(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】押出機システムおよびそのプロセス
(51)【国際特許分類】
B29C 48/505 20190101AFI20241024BHJP
B29C 48/57 20190101ALI20241024BHJP
B29C 48/285 20190101ALI20241024BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20241024BHJP
B29C 48/95 20190101ALI20241024BHJP
B29B 7/38 20060101ALI20241024BHJP
B29B 7/72 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B29C48/505
B29C48/57
B29C48/285
B29C48/92
B29C48/95
B29B7/38
B29B7/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525323
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022047984
(87)【国際公開番号】W WO2023076448
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】マッキューン,マラリー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジアニャ
(72)【発明者】
【氏名】デヤング,ロナルド
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F201AA04
4F201AA09
4F201AA11
4F201AA37
4F201AA45
4F201AB07
4F201AB11
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4F201AL03
4F201AL20
4F201AR20
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4F201BK13
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4F201BK74
4F207AA04
4F207AA09
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4F207AB07
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4F207AB16
4F207AL03
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4F207AR20
4F207KA01
4F207KA17
4F207KE06
4F207KF01
4F207KF12
4F207KK12
4F207KM14
(57)【要約】
本開示は、押出機システム及びそのプロセスに関する。少なくとも1つの態様において動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)組成物を形成する方法は供給口を介して押出機に熱可塑性ポリマーを導入する工程を含む。弾性ポリマーは融解フィーダーに導入され弾性ポリマーを含む弾性ポリマー融解物が形成される。融解フィーダーは押出機に連結される。融解フィーダーからの弾性ポリマー融解物は押出機に導入される。熱可塑性ポリマー及び弾性ポリマー融解物は押出機に別々に供給される。押出機中の熱可塑性ポリマー及び弾性ポリマー融解物は複数の混合ゾーンを有する複数のインターメッシュスクリューを用いて混合される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)組成物を形成する方法であって、
熱可塑性ポリマーを供給口を介して押出機に導入する工程;
弾性ポリマーを融解フィーダーに導入し、該弾性ポリマーを含む弾性ポリマー融解物を形成する工程であって、該融解フィーダーは、該押出機に連結されている、工程;
該融解フィーダーからの該弾性ポリマー融解物を該押出機に導入する工程であって、該熱可塑性ポリマーおよび該弾性ポリマー融解物は、該押出機に別々にフィードされる、工程;および
該押出機中の該熱可塑性ポリマーおよび該弾性ポリマー融解物を、複数のインターメッシュスクリューを用いて混合する工程であって、該押出機は、複数の混合セクションを含む、工程
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記複数の混合セクションが、少なくとも3つの混合セクションを含み、該混合セクションのうちの少なくとも1つは、少なくとも3つの混合セクションのうちの別の混合セクションと比べてより大きい混合強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の混合セクションが、前記少なくとも3つの混合セクションのうちの、第2の混合セクションの上流の第1の混合セクションおよび第2の混合セクションの下流の第3の混合セクションのそれぞれの混合強度と比べて、より大きい混合強度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記押出機の長さの最初の2分の1~4分の3に配置された混合セクションの混合強度が、前記押出機の他の長さに沿って配置された混合セクションの混合強度より大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマーの融解が、
前記複数の混合セクションのうちの第1のセクションを、約1000秒
-1~約1800秒
-1の動的混合強度で作動させること;
前記複数の混合セクションのうちの第2のセクションを、約1200秒
-1~約2100秒
-1の動的混合強度で作動させること;
前記複数の混合セクションのうちの第3のセクションを、約3100秒
-1~約5600秒
-1の動的混合強度で作動させること;および
前記複数の混合セクションのうちの第4のセクションを、約1,100秒
-1~約1,900秒
-1の動的混合強度で作動させること
によって実行され、前記第1、第2、第3および第4のセクションのそれぞれは、前記押出機の上流の末端から下流の末端へと互いに順に並んでいる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーおよび前記弾性ポリマー融解物の混合が、
前記複数の混合セクションのうちの第1のセクションを、約80~約160の有効混合強度で作動させること;
前記複数の混合セクションのうちの第2のセクションを、約110~約190の有効混合強度で作動させること;
前記複数の混合セクションのうちの第3のセクションを、約290~約450の有効混合強度で作動させること;および
前記複数の混合セクションのうちの第4のセクションを、約90~約170の有効混合強度で作動させること
によって実行され、前記第1、第2、第3および第4のセクションのそれぞれは、前記押出の上流の末端から下流の末端へと互いに順に並んでいる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマーが、第1の位置で導入され、前記弾性ポリマー融解物が、第2の位置で導入され、前記第2の位置が、前記第1の位置の下流であり、前記第1および第2の位置がそれぞれ、前記押出機の長さの最初の16分の1~4分の1に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記押出機の第3の位置で、前記押出機に硬化剤を導入する工程をさらに含み、該第3の位置は、前記第1および第2の位置の下流に配置され、該第3の位置は、前記押出機の長さの最初の3分の1~3分の2に配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
硬化減速材およびフィラーを含む粉末ブレンドを前記供給口を介して前記押出機に導入する工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フィラーが、炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、タルク、二酸化チタン、カーボンブラック、核剤、雲母、木粉、ナノスケールの無機フィラー、ナノスケールの有機フィラー、およびそれらの組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記硬化減速材が、フェノール樹脂を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレンホモポリマー、プロピレンエチレンコポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記弾性ポリマーが、エチレンプロピレンジエンターポリマーを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記押出機に沿った1つまたはそれより多くの位置でプロセス油を注入する工程をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセス油が、パラフィン系油であり、
前記プロセス油が、前記押出機に連結された1つまたはそれより多くの液体ポンプを介して注入され、
前記プロセス油が、前記押出機に導入された硬化剤の上流に、前記硬化剤の下流に、または前記硬化剤の上流および下流に注入される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記融解フィーダーで前記弾性ポリマー融解物を形成することが、約90℃~約120℃の温度で実行される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
硬化減速材およびフィラーを含む粉末ブレンドを前記供給口に導入する工程をさらに含み、該粉末ブレンドは、ゴム100部に対して約1部~約4部の量で導入される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記硬化減速材が、ゴム100部に対して約0.5部~約2.0部の量で前記供給口に導入される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記硬化減速材が、塩化第一スズ、酸化亜鉛、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記熱可塑性ポリマーが、ゴム100部に対して約7部~約100部の量で前記供給口に導入される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記プロセス油が、ゴム100部に対して約25部~約41部の量で導入される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記硬化剤が、ゴム100部に対して約3部~約10部の量で導入される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記熱可塑性ポリマーおよび前記弾性ポリマー融解物から形成された押出し物を、前記押出機からツインスクリュー融解物ポンプに提供して、組成物を形成する工程、および該ツインスクリュー融解物ポンプから該組成物を取り出す工程をさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記押出機中の前記熱可塑性ポリマーおよび前記弾性ポリマー融解物を混合する工程が、約690~約830の合計有効混合強度で実行される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記押出機中の前記熱可塑性ポリマーおよび前記弾性ポリマー融解物を混合する工程が、約7,000秒
-1~約12,000秒
-1の合計動的混合強度で実行される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記押出機中の前記熱可塑性ポリマーおよび前記弾性ポリマー融解物を混合する工程が、約160℃~約320℃の平均押出温度で実行される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記TPV組成物が、約25μin~約50μinの押出し表面粗さ(ESR)を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記TPV組成物が、前記熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマーを前記押出機に同時に導入することによって作製された対照組成物と比べて約40%またはそれ未満のヘッド圧力ドロップを有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記TPV組成物が、3つのストリップの視覚的な観察を使用した場合、約23個またはそれ未満の表面スポットを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
押出機システムであって、
第1の末端、第2の末端、および押出機に沿って配置された複数のポートを有する押出;
該押出機の第1の末端における、該複数のポートのうちの第1のポートに連結された供給口;
該第1のポートの下流における、該複数のポートのうちの第2のポートに連結された融解フィーダー;
該複数のポートのうちの第3のポートに連結された硬化剤源であって、該第3のポートは、該第2のポートの下流または上流に配置される、硬化剤源;および
該押出機の第2の末端に連結された融解物ポンプ
を含む、押出機システム。
【請求項31】
プロセス油ポンプが、前記第3のポートの上流または下流の、前記複数のポートのうちの第4のポートに連結される、請求項30に記載の押出機システム。
【請求項32】
動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)組成物を形成する方法であって、
熱可塑性ポリマーを、第1の位置で、供給口を介して押出機に導入する工程;
弾性ポリマーを、融解フィーダーに導入し、該弾性ポリマーを含む弾性ポリマー融解物を形成する工程であって、該融解フィーダーは該押出機に連結されている、工程;
該融解フィーダーからの該弾性ポリマー融解物を、該第1の位置の下流の第2の位置で、該押出機に導入する工程;および
該押出機中の該熱可塑性ポリマーおよび該弾性ポリマー融解物を、複数のインターメッシュスクリューを用いて混合する工程
を含む、上記方法。
【請求項33】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレンホモポリマー、プロピレンエチレンコポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記弾性ポリマーが、エチレンプロピレンジエンターポリマーを含む、請求項32または33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明の開示は、押出機システムおよびそのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]動的架橋型熱可塑性エラストマー(thermoplastic vulcanizate:TPV)または動的加硫アロイ(dynamic vulanized alloy:DVA)製品は、熱可塑性物質の相に封入された化学的に架橋されたゴムである。TPVは、典型的には、フェノール樹脂硬化触媒系の存在下で分配及び分散混合を組み合わせて、ポリプロピレン相中の小粒径のEPDMゴムの均一な分散を得ることによって生産される。
【0003】
[0003]自動車用機器の製造元や供給元は、EPDMまたは他の熱硬化性化合物の代わりに、自動車用ウェザーシール(automotive weather seals)用としてTPV組成物をますます使用している。TPV組成物の使用が増加した一部の理由としては、加工性とリサイクル可能性における利点が挙げられる。リップ(lip)は、ウェザーシール構造のうち弾性と反発性が高度に求められる部分である。例えば、リップは、例えば最大約90℃の温度でガラスに触れてたわんだ際に、即座に縮んでその元の位置にもどるべきである。
【0004】
[0004]TPV組成物は、弾性に加えて、硬度や引張強度などの他の機械特性の優れたバランスを有するべきである。さらに、ガラスランチャンネルのような押出用途には、エッジの裂け、表面スポット、および光学的な欠陥などの欠陥がないTPV組成物の優れた表面仕上げが求められる。劣った弾性特性は、融解状態でのTPV組成物の高い降伏応力に部分的に関連しており、結果として不良なフロー/融解の停滞が起こる。
【0005】
[0005]したがって、弾性特性と機械特性との組合せの優れたバランス、加えて、優れたフローおよび押出加工性を有するTPV組成物を開発する必要がある。
【0006】
[0006]情報開示陳述書(37CFR1.97(h))で引用された参考文献は、米国特許第7,655,728号;米国特許第10,077,344号;米国特許第8,158,721号;米国特許第9,296/885号を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,655,728号
【特許文献2】米国特許第10,077,344号
【特許文献3】米国特許第8,158,721号
【特許文献4】米国特許第9,296/885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0007]本発明の開示は、押出機システムおよびそのプロセスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0008]少なくとも1つの実施態様において、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)組成物を形成する方法は、熱可塑性ポリマーを供給口を介して押出機に導入する工程を含む。弾性ポリマーは、融解フィーダーに導入され、弾性ポリマーを含む弾性ポリマー融解物が形成される。融解フィーダーは、押出機に連結される。融解フィーダーからの弾性ポリマー融解物は、押出機に導入される。熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマー融解物は、押出機に別々にフィードされる。押出機中の熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマー融解物は、複数の混合ゾーンを有する複数のインターメッシュスクリューを用いて混合される。
【0010】
[0009]少なくとも1つの実施態様において、押出機システムは、第1の末端、第2の末端、および押出機に沿って配置された複数のポートを含む。押出機の第1の末端で、供給口は、複数のポートのうちの第1のポートに連結される。融解フィーダーは、第1のポートの下流の、複数のポートのうちの第2のポートに連結される。硬化剤源は、複数のポートのうちの第3のポートに連結され、第3のポートは、第2のポートの下流または上流に配置される。融解物ポンプは、押出機の第2の末端に連結される。
【0011】
[0010]少なくとも1つの実施態様において、方法は、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)組成物を形成することを含む。本方法は、第1の位置にある供給口を介して押出機に熱可塑性ポリマーを導入する工程を含む。弾性ポリマーは、融解フィーダーに導入され、弾性ポリマーを含む弾性ポリマー融解物が形成され、融解フィーダーは押出機に連結される。弾性ポリマー融解物は、第1の位置の下流の第2の位置で、融解フィーダーから押出機に導入される。熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマー融解物は、複数のインターメッシュスクリューを用いて押出機中で混合される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0011]本発明の開示は、押出機システム、および押出機システムを使用してTPV生成物を形成するプロセスに関する。
【0013】
[0012]TPV生成物は、熱可塑性物質の相に封入された化学的に架橋されたゴムである。TPVは、樹脂硬化触媒系の存在下における分配及び分散混合の組合せ(a combination of distributive and dispersive mixing)を使用して生産される。
【0014】
[0013]弾性特性、フロー、および表面特性が強化されたTPV組成物は、本発明の開示の押出機システムで材料を処理すること、および本明細書で提供される方法を使用することにより得ることができることが見出された。表面特性の改善としては、押出し表面粗さ(extrusion surface roughness:ESR)および表面スポットの改善が挙げられる。理論に縛られることはないが、表面特性の改善は、よく混合された生成物の転相の動力学を変化させる、本明細書に記載される押出機システムおよび方法によって生じる反応速度論による可能性があると考えられる。本明細書で提供されるシステムおよび方法は、非常に小さい加硫ゴム粒子、例えば直径約5nm以下の、例えば直径約3nm未満の加硫ゴム粒子の、強化された均一な分散を提供する。
【0015】
[0014]本発明の開示の目的のために、ポリマーがオレフィンを含むと述べられる場合、ポリマー中に存在するオレフィンは、それぞれオレフィンの重合した形態である。同様に、ポリマーという用語の使用は、ホモポリマーおよびコポリマーを包含することを意味し、コポリマーは、2つまたはそれより多くの化学的に別個の単量体を有するあらゆるポリマーを含む。
【0016】
[0015]この開示の目的のために、用語「ポリプロピレン」は、本明細書で使用される場合、単量体としてプロピレンを含有するポリマーを意味し、これは、ホモポリプロピレンまたはプロピレンとα-オレフィンコモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0017】
[0016]この開示の目的のために、用語「ポリエチレン」は、本明細書で使用される場合、単量体としてエチレンを含有するポリマーを意味し、これは、ホモポリエチレンまたはエチレンとα-オレフィンコモノマーのコポリマーであってもよい。
【0018】
[0017]「組成物」は、本明細書で使用される場合、組成物の構成要素および/または構成要素の1つもしくはそれより多くの反応生成物を含み得る。
【0019】
TPV組成物の作製方法
[0018]一部の実施態様において、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)組成物を形成する方法は、熱可塑性ポリマーを押出機に供給口を介して導入する工程を含む。弾性ポリマーは、押出機に連結された融解フィーダーに導入され、弾性ポリマー融解物が形成される。融解フィーダーからの弾性ポリマー融解物は、押出機に導入される。熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマー融解物は、押出機に別々にフィードされ、複数のインターメッシュスクリューを用いて、スクリュー/押出機の複数の混合ゾーン内で、押出機中で混合される。一部の実施態様において、熱可塑性ポリマーは、第1の位置で、供給口を介して押出機に導入される。融解フィーダーからの弾性ポリマー融解物は、第1の位置の下流の第2の位置で、押出機に導入される。押出機中の熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマー融解物は、複数のインターメッシュスクリューを用いて一緒に混合される。熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレンホモポリマー、プロピレンエチレンコポリマー、またはそれらの組合せであり得る。
【0020】
[0019]複数の混合セクションは、少なくとも3つの混合セクションを含む。混合セクションの少なくとも1つは、少なくとも3つの混合セクションの中の別の混合セクションと比べてより大きい混合強度を有する。一部の実施態様において、第2の混合セクションは、少なくとも3つの混合ゾーンのうちの第2の混合ゾーンの上流の第1の混合ゾーンおよび第2の混合ゾーンの下流の第3の混合ゾーンのそれぞれの混合強度と比べてより大きい混合強度を有する。一部の実施態様において、押出機の長さの最初の2分の1~4分の3に配置された混合ゾーンの混合強度は、押出機の他方の長さに沿って配置された混合ゾーンの混合強度より大きい。熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマー融解物は、約690~約830の合計有効混合強度で、押出機中で混合される。熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマー融解物は、約7,000秒-1~約12,000秒-1の合計動的混合強度で、押出機中で混合される。混合中、平均押出温度は、約160℃~約320℃である。
【0021】
[0020]これらのまたは他の実施態様において、熱可塑性物質相内の熱可塑性ポリマーの量は、ゴム100重量部に対して約5部~約350部であってもよく、例えば、約7部~約100部、または約20部~約150部、例えば約25部~約150部、例えば約50部~約150部、例えば約60部~約100部であってもよい(ゴム100重量部あたりの部を「phr」(parts per hundred parts by weight of rubber)とする)。熱可塑性物質相は、ゴムとは別に、例えば押出機の第1の末端の近傍に配置された供給口から押出機に導入される。
【0022】
[0021]熱可塑性ポリマーは、押出機の第1の位置で導入され、弾性ポリマー融解物は、第2の位置で導入され、第2の位置は、第1の位置の下流であり、第1および第2の位置はそれぞれ、押出機の長さの最初の16分の1~4分の1に配置されている。
【0023】
[0022]一部の実施態様において、フィラー(例えば炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、タルク、二酸化チタン、核剤、雲母、木粉など、およびそれらのブレンド、加えて無機物質およびナノスケールの有機フィラー)は、約100phrまたはそれ未満の量でTPV組成物に添加されてもよい。一部の実施態様において、フィラーは、約10phrまたはそれ未満の量で、例えば約1phr~約4phr、例えば約1.5phr、または約2.0phrの量で、粉末ブレンド中の反応減速材(例えば、硬化減速材)と共に押出機に導入される。一部の実施態様において、硬化減速材は、フェノール樹脂である。
【0024】
[0023]例えばクレイのような少量のフィラー(例えば、約100phrまたはそれ未満)は、粉末ブレンドとして、少量の硬化減速材を希釈したりフィードしたりするのに使用される。少量のフィラーを有する得られた生成物は、滑らかであり、エッジの裂けがないかもしくは実質的になく、ダイラインがないかもしくは実質的になく、および/または目に見える表面上のゲルがないかもしくは実質的にない表面を有する。
【0025】
[0024]粉末ブレンドは、押出機の第2の位置の上流に導入される。粉末ブレンドは、押出機の第1の位置に配置された供給口に導入することができる。一部の実施態様において、粉末ブレンドは、熱可塑性ポリマーと共に導入される。融解フィーダーなしで熱可塑性物質層およびゴムが一緒に導入される典型的なプロセスでは、プロセスを補助するのに有意な量のフィラーが必要である。押出機にゴムを導入する前にゴムを加熱し処理するための融解フィーダーを使用することにより、大量のフィラーの必要性がなくなり、製品品質が強化されることが見出されている。
【0026】
[0025]硬化促進剤、例えば硬化促進剤マスターバッチは、3phr未満の量、例えば約0.5phr~約2.0phrの量で供給口に導入される。硬化促進剤は、塩化第一スズ、酸化亜鉛、またはそれらの組合せである。
【0027】
[0026]カーボンブラック材料は、第2の位置の上流の位置で押出機に導入される。カーボンブラックは、ゴムとは別に押出機に導入される。一部の実施態様において、カーボンブラック材料は、カーボンブラックマスターバッチであり、これは、供給口で押出機に導入される。カーボンブラックマスターバッチは、約5phr~約30phrで、例えば約10phr~約20phrで導入される。カーボンブラックマスターバッチの量は、望ましい製品グレードによって決まる。
【0028】
[0027]一部の実施態様において、TPV組成物は、硬化剤、例えばフェノール樹脂硬化剤を含む。フェノール樹脂硬化剤は、融解フィーダーの下流で押出機に導入される。硬化剤は、第2の位置の下流の第3の位置で(例えば、融解フィーダーの位置で)押出機に連結された液体ポンプを介して導入される。第3の位置は、押出機の長さの最初の3分の1~3分の2に配置される。硬化剤は、約3phr~約10phrの量で導入される。
【0029】
[0028]プロセス油は、1つまたはそれより多くの位置で、例えば硬化剤の上流で、硬化剤の下流で、融解フィーダーの下流で、供給口の下流で、またはそれらの組合せの位置で押出機に導入される。一部の実施態様において、プロセス油は、パラフィン系油である。プロセス油はまた、可塑剤または増量剤、例えば鉱油、合成油などの油、エステル可塑剤、またはそれらの組合せを指す場合もある。鉱油としては、芳香族系油、ナフテン系油、パラフィン系油、イソパラフィン系油、合成油、およびそれらの組合せを挙げることができる。一部の実施態様において、鉱油は、処理されていてもよいし、または未処理であってもよい。有用な鉱油は、SUNPAR(商標)(サンケミカル(Sun Chemicals))という商品名で得ることができる。他の油は、PARALUX(商標)(シェブロン(Chevron))、およびPARAMOUNT(商標)(シェブロン)、例えばParamount(商標)6001R(シェブロンフィリップス(Chevron Phillips))という商品名で入手可能である。使用される可能性がある他の油としては、炭化水素油および可塑剤、例えば有機エステルおよび合成可塑剤が挙げられる。多くの添加剤オイルは、石油留分から誘導され、それらがパラフィン系、ナフテン系、または芳香族系油のクラスに分類されるかどうかに応じて、特定のASTM名称を有する。他のタイプの添加剤オイルとしては、アルファオレフィン系合成油、例えば液体ポリブチレンが挙げられる。石油ベースの油以外の添加剤オイルも使用でき、その例としては、コールタールやパインタールから得られた油、加えて、合成油、例えば、ポリオレフィン材料が挙げられる。油の例としては、ベースストックが挙げられる。
【0030】
[0029]プロセス油は、押出機の1つまたはそれより多くの位置の間で分割されて、約25phr~約41phrの量で押出に導入される。
【0031】
[0030]押出物は、押出機からツインスクリュー融解物ポンプへの熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマー融解物から形成されて、組成物を形成する。組成物は、ツインスクリュー融解物ポンプから取り出され、自動車用製品、例えばウェザーシールなどの最終産物を形成するための供給材料として使用することができる。組成物は、試験のための特定の仕様に従って、試験用サンプルへと成形し、調整することができる。組成物(例えば、TPV組成物)は、参照により本明細書に組み入れられるChemical Surface Treatments of Natural Rubber And EPDM Thermoplastic Elastomers: Effects on Friction and Adhesion、RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY、67巻、4号(1994)に記載されるESR手順に基づき測定される場合、約25μin~約50μinの押出表面粗さ(ESR)を有する。
【0032】
[0031]ウェザーシールは、ウェザーシール押出しライン、例えば、シングルまたはデュアルスクリュー設計およびミキサーを備えた2.5インチの30:1押出機を使用して、TPV組成物から形成することができる。本明細書に記載される押出機システムおよびプロセスを用いて形成されたTPV組成物は、熱可塑性ポリマーおよび弾性ポリマーを押出機に同時に導入することによって作製された対照組成物と比べて約40%またはそれ未満のヘッド圧力ドロップを有する。「ヘッド圧力ドロップ」は、本明細書で使用される場合、異形押出試験中にダイの圧力が増加することを指す。圧力増加が低いほど、加工性がより優れていることを示す。モーターのアンペアは、対照組成物と比べて約10%~約30%であった。理論に縛られることはないが、低減されたヘッド圧力ドロップおよびアンペアは、本発明の開示のTPV組成物で使用されるフィラーの量の低減によると考えられる。したがって、本明細書に記載されるTPV組成物は、従来のTPV組成物と比べてより容易に最終産物に加工できると考えられる。
【0033】
[0032]TPV組成物は、3つのストリップの視覚的な観察を使用して、約23個またはそれ未満の表面スポットを有する。ストリップは、ESR手順に従って調製される。約150リニアセンチメートルのストリップ表面を有するストリップのそれぞれが、目に見えるスポットに関して検査される。表面から突き出た視認可能なスポットが計数される。各ストリップのスポットの総数が計数され、約0.80mm2(0.001インチ2)またはそれより大きい面積を有するスポットの数が計数される。
【0034】
押出機システム
[0033]少なくとも1つの実施態様において、押出機システムは、第1の末端、第2の末端、および押出機に沿って配置された複数のポートを含む。供給口は、押出機の第1の末端における複数のポートのうち第1のポートに連結される。融解フィーダーは、第1のポートの下流の複数のポートのうちの第2のポートに連結される。硬化剤源は、複数のポートのうちの第3のポートに連結され、第3のポートは、第2のポートの下流または上流に配置される。融解物ポンプは、押出機の第2の末端に連結される。プロセス油ポンプは、第3のポートの上流または下流の複数のポートのうちの第4のポートに連結される。
【0035】
[0034]融解フィーダーは、押出機にポリマー(例えば、弾性ポリマー)融解物を提供するものであり、押出機に弾性ポリマー(例えば、ゴム)を導入する前に弾性ポリマーを顆粒化する必要性を低減するかまたはその必要性をなくす。ゴムを顆粒化するためのプロセスは、最終的な製品における顆粒化したゴムの再凝集を防止するために分配フィラー(partitioning filler)を導入することを含む。フィラーの使用は、本明細書に記載されるプロセスで低減される。特定には、クレイなどの少量のフィラーは、反応減速材と共に混合したり、少ない量の反応減速材を粉末ブレンドとしてフィードしたりするために使用してもよい。少量のフィラーを有する得られた生成物は、滑らかであり、エッジの裂けがないかまたは実質的になく、ダイラインがないかまたは実質的になく、および/または目に見える表面上のゲルがないかまたは実質的にない表面を有する。
【0036】
[0035]押出機の出口に配置された融解物ポンプ、例えばツインスクリュー融解物ポンプは、押出機で押出されるメインストリームへの潤滑剤のサイドストリームの逆流の発生を排除することが見出されている。
【0037】
[0036]押出機で使用されるスクリューは、インターメッシュスクリューや共回転スクリューである。
【0038】
[0037]本開示の押出機は、使用される加工パラメーターに応じて、あらゆる好適なポートの数、スクリューの数、バレルの数、バレル長さ、ソリッドバレルおよび組合せのバレルの配置を有し得る。1個またはそれより多くのスクリューはブロッキングスクリュー(blocking screw)であってもよい。ブロッキングスクリューは、押出機のある部分から押出機の別の部分への材料の交差を防止するように設計することができる。ブロッキングスクリューは、定位置であってもよいし、またはソリッドで回転していてもよい。
【0039】
[0038]押出機において1つのフローゾーンから次のフローゾーンへと押出し物を移行させることは、運搬ゾーンを出て混合ゾーンに入ること、または混合ゾーンを出て運搬ゾーンに入ることと定義される。
【0040】
[0039]スクリューの要素は、運搬要素、ニーダー、バックフロー要素、フロースプリッター、または制限的運搬要素(restrictive conveying element)のうちの1つとして分類することができる。一部の実施態様において、本開示のスクリューは、あらゆる好適な立体配置での、1つまたはそれより多くの運搬要素、1つまたはそれより多くのニーダー、1つまたはそれより多くのバックフロー要素、1つまたはそれより多くのフロースプリッター、1つまたはそれより多くの制限的運搬要素、またはそれらの組合せを含む。運搬要素は、様々なピッチを有するフルートを有するスクリューであり、混合バレル中で押出し物を前方へ移動させるように設計される。ニーダーは、押出し物のフローを制限する傾向があり、ニーダーは、徹底的な剪断、粒子サイズの低減、および発熱を提供する。バックフロー要素は、押出し物のフローを逆転させ、制限またはブロック要素として機能するようなフルートを備える。制限的運搬要素は、幅広なクレストを有する単一のフライト要素であってもよいし、またはスロット付きフライトを有するものであってもよく、それが前方へ運搬されるときに押出し物を混練する。制限的運搬要素は、スロットと共に低いピッチのフライトまたは高いピッチのフライトを有していてもよい。
【0041】
[0040]スクリュー要素は、商業的には、その設計において文字および数字の記号によって記載される。数字および文字の記号ならびにスクリュー要素は、センチュリー・エクストルーダー(Century Extruders)、ミシガン州トラバースシティーより入手可能である。
【0042】
[0041]SおよびSKは、いくつかの混合を行う運搬要素を指すが、主として押出機中の材料を融解フィーダーの末端から押出機末端に押すために使用される。SK要素は、通常の運搬要素より多くの自由体積を有する運搬要素であり、フローゾーン間の移行要素として使用される。SGは、実質的な混合を提供しながら押出し材料を運搬する要素を指す。
【0043】
[0042]KBは、混練要素を指す。ニーダーは、押出し材料を前方へ移動させる方向に大きな偏りがなく、押出機において上流から材料を埋める傾向がある。ニーダーは、あらゆる数のプレートを含んでいてもよく、プレートは、1つまたはそれより多くのポイントを有していてもよい。例えば、2つのポイントを有する混練プレートは、プレートの最大直径に対応する2つのポイントを有する全体的に平行四辺形の形状を有し、3つのポイントを有するプレートは、3つの同様の最大直径ポイントと、スクリューシャフトの直径に近い直径を有する3つの対応する平坦な領域とを有する。ニーダーと共にバックフローコンベヤーが使用される場合、ニーダー周辺のフローゾーンの充填が確実に行われ、充填によって引き起こされる圧力および剪断の増加は、押出し材料の温度を劇的に増加させる傾向がある。
【0044】
[0043]スクリュー要素記号における数字は、フルートのピッチ、要素の長さ、および要素におけるプレートの数を指す。追加の文字は、その方向である左(L)または右(R)およびそのタイプを指す。説明において、文字「N」は、要素が「ニュートラル」であり、どちらの方向でも運搬動作を提供しないことを意味する。
【0045】
[0044]例えば、S060R030は、右(R)に060mmのフルートのピッチを有し、30mmの長さを有する運搬要素(S)を指す。同様に、KBS405R030は、隣接するプレートの先端間に45°の分離と、右への運搬バイアスを有する5つのプレートと、30mmの長さを有するニーダー(KBS)を指す。S040RL040 IgelおよびKBS905N030は、押出しフローを2つまたはそれより多くのストリームにカットし、分割されたストリーム自体を左(L)および右(R)に戻すように方向付けるフロー分割要素である。これらのフロー分割要素は、内部および外部の押出し物ストリーム間で交差を引き起こす。S030L015は、左(L)に30mmのピッチ、および15mmの長さを有するバックフロー運搬要素を指す。L記号は、フルートのピッチ方向が、時にはバックフローと称される押出し材料を供給口に押し戻す傾向があることを記載する。
【0046】
[0045]バックフロー要素、ニーダーおよび他の非運搬または低運搬要素は、フィード材料の圧力および上流の運搬要素によって引き起こされる圧力が逆圧に打ち勝ち、押出し材料をそれぞれのフローゾーンに押し出すまで、その特定のフローゾーンにおいて圧力の構築を引き起こす。
【0047】
[0046]バックフロー要素は、使用される場合、フローまたは混合ゾーンの末端に置かれる。バックフロー要素は、障壁を作り出すため、それがフローゾーンの末端を画定するとみなされる。同様に、制限的運搬要素は、そのフローゾーンにおいて高い圧力を生じるため、圧力が前方の運搬要素に放出されるこのような要素の末端は、フローゾーンの末端とみなされる。
【0048】
[0047]各フローゾーンの機能は、その剪断速度、およびフローゾーンで行われる剪断の数によって定義することができる。ニーダーおよびフロースプリッターは、それが提供する混合に加えて、例えば、押出し物を融解させること、およびその温度を増加させることに使用され、多数の剪断が生じるように設計される。運搬要素は、いくつかの混合を提供するが、主として所定方向に押出し物を移動させるように設計されており、ニーダーほど多くの剪断を生じない。他の混合要素のほとんどは、それらの混合能力およびそれらの剪断能力の点で、ニーダーと運搬要素との間に存在する。
【0049】
[0048]米国特許第4,594,390号で例示されるように、剪断速度は、C×RPM/先端クリアランスによって定義される(式中、「先端クリアランス」は、スクリューの先端と押出しチャンバーの壁(例えば、混合バレル)との間の距離であり、Cは、要素の円周である)。言い換えれば、剪断速度は、先端の回転数を先端クリアランスで割ったものである。それゆえに、剪断の数は、「剪断速度」×「特定のフローゾーンの長さ」であり、剪断速度は、特定のスクリュープロファイルの混合の攻撃性に直接関係する。本開示のプロセスにおいて、400秒-1またはそれより大きい剪断速度が効果的に使用できる。
【0050】
[0049]スクリューの先端と、隣接するインターメッシュスクリューの溝の底部との間で実質的な剪断が起こり、以前の計算はこの混合プロセスを完全に説明していないが、本開示の目的に関しては、特定のスクリュープロファイルの混合能力は、スクリューの「メッシュ」、および複数のインターメッシュスクリューの「インターメッシュ」に関して説明することができる。「メッシュ」は、本明細書で使用される場合、特定のスクリュー要素またはプロファイルの混合能力を指し、「インターメッシュ」は、複数のインターメッシュスクリューの混合能力を指す。
【0051】
[0050]特定のスクリュー要素によって生じた剪断の数は、その要素のプロファイルに依存し、スクリュー先端と混合バレルとの間で生じた剪断の数は、要素のプロファイルの固有の特性となり、スクリューのメッシュおよびインターメッシュの計算は、先行技術に記載される方法に比べてスクリュープロファイルの処理能力を決定するより満足のいく方法である。
【0052】
[0051]処理中、スクリューが特定のRPMで回転している場合、インターメッシュの数/秒、または1秒当たりのインターメッシュは、押出し物において生じた混合の量の尺度として計算することができる。特定の押出し物の処理に通じる混合の量はさらに、材料のフィード速度、押出スクリューのRPM、材料の粘度比率および温度、それらの表面湿潤特性、粒子の表面張力、およびそれらのフロー特性に依存する。
【0053】
[0052]FCAは、スクリュー要素、バレル表面、およびコアの間に存在するcm2単位での自由断面積である。押出機への材料フィード速度は、FCAに基づき特定される。例えば、30mmのリング押出機において、製造元によって提供されるFCAは、26.2cm2である。400RPMおよび200Kg/時間の速度では、材料フィード速度=(200Kg/時間)/(26.2cm2)=7.63Kg/(時間×cm2)であり、100RPMおよび50Kg/時間では、材料フィード速度=(50Kg/時間)/(26.2cm2)=1.91Kg/(時間×cm2)である。
【0054】
[0053]実際には、速度、スクリュー速度、バレル温度、および他のプロセス条件は、スケールアップのときに目標とする製品特性が得られるように最適化されることが多い。スケールアップにおいて品質が類似するように、異なるサイズの押出機で、スクリュー軸に沿って、類似の滞留時間、融解温度、硬化および混合プロファイルを維持することが重要であり得る。一部の実施態様において、押出しは、約26℃(80°F)~約371℃(700°F)、例えば約65℃(150°F)~約204℃(400°F)、例えば約82℃(180°F)~約148℃(300°F)の押出温度(例えば、バレルの内部温度)で実行される。
【0055】
[0054]同じスクリュー速度でスケールアップする場合の速度は、公知の押出機の材料フィード速度に、望ましいまたは目標とする押出機のFCAおよび目標とする公知の押出機の直径比率を掛けることによって計算することができる。これは、50mmのリング押出機の速度が、400RPMでの30mmサイズの器具からのデータから計算される例でさらに例示される。速度50mm(kg/時間)=(材料フィード速度(kg/(時間×cm2)))30mm×FCA50mm×(50mm/30mm)=7.63kg/(時間×cm2)×74.1cm2×1.67=944kg/時間。
【0056】
[0055]プロセス中に押出機によって与えられた混合を定義する重要なパラメーターは、以下のように関連付けられる:混合の程度は、先端の数の係数(the No. of Tips factor)、ピッチ係数(Pitch factor)、長さ(Length)またはL/D係数(L/D factor)、制限係数(Restriction factor)、自由断面積(FCA)、RPM、および速度(Rate)の関数である。
【0057】
[0056]使用される材料に関係なく、特定のフローゾーンにおける1秒当たりのメッシュは、制限係数に、長さ係数を掛け、ピッチ係数を掛け、先端の数の係数を掛け、1秒当たりの回転数を掛けることによって見出すことができる。インターメッシュの数/秒は、押出しで使用されるスクリューの数によって得られた数を掛けることによって見出すことができる。
【0058】
[0057]本開示のスクリューは、450~1020のメッシュを有していてもよく、例えば500~900のメッシュ、例えば700~800のメッシュを有していてもよい。スクリューは、例えば約11~約20のメッシュのようにL/D当たり約10~23のメッシュを有していてもよく、例えばL/D当たり約11~16のメッシュを有していてもよく、L/D当たりのメッシュは、所与のスクリュー設計のメッシュをL/Dで割ることによって計算される。
【0059】
[0058]本開示の目的のために、フローゾーンまたは混合ゾーンはさらに、1つまたはそれより多くの混合要素のセットまたは1つまたはそれより多くの運搬要素のセットと定義することができる。各ゾーンのエンドポイントは、運搬要素から混合要素への移行またはその逆によって定義される。例えば、KB60/3/30とそれに続くK60/3/30は、1つのゾーンとなりうる。しかしながら、KB60/3/30とそれに続く45/45または他のあらゆる混合要素は、2つの異なるゾーン間の分離を意味する。したがって、全ての0.5L/Dの混合および運搬要素が使用される場合、理論上、100L/Dのスクリューは、200の混合ゾーンを有し得る。当業者であれば、より大きい直径の機械は、0.5L/D未満を有するスクリュー要素を使用できることを認識するであろう。
【0060】
[0059]特定のスクリュープロファイルの混合特性を定量化する目的で、プレートの数、剪断および接触面積(例えば制限的運搬要素は、より短いピッチおよびより高い滞留時間を有し、ゾーンにおける圧力は増加する)、およびそれらの機能(例えば逆流)、ならびにバレルまたは隣接するスクリュー要素との間の先端のラジアルクリアランスによって決定された混合係数に基づいて、制限係数をスクリュープロファイルで使用される要素のそれぞれに割り当てた。
【0061】
[0060]表1に、特定のスクリュー要素に割り当てられた制限係数を示す。
【0062】
【0063】
[0061]SFL、LHKB、およびLHCE要素は、混合要素の後に設置される場合、より高い制限係数(それぞれ55、6および50)を有するとみなされ、運搬要素の後に設置される場合、より少ない制限作用を有するとみなされる(それぞれ20、3および15)。1つより多くの左手要素が別の左手要素の次に配置される場合、より高い制限係数が割り当てられる。
【0064】
[0062]特定のスクリュープロファイルの混合値を絶対的な観点で説明するには、スクリューをそのメッシュに関して説明することが適切であり、すなわち、回転速度、L/D、および使用されるスクリューの数から独立したスクリューの混合能を説明することが適切である。スクリュー設計のメッシュの数をそのL/Dで割ることによって、そのスクリュー設計のL/D当たりのメッシュの数の計算値を得ることができる。
【0065】
[0063]一部の実施態様において、L/D当たり最大23のメッシュ、および最大170個の混合ゾーンで最大100のL/Dを有するスクリューを使用することができる。一部の実施態様において、わずか3個の混合ゾーンおよびL/D当たり10のメッシュを使用することができる。したがって、プロセスは、15~100のL/Dを有するスクリューを、3~170個の混合ゾーン、および3~17のメッシュ(L/D当たり)と共に使用して実行することができる。一部の実施態様において、本開示のスクリューは、約40~約50のL/Dを有する。
【0066】
[0064]個々の要素のメッシュの計算は、メッシュ表(表3)に示される。表において、要素は、タイプ、ピッチ係数、長さ係数(L/Dで示される)、要素におけるフライト先端の数、制限係数、および有効な要素の強度によって記載される。制限係数の列は、メッシュにおける要素の混合能を示す。
【0067】
[0065]計算において、ピッチ係数=スクリュー直径/ピッチ、例えば、30mm/60mm=0.5である。これは、SG、SKおよびS要素に適用されるが、KBS、Igel、LH要素または混練ブロックには適用されない。長さ係数は、全ての要素に適用される。
【0068】
[0066]メッシュの表における要素もついての先端の数は、フライトの数×要素またはディスクの数であり、単一のフライトを有する要素またはディスクの場合、これは、1×1=1である。ダブルフライト要素の場合、先端の数は、5枚のディスクのダブルフライトを有する混練ブロックの場合、2×5=10であり、ダブルフライトを有する5つのセグメント化Igelの場合、2×5=10であり、6つのセグメント化SG要素の場合、2×6=12である。5枚のディスクを有するトリプルフライトを有する混練ブロックの場合、先端の数は、3×5=15である。これらの例に従うことによって、この計算は、3つより多くのフライトを有する運搬または混合要素に使用することができる。
【0069】
【0070】
[0067]スクリュープロファイルにおける各要素の有効な要素の強度の合計は、上記のメッシュの表(表2)の最後の列で示される有効要素強度(the effective element intensity)である。スクリューの合計有効混合強度(the total effective mixing intensity of the screw)。一部の実施態様において、本開示のスクリューは、約100rpm(毎分回転数)~約500rpmの速度で回転し、例えば約200rpm~約400rpm、例えば約275rpm~約375rpmの速度で回転する。一部の実施態様において、本開示のスクリューは、約600~約900の合計有効混合強度で作動し、例えば約700~約800、例えば約750~約780のスクリューの合計有効混合強度で作動する。
【0071】
[0068]合計混合強度は、スクリュー設計における各要素の混合強度と有効要素強度の合計である。合計混合強度は、式1を使用して決定することができる。
【0072】
合計混合強度=要素のピッチ係数×要素のL/D×要素のフライト先端の数×要素の制限係数 (式1)
[0069]最終的に、スクリュー設計の動的混合強度(dynamic mixing intensity)は、混合力の程度を示す主要な評価であり得る。例えば、押出しプロセスにおいて合計2つの回転スクリューが存在するため、動的混合強度は、混合強度を得て、それに秒-1の単位のプロセスRPMを掛け、2の因子を掛ける。動的混合強度は、式2を使用して決定することができる。
【0073】
動的混合強度=メッシュの数×スクリュー速度×スクリューの数 (式2)
[0070]例えば、ツインスクリュー押出機がTPVを350rpmで混合する非限定的な例のスクリューの場合、動的混合強度は、8,903秒-1であり得る。一部の実施態様において、本開示のスクリューは、約6,000秒-1~約10,500秒-1の動的混合強度で作動し、例えば約7,000秒-1~約9,500秒-1、例えば約8,000秒-1~約9,000秒-1の動的混合強度で作動する。
【0074】
[0071]スクリューの長さは、ほぼ等しい混合セクション、例えば4つの等しい四分位群(Quartile)を有するとみなすことができる。スクリュープロファイルの四分位群の3のセクションは、押出機のrpmに関係なく混合強度の優勢な領域であることが表3に示される。
【0075】
[0072]スクリューの第1の四分位群は、スクリューの第1の末端の近傍に配置された四分位群であり、例えば、押出機の供給口の近傍に配置された四分位群である。一部の実施態様において、本開示のスクリューの第1の四分位群は、約700秒-1~約1,800秒-1の動的混合強度で作動し、例えば約800秒-1~約1,600秒-1、または約1,000秒-1~約1,800秒-1の動的混合強度で作動する。一部の実施態様において、本開示のスクリューの第2の四分位群は、約900秒-1~約2,100秒-1の動的混合強度で作動し、例えば約1,000秒-1~約1,900秒-1、または約1,200秒-1~約2,100秒-1の動的混合強度で作動する。一部の実施態様において、本開示のスクリューの第3の四分位群は、約2,900秒-1~約5,800秒-1の動的混合強度で作動し、例えば約3,000秒-1~約5,000秒-1、または約3,100秒-1~約5,600秒-1の動的混合強度で作動する。一部の実施態様において、本開示のスクリューの第4の四分位群は、約1,000秒-1~約2,000秒-1の動的混合強度で作動し、例えば約1,100秒-1~約1,900秒-1、例えば約1,100秒-1~約1,500秒-1、代替として約1,600秒-1~約1,900秒-1の動的混合強度で作動する。第1、第2、第3および第4のセクションのそれぞれ(例えば、四分位群)は、押出機の上流の末端から下流の末端へ互いに順に並んでいる。
【0076】
[0073]一部の実施態様において、本開示のスクリューは、約500~約1,100の合計有効混合強度で作動し、例えば約600~約900、例えば約700~約800の合計有効混合強度で作動する。一部の実施態様において、本開示のスクリューの第1の四分位群は、約80~約160の合計の有効混合強度で作動し、例えば約100~約140、例えば約110~約130の合計有効混合強度で作動する。一部の実施態様において、本発明の開示のスクリューの第2の四分位は、約100~約200の合計の有効な混合強度で作動し、例えば約110~約190、例えば約130~約170の合計の有効な混合強度で作動する。一部の実施態様において、本開示のスクリューの第3の四分位群は、約280~約460の合計有効混合強度で作動し、例えば約290~約450、例えば約280~約440の合計有効混合強度で作動する。一部の実施態様において、本開示のスクリューの第4の四分位群は、約80~約200の合計有効混合強度で作動し、例えば約90~約170、例えば約100~約160の合計有効混合強度で作動する。一部の実施態様において、本開示のスクリューの第5の四分位群は、約110~約200の合計有効混合強度で作動し、例えば約130~約170、例えば約145~約155の合計有効混合強度で作動する。一部の実施態様において、第3の四分位群で、実質的な量の硬化が起こる。
【0077】
【0078】
[0074]ZME、TME、SME、および伸長フロー要素などの混合要素は、それぞれ20、15、10、および35のメッシュを有する。示された計算は、あらゆる直径、L/D、フライトもしくはローブの数、またはディスクの数の要素に適用することができる。当業者であれば、特定の押出しで使用されるインターメッシュの数を決定するために、各々の計算を使用できるであろう。例えば、スクリューが396のメッシュを有し、6つのスクリューが360RPMで使用される場合、インターメッシュの数/秒は、396×6/秒×6=14,256と予なる。
【0079】
[0075]一部の実施態様において、約15~約40の混合ゾーンを有し、例えばその約60%~71%の約25~約35の混合ゾーンが運搬要素であり、約20%~40%が混合要素(ピッチを有するニーダー)であり、約2%~6%が制限的運搬要素であるスクリュープロファイル使用することができ、この場合、スクリューが543~850メッシュの混合能を有するスクリュープロファイルを使用することができる。スクリュープロファイルのL/D比率は、L/D36~L/D60であってもよい。
【0080】
[0076]一部の実施態様において、本開示のスクリューは、合計500~850のメッシュを有する。
【0081】
[0077]本開示のプロセスの押出機における押出し物の滞留時間は、ダイからの押出し開始の後に押出機の供給口に色素を加え、押出しダイに色の変化が出現する時間を測定することによって、経験的に決定することができる。一部の実施態様において、滞留時間は、処理される材料に応じて15~180秒であり得る。
【0082】
[0078]一部の実施態様において、組成物が加工されているときに組成物の温度および粘稠度を制御するために、加えて、押出し物の最終産物の特性を制御するために、プロセス油は、押出機に沿って1つの位置または複数の位置で添加される。
【0083】
[0079]一部の実施態様において、リング押出機の比エネルギーは、約0.17~0.28Kw/Kgである。
【0084】
[0080]一部の実施態様において、押出機は、約10キログラム/時間(kg/時間)~約6,000kg/時間の出力容量で作動することができ、例えば約10kg/時間~約300kg/時間、代替として約300kg/時間~約1,500kg/時間、代替として約1,500kg/時間~約3,000kg/時間、代替として約3,000kg/時間~約6,000kg/時間の出力容量で作動することができる。
【0085】
融解フィーダー
[0081]本開示の融解フィーダー(melt feeder)は、あらゆる好適な融解フィーダーであってもよく、例えばオハイオ州アクロンのボンノット(Bonnot)社から商業的に入手可能な融解フィーダーであってもよい。弾性ポリマーを融解フィーダーに導入し、加熱して、弾性ポリマー融解物を形成することができる。融解フィーダーは、押出機に連結されて、押出機に弾性ポリマー融解物を導入する。ポリマー融解物は、軟化したフィード、融解したフィード、またはそれらの組合せを含み得る。
【0086】
[0082]融解フィーダーは、ギアボックスの第1の末端に連結されたモーターを含んでいてもよい。ギアボックスは、第2の末端で、ホッパーの第1の末端と連結される。ホッパーは、固体フィードを小さい粒子に磨砕するように構成された複数の歯を有する複数のグラインダーを含む。グラインダーは、モーターやギアボックスによって作動させることができる(例えば、回転させることができる)。ホッパーは、第2の末端で、オーガーバレルの第1の末端と連結される。複数の加熱ジャケットがオーガーバレルの周囲に配置され、各加熱ジャケットは、加熱ゾーンに対応し、ホッパーからの小さい粒子の制御された加熱を提供する。
【0087】
[0083]ホッパーにフィードされるフィードは、あらゆる好適なサイズであってもよい。例えば、フィードは、約3インチまたはそれ未満、例えば約2インチまたはそれ未満の平均サイズを有していてもよい。ホッパーから形成された小さい粒子は、約0.5インチまたはそれ未満、例えば約0.25インチまたはそれ未満のサイズを有していてもよい。小さい粒子は、オーガーバレルの内部スペースに方向付けられる。スクリューは、オーガーバレル内に回転可能に配置される。使用中、スクリューの回転がホッパーからフィード/粒子/融解物を引き出し、フィード/粒子/融解物の加熱処理中にバレルを介してフィード/粒子/融解物を移動させる。
【0088】
[0084]スクリューの前端は、ギアボックスと連結される(例えば、それに接続される)。ギアボックスは、使用中にスクリューを回転させるように構成される。一部の実施態様において、スクリューは、約1インチ~約10インチの幅を有し、例えば約2インチ~約6インチ、例えば約3インチ~約4インチの幅を有する。スクリューは、複数のフライトを含む。複数のフライトのフライト間の間隔は、変更が可能であり、例えば、フライトの間隔は、スクリューの前端の近くでより大きく、次いで、連続的に低減するか、またはスクリューの前部に沿ったどこかのポイントで低減する。
【0089】
[0085]加熱ジャケットは、フィード/粒子/融解物がスクリューの回転によってオーガーバレル内部に移動するときに、それらを加熱するように構成される。加熱ジャケットは、あらゆる好適なサイズまたは立体配置を有していてもよいし、またはあらゆる好適な数の加熱ジャケットが存在していてもよい。加熱ジャケットは、流体(例えば、加熱した油、水蒸気など)を加熱ジャケットを通って流動および/または循環させることによって加熱されてもよいし、および/または電気ヒーターであってもよい。一般的に、加熱ジャケットは、供給材料(例えば、ポリマー)を、約60℃~約180℃、例えば約80℃~約120℃の温度で加熱するように構成される。融解フィーダーの開始時または前部における供給材料の加熱は、フィード中に水分が存在する場合、それを蒸発させる。
【0090】
[0086]融解フィーダーは、フィーダーの末端で押出機と連結されており(例えば、押出機に接続されており)、押出機にポリマー融解物を提供し、例えば上述したようにポリマーの機能化を開始させることができる。一部の実施態様において、ポリマー融解物は、約40kg/時間~約4,000kg/時間、例えば約1,000kg/時間~約3,000kg/時間の速度で、押出機に提供される。
【0091】
[0087]一部の実施態様において、融解フィーダーは、押出機の第1の部分(例えば、長さの最初の8分の1~2分の1、例えば長さの4分の1)で、押出機(ポリマーを機能化するのに使用される)と連結される。例えば、融解フィーダーは、ポリマーを機能化するための押出機で使用されるスクリューのフローゾーンに対応する位置で、押出機と連結されていてもよい。用語「最初の」および「残りの」は、押出し物が押出機を通って流れる方向に関して使用される。
【0092】
融解物ポンプ
[0088]メルトポンプのような本開示の融解物ポンプは、あらゆる好適な融解物ポンプであってもよく、例えば、ツインスクリュー融解物ポンプ、例えばドイツのヘンシェル社(Henschel GmbH)から商業的に入手可能な融解物ポンプであってもよい。融解物ポンプは、第1の末端で、押出機の第2の末端と連結され、第2の末端で、押出しダイの第1の末端と連結される。
【0093】
[0089]融解物ポンプは、水平のスクリュー配置を有するマルチスクリュー押出機(例えば、ツインスクリュー押出機)であってもよく、この場合、フィードは、上/下の相対的配置でフィードされる/取り出される。融解物ポンプは、加熱カートリッジおよび水冷を使用した温度で作動するシリンダーハウジングを有していてもよい。融解物ポンプは、約60ミリメートル(mm)~約200mm、例えば約100mm~約140mmの直径を有する1つまたはそれより多くのスクリューを有していてもよい。使用中、スクリューは、約15分-1~約160分-1の速度で回転させてもよく、例えば約53分-1~約150分-1、代替として約31分-1~約94分-1、代替として約23分-1~約69分-1、代替として約16分-1~約47分-1の速度で回転させてもよい。スクリューは、約4キロワット(kW)~約140kW、例えば約4kW~約12kW、代替として11kW~約36kW、代替として23kW~約70kW、代替として45kW~約140kWの出力で作動するモーターを使用して制御することができる。融解物ポンプは、約700ニュートンメートル(Nm)~約28,300Nm、例えば約3,600Nm~約9,800Nmの出力トルクで作動することができる。融解物ポンプは、約10キログラム/時間(kg/時間)~約6,000kg/時間の出力容量で作動することができ、例えば約10kg/時間~約300kg/時間、代替として約300kg/時間~約1,500kg/時間、代替として約1,500kg/時間~約3,000kg/時間、代替として約3,000kg/時間~約6,000kg/時間の出力容量で作動することができる。融解物ポンプは、約100bar~約500bar、例えば200bar~約350barの圧力で作動することができる。
【0094】
[0090]融解物ポンプは、押出し物のタイプに応じて約30rpm~約300rpm、例えば約50rpm~約150rpmの回転速度でツインスクリューが回転するように設計することができる。選択された回転速度は、融解物が、脈動を著しく低減するかまたは脈動を起こすことなく運搬されるように選択できる。
【0095】
[0091]ギアは、圧縮機と、有利には電気的駆動装置との間に配置されていてもよく、それにより、ツインスクリューは同期的に駆動可能である。この同期のために、フライトの相互の幾何学的に正確なインターロックが可能である。それによってツインスクリューの1つのスクリューは、有利なことに、既知の例によるギア付きポンプの場合のように機械的に強制された連結によって移動するのではなく、直接駆動することから、高いエネルギー消費と必然的に伴う温度増加の既知の不利益を有する高い摩擦が回避される。これはまた、各スクリューが反対方向に回転するようにツインスクリューを作動させることも可能にする。ギアからの同期は、より優れた力分布を達成するために、駆動力を両方のツインスクリューに直接導入することもできるという点でさらに有利である。
【0096】
[0092]一例として、両方のツインスクリューのフライトは、最も狭い位置で残存するフライトギャップがギャップシールを形成するような方式で互いにかみ合っていてもよい。このギャップシールは、押出し物の逆流を防止し、強制フィードを増加させ、超過圧力の相殺としても作用する。強制フィードは高い圧力の構築を生じ、同時に、圧力の相殺は、より具体的には加工しようとする媒体にギャップシールが適合される場合、押出し物へのダメージを防ぐ。同じ利点がハウジングのギャップにも適用される場合がある。
【0097】
[0093]別の利点は、ツインスクリューは相対的に低い出力で駆動できる点であり、これにより、より小さい駆動モーターおよびより小さいエネルギー消費がもたらされる。
【0098】
[0094]さらに、押出し物が入れられる複数のチャンバーが、ハウジングとツインスクリューまたはそのフライトとの間に形成される。望ましい圧力が構築でき、ただし局所的に過剰な圧力を伴う例では圧力の相殺が起こるように、チャンバーは、ギャップシールおよび/またはハウジングのギャップに従って擬似的に閉鎖することができる。
【0099】
[0095]さらに、チャンバーは、フライトのピッチに沿って伸長する。したがってチャンバーの始点と末端は、2つのツインスクリューの交差部分に(例えば、2つのツインスクリューの軸によって定義される面内に)位置し、これは、押出し物が定義された場所を占有して別の媒体と混合されないという点で有利である。同時に、これは、穴の開いたディスク上での効率的な圧力の構築を可能にする。
【0100】
[0096]ハウジングのギャップは、フライトとケーシングとの間に形成することができ、ギャップは、フライトとその隣接する対向して回転するツインスクリューとの間に形成され、これが両方とも、隣接する後方のチャンバーへのギャップ(例えば、ギャップシール)を通る媒体の著しい逆流を起こすことなく媒体がそれぞれのチャンバーに実質的に保持されるようにギャップシールを形成する。これは、シールがチャンバー間で達成されるという点で有利であり、それにより、各チャンバーにおける高い圧力および穴の開いたディスクにおける約400~約600barの圧力、ならびに約100℃~約300℃の温度が可能になる。
【0101】
[0097]ハウジングギャップおよび/またはギャップは、約0.05mm~約2mmの幅を有していてもよい。ギャップの幅、したがってギャップシールのサイズは、最終的に、加工しようとする媒体およびその添加物に依存する。
【0102】
[0098]ツインスクリューは、コア直径に対する外径の比率がおよそ2になるように設計される。融解物(押出し物)のタイプに応じて、約1.6~約2.4の範囲を有するDaとDiとの比率も選択することができ、それによって、相対的に薄い、したがって費用効率が高い融解物ポンプを用いて、大きい送達体積が結果的に達成される。対向して回転するツインスクリューの長さ/直径の比率が約2~約5、例えば約3.5であると、容器は、穴の開いたディスク上で約250bar~約600barの圧力および約100℃~約350℃の温度を達成することができる。これは、融解物ポンプを低コストで製造し、省スペースで利用できるという点で有利である。
【0103】
[0099]2つの正確にインターメッシュするツインスクリューとそれに応じて設計されたフライトの協働によって、比較的迅速な圧力の構築が達成される。高い圧力が達成され、容器中の保持期間が比較的短いため、押出し物への熱的および機械的なダメージの可能性を低減することができる。
【0104】
TPV組成物
[0100]一部の実施態様において、TPV組成物は、弾性ポリマーと熱可塑性ポリオレフィンとを組み合わせた重量に基づいて、約5wt%~約95wt%の弾性ポリマーの量、例えば約10wt%~約90wt%、例えば約20wt%~約85wt%、例えば約45wt%~約80wt%、例えば約60wt%~約75wt%の量の弾性ポリマーを含んでいてもよい。弾性ポリマーは、本明細書では「ゴム」としても言及され、これは動的加硫ゴム(dynamically-vulcanized rubber)であり、例えばエチレンベースのコポリマー、例えばエチレンプロピレンジエンターポリマーなどである。
【0105】
[0101]少なくとも1つの実施態様において、TPV組成物におけるゴムの量は、ゴム相と熱可塑性物質相とを組み合わせた重量に基づいて、約5wt%~約95wt%であってもよく、例えば約10wt%~約90wt%、例えば約20wt%~約85wt%、例えば約45wt%~約80wt%、例えば約60wt%~約75wt%であってもよく、熱可塑性物質相は、ゴム相と熱可塑性物質相とを組み合わせた重量に基づいて、約1.5wt%~約45wt%、例えば約10wt%~約40wt%、例えば約12wt%~約30wt%の、熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性ポリオレフィン、例えばプロピレンベースのポリマー、エチレンベースのポリマー、ブテン-1ベースのポリマー、またはそれらの組合せを含む。
【0106】
[0102]熱可塑性ポリマー、例えばポリプロピレンにおける、小粒径の弾性ポリマー、例えばEPDMゴムの均一な分散を提供するためのプロセスは、熱硬化性ゴムに類似した物理的特性を提供する封じ込められた(locked-in)形態をもたらす。特定には、本プロセスは、優れた引張強度および弾性を提供する。TPVは、自動車用ウェザーストリップなどの押出し部品の主成分であるため、TPVの最終用途の使用にとって、TPVの改善された加工性および押出し特性が鍵となる。プロセスを改善することは、加工性や表面外観などの要素をさらに強化する。
【0107】
ゴム相
[0103]ゴム相を形成するのに採用できるゴムとしては、フェノール樹脂またはヒドロシリル化硬化剤(例えば、シリコーンヒドリド)、助剤を含む過酸化物、シランのグラフト化、またはアジ化物による湿気硬化によって硬化または架橋することが可能なポリマーが挙げられる。ゴム相は、押出機にゴムを導入した後に架橋される。ゴム相は、連続的な熱可塑性物質相(これはマトリックスと称することもできる)内に分散できる加硫または硬化ゴムの細粒化した粒子の形態であってもよい。ゴムへの言及は、1種より多くのゴムの混合物を含み得る。ゴムの非限定的な例としては、オレフィン系エラストマーのターポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。一部の実施態様において、オレフィン系エラストマーのターポリマーとしては、エチレンベースのエラストマー、例えばエチレンベースのコポリマーゴムおよびエチレン-プロピレン-非共役ジエンゴムが挙げられる。
【0108】
エチレンベースのコポリマー
[0104]エチレンベースのコポリマーという用語は、エチレン、少なくとも1種の他のα-オレフィン単量体、および少なくとも1種のジエン単量体から重合されたゴム様のターポリマー(例えば、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーまたはEPDMターポリマー)を指す。α-オレフィン単量体としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、またはそれらの組合せを挙げることができる。少なくとも1つの実施態様において、α-オレフィン単量体としては、プロピレン、1-ヘキセン、1-オクテンまたはそれらの組合せを挙げることができる。ジエン単量体としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB);5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB);ジビニルベンゼン;1,4-ヘキサジエン;5-メチレン-2-ノルボルネン;1,6-オクタジエン;5-メチル-1,4-ヘキサジエン;3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン;1,3-シクロペンタジエン;1,4-シクロヘキサジエン;ジシクロペンタジエン;またはそれらの組合せを挙げることができる。エチレン、α-オレフィン単量体、およびジエン単量体から調製されたポリマーは、ターポリマーと称することもでき、または複数のα-オレフィン単量体またはジエンが使用される場合には、テトラポリマーと称する場合もある。エチレンベースのコポリマーの例は、エチレン-プロピレンコポリマーゴム(またはエチレン-プロピレンコポリマー)である。
【0109】
[0105]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、エチレンプロピレンゴムの総重量に基づいて、約10wt%~約99.9wt%(例えば約10wt%~約90wt%、例えば約12wt%~約90wt%、例えば約15wt%~約90wt%、例えば約20wt%~約80wt%、例えば約40wt%~約70wt%、例えば約50wt%~約70wt%、例えば約55wt%~約65wt%、例えば約60wt%~約65wt%)のエチレン由来の内容物を有していてもよい。一部の実施態様において、エチレン由来の内容物は、エチレンプロピレンゴムの総重量に基づいて、約40wt%~約85wt%、例えば約40wt%~約85wt%である。
【0110】
[0106]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、エチレンプロピレンゴムの総重量に基づいて、約0.1wt%~about~約15wt%、例えば約0.1wt%~約5wt%、例えば約0.2wt%~約10wt%、例えば約2wt%~約8wt%、または約4wt%~約12wt%、例えば約4wt%~約9wt%)のジエン由来の内容物を有していてもよい。一部の実施態様において、ジエン由来の内容物は、エチレンプロピレンゴムの総重量に基づいて、約3wt%~約15wt%であってもよい。
【0111】
[0107]一部の実施態様において、ジエン単量体が5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)および/または5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)を含む場合、エチレンベースのコポリマーは、エチレンプロピレンゴムの総重量に基づいて、少なくとも約0.1wt%(例えば少なくとも約1wt%、例えば少なくとも約3wt%、例えば少なくとも約4wt%、例えば少なくとも約5wt%)のジエン単量体を含んでいてもよい。これらのおよび他の実施態様において、ジエンがENBまたはVNBを含む場合、エチレンベースのコポリマーは、エチレンプロピレンゴムの総重量に基づいて、約1wt%~約15wt%(例えば・などのfromから約3wt%~約15wt%、例えば約4wt%~約12wt%、例えば約5wt%~約12wt%、例えば約7wt%~約11wt%)のジエン単量体を含んでいてもよい。
【0112】
[0108]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、約0phr(ゴム100重量部に対する部)~約200phr、例えば約0phr~約100phr、例えば75phrおよび100phrである量の油を有していてもよい。
【0113】
[0109]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、α-オレフィン由来の内容物(例えば、C2~C40、例えばC3~C20、例えばC3~C10オレフィン、例えばプロピレン)を含むエチレンプロピレンゴムのバランスを有していてもよい。
【0114】
[0110]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、約100,000g/molまたはそれより高い(例えば約200,000g/molまたはそれより高い、例えば約400,000g/molまたはそれより高い、例えば約600,000g/molまたはそれより高い)重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。これらのまたは他の実施態様において、Mwは、約1,200,000g/molまたはそれ未満(例えば約1,000,000g/molまたはそれ未満、例えば約900,000g/molまたはそれ未満、例えば約800,000g/molまたはそれ未満、例えば約400,000g/mol~約700,000g/mol)であってもよい。これらのまたは他の実施態様において、Mwは、約400,000g/molおよび約3,000,000g/mol(例えば約400,000g/mol~約2,000,000、例えば約400,000g/mol~約1,500,000g/mol、例えば約400,000g/mol~約1,000,000g/molまたは約600,000g/mol~約1,200,000g/mol、例えば約600,000g/mol~約1,000,000g/mol)であってもよい。
【0115】
[0111]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、約20,000g/molまたはそれより高い(例えば約60,000g/molまたはそれより高い、例えば約100,000g/molまたはそれより高い、例えば約150,000g/molまたはそれより高い)数平均分子量(Mn)を有していてもよい。これらのまたは他の実施態様において、Mnは、約500,000g/mol未満(例えば約400,000g/molまたはそれ未満、例えば約300,000g/molまたはそれ未満、例えば約250,000g/molまたはそれ未満)であってもよい。
【0116】
[0112]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、約10,000g/mol~約7,000,000g/mol(例えば約50,000g/mol~約3,000,000g/mol、例えば約100,000g/mol~約2,000,000g/mol、例えば約200,000g/mol~約1,500,000g/mol、例えば約200,000g/mol~約1,00,000g/mol、例えば約200,000g/mol~約500,000g/mol)のZ平均分子量(Mz)を有していてもよい。
【0117】
[0113]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、約1~約15(例えば約1~約10、例えば約1~約5、例えば約1~約4、例えば約2~約4または約1~約3、例えば約1.8~約3、または約1~約2、または約1~約2.5)の多分散指数(Mw/Mn;PDI)を有していてもよい。
【0118】
[0114]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、ASTM D1646に従って、約10MU~約500MUまたは約50MU~約450MUの乾燥ムーニー粘度(dry Mooney viscosity)(125℃におけるML(1+4))を有していてもよい。これらのまたは他の実施態様において、ムーニー粘度は、約50またはそれより大きい、例えば約250MUまたはそれより大きい、例えば約350MUまたはそれより大きい。
【0119】
[0115]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、0.7またはそれより大きいg’visを有していてもよい(例えば約0.75またはそれより大きい、例えば約0.8またはそれより大きい、0.85またはそれより大きい、例えば0.9またはそれより大きい、例えば0.95またはそれより大きい、例えば約0.96、約0.97、約0.98、約0.99、または約1)。
【0120】
[0116]一部の実施態様において、エチレンプロピレンゴムは、ASTM E1356に従って、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される場合、約-20℃またはそれ未満(例えば約-30℃またはそれ未満、例えば約-50℃またはそれ未満)のガラス転移温度(Tg)を有していてもよい。一部の実施態様において、Tgは、約-20℃~約-60℃である。
【0121】
[0117]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、約10未満、例えば約5未満、例えば約-1~約5の大振幅振動剪断(LAOS)分枝指標を有していてもよい。少なくとも1つの実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、約3未満のLAOS分枝指標を有していてもよい。
【0122】
[0118]一部の実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、約2.5またはそれより低い、例えば約2.0またはそれより低いLCB指標(125℃で)を有していてもよい。
【0123】
[0119]少なくとも1つの実施態様において、エチレンベースのコポリマーは、小振幅振動剪断(SAOS)から約30度~80度のΔδ、例えば約32°またはそれより大きい、例えば約35°またはそれより大きいΔδを有していてもよい。Δδは、0.1および128ラジアン/秒の周波数での位相角(δ)の差であり、これは例えば、125℃での周波数掃引から導き出され、すなわち、この場合、Δδ(125℃)=δ(0.1ラジアン/秒)-δ(128ラジアン/秒)である。
【0124】
[0120]エチレンベースのコポリマーは、様々な技術を使用することによって製造または合成することができる。例えば、これらのターポリマーは、バナジウム触媒を含むチーグラー・ナッタ系などの様々な触媒系を採用し、溶液、スラリー、または気相などの様々な相で行われる、溶液重合、スラリー重合もしくは気相重合技術またはそれらの組合せを採用することによって合成することができる。例示的な触媒としては、IV~VI族メタロセンを含む拘束幾何触媒を含むシングルサイト触媒が挙げられる。一部の実施態様において、EPDMは、スラリー法、特に米国特許第5,783,645号に開示されたようなバナジウム化合物を含むスラリー法を使用する従来のチーグラー・ナッタ触媒を介して、加えて、同様に米国特許第5,756,416号に開示されたメタロセン触媒を介して生産することができる。ブルックハート(Brookhart)触媒系などの他の触媒系も採用することができる。任意選択で、このようなEPDMは、溶液プロセスで上記の触媒系を使用して調製することができる。
【0125】
[0121]一部の実施態様において、ゴムは、高度に硬化されていてもよい。一部の実施態様において、ゴムは、有利には、部分的または十分に(完全に)硬化されている。硬化の程度は、抽出剤としてシクロヘキサンまたは沸騰キシレンを使用することによってTPV組成物から抽出可能なゴムの量を決定することによって測定することができる。この方法は、米国特許実務の目的のために参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,311,628号に開示されている。一部の実施態様において、ゴムは、米国特許実務の目的のために参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,100,947号および5,157,081号に記載されたように、23℃でシクロヘキサンによって抽出可能な量が、約5.9wt%以下、例えば約5wt%以下、例えば約4wt%以下、例えば約3wt%以下である硬化の程度を有する。これらのまたは他の実施態様において、ゴムは、ゴムの重量に基づき、約94wt%より多く、例えば約95wt%より多く、例えば約96wt%より多く、例えば約97wt%より多くが、23℃でシクロヘキサン中に不溶性である程度に硬化される。その代わりに、一部の実施態様において、ゴムは、架橋密度が、少なくとも4×10-5モル/ミリリットルのゴム、例えば少なくとも7×10-5モル/ミリリットルのゴム、例えば少なくとも10×10-5モル/ミリリットルのゴムになるような硬化の程度を有する。またEllulらによる「Crosslink Densities and Phase Morphologies in Dynamically Vulcanized TPEs」、RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY、68巻、573~584頁(1995)も参照されたい。
【0126】
[0122]ゴムは部分的にまたは完全に硬化され得るという事実にもかかわらず、この開示のTPV組成物は、物品を形成するための押出し、射出成形、吹込成形、および/または圧縮成形などの従来のプラスチック処理技術によって加工および再加工することができる。これらの熱可塑性エラストマー内のゴムは、連続的な熱可塑性物質相内の加硫または硬化ゴムの細粒化され十分分散された粒子の形態であってもよい。一部の実施態様において、共連続的な形態または相反転が達成されてもよい。熱可塑性媒体内で硬化ゴムが細粒化され十分分散された粒子の形態である実施態様において、ゴム粒子は、約50μmまたはそれ未満(例えば約30μmまたはそれ未満、例えば約10μmまたはそれ未満、例えば約5μmまたはそれ未満、例えば約1μmまたはそれ未満)の平均直径を有していてもよい。一部の実施態様において、粒子の少なくとも約50%、例えば約60%、例えば約75%が、約5μmまたはそれ未満、例えば約2μmまたはそれ未満、例えば約1μmまたはそれ未満の平均直径を有する。
【0127】
[0123]一部のターポリマーのエラストマーは、Vistalon(商標)(エクソンモービル・ケミカル社(ExxonMobil Chemical Co.);テキサス州ヒューストン)、Keltan(商標)(アランセオ・パフォーマンス・エラストマーズ(Arlanxeo Performance Elastomers);テキサス州オレンジ)、Nordel(商標)IP(ダウ(Dow))、NORDEL MG(商標)(ダウ)、Royalene(商標)(ライオン・エラストマーズ(Lion Elastomers))、およびSuprene(商標)(SKグローバルケミカル(SK Global Chemical))という商品名で商業的に入手可能である。具体的な例としては、Vistalon(商標)3666、EXP-Vistalon(WO2017127184A1に従って製造された)、Keltan(商標)5469Q、Keltan(商標)4969Q、Keltan(商標)5469C、Keltan(商標)4869C、Royalene(商標)694、Royalene(商標)677、Suprene(商標)512F、Nordel(商標)6555、Keltan5467C、およびNordel(商標)4555OEが挙げられる。
【0128】
[0124]一部の実施態様において、エチレンプロピレンゴムは、エチレンプロピレンゴム100phrに基づき、約50phr~約200phrのプロセス油、例えば約75phr~約120phrのプロセス油で油展された形態で得ることができる。
【0129】
熱可塑性物質層
[0125]一部の実施態様において、TPV組成物の熱可塑性物質層は、その融解温度より高い温度で流動することができるポリマーを含む。一部の実施態様において、熱可塑性物質層の主成分は、少なくとも1種の熱可塑性ポリオレフィン、例えばポリプロピレン(例えばホモポリマー、ランダムコポリマー、もしくはインパクトコポリマー、またはそれらの組合せ)、エチレンベースのポリマー(例えば、ポリエチレン)、またはブテンベースのポリマー(例えば、ポリブテン)を含む。一部の実施態様において、熱可塑性物質層はまた、少量の成分として、少なくとも1種の熱可塑性ポリオレフィン、例えばエチレンベースのポリマー(例えば、ポリエチレン)、プロピレンベースのポリマー(例えば、ポリプロピレン)、またはブテンベースのポリマー(例えば、ポリブテン)を含んでいてもよい。
【0130】
1.プロピレンベースのポリマー
[0126]プロピレンベースのポリマーとしては、固体のものが挙げられ、一般的に、主としてプロピレンの重合から得られた単位を含む高分子量のプラスチック樹脂が挙げられる。一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーの単位の、少なくとも75%、他の実施態様において少なくとも90%、他の実施態様において少なくとも95%、他の実施態様において少なくとも97%が、プロピレンの重合から得られたものである。一部の実施態様において、これらのポリマーは、プロピレンのホモポリマーを含む。ホモポリマーポリプロピレンは、直鎖状の鎖および/または長鎖の分岐を有する鎖を含んでいてもよい。
【0131】
[0127]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーはまた、エチレンおよび/またはα-オレフィンの重合から得られた単位、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン、およびそれらの混合物も含む。具体的には、プロピレンと、エチレンもしくは上述されるより高次のα-オレフィン、またはC10~C20オレフィンとのリアクター、インパクト、およびランダムコポリマーが含まれる。
【0132】
[0128]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーは、半結晶性ポリマーを含む。一部の実施態様において、これらのポリマーは、少なくとも25wt%またはそれより大きい結晶性(例えば約55wt%またはそれより大きい、例えば約65wt%またはそれより大きい、例えば約70wt%またはそれより大きい結晶性)によって特徴付けることができる。結晶性は、サンプルの融解熱(Hf)を100%の結晶性ポリマーの融解熱で割ることによって決定することができ、これは、ポリプロピレンの場合、209ジュール/グラムと仮定される。
【0133】
[0129]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーは、約52.3J/gまたはそれより大きいHf(例えば約100J/gまたはそれより大きい、例えば約125J/gまたはそれより大きい、例えば約140J/gまたはそれより大きいHf)を有していてもよい。
【0134】
[0130]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーは、ポリスチレン標準を用いたGPCによって測定される場合、約50,000g/mol~約2,000,000g/mol(例えば約100,000g/mol~約1,000,000g/mol、例えば約100,000g/mol~約600,000g/molまたは約400,000g/mol~約800,000g/mol)の重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。
【0135】
[0131]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーは、ポリスチレン標準を用いたGPCによって測定される場合、約25,000g/mol~約1,000,000g/mol(例えば約50,000g/mol~約300,000g/mol)の数平均分子量(Mn)を有していてもよい。
【0136】
[0132]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーは、約1またはそれ未満(例えば0.9またはそれ未満、例えば0.8またはそれ未満、例えば0.6またはそれ未満、例えば0.5またはそれ未満)のg’visを有していてもよい。一部の実施態様において、ポリプロピレンは、約0.90より大きい、例えば約0.97より大きいg’visを有していてもよい。一部の実施態様において、ポリプロピレンは、約0.7~約0.88のg’visを有する。
【0137】
[0133]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーは、約0.1g/10分またはそれより大きい(例えば約0.2g/10分またはそれより大きい、例えば約0.2g/10分またはそれより大きい)のメルトマスフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃での2.16kg重量)を有していてもよい。その代わりに、MFRは、約0.1g/10分~約50g/10分、例えば約0.5g/10分~約5g/10分、例えば約0.5g/10分~約3g/10分であってもよい。
【0138】
[0134]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーは、約110℃~約170℃(例えば約140℃~約168℃、例えば約160℃~約165℃)の融解温度(Tm)を有していてもよい。
【0139】
[0135]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーは、約-50℃~約10℃(例えば約-30℃~約5℃、例えば約-20℃~約2℃)のガラス転移温度(Tg)を有していてもよい。
【0140】
[0136]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーは、約75℃またはそれより高い(例えば約95℃またはそれより高い、例えば約100℃またはそれより高い、例えば約105℃またはそれより高い(例えば約105℃~約130℃)結晶化温度(Tc)を有する。
【0141】
[0137]一部の実施態様において、プロピレンベースのポリマーは、高結晶性アイソタクチックまたはシンジオタクチックポリプロピレンのホモポリマーを含んでいてもよい。このポリプロピレンは、約0.89~約0.91g/mlの密度を有していてもよく、大部分がアイソタクチックなポリプロピレンは、約0.90~約0.91g/mlの密度を有する。また、わずかなメルトフローレートを有する高分子量および超高分子量ポリプロピレンも採用することができる。一部の実施態様において、ポリプロピレン樹脂は、約10dg/分またはそれ未満(例えば約1.0dg/分またはそれ未満、例えば約0.5dg/分またはそれ未満)であるMFR(ASTM D-1238;230℃での2.16kg)によって特徴付けることができる。
【0142】
[0138]一部の実施態様において、ポリプロピレンとしては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、またはインパクトコポリマーポリプロピレンまたはそれらの組合せを挙げることができる。一部の実施態様において、ポリプロピレンは、高い融解強度(HMS)の長鎖分岐(LCB)ホモポリマーポリプロピレンである。
【0143】
[0139]プロピレンベースのポリマーは、従来のチーグラー・ナッタ型の重合や、メタロセン触媒などのシングルサイト有機金属触媒を採用する触媒作用などの当業界において公知の適切な重合技術を使用することによって合成することができる。
【0144】
[0140]本明細書に記載されるTPV組成物に有用なポリプロピレンの例としては、ExxonMobil(商標)PP5341(エクソンモービル(ExxonMobil)より入手可能);Achieve(商標)PP6282NE1(エクソンモービルより入手可能)および/またはUS9,453,093およびUS9,464,178に記載されるように広範な分子量分布を有するポリプロピレン樹脂;ならびにUS20180016414およびUS20180051160に記載される他のポリプロピレン樹脂(例えば、以下の表で示されるEXP-PP);Waymax(商標)MFX6(日本ポリプロ株式会社(Japan Polypropylene Corp.)より入手可能);Borealis Daploy(商標)WB140(ボレアリス社(Borealis AG)より入手可能);ならびにBraskem Ampleo 1025MAおよびBraskem Ampleo 1020GA(ブラスケム・アンプレオ(Braskem Ampleo)より入手可能)が挙げられる。表5は、選択されたプロピレンベースのポリマーの特徴を示す。g’visは、GPC-4Dを使用して測定することができる。分子の特性を決定するための技術は後述する。
【0145】
【0146】
2.エチレンベースのポリマー
[0141]エチレンベースのポリマーとしては、固体のものが挙げられ、主としてエチレンの重合から得られた単位を含む一般的に高分子量のプラスチック樹脂が挙げられる。一部の実施態様において、エチレンベースのポリマーの単位の、少なくとも90%、他の実施態様において少なくとも95%、および他の実施態様において少なくとも99%が、エチレンの重合から得られたものであってもよい。特定の実施態様において、これらのポリマーは、エチレンのホモポリマーを含む。
【0147】
[0142]一部の実施態様において、エチレンベースのポリマーはまた、α-オレフィンコモノマーの重合から得られた単位、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン、およびそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0148】
[0143]一部の実施態様において、エチレンベースのポリマーは、約0.1dg/分~約1,000dg/分(例えば約1.0dg/分~約200dg/分、例えば約7.0dg/分~約20.0dg/分)のメルトインデックス(MI)(ASTM D1238、190℃での2.16kg)を有していてもよい。
【0149】
[0144]一部の実施態様において、エチレンベースのポリマーは、10℃/分での示差走査熱量測定(DSC)によって測定される場合、約140℃~約90℃(例えば約135℃~約125℃、例えば約130℃~約120℃)の融解温度(Tm)を有していてもよい。
【0150】
[0145]エチレンベースのポリマーは、従来のチーグラー・ナッタ型の重合や、メタロセン触媒などのシングルサイト有機金属触媒を採用する触媒作用などの当業界において公知の適切な重合技術を使用することによって合成することができる。一部のエチレンベースのポリマーは、商業的に入手可能である。例えば、ポリエチレンは、ExxonMobil(商標)ポリエチレン(エクソンモービル)という商品名で商業的に入手可能である。エチレンベースのコポリマーは、ExxonMobil(商標)ポリエチレン(エクソンモービル)という商品名で商業的に入手可能であり、その例としては、Exceed(商標)、Enable(商標)、およびExceed(商標)XPなどのメタロセンにより生産された直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0151】
[0146]一部の実施態様において、エチレンベースのポリマーとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンを挙げることができる。一部の実施態様において、エチレンベースのポリマーは、高溶融強度(HMS)長鎖分岐(LCB)ホモポリマーポリエチレンであってもよい。
【0152】
[0147]使用することができる他のエチレンベースのポリマーとしては、Hostalen(LBI)、Paxxon(エクソンモービル)およびEscorene(エクソンモービル)が挙げられる。
【0153】
3.1-ブテンベースのポリマー
[0148]ブテン-1ベースのポリマーとしては、固体のものが挙げられ、一般的に、主として1-ブテンの重合から得られた単位を含む高分子量のアイソタクチックブテン-1樹脂が挙げられる。
【0154】
[0149]一部の実施態様において、1-ブテンベースのポリマーとしては、アイソタクチックポリ(ブテン-1)ホモポリマーを挙げることができる。一部の実施態様において、1-ブテンベースのポリマーはまた、α-オレフィンコモノマーの重合から得られた単位、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキサン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-ヘキセン、およびそれらの2種またはそれより多くの混合物を含んでいてもよい。
【0155】
[0150]一部の実施態様において、1-ブテンベースのポリマーは、以下の特徴のうち1つまたはそれより多くを含む。
【0156】
[0151]一部の実施態様において、1-ブテンベースのポリマーは、少なくとも90wt%またはそれより多くの(例えば約95wt%またはそれより多く、例えば約98wt%またはそれより多く、例えば約99wt%またはそれより多くの)、1-ブテンの重合から得られた1-ブテンベースのポリマーの単位を有していてもよい。一部の実施態様において、これらのポリマーは、1-ブテンのホモポリマーを含んでいてもよい。
【0157】
[0152]一部の実施態様において、1-ブテンベースのポリマーは、約0.1dg/分~800dg/分(例えば約0.3dg/分~約200dg/分、例えば約0.3dg/分~約4.0dg/分)であり得るメルトインデックス(MI)(ASTM D1238、190℃での2.16kg)を有していてもよい。これらのまたは他の実施態様において、MIは、約500dg/分またはそれ未満(例えば約100dg/分またはそれ未満、例えば約10dg/分またはそれ未満、例えば約5dg/分またはそれ未満)であってもよい。
【0158】
[0153]一部の実施態様において、1-ブテンベースのポリマーは、10℃/分でDSCによって測定される場合、約130℃~約110℃(例えば約125℃~約115℃、例えば約125℃~約120℃)であり得る溶融温度(Tm)を有していてもよい。
【0159】
[0154]一部の実施態様において、1-ブテンベースのポリマーは、ASTM D792に従って決定される場合、約0.897g/ml~約0.920g/ml、例えば約0.910g/ml~約0.920g/mlであり得る密度を有していてもよい。これらのまたは他の実施態様において、密度は、約0.910g/mlまたはそれより大きくてもよく、例えば0.915g/mlまたはそれより大きくてもよく、例えば約0.917g/mlまたはそれより大きくてもよい。
【0160】
[0155]1-ブテンベースのポリマーは、従来のチーグラー・ナッタ型の重合や、メタロセン触媒などのシングルサイト有機金属触媒を採用する触媒作用などの当業界において公知の適切な重合技術を使用することによって合成することができる。一部の1-ブテンベースのポリマーは、商業的に入手可能である。例えば、アイソタクチックポリ(1-ブテン)は、ポリブテン樹脂またはPB(バセル(Basell))という商品名で商業的に入手可能である。
【0161】
硬化剤
[0156]一部の実施態様において、ゴムは、動的加硫によって硬化または架橋される。動的加硫という用語は、熱可塑性樹脂とのブレンドに含有されるゴムの加硫または硬化プロセスを指し、ゴムは、熱可塑性物質の融点を超える温度での高剪断条件下において架橋または加硫される。ゴムは、硬化剤を含む様々な硬化剤系を採用することによって硬化することができる。例示的な硬化剤としては、フェノール樹脂硬化系、過酸化物硬化系、ケイ素ベースの硬化系(例えばヒドロシリル化およびシラングラフト化、それに続く湿気硬化)、硫黄ベースの硬化系、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0162】
[0157]動的加硫は、熱可塑性ポリオレフィンの存在下で行ってもよいし、熱可塑性ポリオレフィンは、動的加硫の後に添加されてもよいし(例えば、添加の後)、またはその両方で添加されてもよい(例えば、一部のポリオレフィンが動的加硫の前に添加されてもよく、一部のポリオレフィンが動的加硫の後に添加されてもよい)。
【0163】
[0158]有用なフェノール系硬化系は、米国特許第2,972,600号、3,287,440号、5,952,425号および6,437,030号に開示されている。
【0164】
[0159]一部の実施態様において、フェノール樹脂硬化剤としては、レゾール樹脂が挙げられ、これは、アルカリ性媒体中でのアルデヒド、例えばホルムアルデヒドを用いたアルキル置換フェノールまたは非置換フェノールの縮合によって、または二官能性フェノールジアルコールの縮合によって製造することができる。アルキル置換フェノールのアルキル置換基は、約1個の炭素原子~約10個の炭素原子を有していてもよく、例えば、パラ位で約1個の炭素原子~約10個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたジメチロールフェノールまたはフェノール樹脂である。一部の実施態様において、オクチルフェノール-ホルムアルデヒドおよびノニルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂のブレンドが採用される。ブレンドは、約25wt%~約40wt%のオクチルフェノール-ホルムアルデヒド、および約75wt%~約60wt%のノニルフェノール-ホルムアルデヒドを含み、例えば約30wt%~約35wt%のオクチルフェノール-ホルムアルデヒド、および約70wt%~約65wt%のノニルフェノール-ホルムアルデヒドを含む。一部の実施態様において、ブレンドは、約33wt%のオクチルフェノール-ホルムアルデヒド、および約67wt%のノニルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を含み、オクチルフェノール-ホルムアルデヒドおよびノニルフェノール-ホルムアルデヒドのそれぞれが、メチロール基を含む。このブレンドは、約30%の固体でパラフィン系油中に、相分離を起こすことなく可溶化することができる。
【0165】
[0160]有用なフェノール樹脂は、SP-1044、SP-1045(スケネクタディ・インターナショナル(Schenectady International);ニューヨーク州スケネクタディ)という商品名で得ることができ、これは、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と称される場合もある。
【0166】
[0161]フェノール樹脂硬化剤の例としては、以下の一般式に従って定義されるものが挙げられる。
【0167】
【0168】
式中、Qは、-CH2-、-CH2-O-CH2-からなる群から選択される2価ラジカルであり;mは、ゼロまたは1~20の正の整数であり、R’は、有機基である。一部の実施態様において、Qは、2価ラジカル-CH2-O-CH2-であり、mは、ゼロまたは1~10の正の整数であり、R’は、20個未満の炭素原子を有する有機基である。他の実施態様において、mは、ゼロまたは1~10の正の整数であり、R’は、4~12個の炭素原子を有する有機ラジカルである。
【0169】
[0162]一部の実施態様において、フェノール樹脂は、ハロゲン源、例えば塩化第一スズ、および金属酸化物または還元性化合物、例えば酸化亜鉛と組み合わせて使用される。
【0170】
他の成分
[0163]他の成分が、押出機に沿って1つまたはそれより多くの位置に、および/または供給口に添加されてもよい。一部の実施態様において、TPV組成物は、ポリマー加工添加剤を含んでいてもよい。加工添加剤は、非常に高いメルトフローインデックスを有する高分子樹脂であり得る。これらの高分子樹脂としては、約500dg/分またはそれより大きい、例えば約750dg/分またはそれより大きい、例えば約1000dg/分またはそれより大きい、例えば約1200dg/分またはそれより大きい、例えば約1500dg/分またはそれより大きいメルトフローレートを有する直鎖状および分岐状ポリマーの両方が挙げられる。様々な分岐状または様々な直鎖状ポリマー加工添加剤の混合物、加えて、直鎖状および分岐状ポリマー加工添加剤の両方の混合物が採用されてもよい。ポリマー加工添加剤への言及は、別段の規定がない限り、直鎖状および分岐状添加剤の両方を含み得る。直鎖状ポリマー加工添加剤としては、ポリプロピレンホモポリマーが挙げられ、分岐状ポリマー加工添加剤としては、ジエン修飾ポリプロピレンポリマーが挙げられる。類似の加工添加剤を含むTPV組成物が、米国特許の実施の目的に関して参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,451,915号に開示されている。
【0171】
[0164]一部の実施態様において、本開示のTPV組成物としては、任意選択で、補強および非補強性フィラー、相溶化剤、抗酸化剤、安定剤、ゴムプロセス油、潤滑剤、アンチブロッキング剤、静電気防止剤、ワックス、発泡剤、顔料、難燃剤、核剤、およびゴム配合分野において公知の他の加工助剤を含んでもよい。これらの添加剤は、TPV組成物の総重量の最大約50wt%の量でTPV組成物に使用することができる。
【0172】
[0165]利用することができるフィラーおよび増量剤としては、従来の無機物質、例えば、炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、タルク、二酸化チタン、カーボンブラック、核剤、雲母、木粉など、およびそれらのブレンド、加えてナノスケールの無機および有機フィラーが挙げられる。
【0173】
[0166]一部の実施態様において、TPV組成物は、可塑剤、例えば鉱油、合成油、エステル可塑剤、またはそれらの組合せなどの油を含んでいてもよい。これらの油はまた、可塑剤または増量剤と称される場合もある。鉱油としては、芳香族系油、ナフテン系油、パラフィン系油、イソパラフィン系油、合成油、およびそれらの組合せを挙げることができる。一部の実施態様において、鉱油は、処理されていてもよいし、または未処理であってもよい。有用な鉱油は、SUNPAR(商標)(サンケミカル)という商品名で得ることができる。他の油は、PARALUX(商標)(シェブロン)、およびPARAMOUNT(商標)(シェブロン)、例えばParamount(商標)6001R(シェブロンフィリップス)という商品名で入手可能である。使用される可能性がある他の油としては、炭化水素油および可塑剤、例えば有機エステルおよび合成可塑剤が挙げられる。多くの添加剤オイルは、石油留分から誘導され、それらがパラフィン系、ナフテン系、または芳香族系油のクラスに分類されるかどうかに応じて、特定のASTM名称を有する。他のタイプの添加剤オイルとしては、アルファオレフィン系合成油、例えば液体ポリブチレンが挙げられる。石油ベースの油以外の添加剤オイルも使用でき、その例としては、コールタールやパインタールから得られた油、加えて、合成油、例えば、ポリオレフィン材料が挙げられる。
【0174】
[0167]油の例としては、ベースストックが挙げられる。米国石油協会(American Petroleum Institute)(API)分類に従って、ベースストックは、それらの飽和炭化水素含量、硫黄レベル、および粘度指数に基づいて5つのグループに類別される(表6)。潤滑油ベースストックは、典型的には、再生不能な石油源からラージスケールで生産される。グループI、II、およびIIIのベースストックは全て、溶媒抽出、溶媒または接触脱ろう、ならびに水素異性化、水素化分解およびイソ脱ろう(isodewaxing)、イソ脱ろうおよび水素化仕上げなどの大規模な処理により原油から得られる。Oil & Gas Journal、1997年9月1日における「New Lubes Plants Use State-of-the-Art Hydrodewaxing Technology」;Krishnaら、「Next Generation Isodewaxing and Hydrofinishing Technology for Production of High Quality Base Oils」、2002 NPRA Lubricants and Waxes Meeting、2002年11月14~15日;TPES 2000、ペンシルベニア州フィラデルフィア、1999年9月27~28日に発表された、GedeonおよびYenni、「Use of “Clean” Paraffinic Processing Oils to Improve TPE Properties」を参照されたい。
【0175】
[0168]グループIIIのベースストックは、天然ガス、石炭または他の化石資源から得られた合成炭化水素液からも生産することができ、グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)であり、アルファオレフィン、例えば1-デセンのオリゴマー化によって生産される。グループVのベースストックは、グループI~IVに属さない全てのベースストックを含み、例えばナフテン系化合物、ポリアルキレングリコール(PAG)、およびエステルを含む。
【0176】
【0177】
[0169]一部の実施態様において、グループIIのベースストックは、ベースストックの総重量に基づいて、ASTM2007に従って測定される場合、約4.5wt%より多く、または約4.5wt%未満の芳香族化合物および極性化合物の総量を含み、および/または油の粘度は、40℃で少なくとも約80cStである。
【0178】
[0170]一部の実施態様において、鉱油は、100℃で少なくとも10cStの粘度を有していてもよい。
【0179】
[0171]一部の実施態様において、油は、ASTM2007に従って測定される場合、油の総重量に基づいて、約4wt%未満の芳香族化合物および/または約0.3wt%未満の極性化合物を含んでいてもよい。
【0180】
[0172]一部の実施態様において、合成油としては、ブテンのポリマーおよびオリゴマーが挙げられる。例えば、合成油は、1-ブテンのオリゴマーであってもよい。一部の実施態様において、合成油のオリゴマーの形態は、約300g/mol~約9,000g/mol、他の実施態様において約700g/mol~約1,300g/molの数平均分子量(Mn)によって特徴付けることができる。一部の実施態様において、これらのオリゴマーは、イソブテニル単位を含む。例示的な合成油としては、ポリイソブチレン、ポリ(イソブチレン-co-ブテン)、およびそれらの混合物が挙げられる。一部の実施態様において、合成油としては、ポリ直鎖α-オレフィン、ポリ分岐鎖α-オレフィン、水素化ポリアルファオレフィン、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0181】
[0173]一部の実施態様において、合成油としては、約20cpsまたはそれより大きい、例えば約100cpsまたはそれより大きい、例えば約190cpsまたはそれより大きい粘度を有する合成ポリマーまたはコポリマーが挙げられ、粘度は、38℃でASTM D-4402に従って、ブルックフィールド粘度計によって測定される。これらのまたは他の実施態様において、これらの油の粘度は、約4,000cpsまたはそれ未満、例えば約1,000cpsまたはそれ未満であってもよい。
【0182】
[0174]一部の実施態様において、油は、IP-346に従って測定される3wt%未満のDMSO抽出物を有する。
【0183】
[0175]有用な合成油は、Polybutene(商標)(ソルテックス(Soltex);テキサス州ヒューストン)、およびIndopol(商標)(イネオス(Ineos))という商品名で商業的に得てもよい。白色合成油は、SPECTRASYN(商標)(エクソンモービル)、以前の名称SHF Fluids(モービル)、Elevast(商標)(エクソンモービル)、および液体燃料合成技術によって生産された白油、例えばRisella(商標)X415/420/430(シェル(Shell))またはPrimol(商標)(エクソンモービル)シリーズの白油、例えばPrimol(商標)352、Primol(商標)382、Primol(商標)542、またはMarcol(商標)82、Marcol(商標)52、Drakeol(商標)(ペンセロ(Pencero))シリーズの白油、例えばDrakeol(商標)34という商品名またはそれらの組合せで入手可能である。米国特許第5,936,028号に記載される油も採用することができる。
【0184】
[0176]全体として、本開示は、より少ないフィラーを使用して強化された加工性および強化された表面特性を有するTPV組成物を提供することが可能な押出し方法および押出機システムを提供する。本開示の押出機システムおよびプロセスは、ゴムとは別に熱可塑性ポリマーを導入して、TPV組成物を提供することができる。
【0185】
[0177]別段の規定がない限り、「から本質的になる(consists essentially of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、本明細書で具体的に述べているかどうかにかかわらず、そのような工程、要素、または材料が本発明の開示の基礎および新規の特徴に影響を与えない限り、他の工程、要素、または材料の存在を排除せず、加えてそれらは、使用される要素および材料に通常付随する不純物および差を排除しない。
【0186】
[0178]簡潔にする目的で、本明細書では特定の範囲のみが明示的に開示される。しかしながら、明示的に列挙されていない範囲を列挙するために、いずれの下限からの範囲を、いずれの上限とも組み合わせることができ、加えて、明示的に列挙されていない範囲を列挙するために、いずれの下限からの範囲を、同じようにして他のいずれの下限とも組み合わせることができ、明示的に列挙されていない範囲を列挙するために、いずれの上限の範囲を、他のあらゆる上限とも組み合わせることができる。加えて、範囲内には、明示的に列挙されないとしても、その端点の間の全ての点または個々の値を含む。したがって、全ての点または個々の値が、それ自体、明示的に列挙されていない範囲を列挙するために、他のあらゆる点もしくは個々の値または他のあらゆる下限もしくは上限と組み合わされる下限または上限として機能し得る。
【0187】
[0179]本明細書における詳細な説明内の全ての数値は、示された値が「約」で修飾され、当業者によって予期される実験誤差や変動を考慮に入れる。
【0188】
[0180]本明細書に記載される全ての文書は、それらが本明細書と矛盾しない程度に、参照によりあらゆる優先権文書および/または試験手順を含む本明細書に組み入れられる。前述の全般的な説明および具体的な実施態様から明白であるように、本開示の形態を例示し説明したが、本開示の本質および範囲から逸脱することなく様々な改変をなすことができる。したがって、本開示がそれによって限定されることは意図されない。同様に、用語「含む(comprising)」は、米国の法律の目的では用語「含む(including)」と同義とみなされる。同様に、組成物、要素または要素の群の後に移行句「含む」が続く場合は常に、組成物、要素、または要素の列挙の後に移行句「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、または「である」が続く同じ組成物または要素の群も予期しており、逆もまた同様であることが理解される。
【0189】
[0181]本開示を多数の実施態様および実施例に関して説明したが、当業者は、この開示から利益を受け、本発開示の範囲および本質から逸脱しない他の実施態様を考え出すことができることが認識させるだろう。
【国際調査報告】