(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】スロットル弁アクチュエータユニット、このようなスロットル弁アクチュエータユニットを備えた燃料電池システムおよびこのような燃料電池システムを備えた自動車
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20241024BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241024BHJP
【FI】
F16K27/00 Z
H01M8/04 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525196
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2022078701
(87)【国際公開番号】W WO2023072636
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】102021212202.7
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル ポパ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル-イリー イサインク
(72)【発明者】
【氏名】ミハイ ドリエノフスキ
【テーマコード(参考)】
3H051
5H127
【Fターム(参考)】
3H051BB05
3H051CC11
5H127AB04
5H127AC05
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127EE19
(57)【要約】
本発明は、電動モータにより変位可能なスロットル弁(14)を有するスロットル弁アクチュエータ(4)と、流体通路とを備えたスロットル弁アクチュエータユニット(7)であって、流体通路は、第1および第2の流体通路部分(8a,8b)を有しており、第1の流体通路部分(8a)は、スロットル弁(14)により変更可能な流れ横断面を有している、スロットル弁アクチュエータユニット(7)に関する。第2の流体通路部分(8b)は、流体通路を通流する流体の圧力低下を生ぜしめる幾何学形状を有している。さらに本発明は、このようなスロットル弁アクチュエータユニット(7)を備えた燃料電池システム(2)およびこのような燃料電池システム(2)を備えた自動車(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータにより変位可能なスロットル弁(14)を有するスロットル弁アクチュエータ(4)と、流体通路とを備えたスロットル弁アクチュエータユニット(7)であって、前記流体通路は、第1および第2の流体通路部分(8a,8b)を有しており、前記第1の流体通路部分(8a)は、前記スロットル弁(14)により変更可能な流れ横断面を有している、スロットル弁アクチュエータユニット(7)において、
前記第2の流体通路部分(8b)は、前記流体通路を通流する流体の圧力低下を生ぜしめる幾何学形状を有していることを特徴とする、スロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項2】
前記第2の流体通路部分(8b)は、前記第1の流体通路部分(8a)の前記流れ横断面に対して間隔をあけて配置されている、請求項1記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項3】
前記第2の流体通路部分(8b)は、前記第1の流体通路部分(8a)に対して上流側または下流側に配置されている、請求項1または2記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項4】
前記第2の流体通路部分(8b)の前記幾何学形状は、流動流体の流れ方向(17)において、前記第2の流体通路部分(8b)の第1の流れ横断面(10)から、前記第2の流体通路部分(8b)の第2の流れ横断面(11)に移行しており、前記第2の流体通路部分(8b)の前記第2の流れ横断面(11)は、前記第2の流体通路部分(8b)の第3の流れ横断面(12)に移行している、請求項1から3までのいずれか1項記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項5】
前記第2の流体通路部分(8b)の前記幾何学形状は、スロットルまたは絞りの幾何学形状に相応する、請求項1から4までのいずれか1項記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項6】
前記流体通路は、前記変更可能な流れ横断面に対して間隔をあけて配置された溝を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項7】
前記第2の流体通路部分(8b)は、前記スロットル弁アクチュエータ(4)に対して別個に形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項8】
前記第1の流体通路部分(8a)と前記第2の流体通路部分(8b)とは、互いに流体案内式に接続されており、前記第2の流体通路部分(8b)と、前記スロットル弁アクチュエータ(4)または前記第1の流体通路部分とは、材料結合式、形状結合式または力結合式に互いに固定されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項9】
前記第1の流体通路部分(8a)は、最小限の圧力低下に関して流れを最適化されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項10】
燃料電池スタック(5)と、該燃料電池スタックの空気出口側に配置された、請求項1から9までのいずれか1項記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)とを備えた燃料電池システム(2)。
【請求項11】
前記スロットル弁アクチュエータユニット(7)の第1のスロットル弁アクチュエータ(4)と同一の別のスロットル弁アクチュエータ(4)が、前記燃料電池スタック(5)の空気入口側に配置されている、請求項10記載の燃料電池システム(2)。
【請求項12】
請求項11記載の燃料電池システム(2)を備えた自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のスロットル弁アクチュエータユニットに関する。さらに本発明は、このようなスロットル弁アクチュエータユニットを備えた燃料電池システムに関する。さらに本発明は、このような燃料電池システムを備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料電池システムでは、燃料電池システムの燃料電池スタックへの空気供給量を調整するために、スロットル弁アクチュエータが使用される。このために、第1の流体通路が燃料電池スタック内に通じている一方で、第2の流体通路が燃料電池スタックから導出されている。この場合、従来技術では、空気入口側に第1のスロットル弁アクチュエータを配置し、空気出口側に第2および第3のスロットル弁アクチュエータを互いに直列に配置することが行われてきた。第2のスロットル弁アクチュエータが、第2の流体通路を開閉するように形成されているのに対して、第3のスロットル弁アクチュエータは、第2の流体通路内の所望の圧力を調整するように形成されている。コスト節減を達成するためには、第2および第3のスロットル弁アクチュエータの機能を単一のスロットル弁アクチュエータにまとめることが望ましいと考えられる。しかしながら、第2および第3のスロットル弁アクチュエータに対する要求は、相反するものである。第2のスロットル弁アクチュエータが、第2のスロットル弁アクチュエータのスロットル弁の回転角度位置に応じて可能な限り正確な圧力を調整するように設計されているのに対して、第3のスロットル弁アクチュエータは、スロットル弁の閉鎖位置では第2の流体通路を可能な限り密閉し、開放位置では最小限の圧力損失を提供するように設計されている。
【0003】
独国特許出願公開第102010051429号明細書は、スロットル弁アクチュエータに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、一方では可能な限り正確な圧力調整を可能にし、他方ではスロットル弁の開放位置における最小限の圧力損失と、スロットル弁の閉鎖位置における可能な限り高いシール作用とを可能にする、スロットル弁アクチュエータユニットを提供することにある。さらに、本発明の第2の課題は、このようなスロットル弁アクチュエータユニットを備えた燃料電池システムを提供することにある。さらに、第3の課題は、このような燃料電池システムを備えた自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の課題は、請求項1に記載の特徴を備えた装置によって解決される。換言すると、第1の課題は、電動モータにより変位可能なスロットル弁を有するスロットル弁アクチュエータと、流体通路とを備えたスロットル弁アクチュエータユニットであって、流体通路は、第1および第2の流体通路部分を有しており、第1の流体通路部分は、スロットル弁により変更可能な流れ横断面を有しており、第2の流体通路部分は、流体通路を通流する流体の圧力低下を生ぜしめる幾何学形状を有している、スロットル弁アクチュエータユニットによって解決される。
【0006】
本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットにより、この単一のスロットル弁アクチュエータユニットのみを、燃料電池スタックの空気出口側に配置し、これにより、さもなければ空気出口側において他方のスロットル弁アクチュエータに直列に配置する必要がある1つの別のスロットル弁アクチュエータにかかるコストを節約することが可能である。換言すると、本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットにより、スロットル弁アクチュエータユニットのスロットル弁アクチュエータのスロットル弁の閉鎖位置では、流体通路が可能な限り流体密に閉じられている一方で、スロットル弁アクチュエータユニットのスロットル弁アクチュエータのスロットル弁の開放位置では最小限の圧力損失が生じる、ということが保証されている。同時に、本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットにより、第2の流体通路部分の幾何学形状に基づき、特にスロットル弁の小さな流れ横断面または小さな開放角度において、流体通路内の圧力を可能な限り正確に調整することが可能である。それというのも、第2の流体通路部分の幾何学形状に基づき、この幾何学形状なしの場合に必要になるであろう動きに比べて、スロットル弁のより大きな動きが所定の圧力差を達成するために必要であるからである。
【0007】
別の好適な実施形態では、第2の流体通路部分の幾何学形状は、スロットル弁が可変の流れ横断面を閉じる位置に対して、スロットル弁が30°未満の開放動作を行うと、スロットル弁の下流側に不釣り合いに低い圧力上昇のみを引き起こすことができるように形成されている。不釣り合いに小さいとは特に、スロットル弁が可変の流れ横断面を閉じる位置に対して、スロットル弁が30°超の開放動作を行うことにより引き起こすことができる圧力上昇に対してである。代替的に、第2の流体通路部分の幾何学形状は、スロットル弁が可変の最大流れ横断面の20%に相当する流れ横断面まで開放動作を行うと、スロットル弁の下流側に不釣り合いに小さい圧力上昇のみを引き起こすことができるように、形成されている。不釣り合いに小さいとは特に、可変の最大流れ横断面の50%~100%に相当する流れ横断面においてスロットル弁の下流側に引き起こすことができる圧力上昇に対してである。
【0008】
スロットル弁アクチュエータユニットおよび/またはスロットル弁アクチュエータは、好適には燃料電池システム用のスロットル弁アクチュエータユニットまたはスロットル弁アクチュエータである。換言すると、この場合、スロットル弁アクチュエータユニットまたはスロットル弁アクチュエータは、その使用分野に相応して形成されており、この用途に適している。これにより、燃料電池システムにおいて使用するための適性および寿命に関して、スロットル弁アクチュエータユニットおよびスロットル弁アクチュエータを最適化することができる。
【0009】
スロットル弁アクチュエータが、第1および/または第2の流体通路部分を含むスロットル弁アクチュエータハウジングを有していると、特に有利である。スロットル弁アクチュエータハウジングが、第1および/または第2の流体通路部分と一体に形成されていると、特に好適である。これにより、別個の製造プロセスを省くことができ、これはコストを節減することになる。同時に、これにより、スロットル弁アクチュエータハウジングと、流体通路部分のうちの1つとの間の取付けおよび別個の接続を省くことができ、これは、さらにコストを節減することになる。さらに、例えばプラスチック射出成形法または金属鋳造法によりまとめて形成することにより、スロットル弁アクチュエータと流体通路部分との間で可能な限り正確な位置調整が行われる。
【0010】
スロットル弁アクチュエータが、スロットル弁を変位させることができる電動モータを有している場合も有利である。電動モータは、好適には機械的に整流される直流モータとして、または永久励磁される同期モータとして形成されている。最初に挙げた形式のモータは極めて廉価であるのに対して、2番目に上げた形式のモータは極めて長寿命である。さらに、スロットル弁アクチュエータのスロットル弁を変位させるために、電動モータとしてステップモータを使用することも考えられる。このようにして、スロットル弁の位置検出を省くことができ、これは、さらにコストを節減することになる。
【0011】
また、第1の流体通路部分の流れ横断面の可変性が、第1の流体通路部分内のスロットル弁の位置に左右される場合も好適である。
【0012】
さらに、スロットル弁アクチュエータが軸を有しており、この軸を介して、スロットル弁アクチュエータの電動モータが第1の流体通路部分内のスロットル弁の位置を変化させると、好適である。このために、軸がスロットル弁に相対回動不能に結合されている。この場合、軸は1箇所または2箇所で、第1の流体通路部分から出ていることが可能である。これは、軸が、第1の流体通路部分を画定する第1の流体通路区分の通路壁を半径方向に貫通していることを意味する。このような貫通部は、本発明の枠内では軸の出口とも呼ばれる。
【0013】
軸が2箇所で第1の流体通路部分から出ている好適な変化形では、第1の流体通路部分からの軸の第1の出口が、スロットル弁とスロットル弁アクチュエータの電動モータとの駆動伝達式の結合に用いられる。特に、第1の流体通路部分からの軸のこの第1の出口は追加的に、軸および/またはスロットル弁の支持に用いることができる。特に、第1の流体通路部分からの軸の第2の出口は、軸および/またはスロットル弁の支持にのみ用いられる。
【0014】
別の好適な実施形態では、第1の流体通路部分は、軸の出口を1つだけ有している。換言すると、軸のこの出口は、一方では軸および/またはスロットル弁の支持に用いられ、他方ではスロットル弁とスロットル弁アクチュエータの電動モータとの駆動伝達式の結合に用いられる。
【0015】
別の好適な実施形態では、軸の1つの出口または軸の第1および第2の出口は、スロットル弁によりその閉鎖位置で閉じられた平面内に位置している。これは、軸およびスロットル弁の支持部の特に簡単な構成である。
【0016】
別の好適な実施形態では、軸の1つの出口は、流れ方向に見て、スロットル弁によりその閉鎖位置で閉じられた平面内に位置している。これにより、第1の流体通路部分からの軸の出口が望ましくないバイパス体積流を引き起こすことが防止される。第1の流体通路部分からの軸の出口が2つ設けられている場合には、軸の2つの出口は、スロットル弁によりその閉鎖位置で閉じられた平面に対して間隔をあけて位置することが可能である。換言すると、軸の2つの出口は、流れ方向においてこの平面の上流側または下流側に位置することが可能である。また、軸の各1つの出口が、この平面の上流側と下流側とに位置することも可能である。これにより、軸の出口に必要な間隙寸法によって引き起こされる、スロットル弁によりその閉鎖位置で閉じられた平面の傍らを通過する望ましくないバイパス体積流が防止される。
【0017】
本発明の枠内では、スロットル弁アクチュエータのスロットル弁の閉鎖位置とは、第1の流体通路部分の流れ横断面が最小になっているスロットル弁の位置を意味する。これにより、スロットル弁が第1の流体通路部分を完全に流体密に閉じることを必ずしも意味するわけではない。換言すると、流動流体の望ましいまたは望ましくないバイパス体積流が発生する可能性があり、このバイパス体積流は、望ましくないバイパス体積流の場合、用途に関して許容可能な範囲内である。スロットル弁の開放位置とは、本発明の枠内では、スロットル弁が、第1の流体通路部分の流れ横断面が最大になっている位置に位置することを意味する。
【0018】
流動流体は、好適には空気である。特にこの場合、圧送可能な流体流または空気流である。空気流を圧送するためには、例えば電動モータにより駆動される遠心圧縮機を使用することが考えられる。このようにして、極僅かな脈動という点で優れている連続的な空気流を供給することができる。
【0019】
好適な実施例は、第2の流体通路部分が、第1の流体通路部分の流れ横断面に対して間隔をあけて配置されていることを特徴とする。換言すると、流体通路を通流する流体の圧力低下を生ぜしめる幾何学形状は、第1の流体通路部分の、スロットル弁により変更可能な流れ横断面には組み込まれていない。これにより、第1の流体通路部分を、第2の流体通路部分とは関係なく形成することができる。好適には、第1の流体通路部分は、流れを最適化するように形成されている、すなわち、最小限の圧力損失が生じるように形成されている。
【0020】
好適な実施例は、第2の流体通路部分が、第1の流体通路部分に対して上流側または下流側に配置されていることを特徴とする。上流側とは、流動流体の流れ方向とは反対の方向を意味するのに対して、下流側とは、流動流体の流れ方向の向きの方向を意味する。特に、第1の流体通路部分の下流側に第2の流体通路部分を配置することにより、スロットル弁の小さな開放角度、すなわち小さな流れ横断面に対して大きな圧力低下が引き起こされ、これは、スロットル弁の小さな開放角度において、正確な圧力調整が可能である、ということを保証する。
【0021】
別の好適な実施例は、第2の流体通路部分の幾何学形状が、少なくとも2つの流れ横断面を有していることを特徴とする。流動流体の流れ方向において、第2の流体通路部分の幾何学形状が、第2の流体通路部分の第1の流れ横断面から、第2の流体通路部分の第2の流れ横断面に移行していると、特に有利である。この場合、第2の流体通路部分の第2の流れ横断面が、第2の流体通路部分の第1の流れ横断面よりも小さくなっていると、特に有利である。
【0022】
別の好適な実施形態では、第2の流体通路部分の幾何学形状は、少なくとも1つの第3の流れ横断面を有している。有利には、この第3の流れ横断面は、流れ方向において直接、第2の流れ横断面に続いている。さらに、第3の流れ横断面が、第2の流れ横断面よりも大きくなっていると好適である。さらに、第3の流れ横断面が、第1の流れ横断面に相応すると、極めて好適である。
【0023】
別の好適な実施形態では、第2の流体通路部分の第1の流れ横断面から、第2の流体通路部分の第2の流れ横断面への移行部および/または第2の流体通路部分の第2の流れ横断面から、第2の流体通路部分の第3の流れ横断面への移行部が、突飛に(sprunghaft)、つまり非連続的な流れ横断面変化部として形成されている。この流れ横断面変化は、流体の流れ方向に関係する。
【0024】
別の好適な実施例は、第2の流体通路部分の第2の流れ横断面が、第2の流体通路部分に圧入されたリングにより形成されていることを特徴とする。換言すると、リングの内径が、第2の流体通路部分の第2の流れ横断面を画定する一方で、リングの外径は、リングを第2の流体通路部分に圧入する際に、リングと第2の流体通路部分との間にプレス嵌めを引き起こすように選択されている。この場合が、第2の流体通路部分の幾何学形状を形成する特に廉価で簡単な手段である。
【0025】
別の好適な実施例は、第2の流体通路部分の幾何学形状が、スロットルまたは絞りの幾何学形状に相応することを特徴とする。換言すると、第2の流体通路部分の幾何学形状は、スロットルの場合、第2の流体通路部分の第2の流れ横断面が、第2の流体通路部分の第1の流れ横断面よりも小さくなっており、かつ第2の流れ横断面が流体の流れ方向において、第2の流体通路部分の第2の流れ横断面の直径よりも大きな長さにわたり延在している幾何学形状に相応する。
【0026】
絞りの場合、第2の流体通路部分の幾何学形状は、第2の流体通路部分の第2の流れ横断面が、第2の流体通路部分の第1の流れ横断面よりも小さくなっており、かつ第2の流れ横断面が流体の流れ方向において、第2の流体通路部分の第2の流れ横断面の直径よりも小さな長さにわたり延在している幾何学形状に相応する。第2の流体通路部分の第2の流れ横断面が円形の幾何学形状を有している場合、換言すると、1つの直径のみを有しており、このことが好適である場合、この直径を、絞りおよびスロットルに関する上述の比較または上述の実施形態に利用することができる。第2の流体通路部分の第2の流れ横断面が、その周に沿って可変の直径を有している別の場合では、第2の流体通路部分の第2の流れ横断面の最小直径、平均直径または最大直径を、絞りおよびスロットルに関する上述の比較または上述の実施形態に利用することができる。
【0027】
別の好適な実施例は、流体通路が、スロットル弁により変更可能な流れ横断面に対して間隔をあけて配置された溝を有していることを特徴とする。溝が、流体通路の周方向に、つまり特に流体の流れ方向に対して直交して延びていると、特に好適である。さらに、溝が全周にわたり、換言すると流体通路の周方向において360°にわたり延在していると、好適である。さらに、溝が、流れ方向において第1の流体通路部分の流れ横断面に対して間隔をあけて形成されていると、有利である。さらに、第1または第2の流体通路部分が溝を含んでいると、有利である。溝が、第1の流体通路部分から第2の流体通路部分への移行部として形成されていると、極めて特に有利である。これは、例えば第1の流体通路部分が第2の流体通路部分とは別個に形成されていることによって実現することができる。溝が、流体の流れ方向とは反対の方向において、第2の流体通路部分の幾何学形状または第2の流体通路部分の第2の流れ横断面に対して間隔をあけて形成されていると、極めて好適である。溝およびその配置により、スロットル弁の開放角度が小さい場合に、換言すると第1の流体通路部分の流れ横断面が小さい場合に、流体通路を通流する流体を渦動させる、つまり乱流にすることが可能である。その結果、さらなる圧力低下が生じ、これにより、圧力を調整するためにはスロットル弁のより大きな動きが必要となり、ひいては調整能力を向上させる。
【0028】
好適な実施例は、第2の流体通路部分が、スロットル弁アクチュエータに対して別個に形成されていることを特徴とする。換言すると、スロットル弁アクチュエータは、第2の流体通路部分なしに使用可能である。特にスロットル弁アクチュエータは、第1の流体通路部分と第2の流体通路部分とが好適には直接にまたはシールを介して、互いに流体案内式に接続されているように、第2の流体通路部分に接続されている。換言すると、第2の流体通路部分を、スロットル弁および/または第1の流体通路部分に対してモジュール式に形成することが可能である。換言すると、第2の流体通路部分は、スロットル弁および/または第1の流体通路部分とは別個に形成されている。これにより、燃料電池スタックの空気入口側に同じスロットル弁アクチュエータ、つまり、スロットル弁アクチュエータユニットのスロットル弁アクチュエータが配置または使用され得、これにより、さらにコストが節減されることになる。
【0029】
好適な実施例は、第1の流体通路部分と第2の流体通路部分とが、互いに流体案内式に接続されており、第2の流体通路部分と、スロットル弁アクチュエータまたは第1の流体通路部分とは、材料結合式、形状結合式または力結合式に、互いに直接的または間接的に固定されていることを特徴とする。このようにして、スロットル弁アクチュエータおよび第1の流体通路部分と、第2の流体通路部分とが別個に形成されているにもかかわらず、1つの構成群または1つのユニットが形成される。この固定、換言すると結合は、例えば溶接、ねじ締結、パイプクリップ、またはねじ山を介して行われてよい。流体案内式の接続部も固定部も、それぞれ互いに独立して、直接的または間接的に形成されていてよい。
【0030】
好適な実施例は、第1の流体通路部分が、最小限の圧力低下に関して流れを最適化されていることを特徴とする。これにより、スロットル弁アクチュエータを、第1の流体通路部分と共に、つまり第2の流体通路部分なしで、燃料電池スタックの空気入口側に配置または使用することができる。
【0031】
燃料電池システムの提供に関する第2の課題は、燃料電池スタックと、燃料電池スタックの空気出口側に配置された本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットとを備えた燃料電池システムによって解決される。
【0032】
好適な実施例は、スロットル弁アクチュエータユニットの第1のスロットル弁アクチュエータと同一の別のスロットル弁アクチュエータが、燃料電池スタックの空気入口側に配置されていることを特徴とする。このようにして、燃料電池システムの空気出口側において、従来技術から周知の2つの異なるスロットル弁アクチュエータを本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットに置き換えるだけでなく、空気入口側においても、第2の流体通路部分および/または第2の流体通路部分の幾何学形状を省くことにより、本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットの大部分を使用することができる。換言すると、空気入口側にも、本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットのスロットル弁アクチュエータと同じスロットル弁アクチュエータが提供される。これにより、今や空気入口側と空気出口側とにおいて同じスロットル弁アクチュエータを使用することができるため、個数の増加に基づき、製造コストを節減することができる。別のスロットル弁アクチュエータが、スロットル弁アクチュエータユニットに属す第1のスロットル弁アクチュエータと同じである、という表現は、同じモデルであるため、異なるスロットル弁アクチュエータを製造せずに済む、ということを意味する。
【0033】
自動車の提供に関する第3の課題は、このような燃料電池システムを備えた自動車によって解決される。換言すると、本発明による燃料電池システムを含む自動車が提供される。これにより、廉価な自動車が提供されることになる。
【0034】
本発明の有利な改良は、従属請求項および以下の図面の説明に記載されている。
【0035】
以下に、本発明を実施例に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】燃料電池システムと本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットとを備えた自動車を示す図である。
【
図2a】本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットを示す図である。
【
図2b】本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットを示す断面図である。
【
図3】本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットに関する流れシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1には、燃料電池システム2を含む自動車1が示されている。燃料電池システム2は遠心圧縮機3を有しており、遠心圧縮機3により、空気流を燃料電池スタック5に圧送することができる。遠心圧縮機3と燃料電池スタック5との間には、燃料電池スタック5の空気入口側にスロットル弁アクチュエータ4が流体案内式に配置されている。スロットル弁アクチュエータ4は、スロットル弁アクチュエータユニット7の一部として燃料電池スタック5の空気出口側に配置された別のスロットル弁アクチュエータに相応する。スロットル弁アクチュエータユニット7は、スロットル弁アクチュエータユニット7がスロットル弁アクチュエータ4に比べて、流体通路を通流するかまたは圧送可能な流体の圧力低下を生ぜしめる幾何学形状を有する第2の流体通路部分を有しているという点で、スロットル弁アクチュエータ4と異なっている。燃料電池スタック5により電気を発生させることができ、電気はインバータと電動モータ駆動装置6とにより、自動車1を駆動するために利用することができる。
【0038】
図2aには、
図1に示した燃料電池スタックの空気出口側に配置された、本発明によるスロットル弁アクチュエータユニット7の一実施形態が示されている。スロットル弁アクチュエータユニット7は、スロットル弁アクチュエータ4と、スロットル弁アクチュエータ4に設けられた孔に対応する貫通孔9を有する第2の流体通路部分8bとを有しており、これにより、第2の流体通路部分8bを、ねじ締結(このために孔9が設けられている)によりスロットル弁アクチュエータ4に取り付けることで、第1の流体通路部分を第2の流体通路部分8bに流体案内式に接続することができるようになっている。
【0039】
図2bには、
図2aに示したスロットル弁アクチュエータユニット7の断面図が示されている。この場合、断面は、スロットル弁アクチュエータユニット7により圧送可能な流体の流れ方向に沿って延びている。スロットル弁14が認められ、スロットル弁14は、軸13aを介して閉鎖位置から開放位置に変位可能である。軸13aは、出口13bにおいて第1の流体通路部分8aから出ており、これにより、スロットル弁アクチュエータユニット7のスロットル弁アクチュエータの電動モータに駆動結合している。第1の流体通路部分8aには直接、第2の流体通路部分8bが流体案内式に接続している。第2の流体通路部分8bの幾何学形状は、流れ方向に直接連続する第2の流体通路部分8bの第1の流れ横断面10と、第2の流体通路部分8bの第2の流れ横断面11と、第2の流体通路部分8bの第3の流れ横断面12とを有している。この場合、第2の流体通路部分8bの第1の流れ横断面10の値は、第2の流体通路部分8bの第3の流れ横断面12に相応しており、第2の流体通路部分8bの第2の流れ横断面11は、第2の流体通路部分8bの別の2つの流れ横断面10,12よりも小さくなっている。さらに、第2の流体通路部分8bの個々の流れ横断面10,11,12の移行部は突飛に、換言すると非連続的に形成されている。
【0040】
図3には、スロットル弁アクチュエータユニットを通流する空気流16の流れ方向17における空気流16の流れシミュレーションが示されている。スロットル弁14は、第1の流体通路部分8a内に配置されており、スロットル弁14の閉鎖位置と小さな角度の分だけ異なる位置にある。スロットル弁14に駆動結合された軸13aは、流れ方向17においてスロットル弁14の下流側に位置していることが認められる。スロットル弁14の位置に基づき、空気流16は、第1の流体通路部分8aの壁に沿って流れ、溝15により渦動させられ、第2の流体通路部分8b内では、第2の流体通路部分8bの第1の流れ横断面10から第2の流れ横断面11への移行部の形態の流れ横断面変化部に向かって流れ、そこで相応の圧力低下を伴う、空気流16の大きな変向が生じる。換言すると、スロットル弁14は、第1の流れ横断面10の他に第2および第3の流れ横断面11,12をも有する第2の流体通路部分8bの幾何学形状に基づき、この幾何学形状を備えた第2の流体通路部分なしの場合に必要になるであろう角度よりも大きな角度で開放される必要があり、これにより、例えば第2の流体通路部分8bの第3の流れ横断面12において、スロットル弁の下流側の顕著な圧力上昇を測定することができる。したがって、1つの燃料電池スタックに関して、空気入口側と空気出口側とで同じスロットル弁アクチュエータを使用することができ、この場合、空気出口側のスロットル弁アクチュエータは、本発明によるスロットル弁アクチュエータユニットの形態で形成されている。
【0041】
個々の実施例のそれぞれ異なる特徴が、互いに組み合わせられてもよい。
【0042】
図1~
図3に示す実施例は、特に限定的な特徴を有するものではなく、本発明の思想を明確に示すために用いられる。
【符号の説明】
【0043】
1 自動車
2 燃料電池システム
3 遠心圧縮機
4 スロットル弁アクチュエータ
5 燃料電池スタック
6 インバータおよび電動モータ駆動装置
7 スロットル弁アクチュエータユニット
8a 第1の流体通路部分
8b 第2の流体通路部分
9 貫通孔
10 第2の流体通路部分の第1の流れ横断面
11 第2の流体通路部分の第2の流れ横断面
12 第2の流体通路部分の第3の流れ横断面
13a 軸
13b 軸の出口
14 スロットル弁
15 溝
16 空気流
17 流れ方向
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータにより変位可能なスロットル弁(14)を有するスロットル弁アクチュエータ(4)と、流体通路とを備えたスロットル弁アクチュエータユニット(7)であって、前記流体通路は、第1および第2の流体通路部分(8a,8b)を有しており、前記第1の流体通路部分(8a)は、前記スロットル弁(14)により変更可能な流れ横断面を有している、スロットル弁アクチュエータユニット(7)において、
前記第2の流体通路部分(8b)は、前記流体通路を通流する流体の圧力低下を生ぜしめる幾何学形状を有していることを特徴とする、スロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項2】
前記第2の流体通路部分(8b)は、前記第1の流体通路部分(8a)の前記流れ横断面に対して間隔をあけて配置されている、請求項1記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項3】
前記第2の流体通路部分(8b)は、前記第1の流体通路部分(8a)に対して上流側または下流側に配置されている、請求項
1記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項4】
前記第2の流体通路部分(8b)の前記幾何学形状は、流動流体の流れ方向(17)において、前記第2の流体通路部分(8b)の第1の流れ横断面(10)から、前記第2の流体通路部分(8b)の第2の流れ横断面(11)に移行しており、前記第2の流体通路部分(8b)の前記第2の流れ横断面(11)は、前記第2の流体通路部分(8b)の第3の流れ横断面(12)に移行している、請求項
1記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項5】
前記第2の流体通路部分(8b)の前記幾何学形状は、スロットルまたは絞りの幾何学形状に相応する、請求項
1記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項6】
前記流体通路は、前記変更可能な流れ横断面に対して間隔をあけて配置された溝を有している、請求項
1記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項7】
前記第2の流体通路部分(8b)は、前記スロットル弁アクチュエータ(4)に対して別個に形成されている、請求項
1記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項8】
前記第1の流体通路部分(8a)と前記第2の流体通路部分(8b)とは、互いに流体案内式に接続されており、前記第2の流体通路部分(8b)と、前記スロットル弁アクチュエータ(4)または前記第1の流体通路部分とは、材料結合式、形状結合式または力結合式に互いに固定されている、請求項
1記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項9】
前記第1の流体通路部分(8a)は、最小限の圧力低下に関して流れを最適化されている、請求項
1記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)。
【請求項10】
燃料電池スタック(5)と、該燃料電池スタックの空気出口側に配置された、請求項1から9までのいずれか1項記載のスロットル弁アクチュエータユニット(7)とを備えた燃料電池システム(2)。
【請求項11】
前記スロットル弁アクチュエータユニット(7)の第1のスロットル弁アクチュエータ(4)と同一の別のスロットル弁アクチュエータ(4)が、前記燃料電池スタック(5)の空気入口側に配置されている、請求項10記載の燃料電池システム(2)。
【請求項12】
請求項11記載の燃料電池システム(2)を備えた自動車(1)。
【国際調査報告】