(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】熱可塑性組成物、熱可塑性組成物を製造する方法、および熱可塑性組成物を含む物品
(51)【国際特許分類】
C08L 71/12 20060101AFI20241024BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20241024BHJP
C08L 83/12 20060101ALI20241024BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20241024BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08L71/12
C08L53/02
C08L83/12
C08K5/521
C08K3/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525161
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 IB2022059440
(87)【国際公開番号】W WO2023073458
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン ハイミン
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン リーピン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD154
4J002BP013
4J002CH071
4J002CP182
4J002DA037
4J002DE077
4J002DG027
4J002DH047
4J002EW046
4J002FB284
4J002FD134
4J002FD136
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】
熱可塑性組成物は、特定量のポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物、衝撃改質剤、有機リン酸エステル難燃剤、および第2ポリ(フェニレンエーテル)を含む。この組成物は、様々な物品において、特に電気自動車バッテリーの部品として有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体および第1ポリ(フェニレンエーテル)を含むポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物5~40重量パーセント;
アルケニル芳香族および共役ジエンの水添ブロック共重合体を含む衝撃改質剤1~15重量パーセント;
有機リン酸エステル難燃剤5~20重量パーセント;
補強充填剤3重量パーセント未満;
リン酸三カルシウム0.5重量パーセント未満;ならびに
第2ポリ(フェニレンエーテル)40~90重量パーセント
を含む熱可塑性組成物であって、
各成分の重量パーセントが、組成物の総重量に基づくことを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記第2ポリ(フェニレンエーテル)が、組成物の総重量に基づいて45~85重量パーセントの量で存在することを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物であって、前記ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物および前記第2ポリ(フェニレンエーテル)が、組成物の総重量に基づいて、少なくとも70重量パーセント、または70~94重量パーセント、または75~85重量パーセントの総量で存在することを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物であって、組成物の成型サンプルが、
23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、1.0ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;
23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.75ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;
23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.5ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;
23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.3ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;
23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.2ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;および、
場合により、
ASTM D648に従って1.82MPaの荷重を使用して3.2mm厚片で測定した場合に、115℃以上の熱たわみ温度;および
ASTM D256に従って測定した場合に、240J/m以上のノッチ付アイゾッド衝撃強さのいずれかまたは両方を示すことを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物であって、前記第1ポリ(フェニレンエーテル)が、ウベローデ粘度計を使用してクロロホルム中25℃で測定した場合に、0.25デシリットル/グラム超、または0.4~0.6デシリットル/グラムの固有粘度を有し、好ましくは、前記ポリ(フェニレンエーテル)が、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を含むことを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物であって、前記有機リン酸エステル難燃剤が、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビス-フェノールAビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジ2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、オリゴマーリン酸エステル、リン酸トリフェニル、またはこれらの組み合わせ、好ましくはビス-フェノールAビス-ジフェニルホスフェートを含むことを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物であって、前記水添ブロック共重合体が、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンを含むことを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物であって、0~15重量パーセントのホモポリスチレンまたは耐衝撃性ポリスチレンを含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の組成物であって、ガラス繊維を含まないことを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の組成物であって、0.1~10重量パーセントの添加剤組成物をさらに含むことを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物であって、
前記ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物8~28重量パーセント;
前記第2ポリ(フェニレンエーテル)50~75重量パーセント;
前記水添ブロック共重合体3~10重量パーセント;および
前記有機リン酸エステル難燃剤7~15重量パーセント
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物であって、前記ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物および前記第2ポリ(フェニレンエーテル)が、組成物の総重量に基づいて、少なくとも75重量パーセントの総量で存在することを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項以上に記載の組成物を製造する方法であって、組成物の成分を溶融混合することを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物を含む物品であって、
好ましくは、電気自動車バッテリーモジュール、バッテリー絶縁シートまたはフィルム、バッテリーハウジング、バッテリーケース、バッテリーセルフレーム、バッテリーセルスペーサー、バッテリーセルリテーナー、ブスバーホルダー、端子カバー、電気または電子部品、充電器アダプター絶縁シートまたはフィルム、熱硬化性遮断器、電子写真複写機用の定着器ホルダー、太陽光発電ジャンクションボックス、太陽光発電コネクタ、電気コネクタ、自動車用電気コネクタ、継電器、充電カプラ、家電部品、自動車部品、ポータブルデバイス、モバイル部品、または固定電気部品であることを特徴とする物品。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物から押出成形された電気自動車バッテリー部品であって、好ましくは電気自動車バッテリー絶縁シートまたはフィルムであることを特徴とする電気自動車バッテリー部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性組成物、熱可塑性組成物を製造する方法、および熱可塑性組成物を含む物品に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年10月28日に出願された欧州特許出願第21205340.9号の優先権および利益を主張し、その内容は、その全体を本願に引用して援用される。
【背景技術】
【0003】
ポリ(アリーレンエーテル)は、例えば、高温耐性、寸法安定性および加水分解安定性、ならびに電気特性を含む特性の独特な組み合わせにより、商業的に魅力的な材料である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当技術分野では、特に薄壁用途向けに、燃焼性の低いポリ(アリーレンエーテル)組成物が継続的に必要とされている。低燃焼性に加えて、組成物が高耐熱性、高衝撃強度、および耐加水分解性も示すとさらに有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
熱可塑性組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体および第1ポリ(フェニレンエーテル)を含むポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物5~40重量パーセント;アルケニル芳香族および共役ジエンの水添ブロック共重合体を含む衝撃改質剤1~15重量パーセント;有機リン酸エステル難燃剤5~20重量パーセント;補強充填剤3重量パーセント未満;リン酸三カルシウム0.5重量パーセント未満;ならびに第2ポリ(フェニレンエーテル)40~90重量パーセントを含み、各成分の重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0006】
組成物を製造する方法は、この組成物の成分を溶融混合することを含む。
【0007】
物品は、この組成物を含む。例えば、電気自動車バッテリー部品は、この組成物から押出成形することができ、好ましくは、電気自動車バッテリー部品は、電気自動車バッテリー絶縁シートまたはフィルムである。
【0008】
上述の特徴および他の特徴は、以下の詳細な説明によって例示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、特定の熱可塑性組成物が望ましい特性の組み合わせを提供できることを予期せず発見した。より具体的には、特定量のポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物、第2ポリ(フェニレンエーテル)、アルケニル芳香族および共役ジエンの水添ブロック共重合体ならびに有機リン酸エステル難燃剤を含む組成物が、低燃焼性、高耐熱性、高衝撃強度、および耐加水分解性の望ましい組み合わせを提供できる。
【0010】
したがって、本開示の一態様は、熱可塑性組成物である。熱可塑性組成物は、第1ポリ(フェニレンエーテル)およびポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体を含むポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物を含む。本明細書では、用語「ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体」は、少なくとも1つのポリ(フェニレンエーテル)ブロック、および少なくとも1つのポリシロキサンブロックを含むブロック共重合体を指す。
【0011】
ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体のポリ(フェニレンエーテル)ブロックは、式(1)
【化1】
(1)
[式中、Z
1の各存在は、独立して、ハロゲン、非置換または置換C
1~12ヒドロカルビルであるが、ただし、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビル、C
1~12ヒドロカルビルチオ、C
1~12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~12ハロヒドロカルビルオキシではなく、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子および酸素原子を隔てている場合に限り、Z
2の各存在は、独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1~12ヒドロカルビルであるが、ただし、ヒドロカルビル基が、第三級ヒドロカルビル、C
1~12ヒドロカルビルチオ、C
1~12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~12ハロヒドロカルビルオキシではなく、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子および酸素原子を隔てている場合に限る]による繰り返し構造単位を含む。本明細書では、用語「ヒドロカルビル」は、それ自体で使用されるか、または別の用語の接頭語、接尾語、または断片として使用されるかにかかわらず、炭素および水素のみを含有する残基を指す。残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和、または不飽和であってもよい。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和、および不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含有することもできる。ただし、ヒドロカルビル残基が置換されていると記載されている場合、場合により、置換基残基の炭素および水素の成員(member)に加えてヘテロ原子を含んでいてもよい。したがって、特に置換されていると記載されている場合、ヒドロカルビル残基はまた、1つ以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基などを含有することもあり、またはヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含有することもある。一例として、Z
1は、末端3,5-ジメチル-1,4-フェニル基と酸化重合触媒のジ-n-ブチルアミン成分との反応によって形成されるジ-n-ブチルアミノメチル基であり得る。
【0012】
一態様では、ポリ(フェニレンエーテル)ブロックは、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル繰り返し単位、すなわち、式(2)
【化2】
(2)
による繰り返し単位、2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル繰り返し単位、またはこれらの組み合わせを含む。
【0013】
ポリ(フェニレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基に対してオルト位に位置するアミノアルキル含有末端基を有する分子を含んでもよい。また、テトラメチルジフェノキノン(TMDQ)末端基もしばしば存在し、これは典型的には、テトラメチルジフェノキノン副生成物が存在する2,6-ジメチルフェノール含有反応混合物から得られる。ポリ(フェニレンエーテル)は、ホモポリマー、共重合体、グラフト共重合体、イオノマー、またはブロック共重合体、ならびにこれらの組み合わせの形態であり得る。
【0014】
ポリシロキサンブロックは、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの残基である。一態様では、ポリシロキサンブロックは、式(3)
【化3】
(3)
[式中、R
1およびR
2の各存在はそれぞれ独立して、水素、C
1~12ヒドロカルビルまたはC
1~12ハロヒドロカルビルである]による繰り返し単位を含み、ポリシロキサンブロックは、式(4)
【化4】
(4)
[式中、Yは水素、C
1~12ヒドロカルビル、C
1~12ヒドロカルビルオキシ、またはハロゲンであり、R
3およびR
4の各存在は、それぞれ独立して水素、C
1~12ヒドロカルビルまたはC
1~12ハロヒドロカルビルである]の末端単位をさらに含む。一態様では、ポリシロキサン繰り返し単位は、ジメチルシロキサン(-Si(CH
3)
2O-)単位を含む。一態様では、ポリシロキサンブロックは、式(5)
【化5】
(5)
[式中、nは平均して20~60である]による構造を有する。
【0015】
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、少なくとも1つのヒドロキシアリール末端基を含む。一態様では、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、単一のヒドロキシアリール末端基を有し、この場合、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンジブロック共重合体が形成される。一態様では、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、2つのヒドロキシアリール末端基を有し、この場合、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンジブロック共重合体および/またはポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサン-ポリ(フェニレンエーテル)トリブロック共重合体が形成される。また、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンが、3つ以上のヒドロキシアリール末端基および対応する分岐ブロック共重合体の形成を可能にする分岐構造を有することが可能である。
【0016】
一態様では、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、平均して、20~80個のシロキサン繰り返し単位、具体的には25~70個のシロキサン繰り返し単位、より具体的には30~60個のシロキサン繰り返し単位、さらにより具体的には35~50個のシロキサン繰り返し単位、さらにより具体的には40~50個のシロキサン繰り返し単位を含む。ポリシロキサンブロックのシロキサン繰り返し単位の数は、共重合および分離条件によって本質的に影響を受けないため、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン出発物質中のシロキサン繰り返し単位の数と等しい。特に把握されていない場合、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン分子あたりのシロキサン繰り返し単位の平均数は、シロキサン繰り返し単位に関連するシグナルの強度をヒドロキシアリール末端基に関連するシグナルの強度と比較する核磁気共鳴(NMR)法によって求めることができる。例えば、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンがオイゲノールでキャップされたポリジメチルシロキサンである場合、ジメチルシロキサン共鳴のプロトンおよびオイゲノールのメトキシ基のプロトンの積分を比較するプロトン核磁気共鳴(1HNMR)法によって、シロキサン繰り返し単位の平均数を求めることができる。
【0017】
一態様では、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物は、少なくとも30,000グラム/モル(g/mol)の重量平均分子量を有する。例えば、反応生成物は、30,000~150,000g/mol、具体的には35,000~120,000g/mol、より具体的には40,000~90,000g/mol、さらにより具体的には45,000~70,000g/molの重量平均分子量を有してもよい。一態様では、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物は、10,000~50,000g/mol、具体的には10,000~30,000g/mol、より具体的には14,000~24,000g/molの数平均分子量を有する。
【0018】
一態様では、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物は、クロロホルム中25℃でウベローデ粘度計により測定して、少なくとも0.3デシリットル/グラムの固有粘度を有する。一態様では、固有粘度は、0.3~0.5デシリットル/グラム、具体的には0.31~0.5デシリットル/グラム、より具体的には0.35~0.47デシリットル/グラムである。
【0019】
ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体は、酸化共重合法により調製される。この方法では、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体は、一価フェノールおよびヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含むモノマー混合物を酸化共重合することを含むプロセスの生成物である。一態様では、モノマー混合物は、一価フェノールおよびヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの総重量に基づいて、70~99重量部の一価フェノールおよび1~30重量部のヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含む。ヒドロキシアリール両末端ポリシロキサン(hydroxyaryl-diterminated polysiloxane)および一価フェノールは、上記の通りであり得る。
【0020】
酸化共重合法では、所望の生成物としてポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体が生成され、副生成物としてポリ(フェニレンエーテル)(ポリシロキサンブロックが組み込まれていない)が生成される。ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体からポリ(フェニレンエーテル)を分離する必要はない。したがって、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体の両方を含む「反応生成物」として利用することができる。イソプロパノールから沈殿物を生じさせるなどの特定の分離手順を使用すると、反応生成物が残留ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン出発物質を本質的に含まないことを保証できる。換言すれば、これらの分離手順は、反応生成物のポリシロキサン含量が本質的にすべてポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体の形態であることを保証する。ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体を形成するための詳細な方法は、キャリロ(Carrillo)らの米国特許第8,017,697号および第8,669,332号に記載されている。
【0021】
ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物は、反応生成物の総重量に基づいて、1~30重量パーセントのシロキサン繰り返し単位および70~約99重量パーセントのフェニレンエーテル繰り返し単位を含んでもよい。シロキサン繰り返し単位は、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンから誘導され、フェニレンエーテル繰り返し単位は、一価フェノールから誘導されることが理解されるであろう。一態様では、例えば、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物がイソプロパノール中での沈殿によって精製される場合、シロキサン繰り返し単位は、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体に組み込まれたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの残基から本質的になる。
【0022】
一態様では、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体は、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、およびこれらの組み合わせから誘導されるフェニレンエーテル繰り返し単位を含む。一態様では、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体は、例えば、組成物全体に対してシロキサン基の0.05~2重量パーセント、具体的には0.1~1重量パーセント、より具体的には0.2~0.8重量パーセントを占め得る。
【0023】
組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物を、組成物の総重量に基づいて5~40重量パーセントの量で含む。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物は、少なくとも8重量パーセント、または少なくとも10重量パーセント、または少なくとも12重量パーセント、または少なくとも15重量パーセントの量、または少なくとも20重量パーセント、または少なくとも22重量パーセント、または少なくとも24重量パーセントの量で存在し得る。また、この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物は、35重量パーセント以下、または32重量パーセント以下、または30重量パーセント以下、または28重量パーセント以下の量で存在し得る。一態様では、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物は、8~40重量パーセント、または8~35重量パーセント、または8~30重量パーセント、または8~28重量パーセント、または10~28重量パーセントの量で存在し得る。
【0024】
ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物に加えて、熱可塑性組成物は、第2ポリ(フェニレンエーテル)をさらに含む。
【0025】
第2ポリ(フェニレンエーテル)は、ウベローデ粘度計を使用してクロロホルム中25℃で測定した場合に、0.25デシリットル/グラム超、好ましくは0.44~0.60デシリットル/グラム、より好ましくは0.44~0.50デシリットル/グラムの固有粘度を有してもよい。一態様では、第2ポリ(フェニレンエーテル)は、モノマーの2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノールおよびこれらの組み合わせのホモポリマーまたは共重合体を含む。
【0026】
一態様では、第2ポリ(フェニレンエーテル)は、0.43デシリットル/グラムを超える固有粘度を有してもよく、好ましくは、第2ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を含む。
【0027】
組成物は、第2ポリ(フェニレンエーテル)を、組成物の総重量に基づいて40~89重量パーセントの量で含んでもよい。この範囲内で、第2ポリ(フェニレンエーテル)の量は、45~89重量パーセント、または45~75重量パーセント、または50~75重量パーセント、または50~70重量パーセント、または50~60重量パーセントであり得る。
【0028】
一態様では、組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物および第2ポリ(フェニレンエーテル)を、組成物の総重量に基づいて少なくとも70重量パーセント、または70~94重量パーセント、または75~85重量パーセントの総量で含んでもよい。
【0029】
組成物は、アルケニル芳香族および共役ジエンの水添ブロック共重合体をさらに含む。簡潔にするために、この成分を「水添ブロック共重合体」と呼ぶ。水添ブロック共重合体は、水添ブロック共重合体の重量に基づいて、10~90重量パーセントのポリ(アルケニル芳香族)含量および90~10重量パーセントの水添ポリ(共役ジエン)含量を含んでもよい。一態様では、水添ブロック共重合体は、ポリ(アルケニル芳香族)含量が10~40重量パーセント未満、または20~35重量パーセント、または25~35重量パーセント、または30~35重量パーセントの低ポリ(アルケニル芳香族含量)水添ブロック共重合体であり、これらはすべて低ポリ(アルケニル芳香族)含量の水添ブロック共重合体の重量に基づく。一態様では、水添ブロック共重合体は、ポリ(アルケニル芳香族)含量が40~90重量パーセント、または50~80重量パーセント、または60~70重量パーセントである高ポリ(アルケニル芳香族含量)水添ブロック共重合体であり、これらはすべて高ポリ(アルケニル芳香族含量)水添ブロック共重合体の重量に基づく。
【0030】
一態様では、水添ブロック共重合体は、40,000~400,000g/molの重量平均分子量を有する。数平均分子量および重量平均分子量は、ポリスチレン標準との比較に基づくゲル浸透クロマトグラフィーによって求めることができる。一態様では、水添ブロック共重合体は、200,000~400,000g/mol、または220,000~350,000g/molの重量平均分子量を有する。一態様では、水添ブロック共重合体は、40,000~200,000g/mol、または40,000~180,000g/mol、または40,000~150,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0031】
水添ブロック共重合体を調製するために使用されるアルケニル芳香族モノマーは、式(6)
【化6】
(6)
[式中、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、C
1~8アルキル基、またはC
2~8アルケニル基を表し、R
7およびR
11は、それぞれ独立して、水素原子、C
1~8アルキル基、塩素原子、または臭素原子を表し、R
8、R
9、およびR
10は、それぞれ独立して、水素原子、C
1~8アルキル基、もしくはC
2~8アルケニル基を表すか、またはR
8およびR
10は、中心の芳香環とともにナフチル基を形成するか、またはR
9およびR
10は、中心の芳香環とともにナフチル基を形成する]による構造を有してもよい。特定のアルケニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、例えば、p-クロロスチレン、メチルスチレン、例えば、アルファ-メチルスチレンおよびp-メチルスチレンならびにt-ブチルスチレン、例えば、3-t-ブチルスチレンおよび4-t-ブチルスチレンが挙げられる。一態様では、アルケニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0032】
水添ブロック共重合体を調製するために使用される共役ジエンは、C4~20共役ジエンであり得る。好適な共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなど、およびこれらの組み合わせが挙げられる。一態様では、共役ジエンは、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、またはこれらの組み合わせである。一態様では、共役ジエンは、1,3-ブタジエンである。
【0033】
水添ブロック共重合体は、(A)アルケニル芳香族化合物に由来する少なくとも1つのブロックと、(B)共役ジエンに由来する少なくとも1つのブロックとを含む共重合体であり、ブロック(B)中の脂肪族不飽和基の含量は、水素添加により少なくとも部分的に減少する。一態様では、(B)ブロック中の脂肪族不飽和は、少なくとも50パーセント、または少なくとも70パーセント減少する。ブロック(A)および(B)の配置には、直鎖構造、グラフト構造、および分岐鎖の有無にかかわらずラジアルテレブロック構造が含まれる。直鎖ブロック共重合体には、テーパー状の直鎖構造(tapered linear structure)および非テーパー状の直鎖構造が含まれる。一態様では、水添ブロック共重合体は、テーパー状の直鎖構造を有する。一態様では、水添ブロック共重合体は、非テーパー状の直鎖構造を有する。一態様では、水添ブロック共重合体は、アルケニル芳香族モノマーのランダムな組み込みを含む(B)ブロックを含む。直鎖ブロック共重合体の構造には、ジブロック(A-Bブロック)、トリブロック(A-B-AブロックまたはB-A-Bブロック)、テトラブロック(A-B-A-Bブロック)、およびペンタブロック(A-B-A-B-AブロックまたはB-A-B-A-Bブロック)構造、ならびに(A)および(B)を合計で6つ以上のブロックを含有する直鎖構造が含まれ、各(A)ブロックの分子量は、他の(A)ブロックの分子量と同じであっても異なっていてもよく、各(B)ブロックの分子量は、他の(B)ブロックの分子量と同じであっても異なっていてもよい。一態様では、水添ブロック共重合体は、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、またはこれらの組み合わせである。
【0034】
一態様では、水添ブロック共重合体は、アルケニル芳香族化合物および共役ジエン以外のモノマーの残基を含まない。一態様では、水添ブロック共重合体は、アルケニル芳香族化合物および共役ジエンに由来するブロックからなる。この水添ブロック共重合体は、これらのモノマーまたは他のモノマーから形成されたグラフトを含まない。また、炭素原子および水素原子からなるため、ヘテロ原子を含まない。一態様では、水添ブロック共重合体は、無水マレイン酸などの1種以上の酸官能化剤の残基を含む。一態様では、水添ブロック共重合体は、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレントリブロック共重合体を含む。
【0035】
一態様では、水添ブロック共重合体は、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレントリブロック共重合体の重量に基づいて、10~50重量パーセント、または20~40重量パーセント、または20~35重量パーセント、または25~35重量パーセントのポリスチレン含量を有するポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレントリブロック共重合体である。これらの態様では、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレントリブロック共重合体はポリスチレン標準を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって測定される、200,000~400,000グラム/モル、または250,000~350,000グラム/モルの重量平均分子量を場合により有することもあり得る。
【0036】
水添ブロック共重合体を調製するための方法は、当技術分野で公知であり、多くの水添ブロック共重合体が市販されている。例示的な市販の水添ブロック共重合体としては、Kraton(商標)G1701(37重量パーセントのポリスチレンを有する)およびG1702(28重量パーセントのポリスチレンを有する)としてKraton Performance Polymers Inc.から入手可能なポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)ジブロック共重合体;Kraton(商標)G1641(33重量パーセントのポリスチレンを有する)、G1650(30重量パーセントのポリスチレンを有する)、G1651(33重量パーセントのポリスチレンを有する)およびG1654(31重量パーセントのポリスチレンを有する)としてKraton Performance Polymers Inc.から入手可能なポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレントリブロック共重合体;ならびにSEPTON(商標)S4044、S4055、S4077、およびS4099として株式会社クラレから入手可能なポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)-ポリスチレントリブロック共重合体が挙げられる。さらなる市販の水添ブロック共重合体としては、CALPRENE(商標)H6140(31重量パーセントのポリスチレンを有する)、H6170(33重量パーセントのポリスチレンを有する)、H6171(33重量パーセントのポリスチレンを有する)およびH6174(33重量パーセントのポリスチレンを有する)としてDynasolから入手可能であり、かつSEPTON(商標)8006(33重量パーセントのポリスチレンを有する)および8007(30重量パーセントのポリスチレンを有する)として株式会社クラレから入手可能なポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)トリブロック共重合体;SEPTON(商標)2006(35重量パーセントのポリスチレンを有する)および2007(30重量パーセントのポリスチレンを有する)として株式会社クラレから入手可能なポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)共重合体;Kraton(商標)G4609(45%の鉱油、および33重量パーセントのポリスチレンを有するSEBSを含有する)およびG4610(31%の鉱油、および33重量パーセントのポリスチレンを有するSEBSを含有する)としてKraton Performance Polymers Inc.から入手可能であり、かつTUFTEC(商標)H1272(36%の油、および35重量パーセントのポリスチレンを有するSEBSを含有する)として旭化成株式会社から入手可能なこれらの水添ブロック共重合体の油展化合物が挙げられる。2つ以上の水添ブロック共重合体の混合物を使用することができる。一態様では、水添ブロック共重合体は、少なくとも100,000グラム/モル、または200,000~400,000グラム/モルの重量平均分子量を有するポリスチレンポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレントリブロック共重合体を含む。
【0037】
組成物は、水添ブロック共重合体を組成物の総重量に基づいて1~15重量パーセントの量で含む。この範囲内で、水添ブロック共重合体の量は、1~10重量パーセント、または3~8重量パーセント、または5~10重量パーセント、または4~8重量パーセント、または5~7重量パーセントであり得る。
【0038】
一態様では、組成物は場合により、ホモポリスチレンまたは耐衝撃性ポリスチレンをさらに含んでもよい。本明細書では、ホモポリスチレンという用語は、スチレンのホモポリマーを指す。したがって、スチレン以外の任意のモノマーの残基は、ホモポリスチレンから除外される。ホモポリスチレンは、アタクチック、シンジオタクチック、またはアイソタクチックであり得る。一態様では、ホモポリスチレンは、アタクチックホモポリスチレンであり得る。一態様では、ホモポリスチレンは、ISO1133に従って200℃および5キログラムの荷重で測定して、1.5~5立方センチメートル/10分のメルトボリュームフローレートを有することもある。HIPSまたはゴム変性ポリスチレンとしても公知の耐衝撃性ポリスチレンは、ゴム変性ポリスチレンの重量に基づいて、80~96重量パーセントのポリスチレン、具体的には88~94重量パーセントのポリスチレン、および4~20重量パーセントのポリブタジエン、具体的には6~12重量パーセントのポリブタジエンを含んでもよい。一態様では、ゴム変性ポリスチレンは、10~35パーセントの有効ゲル含量(effective gel content)を有する。
【0039】
存在する場合、ホモポリスチレンまたは耐衝撃性ポリスチレンは、組成物の総重量に基づいて、0~15重量パーセント超、または1~10重量パーセントの量で存在し得る。一態様では、ホモポリスチレンまたは耐衝撃性ポリスチレンを組成物から除外することができる。
【0040】
組成物は、有機リン酸エステル難燃剤をさらに含む。例示的な有機リン酸エステル化合物としては、フェニル基、置換フェニル基、またはフェニル基および置換フェニル基の組み合わせを含むリン酸エステル、レゾルシノールに基づくビスアリールリン酸エステル、例えばレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ならびにビスフェノールに基づくビスアリールリン酸エステル、例えばビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)が挙げられる。一態様では、有機リン酸エステルは、トリス(アルキルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS Reg.No.89492-23-9またはCAS Reg.No.78-33-1)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(CAS Reg.No.57583-54-7)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(CAS Reg.No.181028-79-5)、リン酸トリフェニル(CAS Reg.No.115-86-6)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS Reg.No.68937-41-7)、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート(CAS Reg.No.56803-37-3)、ビス(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート(CAS Reg.No.65652-41-7)、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート(CAS Reg.No.78-33-1)、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0041】
一態様では、有機リン酸エステルは、式(7)
【化7】
(7)
[式中、Rは各存在において独立して、C
1~12アルキレン基であり、R
16およびR
17は各存在において独立して、C
1~5アルキル基であり、R
12、R
13、およびR
15は、独立して、C
1~12ヒドロカルビル基であり、R
14は、各存在において独立して、C
1~12ヒドロカルビル基であり、nは1~25であり、s1およびs2は独立して0、1、または2に等しい整数である。一態様では、OR
12、OR
13、OR
14およびOR
15は、独立して、フェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール、またはトリアルキルフェノールから誘導される]によるビスアリールホスフェートを含む。
【0042】
当業者には容易に理解されるように、ビスアリールホスフェートは、ビスフェノールから誘導される。例示的なビスフェノールとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。一態様では、ビスフェノールにはビスフェノールAが含まれる。
【0043】
一態様では、有機リン酸エステルには、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビス-フェノールAビス-ジフェニルホスフェート、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0044】
有機リン酸エステルは、組成物の総重量に基づいて、5~20重量パーセントの量で組成物中に存在し得る。この範囲内で、有機リン酸エステルは、7~15重量パーセント、または8~14重量パーセント、または8.5~12.5重量パーセントの量で存在し得る。
【0045】
熱可塑性組成物は、場合により添加剤組成物をさらに含んでもよい。添加剤組成物は、1つ以上の添加剤を含む。添加剤は、例えば、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、ドリップ防止剤(drip retardant)、核剤、UV遮断剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、アンチブロッキング剤、またはこれらの組み合わせであり得る。一態様では、添加剤組成物は、酸化防止剤、潤滑剤、熱安定剤、紫外線吸収添加剤、可塑剤、アンチドリップ剤、離型剤、帯電防止剤、染料、顔料、レーザーマーキング添加剤、放射線安定剤、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。存在する場合、そのような添加剤は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、0.1~10重量パーセントの総量で使用される。
【0046】
一態様では、組成物はアンチドリップ剤を含んでもよい。フッ素化ポリオレフィンまたはポリテトラフルオロエチレンを、アンチドリップ剤として使用することができる。アンチドリップ剤、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフィブリル形成または非フィブリル形成フルオロポリマーも使用することができる。アンチドリップ剤は、例えばスチレンアクリロニトリル(SAN)などの剛性共重合体によってカプセル化することができる。SANでカプセル化されたPTFEは、TSANとして公知である。カプセル化フルオロポリマーは、例えば水性分散液中でフルオロポリマーの存在下でカプセル化ポリマーを重合させることによって作製することができる。TSANは、組成物中でより容易に分散できるという点で、PTFEに比べて大きな利点を提供することができる。好適なTSANは、例えば、カプセル化フルオロポリマーの総重量に基づいて、50重量%のPTFEおよび50重量%のSANを含んでもよい。SANは、例えば、共重合体の総重量に基づいて75重量%のスチレンおよび25重量%のアクリロニトリルを含んでもよい。あるいは、フルオロポリマーを、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂またはSANなどの第2のポリマーと何らかの方法で予めブレンドして、アンチドリップ剤として使用するための造粒物を形成することもできる。どちらの方法も、カプセル化フルオロポリマーを製造するために使用できる。
【0047】
アンチドリップ剤は、0.3~0.7mm、具体的には0.4~0.6ミリメートルの数平均粒径を有する比較的大きな粒子の形態で添加することができる。アンチドリップ剤は、組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~5.0重量%の量で使用することができる。
【0048】
組成物は、3重量パーセント未満、または1重量パーセント未満、または0.5重量パーセント未満の補強充填剤を含んでもよい。一態様では、補強充填剤を組成物から除外することができる。補強充填剤としては、例えば、マイカ、クレイ、長石、石英、珪岩、パーライト、トリポリ岩、珪藻土、ケイ酸アルミニウム(ムライト)、合成ケイ酸カルシウム、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、砂、窒化ホウ素粉末、ホウケイ酸粉末、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム(例えば、チョーク、石灰石、大理石、および合成沈降性炭酸カルシウム)、タルク(繊維状、モジュール状、針状、および薄片状タルクを含む)、珪灰石、中空または固体のガラス球、ケイ酸塩球、セノスフェア、アルミノケイ酸塩または(アルモスフェア(armosphere))、カオリン、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、または銅のひげ結晶、連続およびチョップド炭素繊維またはガラス繊維、硫化モリブデン、硫化亜鉛、チタン酸バリウム、バリウムフェライト、硫酸バリウム、重晶石、TiO2、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、粒子状または繊維状アルミニウム、青銅、亜鉛、銅、またはニッケル、ガラスフレーク、フレーク状炭化ケイ素、フレーク状二ほう化アルミニウム、フレーク状アルミニウム、スチールフレーク、木粉などの天然充填剤、繊維状セルロース、綿、サイザルアサ、ジュート、デンプン、リグニン、グラウンドナッツ(ground nut)の殻、または米粒の外皮、補強用有機繊維状充填剤、例えば、ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル、ポリエチレン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリ(ビニルアルコール)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。充填剤および補強剤は、導電性を高めるために金属材料の層でコーティングすることができるか、またはシランで表面処理してポリマーマトリックスへの接着および分散を改善することができる。一態様では、組成物は5重量パーセント未満のガラス繊維を含んでもよい。一態様では、組成物はガラス繊維を含まなくてもよい。
【0049】
組成物は、0.5重量パーセント未満、または0.1重量パーセント未満、または0.01重量パーセント未満のリン酸三カルシウムを含んでもよい。一態様では、組成物はリン酸三カルシウムを含まなくてもよい。リン酸三カルシウム(CAS Reg.No.1306-06-5)は、化学式Ca5(OH)(PO4)3を有し、ヒドロキシアパタイト、ヒドロキシルアパタイト、第三リン酸カルシウム、ヒドロキシオルトリン酸五カルシウム、およびアパタイトとしても公知である。
【0050】
組成物は、本明細書に特に記載されていない追加の成分を、場合により最小限に抑えるか、または含まなくてもよい。例えば、組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物、第2ポリ(フェニレンエーテル)、水添ブロック共重合体、ポリスチレンおよび耐衝撃性ポリスチレン以外の任意の熱可塑性ポリマーを、2重量パーセント未満、または1重量パーセント未満、または0.5重量パーセント未満、または0.1重量パーセント未満しか含まなくてもよい。一態様では、組成物は、本組成物の前述のポリマー以外の任意の熱可塑性ポリマーを含まなくてもよい。一態様では、組成物はガラス繊維を最小限に抑えるか、または含まなくてもよい。一態様では、組成物は、ホモポリスチレンまたはゴム変性ポリスチレンを最小限に抑えるか、または含まなくてもよい。
【0051】
一態様では、組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物8~28重量パーセント;第2ポリ(フェニレンエーテル)50~75重量パーセント;水添ブロック共重合体3~10重量パーセント;有機リン酸エステル難燃剤7~15重量パーセントを含んでもよい。組成物は、リン酸三カルシウムおよび補強充填剤を含まなくてもよい。
【0052】
一態様では、組成物は、2,6-ジメチルフェノールに由来する繰り返し単位を含むフェニレンエーテルブロックと、ジメチルシロキサンに由来する繰り返し単位を含むシロキサンブロックとを含むポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物;アルケニル芳香族および共役ジエンの水添ブロック共重合体;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビス-フェノールAビス-ジフェニルホスフェート、またはこれらの組み合わせを含む有機リン酸エステル難燃剤、ならびに2,6-ジメチルフェノールに由来する繰り返し単位を含む第2ポリ(フェニレンエーテル)を含んでもよい。一態様では、組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物8~28重量パーセント、第2ポリ(フェニレンエーテル)50~75重量パーセント、水添ブロック共重合体3~10重量パーセント、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビス-フェノールAビス-ジフェニルホスフェート、またはこれらの組み合わせを含む有機リン酸エステル難燃剤7~15重量パーセントを含んでもよい。
【0053】
本開示の組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体および第1ポリ(フェニレンエーテル)を含むポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物5~40重量パーセント;アルケニル芳香族および共役ジエンの水添ブロック共重合体を含む衝撃改質剤1~15重量パーセント;有機リン酸エステル難燃剤5~20重量パーセント;補強充填剤3重量パーセント未満;リン酸三カルシウム0.5重量パーセント未満;ならびに第2ポリ(フェニレンエーテル)40~89重量パーセント、好ましくは45~85重量パーセントを含んでもよく、各成分の重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物および第2ポリ(フェニレンエーテル)は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも70重量パーセント、または70~94重量パーセント、または75~85重量パーセントの総量で存在し得る。第1ポリ(フェニレンエーテル)は、ウベローデ粘度計を使用してクロロホルム中25℃で測定した場合に、0.25デシリットル/グラム超、または0.4~0.6デシリットル/グラムの固有粘度を有してもよく、好ましくは、ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を含む。有機リン酸エステル難燃剤は、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビス-フェノールAビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジ2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、オリゴマーリン酸エステル、リン酸トリフェニル、またはこれらの組み合わせ、好ましくはビス-フェノールAビス-ジフェニルホスフェートを含んでもよい。水添ブロック共重合体は、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンを含んでもよい。組成物は、0~15重量パーセントのホモポリスチレンまたは耐衝撃性ポリスチレンを含んでもよい。組成物は、0.1~10重量パーセントの添加剤組成物をさらに含んでもよい。組成物は、ガラス繊維を含まなくてもよい。組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物8~28重量パーセント;第2ポリ(フェニレンエーテル)50~75重量パーセント;水添ブロック共重合体3~10重量パーセント;および有機リン酸エステル難燃剤7~15重量パーセントを含んでもよい。各成分の相対量は、上記の範囲内で調整して所望の特性の組み合わせを得ることができる。当業者によって理解されるように、各成分の量は、それらの合計が100重量パーセントとなるように選択される。
【0054】
本開示の組成物は、望ましい物理的特性の組み合わせを示すことができる。例えば、組成物の成型サンプルは、23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、1.0ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;ならびに、23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.75ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.5ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.3ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;ならびに、23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.2ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0を示し得る。組成物の成型サンプルは、ASTM D648に従って1.82MPaの荷重を使用して3.2mm厚片で測定した場合に、115℃以上の熱たわみ温度を示し得る。組成物の成型サンプルは、ASTM D256に従って測定した場合に、240J/m以上のノッチ付アイゾッド衝撃強さを示し得る。
【0055】
本開示の組成物は、例えば、組成物の成分を溶融ブレンドすることによって製造することができる。組成物の成分は、一般的な装置、例えば、リボンブレンダー、HENSCHEL(商標)ミキサー、BANBURY(商標)ミキサー、ドラムタンブラーなどを使用して混合またはブレンドすることができ、その後、ブレンドされた組成物を溶融ブレンドまたは溶融混練することができる。溶融ブレンドまたは溶融混練は、一般的な装置、例えば、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、コニーダーなどを使用して実施することができる。例えば、本発明の組成物は、二軸押出機で270~310℃、または280~300℃の温度で成分を溶融ブレンドすることによって調製することができる。押出物は水浴中で直ちに急冷され、ペレット化される。このように調製されたペレットは、必要に応じて長さが1/4インチ以下であってもよい。このようなペレットは、その後の成型、造形、または成形に使用できる。
【0056】
この組成物を含む造形品、成形品、または成型品は、本開示の別の態様を表す。この組成物は、射出成形、押出成形、回転成形、ブロー成形および熱成形などの様々な方法によって、有用な造形品に成型することができる。物品のいくつかの例としては、電気自動車バッテリーモジュール、バッテリーハウジング、バッテリーケース、バッテリーセルフレーム、バッテリーセルスペーサー、バッテリーセルリテーナー、バッテリーパック絶縁フィルム、ブスバーホルダー、端子カバー、電気または電子部品、熱硬化性遮断器(thermoset circuit breaker)、電子写真複写機用の定着器ホルダー、太陽光発電ジャンクションボックス、太陽光発電コネクタ、電気コネクタ、自動車用電気コネクタ、継電器、充電カプラ、家電部品、自動車部品、ポータブルデバイス、モバイル部品、または固定電気部品(stationary electrical component)が挙げられる。一態様では、物品は、押出品、成型品、引抜成形品、熱成形品、発泡品、多層品の層、被覆品の基材、または金属化物品の基材である。一態様では、この組成物は、電気自動車バッテリー部品用の成型部品または押出部品に特に有用であり得る。例えば、組成物は、電気自動車バッテリー部品用の押出部品、例えば、電気自動車バッテリー部品用の絶縁シートまたはフィルムに使用することができる。
【0057】
バッテリー絶縁フィルムまたはシートは、本開示の別の態様を表す。バッテリー絶縁フィルムまたはシートは、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体および第1ポリ(フェニレンエーテル)を含むポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物5~40重量パーセント;アルケニル芳香族および共役ジエンの水添ブロック共重合体を含む衝撃改質剤1~15重量パーセント;有機リン酸エステル難燃剤5~20重量パーセント;補強充填剤3重量パーセント未満;リン酸三カルシウム0.5重量パーセント未満;ならびに第2ポリ(フェニレンエーテル)40~89重量パーセントを含む組成物から押し出され、各成分の重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。一態様では、押出成形したフィルムまたはシートは、23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、1.0ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.75ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.5ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.3ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;ならびに、23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.2ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0を有することもある。押出成形したフィルムまたはシートは、ASTM D648に従って1.82MPaの荷重を使用して3.2mm厚片で測定した場合に、115℃以上の熱たわみ温度、ならびにASTM D256に従って測定した場合に、240J/m以上のノッチ付アイゾッド衝撃強さを示し得る。バッテリー絶縁フィルムは、例えば50~1000マイクロメートルの厚さを有してもよい。
【0058】
本明細書に記載されるように、本発明者は、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体、アルケニル芳香族および共役ジエンの水添ブロック共重合体、有機リン酸エステル難燃剤、および第2ポリ(フェニレンエーテル)を特定量含む組成物が、特定の有利な特性を提供できることを予期せず発見した。特に薄手の成型品の場合、特に、高い耐熱性、高い衝撃強度、および低燃焼性の組み合わせが得られる。したがって、特にこの組成物から押出成形したバッテリーパック絶縁フィルムまたはシートに関する場合に、本開示によって顕著な改善が提供される。
【実施例】
【0059】
本開示は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは限定されるものではない。
【0060】
以下の実施例で使用した材料を表1に示す。
【0061】
【0062】
組成物は、Toshiba TEM-37BS二軸押出機を使用してコンパウンディングした。液体フィーダを介して添加したBPADP以外は、すべての成分を押出機(the extruded)の供給口で添加した。押出物を水浴中で冷却し、ペレット化した。射出成形または押出成形の前に、ペレットを120℃で3時間コンディショニングした。使用した加工パラメータを、表2に要約する。
【0063】
【0064】
試験品は、バレル温度290℃、300℃、300℃、および290℃(供給口からノズルまで)、および金型温度90℃で動作するToshiba UH1000-110射出成形機で射出成形した。
【0065】
成形品の特性は、以下の基準に従って試験した。
【0066】
g/10minの単位で表されるメルトフローレート値は、ASTM D1238-10、手順Bに従って、300℃の温度、および5キログラムの荷重で測定した。℃の単位で表される熱たわみ温度(HDT)は、ASTM D648に従って、3.2ミリメートルの厚さの荷重棒を使用して1.82MPaまたは0.45MPaで測定した。ジュール/メートルの単位で表されるノッチ付アイゾット衝撃(NII)強さの値は、ASTM D256-10メソッドAに従って、3.2ミリメートル×12.7ミリメートルの断面寸法の振り子を使用して23℃で測定した。ジュール/メートルの単位で表されるノッチなしアイゾット衝撃強さは、ASTM D4812に従って、3.2ミリメートル×12.7ミリメートルの断面寸法の振り子を使用して23℃で測定した。引張特性は、ASTM D638に従って、サンプル厚さ3.2ミリメートル、および試験速度5ミリメートル/分で測定した。
【0067】
加水分解安定性は、引張棒を85℃、および相対湿度85%の加水分解チャンバに1000時間置くことによって評価した。次いで、特性評価のためにサンプルをチャンバから取り出した。加水分解安定性は、引張弾性率および引張応力の保持によって評価した。引張弾性率および引張応力保持率が90%以上である場合、「良好」とみなした。引張弾性率または引張応力保持率の少なくとも一方が90%未満の場合、加水分解安定性は「不良」とみなした。
【0068】
グラム/立方センチメートル(g/cc)の単位で表される密度は、ASTM D-792またはISO1183-1、メソッドAに従って測定した。
【0069】
重量変化率として表される吸水率は、ASTM D-570またはISO62、メソッド4に従って測定した。
【0070】
射出成形品燃焼試験片の難燃性は、Underwriter’s Laboratory Bulletin 94「Tests for Flammability of Plastic Materials,UL94」、20mm垂直燃焼試験に従って測定した。試験前に、厚さ1.0、0.75、0.5、0.3、および0.2ミリメートルの燃焼試験片を、23℃、および相対湿度50%で少なくとも48時間、または70℃、および相対湿度50%で168時間コンディショニングした。UL94の20mm垂直燃焼試験では、10~20本の燃焼試験片のセットを試験した。各試験片について、試験片に10秒間接炎してから離し、試験片が自己消火するまでに要した時間(最初の接炎後時間t1)を記録した。次いで、再度10秒間接炎してから離し、試験片が自己消火するまでに要した時間(2回目の接炎後時間、t2)および赤熱後時間(アフターグロー時間、t3)を記録した。V-0の等級を達成するには、個々の試験片の接炎後時間t1およびt2が10秒以下でなければならず、5つの試験片すべての合計接炎後時間(5つの試験片すべてのt1+t2)が50秒以下でなければならず、個々の試験片の2回目の接炎後時間+アフターグロー時間(t2+t3)が30秒以下でなければならず、固定用クランプの位置まで燃焼するかまたは燃え上がる試験片があってはならず、また、綿の指標が炎の粒子または滴下物によって発火してはならない。V-1の等級を達成するには、個々の試験片の接炎後時間t1およびt2が30秒以下でなければならず、5つの試験片すべての合計接炎後時間(5つの試験片すべてのt1+t2)が250秒以下でなければならず、個々の試験片の2回目の接炎後時間+アフターグロー時間(t2+t3)が60秒以下でなければならず、固定用クランプの位置まで燃焼するかまたは燃え上がる試験片があってはならず、また、綿の指標が炎の粒子または滴下物によって発火してはならない。V-2の等級を達成するには、個々の試験片の接炎後時間t1およびt2が30秒以下でなければならず、5つの試験片すべての合計接炎後時間(5つの試験片すべてのt1+t2)が250秒以下でなければならず、個々の試験片の2回目の接炎後時間+アフターグロー時間(t2+t3)が60秒以下でなければならず、固定用クランプの位置まで燃焼するかまたは燃え上がる試験片があってはならないが、綿の指標が炎の粒子または滴下物によって発火してもよい。
【0071】
組成および特性を表3に要約する。各成分の量は、組成物の総重量に基づく重量パーセントで提供される。
【0072】
【0073】
表3に示すように、比較例1の組成物は、0.75mmでV0、0.5、0.3mm、および0.2mmでV2の難燃性を示した。比較例2の組成物は、比較例1と比べて改善されたHDTを示したが、燃焼性能の低下を示し、0.75mmでもV1の燃焼等級しか得られなかった。比較例3の組成物は、BPADP装填量の増加により改善された難燃性を示したが、HDTは比較例2と比較して低下した。したがって、比較組成物はいずれも厚さ0.75mm未満でV0の燃焼等級を達成できず、難燃性と耐熱性(例えば、HDT)との間の良好なバランスを達成することもできない。
【0074】
対照的に、実施例1~8の組成物はそれぞれ、望ましい特性の組み合わせを示した。最も注目すべきは、これらの組成物のそれぞれが、1.0、0.75、0.5、および0.3ミリメートルの厚さでV0の燃焼等級を達成したことである。それぞれPPE-Siを含有する実施例1~8の組成物は、0.3ミリメートルの厚さでV0の燃焼等級を達成し、実施例1~3の組成物はさらに、0.2ミリメートルの厚さでV0の燃焼等級を達成した。対照的に、比較例1~3の組成物は、0.5ミリメートル以下の厚さでV1またはV2の燃焼等級を達成した。高い難燃性に加えて、実施例1~8の組成物はまた、良好な耐加水分解性、耐熱性、および衝撃強度を示した。
【0075】
したがって、本開示の組成物は、0.3mm以下の厚さでV0の燃焼等級を提供することができ、薄壁用の燃焼等級と高い耐熱性との望ましいバランスを達成することができる。
【0076】
実施例1および2の組成物を、様々な既存の組成物とさらに比較した。結果を表4に要約する。比較例4の組成物は、SABICから入手した非臭素化、非塩素化の難燃性ポリフェニレンエーテル樹脂であるNORYL(商標)PX9406Pである。比較例5の組成物は、ITW FORMEXから入手した難燃性ポリカーボネートであるFORMEX(商標)CNDである。比較例6の組成物は、ITW FORMEXから入手した難燃性ポリプロピレンであるFORMEX(商標)GKである。
【0077】
これらの比較例について、UL94 VTM(薄手材料垂直燃焼性等級)に従って燃焼性をさらに評価した。サンプルは上記のように前処理した。VTM-0の等級を達成するには、個々の試験片の接炎後時間t1およびt2が10秒以下でなければならず、5つの試験片すべての合計接炎後時間(5つの試験片すべてのt1+t2)が50秒以下でなければならず、個々の試験片の2回目の接炎後時間+アフターグロー時間(t2+t3)が30秒以下でなければならず、固定用クランプの位置まで燃焼するかまたは燃え上がる試験片があってはならず、また、綿の指標が炎の粒子または滴下物によって発火してはならない。各組成物がVTM-0の等級を達成する厚さを表4に提示する。
【0078】
表4に示すように、既存の組成物は、薄壁用の難燃性、耐加水分解性および耐熱性の組み合わせを達成することができない。したがって、本開示の組成物は、顕著な改善をもたらす。
【0079】
【0080】
本開示は、以下の態様をさらに包含する。
【0081】
態様1:ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体および第1ポリ(フェニレンエーテル)を含むポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物5~40重量パーセント;アルケニル芳香族および共役ジエンの水添ブロック共重合体を含む衝撃改質剤1~15重量パーセント;有機リン酸エステル難燃剤5~20重量パーセント;補強充填剤3重量パーセント未満;リン酸三カルシウム0.5重量パーセント未満;ならびに第2ポリ(フェニレンエーテル)40~90重量パーセントを含む熱可塑性組成物であって、各成分の重量パーセントが、組成物の総重量に基づくことを特徴とする組成物。
【0082】
態様2:態様1に記載の組成物であって、前記第2ポリ(フェニレンエーテル)が、45~85重量パーセントの量で存在することを特徴とする組成物。
【0083】
態様3:態様1または2に記載の組成物であって、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリ(シロキサン)ブロック共重合体反応生成物および第2ポリ(フェニレンエーテル)が、組成物の総重量に基づいて、少なくとも70重量パーセント、または70~94重量パーセント、または75~85重量パーセントの総量で存在することを特徴とする組成物。
【0084】
態様4:態様1から3のいずれか1つに記載の組成物であって、組成物の成型サンプルが、23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、1.0ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.75ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.5ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.3ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;23℃で48時間、および70℃で168時間コンディショニングした後、0.2ミリメートルの試験片を使用して測定した場合に、UL-94燃焼性等級V0;ならびに場合により、ASTM D648に従って1.82MPaの荷重を使用して3.2mm厚片で測定した場合に、115℃以上の熱たわみ温度;ならびにASTM D256に従って測定した場合に、240J/m以上のノッチ付アイゾッド衝撃強さのいずれかまたは両方を示すことを特徴とする組成物。
【0085】
態様5:態様1から4のいずれか1つに記載の組成物であって、第1ポリ(フェニレンエーテル)が、ウベローデ粘度計を使用してクロロホルム中25℃で測定した場合に、0.25デシリットル/グラム超、または0.4~0.6デシリットル/グラムの固有粘度を有し、好ましくは、ポリ(フェニレンエーテル)が、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を含むことを特徴とする組成物。
【0086】
態様6:態様1から5のいずれか1つに記載の組成物であって、有機リン酸エステル難燃剤が、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビス-フェノールAビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジ2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、オリゴマーリン酸エステル、リン酸トリフェニル、またはこれらの組み合わせ、好ましくはビス-フェノールAビス-ジフェニルホスフェートを含むことを特徴とする組成物。
【0087】
態様7:態様1から6のいずれか1つに記載の組成物であって、水添ブロック共重合体が、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンを含むことを特徴とする組成物。
【0088】
態様8:態様1から7のいずれか1つに記載の組成物であって、0~15重量パーセントのホモポリスチレンまたは耐衝撃性ポリスチレンを含むことを特徴とする組成物。
【0089】
態様9:態様1から8のいずれか1つに記載の組成物であって、ガラス繊維を含まないことを特徴とする組成物。
【0090】
態様10:態様1から9のいずれか1つに記載の組成物であって、0.1~10重量パーセントの添加剤組成物をさらに含むことを特徴とする組成物。
【0091】
態様11:態様1に記載の組成物であって、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物8~28重量パーセント;第2ポリ(フェニレンエーテル)50~75重量パーセント;水添ブロック共重合体3~10重量パーセント;および有機リン酸エステル難燃剤7~15重量パーセントを含むことを特徴とする組成物。
【0092】
態様12:態様11に記載の組成物であって、ポリ(フェニレンエーテル)-ポリシロキサンブロック共重合体反応生成物および第2ポリ(フェニレンエーテル)が、組成物の総重量に基づいて、少なくとも75重量パーセントの総量で存在することを特徴とする組成物。
【0093】
態様13:態様1から12のいずれか1つ以上に記載の組成物を製造する方法であって、組成物の成分を溶融混合することを含むことを特徴とする方法。
【0094】
態様14:態様1から12のいずれか1つに記載の組成物を含む物品であって、好ましくは、電気自動車バッテリーモジュール、バッテリー絶縁シートまたはフィルム、バッテリーハウジング、バッテリーケース、バッテリーセルフレーム、バッテリーセルスペーサー、バッテリーセルリテーナー、ブスバーホルダー、端子カバー、電気または電子部品、充電器アダプター絶縁シートまたはフィルム、熱硬化性遮断器、電子写真複写機用の定着器ホルダー、太陽光発電ジャンクションボックス、太陽光発電コネクタ、電気コネクタ、自動車用電気コネクタ、継電器、充電カプラ、家電部品、自動車部品、ポータブルデバイス、モバイル部品、または固定電気部品であることを特徴とする物品。
【0095】
態様15:態様1から12のいずれか1つに記載の組成物から押出成形された電気自動車バッテリー部品であって、好ましくは電気自動車バッテリー絶縁シートまたはフィルムであることを特徴とする電気自動車バッテリー部品。
【0096】
組成物、方法、および物品は、本明細書に開示される任意の適切な材料、ステップ、または構成要素を選択的に含む、それらからなる、または本質的にそれらからなることができる。組成物、方法、および物品は、追加的または選択的に、組成物、方法、および物品の機能または目的の達成に必要でない、いかなる材料(または種)、ステップ、または成分も含まない、または実質的に含まないように配合することができる。
【0097】
本明細書に開示されるすべての範囲には端点が含まれており、端点は互いに独立して組み合わせることができる。「組み合わせ」には、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などが含まれる。「第1」、「第2」などの用語は、順序、数量、または重要性を示すものではなく、ある要素を別の要素と区別するために使用される。用語「a」、および「an」、および「the」は、数量の制限を示すものではなく、本明細書で別段に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「または」は、別段に明記されていない限り、「および/または」を意味する。本明細書全体にわたる「一態様」への言及は、その態様に関連して説明される特定の要素が本明細書に記載される少なくとも1つの態様に含まれ、他の態様には存在してもしなくてもよいことを意味する。本明細書に記載される任意の態様は、他の任意の態様と組み合わせることができる。本明細書では用語「これらの組み合わせ」は、列挙された要素のうちの1つ以上を含み、名称のない1つ以上の同様の要素の存在を許容するオープンなものである。さらに、記載された要素は、様々な態様において任意の好適な方法で組み合わせてもよいことを理解されたい。
【0098】
本明細書に別のものと明記されない限り、すべての試験規格は、本出願の出願日、または優先権が主張されている場合には、その試験規格が掲載される最も早い優先出願の出願日の時点で有効な最新の規格である。
【0099】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本出願が属する分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。引用されているすべての特許、特許出願、および他の参考文献は、その全体を本願に引用して援用する。しかしながら、本出願の用語が援用された参考文献の用語と矛盾または対立する場合は、本出願の用語が援用された参考文献の対立する用語よりも優先される。
【0100】
化合物は、標準命名法を使用して記述される。例えば、示されたいかなる基によっても置換されていない任意の位置は、示された結合または水素原子によってその原子価が満たされていると理解される。2つの文字または記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の結合点を示すために使用される。例えば、-CHOはカルボニル基の炭素を介して結合する。
【0101】
本明細書では、用語「ヒドロカルビル」は、それ自体で使用されるか、または別の用語の接頭語、接尾語、または断片として使用されるかにかかわらず、炭素および水素のみを含有する残基を指す。残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和、または不飽和であってもよい。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和、および不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含有することもできる。しかしながら、ヒドロカルビル残基が置換されていると記載されている場合、場合により、置換基残基の炭素および水素の成員に加えてヘテロ原子を含んでいてもよい。したがって、特に置換されていると記載されている場合、ヒドロカルビル残基はまた、1つ以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基などを含有することもあり、またはヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含有することもある。用語「アルキル」は、分枝鎖または直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、ならびにn-およびs-ヘキシルが挙げられる。「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の一価炭化水素基を意味する(例えば、エテニル(-HC=CH2))。「アルコキシ」は、酸素を介して結合したアルキル基(すなわち、アルキル-O-)を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、およびsec-ブチルオキシ基が挙げられる。「アルキレン」は、直鎖または分岐鎖の飽和二価脂肪族炭化水素基を意味する(例えば、メチレン(-CH2-)またはプロピレン(-(CH2)3-))。「シクロアルキレン」は、二価の環状アルキレン基、-CnH2n-xを意味し、式中、xは環化によって置換された水素の数である。「シクロアルケニル」は、1つ以上の環および環内に1つ以上の炭素-炭素二重結合を有し、すべての環員が炭素である一価の基を意味する(例えば、シクロペンチルおよびシクロヘキシル)。「アリール」は、特定の数の炭素原子を含有する芳香族炭化水素基を意味し、例えばフェニル、トロポン、インダニル、またはナフチルが挙げられる。「アリーレン」は、二価のアリール基を意味する。「アルキルアリーレン」は、アルキル基で置換されたアリーレン基を意味する。「アリールアルキレン」は、アリール基(例えば、ベンジル)で置換されたアルキレン基を意味する。接頭語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード置換基の1つ以上を含む基または化合物を意味する。異なるハロ原子(例えば、ブロモおよびフルオロ)の組み合わせ、またはクロロ原子のみが存在できる。接頭語「ヘテロ」は、化合物または基が、ヘテロ原子である少なくとも1つの環員(例えば、1、2、または3個のヘテロ原子)を含み、ヘテロ原子がそれぞれ独立してN、O、S、Si、またはPであることを意味する。「置換された」とは、化合物または基が、水素の代わりにそれぞれ独立して、C1~9アルコキシ、C1~9ハロアルコキシ、ニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、C1~6アルキルスルホニル(-S(=O)2-アルキル)、C6~12アリールスルホニル(-S(=O)2-アリール)、チオール(-SH)、チオシアノ(-SCN)、トシル(CH3C6H4SO2-)、C3~12シクロアルキル、C2~12アルケニル、C5~12シクロアルケニル、C6~12アリール、C7~13アリールアルキレン、C4~12ヘテロシクロアルキル、およびC3~12ヘテロアリールであり得る少なくとも1つ(例えば、1、2、3または4つ)の置換基で置換されていることを意味するが、ただし置換原子の通常の原子価を超えない。基内に示される炭素原子の数は、任意の置換基を除く。例えば、-CH2CH2CNは、ニトリルで置換されたC2アルキル基である。
【0102】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人または当業者が、現在予見しないかまたはできない代替案、変形、変更形態、改善案、および実質的均等物を考えつく可能性はある。したがって、出願され、修正される可能性がある添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての代替案、変形、変更形態、改善案、および実質的均等物を包含することを意図している。
【国際調査報告】