(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】癌を治療する方法及びGPRC5DXCD3二重特異性抗体の有効性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241024BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525208
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022079144
(87)【国際公開番号】W WO2023081704
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドバーグ,ジェナ
(72)【発明者】
【氏名】ワン リン,シュン シン
(72)【発明者】
【氏名】プライアー,トーマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェローナ,ラルカ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイス,ブレンダン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
癌を治療する方法及びT細胞リダイレクト治療薬の有効性を向上させる方法が開示される。特に、癌を治療するためにGPRC5DxCD3二重特異性抗体、CD38抗体、及び/又はポマリドミドを使用する方法が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象を治療する方法であって、
(1)GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に前記対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に前記対象に投与することとを含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、
(1)前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体を300μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に前記対象に皮下投与することと、
(2)前記抗CD38抗体を1600mg~2000mgの用量で1~4週間毎に前記対象に皮下投与することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)の前に、前記対象に前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体を工程(1)で使用される用量よりも低い用量で皮下投与することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、約300μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、若しくは1000μg/kgの用量、又は約300μg/kg~約1000μg/kgの任意の用量で1週間に1回若しくは2週間に1回、前記対象に皮下投与される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、毎週若しくは隔週400μg/kg、又は隔週800μg/kgの用量で前記対象に皮下投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、毎週400μg/kg又は隔週800μg/kgの用量で前記対象に皮下投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗CD38抗体が、1800mgの用量で前記治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、前記治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、及び前記治療の24週目の後は4週間に1回、前記対象に皮下投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗CD38抗体が、rHuPH20、例えば、約30,000UのrHuPH20と一緒に投与されるか、又はrHuPH20、例えば、約30,000UのrHuPH20と一緒の投与のために提供される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、
(1)それぞれ配列番号27、配列番号28、及び配列番号29のアミノ酸配列の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号30、配列番号31、及び配列番号32のアミノ酸配列の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域(VL)を含むGPRC5D結合ドメイン、並びに
(2)それぞれ配列番号17、配列番号18、及び配列番号19のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVH、並びにそれぞれ配列番号20、配列番号21、及び配列番号22のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記GPRC5D結合ドメインが、配列番号33のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号34のアミノ酸配列を有するVLを含み、前記CD3結合ドメインが、配列番号23のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号24のアミノ酸配列を有するVLを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、配列番号35のアミノ酸配列を有する第1の重鎖(HC1)と、配列番号36のアミノ酸配列を有する第1の軽鎖(LC1)と、配列番号25のアミノ酸配列を有する第10の重鎖(HC2)と、配列番号26のアミノ酸配列を有する第2の軽鎖(LC2)とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗CD38抗体が、それぞれ配列番号7、配列番号8、及び配列番号9のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVHと、それぞれ配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLとを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記CD38抗体が、配列番号5のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVLを含む、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
前記癌が、多発性骨髄腫である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
治療を必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法であって、
(1)毎週400μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体を、又は隔週800μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体を前記対象に皮下投与することと、
(2)1800mgの抗CD38抗体を、前記治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、前記治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、前記治療の24週目以降は4週間に1回前記対象に皮下投与することとを含み、
前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、配列番号35の第1の重鎖(HC1)、配列番号36の第1の軽鎖(LC1)、配列番号25の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号26の第2の軽鎖(LC2)を含み、前記抗CD38抗体が、配列番号13のHC及び配列番号14のLCを含む、方法。
【請求項16】
400μg/kgの前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回用量の前に、治療の2日目に10μg/kg及び治療の4日目に60μg/kgなどの1つ以上の漸増用量の前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与すること、又は800μg/kgの前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回用量の前に、治療の2日目に10μg/kg、治療の4日目に60μg/kg、及び治療の8日目に300μg/kgなどの1つ以上の漸増用量の前記GPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、多発性骨髄腫に対する少なくとも1回の以前の治療を受けたことがあるか、又は前記対象が、前記少なくとも1回の以前の治療に対して再発性若しくは難治性であり、前記以前の治療が、プロテアソーム阻害剤(PI)又は免疫調節剤(IMiD)のうちの少なくとも1つを含むことができる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、抗CD38抗体、レナリドマイド、ボルテゾミブ、ポマリドマイド、カルフィルゾミブ、エロツズマブ、イキサゾミブ、イサツキシマブ、メルファラン及びサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される治療に対して難治性又は再発性であり、好ましくは、対象はレナリドマイド難治性である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
追加の治療薬、例えば、ポマリドミド及び/又はデキサメタゾンを前記対象に投与することを更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記治療が、CD4及びCD8T細胞上のCD25、PD-1、CD38のうちの少なくとも1つの増加などのT細胞活性化をもたらすか、又は前記治療が、CD38+CD8+T細胞、CD38+CD4+T細胞、及びTregs T細胞のうちの少なくとも1つの頻度の増加をもたらす、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年11月3日出願の米国特許仮出願第63/275,356号に基づく利益を主張し、当該出願の内容をその全容において援用するものである。
【0002】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、XML形式で電子的に提出済みである、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2022年10月28日に作成された上記XMLコピーは、「258199.060802_PRD4189WOPCT1_SL.xml」というファイル名で、サイズは64.2キロバイトである。
【0003】
(発明の分野)
癌を治療し、GPRC5DxCD3二重特異性抗体の有効性を向上させる方法が開示される。
【背景技術】
【0004】
1990年~2016年に、世界中で、多発性骨髄腫(MM)の発生症例は126%増加し、死亡は94%増加した。2020年のアメリカ合衆国では、32,270人が新たにMMと診断され、140,779人がMMに罹患して生活していると推定される。欧州では、多発性骨髄腫は2番目に多い血液悪性腫瘍であり、2020年に欧州27カ国で35,842件の新たな症例が推定されている(European Cancer Information System 2020)。複数の治療選択肢にもかかわらず、この疾患は非常に頻繁に再発し、不治のままである。連続的な再発のたびに、症状が戻り、生活の質が悪化し、奏効の可能性及び持続時間が典型的には低下する。
【0005】
再発性及び難治性の多発性骨髄腫は、未解決の特殊な医学的ニーズを構成する。標準療法(プロテアソーム阻害剤[PI]又は免疫調節薬[IMiD]など)を投与された後に進行する患者は、2つの主要な薬物クラスに既に曝露されているため、治療が困難であり、新たな有効かつ好都合な治療選択肢が必要とされている。骨髄腫は不治の疾患のままであるにもかかわらず、患者の40%未満しか三次治療を受けない。レナリドマイドを含むレジメンは、米国及び欧州のほとんどにおいて、移植適格患者及び移植不適格患者の両方において、ますます標準療法の一次治療になっている。これらの実施パターンの結果として、再発性多発性骨髄腫を有するほとんどの患者は、最初に再発したときにレナリドマイドに曝露される。
【0006】
T細胞リダイレクト殺傷は、多くの治療領域において望ましい作用様式である。一般的には、T細胞リダイレクト分子は、一方の部位が標的細胞上の表面抗原に結合し、他方の部位がT細胞表面抗原に結合する、少なくとも2つの抗原結合部位を有するよう操作される。T細胞表面抗原の中でも、TCRタンパク質複合体のヒトCD3イプシロンサブユニットは、T細胞殺傷をリダイレクトするように最も標的化されている。様々な二重特異性抗体形式が、前臨床試験及び臨床試験の両方において、T細胞リダイレクトを媒介することが示されている。
【0007】
腫瘍は、免疫抑制腫瘍微小環境(tumor microenvironment、TME)を作製することによって免疫認識を回避する。TMEでは、持続的な抗原及び炎症の条件下で、T細胞は、消耗されるか、又は機能不全になり、それらのエフェクター機能及び増殖能力を漸進的に失う。治療薬媒介性T細胞リダイレクト殺傷に関与する利用可能なT細胞の損なわれた機能及び数は、治療薬の抗腫瘍有効性を損なう場合がある。T細胞リダイレクト殺傷を媒介する治療薬の最適な有効性のために、T細胞機能性を向上させる必要性が存在する。
【0008】
タルケタマブ(Tal)は、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(G Protein-Coupled Receptor Class C Group 5 Member D、GPRC5D)及びCD3に結合する二重特異性抗体である。ダラツムマブ(Dara)は、MM細胞上のCD38を標的とし、MM細胞の直接的な細胞毒性をもたらす、MM治療用に承認されたモノクローナル抗体である。癌、特に多発性骨髄腫(MM)を治療するための新規薬剤が必要とされているが、これは依然として不治であり、ほとんどの患者(pts)が再発するか、又は標準療法に対して難治性になる。
【発明の概要】
【0009】
本出願に記載される投与レジメンを使用して、GPRC5DxCD3二重特異性抗体と抗CD38抗体DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)と(それぞれ、同じ細胞上での標的結合時に多発性骨髄腫細胞の死滅を媒介する)の組み合わせが、癌、特に再発性/難治性MMを治療するために対象に安全に投与され得ることが発見された。
【0010】
一般的な一態様では、本発明は、治療を必要とする対象において多発性骨髄腫のような癌を治療する方法であって、
(1)GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、方法に関する。
【0011】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、60μg/kg~1200μg/kgの用量、例えば、60μg/kg、70μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、650μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、1000μg/kg、1050μg/kg、1100μg/kg、1150μg/kg、若しくは1200μg/kg、又はその間の任意の用量で1~2週間毎に対象に投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は、
(1)GPRC5DxCD3二重特異性抗体を300μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に皮下投与することと、
(2)抗CD38抗体を1600mg~2000mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程(1)の前に、GPRC5DxCD3二重特異性抗体を、工程(1)において使用される用量よりも低い用量で対象に皮下投与することを更に含む。
【0014】
本出願の実施形態によれば、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、約300μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、若しくは1000μg/kgの用量又はその間の任意の用量で1週間に1回又は2週間に1回、対象に皮下投与される。例えば、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、毎週若しくは隔週400μg/kg、又は隔週800μg/kgの用量で対象に皮下投与され得る。
【0015】
本出願の一実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、毎週400μg/kg又は隔週800μg/kgの用量で対象に皮下投与され、抗CD38抗体は、治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、及び治療の24週目以降は4週間に1回、1800mgの用量で対象に皮下投与される。抗CD38抗体は、rHuPH20、例えば、約30,000UのrHuPH20と一緒に投与されるか、又はrHuPH20、例えば、約30,000UのrHuPH20と一緒の投与のために提供される。
【0016】
任意の適切なGPRC5DxCD3二重特異性抗体が、本出願の方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、本出願に有用なGPRC5DxCD3二重特異性抗体は、
(i)それぞれ配列番号27、配列番号28、及び配列番号29のアミノ酸配列の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域(VH)と、それぞれ配列番号30、配列番号31、及び配列番号32のアミノ酸配列の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を有する軽鎖可変領域(VL)とを含むGPRC5D結合ドメイン、並びに
(ii)それぞれ配列番号17、配列番号18、及び配列番号19のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVH、並びにそれぞれ配列番号20、配列番号21、及び配列番号22のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、GPRC5D結合ドメインは、配列番号33のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号34のアミノ酸配列を有するVLを含む。CD3結合ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号24のアミノ酸配列を有するVLを含む。好ましくは、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、配列番号35のアミノ酸配列を有する第1の重鎖(HC1)と、配列番号36のアミノ酸配列を有する第1の軽鎖(LC1)と、配列番号25のアミノ酸配列を有する第2の重鎖(HC2)と、配列番号26のアミノ酸配列を有する第2の軽鎖(LC2)と、を含む。より好ましくは、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、タルケタマブである。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号7、配列番号8、及び配列番号9のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVHと、それぞれ配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLとを含む。好ましくは、抗CD38抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVLを含む。より好ましくは、CD38抗体は、ダラツムマブである。
【0019】
一実施形態では、本出願は、治療を必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法であって、
(1)毎週400μg/kgの体重ベースの治療用量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体を、又は隔週800μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に毎週皮下投与することと、
(2)1800mgの抗CD38抗体を、治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、治療の24週目以降は4週間に1回対象に皮下投与することとを含み、
GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、配列番号35の第1の重鎖(HC1)、配列番号36の第1の軽鎖(LC1)、配列番号25の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号26の第2の軽鎖(LC2)を含み、抗CD38抗体が、配列番号13のHC及び配列番号14のLCを含む、方法に関する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本方法は、400μg/kgの体重ベースの治療用量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、10μg/kg及び60μg/kgの漸増用量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与する工程を更に含むか、又は本方法は、800μg/kgの体重ベースの治療用量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、10μg/kg、60μg/kg、及び300μg/kgの漸増用量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与する工程を更に含む。
【0021】
本出願のいくつかの実施形態では、対象は、多発性骨髄腫の少なくとも1つの以前の治療を受けており、好ましくは、対象は、少なくとも1つの以前の治療に対して再発又は難治性であり、より好ましくは、以前の治療は、プロテアソーム阻害剤(PI)及び免疫調節剤(IMiD)のうちの少なくとも1つを含む。対象は、抗CD38抗体、レナリドマイド、ボルテゾミブ、ポマリドマイド、カルフィルゾミブ、エロツズマブ、イキサゾミブ、メルファラン及びサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される治療などの治療に対して、難治性又は再発性であり得る。好ましくは、対象が以前に1回のみの治療を受けている場合、対象はレナリドミド難治性である。
【0022】
一部の実施形態では、本出願の方法は、ポマリドミド及び/又はデキサメタゾンなどの、癌のための別の治療を対象に投与することを更に含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、本出願の実施形態による方法は、CD4及びCD8T細胞上のCD25、PD-1、CD38のうちの少なくとも1つの増加などのT細胞活性化をもたらす。本出願の実施形態による方法はまた、CD38+CD8+T細胞、CD38+CD4+T細胞、及びTregs T細胞のうちの少なくとも1つの頻度の増加をもたらし得る。
【0024】
本出願の別の一般的な態様は、癌、例えばMM、より具体的には再発又は難治性MMを治療する方法において使用するための、本明細書に記載される抗CD38抗体に関し、本方法は、
(1)GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kg又は300μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む。
【0025】
本出願の別の一般的な態様は、癌、例えばMM、より具体的には再発又は難治性MMの治療における使用のための、本明細書に記載されるGPRC5DxCD3二重特異性抗体に関し、治療は、
(1)GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kg又は300μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む。
【0026】
本出願の更に別の一般的な態様は、癌、例えばMM、より具体的には再発又は難治性MMの治療において使用するための、本明細書に記載される抗CD38抗体と本明細書に記載されるGPRC5DxCD3二重特異性抗体との組み合わせ又はキットであって、治療が、
(1)GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kg又は300μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、組み合わせ又はキットに関する。
【0027】
本出願は更に、癌、例えばMM、より具体的には再発又は難治性MMを治療するための医薬の製造における、本明細書に記載される抗CD38抗体と本明細書に記載されるGPRC5DxCD3二重特異性抗体との組み合わせの使用であって、治療が、
(1)GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kg又は300μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、使用に関する。
【0028】
上述の「発明の概要」及び以降の「発明を実施するための形態」は、添付の図面と併せて読むことでより良好に理解されるであろう。本発明は、図面に示される正確な実施形態に限定されない点を理解する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】再発又は難治性多発性骨髄腫のために皮下ダラツムマブと組み合わせて投与されたタルケタマブの第1相試験のパート1及びパート2の概要の概略図である。
【
図2】ダラツムマブ及びタルケタマブで治療された患者の奏効率を示す(分析の締切日は2021年9月20日)。
a1回以上の試験治療を受け、1回以上のベースライン後奏効評価を有した患者。Dara1800mg+Tal(400μg/kg毎週+400μg/kg及び800μg/kg隔週)
bDara=ダラツムマブ;Tal=タルケタマブ;sCR=厳密な完全奏効;CR=完全奏効、PR=部分奏効、VGPR=非常に良好な部分奏効。
【
図3】サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome、CRS)が、全ての患者においてグレード1又は2に限定され、概して、漸増用量及び最初の完全用量に限定されたことを示す。
e米国移植細胞療法学会(American Society for Transplantation and Cellular Therapy、ASTCT)基準に従ってCRSを等級付けした。CRSは、89人の患者全てで消散した。
【
図4】再発又は難治性多発性骨髄腫を有する患者におけるダラツムマブの存在におけるタルケタマブ投薬後のCD38+T細胞の頻度の増加を示す。ダラツムマブ(Dara)を、C1D1(サイクル1の1日目)から毎週投与した。
A各線は異なる患者を表す。全ての患者が、Dara1800mg=Tal(タルケタマブ)SCを投与された。
bTalの漸増用量。
【
図5】400μg/kgのタルケタマブ及びダラツムマブで治療されたRRMMを有する患者における、示された時点でのCD8+T細胞及びCD4+T細胞の数の対数倍変化を示す。1人の代表的な対象からのデータが示されている。
【
図6】400μg/kgのタルケタマブ及び1800mgのダラツムマブで治療されたRRMMを有する患者における、示された時点でのCD25+CD4+T細胞及びCD25+CD8+T細胞のパーセントを示す。1人の代表的な対象からのデータが示されている。
【
図7A】ダラツムマブ1800mg+漸増用量のタルケタマブSC(10μg/kg及び60μg/kg)、続いて週1回(QW)400μg/kgのタルケタマブで治療したRRMM患者における選択サイトカインのレベルを示す。インターフェロンガンマ(IFN-g)レベルを示す。
【
図7B】ダラツムマブ1800mg+漸増用量のタルケタマブSC(10μg/kg及び60μg/kg)、続いて週1回(QW)400μg/kgのタルケタマブで治療したRRMM患者における選択サイトカインのレベルを示す。腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)レベルを示す。
【
図7C】ダラツムマブ1800mg+漸増用量のタルケタマブSC(10μg/kg及び60μg/kg)、続いて週1回(QW)400μg/kgのタルケタマブで治療したRRMM患者における選択サイトカインのレベルを示す。インターロイキン-6(IL-6)レベルを示す。
【
図7D】ダラツムマブ1800mg+漸増用量のタルケタマブSC(10μg/kg及び60μg/kg)、続いて週1回(QW)400μg/kgのタルケタマブで治療したRRMM患者における選択サイトカインのレベルを示す。インターロイキン-8(IL-8)レベルを示す。各パネルについて、1人の代表的な対象からのデータを示す。
【
図8】ダラツムマブ1800mg+タルケタマブ(400μg/kgSCQW又は400μg/kgSCQ2W又は800μg/kgSCQ2W(隔週に1回))で治療された患者における奏効期間を示す。+、5難治性;AE、有害事象;CD38E、抗CD38曝露CD38RE、抗CD38療法に難治性;CR、完全奏効;D/C=中断;MR、最小応答;PD、進行性疾患;PR、部分奏効;SC=皮下;sCR、厳密な完全奏効;SD、安定した疾患;TR、3クラス難治性;VGPR、非常に良好な部分奏効。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示の方法は、本開示の一部を形成する、添付の図面に関連してなされる以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本開示の方法は、本明細書に記載及び/又は示される特定の方法に限定されないこと、更に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を例によって説明することのみを目的とし、特許請求された方法に限定することを意図しないことを理解されたい。本明細書に引用される全ての特許、公開された特許出願及び刊行物は、あたかも本明細書に完全に記載されているように参照により組み込まれる。
【0031】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数を含むものとする。
【0032】
本明細書の態様に関する様々な用語が、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用される。別段の指示がない限り、このような用語には、当該技術分野におけるそれらの通常の意味が与えられるものとする。他の具体的に定義される用語は、本明細書で提供される定義と一致する様式で解釈されるものとする。
【0033】
「約」は、数値範囲、カットオフ、又は特定の値を参照して使用するとき、当業者によって決定される特定の値について許容される誤差範囲内であることを意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、すなわち測定システムの制限事項に部分的に依存する。アッセイ、結果、又は実施形態の文脈において実施例又は明細書のその他の箇所に別途明示的に記載のない限り、「約」は、当該技術分野の実施に従う1つの標準偏差内又は5%までの範囲内のいずれか大きい方を意味する。
【0034】
「抗体」は、広義の意味を有し、マウス、ヒト、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗原結合断片、二重特異性、三重特異性、四重特異性などの多特異性抗体、二量体、四量体、又は多量体抗体、一本鎖抗体、ドメイン抗体、並びに必要とされる特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された形態を含む免疫グロブリン分子を含む。「完全長抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された、2本の重鎖(heavy chain、HC)及び2本の軽鎖(light chain、LC)、並びにこれらの多量体(例えばIgM)で構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)、及び重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3からなる)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(light chain constant region、CL)で構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(framework region、FR)が散在しており相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼称される超可変領域に更に細分化され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置された、3つのCDR及び4つのFRセグメントで構成される。免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。どのような脊椎動物種の抗体軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なるタイプ、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。
【0035】
「抗原結合断片」又は「抗原結合ドメイン」とは、抗原に結合するイムノグロブリン分子の一部を指す。抗原結合断片は合成ポリペプチド、酵素により入手可能なポリペプチド、又は遺伝子組換えされたポリペプチドであってもよく、VH、VL、VH及びVL、Fab、F(ab’)2、Fd及びFv断片、1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなるドメイン抗体(domain antibody、dAb)、サメ可変性IgNARドメイン、ラクダ化VHドメイン、FR3-CDR3-FR4部分などの、抗体のCDRを再現したアミノ酸残基からなる最小の認識単位、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3が挙げられる。VH及びVLドメインは互いに、合成リンカーを介して結合し、様々なタイプの一本鎖抗体設計を形成することができ、VH及びVLドメインが、別個の一本鎖抗体構築物により発現される場合では、VH/VLドメインが分子内、又は分子間で対形成し、一価の抗原結合部位、例えば一本鎖Fv(single chain Fv、scFv)又はダイアボディを形成することができ、これらは、例えば国際公開第1998/44001号、同第1988/01649号、同第1994/13804号、及び同第1992/01047号に記載されている。
【0036】
「二重特異性」は、2つの異なる抗原、又は同じ抗原中の2つの異なるエピトープと特異的に結合する抗体を指す。二重特異性抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、カニクイザル(Macaca cynomolgus)(例えば、カニクイザル(cynomolgus、cyno)又はチンパンジーなどの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有し得る、あるいは2つ以上の異なる抗原間で共有されているエピトープに結合し得る。
【0037】
「癌」とは、身体における異常細胞の制御されていない成長を特徴とする、様々な疾患の広範な群を指す。制御されていない細胞分裂及び成長は、隣接組織を浸潤する悪性腫瘍の形成をもたらし、リンパ系又は血流を介して身体の遠位部分にも転移し得る。「癌」又は「癌組織」は、腫瘍を含み得る。
【0038】
「CD3」とは、多分子T細胞受容体(T cell receptor、TCR)複合体の一部としてT細胞上で発現され、2つ又は4つの受容体鎖:CD3イプシロン、CD3デルタ、CD3ゼータ、及びCD3ガンマの会合から形成されたホモ二量体又はヘテロ二量体からなるヒトの抗原を指す。ヒトCD3イプシロンは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。配列番号2は、CD3イプシロンの細胞外ドメインを示す。
【0039】
「CD38」とは、ヒトCD38タンパク質(UniProt受入番号P28907)(同義語:ADP-リボシルシクラーゼ1、cADPrヒドロラーゼ1、環状ADP-リボースヒドロラーゼ1)を指す。ヒトCD38は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する。CD38は、アミノ酸残基1~21が細胞質ドメインを表し、アミノ酸残基22~42が膜貫通ドメインを表し、残基43~300が細胞外ドメインを表す、シングルパスII型膜貫通タンパク質である。
【0040】
「GPRC5D」は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するヒトGタンパク質結合受容体ファミリーCグループ5メンバーDを指す。
【0041】
「CH3領域」又は「CH3ドメイン」とは、免疫グロブリンのCH3の領域を指す。ヒトIgG1抗体のCH3領域は、アミノ酸残基341~446に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載の他の抗体アイソタイプのいずれであってもよい。
【0042】
「キメラ抗原受容体」又は「CAR」とは、T細胞上にリガンド又は抗原特異性を移植する、操作されたT細胞受容体(例えば、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、又はこれらの組み合わせ)を指す。CARはまた、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、又はキメラ免疫受容体としても知られている。CARは、抗原、膜貫通ドメイン、及び少なくとも1つの細胞内ドメインに結合することができる、細胞外ドメインを含む。CAR細胞内ドメインは、細胞内の生物学的プロセスの活性化又は阻害を引き起こすシグナルを伝達するドメインとして機能することが知られている、ポリペプチドを含む。膜貫通ドメインは、細胞膜に及ぶことが知られており、かつ細胞外ドメイン及びシグナル伝達ドメインを結合するように機能し得る、任意のペプチド又はポリペプチドを含む。キメラ抗原受容体は、任意選択的に、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間のリンカーとして機能する、ヒンジドメインを含み得る。
【0043】
「組み合わせ」とは、2つ以上の治療薬を、混合物の状態で一緒に、単剤として同時に、又は単剤として任意の順序で逐次、対象に投与することを意味する。
【0044】
「相補性決定領域(CDR)」とは、抗原に結合する抗体の領域である。CDRは、Kabat(Wu et al.J Exp Med 132:211-50,1970)(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991),Chothia(Chothia et al.J Mol Biol 196:901-17,1987),IMGT(Lefranc et al.Dev Comp Immunol 27:55-77,2003)、及びAbM(Martin and Thornton J Bmol Biol 263:800-15,1996)などの様々な記述を使用して定義し得る。様々な記述と、可変領域の番号付けとの対応が記載されている(例えば、Lefranc et al.Dev Comp Immunol 27:55-77,2003、Honegger and Pluckthun,J Mol Biol 309:657-70,2001、International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース;ウェブリソース、http://www_imgt_orgを参照されたい)。UCL Business PLCによるabYsisなどの利用可能なプログラムを使用して、CDRを記述することができる。本明細書で使用される場合、「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」という用語は、明細書で別途明示的に記載されない限り、上述したKabat、Chothia、IMGT、又はAbMの方法のいずれかにより定義されるCDRを含む。例えば、Kabat番号付け及びIMGT固有の番号付けシステムを含む番号付けシステム間の対応関係は、当業者に周知である(例えば、Kabat;Chothia;Martin;Lefranc et al.を参照)。
【0045】
【0046】
「を含む(comprising)」とは、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び用語「からなる(consisting of)」によって包含される例を含むことを意図する。同様に、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語によって包含される例を含むことを意図する。文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、明細書及び特許請求の範囲を通して、単語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、排他的又は排外的な意味とは対照的に、包括的な意味で、すなわち、「~を含むがこれらに限定されない」という意味で解釈されるべきである。
【0047】
「向上させる」又は「向上した」とは、1つの対照分子と比較したときの試験分子の1つ若しくは2つ以上の機能の向上、又は1つ以上の対照分子と比較したときの試験分子の組み合わせの1つ以上の機能の向上を指す。測定され得る例示的な機能は、腫瘍細胞殺傷、T細胞活性化、相対的若しくは絶対的T細胞数、Fc媒介性エフェクター機能(例えば、ADCC、CDC、及び/若しくはADCP)、又はFcγ受容体(FcγR)若しくはFcRnへの結合である。「向上した」とは、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、若しくはそれ以上の向上、又は統計的に有意な向上であることができる。
【0048】
「Fcガンマ受容体」(FcγR)とは、周知のFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、又はFcγRIIIのことを指す。活性化FcγRに、FcγRI、FcγRIIa、及びFcγRIIIが含まれる。
【0049】
「ヒト抗体」とは、ヒト被検体に投与される場合に、最小の免疫応答を有するように最適化された抗体を指す。ヒト抗体の可変領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体が定常領域又は定常領域の一部を含む場合、その定常領域もヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。このような例示的な系は、ファージにディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばマウス又はラットである。「ヒト抗体」は、典型的には、ヒト抗体及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を得るために使用した系の違い、フレームワーク若しくはCDRへの体細胞変異の導入若しくは置換の意図的な導入、又はこれらの両方により、ヒトで発現した免疫グロブリンと比較したときにアミノ酸の違いを含有する。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされているアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。場合によっては、「ヒト抗体」は、例えばKnappik et al.,(2000)J Mol Biol 296:57-86に記載されるヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列、又は例えばShi et al.,(2010)J MolBiol 397:385-96及び国際公開第2009/085462号に記載される、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含有し得る。少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0050】
「ヒト化抗体」とは、少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来し、少なくとも1つのフレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体は、フレームワークに置換を含むことができるため、フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又はヒト免疫グロブリン生殖細胞系列遺伝子配列の厳密なコピーではない場合がある。
【0051】
「単離された」とは、組換え細胞などの分子が産生されるシステムに関係する他の成分から実質的に分離及び/又は精製されている、分子の均質な集団(例えば、合成ポリヌクレオチド又は抗体などのタンパク質)に加えて、少なくとも1つの精製又は単離工程に供されたタンパク質を指す。「単離抗体」とは、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない抗体を指し、より高い純度、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度まで単離された抗体を包含する。
【0052】
「モノクローナル抗体」とは、抗体分子の実質的に均質な母集団(すなわち、母集団を含む個別の抗体が、抗体重鎖からC末端リジンを除去する、又は、アミノ酸異性化若しくはアミド分解、メチオニン酸化若しくはアスパラギン若しくはグルタミンアミド分解などの翻訳後修飾といった、可能な周知の変更を除いて同一である)から入手される抗体を意味する。モノクローナル抗体は、典型的には、1つの抗原性エピトープに結合する。二重特異性モノクローナル抗体は、2つの異なる抗原性エピトープに結合する。モノクローナル抗体は、抗体集団内で不均一なグリコシル化を有し得る。モノクローナル抗体は、単一特異性であってもよく、又は、二重特異性などの多重特異性であってもよく、一価、二価、又は多価であってもよい。
【0053】
「変異」とは、参照配列と比較したときのポリペプチド又はポリヌクレオチド配列における、人工操作によるか又は自然発生による変更を指す。変更は、1つ又は2つ以上のアミノ酸又はポリヌクレオチドの置換、挿入、又は欠失であってもよい。
【0054】
「非固定組み合わせ」とは、T細胞リダイレクト治療薬及び抗CD38抗体の別々の医薬組成物又は単位剤形が、異なる実体として、特定の中断時間の制限なしに同時に、併行的に、又は逐次のいずれかで投与されることを指し、ここで、そのような投与は、対象の体内で2つの化合物の有効なレベルを提供する。
【0055】
「多重特異性」とは、少なくとも2種の異なる抗原と特異的に結合する抗体、又は同じ抗原内の少なくとも2箇所の異なるエピトープと結合する抗体を指す。多重特異性抗体は、例えば、2つ、3つ、4つ、若しくは5つの異なる抗原、又は同じ抗原内の異なるエピトープに結合し得る。
【0056】
投与量を指す場合、「μg/kg」又は「mg/kg」は、対象の体重1キログラム(kg)当たりの対象に投与されるマイクログラム(μg)又はミリグラム(mg)単位の二重特異性抗体又は抗体などの活性薬剤の量を指す。
【0057】
「医薬組成物」とは、有効成分と薬学的に許容される担体とを含む組成物を指す。
【0058】
「医薬的に許容される担体」又は「賦形剤」は、対象に対して毒性のない、活性成分以外の医薬組成物中の成分を指す。
【0059】
「フィラデルフィア染色体」又は「Ph」は、構成的に活性なチロシンキナーゼ活性を有する癌原性BCR-ABL遺伝子融合をもたらす、染色体9と22との間の周知の染色体転座を指す。この転座により、染色体22q11のBCR遺伝子の一部分が染色体9q34のABL遺伝子の一部分と融合され、これは、国際ヒト細胞遺伝学命名法(International System for Human Cytogenetic Nomenclature、ISCN)の下、t(9;22)(q34;q11)と名付けられている。融合の正確な位置に応じて、得られる融合タンパク質の分子量は、185~210kDaの範囲であり得る。「フィラデルフィア染色体」は、(9;22)(q34;q11)転座により形成される全てのBCR-ABL融合タンパク質を指す。
【0060】
「組換え物」は、異なる供給源由来のセグメントが結合されて組換えDNA、抗体、又はタンパク質を産生するときに、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離されるDNA、抗体、及び他のタンパク質を指す。
【0061】
「低減する」又は「低減した」とは、対照分子と比較したときの試験分子の1つ若しくは2つ以上の機能の低減、又は1つ以上の対照分子と比較したときの試験分子の組み合わせの1つ以上の機能の低減を指す。測定され得る例示的な機能は、腫瘍細胞殺傷、T細胞活性化、相対的若しくは絶対的T細胞数、Fc媒介性エフェクター機能(例えば、ADCC、CDC、及び/若しくはADCP)、又はFcγ受容体(FcγR)若しくはFcRnへの結合である。「低減した」は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、若しくはそれ以上の低減、又は統計的に有意な向上であり得る。「rHuPh20」は、配列番号37のアミノ酸を有する組換えヒトヒアルロニダーゼを指し、これは国際公開第2004/078140号に記載されている組換えヒアルロニダーゼ(HYLENEX(登録商標))である。
【0062】
「難治性」とは、外科的介入によっても修復可能ではなく、初期には療法に対して奏効しない癌を指す。
【0063】
「再発性」とは、治療に奏効するが、その後再発する癌を指す。
【0064】
「対象」は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」には、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳動物及び非哺乳動物などの全ての脊椎動物が含まれる。記載されている場合を除き、「患者」及び「対象」という用語は、互換的に使用される。
【0065】
「GPRC5DxCD3二重特異性抗体」は、2つ以上の結合領域を含有する分子を指し、結合領域のうちの1つは、標的細胞又は組織上の細胞表面抗原Gタンパク質結合受容体クラスCグループ5メンバーD抗原(GPRC5D)に特異的に結合し、分子の第2の結合領域は、T細胞抗原CD3に特異的に結合する。この二重/多重標的結合能力は、T細胞を標的細胞又は組織に動員して、標的細胞又は組織の根絶をもたらす。
【0066】
「治療に有効な量」とは、必要な用量及び期間で所望の治療結果を得るための有効量を指す。治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体において所望の応答を誘発する治療薬又は治療薬の組み合わせの能力によって変動し得る。有効な治療薬又は治療薬の組み合わせの例示的な指標としては、例えば、患者の改善された健康が挙げられる。
【0067】
「治療する」、又は「治療」とは、治療的処置、及び予防的(prophylactic)若しくは予防的(preventative)手段の両方を意味し、対象は、望ましくない生理学的変化又は疾患を予防する、又は低減させる(少なくする)予定である。有益な又は所望の臨床結果としては、検出可能又は検出不可能にかかわらず、症状の緩和、疾患の程度の軽減、安定した(すなわち、悪化しない)疾患状態、疾患の進行の遅延又は鈍化、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的にかかわらず)が挙げられる。「治療」はまた、対象が治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長させることを意味し得る。治療を必要とする者には、既に病態若しくは疾患を有している者、及び、病態若しくは疾患を有しやすい者、又は病態若しくは疾患を予防しようとする者が含まれる。
【0068】
「腫瘍細胞」又は「癌細胞」とは、インビボ、エクスビボ、又は組織培養のいずれかにおいて、自然発生的な又は誘発された表現型の変化を有する癌性、前癌性、又は形質転換細胞を指す。これらの変化は、必ずしも新たな遺伝物質の取り込みを伴うものではない。形質転換は、形質転換ウイルスの感染及び新たなゲノム核酸の組み込み、外因性核酸の取り込みにより発生させることもでき、自然発生的に又は発癌物質に曝露した後に発生し、それによって内因性の遺伝子が変異する場合もある。形質転換/癌は、インビトロ、インビボ、及びエクスビボにおける、形態学的変化、細胞の不死化、異常な増殖制御、病巣の形成、増殖、悪性病変、腫瘍特異的マーカーレベルの調節、浸潤性、ヌードマウスなどの好適な動物宿主における腫瘍の増殖などによって例示される。
【0069】
本明細書全体を通して、抗体定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、本明細書に別途明示的に記載されない限り、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)に記載のEUインデックスに従う。抗体定常鎖の番号付けは、例えば、ImMunoGeneTicsのウェブサイトで、IMGT ScientificチャートのIMGT Webリソースに見出すことができる。
【0070】
CH3領域における置換は、第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾された位置(複数可)/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾された位置(複数可)として表現される。例えば、F405L/K409Rは、第1のCH3領域におけるF405L変異及び第2のCH3領域におけるK09R変異を指す。L351Y_F405A_Y407V/T394Wは、第1のCH3領域におけるL351Y、F40FA、及びY407V変異、並びに第2のCH3領域におけるT394W変異を指す。D399FHKRQ/K409AGRHは、D399がF、H、KR、又はQによって置換され得、K409がA、G、R、又はHによって置換され得る変異を指す。
【0071】
従来の2文字及び3文字のアミノ酸コードを、表1に示す通りに本明細書で使用する。
【0072】
【0073】
「ポマリドミド」は、「POMALYST(登録商標)」とも呼ばれ、サリドマイドの類似体を指し、これは抗腫瘍活性を有する第3世代IMiD(免疫調節薬)である。レナリドマイド及びポマリドマイドなどのIMiDは、いくつかの現在の多発性骨髄腫治療レジメンの主軸を形成する。それらの正確な作用機序は完全には理解されていないが、IMiDは多発性骨髄腫腫瘍微小環境に対して免疫調節効果を有し、腫瘍抑制遺伝子の発現に影響を及ぼし、骨髄腫細胞のアポトーシスを促進し、NK媒介骨髄腫細胞溶解を増強し得る。ダラツムマブとIMiDとの組み合わせは、複数の試験において評価されており、有効性の有意な改善を実証した。
【0074】
一般的な一態様では、本出願は、癌、例えばMM、好ましくは難治性又は再発性MMを治療する方法であって、GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に投与することと、抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、方法に関する。
【0075】
本開示はまた、必要とする対象における腫瘍細胞を死滅させる方法であって、GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に投与することと、抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与し、それによって対象における腫瘍細胞を死滅させることとを含む、方法を提供する。
【0076】
本開示は更に、必要とする対象においてGPRC5DxCD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体のうちの少なくとも1つの活性を増強する方法であって、GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に投与することと、抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与し、それによって対象において腫瘍を死滅させることとを含む、方法を提供する。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、GPRC5DxCD3二重特異性抗体を投与する前に投与される。例えば、抗CD38抗体は、GPRC5DxCD3二重特異性抗体を投与する約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10時間前に投与される。特定の実施形態では、抗CD38抗体及びGPRC5DxCD3二重特異性抗体は、同日に投与され、抗CD38抗体は、GPRC5DxCD3二重特異性抗体の皮下投与の約3時間前に投与される。
【0078】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、毎週又は隔週投与される。
【0079】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体は、治療されている疾患を緩和するか又は少なくとも部分的に停止させるのに十分な量(「治療有効量」)で、癌、例えば、多発性骨髄腫を有する対象にそれぞれ投与される。
【0080】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、60μg/kg~1200μg/kgの用量で毎週又は隔週投与される。例えば、GPRCD5xCD3二重特異性抗体は、60~100μg/kg、例えば、60μg/kg、70μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、又はその間の任意の値の用量で静脈内投与され得、投与は、毎週、隔週、又はその間の任意の頻度であり得る。GPRC5DxCD3二重特異性抗体はまた、300~1200μg/kg、例えば、300μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、650μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、若しくは1200μg/kg、又はその間の任意の値の用量で皮下投与され得、投与は、毎週、隔週。又はその間の任意の頻度であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、400μg/kgの用量で毎週皮下投与される。いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、800μg/kgの用量で毎週又は隔週皮下投与される。
【0082】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、400μg/kgの用量で隔週皮下投与される。
【0083】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、第1の治療の投与前に、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は300μg/kgなどの10~300μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体の少なくとも1、2、又は3漸増用量で皮下投与される。
【0084】
いくつかの実施形態では、本方法は、400μg/kgの体重ベースの治療用量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、10μg/kg及び60μg/kgの漸増用量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む。別の実施形態では、本方法は、800μg/kgの体重ベースの治療用量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、10μg/kg、60μg/kg、及び300μg/kgの漸増用量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、1~4週間毎に約8mg/kg~約16mg/kgの用量で皮下投与される。例えば、抗CD38抗体は、8mg/kg、8.5mg/kg、9mg/kg、9.5mg/kg、10mg/kg、10.5mg/kg、11mg/kg、11.5mg/kg、12mg/kg、12.5mg/kg、13mg/kg、13.5mg/kg、14mg/kg、14.5mg/kg、15mg/kg、15.5mg/kg、16mg/kg、又はその間の任意の値の用量で皮下投与され得、投与は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、若しくは4週間に1回、又はその間の任意の頻度であり得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、1~4週間毎に1200~2400mgの固定用量で皮下投与される。例えば、抗CD38抗体は、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、2050mg、2100mg、2150mg、2200mg、2250mg、2300mg、2350mg、2400mg、又はその間の任意の値の用量で皮下投与され得、投与は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、若しくは4週間に1回、又はその間の任意の頻度であり得る。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、1~4週間毎に1600~2000mgの用量範囲で皮下投与される。例えば、抗CD38抗体は、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、又はその間の任意の値の用量で皮下投与され得、投与は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、若しくは4週間に1回、又はその間の任意の頻度であり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、毎週、隔週、2週間に1回、又は4週間に1回、1800mgの用量で皮下投与される。
【0088】
漸増用量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体が、最初のサイクルにおいて投与され得る。いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体の漸増用量の投与は、時間遅延後に繰り返され得る。より低い投与量でのGPRC5DxCD3二重特異性抗体の1回以上の漸増用量が、本出願の実施形態による毎週又は隔週の治療のための投与量レベルの初回投与の前に対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異体は、最初の毎週又は隔週の治療の投与前に、5~300μg/kg、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、若しくは300μg/kg、又はGPRC5DxCD3二重特異性抗体のその間の任意の値の少なくとも1、2、又は3漸増用量で対象に皮下投与される。
【0089】
特定の実施形態では、本出願による方法は、400μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異体の初回皮下投与の前に、5~100μg/kg、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100μg/kg、又はその間の任意の値のGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む。他の実施形態では、本出願による方法は、800μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回投与前に、5~350μg/kg、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、若しくは350μg/kg、又はその間の任意の値のGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む。他の実施形態では、本方法は、治療の2日目に第1の漸増用量を投与し、4日目に第2の漸増用量を投与し、場合により、8日目に第3の漸増用量を投与することを含む。
【0090】
特定の実施形態では、本出願の方法は、毎週又は隔週の400μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、治療の2日目に10μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体及び治療の4日目に60μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを含む。特定の実施形態では、本出願の方法は、毎週又は隔週の800μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、治療の2日目に10μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体、治療の4日目に60μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体、及び治療の8日目に300μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを含む。
【0091】
GPRC5DxCD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体は、28日サイクルで投与され得、治療は、複数サイクル、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル又はそれ以上を含み得る。また、治療過程を繰り返すことも、長期にわたる投与として可能である。反復投与は、同じ用量又は異なる用量で行うことができる。例えば、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、8週間にわたって毎週400μg/kg又は800μg/kgで、更なる期間にわたって隔週400μg/kg又は800μg/kgで皮下投与され得る。別の例では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、8週間にわたって隔週400μg/kg又は800μg/kgで皮下投与され得、その後、同じ用量又は異なる用量での隔週投与の更なる期間が続く。他の実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、8週間にわたって毎週200μg/kg、300μg/kg、又は400μg/kgを、好ましくは毎週400μg/kgを皮下投与され、その後、800μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体が隔週皮下投与される。他の実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、8週間にわたって毎週400μg/kgで皮下投与され、その後、隔週400μg/kg又は800μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体が皮下投与される。
【0092】
本出願の実施形態によれば、抗CD38抗体の投与の頻度は、治療の時間と共に減少させ得る。例えば、抗CD38抗体は、1800mgの用量で治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、及び治療の24週目の後は4週間に1回、対象に皮下投与される。
【0093】
GPRC5DxCD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体は、例えば、6ヶ月又はそれ以上の期間にわたって1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回などの維持療法によって投与され得る。
【0094】
GPRC5DxCD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体はまた、多発性骨髄腫などの癌を発症するリスクを低減し、癌の進行における事象の発生の開始を遅延させ、かつ/又は癌が緩解した際の再発リスクを低減するために、予防的に投与され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、対象に抗CD38抗体を投与した後に対象に投与される。GPRC5DxCD3二重特異性抗体と抗CD38抗体は、同日に投与され得る。GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、抗CD38抗体の投与後、1日以上、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、又はそれ以上後に投与され得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象に1つ以上の抗癌療法を施すことを更に含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌療法は、自家幹細胞移植(autologous stem cell transplant、ASCT)、放射線、手術、化学療法剤、免疫調節剤、及び標的化癌療法からなる群から選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の抗癌治療は、自家幹細胞移植(ASCT)である。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の抗癌治療は、放射線である。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の抗癌治療は、手術である。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌治療は、化学療法剤である。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌治療は、免疫調節剤である。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の抗癌治療は、標的化癌療法である。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌療法は、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、エロトズマブ、イキサゾミブ、メルファラン、イサツキシマブ、CELMoDs、デキサメタゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、プレドニゾン、リツキシマブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ、バフェチニブ、サラカチニブ、トザセルチブ又はダヌセルチブ、シタラビン、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、デシタビン、クラドリビン、フルダラビン、トポテカン、エトポシド6-チオグアニン、コルチコステロイド、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、アザシチジン、三酸化ヒ素及びオールトランスレチノイン酸、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0099】
いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌治療は、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、エロトズマブ、イキサゾミブ、メルファラン、プレドニゾン、若しくはデキサメタゾン、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0100】
いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌治療は、ポマリドミドである。
【0101】
いくつかの実施形態では、ポマリドミドは、2mg又は4mgの用量で経口投与される。
【0102】
いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌治療は、ポマリドミド及びデキサメタゾンである。
【0103】
いくつかの実施形態では、ポマリドミドは、遅延投薬スケジュールで投与される。遅延投薬スケジュールは、サイクル1の15日目(C1D15)又はサイクル2の1日目(C2D1)に行われてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、ポマリドミドは、GPRC5DxCD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体と同時に投与される。
【0105】
いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、少なくとも3回の完全な初期IMiD含有サイクル中に投与される。
【0106】
CD38は、受容体媒介接着及びシグナル伝達における機能を有すると共に、そのエクト型酵素活性を介してカルシウム動員を媒介し、環状ADP-リボース(cADPR)及びADPRの形成を触媒する、多機能タンパク質である。CD38は、サイトカインの分泌並びにリンパ球の活性化及び増殖を媒介する(Funaro et al.,J Immunol 145:2390-6,1990;Terhorst et al.,Cell 771-80,1981;Guse et al.,Nature 398:70-3,1999)。CD38はまた、そのNADグリコヒドラーゼ活性を介して、調節性のT細胞区画を調節することに関与するとされている細胞外NAD+レベルを調節する(Adriouch et al.,Microbes infect 14:1284-92,2012;Chiarugi et al.,Nature Reviews 12:741-52,2012)。Ca2+を介したシグナル伝達に加えて、CD38シグナル伝達は、T及びB細胞上の抗原受容体複合体又は他の種類の受容体複合体、例えば、主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex、MHC)分子とのクロストークを介して生じ、このようにして、CD38は、いくつかの細胞応答並びにIgG1のスイッチング及び分泌にも関与している。
【0107】
任意の適切な抗CD38抗体が、本発明の方法で使用され得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む。
【0109】
上記のCDRは、Kabat番号付けシステムのものである。しかしながら、本明細書で提供されるように、本開示のCDRは、Kabat、Chothia、IMGT、又はAbMナンバリングシステムなどの任意の適切なナンバリングシステムによって提供されてもよい。表3は、Kabat、Chothia、IMGT、及びAbMナンバリングシステムを利用する例示的なCDRを提供する。
【0110】
【0111】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号46のHCDR1、配列番号47のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号48のHCDR1、配列番号49のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号50のHCDR1、配列番号51のHCDR2、配列番号52のHCDR3、配列番号53のLCDR1、アミノ酸配列DASを有するLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号5のVH及び配列番号6のVLを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号13のHC及び配列番号14のLCを含む。
【0117】
本発明の方法において使用される他の抗CD38抗体は、米国特許第7,829,673号に記載のmAb003などの公知の抗体であってもよい。mAb003のVH及びVLは、米国特許第7,829,673号に記載のIgG1/κ;mAb024として表現されてもよい。mAb024のVH及びVLは、米国特許第8,088,896号に記載のIgG1/κ;MOR-202(MOR-03087)として表現されてもよい。MOR-202のVH及びVLは、米国特許第8,153,765号に記載のIgG1/κ;又はイサツキシマブ;として表現されてもよい。イサツキシマブのVH及びVLは、IgG1/κとして表現されてもよい。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、a)配列番号38のVH及び配列番号39のVL、b)配列番号40のVH及び配列番号41のVL、c)配列番号42のVH及び配列番号43のVL、又はd)配列番号44のVH及び配列番号45のVLを含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)である。
【0119】
いくつかの実施形態では、ダラツムマブは、配列番号5のVH及び配列番号6のVLを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、ダラツムマブは、配列番号13のHC及び配列番号14のLCを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、キメラ、ヒト化、又はヒトである。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプである。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG1アイソタイプである。
【0124】
Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)は、配列相同性スコアに基づいてC型Gタンパク質共役受容体として分類される7回膜貫通型受容体タンパク質であり、リガンド及びシグナル伝達機構がまだ同定されていないオーファン受容体である。GPRC5Dメッセンジャーリボ核酸(mRNA)は、形質細胞表現型を有する細胞において主に発現され、多発性骨髄腫を有する患者由来の全ての悪性形質細胞においても発現される。形質細胞系列上でのGPRC5Dの発現は、多発性骨髄腫のような形質細胞障害を治療するためのT細胞媒介療法の標的となる。GPRC5D xCD3二重特異性抗体は、T細胞上のCD3受容体複合体及び形質細胞上のGPRC5Dを標的とする。二重結合部位は、GPRC5DxCD3二重特異体が、T受容体特異性に関係なく、又は活性化のための抗原提示細胞の表面上のMHCクラス1分子への依存に関係なく、CD3+T細胞を骨髄腫細胞に近接して引き込むことを可能にし、GPRC5D陽性細胞の細胞死をもたらす。
【0125】
任意の適切なGPRC5DxCD3二重特異性抗体が、本出願の方法において使用され得る。例示的な多重特異性及び/又は二重特異性形式は、二重標的分子を含むは、二重標的(Dual Targeting、DT)-Ig(GSK/Domantis)、2in1(Two-in-one)抗体(Genentech)、及びmAb2(F-Star)、二重可変ドメイン(DVD)-Ig(Abbott)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)、及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)、及びTvAb(Roche)、ScFv/Fc融合体(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion、Zymogenetics/BMS)、及び二重親和性再標的技術(Dual Affinity Retargeting Technology、Fc-DART)(MacroGenics)、F(ab)2(Medarex/AMGEN)、二重活性又はBis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、二価二重特異性(Biotecnol)、及びFab-Fv(UCB-Celltech)、二重特異性T細胞エンゲージャ(Bispecific T Cell Engager、BITE)(Micromet)、タンデムダイアボディ(Tandem Diabody、Tandab)(Affimed)、二重親和性再標的技術(DART)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的ナノボディ(Ablynx)、二重標的重鎖のみドメイン抗体を含む。二重特異性抗体の様々なフォーマットは、例えば、Chames and Baty(2009)Curr Opin Drug Disc Dev 12:276及びNunez-Prado et al.,(2015)Drug Discovery Today 20(5):588-594に記載されている。
【0126】
いくつかの実施形態では、GPRC5D xCD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体は、抗原結合断片である。例示的な抗原結合断片は、Fab、F(ab’)2、Fd、及びFv断片である。
【0127】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、キメラ、ヒト化、又はヒトである。
【0128】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、
配列番号27のHCDR1、配列番号28のHCDR2、配列番号29のHCDR3を有するVH及び配列番号30のLCDR1、配列番号31のLCDR2、及び配列番号32のLCDR3を有するVLを含むGPRC5D結合ドメイン、並びに配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、配列番号19のHCDR3を有するVH及び配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2、配列番号22のLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。GPRC5DxCD3二重特異性抗体のHCDR及びLCDRを、以下の表4に列挙する。
【0129】
【0130】
上記の表に列挙されるCDRは、Kabat番号付けシステムのものである。しかしながら、本明細書で提供されるように、本開示のCDRは、Kabat、Chothia、IMGT、又はAbMナンバリングシステムのいずれかなどの任意の適切なナンバリングシステムによって提供されてもよい。以下の表5~7は、Chothia、AbM、及びIMGTナンバリングシステムを利用する例示的なCDRを提供する。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、配列番号27のHCDR1、配列番号28のHCDR2、配列番号29のHCDR3を有するVH及び配列番号30のLCDR1、配列番号31のLCDR2、及び配列番号32のLCDR3を有するVLを含むGPRC5D結合ドメイン、並びに配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、配列番号19のHCDR3を有するVH及び配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2、配列番号22のLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、配列番号54のHCDR1、配列番号55のHCDR2、配列番号29のHCDR3を有するVH及び配列番号30のLCDR1、配列番号31のLCDR2、及び配列番号32のLCDR3を有するVLを含むGPRC5D結合ドメイン、並びに配列番号56のHCDR1、配列番号57のHCDR2、配列番号19のHCDR3を有するVH及び配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2、配列番号22のLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、配列番号58のHCDR1、配列番号59のHCDR2、配列番号29のHCDR3を有するVH及び配列番号30のLCDR1、配列番号31のLCDR2、及び配列番号32のLCDR3を有するVLを含むGPRC5D結合ドメイン、並びに配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号19のHCDR3を有するVH及び配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2、配列番号22のLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、配列番号62のHCDR1、配列番号63のHCDR2、配列番号64のHCDR3を有するVH、配列番号65のLCDR1を有するVL、アミノ酸配列SASを有するLCDR2、及び配列番号32のLCDR3を有するVHを含むGPRC5D結合ドメイン、並びに配列番号66のHCDR1、配列番号67のHCDR2、配列番号68のHCDR3を有するVH、配列番号69のLCDR1、アミノ酸配列GTNを有するLCDR2、及び配列番号22のLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、配列番号33のVH及び配列番号34のVLを含むBGPRC5D結合ドメイン、並びに配列番号23のVH及び配列番号24のVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、GPRC5Dに結合するGPRC5DxCD3二重特異性抗体は、配列番号35の第1の重鎖(first heavy chain、HC1)、配列番号36の第1の軽鎖(first light chain、LC1)、配列番号25の第2の重鎖(second heavy chain、HC2)、及び配列番号26の第2の軽鎖(second light chain、LC2)を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体のCD3結合アーム及びGPRC5DxCD3二重特異性抗体のGPRC5D結合アームは、表8a及び8bに提供されているアミノ酸配列を含む。
【0141】
【0142】
【0143】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、タルケタマブ(別名JNJ-564又はJNJ-64407564)、Kodama et al.Mol Cancer Ther.2019.18(9):1555-1564(その全内容が参照により本明細書に組み入れられる)に記載のGPRC5DxCD3二重特異性抗体、又は米国特許第10,590,196号(その全内容が参照により本明細書に組み入れられる)に記載のヒトGPRC5D結合ドメイン、又はヒトGPRC5Dへの結合についてタルケタマブ若しくは米国特許第10,590,196号に記載のヒトGPRC5D結合ドメインと競合するGPRC5D結合ドメインを使用する二重特異性抗体であってもよいが、これらに限定されない。
【0144】
いくつかの実施形態では、タルケタマブは、第1の重鎖(HC1)、第1の軽鎖(LC1)、第2の重鎖(HC2)、及び第2の軽鎖(LC2)を含み、HC1はLC1と会合し、HC2はLC2と会合し、HC1及びLC1は、GPRC5Dに免疫特異的に結合する第1の抗原結合性部位を形成し、HC2及びLC2は、CD3に免疫特異的に結合する第2の抗原結合性部位を形成する。いくつかの実施形態では、タルケタマブは、配列番号35のHC1、配列番号36のLC1、配列番号25のHC2、及び配列番号26のLC2を含む。いくつかの実施形態では、タルケタマブのCD3アーム及びタルケタマブのGPRC5Dアームは、それらのそれぞれのFcドメイン間の相互作用を介して機能的二重特異性抗体を形成する。
【0145】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第10,906,956号又は国際公開第2020/092854号に記載のGPRC5D結合ドメイン、又はヒトGPRC5Dへの結合についてそのようなGPRC5D結合ドメインと競合するGPRC5D結合ドメインのいずれか1つを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプである。
【0147】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、IgG1アイソタイプである。
【0148】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、IgG2アイソタイプである。
【0149】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、IgG3アイソタイプである。
【0150】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプである。
【0151】
GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、任意のアロタイプのものとすることができる。治療用抗体の免疫原性は、注入反応のリスクの高さ及び治療奏効の期間短縮に関連している(Baert et al.,(2003)N Engl J Med 348:602-08)。宿主において治療用抗体が免疫応答を誘導する程度は、抗体のアロタイプによって部分的に決定されてもよい(Stickler et al.,(2011)Genes and Immunity 12:213-21)。抗体のアロタイプは、抗体の定常領域配列における特定の位置のアミノ酸配列の変異に関連する。表9は、選択されたIgG1、IgG2、及びIgG4アロタイプを示す。
【0152】
【0153】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、多重特異性抗体のFcγ受容体(FcγR)への結合を低減する1つ以上のFc置換を含む。多重特異性抗体のFcγRへの結合を低減する置換は、多重特異性抗体のADCC、ADCP、及び/又はCDCなどのFcエフェクター機能を低減する。特定の置換は、配列番号15の野生型IgG1又は配列番号16の野生型IgG4と比較して行われ得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG4上のF234A/L235A、IgG1上のL234A/L235A、IgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、IgG4上のF234A/L235A、IgG4上のS228P/F234A/L235A、全てのIgアイソタイプ上のN297A、IgG2上のV234A/G237A、IgG1上のK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2上のH268Q/V309L/A330S/P331S、IgG1上のS267E/L328F、IgG1上のL234F/L235E/D265A、IgG1上のL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、IgG4上のS228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及びIgG4上のS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sからなる群から選択され、残基の番号付けは、EUインデックスに従う。
【0155】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG4上のF234A/L235Aである。
【0156】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG1上のL234A/L235Aである。
【0157】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331Sである。
【0158】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG4上のF234A/L235Aである。
【0159】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG4上のS228P/F234A/L235Aである。
【0160】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、全てのIgアイソタイプ上のN297Aである。
【0161】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG2上のV234A/G237Aである。
【0162】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG1上のK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358Mである。
【0163】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG2上のH268Q/V309L/A330S/P331Sである。
【0164】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG1上のS267E/L328Fである。いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG1上のL234F/L235E/D265Aである。
【0165】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG1上のL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331Sである。
【0166】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG4上のS228P/F234A/L235A/G237A/P238S及びIgG4上のS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sである。
【0167】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、S228P置換を更に含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、第1のCH3ドメイン若しくは第2のCH3ドメインに、又は第1のCH3ドメイン及び第2のCH3ドメインの両方に、1つ又は2つ以上の非対称置換を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、1つ以上の非対称置換は、F450L/K409R、野生型/F409L_R409K、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S及びT366W/T366S_L368A_Y407V、L351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、並びにT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wからなる群から選択される。
【0170】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、F450L/K409Rである。
【0171】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、野生型/F409L_R409Kである。
【0172】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366Y/F405Aである。
【0173】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366W/F405Wである。
【0174】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、F405W/Y407Aである。
【0175】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T394W/Y407Tである。
【0176】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T394S/Y407Aである。
【0177】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366W/T394Sである。
【0178】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、F405W/T394Sである。
【0179】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366W/T366S_L368A_Y407Vである。
【0180】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、L351Y_F405A_Y407V/T394Wである。
【0181】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407Vである。
【0182】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407Vである。
【0183】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、L351Y_Y407A/T366A_K409Fである。
【0184】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、L351Y_Y407A/T366V_K409Fである。
【0185】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、Y407A/T366A_K409Fである。
【0186】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wである。
【0187】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプであり、第1の重鎖(HC1)の405位にフェニルアラニン及び409位にアルギニン、並びに第2の重鎖(HC2)の405位にロイシン及び409位にリジンを含み、残基の番号付けは、EUインデックスに従う。
【0188】
いくつかの実施形態では、GPRC5D×CD3二重特異性抗体は、HC1及びHC2の両方の228位にプロリン、234位にアラニン、及び235位にアラニンを更に含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、癌は、血液悪性腫瘍又は固形腫瘍である。
【0190】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、良性単クローン性γグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance、MGUS)、急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia、ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)、バーキットリンパ腫(Burkitt's lymphoma、BL)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma、FL)、マントル細胞リンパ腫(mantle-cell lymphoma、MCL)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞白血病、軽鎖アミロイドーシス(AL)、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、B細胞悪性腫瘍、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、CML)、毛状細胞白血病(hairy cell leukemia、HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(marginal zone B-cell lymphoma、MZL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(mucosa-associated lymphatic tissue、MALT)、形質細胞白血病、未分化大細胞リンパ腫(anaplastic large-cell lymphoma、ALCL)、白血病、又はリンパ腫である。
【0191】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫である。
【0192】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、新たに診断された多発性骨髄腫である。
【0193】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、再発又は難治性多発性骨髄腫(RRMM)である。
【0194】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、高リスク多発性骨髄腫である。高リスク多発性骨髄腫を有する対象は、早期に再発し、不良予後及び転帰を有することが知られている。対象は、以下の細胞遺伝学的異常のうちの1つ以上を有する場合、高リスク多発性骨髄腫を有すると分類され得る:t(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、del17p、1qAmp、t(4;14)(p16;q32)及びt(14;16)(q32;q23)、t(4;14)(p16;q32)及びdel17p、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p、又はt(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、及びdel17p。
【0195】
いくつかの実施形態では、高リスク多発性骨髄腫を有する対象が、t(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、del17p、1qAmp、t(4;14)(p16;q32)及びt(14;16)(q32;q23)、t(4;14)(p16;q32)及びdel17p、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p;若しくはt(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p、又はこれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の染色体異常を有し得る。
【0196】
様々な定性的及び/又は定量的方法が、疾患の再発性又は難治性を判定するために使用できる。関連し得る症状は、例えば、患者の健康状態の低下若しくはプラトー状態、固形腫瘍に関連する様々な症状の復元若しくは悪化、及び/又は1つの場所から他の臓器、組織、若しくは細胞への体内の癌性細胞の転移である。
【0197】
細胞遺伝学的異常は、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(fluorescent in situ hybridization、FISH)によって検出され得る。染色体転座において、癌遺伝子は、染色体14q32上のIgH領域に転座され、これらの遺伝子の制御不全がもたらされる。t(4;14)(p16;q32)は、線維芽細胞成長因子受容体3(fibroblast growth factor receptor 3、FGFR3)及び多発性骨髄腫SETドメイン含有タンパク質(multiple myeloma SET、MMSET)(別名、WHSC1/NSD2)の転座を伴い、t(14;16)(q32;q23)は、MAF転写因子C-MAFの転座を伴う。17p欠失(del17p)は、p53遺伝子座の喪失を伴う。
【0198】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、抗CD38抗体(例えば、ダラツムマブ、イサツキシマブなど)、レナリノミド、ボルテゾミブ、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、エロトズマブ、イキサゾミブ、メルファラン、若しくはサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせによる治療に対して再発又は難治性である。
【0199】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、抗CD38抗体による治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、レナリドミドによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、ボルテゾミブによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、ポマリドミドによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、カルフィルゾミブによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、エロツズマブによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、イキサゾミブによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、メルファランによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、サリドマイドによる治療に対して再発又は難治性である。
【0200】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、AMLである。
【0201】
いくつかの実施形態では、AMLは、少なくとも1つの遺伝的異常を有するAMLである。いくつかの実施形態では、AMLは、多系統異形成を伴うAMLである。いくつかの実施形態では、AMLは治療関連AMLである。いくつかの実施形態では、AMLは、未分化AMLである。いくつかの実施形態では、AMLは、最小成熟を伴うAMLである。いくつかの実施形態では、AMLは、成熟型AMLである。いくつかの実施形態では、AMLは、急性骨髄性単球性白血病である。いくつかの実施形態では、AMLは、急性単球性白血病である。いくつかの実施形態では、AMLは、急性赤白血病である。いくつかの実施形態では、AMLは、急性巨核芽球性白血病である。いくつかの実施形態では、AMLは、急性好塩基球性白血病である。いくつかの実施形態では、AMLは、線維症を伴う急性汎骨髄症である。いくつかの実施形態では、AMLは、骨髄性肉腫である。
【0202】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、8番染色体と21番染色体との間の転座、16番染色体の転座若しくは逆位、15番染色体と17番染色体との間の転座、11番染色体の変化、又はfms関連チロシンキナーゼ3(fms-related tyrosine kinase 3、FLT3)、ヌクレオフォスミン(nucleophosmin、NPM1)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(isocitrate dehydrogenase 1、IDH1)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(isocitrate dehydrogenase 2、IDH2)、DNA(シトシン-5)-メチルトランスフェラーゼ3(DNA(cytosine-5)-methyltransferase 3、DNMT3A)、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ(CCAAT/enhancer binding protein alpha、CEBPA)、U2核内低分子RNA補助因子1(U2 small nuclear RNA auxiliary factor 1、U2AF1)、zeste2ポリコーム抑制複合体2サブユニットエンハンサー(enhancer of zeste 2 polycomb repressive complex 2 subunit、EZH2)、染色体構造維持1A(structural maintenance of chromosomes 1A、SMC1A)、若しくは染色体構造維持3(structural maintenance of chromosomes 3、SMC3)における変異である。
【0203】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、8番染色体と21番染色体との間の転座である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、16番染色体の転座又は逆位である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、15番染色体と17番染色体との間の転座である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、第11染色体における変化である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、fms関連チロシンキナーゼ3(FLT3)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、ヌクレオフォスミン(NPM1)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、DNA(シトシン-5)-メチルトランスフェラーゼ3(DNMT3A)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ(CEBPA)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、U2核内低分子RNA補助因子1(U2AF1)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、zeste2ポリコーム抑制複合体2サブユニットエンハンサー(EZH2)の変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、染色体1A(SMC1A)の構造維持における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、第3染色体の構造維持(SMC3)における変異である。
【0204】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は転座t(8;21)(q22;q22)、逆位inv(16)(p13;q22)、転座t(16;16)(p13;q22)、転座t(15;17)(q22;q12)、FLT3-ITDの変異、IDH1内のR132H若しくはR100Q/R104V/F108L/R119Q/I130Vの変異、又はIDH2内のR140Q若しくはR172の変異である、請求項13に記載の方法。
【0205】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、転座t8;21)(q22;q22)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、反転inv(16)(p13;q22)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、転座t(16;16)(p13;q22)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、転座t(15;17)(q22;q12)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、変異FLT3-ITDである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、IDH1における変異R132Hである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、IDH1におけるR100Q/R104V/F108L/R119Q/I130Vである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、IDH2における変異R140Qである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、IDH2における変異R172である。
【0206】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、ALLである。
【0207】
いくつかの実施形態では、ALLは、B細胞系列ALL、T細胞系列ALL、成人ALL、又は小児ALLである。
【0208】
いくつかの実施形態では、ALLは、B細胞系列ALLである。いくつかの実施形態では、ALLはT細胞系列ALLである。いくつかの実施形態では、ALLは、成人ALLである。いくつかの実施形態では、ALLは、小児ALLである。
【0209】
いくつかの実施形態では、ALLを有する対象は、フィラデルフィア染色体を有するか、又はBCR-ABLキナーゼ阻害剤による治療に対して耐性であるか若しくはそれに対する後天耐性を有する。
【0210】
いくつかの実施形態では、ALLを有する対象は、フィラデルフィア染色体を有する。いくつかの実施形態では、ALLを有する対象は、BCR-ABLキナーゼ阻害剤による治療に対して耐性であるか、又はそれに対する後天耐性を有する。
【0211】
Ph染色体は、ALLを有する成人の約20%及びALLを有する小児の小さな割合に存在し、予後不良に関連する。再発時には、Ph+陽性ALLを有する患者は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)レジメンにある場合があり、したがってTKIに対して耐性となる場合がある。したがって、抗CD38抗体は、選択的又は部分的に選択的なBCR-ABL阻害剤に対して耐性となった対象に投与され得る。例示的なBCR-ABL阻害剤は、例えば、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ、バフェチニブ、サラカチニブ、トザセルチブ、又はダヌセルチブである。
【0212】
B系列ALL患者において特定される他の染色体再編成は、t(v;11q23)(MLL再構成)、t(1;19)(q23;p13.3);TCF3-PBX1(E2A-PBX1)、t(12;21)(p13;q22);ETV6-RUNX1(TEL-AML1)及びt(5;14)(q31;q32);IL3-IGH)である。
【0213】
いくつかの実施形態では、対象は、t(v;11q23)(MLL再構成)、t(1;19)(q23;p13.3);TCF3-PBX1(E2A-PBX1)、t(12;21)(p13;q22);ETV6-RUNX1(TEL-AML1)又はt(5;14)(q31;q32);IL3-IGH染色体再構成を有するALLを有する。
【0214】
染色体再構成は、周知の方法、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、核型分析、パルスフィールドゲル電気泳動、又はシークエンシングを使用して特定することができる。
【0215】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、くすぶり型多発性骨髄腫である。
【0216】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、MGUSである。
【0217】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、ALLである。
【0218】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、DLBLCである。
【0219】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、BLである。
【0220】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、FLである。
【0221】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、MCLである。
【0222】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症である。
【0223】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、形質細胞白血病である。
【0224】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、ALである。
【0225】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病である。
【0226】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病である。
【0227】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、骨髄異形成症候群(MDS)である。
【0228】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、CLLである。
【0229】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、B細胞悪性腫瘍である。
【0230】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、CMLである。
【0231】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、HCLである。
【0232】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍である。
【0233】
いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、ホジキンリンパ腫である。
【0234】
いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、非ホジキンリンパ腫である。
【0235】
いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、MZLである。
【0236】
いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、MALTである。
【0237】
いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、形質細胞白血病である。
【0238】
いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、ALCLである。
【0239】
いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、白血病である。
【0240】
いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、リンパ腫である。
【0241】
一実施形態では、本開示は、対象において癌を治療する方法であって、治療に有効な量のGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に投与して、癌を治療することを含み、対象が、GPRC5DxCD3二重特異性抗体の投与前に抗CD38抗体で治療されている、方法を提供する。
【0242】
本開示はまた、対象において癌を治療する方法であって、治療に有効な量のGPRC5D×CD3二重特異性抗体を対象に投与して、癌を治療することを含み、対象が、以前の抗癌治療薬による治療に対して再発又は難治性である、方法も提供する。
【0243】
いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3抗体を投与した対象は、抗CD38抗体による治療に対して耐性及び/又は難治性である。
【0244】
いくつかの実施形態では、癌は、GPRC5D発現癌である。
【0245】
いくつかの実施形態では、癌は、血液悪性腫瘍である。
【0246】
いくつかの実施形態では、癌は、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、良性単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、B細胞急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞白血病、軽鎖アミロイドーシス、又は非ホジキンリンパ腫である。経験のある医師が、癌診断を行う。
【0247】
いくつかの実施形態では、対象は、抗CD38抗体若しくはレナリドミド、又はこれらの組み合わせによる治療に対して再発又は難治性である。
【0248】
いくつかの実施形態では、対象は、抗CD38抗体による治療に対して再発GPRC5D又は難治性である。いくつかの実施形態では、対象は、レナリドミドによる治療に対して再発又は難治性である。
【0249】
いくつかの実施形態では、対象は、多発性骨髄腫又は他の血液悪性腫瘍を治療するために使用される治療薬などの、以前の抗癌治療による治療に対して再発性又は難治性である。
【0250】
いくつかの実施形態では、対象が、THALOMID(登録商標)(サリドマイド)、REVLIMID(登録商標)(レナリドマイド)、POMALYST(登録商標)(ポマリドミド)、VELCADE(登録商標)(ボルテゾミブ)、NINLARO(イキサゾミブ)、KYPROLIS(登録商標)(カルフィルゾミブ)、FARADYK(登録商標)(パノビノスタット)、AREDIA(登録商標)(パミドロネート)、ZOMETA(登録商標)(ゾレドロン酸)、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)、Empliciti(登録商標)(エロツズマブ)、SARCLISA(登録商標)(イサツキシマブ)、又はAlkeran(登録商標)(メルファラン)による治療に対して難治性又は再発性である。
【0251】
いくつかの実施形態では、対象は、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)による治療に対して再発性である。
【0252】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、約25mMの酢酸、約60mMの塩化ナトリウム、約140マンニトール、及び約0.04%w/vのポリソルベート-20(PS-20)中の約20mg/mL~約120mg/mLの抗CD38抗体をpH約5.5で含む医薬組成物において投与されるか、又は投与のために提供される。
【0253】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、約1,800mgの抗CD38抗体及び約30,000UのrHuPH20を含む医薬組成物において投与されるか、又は投与のために提供される。
【0254】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、約120mg/mLの抗CD38抗体及び約2,000U/mLのrHuPH20を含む医薬組成物において投与されるか、又は投与のために提供される。
【0255】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、
約5mM~約15mMのヒスチジンと、
約100mM~約300mMのソルビトールと、
約0.01%w/v~約0.04%w/vのPS-20と、
約1mg/mL~約2mg/mLのメチオニンとを、pH約5.5~5.6で含む医薬組成物において投与されるか、又は投与のために提供される。
【0256】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、
約1,800mgの抗CD38抗体と、
約30,000UのrHuPH20と、
約10mMのヒスチジンと、
約300mMのソルビトールと、
約0.04%(w/v)のPS-20と、
約1mg/mLのメチオニンとを含み、pH約5.6である医薬組成物である。
【0257】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、
約120mg/mLの抗CD38抗体と、
約2,000U/mLのrHuPH20と、
約10mMのヒスチジンと、
約300mMのソルビトールと、
約0.04%(w/v)のPS-20と、
約1mg/mLのメチオニンとを含み、pH約5.6である、医薬組成物である。
【0258】
本発明はまた、本明細書に記載されるGPRC5DxCD3二重特異体とCD38抗体とを含む医薬組成物を提供する。例えば、本組成物は、配列番号33のVH及び配列番号34のVLを含むGPRC5D結合ドメイン、配列番号23のVH及び配列番号24のVLを含むCD3結合ドメイン、配列番号5のVH及び配列番号6のVLを含む抗CD38抗体を含み得る。
【0259】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号35のHC1、配列番号36のLC1、配列番号25のHC2、配列番号26のLC2を含むGPRC5DxCD3二重特異性抗体、並びに配列番号13のHC及び配列番号14のLCを含む抗CD38抗体を含む。いくつかの実施形態では、GPRC5DxCD3二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプであり、第1の重鎖(HC1)の405位にフェニルアラニン及び409位にアルギニン、並びに第2の重鎖(HC2)の405位にロイシン及び409位にリジンを含み、残基の番号付けは、EUインデックスに従う。いくつかの実施形態では、GPRC5D×CD3二重特異性抗体は、HC1及びHC2の両方の228位にプロリン、234位にアラニン、及び235位にアラニンを更に含む。
【0260】
本開示はまた、本出願の方法において使用するための、GPRC5DxCD3二重特異性抗体と抗CD38抗体とを含むキット又は組み合わせを提供する。
【0261】
本発明の方法で使用される抗体を生成する方法
特定の抗原に結合する本発明の方法で使用される抗体は、例えば、ファージディスプレイライブラリから新たに選択されてもよく、その場合、ファージは、ヒト免疫グロブリン又はその一部分(Fab、一本鎖抗体(scFv)、又は対をなさない若しくは対をなした抗体可変領域など)を発現するように操作される(Knappik et al.,J Mol Biol 296:57-86,2000;Krebs et al.,J Immunol Meth 254:67-84,2001;Vaughan et al.,Nature Biotechnology 14:309-14,1996;Sheets et al.,PITAS(USA)95:6157-62(1998);Hoogenboom and Winter,J Mol Biol 227:381,1991;Marks et al.,J Mol Biol 222:581,1991)。Shi et al(2010)J.Mol.Biol.397:385-96及び国際公開第2009/085462号に記載のバクテリオファージpIXコートタンパク質との融合タンパク質として抗体重鎖及び軽鎖可変領域を発現するファージディスプレイライブラリ。抗体ライブラリをGPRC5Dなどの所望の抗原への結合に関してスクリーニングし、得られた陽性クローンを更に特徴付け、クローンライセートからFabを単離した後、完全長抗体としてクローニングしてもよい。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、当該技術分野にて確立されている。例えば、米国特許第5,223,409号、米国特許第5,403,484号、米国特許第5,571,698号、米国特許第5,427,908号、米国特許第5,580,717号、米国特許第5,969,108号、米国特許第6,172,197号、米国特許第5,885,793号、米国特許第6,521,404号、米国特許第6,544,731号、米国特許第6,555,313号、米国特許第6,582,915号、及び米国特許第6,593,081号を参照されたい。
【0262】
T細胞リダイレクト二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号に記載された方法に従って、で無細胞環境下、2種類の単一特異性ホモ二量体抗体のCH3領域中に非対称な変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化させる還元条件下において、2種類の親単一特異性ホモ二量体抗体から二重特異性ヘテロ二量体抗体を形成することにより生成されてもよい。この方法では、ヘテロ二量体の安定性を促進する特定の置換をCH3ドメインに有するように、2つの単一特異性二価抗体を遺伝子操作する。これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合を異性化させるために十分な還元条件下において一緒にインキュベートされ、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適には、非還元条件に戻され得る。使用され得る代表的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-mercaptoethylamine、2-MEA)、ジチオスレイトール(dithiothreitol、DTT)、ジチオエリスリトール(dithioerythritol、DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)、L-システイン、及びβ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度で、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えばpH7.0又はpH7.4で、少なくとも90分間のインキュベートを使用することができる。
【0263】
二重特異性抗体の第1の重鎖及び第2の重鎖に使用され得る代表的なCH3の変異は、K409R及び/又はF405Lである。
【0264】
使用され得る追加のCH3変異には、Duobody(登録商標)変異(Genmab)、ノブインホール変異(Genentech)、静電的マッチ変異(Chugai、Amgen、NovoNordisk、Oncomed)、鎖交換操作ドメインボディ(SEEDボディ)(EMD Serono)、及び他の非対称変異(例えば、Zymeworks)などの技術が含まれる。
【0265】
Duobody(登録商標)変異(Genmab)は、例えば、米国特許第9150663号及び米国特許出願公開第2014/0303356号に開示されており、F405L/K409R、野生型/F405L_R409K、T350I_K370T_F405L/K409R、K370W/K409R、D399AFGHILMNRSTVWY/K409R、T366ADEFGHILMQVY/K409R、L368ADEGHNRSTVQ/K409AGRH、D399FHKRQ/K409AGRH、F405IKLSTVW/K409AGRH、及びY407LWQ/K409AGRHの変異が含まれる。
【0266】
ノブインホール変異は、例えば、国際公開第1996/027011号に開示されており、小さい側鎖(ホール)を有するアミノ酸が第1のCH3領域に導入され、大きい側鎖(ノブ)を有するアミノ酸が第2のCH3領域に導入され、第1のCH3領域と第2のCH3領域との間に優先的な相互作用をもたらす、CH3領域の界面上の変異が含まれる。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3領域変異は、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである。
【0267】
重鎖ヘテロ二量体形成は、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/028637号、又は米国特許出願公開第2011/0123532号に記載のように、第1のCH3領域上の正に荷電した残基及び第2のCH3領域上の負に荷電した残基を置換することにより、静電相互作用を使用することによって促進され得る。
【0268】
重鎖ヘテロ二量体化を促進するために使用され得る他の非対称変異は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は同第2013/0195849号に記載のL351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wである。
【0269】
SEEDボディ変異は、米国特許出願公開第20070287170号に記載のように、選択されたIgG残基をIgA残基と置換して、重鎖ヘテロ二量体化を促進することを伴う。
【0270】
使用され得る他の例示的な変異は、国際公開第2007/147901号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2013157954号、国際公開第2013096291号、及び米国特許出願公開第2018/0118849号に記載のR409D_K370E/D399K_E357K、S354C_T366W/Y349C_T366S_L368A_Y407V、Y349C_T366W/S354C_T366S_L368A_Y407V、T366K/L351D、L351K/Y349E、L351K/Y349D、L351K/L368E、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、K392D/D399K、K392D/E356K、K253E_D282K_K322D/D239K_E240K_K292D、K392D_K409D/D356K_D399Kである。
【0271】
GPRC5DxCD3二重特異性抗体として使用され得る追加の二重特異性又は多重特異性構造には、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD)(国際公開第2009/134776号、DVDは、VH1-リンカー-VH2-CH構造を有する重鎖と、VL1-リンカー-VL2-CL構造を有する軽鎖とを含む完全長抗体であり、リンカーは任意選択的である)、異なる特異性を有する2つの抗体アームを結合するための様々な二量化ドメインを含む構造、例えば、ロイシンジッパー又はコラーゲン二量化ドメイン(国際公開第2012/022811号、米国特許第5,932,448号、同第6,833,441号)、一緒にコンジュゲートされた2つ又は3つ以上のドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、ラクダ科抗体及び遺伝子操作されたラクダ科抗体などの重鎖のみ抗体、二重標的化(DT)-Ig(GSK/Domantis)、ツーインワン抗体(Genentech)、架橋Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)及びCovX-body(CovX/Pfizer)、IgG様二重特異性(InnClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)及びTvAb(Roche)、ScFv/Fc融合体(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion,Zymogenetics/BMS))、二重親和性再標的化技術(Fc-DART)(MacroGenics)及びDual(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine--China)、Dual-Action又はBis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)並びにFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられる。ScFv抗体、ダイアボディに基づく抗体、及びドメイン抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャ(Bispecific T Cell Engager、BiTE)(Micromet)、タンデムダイアボディ(Tandem Diabody、Tandab)(Affimed)、二重親和性再標的化技術(DART)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的ナノボディ(Ablynx)、二重標的重鎖のみドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。
【0272】
抗体のFc操作
二重特異性若しくは多重特異性抗体又は抗CD38抗体などのGPRC5DxCD3二重特異性抗体のFc領域は、GPRC5DxCD3二重特異性抗体の活性化Fcγ受容体(FcγR)への結合を低減する、かつ/又はC1q結合、補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity、CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)、若しくは貪食作用(antibody-dependent cell-mediated phagocytosis、ADCP)などのFcエフェクター機能を低減する、Fc領域における少なくとも1つの置換を含み得る。
【0273】
Fcの活性化FcγRへの結合を低減させ、次に、エフェクター機能を低減するように置換され得るFc位置は、IgG1におけるL234A/L235A、IgG2におけるV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、IgG4におけるF234A/L235A、IgG4におけるS228P/F234A/L235A、全てのIgアイソタイプにおけるN297A、IgG2におけるV234A/G237A、IgG1におけるK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2におけるH268Q/V309L/A330S/P331S、IgG1におけるS267E/L328F、IgG1におけるL234F/L235E/D265A、IgG1におけるL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、IgG4におけるS228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及びIgG4におけるS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sの置換であり、残基の番号付けは、EUインデックスに従う。
【0274】
CDCを低減するために使用され得るFc置換は、K322A置換である。
【0275】
IgG4の安定性を向上させるために、周知のS228P置換をIgG4抗体に更に行うことができる。
【0276】
例示的な野生型IgG1は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。例示的な野生型IgG4は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0277】
「抗体依存性細胞傷害」、「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」、又は(ADCC)は、抗体で被覆された標的細胞と、ナチュラルキラー細胞(NK)、単球、マクロファージ、及び好中球などの溶解活性を有するエフェクター細胞との、エフェクター細胞上で発現するFcγ受容体(FcγR)を介した相互作用に依存する細胞死を誘導するための機序である。例えば、NK細胞はFcγRIIIaを発現し、一方、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIaを発現する。抗体のADCC活性は、抗体が結合するタンパク質を発現する細胞を標的細胞として、及びNK細胞をエフェクター細胞として使用するインビトロアッセイを使用して評価されてもよい。細胞溶解は、溶解した細胞からの標識(例えば、放射性基質、蛍光染料、又は天然細胞内タンパク質)の放出によって検出することができる。例示的なアッセイでは、標的細胞を、1つの標的細胞の、4つのエフェクター細胞に対する比で使用する。標的細胞はBATDAで予め標識し、エフェクター細胞及び試験抗体と組み合わせる。サンプルを2時間インキュベートし、上清に放出したBATDAを測定することにより、細胞溶解を測定する。0.67%Triton X-100(Sigma Aldrich)による最大の細胞傷害に対してデータを正規化し、またあらゆる抗体の非存在下における標的細胞からのBATDAの自然放出によって最小対照を求める。
【0278】
「抗体依存性細胞貪食作用」(「ADCP」)とは、例えばマクロファージ又は樹状細胞などの貪食細胞による取り込みにより、抗体被覆標的細胞を排除する機序を指す。ADCPは、単球由来マクロファージをエフェクター細胞として、及び抗体が結合するタンパク質を発現する細胞をGFP又は別の標識分子を発現するようにも操作された標的細胞として使用することによって評価することができる。例示的なアッセイでは、エフェクター:標的細胞比は、例えば4:1とすることができる。エフェクター細胞は、本発明の抗体を添加して、又は添加せずに、標的細胞と共に4時間インキュベートしてもよい。インキュベーション後、細胞は、アクターゼを使用して剥離され得る。マクロファージは、蛍光標識に結合した抗CD11b抗体及び抗CD14抗体を用いて特定することができ、貪食作用の割合は、標準的な方法を使用して、CD11+CD14+マクロファージにおけるGFP蛍光%に基づいて求めることができる。
【0279】
「補体依存性細胞傷害」すなわち「CDC」は、標的結合抗体のFcエフェクタードメインが補体成分C1qに結合してこれを活性化し、かかる補体成分C1qが次に補体カスケードを活性化して標的細胞の細胞死をもたらす、細胞死を誘導するための機序を指す。補体の活性化はまた、標的細胞表面に対する補体成分の沈着を生じさせ得、白血球への補体受容体(例えば、CR3)の結合によって、CDCを容易にする。細胞のCDCは、例えば、Daudi細胞を、RPMI-B(1%のBSAを補給したRPMI)に1×105個の細胞/ウェル(50μL/ウェル)でプレーティングし、50μLの試験タンパク質を0~100μg/mLの最終濃度でウェルに添加し、反応物を室温で15分間インキュベートし、11μLのプールヒト血清をウェルに添加し、反応物を37℃で45分間インキュベートすることによって測定され得る。溶解した細胞の割合(%)は、標準法を使用して、FACSアッセイにおけるヨウ化プロピジウム染色細胞の%として検出され得る。
【0280】
抗体のFcγR又はFcRnへの結合は、フローサイトメトリーを使用して、各受容体を発現するように遺伝子操作された細胞にて評価されてもよい。例示的な結合アッセイでは、96ウェルプレートに2×105個/ウェルの細胞を播種し、BSA染色緩衝液(BD Biosciences、San Jose,USA)中、4℃で30分間ブロッキングする。細胞を、氷上で、4℃で1.5時間、試験抗体と共にインキュベートする。BSA染色緩衝液で2回洗浄した後、細胞を、R-PE標識抗ヒトIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories)と共に4℃で45分間、インキュベートする。細胞を、染色緩衝液で2回洗浄し、次いで、1:200希釈したDRAQ7生/死細胞染色試薬(Cell Signaling Technology、Danvers,USA)を含有する150μLの染色緩衝液中に再懸濁する。染色された細胞のPE及びDRAQ7シグナルを、Miltenyi MACSQuantフローサイトメータ(Miltenyi Biotec,米国オーバーン)によってそれぞれB2及びB4チャンネルを使用して検出した。生細胞をDRAQ7除外でゲーティングし、収集された少なくとも10,000生細胞イベントについて、幾何平均蛍光シグナルを決定する。分析にはFlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用する。データを、平均蛍光シグナルに対する抗体濃度の対数としてプロットする。非線形回帰分析を実行する。
【0281】
キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体(CAR)は、遺伝子操作された受容体である。これらの操作された受容体は、当該技術分野で既知の技術に従って、T細胞を含む免疫細胞に容易に挿入し、それらによって発現させることができる。CARによって、単一の受容体は、特定の抗原を認識し、その抗原に結合したときに、免疫細胞を活性化して、その抗原を担持する細胞を攻撃及び破壊するようにプログラミングすることができる。これらの抗原が腫瘍細胞上に存在する場合、CARを発現する免疫細胞は、腫瘍細胞を標的とし、それらを殺傷することができる。
【0282】
CARは、典型的には、抗原(例えば、前立腺新生抗原又はB細胞成熟抗原(BCMA))に結合する細胞外ドメイン、任意のリンカー、膜貫通ドメイン、並びに共刺激ドメイン及び/又はシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインを含む。
【0283】
CARの細胞外ドメインは、所望の抗原(例えば、前立腺新生抗原)に結合する任意のポリペプチドを含有してもよい。細胞外ドメインは、抗体の一部分又は選択的スカフォールドであるscFvを含み得る。CARはまた、タンデムに配置され、リンカー配列によって分離され得る2つ又は3つ以上の所望の抗原に結合するように操作されてもよい。例えば、1つ以上のドメイン抗体、scFv、ラマVHH抗体、又は他のVHのみ抗体断片を、リンカーを介してタンデムに構成して、CARに二重特異性又は多重特異性を提供してもよい。
【0284】
CARの膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通ドメイン、T細胞受容体のアルファ、ベータ、若しくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CDI la、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、4-1BBL、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFI)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7R a、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDI Id、ITGAE、CD103、ITGAL、CDI la、LFA-1、ITGAM、CDI lb、ITGAX、CDI lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(触覚)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、及び/又はNKG2Cに由来し得る。
【0285】
CARの細胞内共刺激ドメインは、1つ以上の共刺激分子の細胞内ドメインに由来し得る。共刺激分子は、抗原への結合時にTリンパ球の効率的な活性化及び機能に必要な第2のシグナルを提供する、抗原受容体又はFc受容体以外の周知の細胞表面分子である。CARに使用され得る例示的な共刺激ドメインは、4-1BB、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70の細胞内ドメインである。
【0286】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば、
【0287】
【化1】
CD3ε、CD22、CD79a、CD66d、又はCD39のシグナル伝達ドメインに由来し得る。「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター細胞機能を誘発するために、標的抗原への有効なCAR結合のメッセージの、免疫エフェクター細胞の内部への形質導入に関与して、エフェクター細胞機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖、及び細胞傷害性活性(細胞傷害性因子のCAR結合標的細胞への放出、又は細胞外CARドメインへの抗原結合後に引き出される他の細胞応答を含む)を引き出すCARポリペプチドの一部を指す。
【0288】
細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置付けられる任意のCARのリンカーは、約2~100アミノ酸長のポリペプチドであり得る。リンカーは、隣接するタンパク質ドメインが互いに対して自由に移動するように、グリシン及びセリンなどの可撓性残基を含み得るか、又はそれで構成され得る。2つの隣接するドメインが互いに立体的に干渉しないことを確実にすることが望ましい場合、より長いリンカーを使用することができる。リンカーは、開裂可能又は開裂不可能であり得る。開裂可能なリンカーの例には、2Aリンカー(例えば、T2A)、2A様リンカー、又はこれらの機能的等価物及びこれらの組み合わせが含まれる。リンカーはまた、任意の免疫グロブリンのヒンジ領域又はヒンジ領域の一部分に由来し得る。
【0289】
使用することができる例示的なCARは、例えば、本開示の多発性骨髄腫ネオ抗原に結合する細胞外ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、及びCD3εシグナル伝達ドメインを含有するCARである。他の例示的なCARは、本開示の卵巣ネオ抗原に結合する細胞外ドメイン、CD8又はCD28膜貫通ドメイン、CD28、41BB、又はOX40共刺激ドメイン、及びCD3εシグナル伝達ドメインを含有する。
【0290】
CARは、標準的な分子生物学的技術によって生成される。所望の抗原に結合する細胞外ドメインは、本明細書に記載の技術を使用して生成された抗体又はそれらの抗原結合断片に由来し得る。
【0291】
転帰
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって治療される対象は、部分奏効(PR)以上を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって治療される対象は、非常に良好な部分奏効(VGPR)以上を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって治療される対象は、完全奏効(CR)以上を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって治療される対象は、厳密な完全奏効(sCR)以上を有する。いくつかの実施形態では、PR、VGPR、CR、及びsCRは、IMWG2016基準によって定義される通りである。いくつかの実施形態では、PRは、血清Mタンパク質の50%超の低減及び24時間尿Mタンパク質の90%超又は200mg未満/24時間までの低減として定義される。いくつかの実施形態では、VGPRは、免疫固定によって検出可能であるが電気泳動では検出可能でない血清及び尿中Mタンパク質レベル、又は血清Mタンパク質+尿中Mタンパク質レベルの90%超<100mg未満/24時間の低減を有すると定義される。いくつかの実施形態では、CRは、血清及び尿に対する負の免疫固定、並びに骨髄中の任意の軟組織形質細胞腫及び<5%の形質細胞の消失を有すると定義される。いくつかの実施形態では、sCRは、上記のようなCR定義+正常なFLC比及び免疫組織化学又は免疫蛍光法による骨髄中のクローン細胞の非存在として定義される。
【0292】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法による治療は、T細胞活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、CD25、PD-1、CD4+T細胞上のCD38、CD8+T細胞上のCD38、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、CD25の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、PD-1の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、CD4+T細胞上のCD38の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、CD8+T細胞上のCD38の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、CD38+CD8+T細胞、CD38+CD4+T細胞、Tregs T細胞、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つの頻度の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、CD38+CD8+T細胞の頻度の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、CD38+CD4+T細胞の頻度の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、Tregs T細胞の頻度の増加をもたらす。
【0293】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、単剤療法として投与された場合、本方法の成分の活性の増強をもたらすか、又はその有効性の向上をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、抗CD38抗体を用いない治療と比較して、GPRC5DxCD3二重特異性抗体の活性の増強をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、GPRC5DxCD3二重特異性抗体を用いない治療と比較して、抗CD38抗体の活性の増強をもたらす。
【0294】
番号付き実施形態
本開示はまた、以下の番号付きの実施形態を提供する。
1.治療を必要とする対象を治療する方法であって、
(1)GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、方法。
1a.治療を必要とする対象を治療する方法であって、
(1)GPRC5DxCD3二重特異性抗体を60μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に静脈内投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、方法。
1a1.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、60μg/kgの用量で毎週対象に静脈内投与される、実施形態1aに記載の方法。
1a2.抗CD38抗体が、1800mgの用量で毎週、隔週、3週間毎、又は4週間毎に皮下投与される、実施形態1a又は1a1に記載の方法。
1a3.抗CD38抗体が、1800mgの用量で治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、及び治療の24週目の後は4週間に1回皮下投与される、実施形態1a1に記載の方法。
2.
(1)GPRC5DxCD3二重特異性抗体を300μg/kg~1200μg/kgの用量で1~2週間毎に対象に皮下投与することと、
(2)抗CD38抗体を1600mg~2000mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、実施形態1に記載の方法。
3.工程(1)の前に、GPRC5DxCD3二重特異性抗体を、工程(1)で使用される用量よりも低い用量で対象に皮下投与することを更に含む、実施形態2に記載の方法。
3a.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、抗CD38抗体の初回投与後に、工程(1)で使用される用量よりも低い用量で対象に皮下投与され、好ましくは、GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、抗CD38抗体の初回投与の少なくとも20時間後に、工程(1)で使用される用量よりも低い用量で対象に最初に投与される、実施形態3に記載の方法。
3b.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、工程(1)の400μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、5~100μg/kg、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100μg/kg又はその間の任意の値で対象に皮下投与される、実施形態3又は3aに記載の方法。
3c.少なくとも2つの漸増用量のGPRC5DxCD3が投与され、好ましくは、第1の漸増用量が治療の2日目に投与され、第2の漸増用量が治療の4日目に投与される、実施形態3bに記載の方法。
3d.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、工程(1)における400μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、例えば、治療の2日目に10μg/kgの用量で、例えば、治療の4日目に60μg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態3cに記載の方法。
3e.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、工程(1)における800μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、5~350μg/kg、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、若しくは350μg/kg又はその間の任意の値の用量で対象に皮下投与される、実施形態3~3dのいずれか1つに記載の方法。
3f.少なくとも3つの漸増用量のGPRC5DxCD3が投与され、好ましくは、第1の漸増用量が治療の2日目に投与され、第2の漸増用量が治療の4日目に投与され、第3の漸増用量が治療の8日目に投与される、実施形態3eに記載の方法。
3g.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、工程(1)における800μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、例えば、治療の2日目に10μg/kgの用量、例えば、治療の4日目に60μg/kgの用量、及び例えば、治療の8日目に300μg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態3fに記載の方法。
4.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、300μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、1000μg/kg、1050μg/kg、1200μg/kgの用量又はその間の任意の用量で1週間に1回又は2週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態2~3gのいずれか1つに記載の方法。
4a.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、300μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、1000μg/kg、1050μg/kg、又は1200μg/kgの用量で毎週対象に皮下投与される、実施形態4に記載の方法。
4b.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、隔週300μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、1000μg/kg、1050μg/kg、又は1200μg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態4に記載の方法。
5.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、毎週400μg/kg、又は隔週400μg/kg、又は隔週800μg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態4に記載の方法。
6.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、毎週400μg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6a.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、隔週400μg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6b.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、隔週400μg/kg、又は隔週800μg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6c.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、隔週800μg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6d.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、最初の8週間は毎週400μg/kgの用量で対象に皮下投与され、その後、GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、隔週800μg/kgの用量で投与される、実施形態5に記載の方法。
6e.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、400μg/kgの用量で8週間にわたって毎週対象に皮下投与され、その後、GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、隔週400μg/kgの用量で投与される、実施形態5に記載の方法。
7.抗CD38抗体が、1800mgの用量で治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、及び治療の24週目の後は4週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態1~6eのいずれか1つに記載の方法。
7a.抗CD38抗体が、1800mgの用量で1週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態1~6eのいずれか1つに記載の方法。
7b.抗CD38抗体が、2週間に1回、1800mgの用量で対象に皮下投与される、実施形態1~6eのいずれか1つに記載の方法。
7c.抗CD38抗体が、3週間に1回、1800mgの用量で対象に皮下投与される、実施形態1~6eのいずれか1つに記載の方法。
7d.抗CD38抗体が、4週間に1回、1800mgの用量で対象に皮下投与される、実施形態1~6eのいずれか1つに記載の方法。
8.抗CD38抗体が、rHuPH20、例えば、約30,000UのrHuPH20と一緒に投与されるか、又はrHuPH20、例えば、約30,000UのrHuPH20と一緒の投与のために提供される、実施形態1~7dのいずれか1つに記載の方法。
8a.rHuPH20を対象に投与して、必要とされる注射体積を減少させ、抗CD38抗体の皮下投与を容易にすることを更に含む、実施形態1~7dのいずれか1つに記載の方法。
8b.rHuPH20が、抗CD38抗体と一緒に皮下投与される、実施形態8aに記載の方法。
8c.rHuPH20が、抗CD38抗体とは別個に皮下投与される、実施形態8aに記載の方法。
8d.rHuPH20が、10,000~50000U、例えば、10,000、20,000、30,000、40,000、若しくは50,000U、又はその間の任意の値の用量で皮下投与される、実施形態8a~8dのいずれか1つに記載の方法。
8e.rHuPH20が、30,000Uの用量で皮下投与される、実施形態8a~8dのいずれか1つに記載の方法。
8d.rHuPH20及び抗CD38抗体が、同じ医薬組成物中で一緒に投与される、実施形態8~8eのいずれか1つに記載の方法。
9.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、
(i)それぞれ配列番号27、配列番号28、及び配列番号29のアミノ酸配列の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域(VH)と、それぞれ配列番号30、配列番号31、及び配列番号32のアミノ酸配列の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を有する軽鎖可変領域(VL)とを含むGPRC5D結合ドメイン、並びに
(ii)それぞれ配列番号17、配列番号18、及び配列番号19のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVH、並びにそれぞれ配列番号20、配列番号21、及び配列番号22のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
9a.GPRC5D結合ドメインが、配列番号33のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号34のアミノ酸配列を有するVLを含み、CD3結合ドメインが、配列番号23のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号24のアミノ酸配列を有するVLを含む、実施形態9に記載の方法。
10.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、配列番号35のアミノ酸配列を有する第1の重鎖(HC1)と、配列番号36のアミノ酸配列を有する第1の軽鎖(LC1)と、配列番号25のアミノ酸配列を有する第2の重鎖(HC2)と、配列番号26のアミノ酸配列を有する第2の軽鎖(LC2)と、を含む、実施形態9aに記載の方法。
11.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、JNJ-564又はJNJ-64407564とも呼ばれるタルケタマブ、Kodama et al.Mol Cancer Ther.2019.18(9):1555-1564に記載のGPRC5DxCD3二重特異性抗体、18(9):1555-1564に記載されている)、又は米国特許第10,590,196号、同第10,906,956号、若しくは国際公開第2020/092854号に記載のGPRC5Dヒト結合ドメイン、又はタルケタマブ若しくはヒトGPRC5Dへの結合についてそのようなGPRC5D結合ドメインと競合するGPRC5D結合ドメインを使用する二重特異性抗体を含む、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
11a.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、Fab、F(ab’)2、Fd、又はFv断片などの抗原結合断片を含む、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
11b.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、キメラ、ヒト化、又はヒトである、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
11c.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、IgG1、IgG2、及びIgG3、又はIgG4アイソタイプである、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
11d.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、IgG4アイソタイプである、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
12.抗CD38抗体が、それぞれ、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVHと、それぞれ、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLとを含む、実施形態1~11dのいずれか1つに記載の方法。
12a.抗CD38抗体が、a)配列番号38のVH及び配列番号39のVL、b)配列番号40のVH及び配列番号41のVL、c)配列番号42のVH及び配列番号43のVL、d)配列番号44のVH及び配列番号45のVLを含む、実施形態1~11dのいずれか1つに記載の方法。
12b.CD38抗体が、配列番号5のアミノ酸配列を有するHC2及び配列番号6のアミノ酸配列を有するLC2を含む、実施形態1~11dのいずれか1つに記載の方法。
13.抗CD38抗体が、米国特許第7,829,673号に記載のmAb003、米国特許第7,829,673号に記載のmAb024、米国特許第8,088,896号に記載のMOR-202(MOR-03087)、又は米国特許第8,153,765号に記載のイサツキシマブと、ダラツムマブとからなる群から選択される、実施形態1~11dのいずれか1つに記載の方法。
13a.抗CD38抗体が、配列番号13のHC及び配列番号14のLCを含む、実施形態1~11dのいずれか1つに記載の方法。
13b.抗CD38抗体が、キメラ、ヒト化、又はヒトである、実施形態1~11dのいずれか1つに記載の方法。
13c.抗CD38抗体が、IgG1、IgG2、及びIgG3、又はIgG4アイソタイプである、実施形態1~11dのいずれか1つに記載の方法。
13d.抗CD38抗体が、IgG1アイソタイプである、実施形態1~11aのいずれか1つに記載の方法。
13e.GPRC5DxCD3二重特異性抗体及び/又は抗CD38抗体が、本明細書に記載される1つ以上のFc置換を含む、実施形態1~13dのいずれか1つに記載の方法。
13f.Fc置換が、IgG4上のF234A/L235A、IgG1上のL234A/L235A、IgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、IgG4上のF234A/L235A、IgG4上のS228P/F234A/L235A、全てのIgアイソタイプ上のN297A、IgG2上のV234A/G237A、IgG1上のK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2上のH268Q/V309L/A330S/P331S、IgG1上のS267E/L328F、IgG1上のL234F/L235E/D265A、IgG1上のL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、IgG4上のS228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及びIgG4上のS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sからなる群から選択され、残基の番号付けは、EUインデックスに従う、実施形態13eに記載の方法。
13g.Fc置換が、
(1)IgG4上のF234A/L235A;
(2)IgG1上のL234A/L235A;
(3)IgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S;
(4)IgG4上のF234A/L235A;
(5)IgG4上のS228P/F234A/L235A;
(6)全てのIgアイソタイプ上のN297A;
(7)IgG2上のV234A/G237A;
(8)IgG1上のK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M;
(9)IgG2上のH268Q/V309L/A330S/P331S;
(10)IgG1上のS267E/L328F;
(11)IgG1上のL234F/L235E/D265A;
(12)IgG1上のL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S;
(13)IgG4上のS228P/F234A/L235A/G237A/P238S及びIgG4上のS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238S;及び/又は
(14)S228P置換からなる群から選択される、実施形態13eに記載の方法。
13h.GPRC5DxCD3多重特異性抗体が、第1のCH3ドメイン若しくは第2のCH3ドメインに、又は第1のCH3ドメイン及び第2のCH3ドメインの両方に、1つ以上の非対称置換を含む、実施形態1~13eのいずれか1つに記載の方法。
13i.1つ以上の非対称置換が、F450L/K409R、野生型/F409L_R409K、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S及びT366W/T366S_L368A_Y407V、L351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、並びにT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wからなる群から選択される、実施形態13hに記載の方法。
13j.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、IgG4アイソタイプであり、第1の重鎖(HC1)の405位にフェニルアラニン及び409位にアルギニン、並びに第2の重鎖(HC2)の405位にロイシン及び409位にリジンを含み、残基の番号付けが、EUインデックスに従う、実施形態1~13eのいずれか1つに記載の方法。
13k.GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、HC1及びHC2の両方において、228位にプロリン、234位にアラニン、及び235位にアラニンを更に含む、実施形態13jに記載の方法。
14.癌が、血液悪性腫瘍又は固形腫瘍である、実施形態1~13kのいずれか1つに記載の方法。
14a.血液悪性腫瘍が、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、良性単クローン性γグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance、MGUS)、急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia、ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma、BL)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma、FL)、マントル細胞リンパ腫(mantle-cell lymphoma、MCL)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞白血病、軽鎖アミロイドーシス(AL)、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、B細胞悪性腫瘍、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、CML)、毛状細胞白血病(hairy cell leukemia、HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(marginal zone B-cell lymphoma、MZL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(mucosa-associated lymphatic tissue、MALT)、形質細胞白血病、未分化大細胞リンパ腫(anaplastic large-cell lymphoma、ALCL)、白血病、又はリンパ腫である、実施形態14に記載の方法。
14b.血液悪性腫瘍が、多発性骨髄腫を含む、実施形態14aに記載の方法。
14c.多発性骨髄腫が、新たに診断された多発性骨髄腫である、実施形態14bに記載の方法。
14d.多発性骨髄腫が、再発性又は難治性多発性骨髄腫である、実施形態14bに記載の方法。
14e.多発性骨髄腫が、高リスク多発性骨髄腫である、実施形態14bに記載の方法。
14f.高リスク多発性骨髄腫を有する対象が、t(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、del17p、1qAmp、t(4;14)(p16;q32)及びt(14;16)(q32;q23)、t(4;14)(p16;q32)及びdel17p、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p;若しくはt(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p、又はこれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の染色体異常を有し得る、実施形態14bに記載の方法。
14g.癌が、治療に対して再発又は難治性である多発性骨髄腫を含む、実施形態1~14fのいずれか1つに記載の方法。
14h.多発性骨髄腫が、抗CD38抗体、レナリドミド、ボルテゾミブ、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、イサツキシマブ、エロトズマブ、イキサゾミブ、メルファラン、若しくはサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせによる治療に対して再発又は難治性である、実施形態14gに記載の方法。
14i.癌が、AMLを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
14j.AMLが、少なくとも1つの遺伝子異常を伴うAML、多系列異形成を伴うAML、療法関連AML、未分化AML、最未分化型AML、分化型AML、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤血球性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性好塩基球性白血病、線維症を伴う急性汎骨髄症、又は骨髄肉腫である、実施形態14iに記載の方法。
14k.癌が、任意のGPRC5D発現癌、例えば、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、良性単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、B細胞急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞白血病、軽鎖アミロイドーシス、又は非ホジキンリンパ腫を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
14l.対象が、抗CD38抗体若しくはレナリドミド、又はこれらの組み合わせによる治療に対して再発又は難治性である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
14m.対象が、THALOMID(登録商標)(サリドマイド)、REVLIMID(登録商標)(レナリドマイド)、POMALYST(登録商標)(ポマリドミド)、VELCADE(登録商標)(ボルテゾミブ)、NINLARO(イキサゾミブ)、KYPROLIS(登録商標)(カルフィルゾミブ)、FARADYK(登録商標)(パノビノスタット)、AREDIA(登録商標)(パミドロネート)、ZOMETA(登録商標)(ゾレドロン酸)、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)、Empliciti(登録商標)(エロツズマブ)、SARCLISA(登録商標)(イサツキシマブ)、又はAlkeran(登録商標)(メルファラン)による治療に対して難治性又は再発性である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
14n.対象が、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)による治療に対して再発性である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
15.治療を必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法であって、
(1)毎週400μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体、又は隔週800μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体のうちの少なくとも1つを対象に皮下投与することと、
(2)1800mgの抗CD38抗体を、治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、治療の24週目以降は4週間に1回対象に皮下投与することとを含み、
GPRC5DxCD3二重特異性抗体が、配列番号35の第1の重鎖(HC1)、配列番号36の第1の軽鎖(LC1)、配列番号25の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号26の第2の軽鎖(LC2)を含み、抗CD38抗体が、配列番号13のHC及び配列番号14のLCを含む、方法。
16.400μg/kg又は800μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、10~300μg/kgのGPRC5DxCD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む、実施形態15に記載の方法。
17.対象が多発性骨髄腫の少なくとも1つの前治療を受けており、好ましくは、対象が少なくとも1つの前治療に対して再発又は難治性であり、より好ましくは、前治療がプロテアソーム阻害剤(PI)及び免疫調節剤(IMiD)の少なくとも1つを含む、実施形態14~16のいずれか1つに記載の方法。
18.対象が、抗CD38抗体、レナリドマイド、ボルテゾミブ、ポマリドマイド、カルフィルゾミブ、エロツズマブ、イキサゾミブ、イサツキシマブ、メルファラン及びサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される治療に対して難治性又は再発性であり、好ましくは、対象はレナリドマイド難治性である、実施形態17の方法。
19.ポマリドミド及び/又はデキサメタゾンなどの別の治療を対象に投与することを更に含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
20.治療が、CD4+及びCD8+T細胞上のCD25、PD-1、CD38のうちの少なくとも1つの増加などのT細胞活性化をもたらす、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
21.治療が、CD38+CD8+T細胞、CD38+CD4+T細胞、及びTregs T細胞のうちの少なくとも1つの頻度の増加をもたらす、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
22.治療が、抗CD38抗体を用いない治療と比較して、GPRC5DxCD3二重特異性抗体の活性の増強をもたらす、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
23.治療が、GPRC5DxCD3二重特異性抗体を用いない治療と比較して、抗CD38抗体の活性の増強をもたらす、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
24.実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療する際に使用するためのGPRC5DxCD3二重特異性抗体。
25.実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療する際に使用するための抗CD38抗体。
26.実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療する際に使用するためのGPRC5DxCD3二重特異性抗体と抗CD38抗体との組み合わせ。
27.実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療するための医薬の製造におけるGPRC5DxCD3二重特異性抗体の使用。
28.実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療するための医薬の製造における抗CD38抗体の使用。
29.実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療するための医薬の製造における、GPRC5DxCD3二重特異性抗体と抗CD38抗体との組み合わせの使用。
30.GPRC5DxCD3二重特異性抗体と、抗CD38抗体と、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法を使用して、必要とする対象において癌を治療する際に抗体を使用することに関する指示とを含むキット。
【0295】
本発明は一般論として記述されてきたが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲の範囲を限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【実施例】
【0296】
本明細書において開示した実施形態のいくつかを更に説明するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は、例示を目的とするものであって、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0297】
一般的な材料及び方法
抗体及び試薬
抗GPRC5D/抗CD3抗体JNJ-564(JNJ-64407564とも呼ばれる、タルケタマブ)及びダラツムマブは、Janssen Pharmacetuicalsによって作製された。3930(IgGアイソタイプ対照)、GPFC5DxNull対照、及び7008(NullxCD3対照)は全て、Janssen Pharmaceuticalsによって作製され、対照抗体として使用された。
【0298】
JNJ-564は、CD3結合アームCD3B219及びGPRC5D結合アームGC5B596を含み、それらのアミノ酸配列をそれぞれ、表8a及び表8bに示す。
【0299】
骨髄及び末梢血単核細胞
健康なドナー及びMM患者の末梢血単核球(PBMC)、並びにMM患者BM吸引液の骨髄単核細胞(BM-MNC)を、Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離によって単離した。
【0300】
MM患者の骨髄及び血液サンプルのフローサイトメトリー分析
BM局在MM細胞を特定し、1.0×106細胞/mLを、HuMax-003(CD38)FITC(この抗体は、ダラツムマブによって結合されるエピトープとは異なるエピトープに結合する、Janssen Pharmaceuticals)、CD138 PE、CD56 PC7、CD45 Krome Orange(全てBeckman Coulter)、CD269(BCMA)APC(Biolegend)、CD274(PD-L1)BV421、及びCD19 APC-H7(共にBecton Dickinson)で染色することによって、細胞表面マーカー発現レベルについて分析した。BM又はPB免疫細胞サブセットを特定し、1.0×106細胞/mLを、CD45クロムオレンジ、CD56 PC7(共にBeckman Coulter)、CD14 APC-H7、CD19 APC-H7、CD3 V450、CD4 APC-H7若しくはPE、CD8 FITC、CD45-RA APC、CD127 PE.Cy7、CD62L PE、CD274(PD-1)BV421、CD16 APC、HLA-DR APC-H7(全てBecton Dickinson)及びCD25 PE(Dako)、又はCD4 BUV395(BD Biosciences)、CD8 BUV737(BD Biosciences)、PD-1 BV421(BD Biosciences)、TIM-3 BV650(BD Biosciences)、CD3 BV711(BD Biosciences)、CD45RO BV786(BD Biosciences)、CD38 Humab-003-FITC(Janssen)、CD45RA PerCP-Cy5.5(BD Biosciences)、HLA-DR PE(BD Biosciences)、LAG-3 PE-eF610(ThermoFisher)、CD25 PE-Cy7(BD Biosciences)、CCR7 AF647(BD Biosciences)、CD127 APC-eF780(ThermoFisher)で染色することによって細胞表面マーカー発現レベルについて分析した。全てのBMサンプルを、サンプルを収集した時点から24時間以内に分析した。
【0301】
フローサイトメトリーは、7レーザーLSRFORTESSA(Becton Dickinson)を使用して実行した。蛍光標識ビーズ(CS&Tビーズ、Becton Dickinson)を毎日使用して、フローサイトメータの性能を監視し、光路及び流量を検証した。この手順は、制御された標準化結果を可能にし、フローサイトメータ内の長期のドリフト及び偶発的な変化の決定を可能にする。結果に影響を及ぼし得る変化は、観察されなかった。補償ビーズを使用して、スペクトル重複を決定し、補償は、Divaソフトウェアを使用して自動的に算出した。FACS Divaソフトウェアを使用して、フローサイトメトリーデータを分析した。
【0302】
細胞遺伝学的分析
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)及び単一ヌクレオチド多型(single nucleotide polymorphism、SNP)アレイによって、細胞遺伝学的異常を、精製MM細胞において評価した。高リスク疾患は、del(17p)、del(1p)、ampl(1q)、t(4;14)、又はt(14;16-2の存在によって定義した。
【0303】
多重サイトカインアッセイ
V-Plex炎症促進性パネル1ヒトキット(Meso Scale Diagnostics)を製造業者のプロトコルに従って使用して、細胞培養上清中のサイトカイン[インターフェロン-ガンマ(interferon-gamma、IFN-γ)、インターロイキン(interleukin、IL)-2、IL-6、IL-8、IL-10、及び腫瘍壊死因子-アルファ(tumor necrosis factor-alpha(TNF-α)]を分析した。
【0304】
統計データ
データが正常な分布に従わない場合、変数間の比較は、両側(対応のある)スチューデントt検定、又はマン・ホイットニーU検定、又はウィルコクソンマッチドペア符号順位検定を使用して実行した。変数間の相関は、スピアマンの順位相関係数を使用して行った。0.05未満のp値を有意と見なした。JNJ-564及びダラツムマブのコンビナトリアル治療の場合、予想される溶解値を算出して、以下の式:予想溶解%=(JNJ-564による溶解%+ダラツムマブによる溶解%)-(JNJ-564による溶解%×ダラツムマブによる溶解%)を使用して、JNJ-564とダラツムマブとの間には相加効果のみが存在するという虚無仮説を試験した。観察値が予想値よりも有意に高い(P<0.05)場合、「相加効果」の虚無仮説は却下された。
【0305】
実施例1再発又は難治性多発性骨髄腫(RRMM)(TRIMM-2)のための皮下ダラツムマブと組み合わせて投与されたタルケタマブ(JNJ-564)の第1相試験
多発性骨髄腫を有する成人対象に投与されるダラツムマブの皮下(SC)投薬レジメンと組み合わせたタルケタマブの第1b相非盲検多施設多コホート試験を実施した。2つの治療の組み合わせはまた、ポマリドミド(及び少なくとも最初のサイクルのための併用デキサメタゾン)を含んだ。ポマリドミド含有治療組み合わせにおいて、デキサメタゾン投与は、IMiD駆動性抗骨髄腫効果を増強し、ダラツムマブ及びタルケタマブのための前治療剤として機能するために、最初の3回の完全免疫調節剤(IMiD)含有サイクルを通して必要とされた。試験の全体的な目的は、ポマリドミドを伴う又は伴わないタルケタマブ(及び少なくとも最初のサイクルのための併用デキサメタゾン)と組み合わせたダラツムマブの安全性を評価すること、及び予備的な抗癌活性を評価することであった。安全性は、試験評価チーム(Study Evaluation Team、SET)によって監視された。
【0306】
目的及びエンドポイント
【0307】
【表11】
略語:MR=最小奏効;MRD=最小残存病変;ORR=全応答率;PFS=無増悪生存期間;RP2D=第2相推奨用量
【0308】
研究デザイン
試験は、2つのパートで行った。
● パート1:各治療組み合わせのRP2D(複数可)を確立する用量漸増
● パート2:選択された治療組み合わせ(複数可)に対するRP2D(複数可)での用量拡大
【0309】
パート1及びパート2の概略図を
図1に示す。以下の治療の組み合わせを試験した。
● SCダラツムマブ及びIVタルケタマブ
● SCダラツムマブ及びSCタルケタマブ
● SCダラツムマブ、SCタルケタマブ、及びポマリドマイド。
【0310】
パート1(用量漸増)
パート1(用量漸増)では、全ての対象が、多発性骨髄腫において承認された用量でダラツムマブを投与される。ポマリドミドを投与される対象は、適用可能な場合、その承認された用量又はより低い修正用量でそれを投与される。投薬スケジュールBは、サイクル1の2日目に漸増投薬を開始する試験での使用が承認された。その後のコホートについて、安全かつ認容可能なRP2D(複数可)を特定するために全ての利用可能な安全性、薬物動態、及び薬力学的データを使用する統計モデルに基づいて、漸増投薬レジメン及び治療用量を決定する。この試験において試験された漸増用量及び治療用量は、タルケタマブの単一療法治療においてSETによって以前にクリアされた用量を超えない。関連する治療用量は、漸増用量(複数可)に続いて28日サイクルで週ベースで投与されるように計画した。しかしながら、隔週投与を含む他のスケジュールもコホートにおいて試験した。少なくとも30人の対象がパート1で評価される。治療される対象の総数は、RP2D(複数可)を特定するために探索される用量レベルの数、及び各用量レベルで登録された対象者の数に依存する。
【0311】
パート2(用量拡大)
パート2(NCT04108195CTX)における更なる試験のために選択された各治療組み合わせについてのRP2D(複数可)は、パート1からの知見に基づくBLRM(ベイズロジスティック回帰モデル)によって推奨される用量に基づく。更に、SETは、適用可能な場合、パート2におけるその治療組み合わせについてのRP2D(複数可)を決定する前に、パート1における各治療組み合わせについての全ての利用可能な安全性、薬物動態、薬力学、及び有効性データを検討する。SETは、各治療組み合わせに対して1つ以上のRP2D(複数可)を選択してもよい。最大約40人の対象が、パート2の試験のために選択された各治療組み合わせについて、RP2Dの各々において評価される。
【0312】
対象集団
本試験は、プロテアソーム阻害剤(PI)及びIMiDを含む少なくとも3つの事前の治療ラインを受けたことがあるか、又はPI及びIMiDに対して二重難治性である疾患を有する、多発性骨髄腫を有する18歳以上の対象に対して実施した。抗CD38療法を90日間以下受けた対象は除外した。ポマリドミドを含む治療組み合わせに登録された対象については、以前のIMiD療法はレナリドミドを含むべきである。
【0313】
本試験に対象を登録するための組み入れ基準及び除外基準を以下に記述する。全ての試験組み入れ/除外基準は、スクリーニング時及び試験薬の最初の投与前に満たされていることを確認した。
【0314】
組み入れ基準
各対象は、この試験に登録されるために、以下の基準の全てを満たすことを必要とした。
1.18歳以上。
2.IMWG診断基準による多発性骨髄腫の文書化された最初の診断。
3.以下のいずれかを有さなければならない。
● 治療中に任意の順序でPI(2サイクル又は2ヶ月以上の治療)及びIMiD(2サイクル又は2ヶ月以上の治療)を含む少なくとも3回の事前の治療ライン(以下の定義を参照)を受けた(最初の2サイクル/ヶ月以内に重度のアレルギー反応のためにこれらの治療のいずれかを中止した対象を除く)。
○ 進行性疾患が治療ラインに対する最良奏効でない限り、治療ライン毎に少なくとも1回の完全な治療サイクルを受けた。
○ PI及び/又はIMiDを伴わない事前の治療ラインについて、少なくとも3つの事前の治療ラインについての基準を満たすために、進行性疾患が治療ラインに対して最良奏効であった場合を除き、又は対象が有害反応のために中止した場合を除き、対象は少なくとも1つの完全なサイクル又は1ヶ月の治療を受けていなければならない;又は
● PI及びIMiDに対して二重に難治性である疾患2つ以上のタイプのPIを受けた対象については、疾患は直近のタイプに対して難治性でなければならない。同様に、2つ以上のタイプのIMiDを受けた患者については、疾患は直近のタイプに対して難治性でなければならない。
注:対象は、最後の治療ラインの12ヶ月以内に、Kumar et al.2016(Lancet Oncol.2016;17(8):e328-346.)に記載されるIMWG2016基準による治験責任医師の奏効判定に基づいて、進行性疾患の証拠の記録を残さなければならない。確認は、中央テスト又は地元テストのいずれかから行われてもよい。また、過去6ヶ月以内に進行性疾患の証明された証拠を有し、その後直近の治療ラインに対して難治性又は非応答性である対象が適格である。ポマリドミドを含む治療組み合わせに登録される対象については、以前のIMiD療法はレナリドミドを含むべきである。単一の治療ラインは、1つ以上の薬剤からなり得、誘導、造血幹細胞移植、及び維持療法を含んでもよい。詳細には、治療ラインは、単一薬剤の1回以上の完全なサイクル、いくつかの薬物の組み合わせからなるレジメン、又は様々なレジメンの計画された継続治療からなる(例えば、ボルテゾミブ-デキサメタゾンによる初期治療の3~6サイクル、その後の幹細胞移植、強化、及びレナリドマイド維持は、1ラインと考えられる)。
放射線療法、ビスホスホネート、又はステロイドの単回短期コース(すなわち、デキサメタゾン40mg/日の等価物以下を4日間)は、事前の治療ラインとは見なされない。
4.スクリーニング時に測定可能な疾患は、以下のうちのいずれかとして定義される。
● 血清モノクローナルタンパク質(Mタンパク質)レベル≧1.0g/dL(非IgG骨髄腫において、Mタンパク質レベル0.5g/dL);又は
● 尿M-タンパク質レベル≧200mg/24時間;又は
● 軽鎖多発性骨髄腫:血清Ig遊離軽鎖(FLC)≧10mg/dL及び異常な血清IgカッパラムダFLC比。
5.スクリーニング時及び投与前サイクル1の1日目の米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group、ECOG)パフォーマンスステータスグレード0又は1
6.サイクル1の1日目にダラツムマブを投与する前に、以下の基準を満たす臨床検査値:
【0315】
【表12】
1. 略語:G-CSF=顆粒球コロニー刺激因子;GM-CSF=顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子;ULN=基準値上限;RBC=赤血球
7.妊娠の可能性のある女性は、スクリーニング時に陰性の高感受性血清βヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)妊娠検査(<5IU/mL)を受けなければならず、試験薬の最初の投与前1日以内に陰性の尿又は血清妊娠検査を受けなければならず、試験中に更なる血清又は尿妊娠検査に同意しなければならない。
8.女性は以下のいずれかでなければならない。
a. 妊娠の可能性がない
b. 出産能力がある、かつ
- 真の禁欲を実践する、
- 又は精管切除された唯一のパートナーを有する、
- 又は少なくとも1つの非常に有効な使用者非依存的避妊法(例えば、子宮内避妊具(IUD)、子宮内ホルモン放出システム(IUS)、両側性卵管結紮術/閉塞、又は排卵の阻害に関連する埋め込み型プロゲストゲンのみのホルモン避妊法)を実施する。ホルモン避妊が使用される場合(例えば、経口エストロゲン/プロゲスチン)、殺精子剤(例えば、殺精子フォーム/ゲル/フィルム/クリーム/坐剤)を伴う又は伴わない男性又は女性のコンドームも使用されなければならない。
- ポマリドミドを受けている対象に関して、妊娠の可能性がある女性は、試験治療を受けている間と同時に、試験治療の最終投与の100日後まで、信頼できる避妊法の2つの方法を受けていなければならない:1つは、顕著な有効形態の避妊法(卵管結紮術、子宮内器具、ホルモン[経口、注射、経皮パッチ、膣リング、若しくはインプラント)、又はパートナーの精管切除)、及びもう1つは、追加の有効な避妊法(男性ラテックス若しくは合成コンドーム、ペッサリー、又は子宮頸部キャップ)。
- ポマリドミドを投与されていない対象について、経口避妊薬を使用している妊娠の可能性のある女性は、追加の避妊法を使用しなければならない。
対象は、試験薬を受けている間及び最後の投薬の100日後まで上記を続けることに同意しなければならない。妊娠の可能性がある女性は、最後の試験薬投与後100日以内に妊娠検査(血清又は尿)に同意しなければならない。
注:女性が試験の開始後に妊娠の可能性がある場合、女性は上記の項目(b.)に従わなければならない。
経口避妊薬を使用する女性は、上記に列挙した要件に加えて、追加の避妊法を使用しなければならない。
9.男性は、別の人への射精精液の通過を可能にする行為に従事するとき、試験の間及び試験薬物の最後の投与後100日間、コンドーム(殺精子フォーム/ゲル/フィルム/クリーム/坐剤あり又はなし)を着用しなければならない。女性パートナーは、妊娠の可能性がある場合、非常に有効な避妊法(例えば、子宮内避妊具(IUD)、子宮内ホルモン放出システム(IUS)、排卵の阻害に関連する複合(エストロゲン及びプロゲストゲン含有)ホルモン避妊法など)も実施していなければならない。
男性が精管切除している場合、引き続きコンドーム(殺精子フォーム/ゲル/フィルム/クリーム/坐薬を含む又は含まない)を使用しなければならないが、その女性パートナーは避妊法を使用する必要はない。
10.女性は、試験期間において介助生殖のため、又は将来の使用のために、試験薬の最後の投与を受けた後少なくとも100ヶ月間、卵子(卵子、卵母細胞)を提供又は凍結してはならない。
11.男性参加者は、試験中、及び試験薬の最後の用量を受けた後の少なくとも100日間、生殖の目的で精液を提供しないと同意しなければならない。
12.対象が試験の目的及びそれに必要な手順を理解し、試験に参加する意思があり、かつ参加できることを示すインフォームドコンセントフォーム(informed consent form、ICF)に署名する。同意は、対象の疾患に対する標準的なケアの一部ではない、任意の試験関連試験又は手順の開始前に得なければならない。
13.このプロトコルに指定された禁止事項及び制限事項を守る意思があり、それが可能でなければならない。
【0316】
除外基準
以下の基準のいずれかに該当する潜在対象は、試験への参加から除外される。すなわち、
1.抗CD38療法(例えば、ダラツムマブ)による過去90日間の治療、又は抗CD38療法に関連する有害事象による任意の時点での以前の抗CD38療法の中止。
2.試験薬の最初の投与前の、以下のような抗腫瘍療法:
● 標的療法、エピジェネティック療法、又は治験薬による治療、又は21日以内若しくは少なくとも5半減期以内の侵襲的医療デバイス。
● 21日以内のモノクローナル抗体(治療過去90日以内に抗CD38治療は使用できない)。
● 21日以内の細胞毒性療法。
● 14日以内のPI療法。
● 7日以内のIMiD療法。
● 21日以内の放射線療法。しかしながら、放射線ポータルが骨髄リザーブの5%以下であった場合、対象は放射線療法の終了日に関係なく適格とする。
● 90ヶ月以内の遺伝子改変養子細胞療法(例えば、キメラ抗原受容体改変T細胞、ナチュラルキラー[NK]細胞)。
3.試験薬の最初の投与前14日の期間内の140mg以上のプレドニゾンに相当するコルチコステロイドの累積投与。
4.治験依頼者によって承認されない限り、試験薬の最初の投与前4週間以内の弱毒生ワクチン。
5.ベースラインレベル又はグレード1以下(脱毛症[任意のグレード]又は末梢神経障害グレード3以下を除く)まで消散していない以前の抗癌療法からの毒性。
6.幹細胞移植:
● 同種移植を受けた対象は、移植片対宿主病の兆候なしで42日間以上全ての免疫抑制薬をオフにしなければならない。
● 試験薬の最初の投与から12週間以内の自己幹細胞移植。
7.多発性骨髄腫の中枢神経系関与又は髄膜関与の臨床徴候。いずれかが疑われる場合、脳磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging、MRI)及び腰部細胞診が必要とされる。
8.活性形質細胞白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、POEMS症候群(多発性神経障害、臓器肥大症、内分泌障害、Mタンパク、及び皮膚変化)、又は一次アミロイド軽鎖アミロイドーシス。
9.ヒト免疫不全ウイルスに対して血清陽性であることが知られている。
10.B型肝炎について血清陽性(B型肝炎表面抗原[HBsAg]についての陽性試験によって定義される)。消散した感染を有する対象(すなわち、B型肝炎表面抗体[抗HBs]の存在を伴うか又は伴わない全B型肝炎コア抗原[抗HBc]に対する抗体を有するHBsAg陰性である対象)は、HBV DNAレベルのリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)測定を使用してスクリーニングされなければならない。PCR陽性であるものは除外される。例外:HBVワクチン接種を示唆する血清学的所見(唯一の血清学的マーカーとしての抗HBs陽性)及び以前のHBVワクチン接種の既知の病歴を有する対象は、PCRによってHBV DNAについて試験される必要はない。
11.活動性C型肝炎への感染は、陽性C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus、HCV)-RNA試験によって測定した。C型肝炎ウイルス抗体陽性の病歴を有する対象は、HCV-RNA試験を受けなければならない。
12.以下のいずれか。
● 1秒内の努力性肺活量(FEV1)が予想正常値の50%未満である、既知の慢性閉塞性肺疾患(COPD)。注:FEV1試験が、COPDを有する疑いのある対象に対して必要であり、FEV1が予測正常値の50%未満である場合、対象は除外されなければならないことに留意されたい。
● 過去2年以内の中等度若しくは重度の持続性喘息、又は任意の分類の制御されない喘息。注:現在、制御された間欠性喘息又は制御された軽度な持続性喘息を有している対象は、試験において許容されることに留意されたい。
13.試験介入又はその賦形剤に対する既知のアレルギー、過敏症、又は不耐性(治験責任医師のパンフレット及び添付文書を参照)。
14.何らかの重篤な基礎的な疾患、例えば:
● 重篤な活性ウイルス、細菌、又は制御されない全身性真菌感染の証拠;
● 試験治療の開始前6ヶ月以内に全身免疫抑制療法を必要とする活動性自己免疫性疾患。例外:白斑、I型糖尿病、並びに臨床症状及び臨床検査に基づいて現在は甲状腺機能正常である以前の自己免疫性甲状腺炎を有する参加者は、これらの状態がいつ診断されたかにかかわらず適格である。
● 精神状態の障害(例えば、アルコール又は薬物乱用)、認知症、又は異常な精神状態
● 対象が治療施設で計画された治療を受ける、引き受ける、又は許容する能力を損なうことになるか、対象がインフォームドコンセント又は、治験責任医師の判断によれば、対象にとって参加が最良ではない(例えば、生活の質を損なう)あらゆる条件を理解する能力を損なうことになるか、又はプロトコルに定められた評価を妨害、制限、又は混同しかねない、任意の他の問題。
15.以下の心臓の症状:
● ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)のステージIII又はIVの心不全
● 登録前6ヶ月以内の心筋梗塞又は不安定狭心症
● 自然な血管迷走神経又は脱水によるとは考えられない、臨床的に重要な心室性不整脈又は説明されない仮死の病歴
● 重度の非虚血性心筋症の病歴
● フリデリシアの式(QTc)によって補正された平均ベースラインQT間隔>470ミリ秒を示すスクリーニング12誘導心電図(ECG)
16.この試験に登録している間、又は試験薬の最後の投与後100日以内に妊娠している、授乳している、又は妊娠を計画している。
17.この試験に登録している間、又は試験薬の最後の投与後100日以内に子供の父親となることを計画している。
18.最初の投与の2週間以内に大手術を受けているか、又は手術から完全に回復する予定にないか、又は対象が試験での治療を予想される時期に手術を予定している。
注:局所麻酔下で施行される外科治療が計画されている対象は、参加可能である。
以下の基準のうちのいずれかを満たす可能性のある対象は、この試験の参加から除外される。
19.対象は、治療の中止を必要とするポマリドミドに関連する有害事象を以前に経験した。
【0317】
試験介入
治療は28日サイクルで行った。ダラツムマブを、以下のように1800mgの用量でSC注射によって全ての対象に投与した。サイクル1~2は毎週、サイクル3~6は2週間毎(Q2W)、その後は4週間毎である。組換えヒトヒアルロニダーゼPH20(rHuPH20)を使用して、必要とされる注射体積を減少させ、ダラツムマブのSC投与を容易にしたことに留意されたい。
【0318】
ダラツムマブSC(Dara)を、毎週Dara1800mg+Tal60μg/kgSC、毎週Dara1800mg+Tal400μg/kgSC、サイクル3の1日目から隔週Dara1800mg+Tal400μg/kgSC(サイクル1~2において毎週Tal400μg/kgSC)、及び隔週Dara1800mg+Tal800μg/kgSCを含む、異なる用量レベルのタルケタマブ(Tal)と組み合わせて投与した。Dara1800mg+Tal400μg/kgSC毎週コホートの何人かの対象は、サイクル3の1日目の後にTal800μg/kgの隔週SC投薬に切り替えた。サイクル1の9日目に漸増投薬を開始した60μg/kgタルケタマブSC毎週コホートを除いて、タルケタマブの漸増投与はサイクル1の2日目に開始した。ダラツムマブ及びタルケタマブを同日に投与する場合、ダラツムマブを最初に投与した。タルケタマブの漸増用量1を、SCダラツムマブの少なくとも20時間後に投与した。該当する場合、その後の漸増用量(複数可)及びタルケタマブの第1の治療用量を、SCダラツムマブの約3時間後に投与した。タルケタマブのその後の治療用量は、SCダラツムマブの約1時間後に投与された(両方の試験薬が同日に投与される場合)。
【0319】
ダラツムマブSC、タルケタマブSC、及びポマリドミドの組み合わせを含む治療のために、ポマリドミドは、2mg、4mg、又はこれらの組み合わせで1日1回経口投与された。ポマリドミドコホートは、C2D1で開始する2mg、治療開始で開始する4mg、及びC2D1で開始する2mgからC4D1で開始する増量した4mgを含んだ。ポマリドミドは、併用治療において試験薬の前又は後に服用され得る。二重特異性抗体及びポマリドミドの同時投与によるサイトカイン放出症候群(CRS)のリスク増加の可能性を最小限にするために、対象の最初のコホートは、ポマリドミドの遅延投薬スケジュールを受ける。SETによって適切であると見なされる場合、減少した開始用量又はより遅い開始日(例えば、サイクル2の1日目の開始)が、レジメンについての安全性データのレビューに基づいて、将来のコホートについてポマリドミドに関して実施され得る。デキサメタゾンは、最初の3回の完全なIMiD含有サイクルと同時に与えられる。サイクル1の第1週の間、デキサメタゾン20mgが、ダラツムマブSCの前のサイクル1の1日目に与えられ、デキサメタゾン16mgの2回の追加用量が、二重特異性抗体の漸増用量1及び漸増用量2の前にそれぞれ1回与えられる。サイクル1の残り及びその後の必要とされるサイクルについて、デキサメタゾンは、毎週40mg(経口又はIV)で与えられる(75歳を超えるか、又はボディマス指数[BMI]<18.5を有する対象であって、ダラツムマブのSC投与のみの前に20mgのデキサメタゾンを受けるべき対象を除く)。デキサメタゾンは、ダラツムマブSC(又はダラツムマブSCが投与されない日の二重特異性抗体)の約1~3時間前に与えられる。上記の必要なデキサメタゾンサイクルの後、IMiD駆動抗骨髄腫効果を増強するためのデキサメタゾンの継続及び投与スケジュールは、治験責任医師の臨床判断に基づくであろう。ポマリドミドが毒性又は不耐性のために恒久的に中止される場合、高用量デキサメタゾンも治験責任医師の臨床判断に基づいて中止されてもよい。
【0320】
二重特異性抗体及びポマリドミドの同時投与によるサイトカイン放出症候群(CRS)のリスク増加の可能性を最小化するために、対象の最初のコホートは、ポマリドミドの遅延投薬スケジュール(C2D1(サイクル2、1日目)又はC1D15(サイクル1、15日目))を受けた。パート1の各コホートにおける最初の対象は、タルケタマブの最初の投与後、又は治療用量で後続の対象を治療する前に、少なくとも36時間観察された。
【0321】
治療はまた、SCダラツムマブ及びポマリドマイドに関連する、必要とされる及び任意の前治療及び後治療薬剤を含む。ダラツムマブのための必要かつ任意の前治療及び後治療薬剤は、2週間のグルココルチコイド漸減であり得る。それは、例えば、ポマリドミドを投与されていない対象に対するダラツムマブ投与の前及び後のIV又は経口グルココルチコイド(例えば、メチルプレドニゾロン20~100mg、デキサメタゾン4~12mg);全ての対象についてダラツムマブ投与前に、必要とされるIV又は経口抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン25~50mg又は同等物)又は解熱剤(アセトアミノフェン650~1000mg);及び全ての対象についてダラツムマブ投与前に、任意選択のIV又は経口グルココルチコイド(メチルプレドニゾロン60mg(又はデキサメタゾン12mg)、又は経口ロイコトリエン阻害剤(例えば、モンテルカスト10mg)による必要な治療であり得る。IV又は経口グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン、8~16mg)、抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミン25~50mg若しくはその同等物)又は解熱薬(アセトアミノフェン650~1000mg)はまた、例えば、全ての漸増用量及び第1の治療用量の前に、タルケタマブのための前治療として、又はタルケタマブの次の2つの後続用量のためにグレード2以上のCRS/IRRを経験する対象のために必要とされ得る。
【0322】
呼吸器合併症のリスクがより高い任意の治療組み合わせの対象(例えば、スクリーニング時にFEV1が80%未満であるか、又は試験中にFEV1が80%未満になり、病歴が全くない軽度喘息の対象又はCOPDの対象)については、以下の注射後薬物を考慮すべきである。抗ヒスタミン、短時間作用型β2アドレナリン受容体アゴニスト、例えばサルブタモール、肺疾患のための対照薬(例えば、喘息を有する対象のための吸入コルチコステロイド±長時間作用型β2アドレナリン受容体アゴニスト;長時間作用型気管支拡張剤、例えばチオトロピウム又はサルメテロール±COPDを有する対象のための吸入コルチコステロイド)。
【0323】
研究評価
安全性、薬物動態、免疫原性、バイオマーカー、有効性、及び他の測定が行われる。
【0324】
安全は、例えば、身体検査(神経学的評価を含む)、米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group、ECOG)パフォーマンスステータス、臨床検査、バイタルサイン、有害事象モニタリング、及び併用薬使用によって評価される。重篤であるか非重篤であるかにかかわらず、全ての有害事象及び特別な報告状況は、署名され、かつ日付を記入したICFが取得された時間から、試験薬の最後の用量後100日まで、又は早期の場合は、後続の全身抗癌剤療法の開始まで報告され、また安全性のフォローアップのための連絡を含んでもよい。有害事象(AE)は、サイトカイン放出症候群(CRS)及び免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)を除いて、NCI-CTCAE v5.0によって評価され、これらは米国移植細胞療法協会(American Society for Transplantation and Cellular Therapy)(ASTCT)ガイドラインに従って等級付けされた。CRS(任意のグレード)の事象は、回復するまで、又は更なる改善がなくなるまでフォローされる。
【0325】
薬物動態及び免疫原性(例えば、ダラツムマブ、rHuPH20、又はタルケタマブに対する抗体)の評価のために、血中及び血清中又は血漿中の試料を採取した。用量拡大のための用量レジメン(用量レベル及び頻度)の選択は、用量漸増中に得られた薬物動態及び薬力学的情報に基づいて決定した。薬物動態及び免疫原性分析のための試料を、計画された時間、及び疑わしいIRR又はCRS事象(CRS事象の場合、試料は、発症時、24時間後、及び72時間後に収集した)が試験中に観察された任意の時間に収集した。
【0326】
各血清試料を3つのアリコート(ダラツムマブの薬物動態及び免疫原性のために1つ、タルケタマブの薬物動態及び免疫原性のために1つ、及びバックアップ1つ)に均等に分割した。抗rHuPH20抗体についての各血漿試料を5つのアリコート(抗rHuPH20抗体について3つ、及びrHuPH20について中和抗体について2つ)に分割した。薬物動態及び免疫原性の分析のために収集された試料は、免疫原性の更なる特徴付けのために、sBCMAなどの疾患のマーカーを評価するため、又は試験期間中若しくは試験期間後に生じる懸念に対処する安全面若しくは有効性面を評価するために使用され得る。薬物動態分析のために、血清中試料を分析して、検証された特異的かつ高感度のアッセイ法を用いてダラツムマブ及びタルケタマブの濃度を決定した。薬物動態パラメータとしては、曲線下面積(AUC)(0-t)、AUCtau、Cmax、及びTmaxが挙げられるが、これらに限定されず、十分なデータが推定に利用可能である場合に計算される。免疫原性分析のために、ダラツムマブ、rHuPH20、及びタルケタマブに対する抗体の検出及び特徴付けを、検証されたアッセイ方法を使用して実施した。結合抗体について陽性の試料を、ダラツムマブ又はタルケタマブに対する中和抗体について試験した。rHuPH20免疫原性評価のために、血漿試料をrHuPH20に結合する抗体についてスクリーニングし、必要に応じて確認アッセイ及び力価アッセイにおいて評価した。
【0327】
バイオマーカー評価は、パート1及びパート2の両方で行った。バイオマーカー評価は、いくつかの主な目的に焦点を当てた:(1)試験薬に対する奏効への潜在的な寄与のためのT細胞リダイレクトを示す免疫応答;(2)CRを達成した多発性骨髄腫を有する対象においてMRD陰性を誘導する各治療組み合わせの能力;(3)サイトカイン(IL-6、IL-2、及びIL-10など)又は免疫応答を示す他の血清タンパク質の血清プロテオミクスプロファイリング;(4)骨髄腫細胞に対する奏効/耐性のバイオマーカー(例えば、GPRC5D及びPD-L1);(5)細胞遺伝学的改変(del17p、t4;14;16)又は他の高リスク分子サブタイプ)を有する対象における各治療組み合わせの臨床的利益(ORR、応答持続時間[DOR]及び奏効までの時間);14)、t(14;16)、又は他の高リスク分子サブタイプ)を有する対象における試験薬の臨床的利益を決定する;(6)CD4+及びCD8+T細胞などの免疫細胞サブセットの免疫表現型、並びに作用機序に直接影響を及ぼし得る制御性T細胞。説明できない有害事象の理解を助けるために、追加のバイオマーカー試料を収集することができる。サイトカインについての追加の試料(複数可)もまた、疑わしいIRR又はCRS事象が試験中に観察又は報告された任意の時点で収集することができた。
【0328】
疾患の評価は、疾患が進行するまで、中央検査室によって行われる(追加の試料が、地元検査室による分析のために収集されてもよい)。この試験は、Kumarらによって記載されたIMWGベースの奏効基準(2016)を使用した(Lancet Oncol.2016;17(8):e328-346)。血清免疫固定電気泳動(IFE)におけるダラツムマブ干渉が疑われる対象については、抗イディオタイプモノクローナル抗体を使用する第2の反射アッセイを使用して、IFEにおけるダラツムマブ移動を確認した。CRに関する全ての他のIMWG基準を満たし、その陽性IFEがダラツムマブ干渉であることが確認された対象は、完全奏効者と見なされる。軽鎖多発性骨髄腫を有する対象については、血清及び尿の両方のIFE及び血清FLCアッセイを4週間毎に行った。追加の血清試料を利用して、IFEとの潜在的ダラツムマブ干渉、及びIMWGに基づく奏効基準に従って判定された奏効をモニタリングしてもよい。定量的免疫グロブリン(QIg、例えば、IgG、IgA、IgM、IgE、及びIgD)、Mタンパク質を電気泳動(SPEP)によって測定した血清及び尿並びに血清β-ミクログロブリンにおけるFLC及びIFE測定は、中央検査室によって分析された。実験室試験の1つのみに基づく疾患進行は、1~3週間後に実施された少なくとも1回の反復調査によって確認された。疾患評価は、疾患進行が確認されるまで、CRからの再発を超えて継続される。血清及び尿IFE及び血清FLCアッセイは、スクリーニング時及びその後、CR又はsCRが疑われる場合(血清又は24時間尿M-タンパク質電気泳動[SPEP又はUPEPによる]が0又は定量不可能である場合)に行われる。高カルシウム血症(補正血清カルシウム>11mg/dL)の発症は、それが任意の他の原因に起因しない場合、疾患の進行又は再発を示し得る。したがって、補正された血清カルシウム又は遊離イオン化カルシウムもまた、確認された疾患進行の発生まで血液試料において分析された。
【0329】
骨髄穿刺液又は生検が、臨床評価及びバイオマーカー評価のために行われる。臨床病期分類(形態学、細胞遺伝学、及び免疫組織化学又は免疫蛍光又はフローサイトメトリー)は、地元の実験室によって行われてもよい。骨髄穿刺液の一部を免疫表現型検査に使用し、CD138陽性多発性骨髄腫細胞におけるGPRC5D、CD38、及びチェックポイントリガンド発現、並びにT細胞上のチェックポイント発現をモニターした。試験薬の次の予定された用量の前に、CR及びsCRを確認するために、骨髄穿刺液試料が必要であった。MRD陰性は、無増悪生存期間(progression-free survival、PFS)の潜在的な代用物として当該分野で評価されていた。ベースライン骨髄穿刺液を使用して骨髄腫クローンを定義し、治療後試料を使用して、CR/sCR)を経験する対象におけるMRD陰性を評価した。骨髄穿刺液DNAが、次世代配列決定を使用してMRDを監視するために使用され得る一方、血清MRD陰性は、質量分析を介して評価される。
【0330】
完全な骨格調査(頭蓋、全脊柱、骨盤、胸部、上腕骨、大腿骨、及び治験責任医師が疾患による関与を疑う任意の他の骨を含む)をスクリーニング段階中に実施し、IV造影剤を使用せずに、X線撮影又は低線量コンピュータ断層撮影(CT)スキャン(又は陽電子放出断層撮影[PET]/CT)のいずれかによって評価した。治療期間中の進行を評価する場合、ベースラインで使用したのと同じ方法論を使用すべきである。MRIも、骨疾患の評価のために含めてもよい。
【0331】
統計分析
この試験において公式な統計的仮説検定は実施しない。パート1(用量漸増)は、過投与量制御を伴う漸増(Escalation with Overdosage Control、EWOC)原理を用いた、統計モデル、ベイズロジスティック回帰モデル(Bayesian Logistic Regression Model、BLRM)に基づく修正された連続再評価法(Continual Reassessment Method、mCRM)によってサポートされた。各治療の組み合わせについて1つ以上のRP2D(複数可)が特定されてもよい。パート2(用量拡大)では、対象を各RP2D(複数可)で治療して、選択された治療組み合わせ(複数可)の安全性及び抗腫瘍活性を更に評価した。
【0332】
エンドポイント定義
● ORRは、IMWG基準に従ってPR以上を有する対象の割合として定義される。治療に対する応答は、治験担当者によって評価される。
● 臨床的有用率(ORR+MR)は、治験責任医師によって評価されるように、IMWG基準に従ってMR以上を有する対象の割合として定義される。
● MRD陰性率は、MRD陰性状態を達成する対象の割合として定義される。
● DORは、IMWG基準に定義されるような、奏効(PR以上)の最初の文書化日から、いずれが先に到来するにせよ、進行性疾患の証拠の最初の文書化日又は進行性疾患による死亡のいずれかまでの時間として定義される。CRからの再発は、疾患進行とは見なされない。進行していない対象については、任意の後続の抗骨髄腫療法の開始前の最後の疾患評価時にデータを打ち切る。
● 奏効までの時間は、試験薬の最初の投与日と、対象がPR以上について全ての基準を満たした最初の有効性評価との間の時間として定義される。
● PFSは、試験薬の最初の投与の日から、IMWG基準で定義されるような最初に記録された疾患の進行、又はいずれかの原因による死亡のいずれかが最初に起こる日までの時間として定義される。進行しておらず生存している対象については、任意の後続の抗骨髄腫療法の開始前の最後の疾患評価時にデータを打ち切る。
【0333】
予備的結果(分析の締切日2022年4月6日)。
試験は進行中であり、分析の締切日の時点で、タルケタマブ及びダラツムマブ+/-ポマリドマイドで治療された129人の患者を評価した。
【0334】
タルケタマブSC+ダラツムマブSCコホート
ダラツムマブ及びタルケタマブによるSC治療は、28日サイクルで投与された(タルケタマブについての漸増投薬を伴う)。データを、ダラツムマブ1800mg+タルケタマブ(400μg/kg週+400μg/kg又は800μg/kg隔週+/-ポマリドマイド)にプールした。
【0335】
2022年4月6日現在の予備的データは、ダラツムマブ1800mgSCと組み合わせて毎週400μg/kgのSCタルケタマブ治療用量で治療された14人の参加者についての結果を含んだ。5人の参加者は、ダラツムマブ1800mgのSCと組み合わせて、C2D1(サイクル2の1日目)から隔週400μg/kgのSCタルケタマブ治療用量で治療された。44人の参加者の追加のコホートは、ダラツムマブ1800mgSCと組み合わせて、C1D15(サイクル1の15日目)から隔週800μg/kgのSCタルケタマブ治療用量を投与された。ポマリドミドを含むコホートについて、参加者は、ダラツムマブ1800mgSC及びC2D1(サイクル2の1日目;n=18)から2mgポマリドミド又はC1D15(サイクル1の15日目;n=8)から4mgポマリドミドと組み合わせて、毎週400μg/kg(n=26)又は隔週800μg/kg(n=32)のダラツムマブを投与された。加えて、8人の参加者は、ダラツムマブ1800mgSC及びC2D1(サイクル2の1日目)から2mgポマリドミド、C4D1(サイクル4の1日目)からの計画された用量増加で4mgポマリドミドと組み合わせて隔週SCタルケタマブ800μg/kgを投与された。全ての参加者は、1800mgのダラツムマブSCと組み合わせてタルケタマブを投与された。デキサメタゾンを、漸増投薬の間及びタルケタマブSCの最初の治療用量のために、並びにダラツムマブSCの最初の2用量のために前治療薬剤として与え、その後、デキサメタゾンを中止した。タルケタマブ及びダラツムマブ投薬コホートの概要を表12に示す。
【0336】
【表13】
SC=皮下、QW=週1回、Q2W=2週間に1回、pom=ポマリドミド;C2D1=サイクル2の1日目;C4D1=サイクル4の1日目
a.完全用量の投与の1週間前までに、1~3回の漸増用量を与えた。前投薬(例えば、グルココルチコイド、抗ヒスタミン剤、及び解熱剤)は、漸増用量及び最初の完全用量(最初の完全用量の後にステロイドを必要としない)に限定されたことに留意されたい。
【0337】
評価された129人の対象の年齢範囲中央値は63歳であり(33~81歳の範囲)、58人の対象が女性であった(45.0%)。以前の療法の中央値は5(範囲2~18)であり、対象の79.1%が最終選択の治療に対して難治性であり、65.1%が3クラス難治性であり、67.4%が5クラス曝露され、33.3%が5クラス難治性であった。対象の人口統計及びベースライン特徴の概要を表13に示す。
【0338】
【表14】
aDara1800mg+Tal(400μg/kgSCQW又は400μg/kgSCQ2W又は800μg/kgSCQ2W);
bDara1800mg+Tal(400μg/kgSC又は800μg/kgSC)+ポマリドミド
cDara+Talについてn=50、Dara+Tal+Pomについてn=60、全体についてn=110から計算されたパーセンテージ;
ddel(17p)、t(4:14)、及び/又はt(14;16);Dara+Talについてはn=41、Dara+Tal+Pomについてはn=50、全体についてはn=100から計算されるパーセンテージ;
e骨に関連しない軟組織形質細胞腫が含まれていた;
fDara又はIsa;
gサリドマイド、len、及び/又はpom;
hBCMA CAR-T療法又はBCMA非CAR-T療法;
i≧1 PI、≧1 IMiD、及び1抗CD38mAb;
j≧2 PI、≧2 IMiD、及び1抗CD38mAb。
BCMA、B細胞成熟抗原;CAR-T、キメラ抗原T細胞;ダラ、ダラツムマブ;IMiD、免疫調節剤;Isa、イサツキシマブ;ISS、国際病期分類;Len、レナリドミド;mAb、モノクローナル抗体;PI、プロテアソーム阻害剤;Pom、ポマリドミド;Q2W、隔週;QW、毎週;SC、皮下;Tal、タルケタマブ。
【0339】
全てのダラツムマブ+タルケタマブコホート(1800mgダラツムマブ+タルケタマブ(400μg/kgSCQ1W又は400μg/kgSCQ2W又は800μg/kgSCQ2W))の中で、併用療法は忍容性があり、両方の単独療法に匹敵する安全プロファイルを示した。新たな毒性は同定されず、有害事象(AE)の大部分はグレード1又は2であった。AEを経験した患者は62人(98.4%)であり、グレード3又は4のAEを経験した患者は49人(77.8%)であった。感染は、34人(54%)の患者で報告された(グレード3以上:19%)。皮膚関連AE(例えば、爪障害、爪線状隆起、爪甲剥離症、爪甲剥離症、及び爪ジストロフィーを除外した「皮膚及び皮下障害」についてのSOC)は、51人(81%)の患者において生じ、ほとんどがグレード1又は2であった。3人の患者(10.3%)がグレード3の斑状丘疹状発疹を有し、患者の31%が爪障害(爪障害、爪線状隆起、爪甲剥離症、爪甲剥離症、及び爪ジストロフィーを含む)を経験したことに留意されたい。3人(4.8%)の患者がICANS事象(グレード3以上:1(1.6%))を有し、全ての事象が消散した。1人の患者におけるグレード3のICANS事象は、タルケタマブに関連する治療の中断をもたらした。タルケタマブ及びダラツムマブで治療された患者の有害事象(AE)の概要を表14に示す。
【0340】
【表15】
aDara1800mg+Tal(400μg/kgSCQW又は400μg/kgSCQ2W又は800μg/kgSCQ2W)
AE、有害事象;CRS、サイトカイン放出症候群;ダラ、ダラツムマブ;ICANS、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群;N/A、該当なし;PD、進行性疾患;Q2W、隔週;QW、毎週;SC、皮下;SOC、器官別大分類;Tal、タルケタマブ。
【0341】
全てのダラツムマブ+タルケタマブコホート(1800mgダラツムマブ+タルケタマブ(400μg/kgSCQW又は400μg/kgSCQ2W又は800μg/kgSCQ2W))の中で、グレード3又は4のサイトカイン放出症候群(CRS)事象はなかった。全てのCRS事象はグレード1及び2に限定され、大部分はタルケタマブの漸増用量及び完全用量に限定された。全てのCRS事象が消散した。表15は、CRS事象を要約する。
【0342】
【表16】
aDara1800mg+Tal(400μg/kgQW+400μg/kg及び800μg/kgQ2W);
b直近の用量に対して;
c患者は、>1の支持療法を受けることができる;
dトシリズマブが全てのCRS事象に対して許可された
Q2W、隔週;QW、毎週。
【0343】
ダラツムマブ+タルケタマブ400μg/kg毎週コホートにおいて、6人(42.9%)の参加者がタルケタマブ治療を中止した。4人(28.6%)の参加者が進行性疾患に起因しており、2人(14.3%)の参加者が更なる試験治療を拒絶した。ダラツムマブ+タルケタマブ400μg/kg隔週コホートの5人の参加者のうち4人は、死亡(n=2[40%])、TEAE(n=1[20%])(治療下で発生した有害事象)、及び医師の決定(n=1[20%])のために治療を中止した。ダラツムマブ+タルケタマブ800μg/kg隔週コホートでは、5人(11.4%)の参加者が疾患の進行のためにタルケタマブ治療を中断し、1人(2.3%)が死亡、TEAE、及び医師の決定のためにそれぞれ中断した。
【0344】
ダラツムマブ+毎週400μg/kg(n=10[71.4%])、隔週800μg/kg(n=34[77.3%])SCタルケタマブ、及び隔週400μg/kg(n=1[20%])の各コホートの参加者は、治療下発現CRSの事象を経験し、その全ては、重篤でなく、グレード1~2の事象であり、消散した。CRSのグレード3又は4の治療下発現症状を経験した参加者はいなかった。SCタルケタマブを投与された全ての参加者は、ダラツムマブ+タルケタマブ400μg/kg週コホートにおける1人を除いて、1つ以上のTEAEを経験した。
【0345】
TEAEは、ダラツムマブ+タルケタマブ400μg/kg毎週、400μg/kg隔週、及び800μg/kg隔週のコホートにおいて、それぞれ14人(100%)、5人(100%)、及び43人(97.7%)の参加者において報告された。TEAEの最も高い割合は、味覚異常、リンパ球減少、好中球減少、血小板減少、爪障害、発疹(3人の参加者がグレード3以上を有した)、皮膚剥離、及びCRSであった。最も一般的な全グレード非血液学的AEは、貧血(いずれかのグレードで46%、グレード3又は4で22.2%)、血小板減少(いずれかのグレードで36.5%、グレード3又は4で20.6%)、及び好中球減少(いずれかのグレードで34.9%、グレード3又は4で25.4%)であった。最も一般的な全グレード非血液学的AEは、CRS(いずれかのグレードで71.4%、グレード3又は4で0%)、味覚異常(いずれかのグレードで58.7%、グレード3又は4で該当なし)、及び口渇(いずれかのグレードで44.4%、グレード3で0、グレード4で該当なし)であった。34人(54%)の参加者が、感染関連TEAEを経験した。19%の参加者が、グレード3以上の感染関連TEAEを有していた。感染のTEAEは、肺炎、COVID-19、及び上気道感染であった。注射関連反応のTEAEが報告されており、全てグレード1~2であった。隔週800μg/kgのタルケタマブで治療されたコホートにおける1人の対象が、DLT(用量制限毒性)を示した。
【0346】
全てのタルケタマブ用量レベル及びダラツムマブにわたる56人の参加者が、2022年4月6日現在、1回以上の投薬後疾患評価を有していた(すなわち、有効性について評価可能であった)。奏効は、厳密な完全奏効(sCR)を有する7人の対象(12.5%)、完全奏効(CR)を有する9人の対象(16.1%)、非常に良好な部分奏効(VGPR)を有する20人の対象(35.7%)、及び部分奏効(PR)を有する9人の対象(16.1%)を含んだ。加えて、8人の対象(14.3%)が安定した疾患を有し、3人の対象(5.4%)が最良奏効としては進行性疾患を有していた。ダラツムマブ及びタルケタマブで治療された患者の全体的な奏効率は、80.4%(45人の対象)であった。400及び800μg/kgのタルケタマブで治療した患者についての全体的な奏効率の概要を表10に示す。
【0347】
1800mgのSCダラツムマブ及び400μg/kgのSCタルケタマブ毎週治療用量を投与された対象(n=14人の評価可能な対象)について、奏効は、sCRを有する2人の対象(14.3%)、CRを有する2人の対象(14.3%)、VGPRを有する4人の対象(28.6%)、PRを有する2人の対象(14.3%)、及び安定した疾患を有する4人の対象(28.6%)を含んだ。1800mgのSCダラツムマブ及び400μg/kgのSCタルケタマブの隔週治療用量を投与された対象(n=5人の評価可能な対象)について、奏効は、CRを有する1人の対象(20%)、VGPRを有する3人の対象(60%)、及び進行性疾患を有する1人の対象(20%)を含んだ。1800mgのSCダラツムマブ及び800μg/kgのSCタルケタマブの隔週治療用量を投与された対象(n=37人の評価可能な対象)について、奏効は、5人(13.5%)のsCR、6人(16.2%)のCR、VGPRを有する13人の対象(35.1%)、PRを有する7人の対象(18.9%)、及び安定した疾患を有する4人の対象(28.6%)を含んだ。ダラツムマブ及びタルケタマブ(毎週400μg/kg又は隔週400μg/kg及び800μg/kg)で治療された患者に関する追加情報については、表11を参照されたい。
【0348】
その結果、ダラツムマブ(1800mg)及びタルケタマブ(毎週400μg/kg又は隔週400μg/kg又は800μg/kg)による治療は、重度に多発性骨髄腫を前治療された患者(事前抗CD38治療を受けた患者を含む)において予備的有効性を示した。奏効までの時間の中央値は5.59ヶ月(範囲0.2~19.6)であった。奏効は早期(1ヶ月以内)に起こり、時間と共に深まり続けた。1回以上の試験治療を受け、1回以上のベースライン後奏効評価を有した患者の応答率を
図2に示す。最初に確認された奏効までの時間の中央値は1ヶ月(範囲0.9~6.5)であった。奏効は耐久性があり、時間と共に深くなった(
図8)。タルケタマブ及びダラツムマブ投薬コホートにおいて、進行性疾患(PD)による死亡は起こらなかった。奏効についての6.5ヶ月(1.6~19.6)の追跡中央値で、奏効者41人中37人(90.2%)が治療を継続した。41人の奏効のうち31人(75.6%)が以前に抗CD38曝露を有していたことに留意されたい。
【0349】
バイオマーカーデータは、タルケタマブ及びダラツムマブの作用機序の特徴である薬力学的変化を示し、これはタルケタマブ単独治療と一致した。これらには、CD3+T細胞の絶対数の変化によって示されるT細胞再分布、並びにCD3+T細胞上のPD-1、LAG-3、TIM-3、HLA-DR、CD38、及びCD25などのいくつかのT細胞活性化マーカーの発現の増加が含まれた。特に、ダラツムマブ38+/CD8+T細胞の割合は、ダラツムマブでの以前のデータと一致して、C1D1への初回ダラツムマブ投薬後に減少したが、注目すべきことに、タルケタマブ投薬は、同時ダラツムマブ投与にもかかわらず、タルケタマブの初回用量後にCD38+/CD8+T細胞の誘導をもたらした。サイトカインの増加は、タルケタマブ及びダラツムマブの投与後にも観察され、タルケタマブ単独治療と一致した。これらは、IL-10、IL-6、及びIL-2Rαを含んでいた。加えて、ダラツムマブの存在におけるタルケタマブの薬物動態プロファイルは、第1相タルケタマブ単独治療において観察されたプロファイルと一致した。
【0350】
タルケタマブ及びダラツムマブ投薬後早期にT細胞数が一時的に減少し、その後、1週間以内にT細胞数が回復した(
図5)。サイクル3の1日目(C3D1)までにT細胞数の増大もあった。更に、ダラツムマブとのタルケタマブ併用によってT活性化が誘導された(
図6)。炎症促進性サイトカインの誘導は、ダラツムマブ及びタルケタマブでの治療後に生じた(
図7)。
【0351】
予備的データはまた、以下についての結果を含んだ:1800mgダラツムマブSC及び4mgポマリドマイド(Tal400qwDaraPom4)と組み合わせて、毎週400μg/kgSCタルケタマブで治療された8人の参加者;1800mgダラツムマブSC及び2mgポマリドマイド(Tal400qwDaraPom2)と組み合わせて、毎週400μg/kgSCタルケタマブで治療された18名の参加者;60人の参加者が、1800mgのダラツムマブSC及び2mgのポマリドマイド(Tal800q2wDaraPom2)と組み合わせて、隔週800μg/kgのSCタルケタマブで治療された。400μg/kg及び800μg/kgの隔週コホートにおいて、ポマリドミドをサイクル2の1日目に開始して投与した。デキサメタゾンは、漸増投薬の間及びタルケタマブSCの最初の治療用量の間、並びにサイクル4を通じて前治療薬剤として与えられた。参加者の人口統計を表13に詳述する。タルケタマブ、ダラツムマブ、及びポマリドマイドで治療された患者についての奏効率の詳細な概要を表16に示す。
【0352】
安全性データは、ダラツムマブ1800mgと組み合わせたポマリドミド対象のタルケタマブについての以下の3つの別個の集団で提示されている:タルケタマブ800μg/kgとサイクル2の1日目から2mgポマリドミド、続いて特定の基準が満たされた場合にはC4D1で4mgに増加させたもの(コホート19、n=8);毎週タルケタマブ400μg/kgとサイクル1の15日目からポマリドミド4mg(コホート8、n=8);及び毎週プールされたタルケタマブ400μg/kg又は毎週タルケタマブ800μg/kgとサイクル2の1日目からPom2mg(コホート12、13及び18、n=50)。
【0353】
ダラツムマブ1800mgと組み合わせたタルケタマブ800μg/kg及び第2サイクルの1日目からpomを投与された8人の参加者のうち、5人(62.5%)の参加者が重篤な有害事象を報告した。5人(62.5%)の参加者がCRSを経験し、その全員がグレード1であった。6人の参加者(75%)が1つ以上のTEAEを有し、最も一般的な事象は、リンパ球減少症(50%)、頭痛(37.5%)、皮膚剥離(25%)、及び味覚異常(25%)であった。
【0354】
ダラツムマブ1800mg、毎週タルケタマブ400μg/kg、サイクル4の1日目からPom4mgを投与された8人の対象のうち、血小板減少の1つのDLTが報告された。4人(50%)の参加者が重篤な有害事象を報告した。5人(62.5%)の参加者がCRSを経験し、その全員がグレード1~2であった。タルケタマブSCに関連する神経毒性を報告した参加者はいなかった。8人の参加者(100%)が1以上のTEAEを有し、最も一般的な事象は、好中球減少(75%)、味覚異常(75%)、発熱(75%)、倦怠感(62.5%)、貧血症(50%)、下痢(50%)、頭痛(50%)、口渇(37.5%)、食欲減退(37.5%)、掻痒(37.5%)、爪障害(37.5%)、不眠(37.5%)、及びCOVID-19(37.5%)であった。
【0355】
ダラツムマブ1800mgと併用したPom2mgと共に毎週400μg/kgのタルケタマブ又は毎週又は800μg/kgのタルケタマブを投与されたプール集団における50人の参加者のうち、好中球減少の1つのDLTが報告された。22人(44%)の参加者が、重篤な有害事象を報告した。34人(68%)の参加者がCRSを経験し、その全員がグレード1~2であった。48人の参加者(96%)が1以上のTEAEを有していた。最も一般的な事象は、味覚異常(72%)、好中球減少(64%)、口渇(62%)、皮膚剥離(44%)、倦怠感(42%)、リンパ球減少(36%)、頭痛(34%)、血小板減少(30%)、及び貧血症(30%)であった。
【0356】
【0357】
【0358】
【0359】
全てのタルケタマブ、ダラツムマブ、及びポマリドマイドの用量レベルにわたる44人の参加者が、2022年4月6日現在、投与後の疾患評価が1以上であった(すなわち、有効性について評価可能であった)。奏効は、厳密な完全奏効(sCR)を有する6人の対象(13.6%)、CRを有する3人の対象(6.8%)、非常に良好な部分奏効(VGPR)を有する19人の対象(43.2%)、及び部分奏効(PR)を有する8人の対象(18.2%)を含んだ。加えて、7人の対象(15.9%)は安定した疾患を有し、1人の対象(2.3%)は最良奏効として進行性疾患を有していた。
図2も参照されたい。
【0360】
1800mgのSCダラツムマブ、毎週400μg/kgのSCタルケタマブ、及び4mgのポマリドミド治療用量を投与された対象(n=8人の評価可能な対象)について、奏効は、sCRを有する1人の対象(12.5%)、CRを有する2人の対象(25%)、VGPRを有する4人の対象(50%)、及び奏効応答を有する1人の対象(12.5%)を含んだ。1800mgのSCダラツムマブ、毎週400μg/kgのSCタルケタマブ、及び2mgのポマリドミド治療用量を投与された対象(n=18人の評価可能な対象)について、奏効は、sCRを有する3人の対象(16.7%)、VGPRを有する8人の対象(44.4%)、PRを有する5人の対象(27.8%)、及び安定した疾患を有する2人の対象(11.1%)を含んだ。1800mgのSCダラツムマブ、隔週800μg/kgのSCタルケタマブ、及び2mgのポマリドミド治療用量を投与された対象(n=26人の評価可能な対象)について、奏効は、sCRを有する3人の対象(11.5%)、CRを有する3人の対象(11.5%)、VGPRを有する11人の対象(542.3%)、PRを有する3人の対象(11.5%)、安定疾患を有する5人の対象(19.2%)、及び進行性疾患を有する1人の対象(3.8%)が含んだ。毎週のタルケタマブ400μg/kg及びサイクル4の1日目、2022年4月6日から2mg、次いで4mgのポマリドミドを投与した8人の対象のコホートについて、有効性データは入手できなかった。
【0361】
全体として、データは有望であり、更なる調査を保証した。したがって、RRMMを有する患者におけるタルケタマブ、ダラツムマブSC、及びポマリドマイド(Tal-Dara-Pom)対タルケタマブ、及びダラツムマブSC(Tal-Dara)対ダラツムマブSC、ポマリドマイド、並びにデキサメタゾン(dpD)の投与を調べる第3相試験を行う。
【0362】
当業者であれば、本発明の好ましい実施形態に対して、多数の変更及び修正を加えることができ、このような変更及び修正を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で行うことができることを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲に収まる、このような同等の変化を全て網羅することが意図されている。
【0363】
本明細書に引用又は記載されている各特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】