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特表2024-540002治療剤送達のための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】治療剤送達のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/867 20060101AFI20241024BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241024BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20241024BHJP
   C07D 473/18 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C12N15/24
C12N15/33
C12N15/54
A61K35/76
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/522
C07D473/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525021
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 US2022047596
(87)【国際公開番号】W WO2023076177
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/271,674
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/413,165
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505389271
【氏名又は名称】ジェンビーボ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GENVIVO, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ブリリー
(72)【発明者】
【氏名】ロー,セシリア
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ロバート・ジー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB07
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA07
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
治療剤を送達するための組成物が本明細書に記載される。治療剤を送達するための本明細書に記載される組成物を使用する方法も本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-12(IL-12)のP40サブユニットをコードする第1のポリヌクレオチド配列、インターロイキン-12のP35サブユニットをコードする第2のポリヌクレオチド配列、ならびに第1および第2のポリヌクレオチド配列の間の第3のポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む組換えレトロウイルスベクターであって、第3のポリヌクレオチド配列が、P40サブユニットとP35サブユニットとの間の切断を容易にする切断部位をコードする、組換えレトロウイルスベクター。
【請求項2】
切断部位が、フューリン切断部位を含む、請求項1に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項3】
フューリン切断部位が、アミノ酸配列RRKRを含む、請求項2に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項4】
核酸コンストラクトが、第1および第2のポリヌクレオチド配列の間の第4のポリヌクレオチド配列をさらに含み、第4のポリヌクレオチド配列は、自己切断ペプチドをコードする、請求項1に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項5】
自己切断ペプチドが、T2Aペプチド、P2Aペプチド、E2Aペプチド、F2Aペプチド、またはそれらの組合せを含む、請求項4に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項6】
T2Aペプチドが、アミノ酸配列EGRGSLLTCGDVEENPGPを含む、請求項5に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項7】
自己切断ペプチドが、アミノ酸配列GSGEGRGSLLTCGDVEENPGPを含むT2Aペプチドを含む、請求項5に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項8】
P2Aペプチドが、アミノ酸配列ATNFSLLKQAGDVEENPGPを含む、請求項5に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項9】
P2Aペプチドが、アミノ酸配列GSGATNFSLLKQAGDVEENPGPを含む、請求項5に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項10】
E2Aペプチドが、アミノ酸配列QCTNYALLKLAGDVESNPGPを含む、請求項5に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項11】
E2Aペプチドが、アミノ酸配列GSGQCTNYALLKLAGDVESNPGPを含む、請求項5に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項12】
F2Aペプチドが、アミノ酸配列VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGPを含む、請求項5に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項13】
F2Aペプチドが、アミノ酸配列GSGVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGPを含む、請求項5に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項14】
第3のポリヌクレオチド配列が、第4のポリヌクレオチド配列の上流にある、請求項3に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項15】
核酸コンストラクトが、第3および第4のポリヌクレオチド配列の間の第5のポリヌクレオチド配列をさらに含み、第5のポリヌクレオチド配列は、アミノ酸配列GSGをコードする、請求項14に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項16】
第1のポリヌクレオチド配列が、第2のポリヌクレオチド配列の上流にある、請求項1に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項17】
核酸コンストラクトが、第1のポリヌクレオチド配列のすぐ上流に第1の開始コドンを含み、第2のポリヌクレオチド配列のすぐ上流に第2の開始コドンを含む、請求項16に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項18】
核酸コンストラクトが、第1および第2のポリヌクレオチド配列の下流に第6のポリヌクレオチド配列をさらに含み、第6のポリヌクレオチド配列は、HisタグまたはFlag-タグをコードする、請求項17に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項19】
核酸コンストラクトが、チミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項20】
チミジンキナーゼが、野生型チミジンキナーゼと比べて細胞の致死活性が増加した突然変異した形態である、請求項19に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項21】
核酸コンストラクトが、IL-7をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項22】
インターロイキンのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む組換えレトロウイルスベクター。
【請求項23】
細胞中でインターロイキンのサブユニットが発現されると、インターロイキンのサブユニットが、細胞中でインターロイキンの発現をモジュレートする、請求項22に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項24】
インターロイキンのサブユニットが、P35サブユニットである、請求項22または23に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項25】
インターロイキンが、IL-12である、請求項22または23に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項26】
インターロイキンのサブユニットの発現が、細胞中で、インターロイキンに関連する毒性を減少させる、請求項22、24、または25に記載の組換えレトロウイルスベクター。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の組換えレトロウイルスベクターを含む医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む、対象におけるがんを処置する方法。
【請求項28】
a)チミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む組換えレトロウイルスベクターを含む医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップ、および
b)ヌクレオシド剤を共投与するステップ
をさらに含む、請求項27に記載の対象におけるがんを処置する方法。
【請求項29】
チミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチド配列およびインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチド配列が、同じ組換えレトロウイルスベクター中にある、請求項28に記載の対象におけるがんを処置する方法。
【請求項30】
チミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチド配列およびインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチド配列が、異なる組換えレトロウイルスベクター中にある、請求項28に記載の対象におけるがんを処置する方法。
【請求項31】
対象におけるインターロイキン-12レベルをモニターするステップ、および対象におけるインターロイキン-12レベルが予め決定された閾値に達している場合、対象におけるインターロイキン-12発現を阻害するステップをさらに含む、請求項28に記載の対象におけるがんを処置する方法。
【請求項32】
ヌクレオシド剤が、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アシクロビル、バラシクロビル、またはペンシクロビルの少なくとも1つである、請求項28に記載の対象におけるがんを処置する方法。
【請求項33】
チミジンキナーゼをコードする組換えレトロウイルスベクターおよびインターロイキン-12をコードする組換えレトロウイルスベクターが、異なるタイムポイントで対象に投与される、請求項32に記載の対象におけるがんを処置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[001]本出願は、2021年10月25日に出願された米国仮出願第63/271,674号、および2022年10月4日に出願された米国仮出願第63/413,165号の利益を主張し、これらの全体は、参照により本明細書に組み入れられる。
参照により組み入れ
[002]本明細書で述べられた全ての公報、特許、および特許出願は、それぞれ個々の公報、特許、または特許出願が具体的および個々に参照により組み入れられることが示されたのと同じ程度に参照により本明細書に組み入れられる。参照により組み入れられる公報および特許または特許出願が本明細書に含有される開示と矛盾する範囲で、本明細書は、このような矛盾する材料のいずれかにとって代わる、および/またはそれに優先するように意図されている。
【背景技術】
【0002】
[003]インターロイキン(IL)-12は、抗がんT細胞を活性化できるT細胞刺激薬であるため、がんのための可能性のある免疫療法剤として研究されてきた。IL-12は、IFN-γ、IL-2、またはTNF-αなどの特定の炎症性サイトカインの生産を誘導することによって抗腫瘍T細胞の発達を促進する。
【発明の概要】
【0003】
[004]現在利用可能なIL治療剤の制限のために、処置を必要とする対象をILで処置する組成物および方法の必要が未だある。したがって、一部の態様において、現在利用可能なIL治療剤を超える利点を付与するIL-12を発現するベクターが本明細書に記載される。第一に、IL-12タンパク質は、対象に直接注射されないため、起こり得る全身性の用量制限毒性を生じない。さらに、IL-12を発現するベクターの局所注射は、腫瘍領域における発現レベルを制御すると予想される。
【0004】
[005]本発明の開示は、IL-12のP40とP35サブユニットとを別々にコードするポリヌクレオチド配列、およびその間の追加のポリヌクレオチド配列を含有する組換えレトロウイルスベクターを提供する。P40およびP35サブユニットは個々に発現され、次いで一緒になってジスルフィド架橋によって連結されたヘテロ二量体を形成し、機能的になる。一部の実施形態において、追加のポリヌクレオチド配列は、P40サブユニットとP35サブユニットとの間に切断部位を含む。予期される切断部位としては、フューリン切断部位、自己切断ペプチド(例えば、T2A、P2A、E2A、F2A、またはあらゆる組合せ)、または両方が挙げられる。一部の他の実施形態において、ベクターは、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードする1つのみのポリヌクレオチド配列を含む。本発明の開示はまた、本明細書で開示されるレトロウイルスベクターのいずれかを対象に投与するステップによって、対象におけるがんまたは他の疾患もしくは状態(例えば、炎症または感染)を処置するための方法も提供する。
【0005】
[006]一部の態様において、IL-12のP40サブユニットをコードする第1のポリヌクレオチド配列、IL-12のP35サブユニットをコードする第2のポリヌクレオチド配列、ならびに第1および第2のポリヌクレオチド配列の間の第3のポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む組換えレトロウイルスベクターであって、第3のポリヌクレオチド配列は、P40サブユニットとP35サブユニットとの間の切断を容易にする切断部位をコードする、組換えレトロウイルスベクターが本明細書に記載される。一部の実施形態において、切断部位は、フューリン切断部位を含む。一部の実施形態において、フューリン切断部位は、アミノ酸配列RRKRを含む。一部の実施形態において、核酸コンストラクトは、第1および第2のポリヌクレオチド配列の間の第4のポリヌクレオチド配列をさらに含み、第4のポリヌクレオチド配列は、自己切断ペプチドをコードする。一部の実施形態において、自己切断ペプチドは、T2Aペプチド、P2Aペプチド、E2Aペプチド、F2Aペプチド、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、T2Aペプチドは、アミノ酸配列EGRGSLLTCGDVEENPGPを含む。一部の実施形態において、自己切断ペプチドは、アミノ酸配列GSGEGRGSLLTCGDVEENPGPを含むT2Aペプチドを含む。一部の実施形態において、P2Aペプチドは、アミノ酸配列ATNFSLLKQAGDVEENPGPを含む。一部の実施形態において、P2Aペプチドは、アミノ酸配列GSGATNFSLLKQAGDVEENPGPを含む。一部の実施形態において、E2Aペプチドは、アミノ酸配列QCTNYALLKLAGDVESNPGPを含む。一部の実施形態において、E2Aペプチドは、アミノ酸配列GSGQCTNYALLKLAGDVESNPGPを含む。一部の実施形態において、F2Aペプチドは、アミノ酸配列VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGPを含む。一部の実施形態において、F2Aペプチドは、アミノ酸配列GSGVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGPを含む。一部の実施形態において、第3のポリヌクレオチド配列は、第4のポリヌクレオチド配列の上流にある。一部の実施形態において、核酸コンストラクトは、第3および第4のポリヌクレオチド配列の間の第5のポリヌクレオチド配列をさらに含み、第5のポリヌクレオチド配列は、アミノ酸配列GSGをコードする。一部の実施形態において、第1のポリヌクレオチド配列は、第2のポリヌクレオチド配列の上流にある。一部の実施形態において、核酸コンストラクトは、第1のポリヌクレオチド配列のすぐ上流に第1の開始コドンを含み、第2のポリヌクレオチド配列のすぐ上流に第2の開始コドンを含む。一部の実施形態において、核酸コンストラクトは、第1および第2のポリヌクレオチド配列の下流に第6のポリヌクレオチド配列をさらに含み、第6のポリヌクレオチド配列は、HisタグまたはFlag-タグをコードする。一部の実施形態において、核酸コンストラクトは、チミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態において、チミジンキナーゼは、野生型チミジンキナーゼと比べて細胞の致死活性が増加した突然変異した形態である。一部の実施形態において、核酸コンストラクトは、IL-7をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む。
【0006】
[007]一部の態様において、対象におけるがんを処置するための方法であって、本明細書に記載される組換えレトロウイルスベクターを含む医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む、方法が本明細書に記載される。一部の実施形態において、方法は、チミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む組換えレトロウイルスベクターを含む医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップ、およびヌクレオシド剤を共投与するステップをさらに含む。一部の実施形態において、チミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチド配列およびインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチド配列は、同じ組換えレトロウイルスベクター中にある。一部の実施形態において、チミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチド配列およびインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチド配列は、異なる組換えレトロウイルスベクター中にある。一部の実施形態において、方法は、対象におけるインターロイキン-12レベルをモニターするステップ、および対象におけるインターロイキン-12レベルが予め決定された閾値に達している場合、対象におけるインターロイキン-12発現を阻害するステップをさらに含む。一部の実施形態において、ヌクレオシド剤は、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アシクロビル、バラシクロビル、またはペンシクロビルの少なくとも1つである。一部の実施形態において、チミジンキナーゼをコードする組換えレトロウイルスベクターおよびインターロイキン-12をコードする組換えレトロウイルスベクターは、異なるタイムポイントで対象に投与される。
【0007】
[008]この特許出願は、カラーで作製された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を含むこの特許または特許出願のコピーは、要請と必要料金の支払いに応じて特許庁により提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】[009]図1は、本明細書に記載されるペイロードベクター中のマウスIL-12(mIL-12)遺伝子インサートを例示する。
図2】[0010]図2は、本明細書に記載される例示的なベクター(マウスIL-12、mIL-12をコードするベクター、上;ヒトIL-12、hIL-12をコードするベクター、中央;およびヒトIL-7、hIL-7をIL-12と共にコードするベクター)を例示する。
図3】[0011]図3は、ウェスタンブロッティングによってmIL-12発現を例示する。
図4】[0012]図4は、ELISAによってmIL-12発現を例示する。
図5】[0013]図5は、商業的なrIL-12対mIL-12を発現するA375細胞の馴化培地(CM)での刺激によるIFN-γ生産を試験するための実験の設定を例示する。
図6】[0014]図6は、刺激に関する様々な量のIL-12でのIFN-γ ELISAの結果を例示する。
図7】[0015]図7は、商業的なrIL-12で、それに対してmIL-12を発現するA375細胞のCMで脾細胞を刺激した後の、ホットな腫瘍遺伝子発現を試験するための実験の設定を例示する。
図8】[0016]図8は、商業的なrIL-12およびmIL-12を発現するA375細胞のCMで脾細胞を刺激した後の、IFN-γおよび炎症性のホットな腫瘍遺伝子発現を例示する。
図9】[0017]図9は、商業的なrIL-12と、それに対するmIL-12を発現するCT26細胞のCMで脾細胞を刺激した後の、IFN-γ生産およびホットな腫瘍遺伝子発現を試験するための実験の設定を例示する。
図10】[0018]図10は、商業的なrIL-12およびmIL-12を発現するCT26細胞のCMで脾細胞を刺激した後の、IFN-γおよび炎症性のホットな腫瘍遺伝子発現を例示する。
図11】[0019]図11は、ルシフェラーゼ遺伝子単独またはルシフェラーゼおよびmIL-12遺伝子のいずれかを発現するCT26細胞の皮下埋め込みのマウスのイラストを例示する。
図12】[0020]図12は、CT26腫瘍細胞が埋め込まれた動物の生物発光画像を例示する。
図13】[0021]図13は、mIL-12または対照を発現するCT26細胞が埋め込まれた動物の生存曲線を例示する。
図14】[0022]図14は、対照およびmIL-12を発現する腫瘍組織の細胞DNAのDapi青色染色のバックグラウンドにおける抗CD8および抗CD11b染色を例示する。図の凡例で示される通り、矢印は、抗CD8および抗CD11b染色の場所を示し、括弧は、Dapi青色染色(抗CD8または抗CD11bのいずれかからの染色シグナルが欠如した細胞を示す)が優勢な領域を示す。3色の顕微鏡画像のグレースケール表示によって明白なように、mIL-12を発現するCT26腫瘍組織は、mIL-12発現が欠如した対照CT26腫瘍組織に存在しないCD8+細胞傷害性T細胞およびCD11b+骨髄性細胞による高い程度の浸潤を示す。CD8およびCD11bを発現する単離細胞は対照組織で観察されるが、それに対してこれらの細胞の集団は、mIL-12を発現する組織において劇的に富化される。
図15】[0023]図15は、mIL-12を発現する腫瘍組織からの炎症性のホットな腫瘍遺伝子の発現を例示する。
図16】[0024]図16は、対照またはCT26 mIL-12発現レシピエントグループから抽出された脾細胞とのインキュベーション後のCT26細胞の生存可能な細胞数を例示する。
図17】[0025]図17は、対照またはmIL-12脾細胞を用いたIFN-γ酵素免疫スポット(ELISpot)アッセイを例示する。
図18A】[0026]図18Aは、ヒトIL-12のP35サブユニットをコードする例示的なレトロウイルスベクターを例示する。
図18B】[0027]図18Bは、IL-12のP35サブユニットのコード化および発現のために本明細書に記載されるレトロウイルスベクターで形質導入されたA375細胞におけるP35の発現(左);ならびにP40サブユニットを安定して発現するA375細胞によるP40サブユニットの発現および分泌を示すウェスタンブロッティングを例示する。
図19】[0028]図19は、IL-12発現(ヒトIL-12またはhIL-12)のウェスタンブロッティングを例示する。IL-12(P70)発現は、P35の発現が増加したときに増加した。P70発現は、P40発現と無関係であった(例えば、P70発現は、P35の発現の増加に伴い増加したが、P40発現のときは一定であった)。
図20】[0029]図20は、hIL-12発現を定量化する例示的なELISAアッセイを例示する。図19と類似して、P35の発現単独の増加は、P70の発現を増加させることができた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0030]添付の特許請求の範囲において本開示の新規の特徴を詳細に述べる。本発明の開示の特徴および利点のよりよい理解は、例示的な実施形態を明記する以下の詳細な説明を参照することにより得られるであろう。
【0010】
概要
[0031]一部の態様において、それを必要とする対象において治療剤を発現させるための、ベクターおよびベクターを使用する方法が本明細書に記載される。一部の態様において、ベクターは、組成物または医薬組成物に製剤化することができる。一部の態様において、ベクターは、組換えレトロウイルスベクターである。一部の態様において、ベクターは、少なくとも1つのインターロイキン(IL)またはILのサブユニットをコードする。図2は、例示的な組換えレトロウイルスベクター(mIL-12レトロベクター)を例示し、本明細書に記載されるIL-12(mIL-12)をコードする核酸を示す。一部の態様において、ベクターは、ILの少なくとも2つのサブユニットをコードする。一部の態様において、ベクターは、切断部位をコードし、この場合、切断事象のとき、ベクターによってコードされたILの少なくとも2つのサブユニットが切断される。一部の態様において、切断部位は、自己切断部位(例えば、リボザイム部位または自己切断ペプチド)を含む。一部の態様において、切断部位は、ペプチド切断部位を含み、ILの少なくとも2つのサブユニットは、内因性または外因性プロテアーゼによって、または自己切断によって切断することができる。一部の態様において、切断されたILサブユニットは、互いに複合体化して、機能的なILを形成することができる。一部の態様において、切断されたILサブユニットは、他の内因性ILサブユニットと複合体化して、機能的なILを形成することができる。一部の実施形態において、ILは、IL-12、IL-23、IL-27、IL-35、またはIL-39を含むIL-12ファミリーに属する。一部の実施形態において、ILは、IL-12である。一部の実施形態において、IL-12は、P40サブユニットおよびP35サブユニットを含むヘテロ二量体を含む。一部の実施形態において、ILは、IL-7である。一部の態様において、ベクターは、2つのIL-12サブユニットとして(これは次いで二量体化してIL-12を形成する)または単一の組換えIL-12としてのいずれかでIL-12をコードする(図3)。一部の態様において、ベクターは、レトロウイルスベクターを含む。一部の態様において、ベクターは、プロドラッグであるヌクレオシド剤を、疾患または状態を処置するための細胞傷害性薬剤に変換することができる酵素をコードする。
【0011】
[0032]一部の態様において、それを必要とする対象を処置するための方法も本明細書に記載される。一部の態様において、方法は、少なくとも1つのILサブユニットをコードする少なくとも1つのベクターを対象に投与するステップを含む。一部の態様において、方法は、少なくとも1つのILサブユニットおよびプロドラッグであるヌクレオシド剤を変換する酵素をコードする少なくとも1つのベクターを対象に投与するステップを含む。一部の態様において、方法は、本明細書に記載されるベクターを、それを必要とする対象に投与しようとする組成物または医薬組成物に製剤化するステップを含む。一部の態様において、本明細書に記載される方法は、細胞中で、少なくとも1つのILサブユニット、またはプロドラッグであるヌクレオシド剤を細胞傷害性薬剤に変換することができる本明細書に記載される酵素(例えば、チミジンキナーゼ)を発現させるために、エクスビボで細胞を少なくとも1つのベクターと接触させるステップを含む。一部の態様において、方法は、少なくとも1つのベクターと接触させた細胞を、それを必要とする対象に投与することを含み、細胞は、少なくとも1つのILサブユニットまたは本明細書に記載される酵素を発現し、それを対象に送達し、それによって疾患または状態を有する対象を処置する。
【0012】
[0033]一部の態様において、疾患または状態は、がん(例えば、新形成、腫瘍、または病変)である。一部の態様において、がん細胞または腫瘍を、インターロイキン(例えば、IL-12またはIL-7)および/またはプロドラッグを細胞傷害性薬剤に変換することが可能な酵素と接触させることによって、対象におけるがんを処置するための方法であって、インターロイキンおよび/または酵素と接触させると、腫瘍は、コールドな腫瘍からホットな腫瘍に変換される、方法が本明細書に記載される。一部の態様において、コールドな腫瘍は、著しい免疫学的な活性が欠如している腫瘍またはがん細胞であり、腫瘍の存在に関する免疫系によって相対的に高い程度の寛容を示す可能性がある。このような寛容は、このようなコールドな腫瘍またはがん細胞に向けられたロバストな免疫応答に依存すると予想されるあらゆるがん処置様式に負の影響を与える可能性がある。一部の態様において、ホットな腫瘍は、腫瘍細胞による免疫系によって相対的に低い寛容に依存する処置様式を支持できる免疫学的な活性のレベルの増加を示す腫瘍またはがん細胞である。本明細書に記載される方法は、コールドな腫瘍をホットな腫瘍に変換する意図で、本明細書に記載されるベクターが、インターロイキン(例えば、IL-12またはIL-7)の局所的な発現を送達する可能性を強化する。このような変換は、腫瘍またはがん細胞が、本明細書に記載されるベクターで処置されている対象による免疫応答の影響を受けやすくすることができる。
【0013】
[0034]一部の実施形態において、疾患または状態は、炎症または感染(例えば、細菌、原生動物、マイコバクテリウム、真菌、またはウイルスによる感染)である。一部の実施形態において、疾患または状態は、感染によって引き起こされる炎症である。
【0014】
ベクター
[0035]一部の態様において、インターロイキン、インターロイキンのサブユニット、またはそれらの組合せをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含む組換えレトロウイルスベクターが本明細書に記載される。一部の実施形態において、ベクターは、少なくとも1つのインターロイキンサブユニットをコードする。一部の実施形態において、ベクターは、少なくとも2つのインターロイキンサブユニットをコードし、少なくとも2つのインターロイキンサブユニットは、同一であるかまたは異なっている。一部の実施形態において、ベクターは、1つのインターロイキンサブユニットをコードする。一部の実施形態において、ベクターは、2つのインターロイキンサブユニットをコードする。一部の実施形態において、ベクターは、2つの異なるインターロイキンサブユニットをコードする。一部の実施形態において、ベクターは、2つまたはそれより多くの異なるインターロイキンサブユニットをコードする。一部の実施形態において、ベクターは、インターロイキン、インターロイキンのサブユニット、またはそれらの組合せを発現させるための少なくとも1つの開始コドンを含む。一部の実施形態において、ベクターは、2つのインターロイキン、インターロイキンの2つのサブユニット、またはそれらの組合せを発現させるための少なくとも2つの開始コドンを含む。一部の実施形態において、ベクターは、それぞれインターロイキンサブユニットを発現させるための2つのコドンを含む。一部の態様において、ベクターは、インターロイキンではない少なくとも1種の追加の酵素をコードする。一部の実施形態において、ベクターは、レトロウイルスベクターである。一部の態様において、ベクターによってコードされた、インターロイキン、インターロイキンのサブユニット、少なくとも1種の追加の酵素、またはそれらの組合せの発現は、インビボで行われてもよい。例えば、インターロイキン、インターロイキンのサブユニット、少なくとも1種の追加の酵素、またはそれらの組合せは、直接的に、または本明細書に記載される組成物(例えば、医薬組成物)としてのいずれかでベクターを対象に投与することによって、それを必要とする対象においてインビボで発現させることができる。一部の実施形態において、ベクターは、最初に、インターロイキン、インターロイキンのサブユニット、少なくとも1種の追加の酵素、またはそれらの組合せを発現させるために、エクスビボで細胞に導入することができる。一部の態様において、ベクターを含む細胞は次いで、それを必要とする対象に投与することができ、投与された細胞は、インターロイキン、インターロイキンのサブユニット、少なくとも1種の追加の酵素、またはそれらの組合せを、それを必要とする対象においてインビボで発現することができる。
【0015】
[0036]一部の実施形態において、ベクターは、インターロイキン、インターロイキンのサブユニット、またはそれらの組合せをコードする少なくとも1種のポリヌクレオチドを含む。インターロイキンの非限定的な例としては、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36、IL-37、IL-38、IL-39、IL-40、またはIL-41を挙げることができる。一部の実施形態において、インターロイキンは、IL-7を含む。一部の実施形態において、インターロイキンは、IL-12を含む。一部の実施形態において、ベクターは、インターロイキン-12(IL-12)のP40サブユニットをコードする第1のポリヌクレオチド配列、およびIL-12のP35サブユニットをコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む。一部の態様において、ベクターは、第1および第2のポリヌクレオチド配列の間に第3のポリヌクレオチド配列を含み、第3のポリヌクレオチド配列は、P40サブユニットとP35サブユニットとの間の切断を容易にする切断部位をコードする。一部の態様において、第3のポリヌクレオチド配列は、ペプチド切断部位をコードする。一部の実施形態において、切断部位は、内因性プロテアーゼによって標的化され、切断され得る。一部の実施形態において、内因性プロテアーゼは、フューリンを含む。一部の実施形態において、切断部位は、RXYRのアミノ酸配列を含むフューリン切断部位であり、式中、Rは、アルギニンであり、Yは、アルギニンまたはリジンであってもよい。一部の実施形態において、切断部位は、RRKRのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、切断部位は、RKRRのアミノ酸配列を含む。
【0016】
[0037]一部の態様において、ペプチド切断部位は、自己切断ペプチド、例えばT2A、P2A、E2A、またはF2Aである。一部の実施形態において、ペプチド切断部位は、アミノ酸配列:EGRGSLLTCGDVEENPGPを含むT2Aペプチドを含む。一部の実施形態において、ペプチド切断部位は、アミノ酸配列:GSGEGRGSLLTCGDVEENPGPを含むT2Aペプチドを含む。一部の実施形態において、ペプチド切断部位は、アミノ酸配列:ATNFSLLKQAGDVEENPGPを含むP2Aペプチドを含む。一部の実施形態において、ペプチド切断部位は、アミノ酸配列:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGPを含むP2Aペプチドを含む。一部の実施形態において、ペプチド切断部位は、アミノ酸配列:QCTNYALLKLAGDVESNPGPを含むE2Aペプチドを含む。一部の実施形態において、ペプチド切断部位は、アミノ酸配列:GSGQCTNYALLKLAGDVESNPGPを含むE2Aペプチドを含む。一部の実施形態において、ペプチド切断部位は、アミノ酸配列:VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGPを含むF2Aペプチドを含む。一部の実施形態において、ペプチド切断部位は、アミノ酸配列:GSGVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGPを含むF2Aペプチドを含む。
【0017】
[0038]一部の実施形態において、ベクターは、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードする1つのみのポリヌクレオチド配列を含む。例えば、ベクターは、インターロイキンのサブユニットのみ、例えばIL-12のみをコードしていてもよい。図18~20で示されるように、IL-12のP35サブユニットをコードするレトロウイルスベクターは、IL-12の発現を誘導するかまたは増加させるのに十分であった。一部の実施形態において、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードするベクターは、インターロイキン治療剤に関連する毒性を減少させることができる。一部の実施形態において、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードするベクターは、インターロイキンのサブユニットの発現に起因するインターロイキン治療剤に関連する毒性を減少させることができる。一部の実施形態において、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードするベクターは、インターロイキンの治療効能を減少させることなく、インターロイキン治療剤に関連する毒性を減少させることができる。一部の実施形態において、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードするベクターは、インターロイキンの発現または存在度をモジュレートすることによって、インターロイキン治療剤に関連する毒性を減少させることができる。例えば、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードするベクターは、インターロイキン治療剤の処置が必要な対象において、インビボにおけるインターロイキンの発現または存在度をモジュレートすることによって、インターロイキン治療剤に関連する毒性を減少させることができる。
【0018】
[0039]一部の実施形態において、ベクターは、少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させるための少なくとも1つのプロモーターを含む。例えば、ベクターは、本明細書に記載されるインターロイキン(例えば、P40サブユニットおよびP35サブユニット)をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させるためのCMVプロモーターを含む。プロモーターの他の例としては、レトロウイルスのLTR;SV40プロモーター;ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター;ヒストンプロモーター;polIIIプロモーター、β-アクチンプロモーター;誘導性プロモーター、例えばMMTVプロモーター、メタロチオネインプロモーター;熱ショックプロモーター;アデノウイルスプロモーター;アルブミンプロモーター;ApoAIプロモーター;B19パルボウイルスプロモーター;ヒトグロビンプロモーター;ウイルスチミジンキナーゼプロモーター、例えば単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼプロモーター;レトロウイルスのLTR;ヒト成長ホルモンプロモーター、およびMxIFN誘導性プロモーターを挙げることができる。一部の実施形態において、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。一部の実施形態において、組織特異的プロモーターは、チロシナーゼ関連プロモーター(TRP-1およびTRP-2)、DF3エンハンサー(乳房細胞に関する)、SLPIプロモーター(分泌性ロイコプロテアーゼ阻害剤、多くのタイプの癌腫で発現される)、TRS(組織特異的な調節配列)、α-フェトプロテインプロモーター(正常な肝細胞および形質転換した肝細胞それぞれに特異的)、癌胎児性抗原プロモーター(消化管、肺、乳房および他の組織の形質転換した細胞における使用に関する)、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター(メラニン細胞に関する)、神経芽細胞腫における使用に関するコリンアセチルトランスフェラーゼまたはニューロン特異的なエノラーゼプロモーター、グリア線維芽細胞腫の調節配列、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、c-erb B-2プロモーター、PGKプロモーター、PEPCKプロモーター、乳清酸性プロモーター(whey acidic promoter)(乳房組織)、ならびにカゼインプロモーター(乳房組織)および脂肪細胞P2プロモーターを含む群から選択される。一部の実施形態において、プロモーターは、ウイルス特異的なプロモーター(例えば、レトロウイルスのプロモーター、加えてHIVプロモーターなど他のプロモーター)、肝炎、ヘルペス(例えば、EBV)である。一部の実施形態において、プロモーターは、天然のHSV-TKプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは、細菌、真菌または寄生虫(例えば、マラリア)特異的なプロモーターであり、ウイルス、細菌、真菌、または寄生体に感染した特異的な細胞または組織を標的化するために利用される。
【0019】
[0040]一部の実施形態において、ベクターは、インターロイキンまたはインターロイキンサブユニットを細胞中で別々に発現させるために、2つまたはそれより多くのプロモーターを含む。一部の態様において、ベクターは、精製、画像化、または発現制御目的のためのHisタグまたはFlagタグなどのタグをコードする核酸配列を含む。
【0020】
[0041]一部の態様において、ベクターは、レトロウイルスベクターなどのウイルスベクターである。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳類細胞、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用される方法になりつつある。一部の実施形態において、他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純疱疹ウイルスI、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはシンドビスウイルスから誘導される。ウイルスベクターの非限定的な例としては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、ポックスベクター、パルボウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、または単純疱疹ウイルスベクター(HSV)を挙げることができる。一部の場合において、レトロウイルスベクターとしては、ガンマレトロウイルスベクター、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV、MMLV、MuLV、またはMLV)またはマウス幹細胞ウイルス(MSCV)ゲノム由来のベクターが挙げられる。一部の場合において、レトロウイルスベクターとしてはまた、レンチウイルスベクター、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)ゲノム由来のレンチウイルスベクターも挙げられる。一部の場合において、AAVベクターとしては、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、またはAAV9血清型が挙げられる。一部の場合において、ウイルスベクターは、2つまたはそれより多くのウイルスからのウイルス部分を含むキメラウイルスベクターである。追加の例において、ウイルスベクターは、組換えウイルスベクターである。
【0021】
[0042]一部の実施形態において、ベクターは、インターロイキンではない酵素をコードする。一部の態様において、ベクターは、ヌクレオシド剤を、本明細書に記載される疾患または状態に関連する細胞を致死させるための細胞傷害性薬剤に変換できる酵素をコードする。一部の実施形態において、酵素は、基質として核酸ヌクレオチドを有するキナーゼを含む。一部の実施形態において、キナーゼは、チミジンキナーゼであり、この場合、チミジンキナーゼは、天然ヌクレオシド基質に加えてヌクレオシドアナログもリン酸化するサルベージ経路酵素である。一般的に、ウイルスチミジンキナーゼは、ウイルスチミジンキナーゼを発現すること細胞へのガンシクロビルまたはアシクロビルなどのヌクレオシドアナログの投与によって治療的に活用でき、この場合、ウイルスチミジンキナーゼは、ヌクレオシドアナログをリン酸化し、細胞を致死させることが可能な毒性生成物を作り出す。本発明の開示のウイルスチミジンキナーゼは、多種多様のウイルスチミジンキナーゼから調製することができる。一部の実施形態において、ウイルスチミジンキナーゼ突然変異体は、例えば、霊長類ヘルペスウイルスと鳥ヘルペスウイルスなどの非霊長類ヘルペスウイルスの両方を含むヘルペスウイルス科のチミジンキナーゼから誘導される。好適なヘルペスウイルスの代表的な例としては、例えば、単純疱疹ウイルス(HSV)1型、単純疱疹ウイルス2型、水痘帯状疱疹ウイルス、マーモセットヘルペスウイルス、ネコヘルペスウイルス1型、仮性狂犬病ウイルス、ウマヘルペスウイルス1型、ウシヘルペスウイルス1型、シチメンチョウヘルペスウイルス、マレック病ウイルス、ヘルペスウイルスサイミリ、またはエプスタインバーウイルスが挙げられる。
【0022】
[0043]一部の態様において、本明細書に記載されるチミジンキナーゼは、突然変異チミジンキナーゼであってもよく、この場合、突然変異チミジンキナーゼは、少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む。一部の態様において、突然変異チミジンキナーゼは、HSV1-TKの野生型アミノ酸配列:MASYPGHQHASAFDQAARSRGHSNRRTALRPRRQQEATEVRPEQKMPTLLRVYIDGPHGMGKTTTTQLLVALGSRDDIVYVPEPMTYWRVLGASETIANIYTTQHRLDQGEISAGDAAVVMTSAQITMGMPYAVTDAVLAPHIGGEAGSSHAPPPALTLIFDRHPIAALLCYPAARYLMGSMTPQAVLAFVALIPPTLPGTNIVLGALPEDRHIDRLAKRQRPGERLDLAMLAAIRRVYGLLANTVRYLQCGGSWREDWGQLSGTAVPPQGAEPQSNAGPRPHIGDTLFTLFRAPELLAPNGDLYNVFAWALDVLAKRLR(配列番号1)と比較して、少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む突然変異単純疱疹ウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV1-TK)である。一部の態様において、突然変異体HSV1-TKは、HSV1-TKアミノ酸配列(例えば、配列番号1)に、少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高度な配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、突然変異体HSV-1-TKは、核輸出配列(NES)を含む。一部の態様において、NESは、LQKKLEELELDG(配列番号2)のアミノ酸配列を含む。
【0023】
[0044]一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、HSV1-TKの野生型アミノ酸配列(配列番号1)と比較して、アミノ酸残基25、26、32、33、167、168、またはそれらの組合せに、少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む。一部の実施形態において、突然変異は、野生型アミノ酸を、極性、非極性、塩基性または酸性アミノ酸で置換することを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基167、168、または両方において突然変異している。一例において、配列は、アミノ酸残基167において突然変異している。別の例において、配列は、アミノ酸残基168において突然変異している。別の例において、配列は、アミノ酸残基167および168において突然変異している。アミノ酸残基167は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、およびフェニルアラニンに突然変異していてもよい。アミノ酸残基168は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンに突然変異していてもよい。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25および/または26において突然変異している。アミノ酸残基25および/または26は、グリシン、セリン、およびグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸に突然変異していてもよい。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基32および/または33において突然変異している。アミノ酸残基32および/または33は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸に突然変異していてもよい。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25、26、32、および/または33において突然変異している。アミノ酸残基25、26、32、および/または33は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸に突然変異していてもよい。
【0024】
[0045]一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25および/または26;ならびに167において突然変異しており、アミノ酸残基25および/または26における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基167における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25および/または26;ならびに168において突然変異しており、アミノ酸残基25および/または26における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基168における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25および/または26;ならびに167および/または168において突然変異しており、アミノ酸残基25および/または26における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基167および/または168における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。
【0025】
[0046]一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基32および/または33;ならびに167において突然変異しており、アミノ酸残基32および/または33における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基167における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基32および/または33;ならびに168において突然変異しており、アミノ酸残基32および/または33における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基168における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基32および/または33;ならびに167および/または168において突然変異しており、アミノ酸残基32および/または33における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基167および/または168における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。
【0026】
[0047]一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25、26、32、および33;ならびに167において突然変異しており、アミノ酸残基25、26、32、および33における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基167における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25、26、32、および33;ならびに168において突然変異しており、アミノ酸残基25、26、32、および33における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基168における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25、26、32、および33;ならびに167および/または168において突然変異しており、アミノ酸残基25、26、32、および33における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基167および/または168における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。
【0027】
[0048]一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25および26または32および33;ならびに167において突然変異しており、アミノ酸残基25および26または32および33における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基167における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25および26または32および33;ならびに168において突然変異しており、アミノ酸残基25および26または32および33における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基168における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25および26または32および33;ならびに167および/または168において突然変異しており、アミノ酸残基25および26または32および33における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基167および/または168における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。
【0028】
[0049]一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25、26、32および/または33;ならびに167のうちのいずれか1つまたは複数において突然変異しており、アミノ酸残基25、26、32および/または33のうちのいずれか1つまたは複数における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基167における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25、26、32および/または33;ならびに168のうちのいずれか1つまたは複数において突然変異しており、アミノ酸残基25、26、32および/または33のうちのいずれか1つまたは複数における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基168における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、アミノ酸残基25、26、32および/または33;ならびに167および/または168のうちのいずれか1つまたは複数において突然変異しており、アミノ酸残基25、26、32および/または33のうちのいずれか1つまたは複数における突然変異は、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸を含み;アミノ酸残基167および/または168における突然変異は、ヒスチジン、リジン、システイン、セリン、またはフェニルアラニンを含む。
【0029】
[0050]一部の実施形態において、ベクターは、突然変異HSV1-TKをコードすることに加えて、PiT-2、PiT-1、mCat-1(マウスカチオン性受容体-1;エコトロピックモロニーMLVの標的)、またはガンマレトロウイルスによって使用される他の受容体をコードしていてもよい。
【0030】
[0051]一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、野生型HSV1-TKと比較して、ヌクレオシド剤を細胞傷害性薬剤に変換する酵素活性の増加を含む。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、ヌクレオシド剤を細胞傷害性薬剤に変換する酵素活性を、同じヌクレオシド剤(例えば、プロドラッグ)を細胞傷害性薬剤に変換する野生型HSV1-TKの酵素活性と比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、1.0倍、2.0倍、5.0倍、10.0倍、またはそれより多く増加させる。
【0031】
[0052]一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、疾患または状態に関連する細胞を致死させるためのバイスタンダー効果を増加させる。「バイスタンダー効果」は、本明細書で使用される場合、HSV1-TK陽性細胞(例えば、本明細書に記載されるベクターと接触させた細胞)が、HSV1-TK陽性細胞においてHSV1-TK発現が誘導された後、隣接するHSV1-TK陰性細胞に致死作用を発揮する現象を指す。一部の実施形態において、突然変異HSV1-TKは、野生型HSV1-TK陽性細胞により誘導されたバイスタンダー効果と比較して、少なくとも0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、1.0倍、2.0倍、5.0倍、10.0倍、またはそれより高度にバイスタンダー効果を増加させる。
【0032】
方法
[0053]一部の実施形態において、本明細書に記載されるベクターを使用する方法が本明細書で開示される。一部の実施形態において、方法は、本明細書に記載されるベクターまたはベクターを含む医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象における疾患または状態を処置することを含む。一部の実施形態において、方法は、細胞をベクターと接触させること、それに続いて、細胞を対象に投与することを含む。一部の実施形態において、ベクターと接触させた細胞は、自己細胞である。例えば、細胞はまず、対象から単離されてもよく、任意選択で、ベクターと接触させる前に培養または拡大増殖される。一部の実施形態において、ベクターによってコードされたインターロイキン(例えば、IL-12のP40もしくはP35またはIL-7)またはHSV1-TKの発現は、対象に細胞を投与する前に、細胞中で検証することができる。図11~17は、インビボの実施例を例示しており、それにおいて、本明細書に記載されるベクターと接触させた細胞が、腫瘍を有するマウスに対して翻訳された後にがん細胞の致死をもたらすことができる。
【0033】
[0054]一部の実施形態において、方法は、2つまたはそれより多くのベクターを対象に投与することを含み、この場合、2つまたはそれより多くのベクターのうち第1のベクターは、本明細書に記載されるインターロイキン(例えば、IL-12のP40もしくはP35またはIL-7)をコードし、2つまたはそれより多くのベクターのうち第2のベクターは、本明細書に記載されるチミジンキナーゼ(例えば、突然変異したHSV1-TK)をコードする。一部の実施形態において、方法は、まず細胞を2つまたはそれより多くのベクターと接触させること、それに続いて細胞を対象に投与することを含む。実施形態において、インターロイキン(例えば、IL-12のP40もしくはP35またはIL-7)およびチミジンキナーゼ(例えば、突然変異したHSV1-TK)は、同じベクターによってコードされる。一部の実施形態において、投与は、あらゆる好適な投与様式全身投与(例えば、静脈内、吸入など)によってなされる。一部の実施形態において、対象は、ヒトである。一部の実施形態において、疾患または状態は、がんまたは病変である。一部の実施形態において、2つまたはそれより多くのベクターは、共投与されてもよい。一部の実施形態において、2つまたはそれより多くのベクターは、同時に共投与されてもよい。一部の実施形態において、2つまたはそれより多くのベクターは、異なるタイムポイントで共投与されてもよい。例えば、IL-12またはIL-7をコードする第1のベクターが対象に投与され、それに続いて、異なるタイムポイントで、突然変異チミジンキナーゼをコードする第2のベクターを投与することができる。
【0034】
[0055]一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、疾患または状態に関連する細胞または微環境にインターロイキンを送達する。一部の実施形態において、インターロイキンを送達するベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、対象へのインターロイキンの直接投与と比較して、対象における毒性を減少させる(例えば、疾患または状態に関連しない細胞の細胞死の減少またはホットな腫瘍遺伝子の発現の減少によって決定される場合)。一部の実施形態において、本明細書に記載されるベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物によってインターロイキンを送達することの毒性は、対象にインターロイキンを直接投与することにより誘導された毒性と比較して、少なくとも0.1分の1、0.2分の1、0.5分の1、1.0分の1、2.0分の1、5.0分の1、10.0分の1、50.0分の1、またはそれより高度に減少する。
【0035】
[0056]一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、疾患または状態に関連する細胞または微環境にIL-12またはIL-7を送達する。一部の実施形態において、IL-12(P40サブユニットおよびP35サブユニットまたは組換えIL-12のいずれかとして)またはIL-7を送達するベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、対象へのIL-12またはIL-7の直接投与と比較して、対象における毒性(例えば、疾患もしくは状態に関連しない細胞の細胞死の減少、またはホットな腫瘍遺伝子の発現の減少によって決定される通り)を減少させる。一部の実施形態において、本明細書に記載されるベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物によってIL-12またはIL-7を送達することの毒性は、対象にIL-12またはIL-7を直接投与することにより誘導された毒性と比較して、少なくとも0.1分の1、0.2分の1、0.5分の1、1.0分の1、2.0分の1、5.0分の1、10.0分の1、50.0分の1、またはそれより高度に減少する。
【0036】
[0057]一部の実施形態において、ベクターによってコードされたIL-12またはIL-7は、細胞によって発現および分泌される。一部の実施形態において、細胞によって発現または分泌されるIL-12またはIL-7は、対象において自然免疫のシグナル伝達または応答を刺激することができる。一部の実施形態において、方法は、疾患または状態を処置するために、発現または分泌されたインターロイキン(例えば、IL-12のP40もしくはP35またはIL-7)で内因性サイトカイン(例えば、IFN-γ)の生産を刺激することを含む。図5~10で示されるように、組換えレトロウイルスベクターによってコードされたIL-12は、脾細胞においてサイトカインまたはホットな腫瘍遺伝子発現(例えば、IFN-γ、T-bet、IL-2、IL-15、およびTNFα)を刺激することができる。ホットな腫瘍遺伝子発現は、内因性免疫応答を開始させる本明細書に記載されるサイトカインなどの遺伝子産物の発現を指すことができる。したがって、ホットな腫瘍遺伝子の発現は、内因性免疫応答によって疾患または状態に関連する細胞(例えば、がんまたは腫瘍細胞)の致死を引き起こすことができる。
【0037】
[0058]一部の実施形態において、ベクターは、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードする1つのみのポリヌクレオチド配列を含む。例えば、ベクターは、インターロイキンのサブユニットのみ、例えばIL-12のみをコードしていてもよい。図18~20で示されるように、IL-12のP35サブユニットをコードするレトロウイルスベクターは、P40が存在する場合、IL-12の発現を誘導するかまたは増加させるのに十分であった。一部の実施形態において、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードするベクターは、インターロイキン治療剤に関連する毒性を減少させることができる。一部の実施形態において、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードするベクターは、インターロイキンのサブユニットの発現に起因するインターロイキン治療剤に関連する毒性を減少させることができる。一部の実施形態において、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードするベクターは、インターロイキンの治療効能を減少させることなく、インターロイキン治療剤に関連する毒性を減少させることができる。一部の実施形態において、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードするベクターは、インターロイキンの発現または存在度をモジュレートすることによって、インターロイキン治療剤に関連する毒性を減少させることができる。例えば、インターロイキンまたはインターロイキンのサブユニットをコードするベクターは、インターロイキン治療剤の処置が必要な対象において、インビボにおけるインターロイキンの発現または存在度をモジュレートすることによって、インターロイキン治療剤に関連する毒性を減少させることができる。
【0038】
[0059]一部の実施形態において、インターロイキンを送達するベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、対象へのインターロイキンの直接投与と比較して、対象における疾患または状態を処置することに関する効能を増加させる(例えば、腫瘍細胞の細胞死の増加またはホットな腫瘍遺伝子の発現の増加によって決定される場合)。一部の実施形態において、本明細書に記載されるベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物によってインターロイキンを送達することによって疾患または状態を処置することに関する効能は、対象にインターロイキンを直接投与することによって疾患または状態を処置する場合の効能と比較して、少なくとも0.1分の1、0.2分の1、0.5分の1、1.0分の1、2.0分の1、5.0分の1、10.0分の1、50.0分の1、またはそれより高度に減少する。
【0039】
[0060]一部の実施形態において、IL-12(P40サブユニットおよびP35サブユニットまたは組換えIL-12のいずれかとして)またはIL-7を送達するベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、対象へのIL-12またはIL-7の直接投与と比較して、対象における疾患または状態を処置することに関する効能を増加させる(例えば、腫瘍細胞の細胞死の増加またはホットな腫瘍遺伝子の発現の増加によって決定される場合)。一部の実施形態において、本明細書に記載されるベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物によってIL-12またはIL-7を送達することによって疾患または状態を処置することに関する効能は、対象にIL-12またはIL-7を直接投与することによって疾患または状態を処置する場合の効能と比較して、少なくとも0.1分の1、0.2分の1、0.5分の1、1.0分の1、2.0分の1、5.0分の1、10.0分の1、50.0分の1、またはそれより高度に減少する。
【0040】
[0061]一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、期間中に少なくとも1回(例えば、2日毎、週2回、週1回、毎週、1ヶ月当たり3回、1ヶ月当たり2回、1ヶ月当たり1回、2ヶ月毎、3ヶ月毎、4ヶ月毎、5ヶ月毎、6ヶ月毎、7ヶ月毎、8ヶ月毎、9ヶ月毎、10ヶ月毎、11ヶ月毎、年1回)投与される。一部の実施形態において、組成物は、期間中に2回またはそれより多く(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60,70、80、90、100回)投与される。
【0041】
[0062]一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、様々な形態および例えば経口または局所投与などの経路によって、治療有効量で投与される。一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、腫瘍内、非経口、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、腹膜内、大脳内、クモ膜下、眼球内、胸骨内、眼、内皮、局所、鼻腔内、肺内、直腸、動脈内、髄腔内、吸入法、病巣内、皮内、硬膜外、嚢内、被膜下、心臓内、経気管、表皮下、クモ膜下、または脊髄内への投与、例えば、注射または注入によって投与されてもよい。一部の実施形態において、組成物は、上皮または粘膜皮膚の内層を介した吸収(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜投与)によって投与されてもよい。一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、複数の投与経路を介して送達される。
【0042】
[0063]一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、静脈内注入によって投与される。一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、またはベクターを含む医薬組成物は、長い期間にわたる、例えば24時間より長い期間にわたる遅い連続的な注入によって投与される。一部の態様において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、局所的な方式で、例えば臓器への直接的な薬剤の注射を介して、投与してもよいし、任意選択でデポー製剤または持続放出製剤またはインプラントで投与してもよい。
【0043】
[0064]一部の実施形態において、方法は、対象が処置された後に、対象におけるIL-12またはIL-7などのインターロイキンの発現をモニターすることを含む。一部の態様において、方法は、IL-12またはIL-7の発現レベルをモニターすることを含み、対象においてIL-12またはIL-7発現が予め決定された閾値に達した場合、インターロイキン阻害剤を対象に投与することができる。
【0044】
[0065]一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または本明細書で提供される医薬組成物は、少なくとも1種の追加の治療剤、例えば、抗ウイルス療法剤、化学療法剤、抗生物質、細胞療法剤、サイトカイン療法剤、または抗炎症剤と共に投与してもよい。一部の実施形態において、少なくとも1種の追加の治療剤は、ヌクレオシド剤(例えば、プロドラッグ)を含む。プロドラッグの非限定的な例としては、チミジンキナーゼの場合、FHBG(9-[4-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン)、FHPG(9-([3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロポキシ]メチル)グアニン)、FGCV(フルオロガンシクロビル)、FPCV(フルオロペンシクロビル)、FIAU(1-(2’-デオキシ-2’-フルオロ-1-β-D-アラビノフラノシル)-5-ヨードウラシル)、FEAU(フルオロ-5-エチル-1-ベータ-D-アラビノフラノシルウラシル)、FMAU(フルオロ-5-メチル-1-ベータ-D-アラビノフラノシルウラシル)、FHOMP(6-((1-フルオロ-3-ヒドロキシプロパン-2-イルオキシ)メチル)-5-メチルピリミジン(methylpryrimidine)-2,4(1H,3H)-ジオン)、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アシクロビル、バラシクロビル(valacivlovir)、ペンシクロビル、N-1に4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)ブチル側鎖を有する放射標識したピリミジン(HHG-5-FEP)、または2,3-ジヒドロキシプロピル、アシクロビル、ガンシクロビルおよびペンシクロビル様側鎖が結合している5-(2-)ヒドロキシエチル)-および5-(3-ヒドロキシプロピル)置換ピリミジン誘導体;オキシドレダクターゼの場合、イホスファミド;VZV-TKの場合、6-メトキシプリンアラビノシド;シトシンデアミナーゼの場合、5-フルオロシトシン;ベータ-グルクロニダーゼの場合、ドキソルビシン;ニトロレダクターゼの場合、CB1954およびニトロフラゾン;およびカルボキシペプチダーゼAの場合、N-(シアノアセチル)-L-フェニルアラニン、またはN-(3-クロロプロピオニル)-L-フェニルアラニンを挙げることができる。一部の実施形態において、ヌクレオシド剤は、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アシクロビル、バラシクロビル、またはペンシクロビルを含む。
【0045】
[0066]一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または本明細書で提供される医薬組成物は、疾患または状態の出現の前に、その間に、またはその後に投与することができる。一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、予防として使用することができ、対象に連続的に投与することができる。一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、疾患または状態に関連する症状の発症の前に対象に投与することができる。
【0046】
[0067]本開示の薬剤(例えば、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物)の実際の投薬量レベルは、対象(例えば、免疫化のための対象または処置のための対象)に対する毒性を生じさせずに、特定の対象、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を達成する薬剤の量が得られるように変更することができる。選択された投薬量レベルは、本明細書に記載される特定の組成物の活性、投与経路、投与の時間、排泄の頻度、処置の持続時間、採用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態および以前の病歴、ならびに医療分野において周知の同様の要因などの様々な薬物動態学的な要因に依存する可能性がある。
【0047】
[0068]投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療および/または予防応答)を提供するように調整することができる。例えば、単回のボーラスが投与されてもよいし、数回に分けた用量が長期にわたり投与されてもよいし、または治療状況の緊急性によって示される場合、用量は、比例的に低減または増加させてもよい。投与しやすさや投薬量の均一性のために、投薬量単位形態の非経口用組成物を配合することが特に有利である。投薬量単位形態は、本明細書で使用される場合、対象(例えば、免疫化のための対象または処置のための対象)にとって一体化された投薬として適した物理的に別々の単位を指す;各単位は、必要な医薬用担体に応じて所望の治療作用を生じるように計算された予め決定された量の活性薬剤を含有する。本開示の投薬量単位形態に関する詳細は、(a)活性薬剤の固有な特徴および達成しようとする特定の治療作用、ならびに(b)個体における感受性の処置のためにこのような活性薬剤を調合することにおける当業界において固有の制限によって決定することができ、それに直接的に依存する。用量は、環状ポリリボヌクレオチドもしくは抗体またはそれらの抗原結合断片の血漿濃度または局所濃度を参照することによって決定することができる。用量は、直鎖ポリリボヌクレオチドもしくは抗体またはそれらの抗原結合断片の血漿濃度または局所濃度を参照することによって決定することができる。
【0048】
[0069]一部の実施形態において、本明細書に記載されるベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、正確な投薬量の単回投与に好適な形態単位投薬形態であってもよい。単位剤形において、製剤は、適切な量の組成物を含有する単位用量に分割してもよい。単位剤形において、製剤は、適切な量の1つまたは複数の直鎖ポリリボヌクレオチド、抗体もしくはそれらの抗原結合断片、および/または治療剤を含有する単位用量に分割してもよい。単位投薬形態は、別々の量の製剤を含有するパッケージの形態であってもよい。非限定的な例は、パッケージ化された注射可能物質、バイアル、およびアンプルである。本明細書で開示される水性懸濁剤組成物は、単回用量の再び閉じることができない容器中にパッケージ化されていてもよい。複数回用量用の再び閉じることができる容器が、例えば保存剤と組み合わせて、または保存剤なしで使用できる。本明細書で開示される注射のための製剤は、単位剤形で、例えば保存剤を含むアンプルまたは複数回用量用の容器中に存在していてもよい。
【0049】
[0070]ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物の投薬量は、好ましくは、毒性がないかまたはほとんどないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、採用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変更することができる。治療有効用量は、最初は細胞培養アッセイから推測することができる。用量は、細胞培養において決定される場合、IC50(すなわち、最大感染の半分または最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成する動物モデルにおいてもたらすことができる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えばRT-qPCRまたはddPCR方法によって測定することができる。
【0050】
[0071]処置が必要な対象に投与しようとする本明細書で開示されるベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物の有効量または治療有効量は、様々な方法で決定することができる。一例として、量は、動物モデルにおけるウイルスのタイターまたは効能に基づいていてもよい。代替として、臨床治験で使用される用量レジメンは、一般的なガイドラインとして使用することもできる。
【0051】
[0072]一部の実施形態において、1日用量は、単回用量で投与してもよいし、または1日の様々な時間に数回に分けて投与してもよい。一部の実施形態において、より多くの投薬量が必要な場合があり、最適な最初の応答が得られたら経時的に低減してもよい。一部の実施形態において、処置は、連続的して数日、数週間、または数年であってもよいし、または休息期間を介在させて間隔をあけてもよい。一部の実施形態において、投薬量は、個体が受けている可能性がある他の処置に従って改変される。しかしながら、処置の方法は、決してレトロウイルス粒子の特定の濃度または範囲に限定されることはなく、処置されているそれぞれの個体と使用される各誘導体につき変更することができる。所定の個体にとって最大の作用を達成するのに、投薬量の個別化が必要な場合がある。一部の実施形態において、処置されている個体に投与される投薬量は、個体の年齢、疾患の重症度または段階、および処置経過への応答に応じて様々である。一部の実施形態において、投薬量を決定するための臨床パラメーターとしては、これらに限定されないが、腫瘍のサイズ、特定の悪性腫瘍の臨床試験に使用される腫瘍マーカーのレベルの変化が挙げられる。一部の実施形態において、処置を行う医師は、所定の個体に使用されることになる治療有効量を決定する。一部の実施形態において、本明細書で開示される療法は、必要に応じた頻度で、処置を行う医師によって必要と判断された期間にわたり投与される。
【0052】
[0073]一部の実施形態において、複数の治療剤のコース(例えば、第1および第2の治療剤のコース)が、処置が必要な対象に投与される。一部の実施形態において、第1および/または第2の治療剤のコースは、静脈内投与される。他の実施形態において、第1および/または第2の治療剤のコースは、動脈内注入、これらに限定されないが、肝動脈、大脳動脈、冠状動脈、肺動脈、腸骨動脈、腹腔動脈、胃動脈、脾動脈、腎動脈、生殖腺動脈、鎖骨下動脈、椎骨動脈、腋窩動脈、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈、頸動脈、大腿動脈、下腸間膜動脈および/または上腸間膜動脈を介した注入などを介して投与される。動脈内注入は、血管内処置、経皮処置または切開を伴う外科的アプローチを使用して達成してもよい。一部の実施形態において、第1および第2の治療剤のコースは、逐次的に投与されてもよい。さらに他の実施形態において、第1および第2の治療剤のコースは、同時に投与してもよい。さらに他の実施形態において、任意選択の第3の治療剤のコースは、第1および第2の治療剤のコースと逐次的に、またはそれと同時に投与されてもよい。
【0053】
[0074]一部の実施形態において、本明細書で開示されるベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、蓄積に基づいて高い用量の逐次的な、または同時に投与される治療剤のコースと共に投与されてもよい。例えば、一部の実施形態において、蓄積に基づいて治療剤のコースが、それを必要とする患者に全身投与されてもよく、例えば静脈内投与されてもよい。第1の治療剤のコースが全身投与されてもよい。代替として、第1の治療剤のコースが局所的な方式で投与され、例えば動脈内投与され、例えばそれを必要とする患者に、蓄積に基づいて動脈内注入を介して投与されてもよい。
【0054】
[0075]さらに他の実施形態において、それを必要とする対象は、高い用量のベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物の、全身性および動脈内注入の投与の組合せを、逐次的または同時のいずれかで受けてもよい。例えば、それを必要とする患者に、最初に、蓄積に基づいてベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物が全身投与されてもよく、それに続いて、動脈内注入、例えば肝動脈注入の追加の治療剤のコースが、蓄積に基づいた送達として投与されてもよい。
【0055】
[0076]処置が必要な対象はまた、全身または局所的のいずれかで(例えば動脈内注入、例えば肝動脈注入)、所定期間にわたりベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物を送達する治療剤のコースを投与することもできる。一部の実施形態において、期間は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、または少なくとも5年間であり得る。投与はまた、長期的な方式で、すなわち不確定の期間または無期限にわたり行ってもよい。
【0056】
[0077]ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物の投与はまた、定期的な方式で行ってもよく、例えば、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、少なくとも1日3回、少なくとも1日4回、少なくとも1日5回行ってもよい。ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物の送達の定期的な投与は、送達の時間に加えて投与様式に依存する場合がある。例えば、非経口投与は、長期間にわたり1日1回のみで行うことができ、それに対してベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物の送達の経口投与は、1日1回より多く行うことができ、その場合、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物の送達の投与は、より短い期間にわたり行われる。
【0057】
[0078]一実施形態において、対象は、第1の治療剤のコースと第2の治療剤のコースとの間に1~2日間の休止が許容される。一部の実施形態において、対象は、第1の治療剤のコースと第2の治療剤のコースとの間に2~4日間の休止が許容される。他の実施形態において、対象は、第1の治療剤のコースと第2の治療剤のコースとの間に少なくとも2日間の休止が許容される。さらに他の実施形態において、対象は、第1の治療剤のコースと第2の治療剤のコースとの間に少なくとも4日間の休止が許容される。さらに他の実施形態において、対象は、第1の治療剤のコースと第2の治療剤のコースとの間に少なくとも6日間の休止が許容される。一部の実施形態において、対象は、第1の治療剤のコースと第2の治療剤のコースとの間に少なくとも1週間の休止が許容される。さらに他の実施形態において、対象は、第1の治療剤のコースと第2の治療剤のコースとの間に少なくとも2週間の休止が許容される。一実施形態において、対象は、第1の治療剤のコースと第2の治療剤のコースとの間に少なくとも1ヶ月の休止が許容される。一部の実施形態において、対象は、第2の治療剤のコースと任意選択の第3の治療剤のコースとの間に少なくとも1~7日間の休止が許容される。さらに他の実施形態において、対象は、第2の治療剤のコースと任意選択の第3の治療剤のコースとの間に少なくとも1~2週間の休止が許容される。
【0058】
[0079]一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、本明細書に記載される疾患または状態に関連する細胞または微環境(例えば、がんまたは病変)におけるインターロイキン(例えば、IL-12のP40もしくはP35またはIL-7)およびチミジンキナーゼ(例えば、突然変異したHSV1-TK)の局所濃度を増加させるために投与される。一部の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、動脈内注入を介して投与され、それにより、特異的な臓器系に対する治療用ベクターの局所濃度が増加する。さらに他の実施形態において、ベクター、ベクターを含む細胞、または医薬組成物は、腫瘍内に投与される。一部の実施形態において、標的病変の場所に依存して、肝動脈のカテーテル法に続いて、肝臓病変を局所的に標的化するために、それぞれ膵十二指腸動脈、右肝動脈、および中肝動脈への注入が行われる。一部の実施形態において、ペプチドまたは送達ベクターの、肺、胃腸、脳、生殖器、脾臓または他の規定された臓器系などの他の臓器系への局所的な分布は、カテーテル法または他の局所送達系を介して達成される。一部の実施形態において、動脈内注入は、他のあらゆる利用可能な動脈源を介して達成され、そのような動脈源の例としては、これらに限定されないが、肝動脈、大脳動脈、冠状動脈、肺動脈、腸骨動脈、腹腔動脈、胃動脈、脾動脈、腎動脈、生殖腺動脈、鎖骨下動脈、椎骨動脈、腋窩動脈、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈、頸動脈、大腿動脈、下腸間膜動脈および/または上腸間膜動脈を介した注入が挙げられる。一部の実施形態において、動脈内注入は、血管内処置、経皮処置または切開を伴う外科的アプローチを使用して達成される。
【0059】
医薬組成物
[0080]治療剤(例えば、本明細書に記載されるベクターまたはベクターを含む細胞)を含む医薬組成物が本明細書に記載される。一部の態様において、本明細書に記載されるベクターと接触させた細胞は、インビボまたはインビトロにおいて、インターロイキン(例えば、IL-12のP40もしくはP35またはIL-7)、またはチミジンキナーゼ(例えば、突然変異したHSV1-TK)を発現する。一部の態様において、細胞は、対象から得られ;インビトロの環境において拡大増殖され;対象における疾患または状態を処置するために対象に投与し戻される。一部の態様において、細胞は、対象由来ではない源から得られる。一部の態様において、細胞は、細胞株から得られる。一部の実施形態において、細胞は、医薬組成物に製剤化される。一部の実施形態において、医薬組成物は、本明細書に記載されるヌクレオシド剤を含む。
【0060】
[0081]一部の態様において、医薬組成物は、医薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む。一部の態様において、本明細書に記載される医薬組成物は、本明細書に記載される細胞以外の少なくとも1種の追加の活性薬剤を含む。一部の態様において、少なくとも1つの追加の活性薬剤は、化学療法剤、細胞傷害性物質、サイトカイン、増殖阻害薬剤、抗ホルモン剤、抗血管形成剤、またはチェックポイント阻害剤である。
【0061】
[0082]本明細書で提供される処置または使用の方法を実施することにおいて、治療有効量の本明細書に記載される医薬組成物が、処置しようとする疾患または状態、例えばがんまたは病変を有する哺乳動物に投与される。一部の態様において、哺乳動物は、ヒトである。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康状態、使用される治療剤の効力および他の要因に応じて広範に変更することができる。本明細書に記載される治療剤、一部のケースでは組成物は、単独で使用してもよいし、または混合物の成分としての1種または複数の治療剤と組み合わせて使用してもよい。
【0062】
[0083]本明細書に記載される医薬組成物は、適切な投与経路によって対象に投与することができ、このような経路の例としては、これらに限定されないが、静脈内、動脈内、経口、非経口、口腔、局所、経皮、直腸、筋肉内、皮下、骨内、経粘膜、吸入法、または腹膜内投与経路が挙げられる。本明細書に記載される組成物としては、これらに限定されないが、水性液状分散剤、自己乳化型分散剤、固溶体、リポソーム分散剤、エアロゾル、固体剤形、粉末、即時放出製剤、放出制御製剤、速溶製剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、ならびに混合即時放出製剤および放出制御製剤が挙げられる。
【0063】
[0084]治療剤を含む医薬組成物は、従来の方式で製造することができ、例えば、単なる一例として、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠の形成、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入または圧縮プロセスによって製造することができる。
【0064】
[0085]医薬組成物は、少なくとも外因性の治療剤を、遊離酸もしくは遊離塩基の形態で、または医薬的に許容される塩の形態での活性成分として含んでいてもよい。加えて、本明細書に記載される方法および組成物は、N-酸化物(場合により)、結晶形態、非晶質相、加えて、同じタイプの活性を有するこれらの化合物の活性代謝産物の使用を含む。一部の態様において、治療剤は、非溶媒和の形態で、または例えば水、エタノールなどの医薬的に許容される溶媒との溶媒和の形態で存在する。治療剤の溶媒和の形態も、本明細書で開示されているものとみなされる。
【0065】
[0086]特定の実施形態において、本明細書で提供される医薬組成物は、微生物活性を阻害するための1種または複数の保存剤を含む。好適な保存剤としては、水銀を含有する物質、例えばメルフェン(merfen)およびチオメルサール;安定化された二酸化塩素;ならびに第四アンモニウム化合物、例えば塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化セチルピリジニウムが挙げられる。
【0066】
[0087]一部の態様において、本明細書に記載される医薬組成物は、抗酸化剤、金属キレート剤、チオールを含有する化合物および他の一般的な安定化剤から利益を得る。このような安定化剤の例としては、これらに限定されないが、(a)約0.5%~約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%~約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%~約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mMのEDTA、I 約0.01%~約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%~約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%~約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)多硫酸ペントサンおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムおよび亜鉛などの2価カチオン;または(n)それらの組合せが挙げられる。
【0067】
[0088]本明細書に記載される医薬組成物は、あらゆる好適な剤形に製剤化することができ、そのような剤形としては、これらに限定されないが、水性経口分散剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー剤、懸濁剤、固体経口用剤形、エアロゾル形、放出制御製剤、速溶製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、散剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、ならびに混合即時放出剤および放出制御製剤が挙げられる。一態様において、本明細書で論じられる治療剤、例えば治療剤は、筋肉内、皮下、または静脈注射に好適な医薬組成物に製剤化される。一態様において、筋肉内、皮下、または静脈注射に好適な製剤は、滅菌注射用溶液または分散剤に再水和するための、生理学的に許容される滅菌水性または非水性溶液、分散剤、懸濁剤または乳剤、および滅菌粉末を含む。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレン-グリコール、グリセロール、クレモフォールなど)、それらの好適な混合物、植物油(例えばオリーブ油)および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。適した流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤のケースでは必要な粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。一部の態様において、皮下注射に好適な製剤はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分配剤などの添加剤も含有する。微生物の増殖の防止は、様々な抗菌剤や抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にすることができる。一部のケースにおいて、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい。注射可能な医薬の形態の持効性吸収は、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅延させる物質の使用によって生じさせることができる。
【0068】
[0089]静脈注射または点滴または注入の場合、本明細書に記載される医薬組成物は、水溶液の形態で、好ましくは生理学的に適合する緩衝剤、例えばハンクス溶液、リンゲル液、または生理的緩衝食塩水の形態で製剤化される。経粘膜投与の場合、透過させようとするバリアに適切な浸透剤が製剤で使用される。他の非経口の注射剤の場合、適切な製剤は、水性または非水性溶液を、好ましくは生理学的に適合する緩衝剤または賦形剤と共に含む。
【0069】
[0090]非経口の注射剤は、ボーラス注射または連続注入を含む場合もある。注射のための医薬組成物は、単位剤形で、例えば添加された保存剤を含むアンプルまたは複数回用量用の容器の形態で存在していてもよい。本明細書に記載される医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の滅菌懸濁剤、溶剤または乳剤として、非経口の注射剤に好適な形態であってもよいし、懸濁化、安定化および/または分散剤などの成形剤を含有していてもよい。一態様において、活性成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水で構成するための粉末形態である。
【0070】
[0091]吸入による投与の場合、治療剤は、エアロゾル剤、ミスト剤または散剤として使用するために製剤化される。本明細書に記載される医薬組成物は、都合のよい形態としては、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスを使用した、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー供給の形態で送達される。加圧したエアロゾルのケースにおいて、投薬量単位は、定量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。吸入器または注入器における使用のための、本明細書に記載される治療剤と、ラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末ベースとの粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジ、例えば、単なる一例として、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジが製剤化されてもよい。組成物を含む製剤は、ベンジルアルコールもしくは他の好適な保存剤、フルオロカーボン、および/または当業界において公知の他の可溶化剤もしくは分散剤を採用する生理食塩水中の溶液として調製される。好ましくは、これらの組成物および製剤は、好適な非毒性の医薬的に許容される成分を用いて調製される。好適な担体の選択は、所望の経鼻剤形、例えば、溶液剤、懸濁剤、軟膏剤、またはゲル剤の正確な性質に依存する。経鼻剤形は、一般的に、活性成分に加えて大量の水を含有する。少量の他の成分、例えばpH調節剤、乳化剤もしくは分散剤、保存剤、界面活性剤、ゲル化剤、または緩衝化剤および他の安定化剤および可溶化剤が任意選択で存在する。好ましくは、経鼻剤形は、鼻の分泌物と等張であるべきである。
【0071】
[0092]別の態様において、剤形としては、マイクロカプセル化された製剤が挙げられる。一部の態様において、1種または複数の他の適合性の材料が、マイクロカプセル化材料中に存在する。材料の非限定的な例としては、pH調節剤、浸食促進剤、消泡剤、抗酸化剤、矯味矯臭剤、および担体材料、例えばバインダー、懸濁化剤、崩壊剤、増量剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、潤滑剤、湿潤剤、および希釈剤が挙げられる。
【0072】
[0093]経口投与のための液体製剤剤形は、任意選択で、これらに限定されないが、医薬的に許容される水性経口分散剤、乳剤、溶液剤、エリキシル剤、ゲル剤、およびシロップ剤からなる群から選択される水性懸濁剤である。治療剤に加えて、液体剤形は、任意選択で、添加剤、例えば(a)崩壊剤;(b)分散剤;(c)湿潤剤;(d)少なくとも1つの保存剤、(e)粘度増強薬剤、(f)少なくとも1種の甘味剤、および(g)少なくとも1種の矯味矯臭剤を含む。一部の態様において、水性分散剤は、結晶形成阻害剤をさらに含む。
【0073】
[0094]一部の態様において、本明細書に記載される医薬組成物は、自己乳化型薬物送達系(SEDDS)であってもよい。乳剤は、一方の不混和性相が他方に通常は液滴の形態で分散したものである。一般的に、乳剤は、力強い機械的分散によって作製される。SEDDSは、乳剤またはマイクロエマルジョンとは対照的に、過量の水に添加されると、いかなる外部の機械的分散またはかき混ぜがなくとも自発的に乳剤を形成する。SEDDSの利点は、溶液全体に液滴を分散させるのに穏やかな混合のみを必要とすることである。加えて、水または水性相は、任意選択で投与の直前に添加され、それにより不安定な、または疎水性の活性成分の安定性を確保する。したがって、SEDDSは、疎水性活性成分の経口および非経口送達のための有効な送達系を提供する。一部の態様において、SEDDSは、疎水性活性成分の生物学的利用率における改善を提供する。
【0074】
[0095]口腔製剤は、当業界において公知の様々な製剤を使用して投与される。加えて、本明細書に記載される口腔剤形は、剤形を口腔粘膜に接着させるのにも役立つ生体内分解性(加水分解性)のポリマー担体をさらに含んでいてもよい。口腔または舌下投与の場合、組成物は、従来の方式で製剤化される錠剤、ロゼンジ剤、またはゲル剤の形態をとっていてもよい。
【0075】
[0096]静脈注射の場合、医薬組成物は、任意選択で、水溶液の形態で、好ましくは生理学的に適合する緩衝剤、例えばハンクス溶液、リンゲル液、または生理的緩衝食塩水中の水溶液の形態で製剤化される。経粘膜投与の場合、透過させようとするバリアに適切な浸透剤が製剤で使用される。他の非経口の注射剤の場合、適切な製剤は、水性または非水性溶液を、好ましくは生理学的に適合する緩衝剤または賦形剤と共に含む。
【0076】
[0097]非経口の注射剤は、任意選択でボーラス注射または連続注入を含む。注射のための製剤は、任意選択で、単位剤形で、例えば添加された保存剤を含むアンプルまたは複数回用量用の容器で存在する。一部の態様において、本明細書に記載される組成物は、油性または水性ビヒクル中の滅菌懸濁剤、溶液剤または乳剤として非経口の注射剤に好適な形態であり、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの成形剤を含有する。非経口投与のための組成物は、水溶性形態で頸動脈小体の活性をモジュレートする薬剤の水溶液を含む。加えて、頸動脈小体の活性をモジュレートする薬剤の懸濁剤、例えば油性懸濁注射液は、任意選択で、必要に応じて調製される。
【0077】
[0098]従来の製剤技術としては、例えば、以下の方法:(1)乾式混合、(2)直接圧縮、(3)磨砕、(4)乾式もしくは非水性顆粒化、(5)湿式造粒、または(6)融合の1つまたは組合せが挙げられる。他の方法としては、例えば、噴霧乾燥、パンコーティング、溶融造粒、顆粒化、流動床噴霧乾燥またはコーティング(例えば、ワースターコーティング)、タンジェンシャルコーティング(tangential coating)、トップスプレー(top spraying)、錠剤形成、押出し成形などが挙げられる。
【0078】
[0099]一部の態様において、治療剤の粒子と、対象への経口投与のための少なくとも1種の分散剤または懸濁化剤とを含む医薬組成物が提供され得る。この製剤は、懸濁のための粉末および/または顆粒であってもよく、水と混合すると、実質的に一様の懸濁剤が得られる。
【0079】
[00100]さらに、医薬組成物は、任意選択で1種または複数のpH調節剤または緩衝剤を含み、その例としては、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸および塩酸などの酸;水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびトリス-ヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基;ならびにクエン酸/デキストロース、重炭酸ナトリウムおよび塩化アンモニウムなどの緩衝剤が挙げられる。このような酸、塩基および緩衝剤は、組成物のpHを許容できる範囲に維持するのに必要な量で含まれる。
【0080】
[00101]加えて、医薬組成物は、任意選択で、1種または複数の塩を、医薬組成物の浸透圧重量モル濃度を許容できる範囲にするのに必要な量で含む。このような塩としては、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムカチオンと、塩化物、クエン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、リン酸、炭酸水素、硫酸、チオ硫酸または重亜硫酸アニオンとを有するものが挙げられ、好適な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、および硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0081】
[00102]一実施形態において、本明細書に記載される水性懸濁剤および分散剤は、少なくとも4時間、均質な状態のままである。一実施形態において、水性懸濁剤は、1分間未満継続する物理的なかき混ぜによって、均質な懸濁剤に再懸濁される。さらに別の実施形態において、均一な水性分散液を維持するのにかき混ぜは必要ではない。
【0082】
[00103]経鼻投与のためのエアロゾル製剤は、一般的に、液滴またはスプレーの形態で鼻道に投与されるように設計された水溶液である。鼻用溶液は、それらが全体的に等張であり、約5.5~約6.5のpHを維持するようにわずかに緩衝化されているという点で鼻の分泌物と類似していてもよいが、この範囲外のpH値も加えて使用できる。抗微生物剤または保存剤も製剤に含まれていてもよい。
【0083】
[00104]吸入および吸入剤のためのエアロゾル製剤は、経鼻または経口呼吸器経路によって投与される場合、薬剤または薬剤の組合せが対象の呼吸樹に運搬されるように設計することができる。吸入溶液は、例えばネブライザーによって投与されてもよい。微粉末化されたかまたは液体の薬物を含む吸入または通気は、例えば分配に役立つように、噴射剤中の薬剤または薬剤の組合せの溶液または懸濁剤の医薬エアロゾルとして、呼吸器系に送達されてもよい。噴射剤は、液化ガスであってもよく、その例としては、ハロカーボン、例えば、フッ素化塩素化炭化水素、ハイドロクロロフルオロカーボン、およびハイドロクロロカーボンなどのフルオロカーボン、加えて、炭化水素および炭化水素エーテルが挙げられる。エアロゾル製剤はまた、他の成分を含んでいてもよく、例えば、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、加えて、界面活性剤または油および洗浄剤などの他の成分を含んでいてもよい。これらの成分は、製剤を安定化させたり、および/またはバルブ成分を潤滑化したりするのに役立つ可能性がある。
【0084】
キット
[00105]一部の態様において、本明細書に記載されるベクターを使用するためのキットが本明細書に記載される。一部の実施形態において、キットは、対象における疾患または状態を処置するために使用することができる。一部の態様において、キットは、ベクターまたはベクターを含む細胞から離れて、材料または成分の群を含む。一部の態様において、キットは、合成された、および/または本明細書に記載される細胞によって放出されるかもしくは発現された生体分子(例えば、ベクター、細胞、IL-12もしくはIL-7、突然変異HSV1-TK、またはそれらの組合せを含む治療剤)単位数をアッセイするための成分を含む。一部の態様において、キットは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)、PCR、およびqPCRなどのアッセイを実行するための成分を含む。キット中の構成される成分の正確な性質は、その意図する目的に依存する。例えば、キットは、対象における本明細書で開示される疾患または状態(例えば、がんまたは病変)を処置する目的のために設計されていてもよい。一部の態様において、キットは、特定には、哺乳類対象を処置する目的のために設計される。一部の態様において、キットは、特定には、ヒト対象を処置する目的のために設計される。
【0085】
[00106]使用説明書がキットに含まれていてもよい。一部の態様において、キットは、本明細書に記載されるベクター、細胞、または医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することに関する説明書を含む。一部の態様において、キットは、生体分子(例えば、IL-12またはIL-7、および突然変異HSV1-TKを含む治療剤)を発現するようにベクターまたは細胞をさらに操作することに関する説明書を含む。一部の態様において、キットは、貯蔵または輸送中に保存されていた可能性がある細胞を融解させること、またはそれ以外の方法で細胞の生物学的活性を回復させる説明書を含む。一部の態様において、キットは、その意図する目的(例えば、対象を処置するために使用される場合、治療効能)に関する効能を確認するために、保存された細胞の生存率を測定することに関する説明書を含む。
【0086】
[00107]任意選択で、キットはまた、他の有用な成分、例えば、希釈剤、緩衝剤、医薬的に許容される担体、シリンジ、カテーテル、アプリケーター、ピペッティングもしくは測定ツール、包帯材料または他の有用な装備も含有する。操作性および有用性を保存するいずれかの便利で好適な方法で貯蔵された、キットに組み立てられた材料または成分が、医師に提供されてもよい。例えば、成分は、溶解した、脱水した、または凍結乾燥した形態であってもよく、それらは、室温、冷蔵温度または冷凍温度で提供されてもよい。成分は、典型的には好適なパッケージング材料に含有される。
【0087】
[00108]独立した、または連続的な用語の使用、例えば、「であろう」、「ではないであろう」、「であるものとする」、「ではないものとする」、「でなければならない」、「である必要はない」、「最初に」、「初期に」、「次に」、「続いて」、「~の前に」、「~の後に」、「最後に」、および「最終的に」の使用は、本明細書で開示される本発明の実施形態の範囲を限定することを意味せず、例示的であることを意味する。
【0088】
[00109]単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、本明細書で使用される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、同様に複数形の形態を含むことが意図される。さらに、用語「包含する」、「包含すること」、「有する」、「有すること」、「と共に」、またはそれらの派生語は、このような用語が詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかで使用される程度に用語「含む」と類似した方式で包括的であることが意図される。
【0089】
[00110]語句「少なくとも1つの」、「1つまたは複数の」、および「および/または」は、本明細書で使用される場合、接続的および離接的の両方が有効なオープンエンドの表現である。例えば、表現「A、BおよびCの少なくとも1つ」、「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つまたは複数」、「A、B、またはCの1つまたは複数」および「A、B、および/またはC」のそれぞれは、A単独、B単独、C単独、AとBが一緒、AとCが一緒、BとCが一緒、またはA、BおよびCが一緒を意味する。
【0090】
[00111]「または」は、本明細書で使用される場合、「および」、「または」、または「および/または」を指す場合もあり、独占的と包括的の両方で使用することができる。例えば、用語「AまたはB」は、「AまたはB」、「BではなくA」、「AではなくB」、および「AおよびB」を指す場合もある。一部のケースにおいて、文脈によって特定の意味を有する場合もある。
【0091】
[00112]本明細書に記載されるいずれのシステム、方法、ソフトウェア、およびプラットフォームも、モジュールである。したがって、「第1」および「第2」などの用語は、必ずしも優先度、重要性の順番、または実行の順番を示すわけではない。
【0092】
[00113]用語「約」は、数または数値範囲に対して言及される場合、言及された数または数値範囲が、実験上のばらつきの範囲内(または統計上の実験誤差の範囲内)の近似値であることを意味し、数または数値範囲は、例えば述べられた数または数値範囲の1%から15%まで変動し得る。実施例において、用語「約」は、述べられた数または値の±10%を指す。
【0093】
[00114]用語「増加した」、「増加させること」、または「増加させる」は、本明細書において、一般的に、統計学的に(statically)有意な量での増加を意味するのに使用される。一部の態様において、用語「増加した」、または「増加する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加を意味し、例えば、参照レベル、標準、または対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、または100%を含む最大100%の増加、または10から100%の間のあらゆる増加を意味する。「増加」の他の例としては、参照レベルと比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれより多くの増加が挙げられる。
【0094】
[00115]用語「減少した」、「減少すること」、または「減少する」は、本明細書において、一般的に、統計学的に有意な量での減少を意味するものとして使用される。一部の態様において、「減少した」または「減少する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の低減を意味し、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の減少、または100%を含む最大100%の減少(例えば、参照レベルと比較して、非存在レベルまたは検出不可能なレベル)、または10から100%の間のあらゆる減少を意味する。マーカーまたは症状の文脈において、これらの用語は、このようなレベルの統計学的に有意な減少を意味する。減少は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%またはそれより多くの減少であってもよく、好ましくは、所与の疾患がない個体の場合の正常の範囲内として容認されるレベルへの低下である。
【0095】
[00116]「核酸」は、本明細書で使用される場合、少なくとも2つの共有結合で連結されたヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログサブユニットを含有するポリヌクレオチドを指す。核酸は、一般的に、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、またはDNAもしくはRNAのアナログである。核酸は、一般的に、一本鎖、二本鎖、またはそれらの混合物である。本明細書における目的によって、別段の規定がない限り、核酸は二本鎖であるか、または文脈から明白である。
【0096】
[00117]「DNA」は、本明細書で使用される場合、全てのタイプおよびサイズのDNA分子を含み、例えば、cDNA、プラスミド、ならびに改変されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含むDNAなどを含むことを意味する。
【0097】
[00118]「ヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、ヌクレオシド一、二、および三リン酸を含む。またヌクレオチドとしては、改変されたヌクレオチド、例えば、これらに限定されないが、ホスホロチオエートヌクレオチドおよびデアザプリンヌクレオチド、ならびに他のヌクレオチドアナログも挙げられる。
【0098】
[00119]用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、あらゆる長さのヌクレオチドのポリマー形態を意味し、その例としては、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドが挙げられる。このような用語はまた、一本鎖および二本鎖DNA、加えて、一本鎖および二本鎖RNAも含む。この用語はまた、改変されたポリヌクレオチド、例えばメチル化された、またはキャップされたポリヌクレオチドも含む。
【0099】
[00120]用語「対象」は、本明細書で使用される場合、大きいDNA分子が導入される動物、植物、昆虫、および鳥を指す。哺乳動物および鳥などの高等生物も含まれ、例えば、例えばヒト、霊長類、げっ歯類、ウシ、ブタ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラット、モルモット、ネコ、イヌ、ウマ、ニワトリなどである。対象は、疾患または状態を有していてもよいし、または有していてなくてもよい。
【0100】
[00121]「対象に投与すること」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の送達薬剤および/または大きい核酸分子が、一緒にまたは別々に、対象に存在する標的細胞が最終的に薬剤および/または大きい核酸分子と接触するように対象に導入されるかまたは対象上に適用される手順である。
【0101】
[00122]「送達ベクター」または「送達ビヒクル」または「治療用ベクター」または「治療システム」は、本明細書で使用される場合、外因性の核酸分子を内包し標的細胞または組織にそれを輸送するウイルスおよび非ウイルス粒子の両方を指す。ウイルスビヒクルとしては、これらに限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスのウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが挙げられる。非ウイルスビヒクルとしては、これらに限定されないが、マイクロパーティクル、ナノ粒子、ビロソームおよびリポソームが挙げられる。「標的化」は、本明細書で使用される場合、送達媒体と会合し、ビヒクルを細胞または組織に標的化するリガンドの使用を指す。リガンドとしては、これらに限定されないが、抗体、受容体およびコラーゲン結合ドメインが挙げられる。
【0102】
[00123]「送達」は、「形質導入」と同義的に使用され、本明細書で使用される場合、外因性の核酸分子が細胞の内部に配置されるように、それが細胞に移行されるプロセスを指す。核酸の送達は、核酸の発現とは別個のプロセスである。
【0103】
[00124]「発現」は、本明細書で使用される場合、核酸がペプチドに翻訳されるか、または例えばペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質に翻訳することができるRNAに転写されるプロセスを指す。核酸がゲノムDNAから誘導される場合、発現は、適切な真核宿主細胞または生物が選択される場合、mRNAのスプライシングを含む。宿主細胞において異種核酸を発現させる場合、最初に異種核酸は細胞に送達され、次いで、細胞中に入ったら、最終的に核に存在するようにする必要がある。
【0104】
[00125]「治療剤のコース」は、本明細書で使用される場合、所定期間内における本明細書で開示されるベクターの定期的な、または時間を定められた投与を指す。このような期間は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも5日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、または少なくとも6ヶ月である。投与はまた、長期的な方式で、すなわち不確定の期間にわたり行ってもよい。定期的な、または時間を定められた投与としては、1日1回、1日2回、1日3回または他の設定された時間を定められた投与が挙げられる。
【0105】
[00126]用語「共投与」、「~と組み合わせて投与される」およびそれらの文法的に等しいものなどは、本明細書で使用される場合、単一の患者への選択された治療剤の投与を包含することを意味し、同一もしくは異なる投与経路によって、または同一もしくは異なる時間に薬剤が投与される処置レジメンを含むことが意図される。一部の実施形態において、本出願で開示され治療剤は、他の薬剤と共投与されると予想される。これらの用語は、両方の薬剤および/またはそれらの代謝産物が動物中に同時に存在するように、2種またはそれより多くの薬剤を動物に投与することを包含する。その例としては、別々の組成物での同時投与、別々の組成物での異なる時間での投与、および/または両方の薬剤が存在する組成物での投与が挙げられる。したがって、一部の実施形態において、治療剤および他の薬剤は、単一の組成物の形態で投与される。一部の実施形態において、治療剤および他の薬剤は、組成物中で混和されている。さらなる実施形態において、治療剤および他の薬剤は、別々の時間に別々の用量で投与される。
【0106】
[00127]用語「突然変異チミジンキナーゼ」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載される具体的なタンパク質(加えてこれらのタンパク質をコードする核酸配列)だけでなく、生物学的活性を保持する一次タンパク質の様々な構造的な形態を含み得るその誘導体も指す。
【0107】
[00128]用語「突然変異した」または「別のヌクレオチドで置き換えられた」は、本明細書で使用される場合、特定の位置におけるヌクレオチドが、その位置で、突然変異していないかまたはそれまでに突然変異した配列に存在するもの以外のヌクレオチドによって置き換えられていることを意味する。すなわち、一部の場合において、特定の改変が、異なるヌクレオチドでなされていてもよい。一部の実施形態において、置き換えは、関連するスプライスドナーおよび/またはアクセプター部位がもはや遺伝子中に存在しなくなるようになされる。
【0108】
[00129]「極性アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸残基Asn(N)、Cys(C)、Gln(Q)、Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)またはTyr(Y)を指す。
【0109】
[00130]「非極性アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸残基Ala(A)、Ile(I)、Leu(L)、Met(M)、Phe(F)、Pro(P)、Trp(W)、またはVal(V)を指す。
【0110】
[00131]「塩基性アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸残基Arg(R)、His(H)、またはLys(K)を指す。
[00132]「酸性アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸残基Asp(D)またはGlu(E)を指す。
【0111】
[00133]本発明の好ましい実施形態を本明細書で示し説明したが、このような実施形態は単なる一例として提供されることが当業者にとって明白であろう。明細書内に提供される具体的な実施例によって本発明が限定されることは意図されない。前述の明細書を参照しながら本発明を説明したが、本明細書における実施形態の説明および例証は、限定的な意味で解釈されることを意味しない。ここで当業者であれば多数のバリエーション、変更、および置換が本発明から逸脱することなく想起されるであろう。さらに、本発明の全ての態様は、本明細書に記載される具体的な描写、配置または相対的比率に限定されず、これらは様々な条件および変数に依存することが理解されるものとする。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替案が、本発明の実施において採用できることが理解されるものとする。したがって、本発明は、このようなあらゆる代替案、改変、バリエーションまたは均等物も網羅するものとすることが予期される。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義すること、さらに、これらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物は、それによって網羅されることが意図される。
【実施例
【0112】
[00134]以下の説明に役立つ例は、本明細書に記載される刺激、システム、および方法の実施形態の代表例であり、限定することはまったく意味しない。
実施例1.マウスIL-12およびヒトIL-12ベクターの生成
マウスIL-12ベクターの生成
[00135]マウスIL-12(mIL-12)をまず、図1で示されるようにベクターに組み込んだ(マウス_IL-12、1740bp;AgeI_Start_P40_フューリン部位_GSG_T2A_Start_P35_HIS_Stop_BamHI)。
【0113】
[00136]P40およびP35(表1で示されるペプチド配列)を、ペイロードベクター中のT2Aリンカー(GSGEGRGSLLTCGDVEENPGP)によって連結した。P40とP35との間を確実に切断することによってタンパク質発現を増加させるために、フューリン部位(RRKR)、それに続いてアミノ酸GSGをP40サブユニットの末端に付加した(図2)。これにより、フューリン部位がない余分な23個のアミノ酸の代わりに、タンパク質配列の末端にのみ追加の2つのアミノ酸(RR)を有するP40タンパク質が作り出されることになった。同様に検出のためにP35の後にHISタグを付加した。mIL-12遺伝子を、Genscript(Piscataway、NJ)で合成し、増幅し、ペイロードベクターにAgeIおよびBamHI部位で挿入した(図2)。
【0114】
【表1】
【0115】
[00137]A375黒色腫試験細胞株を、mIL-12ベクター(例えば、レトロウイルスベクター)で形質導入し、単一クローンの細胞株としてクローニングした。クローン細胞株からの分泌されたタンパク質の発現を、mIL-12 ELISAおよびウェスタンブロッティングによって試験した(図3)。ウェスタンブロットにおいて、還元サンプルは明らかに2つのサブユニット、P40およびP35を示し、それに対して非還元サンプルは70kDaのタンパク質サイズを示したことから、P40およびP35を含むヘテロ二量体の存在が示される。mIL-12レトロウイルスベクターで形質導入されたA375細胞からの馴化培地(CM)を使用して、ELISAによって分泌されたmIL-12の量を定量化した。クローン2-E2をさらなるインビトロの研究のために選択した(図4)。
【0116】
ヒトIL-12ベクターの生成
[00138]ヒトIL-12(表2)も以下の通りにレトロウイルスベクターに組み込んだ:ヒト_IL-12、1740bp;AgeI_Kozak_Start_P40_フューリン部位_GSG_T2A_Start_P35_Stop_BamHI。ヒトIL-12について、HISタグを除いてmIL-12の生成の場合と同じ組入れ方法を適用した。hIL-12遺伝子中のHISタグを除去した。
【0117】
【表2】
【0118】
[00139]P40およびP35(表2で示されるペプチド配列)を、ペイロードベクター中のT2Aリンカー(GSGEGRGSLLTCGDVEENPGP)によって連結した。P40とP35との間を確実に切断することによってタンパク質発現を増加させるために、フューリン部位(RRKR)、それに続いてアミノ酸GSGをP40サブユニットの末端に付加した(図2)。これにより、フューリン部位がない余分な23個のアミノ酸の代わりに、タンパク質配列の末端にのみ追加の2つのアミノ酸(RR)を有するP40タンパク質が作り出されることになった。hIL-12遺伝子を、Genscript(Piscataway、NJ)で合成し、増幅し、ペイロードベクターにAgeIおよびBamHI部位で挿入した。
【0119】
インビトロにおけるmIL-12の効能
[00140]マウス脾細胞をmIL-12とインキュベートし、INF-γを測定することによって、mIL-12の官能性を検査した。約2×10個のマウス脾細胞を、商業的な組換えマウスIL-12(rIL-12)、またはmIL-12レトロウイルスベクターで形質導入され、それを安定して発現するA375細胞からのCMのいずれかで48時間刺激した。刺激の後、各培養物からのCMを収集し、ELISAによってIFN-γ生産に関して測定した(図5)。結果は、mIL-12を安定して発現するA375細胞からのCMが、マウス脾細胞においてマウスINF-γ生産を用量依存的に誘導したこと、およびそれがrIL-12と同等に有効であったことを示した(図6)。
【0120】
[00141]mIL-12を安定して発現するA375細胞での免疫細胞からの炎症性遺伝子の活性化をさらに評価した。約2×10個のマウス脾細胞を、商業的なrIL-12またはmIL-12を安定して発現するA375からのCMのいずれかで、2ng/mLのIL-12濃度で48時間刺激した。刺激の後、各グループからの細胞を収集し、qPCRによって炎症性遺伝子の発現に関して分析した。結果から、mIL-12を安定して発現するA375からのCMは、商業的なrIL-12と全く同様に効果的にIFN-γおよび他の炎症性遺伝子を誘導したことが実証された(図7および図8)。
【0121】
[00142]次に、マウス結腸直腸癌細胞株であるCT26をmIL-12レトロウイルスベクターで形質導入し、分泌されたmIL-12がIFN-γを生産し、免疫細胞からの炎症性遺伝子を活性化できるかどうかを検査した。約2×10個のマウス脾細胞を、商業的なrIL-12またはmIL-12を発現するCT26細胞からのCMのいずれかで、2ng/mLの濃度で48時間刺激した。刺激の後、各グループからの上清および細胞を収集し、ELISAによってIFN-γの生産に関して、さらに、qPCRによって炎症性遺伝子の発現に関して分析した。結果から、mIL-12を発現するCT26細胞からのCMは、IFN-γ生産および他の炎症性遺伝子を、商業的なrIL-12と全く同様に効果的に誘導したことが示された(図9および図10)。一部の予備的な動物実験をレトロウイルスベクター細胞からの、ルシフェラーゼ遺伝子を安定して発現するCT26細胞またはルシフェラーゼおよびmIL-12遺伝子を安定して発現するCT26細胞1.5×10個を右肩の側部に埋め込むことによって実行した。肩の側部におけるルシフェラーゼを発現するCT26腫瘍の連続的なインビボでのモニタリングのたに、IVIS画像化システムを使用した(図11)。図12に、ルシフェラーゼを発現するCT26またはルシフェラーゼおよびmIL-12腫瘍細胞のいずれかが埋め込まれた動物の生物発光画像が示される。インビボでの画像化の前に、腫瘍を有する動物は、200μLのルシフェリン(15mg/mL)を受けた。生存曲線は、mIL-12を発現するCT26を用いた研究の終わりまで最大63日間100%の生存率を提示し、それに対して、対照グループ中生き残った動物は1匹のみであった(図13)。
【0122】
[00143]一部のCT26腫瘍組織を、対照およびmIL-12グループから抽出し、CD8(細胞傷害性T細胞)およびCD11b(骨髄)の存在について染色した(図14)。CT26 mIL-12を発現する腫瘍組織において、増加したCD8およびCD11b陽性免疫細胞が検出された。対照およびmIL-12グループからのCT26腫瘍組織を収集し、qPCRによって、T細胞を引き付けるケモカインCXCL9およびCXCL10を含む複数の炎症性のホットな腫瘍遺伝子の発現に関して分析した(図15)。3つの個々のCT26 mIL-12を発現するレシピエントからの腫瘍組織を、対照と比較した。対照またはCT26 mIL-12を発現するレシピエントグループのいずれかからの約5×10個の脾細胞を、5×10個の天然CT26細胞と72時間混合し、生存可能なCT26細胞を数えた。データから、細胞の光学顕微鏡写真で示されるように、mIL-12脾細胞が、CT26標的細胞をより効果的に致死させることができることが示された(図16)。IFN-γ酵素免疫スポット(ELISpot)アッセイは、単一細胞レベルでIFN-γを分泌する細胞の頻度を測定するイムノアッセイである。このアッセイにおいて、免疫細胞は、刺激(抗原、がん細胞など)の存在下で、特異的なIFN-γ捕獲抗体でコーティングされた表面上で培養される。このアッセイを実行するために、対照またはCT26 mIL-12を発現する免疫動物のいずれかからの約3×10個の脾細胞を、1×10個の天然CT26がん細胞(標的刺激)と24時間混合した。各スポットは、個々のサイトカインを分泌する細胞に対応する(図17)。mIL-12レトロウイルスベクターは、A375細胞とCT26細胞の両方を高いレベルのmIL-12で形質導入した。分泌されたmIL-12は、インビトロでT細胞活性化を誘導することとIFN-γ生産を促進することにおいて商業的なIL-12と同様に機能的に有効であった。
【0123】
mIL-12は腫瘍を有する動物の生存を促進した(CT26 mIL-12を発現する腫瘍を有する動物の100%)。
[00144]免疫細胞浸潤の増加および炎症性のホットな腫瘍遺伝子の発現の上方調節が、CT26 mIL-12を発現する腫瘍組織で観察された。CT26 mIL-12を発現する動物からの末梢免疫細胞は、同様にインビトロで天然CT26腫瘍細胞を効果的に致死させることができた。
【0124】
実施例2.P35サブユニットおよびP70発現
[00145]インターロイキン-12(IL-12)は、T細胞およびナチュラルキラー細胞応答を調節するヘテロ二量体の炎症促進性サイトカインであり、インターフェロン-γ(IFN-γ)の生産を誘導し、Tヘルパー1(TH1)細胞の分化を支持し、自然の耐性と適応免疫との間の重要なつなぎである。IL-12は、特定の疾患または状態(例えば、がん)を処置することに関して治療上有効であることが示されているが、IL-12の全身投与は毒性であることが示された。
【0125】
[00146]治療目的のためにIL-12の毒性を減少させるために、P35サブユニットのみをコードし発現するようにレトロウイルスベクターを設計した。図18Aは、IL-12のP35サブユニットをコードする例示的なレトロウイルスベクターを例示する。レトロウイルスベクターによって媒介されるP35サブユニットの発現は、IL-12の発現をモジュレートでき、したがって、IL-12に関連する毒性をモジュレートできる。図18Bは、IL-12のP35サブユニットのコード化および発現のために本明細書に記載されるレトロウイルスベクターで形質導入されたA375細胞におけるP35の発現(左);ならびにA375細胞(A375-P40安定細胞株)によるP40サブユニットの発現および分泌を示すウェスタンブロットを例示する。
【0126】
[00147]100μLの増殖培地/96ウェルで、96ウェルプレートに、1日目に、P40を安定して発現するA375細胞を、細胞12,000個/cmで植え付けた。細胞を付着させた後、P35をコードするレトロウイルスベクター(3.36e8ベクターゲノム/mL)を、100μLの増殖培地での連続希釈での8μg/mLのポリブレンと共に(表3)、A375-P40安定細胞に形質導入した。形質導入の後の日に、形質導入されたA375細胞のために新鮮な培地を交換した。培地交換の2日後、細胞馴化培地を採取し、WBおよびhIL-12 ELISAに供した。細胞をさらに3日間増殖させ、細胞および馴化培地を再びWBおよびhIL-12 ELISAによって検査した。全てのELISAサンプルを1:20の希釈率で試験した。図19は、IL-12発現(ヒトIL-12またはhIL-12)のウェスタンブロッティングを例示する。P35の発現が増加した場合、IL-12(P70)発現が増加した。P70発現は、P40発現と無関係であった(例えば、P70発現はP35の発現の増加に伴い増加したが、P40発現は一定であった)。図20は、hIL-12発現を定量化する例示的なELISAアッセイを例示する。図19と類似して、P35発現の増加は単独で、P70の発現を増加させることができる。
【0127】
【表3】
【0128】
[00148]A375-P40細胞を[00145]に記載した通りに96ウェルプレートに植え付けた。蒸発の作用を回避するために、第A行および第H行ならびに第1行および第12列は使用しなかったが、実験期間中、細胞を含まない増殖培地中で維持した。細胞増殖対照として、第2列および第3列に、P35レトロベクター形質導入がないA375-P40細胞を植え付けた。第B列~第E列の馴化培地および細胞を、WBおよびELISA試験のためにプールした。第F列および第G列(示されていない)を増殖培地中で維持した。
【0129】
[00149]前述の開示は、わかりやすさと理解のために多少詳細に記載されるが、本開示の真の範囲から逸脱することなく形態および詳細における様々な変化をなすことができることは、この開示を読むことで当業者には明らかであろう。例えば、上述した全ての技術および装置は、様々な組合せで使用することができる。本出願で引用された全ての公報、特許、特許出願、および/または他の文書は、それぞれ個々の公報、特許、特許出願、および/または他の文書が、あらゆる目的のために個々に、別々に参照により組み入れられることが示されたのと同じ程度に、あらゆる目的のために参照によりそれら全体が本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
【配列表】
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【国際調査報告】