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特表2024-540058誘導性クラスターキメラ抗原受容体(CCAR)構築物の開発
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】誘導性クラスターキメラ抗原受容体(CCAR)構築物の開発
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20241024BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/57 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/40 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/57
C12N15/40
C12N15/19
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525221
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022079218
(87)【国際公開番号】W WO2023081754
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/275,752
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】レーア,ジェンズ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】クノーチェル,バージット
(57)【要約】
クラスターCARおよび治療用ペイロード核酸、それらを含有する免疫細胞、ならびに調節可能な養子細胞治療およびCAR T細胞抵抗性腫瘍細胞の殺傷のためのそれらの使用が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の核酸、第2の核酸、および第3の核酸のうちの少なくとも1つを含む核酸構築物であって、前記第1の核酸が、第1の腫瘍関連抗原(TAA)に結合する第1の抗原結合性ドメインを含む第1の細胞外ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、第1のシグナル伝達ドメインおよびプロテアーゼドメインを含む第1の細胞内ドメインとを含む第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸と作動可能に連結された第1のプロモーターを含み、
前記第2の核酸が、第2のTAAに結合する第2の抗原結合性ドメインを含む第2の細胞外ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、第2のシグナル伝達ドメイン、前記プロテアーゼにより認識される切断部位、および転写活性化因子を含む細胞内ドメインとを含む第2のCARをコードする核酸と作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、
前記第3の核酸が、前記転写活性化因子に結合する転写アクセプターと、第3のプロモーターと、前記第3のプロモーターと作動可能に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸とを含む、
核酸構築物。
【請求項2】
前記第1、前記第2、および前記第3の核酸を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
前記第1、前記第2、および前記第3の核酸のうちの2つを含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項4】
前記第1のプロモーター、前記第2のプロモーター、または前記第1のプロモーターと前記第2のプロモーターの両方が、EF-1α、CMV、PGK、RPBSA、AmpR、またはCAGプロモーターである、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項5】
前記第1および前記第2のプロモーターがEF-1αプロモーターである、請求項4に記載の核酸構築物。
【請求項6】
前記第1の抗原結合性ドメイン、前記第2の抗原結合性ドメイン、または前記第1の抗原結合性ドメインと前記第2の抗原結合性ドメインの両方が、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD19、CD20、CD38、CD138、FCRH5、GPRC5D、またはSLAMF7に結合する、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項7】
前記第1および前記第2の抗原結合性ドメインがBCMAに結合する、請求項6に記載の核酸構築物。
【請求項8】
前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインが、アミノ酸配列
【化1】
を含むVLドメイン、およびアミノ酸配列
【化2】
を含むVHドメインを含む、請求項7に記載の核酸構築物。
【請求項9】
前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインがCD38に結合する、請求項6に記載の核酸構築物。
【請求項10】
前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインが、アミノ酸配列
【化3】
を含むVLドメイン、およびアミノ酸配列
【化4】
を含むVHドメインを含む、請求項9に記載の核酸構築物。
【請求項11】
前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインがSLAMF7に結合する、請求項6に記載の核酸構築物。
【請求項12】
前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインが、アミノ酸配列
【化5】
を含むVLドメイン、およびアミノ酸配列
【化6】
を含むVHドメインを含む、請求項11に記載の核酸構築物。
【請求項13】
前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインがFCRH5に結合する、請求項6に記載の核酸構築物。
【請求項14】
前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインが、アミノ酸配列
【化7】
を含むVLドメイン、およびアミノ酸配列
【化8】
を含むVHドメインを含む、請求項14に記載の核酸構築物。
【請求項15】
前記第1および前記第2の抗原結合性ドメインが同じTAAに結合する、請求項1~14のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項16】
前記第1および前記第2の抗原結合性ドメインが同じアミノ酸配列を有する、請求項15に記載の核酸構築物。
【請求項17】
前記第1または前記第2の膜貫通ドメインがCD3、CD8α、CD28、またはCD137に由来する、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項18】
前記第1および前記第2の膜貫通ドメインがCD28に由来する、請求項17に記載の核酸構築物。
【請求項19】
前記第1および前記第2の膜貫通ドメインが、アミノ酸配列FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号50)を有する、請求項18に記載の核酸構築物。
【請求項20】
前記第1の細胞外ドメインが、前記第1の抗原結合性ドメインと前記第1の膜貫通ドメインとの間に配置された第1のヒンジドメインをさらに含み、前記第2の細胞外ドメインが、前記第2の抗原結合性ドメインと前記第2の膜貫通ドメインとの間に配置された第2のヒンジドメインをさらに含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項21】
前記第1および前記第2のヒンジドメインがCD8α、IgG1、またはIgG4に由来する、請求項20に記載の核酸構築物。
【請求項22】
前記第1および前記第2のヒンジドメインがCD8αに由来する、請求項21に記載の核酸構築物。
【請求項23】
前記第1および前記第2のヒンジドメインがアミノ酸配列KPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSKRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY(配列番号54)を含む、請求項22に記載の核酸構築物。
【請求項24】
前記第1のシグナル伝達ドメイン、前記第2のシグナル伝達ドメイン、または前記第1のシグナル伝達ドメインと前記第2のシグナル伝達ドメインの両方が、一次シグナル伝達ドメイン、共刺激シグナル伝達ドメイン、または一次シグナル伝達ドメインと共刺激シグナル伝達ドメインの両方を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項25】
前記第1のシグナル伝達ドメインがCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含み、前記第2のシグナル伝達ドメインがCD28一次シグナル伝達ドメインを含む、請求項24に記載の核酸構築物。
【請求項26】
前記第1のシグナル伝達ドメイン、前記第2のシグナル伝達ドメイン、または前記第1のシグナル伝達ドメインと前記第2のシグナル伝達ドメインの両方が、CD3ζ一次シグナル伝達ドメイン、および4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインまたはCD28共刺激シグナル伝達ドメイン、または4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインとCD28共刺激シグナル伝達ドメインの両方を含む、請求項24に記載の核酸構築物。
【請求項27】
前記第1および前記第2のシグナル伝達ドメインが、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインならびに4-1BBおよびCD28共刺激シグナル伝達ドメインを含む、請求項26に記載の核酸構築物。
【請求項28】
前記CD3ζ一次シグナル伝達ドメインがアミノ酸配列
【化9】
を含み、前記4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインがアミノ酸配列KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号68)を含み、前記CD28共刺激シグナル伝達ドメインがアミノ酸配列RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号72)を含む、請求項27に記載の核酸構築物。
【請求項29】
前記第1のCARが、前記プロテアーゼドメインのN末端側にある第1のリンカーをさらに含み、前記第2のCARが、前記切断部位のN末端側にある第2のリンカーをさらに含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項30】
前記プロテアーゼドメインが、タバコエッチウイルスプロテアーゼ(TEVp)に由来し、前記切断部位がTEVpにより切断可能な配列を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項31】
前記切断部位がアミノ酸配列ENLYFQM(配列番号83)を含む、請求項30に記載の核酸構築物。
【請求項32】
前記転写活性化因子がGal4-VP64融合タンパク質を含み、前記転写アクセプターがGal4結合部位を含み、前記第3のプロモーターが改変型CMVプロモーターである、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項33】
前記治療用ペイロードが、抗体断片、サイトカイン、可溶性サイトカイン受容体、ケモカイン、可溶性ケモカイン受容体、RNAもしくはオリゴペプチドワクチン、または表面受容体を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項34】
前記治療剤が、CD3、CD19、CD20、HLA-E、TGFβ、PD-L1、EGFR、NKG2A、TIGIT、LAG3、またはCTLA4に結合する抗体断片を含む、請求項33に記載の核酸構築物。
【請求項35】
前記治療用ペイロードが、二重特異性抗体断片または二重特異性T細胞エンゲージャーを含む、請求項34に記載の核酸構築物。
【請求項36】
前記治療用ペイロードが、CD3に結合するscFv、およびBCMA、CD19、CD20、CD33、CD38、CD138、EGFR、FCRH5、Flt3、GPCR5D、PSMA、またはSLAMF7に結合するscFvを含む二重特異性抗体断片を含む、請求項35に記載の核酸構築物。
【請求項37】
前記治療用ペイロードが、CD19に結合するscFvおよびCD3に結合するscFvを含む二重特異性抗体断片を含む、請求項36に記載の核酸構築物。
【請求項38】
前記治療用ペイロードが、アミノ酸配列
【化10】
を含む二重特異性抗体断片を含む、請求項37に記載の核酸構築物。
【請求項39】
前記治療用ペイロードが、CD20に結合するscFvおよびCD3に結合するscFvを含む二重特異性抗体断片を含む、請求項36に記載の核酸構築物。
【請求項40】
前記治療用ペイロードが、FCRH5に結合するscFvおよびCD3に結合するscFvを含む二重特異性抗体断片を含む、請求項36に記載の核酸構築物。
【請求項41】
前記治療用ペイロードが、アミノ酸配列
【化11】
を含む二重特異性抗体断片を含む、請求項40に記載の核酸構築物。
【請求項42】
前記治療用ペイロードが、サイトカイン、サイトカイン受容体、ケモカイン、またはケモカイン受容体に結合する抗体断片を含む、請求項33に記載の核酸構築物。
【請求項43】
前記抗体断片がIL-6またはIL-6Rに結合する、請求項42に記載の核酸構築物。
【請求項44】
前記治療用ペイロードが、サイトカイン、可溶性サイトカイン受容体、ケモカイン、または可溶性ケモカイン受容体を含む、請求項33に記載の核酸構築物。
【請求項45】
前記サイトカインまたはケモカインが、IFNγ、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、またはTGFβである、請求項44に記載の核酸構築物。
【請求項46】
前記サイトカインまたはケモカインが、IFNγ、IL-2、またはTGFβである、請求項45に記載の核酸構築物。
【請求項47】
前記可溶性サイトカイン受容体または前記ケモカイン受容体が可溶性IFNγRまたは可溶性IL-2Rである、請求項45に記載の核酸構築物。
【請求項48】
前記治療用ペイロードがRNAまたはオリゴペプチドワクチンを含む、請求項33に記載の核酸構築物。
【請求項49】
前記RNAまたはオリゴペプチドワクチンが、サバイビン、WT1、MUC1、MAGE-A3、またはCT7に対して方向付けられている、請求項46に記載の核酸構築物。
【請求項50】
前記治療用ペイロードが表面受容体を含む、請求項33に記載の核酸構築物。
【請求項51】
前記表面受容体がCAR、CTLA-4、PD1、PD-L1、PD-L2を含む、請求項50に記載の核酸構築物。
【請求項52】
前記第1のリンカー、前記第2のリンカー、または前記第1のリンカーと前記第2のリンカーの両方が、アミノ酸配列GGGX、GGGGX(配列番号89)、またはGSSGSX(配列番号90)を含み、XはCかまたはSのいずれかである、請求項29~51のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項53】
前記リンカーがアミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号94)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号95)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号96)、EGKSSGSGSESKST(配列番号97)、またはGSAGSAAGSGEF(配列番号98)を有する、請求項52に記載の核酸。
【請求項54】
請求項1~53のいずれか一項に記載の核酸構築物を含むベクター。
【請求項55】
レンチウイルスベクターである、請求項54に記載のベクター。
【請求項56】
遺伝子改変型免疫細胞を産生する方法であって、
第1の核酸構築物、第2の核酸構築物、および第3の核酸構築物を免疫細胞へ導入するステップを含み、前記第1の核酸構築物が、第1のTAAに結合する第1の抗原結合性ドメインを含む第1の細胞外ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、第1のシグナル伝達ドメインおよびプロテアーゼドメインを含む第1の細胞内ドメインとを含む第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸と作動可能に連結された第1のプロモーターを含み、
前記第2の核酸構築物が、第2のTAAに結合する第2の抗原結合性ドメインを含む第2の細胞外ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、第2のシグナル伝達ドメイン、前記プロテアーゼにより認識される切断部位、および転写活性化因子を含む細胞内ドメインとを含む第2のCARをコードする核酸と作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、
前記第3の核酸構築物が、前記転写活性化因子に結合する転写アクセプターと、第3のプロモーターと、前記第3のプロモーターと作動的に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸とを含む、方法。
【請求項57】
前記第1のCARが、前記プロテアーゼドメインのN末端側にある、第1のシグナル伝達ドメインおよび第1のリンカーをさらに含み、前記第2のCARが、前記切断部位のN末端側にある、第2のシグナル伝達ドメインおよび第2のリンカーをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記第1、第2、および前記第3の核酸構築物が1つのベクターにより前記免疫細胞へ導入される、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記第1、第2、および前記第3の核酸構築物のうちの2つが、第1のベクターにより前記免疫細胞へ導入され、前記3つの核酸構築物の3番目が第2のベクターにより前記免疫細胞へ導入される、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
第1の核酸構築物、第2の核酸構築物、および第3の核酸構築物を含む、遺伝子改変型免疫細胞であって、
前記第1の核酸構築物が、第1のTAAに結合する第1の抗原結合性ドメインを含む第1の細胞外ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、第1のシグナル伝達ドメインおよびプロテアーゼドメインを含む第1の細胞内ドメインとを含む第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸と作動可能に連結された第1のプロモーターを含み、
前記第2の核酸構築物が、第2のTAAに結合する第2の抗原結合性ドメインを含む第2の細胞外ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、第2のシグナル伝達ドメイン、前記プロテアーゼにより認識される切断部位、および転写活性化因子を含む細胞内ドメインとを含む第2のCARをコードする核酸と作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、
前記第3の核酸構築物が、前記転写活性化因子に結合する転写アクセプターと、第3のプロモーターと、前記第3のプロモーターと作動的に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸とを含む、
免疫細胞。
【請求項61】
前記第1のCARが、前記プロテアーゼドメインのN末端側にある、第1のシグナル伝達ドメインおよび第1のリンカーをさらに含み、前記第2のCARが、前記切断部位のN末端側にある、第2のシグナル伝達ドメインおよび第2のリンカーをさらに含む、請求項60に記載の免疫細胞。
【請求項62】
前記第1、第2、および前記第3の核酸構築物が1つのベクター内に配置されている、請求項60に記載の免疫細胞。
【請求項63】
前記第1、第2、および前記第3の核酸構築物のうちの2つが第1のベクター内に配置され、前記3つの核酸構築物の3番目が第2のベクター内に配置されている、請求項60に記載の免疫細胞。
【請求項64】
T細胞である、請求項60~63のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項65】
CD8 T細胞である、請求項64に記載の免疫細胞。
【請求項66】
NK細胞である、請求項60~63のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項67】
請求項63~66のいずれか一項に記載の治療的有効数の免疫細胞および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項68】
癌を処置する方法であって、
それを必要としている対象に、請求項67に記載の薬学的組成物を投与するステップ
を含む、方法。
【請求項69】
前記対象が、以前CAR-T細胞治療またはBiTe治療を受けている、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記癌が固形腫瘍により特徴付けられる、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
固形腫瘍により特徴付けられる前記癌が、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、前立腺癌、脳癌、胃腸癌、精巣癌、子宮癌、および小児癌である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記癌が血液癌である、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記血液癌が多発性骨髄腫、白血病、またはリンパ腫である、請求項72に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2021年11月4日に出願された米国仮出願第63/275,752号の35 U.S.C. § 119(e)による優先権の利益を主張し、その米国仮出願は、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0002】
配列表
本出願は、XML形式で電子的に提出されており、かつ全体として参照により本明細書に組み入れられている配列表を含有する。2022年11月3日に作成された前記XMLコピーは、ファイル名が52095_751001WO_ST.xmlであり、サイズが157KBバイトである。
【背景技術】
【0003】
癌のほとんど全部の型は、薬剤抵抗性を発生し、処置に対して不応性となり得る。驚異的な数の多様な薬剤抵抗性機構があり、その機構には、遺伝的に異なる癌細胞の競合的成長を伴うクローン進化、細胞状態の転写変化を有する癌細胞のエピジェネティックな適応、および薬剤標的発現の喪失をもたらす選択的スプライシング事象が挙げられる。癌抵抗性機構を克服すること、および特に播種性癌を有する、癌患者の治癒を見出すことは、依然として重要な医学的必要性がある。
【0004】
さらに、腫瘍細胞は、それらの細胞上の免疫療法標的をいくつかの細胞内因性機構により排除することが知られており、その機構には、癌細胞表面上の標的タンパク質の、転写状態変化およびエピジェネティックな適応を通しての下方制御、標的タンパク質の遺伝子欠失、標的タンパク質の変異、スプライシングを通しての免疫療法結合部位の除去、立体構造変化を通しての標的マスキング、ならびに産生関連機構が挙げられる。
【0005】
したがって、正常な非疾患組織を温存しながら、有効な治療用物質を腫瘍部位へ特異的に送達する必要性がある。そのような方法および系は、全身投与された場合に通常なら高度に毒性であろう治療用物質の効果的な投与を可能にするだろう。たいていの新生物は、身体にわたって均一に分布するというよりむしろクラスターとして成長しかつ転移する傾向にあるため、それらはまた、特に魅力的であろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示の第1の態様は、3つの核酸のうちの少なくとも1つを含有する核酸構築物を対象とする。第1の核酸は、第1の腫瘍関連抗原(TAA)に結合する第1の抗原結合性ドメインを有する第1の細胞外ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、ならびに第1のシグナル伝達ドメインおよびプロテアーゼドメインを含む第1の細胞内ドメインを含有する第1のキメラ抗原受容体(本明細書では、「プロテアーゼCAR」とも呼ばれる)をコードする核酸と作動可能に連結された第1のプロモーターを含有する。3つの核酸の第2の核酸は、TAAに結合する第2の抗原結合性ドメインを含有する第2の細胞外ドメイン、第2の膜貫通ドメイン、ならびに第2のシグナル伝達ドメイン、プロテアーゼにより認識される切断部位、および転写活性化因子を含有する第2の細胞内ドメインを含有する第2のCAR(本明細書では、「活性化CAR」とも呼ばれる)をコードする核酸と作動可能に連結された第2のプロモーターを含有する。3つの核酸の第3の核酸は、転写活性化因子に結合する転写アクセプター、第3のプロモーター、ならびに第3のプロモーターと作動的に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸を含有する。
【0007】
本開示の別の態様は、プロテアーゼCAR、活性化CAR、第3の核酸、3つの核酸のうちの2つの部分的組合せ、または3つ全部の核酸をコードする核酸構築物を含有するベクターを対象とする。
【0008】
本開示のさらに別の態様は、遺伝子改変型免疫細胞を産生する方法を対象とする。方法は、第1の核酸構築物、第2の核酸構築物、および第3の核酸構築物を免疫細胞へ導入するステップを伴い、第1の核酸構築物が、第1のTAAに結合する抗原結合性ドメインを含有する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに第1のシグナル伝達ドメインおよびプロテアーゼドメインを含有する細胞内ドメインを含有するプロテアーゼCARをコードする核酸と作動可能に連結されたプロモーターを含有し;第2の核酸構築物が、第2のTAAに結合する抗原結合性ドメインを含有する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに第2のシグナル伝達ドメイン、プロテアーゼにより認識される切断部位、および転写活性化因子を含有する細胞内ドメインを含有する活性化CARをコードする核酸と作動可能に連結されたプロモーターを含有し;ならびに第3の核酸構築物が、転写活性化因子に結合する転写アクセプター、第3のプロモーター、ならびに第3の核酸構築物のプロモーターと作動的に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸を含有する。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、第1の核酸、第2の核酸、および第3の核酸を含有する遺伝子改変型免疫細胞を対象とする。
【0010】
本開示のさらに別の態様は、治療的有効数の遺伝子改変型免疫細胞および薬学的に許容される担体を含有する薬学的組成物を対象とする。
【0011】
本開示の別の態様は、癌を処置する方法を対象とする。方法は、必要としている対象に薬学的組成物を投与するステップを伴う。
【0012】
動作理論によって縛られるつもりはないが、癌患者への投与時、遺伝子改変型免疫細胞は、癌細胞と結合する際、本明細書でクラスターCAR(cCAR)細胞と呼ばれる免疫細胞が、免疫細胞の膜上の発現または細胞外スペースへの放出として治療用ペイロードを産生し、その後、その治療用ペイロードは、すぐ近接した他の癌細胞に結合し、治療効果(例えば、殺傷)を発揮する点における「クラスター効果」により治療効力を達成すると出願人は考えている。本明細書に開示された実施例は、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞)へ適用可能な治療用クラスターCAR系が、どのように健康な組織を実質的に温存しながら、効率的に腫瘍部位への、治療用物質の送達を可能にするかを実証している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】細胞が治療用ペイロードを腫瘍細胞の近くに送達するcCAR系の態様を概略的に示す図である。cCAR系は、CAR媒介性殺傷を、治療用ペイロードの送達を通してのCAR非依存性殺傷と組み合わせる。cCAR細胞は、同じかまたは2つの異なるかのいずれかの表面TAAをエンゲージする、プロテアーゼCARおよび活性化CARを発現する。CARエンゲージメントは、結果として、CAR特異的殺傷(内側の四角形)、加えて治療用ペイロード依存性殺傷(内側の円)を生じる。治療用ペイロードは、cCAR細胞の近くで有効な濃度で存在するのみであり、したがって、内側の円の外側の安全ゾーン(外側の円)に存在する非疾患細胞を温存する。
図2】抗BCMAプロテアーゼCAR、抗BCMA活性化CAR、および治療用ペイロードをコードする第3の核酸のドメインを概略的に示す図である。
図3A】どのようにしてcCAR細胞が産生され、かつ治療用ペイロードの腫瘍特異的送達を提供するように作用するのかを示す一連の概略図である。T細胞上のプロテアーゼCARおよび活性化CARによる2つの腫瘍表面タンパク質の認識が、免疫学的シナプスにおけるCARの癒着をもたらし、それが、CAR媒介性細胞傷害性に加えて、治療用ペイロードの転写および分泌をもたらす事象のカスケードを引き起こす。
図3B】同上。
図3C】同上。
図3D】同上。
図3E】同上。
図3F】同上。
図3G】同上。
図3H】同上。
図4A】プロテアーゼCAR、活性化CAR、治療用ペイロードをコードする第3の核酸のうちの2つ以上を発現するcCAR細胞の実施形態を示す一連のフローサイトメトリープロットであり、プロテアーゼCARは追加としてmycタグレポーターをコードし、活性化CARは短縮型EGFRレポーターをコードし、第3の核酸は追加としてmCherryレポーターをコードする。プロテアーゼCARは抗myc-APC抗体で検出され、活性化CARは抗EGFR-PE抗体で検出され、第3の核酸はmCherryペプチドにより直接的に検出される。図4Aは、プロテアーゼCAR、活性化CAR、および第3の核酸を発現する細胞の一連のフローサイトメトリープロットである。
図4B図4Bは、活性化CARおよび第3の核酸を発現する細胞の一連のフローサイトメトリープロットである。
図4C図4Cは、プロテアーゼCARおよび第3の核酸を発現する細胞の一連のフローサイトメトリープロットである。
図4D図4Dは、プロテアーゼCARおよび第3の核酸を発現する細胞の一連のフローサイトメトリープロットである。
図4E図4A~4Dのフローサイトメトリープロットを生成するために用いられたプロテアーゼCAR、活性化CAR、および第3の核酸の実施形態の概略図である。
図5A】プロテアーゼCARをコードする核酸を含有するベクター、および活性化CARをコードする核酸を含有するベクター、および第3の核酸を含有するベクターを示す概略図である。
図5B】同上。
図5C】同上。
図6】ビーズのカウント数に対する生きているOPM2細胞の比率の関数として決定された場合、cCAR細胞が、プロテアーゼCARおよび活性化CARの両方、加えて第3の核酸を発現した時、標的癌細胞を殺傷することを示す棒グラフである。
図7】GFP cCAR細胞のパーセンテージにより決定された場合、cCAR細胞は、プロテアーゼCAR、活性化CAR、および第3の核酸の全部が発現している時、モデル治療用ペイロードとしてのGFPを発現することを示す棒グラフである。
図8A】cCAR細胞の標的殺傷を示すフローサイトメトリープロットおよび棒グラフのセットを示す図である。図8Aは、OPM2細胞上のBCMA表面発現を示すフローサイトメトリープロットである。
図8B図8Bは、NALM-6細胞上のBCMA表面発現を示すフローサイトメトリープロットである。
図8C図8Cは、ビーズのカウント数に対する生きているNALM-6細胞の比率の関数として決定された、対照T細胞またはcCAR T細胞との共培養後の標的NALM-6細胞の殺傷を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
他に定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本明細書の主題が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。本明細書および添付の特許請求の範囲に用いられる場合、反対に特定されることがない限り、以下の用語は、本開示の理解を促進するために、示された意味をもつ。
【0015】
本説明および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上、明らかに他の指図がない限り、「1つまたは複数」を意味し、したがって、複数の指示対象を含む。このように、例えば、「1つの組成物」への言及は、2つ以上のそのような組成物の混合物を含み、「1つの阻害剤」への言及は、2つ以上のそのような阻害剤の混合物を含むなどである。
【0016】
他に明記されない限り、用語「約」は、当技術分野における通常の許容誤差の範囲内、例えば、平均値の標準偏差の2倍以内として理解される。「約」は、述べられた値の10%内、9%内、8%内、7%内、6%内、5%内、4%内、3%内、2%内、1%内、0.5%内、0.1%内、0.05%内、または0.01%内として理解され得る。文脈上、別なふうに明らかでない限り、本明細書に提供される全ての数値は、用語「約」により修飾される。
【0017】
本明細書で用いられる場合、用語「およそ」は、他に明記されない限り、または文脈上、別なふうに明白でない限り、述べられた参照値のいずれかの方向で(より大きい、またはより小さい)の25%内、20%内、19%内、18%内、17%内、16%内、15%内、14%内、13%内、12%内、11%内、10%内、9%内、8%内、7%内、6%内、5%内、4%内、3%内、2%内、1%内、またはそれ未満内に入る値(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)の範囲を指す。
【0018】
「含む(include(s))」、「含むこと(including)」、「含有する(contain(s))」、「含有すること(containing)」、または「により特徴付けられる(characterized by)」と同義である移行句「含むこと(comprising)」は、包含的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。対照的に、移行句「からなる」および「からなること」は、特許請求の範囲に特定されていないいかなる要素または方法ステップ(または句「からなること」が結びついている特定の要素または方法ステップ)も除外する。移行句「から本質的になること」は、特許請求の範囲を、特定された要素および方法またはステップ、ならびに特許請求された開示の「基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しない、列挙されていない要素および方法ステップ」に限定する。
【0019】
核酸構築物
一態様において、本開示は、3つの核酸のうちの少なくとも1つを含有する核酸構築物であって、第1の核酸が、第1のTAAに結合する第1の抗原結合性ドメインを有する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびプロテアーゼドメインを含有する細胞内ドメインを含む第1のプロテアーゼキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸と作動可能に連結されたプロモーターを含有する、核酸構築物を提供する。3つの核酸の第2の核酸は、第2のTAAに結合する抗原結合性ドメインを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびにプロテアーゼにより認識される切断部位および転写活性化因子を含有する細胞内ドメインを含む活性化CARをコードする核酸と作動可能に連結されたプロモーターを含有する。3つの核酸の第3の核酸は、転写活性化因子に結合する転写アクセプター、プロモーター、ならびに第3の核酸のプロモーターと作動的に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸を含有する。
【0020】
本明細書で用いられる場合、用語「抗原」および「TAA」は、癌細胞により発現した標的分子を指す。抗原は、タンパク質、ペプチド、ペプチドとタンパク質の複合体(例えば、MHC分子と結合したペプチド)、タンパク質と炭水化物の複合体(例えば、糖タンパク質)、タンパク質と脂質の複合体(例えば、リポタンパク質)、タンパク質と核酸の複合体(例えば、核タンパク質)、炭水化物、脂質、または核酸であり得る。
【0021】
当技術分野において知られているように、本明細書で用いられる場合、用語「核酸」は、ヌクレオチドのポリマーを指し、ヌクレオチドのそれぞれは、ヌクレオシド(核酸塩基および五炭糖)およびリン酸エステルからなる有機分子である。ヌクレオチドという用語は、別段具体的に明記されない限り、または文脈から明らかでない限り、リボース糖を有するヌクレオシド(すなわち、リボ核酸、RNAを形成するリボヌクレオチド)または2‘-デオキシリボース糖を有するヌクレオシド(すなわち、デオキシリボ核酸、DNAを形成するデオキシリボヌクレオチド)を含む。ヌクレオチドは、核酸ポリマーまたはポリヌクレオチドのモノマー単位としての役割を果たす。DNAにおける4つの核酸塩基は、グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、およびチミン(T)である。RNAにおける4つの核酸塩基は、グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、およびウラシル(U)である。核酸は、1個のヌクレオチドのホスホリル基と隣接ヌクレオチドにおける糖(すなわち、リボースまたは2’-デオキシリボース)のヒドロキシル基との間の一連のエステル結合により化学結合したヌクレオチド(例えば、少なくとも3個のヌクレオチド)の直線状の鎖である。本関連において、核酸は、それらが導入され得る免疫細胞に対して外因的であることは理解されている。
【0022】
本明細書で用いられる場合、用語「プロモーター」は、それが作動可能に連結されている対応する核酸コード配列(本開示の関連においては、CARまたは治療用ペイロード)の転写を直接的または間接的に制御する非コード核酸を指す。プロモーターは、転写を制御するように単独で機能し得、またはそれは、1つもしくは複数の他の制御配列(例えば、発現ベクター内に存在し得るエンハンサーもしくはサイレンサー、または制御エレメント)と協力して作用し得る。プロモーターは、同じ鎖の遺伝子の転写開始部位の近くで、かつそのDNA上の上流に(センス鎖の5’領域の方に)位置する。プロモーターの長さは典型的には、約100~1000塩基対の範囲である。
【0023】
本明細書で用いられる場合、用語「作動的に連結された」は、核酸コード配列が、その核酸コード配列によりコードされるタンパク質の発現を駆動するように、プロモーターに対して、核酸構築物において空間的に位置しまたは配置されていると理解することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、第1、第2、および第3の核酸のうちの2つを含む。いくつかの実施形態において、核酸構築物は第1、第2、および第3の核酸を含む。
【0025】
プロテアーゼCAR、活性化CAR、および治療用ペイロードをコードする核酸の発現は、それぞれ、天然プロモーターまたは合成プロモーターであり得るプロモーターによって調節される。いくつかの実施形態において、プロモーターの1つまたは複数は、伸長因子1アルファ(EF-1α)、サイトメガロウイルス(CMV)、β-アクチン、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、RPBSA(合成、スリーピングビューティ由来)、またはCAG(合成、CMV初期エンハンサーエレメント、ニワトリβ-アクチン、およびウサギβ-グロビンのスプライスアクセプター)のプロモーターに由来する。タンパク質または核酸配列に言及する時の、本明細書で用いられる場合の用語「由来する」は、別の親配列が起源である配列を指す。親配列に由来する配列は、同一であり得、または親配列の一部分であり得、または親配列からの少なくとも1つのバリアントを有し得る。バリアントは、置換、挿入、または欠失を含み得る。したがって、例えば、親配列に由来するアミノ酸配列は、親のアミノ酸の特定の範囲について同一であり得るが、その特定の領域以外のアミノ酸を含まない。
【0026】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、核酸コード配列の最初の所の近くに位置するコア領域を有し得る。いくつかの実施形態において、プロモーターは、天然プロモーターと比べて改変されている。1つの改変は、メチル化感受性部位(例えば、シトシンヌクレオチドの後にグアニンヌクレオチドが続く、すなわち「CpG」)の除去を伴う。別の改変は、DNAメチル化抑制転写因子に結合する制御配列の付加を伴う。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、足場マトリックス付着領域(S/MAR)として知られたA/Tリッチな、核マトリックスと相互作用する配列を含み、それは、形質転換効率を増強し、導入遺伝子発現の安定性を向上させ得る。
【0027】
第1、第2、および第3のプロモーターは、同じまたは異なり得る。いくつかの実施形態において、第1、第2、および第3のプロモーターは異なる。いくつかの実施形態において、第1および第2のプロモーターは同じであり、第3のプロモーターは、第1および第2のプロモーターと異なる。いくつかの実施形態において、第1および第3のプロモーターは同じであり、第2のプロモーターは異なる。いくつかの実施形態において、第2および第3のプロモーターは同じであり、第1のプロモーターは異なる。
【0028】
EF-1αプロモーターは、NCBIアクセッション番号J04617.1で提供されている。改変型CMVプロモーターのバリエーションは、NCBIアクセッション番号AY218848、AF477200、M64754、およびAF286076で提供されている。PGKプロモーターは、NCBIアクセッション番号NC_000023.11、範囲78104248~78129295で提供されている。RPBSAプロモーターは、NCBIアクセッション番号MN811119.1において提供されている。CAGプロモーターは、NCBIアクセッション番号MG763233.1において提供されている。いくつかの実施形態において、プロモーターの1つまたは複数はEF-1αに由来する。いくつかの実施形態において、第1および第2のプロモーターはEF-1αに由来する。いくつかの実施形態において、第1および第2のプロモーターは、EF-1αに由来し、第3のプロモーターはCMVに由来する。
【0029】
プロテアーゼCARの抗原結合性ドメイン(本明細書では、「第1の抗原結合性ドメイン」とも呼ばれる)および活性化CARの抗原結合性ドメイン(本明細書では、「第2の抗原結合性ドメイン」とも呼ばれる)はそれぞれ、TAAに結合する。TAAは、同じまたは異なり得る。いくつかの実施形態において、第1の抗原結合性ドメインおよび第2の抗原結合性ドメインのいずれかまたは両方はBCMA、CD19、CD20、CD38、CD138、FCRH5、GPRC5D、またはSLAMF7に結合する。
【0030】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは抗体断片である。いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)ドメインを含有する単鎖可変抗体断片(scFv)である。いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、リンカーにより相互接続された、抗体軽鎖の可変ドメインおよび抗体重鎖の可変ドメインを含有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインはBCMAに結合する。いくつかの実施形態において、抗原結合性ドメインは、市販の抗BCMA抗体、およびそのBCMA結合性断片、またはその誘導体、例えば、ベランタマブ(Blenrep(登録商標))、リンボセルタマブ(REGN5458)、パカナロタマブ(AMG 420)、パブルタマブ(AMG 701)、およびテクリスタマブ(Tecvayli(登録商標))に由来し、それらの重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は表1に示されている。いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、抗BCMA抗体の軽鎖の可変ドメインおよび重鎖の可変ドメインを含有し、その可変ドメインはリンカーにより接続されている。
【0032】
【表1】
【0033】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、下記に示されたアミノ酸配列(配列番号10)を有するVLを含有する:
【0034】
【化1】
【0035】
追加として、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、下記に示されたアミノ酸配列(配列番号11)を有するVHを含有する:
【0036】
【化2】
【0037】
追加の抗BCMA結合性ドメインは当技術分野において知られている。例えば、米国特許第10,072,088号および第11,084,880号明細書、ならびに米国特許出願公開第2016/0131655号、第2017/0226216号、第2018/0133296号、第2019/0151365号、第2019/0381171号、第2020/0339699号、第2020/0055948号、および第2022/0064316号明細書を参照されたい。
【0038】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインはCD19に結合する。いくつかの実施形態において、その抗原結合性ドメインは、市販の抗CD19抗体、その抗CD19結合性断片、またはその誘導体、例えば、ロンカスツキシマブ(Zynlonta(登録商標))、タファシタマブ(Monjuvi(登録商標))、デニンツズマブ(SGN-CD19A)、およびイネビリズマブ(Uplizna(登録商標))に由来し、それらの重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は表2に示されている:
【0039】
【表2】
【0040】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメイン、例えば、scFvはCD20に結合する。いくつかの実施形態において、その抗原結合性ドメインは、市販の抗CD20抗体、そのCD20結合性断片、またはその誘導体、例えば、オファツムマブ(Arzerra(登録商標)、Kesimpta(登録商標))、ベルツズマブ(IMMU-106)、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、およびリツキシマブ(Rituxan(登録商標)、Riabni(登録商標)、Truximab(登録商標))に由来し、それらの重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は表3に示されている:
【0041】
【表3】
【0042】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインはCD38に結合する。いくつかの実施形態において、その抗原結合性ドメインは、市販の抗CD38抗体、そのCD38結合性断片、またはその誘導体、例えば、ダラツムマブ(Darzalex(登録商標))、イサツキシマブ(Sarclisa(登録商標))、およびメザジタマブ(TAK-079)に由来し、それらの重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は表4に示されている:
【0043】
【表4】
【0044】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、下記に示されたアミノ酸配列(配列番号36)を有するVLを含有する:
【0045】
【化3】
【0046】
追加として、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、下記に示されたアミノ酸配列(配列番号37)を有するVHを含有する:
【0047】
【化4】
【0048】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメイン、例えば、scFvはCD138に結合する。抗CD138抗体およびそのCD138結合性断片は当技術分野において知られている。例えば、米国特許第9,221,914号、第9,387,261号、第9,446,146号、および第10,975,158号明細書、ならびに米国特許出願公開第2007/0183971号、第2009/0232810号、第2018/0312561号、第2019/0100588号、第2020/0384024号、および第2020/0392241号明細書を参照されたい。
【0049】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメイン、例えば、scFvはFCRH5に結合する。抗FCRH5抗体およびそのFCRH5結合性断片は当技術分野において知られており、例えば、セボスタマブ、および米国特許第8,466,260号、第9,017,951号、第10,323,094号、第10,435,471号明細書である。代表的な抗FCRH5重鎖のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号38):
【0050】
【化5】
【0051】
代表的な抗FCRH5軽鎖のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号39):
【0052】
【化6】
【0053】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、下記に示されたアミノ酸配列(配列番号40)を有するVLを含有する:
【0054】
【化7】
【0055】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、下記に示されたアミノ酸配列(配列番号41)を有するVHを含有する:
【0056】
【化8】
【0057】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメイン、例えば、scFvはGPRC5Dに結合する。抗GPRC5D抗体およびそのGPRC5D結合性断片は当技術分野において知られており、例えば、タルケタマブ、米国特許第10,562,968号および第10,590,196号明細書、ならびに米国特許出願公開第2019/0367612号、第2020/0123250号、第2020/0190205号、第2020/0270326号、第2021/0054094号明細書である。代表的な抗FCRH5抗体scFv断片のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号42):
【0058】
【化9】
【0059】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメイン、例えば、scFvはSLAMF7に結合する。いくつかの実施形態において、その抗原結合性ドメインは、市販の抗SLAMF7抗体、SLAMF7結合性断片、またはその誘導体、例えば、エロツズマブ(Empliciti(登録商標))に由来する。エロツズマブ重鎖のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号43):
【0060】
【化10】
【0061】
エロツズマブ軽鎖のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号44):
【0062】
【化11】
【0063】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、下記に示されたアミノ酸配列(配列番号45)を有するVLを含有する:
【0064】
【化12】
【0065】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の抗原結合性ドメインは、下記に示されたアミノ酸配列(配列番号46)を有するVHを含有する:
【0066】
【化13】
【0067】
追加の抗SLAMF7抗体およびそのSLAMF7結合性断片は、当技術分野において知られている。例えば、SLAMF7に結合する代表的な抗体および抗体scFv断片には、ThermoFisher Scientificから市販されている抗体、カタログ番号12-2229-42(クローン162)、MA5-24227(クローン520914)、CF807421(クローンOTI1F1)、57823-MSM1-P1ABX(クローン3649)、PA5-63125(ポリクローナル)、およびPA5-25589(ポリクローナル)が挙げられる。
【0068】
いくつかの実施形態において、プロテアーゼCARおよび活性化CAR、それぞれの第1の抗原結合性ドメインおよび第2の抗原結合性ドメインは同じTAAに結合する。これらの実施形態のいくつかにおいて、第1および第2の抗原結合性ドメインは同じアミノ酸配列を有する。
【0069】
プロテアーゼCARおよび活性化CAR、それぞれの第1の膜貫通ドメインおよび第2の膜貫通ドメインは、抗原結合性ドメインを細胞内ドメインに接続する。いくつかの実施形態において、第1および/または第2の膜貫通ドメインは抗原結合性ドメインへ直接的に接続される。
【0070】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の膜貫通ドメインは、CD3α、CD3β、CD3γ、CD3ζ、CD3ε、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD154、4-1BB(別名CD137またはTNF受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9))、FcεRIα、FcεRIβ、FcεRIγ、ICOS、KIR2DS2、MHCクラスI、MHCクラスII、またはNKG2Dに由来する。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、CD3ζ、CD4、CD8α、CD28、またはCD137(4-1BB)に由来する。代表的な膜貫通ドメインのアミノ酸配列は表5に列挙されている:
【0071】
【表5】
【0072】
天然に存在する膜貫通ドメインのアミノ酸配列は、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にするために、そのような領域の、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとの結合を回避するようにアミノ酸置換によって改変され得る。例えば、米国特許出願公開第2021/0101954号明細書;Soudais et al., Nat Genet 3:77-81 (1993);Muller et al., Front. Immunol. 12:639818-13 (2021);および Elazar et al., elife 11:e75660-29 (2022)を参照されたい。
【0073】
いくつかの実施形態において、プロテアーゼCAR、活性化CAR、または両方のCARは、抗原結合性ドメインと膜貫通ドメインとの間に配置されたヒンジドメインをさらに含む。ヒンジドメインは、抗原結合性ドメインが抗原結合のための最適な配向を得ることを可能にするという点で、可動性を与え得、それにより、CARを発現する細胞の抗腫瘍活性を増強する。プロテアーゼCARおよび活性化CARのヒンジドメインは、それぞれ、第1のヒンジドメインおよび第2のヒンジドメインとも呼ばれ、同じまたは異なり得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2のヒンジドメインは、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMに由来する。いくつかの実施形態において、第1および/または第2のヒンジドメインは、CD3ζ、CD4、CD8α、CD28、IgG1、IgG2、またはIgG4に由来する。代表的なヒンジドメインのアミノ酸配列は表6に列挙されている:
【0075】
【表6】
【0076】
いくつかの実施形態において、プロテアーゼCAR、活性化CAR、またはプロテアーゼCARと活性化CARの両方の細胞内ドメインは、それぞれ、本明細書では第1の細胞内ドメインおよび第2の細胞内ドメインとも呼ばれ、細胞内シグナル伝達および免疫細胞機能を可能にするシグナル伝達ドメインを含有する。シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、細胞内ドメインは、ITAM含有分子またはTCR受容体複合体などの受容体複合体の天然ライゲーションのそれを近似して、シグナルを送達する能力がある。第1および第2の細胞内ドメインに存在し得るシグナル伝達ドメインは同じまたは異なり得る。したがって、いくつかの実施形態において、第1および第2の細胞内ドメインは、同じ一次シグナル伝達ドメインおよび異なる共刺激ドメイン、または逆であり得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2の細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば、4-1BB、CD3ζ、CD28、CD27、ICOS、およびOX40から選択される、本明細書に記載された複数の、例えば、2つまたは3つの、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメインとしてCD3ζドメイン、および細胞外から細胞内への方向に、共刺激シグナル伝達ドメインの以下のペア、すなわち、4-1BB-CD27;CD27-4-1BB;4-1BB-CD28;CD28-4-1BB;4-1BB-CD3ζ;CD3ζ-4-1BB;CD28-CD3ζ;CD3ζ-CD28;OX40-CD28、およびCD28-OX40のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態において、一次シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD27、CD28、CD40、KIR2DS2、MyD88、またはOX40に由来する。いくつかの実施形態において、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD27、CD40、CD28、CD72、CD80、CD86、CLEC-1、4-1BB、TYROBP(DAP12)、デクチン-1、FcαRI、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、FcεRI、IL-2RB、ICOS、KIR2DS2、MyD88、OX40、およびZAP70のうちの1つまたは複数に由来する。代表的なシグナル伝達ドメインのアミノ酸配列は表7に列挙されている。
【0078】
【表7-1】
【0079】
【表7-2】
【0080】
いくつかの実施形態において、一次シグナル伝達ドメインはCD28に由来し、共刺激ドメインは、4-1BBに由来する。いくつかの実施形態において、一次シグナル伝達ドメインはCD28に由来し、共刺激ドメインはCD3ζに由来する。いくつかの実施形態において、一次シグナル伝達ドメインはCD28に由来し、共刺激ドメインは4-1BBおよびCD3ζに由来する。
【0081】
CD28の追加のアイソフォームのアミノ酸配列は表8に提供されている。
【0082】
【表8】
【0083】
プロテアーゼCARの細胞内ドメインはプロテアーゼドメインを含有する。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ(TEVp)、NEDP1プロテアーゼ、カルパインプロテアーゼ、またはSUMOプロテアーゼに由来する。TEVp(酵素番号3.4.22.44、別名TEV核封入aエンドペプチダーゼ)は、核封入aプロテアーゼの触媒活性27kDa C末端ドメインである。TEVpは、配列特異性が高いシステインプロテアーゼである(Dougherty et al., Virology 172(1):302-10 (1989))。代表的なTEVpのアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号81):
【0084】
【化14】
【0085】
TEVpは切断部位を認識する。TEVpは、7個の残基の標的アミノ酸配列ENLYFQX(配列番号82)を認識し、ここでXはM、G、またはSである。切断されるペプチド結合は、QとXの間である。いくつかの実施形態において、切断部位はアミノ酸配列ENLYFQM(配列番号83)を有する。
【0086】
カルパインプロテアーゼは当技術分野において知られている。例えば、米国特許第7,001,907号および第9,833,498号明細書を参照されたい。NEDP1プロテアーゼは当技術分野において知られている。例えば、米国特許第7,842,460号、第8,642,256号、および第10,466,249号明細書を参照されたい。SUMOプロテアーゼは当技術分野において知られている。例えば、米国特許第7,750,134号、第8,119,369号、第10,767,185号、および第11,261,437号明細書を参照されたい。他の酵素切断系または転写系が報告されており、代替としてまたは追加の「オン」のスイッチとして、この開示の範囲内である。例えば、Barnea et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 105(1):64-9 (2008)、およびMorsut et al., Cell 164(4):780-91 (2016)を参照されたい。
【0087】
いくつかの実施形態において、プロテアーゼCARは、下記に示された核酸配列(配列番号84)を有し、表9に示された特徴を含有し、pLVC-CMV 100構築物バックグラウンドへ組み入れられ得る。
【0088】
【化15-1】
【0089】
【化15-2】
【0090】
【化15-3】
【0091】
【化15-4】
【0092】
【表9】
【0093】
活性化CARの細胞内ドメインは、転写活性化因子を含有し、その転写活性化因子は、第3の核酸に存在する転写アクセプターと共に、治療用ペイロードの転写および発現を調節する細胞の「オンのスイッチ」としての役割を果たす。いくつかの実施形態において、転写活性化因子は、Gal4-VP64融合タンパク質をコードする。代表的なGal4-VP64融合タンパク質のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号86):
【0094】
【化16】
【0095】
いくつかの実施形態において、プロテアーゼCAR、活性化CAR、またはプロテアーゼCARと活性化CARの両方のドメインのうちの1つまたは複数は、リンカーにより相互接続されている。いくつかの実施形態において、プロテアーゼCARおよび活性化CARのどちらも、膜貫通ドメインと細胞内ドメインとの間に配置されたリンカーを有する。いくつかの実施形態において、リンカーは、GGGX、GGGGX(配列番号87)、またはGSSGSX(配列番号88)(ここでXはシステイン(C)かまたはセリン(S)のいずれかである)のアミノ酸配列またはその反復配列を有する。いくつかの実施形態において、リンカーは、GGGC(配列番号89)、GGGS(配列番号90)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号91)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号92)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号93)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号94)、EGKSSGSGSESKST(配列番号95)、またはGSAGSAAGSGEF(配列番号96)のアミノ酸配列を有する。
【0096】
いくつかの実施形態において、活性化CARは、下記に示された核酸配列(配列番号97)を有し、表10に示された特徴を含有し、pLVC-CMV 100構築物バックグラウンドへ組み入れられ得る:
【0097】
【化17-1】
【0098】
【化17-2】
【0099】
【化17-3】
【0100】
【化17-4】
【0101】
【表10-1】
【0102】
【表10-2】
【0103】
第3の核酸は、転写アクセプター、第3のプロモーター、ならびに第3のプロモーターと作動的に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸を含有する。転写活性化因子が、プロテアーゼCARのプロテアーゼにより活性化CARから切断されたならば、転写活性化因子は転写アクセプターと結合する。転写活性化因子の転写アクセプターとの結合は、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸の転写を惹起する。
【0104】
いくつかの実施形態において、転写アクセプターは、Gal4結合部位またはGal4結合部位の反復である。いくつかの実施形態において、転写アクセプターは、核酸配列GGAGCACTGTCCTCCGAACG(配列番号99)を有する。いくつかの実施形態において、転写アクセプターは、その配列の2個以上、例えば、2~4個の反復を含有する。
【0105】
第3のプロモーターは、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸と作動的に連結されている。第3のプロモーターおよび転写アクセプターは、治療用ペイロードの転写を可能にする。いくつかの実施形態において、第3のプロモーターは改変型CMVプロモーターである。
【0106】
治療用ペイロードは、CAR非依存性腫瘍細胞殺傷を可能にする。治療用ペイロードは可溶性または膜結合型であり得る。本明細書で用いられる場合、治療用ペイロードに言及する時の用語「可溶性」は、膜貫通ドメインを欠損し、かつ細胞から発現した時、細胞膜と付着または会合していないタンパク質を指す。リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸は、転写活性化因子が転写アクセプターに結合した後、転写される。リーダーペプチドは、治療用ペイロードの細胞外環境への分泌を保証する。
【0107】
いくつかの実施形態において、プロテアーゼCAR、活性化CAR、治療用ペイロード、またはプロテアーゼCAR、活性化CAR、および治療用ペイロードのそれぞれは、リーダーペプチドをさらに含む。本明細書で用いられる場合、用語「リーダーペプチド」は、タンパク質の輸送を方向付ける、タンパク質のN末端におけるまたはタンパク質の膜貫通ドメインに組み込まれたアミノ酸の短い(例えば、5~30または10~100アミノ酸長)ストレッチを指す。リーダーペプチド含有タンパク質は、細胞膜へ輸送されるか、または細胞から分泌されるかのいずれかである。典型的には、リーダーペプチドを有しかつ膜貫通ドメインを含まないタンパク質が分泌される。
【0108】
いくつかの実施形態において、リーダーペプチドは、アルブミン、CD8α、CD33、エリスロポイエチン、IL-2、ヒトもしくはマウスIg-カッパ鎖V-III(IgK VIII)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、または分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)に由来する。適切なリーダーペプチドは、天然配列から導き出せる合成配列である。代表的なリーダーペプチドのアミノ酸配列は表11に列挙されている:
【0109】
【表11】
【0110】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、可溶性抗体断片、サイトカイン、可溶性サイトカイン受容体、ケモカイン、可溶性ケモカイン受容体、またはオリゴペプチドもしくはRNAワクチンである。
【0111】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、CD3、CD19、またはCD20に結合する抗体断片である。その断片は、CD3、CD19、およびCD20に結合する無傷抗体から導き出せる。例えば、CD3に結合する抗体の代表的な例には、ブリナツモマブ(Blincyto(登録商標))、カツマキソマブ(Removab(登録商標))、フロテツズマブ(MGD006)、ムロモナブ-CD3(オルソクローンOKT3(登録商標))、オテリキシズマブ(ChAglyCD3、TRX4)、テプリズマブ、およびビシリズマブが挙げられる。
【0112】
CD19に結合する代表的な抗体には、ロンカスツキシマブ(Zynlonta(登録商標))、タファシタマブ(Monjuvi(登録商標))、デニンツズマブ(SGN-CD19A)、およびイネビリズマブ(Uplizna(登録商標))が挙げられる。
【0113】
CD20に結合する代表的な抗体には、オファツムマブ(Kesimpta(登録商標))、オビヌツズマブ(Gazyva(登録商標))、オカラツズマブ、ウブリツキシマブ、ベルツズマブ(IMMU-106)、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、およびリツキシマブ(Rituxan(登録商標))が挙げられる。
【0114】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、免疫寛容誘発性分子またはチェックポイント阻害剤と結合する抗体断片であり、その免疫寛容誘発性分子またはチェックポイント阻害剤の代表的な例には、HLA-E、TGFβ、CTLA-4、PD1、PD-L1、PD-L2、TIGIT、TIM3、LAG3、EGFR、およびNKG2Aが挙げられる。
【0115】
HLA-EまたはそのリガンドNKG2Aに結合する代表的な抗体は当技術分野において知られている。例えば、米国特許第8,206,709号、第10,676,523号、第10,870,700号、および第11,225,519号明細書、ならびに米国特許出願公開第2012/0171195号明細書を参照されたい。いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、市販の抗NKG2A抗体、その抗体断片またはバリアント、例えば、モナリズマブ(IPH2201)およびヒト化Z199に由来する抗体断片である。代表的な抗NKG2A重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は表12に示されている:
【0116】
【表12】
【0117】
TGFβまたはその受容体に結合する代表的な抗体は、当技術分野において知られており、例えば、フレソリムマブ、および米国特許第8,147,834号、第9,109,031号、第9,783,604号、および第11,312,767号明細書である。
【0118】
CTLA-4に結合する代表的な抗体には、バブナリマブ(XmAb 22841)、ボテンシリマブ(AGEN 1181)、カドニリマブ、イピリムマブ(YERVOY(登録商標))、クアボンリマブ(MK 1308)、トレメリムマブ(CP-675,206)、ブダリマブ(XmAb 20717またはXmAb 717)、およびザリフレリマブ(AGEN 1884)が挙げられる。
【0119】
PD1に結合する代表的な抗体には、バルスチリマブ、ブディジャリマブ、カドニリマブ、セミプリマブ、セトレリマブ、ドスタルリマブ、イズラリマブ、ニボルマブ、パクミリマブ、ペムブロリズマブ、ペンプリマブ、ペレソリマブ、ピジリズマブ、レチファンリマブ、ロスニリマブ、シンチリマブ、スパルタリズマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ボルルストミグ、ブダリマブ、ゼルバリマブ、およびジムベレリマブが挙げられる。PD-L1に結合する代表的な抗体には、アテゾリズマブ、アベルマブ、ビントラフスプ アルファ、コシベリマブ、ダンブルストツグ、デュルバルマブ、インバキセプト、ロダポリマブ、ピミバリマブ、およびソカゾリマブが挙げられる。
【0120】
TIGITに結合する代表的な抗体は当技術分野において知られており、例えば、ベルレストツグ、ドムバナリマブ、エチギリマブ、オシペルリマブ、チラゴルマブ、ビボストリマブ、米国特許第10,017,572号、第10,766,957号、第10,213,505号、第10,329,349号、および第11,021,537号明細書、ならびに米国特許出願公開第2009/0258013号、第2020/0040082号、第2020/0354453号、および第2021/0087268号明細書である。
【0121】
TIM3に結合する代表的な抗体は当技術分野において知られており、例えば、コボリマブ、サバトリマブ、スルゼビクリマブ、米国特許第10,533,052号および第10,927,171号明細書、ならびに米国特許出願公開第2019/0382480号、第2021/0221885号、第2021/0261663号、第2021/0363242号、第2022/0089720号、および第2022/0235130号明細書である。
【0122】
LAG3に結合する代表的な抗体は当技術分野において知られており、例えば、バブナリマブ(XmAb 22841)、イエラミリマブ、レラトリマブ、米国特許第10,358,495号、第10,898,571号、第11,028,169号、および第11,045,547号明細書、ならびに米国特許出願公開第2019/0330336号、第2021/0363243号、および第2022/0002410号明細書である。
【0123】
EGFRに結合する代表的な抗体には、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、ネシツムマブ(Portrazza(登録商標))、およびアミバンタマブ(Rybrevant(登録商標))が挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは二重特異性であり、2つの抗体断片を含み、それぞれが、癌細胞上の異なる標的に結合する。いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、癌細胞上のTAAに結合する抗体断片、およびT細胞上の抗原(例えば、CD3)に結合する抗体断片を含有する二重特異性T細胞エンゲージャーである。いくつかの実施形態において、1つの抗体断片はCD3に結合し、他方はBCMA、CD19、CD20、CD33、CD38、CD138、EGFR、FCRH5、Flt3、GPCR5D、PSMA、またはSLAMF7に結合する。本明細書の他の所で提供された代表的な抗体配列が、二重特異性抗体および二重特異性T細胞エンゲージャーへ用いられ得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、CD19に結合するscFvおよびCD3に結合するscFvを含む。抗CD19および抗CD3二重特異性抗体断片は当技術分野において知られており、例えば、ブリナツモマブ(Blincyto(登録商標))、デュボルツキシズマブ、米国特許第7,112,324号、第8,840,888号、第10,191,034号、第10,633,443号、および第10,889,653号明細書、ならびに米国特許出願公開第2016/0355588号および第2021/0317212号明細書である。CD3およびCD19に結合する代表的な二重特異性抗体断片のアミノ酸配列は、下記に示されている(配列番号118):
【0126】
【化18】
【0127】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、FCRH5に結合するscFvおよびCD3に結合するscFvを含む。CD3およびFCRH5に結合する代表的な二重特異性抗体断片のアミノ酸配列は、下記に示されている(配列番号119):
【0128】
【化19】
【0129】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、CD20に結合するscFvおよびCD3に結合するscFvを含む。抗CD20および抗CD3二重特異性抗体断片は当技術分野において知られており、例えば、エプコリタマブ、グロフィタマブ、モスネツズマブ(Lunsumio(登録商標))、オドロネクスタマブ、プラモタマブ、ならびに米国特許第10,550,193号、第10,662,244号、第10,787,520号、および第11,440,972号明細書である。
【0130】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、サイトカインまたはケモカインに結合する抗体断片である。いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、IL-6またはIL-6Rに結合する抗体断片である。そのような断片は、無傷の抗IL-6抗体、例えば、シルツキシマブ(Sylvant(登録商標))、シルクマブ、米国特許第8,062,866号、第8,309,300号、および第9,834,603号明細書、ならびに抗IL-6R抗体、例えば、サリルマブ(Kevzara(登録商標))、サトラリズマブ(Enspryng(登録商標))、トシリズマブ(Actemra(登録商標))、米国特許第8,753,634号、第9,884,916号、および第10,081,628号明細書、ならびに米国出願公開第2012/0045440号、第2013/0317203号、および第2021/0301027号明細書から入手可能である。
【0131】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードはサイトカインまたはケモカインである。いくつかの実施形態において、サイトカインまたはケモカインは、IFNγ、可溶性IFNγR、TGFβ、IL-1、IL-2、可溶性IL-2R、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、またはIL-10であり、それらのアミノ酸配列は当技術分野において知られている。代表的なIFNγのアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号120):
【0132】
【化20】
【0133】
代表的なIL-2のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号121):
【0134】
【化21】
【0135】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、RNAまたはオリゴペプチドワクチンである。オリゴペプチドワクチンは、HLAタンパク質により細胞傷害性T細胞へ提示される能力がある短いペプチドであり、それらの細胞における細胞傷害性を、それらが、そのオリゴペプチドワクチンが由来するタンパク質を提示する癌を認識した時に、誘導する。いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、サバイビン、ウィルムス腫瘍1転写因子(WT1)、ムチン1(MUC1)、メラノーマ関連抗原3(MAGE-A3)、またはメラノーマ関連抗原C1(MAGE-C1、別名CT7)に由来するRNAまたはオリゴペプチドワクチンである。代表的なアミノ酸配列は、WT1についてNCBIアクセッション番号NP_000369.4、MUC1についてNCBIアクセッション番号NP_001018016.1、MAGE-A3についてNCBIアクセッション番号NP_005353.1、およびMAGE-C1についてNCBIアクセッション番号NP_005453.2で提供されている。
【0136】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、免疫細胞の細胞膜に局在している(すなわち、膜結合型)。膜結合型治療用ペイロードには、細胞表面受容体(例えば、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、阻害性分子に対する受容体、CAR)、膜結合型サイトカイン、膜結合型ケモカイン、および膜結合型抗体が挙げられる。
【0137】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは表面受容体である。いくつかの実施形態において、表面受容体は、本明細書に記載されたドメインの組合せまたは部分的組合せを含有するCARである。いくつかの実施形態において、表面受容体はCTLA-4、PD1、PD-L1、PD-L2である。いくつかの実施形態において、表面受容体は、サイトカインまたはケモカインに対する受容体である。代表的なサイトカインまたはケモカイン受容体には、IFNγR、IL-1R、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-8R、IL-9R、IL-10R、IL-15R、およびTGFβRが挙げられ、それらのアミノ酸配列は当技術分野において知られている。例えば、IL-2Rは、サブユニットIL-2Rα(CD25)、IL-2Rβ(CD122)、および共通γ鎖受容体(CD132)からなるヘテロ複合体である。代表的なIL-2Rα(CD28)のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号122):
【0138】
【化22】
【0139】
代表的なIL-2Rβ(CD122)のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号123):
【0140】
【化23】
【0141】
代表的な共通γ鎖受容体(CD132)のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号124):
【0142】
【化24】
【0143】
IL-7Rは、サブユニットIL-7Rα(CD127)および共通γ鎖受容体(CD132)からなるヘテロ二量体である。代表的なIL-7Rαのアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号125):
【0144】
【化25】
【0145】
IL-15Rは、サブユニットIL-15Rα(CD215)、IL-2Rβ(CD122)、および共通γ鎖受容体(CD132)からなるヘテロ二量体である。代表的なIL-15Rα(CD215)のアミノ酸配列は下記に示されている(配列番号126):
【0146】
【化26】
【0147】
いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは、膜結合型サイトカインまたはケモカインであり、それらのアミノ酸配列は、当技術分野において知られている。いくつかの実施形態において、治療用ペイロードは膜結合型抗体であり、それらのアミノ酸配列は当技術分野において知られている。
【0148】
いくつかの実施形態において、第3の核酸は、下記に示された核酸配列(配列番号127)を有し、表13に示された特徴を含有し、pLVC-CMV 100構築物バックグラウンドへ組み入れられ得る:
【0149】
【化27-1】
【0150】
【化27-2】
【0151】
【化27-3】
【0152】
【化27-4】
【0153】
【表13】
【0154】
発現ベクター
プロテアーゼCAR、活性化CAR、および治療用ペイロードをコードする核酸(または核酸構築物)は、1つまたは複数の適切な発現ベクターにより免疫細胞へ導入され得る。発現ベクターは、免疫細胞への輸送をもたらし、かつ形質転換後、核酸の発現をもたらすように構成され、かつそのために必要なエレメントを含有する。そのようなエレメントは、必ずしも、開示された核酸構築物内に含まれるとは限らないが、それらには、複製開始点、ポリAテール配列、選択マーカー、および多重クローニング部位(MCS)などの、核酸の挿入のための1つまたは複数の適切な部位が挙げられる。
【0155】
いくつかの実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルス、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。本明細書で用いられる場合、用語「レンチウイルスベクター」は、感染性レンチウイルス粒子を意味することを意図される。レンチウイルス亜科(Lentivirinae)(レンチウイルス)は、ビリオン構造、宿主範囲、および病理学的効果により他のウイルスと識別できる、エンベロープ型レトロウイルス科(retrovirinae)(レトロウイルス)のサブファミリーである。感染性レンチウイルス粒子は、非分裂細胞および免疫細胞に感染しかつ形質導入することを含む、標的宿主細胞に侵入する能力がある。
【0156】
いくつかの実施形態において、発現ベクターは、非組込み型および非複製性組換えレンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターの構築は、例えば、米国特許第5,665,577号、第5,981,276号、第6,013,516号、第7,090,837号、第8,119,119号、および第10,954,530号明細書に記載されている。レンチウイルスベクターは欠陥レンチウイルスゲノムを含み、すなわち、レンチウイルス遺伝子gag、pol、およびenvの少なくとも1つが不活性化または欠失している。
【0157】
他の実施形態において、発現ベクターは、非ウイルスベクターであり、その代表的な例には、プラスミド、mRNA、直鎖状一本鎖(ss)DNAまたは直鎖状二本鎖(ds)DNA、ミニサークル、ならびにトランスポゾンに基づいたベクター、例えばスリーピングビューティ(SB)に基づいたベクターおよびpiggyBac(PB)に基づいたベクターが挙げられる。さらに他の実施形態において、ベクターは、ウイルス性エレメントと非ウイルス性エレメントの両方を含み得る。
【0158】
いくつかの実施形態において、ベクターはプラスミドである。核酸と作動的に連結されたプロモーターに加えて、プラスミドはまた、例えば、免疫細胞において核酸の輸送および発現を促進する、他のエレメントも含有し得る。プラスミドは、制限酵素で直線化され、インビトロで転写されて、mRNAを産生し、その後、5’キャップおよび3’ポリAテールで修飾され得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、配列番号84に示された核酸配列および表9に示された特徴を有するプロテアーゼCARをコードする第1のプラスミド、配列番号97に示された核酸配列および表10に示された特徴を有する活性化CARをコードする第2のプラスミド、ならびに配列番号127に示された核酸配列および表13に示された特徴を有する第3の核酸をコードする第3のプラスミドである、複数のプラスミドである。
【0159】
いくつかの実施形態において、担体はベクターを被包する。担体は、脂質に基づき得、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム、脂質ベシクル、またはリポプレックスである。いくつかの実施形態において、担体はLNPである。ある特定の実施形態において、LNPは、水性コンパートメントにより隔てられた2つ以上の同心円状二重層を含む。脂質二重層は、官能化されおよび/または互いに架橋され得る。脂質二重層は、1つまたは複数のリガンド、タンパク質、またはチャネルを含み得る。
【0160】
脂質担体、例えばLNPは、1つもしくは複数のカチオン性/イオン化可能脂質、1つもしくは複数のポリマーコンジュゲート化脂質、1つもしくは複数の構造脂質、および/または1つもしくは複数のリン脂質を含み得る。「カチオン性脂質」は、正に荷電した脂質、または正電荷を保持する能力がある脂質を指す。カチオン性脂質は、pHに依存して正電荷を有する1つまたは複数のアミン基を含む。「ポリマーコンジュゲート化脂質」は、コンジュゲートされたポリマー部分を有する脂質を指す。ポリマーコンジュゲート化脂質には、ポリエチレングリコールとコンジュゲートされた脂質であるPEG化脂質が挙げられる。「構造脂質」は、生理的pHにおいて正味電荷を有しない非カチオン性脂質を指す。例示的な構造脂質には、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、およびその他同種類のものが挙げられる。「リン脂質」は、2個の脂肪酸および1個のリン酸イオンを含むグリセロールのトリエステルを有する脂質を指す。LNPにおけるリン脂質は、その脂質を1つまたは複数の脂質二重層へとアセンブルする。LNP、それらの調製方法、製剤化、および送達は、例えば、米国特許出願公開第2004/0142025号、第2007/0042031号、および第2020/0237679号明細書、ならびに米国特許第9,364,435号、第9,518,272号、第10,022,435号、および第11,191,849号明細書に開示されている。
【0161】
リポプレックス、リポソーム、および脂質ナノ粒子は、脂質分子、例えば、カチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、ポリペプチド-脂質コンジュゲート、および他の安定化コンポーネントの組合せを含み得る。代表的な安定化コンポーネントには、抗酸化剤、界面活性剤、および塩が挙げられる。リポプレックス、リポソーム、および脂質ナノ粒子の組成物および調製方法は当技術分野において知られている。例えば、米国特許第8,058,069号、第8,969,353号、第9,682,139号、第10,238,754号明細書、米国特許出願公開第2005/0064026号および第2018/0291086号明細書、ならびにLasic, Trends Biotechnol. 16(7):307-21 (1998)、Lasic et al., FEBS Lett. 312(2-3):255-8 (1992)、およびDrummond et al., Pharmacol. Rev. 51(4):691-743 (1999)を参照されたい。
【0162】
細胞
本開示の一態様は、プロテアーゼCAR、活性化CAR、および治療用ペイロードを発現する遺伝子改変型免疫細胞である。本明細書で用いられる場合、「免疫細胞」は、自然および/または適応免疫応答の惹起および/または実行に機能的に関与する造血系起源の細胞を指す。免疫細胞の代表的な例には、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびNK T(NKT)細胞が挙げられる。異なる免疫細胞の組合せが用いられ得る。T細胞の代表的な例には、細胞傷害性リンパ球、細胞傷害性T細胞(CD8 T細胞)、ヘルパーT細胞(CD4 T細胞)、αβ T細胞および/またはγδ T細胞、ならびにTh17 T細胞が挙げられる。いくつかの実施形態において、免疫細胞はCD8 T細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞はCD4 T細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、CD8 T細胞とCD4 T細胞の組合せである。いくつかの実施形態において、免疫細胞はNK細胞である。免疫細胞は、健康な患者から単離された初代細胞であり得、融合タンパク質および任意で、CARポリペプチドを発現するように操作され得る。いくつかの実施形態において、免疫細胞はヒト免疫細胞である。
【0163】
免疫細胞には、幹細胞に由来する細胞が挙げられる。幹細胞は、成体幹細胞(例えば、誘導多能性幹細胞(iPSC))、胚性幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、誘導多能性幹細胞、全能性幹細胞、または造血幹細胞であり得る。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、末梢血単核球(PBMC)、細胞株、または細胞バンク細胞に由来する。体液および組織からの細胞の収集、単離、精製、および分化は当技術分野において知られている。例えば、Brown et al., PloS One 5:e11373-9 (2010)、Rivera et al., Curr. Protoc. Stem Cell Biol. 54:e117-21 (2020)、Seki et al., Cell Stem Cell 7:11-4 (2010)、Takahashi et al., Cell 126:663-76 (2006)、Fusaki et al., Proc. Jpn. Acad. Ser. B Phys. Biol. Sci. 85:348-62 (2009)、Park et al., Nature 451:141-6 (2008)、ならびに米国特許第10,214,722号、第10,370,452号、第10,428,309号、第10,844,356号、第11,141,471号、第11,162,076号、および第11,193,108号明細書、ならびに米国特許出願公開第2012/0121544号、第2018/0362927号、第2019/0112577号、および第2021/0015859号明細書を参照されたい。
【0164】
いくつかの実施形態において、免疫細胞は、1つまたは複数の遺伝子改変を含有する。いくつかの実施形態において、細胞は、T細胞受容体(TCR)のコンポーネント、例えば、T細胞受容体α定常領域(TRAC)、T細胞受容体β定常領域(TRBC)1、TRBC2、CD3γ、CD3δ、およびCD3εのうちの1つまたは複数をノックアウトすることにより遺伝子改変される。いくつかの実施形態において、細胞は、β-2-ミクログロブリン(B2MG)、クラスII主要組織適合複合体トランス活性化因子(CIITA)、HLAクラスI、およびHLAクラスIIのうちの1つまたは複数をノックアウトすることにより遺伝子改変される。
【0165】
プロテアーゼCAR、活性化CAR、および第3の核酸を含有するベクターを免疫細胞へ導入する方法は当技術分野において知られている。例えば、米国特許第7,399,633号、第7,575,925号、第10,072,062号、第10,370,452号、および第10,829,735号明細書、ならびに米国特許公開第2019/0000880号および第2021/0407639号明細書を参照されたい。
【0166】
いくつかの実施形態において、方法は、レンチウイルス発現ベクターの免疫細胞への形質導入を伴う。他の実施形態において、方法は、ガンマレトロウイルスベクターの使用を伴う。例えば、米国特許第9,669,049号、第11,065,311号、および第11,230,719号明細書を参照されたい。いくつかの実施形態において、方法は、第1、第2、および第3の核酸を送達するための、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、dsRNA、ssDNA、またはdsRNAの使用を伴う。例えば、米国特許第10,563,226号明細書、ならびに米国特許出願公開第2019/0225991号、第2020/0080108号、および第2022/0186263号明細書を参照されたい。
【0167】
いくつかの実施形態において、核酸配列を含有するベクターは、リポフェクションにより免疫細胞へ送達される。例えば、米国特許第5,049,386号、第4,946,787号、および第4,897,355号明細書を参照されたい。
【0168】
いくつかの実施形態において、方法は、直鎖状、環状、または自己増幅性mRNAのエクスビボまたはインビボ送達を伴う。例えば、米国特許第7,442,381号、第7,332,322号、第9,822,378号、第9,254,265号、第10,532,067号、および第11,291,682号明細書を参照されたい。いくつかの実施形態において、方法は、ベクターにより送達される核酸を免疫細胞のゲノムへ組み込むためのトランスポサーゼの使用を伴う。例えば、米国特許第7,985,739号、第10,174,309号、第11,186,847号、および第11,351,272号明細書を参照されたい。いくつかの実施形態において、方法は、自己複製性エピソームナノベクターの使用を伴う。例えば、米国特許第5,624,820号、第5,674,703号、および第9,340,775号明細書を参照されたい。
【0169】
薬学的組成物
本開示の薬学的組成物は、治療的有効数の遺伝子改変型免疫細胞および薬学的に許容される担体を含む。本明細書で用いられる場合、用語「治療的有効数の免疫細胞」(間接的には、プロテアーゼCAR、活性化CAR、および治療用ペイロードの対応する量を含む)は、所望の効果を与えるのに十分な数の、核酸を含有する免疫細胞を指す。
【0170】
所定の患者についての遺伝子改変型免疫細胞の有効数は、対象の年齢、体重、および癌の型、位置、および重症度、ならびに全般的な健康状態を含み得る1つまたは複数の因子によって異なる。最終的には、主治医が、適切な用量および投与レジメンを決定する。典型的には、免疫細胞は、単一用量で与えられる。いくつかの実施形態において、遺伝子改変型免疫細胞の有効数は、対象あたり約1×10~約1×1010細胞である。いくつかの実施形態において、遺伝子改変型免疫細胞の有効数は、対象の体重1kgあたり約1×10~約6×10細胞である。
【0171】
組成物は、選択されたpHへ緩衝され得る、無菌液体調製物、例えば、等張性水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液、または粘稠性組成物として提供され得る。同様に、液体担体には、水性または非水性担体が挙げられる。液体担体の代表的な例には、食塩水、リン酸緩衝食塩水、可溶性タンパク質、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、およびその他同種類のもの)、およびそれらの適切な混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、液体担体は、そこに溶解されまたは分散したタンパク質を含み、代表的な例には、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン、組換えヒトアルブミン)、ゼラチン、およびカゼインが挙げられる。組成物は、典型的には、等張性であり、すなわち、それらは、血液と同じ浸透圧を有する。塩化ナトリウムおよび等張性電解質溶液(例えば、Plasma-Lyte(登録商標))は、所望の等張性を達成するために用いられ得る。担体および免疫細胞に依存して、他の賦形剤、例えば、当技術分野において知られているような、湿潤剤、分散剤、または乳化剤、ゲル化および粘性増強剤、保存剤、ならびにその他同種類のものが加えられ得る。
【0172】
使用方法
いくつかの態様において、本開示は、対象において癌を処置することを対象とする。方法は、プロテアーゼCAR、活性化CAR、および治療用ペイロードをコードする核酸を有する遺伝子改変型免疫細胞の治療的有効数を、必要としている対象に投与するステップを伴う。
【0173】
本明細書で用いられる場合、用語「対象」(または「患者」)は、示された癌に罹りやすい(またはその傾向がある)またはそれを患っている動物界の全メンバーを含む。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。したがって、「癌を有する」または本開示による処置を「必要としている」対象は、陽性と診断されている対象を広く包含し、例えば、以前、1ラウンドまたは複数ラウンドの治療で処置された可能性がある活性疾患を有する対象、および現在、(例えば、寛解期で)処置中ではないが、まだなお再発のリスクがあり得る対象、および陽性と診断されたことはないが、癌の素因がある(例えば、前病歴および/または家族歴の根拠を理由に、または別なふうに、医療専門家が、対象が癌の素因があるのではないかと合理的に疑い得るような、1つもしくは複数のリスク因子を示す)対象である。
【0174】
本明細書で用いられる場合、用語「処置する」、「処置すること」、および「処置」は、癌に関連した症状、合併症もしくは状態、または生化学的徴候の開始、進行、発生、重症度、または再発を逆転させ、軽減し、寛解させ、阻害し、減少させ、遅らせ、停止させ、安定化させ、または防止することの治療目的(「治療効果」)を以て、必要としている対象に実施される任意の型の介入、工程、またはその対象への遺伝子改変型免疫細胞の投与を指す。
【0175】
いくつかの実施形態において、細胞は、その細胞を受ける対象と同種異系であり、すなわち、細胞は、対象との完全なまたは少なくとも部分的なHLA適合を有する。いくつかの実施形態において、細胞は自家性である。本明細書で用いられる場合、用語「自家性の」は、材料が後で再導入される同じ対象に由来する任意の材料(例えば、T細胞またはNK細胞)を指す。本明細書で用いられる場合、用語「同種異系の」は、材料が後で導入される対象と同じ種の異なる対象に由来する任意の材料を指す。2つ以上の個々の対象は、1つまたは複数の座における遺伝子(典型的にはHLA座)が同一ではない場合、同種異系である。
【0176】
いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍により特徴付けられる。固形腫瘍により特徴付けられる代表的な癌には、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、または前立腺癌が挙げられる。
【0177】
いくつかの実施形態において、癌は血液癌である。代表的な血液癌には、形質細胞腫瘍(例えば、骨髄腫、多発性骨髄腫、再発性もしくは治療抵抗性多発性骨髄腫、形質細胞性骨髄腫、髄外多発性骨髄腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MUGS)、無症候性くすぶり型多発性骨髄腫、または孤立性形質細胞腫)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様リンパ腫、またはびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)、白血病(例えば、再発性もしくは治療抵抗性急性Bリンパ球白血病、または再発性もしくは治療抵抗性急性リンパ芽球性白血病)、および癌腫(例えば、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症または膠芽腫(星細胞腫))が挙げられる。これらの実施形態において、治療効果は、1つまたは複数の当技術分野で認められた、治療効力の徴候を含み得、それらの代表的な例には、転移の阻止または遅延、生存時間の向上、癌の全体/完全または部分寛解、例えば、それぞれ、検出可能な癌細胞なし、およびより小さい腫瘍細胞もしくはより小さい腫瘍、または腫瘍細胞数の低下が挙げられる。
【0178】
いくつかの実施形態において、血液癌は、多発性骨髄腫、白血病、またはリンパ腫である。いくつかの実施形態において、血液癌は多発性骨髄腫であり、第1および第2の抗原結合性ドメインは、BCMA、CD19、CD38、CD138、GPCR5D、FCHR5、SLAMF7、またはその組合せに結合する。いくつかの実施形態において、血液癌は白血病またはリンパ腫であり、第1および第2の抗原結合性ドメインは、CD19、CD20、CD33、CD38、FCHR5、Flt3、またはその組合せに結合する。
【0179】
併用治療
いくつかの実施形態において、本方法は、抗癌剤の同時投与を含み得る。
【0180】
用語「同時投与」、「同時投与する」、および「同時投与された」は、同じもしくは別々の剤形により、または逐次的に、例えば、同じ処置レジメンの一部としてもしくは連続的な処置レジメンとして、実質的に同時の投与を含む。したがって、逐次的に与えられる場合には、2番目の治療の投与の開始時点において、2つの治療のうちの1番目の治療は、場合によっては、処置の部位で、まだなお有効な濃度で検出可能である。順序および時間間隔は、それらが一緒に(例えば、それらが他の方法で投与された場合よりベネフィットの増加を与えるように相乗的に)作用できるように決定され得る。例えば、治療用物質は、同時に、または異なる時点で任意の順番で逐次的に投与され得る;しかしながら、同時に投与されない場合には、それらは、相乗様式であり得る、所望の治療効果を与えるように時間的に十分接近して投与され得る。したがって、その用語は、正確に同時での活性物質の投与に限定されない。
【0181】
本発明の細胞と共に用いられ得る抗癌剤は当技術分野において知られている。例えば、米国特許第9,101,622号(そのセクション5.2)を参照されたい。「抗癌」剤は、例えば、癌細胞を殺傷し、癌細胞にアポトーシスを誘導し、癌細胞の成長速度を低下させ、転移の発生率もしくは数を低下させ、腫瘍サイズを低下させ、腫瘍成長を阻害し、腫瘍もしくは癌細胞への血液供給を低下させ、癌細胞もしくは腫瘍に対する免疫応答を促進し、癌の進行を防止もしくは阻害し、または癌を有する対象の寿命を増加させることにより、対象において癌にマイナスの影響を及ぼす能力がある。より一般的には、これらの他の組成物は、癌性細胞を殺傷しまたはその増殖を阻害するのに有効な混合量で提供される。この工程は、癌細胞を同時にレシピエント細胞および作用物質または複数の因子と接触させることを含み得る。これは、両方の作用物質を含む単一の組成物もしくは薬理学的製剤と癌細胞を接触させることにより、または同時に2つの別個の組成物もしくは製剤(一方の組成物がレシピエント細胞を含み、他方が第2の作用物質を含む)と癌細胞を接触させることにより、達成され得る。
【0182】
いくつかの実施形態において、本開示の遺伝子改変型免疫細胞は、化学療法的、放射線療法的、免疫療法的介入、標的治療、アポトーシス促進性治療、または細胞周期制御治療と共に用いられる。
【0183】
免疫療法
免疫チェックポイント阻害剤の同時投与を含む、免疫療法は、癌を処置するために用いられ得る。免疫チェックポイント分子には、例えば、PD1、CTLA4、KIR、TIGIT、TIM-3、LAG-3、BTLA、VISTA、CD47、およびNKG2Aが挙げられる。免疫チェックポイント阻害剤の臨床的に利用可能な例には、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、およびアベルマブ(Bavencio(登録商標))が挙げられる。PD1阻害剤の臨床的に利用可能な例には、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、およびセミプリマブ(Libtayo(登録商標))が挙げられる。
【0184】
化学療法
抗癌治療はまた、化学物質に基づいた処置と放射線に基づいた処置の両方での様々な併用治療を含む。併用化学療法には、例えば、Abraxane(登録商標)、アルトレタミン、ドセタキセル、Herceptin(登録商標)、メトトレキサート、Novantrone(登録商標)、Zoladex(登録商標)、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、Taxol(登録商標)、ゲムシタビン、Navelbine(登録商標)、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、または前述の任意の類似体、誘導体、もしくはバリアント、ならびにまたそれらの組合せが挙げられる。
【0185】
放射線療法
抗癌治療はまた、放射線に基づいたDNA損傷処置を含む。併用放射線療法には、ガンマ線、X線として一般的に知られているもの、ならびに/または、DNAへの、DNAの複製と修復への、および染色体のアセンブリと維持への幅広い範囲の損傷を引き起こす放射性同位元素の腫瘍細胞への方向付けられた送達が挙げられる。放射性同位元素についての投与量範囲は様々であり、同位元素の半減期、放射される放射線の強度および型、ならびに腫瘍性細胞による取込みに依存し、主治医によって決定される。
【0186】
放射線療法は、外部または内部放射治療を含み得る。外部放射治療は、対象の身体の外側の放射線源、および放射線を身体内の癌のエリアへ送ることを含む。内部放射線治療は、癌へまたはその近くへ直接的に置かれる針、シード、ワイヤー、またはカテーテル内に密封された放射性物質を用いる。
【0187】
本開示のこれらを始めとする態様は、以下の実施例の考慮によりさらに理解されるだろうし、その実施例は、本開示のある特定の実施形態を例証することを意図され、特許請求の範囲により定義されているようなその範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0188】
[実施例1]
材料および方法
cCAR細胞を、ベクターおよびレンチウイルス感染を用いて産生した。CD3ζ一次シグナル伝達ドメイン、加えて4-1BBおよびCD28共刺激ドメインを含有する細胞内ドメインと共にBCMA抗原を標的化する単鎖可変断片を含有する抗原結合性ドメイン(全て、EF-1αプロモーターの調節下で発現する)を含む第3世代(CAR)構築物(表9および表10参照)をデザインした。プロテアーゼCARは、GGGSリンカー(配列番号90)によって分離されたMYCタグおよびΔ220-242 S219V TEVプロテアーゼを含有した;活性化CARは、TEVプロテアーゼ切断部位(ENLYFQM(配列番号83))、転写活性化因子GAL4-VP64、およびT2A配列によってCARから分離された短縮型上皮成長因子受容体(tEGFR)を含有した。第3の核酸(表13参照)は、Gal4結合部位の4個のリピート、続いて最小限CMVプロモーター、および誘導性ペイロード代理としての高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)レポータータンパク質、および構築物の成功した組込みを同定するためのmCherry蛍光タグを含有した。
【0189】
293T細胞に、プロテアーゼCARおよび活性化CARのレンチウイルス構築物、psPAX2およびpCMV-VSV-Gパッケージングベクターを、Thermo Fisher Scientificから市販されているLipofectamine 3000を用い、製造会社のプロトコールに従って同時トランスフェクトした。12時間後、24時間後、および36時間後、レンチウイルスを収集し、培地を交換した。ウイルスを、濾過および4℃、20,000rpmで2時間の超遠心分離により濃縮した。
【0190】
T細胞単離および形質導入。T細胞実験をジャーカット細胞かまたは初代ヒトT細胞かのいずれかで実施した。健康なドナー由来のヒト血液をResearch Blood Components、LLCまたはCrimson Core of the Brigham and Women’s Hospitalから入手した。単核球(PBMC)をFicoll-Paque PLUS(Global Life Sciences Solutions USA LLC)により単離した。PBMCを、EasySep(商標)ヒトT細胞濃縮キット(STEMCELL Technologies)でCD3 T細胞を単離することによりさらに処理した。CD8またはCD4 T細胞精製について、EasySep(商標)遊離ヒトCD4またはCD8ポジティブセレクションキット(STEMCELL Technologies)を用いて、製造会社のプロトコールに従って選択を実施した。
【0191】
単離されたT細胞をDynabeads(商標)ヒトT-活性化因子CD3/CD28(Thermo Fisher Scientific)により活性化し、5% ヒト血清(Sigma-Aldrich)を追加したX-VIVO 15培地(Lonza)中で培養した。50IU/ml IL-2(Miltenyi Biotec)を1日おきに加えた。単離から1日後、T細胞またはジャーカット細胞を、5のMOIでのスピノキュレーションにより感染させた。7日後、感染効率を、抗hEGFR抗体(Biotinylated、Cetuximab;R&D Systems)、抗myc抗体、およびmCherry細胞でのゲーティングを用いるフローサイトメトリーにより決定した。CAR発現細胞を、EasySep(商標)遊離ヒトビオチンポジティブセレクションキット(STEMCELL Technologies)を用いる磁気単離により単離した。再刺激での10日後、活性化ビーズを、製造会社のプロトコールに従って、除去した。同じドナー由来の非感染T細胞または非感染ジャーカット細胞を、並行して維持し、対照として用いた。
【0192】
生細胞顕微鏡観察画像化を、5%ヒト血清(Sigma-Aldrich)を追加した、フェノールレッドを含まないX-VIVO 15培地(Lonza)において実施した。腫瘍細胞をCFSEで染色した。ステージトップインキュベーターを用いて、37℃において一定の加湿OおよびCO流を維持した(Okolab)。10細胞をペトリディッシュ上に播種し、タイムラプス画像化前の少なくとも30分間、定着させた。CAR T細胞をおよそ1:1比で慎重に加えた。適切な場合、SYTOX青色死細胞染色(Thermo Fisher Scientific)を培地へ1mMで加えた。
【0193】
ホログラフィック顕微鏡システム(holotomography)に基づいた3次元ライブ顕微鏡観察について、相互作用部位は、60×倍率対物レンズでの512×512解像度における3D Cell Explorer顕微鏡システム(Nanolive)を用いた、屈折率およびCFSE蛍光シグナルの測定により記録された。画像を、3次元タイムラプスを示すように、NanoliveのソフトウェアSTEVE v1.6.3496でさらに処理した。
【0194】
免疫学的シナプスにおけるクラスタリングを可視化するために、Nikon Eclipse Ti顕微鏡システムを用いて、10分ごとに6時間、20×倍率対物レンズで2048×2048解像度において相互作用部位を記録した。Zスタック画像を、Nikonのパーフェクトフォーカスシステム(Perfect Focus System)を用いて、細胞の中間層、加えて上下2μmに焦点を合わせて記録した。死細胞を、SYTOX青色染色の陽性により決定した。典型的には、分析は、分析の時間においてSYTOX青色陰性である腫瘍細胞だけを含んだ。
【0195】
フローサイトメトリーを、10個の標的OMP2(標的、T)細胞をcCAR T細胞またはcCARジャーカット細胞(エフェクター、E)と1:1、2:1、および5:1のE:T比で、96ウェル丸底プレートにおいて1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、および24時間、共培養する方法により実施した。細胞を、二次染色PEストレプトアビジン(BD Biosciences、カタログ番号554061)と共に、抗MYC APC(9B11 Mouse mAb、Cell Signaling Technology)、抗tEGFR PE(組換えモノクローナルヒトIgG1クローン番号Hu1、R&D Systems;PEストレプトアビジン、BD Biosciences)、またはヒトEGFRビオチン化抗体、組換えモノクローナルヒトIgG1クローン番号Hu1(R&D systems、カタログ番号FAB9577B-100)で染色し、AbC(商標)トータル抗体補正ビーズキット(Total Antibody Compensation Bead Kit)(Thermo Fisher Scientifc)により補正を実施して、Fortessaフローサイトメーター(BD Biosciences)において分析した。適切な場合、絶対カウント数を、Precisionカウントビーズ(BioLegend)で測定した。フローサイトメトリー分析を、FlowJo V10(BD Biosciences)で実施した。
【0196】
以下の核酸構築物を作製した、すなわち:配列番号84の配列を有する、pLVX-CMV 100ベクターバックボーンを含有する第1の核酸構築物(表9に要約する);配列番号97の配列を有する第2の核酸構築物(表10に要約する);および配列番号127の配列を有する第3の核酸構築物(表13に要約する)。
【0197】
[実施例2]
cCAR細胞の調製
それぞれ、図3A~4Dに示され、表9(配列番号84)および表10(配列番号97)に要約されているように、抗腫瘍タンパク質Aの抗原結合性ドメインを有するプロテアーゼCARをコードする核酸、抗腫瘍タンパク質Bの抗原結合性ドメインを有する活性化CARをコードする核酸、および高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)のモデルペイロードタンパク質をコードする第3の核酸を含む3つの核酸を含有する核酸構築物を設計し、その第3の核酸は、cCAR細胞が、腫瘍タンパク質Aおよび腫瘍タンパク質B(すなわち、第1および第2のTAA)を発現する癌細胞に遭遇した時に発現する。プロテアーゼCARおよび活性化CARの抗原結合性ドメインは、図3Aに示されているように、CD28または4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含有する細胞内ドメインと連結された細胞外リンカーおよび膜貫通ドメインと共に、抗腫瘍タンパク質Aかまたは抗腫瘍タンパク質Bかのいずれかを標的化する抗体のscFv断片を含有した。これらのシグナル伝達ドメインは、CAR特異的殺傷を媒介した。プロテアーゼCARにおいて、シグナル伝達ドメインの後に、TEVプロテアーゼが続き、活性化CARにおいて、シグナル伝達ドメインの後に、TEVプロテアーゼの対応する切断部位が続き、その切断部位は、Gal4-VP64転写活性化因子と融合していた(図3A)。
【0198】
図3B~Hにおいて概略的に示されているように、同じ腫瘍細胞の表面上の腫瘍タンパク質AおよびBの認識は、プロテアーゼCARおよび活性化CARを共局在化させ、免疫学的シナプスを形成し、細胞内TEVプロテアーゼとその対応する切断部位を互いに接近させる(図3B~3D)。結果として、Gal4-VP64転写活性化因子が、タンパク質の残りから切り離され(図3Eおよび3F)、核への移行を可能にする(図3F)。核において、Gal4-VP64転写因子は、第3の核酸によりコードされるその転写アクセプターに結合し、同時に、第3の核酸は、他の2つの核酸と共に細胞へ導入される(図3F)。第3の核酸は、治療用ペイロードの転写を調節する転写アクセプター(ここでは、Gal4-VP64転写因子アクセプター部位)をコードする。Gal4-VP64転写因子の転写アクセプターとの結合で、誘導性治療用ペイロードは、改変型CMVプロモーターの調節下で転写され、タンパク質へ翻訳される(図3G)。治療用ペイロードタンパク質の核酸配列より前に、所望の位置、例えば、細胞外環境へと治療用ペイロードタンパク質を標的化するリーダーペプチドがあった。したがって、治療用ペイロードは、細胞の隣接環境へ分泌される(図3H)。
【0199】
cCAR細胞をフローサイトメトリーによりアッセイした。図4A~4Dに示されているように、cCAR細胞は、両方のCAR構築物(プロテアーゼCARおよび活性化CAR)が最小ベースライン発現(1%未満)でのそれらの標的TAAを認識かつ結合した時のみ、モデル治療用ペイロードタンパク質、ここではeGFPを発現した。
【0200】
本明細書に開示された治療概念は、以下に詳述されているように、既存の免疫療法概念と比べて、いくつかの新規な特徴を有し、大幅な進歩を示している:1)開示されているようなcCAR系は、細胞間の界面で癒着する(免疫学的シナプス)ヘテロタイプの受容体の性質を利用することによる、治療用ペイロードを送達するための細胞のオンのスイッチを含む;2)2つの異なる標的TAAが同じ腫瘍細胞上に発現している場合のみ、免疫療法用ペイロード送達が惹起されるため、cCAR系は優れた特異性を提供する。この追加された特異性は、正常組織を温存することにより毒性を軽減する;3)いったん引き起こされたならば、CAR特異的殺傷のための2つの異なる標的腫瘍表面タンパク質が存在しない場合でさえも、分泌されたペイロードは、クラスター内の腫瘍細胞を殺傷する。クラスター内のいくつかの細胞が、標的エピトープ発現の喪失を通してCAR媒介性殺傷に対して抵抗性になっている場合でさえも、これは、腫瘍細胞のクラスター全体が排除されること(フィールド効果)を確実にする。したがって、その系は、CAR細胞抵抗性を克服する;4)cCAR系はまた、CAR媒介性殺傷なしに(すなわち、プロテアーゼCARおよび活性化CARがシグナル伝達ドメインを含有しない実施形態)、身体における限定された部位への精巧な特異性で治療用物質を送達するために用いることができ、例えば癌における、免疫療法的送達系としてのその使用を可能にする。
【0201】
[実施例3]
多発性骨髄腫を処置するための抗BCMA cCAR細胞
難治性血液悪性腫瘍である多発性骨髄腫を、最初の概念実証研究のために選択した。cCAR系は、BCMAをプロテアーゼCARおよび活性化CARの抗原結合性ドメインの両方についての抗腫瘍タンパク質AおよびBとして標的化し(図2)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)を治療用ペイロードの代理として用いた。抗BCMA CAR T細胞は、高レベルのBCMAを発現する骨髄腫細胞に対して優れた活性を有し、再発性/治療抵抗性骨髄腫を有する患者においてFDA認可されている。cCAR細胞に、cCAR系の全ての3つの核酸を感染させ、BCMA発現骨髄腫細胞(例えば、OPM2細胞株)と共培養し、図4Aに示されているように、cCAR細胞の約80%は高レベルのeGFPペイロードを産生した。cCAR系の全ての3つのコンポーネントは、有効なeGFP産生に必要とされ、プロテアーゼCARコード構築物の非存在下でeGFPの有意なバックグラウンド産生はなかった(<1%)(図4B~4D)。抗BCMAプロテアーゼCARおよび抗BCMA活性化CAR構築物は、CAR媒介性骨髄腫細胞殺傷を与えた。核酸のドメインは、図2および図4E~5Cに、より詳細に示されている。図4A~4Dのフローサイトメトリープロットは、それぞれ、左から右へ、プロテアーゼCAR、活性化CAR、第3の核酸、およびeGFPについて染色されたcCARを示す。図4Aにおいて、ジャーカットT細胞を、全ての3つの核酸を含むレンチウイルスで形質転換した。細胞に、図4Bにおいては、活性化CARおよび第3の核酸のみを含有するウイルスを、図4Cにおいては、プロテアーゼCARおよび活性化CARのみを含有するウイルスを、ならびに図4Dにおいては、プロテアーゼCARおよび第3の核酸のみを含有するウイルスを感染させた。
【0202】
プロテアーゼCARおよび活性化CARはどちらも、BCMA表面タンパク質に対して方向付けられた(すなわち、プロテアーゼCARおよび活性化CARはBCMAに結合する)。これらの実験について、各構築物を、構築物発現を検出するためのマーカーを含むように設計した。プロテアーゼCARは、α-myc-APCで染色されたmycタグについての配列を含む。活性化CARは、α-EGFR-PEで染色された短縮型EGFR受容体についての配列を含む。第3の核酸は、PGKプロモーターの調節下でのmCherryフルオロフォアについての配列を含む。その後、細胞を、表面にCAR標的としてBCMAを発現するOPM2骨髄腫細胞と共培養した。24時間の共培養後、フローサイトメトリーを実施し、3つの核酸をトランスフェクトされた生細胞(すなわち、図4AにおけるAPCPEmCherry)についてゲーティングした。図4Aからわかるように、ゲーティングされた細胞の大部分は、モデルペイロードとしてのeGFPを発現している。とりわけ、3つの核酸のうちの2つのみがトランスフェクトされて、発現した場合には、最小のeGFPペイロード発現のみが検出されている(図4B~4D)。
【0203】
[実施例4]
BCMAに結合するcCAR T細胞はBCMA発現OPM2多発性骨髄腫細胞を殺傷する
治療用ペイロードをコードする第3の核酸(図6において「3」と名前を付けられている)、ならびにα-BCMAプロテアーゼCARおよび活性化CAR(図6において、それぞれ「1」および「2」と名前を付けられている)の一方または両方にレンチウイルス性感染したT細胞またはCAR T細胞を、OPM2多発性骨髄腫細胞と2:1のエフェクター対標的比で40時間、共培養した。ビーズのカウント数に対する生きているOPM2細胞の比率を、非トランスフェクト化T細胞共培養物に対して正規化し、図6において、破線で分けられた2つの代表的な実験が示されている。どちらの実験においても、治療用ペイロードをコードする第3の核酸に加えて、プロテアーゼCARかまたは活性化CARかのいずれかを形質導入されたCAR T細胞は、多発性骨髄腫細胞を殺傷することにおいて有効であった(それぞれ、0.15および0.19 生きているOPM2/ビーズのカウント数)。2つのα-BCMA CAR構築物(プロテアーゼCARおよび活性化CAR、すなわち、「1および2」)、および第3の核酸を保有するペイロード(「3」)を形質導入されたCAR T細胞は、単一のα-BCMA CAR構築物(すなわち、プロテアーゼCARまたは活性化CAR)を形質導入されたCAR T細胞と同様に、骨髄腫細胞を殺傷した(0.13 生きているOPM2/ビーズのカウント数)。これらのデータは、α-BCMAに方向付けられたプロテアーゼCARまたは活性化CARのいずれかを発現するT細胞が、BCMA発現骨髄腫細胞を殺傷したことを実証している。
【0204】
T細胞を、治療用ペイロードをコードする第3の核酸を単独でか、またはα-BCMA プロテアーゼCARおよびα-BCMA 活性化CARに加えてかのいずれかでレンチウイルス性感染させた(図7)。感染したT細胞を、BCMA発現OPM2多発性骨髄腫細胞と1:1のエフェクター対標的細胞比で40時間、共培養した。GFPを、ペイロード転写率および発現率を評価するためにニセ治療用ペイロードとして用いた。バックグラウンド治療用ペイロード発現(11.3% GFP+ CAR T細胞)が、第3の核酸のみを保有するT細胞において見られた。ペイロード発現の有意な増加(40.9% GFP+ CAR T細胞)が、プロテアーゼCARおよび活性化CARおよび治療用物質をコードする第3の核酸の全部を発現するCAR T細胞において観察されている(図7)。OPM2標的細胞死は、治療用ペイロード発現と相関した。
【0205】
[実施例5]
多発性骨髄腫インビトロモデルに対するcCAR細胞の効力
一実施形態において、cCAR細胞を、CD38抗原に結合するプロテアーゼCARおよびBCMAに結合する活性化CARを発現する細胞を産生するように同時レンチウイルス感染により作製した。細胞はまた、BiTE CD3-CD19およびBiTE CD3-CD20の一方または両方をコードする第3の核酸を含有する。これらのcCAR細胞は、これらの細胞の周囲のクラスターである、CD38およびBCMAを発現する癌細胞を認識し、BiTEの転写を惹起するはずである。BiTEは、第3の核酸の一部として導入される細胞外分泌のための隣接リーダーペプチドにより、分泌される。
【0206】
この実施形態において、治療用ペイロードは、二重特異性抗体または二重特異性T細胞エンゲージャーをコードする。この治療用ペイロードは、ペイロードタンパク質の細胞外分泌を保証するリーダーペプチドを含む。二重特異性抗体/二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)は癌細胞をT細胞と連結させ、連結された癌細胞へ細胞傷害活性を発揮するようにT細胞を活性化する。原理の証明として、2つの異なる特異性は、2つの異なる治療用ペイロードとしてCD3-CD19に対するBiTEおよびCD3-CD20に対するBiTEを導入することにより試験される。CD19とCD20のどちらも、骨髄腫細胞の小サブセットに発現していることが知られている。二重特異性T細胞エンゲージャーまたは二重特異性抗体はCD3-CD19(ブリナツモマブ)についてFDA認可されており、CD3-CD20(オドロネクスタマブ)について現在、臨床試験中である。これらの二重特異性T細胞エンゲージャーまたは二重特異性抗体は、細胞株に関するペイロード分子としての効力について試験することができる。治療用ペイロード効力の一つの例示的な実施形態において、Molp2骨髄腫細胞が標的癌細胞としての役割を果たし得、それらの細胞表面にCD19を発現するが、CD20を発現しない。表面にCD20を発現するが、CD19を発現しないKarpas620骨髄腫細胞もまた、標的癌細胞としての役割を果たし得る。CRISPR/Cas9ゲノム編集は、CD38もしくはBCMAもしくはSLAMF7、またはこれらの分子の2つもしくは3つ全部の組合せの発現を欠損するMolp2およびKarpas620骨髄腫細胞を作製するために用いることができる。
【0207】
cCAR細胞の特異性を試験するために、上記のcCAR細胞を、CD38およびBCMAがCRISPR/Cas9ゲノム編集でノックアウトされているMolp2細胞(Molp2CD38 KO/BCMA KO)と、野生型Molp2細胞の存在下または非存在下で共培養する。CD3-CD19 BiTE治療用ペイロードの分泌は、表面CD38とBCMAの両方を発現する野生型Molp2細胞の存在下でのみ起こることが予想される。したがって、Molp2CD38 KO/BCMA KO骨髄腫細胞の殺傷は、野生型Molp2細胞もまた共培養中に存在する場合のみ起こると予測される。追加のCAR特異性、例えば、SLAMF7、CD138、CD38、およびBCMAは、本明細書で開示されている。
【0208】
[実施例6]
cCAR細胞は抗原発現腫瘍細胞を選択的に殺傷する
この実験は、抗BCMA プロテアーゼCAR、抗BCMA 活性化CAR、およびCD3/CD19 BiTEをコードする第3の核酸を発現するcCAR細胞が、BCMA陽性腫瘍細胞の存在下でのみCD19陽性腫瘍細胞を選択的に殺傷したことを示している。OPM2(図8A)およびNALM-6(図8B)癌細胞を、BCMA(CD269)発現について評価した。赤色ヒストグラムは未染色細胞を表し、一方、青色はα-BCMA染色を表し、OPM2細胞(図8A)がBCMA陽性であったが、NALM-6細胞(図8B)がBCMA陰性であったことを示している。cCAR T細胞に、抗BCMA プロテアーゼCAR、抗BCMA 活性化CAR、およびCD3/CD19 BiTEをコードする第3の核酸をレンチウイルス性感染させた(図8Cにおいて、1+2+3 CAR Tと名前を付けられている)。これらのcCAR T細胞または非感染対照T細胞(T細胞)を、BCMA陰性/CD19陽性NALM-6細胞とBCMA陽性OPM2細胞の両方と、2:1のエフェクター対標的比で40時間、共培養した。CD3/CD19 BiTE発現および殺傷効力は、非感染T細胞による殺傷に対して正規化された、ビーズのカウント数に対する生きているNALM-6細胞の比率として示されている。CD3/CD19 BiTEによるCD19陽性NALM-6細胞の治療用ペイロード媒介性殺傷は、BCMA陽性OPM2細胞の存在下でのcCAR T細胞に関してのみ観察された(図8C)。
【0209】
[実施例7]
多発性骨髄腫インビトロモデルに対するcCAR細胞の効力
この実施例において、本開示は、インビボで不均一な腫瘍細胞クラスターの標的化についてのcCAR系の特異性および効力を調べるための実施形態に適用される。多発性骨髄腫が再び、モデル系として用いられ、最初は、本明細書の他の所で詳述された治療用ペイロードの例として抗CD19 BiTEおよび抗CD20 BiTEを用いることに焦点を合わせる。今まで、骨髄腫プリマグラフト(primagraft)モデルを作製するのが困難であったが、例えば、Bianchi et al., Blood Cancer Discov. 2(4):338-353 (2021)に記載されているように、髄内異種移植NOD-scid-IL2Rgnull(NSG)モデルが骨髄間質を模倣するように用いることに成功している(μ-SCID異種移植モデル)。この目的のために、NSGドナーマウスの両側大腿骨を摘出し、吸引し、内因性骨髄を廃棄する。その後、Molp2またはKarpas620骨髄腫細胞、それぞれを、髄内に注射し、その後、マトリゲルで大腿骨頭を封鎖する。大腿骨をNSGレシピエントマウスへ皮下に移植する(マウスあたり2個の移植片、群あたり7匹のマウス)。その後、マウスに、抗CD38/抗BCMA/CD3-CD19 BiTE治療用ペイロードを発現するcCAR細胞または抗CD38/抗BCMA/CD3-CD20 BiTE治療用ペイロードを発現するcCAR細胞、それぞれを注射する。治療用ペイロードの効力を評価するために、Molp2CD38 KO/BCMA KOまたはKarpas620CD38 KO/BCMA KO細胞をそれぞれ、野生型Molp2またはKarpas620細胞の同時移植ありおよびなしで、同時移植する。BiTE治療用ペイロードの細胞傷害性により、野生型とノックアウト骨髄腫細胞の両方が、効果的に殺傷されることが予想されるが、ただし、野生型Molp2またはKarpas620細胞が存在する場合でのみである。腫瘍殺傷は、腫瘍負荷について、ルミネセンスを用いかつカプラン・マイアー生存曲線を作成して、評価される。
【0210】
第2セットの実験において、BiTE媒介性殺傷からのCD19またはCD20を発現する非癌性B細胞の死を、評価する。この目的のために、NSGレシピエントマウスに、正常ドナーB細胞を移植する。移植が末梢血フローサイトメトリーにより確認されたならば、Molp2またはKarpas620骨髄腫細胞を含有する大腿骨移植片を移植し、上記で詳述されているようなそれぞれのCD38/BCMA KO骨髄腫細胞を同時トランスフェクトする。その後、抗CD38/抗BCMA/CD3-CD19 BiTE治療用ペイロードを発現するcCAR細胞または抗CD38/抗BCMA/CD3-CD20 BiTE治療用ペイロードを発現するcCAR細胞を、それぞれ、注射し、疾患負荷を上記のようにモニターする。加えて、末梢血中の非癌性B細胞の数、非癌性骨髄、および骨髄の骨髄腫移植片を、CD19、CD20、およびCD79aについてのフローサイトメトリー染色により評価する。骨髄腫の骨髄移植片におけるB細胞の減少が予想されるが、末梢血および非癌性骨髄におけるB細胞の数への効果はないと予想される。
【0211】
これらの実験は、i)不均一な腫瘍細胞クラスターの標的化およびii)別個のコンパートメントに局在した正常組織の温存のためのcCAR依存性治療用ペイロードの効力を確立する。
【0212】
全ての特許刊行物および非特許刊行物は、本開示が関連する技術分野の当業者の技術のレベルを示す。全てのこれらの刊行物(参照されるそれらの任意の特定の部分を含む)は、あたかも各個々の刊行物が、参照により組み入れられているものとして具体的かつ個々に示されているかのように同じ程度で参照により本明細書に組み入れられている。
【0213】
本明細書における本開示は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は、単に、本開示の原理および適用の実例となるに過ぎないことは理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲により定義されるような本開示の精神および範囲から逸脱することなく、多数の改変が実例的な実施形態になされ得ること、および他の配置が考案され得ることは理解されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図8C
【配列表】
2024540058000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の核酸、第2の核酸、および第3の核酸のうちの少なくとも1つを含む核酸構築物であって、前記第1の核酸が、第1の腫瘍関連抗原(TAA)に結合する第1の抗原結合性ドメインを含む第1の細胞外ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、第1のシグナル伝達ドメインおよびプロテアーゼドメインを含む第1の細胞内ドメインとを含む第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸と作動可能に連結された第1のプロモーターを含み、
前記第2の核酸が、第2のTAAに結合する第2の抗原結合性ドメインを含む第2の細胞外ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、第2のシグナル伝達ドメイン、前記プロテアーゼにより認識される切断部位、および転写活性化因子を含む細胞内ドメインとを含む第2のCARをコードする核酸と作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、
前記第3の核酸が、前記転写活性化因子に結合する転写アクセプターと、第3のプロモーターと、前記第3のプロモーターと作動可能に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸とを含む、
核酸構築物。
【請求項2】
前記第1、前記第2、および前記第3の核酸を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
前記第1、前記第2、および前記第3の核酸のうちの2つを含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項4】
前記プロテアーゼドメインが、タバコエッチウイルスプロテアーゼ(TEVp)に由来し、前記切断部位がTEVpにより切断可能な配列を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項5】
前記治療用ペイロードが、抗体断片、サイトカイン、可溶性サイトカイン受容体、ケモカイン、可溶性ケモカイン受容体、RNAもしくはオリゴペプチドワクチン、または表面受容体を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0213
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0213】
本明細書における本開示は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は、単に、本開示の原理および適用の実例となるに過ぎないことは理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲により定義されるような本開示の精神および範囲から逸脱することなく、多数の改変が実例的な実施形態になされ得ること、および他の配置が考案され得ることは理解されるべきである。

以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 第1の核酸、第2の核酸、および第3の核酸のうちの少なくとも1つを含む核酸構築物であって、前記第1の核酸が、第1の腫瘍関連抗原(TAA)に結合する第1の抗原結合性ドメインを含む第1の細胞外ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、第1のシグナル伝達ドメインおよびプロテアーゼドメインを含む第1の細胞内ドメインとを含む第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸と作動可能に連結された第1のプロモーターを含み、
前記第2の核酸が、第2のTAAに結合する第2の抗原結合性ドメインを含む第2の細胞外ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、第2のシグナル伝達ドメイン、前記プロテアーゼにより認識される切断部位、および転写活性化因子を含む細胞内ドメインとを含む第2のCARをコードする核酸と作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、
前記第3の核酸が、前記転写活性化因子に結合する転写アクセプターと、第3のプロモーターと、前記第3のプロモーターと作動可能に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸とを含む、
核酸構築物。
[2] 前記第1、前記第2、および前記第3の核酸を含む、[1]に記載の核酸構築物。
[3] 前記第1、前記第2、および前記第3の核酸のうちの2つを含む、[1]に記載の核酸構築物。
[4] 前記第1のプロモーター、前記第2のプロモーター、または前記第1のプロモーターと前記第2のプロモーターの両方が、EF-1α、CMV、PGK、RPBSA、AmpR、またはCAGプロモーターである、[1]~[3]のいずれかに記載の核酸構築物。
[5] 前記第1および前記第2のプロモーターがEF-1αプロモーターである、[4]に記載の核酸構築物。
[6] 前記第1の抗原結合性ドメイン、前記第2の抗原結合性ドメイン、または前記第1の抗原結合性ドメインと前記第2の抗原結合性ドメインの両方が、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD19、CD20、CD38、CD138、FCRH5、GPRC5D、またはSLAMF7に結合する、[1]に記載の核酸構築物。
[7] 前記第1および前記第2の抗原結合性ドメインがBCMAに結合する、[6]に記載の核酸構築物。
[8] 前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインが、アミノ酸配列
【化28】

を含むVLドメイン、およびアミノ酸配列
【化29】

を含むVHドメインを含む、[7]に記載の核酸構築物。
[9] 前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインがCD38に結合する、[6]に記載の核酸構築物。
[10] 前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインが、アミノ酸配列
【化30】

を含むVLドメイン、およびアミノ酸配列
【化31】

を含むVHドメインを含む、[9]に記載の核酸構築物。
[11] 前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインがSLAMF7に結合する、[6]に記載の核酸構築物。
[12] 前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインが、アミノ酸配列
【化32】

を含むVLドメイン、およびアミノ酸配列
【化33】

を含むVHドメインを含む、[11]に記載の核酸構築物。
[13] 前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインがFCRH5に結合する、[6]に記載の核酸構築物。
[14] 前記第1または前記第2の抗原結合性ドメインが、アミノ酸配列
【化34】

を含むVLドメイン、およびアミノ酸配列
【化35】

を含むVHドメインを含む、[14]に記載の核酸構築物。
[15] 前記第1および前記第2の抗原結合性ドメインが同じTAAに結合する、[1]~[14]のいずれかに記載の核酸構築物。
[16] 前記第1および前記第2の抗原結合性ドメインが同じアミノ酸配列を有する、[15]に記載の核酸構築物。
[17] 前記第1または前記第2の膜貫通ドメインがCD3、CD8α、CD28、またはCD137に由来する、[1]に記載の核酸構築物。
[18] 前記第1および前記第2の膜貫通ドメインがCD28に由来する、[17]に記載の核酸構築物。
[19] 前記第1および前記第2の膜貫通ドメインが、アミノ酸配列FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号50)を有する、[18]に記載の核酸構築物。
[20] 前記第1の細胞外ドメインが、前記第1の抗原結合性ドメインと前記第1の膜貫通ドメインとの間に配置された第1のヒンジドメインをさらに含み、前記第2の細胞外ドメインが、前記第2の抗原結合性ドメインと前記第2の膜貫通ドメインとの間に配置された第2のヒンジドメインをさらに含む、[1]に記載の核酸構築物。
[21] 前記第1および前記第2のヒンジドメインがCD8α、IgG1、またはIgG4に由来する、[20]に記載の核酸構築物。
[22] 前記第1および前記第2のヒンジドメインがCD8αに由来する、[21]に記載の核酸構築物。
[23] 前記第1および前記第2のヒンジドメインがアミノ酸配列KPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSKRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY(配列番号54)を含む、[22]に記載の核酸構築物。
[24] 前記第1のシグナル伝達ドメイン、前記第2のシグナル伝達ドメイン、または前記第1のシグナル伝達ドメインと前記第2のシグナル伝達ドメインの両方が、一次シグナル伝達ドメイン、共刺激シグナル伝達ドメイン、または一次シグナル伝達ドメインと共刺激シグナル伝達ドメインの両方を含む、[1]に記載の核酸構築物。
[25] 前記第1のシグナル伝達ドメインがCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含み、前記第2のシグナル伝達ドメインがCD28一次シグナル伝達ドメインを含む、[24]に記載の核酸構築物。
[26] 前記第1のシグナル伝達ドメイン、前記第2のシグナル伝達ドメイン、または前記第1のシグナル伝達ドメインと前記第2のシグナル伝達ドメインの両方が、CD3ζ一次シグナル伝達ドメイン、および4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインまたはCD28共刺激シグナル伝達ドメイン、または4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインとCD28共刺激シグナル伝達ドメインの両方を含む、[24]に記載の核酸構築物。
[27] 前記第1および前記第2のシグナル伝達ドメインが、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインならびに4-1BBおよびCD28共刺激シグナル伝達ドメインを含む、[26]に記載の核酸構築物。
[28] 前記CD3ζ一次シグナル伝達ドメインがアミノ酸配列
【化36】

を含み、前記4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインがアミノ酸配列KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号68)を含み、前記CD28共刺激シグナル伝達ドメインがアミノ酸配列RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号72)を含む、[27]に記載の核酸構築物。
[29] 前記第1のCARが、前記プロテアーゼドメインのN末端側にある第1のリンカーをさらに含み、前記第2のCARが、前記切断部位のN末端側にある第2のリンカーをさらに含む、[1]に記載の核酸構築物。
[30] 前記プロテアーゼドメインが、タバコエッチウイルスプロテアーゼ(TEVp)に由来し、前記切断部位がTEVpにより切断可能な配列を含む、[1]に記載の核酸構築物。
[31] 前記切断部位がアミノ酸配列ENLYFQM(配列番号83)を含む、[30]に記載の核酸構築物。
[32] 前記転写活性化因子がGal4-VP64融合タンパク質を含み、前記転写アクセプターがGal4結合部位を含み、前記第3のプロモーターが改変型CMVプロモーターである、[1]に記載の核酸構築物。
[33] 前記治療用ペイロードが、抗体断片、サイトカイン、可溶性サイトカイン受容体、ケモカイン、可溶性ケモカイン受容体、RNAもしくはオリゴペプチドワクチン、または表面受容体を含む、[1]に記載の核酸構築物。
[34] 前記治療剤が、CD3、CD19、CD20、HLA-E、TGFβ、PD-L1、EGFR、NKG2A、TIGIT、LAG3、またはCTLA4に結合する抗体断片を含む、[33]に記載の核酸構築物。
[35] 前記治療用ペイロードが、二重特異性抗体断片または二重特異性T細胞エンゲージャーを含む、[34]に記載の核酸構築物。
[36] 前記治療用ペイロードが、CD3に結合するscFv、およびBCMA、CD19、CD20、CD33、CD38、CD138、EGFR、FCRH5、Flt3、GPCR5D、PSMA、またはSLAMF7に結合するscFvを含む二重特異性抗体断片を含む、[35]に記載の核酸構築物。
[37] 前記治療用ペイロードが、CD19に結合するscFvおよびCD3に結合するscFvを含む二重特異性抗体断片を含む、[36]に記載の核酸構築物。
[38] 前記治療用ペイロードが、アミノ酸配列
【化37】

を含む二重特異性抗体断片を含む、[37]に記載の核酸構築物。
[39] 前記治療用ペイロードが、CD20に結合するscFvおよびCD3に結合するscFvを含む二重特異性抗体断片を含む、[36]に記載の核酸構築物。
[40] 前記治療用ペイロードが、FCRH5に結合するscFvおよびCD3に結合するscFvを含む二重特異性抗体断片を含む、[36]に記載の核酸構築物。
[41] 前記治療用ペイロードが、アミノ酸配列
【化38】

を含む二重特異性抗体断片を含む、[40]に記載の核酸構築物。
[42] 前記治療用ペイロードが、サイトカイン、サイトカイン受容体、ケモカイン、またはケモカイン受容体に結合する抗体断片を含む、[33]に記載の核酸構築物。
[43] 前記抗体断片がIL-6またはIL-6Rに結合する、[42]に記載の核酸構築物。
[44] 前記治療用ペイロードが、サイトカイン、可溶性サイトカイン受容体、ケモカイン、または可溶性ケモカイン受容体を含む、[33]に記載の核酸構築物。
[45] 前記サイトカインまたはケモカインが、IFNγ、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、またはTGFβである、[44]に記載の核酸構築物。
[46] 前記サイトカインまたはケモカインが、IFNγ、IL-2、またはTGFβである、[45]に記載の核酸構築物。
[47] 前記可溶性サイトカイン受容体または前記ケモカイン受容体が可溶性IFNγRまたは可溶性IL-2Rである、[45]に記載の核酸構築物。
[48] 前記治療用ペイロードがRNAまたはオリゴペプチドワクチンを含む、[33]に記載の核酸構築物。
[49] 前記RNAまたはオリゴペプチドワクチンが、サバイビン、WT1、MUC1、MAGE-A3、またはCT7に対して方向付けられている、[46]に記載の核酸構築物。
[50] 前記治療用ペイロードが表面受容体を含む、[33]に記載の核酸構築物。
[51] 前記表面受容体がCAR、CTLA-4、PD1、PD-L1、PD-L2を含む、[50]に記載の核酸構築物。
[52] 前記第1のリンカー、前記第2のリンカー、または前記第1のリンカーと前記第2のリンカーの両方が、アミノ酸配列GGGX、GGGGX(配列番号89)、またはGSSGSX(配列番号90)を含み、XはCかまたはSのいずれかである、[29]~[51]のいずれかに記載の核酸。
[53] 前記リンカーがアミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号94)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号95)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号96)、EGKSSGSGSESKST(配列番号97)、またはGSAGSAAGSGEF(配列番号98)を有する、[52]に記載の核酸。
[54] [1]~[53]のいずれかに記載の核酸構築物を含むベクター。
[55] レンチウイルスベクターである、[54]に記載のベクター。
[56] 遺伝子改変型免疫細胞を産生する方法であって、
第1の核酸構築物、第2の核酸構築物、および第3の核酸構築物を免疫細胞へ導入するステップを含み、前記第1の核酸構築物が、第1のTAAに結合する第1の抗原結合性ドメインを含む第1の細胞外ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、第1のシグナル伝達ドメインおよびプロテアーゼドメインを含む第1の細胞内ドメインとを含む第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸と作動可能に連結された第1のプロモーターを含み、
前記第2の核酸構築物が、第2のTAAに結合する第2の抗原結合性ドメインを含む第2の細胞外ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、第2のシグナル伝達ドメイン、前記プロテアーゼにより認識される切断部位、および転写活性化因子を含む細胞内ドメインとを含む第2のCARをコードする核酸と作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、
前記第3の核酸構築物が、前記転写活性化因子に結合する転写アクセプターと、第3のプロモーターと、前記第3のプロモーターと作動的に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸とを含む、方法。
[57] 前記第1のCARが、前記プロテアーゼドメインのN末端側にある、第1のシグナル伝達ドメインおよび第1のリンカーをさらに含み、前記第2のCARが、前記切断部位のN末端側にある、第2のシグナル伝達ドメインおよび第2のリンカーをさらに含む、[56]に記載の方法。
[58] 前記第1、第2、および前記第3の核酸構築物が1つのベクターにより前記免疫細胞へ導入される、[56]に記載の方法。
[59] 前記第1、第2、および前記第3の核酸構築物のうちの2つが、第1のベクターにより前記免疫細胞へ導入され、前記3つの核酸構築物の3番目が第2のベクターにより前記免疫細胞へ導入される、[56]に記載の方法。
[60] 第1の核酸構築物、第2の核酸構築物、および第3の核酸構築物を含む、遺伝子改変型免疫細胞であって、
前記第1の核酸構築物が、第1のTAAに結合する第1の抗原結合性ドメインを含む第1の細胞外ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、第1のシグナル伝達ドメインおよびプロテアーゼドメインを含む第1の細胞内ドメインとを含む第1のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸と作動可能に連結された第1のプロモーターを含み、
前記第2の核酸構築物が、第2のTAAに結合する第2の抗原結合性ドメインを含む第2の細胞外ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、第2のシグナル伝達ドメイン、前記プロテアーゼにより認識される切断部位、および転写活性化因子を含む細胞内ドメインとを含む第2のCARをコードする核酸と作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、
前記第3の核酸構築物が、前記転写活性化因子に結合する転写アクセプターと、第3のプロモーターと、前記第3のプロモーターと作動的に連結されている、リーダーペプチドおよび治療用ペイロードをコードする核酸とを含む、
免疫細胞。
[61] 前記第1のCARが、前記プロテアーゼドメインのN末端側にある、第1のシグナル伝達ドメインおよび第1のリンカーをさらに含み、前記第2のCARが、前記切断部位のN末端側にある、第2のシグナル伝達ドメインおよび第2のリンカーをさらに含む、[60]に記載の免疫細胞。
[62] 前記第1、第2、および前記第3の核酸構築物が1つのベクター内に配置されている、[60]に記載の免疫細胞。
[63] 前記第1、第2、および前記第3の核酸構築物のうちの2つが第1のベクター内に配置され、前記3つの核酸構築物の3番目が第2のベクター内に配置されている、[60]に記載の免疫細胞。
[64] T細胞である、[60]~[63]のいずれかに記載の免疫細胞。
[65] CD8 T細胞である、[64]に記載の免疫細胞。
[66] NK細胞である、[60]~[63]のいずれかに記載の免疫細胞。
[67] [63]~[66]のいずれかに記載の治療的有効数の免疫細胞および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
[68] 癌を処置する方法であって、
それを必要としている対象に、[67]に記載の薬学的組成物を投与するステップ
を含む、方法。
[69] 前記対象が、以前CAR-T細胞治療またはBiTe治療を受けている、[68]に記載の方法。
[70] 前記癌が固形腫瘍により特徴付けられる、[68]に記載の方法。
[71] 固形腫瘍により特徴付けられる前記癌が、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、前立腺癌、脳癌、胃腸癌、精巣癌、子宮癌、および小児癌である、[70]に記載の方法。
[72] 前記癌が血液癌である、[68]に記載の方法。
[73] 前記血液癌が多発性骨髄腫、白血病、またはリンパ腫である、[72]に記載の方法。
【国際調査報告】