(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】巻線界磁式同期機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525016
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2022077662
(87)【国際公開番号】W WO2023072539
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021212205.1
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレル トルステン
(72)【発明者】
【氏名】オスドバ フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】トパロフ ペンヨ
(72)【発明者】
【氏名】ズィマーシート フィリップ
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP11
5H609PP16
5H609QQ05
5H609QQ11
5H609RR39
(57)【要約】
本発明は、巻線界磁式同期機(1)に関する。-少なくとも1つの軸方向前側軸受シールド(6)を備える固定子ハウジング(5)と、固定子磁界を発生させるための固定子コイル(7)とを有する固定子(2)と、-少なくとも軸受シールド(6)に回転軸(10)の周りに回転可能に取り付けられた回転子シャフト(9)と、回転子磁界を発生させるための回転子コイル(11)とを有する回転子(3)と、-回転子コイル(11)に電気エネルギーを伝達するためのエネルギー伝達システム(40)とを備え、-軸受シールド(6)は、少なくとも1つの冷却材ダクト(23)を含み、冷却材入口(24)と冷却材出口(25)とを有し、軸受シールド(6)が、冷却材ダクト(23)を通って誘導される冷却材によって能動的に冷却されるようになっており、-同期機(1)の、固定子に固定された電力回路(34)の少なくとも1つの構成要素(35)が、熱を伝達するように、軸受シールド(6)に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線界磁式同期機(1)であって、
少なくとも1つの軸方向前側軸受シールド(6)を備える固定子ハウジング(5)と、固定子磁界を発生させるための固定子コイル(7)とを有する固定子(2)と、
少なくとも前記軸受シールド(6)に回転軸(10)の周りに回転可能に取り付けられた回転子シャフト(9)と、回転子磁界を発生させるための回転子コイル(11)とを有する回転子(3)と、
前記回転子コイル(11)に電気エネルギーを伝達するためのエネルギー伝達器(4)を有するエネルギー伝達システム(4)と
を備え、
前記軸受シールド(6)が、少なくとも1つの冷却材ダクト(23)を含み、冷却材入口(24)と冷却材出口(25)とを有し、前記軸受シールド(6)が、前記冷却材ダクト(23)を通って誘導される冷却材によって能動的に冷却されるようになっており、
前記同期機(1)の、固定子に固定された電力回路(34)の少なくとも1つの構成要素(35)が、熱を伝達するように、前記軸受シールド(6)に配置されている
同期機(1)。
【請求項2】
前記冷却材ダクト(23)が、前記回転軸(10)と同心に配置された前記軸受シールド(6)の環状領域(27)を通り、前記環状領域(27)内で周方向(28)に少なくとも180°にわたって延びており、
前記電力回路(34)の前記各構成要素(35)が、熱を伝達するように、前記軸受シールド(6)上のこの環状領域(27)に配置されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項3】
前記冷却材ダクト(23)が、前記回転軸(10)と同心に配置された、前記周方向(28)に少なくとも90°にわたって延びる、前記軸受シールド(6)の環状セグメントの形の冷却領域(29)内を延び、
前記電力回路(34)の前記各構成要素(35)が、熱を伝達するように、前記軸受シールド(6)上のこの冷却領域(29)に配置されている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の同期機(1)。
【請求項4】
前記冷却材ダクト(23)が、前記冷却領域(29)内を蛇行しながら延び、前記冷却領域(29)の半径方向内側の内側端部(30)と前記冷却領域(29)の半径方向外側の外側端部(31)との間を行き来している
ことを特徴とする、請求項3に記載の同期機(1)。
【請求項5】
前記冷却材ダクト(23)が、前記冷却領域(29)に、流れて通ることができる扁平断面(32)を有し、前記断面(32)が、前記冷却領域(29)の半径方向内側の内側端部(30)から前記冷却領域(29)の半径方向外側の外側端部(31)まで延びている
ことを特徴とする、請求項3に記載の同期機(1)。
【請求項6】
前記冷却材ダクト(23)の前記扁平断面(32)に、冷却リブ構造(33)が配置又は形成されている
ことを特徴とする、請求項5に記載の同期機(1)。
【請求項7】
前記エネルギー伝達器(4)が、電気エネルギーの誘導伝達のために、回転変圧器(12)を有し、前記回転変圧器(12)が、固定子に固定された一次変圧器コイル(13)と、回転子に固定された二次変圧器コイル(14)と、前記回転軸(10)と同心に配置された、少なくとも部分的に固定子に固定されたフェライトコア(21)とを有し、前記フェライトコア(21)内に、前記一次変圧器コイル(13)が、動かないように配置され、前記フェライトコア(21)内又は前記フェライトコア(21)上に、前記二次変圧器コイル(14)が、回転可能に配置されている
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の同期機(1)。
【請求項8】
前記フェライトコア(21)が、少なくとも部分的に、熱を伝達するように、前記軸受シールド(6)内に、相対的に回転できないように配置され、前記冷却材ダクト(23)が、前記軸受シールド(6)内の前記フェライトコア(21)の半径方向外側を通るようにする
ことを特徴とする、請求項7に記載の同期機(1)。
【請求項9】
前記フェライトコア(21)が、前記環状領域(27)内に同心に配置されている
ことを特徴とする、請求項2及び8に記載の同期機(1)。
【請求項10】
前記フェライトコア(21)が、前記冷却領域(29)と同心に配置されている
ことを特徴とする、請求項8又は9に記載及び請求項3~7のいずれか一項に記載の同期機(1)。
【請求項11】
前記軸受シールド(6)が、コアレセプタクル(26)を有し、前記コアレセプタクル(26)内に、前記フェライトコア(21)が配置されている
ことを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の同期機(1)。
【請求項12】
前記コアレセプタクル(26)が、筐体(39)を有し、前記筐体(39)の半径方向内側の輪郭が、前記フェライトコア(21)の半径方向外側の輪郭に合わせられている
ことを特徴とする、請求項11に記載の同期機(1)。
【請求項13】
前記固定子ハウジング(5)が、前記固定子ハウジング(5)を通る固定子冷却材ダクトを備える固定子冷却機構を有さない
ことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の同期機(1)。
【請求項14】
前記固定子ハウジング(5)が、前記固定子ハウジング(5)を通る固定子冷却材ダクトを備える固定子冷却機構を有し、前記固定子冷却材ダクトが、前記軸受シールド(6)の前記冷却材ダクト(23)から流体的に分離されている
ことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の同期機(1)。
【請求項15】
前記同期機(1)が、湿式運転電気機械として設計されており、前記同期機(1)の冷却回路が、前記固定子ハウジング(5)の内部空間を通るように冷却材を誘導し、前記内部空間で、前記回転子(3)が、前記冷却材と接触し、前記冷却回路が、前記軸受シールド(6)の前記冷却材ダクト(23)と流体的に結合されている
ことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の同期機(1)。
【請求項16】
前記回転子(3)が、前記回転子(3)を通る回転子冷却材ダクト(42)を備える回転子冷却機構(41)を有し、前記回転子冷却材ダクト(42)が、前記軸受シールド(6)の冷却材ダクト(23)と流体的に結合されている
ことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の同期機(1)。
【請求項17】
前記冷却材ダクト(23)が、その冷却材出口(25)によって、前記回転子冷却機構(41)の冷却材入口領域(43)に接続されている
ことを特徴とする、請求項16に記載の同期機(1)。
【請求項18】
前記冷却材出口(25)が、軸方向を向き、前記軸受シールド(6)の軸方向内側に配置されている
ことを特徴とする、請求項17に記載の同期機(1)。
【請求項19】
前記冷却材入口(24)が、半径方向を向き、前記軸受シールド(6)の半径方向外周(36)に配置されている
ことを特徴とする、請求項18に記載の同期機(1)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
巻線界磁式同期機は、固定子、回転子及びエネルギー伝達システムを備える。固定子は、少なくとも1つの軸方向前側の軸受シールド(Lagerschild)を備える固定子ハウジングと、固定子磁界を発生させるための固定子コイルとを有する。回転子は、少なくとも軸受シールドに回転軸の周りに回転可能に取り付けられた回転子シャフトと、回転子磁界を発生させるためのコイルとを有する。エネルギー伝達システムは、回転子コイルに電気エネルギーを伝達する目的を果たし、それによって外部励磁を行う。誘導によって動作するエネルギー伝達システムの場合には、エネルギー伝達システムは、誘導エネルギー伝達器を備えることができ、誘導エネルギー伝達器は、好ましくは回転変圧器として設計することが可能で、回転変圧器は、固定子に固定された一次変圧器コイルと、回転子に固定された二次変圧器コイルとを有する。
【発明の概要】
【0002】
高性能の同期機は、高い熱ストレスにさらされる。これは特に、磁界の発生と電気エネルギーの伝達に寄与するすべての電気的に作動する構成要素又は構成部品にいえ、したがって、好ましくは、エネルギー伝達器、及び同期機の電力回路にいえる。
【0003】
同期機は、特に100kW~240kW、好ましくは120kW~160kW、特に好ましくは約140kWの電力を吸収できる自動車用の走行用モーターとして設計されることが好ましい。
【0004】
原理的には、同期機を冷却することが考えられる。その場合には、固定子ハウジングに冷却ジャケットを組み込むのが一般的である。冷却ジャケットは、適切な、特に液体の冷却材が流れて通ることができる。さらに、電力回路の特に脆弱な構成要素を、これらの構成要素への熱伝達が少なくなるように、かつ/又はこれらの構成要素からの熱放散が改善されるように、配置することも考えられる。しかしながら、これには通常、構造的に多くの労力、そして比較的大きな構造スペースの必要性が伴う。さらに、比較的長い電線が必要になることもあり、これにより、駆動システムの動作が重くなって、駆動システムの効率に悪影響を与え、電力回路の故障の可能性が高まる。
【0005】
本発明は、上記タイプの同期機の改良された実施形態、又は少なくとも異なる実施形態を明確に示すという問題を扱い、この実施形態は特に、熱放散の改善を特徴とする。さらに、集積度の向上及び/又は電力密度の向上が特に求められる。
【0006】
この問題は、本発明によれば、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明は、軸受シールドを能動的に冷却し、同期機の電力回路の少なくとも1つの構成要素を組み立てに使用するという一般的な考えに基づいている。これによって、一方では、電力回路の各構成要素の効率的な冷却が実現する。それによって、他方では、エネルギー伝達器と電力回路の各構成要素との間など、短い接続経路を可能にするコンパクトな構造形態も実現する。電線が短くなると、故障の発生・可能性、故障させる寄生効果、それらに関連した電力損失、電力インダクタンス、電力容量は減る。
【0008】
詳細には、本発明は、軸受シールドが、少なくとも1つの冷却材ダクト、冷却材入口及び冷却材出口を備え、軸受シールドが、冷却材ダクトを通って誘導される特に液体の冷却材によって能動的に冷却されるようにすることを提案する。同期機の、固定子に固定された電力回路の少なくとも1つの構成要素が、熱を伝達するように、軸受シールドに配置される。これによって、一方では、電力回路の各構成要素への入熱が減り、他方では、電力回路の各構成要素の廃熱を放散することができる。
【0009】
好ましくは、電力回路の各構成要素は、軸受シールドの軸方向外側に配置される。
【0010】
電力回路の各構成要素と軸受シールドとの間の熱を伝達する結合は、特にプレストレスによる接合によって直接、及び/又は、サーマルペーストやサーマルパッドなどの熱伝導性材料の使用によって間接的に、実現することができる。熱伝導性材料を介して、プレストレスによる間接的な接合も行えるのが、適切である。
【0011】
有利な実施形態では、冷却材ダクトは、回転軸と同心に配置された軸受シールドの環状領域を通り、環状領域内で、周方向に少なくとも180°、好ましくは少なくとも270°にわたって延びることができる。電力回路の各構成要素は、熱を伝達するように、軸受シールド上のこの環状領域に配置される。これによって、特に効率的な熱放散ができる。
【0012】
別の実施形態では、冷却材ダクトは、回転軸と同心に配置された、周方向に少なくとも90°、好ましくは少なくとも180°にわたって延びる、軸受シールドの環状セグメントの形の冷却領域内を延びることができる。電力回路の各構成要素は、熱を伝達するように、軸受シールド上のこの冷却領域に配置されるのが、適切である。ここでも、効率的な熱伝達がサポートされる。また、熱に特に敏感な及び/又はストレスを受ける個々の構成部品が冷却回路に組み込まれることも考えられる。これは、例えば、凹部又はくぼみによって行うことができ、そこに当該の構成部品が配置される。
【0013】
有利な発展形態では、冷却材ダクトは、冷却領域内を蛇行しながら延び、冷却領域の半径方向内側の内側端部と冷却領域の半径方向外側の外側端部との間を行き来する。これによって、熱伝達に利用できる表面積が大きくなるため、冷却効果を改善できる。
【0014】
あるいは、冷却効果は、冷却材ダクトが、冷却領域に、流れて通ることができる扁平断面を有し、この断面が、冷却領域の半径方向内側の内側端部から冷却領域の半径方向外側の外側端部まで延びることによっても、改善することできる。この措置によっても、熱伝達に利用できる表面積が大きくなるため、熱放散を改善できる。
【0015】
一発展形態では、冷却材ダクトの扁平断面に、冷却構造が配置又は形成される。冷却構造は、冷却材と軸受シールドとの間の熱伝達を改善する。冷却構造は、冷却材ダクトに入れられる少なくとも1つの別個の構成部品となることができる。また、冷却構造を軸受シールドに一体的に成形することも考えられる。冷却構造は、リブ、ノブ、フィン、ピン及び/又はそれらに類するものを有することができる。
【0016】
原理的には、エネルギー伝達器を、接触によって動作するエネルギー伝達器として設計することができ、このエネルギー伝達器は、接触によって電気エネルギーを伝達する。接触エネルギー伝達器は特に、固定子に固定された少なくとも1つの摺動接触子を有する摺動装置を有することができる。特にブラシとして設計されたそれぞれの摺動接触子は、特に回転軸に対して半径方向に、熱を伝達するように軸受シールド内又は軸受シールド上に配置することができる。回転子側では、接触エネルギー伝達器は、回転子に固定された少なくとも1つのスリップリングを有することができ、それぞれの摺動接触子はそのスリップリングと協働する。それぞれのスリップリングは、例えば、回転子シャフト上に形成することができる。
【0017】
しなしながら、好ましいのは、エネルギー伝達器が、誘導によって動作するエネルギー伝達器として構成され、このエネルギー伝達器が、回転子コイルへの電気エネルギーの誘導伝達を行う実施形態である。誘導エネルギー伝達器は、固定子に固定された一次変圧器コイルと、回転子に固定された二次変圧器コイルとを有する回転変圧器を備えるか、そのような回転変圧器として設計されるのが、適切である。ここでは、一次変圧器コイルは、エネルギー伝達器の、固定子に固定された構成要素となる。そして、誘導によって動作するエネルギー伝達システムは、二次変圧器コイルを回転子コイルと電気的に接続する回転子側の又は回転子に固定された整流器を適切に有する。
【0018】
両変圧器コイルの間の電磁結合を改善するために、エネルギー伝達器は、回転軸と同心に配置された、少なくとも部分的に固定子に固定された磁心又はフェライトコアを有することができる。このフェライトコア内に、一次変圧器コイルは、動かないように配置され、同フェライトコア内に、二次変圧器コイルは、回転可能に配置される。そのようなフェライトコアは、全体を固定子に固定されたフェライトコアとして設計すること、又は、固定子に固定されたフェライトコア部分と、回転子に固定されたフェライトコア部分とを有することができる。以下では、フェライトコアの話を続けるが、原則として、それぞれの場合において、全体を固定子に固定されたフェライトコア、及び固定子に固定されたフェライトコア部分を意味するものとする。
【0019】
そこで、特に有利なのは、フェライトコア又は固定子に固定されたフェライトコア部分が、熱を伝達するように、軸受シールド内又は軸受シールド上に、相対的に回転しないように配置され、冷却材ダクトが、軸受シールド内のフェライトコアの半径方向外側を通るようにする発展形態である。回転変圧器がフェライトコアによってカプセル化されることによって、伝達時に回転変圧器に発生する熱は、フェライトコアによって吸収される。そして、この熱は、特に良好に軸受シールドに伝達し、冷却材を通じて放散することができる。
【0020】
フェライトコアを軸受シールドの軸方向外側に配置することによって、熱保護を改善することもできる。軸受シールドは特に、軸方向においてフェライトコアとエネルギー伝達器の整流器との間に配置することができる。しかし、構造スペースの理由により、フェライトコアを軸受シールドの軸方向内側に配置することが適切な場合もある。
【0021】
有利な実施形態によれば、軸受シールドがレセプタクル(Aufnahme)を有し、そのレセプタクル内にエネルギー伝達器の、固定子に固定された構成要素が配置されるようにすることができる。これによって、一方では各構成要素の位置決めが簡単になり、他方では熱伝達が改善される。この効果は、オプションとして、レセプタクルが筺体を有し、その半径方向内側の輪郭がエネルギー伝達器の、固定子に固定された構成要素の半径方向外側の輪郭に合わせられるようにすれば、改善することができる。各構成要素は、レセプタクル内では軸方向に、オプションの筐体上では半径方向に接することができ、そこでは、熱伝導性材料を介して間接的に接すること、又は直接接することが考えられる。誘導エネルギー伝達器の場合で、固定子に固定された構成要素がフェライトコアである場合には、レセプタクルは、フェライトコアを受け入れるコアレセプタクルとして設計することができる。オプションの筐体は、フェライトコアを半径方向に囲む。そして、フェライトコアは、コアレセプタクル内では軸方向に、筐体上では半径方向に、直接又は間接的に接する。
【0022】
有利な発展形態では、フェライトコアは、上記の環状領域内に同心に配置することができる。それに加えて、又はその代わりに、フェライトコアをさらに上記の冷却領域と同心に配置することができる。同心に配置することによって、フェライトコアから軸受シールドに放射状に放出される熱は、環状領域又は冷却領域に直接達し、そこで冷却材によって吸収される。
【0023】
有利な実施形態では、固定子ハウジングは、固定子ハウジングを通る固定子冷却材ダクトを備える固定子冷却機構を有さないように設計することができる。実施形態によっては、十分な冷却を実現するのに、軸受シールドの能動的冷却で事足りることがわかっている。例えば、電気機械内の/電気機械を通る空気流による追加の受動的冷却が考えられる。この空気流は、冷却された軸受シールドに沿って誘導することができ、これにより、場合によって、軸受シールドによる追加の間接的冷却を達成することができる。
【0024】
それに対して、別の実施形態によれば、固定子ハウジングが、固定子ハウジングを通る固定子冷却材ダクトを備える固定子冷却機構を有するようにすることができ、この固定子冷却材ダクトは、軸受シールド内の冷却材ダクトから流体的に分離される。固定子冷却材ダクトと軸受シールドの冷却材ダクトとが流体的に分離されることにより、軸受シールドの冷却を局所的条件に応じて最適化することができる。特に、一方では軸受シールドの冷却材ダクトにおいて、他方では固定子冷却材ダクトにおいて、異なる圧力、冷却材、流速及び冷却材の温度を用いることができる。
【0025】
代わりとなる別の実施形態では、同期機は、湿式運転電気機械として設計することができる。そこでは、同期機は、固定子ハウジングの内部空間を通るように冷却材を誘導する冷却回路を有し、この内部空間では、回転子及び通常は固定子もが冷却材と接触する。そして、この冷却回路は、軸受シールドの冷却材ダクトと流体的に結合することができる。これによって、軸受シールドの冷却が簡単になる。
【0026】
この箇所では、純粋な回転子冷却機構、純粋な固定子冷却機構、又は組み合わせた回転子・固定子冷却機構が考えられる。回転子を通り(回転子シャフトを介した供給など)、それによって冷却媒体が回転子から固定子に噴射される回転子スプレー冷却、並びに、回転子及び/又は固定子に噴射するノズル/放出口による冷却(場合によって、回転子による追加の噴霧化)が、例示的な実施形態として挙げられる。湿式運転同期機としての実施によって、固定子ジャケット冷却を不要にすることができる。
【0027】
別の実施形態では、回転子が、回転子を通る回転子冷却材ダクトを備える回転子冷却機構を、特に回転子スプレー冷却として、又は回転子スプレー冷却と併せて、有することができ、この回転子冷却材ダクトは、軸受シールド内の冷却材ダクトと流体的に結合される。これによっても、軸受シールドの冷却の実現が簡単になる。ここで特に適切なのは、軸受シールドの冷却材ダクトが、回転子冷却材ダクトの上流に配置される実施形態である。
【0028】
そこでは、特に、冷却材ダクトが、その冷却材出口によって、回転子冷却機構の冷却材入口領域に接続されるようにすることができる。これによって、軸受シールドの冷却機構は、回転子冷却機構の上流に位置する。
【0029】
それに加えて、又はその代わりに、そこでは、冷却材出口が軸方向を向き、軸受シールドの軸方向内側に配置されるようにすることができる。これによって、軸受シールド冷却機構と回転子冷却機構との流体的結合が簡単になる。
【0030】
さらに、それに加えて、又はその代わりに、冷却材入口が半径方向を向き、軸受シールドの半径方向外周に配置されるようにすることができる。この措置によって、同期機と冷却回路との結合が簡単になる。
【0031】
本発明のさらなる重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面に基づく関連説明から明らかになる。
【0032】
上記の特徴及び以下にさらに説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなしに、それぞれ示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又は単独でも使用できることを理解されたい。設備、機器、装置などの上位のユニットの別々に示された上記の構成要素及び以下にさらに挙げる構成要素は、たとえ図面では異なって示されていようとも、そのユニットの別々の構成部品又は構成要素となることも、そのユニットの一体の領域又は部分となることもできる。
【0033】
本発明の好ましい実施例は、図面に示されており、以下でさらに詳細に説明されるが、同じ参照符合は、同じ、類似の、又は機能的に同じ構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】エネルギー伝達システムを備える同期機の軸方向端部領域の部分的に切断された等角図。
【
図2】エネルギー伝達システムの簡略化された回路図。
【
図3】エネルギー伝達システムのエネルギー伝達器の、固定子に固定された構成要素(例えば、フェライトコア)のない軸受シールドの外側からの等角図。
【
図4】エネルギー伝達器の、固定子に固定された構成要素(例えば、フェライトコア)のある
図3と同様の図。
【
図5】エネルギー伝達器の、固定子に固定された構成要素(例えば、フェライトコア)を備える軸受シールドの等角縦断面図。
【
図7】別の実施形態における外側からの軸受シールドの軸方向図。
【
図8】さらなる実施形態における外側からの軸受シールドの軸方向図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1によれば、巻線界磁式同期機1(ここでは部分的にしか図示していない)は、固定子2、回転子3及びエネルギー伝達システム40を有する。固定子2は、少なくとも1つの軸方向前側軸受シールド6を備える固定子ハウジング5と、固定子磁界を発生させるための固定子コイル7とを有する。軸受シールド6に関しては、
図1には、軸受シールド6に配置又は形成される軸受8のみが示されている。回転子3は、少なくとも軸受シールド6に回転軸10の周りに回転可能に取り付けられた回転子シャフト9を有する。回転子3はさらに、回転子磁界を発生させるための回転子コイル11を有する。
【0036】
エネルギー伝達システム40は、外部の適切なエネルギー源から回転子コイル11に電気エネルギーを伝達する目的を果たす。そのために、エネルギー伝達システム40は、誘導又は接触によってエネルギー伝達を行うエネルギー伝達器4を備える。図に示された例では、好ましい実施形態を表す誘導エネルギー伝達器4が示されている。
【0037】
それにしたがって、
図1及び
図2には、誘導によって回転子コイル11にエネルギーを伝達する誘導エネルギー伝達器4が示されている。したがって、これは、誘導巻線界磁式同期機1である。
【0038】
誘導エネルギー伝達器4は、
図2の回路図に示された回転変圧器12を備える。
図1及び
図2によれば、回転変圧器12は、固定子に固定された一次変圧器コイル13と、回転子に固定された二次変圧器コイル14とを有する。
図2では、矢印15は回転変圧器12の動かない一次側を示し、矢印16は回転変圧器12の回転する二次側を示している。矢印17は、同期機1の運転時のエネルギーの流れを示している。
【0039】
さらに、
図2の回路図の一次側15には、インバーター18及び直流電源が示されている。二次側16には、整流器20及び回転子コイル11が示されている。
【0040】
ここでは、エネルギー伝達器4はさらに、回転軸10と同心に配置された、固定子に固定されたフェライトコア21を備える。このフェライトコア21内に、一次変圧器コイル13は、動かないように配置される。フェライトコア21内に、二次変圧器コイル14は、回転可能に配置される。回転子シャフト9は、フェライトコア21を通り、
図1に示されたディスク22上に、二次変圧器コイル14を担持し、二次変圧器コイル14は、このディスク22を介して、回転子シャフト9と、相対的に回転しないように接続されている。一次変圧器コイル13とフェライトコア21はそれぞれ、エネルギー伝達器4の、固定子に固定された構成要素37となる。図示しない別の実施形態では、フェライトコア21は、固定子に固定されたフェライトコア部分と、回転子に固定されたフェライトコア部分とを有する。
【0041】
図3~
図7によれば、軸受シールド6は、残りの固定子ハウジング5に対して別個の構成部品として設計することができる。原理的には、軸受シールド6が固定子ハウジング5に一体的に成形される実施形態も考えられる。
図3~
図7によれば、軸受シールド6は、軸受シールド6の内部に形成される少なくとも1つの冷却材ダクト23を有する。そこでは、冷却材ダクト23は、軸受シールド6の材料内に直接形成され、冷却材ダクト23を流れて通る冷却材が軸受シールド6の材料と直接接触するようにする。冷却材は、好ましくは、誘電性油、又は誘電性油と空気の混合物である。軸受シールド6はさらに、冷却材入口24と冷却材出口25とを有する。
【0042】
エネルギー伝達器4の少なくとも1つの、固定子に固定された構成要素37の冷却を改善するために、各構成要素37は、熱を伝達するように軸受シールド6内又は軸受シールド6上に配置することができる。そのために、軸受シールド6は、
図4及び
図5にしたがって、各構成要素37が入れられるレセプタクル38を有することができる。レセプタクル38は、カラーのように周方向28に回転する筺体39を有し、この筺体39は、
図1及び
図3~
図8に双方向矢印で示されており、回転軸10の周りを回転する。この筺体39は、レセプタクル38に入れられた構成要素37を囲む。具体例では、レセプタクル38は、コアレセプタクル26として設計され、このコアレセプタクル26は、筺体39と結合して、フェライトコア21を補完するように、適切に成形される。
【0043】
図4及び
図5によれば、フェライトコア21は、熱を伝達するように、軸受シールド6内又は軸受シールド6上に、相対的に回転しないように配置される。そのために、好ましくは、フェライトコア21を補完するように成形された筺体39を備えた前記コアレセプタクル26が軸受シールド6内に形成され、フェライトコア21が、相対的に回転しないように、コアレセプタクル26に入れられるようにする。ここに示された好ましい例では、コアレセプタクル26とフェライトコア21は、軸受ハウジング5又は回転子3から離れる方を向く軸受シールド6の軸方向外側に位置する。特に、それによって、軸受シールド6は、軸方向においてフェライトコア21と整流器20との間に配置される。
【0044】
フェライトコアと軸受シールドとの間の熱を伝達する結合は、プレストレスによる接合によって直接、及び/又は、サーマルペーストやサーマルパッドなどの熱伝導性材料の使用によって間接的に、実現することができる。
【0045】
図3~
図7からわかるように、冷却材ダクト23は、フェライトコア21と同心に、したがって回転軸10と同心に配置された軸受シールド6の環状領域27に形成される。冷却材ダクト23は、周方向28に少なくとも180°にわたって、フェライトコア21に沿って延びる。そこでは、回転軸10が同期機1の軸方向を定め、軸方向は回転軸10と平行に延びる。半径方向は、回転軸10に対して垂直である。
【0046】
ここに示された
図3~
図8の例では、冷却材ダクト23は、周方向28に少なくとも360°にわたって延びる。
図3~
図6には、冷却材ダクト23が、冷却材入口24から冷却材出口25まで、概ね、ほぼ一定で、流れて通ることができる断面を有する第1の実施形態が示されており、断面は、例では丸く、特に円形に設計されている。ここに図示しない実施形態では、冷却材回路23は、らせん状に構成し、周方向28に360°を超えて延びるようにすることができる。冷却材ダクト23は、上記の筐体39内で、周方向28に少なくとも部分的に延びることができる。
【0047】
図3~
図8によれば、フェライトコア21と同心に周方向28に少なくとも90°にわたって延びる環状セグメントの形の冷却領域29を、軸受シールド6に形成することができる。示された例では、この冷却領域29は、周方向28に約180°にわたって延びている。
【0048】
図7によれば、第2の実施形態の冷却材ダクト23は、この冷却領域29内を蛇行しながら延びることができる。
図7によれば、冷却材ダクト23は、冷却領域29内で、冷却領域29の半径方向内側の内側端部30と冷却領域29の半径方向外側の外側端部31との間を行き来する。
【0049】
第3の実施形態では、その代わりに、冷却材ダクト23は、
図8の冷却領域29に、流れて通ることができる扁平断面32を有することができる。この扁平断面32は、冷却領域29の半径方向内側の内側端部30から冷却領域29の半径方向外側の外側端部31まで延びる。冷却材ダクト23の流れて通ることができる断面32は、半径方向に測定した幅が、軸方向に測定した高さより大きく、特に少なくとも5倍の大きさであるため、平たい。
【0050】
これによって、第2の実施形態と第3の実施形態のどちらの場合でも、軸受シールド6に冷却領域29の大面積の冷却機構が作り出される。
図9によれば、オプションとして、軸受シールド6と冷却材との間の熱伝達を改善する冷却構造33を、冷却材ダクト23の扁平断面32、したがって冷却領域29内に配置するようにすることができる。冷却構造33は、リブ、ノブ、ピン、それらに類するもの及びそれらの任意の組み合わせで形成することができる。
【0051】
同期機1は、いくつかの構成要素35を有する電力回路34を有する。例えば、回転変圧器12のインバーター18は、電力回路34のそのような構成要素35となる。また、固定子コイル7に電流を供給するため、及び同期機1を制御するために、ここでは図示しないが、電力回路34のさらなる構成要素を設けることもできる。
【0052】
軸受シールド6上の環状領域27又は冷却領域29に、電力回路34の少なくとも1つの構成要素35の取り付け領域を作ることができる。軸受シールド6の冷却によって、特に冷却領域29の集中的な冷却によって、電力回路34の各構成要素35の過熱を効率的に防止することができる。特に、この構成要素35の廃熱も効率的に放散することができる。
【0053】
一方ではフェライトコア21と軸受シールド6との間、他方では電力回路34のそれぞれの構成要素35の間の熱を伝達する結合は、プレストレスによる接合によって、及び/又は、ここでは図示しないが、サーマルペーストやサーマルパッドなどの熱伝導性材料の使用によって、実現することができる。
【0054】
軸受シールド6は、鋳造部品とすることができ、この鋳造部品は、例えば、ロスト鋳造中子(verlorenem Gusskern)を用いて、一体化された冷却材ダクト23とともに製造することができる。軸受シールド6は、3Dプリント部品とすることもできる。また、軸受シールド6をいくつかの部品で構成して、そこに冷却材ダクト23を形成することも考えられる。
【0055】
ここに示された例では、冷却材入口24は、半径方向を向いており、軸受シールド6の半径方向外周36に配置されている。それとは異なり、例では、冷却材出口25は、軸方向を向いており、軸受シールド6の内側に配置され、組み立てられた状態では、固定子ハウジング5の方、そして
図6でのみ観察者の方を向いている。これによって、冷却材ダクト23は、冷却材出口25を介して、回転子冷却機構41の冷却材入口領域43に特に容易に接続することができ、この回転子冷却機構41は、例えば、回転子シャフト9を通って誘導される回転子冷却材ダクト42を有する。
【0056】
ここに示された例では、フェライトコア21及び/又は電力回路34の各構成要素35は、固定子ハウジング5から離れる方を向く外側に配置されている。
【国際調査報告】