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特表2024-540014遮蔽流体を含む液滴に関連する組成物、物品、デバイス、および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】遮蔽流体を含む液滴に関連する組成物、物品、デバイス、および方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/04 20060101AFI20241024BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A01N25/04 101
A01M7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525056
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 US2022048062
(87)【国際公開番号】W WO2023076497
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/273,500
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/277,958
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤプラカシュ, ヴィシュヌ
(72)【発明者】
【氏名】バラナシ, クリパ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】パナット, スリーダス
(72)【発明者】
【氏名】ルーファー, サイモン ビー.
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121CB70
2B121CC02
2B121CC03
2B121CC05
2B121EA26
2B121FA15
2B121FA16
4H011DA16
(57)【要約】
キャリア流体および遮蔽流体を含む液滴に関連する組成物および物品、ならびに表面上に液滴を堆積させる関連方法およびそのためのデバイスが本明細書に記載される。一部の実施形態によれば、組成物が説明され、前記組成物は、キャリア流体と、遮蔽流体と、基部の表面に送達するための1つまたは複数の種とを含み、前記遮蔽流体は、前記組成物が前記基部の前記表面に適用されている間、前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア流体と;
遮蔽流体と;
基部の表面に送達するための1つまたは複数の種と
を含む組成物であって、前記遮蔽流体は、前記組成物が前記基部の前記表面に適用されている間、前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲するように構成される、組成物。
【請求項2】
キャリア流体と;
前記キャリア流体を包囲する遮蔽流体と;
基部の表面に送達するための1つまたは複数の種と
を含む組成物であって、前記組成物の拡張係数は、0に等しいかまたはそれより大きく、前記拡張係数は、
S=σ水+種、空気-(σ水+種、遮蔽流体+σ遮蔽流体、空気
により定義され、ここで、σは、界面張力である、組成物。
【請求項3】
キャリア流体と;
前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体と;
基部の表面に送達するための1つまたは複数の種と
を含む組成物であって、前記組成物は、前記組成物の全体積に対して5体積%に等しいまたはそれより少ない量の前記遮蔽流体を含む、組成物。
【請求項4】
表面を含む基部と;
前記表面上に堆積させられた液滴とを含む物品であって、前記液滴は、キャリア流体と、前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体と、前記基部の前記表面に送達するための1つまたは複数の種とを含む、物品。
【請求項5】
基部の表面上に液滴を堆積させる方法であって、前記方法が、
キャリア流体を遮蔽流体に曝露するステップと;
前記キャリア流体を前記遮蔽流体で少なくとも部分的に包囲し、それにより前記液滴を形成するステップであって、前記液滴は、前記液滴の全体積に対して5体積%に等しいまたはそれより少ない量の前記遮蔽流体を含み、前記液滴は、前記基部の前記表面に送達するための1つまたは複数の種を含む、ステップと;
前記液滴を前記基部の前記表面上に堆積させるステップと
を含む、方法。
【請求項6】
キャリア流体が入っている第1の区画と;
遮蔽流体が入っている第2の区画と;
基部の表面に送達するための1つまたは複数の種と
を含むデバイスであって、前記デバイスが、前記遮蔽流体が前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲するように、前記キャリア流体を前記遮蔽流体に曝露し、それにより組成物の全体積に対して5体積%に等しいまたはそれより少ない量の前記遮蔽流体を含む前記組成物を提供するように構成される、デバイス。
【請求項7】
前記キャリア流体が、水、水溶液、油、および/または非ニュートン流体を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物、物品、方法、またはデバイス。
【請求項8】
前記遮蔽流体が、油、界面活性剤、水溶液、および/または非ニュートン流体を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物、物品、方法、またはデバイス。
【請求項9】
前記油が、植物ベース油および/または石油ベース油である、請求項8に記載の組成物、物品、方法またはデバイス。
【請求項10】
前記油が、大豆油、キャノーラ油、シリコーン油、鉱油、亜麻仁油、綿実油、アニス油、ベルガモット油、ヒマシ油、シダーウッド油、シトロネラ油、ユーカリ油、ホホバ油、ラバンジン油、レモングラス油、サリチル酸メチル油、ミント油、カラシ油、および/またはオレンジ油である、請求項8に記載の組成物、物品、方法、またはデバイス。
【請求項11】
前記1つまたは複数の種が、前記キャリア流体中に少なくとも部分的に溶解および/または懸濁している、前記請求項のいずれかに記載の組成物、物品、方法、またはデバイス。
【請求項12】
前記1つまたは複数の種が、前記遮蔽流体中に少なくとも部分的に溶解および/または懸濁している、前記請求項のいずれかに記載の組成物、物品、方法、またはデバイス。
【請求項13】
前記基部が、農業的基部である、前記請求項のいずれかに記載の組成物、物品、方法、またはデバイス。
【請求項14】
前記農業的基部が、植物または植物の一部である、請求項13に記載の組成物、物品、方法またはデバイス。
【請求項15】
前記表面が、少なくとも部分的に疎水性である、前記請求項のいずれかに記載の組成物、物品、方法、またはデバイス。
【請求項16】
前記デバイスが、少なくとも1つのノズルを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのノズルが、前記組成物を噴霧するように構成される、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つのノズルが、前記キャリア流体を前記遮蔽流体に曝露するように構成される、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
前記組成物の拡張係数が、0に等しいかまたはそれより大きく、前記拡張係数は、
S=σ水+種、空気-(σ水+種、遮蔽流体+σ遮蔽流体、空気
により定義され、ここで、σは、界面張力である、請求項1または3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、前記組成物の全体積に対して5体積%に等しいまたはそれより少ない量の前記遮蔽流体を含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、前記組成物の全体積に対して1体積%に等しいまたはそれより少ない量の前記遮蔽流体を含む、請求項1から3または7から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
キャリア流体と;
前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する複数の遮蔽流体と;
基部の表面に送達するための1つまたは複数の種と
を含む組成物であって、前記組成物が、前記組成物の全体積に対して5体積%に等しいまたはそれより少ない量の前記複数の遮蔽流体を含む、組成物。
【請求項23】
前記複数の遮蔽流体が、第1の遮蔽流体および第2の遮蔽流体を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記第1の遮蔽流体が、前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲し、前記第2の遮蔽流体が、前記第1の遮蔽流体を少なくとも部分的に包囲する、請求項23に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年10月29日出願の米国仮出願第63/273,500号、および2021年11月10日出願の米国仮出願第63/277,958号の、米国特許法§119(e)の下での優先権の利益を主張し、これら米国仮出願の開示は、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
キャリア流体および遮蔽流体を含む液滴に関連する組成物および物品、ならびに表面上に液滴を堆積させる関連方法およびそのためのデバイスが本明細書に記載される。
【背景技術】
【0003】
背景
殺有害生物剤汚染は、世界中で年間20,000を超える死亡をもたらし、最大3億8500万件の急性疾病に関連しており、これはがん、神経学的状態、および先天性欠損等の疾患を含む。殺有害生物剤は、環境のあらゆる部分、特に水および土壌を汚染する。例えば、殺有害生物剤は、米国全体の農業用水において当時90%、浅井戸において当時50%、および主要な深部帯水層において当時33%で検出されている。最近の研究では、全世界の農業用土壌の31%が、殺有害生物剤汚染の高いリスクを有することが示されている。これらの過剰の殺有害生物剤は、土壌の化学的性質に影響するだけでなく、標的外の生物の死ももたらし、土壌中の植物栄養素を補給する役割を果たす土壌微生物叢にダメージを与える。多大な人的および環境的コストを有することに加えて、殺有害生物剤は、農業従事者に大きな経済的負担となっており、殺有害生物剤が、ある特定の作物(綿花等)における生産コストの約30%に寄与し得るように、農業従事者は世界で殺有害生物剤に年間600億ドルを超える費用を費やしている。したがって、殺有害生物剤の浪費および過剰使用を低減することが緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
キャリア流体および遮蔽流体(cloaking fluid)を含む液滴に関連する組成物および物品、ならびに表面上に液滴を堆積させる関連方法およびそのためのデバイスが本明細書に記載される。本発明の主題は、いくつかの場合において、相互に関連した生成物、特定の問題に対する代替の解決策、ならびに/または1つもしくは複数のシステムおよび/もしくは物品の複数の異なる使用を伴う。
【0005】
一部の実施形態によれば、組成物が説明され、前記組成物は、キャリア流体と、遮蔽流体と、基部の表面に送達するための1つまたは複数の種とを含み、前記遮蔽流体は、前記組成物が前記基部の前記表面に適用されている間、前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲するように構成される。
【0006】
ある特定の実施形態では、組成物は、キャリア流体と、前記キャリア流体を包囲する遮蔽流体と、基部の表面に送達するための1つまたは複数の種とを含み、前記組成物の拡張係数は、0に等しいかまたはそれより大きく、前記拡張係数は、
S=σ水+種、空気-(σ水+種、遮蔽流体+σ遮蔽流体、空気
により定義され、ここで、σは、界面張力である。
【0007】
一部の実施形態では、組成物は、キャリア流体と、前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体と、基部の表面に送達するための1つまたは複数の種とを含み、前記組成物は、前記組成物の全体積に対して5体積%に等しいまたはそれより少ない量の前記遮蔽流体を含む。
【0008】
ある特定の実施形態によれば、組成物は、キャリア流体と、前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する複数の遮蔽流体と、基部の表面に送達するための1つまたは複数の種とを含み、前記組成物は、前記組成物の全体積に対して5体積%に等しいまたはそれより少ない量の前記複数の遮蔽流体を含む。
【0009】
一部の実施形態では、物品が説明され、前記物品は、表面を含む基部と、前記表面上に堆積させられた液滴とを含み、前記液滴は、キャリア流体と、前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体と、前記基部の前記表面に送達するための1つまたは複数の種とを含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、基部の表面上に液滴を堆積させる方法が説明され、前記方法は、キャリア流体を遮蔽流体に曝露するステップと;前記キャリア流体を前記遮蔽流体で少なくとも部分的に包囲し、それにより前記液滴を形成するステップであって、前記液滴は、前記液滴の全体積に対して5体積%に等しいまたはそれより少ない量の前記遮蔽流体を含み、前記液滴は、前記基部の前記表面に送達するための1つまたは複数の種を含む、ステップと;前記液滴を前記基部の前記表面上に堆積させるステップとを含む。
【0011】
一部の実施形態によれば、デバイスが説明され、前記デバイスは、キャリア流体が入っている第1の区画と、遮蔽流体が入っている第2の区画と、基部の表面に送達するための1つまたは複数の種とを含み、前記デバイスは、前記遮蔽流体が前記キャリア流体を少なくとも部分的に包囲するように、前記キャリア流体を前記遮蔽流体に曝露し、それにより組成物の全体積に対して5体積%に等しいまたはそれより少ない量の前記遮蔽流体を含む前記組成物を提供するように構成される。
【0012】
本発明の他の利点および新規の特徴は、付随する図面と併せて考慮すれば、以下の本発明の様々な非限定的実施形態の詳細な説明から明らかとなる。本明細書および参照により組み込まれる文献が、相反し、かつ/または矛盾する開示を含む場合、本明細書が優先されるものとする。参照により組み込まれる2つまたはそれよりも多くの文献が、互いに関して相反し、かつ/または矛盾する開示を含む場合、より最近の発効日を有する文献が優先されるものとする。
【0013】
付随する図面を参照しながら、本発明の非限定的実施形態を例として説明するが、図面は概略であり、縮尺通りに描かれることを意図していない。図中、示されるそれぞれの同一またはほぼ同一の構成要素は、典型的には単一の番号で表示される。明確性を目的として、当業者が本発明を理解できるように、全ての図面において全ての構成要素が標示されているわけではなく、また図示が不要である場合、本発明の各実施形態の全ての構成要素が示されているわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴の概略断面図を示し、ここで、キャリア流体は種を含む。
【0015】
図1B図1Bは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴の概略断面図を示し、ここで、遮蔽流体は種を含む。
【0016】
図1C図1Cは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴の概略断面図を示し、ここで、キャリア流体および遮蔽流体は種を含む。
【0017】
図1D図1Dは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴の概略断面図を示す。
【0018】
図2図2は、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する複数の遮蔽流体とを含む液滴の概略断面図を示す。
【0019】
図3A図3Aは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴の概略断面図を示し、ここで、液滴は基部の表面上に堆積させられ、キャリア流体は種を含み、遮蔽流体は表面と接触している。
【0020】
図3B図3Bは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴の概略断面図を示し、ここで、液滴は基部の表面上に堆積させられ、キャリア流体は種を含み、キャリア流体は表面と接触している。
【0021】
図3C図3Cは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴の概略断面図を示し、ここで、液滴は基部の表面上に堆積させられ、キャリア流体は種を含み、キャリア流体および遮蔽流体の両方が表面と接触している。
【0022】
図4A図4A~4Dは、ある特定の実施形態に従い、基部の表面上に液滴を堆積させる方法を示す。
図4B図4A~4Dは、ある特定の実施形態に従い、基部の表面上に液滴を堆積させる方法を示す。
図4C図4A~4Dは、ある特定の実施形態に従い、基部の表面上に液滴を堆積させる方法を示す。
図4D図4A~4Dは、ある特定の実施形態に従い、基部の表面上に液滴を堆積させる方法を示す。
【0023】
図5A図5Aは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴を送達するためのノズルを含むデバイスを示し、ここで、キャリア流体は種を含む。
【0024】
図5B図5Bは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴を生成するように構成された2つのノズルを含むデバイスを示し、ここで、キャリア流体は種を含む。
【0025】
図6A図6Aは、ある特定の実施形態に従い、葉の上に噴霧された水の概略図(左)、およびキャベツの葉の上に3秒間噴霧された水の低速度撮影画像(右)を示す。
【0026】
図6B図6Bは、ある特定の実施形態に従い、葉の上に噴霧された油遮蔽水滴の概略図(左)、およびキャベツの葉の上に1秒間噴霧された、約1体積%の大豆油で遮蔽された水滴の低速度撮影画像(右)を示す。
【0027】
図7図7は、ある特定の実施形態に従い、葉の総面積のパーセンテージとして表現され、噴霧時間により正規化された液滴被覆率を示す。
【0028】
図8A図8Aは、ある特定の実施形態に従い、水滴の衝突を調査するために使用された実験構成の概略図(左)、ならびに水滴の衝突を側方から(上)および上から(下)見た、低速度撮影画像(右)を示す。
【0029】
図8B図8Bは、ある特定の実施形態に従い、油で遮蔽された水滴の衝突を調査するために使用された実験構成の概略図(左)、ならびに1体積%の大豆油で遮蔽された水滴の衝突を側方から(上)および上から(下)見た、低速度撮影画像(右)を示す。
【0030】
図9A図9Aは、ある特定の実施形態に従い、約1.25m/秒の衝突速度での、7つの異なる油遮蔽に対する時間の関数としての正規化接触直径のプロットを示す。
【0031】
図9B図9Bは、ある特定の実施形態に従い、相関関数f(Re,We)の関数としての正規化最大直径のプロットを示す。
【0032】
図9C図9Cは、ある特定の実施形態に従い、異なる衝突速度、油、および油粘度に対する液滴直径(D)により正規化された液滴の重心の反跳高さ(hcm)のプロットを示す。
【0033】
図9D図9Dは、ある特定の実施形態に従い、遮蔽液滴中の油体積分率の関数としてプロットされた、異なる衝突実験に対する液滴直径(D)により正規化された液滴の重心の反跳高さ(hcm)のプロットを示す。
【0034】
図10図10は、ある特定の実施形態に従い、低い油体積分率で10cStシリコーン油で遮蔽された水滴の収縮段階中に測定された平均動的接触角のプロット(左)、ならびに0.10体積%(右上)および0.03体積%(右下)の油での油遮蔽液滴の収縮中に撮影されたスナップショットを示す。
【0035】
図11図11は、ある特定の実施形態に従い、選択された実験に対する収縮または反跳中の液滴の重心の最高点のスナップショットを示す。
【0036】
図12A図12Aは、ある特定の実施形態に従い、超疎水性表面から反跳する水滴を描いた概略図を示し、ここで、上向きの矢印は、その表面から離れる動きを示し、水滴は、反発係数(e)、反跳速度(v)、および液滴の質量(m)に関して表現され得る運動エネルギーを有する。
【0037】
図12B図12Bは、ある特定の実施形態に従い、表面に付着する油で遮蔽された水滴を描いた概略図を示し、ここで、運動エネルギーは、接着の仕事(E)および粘性消散(Eμ+EμII+EμIII)により液滴から取り除かれる。
【0038】
図12C図12Cは、ある特定の実施形態に従い、液滴速度の関数としての、純水滴の反跳の運動エネルギーと接着の仕事および粘性消散の和との比率のプロットを示す。
【0039】
図13A図13Aは、ある特定の実施形態に従い、超疎水性表面上の水のみまたは油のみの前進接触角および後退接触角を示す。
【0040】
図13B図13Bは、ある特定の実施形態に従い、1体積%の油で遮蔽された水滴の前進接触角および後退接触角を示す。
【0041】
図14A図14Aは、ある特定の実施形態に従い、超疎水性ウエハに純水を3秒間噴霧した結果の画像を示す。
【0042】
図14B図14Bは、ある特定の実施形態に従い、超疎水性ウエハに1体積%の大豆油で遮蔽された水を噴霧した結果の画像を示す。
【0043】
図14C図14Cは、ある特定の実施形態に従い、異なる噴霧時間および異なる油遮蔽に対する、超疎水性表面上の液滴の保持質量のプロットを示す。
【0044】
図14D図14Dは、ある特定の実施形態に従い、(a)キャベツ、(b)ケール、(c)レタスおよび(d)ホウレンソウの葉の上に大豆油遮蔽水滴を1秒間噴霧することで達成される被覆のスナップショットを示す。
【0045】
図14E図14Eは、ある特定の実施形態に従い、純水、および1体積%の大豆油で遮蔽された大豆油遮蔽水滴に対する、4種類の作物の葉で比較した、葉の面積および噴霧時間により正規化された葉の上に保持された液滴の質量のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
殺有害生物剤(pesticide)の浪費および結果的な過剰使用の主な原因は、疎水性植物表面上への乏しい噴霧または液滴保持によるものである。植物表面(例えば葉)上のワックス様コーティングは疎水性表面特性をもたらし、これは、殺有害生物剤スプレーが水滴中に溶解または懸濁した殺有害生物剤分子からなるため、殺有害生物剤保持に対する根本的な障害である。その結果、水滴は植物表面で跳ね返り、そして/またはそこから転がり落ち、噴霧されたものの大半が、環境中の水および土壌中に向かうこととなる。
【0047】
農業用スプレーにおいて、液滴サイズは50~600μmの範囲であり、液滴衝突速度は1~8m/秒の範囲であり、これは1~600のウェーバー数範囲に対応する。衝突中、そのような液滴は慣性力により引き起こされる膨張および表面張力により引き起こされる収縮を生じる。液滴が付着するか跳ね返るかは、表面エネルギーおよび葉の微細テクスチャ等の表面特性、ならびに表面張力、粘度、密度および衝突速度等の液滴特性によって決定付けられる。植物表面上の液滴保持を増加させるための従来の方法は、(i)表面張力、粘度もしくは密度等の液滴特性を調整するための補助剤;(ii)葉の表面上のワックス様コーティングを局所的に破壊して接着を促進し得る添加剤;(iii)液滴が付着する微視的固定部位を生成する化学物質;または(iv)液滴接着を促進する物理的帯電相互作用の使用を含む。
【0048】
界面活性剤は、噴霧被覆および保持を向上させることを目的として最も広く使用されている補助剤である。静的条件下での植物表面上の液滴の展着を改善する上でのその効果は文書で十分に証明されているが、衝突する液滴の反跳を抑制するその能力は、より複雑である。特殊な界面活性剤のみが、衝突中に液滴の動的表面張力を低減して反跳を停止させるのに十分迅速に液滴界面に拡散し得る。さらに、界面活性剤は、多様な殺有害生物剤の化学的性質に対して化学的に安定でなければならないため、普遍性の欠如が問題となる。界面活性剤は表面張力を低減させるため、界面活性剤はさらに、噴霧された液滴をより小さくし、これが殺有害生物剤の漂流および環境汚染を悪化させる。最後に、商業的に使用される一部の界面活性剤は、殺有害生物剤中の活性成分よりも環境的および生物学的に有毒であり得る。例えば、Roundup(登録商標)に脂肪アミンエトキシレート界面活性剤を添加することによって、これらの製剤は、ヒト細胞においてより多くのミトコンドリア損傷および壊死を引き起こし、そのような界面活性剤は、両生類集団に対して、活性成分であるグリホセート単独よりもはるかに有毒である。
【0049】
衝突中の粘性消散を利用して液滴が植物表面から跳ね返るのを防ぐ粘度調整補助剤は、植物表面上の噴霧保持効率に限られた改善を提供する。液滴の拡大レオロジーを有意に向上させ得る高分子量ポリマーベース補助剤もまた、噴霧保持を若干向上させることが示されている(例えば葉の表面上での約2%の向上)。その適度な改善に加えて、そのような製剤に対するpHの慎重な制御の必要性が、堅牢な実施に対する大きな障害を引き起こしている。さらに、噴霧液滴を物理的に帯電させ、接地された植物表面に向かう引力を導入する静電噴霧器はコストの高さが問題であり、これが適用可能性を制限している。
【0050】
持続不可能、有毒、非普遍性または高額である上記アプローチとは異なり、植物ベース油は液滴保持を促進し得る補助剤として非常に有望である。油は、殺虫特性および静真菌特性を有するため、何世紀にもわたり農業において使用されてきた。植物油は一般に安全であると認識されており、環境に対するリスクを有さないと理解されており、また食品および農業において広く使用されている。それらは土壌中の微生物によって容易に分解可能であるため、これらの油は合成農薬よりもはるかに低い環境フットプリントを有する。作物の健康に対するそれらの影響は十分に理解されており、それらは、正しく使用されれば植物毒性を有さない。一部の油は有害生物における耐性発現に対してより堅牢であり、一部の植物油は、ミツバチ等の標的外の昆虫に対する影響が最小限である。噴霧補助剤として、油の表面エネルギーが低いほど、油は、水と比較して疎水性の葉へより容易に付着する。油は、主に水中油型エマルジョンとして製剤化され、上述の欠点を有する界面活性剤の使用を必要とし、使用時に複雑な撹拌方法を必要とする。水中油型エマルジョンと比較して、油中水型エマルジョン(10体積%超の油)は、植物毒性の可能性を有し、したがって大量の油含有率は、そのような製剤の適用可能性を制限する。
【0051】
本発明者らは、微量(例えば5体積%に等しいまたはそれより少ない)の遮蔽流体により包囲されたキャリア流体の液滴を含む組成物を使用して、基部表面(例えば葉等の農業的表面)上の液滴保持を向上させることができることを見出し、認識した。一部の実施形態では、キャリア流体は水を含んでもよく、遮蔽流体は、食用および環境的に安全な植物ベース油等の油を含んでもよい。油-水の湿潤動力学および表面張力を利用することにより、油は、水滴の形成後に導入され得、それによって、乳化の複雑性または環境的に有害な界面活性剤の使用を回避することができる。
【0052】
本明細書に記載の遮蔽液滴(cloaked droplets)は、疎水性表面上の噴霧(例えば殺有害生物剤噴霧)の保持を向上させるための、単純、環境的に持続可能、安価、および効果的なアプローチを提供する。本発明者らは、本明細書に記載の方法論が、農業的に関連した衝突条件にわたって広範な粘度および表面張力に及ぶ様々な異なる遮蔽流体を用いた疎水性表面上での堅牢な反跳抑制を提供することを実証した。反跳抑制を達成するための遮蔽流体の量は有利に低く(例えばわずか0.1体積%)、それによって植物毒性の可能性を回避し得る。デバイス(例えば噴霧器デバイス)もまた本明細書において説明され、デバイスは、遮蔽液滴を疎水性基部表面上に噴霧し、液滴保持の向上を提供し、浪費の有意な低減をもたらすために使用され得る。本明細書で説明されるように、液滴保持の向上は、食用および環境的に安全なキャリア流体および遮蔽流体(例えばそれぞれ水および油)を使用して達成され、それによって、殺有害生物剤の人間の健康への影響および環境学的影響の低減において非常に有望であることを実証している。
【0053】
一部の実施形態によれば、組成物が本明細書に記載される。組成物は、ある特定の実施形態では、キャリア流体を含み得る。本明細書で使用される場合、「キャリア流体」という用語は一般的に、1つまたは複数の種を輸送することができる流体を指す。ある特定の実施形態では、例えば、また以下でより詳細に説明されるように、キャリア流体は、基部の表面に送達するための種を含み得る。図1Aは、ある特定の実施形態に従い、液滴の概略断面図を示す。図1Aを参照すると、組成物102a(例えば液滴)はキャリア流体104を含み、キャリア流体104は種108を含む。
【0054】
様々な好適なキャリア流体のいずれかが利用され得る。一部の実施形態では、例えば、キャリア流体は、水、水溶液、油、および/または非ニュートン流体を含む。他のキャリア流体もまた可能である。一部の実施形態では、キャリア流体の混合物が利用され得る(例えば、水および非ニュートン流体の混合物)。
【0055】
組成物は、キャリア流体を、様々な好適な量のいずれかで含み得る。一部の実施形態によれば、組成物は、比較的多量のキャリア流体を含む。ある特定の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の全体積に対して95体積%に等しいもしくはそれより多い、96体積%に等しいもしくはそれより多い、97体積%に等しいもしくはそれより多い、98体積%に等しいもしくはそれより多い、99体積%に等しいもしくはそれより多い、99.1体積%に等しいもしくはそれより多い、99.2体積%に等しいもしくはそれより多い、99.3体積%に等しいもしくはそれより多い、99.4体積%に等しいもしくはそれより多い、99.5体積%に等しいもしくはそれより多い、99.6体積%に等しいもしくはそれより多い、99.7体積%に等しいもしくはそれより多い、または99.8体積%に等しいもしくはそれより多い量のキャリア流体を含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物の全体積に対して99.9体積%に等しいもしくはそれより少ない、99.8体積%に等しいもしくはそれより少ない、99.7体積%に等しいもしくはそれより少ない、99.6体積%に等しいもしくはそれより少ない、99.5体積%に等しいもしくはそれより少ない、99.4体積%に等しいもしくはそれより少ない、99.3体積%に等しいもしくはそれより少ない、99.2体積%に等しいもしくはそれより少ない、99.1体積%に等しいもしくはそれより少ない、99体積%に等しいもしくはそれより少ない、98体積%に等しいもしくはそれより少ない、97体積%に等しいもしくはそれより少ない、または96体積%に等しいもしくはそれより少ない量のキャリア流体を含む。上に列挙された範囲の組合せが可能である(例えば、組成物は、組成物の全体積に対して95体積%に等しいまたはそれより多くかつ99.9体積%に等しいまたはそれより少ない量のキャリア流体を含む、組成物は、組成物の全体積に対して99体積%に等しいまたはそれより多くかつ99.5体積%に等しいまたはそれより少ない量のキャリア流体を含む)。他の範囲もまた可能である。一部の実施形態では、キャリア流体の量は、顕微鏡レンズ、顕微分光法、または核磁気共鳴(NMR)を使用して液滴を画像化することにより決定され得る。ある特定の実施形態では、キャリア流体の量は、組成物を生成するために使用されるキャリア流体の入力流速を分析することにより決定され得る。
【0056】
一部の実施形態によれば、組成物は、遮蔽流体を含む。本明細書で使用される場合、「遮蔽流体」という用語は、一般的に、第1の流体の層が広がって第2の流体を少なくとも部分的に包囲するように、第2の流体を少なくとも部分的に包囲するように構成される第1の流体を指す。ある特定の実施形態では、例えば、遮蔽流体は、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲するように構成される。一部の実施形態では、遮蔽流体は、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する(例えば、本明細書でさらに詳細に説明されるように、組成物が表面に適用されている間)。例えば図1Aを参照すると、組成物102aは、キャリア流体104を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体106を含む。
【0057】
ある特定の実施形態では、(例えばキャリア流体を少なくとも部分的に包囲する)遮蔽流体の存在は、基部の表面上に配置(例えば噴霧)された場合に、組成物の保持を有利に向上させ得る。一部の実施形態では、例えば、遮蔽流体は、例えば組成物が基部の表面上に配置(例えば噴霧)された際、組成物の収縮中に基部の表面に組成物を固定するように構成され得る。
【0058】
様々な好適な遮蔽流体のいずれかが利用され得る。一部の実施形態では、例えば、遮蔽流体は、油、界面活性剤、水溶液、および/または非ニュートン流体を含む。遮蔽流体が油を含む一部の実施形態では、油は、植物ベース油および/または石油ベース油であり得る。実質的に任意の油が利用され得るが、好適な油の非限定的例としては、大豆油、キャノーラ油、シリコーン油、鉱油、亜麻仁油、綿実油、アニス油、ベルガモット油、ヒマシ油、シダーウッド油、シトロネラ油、ユーカリ油、ホホバ油、ラバンジン(lavandin)油、レモングラス油、サリチル酸メチル油、ミント油、カラシ油、および/またはオレンジ油が挙げられる。他の遮蔽流体もまた可能である。一部の実施形態によれば、遮蔽流体の混合物が利用され得る(例えば、油および非ニュートン流体の混合物、油の混合物等)。
【0059】
遮蔽流体は、様々な好適な粘度のいずれかを有し得る。一部の実施形態では、例えば、遮蔽流体は、1cStに等しいもしくはそれより高い、25cStに等しいもしくはそれより高い、50cStに等しいもしくはそれより高い、75cStに等しいもしくはそれより高い、100cStに等しいもしくはそれより高い、150cStに等しいもしくはそれより高い、200cStに等しいもしくはそれより高い、250cStに等しいもしくはそれより高い、300cStに等しいもしくはそれより高い、350cStに等しいもしくはそれより高い、400cStに等しいもしくはそれより高い、または450cStに等しいもしくはそれより高い粘度を有する。ある特定の実施形態では、遮蔽流体は、500cStに等しいもしくはそれより低い、450cStに等しいもしくはそれより低い、400cStに等しいもしくはそれより低い、350cStに等しいもしくはそれより低い、300cStに等しいもしくはそれより低い、250cStに等しいもしくはそれより低い、200cStに等しいもしくはそれより低い、150cStに等しいもしくはそれより低い、100cStに等しいもしくはそれより低い、75cStに等しいもしくはそれより低い、50cStに等しいもしくはそれより低い、または25cStに等しいもしくはそれより低い粘度を有する。上で列挙された範囲の組合せが可能である(例えば、遮蔽流体は、1cStに等しいまたはそれより高くかつ500cStに等しいまたはそれより低い粘度を有する、遮蔽流体は、50cStに等しいまたはそれより高くかつ75cStに等しいまたはそれより低い粘度を有する)。他の範囲もまた可能である。
【0060】
遮蔽流体は、様々な好適な表面張力のいずれかを有し得る。一部の実施形態では、例えば、遮蔽流体は、1mN/mに等しいもしくはそれより高い、5mN/mに等しいもしくはそれより高い、10mN/mに等しいもしくはそれより高い、15mN/mに等しいもしくはそれより高い、20mN/mに等しいもしくはそれより高い、25mN/mに等しいもしくはそれより高い、30mN/mに等しいもしくはそれより高い、35mN/mに等しいもしくはそれより高い、40mN/mに等しいもしくはそれより高い、または45mN/mに等しいもしくはそれより高い表面張力を有する。ある特定の実施形態では、遮蔽流体は、50mN/mに等しいもしくはそれより低い、45mN/mに等しいもしくはそれより低い、40mN/mに等しいもしくはそれより低い、35mN/mに等しいもしくはそれより低い、30mN/mに等しいもしくはそれより低い、25mN/mに等しいもしくはそれより低い、20mN/mに等しいもしくはそれより低い、15mN/mに等しいもしくはそれより低い、10mN/mに等しいもしくはそれより低い、または5mN/mに等しいもしくはそれより低い表面張力を有する。上で列挙された範囲の組合せが可能である(例えば、遮蔽流体は、1mN/mに等しいまたはそれより高くかつ50mN/mに等しいまたはそれより低い表面張力を有する、遮蔽流体は、20mN/mに等しいまたはそれより高くかつ25mN/mに等しいまたはそれより低い表面張力を有する)。他の範囲もまた可能である。
【0061】
組成物は、様々な好適な量のいずれかの遮蔽流体を含み得る。ある特定の実施形態では、組成物は、実質的に少ない量の遮蔽流体を含む。ある特定の実施形態によれば、植物毒性組成物の可能性を回避するために、少量の遮蔽流体を採用することが有利であり得る。一部の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の全体積に対して5体積%に等しいもしくはそれより少ない、4体積%に等しいもしくはそれより少ない、3体積%に等しいもしくはそれより少ない、2体積%に等しいもしくはそれより少ない、1体積%に等しいもしくはそれより少ない、0.9体積%に等しいもしくはそれより少ない、0.8体積%に等しいもしくはそれより少ない、0.7体積%に等しいもしくはそれより少ない、0.6体積%に等しいもしくはそれより少ない、0.5体積%に等しいもしくはそれより少ない、0.4体積%に等しいもしくはそれより少ない、0.3体積%に等しいもしくはそれより少ない、0.2体積%に等しいもしくはそれより少ない、0.1体積%に等しいもしくはそれより少ない、0.05体積%に等しいもしくはそれより少ない、または0.04体積%に等しいもしくはそれより少ない量の遮蔽流体を含む。ある特定の実施形態では、組成物は、組成物の全体積に対して0.02体積%に等しいもしくはそれより多い、0.04体積%に等しいもしくはそれより多い、0.05体積%に等しいもしくはそれより多い、0.1体積%に等しいもしくはそれより多い、0.2体積%に等しいもしくはそれより多い、0.3体積%に等しいもしくはそれより多い、0.4体積%に等しいもしくはそれより多い、0.5体積%に等しいもしくはそれより多い、0.6体積%に等しいもしくはそれより多い、0.7体積%に等しいもしくはそれより多い、0.8体積%に等しいもしくはそれより多い、0.9体積%に等しいもしくはそれより多い、1体積%に等しいもしくはそれより多い、2体積%に等しいもしくはそれより多い、3体積%に等しいもしくはそれより多い、または4体積%に等しいもしくはそれより多い量の遮蔽流体を含む。上に列挙された範囲の組合せが可能である(例えば、組成物は、組成物の全体積に対して0.02体積%に等しいまたはそれより多くかつ5体積%に等しいまたはそれより少ない量の遮蔽流体を含む、組成物は、組成物の全体積に対して0.5体積%に等しいまたはそれより多くかつ1体積%に等しいまたはそれより少ない量の遮蔽流体を含む)。他の範囲もまた可能である。一部の実施形態では、遮蔽流体の量は、顕微鏡レンズ、顕微分光法、または核磁気共鳴(NMR)を使用して液滴を画像化することにより決定され得る。ある特定の実施形態では、遮蔽流体の量は、組成物を生成するために使用される遮蔽流体の入力流速を分析することにより決定され得る。
【0062】
組成物(例えば液滴)は、様々な好適な形状のいずれかを有し得る。一部の実施形態では、例えば、また図1Aに示されるように、組成物102a(例えば液滴)は、実質的に球形であってもよい。本開示はこの点に関して限定的であることを意図していないため、他の実施形態では、組成物は非球形であってもよい。組成物は、様々な好適なサイズのいずれかを有し得る。ある特定の実施形態では、例えば、また図1Aに示されるように、組成物102a(例えば液滴)は、最大特性寸法(例えば最大直径)114を有し得る。一部の実施形態によれば、組成物は、100マイクロメートルに等しいもしくはそれより大きい、200マイクロメートルに等しいもしくはそれより大きい、300マイクロメートルに等しいもしくはそれより大きい、400マイクロメートルに等しいもしくはそれより大きい、500マイクロメートルに等しいもしくはそれより大きい、1mmに等しいもしくはそれより大きい、2mmに等しいもしくはそれより大きい、3mmに等しいもしくはそれより大きい、または4mmに等しいもしくはそれより大きい最大特性寸法を有し得る。ある特定の実施形態では、組成物は、5mmに等しいもしくはそれより小さい、4mmに等しいもしくはそれより小さい、3mmに等しいもしくはそれより小さい、2mmに等しいもしくはそれより小さい、1mmに等しいもしくはそれより小さい、500マイクロメートルに等しいもしくはそれより小さい、400マイクロメートルに等しいもしくはそれより小さい、300マイクロメートルに等しいもしくはそれより小さい、または200マイクロメートルに等しいもしくはそれより小さい最大特性寸法を有し得る。上で列挙された範囲の組合せが可能である(例えば、組成物は、100マイクロメートルに等しいまたはそれより大きくかつ5mmに等しいまたはそれより小さい最大特性寸法を有する、組成物は、500マイクロメートルに等しいまたはそれより大きくかつ1mmに等しいまたはそれより小さい最大特性寸法を有する)。他の範囲もまた可能である。ある特定の実施形態では、組成物の最大特性寸法は、走査型電子顕微鏡法(SEM)および/または透過型電子顕微鏡法(TEM)により決定され得る。
【0063】
ある特定の実施形態によれば、組成物は、基部の表面に送達するための1つまたは複数の種を含む。例えば図1Aを参照すると、組成物102aは、キャリア流体104、キャリア流体104を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体106、および種108を含む。一部の実施形態では、種は、図1Aに示されるように、キャリア流体中に少なくとも部分的に溶解および/または懸濁していてもよい。他の実施形態では、種は、遮蔽流体中に少なくとも部分的に溶解および/または懸濁していてもよい。例えば、図1Bは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体104と、キャリア流体104を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体106とを含む組成物102b(例えば液滴)の概略断面図を示し、ここで、遮蔽流体106は、遮蔽流体106中に溶解および/または懸濁した種108を含む。さらに他の実施形態では、種は、キャリア流体および遮蔽流体の両方に少なくとも部分的に溶解および/または懸濁していてもよい。例えば、図1Cは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体104と、キャリア流体104を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体106とを含む組成物102c(例えば液滴)の概略断面図を示し、ここで、キャリア流体104および遮蔽流体106の両方が種108を含み、種108は、キャリア流体104および遮蔽流体106中に溶解および/または懸濁していてもよい。
【0064】
ある特定の実施形態によれば、組成物は、1つ超の種(例えば2つの種、3つの種、4つの種、5つの種等)を含み得る。一部の実施形態では、例えば、組成物は、キャリア流体および/または遮蔽流体中に溶解および/または懸濁した1つ超の種を含み得る。ある特定の実施形態では、組成物は、キャリア流体中に溶解および/または懸濁した少なくとも1つの種、ならびに遮蔽流体中に溶解および/または懸濁した少なくとも1つの種を含み得る。他の実施形態では、組成物は、キャリア流体中に溶解および/または懸濁した少なくとも第1の種および第2の種を含み得る。さらに他の実施形態では、組成物は、遮蔽流体中に溶解および/または懸濁した少なくとも第1の種および第2の種を含み得る。
【0065】
様々な好適な種のいずれかが利用され得る。一部の実施形態では、種は、農業用化学物質である。ある特定の実施形態では、種は、殺有害生物剤、肥料、農薬化合物、および/または界面活性剤である。種の非限定的例としては、殺虫剤、除草剤、殺真菌剤、雑草除去剤、および/または葉面肥料が挙げられる。他の種もまた可能である。
【0066】
一部の実施形態によれば、組成物は、
S=σ水+溶質、空気-(σ水+溶質、遮蔽流体+σ遮蔽流体、空気
により定義される拡散係数を有し得、ここで、σは、界面張力である。
【0067】
一部の実施形態では、組成物は、拡散係数が0に等しくまたはそれより大きくなるように構成され得る。一部のそのような実施形態では、遮蔽流体は、キャリア流体を完全に包囲し得る(すなわち、遮蔽流体は、キャリア流体の表面積の100%を被覆する)。例えば図1A~1Cを参照すると、遮蔽流体106は、キャリア流体104を完全に包囲する。
【0068】
ある特定の実施形態では、組成物は、拡散係数が0未満となるように構成され得る。一部のそのような実施形態では、遮蔽流体は、キャリア流体を部分的に包囲し得る。図1Dは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体104と、キャリア流体104を部分的に包囲する遮蔽流体106とを含む組成物102d(例えば液滴)の概略断面図を示す。一部の実施形態では、例えば、キャリア流体104の表面105aは、キャリア流体104と外部媒体(例えば空気、表面等)との間の界面であってもよく、一方キャリア流体104の表面105bは、キャリア流体104と遮蔽流体106との間の界面である。図1Dは、種108がキャリア流体104中に溶解および/または懸濁していることを示しているが、上で説明したように、キャリア流体104が種108を含むことに加えて、またはその代わりに、遮蔽流体106が種108を含んでもよい。
【0069】
遮蔽流体は、キャリア流体の様々な好適な表面積のいずれかを包囲し得る。ある特定の実施形態では、例えば、遮蔽流体は、キャリア流体の表面積の50%相当もしくは50%超を、60%相当もしくは60%超を、70%相当もしくは70%超を、80%相当もしくは80%超を、90%相当もしくは90%超を、95%相当もしくは95%超を、または99%相当もしくは99%超を包囲する。一部の実施形態では、遮蔽流体は、キャリア流体の表面積の100%相当もしくは100%未満を、99%相当もしくは99%未満を、95%相当もしくは95%未満を、90%相当もしくは90%未満を、80%相当もしくは80%未満を、70%相当もしくは70%未満を、または60%相当もしくは60%未満を包囲する。上に列挙された範囲の組合せが可能である(例えば、遮蔽流体は、キャリア流体の表面積の50%相当または50%超、かつ100%相当または100%未満を包囲する、遮蔽流体は、キャリア流体の表面積の70%相当または70%超、かつ80%相当または80%未満を包囲する)。他の範囲もまた可能である。遮蔽流体により包囲されるキャリア流体の表面積は、SEMおよび/またはTEM等の方法を使用して決定され得る。
【0070】
一部の実施形態によれば、組成物は、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する複数の遮蔽流体を含み得る。図2は、一部の実施形態では、キャリア流体104と、キャリア流体104を少なくとも部分的に包囲する複数の遮蔽流体106(例えば、第1の遮蔽流体106aおよび第2の遮蔽流体106b)とを含む組成物102e(例えば液滴)の概略断面図を示す。図2は、第1の遮蔽流体および第2の遮蔽流体を示しているが、本開示はこの点に関して限定的であることを意図しないため、追加の遮蔽流体もまた可能である(例えば、第3の遮蔽流体、第4の遮蔽流体、第5の遮蔽流体等)。一部の実施形態では、第1の遮蔽流体106aは、キャリア流体104を少なくとも部分的に包囲してもよく、第2の遮蔽流体106bは、第1の遮蔽流体106aを少なくとも部分的に包囲してもよい。
【0071】
図2は、種108がキャリア流体104中に溶解および/または懸濁していることを示しているが、本開示はこの点に関して限定的であることを意図しないため、キャリア流体104が種108を含むことに加えて、またはその代わりに、第1の遮蔽流体106aおよび/または第2の遮蔽流体106bが種108を含んでもよい。
【0072】
ある特定の実施形態によれば、また図2に示されるように、第1の遮蔽流体106aは、キャリア流体104を完全に包囲してもよく、第2の遮蔽流体106bは、第1の遮蔽流体106aを完全に包囲してもよい。一部の実施形態では、図に示されてはいないが、第1の遮蔽流体は、キャリア流体の表面がキャリア流体と第2の遮蔽流体との間の界面であるようにキャリア流体を部分的に包囲してもよい。他の実施形態では、第2の遮蔽流体は、第1の遮蔽流体の表面が第1の遮蔽流体と外部媒体(例えば、空気、表面等)との間の界面であるように、第1の遮蔽流体を部分的に包囲してもよい。さらに他の実施形態では、第1の遮蔽流体および第2の遮蔽流体の両方が、キャリア流体の表面がキャリア流体と外部媒体(例えば、空気、表面等)との間の界面であるようにキャリア流体を部分的に包囲する。
【0073】
ある特定の実施形態では、物品が説明される。例えば、図3Aは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体104と、キャリア流体104を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体106とを含む液滴を含む物品103aの概略断面図を示し、ここで、液滴は、基部110の表面112上に堆積させられ、遮蔽流体106は、表面112と接触している。図3Aは、組成物の堆積後の基部の表面と接触している遮蔽流体の非限定的実施形態を示す。一部の実施形態によれば、組成物の成分、組成物の特性、基部の組成、および/または組成物が堆積させられる速度の割合に依存して、遮蔽流体が基部の表面と接触することの代わりに、またはそれに加えて、キャリア流体が基部の表面と接触していてもよい。例えば、図3Bは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体104と、キャリア流体104を部分的に包囲する遮蔽流体106とを含む液滴を含む物品103bの概略断面図を示し、ここで、液滴は、基部110の表面112上に堆積させられ、キャリア流体104は、表面112と接触している。図3Cは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体104と、キャリア流体104を部分的に包囲する遮蔽流体106とを含む液滴を含む物品103cの概略断面図を示し、ここで、液滴は、表面112上に堆積させられ、キャリア流体104および遮蔽流体106の両方が、表面112と接触している。
【0074】
図3A~3Cは、キャリア流体104が種108を含むことを示しているが、本開示はこの点に関して限定的であることを意図しないため、上で説明したように、キャリア流体104が種108を含むことに加えて、またはその代わりに、遮蔽流体106が種108を含んでもよい。
【0075】
一部の実施形態によれば、基部の表面上に液滴を堆積させる方法が説明される。図4A~4Dは、ある特定の実施形態に従い、基部の表面上に液滴を堆積させる方法を示す。図4Aに示されるように、上記方法は、一部の実施形態では、キャリア流体104(例えば種108を含む)を遮蔽流体106に曝露するステップを含み得る。図4Aは、キャリア流体104が種108を含むことを示しているが、本開示はこの点に関して限定的であることを意図しないため、上で説明したように、一部の実施形態では、キャリア流体104が種108を含むことに加えて、またはその代わりに、遮蔽流体106が種108を含んでもよい。
【0076】
図4Bを参照すると、キャリア流体104を遮蔽流体106に曝露した結果、遮蔽流体106は、一部の実施形態では、キャリア流体104を少なくとも部分的に包囲し、それにより液滴208を形成し得る。ある特定の実施形態では、図4C~4Dに示されるように、上記方法は、基部110の表面112上に液滴208を堆積させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、液滴が基部の表面上に堆積させられる間、遮蔽流体がキャリア流体を少なくとも部分的に包囲するように、液滴はその場で形成されてもよい。図4Dは、遮蔽流体106が基部110の表面112と接触していることを示しているが、本開示はこの点に関して限定的であることを意図しないため、キャリア流体104が表面112と接触している図3Bに示される実施形態、またはキャリア流体104および遮蔽流体106の両方が表面112と接触している図3Cに示される実施形態もまた可能である。
【0077】
様々な好適な基部のいずれかが採用され得る。ある特定の実施形態では、基部は、農業的基部である。農業的基部の例としては、植物または植物の一部が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、例えば、基部は、葉(例えば、木の葉、キャベツの葉、ケールの葉、レタスの葉、ホウレンソウの葉等)、茎、果実、野菜、花、根、種子、堅果および/または同様のものであってもよい。他の基部もまた可能である。基部の表面は、ある特定の実施形態では、少なくとも部分的に疎水性(例えば、90度を超える水接触角を有する)または超疎水性(例えば、150度を超える水接触角を有する)であってもよい。
【0078】
ある特定の実施形態では、デバイスが説明される。図5Aは、ある特定の実施形態に従い、キャリア流体と、キャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴208を送達するためのノズル206を含むデバイス301aを示し、ここで、キャリア流体は種を含む。デバイス301aは、一部の実施形態では、キャリア流体104が入っている第1の区画202と、遮蔽流体106が入っている第2の区画204とを含んでもよい。ある特定の実施形態では、デバイスは、上で説明したようにキャリア流体および/または遮蔽流体中に少なくとも部分的に溶解および/または懸濁していてもよい種を含む。図5Aは、キャリア流体104が種108を含むことを示しているが、本開示はこの点に関して限定的であることを意図しないため、上で説明したように、キャリア流体104が種108を含むことに加えて、またはその代わりに、遮蔽流体106が種108を含んでもよい。
【0079】
ある特定の実施形態では、図に示されてはいないが、種が第1の区画および第2の区画とは別個の第3の区画内に入れられ得るように、種はキャリア流体および遮蔽流体とは別個であってもよい。一部のそのような実施形態では、デバイスは、第1の区画および/または第2の区画を第3の区画に流体接続するノズル、導管、および/またはチャネルを介して、種をキャリア流体および/または遮蔽流体に曝露するように構成されてもよい。
【0080】
組成物が複数の遮蔽流体(例えば第1の遮蔽流体および第2の遮蔽流体)を含む一部の実施形態では、デバイスは、追加の遮蔽流体を入れるための追加の区画を含んでもよい。
【0081】
一部の実施形態によれば、デバイスは、遮蔽流体がキャリア流体を少なくとも部分的に包囲するようにキャリア流体を遮蔽流体に曝露するように構成される。例えば、ある特定の実施形態では、デバイスは、少なくとも1つのノズルを含む。例えば、図5Aを参照すると、デバイス301aはノズル206を含み、それは、一部の実施形態では、液滴208が(例えば、液滴が表面に適用されている際にその場で)形成されるようにキャリア流体104および遮蔽流体106を同時に噴霧するように構成され得る。ある特定の実施形態では、デバイス301aは、基部の表面上に液滴208を堆積させるように構成され得る。
【0082】
他の実施形態では、デバイスは、2つのノズルを含んでもよい。図5Bは、ある特定の実施形態に従い、第1のノズル206aおよび第2のノズル206bを含むデバイス301bを示す。ある特定の実施形態によれば、2つのノズルは、遮蔽流体106がキャリア流体104を少なくとも部分的に包囲し、それによりキャリア流体とキャリア流体を少なくとも部分的に包囲する遮蔽流体とを含む液滴208を生成するようにキャリア流体104を遮蔽流体106に曝露するように構成され得、ここで、キャリア流体は種を含む。一部のそのような実施形態では、第1のノズル206aは、キャリア流体104(例えば種108を含む)が入っている第1の区画202に流体接続され、第2のノズル206bは、遮蔽流体106が入っている第2の区画204に流体接続されている。上で説明したように、図5Bは、キャリア流体104が種108を含むことを示しているが、本開示はこの点に関して限定的であることを意図しないため、キャリア流体104が種108を含むことに加えて、またはその代わりに、遮蔽流体106が種108を含んでもよい。ある特定の実施形態では、デバイス301bは、基部の表面上に液滴208を堆積させるように構成され得る。
【0083】
ある特定の実施形態によれば、図に示されてはいないが、デバイスの1つもしくは複数の区画および/または1つもしくは複数のノズルは、圧力源と結合されていてもよい。圧力源は、ある特定の実施形態では、流体(例えば、キャリア流体、遮蔽流体)がデバイスから(例えばノズルを通して)分注(例えば噴霧)され得るように、1つまたは複数の区画および/または1つまたは複数のノズル内部の流体に加圧し得る。
【0084】
ある特定の実施形態によれば、デバイスの1つまたは複数のノズルは、組成物および/またはその成分(例えば、キャリア流体、遮蔽流体)を、様々な好適な速度のいずれかで噴霧するように構成され得る。一部の実施形態では、例えば、デバイスの1つまたは複数のノズルは、組成物および/またはその成分を、1m/秒に等しいもしくはそれより高い、2m/秒に等しいもしくはそれより高い、3m/秒に等しいもしくはそれより高い、4m/秒に等しいもしくはそれより高い、5m/秒に等しいもしくはそれより高い、6m/秒に等しいもしくはそれより高い、7m/秒に等しいもしくはそれより高い、8m/秒に等しいもしくはそれより高い、9m/秒に等しいもしくはそれより高い、10m/秒に等しいもしくはそれより高い、または15m/秒に等しいもしくはそれより高い速度で噴霧するように構成される。ある特定の実施形態では、デバイスの1つまたは複数のノズルは、組成物および/またはその成分を、20m/秒に等しいもしくはそれより低い、15m/秒に等しいもしくはそれより低い、10m/秒に等しいもしくはそれより低い、9m/秒に等しいもしくはそれより低い、8m/秒に等しいもしくはそれより低い、7m/秒に等しいもしくはそれより低い、6m/秒に等しいもしくはそれより低い、5m/秒に等しいもしくはそれより低い、4m/秒に等しいもしくはそれより低い、3m/秒に等しいもしくはそれより低い、または2m/秒に等しいもしくはそれより低い速度で噴霧するように構成される。上に列挙された範囲の組合せが可能である(例えば、デバイスの1つまたは複数のノズルは、組成物および/またはその成分を、1m/秒に等しいまたはそれより高くかつ20m/秒に等しいまたはそれより低い速度で噴霧するように構成され、デバイスの1つまたは複数のノズルは、組成物および/またはその成分を、5m/秒に等しいまたはそれより高くかつ10m/秒に等しいまたはそれより低い速度で噴霧するように構成される)。他の範囲もまた可能である。
【0085】
本明細書に記載の組成物、物品、方法、および/またはデバイスは、様々な好適な用途のいずれかに使用され得る。一部の実施形態によれば、組成物は、例えば水のみ、水中油(O/W)型エマルジョン、および/または油中水(W/O)型エマルジョンを含む従来の組成物と比較して、植物の一部の表面等の基部の表面上の組成物の保持(例えば噴霧保持)を向上させる、有利に少ない量の遮蔽流体(例えば油)を含み得る。ある特定の実施形態では、例えば、また本明細書に記載のように、組成物は、1つまたは複数の種(例えば殺有害生物剤)を含み得、また組成物は、基部(例えば植物の一部)の表面上の1つまたは複数の種の保持を向上させるように構成され得る。
【0086】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を例示することを意図しているが、本発明の全範囲を例証するわけではない。
【実施例
【0087】
実施例1
以下の実施例は、基部表面上の液滴の噴霧保持を向上させるための微量の遮蔽流体の使用を説明する。
【0088】
化合物液滴の衝突は、ここ数年にわたりますます関心が持たれている。しかしながら、油中水型化合物液滴の衝突は、超疎水性表面上および低濃度の油(例えば1体積%以下)では調査されていなかった。以下でより詳細に説明するように、植物油で水滴を遮蔽することによって、疎水性植物表面に付着する化合物液滴が作製された。
【0089】
図6Aは、農業用噴霧器を使用して3秒間キャベツの葉の上に噴霧された水滴の低速度撮影画像を示す。この場合では、ノズルは、5~10m/秒の速度で341~403μmの体積中位径を有する液滴を生成した。一部の液滴は、葉上の欠陥が存在する場所には必ず固定されるが、噴霧された水の大部分は跳ね返り、従来の農薬噴霧における不十分な液滴保持の問題を強調している。対照的に、図6Bは、約1%の大豆油(遍在的な植物ベース油)により水滴を遮蔽することの有効性を実証しており、大豆油は、(i)食品に使用されており;(ii)米国環境保護庁(EPA)によって農業における使用について承認されており;(iii)環境への影響が最小限であり;(iv)安価である。3分の1の噴霧時間で、より均一な被覆が達成された。殺有害生物剤の浪費を低減するこのアプローチの能力は、液滴で被覆された葉の面積のパーセンテージにより噴霧時間を正規化することによって定量化された。図7に示されるように、油遮蔽は、5.25分の1への殺有害生物剤の浪費低減をもたらすことが見出され、これは、この単純、安価、および環境的に持続可能なアプローチが非常に有望であることを示している。
【0090】
液滴保持を向上させるこの技術の可能性を十分に理解するために、2種類のナノ加工超疎水性表面を用いてこの技術を体系的に調査した。液滴衝突動力学を、様々な農業的に関連した噴霧速度およびウェーバー数で試験し、様々な表面張力および粘度の異なる油による遮蔽の効果を体系的に調査した。油分率の効果が探究されて、単純なエネルギー状態のフレームワークが、油遮蔽液滴で観察された反跳抑制を説明するために提示される。このシステムの実用的な実施形態をテストし、ナノ加工超疎水性表面および野菜作物の葉の上での噴霧保持の有意な改善が実証される。
【0091】
異なるゲージのニードルに液体を押し通すことによって、異なる直径の単一水滴を形成した。図8Bに示されるように、二次ニードルを使用して油遮蔽を適用した。全ての流体の流速は、シリンジポンプを使用して制御した。1体積%未満の油分率の場合、いかなるウィッキング損失も防止するために、ステンレス鋼ニードルを疎水化した。衝突速度は、分注される液滴の放出高さを制御することによって変化させた。超疎水性表面モデルとして、ケイ素ナノグラス表面を使用した。表面は、約200nmの平均テクスチャサイズおよび間隔を有し、異なる疎水性調整剤により機能化された。この基部上のDI水の前進接触角および後退接触角は、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)コーティングされた表面上でそれぞれ163.9°および159.3°であり、トリクロロ(1h,1h,2h,2h-パーフルオロオクチル)シラン(FS)コーティングされた表面上でそれぞれ166.6°および164.8°であった。衝突実験は、Photron Fastcam SA1.1高速度カメラを使用して観察した。
【0092】
図8Aは、側方から(上)および上から(下)見た、OTS-ナノグラス表面上に衝突する水滴(直径約3mmおよび衝突速度約1.25m/秒)の低速度撮影画像を示す。液滴は予測通りの挙動を示し、対称的な収縮段階を経て表面から完全に反跳した。図8Bは、1体積%の大豆油で遮蔽された液滴による同一条件下(速度および直径)での衝突を示す。膨張段階は最大直径および膨張時間の点でほぼ同一であったが、遮蔽された場合の収縮段階は著しく異なっていた。収縮中、液滴の接触線は、油により表面に固定された。これによって収縮速度は有意に低減され、液滴は表面に付着した。この構成は、液滴の重心の最大高さ(hcm)を追跡し、反跳抑制を追跡するための定量測定を提供する。例示的に、hcm図8Bに標示されている。衝突の拡散段階は乱されないことを確認するために、および反跳抑制の動力学をより徹底的に調査するために、様々な粘度および表面張力の9つの異なる油を用いて液滴衝突実験を行った。
【0093】
図9Aは、6つの代表的な油遮蔽条件での、液滴の初期直径Dにより正規化された液滴の接触直径(D(t))の経時変化を示す。これらの実験は全て、OTSコーティングされたナノグラス表面上で、1体積%の油分率および約1.25m/秒の衝突速度で行った。対照DI水滴のみが、これらの条件下で反跳後に表面との接触を失った一方で、油遮蔽は全て反跳の抑制に成功した。全ての液滴について膨張段階は最大液滴直径および膨張時間の点で概ね同一であったため、図8A~8Bにおける観察がさらに裏付けられた。収縮段階中、遮蔽液滴の接触線は表面に固定され始めた。図9Bは、異なる油遮蔽、液滴サイズ、および衝突速度による衝突実験についての正規化最大直径を示す。農業的に関連した条件にわたり、液滴のウェーバー数は45~639で様々であり、レイノルズ数は1972~7875で様々であった。この領域において、完全拡張スケールでの正規化最大直径は、式1で示される。
【数1】
式中、Weはウェーバー数であり、Reはレイノルズ数である。ここでも、最大直径は、油遮蔽ありおよびなしの場合でほぼ同一であり、式1により示される傾向に従うことが観察された。このことは、液滴衝突の膨張段階が、様々な衝突速度および異なる油での油遮蔽の存在によってほぼ影響を受けないことを実証している。
【0094】
遮蔽液滴の収縮段階および反跳挙動に着目するために、上で定義された液滴の重心の最大高さ(hcm)を再考した。液滴衝突の高速度ビデオを使用して、液滴のhcmを測定し、初期液滴直径Dにより正規化した。図9Cは、様々な衝突速度、油遮蔽条件および表面に対する正規化反跳高さをプロットしている。これらの実験では、遮蔽液滴の油分率は1体積%で一定に維持された。プロットは、液滴保持の促進におけるこのアプローチの堅牢性を実証している。油の種類、油の粘度、または油の表面張力に関わらず、遮蔽を用いた場合は、農業的に関連したWe数81~646に対応する0.8~2.3m/秒の速度に対して、超疎水性表面上への液滴付着をもたらした。油の粘度は、1.3cst~68cstの間で様々であった。油の表面張力は、16mN/m~32mN/mの間で様々であった。
【0095】
表面張力および粘度が高いほどhcmが低くなる一般的な傾向が、これらの実験において観察された。衝突速度の上限では、DI水滴および油遮蔽液滴の両方の飛散が観察された。興味深いことに、対照の場合のサテライト液滴は表面から散乱し、油遮蔽の場合のサテライト液滴はほぼ全て表面に接着した。典型的には、植物表面上の被覆を高めるために、より漂流しやすいより小さい液滴サイズが選択されるが、これらの結果は、この方法論が、サテライト液滴により提供される被覆の向上からの利益をまだ享受している間に、漂流に抵抗性を示す大きい液滴の使用を可能にし得ることを示している。
【0096】
図9Dは、低粘度および高粘度の2つの代表的な油の油分率の効果を実証している。両方の油が、0.1体積%で保持を防止するのに効果的であり、このアプローチの実用的な堅牢性を促進した。この油の体積は、水中油型エマルジョンが採用される場合を含む従来の農業用噴霧において使用される補助剤の総量と同等である。
【0097】
図10は、より低い油分率で生じる複雑性のいくつかを示す。体積分率が0.1%に達すると、液滴を固定する油の縁が不連続となることが分かった。この縁は続いて、油分率が0.1%未満となるにつれて消失した。これらの体積分率では、収縮段階中の平均接触角もまた、約30°から約140°に劇的に変化した。0.01%の体積分率では、収縮段階はDI水滴のものと同等であり、このアプローチが効果的となるには、最小限の量の油が必要であることを示した。図11は、異なる衝突条件に対する最大正規化反跳高さのいくつかの例を示し、跳ね返り、付着、および飛散領域の間の区別を強調している。
【0098】
油遮蔽は、広範な油、油粘度、および油体積分率に対して、農業的に関連した衝突条件の範囲にわたり超疎水性表面上での液滴保持を向上させるための単純ながら堅牢なアプローチを提供することが実証された。しかしながら、これらの衝突から、収縮動力学を支配するメカニズムが極めて複雑であることも明らかである。収縮中のエネルギー損失をもたらすいくつかの巨視的および微視的固定事象が存在する。高速度ビデオは、油の縁の形成が、液滴を表面に固定する上で役割を担うことを示した。しかしながら、縁の厚さ、連続性および対称性が非常に変動しやすいことも明確である。油の体積分率が0.1%未満になると、追加の複雑性が生じる。この場合、これらの化合物液滴衝突の動力学を正確に把握しようとする任意のモデルにおいて、界面における油不足が考慮される必要がある。この系の明示的な動力学を説明するには、進行中の流体および界面相互作用のさらなる試験が必要であるが、エネルギー状態の単純な分析を使用して、液滴保持を説明することができる。
【0099】
衝突する液滴は、(i)衝突中の最大直径時および(ii)液滴が反跳した後の2つの状態で考慮され得る。まず後者の状態に着目すると、水滴が超疎水性表面から反跳した場合、その運動エネルギーは、図12Aに示される、その入射運動エネルギーおよび反発係数(e)の積として表現され得る。水滴の場合、超疎水性表面上の反発係数は、ウェーバー数の関数である。この傾向を使用して、所与のサイズおよび入射速度の任意の水滴に対して、当業者は、液滴が保有するであろう反跳運動エネルギーを推定することができる。この反跳を抑制するためのいかなる技術においても、このエネルギーが液滴から除去される必要がある。注目される他の状態に戻ると、液滴がその最大直径に到達した際、2種類のエネルギー散逸メカニズムを考慮することができ、1つは表面張力によるもの、もう1つは粘度によるものである。
【0100】
表面から液滴を除去するのに必要な仕事量を捉えた用語である接着の仕事(E)は、式2に示されるように、表面と接触する流体の表面張力(σouter)、液滴の後退接触角(θ)、および表面上の液滴の最大半径(Rmax)に関して記述することができる。
【数2】
【0101】
遮蔽された場合では、表面との接触面積全体が、衝突事象中に油により被覆されることが仮定された。油は水と比較して優先的に表面を濡らすことを考慮すると、これは合理的な仮定である。第2の消散メカニズムは、油で遮蔽された場合にのみ存在し、油遮蔽自体の粘度に起因する。粘性消散Eμは、図12Bおよび式3~5に示されるように、油キャップの消散(EμI)、液滴の下の油膜における消散(EμII)および油の突出部における消散(EμIII)の3つの項の和として表現され得る。
【数3】
【0102】
これらの項の相対的な大きさを比較すると、後退する液滴の接触線での油の突出部における粘性消散が支配的な項となると思われた。水滴における消散は、反発係数においてすでに考慮されているため、このエネルギーバランスにおいて考慮される必要がないことが留意される。このフレームワークを使用して、接着の仕事および粘性消散の和が反跳運動エネルギーと釣り合う場合、液滴は付着し、反跳運動エネルギーがこれらの項の和よりもはるかに大きい場合、液滴は跳ね返るはずである。
【0103】
図12Cは、モデルを適用可能である各実験条件のそれぞれについて、接着の仕事および粘性消散の和により正規化された反跳運動エネルギーをプロットしている。各液滴について、同様のサイズおよび入射速度の水滴が保有する反跳運動エネルギーは、反発係数を使用して推定された。接着の仕事および粘性消散は、各液滴衝突中に観察される最大接触直径を使用して推定された。この場合に使用される接触角は、図13A~13Bに報告されるように、超疎水性表面上の化合物液滴の準静的な後退角度である。これらの説明を考慮すると、接着の仕事および粘性消散の和は、全ての油遮蔽液滴について反跳運動エネルギーに十分釣り合い、それらが付着し得る理由を示していると思われた。対照的に、純水滴(液滴が反跳した唯一の実験である)は、消散項の和に比べて約3倍の大きさの運動エネルギーを有する。
【0104】
エネルギー消散モデルが液滴の反跳挙動を正確に把握することができることを考慮すると、より高い粘度および遮蔽時間スケールの効果は、言及に値する。1%の油体積分率の500cStシリコーン油に遮蔽された液滴の衝突を、高速度ビデオで観察した。この高粘度油は、純水の場合と比較して収縮段階を若干もたらしたが、これは、油粘度が70cSt未満である他の遮蔽液滴の場合よりも、反跳の抑制においてはるかに非効果的であった。したがって、高粘度油を用いたこの実験は、遮蔽時間スケールおよび反跳抑制におけるその重要性についてのある程度の洞察を提供した。確かに、上に提示された単純なエネルギー状態モデルは、他の全ての仮定を維持した場合、液滴が付着することを予測したであろう。しかしながら、水滴に対する異なる粘度の油の遮蔽時間スケールは、油が界面面積全体を被覆するという仮定が、高度に粘稠性の油で遮蔽したこの場合には成り立たないことを示唆している。具体的には、調査に使用された他の油の全てが70cSt未満の粘度を有し、これは、それらが、約0.5msで低粘度に起因して水滴ならびに液滴と超疎水性表面(SHS)との間の界面もまた遮蔽し得るはずであることを示唆している。対照的に、高粘度油は、液滴全体を被覆するのに約50msを要し、液滴とSHSとの間の界面面積を遮蔽するのに数十ミリ秒程度を要する。収縮段階全体が約10~20msで生じることを考慮すると、これは、高度に粘稠性の油が反跳を抑制し得るには十分な時間ではないかもしれない。
【0105】
単一の液滴衝突での広い領域の流体および界面パラメータを探求したところ、噴霧保持の実用的な向上を実証するために使用され得る実用的デバイスが実装された。1つは水用、もう1つは油用の2つのノズルを含むプロトタイプを開発した。
【0106】
最も極端な場合において保持を向上させる噴霧器デバイスの能力をテストするために、水滴および大豆油遮蔽水滴の両方を、広いOTSナノグラス表面上に噴霧した。質量の点で保持性能を測定するために、両方の場合において液滴の保持質量を秤量した。図14Aは、3秒間表面上に水滴を噴霧した結果の写真を示す。予測されたように、超疎水性表面上に噴霧されたほぼ全ての水滴が跳ね返る。図14Bは、3秒間約1重量%大豆油で遮蔽された水滴を噴霧した結果の写真を示す。ほぼ噴霧開始直後に、水滴は表面に付着し始め、3秒の終わりまでに、大豆油の場合について、保持質量の96倍の向上が測定された(図14C)。図14Cはまた、油遮蔽液滴がわずか1秒間および2秒間噴霧された実験の保持データを示す。この傾向は、キャノーラ油または綿実油等の農業において一般的に使用される他の植物油についても一貫しており、このアプローチの堅牢性を示していることが見出された。これらの実験は、噴霧される殺有害生物剤の量を大幅に低減するこの技術の可能性を示しており、3分の1の噴霧時間でも、この技術は使用される油に基づき質量保持の7.3倍~14倍の向上を可能にする。非常に重要なことに、これらの向上は、安価で、広く使用され、かつ環境、農場労働者、および作物に安全な油で達成される。これらの油はまた、殺有害生物性化学物質に広く適合可能であり、農薬噴霧液滴の蒸発を遅延させ、殺有害生物剤の葉面吸収を促進することが公知である。
【0107】
図6A~7において、葉の表面被覆の点で噴霧の浪費を低減するプロトタイプデバイス噴霧器の能力が実証された。保持質量を向上させる噴霧器デバイスの能力を実証するために、さらに3つの作物の葉(ケール、ホウレンソウおよびレタス)に噴霧し、全ての葉に対する1秒間の噴霧の結果を図14Dに示す。液滴の全保持質量を、水滴および大豆油遮蔽液滴の両方について葉の面積および噴霧時間により正規化し、図14Eに示す。葉にわたる正規化保持質量の3倍を超える向上が観察され、液滴保持の向上におけるこのアプローチの幅広い実用的適用可能性が実証された。
【0108】
結論として、疎水性および超疎水性表面上での噴霧の保持を向上させる、単純、環境的に持続可能、安価、および効果的なアプローチが実証された。微量の油(1体積%未満)で液滴を遮蔽することにより、農業的に関連した衝突条件にわたり、広範な粘度および表面張力に及ぶ9つの異なる油で、2種類の超疎水性表面上での堅牢な反跳抑制が実証された。液滴当たりわずか0.1体積%の油による反跳抑制もまた実証された。これらの遮蔽液滴の衝突中の粘性および表面エネルギーベース消散をモデル化することにより、反跳抑制の物理的な理解が提供された。最後に、これらの所見はプロトタイプ噴霧器デバイスに転換され、これは、超疎水性表面上での保持の最大102倍の向上、および作物の葉上に噴霧された場合に浪費の最大5.25分の1への低減を実証することができた。これらの向上は、食品および環境的に安全な植物油を使用して達成され、提示された方法論は、殺有害生物剤の人間の健康への影響および環境学的影響の低減において非常に有望であることを実証している。
【0109】
衝突速度、重心および反発係数の推定:衝突速度および重心(COM)データは、高速度ビデオから、各フレームの画像分析により抽出した。背景および表面を照らす際、液滴の端部がビデオの最も暗い特徴であるように注意した。これにより、液滴の輪郭のマスクを形成するための単純な閾値化方法の使用が可能となった。液滴マスクにおけるピクセルの各行において、マスクの幅は、液滴が常時軸対称性を維持すると仮定して、液滴の局所的直径であるとみなされた。各行の部分質量は、1ピクセル厚のディスクの質量として計算された。その垂直位置ごとに量ったこれらの部分質量の質量平均からCOMが与えられた。衝突速度は、フレーム毎の垂直COMを時間に関して微分し、衝突直前の速度を考慮することにより計算された。液滴の反跳速度は反跳プロセス全体を通して非常に変動しやすいため、反発係数の代替の定義が確立され、
【数4】
であった。反跳後の液滴の最大COM高さを使用して等価速度を計算することにより、はるかに信頼性のある値が得られる。
【0110】
実用的な実施形態の構成:農業的に関連した噴霧による葉の表面の被覆をテストするために、脱イオン水の容器を2気圧(30psi)で加圧し、TG-1 TeeJet Full Cone Spray Tip(Spray Smarter)を通して流し、生じる噴霧を葉に向けた。噴霧器と葉との間に約75cmの距離を維持した。AA250AUH Automatic Spray Nozzle(Spraying Systems)を噴霧先端のすぐ上流に設置し、スイッチをオンおよびオフにすることにより噴霧時間を制御した。一次ノズルからの水滴を、二次エアブラシ噴霧器を使用して油で遮蔽した。2つのノズルの重なり角が、二次噴霧器からの油が表面を直接汚染しないことを確実にすることが確実となるように注意した。両方の流体の流速は、確実に1重量%の遮蔽となるように制御した。
【0111】
ニードルの疎水化:ステンレス鋼ニードルを、メタノール中の溶媒和した5mMのフルオロアルキル(C10)ホスホン酸(SP-06-003、Specific Polymersから入手)の溶液中に24時間浸漬することによって、ステンレス鋼ニードルを疎水化した。同じ条件に供された平坦なステンレス鋼対照表面は、90°を超える水-空気接触角を有しており、疎水化の成功が確認された。
【0112】
接触角測定:Rame-Hart接触角ゴニオメータを使用して、接触角を測定した。
【0113】
油の低体積分率の確認:油の全ての体積分率は、分注した液体の重量を経時的に測定することにより確認した。
【0114】
本明細書において、本発明のいくつかの実施形態を説明および例示したが、機能を実行するため、ならびに/または結果および/もしくは本明細書に記載の利点の1つもしくは複数を得るための様々な他の手段および/または構造が、当業者によって容易に想定され、そのような変形および/または修正のそれぞれが、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、本明細書に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は、例示的であることが意図されていること、ならびにその実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される特定の用途(単数又は複数)に依存することが、当業者に容易に理解される。当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識し、または慣例的にすぎない実験を使用して確認することができる。したがって、上記実施形態は、例示のみを目的として示されること、ならびに、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明は、具体的に説明および請求されるものとは別様に実践されてもよいことを理解されたい。本発明は、本明細書に記載のそれぞれの個々の特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法に関連する。さらに、2つまたはそれよりも多くのそのような特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組合せは、そのような特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しない限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0115】
本明細書において定義および使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書における定義、および/または定義されている用語の通常の意味よりも優先されることが理解されるべきである。
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」および「an」は、本明細書および特許請求の範囲において、反対の意味が明示されない限り、「少なくとも1つ」を意味することが理解されるべきである。
【0116】
本明細書で使用される場合、「および/または」という語句は、本明細書および特許請求の範囲において、そのように結合された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、いくつかの場合においては連言的に存在し、他の場合においては選言的に存在する要素を意味することが理解されるべきである。「および/または」で列挙される複数の要素も、同様に、すなわちそのように結合される要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。「および/または」節により具体的に特定される要素以外の他の要素が、その具体的に特定される要素と関連しているか関連していないかに関わらず、必要に応じて存在してもよい。したがって、非限定的例として、「Aおよび/またはB」の言及は、「含む(comprising)」等の非制限的言語と併せて使用される場合、一実施形態ではAのみ(B以外の要素を必要に応じて含む)を、別の実施形態ではBのみ(A以外の要素を必要に応じて含む)を、さらに別の実施形態ではAおよびBの両方(他の要素を必要に応じて含む)を、等指すことができる。
【0117】
本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲において、「または」は、上で定義されるような「および/または」と同じ意味を有することが理解されるべきである。例えば、あるリスト中の項目を分離する場合に、「または」または「および/または」は、包含的である、すなわち、ある数の要素または列挙される要素のうちの少なくとも1つを含むが、1つ超もまた含み、必要に応じて追加の列挙されていない項目を含むと解釈されるものとする。反対の意味が明示されている用語のみ、例えば「~の1つのみ」もしくは「~の正確に1つ」、または、特許請求の範囲において使用される場合には、「~からなる」は、ある数の要素または列挙される要素のうちの正確に1つの要素の包含を指す。一般に、「または」という用語は、本明細書において使用される場合、「いずれか」、「~の1つ」、「~の1つのみ」、または「~の正確に1つ」等の排他性の用語が先行する場合には、排他的代替(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を示すものとただ解釈されるだけであるものとする。「本質的に~からなる」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野において使用されるような、その通常の意味を有するものとする。
【0118】
本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲において、列挙される1つまたは複数の要素に関連する「少なくとも1つ」という語句は、列挙される要素のうちの要素のいずれか1つまたは複数から選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも、列挙される要素の範囲内で具体的に列挙されたありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、また、列挙される要素の中での要素の任意の組合せを除外しないことが理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す、列挙された要素の範囲内で具体的に特定される要素以外の要素が、その具体的に特定される要素と関連しているか関連していないかに関わらず、必要に応じて存在してもよいことを許容する。したがって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない、少なくとも1つ(必要に応じて1つ超を含む)のA(および必要に応じてB以外の要素を含む)を、別の実施形態では、Aが存在しない、少なくとも1つ(必要に応じて1つ超を含む)のB(および必要に応じてA以外の要素を含む)を、さらに別の実施形態では、少なくとも1つ(必要に応じて1つ超を含む)のA、および少なくとも1つ(必要に応じて1つ超を含む)のB(および必要に応じて他の要素を含む)を、等指すことができる。
【0119】
また、反対の意味が明示されない限り、1つ超のステップまたは行為を含む本明細書において請求される任意の方法において、方法のステップまたは行為の順番は、方法のステップまたは行為が列挙される順番に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。
【0120】
特許請求の範囲および上記明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保持する」、「有する」、「入れている(containing)」、「伴う」、「保有する」、「~から構成される」等の移行句は全て、非制限的である、すなわち、含むがそれに限定されないことを意味すると理解されたい。「~からなる」および「~から本質的になる」という移行句のみが、それぞれ、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、セクション2111.03に規定されるように、制限的または半制限的移行句であるものとする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
【国際調査報告】