(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ターフェニル化合物の安息香酸塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 207/09 20060101AFI20241024BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20241024BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07D207/09 CSP
A61K31/40
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524989
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 US2022047766
(87)【国際公開番号】W WO2023076302
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501170688
【氏名又は名称】アステックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダヴァール ニプン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】マンタティ スレシュ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC07
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC20
(57)【要約】
化合物(A)と称される、4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルの安息香酸塩の製造方法、および化合物(A)の使用方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化合物(A)の安息香酸塩の製造方法であって、
【化1】
(i)下記の化合物(A)を含む反応液から化合物(A)を2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me THF)に抽出し、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること;
【化2】
(ii)2-Me THFからイソプロピルアルコール(IPA)に溶媒交換を行い、化合物(A)のIPA溶液を得ること;および
(iii)化合物(A)の安息香酸塩を得るのに十分な条件下で、化合物(A)のIPA溶液に安息香酸を加えること;
を含む製造方法。
【請求項2】
化合物(A)の安息香酸塩を再結晶することをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
IPAの過酸化物含有量が10ppm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
反応混合物中の化合物(A)が、反応混合液中で下記の化合物(B)を塩酸と接触させることにより得られる、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【化3】
【請求項5】
反応混合物を約15℃から約50℃の温度で加熱する、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
反応混合物を約40℃から約50℃の温度で加熱する、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
反応混合物を約1時間から約8時間攪拌する、請求項4~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
(i-a)反応混合液を冷却し、水とメチルtertブチルエーテル(MTBE)を反応混合物に加えること;
(i-b)MTBEを含む有機層と水層を分離すること;
(i-c)工程(i-b)からの水層に2-Me THFを添加し、2-Me THFおよび水層を含む混合物にNaOH水溶液を添加すること;
(i-d)2-Me THFを含む有機層を分離すること;
(i-e)工程(i-d)の有機層を20%w/w NaCl溶液で洗浄すること;
(i-f)工程(i-e)の有機層を水で洗浄すること;および
(i-g)任意選択で工程(i-f)を1回または2回以上繰り返して、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること;
をさらに含む、請求項4~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(i-a)において、反応混合物を約20℃~約25℃の温度に冷却し、水およびMTBEを添加する前に、任意選択で約2時間~約24時間撹拌する、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(i-c)において、NaOH水溶液を、少なくともpH10のpHになるまで混合物に添加する、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
工程(i-g)の後、化合物(A)の2-Me THF溶液が実質的にNaOH水溶液を含まない、請求項8~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
工程(iii)が、反応混合物を約70℃~約80℃の温度に加熱すること、および反応混合物を約70℃~約80℃で約30分間~約60分間維持することをさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
反応混合物を約50℃~約55℃に冷却する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
化合物(A)の安息香酸塩の種結晶のIPA中スラリーを反応混合物に添加する、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
反応混合物を冷却および加熱サイクルに付し、次いで約16℃~約24℃の温度に冷却し、約16℃~約24℃の温度で約6時間撹拌する、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
以下の工程を含む、請求項15に記載の製造方法:
(iii-a)反応混合物を約200分~約250分かけて約16℃~約24℃の温度に冷却し、次いで約16℃~約24℃の温度で約30分間撹拌すること;
(iii-b)反応混合物を約280分~約320分かけて約62℃~約66℃に加熱すること;
(iii-c)工程(iii-a)および工程(iii-b)の冷却および加熱を1回または2回繰り返すこと;および
(iii-d)反応混合物を約280分~320分かけて約16℃~約24℃の温度に冷却し、約16℃~約24℃の温度で約6時間撹拌すること。
【請求項17】
化合物(A)の安息香酸塩を、エタノール、ブタノール、IPA、アセトニトリル、TBME、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン(MEK)、プロプリオニトリル、またはトルエンから再結晶する、前記請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
化合物(A)の安息香酸塩は、以下の化合物のいずれか、またはそれらの組み合わせの合計含有量が0.7%a/a以下である、前記請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【化4】
【請求項19】
下記の化合物(A)の安息香酸塩の製造方法であって、
【化5】
(i)化合物(B)と塩酸を接触させ、化合物(A)を得ること;
【化6】
【化7】
(ii)化合物(A)を2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me THF)に抽出し、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること;
(iii)2-Me THFからイソプロピルアルコール(IPA)への溶媒交換を行うこと;
(iv)化合物(A)の安息香酸塩を得るのに十分な条件下で、IPAを含む混合物に安息香酸を添加すること;および
(v)化合物(A)の安息香酸塩を再結晶すること;
を含む製造方法。
【請求項20】
前記請求項のいずれか1項に記載の製造方法により製造された化合物(A)の安息香酸塩。
【請求項21】
以下の化合物のいずれか、またはそれらの組み合わせの合計含有量が0.7%a/a以下である、化合物(A)の安息香酸塩。
【化8】
【請求項22】
請求項1~19のいずれか1項に記載の製造方法により製造された化合物(A)の安息香酸塩を含む医薬組成物。
【請求項23】
化合物(A)の安息香酸塩を含み、かつ、以下の化合物のいずれか、またはそれらの組み合わせの合計含有量が0.7%a/a以下である医薬組成物。
【化9】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月26日に出願された米国仮出願第63/271,975号の35 U.S.C.§119(e)に基づく優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、リジン特異的ヒストン脱メチラーゼ1A(LSD1)を調節する化合物の安息香酸塩固体の製造方法、その医薬組成物、およびその医療用途に関する。
【背景技術】
【0003】
化合物4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル(本明細書において、化合物(A)と称する)は、強力なLSD1阻害剤であり、抗腫瘍剤として、またはがんの予防および/又は治療剤として使用されている。化合物(A)および/またはその安息香酸塩の合成に通常採用されてきた多段階合成ルートにおいては、様々な合成段階由来の不純物を含む最終生成物が得られる。
【0004】
このようなLSD1阻害剤は、再現性よく、高純度に大量合成できることが望まれる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、溶媒交換により、乾燥固体中間体を取得するための溶媒除去工程を行わずに化合物(A)の安息香酸塩を製造する方法を提供する。この製造方法においては、最終生成物中の不純物が低減し、かつ、スケールアップが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示において、下記の化合物(A)の安息香酸塩の製造方法であって、
【化1】
(i)下記の化合物(A)を含む反応液から化合物(A)を2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me THF)に抽出し、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること;
【化2】
(ii)2-Me THFからイソプロピルアルコール(IPA)に溶媒交換を行い、化合物(A)のIPA溶液を得ること;および
(iii)化合物(A)の安息香酸塩を得るのに十分な条件下で、化合物(A)のIPA溶液に安息香酸を加えること;
を含む製造方法を提供する
【0007】
また、本開示において、発明の詳細な説明に記載されている、特定の不純物の含有量が0.5% a/a未満である化合物(A)の安息香酸塩も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本願発明の実施形態を、添付の図を参照して例示する。
【0009】
【
図1A】本明細書に記載の製造方法(process)によって得られた化合物(A)の安息香酸塩の光学顕微鏡像(偏光顕微鏡、PLM)である。
【0010】
【
図1B】本明細書に記載の製造方法(process)によって得られた化合物(A)の安息香酸塩の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において化合物(A)と称する4-[5-[(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボニル]-2-[2-フルオロ-4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)フェニル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルは、以下の式で表される。
【化3】
【0012】
化合物(A)はLSD1の阻害剤である。その合成および使用方法は、国際公開第WO2017/090756号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、国際公開第WO2021/095835号には、化合物(A)の安息香酸塩が記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0013】
先行技術の製造方法においては、化合物(A)を安息香酸塩に変換する前に、乾燥固体として単離されていた。一方、本明細書に記載の製造方法では、化合物(A)を遊離塩基固体として単離せずに溶媒交換を行う。本明細書に記載の製造方法においては、全体収率が20%であり、スケールアップが可能で再現性がある。
【0014】
先行技術に開示された化合物(A)の合成方法では、例えば下記のような不純物が、最終生成物に通常含まれる:
【化4】
【0015】
さらに、先行技術における製造方法では、最適な形態及び/又は所望のレベルの純度を満たす化合物(A)の安息香酸塩は得られなかった。一方で、本明細書に記載の製造方法では、不純物の発生を低減し、また、化合物(A)の安息香酸塩の最終生成物の形態をより良好に制御できる。
1.定義
【0016】
本明細書において使用される場合、以下の語句は、かかる語句が使用される文脈が他の意味を示す場合を除き、一般的に以下に規定する意味を意図している。
【0017】
用語「comprise」およびその変化形、例えば「comprises」や「comprising」は、非限定的で包括的な意味、つまり「含むが、それに限定されない」と解釈される。さらに、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが指示されない限り、複数の意味を包含する。従って、「the compound」への言及は、そのような化合物の複数を含み、「the assay」への言及は、当業者に公知の1つ以上のアッセイおよびその等価物への言及を含む。
【0018】
本明細書において、値又はパラメーターの「約」は、その値又はパラメーター自体の実施形態を含む。特定の実施形態において、用語「約」は指示量±10%を含む。他の実施形態において、用語「約」は指示量±5%を含む。特定の他の実施形態において、用語「約」は指示量±2.5%を含む。特定の他の実施形態において、用語「約」は指示量±1%を含む。また、「約X」という用語には「X」の記載が含まれる。
【0019】
本開示全体を通して、数値範囲を列挙することは、範囲を定義する値を包含する範囲内に入る各個別の値を個別に参照する略記法としての役割を果たすことを意図しており、各個別の値は、本明細書において個別に列挙されるものとして本明細書に組み込まれる。
【0020】
本明細書において、化合物(A)の安息香酸塩、およびその溶媒和物又は水和物を提供する。一実施形態において、化合物(A)の安息香酸塩、およびその溶媒和物又は水和物の形態について言及しているときは、組成物中の化合物(A)の安息香酸塩、およびその溶媒和物又は水和物の少なくとも95~99%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%)が当該形態であることを意味する。
【0021】
用語「溶媒和物」は、溶媒分子と溶質の分子またはイオンが結合して形成される複合体を指す。溶媒は、有機化合物、無機化合物、またはその両方の混合物であり得る。本明細書で使用する場合、「溶媒和物」という用語には、「水和物」(すなわち、水分子と溶質の分子またはイオンとの組み合わせによって形成される複合体)、半水和物、チャネル水和物などが含まれる。 溶媒の例としては、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、水などが挙げられるが、これらに限定されない。 一般に、溶媒和形態は非溶媒和形態と同等であり、本開示の範囲内に包含される。
【0022】
化合物(A)を含め、本明細書で示される式または構造は、化合物の同位体標識形態と同様に、非標識形態を表すことも意図される。任意の所与の原子について、同位体は、本質的にそれらの自然発生に従った比率で存在してもよく、または1つ以上の特定の原子は、当業者に公知の合成方法を使用して、1つ以上の同位体に関して増強されてもよい。したがって、水素は、例えば、1H、2H、3Hを含み;炭素は、例えば、11C、12C、13C、14Cを含み;酸素は、例えば、16O、17O、18Oを含み;窒素は、例えば、13N、14N、15Nを含み;硫黄としては、例えば32S、33S、34S、35S、36S、37S、38Sを含み;フッ素としては、例えば17F、18F、19Fを含み;クロロとしては、例えば35Cl、36Cl、37Cl、38Cl、39Clを含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「治療」、「処置」、「療法」などの用語は、疾患の1つ以上の症状または状態を予防、緩和、または改善し、および/または治療される対象を延命するのに有効な量の材料、例えば本明細書に記載の化合物(A)の1つ以上の固体、結晶または多形体を投与することを意味する。
【0024】
用語「投与」は、経口投与、座薬としての投与、局所接触、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、皮下投与、または徐放性デバイス(例えば、ミニ浸透圧ポンプ)の被験者への移植を指す。投与は、非経口および経粘膜(例えば、頬側、舌下、口蓋、歯肉、鼻腔、膣、直腸、または経皮)を含む任意の経路によるものである。非経口投与には、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、および頭蓋内が含まれる。他の送達様式としては、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用する場合、「調節」または「調節する」という用語は、生物学的活性、特にLSD1のような特定の生体分子に関連する生物学的活性を変化させる効果を指す。例えば、特定の生体分子のアゴニストまたはアンタゴニストは、その生体分子の活性を増加させる(例えば、アゴニスト、アクチベーター)か、または低下させる(例えば、アンタゴニスト、インヒビター)ことにより、その生体分子、例えばLSD1の活性を調節する。このような活性は、通常、例えばLSD1に対する阻害剤または活性化剤それぞれの化合物の阻害濃度(IC50)または効果濃度(EC50)で示される。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「LSD1が介在する疾患または状態」とは、LSD1およびその変異体の生物学的機能が、発症、経過および/又は疾患の症状や状態に影響を及ぼす疾患又は状態、および/又は、LSD1の調節により発症、経過および/又は疾患の症状や状態を変化させる疾患又は状態を指す。LSD1が介在する疾患または状態には、LSD1の調節により治療上の利益をもたらす疾患または状態が含まれ、例えば、本明細書に記載される化合物(A)の1つまたは複数の固体、結晶または多形体を含む化合物による治療が、疾患または状態に罹患しているかまたはその危険性がある被験者に治療上の利益をもたらすことが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「組成物」という用語は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物(任意の固体形態を含む)を含む、治療目的の対象への投与に適した医薬製剤を指す。組成物には、適切な担体または賦形剤などといった、化合物の形態を改良するために薬学的に許容される成分を少なくとも1つ含むことができる。
【0028】
本明細書で使用する場合、「被験体」または「患者」という用語は、本明細書に記載の化合物で処置される生体を指し、これには、ヒト、他の霊長類、スポーツ動物、ウシなどの商業用動物、ウマなどの農耕動物、またはイヌやネコなどの愛玩動物などの哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
「薬学的に許容される」という用語は、治療される疾患または状態およびそれぞれの投与経路を考慮して、指示された材料が、合理的な判断力を有する医療従事者に患者への投与を回避させるような特性を有していないことを示す。例えば、注射剤などでは、このような材料が本質的に無菌であることが一般的に要求される。
【0030】
本明細書において、「治療上有効な」または「有効量」という用語は、材料または材料の量が、疾患または病状の1つまたは複数の症状を予防、緩和、または改善するのに有効であること、および/または治療される対象の生存期間を延長するのに有効であることを示す。治療上有効な量は、化合物、疾患または病状およびその重篤度、ならびに治療される哺乳動物の年齢、体重などに応じて変化する。例えば、有効量とは、有益または所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回の投与で一度に提供することも、数回の投与で有効量を提供する分量で提供することもできる。何が有効量とみなされるかの正確な決定は、被験体の大きさ、年齢、傷害、および/または治療される疾患もしくは傷害、および傷害の発生または疾患の開始からの時間の長さを含む、各被験体に個別の要因に基づくことができる。当業者であれば、当技術分野で日常的に行われているこれらの考察に基づいて、所与の被験体に対する有効量を決定することができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、「実質的に純粋」とは、参照される材料(例えば、化合物(A)、または化合物(A)の安息香酸塩)において、材料の少なくとも99.9%が参照される多形であることを意味する。いくつかの実施形態において、「実質的に純粋」とは、参照される材料(例えば、化合物(A)、または化合物(A)の安息香酸塩)において、材料の少なくとも99.5%が参照される多形であることを意味する。いくつかの実施形態において、「実質的に純粋」とは、参照される材料(例えば、化合物(A)、または化合物(A)の安息香酸塩)において、材料の少なくとも99%が参照される多形であることを意味する。いくつかの実施形態において、「実質的に純粋」とは、参照される材料(例えば、化合物(A)、または化合物(A)の安息香酸塩)において、材料の少なくとも98%が参照される多形であることを意味する。いくつかの実施形態において、「実質的に純粋」とは、参照される材料(例えば、化合物(A)、または化合物(A)の安息香酸塩)において、材料の少なくとも97%が参照される多形であることを意味する。いくつかの実施形態において、「実質的に純粋」とは、参照される材料(例えば、化合物(A)、または化合物(A)の安息香酸塩)において、材料の少なくとも96%が参照される多形であることを意味する。いくつかの実施形態において、「実質的に純粋」とは、参照される材料(例えば、化合物(A)、または化合物(A)の安息香酸塩)において、材料の少なくとも95%が参照される多形であることを意味する。
【0032】
「NaOH水溶液を実質的に含まない」とは、本明細書に記載の工程(i-g)後の2-Me THF中の(A)の混合物(例えば、2-Me THFに溶解した(A)からなる混合物)において、混合物の全重量と比較して、混合物中のNaOHの重量が5%未満、1%未満または0.1%未満であることを意味する。
【0033】
モジュレーターである、またはモジュレーターである可能性のある化合物の使用、試験、またはスクリーニングにおいて、「接触」という用語は、化合物が特定の分子、複合体、細胞、組織、生物、または他の特定の物質に十分に近接するようにされ、化合物と他の特定の物質との間の潜在的な結合相互作用および/または化学反応が起こり得ることを意味する。
【0034】
また、本明細書で使用される略語の意味は以下の通りである。
【表1】
2.化合物(A)の安息香酸塩の製造方法
【0035】
いくつかの実施形態において、下記の化合物(A)の安息香酸塩の製造方法であって、
【化5】
(i)化合物(A)を含む反応液から化合物(A)を2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me THF)に抽出し、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること;および
(ii)2-Me THFからイソプロピルアルコール(IPA)に溶媒交換を行い、化合物(A)のIPA溶液を得ること;
を含む製造方法を提供する。
(ii)においてIPA中の過酸化物の含有量は30ppm以下、20ppm以下、または10ppm以下である
【0036】
一実施形態において、下記の化合物(A)の安息香酸塩の製造方法であって、
【化6】
(i)化合物(A)を含む反応液から化合物(A)を2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me THF)に抽出し、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること;
【化7】
(ii)2-Me THFからイソプロピルアルコール(IPA)に溶媒交換を行い、化合物(A)のIPA溶液を得ること;および
(iii)化合物(A)の安息香酸塩を得るのに十分な条件下で、化合物(A)のIPA溶液に安息香酸を加えること;
を含む製造方法を提供する。
【0037】
一実施形態において、上記方法は、化合物(A)の安息香酸塩の再結晶の工程をさらに含む。結晶化はIPAまたは任意の他の適切な溶媒中で実施することができる。任意に、再結晶を2回実施してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、IPAの過酸化物含量は、反応混合物中にIPAを導入する前の段階で10ppm以下である。 いくつかの実施形態において、IPAの過酸化物含量は、反応混合物中にIPAを導入する前の段階で20ppm以下である。いくつかの実施形態において、IPAの過酸化物含量は、反応混合物中にIPAを導入する前の段階で30ppm以下である。
【0039】
いくつかの実施形態において、反応混合物中の化合物(A)は、溶媒中で化合物(B)を塩酸と接触させることにより得られる。
【化8】
いくつかの実施形態において、溶媒はメタノールである。いくつかの実施形態において、溶媒は水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はTHFである。
【0040】
いくつかの実施形態において、化合物(B)を脱保護し化合物(A)を得るため反応混合物を15~50℃に加熱する。いくつかの実施形態において、化合物(B)を脱保護し化合物(A)を得るため反応混合物を40~50℃に加熱する。これらの実施形態において、化合物(B)を脱保護し化合物(A)を得るため反応混合物を1~8時間攪拌する。これらの実施形態において、化合物(B)を脱保護し化合物(A)を得るため反応混合物を3~6時間攪拌する。これらの実施形態において、化合物(B)を脱保護し化合物(A)を得るため反応混合物を約5時間攪拌する。
【0041】
いくつかの実施形態において、化合物(B)を脱保護し化合物(A)を得る工程は、以下を含む。
(i-a)上記の反応混合物を冷却し、水とメチルtertブチルエーテル(MTBE)を反応混合物に加えること;
(i-b)MTBEを含む有機層と水層を分離すること;
(i-c)工程(i-b)からの水性層に2-Me THFを添加し、2-Me THFおよび水性層を含む混合物にNaOH水溶液を添加すること;
(i-d)2-Me THFを含む有機層を分離すること;
(i-e)工程(i-d)の有機層を20%w/w NaCl溶液で洗浄すること;
(i-f)工程(i-e)の有機層を水で洗浄すること;および
(i-g)任意に工程(i-f)を1回または2回以上繰り返して、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること。
【0042】
いくつかの実施形態において、工程(i-a)で、反応混合物を20~25℃に冷却し、任意選択で、水およびMTBEを添加する前に、約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約6時間、または約1時間~約4時間撹拌する。いくつかの実施形態において、工程(i-a)で、反応混合物を20~25℃に冷却し、任意選択で、水およびMTBEを添加する前に、約2時間~約24時間撹拌する。いくつかの実施形態において、工程(i-a)で、反応混合物を20~25℃に冷却し、任意選択で、水およびMTBEを添加する前に、約1時間~約2時間撹拌する。いくつかの実施形態において、工程(i-a)で、反応混合物を20~25℃に冷却し、任意選択で、水およびMTBEを添加する前に、反応が完了するまでさらに一定時間撹拌する。
【0043】
いくつかの実施形態において、工程(i-c)で、NaOH水溶液を少なくともpH13のpHになるまで混合物に添加する。いくつかの実施形態においては、pHは少なくとも12である。いくつかの実施形態では、pHは少なくとも11である。いくつかの実施形態では、pHは少なくとも10である。いくつかの実施形態では、pHは少なくとも9である。工程(i-d)で層を分離したのち、有機層をNaCl溶液で洗浄し、層分離後、有機層を水で洗浄する。この工程(i-f)の水による有機層の洗浄により、工程(i-e)後の有機層からNaOHを除去する。NaOHを実質的に含まない、化合物(A)の2-Me THF溶液を含む有機層を得るために、1回または2回以上の水による洗浄が必要とされ得る。いくつかの実施形態において、工程(i-c)で混合物のpHが約7~約13、約8~約13、約9~約13、約10~約13、約11~約13、約12~約13となるように、NaOH水溶液を混合物に添加する。いくつかの実施形態において、NaOH水溶液添加時の混合物のpHは、化合物(A)の安息香酸塩を製造するためのプロセスの全体的な収率に影響を及ぼす。いくつかの実施形態において、残留NaOHが混合物の0.1%w/w未満となるようにNaOHを除去することは、化合物(A)の安息香酸塩を製造するためのプロセスの全体的な収率に影響を及ぼす。
【0044】
いくつかの実施形態において、化合物(A)を化合物(A)の安息香酸塩に変換する工程(iii)において、工程(iii)は、反応混合物を約70℃~約80℃の温度に加熱すること、および反応混合物を約70℃~約80℃で約30分間~約60分間維持することをさらに含む。いくつかの実施形態において、加熱した反応混合物を、約50℃~約55℃の温度に冷却する。いくつかの実施形態において、IPA中の化合物(A)の安息香酸塩の種結晶のスラリーを、冷却した反応混合物に添加する。いくつかの実施形態において、種結晶を、国際公開第WO2021/095835号に記載されている方法に従って製造する。
【0045】
いくつかの実施形態において、種結晶を添加した後、反応混合物を冷却および加熱サイクルに供し、次いで冷却し、冷却した温度で約4~10時間(例えば、6時間)撹拌する。いくつかの実施形態において、冷却および加熱サイクルは、以下の初期冷却サイクルからなる。
(iii-a)反応混合物を、約150分~約400分、約200分~約300分、または約200分~約250分かけて、約10℃~約30℃、約16℃~約24℃、または約20℃の温度に冷却し、次いで冷却した温度で約20分、約30分、約45分、又は約60分間撹拌する。
【0046】
いくつかの実施形態において、冷却および加熱サイクルは、以下のサイクルで構成される。
(iii-b)反応混合物を、約200分~約400分、約250分~約350分、又は約280分~約320分かけて、約60℃~約75℃、約65℃~約70℃、又は約62℃~約66℃の温度に加熱する。
【0047】
いくつかの実施形態において、冷却および加熱サイクルは、以下の追加サイクルを含む。
(iii-c)工程(iii-a)および(iii-b)の冷却および加熱を1回または2回繰り返す。
【0048】
いくつかの実施形態において、冷却および加熱サイクルは、以下の追加サイクルを含む。
(iii-d)反応混合物を、約150分~約400分、約250分~約350分、又は約280分~約320分かけて、約10℃~約30℃、約16℃~約24℃、又は約20℃の温度に冷却し、次いで、約10℃~約30℃、約16℃~約24℃、または約20℃の冷却温度で、約2時間~約10時間、約4時間~約8時間、又は約6時間撹拌する。
【0049】
いくつかの実施形態において、種結晶を添加した後、反応混合物を冷却および加熱サイクルに供し、次いで約16℃~約24℃の温度に冷却し、約16℃~約24℃の温度で約6時間撹拌する。いくつかの実施形態において、冷却および加熱サイクルは、以下の工程を含む。
(iii-a)反応混合物を約200分~約250分かけて約16℃~約24℃の温度に冷却し、次いで約16℃~約24℃の温度で約30分間撹拌する;
(iii-b)反応混合物を約280分~約320分かけて約62℃~約66℃に加熱する;
(iii-c)工程(iii-a)および(iii-b)の冷却および加熱を1回または2回繰り返す;および
(iii-d)反応混合物を約280分~320分かけて約16℃~約24℃の温度に冷却し、約16℃~約24℃の温度で約6時間撹拌する。
【0050】
本明細書に記載の製造方法のいくつかの実施形態において、化合物(A)の安息香酸塩を、エタノール、ブタノール、IPA、アセトニトリル、TBME、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン(MEK)、プロプリオニトリル、またはトルエンから再結晶させる。本明細書に記載の製造方法のいくつかの実施形態において、化合物(A)の安息香酸塩を、最初にIPAで結晶化し、次いでIPA、または他の溶媒(エタノール、ブタノール、アセトニトリル、TBME、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン(MEK)、プロプリオニトリル、またはトルエンを含むが、これに限定されない)でさらに再結晶を行う。
【0051】
本明細書に記載の製造方法のいくつかの実施形態において、再結晶した化合物(A)の安息香酸塩は、以下の化合物のいずれか、またはそれらの組み合わせの合計含有量が0.7%a/a以下、または0.5%a/a以下、または0.3%a/a以下である:
【化9】
【0052】
いくつかの実施形態において、下記の化合物(A)の安息香酸塩の製造方法であって、
【化10】
(i)化合物(B)を塩酸と接触させ、化合物(A)を得ること;
【化11】
【化12】
(ii)化合物(A)を2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me THF)に抽出し、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること;
(iii)2-Me THFからイソプロピルアルコール(IPA)への溶媒交換を行うこと;
(iv)化合物(A)の安息香酸塩を得るのに十分な条件下で、IPAを含む混合物に安息香酸を添加すること;および
(v)化合物(A)の安息香酸塩を再結晶すること;
を含む製造方法を提供する。
【0053】
本明細書では、本明細書に記載される任意の製造方法に従って製造される化合物(A)の安息香酸塩を提供する。
【0054】
本明細書では、以下の化合物のいずれか、またはそれらの組み合わせの合計含有量が0.7%a/a以下、または0.5%a/a以下、または0.3%a/a以下である化合物(A)の安息香酸塩を提供する:
【化13】
【0055】
いくつかの実施形態において、以下の工程を含む化合物(A)の安息香酸塩の製造方法を提供する:
化合物(B)を得るのに十分な条件下で、化合物(C)又はその塩を、化合物(D)又はその塩と接触させること。
【化14】
【化15】
【化16】
【0056】
いくつかの実施形態において、以下の工程を含む化合物(C)又はその塩の製造方法を提供する:
【化17】
(i)化合物(E)を得るのに十分な条件下で、化合物(G)又はその塩を、化合物(F)又はその塩と接触させること;および
【化18】
【化19】
【化20】
(ii)化合物(E)またはその塩の脱保護を行い、化合物(C)又はその塩を得ること。
【0057】
いくつかの実施形態において、以下の工程を含む化合物(G)又はその塩の製造方法を提供する:
【化21】
(i)化合物(J)を得るのに十分な条件下で、化合物(L)又はその塩を、化合物(K)又はその塩と接触させること;
【化22】
【化23】
【化24】
(ii)化合物(J)またはその塩の保護を行い、化合物(H)又はその塩を得ること;および
【化25】
(iii)化合物(H)またはその塩のホウ素化を行い、化合物(G)またはその塩を得ること。
【0058】
いくつかの実施形態において、スキーム1に従い化合物(A)を製造する方法を提供する。化合物(A)は本明細書に記載の方法に従って、化合物(A)の安息香酸塩に変換することができる。
スキーム1
【化26】
【0059】
上記スキーム1における化合物(C)および他の中間体は、米国特許第10,723,742号に記載されている方法に従って製造することができ、かかる方法は参照により本明細書に組み込まれる。化合物(C)と化合物(D)をカップリングし、化合物(B)を得る。化合物(B)を脱保護して化合物(A)を得て、本明細書に記載の方法を用いて化合物(A)を化合物(A)の安息香酸塩に変換する。
3.医薬組成物、キットおよび投与方法
【0060】
本明細書に記載の化合物(A)またはその安息香酸塩を、医薬組成物中に含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される任意の製造方法に従って製造される化合物(A)の安息香酸塩を含む医薬組成物を提供する。
【0061】
いくつかの実施形態において、化合物(A)の安息香酸塩を含み、かつ、以下の化合物のいずれか、またはそれらの組み合わせの合計含有量が0.7%a/a以下、または0.5%a/a以下、または0.3%a/a以下である医薬組成物を提供する。
【化27】
【0062】
いくつかの実施形態において、化合物(A)の安息香酸塩を含み、不純物の総量が4.0%a/a以下である医薬組成物を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物(A)またはその安息香酸塩と、担体、アジュバントおよび賦形剤などの1つまたは複数の薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物を提供する。適切な薬学的に許容されるビヒクルとしては、例えば、不活性固体希釈剤および充填剤、滅菌水溶液および種々の有機溶媒を含む希釈剤、浸透促進剤、可溶化剤およびアジュバントを挙げることができる。このような組成物は、製薬技術分野で周知の方法で製造される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Co., Philadelphia, Pa.第17版(1985年);およびModern Pharmaceutics,Marcel Dekker,Inc.第3版 (G.S. Banker & C.T. Rhodes, Eds.)に記載されている。医薬組成物は、単独で、または他の治療剤と組み合わせて投与することができる。
【0064】
いくつかの実施形態は、治療有効量の化合物(A)またはその安息香酸塩を含む医薬組成物に関する。
【0065】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の化合物(A)またはその安息香酸塩と、1つ以上の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。一実施形態において、医薬組成物は化合物(A)を含み、化合物(A)の少なくとも95%は本明細書記載の化合物(A)の安息香酸塩である。一実施形態において、医薬組成物は化合物(A)を含み、化合物(A)の少なくとも96%は本明細書記載の化合物(A)の安息香酸塩である。一実施形態において、医薬組成物は化合物(A)を含み、化合物(A)の少なくとも97%は本明細書記載の化合物(A)の安息香酸塩である。一実施形態において、医薬組成物は化合物(A)を含み、化合物(A)の少なくとも98%は本明細書記載の化合物(A)の安息香酸塩である。一実施形態において、医薬組成物は化合物(A)を含み、化合物(A)の少なくとも99%は本明細書記載の化合物(A)の安息香酸塩である。一実施形態において、医薬組成物は化合物(A)を含み、化合物(A)の少なくとも99.5%は本明細書記載の化合物(A)の安息香酸塩である。一実施形態において、医薬組成物は化合物(A)を含み、化合物(A)の少なくとも99.9%は本明細書記載の化合物(A)の安息香酸塩である。
【0066】
本明細書記載の化合物(A)の安息香酸塩は、粉砕した後、または粉砕することなく、種々の形態の医薬組成物、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、ドライシロップ剤等の経口剤、坐剤、吸入剤、点鼻剤、軟膏剤、貼付剤、エアゾール剤等に加工することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、組成物は、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、錯化剤、可溶化剤、および界面活性剤などの薬学的に許容される担体または賦形剤を含み、これらは、特定の経路による化合物(A)の投与を容易にするために選択され得る。担体の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、グルコース、スクロースなどの各種糖類、デンプンの一種、セルロース誘導体、ゼラチン、脂質、リポソーム、ナノ粒子などが挙げられる。担体にはまた、例えば注射用水(WFI)の滅菌溶液、生理食塩水、ブドウ糖溶液、ハンク溶液、リンゲル液、植物油、鉱物油、動物油、ポリエチレングリコール、流動パラフィンなどを含む、溶媒としてまたは懸濁液として生理学的に適合性のある液体も含まれる。賦形剤としては、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、シリカゲル、タルク、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、マクロクリスタリンセルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ステアリン酸ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、シロイド、ステアロウェットC、酸化マグネシウム、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素添加植物油、水素添加綿実油、ヒマシ油ミネラルオイル、ポリエチレングリコール(例えばPEG 4000-8000)、ポリオキシエチレングリコール、ポロキサマー、ポビドン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸、カゼイン、メタクリル酸ジビニルベンゼン共重合体、ドキュセートナトリウム、シクロデキストリン(例えば、2-ヒドロキシプロピル-δ-シクロデキストリン)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、セトリミド、TPGS(コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000)、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールのジ脂肪酸エステル、またはポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステルTween(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸、ステアリン酸またはパルミチン酸などの脂肪酸からのソルビタン脂肪酸エステル)、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルトース、乳糖、乳糖一水和物または乳糖噴霧乾燥物、スクロース、フルクトース、リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、デキストレート、デキストラン、デキストロース、酢酸セルロース、マルトデキストリン、シメチコン、ポリデキストロース、キトサン、ゼラチン、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。
【0068】
医薬製剤は、単位用量あたり所定量の活性成分を含有する単位用量形態で提示され得る。このような単位は、治療される状態、投与経路、および患者の年齢、体重および状態に応じて、例えば、0.5mg~1g、好ましくは1mg~700mg、より好ましくは5mg~100mgの本開示の化合物(遊離酸塩、溶媒和物(水和物を含む)または塩として、任意の形態)を含有し得る。好ましい単位用量製剤は、活性成分の1日用量、週用量、月用量、副用量(sub-dose)またはその適切な分画を含むものである。さらに、このような医薬製剤は、薬学技術において周知の方法のいずれかによって製造することができる。
【0069】
化合物(A)またはその安息香酸塩は、通常、医薬組成物の形態で投与される。従って、本明細書に記載の化合物(A)またはその安息香酸塩と、担体、アジュバントおよび賦形剤から選択される1種以上の薬学的に許容されるビヒクルとを含有する医薬組成物を提供する。適切な薬学的に許容されるビヒクルとしては、例えば、不活性固体希釈剤および充填剤、滅菌水溶液および種々の有機溶媒を含む希釈剤、浸透促進剤、可溶化剤およびアジュバントが挙げられる。このような組成物は、製薬技術分野で周知の方法で製造される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Co., Philadelphia, Pa.第17版(1985年);およびModern Pharmaceutics,Marcel Dekker,Inc.第3版 (G.S. Banker & C.T. Rhodes, Eds.)を参照のこと。
【0070】
医薬組成物は、単回投与でも複数回投与でもよい。医薬組成物は、例えば、直腸経路、頬側経路、鼻腔内経路および経皮経路を含む種々の方法によって投与することができる。特定の実施形態において、医薬組成物は、動脈内注射、静脈内注射、腹腔内注射、非経口投与、筋肉内注射、皮下注射、経口投与、局所投与、または吸入剤として投与され得る。
【0071】
一つの投与様式として、例えば、注射による非経口投与が挙げられる。注射投与のための医薬組成物の形態としては、例えば、ゴマ油、コーン油、綿実油、またはピーナッツ油との水性または油性の懸濁液、または乳濁液、ならびにエリキシル、マンニトール、デキストロース、または滅菌水溶液、および同様の医薬ビヒクルが挙げられる。
【0072】
注射剤を製造する場合には、化合物(A)の結晶体に、必要に応じてpH調整剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤などを添加し、得られた混合物を常法に従って皮下注射剤、筋肉注射剤、静脈注射剤などに製剤化することができる。
【0073】
使用可能なpH調整剤および緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。使用可能な安定剤の例としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。使用可能な局所麻酔薬の例としては、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。使用可能な等張化剤の例としては、塩化ナトリウム、グルコース、D-マンニトール、グリセリン等が挙げられる。
【0074】
他の投与様式として、経口投与が挙げられる。投与は、例えば、カプセルまたは腸溶性コーティング錠剤を介して行うことができる。本明細書に記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容される塩、同位体濃縮アナログ、立体異性体、立体異性体の混合物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を製造する場合、活性成分は通常、賦形剤によって希釈され、および/またはカプセル、小袋、紙もしくは他の容器の形態であり得るそのような担体内に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、それは活性成分のためのビヒクル、担体または媒体として機能する固体、半固体または液体材料の形態であり得る。したがって、組成物は、錠剤、丸薬、粉末、トローチ、サシェ、カシェ、エリキシル、懸濁液、乳剤、溶液、シロップ、エアロゾル(固体または液体媒体中)、軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、無菌注射液、および無菌包装粉末の形態とすることができる。
【0075】
経口固形製剤は以下のようにして製造することができる。化合物(A)の結晶形に、賦形剤を結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤等とともに任意に添加した後、得られた混合物を当業者に公知の方法により錠剤、被覆錠、顆粒剤、散剤、カプセル剤等に製剤化する。
【0076】
賦形剤の例としては、乳糖、ショ糖、D-マンニトール、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、無水ケイ酸などが挙げられる。結合剤としては、水、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、単シロップ、液状ブドウ糖、液状α-デンプン、液状ゼラチン、D-マンニトール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤の例としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、粉末寒天、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。滑沢剤の例としては、精製タルク、ステアリン酸塩ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。着色剤の例としては、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。矯味矯臭剤の例としては、スクロース、ビターオレンジピール、クエン酸、L-酒石酸などが挙げられる。製剤はさらに、湿潤剤;乳化剤および懸濁剤;メチルヒドロキシ安息香酸エステルおよびプロピルヒドロキシ安息香酸エステルなどの保存剤を含むことができる。
【0077】
経口投与用液剤を製造する場合には、本明細書に記載の化合物(A)またはその安息香酸塩に、矯味剤、緩衝剤、安定化剤、香料等を添加し、得られた混合物を常法に従って経口液剤、シロップ剤、エリキシル剤等に製剤化することができる。
【0078】
この場合、上記と同様の矯味矯臭剤を使用することができる。緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム等が挙げられ、安定化剤の例としては、トラガカント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。必要に応じて、これらの経口投与用製剤は、例えば効果の持続性などを目的として、腸溶性コーティング剤などで当該技術分野で公知の方法に従ってコーティングすることができる。このようなコーティング剤の例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、Tween80(登録商標)などが挙げられる。
【0079】
本明細書に記載の化合物(A)またはその安息香酸塩を含む組成物は、当該技術分野で公知の手順を採用することにより、対象への投与後に活性成分の迅速放出、持続放出または遅延放出ができるように製剤化することができる。経口投与のための制御放出薬物送達システム(制御放出薬物送達システム系とも言う)には、浸透圧ポンプシステムおよびポリマー被覆リザーバーまたは薬物-ポリマーマトリックス製剤を含む溶解システムが含まれる。本明細書に開示される方法において使用される別の製剤としては、経皮送達デバイス(「パッチ」)が挙げられる。このような経皮パッチは、本明細書に記載の化合物を連続的または非連続的に量を制御しながら注入するために使用することができる。薬剤送達のための経皮パッチの構造および使用は、当該技術分野において周知である。このようなパッチは、薬剤の連続的、拍動的、またはオンデマンド送達のために構築され得る。
【0080】
錠剤のような固形組成物を製造するために、主要な活性成分を医薬賦形剤と混合して、本明細書に記載の化合物(A)またはその安息香酸塩の均一混合物を含む固形製剤前組成物を形成することができる。これらの製剤前組成物を均質と称する場合、活性成分は組成物全体に均一に分散され、組成物を錠剤、丸薬およびカプセルのような均等に有効な単位剤形に容易に小分けすることができる。
【0081】
本明細書に記載の化合物(A)またはその安息香酸塩の錠剤または丸薬は、作用時間を長くするため、または胃の酸条件から保護するために、コーティングまたは他の方法で配合することができる。例えば、錠剤または丸薬は、内側投与成分および外側投与成分を含むことができ、後者は前者を覆う包囲体の形態である。この2つの成分は、胃での崩壊を抑制し、内側成分がそのまま十二指腸を通過するか、または放出を遅延させる役割を果たす腸溶層によって分離することができる。このような腸溶層またはコーティングには、様々な材料を使用することができ、このような材料には、多くの重合体酸、および重合体酸とシェラック、セチルアルコール、酢酸セルロースなどの材料との混合物が含まれる。
【0082】
別の態様において、本開示は、化合物(A)又はその安息香酸塩、および本明細書に記載の形態、または本明細書に記載の医薬組成物を含むキット又は容器を提供する。いくつかの実施形態において、化合物又は組成物は、例えばバイアル、ボトル、フラスコ内に包装され、さらに例えば、箱、封筒、または袋内に包装され得る。化合物または組成物の、哺乳動物、例えば、ヒトへの投与は、米国食品医薬品局または類似の規制機関により承認される。化合物又は組成物は、ブロモドメインタンパク質を介する疾患や状態のために、哺乳動物、例えば、ヒトへの投与が承認されている。本明細書に記載のキット又は容器は、化合物または組成物が、ブロモドメインタンパク質を介する疾患または状態のために、哺乳動物、例えばヒトへの投与に適しているかまたは承認されていることを示す、使用説明書および/または他の表示を含むことができる。また、化合物又は組成物は、単位用量または単回用量の形態、例えば単回用量の錠剤、カプセルなどとして包装することができる。
【0083】
種々の化合物の投与量は、化合物の活性(in vitro、例えば標的に対する化合物(A)のC50、または動物有効性モデルにおけるin vivo活性)、動物モデルにおける薬物動態学的結果(例えば生物学的半減期または生物学的利用能)、被験体の年齢、体格、および体重、ならびに被験体に関連する障害などの因子を考慮して、標準的な手順により決定することができる。これらの因子および他の因子の重要性は、当業者によく知られている。一般に、投与量は、約0.01~50mg/kgの範囲であり、また、治療される対象の約0.1~20mg/kgの範囲である。複数回投与してもよい。
【0084】
このような各用量単位形態に配合される化合物(A)またはその安息香酸塩の量は、化合物(A)またはその安息香酸塩が投与される患者の状態、剤形などによって異なる。一般に、経口剤、注射剤および坐剤の場合、本開示の化合物の配合量は、1剤形あたり、それぞれ、0.05~100mg、0.01~500mgおよび1~100mgであることが好ましい。
【0085】
このような剤形における医薬の1日投与量は、患者の状態、体重、年齢、性別などに依存し、一般化できない。例えば、成人(体重:50~70kg)に対する本明細書に記載の化合物(A)の塩の1日投与量は、0.05~5000mg、または0.1~1000mgとすることができ;そして、1日に1回、または2~4回に分割して投与することができ、また他の任意の適切な投与スケジュールで投与することができる。
4.投薬
【0086】
任意の特定の被験体に対する、本明細書に記載の化合物(A)またはその安息香酸塩の特定の投薬量は、特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、および排泄速度、薬剤の組み合わせ、ならびに治療を受ける被験体における特定の疾患の重症度を含む種々の要因に依存する。例えば、投与量は、被験体の体重1kgあたりの本明細書に記載の化合物のミリグラム数(mg/kg)として表すことができる。約0.1~150mg/kgの投与量が適切であり得る。いくつかの実施形態では、約0.1~100mg/kgの投与量が適切であり得る。他の実施形態では、0.5~60mg/kgの投与量が適切であり得る。いくつかの実施形態では、1日あたり体重1kgあたり約0.0001~約100mg、体重1kgあたり化合物約0.001~約50mg、または体重1kgあたり化合物約0.01~約10mgの投与量が適切であり得る。被験者の体重に応じて正規化することは、小児と成人ヒトの両方に薬剤を使用する場合、またはイヌのような非ヒト被験者の有効投与量をヒト被験者に適した投与量に変換する場合のように、体格が大きく異なる被験者間で投与量を調整する場合に特に有用である。
5.適応疾患とLSD1の調節
【0087】
本明細書において、哺乳動物におけるリジン特異的ヒストン脱メチラーゼ1A(LSD-1)関連の疾患または状態を処置するための方法であって、本明細書に記載の化合物(A)もしくはその安息香酸塩、または本明細書に記載の組成物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0088】
いくつかの実施形態において、LSD-1関連疾患または状態はがんである。
【0089】
いくつかの実施形態において、がんは悪性腫瘍である。
【0090】
いくつかの実施形態において、がんは、頭頸部がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、胆道がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、腎がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣腫瘍、骨肉腫、軟部肉腫、白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄増殖性疾患、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、皮膚がん、脳腫瘍、または中皮腫である。
【0091】
いくつかの実施形態において、がんは、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、白血病、または骨髄異形成症候群である。いくつかの実施形態において、がんは、再発または難治性(r/r)AMLを含む急性骨髄性白血病(AML)である。
【0092】
特定の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される疾患または状態の処置のための医薬の製造における、本明細書に記載される化合物(A)もしくはその安息香酸塩、または本明細書に記載されるその医薬組成物のいずれかの使用を提供する。 他の実施形態において、本開示は、本明細書に記載の疾患または状態の処置における使用のための、本明細書に記載の化合物(A)もしくはその安息香酸塩、または本明細書に記載のその医薬組成物のいずれかを提供する。
【実施例】
【0093】
本開示は、以下の実施例を参照することによってさらに理解されるが、これらの実施例は、本開示を純粋に例示することを意図している。本開示は、例示された実施形態によって範囲が限定されるものではなく、これらの実施形態は、本開示の単一の態様の例示としてのみ意図される。機能的に同等な任意の方法は、本開示の範囲内である。 本明細書に記載されたものに加えて、本開示の様々な改変が、前述の説明および添付の図から当業者に明らかになるであろう。このような改変は、特許請求の範囲に含まれる。
【0094】
出発物質は、一般に既知の化合物であってもよいし、既知の手順またはその明らかな改変によって製造することもできる。例えば、出発物質の多くは、Sigma Aldrich(St. Louis,ミズーリ州、米国)、Bachem(Torrance,カリフォルニア州、米国)、Emka-Chemce(St. Louis,ミズーリ州、米国)などの市販の供給業者から入手可能である。その他、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,1-15巻 (John Wiley, and Sons, 2016), Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,1-5巻,and Supplementals (Elsevier Science Publishers, 2001), Organic Reactions,1-40巻 (John Wiley, and Sons,2019), March‘s Advanced Organic Chemistry,(John Wiley,and Sons,第8版,2019), Larock’s Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc.,1989)などの標準参考テキストに記載の手順やその改変手順により製造することができる。
【0095】
さらに、当業者に明らかなように、特定の官能基が望ましくない反応をするのを防ぐために、従来の保護基が必要な場合がある。種々の官能基に対して適切な保護基、ならびに特定の官能基を保護および脱保護するための適切な条件は、当該技術分野において周知である。例えば、多数の保護基が、T. W. GreeneおよびP. G. M. Wuts著のProtecting Groups in Organic Synthesis、第3版、 Wiley, New York, 1999およびそこで引用された文献に記載されている。
実施例1:化合物(A)の安息香酸塩の製造
【0096】
メカニカルスターラーを備えたジャケット付き反応器に、化合物(B)とメタノール4.5vを加えた。混合物を、化合物(B)を溶解するために必要であれば約45℃まで加熱し、その後約35℃まで冷却した。補助容器に、1.2vの水と1.2vの35%w/w HClを混合し、HCl 6M溶液を製造した。反応温度を約35℃に保ちながら、製造したHCl 6M溶液1.3volを反応器に添加した。
【0097】
反応混合物を約45℃(約40℃~約50℃)に加熱し、約45℃(約40℃~約50℃)で約4~5時間撹拌したのち、反応が完了し化合物(A)が生成したかどうかをHPLCで確認した。HPLCと並行して、反応混合物を約15℃~約25℃に冷却した。インプロセスコントロールにおいて、出発物質の99%以上を消費したことが示された場合、反応を以下のようにクエンチした。
【0098】
10vの水を加えながら、反応混合物を約20℃から30℃に保ち、温度が30℃以下になるよう注意深く維持した(熱の放出が観察された)。反応混合物を約15℃から約25℃に冷却した。
【0099】
その後、温度を30℃以下に維持しながら、5vのMTBEを反応器に加えた。反応混合物を約15℃~約25℃に冷却し、温度を約15℃~約25℃(例えば約20℃)に維持しながら約15分間撹拌した。温度を20℃から25℃に維持しながら、層を少なくとも15分間(例えば、30分間)静置した。そして、水層を容器に移した。
【0100】
温度を30℃未満に維持しながら、さらに5vのMTBEを容器に添加した。反応混合物を約15℃~約25℃に冷却し、温度を約15℃~約25℃(例えば約20℃)に維持しながら約15分間撹拌した。温度を20℃から25℃に維持しながら、層を少なくとも15分間(例えば、30分間)静置した。
【0101】
分離した水層を容器に移した。次に、10vの2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me THF)を容器に加えた。補助容器に、0.6pのNaOHと2.9vの水を溶解した5M NaOH溶液を入れた。容器内の水層のpHは、温度≦35℃を保ちながら、先に製造した5M NaOH溶液を用いてpH≧13.0に調整した。
【0102】
混合物を約15℃~約25℃(例えば、20℃)の温度で少なくとも10分間、最大速度で撹拌した。攪拌を止め、相を約20℃から25℃の温度で分離させた。
【0103】
有機層は容器に保持した。補助容器に、1.25pのNaClを5vの水に溶解した20%w/w NaCl溶液を加えた。有機層を含む主容器に5.0vの20%w/w NaCl溶液を加え、約15℃~約25℃(例えば20℃)の温度で少なくとも10分間撹拌した。撹拌を止め、層を分離させた。有機層を容器に保持し、5vの水で少なくとも3回洗浄した。必要に応じて、2-Me THFおよび化合物(A)を含む有機層を2~8℃で保存した。
【0104】
過酸化物ストリップを用いて、使用するIPA(Ravago Chemicals社から購入)の過酸化物含有量が10ppm以下であることを確認した。有機層をジャケット付き反応器に移し、約30℃から45℃(例えば35℃)に加熱した後、真空下で残容量が4~5vになるまで濃縮した。9vのIPAを、約30℃~45℃(例えば35℃)で濃縮溶液に加え、混合物を真空下で残容量が4~5vになるまで濃縮した。9vのIPAを、約30℃~45℃(例えば35℃)で濃縮溶液に加え、混合物を真空下で残容量が4~5vになるまで濃縮した。IPAの添加と濃縮は、GC分析でIPAに対して2-Me THF≦1% w/w、すなわち2-Me THFからIPAへの溶媒交換が達成されるまで繰り返した。
【0105】
補助容器に、約20±5℃で安息香酸0.28pをIPA 12vに溶解した。安息香酸の添加量は、化合物(A)(遊離塩基)のw/wアッセイに基づいて計算した。安息香酸溶液を主反応器に加え、さらに6vのIPAを主反応器に添加した。混合物を約30分で約70℃~約80℃(例えば、76℃)の温度に加熱し、加熱を15~30分間さらに継続した。混合物を約30~約60分かけて約50℃~約55℃(例えば、約52℃)まで冷却した。約50℃から約55℃で、0.05v IPA中の種結晶0.005pを添加し、混合物を約10分から約15分間撹拌した。種結晶は、国際公開第2021/095835号に記載されている手順に従って製造した。次いで、混合物を約200~約250分かけて約20℃~約25℃に冷却し、次いで約20℃~約25℃で約20~約40分間撹拌した。その後、混合物を約280~約320分かけて約62℃~約66℃に加熱し、約280~約320分かけて約20℃~約25℃に冷却し、加熱冷却サイクルを繰り返した。その後、混合物を約20℃から約25℃の温度で約6時間さらに撹拌した。
【0106】
アニーリング(熱冷却サイクル)により、プロセス全体の収率が向上した。このアニーリングにより、スケールアップ時のクラストの問題が解消された。このプロセスを用いて、
図1Aおよび
図1Bに示すように、許容可能な粒子サイズおよび形態を有する化合物(A)の安息香酸塩が得られた。
【0107】
このスラリーを濾過し、フィルターケーキを40℃の真空中で約16時間乾燥させた。HPLCでサンプルの分析を行い、以下の不純物が0.5%a/a以下であることを確認した。
【化28】
【0108】
また、サンプルを分析し、RRT1.08の不純物が0.3% a/a以下であるかどうか、RRT1.15の以下の構造を持つ不純物が0.7% a/a以下であるかどうかを確認した。
【化29】
【0109】
また、以下の各不純物が0.3% a/a以下であるかについてもHPLCで確認した。
【化30】
【化31】
【0110】
その他の不純物が0.3% a/a以下であること、および不純物の合計が4.0% a/a以下であることをHPLCで確認した。本明細書において、a/aはHPLCにおけるピーク面積を意味する。
【0111】
任意選択で、フィルターケーキから適当な溶媒(例えば、IPA)で2回目の再結晶を行い、最終製品を得てもよい。
【0112】
国際公開第2021/095835号に記載されているように、化合物(A)の安息香酸塩は固体安定性に優れ、試験条件下で4週間純度を維持する。
実施例2:化合物(C)から化合物(B)の製造
【0113】
ジメチルアセトアミド(6.5容量)を適切な大きさの反応容器に投入し、続いて化合物(C)を投入した。温度を0℃から5℃に調整した後、0.6部の化合物(D)と0.53部のトリエチルアミンを加えた。1.3部のHATUを少しずつ加え、HPLC分析により反応が完了したと判断されるまで反応温度を約5℃に維持した。反応が完了したら、反応温度を約25℃以下に維持しながら、酢酸イソプロピル(10容量)を反応混合物に投入し、続いて水を投入した。水層を分離し、酢酸イソプロピル(8容量)で抽出した。合わせた有機層を水(10容量)、1N塩酸(10容量)、水(10容量)、10%塩化ナトリウム水溶液(5容量)、最後に水(10容量)で順次洗浄した。酢酸イソプロピル溶液を、AKS-7チャコールパッドに通して色が除去されるまで繰り返し循環させた。溶媒を留去して約5相対容量の残留容量にし、MTBE(35容量)を加えた。混合物の温度を約45℃に調整し、次いで高速攪拌下で約32℃に冷却した。この時点で固体が観察された。固体が観察されない場合は、さらなる冷却または化合物(B)の種晶のスラリーの添加により結晶化を開始することができる。化合物(B)の種晶は、米国特許第10,723,742号に記載されている手順を用いて製造することができる。固形物が観察されたら、高速撹拌を約4~5時間維持した。その後、懸濁液を約10℃まで冷却し、ろ過した。フィルターケーキをMTBE(2×5容量)で洗浄し、約40℃で乾燥して化合物(B)を得た。
生物学的実施例
実施例A
【0114】
国際公開第2021/095835号に記載されているように、ラットを用いた薬物動態(PK)試験において、3種類の薬物、すなわち化合物(A)の遊離体、化合物(A)の安息香酸塩および化合物(A)のソルビン酸塩のそれぞれのAUC、Cmax(μM)およびTmax(hr)を算出した。各薬剤は32mg/5mL/kgの用量で動物に投与した。化合物(A)の遊離体、化合物(A)の安息香酸塩および化合物(A)のソルビン酸塩のAUCは、16.04μM hr、16.13μM hrおよび11.64μM hrであった。3つの試験化合物のCmax は2.56μM、2.68μM、2.03μMであった。3つの試験化合物のTmax は4.0時間、2.7時間、2.3時間であった。したがって、化合物(A)の安息香酸塩で優れた薬物吸収/曝露が達成された。
実施例B
【0115】
再発又は難治性(r/r)の急性骨髄性白血病(AML)を対象に、化合物(A)の安息香酸塩の単剤及びオールトランス型レチノイン酸(ATRA)との併用による安全性、薬物動態及び予備的活性を検討する第1相試験を実施する。
【0116】
第1部では、化合物(A)の安息香酸塩を単剤で28日間サイクルの特定の日に1日1回(QD)投与する。第2部では、1日2回(BID)ATRAと併用しながら、化合物(A)の安息香酸塩を28日サイクルの特定日にQD投与する。投与方法は経口カプセルである。
【0117】
登録基準には、少なくとも12週間の余命が予測され、1フルサイクル(4週間)の治療を完了できる安定した状態であること;世界保健機関(WHO)2016年基準によりAMLであることが組織学的に確認され、他の利用可能なすべての従来療法が無効であること;登録時に末梢血または骨髄芽球数が5%以上であること;標準的導入化学療法(アントラサイクリンとシタラビンの併用療法を含むがこれに限定されない)に抵抗性であるか、アントラサイクリンとシタラビンの併用療法または幹細胞移植(SCT)後に再発したか、またはメチル化阻害剤を単独または併用療法で用いる一次治療に抵抗性であるか、または当該治療後に再発したことがある病態が含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
アウトカム評価項目には、治療に起因する有害事象、完全寛解(CR)、不完全血球数回復を伴う完全寛解(CRi)、部分寛解(PR)、部分的血液学的回復を伴う完全寛解(CRh)の奏効率、全生存期間、その他の適切な評価項目が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
本明細書において引用されるすべての特許および他の参考文献は、本開示が関連する当業者の技術レベルを示すものであり、各参考文献が個別に参照によりその全体が組み込まれる場合と同じ程度に、表および図を含め、その全体が参照により組み込まれる。
【0120】
当業者であれば、本開示が、言及された目的および利点、ならびにそれらに固有のものを得るために十分に適合していることを容易に理解できる。好ましい実施形態として本明細書に記載される方法、変形、および組成物は、例示的なものであり、本開示の範囲に対する制限として意図されるものではない。当業者において、本明細書からの変更や他の用途が生じうるが、それらは本開示の概念に包含され、特許請求の範囲によって定義される。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化合物(A)の安息香酸塩の製造方法であって、
【化1】
(i)下記の化合物(A)を含む反応液から化合物(A)を2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me THF)に抽出し、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること;
【化2】
(ii)2-Me THFからイソプロピルアルコール(IPA)に溶媒交換を行い、化合物(A)のIPA溶液を得ること;および
(iii)化合物(A)の安息香酸塩を得るのに十分な条件下で、化合物(A)のIPA溶液に安息香酸を加えること;
を含む製造方法。
【請求項2】
化合物(A)の安息香酸塩を再結晶することをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
IPAの過酸化物含有量が10ppm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
反応混合物中の化合物(A)が、反応混合液中で下記の化合物(B)を塩酸と接触させることにより得られる、請求項1
または2に記載の製造方法。
【化3】
【請求項5】
反応混合物を約15℃から約50℃の温度で加熱する、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
反応混合物を約40℃から約50℃の温度で加熱する、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
反応混合物を約1時間から約8時間攪拌する、請求項4~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
(i-a)反応混合液を冷却し、水とメチルtertブチルエーテル(MTBE)を反応混合物に加えること;
(i-b)MTBEを含む有機層と水層を分離すること;
(i-c)工程(i-b)からの水層に2-Me THFを添加し、2-Me THFおよび水層を含む混合物にNaOH水溶液を添加すること;
(i-d)2-Me THFを含む有機層を分離すること;
(i-e)工程(i-d)の有機層を20%w/w NaCl溶液で洗浄すること;
(i-f)工程(i-e)の有機層を水で洗浄すること;および
(i-g)任意選択で工程(i-f)を1回または2回以上繰り返して、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること;
をさらに含む、請求項
4に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(i-a)において、反応混合物を約20℃~約25℃の温度に冷却し、水およびMTBEを添加する前に、任意選択で約2時間~約24時間撹拌する、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(i-c)において、NaOH水溶液を、少なくともpH10のpHになるまで混合物に添加する、請求項
8に記載の製造方法。
【請求項11】
工程(i-g)の後、化合物(A)の2-Me THF溶液が実質的にNaOH水溶液を含まない、請求項
8に記載の製造方法。
【請求項12】
工程(iii)が、反応混合物を約70℃~約80℃の温度に加熱すること、および反応混合物を約70℃~約80℃で約30分間~約60分間維持することをさらに含む、
請求項
1または2に記載の製造方法。
【請求項13】
反応混合物を約50℃~約55℃に冷却する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
化合物(A)の安息香酸塩の種結晶のIPA中スラリーを反応混合物に添加する、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
反応混合物を冷却および加熱サイクルに付し、次いで約16℃~約24℃の温度に冷却し、約16℃~約24℃の温度で約6時間撹拌する、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
以下の工程を含む、請求項15に記載の製造方法:
(iii-a)反応混合物を約200分~約250分かけて約16℃~約24℃の温度に冷却し、次いで約16℃~約24℃の温度で約30分間撹拌すること;
(iii-b)反応混合物を約280分~約320分かけて約62℃~約66℃に加熱すること;
(iii-c)工程(iii-a)および工程(iii-b)の冷却および加熱を1回または2回繰り返すこと;および
(iii-d)反応混合物を約280分~320分かけて約16℃~約24℃の温度に冷却し、約16℃~約24℃の温度で約6時間撹拌すること。
【請求項17】
化合物(A)の安息香酸塩を、エタノール、ブタノール、IPA、アセトニトリル、TBME、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン(MEK)、プロプリオニトリル、またはトルエンから再結晶する、
請求項
2に記載の製造方法。
【請求項18】
化合物(A)の安息香酸塩は、以下の化合物のいずれか、またはそれらの組み合わせの合計含有量が0.7%a/a以下である、
請求項1
または2に記載の製造方法。
【化4】
【請求項19】
下記の化合物(A)の安息香酸塩の製造方法であって、
【化5】
(i)化合物(B)と塩酸を接触させ、化合物(A)を得ること;
【化6】
【化7】
(ii)化合物(A)を2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me THF)に抽出し、化合物(A)の2-Me THF溶液を得ること;
(iii)2-Me THFからイソプロピルアルコール(IPA)への溶媒交換を行うこと;
(iv)化合物(A)の安息香酸塩を得るのに十分な条件下で、IPAを含む混合物に安息香酸を添加すること;および
(v)化合物(A)の安息香酸塩を再結晶すること;
を含む製造方法。
【請求項20】
請求項
1に記載の製造方法により製造された化合物(A)の安息香酸塩。
【請求項21】
以下の化合物のいずれか、またはそれらの組み合わせの合計含有量が0.7%a/a以下である、化合物(A)の安息香酸塩。
【化8】
【請求項22】
請求項
1に記載の製造方法により製造された化合物(A)の安息香酸塩を含む医薬組成物。
【請求項23】
化合物(A)の安息香酸塩を含み、かつ、以下の化合物のいずれか、またはそれらの組み合わせの合計含有量が0.7%a/a以下である医薬組成物。
【化9】
【国際調査報告】