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特表2024-540000金属感を有する生体模倣型高分子多層構造体及びその製造方法
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  • 特表-金属感を有する生体模倣型高分子多層構造体及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】金属感を有する生体模倣型高分子多層構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241024BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241024BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B7/023
B32B27/20 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525013
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 KR2021015216
(87)【国際公開番号】W WO2023074935
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0143848
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514109710
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファンデーション,ダンコック ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨン ソク
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ジ ウォン
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AC03A
4F100AC03B
4F100AC05A
4F100AC05B
4F100AH03A
4F100AH03B
4F100AH03H
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK17A
4F100AK17B
4F100AK22A
4F100AK22B
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK33A
4F100AK33B
4F100AK49A
4F100AK49B
4F100AK53A
4F100AK53B
4F100BA02
4F100BA08A
4F100BA08B
4F100CA13A
4F100CA13B
4F100DE02A
4F100DE02B
4F100DE02H
4F100GB31
4F100GB33
4F100GB48
4F100JB13A
4F100JB13B
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JL10
4F100JN06
4F100JN18A
4F100JN18B
4F100JN21
4F100JN24
4F100JN28
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
本発明は、屈折率(refractive index)差0.3以上の2種以上の互いに異なる高分子をそれぞれ含む高分子層が交互に積層された構造を有し、各高分子層は、互いに独立して95~195nmの範囲に属する任意の厚さを有し、少なくとも1つ以上の高分子層が板状顔料としてグアニン(guanine)を含むことを特徴とする、金属感の高分子多層構造体及びその製造方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率(refractive index)差0.3以上の2種以上の互いに異なる高分子をそれぞれ含む高分子層が交互に積層された構造を有し、
各高分子層は、互いに独立して95~195nmの範囲に属する任意の厚さを有し、
少なくとも1つ以上の高分子層が板状顔料としてグアニン(guanine)を含むことを特徴とする、金属感の高分子多層構造体。
【請求項2】
グアニンを含む高分子層に含まれる高分子とグアニンとの屈折率差が0.3以上であることを特徴とする、請求項1に記載の金属感の高分子多層構造体。
【請求項3】
前記2種以上の互いに異なる高分子それぞれは、
(i)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、フッ素系樹脂及び繊維素系樹脂の中から選択される熱可塑性樹脂、又は(ii)フェノール樹脂、エポキシ樹脂およびポリイミド樹脂の中から選択される熱硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の金属感の高分子多層構造体。
【請求項4】
1つ以上の高分子層が、
モンモリロナイト(montmorillonite、MMT)、パイロフィライト-タルク(pyrophyllite-talc)、フルオロヘクトライト(fluorohectorite)、カオリナイト(kaolinite)、バーミキュライト(vermiculite)、イライト(illite)およびマイカ(mica)よりなる群から選択される1種以上の板状ナノ粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の金属感の高分子多層構造体。
【請求項5】
(a)屈折率(refractive index)差0.3以上の2種以上の互いに異なる高分子をそれぞれ含むフィルム状の成形体を製造するが、前記成形体のうちの少なくとも1つ以上は板状顔料としてグアニン(guanine)を含む成形体を製造するステップと、
(b)前記ステップ(a)で製造した成形体をそれぞれ延伸させて、95~195nmの範囲に属する任意の厚さを有するフィルムを製造するステップと、
(c)前記ステップ(b)で製造したフィルムを交互に積層して多層構造体を製造するステップと、を含む、金属感の高分子多層構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属調の色、光沢及び質感などを示す金属感の高分子素材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックなどの高分子材料は、優れた機能性、成形性、軽量性、低コストなどの利点を持つものの、セラミック、金属などの他の素材と比較して素材の外観から感知される色、質感、感性などが劣り、安価な素材という認識が広く広がっている。
【0003】
そこで、高分子材料の色、質感、審美性を向上させる手段として、表面加飾(surface decoration)技術への関心が次第に高まっており、近年、このような高分子材料表面加飾技術は、加飾の本来の目的である見かけ・外観の向上に止まらず、電気・光機能、抗菌機能、帯電機能、耐ウイルス性機能、表面触覚機能などを付与した「機能性付与加飾」へと拡張されており、塗装などの湿式方式の代わりに乾式方式の加食に関するニーズが高まっている。
【0004】
また、高分子に金属やセラミックなどの異種材料を分散させて得られる高分子多層構造体も、高分子材料の色、質感、審美性を改善させるだけでなく、高分子のみからなる素材では実現できない多様な機能を実現することができるという利点を有する。
【0005】
一方、最近、自動車産業をはじめとする全産業で製品デザインに対する要求事項が多様化しており、製品価格や機能などの性能要求から感性、高品質、利便性などの要素へと製品選択の観点が進化している。このような傾向の変化により、自動車内装部品も、金属質感のポイント部品の採用が増加している。金属質感を実現するためには、メッキ及び塗装工法が最も多く用いられているが、環境的な問題により、1回の部品射出工程で金属感を実現することが可能な金属感複合素材に関する研究が着実に増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、外観上、色、光沢、質感等の金属調を呈する金属感を有する高分子多層構造体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、屈折率(refractive index)差0.3以上の2種以上の互いに異なる高分子をそれぞれ含む高分子層が交互に積層された構造を有し、各高分子層は、互いに独立して95~195nmの範囲に属する任意の厚さを有し、少なくとも1つ以上の高分子層が板状顔料としてグアニン(guanine)を含むことを特徴とする、金属感の高分子多層構造体を提案する。
【0008】
また、前記金属感の高分子多層構造体を構成する高分子層のうち、グアニンを含む高分子層に含まれる高分子とグアニンとの屈折率差が0.3以上であることを特徴とする、金属感の高分子多層構造体を提案する。
【0009】
また、前記2種以上の互いに異なる高分子それぞれは、(i)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、フッ素系樹脂及び繊維素系樹脂の中から選択される熱可塑性樹脂、又は(ii)フェノール樹脂、エポキシ樹脂およびポリイミド樹脂の中から選択される熱硬化性樹脂であることを特徴とする、金属感の高分子多層構造体を提案する。
【0010】
また、前記金属感の高分子多層構造体に含まれる1つ以上の高分子層が、モンモリロナイト(montmorillonite、MMT)、パイロフィライト-タルク(pyrophyllite-talc)、フルオロヘクトライト(fluorohectorite)、カオリナイト(kaolinite)、バーミキュライト(vermiculite)、イライト(illite)およびマイカ(mica)よりなる群から選択される1種以上の板状ナノ粒子を含むことを特徴とする、金属感の高分子多層構造体を提案する。
【0011】
また、本発明は、発明の他の観点から、前記金属感の高分子多層構造体製造方法の一実施様態として、(a)屈折率(refractive index)差0.3以上の2種以上の互いに異なる高分子をそれぞれ含むフィルム状の成形体を製造するが、前記成形体のうちの少なくとも1つ以上は板状顔料としてグアニン(guanine)を含む成形体を製造するステップと、(b)前記ステップ(a)で製造した成形体をそれぞれ延伸させて、95~195nmの範囲に属する任意の厚さを有するフィルムを製造するステップと、(c)前記ステップ(b)で製造したフィルムを交互に積層して多層構造体を製造するステップと、を含む、金属感の高分子多層構造体の製造方法を提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による金属感の高分子多層構造体の製造方法は、従来のプラスチックなどの高分子素材に金属感を付与するために高分子素材の表面上に金属粒子をメッキ及び塗装する技術において発生する金属薄膜と高分子表面との弱い接着性、一部金属粒子の腐食性及び毒性の問題等を解決するとともに、可視光線の波長範囲(380~780nm)で80%以上の反射率を有する金属感の高分子基盤素材を実現することができるため、審美性が求められる自動車内蔵材や家電、美容パッケージングなどのさまざまな分野で広く使用できる素材の製造に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による金属感の高分子多層構造体の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を説明するにあたり、関連する公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を無駄に不明確にするおそれがあると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。
【0015】
本発明の概念による実施形態は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、特定の実施形態を図面に例示し、本明細書または出願に詳細に説明しようとする。しかし、これは、本発明の概念による実施形態を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術の範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むと理解されるべきである。
【0016】
本明細書で使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとするものではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を有しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、説示された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0017】
光学薄膜は、光学表面の分光特性、例えば、反射率、透過率、吸収率、偏光、位相、色などを、光の干渉効果と媒質の光学特性を用いて目的に合わせて変化させることができる。材料の屈折率と厚さ、層数を決定して設計し、光学薄膜は、ARコーティング(anti-refection coating)、HRコーティング(high reflection coating)、ショートウェーブパス(short wave pass)、ロングウェーブパス(long wave pass)などがあり、メガネに無反射コーティングを行うものが代表的な光学薄膜である。
【0018】
物質の光学特性は、光学定数Nで表され、Nは、複素数屈折率(complex refractive index)であって、屈折率(refractive index)と消滅係数(extinction coefficient)kを介して
【数1】
で表す。誘電体薄膜の場合、屈折率が消滅係数より高く、消滅係数は0に近い。その例として、ガラスの屈折率は1.5、TiOは2.35、SiOは1.46である。屈折率と反射率の関係式は
【数2】
であり、誘電体薄膜の場合、低い反射率と高い透過率を示し、吸収率は0に近い。これに対し、金属薄膜は反対の傾向を示し、銀(Ag)の場合には、複素数屈折率は
【数3】
であり、アルミニウム(Al)の場合には、複素数屈折率は
【数4】
であって、屈折率よりも消滅係数が高い傾向を示す。金属薄膜における反射率は
【数5】
で表し、高い反射率と低い透過率を示し、吸収率が存在する。薄い金属薄膜の吸収係数(absorption coefficient)は、αで表し、
【数6】
である。厚さdの金属薄膜を通る光の強さに対して初期光の強さ
【数7】
と薄膜を通った後の光の強さ
【数8】
に関する関係式は、
【数9】
であり、吸収された光の強さ
【数10】
は、
【数11】
である。
【0019】
光学アドミタンス(optical admittance)は、光学薄膜の設計、蒸着および特性評価において非常に重要な役割を果たす物理量であり、磁場と電場の比で定義される。均一で等方的な媒質において角振動数がωであり、伝播ベクトルがKである平面波が進行するとき、電場と磁場はそれぞれ
【数12】
で表現することができ、EとHはそれぞれ電場と磁場の振幅であり、rは位置ベクトルである。平面波の真空中の波長がλであるとき、複素数屈折率がNである媒質における伝播ベクトルは
【数13】
であり、このとき、
【数14】
は、伝播方向を示す単位ベクトルである。このような電場と磁場をマックスウェルの方程式に代入するとき、演算子は
【数15】

【数16】
で表現することができ、これにより、電場と磁場は
【数17】
で表すことができる。等方性物質では、
【数18】
とEが互いに垂直なので、電場と磁場の大きさは
【数19】
となる。上記の式において、磁場Hと電場Eの比を光学アドミタンスと定義する。したがって、光学アドミタンスYは
【数20】
となり、yはN=1の真空のアドミタンスであって、
【数21】
[siemens、S]である。アドミタンスの単位は、Sまたは1/Ωで表す。屈折率1.52のガラスの光学アドミタンスは1.52yであり、屈折率2.35のZnSの光学アドミタンスはY=2.35yとなり、複素数屈折率
【数22】
のAgの光学アドミタンスは
【数23】
となる。
【0020】
分布ブラッグ反射器(DBR、distributed bragg refectors)は、一般に5~50周期の異なる屈折率を有する2つの物質からなる多層反射鏡である。屈折率の差に起因して、それぞれの界面でフレネル(Fresnel)反射が発生する。通常、2つの物質の屈折率差は小さいため、一つの界面でのフレネルの度合いは非常に小さい。しかし、数多くのDBRは、多くの界面から構成され、反射されたすべての波動(all refected waves)が補強干渉(constructive interference)することができるように、2つの物質の厚さを選択するか、或いは2つの物質の屈折率差が大きいため、一つの界面での補強干渉効果が大きくなると、1に近い反射度を得ることができる。このような条件は、垂直入射(normal incidence)に対して2つの物質の厚さが光の1/4波長であるときに満足される。垂直入射の場合、次の通りである。
【数24】
【0021】
式で与えられる厚さは、λ/4となることができるだけでなく、λ/4、3λ/4、5λ/4、7λ/4などのように奇数整数倍に対しても可能である。これらの厚さは、反射波動の補強干渉を起こすだろう。しかし、3λ/4のようにλ/4よりもさらに厚い層厚の場合、高反射度遮断帯域がさらに狭くなる。傾斜した入射角に対して、波動ベクトルは水平成分と垂直成分に分離されることができる。
【0022】
傾斜入射(oblique incidence)の場合でも、垂直入射と同様に、DBR層の厚さは、DBR層に垂直な波動ベクトル成分に対して1/4波長でなければならない。傾斜した入射角θに対して高反射度のための最適厚さは、次のように与えられる。
【数25】
【0023】
垂直入射と同様に、与えられた厚さTl,hは、与えられた値の奇数整数倍であり得る。
【0024】
グアニン結晶体は、自然で光を操作するために広く使用される。自然界でグアニン結晶が銀色を呈する理由は、広い帯域で高い反射率を呈するからである。グアニンからなる自然光学系の高い反射率は、屈折率(n=1.83)が非常に高いという事実に由来する。そして、反射率を最適化するために、ほとんどの有機体において、グアニンの高い屈折率の表面が板状の単一結晶体を形成する。タチウオの鱗に存在するグアニンも、入射する光の反射を調節することにより、銀色または金属調を発する特性を持たせる。
【0025】
その他に、グアニンは、光学的非等方性を有しているが、グアニンの高い屈折率は、グアニン分子の積層方向に該当する結晶軸に沿って発生するのに対し、直交方向による屈折率は、n=1.45程度と遥かに低いと推定する。すなわち、グアニン分子の積層方向に応じて屈折率が確然に異なる。したがって、グアニンの結晶軸を基準に配向を多様化させると、屈折率は1.45~1.83の範囲で様々な分布を示すだろう。
【0026】
これを応用して、高分子マトリックスの屈折率が約1.4である場合、グアニンの屈折率が1.45であるときには、屈折率差が小さいため、低い反射率を有するが、グアニンの屈折率が1.83であるときには、屈折率差が大きいため、高い反射率を有する。したがって、グアニン結晶の非等方性を利用して配向度を調節して屈折率を調節することができ、これにより反射率調節を行うことができる。
【0027】
前述した原理に基づいて、本発明では、屈折率(refractive index)差が特定数値(0.3)以上の条件を満たす2種以上の互いに異なる高分子を含む複数の高分子層が交互に積層された構造からなる多層高分子構造体として、タチウオのスキン層に含まれた板状のグアニン(guanine)によってタチウオの表面に銀色光沢が発現することを生体模倣(biomimicry)するために、前記高分子層のうちの少なくとも1つ以上の高分子層が板状顔料としてグアニンを含む金属感の高分子多層構造体を提案する。
【0028】
このとき、前記金属感の高分子多層構造体を構成する高分子層のうち、グアニンを含む高分子層に含まれる高分子とグアニンとの屈折率差が0.3以上であることがさらに好ましい。
【0029】
また、前記金属感の高分子多層構造体を構成する各高分子層は、隣り合う高分子層などの他の高分子層とは独立して可視光波長の1/4、すなわち95~195nmの範囲に属する任意の光学厚さを有する金属感の高分子多層構造体を提案する。
【0030】
すなわち、本発明による金属感の高分子多層構造体は、互いに異なる高分子を含む高分子層が交互に積層されるという点では規則性を有するのに対し、各高分子層の厚さは、他の高分子層の厚さに関係なく独立して一定の範囲(95~195nm)内の任意の値を有するので、高分子層の厚さは、高分子多層構造体の厚さ方向に勾配を形成せずにランダムな配列を有する。
【0031】
図1は、本発明による金属感の高分子多層構造体の一例を示す断面模式図である。図1を参照すると、第1高分子P1からなる高分子層P1、P1、…P1n-1、P1と、第2高分子P2からなる高分子層P2、P2、…P2n-1、P2が互いに交互に配列された構造を有する一方、一部の高分子層内に板状顔料としてグアニンが無秩序に分散しており、各高分子層が互いに独立して95~195nmの範囲内で任意の厚さを有しながらランダムな厚み配列を示す高分子多層構造体を示す。
【0032】
一方、本発明による高分子多層構造体を製造するための方法は、特に限定されず、一例として、(a)第1高分子(ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)等)を含むフィルム状の第1高分子含有成形体、及び第2高分子(トリアセチルセルロース(triacetyl cellulose、TAC)等)を含むフィルム状の第2高分子含有成形体をそれぞれ2つ以上製造するステップと、(b)第1高分子含有成形体及び第2高分子含有成形体をそれぞれ延伸させて、95~195nmの範囲に属する任意の厚さを有する第1高分子含有フィルム及び第2高分子含有フィルムを製造するステップと、(c)第1高分子含有フィルム及び第2高分子含有フィルムを交互に積層して多層構造体を製造するステップと、を含んでなることができる。
【0033】
本発明による金属感の高分子多層構造体の各高分子層に含まれる2種以上の互いに異なる高分子は、それぞれ熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる。
【0034】
より具体的に、前記熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-4-メチルペンテン-1、アクリル系樹脂であるポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、ビニル系樹脂であるポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニリデン、スチレン系樹脂であるポリスチレン、ABS樹脂、フッ素樹脂である四フッ化エチレン樹脂、三フッ化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、繊維素系樹脂であるニトロセルロース、セルロースアセテート、エチルセルロース、プロピレンセルロースなどが挙げられ、この他にも、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンブチレート、ポリブチレンブチレート、アイオノマー樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリエステル(エコノール、ポリアリレート)などが使用可能である。
【0035】
また、前記熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0036】
また、本発明による金属感の高分子多層構造体の反射率等の光学特性を向上及び/又は改善させるために、多層構造体に含まれる1つ以上の高分子層は、モンモリロナイト(montmorillonite、MMT)、パイロフィライト-タルク(pyrophyllite-talc)、フルオロヘクトライト(fluorohectorite)、カオリナイト(kaolinite)、バーミキュライト(vermiculite)、イライト(illite)およびマイカ(mica)よりなる群から選択される1種以上の板状ナノ粒子を含むことができる。
【0037】
本発明によるグアニンを含む金属感の高分子多層構造体の一実施形態として、各層の高分子は、相対的に屈折率の高い高屈折率高分子と低屈折率高分子との交互積層によって製造される。高屈折率高分子と低屈折率高分子との屈折率差は0.3以上であり、このとき、板状顔料は、低屈折率材料層に含まれる。多層構造体の高分子フィルムの積層数は257枚であり、低屈折率材料層に含まれた板状顔料の含有量は0.1~10重量%である。メラミン(melamine)フィルムとテフロン(登録商標)(teflon)フィルムとを積層してナノ構造体を形成することを例に挙げると、メラミンフィルムが高屈折率材料、テフロン(登録商標)フィルムが低屈折率材料となる。この場合、低屈折率材料であるテフロン(登録商標)フィルムを製造する際に、高屈折率の板状顔料であるグアニンを添加する。
【0038】
上述した本発明による金属感の高分子多層構造体は、従来のプラスチックなどの高分子素材に金属感を付与するために高分子素材の表面上に金属粒子をメッキ及び塗装する技術において発生する金属薄膜と高分子表面との弱い接着性、一部金属粒子の腐食性及び毒性の問題などを解決するとともに、可視光線の波長範囲(380~780nm)で80%以上の反射率を有する金属感の高分子基盤素材を実現することができるため、審美性が求められる自動車内蔵材や家電、美容パッケージングなどの様々な分野に有用に使用できる。
【0039】
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できるということを理解することができるだろう。したがって、上述した実施形態は、すべての点で例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明による金属感の高分子多層構造体の製造方法は、可視光線の波長範囲(380~780nm)で80%以上の反射率を有する金属感の高分子基盤素材を実現することができるため、審美性が求められる自動車内装材や家電、美容パッケージングなどの様々な分野で広く使用できる素材の製造に有用に使用できる。
図1
【国際調査報告】