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特表2024-540054癌を治療する方法及びBCMA×CD3二重特異性抗体の有効性を向上させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】癌を治療する方法及びBCMA×CD3二重特異性抗体の有効性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/45 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K39/395 T
A61P43/00 121
A61K31/573
A61K31/45
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525209
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022079147
(87)【国際公開番号】W WO2023081705
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/275,368
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/288,279
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/348,036
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドバーグ,ジェナ
(72)【発明者】
【氏名】ジャシエレック,ジャゴダ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェローナ,ラルカ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイス,ブレンダン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA16
4C085BB01
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC22
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
(57)【要約】
癌、特に再発又は難治性多発性骨髄腫を治療し、BCMA×CD3二重特異性抗体の有効性を向上させる方法が開示される。特に、癌を治療するためにBCMA×CD3二重特異性抗体、CD38抗体、及び/又はポマリドミドを使用する方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象において癌を治療する方法であって、
(1)BCMA×CD3二重特異性抗体を200μg/kg~6mg/kg又は60mg~600mgの用量で1~4週間毎に前記対象に投与することと、及び
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に前記対象に投与することとを含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、
(1)前記BCMA×CD3二重特異性抗体を1mg/kg~6mg/kg又は60mg~600mgの用量で1~4週間毎に前記対象に皮下投与することと、及び
(2)前記抗CD38抗体を1600mg~2000mgの用量で1~4週間毎に前記対象に皮下投与することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)の前に、前記BCMA×CD3二重特異性抗体を0.5mg/kgよりも低い用量で前記対象に皮下投与することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記BCMAxCD3二重特異性抗体が、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、5、5.5、若しくは6mg/kgの用量、又は60、100、150、200、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340,350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600mg、又は約1mg~約600mgの任意の用量で1週間に1回又は2週間に1回、前記対象に皮下投与される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記BCMA×CD3二重特異性抗体が、毎週1.5mg/kg、毎週若しくは隔週3.0mg/kg、毎月6.0mg/kg、毎週60~150mg、隔週150~300mg、又は毎月300~600mgの用量で前記対象に皮下投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
BCMA×CD3二重特異性抗体が、毎週1.5mg/kg又は60~150mgの用量で対象に皮下投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記BCMA×CD3二重特異性抗体が、毎週3mg/kg又は隔週150~300mgの用量で前記対象に皮下投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記BCMA×CD3二重特異性抗体が、毎週6mg/kg又は毎月300~600mgの用量で前記対象に皮下投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記抗CD38抗体が、1800mgの用量で前記治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、前記治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、及び前記治療の24週目の後は4週間に1回、前記対象に皮下投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗CD38抗体が、rHuPH20、例えば、約30,000UのrHuPH20と一緒に投与されるか、又は投与のために提供される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記BCMA×CD3二重特異性抗体が、
(1)それぞれ配列番号18、配列番号19、及び配列番号20のアミノ酸配列の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号21、配列番号22、及び配列番号23のアミノ酸配列の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域(VL)を含むBCMA結合ドメイン、並びに
(2)それぞれ配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVH、並びにそれぞれ配列番号31、配列番号32、及び配列番号33のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記BCMA結合ドメインが、配列番号24のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号25のアミノ酸配列を有するVLを含み、前記CD3結合ドメインが、配列番号34のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号35のアミノ酸配列を有するVLを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記BCMA×CD3二重特異性抗体が、配列番号26のアミノ酸配列を有する第1の重鎖(HC1)と、配列番号27のアミノ酸配列を有する第1の軽鎖(LC1)と、配列番号36のアミノ酸配列を有する第2の重鎖(HC2)と、配列番号37のアミノ酸配列を有する第2の軽鎖(LC2)と、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記抗CD38抗体が、それぞれ配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVHと、それぞれ配列番号11、配列番号12、及び配列番号13のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLとを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記CD38抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを含む、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
前記癌が、多発性骨髄腫である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
治療を必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法であって、
(i)前記治療の第1週目~第8週目の間に、1.5mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を1週間に1回、並びに前記治療の第8週目以降は、3.0mg/kgの前記BCMA×CD3二重特異性抗体を2週間に1回及び/又は6.0mg/kgの前記BCMA×CD3二重特異性抗体を1月に1回前記対象に皮下投与することと、
(ii)1800mgの抗CD38抗体を、前記治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、前記治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、前記治療の24週目以降は4週間に1回前記対象に皮下投与することとを含み、
前記BCMA×CD3二重特異性抗体が、配列番号26の第1の重鎖(HC1)、配列番号27の第1の軽鎖(LC1)、配列番号36の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号37の第2の軽鎖(LC2)を含み、前記抗CD38抗体が、配列番号12のHC及び配列番号13のLCを含む、方法。
【請求項18】
1.5mg/kgの前記BCMA×CD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、前記治療の2日目に0.06mg/kgの前記BCMA×CD3二重特異性抗体及び前記治療の4日目に0.3mg/kgの前記BCMA×CD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、多発性骨髄腫に対する少なくとも1回の以前の治療を受けたことがあるか、又は前記対象が、前記少なくとも1回の以前の治療に対して再発性若しくは難治性であり、前記以前の治療が、プロテアソーム阻害剤(PI)又は免疫調節剤(IMiD)のうちの少なくとも1つを含むことができる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、抗CD38抗体、レナリドミド、ボルテゾミブ、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、エロツズマブ、イキサゾミブ、イサツキシマブ、メルファラン及びサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される治療に対して難治性又は再発性であり、好ましくは、対象はレナリドミド難治性である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
追加の治療薬、例えば、ポマリドミド及び/又はデキサメタゾンを前記対象に投与することを更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記治療が、CD4及びCD8T細胞上のCD25、PD-1、CD38のうちの少なくとも1つの増加などのT細胞活性化をもたらすか、又は前記治療が、CD38+CD8+T細胞、CD38+CD4+T細胞、及びTregs T細胞のうちの少なくとも1つの頻度の増加をもたらす、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年11月03日に出願された米国仮出願第63/275,368号、2021年12月10日に出願された米国仮出願第63/288,279号、及び2022年6月2日に出願された米国仮出願第63/348,036号に対する優先権を主張するものであり、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、XML形式で電子的に提出済みである、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2022年10月28日に作成された上記XMLコピーは、「258199.060902_PRD4190WOPCT1_SL.xml」というファイル名で、サイズは64.1キロバイトである。
【0003】
(発明の分野)
癌を治療し、BCMA×CD3二重特異性抗体の有効性を向上させる方法が開示される。
【背景技術】
【0004】
1990年~2016年に、世界中で、多発性骨髄腫(MM)の発生症例は126%増加し、死亡は94%増加した。2020年のアメリカ合衆国では、32,270人が新たにMMと診断され、140,779人が罹患して生活していると推定される。欧州では、多発性骨髄腫は2番目に多い血液悪性腫瘍であり、2020年に欧州27カ国で35,842件の新たな症例が推定されている(European Cancer Information System 2020)。複数の治療選択肢にもかかわらず、この疾患は非常に頻繁に再発し、不治のままである。連続的な再発のたびに、症状が戻り、生活の質が悪化し、奏効の可能性及び持続時間が典型的には低下する。
【0005】
再発性及び難治性の多発性骨髄腫は、未解決の特殊な医学的ニーズを構成する。標準療法(プロテアソーム阻害剤[PI]又は免疫調節薬[IMiD]など)を投与された後に進行する患者は、2つの主要な薬物クラスに既に曝露されているため、治療が困難であり、新たな有効かつ好都合な治療選択肢が必要とされている。骨髄腫は不治の疾患のままであるにもかかわらず、患者の40%未満しか三次治療を受けない。レナリドマイドを含むレジメンは、米国及び欧州のほとんどにおいて、移植適格患者及び移植不適格患者の両方において、ますます標準療法の一次治療になっている。これらの実施パターンの結果として、再発性多発性骨髄腫を有するほとんどの患者は、最初に再発したときにレナリドマイドに曝露される。
【0006】
T細胞リダイレクト殺傷は、多くの治療領域において望ましい作用様式である。一般的には、T細胞リダイレクト分子は、一方の部位が標的細胞上の表面抗原に結合し、他方の部位がT細胞表面抗原に結合する、少なくとも2つの抗原結合部位を有するよう操作される。T細胞表面抗原の中でも、TCRタンパク質複合体のヒトCD3イプシロンサブユニットは、T細胞殺傷をリダイレクトするように最も標的化されている。様々な二重特異性抗体形式が、前臨床試験及び臨床試験の両方において、T細胞リダイレクトを媒介することが示されている。
【0007】
腫瘍は、免疫抑制腫瘍微小環境(tumor microenvironment、TME)を作製することによって免疫認識を回避する。TMEでは、持続的な抗原及び炎症の条件下で、T細胞は、消耗されるか、又は機能不全になり、それらのエフェクター機能及び増殖能力を漸進的に失う。治療薬媒介性T細胞リダイレクト殺傷に関与する利用可能なT細胞の損なわれた機能及び数は、治療薬の抗腫瘍有効性を損なう場合がある。T細胞リダイレクト殺傷を媒介する治療薬の最適な有効性のために、T細胞機能性を向上させる必要性が存在する。
【0008】
テクリスタマブ(Tec)は、B細胞成熟抗原(BCMA)及びCD3に結合する二重特異性抗体である。ダラツムマブ(Dara)は、MM細胞上のCD38を標的とし、MM細胞の直接的な細胞毒性をもたらす、MM治療用に承認されたモノクローナル抗体である。癌、特に多発性骨髄腫(MM)を治療するための新規薬剤が必要とされているが、これは依然として不治であり、ほとんどの患者(pts)が再発するか、又は標準療法に対して難治性になる。
【発明の概要】
【0009】
本出願に記載される投与レジメンを使用して、BCMA×CD3二重特異性抗体と抗CD38抗体DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)と(それぞれ、同じ細胞上での標的結合時に多発性骨髄腫細胞の死滅を媒介する)の組み合わせが、癌、特に再発性/難治性MMを治療するために対象に安全に投与され得ることが発見された。
【0010】
一般的な一態様では、本発明は、治療を必要とする対象において多発性骨髄腫のような癌を治療する方法であって、
(1)BCMA×CD3二重特異性抗体を200μg/kg~6mg/kg又は60mg~600mgの用量で1~4週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、方法に関する。
【0011】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、200μg/kg~350μg/kgの用量、例えば、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350μg/kg又はその間の任意の用量で、1~4週間毎に対象に静脈内投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は、
(1)BCMA×CD3二重特異性抗体を1mg/kg~6mg/kg又は200mg~400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することと、
(2)抗CD38抗体を1600mg~2000mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程(1)の前に、BCMA×CD3二重特異性抗体を0.5mg/kgよりも低い用量で対象に皮下投与することを更に含む。
【0014】
本出願の実施形態によれば、BCMA×CD3二重特異性抗体は、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、5、5.5、若しくは6mg/kgの用量で、又は60、100、150、200、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mgの固定用量、又はその間の任意の用量で、1週間に1回、2週間に1回、又は4週間に1回、対象に皮下投与される。例えば、BCMA×CD3二重特異性抗体は、毎週若しくは隔週1.5mg/kg、3.0mg/kg又は隔週300mgの用量で対象に皮下投与され得る。
【0015】
本出願の一実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、毎週1.5mg/kgの用量で対象に皮下投与され、抗CD38抗体は、治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、及び治療の24週目以降は4週間に1回、1800mgの用量で対象に皮下投与される。
【0016】
本出願の別の実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、治療の1週目~8週目の間、1.5mg/kgの用量で1週間に1回、治療の8週目以降は、例えば、治療の9週目~24週目の間、3.0mg/kgの用量で2週間に1回、対象に皮下投与され、抗CD38抗体は、治療の1週目~8週目の間、1800mgの用量で1週間に1回、治療の9週目~24週目の間、2週間に1回、治療の24週目の後、4週間に1回、対象に皮下投与される。
【0017】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、治療の8週目後は、例えば、6.0mg/kgの隔週皮下投与の4~12週後に、3.0mg/kgで1月に1回皮下投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、rHuPH20、例えば、約30,000UのrHuPH20と一緒に投与されるか、又は投与のために提供される。
【0019】
任意の適切なBCMA×CD3二重特異性抗体が、本出願の方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、本出願に有用なBCMA×CD3二重特異性抗体は、
(i)それぞれ配列番号18、配列番号19、及び配列番号20のアミノ酸配列の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号21、配列番号22、及び配列番号23のアミノ酸配列の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域(VL)を含むBCMA結合ドメイン、並びに
(ii)それぞれ配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVH、並びにそれぞれ配列番号31、配列番号32、及び配列番号33のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、BCMA結合ドメインは、配列番号24のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号25のアミノ酸配列を有するVLを含む。CD3結合ドメインは、配列番号34のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号35のアミノ酸配列を有するVLを含む。好ましくは、BCMA×CD3二重特異性抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を有する第1の重鎖(HC1)と、配列番号27のアミノ酸配列を有する第1の軽鎖(LC1)と、配列番号36のアミノ酸配列を有する第2の重鎖(HC2)と、配列番号37のアミノ酸配列を有する第2の軽鎖(LC2)とを含む。より好ましくは、BCMA×CD3二重特異性抗体は、テクリスタマブである。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVHと、それぞれ配列番号11、配列番号12、及び配列番号13のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLとを含む。好ましくは、抗CD38抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを含む。より好ましくは、抗CD38抗体は、ダラツムマブである。
【0022】
一実施形態では、本出願は、治療を必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法であって、
(1)治療の第1週目~第8週目の間に、1.5mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を1週間に1回、並びに治療の第8週目以降は、3.0mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を2週間に1回及び/又は6.0mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を1月に1回、対象に皮下投与することと、
(2)1800mgの抗CD38抗体を、治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、治療の24週目以降は4週間に1回、対象に皮下投与することとを含み、
BCMA×CD3二重特異性抗体が、配列番号26の第1の重鎖(HC1)、配列番号27の第1の軽鎖(LC1)、配列番号36の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号37の第2の軽鎖(LC2)を含み、抗CD38抗体が、配列番号12のHC及び配列番号13のLCを含む、方法に関する。
【0023】
本出願のいくつかの実施形態では、対象は、多発性骨髄腫の少なくとも1つの以前の治療を受けており、好ましくは、対象は、少なくとも1つの以前の治療に対して再発又は難治性であり、より好ましくは、以前の治療は、プロテアソーム阻害剤(PI)及び免疫調節剤(IMiD)のうちの少なくとも1つを含む。対象は、抗CD38抗体、レナリドマイド、ボルテゾミブ、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、エロツズマブ、イキサゾミブ、メルファラン及びサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される治療などの治療に対して、難治性又は再発性であり得る。好ましくは、対象が以前に1回のみの治療を受けている場合、対象はレナリドミド難治性である。
【0024】
いくつかの実施形態では、本出願の方法は、ポマリドミド、ダラツムマブ、デキサメタゾン、ボルテゾミブ、及びレナリドミドを含むがこれらに限定されない、癌のための別の治療を対象に施すことを更に含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、本出願の実施形態による方法は、CD4及びCD8T細胞上のCD25、PD-1、CD38のうちの少なくとも1つの増加などのT細胞活性化をもたらす。本出願の実施形態による方法はまた、CD38+CD8+T細胞、CD38+CD4+T細胞、及びTregs T細胞のうちの少なくとも1つの頻度の増加をもたらし得る。
【0026】
本出願の別の一般的な態様は、癌、例えばMM、より具体的には再発又は難治性MMを治療する方法において使用するための、本明細書に記載される抗CD38抗体に関し、本方法は、
(1)BCMA×CD3二重特異性抗体を200μg/kg~6mg/kg又は60mg~600mgの用量で1~4週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む。
【0027】
本出願の別の一般的な態様は、癌、例えばMM、より具体的には再発又は難治性MMの治療における使用のための、本明細書に記載されるBCMA×CD3二重特異性抗体に関し、治療は、
(1)BCMA×CD3二重特異性抗体を200μg/kg~6mg/kg又は60mg~600mgの用量で1~4週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む。
【0028】
本出願の更に別の一般的な態様は、癌、例えばMM、より具体的には再発又は難治性MMの治療において使用するための、本明細書に記載される抗CD38抗体と本明細書に記載されるBCMA×CD3二重特異性抗体との組み合わせ又はキットであって、治療が、
(1)BCMA×CD3二重特異性抗体を200μg/kg~6mg/kg又は60mg~600mgの用量で1~4週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む。
【0029】
本出願は更に、癌、例えばMM、より具体的には再発又は難治性MMを治療するための医薬の製造における、本明細書に記載される抗CD38抗体と本明細書に記載されるBCMA×CD3二重特異性抗体との組み合わせの使用であって、治療が、
(1)BCMA×CD3二重特異性抗体を200μg/kg~6mg/kg又は60mg~600mgの用量で1~4週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
上述の「発明の概要」及び以降の「発明を実施するための形態」は、添付の図面と併せて読むことでより良好に理解されるであろう。本発明は、図面に示される正確な実施形態に限定されない点を理解する必要がある。
図1】再発又は難治性多発性骨髄腫(RRMM)のために皮下ダラツムマブと組み合わせて投与されたテクリスタマブの第1相試験のパート1及びパート2の概要の概略図である。
図2】試験のパート1及びパート2(分析の締切日は2022年4月06日)においてダラツムマブ及びテクリスタマブで治療された患者の奏効率を示す。Dara SC 1800mg+Tec SC(1.5mg/kg QW又は3mg/kg QW又は3mg/kg Q2W);CR、完全奏効;D/C=中断;dara、ダラツムマブ;MR、最小応答;PD、進行性疾患;PR、部分奏効;QW、毎週:Q2W、隔週;sCR、厳密な完全奏効;SD、安定した疾患;tec、テクリスタマブ;TR、3クラス難治性;VGPR、非常に良好な部分奏効。
図3】本出願の一実施形態による、1800mgのSCダラツムマブ及び1.5mg/kgのSCテクリスタマブで毎週治療されたRRMMを有する患者内のCD8+及びCD4+T細胞数を示す。
図4】本出願の一実施形態による、1800mgのSCダラツムマブ及びSCテクリスタマブで毎週治療されたRRMMの患者内のT細胞活性化(CD25+)を示す。
図5】本出願の一実施形態による、1800mgのSCダラツムマブ及びSCテクリスタマブで毎週治療されたRRMM患者におけるサイトカイン誘導を示す図である。TNF-α=組織壊死因子α;IL-8=インターロイキン8;IFN-g=インターフェロンγ;IL-6=インターロイキン6。
図6】本出願の一実施形態による、1800mgのSCダラツムマブ及びSCテクリスタマブで治療されたRRMMを有する4人の対象におけるCD38+T細胞の頻度の増加を示す。
図7】本出願の実施形態による、臨床試験のA群(Tec-Dara)の投与スケジュールの概略図であり、太い矢印はダラツムマブのSC投薬日を示し、細い矢印はテクリスタマブ投薬日を示す(短い方が漸増用量である)。Dara、ダラツムマブ、Tec、テクリスタマブ。
【発明の詳細な説明】
【0031】
本開示の方法は、本開示の一部を形成する、添付の図面に関連してなされる以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本開示の方法は、本明細書に記載及び/又は示される特定の方法に限定されないこと、更に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を例によって説明することのみを目的とし、特許請求された方法に限定することを意図しないことを理解されたい。本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物は、あたかも本明細書に完全に記載されているように参照により組み込まれる。
【0032】
本明細書の態様に関する様々な用語が、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用される。別段の指示がない限り、このような用語には、当該技術分野におけるそれらの通常の意味が与えられるものとする。他の具体的に定義される用語は、本明細書で提供される定義と一致する様式で解釈されるものとする。
【0033】
本明細書で使用するとき、文脈上特に明記されない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ以上の細胞の組み合わせなどが含まれる。
【0034】
特に断らない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、典型的には、記載される値の±10%を含む。例えば、投薬量10mgは、9mg~11mgを含む。本明細書で使用するとき、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0035】
「約」は、数値範囲、カットオフ、又は特定の値を参照して使用するとき、当業者によって決定される特定の値について許容される誤差範囲内であることを意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、すなわち測定システムの制限事項に部分的に依存する。アッセイ、結果、又は実施形態の文脈において実施例又は明細書のその他の箇所に別途明示的に記載のない限り、「約」は、当該技術分野の実施に従う1つの標準偏差内又は10%までの範囲内のいずれか大きい方を意味する。
【0036】
「抗体」は、広義の意味を有し、マウス、ヒト、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗原結合断片、二重特異性、三重特異性、四重特異性などの多特異性抗体、二量体、四量体、又は多量体抗体、一本鎖抗体、ドメイン抗体、並びに必要とされる特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された形態を含む免疫グロブリン分子を含む。「完全長抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された、2本の重鎖(heavy chain、HC)及び2本の軽鎖(light chain、LC)、並びにこれらの多量体(例えばIgM)で構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)、及び重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3からなる)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(light chain constant region、CL)で構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(framework region、FR)が散在しており相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼称される超可変領域に更に細分化され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置された、3つのCDR及び4つのFRセグメントで構成される。免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。どのような脊椎動物種の抗体軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なるタイプ、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。
【0037】
「抗原結合断片」又は「抗原結合ドメイン」とは、抗原に結合するイムノグロブリン分子の一部を指す。抗原結合断片は合成ポリペプチド、酵素により入手可能なポリペプチド、又は遺伝子組換えされたポリペプチドであってもよく、VH、VL、VH及びVL、Fab、F(ab’)2、Fd及びFv断片、1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなるドメイン抗体(domain antibody、dAb)、サメ可変性IgNARドメイン、ラクダ化VHドメイン、FR3-CDR3-FR4部分などの、抗体のCDRを再現したアミノ酸残基からなる最小の認識単位、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3が挙げられる。VH及びVLドメインは互いに、合成リンカーを介して結合し、様々なタイプの一本鎖抗体設計を形成することができ、VH及びVLドメインが、別個の一本鎖抗体構築物により発現される場合では、VH/VLドメインが分子内、又は分子間で対形成し、一価の抗原結合部位、例えば一本鎖Fv(single chain Fv、scFv)又はダイアボディを形成することができ、これらは、例えば国際公開第1998/44001号、同第1988/01649号、同第1994/13804号、及び同第1992/01047号に記載されている。
【0038】
「BCMA」は、ヒトB細胞成熟抗原を指し、これはCD269又はTNFRSF17としても公知である。ヒトBCMA(UniProt Q02223)は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。ヒトBCMAの細胞外ドメインは、配列番号1の残基1~54に及ぶ。
【0039】
「二重特異性」は、2つの異なる抗原、又は同じ抗原中の2つの異なるエピトープと特異的に結合する抗体を指す。二重特異性抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、カニクイザル(Macaca cynomolgus)(例えば、カニクイザル(cynomolgus、cyno)又はチンパンジーなどの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有し得る、あるいは2つ以上の異なる抗原間で共有されているエピトープに結合し得る。
【0040】
「癌」とは、身体における異常細胞の制御されていない成長を特徴とする、様々な疾患の広範な群を指す。制御されていない細胞分裂及び成長は、隣接組織を浸潤する悪性腫瘍の形成をもたらし、リンパ系又は血流を介して身体の遠位部分にも転移し得る。「癌」又は「癌組織」は、腫瘍を含み得る。
【0041】
「CD3」とは、多分子T細胞受容体(T cell receptor、TCR)複合体の一部としてT細胞上で発現され、2つ又は4つの受容体鎖:CD3イプシロン、CD3デルタ、CD3ゼータ、及びCD3ガンマの会合から形成されたホモ二量体又はヘテロ二量体からなるヒトの抗原を指す。ヒトCD3イプシロンは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。配列番号3は、CD3イプシロンの細胞外ドメインを示す。
【0042】
「CD38」は、CD38タンパク質(同義語:ADPリボシルシクラーゼ1、cADPrヒドロラーゼ1、環状ADPリボースヒドロラーゼ1)を指す。ヒトCD38(UniProt受託番号P28907)のは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する。CD38は、アミノ酸残基1~21が細胞質ドメインを表し、アミノ酸残基22~42が膜貫通ドメインを表し、残基43~300が細胞外ドメインを表す、シングルパスII型膜貫通タンパク質である。
【0043】
「CH3領域」又は「CH3ドメイン」とは、免疫グロブリンのCH3の領域を指す。ヒトIgG1抗体のCH3領域は、アミノ酸残基341~446に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載の他の抗体アイソタイプのいずれであってもよい。
【0044】
「キメラ抗原受容体」又は「CAR」とは、T細胞上にリガンド又は抗原特異性を移植する、操作されたT細胞受容体(例えば、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、又はこれらの組み合わせ)を指す。CARはまた、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、又はキメラ免疫受容体としても知られている。CARは、抗原、膜貫通ドメイン、及び少なくとも1つの細胞内ドメインに結合することができる、細胞外ドメインを含む。CAR細胞内ドメインは、細胞内の生物学的プロセスの活性化又は阻害を引き起こすシグナルを伝達するドメインとして機能することが知られている、ポリペプチドを含む。膜貫通ドメインは、細胞膜に及ぶことが知られており、かつ細胞外ドメイン及びシグナル伝達ドメインを結合するように機能し得る、任意のペプチド又はポリペプチドを含む。キメラ抗原受容体は、任意選択的に、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間のリンカーとして機能する、ヒンジドメインを含み得る。
【0045】
「組み合わせ」とは、2つ以上の治療薬を、混合物の状態で一緒に、単剤として同時に、又は単剤として任意の順序で逐次、対象に投与することを意味する。
【0046】
「相補性決定領域(CDR)」とは、抗原に結合する抗体の領域である。CDRは、Kabat(Wu et al.J Exp Med 132:211-50,1970)(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991),Chothia(Chothia et al.J Mol Biol 196:901-17,1987),IMGT(Lefranc et al.Dev Comp Immunol 27:55-77,2003)、及びAbM(Martin and Thornton J Bmol Biol 263:800-15,1996)などの様々な記述を使用して定義し得る。様々な記述と、可変領域の番号付けとの対応が記載されている(例えば、Lefranc et al.Dev Comp Immunol 27:55-77,2003;Honegger and Pluckthun,J Mol Biol 309:657-70,2001;International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース;ウェブリソース、http://www_imgt_orgを参照されたい)。UCL Business PLCによるabYsisなどの利用可能なプログラムを使用して、CDRを記述することができる。本明細書で使用される場合、「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」という用語は、明細書で別途明示的に記載されない限り、上述したKabat、Chothia、IMGT、又はAbMの方法のいずれかにより定義されるCDRを含む。例えば、Kabat番号付け及びIMGT固有の番号付けシステムを含む番号付けシステム間の対応関係は、当業者に周知である(例えば、Kabat;Chothia;Martin;Lefranc et al.を参照)。
【0047】
【表1】
【0048】
「を含む(comprising)」とは、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び用語「からなる(consisting of)」によって包含される例を含むことを意図する。同様に、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語によって包含される例を含むことを意図する。文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、明細書及び特許請求の範囲を通して、単語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、排他的又は排外的な意味とは対照的に、包括的な意味で、すなわち、「~を含むがこれらに限定されない」という意味で解釈されるべきである。
【0049】
「向上させる」又は「向上した」とは、1つの対照分子と比較したときの試験分子の1つ若しくは2つ以上の機能の向上、又は1つ以上の対照分子と比較したときの試験分子の組み合わせの1つ以上の機能の向上を指す。測定され得る例示的な機能は、腫瘍細胞殺傷、T細胞活性化、相対的若しくは絶対的T細胞数、Fc媒介性エフェクター機能(例えば、ADCC、CDC、及び/若しくはADCP)、又はFcγ受容体(FcγR)若しくはFcRnへの結合である。「向上した」とは、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、若しくはそれ以上の向上、又は統計的に有意な向上であることができる。
【0050】
「Fcガンマ受容体」(FcγR)とは、周知のFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、又はFcγRIIIのことを指す。活性化FcγRに、FcγRI、FcγRIIa、及びFcγRIIIが含まれる。
【0051】
「ヒト抗体」とは、ヒト被検体に投与される場合に、最小の免疫応答を有するように最適化された抗体を指す。ヒト抗体の可変領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体が定常領域又は定常領域の一部を含む場合、その定常領域もヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。このような例示的な系は、ファージにディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばマウス又はラットである。「ヒト抗体」は、典型的には、ヒト抗体及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を得るために使用した系の違い、フレームワーク若しくはCDRへの体細胞変異の導入若しくは置換の意図的な導入、又はこれらの両方により、ヒトで発現した免疫グロブリンと比較したときにアミノ酸の違いを含有する。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされているアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。場合によっては、「ヒト抗体」は、例えばKnappik et al.,(2000)J Mol Biol 296:57-86に記載されるヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列、又は例えばShi et al.,(2010)J MolBiol 397:385-96及び国際公開第2009/085462号に記載される、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含有し得る。少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0052】
「ヒト化抗体」とは、少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来し、少なくとも1つのフレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体は、フレームワークに置換を含むことができるため、フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又はヒト免疫グロブリン生殖細胞系列遺伝子配列の厳密なコピーではない場合がある。
【0053】
「単離された」とは、組換え細胞などの分子が産生されるシステムに関係する他の成分から実質的に分離及び/又は精製されている、分子の均質な集団(例えば、合成ポリヌクレオチド又は抗体などのタンパク質)に加えて、少なくとも1つの精製又は単離工程に供されたタンパク質を指す。「単離抗体」とは、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない抗体を指し、より高い純度、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度まで単離された抗体を包含する。
【0054】
「モノクローナル抗体」とは、抗体分子の実質的に均質な母集団(すなわち、母集団を含む個別の抗体が、抗体重鎖からC末端リジンを除去する、又は、アミノ酸異性化若しくはアミド分解、メチオニン酸化若しくはアスパラギン若しくはグルタミンアミド分解などの翻訳後修飾といった、可能な周知の変更を除いて同一である)から入手される抗体を意味する。モノクローナル抗体は、典型的には、1つの抗原性エピトープに結合する。二重特異性モノクローナル抗体は、2つの異なる抗原性エピトープに結合する。モノクローナル抗体は、抗体集団内で不均一なグリコシル化を有し得る。モノクローナル抗体は、単一特異性であってもよく、又は、二重特異性などの多重特異性であってもよく、一価、二価、又は多価であってもよい。
【0055】
「変異」とは、参照配列と比較したときのポリペプチド又はポリヌクレオチド配列における、人工操作によるか又は自然発生による変更を指す。変更は、1つ又は2つ以上のアミノ酸又はポリヌクレオチドの置換、挿入、又は欠失であってもよい。
【0056】
「非固定組み合わせ」とは、BCMA×CD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体の別々の医薬組成物又は単位剤形が、異なる実体として、特定の中断時間の制限なしに同時に、併行的に、又は逐次のいずれかで投与されることを指し、ここで、そのような投与は、対象の体内で2つの化合物の有効なレベルを提供する。
【0057】
「多重特異性」とは、少なくとも2種の異なる抗原と特異的に結合する抗体、又は同じ抗原内の少なくとも2箇所の異なるエピトープと結合する抗体を指す。多重特異性抗体は、例えば、2つ、3つ、4つ、若しくは5つの異なる抗原、又は同じ抗原内の異なるエピトープに結合し得る。
【0058】
「医薬組成物」とは、有効成分と薬学的に許容される担体とを含む組成物を指す。
【0059】
「医薬的に許容される担体」又は「賦形剤」は、対象に対して毒性のない、活性成分以外の医薬組成物中の成分を指す。
【0060】
「フィラデルフィア染色体」又は「Ph」は、構成的に活性なチロシンキナーゼ活性を有する癌原性BCR-ABL遺伝子融合をもたらす、染色体9と22との間の周知の染色体転座を指す。この転座により、染色体22q11のBCR遺伝子の一部分が染色体9q34のABL遺伝子の一部分と融合され、これは、国際ヒト細胞遺伝学命名法(International System for Human Cytogenetic Nomenclature、ISCN)の下、t(9;22)(q34;q11)と名付けられている。融合の正確な位置に応じて、得られる融合タンパク質の分子量は、185~210kDaの範囲であり得る。「フィラデルフィア染色体」は、(9;22)(q34;q11)転座により形成される全てのBCR-ABL融合タンパク質を指す。
【0061】
「組換え物」は、異なる供給源由来のセグメントが結合されて組換えDNA、抗体、又はタンパク質を産生するときに、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離されるDNA、抗体、及び他のタンパク質を指す。
【0062】
「低減する」又は「低減した」とは、対照分子と比較したときの試験分子の1つ若しくは2つ以上の機能の低減、又は1つ以上の対照分子と比較したときの試験分子の組み合わせの1つ以上の機能の低減を指す。測定され得る例示的な機能は、腫瘍細胞殺傷、T細胞活性化、相対的若しくは絶対的T細胞数、Fc媒介性エフェクター機能(例えば、ADCC、CDC、及び/若しくはADCP)、又はFcγ受容体(FcγR)若しくはFcRnへの結合である。「低減した」は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、若しくはそれ以上の低減、又は統計的に有意な向上であり得る。
【0063】
「rHuPh20」は、配列番号5のアミノ酸を有する組換えヒトヒアルロニダーゼを指し、これは国際公開第2004/078140号に記載されている組換えヒアルロニダーゼ(HYLENEX(登録商標))である。
【0064】
「治療に難治性」とは、外科的介入によっても修復可能ではなく、初期には療法に対して奏効しない癌を指す。
【0065】
「再発性」とは、治療に奏効するが、その後再発する癌を指す。
【0066】
「対象」は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」には、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳動物及び非哺乳動物などの全ての脊椎動物が含まれる。記載されている場合を除き、「患者」及び「対象」という用語は、互換的に使用される。
【0067】
「BCMA×CD3二重特異性抗体」は、2つ以上の結合領域を含有する分子を指し、結合領域のうちの1つは、標的細胞又は組織上の細胞表面抗原B細胞成熟抗原(BCMA)に特異的に結合し、分子の第2の結合領域は、T細胞抗原CD3に特異的に結合する。この二重/多重標的結合能力は、T細胞を標的細胞又は組織に動員して、標的細胞又は組織の根絶をもたらす。
【0068】
「治療に有効な量」とは、必要な用量及び期間で所望の治療結果を得るための有効量を指す。治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体において所望の応答を誘発する治療薬又は治療薬の組み合わせの能力によって変動し得る。有効な治療薬又は治療薬の組み合わせの例示的な指標としては、例えば、患者の改善された健康が挙げられる。
【0069】
「治療する」、又は「治療」とは、治療的処置、及び予防的(prophylactic)若しくは予防的(preventative)手段の両方を意味し、対象は、望ましくない生理学的変化又は疾患を予防する、又は低減させる(少なくする)予定である。有益な又は所望の臨床結果としては、検出可能又は検出不可能にかかわらず、症状の緩和、疾患の程度の軽減、安定した(すなわち、悪化しない)疾患状態、疾患の進行の遅延又は鈍化、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的にかかわらず)が挙げられる。「治療」はまた、対象が治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長させることを意味し得る。治療を必要とする者には、既に病態若しくは疾患を有している者、及び、病態若しくは疾患を有しやすい者、又は病態若しくは疾患を予防しようとする者が含まれる。
【0070】
「腫瘍細胞」又は「癌細胞」とは、インビボ、エクスビボ、又は組織培養のいずれかにおいて、自然発生的な又は誘発された表現型の変化を有する癌性、前癌性、又は形質転換細胞を指す。これらの変化は、必ずしも新たな遺伝物質の取り込みを伴うものではない。形質転換は、形質転換ウイルスの感染及び新たなゲノム核酸の組み込み、外因性核酸の取り込みにより発生させることもでき、自然発生的に又は発癌物質に曝露した後に発生し、それによって内因性の遺伝子が変異する場合もある。形質転換/癌は、インビトロ、インビボ、及びエクスビボにおける、形態学的変化、細胞の不死化、異常な増殖制御、病巣の形成、増殖、悪性病変、腫瘍特異的マーカーレベルの調節、浸潤性、ヌードマウスなどの好適な動物宿主における腫瘍の増殖などによって例示される。
【0071】
本明細書全体を通して、抗体定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、本明細書に別途明示的に記載されない限り、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)に記載のEUインデックスに従う。抗体定常鎖の番号付けは、例えば、ImMunoGeneTicsのウェブサイトで、IMGT ScientificチャートのIMGT Webリソースに見出すことができる。
【0072】
CH3領域における置換は、第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾された位置(複数可)/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾された位置(複数可)として表現される。例えば、F405L/K409Rは、第1のCH3領域におけるF405L変異及び第2のCH3領域におけるK09R変異を指す。L351Y_F405A_Y407V/T394Wは、第1のCH3領域におけるL351Y、F40FA、及びY407V変異、並びに第2のCH3領域におけるT394W変異を指す。D399FHKRQ/K409AGRHは、D399がF、H、KR、又はQによって置換され得、K409がA、G、R、又はHによって置換され得る変異を指す。
【0073】
従来の2文字及び3文字のアミノ酸コードを、表1に示すとおりに本明細書で使用する。
【0074】
【表2】
【0075】
「ポマリドミド」は、「POMALYST(登録商標)」とも呼ばれ、サリドマイドの類似体を指し、これは抗腫瘍活性を有する第3世代IMiD(免疫調節薬)である。レナリドマイド及びポマリドミドなどのIMiDは、いくつかの現在の多発性骨髄腫治療レジメンの主軸を形成する。それらの正確な作用機序は完全には理解されていないが、IMiDは多発性骨髄腫腫瘍微小環境に対して免疫調節効果を有し、腫瘍抑制遺伝子の発現に影響を及ぼし、骨髄腫細胞のアポトーシスを促進し、NK媒介骨髄腫細胞溶解を増強することができる。ダラツムマブとIMiDとの組み合わせは、複数の試験において評価されており、有効性の有意な改善を実証した。
【0076】
本明細書で提供される投薬頻度は、当技術分野における標準的な用語と同義であると理解される。例えば、「毎週」投薬は、「QW」と同義であると理解される。例えば、「隔週」投薬は、「Q2W」と同義であると理解される。例えば、「4週間に1回」は、「Q4W」と同義であると理解される。反対のことが明示的に述べられていない限り、「4週間に1回」及び「毎月」は、投薬頻度の文脈において互換的に使用される。したがって、「毎月」又は「1月に1回」もまた、明示的に別段の定めがない限り、「Q4W」と同義であると理解される。
【0077】
一般的な一態様では、本出願は、癌、例えばMM、好ましくは難治性又は再発性MMを治療する方法であって、BCMA×CD3二重特異性抗体を100μg/kg~6mg/kgの用量で又は60mg~600mgの固定用量で1~4週間毎に対象に投与することと、抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、方法に関する。
【0078】
本開示はまた、必要とする対象における腫瘍細胞を死滅させる方法であって、BCMA×CD3二重特異性抗体を200μg/kg~6mg/kgの用量で又は60mg~600mgの固定用量で1~4週間毎に対象に投与することと、抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与し、それによって対象における腫瘍細胞を死滅させることとを含む、方法を提供する。
【0079】
本開示は更に、必要とする対象においてBCMA×CD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体のうちの少なくとも1つの活性を増強する方法であって、BCMA×CD3二重特異性抗体を200μg/kg~6mg/kgの用量で又は60mg~600mgの固定用量で1~4週間毎に対象に投与することと、抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与し、それによって対象において腫瘍を死滅させることとを含む、方法を提供する。
【0080】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、BCMA×CD3二重特異性抗体を投与する前に投与される。例えば、抗CD38抗体は、BCMA×CD3二重特異性抗体を投与する約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10時間前に投与される。特定の実施形態では、抗CD38抗体及びBCMA×CD3二重特異性抗体は、同日に投与され、抗CD38抗体は、BCMA×CD3二重特異性抗体の皮下投与の約3時間前に投与される。
【0081】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、毎週、隔週、又は4週間毎に投与される。いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、毎週投与される。いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、隔週投与される。いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、4週間に1回投与される。
【0082】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体は、治療されている疾患を緩和するか又は少なくとも部分的に停止させるのに十分な量(「治療有効量」)で、癌、例えば、多発性骨髄腫を有する対象にそれぞれ投与される。
【0083】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、100μg/kg~6mg/kgの用量、又は60mg~600mgの固定用量で、毎週、隔週、毎月、又はその間の任意の頻度で投与される。例えば、BCMA×CD3二重特異性抗体は、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、650μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、若しくは950μg/kg、又はその間の任意の値の用量で静脈内投与され得、投与は、毎週、隔週、又はその間の任意の頻度であり得る。BCMA×CD3二重特異性抗体は、1000μg/kg、1100μg/kg、1200μg/kg、1300μg/kg、1400μg/kg、1500μg/kg、1600μg/kg、1700μg/kg、1800μg/kg、1900μg/kg、2000μg/kg、2100μg/kg、2200μg/kg、2300μg/kg、2400μg/kg、2500μg/kg、2600μg/kg、2700μg/kg、2800μg/kg、2900μg/kg、3000μg/kg、3100μg/kg、3200μg/kg、3300μg/kg、3400μg/kg、3500μg/kg、3600μg/kg、3700μg/kg、3800μg/kg、3900μg/kg、4000μg/kg、4100μg/kg、4200μg/kg、4300μg/kg、4400μg/kg、4500μg/kg、4600μg/kg、4700μg/kg、4800μg/kg、4900μg/kg、5000μg/kg、5100μg/kg、5200μg/kg、5300μg/kg、5400μg/kg、5500μg/kg、5600μg/kg、5700μg/kg、5800μg/kg、5900μg/kg、6000μg/kg、又はその間の任意の値の用量で静脈内投与され得、投与は、毎週、隔週、又はその間の任意の頻度であり得る。BCMA×CD3二重特異性抗体は、60mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、450mg、500mg、600mg、又はその間の任意の値の固定用量で更に皮下投与され得、投与は、毎週、隔週、毎月、又はその間の任意の頻度であり得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、1500μg/kgの用量で毎週皮下投与される。
【0085】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、3000μg/kgの用量で毎週又は隔週皮下投与される。
【0086】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、約6mg/kgの用量で、例えば4週間に1回皮下投与される。
【0087】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、600μg/kgの用量で、例えば4週間に1回皮下投与される。
【0088】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、300μg/kgの用量で隔週皮下投与される。
【0089】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体の固定用量は、対象の体重によって決定され、ある特定の体重閾値以下の対象には、特定の固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が投与され、ある特定の体重閾値を超える対象には、別の特定の固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が投与される。いくつかの実施形態では、重量閾値は、50kg、55kg、60kg、65kg、70kg、70kg超、又はその間の任意の値である。
【0090】
いくつかの実施形態では、対象は、50kg、55kg、60kg、65kg、又は70kgから選択される体重閾値以下の体重を有し、60mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、450mg、500mg、600mg、又はこれらの間の任意の値の固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体を皮下投与され、投与は、は、毎週、隔週、毎月、又はこれらの間の任意の頻度であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、50kg、55kg、60kg、65kg、又は70kgから選択される体重閾値を超える体重を有し、60mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、450mg、500mg、600mg、又はこれらの間の任意の値の固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体を皮下投与され、投与は、毎週、隔週、毎月、又はこれらの間の任意の頻度であり得る。いくつかの実施形態では、体重閾値以下の体重を有する対象及び体重閾値を超える体重を有する対象には、同じ固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が投与される。いくつかの実施形態では、体重閾値以下の体重を有する対象及び体重閾値を超える体重を有する対象には、異なる固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が投与される。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、1~4週間毎に約8mg/kg~約16mg/kgの用量で皮下投与される。例えば、抗CD38抗体は、8mg/kg、8.5mg/kg、9mg/kg、9.5mg/kg、10mg/kg、10.5mg/kg、11mg/kg、11.5mg/kg、12mg/kg、12.5mg/kg、13mg/kg、13.5mg/kg、14mg/kg、14.5mg/kg、15mg/kg、15.5mg/kg、16mg/kg、又はその間の任意の値の用量で皮下投与され得、投与は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、若しくは4週間に1回、又はその間の任意の頻度であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、1~4週間毎に1200~2400mgの固定用量で皮下投与される。例えば、抗CD38抗体は、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、2050mg、2100mg、2150mg、2200mg、2250mg、2300mg、2350mg、2400mg、又はその間の任意の値の用量で皮下投与され得、投与は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、若しくは4週間に1回、又はその間の任意の頻度であり得る。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、1~4週間毎に1600~2000mgの用量範囲で皮下投与される。例えば、抗CD38抗体は、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、又はその間の任意の値の用量で皮下投与され得、投与は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、若しくは4週間に1回、又はその間の任意の頻度であり得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、毎週、隔週、2週間に1回、又は4週間に1回、1800mgの用量で皮下投与される。
【0094】
漸増用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が、最初のサイクルにおいて投与され得る。より低い投与量でのBCMA×CD3二重特異性抗体の1回以上の漸増用量が、本出願の実施形態による毎週又は隔週の治療のための投与量レベルの初回投与の前に対象に投与され得る。特定の実施形態では、本出願による方法は、治療の1日目又は2日目に、好ましくは1日目の抗CD38抗体の最初の投与後の治療の2日目に、0.01~0.10mg/kg、例えば0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、及び0.10mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む。他の実施形態では、本出願による方法は、治療の3日目、4日目又は5日目、好ましくは4日目に、毎週又は隔週投与のための用量でのBCMA×CD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、0.10~0.50mg/kg、例えば0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45若しくは0.50mg/kg、又はこれらの間の任意の値のBCMA×CD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む。
【0095】
特定の実施形態では、本出願による方法は、治療の1日目又は2日目に、好ましくは1日目の抗CD38抗体の最初の投与後の治療の2日目に、1~10mg、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mgの固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む。他の実施形態では、本出願による方法は、治療の3日目、4日目又は5日目、好ましくは4日目に、毎週又は隔週投与のための固定用量でのBCMA×CD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、10~50mg、例えば10、15、20、25、30、35、40、45、若しくは50mg、又はこれらの間の任意の値のBCMA×CD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体の固定用量は、対象の体重によって決定され、ある特定の体重閾値以下の対象には、特定の固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が投与され、ある特定の体重閾値を超える対象には、別の特定の固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が投与される。いくつかの実施形態では、重量閾値は、50kg、55kg、60kg、65kg、70kg、70kg超、又はその間の任意の値である。
【0097】
いくつかの実施形態では、対象は、50kg、55kg、60kg、65kg、又は70kgから選択される体重閾値以下の体重を有し、治療の1日目又は2日目に、好ましくは1日目の抗CD38抗体の最初の投与後の治療の2日目に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mgの固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が皮下投与される。いくつかの実施形態では、対象は、50kg、55kg、60kg、65kg、又は70kgから選択される体重閾値を超える体重を有し、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mgの固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が、治療の1日目又は2日目に、好ましくは1日目の抗CD38抗体の初回投与後の治療の2日目に皮下投与される。いくつかの実施形態では、体重閾値以下の体重を有する対象及び体重閾値を超える体重を有する対象には、同じ固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が投与される。いくつかの実施形態では、体重閾値以下の体重を有する対象及び体重閾値を超える体重を有する対象には、異なる固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が投与される。
【0098】
いくつかの実施形態では、対象は、50kg、55kg、60kg、65kg、又は70kgから選択される体重閾値以下の体重を有し、毎週又は隔週投与のための用量のBCMA×CD3二重特異性抗体の初回皮下投与前に、治療の3日目、4日目、又は5日目、好ましくは4日目に、10、15、20、25、30、35、40、45、若しくは50mg、又はこれらの間の任意の値の固定用量でBCMA×CD3二重特異性抗体が皮下投与される。いくつかの実施形態では、対象は、50kg、55kg、60kg、65kg、又は70kgから選択される体重閾値を超える体重を有し、毎週又は隔週投与のための用量のBCMA×CD3二重特異性抗体の初回皮下投与前に、治療の3日目、4日目、又は5日目、好ましくは4日目に、10、15、20、25、30、35、40、45若しくは50mg、又はこれらの間の任意の値の固定用量でBCMA×CD3二重特異性抗体が皮下投与される。いくつかの実施形態では、体重閾値以下の体重を有する対象及び体重閾値を超える体重を有する対象には、同じ固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が投与される。いくつかの実施形態では、体重閾値以下の体重を有する対象及び体重閾値を超える体重を有する対象には、異なる固定用量のBCMA×CD3二重特異性抗体が投与される。
【0099】
特定の実施形態では、本出願の方法は、毎週又は隔週の1.5mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、治療の2日目に0.06mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体及び治療の4日目に0.3mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む。
【0100】
ある特定の実施形態では、本方法は、3mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を隔週で対象に皮下投与することを含む。
【0101】
ある特定の実施形態では、本出願の方法は、8週間にわたって週1回(2サイクル)1.5mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を対象に皮下投与し、その後、4週間にわたって2週間に1回(1サイクル)3.0mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を対象に皮下投与し、1800mgの抗CD38抗体を、治療の第1週目~第8週目の間は1週間に1回、治療の第9週目~第24週目の間は2週間に1回、治療の第24週以降は4週間に1回対象に皮下投与することを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、3サイクルの完了後、次の計画された28日周期の1日目に、3mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を隔週で投与することを含む。
【0102】
BCMA×CD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体は、28日サイクルで投与され得、治療は、複数サイクル、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル又はそれ以上を含み得る。ある特定の実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体及び/又は抗CD38抗体は、対象が進行性疾患(PD)を経験しない限り、サイクルで連続的に投与される。また、治療過程を繰り返すことも、長期にわたる投与として可能である。反復投与は、同じ用量又は異なる用量で行うことができる。例えば、BCMA×CD3二重特異性抗体は、8週間にわたって毎週1500μg/kg又は3000μg/kgで、更なる期間にわたって隔週1500μg/kg又は3000μg/kgで皮下投与され得る。別の例では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、8週間にわたって隔週3000μg/kg又は300μg/kgで皮下投与され得、その後、同じ用量又は異なる用量での隔週投与の更なる期間が続く。別の例では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、8週間にわたって隔週又は毎月、3000μg/kg又は6000μg/kgで皮下投与され得る。他の実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、8週間にわたって毎週60mg、150mg、又は200mgを、好ましくは毎週150mgを皮下投与され、その後、300mgのBCMA×CD3二重特異性抗体が隔週皮下投与される。他の実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、8週間にわたって毎週1500μg/kgで皮下投与され、その後、隔週3000μg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体が皮下投与される。
【0103】
本出願の実施形態によれば、抗CD38抗体の投与の頻度は、治療の時間と共に減少させ得る。例えば、抗CD38抗体は、1800mgの用量で治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、及び治療の24週目の後は4週間に1回、対象に皮下投与される。
【0104】
BCMA×CD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体は、例えば、6ヶ月又はそれ以上の期間にわたって1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回などの維持療法によって投与され得る。
【0105】
BCMA×CD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体はまた、多発性骨髄腫などの癌を発症するリスクを低減し、癌の進行における事象の発生の開始を遅延させ、かつ/又は癌が緩解した際の再発リスクを低減するために、前癌状況において投与され得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、対象に抗CD38抗体を投与した後に対象に投与される。BCMA×CD3二重特異性抗体と抗CD38抗体は、同日に投与され得る。BCMA×CD3二重特異性抗体は、抗CD38抗体の投与後、1日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、又はそれ以上後に投与され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象に1つ以上の抗癌療法を施すことを更に含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌療法は、自家幹細胞移植(autologous stem cell transplant、ASCT)、放射線、手術、化学療法剤、免疫調節剤、及び標的化癌療法からなる群から選択される。
【0109】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の抗癌治療は、自家幹細胞移植(ASCT)である。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の抗癌治療は、放射線である。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の抗癌治療は、手術である。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌治療は、化学療法剤である。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌治療は、免疫調節剤である。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の抗癌治療は、標的化癌療法である。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌療法は、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、エロトズマブ、イキサゾミブ、メルファラン、イサツキシマブ、CELMoDs、デキサメタゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、プレドニゾン、リツキシマブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ、バフェチニブ、サラカチニブ、トザセルチブ又はダヌセルチブ、シタラビン、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、デシタビン、クラドリビン、フルダラビン、トポテカン、エトポシド6-チオグアニン、コルチコステロイド、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、アザシチジン、三酸化ヒ素及びオールトランスレチノイン酸、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0110】
いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌治療は、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、エロトズマブ、イキサゾミブ、メルファラン、プレドニゾン、若しくはデキサメタゾン、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0111】
いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌治療は、ポマリドミドである。
【0112】
いくつかの実施形態では、ポマリドミドは、2mg又は4mgの用量で経口投与される。
【0113】
いくつかの実施形態では、1つ以上の抗癌治療は、ポマリドミド及びデキサメタゾンである。
【0114】
いくつかの実施形態では、ポマリドミドは、遅延投薬スケジュールで投与される。遅延投薬スケジュールは、サイクル1の15日目(C1D15)又はサイクル2の1日目(C2D1)に行われてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、ポマリドミドは、BCMA×CD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体と同時に投与される。
【0116】
いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、少なくとも3回の完全な初期IMiD含有サイクル中に投与される。
【0117】
CD38は、受容体媒介接着及びシグナル伝達における機能を有すると共に、そのエクト型酵素活性を介してカルシウム動員を媒介し、環状ADP-リボース(cADPR)及びADPRの形成を触媒する、多機能タンパク質である。CD38は、サイトカインの分泌並びにリンパ球の活性化及び増殖を媒介する(Funaro et al.,J Immunol 145:2390-6,1990;Terhorst et al.,Cell 771-80,1981;Guse et al.,Nature 398:70-3,1999)。CD38はまた、そのNADグリコヒドラーゼ活性を介して、調節性のT細胞区画を調節することに関与するとされている細胞外NAD+レベルを調節する(Adriouch et al.,Microbes infect 14:1284-92,2012;Chiarugi et al.,Nature Reviews 12:741-52,2012)。Ca2+を介したシグナル伝達に加えて、CD38シグナル伝達は、T及びB細胞上の抗原受容体複合体又は他の種類の受容体複合体、例えば、主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex、MHC)分子とのクロストークを介して生じ、このようにして、CD38は、いくつかの細胞応答並びにIgG1のスイッチング及び分泌にも関与している。
【0118】
任意の適切な抗CD38抗体が、本発明の方法で使用され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号8のHCDR1、配列番号9のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号11のLCDR1、配列番号12のLCDR2、及び配列番号13のLCDR3を含む。
【0120】
上記のCDRは、Kabat番号付けシステムのものである。しかしながら、本明細書で提供されるように、本開示のCDRは、Kabat、Chothia、IMGT、又はAbMナンバリングシステムなどの任意の適切なナンバリングシステムによって提供されてもよい。表3は、Kabat、Chothia、IMGT、及びAbMナンバリングシステムを利用する例示的なCDRを提供する。
【0121】
【表3】
【0122】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号8のHCDR1、配列番号9のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号11のLCDR1、配列番号12のLCDR2、及び配列番号13のLCDR3を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号46のHCDR1、配列番号47のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号11のLCDR1、配列番号12のLCDR2、及び配列番号13のLCDR3を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号48のHCDR1、配列番号49のHCDR2、配列番号10のHCDR3、配列番号11のLCDR1、配列番号12のLCDR2、及び配列番号13のLCDR3を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号50のHCDR1、配列番号51のHCDR2、配列番号52のHCDR3、配列番号53のLCDR1、アミノ酸配列DASを有するLCDR2、及び配列番号13のLCDR3を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号6のVH及び配列番号7のVLを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号12のHC及び配列番号13のLCを含む。
【0128】
本発明の方法において使用される他の抗CD38抗体は、米国特許第7,829,673号に記載のmAb003などの公知の抗体であってもよい。mAb003のVH及びVLは、米国特許第7,829,673号に記載のIgG1/κ;mAb024として表現されてもよい。mAb024のVH及びVLは、米国特許第8,088,896号に記載のIgG1/κ;MOR-202(MOR-03087)として表現されてもよい。MOR-202のVH及びVLは、米国特許第8,153,765号に記載のIgG1/κ;又はイサツキシマブ;として表現されてもよい。イサツキシマブのVH及びVLは、IgG1/κとして表現されてもよい。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、a)配列番号38のVH及び配列番号39のVL、b)配列番号40のVH及び配列番号41のVL、c)配列番号42のVH及び配列番号43のVL、又はd)配列番号44のVH及び配列番号45のVLを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)である。
【0130】
いくつかの実施形態では、ダラツムマブは、配列番号6のVH及び配列番号7のVLを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、ダラツムマブは、配列番号12のHC及び配列番号13のLCを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、キメラ、ヒト化、又はヒトである。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプである。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG1アイソタイプである。
【0135】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、B細胞の形質細胞への分化に関与する細胞膜結合腫瘍壊死因子受容体ファミリーメンバーである。BCMAの発現は、B細胞系統に制限され、その系統では、主に胚中心の濾胞内領域内、及び分化した形質細胞及び形質芽球上で発現される。BCMAは、ナイーブB細胞及びメモリーB細胞上には実質的に存在しない(Tai and Anderson,Immunotherapy 7:1187-99,2015)。BCMA×CD3二重特異性抗体は、T細胞上のCD3受容体複合体及び形質細胞上のBCMAを標的とする。二重結合部位は、BCMA×CD3二重特異性抗体が、T受容体特異性に関係なく、又は活性化のための抗原提示細胞の表面上のMHCクラス1分子への依存に関係なく、CD3+T細胞を骨髄腫細胞に近接して引き込むことを可能にし、BCMA陽性細胞の細胞死をもたらす。
【0136】
任意の適切なBCMA×CD3二重特異性抗体が、本出願の方法において使用され得る。例示的な多重特異性及び/又は二重特異性形式は、二重標的分子を含むは、二重標的(Dual Targeting、DT)-Ig(GSK/Domantis)、2in1(Two-in-one)抗体(Genentech)、及びmAb2(F-Star)、二重可変ドメイン(DVD)-Ig(Abbott)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)、及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)、及びTvAb(Roche)、ScFv/Fc融合体(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion、Zymogenetics/BMS)、及び二重親和性再標的技術(Dual Affinity Retargeting Technology、Fc-DART)(MacroGenics)、F(ab)2(Medarex/AMGEN)、二重活性又はBis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、二価二重特異性(Biotecnol)、及びFab-Fv(UCB-Celltech)、二重特異性T細胞エンゲージャー(Bispecific T Cell Engager、BITE)(Micromet)、タンデムダイアボディ(Tandem Diabody、Tandab)(Affimed)、二重親和性再標的技術(DART)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的ナノボディ(Ablynx)、二重標的重鎖のみドメイン抗体を含む。二重特異性抗体の様々なフォーマットは、例えば、Chames and Baty(2009)Curr Opin Drug Disc Dev 12:276及びNunez-Prado et al.,(2015)Drug Discovery Today 20(5):588-594に記載されている。
【0137】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体及び抗CD38抗体は、抗原結合断片である。例示的な抗原結合断片は、Fab、F(ab’)2、Fd、及びFv断片である。
【0138】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、キメラ、ヒト化、又はヒトである。
【0139】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、配列番号18のHCDR1、配列番号19のHCDR2、配列番号20のHCDR3を有するVH及び配列番号21のLCDR1、配列番号22のLCDR2、及び配列番号23のLCDR3を有するVLを含むBCMA結合ドメイン、並びに配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3を有するVH及び配列番号31のLCDR1、配列番号32のLCDR2、配列番号33のLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。BCMA×CD3二重特異性抗体のHCDR及びLCDRを、以下の表4に列挙する。
【0140】
【表4】
【0141】
上記の表に列挙されるCDRは、Kabat番号付けシステムのものである。しかしながら、本明細書で提供されるように、本開示のCDRは、Kabat、Chothia、IMGT、又はAbMナンバリングシステムのいずれかなどの任意の適切なナンバリングシステムによって提供されてもよい。以下の表5~7は、Chothia、AbM、及びIMGTナンバリングシステムを利用する例示的なCDRを提供する。
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
【表7】
【0145】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、配列番号18のHCDR1、配列番号19のHCDR2、配列番号20のHCDR3を有するVH及び配列番号21のLCDR1、配列番号22のLCDR2、及び配列番号23のLCDR3を有するVLを含むBCMA結合ドメイン、並びに配列番号28のHCDR1、配列番号29のHCDR2、配列番号30のHCDR3を有するVH及び配列番号31のLCDR1、配列番号32のLCDR2、配列番号33のLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、配列番号54のHCDR1、配列番号55のHCDR2、配列番号20のHCDR3を有するVH及び配列番号21のLCDR1、配列番号22のLCDR2、及び配列番号23のLCDR3を有するVLを含むBCMA結合ドメイン、並びに配列番号56のHCDR1、配列番号57のHCDR2、配列番号30のHCDR3を有するVH及び配列番号31のLCDR1、配列番号32のLCDR2、配列番号33のLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、配列番号58のHCDR1、配列番号59のHCDR2、配列番号20のHCDR3を有するVH及び配列番号21のLCDR1、配列番号22のLCDR2、及び配列番号23のLCDR3を有するVLを含むBCMA結合ドメイン、並びに配列番号60のHCDR1、配列番号61のHCDR2、配列番号30のHCDR3を有するVH及び配列番号31のLCDR1、配列番号32のLCDR2、配列番号33のLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、配列番号62のHCDR1、配列番号63のHCDR2、配列番号64のHCDR3を有するVH、配列番号65のLCDR1を有するVL、アミノ酸配列DDSを有するLCDR2、及び配列番号23のLCDR3を有するVHを含むBCMA結合ドメイン、並びに配列番号66のHCDR1、配列番号67のHCDR2、配列番号68のHCDR3を有するVH、配列番号69のLCDR1、アミノ酸配列GTNを有するLCDR2、及び配列番号33のLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、配列番号24のVH及び配列番号25のVLを含むBCMA結合ドメイン、並びに配列番号34のVH及び配列番号35のVLを含むCD3結合ドメインを含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、BCMAに結合するBCMA×CD3二重特異性抗体は、配列番号26の第1の重鎖(first heavy chain、HC1)、配列番号27の第1の軽鎖(first light chain、LC1)、配列番号36の第2の重鎖(second heavy chain、HC2)、及び配列番号37の第2の軽鎖(second light chain、LC2)を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体のBCMA結合アーム及びBCMA×CD3二重特異性抗体のCD3結合アームは、表8a及び8bに提供されているアミノ酸配列を含む。
【0152】
【表8】
【0153】
【表9】
【0154】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体が、Seattle GeneticsによるACTR癌療法のBCMA結合ドメイン、AFM-26、ALLO-715、CRISPR Therapeuticsによる抗BCMA同種CAR-T癌療法、Sorrento Therapeuticsによる抗BCMA CAR-T、Hrain Biotechnologyによる抗CD19/BCMA CAR-T癌療法、Chineo Med(北京)によるBCMA CAR-T療法、Triumvira ImmunologicsによるBCMA TAC-T癌療法、Shanghai Unicar-Therapy BiomedによるBCMA-CAR T癌療法、RegeneronによるBCMA/CD3抗体、NantKwestによるCAR-NK癌療法、CC-93629、CMD-505、CTX-4419、CYAD-211、HDP-101、HPN-217、P-BCMA-ALLO1、TNB-383B、bb-2121、AUTO-2、PregeneによるBCMAキメラ抗原受容体療法、Shanghai Bioray LaboratoryによるBCMA-CAR T細胞、CARsgen TherapeuticsによるBCMA-CAR-T細胞、Shenzhen BinDeBioによるCAR-T/TCR-T細胞免疫療法、ET-140、P-BCMA-101、REGN-5458、AMG-701、Cellular Biomedicine Groupによる抗BCMA CAR-T癌療法、bb-21217、BI-836909、CC-93269、Descartes-08、IM-21、JNJ-64007957、MEDI-2228、又はPF-06863135からなる群から選択されるBCMAに結合するBCMA結合ドメインを含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、エルラナタマブ(別名PF-06863135)、テネオビオ(別名TNB-383B)、REGN5458、REGN5459、パブルタマブ(別名AMG-701)、BI 836909、CC-93269、WVT078、又はテクリスタマブ(別名JNJ-957又はJNJ-64007957)であってもよいが、これらに限定されない。
【0156】
いくつかの実施形態では、テクリスタマブは、第1の重鎖(HC1)、第1の軽鎖(LC1)、第2の重鎖(HC2)、及び第2の軽鎖(LC2)を含み、HC1はLC1と会合し、HC2はLC2と会合し、HC1及びLC1は、BCMAに免疫特異的に結合する第1の抗原結合性部位を形成し、HC2及びLC2は、CD3に免疫特異的に結合する第2の抗原結合性部位を形成する。いくつかの実施形態では、テクリスタマブは、配列番号26のHC1、配列番号27のLC1、配列番号36のHC2、及び配列番号37のLC2を含む。いくつかの実施形態では、テクリスタマブのBCMAアーム及びCD3アームは、それらのそれぞれのFcドメイン間の相互作用を介して機能的二重特異性抗体を形成する。
【0157】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、国際公開第2017/031104号に記載されるCD3結合ドメインのいずれか1つを含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプである。
【0159】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、IgG1アイソタイプである。
【0160】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、IgG2アイソタイプである。
【0161】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、IgG3アイソタイプである。
【0162】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプである。
【0163】
BCMA×CD3二重特異性抗体は、任意のアロタイプのものとすることができる。アロタイプは、結合又はFc媒介性エフェクター機能などのBCMA×CD3二重特異性抗体の特性に影響を与えないことが予想される。治療用抗体の免疫原性は、注入反応のリスクの高さ及び治療奏効の期間短縮に関連している(Baert et al.,(2003)N Engl J Med 348:602-08)。宿主において治療用抗体が免疫応答を誘導する程度は、抗体のアロタイプによって部分的に決定されてもよい(Stickler et al.,(2011)Genes and Immunity 12:213-21)。抗体のアロタイプは、抗体の定常領域配列における特定の位置のアミノ酸配列の変異に関連する。表9は、選択されたIgG1、IgG2、及びIgG4アロタイプを示す。
【0164】
【表10】
【0165】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、多重特異性抗体のFcγ受容体(FcγR)への結合を低減する1つ以上のFc置換を含む。多重特異性抗体のFcγRへの結合を低減する置換は、多重特異性抗体のADCC、ADCP、及び/又はCDCなどのFcエフェクター機能を低減する。特定の置換は、配列番号16の野生型IgG1又は配列番号17の野生型IgG4と比較して行うことができる。
【0166】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG4上のF234A/L235A、IgG1上のL234A/L235A、IgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、IgG4上のF234A/L235A、IgG4上のS228P/F234A/L235A、全てのIgアイソタイプ上のN297A、IgG2上のV234A/G237A、IgG1上のK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2上のH268Q/V309L/A330S/P331S、IgG1上のS267E/L328F、IgG1上のL234F/L235E/D265A、IgG1上のL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、IgG4上のS228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及びIgG4上のS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sからなる群から選択され、残基の番号付けは、EUインデックスに従う。
【0167】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG4上のF234A/L235Aである。
【0168】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG1上のL234A/L235Aである。
【0169】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331Sである。
【0170】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG4上のF234A/L235Aである。
【0171】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG4上のS228P/F234A/L235Aである。
【0172】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、全てのIgアイソタイプ上のN297Aである。
【0173】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG2上のV234A/G237Aである。
【0174】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG1上のK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358Mである。
【0175】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG2上のH268Q/V309L/A330S/P331Sである。
【0176】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG1上のS267E/L328Fである。いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG1上のL234F/L235E/D265Aである。
【0177】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG1上のL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331Sである。
【0178】
いくつかの実施形態では、1つ以上のFc置換は、IgG4上のS228P/F234A/L235A/G237A/P238S及びIgG4上のS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sである。
【0179】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、S228P置換を更に含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、第1のCH3ドメイン若しくは第2のCH3ドメインに、又は第1のCH3ドメイン及び第2のCH3ドメインの両方に、1つ又は2つ以上の非対称置換を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、1つ以上の非対称置換は、F450L/K409R、野生型/F409L_R409K、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S及びT366W/T366S_L368A_Y407V、L351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、並びにT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wからなる群から選択される。
【0182】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、F450L/K409Rである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、野生型/F409L_R409Kである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366Y/F405Aである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366W/F405Wである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、F405W/Y407Aである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T394W/Y407Tである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T394S/Y407Aである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366W/T394Sである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、F405W/T394Sである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366W/T366S_L368A_Y407Vである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、L351Y_F405A_Y407V/T394Wである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407Vである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407Vである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、L351Y_Y407A/T366A_K409Fである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、L351Y_Y407A/T366V_K409Fである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、Y407A/T366A_K409Fである。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の非対称置換は、T350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wである。
【0183】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプであり、第1の重鎖(HC1)の405位にフェニルアラニン及び409位にアルギニン、並びに第2の重鎖(HC2)の405位にロイシン及び409位にリジンを含み、残基の番号付けは、EUインデックスに従う。
【0184】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、HC1及びHC2の両方の228位にプロリン、234位にアラニン、及び235位にアラニンを更に含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、癌は、血液悪性腫瘍又は固形腫瘍である。
【0186】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、良性単クローン性γグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance、MGUS)、急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia、ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma、BL)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma、FL)、マントル細胞リンパ腫(mantle-cell lymphoma、MCL)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞白血病、軽鎖アミロイドーシス(AL)、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、B細胞悪性腫瘍、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、CML)、毛状細胞白血病(hairy cell leukemia、HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(marginal zone B-cell lymphoma、MZL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(mucosa-associated lymphatic tissue、MALT)、形質細胞白血病、未分化大細胞リンパ腫(anaplastic large-cell lymphoma、ALCL)、白血病、又はリンパ腫である。
【0187】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、新たに診断された多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、再発又は難治性多発性骨髄腫(RRMM)である。
【0188】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、高リスク多発性骨髄腫である。高リスク多発性骨髄腫を有する対象は、早期に再発し、不良予後及び転帰を有することが知られている。対象は、以下の細胞遺伝学的異常のうちの1つ以上を有する場合、高リスク多発性骨髄腫を有すると分類され得る:t(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、del17p、1qAmp、t(4;14)(p16;q32)及びt(14;16)(q32;q23)、t(4;14)(p16;q32)及びdel17p、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p、又はt(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、及びdel17p。
【0189】
いくつかの実施形態では、高リスク多発性骨髄腫を有する対象が、t(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、del17p、1qAmp、t(4;14)(p16;q32)及びt(14;16)(q32;q23)、t(4;14)(p16;q32)及びdel17p、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p;若しくはt(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p、又はこれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の染色体異常を有し得る。
【0190】
様々な定性的及び/又は定量的方法が、疾患の再発性又は難治性を判定するために使用できる。関連し得る症状は、例えば、患者の健康状態の低下若しくはプラトー状態、固形腫瘍に関連する様々な症状の復元若しくは悪化、及び/又は1つの場所から他の臓器、組織、若しくは細胞への体内の癌性細胞の転移である。
【0191】
細胞遺伝学的異常は、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(fluorescent in situ hybridization、FISH)によって検出され得る。染色体転座において、癌遺伝子は、染色体14q32上のIgH領域に転座され、これらの遺伝子の制御不全がもたらされる。t(4;14)(p16;q32)は、線維芽細胞成長因子受容体3(fibroblast growth factor receptor 3、FGFR3)及び多発性骨髄腫SETドメイン含有タンパク質(multiple myeloma SET、MMSET)(別名、WHSC1/NSD2)の転座を伴い、t(14;16)(q32;q23)は、MAF転写因子C-MAFの転座を伴う。17p欠失(del17p)は、p53遺伝子座の喪失を伴う。
【0192】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、抗CD38抗体、レナリドミド、ボルテゾミブ、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、エロツズマブ、イキサゾミブ、メルファラン、若しくはサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせによる治療に対して再発又は難治性である。
【0193】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、抗CD38抗体による治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、レナリドミドによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、ボルテゾミブによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、ポマリドミドによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、カルフィルゾミブによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、エロツズマブによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、イキサゾミブによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、メルファランによる治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、サリドマイドによる治療に対して再発又は難治性である。
【0194】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、AMLである。
【0195】
いくつかの実施形態では、AMLは、少なくとも1つの遺伝的異常を有するAMLである。いくつかの実施形態では、AMLは、多系統異形成を伴うAMLである。いくつかの実施形態では、AMLは治療関連AMLである。いくつかの実施形態では、AMLは、未分化AMLである。いくつかの実施形態では、AMLは、最小成熟を伴うAMLである。いくつかの実施形態では、AMLは、成熟型AMLである。いくつかの実施形態では、AMLは、急性骨髄性単球性白血病である。いくつかの実施形態では、AMLは、急性単球性白血病である。いくつかの実施形態では、AMLは、急性赤白血病である。いくつかの実施形態では、AMLは、急性巨核芽球性白血病である。いくつかの実施形態では、AMLは、急性好塩基球性白血病である。いくつかの実施形態では、AMLは、線維症を伴う急性汎骨髄症である。いくつかの実施形態では、AMLは、骨髄性肉腫である。
【0196】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、8番染色体と21番染色体との間の転座、16番染色体の転座若しくは逆位、15番染色体と17番染色体との間の転座、11番染色体の変化、又はfms関連チロシンキナーゼ3(fms-related tyrosine kinase 3、FLT3)、ヌクレオフォスミン(nucleophosmin、NPM1)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(isocitrate dehydrogenase 1、IDH1)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(isocitrate dehydrogenase 2、IDH2)、DNA(シトシン-5)-メチルトランスフェラーゼ3(DNA(cytosine-5)-methyltransferase 3、DNMT3A)、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ(CCAAT/enhancer binding protein alpha、CEBPA)、U2核内低分子RNA補助因子1(U2 small nuclear RNA auxiliary factor 1、U2AF1)、zeste2ポリコーム抑制複合体2サブユニットエンハンサー(enhancer of zeste 2 polycomb repressive complex 2 subunit、EZH2)、染色体構造維持1A(structural maintenance of chromosomes 1A、SMC1A)、若しくは染色体構造維持3(structural maintenance of chromosomes 3、SMC3)における変異である。
【0197】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、8番染色体と21番染色体との間の転座である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、16番染色体の転座又は逆位である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、15番染色体と17番染色体との間の転座である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、第11染色体における変化である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、fms関連チロシンキナーゼ3(FLT3)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、ヌクレオフォスミン(NPM1)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、DNA(シトシン-5)-メチルトランスフェラーゼ3(DNMT3A)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ(CEBPA)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、U2核内低分子RNA補助因子1(U2AF1)における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、zeste2ポリコーム抑制複合体2サブユニットエンハンサー(EZH2)の変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、染色体1A(SMC1A)の構造維持における変異である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、第3染色体の構造維持(SMC3)における変異である。
【0198】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は転座t(8;21)(q22;q22)、逆位inv(16)(p13;q22)、転座t(16;16)(p13;q22)、転座t(15;17)(q22;q12)、FLT3-ITDの変異、IDH1内のR132H若しくはR100Q/R104V/F108L/R119Q/I130Vの変異、又はIDH2内のR140Q若しくはR172の変異である、請求項13に記載の方法。
【0199】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、転座t(8;21)(q22;q22)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、反転inv(16)(p13;q22)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、転座t(16;16)(p13;q22)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、転座t(15;17)(q22;q12)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、変異FLT3-ITDである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、IDH1における変異R132Hである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的異常は、IDH1におけるR100Q/R104V/F108L/R119Q/I130Vである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、IDH2における変異R140Qである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子異常は、IDH2における変異R172である。
【0200】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、ALLである。
【0201】
いくつかの実施形態では、ALLは、B細胞系列ALL、T細胞系列ALL、成人ALL、又は小児ALLである。
【0202】
いくつかの実施形態では、ALLは、B細胞系列ALLである。いくつかの実施形態では、ALLはT細胞系列ALLである。いくつかの実施形態では、ALLは、成人ALLである。いくつかの実施形態では、ALLは、小児ALLである。
【0203】
いくつかの実施形態では、ALLを有する対象は、フィラデルフィア染色体を有するか、又はBCR-ABLキナーゼ阻害剤による治療に対して耐性であるか若しくはそれに対する後天耐性を有する。
【0204】
いくつかの実施形態では、ALLを有する対象は、フィラデルフィア染色体を有する。いくつかの実施形態では、ALLを有する対象は、BCR-ABLキナーゼ阻害剤による治療に対して耐性であるか、又はそれに対する後天耐性を有する。
【0205】
Ph染色体は、ALLを有する成人の約20%及びALLを有する小児の小さな割合に存在し、予後不良に関連する。再発時には、Ph+陽性ALLを有する患者は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)レジメンにある場合があり、したがってTKIに対して耐性となる場合がある。したがって、抗CD38抗体は、選択的又は部分的に選択的なBCR-ABL阻害剤に対して耐性となった対象に投与され得る。例示的なBCR-ABL阻害剤は、例えば、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ、バフェチニブ、サラカチニブ、トザセルチブ、又はダヌセルチブである。
【0206】
B系列ALL患者において特定される他の染色体再編成は、t(v;11q23)(MLL再構成)、t(1;19)(q23;p13.3);TCF3-PBX1(E2A-PBX1)、t(12;21)(p13;q22);ETV6-RUNX1(TEL-AML1)及びt(5;14)(q31;q32);IL3-IGH)である。
【0207】
いくつかの実施形態では、対象は、t(v;11q23)(MLL再構成)、t(1;19)(q23;p13.3);TCF3-PBX1(E2A-PBX1)、t(12;21)(p13;q22);ETV6-RUNX1(TEL-AML1)又はt(5;14)(q31;q32);IL3-IGH染色体再構成を有するALLを有する。
【0208】
染色体再構成は、周知の方法、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、核型分析、パルスフィールドゲル電気泳動、又はシークエンシングを使用して特定することができる。
【0209】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、くすぶり型多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、MGUSである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、ALLである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、DLBLCである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、BLである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、FLである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、MCLである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、形質細胞白血病である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、ALである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、骨髄異形成症候群(MDS)である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、CLLである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、B細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、CMLである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、HCLである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍である。いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、MZLである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、MALTである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、形質細胞白血病である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、ALCLである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、白血病である。いくつかの実施形態では、血液系腫瘍は、リンパ腫である。
【0210】
一実施形態では、本開示は、対象において癌を治療する方法であって、治療に有効な量のBCMA×CD3二重特異性抗体を対象に投与して、癌を治療することを含み、対象が、BCMA×CD3二重特異性抗体の投与前に抗CD38抗体で治療されている、方法も提供する。
【0211】
本開示はまた、対象において癌を治療する方法であって、治療に有効な量のBCMA×CD3二重特異性抗体を対象に投与して、癌を治療することを含み、対象が、以前の抗癌治療薬による治療に対して再発又は難治性である、方法も提供する。
【0212】
いくつかの実施形態では、BCMA×CD3抗体を投与した対象は、抗CD38抗体による治療に対して耐性及び/又は難治性である。
【0213】
いくつかの実施形態では、癌は、BCMA発現癌である。
【0214】
いくつかの実施形態では、癌は、血液悪性腫瘍である。
【0215】
いくつかの実施形態では、癌は、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、良性単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、B細胞急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞白血病、軽鎖アミロイドーシス、又は非ホジキンリンパ腫である。経験のある医師が、癌診断を行う。
【0216】
いくつかの実施形態では、対象は、抗CD38抗体若しくはレナリドミド、又はこれらの組み合わせによる治療に対して再発又は難治性である。
【0217】
いくつかの実施形態では、対象は、抗CD38抗体による治療に対して再発又は難治性である。いくつかの実施形態では、対象は、レナリドミドによる治療に対して再発又は難治性である。
【0218】
いくつかの実施形態では、対象は、多発性骨髄腫又は他の血液悪性腫瘍を治療するために使用される治療薬などの、以前の抗癌治療による治療に対して再発性又は難治性である。
【0219】
いくつかの実施形態において、対象は、THALOMID(登録商標)(サリドマイド)、REVLIMID(登録商標)(レナリドミド)、POMALYST(登録商標)(ポマリドミド)、VELCADE(登録商標)(bortezomib)、NINLARO(イキサゾミブ)、KYPROLIS(登録商標)(カルフィルゾミブ)、FARADYK(登録商標)(パノビノスタット)、AREDIA(登録商標)(パミドロネート)、ZOMETA(登録商標)(ゾレドロン酸)、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)、エロツズマブ(Empliciti(登録商標))、SARCLISA(登録商標)(イサツキシマブ)、又はメルファラン(Alkeran(登録商標))による治療に対して抵抗性又は再発性である。
【0220】
いくつかの実施形態では、対象は、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)による治療に対して再発性である。
【0221】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、約25mMの酢酸、約60mMの塩化ナトリウム、約140マンニトール、及び約0.04%w/vのポリソルベート-20(PS-20)中の約20mg/mL~約120mg/mLの抗CD38抗体をpH約5.5で含む医薬組成物において投与されるか、又は投与のために提供される。
【0222】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、約1,800mgの抗CD38抗体及び約30,000UのrHuPH20を含む医薬組成物において投与されるか、又は投与のために提供される。
【0223】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、約120mg/mLの抗CD38抗体及び約2,000U/mLのrHuPH20を含む医薬組成物において投与されるか、又は投与のために提供される。
【0224】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、
約5mM~約15mMのヒスチジンと、
約100mM~約300mMのソルビトールと、
約0.01%w/v~約0.04%w/vのPS-20と、
約1mg/mL~約2mg/mLのメチオニンとを、pH約5.5~5.6で含む医薬組成物において投与されるか、又は投与のために提供される。
【0225】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、
約1,800mgの抗CD38抗体と、
約30,000UのrHuPH20と、
約10mMのヒスチジンと、
約300mMのソルビトールと、
約0.04%(w/v)のPS-20と、
約1mg/mLのメチオニンとを含み、pH約5.6である、医薬組成物である。
【0226】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、
約120mg/mLの抗CD38抗体と、
約2,000U/mLのrHuPH20と、
約10mMのヒスチジンと、
約300mMのソルビトールと、
約0.04%(w/v)のPS-20と、
約1mg/mLのメチオニンとを含み、pH約5.6である医薬組成物である。
【0227】
本発明はまた、本明細書に記載されるBCMA×CD3二重特異性抗体と抗CD38抗体とを含む医薬組成物を提供する。例えば、本組成物は、配列番号24のVH及び配列番号25のVLを含むBCMA結合ドメイン、配列番号34のVH及び配列番号35のVLを含むCD3結合ドメイン、配列番号6のVH及び配列番号7のVLを含む抗CD38抗体を含み得る。
【0228】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号26のHC1、配列番号27のLC1、配列番号36のHC2、配列番号37のLC2を含むBCMA×CD3二重特異性抗体、並びに配列番号14のHC及び配列番号15のLCを含む抗CD38抗体を含む。いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプであり、第1の重鎖(HC1)の405位にフェニルアラニン及び409位にアルギニン、並びに第2の重鎖(HC2)の405位にロイシン及び409位にリジンを含み、残基の番号付けは、EUインデックスに従う。いくつかの実施形態では、BCMA×CD3二重特異性抗体は、HC1及びHC2の両方の228位にプロリン、234位にアラニン、及び235位にアラニンを更に含む。
【0229】
本開示はまた、本出願の方法において使用するための、BCMA×CD3二重特異性抗体と抗CD38抗体とを含むキット又は組み合わせを提供する。
【0230】
本発明の方法で使用される抗体を生成する方法
特定の抗原に結合する本発明の方法で使用される抗体は、例えば、ファージディスプレイライブラリから新たに選択されてもよく、その場合、ファージは、ヒト免疫グロブリン又はその一部分(Fab、一本鎖抗体(scFv)、又は対をなさない若しくは対をなした抗体可変領域など)を発現するように操作される(Knappik et al.,J Mol Biol 296:57-86,2000;Krebs et al.,J Immunol Meth 254:67-84,2001;Vaughan et al.,Nature Biotechnology 14:309-14,1996;Sheets et al.,PITAS(USA)95:6157-62(1998);Hoogenboom and Winter,J Mol Biol 227:381,1991;Marks et al.,J Mol Biol 222:581,1991)。Shi et al(2010)J.Mol.Biol.397:385-96及び国際公開第2009/085462号に記載のバクテリオファージpIXコートタンパク質との融合タンパク質として抗体重鎖及び軽鎖可変領域を発現するファージディスプレイライブラリ。抗体ライブラリをBCMAなどの所望の抗原への結合に関してスクリーニングし、得られた陽性クローンを更に特徴付け、クローンライセートからFabを単離した後、完全長抗体としてクローニングしてもよい。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、当該技術分野にて確立されている。例えば、米国特許第5,223,409号、米国特許第5,403,484号、米国特許第5,571,698号、米国特許第5,427,908号、米国特許第5,580,717号、米国特許第5,969,108号、米国特許第6,172,197号、米国特許第5,885,793号、米国特許第6,521,404号、米国特許第6,544,731号、米国特許第6,555,313号、米国特許第6,582,915号、及び米国特許第6,593,081号を参照されたい。
【0231】
T細胞リダイレクト二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号に記載された方法に従って、無細胞環境下、2種類の単一特異性ホモ二量体抗体のCH3領域中に非対称な変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化させる還元条件下において、2種類の親単一特異性ホモ二量体抗体から二重特異性ヘテロ二量体抗体を形成することにより生成されてもよい。この方法では、ヘテロ二量体の安定性を促進する特定の置換をCH3ドメインに有するように、2つの単一特異性二価抗体を遺伝子操作する。これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合を異性化させるために十分な還元条件下において一緒にインキュベートされ、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適には、非還元条件に戻され得る。使用され得る代表的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-mercaptoethylamine、2-MEA)、ジチオスレイトール(dithiothreitol、DTT)、ジチオエリスリトール(dithioerythritol、DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)、L-システイン、及びβ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度で、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えばpH7.0又はpH7.4で、少なくとも90分間のインキュベートを使用することができる。
【0232】
二重特異性抗体の第1の重鎖及び第2の重鎖に使用され得る代表的なCH3の変異は、K409R及び/又はF405Lである。
【0233】
使用され得る追加のCH3変異には、Duobody(登録商標)変異(Genmab)、ノブインホール変異(Genentech)、静電的マッチ変異(Chugai、Amgen、NovoNordisk、Oncomed)、鎖交換操作ドメインボディ(SEEDボディ)(EMD Serono)、及び他の非対称変異(例えば、Zymeworks)などの技術が含まれる。
【0234】
Duobody(登録商標)変異(Genmab)は、例えば、米国特許第9150663号及び米国特許出願公開第2014/0303356号に開示されており、F405L/K409R、野生型/F405L_R409K、T350I_K370T_F405L/K409R、K370W/K409R、D399AFGHILMNRSTVWY/K409R、T366ADEFGHILMQVY/K409R、L368ADEGHNRSTVQ/K409AGRH、D399FHKRQ/K409AGRH、F405IKLSTVW/K409AGRH、及びY407LWQ/K409AGRHの変異が含まれる。
【0235】
ノブインホール変異は、例えば、国際公開第1996/027011号に開示されており、小さい側鎖(ホール)を有するアミノ酸が第1のCH3領域に導入され、大きい側鎖(ノブ)を有するアミノ酸が第2のCH3領域に導入され、第1のCH3領域と第2のCH3領域との間に優先的な相互作用をもたらす、CH3領域の界面上の変異が含まれる。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3領域変異は、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである。
【0236】
重鎖ヘテロ二量体形成は、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/028637号、又は米国特許出願公開第2011/0123532号に記載のように、第1のCH3領域上の正に荷電した残基及び第2のCH3領域上の負に荷電した残基を置換することにより、静電相互作用を使用することによって促進され得る。
【0237】
重鎖ヘテロ二量体化を促進するために使用され得る他の非対称変異は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は同第2013/0195849号に記載のL351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wである。
【0238】
SEEDボディ変異は、米国特許出願公開第20070287170号に記載のように、選択されたIgG残基をIgA残基と置換して、重鎖ヘテロ二量体化を促進することを伴う。
【0239】
使用され得る他の例示的な変異は、国際公開第2007/147901号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2013157954号、国際公開第2013096291号、及び米国特許出願公開第2018/0118849号に記載のR409D_K370E/D399K_E357K、S354C_T366W/Y349C_T366S_L368A_Y407V、Y349C_T366W/S354C_T366S_L368A_Y407V、T366K/L351D、L351K/Y349E、L351K/Y349D、L351K/L368E、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、K392D/D399K、K392D/E356K、K253E_D282K_K322D/D239K_E240K_K292D、K392D_K409D/D356K_D399Kである。
【0240】
BCMA×CD3二重特異性抗体として使用され得る追加の二重特異性又は多重特異性構造には、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD)(国際公開第2009/134776号、DVDは、VH1-リンカー-VH2-CH構造を有する重鎖と、VL1-リンカー-VL2-CL構造を有する軽鎖とを含む完全長抗体であり、リンカーは任意選択的である)、異なる特異性を有する2つの抗体アームを結合するための様々な二量化ドメインを含む構造、例えば、ロイシンジッパー又はコラーゲン二量化ドメイン(国際公開第2012/022811号、米国特許第5,932,448号、同第6,833,441号)、一緒にコンジュゲートされた2つ又は3つ以上のドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、ラクダ科抗体及び遺伝子操作されたラクダ科抗体などの重鎖のみ抗体、二重標的化(DT)-Ig(GSK/Domantis)、ツーインワン抗体(Genentech)、架橋Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)及びCovX-body(CovX/Pfizer)、IgG様二重特異性(InnClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)及びTvAb(Roche)、ScFv/Fc融合体(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion,Zymogenetics/BMS))、二重親和性再標的化技術(Fc-DART)(MacroGenics)及びDual(ScFv)-Fab(National Research Center for Antibody Medicine--China)、Dual-Action又はBis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)並びにFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられる。ScFv抗体、ダイアボディに基づく抗体、及びドメイン抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャー(Bispecific T Cell Engager、BiTE)(Micromet)、タンデムダイアボディ(Tandem Diabody、Tandab)(Affimed)、二重親和性再標的化技術(DART)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的ナノボディ(Ablynx)、二重標的重鎖のみドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。
【0241】
抗体のFc操作
二重特異性若しくは多重特異性抗体又は抗CD38抗体などのBCMA×CD3二重特異性抗体のFc領域は、BCMA×CD3二重特異性抗体の活性化Fcγ受容体(FcγR)への結合を低減する、かつ/又はC1q結合、補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity、CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)、若しくは貪食作用(antibody-dependent cell-mediated phagocytosis、ADCP)などのFcエフェクター機能を低減する、Fc領域における少なくとも1つの置換を含み得る。
【0242】
Fcの活性化FcγRへの結合を低減させ、次に、エフェクター機能を低減するように置換され得るFc位置は、IgG1におけるL234A/L235A、IgG2におけるV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、IgG4におけるF234A/L235A、IgG4におけるS228P/F234A/L235A、全てのIgアイソタイプにおけるN297A、IgG2におけるV234A/G237A、IgG1におけるK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2におけるH268Q/V309L/A330S/P331S、IgG1におけるS267E/L328F、IgG1におけるL234F/L235E/D265A、IgG1におけるL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、IgG4におけるS228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及びIgG4におけるS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sの置換であり、残基の番号付けは、EUインデックスに従う。
【0243】
CDCを低減するために使用され得るFc置換は、K322A置換である。
【0244】
IgG4の安定性を向上させるために、周知のS228P置換をIgG4抗体に更に行うことができる。
【0245】
例示的な野生型IgG1は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。例示的な野生型IgG4は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0246】
「抗体依存性細胞傷害」、「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」、又は(ADCC)は、抗体で被覆された標的細胞と、ナチュラルキラー細胞(NK)、単球、マクロファージ、及び好中球などの溶解活性を有するエフェクター細胞との、エフェクター細胞上で発現するFcγ受容体(FcγR)を介した相互作用に依存する細胞死を誘導するための機序である。例えば、NK細胞はFcγRIIIaを発現し、一方、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIaを発現する。抗体のADCC活性は、抗体が結合するタンパク質を発現する細胞を標的細胞として、及びNK細胞をエフェクター細胞として使用するインビトロアッセイを使用して評価されてもよい。細胞溶解は、溶解した細胞からの標識(例えば、放射性基質、蛍光染料、又は天然細胞内タンパク質)の放出によって検出することができる。例示的なアッセイでは、標的細胞を、1つの標的細胞の、4つのエフェクター細胞に対する比で使用する。標的細胞はBATDAで予め標識し、エフェクター細胞及び試験抗体と組み合わせる。サンプルを2時間インキュベートし、上清に放出したBATDAを測定することにより、細胞溶解を測定する。0.67%Triton X-100(Sigma Aldrich)による最大の細胞傷害に対してデータを正規化し、またあらゆる抗体の非存在下における標的細胞からのBATDAの自然放出によって最小対照を求める。
【0247】
「抗体依存性細胞貪食作用」(「ADCP」)とは、例えばマクロファージ又は樹状細胞などの貪食細胞による取り込みにより、抗体被覆標的細胞を排除する機序を指す。ADCPは、単球由来マクロファージをエフェクター細胞として、及び抗体が結合するタンパク質を発現する細胞をGFP又は別の標識分子を発現するようにも操作された標的細胞として使用することによって評価することができる。例示的なアッセイでは、エフェクター:標的細胞比は、例えば4:1とすることができる。エフェクター細胞は、本発明の抗体を添加して、又は添加せずに、標的細胞と共に4時間インキュベートしてもよい。インキュベーション後、細胞は、アクターゼを使用して剥離され得る。マクロファージは、蛍光標識に結合した抗CD11b抗体及び抗CD14抗体を用いて特定することができ、貪食作用の割合は、標準的な方法を使用して、CD11CD14マクロファージにおけるGFP蛍光%に基づいて求めることができる。
【0248】
「補体依存性細胞傷害」即ち「CDC」は、標的結合抗体のFcエフェクタードメインが補体成分C1qに結合してこれを活性化し、かかる補体成分C1qが次に補体カスケードを活性化して標的細胞の細胞死をもたらす、細胞死を誘導するための機序を指す。補体の活性化はまた、標的細胞表面に対する補体成分の沈着を生じさせ得、白血球への補体受容体(例えば、CR3)の結合によって、CDCを容易にする。細胞のCDCは、例えば、Daudi細胞を、RPMI-B(1%のBSAを補給したRPMI)に1×10個の細胞/ウェル(50μL/ウェル)でプレーティングし、50μLの試験タンパク質を0~100μg/mLの最終濃度でウェルに添加し、反応物を室温で15分間インキュベートし、11μLのプールヒト血清をウェルに添加し、反応物を37℃で45分間インキュベートすることによって測定され得る。溶解した細胞の割合(%)は、標準法を使用して、FACSアッセイにおけるヨウ化プロピジウム染色細胞の%として検出され得る。
【0249】
抗体のFcγR又はFcRnへの結合は、フローサイトメトリーを使用して、各受容体を発現するように遺伝子操作された細胞にて評価することができる。例示的な結合アッセイでは、96ウェルプレートに2×10個/ウェルの細胞を播種し、BSA染色緩衝液(BD Biosciences、San Jose,USA)中、4℃で30分間ブロッキングする。細胞を、氷上で、4℃で1.5時間、試験抗体と共にインキュベートする。BSA染色緩衝液で2回洗浄した後、細胞を、R-PE標識抗ヒトIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories)と共に4℃で45分間、インキュベートする。細胞を、染色緩衝液で2回洗浄し、次いで、1:200希釈したDRAQ7生/死細胞染色試薬(Cell Signaling Technology、Danvers,USA)を含有する150μLの染色緩衝液中に再懸濁する。染色された細胞のPE及びDRAQ7シグナルを、Miltenyi MACSQuantフローサイトメーター(Miltenyi Biotec,米国オーバーン)によってそれぞれB2及びB4チャンネルを使用して検出した。生細胞をDRAQ7除外でゲーティングし、収集された少なくとも10,000生細胞イベントについて、幾何平均蛍光シグナルを決定する。分析にはFlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用する。データを、平均蛍光シグナルに対する抗体濃度の対数としてプロットする。非線形回帰分析を実行する。
【0250】
キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体(CAR)は、遺伝子操作された受容体である。これらの操作された受容体は、当該技術分野で既知の技術に従って、T細胞を含む免疫細胞に容易に挿入し、それらによって発現させることができる。CARによって、単一の受容体は、特定の抗原を認識し、その抗原に結合したときに、免疫細胞を活性化して、その抗原を担持する細胞を攻撃及び破壊するようにプログラミングすることができる。これらの抗原が腫瘍細胞上に存在する場合、CARを発現する免疫細胞は、腫瘍細胞を標的とし、それらを殺傷することができる。
【0251】
CARは、典型的には、抗原(例えば、前立腺新生抗原又はB細胞成熟抗原(BCMA))に結合する細胞外ドメイン、任意のリンカー、膜貫通ドメイン、並びに共刺激ドメイン及び/又はシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインを含む。
【0252】
CARの細胞外ドメインは、所望の抗原(例えば、前立腺新生抗原)に結合する任意のポリペプチドを含有してもよい。細胞外ドメインは、抗体の一部分又は選択的スカフォールドであるscFvを含み得る。CARはまた、タンデムに配置され、リンカー配列によって分離され得る2つ又は3つ以上の所望の抗原に結合するように操作されてもよい。例えば、1つ以上のドメイン抗体、scFv、ラマVHH抗体、又は他のVHのみ抗体断片を、リンカーを介してタンデムに構成して、CARに二重特異性又は多重特異性を提供してもよい。
【0253】
CARの膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通ドメイン、T細胞受容体のアルファ、ベータ、若しくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CDI la、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、4-1BBL、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFI)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7R a、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDI Id、ITGAE、CD103、ITGAL、CDI la、LFA-1、ITGAM、CDI lb、ITGAX、CDI lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(触覚)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、及び/又はNKG2Cに由来し得る。
【0254】
CARの細胞内共刺激ドメインは、1つ以上の共刺激分子の細胞内ドメインに由来し得る。共刺激分子は、抗原への結合時にTリンパ球の効率的な活性化及び機能に必要な第2のシグナルを提供する、抗原受容体又はFc受容体以外の周知の細胞表面分子である。CARに使用され得る例示的な共刺激ドメインは、4-1BB、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70の細胞内ドメインである。
【0255】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば、O’O3ζ、CD3ε、CD22、CD79a、CD66d、又はCD39のシグナル伝達ドメインに由来し得る。「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター細胞機能を誘発するために、標的抗原への有効なCAR結合のメッセージの、免疫エフェクター細胞の内部への形質導入に関与して、エフェクター細胞機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖、及び細胞傷害性活性(細胞傷害性因子のCAR結合標的細胞への放出、又は細胞外CARドメインへの抗原結合後に引き出される他の細胞応答を含む)を引き出すCARポリペプチドの一部を指す。
【0256】
細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置付けられる任意のCARのリンカーは、約2~100アミノ酸長のポリペプチドであり得る。リンカーは、隣接するタンパク質ドメインが互いに対して自由に移動するように、グリシン及びセリンなどの可撓性残基を含み得るか、又はそれで構成され得る。2つの隣接するドメインが互いに立体的に干渉しないことを確実にすることが望ましい場合、より長いリンカーを使用することができる。リンカーは、開裂可能又は開裂不可能であり得る。開裂可能なリンカーの例には、2Aリンカー(例えば、T2A)、2A様リンカー、又はこれらの機能的等価物及びこれらの組み合わせが含まれる。リンカーはまた、任意の免疫グロブリンのヒンジ領域又はヒンジ領域の一部分に由来し得る。
【0257】
使用することができる例示的なCARは、例えば、本開示の多発性骨髄腫ネオ抗原に結合する細胞外ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含有するCARである。他の例示的なCARは、本開示の卵巣ネオ抗原に結合する細胞外ドメイン、CD8又はCD28膜貫通ドメイン、CD28、41BB、又はOX40共刺激ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含有する。
【0258】
CARは、標準的な分子生物学的技術によって生成される。所望の抗原に結合する細胞外ドメインは、本明細書に記載の技術を使用して生成された抗体又はそれらの抗原結合断片に由来し得る。
【0259】
転帰
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって治療される対象は、部分奏効(PR)以上を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって治療される対象は、非常に良好な部分奏効(VGPR)以上を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって治療される対象は、完全奏効(CR)以上を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって治療される対象は、厳密な完全奏効(sCR)以上を有する。いくつかの実施形態では、PR、VGPR、CR、及びsCRは、IMWG2016基準によって定義されるとおりである。いくつかの実施形態では、PRは、血清Mタンパク質の50%超の低減及び24時間尿Mタンパク質の90%超又は200mg未満/24時間までの低減として定義される。いくつかの実施形態では、VGPRは、免疫固定によって検出可能であるが電気泳動では検出可能でない血清及び尿中Mタンパク質レベル、又は血清Mタンパク質+尿中Mタンパク質レベルの90%超<100mg未満/24時間の低減を有すると定義される。いくつかの実施形態では、CRは、血清及び尿に対する負の免疫固定、並びに骨髄中の任意の軟組織形質細胞腫及び<5%の形質細胞の消失を有すると定義される。いくつかの実施形態では、sCRは、上記のようなCR定義+正常なFLC比及び免疫組織化学又は免疫蛍光法による骨髄中のクローン細胞の非存在として定義される。
【0260】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法による治療は、T細胞活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、CD25、PD-1、CD4+T細胞上のCD38、CD8+T細胞上のCD38、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、CD25の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、PD-1の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、CD4+T細胞上のCD38の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、CD8+T細胞上のCD38の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、CD38+CD8+T細胞、CD38+CD4+T細胞、Tregs T細胞、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つの頻度の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、CD38+CD8+T細胞の頻度の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、CD38+CD4+T細胞の頻度の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、Tregs T細胞の頻度の増加をもたらす。
【0261】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、単剤療法として投与された場合、本方法の成分の活性の増強をもたらすか、又はその有効性の向上をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、抗CD38抗体を用いない治療と比較して、BCMA×CD3二重特異性抗体の活性の増強をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法による治療は、BCMA×CD3二重特異性抗体を用いない治療と比較して、抗CD38抗体の活性の増強をもたらす。
【0262】
番号付き実施形態
本開示はまた、以下の番号付きの実施形態を提供する。
1.治療を必要とする対象を治療する方法であって、
(1)BCMA×CD3二重特異性抗体を200μg/kg~6mg/kg又は60mg~600mgの用量で1~4週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、方法。
1a.治療を必要とする対象を治療する方法であって、
(1)BCMA×CD3二重特異性抗体を200μg/kg~1mg/kgの用量で1~2週間毎に対象に静脈内投与することと、
(2)抗CD38抗体を1200mg~2400mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、方法。
1a1.BCMA×CD3二重特異性抗体が、270μg/kgの用量で毎週対象に静脈内投与される、実施形態1aに記載の方法。
1a2.抗CD38抗体が、1800mgの用量で毎週、隔週、3週間毎、又は4週間毎に皮下投与される、実施形態1a又は1a1に記載の方法。
1a3.抗CD38抗体が、1800mgの用量で治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、及び治療の24週目の後は4週間に1回皮下投与される、実施形態1a1に記載の方法。
2.
(1)BCMA×CD3二重特異性抗体を1mg/kg~6mg/kg又は60mg~600mgの用量で1~4週間毎に対象に投与することと、
(2)抗CD38抗体を1600mg~2000mgの用量で1~4週間毎に対象に皮下投与することとを含む、実施形態1に記載の方法。
3.工程(1)の前に、BCMA×CD3二重特異性抗体を0.5mg/kgよりも低い用量で対象に皮下投与することを更に含む、実施形態2に記載の方法。
3a.BCMA×CD3二重特異性抗体が、抗CD38抗体の初回投与後に、0.5mg/kgよりも低い用量で対象に皮下投与され、好ましくは、BCMA×CD3二重特異性抗体が、抗CD38抗体の初回投与の少なくとも20時間後に、0.5mg/kgよりも低い用量で対象に最初に投与される、実施形態3に記載の方法。
3b.BCMA×CD3二重特異性抗体が、治療の1日目に、0.01~0.10mg/kg、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、及び0.10mg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態3又は3aに記載の方法。
3c.BCMA×CD3二重特異性抗体が、治療の2日目に、0.01~0.10mg/kg、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、及び0.10mg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態3又は3aに記載の方法。
3d.0.10~0.50mg/kg、例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、若しくは0.50mg/kg、又はその間の任意の値のBCMA×CD3二重特異性抗体が、治療の3日目に投与される、実施形態3~3cのいずれか1つに記載の方法。
3e.0.10~0.50mg/kg、例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、若しくは0.50mg/kg、又はその間の任意の値のBCMA×CD3二重特異性抗体が、治療の4日目に投与される、実施形態3~3cのいずれか1つに記載の方法。
3f.0.10~0.50mg/kg、例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、若しくは0.50mg/kg、又はその間の任意の値のBCMA×CD3二重特異性抗体が、治療の5日目に投与される、実施形態3~3cのいずれか1つに記載の方法。
3g.BCMA×CD3二重特異性抗体の1mg/kg~6mg/kg又は200mg~600mgの初回用量が、治療の6日目、7日目、又は8日目に対象に皮下投与される、実施形態3~3fのいずれか1つに記載の方法。
4.BCMA×CD3二重特異性抗体が、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、若しくは3.0mg/kgの用量、又は100、150、200、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、又はその間の任意の用量で、1週間に1回又は2週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態2~3gのいずれか1つに記載の方法。
4a.BCMA×CD3二重特異性抗体が、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、5.0mg/kg、5.1mg/kg、5.2mg/kg、5.3mg/kg、5.4mg/kg、5.5mg/kg、5.6mg/kg、5.7mg/kg、5.8mg/kg、5.9mg/kg、又は6.0mg/kgの用量で毎週対象に皮下投与される、実施形態4に記載の方法。
4b.BCMA×CD3二重特異性抗体が、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、5.0mg/kg、5.1mg/kg、5.2mg/kg、5.3mg/kg、5.4mg/kg、5.5mg/kg、5.6mg/kg、5.7mg/kg、5.8mg/kg、5.9mg/kg、又は6.0mg/kgの用量で隔週対象に皮下投与される、実施形態4に記載の方法。
4c.BCMA×CD3二重特異性抗体が、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、5.0mg/kg、5.1mg/kg、5.2mg/kg、5.3mg/kg、5.4mg/kg、5.5mg/kg、5.6mg/kg、5.7mg/kg、5.8mg/kg、5.9mg/kg、又は6.0mg/kgの用量で3週間毎に対象に皮下投与される、実施形態4に記載の方法。
4d.BCMA×CD3二重特異性抗体が、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、5.0mg/kg、5.1mg/kg、5.2mg/kg、5.3mg/kg、5.4mg/kg、5.5mg/kg、5.6mg/kg、5.7mg/kg、5.8mg/kg、5.9mg/kg、又は6.0mg/kgの用量で毎月対象に皮下投与される、実施形態4に記載の方法。
4e.BCMA×CD3二重特異性抗体が、100、150、200、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、若しくは350mgの用量、又はその間の任意の用量で、1週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態4に記載の方法。
4f.BCMA×CD3二重特異性抗体が、100、150、200、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600mgの用量、又はその間の任意の用量で、2週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態4~4cのいずれか1つに記載の方法。
5.BCMA×CD3二重特異性抗体が、毎週1.5mg/kg、毎週150mg、毎週若しくは隔週3.0mg/kg、隔週若しくは毎月6.0mg/kg、隔週300mg、又は隔週若しくは毎月600mgの用量で対象に皮下投与される、実施形態4に記載の方法。
6.BCMA×CD3二重特異性抗体が、毎週1.5mg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6a.BCMA×CD3二重特異性抗体が、毎週60~150mgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6b.BCMA×CD3二重特異性抗体が、毎週3mg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6c.BCMA×CD3二重特異性抗体が、隔週又は3週間毎に3.0mg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6d.BCMA×CD3二重特異性抗体が、毎週150~300mgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6e.BCMA×CD3二重特異性抗体が、隔週又は3週間毎に150~300mgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6f.BCMA×CD3二重特異性抗体が、隔週6.0mg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6g.BCMA×CD3二重特異性抗体が、3週間毎又は毎月6.0mg/kgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6h.BCMA×CD3二重特異性抗体が、隔週300~600mgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6i.BCMA×CD3二重特異性抗体が、3週間毎又は毎月300~600mgの用量で対象に皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6j.BCMA×CD3二重特異性抗体が、最初の8週間は毎週60~150mgの用量で対象に皮下投与され、その後、BCMA×CD3二重特異性抗体が、隔週150~300mgの用量で投与される、実施形態5に記載の方法。
6k.BCMA×CD3二重特異性抗体が、1.5mg/kgの用量で8週間(2サイクル)にわたって毎週対象に皮下投与され、その後、BCMA×CD3二重特異性抗体が、例えば4~12週間(1~3サイクル)にわたって隔週3.0mg/kgの用量で皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6l.BCMA×CD3二重特異性抗体が、8週間(2サイクル)にわたって1.5mg/kgの用量で毎週対象に皮下投与され、続いて、例えば4~12週間にわたって3.0mg/kgの用量でBCMA×CD3二重特異性抗体が隔週皮下投与され、続いて、6.0mg/kgの用量でBCMA×CD3二重特異性抗体が毎月皮下投与される、実施形態6kに記載の方法。
6m.BCMA×CD3二重特異性抗体が、60~150mgの用量で8週間(2サイクル)にわたって毎週対象に皮下投与され、その後、BCMA×CD3二重特異性抗体が、例えば4~12週間(1~3サイクル)にわたって隔週150~300mgの用量で皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
6n.BCMA×CD3二重特異性抗体が、8週間(2サイクル)にわたって60~150mgの用量で毎週対象に皮下投与され、続いて、例えば、4~12週間(1~3サイクル)にわたって、150~300mgの用量でBCMA×CD3二重特異性抗体が隔週皮下投与され、更に続いて、300~600mgの用量でBCMA×CD3二重特異性抗体が毎月皮下投与される、実施形態5に記載の方法。
7.抗CD38抗体が、1800mgの用量で治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、及び治療の24週目の後は4週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態1~6nのいずれか1つに記載の方法。
7a.抗CD38抗体が、1800mgの用量で1週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態1~6nのいずれか1つに記載の方法。
7b.抗CD38抗体が、1800mgの用量で2週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態1~6nのいずれか1つに記載の方法。
7c.抗CD38抗体が、1800mgの用量で3週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態1~6nのいずれか1つに記載の方法。
7d.抗CD38抗体が、1800mgの用量で4週間に1回、対象に皮下投与される、実施形態1~6nのいずれか1つに記載の方法。
8.抗CD38抗体が、rHuPH20、例えば、約30,000UのrHuPH20と一緒に投与されるか、又は投与のために提供される、実施形態1~7dのいずれか1つに記載の方法。
8a.rHuPH20を対象に投与して、必要とされる注射体積を減少させ、抗CD38抗体の皮下投与を容易にすることを更に含む、実施形態1~7dのいずれか1つに記載の方法。
8b.rHuPH20が、抗CD38抗体と一緒に皮下投与される、実施形態8aに記載の方法。
8c.rHuPH20が、抗CD38抗体とは別個に皮下投与される、実施形態8aに記載の方法。
8d.rHuPH20が、10,000~50000U、例えば、10,000、20,000、30,000、40,000、若しくは50,000U、又はその間の任意の値の用量で皮下投与される、実施形態8a~8dのいずれか1つに記載の方法。
8e.rHuPH20が、30,000Uの用量で皮下投与される、実施形態8a~8dのいずれか1つに記載の方法。
8d.rHuPH20及び抗CD38抗体が、同じ医薬組成物中で一緒に投与される、実施形態8~8eのいずれか1つに記載の方法。
9.BCMA×CD3二重特異性抗体が、
(i)それぞれ配列番号18、配列番号19、及び配列番号20のアミノ酸配列の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号21、配列番号22、及び配列番号23のアミノ酸配列の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域(VL)を含むBCMA結合ドメイン、並びに
(ii)それぞれ配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVH、並びにそれぞれ配列番号31、配列番号32、及び配列番号33のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLを含むCD3結合ドメインを含む、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
9a.BCMA×CD3二重特異性抗体が、Seattle GeneticsによるACTR癌療法のBCMA結合ドメイン、AFM-26、ALLO-715、CRISPR Therapeuticsによる抗BCMA同種CAR-T癌療法、Sorrento Therapeuticsによる抗BCMA CAR-T、Hrain Biotechnologyによる抗CD19/BCMA CAR-T癌療法、Chineo Med(北京)によるBCMA CAR-T療法、Triumvira ImmunologicsによるBCMA TAC-T癌療法、Shanghai Unicar-Therapy BiomedによるBCMA-CAR T癌療法、RegeneronによるBCMA/CD3抗体、NantKwestによるCAR-NK癌療法、CC-93629、CMD-505、CTX-4419、CYAD-211、HDP-101、HPN-217、P-BCMA-ALLO1、TNB-383B、bb-2121、AUTO-2、PregeneによるBCMAキメラ抗原受容体療法、Shanghai Bioray LaboratoryによるBCMA-CAR T細胞、CARsgen TherapeuticsによるBCMA-CAR-T細胞、Shenzhen BinDeBioによるCAR-T/TCR-T細胞免疫療法、ET-140、P-BCMA-101、REGN-5458、AMG-701、Cellular Biomedicine Groupによる抗BCMA CAR-T癌療法、bb-21217、BI-836909、CC-93269、Descartes-08、IM-21、JNJ-64007957、MEDI-2228、又はPF-06863135からなる群から選択されるBCMAに結合するBCMA結合ドメインを含む、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
9b.BCMA×CD3二重特異性抗体が、国際公開第2017/031104号に記載されるBCMA結合ドメインを含む、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
10.BCMA×CD3二重特異性抗体が、配列番号24のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号25のアミノ酸配列を有するVLを含むBCMA結合ドメインと、配列番号34のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号35のアミノ酸配列を有するVLを含むCD3結合ドメインとを含む、実施形態9に記載の方法。
11.BCMA×CD3二重特異性抗体が、配列番号26のアミノ酸配列を有する第1の重鎖(HC1)及び配列番号27のアミノ酸配列を有する第1の軽鎖(LC1)を含むBCMA結合ドメインと、配列番号36のアミノ酸配列を有する第2の重鎖(HC2)及び配列番号37のアミノ酸配列を有する第2の軽鎖(LC2)を含むCD3結合ドメインとを含む、実施形態10に記載の方法。
11a.BCMA×CD3二重特異性抗体が、エルラナタマブ(別名PF-06863135)、テネオビオ(別名TNB-383B)、REGN5458、REGN5459、パブルタマブ(別名AMG-701)、BI 836909、CC-93269、WVT078、又はテクリスタマブ(別名JNJ-957又はJNJ-64007957)を含む、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
11b.BCMA×CD3二重特異性抗体が、Fab、F(ab’)2、Fd、又はFv断片などの抗原結合断片を含む、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
11c.BCMA×CD3二重特異性抗体が、キメラ、ヒト化、又はヒトである、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
11d.BCMA×CD3二重特異性抗体が、IgG1、IgG2、及びIgG3、又はIgG4アイソタイプである、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
11e.BCMA×CD3二重特異性抗体が、IgG4アイソタイプである、実施形態1~8dのいずれか1つに記載の方法。
12.抗CD38抗体が、それぞれ、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有するVHと、それぞれ、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有するVLとを含む、実施形態1~11eのいずれか1つに記載の方法。
12a.抗CD38抗体が、a)配列番号38のVH及び配列番号39のVL、b)配列番号40のVH及び配列番号41のVL、c)配列番号42のVH及び配列番号43のVL、又はd)配列番号44のVH及び配列番号45のVLを含む、実施形態1~11aのいずれか1つに記載の方法。
13.CD38抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを含む、実施形態12に記載の方法。
13a.抗CD38抗体が、米国特許第7,829,673号に記載のmAb003、米国特許第7,829,673号に記載のmAb024、米国特許第8,088,896号に記載のMOR-202(MOR-03087)、又は米国特許第8,153,765号に記載のイサツキシマブと、ダラツムマブとからなる群から選択される、実施形態1~11aのいずれか1つに記載の方法。
13b.抗CD38抗体が、配列番号12のHC及び配列番号13のLCを含む、実施形態1~11aのいずれか1つに記載の方法。
13c.抗CD38抗体が、キメラ、ヒト化、又はヒトである、実施形態1~11aのいずれか1つに記載の方法。
13d.抗CD38抗体が、IgG1、IgG2、及びIgG3、又はIgG4アイソタイプである、実施形態1~11aのいずれか1つに記載の方法。
13e.抗CD38抗体が、IgG1アイソタイプである、実施形態1~11aのいずれか1つに記載の方法。
13f.BCMA×CD3二重特異性抗体及び/又は抗CD38抗体が、本明細書に記載される1つ以上のFc置換を含む、実施形態1~13eのいずれか1つに記載の方法。
13g.Fc置換が、IgG4上のF234A/L235A、IgG1上のL234A/L235A、IgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、IgG4上のF234A/L235A、IgG4上のS228P/F234A/L235A、全てのIgアイソタイプ上のN297A、IgG2上のV234A/G237A、IgG1上のK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2上のH268Q/V309L/A330S/P331S、IgG1上のS267E/L328F、IgG1上のL234F/L235E/D265A、IgG1上のL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、IgG4上のS228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及びIgG4上のS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sからなる群から選択され、残基の番号付けは、EUインデックスに従う、実施形態13fに記載の方法。
13h.Fc置換が、
(1)IgG4上のF234A/L235A;
(2)IgG1上のL234A/L235A;
(3)IgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S;
(4)IgG4上のF234A/L235A;
(5)IgG4上のS228P/F234A/L235A;
(6)全てのIgアイソタイプ上のN297A;
(7)IgG2上のV234A/G237A;
(8)IgG1上のK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M;
(9)IgG2上のH268Q/V309L/A330S/P331S;
(10)IgG1上のS267E/L328F;
(11)IgG1上のL234F/L235E/D265A;
(12)IgG1上のL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S;
(13)IgG4上のS228P/F234A/L235A/G237A/P238S及びIgG4上のS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238S;及び/又は
(14)S228P置換からなる群から選択される、実施形態13fに記載の方法。
13i.BCMA×CD3多重特異性抗体が、第1のCH3ドメイン若しくは第2のCH3ドメインに、又は第1のCH3ドメイン及び第2のCH3ドメインの両方に、1つ以上の非対称置換を含む、実施形態1~13eのいずれか1つに記載の方法。
13j.1つ以上の非対称置換が、F450L/K409R、野生型/F409L_R409K、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S及びT366W/T366S_L368A_Y407V、L351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、並びにT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wからなる群から選択される、実施形態13iに記載の方法。
13k.BCMA×CD3二重特異性抗体が、IgG4アイソタイプであり、第1の重鎖(HC1)の405位にフェニルアラニン及び409位にアルギニン、並びに第2の重鎖(HC2)の405位にロイシン及び409位にリジンを含み、残基の番号付けが、EUインデックスに従う、実施形態1~13eのいずれか1つに記載の方法。
13l.BCMA×CD3二重特異性抗体が、HC1及びHC2の両方において、228位にプロリン、234位にアラニン、及び235位にアラニンを更に含む、実施形態13kに記載の方法。
14.癌が、血液悪性腫瘍又は固形腫瘍である、実施形態1~13lのいずれか1つに記載の方法。
14a.血液悪性腫瘍が、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、良性単クローン性γグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance、MGUS)、急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia、ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma、BL)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma、FL)、マントル細胞リンパ腫(mantle-cell lymphoma、MCL)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞白血病、軽鎖アミロイドーシス(AL)、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、B細胞悪性腫瘍、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、CML)、毛状細胞白血病(hairy cell leukemia、HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(marginal zone B-cell lymphoma、MZL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(mucosa-associated lymphatic tissue、MALT)、形質細胞白血病、未分化大細胞リンパ腫(anaplastic large-cell lymphoma、ALCL)、白血病、又はリンパ腫である、実施形態14に記載の方法。
14b.血液悪性腫瘍が、多発性骨髄腫を含む、実施形態14aに記載の方法。
14c.多発性骨髄腫が、新たに診断された多発性骨髄腫である、実施形態14bに記載の方法。
14d.多発性骨髄腫が、再発又は難治性多発性骨髄腫(RRMM)である、実施形態14bに記載の方法。
14e.多発性骨髄腫が、高リスク多発性骨髄腫である、実施形態14bに記載の方法。
14f.高リスク多発性骨髄腫を有する対象が、t(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)、del17p、1qAmp、t(4;14)(p16;q32)及びt(14;16)(q32;q23)、t(4;14)(p16;q32)及びdel17p、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p;若しくはt(4;14)(p16;q32)、t(14;16)(q32;q23)及びdel17p、又はこれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の染色体異常を有する、実施形態14bに記載の方法。
14g.癌が、治療に対して再発又は難治性である多発性骨髄腫を含む、実施形態1~14fのいずれか1つに記載の方法。
14h.多発性骨髄腫が、抗CD38抗体、レナリドミド、ボルテゾミブ、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、エロツズマブ、イキサゾミブ、メルファラン、若しくはサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせによる治療に対して再発又は難治性である、実施形態14gに記載の方法。
14i.癌が、AMLを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
14j.AMLが、少なくとも1つの遺伝子異常を伴うAML、多系列異形成を伴うAML、療法関連AML、未分化AML、最未分化型AML、分化型AML、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤血球性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性好塩基球性白血病、線維症を伴う急性汎骨髄症、又は骨髄肉腫である、実施形態14iに記載の方法。
14k.癌が、任意のBCMA発現癌、例えば、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、良性単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、B細胞急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞白血病、軽鎖アミロイドーシス、又は非ホジキンリンパ腫を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
14l.対象が、抗CD38抗体若しくはレナリドミド、又はこれらの組み合わせによる治療に対して再発又は難治性である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
14m.対象が、THALOMID(登録商標)(サリドマイド)、REVLIMID(登録商標)(レナリドミド)、POMALYST(登録商標)(ポマリドミド)、VELCADE(登録商標)(ボルテゾミブ)、NINLARO(イキサゾミブ)、KYPROLIS(登録商標)(カルフィルゾミブ)、FARADYK(登録商標)(パノビノスタット)、AREDIA(登録商標)(パミドロネート)、ZOMETA(登録商標)(ゾレドロン酸)、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)、エロツズマブ(Empliciti(登録商標))、SARCLISA(登録商標)(イサツキシマブ)、又はメルファラン(Alkeran(登録商標))による治療に対して難治性又は再発性である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
14n.対象が、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)による治療に対して再発性である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
15.治療を必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法であって、
(1)治療の第1週目~第8週目の間に、1.5mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を1週間に1回、並びに治療の第8週目以降は、3.0mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を2週間に1回及び/又は6.0mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を1月に1回、対象に皮下投与することと、
(2)1800mgの抗CD38抗体を、治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、治療の9週目~24週目の間は2週間に1回、治療の24週目の後は4週間に1回、対象に皮下投与することとを含み、
BCMA×CD3二重特異性抗体が、配列番号26の第1の重鎖(HC1)、配列番号27の第1の軽鎖(LC1)、配列番号36の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号37の第2の軽鎖(LC2)を含み、抗CD38抗体が、配列番号12のHC及び配列番号13のLCを含む、方法に関する。
15a.BCMA×CD3二重特異性抗体が、1.5mg/kgの用量で治療の1週目~8週目の間は1週間に1回、3.0mg/kgの用量で治療の9週目~20週目の間は2週間に1回、及びそれ以降は6.0mg/kg、対象に皮下投与される、請求項15に記載の方法。
16.毎週又は隔週の1.5mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体の初回皮下投与の前に、治療の2日目に0.06mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体及び治療の4日目に0.3mg/kgのBCMA×CD3二重特異性抗体を対象に皮下投与することを更に含む、実施形態15又は15aに記載の方法。
17.次に計画された28日サイクルの1日目に、3mg/kgの二重特異性抗体を隔週で投与することを更に含む、実施形態15又は15aに記載の方法。
18.対象が多発性骨髄腫の少なくとも1つの前治療を受けており、好ましくは、対象が少なくとも1つの前治療に対して再発又は難治性であり、より好ましくは、前治療がプロテアソーム阻害剤(PI)及び免疫調節剤(IMiD)の少なくとも1つを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
19.対象が、抗CD38抗体、レナリドミド、ボルテゾミブ、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、エロツズマブ、イキサゾミブ、イサツキシマブ、メルファラン及びサリドマイド、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される治療に対して難治性又は再発性であり、好ましくは、対象はレナリドミド難治性である、実施形態18に記載の方法。
20.ポマリドミド及び/又はデキサメタゾンなどの別の治療を対象に投与することを更に含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
21.治療が、CD4+及びCD8+T細胞上のCD25、PD-1、CD38のうちの少なくとも1つの増加などのT細胞活性化をもたらす、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
22.治療が、CD38+CD8+T細胞、CD38+CD4+T細胞、及びTregs T細胞のうちの少なくとも1つの頻度の増加をもたらす、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
23.治療が、抗CD38抗体を用いない治療と比較して、BCMA×CD3二重特異性抗体の活性の増強をもたらす、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
24.治療が、BCMA×CD3二重特異性抗体を用いない治療と比較して、抗CD38抗体の活性の増強をもたらす、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
25.実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療する際に使用するためのBCMA×CD3二重特異性抗体。
26.実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療する際に使用するための抗CD38抗体。
27.実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療する際に使用するためのBCMA×CD3二重特異性抗体と抗CD38抗体との組み合わせ。
28.実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療するための医薬の製造におけるBCMA×CD3二重特異性抗体の使用。
29.実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療するための医薬の製造における抗CD38抗体の使用。
30.実施形態1~243のいずれか1つに記載の方法を使用して、それを必要とする対象において癌を治療するための医薬の製造における、BCMA×CD3二重特異性抗体と抗CD38抗体との組み合わせの使用。
31.BCMA×CD3二重特異性抗体と、抗CD38抗体と、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法を使用して、必要とする対象において癌を治療する際に抗体を使用することに関する指示とを含むキット。
【0263】
本発明は一般論として記述されてきたが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲の範囲を限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【実施例
【0264】
本明細書において開示した実施形態のいくつかを更に説明するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は、例示を目的とするものであって、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0265】
一般的な材料及び方法
抗体及び試薬
抗BCMA/抗CD3抗体JNJ-64007957(JNJ-957と称される)(国際公開第2017031104(A1)号に記載される)及びダラツムマブは、Janssen Pharmaceuticalsによって製造された。全てJanssen Pharmaceuticals製のCNTO7008(CD3×null)、BC3B4(BCMA×null)、及び3930(IgGアイソタイプ対照)を対照抗体として使用した。
【0266】
JNJ-957(BCMA)は、BCMA結合アームBCMB69及びCD3結合アームCD3B219を含み、それらのアミノ酸配列をそれぞれ、表8a及び表8bに示す。
【0267】
骨髄及び末梢血単核細胞
健康なドナー及びMM患者の末梢血単核球(PBMC)、並びにMM患者BM吸引液の骨髄単核細胞(BM-MNC)を、Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離によって単離した。
【0268】
MM患者の骨髄及び血液サンプルのフローサイトメトリー分析
BM局在MM細胞を特定し、1.0×10細胞/mLを、HuMax-003(CD38)FITC(この抗体は、ダラツムマブによって結合されるエピトープとは異なるエピトープに結合する、Janssen Pharmaceuticals)、CD138 PE、CD56 PC7、CD45 Krome Orange(全てBeckman Coulter)、CD269(BCMA)APC(Biolegend)、CD274(PD-L1)BV421、及びCD19 APC-H7(共にBecton Dickinson)で染色することによって、細胞表面マーカー発現レベルについて分析した。BM又はPB免疫細胞サブセットを特定し、1.0×10細胞/mLを、CD45クロムオレンジ、CD56 PC7(共にBeckman Coulter)、CD14 APC-H7、CD19 APC-H7、CD3 V450、CD4 APC-H7若しくはPE、CD8 FITC、CD45-RA APC、CD127 PE.Cy7、CD62L PE、CD274(PD-1)BV421、CD16 APC、HLA-DR APC-H7(全てBecton Dickinson)及びCD25 PE(Dako)、又はCD4 BUV395(BD Biosciences)、CD8 BUV737(BD Biosciences)、PD-1 BV421(BD Biosciences)、TIM-3 BV650(BD Biosciences)、CD3 BV711(BD Biosciences)、CD45RO BV786(BD Biosciences)、CD38 Humab-003-FITC(Janssen)、CD45RA PerCP-Cy5.5(BD Biosciences)、HLA-DR PE(BD Biosciences)、LAG-3 PE-eF610(ThermoFisher)、CD25 PE-Cy7(BD Biosciences)、CCR7 AF647(BD Biosciences)、CD127 APC-eF780(ThermoFisher)で染色することによって細胞表面マーカー発現レベルについて分析した。全てのBMサンプルを、サンプルを収集した時点から24時間以内に分析した。
【0269】
フローサイトメトリーは、7レーザーLSRFORTESSA(Becton Dickinson)を使用して実行した。蛍光標識ビーズ(CS&Tビーズ、Becton Dickinson)を毎日使用して、フローサイトメーターの性能を監視し、光路及び流量を検証した。この手順は、制御された標準化結果を可能にし、フローサイトメーター内の長期のドリフト及び偶発的な変化の決定を可能にする。結果に影響を及ぼし得る変化は、観察されなかった。補償ビーズを使用して、スペクトル重複を決定し、補償は、Divaソフトウェアを使用して自動的に算出した。FACS Divaソフトウェアを使用して、フローサイトメトリーデータを分析した。
【0270】
LUCを形質導入したMM細胞株を使用する生物発光イメージング(BLI)に基づく溶解アッセイ
LUCを形質導入したMM細胞株を、新たに診断されたMM患者(n=12)から得たプールしたBM間質細胞(BM stromal cell、BMSC)の存在下又は非存在下で16時間培養してから、9:1のエフェクター対標的比で、エフェクター細胞(健康なドナーから新たに単離したPBMC)と共にインキュベートし、96ウェル平底プレート(Greiner-Bio-One)において、JNJ-957(0.00256~4.0μg/mL)又は対照抗体を48時間連続希釈した。その後、LUC-MM細胞の生存を、基質のルシフェリン(150μg/mL;Promega)を添加した10分後に判定した。MM細胞の溶解を、以下の式:溶解%=1-(エフェクター細胞及びJNJ-957の存在下での平均BLIシグナル/エフェクター細胞及び未処理の抗体の存在下での平均BLIシグナル)×100%を使用して求めた。
【0271】
JNJ-957の有効性に対するダラツムマブ単剤療法によるPB MNCのインビボ前治療の効果を評価するために、LUCを形質導入したMM細胞株4はまた、ダラツムマブ単剤療法の開始前及びダラツムマブ単剤療法に対する最良奏効時点でMM患者から得たPB MNCと共に共培養した(9:1のエフェクター対標的比)。BLIアッセイは、前述のように実行した。
【0272】
細胞遺伝学的分析
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)及び単一ヌクレオチド多型(single nucleotide polymorphism、SNP)アレイによって、細胞遺伝学的異常を、精製MM細胞において評価した。高リスク疾患は、del(17p)、del(1p)、ampl(1q)、t(4;14)、又はt(14;16-2の存在によって定義した。
【0273】
可溶性BCMAアッセイ
MSD GOLD(商標)96ウェルSmall Spot Streptavidin SECTORプレート(Meso Scale Diagnostics)を製造業者の推奨するプロトコルに従って使用して、細胞培養上清中の可溶性BCMA(sBCMA)を測定した。
【0274】
多重サイトカインアッセイ
V-Plex炎症促進性パネル1ヒトキット(Meso Scale Diagnostics)を製造業者のプロトコルに従って使用して、細胞培養上清中のサイトカイン[インターフェロン-ガンマ(interferon-gamma、IFN-γ)、インターロイキン(interleukin、IL)-2、IL-6、IL-8、IL-10、及び腫瘍壊死因子-アルファ(tumor necrosis factor-alpha(TNF-α)]を分析した。
【0275】
統計データ
データが正常な分布に従わない場合、変数間の比較は、両側(対応のある)スチューデントt検定、又はマン・ホイットニーU検定、又はウィルコクソンマッチドペア符号順位検定を使用して実行した。変数間の相関は、スピアマンの順位相関係数を使用して行った。0.05未満のp値を有意と見なした。JNJ-957及びダラツムマブのコンビナトリアル治療の場合、予想される溶解値を算出して、以下の式:予想溶解%=(JNJ-957による溶解%+ダラツムマブによる溶解%)-(JNJ-957による溶解%×ダラツムマブによる溶解%)を使用して、JNJ-957とダラツムマブとの間には相加効果のみが存在するという虚無仮説を試験した。観察値が予想値よりも有意に高い(P<0.05)場合、「相加効果」の虚無仮説は却下された。
【0276】
実施例1再発又は難治性多発性骨髄腫(RRMM)のための皮下ダラツムマブと組み合わせて投与されたテクリスタマブ(JNJ-957)の第1相試験
多発性骨髄腫を有する成人対象に投与されるダラツムマブの皮下(SC)投薬レジメンと組み合わせたテクリスタマブの第1b相非盲検多施設多コホート試験を実施した。2つの治療の組み合わせはまた、ポマリドミド(及び少なくとも最初のサイクルのための併用デキサメタゾン)を含んだ。ポマリドミド含有治療組み合わせにおいて、デキサメタゾン投与は、IMiD駆動性抗骨髄腫効果を増強し、ダラツムマブ及びテクリスタマブのための前治療剤として機能するために、最初の3回の完全免疫調節剤(IMiD)含有サイクルを通して必要とされた。試験の全体的な目的は、ポマリドミドを伴う又は伴わないテクリスタマブ(及び少なくとも最初のサイクルのための併用デキサメタゾン)と組み合わせたダラツムマブの安全性を評価すること、及び予備的な抗癌活性を評価することであった。安全性は、試験評価チーム(Study Evaluation Team、SET)によって監視された。
【0277】
目的及びエンドポイント
【0278】
【表11】
略語:MR=最小奏効;MRD=最小残存病変;ORR=全応答率、PFS=無増悪生存期間;RP2D=第2相推奨用量
【0279】
研究デザイン
試験は、2つのパートで行った。
・パート1:各治療組み合わせのRP2D(複数可)を確立する用量漸増
・パート2:選択された治療組み合わせ(複数可)に対するRP2D(複数可)での用量拡大
【0280】
パート1及びパート2の概略図を図1に示す。以下の治療の組み合わせを試験した。
・SCダラツムマブ及びIVテクリスタマブ
・SCダラツムマブ及びSCテクリスタマブ
・SCダラツムマブ、SCテクリスタマブ、及びポマリドミド。
【0281】
パート1(用量漸増)
パート1(用量漸増)では、全ての対象が、多発性骨髄腫において承認された用量でダラツムマブを投与される。ポマリドミドを投与される対象は、適用可能な場合、その承認された用量又はより低い修正用量でそれを投与される。(270μg/mgのIVテクリスタマブの治療用量が評価された)試験において治療された対象の最初のコホートについて、二重特異性抗体の漸増投与は、漸増投薬がサイクル1の9日目に開始される投薬スケジュールAに従った。このコホートは、漸増投薬レジメン(すなわち、用量、漸増用量[複数可]の数、及び漸増用量[複数可]間の日数)及び進行中の単剤療法試験において適切な投与経路について最後にクリアされた用量レベル未満の治療用量レベルに関連する治療用量(例えば、270μg/kg IVテクリスタマブの治療用量)を利用した。新たなデータに基づいて、SETは、漸増投薬がサイクル1の2日目に開始する投薬スケジュールBの実施を承認した。その後のコホートについて、安全かつ認容可能なRP2D(複数可)を特定するために全ての利用可能な安全性、薬物動態、及び薬力学的データを使用する統計モデルに基づいて、漸増投薬レジメン及び治療用量を決定する。この試験において試験された漸増用量及び治療用量は、テクリスタマブの単剤療法試験においてSETによって以前にクリアされた用量を超えない。関連する治療用量は、漸増用量(複数可)に続いて28日サイクルで週ベースで投与されるように計画した。しかしながら、隔週投与を含む他のスケジュールもコホートにおいて試験した。少なくとも30人の対象がパート1で評価される。治療される対象の総数は、RP2D(複数可)を特定するために探索される用量レベルの数、及び各用量レベルで登録された対象者の数に依存する。
【0282】
パート2(用量拡大)
パート2(NCT04108195CTX)における更なる試験のために選択された各治療組み合わせについてのRP2D(複数可)は、パート1からの知見に基づくBLRM(ベイズロジスティック回帰モデル)によって推奨される用量に基づく。更に、SETは、適用可能な場合、パート2におけるその治療組み合わせについてのRP2D(複数可)を決定する前に、パート1における各治療組み合わせについての全ての利用可能な安全性、薬物動態、薬力学、及び有効性データを検討する。SETは、各治療組み合わせに対して1つ以上のRP2D(複数可)を選択してもよい。最大約40人の対象が、パート2の試験のために選択された各治療組み合わせについて、RP2Dの各々において評価される。
【0283】
対象集団
本試験は、プロテアソーム阻害剤(PI)及びIMiDを含む少なくとも3つの事前の治療ラインを受けたことがあるか、又はPI及びIMiDに対して二重難治性である疾患を有する、多発性骨髄腫を有する18歳以上の対象に対して実施した。抗CD38療法を90日間以下受けた対象は除外した。ポマリドミドを含む治療組み合わせに登録された対象については、以前のIMiD療法はレナリドミドを含むべきである。
【0284】
本試験に対象を登録するための組み入れ基準及び除外基準を以下に記述する。全ての試験組み入れ/除外基準は、スクリーニング時及び試験薬の最初の投与前に満たされていることを確認した。
【0285】
組み入れ基準
各対象は、この試験に登録されるために、以下の基準の全てを満たすことを必要とした。
1.18歳以上。
2.IMWG診断基準による多発性骨髄腫の文書化された最初の診断。
3.以下のいずれかを有さなければならない。
●治療中に任意の順序でPI(2サイクル又は2カ月以上の治療)及びIMiD(2サイクル又は2ヶ月以上の治療)を含む少なくとも3回の事前の治療ライン(以下の定義を参照)を受けた(最初の2サイクル/カ月以内に重度のアレルギー反応のためにこれらの治療のいずれかを中止した対象を除く)。
○進行性疾患が治療に対する最良奏効でない限り、治療毎に少なくとも1回の完全な治療サイクルを受けた。
○PI及び/又はIMiDを伴わない事前治療について、少なくとも事前治療についての基準を満たすために、進行性疾患が治療に対して最良奏効であった場合を除き、又は対象が有害反応のために中止した場合を除き、対象は少なくとも1つの完全なサイクル又は1ヶ月の治療を受けていなければならない;又は
●PI及びIMiDに対して二重に難治性である疾患2つ以上のタイプのPIを受けた対象については、疾患は直近のタイプに対して難治性でなければならない。同様に、2つ以上のタイプのIMiDを受けた患者については、疾患は直近のタイプに対して難治性でなければならない。
注:対象は、最後の治療の12ヶ月以内に、Kumar et al.2016(Lancet Oncol.2016;17(8):e328-346.)に記載されるIMWG2016基準による治験責任医師の奏効判定に基づいて、進行性疾患の証拠の記録を残さなければならない。確認は、中央テスト又は地元テストのいずれかから行われてもよい。また、(上記のような)過去6ヶ月以内に進行性疾患の証明された証拠を有し、その後直近の治療に対して難治性又は非応答性である対象が適格である。
注:ポマリドミドを含む治療組み合わせに登録される対象については、以前のIMiD療法はレナリドミドを含むべきである。
4.スクリーニング時に測定可能な疾患は、以下のうちのいずれかとして定義される。
●血清モノクローナルタンパク質(Mタンパク質)レベル≧1.0g/dL(非IgG骨髄腫において、Mタンパク質レベル≧0.5g/dL);又は
●尿M-タンパク質レベル≧200mg/24時間;又は
●軽鎖多発性骨髄腫:血清Ig遊離軽鎖(FLC)≧10mg/dL及び異常な血清IgカッパラムダFLC比。
5.スクリーニング時及び投与前サイクル1の1日目の米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group、ECOG)パフォーマンスステータスグレード0又は1
6.サイクル1の1日目にダラツムマブを投与する前に、以下の基準を満たす臨床検査値:
【0286】
【表12】
略語:G-CSF=顆粒球コロニー刺激因子;GM-CSF=顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子;ULN=基準値上限;RBC=赤血球。
7.妊娠の可能性のある女性は、スクリーニング時に陰性の高感受性血清βヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)妊娠検査(<5IU/mL)を受けなければならず、試験薬の最初の投与前24時間以内に陰性の尿又は血清妊娠検査を受けなければならず、試験中に更なる血清又は尿妊娠検査に同意しなければならない。
8.女性は以下のいずれかでなければならない。
a.妊娠の可能性がない
b.出産能力がある、かつ
-真の禁欲を実践する、
-又は精管切除された唯一のパートナーを有する、
-又は少なくとも1つの非常に有効な使用者非依存的避妊法(例えば、子宮内避妊具(IUD)、子宮内ホルモン放出システム(IUS)、両側性卵管結紮術/閉塞、又は排卵の阻害に関連する埋め込み型プロゲストゲンのみのホルモン避妊法)を実施する。ホルモン避妊が使用される場合(例えば、経口エストロゲン/プロゲスチン)、殺精子剤(例えば、殺精子フォーム/ゲル/フィルム/クリーム/坐剤)を伴う又は伴わない男性又は女性のコンドームも使用されなければならない。
-ポマリドミドを受けている対象に関して、妊娠の可能性がある女性は、試験治療を受けている間と同時に、試験治療の最終投与の100日後まで、信頼できる避妊法の2つの方法を受けていなければならない:1つは、顕著な有効形態の避妊法(卵管結紮術、子宮内器具、ホルモン[経口、注射、経皮パッチ、膣リング、若しくはインプラント)、又はパートナーの精管切除)、及びもう1つは、追加の有効な避妊法(男性ラテックス若しくは合成コンドーム、ペッサリー、又は子宮頸部キャップ)。
-ポマリドミドを投与されていない対象について、経口避妊薬を使用している妊娠の可能性のある女性は、追加の避妊法を使用しなければならない。
対象は、試験薬を受けている間及び最後の投薬の100日後まで上記を続けることに同意しなければならない。妊娠の可能性がある女性は、最後の試験薬投与後100日以内に妊娠検査(血清又は尿)に同意しなければならない。
注:女性が試験の開始後に妊娠の可能性がある場合、女性は上記の項目(b.)に従わなければならない。経口避妊薬を使用する女性は、上記に列挙した要件に加えて、更なる避妊法を使用しなければならない。
9.男性は、別の人への射精精液の通過を可能にする行為に従事するとき、試験の間及び試験薬物の最後の投与後100日間、コンドーム(殺精子フォーム/ゲル/フィルム/クリーム/坐剤あり又はなし)を着用しなければならない。女性パートナーは、妊娠の可能性がある場合、非常に有効な避妊法(例えば、子宮内避妊具(IUD)、子宮内ホルモン放出システム(IUS)、排卵の阻害に関連する複合(エストロゲン及びプロゲストゲン含有)ホルモン避妊法など)も実施していなければならない。
男性が精管切除している場合、引き続きコンドーム(殺精子フォーム/ゲル/フィルム/クリーム/坐薬を含む又は含まない)を使用しなければならないが、その女性パートナーは避妊法を使用する必要はない。
10.女性は、試験期間において介助生殖のため、又は将来の使用のために、試験薬の最後の投与を受けた後少なくとも100ヶ月間、卵子(卵子、卵母細胞)を提供又は凍結してはならない。
11.男性参加者は、試験中、及び試験薬の最後の用量を受けた後の少なくとも100日間、生殖の目的で精液を提供しないと同意しなければならない。
12.対象が試験の目的及びそれに必要な手順を理解し、試験に参加する意思があり、かつ参加できることを示すインフォームドコンセントフォーム(informed consent form、ICF)に署名する。同意は、対象の疾患に対する標準的なケアの一部ではない、任意の試験関連試験又は手順の開始前に得なければならない。
13.このプロトコルに指定された禁止事項及び制限事項を守る意思があり、それが可能でなければならない。
注:単一の治療は、1つ以上の薬剤からなり得、誘導、造血幹細胞移植、及び維持療法を含んでもよい。放射線療法、ビスホスホネート、又はステロイドの単回短期コース(すなわち、デキサメタゾン40mg/日の等価物以下を4日間)は、事前の治療ラインとは見なされない。
【0287】
除外基準
以下の基準のいずれかに該当する潜在対象は、試験への参加から除外される。すなわち、
1.抗CD38療法(例えば、ダラツムマブ)による過去90日間の治療、又は抗CD38療法に関連する有害事象による任意の時点での以前の抗CD38療法の中止。
2.試験薬の最初の投与前の、以下のような抗腫瘍療法:
・標的療法、エピジェネティック療法、又は治験薬による治療、又は21日以内若しくは少なくとも5半減期以内の侵襲的医療デバイス。
・21日以内のモノクローナル抗体(治療過去90日以内に抗CD38治療は使用できない)。
・21日以内の細胞毒性療法。
・14日以内のPI療法。
・7日以内のIMiD療法。
・21日以内の放射線療法。しかしながら、放射線ポータルが骨髄リザーブの5%以下であった場合、対象は放射線療法の終了日に関係なく適格とする。
・90ヶ月以内の遺伝子改変養子細胞療法(例えば、キメラ抗原受容体改変T細胞、NK細胞)。
3.試験薬の最初の投与前14日の期間内の140mg以上のプレドニゾンに相当するコルチコステロイドの累積投与。
4.治験依頼者によって承認されない限り、試験薬の最初の投与前4週間以内の弱毒生ワクチン。
5.ベースラインレベル又はグレード1以下(脱毛症[任意のグレード]又は末梢神経障害グレード3以下を除く)まで消散していない以前の抗癌療法からの毒性。
6.幹細胞移植:
・同種移植を受けた対象は、移植片対宿主病の兆候なしで42日間以上全ての免疫抑制薬をオフにしなければならない。
・試験薬の最初の投与から12週間以内の自己幹細胞移植。
7.多発性骨髄腫の中枢神経系関与又は髄膜関与の臨床兆候。いずれかが疑われる場合、脳磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging、MRI)及び腰部細胞診が必要とされる。
8.活性形質細胞白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、POEMS症候群(多発性神経障害、臓器肥大症、内分泌障害、Mタンパク、及び皮膚変化)、又は一次アミロイド軽鎖アミロイドーシス。
9.ヒト免疫不全ウイルスに対して血清陽性であることが知られている。
10.B型肝炎について血清陽性(B型肝炎表面抗原[HBsAg]についての陽性試験によって定義される)。消散した感染を有する対象(すなわち、B型肝炎表面抗体[抗HBs]の存在を伴うか又は伴わない全B型肝炎コア抗原[抗HBc]に対する抗体を有するHBsAg陰性である対象)は、HBV DNAレベルのリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)測定を使用してスクリーニングされなければならない。PCR陽性であるものは除外される。例外:HBVワクチン接種を示唆する血清学的所見(唯一の血清学的マーカーとしての抗HBs陽性)及び以前のHBVワクチン接種の既知の病歴を有する対象は、PCRによってHBV DNAについて試験される必要はない。
11.活動性C型肝炎への感染は、陽性C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus、HCV)-RNA試験によって測定した。C型肝炎ウイルス抗体陽性の病歴を有する対象は、HCV-RNA試験を受けなければならない。
12.以下のいずれか。
・1秒内の努力性肺活量(FEV1)が予想正常値の50%未満である、既知の慢性閉塞性肺疾患(COPD)。注:FEV1試験が、COPDを有する疑いのある対象に対して必要であり、FEV1が予測正常値の50%未満である場合、対象は除外されなければならないことに留意されたい。
・過去2年以内の中等度若しくは重度の持続性喘息、又は任意の分類の制御されない喘息。注:現在、制御された間欠性喘息又は制御された軽度な持続性喘息を有している対象は、試験において許容されることに留意されたい。
13.試験介入又はその賦形剤に対する既知のアレルギー、過敏症、又は不耐性(治験責任医師のパンフレット及び添付文書を参照)。
14.何らかの重篤な基礎的な疾患、例えば:
・重篤な活性ウイルス、細菌、又は制御されない全身性真菌感染の証拠;
・試験治療の開始前6ヶ月以内に全身免疫抑制療法を必要とする活動性自己免疫性疾患。例外:白斑、I型糖尿病、並びに臨床症状及び臨床検査に基づいて現在は甲状腺機能正常である以前の自己免疫性甲状腺炎を有する参加者は、これらの状態がいつ診断されたかにかかわらず適格である。
・精神状態の障害(例えば、アルコール又は薬物乱用)、認知症、又は異常な精神状態
・対象が治療施設で計画された治療を受ける、引き受ける、又は許容する能力を損なうことになるか、対象がインフォームドコンセント又は、治験責任医師の判断によれば、対象にとって参加が最良ではない(例えば、生活の質を損なう)あらゆる条件を理解する能力を損なうことになるか、又はプロトコルに定められた評価を妨害、制限、又は混同しかねない、任意の他の問題。
15.以下の心臓の症状:
・ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)のステージIII又はIVの心不全
・登録前6ヶ月以内の心筋梗塞又は不安定狭心症
・自然な血管迷走神経又は脱水によるとは考えられない、臨床的に重要な心室性不整脈又は説明されない仮死の病歴
・重度の非虚血性心筋症の病歴
・フリデリシアの式(QTc)によって補正された平均ベースラインQT間隔>470ミリ秒を示すスクリーニング12誘導心電図(ECG)
16.この試験に登録している間、又は試験薬の最後の投与後100日以内に妊娠している、授乳している、又は妊娠を計画している。
17.この試験に登録している間、又は試験薬の最後の投与後100日以内に子供の父親となることを計画している。
18.最初の投与の2週間以内に大手術を受けているか、又は手術から完全に回復する予定にないか、又は対象が試験での治療を予想される時期に手術を予定している。
注:局所麻酔下で施行される外科処置が計画されている対象は、参加可能である。
以下の基準のうちのいずれかを満たす可能性のある対象は、この試験の参加から除外される。
19.対象は、治療の中止を必要とするポマリドミドに関連する有害事象を以前に経験した。
注:治験担当者は、全ての試験登録基準がスクリーニング時及び試験薬の第1の用量前に満たされていることを確実にするべきである。スクリーニング後であるが、試験薬の最初の投与が行われる前に、対象の臨床状態が変化し(任意の利用可能な検査結果又は追加の医療記録の受信を含む)、対象がもはや全ての適格基準を満たさない場合、適格基準が満たされ、検査試験が1回繰り返されて、対象が試験に適格であるかどうかを決定するように、必要に応じて、地域の標準治療に従って支持療法が施されてもよい。更なる評価の後に組み入れ/除外基準が満たされなかった場合、対象は試験への参加から除外されるべきである。
【0288】
試験介入
治療は28日サイクルで施された。ダラツムマブを、以下のように1800mgの用量でSC注射によって全ての対象に投与した。サイクル1~2は毎週、サイクル3~6は2週間毎(Q2W)、その後は4週間毎である。組換えヒトヒアルロニダーゼPH20(rHuPH20)を使用して、必要とされる注射体積を減少させ、ダラツムマブのSC投与を容易にしたことに留意されたい。
【0289】
ダラツムマブSC(Dara)を、以下の異なる用量レベルのテクリスタマブ(Tec):毎週Dara1800mg+Tec270μg/kg IV;毎週Dara1800mg+Tec1500μg/kg SC;毎週Dara1800mg+Tec3000μg/kg SC;サイクル3の1日目から開始して隔週Dara1800mg+Tec300mg SC(サイクル1-2では、毎週Tec150mg SC);隔週Dara1800mg+Tec3000μg/kg SC;Dara1800mg+Tec6000μg/kg(サイクル1及び2では毎週、サイクル3~6では隔週、サイクル7及びその後のサイクルでは4週間毎に1回);サイクル1~2では毎週Dara1800mg+Tec100mgを、サイクル3~7では隔週Tec200mg、サイクル7及びその後のサイクルではTec200mgを4週間に1回(対象は≦60kgでなければならない);サイクル1~2では毎週Dara1800mg+Tec150mg、サイクル3~7では隔週Tec300mg、サイクル7及びその後のサイクルではTec300mgを4週間に1回(対象は>60kgでなければならない)と組み合わせて投与した。毎週Dara1800mg+Tal1500μg/kgSCコホートの何人かの対象は、サイクル3の1日目の後にTal3000μg/kgの隔週SC投薬に切り替えた。サイクル1の9日目に漸増投薬を開始した270μg/kgテクリスタマブIV毎週コホートを除いて、テクリスタマブの漸増投与はサイクル1の2日目に開始した。ダラツムマブ及びテクリスタマブを同日に投与する場合、ダラツムマブを最初に投与した。漸増用量1のテクリスタマブを、SCダラツムマブの少なくとも20時間後に投与した。該当する場合、その後の漸増用量(複数可)及びテクリスタマブの第1の治療用量を、SCダラツムマブの約3時間後に投与した。テクリスタマブのその後の治療用量は、SCダラツムマブの約1時間後に投与された(両方の試験薬が同日に投与される場合)。
【0290】
ダラツムマブSC、テクリスタマブSC、及びポマリドミドの組み合わせを含む治療のために、4mgのポマリドミドを1日1回経口投与した。ポマリドミドは、併用治療において試験薬の前又は後に服用され得る。二重特異性抗体及びポマリドミドの同時投与によるサイトカイン放出症候群(CRS)のリスク増加の可能性を最小限にするために、対象の最初のコホートは、ポマリドミドの遅延投薬スケジュールを受ける。SETによって適切であると見なされる場合、減少した開始用量又はより遅い開始日(例えば、サイクル2の1日目の開始)が、レジメンについての安全性データのレビューに基づいて、将来のコホートについてポマリドミドに関して実施され得る。デキサメタゾンは、最初の3回の完全なIMiD含有サイクルと同時に与えられる。サイクル1の第1週の間、デキサメタゾン20mgが、ダラツムマブSCの前のサイクル1の1日目に与えられ、デキサメタゾン16mgの2回の追加用量が、二重特異性抗体の漸増用量1及び漸増用量2の前にそれぞれ1回与えられる。サイクル1の残り及びその後の必要とされるサイクルについて、デキサメタゾンは、毎週40mg(経口又はIV)で与えられる(75歳を超えるか、又はボディマス指数[BMI]<18.5を有する対象であって、ダラツムマブのSC投与のみの前に20mgのデキサメタゾンを受けるべき対象を除く)。デキサメタゾンは、ダラツムマブSC(又はダラツムマブSCが投与されない日の二重特異性抗体)の約1~3時間前に与えられる。上記の必要なデキサメタゾンサイクルの後、IMiD駆動抗骨髄腫効果を増強するためのデキサメタゾンの継続及び投与スケジュールは、治験責任医師の臨床判断に基づくであろう。ポマリドミドが毒性又は不耐性のために恒久的に中止される場合、高用量デキサメタゾンも治験責任医師の臨床判断に基づいて中止されてもよい。
【0291】
二重特異性抗体及びポマリドミドの同時投与によるサイトカイン放出症候群(CRS)のリスク増加の可能性を最小化するために、対象の最初のコホートは、ポマリドミドの遅延投薬スケジュール(C2D1(サイクル2、1日目)又はC1D15(サイクル1、15日目))を受けた。パート1の各コホートにおける最初の対象は、テクリスタマブの最初の投与後、又は治療用量で後続の対象を治療する前に、少なくとも36時間観察した。
【0292】
治療はまた、SCダラツムマブ及びポマリドマイドに関連する、必要とされる及び任意の前治療及び後治療薬剤を含む。ダラツムマブのための必要かつ任意の前治療及び後治療薬剤は、2週間のグルココルチコイド漸減であり得る。それは、例えば、ポマリドミドを投与されていない対象に対するダラツムマブ投与の前及び後のIV又は経口グルココルチコイド(例えば、メチルプレドニゾロン20~100mg、デキサメタゾン4~12mg);全ての対象についてダラツムマブ投与前に、必要とされるIV又は経口抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン25~50mg又は同等物)又は解熱剤(アセトアミノフェン650~1000mg);及び全ての対象についてダラツムマブ投与前に、任意選択のIV又は経口グルココルチコイド(メチルプレドニゾロン60mg(又はデキサメタゾン12mg)、又は経口ロイコトリエン阻害剤(例えば、モンテルカスト10mg)による必要な治療であり得る。IV又は経口グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン、8~16mg)、抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミン25~50mg若しくはその同等物)又は解熱薬(アセトアミノフェン650~1000mg)はまた、例えば、全ての漸増用量及び第1の治療用量の前に、テクリスタマブのための前治療として、又はテクリスタマブの次の2つの後続用量のためにグレード2以上のCRS/IRRを経験する対象のために必要とされ得る。
【0293】
呼吸器合併症のリスクがより高い任意の治療組み合わせの対象(例えば、スクリーニング時にFEV1が80%未満であるか、又は試験中にFEV1が80%未満になり、病歴が全くない軽度喘息の対象又はCOPDの対象)については、以下の注射後薬物を考慮すべきである。抗ヒスタミン、短時間作用型β2アドレナリン受容体アゴニスト、例えばサルブタモール、肺疾患のための対照薬(例えば、喘息を有する対象のための吸入コルチコステロイド±長時間作用型β2アドレナリン受容体アゴニスト;長時間作用型気管支拡張剤、例えばチオトロピウム又はサルメテロール±COPDを有する対象のための吸入コルチコステロイド)。
【0294】
研究評価
安全性、薬物動態、免疫原性、バイオマーカー、有効性、及び他の測定が行われる。
【0295】
安全は、例えば、身体検査(神経学的評価を含む)、米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group、ECOG)パフォーマンスステータス、臨床検査、バイタルサイン、有害事象モニタリング、及び併用薬使用によって評価される。重篤であるか非重篤であるかにかかわらず、全ての有害事象及び特別な報告状況は、署名され、かつ日付を記入したICFが取得された時間から、試験薬の最後の用量後100日まで、又は早期の場合は、後続の全身抗癌剤療法の開始まで報告され、また安全性のフォローアップのための連絡を含んでもよい。有害事象(AE)は、サイトカイン放出症候群(CRS)及び免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)を除いて、NCI-CTCAE v5.0によって評価され、これらは米国移植細胞療法協会(American Society for Transplantation and Cellular Therapy)(ASTCT)ガイドラインに従って等級付けされた。CRS(任意のグレード)の事象は、回復するまで、又は更なる改善がなくなるまでフォローされる。
【0296】
薬物動態及び免疫原性(例えば、ダラツムマブ、rHuPH20、又はテクリスタマブに対する抗体)の評価のために、血中及び血清中又は血漿中の試料を採取した。用量拡大のための用量レジメン(用量レベル及び頻度)の選択は、用量漸増中に得られた薬物動態及び薬力学的情報に基づいて決定した。薬物動態及び免疫原性分析のための試料を、計画された時間、及び疑わしいIRR又はCRS事象(CRS事象の場合、試料は、発症時、24時間後、及び72時間後に収集した)が試験中に観察された任意の時間に収集した。
【0297】
各血清試料を3つのアリコート(ダラツムマブの薬物動態及び免疫原性のために1つ、テクリスタマブの薬物動態及び免疫原性のために1つ、及びバックアップ1つ)に均等に分割した。抗rHuPH20抗体についての各血漿試料を5つのアリコート(抗rHuPH20抗体について3つ、及びrHuPH20について中和抗体について2つ)に分割した。薬物動態及び免疫原性の分析のために収集された試料は、sBCMAを評価するため、又は免疫原性の更なる特性決定のために試験期間中若しくは試験期間後に生じる懸念に対処する安全面若しくは有効性面を評価するために使用されてもよい。薬物動態分析のために、血清中試料を分析して、検証された特異的かつ高感度のアッセイ法を用いてダラツムマブ及びテクリスタマブの濃度を求めた。薬物動態パラメータとしては、曲線下面積(AUC)(0-t)、AUCtau、Cmax、及びTmaxが挙げられるが、これらに限定されず、十分なデータが推定に利用可能である場合に計算される。免疫原性分析のために、ダラツムマブ、rHuPH20、及びテクリスタマブに対する抗体の検出及び特徴付けを、検証されたアッセイ方法を使用して実施した。結合抗体について陽性の試料を、ダラツムマブ又はテクリスタマブに対する中和抗体について試験した。rHuPH20免疫原性評価のために、血漿試料をrHuPH20に結合する抗体についてスクリーニングし、必要に応じて確認アッセイ及び力価アッセイにおいて評価した。
【0298】
バイオマーカー評価は、パート1及びパート2の両方で行った。バイオマーカー評価は、いくつかの主な目的に焦点を当てた:(1)試験薬に対する奏効への潜在的な寄与のためのT細胞リダイレクトを示す免疫応答;(2)CRを達成した多発性骨髄腫を有する対象においてMRD陰性を誘導する各治療組み合わせの能力;(3)サイトカイン(IL-6、IL-2、及びIL-10など)又は免疫応答を示す他の血清タンパク質の血清プロテオミクスプロファイリング;(4)骨髄腫細胞に対する奏効/耐性のバイオマーカー(例えば、BCMA、CD38及びPD-L1);(5)細胞遺伝学的改変(del17p、t4;14;16)又は他の高リスク分子サブタイプ)を有する対象における各治療組み合わせの臨床的利益(ORR、応答持続時間[DOR]及び奏効までの時間);16)、又は他の高リスク分子サブタイプ)を有する対象における試験薬の臨床的利益を決定する;(6)CD4+及びCD8+T細胞などの免疫細胞サブセットの免疫表現型、並びに作用機序に直接影響を及ぼし得る制御性T細胞。説明できない有害事象の理解を助けるために、追加のバイオマーカー試料を収集することができる。サイトカインについての更なる試料(複数可)もまた、疑わしいIRR又はCRS事象が試験中に観察又は報告された任意の時点で収集することができた。
【0299】
疾患の評価は、疾患が進行するまで、中央検査室によって行われる(更なるサンプルが、地元検査室による分析のために収集されてもよい)。この試験は、Kumarらによって記載されたIMWGベースの奏効基準(2016)を使用する(Lancet Oncol.2016;17(8):e328-346)。血清免疫固定電気泳動(IFE)におけるダラツムマブ干渉が疑われる対象については、抗イディオタイプモノクローナル抗体を使用する第2の反射アッセイを使用して、IFEにおけるダラツムマブ移動を確認する。CRに関する全ての他のIMWG基準を満たし、その陽性IFEがダラツムマブ干渉であることが確認された対象は、完全奏効者と見なされる。軽鎖多発性骨髄腫を有する対象については、血清及び尿の両方のIFE及び血清FLCアッセイを4週間毎に行う。追加の血清試料を利用して、IFEとの潜在的ダラツムマブ干渉、及びIMWGに基づく奏効基準に従って判定された奏効をモニタリングしてもよい。定量的免疫グロブリン(QIg、例えば、IgG、IgA、IgM、IgE、及びIgD)、Mタンパク質を電気泳動(SPEP)によって測定した血清及び尿並びに血清β-ミクログロブリンにおけるFLC及びIFE測定は、中央検査室によって分析される。実験室試験の1つのみに基づく疾患進行は、1~3週間後に実施された少なくとも1回の反復調査によって確認された。疾患評価は、疾患進行が確認されるまで、CRからの再発を超えて継続される。血清及び尿IFE及び血清FLCアッセイは、スクリーニング時及びその後、CR又はsCRが疑われる場合(血清又は24時間尿M-タンパク質電気泳動[SPEP又はUPEPによる]が0又は定量不可能である場合)に行われる。高カルシウム血症(補正血清カルシウム>11mg/dL)の発症は、それが任意の他の原因に起因しない場合、疾患の進行又は再発を示し得る。したがって、補正された血清カルシウム又は遊離イオン化カルシウムもまた、確認された疾患進行の発生まで血液サンプルにおいて分析された。
【0300】
骨髄穿刺液又は生検が、臨床評価及びバイオマーカー評価のために行われる。臨床病期分類(形態学、細胞遺伝学、及び免疫組織化学又は免疫蛍光又はフローサイトメトリー)は、地元の実験室によって行われてもよい。骨髄穿刺液の一部を免疫表現型検査に使用し、CD138陽性多発性骨髄腫細胞におけるBCMA、CD38、及びチェックポイントリガンド発現、並びにT細胞上のチェックポイント発現をモニターした。試験薬の次の予定された用量の前に、CR及びsCRを確認するために、骨髄穿刺液試料が必要であった。MRD陰性は、無増悪生存期間(progression-free survival、PFS)の潜在的な代用物として当該分野で評価されていた。ベースライン骨髄穿刺液を使用して骨髄腫クローンを定義し、治療後試料を使用して、CR/sCR)を経験する対象におけるMRD陰性を評価した。骨髄穿刺液DNAが、次世代配列決定を使用してMRDを監視するために使用され得る一方、血清MRD陰性は、質量分析を介して評価される。
【0301】
完全な骨格調査(頭蓋、全脊柱、骨盤、胸部、上腕骨、大腿骨、及び治験責任医師が疾患による関与を疑う任意の他の骨を含む)をスクリーニング段階中に実施し、IV造影剤を使用せずに、X線撮影又は低線量コンピュータ断層撮影(CT)スキャン(又は陽電子放出断層撮影[PET]/CT)のいずれかによって評価した。治療期間中の進行を評価する場合、ベースラインで使用したのと同じ方法論を使用すべきである。MRIも、骨疾患の評価のために含めてもよい。
【0302】
統計分析
この試験において公式な統計的仮説検定は実施しない。パート1(用量漸増)は、過投与量制御を伴う漸増(Escalation with Overdosage Control、EWOC)原理を用いた、統計モデル、ベイズロジスティック回帰モデル(Bayesian Logistic Regression Model、BLRM)に基づく修正された連続再評価法(Continual Reassessment Method、mCRM)によってサポートされる。各治療の組み合わせについて1つ以上のRP2D(複数可)が特定されてもよい。パート2(用量拡大)では、対象を各RP2D(複数可)で治療して、選択された治療組み合わせ(複数可)の安全性及び抗腫瘍活性を更に評価する。
【0303】
エンドポイント定義
・ORRは、IMWG基準に従ってPR以上を有する対象の割合として定義される。治療に対する応答は、治験担当者によって評価される。
・臨床的有用率(ORR+MR)は、治験責任医師によって評価されるように、IMWG基準に従ってMR以上を有する対象の割合として定義される。
・MRD陰性率は、MRD陰性状態を達成する対象の割合として定義される。
・DORは、IMWG基準に定義されるような、奏効(PR以上)の最初の文書化日から、いずれが先に到来するにせよ、進行性疾患の証拠の最初の文書化日又は進行性疾患による死亡のいずれかまでの時間として定義される。CRからの再発は、疾患進行とは見なされない。進行していない対象については、任意の後続の抗骨髄腫療法の開始前の最後の疾患評価時にデータを打ち切る。
・奏効までの時間は、試験薬の最初の投与日と、対象がPR以上について全ての基準を満たした最初の有効性評価との間の時間として定義される。
・PFSは、試験薬の最初の投与の日から、IMWG基準で定義されるような最初に文書化された疾患の進行、又はいずれかの原因による死亡のいずれかが最初に起こる日までの時間として定義される。進行しておらず生存している対象については、任意の後続の抗骨髄腫療法の開始前の最後の疾患評価時にデータを打ち切る。
【0304】
体重ベースのコホートについての予備的結果(分析の締切2022年4月6日)。
【0305】
試験は進行中であり、分析の締切日の時点で、テクリスタマブ及びダラツムマブで治療された65人の患者を評価した。
【0306】
テクリスタマブSC(1.5mg/kg QW及び3.0mg/kg Q2W)+ダラツムマブSCコホート
ダラツムマブ及びテクリスタマブによるSC治療は、28日サイクルで投与された(テクリスタマブについての漸増投薬を伴う)。2022年4月6日現在の予備データは、1800mgのSCダラツムマブ及びテクリスタマブ(毎週1.5mg/kg(1500μg/kg)+毎週又は隔週3mg/kg(3000μg/kg))で治療された65人の対象についての結果を含んでいた。テクリスタマブ及びダラツムマブ投薬コホートの概要を表12に示す。
【0307】
【表13】
a.テクリスタマブ(PI及びIMiDを含む)に使用し、1~3回の漸増用量を全用量前の1週間以内に与えた。注:9人の患者を、サイクル4~9において、1.5mg/kg SC Q1Wから3mg/kg SC Q2Wに切り替えた。前投薬(グルココルチコイド、抗ヒスタミン薬、及び解熱薬)は、テクリスタマブの漸増用量及び最初の完全用量に限定した。最初の全用量の後、テクリスタマブに対するステロイド要求はなかった。IMiD、免疫調節剤;PI、プロテアソーム阻害剤;qw、週1回;Q2W、2週間に1回
【0308】
評価された65人の対象の年齢範囲中央値は67歳であり(40~81歳の範囲)、30人の対象が女性であった(46.2%)。以前の療法の中央値は5(範囲1~15)であり、対象の80%が最終治療に対して難治性であり、58.5%が3クラス難治性であり、55.4%が5クラス曝露され、30.8%が5クラス難治性であった。対象の人口統計及びベースライン特徴の概要を表13に示す。
【0309】
【表14】
a.ダラツムマブSC1800mg+テクリスタマブSC(1.5mg/kg QW又は3mg/kg QW又は3mg/kg Q2W)
b.アジア人と報告された1人の患者及びその人種が報告されなかった患者を含む。
c.骨に関連しない軟組織形質細胞腫が含まれていた;
d.del(17p)、t(4:14)、及び/又はt(14;16);n=48から計算されるパーセンテージ;
e.n=54から計算されるパーセンテージ;
f.BCMA CAR-T療法又はBCMA非CAR-T療法;
g.ダラツムマブ又はイサツキシマブ;
h.サリドマイド、レナリドミド、及び/又はポマリドミド;
i.≧1 PI、≧1 IMiD、及び≧1抗CD38mAb;
j.≧2 PI、≧2 IMiD、及び≧1抗CD38mAb;
BCMA、B細胞成熟抗原;CAR-T、キメラ抗原T細胞;IMiD、免疫調節剤;ISS、国際病期分類PI、プロテアソーム阻害剤;QW、毎週;Q2W、隔週;SC、皮下;mAb、モノクローナル抗体。
【0310】
テクリスタマブとダラツムマブの組み合わせは、良好に忍容される管理可能な安全プロファイルを示し、単剤と比較して新たな安全シグナルは観察されず、重複する毒性もなかった。AEによる治療中断は起こらず、重複する毒性は観察されなかった。全てのCRS事象は、グレード1又は2であった。感染は、44人(67.7%)の患者で報告された(グレード3以上:27.7%)。1人の患者(1.5%)はグレード1のICANS事象を有し、これは1日で完全に消散した。最も一般的な全グレード非血液学的AEは、好中球減少(いずれかのグレードで49.2%、グレード3又は4で41.5%)、貧血(いずれかのグレードで41.5%、グレード3又は4で27.7%)、及び血小板減少症(いずれかのグレードで32.3%、グレード3又は4で24.6%)であった。最も一般的な全グレードの血液学的AEは、CRS(任意のグレードで67.7%、グレード3又は4で0)、下痢(任意のグレードで32.3%、グレード3又は4で1.5%)、悪心(任意のグレードで27.7%、グレード3又は4で0)、及び無力症(任意のグレードで20.0%、グレード3又は4で1.5%)であった。テクリスタマブ及びダラツムマブで治療された患者のAEの概要を表14に示す。
【0311】
【表15】
a.ダラツムマブSC1800mg+テクリスタマブSC(1.5mg/kg QW又は3mg/kg QW又は3mg/kg Q2W)QW、毎週:Q2W、隔週;SC=皮下;CRS、サイトカイン放出症候群;ICAN、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群;AEは、CTCAE v 5によって等級付けされ、CRS及びICANS事象は、米国移植細胞療法学会(American Society for Transplantation and Cellular Therapy)2019基準に従って等級付けされた。AE:有害事象。
【0312】
奏効評価可能な対象は51人だった。全奏効率(ORR)は、テクリスタマブ単剤療法について第2相推奨用量と比較して改善された。ダラツムマブSC 1800mg及びテクリスタマブSC Q2W 3mg/kgで治療した患者(n=27)のORRは、74.1%であった。ダラツムマブSC 1800mg及びテクリスタマブSC QW 1.5mg/kgで治療した患者(n=20)のORRは、75.0%であった。ダラツムマブSC 1800mg及びテクリスタマブSC 3mg/kgで治療された患者(n=4)のORRは100%であった。追跡期間の中央値は8.6ヶ月(範囲:0.3~19.6)であり、最初に確認された奏効までの期間の中央値は1ヶ月(範囲:0.9~3.5)であった。以下の表15に、ORRの概略を示す。
【0313】
【表16】
a.患者は、少なくとも1回の試験治療を受けており、治験責任医師による少なくとも1回のベースライン後奏効評価を有し、未確認の奏効を含む。
b.奏効評価可能な患者においてPR以上であり、未確認奏効を含む。
CR、完全奏効;ORR、全奏効率;PR、部分奏効;QW、毎週:Q2W、隔週;SC、皮下;SD、安定した疾患;PD、進行性疾患;RP2D、第2相推奨用量;tec、テクリスタマブ;VGPR、非常に良好な部分奏効。
【0314】
奏効は耐久性があり、図2に示すように時間と共に深くなった。奏効は、CD38曝露又は難治性のいずれかであった患者を含む、高度に前治療された患者において観察された。奏効者の追跡期間中央値は9.6ヶ月(範囲1.5~19.6)であり、26の奏効が締切時点で進行中の治療であった。加えて、1人の参加者が、締切時に、有害事象に起因して治療を中止した後に奏効を継続した。
【0315】
ポマリドミドを伴う又は伴わないダラツムマブと組み合わせて、1800mgのダラツムマブ及びテクリスタマブ(毎週1500μg/kg又は3000μg/kg、及び隔週300mg及び3000μg/kg)で治療された患者の全奏効率の詳細な概要を表16に示す。全てのテクリスタマブ用量レベルにわたる63人の参加者が、2022年4月6日現在、投与後の疾患評価が1以上であった(すなわち、有効性について評価可能であった)。1800mgのダラツムマブSCと組み合わせて300mgのSCテクリスタマブを隔週で受けている患者を、サイクル1の15日目からサイクル2まで毎週治療し、続いてサイクル3の1日目から隔週で治療した(C3D1)。1800mgのダラツムマブと組み合わせて3000μg/kg SCテクリスタマブを隔週投与される患者を、サイクル1の15日目に開始して隔週で治療した。1800mgのSCダラツムマブ及び2又は4mgのポマリドミドと組み合わせて720μg/kg又は750μg/kg SCテクリスタマブを隔週投与される患者を、サイクル1の15日目に開始して隔週で治療した。
【0316】
【表17-1】
【0317】
【表17-2】
【0318】
1800mgのSCダラツムマブと組み合わせて週1回3000μg/kgのSC テクリスタマブを投与された対象(n=4人の評価可能な対象)について、奏効は、CR/sCRの2人の対象(50.0%)及びVGPRの2人の対象(50.0%)を含んだ。1800mgのSCダラツムマブ及び4mgのポマリドミドと組み合わせて720μg/kg SCテクリスタマブを毎週投与された対象について(n=9人の奏効評価可能対象)、奏効は、sCRの2人の対象(22.2%)、CRの3人の対象(33.3%)、VGPRの2人の対象(22.2%)、PRの1人の対象(11.1%)、及び進行性疾患の2人の対象(22.2%)を含む。1800mgのSCダラツムマブ及びSDを伴う2mgのポマリドミドと組み合わせて750μg/kgのSCテクリスタマブを毎週投与された1人の奏効評価可能な対象が存在した。1800mgのSCダラツムマブと組み合わせて300mgのSC テクリスタマブを隔週投与された対象(n=2の奏効評価可能対象)について、奏効は、VGPRの2人の対象(100%)を含む。
【0319】
バイオマーカーデータは、ダラツムマブの存在におけるテクリスタマブの薬力学的プロファイルが、これらの薬剤の作用機序及びテクリスタマブ単剤治療試験(MajesTEC-1)において観察されたプロファイルと一致することを示した。バイオマーカー分析の締切日(2022年4月6日)の時点で、バイオマーカーを35人の対象について評価した[1500μg/kg QW(n=21)及び3000μg/kg QW(n=5);3000μg/kg Q2W(n=9)]。テクリスタマブ及びダラツムマブ投薬後早期にT細胞数が一時的に減少し、その後、1週間以内にT細胞数が回復した(図3)。サイクル3の1日目(C3D1)までにT細胞数の2倍の増殖もあった。更に、ダラツムマブとのテクリスタマブ併用によってT活性化が誘導された(図4)。炎症促進性サイトカインの誘導は、ダラツムマブ及びテクリスタマブ(漸増及び完全用量)治療の後に起こった(図5)。2人の対象において、CD38+T細胞サブセットは、ダラツムマブの最初の投与後に減少する。
【0320】
テクリスタマブ+ダラツムマブ投与は、CD38+/CD8+T細胞の誘導によって実証されるように、末梢T細胞活性化をもたらした(図6)。CD38+/CD8+T細胞の割合は、サイクル1の1日目(C1D1)の最初のダラツムマブ投与後に減少し、これは以前のデータと一致したが、特にテクリスタマブ投与は、テクリスタマブの第1の漸増用量(C1D2)後にCD38+T細胞の誘導をもたらした。
【0321】
テクリスタマブSC(6.0mg/kg)+ダラツムマブSCコホート
ダラツムマブ及びテクリスタマブによるSC治療は、28日サイクルで投与された(テクリスタマブについての漸増投薬を伴う)。2022年4月6日現在の予備データは、1800mgのSCダラツムマブ及びテクリスタマブ6.0mg/kg(6000μg/kg)で治療された12人の対象についての結果を含んでいた。テクリスタマブ及びダラツムマブ投薬コホートの概要を表17に示す。
【0322】
【表18】
【0323】
過去の治療ライン数の中央値は6.0(範囲、2~15ライン)であり、経過観察期間の中央値は5.39ヶ月(範囲1.0~6.0ヶ月)であった。参加者は、中央値2.0サイクルのTec-Dara治療(範囲:1~4サイクル)を受けていた。2人の参加者が、死亡のために治療を中止した。これらの参加者のうちの1人が、グレード5の血球貪食症候群(両方の試験薬に関連する)のために死亡し、他の参加者が、COVID-19肺炎(試験薬に関連しない)のために死亡した。1人の参加者が、グレード4のCOVID-19肺炎のTEAEのために試験治療を中止し、その後、グレード5のCOVID-19肺炎のために死亡した。
【0324】
全ての参加者(100.0%)が、1以上のTEAEを有していた。4人の参加者(33.3%)が、グレード3の最大重症度を有するTEAEを有していた。5人の対象(41.7%)が、グレード4の最大重症度を有するTEAEを有していた。2人の参加者が、グレード5のTEAEを有していた。7人の参加者(58.3%)が、重篤なTEAEを報告した。1人の参加者が、グレード5の致死的血球貪食症候群のDLTを経験した。
【0325】
最も頻繁に報告されたTEAE(対象の20%以上)は、疲労(75%;全てグレード1又は2)、CRS(58.3%;全てグレード1又は2)、及び好中球減少症(58.3%;グレード3/4:50%)、食欲減退(50%、全グレード1又は2)、サイトメガロウイルス感染症再発(41.7%;グレード3/4:25%)、発熱、悪心、及び下痢(全て41.7%;全てのグレード1又は2)、悪寒(33.3%;全てのグレード1又は2)、口渇、呼吸異常、体重減少、嘔吐、低カルシウム血症、及び味覚異常(25%;全てグレード1又は2)、血中カリウム不足症(25%;グレード3/4、8.3%)、並びに貧血(25%、グレード3/4:16.7%)であった。ICANSは報告されなかった。4人の参加者(33.3%)が、局所注射部位反応を経験した。全身注入/注射関連反応を経験した者はいなかった。
【0326】
全体として、第1b相試験のデータは、予備的有効性データとして有望であり、高度に前治療された患者において有望なORR(70~100%)を示唆した。更に、ダラツムマブの存在における細胞傷害性T細胞(CD38+/CD8+)のテクリスタマブ媒介性誘導は、併用レジメンの原理を裏付ける。結果として、RRMM患者におけるテクリスタマブとダラツムマブの併用の更なる調査が正当化される。例えば、無作為化第3相MajesTEC-3試験(NCT05083169)は、テクリスタマブ及びダラツムマブSC(Tec-Dara)対ダラツムマブSC、ポマリドミド、及びデキサメタゾン(DPd)、又はダラツムマブ、ボルテゾミブ、及びデキサメタゾン(DVd)で治療されたRRMM患者を評価する。
【0327】
実施例2 RRMMを有する参加者において、ダラツムマブSC(Tec-Dara)と組み合わせたテクリスタマブと、ダラツムマブSC、ポマリドミド、及びデキサメタゾン(DPd)、又はダラツムマブSC、ボルテゾミブ、及びデキサメタゾン(DVd)とを比較する第3相無作為化試験
再発性又は難治性多発性骨髄腫(RRMM)を有する参加者において、ダラツムマブSCと組み合わせたテクリスタマブ(Tec-Dara)と、ダラツムマブSC、ポマリドミド、及びデキサメタゾン(DPd)又はダラツムマブSC、ボルテゾミブ、及びデキサメタゾン(DVd)とを比較する第3相無作為化試験を行う。参加者は、PI及びレナリドミドを含む1~3回の事前治療を受けていなければならない。
【0328】
目的及びエンドポイント
試験の主な目的は、PFSによって評価される際に、ダラツムマブSC(Tec-Dara;A群、図7)と組み合わせたテクリスタマブの効能と、治験責任医師が選択したDPd又はDVd(B群;以下、DPd/DVdと称する)とを比較することである。主要な第2の目的は、全奏効(PR以上)率、CR以上率、MRD(微小残存病変)陰性率、PFS2(次の治療ラインにおける無増悪生存期間)、及びOS(全生存期間)によって評価される有効性の更なる比較を含む。試験は、各参加者について以下の3段階で行われる:スクリーニング(28日まで)、治療(確認された進行性疾患、死亡、耐えられない毒性、同意の撤回、又は試験の終了のいずれかが最初に起こるまで)、及び追跡(死亡、同意の撤回、追跡の喪失、又は試験の終了のいずれかが最初に起こるまで)。進行性疾患又は同意の撤回以外の任意の理由で試験治療を中止する参加者は、進行性疾患が確認されるまで、又はその後の抗骨髄腫治療の開始まで、奏効評価のために追跡され続ける。進行性疾患が確認された後、参加者は、生存状態、その後の抗骨髄腫治療、及び第2の原発性悪性腫瘍の発生について、試験の終了まで16週間毎に追跡される。
【0329】
対象集団
本試験は、PI及びレナリドミドを含む1~3回の事前治療ラインを以前に受けた多発性骨髄腫患者を用いて行われる。参加者が以前に1回の治療ラインしか受けていない場合、彼又は彼女の疾患はレナリドミド不応性でなければならない。本試験に対象を登録するための組み入れ基準及び除外基準を以下に記述する。
【0330】
組み入れ基準
1.18歳以上。
2.以下の基準によって定義される文書化された多発性骨髄腫:
a.IMWG診断基準に従う多発性骨髄腫診断
b.以下のうちのいずれかとして定義されるスクリーニング時に測定可能な疾患
1)血清M-タンパク質レベル≧0.5g/dL(中央検査室);又は
2)尿M-タンパク質レベル≧200mg/24時間(中央検査室);又は
3)血清免疫グロブリン遊離軽鎖≧10mg/dL(中央検査室)及び異常な血清免疫グロブリンカッパラムダ遊離軽鎖比。
注:全ての試みは、血液及び尿M-タンパク質測定のスクリーニングの中央検査室結果に基づいて参加者の適格性を決定するために行われるべきである。例外的な状況では、治験依頼者との討議及び治験依頼者による書面による承認の後に、血液及び尿のMタンパク質測定の現地の検査結果を使用して、最初の適格性を判定してもよいが、これは、結果が測定可能性の閾値を25%以上上回る場合のみである。そのような場合、中央検査室結果も、ベースライン中央検査室値を確立し、ローカル検査室からの結果を確認するために、試験治療の投与の開始前に依然として得られるべきである。
3.PI及びレナリドミドを含む抗骨髄腫療法の1~3回の事前治療ラインを受けた。
a.以前の抗骨髄腫療法ラインを1ラインだけ受けた参加者は、レナリドミド不応性でなければならない(すなわち、レナリドミド含有レジメンの治療中又は完了の60日以内にIMWG基準によって進行性疾患を示した)。維持として投与されるレナリドミドの最後の用量の60日目又は60日以内の進行は、この基準を満たす。
注記:参加者は、進行性疾患がレジメンに対する最良奏効でない限り、各レジメンについて1回以上の完全な治療サイクルを受けていなければならない。
単一治療ラインは、1つ以上の薬剤からなり得、誘導、造血幹細胞移植、及び維持療法を含んでもよい。放射線療法、ビスホスホネート、又はステロイドの単回短期コース(すなわち、デキサメタゾン40mg/日の等価物以下を4日間)は、事前治療ラインとは見なされない。
4.最後のレジメン時又はその後のIMWG基準による奏効に関する治験責任医師の判定に基づく進行性疾患の文書化された証拠。
5.スクリーニング時及び試験治療の投与開始直前に0、1、又は2のECOGパフォーマンスステータススコアを有する。
6.スクリーニング段階中及び試験治療の投与開始時にも、以下の基準を満たす臨床検査値を有する。
【0331】
【表19】
ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ;AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;CrCl=クレアチニンクリアランス;G-CSF=顆粒球コロニー刺激因子;GM-CSF=顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子;RBC=赤血球;ULN=基準値上限。
加えて、これらの検査値は72時間以内に再評価されなければならない。
最初の投与の前に、参加者はまた、全ての基準を満たさなければならない。1つ以上の
基準が投薬の72時間前に満たされない場合、検査試験の1回の反復が許容される。
1回を超える反復検査試験が必要である場合、治験依頼者は投薬前に相談されなければならない。
7.妊娠の可能性のある女性は、スクリーニング時及び試験治療の開始から24時間以内に再び陰性の高感度血清妊娠検査を受けなければならず、試験中に更なる血清又は尿妊娠検査に同意しなければならない。
8.女性は、以下の条件を満たさなければならない。
a.妊娠の可能性がない、又は
b.出産能力があり、かつ
1)真の禁欲を実践する、若しくは
2)2つの有効な避妊法(少なくとも1つは、卵管結紮術、子宮内避妊具(IUD)、ホルモン(避妊薬、ホルモンパッチ、注射パッチ、注射など)などの非常に有効な方法でなければならない)。
注記:参加者は、試験全体を通して、及び試験治療の最後の投与後90日間、上記を継続することに同意しなければならない。
注:女性が試験の開始後に妊娠の可能性がある場合、女性は上記の項目(b.)に従わなければならない。
注:ホルモン避妊法とテクリスタマブとの間の相互作用は、正式に試験されなかった。
したがって、A群に無作為化された女性がホルモン
避妊薬を使用している場合、追加のバリア法を使用しなければならない。
注:性的禁欲は、試験治療に関連するリスクの全期間中、異性間の性交を控えることとして定義される場合にのみ、非常に有効な方法と考えられる。
性的禁欲の信頼性は、試験期間並びに参加者好ましい及び通常の生活パターンに関連して評価する必要がある。
9.女性は、将来の使用のために、試験中及び試験治療の最後の投与を受けた後90日間の補助生殖の目的で、卵(卵子、卵母細胞)を提供しないこと、又は凍結しないことに同意しなければならない。
10.男性は、別の人への射精精液の通過を可能にする行為に従事するとき、試験の間及び試験治療の最後の投与後最低90日間、コンドーム(殺精子フォーム/ゲル/フィルム/クリーム/坐剤を伴って)を着用しなければならない。女性パートナーが妊娠の可能性がある場合、彼女は非常に有効な避妊法を実施しなければならない。
注:男性参加者が精管切除している場合、引き続きコンドーム(殺精子フォーム/ゲル/フィルム/クリーム/坐薬を伴って)を使用しなければならないが、その女性パートナーは避妊法を使用する必要はない。
11.男性参加者は、試験の間及び試験治療の最後の投与後後最低90日間、生殖の目的で精子を提供しないことに同意しなければならない。
12.このプロトコルで指定された生活様式の制限事項を守る意思があり、それが可能である。
13.参加者は、対象が試験の目的とそれに必要な手順を理解し、試験に参加する意思があることを示すICFに署名しなければならない(又はその法的に許容される代理人が署名しなければならない)。
【0332】
除外基準
以下の基準のいずれかに該当する潜在対象は、試験への参加から除外される。すなわち、
1.治験薬又はその賦形剤(テクリスタマブ治験責任医師のパンフレット及び適切な添付文書を参照)に対する禁忌又は生命を脅かすアレルギー、過敏症、又は不耐性。
特定の試験薬に関する追加の除外基準は、以下を含む。
a.参加者は、以下のいずれかが存在する場合、対照療法としてDPdを受ける資格がない:
1)ポマリドミドに対する禁忌又は生命を脅かすアレルギー、過敏症、又は不耐性(ポマリドミドに関連する任意のAEに起因して以前の治療が中止されたこととして定義される不耐性)
2)IMWGによるポマリドミドに対して難治性であると考えられる疾患(ポマリドミドによる治療中又は治療完了から60日以内に進行)
b.参加者は、以下のいずれかが存在する場合、対照療法としてDVdを受ける資格がない:
1)ボルテゾミブに対する禁忌又は生命を脅かすアレルギー、過敏症、又は不耐性(ボルテゾミブに関連する任意のAEに起因して以前の治療が中止されたこととして定義される不耐性)
2)NCI-CTCAEバージョン5.0によって定義される、疼痛を伴うグレード1の末梢神経障害又はグレード2以上の末梢神経障害
3)IMWGによるボルテゾミブに対して不応性であると考えられる疾患(ボルテゾミブによる治療中又は治療完了から60日以内に進行)
4)無作為化前の5半減期以内に強力なCYP3A4誘導物質を投与された。
c.参加者は、ポマリドミド及びボルテゾミブの両方に対して不応性である場合、本試験に適格ではない。
2.任意の事前のBCMA指向療法を受けた。
3.IMWGによる抗CD38モノクローナル抗体に対して不応性であると考えられる疾患(抗CD38モノクローナル抗体による治療中又は治療完了から60日以内の進行)を有する。
4.無作為化前の特定の時間枠において、以下の事前抗骨髄腫療法を受けた。
a.21日以内若しくは少なくとも5以上の半減期以内のいずれか短い方での標的療法、エピジェネティック療法、又は治験薬若しくは侵襲的治験医療デバイスによる治療
b.4週間以内の治験ワクチン
c.21日以内のモノクローナル抗体療法
d.21日以内の細胞毒性療法
e.14日以内のPI療法
f.14日以内のIMiD剤療法
g.14日以内の放射線療法又は7日以内の焦点放射線
h.3ヶ月以内の遺伝子改変養子細胞療法(例えば、キメラ抗原受容体改変T細胞、NK細胞)
5.幹細胞移植:
a.6ヶ月以内の同種異系幹細胞移植。同種移植を受けた参加者は、移植片対宿主病の兆候なしで42日間以上全ての免疫抑制薬をオフにしなければならない。
b.無作為化前12週間以内の自己幹細胞移植。
6.無作為化前の14日以内に140mg以上のプレドニゾンに相当するコルチコステロイドの累積用量を投与された。
7.無作為化前の4週間以内に生弱毒化ワクチンを投与された。
8.再発性/難治性多発性骨髄腫以外の骨髄異形成症候群又は活動性悪性腫瘍(すなわち、最近24ヶ月間に進行しているか、又は治療変更を必要とする)。唯一許される例外は以下の通りである。
a.完全に治癒したと考えられる最近24ヶ月以内に治療された非筋肉浸潤性膀胱癌
b.完全に治癒したと考えられる最近24ヶ月以内に治療された皮膚癌(非黒色腫又は黒色腫)
c.完全に治癒したと考えられる最近24ヶ月以内に治療された非侵襲性子宮頸癌
d.限局性前立腺癌(N0M0):
1)グリーソンスコアが6以下であり、最近24ヶ月以内に治療されているか、又は治療されておらず監視下である、
2)グリーソンスコアが3+4であり、完全な試験スクリーニングの6ヶ月以上前に治療されており、再発のリスクが非常に低いと考えられる、又は
3)限局性前立腺癌の病歴があり、アンドロゲン除去療法を受けており、再発のリスクが非常に低いと考えられる。
e.乳癌:適切に治療された非浸潤性小葉癌若しくは非浸潤性乳癌、又は限局性乳癌の病歴及び抗ホルモン剤の投与を受けており、再発のリスクが非常に低いと考えられるもの。
f.最小限の再発リスクで治癒したと考えられる他の悪性腫瘍。
9.スクリーニング時点の形質細胞白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、POEMS症候群(多発性神経障害、臓器肥大症、内分泌障害、Mタンパク、及び皮膚変化)、又は一次アミロイド軽鎖アミロイドーシス。
10.CNSの関与又は多発性骨髄腫の髄膜関与の臨床兆候を示した。いずれかが疑われる場合、陰性全脳MRI及び腰部細胞診が必要とされる。
11.ICFに署名する前6ヶ月以内の脳卒中又は発作。
12.参加者が、この試験に登録している間、又は試験薬の最後の用量後90日以内に妊娠している、授乳している、又は妊娠を計画している。
13.参加者が、この試験に登録している間、又は試験介入の最後の投与後90日以内に子供の父親となることを計画している。
14.以下の心臓の症状の存在:
a.ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)のステージIII又はIVの心不全
b.無作為化前6ヶ月以内の心筋梗塞又は冠状動脈バイパス移植
c.自然な血管迷走神経又は脱水によるとは考えられない、臨床的に重要な心室性不整脈又は説明されない仮死の病歴
d.制御されていない心不整脈又は臨床的に有意なECG異常
15.以下のいずれか:
a.ヒト免疫不全ウイルスについて血清陽性。
b.B型肝炎感染(すなわち、HBsAg又はHBV-DNA陽性)。感染状態が不明である場合、感染状態を判定するために定量的レベルが必要である。
c.活性型のC型肝炎への感染は、陽性HCV-RNA試験によって測定した。HCV抗体陽性の病歴を有する対象は、HCV-RNA試験を受けなければならない。慢性C型肝炎感染(HCV抗体及びHCV-RNA陽性の両方として定義される)の病歴を有する参加者が抗ウイルス療法を完了し、療法の完了の12週間後に検出不可能なHCV-RNAを有する場合、その参加者は試験に適格である。
d.予測正常の50%未満のFEV1を有するCOPD。FEV1試験が、COPD又は喘息を有することが既知である又は疑われる参加者に対して必要であり、FEV1が予測正常値の50%未満である場合、参加者は除外されなければならないことに留意されたい。
e.過去2年以内の中等度若しくは重度の持続性喘息、又は任意の分類の制御されない喘息。FEV1試験が、喘息を有することが既知である又は疑われる参加者に対して必要であり、FEV1が予測正常値の50%未満である場合、参加者は除外されなければならないことに留意されたい。
注:現在、制御された間欠性喘息又は制御された軽度な持続性喘息を有している対象は、試験において許容されることに留意されたい。
16.試験手順若しくは結果に干渉する可能性がある、
又は治験責任医師の意見において本試験に参加することについて以下の危険性を有する、併発する医学的又は精神的状態又は疾患。
a.制御されていない糖尿病
b.急性びまん性浸潤性肺疾患
c.全身性抗菌療法を必要とする活性全身性ウイルス、真菌、又は細菌感染の証拠
d.白斑、I型糖尿病、並びに臨床症状及び臨床検査に基づいて現在は甲状腺機能正常である以前の自己免疫性甲状腺炎を除く、活動性自己免疫疾患又は自己免疫疾患の記録された病歴
e.精神状態の障害(例えば、アルコール又は薬物乱用)、認知症、又は異常な精神状態
f.参加者が治療施設で計画された治療を受ける又はそれに耐える能力を損なうことになるか、参加者がインフォームドコンセント又は、治験責任医師の判断によれば、対象にとって参加が最良ではない(例えば、生活の質を損なう)あらゆる条件を理解する能力を損なうことになるか、又はプロトコルに定められた評価を妨害、制限、又は混同しかねない、任意の他の問題。
g.推奨される医学的処置の不遵守の病歴
17.最初の投与の2週間以内に大手術を受けているか、又は手術から完全に回復する予定にないか、又は対象が試験への参加を期待される時期に若しくは検査薬剤投与の最後の投与後2週間以内に、手術を予定している。
注:局所麻酔下で施行される外科処置が計画されている参加者は、参加可能である。椎体形成術(Kyphoplasty)又は椎体形成術(vertebroplasty)は、大手術とは見なされない。これらの基準について疑問がある場合、治験担当者は、適切な治験依頼者担当者に相談し、試験に参加者を登録する前に問題を解決しなければならない。
【0333】
試験介入
およそ560人の参加者を、Tec-Dara(A群)又は治験責任医師のDPd/DVdの選択(B群)に対して1:1の比で無作為化する。試験治療は、Tec-Dara(A群)及びDPd(B群)について28日サイクルで投与される。DVd(B群)については、試験治療は、サイクル1~8については21日サイクルで、サイクル9+については28日サイクルで投与される。群A及び群Bの参加者は、表19に示される投薬レジメンで治療される。
【0334】
【表20】
【0335】
テクリスタマブSC投薬スケジュールは、2回の漸増用量(0.06及び0.3mg/kg)と、それに続く1.5mg/kgの毎週の治療用量からなるRP2D用量である。
【0336】
無作為化は、治験責任医師のDPd又はDVdの選択、ISS毎のスクリーニングの段階(I対II対III)、以前の抗CD38モノクローナル抗体曝露、及び以前治療ラインの数(1対2又は3)によって階層化される。
【0337】
試験評価
有効性評価
有効性評価は、血清、尿、骨髄、及びイメージング(適用可能な場合)からのデータを使用して、プロトコルにおいて定義されているIMWG基準(2016)に従って行われる。奏効又は進行は、治験責任医師、検証されたアルゴリズムの使用、及び独立審査委員会(Independent Review Committee、IRC)によって評価される。
【0338】
薬物動態及び免疫原性評価
PK分析のためのテクリスタマブ(A群[Tec-Dara]のみ)及びダラツムマブ(両方の治療群)の血清中濃度の測定のために、まばらな血液試料を採取する。集団PK分析を行い、結果を別々に報告してもよい。テクリスタマブ及びダラツムマブに対する抗薬物抗体の検出及び特徴付けは、検証された又は適切に認定されたアッセイ方法を使用して実施される。
【0339】
薬力学的及びバイオマーカー評価
末梢血及び骨髄穿刺液を、両方の治療群の参加者から収集する。バイオマーカー評価は、以下の目的に焦点を合わせる:1)テクリスタマブ及びダラツムマブの作用機序を示す薬力学的バイオマーカーを評価すること;2)MRD陰性を誘導及び維持する試験治療の能力を判定すること;3)骨髄腫細胞に対する奏効/耐性のバイオマーカー(例えば、BCMA、CD38、及びPD-L1発現のレベル)及び免疫細胞に対する奏効/耐性のバイオマーカー(例えば、T細胞上の活性化/消耗マーカー)を調査すること;4)細胞遺伝学的変化又は他の高リスク分子サブタイプを有する参加者における試験治療の臨床的利益を判定すること。
【0340】
安全性の評価
ダラツムマブSCと組み合わせたテクリスタマブの安全は、身体検査、神経検査、ECOGパフォーマンスステータス、臨床検査試験、バイタルサイン、及びAEモニタリングによって評価される。AEの重症度は、ASTCTガイドラインに基づいて評価されるCRS及びICANSのグレード付けを除いて、NCI-CTCAEバージョン5.0を使用して評価される。併用薬が記録される。
【0341】
統計方法
有効性分析のための一次集団は、治療意図(ITT)集団であり、これは、全ての無作為化された参加者を含む。安全性セットは、任意の試験治療を受けた無作為化された全ての参加者からなる。治療を唯一の説明変数とする層別ログランク検定、カプラン・マイヤー法、及び層別コックス回帰を、PFSの主要有効性エンドポイントの分析に使用する。二元型二次エンドポイント(例えば、全奏効、VGPR以上、CR、及びMRD陰性)については、層別コクラン・マンテル・ヘンツェル検定が使用される。事象までの時間の二次エンドポイント(例えば、OS、PFS2、ProSの悪化までの時間、及び次の治療までの時間)については、PFSと同様の方法が採用される。218回のPFS事象(オブライエン&フレミング型アルファ消費)後のPFSについて、1つの中間分析を計画する。PFSについての最終分析は、335回のPFS事象が報告された後に行われる。試験の終了は、最終OS(全生存期間)分析によって定義され、これは、335事象の初期又は最後の参加者が無作為化された5年後に行われる。
【0342】
当業者であれば、本発明の好ましい実施形態に対して、多数の変更及び修正を加えることができ、このような変更及び修正を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で行うことができることを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲に収まる、このような同等の変化を全て網羅することが意図されている。
【0343】
本明細書に引用又は記載されている各特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が本明細書に参照として組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2024540054000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7
【国際調査報告】