(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】麻抽出物で卵巣がんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241024BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241024BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241024BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P35/00
A61K31/12
A61P35/04
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/12
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525139
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 US2022078691
(87)【国際公開番号】W WO2023076928
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524152148
【氏名又は名称】エコファイバー ユーエスエイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOFIBRE USA INC.
(71)【出願人】
【識別番号】524153178
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ニューカッスル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NEWCASTLE
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】カパノ、アレクサンドラ エム
(72)【発明者】
【氏名】タンワル、プラディープ シン
(72)【発明者】
【氏名】ナンス、アレックス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB29
4C076BB30
4C076CC27
4C076DD37
4C076DD41
4C076DD59
4C076EE51
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA60
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C088AB12
4C088AC03
4C088AC05
4C088MA52
4C088MA57
4C088NA14
4C088ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA72
4C206MA77
4C206NA14
4C206ZB26
(57)【要約】
卵巣がんを治療するための方法であって、CBDを含む有効量の大麻抽出物を患者に投与することを含み、好ましくは、大麻抽出物が、粘膜製剤を介して投与される、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビジオール(CBD)を含む、患者の卵巣がんを治療する方法における使用のための大麻抽出物。
【請求項2】
前記大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、及びカンナビジオール酸(CBDA)から選択され、任意選択的に、前記BSHE又はFSHEが、(i)50重量%~99重量%のCBDと、(ii)Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ
9-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、Δ-8-テトラヒドロカンナビノール(Δ
8-THC)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビノール(CBN)、カンナビシクロール(CBL)、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含む、請求項1に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項3】
前記大麻抽出物が、用量当たり10mg~500mgのCBDを含む、請求項1又は2に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項4】
a.前記方法が、経口用量、口腔粘膜用量、膣内用量、若しくはそれらの組み合わせを介した前記患者への前記大麻抽出物の投与を含み、及び/又は
b.前記方法が、少なくとも3日に1回、好ましくは少なくとも1日に1回、少なくとも1日に2回、若しくは少なくとも1日に3回の前記患者への前記大麻抽出物の用量の投与を含み、及び/又は
c.前記方法が、前記患者の標的組織で少なくとも10μg/mLの濃度の前記大麻抽出物を生成するのに十分な前記大麻抽出物の量の投与を含み、好ましくは、前記標的組織が、女性生殖管のがん性組織であり、及び/又は
d.前記方法が、CBDの全身血漿レベルによって測定される有効治療レベルに達するのに十分な前記大麻抽出物の量の投与を含み、及び/又は
e.前記方法が、前記患者への1日当たり20mg~4,250mgのCBDの投与を含み、及び/又は
f.前記大麻抽出物が、酸性pH、好ましくは、3.5~6のpHで製剤化される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項5】
a.前記卵巣がんが、転移しており、及び/又は
b.前記卵巣がんが、化学療法抵抗性がんである、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項6】
前記大麻抽出物が、1%~99.9%のCBDを含み、前記方法が、膣内投与を介して前記患者に前記大麻抽出物を投与することを含み、好ましくは、
a.前記大麻抽出物が、60%~99.9%のCBDを含み、並びに/又は
b.前記大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、及びCBD単離物から選択され、並びに/又は
c.前記大麻抽出物が、CBDAを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項7】
請求項1~3及び6のいずれか一項に記載の大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、患者の卵巣がんを治療する方法における使用のための粘膜組成物。
【請求項8】
前記組成物が、(i)担体としての油若しくは脂肪、及び/又は(ii)少なくとも1つのテルペン、少なくとも1つのポリフェノール、少なくとも1つの必須脂肪酸、少なくとも1つの植物栄養素、若しくはそれらの組み合わせを含み、
任意選択的に、前記少なくとも1つのテルペン、少なくとも1つのポリフェノール、少なくとも1つの必須脂肪酸、少なくとも1つの植物栄養素、又はそれらの組み合わせが、前記組成物の総重量の1重量%~50重量%を構成し、
更に任意選択的に、
・前記テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は
・前記ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は
・前記必須脂肪酸が、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は
・前記植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の使用のための粘膜組成物。
【請求項9】
a.前記粘膜組成物が、25mg~4,250mgの用量のCBDを含み、前記方法が、口腔粘膜、直腸、膣、若しくは鼻腔から選択される粘膜表面への挿入を介して前記組成物を前記患者に投与することを含み、及び/又は
b.前記方法が、1日当たり少なくとも2回用量の前記粘膜組成物を前記患者に投与することを含み、前記粘膜組成物の各用量が、10mg~2,125mgの大麻抽出物を含み、及び/又は
c.前記粘膜組成物が、酸性pH、好ましくは、3.5~6のpHを有する、請求項7又は8に記載の使用のための粘膜組成物。
【請求項10】
前記方法が、卵巣がんを治療するための方法であり、前記方法が、粘膜製剤を介して前記大麻抽出物を前記患者に同時に投与することを含み、好ましくは、前記大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)又はブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項11】
前記方法が、有効量の前記大麻抽出物及び有効量の化学療法剤を患者に同時投与することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項12】
卵巣がんを治療する方法における使用のための化学療法剤であって、前記方法が、有効量の前記化学療法剤及び有効量の請求項1~6のいずれか一項に記載の大麻抽出物を患者に同時投与することを含む、化学療法剤。
【請求項13】
a.前記化学療法剤が、パクリタキセル、アルトレタミン、カペシタビン、シクロホスファミド、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、ドキソルビシン、メルファラン、ペメトレキセド、トポテカン、ビノレルビン、カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は
b.前記卵巣がんが、化学療法抵抗性がんであり、並びに/又は
c.前記方法が、患者におけるがん性組織の化学療法抵抗性を決定する第1のステップと、化学療法抵抗性の確認後に、前記患者に有効量の前記大麻抽出物及び有効量の前記化学療法剤を投与する後続のステップと、を含み、並びに/又は
d.前記有効量の前記化学療法剤が、前記大麻抽出物の非存在下で投与される場合の前記化学療法剤の指示用量の少なくとも50%未満であり、並びに/又は
e.前記方法が、1日当たり20mg~4,250mgの量で前記患者に前記大麻抽出物を投与することを含む、請求項11に記載の使用のための大麻抽出物又は請求項12に記載の使用のための化学療法剤。
【請求項14】
有効量のCBDを含む大麻抽出物を含む、卵巣がんを治療する方法における使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、
a.担体、並びに/又は
b.CBDV、THC、CBG、CBN、CBC、CBDA、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの追加のカンナビノイド、並びに/又は
c.少なくとも1つのテルペンであって、好ましくは、前記テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのテルペン、並びに/又は
d.少なくとも1つのポリフェノールであって、好ましくは、前記ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのポリフェノール、並びに/又は
e.必須脂肪酸であって、好ましくは、前記必須脂肪酸が、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸、及びそれらの組み合わせから選択される、必須脂肪酸、並びに/又は
f.植物栄養素であって、好ましくは、前記植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせから選択される、植物栄養素を更に含む、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
患者及び大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物に投与することを含む、卵巣がんを治療するための方法。
【請求項17】
前記CEが、50%~99.9%のカンナビジオール(CBD)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記CEが、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、及びカンナビジオール酸(CBDA)単離物からなる群から選択される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記CEが、経口剤形、口腔粘膜剤形、膣内剤形、鼻粘膜剤形、直腸剤形、注射剤形、又はそれらの組み合わせを介して投与される、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
CBDを含む前記有効量の前記大麻抽出物が、1日当たり10mg~4,250mgのCBDを含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記CEの投与が、少なくとも1日に1回、少なくとも1日に2回、又は少なくとも1日に3回与えられる用量である、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記卵巣がんが、グレード1、グレード2、又はグレード3のがんである、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記卵巣がんが、化学療法抵抗性卵巣がんである、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記CEが、0.1%~10%の濃度でCBDAを含む、請求項16~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記CEが、BSHE又はFSHEであり、前記BSHE又はFSHEの各々が、50重量%~99重量%のCBDと、0.1%~10%の濃度の少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含み、前記少なくとも1つの他のカンナビノイドが、Δ
9-THC、THCA、THCV、Δ
8-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記CEが、60%~99%の濃度のCBDと、0.1%~10%の濃度の少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含み、前記少なくとも1つの他のカンナビノイドが、Δ
9-THC、THCA、THCV、Δ
8-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記CEが、65%~99%の総濃度のカンナビノイドを含む、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸、植物栄養素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を含み、前記少なくとも1つの追加の化合物が、前記組成物の総重量の0.1%~50%を構成する、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、担体として油又は脂肪を含む、請求項16~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記有効量の前記組成物が、全身血漿レベルによって測定されるCBDの有効治療レベルに達するのに十分な量である、請求項16~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、酸性pHで投与される、請求項16~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記酸性pHが、3.5~6である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
有効量の化学療法剤を患者に投与することと、有効量の大麻抽出物(CE)を同時投与することと、を含む、卵巣がんの治療方法。
【請求項33】
前記化学療法剤及び前記CEが、1つの組成物として、又は2つの異なる組成物として投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記化学療法剤が、パクリタキセル、カルボプラチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ドセタキセル、フルオロウラシル、メトトレキサート、セツキシマブ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記CEを含む前記組成物が、経口、直腸、膣内、口腔粘膜、又は経鼻送達のための組成物である、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記有効量の前記組成物が、CBDの全身血漿レベルによって測定される有効治療レベルに達するのに十分である、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記卵巣がんが、化学療法抵抗性がんである、請求項32~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記有効量の化学療法剤が、指示された個々の用量の少なくとも50%未満であり、前記CEが、1日当たり20mg~4,250mgで投与される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記大麻抽出物が、酸性pHで、組成物中で投与される、請求項32~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記酸性pHが、3.5~6である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記患者からのがん性組織の化学療法抵抗性を決定し、化学療法抵抗性の確認後に、有効量の前記CEを前記患者に投与する第1のステップを含む、請求項32~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記CEが、Δ
9-THC、THCA、THCV、Δ
8-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるカンナビノイドを含む、請求項32~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1つのテルペンを更に含む、請求項32~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1つのポリフェノールを更に含む、請求項32~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
オメガ3、オメガ6、オメガ9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される必須脂肪酸を更に含む、請求項32~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
植物栄養素を更に含む、請求項32~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記CBDが、大麻抽出物に由来するフィトカンナビノイドに由来する、請求項32~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
卵巣がんを治療する方法であって、
a.患者からがん性細胞を採取し、前記がん性細胞からオルガノイドを形成することと、
b.前記オルガノイドに対してスクリーニングを実施して、生存オルガノイドの割合を50%低減させることができる化学療法薬物を、前記化学療法薬物のIC50用量で決定することと、
c.50%~99.9%のCBDを有する大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物とともに前記化学療法薬物を前記患者に投与することと、を含む、方法。
【請求項52】
卵巣がんを治療する方法であって、
a.患者から卵巣がん細胞を採取し、前記卵巣がん細胞から少なくとも1つのオルガノイドを形成することと、
b.前記少なくとも1つのオルガノイドに対してスクリーニングを実施して、前記患者のオルガノイドに応答する化学療法薬物を決定することと、
c.50%~99.9%のCBDを有する大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物とともに前記化学療法薬物を前記患者に投与することと、を含む、方法。
【請求項53】
前記CEが、経口剤形、口腔粘膜剤形、経鼻剤形、直腸剤形、膣内剤形、注射剤形、又はそれらの組み合わせとして前記患者に投与される、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記CEが、口腔粘膜及び膣内に投与される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
1重量%~99重量%の大麻抽出物(CE)を含む、卵巣がんを治療する方法における使用のための組成物。
【請求項56】
前記組成物の前記CEが、
a.フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、CBDA単離物、若しくはそれらの組み合わせを含み、及び/又は
b.前記組成物が、前記組成物の1重量%~99重量%の担体を含み、及び/又は
c.前記組成物が、前記組成物の1重量%~50重量%の1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
卵巣がんの治療のための組成物であって、前記組成物が、大麻抽出物(CE)を含み、前記CEが、前記組成物の1重量%~100重量%及びその中の全てのパーセンテージを構成する、組成物。
【請求項58】
前記CEが、前記組成物の10重量%~90重量%、又は20重量%~90重量%、及び、好ましくは、40重量%~80重量%を構成する、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記CEが、好ましくは、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、又はCBDA単離物である、請求項57又は58に記載の組成物。
【請求項60】
前記BSHE及び/又は前記FSHE及び/又は前記CBD単離物及び/又は前記CBDA単離物が、前記CEの50重量%~99.9重量%を構成する、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記組成物の1重量%~99重量%の担体を含む、請求項57~60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
少なくとも1つ以上の追加の賦形剤を更に含む、請求項57~61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
前記組成物が、粘膜組成物である、請求項57~62のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
20mg~4,250mgのCBDを含む、請求項57~63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
卵巣がんの治療方法であって、それを必要とする患者に、有効量の請求項55~57のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項66】
前記有効量が、20mg~4,250mgのカンナビジオール(CBD)である、請求項65に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許商標庁に対して2021年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/263,018号、2021年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/263,026号、及び2021年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/263,020号の利益を主張し、これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に開示される発明は、有効量の大麻抽出物を単独で又は化学療法剤と併用して投与することによる、卵巣がんの組成物及び治療行為に関する。大麻抽出物は、1つ以上のカンナビノイド、具体的には治療量のカンナビジオール(cannabidiol、CBD)を含み、多くの場合、大麻抽出物内に1つ以上の追加のカンナビノイド、テルペン、又は他の分子を含む。
【背景技術】
【0003】
がんは、腫瘍形成に必要とされる全範囲の生物学的特性を細胞に与える複数の遺伝的病変の表現型エンドポイントを表す。実際、卵巣がんなどの婦人科がんを含む多くのがんの特徴的なゲノム特徴は、とりわけ、転座、染色体内逆位、点突然変異、欠失、遺伝子コピー数変化、遺伝子発現レベル変化、及び生殖系列突然変異を含む、多数の複雑な染色体構造異常の存在である。がんが所与の治療選択肢に応答するかどうかは、がんに存在する特定のゲノム特徴に依存し得る。
【0004】
女性は、現在適切な治療の方法がない多数の婦人科疾患に直面している。これらの病気は、多嚢胞性卵巣症候群及び子宮内膜症などの生命を脅かさない疾患から、生命を左右するがんにまで及ぶ。がんは、婦人科管の任意の数の細胞及び器官に浸潤し得る。残念なことに、これらのがんの多くは、攻撃的であり、転移性疾患の有意なリスクを有し、それらの細胞起源から身体の残りの部分に移動する。更に、婦人科がんの多くは、化学療法抵抗性に苦しみ、積極的な治療にもかかわらず、がん停止は、化学療法に応答せず、進行し続ける。
【0005】
卵巣がんは、米国において2番目に多い婦人科がんであり、女性生殖系の任意の他のがんよりも多くの死亡を引き起こす。卵巣がんの治療は、通常、手術と化学療法との併用を伴う。残念なことに、卵巣がんのスクリーニングの選択肢が存在しないため、疾患は、多くの場合、がん進行の後期に検出され、患者は、最も一般的には卵巣がんのステージ3で診断される。ステージ3のがんは、卵巣がん細胞が骨盤の近くの器官に拡散又は増殖しており、したがって、疾患は、卵巣又はファロピウス管内に含まれていないことを意味する。診断の後期、及び卵巣がんの攻撃性のため、5年生存率は、わずか約39%である。現在の治療選択肢は、不十分なままである。
【0006】
本出願人は、CBDを含む大麻抽出物の投与を含む卵巣がんの治療方法を特定した。本出願人は、CBDを含む1つ以上の大麻抽出物が、単剤療法として投与されるか、又は1つ以上の化学療法剤と併用して投与されるかどうかにかかわらず、化学療法感受性、化学療法抵抗性、及び化学療法未実施のがんに好適であることを特定した。更に、本発明者らは、他の投与経路に加えて、膣粘膜、口腔粘膜、直腸粘膜、又は鼻粘膜を含む、大麻抽出物の粘膜投与を介した治療薬投与を提唱する。これら及び他の実施形態は、本明細書でより詳細に詳述される。
【発明の概要】
【0007】
本明細書の実施形態は、卵巣がんの治療方法であって、それを必要とする患者に、有効量の大麻抽出物を投与することを含む、卵巣がんの治療方法に関する。
【0008】
好ましい実施形態では、患者に投与するプロセスは、大麻抽出物の経口及び/又は膣内適用を含む。更に好ましい実施形態では、方法は、大麻抽出物を含む膣内組成物又は直腸組成物の同時治療適用と、経口投与又は口腔粘膜を介した大麻抽出物の同時投与と、を含み、併用効果は、特定のがん及び婦人科疾患の全身治療のための有効量のCBDを生じさせる。好ましい実施形態では、併用療法は、健常な細胞に過度の損傷を与えることなく、CBDの局所投与及び全身投与の両方を提供する。
【0009】
大麻抽出物は、1つ以上のカンナビノイド、具体的には治療量のカンナビジオール(CBD)を含み、多くの場合、大麻抽出物内に1つ以上の追加のカンナビノイド、テルペン、又は他の分子を含む。特定の実施形態では、方法は、化学療法感受性及び化学療法抵抗性卵巣がんの治療行為を更に含む。更なる方法は、化学療法剤及び大麻抽出物を含む併用治療行為計画を使用する治療のための方法に関する。更なる方法は、卵巣がんの治療のための治療有効用量に達するための膣内適用及び/又は経口若しくは口腔粘膜製剤を含む併用プロトコルによるがんの治療のためのCBDを含む大麻抽出物を使用する治療方法を含む、卵巣がんの特定の投与経路に関する。
【0010】
一実施形態では、本発明は、カンナビジオール(CBD)を含む、患者の卵巣がんを治療する方法における使用のための大麻抽出物を提供する。
【0011】
一実施形態では、本発明は、患者の卵巣がんを治療する方法における使用のための膣内組成物を提供し、当該膣内組成物が、カンナビジオールを含む大麻抽出物及び薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0012】
一実施形態では、本発明は、患者における卵巣がんを治療する方法における使用のための大麻抽出物を提供し、当該大麻抽出物は、カンナビジオール(CBD)を含み、当該方法は、卵巣がんを治療するための方法であり、方法は、経口製剤及び膣内製剤を介して大麻抽出物を患者に同時に投与することを含む。本明細書で定義される際、「同時に」という用語は、経口製剤及び膣内製剤が、72時間以下の間隔で、好ましくは48時間以下の間隔で、より好ましくは24時間以下の間隔で、例えば、12時間以下の間隔で、6時間以下の間隔で、4時間以下の間隔で、3時間以下の間隔で、2時間以下の間隔で、1時間以下の間隔で、30分以下の間隔で、又は同時に患者に投与されることを意味する。したがって、一実施形態では、本発明は、卵巣がんを治療するための方法における使用のための経口製剤を提供し、当該経口製剤は、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含み、当該方法は、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む膣内製剤と同時の経口製剤の投与を含む。更なる実施形態では、本発明は、卵巣がんを治療するための方法における使用のための膣内製剤を提供し、当該膣内製剤は、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含み、当該方法は、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む経口製剤と同時の膣内製剤の投与を含む。
【0013】
一実施形態では、本発明は、卵巣がんを治療する方法における使用のための大麻抽出物を提供し、当該大麻抽出物が、カンナビジオール(CBD)を含み、当該方法が、有効量の大麻抽出物及び有効量の化学療法剤を患者に同時投与することを含む。本明細書で定義される際、「同時投与すること」という用語は、大麻抽出物及び化学療法剤が、72時間以下の間隔で、好ましくは48時間以下の間隔で、より好ましくは24時間以下の間隔で、例えば、12時間以下の間隔で、6時間以下の間隔で、4時間以下の間隔で、3時間以下の間隔で、2時間以下の間隔で、1時間以下の間隔で、30分以下の間隔で、又は同時に患者に投与されることを意味する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、卵巣がんを治療する方法における使用のための化学療法剤を提供し、当該方法が、有効量の化学療法剤及び有効量の大麻抽出物を患者に同時投与することを含み、当該大麻抽出物が、カンナビジオール(CBD)を含む。
【0015】
一実施形態では、本発明は、卵巣がんを治療する方法における使用のための医薬組成物を提供し、当該医薬組成物は、大麻抽出物及び有効量のCBDを含む。
【0016】
一実施形態では、本発明は、卵巣がんを治療する方法における使用のための医薬の製造における、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物の使用を提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、卵巣がんを治療する方法における使用のための医薬の製造における、カンナビジオールを含む大麻抽出物、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、膣内組成物の使用を提供する。
【0018】
一実施形態では、本発明は、卵巣がんを治療する方法における使用のための医薬の製造における、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物の使用を提供し、当該大麻抽出物が、化学療法剤と同時投与される。
【0019】
一実施形態では、本発明は、卵巣がんを治療する方法における使用のための医薬の製造における化学療法剤の使用を提供し、当該化学療法剤が、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物と同時投与される。
【0020】
一実施形態では、本発明は、卵巣がんを治療する方法における使用のための医薬の製造における、大麻抽出物及び有効量のCBDを含む医薬組成物の使用を提供する。
【0021】
好ましい実施形態では、カンナビジオール(CBD)を含む、患者の卵巣がんを治療する方法における使用のための大麻抽出物。
【0022】
更なる実施形態では、当該大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(full spectrum hemp extract、FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(broad spectrum hemp extract、BSHE)、CBD単離物、及びカンナビジオール酸(cannabidiolic acid、CBDA)から選択され、任意選択的に、BSHE又はFSHEが、(i)50重量%~99重量%のCBDと、(ii)Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-9-tetrahydrocannabinol、Δ9-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(tetrahydrocannabinolic acid、THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(tetrahydrocannabivarin、THCV)、Δ-8-テトラヒドロカンナビノール(Δ-8-tetrahydrocannabinol、Δ8-THC)、カンナビクロメン(cannabichromene、CBC)、カンナビクロメン酸(cannabichromene acid、CBCA)、カンナビゲロール(cannabigerol、CBG)、カンナビゲロール酸(cannabigerol acid、CBGA)、カンナビジオール酸(cannabidiolic acid、CBDA)、カンナビジバリン(cannabidivarin、CBDV)、カンナビノール(cannabinol、CBN)、カンナビシクロール(cannabicyclol、CBL)、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含む、使用のための大麻抽出物。
【0023】
更なる実施形態では、当該大麻抽出物が、用量当たり10mg~500mgのCBDを含む、使用のための大麻抽出物。
【0024】
更なる実施形態では、(a)方法が、経口用量、口腔粘膜用量、膣内用量、若しくはそれらの組み合わせを介した患者への大麻抽出物の投与を含み、及び/又は(b)方法が、少なくとも3日に1回、好ましくは少なくとも1日に1回、少なくとも1日に2回、若しくは少なくとも1日に3回の患者への大麻抽出物の用量の投与を含み、及び/又は(c)方法が、患者の標的組織で少なくとも10μg/mLの濃度の大麻抽出物を生成するのに十分な大麻抽出物の量の投与を含み、好ましくは、標的組織が、女性生殖管のがん性組織であり、及び/又は(d)方法が、CBDの全身血漿レベルによって測定される有効治療レベルに達するのに十分な大麻抽出物の量の投与を含み、及び/又は(e)方法が、患者への1日当たり20mg~4,250mgのCBDの投与を含み、及び/又は(f)大麻抽出物が、酸性pH、好ましくは、3.5~6のpHで製剤化される、使用のための大麻抽出物。
【0025】
更なる実施形態では、使用のための大麻抽出物は、(a)卵巣がんが、転移しており、及び/又は(b)卵巣がんが、化学療法抵抗性がんである。
【0026】
更なる実施形態では、当該大麻抽出物が、1%~99.9%のCBDを含み、方法が、膣内投与を介して大麻抽出物を患者に投与することを含み、好ましくは、(a)大麻抽出物が、60%~99.9%のCBDを含み、並びに/又は(b)大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、及びCBD単離物から選択され、並びに/又は大麻抽出物が、CBDAを含む、使用のための大麻抽出物。
【0027】
好ましい実施形態では、大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、患者の卵巣がんを治療する方法における使用のための粘膜組成物。
【0028】
更なる実施形態では、組成物が、(i)担体としての油若しくは脂肪、及び/又は(ii)少なくとも1つのテルペン、少なくとも1つのポリフェノール、少なくとも1つの必須脂肪酸、少なくとも1つの植物栄養素、若しくはそれらの組み合わせを含み、任意選択的に、少なくとも1つのテルペン、少なくとも1つのポリフェノール、少なくとも1つの必須脂肪酸、少なくとも1つの植物栄養素、又はそれらの組み合わせが、組成物の総重量の1重量%~50重量%を構成し、更に任意選択的に、テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又はポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は必須脂肪酸が、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせから選択される、使用のための粘膜組成物。
【0029】
更なる実施形態では、(a)粘膜組成物が、25mg~4,250mgの用量のCBDを含み、方法が、口腔粘膜、直腸、膣、若しくは鼻腔から選択される粘膜表面への挿入を介して組成物を患者に投与することを含み、及び/又は方法が、1日当たり少なくとも2回用量の粘膜組成物を患者に投与することを含み、粘膜組成物の各用量が、10mg~2,125mgの大麻抽出物を含み、及び/又は粘膜組成物が、酸性pH、好ましくは、3.5~6のpHを有する、使用のための粘膜組成物。
【0030】
更なる実施形態では、当該方法が、卵巣がんを治療するための方法であり、方法が、粘膜製剤を介して大麻抽出物を患者に同時に投与することを含み、好ましくは、大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)又はブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)である、使用のための大麻抽出物。
【0031】
更なる実施形態では、当該方法が、有効量の大麻抽出物及び有効量の化学療法剤を患者に同時投与することを含む、使用のための大麻抽出物。
【0032】
好ましい実施形態では、卵巣がんを治療する方法における使用のための化学療法剤であって、当該方法が、有効量の化学療法剤及び有効量の大麻抽出物を患者に同時投与することを含む、化学療法剤。
【0033】
好ましい実施形態では、(a)化学療法剤が、パクリタキセル、アルトレタミン、カペシタビン、シクロホスファミド、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、ドキソルビシン、メルファラン、ペメトレキセド、トポテカン、ビノレルビン、カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は(b)卵巣がんが、化学療法抵抗性がんであり、並びに/又は(c)方法が、患者におけるがん性組織の化学療法抵抗性を決定する第1のステップと、化学療法抵抗性の確認後に、患者に有効量の大麻抽出物及び有効量の化学療法剤を投与する後続のステップと、を含み、並びに/又は(d)有効量の化学療法剤が、大麻抽出物の非存在下で投与される場合の化学療法剤の指示用量の少なくとも50%未満であり、並びに/又は(e)方法が、1日当たり20mg~4,250mgの量で患者に大麻抽出物を投与することを含む、使用のための大麻抽出物又は使用のための化学療法剤。
【0034】
好ましい実施形態では、1~99重量%のCEを含む、卵巣がんを治療する方法における使用のための組成物。
【0035】
好ましい実施形態では、組成物のCEが、(a)FSHE、BSHE、CBD単離物、CBDA単離物を含み、並びに/又は(b)組成物が、組成物の1~99重量%の担体を含み、並びに/又は(c)組成物が、組成物の1~50重量%の1つ以上の賦形剤を更に含む、組成物。
【0036】
好ましい実施形態では、卵巣がんの治療のための組成物であって、組成物が、大麻抽出物(cannabis extract、CE)を含み、CEが、組成物の1~100重量%及びその中の全てのパーセンテージを構成する、組成物。好ましい実施形態では、CEが、組成物の10~90重量%、又は20~90重量%、及び、好ましくは、40~80重量%を構成する。CEは、本明細書に詳述されるように、好ましくは、BSHE、FSHE、CBD単離物、又はCBDA単離物である。これらの異なるCE、BSHE、FSHE、CBD単離物、又はCBDA単離物の各々では、それらは、CEの50~99.9重量%を構成し、残りは、ワックス、脂肪、脂肪酸などである。しかしながら、好ましい実施形態は、組成物の1~99重量%で担体を利用し、好ましくは、組成物の使用事例に応じて1つ以上の追加の賦形剤を利用する。次いで、組成物は、典型的には、投与されるCBDのmg単位の投与量に基づいて投与される。CBDのmgを満たすのに必要な組成物の量は、CEの各々内のCBDの量に依存する。
【0037】
更に好ましい実施形態では、卵巣がんの治療方法であって、それを必要とする患者に、上記の実施形態のうちのいずれか1つによる有効量の組成物を投与することを含む、卵巣がんの治療方法。好ましい実施形態では、有効量が、20~4250mgのカンナビジオール(CBD)である。
【0038】
好ましい実施形態では、有効量のCBDを含む大麻抽出物を含む、卵巣がんを治療する方法における使用のための医薬組成物。
【0039】
更なる実施形態では、組成物が、(a)担体、並びに/又は(b)Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、Δ-8-テトラヒドロカンナビノール(Δ8-THC)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビノール(CBN)、カンナビシクロール(CBL)、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの追加のカンナビノイド、並びに/又は(c)少なくとも1つのテルペンであって、好ましくは、テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのテルペン、並びに/又は(d)少なくとも1つのポリフェノールであって、好ましくは、ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのポリフェノール、並びに/又は(e)必須脂肪酸であって、好ましくは、必須脂肪酸が、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸、及びそれらの組み合わせから選択される、必須脂肪酸、並びに/又は(f)植物栄養素であって、好ましくは、植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせから選択される、植物栄養素を更に含む、使用のための医薬組成物。
【0040】
好ましい実施形態では、患者及び大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物に投与することを含む、卵巣がんを治療するための方法。
【0041】
更なる実施形態では、CEが、50%~99.9%のカンナビジオール(CBD)を含む、方法。
【0042】
更なる実施形態では、CEが、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、及びカンナビジオール酸(CBDA)単離物からなる群から選択される、方法。
【0043】
更なる実施形態では、CEが、経口剤形、口腔粘膜剤形、膣内剤形、鼻粘膜剤形、直腸剤形、注射剤形、又はそれらの組み合わせを介して投与される、方法。
【0044】
更なる実施形態では、CBDを含む有効量の大麻抽出物が、1日当たり10mg~4,250mgのCBDを含む、方法。
【0045】
更なる実施形態では、CEの投与が、少なくとも1日に1回、少なくとも1日に2回、又は少なくとも1日に3回与えられる用量である、方法。
【0046】
更なる実施形態では、卵巣がんが、グレード1、グレード2、又はグレード3のがんである、方法。更なる実施形態では、卵巣がんが、化学療法抵抗性卵巣がんである、方法。
【0047】
更なる実施形態では、CEが、0.1%~10%の濃度のCBDAを含む、方法。
【0048】
更なる実施形態では、CEが、BSHE又はFSHEであり、BSHE又はFSHEの各々が、50重量%~99重量%のCBDと、0.1%~10%の濃度の少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含み、少なくとも1つの他のカンナビノイドが、Δ9-THC、THCA、THCV、Δ8-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。更なる実施形態では、CEが、60%~99%の濃度のCBDと、0.1%~10%の濃度の少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含み、少なくとも1つの他のカンナビノイドが、Δ9-THC、THCA、THCV、Δ8-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、CEが、65%~99%の総濃度のカンナビノイドを含む、方法。
【0049】
更なる実施形態では、組成物が、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸、植物栄養素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を含み、少なくとも1つの追加の化合物が、組成物の総重量の0.1%~50%を構成する、方法。
【0050】
更なる実施形態では、組成物が、担体として油又は脂肪を含む、方法。
【0051】
更なる実施形態では、有効量の組成物が、全身血漿レベルによって測定されるCBDの有効治療レベルに達するのに十分な量である、方法。
【0052】
更なる実施形態では、組成物が、酸性pHで投与される、方法。更なる実施形態では、酸性pHが、3.5~6である、方法。
【0053】
好ましい実施形態では、有効量の化学療法剤を患者に投与することと、有効量の大麻抽出物(CE)を同時投与することと、を含む、卵巣がんの治療方法。
【0054】
更なる実施形態では、化学療法剤及びCEが、1つの組成物として、又は2つの異なる組成物として投与される、方法。
【0055】
更なる実施形態では、化学療法剤が、パクリタキセル、カルボプラチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ドセタキセル、フルオロウラシル、メトトレキサート、セツキシマブ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0056】
更なる実施形態では、CEを含む組成物が、経口、直腸、膣内、口腔粘膜、又は経鼻送達のための組成物である、方法。
【0057】
更なる実施形態では、有効量の組成物が、CBDの全身血漿レベルによって測定される有効治療レベルに達するのに十分である、方法。
【0058】
更なる実施形態では、卵巣がんが、化学療法抵抗性がんである、方法。
【0059】
更なる実施形態では、有効量の化学療法剤が、指示された個々の用量の少なくとも50%未満であり、CEが、1日当たり20mg~4,250mgで投与される、方法。
【0060】
更なる実施形態では、大麻抽出物が、酸性pHで、組成物中で投与される、方法。更なる実施形態では、酸性pHが、3.5~6である、方法。
【0061】
更なる実施形態では、当該患者からのがん性組織の化学療法抵抗性を決定し、化学療法抵抗性の確認後に、有効量のCEを患者に投与する第1のステップを含む、方法。
【0062】
更なる実施形態では、CEが、Δ9-THC、THCA、THCV、Δ8-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるカンナビノイドを含む、方法。
【0063】
更なる実施形態では、少なくとも1つのテルペンを更に含む、方法。更なる実施形態では、テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0064】
更なる実施形態では、少なくとも1つのポリフェノールを更に含む、方法。更なる実施形態では、ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0065】
更なる実施形態では、オメガ3、オメガ6、オメガ9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される必須脂肪酸を更に含む、方法。
【0066】
更なる実施形態では、植物栄養素を更に含む、方法。更なる実施形態では、植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0067】
更なる実施形態では、CBDが、大麻抽出物に由来するフィトカンナビノイドに由来する、方法。
【0068】
好ましい実施形態では、卵巣がんを治療するための方法であって、(a)患者からがん性細胞を採取し、がん性細胞からオルガノイドを形成することと、(b)オルガノイドに対してスクリーニングを実施して、生存オルガノイドの割合を50%低減させることができる化学療法薬物を、化学療法薬物のIC50用量で決定することと、(c)50%~99.9%のCBDを有する大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物とともに化学療法薬物を患者に投与することと、を含む、方法。
【0069】
好ましい実施形態では、卵巣がんを治療する方法であって、(a)患者から卵巣がん細胞を採取し、卵巣がん細胞から少なくとも1つのオルガノイドを形成することと、(b)少なくとも1つのオルガノイドに対してスクリーニングを実施して、患者のオルガノイドに応答する化学療法薬物を決定することと、(c)50%~99.9%のCBDを有する大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物とともに化学療法薬物を患者に投与することと、を含む、方法。
【0070】
更なる実施形態では、CEが、経口剤形、口腔粘膜剤形、経鼻剤形、直腸剤形、膣内剤形、注射剤形、又はそれらの組み合わせとして患者に投与される、方法。更なる実施形態では、CEが、口腔粘膜及び膣内に投与される、方法。
【0071】
好ましい実施形態では、1重量%~99重量%の大麻抽出物(CE)を含む、卵巣がんを治療する方法における使用のための組成物。
【0072】
更なる実施形態では、組成物のCEが、(a)フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、CBDA単離物、若しくはそれらの組み合わせを含み、並びに/又は(b)組成物が、組成物の1重量%~99重量%の担体を含み、並びに/又は(c)組成物が、組成物の1重量%~50重量%の1つ以上の賦形剤を更に含む、組成物。
【0073】
好ましい実施形態では、卵巣がんの治療のための組成物であって、組成物が、大麻抽出物(CE)を含み、CEが、組成物の1重量%~100重量%及びその中の全てのパーセンテージを構成する、組成物。
【0074】
更なる実施形態では、CEが、組成物の10重量%~90重量%、又は20重量%~90重量%、及び、好ましくは、40重量%~80重量%を構成する、組成物。
【0075】
更なる実施形態では、CEが、好ましくは、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、又はCBDA単離物である、組成物。更なる実施形態では、BSHE及び/又はFSHE及び/又はCBD単離物及び/又はCBDA単離物が、CEの50重量%~99.9重量%を構成する、組成物。
【0076】
更なる実施形態では、組成物の1重量%~99重量%の担体を含む、組成物。
【0077】
更なる実施形態では、少なくとも1つ以上の追加の賦形剤を更に含む、組成物。
【0078】
更なる実施形態では、組成物が、粘膜組成物である、組成物。
【0079】
更なる実施形態では、20mg~4,250mgのCBDを含む、組成物。
【0080】
好ましい実施形態では、卵巣がんの治療方法であって、それを必要とする患者に、有効量の組成物を投与することを含む、卵巣がんの治療方法。更なる実施形態では、有効量が、20mg~4,250mgのカンナビジオール(CBD)である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1A】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、
図1Aは、タンパク質発現に関するデータを取り込むプロセスの図を示す。
【
図1B】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、
図1Bは、タンパク質の分化数を図示する。
【
図1C】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、
図1Cは、ビヒクル中及びCBD治療を含む大麻抽出物による上方制御及び下方制御された細胞を図示する。
【
図1D】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、
図1Dは、ECC治療細胞における上位20個の上方及び下方制御されたタンパク質を図示する。
【
図1E】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、
図1Eは、様々な生理学的及び病態生理学的経路のシグナル伝達及び輸送に対する大麻抽出物の効果を図示している。
【
図1F】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、
図1Fは、子宮内膜がん細胞におけるカンナビノイド受容体1タンパク質発現を図示する。
【
図1G】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、
図1Gは、子宮内膜がん細胞におけるカンナビノイド受容体2タンパク質発現を図示する。
【
図2A】大麻抽出物で治療された卵巣がんベースのオルガノイドを図示し、
図2Aは、BSHEを介して送達される際の様々な濃度の大麻抽出物で治療された細胞画像を図示する。
【
図2B】大麻抽出物で治療された卵巣がんベースのオルガノイドを図示し、特に、
図2Bは、10μg/mLと低い、卵巣がんオルガノイドの事実上の根絶を示す結果を要約しており、それを上回る全ての値も示している。
【
図3A】大麻抽出物で治療された化学療法抵抗性卵巣がんベースのオルガノイドを図示し、
図3Aは、BSHEを介して送達される際の様々な濃度の大麻抽出物で治療された細胞画像を図示する。
【
図3B】大麻抽出物で治療された化学療法抵抗性卵巣がんベースのオルガノイドを図示し、特に、
図3Bは、10μg/mLと低い、卵巣がんオルガノイドの事実上の根絶を示す結果を要約しているが、それを上回る全ての値も示している。
【
図4A】低用量(
図4A)の2、3、4、及び5μg/mLのCBDに対する高グレードの卵巣がんオルガノイドの応答の概略図を図示し、
図4Bは、3、5、7、及び10μg/mL用量のより高用量を図示する。
【
図4B】低用量(
図4A)の2、3、4、及び5μg/mLのCBDに対する高グレードの卵巣がんオルガノイドの応答の概略図を図示し、
図4Bは、3、5、7、及び10μg/mL用量のより高用量を図示する。
【
図5A】4つの異なる大麻抽出物、すなわち、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)(
図5A)、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)(
図5B)、CBD単離物(
図5C)、及びCBDA(
図5D)に対して試験されている、化学療法感受性及び化学療法抵抗性の卵巣がん患者由来オルガノイドからの結果を図示する。
【
図5B】4つの異なる大麻抽出物、すなわち、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)(
図5A)、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)(
図5B)、CBD単離物(
図5C)、及びCBDA(
図5D)に対して試験されている、化学療法感受性及び化学療法抵抗性の卵巣がん患者由来オルガノイドからの結果を図示する。
【
図5C】4つの異なる大麻抽出物、すなわち、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)(
図5A)、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)(
図5B)、CBD単離物(
図5C)、及びCBDA(
図5D)に対して試験されている、化学療法感受性及び化学療法抵抗性の卵巣がん患者由来オルガノイドからの結果を図示する。
【
図5D】4つの異なる大麻抽出物、すなわち、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)(
図5A)、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)(
図5B)、CBD単離物(
図5C)、及びCBDA(
図5D)に対して試験されている、化学療法感受性及び化学療法抵抗性の卵巣がん患者由来オルガノイドからの結果を図示する。
【
図6】患者由来の子宮内膜がん細胞をマウスに注射した、マウス内の子宮内膜がん腫瘍体積のグラフィカルチャートを図示する。子宮内膜がんオルガノイドは、卵巣がんオルガノイドと類似した応答を示すことが示され、この特定のモデルに使用された。データは、7日目から21日目までの腫瘍体積の変化を示し、腫瘍体積に対する様々な大麻抽出物の治療有効性を図示する。
【
図7A】卵巣がんオルガノイド細胞、並びにパクリタキセル及びパクリタキセルと大麻抽出物との併用治療に対するそれらの応答を図示する。
図7Aは、化学療法感受性オルガノイドを図示する。
【
図7B】卵巣がんオルガノイド細胞、並びにパクリタキセル及びパクリタキセルと大麻抽出物との併用治療に対するそれらの応答を図示する。
図7Bは、化学療法抵抗性オルガノイドを図示する。
【
図8】化学療法剤が、カルボプラチンであり、大麻抽出物とともに投与される、患者由来子宮内膜がんオルガノイドに対して試験された併用療法治療を図示する。
【
図9】パクリタキセル及び大麻抽出物を投与されたマウスについての腫瘍体積データを図示し、大麻抽出物と併用される化学療法の併用の影響に関する相乗作用を図示する。
【
図10A】大麻抽出物で治療されたマウス組織に対して実施された組織病理学の画像を図示し、大麻抽出物による治療行為が、卵巣、ファロピウス管、子宮の、又は肝臓からの正常な生殖管細胞を損傷しないことを図示している。
【
図10B】大麻抽出物で治療されたマウス組織に対して実施された組織病理学の画像を図示し、大麻抽出物による治療行為が、卵巣、ファロピウス管、子宮の、又は肝臓からの正常な生殖管細胞を損傷しないことを図示している。
【
図11】がんオルガノイドに同じ濃度で適用されたときの大麻抽出物のpH改変の効果を図示する。特に、天然pHは、約10.85であり、生存率を低減させる能力は、天然pHよりも10及び8のpHで悪く、驚くべきことに4のpHでより強力である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
様々な実施形態が、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照して以下でより完全に説明される。しかしながら、実施形態は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、実施形態の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。とりわけ、様々な実施形態は、卵巣がんの1以上の苦痛を治療する際の治療薬、治療方法、治療の使用であり得る。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0083】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それが使用されている数の数値の±5%を意味する。したがって、約50%は、45%~55%の範囲を意味する。したがって、20mgは、端点及びその間の全ての数を含む19~21の範囲を意味する。
【0084】
「投与すること」は、治療薬と併せて使用されるとき、治療薬を対象に直接投与し、それによって、薬剤が標的に正の影響を及ぼすことを意味する。治療薬物又は化合物を「投与すること」は、例えば、注射、経口投与、局所投与、粘膜投与、及び/又は他の公知の技術と組み合わせて達成され得る。投与技術は、加熱、放射線、化学療法、超音波、及び送達剤の使用を更に含み得る。好ましくは、本開示では、投与は、経口、口腔粘膜/舌下、経鼻、筋肉内、直腸、及び/又は膣内剤形を介する。そのような膣内形態は、典型的には担体とともに膣内に挿入されることが意図され、活性成分は、膣粘膜を通過する。活性成分はまた、嚥下される経口形態で提供され得る。別の経口形態は、口腔粘膜適用であり、これは、多くの場合、舌下適用として提供され、これは、最終的に嚥下されて胃に入るが、口の中、例えば、舌の下に保持されることが意図され、有効成分は、嚥下される前に口腔粘膜を通過するか、又は唾液作用若しくは物質の能動的嚥下若しくはその両方によって胃の中に通過する。
【0085】
「薬学的に許容される」とは、限定されるものではないが、担体、希釈剤、アジュバント、又は賦形剤を含む成分が、製剤の他の成分と適合性でなければならず、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0086】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、特定の成分を特定の量で含む生成物と、特定の成分の特定の量の組み合わせから直接的又は間接的に生じる任意の生成物とを包含することが意図される。「医薬組成物」に関するそのような用語は、担体を構成する活性成分及び不活性成分を含む生成物と、成分のうちの任意の2つ以上の組み合わせ、錯体形成、若しくは凝集から、又は成分の1つ以上の解離から、又は成分のうちの1つ以上の他のタイプの反応若しくは相互作用から、直接的又は間接的に結果的に生じる任意の生成物とを包含することが意図される。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物及び薬学的に許容されるキャリアを混合することによって作製される任意の組成物を包含する。
【0087】
本明細書で使用される場合、「薬剤」、「活性剤」、「治療剤」、又は「治療薬」という用語は、患者の望ましくない病気又は疾患を治療する、戦う、寛解させる、防止する、又は改善するために利用される化合物又は組成物を意味する。更に、「薬剤」、「活性剤」、「治療剤」、又は「治療薬」という用語は、本開示に説明されるような大麻抽出物及び/又は追加の薬剤を包含する。
【0088】
組成物の「治療有効量」又は「有効量」は、所望の効果を達成するために、すなわち、細胞機能の活性化、遊走、増殖、改変を阻害、遮断、又は逆転させ、細胞の正常な機能を保存するために計算された所定の量である。本明細書に説明される方法によって企図される活性は、必要に応じて、内科治療及び/又は予防的治療の両方を含み、本発明の組成物は、説明される病気のいずれかにおける改善を提供するために使用され得る。本明細書に説明される組成物は、症状を呈さないが特定の障害を発症するリスクがあり得る健常な対象又は個体に投与され得ることも企図される。治療及び/又は予防効果を得るために本発明に従って投与される化合物の特定の用量は、当然ながら、例えば、投与される化合物、投与経路、及び治療される病気を含む、症例を取り巻く特定の状況によって決定される。しかしながら、選択された投与量範囲は、本発明の範囲を限定することを決して意図しないことが理解されるであろう。本発明の化合物の治療有効量は、典型的には、生理学的に許容される賦形剤組成物中で投与されるときに、治療応答を達成するために有効な全身濃度又は組織中の局所濃度を達成するのに十分であるような量である。具体的には、治療薬は、卵巣がんに関連するがん性増殖及びそれに関連する転移性疾患の治療において有効であるべきである。
【0089】
本明細書で使用される「治療する」、「治療された」、又は「治療すること」という用語は、治療行為及び予防的又は防止的手段の両方を指し、その目的は、望ましくない生理学的病気、障害、若しくは疾患を防止若しくは減速(軽減)すること、又は有益な若しくは所望の臨床結果を得ることである。本開示の目的のために、有益な又は所望の結果としては、限定されるものではないが、症状の緩和、腫瘍のサイズの低減などの、病気、障害、又は疾患の程度の減退、病気、障害、又は疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、病気、障害、又は疾患の発症の遅延又は進行の緩徐化、病気、障害、又は疾患状態の改善、及び検出可能であるか若しくは検出不能であるかにかかわらず、寛解(部分的であるか若しくは総合的であるかにかかわらず)、又は病気、障害、若しくは疾患の増強若しくは改善が挙げられる。
【0090】
本明細書で使用される場合、「大麻抽出物」(CE)という用語は、大麻属の植物(麻を含む)に由来する組成物である。典型的には、大麻抽出物は、カンナビジオールを含有し、より典型的には、カンナビジオール(CBD)と、0.1~40%のΔ9-THC、THCA、THCV、Δ8-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加のカンナビノイドとの両方を含む。本発明による大麻抽出物は、典型的には、カンナビジオールが濃縮されており、1~99.9%のCBD、好ましくは20~99.9%のCBD、より好ましくは50~99.9%のCBD、更により好ましくは70~99.9%のCBD、最も好ましくは90~99.9%のCBDを含み得る。フルスペクトル麻抽出物、ブロードスペクトル麻抽出物、CBD単離物、及びCBDA単離物は、CEの非限定的な例として、本明細書で利用される大麻抽出物の形態である。本出願を通して、CBDという用語は、多くの場合、特定の量のCBDを含有するCE生成物を意味するように、CEと互換的に使用されることが多いが、一方で、他の場合には、読者には明らかであるが、CBDは、CBD単離物を指し、これは、CEがCBDを除去及び単離するように処理され、CEの実質的に全ての他の成分を除去したことを意味する。
【0091】
本明細書で使用される場合、フルスペクトル麻抽出物(full spectrum hemp extract、FHSE)という用語は、CBDと、0を上回る、好ましくは0.01~5%、最も好ましくは0.01%~0.3%の量のTHCと、を含有する、大麻属の植物に由来する組成物である。FSHEは、追加のカンナビノイドを含み得、CEの重量の少なくとも50~99%のCBD、少なくとも0.01~10%のTHC(Δ9-THC、THCA、THCV、Δ8-THC)、及び50%~99%の総カンナビノイドを含む生成物が得られる。
【0092】
本明細書で使用される場合、ブロードスペクトル麻抽出物(broad spectrum hemp extract、BHSE)という用語は、抽出物を精製するために少なくともいくつかの精製を受けた大麻属の植物に由来する組成物である。典型的には、BHSEは、60~99.9%のCBDと、0.1~40%のΔ9-THC、THCA、THCV、Δ8-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの追加のカンナビノイドと、を含む。
【0093】
卵巣がんは、卵巣から、又はファロピウス管及び腹膜の関連エリアにおいて形成される細胞の増殖である。卵巣の表面を覆う細胞から形成され、卵巣腫瘍の大部分を占める上皮細胞腫瘍、卵巣で卵を作る細胞から発生する胚細胞腫瘍、及び女性ホルモンの生成に関与する卵巣の構造組織の細胞で発生する腫瘍である間質細胞腫瘍を含む、3つのタイプの卵巣腫瘍がある。
【0094】
卵巣がんは、2番目に一般的な婦人科がんであり、米国において毎年約20,000の新たな診断の発生率を有する。更に、残念なことに、米国では毎年約13,000人の女性が卵巣がんで死亡しており、女性の生殖系のがんによる死亡の主な原因となっている。卵巣がんは、他のがんと同様に、BRCA1及びBRCA2に対するもの、並びにリンチ症候群と関連付けられたものを含む、特定の遺伝子変異に基づいて、より高い発生率を有する。
【0095】
卵巣がんの検出時、大部分の患者は、子宮摘出及び両側卵管卵巣摘出を含む外科的除去を選択する。ほとんどの場合、これに続いて化学療法を行う。最小量の広がりのステージIから、広範な転移を有するステージIVまで変化し得るがんのステージに応じて、化学療法が、典型的には、外科的除去後に示される。化学療法の重大な副作用を考慮すると、ステージI及びIIの患者のごく一部分は、ステージIII及びIVの患者と比較して、化学療法の使用を省略又は低減し得る。化学療法は、実質的に常に、ステージIII又はステージIVの卵巣がん患者に与えられ、多くの場合、リスク及び見返りを最適化する目的で数回の治療が行われる。したがって、ステージIII及びIVの卵巣がんでは、卵巣がん細胞が既に卵巣から子宮に、場合によっては腹部内及びその先の他の身体部位に移動しているため、器官及び腫瘍の除去に続いて、典型的には、転移性疾患を捕捉するための化学療法治療が行われる。
【0096】
しかしながら、化学療法剤は、それらの殺傷において無差別であり、したがって、顕著な二次的影響が患者に生じ、生活の質に対する影響につながることが周知である。実際、化学療法が、がんの治療に有効である場合であっても、化学療法の毒性効果は、多くの場合、時間が経つにつれて致命的になる。最近の研究では、がんを治療するための化学療法の使用は、症例の27%において死を早めた。更なる研究では、化学療法を受けているがん患者の43%が、化学療法の副作用を低減するために他の並行治療を受けているにもかかわらず、有意な治療関連毒性を示した。合計4人に1人の患者が、がんではなく、化学療法の直接の結果として死亡した。化学療法を受けている患者の約20%が、化学療法を全く受けるべきではなかったため、これは特に問題である。健常な細胞に対する毒性及び化学療法抵抗性の存在を含む、化学療法と関連付けられたリスクを理由に、卵巣がんに対する化学療法を低減させるか又は置き換えるやり方を含む、新たな治療行為が非常に必要とされている。
【0097】
実質的に全ての場合において、化学療法は、1サイクルで行われ、これは、薬物又は薬物の組み合わせが、通常2~6週間の期間にわたって与えられ、次いで、休止期間が与えられ、その後、第2又はそれ以上の治療期間が続くことを意味する。多くの場合に処方される化学療法剤の一部としては、限定されるものではないが、パクリタキセル、アルトレタミン、カペシタビン、シクロホスファミド、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、itinotecan、ドキソルビシン、メルファラン、ペメトレキセド、トポテカン、binorelbine、カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、並びにこれら及び他の薬剤の組み合わせが挙げられる。
【0098】
化学療法薬物は、典型的には、異なるクラスの薬物、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、分裂阻害剤、DNA修復酵素阻害剤、植物アルカロイド、及び抗悪性腫瘍薬に分類される。卵巣がんのための最も一般的な化学療法薬物のうち、これらは、次のクラスに分類される:パクリタキセルは、抗悪性腫瘍-植物アルカロイドであり、ドセタキセルは、抗悪性腫瘍-植物アルカロイドであり、ドキソルビシンは、抗悪性腫瘍-アントラサイクリン抗生物質であり、カルボプラチンは、抗悪性腫瘍-アルキル化剤、かつプラチナベースであり、シスプラチンは、抗悪性腫瘍-アルキル化剤、かつプラチナベースである。多くの場合、パクリタキセルは、シスプラチン又はカルボプラチンのうちの1つ以上と併用して投与される。しかしながら、卵巣がん患者の80%超が最初にプラチナベースの化学療法に応答するが、一方で、大部分は再発し、「プラチナ製剤抵抗性」という用語は、プラチナベースの療法の6か月以内に進行する卵巣がんを有する患者を指す。研究は、複数の細胞経路を制御するヘテロ二量体転写因子であるHIF1αが、プラチナ製剤抵抗性を支配する重要な機構であることを特定している。当然ながら、一次療法が失敗したとき、これらの患者は、疾患関連死亡のリスクが最も高い。積極的治療を用いても、特にステージIII又はIVまで検出されないとき、転移性腫瘍は、最初の診断及び治療から2年及び5年後の低い生存率につながる。
【0099】
プラチナ製剤抵抗性がその一種である、化学療法抵抗性は、単に、がん細胞が特定の治療剤の作用に対して抵抗性であり、その結果、疾患が進行することとして定義される。化学療法抵抗性疾患は、依然として、薬物に対するある程度の臨床応答を有し得るが、疾患進行を防止するのに十分なレベルではないか、又は治療が不適切となるほどの高用量を必要とする。化学療法感受性は、その逆で、患者のがん細胞が化学療法剤に対して感受性であり、その結果、疾患が管理又は低減される。しかしながら、がんは、ある時点で化学療法に応答し、典型的なオン/オフサイクルを通して治療が進行するにつれて化学療法抵抗性になる場合がある。実際、現在、化学療法抵抗性腫瘍が存在する場合、緩和ケア以外の任意の治療計画、又は腫瘍の特定時の追加の除去は、存在するとしても少数である。この後のステップは、腫瘍が転移するとき、ほとんど不可能になる。
【0100】
実際、化学療法の副作用は、多くの場合、慢性的であり、脳、中枢神経系及び末梢神経系、心臓、肺、肝臓、胃腸管、及び生殖官などの主要器官及び器官系に対する損傷を含む。化学療法は、結果的に、経時的に二次がんをもたらすことさえあり得る。更に、化学療法は、特に高用量で使用されるとき、致死的であり得る。この効果を評価する最近の調査では、化学療法又はその副作用が患者の27%を直接死に至らしめると結論付けられた。加えて、その研究における患者の43%が、化学療法を受けてからわずか30日以内に有意な治療関連毒性に罹患した。
【0101】
したがって、一次治療を改善する治療、すなわち、卵巣がん細胞の破壊及び卵巣がん細胞負荷の低減、体内の転移の機会の低減を生じさせること、並びに腫瘍の管理を通して又は寛解に達することによって寿命を延ばすという最終目標を伴って、任意の未切除腫瘍について腫瘍サイズを低減させることの両方が重要である。しかしながら、化学療法の使用に直接起因する有意な罹患率及び死亡率を考慮すると、化学療法の量又は化学療法治療の持続時間を短縮させる方法及び治療は、がん治療を劇的に改善することになる。これらの結果の各々は、1以上の患者における治療の成功を意味し得る。生活の質の改善を提供する新たな治療、並びに化学療法の用量を低減させ得るか又は直接病変若しくは転移性疾患に影響し得る新たな有効な治療が、緊急に所望される。
【0102】
哺乳動物の身体、特に生殖系におけるECSの広範な存在を考慮して、婦人科がん細胞タンパク質発現に対するCBDを含む大麻抽出物(CE)の効果を調べた。プロテオミクスは、タンパク質の大規模研究であり、プロテオームは、調査中の試料によって産生されるタンパク質の全セットである。プロテオームは、細胞毎及び時間毎に異なることになる。したがって、治療済み細胞と比較した未治療細胞におけるタンパク質発現の比較は、どのタンパク質が子宮内膜がん細胞における発現を変化させ、どのタンパク質が同じままであるかに関する洞察を提供する。この知識を用いて、更に的を絞った研究を進めることができる。
図1Aを参照すると、子宮内膜がん細胞(endometrial cancer cell、ECC)を、CBD(1μg/mL)を含むCEで治療するか、又は対照(ビヒクル-DMSO)として未治療のままにした。治療後、タンパク質を試験細胞及び対照細胞から抽出し、液体クロマトグラフィー(liquid chromatography、LC)タンデム質量分析(MS/MS)による分析のために消化した。
図1Bを参照すると、ベン図は、LC-MS/MS分析の結果を示し、これは、治療済み細胞が未治療細胞とは2,842個の異なるタンパク質を発現し、未治療細胞が治療済み細胞とは2,681個の異なるタンパク質を発現し、治療済み及び未治療の両方が3,747の共通タンパク質を発現したことを示している。明らかに、タンパク質発現の差異に基づいて、CBDを含むわずか1μg/mLのCEによる治療は、排他的に発現されるタンパク質及びもはや発現されないタンパク質に対して明らかな影響を有した。
図1Cは、特定のタンパク質が未治療細胞及び治療済み細胞において発現された(又は発現されなかった)程度を比較する。
【0103】
図1Dを参照すると、治療済み及び未治療細胞で差次的に発現された数千のタンパク質のうち、上方制御された(例えば、治療済み細胞のみで)及び下方制御された(例えば、未治療細胞のみで)上位20が特定され、列挙されている。ここで
図1Eを参照すると、様々な生理学的及び病態生理学的経路のシグナル伝達及び輸送に対する、CBDを有するCEによる治療の効果が示されている。一例として、エンドカンナビノイドニューロンシナプスと関連付けられたタンパク質は、未治療細胞で上方制御され、治療済み細胞で下方制御されることが示されている。最後に、
図1Fを参照すると、子宮内膜がんを有する患者から採取した組織試料を選択的に染色して、CB1受容体発現を示した。
図1Gは、CB2受容体発現を示すために選択的に染色された同様の組織試料である。
【0104】
上記の実験が行われるのとほぼ同時に、CBDを用いたCEに対する卵巣がんに由来するオルガノイドの応答も研究した。一般に、卵巣がんを有する患者を特定し、腫瘍細胞を収集した。卵巣がん腫瘍細胞を使用して患者由来オルガノイドを生成し、その方法が以下の方法のセクションに説明される。統計分析のための計算もまた、方法のセクションで提供される。名称が示唆するように、オルガノイドは、全てのそれらの複雑さにおいて器官を模倣する小型構造である。それらは、生検及び/又は切除された健常な組織若しくは腫瘍を介して収集された幹細胞に由来する。培養において、それらは、それらが由来する個々の患者の組織を模倣する三次元組織に自己組織化した。すなわち、オルガノイドは、それらが由来する個体と同じ遺伝的指令を有し、したがって、それらのヒト対応物と同一の突然変異、増殖、及び疾患進行を示す。オルガノイドは、分化した細胞型を有する器官を複製するように、又は関心対象の特定された細胞の選択された態様を発現するように作製され得る。臨床試験における高い失敗率と関連付けられた伝統的な細胞株モデルとは異なり、オルガノイドの応答は、精密かつ直接的にヒト応答に換算される。オルガノイドは、十分に確立されており、嚢胞性線維症、膵臓がん、糖尿病、及び他の疾患を治療することにブレークスルーをもたらし、医学研究を一変させた。単純化された例では、オルガノイドを個体の器官のクローンとして想定する。本質的に、それは、体外に存在する別個の患者の生きている増殖するアバターである。アバターは、腫瘍の増殖を模倣し、体内と同様にがんの治療に応答することになる。この個別化された複製識別子は、数日のうちに個別化された標的化治療の特定を可能にする。それは、患者が、無効な治療による時間の浪費及び毒性の危険を回避することを可能にする。
【0105】
化学療法感受性卵巣がんオルガノイドに対する初期実験では、治療のための最低用量としてCBDを含む250μg/mLのBSHEを使用した。この投与量は、卵巣がんオルガノイドを殺傷するのに100%有効であり、これは確かに予想外であった。その後の実験では、治療のための最低用量として100μg/mLのBSHEを使用した。再び、100μg/mLは、卵巣がんオルガノイドを殺傷するのに100%有効であった。その後、化学療法感受性卵巣がんオルガノイドを低用量のBSHEで治療し、試験された最高用量は、50μg/mLであった。
図2Aに見ることができるように、化学療法感受性卵巣がんオルガノイドを、オルガノイドが増殖する増殖培地である培地のみ、BSHEを他のオルガノイドに送達するために使用される単なる溶媒であるビヒクル、次いで、ビヒクルで送達される1μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、及び50μg/mLの各濃度の試験投与量で治療した。
図2B(及び
図2A)にあり得るように、ビヒクル及び1μg/mLの投与量が、ほぼ同数のオルガノイドを有した。しかし、10μg/mLという低い濃度で、BSHEは、卵巣がんオルガノイドを完全に殺傷させることができた。25μg/mL及び50μg/mLのより高い用量のBSHEもまた、卵巣がんオルガノイドの100%の殺傷率を示した。
図2の試験の各々は、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)であったビヒクル単独を含めて、少なくとも3連で実施した。したがって、
図2は、ビヒクル、1μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、及び50μg/mLで治療された患者由来オルガノイドが卵巣がんを治療する際に有効であることを示す。
【0106】
次いで、これらの用量を外挿して、1μg/mLが約20mg/日のCBDの用量であり、10μg/mLが約200mg/日であり、25μg/mLが約500mg/日であり、50μg/mLが約1000mg/日である、ヒト等価量のCBDが得られる。現在、例えば、処方されたCBD単離物は、5~50mgのCBD/kgの用量で与えられ、米国では、65~85kgの平均体重は、325~4250mg/日の用量のCBDを服用する。したがって、本出願人の実際の試験は、これらの用量よりも十分に低い用量から許容可能な用量の約1/4までの範囲である。本出願人は、ヒト投与量範囲の上限がこの場合にも十分に適切であり、100μg/mL以上で試験を再現すると考え、これは、そのようなCBD用量の代替が、ほぼ常に、事実上、任意の濃度でCBDの最高用量よりも顕著に悪い副作用プロファイルを有することになる化学療法であるためである。
【0107】
驚くべきことに、CBDを含む大麻抽出物を投与することは、化学療法感受性卵巣がんオルガノイドに関する初期研究内で、全てのオルガノイド(がん性細胞)を殺傷させるために、10μg/mL以上の全ての用量で有効であった。しかしながら、多くの形態の卵巣がんは、化学療法抵抗性であり、したがって、異なって応答する可能性がある。
図3A及び
図3Bは、効力を確認するために化学療法抵抗性卵巣がんオルガノイドを用いて同じ試験を繰り返した。特に、
図3Aは、培地のみ(バックグラウンド材料の一部を示す)、及びDMSOビヒクル治療対照の両方を詳述する。最低量の濃度である1μg/mLは、対照と比較して無効であったが、一方で、DMSO中にCBDを含む10、25、又は50μg/mLの濃度のBSHEで治療すると、オルガノイドは完全に破壊された。
図3Aに示される画像及び
図3Bのデータの概要は、10μg/mL以上の量のCBDを含む大麻抽出物の治療によるオルガノイド除去の成功した治療の全体像を示す。
【0108】
最適化された治療を提供するために、薬物製品は、治療有効性を提供するための最低用量を特定しようとする。ここで、治療有効性は、生存オルガノイド数のゼロに近いか又はゼロの低減であり、したがって、オルガノイド数の100%の減少を有する。驚くべき結果を考慮して、本出願人は、次いで、用量を更に減少させて、より低用量が追加の試料にも有効であり続けるかどうかを決定した。したがって、追加の卵巣がんオルガノイドを、高グレードの卵巣がんに対応するものを含む、数人の患者から作成した。
図4A及び
図4Bは、高グレードの卵巣がんオルガノイドにおいて、4μg/mLという低い投与量がオルガノイドの割合を事実上ゼロに低減させるのに有効であったことを詳述する。実際に、5、7、及び10μg/mL用量のBSHEの量では、試料の全てがオルガノイド数の100%の低減を示したが、一方で、4μg/mLでは、これらの数は、全ての試料にわたって平均してオルガノイドをほぼ98%低減した。したがって、患者の特定のセットについて、CBDを含む大麻抽出物を含む治療行為は、4μg/mLという低い用量で高グレードの卵巣がんにおけるオルガノイドの数を95%超減少させるのに有効であり、5μg/mLの用量でオルガノイドの数を100%低減させることができた。
【0109】
したがって、CEを介して適用されたCBDは、卵巣がんにおいてオルガノイドを破壊するのに有効であった。この応答は、がんの重症度又はグレードにかかわらず保持された。したがって、CBDを含む大麻抽出物の適用は、卵巣がんからの生存可能な患者由来オルガノイド細胞の数を低減させるのに有効である。
【0110】
全ての先行試験で使用されたBSHEは、大麻抽出物の1つの製剤にすぎない。方法のセクションで更に詳述されるように、BSHEを製造するためのプロセスは、限定されるものではないが、好ましくは、0.01~0.3%であるが、最大約5%のΔ9-THC、及び通常0.3%未満のΔ9-THCを含有する、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)を含む、追加の生成物を生じるように修正され得る。別の生成物は、単離されたCBDであり、最後に、CBAの酸形態であるカンナビジオール酸(CBDA)の単離された生成物である。
【0111】
次いで、本出願人は、新たに得られた患者由来の化学療法感受性及び化学療法抵抗性卵巣がんオルガノイドに対して、様々な濃度のいくつかの異なる大麻抽出物を試験した。
図5Aは、BSHEに関する結果を示し、
図5Bは、FSHEを示し、
図5Cは、CBD単離物を示し、
図5Dは、CBDAを示す。ここで、BSHEは、これらのオルガノイドが全ての先行試験とは異なる患者から生成されたにもかかわらず、先行試験と事実上同じレベルで機能し続けた。データは、単に、患者にわたる応答率における、ある程度のわずかな変動性を示しており、これは、任意の薬物製品に典型的である。しかしながら、変わらないものは、10μg/mL又は約10μg/mLで、事実上全ての患者由来オルガノイド試料がゼロ生存率になり始めるか又は到達することである。しかしながら、全てが0%の生存率に達したわけではないため、FSHE及びCBD単離物について15及び20μg/mLで追加の試験を実施し、CBDAに関連するものを除いて、全ての試料が15及び20μg/mLの両方で0%の生存率を有したことを示した。次いで、CBDAを15、20、25、35、及び50μg/mLまで拡張し、50μg/mLにおける値のみが、他の試験生成物と同様にゼロ生存率に近かった。
【0112】
したがって、その研究は、卵巣がんオルガノイド細胞が様々な大麻抽出物に対して非常に感受性であること、及び有効量の大麻抽出物を投与することが、数例を除く全てにおいてオルガノイドの数を低減させ、それらを根絶するのに有効であったことを示す。したがって、治療量のCBDを含む大麻抽出物が卵巣がん細胞由来のオルガノイドを治療するのに有効であるという決定の成功に基づいて、本出願人は、患者由来異種移植研究において、この確認をマウスモデルに拡張することを望んだ。これらの異種移植研究は、投与がオルガノイドとマウスモデルとの間で一貫していること、及び全身送達が、がん性細胞の治療に成功していることを確認する。
【0113】
マウス研究は、細胞ベースの適用を行い、全動物系におけるそれらの有効性を確認するのに有用である。更に、マウスは、薬物の全身適用の試験を可能にする。マウスを生成し、以下に詳述される方法のセクションに従って試験した。次いで、マウスに、腹腔内投与を介して、既知量のCBD又はビヒクルを含む大麻抽出物の様々な製剤を注射し、結果を、マウスの各々についてT=0における体積と比較した。大麻抽出物の各々の用量は30mg/kgであり、
図6は、マウスに注射した子宮内膜がん細胞を使用した21日間にわたる結果を図示する。各場合において、マウスモデルは、腫瘍が全体としてサイズが減少し始める前に、腫瘍増殖が最初の7~10日間にわたってわずかな減少又はわずかな増殖の範囲であったことを示した。14日目までに、対照と比較して、腫瘍体積の各々は、それらの0日目の体積以下であり、7日目及び10日目の体積と比較して、異なる大麻抽出物の各々において有意な減少が見られた。最後に、21日目までに、治療された試料の全てについての腫瘍サイズは、それらの元の体積の両方と比較して、また、対照と比較して劇的に低減される。
【0114】
図6のデータは、その有効性において実際に衝撃的である。ビヒクルのみを受けた対照マウスは、ほぼ150%の腫瘍増殖を示す。対照的に、4つの治療された例の各々は、53~82%の腫瘍体積の減少を示す。対照腫瘍は動物の倫理的犠牲を必要とするサイズに達するが、一方で、治療された動物は、治療のちょうど21日後に実質的に腫瘍を示さないため、差異は文字通り生死である。これは、がん腫瘍、特に、子宮内膜がん及び卵巣がんのがん腫瘍が、CBDを含む大麻抽出物による治療に感受性であることを示す、先行するオルガノイド研究を再確認するものである。したがって、本出願人は、大麻抽出物の使用が、いくつかの異なるモデルにわたって腫瘍体積を低減させ、腫瘍細胞の生存率を低減させるのに好適であることを確認する。
【0115】
注目すべきことに、各場合に使用されるCBDの濃度は、ヒト患者又はマウスへの投与に好適な治療用量の下限に留まる。大麻抽出物の影響を示すために、データの各々がゼロになる代わりに、マウスに投与される用量の2倍、3倍、又はそれ以上を使用することによって、低用量を利用したが、それらの用量は全て、適切なヒト等価用量である。21日目の時点で、より低用量であっても、事実上試料の全てが腫瘍体積をゼロに向かって進行させており、1つの事例では、腫瘍体積は、21日目にゼロに到達している。したがって、これらの量をオルガノイドデータからの量と比較するとき、本発明者らは、各試料が、特定の濃度のCBDを伴うCEの全身投与を介して、がん性増殖を治療することにおけるオルガノイドデータからの有効性を保持していることを確認する。したがって、大麻抽出物を投与することは、この場合、卵巣がんに対するモデルとして機能する子宮内膜がん腫瘍の増殖を大幅に遅延させるのに有効であり、最終的に、腫瘍サイズを低減し、結果的に、大麻抽出物をマウスに投与することによって、腫瘍細胞の根絶をもたらし得る。
【0116】
化学療法との併用
化学療法は、多くの場合、卵巣がん、及び本明細書に詳述される他の婦人科がんを治療する際に使用される第一選択治療であるため、その有効性を維持しながら化学療法の量を低減する能力は、がん治療における大躍進につながることになる。本発明者らは、化学療法からの毒性効果が実際に患者の顕著な部分において死を引き起こすことを上記に詳述した。更に、化学療法の急性毒性は、即死を引き起こさないときであっても、結果的に、顕著な損傷及び罹患をもたらす。したがって、本発明者らは、化学療法剤の量を低減させることによって有効な治療行為を得る能力、又は化学療法サイクルの数を低減させる能力が、がん治療における多大な改善につながることを認識する。
【0117】
化学療法は、多くの場合、漸増用量で与えられ、これは、疾患が進行するにつれて、同じ応答を得るためにより多くの化学療法薬物を摂取し得ることを意味する。多くの場合、患者は進行し、卵巣がんは化学療法抵抗性になり、これは、化学療法剤の変更又は疾患の管理に向けた完全に新しいアプローチを必要とする。オルガノイド細胞に対するCBDを含む大麻抽出物の成功を考慮して、本出願人は、CBDと化学療法剤との併用が、腫瘍細胞の低減を達成するのに必要な化学療法剤の量の低減につながり得るかどうかに疑問を抱いた。したがって、本出願人は、化学療法薬と大麻抽出物との併用を試験して、その併用が、治療応答を得るのに必要な化学療法の量を低減させることができるかどうか、すなわち、卵巣がん細胞/腫瘍の増殖を低減し、最終的に腫瘍を排除するかどうかを決定した。
【0118】
いくつかの化学療法剤を、両方のオルガノイドに対する、次いで、マウスモデルに対する有効性について試験した。化学療法剤の毒性のため、重要な測定基準及び値は、より少ない総量の化学療法剤を使用しながら、化学療法に対する同等の臨床応答を生じる能力である。単純化された例は、化学療法剤Xの通常の用量が200mgであり、90%の腫瘍サイズの低減をもたらす場合、100mgの用量で同じ化学療法剤Xを使用し、90%の腫瘍サイズの同じ低減を得る能力は、健常な組織へのより少ない二次的損傷、及び化学療法剤からの他の既知の影響に関して、患者に有意な利益を提供することになる。ここで、その結果は、適切な治療応答を得るための化学療法の量の単に50%の低減ではなく、治療有効用量の大麻抽出物と併用して、通常の化学療法用量の5分の1又は6分の1の量を使用することによって、化学療法剤単独よりも、マウスモデルにおいて腫瘍増殖を停止させ、卵巣がんオルガノイドを低減するとともに、腫瘍体積を低減させる、より強い治療応答を得た。
【0119】
図7Aは、腹水細胞に由来した化学療法感受性卵巣がん細胞を治療する際の大麻抽出物との併用におけるパクリタキセルの使用を詳述する。
図7は、50%阻害濃度(IC50)で与えられた、大麻抽出物製品のみを意味する対照用量を示す。IC50は、細胞ベースの毒性試験で薬物効力を決定するために従来から使用されている。ここで、その量は、BSHEで5.5μg/mL、FSHEで5.8μg/mLである。パクリタキセルは、4nm/mLで投与され、大麻抽出物と併用して20nm/mLでも投与される。注目すべきことに、パクリタキセルも8、12、及び16nm/mLで試験したが、ほぼ直線的な中程度の変化しかなく、したがって、図面には図示されていない。
【0120】
図7Aの結果について特筆すべきことは、パクリタキセルの最初の用量を摂取し、その用量を5倍増加させると、結果的に4nmにおけるオルガノイドについての約89%から、20nm/mL用量についてのわずか約57%への生存率の相対的低減がもたらされることである。有意ではあるが、32%の変化は、依然としてパクリタキセル単独の最高用量における50%未満の全殺傷率につながる。しかしながら、有意な毒性を考慮すると、そのような最小限の増加及び用量の大きい乗数は、パクリタキセル単独の弱点を示す。その増加は、大麻抽出物のいずれかのIC50用量で、パクリタキセルの最低用量を使用することから明らかであるものと比較して、わずか4nm/mLで生存率をほぼ60%低減させる。実際、20nm/mLのパクリタキセル単独であっても、少量のBSHE又はFSHEのいずれかを含む4nm/mLのパクリタキセル用量よりも30%低い殺傷率を有した。したがって、パクリタキセルの用量を増加させる代わりに、最低用量のパクリタキセルを大麻抽出物の用量とともに投与することがより有利であろう。したがって、大麻抽出物のいずれかのIC50用量を摂取し、それをパクリタキセルと同時に投与することによって、驚くべき相乗作用が特定され、これは、子宮内膜がんオルガノイドについて低生存率から生存率なしを達成するのに必要なパクリタキセルの量を劇的に低減することができた。
【0121】
次いで、
図7Bは、化学療法抵抗性卵巣がんオルガノイドについて
図7Aからの試験を繰り返す。ここで、パクリタキセルは、4nm/mLに対して45%の生存率を有するが、IC50量の大麻抽出物のみを加えることによって、数は、ほぼ10%の生存率だけ低下する。それをパクリタキセル単独の5倍以上の追加と比較すると、生存率は合計で約3%だけ変化し、42%の生存率である。したがって、少量の大麻抽出物を伴う少量のパクリタキセルの使用は、低用量又は高用量でパクリタキセル単独よりも劇的に多くの化学療法抵抗性オルガノイドを殺傷するという驚くべき相乗作用を示す。
図7A及び
図7Bからの応答に基づいて、併用化学療法は、化学療法剤単独よりも非常に優れている。
【0122】
この前提が、異なる化学療法剤にわたって変わらないかどうかを決定するために、本出願人は、パクリタキセルをカルボプラチンに置き換えて、関連する婦人科がん細胞、子宮内膜がん細胞に対して試験を繰り返した。パクリタキセルでの驚くべき所見は、カルボプラチン単独又はカルボプラチンと大麻抽出物との影響を試験することによって更に確認された。
図8では、3つの異なる大麻抽出物、BSHE、FSHE、及びCBD単離物を各々IC50濃度で試験した。パクリタキセルについて詳述された話は、卵巣がんの別の第一選択化学療法剤であるカルボプラチンについても繰り返され、CBDを含む大麻抽出物と併用したとき、患者由来オルガノイドの生存率の劇的な低減につながる。
【0123】
図8に図示されるように、オルガノイドに50及び100μg/mLでカルボプラチンを投与することによって、生存率の低減は、約50%で事実上変化しないままであるが、一方で、IC50量の大麻抽出物を投与することは、大麻抽出物のうちの2つについて生存率を20%以下に低減させ、100μm/mLの用量は、大麻抽出物のうちの1つについて生存率を20付近に低減させ、他方で約15%であり、最後に10%未満の生存率である。ここで、BSHEは2μg/mL、FSHEは4.5μg/mL、CBD単離物は3μg/mLのそれらのIC50用量で使用した。最後に、100μm/mL試験からの用量の2.5倍である250μm/mLカルボプラチンの用量では、カルボプラチン及び大麻抽出物を用いた併用療法の全てが10%を下回る生存率であるが、一方で、カルボプラチン単独では30%を上回ったままである。各場合において、250μm/mLでカルボプラチンの2.5倍未満又は更に5倍未満を投与することは、治療プロトコルに大麻抽出物のIC50量を単に加えたとき、1つを除く全ての試験において優れた結果をもたらす。
【0124】
別の言い方をすると、カルボプラチンの用量を倍加することの影響は、パーセント生存率を約1%変化させた。更に、元の50μm/mL用量を摂取し、それを5倍だけ増加させても、生存率において合計約17%の低下しかもたらさなかった。カルボプラチンの5倍の増加は、本明細書に詳述されるように、高濃度の化学療法に起因して、罹患率に対する有意なリスクを提供し、死亡率のリスクさえ増加させる。対照的に、最も低いカルボプラチン用量を摂取し、BSHE又はFSHEのIC50量を加えることは、結果的に、BSHEでは生存率が26%低下し、FSHEでは生存率が37%低下することをもたらす。CBD単離物は、依然として単離物単独よりも有意に良好に機能したが、最低レベルにおけるその併用は、依然として大きい低下である合計約37%の生存率をもたらした。カルボプラチンを2倍にすると、生存率は2%しか改善せず、CBDを100μm/mL用量に加えると、BSHEでは21%の改善、FSHEでは39%の改善、CBD単離物では32%の改善を示す。最も高いカルボプラチン用量における結果は、併用治療の治療有効性を示し続け、全ての併用は10%生存率を下回り、ゼロに近づいているが、一方で、カルボプラチン単独は32%生存率である。
【0125】
これらのオルガノイド試験の各々において、結果は、がんを臨床的に治療するのに必要な化学療法の量における予想外の相乗作用及び劇的な改善を示す。大麻抽出物を化学療法と併用することは、IC50値で大麻抽出物と単純に併用されるか又は同時投与される場合、同じ有効性を得るための化学療法剤の使用の少なくとも5倍の低減を可能にする。
【0126】
化学療法とCBDを含む大麻抽出物との併用の影響は非常に成功しており、CBDを含む大麻抽出物のうちの1つと併用したとき、劇的に少ない化学療法剤が利用され得ることを示している。全身アプローチ内における研究の有効性を確認するために、以下の方法に従ってマウスを成長させ、パクリタキセル単独、次いで、大麻抽出物を伴うパクリタキセルについて試験した。
【0127】
図9は、パクリタキセル単独と、パクリタキセル及び大麻抽出物の併用で治療したものとを比較したマウス腫瘍体積の結果を詳述する。対照又は治療なしは、
図9に示されていないが、初期腫瘍体積と比較して、21日間にわたってほぼ150%の増殖をもたらした。特筆すべきことは、オルガノイドデータにおいて見られ、次いで、ここで繰り返されたことであり、低用量のパクリタキセルを有効用量の大麻抽出物のいずれかと併用することによって、パクリタキセル単独又は更に所与の用量の大麻抽出物単独と比較して、腫瘍体積の劇的に大きな低減がもたらされる。したがって、既知量のCBDを含む麻抽出物とカルボプラチン又はパクリタキセルとの同時投与は、驚くべきことに、それらの単独投与よりも有効であった。
【0128】
図9は、30.007mg/m
2のパクリタキセルに調整され得る、わずか10mg/kgの用量を利用し、パクリタキセルの臨床的に推奨されるヒト用量は、175mg/m
2である。パクリタキセルのみの用量は、残りの11日間にわたって、パクリタキセルのみのマウスにおける腫瘍体積が低減されなかったため、10日目の初期低減後、本質的に無効であった。しかしながら、パクリタキセルのみの用量の均衡状態は、パクリタキセルとCEとの併用とは全く対照的である。CE製品の各々を30mg/kgの濃度で投与し、170.1mg/日のヒト等価物の有効用量を得た。パクリタキセル用量を異なる大麻抽出物のうちのいずれかと併用する治療の各々において、21日目までに、これらの併用治療されたマウスについての腫瘍体積の各々は、パクリタキセル単独マウスよりも腫瘍体積の変化において少なくとも20%良好であった。実際、大麻抽出物のうちの3つについて、結果は、腫瘍体積の変化においてほぼ40%良好であり、それらの初期治療体積よりもほぼ80%少ない腫瘍体積をもたらし、腫瘍の完全な低減に向かって急速に移動した。したがって、パクリタキセルの通常の示された用量のほぼ1/6を投与すること、及び30mg/kg体重のCEを投与することは、結果的に、マウス内の腫瘍体積を低減することにおいて予想外の相乗作用をもたらした。その差は、化学療法単独による無効な治療、又は単に同じパクリタキセル用量を大麻抽出物とともに投与することによって、21日間にわたって腫瘍のほぼ完全な根絶をもたらすことで、一目瞭然である。この相乗作用は、CBDを含む大麻抽出物と併用した場合、パクリタキセルがその通常の有効用量の1/6で投与されることを可能にする。パクリタキセル用量のそのような低減は、化学療法剤の不必要な副作用を低減し、そして共同投与により、劇的に増加した効力を提供することになる。
【0129】
化学療法からの顕著な毒性及び損傷のため、患者が受ける化学療法の量の低減は、短期及び長期罹患率を著しく低減させ、多くの場合、死亡率を低減させる。化学療法の副作用は、多くの場合、慢性的であり、脳、中枢神経系及び末梢神経系、心臓、肺、肝臓、胃腸管、及び生殖官などの主要器官及び器官系に対する損傷を含む。化学療法は、結果的に、経時的に二次がんをもたらすことさえあり得る。更に、化学療法は、特に高用量で使用されるとき、致死的である。この効果を評価する最近の研究では、化学療法又はその副作用が患者の27%の死亡を直接引き起こすか又は早めると結論付けられた。加えて、その研究における患者の43%が、化学療法を受けてわずか30日以内に有意な治療関連毒性に罹患し、そのような患者の全25%が治療関連毒性により死亡した。全死亡の19%が化学療法を全く受けるべきではなかった患者に関連していたと研究が決定したとき、データは、特に説得力がある。
【0130】
したがって、化学療法関連毒性を軽減し、化学療法投与量を低減することは、高用量の化学療法による治療が、時間をかけて与えられた場合、無差別的であり、これらの細胞を損傷するため、非常に重要である。したがって、低用量であろうとなかろうと、大麻抽出物と併用した化学療法薬物の量の低減は、より大きい割合で腫瘍体積を減少させ、化学療法単独よりも大きい総パーセンテージまで腫瘍体積を低減させることによって患者の転帰を改善し得、そうでなくても、化学療法の使用から生じるような生殖器官及び肝臓の対応する健常な組織への損傷を引き起こさない。
【0131】
大麻抽出物を化学療法と併用することは、結果的に、マウスにおける有効な治療に必要な毒性治療において6倍の用量減少をもたらす。単独で使用した場合、30.007mg/m2のパクリタキセルは、腫瘍増殖の低減に無効であった。しかしながら、正確に同じ30.007mg/m2のパクリタキセル用量(パクリタキセル単独のヒト投与に必要とされる175mg/m2の代わりに)を使用することは、CBDを含む大麻抽出物と併用したときのみ、腫瘍増殖の低減に有効であった。オルガノイドデータは、2倍又は5倍のいずれかの化学療法を加えることが、最低化学療法用量に、CBDとともにIC50量のCEを単に加えることよりも有効性が低かったため、等しく印象的であった。
【0132】
オルガノイド及びマウスのデータを考慮して、有効量の大麻抽出物を単独で、又は化学療法剤と併用して提供することは、併用療法に相乗作用を提供することになるか、又はそれ自体で治療有効性を提供することができる。そして、化学療法の用量を低減することは、第一選択治療として化学療法を利用する患者に対する急性及び長期毒性を低減することになるため、これは非常に貴重である。毒性の低減に対する影響は、健常な細胞が、高レベルの化学療法治療と比較して、低減された損傷を示すことになることである。
【0133】
健常な組織に対する大麻抽出物の治療レベルの影響もまた最も重要である。図示されていないが、少量の化学療法であっても、健常な細胞に顕著な損傷を引き起こす。これは、文献において広く理解されており、化学療法による罹患率及び死亡率の顕著な原因である。
図10A及び
図10Bは、治療済みマウス及び未治療マウスのマウスモデルから採取した組織病理学を示し、大麻抽出物によるマウスの吊料が、
図10Aでは卵巣及びファロピウス管の細胞、かつ
図10Bでは子宮、膣、又は肝臓の細胞を損傷しないことを示す。この証拠により、マウスを治療したとき、CBDを含む大麻抽出物に毒性がないことが確認される。各場合において、未治療組織と治療済み組織との間の視覚的比較は、CBDを含む大麻抽出物が健常な組織に二次的又は付随的な損傷を引き起こさないことを示す。しかしながら、化学療法で治療された組織との更なる比較は、有意な損傷を示す。これは、高用量の化学療法による治療が、時間をかけて与えられた場合、無差別的であり、これらの細胞を損傷するため、非常に重要である。したがって、低用量であろうとなかろうと、大麻抽出物と併用した化学療法薬物の量の低減は、より大きい割合で腫瘍体積を減少させ、化学療法単独よりも大きい総パーセンテージまで腫瘍体積を低減させることによって患者の転帰を改善し得、そうでなくても、化学療法の使用から生じるような生殖器官及び肝臓の対応する健常な組織への損傷を引き起こさない。
【0134】
CBDは、非形質転換細胞において非毒性であり、生理学的パラメータ(心拍数、血圧、及び体温)、胃腸通過にも精神運動若しくは心理学的機能にも影響を及ぼさない。CBDの長期使用及び最大1,500mg/日の用量は、ヒトにおいて十分に許容されるものとして確立されており、いくつかの用量は、特定の適用において最大4,250mg/日で投与される。CBD優勢大麻抽出物は、乱用又は依存の潜在性がない。これは、2018年11月にスイスのジュネーブで開催された世界保健機関の薬物依存に関する41回目の専門家委員会の間に最も強調された。会議の報告書の付録1は、「カンナビジオールは、国際薬物コントロール規則内でスケジュールされるべきではない。カンナビジオールは、大麻及び大麻樹脂中に見出されるが、精神活性特性を有しておらず、乱用の潜在性がなく、依存を生じる潜在性がない。それは、顕著な悪影響を有していない」と記載している。
【0135】
更なる興味深い観察が、オルガノイドデータに対する大麻抽出物の有効性に対するpHの影響によって決定された。
図11は、大麻抽出物の天然pHが、オルガノイドについて約2又は12%の生存率を提供したことを示す。各場合において、同じpHに緩衝化された対照ビヒクルは、細胞を殺傷させるのに全く効果がなく、したがって、図示されなかった。しかしながら、pHを増加させることは、効力の実質的な改善につながった。しかしながら、12のpH、及び確かに14のpHは、非常に腐食性の高いアルカリ濃度であり、治療用途に適していない。実際、そのようなpHは、等張性ではなく、膣内適用にも適切ではない。膣は、細菌のバランスを維持するために必要である酸性pHを有する。しかしながら、アルカリ性又は強酸性(例えば、2のpH未満)のいずれかのpHの強い改変は、タンパク質の変性又は他の問題につながり得る。直ちに明らかになったことは、pHをより酸性に緩衝しようとする最初の試みが、わずかであっても、より劣った結果をもたらしたことである。実際に、2つの大麻抽出物質の各々は、pHを10.5から約10のpHに低下させることによってその有効性を低減させた。更に、pHを8に更に低下させると、再び、BSHEは、オルガノイドを死滅させる点で天然pHのほぼ2倍弱くなったが、一方で、CBD単離物は、実質的に変化を示さなかった。中性pHである7のpHでも、変化は、せいぜいわずかである。
【0136】
そのような状況では、pHを更に低下させても、その変化は、典型的には、天然pHと比較してより悪いか、又は実質的に変化を示さなかったため、治療有効性の更なる増加につながらない可能性が高い。代わりに、予想外に、pHを4に更に低下させることによって、BSHE及びCBD単離物の各々について、1%の生存率であったような、パーセント生存率の劇的な改善が見られ、そのような結果は、より悪い応答又は実質的に変化しない応答に向かう傾向がある事前のデータに基づいて予想外であった。したがって、治療的投与のために大麻抽出物を提供するとき、pHを約3.5~5.5に低下させることは、有効性の予想外の増加をもたらす。これは、特に、大麻抽出物が膣内、又は口腔粘膜に提供される場合に関連して、pHを2~6に改変するために緩衝液を利用することによって、その天然のpHで大麻抽出物を与えるよりも優れた応答をもたらす。好ましくは、大麻抽出物は、3.5~5.5のpH、より好ましくは、4~5のpHを有する担体で提供される。
【0137】
ヒト患者への大麻抽出物の投与
卵巣がんなどの婦人科がんを治療するために、経口、口腔粘膜、膣粘膜、又は他の投与経路にかかわらず、CBDは、複雑な細胞構造化オルガノイド及びマウスモデルにおいて有効であることが示された。大麻抽出物を介して提供されるようなCBDの低い生物学的利用能のため、患者についての初期試験は、治療有効性に達するために口腔粘膜及び適用を介して提供された。更に、婦人科組織に対する標的化されたアプローチのため、当業者は、特定の治療剤が、膣粘膜を通過することができ、膣壁上の組織のみならず、非限定的な組織として子宮、頸部、卵巣などを含む婦人科管の全体を含む膣壁に隣接する組織の両方に接触することができることを認識することになる。更に、
図1E及び
図1Fに図示されるように、女性の生殖器官には豊富なエンドカンナビノイド受容体が存在し、そのような組織への投与されたカンナビノイドの可能な治療的影響を可能にする。更に、カンナビノイドの膣内送達は、結果的に、鼠径リンパ節を介した取り込みをもたらし、生殖器官からの更なる全身取り込みにつながり得る。
【0138】
膣内送達は、十分に研究されており、安全であり、有効であり、耐容性が良好であると考えられている。膣内送達は、消化管吸収を回避し、初回通過代謝を回避するが、一方で、局所効果及び安定した持続的治療応答を容易にする。膣上皮を介した吸収及び全身送達は、同様の親油性化合物を用いて迅速に起こる。膣上皮の厚さ、並びにpH、子宮頸部粘液の存在、及び微生物叢を含む膣液特性の変動は、吸収速度及び生物学的利用能に影響し得る。
【0139】
粘膜投与は、口腔粘膜を通して容易に投与され得る。口腔粘膜又は舌下送達に関するデータは、CBDが1.6時間の最大血漿濃度を有するが、これが一部の個体において遅延され得ることを実証する。経口送達されたCBDは、約2.5~5時間の最大血漿濃度を有するが、一部の個体では最大6時間遅延され得る。高脂肪食との同時投与は、最大5倍の濃度でCmaxを増加させることが示されている。更に、口の奥におけるリンパ節の有病率は、CBDの全身的なより迅速な開始及び取り込みを可能にする。
【0140】
特定の状況では、副鼻腔内への投与が望ましい場合があり、したがって、高度に血管化された鼻粘膜を介したCBDの送達が望ましい場合がある。研究は、鼻粘膜を介したCBDの送達が、結果的に、急速な取り込み及び約10分のTmaxをもたらすことを示している。更に、物質が副鼻腔の後部を通過すると、咽喉を通過し、がんからの特定の転移、並びに副鼻腔及び咽喉内の重要なリンパ系に到達するための最良のやり方のうちの1つとして機能し得る。
【0141】
最後に、直腸適用もまた、特定の適用において好適であり得る。直腸坐剤送達は、結果的に、CBDの経口経路に対して増加した生物学的利用能(51~60%)をもたらす。したがって、粘膜投与は、局所腫瘍及び転移性腫瘍の両方を治療するための大麻抽出物の標的化された投与を可能にし得る。追加の投与は、依然として、限定されるものではないが、大麻抽出物を含む軟質ゲルなどの経口剤形を含む、従来の投与経路を介して達成され得る。更に、投与は、筋肉内に、又は取り込みのための他の好適な組織に注射され得る。
【0142】
したがって、粘膜投与、特に膣内投与は、婦人科がん細胞の標的化治療を可能にし得る治療有効性を有し、これは、卵巣がん及び子宮内膜がんなどの疾患、並びにそれに関連する転移性疾患における局所腫瘍及び転移性腫瘍の両方を治療することになる。これらのデータは、ヒト患者内における更なる試験によって確認され、これは、CBDによる治療が、体内で転移した化学療法抵抗性ECを低減させるのに有効であったことを示した。
【0143】
31歳の白人女性は、顕著な疼痛及び不快感を示し、診断時に子宮内膜がんであることが明らかになった。患者は、子宮全摘両側卵管卵巣摘出を受け、続いて、5ラウンドの化学療法を受けていた。化学療法の最初の5ラウンドの各々は、パクリタキセル/カルボプラチンとの併用化学療法であった。治療は最終的に無効であり、彼女は、以前のラウンドが無効であったことに起因して、6ラウンドに進めなかった。次いで、彼女は、アベマシクリブで治療を開始し、続いて、アテゾリズマブで治療されたが、化学療法抵抗性に起因してこれも失敗し、結果的に、重度の有害作用をもたらした。したがって、彼女は、化学療法抵抗性子宮内膜がんを有するとみなされた。
【0144】
子宮内膜がんは、ステージIVであり、転移性リンパ節、肺転移、腹膜転移に転移しており、これは、PETスキャンによって確認された。転移性子宮内膜がんが、遠位器官におけるがん増殖の存在によって確認された。化学療法抵抗性に起因して、7回の化学療法ラウンドに失敗した後に、CBD及び代替化学療法に対する患者の応答を評価するために、オルガノイドを患者のために作製した。オルガノイドは、CBDに対する有意な応答、及びゲムシタビン/カペシタビン(gemcitabine/capecitabine、GemCap)、彼女がまだ提供されていない併用化学療法に対する部分的な応答を示した。患者は、標準プロトコルGemCapとともに、CBD、1日1回の膣内送達を介した75mgのFSHEとともに1日2回の口腔粘膜送達を介した30mgのBSHEを使用し始めた。これは、結果的に、合計135mgのCBDの1日用量をもたらした。患者の進行をモニタリングし、PETスキャンによって確認した。
【0145】
がんの化学療法抵抗性及び攻撃的性質は、広範な転移性疾患につながる。これまでに、脳、乳房、心臓、胃、肺、及びリンパ系を含む全身で特定されている。転移性リンパ節の測定値は、事前に11×7mm~29×10mmの範囲であった。12週間の治療後、フォローアップPETスキャンは、ゼロの測定可能な節を報告し、その結果が表1及び2に詳述される。放射線科は、治療に対する完全な代謝応答を結論付けた。
【0146】
表1は、患者のリンパ節における代謝応答を詳述する。治療後、頸部、胸部、腹部、骨盤、又は鼠径部内には、転移性アデノパシーの新たな部位を示唆する新たな拡大又は代謝亢進結節は、なかった。
【0147】
【0148】
【0149】
表2は、肺転移の変化を詳述する。特に、転移のサイズの有意な低減が文書化された。更に、診断用CTにおいて、新たな代謝亢進肺転移はなく、リンパ管炎もなく、胸水又は心嚢水もなく、固形腹部器官における異常な代謝もなく、固形腹部器官又は転移性の疾患の証拠もなかった。事前に実証された骨盤領域における悪性腹水もまた、ほぼ完全に消失したとして文書化された。腹膜沈着物における完全な代謝応答。例えば、肝臓の右葉の4mm下の最大沈着物は、PETではもはや測定不能である。事前に22×10mm、SUVmax 7.2)。新しい代謝亢進腹膜沈着物はない。脳に異常な代謝はない。低用量非造影CTで疑わしい病変はない。骨の転移を示唆する骨における異常な代謝はない。
【0150】
更に、表3は、患者由来オルガノイドに対して試験した薬剤を列挙しており、薬剤の大部分が患者のがんに影響を与えなかったことを示している。
【0151】
【0152】
表3からの要約は、薬剤の多くがいずれのIC50にも達することができず、したがって、がん性増殖に影響を及ぼさなかったことを示す。物質のうちの数個は、オルガノイド試料に対してわずかに有効であったが、IC50数は、Cmaxを下回ったままであり、これらを治療用途のための不十分な選択として特定した。しかしながら、患者に対して大麻抽出物治療ほど有効なものはなかった。
【0153】
患者由来オルガノイドに対する応答について、上記の薬物製品のうちの数個、及び追加の薬物を試みた。表4は、追加の薬物製品及びそれらのオルガノイド細胞死のパーセントを列挙する。
【0154】
【0155】
注目すべきことに、かつ予想されるように、パクリタキセルは、完全に無効であることが示され、したがって、39%の細胞死は、治療を成功させるために細胞死を大幅に増加させる必要性を示す。
【0156】
結論
130mg/日のCBDを伴うgemCap及び大麻抽出物による併用治療後、患者のスキャンは、治療に対する完全な代謝応答を明らかにした。事前に実証された転移性リンパ節、肺転移、及び腹膜疾患は、完全な代謝応答を伴ってCTでかろうじて認知可能である。悪性腹水は、ほぼ完全に消失しており、新たな代謝亢進疾患はない。しかしながら、患者はがん寛解のままであったが、彼女は、数回の化学療法から彼女の器官に顕著な損傷を有し、彼女は、化学療法からの器官損傷からの合併症で死亡し、死亡時にがん性増殖はなかった。したがって、化学療法と大麻抽出物との併用療法が腫瘍増殖の低減に非常に有効であることが証明されたとしても、化学療法の多数のラウンドからの既存の損傷が致命的であることが証明された。彼女がより早期の寛解を達成できたか否か、したがって、数回のラウンドの失敗した化学療法に供されず、化学療法の早期のラウンド中にCBDを含む大麻抽出物を利用していた場合のことは分からない。しかしながら、本発明らは、彼女の最後の治療が、化学療法と、CBDを有する大麻抽出物との併用療法で有効であることが証明されたことを確認することができる。
【0157】
したがって、卵巣がん増殖の治療行為は、腫瘍サイズの低減及び子宮内膜がん細胞の選択的破壊によって治療され、膣内適用としての大麻抽出物の適用による膣内のCBDの適用によって治療され得る。しかしながら、用量は、1日に数回繰り返され得、総用量は、1日に20~4250mgであり得る。好ましい実施形態では、FSHE、BSHE、CBD単離物、又はCBDAから選択される大麻抽出物からのCBDの25~1250mgの用量が、患者に対する治療要件を満たすために少なくとも1日に1回投与される。更に好ましい用量では、CBD用量は、1日、25~1000mg、又は30~750mg、又は40~600mg、又は50~500mgである。投与は、単一経路又は複数の投与経路による投与によって実施され得る。好ましい実施形態では、大麻抽出物は、膣内適用のための担体として脂肪又は油を含み、少なくとも1つのテルペンを更に含む。
【0158】
好ましい方法では、グレード1、2、又は3の卵巣がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、CBDを含む有効量の大麻抽出物を投与することを含む、グレード1、2、又は3の卵巣がんを治療する方法。好ましい実施形態では、大麻抽出物は、大麻抽出物の50~99.9の総カンナビノイドを含む。本明細書に説明されるとき、大麻抽出物のパーセントは、前文のように、総カンナビノイドが大麻抽出物の50~99.9重量%を構成することを意味する。好ましくは、総カンナビノイドのうち、CBDは、大麻抽出物内の全てのカンナビノイドの少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65、70、75、80、85、90、95、及び99%を構成する。好ましい実施形態では、口腔粘膜用量は、脂肪又は油の担体内で投与される。好ましい実施形態では、用量は、口腔粘膜用量、膣内用量、鼻粘膜用量、直腸用量、経口用量、筋肉内注射、又は静脈内用量として提供される。
【0159】
卵巣がんの治療のための本明細書中の治療方法は、経口治療、口腔粘膜治療、膣内治療、鼻粘膜治療、注射剤、若しくは直腸治療、又はそれらの組み合わせを提供する。したがって、卵巣がんの治療において、膣内治療剤は、単独で、又は経口若しくは口腔粘膜治療と、又は直腸治療と併用して使用され得るか、あるいは口腔粘膜用量は、単独で、又は別の剤形と併用して投与され得る。
【0160】
口腔粘膜療法は、口腔粘膜を通る初回通過代謝を迂回しようとし、嚥下される経口用量と比較してより高い生物学的利用能を可能にする。これは、口腔組織による部分的な吸収と、それに続く、嚥下される量による代謝と、GI管を通って全身系に入ることに起因する。口腔粘膜におけるCBDの取り込みは、4~12時間の期間にわたって低い浸透率を有し、口腔粘膜内にCBDを蓄積するが、その取り込みは、胃における経口吸収よりも有意に大きい。これは、全身吸収のための臨床的に関連する血漿レベルの増加を提供する。
【0161】
しかしながら、口腔粘膜投与の更なる利点は、CBDの口腔粘膜組織内における蓄積である。口腔粘膜治療薬の利点は、持続放出のための口腔粘膜組織へのCBDの放出、並びに口及び咽喉のリンパ系による取り込みである。口腔粘膜適用は、最終的に唾液腺に移行することになり、口の中に保持されたCBD物質は、最終的にGI管内に流れ込む。しかしながら、これはまた、食道並びに口の後部及び上部咽喉の下方への組織蓄積を可能にする。
【0162】
更に、女性生殖器官及び中枢神経系においてエンドカンナビノイド受容体が行き渡っているため、膣内療法は、膣粘膜を通した取り込みを可能にし、全身レベルのCBDを身体に送達する。同様に、直腸投与が、GI管を迂回し、より速い作用速度及びより高い生物学的利用能を有するため、直腸適用は、好適である。更に、直腸投与は、結果的に、経口GI投与よりも高い薬物、ここではCBDの全身循環をもたらす。
【0163】
患者試料の要約:治療を試験するためのオルガノイドの使用は、本発明者らが、他の種における類似体モデルに依存する代わりに、異なる治療に対する応答を決定するために代表的な細胞を使用することができるため、刺激的である。したがって、結果は、CBDを含むBSHE又はFSHEと接触すると、オルガノイドが様々な濃度にわたって破壊されたが、5、7、10、又は20μg/mLと低いことが多いことを示す。これは、子宮内膜がん及び卵巣がんの様々なステージ及びグレードのいくつかの異なる患者において示され、全て同じ成功率であった。これらの数値をマウスモデルに換算することで、同じ有効性が確認され、腫瘍増殖が停止し、腫瘍体積が全体にわたって低減された。更に、これらの値をヒト患者に換算すると、用量は、後期転移性がんの治療において再び有効であった。したがって、PETスキャンからの結果によって示されたように、治療は、直接的な婦人科器官におけるがん細胞を標的化するのに有効であっただけでなく、全身的に身体全体に有効であった。
【0164】
現在、本出願人は、様々な婦人科がんについて21人以上の患者についてのデータを有する。これらのうち、10人は、卵巣がんの治療を受けており、いずれも、腹水再発性化学療法抵抗性がんであり、数人は化学療法未実施の固形腫瘍を有する。卵巣嚢胞腺がんを含む、少なくとも以下の患者を疾患タイプ及び既知の突然変異について決定し、1人の患者は、BRCA2及びTP53を有し、第2の患者は、BRCA2、NF1、及びTP53を有する。2人の患者は高グレードの卵巣漿液性腺がんを有し、1人の患者はTP53突然変異を有し、他方はPIK3R1及びTP53突然変異を有していた。更なる患者は、高グレードの漿液性卵巣がんを有したが、注目される突然変異はなかった。ステージIIIcの高グレードの漿液性卵巣がんを有する別の患者は、BRCA陰性であった。1人はステージIVcの低グレードの漿液性卵巣がんを有し、1人は未定義の卵巣がんを有する2人の追加の患者は、注目される突然変異を有していなかった。したがって、本発明者らは、BRCA2及びTP53が、これらの患者株において卵巣がんに対して感受性である一般的に保存された突然変異であり、そのオルガノイドが、次いで、大麻抽出物単独で、又は1つ以上の化学療法剤と同時のいずれかで治療の成功を確認することができる。
【0165】
各場合において、データが図に示すように、10μg/mLの治療適用は、多数の試料においてオルガノイドの完全な根絶を示すのに十分であった。これは、約200mg/日のCBDとして計算され、これは、任意の数の異なる大麻抽出物で提供され得る。注目すべきことに、数例では、より高い投与量が必要とされ、したがって、250、300、350、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、又はそれ以上の投与が、治療投与量に好適かつ必要であり得る。いくつかの事例では、より低い用量も有効であった。しかしながら、卵巣がん細胞の成長及び増殖を低減するという最終的な目標を考慮すると、投与量不足の代わりに、投与量をわずかに過剰にすることが賢明であり得る。したがって、特に化学療法剤と併用したとき、1日当たり25、50、又は100mgという低い用量であっても十分であり得るが、一方で、有効な治療に必要な化学療法の量を更に低減させるために、より高い用量が推奨され得る。
【0166】
これは、BSHE、FSHE、CBD単離物、又はCBDAなどからの大麻抽出物を、がんを治療するのに有効な量で提供することによって新しい形態の治療が達成され得るため、全ての婦人科がん、特に化学療法感受性及び化学療法抵抗性の卵巣がんの治療行為の新しい機会を提供する。患者に対する低濃度の予期外の成功は、CBDを含む大麻抽出物が、がん性増殖を破壊するのに非常に有効であったことを示す。
【0167】
婦人科がんの患者へのCBDの適用は、ブロードスペクトルCBDの膣内適用を特に標的化する。注目すべきことに、外科手術後の患者には、切除によって完全に除去されなかった残存病変及び増殖の両方を標的化するためだけでなく、転移性細胞の拡散を防止することによって転移性疾患に特異的に対処するために、又は身体全体に既に拡散したものを再排除するために、膣内ブロードスペクトルCBDが提供された。膣内適用は、婦人科がんを特異的に標的化し、迅速な全身取り込みを提供するため、優れている。これは、婦人科器官への直接的な適用、並びに局所がん及び転移性がんの両方に達するための全身的影響を提供する。
【0168】
好ましい実施形態では、50~99%のCBDを含む、大麻抽出物。したがって、10mg用量のBSHE又はFSHEは、5~9.9mgのCBDを含む。BSHE又はFSHEの残りの成分は、追加のカンナビノイド、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸、及び植物栄養素を含む。医薬組成物で提供されるとき、CBDの濃度は、典型的には、医薬組成物の5~50mg/mLである。特定の組成物は、限定されるものではないが、脂肪、油、MCT油、長鎖トリグリセリド油、超長鎖トリグリセリド油を含む、追加の賦形剤及び成分を含む。限定されるものではないが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトールを含む、テルペン成分。ポリフェノールとしては、限定されるものではないが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、及びクロロゲン酸が挙げられ得る。オメガ3、オメガ6、及びオメガ9脂肪酸、並びにトコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、及び特定のミネラルなどの追加の植物栄養素が存在してもよい。担体を含むこれらの成分は、医薬組成物の最大90重量%を構成し得るが、より好ましくは、CBDは、医薬組成物の1~99.9重量%を構成する。
【0169】
したがって、好ましい実施形態は、50~99.9%のCBDを有する大麻抽出物を含む有効量の薬学的に許容される組成物を患者に投与することを含む、婦人科がんの治療の方法に関し、組成物が、BSHE、FSHE、CBD単離物、又はCBDAのうちの1つを含む。好ましい実施形態では、有効量は、標的組織において少なくとも10μg/mLのBSHE又はFSHEの等価濃度を生成するのに有効な量である。更に好ましい実施形態では、有効用量は、1日当たり10~2500mgのCBDであり、当該CBDは、膣内適用、経口、口腔粘膜、又はそれらの組み合わせによって大麻抽出物において提供される。
【0170】
更に好ましい実施形態では、患者に、大麻抽出物からの有効量のCBDに投与することを含む、卵巣がんを治療する方法。
【0171】
更に好ましい実施形態では、患者に、BSHE又はFSHEからの有効量のCBDを投与することを含む、化学療法抵抗性卵巣がんの治療の方法。好ましい実施形態では、有効用量は、標的組織において少なくとも10μg/mLのBSHE又はFSHEの濃度を生成するのに有効な量である。更に好ましい実施形態では、有効用量は、25~2500mgのCBDであり、当該CBDは、大麻抽出物において提供され、膣内適用によって送達される。特定の実施形態では、患者は、最初に、患者の特定のがんに対する化学療法抵抗性について試験され、化学療法抵抗性の確認後に、大麻抽出物からの有効量のCBDで治療される。
【0172】
好ましい実施形態では、大麻抽出物は、膣内投与のための好適な担体及び賦形剤を含む、薬学的に許容される組成物において提供され、大麻抽出物からの活性成分、具体的にはCBDは、膣膜を通過して、女性生殖系の標的組織に至り、全身分布のために活性成分の全身取り込みを得る。
【0173】
特定の他の適用において、CBD治療を進行中の放射線又は化学療法治療と同時投与することが好適であり得る。治療的同時投与は、有効性を増加させ、かつ/又は用量を減少させ、したがって、化学療法治療に関連する毒性を減少させるのに好適であり得る。
【0174】
好ましい実施形態では、1つ以上の一般的な塩の追加によって膣内細菌に対して穏やかであるように、治療的投与のための組成物の浸透圧を改変することが有利である。更に好ましい実施形態では、典型的には酸性である膣のpHにより適切に適合するように、担体のPHを改変することが適切であり得る。適切な結合酸及び塩基対を含む緩衝液を利用して、適切なpHを選択及び維持し得る。好ましくは、組成物の口腔粘膜投与又は膣内投与は、2~6のpHで提供される。
【0175】
方法
患者由来オルガノイドの開発:患者由来オルガノイドを次のように作成した:患者の組織試料を手術後に収集し、氷上で1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)(Life Technologies、15070-063)を含むハンクス平衡塩類溶液(Hank’s Balanced Salt Solution、HBSS)(Hyclone、SH30031.02)に浸した。次いで、試料を、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Dulbecco’s phosphate-buffered saline、DPBS)及び1%P/Sを用いてシェーカー(70rpm)上で3回、各々15分間洗浄した。次いで、組織を予め滅菌した細胞培養フードに移して、滅菌ブレードで細かく刻んだ。全ての切り刻んだ部分を、室温で2.5時間、Accumax(Innovative Cell Technologies Inc.、AM105-500)という名称の酵素で消化した。2.5時間のインキュベーション後、消化された組織ミンチ全体を、37℃の水浴中で更に45分間、別の酵素、TrypLE express(Gibco、12604-021)に移した。この間、溶液を5分間隔で連続的に撹拌した。45分のインキュベーション後、溶液を50mLファルコンチューブ上の70μmフィルタに通した。フィルタを除去し、細胞を含むフロースルーを5%FBS AD+++培地(1%ITS、2%B27、1%N2、25%WRN、hegf-50ng/mL、hfgf-10-100ng/mL、ニコチンアミド-1mM、N-アセチルシステイン-1.25mM、プリモシン-0.2%、エストロゲン-2nm、A8301-0.5uM、及びY27632を含む)に収集した。この細胞懸濁液を室温で5分間1000rpmで遠心分離して、計数のための細胞ペレットを得た。血球計数器でチェックした後、細胞数を計算し、オルガノイド培養のために処理した。本発明者らが最終細胞懸濁液中にRBC汚染を見出したかどうかを顕微鏡下でチェックした後、本発明者らは、赤血球溶解緩衝液(Roche Diagnostics、11814389001)を使用して過剰なRBCを除去した。子宮内膜がんからのヒト患者細胞を増殖させ、5%CO2を含む37℃の加湿チャンバ内で維持した。
【0176】
腹水試料について、本発明者らは、腹水を室温で10分間1000rpmで遠心分離して細胞懸濁液を得た。次いで、細胞懸濁液を赤血球溶解緩衝液(Roche Diagnostics、11814389001)で処理して、最終細胞懸濁液からRBCを除去した。試料が作成されると、それらは、オルガノイドを大麻抽出物で治療することを含む試験の準備ができた。
【0177】
全ての試験のプロトコル:患者由来オルガノイド(PDO)培養及び薬物治療
患者由来オルガノイドを培養するために、2~3×10^3個の細胞を、ウェル当たり10mLのマトリゲル(5%FBS AD+++培地)中の予熱された(37℃)96ウェルプレートに播種した。個々の患者細胞オルガノイドを異なるプレート中で別々に培養した。交差汚染の機会を低減するために、個々の患者細胞を別々に取り扱った。細胞をマトリゲルと混合した後、10mLの液滴をウェルに入れ、5%CO2の37℃インキュベータに30分間入れた。内部に細胞を有するマトリゲル液滴の固化時、プレートを滅菌フード内に置き、マトリゲル液滴を200μLのオルガノイド増殖培地に浸漬した。細胞を成熟オルガノイドへと14日間増殖させた。個々のCBD剤(ブロードスペクトル、フルスペクトル、CBD単離物、及びCBDA)又は化学療法剤(パクリタキセル、ドキソルビシン、又はカルボプラチン)と組み合わせたものによる治療を、1日目から開始し、個々の薬物又は薬物の組み合わせを増殖培地に加えた。ビヒクルのみの対照(薬物治療に使用される最高濃度の培養培地中のジメチルスルホキシド)を含めて、全ての治療を3連で行った。
【0178】
個々の患者オルガノイドを、全てのそれぞれの大麻抽出物(ブロードスペクトル、フルスペクトル、CBD単離物、及びCBDA)で治療して、Graphpad Prism 9において最小二乗回帰を使用して、阻害剤対正規化応答変数勾配によってIC50を決定した。このIC50は、個々の患者及び個々のCBD剤に特異的であった。ここで、同じ患者のオルガノイドを、その特定の患者に対する個々のCBD剤の特異的IC50とともに、増分用量の化学療法剤(パクリタキセル、ドキソルビシン、又はカルボプラチン)で更に治療した。注目すべきことに、これらの用量は、全て、ヒト投与に好適な最大用量に該当する。これは、本発明者らが、個々のCBD剤の特定の用量(IC50)の存在が化学療法剤(パクリタキセル、ドキソルビシン、又はカルボプラチン)の用量を低減させて、標準的なヒト用量と同量のがん細胞死を得ることができるかどうかを決定するのを助けた。注記:IC50は、細胞ベースの細胞毒性試験で薬効を決定するために従来使用されている50%阻害濃度である。
【0179】
細胞生存率アッセイ
治療後のオルガノイドにおける細胞生存率を評価するために、CellTiter-Glo(登録商標)発光アッセイ(Promega#G7572)を使用した。簡単に説明すると、オルガノイド培養の14日目に、オルガノイドを内部に有する各ウェル中のマトリゲル液滴を、製造業者のガイドラインに従って100μLの新鮮な増殖培地及び100μLのCellTiter-Glo(登録商標)試薬に浸漬した。培地及びCellTiter Gio(登録商標)試薬のみを含有するブランクウェル(細胞なし)もまた、各プレートに含めた。次いで、プレートを110rpmのシェーカー上に室温で5分間置いて細胞溶解を誘導し、続いて、室温で25分間置いて発光シグナルを安定化した。CellTiter Gio(登録商標)試薬を加えた後の各ステップを暗所で実施した。発光を、FLUOstar OPTIMAプレートリーダー(BMG Lab technologies、Offenburg,Germany)で測定した。治療値をビヒクル対照に対して正規化し、ビヒクル対照のパーセンテージとしてそれらをプロットすることによって分析を実施した。薬物IC50値を、Graphpad Prism 9において最小二乗回帰を使用して、阻害剤対正規化応答変数勾配によって決定した。
【0180】
マウスモデル:患者由来異種移植(Patient-Derived Xenograft、PDX)マウス世代
子宮内膜がんからのヒト患者細胞を、100μLの溶液に再懸濁した後、雌NOD/SCIDガンママウスに皮下注射した。腫瘍が視認可能なサイズに増殖したら、全てのマウスに、CBD単剤(全て10~30mg/kg体重)及び/又はCBD+化学療法剤(CBD(10~30mg/kg体重)、パクリタキセル(最大20mg/kg体重)/カルボプラチン(最大60mg/kg体重)、ドキソルビシン(最大15mg/kg体重))又はビヒクルを週3回、最大5週間、腹腔内注射した。腫瘍サイズを治療前に測定し、続いて週2回測定した。全ての治療群のマウスを、薬物注射後最大10週間、又は腫瘍体積が2500mm3より大きく成長するまで生存させた。
【0181】
腫瘍サイズを、組織収集時に体重とともに測定した。全ての腫瘍組織を、安楽死させたマウスの体から注意深く除去した。腫瘍組織試料を、組織学、プロテオミクス、ゲノミクス、及び他の下流処理のために保存した。全ての下流処理は、NCI患者由来モデルリポジトリSOPに従って完了した。GraphPad Prism 9を使用して、腫瘍体積グラフをプロットする。
【0182】
オルガノイド用量を等価ヒト用量に換算することを、標準式によって決定した。(M=m/MW×1/V、式中、m=グラム単位の質量、MW=物質の分子量、及びV=リットル単位の希釈剤の体積)。したがって、例えば、薬物Xが54.35uMのオルガノイド用量を有する場合、それは、次のように計算される。これは、100μL又は0.0001L(V)中に0.0032mgの薬物Xを必要とすることを意味し、これは、0.00005435M又は54.35μMの濃度に相当し、式中、薬物XのMW=588.72g/mol及びm=0.0000032gである。
【0183】
追加の試験を実施するとき、96ウェルプレートで試験される試料は、ヒト用量に換算するための異なる式を使用し得る。96ウェルプレートによる試験時、96ウェルプレート中の単一ウェルの表面積は、0.32cm2である。それは、臨床用量等価量(mg/m2)が、次式、臨床投与量(mg/m2)=(mg/培養プレート表面積cm2単位のPDO投与量)×1002によって100mg/m2となる。オルガノイド用量をヒト用量に換算する2つの異なる方法を比較するとき、2つの計算は、非常に類似したヒト等価用量、例えば、10μg/mLのオルガノイド等価物について約200mg/日を示す。
【0184】
マウスPDXからヒトへの用量換算
米国食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)は、動物用量のヒト用量への外挿が、多くの場合、mg/m2で表される、体表面積(body surface area、BSA)への正規化によってのみ正確に実施されることを示唆している。ヒト等価用量(human equivalent dose、HED)は、次式:mg/kg単位のヒト等価投与量=マウス投与量(mg/kg)×(マウスKm/ヒトKm)を使用することによって、より適切に計算され得る。補正係数(Km)は、種の平均体重(kg)をその体表面積(m2)で除算することによって推定される。例えば、平均ヒト体重は、60kgであり、体表面積は、1.62m2である。したがって、ヒトについてのKm因子は、60を1.62で除算することによって計算され、これは37であり、同じやり方でマウスKm因子が計算され、これは3である。ここで、動物又はヒトの用量の単位の交換(mg/kgからmg/m2)は、BSAに従ったKm因子を使用して行われる:mg/m2の投与量=Km×mg/kg単位の投与量。
【0185】
マウス試験は、既知量のCBDを含む様々な製剤の大麻抽出物の腹腔内投与を利用した。種々の大麻抽出物、BSHE、FSHE、CBD単離物、及びCBDAの各々について、2~3匹のマウスをビヒクル単独(対照)の各々に対して試験し、結果をマウスの各々についてT=0における体積と比較した。大麻抽出物の各々の投与量は、30mg/kgであり、CBDのみの研究の結果が
図5に定義される。
【0186】
注目すべきことに、各場合に使用されるCBDの濃度は、ヒト患者又はマウスへの投与に好適な治療用量の下限に留まる。大麻抽出物の影響を示すために、データの各々がゼロになる代わりに、マウスに投与される用量の2倍、3倍、又はそれ以上を使用することによって、低用量を利用したが、それらの用量は全て、適切なヒト等価用量である。21日目の時点で、より低用量であっても、事実上試料の全てが腫瘍体積をゼロに向かって進行させており、1つの事例では、腫瘍体積は、21日目にゼロに到達している。したがって、これらの量をオルガノイドデータからの量と比較するとき、本発明者らは、各試料が、オルガノイドデータからの有効性を保持していることを確認する。したがって、より高用量のCBDを投与することは、マウスモデルにおいて腫瘍体積のより大きな低減をもたらすことになる。したがって、大麻抽出物を投与することは、子宮内膜がん腫瘍の増殖を大幅に遅延させるのに有効であり、最終的に、腫瘍サイズを低減し、結果的に、大麻抽出物をマウスに投与することによって、腫瘍細胞の根絶をもたらし得る。
【0187】
CBD試料の作成
本明細書の方法における治療的使用のための大麻抽出物は、大麻属内の植物からの毛状突起及び他の緑色物質から所望の物質を除去するための抽出プロセスによって生成される。抽出プロセスでは、多種多様なカンナビノイドが大麻植物から単離されており、いくつかは、大麻植物中に存在することが知られている483種の特定可能な化学成分を報告しており、それらの多くは、定量レベルを下回るレベルで生成される。しかしながら、本明細書で利用される大麻抽出物は、高濃度のCBDを有する大麻株を利用し、生成される生成物は、典型的には、mg単位のCBD含量に基づいて評価される。大麻抽出物は、好ましくは、ある量の一連のカンナビノイドと、必須脂肪酸、フラボノイド、テルペン、並びに必須ビタミン及びミネラルなどの、他の植物栄養素と、を更に含む。
【0188】
本開示の大麻抽出物の代表的な非限定的な試料は、以下の範囲内の特定の化合物の濃度を含む。
【0189】
【0190】
【0191】
テルペン及び他の重要な分子
好ましくは、製剤は、以下のフィンガープリントを有する:製剤への単純化されたアプローチは、BSHEが60~95%のCBD、0~5%のTHC、及び0.1~20%の追加のカンナビノイドを含むことである。追加の要素は、0.1~20%のワックス及び脂肪酸を含む。
【0192】
更に好ましい実施形態では、0.1%及び20%を構成する追加のカンナビノイドは、Δ8-THC、Δ9-THCA、CBDA、CBC、CBDV、CBG、CBGA、CBN、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。したがって、この意味は、これらのカンナビノイドのうちの1つ以上を含むが、追加のカンナビノイドを除外しない。更に好ましい実施形態では、Δ8-THC、Δ9-THCA、CBDA、CBC、CBDV、CBG、CBGA、CBN、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加のカンナビノイドが0.1~10%で製剤中に存在する。
【0193】
ブロードスペクトル麻抽出物を使用する大麻抽出物の試料を、子宮内膜がん患者由来オルガノイドに対して利用して、子宮内膜がん細胞に対する大麻抽出物の有効性を決定した。
【0194】
患者試験の概要
子宮内膜がん患者:合計11人の患者(グレード1の8人の患者及びグレード2の3人の患者)。これらの患者は、40~75歳である。手術(子宮全摘又は子宮全摘両側卵管卵巣摘出)時に組織試料を収集し、病理医が疾患を確認した。患者は、子宮由来が疑われる骨盤内腫瘤を有すると診断され、かつ臨床的に疑わしい悪性子宮内膜増殖のための手術のために入院したときに連続的かつ前向きに含められる。登録に適格であるためには、患者は、18歳以上であり、かつ計画された外科的介入を伴う子宮内膜がんの診断を有する必要がある。1年の無月経として定義される閉経状態は、47~56歳の女性についてチェックされる。<47歳の患者は閉経前と考えられ、>56歳の女性は閉経後と考えられる。除外基準は、妊娠、慢性心不全、重篤な慢性肝臓又は腎臓疾患などの重大な併発疾患、事前の両側卵巣摘出、骨盤子宮内膜症又は子宮腺筋症又は卵巣原発腫瘍、及びプロトコルの遵守を妨げ得る重篤な医学的又は精神医学的状態である。生物学的試料の収集及び手術の前に、全ての患者は、完全なインフォームドコンセントを提出することを要求される。手術後、腫瘍は、FIGO標準に従って、診断、組織学、グレード、及びステージ(I~IV)について、経験のある婦人科病理医によって検査される。病期分類はまた、骨盤洗浄を行い、両側の骨盤及び傍大動脈リンパ節郭清を実施することによって行われる。リンパ節カウントは、不要である。完全な外科的病期分類及び病理学的に確認された子宮内膜がんを有する患者のみが、研究に含まれることになる。
【0195】
卵巣がん患者:合計10人の患者(腹水再発性化学療法抵抗性である4人の患者、固形化学療法未実施である1人の患者、固形化学療法抵抗性である5人の患者、全10人の患者の転移性疾患)。患者は、卵巣由来が疑われる骨盤内腫瘤を有すると診断され、かつ卵巣/卵管由来の臨床的に疑わしい悪性骨盤内腫瘤のための手術のために入院したときに連続的かつ前向きに含められる。登録に適格であるためには、患者は、18歳以上であり、かつ計画された外科的介入を伴う卵巣嚢胞又は骨盤内腫瘤の診断を有する必要がある。1年の無月経として定義される閉経状態は、47~56歳の女性についてチェックされる。<47歳の患者は閉経前と考えられ、>56歳の女性は閉経後と考えられる。除外基準は、妊娠、慢性心不全、重篤な慢性肝臓又は腎臓疾患などの重大な併発疾患、事前の両側卵巣摘出、及びプロトコルの遵守を妨げ得る重篤な医学的又は精神医学的状態である。生物学的試料の収集及び手術の前に、全ての患者は、完全なインフォームドコンセントを提出することを要求される。手術後、腫瘍は、FIGO標準に従って、診断、組織学、グレード、及びステージ(I~IV)について、経験のある婦人科病理医によって検査される。
【0196】
子宮内膜症患者:合計9人の患者(卵巣子宮内膜腫を有する2人の患者及び深部子宮内膜症を有する7人の患者)、患者は、骨盤痛の調査又は子宮内膜症の診断及び/若しくは治療のために、その一般開業医又は他の臨床医によって紹介された患者であった。子宮内膜症、骨盤痛の調査及び治療のために腹腔鏡手術を受けること、又は乳がん及び卵巣がんの強い家族歴のために両側卵管卵巣切除術を受けることに同意した人にアプローチし、募集した。包含基準は、以下のとおりであった:「子宮内膜症症例」は、腹腔鏡検査で子宮内膜症と診断され、組織学的に確認された女性として定義され、「疼痛を有する対照」は、子宮内膜症の外科的証拠を伴わない、原因不明の骨盤痛又は慢性骨盤炎症性疾患を有する有症状女性と定義され、「疼痛のない対照」は、乳がん及び卵巣がんの家族リスクに起因して、両側卵管結紮術及び/又は予防的両側卵管卵巣摘出術を受け、かつ腹腔鏡検査で子宮内膜炎の視覚的証拠のない、既知の疾患のない、規則正しく月経のある女性であった。以下の女性は、研究から除外した。閉経後の女性、手術の日に妊娠検査が陽性であるか又は妊娠状態が不明である女性、他の良性状態又は悪性腫瘍を有する女性(特に、類線維腫及び/又はがんを有する患者は、これらの状態が子宮内膜の完全性を損ない得るため、除外した)、手術前<3か月の任意のホルモン療法を受けている女性、並びに外科的所見及び病理学的報告が一致しなかった女性。サイクル位相を、正確さを確保するために3重のアプローチ、時系列、組織学的年代測定、及び性ステロイドホルモン測定によって決定した。月経サイクルステージが未確認の女性は除外した。年齢、不妊歴、治療歴(経口避妊薬及びGnRH類似体の使用)、月経サイクル位相、疼痛歴、病理組織所見、及び疾患病変の解剖学的特徴を含む、追加の患者データを収集した。
【0197】
好ましい実施形態では、BSHE又はFSHEは、50~99.9%のCBDを含む。したがって、10mg用量のBSHE又はFSHEは、5~9.9mgのCBDを含む。BSHE又はFSHEの残りの成分は、追加のカンナビノイド、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸、及び植物栄養素を含む。医薬組成物で提供されるとき、CBDの濃度は、典型的には、医薬組成物の5~50mg/mLである。特定の組成物は、限定されるものではないが、脂肪、油、MCT油、長鎖トリグリセリド油、超長鎖トリグリセリド油を含む、追加の賦形剤及び成分を含む。限定されるものではないが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトールを含む、テルペン成分。ポリフェノールとしては、限定されるものではないが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、及びクロロゲン酸が挙げられ得る。オメガ3、オメガ6、及びオメガ9脂肪酸、並びにトコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、及び特定のミネラルなどの追加の植物栄養素が存在してもよい。担体を含むこれらの成分は、医薬組成物の最大90重量%を構成し得るが、より好ましくは、CBDは、医薬組成物の1~90重量%を構成する。
【0198】
したがって、好ましい実施形態は、有効量のCBDを含む薬学的に許容される組成物を患者に投与することを含む、卵巣がんの治療方法であって、組成物が、BSHE又はFSHEを含む、方法に関する。好ましい実施形態では、有効量は、標的組織において少なくとも10μg/mLのBSHE又はFSHEの濃度、より好ましくは少なくとも20μg/mLの少なくとも標的濃度を生成するのに有効な量である。更に好ましい実施形態では、有効用量は、1日当たり10~4250mgのCBDであり、当該CBDは、粘膜投与によってBSHE又はFSHE中に提供される。本明細書の治療方法は、不適切な病変、すなわち、体内の意図された場所から移動した細胞を排除するのに有効である。
【0199】
好ましい実施形態では、膣内投与に対して穏やかであるように、治療的投与のための組成物の浸透圧を改変することが有利である。更に好ましい実施形態では、典型的には酸性である膣のPHにより適切に適合するように、担体のpHを改変することが適切であり得る。したがって、好ましい実施形態は、膣内適用に好適な担体内で、酸性pH、好ましくは3.5~6を有する組成物である。
【0200】
経口投与については、生物学的利用能を増加させるために高脂肪成分を加えるか、若しくはそれと同時投与すること、又は口腔粘膜へのCBDの吸収又は取り込みの速度を増加させるためにpH若しくは浸透圧を改変することが好適であり得る。
【0201】
したがって、卵巣がんの治療行為は、腫瘍サイズの低減及び卵巣がん細胞の選択的破壊によって治療され、CBDを含むCEを投与することによって治療され得る。患者の必要性に基づいて、投与は、好ましくは、膣内、口腔粘膜、直腸、若しくは鼻腔内などの粘膜投与経路、又はこれらの投与経路のうちの2つ以上を介する。用量は、3日に1回、2日に1回、1日に1回、毎日、又は1日に数回、例えば、1日に2回、3回、4回以上提供され得る。治療用量は、好ましくは、1日当たり20~4250mgである。好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEからの25~1250mgの用量のCBDが、少なくとも1日に1回投与される。好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEは、CEの投与を支援する担体を含む組成物の一部である。好ましくは、担体は、粘膜送達用担体としての脂肪又は油である。好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEは、粘膜適用のための担体として脂肪又は油を含む。別の好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEは、少なくとも1つのテルペンを含む。より好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEは、膣内適用のための担体として脂肪又は油を含み、少なくとも1つのテルペンを更に含む。投与経路に基づいて、更なる賦形剤又は送達マトリックスが更に加えられ得る。CEは、好ましくは、CEの重量の50~99.9%のCBDを含む。しかしながら、CEは、好ましくは、CBC、CBG、CBN、CBDA、CBDV、Δ9-THCなどの、少なくとも1つの追加のカンナビノイドを更に含み、1つの追加のカンナビノイドの総濃度は、0.1~49%である。更なる実施形態では、CEはまた、テルペン、ポリフェノール、脂肪酸、又は植物栄養素のうちの少なくとも1つを含み得る。これらの各々は、好ましくは、大麻植物に由来し、抽出プロセスに起因して存在する。
【0202】
好ましい実施形態では、卵巣がんの治療は、化学療法剤及びCBDを含むCEの両方による治療を含む。CEは、上記に提供されるように投与される。化学療法剤は、その通常の投与経路で投与される。しかしながら、化学療法剤は、好ましくは、その通常の用量と比較して低減された用量で投与される。低減された用量は、化学療法剤とCEとの間の決定された相乗作用に基づいて可能である。CEの投与は、任意の好適な経路によるものであってもよいが、口腔粘膜治療では、口及び咽喉のリンパ節に隣接した、並びにがん性組織に隣接したCBDの高い生物学的利用能を可能にするとともに、粘膜投与による初回通過代謝を低減することが好ましい。CEは、好ましくはFSHE又はBSHEであり、CBDの濃度は、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60、65、70、75、80、85、90、又は95%であり、FSHE又はBSHEの残りの部分は、少なくとも1つの追加のカンナビノイドをCEの0.1~40重量%の濃度で含む。最も好ましくは、FSHE又はBSHEは、少なくとも2つのカンナビノイドを含み、各々がCEの少なくとも0.1重量%の濃度を有する。最も好ましくは、追加のカンナビノイドは、CBC、CBG、CBN、CBDA、CBDV、又はΔ9-THCのうちの1つ以上である。並列がんでは、CEとの化学療法剤の投与は、治療された患者において身体全体に広がっていた子宮内膜がんの有病率を低減させるのに有効であった。膣内を介した投与及び口腔粘膜投与は、PETスキャンを介してがん細胞のサイズの完全な低減を示し、したがって、卵巣がんの治療にも有効とある。
【0203】
特定の実施形態では、治療は、化学療法感受性卵巣がんに適応される。そのような事例、CBD単独によるCEで十分であるか、又は化学療法剤と一緒に投与され得る。特定の他の実施形態では、治療は、転移性化学療法感受性卵巣がんに適応され、卵巣がん細胞は、転移し、卵巣を越えて広がっている。特定の実施形態では、卵巣がんは、化学療法抵抗性がんである。
【0204】
特定の実施形態では、CEは、追加の担体を必要とせずに投与され得る。したがって、組成物は、任意の更なる担体又は賦形剤を含まないCEであり得る。
【0205】
しかしながら、好ましい実施形態は、卵巣がんの治療のための組成物を含み、組成物が、大麻抽出物(CE)を含み、CEが、組成物の1~100重量%及びその中の全てのパーセンテージを構成する。好ましい実施形態では、CEが、組成物の10~90重量%、又は20~90重量%、及び、好ましくは、40~80重量%を構成する。CEは、本明細書に詳述されるように、好ましくは、BSHE、FSHE、CBD単離物、又はCBDA単離物である。これらの異なるCE、BSHE、FSHE、CBD単離物、又はCBDA単離物の各々では、それらは、CEの50~99.9重量%を構成し、残りは、ワックス、脂肪、脂肪酸などである。しかしながら、好ましい実施形態は、組成物の1~99重量%で担体を利用し、好ましくは、組成物の使用事例に応じて1つ以上の追加の賦形剤を利用する。次いで、組成物は、典型的には、投与されるCBDのmg単位の投与量に基づいて投与される。CBDのmgを満たすのに必要な組成物の量は、CEの各々内のCBDの量に依存する。
【0206】
特定の実施形態では、個別化された医療は、最適化された治療行為を提供する際に重要な役割を果たし得る。したがって、卵巣がんを有する患者は、オルガノイドの作成のための組織試料を得ることができる。組織試料は、典型的には、生検又は切除されたがん性組織から採取される。次いで、オルガノイドが増殖され、最適化された治療計画を特定するために化学療法剤のパネルに対して試験され得る。好ましい計画は、オルガノイドを根絶するために、CEと組み合わせて、可能な限り低用量の化学療法剤を利用することである。その後、最適化された化学療法剤及びCEによる患者の治療は、最適化された治療行為計画を提供することになる。本明細書に記載されるように、化学療法剤は、非常に毒性であり、化学療法ラウンドの量及び数を低減させる能力は、化学療法からの有意な副作用が低減され得るため、がん治療に対する有意な改善を提供する。
【0207】
好ましい方法では、大麻抽出物は、BSHEである。好ましい方法では、BSHEは、50~99%のCBDと、少なくとも1つの追加のカンナビノイドとを含む。特定の実施形態では、BSHEは、少なくとも2つの追加のカンナビノイドを含む。更なる実施形態では、CEは、少なくとも3つの追加のカンナビノイドを含む。好ましい実施形態では、追加のカンナビノイドは、CBC、CBG、CBDA、CBDV、THCV、又はΔ9-THCからなる群から選択される。
【0208】
特定の実施形態では、大麻抽出物は、少なくとも0.1~10%のΔ9-THCを含むFSHEである。好ましい実施形態では、FSHEは、50~99%のCBD、及び0.1~10%のTHCを含む。好ましくは、FSHEは、合計51~99.9%のカンナビノイドを含み、Δ8-THC、Δ9-THC、Δ9-THCV、THCV、及びTHCVAを含む合計のTHCは、CEの0.1~10重量%を構成する。
【0209】
更に好ましい方法では、CEは、大麻抽出物に由来するCBDの単離物である。したがって、CBD単離物は、CBDを濃縮しようとし、CBDは、CEの70~99.9重量%で存在する。特定の好ましい実施形態では、CBDの単離物は、少なくとも1つの追加のカンナビノイドを更に含む。好ましい実施形態では、単離されたCBDは、CBN、CBDA又はその両方を0.1~10%の濃度で更に含む。
【0210】
大麻抽出物は、疾患の治療のための治療効果についての詳細な研究が開始されたばかりである。最も関心の高い大麻抽出物中に典型的に見出される2つの分子は、典型的には、カンナビジオール(CBD)及びΔ9テトラヒドロカンナビジオール(THC)である。しかしながら、抽出物は、多数の他のカンナビノイドを含有しており、今日まで、科学者らは、麻植物を含む大麻属の植物によって生成される少なくとも144種のカンナビノイドを特定している。麻は、米国では、Δ9-THC含量が乾燥重量で0.3%以下である大麻植物として定義されているが、それは、政治的な定義であり、科学的な定義ではない。したがって、本出願の目的に関して、「麻」は、乾燥重量で0.3%以下のΔ9-THC含量を有する大麻植物として定義される。カンナビノイドを含む大麻植物の副産物は、2014年農業法案の第7606条で定義され、2018年農業法案で恒久化されたように、連邦法では合法である。異なるカンナビノイドのほんの数例としては、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビジバリン(CBDV)、及びカンナビノール(CBN)が挙げられる。
【0211】
大麻抽出物は、原料物質として1つ以上の大麻植物株に由来し得る。注目すべきことに、異なる株は、所望の化合物の異なる割合を有する緑色物質を生成し得るが、異なる増殖条件は、同じ株であっても各化合物の精密な量に影響し得る。大麻抽出物は、単離されたCBDなどの特定の化合物の単離物を含み得るか、又は多種多様なカンナビノイド及びフルスペクトル麻抽出物(FSHE)及びブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)と呼ばれるものなどの他の材料を含有する生成物を含み得、それらの各々は、一連のカンナビノイドと、必須脂肪酸、フラボノイド、テルペン、並びに必須ビタミン及びミネラルなどの他の植物栄養素と、を含有し得る。カンナビノイドのこの組み合わせは、天然に存在する化合物が同時に消費されるときに現れる不可解な相乗作用を説明するためにRalph Mechoulamによって作成された用語である「アントラージュ効果」として知られているものを提供する。この効果は、大麻抽出物中の様々な栄養素からの多経路活性化及びシグナル伝達の結果であると考えられる。
【0212】
カンナビノイドは、カンナビノイド受容体(CB1又はCB2)に影響する多様なクラスの化学化合物のうちのいずれか1つである。これらの受容体に加えて、それらを活性化するカンナビノイドは、エンドカンナビノイド系(endocannabinoid system、ECS)を含む。3つの主要なタイプのカンナビノイドとして、エンドカンナビノイド、フィトカンナビノイド、及び合成カンナビノイドがある。内在性カンナビノイドとしても知られるエンドカンナビノイドは、体内で天然に生成されるカンナビノイドである。フィトカンナビノイドは、植物内で生成されるカンナビノイドである。カンナビノイドを生成する植物としては、限定されるものではないが、カバ、ローズマリー、苔類、エレクトリックデイジー、エキナセア、カカオ、ヘリクリサム、ペッパーツリー、黒トリュフ、大麻、及び酵母の一種(Pichia pastoris)が挙げられる。加えて、特定のカンナビノイドが合成され得る。しかしながら、現在まで、合成カンナビノイドは、有害作用のより大きいリスク及びより低い治療潜在性を示しており、結論は、フィトカンナビノイド対合成カンナビノイドの安全性及び忍容性を比較する複数の系統的レビューによって共有されている。
【0213】
植物におけるカンナビノイドの目的は不明のままであるが、最も一般的な仮説は、それらが昆虫、細菌、真菌、紫外線、及び乾燥から植物を保護するように作用することを示唆している。対照的に、人体は、エンドカンナビノイド系(ECS)として知られる高度な生理系を有する。この中枢制御系は、体内のほぼ全ての生物系全体にわたって細胞バランスを促進するカンナビノイドを体内に作る(エンドカンナビノイド)。ECSは、ヒトの生理機能全体に広く分布しており、3つの主要部分から構成される。これらは:(i)カンナビノイド受容体(CB1及びCB2)と、(ii)内在性カンナビノイド(エンドカンナビノイド)並びに最も顕著にはアナンダミド及び2-AGと、(iii)エンドカンナビノイドを分解する酵素(FAAH及びMAGL)と、である。細胞の表面に見つかるカンナビノイド受容体は、身体全体に広がっており、各細胞の周囲の環境を感知している。それらは、現在の状態に関する情報を細胞に送信し、それによって、適切な細胞応答を活性化させる。適切に機能するカンナビノイド受容体は、身体の細胞において恒常性を作り出す重要な機能を有する。
【0214】
CB1及びCB2受容体は、ECSにおける主な受容体である。CB1受容体は、脳及び中枢神経系に豊富に存在し、それに対して、CB2受容体は、中枢神経系には疎らであるが、免疫細胞を中心に末梢全体に一般的に存在する。カンナビノイド受容体は、身体全体のほとんど全ての器官及び器官系に存在する。それらは、生殖系、心臓、肺、脳、血管、GI管、肝臓、胃などにおける活性に影響する。CBDなどの麻(フィトカンナビノイド)に見出されるカンナビノイドは、幅広い身体機能に影響し得る。これらのフィトカンナビノイドは、カンナビノイド受容体と相互作用し、それらの活性を調節するが、一方で、同時にエンドカンナビノイドのレベルをブーストする。例えば、CBDは、天然に生成されるエンドカンナビノイドアナンダミドを分解する酵素であるFAAH(脂肪酸アミドヒドロラーゼ)を阻害することによってカンナビノイド受容体とともに作用し、したがって、その半減期を延長する。アナンダミドは、体内におけるその他の意味の中でも、ヒトの生殖の制御に部分的に関与している。
【0215】
エンドカンナビノイド受容体は、女性生殖器官及び中枢神経系に豊富に存在する。それらのシグナル伝達及び輸送は、卵胞形成、卵子の成熟、細胞骨格再構成、子宮内膜細胞の運動性、子宮内膜の遊走及び増殖、脱落膜化、可塑性、並びに末梢神経支配を含む、女性の生殖の複数の生理的及び病態生理的機能に影響する。したがって、カンナビノイドは、深部浸潤性子宮内膜症に対して抗増殖効果を発揮し、カンナビノイドシグナル伝達の増加は、子宮内膜症病変の増殖を低減させ得、その病因は、卵巣がん及び子宮内膜がんといくつかの遺伝的基礎及び病態生理学的重複を共有する。骨盤、卵巣、子宮内膜、外陰部、並びに中枢及び末梢神経系におけるカンナビノイド受容体は、これらの治療標的における炎症、侵害受容、及び覚醒に影響する。カンナビノイドは、局所的な血管拡張を引き起こし、病的な平滑筋の収縮及び/又は痙縮を緩和する。
【0216】
カンナビノイド受容体は、Gタンパク質共役受容体のスーパーファミリーに属する。それらは、7つの膜貫通α-ヘリックスを有する単一ポリペプチドであり、細胞外のグリコシル化されたN末端及び細胞内C末端を有する。CB1及びCB2カンナビノイド受容体は、両方、G1/0タンパク質に結合されている。これらの受容体に加えて、THCの薬理作用を模倣することができるこれらの受容体の内因性リガンドも発見されている。そのようなリガンドは、エンドカンナビノイドと呼ばれ、アナンダミド及び2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)を含んでいた。アナンダミドは、脳及び脾臓などの末梢免疫組織において生成される。
【0217】
CB1及びCB2に結合することによってその作用を発揮するTHCとは異なり、CBDは、これらの受容体に容易に結合せず、したがって、向精神薬活性を有していない。代わりに、カンナビジオールは、アナンダミドを分解する酵素(脂肪酸アミドヒドロキシラーゼ、「FAAH」)を抑制することによって、内在性カンナビノイドシグナル伝達を間接的に刺激する。CBDはまた、2-AGの放出を刺激する。したがって、CBDの作用機序は、複雑であり、多様であり、依然として部分的にしか理解されていない。CBDは、アンタゴニストであり、CB1受容体の部分アロステリック調節因子である。CBDが5HT1A/2A/3Aセロトニン受容体、TRPV1-2バニロイド受容体、及びグリシンチャネルを刺激するという証拠がある。CBDは、CB1又はCB2受容体のいずれにも結合せず、したがって、全てではないがほとんどのCBD機構は、CB受容体によって直接媒介されない。
【0218】
したがって、CBDは、体内のシグナル伝達経路に関与し得る。例えば、CBDは、サイトカインに関して調節的役割を果たし得る。サイトカインは、刺激の際に免疫細胞によって合成及び分泌されるシグナル伝達タンパク質である。したがって、CBDによる免疫制御の可能な機構のうちの1つは、Tヘルパーサブセット、Th1及びTh2によって生成されるサイトカイン間のバランスを乱すことによるものである。特定の以前の研究では、抗炎症効果及び炎症促進効果の両方が示された。
【0219】
慢性炎症の間、IL-6抑制は、組織損傷を減少させることができる。CBD及びTHCを含むカンナビノイドは、IL-6、TNFα、GM-CSF、及びIFNγを減少させることが示されている。したがって、CBD又はTHCのうちの1つ以上は、炎症を低減し、疼痛を減少させるために併用効果が必要である特定の適用において必要な成分であり得る。低用量のTHCは、CBDと組み合わせてこれらの治療効果を提供するのに好適であり得る。
【0220】
CBDはまた、疼痛知覚、炎症、及び体温を媒介することが知られているバニロイドペイン受容体(TRPV-1受容体)を刺激することも知られている。CBDはまた、特定のアデノシン受容体に影響し得、アデノシン受容体は、心血管機能において重要な役割を果たし、身体全体の抗炎症効果に広く影響するとともに、不安及びうつ病を制御及び減少させ、幸福感を増加させる。
【0221】
体内へのフィトカンナビノイドの取り込みは、その物理的特性によって混乱させられる。フィトカンナビノイドは、水にほとんど不溶性であるが、脂質、アルコール、及び非極性有機溶媒に可溶性であり、エマルジョン中に懸濁させることもできる。THC及びCBDは、両方、非常に親油性であり、嚥下されたときに6~10パーセントの低い経口生物学的利用能を有し、その量は、特定の調製物によって増加させることができる。経口THC製剤は、様々な吸収を呈し、広範な肝臓初回通過代謝を受け、結果的に、吸入と比較してより低いピーク血漿THC濃度及びピーク濃度に到達するためのより長い発現(約120分)をもたらす。CBDの経口投与後、経口THCと同様の血漿濃度-時間プロファイルが観察された。このプロファイルに基づいて、経口製剤は、吸入などの代替の送達方法と比較して、治療血漿濃度に達するために、より高い濃度が必要であり得るが、より長い期間にわたる症状の軽減を必要とする患者に有用であり得る。更に、治療レベルのためにより高い投与量が必要とされる場合、広範な初回通過代謝のため、特定の肝臓毒性が存在し得る。
【0222】
しかしながら、カンナビノイドの経皮投与は、初回通過代謝を回避するが、カンナビノイドの極めて疎水性の性質及び高分子量が、真皮の水層を横切る拡散を制限する。この速度制限ステップは、透過増強によって、又は送達ツールにおけるような分子の増強若しくは操作によって、又はプロドラッグとしてのみ改変され得る。有効な皮膚輸送は、典型的には、透過増強によってのみ得られる。しかしながら、口腔粘膜、鼻粘膜、膣粘膜、又は直腸粘膜のいずれかを介する粘膜輸送は、真皮層と比較して異なる特性を有し、したがって、これらの組織にわたるより大きな拡散を可能にする。そうであっても、ヒト皮膚を用いたインビトロ研究は、CBDの透過潜在性がΔ9-THC及びΔ8-THCの透過潜在性よりも10倍高いことを決定しており、これは、CBDが比較的親油性が低いことと一貫する。これは、Δ9-THCでは比較的利用不能である局所投与のためのCBDの機会につながり、これは、真皮皮膚層のバリア機能を克服する全身拡散課題の全てを含まない粘膜投与のために更に改善される。
【0223】
口腔粘膜調製物は、口腔粘膜を介して迅速に吸収され(したがって、迅速な緩和を必要とする症状に有用である)、経口送達と比較してより高い血漿薬物濃度を生成するが、カンナビス物質の吸入(煙)消費と比較して低減された濃度である。しかしながら、口腔粘膜調製物を利用する場合であっても、用量の一部が嚥下され、したがって、胃を介して摂取されることになり、したがって、一部分が標準的な経口製剤になる。
【0224】
カンナビノイドは、良好に血管化された器官(例えば、肺、心臓、脳、肝臓)に急速に分布し、その後、あまり血管化されていない組織に平衡する。分布は、身体サイズ及び組成、並びに血液組織関門の透過性に影響する疾患状態によって影響され得る。したがって、あまり血管化されていない器官を標的とする場合、分布及び取り込みは、他の器官と比較して低減され得る。これはまた、治療的処置の典型的な適用のように単に胃又は口腔粘膜を介する代わりに、EC治療のための局所的な投与の意味を指す。
【0225】
CBDは、主にアイソザイムCYP450、CYP2C19及びCYP3A4、並びに追加的にCYP1A1、CYP1A2、CYP2C9及びCYP2D6によって肝臓で代謝される。7-ヒドロキシカンナビジオール(7-OH-CBD)へのヒドロキシル化の後、更なる肝臓代謝があり、その後、これらの代謝産物の糞便中、及びより少ない程度で尿中への排泄がある。CBDは、THCと同様に、長い消失半減期を有することも報告されており、静脈内投与後の平均半減期は24±6時間であることが観察され、吸入後は31±4時間であることが観察されている。CBDの繰り返しの毎日の経口投与の調査は、2~5日の範囲の消失半減期を誘発した。比較的長い消失半減期が重度の使用者において観察され、脂肪組織などの深部区画からの遅い再分布に起因する。実際、THC及びCBDは、両方、反復投与により脂肪組織に蓄積することが知られている。結果として、THC及びCBD濃度1μg1-1は、最後の大麻使用後24時間を超えて重度の使用者の血液中で測定可能であり得る。
【0226】
用量応答及び薬物-薬物相互作用情報が欠如している。酵素又は輸送体の阻害又は誘導を介した、THC及びCBDの両方と他の薬物との間の薬物動態学的相互作用、更に、薬力学的薬物相互作用の潜在性が存在する。CBDは、CYP450経路を介して代謝される薬物、具体的には酵素CYP3A4、CYP2C19、及びCYP2D6と相互作用する薬物と競合する潜在性がある。CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP1A2、及びCYP2B6の基質では用量調整が必要であり得る。現在の文献は、20mg/kg/日の用量で臨床的に有意な薬物相互作用を実証している。1つの公開されたケーススタディは、10mg/kgの用量でワルファリンとの有意な相互作用を結論付けた。
【0227】
インビトロ研究は、CBDがP-糖タンパク質媒介性薬物輸送を有意に阻害することを報告し、CBDが他の同時投与された薬物の吸収及び処分に潜在的に影響し得ることを示唆した。リファンピシン(CYP3A4誘導物質)の同時投与は、CBDのピーク血漿濃度を有意に低減させたが、一方で、CYP3A4阻害剤ケトコナゾールの同時投与は、ピーク血漿薬物濃度をほぼ2倍にした。したがって、より高い血漿濃度に達するために、又は治療レベルに達するように投与されるCBDの総量を低減するために、CYP3A4阻害剤をCBDと同時投与することが有用であり得る。更に、インビトロで、CBDは、CYP2C19酵素の強力な阻害剤であることが観察された。
【0228】
本明細書で説明される実施形態及び例示は、例として提供され、本発明は、具体的に開示されたものに限定されないことが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記に説明された様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに上記の説明を読んだときに当業者が想起するであろう、先行技術に開示されていない、それらの変形例及び修正例を含む。したがって、様々なシステム及び方法は、本明細書に詳述される種々の方法及びシステムを実装する者によって理解されるように、実施形態の限定のうちの1つ又は全てを含むか、若しくは任意の順序で実施され得るか、又は異なる実施形態からの限定を組み合わせてもよい。
【国際調査報告】