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特表2024-539995テトラフルオロエチレンオキシドとヘキサフルオロプロピレンオキシドとのコポリマーを含む潤滑グリース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】テトラフルオロエチレンオキシドとヘキサフルオロプロピレンオキシドとのコポリマーを含む潤滑グリース
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/02 20060101AFI20241024BHJP
   C10M 105/54 20060101ALN20241024BHJP
   C10M 119/22 20060101ALN20241024BHJP
   C10M 113/12 20060101ALN20241024BHJP
   C10M 113/10 20060101ALN20241024BHJP
   C10M 113/02 20060101ALN20241024BHJP
   C10M 115/08 20060101ALN20241024BHJP
   C10M 113/08 20060101ALN20241024BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20241024BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20241024BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20241024BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20241024BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20241024BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20241024BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20241024BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20241024BHJP
   C10N 40/12 20060101ALN20241024BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C10M169/02
C10M105/54
C10M119/22
C10M113/12
C10M113/10
C10M113/02
C10M115/08
C10M113/08
C10N50:10
C10N20:02
C10N20:04
C10N10:04
C10N30:02
C10N30:08
C10N30:00 Z
C10N40:02
C10N40:12
C10N40:00 A
C10N40:00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524987
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 US2022047597
(87)【国際公開番号】W WO2023076178
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/271,400
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー ボリソヴィチ シュタロフ
(72)【発明者】
【氏名】ペリン ハカリオグル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン リー ハウエル
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA04B
4H104AA13B
4H104AA22C
4H104AA24B
4H104AA26B
4H104BD01B
4H104BD05A
4H104BD05B
4H104EA02A
4H104EA03A
4H104FA02
4H104LA01
4H104LA04
4H104LA20
4H104PA01
4H104PA07
4H104PA09
4H104PA49
4H104QA18
(57)【要約】
グリースは、ペルフルオロポリエーテル油コポリマーと、コポリマーと混合される増粘剤と、を含む。コポリマーは、約20mol%~約80mol%の-CFCFO-単位、約20mol%~約80mol%の-CF(CF)CFO-単位、及び約0mol%~約45mol%の1つ以上の追加のペルフルオロアルキレンオキシ単位を含む。コポリマーは、約120~約220の範囲の粘度指数を有する。コポリマーは、約6未満の平均TFEO連続長さを有する。グリースを形成するプロセスは、ペルフルオロポリエーテル油コポリマーを増粘剤と混合して、グリースを形成する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルフルオロポリエーテル油コポリマーと、前記コポリマーと混合される増粘剤とを含むグリースであって、
前記ペルフルオロポリエーテル油コポリマーは、
約20mol%~約80mol%の-CFCFO-単位と、
約20mol%~約80mol%の-CF(CF)CFO-単位と、
約0mol%~約45mol%の1つ以上の追加のペルフルオロアルキレンオキシ単位と、
を含み、
前記コポリマーが、約120~約220の範囲の粘度指数を有し、
前記コポリマーが、約6未満の平均TFEO連続長さを有する、
グリース。
【請求項2】
前記コポリマーが、約1,500~約20,000Daの範囲の数平均分子量を有する、請求項1に記載のグリース。
【請求項3】
前記数平均分子量が、約3,500~約13,000Daの範囲である、請求項2に記載のグリース。
【請求項4】
前記1つ以上の追加のペルフルオロアルキレンオキシ単位が、-CFCFCFO-単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項5】
前記コポリマーのISO粘度グレードが、約25より高い、請求項1~4のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項6】
前記粘度指数が、約150~約220の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項7】
前記平均TFEO連続長さが、約4.5未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項8】
前記コポリマーが、約-20℃以下の流動点を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項9】
前記流動点が、約-50℃以下である、請求項8に記載のグリース。
【請求項10】
前記増粘剤が、ポリテトラフルオロエチレン、タルク、シリカ、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、粘土、グラファイト、表面処理シリカ、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項11】
前記増粘剤が、前記グリースの約1重量%~約50重量%の範囲の量で前記グリース中に存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項12】
前記増粘剤が、約2~約35m/gの範囲の表面積を有する粒子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項13】
前記増粘剤が、30nm~300nmの範囲の平均粒径を有する粒子を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項14】
前記グリースが、-40℃で1100g-cm未満の始動トルクを有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項15】
前記グリースが、-40℃で450g-cm未満の回転トルクを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のグリース。
【請求項16】
グリースを形成するプロセスであって、前記プロセスが、
ペルフルオロポリエーテル油コポリマーを増粘剤と混合して、前記グリースを形成する工程であって、前記ペルフルオロポリエーテル油コポリマーが、
約20mol%~約80mol%の-CFCFO-単位と、
約20mol%~約80mol%の-CF(CF)CFO-単位と、
約0mol%~約45mol%の1つ以上の追加のペルフルオロアルキレンオキシ単位と、
を含み、
前記コポリマーが、約120~約220の範囲の粘度指数を有し、
前記コポリマーが、約6未満の平均TFEO連続長さを有する、工程
を含む、プロセス。
【請求項17】
前記混合工程が、前記ペルフルオロポリエーテル油コポリマーを前記増粘剤とともに粉砕することを含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記増粘剤が、ポリテトラフルオロエチレン、タルク、シリカ、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、粘土、グラファイト、表面処理シリカ、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16又は17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記グリースが、-40℃で1100g-cm未満の始動トルクを有する、請求項16~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記グリースが、-40℃で450g-cm未満の回転トルクを有する、請求項16~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑グリースに関し、より詳細には、テトラフルオロエチレンオキシドとヘキサフルオロプロピレンオキシドとのコポリマー及び増粘剤を含有する潤滑グリースに関する。
【背景技術】
【0002】
高性能ペルフルオロポリエーテル潤滑剤の市販のスケールオプションは、低温におけるヘキサフルオロプロピレンオキシド(hexafluoropropylene oxide、HFPO)モノマーのアニオン重合、又はテトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene、TFE)若しくはヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene、HFP)の制御された光酸化重合若しくは両方を使用するほんのいくつかの主要な手法に限定される。2,2,3,3-テトラフルオロオキセタンの部分フッ素化ポリマーの調製及びその更なるフッ素化もまた、実施され、-(CFCFCHO)-ポリマーを製造し、-(CFCFCFO)-ポリマーを作製するために顕著な更なるフッ素化を必要とする。
【0003】
商品名Krytox(商標)(The Chemours Company FC,LLC,Wilmington,DE)(PFPE-K)で入手可能である、HFPO(ポリ-CF(CF)CFO-)のアニオン重合によって形成された市販油は、金属ハロゲン化物及び酸化物の存在下で優れた安定性を有するが、それらの粘度は、温度の変化で著しく変化し(低粘度指数)、それらは比較的高い流動点を有する。追加的に、低分子量の比較的粘性な油により、それらの揮発性を増加させ、それらの用途の一部を制限し得る。
【0004】
-CFCFO-のテトラフルオロエチレンオキシド(tetrafluoroethylene oxide、TFEO)単位を含有する、光酸化重合によってTFEから製造された市販油は、Fomblin(登録商標)M及びFomblin(登録商標)Z(Solvay Specialty Polymers,Milan,IT)の商品名で入手可能であり、CFO-基を含有しない、ポリ-(CF(CF)CFO)-(Krytox(商標)PFPE-K)又は-(CFCFCFO)-(PFPE-D)などの他の市販のペルフルオロポリエーテル(perfluoropolyether、PFPE)よりも低い流動点及び高い粘度指数を有する。光酸化重合によってHFPから製造され、商品名Fomblin(登録商標)Y(Solvay Specialty Polymers,Milan,IT)で入手可能な-CF(CF)CFO-単位を含有する市販油はまた、PFPE-Kと比較して安定性が低いジフルオロホルミル(-CFO-)基を含有し、ルイス酸、AlClなどの金属ハロゲン化物、金属酸化物、又は、アルミニウム若しくは鉄などの金属の存在下で迅速な分解を促進する。
【0005】
Fomblin(登録商標)M及びFomblin(登録商標)Z油の末端基は、主にCFO-基であり、また、より長いCFCFO-、CFCFCFO-、及び(CFCFO-末端基と比較して、金属ハロゲン化物及び酸化物の存在下の安定性がより低い[例えば、Kasai,「Perfluoropolyethers:Intramolecular Disproportionation」,Macromolecules,Vol.25,pp.6791-6799(1992)を参照されたい]。したがって、低量のCFO-末端基を有する油は、より高い安定性を達成するために望ましい。Fomblin(登録商標)M、Fomblin(登録商標)Z、及びFomblin(登録商標)Yなどのジフルオロホルミル(-CFO-)を含有する油もまた、金属の存在下でより低い熱酸化安定性を有する[例えば、Koch et al.,「Thermo-Oxidative Behaviour of Perfluoropolyalkylethers」,Journal of Synthetic Lubrication,Vol.12,pp.191-204(1995)を参照されたい]。加えて、特定の金属及び酸化アルミニウムなどの金属酸化物(Al)及び酸化チタン(TiO)は、Fomblin(登録商標)Y油の分解に対して触媒効果を有する[Sianesi et al.,「Perfluoropolyethers:Their Physical Properties and Behavior at High and Low Temperatures」,Wear,Vol.18,pp.85-100(1971)]。
【0006】
「Lubricating grease composition」と題された米国特許第8,067,344号(Shimura et al.に対して2011年11月29日発行)は、フッ化セシウム触媒の存在下でのHFPO又はHFPOとTFEOの両方のアニオン重合からのペルフルオロポリエーテル油を示唆する。
【0007】
「Lubricating greases」と題された、MaCcone et al.による、2005年4月7日に公開された、米国特許出願公開第2005/0075250号は、20℃で特定の値範囲内の粘度を有する、-CF(CF)CFO-単位を含有するポリマー及び-CFCFO-単位を含有するポリマーに加えて、-CF(CF)CFO-単位及び-CFCFO-単位を含有するポリマーを示唆する。
【0008】
1964年9月25日に発行された仏国特許第1373014号は、HFPO及びTFEOを含むコポリマーを含み、高TFEO含有量を有するフルオロカーボンポリエーテルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8,067,344号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0075250号
【特許文献3】仏国特許第1373014号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kasai,「Perfluoropolyethers:Intramolecular Disproportionation」,Macromolecules,Vol.25,pp.6791-6799(1992)
【非特許文献2】Koch et al.,「Thermo-Oxidative Behaviour of Perfluoropolyalkylethers」,Journal of Synthetic Lubrication,Vol.12,pp.191-204(1995)
【非特許文献3】Sianesi et al.,「Perfluoropolyethers:Their Physical Properties and Behavior at High and Low Temperatures」,Wear,Vol.18,pp.85-100(1971)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
広い温度範囲にわたって粘度の変化が比較的小さく、流動点が低く、揮発性が低く、熱安定性が高い不活性PFPE油のグリースが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
例示的な実施形態では、グリースは、ペルフルオロポリエーテル油コポリマーと、コポリマーと混合される増粘剤と、を含む。コポリマーは、約20mol%~約80mol%の-CFCFO-単位、約20mol%~約80mol%の-CF(CF)CFO-単位、及び約0mol%~約45mol%の1つ以上の追加のペルフルオロアルキレンオキシ単位を含む。コポリマーは、約120~約220の範囲の粘度指数を有する。コポリマーは、約6未満の平均TFEO連続長さを有する。
【0013】
別の例示的な実施形態では、グリースを形成するプロセスは、ペルフルオロポリエーテル油コポリマーを増粘剤と混合して、グリースを形成する工程を含む。コポリマーは、約20mol%~約80mol%の-CFCFO-単位、約20mol%~約80mol%の-CF(CF)CFO-単位、及び約0mol%~約45mol%の1つ以上の追加のペルフルオロアルキレンオキシ単位を含む。コポリマーは、約120~約220の範囲の粘度指数を有する。コポリマーは、約6未満の平均TFEO連続長さを有する。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、例として本発明の原理を例示する好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
広い温度範囲にわたって粘度の変化が比較的小さく、流動点が低く、揮発性が低く、熱安定性が高い、増粘剤及び不活性PFPE油の例示的なグリースが提供される。
【0016】
例示的な実施形態では、PFPE油は、広い温度範囲にわたって粘度の変化が比較的小さく、流動点が低く、揮発性が低く、熱安定性が高い。
【0017】
グリースにおいて、PFPE油の低揮発性は特に重要であり、その理由は、動作条件中の油の損失がグリース中の増粘剤の相対量を増加させ、グリースの物理的特性を潜在的に変化させるからである。
【0018】
グリースにおいて、動作条件により、一般的に、PFPE油の高い熱安定性は、特に低温での動作について、油が増粘剤なしの潤滑剤として単独で使用される場合よりも重要でなくなる。
【0019】
例示的な実施形態では、グリースは、同様の国際標準化機構(International Standards Organization、ISO)グレードの従来のPFPE油のグリースよりも、潤滑ボールベアリングについて低いトルク値を有し、及び/又は優れた耐候性を有する。
【0020】
例示的な実施形態では、グリースは、限定されないが、高温、非常に低い温度と組み合わされた非常に低い圧力、低トルクを必要とする用途、攻撃的な化学物質及び溶媒を含有する環境、並びに/又は酸素若しくは塩化物を含有する環境を含む厳しい条件において有用である。
【0021】
提供されるPFPE油は、高い熱的及び化学的安定性、低揮発性、並びに改善された粘度変化(例えば、より低い40℃/100℃粘度比及びより高い粘度指数)をもたらす、テトラフルオロエチレンオキシド(TFEO)とヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)とのコポリマーである。40℃で同様の粘度のポリマー(ISO粘度グレード(viscosity grade(VG))を比較すると、20~80mol%の-CF(CF)CFO-単位を含有するTFEO/HFPOコポリマーは、Fomblin(登録商標)Y、-CF(CF)CFO-co-CFO-潤滑剤、ポリ-HFPO Krytox(商標)潤滑剤、及びポリ-TFEOホモポリマーよりも低い流動点を有する。
【0022】
本明細書で使用される場合、粘度指数(VI)は、40℃及び100℃におけるその動粘度に基づく対象のポリマー又はコポリマー油の単位なしの値であり、以下の式によって計算される。
【0023】
【数1】
式中、Uは40℃における対象油の動粘度であり、L及びHは、それぞれ0のVI及び100のVIを有し、対象油と100℃で同じ動粘度を有する、参照油の40℃における動粘度の値であり、L及びHの値はASTM D2270で見出される。
【0024】
本明細書で使用される場合、ISO粘度グレードは、センチストークスで報告された40℃における油の動粘度に対応するISO VGを指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、流動点は、American Society for Testing and Materials(ASTM)D97標準試験方法に従って、ポリマー又はコポリマーがビーカーから注がれる能力を失う温度を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、安定性とは、ルイス酸としての2%酸化アルミニウム(中性α-Al)の存在下で50%の重量損失が観察される温度を指し、標準10℃/分ランプTGA試験では、温度が高い程、より高い安定性を示す。
【0027】
本明細書で使用される場合、揮発性は、標準的な10℃/分ランプTGA試験で観察された室温から300℃までの油の重量損失%を指し、質量減少が低いほど揮発性が低いことを示す。
【0028】
本明細書で使用される場合、平均TFEO連続長さは、TFEOモノマーの開環によって形成されたコポリマー中の連続する-CFCFO-単位の平均数を指す。
【0029】
TFEOは、以下の化学構造を有する。
【0030】
【化1】
これは、コポリマー中の-CFCFO-ペルフルオロアルキレンオキシ単位となる。
【0031】
HFPOは、以下の化学構造を有する。
【0032】
【化2】
これは、コポリマー中の-CF(CF)CFO-ペルフルオロアルキレンオキシ単位となる。
【0033】
PFPE油コポリマーは、ランダムに分布したHFPO及びTFEO繰り返し単位を含有する。例示的な実施形態では、PFPE油コポリマーは、以下の化学式を有する。
CF(CF2zO-[CF(CFCFO](CFCFO)-CF (3)
式中、Rが、-F又は-CFであり、zが、1~2であり、x及びyが、独立して0~30であり、例えば、1~30、2~30、3~30、5~30、5~25、5~20、10~20、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲である。
【0034】
例示的な実施形態では、ガス流中のモノマーの比は、得られたコポリマーの潤滑剤特性を改善及び変更するように選択される。例示的な実施形態では、コポリマーは、約20mol%~約80mol%の-CFCFO-単位及び約20mol%~約80mol%の-CF(CF)CFO-単位、代替的に約20mol%~約75mol%の-CFCFO-単位、及び約25mol%~約80mol%の-CF(CF)CFO-単位を有する。例示的な実施形態では、コポリマーは、少なくとも約20mol%の-CFCFO-単位、代替的に少なくとも約25mol%の-CFCFO-単位、代替的に少なくとも約30mol%の-CFCFO-単位、代替的に少なくとも約35mol%の-CFCFO-単位、代替的に少なくとも約40mol%の-CFCFO-単位、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲を有する。例示的な実施形態では、コポリマーは、少なくとも約20mol%の-CF(CF)CFO-単位、代替的に少なくとも約25mol%の-CF(CF)CFO-単位、代替的に少なくとも約30mol%の-CF(CF)CFO-単位、代替的に少なくとも約35mol%の-CF(CF)CFO-単位、代替的に少なくとも約40mol%の-CF(CF)CFO-単位、代替的に少なくとも約45mol%の-CF(CF)CFO-単位、代替的に少なくとも約50mol%の-CF(CF)CFO-単位、代替的に少なくとも約55mol%の-CF(CF)CFO-単位、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、コポリマーは、約55mol%以上の-CFCFO-単位及び-CF(CF)CFO-単位を組み合わせて、例えば、約60mol%以上、約65mol%以上、約70mol%以上、約75mol%以上、約80mol%以上、約85mol%以上、約90mol%以上、約95mol%以上、約99mol%以上、本質的に100mol%、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲などを有する。
【0036】
コポリマーはまた、最大約45mol%の、-CFCFO-及び-CF(CF)CFO-ペルフルオロアルキレンオキシ単位以外の1つ以上の追加のペルフルオロアルキレンオキシ単位、代替的に約5%~約45%、代替的に約5%~約35%、代替的に約5%~約25%、代替的に約5%~約10%、代替的に約10%~約40%、代替的に最大約5%、代替的に最大約10%、代替的に最大約25%、代替的に最大約35%、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲を含み得る。いくつかの実施形態では、追加のペルフルオロアルキレンオキシ単位は、(-CF-CF-CF-O-)である。いくつかの実施形態では、(-CF-CF-CF-O-)単位は、TFEO、任意選択的にHFPOと、2,2,3,3-テトラフルオロオキセタンとの共重合によって導入されて、ポリフッ素化エーテルを含有する(-CH-CF-CF-O-)を作製し、続いて元素状フッ素を用いてフッ素化して、-CF-CF-CF-O-含有ポリマーを形成する。
【0037】
例示的な実施形態では、コポリマーは、約1,500ダルトン(Dalton、Da)~約20,000Da、代替的に約3,500Da~約13,000Da、代替的に約2,500Da~約10,000Daの範囲、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲の、19F NMRによって決定される数平均分子量(M)を有する。
【0038】
例示的な実施形態では、コポリマーは、約100~約220、代替的に約120~約220、代替的に約135~約200、代替的に約100~約210、代替的に約150~約220、代替的に約150~約200の範囲、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲の粘度指数を有する。
【0039】
例示的な実施形態では、コポリマーは、約6未満、代替的に約5.5未満、代替的に約5未満、代替的に約4.5未満、代替的に約4未満、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲の平均TFEO連続長さを有する。より短い平均TFEO連続長さは、冷却時にコポリマーの結晶化の可能性を低減する。
【0040】
例示的な実施形態では、コポリマーは、約-20℃以下、代替的に約-30℃以下、代替的に約-40℃以下、代替的に約-50℃以下、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲の流動点を有する。
【0041】
例示的な実施形態では、コポリマーの末端基は、主にCFCFCFO-及びCFCFO-末端基を含有し、それによって、TFEの光酸化重合によって作製される、-CFCF-O-単位を含有するペルフルオロポリエーテルに典型的な高量のCFO-末端基を回避し、高い安定性及び低揮発性を有する潤滑剤をもたらす。
【0042】
例示的な実施形態では、約31mol%以下の末端基は、代替的に約16mol%以下、代替的に約10mol%以下、代替的に約5mol%以下、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲のCFO-末端基である。例示的な実施形態では、約69mol%以上の末端基は、代替的に約84mol%以上、代替的に約90mol%以上、代替的に約95mol%以上、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲のCFCFCFO-、(CFCFO-、及びCFCFO-末端基から選択される。
【0043】
例示的な実施形態では、コポリマーの安定性は、約250℃以上、代替的に約250℃~約450℃、代替的に約275℃以上、代替的に約300℃以上、代替的に約325℃以上、代替的に約350℃以上、代替的に約350℃~約450℃、代替的に約375℃以上、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲である。
【0044】
例示的な実施形態では、有用な温度範囲でのコポリマーの揮発性は、約5%以下、代替的に約1%~約5%、代替的に約4%以下、代替的に約3%以下、代替的に約2%以下、代替的に約1%~約2%、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲である。
【0045】
例示的な実施形態では、コポリマーのISO粘度グレードは、約20以上、代替的に約20~約170、代替的に約25以上、代替的に約25~約170、代替的に約25~約110、代替的に約50以上、代替的に約95以上、代替的に約95~約170、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲である。
【0046】
例示的な実施形態では、コポリマーは、TFEO及びHFPOを含有するガス流を、フッ素化溶媒、アルカリ金属フッ化物塩、ポリ(エチレングリコール)ジアルキルエーテル、短鎖ペルフルオロアルキルポリエーテル酸フッ化物、ペルフルオロアルキル酸フッ化物、例えば、CFC(O)F又はCFCFC(O)F又はペルフルオロアルキルケトン若しくはその対応するアルコキシド、例えば、CFCF、CFCFCF、(CFCFO、又はCFCFCFCFを含有する反応器に供給して、酸フッ化物含有ポリマーを形成する工程を含むプロセスによって形成される。TFEO及びHFPOは、コポリマーが本明細書に開示される相対量-CFCFO-単位及び-CF(CF)CFO-単位のいずれかを含むように、ガス流中に相対量で提供され得る。重合中にTFEO及びHFPO比を比較的一定に維持することにより、一貫したコポリマー組成物をもたらす。CFO-末端基の割合を減少させるために、HFPOの相対量を重合終了時に増加させてもよい。例示的な実施形態では、ペルフルオロアルキルポリエーテルコポリマーの末端基の約5mol%以下がCFO-末端基であるように、重合終了時に少なくとも4:1のHFPO:TFEOのモル比を含有するように、ガス流を調整する。方法は、酸フッ化物含有ポリマーをワークアップして、コポリマーを形成する工程を更に含む。
【0047】
例示的な実施形態では、ワークアップは、フッ素化溶媒中の酸フッ化物含有ポリマー又は酸フッ化物含有ポリマーの溶液を水又は塩基の水溶液で加水分解して、ペルフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸又はカルボン酸塩を形成する工程を含む。適切なフッ素化溶媒としては、例えば、ペルフルオロブチルメチルエーテルなどの部分フッ素化エーテルが挙げられ得るが、これに限定されない。ワークアップは更に、ポリエーテルカルボン酸又はカルボン酸塩を部分的に又は完全に-OCFH、-OCF(CF)H、及び/又は-OCF=CF末端基でポリエーテルに変換し得る、加熱でフッ素化溶媒を留去する工程を含む。プロセスは、ペルフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸若しくはカルボン酸塩、又は-OCFH、-OCF(CF)H、及び/若しくは-OCF=CF末端基を含有する上記の混合物を、元素状フッ素で処理して、ペルフルオロアルキルポリエーテルコポリマーを得る工程を更に含む。
【0048】
例示的な実施形態では、反応器はオートクレーブである。例示的な実施形態では、反応は、約14~約18時間の期間にわたって、約-35℃~約30℃、代替的に約-25℃~約-15℃の範囲の温度、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲で起こる。
【0049】
例示的な実施形態では、加水分解は、約1~4の範囲のpHに達するために水酸化ナトリウム水溶液によるものである。例示的な実施形態では、処理は、約20℃~約150℃、代替的に約25℃~約150℃、代替的に約80℃~約150℃、代替的に約20℃~約80℃、代替的に約25℃~約80℃、又はそれらの間の任意の範囲若しくは部分範囲の段階的に上昇する温度で25%の元素状フッ素によるものである。
【0050】
いくつかの実施形態では、得られたPFPE油コポリマーは、5重量%の損失が観察される温度が少なくとも約200℃、代替的に少なくとも約250℃、代替的に少なくとも約300℃、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲であるような低い揮発性を有する。いくつかの実施形態では、PFPE油コポリマーは、50重量%の損失が観察される温度が少なくとも約300℃、代替的に少なくとも約350℃、代替的に少なくとも約400℃、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲であるような低い揮発性を有する。
【0051】
例示的な実施形態では、得られたPFPE油コポリマーは、グリースを形成するために1つ以上の増粘剤と組み合わされる。いくつかの実施形態では、PFPE油及び増粘剤は、組み合わせて、グリースの少なくとも約95重量%、例えば少なくとも約96重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%、少なくとも約99重量%、少なくとも約99.5重量%など、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲を構成する。
【0052】
例示的な実施形態では、増粘剤は、化学的に不活性又は実質的に化学的に不活性である粒子の形態である。例示的な実施形態では、増粘剤は、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、タルク、シリカ(SiO)、フッ素化エチレンプロピレン(fluorinated ethylene propylene、FEP)、ペルフルオロアルコキシアルカン(perfluoroalkoxy alkane、PFA)、粘土、グラファイト、表面処理シリカ、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、又はこれらの組み合わせである。
【0053】
例示的な実施形態では、グリースにおける増粘剤の量は、約1重量%~約50重量%、代替的に約1重量%~約35重量%、代替的に約10重量%~約50重量%、代替的に約15重量%~約35重量%、代替的に約15重量%~約25重量%、代替的に約20重量%~約22重量%、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲の範囲である。
【0054】
例示的な実施形態では、増粘剤は、粉末の形態で添加される。いくつかの実施形態では、粉末は、微粉末である。いくつかの実施形態では、増粘剤は、油を増粘剤とともに粉砕することによって添加される。
【0055】
例示的な実施形態では、増粘剤粒子は、約2m/g~約35m/g、代替的に約7m/g~約25m/g、代替的に約10m/g~約20m/gの範囲、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲の表面積を有する。
【0056】
例示的な実施形態では、増粘剤粒子は、約30nm~約300nm、代替的に約50nm~約250nmの範囲、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲の平均粒径を有する。平均粒径は、平均一次粒径を指す。増粘剤がPTFEである場合、PTFEは、好ましくは、フーリエ変換赤外(Fourier-transform infrared、FTIR)分光法によって決定される10個のCF基当たりのPTFE上の末端基の総数に基づいて決定される、少なくとも約10,000Da、代替的に約10,000~約10,000,000Da、代替的に少なくとも100,000Da、代替的に少なくとも1,000,000Da、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲の数平均分子量Mを有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、グリースは、-40℃で、1500g-cm未満、代替的に1100g-cm未満、代替的に1000g-cm未満、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲の始動トルクを有する。いくつかの実施形態では、グリースは、-40℃で、500g-cm未満、代替的に450g-cm未満、代替的に250g-cm未満、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲の回転トルクを有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、グリースはまた、1つ以上の添加剤を含む。いくつかの実施形態では、添加剤は、例えば、耐摩耗性又は防錆性などの特定の利益又は特性を提供する。適切な添加剤としては、二硫化モリブデン(moly disulfide)、硝酸ナトリウム、ポリフルオロポリオキサ-アルキルアリールリン酸エステル、有機モリブデン化合物、又は二硫化タングステンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書に開示されるグリースは、酸素環境における不燃性及び高い安定性、低い蒸気圧、化学的不活性、高温安定性、多くの化学物質に対する不溶性、良好な潤滑性及び耐酸化性、最大約550°F(約288℃)の一定温度及び最大約800°F(約427℃)の間欠温度に耐える能力、並びに/又は非常に低い温度で流体のままである能力を有し得、酸素供給における弁及びOリング潤滑、航空計器ベアリング潤滑、反応性化学環境におけるシール潤滑、電気モータなどにおける寿命ベアリングシール、高温グリース用途、低温グリース用途、自動車用途、タービン用途、及び/又は航空宇宙用途を含むがこれらに限定されない多くの異なる用途のいずれにおいても有用となる。
【実施例
【0060】
本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない以下の実施例に示される。
【0061】
組成物
3つの本発明の実施例組成物を形成し、試験した。第1の本発明の実施例(IE1)の油は、約44mol%のHFPO及び約56mol%のTFEOであった。第2の本発明の実施例(IE2)の油は、約34mol%のHFPO及び約66mol%のTFEOであった。第3の本発明の実施例(IE3)の油は、約43mol%のHFPO及び約57mol%のTFEOであった。
【0062】
2つの比較例組成物を、本発明の実施例と比較するために形成し、試験した。第1の比較例(CE1)の油は、市販のKrytox(商標)VPF1531油(The Chemours Company,Wilmington,DE)、HFPOのホモポリマーであった。第2の比較例(CE2)の油は、市販のKrytox(商標)143AA油(The Chemours Company FC,LLC)、PFPE系油であった。
【0063】
増粘剤の添加前に、油を粘度、揮発性、及び分子量について試験した。
【0064】
各油について、79重量%の油及び21重量%のPTFE粉末を増粘剤として含有するグリースを、油をPTFE粉末とともに粉砕することによって作製した。PTFE粉末は、6.7μmの凝集粒径D50及び24.4m/gの表面積を有していた(The Chemours Company,Wilmington,DE)。グリースを、トルク、摩耗、針入度(penetration)、及び分離について試験した。
【0065】
試験方法
油動粘度の決定
動粘度は、40℃、100℃、及び-40℃の温度でGravity Flow U字形ガラス管キャピラリ粘度計(ASTM D445-97)を使用して測定し、センチストークス(centistoke、cSt)で報告した。粘度指数は、測定された粘度から計算した。得られた値を表1に示す。
【0066】
揮発性の決定
揮発性を決定するために、試験油を、60mL/分の流量で空気又は窒素雰囲気下で、標準的な10℃/分のランプ熱重量分析器(thermogravimetric analyzer、TGA)試験に供した。重量及び温度データを0.50秒/点の速度で収集した。揮発性は、5重量%及び50重量%の損失が観察される温度として報告される。得られた値を表1に示す。
【0067】
分子量の決定
19F NMRスペクトル(376.5MHz,Bruker Ascend 400)を、本発明の実施例のニート油について、又はFreon-113にCキャピラリで油を溶解することによって得た。
【0068】
数平均分子量(M)値は、末端基、CFO-(-56.0及び-58.1ppm、シングレット)、CFCFO-(CFCFO-、-89.3及び-89.5ppm、複数のシングレット)、及びCFCFCFO-(CFCFCFO-、-131.8及び-132.3ppm、シングレット)の数当たりの、全ての-CFCFO-(-90.0から-91.5ppm、いくつかのシングレット、及び-86.7から-88.7ppm、AB-システム)及び-CF(CF)CFO-(-145から-146.5ppm、マルチプレット)の積分からの繰り返し単位の重量及び数を考慮して、19F NMRによって決定した。
【0069】
比較例についての数平均分子量(M)値は、市販製品について報告された値であった。
【0070】
得られた値を表1に示す。
【0071】
トルクの決定
トルクを決定するために、グリースを、ASTM D1478(ASTM International,West Conshohocken,PA)の方法に従って低温ボールベアリングトルク試験に供した。-40℃での始動トルク及び回転トルクを表2に報告する。
【0072】
摩耗の決定
ASTM D2266の方法に従って、75℃、1200rpm、及び40kgf、60分間の条件で、各グリースの平均4球摩耗痕を決定した。表2は、各グリースについての2回の実行の平均を示す。
【0073】
針入度の決定
針入度を決定するために、グリースを、ASTM D1403の方法に従って、潤滑グリース試験の1/4スケールコーン針入度に供した。0、4、7、12、及び13日後に、得られたグリース針入度距離を表2に示す。
【0074】
分離の決定
油分離を決定するために、グリースを、ASTM D6184の方法に従って油分離試験に供した。この試験では、運転時の油損失をシミュレートして、高温で30時間、静的条件下でグリースからの油のブリードをワイヤコーンで測定した。表2は、99℃及び204℃の温度で測定した重量損失百分率を示す。
【0075】
結果
本発明の実施例及び比較例の油の特定の特性を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
IE1及びIE3の油は、より類似したHFPO:TFEO比を有していたが、IE1及びIE2の油は、より類似した分子量を有し、互いにより類似した粘度及び揮発性をもたらした。
【0078】
本発明の油は、40℃及び100℃で比較油と類似した粘度を有し、概して、比較油よりも揮発性が低かった。本発明の油は、-40℃で比較油の粘度の間の粘度を有していた。
【0079】
本発明の実施例及び比較例のグリースの特定の特性を表2に示す。
【0080】
【表2】
N/D=未決定
【0081】
表2は、本発明のグリースが良好な針入度及び低い油分離を有することを示す。
【0082】
本発明の実施例の1つの利点は、-40℃で測定される低温トルクの低減であり、これは、CE1のポリ-HFPO油系グリースによっては達成されない。また、本発明のグリースの油成分のTGAによって示される揮発性は、CE1などのグリースの同様のISOグレード(40℃粘度)ポリ-HFPO油成分の揮発性よりも実質的に低い。更に、本発明のグリースの油成分の粘度指数は、CE1などのグリースの同様のISOグレード(40℃粘度)ポリ-HFPO油成分の粘度指数よりも実質的に高い。これらの特性は、低温範囲及び高温範囲の両方でグリースの有用な温度範囲を拡大する。
【0083】
上記の全ての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更を行うことができ、その要素の代わりに同等物を使用することができることが理解されるであろう。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むことが意図される。
【国際調査報告】