(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】非ステロイド性抗炎症薬、リシンおよびガバペンチンの共結晶、医薬組成物、ならびにその医学的使用
(51)【国際特許分類】
C07C 229/28 20060101AFI20241024BHJP
C07C 229/26 20060101ALI20241024BHJP
C07C 57/58 20060101ALI20241024BHJP
C07C 57/30 20060101ALI20241024BHJP
C07C 51/42 20060101ALI20241024BHJP
C07C 227/38 20060101ALI20241024BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20241024BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241024BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/4035 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07C229/28
C07C229/26
C07C57/58
C07C57/30
C07C51/42
C07C227/38
A61P25/04
A61P29/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P19/08
A61K31/192
A61K31/4035
A61K31/196
A61K31/407
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525062
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2022079728
(87)【国際公開番号】W WO2023072908
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】315012541
【氏名又は名称】ドムペ・ファルマチェウティチ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】アラミーニ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ビアンキーニ,ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】リリーニ,サムエレ
(72)【発明者】
【氏名】トマセッティ,マラ
(72)【発明者】
【氏名】ブランドリーニ,ローラ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC10
4C086CB03
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4H006BJ50
4H006BM71
4H006BS10
4H006BU32
4H006BU34
(57)【要約】
本発明は、フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸誘導体のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リシンおよびガバペンチンの新しい共結晶、これらの医薬組成物、ならびに疼痛および/または炎症の予防、軽減または処置でのこれらの使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リシンおよびガバペンチンの共結晶であって、但し前記非ステロイド性抗炎症薬が、ケトプロフェンではない、共結晶。
【請求項2】
共結晶の構成要素のモル比が1:1:1である、請求項1に記載の共結晶。
【請求項3】
フェニルプロピオン酸誘導体のクラスに属する前記非ステロイド性抗炎症薬が、イブプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、インドプロフェン、ロキソプロフェン、ペルビプロフェン、およびナプロキセンから選択される、請求項1または2のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項4】
フェニル酢酸誘導体のクラスに属する前記非ステロイド性抗炎症薬が、ジクロフェナク、フェルビナク、イブフェナク、フェンクロフェナク、チフラクおよびケトロラクから選択される、請求項1または2のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項5】
前記非ステロイド性抗炎症薬が、フルルビプロフェンおよびイブプロフェンから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項6】
9~10度2-シータ、15~25度2-シータおよび27~28度2-シータの領域で最も強度が大きいXRPD回折ピークを有することにより特徴付けられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項7】
以下の共通XRPD回折ピーク:9.3、17.1、18.5、19.8、22.1、24.1、24.9、27.9度2-シータ±0.4度2-シータにより特徴付けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項8】
前記NSAIDがフルルビプロフェンであり、以下のXRPD回折ピーク:9.3、10.4、15.2、16.0、17.2、18.3、18.8、19.7、20.7、21.9、24.0、24.8、27.9、および29.0度2-シータ±0.2度2-シータにより特徴付けられ、好ましくは以下のXRPD回折ピーク:6.9、10.9、12.2、25.5、26.3、29.8、31.5、33.0、34.0、35.9、37.5、39.2および40.8度2-シータ±0.2度2-シータによりさらに特徴付けられる、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項9】
以下:
163.48℃±0.5℃で融解ピークにより特徴付けられる、
図2に報告されるDSCサーモグラム、
図4に報告されるTGAサーモグラム、
図6および8のFTラマンおよびFT-IRスペクトル、
図10の溶液
1H-NMRスペクトルおよび表10のシグナル、
図12の固体状態
13C CPMASスペクトルおよび表12のシグナル、ならびに/または
図14の15N CPMASスペクトル
の1つまたは複数によりさらに特徴付けられる、請求項8に記載の共結晶。
【請求項10】
前記NSAIDがイブプロフェンであり、以下のXRPD回折ピーク:9.5、10.3、15.9、17.1、17.6、18.7、20.0、22.3、24.1、25.1、25.6、27.9および28.6度2-シータ±0.2度2-シータにより特徴付けられ、好ましくは以下のXRPD回折ピーク:6.9、12.0、14.7、26.3、30.6、31.1、32.3、33.1、34.5、35.3、36.6、38.6、39.0、41.1、および48.9度2-シータ±0.2度2-シータによりさらに特徴付けられる、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項11】
以下:
165.60℃±0.5℃で融解ピークにより特徴付けられる、
図3に報告されるDSCサーモグラム、
図5に報告されるTGAサーモグラム、
図7および9のFTラマンおよびFT-IRスペクトル、
図11の溶液
1H-NMRスペクトルおよび表11のシグナル、
図16の固体状態
13C CPMASスペクトルおよび表13のシグナル、ならびに/または
図18の15N CPMASスペクトル
の1つまたは複数によりさらに特徴付けられる、請求項10に記載の共結晶。
【請求項12】
前記リシンが(S,R)-リシンである、請求項1から11のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の共結晶および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
医薬としての使用のための請求項1から12のいずれか一項に記載の共結晶または請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
疼痛および/または炎症、好ましくは急性または慢性疼痛の予防、軽減または処置での使用のための請求項1から12のいずれか一項に記載の共結晶または請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記疼痛が、神経障害性または炎症性疼痛であり、頭痛、歯痛、月経痛、筋肉痛、神経障害性疼痛、神経炎症に伴う疼痛、糖尿病性ニューロパチー、がん疼痛、変形性関節炎、腰痛、坐骨神経痛、線維筋痛、三叉神経痛、外科手術後および術後疼痛、ヘルペス後神経痛、関節リウマチ、強直性脊椎炎、五十肩、幻肢痛またはHIV疼痛から選択される、請求項15に記載の使用のための共結晶または医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から12のいずれか一項に記載の共結晶の調製のための方法であって、
a)フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リシン、およびガバペンチンを好適な溶媒に懸濁するステップ、
b)透明な溶液を得るまで、可能であれば撹拌しながら、任意で懸濁液を加熱することにより、前記NSAID、リシン、およびガバペンチンを溶解するステップ、
c)溶液を任意で冷却するステップ、ならびに/または
d)貧溶媒を任意で添加して、NSAID、リシン、およびガバペンチン共結晶を提供するステップ
を含む方法。
【請求項18】
ステップa)で使用する溶媒が、水、アルコール、好ましくはメタノールおよびエタノール、エステル、好ましくは酢酸エチル、エーテル、好ましくはテトラヒドロフランおよびtert-ブチルメチルエーテル、ならびに芳香族溶媒、好ましくはトルエンから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
疼痛および/または炎症の処置のための方法であって、患者に有効量の請求項1から12のいずれか一項に記載の共結晶または請求項13に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リシンおよびガバペンチンの共結晶、これらの調製のための方法、前記共結晶を含む医薬組成物、ならびに急性または慢性疼痛の処置、特に神経障害性または炎症性疼痛の処置における前記共結晶または医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、身体が、組織損傷が生じたことを伝える手段である。IASP(国際疼痛学会-2020)および世界保健機構の定義にしたがって、疼痛は、「実際のまたは潜在的な組織損傷に関連するか、または実際のまたは潜在的な組織損傷に関連するものに類似する不快な感覚および感情的な経験」である。
【0003】
疼痛の経験は、人間毎に異なり、これを感じ、説明するための様々な方法がある。一般に、疼痛状態は、急性および慢性に分けることができる。
急性疼痛は、短期間、典型的には3か月未満継続する激痛であり、一般的に、組織傷害または局在した組織損傷および炎症に関連する。特に、3種類の異なる急性疼痛:体性疼痛(人間が皮膚または皮膚のすぐ下の軟組織に疼痛を感じる)、内臓疼痛(内部臓器および体腔の内膜における疼痛)、ならびに関連疼痛(組織損傷の源以外の位置に関連する疼痛)が存在する。
【0004】
慢性疼痛は、急性疼痛よりかなり長く、通常3か月より長く継続する。慢性疼痛は、生理学的侵害受容の急性の警告機能が欠けている。一般に、慢性疼痛は、軽度または重度の持続性(例えば関節炎)または間欠性(例えば片頭痛を伴う)であり得る。特に、末梢神経系(PNS)および中枢神経系(CNS)は、慢性疼痛をもたらす侵害受容ニューロンの感作を生成し、維持するのに関与する。
【0005】
慢性疼痛は、異なる病因を有し得、神経障害性疼痛、慢性炎症性疼痛、例えば関節炎、または線維筋痛および下肢静止不能症候群のような原因不明の疼痛を含む。慢性神経障害性疼痛は、皮膚、筋骨格、および内臓を含む身体についての情報を提供する体性感覚神経系の病変または疾患に起因する。
【0006】
慢性炎症性疼痛の薬理学的処置は、通常、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用を含む。
非ステロイド性抗炎症薬は、通常、異なるクラス、例えばサリチレート、例えばアスピリン、サリチル酸ナトリウムおよびジフルニサル、プロピオン酸誘導体、例えばイブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェンおよびナプロキセン、酢酸誘導体、例えばジクロフェナク、ケトロラク、インドメタシン、スリンダクおよびゾメピラク、アルカノン、例えばナブメトン、ならびにオキシカム、例えばピロキシカムおよびテノキシカムに、化学構造にしたがって分けられる(J Clin Pharmacol 1988年6月;28(6):512~7頁)。
【0007】
NSAIDは、プロスタグランジン合成の阻害により得られた、解熱、鎮痛、および抗炎症効果を有する。特に、NSAIDは、アラキドン酸からの環状エンドペルオキシドの合成を触媒して、プロスタグランジンを形成する酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する。非選択性NSAIDは、COX-1およびCOX-2の両方の活性を阻害する一方、選択性COX-2は、シクロオキシゲナーゼCOX2のみを阻害する。
【0008】
NSAIDが通常使用されるが、胃腸潰瘍および出血、心臓発作ならびに腎疾患のリスクが高まるので問題となる望ましくない作用を引き起こす可能性がある。
したがって、上述した重度の副作用を引き起こさない慢性疼痛の処置に対する新しい治療的解決策を同定する必要があると感じられる。
【0009】
慢性炎症性疼痛の状態は、多くの場合、炎症性サイトカインを放出する免疫細胞、いわゆる白血球の浸潤により特徴付けられる生理学的/病理学的状態である神経炎症に関連する。
【0010】
神経炎症はまた、グリア細胞の活性化、および疼痛感受性を調節する炎症メディエーターの産生を示す。特に、シュワン細胞は神経で、サテライトグリア細胞は神経節および小膠細胞で、星状膠細胞および希突起膠細胞は脊髄および脳で活性化される。
【0011】
今日、神経炎症状態の処置に対する効果的な療法は存在しない。非ステロイド性抗炎症薬は、神経障害性疼痛でほとんど効果がない。
ガバペンチンは、式
【0012】
【0013】
の神経伝達物質ガンマ-アミノ酪酸(GABA)の鎮痙薬の合成類似体である。
ガバペンチンは、部分痙攣発作および神経障害性疼痛を処置するのに主に使用される鎮痙薬である。ガバペンチンは、最近、慢性疼痛、特に神経障害性疼痛状態の処置に承認されている。神経障害性疼痛は、末梢線維および中枢ニューロンを含む体性感覚系の病変または疾患に起因し、一般集団の7~10%に影響を及ぼす。特に、神経障害性疼痛は、興奮性および抑制性の間の体性感覚シグナル伝達の不均衡、イオンチャネルおよびモジュレーターの放出の変化に起因する。神経障害性疼痛は、複雑な症状、乏しい転帰および困難な処置判断により特徴付けられる慢性疼痛である。
【0014】
ガバペンチンの作用の機構は、カルシウムチャネルを発現する中枢神経系および脊髄のいくつかの領域でのカルシウムチャネルに結合することを含む。カルシウムチャネルは、シナプス前末端に局在化し、神経伝達物質の放出を制御する。
【0015】
ガバペンチンは、肝酵素により阻害も代謝もされない。これは腎臓系で排出され、その排出の半減期はおおむね6時間である。ゆえに、ガバペンチンは、短い半減期により特徴付けられ、結果として、1日3回(tds)投与する必要がある。
【0016】
迅速滴定は、第1日目に1日1回(鎮静を最小限にするために多くの場合就寝時に)300mgと、続く第2日目に1日2回300mgおよび第3日目にtdsで300mgの用量で達成することができる。投与量は、有効性がこの用量で達成されない場合、さらに増加させることができる。
【0017】
不十分な薬理学的および薬物動態的プロファイルは、ガバペンチンを疼痛療法において単独で使用する場合に観察される。換言すれば、ガバペンチンを疼痛の処置に対して単独療法で使用する場合は、完全には効果的ではない。実際に、応答の開始の遅延を記録した。ガバペンチンは、経口投与後にゆっくり吸収され、3~4時間以内に血漿で最大レベルとなる(Quintero、Journal of Experimental Pharmacology 2017年:9 13~21頁)。さらに、ガバペンチンは、カラギーナン炎症ラットモデルの本実験の部でも確認されるように、炎症性疼痛に対してほとんど活性ではない。
【0018】
加えて、ガバペンチンは、腰痛の処置に推奨されない(Low back pain and sciatica in over 16s:assessment and management、National Institute for Health and Care Excellence NICE Guidelines 2016年)。
【0019】
疼痛の処置に対する単独療法でガバペンチンを使用する欠点を考慮して、本出願人は、疼痛状態の処置での使用のために、ガバペンチンの特性を改善するためにいくつかの研究を行った。
【0020】
特に、本出願人は、非ステロイド性抗炎症薬、とりわけフェニルプロピオン酸およびフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬と組み合わせたガバペンチンに対して調査を実行した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
疼痛状態の療法を改善することを目的とする本出願人は、驚くべきことに、フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬が、ガバペンチンおよびリシンと共に安定な共結晶を形成することを見出した。
【0022】
調査期間中、本出願人は、上述したクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬、リシンおよびガバペンチンの共結晶が、炎症および疼痛に対して驚くべき相乗効果を示すことを見出した。
【0023】
実際に、これらの有効成分が本発明の共結晶中において会合している場合、別個の活性分子(NSAID、ガバペンチン)として共投与で得られるものより大きな抗炎症性および鎮痛活性を示す。
【0024】
ゆえに、本共結晶は、著しく小さい治療用量のNSAIDまたはガバペンチンまたはその両方のいずれかの使用を可能にして、副作用を最小限にする。加えて、ガバペンチン単独と比較して、経時的な有効性の持続が観察された。
【0025】
最終的に、共結晶は、とりわけ水性の生理学的環境に溶解する場合にNSAIDの溶解速度を改善し、2つの活性分子ガバペンチンおよびNSAIDの吸収および/または生物学的利用能を向上させる。
【0026】
ゆえに、本発明の目的は、フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リシンおよびガバペンチンの共結晶であるが、但し前記非ステロイド性抗炎症薬は、ケトプロフェンではない。
【0027】
本発明の実施形態によると、前記非ステロイド性抗炎症薬は、イブプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、インドプロフェン、ロキソプロフェン、ペルビプロフェン、およびナプロキセンから選択されるフェニルプロピオン酸誘導体である。
【0028】
本発明の実施形態によると、前記非ステロイド性抗炎症薬は、ジクロフェナク、フェルビナク、イブフェナク、フェンクロフェナク、チフラク、およびケトロラクから選択されるフェニル酢酸誘導体である。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態によると、前記非ステロイド性抗炎症薬は、イブプロフェンおよびフルルビプロフェンから選択される。
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン(FLG)およびイブプロフェン-リシン-ガバペンチン(ILG)の本発明による共結晶は、それぞれ、
図1に報告されるXRPD回折図、ならびに表2~3に示すXRPD位置および強度により特徴付けられる。
【0030】
本出願人は、驚くべきことに、フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶およびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶が、互いに顕著な類似性を有し、9~10度2-シータ、15~25度2-シータおよび27~28度2-シータの領域で最も強度が大きいXRPD回折ピークを伴ったことを観察した。同じパターンは、国際特許出願PCT/EP2021/060421に記載されるケトプロフェン-リシン-ガバペンチンの以前の共結晶で観察されたが、本出願の一部ではない。
【0031】
この類似性は、共結晶の等構造性(isostructurality)の明らかなエビデンスとした。等構造性は、類似の結晶充填を伴う異なる構成要素を指す。密接に関連する分子が単一の構成要素の結晶格子に導入される場合、対応する二元系は、最密充填を呈することができる[G.Portalone、Crystals、2020年、10、999~1012頁]。
【0032】
本発明のさらなる目的は、本発明の共結晶の調製のための方法であって、
a)フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リシン、およびガバペンチンを好適な溶媒に懸濁するステップ、
b)透明な溶液を得るまで、可能であれば撹拌しながら、任意で懸濁液を加熱することにより、前記NSAID、リシン、およびガバペンチンを溶解するステップ、
c)得られた溶液を任意で冷却するステップ、ならびに/または
d)貧溶媒(anti-solvent)を任意で添加して、NSAID、リシン、およびガバペンチン共結晶を提供するステップ
を含む方法である。
【0033】
本発明のさらなる目的は、本発明の共結晶および少なくとも薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。
本発明のさらなる目的は、本発明による共結晶および少なくとも別の薬学的な有効成分を含む医薬組成物である。
【0034】
本発明のさらなる目的は、疼痛および/または炎症の処置での使用のための本発明による共結晶である。
本発明のさらなる目的は、患者に有効量の本発明による共結晶を投与するステップを含む、疼痛および/または炎症の処置のための方法である。
【0035】
定義
本発明の目的のために、用語「共結晶」とは、多成分系を意味し、全ての構成要素が、その純粋な形態である場合、周囲条件下で固体である。構成要素は、単一の結晶内に分子レベルで共存する。少なくとも一部の構成要素は、非共有結合で、非イオン性相互作用により連結される。
【0036】
本発明の目的のために、用語「疼痛」とは、異なる性質および臓器の障害、例えば:原発性で、それゆえ他の因子または疾患に関連しない、ならびに続発性で、それゆえ外傷、傷害および別個の疾患に依存する、その両方の頭痛(headache、cephalalgia);多くの血管および神経を伴う歯髄で疼痛を起こす膿瘍またはう蝕の場合、歯痛;月経痛:月経の期間に典型的なホルモン変化に起因する腹部および下腹部の疼痛ならびに頭痛;ストレイン、外傷および感染による神経痛、または激しい神経痛;筋肉での疼痛、または筋肉痛:急縮または外傷により筋肉を使用または接触する場合の筋肉レベルに位置する疼痛;骨関節痛、例えば、外傷、加齢、ストレインおよび傷害に続く(骨、軟骨、靭帯および腱に対する)関節の炎症に起因する疼痛を意味する。
【0037】
本発明の目的のために、用語「炎症」とは、毛細血管拡張、白血球浸潤、発赤、発熱、および疼痛で示され、有害物質および損傷組織の排除を開始する機構として役に立つ、細胞傷害に対する生物体の局所応答を意味する。
【0038】
本発明の目的のために、用語「薬学的に許容される賦形剤」とは、それ自体のいかなる薬理学的効果も欠けており、哺乳動物、好ましくはヒトに投与の場合に有害反応を生じない物質を指す。
【0039】
本発明の目的のために、用語「室温」とは、18~25℃の範囲の温度を意味する。
本発明の目的のために、用語「貧溶媒(anti-solvent)」とは、化合物が不溶性であるか、またはわずかしか可溶性ではない溶媒を意味する。
【0040】
本明細書および本明細書に添付された図面では、略語「Gaba」は、ガバペンチンを示す。
本明細書の用語「およそ」および「約」とは、測定で起こり得る実験誤差の範囲を指す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンおよびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶の粉末X線回析パターン。
【
図2】フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶のDSCサーモグラム。
【
図3】イブプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶のDSCサーモグラム。
【
図4】フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶のTGサーモグラム。
【
図5】イブプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶のTGサーモグラム。
【
図6】フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶のラマンスペクトル。
【
図7】イブプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶のラマンスペクトル。
【
図8】フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶のFT-IRスペクトル。
【
図9】イブプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶のFT-IRスペクトル。
【
図10】フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶の
1H-NMRスペクトル(400MHz、D
2O)。
【
図11】イブプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶の
1H-NMRスペクトル(400MHz、D
2O)。
【
図12】フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶の
13C CPMASスペクトル。
【
図13】FLU-LYS-GAB、FLU・SALA、FLU・PICA、NaFLU、純粋なFLU、NaGAB、純粋なGAB、DL-LYS・2HCl、L-LYSアセテートおよび純粋なL-LYSの13C CPMASスペクトルのカルボン酸領域の詳細。
【
図14】フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶の15N CPMASスペクトル。
【
図15】FLU-LYS-GAB、NaGAB、GAB、DL-LYS・2HCl、L-LYSアセテートおよび純粋なL-LYSの15N CPMASスペクトルの間の比較。
【
図16】イブプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶の
13C CPMASスペクトル。
【
図17】IBU-LYS-GAB、IBU・L-プロリン、NaIBU、純粋なIBU、NaGAB、純粋なGAB、DL-LYS・2HCl、L-LYSアセテートおよび純粋なL-LYSの
13C CPMASスペクトルのカルボン酸領域の詳細。
【
図18】イブプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶の15N CPMASスペクトル。
【
図19】IBU-LYS-GAB、NaGAB、GAB、DL-LYS・2HCl、L-LYSアセテートおよび純粋なL-LYSの15N CPMASスペクトルの間の比較。
【
図20】室温、20kHzの回転速度で得られた、フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンおよびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンの13C(150.91MHz)CPMASスペクトル。
【
図21】室温、12kHzの回転速度で得られた、フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンおよびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンの15N(60.83MHz)CPMASスペクトル。
【
図22】カラギーナン誘発性のラットの足浮腫での、Flur+Lys+Gabaの混合物、ならびにそれぞれフルルビプロフェン、ガバペンチンおよびインドメタシンである単一活性物質と比較したFlur/Lys/Gaba共結晶の効果。本図面では、「Gaba」はガバペンチンを示す。
【
図23】ラットのカラギーナン誘発性足浮腫モデルの機械的異痛での、Flur+Lys+Gabaの混合物、ならびにそれぞれフルルビプロフェン、ガバペンチンおよびインドメタシンである単一活性物質と比較したFlur/Lys/Gaba共結晶の効果。本図面では、「Gaba」はガバペンチンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の目的は、フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リシンおよびガバペンチンの共結晶であるが、但し前記非ステロイド性抗炎症薬は、ケトプロフェンではない。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によると、共結晶の構成要素のモル比は1:1:1である。
実験の部に報告される分析に沿って、本発明による共結晶では、フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)のカルボキシル基は、脱プロトン化され、中性塩を形成するイオン結合を通してプロトン化されたリシンε-NH3
+基と相互作用する。
【0044】
フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とのリシンの塩、特にリシンを含むフルルビプロフェンまたはイブプロフェン塩は、非イオン結合を通してガバペンチンと相互作用し、安定な共結晶を形成する。
【0045】
本発明の実施形態によると、前記非ステロイド性抗炎症薬は、イブプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、インドプロフェン、ロキソプロフェン、ペルビプロフェンおよびナプロキセンから選択されるフェニルプロピオン酸誘導体である。
【0046】
本発明の実施形態によると、前記非ステロイド性抗炎症薬は、ジクロフェナク、フェルビナク、イブフェナク、フェンクロフェナク、チフラクおよびケトロラクから選択されるフェニル酢酸誘導体である。
【0047】
本発明による共結晶では、NSAIDのキラル炭素は、存在する場合、光学的に純粋な(S)もしくは(R)もしくはラセミ(S,R)であるか、または立体異性体の任意の混合物の形態であり得る。
【0048】
本発明の共結晶では、リシンは、ラセミ(S,R)リシン、(S)リシンもしくは(R)リシン、または任意のその混合物であり得、好ましくはL-リシンとも命名される天然アミノ酸(S)-リシンである。
【0049】
特に好ましい実施形態によると、前記非ステロイド性抗炎症薬は、フルルビプロフェンおよびイブプロフェンから選択される。別の好ましい実施形態によると、前記非ステロイド性抗炎症薬はフルルビプロフェンである。
【0050】
本実施形態による共結晶では、フルルビプロフェンは、ラセミ(S,R)フルルビプロフェン、(S)-フルルビプロフェンもしくは(R)-フルルビプロフェンまたは任意のその混合物であり得る。
【0051】
本実施形態による共結晶では、リシンは、ラセミ(S,R)リシン、(S)リシンもしくは(R)リシン、または任意のその混合物であり得、好ましくはL-リシンとも命名される天然アミノ酸(S)-リシンである。
【0052】
一実施形態では、本発明の共結晶は、(S,R)-フルルビプロフェンを含む。
一実施形態では、本発明の共結晶は、(S,R)-リシンを含む。
一実施形態では、本発明の共結晶は、(S,R)-フルルビプロフェンおよび(S,R)-リシンを含む。
【0053】
別の好ましい実施形態によると、前記非ステロイド性抗炎症薬はイブプロフェンである。
本実施形態による共結晶では、イブプロフェンは、ラセミ(S,R)イブプロフェン、(S)-イブプロフェンもしくは(R)-イブプロフェンまたは任意のその混合物であり得る。
【0054】
また、本実施形態による共結晶では、リシンは、ラセミ(S,R)リシン、(S)リシンもしくは(R)リシン、または任意のその混合物であり得、好ましくはL-リシンとも命名される天然アミノ酸(S)-リシンである。
【0055】
一実施形態では、本発明の共結晶は、(S,R)-イブプロフェンを含む。
一実施形態では、本発明の共結晶は、(S,R)-リシンを含む。
一実施形態では、本発明の共結晶は、(S,R)-イブプロフェンおよび(S,R)-リシンを含む。
【0056】
本発明の共結晶は、非溶媒和形態ならびに水和形態を含む溶媒和形態で存在し得る。
本発明の共結晶は、容易に入手可能であり、安定である。
本発明の共結晶は、以下の実験の節に記載される通り、疼痛状態の改善した薬学的特性、薬物動態および有効性を示す。
【0057】
本発明の共結晶は、共通XRPDパターン、特に以下の共通XRPD回折ピーク:9.3、17.1、18.5、19.8、22.1、24.1、24.9、27.9度2-シータ±0.4度2-シータにより特徴付けられる。
【0058】
本共結晶の他の多形体もまた本発明の範囲内である。
一実施形態によると、本発明のフルルビプロフェン、リシンおよびガバペンチンの共結晶は、以下のXRPD回折ピーク:9.3、10.4、15.2、16.0、17.2、18.3、18.8、19.7、20.7、21.9、24.0、24.8、27.9、および29.0度2-シータ±0.2度2-シータにより特徴付けられ、好ましくは以下のXRPD回折ピーク:6.9、10.9、12.2、25.5、26.3、29.8、31.5、33.0、34.0、35.9、37.5、39.2および40.8度2-シータ±0.2度2-シータによりさらに特徴付けられる。
【0059】
本実施形態によると、本発明のフルルビプロフェン、リシンおよびガバペンチンの共結晶は、161.59℃±0.5℃で開始する163.48℃±0.5℃の融解点に相当する共結晶の吸熱形状のピークを伴う
図2のDSCサーモグラム、
図4のTGAサーモグラム、
図6および8に報告される典型的な吸収帯を伴うFTラマンおよびFT-IRスペクトル、
図10の溶液
1H-NMRスペクトルおよび表10での相対的な割当て、
図12、13の固体状態
13C CPMASおよび表12での相対的な割当て、ならびに/または
図14および15の15N CPMASスペクトルによりさらに特徴付けられる。
【0060】
別の実施形態によると、本発明のイブプロフェン、リシンおよびガバペンチンの共結晶は、以下のXRPD回折ピーク:9.5、10.3、15.9、17.1、17.6、18.7、20.0、22.3、24.1、25.1、25.6、27.9および28.6度2-シータ±0.2度2-シータにより特徴付けられ、好ましくは以下のXRPD回折ピーク:6.9、12.0、14.7、26.3、30.6、31.1、32.3、33.1、34.5、35.3、36.6、38.6、39.0、41.1、および48.9度2-シータ±0.2度2-シータによりさらに特徴付けられる。本実施形態によると、本発明の共結晶イブプロフェン、リシンおよびガバペンチンは、161.60℃±0.5℃で開始する165.60℃±0.5℃の融解点に相当する共結晶の吸熱形状のピークを伴う
図3のDSCサーモグラム、
図5のTGAサーモグラム、
図7および9に報告される典型的な吸収帯を伴うFTラマンおよびFT-IRスペクトル、
図11の溶液
1H-NMRスペクトルおよび表11での相対的な割当て、
図16、17の固体状態
13C CPMASおよび表13での相対的な割当て、ならびに/または
図18および19の15N CPMASスペクトルによりさらに特徴付けられる。
【0061】
上記に示すXRPDを有する共結晶、特にフルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶およびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶が、等構造性共結晶であると観察される。
【0062】
等構造性は、類似の結晶充填を伴う異なる構成要素を示す。密接に関連する分子が単一の構成要素の結晶格子に導入される場合、対応する二元系は、最密充填を呈することができる(G.Portalone、Crystals、2020年、10、999~1012頁)。
【0063】
類似する構造的な青写真を含む等構造性共結晶は、変動するコフォーマーの存在ならびにその立体配座およびパッキング性での軽微な変化により共通して改変した薬学的に関連した特性を呈し得る。多くの場合、等構造性共結晶は、同形体として定義される、空間群を含む類似の格子パラメーターを有し、一般に同一のX線回析パターンを呈する[F.Y.Wang、Q.Zhang、Z.Zhang、X.Gong、J.R.WangおよびX.Mei、Cryst.Eng.Comm、2018年、20、5945~5948頁]。共結晶の等構造性は、XRPDパターン比較により実証され、13Cおよび15N-CPMAS NMRスペクトルによりさらに確認された(実験の節を参照)。
【0064】
本共結晶のXRPD回折図は、類似の強度を有する14~22度2-シータの領域でそれぞれ主要なピークの反射を伴って、非常に類似する(
図1、XRPD)。この類似性は、共結晶の等構造性の明らかなエビデンスとした。
【0065】
さらに、2つの共結晶の13Cおよび15N-CPMAS NMRスペクトルでは(
図20および21を参照)、共鳴の多くが一致する。シグナルの注意深い分析は、脂肪族領域(80ppm未満)で反復するシグナル全てがLYSおよびGABの脂肪族C核に相当することを指摘する。最も明白な違いは芳香族範囲(110~170ppm)にあり、芳香族炭素が異なるNSAIDのものであるので理にかなっている。最も顕著には、同じ類似性は、FLU-LYS-GABおよびIBU-LYS-GABのカルボン酸共鳴を伴って、カルボン酸領域で観察することができる。
【0066】
同じ顕著なスペクトル類似性は、サンプルの15N CPMASスペクトルで観察することができる。
これらスペクトル類似性全ては、FLU-LYS-GABおよびIBU-LYS-GABの結晶系が均一な相であり、とりわけLYSおよびGABについて非常に類似する局所的な環境、ならびに同等の振動の挙動により特徴付けられることを示す。
【0067】
本発明のさらなる目的は、医薬としての使用のための本発明の共結晶である。医学的使用は、治癒的、予防的または緩和的であり得る。
本出願人は、同じ結晶中の2つの有効成分の会合が本医学的使用のためにいくつかの利点を呈することを観察した。第1に、NSAID、リシンおよびガバペンチンを含む共結晶は、単一の化学物質として挙動するので、処置を容易にし、ガバペンチンおよびNSAID単独での処置に対してより少ない副作用をもたらす。
【0068】
NSAID、リシンおよびガバペンチンを含む共結晶は、有利なことに、疼痛および/または炎症の予防、軽減または処置に使用することができ、前記疼痛は急性または慢性疼痛である。
【0069】
好ましい使用によると、NSAID、リシンおよびガバペンチンを含む共結晶は、神経障害性または炎症性疼痛に対して使用される。実際に、2つの有効成分の1つの固有の種への会合は、脳血液関門のより良好な浸透も含むより良好な薬物動態/薬力学(PKPD)を可能にし得、神経障害性疼痛の処置を助ける。
【0070】
好ましくは、前記疼痛は、頭痛、歯痛、月経痛、筋肉痛、神経障害性疼痛、神経炎症に伴う疼痛、糖尿病性ニューロパチー、がん疼痛、変形性関節炎、腰痛、坐骨神経痛、線維筋痛、三叉神経痛、外科手術後および術後疼痛、ヘルペス後神経痛、関節リウマチ、強直性脊椎炎、五十肩、幻肢痛およびHIV疼痛から選択される。
【0071】
一実施形態によると、ヒトに対する共結晶の1日投与量は、フルルビプロフェンに対して、好ましくは1日当たり50~250mg、より好ましくは1日当たり100~200mgの量で、好ましくは1日1~4回提供する。
【0072】
別の実施形態によると、ヒトに対する共結晶の1日投与量は、イブプロフェンに対して、好ましくは1日当たり200~800mg、より好ましくは1日当たり400~600mgの量で、好ましくは1日1~4回提供する。
【0073】
ヒトに対する本発明による共結晶の1日投与量は、有利なことに、ガバペンチンを単独で使用する場合のガバペンチンの通常の投与量と比較すると、ずっと少ないガバペンチンの総量をもたらす。
【0074】
本発明のさらなる目的は、本発明の共結晶の調製のための方法であって、
a)フェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リシン、およびガバペンチンを好適な溶媒に懸濁し、透明な溶液を得るまで、室温で得られる混合物を撹拌するステップ、
b)透明な溶液を得るまで、可能であれば撹拌しながら、任意で懸濁液を加熱することにより、前記NSAID、リシン、およびガバペンチンを溶解するステップ、
c)任意で、b)で得られた溶液を冷却するステップ、ならびに/または
d)任意で、貧溶媒を添加して、NSAID、リシン、およびガバペンチン共結晶を提供するステップ
を含む方法である。
【0075】
本発明の実施形態によると、ステップa)による非ステロイド性抗炎症薬は、イブプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、インドプロフェン、ロキソプロフェン、ペルビプロフェン、およびナプロキセンから選択されるフェニルプロピオン酸誘導体である。
【0076】
本発明の別の実施形態によると、非ステロイド性抗炎症薬は、ジクロフェナク、フェルビナク、イブフェナク、フェンクロフェナク、チフラク、およびケトロラクから選択されるフェニル酢酸誘導体である。
【0077】
好ましい実施形態によると、前記非ステロイド性抗炎症薬は、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナク、およびナプロキセンから、さらにより好ましくはイブプロフェンおよびフルルビプロフェンから選択される。
【0078】
本方法では、NSAIDに対する出発物質は、NSAID遊離酸またはNSAID塩であり得る。
リシネートと異なるNSAID遊離酸またはNSAID塩の場合、リシンは、好ましくはリシンの中性形態に添加する。リシンは、好ましくは、同じモル量のNSAIDで使用される。
【0079】
NSAID塩は、好ましくは、フルルビプロフェンリシネートまたはイブプロフェンリシネートであり得る。
本方法のステップa)では、ガバペンチン対NSAIDのモル比は、好ましくは1:1~1.5:1、より好ましくは1:1~1.2:1であり、さらにより好ましくは約1:1である。
【0080】
好ましい実施形態では、ステップa)のNSAID:リシン:ガバペンチンのモル比は約1:1:1である。
本発明による方法のステップa)で使用するのに好適な溶媒は、水、アルコール、好ましくはメタノールおよびエタノール、エステル、好ましくは酢酸エチル、エーテル、好ましくはテトラヒドロフランおよびtert-ブチルメチルエーテル、または芳香族溶媒、好ましくはトルエンである。
【0081】
ステップb)は、室温でまたは加熱しながら、好ましくは溶媒の還流の温度で実行することができる。
好ましくは、ステップb)の透明な溶液は、1molのモル濃度での前記NSAID、NSAIDと比較して1~1.5mol/mol、より好ましくは1mol/molのモル濃度でのリシン、およびNSAIDと比較して1~1.5mol/mol、より好ましくは1mol/molのモル濃度でのガバペンチンを含有する。
【0082】
好ましくは、ステップb)からの溶液は、室温で維持または冷却し、濾過する。
好ましくは、ステップb)は撹拌しながら実行する。ステップb)の撹拌するステップは、好ましくは10分~30分間実施する。
【0083】
任意で、ステップd)では、共結晶の沈殿は、酢酸エチルおよびテトラヒドロフランのような貧溶媒の添加が好ましい。
好ましくは、貧溶媒は、溶液の体積に対して1:1~16:1の体積比で添加することができる。
【0084】
一実施形態によると、本発明による方法のステップa)では、NSAIDおよびリシンは、任意の多形形態で予め形成した塩または共結晶として存在し得る。
本発明の共結晶の製造のための出発物質は、以前公表され、有機化学者に周知されている合成の方法にしたがって調製することができる。
【0085】
代替的な実施形態によると、前記NSAIDは遊離酸であり、および/または前記リシンは中性形態にある。
本調製方法では、ガバペンチンは、好ましくは、その中性形態(両性イオン性内部塩)または任意の酸もしくは塩基の塩化形態で、例えばガバペンチン塩酸塩またはガバペンチンナトリウム塩として使用される。
【0086】
好ましくは、ガバペンチンはその中性形態で使用する。
ガバペンチンは、任意の多形形態であり得る。
本方法は、高収率で本発明の共結晶を提供する。これは、工業レベルで単純で容易に拡張可能である。
【0087】
本発明は、上述したフェニルプロピオン酸またはフェニル酢酸のクラスに属する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リシンおよびガバペンチンの共結晶、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物にさらに関する。本発明の実施形態によると、医薬組成物中の前記非ステロイド性抗炎症薬は、イブプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、インドプロフェン、ロキソプロフェン、ペルビプロフェンおよびナプロキセンから選択されるフェニルプロピオン酸誘導体である。
【0088】
本発明の別の実施形態によると、医薬組成物中の前記非ステロイド性抗炎症薬は、ジクロフェナク、フェルビナク、イブフェナク、フェンクロフェナク、チフラクおよびケトロラクから選択されるフェニル酢酸誘導体である。
【0089】
特に好ましい実施形態によると、医薬組成物は、フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶を含む。
別の特に好ましい実施形態によると、医薬組成物は、イブプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶を含む。
【0090】
本発明の医薬組成物に存在する共結晶中の非ステロイド性抗炎症薬はケトプロフェンではない。
本発明による組成物は、6~60重量%の本明細書で定義される共結晶、および40~94重量%の1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。
【0091】
賦形剤の選択は、投与の特定の様式、溶解度および安定性の効果、ならびに剤形の性質のような因子に依存して広範囲である。
本発明による医薬組成物は、ヒトおよび/または動物、好ましくは幼児、小児および成人を含むヒトへの投与に好適である任意の形態であり得、当業者に知られている標準的な手順により生成することができる。
【0092】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、経口固体組成物、例えばカプセル剤、ペレット剤、錠剤、カシェ剤、チュアブル剤形、散剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、経口可溶な顆粒物、懸濁剤、乳剤、スプレー剤、または液体媒体で再構成される乾燥粉末形態である。
【0093】
医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、例えば充填剤、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、流動調節剤、放出剤などをさらに含有することができる。
好適な賦形剤は、例えば「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第3版、A.H.Kibbe出版、American Pharmaceutical Association、Washington、USA、およびPharmaceutical Press、Londonに開示される。
【0094】
好適な充填剤は、例えばラクトース(一水和物、スプレー乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム二水和物およびリン酸水素カルシウムである。
【0095】
充填剤は、組成物の総重量の0~80重量%の量、好ましくは10~60重量%の量で存在し得る。
好適な結合剤は、例えばポリビニルピロリドン、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、糖類、デキストラン、トウモロコシデンプン、ゼラチン、ポリエチレングリコール、天然および合成ガム、アルファ化デンプンである。
【0096】
結合剤は、組成物の総重量の0~80重量%の量、好ましくは10~60重量%の量で存在し得る。
結合剤は、一般に、錠剤製剤に粘着性を付与するために使用される。
【0097】
好適な流動促進剤は、例えばステアリン酸のような脂肪酸のアルカリ土類金属塩、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物である。
【0098】
流動促進剤は、例えば組成物の総重量の0~2重量%の量、好ましくは0.5~1.5重量%の量で存在し得る。
好適な崩壊剤は、例えばクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、カルボキシメチルグリコール酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムである。
【0099】
崩壊剤は、組成物の総重量の0~20重量%の量、好ましくは1~15重量%の量で存在し得る。
好適な流動調節剤は、例えばコロイダルシリカである。流動調節剤は、組成物の総重量の0~8重量%の量、好ましくは0.1~3重量%の量で存在し得る。
【0100】
好適な放出剤は、例えばタルカムである。放出剤は、組成物の総重量の0~5重量%の量、好ましくは0.5~3重量%の量で存在し得る。
固体組成物は、コーティングすることができ、好ましくはフィルムコーティングすることができる。
【0101】
好適なコーティング剤は、例えばセルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテートフタレート、および/またはセラックもしくは天然ゴム、例えばカラギーナンである。
【0102】
本発明の医薬組成物は、固体インプラント組成物であり得、共結晶は固体の形態である。本組成物は、身体組織または体腔に組み込むことができる。
インプラントは、生体適合性および生体侵食性の物質のマトリクスを含み得、本発明の共結晶の粒子は分散させるか、または可能であれば、本共結晶の液体混合物の小球体もしくは単離細胞は捕捉される。望ましくは、マトリクスは破壊され、身体により完全に吸収される。マトリクスの組成物はまた、好ましくは、長期間、本発明の共結晶の制御放出、持続放出、および/または遅延放出を提供するために選択される。
【0103】
代替的に、本発明の共結晶は、活性化合物の調節放出をもたらす埋込みデポー剤として投与用の固体、半固体、またはチキソトロピー液体として製剤化することができる。
本組成物は、皮膚または粘膜に局所的に、すなわち経真皮、経表皮、表皮下または経皮的に投与することができる。
【0104】
本組成物は、舌下的にまたは坐剤を介して投与することができる。
本目的に対する典型的な製剤は、ポアオン剤、スポットオン剤、ディップ剤、スプレー剤、ムース剤、シャンプー剤、粉末製剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、散布剤、包帯、フォーム剤、フィルム剤、皮膚貼付剤、ウェハ剤、インプラント、デポー剤、スポンジ、ファイバー、絆創膏、マイクロエマルジョン、経口可溶な(orosoluble)顆粒物を含む。リポソームもまた使用することができる。
【0105】
本発明の医薬組成物は、経口または非経口投与用の、例えば筋肉内、腹腔内、または静脈内注射で投与される、溶液の即時調製のための固体組成物であり得る。
本発明の医薬組成物は、当業者に周知されている方法により調製することができる。
【0106】
本発明の組成物は、即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、パルス放出または制御放出の型であり得る。
さらなる実施形態によると、本発明の医薬組成物は、本発明の共結晶および少なくとも別の薬学的な有効成分を含み得る。
【0107】
他の薬学的な有効成分は、本発明の治療剤を投与する状況により決定される。
本発明によると、医薬組成物は、疼痛および/または炎症の予防、軽減または処置に使用することができ、前記疼痛は急性または慢性疼痛である。
【0108】
好ましい使用によると、組成物は、神経障害性または炎症性疼痛の予防、軽減および/または処置に使用される。
前記疼痛は、頭痛、歯痛、月経痛、筋肉痛、神経障害性疼痛、神経炎症に伴う疼痛、糖尿病性ニューロパチー、がん疼痛、変形性関節炎、腰痛、坐骨神経痛、線維筋痛、三叉神経痛、外科手術後および術後疼痛、ヘルペス後神経痛、関節リウマチ、強直性脊椎炎、五十肩、幻肢痛またはHIV疼痛から選択される。
【0109】
本発明のさらなる目的は、疼痛および/または炎症の予防、軽減または処置のための方法であって、疼痛および/または炎症の予防、軽減または処置を必要とする対象、好ましくはヒトに、有効量の本発明の共結晶および/または前記共結晶を含む医薬組成物を投与するステップを含む方法である。
【0110】
特に、前記方法は、頭痛、歯痛、月経痛、筋肉痛、神経障害性疼痛、神経炎症に伴う疼痛、糖尿病性ニューロパチー、がん疼痛、変形性関節炎、腰痛、坐骨神経痛、線維筋痛、三叉神経痛;外科手術後および術後疼痛、ヘルペス後神経痛、関節リウマチ、強直性脊椎炎、五十肩、幻肢痛またはHIV疼痛の予防、軽減または処置を可能にする。特に、患者は、ガバペンチンもしくはNSAIDまたはその組合せでの処置より長い共結晶の処置からの作用の期間から利益を受ける。
【0111】
これは、投与の好ましい経路、対応する好適な剤形および投薬レジメンを決定する、医師のような当業者の通常の技術の範囲内である。
例えば、ヒトおよび動物に対する1日投与量は、年齢、性別、体重または疾病の程度などのような因子に依存して変化し得る。
【0112】
疼痛および/または炎症の予防、軽減または処置のための方法の一実施形態によると、共結晶および/または医薬組成物は、疼痛および/または炎症の予防、軽減または処置に有用な1つまたは複数の他の薬物と組み合わせて投与することができる。
【実施例】
【0113】
実験の部
以下では、NSAID、リシンおよびガバペンチンの共結晶の製造、これらの分析および生物学的特徴付けを記載する。
【0114】
1.共結晶NSAID-リシン-ガバペンチンの合成
NSAID(3.3mmol、1.0当量)を6mLのエタノールに溶解した。得られる溶液に、50%w/wのD,L-リシン水溶液(1.0当量)を添加し、溶液を10分間撹拌した。次いで、1.0当量のガバペンチンを添加した。固体沈殿をおよそ30分間行い、懸濁液を25℃で5時間撹拌した(300rpm)。固体生成物を濾紙で真空濾過により単離し、次いでおよそ10分間窒素流下で圧搾した。固体を穏やかに粉砕し、次いで40℃、30mbarで終夜乾燥させ、NSAID-リシン-ガバペンチン共結晶の白色固体として所望の生成物を得た(収率:75~90%)。
【0115】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶およびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶を、上記の手順にしたがって合成し、以下の分析にかけた。
2.XRPD分析
XRPD分析を、以下の表1に報告される以下の機器および条件で実行した。
【0116】
【0117】
【0118】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1およびイブプロフェン-リシン-ガバペンチン1:1:1共結晶の粉末X線回折図は、
図1に報告される。
共結晶のXRPDピークのリストは、以下の表2および表3に報告される。
【0119】
【0120】
【0121】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンおよびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンのXRPD回折図は、類似の強度を有する9~10度2-シータ、15~25度2-シータおよび27~28度2-シータの領域でそれぞれ主要なピークの反射を伴って、非常に類似した(
図1ならびに表2および3を参照)。この類似性は、共結晶の等構造性の明らかなエビデンスとした。
【0122】
3.熱分析
DSC分析
分析は、機器DSC Mettler Toledo DSC1を使用して実行した。
【0123】
サンプルを、アルミニウムカバーで密封したアルミニウムパンで秤量した。分析は、以下の表3aに示す条件下で、25℃から320℃まで10°K/分でサンプルを加熱することにより実施した。
【0124】
【0125】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン共結晶(
図2)およびイブプロフェン-リシン-ガバペンチン(
図3)のサンプルにおいて、分析を実行した。
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンのDSCプロファイルは、サンプル融解および分解に関連した163.48℃(開始161.59℃、デルタH=153.58J/g)での吸熱事象を示した(
図2)。イブプロフェン-リシン-ガバペンチンのDSCプロファイルが、165.60℃(開始161.60℃、デルタH=157.73J/g)での吸熱事象を示したが、120℃超で、多数の部分的に重複した吸熱ピークは分解ステップで検出可能だった(
図3)。驚くべきことに、フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンおよびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンは、その等構造性パッキングをさらに支持する融合の類似するエンタルピー(153.58および157.73J/g)を示した。さらに、共結晶のより低い融解吸熱は、天然の薬物の溶解度/溶解プロファイルを改善すると想定される[(a)M.K.Mishra、P.Sanphui、U.RamamurtyおよびG.R.Desiraju、Cryst.Growth Des.、2014年、14、3054~3061頁;(b)P.Sanphui、N.R.Goud、U.B.R.KhandavilliおよびA.Nangia、Cryst.Growth Des.、2011年、11、4135~4145頁]。
【0126】
熱重量分析TGA
分析は、機器Mettler Toledo TGA/DSC1を使用して実行した。
サンプルを、アルミニウム穿孔カバーで密封したアルミニウムパンで秤量した。分析は、以下の表4に示す条件下で、25℃から320℃まで10°/分でサンプルを加熱することにより実施した。
【0127】
【0128】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン共結晶のTGA分析は、融解点の前に1.686%しか重量低下を示さず、共結晶が溶媒をほぼ含まないことを確認した(
図4)。
イブプロフェン-リシン-ガバペンチン共結晶のTGA分析は、8.007重量%の喪失を示し、溶媒和水の喪失を確認した(
図5)。
【0129】
4.FT-ラマンおよびFT-IR
FT-ラマン
ラマンスペクトルは、Nicolet iS50 FT-IR分光計で記録した。励起源は、後方散乱(180°)構成におけるNd-YAGレーザ(1064nm)であった。焦点レーザビームの直径は、およそ50mmであり、スペクトル分解能は、4cm-1であった。スペクトルは、およそ100mWのサンプルで、レーザ出力で記録した。
【0130】
FT-IR
分析は、以下の表5に示す条件下で、スマートパフォーマーダイアモンド、DTGS KBr検出器、IR源、KBrビームスプリッタを備えた、機器Thermo Nicolet iS50-ATRモジュール分光計を使用して実行した。
【0131】
【0132】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンおよびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶のラマンスペクトルは、
図6および7に報告され、ピークのリストは、表6および7に報告される。
【0133】
【0134】
【0135】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンおよびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶のFT-IRスペクトルは、
図8および9に示し、ピークのリストは、表8および9に報告される。
【0136】
【0137】
【0138】
ラマンおよびFT-IRスペクトルでさえ、異なるNSAIDの存在のためであり得るいくつかの違いと共に、共結晶内の有意な類似性を観察した。スペクトル全ては、2つの結晶系が、とりわけリシンおよびガバペンチンについて非常に類似する局所的な環境により特徴付けられ、同等の振動の挙動を示すことを示すようであった。
【0139】
5.液体および固体状態のNMR
1H-核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、Bruker Avance3 400MHz機器での内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)と共に示した溶媒で記録した。化学シフトは、内部標準に対して百万分率(ppm)で報告される。略語は以下のように使用する:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、dd=二重線の二重線、br=幅広。カップリング定数(J値)は、ヘルツ(Hz)で得られる。
【0140】
サンプルの固体状態13C CPMASスペクトルは、それぞれ1Hおよび13C核に対して、600.17および150.91MHzで動作するJeol ECZR600機器で得られた。粉末サンプルを、3.2mmのo.d.および60μlの体積での円筒状のジルコニウム製のロータに充填した。サンプルを各バッチから収集し、さらなる調製をせずに使用して、ロータに充填した。13C CPMASスペクトルを、2.1μsの90°1Hパルスおよび3.5msの接触時間でのランプ交差分極パルスシーケンスを使用して、室温、20kHzの回転速度で得た。共結晶に対して5.7から100秒の最適なリサイクル遅延を使用し、走査の数に対して2200から20を使用した。各スペクトルに対して、108.5kHzの高周波電界で、2パルス位相変調(TPPM)デカップリングスキームを使用した。13C化学シフトスケールは、外部標準グリシンのメチレンシグナルを通して(43.7ppmで)較正した。13C T1
1H分析に対して、12スペクトルは、異なる緩和遅延を伴う350回の走査に対して得られ、範囲0.1~60秒に含まれ、指数アルゴリズムを通してデルタv5.2.1ソフトウェアにより算出した。スペクトルを、2.1μsの90°1Hパルスおよび2msの接触時間でのランプ交差分極パルスシーケンスを使用して、室温、20kHzの回転速度で得た。
【0141】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンの1H-NMRスペクトル
共結晶の1H-NMRスペクトルは、1:1:1化学量を伴うフルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンのサンプルでの共存を確認した。
【0142】
スキーム1に示される原子の番号付けと一致するシグナルの多重度および割当ては、表10に報告される:
スキーム1.フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンの化学構造および原子の番号付け
【0143】
【0144】
【0145】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン共結晶の
1H-NMRスペクトル(400MHz、D
2O)は、
図10に示す。
イブプロフェン-リシン-ガバペンチンの
1H-NMRスペクトル
イブプロフェン-リシン-ガバペンチン共結晶の
1H-NMRスペクトルは、1:1:1化学量を伴うイブプロフェン-リシン-ガバペンチンのサンプルでの共存を確認した。
【0146】
スキーム2に示される原子の番号付けと一致するシグナルの多重度および割当ては、表11に報告される:
スキーム2.イブプロフェン-リシン-ガバペンチンの化学構造および原子の番号付け
【0147】
【0148】
【0149】
イブプロフェン-リシン-ガバペンチン共結晶の
1H-NMRスペクトル(400MHz、D
2O)は、
図11に示す。
共結晶フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンの固体状態
13C CPMASスペクトル
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンの新しい均一な相は、
13C-CPMASスペクトルで確認した。化学量は、単位胞においてフルルビプロフェン、リシンおよびガバペンチンの1つの独立分子を含む、1:1:1であると評価された。
【0150】
以下の表12では、特有の固体状態13C NMRのシグナルが要約される。
【0151】
【0152】
13C SSNMR分析から、物質のカルボン酸/カルボキシレート部分は、様々な異なる相互作用に関与する(
図12および13):
・純粋なフルルビプロフェン(FLU)は、その結晶構造でカルボン酸ホモダイマーを提示し、関連シグナルを183.4ppmにもたらす。
【0153】
・フルルビプロフェンナトリウム塩(NaFLU、
図13)は、183.9ppmでカルボキシレートピークの低下を提示する;
・文献から再現される2つのフルルビプロフェン共結晶(サリチルアミドFLU・SALAおよびピコリンアミド、FLU・PICA)では、フルルビプロフェンの中性COOH部分は、2つのアミドの芳香族Nとの水素結合に関与する。対応するシグナルは、それぞれ178.6(FLU・SALA)および177.8(FLU・PICA)ppmで共鳴する。
【0154】
・純粋なガバペンチン(GAB)は、179.0ppmで共鳴するCOO-部分を含む両性イオンであり;ナトリウム塩(NaGAB)として、中性NH2部分は、NH3+基の代わりに存在するが、183.4ppmで共鳴するカルボキシレート基を依然として有する。
【0155】
・両性イオン性L-リシン(L-LYS)は、176.7ppmでのカルボキシレートシグナルにより特徴付けられるが、DL-リシンの二重塩酸塩(DL-LYS・2HCl)は、中性COOH基を提示し、そのピークは171.7ppmに低下する。
【0156】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチン(FLU-LYS-GAB)のスペクトルは、181.3、179.5および178.2ppmで、カルボン酸領域において3つの別個のピークを特徴付ける。出発物質の化学シフトを考慮すると、出発物質はそれぞれ、フルルビプロフェン、ガバペンチンおよびリシンに属すると仮定することは理にかなっている。
【0157】
15N CPMAS分析は、共結晶ならびにNaGABで実施した。これらのスペクトルの比較は、L-LYSおよびGABのものと共に、
図14および15に提示する。
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンは、37.6、30.2および21.6ppmで、3つの別個の15N共鳴を提示し、単位胞においてリシン(2つのシグナルを占める)およびガバペンチン(1つを占める)の単一の独立分子の存在を確認する。化学シフトは、共結晶では、リシンのα-Nおよびε-N、ならびにガバペンチンの窒素を脱プロトン化する(すなわちNH3+の形態)ことを示唆する(
図14および15)。
【0158】
共結晶イブプロフェン-リシン-ガバペンチンの固体状態13C CPMASスペクトル
イブプロフェン-リシン-ガバペンチンの新しい均一な相は、13C-CPMASスペクトルで確認した。化学量は、単位胞においてイブプロフェン、リシンおよびガバペンチンの1つの独立分子を含む、1:1:1であると評価された。以下の表13では、特有の固体状態13C NMRのシグナルが要約される。
【0159】
【0160】
図16は、イブプロフェン-リシン-ガバペンチン共結晶の
13C CPMAS NMRスペクトルを提示する。
イブプロフェン-リシン-ガバペンチンの
13C CPMAS NMRについて、イブプロフェン(IBU)に起因する2つのシグナルが182.8および181.3ppmで出現する(
図17)。第1の化学シフトは、COOH部分がホモ二量体の相互作用に関与する、純粋なイブプロフェンのもの(182.9ppm)、および183.4ppmでのイブプロフェンナトリウム塩(NaIBU)のカルボキシレート基のものと非常に類似する。これは、L-プロリンとの共結晶におけるイブプロフェンの中性COOHの非常に低い化学シフト(176.7ppm)がさらに示す通り、カルボキシレート部分に相当することを示唆する。他の3つのカルボン酸シグナルに対して、フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンに対して行われる全ての考慮は、本明細書で同様に適用される。
図18および19に提示される、15N CPMASスペクトルでも同様であり得る。
【0161】
フルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンおよびイブプロフェン-リシン-ガバペンチンの共結晶の13C CPMASスペクトルは、
図20に示すのと非常に類似する。2つの共結晶のシグナルの多く(
図20において破線で強調)は一致する。シグナルの注意深い分析は、脂肪族領域(80ppm未満)で反復するシグナル全てがリシンおよびガバペンチンの脂肪族C核に相当することを指摘する。最も明白な違いは芳香族範囲(110~170ppm)に関し、2つの異なるNSAIDが芳香族炭素を含有するものであるので理にかなっている。最も顕著には、同じ類似性は、イブプロフェン-リシン-ガバペンチンに対しても出現するフルルビプロフェン-リシン-ガバペンチンのカルボン酸シグナルを伴って、カルボン酸領域で観察することができる。
【0162】
同じ顕著なスペクトル類似性(破線で強調)は、サンプルの15N CPMASスペクトルで観察することができる(
図21)。
13Cおよび15Nのデータから、リシンおよびガバペンチン断片の局所的な環境は、2つの結晶形態に対して同じと考えられる。全ての場合で、ガバペンチンは両性イオンであるが、リシンは通常のCOO
-およびα-NH
3
+基を提示する。リシンのε-NおよびNSAIDのCOOH基は、カルボン酸の陽子を共有する。
【0163】
結果は、カルボキシレート部分に変化するフルルビプロフェンおよびイブプロフェンのCOOH部分から、唯一可能な受容体であるリシンのε-NH2へのプロトンの移動の発生を強く示唆した。
【0164】
固体状態13Cおよび15N NMR分析に沿って、本共結晶では、フルルビプロフェンおよびイブプロフェンのカルボキシル基は、脱プロトン化され、中性塩を形成するイオン結合を通してプロトン化されたリシンε-NH3
+基と相互作用する。フルルビプロフェンおよびイブプロフェンのリシン中性塩は、安定な共結晶を形成する非イオン結合を通してガバペンチンと相互作用する。
【0165】
6.in vivo研究
ラットにおいてカラギーナン足底内注射で誘発される炎症性疼痛
雄のウィスターラット(270~280g)(Envigo、イタリア)を、実験での使用の前に少なくとも1週間、制御した照明(12:12時間の明:暗サイクル;6.00時点灯)および標準的な環境条件(室温22±1℃、湿度60±10%)の下、1ケージ当たり2~3匹を収容した。ラット食および水道水は、適宜利用可能にした。手順は、カンパニア大学の動物倫理委員会「Luigi Vanvitelli」で承認された。動物のケアは、実験動物の保護に対するイタリアの政令(D.L.116/92)および欧州委員会指令(E.C.L358/1のO.J.、18/12/86)の規制に準拠した。動物の苦痛および使用する動物の数を最小限にするあらゆる努力が行われた。
【0166】
カラギーナン誘発性ラットの足浮腫の試験法
末梢炎症性疼痛は、以前の研究(Hajhashemi Vら、The role of central mechanisms in the anti-inflammatory effect of amitriptyline on carrageenan-induced paw edema in rats.Clinics(Sao Paulo)、2010年)にしたがって、30Gインスリンシリンジを使用することにより、1%のλ-カラギーナン(0.9%のNaClにおいて各ラットに対して100μl)(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)の単回足底内注射により各動物の左後足で誘発した。ビヒクルまたは薬物は、カラギーナン注射の1時間前に経口投与した。足の体積は、注射の前(0時間)ならびに異なる時間間隔(カラギーナンの1、3および5時間後)でのカラギーナンの注射の後、プレシスモメーター(Ugo Basile、Varese、イタリア)で測定した。浮腫は、対照動物群に対して足の体積(ml)での平均的増加として表される。浮腫の阻害百分率は、以下の等式で算出した:
浮腫の阻害%=[(Vc-Vt)×100-100
(式中、Vcは対照群の浮腫体積であり、Vtは処置群の浮腫体積である)。5時間後、動物を致死量のウレタンで殺処分し、足および胃を形態学的および生化学的評価のために切断した。
【0167】
機械的異痛
機械的異痛は、上下法を使用して評価した(Chaplan,S.R.ら、(1994)Quantitative assessment of tactile allodynia in the rat paw.J.Neurosci.Methods 53、55~63頁)。全ての動物は、エンクロージャー(Ugo Basile、イタリア)において高いメッシュプラットフォームで約30~45分間順化することが可能になった。ラットに対して較正したvon Frey式フィラメント(Stoelting、Wood Dale、IL、4g~100gの範囲の屈曲力)を、後足の足底中央面に3~4秒間適用した(Nour Elhouda Saidiら、Unilateral 6-Hydroxydopamine-Lesioned Rat as Relevant Model to Study the Pain Related to Parkinson’s Disease、NEUROLOGY AND NEUROBIOLOGY(2019)、ISSN 2613~7828頁)。閾値は、刺激した後足を引っ掻いたり、舐めたりすることを誘発した最小の力(g)として取得した。動物を、カラギーナン注射の前のベースライン(0時間)ならびにカラギーナンの1、3、および5時間後に試験した。
【0168】
実験群および薬物
ビヒクル1(Avicel PH101で充填したtorpacカプセル、1cps)(n=4);ビヒクル2(エタノール/0.9%生理食塩水、1:19、100ul)(n=4);ビヒクル2のインドメタシン(10mg/Kg、100ul)(n=8);フルルビプロフェン(5mg/Kg、1cps)(n=8);ガバペンチン(3.51mg/Kg、1cps)(n=8);Flur+Lys+Gaba混合物(11.50mg/Kg、1cps)(n=8);Flur/Lys/Gaba共結晶(11.50mg/Kg、1cps)(n=8)。Flur+Lys+Gaba混合物におけるフルルビプロフェン、リシンおよびガバペンチンの重量比は1:1:1である。
【0169】
ラットにおけるカラギーナン誘発性足浮腫でのFlur/Lys/Gaba共結晶およびフルルビプロフェン単独の単回経口投与の相対的効果
両ビヒクルの単回投与(カプセルまたはエタノール/0.9%生理食塩水、i.g.)は、未処置の反対側足と比較して、カラギーナン足底内注射で誘発されるラットの左足の厚さの増大に影響しなかった(4.71±0.17mm、カラギーナンの3時間後)。特に、時間依存的足腫脹は、1時間から開始することが確認され、カラギーナン注射の5時間後に浮腫のピークを伴った(9.55±0.47mm、p<0.0001;n=8)(
図22)。フルルビプロフェンの単回投与(5mg/Kg)は、カラギーナン注射の1時間前に実施されるが、ビヒクル処置群と比較して、ラットの足の厚さは著しく軽減し(カラギーナンの5時間後に6.5±0.28mm、p=0.028、n=8)(
図22、表14)、-32.0%の足の体積の低下を伴った(表15)。
【0170】
以下の表14は、1%のカラギーナンの足底内注射後のビヒクル、フルルビプロフェン単独、ガバペンチン、インドメタシン、Flur+Lys+Gaba混合物またはFlur/Lys/Gaba共結晶で処置した異なる群の動物での足の厚さの統計を報告する。各時点は、1群当たり8匹のラットの平均値±SEMを表す。P<0.05は、統計学的に有意であると考えられ、二元ANOVAと、続くTukeyの事後検定を使用して算出した。
【0171】
°°°°p<0.0001対反対側、*p<0.05、**p<0.01および***p<0.001対ビヒクルならびに#p<0.05および##p<0.01対Gaba。以下の表14では、「ns」は「有意差なし」を表す。
【0172】
【0173】
【0174】
一方、Flur/Lys/Gaba(11.5mg/Kg)共結晶の投与は、足の厚さを非常に軽減し(カラギーナンの5時間後に5.51±0.42mm;p=0.0003、n=8)、ビヒクル処置ラットと比較して、-42.27%の足の体積の阻害百分率を伴った(
図22、表15)。同様に、インドメタシン(10mg/Kg、i.g.)は、本研究で参照薬として使用するが、観察の全ての時点で有意に足の厚さを軽減し(カラギーナンの5時間後に5.69±0.27mm;p=0.0002、n=8)、ビヒクル処置群に対して、-40.45%の足の体積の百分率の低下を伴った(
図22、表15)。最終的に、3.51mg/Kgでのガバペンチン単独は、カラギーナン注射の5時間後にのみ足腫脹を軽減することができ(カラギーナンの5時間後に7.45±0.26mm;p=0.0284、n=8)、-17.27%の百分率で体積の低下を伴った(
図22、表15)。二元ANOVA分析は、処置の著しい効果(F6,49=57.48、P<0.0001)、時間の著しい効果(F3,147=45.10、P<0.0001)を示し、因子である時間×処置の著しい相互作用(F18,147=7.042、P<0.0001)を観察した。
【0175】
ラットのカラギーナン誘発性足浮腫モデルでの機械的異痛におけるFlur/Lys/Gaba共結晶およびフルルビプロフェン単独の単回経口投与の相対的効果
別のセットの実験では、フルルビプロフェン(5mg/Kg)およびFlur/Lys/Gaba共結晶(11.5mg/Kg、cps)の単回経口投与(i.g)を、インドメタシン(10mg/kg)、ガバペンチン(3.51mg/Kg)またはビヒクル(カプセルもしくはエタノール/0.9%生理食塩水)と比較して、カラギーナン注射動物の機械的異痛に対して試験した。特に、分析は、Von Frey式フィラメントを手動で使用することによりベースライン(0)、カラギーナン足底内注射の前、ならびにカラギーナンの1、3および5時間後に実施した。本発明者らは、機械的逃避閾値が、カラギーナンの1時間後から開始して同側足で著しく低下し、ベースライン(80±7.56g、時間0)と比較して、ビヒクル処置動物において観察の終了(5時間)まで維持された(カラギーナンの3時間後に8.25±1.61g、p<0.0001;n=8)ことを観察した(
図23)。カラギーナン注射の反対側では変化は観察されなかった(カラギーナンの3時間後に85±7.31g)。フルルビプロフェンの単回経口投与は、足のカラギーナン注射の後に、強い抗炎症効果を示したが、著しい抗異痛効果を示さなかった。実際に、フルルビプロフェンは、ビヒクル注射動物と比較して、カラギーナン注射の3時間後にラットにおいて足逃避閾値の増加させることはできなかった(44.62±14.43g、p=0.2802;n=8)(
図23)。さらに、インドメタシン(10mg/Kg)で処置した動物は、カラギーナンの3時間後に足閾値を増加させる有意な傾向を示さなかった(36±7.21g、p=0.0567;n=8)。これに対して、Flur/Lys/Gaba共結晶は、カラギーナン注射の1時間後から実験の終了まで機械的異痛の軽減を誘発し、ビヒクル注射動物と比較して、カラギーナン注射の3時間後にピークに達した(85.75±9.86g、p=0.001;n=8)(
図23)。最終的に、ガバペンチン(3.51mg/Kg)投与は、機械的異痛を軽減する傾向を示し、カラギーナン注射の3時間後にピークタイムを伴った(66.5±11g、p=0.0109;n=8)(
図24)。二元ANOVA分析は、処置の著しい効果(F6,49=22.13、P<0.0001)、時間の著しい効果(F3,147=39.29、P<0.0001)を示し、因子である時間×処置の著しい相互作用(F18,147=2.30、P=0.0035)を観察した。以下の表16は、異なる群の動物での足逃避閾値(g)の統計を表すことを示す。P<0.05は、統計学的に有意であると考えられ、二元ANOVAと、続くTukeyの事後検定を使用して算出した。°°°°p<0.0001対反対側、
*p<0.05、
**p<0.01および
***p<0.001対ビヒクルならびに#p<0.05および##p<0.01対Gaba。
【0176】
以下に報告される表16では、「ns」は「有意差なし」を表す。
【0177】
【0178】
7.ラットにおけるカプセルとして経口投与した後のNSAIDおよびガバペンチンの血漿での曝露パラメーターの決定
本研究の目的は、NSAID、リシンおよびガバペンチンの物理的混合物と比較して、NSAID、特にフルルビプロフェンおよびイブプロフェン、ならびにNSAID-リシン-ガバペンチン共結晶でのガバペンチンの薬理学的パラメーターの決定である。
【0179】
雄のスプラーグドーリーラット(処置の時に体重310g)を本研究で使用した。動物は、Harlan、イタリアにより本来供給された。供給業者から受け取ると、動物を健康検査および受入れにかけた。動物は、種に好適なケージに3つの群で収容し、実験手順が他に規定した短期間を除いて以下の環境で日常的に保持した。動物は、およそ5日間、局所的な収容条件に順応させた。
【0180】
動物は空調した単一の排他的な空間に収容して、最低15回の換気/時間を提供した。環境制御は、自動的に制御したおよそ12時間の明および12時間の暗サイクルで、22℃の範囲内の温度および50~60%の範囲内の相対湿度を維持するように設定した。食餌(Mucedola Standard GLP食)および水は、研究中に適宜利用可能にした。全ての動物を各処置の日に秤量した。臨床徴候は、処置のあらゆる反応を評価するために本研究を通して定期的な間隔でモニタリングした。各動物は、実験前、背中にカラースプレーで一意的に同定した。
【0181】
本研究の終了時、動物は、麻酔下での放血により殺処分した。実験は、イタリアの法律D.L.vo4 marzo 2014、n.26にしたがって実行した。
実験プロトコルは、以下の表17および18にしたがって動物での血液および脳の組織サンプリング、ならびに以下に記載するサンプルの分析からなった。
【0182】
【0183】
【0184】
表18に示す通り、1カプセル/動物を通して与えられるフルルビプロフェン/リシン/ガバペンチン共結晶ならびにフルルビプロフェン、リシンおよびガバペンチンの物理的混合物Flur+Lys+Gabaの経口投与に続いて、ガバペンチンの全身曝露パラメーターはより高く、統計学的有意差(t検定=0.017)に達した。
【0185】
フルルビプロフェンに対して、Cmaxは混合物と比較して共結晶でより高くなった。差は、統計学的有意差(t検定=0.023)に達した。
ゆえに、混合物と比較してより高い共結晶のCmaxは、より良好な薬理学的有効性にもたらすことができる薬物動態的プロファイルの改善を意味する。
【国際調査報告】