(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】マルチビームシステムにおける結像分解能の大域的および局所的最適化の方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/153 20060101AFI20241024BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20241024BHJP
H01J 37/147 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01J37/153 B
H01J37/09 Z
H01J37/147 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525165
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2022073756
(87)【国際公開番号】W WO2023072456
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021211965.4
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521126944
【氏名又は名称】カール ツァイス マルティセム ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】リーデセル クリストフ
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE03
5C101EE08
5C101EE22
5C101EE67
5C101EE69
5C101HH38
5C101HH53
5C101HH64
(57)【要約】
波面収差の決定および補償の改善された方法のために構成されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡が提供される。変更要素を用いて、波面収差振幅が間接的に決定され、正規化感度単位に変換される。本発明により、変更要素とは異なる補償要素を用いて波面収差を補償することが可能である。正規化感度単位は、例えば、改善された校正方法を決定され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
- 補償要素のアレイ(601)を含む、複数の1次荷電粒子ビームレット(3)を発生するためのマルチビーム発生ユニット(300)、
- 大域補償要素(603)、
- 変更要素(605)、
- 制御ユニット(800)、を備え、前記制御ユニット(800)が、
- 前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を設定点に調整すること、
- 前記変更要素(605)を用いて前記複数の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々の波面収差振幅を変更すること、
- 前記設定点における前記複数の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々の前記波面収差振幅A(j)を決定すること、
- 前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の前記波面収差振幅A(j)のフィールド依存性の大域成分AG1および残差成分Ares(j)を決定すること、
- 前記大域補償要素(603)によって前記大域成分AG1を補償すること、
- 補償要素の前記アレイ(601)によって前記残差成分Ares(j)を補償すること、
を行うように構成されている、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項2】
前記大域補償要素(603)が、少なくとも、複数の静電極または磁極の第1の層を含む多極要素であり、前記波面収差振幅の前記フィールド依存性の前記大域成分AG1が、前記大域補償要素(603)によって影響を受ける前記波面収差振幅の低次フィールド依存性に対応する、請求項1に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項3】
補償器構成要素の前記アレイ(601)が、少なくとも、複数のJ個のアパーチャ、および各アパーチャの周縁内に配置された複数の静電極を有する第1の層を含み、前記波面収差振幅の前記フィールド依存性の前記残差成分Ares(j)が、前記大域補償要素(603)を用いて補償され得ない、残差波面収差に対応する、請求項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項4】
前記制御ユニットが、前記変更要素(605)の前記変更によって決定された前記波面収差振幅を正規化感度単位に変換し、正規化感度単位での前記波面収差振幅の前記残差成分から補償要素の前記アレイ(601)のための複数の制御信号を決定するようにさらに構成されている、請求項1~3のいずれかに記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項5】
前記制御ユニットが、正規化感度単位での前記波面収差振幅の前記大域成分AG1から前記大域補償要素(603)のための制御信号を決定するように構成されている、請求項4に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項6】
前記変更要素(605)が前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の偏向走査器(110)または磁気補正要素(420)によって与えられる、請求項1~5のいずれかに記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項7】
前記変更要素(605)が前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の前記大域補償要素(603)と同一である、請求項1~4のいずれかに記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項8】
前記設定点が、前記像面(101)、補償器構成要素の前記アレイ(601)、前記大域補償要素(603)、および/または前記変更要素(605)の座標系の間の前記複数の1次荷電粒子ビームレット(1)の前記ラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を含み、前記制御ユニットが、前記補償要素(601、603)および/または前記変更要素(605)の間の前記波面収差の回転差を補償するように構成されている、請求項1~7のいずれかに記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項9】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数の波面収差振幅を決定する方法であって、
a)前記マルチビーム顕微鏡(1)を検査タスクの設定点に設定するステップと、
b)一連の少なくともSI=3個の変更制御信号SV(i=1…SI)を変更要素(605)に提供することによって複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差を変更し、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について各変更制御信号SV(i=1…SI)における複数のコントラスト値C(j,i)を測定するステップと、
c)前記複数のコントラスト値C(j,i)から、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について複数のコントラスト曲線C(j=1…J)を決定するステップと、
d)前記複数のコントラスト曲線C(j=1…J)から前記設定点における正規化感度単位での複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
ステップcが、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々についての前記i=1…SIのコントラスト値C(j,i)に対する放物線、双曲線、または多項式近似の計算を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
正規化感度単位での複数のJ個の波面振幅A(j)の各々が、最大コントラスト値maxC(j)における変更制御信号SV(maxC(j))を前記変更要素605の正規化範囲RVで除算したもの、および/または前記コントラスト曲線C(j)の放物線係数KV(j)のうちの少なくとも一方から決定される、請求項9~11のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記複数の1次荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも1本の前記像コントラストの所定の変更を達成するために必要とされる最大および最小制御信号SVを決定することによって、前記正規化範囲RVを決定するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
- 前記波面収差振幅を波面収差振幅ベクトルに変換するステップと、
- 前記波面収差振幅ベクトルへの回転行列Mの乗算によって、像面(101)、補償器構成要素のアレイ(601)、大域補償要素(603)、および/または前記変更要素(605)の座標系の間の前記複数の1次荷電粒子ビームレット(1)の前記ラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を考慮するステップと、
をさらに含む、請求項9~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
設定点におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数の波面収差を補償する方法であって、
a)正規化感度単位での複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)を受け取るステップと、
b)正規化感度単位での振幅の大域成分AG1を決定するステップであって、前記大域成分が大域補償要素(603)の前記複数のJ個の波面収差振幅A(j)の所定のフィールド依存性を有する、ステップと、
c)正規化感度単位での複数の残差波面振幅の残差成分Ares(j)を決定するステップと、
d)前記大域成分を大域補正信号GCSに変換するステップと、
e)前記残差成分を複数の局所補償信号LCS(j)に変換するステップと、
f)前記大域補正信号GCSを大域補償要素(603)に提供するステップと、
g)前記複数の局所補償信号LCS(j)を補償要素のアレイ(601)に提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
ステップa)が、前記複数のJ個の波面収差振幅A(j)を決定するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のJ個の波面収差振幅A(j)を決定する前記ステップが、
- 一連の少なくともSI=3個の変更制御信号SV(i=1…SI)を変更要素(605)に提供することによって、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の前記波面収差を変更するステップと、
- 前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について各変更制御信号SV(i=1…SI)における複数のコントラスト値C(j,i)を測定するステップと、
- 前記複数のコントラスト値C(j,i)から、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について複数のコントラスト曲線C(j=1…J)を決定するステップと、
- 前記複数のコントラスト曲線C(j=1…J)から正規化感度単位での複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)を決定するステップと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々についての前記i=1…SIのコントラスト値C(j,i)に対する放物線、双曲線、または多項式近似の計算をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
正規化感度単位での複数のJ個の波面振幅A(j)の各々が、最大コントラスト値maxC(j)における変更制御信号SV(maxC(j))を前記変更要素605の正規化範囲RVで除算したもの、および/または前記コントラスト曲線C(j)の放物線係数KV(j)のうちの少なくとも一方から決定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
- 前記波面収差振幅A(j)を波面収差振幅ベクトルに変換するステップと、
- 前記波面収差振幅ベクトルへの回転行列Mの乗算によって、前記設定点における、補償器構成要素のアレイ(601)、大域補償要素(603)、および/または前記変更要素(605)の間の前記複数の1次荷電粒子ビームレット(1)の前記ラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を考慮するステップと、
をさらに含む、請求項14~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
ステップd)において、前記大域補正信号GCSが、前記大域補償要素(603)の所定の正規化範囲RCの乗算によって、または前記大域補償要素(603)の所定の放物線感度パラメータKCから、正規化感度単位での前記振幅AG1から得られる、請求項14~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
ステップe)において、前記複数の局所補償信号LCS(j)が、前記補償器要素のアレイ(601)の前記補償器要素の各々の所定の正規化範囲RLの乗算によって、または前記補償要素のアレイ(601)の複数の所定の放物線感度パラメータKLC(j)から、正規化感度単位での前記複数の残差波面収差振幅Ares(j)から得られる、請求項14~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ステップa)が、検査タスクの間における前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の波面収差の監視をさらに含む、請求項14~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記監視が、前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡の所定のモデル、および2次的な間接監視パラメータに基づく、モデルベースの制御を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
検査タスクの間に受け取られた複数のデジタル像の像コントラストの前記監視と、像コントラストが所定の閾値を下回るときに、前記複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)の前記受け取りをトリガするステップと、をさらに含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
大域補償器(603)、または補償器要素のアレイ(601)の補償器要素、または変更要素(605)などの、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の荷電粒子光学要素を校正する方法であって、
- 一連の少なくともSI=3個の異なる制御信号SC(i=1…SI)を前記荷電粒子光学要素に提供することによって、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差を変更するステップと、
- 前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について各異なる制御信号SC(i=1…SI)における複数のコントラスト値C(j=1...J,i=1...SI)を測定するステップと、
- 前記複数のコントラスト値C(j,i)から、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について複数のコントラスト曲線C(j=1…J,SC)を決定するステップと、
- 極値maxC(j)、および前記コントラスト曲線C(j,SC)の各々の前記極値maxC(j)に対応する前記制御信号SC(maxC(j))を決定するステップと、
- 正規化感度単位での前記荷電粒子光学要素によって影響を受ける前記波面振幅A(j)の複数の変更を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項26】
正規化感度単位での前記波面振幅A(j)の前記複数の変更が、A(j)=SC(maxC(j))/RCによって得られ、ここで、RCは、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも1本についての前記像コントラストC(j)の所定の変更を達成するために必要とされる最大および最小制御信号SCの間の差に対応する、前記荷電粒子光学要素の正規化範囲である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
正規化感度単位での前記波面振幅A(j)の前記複数の変更が、前記極値max(C(j,SC))の近傍におけるコントラスト曲線C(j=1…J,SC)に対する近似の放物線定数KC(j)を用いて、A(j)=SIGN(j)*2KV(j)*SC(maxC(j))によって得られる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
正規化感度単位での前記荷電粒子光学要素の前記波面振幅A(j)の前記複数の変更を前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の制御ユニット(800)のメモリ内に記憶するステップをさらに含む、請求項25~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットの各ビームレットの波面収差を決定する方法であって、
- 前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットのうちの前記ビームレットの各々のために、前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の像面(101)内に波面検出パターン(61)を提供するステップであって、各波面検出パターン(61)が、異なる回転角αに配向された複数の繰り返し特徴(63)を含む、ステップと、
- NQ個の焦点ステップq=1…NQを有する焦点系列内で前記波面検出パターン(61)の複数の測定を遂行し、複数のコントラスト値C(j,q;α)を決定するステップと、
- 前記ビームレットj=1…Jの各々および前記回転角αの各々について、複数のコントラスト曲線C(j;α)を焦点位置の関数として近似するステップと、
- 前記コントラスト曲線C(j;α)の各々について前記最大値maxC(j;α)を導出するステップと、
- 互いに対して90°に配向された2つの繰り返し特徴(63)の2つの最大値maxC(j;α)およびmaxC(j;α-90)の2つの焦点位置の最大差から前記ビームレットの各々について偶数次の回転対称性を有する対称波面収差A(j)を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項30】
前記複数の繰り返し特徴(63)の各々の焦点にわたる複数の相対像変位dr(j;α)の決定、および焦点にわたる前記最大相対像変位dr(j;α)から前記ビームレットの各々について奇数次の回転対称性を有する非対称波面収差を決定するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチビーム荷電粒子システムに適用可能であり、特に、少なくとも、荷電粒子光学要素のアレイ、および大域的荷電粒子構成要素を備えるマルチビーム荷電粒子システムの動作のために適している。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの、より一層小さく、より緻密な微細構造の絶え間ない発展に伴って、微細構造の小寸法の製作および検査のためのプレーナ製作技術および検査システムのさらなる開発および最適化が必要とされている。半導体デバイスの開発および製作は、例えば、試験ウェーハの設計検証を必要とし、プレーナ製作技術は、信頼性のある高スループット製作のためのプロセス最適化を要する。加えて、近年では、半導体デバイスのリバースエンジニアリングおよびカスタマイズされた個々の構成のための半導体ウェーハの分析が必要とされる。したがって、高精度でのウェーハ上の微細構造の調査のための高スループット検査ツールが要求される。
【0003】
半導体デバイスの製造において用いられる典型的なシリコンウェーハは最大12インチ(300mm)の直径を有する。各ウェーハは、約最大800sq mmサイズの30~60個の繰り返し区域(「ダイ」)にセグメント化される。半導体デバイスは、プレーナ統合技術によってウェーハの表面上に層状に作製された複数の半導体構造を含む。関与する製作プロセスのゆえに、半導体ウェーハは、通例、平坦な表面を有する。集積半導体構造の特徴サイズは数μmから、5nmの限界寸法(CD:critical dimension)に及び、近い将来には、特徴サイズはさらに減少し、例えば、3nm未満、例えば、2nm、またはさらに1nm未満の特徴サイズまたは限界寸法(CD)になる。上述された小さい構造サイズを有しつつ、限界寸法のサイズの欠陥が短時間内に非常に大きい区域内で識別されなければならない。
【0004】
したがって、本発明は、開発の間、または製造の間の、あるいは半導体デバイスのリバースエンジニアリングのための、少なくとも限界寸法の分解能を有する集積半導体特徴の高スループット調査を可能にする、荷電粒子システム、および荷電粒子システムの動作方法を提供することを目的とする。また、ウェーハ上の特定の場所のセットのための、例えば、いわゆるプロセス制御監視(process control monitor)PCMまたは重要区域のみのための高分解能像を獲得することも可能である。
【0005】
荷電粒子顕微鏡(charged particle microscope)CPMの分野における近年の発展はマルチビーム荷電粒子顕微鏡である。例えば、米国特許第7,244,949(BB)号および米国特許第10,896,800(BB)号にマルチビーム荷電粒子ビーム顕微鏡が開示されている。マルチビーム走査型電子顕微鏡などの、マルチビーム荷電粒子顕微鏡内では、各電子ビームが、その次の隣り合った電子ビームから1~200マイクロメートルの距離だけ分離された、1次放射としての、例えば、4~10000本の電子ビームを含む、電子ビームレットのアレイによってサンプルが照射される。例えば、MSEMは、六角形アレイ上に配列された、100本の分離された電子ビームまたはビームレットを有し、電子ビームレットは約10μmの距離だけ分離されている。複数の1次荷電粒子ビームレットは、対物レンズによって、調査対象のサンプル、例えば、可動台上に載せられた、ウェーハチャック上に固定された半導体ウェーハの表面上に集束させられる。1次荷電粒子ビームレットによるウェーハ表面の照明の間に、1次荷電粒子ビームレットの焦点によって形成された複数の交点から、相互作用生成物、例えば、2次電子が発し、その一方で、相互作用生成物の量およびエネルギーはウェーハ表面の材料組成およびトポグラフィに依存する。相互作用生成物は複数の2次荷電粒子ビームレットを形成し、複数の2次荷電粒子ビームレットは対物レンズによって収集され、マルチビーム検査システムの投影結像系によって検出器平面に配置された検出器上へ案内される。検出器は、複数の検出ピクセルを各々含む複数の検出区域を含み、複数の2次荷電粒子ビームレットの各々についての強度分布を検出し、例えば、100μm x 100μmの像パッチが得られる。
【0006】
従来技術のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は一連の静電および磁気要素を備える。静電および磁気要素のうちの少なくとも一部は、複数の2次荷電粒子ビームの焦点位置および非点収差補正を調整するために調整可能である。一例として、米国特許第10535494号は、2次荷電粒子ビームレットの焦点の検出された強度分布が所定の強度分布から逸脱した場合の、荷電粒子顕微鏡の再調整を提案している。検出された強度分布が所定の強度分布に従う場合には、調整が達成される。2次荷電粒子ビームレットの強度分布の大域的変位または変形は、トポグラフィ効果、幾何形状、またはサンプルの傾き、またはサンプルの帯電効果に関する結論を導き出すことを可能にする。米国特許第9,336,982(BB)号は、2次荷電粒子を光に変換するためのシンチレータプレートを有する2次荷電粒子検出器を開示している。
【0007】
米国特許出願公開第20190355544号は、走査中のサンプルの帯電を補償するための調整可能投影システムを有するマルチビーム荷電粒子顕微鏡を開示している。したがって、投影システムは、サンプルから検出器への2次荷電粒子ビームレットの適切な結像を維持するための高速静電要素を有するように構成されている。従来技術のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、調整を促進するための検出システムを備える。
【0008】
一般的に、荷電粒子顕微鏡の結像設定を変化させることが望まれる。マルチビーム荷電粒子顕微鏡の像獲得設定を第1の結像設定から異なる第2の結像設定に変化させる方法が米国特許第9,799,485(BB)号によって説明されている。
【0009】
しかし、ウェーハ検査のための荷電粒子顕微鏡においては、高い信頼性および高い繰り返し精度をもって結像分解能を達成することが望まれる。マルチビームシステムを用いる場合、像は、個々の像セグメントを各々形成する、複数の個々の荷電粒子ビームレットによって得られる。像面湾曲の補償後でさえも、個々のビームレットを用いて結像された各像セグメントは、対応するビームレットのビーム品質に依存する、特定の分解能をもって得られる。各像セグメントの分解能は所定の結像分解能から逸脱し得、例えば、それらは分解能要求の閾値を超えることがあり、各像セグメント内の分解能は異なるビームレットごとに異なり得る。これは(大域)照明システムのフィールド依存性収差によって引き起こされ得る。加えて、マルチビームシステムの分解能は経時的に変化していくか、または調査対象の物体の検査部位に依存し得る。特に、マルチビームシステムの結像分解能は各ビームレットの個々の収差によって劣化させられ得る。
【0010】
本発明の課題は、高信頼性での高精度および高分解能の像獲得を可能にするための手段を有するマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することである。本発明の1つの課題は、複数の1次荷電粒子ビームレットの各々について各像セグメントの分解能を監視し、制御するための手段を有するマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することである。本発明のさらなる課題は、一連の像パッチの高信頼性での像獲得の間における高分解能および高像コントラストを維持するための手段を有するマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することである。
【0011】
概して、本発明の課題は、複数の荷電粒子ビームレットによって得られた複数の像セグメントにわたる高信頼性での高精度および高分解能の像獲得を可能にするための手段を有するウェーハ検査のためのマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することである。本発明のさらなる課題は、マルチビームシステムの各ビームレットの個々の収差を監視し、補償し、ビームレットごとに、等しく補正された無収差結像条件を提供することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の実施形態は、複数の1次荷電粒子ビームレットの波面収差の決定および補償のために構成された、少なくとも1つの大域補償器、および補償器のアレイ要素を備えるマルチビーム荷電粒子顕微鏡によって本発明の目的を解決する。本発明は、複数の1次荷電粒子ビームレットの各々の複数の波面収差を決定するための方法を提供する。本発明は、さらに、複数の1次荷電粒子ビームレットの各々の複数の波面収差を補償するための方法を提供する。本発明は、さらに、ウェーハ検査タスクの間における複数の1次荷電粒子ビームレットの各々の複数の波面収差の監視方法を提供する。したがって、本発明は、複数の1次荷電粒子ビームレットの各々の低い収差をもってマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法を提供する。本発明に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法を用いることで、検査タスクはウェーハ検査タスクの高スループットの要求および分解能の要求に適合する。
【0013】
本発明は、さらに、高スループットおよび低収差をもってマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法を遂行するように構成されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を提供する。本発明に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の1次荷電粒子ビームレットの各々の波面収差の補償のための複数の補償器を含む、補償器のアレイ要素を備える。本発明に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡は変更要素または大域補償器のうちの少なくとも一方をさらに備える。1次荷電粒子ビームレットの少なくともサブセットの波面収差は、変更要素、大域補償器、または補償器のアレイ要素のうちの少なくとも1つによる1次荷電粒子ビームレットの少なくともサブセットのビーム形状の変更によって決定される。本発明の一態様によれば、補償器のアレイ要素、大域補償器、および/または変更要素の感度は正規化感度単位で決定される。正規化感度単位での波面収差から、制御信号が波面収差の補償のために正規化感度単位で計算される。制御信号は大域補償器および/または補償器のアレイ要素に提供される。正規化感度単位での波面誤差および制御信号の決定により、第1の要素を用いて波面誤差を決定し、第1の要素とは異なる第2の要素を用いて波面誤差を補償することが可能である。第1の要素は、補償器のアレイ要素、大域補償器、または変更要素のうちの任意のものであり得る。第2の要素は、補償器のアレイ要素、大域補償器、またはその両方を含むことができる。正規化感度単位での波面誤差および制御信号の決定により、ウェーハ検査タスクの高スループット要求のための波面収差の高速補償が可能である。正規化感度単位での波面収差の改善された決定により、波面収差はより高い精度をもって最小限に抑えられ、より高い分解能およびより高い結像コントラストなどの、より高い結像性能が達成される。さらに、複数の1次荷電粒子ビームレット全体にわたる波面収差の変動が最小限に抑えられる。
【0014】
第1の実施形態では、本発明に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡が説明される。マルチビーム荷電粒子システムは、少なくとも、荷電粒子光学要素のアレイと、大域要素と、を備える。対物レンズまたはビーム分割器などの大域荷電粒子要素は収差の第1の発生源である。荷電粒子光学要素のアレイ、またはアレイ光学要素は収差の第2の発生源である。本発明に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の1次荷電粒子ビームレットの各々の波面収差の補償のための複数の補償器を含む、補償器のアレイ要素と、変更または大域補償器要素のうちの少なくとも一方と、を備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の1次荷電粒子ビームレットの複数の波面収差を短時間で決定し、監視し、補償する方法を遂行するように構成された、メモリおよびプロセッサを有する制御ユニットをさらに備える。制御ユニットは、正規化感度単位での変更要素、大域補償器、または補償器のアレイ要素のうちの少なくとも1つの変更による1次荷電粒子ビームレットの少なくともサブセットのビーム形状の変更によって波面収差を導出するように構成されている。制御ユニットは、正規化感度単位で波面誤差を補償するための制御信号を導出し、制御信号を大域補償器要素および/または補償器のアレイ要素に提供するように構成されている。
【0015】
一例では、本発明のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の1次荷電粒子ビームレットのビーム経路を複数の2次電子ビームレットのビーム経路から分割するためのビーム分割器と、複数の2次電子ビームレットを検出するための検出システムと、をさらに備える。検出システムは、複数の2次電子ビームレットを検出器上に結像するための投影結像系を含む。制御ユニットは、変更要素、大域補償器要素、および/または補償器のアレイ要素のうちの1つを用いて複数の1次荷電粒子ビームレットの少なくともサブセットの波面誤差を変化させる、または変更するように構成されている。検出器により、複数の像系列が得られ、制御ユニットは、複数の像系列から複数の1次荷電粒子ビームレットの少なくともサブセットの複数の波面誤差を導出するように構成されている。これにより、制御ユニットは、複数の波面誤差に係る複数の像系列のデータ分析からの結果を正規化感度単位に変換するように構成されている。制御ユニットは、正規化感度単位での複数の1次荷電粒子ビームレットのうちの全ての波面誤差の補償のための制御信号を導出するようにさらに構成されている。制御ユニットは、制御信号を大域補償器要素および/または補償器のアレイ要素のうちの少なくとも一方に提供するように構成されている。大域補償器要素および/または補償器のアレイ要素は、1次荷電粒子ビームレットの波面収差を、個々に、または合同で補償するように構成されている。したがって、個々の補償要素ごとの制御信号は、校正伝達曲線のオフセットおよび傾きのような所定の校正パラメータを用いて校正される。
【0016】
第1の実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)を発生するためのマルチビーム発生ユニット(300)を備える。それは、補償要素のアレイ(601)、大域補償要素(603)、および/または変更要素(605)をさらに備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の制御ユニット(800)は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を設定点に調整すること、および変更要素(605)を用いて各々または複数の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差振幅を変更すること、を行うように構成されている。それは、設定点における各々または複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差振幅A(j)を決定すること、ならびに複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差振幅A(j)のフィールド依存性の第1もしくは大域成分AG1および第2もしくは残差成分Ares(j)を決定すること、を行うようにさらに構成されている。制御ユニット(800)は、制御信号を大域補償要素(603)に提供することによって大域成分AG1を補償すること、および複数の制御信号を補償要素のアレイ(601)に提供することによって残差成分Ares(j)を補償すること、を行うようにさらに構成されている。大域補償要素(603)は、少なくとも、複数の静電極または磁極の第1の層を含む多極要素であることができ、波面収差振幅のフィールド依存性の大域成分AG1は、大域補償要素(603)によって影響を受ける波面収差振幅の低次フィールド依存性に対応する。補償器構成要素のアレイ(601)は、少なくとも、複数のJ個のアパーチャ、および各アパーチャの周縁内に配置された複数の静電極を有する第1の層を含み、波面収差振幅のフィールド依存性の残差成分Ares(j)は、大域補償要素(603)を用いて補償され得ない、残差波面収差に対応する。制御ユニットは、変更要素(605)の変更によって決定された波面収差振幅を正規化感度単位に変換し、正規化感度単位での波面収差振幅の残差成分から補償要素のアレイ(601)のための複数の制御信号を決定するようにさらに構成されている。マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の制御ユニット(800)は、正規化感度単位での波面収差振幅の大域成分AG1から大域補償要素(603)のための制御信号を決定するようにさらに構成され得る。変更要素(605)は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の偏向走査器(110)または磁気補正要素(420)によって与えられ得るが、別の例では、変更要素(605)はマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の大域補償要素(603)と同一であることもできる。また、波面収差振幅AG1およびAG2に対応する異なる低次フィールド依存性を有する、複数の、例えば、2つの変更要素、ならびに複数の、例えば、2つの大域補償要素が存在することもできる。使用中に、設定点は設計設定点から逸脱し得、磁界内における1次荷電粒子ビームレットの回転のゆえに、設定点は、像面(101)、補償器構成要素のアレイ(601)、大域補償要素(603)、および/または変更要素(605)の座標系の間の複数の1次荷電粒子ビームレット(1)のラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を含み得る。したがって、制御ユニットは、補償要素(601、603)および/または変更要素(605)の間の波面収差の回転差を補償するように構成されている。
【0017】
本発明の第2の実施形態では、正規化感度単位での複数の1次荷電粒子ビームレットの各々の複数の波面収差を決定するための方法が提供される。本方法によれば、複数の1次荷電粒子ビームレットの少なくともサブセットの複数の波面収差が決定される。一例では、各ビームレットの個々の波面収差は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の変更要素による各ビームレットのビーム特性の変更によって決定される。本方法は波面誤差への第1および第2の寄与の決定を含む。第1の寄与は複数の1次荷電粒子ビームレットの波面誤差の関数依存性に対応する。
【0018】
第2の実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数の波面収差振幅を決定する方法では、まず、マルチビーム荷電粒子顕微鏡を第1の検査タスクの設定点に調整または設定する。第2のステップでは、一連の少なくともSI=3個の異なる変更制御信号SV(i=1…SI)を変更要素(605)に提供することによって、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差を変更し、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について各変更制御信号SV(i=1…SI)における複数のコントラスト値C(j,i)を測定する。複数のコントラスト値C(j,i)から、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について複数のコントラスト曲線C(j=1…J)を決定する。複数のコントラスト曲線C(j=1…J)から設定点における正規化感度単位での複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)を導出する。本方法は、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々についてのi=1…SIのコントラスト値C(j,i)に対する放物線、双曲線、または多項式近似の計算を含む。第1の例では、正規化感度単位での複数のJ個の波面振幅A(j)の各々は、最大コントラスト値maxC(j)における変更制御信号SV(maxC(j))を変更要素605の正規化範囲RVで除算したものから決定される。本方法は、複数の1次荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも1本の像コントラストの所定の変更を達成するために必要とされる最大および最小制御信号SVを決定することによって、正規化範囲RVを決定するステップをさらに含むことができる。第2の例では、正規化感度単位での複数のJ個の波面振幅A(j)の各々は、コントラスト曲線C(J)の局所的最大値または最小値の近傍におけるコントラスト曲線C(j)の放物線係数KV(j)から決定される。
【0019】
本方法は、波面収差振幅の、波面収差振幅ベクトルへの変換をさらに含むことができる。使用中に、設定点は設計設定点から逸脱し得、磁界内における1次荷電粒子ビームレットの回転のゆえに、設定点は、像面(101)、補償器構成要素のアレイ(601)、大域補償要素(603)、および/または変更要素(605)の座標系の間の複数の1次荷電粒子ビームレット(1)のラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を含み得る。第2の実施形態に係る方法の一例では、波面収差振幅ベクトルへの回転行列Mの乗算によって、像面(101)、補償器構成要素のアレイ(601)、大域補償要素(603)、および/または変更要素(605)の座標系の間の複数の1次荷電粒子ビームレット(1)のラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を考慮し得る。
【0020】
本発明の第3の実施形態では、複数の1次荷電粒子ビームレットの各々の複数の波面収差を補償するための方法が提供される。
【0021】
大域補償器または補償器のアレイ要素により、複数の1次荷電粒子ビームレットの各々の波面収差は最小限に抑えられる。設定点におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数の波面収差を補償する方法は、正規化感度単位での複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)を受け取るステップを含む。それは、正規化感度単位での振幅の大域成分AG1を決定するステップをさらに含み、大域成分は大域補償要素(603)の複数のJ個の波面収差振幅A(j)の所定のフィールド依存性を有する。それは、正規化感度単位での複数の残差波面振幅の残差成分Ares(j)を決定するステップをさらに含む。それは、大域成分を大域補正信号GCSに変換するステップと、残差成分を複数の局所補償信号LCS(j)に変換するステップと、をさらに含む。大域補正信号GCSを大域補償要素(603)に提供し、複数の局所補償信号LCS(j)を補償要素のアレイ(601)に提供する。一例では、第3の実施形態に係る方法は、複数のJ個の波面収差振幅A(j)を決定するステップを含む。決定するステップは、本発明の第2の実施形態の方法に従って遂行され得る。
【0022】
実施形態において示されるように、異なる正規化感度単位、例えば、範囲RVまたはRCにおけるスケーリング、または放物線感度定数KVおよびKCに従うスケーリングも可能である。正規化感度単位での他のスケーリングも可能である。決定ステップにおいて、および補償ステップにおいて適用されるべき正規化感度単位の一貫した選択により、決定ステップからの測定値を補償ステップへ直接伝達することが可能であり、大域補償器(603)からの補償信号を補償要素のアレイ(601)の補償器要素へ伝達することが可能である。
【0023】
本発明の第4の実施形態では、複数の1次荷電粒子ビームレットの複数の波面収差を監視するための方法が提供される。第4の実施形態によれば、方法は、検査タスクの間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の波面収差の監視を含む。監視は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の所定のモデル、および2次的な間接監視パラメータに基づく、モデルベースの制御によって遂行され得る。モデルベースの制御を利用する方法は、所定のモデルに従って予測された像コントラストが所定の閾値を下回るときに、第2の実施形態に係る複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)の決定をトリガすることができる。監視は、検査タスクの間に受け取られた複数のデジタル像の像コントラストの監視、および像コントラストが所定の閾値を下回るときに、複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)の受け取りをトリガすることを含むことができる。
【0024】
本発明の第5の実施形態では、複数の1次荷電粒子ビームレットの波面収差の正規化感度単位を決定し、校正する方法が提供される。
【0025】
第5の実施形態の第1の例によれば、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の荷電粒子光学要素を校正する方法は、(a)一連の少なくともSI=3個の異なる制御信号SC(i=1…SI)を荷電粒子光学要素に提供することによって、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差を変更するステップと、(b)複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について各異なる制御信号SC(i=1…SI)における複数のコントラスト値C(j=1...J,i=1...SI)を測定するステップと、(c)複数のコントラスト値C(j,i)から、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について複数のコントラスト曲線C(j=1…J,SC)を決定するステップと、(d)極値maxC(j)、およびコントラスト曲線C(j,SC)の各々の極値maxC(j)に対応する制御信号SC(maxC(j))を決定するステップと、(e)正規化感度単位での荷電粒子光学要素によって影響を受ける波面振幅A(j)の複数の変更を決定するステップと、を含む。荷電粒子光学要素は、大域補償器(603)、または補償器要素のアレイ(601)の補償器要素、あるいは変更要素(605)などの、任意の要素であり得る。一例では、波面振幅A(j)の複数の変更は、A(j)=SC(maxC(j))/RCによって正規化感度単位で得られ、ここで、RCは、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも1本についての像コントラストC(j)の所定の変更を達成するために必要とされる最大および最小制御信号SCの間の差に対応する、荷電粒子光学要素の正規化範囲である。別の例では、波面振幅A(j)の複数の変更は、極値max(C(j,SC))の近傍におけるコントラスト曲線C(j=1…J,SC)に対する近似の放物線定数KC(j)を用いて、A(j)=SIGN(j)*2KV(j)*SC(maxC(j))によって正規化感度単位で得られる。正規化感度単位の両方の例は等価的なものであるが、例えば、決定および補償のための本発明の第3の実施形態の選択に従って、1つの正規化方法を一貫して選択することが必要とされる。その後、荷電粒子光学要素の波面振幅A(j)の複数の変更をマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の制御ユニット(800)のメモリ内に正規化感度単位で記憶する。
【0026】
第2の例示的な第5の実施形態によれば、絶対単位での波面収差を決定する方法が与えられる。複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットの各々のために、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の像面(101)内に波面検出パターン(61)を提供する。各波面検出パターン(61)は、異なる回転角αに配向された複数の繰り返し特徴(63)を含む。NQ個の焦点ステップq=1…NQを有する焦点系列内で波面検出パターン(61)の複数の測定を遂行し、複数のコントラスト値C(j,q;α)を決定する。ビームレットj=1…Jの各々および回転角αの各々について、複数のコントラスト曲線C(j;α)を焦点位置の関数として近似し、コントラスト曲線C(j;α)の各々について最大値maxC(j;α)を決定する。互いに対して90°に配向された2つの繰り返し特徴(63)の2つの最大値maxC(j;α)およびmaxC(j;α-90)の2つの焦点位置の最大差からビームレットの各々について偶数次の回転対称性を有する対称波面収差A(j)を決定する。偶数次の回転対称性を有する対称波面収差A(j)は、例えば、非点収差によって与えられる。本方法は、複数の繰り返し特徴(63)の各々の焦点にわたる複数の相対像変位dr(j;α)の決定をさらに含み得る。複数の相対像変位dr(j;α)から、ビームレットの各々について奇数次の回転対称性を有する非対称波面収差を導出することができる。奇数次の回転対称性を有する非対称波面収差は、例えば、コマであり得る。
【0027】
以下の説明から、添付の図面と併せて、本開示の実施形態の他の利点が明らかになるであろう。しかし、本発明は実施形態および例に限定されず、それらの変形、組み合わせ、または変更も含む。本明細書の考慮および本明細書において開示された本発明の実施から、本発明の他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。例えば、本出願において規定される、装置、および方法の使用は、荷電粒子としての電子ビームの使用に限定されない。むしろ、任意の粒子ビームが用いられ得る。代替的な粒子ビームの例は、イオンビーム、金属ビーム、分子ビームである。さらに、本発明の適用は半導体ウェーハの検査に限定されず、概して、リソグラフィマスクを含む、半導体製造に関与する物体またはサンプルに適用可能である。それゆえ、単語「ウェーハ」は半導体ウェーハに限定されず、ウェーハプリントのためのリソグラフィマスクを含むものとする。しかし、本発明は、フォトニック結晶およびメタマテリアルなどを含む、他のナノ構造物体、ならびに生体組織および鉱物の調査にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1の実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡を示す図である。
【
図2】マルチビーム荷電粒子顕微鏡のラスタ構成、および検査タスクの像パッチを示す図である。
【
図3】焦点距離zにわたる非点収差電子ビームレットの形状および対応するコントラスト曲線を示す図である。
【
図5】六角形ラスタ構成41における複数の1次荷電粒子ビームレット3の正規化単位での波面収差振幅のフィールド依存性を示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る波面振幅の決定の方法を示す図である。
【
図7】変更要素605の制御パラメータSVの変化をにわたるコントラスト曲線を示す図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る補償の方法を示す図である。
【
図9】補償要素のアレイ601および大域補償要素603の制御パラメータSCの変化にわたるコントラスト曲線を示す図である。
【
図10】波面収差振幅の測定のための試験パターンの一例を示す図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態に係る共通感度単位での波面収差振幅を決定し、校正する方法を示す図である。
【
図12】共通感度単位での波面収差振幅を決定し、校正する方法によって得られた典型的なコントラスト曲線を示す図である。
【
図13】共通感度単位での波面収差振幅を決定し、校正する方法によって得られた、重心の典型的な曲線を示す図である。
【
図14】マルチビーム荷電粒子顕微鏡の設定点における座標系の回転の一例を示す図である。
【
図15】既定の設定点からの逸脱に従う座標系の回転の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付の図面に例が示された、例示的な実施形態を詳細に参照する。説明全体を通じて、異なる図面における同じ符号は、別途示されない限り、同じまたは同様の要素を表す。図において使用される記号は図示の構成要素の物理的構成を表さず、それらのそれぞれの機能性を記号的に示すために選定されていることに留意されたい。
【0030】
図1の概略図は、本発明の第1の実施形態に係るマルチビームレット荷電粒子顕微鏡1の基本的特徴および機能を示す。図示のシステムの種類は、対物レンズ102の物体面101内に配置されたウェーハなどの、物体7の表面上に複数の1次荷電粒子ビームスポット5を発生するための複数の1次電子ビームレット3を用いる走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)のものである。簡潔にするために、5本の1次荷電粒子ビームレット3および5つの1次荷電粒子ビームスポット5のみが示されている。
【0031】
顕微鏡システム1は、物体照射ユニット100と、検出ユニット200と、1次荷電粒子ビーム経路13から2次荷電粒子ビーム経路11を分離するためのビーム分割器ユニット400と、を備える。物体照射ユニット100は、複数の1次荷電粒子ビームレット3を発生するための荷電粒子マルチビームレット発生器300を含み、1次荷電粒子ビームレット3を、ウェーハ7の表面25がサンプル台500によって配置される、物体面101内に集束させるように適合されている。サンプル台500は台移動コントローラを含み、台移動コントローラは、制御信号によって独立して制御されるように構成された複数のモータを含む。台移動コントローラは制御ユニット800に接続されている。
【0032】
1次ビームレット発生器300は複数の1次荷電粒子ビームレットスポット311を、通例、物体照射ユニット100の像面湾曲を補償するための球状に湾曲した表面である、中間像面321内に生成する。1次ビームレット発生器300は、1次荷電粒子、例えば、電子の供給源301を含む。1次荷電粒子供給源301は、例えば、コリメートビームを形成するようコリメートレンズ303.1および303.2によってコリメートされる、発散1次荷電粒子ビーム309を放射する。コリメートレンズ303.1および303.2は、通常、1つまたは複数の静電または磁気レンズから成るか、あるいは静電および磁気レンズの組み合わせによるものである。コリメートされた1次荷電粒子ビームは1次マルチビームレット形成ユニット305に入射する。マルチビームレット形成ユニット305は、基本的に、1次荷電粒子ビーム309によって照明される第1のマルチアパーチャプレート306.1を含む。第1のマルチアパーチャプレート306.1は、複数の1次荷電粒子ビームレット3の発生のためのラスタ構成による複数のアパーチャを含み、ビームレット3は、複数のアパーチャを通したコリメートされた1次荷電粒子ビーム309の透過によって発生される。マルチビームレット形成ユニット305は、少なくとも、ビーム309内の電子の運動方向に対して、第1のマルチアパーチャプレート306.1の下流に配置されたさらなるマルチアパーチャプレート306.2を含む。例えば、第2のマルチアパーチャプレート306.2はマイクロレンズアレイの機能を有し、好ましくは、中間像面321内の複数の1次ビームレット3の焦点位置が調整されるよう規定の電位に設定される。マルチビームレット形成ユニット305は、複数のビームレット3の各々に個々に影響を及ぼすための複数のアパーチャの各々のための個々の静電要素を含む、補償器のアレイ要素601をさらに含む。補償器のアレイ要素601は、1次荷電粒子ビームレットの各々の波面収差を個々に補償するように構成された、非点収差補正器アレイを形成するための、多極電極、または多極電極の系列などの静電要素を有する1つまたは複数のマルチアパーチャプレートから成る。マルチビームレット形成ユニット305は、本例では、マルチビームレット形成ユニット305の第2のマルチアパーチャプレート306.2である、出射マルチアパーチャプレートの複数のアパーチャ内に界浸フィールドを形成する第1の界浸フィールドレンズ307を用いて構成されている。第1の界浸フィールドレンズ307、第2のフィールドレンズ308、および第2のマルチアパーチャプレート306.2により、複数の1次荷電粒子ビームレット3は中間像面321内またはその近傍に集束させられる。
【0033】
中間像面321内またはその近傍に、複数の荷電粒子ビームレット3の各々を個々に偏向させる能力を有する静電偏向器を有する複数のアパーチャを有するビームステアリングマルチアパーチャプレート390が配置されている。ビームステアリングマルチアパーチャプレート390のアパーチャは、たとえ、1次荷電粒子ビームレット3の焦点スポットがそれらの設計位置から逸脱する場合でも、複数の1次荷電粒子ビームレット3の通過を可能にするために、より大きい直径を有するように構成されている。1次荷電粒子供給源301、および能動マルチアパーチャプレート機構306.1…306.3、およびビームステアリングマルチアパーチャプレート390は、制御ユニット800に接続された、1次ビームレット制御モジュール830によって制御される。
【0034】
中間像面321を通過する1次荷電粒子ビームレット3の複数の焦点は、フィールドレンズ103.1および103.2ならびに対物レンズ102によって、ウェーハ7の表面がサンプル台500によって位置決めされる、像面101内に結像される。物体照射システム100は、複数の荷電粒子ビームレット3がビーム伝搬方向の方向(ここではz方向)と垂直な方向に偏向させられ得る第1のビームクロスオーバ108の近傍の偏向系110を含む。偏向系110は制御ユニット800に接続されている。対物レンズ102および偏向系110は、ウェーハ表面25と垂直であるマルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の光軸105に中心を有する。像面101内に配置されたウェーハ表面25は、その後、偏向系110を用いてラスタ走査される。これにより、ラスタ構成で配置された複数のビームスポット5を形成する、複数の1次荷電粒子ビームレット3は表面25にわたって同期的に走査される。一例では、複数の1次荷電粒子3の焦点スポット5のラスタ構成は約100本以上の1次荷電粒子ビームレット3の六角形ラスタである。1次ビームスポット5は、距離、約6μm~15μm、ならびに5nm未満、例えば、3nm、2nm、またはさらにそれ未満の直径を有する。一例では、ビームスポットサイズは約1.5nmであり、2つの隣接したビームスポットの間の距離は8μmである。本発明の第1の実施形態の第1の例に係る物体照射ユニット100は偏向走査器110の近傍の大域補償要素603をさらに含む。大域補償要素603は、複数の1次荷電粒子ビームレットの波面収差を補償するか、またはそれに影響を及ぼすべく磁界を発生するための6個、8個、またはそれを超える個々にアドレス指定可能な極を有する磁気要素として構成され得る。大域補償要素603は、単一の要素によって、または順次に配置された少なくとも2つの多極要素によって構成され得る。大域補償要素603は、本発明の方法に係る1次ビームレット制御モジュールによって制御され、後述する。第1の実施形態の第2の例では、物体照射ユニット100は、複数の1次荷電粒子ビームレット3の少なくともサブセットの波面収差を変更するように構成された変更要素605を含む。変更要素605は、
図1に示されるとおりの、追加の変更要素605に限定されず、例えば、磁気補正要素420、偏向ユニット110、または大域補償要素603によって実現され得る。
図605の例では、変更要素605は磁気補正要素420の近傍に配置されているが、例えば、ビーム偏向ユニット110の近傍、磁気対物レンズ102の極要素の内部、または大域補償要素603の近傍の、他の位置も可能である。
【0035】
複数の1次ビームスポット5の各々の各走査位置において、複数の2次電子がそれぞれ発生され、1次ビームスポット5と同じラスタ構成による複数の2次電子ビームレット9を形成する。各ビームスポット5において発生される2次荷電粒子の量(plurality)または強度は、対応するスポット5を照明する、衝突する1次荷電粒子ビームレット3の強度、ビームスポットの下の物体の材料組成およびトポグラフィに依存する。2次荷電粒子ビームレット9は、サンプル帯電ユニット503によって発生された静電界によって加速され、対物レンズ102によって収集され、ビーム分割器400によって検出ユニット200に向けられる。検出ユニット200は2次電子ビームレット9を像センサ207上に結像し(images)、複数の2次荷電粒子像スポット15をそこに形成する。検出器は複数の検出器ピクセルまたは個々の検出器を含む。複数の2次荷電粒子ビームスポット15の各々について、強度が別個に検出され、ウェーハ表面の材料組成が高スループットをもって大きい像パッチのために高分解能で検出される。例えば、8μmのピッチを有する10 x 10のビームレットのラスタの場合、偏向系110による1回の像走査を用いて、およそ88μm x 88μmの像パッチが、例えば2nmの像分解能をもって、生成される。像パッチは、例えば2nmのビームスポットサイズの半分をもって、それゆえ、ビームレットごとに像ライン当たり8000ピクセルのピクセル数をもってサンプリングされ、これにより、100本のビームレットによって生成される像パッチは6.4ギガピクセルを含む。像データは制御ユニット800によって収集される。例えば、並列処理を用いる、像データの収集および処理の詳細が、本明細書において参照により組み込まれる、独国特許出願第102019000470.1号および米国特許第9,536,702(BB)号に記載されている。
【0036】
複数の2次電子ビームレット9は第1の偏向系110を通過し、第1の走査系110によって走査偏向させられ、ビーム分割器ユニット400によって、検出ユニット200の2次ビーム経路11をたどるように案内される。複数の2次電子ビームレット9は1次荷電粒子ビームレット3と反対の方向に進んでいき、ビーム分割器ユニット400は、通常、磁界、あるいは磁界および静電界の組み合わせを用いて2次ビーム経路11を1次ビーム経路13から分離するように構成されている。磁気補正要素420が、1次ビーム経路13、および任意選択的に、また、2次ビーム経路11内に存在する。検出ユニット200の投影システム205は、投影システム制御ユニット820に接続された、少なくとも第2の偏向系222をさらに含む。制御ユニット800は、複数の集束させられた2次電子スポット15の位置が像センサ207において一定に保たれるよう、複数の2次電子ビームレット9の複数の焦点15の位置の残差を補償するように構成されている。
【0037】
検出ユニット200の投影システム205は、少なくとも、複数の2次電子ビームレット9の第2のクロスオーバ212を含み、第2のクロスオーバ212内に、アパーチャ214が配置されている。一例では、アパーチャ214は、投影システム制御ユニット820に接続された、検出器(図示せず)をさらに含む。投影システム制御ユニット820は投影システム205の少なくとも1つの静電レンズ206にさらに接続されており、投影システム205はさらなる静電または磁気レンズ208、209、210を含む。投影システム205は、少なくとも、投影システム制御ユニット820に接続された、複数の2次電子ビームレット9の各々に個々に影響を及ぼすためのアパーチャおよび電極を有する、第1のマルチアパーチャ補正器220をさらに含む。
【0038】
像センサ207は、投影レンズ205によって像センサ207上に集束させられた2次電子ビームレット9のラスタ配列と一致するパターンによる感知区域のアレイによって構成されている。これは、像センサ207に入射する、他の2次電子ビームレット9と独立した各々の個々の2次電子ビームレット9の検出を可能にする。複数の電気信号が発生され、デジタル像データに変換され、制御ユニット800へ処理される。像走査の間に、制御ユニット800は、所定の時間間隔内に、複数の2次電子ビームレット9から複数の時間的に分解された強度信号を検出するよう像センサ207をトリガするように構成されており、像パッチのデジタル像が蓄積され、複数の1次荷電粒子ビームレット3の全ての走査位置から一体にスティッチされる。
【0039】
図1に示される像センサ207はCMOSまたはCCDセンサなどの電子感知検出器アレイであり得る。このような電子感知検出器アレイは、シンチレータ要素、またはシンチレータ要素のアレイなどの、電子-光子変換ユニットを含むことができる。別の実施形態では、像センサ207は、複数の2次電子粒子像スポット15の焦平面内に配置された電子-光子変換ユニットまたはシンチレータプレートとして構成され得る。本実施形態では、像センサ207は、2次荷電粒子像スポット15における電子-光子変換ユニットによって発生された光子を、複数の光電子倍増管またはアバランシェフォトダイオード(図示せず)などの、専用光子検出要素上に結像し、案内するためのリレー光学系をさらに含むことができる。このような像センサが米国特許第9,536,702(BB)号に開示されている。同特許は本明細書において参照により組み込まれる。一例では、リレー光学系は、光を分割し、第1の低速光検出器および第2の高速光検出器へ案内するためのビームスプリッタをさらに含む。第2の高速光検出器は、例えば、複数の1次荷電粒子ビームレットの走査速度に従って複数の2次電子ビームレットの像信号を分解するために十分に高速である、アバランシェフォトダイオードなどの、フォトダイオードのアレイによって構成されている。第1の低速光検出器は、好ましくは、焦点スポット15または複数の2次電子ビームレット9を監視するための、ならびに以下においてより詳細に説明されるとおりのマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作の制御のための、高分解能センサデータ信号を提供する、CMOSまたはCCDセンサである。
【0040】
複数の1次荷電粒子ビームレット3を走査することによる像パッチの獲得の間に、台500は、好ましくは、移動させられず、像パッチの獲得後に、台500は、獲得されるべき次の像パッチへ移動させられる。台の移動および台の位置は、レーザ干渉計、格子干渉計、共焦点マイクロレンズアレイ、または同様のものなどの、当技術分野において周知のセンサによって監視され、制御される。例えば、位置感知システムが、レーザ干渉計、容量センサ、共焦点センサアレイ、格子干渉計、またはこれらの組み合わせのうちの任意のものを用いて台の横および鉛直変位ならびに回転を決定する。
【0041】
図2において、像パッチの獲得によるウェーハ検査の方法の一実施形態がより詳細に説明される。ウェーハは、そのウェーハ表面25が、第1の像パッチ17.1の中心21.1をもって、複数の1次荷電粒子ビームレット3の焦点面内にあるように配置される。像パッチ17.1…kの既定の位置は半導体特徴の検査のためのウェーハの検査部位に対応する。第1の検査部位33および第2の検査部位35の既定の位置は標準ファイルフォーマットによる検査ファイルからロードされる。既定の第1の検査部位33は、いくつかの像パッチ、例えば、第1の像パッチ17.1および第2の像パッチ17.2に分割され、第1の像パッチ17.1の第1の中心位置21.1は検査タスクの第1の像獲得ステップのためにマルチビーム荷電粒子顕微鏡システムの光軸下に整列させられる。ウェーハ表面25が登録され、ウェーハ座標の座標系が生成されるよう、ウェーハを整列させるための方法は当技術分野において周知である。
【0042】
複数の1次ビームレットは各像パッチ内において規則的ラスタ構成41で分布しており、像パッチのデジタル像を発生するために走査機構によって走査される。本例では、複数の1次荷電粒子ビームレット3は、N個のビームスポットを有する第1のライン内のn個の1次ビームスポット5.11、5.12~5.1N、およびビームスポット5.11~ビームスポット5.MNを有するM本のラインを有する長方形ラスタ構成41で配置されている。簡略化のために、M=5かけるN=5個のビームスポットのみが示されているが、ビームスポットの数、MかけるNはより大きくてもよく、複数のビームスポット5.11~5.MNは六角形または円形ラスタなどの異なるラスタ構成41を有することができる。
【0043】
1次荷電粒子ビームレットの各々は、複数の1次荷電粒子ビームレットの走査経路27.11~走査経路27.MNを有するビームスポット5.11~5.MNを有する1次荷電粒子ビームレットの例において示されるように、ウェーハ表面25にわたって走査される。複数の1次荷電粒子ビームレット3の各々の走査は、例えば、x方向における走査偏向器110による前後偏向、およびそれに伴うy方向における走査偏向器110によるインターレースされた偏向による、事前に選択された走査プログラムに従って遂行される。像獲得のために、複数の2次電子が焦点5.11~5.MNの走査位置において放射され、複数の2次電子ビームレット9が発生される。複数の2次電子ビームレット9は対物レンズ102によって収集され、第1の偏向系110を通過し、検出ユニット200へ案内され、像センサ207によって検出される。複数の2次電子ビームレット9の各々のデータの順次ストリームは走査経路27.11…27.MNと同期的に複数の2Dデータセットに変換され、各像部分視野29.11~29.MNのデジタル像データを形成する。複数の部分視野29.11~29.MNの複数のデジタル像は、第1の像パッチ17.1のデジタル像を形成するために像スティッチングユニットによって最後に一体にスティッチされる。動作は第1の検査部位33における第2の像パッチ17.2のために繰り返され、第1の検査部位における像データの獲得後に、ウェーハ7は、像パッチ17.kを有する次の検査部位35へ移動させられる。
【0044】
次に、ウェーハ検査タスクの要求または仕様が示される。高スループットウェーハ検査のために、像パッチ17.1…kの像獲得、および像パッチ17.1…kの間の台移動は高速でなければならない。他方で、像分解能、像精度、および繰り返し精度などの像品質の厳格な仕様が維持されなければならない。例えば、像分解能のための要求は、通例、2nm以下である。例えば、特徴の縁部位置、概して、特徴の絶対位置精度は高い絶対精度をもって決定されなければならない。通例、位置精度のための要求は分解能要求の約50%以下である。像コントラストおよびダイナミックレンジは、検査を受けるウェーハの半導体特徴および材料組成の精密な表現が得られるよう十分でなければならない。通例、ダイナミックレンジは6または8ビットよりも良くなければならず、像コントラストは80%よりも良くなければならない。1次荷電粒子ビームレット3.mnの焦点5.mnに対応する像部分視野29.mnの各像データの分解能およびコントラストを制限する支配的収差は1次非点収差によって与えられる。トレフォイル収差またはより高次の非点収差のような、他の収差も存在し得るであろう。1次非点収差は、2つの成分
AST0=A0 r
2 cos 2φ
AST45=A45 r
2 sin 2φ
によって形成される。ここで、rはビームレットの中心軌道からの粒子軌道の距離であり、φは極角である。換言すれば、半径rおよび極角φは1次ビームレット内の荷電粒子軌道の瞳座標を記述する。
図3において、1次荷電粒子ビームレット3の波面収差の効果がAST0の例で説明されている。
図3aは、ウェーハ表面25(図示せず)と垂直である、z軸に沿って伝搬している、完璧にアライメントされたビームレット3を示す。像面101内において、非点収差ビームレット3は最小錯乱円スポット74を形成する。最小錯乱円スポット74の直径は波面収差(ここではAST0)の振幅に依存し、振幅の増大とともに増大する。したがって、像面101内の像コントラストまたは分解能は波面収差振幅の増大とともに減少する。像面101から距離AD/2の正のz位置を有する第1の線焦点面72において、第1の線状焦点76.1が形成され、負の距離AD/2を有する第2の線焦点面78において、第1の線状焦点76.1に対して90°の相対角度をもって第2の線状焦点76.2が形成される。平面の外部では、ビームレットの形状は楕円形である。非点隔差AD(参照符号73)はAST0の振幅A0に比例する。
【0045】
図3bには、z距離の焦点にわたる2つの例示的なコントラスト曲線が示されている。第1のコントラスト曲線81は、水平および鉛直に整列させられた構造(HV構造)を有する典型的な半導体プローブにおける焦点にわたるコントラストを示す。2つの平面73および78内において、線焦点はHV構造に対して平行または垂直のどちらかであり、ウェーバ表面セグメントの像の最大像コントラストは、それゆえ、to最大を示す。像面101内において、コントラスト曲線81は極小を示し、極小におけるコントラスト曲線はおおよそ放物線状の形状を有する。第2のコントラスト曲線83は、任意に配向された構造を有する任意のプローブの一例を示す。ここでは、コントラスト曲線は像面101内に最大を有し、最大におけるコントラスト曲線はおおよそ放物線状の形状を有する。いずれの場合にも、コントラスト曲線は、像面101内において、局所的極値(最大または最小のどちらか)の周りにおおよそ放物線状の形状を有する像コントラストの局所的極値を示す。
【0046】
図4は補償要素のアレイ601を示す。補償器のこのようなアレイは、例えば、米国特許第10,147,582(BB)号において周知であるように、当技術分野において周知である。同特許は本明細書において参照により組み込まれる。マルチアパーチャアレイ601は、複数の1次荷電粒子ビームレット3のラスタ構成41 - 本例では、六角形ラスタ構成 - で配置された複数のアパーチャを含む。アパーチャのうちの2つが参照符号685.1および685.2を用いて示されている。複数のアパーチャの各々の周縁内に、複数の電極681.1~681.8が配置されており、本例では、電極の数は8つであるが、4つ、6つ、またはそれより多数などの他の数も可能である。電極は、互いに対して、および補償器のアレイ601の支持体に対して電気絶縁されている。複数の電極681の各々は導電線607または配線接続のうちの一方(全ては示されていない)によって制御モジュールに接続されている。電極681の各々への個々の、および所定の電圧の印加によって、アパーチャ685の各々を通過する各複数の1次荷電粒子ビームレットのために異なる効果が達成され得る。一例では、このようなマルチアパーチャプレート601が複数、例えば、2つまたは3つ、順次に配置されている。補償器のアレイ601を有するマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の動作の方法が以下の実施形態において説明される。
【0047】
マルチビームシステムにおいて、波面収差は、通例、2つの異なる寄与を有する。第1の寄与は、偏向器110、対物レンズ102、またはビーム分割器ユニット400などの、マルチビームシステム1の大域要素の組み合わせからのものである。第2の寄与は1次マルチビームレット形成ユニット305からのものである。
図5aは、六角形ラスタ構成41による複数の1次荷電粒子ビームレット3の1次AST0の典型的なフィールド依存性を示す。円は正の振幅A0を識別し、正方形は1次荷電粒子ビームレット3の負のA0を識別し、記号の直径は波面収差AST0の振幅A0に比例する。波面収差振幅の分布は、秩序立ったフィールド依存性を有する第3の寄与を有する。
図5aにおいて視認可能なように、AST0の振幅A0はxおよびyにおけるフィールド座標にわたる支配的な線形依存性を示す。加えて、波面収差振幅の分布は、
図5aにおいて、符号3dを用いて識別されるビームレットのいくつかの例で示される、第4の寄与を示す。ここでは、波面収差AST0は線形依存性からの局所的逸脱を示す。
図5bは、波面収差の秩序立ったフィールド依存性(ここでは、xおよびyにおける線形依存性)の減算後の残差波面収差を示す。直径は、
図5aと比べて拡大されたスケールでの波面収差AST0の残差の第4の寄与に対応する。
【0048】
本発明の第2の実施形態によれば、1次荷電粒子ビームレットの各々の波面収差振幅の決定の方法が与えられる。通例、波面収差を直接測定することは不可能である。その代わりに、および一般的使用のために、複数のJ個の波面収差A(j=1…J)は、変更要素605の異なる制御パラメータにおける一連のコントラスト測定によって間接的に決定される。一連の測定から、最大像コントラストの制御パラメータ値が導出される。最大または最小像コントラストにおける制御パラメータ値SV(maxC(j))は、変更要素605の制御パラメータの単位での波面収差AVに対応し、それゆえ、変更要素605に固有のものである。次に、正規化感度単位での波面収差Aが、例えば、相対単位で導出され、以下においては、記号Aが正規化感度単位での波面誤差の振幅のために用いられる。以下の第3の実施形態において説明されるように、正規化感度単位でのにおける正規化波面振幅A(j)の導出は、第1の要素または変更要素605を用いた波面収差振幅の決定、ならびに第1の要素または変更要素605とは異なる、第2の要素または補償要素601もしくは603を用いた波面収差の補償を可能にする。変更要素605は、関心のある波面収差に影響を及ぼす任意の要素、例えば、磁気補正要素420、または走査偏向器110、あるいは他の構成要素であり得る。代替例では、大域補償要素603が、関心のある波面収差を変化させるための変更要素605として用いられる。制御パラメータは静電要素の電圧または磁界要素の電流のどちらかであり得る。大域変更要素605を利用することによって、単一の要素の制御パラメータSVを変化させるだけですみ、波面収差振幅A(j)を決定する方法は、向上した速度および低減した複雑さをもって遂行され得る。第1の例では、次に、波面収差振幅AVは、補償要素の最大範囲の単位での波面収差振幅ACに変換される。第2の例では、波面収差振幅AVは、正規化感度単位での絶対波面収差振幅Aに変換される。
【0049】
図6において、第2の実施形態に係る方法の一例が説明される。本方法は、第1および第2の寄与を含む波面収差振幅を決定するように構成されている。本方法は、物体7が像コントラストを発生する長さだけ、任意の物体7に適用可能である。本方法はAST0の例で説明されているが、それは、AST45、コマ、より高次の非点収差、またはトレフォイル収差などの任意の波面収差のために適用され得る。
【0050】
初期ステップSRにおいて、物体7の表面25をマルチビームレット荷電粒子顕微鏡1の像面101内に調整する。このような方法が、2021年1月29日に出願された独国特許出願第102021200799.6号に記載されている。同特許は本明細書において参照により組み込まれる。マルチビームレット荷電粒子顕微鏡1の初期設定を、例えば、焦点系列によって決定し、最適焦平面を設定点として決定する。次に、制御ユニット800はAST0の決定をトリガする。
【0051】
ステップSDにおいて、一連のi=1~i=SIのコントラスト測定を繰り返す。コントラスト測定ごとに、変更要素605の制御パラメータSVを一連の制御パラメータSV(i=1~SI)にわたって変化させる。コントラスト測定の数SIは、通例、SI>=3であるように選択され、好ましくは、SIは5以上である。変更要素の制御パラメータSV(i)ごとに物体表面25に存在する特徴において複数のJ本の荷電粒子ビームレットの各々についての像コントラストC(j,i)を決定する。複数の像コントラスト値C(j=1…J,I=1…SI)はメモリ内に一時的に記憶される。
【0052】
ステップSFにおいて、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットの各々についてのコントラスト曲線C(j,i)を分析し、ビームレットjごとに、最大コントラスト値maxC(j)のための最適制御パラメータSV(maxC(j))を数値的に決定する。決定は、例えば、多項式当てはめによって、例えば、放物線を測定点に当てはめることによって遂行され得る。
図7に、一例が示されている。1次荷電粒子ビームレットjについて、5つの異なる制御パラメータ値SV(i=1)~SV(i=5)において像コントラストを測定する。i=3についての測定値は設定点49に対応し、本例の制御パラメータ値SV(3)は0(SV(3)=0)に設定される。しかし、必ずしもこうでなければならないわけではない。ステップSRの間の設定点の決定に従って、変更要素605の制御パラメータ値は、0から逸脱したオフセット制御パラメータ値を有することができる。
【0053】
参照符号53を用いて識別された、放物線当てはめC(j;i)が測定点C(j,i=1)~C(j,i=5)に近似され、最大max(C(j))(参照符号55参照)が決定される。最大コントラスト値55に対応する最適制御パラメータ値SV(maxC(j))が決定される。最大コントラスト値max(C(j))は、例えば、このビームレットの他の波面収差または特定の他の欠陥に起因して、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットの各々について異なり得る。さらに、各コントラスト曲線C(j)の放物線形状は、変更要素のパラメータ変更に対するこのビームレットの波面収差の感度に依存して、j=1…Jとするビームレットごとに異なり得る。
【0054】
第1の例では、正規化感度単位での波面振幅A(j)が、複数の1次ビームレット3の各々について、変更要素の所定の制御パラメータ範囲RVに関して、A(j)=SV(maxC(j))/RVとして決定される。決定は繰り返されるか、またはビームレットごとに並行して遂行される。変更要素605の制御パラメータ範囲RVは、例えば、以前の校正ステップにおいて決定され、大域補償要素603、または補償要素のアレイ601の各要素の制御パラメータ範囲を用いる場合と同じ、波面収差振幅の範囲が、制御パラメータ範囲RVまたは変更要素605を用いて達成され得るように調整される。その後、対応する範囲または変更および補償要素が調整され、正規化感度単位で決定された波面振幅Aを用いて補償器要素を制御することが可能である。
【0055】
第2の等価的な例では、コントラスト曲線53の曲率から正規化感度単位での波面振幅A(j)が導出される。放物線状部分を記述する放物線係数KVを有するJ本のコントラスト曲線の各々について、放物線当てはめのパラメータが抽出される:
C(j;SV)=maxC(j)-KV(j)(SV-SV(maxC(j)))2
【0056】
次に、SV=0における放物線コントラスト曲線の導出に従って、像面101内の設定点49における正規化感度単位での波面収差振幅A(j)が決定される:
A(j)=SIGN(j)*2KV(j)*SV(maxC(j))。
【0057】
絶対振幅のsign(j)は座標系の定義に従って決定される。第2の例では、放物線係数KV(j)は制御パラメータの変更に対する波面収差の感度を記述し、それゆえ、放物線感度パラメータとも呼ばれる。
図5aに、正規化感度単位での絶対波面振幅A(j)の決定の結果が示されている。
【0058】
より高い精度のために、測定されたコントラスト値へのより高次の近似または当てはめ、例えば、双曲線当てはめまたはより高次の多項式当てはめが遂行され得る。SV=0におけるコントラスト値への近似当てはめ曲線から、正規化感度単位での波面収差振幅が導出される。
【0059】
決定方法のために、
図2に示されるように像部分視野全体からデジタル像を獲得する必要はない。ビームレットごとのコントラスト測定は、少数の走査位置および走査線、例えば128 x 128ピクセルまたは256 x 256ピクセルを有する、より小さい像部分視野において遂行することもできる。例えば、構造化半導体ウェーハとしての、同様の表面構造を有する物体のためには、偏向走査器110の走査範囲内の、異なる、より小さい像部分視野においてコントラスト測定を遂行することも可能である。これにより、変更要素の異なるパラメータについてのコントラスト測定への帯電効果が最小限に抑えられる。一例では、決定方法は複数のJ本のビームレットの全てのビームレットに適用されない。
【0060】
したがって、複数の波面収差振幅A(j)を決定する方法は、(a)マルチビーム顕微鏡(1)を検査タスクの設定点に設定するステップと、(b)複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差を変更するステップと、(c)複数のコントラスト値C(j,i)から、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について複数のコントラスト曲線C(j=1…J)を決定するステップと、(d)複数のコントラスト曲線C(j=1…J)から設定点における正規化感度単位での複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)を決定するステップと、を含む。一連の少なくともSI=3個の異なる変更制御信号SV(i=1…SI)を変更要素(605)に提供することによって波面収差を変更し、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について各変更制御信号SV(i=1…SI)における複数のコントラスト値C(j,i)を測定する。各コントラスト曲線C(j)は、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々についてのi=1…SIのコントラスト値C(j,i)に対する放物線、双曲線、または多項式近似の計算によって得ることができる。第1の例では、正規化感度単位での波面振幅A(j)は、最大コントラスト値maxC(j)における変更制御信号SV(maxC(j))を変更要素605の正規化範囲RVで除算したものから決定される。正規化範囲RVは、複数の1次荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも1本のビームレットの像コントラストの所定の変更を達成するために必要とされる最大および最小制御信号SVの差から決定され得る。第2の例では、正規化感度単位での波面振幅A(j)はコントラスト曲線C(j)の放物線係数KV(j)から決定される。
【0061】
使用中に、設定点は設計設定点から逸脱し得、磁界内における1次荷電粒子ビームレットの回転のゆえに、設定点は、像面(101)、補償器構成要素のアレイ(601)、大域補償要素(603)、および/または変更要素(605)の座標系の間の複数の1次荷電粒子ビームレット(1)のラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を含み得る。第2の実施形態に係る方法の一例では、波面収差振幅は、波面収差振幅ベクトル、例えば、ベクトル[AST0,AST45]に変換される。波面収差振幅ベクトル[AST0,AST45]への回転行列Mの乗算によって、像面(101)、補償器構成要素のアレイ(601)、大域補償要素(603)、および/または変更要素(605)の座標系の間の複数の1次荷電粒子ビームレット(1)のラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を考慮することができる。
【0062】
例えば、第2の実施形態の方法に従って、マルチビーム荷電粒子システム1内に存在する、波面収差振幅A(j)が決定された後に、波面収差振幅A(j)は少なくとも補償器要素によって最小限に抑えられ得る。本発明の第3の実施形態によれば、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットの波面収差振幅A(j)を補償する方法が説明される。
図8において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1内の波面収差振幅A(j)を補償する方法の一例が説明される。
【0063】
第1の補償トリガステップCTSにおいて、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット3の波面収差振幅A(j)を受け取り、分析する。1次荷電粒子の波面収差振幅A(j)が波面収差振幅の所定の最大閾値を超えるときはいつでも、本方法の後続のステップによって補償がトリガされる。
【0064】
波面収差振幅A(j)は、例えば、第1の実施形態に係る波面収差振幅A(j)の決定の方法から受け取られ得る。他の測定結果から、あるいは監視、およびモデルベースの制御から、他の入力も受け取られ得る。モデルベースの制御は、所定のモデル仮定、ならびにマルチビーム荷電粒子顕微鏡の稼働時間または構成要素の温度のような2次的な間接的監視パラメータに基づいて、1次的な予想挙動、例えば、波面収差振幅の変化を予測する。モデルベースの制御アルゴリズムが、2020年5月28日に出願された国際出願EP2021/061216号においてさらに開示されている。同出願は本明細書において参照により組み込まれる。一例では、設定点49における波面収差振幅A(j)の決定が監視方法によってトリガされる。一例では、監視方法の使用中に、検査または計測タスクの間に生成されたデジタル像の像コントラストの変化が監視される。複数の1次荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも1本について、像コントラストが変化し、例えば、最小コントラストの所定の閾値を下回るときに、波面収差測定がトリガされる。監視方法が第4の実施形態においてより詳細に説明される。
【0065】
補償決定ステップCDSにおいて、振幅A(j)を分析する。補償分析ステップCASにおいて、振幅A(j)に対するフィールド依存性の最良の当てはめによって、少なくとも第1の大域補償要素のフィールド依存性を有する振幅の少なくとも第1の成分AG1を決定する。通例、大域補償要素は、一定フィールド依存性、線形フィールド依存性、または2次のフィールド依存性などの、波面収差に対する低次フィールド依存性を示す。一例では、波面収差のフィールド依存性は、波面収差およびフィールド依存性がツェルニケ多項式の形で展開された、いわゆる二重ツェルニケ展開の形で展開される。フィールド依存性の振幅AG1の正規化された計算のために、最大フィールド半径は1に設定される。
【0066】
大域補償要素は、大域補償要素603、偏向走査器110、磁界構成要素420、または関心のある波面収差に大きな影響を及ぼすが、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の他の特性に及ぼす影響は少ない、1次ビーム経路内の任意の他の電子光学要素であり得る。また、いくつかの大域補償要素、例えば、第1の大域補償要素603、および第2の大域補償要素としての偏向走査器110を用いることも可能である。偏向走査器110は、例えば、静電または磁気八重極要素として実現され、波面収差を補償するための補償信号が8つの極のうちのいくつかにオフセット信号として提供され得る。これにより、例えば、非点収差のほぼ一定のオフセットが補償され得る。代替例では、トレフォイル収差を補償する能力を有する、6つ、または6の倍数個の極を含む要素が提供され得る。
【0067】
少なくとも1つの大域補償要素によって補償され得る第1の成分AG1は振幅A(j)から減算され、残差波面振幅の残差の第2の成分Ares(j)が得られる。この第2の成分Ares(j)は大域補償要素を用いて補正され得ない。
【0068】
第1の成分AG1から、大域補正信号GCSが少なくとも1つの大域補償要素のために導出される。大域補正信号GCSは、フィールド依存性の振幅AG1から、および大域補償要素の所定の感度から導出される。
【0069】
大域補償要素の所定の感度の決定の結果、
図7に示されるとおりの同様のコントラスト曲線が、少なくとも代表的ビームレット、および大域補償要素の制御信号の変更について、ただし、スケーリングの差を有して、得られる。補償器の変更にわたるコントラストは、この場合も先と同様に、放物線感度パラメータKCを有する放物線形状を示す。所定の放物線パラメータKCは制御ユニット800のメモリ内に記憶される。校正パラメータの決定のさらなる詳細が本発明の第5の実施形態において説明される。
【0070】
大域補正信号GCSは次式によって得られる。
GCS=SIGN*AG1/(2*KC)。
【0071】
第2の成分から、J本の1次荷電粒子ビームレットの各々について、複数のJ個の局所補償信号LCS(j)が計算される。アレイ要素601の補償器要素の各々について、複数の所定の個々の放物線パラメータKLC(j)を用いて、次式によって複数の局所補償信号LCS(j)を計算する。
LCS(j)=SIGN(j)*Ares(j)/(2*KLC(j))。
【0072】
符号は座標系の定義に従って事前に決定され、例えば、波面振幅の決定ステップの間に、符号の定義と一致するように定義される。
【0073】
一例では、補償決定ステップCDSは制御ユニット800によって遂行される。したがって、制御ユニット800は、大域補償器要素603のフィールド依存性および大域補償器要素603の所定の放物線感度パラメータKCを保存するためのメモリを含む。メモリ内には、さらに、複数のj=1…Jの所定の放物線感度パラメータKLC(j)が記憶される。別の例では、大域補償器要素の所定の放物線感度パラメータKCは大域補償器要素の動作制御ユニット内に記憶され、大域補正信号GCSへの変換は大域補償器要素の動作制御ユニット内で遂行される。同様に、複数の局所補償信号LCS(j)の計算は大域補償要素のアレイ601の動作制御ユニット内で遂行され得る。
【0074】
補償決定ステップCDSは、ここでは、放物線感度パラメータKV、KC、およびKLC(j)の例で記述される、正規化感度単位での波面収差振幅A(j)を用いて遂行される。例えば、変更要素605から2つの補償要素603および601への波面振幅のスケーリングの他の例も可能である。一例は、以上において第2の実施形態の第1の例において説明されたとおりの変更要素の正規化感度単位でのA(j)=SV(maxC(j))/RVのスケーリングと同様に、補償要素601および605の異なる最大パラメータ範囲を用いた波面振幅のスケーリングを利用することである。
【0075】
補償実行ステップCESにおいて、大域補償信号GCSを大域補償要素、例えば、要素603に提供し、ステップGCEにおいて、波面収差の第1の成分の大域補償を達成する。複数の局所補償信号LCS(j)を補償要素のアレイ601に提供し、ステップLCEにおいて、残差波面収差の局所補償を達成する。
【0076】
任意選択的な検証ステップCVSにおいて、例えば、第1の実施形態において説明された方法を用いて、補償された波面収差を再び測定する。波面収差のなお一層良好な補償を達成するために、補償された波面収差が所定の閾値を下回るまで方法ステップCDS、CES、およびCVSを反復的に繰り返すこともできる。
【0077】
したがって、設定点におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数の波面収差を補償する第3の実施形態に係る方法は、(a)正規化感度単位での複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)を受け取るステップと、(b)正規化感度単位での振幅の大域成分AG1を決定するステップであって、大域成分が大域補償要素(603)の複数のJ個の波面収差振幅A(j)の所定のフィールド依存性を有する、ステップと、(c)正規化感度単位での複数の残差波面振幅の残差成分Ares(j)を決定するステップと、(d)大域成分を大域補正信号GCSに変換するステップと、(e)残差成分を複数の局所補償信号LCS(j)に変換するステップと、(f)大域補正信号GCSを大域補償要素(603)に提供するステップと、(g)複数の局所補償信号LCS(j)を補償要素のアレイ(601)に提供するステップと、を含む。第1のステップ(a)は、第2の実施形態に係る複数のJ個の波面収差振幅A(j)を決定する方法を含むことができる。第3の実施形態の方法によれば、波面収差振幅A(j)は正規化感度単位に変換され、補償要素の感度は同じ正規化感度単位で記述される。第1の例では、大域補償要素(603)の正規化範囲RCおよび補償要素のアレイ(601)の正規化範囲RLはあらかじめ決定され、制御ユニット(809)のメモリ内に記憶される。第1の例では、波面収差振幅、および補償器要素のための制御信号は、正規化範囲RV、RC、およびRLを用いて正規化される。第2の例では、放物線感度定数KV、KC、またはKLC(j)が代わりに用いられ、波面収差振幅、および補償器を駆動するための制御信号の一貫したスケーリングが達成される。
【0078】
第2の実施形態の方法に係る波面振幅A(j)の決定は、高速で信頼性の高い波面収差決定方法である。本方法は、いくらかの像コントラストを生成する任意の物体に適用され得る。特に、物体の検査部位を専用計測物体と替える必要がない。本方法は、検査または計測タスク全体を通した波面収差の監視のためにさらに適用可能である。本発明の第4の実施形態によれば、第2の実施形態に係る決定方法の規則的適用によってマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の監視が遂行される。一例では、監視は、異なる、連続した検査部位における像部分視野から得られた像のコントラストパラメータを抽出することによって遂行される。通例、ウェーハ検査の間に、異なる検査部位における平均像コントラストは変化してはならない。コントラスト変化が、例えば、
図5aに示されるように、AST0のx任意のものにおける線形フィールド依存性などの、波面収差の特定のフィールド依存性を呈する場合には、第2の実施形態に係る波面振幅の決定ステップがトリガされ、その後に、第3の実施形態に係る補償方法が行われる。第4の実施形態では、制御ユニット800は、ウェーハ検査タスクの間に複数の荷電粒子ビームレットのコントラスト変化を監視するように構成されている。制御ユニット800は、コントラスト変化を分析し、第1の波面収差、例えば、AST0またはAST45の少なくとも第1のフィールド依存性を決定するようにさらに構成されている。少なくとも第1のフィールド依存性が制御ユニット800によって検出された場合には、対応する波面収差AST45の波面振幅が決定される。制御ユニット800は、さらなるフィールド依存性、例えば、第2の波面収差、例えば、AST0の第2のフィールド依存性を決定するようにさらに構成されている。第2のフィールド依存性が制御ユニット800によって検出された場合には、対応する波面収差AST0の波面振幅が決定される。
【0079】
第4の実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の監視の方法のさらなる例では、選択された1次荷電粒子ビームレットのみを監視することによって、スループットがさらに増大させられる。複数の1次荷電粒子ビームレット3から、波面収差の低次フィールド依存性の代表となる、少数の2本以上のビームレットが選択される。一例では、互いに対して大きい空間距離を有する少なくとも2本の選択されたビームレットが、例えば、AST0またはAST45などの、関心のある波面収差の線形フィールド依存性を監視するために用いられる。監視方法の一例では、複数の他の1次ビームレットを変化させないままにしておく間に、補償要素のアレイ601の対応する補償器を用いて、互いに対して大きい距離を有する3本の選択されたビームレットの波面収差を変化させる。制御ユニットは、監視中に、これらの3本の選択されたビームレットのみの波面収差の変化をトリガする。選択されたビームレットによって発生された像コントラストの変化から、選択されたビームレットの波面収差振幅を決定し、波面収差の第1の成分または低次フィールド依存性を決定する。次に、波面収差の第1の成分または線形フィールド依存性が、波面収差の線形フィールド依存性を有する適切な大域補償器603によって補償される。残差波面誤差振幅Aresは閾値と比較される。Aresが閾値を超える場合には、本発明の第2および第3の実施形態に係る完全な決定および補償がトリガされる。第3の例によれば、任意の選択されたビームレットの波面収差を、補償要素のアレイ601の対応する補償器を用いて変更することができる。監視の間に、異なる選択されたビームレットの波面収差を変化させることができ、これにより、例えば、AST0、AST45、コマ、またはトレフォイル収差の異なる低次フィールド依存性を決定することができる。
【0080】
さらなる例によれば、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の所定のモデル、および2次的な間接監視パラメータに基づく、モデルベースの制御が監視方法において利用される。モデルベースの制御によれば、検査タスクの間に受け取られた複数のデジタル像の像コントラストが所定のモデルに従って予測され、予測された像コントラストが所定の閾値を下回るときに、波面決定および/または補償ステップがトリガされる。
【0081】
ウェーハ検査タスクの要求または仕様はスループットである。スループットは、いくつかのパラメータ、例えば、獲得時間当たりの測定面積自体に依存する。獲得時間当たりの測定面積は、滞留時間、分解能、およびビームレットの数によって決定される。滞留時間の典型的な例は20ns~80nsである。したがって、高速像センサ207におけるピクセルレートは12Mhz~50MHzの範囲内であり、毎分、約20個の像パッチまたはフレームを得ることができるであろう。2つの像パッチの獲得の合間に、ウェーハはウェーハ台によって関心のある次の点へ横方向に移動させられる。100本のビームレットについては、0.5nmのピクセルサイズを有する高分解能モードにおけるスループットの典型例は約0.045sqmm/分(平方ミリメートル/分)であり、より多数のビームレットおよびより低い分解能、例えば、10000本のビームレットおよび25nsの滞留時間の場合には、7sqmm/分超のスループットが可能である。台の加速および減速を含む台移動は、マルチビーム検査システムスループットにとっての制限因子のうちの1つである。短時間での台のより速い加速および減速は、通例、複雑で高価な台を必要とするか、またはマルチビーム荷電粒子システム内に動的振動を誘起する。追加の台移動が必要とされないため、本発明の第2~第4の実施形態は、ウェーハ検査タスクの高スループットによる非点収差などの波面収差の決定および補償を可能にし、像性能仕様を十分に分解能および繰り返し精度のための要件の範囲内に維持する。例えば、3本のビームレットのみにおける第3の例に係る監視は、監視用の数本の選択されたビームレットを除いた複数の1次ビームレットがウェーハまたはマスク検査のために用いられる、ウェーハまたはマスク検査と並行した監視の遂行を可能にする。
【0082】
第5の実施形態では、放物線感度パラメータKCおよびKLC(j)を決定する方法が示される。第1の例では、放物線感度パラメータKCおよびKLC(j)は、第2の実施形態に係る決定方法と同様の方法において決定される。しかし、第2の実施形態に係る決定方法とは異なり、放物線感度パラメータKCまたはKLC(j)は、補償要素601または603の変更によって、ならびに対応する要素の変更にわたるコントラスト曲線を得ることによって決定される。
図9は、同じビームレットjについての2つの異なる例におけるコントラスト曲線を示す。大域補償要素603の代表的ビームレットのコントラスト曲線53は、例えば、SI=5個の異なる制御パラメータ値SC(SI=1…I)を有する大域補償要素603の制御パラメータSCを変更することによって得られる。I個の得られたコントラスト値C1(i=1…I)への放物線当てはめが遂行される。最大コントラスト位置SC(maxC1(j)の最大コントラスト値55および対応する制御パラメータ値が決定される。大域補償要素603の範囲RCは、例えば、変更要素605による波面収差振幅の変更の範囲RVと同じ、波面収差の範囲を補償するように調整される。放物線定数KCが決定され、制御ユニット800のメモリ内に記憶される。代表的ビームレットが大域補償要素603のフィールド依存性に従って選択される。同様の動作がビームレットj=1…Jごとのアレイ要素601の補償器のために遂行される。第2のコントラスト値C2(i=1…SI)が、ビームレットjごとのアレイ要素601の補償器の制御パラメータの変更によって決定され、放物線感度係数KLC(j)が決定される。
図9は、最大値maxC2(指数56を有する)を有するonコントラスト曲線51を示す。通例、補償器のアレイ601の補償器は、波面収差に対してより大きい影響または感度を有し、より小さい範囲RLにわたって駆動される。本方法はJ本のビームレットj=1…Jの各々のために繰り返される。放物線定数KLC(j)は、通例、大域補償器の放物線定数KCと比べて、若干異なり、より大きい。放物線定数KCおよびKLC(j)の決定は、波面収差が存在するときにも可能である。最大コントラストmaxC1およびmaxC2は、0から逸脱したパラメータ値SCにあるため、
図9における状況は、波面収差が存在するときの状況を示す。第5の実施形態の第1の例に係る校正方法は、像コントラストを発生する構造を有するウェーハ表面において遂行され得る。したがって、第1の例に係る校正方法は、例えば、第3の実施形態に係る波面誤差の補償方法が何回かの反復後に収束しないときに、ウェーハ検査タスクの間に遂行され得る。一例では、補償器のアレイ601の個々の補償器が、補償器の再校正が必要になる、ドリフトまたは汚染を受け得る。このような場合には、第1の例に係る校正方法はまた、補償方法の間に逸脱挙動を呈する補償器のアレイ601の個々の補償器のためにのみ遂行することもできる。
【0083】
大域補償器(603)、または補償器要素のアレイ(601)の補償器要素、あるいは変更要素(605)などの、荷電粒子光学要素の校正方法の第1の例は、(a)一連の少なくともSI=3個の異なる制御信号SC(i=1…SI)を荷電粒子光学要素に提供することによって、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差を変更するステップと、(b)複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について各異なる制御信号SC(i=1…SI)における複数のコントラスト値C(j=1...J,i=1...SI)を測定するステップと、(c)複数のコントラスト値C(j,i)から、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について複数のコントラスト曲線C(j=1…J,SC)を決定するステップと、(e)極値maxC(j)、およびコントラスト曲線C(j,SC)の各々の極値maxC(j)に対応する制御信号SC(maxC(j))を決定するステップと、(f)正規化感度単位での荷電粒子光学要素によって影響を受ける波面振幅A(j)の複数の変更を決定するステップと、を含む。第1の例の正規化感度単位は、A(j)=SC(maxC(j))/RCによって与えられ、ここで、RCは、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも1本についての像コントラストC(j)の所定の変更を達成するために必要とされる最大および最小制御信号SCの間の差に対応する、荷電粒子光学要素の正規化範囲である。第2の例に係る正規化感度単位は、極値max(C(j,SC))の近傍におけるコントラスト曲線C(j=1…J,SC)に対する近似の放物線定数KC(j)を用いて、A(j)=SIGN(j)*2KV(j)*SC(maxC(j))によって与えられる。正規化感度単位での荷電粒子光学要素の波面振幅A(j)の複数の変更はマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の制御ユニット(800)のメモリ内に記憶される。
【0084】
第5の実施形態に係る校正方法のさらなる例では、波面収差に対する変更要素605あるいは補償器要素601または603の感度の絶対校正が説明される。絶対校正は波面収差の決定のための特定の試験パターンにおいて遂行される。
図10に、試験パターンまたは波面検出パターン61の一例が示されている。波面検出パターン61は、異なる回転角に配置された、いくつかの繰り返し特徴63を含む。
図10の波面検出パターン61は、22.5°の等距離の回転ステップで配置された、8つの繰り返し特徴63を含む。各特徴63はラベル69でラベル付けされており、ここでは、回転角(0、23、45、67、90、113、135、および158)がラベルとして用いられている。各特徴63は、非点収差の形態の波面収差の決定のための第1の格子パターン65を含む。各特徴63は、コマの形態の波面収差の決定のための第2の線パターン67を含む。試験ウェーハは複数の同一の波面検出パターン61を提供され、提供され、少なくとも1つの検出パターン61は複数の1次荷電粒子ビームレット3のラスタ構成41で配置される。
図11に、校正方法がさらに示されている。
【0085】
第1のステップM1において、試験パターン61が、複数の1次荷電粒子ビームレット3の各々に対応する像部分視野29の各々の内部に配置されるよう、試験ウェーハをマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の像面内に整列させる。
【0086】
反復ステップM2において、校正対象の補償器要素を一連の所定の制御パラメータ値SC(i=1…SI)の第1の制御パラメータ値SC(1)に設定する。補償器要素は、アレイ要素601の任意の補償器、または大域補償器603であり得る。変更要素605の校正を遂行することもできる。
【0087】
反復ステップM3において、q=1…NQとする焦点ステップdz(q)を有する所定の焦点間隔にわたる焦点系列を遂行する。各焦点位置において、デジタル像を得、角度αを有する規則的格子パターン65についての複数のコントラスト値C(j、q;α)を決定する。加えて、角度αを有する線パターン67の重心の相対変位drαを決定する。
【0088】
ステップM4において、制御パラメータ値SC(i)について、焦点にわたるコントラスト曲線を評価する。まず、放物線コントラスト曲線を、焦点スタックにわたるコントラスト測定に当てはめる。
図12に、一例が示されている。
図12は、角度0°、22.5°、67.5°における第1の格子パターン65、ならびに第1のパターンと垂直な角度90°、112.5°、および157.5°における第2の格子パターン65の6本のコントラスト曲線C0、C23、C67、C90、C113、およびC158を示す。2本のコントラスト曲線C23およびC113は、x軸に対して22.5°に配向された非点収差に対応する、最大値maxC23およびmaxC23を有する強い像コントラストを示す。パターン63の他の配向については、
図3に示されるとおりの非点収差ビームレットの2つの線焦点76.1および76.2は線格子65.2または65.7に対して回転させられ、線格子65.2または65.7と垂直にも平行にも配向されない。次に、2つの最大コントラスト値の2つの焦点位置の距離によって、制御パラメータ値SC(i)に対応する22.5°に配向された絶対非点収差値ASTを決定する。この値は、HV構造の非点収差焦点差とも呼ばれる(HVはhorizontal-vertical(水平-鉛直)の略であり、互いに垂直に配向された2つの格子パターンを意味する)。
【0089】
M2~M4の方法ステップは、I=i…SIとする所定の一連の制御パラメータ値SC(i)が達成されるまで繰り返され得る。制御パラメータ値SC(i=1…SI)ごとに、非点収差焦点差値を決定する。
【0090】
次に、ステップM4において、また、焦点にわたる線パターン67の中心位置drを分析することができる。
図13は分析の結果の図である。本例では、関心のある波面収差は非点収差ではなく、コマである。コマの形態の波面収差のゆえに、線像の最大位置drは焦点にわたってドリフトし、曲線を示す。
図13は、角度α=0°、α=23°、およびα=45°についての焦点位置zにわたる線像の相対変位drαの例で、曲線の3つの例を示す。本例では、45°未満に配向されたコマ収差が存在する。
【0091】
ステップM3に係る焦点位置の変化は、物体表面25をz方向に変位させるためのアクチュエータを有する台500によって、またはマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の焦点位置を変化させるための任意の他の手段によって遂行され得る。
【0092】
図11に係る方法は、変更要素605od補償要素601または603の絶対感度パラメータの校正のために遂行され得る。本方法はまた、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の波面収差の絶対測定にも一般的に適用され得る。
【0093】
したがって、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットの各ビームレットの波面収差を決定する方法は、(a)複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットのうちのビームレットの各々のために、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の像面(101)内に波面検出パターン(61)を提供するステップであって、各波面検出パターン(61)が、異なる回転角αに配向された複数の繰り返し特徴(63)を含む、ステップと、(b)NQ個の焦点ステップq=1…NQを有する焦点系列内で波面検出パターン(61)の複数の測定を遂行し、複数のコントラスト値C(j,q;α)を決定するステップと、(c)ビームレットj=1…Jの各々および回転角αの各々について、複数のコントラスト曲線C(j;α)を焦点位置の関数として近似するステップと、(d)コントラスト曲線C(j;α)の各々について最大値maxC(j;α)を導出するステップと、(e)互いに対して90°に配向された2つの繰り返し特徴(63)の2つの最大値maxC(j;α)およびmaxC(j;α-90)の2つの焦点位置の最大差からビームレットの各々について、無非点収差AST0またはAST45などの、偶数次の回転対称性を有する対称波面収差A(j)を決定するステップと、を含む。
【0094】
本方法は、複数の繰り返し特徴(63)の各々の焦点にわたる複数の相対像変位dr(j;α)の決定、および焦点にわたる最大相対像変位drからビームレットの各々について奇数次の回転対称性を有する非対称波面収差、例えば、COMA0もしくはCOMA90を決定するステップをさらに含むことができる。
【0095】
本発明の実施形態の一例では、複数の1次ビームレット3のラスタ構成41の回転が考慮される。
図14に示されるものにこのような例。ラスタ構成41の回転は、例えば、レンズ103.1および103.2としてのフィールドレンズ、対物レンズ102、あるいは他の磁気光学要素などの、磁気光学レンズ要素の結果であり得る。時として、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット3のこのような回転はラーマー回転と呼ばれる。ラーマー回転のゆえに、異なる多極要素の座標系(x,y)は異なる配向を有し得る。
図14に、第1の設定点または基準設定点の一例が示されている。座標系は、
図1の場合のように、z座標を1次荷電粒子ビームレット3の伝搬方向とするように選定される。補償器のアレイ要素601を含む、1次マルチビームレット形成ユニット305のマルチアレイ要素の間の回転は、焦点またはドウェル点5(
図14cにおけるドウェル点5.0、5.1、および5.3参照)が像面101のx-y座標系内においてラスタ構成41で形成されるように調整される。ドウェル点5は、像面101内に配置されたサンプル、例えば、ウェーハの表面25上に形成される。
図14aは、サンプル座標系(x,y)に対して回転させられた、座標系(x1,y1)内で補償器要素の対応するアレイ601を示す。
図14b)は、大域変更要素605の回転させられた座標系(x5,y5)を示す。次に、1次荷電粒子ビームレット3.3の波面収差AST0の補償の例で回転が説明される。AST0の場合、線焦点は像面101のxおよびy方向に沿って細長く、これは、ビームレット3.3に対応する、細長いドウェル点5.3において非常に強調して示されている。一例によれば、波面収差AST0は、変更要素605によって、この場合には、第1の正の電圧を電極615.1および615.5に、ならびに第2の、負の電圧を変更要素605の電極615.3および615.7に提供することによって変更される(
図14b)。複数の1次荷電粒子ビームレットは交差区域189内で変更要素605を共通に通過していく。変更要素605は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の設定点に従って回転させられた、座標系(x5,y5)内に配置される。電極615.1~615.8は、複数の1次荷電粒子ビームレットの波面収差AST0を変更するために適宜に回転させられた、座標系(x5,y5)内に配向される。次に、補償制御信号が決定され、対応する補償器要素683.3の電極681に提供される。例えば、第3の正の電圧が電極681.1および681.5に提供され、第4の負の電圧が補償要素601(
図14a)のアレイの補償器要素683.3の電極681.3および681.7に提供される。例えば、第3および第4の電圧としての、制御信号を決定する方法は、以上において補償決定ステップCDSおよび補償実行ステップCESにおいて説明された。電極681.1~681.8は、1次ビームレット3.3のAST0を補償するために適宜に回転させられた、座標系(x1,y1)内に配向される。大域補償要素603(図示せず)は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の基準設定点に従って回転させられた、座標系(x3,y3)内に配置され得る。大域補償要素603(図示せず)の電極は、複数の1次荷電粒子ビームレットの波面収差AST0の大域補償要素のフィールド依存性を有する振幅の第1の成分AG1を補償するために適宜に回転させられた、座標系(x3,y3)内に配向される。
【0096】
像面101と、補償器のアレイ要素601、少なくとも1つの大域補償要素603、および/または変更要素605の座標系との間の相対回転角は、通例、所定の基準の第1の設定点のためにマルチビーム1次荷電粒子顕微鏡1の製造および校正の間に調整される。しかし、相対回転角は、異なる設定点について、例えば、異なる倍率を有する第2の設定点、ビームレットの異なる開口数を有する第3の設定点、または異なる像面101までの焦点距離を有する第4の設定点について、変化し得る。
図15に、一例が示されている。異なる設定点に従って、像面101内のラスタ構成41は、
図15cに示されるように、角度φだけ回転させられる。しかし、変更要素605およびラスタ要素のアレイ601の物理的実施は不変である。要素605による波面収差の変更は、今や、像面101の(x,y)座標系との間の相対回転角γ5’に依存している。像面101内のAST0の変更は2つの方式で達成され得る。
【0097】
第1の方式では、変更要素に提供される変更信号が、交差ボリューム189内の静電変更フィールドの回転を生じさせるように調整される。これは、変更要素605の全ての8つの極を考慮することによって達成され得る。例えば、正の電圧が4つの電極615.1、615.8、615.5、および615.4に提供され、負の電圧が電極615.2、615.3、615.6、および615.7に提供される。電極に提供される電圧レベルの適切な調整により、フィールド回転が達成され得る。回転は、多極要素の多数の極、例えば、12個の極またはそれより多くのものによってさらに改善される。
【0098】
第2の方式では、AST0がベクトル[AST0(0),AST45(0)]に変換される。ベクトルは、回転行列M(γ5’)を用いて、回転行列によって[AST0(γ5’),AST45(γ5’)]=M(γ5’)*[AST0(0),AST45(0)]へ回転させられる。回転行列Mは、通例、波面収差ごとに固有である。同様のアプローチにおいて、補償要素のための補償値GCSまたはLCSは、変更要素および補償要素の座標系の間のラーマー回転角を用いて、M(γ)による回転行列を考慮することによって計算される。したがって、像面101と、補償器のアレイ要素601、少なくとも1つの大域補償要素603、および/または変更要素605の座標系との間の相対回転は、波面収差の回転対称の位数に従って、例えば、[AST0,AST45]または[COMA0,COMA90]を有するベクトル関数としての波面収差によって考慮される。対応する回転角は校正ステップの間に決定され、制御ユニット800のメモリ内に記憶され得る。
【0099】
第2~第5の実施形態の方法は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)において、方法のうちの任意のものの自動適用のために実施されるか、またはユーザ入力によってトリガされ得る。したがって、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、第2~第5の実施形態に係る方法のうちの任意のものを遂行するように構成された、ソフトウェアコードを伴うプロセッサおよびメモリ、ならびにFPGAなどのプログラムされたハードウェアを含む、制御ユニット(800)を有するように構成されている。第1の実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、使用中に複数の1次荷電粒子ビームレット(3)を発生するためのマルチビーム発生ユニット(300)をさらに備える。マルチビーム発生ユニット(300)は補償要素のアレイ(601)をさらに含む。第1の実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は大域補償要素(603)および/または変更要素(605)をさらに備える。制御ユニット(800)は、使用中にマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を設定点に調整すること、ならびに設定点における各々または複数の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差振幅A(j)を決定すること、を行うように構成されている。制御ユニット(800)は、使用中に複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差振幅A(j)のフィールド依存性の大域成分AG1および残差成分Ares(j)を決定するように構成されている。制御ユニット(800)は、使用中に、大域補償要素(603)によって大域成分AG1を、および補償要素のアレイ(601)によって残差成分Ares(j)を補償するようにさらに構成されている。波面収差振幅A(j)の決定の間に、制御ユニット(800)は、変更要素(605)を用いて複数の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々の波面収差振幅を変更するように構成されている。大域補償要素(603)は、少なくとも、複数の静電極または磁極の第1の層を含む多極要素であることができ、波面収差振幅のフィールド依存性の大域成分AG1は、大域補償要素(603)によって影響を受ける波面収差振幅の低次フィールド依存性に対応する。補償器構成要素のアレイ(601)は、少なくとも、複数のJ個のアパーチャ、および各アパーチャの周縁内に配置された複数の静電極を有する第1の層を含み、波面収差振幅のフィールド依存性の残差成分Ares(j)は、大域補償要素(603)を用いて補償され得ない、残差波面収差に対応する。第1の実施形態によれば、制御ユニットは、使用中に、変更要素(605)の変更によって決定された波面収差振幅を正規化感度単位に変換し、正規化感度単位での波面収差振幅の残差成分から補償要素のアレイ(601)のための複数の制御信号を決定するようにさらに構成されている。制御ユニット(800)は、正規化感度単位での波面収差振幅の大域成分AG1から大域補償要素(603)のための制御信号を決定するようにさらに構成されている。一例では、変更要素(605)は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の偏向走査器(110)または磁気補正要素(420)によって与えられるか、あるいはマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の大域補償要素(603)と同一である。
【0100】
高速制御および認識波面収差は、高い分解能および高い像コントラストのためだけでなく、高い像繰り返し精度のためにも重要である。高い像繰り返し精度の下では、同じ区域の繰り返される像獲得の下で、第1および第2の繰り返されたデジタル像が生成され、第1および第2の繰り返されたデジタル像の間の差は所定の閾値未満であると理解される。例えば、第1および第2の繰り返されたデジタル像の間の像コントラストの差は10%未満、好ましくは、5%未満でなければならない。このように、結像動作を繰り返したとしても、同様の像結果が得られる。これは、例えば、異なるウェーハダイ内の同様の半導体構造の像獲得および比較のために、あるいは得られた像と、像シミュレーションから、もしくはCADデータから、もしくはデータベースから得られた代表像、または基準像との比較のために重要である。
【符号の説明】
【0101】
1 マルチビームレット荷電粒子顕微鏡
3 1次電子ビームレット
5 1次荷電粒子ビームスポット
7 サンプルまたは物体
9 2次電子ビームレット
11 2次荷電粒子ビーム経路
13 1次荷電粒子ビーム経路
15 2次荷電粒子像スポット
17 像パッチ
19 像パッチの重なり
21 像パッチの中心
25 物体7の表面、ウェーハ表面
27 走査経路
29 像部分視野
33 第1の検査部位
35 第2の検査部位
41 ラスタ構成
49 設定点
51 コントラスト測定に当てはめられた第2のコントラスト曲線
53 コントラスト測定に当てはめられた第1のコントラスト曲線
55 第1のコントラスト曲線の最大点
57 第2のコントラスト曲線の最大点
61 波面検出パターン
63 波面検出パターンの繰り返し特徴
65 規則的格子パターン
67 線パターン
69 配向指数
72 第1の線焦点面
74 最小錯乱円スポット
76 線状焦点
78 第2の線焦点面
81 第1のコントラスト曲線
83 第2のコントラスト曲線
100 物体照射ユニット
101 物体面
102 対物レンズ
103 フィールドレンズ
105 光軸
108 ビームクロスオーバ
110 共通偏向系
189 交差区域
200 検出ユニット
205 投影システム
207 像センサ
208 静電または磁気レンズ
209 静電または磁気レンズ
210 静電または磁気レンズ
212 第2のクロスオーバ
220 2次電子マルチアパーチャ補正器
222 第2の共通偏向系
300 マルチビームレット発生器
301 供給源
303 コリメートレンズ
305 1次マルチビームレット形成ユニット
306.1 第1のマルチアパーチャプレート
306.2 第2の、およびさらなるマルチアパーチャプレート
307 第1の静電フィールドレンズ
308 第2のフィールドレンズ
309 発散1次荷電粒子ビーム
311 1次荷電粒子ビームレットスポット
321 中間像面
390 ビームステアリングマルチアパーチャプレート
400 ビーム分割器
420 磁気補正要素
500 サンプル台
503 サンプル帯電ユニット
601 補償要素のアレイ
603 大域補償要素
605 変更要素
615 極
681 電極
683 多極要素
685 アパーチャ
687 配線接続
800 制御ユニット
820 投影システム制御ユニット
830 1次ビームレット制御モジュール
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
- 補償要素のアレイ(601)を含む、複数の1次荷電粒子ビームレット(3)を発生するためのマルチビーム発生ユニット(300)、
- 大域補償要素(603)、
- 変更要素(605)、
- 制御ユニット(800)、を備え、前記制御ユニット(800)が、
- 前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を設定点に調整すること、
- 前記変更要素(605)を用いて前記複数の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々の波面収差振幅を変更すること、
- 前記設定点における前記複数の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々の前記波面収差振幅A(j)を決定すること、
- 前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の前記波面収差振幅A(j)のフィールド依存性の大域成分AG1および残差成分Ares(j)を決定すること、
- 前記大域補償要素(603)によって前記大域成分AG1を補償すること、
- 補償要素の前記アレイ(601)によって前記残差成分Ares(j)を補償すること、
を行うように構成されている、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項2】
前記大域補償要素(603)が、少なくとも、複数の静電極または磁極の第1の層を含む多極要素であり、前記波面収差振幅の前記フィールド依存性の前記大域成分AG1が、前記大域補償要素(603)によって影響を受ける前記波面収差振幅の低次フィールド依存性に対応する、請求項1に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項3】
補償器構成要素の前記アレイ(601)が、少なくとも、複数のJ個のアパーチャ、および各アパーチャの周縁内に配置された複数の静電極を有する第1の層を含み、前記波面収差振幅の前記フィールド依存性の前記残差成分Ares(j)が、前記大域補償要素(603)を用いて補償され得ない、残差波面収差に対応する、請求項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項4】
前記制御ユニットが、前記変更要素(605)の前記変更によって決定された前記波面収差振幅を正規化感度単位に変換し、正規化感度単位での前記波面収差振幅の前記残差成分から補償要素の前記アレイ(601)のための複数の制御信号を決定するようにさらに構成されている、請求項1
または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項5】
前記制御ユニットが、正規化感度単位での前記波面収差振幅の前記大域成分AG1から前記大域補償要素(603)のための制御信号を決定するように構成されている、請求項4に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項6】
前記変更要素(605)が前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の偏向走査器(110)または磁気補正要素(420)によって与えられる、請求項1
または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項7】
前記変更要素(605)が前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の前記大域補償要素(603)と同一である、請求項1
または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項8】
前記設定点が、前記像面(101)、補償器構成要素の前記アレイ(601)、前記大域補償要素(603)、および/または前記変更要素(605)の座標系の間の前記複数の1次荷電粒子ビームレット(1)の前記ラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を含み、前記制御ユニットが、前記補償要素(601、603)および/または前記変更要素(605)の間の前記波面収差の回転差を補償するように構成されている、請求項1
または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【請求項9】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数の波面収差振幅を決定する方法であって、
a)前記マルチビーム顕微鏡(1)を検査タスクの設定点に設定するステップと、
b)一連の少なくともSI=3個の変更制御信号SV(i=1…SI)を変更要素(605)に提供することによって複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差を変更し、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について各変更制御信号SV(i=1…SI)における複数のコントラスト値C(j,i)を測定するステップと、
c)前記複数のコントラスト値C(j,i)から、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について複数のコントラスト曲線C(j=1…J)を決定するステップと、
d)前記複数のコントラスト曲線C(j=1…J)から前記設定点における正規化感度単位での複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
ステップcが、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々についての前記i=1…SIのコントラスト値C(j,i)に対する放物線、双曲線、または多項式近似の計算を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
正規化感度単位での複数のJ個の波面振幅A(j)の各々が、最大コントラスト値maxC(j)における変更制御信号SV(maxC(j))を前記変更要素605の正規化範囲RVで除算したもの、および/または前記コントラスト曲線C(j)の放物線係数KV(j)のうちの少なくとも一方から決定される、請求項9
または10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の1次荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも1本の前記像コントラストの所定の変更を達成するために必要とされる最大および最小制御信号SVを決定することによって、前記正規化範囲RVを決定するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
- 前記波面収差振幅を波面収差振幅ベクトルに変換するステップと、
- 前記波面収差振幅ベクトルへの回転行列Mの乗算によって、像面(101)、補償器構成要素のアレイ(601)、大域補償要素(603)、および/または前記変更要素(605)の座標系の間の前記複数の1次荷電粒子ビームレット(1)の前記ラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を考慮するステップと、
をさらに含む、請求項9
または10に記載の方法。
【請求項14】
設定点におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数の波面収差を補償する方法であって、
a)正規化感度単位での複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)を受け取るステップと、
b)正規化感度単位での振幅の大域成分AG1を決定するステップであって、前記大域成分が大域補償要素(603)の前記複数のJ個の波面収差振幅A(j)の所定のフィールド依存性を有する、ステップと、
c)正規化感度単位での複数の残差波面振幅の残差成分Ares(j)を決定するステップと、
d)前記大域成分を大域補正信号GCSに変換するステップと、
e)前記残差成分を複数の局所補償信号LCS(j)に変換するステップと、
f)前記大域補正信号GCSを大域補償要素(603)に提供するステップと、
g)前記複数の局所補償信号LCS(j)を補償要素のアレイ(601)に提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
ステップa)が、前記複数のJ個の波面収差振幅A(j)を決定するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のJ個の波面収差振幅A(j)を決定する前記ステップが、
- 一連の少なくともSI=3個の変更制御信号SV(i=1…SI)を変更要素(605)に提供することによって、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の前記波面収差を変更するステップと、
- 前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について各変更制御信号SV(i=1…SI)における複数のコントラスト値C(j,i)を測定するステップと、
- 前記複数のコントラスト値C(j,i)から、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について複数のコントラスト曲線C(j=1…J)を決定するステップと、
- 前記複数のコントラスト曲線C(j=1…J)から正規化感度単位での複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)を決定するステップと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々についての前記i=1…SIのコントラスト値C(j,i)に対する放物線、双曲線、または多項式近似の計算をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
正規化感度単位での複数のJ個の波面振幅A(j)の各々が、最大コントラスト値maxC(j)における変更制御信号SV(maxC(j))を前記変更要素605の正規化範囲RVで除算したもの、および/または前記コントラスト曲線C(j)の放物線係数KV(j)のうちの少なくとも一方から決定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
- 前記波面収差振幅A(j)を波面収差振幅ベクトルに変換するステップと、
- 前記波面収差振幅ベクトルへの回転行列Mの乗算によって、前記設定点における、補償器構成要素のアレイ(601)、大域補償要素(603)、および/または前記変更要素(605)の間の前記複数の1次荷電粒子ビームレット(1)の前記ラスタ構成(41)の所定の回転の逸脱を考慮するステップと、
をさらに含む、請求項14
または15に記載の方法。
【請求項20】
ステップd)において、前記大域補正信号GCSが、前記大域補償要素(603)の所定の正規化範囲RCの乗算によって、または前記大域補償要素(603)の所定の放物線感度パラメータKCから、正規化感度単位での前記振幅AG1から得られる、請求項14
または15に記載の方法。
【請求項21】
ステップe)において、前記複数の局所補償信号LCS(j)が、前記補償器要素のアレイ(601)の前記補償器要素の各々の所定の正規化範囲RLの乗算によって、または前記補償要素のアレイ(601)の複数の所定の放物線感度パラメータKLC(j)から、正規化感度単位での前記複数の残差波面収差振幅Ares(j)から得られる、請求項14
または15に記載の方法。
【請求項22】
ステップa)が、検査タスクの間における前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の波面収差の監視をさらに含む、請求項14
または15に記載の方法。
【請求項23】
前記監視が、前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡の所定のモデル、および2次的な間接監視パラメータに基づく、モデルベースの制御を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
検査タスクの間に受け取られた複数のデジタル像の像コントラストの前記監視と、像コントラストが所定の閾値を下回るときに、前記複数のJ個の波面収差振幅A(j=1…J)の前記受け取りをトリガするステップと、をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
大域補償器(603)、または補償器要素のアレイ(601)の補償器要素、または変更要素(605)などの、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の荷電粒子光学要素を校正する方法であって、
- 一連の少なくともSI=3個の異なる制御信号SC(i=1…SI)を前記荷電粒子光学要素に提供することによって、複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の波面収差を変更するステップと、
- 前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について各異なる制御信号SC(i=1…SI)における複数のコントラスト値C(j=1...J,i=1...SI)を測定するステップと、
- 前記複数のコントラスト値C(j,i)から、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレット(3)の各々について複数のコントラスト曲線C(j=1…J,SC)を決定するステップと、
- 極値maxC(j)、および前記コントラスト曲線C(j,SC)の各々の前記極値maxC(j)に対応する前記制御信号SC(maxC(j))を決定するステップと、
- 正規化感度単位での前記荷電粒子光学要素によって影響を受ける前記波面振幅A(j)の複数の変更を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項26】
正規化感度単位での前記波面振幅A(j)の前記複数の変更が、A(j)=SC(maxC(j))/RCによって得られ、ここで、RCは、前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも1本についての前記像コントラストC(j)の所定の変更を達成するために必要とされる最大および最小制御信号SCの間の差に対応する、前記荷電粒子光学要素の正規化範囲である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
正規化感度単位での前記波面振幅A(j)の前記複数の変更が、前記極値max(C(j,SC))の近傍におけるコントラスト曲線C(j=1…J,SC)に対する近似の放物線定数KC(j)を用いて、A(j)=SIGN(j)*2KV(j)*SC(maxC(j))によって得られる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
正規化感度単位での前記荷電粒子光学要素の前記波面振幅A(j)の前記複数の変更を前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の制御ユニット(800)のメモリ内に記憶するステップをさらに含む、請求項25
または26に記載の方法。
【請求項29】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットの各ビームレットの波面収差を決定する方法であって、
- 前記複数のJ本の1次荷電粒子ビームレットのうちの前記ビームレットの各々のために、前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の像面(101)内に波面検出パターン(61)を提供するステップであって、各波面検出パターン(61)が、異なる回転角αに配向された複数の繰り返し特徴(63)を含む、ステップと、
- NQ個の焦点ステップq=1…NQを有する焦点系列内で前記波面検出パターン(61)の複数の測定を遂行し、複数のコントラスト値C(j,q;α)を決定するステップと、
- 前記ビームレットj=1…Jの各々および前記回転角αの各々について、複数のコントラスト曲線C(j;α)を焦点位置の関数として近似するステップと、
- 前記コントラスト曲線C(j;α)の各々について前記最大値maxC(j;α)を導出するステップと、
- 互いに対して90°に配向された2つの繰り返し特徴(63)の2つの最大値maxC(j;α)およびmaxC(j;α-90)の2つの焦点位置の最大差から前記ビームレットの各々について偶数次の回転対称性を有する対称波面収差A(j)を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項30】
前記複数の繰り返し特徴(63)の各々の焦点にわたる複数の相対像変位dr(j;α)の決定、および焦点にわたる前記最大相対像変位dr(j;α)から前記ビームレットの各々について奇数次の回転対称性を有する非対称波面収差を決定するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【国際調査報告】