細書に記載のシステイン変異抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインの機能的変異体が含まれる。本明細書で使用されるとき「機能的変異体」という用語は、親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインと実質的なまたは有意な配列同一性または類似性を有する抗原結合ドメインを有する抗体コンストラクトを指し、この機能的変異体は、それが変異体である抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインの生物活性を保持する。機能的変異体は、例えば、親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインと同様の程度に、同じ程度に、またはより高い程度に、例えば、以下に限定されないが、PD-L1、HER2、CEAまたはTROP2を発現する標的細胞を認識する能力を保持する、本明細書に記載の抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメイン(親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメイン)の変異体を包含する。
【0085】
抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインに関して、機能的変異体は、アミノ酸配列が抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインと、例えば、少なくとも約30%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上同一であることができる。
【0086】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインのアミノ酸配列を含むことができる。あるいはまたはさらに、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインのアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が機能的変異体の生物活性を妨害または阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を増強してもよいので、機能的変異体の生物活性は、親抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインと比較して上昇する。
【0087】
本発明の免疫複合体を含む抗体はFc操作された変異体を含む。いくつかの実施形態では、1以上のFc受容体への調節された結合をもたらすFc領域の変異は、以下の変異:SD(S239D)、SDIE(S239D/I332E)、SE(S267E)、SELF(S267E/L328F)、SDIE(S239D/I332E)、SDIEAL(S239D/I332E/A330L)、GA(G236A)、ALIE(A330L/I332E)、GASDALIE(G236A/S239D/A330L/I332E)、V9(G237D/P238D/P271G/A330R)及びV11(G237D/P238D/H268D/P271G/A330R)の1以上、及び/または以下のアミノ酸:E345R、E233、G237、P238、H268、P271、L328及びA330での1以上の変異を含むことができる。Fc受容体結合を調節するためのさらなるFc領域の修飾は、例えば、US2016/0145350、US7416726及びUS5624821に記載されており、これらは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
本発明の免疫複合体を含む抗体は脱フコシル化のようなグリカン変異体を含む。いくつかの実施形態では、結合剤のFc領域は、ネイティブの非修飾Fc領域と比較して、Fc領域のグリコシル化パターンの変化を有するように修飾される。
【0089】
本発明の抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインのアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は当該技術分野で公知であり、特定の物理的及び/または化学的特性を有する1つのアミノ酸を、同じまたは類似の化学的または物理的特性を有する別のアミノ酸に交換するアミノ酸置換が含まれる。例えば、保存的アミノ酸置換は、別の酸性/負に帯電した極性アミノ酸に置換された酸性/負に帯電した極性アミノ酸(例えば、AspまたはGlu)、非極性側鎖を有する別のアミノ酸に置換された正に帯電したアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Valなど)、別の塩基性/正に帯電した極性アミノ酸に置換された塩基性/正に帯電した極性アミノ酸(例えば、Lys、His、Argなど)、極性側鎖を有する他の非荷電性アミノ酸に置換された極性側鎖を有する非荷電性アミノ酸(例えば、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)、ベータ分岐側鎖を有する別のアミノ酸に置換されたベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ile、Thr及びVal)、芳香族側鎖を有する別のアミノ酸に置換された芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、His、Phe、Trp及びTyr)などであり得る。
【0090】
抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、他の成分、例えば他のアミノ酸が抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメイン機能的変異体の生物活性を実質的に変化させないように、本明細書に記載されている特定のアミノ酸配列(複数可)から本質的になり得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、修飾Fc領域を含み、修飾は1以上のFc受容体へのFc領域の結合を調節する。
【0092】
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体(例えば、少なくとも2つのアジュバント部分に結合された抗体)は、Fc領域の変異が欠如している天然抗体と比較して、1以上のFc受容体(例えば、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)及び/またはFcγRIIIB(CD16b))に調節された結合(例えば、結合の増加または結合の減少)をもたらす、Fc領域の1以上の修飾(例えば、アミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を含む。いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、抗体のFc領域のFcγRIIBへの結合を減少させる、Fc領域の1以上の修飾(例えば、アミノ酸挿入、欠失及び/または置換)を含む。いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、Fc領域の変異が欠如している天然抗体と比較して、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)及び/またはFcγRIIIA(CD16a)への同じ結合または増加した結合を維持しながら、FcγRIIBへの抗体の結合を減少させる、抗体のFc領域の1以上の修飾(例えば、アミノ酸挿入、欠失及び/または置換)を含む。いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体は、FcγRIIBへの抗体のFc領域の結合を増加させる、Fc領域の1以上の修飾を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、調節された結合は、抗体の天然Fc領域と比較した抗体のFc領域の変異によって提供される。変異は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはこれらの組み合わせにあり得る。「天然Fc領域」は「野生型Fc領域」と同義であり、自然界に見いだされるFc領域のアミノ酸配列と同一の、または天然抗体(例えば、セツキシマブ)に見いだされるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1Fc領域、天然配列ヒトIgG2Fc領域、天然配列ヒトIgG3Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4Fc領域、ならびにこれらの天然に存在する変異型が含まれる。天然配列Fcには、Fcの種々のアロタイプが含まれる(Jefferis et al.,(2009)mAbs,1(4):332-338)。
【0094】
いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体のFc領域は、天然の非修飾Fc領域と比較して、Fc領域のグリコシル化パターンの変化を有するように修飾される。ヒト免疫グロブリンは、各重鎖のCγ2ドメインのAsn297残基でグリコシル化される。このN-結合型オリゴ糖は、コア七糖であるN-アセチルグルコサミン4マンノース3(GlcNAc4Man3)から成る。エンドグリコシダーゼまたはPNGaseFによる七糖の除去は、抗体Fc領域の配座変化を引き起こすことが知られており、FcγRの活性化に対する抗体結合親和性を大幅に低下させ、エフェクター機能を低下させる可能性がある。コア七糖は、ガラクトース、バイセクトGlcNAc、フコース、またはシアル酸で修飾されることが多く、活性型FcγR及び抑制型FcγRへのFc結合に異なる影響を与える。さらに、α2,6-シアリル化は生体内で抗炎症活性を増強する一方で、脱フコシル化はFcγRIIIa結合を改善し、且つ抗体依存性細胞傷害及び抗体依存性食作用の10倍の上昇をもたらすことが実証されている。したがって、特定のグリコシル化パターンを使用して、炎症性エフェクター機能を制御することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、グリコシル化パターンを変更するための修飾は突然変異である。例えば、Asn297での置換。いくつかの実施形態では、Asn297は、グルタミン(N297Q)に変異している。FcγR制御シグナル伝達を調節する抗体による免疫応答を制御するための方法は、例えば、US7,416,726、US2007/0014795及びUS2008/0286819に記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0096】
いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体は、天然に存在しないグリコシル化パターンを有する操作されたFab領域を含有するように修飾される。例えば、ハイブリドーマは、FcRγIIIa結合及びエフェクター機能の増加を可能にする特定の変異を有する脱フコシル化mAb、脱シアリル化mAbまたは脱グリコシル化Fcを分泌するように遺伝子操作することができる。いくつかの実施形態では、免疫複合体の抗体は、脱フコシル化されるように操作される。
【0097】
いくつかの実施形態では、免疫複合体中の抗体の全Fc領域は、異なるFc領域と交換され、その結果、抗体のFab領域は、非天然Fc領域に結合される。例えば、通常はIgG1Fc領域を含むセツキシマブのFab領域は、IgG2、IgG3、IgG4またはIgAに結合できる、または通常はIgG4Fc領域を含むニボルマブのFab領域をIgG1、IgG2、IgG3、IgA1またはIgG2に結合できる。いくつかの実施形態では、非天然Fcドメインを有するFc修飾抗体はまた、記載されたFcドメインの安定性を調節する、IgG4 Fc内のS228P変異のような1以上のアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態では、非天然Fcドメインを有するFc修飾抗体はまた、FcRへのFc結合を調節する、本明細書に記載されている1以上のアミノ酸修飾を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、Fc領域のFcRへの結合を調節する修飾は、天然の非修飾抗体と比較した場合、抗体のFab領域のその抗原への結合を変化させない。他の実施形態では、Fc領域のFcRへの結合を調節する修飾はまた、天然の非修飾抗体と比較した場合、抗体のFab領域のその抗原への結合を増加させる。
【0099】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、PD-L1を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む、抗体コンストラクトを含む。
【0100】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、分化抗原群274、CD274、B7-ホモログ1、またはB7-H1)は、B7タンパク質スーパーファミリーに属し、且つプログラム細胞死タンパク質1(PD-1、PDCD1、分化抗原群279、またはCD279)のリガンドである。PD-L1はまた、B7.1(CD80)と相互作用することができ、そのような相互作用は、T細胞のプライミングを阻害すると考えられている。PD-L1/PD-1軸は、適応免疫応答の抑制に大きな役割を果たす。より具体的には、PD-L1とその受容体であるPD-1との結合は、T細胞の活性化及び増殖を阻害するシグナルをもたらすと考えられている。PD-L1に結合し、リガンドがPD-1受容体に結合するのを防ぐ薬剤は、この免疫抑制を妨げ、したがって、必要に応じて、例えばがんまたは感染症の治療のために、免疫応答を増強することができる。PD-L1/PD-1経路はまた、自己免疫の予防に寄与し、したがって、PD-L1に対するアゴニスト剤、または免疫阻害ペイロードを送達する薬剤は、自己免疫障害の治療に役立ち得る。
【0101】
アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(商標))及びアベルマブ(BAVENCIO(商標))を含む、PD-L1を標的とするいくつかの抗体が、がんの治療のために開発された。それにもかかわらず、PD-L1と高い親和性で結合し、PD-L1/PD-1シグナル伝達を効果的に妨げる薬剤、及びPD-L1発現細胞に治療ペイロードを送達することができる薬剤を含む、新規のPD-L1抗体コンストラクトが依然として必要とされている。さらに、自己免疫障害及び感染を治療するための新規のPD-L1結合剤が必要とされている。
【0102】
TLRアゴニストペイロードを、PD-L1を発現する細胞に送達する方法であって、当該細胞または当該細胞を含む哺乳動物に、1つ以上のTLRアゴニスト部分に共有結合したリンカーに共有結合したシステイン変異抗PD-L1抗体を含む免疫複合体を投与することを含む、方法が提供される。
【0103】
本発明はまた、PD-L1阻害に応答する哺乳動物における免疫応答を増強または低減または阻害するための方法、及び哺乳動物の疾患、障害または状態を治療するための方法を提供し、本方法は、哺乳動物にPD-L1免疫複合体を投与することを含む。
【0104】
本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域ポリペプチド及び免疫グロブリン軽鎖可変領域ポリペプチドを含む、PD-L1抗体を提供する。PD-L1抗体は、PD-L1に特異的に結合する。抗体の結合特異性により、PD-L1を発現する細胞を標的とし、例えば、そのような細胞に治療用ペイロードを送達することが可能になる。いくつかの実施形態では、PD-L1抗体は、ヒトPD-L1に結合する。しかしながら、任意のPD-L1断片、ホモログまたはパラログに結合する抗体も包含される。
【0105】
いくつかの実施形態では、PD-L1抗体は、PD-L1がその受容体であるPD-1に結合することを実質的に阻害または防止することなく、PD-L1に結合する。しかしながら、他の実施形態では、PD-L1抗体は、PD-L1のその受容体であるPD-1への結合を完全にまたは部分的に遮断(阻害または防止)することができ、(例えば、治療目的のために)PD-L1/PD-1シグナル伝達を阻害するために抗体を使用することができる。抗体または抗原結合抗体断片は、PD-L1に対して単一特異的であり得るか、または二重特異的もしくは多重特異的であってよい。例えば、2価または多価の抗体または抗体断片において、結合ドメインは、同じ抗原の異なるエピトープを標的とするか、または異なる抗原を標的とする、異なるものであってもよい。多価結合コンストラクトを構築する方法は、当技術分野で公知である。二重特異性及び多重特異性抗体は、当技術分野で公知である。更に、ポリペプチド鎖の二量体、三量体または四量体である、ダイアボディ、トリアボディまたはテトラボディを提供することができ、それぞれは、同じポリペプチド鎖上のVHとVLの間の対形成を可能にするには短すぎるペプチドリンカーによってVLに接続されたVHを含み、それによって、異なるVH-VLポリペプチド鎖上の相補的ドメイン間の対形成を駆動し、2、3または4個の機能的な抗原結合部位を有する多量体分子を生成する。また、2つの異なる可変領域を有する小さなscFv断片であるビス-scFv断片を生成し、2つの異なるエピトープを結合することが可能な二重特異性ビス-scFv断片を生成することができる。Fab二量体(Fab2)及びFab三量体(Fab3)は、Fab断片に基づく多特異的コンストラクトを作成するために、遺伝子工学法を用いて生成することができる。
【0106】
PD-L1抗体は、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体もしくはキメラ抗体、または対応する抗体断片であってもよいし、それらから得ることもできる。「キメラ」抗体は、典型的には、ヒト定常領域及び非ヒト可変領域を含む抗体またはその断片である。「ヒト化」抗体は、典型的にはヒト抗体足場を含むが、少なくとも1つのCDR(例えば、1、2、3、4、5または6つのCDRすべて)における非ヒト由来アミノ酸または配列を含む、モノクローナル抗体である。
【0107】
PD-L1抗体は、参照により本明細書に組み込まれるWO2021/150701に記載されるように内部移行することができるか、またはPD-L1抗体は、参照により本明細書に組み込まれるWO2021/150702に記載されるように非内部移行であることができる。
【0108】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、HER2を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む抗体コンストラクトを含む。
【0109】
特定の実施形態では、本発明の免疫複合体は、実施例201の方法によって調製されたものなどの、システイン変異抗HER2抗体を含む。本発明の一実施形態では、本発明の免疫複合体の抗HER2抗体は、参照によって本明細書に特に組み込まれるUS5821337の表3に記載されている、ヒト化抗HER2抗体、例えば、huMAb4D5-1、huMAb4D5-2、huMAb4D5-3、huMAb4D5-4、huMAb4D5-5、huMAb4D5-6、huMAb4D5-7及びhuMAb4D5-8のシステイン変異型を含む。これらの抗体は、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域を有するヒトフレームワーク領域を含む。ヒト化抗体huMAb4D5-8はトラスツズマブとも呼ばれ、HERCEPTIN(商標)(Genentech,Inc.)の商品名で市販されている。
【0110】
トラスツズマブ(CAS 180288-69-1、HERCEPTIN(登録商標)、huMAb4D5-8、rhuMAb HER2、Genentech)は、細胞に基づくアッセイにて、HER2の細胞外ドメインに高親和性で選択的に結合する(Kd=5nM)マウス抗HER2抗体(4D5)のヒト化型である、組換えDNA由来のIgG1κ、モノクローナル抗体である(米国特許第5677171号、同第5821337号、同第6054297号、同第6165464号、同第6339142号、同第6407213号、同第6639055号、同第6719971号、同第6800738号、同第7074404号、Coussens et al(1985)Science 230:1132-9、Slamon et al(1989)Science 244:707-12、Slamon et al(2001)New Engl.J.Med.344:783-792)。
【0111】
本発明の一実施形態では、抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、トラスツズマブのCDR領域を含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、トラスツズマブのフレームワーク領域をさらに含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、トラスツズマブの一方または双方の可変領域をさらに含む。
【0112】
本発明の別の実施形態では、本発明の免疫複合体の抗HER2抗体は、米国特許第7862817号に記載されているように、ヒト化抗HER2抗体、例えば、ヒト化2C4を含む。例示的なヒト化2C4抗体は、ペルツズマブである(CAS登録番号380610-27-5)、PERJETA(商標)(Genentech、Inc.)。ペルツズマブはHER二量体化阻害剤(HDI)であり、他のHER受容体(例えば、EGFR/HER1、HER2、HER3及びHER4)と活性なヘテロ二量体またはホモ二量体を形成する能力を阻害する機能を有する。例えば、Harari and Yarden Oncogene 19:6102-14(2000)、Yarden and Sliwkowski.Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2:127-37(2001);Sliwkowski,Nat.Struct.Biol.10:158-9(2003);Cho et al.Nature,421:756-60(2003);及びMalik et al.Pro.Am.Soc.Cancer Res.44:176-7(2003)を参照のこと。PERJETA(商標)は乳癌の治療薬として承認されている。
【0113】
本発明の一実施形態では、抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、ペルツズマブのCDR領域を含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、ペルツズマブのフレームワーク領域をさらに含む。本発明の一実施形態では、抗HER2抗体は、ペルツズマブの一方または両方の可変領域をさらに含む。
【0114】
(MGAH22とも呼ばれる)マルゲツキシマブは、別の抗HER2モノクローナル抗体である。マルゲツキシマブのFc領域は、免疫エフェクター細胞上の活性化FcγRへの結合を増加させるが、抑制性Fc.γ.Rへの結合を減少させるように最適化されている。マルゲツキシマブは、再発または難治性の進行乳癌で、その腫瘍が免疫組織化学により2+レベルでHER2を発現しており、FISHによるHER2遺伝子増幅の証拠がない患者の治療についてFDAによって承認されている。
【0115】
HT-19は、トラスツズマブまたはペルツズマブのエピトープとは異なるヒトHER2のエピトープに結合する、別の抗HER2モノクローナル抗体である。HT-19は、トラスツズマブと同等にHER2シグナル伝達を阻害し、トラスツズマブ及びペルツズマブと組み合わせてHER2の分解を増強することが示された(Bergstrom D.A.et al.,(2015)Cancer Res.;75:LB-231)。
【0116】
本発明の一実施形態では、免疫複合体は、表1から選択される軽鎖配列を有するシステイン変異抗体を含む。
【表1】
【0117】
本発明の一実施態様では、システイン変異HER2標的化抗体は、配列番号20の重鎖(HC)を含む。
【0118】
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号20
【0119】
本発明の一実施形態では、システイン変異HER2標的化抗体の軽鎖(LC)は、表2の配列番号24、25、26、27、28、29、30、31、及び32から選択される。
【表2-1】
【表2-2】
【0120】
本発明の一実施形態では、免疫複合体は、表3から選択される重鎖配列を有するシステイン変異抗体を含む。
【表3】
【0121】
本発明の一実施形態では、システイン変異HER2標的化抗体の軽鎖は、配列番号21の配列を有する。
【0122】
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号21
【0123】
本発明の一実施形態では、システイン変異HER2標的化抗体の重鎖(HC)は、表4の配列番号33、34、35、36、37、38、39、40、及び41から選択される。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0124】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、カプリン-1を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含む、システイン変異抗体コンストラクトを含む(Ellis JA,Luzio JP(1995)J Biol Chem.270(35):20717-23;Wang B,et al(2005)J Immunol.175(7):4274-82;Solomon S,et al(2007)Mol Cell Biol.27(6):2324-42)。カプリン-1はGPIAP1、GPIP137、GRIP137、M11S1、RNG105、p137GPI、及び細胞周期関連タンパク質1としても知られている。
【0125】
細胞質活性化/増殖関連タンパク質-1(カプリン-1)は、細胞周期制御関連遺伝子の調節に関与するRNA結合タンパク質である。カプリン-1は、c-Myc及びサイクリンD2のmRNAに選択的に結合し、G1期を通ってS期への細胞の進行を加速し、細胞生存率を高め、細胞増殖を促進する。これは、それが腫瘍形成にて重要な役割を果たす場合があることを示している(Wang B,et al.(2005),J.Immunol.175:4274-4282)。カプリン-1は、単独で、またはRasGAP SH3ドメイン結合タンパク質1及び脆弱X精神遅滞タンパク質のような他のRNA結合タンパク質と組み合わせて作用する。腫瘍形成過程では、カプリン-1は、主に細胞増殖を活性化し、免疫チェックポイントタンパク質の発現を上方調節することによって機能する。ストレス性顆粒の形成を介して、カプリン-1はまた、腫瘍細胞が有害条件に適応する過程にも関与しており、これは放射線及び化学療法の耐性に寄与する。種々の臨床悪性腫瘍におけるその役割を考慮すると、カプリン-1は、バイオマーカーとして、及び新規治療薬開発の標的として使用される可能性がある。(Yang, Z-S, et al (2019),Oncology Letters,18:15-21)。
【0126】
治療及び検出のためのカプリン-1を標的とする抗体が記載されている(WO2011/096519;WO2013/125654;WO2013/125636;WO2013/125640;WO2013/125630;WO2013/018889;WO2013/018891;WO2013/018883;WO2013/018892;WO2014/014082;WO2014/014086;WO2015/020212;WO2018/079740)。
【0127】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、CEAを特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含むシステイン変異抗体コンストラクトを含む。がん胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEACAM5)は、CD66e(分化抗原群66e)としても知られ、がん胎児性抗原(CEA)遺伝子ファミリーのメンバーである。
【0128】
がん胎児性抗原(CEA、CD66e、CEACAM5)の発現の上昇は、特に腫瘍細胞の接着、転移、細胞免疫機構の遮断、及び抗アポトーシス機能を有するなど、腫瘍の様々な生物学的側面に関係している。CEAはまた、多くの癌腫の血液マーカーとしても使用されている。MN-14及びhMN14としても知られている、ラベツズマブ(CEA-CIDE(商標)、Immunomedics、CAS登録番号219649-07-7)は、ヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、結腸直腸癌の治療のために研究されている(Blumenthal,R.et al(2005)Cancer Immunology Immunotherapy54(4):315-327)。カンプトテシン類似体(ラベツズマブゴビテカン、IMMU-130)に結合したラベツズマブは、がん胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEACAM5)を標的とし、再発性または難治性の転移性大腸癌の患者で研究されている(Sharkey,R.et al,(2018),Molecular Cancer Therapeutics 17(1):196-203;Cardillo,T.et al(2018)Molecular Cancer Therapeutics 17(1):150-160)。本発明の一実施形態では、CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる、US6676924に開示されている、hMN-14/ラベツズマブの可変軽鎖(VLκ)を含む。
【0129】
例示的な実施形態では、本発明の免疫複合体は、TROP2を特異的に認識して結合する抗原結合ドメインを含むシステイン変異抗体コンストラクトを含む。腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子2(TROP-2)は、TACSTD2遺伝子によってコードされる膜貫通糖タンパク質である(Linnenbach AJ,et al(1993)Mol Cell Biol.13(3):1507-15;Calabrese G,et al(2001)Cytogenet Cell Genet.92(1-2):164-5)。TROP2は細胞内カルシウムシグナル伝達因子であり、多くのがんで発現が異なり、細胞に自己複製、増殖、浸潤、及び生存のためにシグナルを伝達する。TROP2は幹細胞マーカーと考えられており、多くの正常組織で発現しているが、対照的に多くのがんでは過剰発現している(Ohmachi T,et al.,(2006),Clin.Cancer Res.,12(10),3057-3063;Muhlmann G,et al.,(2009),J.Clin.Pathol.,62(2),152-158;Fong D,et al.,(2008),Br.J.Cancer,99(8),1290-1295;Fong D,et al.,(2008)Mod. Pathol.,21(2),186-191;Ning S,et al.,(2013)Neurol. Sci.,34(10),1745-1750)。TROP2の過剰発現は、予後的意義がある。TROP2と相互作用するいくつかのリガンドが提案されている。TROP2は、異なる経路を介して細胞にシグナル伝達し、それは、いくつかの転写因子の複雑なネットワークによって転写的に調節されている。
【0130】
ヒトTROP2(TACSTD2:腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子2、GA733-1、EGP-1、M1S1;以下、hTROP2という)は、323アミノ酸残基からなる単回膜貫通1型細胞膜タンパク質である。ヒト栄養膜細胞及びがん細胞に共通する(Faulk W P,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.75(4):1947-1951(1978))免疫抵抗性に関与する細胞膜タンパク質の存在が以前から示唆されいる一方で、ヒト絨毛癌細胞株における細胞膜タンパク質に対するモノクローナル抗体によって認識される抗原分子が同定され、ヒト栄養膜細胞で発現される分子の1つとしてTROP2と命名された(Lipinski M,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.78(8),5147-5150(1981))。この分子はまた、胃癌細胞株での免疫によって得られた、マウスモノクローナル抗体GA733(Linnenbach A J,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.86(1),27-31(1989))によって認識される腫瘍抗原GA733-1とも表された、または非小細胞肺癌細胞での免疫によって得られたマウスモノクローナル抗体RS7-3G11によって認識される上皮糖タンパク質(EGP-1;Basu A,et al.,Int.J.Cancer,62(4),472-479(1995))とも表された。しかしながら、1995年にTROP2遺伝子がクローニングされ、これらの分子はすべて同一の分子であることが確認された(Fornaro M,et al.,Int.J.Cancer,62(5),610-618(1995))。hTROP2のDNA配列及びアミノ酸配列は公開データベースに公開されており、例えば、受託番号NM_002353及びNP_002344(NCBI)で参照することができる。
【0131】
がんとの関連を示唆するこのような情報を受けて、これまでに複数の抗hTROP2抗体が確立されており、その抗腫瘍効果が研究されてきた。これらの抗体の中でも、例えば、ヌードマウス異種移植片モデルにおいてそれ自体で腫瘍活性を示す非結合抗体(WO2008/144891;WO2011/145744;WO2011/155579;WO2013/077458)、及び細胞傷害性薬とともにADCとしての抗腫瘍活性を示す抗体(WO2003/074566;WO2011/068845;WO2013/068946;US7999083)が開示されている。しかしながら、それらの活性の強度または適用範囲は依然として不十分であり、hTROP2を治療標的とする医学的な要求が満たされていない。
【0132】
がん細胞におけるTROP2発現は薬剤耐性と相関している。いくつかの戦略は、抗体、抗体融合タンパク質、化学阻害剤、ナノ粒子などを含むがん細胞上のTROP2を標的としている。これらの様々な治療的処置を用いたインビトロ研究及び前臨床研究によって、マウスにおけるインビトロ及びインビボの両方で腫瘍細胞の増殖が有意に阻害された。臨床研究によって、予後バイオマーカー、及び耐性を逆行させるための治療標的の両方としてTROP2の適用の可能性が調査されてきた。
【0133】
サシツズマブゴビテカン(TRODELVY(登録商標)、Immunomedics、IMMU-132)、トポイソメラーゼ阻害剤に連結されたTROP2を標的とする抗体を含む抗体薬物複合体は、少なくとも2回の先行治療を受けた成人患者における転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)の治療に適応される。サシツズマブゴビテカン中のTROP2抗体は、イリノテカンの活性代謝物であるSN-38にコンジュゲートされている(US2016/0297890;WO2015/098099)。
【0134】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、hRS7(ヒト化RS7)(参照により本明細書に組み込まれるUS7238785)の軽鎖CDR(相補性決定領域)を含む。
【0135】
本発明の一実施形態では、免疫複合体は、表5から選択される軽鎖配列を有するシステイン変異抗体を含む。
【表5】
【0136】
本発明の一実施態様では、システイン変異TROP2標的化抗体は、配列番号22の重鎖(HC)を含む。
【0137】
QVQLQQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTNYGMNWVKQAPGQGLKWMGWINTYTGEPTYTDDFKGRFAFSLDTSVSTAYLQISSLKADDTAVYFCARGGFGSSYWYFDVWGQGSLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号22
【0138】
本発明の一実施形態では、TROP2標的化抗体の軽鎖(LC)は、表6の配列番号42、43、及び44から選択される。
【表6】
【0139】
本発明の一実施形態では、免疫複合体は、表7から選択される重鎖配列を有するシステイン変異抗体を含む。
【表7】
【0140】
本発明の一実施形態では、システイン変異TROP2標的化抗体の軽鎖(LC)は、配列番号23の配列を有する。
【0141】
DIQLTQSPSSLSASVGDRVSITCKASQDVSIAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRYTGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFAVYYCQQHYITPLTFGAGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号23
【0142】
本発明の一実施形態では、システイン変異TROP2標的化抗体の重鎖(HC)は、配列番号45の配列を有する。
【0143】
QVQLQQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTNYGMNWVKQAPGQGLKWMGWINTYTGEPTYTDDFKGRFAFSLDTSVSTAYLQISSLKADDTAVYFCARGGFGSSYWYFDVWGQGSLVTVSSACTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号45
【0144】
本発明の一実施形態では、システイン変異HER2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号46~52から選択される軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表8】
【0145】
本発明の一実施形態では、システイン変異HER2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号53~59から選択される重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表9】
【0146】
本発明の一実施形態では、システイン変異TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号60~66から選択される軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表10】
【0147】
本発明の一実施形態では、システイン変異TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号67~73から選択される重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表11】
【0148】
本発明の一実施形態では、システイン変異TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号74~80から選択される軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表12】
【0149】
本発明の一実施形態では、システイン変異TROP2標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号81~87から選択される重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表13】
【0150】
本発明の一実施形態では、システイン変異PD-L1標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号88~94から選択される軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表14】
【0151】
本発明の一実施形態では、システイン変異PD-L1標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号95~101から選択される重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表15】
【0152】
本発明の一実施形態では、システイン変異CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号102~108から選択される軽鎖CDR(相補性決定領域)または軽鎖フレームワーク(LFR)配列を含む。
【表16】
【0153】
本発明の一実施形態では、システイン変異CEA標的化抗体コンストラクトまたは抗原結合ドメインは、配列番号109~115から選択される重鎖CDR(相補性決定領域)または重鎖フレームワーク(HFR)配列を含む。
【表17】
【0154】
TLRアゴニストアジュバント化合物
本発明の免疫複合体は、免疫賦活性TLRアゴニストアジュバント部分を含む。本明細書に記載されているアジュバント部分は、免疫応答を誘発する化合物(すなわち、免疫賦活剤)である。概ね、本明細書に記載のアジュバント部位は、TLRアゴニストである。TLRは、脊椎動物の自然免疫応答の開始に関与するI型膜貫通タンパク質である。TLRは、細菌、ウイルス、真菌からの様々な病原体関連分子パターンを認識し、侵入する病原体に対する防御の第一線として機能する。TLRは、細胞発現とそれらが開始するシグナル伝達経路の違いにより、重複しているが異なる生物学的応答を誘発する。作動すると(例えば、自然刺激または合成TLRアゴニストによって)、TLRはシグナル伝達カスケードを開始し、アダプタータンパク質である骨髄分化一次応答遺伝子88(MyD88)を介して核因子-κB(NF-κB)の活性化、及びIL-1受容体関連キナーゼ(IRAK)の動員をもたらす。そうしてIRAKのリン酸化は、TNF受容体関連因子6(TRAF6)の動員につながり、その結果、NF-κB阻害剤I-κBがリン酸化される。その結果、NF-κBが細胞核に入り、そのプロモーターがサイトカインなどのNF-κB結合部位を含む、遺伝子の転写を開始させる。TLRシグナル伝達の追加の調節モードには、TIRドメイン含有アダプター誘導型インターフェロン-β(TRIF)依存的なTNF受容体関連因子6(TRAF6)の誘導、ならびにTRIF及びTRAF3を介したMyD88非依存経路の活性化が含まれ、インターフェロン応答因子3(IRF3)のリン酸化をもたらす。同様に、MyD88依存経路もIRF及びIRF7を含むいくつかのIRFファミリーメンバーを活性化し、TRIF依存経路もNF-κB経路を活性化する。
【0155】
通常、本明細書に記載のアジュバント部位は、TLR7及び/またはTLR8アゴニストである。TLR7及びTLR8は、どちらも単球及び樹状細胞で発現する。ヒトでは、TLR7は形質細胞様樹状細胞(pDC)及びB細胞でも発現する。TLR8は、主に骨髄由来の細胞、すなわち単球、顆粒球及び骨髄樹状細胞で発現する。TLR7及びTLR8は、ウイルスの侵入に応答する手段として、細胞内の「外来」一本鎖RNAの存在を検出することができる。TLR8アゴニストによるTLR8発現細胞の治療は、高レベルのIL-12、IFN-γ、IL-1、TNF-α、IL-6及び他の炎症性サイトカインの産生をもたらすことができる。同様に、TLR7アゴニストによるpDCなどのTLR7発現細胞の刺激は、高レベルのIFN-α及び他の炎症性サイトカインの産生をもたらすことができる。TLR7/TLR8関与とその結果としてのサイトカイン産生は、樹状細胞及び他の抗原提示細胞を活性化し、腫瘍破壊につながる多様な自然及び獲得免疫応答メカニズムを促進する。
【0156】
TLRアゴニストアジュバント部分としては、式a~fを有する以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない:(a)イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン(WO2020/190762、WO2020/190725、WO2019/222676、WO2018/112108、WO2018/009916);(b)キノリン-2-アミン(WO2021/046112);(c)2-アミノ-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド(WO2020/252254、WO2020/252294);(d)5-アミノ-6H-チエノ[3,2-b]アゼピン-7-カルボキサミド(WO2021/081407、WO2021/081402);(e)5-アミノ-1,6-ジヒドロピラゾロ[4,3-b]アゼピン-7-カルボキサミド;及び(f)5-アミノ-2,6-ジヒドロピラゾロ[4,3-b]アゼピン-7-カルボキサミド、
【化4】
本明細書に記載のとおりのR
1~4及びX
1~4置換基を有する。
【0157】
TLRアゴニスト-リンカー化合物
本発明の免疫複合体は、TLRアゴニスト-リンカー(TLR-L)化合物とのシステイン変異抗体のコンジュゲーションによって調製される。TLR-L化合物は、リンカーユニットと共有結合したTLRアゴニスト部分を含む。リンカーユニットは、免疫複合体の安定性、透過性、溶解性、及び他の薬物動態、安全性、及び有効性の特性に影響を与える官能基ならびにサブユニットを含む。リンカーユニットは、システイン変異抗体の反応性システインチオール基と反応、すなわち、結合して免疫複合体を形成するマレイミドまたはブロモアセトアミドなどの反応性求電子官能基を含む。
【0158】
反応性求電子官能基がマレイミドである場合、リンカー中に得られるスクシンイミド環は、とりわけ、高いpH及び高温における加水分解により開環反応を受けやすくなる。スクシンイミド環が開環されると、インビボ安定性及び治療活性が調節される場合もある(Zheng,K.et al(2019)J Pharm Sci,108(1):133-141)。
【0159】
TLR-L化合物に適した求電子性反応官能基としては、マレイミド(チオール反応性);ハロゲン化アセトアミド、例えば、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、及びクロロアセトアミド(チオール反応性);ビニルスルホン(チオール、アミン、及びヒドロキシル反応性);ならびにピリジルジスルフィド(チオール反応性)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる試薬としては、Hermanson,Bioconjugate Techniques,2nd Edition,Academic Press,2008に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
本発明は、免疫複合体の設計、調製及び使用に対する制限ならびに課題に対する解決策を提供する。いくつかのリンカーは、血流中で不安定であり、それにより、標的細胞での内部移行前に許容できない量のアジュバント/薬物を放出する可能性がある(Khot,A.et al(2015)Bioanalysis7(13):1633-1648)。他のリンカーは、血流中では安定性を提供し得るが、細胞内放出の有効性に悪影響が及ぼされ得る。所望の細胞内放出を提供するリンカーは通常、血流中での安定性に乏しい。換言すると、血流安定性及び細胞内放出は通常、反比例関係にある。さらに、標準的な結合プロセスで、抗体上に負荷されたアジュバント/薬物部分の量(すなわち、薬物負荷)、結合反応で形成される凝集体の量、及び得ることができる最終精製結合の収率は、相関する。例えば、凝集体の形成は一般に、抗体に結合されるアジュバント/薬物部分及びその誘導体の当量数に正相関する。高い薬物負荷のもとでは、形成された凝集体は治療用途については除去されなければならない。結果として、薬物負荷が介在する凝集体形成は、免疫複合体の収率を低下させ、プロセスの規模拡大を困難し得る。
【0161】
本発明の免疫複合体の設計のための要件は、(1)生体内循環中のTLRアゴニスト部分の早期放出を防ぐこと及び(2)TLRアゴニスト部分の生物活性形態が所望の作用部位において適切な速度で放出されることを保証することを含む。その機能的特性と合わせた免疫複合体の複雑な構造は、抗体、結合部位、リンカー構造、及びピラゾロアゼピン化合物を含む分子のあらゆる構成成分の慎重な設計と選択を必要とする。リンカーはアジュバント放出のメカニズムと速度を決定する。
【0162】
一般に、リンカーユニット(L)は切断可能であってもよく、または切断可能でなくてもよい。切断可能なリンカーユニットは、ペプチドリンカーユニットを認識して切断し、TLRアゴニストを抗体から分離するカテプシンなどの特定のプロテアーゼの基質であるペプチド配列を含んでもよい(Caculitan NG,et al.(2017),Cancer Res .77(24):7027-7037)。
【0163】
切断可能なリンカーユニットは、酸感受性ジスルフィド基などの不安定な官能基を含んでもよい(Kellogg,BA et al(2011)Bioconjugate Chem.22,717-727;Ricart,A.D.et al(2011)Clin.Cancer Res.17,6417-6427;Pillow,T.,et al(2017)Chem.Sci.8,366-370;Zhang D,et al(2016)ACS Med Chem Lett.7(11):988-993)。
【0164】
いくつかの実施形態では、リンカーは、生理的条件下で切断可能ではない。本明細書で使用されるとき、「生理的条件」という用語は、摂氏20~40度の温度範囲、大気圧(すなわち1気圧)、約6~約8のpH、及び1以上の生理学的酵素、プロテアーゼ、酸、及び塩基を指す。免疫複合体における抗体とTLRアゴニスト部分との間の切断可能でないリンカーの1つの利点は、早期のペイロード放出及び対応する毒性を最小限に抑えることである。
【0165】
一実施形態では、本発明は、細胞結合剤と免疫賦活性TLRアゴニスト部分との間に、カテプシン、腫瘍関連エラスターゼ酵素、またはプロテアーゼ様もしくはエラスターゼ様活性がある酵素などのプロテアーゼによって選択的に切断され得る特定のアミノ酸残基の直鎖配列に基づくペプチドラジカルを含むペプチド連結ユニットPEPを含む。ペプチドラジカルは約2~約12のアミノ酸であってもよい。ペプチドリンカー内の結合の酵素的切断により、免疫賦活性TLRアゴニスト部分の活性形態が放出される。このことは、本発明による複合体の組織特異性の増大につながるため、他の組織型における本発明による複合体の毒性のさらなる低下につながる。
【0166】
例示的な一実施形態では、PEPは、以下から成る群から選択されるアミノ酸のアミノ酸残基(AA)から構成される:
【化5】
【0167】
例示的な実施形態では、PEPは、Ala-Pro-Val、Asn-Pro-Val、Ala-Ala-Val、Ala-Ala-Pro-Ala、Ala-Ala-Pro-Val、及びAla-Ala-Pro-Nvaから成る群から選択される。
【0168】
例示的な一実施形態では、PEPは式:
【化6】
を有する。
【0169】
例示的な一実施形態では、PEPは式:
【化7】
を有する。
【0170】
例示的な一実施形態では、PEPは式:
【化8】
から選択される。
【0171】
リンカーは、生体媒体、例えば、培養培地または血清において免疫複合体の十分な安定性を提供し、同時に、免疫賦活性TLRアゴニスト部分、すなわち「ペイロード」の放出を伴うその特異的な酵素切断性または加水分解切断性の結果として腫瘍組織内で所望の細胞内作用を提供する。
【0172】
プロテアーゼ、カテプシンまたはエラスターゼの酵素活性は、生理的条件下で免疫複合体の共有結合の切断を触媒することができる。酵素活性は腫瘍組織に関連する細胞の発現産物である。ターゲッティングペプチドの切断部位での酵素活性が免疫複合体をターゲッティングペプチド及び連結基を含まない活性がある免疫賦活薬に変換する。切断部位は酵素によって特異的に認識されてもよい。カテプシンまたはエラスターゼは、特定のペプチドのC末端アミノ酸残基と免疫複合体の免疫賦活性TLRアゴニスト部分との間の特定のペプチジル結合の切断を触媒することができる。
【0173】
一実施形態では、TLRアゴニスト-リンカー(TLR-L)化合物は、細胞結合剤とTLRアゴニスト部分との間に、グルクロニダーゼ(Jeffrey SC,et al(2006)Bioconjug.Chem.17(3):831-40)またはスルファターゼ(Bargh JD,et al(2020)Chem Sci.11(9):2375-2380)切断に対する基質を含む連結ユニット、すなわち、Lまたはリンカーを含む。特に、LはGlucユニットを含み、且つ以下から選択される式を含む:
【化9】
【0174】
本発明の免疫複合体の特異的切断は、免疫系の腫瘍浸潤細胞及び白血球分泌酵素の存在を利用して、腫瘍部位での抗癌剤の活性化を促進する。
【0175】
TLRアゴニストリンカー(TLR-L)化合物の例示的な実施形態は、式a~f:
【化10】
から選択され;
X
1、X
2、X
3及びX
4は、独立して、結合、C(=O)、C(=O)N(R
5)、O、N(R
5)、S、S(O)
2、及びS(O)
2N(R
5)から成る群から選択され;
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
3~C
12カルボシクリル、C
6~C
20アリール、C
2~C
9ヘテロシクリル、及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、及びヘテロアリールは、独立して、任意に
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-OR
5;
-(C
3~C
12カルボシクリル);
-(C
3~C
12カルボシクリル)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-NR
5-C(=NR
5)NR
5-*;
-(C
6~C
20アリール);
-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-C
1~C
12アルキルジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-(C
2~C
20ヘテロシクリル);
-(C
2~C
20ヘテロシクリル)-*;
-(C
2~C
9)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-NR
5-C(=NR
5a)NR
5-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-NR
5-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリール);
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-NR
5-C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)-*;
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)-(C
2-C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-C(=O)N(R
5)
2;
-C(=O)N(R
5)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)N(R
5)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=O)R
5;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=O)N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)CO
2R
5;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=NR
5a)N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5C(=NR
5a)R
5;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
8アルキルジイル)-NR
5(C
2~C
5ヘテロアリール);
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;
-N(R
5)
2;
-N(R
5)-*;
-N(R
5)C(=O)R
5;
-N(R
5)C(=O)-*;
-N(R
5)C(=O)N(R
5)
2;
-N(R
5)C(=O)N(R
5)-*;
-N(R
5)CO
2R
5;
-N(R
5)CO
2(R
5)-*;
-NR
5C(=NR
5a)N(R
5)
2;
-NR
5C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-NR
5C(=NR
5a)R
5;
-N(R
5)C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-N(R
5)-(C
2~C
5ヘテロアリール);
-N(R
5)-S(=O)
2-(C
1~C
12アルキル);
-O-(C
1~C
12アルキル);
-O-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-O-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-OC(=O)N(R
5)
2;
-OC(=O)N(R
5)-*;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;及び
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-OHから選択される1つ以上の基で置換され;
またはR
2及びR
3は、一緒に5もしくは6員ヘテロシクリル環を形成し;
R
5は、H、C
6~C
20アリール、C
3~C
12カルボシクリル、C
2~C
20ヘテロシクリル、C
6~C
20アリールジイル、C
1~C
12アルキル、及びC
1~C
12アルキルジイルから成る群から選択されるか、または2つのR
5基は一緒に5員もしくは6員ヘテロシクリル環を形成し;
R
5aは、C
6~C
20アリール及びC
1~C
20ヘテロアリールから成る群から選択され;
ここで、アスタリスク*はLの結合部位を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4の1つがLに結合し;
Lは、
Q-C(=O)-PEG-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)N(R6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
Q-C(=O)-PEG-O-;
Q-C(=O)-PEG-O-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-N(R
6)-;
Q-C(=O)-PEG-N(R
6)-C(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-N
+(R
6)
2-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-;
Q-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
Q-C(=O)-PEG-SS-(C
1~C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
Q-C(=O)-PEG-SS-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-;
Q-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
Q-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-;
Q-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O);
Q-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-N(R
6)C(=O)-(C
2-C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-C(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-C(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-SS-(C
1-C
12アルキルジイル-OC(=O)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)-;
Q-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-;及び
Q-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル-から成る群から選択されるリンカーであり;
R
6は、独立してHまたはC
1~C
6アルキルであり;
PEGは、式:-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-を有し;mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり;
Glucは、式:
【化11】
を有し;
PEPは、式:
【化12】
を有し、AAは独立して天然のまたは非天然のアミノ酸側鎖から選択され、またはAAの1以上と隣接する窒素原子とが5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示し;
Cycは、F、Cl、NO
2、-OH、-OCH
3及び以下の構造を有するグルクロン酸から選択される1以上の基によって任意で置換されるC
6-C
20アリールジイル及びC
1-C
20ヘテロアリールジイルから選択され、
【化13】
R
7は-CH(R
8)O-、-CH
2-、-CH
2N(R
8)-、及び-CH(R
8)O-C(=O)-から成る群から選択され、R
8はH、C
1-C
6アルキル、C(=O)-C
1-C
6アルキル、及び-C(=O)N(R
9)
2から選択され、R
9は独立してH、C
1-C
12アルキル、及び-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-OHから成る群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR
9基は一緒に5もしくは6員環のヘテロシクリル環を形成し;
yは2~12の整数であり;
zは0または1であり;
Qは、マレイミド、ブロモアセトアミド、及びピリジルジスルフィドから成る群から選択され;
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール及びヘテロアリールジイルは任意に、F、Cl、Br、I、-CN、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH=CH
2、-C≡CH、-C≡CCH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2OH、-CH
2OCH
3、-CH
2CH
2OH、-C(CH
3)
2OH、-CH(OH)CH(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CH
2OH、-CH
2CH
2SO
2CH
3、-CH
2OP(O)(OH)
2、-CH
2F、-CHF
2、-CF
3、-CH
2CF
3、-CH
2CHF
2、-CH(CH
3)CN、-C(CH
3)
2CN、-CH
2CN、-CH
2NH
2、-CH
2NHSO
2CH
3、-CH
2NHCH
3、-CH
2N(CH
3)
2、-CO
2H、-COCH
3、-CO
2CH
3、-CO
2C(CH
3)
3、-COCH(OH)CH
3、-CONH
2、-CONHCH
3、-CON(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CONH
2、-NH
2、-NHCH
3、-N(CH
3)
2、-NHCOCH
3、-N(CH
3)COCH
3、-NHS(O)
2CH
3、-N(CH
3)C(CH
3)
2CONH
2、-N(CH
3)CH
2CH
2S(O)
2CH
3、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH
3、-NHC(=NH)NH
2、-NHC(=O)NH
2、-NO
2、=O、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-OCH
2CH
2OCH
3、-OCH
2CH
2OH、-OCH
2CH
2N(CH
3)
2、-O(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
mCO
2H、-O(CH
2CH
2O)
nH、-OP(O)(OH)
2、-S(O)
2N(CH
3)
2、-SCH
3、-S(O)
2CH
3、及び-S(O)
3Hから独立して選択される1以上の基で置換される。
【0176】
TLRアゴニスト-リンカー(TLR-L)化合物の例示的な実施形態は、Qがマレイミドであることを含む。
【0177】
TLRアゴニスト-リンカー(TLR-L)化合物の例示的な実施形態は、表8から選択される。それぞれのTLR-L化合物は、質量分析によって特徴付けされ、示された質量を有することが示された。表8及び9のTLR-L化合物は、がん及び他の障害を治療するための有用な治療活性を予測し得る、TLR8アゴニスト選択性の驚くべき予想外の特性を示す。
【0178】
表9の比較化合物は、活性化エステル、テトラフルオロフェニルまたはスルホテトラフルオロフェニル基を有し、これが抗体のリシン残基と反応して、実施例203による抗体とTLRアゴニスト-リンカー部分との間にアミド結合を有する免疫複合体を形成する。
【表18-1】
【表18-2】
【表18-3】
【表19】
【0179】
免疫複合体
本発明の免疫複合体は、1つ以上のTLRアゴニスト部分にリンカーによって共有結合したシステイン変異抗体を含む。
【0180】
免疫複合体の例示的な実施形態は、ヒンジ領域にシステイン変異を有するシステイン変異抗体を含む。
【0181】
免疫複合体の例示的な実施形態は、EU方式に従って番号が付けられたK145C、S114C、E105C、S157C、L174C、G178C、S159C、V191C、L201C、S119C、V167C、I199C、T129C、Q196C、A378C、K149C、K188C、及びA140Cから成る群から選択されるシステイン変異を有するシステイン変異抗体を含む。
【0182】
免疫複合体の例示的な実施形態は、式I:
Ab-[L-D]
p I
またはその薬学的に許容される塩を有し、
式中、
Abは、システイン変異抗体であり;
pは、1~8の整数であり;
Lは、リンカーであり;
Dは、式a~f:
【化14】
から選択されるTLRアゴニスト部分であり;
X
1、X
2、X
3及びX
4は、独立して、結合、C(=O)、C(=O)N(R
5)、O、N(R
5)、S、S(O)
2、及びS(O)
2N(R
5)から成る群から選択され;
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
3~C
12カルボシクリル、C
6~C
20アリール、C
2~C
9ヘテロシクリル、及びC
1~C
20ヘテロアリールからなる群から選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、及びヘテロアリールは、独立して、任意に
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
1~C
12アルキルジイル)-OR
5;
-(C
3~C
12カルボシクリル);
-(C
3~C
12カルボシクリル)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
3~C
12カルボシクリル)-NR
5-C(=NR
5)NR
5-*;
-(C
6~C
20アリール);
-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-C
1~C
12アルキルジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-(C
2~C
20ヘテロシクリル);
-(C
2~C
20ヘテロシクリル)-*;
-(C
2~C
9)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-NR
5-C(=NR
5a)NR
5-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-NR
5-(C
6~C
20アリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
2~C
9ヘテロシクリル)-(C
6~C
20アリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリール);
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-NR
5-C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)-*;
-C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-C(=O)N(R
5)
2;
-C(=O)N(R
5)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-C(=O)N(R
5)-*;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=O)R
5;
-C(=O)N(R
5)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=O)N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)CO
2R
5;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)C(=NR
5a)N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5C(=NR
5a)R
5;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
8アルキルジイル)-NR
5(C
2~C
5ヘテロアリール);
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-N(R
5)-*;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-*;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-C(=O)NR
5-(C
1~C
20ヘテロアリールジイル)-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-C(=O)NR
5-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;
-N(R
5)
2;
-N(R
5)-*;
-N(R
5)C(=O)R
5;
-N(R
5)C(=O)-*;
-N(R
5)C(=O)N(R
5)
2;
-N(R
5)C(=O)N(R
5)-*;
-N(R
5)CO
2R
5;
-N(R
5)CO
2(R
5)-*;
-NR
5C(=NR
5a)N(R
5)
2;
-NR
5C(=NR
5a)N(R
5)-*;
-NR
5C(=NR
5a)R
5;
-N(R
5)C(=O)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-N(R
5)-(C
2~C
5ヘテロアリール);
-N(R
5)-S(=O)
2-(C
1~C
12アルキル);
-O-(C
1~C
12アルキル);
-O-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-O-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)-*;
-OC(=O)N(R
5)
2;
-OC(=O)N(R
5)-*;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-*;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-N(R
5)
2;
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-NR
5-*;及び
-S(=O)
2-(C
2~C
20ヘテロシクリルジイル)-(C
1~C
12アルキルジイル)-OHから選択される1つ以上の基で置換され;
またはR
2及びR
3は、一緒に5もしくは6員ヘテロシクリル環を形成し;
R
5は、H、C
6~C
20アリール、C
3~C
12カルボシクリル、C
2~C
20ヘテロシクリル、C
6~C
20アリールジイル、C
1~C
12アルキル、及びC
1~C
12アルキルジイルから成る群から選択されるか、または2つのR
5基は一緒に5員もしくは6員ヘテロシクリル環を形成し;
R
5aは、C
6~C
20アリール及びC
1~C
20ヘテロアリールから成る群から選択され;
ここで、アスタリスク*はLの結合部位を示し、R
1、R
2、R
3及びR
4の1つがLに結合し;
Lは、
-C(=O)-PEG-;
-C(=O)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-C(=O)-PEG-O-;
-C(=O)-PEG-O-C(=O);
-C(=O)-PEG-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-C(=O)-;
-C(=O)-PEG-N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-N
+(R
6)
2-PEG-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-;
-C(=O)-PEG-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2-C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C
1-C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-C(=O)-PEG-SS-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-;
-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-;
-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-;
-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-N(R
5)-C(=O);
-C(=O)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-N(R
6)C(=O)-(C
2-C
5モノヘテロシクリルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-C(=O)-Gluc-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-O-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-N(R
5)-C(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-C(=O)-PEP-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)N(R
6)-PEG-SS-(C
1-C
12アルキルジイル)-OC(=O)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)-;
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1-C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-;及び
-スクシンイミジル-(CH
2)
m-C(=O)-PEP-N(R
6)-(C
1~C
12アルキルジイル)N(R
6)C(=O)-(C
2~C
5モノヘテロシクリルジイル)-から成る群から選択される前記リンカーであり;
R
6は、独立してHまたはC
1~C
6アルキルであり;
PEGは、式:-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-を有し;mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり;
Glucは、式:
【化15】
を有し;
PEPは、式:
【化16】
を有し、AAは独立して天然のまたは非天然のアミノ酸側鎖から選択され、またはAAの1以上と隣接する窒素原子とが5員環プロリンアミノ酸を形成し、波線は結合点を示し;
Cycは、F、Cl、NO
2、-OH、-OCH
3及び以下の構造を有するグルクロン酸から選択される1以上の基によって任意で置換されるC
6-C
20アリールジイル及びC
1-C
20ヘテロアリールジイルから選択され、
【化17】
R
7は-CH(R
8)O-、-CH
2-、-CH
2N(R
8)-、及び-CH(R
8)O-C(=O)-から成る群から選択され、R
8はH、C
1-C
6アルキル、C(=O)-C
1-C
6アルキル、及び-C(=O)N(R
9)
2から選択され、R
9は独立してH、C
1-C
12アルキル、及び-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
m-OHから成る群から選択され、mは1~5の整数であり、nは2~50の整数であり、または2つのR
9基は一緒に5もしくは6員環のヘテロシクリル環を形成し;
yは2~12の整数であり;
zは0または1であり;
アルキル、アルキルジイル、アルケニル、アルケニルジイル、アルキニル、アルキニルジイル、アリール、アリールジイル、カルボシクリル、カルボシクリルジイル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルジイル、ヘテロアリール及びヘテロアリールジイルは任意に、F、Cl、Br、I、-CN、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH=CH
2、-C≡CH、-C≡CCH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2OH、-CH
2OCH
3、-CH
2CH
2OH、-C(CH
3)
2OH、-CH(OH)CH(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CH
2OH、-CH
2CH
2SO
2CH
3、-CH
2OP(O)(OH)
2、-CH
2F、-CHF
2、-CF
3、-CH
2CF
3、-CH
2CHF
2、-CH(CH
3)CN、-C(CH
3)
2CN、-CH
2CN、-CH
2NH
2、-CH
2NHSO
2CH
3、-CH
2NHCH
3、-CH
2N(CH
3)
2、-CO
2H、-COCH
3、-CO
2CH
3、-CO
2C(CH
3)
3、-COCH(OH)CH
3、-CONH
2、-CONHCH
3、-CON(CH
3)
2、-C(CH
3)
2CONH
2、-NH
2、-NHCH
3、-N(CH
3)
2、-NHCOCH
3、-N(CH
3)COCH
3、-NHS(O)
2CH
3、-N(CH
3)C(CH
3)
2CONH
2、-N(CH
3)CH
2CH
2S(O)
2CH
3、-NHC(=NH)H、-NHC(=NH)CH
3、-NHC(=NH)NH
2、-NHC(=O)NH
2、-NO
2、=O、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-OCH
2CH
2OCH
3、-OCH
2CH
2OH、-OCH
2CH
2N(CH
3)
2、-O(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
mCO
2H、-O(CH
2CH
2O)
nH、-OP(O)(OH)
2、-S(O)
2N(CH
3)
2、-SCH
3、-S(O)
2CH
3、及び-S(O)
3Hから独立して選択される1以上の基で置換される。
【0183】
免疫複合体の例示的な実施形態は、X1が結合であり、R1がHであることを含む。
【0184】
免疫複合体の例示的な実施形態は、X2が結合であり、R2がC1~C8アルキルであることを含む。
【0185】
免疫複合体の例示的な実施形態は、X2及びX3がそれぞれ結合であり、R2及びR3が、C1~C8アルキル、-O-(C1~C12アルキル)、-(C1~C12アルキルジイル)-OR5、-(C1~C8アルキルジイル)-N(R5)CO2R5、-(C1~C12アルキル)-OC(O)N(R5)2、-O-(C1~C12アルキル)-N(R5)CO2R5、及び-O-(C1~C12アルキル)-OC(O)N(R5)2から独立して選択されることを含む。
【0186】
免疫複合体の例示的な実施形態は、R2がC1~C8アルキルであり、R3が-(C1~C8アルキルジイル)-N(R5)CO2R4であることを含む。
【0187】
免疫複合体の例示的な実施形態は、R2が-CH2CH2CH3であり、R3が-CH2CH2CH2NHCO2(t-Bu)、-OCH2CH2NHCO2(シクロブチル)、及び-CH2CH2CH2NHCO2(シクロブチル)から選択されることを含む。
【0188】
免疫複合体の例示的な実施形態は、R2及びR3が、それぞれ独立して-CH2CH2CH3、-OCH2CH3、-OCH2CF3、-CH2CH2CF3、-OCH2CH2OH、及び-CH2CH2CH2OHから選択されることを含む。
【0189】
免疫複合体の例示的な実施形態は、R2及びR3がそれぞれ-CH2CH2CH3であることを含む。
【0190】
免疫複合体の例示的な実施形態は、R2が-CH2CH2CH3であり、R3が-OCH2CH3であることを含む。
【0191】
免疫複合体の例示的な実施形態は、X
3-R
3が、
【化18】
からなる群から選択されることを含む。
【0192】
免疫複合体の例示的な実施形態は、R2またはR3がLに結合していることを含む。
【0193】
免疫複合体の例示的な実施形態は、X
3-R
3-Lが、
【化19】
からなる群から選択されることを含み、波線はNとの結合点を示す。
【0194】
免疫複合体の例示的な実施形態は、R4がC1~C12アルキルである。
【0195】
免疫複合体の例示的な実施形態は、R4が-(C1~C12アルキルジイル)-N(R5)-*であることを含み、アスタリスク*は、Lの結合部位を示す。
【0196】
免疫複合体の例示的な実施形態は、Lが-C(=O)-PEG-または-C(=O)-PEG-C(=O)-であることを含む。
【0197】
免疫複合体の例示的な実施形態は、Lが抗体のシステインチオールに結合していることを含む。
【0198】
免疫複合体の例示的な実施形態は、PEGについて、mが1または2であり、nが2~10の整数であることを含む。
【0199】
免疫複合体の例示的な実施形態は、nが10であることを含む。
【0200】
免疫複合体の例示的な実施形態は、LがPEPを含み、PEPがジペプチドであり、式:
【化20】
を有することを含む。
【0201】
免疫複合体の例示的な実施形態は、PEPが式:
【化21】
を有することを含み、AA
1及びAA
2は独立して、天然に存在するアミノ酸の側鎖から選択される。
【0202】
免疫複合体の例示的な実施形態は、AA1及びAA2が、独立して、H、-CH3、-CH(CH3)2、-CH2(C6H5)、-CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2NHC(NH)NH2、-CHCH(CH3)CH3、-CH2SO3H、及び-CH2CH2CH2NHC(O)NH2から選択されるか、またはAA1及びAA2が、5員環プロリンアミノ酸を形成することを含む。
【0203】
免疫複合体の例示的な実施形態は、AA1が-CH(CH3)2であり、AA2が-CH2CH2CH2NHC(O)NH2であることを含む。
【0204】
免疫複合体の例示的な実施形態は、AA1及びAA2が、独立して、GlcNAcアスパラギン酸、-CH2SO3H、及び-CH2OPO3Hから選択されることを含む。
【0205】
免疫複合体の例示的な実施形態は、LがPEPを含み、PEPがトリペプチドであり、式:
【化22】
を有することを含む。
【0206】
免疫複合体の例示的な実施形態は、LがPEPを含み、PEPがテトラペプチドであり、式:
【化23】
を有することを含む。
【0207】
免疫複合体の例示的な実施形態は、PEPテトラペプチドが以下から選択されることを含む:
AA1はAbu、Ala及びValから成る群から選択され;
AA2はNle(O-Bzl)、Oic及びProから成る群から選択され;
AA3はAla及びMet(O)2から成る群から選択され;
AA4はOic、Arg(NO2)、Bpa、及びNle(O-Bzl)から成る群から選択される。
【0208】
免疫複合体の例示的な実施形態は、LがPEPを含み、PEPがAla-Pro-Val、Asn-Pro-Val、Ala-Ala-Val、Ala-Ala-Pro-Ala、Ala-Ala-Pro-Val、及びAla-Ala-Pro-Nvaから成る群から選択されることを含む。
【0209】
免疫複合体の例示的な実施形態は、LがPEPを含み、PEPが構造:
【化24】
から選択されることを含む。
【0210】
免疫複合体の例示的な実施形態は、Lが構造:
【化25】
から選択されることを含み、波線はR
5との結合を示す。
【0211】
表10の本発明の免疫複合体の例示的な実施形態は、表8のTLRアゴニスト-リンカー化合物とのシステイン変異抗体のコンジュゲーションによって調製された。
【0212】
表11の比較アミド結合免疫複合体Lys IC-1は、表9のTLRアゴニスト-リンカー比較化合物C-1とのトラスツズマブのコンジュゲーションによって調製された。
【0213】
表10a、10b及び11のそれぞれの免疫複合体は、それぞれ実施例202及び203の方法に従って調製され、HPLCによって精製され、質量分析によって特徴付けられた。
【表20-1】
【表20-2】
【表21】
【表22】
【0214】
免疫複合体の生物学的活性
表10a、10b及び11の免疫複合体を実施例204のアッセイによって活性に関して試験した。樹状細胞ベースのアッセイが、がん免疫療法の評価に有用である。樹状細胞(DC)は、自然免疫系と獲得免疫系を橋渡しし、免疫及び寛容を媒介する特殊な抗原提示細胞である。免疫複合体は、実施例204に記載の従来型/古典的樹状細胞(cDC)アッセイによってアッセイした。
【0215】
図1は、免疫複合体Lys IC-1(表11)、IC-2、IC-3、IC-4、IC-8、IC-10、IC-13、IC-16、IC-17及びIC-18(表10)ならびに非コンジュゲート抗体、トラスツズマブを用いたヒト血液から新たに単離され、HCC1954腫瘍細胞と共培養された濃縮ヒトcDC(従来型樹状細胞)の活性化後のIL-12p70分泌を示すグラフを示す。IL-12p70の対数産生は、免疫複合体及びトラスツズマブの濃度増加とともにプロットされる。
【0216】
図2は、免疫複合体IC-1、IC-12、IC-6、IC-11、IC-5、IC-9、IC-7、IC-14、及びIC-15(表10)、Lys IC-1(表11)、ならびに非コンジュゲート抗体、トラスツズマブを用いたヒト血液から新たに単離され、HCC1954腫瘍細胞と共培養された濃縮ヒトcDC(従来型樹状細胞)の活性化後のIL-12p70分泌を示すグラフを示す。IL-12p70の対数産生は、免疫複合体及びトラスツズマブの濃度増加とともにプロットされる。
【0217】
図1及び2の結果は、表10aの特定のシステイン変異免疫複合体がcDCアッセイでより高いレベルのIL-12p70を誘導し、表11の比較アミド結合免疫複合体Lys IC-1、及び非コンジュゲート抗体トラスツズマブよりも強力な骨髄作用を引き起こすことを示している。
【0218】
図3は、システイン変異抗HER2免疫複合体IC-8、IC-13、IC-17、及びIC-10、ならびに対照アミド結合抗HER2複合体Lys IC-1を用いたヒト血液から新たに単離され、HCC1954乳癌腫瘍細胞と共培養された濃縮ヒトcDC(従来型樹状細胞)の活性化後のIL-12p70分泌を示すグラフを示す。
図3の結果は、表10bの特定のシステイン変異免疫複合体が乳癌アッセイでより高いレベルのIL-12p70を誘導し、表11の比較アミド結合免疫複合体Lys IC-1よりも強力な骨髄作用を引き起こすことを示している。K188C変異IC-17は、最高レベルのIL-12p70を誘導した。
【0219】
図4は、システイン変異抗-PD-L1免疫複合体IC-30、IC-31、及び対照アミド結合抗PD-L1複合体Lys IC-3を用いたヒト血液から新たに単離され、PD-L1を過剰発現する改変されたHCC1954細胞株と共培養された濃縮ヒトcDC(従来型樹状細胞)の活性化後のIL-12p70分泌を示すグラフを示す。
図4の結果は、表10bの特定のシステイン変異免疫複合体が乳癌アッセイでより高いレベルのIL-12p70を誘導し、表11の比較アミド結合免疫複合体Lys IC-3よりも強力な骨髄作用を引き起こすことを示している。K188C変異IC-31は、最高レベルのIL-12p70を誘導した。
【0220】
図5は、システイン変異抗-TROP2免疫複合体IC-27、IC-28、IC-29、IC-32、及び対照アミド結合抗-TROP2複合体Lys IC-2を用いたヒト血液から新たに単離され、HPAF II膵臓癌腫瘍細胞と共培養された濃縮ヒトcDC(従来型樹状細胞)の活性化後のIL-12p70分泌を示すグラフを示す。この例では、対照アミド結合抗-TROP2複合体Lys IC-2が乳癌アッセイでより高いレベルのIL-12p70を誘導し、表10bの特定のシステイン変異免疫複合体よりも強力な骨髄作用を引き起こしたことを示している。
【0221】
図1~5の結果は、本発明の免疫複合体が骨髄活性化を誘発するのに有効であり、したがってがんの治療に有用であり得ることを示している。
【0222】
免疫複合体の組成物
本発明は、本明細書に記載されている複数の免疫複合体と、任意でそのための担体、例えば、薬学的または薬理学的に許容される担体とを含む、組成物、例えば、薬学的または薬理学的に許容される組成物または製剤を提供する。免疫複合体は、組成物中で同じであっても異なっていてもよく、すなわち、組成物は、抗体コンストラクト上の同じ位置に連結された同じ数のアジュバントを有する免疫複合体を含むことができ、及び/またはシステイン変異抗体コンストラクトの異なる位置に連結された同じ数のTLRアゴニストアジュバントを有する、抗体コンストラクトの同じ位置に連結された異なる数のアジュバントを有する、もしくは抗体コンストラクトの異なる位置に連結された異なる数のアジュバントを有する免疫複合体を含むことができる。
【0223】
例示的な実施形態では、免疫複合体化合物を含む組成物は免疫複合体化合物の混合物を含み、この場合、免疫複合体化合物の混合物における1システイン変異抗体当たりの平均薬物(TLRアゴニスト)負荷は、約2である。
【0224】
本発明の免疫複合体の組成物は、システイン変異部位の数及びコンジュゲーションのためのシステイン変異抗体を調製する条件、及びコンジュゲーション条件に応じて、約0.4から約10の平均アジュバント対抗体コンストラクト比(DAR)を有してもよい。当業者は、システイン変異抗体コンストラクトにコンジュゲートしたTLRアゴニストアジュバントの数が、本発明の複数の免疫複合体を含む組成物中の免疫複合体によって変化する可能性があるため、アジュバント対抗体コンストラクト(例えば、抗体)比は、薬物対抗体比(DAR)と呼ばれることもある平均として測定できることを認識するであろう。アジュバント対抗体コンストラクト(例えば、抗体)比は、任意の適した手段によって評価することができ、その多くは当技術分野において知られている。
【0225】
結合反応から免疫複合体を調製する際の1抗体当たりのアジュバント部分の平均数(DAR)は、質量分析法、ELISAアッセイ、及びHPLCのような従来の手段によって特徴付けることができる。pの観点から組成物中の免疫複合体の定量的分布もまた、決定することができる。いくつかの事例で、pが特定の値である均一の免疫複合体の、他の薬物負荷を有する免疫複合体からの分離、精製、及び特性評価は、逆相HPLCまたは電気泳動などの手段によって達成され得る。
【0226】
いくつかの実施形態では、組成物は更に、1つ以上の薬学的にまたは薬理学的に許容される賦形剤を含む。例えば、本発明の免疫複合体は、IV投与または体腔もしくは臓器の内腔への投与などの非経口投与用に調製されることができる。あるいは、免疫複合体を腫瘍内に注射することができる。注射用の組成物は一般に、薬学的に許容される担体に溶解された免疫複合体の溶液を含むであろう。用いられ得る許容されるビヒクル及び溶媒の中には、水、及び塩化ナトリウムのような1以上の塩の等張液、例えばリンゲル溶液がある。さらに、減菌された固定油を、溶媒または懸濁媒質として従来どおり使用することができる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を使用できる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸が、注射剤の調製において同様に使用され得る。これらの組成物は、望ましくは滅菌されており、一般に望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技法によって滅菌され得る。組成物は、生理学的条件に近似させるために必要とされる、pH調整剤及び緩衝剤、等張化剤のような薬学的に許容される補助物質、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有してもよい。
【0227】
組成物は、任意の適切な濃度の免疫複合体を含むことができる。組成物中の免疫複合体の濃度は大きく変動する可能性があり、選択された特定の投与様式及び患者のニーズに従って、主に流体量、粘度、体重などに基づいて選択される。特定の実施形態では、注射用の溶液製剤中の免疫複合体の濃度は、約0.1%(w/w)~約10%(w/w)の範囲である。
【0228】
免疫複合体によるがんの治療法
本発明は、がんを治療するための方法を提供する。当該方法は、治療有効量の本明細書に記載されている免疫複合体(例えば、本明細書に記載されている組成物)を、それを必要とする対象、例えば、がんを有し、がんの治療を必要とする対象に投与することを含む。前記方法は、表9から選択される治療有効量の免疫複合体(IC)を投与することを含む。
【0229】
本発明の免疫複合体は、種々の過剰増殖性の疾患または障害、例えば、腫瘍抗原の過剰発現を特徴とするものを治療するのに使用されてもよいことが企図される。例示的な過剰増殖性障害としては、良性または悪性の固形腫瘍、ならびに血液疾患(白血病及びリンパ系腫瘍など)が挙げられる。
【0230】
別の態様では、薬物として使用するための免疫複合体が提供される。特定の実施形態では、本発明は、有効量の免疫複合体を個体に投与することを含む、個体を治療する方法で使用するための免疫複合体を提供する。そのような一実施形態では、この方法は、例えば、本明細書に記載されている、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。
【0231】
さらなる態様では、本発明は、薬物の製造または調製での、免疫複合体の使用を提供する。一実施形態では、薬物は、がんの治療のためのものであり、その方法は、がんを有する個体に有効量の薬物を投与することを含む。そのような一実施形態では、この方法は、例えば、本明細書に記載されている、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。
【0232】
癌腫とは、上皮組織から生じる悪性腫瘍である。上皮細胞は、体の外側表面を覆い、内部空洞を覆い、且つ腺組織の内層を形成する。癌腫の例として、腺癌(腺(分泌)細胞、例えば、乳、膵臓、肺、前立腺、胃、胃食道接合部及び結腸で始まる癌);副腎皮質癌;肝細胞癌;腎細胞癌;卵巣癌;上皮内癌;腺管癌;乳癌;基底細胞癌;扁平上皮癌;移行細胞癌;結腸癌;鼻咽頭癌;多房嚢腫性腎細胞癌;燕麦細胞癌;大細胞肺癌;小細胞肺癌;非小細胞肺癌などを含むが、これらに限定されない。癌腫は、前立腺、膵臓、結腸、脳(通常、続発性転移として)、肺、乳房、及び皮膚に見られることもある。いくつかの実施形態では、非小細胞肺癌を治療するための方法は、PD-L1に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベターのシステイン変異類似体)を含む免疫複合体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、乳癌を治療するための方法は、PD-L1に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベターのシステイン変異類似体)を含む免疫複合体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、トリプルネガティブ乳癌を治療するための方法は、PD-L1に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベターのシステイン変異類似体)を含む免疫複合体を投与することを含む。
【0233】
軟部組織腫瘍は、結合組織に由来するまれな腫瘍の非常に多様な群である。軟部腫瘍の例としては、胞状軟部肉腫、類血管腫型線維性組織球腫、軟骨粘液線維腫、骨格軟骨肉腫、骨外性粘液型軟骨肉腫、明細胞肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫、子宮内膜間質腫瘍、ユーイング肉腫、線維腫症(デスモイド)、乳児性線維腫腫、消化管間質腫瘍、骨巨細胞腫、腱鞘巨細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、子宮筋腫、平滑細胞腫、脂肪芽細胞腫、典型的な脂肪腫、紡錘細胞または多形脂肪腫、異型脂肪腫、軟骨様脂肪腫、高分化脂肪肉腫、粘液様/円形細胞脂肪肉腫、多形脂肪肉腫、粘液型悪性線維性組織球腫、高悪性線維組織球腫、粘液線維肉腫、悪性末梢神経鞘腫、中皮腫、神経芽細胞腫、骨軟骨腫、骨肉腫、原始神経外胚葉性腫瘍、胞巣状横紋筋肉腫、胎児性横紋筋肉腫、良性または悪性シュワン腫、滑膜肉腫、エヴァンズ腫瘍、結節性筋膜炎、デスモイド型線維腫症、孤立性線維性腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、腱鞘巨細胞腫(TGCT)、色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)、線維性骨異形成症、粘液線維肉腫、滑膜肉腫、悪性末梢神経鞘腫、神経線維腫、軟組織の多形腺腫、ならびに線維芽細胞、筋線維芽細胞、組織球、血管細胞/内皮細胞及び神経鞘細胞に由来する腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0234】
肉腫は、間葉起源の細胞で、例えば骨で、または軟骨、脂肪、筋肉、血管、線維組織、もしくは他の結合組織もしくは支持組織を含む体の軟部組織で生じる、まれなタイプのがんである。異なる種類の肉腫は、がんが形成する場所に基づく。例えば、骨肉腫は骨に生じ、脂肪肉腫は脂肪に生じ、横紋筋肉腫は筋肉に生じる。肉腫の例には、アスキン腫瘍;ブドウ状肉腫;軟骨肉腫;ユーイング肉腫;悪性血管内皮腫;悪性神経鞘腫;骨肉腫;及び軟部組織肉腫(例えば、胞状軟部肉腫;血管肉腫;葉状嚢肉腫;隆起性皮膚線維肉腫(DFSP);類腱腫;線維形成性小円形細胞腫;類上皮肉腫;骨外性軟骨肉腫;骨外性骨肉腫;線維肉腫;胃腸間質腫瘍(GIST);血管外皮細胞腫;血管肉腫(より一般的には「血管肉腫」と呼ばれる);カポジ肉腫;平滑筋肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST);神経芽肉腫;滑膜肉腫;及び未分化多形性肉腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0235】
奇形腫は、例えば、毛髪、筋肉、及び骨を含むいくつかの異なる種類の組織(例えば、3つの胚葉:内胚葉、中胚葉、及び外胚葉のうちのいずれか及び/またはすべてに由来する組織を含むことができる)を含有してもよい生殖細胞腫瘍の一種である。奇形腫は、女性においては卵巣に、男性においては精巣に、及び小児においては尾骨に、最もよく発生する。
【0236】
黒色腫は、メラノサイト(色素メラニンを作る細胞)で発生するがんの形態である。黒色腫は、ほくろ(皮膚黒色腫)において始まる場合があるが、眼の中または腸の中のような他の色素組織でも始まる場合がある。
【0237】
メルケル細胞癌はまれなタイプの皮膚癌であり、通常、顔、頭もしくは首に肉色または青みがかった赤色の結節として現れる。メルケル細胞癌は、皮膚の神経内分泌癌とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、メルケル細胞癌を治療するための方法は、PD-L1に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベター)を含む免疫複合体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、メルケル細胞癌は、投与が行われるときに転移している。
【0238】
白血病は、骨髄のような血液形成組織から発生し、多数の異常血球の生成及び血流への侵入を引き起こすがん細胞である。例えば、白血病は、通常であれば血流中で成熟する骨髄由来の細胞で発生する可能性がある。白血病は、病気の発生と進行の速さ(例、急性と慢性)、及び影響を受ける白血球の種類(例、骨髄性とリンパ性)にちなんで名付けられる。骨髄性白血病は、骨髄性白血病または骨髄芽球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病は、リンパ芽球性白血病またはリンパ球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病細胞はリンパ節に集まり、腫れることがある。白血病の例としては、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)を含むが、これらに限定されない。
【0239】
リンパ腫は、免疫系の細胞から始まるがんである。例えば、リンパ腫は、通常であればリンパ系で成熟する骨髄由来細胞に発生する可能性がある。リンパ腫には2つの基本的なカテゴリーがある。リンパ腫の1つのカテゴリーはホジキンリンパ腫(HL)であり、リードステルンベルク細胞と呼ばれる種類の細胞の存在によって特徴付けられる。現在、HLには6つの認識されている種類がある。ホジキンリンパ腫の例としては、結節性硬化型古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、混合細胞型CHL、リンパ球減少型CHL、リンパ球豊富型CHL、及び結節性リンパ球優位型HLが挙げられる。
【0240】
リンパ腫の他のカテゴリーは非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、これには免疫系細胞のがんの大規模で多様な群が含まれる。非ホジキンリンパ腫はさらに、緩徐な(成長の遅い)経過をたどる癌と、攻撃的な(成長の速い)経過をたどる癌に分けることができる。現在、NHLには61つの認識されている種類がある。非ホジキンリンパ腫の例は、AIDS関連リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血液免疫芽細胞性リンパ腫、芽細胞性NK細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、バーキット様リンパ腫(小型非開裂細胞性リンパ腫)、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、肝脾ガンマ・デルタT細胞リンパ腫、T細胞白血病、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、鼻T細胞リンパ腫、小児リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、形質転換リンパ腫、処置関連T細胞リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含むが、これらに限定されない。
【0241】
脳腫瘍には、脳組織の癌が含まれる。脳腫瘍の例には、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫など)、髄膜腫、下垂体腺腫、及び前庭神経鞘腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽細胞腫)が含まれるが、これらに限定されない。
【0242】
本発明の免疫複合体は、治療にて、単独で、または他の薬剤と組み合わせてのいずれかで使用することができる。例えば、本発明の免疫複合体は、化学療法剤のような少なくとも1つの追加の治療剤と共に同時投与され得る。このような併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療剤が同じまたは別個の製剤中に含まれる)、及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、免疫複合体の投与は、追加の治療剤及び/またはアジュバントの投与の前、それと同時、及び/またはその後に生じ得る。免疫複合体はまた、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0243】
本発明の免疫複合体(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内、ならびに局所療法のために所望される場合、病変内投与を含む、任意の好適な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短期であるか、または長期であるかに部分的に依存して、任意の適した経路、例えば、静脈内または皮下注入のような注入によることができる。単回投与または種々の時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス点滴を含むが、これらに限定されない種々の投薬スケジュールが本明細書にて企図される。一実施形態では、免疫複合体は、患者に静脈内、腫瘍内、または皮下投与される。
【0244】
本発明の免疫複合体は、がん、特に乳癌、とりわけ、トリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質の検査で陰性)乳癌、膀胱癌、及びメルケル細胞癌の治療に有用である可能性がある。本明細書に記載の免疫複合体は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、及びそれらのバイオベターなどの治療のために認可された裸の抗体として同じ種類のがん、特に乳癌、とりわけトリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質の検査で陰性)乳癌、膀胱癌、及びメルケル細胞癌を治療するために使用できる。
【0245】
免疫複合体は、任意の適した投与計画を使用して任意の治療有効量でそれを必要とする対象に投与される。例えば、この方法は、約100ng/kg~約50mg/kgの用量を対象に提供するために免疫複合体を投与することを含むことができる。免疫複合体の用量は、約5mg/kg~約50mg/kg、約10μg/kg~約5mg/kg、または約100μg/kg~約1mg/kgの範囲であり得る。免疫複合体の用量は、約100、200、300、400、または500μg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、特定の複合体、及び治療される癌の種類と重症度に応じて、これらの範囲外になることもある。投与の頻度は、1週当たり単回投与から複数回投与まで、またはより頻繁に及び得る。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、月に約1回から週に約5回まで投与される。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、週に1回投与される。
【0246】
別の態様では、本発明は、がんを防ぐための方法を提供する。この方法は、治療有効量の免疫複合体を(例えば、上記のような組成物として)対象に投与することを含む。特定の実施形態では、対象は、予防されるべき特定のがんに感受性である。例えば、この方法は、約100ng/kg~約50mg/kgの用量を対象に提供するために免疫複合体を投与することを含むことができる。免疫複合体の用量は、約5mg/kg~約50mg/kg、約10μg/kg~約5mg/kg、または約100μg/kg~約1mg/kgの範囲であり得る。免疫複合体の用量は、約100、200、300、400、または500μg/kgであり得る。免疫複合体の用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mg/kgであり得る。一実施形態では、免疫複合体は、体重1kg当たり約0.01~20mgの用量で患者に投与される。免疫複合体の用量は、特定の複合体、ならびに治療されるがんの種類及び重症度に応じて、これらの範囲外になることもある。投与の頻度は、1週当たり単回投与から複数回投与まで、またはより頻繁に及び得る。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、治療計画または治療の過程で月に約1回から週に約5回まで投与される。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、週に1回投与される。
【0247】
本発明のいくつかの実施形態は、上記のようながんを治療するための方法を提供し、そこでがんは乳癌である。乳癌は乳房の様々な領域から生じる可能性があり、様々な種類の乳癌が特性評価されている。例えば、本発明の免疫複合体は、非浸潤性乳管癌;浸潤性乳管癌(例えば、乳房の管状癌、髄様癌、粘液癌、乳頭癌、または篩状癌);非浸潤性小葉癌;浸潤性小葉癌;炎症性乳癌;トリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質の検査で陰性)乳癌のような他の形態の乳癌を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、乳癌を治療するための方法は、HER2に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベターのシステイン変異類似体)、PD-L1に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、それらのバイオシミラー、またはそれらのバイオベターのシステイン変異類似体)、またはTROP2に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、サシツズマブ、サシツズマブゴビチカン(TRODELVY(登録商標)、Immunomedics、IMMU-132)、それらのバイオシミラーまたはバイオベターのシステイン変異類似体)を含む免疫複合体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、結腸癌、肺癌、腎癌、膵臓癌、胃癌、及び食道癌を治療するための方法は、CEA、またはCEAを過剰発現する腫瘍に結合することができる抗体コンストラクト(例えば、ラベツズマブ、それらのバイオシミラー、またはバイオベター)を含む免疫複合体を投与することを含む。
【0248】
いくつかの実施形態では、がんは、TLR7及び/またはTLR8によって誘発される炎症誘発性応答に感受性である。
【0249】
いくつかの実施形態では、PD-L1、HER2、CEA、またはTROP2を発現するがんの治療を必要とする患者に治療有効量の免疫複合体が投与される。
【0250】
いくつかの実施形態では、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、尿路癌、尿路上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、メルケル細胞癌、結腸癌、大腸癌、胃癌、または乳癌の治療を必要とする患者に治療有効量の免疫複合体が投与される。メルケル細胞癌は、転移性メルケル細胞癌であり得る。乳癌は、トリプルネガティブ乳癌であり得る。食道癌は、胃食道接合部腺癌であり得る。
【実施例】
【0251】
実施例C-1 4-((1-(5-(2-アミノ-4-(エトキシ(プロピル)カルバモイル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-8-イル)ピリミジン-2-イル)-3-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-2-アザヘキサトリアコンタン-36-オイル)オキシ)-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンスルホン酸、C-1
【化26】
【0252】
5-ブロモ-2-(ブロモメチル)ピリミジン、C-1bの調製
THF(10mL)中の(5-ブロモピリミジン-2-イル)メタノール、C-1a(300mg、1.59mmol、1.0当量)の溶液に、PPh3(499mg、1.90mmol、1.2当量)及びCBr4(631mg、1.90mmol、1.2当量)をN2下、0℃で一度に添加した。混合物を20℃で10時間撹拌した。水(10mL)を添加し、水相を酢酸エチルで抽出し(10mL×3)、合わせた有機相をブライン(10mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(カラム高さ:250mm、直径:100mm、100-200メッシュシリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル=1/0、8/1)によって精製して、C-1b(290mg、1.15mmol、収率72.4%)を白色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.81 (s, 2H), 4.59 (s, 2H)。
【0253】
tert-ブチルN-[(5-ブロモピリミジン-2-イル)メチル]-N-tert-ブトキシカルボニル-カルバマート、C-1cの調製
DMF(3mL)中のC-1b(290mg、1.15mmol、1.0当量)及びtert-ブチルN-tert-ブトキシカルボニルカルバマート(250mg、1.15mmol、1.0当量)の混合物に、Cs2CO3(562mg、1.73mmol、1.5当量)をN2下、20°Cで少しずつ添加し、混合物を20°Cで2.5時間撹拌した。水(5mL)を添加し、水相を酢酸エチルで抽出し(5mL×3)、合わせた有機相をブライン(5mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(カラム高さ:250mm、直径:100mm、100-200メッシュシリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル=1/0、5/1)によって精製して、C-1c(350mg、901umol、収率78.3%)を白色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.74 (s, 2H), 5.01 (s, 2H), 1.48 (s, 18H)。
【0254】
tert-ブチルN-[[5-[2-アミノ-4-[エトキシ(プロピル)カルバモイル]-3H-1-ベンゾアゼピン-8-イル]ピリミジン-2-イル]メチル]-N-tert-ブトキシカルボニル-カルバマート、C-1dの調製
ジオキサン(10mL)及びH2O(2mL)中のC-1c(184mg、473umol、1.0当量)及び2-アミノ-N-エトキシ-N-プロピル-8-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボキサミド(195mg、474umol、1.0当量)の混合物にPd(dppf)Cl2・CH2Cl2(19.3mg、23.7umol、0.05当量)及びK2CO3(163mg、1.18mmol、2.5当量)をN2下で一度に添加し、混合物を脱気し、N2下で90℃に2時間加熱した。ジオキサン(10mL)を真空除去し、水(20mL)を添加し、水相を酢酸エチルで抽出し(10mL×3)、合わせた有機相をブライン(10mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(カラム高さ:250mm、直径:100mm、100-200メッシュシリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル=10/1、0/1から酢酸エチル/メタノール=10/1)によって精製し、C-1d(280mg、470.83umol、収率99.35%)を灰色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, MeOD) δ9.08 (s, 2H), 7.61 (s, 1H), 7.59 (d, J = 2.8 Hz, 2H), 7.38 (s, 1H), 5.08 (s, 2H), 3.98 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.76 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.83-1.75 (m, 2H), 1.47 (s, 18H), 1.20 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.02 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0255】
2-アミノ-8-[2-(アミノメチル)ピリミジン-5-イル]-N-エトキシ-N-プロピル-3H-1-ベンゾアゼピン-4-カルボキサミド、C-1eの調製
【0256】
EtOAc(5mL)中のC-1d(20.0mg、33.6umol、1.0当量)の溶液に、HCl/EtOAc(4M、8.41uL、1.0当量)をN2下、20℃で一度に添加し、混合物を20℃で1時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮した。残留物を分取HPLC(カラム:Phenomenex Synergi C18 150×25×10um;移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B%:1%~30%、8分)によって精製して、C-1e(6.2mg、9.84umol、収率29.2%、純度98.8%、2TFA)を白色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, MeOD) δ9.22 (s, 2H), 7.82 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.79-7.75 (m, 2H), 7.47 (s, 1H), 4.49 (s, 2H), 4.00 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.78 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 3.46 (s, 2H), 1.85-1.77 (m, 2H), 1.22 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.03 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。LC/MS [M+H] 395.2(計算値);LC/MS [M+H] 395.1(実測値)。
【0257】
3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[3-[[5-[2-アミノ-4-[エトキシ(プロピル)カルバモイル]-3H-1-ベンゾアゼピン-8-イル]ピリミジン-2-イル]メチルアミノ]-3-オキソ-プロポキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパン酸、C-1fの調製
DMF(0.5mL)中のC-1e(70mg、149umol、1.0当量、2HCl)及び3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[3-オキソ-3-(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)プロポキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパン酸(127mg、179umol、1.2当量)の混合物に、ジイソプロピルエチルアミン、DIEA(77.4mg、599umol、104uL、4.0当量)をN2下、25°Cで一度に添加し、混合物を25°Cで0.5時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を分取HPLC(カラム:Phenomenex luna C18 80×40mm×3マイクロメートル(μm);移動相:[水(0.04%HCl)-ACN];B%:12%~39%、5.5分)によって精製して、C-1f(50.0mg、53.4umol、収率35.7%)を黄色の油として得た。1H NMR (400 MHz, MeOD) δ9.14 (s, 2H), 7.86-7.81 (m, 1H), 7.78-7.74 (m, 2H), 7.48 (s, 1H), 4.72 (s, 2H), 4.00 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.85-3.71 (m, 8H), 3.69-3.58 (m, 38H), 3.47 (s, 2H), 2.62 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.55 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 1.85-1.76 (m, 2H), 1.23 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.03 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0258】
C-1の調製
ジクロロメタン、DCM(2mL)及びジメチルアセトアミド、DMA(0.5mL)中のC-1f(60mg、61.7umol、1.0当量、HCl)及び(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-フェニル)スルホニルオキシナトリウム(99.3mg、370umol、6.0当量)の混合物に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、EDCI、CAS登録番号1892-57-5(71.0mg、370umol、6.0当量)をN2下、25℃で一度に添加し、混合物を25℃で1時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を分取HPLC(カラム:Phenomenex Synergi C18 150×25×10um;移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B%:20%~45%、8分)によって精製して、C-1(38.0mg、30.5umol、収率49.3%、純度93.3%)を黄色の油として得た。1H NMR (400 MHz, MeOD) δ9.11 (s, 2H), 7.83-7.79 (m, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.76-7.71 (m, 1H), 7.47 (s, 1H), 4.71 (s, 2H), 4.00 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.88 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.85-3.75 (m, 5H), 3.70-3.57 (m, 38H), 3.47 (s, 2H), 2.99 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.62 (t, J = 4 Hz, 2H), 1.85-1.75 (m, 2H), 1.23 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.02 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。LC/MS [M+H] 1163.3(計算値);LC/MS [M+H] 1163.3(実測値)。
【0259】
実施例C-2 2,3,5,6-テトラフルオロフェニル1-(5-(2-アミノ-4-(エトキシ(プロピル)カルバモイル)-3H-ベンゾ[b]アゼピン-8-イル)ピリミジン-2-イル)-3-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-2-アザヘキサトリアコンタン-36-オアート、C-2
【化27】
実施例C-1の手順後に、50mLのDCM中の3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[3-[[5-[2-アミノ-4-[エトキシ(プロピル)カルバモイル]-3H-1-ベンゾアゼピン-8-イル]ピリミジン-2-イル]メチルアミノ]-3-オキソ-プロポキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]プロパン酸、C-1f(5.00g、5.35mmol、1.00当量)の溶液に、2,3,5,6-テトラフルオロフェノール(1.77g、10.7mmol、2.00当量)、プロパンホスホン酸無水物(PPAA、T3P)、CAS登録番号68957-94-8(MeCN中の50wt%溶液、17.0gの溶液、26.8mmol、5.00当量)及びN-メチルイミダゾール、NMI(2.15mL、26.8mmol、5.00当量)を連続的に添加した。混合物を20℃で2時間撹拌した後、20%NaCl水溶液(50mL)で希釈した。水層をDCM(25mL)で抽出し、合わせた有機層を水(25mL)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、濾過し、真空中で濃縮して、粗製C-2を暗褐色の油の形態で得た。材料をBiotageカラム(2:8、v/vのMeCN/水中の250mLの7.5mM HCl)に充填し、勾配段階(20カラム容積 MeCN/水 2:8、次に、15カラム容積 MeCN/水 3:7)を使用して精製した。所望の画分を合わせた後、抽出(2×300mL DCM)し、真空中で濃縮して、純粋なC-2(5.34g、qNMRによる純度55.6wt%、収率56%)を暗黄色の油の形態で得、これを窒素下、-20°Cで保存した後、DMAで希釈して、C-2の20mM溶液を生成した。LC/MS [M+H] 1083.1(計算値);LC/MS [M+H] 1083.1(実測値)。
【0260】
実施例TLR-L-1 2-アミノ-8-(2-(38-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-3,37-ジオキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-2,36-ジアザオクタトリアコンチル)ピリミジン-5-イル)-N-エトキシ-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド、TLR-L-1
【化28】
2-アミノ-8-(2-(アミノメチル)ピリミジン-5-イル)-N-エトキシ-N-プロピル-3H-ベンゾ[b]アゼピン-4-カルボキサミド、C-1e(0.0283g、0.072mmol、1当量)及び1-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカオキサ-3-アザヘキサトリアコンタン-36-酸、TLR-L-1a(0.0478g、0.072mmol、1当量)をジメチルホルムアミド、DMFに溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン、DIPEA(0.075mol、0.43mmol、6当量)を、続いて((7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、PyAOP、CAS登録番号156311-83-0(0.091g、0.18mmol、2.4当量)を添加した。反応物を室温で撹拌した後、濃縮し、RP-HPLCによって精製して、TLR-L-1(0.0346g、0.033mmol、46%)を得た。LC/MS [M+H] 1043.53(計算値);LC/MS [M+H] 1043.84(実測値)。
【0261】
実施例201 特定のシステイン(Cys)変異を有する抗HER2抗体の調製
部位特異的なシステイン変異を有する抗HER2抗体、例えば、トラスツズマブの調製についてUS10,973,826、WO2014/124316、及びWO2015/138615に記載されており、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる。抗HER2抗体、例えば、トラスツズマブの重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを、化学合成し、ヒトIgG1及びヒトκ軽鎖の定常領域を含む2つの哺乳動物発現ベクター、pOG-HC及びpOG-LCにクローン化する。ベクターは、CMVプロモーター及びシグナル配列を含む。オリゴヌクレオチド指定変異誘発を利用して、抗HER2抗体のCys変異コンストラクトを調製し、Cys変異コンストラクトの配列をDNA配列決定によって確認した。例えば、システインは、抗HER2抗体の以下の1つ以上の位置(すべての位置はEUの番号付けによる)に導入されてもよい:(a)抗体重鎖の位置S157、L174、G178、S119、V167、I199、Q196、A378及びA140、ならびに(b)抗体軽鎖の位置K145、S114、E105、S159、V191、L201、T129、K149及びK188。例えば、システインを、重鎖の位置S157(表3)に導入して、抗HER2 mAbを得ることができ、これは、配列番号21の軽鎖配列及び配列番号33の重鎖配列(表4)を有する。
【0262】
抗HER2抗体のCys変異体は、記載されているとおりに一過性トランスフェクション法を使用して重鎖及び軽鎖プラスミドをコトランスフェクトすることによって293 Freestyle(商標)細胞において発現させることができる(Meissner,et al.,(2001)Biotechnol Bioeng.75:197-203)。発現された抗体を標準的なプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって細胞上清から精製する。
【0263】
同様の方法を使用して、CHO細胞における発現のためにトラスツズマブの重鎖及び軽鎖の可変領域を2つのベクターにクローン化する。重鎖ベクターは、ヒトIgG1抗体の定常領域をコードし、シグナルペプチド、重鎖を発現させるためのCMVプロモーター、ならびにCHO細胞への安定なトランスフェクションに適したシグナル及び選択配列を含む。軽鎖ベクターは、ヒトκ軽鎖の定常領域をコードし、シグナルペプチド、軽鎖を発現させるためのCMVプロモーター、ならびにCHO細胞への安定なトランスフェクションに適したシグナル及び選択配列を含む。抗体を生成するために、重鎖ベクター及び軽鎖ベクターをCHO細胞株にコトランスフェクトする。細胞を選択し、次に、安定的にトランスフェクトされた細胞を抗体生成のために最適化された条件下で培養する。抗体を標準的なプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって細胞上清から精製する。
【0264】
システイン変異抗HER2抗体の還元、再酸化及びTLR7アゴニストとの結合
(TLR-L)などのリンカーを含む本発明のTLRアゴニストを、Junutula J R,et al.,Nature Biotechnology 26:925-932(2008)、及び実施例202に記載されている方法を使用して操作して抗体に導入されたシステイン(Cys)残基にコンジュゲートする。哺乳動物細胞で発現される抗体中の操作されたCys残基は生合成中にグルタチオン(GSH)及び/またはシステインなどの付加物(ジスルフィド)によって修飾されるため、初めに発現されたとおりの修飾Cysは、マレイミドまたはブロモアセトアミドまたはヨードアセトアミド基などのチオール反応性試薬に対して非反応性である。操作されたCys残基をコンジュゲートするために、グルタチオンまたはシステイン付加物を、ジスルフィドを還元することによって除去し、これは、一般に発現された抗体中のすべてのジスルフィドの還元を伴う。まず抗体をジチオスレイトール(DTT)またはTCEPなどの還元剤に曝露することによって還元を達成し、続いて抗体のすべての天然のジスルフィド結合の再酸化を行って、機能的な抗体構造を取り戻す、及び/または安定させる。したがって、天然のジスルフィド結合及び操作されたCys残基(複数可)のシステインまたはGSH付加物間のジスルフィド結合を還元するために、新たに調製したDTTをトラスツズマブの予め精製したCys変異体に添加して、10mMまたは20mMの最終濃度にした。抗体をDTTと37℃で1時間インキュベートした後、混合物を毎日バッファー交換して3日間PBSに対して透析して、還元剤及び副産物、例えば、DTTを除去し、天然のジスルフィド結合を再酸化する。再酸化プロセスを逆相HPLCによって監視し、これは、個々の重鎖及び軽鎖分子から抗体の四量体を分離することができる。反応を80℃に加熱したPRLP-S 4000Aカラム(50mm×2.1mm、Agilent)において分析し、0.1%TFAを含む水中の30~60%アセトニトリルの直線勾配によって1.5ml/分の流量でカラム溶出を行う。カラムからのタンパク質の溶出を280nmで監視する。再酸化が完了するまで透析を継続させる。再酸化により鎖内及び鎖間のジスルフィドが元に戻ると同時に、透析により新たに導入されたCys残基(複数可)に結合したシステイン及びグルタチオンが透析で除去される。
【0265】
再酸化が完了、またはほぼ完了したら、TLRアゴニストリンカーマレイミド含有中間化合物(TLR-L)を、一般に操作されたCysに対して1.5:1、2:1、または5:1の比率でPBSバッファー(pH7.2)中の再酸化された抗体に添加し、インキュベーションを約1時間行う。一般に、過剰な遊離TLR-Lを、標準的な方法によるプロテインA樹脂における精製によって除去し、続いてPBSにバッファー交換する。
【0266】
あるいは、抗HER2抗体、例えば、トラスツズマブのCys変異体を、オンレジン法を使用して還元及び再酸化する。プロテインAセファロースビーズ(抗体10mg当たり1ml)をPBS(カルシウムまたはマグネシウム塩なし)中で平衡化した後、バッチ方式で抗体サンプルに添加した。0.5Mのシステインのストックを、3.4gのNaOHを250mLの0.5Mリン酸ナトリウムpH8.0に添加することによって調製した10mLの溶液に850mgのシステインHClを溶解させることによって調製した後、20mMのシステインを抗体/ビーズスラリーに添加し、室温で30~60分間穏やかに混合する。ビーズをグラビティカラムに充填し、50倍の通水倍率のPBSで30分未満洗浄した後、カラムを1倍の通水倍率のPBS中に再懸濁したビーズでキャップした。再酸化の速度を調節するために、50nMから1μM(マイクロモル)の塩化銅を任意に添加する。再酸化の進行は、樹脂の小さな試験サンプルを取り出し、IgG溶出バッファー(Thermo)に溶出し、上記のとおりRP-HPLCにより分析することによって監視する。再酸化が所望の完成度まで進行したら、コンジュゲーションを、2~3モル過剰なTLR-L化合物を操作されたシステインに添加することによってすぐに開始し、混合物を室温で5~10分間反応させた後、カラムを少なくとも20カラム容積のPBSで洗浄した。抗体複合体をIgG溶出バッファーで溶出し、0.1容積の0.5Mリン酸ナトリウムpH8.0で中和し、PBSにバッファー交換する。あるいは、樹脂上での抗体とのコンジュゲーションを開始するかわりに、カラムを少なくとも20カラム容積のPBSで洗浄し、抗体をIgG溶出バッファーで溶出し、バッファーpH8.0で中和する。次に、抗体をコンジュゲーション反応のために使用するか、または後で使用するために急速冷凍する。
【0267】
実施例202 システイン変異免疫複合体(IC)の調製
システイン変異ベースのコンジュゲーションの準備のために、抗体をZeba(商標)スピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)を使用してpH7.2の2mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)にバッファー交換する。バッファー交換した抗体の濃度を、約5~25mg/mlに調節し、滅菌濾過した。最初のステップとして、20~40倍モル過剰な還元剤、例えば、ジチオスレイトール(DTT)またはトリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を抗体に添加して、すべてのジスルフィド結合を還元し、グルタチオン及び/またはシステイン付加物を除去した。還元は、30℃または37℃で30分~2時間行った。Zebaスピン脱塩カラムを使用して過剰な還元試薬を除去した。20~40倍モル過剰なデヒドロアスコルビン酸(dhAA)を使用して室温で60分~2時間Abを再酸化することによって天然のジスルフィドを元に戻した。再酸化の完了後、リンカー-ペイロードを含むマレイミドを再酸化された抗体に5~12倍モル過剰な量で室温で1時間添加した。Zebaスピン脱塩カラムを使用して適した製剤バッファーにバッファー交換することによって過剰なリンカー-ペイロードを除去した。コンジュゲーション後、得られたICのスクシンイミド環を加水分解して、より大きな安定性を付与してもよい(Zheng,K.et al(2019)J Pharm Sci,108(1):133-141)。
【0268】
コンジュゲーション後に、場合によっては未反応のTLR-L及び/または高分子量の凝集物を除去するために、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、限外濾過、遠心限外濾過、タンジェンシャルフロー濾過、及びこれらの組み合わせをさらに使用してICを精製してもよい。
【0269】
コンジュゲーションについては、抗体の安定性または抗原結合特異性に悪影響を及ぼさない、当該技術分野で既知の水性バッファー系に抗体を溶解させてもよい。リン酸緩衝生理食塩水を使用してもよい。TLR-Lは、本明細書の別の箇所に記載されている少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒を含む溶媒系に溶解される。いくつかのそのような態様では、TLR-Lは、pH8トリスバッファー(例えば、50mM Tris)中に約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、または約50mM、及びこれらの範囲内、例えば、約5mM~約50mMまたは約10mM~約30mMの濃度まで溶解される。いくつかの態様では、TLR-Lは、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、またはアセトニトリル、または別の好適な双極性非プロトン性溶媒に溶解される。
【0270】
あるいはコンジュゲーション反応では、当量過剰のTLR-L溶液を希釈し、抗体溶液と合わせてもよい。TLR-L溶液は好適には、少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒及び少なくとも1つの極性プロトン性溶媒で希釈されてもよく、これらの例には、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及び酢酸が挙げられる。抗体に対するTLR-Lのモル当量は、約1.5:1、約3:1、約5:1、約10:1、約15:1または約20:1、及びこれらの範囲内、例えば、約1.5:1~約20:1、約1.5:1~約15:1、約1.5:1~約10:1、約3:1~約15:1、約3:1~約10:1、約5:1~約15:1、または約5:1~約10:1であり得る。反応の完了は、LC-MSなどの当該技術分野において既知の方法によって適切に監視されてもよい。コンジュゲーション反応は通常、約1時間~約16時間の範囲内で完了する。反応が完了した後、試薬を反応混合物に加えて、反応を停止させてもよい。抗体チオール基がTLR-Lのマレイミドなどのチオール反応性基と反応する場合、未反応の抗体チオール基はキャッピング試薬と反応させてもよい。好適なキャッピング試薬の例はエチルマレイミドである。
【0271】
結合後に、免疫複合体は、例えば、これらに限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロマト分画、限外濾過、遠心限外濾過、接線濾過、及びこれらの組み合わせのような当該技術分野で既知の精製方法によって精製され、結合されていない反応物質及び/または結合凝集体から分離されてもよい。例えば、精製の前に、免疫複合体を20mMコハク酸ナトリウム、pH5などで希釈することができる。希釈した溶液を陽イオン交換カラムに適用した後、例えば少なくとも10カラム容量の20mMコハク酸ナトリウム、pH5で洗浄する。複合体は、PBSなどのバッファーで適切に溶出できる。
【0272】
実施例203 比較アミド結合免疫複合体の調製
表11の比較Lys IC-1などのリシン結合免疫複合体を調製するために、抗体は、G-25 SEPHADEX(登録商標)脱塩カラム(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)またはZeba(商標)スピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、pH8.3で、100mMのホウ酸、50mMの塩化ナトリウム、1mMのエチレンジアミン四酢酸を含有する、コンジュゲーションバッファーにバッファー交換する。次にバッファーを使用して、溶出液をそれぞれ約1~10mg/mlのバッファー交換した抗体の濃度に調節した後、滅菌濾過する。抗体を20~30℃に予め温め、表9の2,3,5,6-テトラフルオロフェニルエステルまたは4-スルホ、2,3,5,6-テトラフルオロフェニルエステルなどの活性エステルを含むTLRアゴニスト-リンカー比較化合物の2~20(例えば、7~10)モル当量と素早く混合して、抗体とのアミド結合を形成する。反応を30℃で約16時間進行させ、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化した2つの連続するG-25脱塩カラムに通して免疫複合体(IC)を反応物から分離して、表2の免疫複合体(IC)を得る。アジュバント対抗体比(DAR)は、XEVO(商標)G2-XS TOF質量分析計(Waters Corporation)に接続されたACQUITY(商標)UPLC Hクラス(Waters Corporation、Milford、MA)のC4逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー質量分析によって決定される。
【0273】
あるいは、式a~fの活性エステルTLRアゴニスト-リンカー(TLR-L)化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルアセトアミド(DMA)に溶解させて、5~20mMの濃度にする。コンジュゲーションのために、抗体を4~20モル当量のTLR-Lと混合する。場合によっては、20%(v/v)までの追加のDMAまたはDMSOを加え、コンジュゲーションバッファー中におけるTLR-Lの溶解度を改善した。反応を、20℃または30℃または37℃で約30分~4時間進行させる。得られた複合体を、2つの連続するZeba(商標)スピン脱塩カラムを使用して、未反応のBBI-Lから精製する。カラムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2で予め平衡化する。アジュバント対抗体比(DAR)を、XEVO(商標)G2-XS TOF質量分析計(Waters Corporation)に接続されたACQUITY(商標)UPLC H-class(Waters Corporation、Milford、MA)のC4逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー質量分析によって推定する。
【0274】
実施例204 インビトロにおける免疫複合体活性の評価
この実施例は、本発明の免疫複合体が樹状細胞などの骨髄活性化を誘発するのに有効であり、したがって、がんの治療に有用であることを示している。
【0275】
ヒト通常型樹状細胞の単離:ヒト通常型樹状細胞(cDC)は、密度勾配遠心分離によって健康な血液ドナー(Stanford Blood Center,Palo Alto,California)から得られたヒト末梢血からネガティブに選択された。簡単に説明すると、細胞を最初に、ROSETTESEP(商標)ヒトCD3枯渇カクテル(Stem Cell Technologies,Vancouver,Canada)を使用して富化し、細胞調製物からT細胞を除去する。次にcDCを、EASYSEP(商標)ヒト骨髄DC富化キット(Stem Cell Technologies)を使用して、ネガティブ選択によって更に富化する。
【0276】
cDC活性化アッセイ:8×104個のAPCを、ISAC標的抗原を発現する腫瘍細胞と共に10:1のエフェクター(cDC)対標的(腫瘍細胞)比で共培養した。細胞を、10%のFBS及び示される場合には、様々な濃度の本発明の指示された免疫複合体(上記の実施例に従って調製)を加えたRPMI-1640培地を入れた96ウェルプレート(Corning、Corning、NY)中でインキュベートした。約18時間の一晩のインキュベーション後、無細胞上清を収集し、BioLegend LEGENDPLEXサイトカインビーズアレイを使用して(TNFα及び/またはIL-12p70を含む)サイトカイン分泌について分析した。
【0277】
骨髄細胞型の活性化を、様々な骨髄集団を利用する記載のアッセイに加えて、様々なスクリーニングアッセイを用いて測定することができる。これらは、健康なドナー血液から単離された単球、M-CSF分化マクロファージ、GM-CSF分化マクロファージ、GM-CSF+IL-4単球由来樹状細胞、健康なドナー血液から単離された従来の樹状細胞(cDC)、及び免疫抑制状態に分極した骨髄細胞(骨髄由来抑制細胞またはMDSCとも呼ばれる)を含み得る。MDSC分極細胞としては、例えばM2aΜΦ(IL4/IL13)、M2cΜΦ(IL10/TGFb)、GM-CSF/IL6MDSC、腫瘍教育単球(TEM)などの免疫抑制状態に向けて分化した単球が挙げられる。TEM分化は、腫瘍馴化培地(例えば、786.O、MDA-MB-231、HCC1954)を用いて行うことができる。原発性腫瘍関連骨髄細胞はまた、解離した腫瘍細胞懸濁液に存在する初代細胞を含み得る(Discovery Life Sciences)。
【0278】
骨髄細胞の記載された集団の活性化の評価は、単培養として、またはISACが抗体のCDR領域を介して結合できる目的の抗原を発現する細胞との共培養として行うことができる。18~48時間のインキュベーション後に、フローサイトメトリーを用いた細胞表面共刺激分子の上方制御、または分泌された炎症性サイトカインの測定により活性化を評価することができる。サイトカイン測定の場合、無細胞上清を採取し、フローサイトメトリーを用いてサイトカインビーズアレイ(例えば、Biolegend製LegendPlex)により分析する。
【0279】
本明細書において引用されている、刊行物、特許出願及び特許を含むすべての参考文献は、参照することにより、それらの参考文献のそれぞれが参照することにより組み込まれるべき旨の個別具体的な表示があるかのように、かつ、その全体が本明細書に規定されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】