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特表2024-540081RNAプログラム可能な細胞編集のための組成物およびシステム、ならびにそれを作製および使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】RNAプログラム可能な細胞編集のための組成物およびシステム、ならびにそれを作製および使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20241024BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241024BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/86 Z
C12N15/85 Z
C12N15/87 Z
C12N15/09 100
C12Q1/02
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P21/04
A61P27/16
A61P3/06
A61P3/00
A61P25/00
A61P7/00
A61K48/00
A61P35/02
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525336
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022079004
(87)【国際公開番号】W WO2023077135
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/273,343
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/343,669
(32)【優先日】2022-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】598174705
【氏名又は名称】コールド スプリング ハーバー ラボラトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ゼット. ジョシュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ヨンジュン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA08
4B063QQ08
4B063QR35
4B063QS33
4B063QX02
4C084AA13
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA24
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA341
4C084ZA342
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC331
4C084ZC332
(57)【要約】
readrRNA(内因性ADARによるRNAセンシング)分子は、細胞型もしくは細胞状態の細胞センシングおよび検出を容易にし、ならびに/または選択された細胞へのエフェクタータンパク質の送達を容易にする、モジュラーRNA分子である。そのようなモジュラーRNA分子および別の核酸(モジュラーRNA分子に連結または非連結)を含む組成物は、CellREADR(内因性ADARによるRNAセンシングを通した細胞アクセス)である。readrRNAおよびCellReadRは、選択された細胞RNAの存在を感知し、細胞を定義するRNAの検出を細胞または哺乳動物における1つまたは複数のエフェクタータンパク質の翻訳と組み合わせるために、ADAR(RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ)によって媒介されるRNA編集を活用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、前記センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに
b.タンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、前記タンパク質コードドメインが、前記センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域
を含む、モジュラーRNA分子であって、
Adar酵素を含む細胞への前記モジュラーRNAの導入の際に、前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間および前記細胞RNAの前記対応するヌクレオチド区間が、前記停止コドンを含むRNA二重鎖を形成し、前記RNA二重鎖に含まれる前記停止コドンが、前記細胞においてADARによって編集され、それによって、前記タンパク質の翻訳が可能になる、
モジュラーRNA分子。
【請求項2】
前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間が、mRNAの少なくとも一部分とRNA二重鎖を形成することが可能である、請求項1に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項3】
前記タンパク質コード領域が、エフェクタータンパク質をコードする、請求項1に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項4】
前記分子が、前記センサードメインとエフェクタードメインとの間に位置する自己切断2Aペプチドをコードする連続ヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項5】
前記自己切断2Aペプチドが、T2Aペプチド、P2Aペプチド、E2Aペプチド、およびF2Aペプチドのうちの1つまたは複数からなる群から選択される、請求項4に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項6】
a)(i)細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインであって、前記センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、センサードメイン、および(ii)エフェクタータンパク質をコードする第1のタンパク質コードドメインであって、前記第1のタンパク質コード領域が、前記センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、第1のタンパク質コードドメインを含む、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸、ならびに
b)第2のタンパク質コードドメインを含む第2の核酸
を含む組成物。
【請求項7】
前記第1および第2の核酸が、単一の核酸分子を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1および第2の核酸が、2つの核酸分子を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1および第2の核酸が、共有結合により連結されている、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2のタンパク質コードドメインが、転写制御エレメント、必要に応じて、プロモーターを含む遺伝子内に含まれている、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記エフェクタータンパク質が、前記遺伝子に結合している、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記第2のタンパク質コードドメインの発現が、前記エフェクタータンパク質によってモジュレートされる、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子をコードする、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1のタンパク質コードドメインが、DNAリコンビナーゼをコードする、請求項6に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1のタンパク質コード領域が、チミジンキナーゼ(TK)およびシトシンデアミナーゼ(CD)、CASP3、CASP9、BCL、GSDME、GSDMD、GZMAおよびGZMBからなる群から選択されるプログラム細胞死タンパク質、ChR2およびDREADD-M3Dqからなる群から選択される神経活性化タンパク質、IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15およびCD40Lからなる群から選択される免疫エンハンサータンパク質、NaChBacおよびKir2.1からなる群から選択される生理学的編集タンパク質、リシンを含むタンパク質合成阻害タンパク質、DREADD-hM4D、NpHRおよびGtACR1からなる群から選択される神経阻害タンパク質、NEURODなどの神経細胞運命に関与するタンパク質、表皮増殖因子を含む細胞再生と関与するタンパク質からなる群から選択される細胞死滅タンパク質をコードする、請求項6に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1に記載のモジュラーRNA分子または請求項6に記載の組成物を含む核酸送達ビヒクル。
【請求項17】
ナノ粒子、リポソーム、ベクター、エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、および細胞送達のための選択的内因性封入(SEND)システムからなる群から選択される、請求項16に記載の送達ビヒクル。
【請求項18】
ウイルスベクターを含む、請求項16に記載の送達ビヒクル。
【請求項19】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルスからなる群から選択される、請求項18に記載の送達ビヒクル。
【請求項20】
前記モジュラーRNA分子が、DNAベクターによってコードされる、請求項1に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項21】
前記モジュラーRNA分子が、DNAベクターによってコードされる、請求項6に記載の組成物。
【請求項22】
前記モジュラーRNA分子が、DNAベクターによってコードされる、請求項16に記載の送達ビヒクル。
【請求項23】
請求項1に記載のモジュラーRNA分子、請求項6に記載の組成物、または請求項16に記載の送達ビヒクル、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
請求項1に記載のモジュラーRNA分子、請求項6に記載の組成物、または請求項16に記載の送達ビヒクルを含む細胞。
【請求項25】
哺乳動物細胞である、請求項24に記載の細胞。
【請求項26】
請求項1に記載のモジュラーRNA分子、請求項6に記載の組成物、または請求項16に記載の送達ビヒクル、およびそれらのためのパッケージングを含むキット。
【請求項27】
モジュラーRNA、または前記モジュラーRNAをコードする核酸組成物、または前記モジュラーRNAもしくは前記モジュラーRNAをコードする前記核酸組成物を含む送達ビヒクルを哺乳動物の選択された細胞に導入する方法であって、
前記哺乳動物の前記細胞が、前記モジュラーRNA、または前記モジュラーRNAもしくは前記モジュラーRNAをコードする前記核酸組成物を含む前記送達ビヒクルを含むことを可能にする条件下で、前記哺乳動物の細胞を前記モジュラーRNA分子、前記モジュラーRNAをコードする前記核酸組成物、または前記モジュラーRNAもしくは前記モジュラーRNAをコードする前記核酸組成物を含む前記送達ビヒクルと接触させるステップを含み、
前記モジュラーRNAが、請求項1に記載されるものであり、前記核酸組成物が、請求項6に記載されるものであり、前記送達ビヒクルが、請求項16に記載されるものである、
方法。
【請求項28】
選択された標的細胞RNAを含む哺乳動物の細胞において、停止コドンのADAR編集を誘発して、インフレームの下流のコードされるタンパク質の発現を可能にする方法であって、
モジュラーRNAが前記細胞に含まれる条件下で、前記モジュラーRNA分子を前記哺乳動物の前記細胞に導入するステップであって、前記モジュラーRNAが、(i)前記選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、前記センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに(ii)エフェクタータンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、前記タンパク質コード領域が、前記センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域を含み、
前記哺乳動物への前記モジュラーRNA分子の導入の際に、RNA二重鎖が、前記細胞において、前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間と前記細胞RNAの連続ヌクレオチドの前記対応する区間との間で形成され、前記RNA二重鎖が、前記ADAR編集可能停止コドンを含み、ADARが、前記RNA二重鎖に含まれる前記停止コドンを編集し、それによって、前記タンパク質の翻訳を可能にし、
前記タンパク質が、前記哺乳動物において産生される、ステップ
を含む、方法。
【請求項29】
哺乳動物における疾患または障害を処置するための方法であって、
薬剤を提供するステップであって、前記薬剤が、請求項1に記載のモジュラーRNA分子、または請求項6に記載の核酸組成物、または請求項16に記載の送達ビヒクルを含む、ステップ、および
前記哺乳動物の選択された細胞において、前記エフェクタータンパク質の翻訳を可能にする治療有効量で、前記薬剤を前記哺乳動物に投与し、それによって、前記細胞において前記タンパク質を産生させるステップであって、前記細胞における前記タンパク質の産生が、前記哺乳動物における前記疾患または障害の処置を提供する、ステップ
を含む、方法。
【請求項30】
請求項6に記載の組成物または請求項16に記載の送達ビヒクルを含む前記薬剤が、投与され、前記薬剤に含まれる前記エフェクタータンパク質をコードする前記第1のタンパク質コード領域が、前記第2のタンパク質コード領域の発現を活性化するトランス活性化タンパク質をコードし、前記選択された細胞における前記第2のタンパク質コード領域の発現が、前記疾患または障害の処置において治療的に有効である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が、がん細胞である、請求項27、28、または29に記載の方法。
【請求項32】
前記がん細胞が、転移性がん細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記選択された細胞RNAが、HER2をコードし、連続ヌクレオチドの前記区間を含む前記センサードメインが、前記HER2細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記モジュラーRNAの前記タンパク質コードドメインが、CASP3、CASP9、BCL、GSDME、GSDMD、GZMAおよびGZMBからなる群から選択されるタンパク質をコードする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物が、病原体に感染しており、前記選択された細胞RNAが、前記選択された細胞において、前記病原体によって発現される、請求項27、28または29に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物が、細胞RNAによってコードされ、それから発現される欠陥タンパク質を含み、
前記モジュラーRNA分子が、
前記欠陥タンパク質をコードする前記細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的な前記センサードメインの連続ヌクレオチドの区間、および
前記欠陥タンパク質の野生型機能性タンパク質であるエフェクタータンパク質をコードするタンパク質コードドメイン
を含み、
前記哺乳動物への前記薬剤の導入の際に、前記モジュラーRNA分子の前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間が、前記細胞RNAの連続ヌクレオチドの前記対応する区間と二重鎖を形成し、前記二重鎖が、前記細胞においてADARによって編集され、前記野生型機能性タンパク質が、前記哺乳動物において産生される、
請求項29に記載の方法。
【請求項37】
選択された細胞が、心臓組織の梗塞域を取り囲む境界域(BZ)細胞を含み、前記選択された細胞RNAが、NPPB、MYH7、ANKRD1、DES、UCHL1、JUN、およびFOXP1 RNAからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記モジュラーRNAの前記タンパク質コードドメインが、VEGFAをコードする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記モジュラーRNAの前記タンパク質コード領域が、トランス活性化因子をコードし、前記哺乳動物の前記選択細胞が、前記トランス活性化因子の制御下のVEGFa遺伝子をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記選択された細胞RNAが、NPPB RNAである、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記哺乳動物が、ヒトであり、神経膠芽腫を患っており、前記選択された細胞が、がん性神経膠芽腫細胞であり、前記選択された細胞RNAが、SPARCおよび/またはVIM RNAであり、前記モジュラーRNA分子が、前記選択された細胞SPARCおよび/またはVIM RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的な連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含み、前記タンパク質コードドメインが、カスパーゼを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
前記モジュラーRNA分子が、2つのタンデムインフレームセンサードメインを含み、前記2つのタンデムインフレームセンサードメインの第1が、前記選択された細胞SPARC RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的な連続ヌクレオチドの区間を含み、前記2つのタンデムインフレームセンサードメインの第2が、前記選択された細胞VIM RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的な連続ヌクレオチドの区間を含み、第1のRNA二重鎖が、前記モジュラーRNA分子と前記選択された細胞SPARC RNAとの間で形成され、第2のRNA二重鎖が、前記モジュラーRNA分子と前記選択された細胞VIM RNAとの間で形成され、前記エフェクタータンパク質が、前記SPARC RNAおよび前記VIM RNAの両方の存在下でのみ発現される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記モジュラーRNA分子の前記タンパク質コードドメインが、自殺遺伝子コード領域、細胞死誘導遺伝子コード領域、腫瘍抑制遺伝子コード領域、および抗腫瘍免疫を増強する遺伝子のコード領域からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記モジュラーRNA分子の前記タンパク質コードドメインが、抗腫瘍免疫を増強するタンパク質をコードする遺伝子またはインターフェロンβをコードする遺伝子のコード領域を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記モジュラーRNA分子の前記タンパク質コードドメインが、自殺遺伝子のタンパク質コード領域を含み、前記自殺遺伝子が、チミジンキナーゼおよびシトシンデアミナーゼからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記モジュラーRNA分子の前記タンパク質コードドメインが、細胞死誘導遺伝子のタンパク質コード領域を含み、前記細胞死誘導遺伝子が、カスパーゼ3、カスパーゼ9、Bcl 2およびGSDMからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記モジュラーRNA分子の前記タンパク質コードドメインが、腫瘍抑制遺伝子のタンパク質コード領域を含み、前記腫瘍抑制遺伝子が、RbおよびPTENからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
患者が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(B NHL)を患っており、efRNAが、抗CD19-CARをコードし、sesRNAが、CD3Eである、請求項29に記載の方法。
【請求項49】
PCAG-sesRNACD3E-CD19-CARプラスミドまたはin vitro転写mRNAが、i.v.注射によりCD5標的化LNPによって送達されて、T細胞指向性取り込みを増強する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記患者が、クリグラー-ナジャー症候群(CNS)を患っており、SES標的が、Apoa2(アポリポタンパク質A-2)、AHSG(アルファ2-HS糖タンパク質)およびアルブミン(Alb)遺伝子によって転写されるRNAに対して方向付けられ、前記efRNAが、機能性UGT1A1遺伝子をコードする、請求項29に記載の方法。
【請求項51】
細胞においてタンパク質の発現を検出する方法であって、
a)モジュラーRNAが前記細胞に含まれる条件下で、前記細胞に前記モジュラーRNA分子を導入するステップであって、前記モジュラーRNAが、(i)前記選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、前記センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに(ii)前記タンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、前記タンパク質コード領域が、前記センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域を含み、
前記細胞への前記モジュラーRNA分子の導入の際に、RNA二重鎖が、前記細胞において、前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間と前記細胞RNAの連続ヌクレオチドの前記対応する区間との間で形成され、前記RNA二重鎖が、前記ADAR編集可能停止コドンを含み、ADARが、前記RNA二重鎖に含まれる前記停止コドンを編集し、それによって、前記タンパク質の翻訳を可能にし、前記タンパク質が、前記細胞において産生される、ステップ、ならびに
b)前記細胞において前記タンパク質を検出するステップ
を含む、方法。
【請求項52】
前記細胞型が、単一遺伝子障害をもたらす単一遺伝子の突然変異を有する細胞であり、前記モジュラーRNA分子の前記タンパク質コード領域が、野生型タンパク質をコードする、請求項27または28に記載の方法。
【請求項53】
前記疾患または障害が、筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、先天性難聴、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、家族性高コレステロール血症、ヘモクロマトーシス、神経線維腫症1型(NF1)、鎌状赤血球症およびテイ-サックス病からなる群から選択される単一遺伝子障害であり、前記モジュラーRNA分子の前記タンパク質コード領域が、野生型タンパク質をコードする、請求項29に記載の方法。
【請求項54】
翻訳の際に、前記エフェクタータンパク質が、前記細胞において機能性である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項55】
翻訳の際に、前記エフェクタータンパク質が、前記細胞から分泌される、請求項27または28に記載の方法。
【請求項56】
in vitroで試料中のウイルスの存在を検出するための方法であって、
(1)薬剤を提供するステップであって、前記薬剤が、請求項1に記載のモジュラーRNA分子を含み、前記センサードメインが、ウイルスRNAまたはDNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含み、前記エフェクタータンパク質が、標識をコードする、ステップ、
(2)前記薬剤を前記試料とともにインキュベートするステップであって、前記標識が、前記ウイルスDNAまたはRNAの存在下で発現される、ステップ
を含む、方法。
【請求項57】
前記自殺遺伝子が、シチジンキナーゼであり、配列番号150の配列を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項58】
前記自殺遺伝子が、チミジンキナーゼ1であり、配列番号151の配列を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
前記細胞死誘導遺伝子が、カスパーゼ3であり、配列番号152の配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項60】
前記細胞死誘導遺伝子が、カスパーゼ9であり、配列番号153の配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
前記細胞死誘導遺伝子が、BCL2であり、配列番号154の配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項62】
前記細胞死誘導遺伝子が、GSDMDであり、配列番号155の配列を含む、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
このPCT出願は、2022年5月19日に出願された米国仮出願第63/343,669号、および2021年10月29日に出願された同第63/273,343号に基づく利益を主張し、それぞれの内容は、それらの全体が、本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発に関する陳述
この発明は、国立衛生研究所によって付与された連邦政府助成金番号U19MH114821-03およびDP1MH129954の政府支援で行われた。連邦政府は、この発明に対する特定の権利を有する。
【0003】
配列表
本出願は、パテントセンターを介して、WIPO標準のST.26 XMLファイルとして提出された配列表を含む。2022年10月31日に作成された前記XMLファイルは、「123658-10902.xml」という名称であり、193,921バイトのサイズである。配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
背景
細胞型の多様性は、個々の生物内の生命の形態および生理学的システムの多様性の基礎になる[1]。それらの異なる遺伝子発現プロファイル、形態学的および生理学的特性、ならびに組織機能によって定義される細胞型は、遺伝情報が生物の表現型および挙動を形作る媒介である。すべての身体機能は、細胞型の間の相互作用から出現し、異常な細胞型の生理および機能は、無数の疾患を生じさせる[2]。最近のハイスループット単一細胞ゲノムアプローチは、ヒト身体および多くの他の生物における分子的に定義された主要な細胞型のすべてを同定する見込みがある[3][4]。分子プロファイリングを超えて、生物学的組織化のレベルにわたって、組織構造およびシステム機能におけるそれらの特異的な役割を同定するために、ありとあらゆる細胞型をモニターおよび操作することが必要である。
【0005】
多細胞生物における細胞型のアクセスおよび操作の文脈では、すべてではないがほとんどの遺伝的アプローチは、これまでに、生殖細胞系列細胞もしくは体細胞を通してゲノム内におけるDNA調節エレメントを操作することによって、または転写エンハンサーに基づくウイルスベクターを使用することによって、細胞型特異的なmRNA発現を再現しようと試みている。これまでに、細胞型に対するほぼすべての遺伝的アプローチは、一握りのみの生物の生殖細胞系列操作を主に通して、ある特定の細胞特異的RNA発現を模倣するツール遺伝子(例えば、マーカー、センサー、エフェクター)を発現するためのDNAに基づく転写調節エレメントに依拠している[5~7]。CRISPR[8~10]を含む、すべての生殖細胞系列アプローチは、本質的に扱いにくく、遅く、増減および一般化が困難であり、特に、霊長類およびヒトにおいて、倫理的な問題を生じる[11、12]。最近、ウイルスベクターに基づく転写エンハンサーが、動物における細胞型を標的化するために見込みがあることを示したが[13~19]、そのようなエンハンサーは、同定および検証することが困難であり、多くの場合、標的遺伝子および細胞型とのそれらの複雑な関係に起因して、大規模な努力を必要とする[13]。通常CRISPR/Cas9技術による、体細胞操作は、現在、低効率であり、意図しないオフターゲットを含む傾向がある。エンハンサーウイルスベクターアプローチも、遺伝子発現および細胞型とのその複雑な関係に根差した主要な限界を有し、これは、大規模な努力、特殊専門技術、広範な検証を必要とし、種にわたって、真にスケーラブルで、ユーザーフレンドリーで、一般化可能である可能性は低い。そのため、転写エンハンサーに基づくウイルスベクターが、動物における体細胞型を標的化するために見込みがあることを示すが、そのようなエンハンサーは、同定および検証することが困難であり、多くの場合、標的遺伝子および細胞型とのそれらの複雑な関係に起因して、大規模な努力を必要とする。本質的には、すべてのDNAおよび転写に基づくアプローチは、細胞型特異的RNA発現パターンを模倣および活用する試みにおいて、本質的に間接的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の要約
本開示は、部分的には、DNAに基づく転写プロセスを避け、細胞型を定義するRNAに直接関与する、細胞型技術の新しいクラスの発見に基づく。一部の実施形態では、この新規技術(CellREADR:内因性ADAR[RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ]によるRNAセンシングを通した細胞アクセスと称する)は、細胞RNAの存在を検出し、細胞型をモニターおよび操作するためにエフェクタータンパク質の翻訳のスイッチをオンにするために、すべての動物細胞に遍在するRNAセンシングおよび編集メカニズムを利用する。本明細書に提供される組成物および方法は、標的RNAの存在のおかげで特定の細胞型を標的にする、ワトソン-クリック塩基対合を通した単一RNA分子のオペレーティングとして、展開可能である。したがって、CellREADRは、種にわたって、本質的に特異的で、構築および使用するのが容易で、スケーラブルで、プログラム可能で、一般的である。
【0007】
したがって、本開示は、(a)細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間(strech)に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに(b)タンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、タンパク質コードドメインが、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域を含む、モジュラーRNA分子であって、Adar酵素を含む細胞へのモジュラーRNAの導入の際に、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間および細胞RNAの対応するヌクレオチド区間が、停止コドンを含むRNA二重鎖を形成し、RNA二重鎖に含まれる停止コドンが、細胞においてADARによって編集され、それによって、タンパク質の翻訳が可能になる、モジュラーRNA分子を提供する。
【0008】
モジュラーRNA分子に関する一態様では、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間は、mRNAの少なくとも一部分とRNA二重鎖を形成することが可能である。モジュラーRNA分子に関する別の態様では、タンパク質コード領域は、エフェクタータンパク質をコードする。モジュラーRNA分子に関する別の態様では、これは、センサードメインとエフェクタードメインとの間に位置する自己切断2Aペプチドをコードする連続ヌクレオチドをさらに含む。モジュラーRNA分子に関する別の態様では、自己切断2Aペプチドは、T2Aペプチド、P2Aペプチド、E2Aペプチド、およびF2Aペプチドのうちの1つまたは複数からなる群から選択される。
【0009】
本開示は、(a)(i)細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインであって、センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、センサードメイン、および(ii)エフェクタータンパク質をコードする第1のタンパク質コードドメインであって、第1のタンパク質コード領域が、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、第1のタンパク質コードドメインを含む、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸、ならびに(b)第2のタンパク質コードドメインを含む第2の核酸を含む組成物を提供する。組成物に関する一態様では、第1および第2の核酸は、単一の核酸分子を含む。組成物に関する別の態様では、第1および第2の核酸は、2つの核酸分子を含む。組成物に関する別の態様では、第1および第2の核酸は、共有結合により連結されている。組成物に関する別の態様では、第2のタンパク質コードドメインは、転写制御エレメント、必要に応じて、プロモーターを含む遺伝子内に含まれている。組成物に関する別の態様では、エフェクタータンパク質は、遺伝子に結合する。組成物に関する別の態様では、第2のタンパク質コードドメインの発現は、エフェクタータンパク質によってモジュレートされる。組成物に関する別の態様では、第1のタンパク質コードドメインは、転写活性化因子をコードするか、または第1のタンパク質コードドメインは、DNAリコンビナーゼをコードする。組成物に関する別の態様では、第1のタンパク質コード領域は、チミジンキナーゼ(TK)およびシトシンデアミナーゼ(CD)、CASP3、CASP9、BCL、GSDME、GSDMD、GZMAおよびGZMBからなる群から選択されるプログラム細胞死タンパク質、ChR2およびDREADD-M3Dqからなる群から選択される神経活性化タンパク質、IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15およびCD40Lからなる群から選択される免疫エンハンサータンパク質、NaChBacおよびKir2.1からなる群から選択される生理学的編集タンパク質、リシンを含むタンパク質合成阻害タンパク質、DREADD-hM4D、NpHRおよびGtACR1からなる群から選択される神経阻害タンパク質、NEURODなどの神経細胞運命に関与するタンパク質、表皮増殖因子を含む細胞再生と関与するタンパク質からなる群から選択される細胞死滅タンパク質をコードする。
【0010】
本開示は、上記で言及したモジュラーRNA分子または上記で言及した組成物を含む核酸送達ビヒクルを提供する。一態様では、送達ビヒクルは、リポソーム、ベクター、エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、および細胞送達のための選択的内因性封入(SEND)システムであり、優先的には、ウイルスベクター、リポソーム、ベクター、エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、および細胞送達のための選択的内因性封入(SEND)システムを含み、ここで、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルスからなる群から選択される。
【0011】
本発明の一実施形態では、モジュラーRNA分子は、DNAベクターによってコードされる。上記で言及した組成物の一実施形態では、モジュラーRNA分子は、DNAベクターによってコードされる。本発明の一実施形態では、送達ビヒクルは、DNAベクターによってコードされるモジュラーRNA分子を含む。
【0012】
本発明の一実施形態では、医薬組成物は、上記で言及したモジュラーRNA分子、上記で言及した組成物、または上記で言及した送達ビヒクル、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含む。
【0013】
本発明の一実施形態では、細胞は、上記で言及したモジュラーRNA分子、上記で言及した組成物、または上記で言及した送達ビヒクルを含む。
【0014】
一態様では、細胞は、哺乳動物細胞である。本発明の一実施形態では、上記で言及したモジュラーRNA分子、上記で言及した組成物、または上記で言及した送達ビヒクル、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤、ならびにそれらのためのパッケージングを含むキットが存在する。
【0015】
本発明の一実施形態では、モジュラーRNA、またはモジュラーRNAをコードする核酸組成物、またはモジュラーRNAもしくはモジュラーRNAをコードする核酸組成物を含む送達ビヒクルを哺乳動物の選択された細胞に導入する方法であって、哺乳動物の細胞が、モジュラーRNAまたはモジュラーRNAもしくはモジュラーRNAをコードする核酸組成物を含む送達ビヒクルを含むことを可能にする条件下で、哺乳動物の細胞をモジュラーRNA分子、モジュラーRNAをコードする核酸組成物、またはモジュラーRNAもしくはモジュラーRNAをコードする核酸組成物を含む送達ビヒクルと接触させるステップを含み、上記で言及したモジュラーRNA分子、上記で言及した組成物、または上記で言及した送達ビヒクル、ならびに上記で言及した薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤である、方法が存在する。
【0016】
本発明の一実施形態では、選択された標的細胞RNAを含む哺乳動物の細胞において、停止コドンのADAR編集を誘発して、インフレームの下流のコードされるタンパク質の発現を可能にする方法であって、モジュラーRNAが細胞に含まれる条件下で、モジュラーRNA分子を哺乳動物の細胞に導入するステップであって、モジュラーRNAが、(i)選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに(ii)エフェクタータンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、タンパク質コード領域が、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域を含み、哺乳動物へのモジュラーRNA分子の導入の際に、RNA二重鎖が、細胞において、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間と細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間との間で形成され、RNA二重鎖が、ADAR編集可能停止コドンを含み、ADARが、RNA二重鎖に含まれる停止コドンを編集し、それによって、タンパク質の翻訳を可能にし、タンパク質が、哺乳動物において産生される、ステップを含む、方法が存在する。
【0017】
本発明の一実施形態では、哺乳動物における疾患または障害を処置する方法であって、薬剤を提供するステップであって、薬剤が、上記で言及したモジュラーRNA分子、上記で言及した組成物、または上記で言及した送達ビヒクル、ならびに上記で言及した薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含む、ステップ、哺乳動物の選択された細胞において、エフェクタータンパク質の翻訳を可能にする治療有効量で、薬剤を哺乳動物に投与し、それによって、細胞においてタンパク質を産生させるステップであって、細胞におけるタンパク質の産生が、哺乳動物における疾患または障害の処置を提供する、ステップを含む、方法が存在する。上記で言及した方法の一態様では、薬剤は、上記で言及した組成物または上記で言及した送達ビヒクルを含み、エフェクタータンパク質をコードする第1のタンパク質コード領域は、第2のタンパク質コード領域の発現を活性化するトランス活性化タンパク質をコードする薬剤に含まれ、選択された細胞における第2のタンパク質コード領域の発現は、疾患または障害の処置において治療的に有効である。細胞は、がん細胞であり、転移性がん細胞であり得る。上記で言及した方法の一態様では、選択された細胞RNAは、HER2をコードし、連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインは、HER2細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である。上記で言及した方法の一態様では、モジュラーRNAのタンパク質コードドメインは、CASP3、CASP9、BCL、BCL2、GSDME、GSDMD、GZMAおよびGZMBからなる群から選択されるタンパク質をコードする。上記で言及した方法の一態様では、哺乳動物は、病原体に感染しており、選択された細胞RNAは、選択された細胞において、病原体によって発現される。
【0018】
上記で言及した方法の一態様では、哺乳動物は、細胞RNAによってコードされ、それから発現される欠陥タンパク質を含み、モジュラーRNA分子は、欠陥タンパク質をコードする細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的なセンサードメインの連続ヌクレオチドの区間、および欠陥タンパク質の野生型機能性タンパク質であるエフェクタータンパク質をコードするタンパク質コードドメインを含み、哺乳動物への薬剤の導入の際に、モジュラーRNA分子のセンサードメインの連続ヌクレオチドの区間が、細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間と二重鎖を形成し、二重鎖は、細胞においてADARによって編集され、野生型機能性タンパク質は、哺乳動物において産生される。
【0019】
上記で言及した方法の一態様では、選択された細胞は、心臓組織の梗塞域を取り囲む境界域(BZ)細胞を含み、選択された細胞RNAは、NPPB、MYH7、ANKRD1、DES、UCHL1、JUN、およびFOXP1 RNAからなる群から選択される。上記で言及した方法の一態様では、モジュラーRNAのタンパク質コードドメインは、VEGFAをコードする。上記で言及した方法の一態様では、モジュラーRNAのタンパク質コード領域は、トランス活性化因子をコードし、哺乳動物の選択細胞は、トランス活性化因子の制御下のVEGFa遺伝子をさらに含む。上記で言及した方法の一態様では、選択された細胞RNAは、NPPB RNAである。上記で言及した方法の一態様では、哺乳動物は、ヒトであり、神経膠芽腫を患っており、選択された細胞は、がん性神経膠芽腫細胞であり、選択された細胞RNAは、SPARCおよび/またはVIM RNAであり、モジュラーRNA分子は、選択された細胞SPARCおよび/またはVIM RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的な連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含み、タンパク質コードドメインは、カスパーゼを含む。
【0020】
上記で言及した方法の一態様では、モジュラーRNA分子は、2つのタンデムインフレームセンサードメインを含み、2つのタンデムインフレームセンサードメインの第1は、選択された細胞SPARC RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的な連続ヌクレオチドの区間を含み、2つのタンデムインフレームセンサードメインの第2は、選択された細胞VIM RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的な連続ヌクレオチドの区間を含み、第1のRNA二重鎖は、モジュラーRNA分子と選択された細胞SPARC RNAとの間で形成され、第2のRNA二重鎖は、モジュラーRNA分子と選択された細胞VIM RNAとの間で形成され、エフェクタータンパク質は、SPARC RNAおよびVIM RNAの両方の存在下でのみ発現される。
【0021】
上記で言及した方法の一態様では、モジュラーRNA分子のタンパク質コードドメインは、自殺遺伝子コード領域、細胞死誘導遺伝子コード領域、腫瘍抑制遺伝子コード領域、および抗腫瘍免疫を増強する遺伝子のコード領域を含み得る。上記で言及した方法の一態様では、モジュラーRNA分子のタンパク質コードドメインは、抗腫瘍免疫を増強するタンパク質をコードする遺伝子またはインターフェロンβをコードする遺伝子のコード領域を含む。上記で言及した方法の一態様では、モジュラーRNA分子のタンパク質コードドメインは、自殺遺伝子のタンパク質コード領域を含み、自殺遺伝子は、チミジンキナーゼ(配列番号151)またはシトシンデアミナーゼ(配列番号150)である。
【0022】
上記で言及した方法の一態様では、モジュラーRNA分子のタンパク質コードドメインは、細胞死誘導遺伝子のタンパク質コード領域を含み、細胞死誘導遺伝子は、カスパーゼ3、カスパーゼ9、BclまたはGSDMである。上記で言及した方法の一態様では、モジュラーRNA分子のタンパク質コードドメインは、腫瘍抑制遺伝子のタンパク質コード領域を含み、腫瘍抑制遺伝子は、RbおよびPTENからなる群から選択される。上記で言及した方法の一態様では、患者は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(B NHL)を患っており、efRNAは、抗CD19-CARをコードし、sesRNAは、CD3Eである。上記で言及した方法の一態様では、PCAG-sesRNACD3E-CD19-CARプラスミドまたはin vitro転写mRNAは、i.v.注射によりCD5標的化LNPによって送達されて、T細胞指向性取り込みを増強する。一態様では、患者は、クリグラー-ナジャー症候群(CNS)を患っており、SES標的は、Apoa2(アポリポタンパク質A-2)、AHSG(アルファ2-HS糖タンパク質)およびアルブミン(Alb)遺伝子によって転写されるRNAに対して方向付けられ、efRNAは、機能性UGT1A1遺伝子をコードする。
【0023】
一実施形態では、細胞においてタンパク質の発現を検出する方法であって、(a)モジュラーRNAが細胞に含まれる条件下で、モジュラーRNA分子を細胞に導入するステップであって、モジュラーRNAが、(i)選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに(ii)タンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、タンパク質コード領域が、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域を含み、細胞へのモジュラーRNA分子の導入の際に、RNA二重鎖が、細胞において、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間と細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間との間で形成され、RNA二重鎖が、ADAR編集可能停止コドンを含み、ADARが、RNA二重鎖に含まれる停止コドンを編集し、それによって、タンパク質の翻訳を可能にし、タンパク質が、細胞において産生される、ステップ、ならびに細胞におけるタンパク質を検出するステップを含む、方法が本明細書に記載される。
【0024】
上記に記載される方法の一態様では、細胞型は、単一遺伝子障害をもたらす単一遺伝子の突然変異を有する細胞であり、モジュラーRNA分子のタンパク質コード領域は、野生型タンパク質をコードする。上記に記載される方法の一態様では、疾患または障害は、筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、先天性難聴、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、家族性高コレステロール血症、ヘモクロマトーシス、神経線維腫症1型(NF1)、鎌状赤血球症およびテイ-サックス病からなる群から選択される単一遺伝子障害であり、モジュラーRNA分子のタンパク質コード領域は、野生型タンパク質をコードする。上記に記載される方法の一態様では、翻訳の際に、エフェクタータンパク質は、細胞において機能性である。上記に記載される方法の一態様では、翻訳の際に、エフェクタータンパク質は、細胞から分泌される。
【0025】
一実施形態では、in vitroで試料中のウイルスの存在を検出するための方法であって、
(1)薬剤を提供するステップであって、薬剤が、本明細書に示されるモジュラーRNA分子を含み、センサードメインが、ウイルスRNAまたはDNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含み、エフェクタータンパク質が、標識をコードする、ステップ、
(2)薬剤を試料とともにインキュベートするステップであって、標識が、ウイルスDNAまたはRNAの存在下で発現される、ステップ
を含む、方法が本明細書に記載される。
【0026】
本開示の別の態様は、本明細書に記載され、説明されるものをすべて提供する。
【0027】
添付の図面および実施例は、実例の目的で提供され、限定する目的で提供されるものではない。本開示の前述の態様および他の特徴を、1つまたは複数の実施形態に関する添付の例の図面(「図.」も)に関連して考慮して、以下の記載において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A図1。A.細胞型技術の不足は、解剖所見についてヒト組織を説明する最新の生物学および医薬のスライドにおけるボトルネックである。B.ヒト器官のネットワークの関係における細胞ネットワークの焦点。C.細胞ネットワーク、分子ネットワーク、および遺伝子;発達段階についてのヒト組織。D.生物の輪。E.胎児および成人組織。
図1B図1。A.細胞型技術の不足は、解剖所見についてヒト組織を説明する最新の生物学および医薬のスライドにおけるボトルネックである。B.ヒト器官のネットワークの関係における細胞ネットワークの焦点。C.細胞ネットワーク、分子ネットワーク、および遺伝子;発達段階についてのヒト組織。D.生物の輪。E.胎児および成人組織。
図1C図1。A.細胞型技術の不足は、解剖所見についてヒト組織を説明する最新の生物学および医薬のスライドにおけるボトルネックである。B.ヒト器官のネットワークの関係における細胞ネットワークの焦点。C.細胞ネットワーク、分子ネットワーク、および遺伝子;発達段階についてのヒト組織。D.生物の輪。E.胎児および成人組織。
図1D図1。A.細胞型技術の不足は、解剖所見についてヒト組織を説明する最新の生物学および医薬のスライドにおけるボトルネックである。B.ヒト器官のネットワークの関係における細胞ネットワークの焦点。C.細胞ネットワーク、分子ネットワーク、および遺伝子;発達段階についてのヒト組織。D.生物の輪。E.胎児および成人組織。
図1E図1。A.細胞型技術の不足は、解剖所見についてヒト組織を説明する最新の生物学および医薬のスライドにおけるボトルネックである。B.ヒト器官のネットワークの関係における細胞ネットワークの焦点。C.細胞ネットワーク、分子ネットワーク、および遺伝子;発達段階についてのヒト組織。D.生物の輪。E.胎児および成人組織。
図2図2。生殖細胞系列DNAから体細胞RNAまでの動き。
図3A図3。A.核酸レベルでのアデノシンからイノシンへのADAR媒介変換のメカニズム。B.ADARを発現する多細胞生物の系譜。
図3B図3。A.核酸レベルでのアデノシンからイノシンへのADAR媒介変換のメカニズム。B.ADARを発現する多細胞生物の系譜。
図4図4。CellREADRの特性。
図5図5。A.CellREADRは、翻訳的にインフレームの5’-センサードメイン(sesRNA)および3’-エフェクタードメイン(efRNA)からなり、T2aコード領域によって分離された、単一モジュラーreadrRNA分子である。sesRNAは、細胞RNAに相補的であり、efRNA翻訳を防止するインフレームのSTOPコドンを含有する。sesRNAと標的RNAとの間の塩基対合は、ADARを動員し、これは、A→Iの編集を媒介し、UAG STOPをUGG Trpコドンに変換し、エフェクタータンパク質の翻訳のスイッチをオンにする。B~D.B.CAG-tdT(上)は、CAGプロモーターからtdTomato標的RNAを発現し、READRtdT-GFP(下)は、CAGプロモーターによって駆動される、BFPコード領域とそれに続くsesRNAtdTおよびefRNAGFPからなるreadrRNAを発現する。C.CAG-tdTおよびREADRtdT-GFPの両方でトランスフェクトされた293T細胞は、BFPおよびRFPと共局在化したロバストなGFP発現を示した(下)。READRtdT-GFPのみ(上)、またはSTOPコドンを含有するスクランブルコード配列を有するsesRNACtrlを発現するCAG-tdTおよび対照READRCtrl(中央)でトランスフェクトされた細胞は、GFP発現をほとんど示さなかった。GFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析を右に示す。D.FACSによるCellREADR効率の定量化。E~G.CellREADRにおける標的RNAレベルの効果。E.CellREADRにおける標的RNAレベルの効果を定量化するための発現ベクター。rtTA-TRE-ChETAにおいて(上)、BFP-ChETA融合標的RNAは、テトラサイクリンの濃度依存性の様式で構成的に発現されたrtTAによって駆動される、TREから転写される。READRChETA-GFP(下)は、mCherryコード領域とそれに続くsesRNAChETAおよびefRNAGFPからなるreadrRNAを発現する。F.rtTA-TRE-ChETAおよびREADRChETA-GFPで共トランスフェクトされた293T細胞において、培地中のテトラサイクリン濃度の増加が、RFP細胞においてBFPの増加したパーセンテージをもたらしたことが、FACS解析によって明らかになった。G.GFPのRFP+に対する比は、テトラサイクリン濃度の増加とともに増加した。BFP-ChETA RNAを構成的に発現するCAG-ChETAは、陽性対照としての役割を果たし、sesRNACtrlを発現するREADRCtrlは、陰性対照としての役割を果たした。H~I、ADAR1は、CellREDAR機能のために必要である。sesRNAtdTのみ、sesRNACtrlおよびtdT、sesRNAtdTおよびtdT、またはADAR2過剰発現を伴うsesRNAtdTおよびtdTを発現する野生型またはADAR1KO293T細胞のFACS解析(H.)。矢印は、GFP/RFP集団を示す。I、細胞変換比の定量化。J、示された異なる試料における意図した編集部位でのAからGへの変換を示すサンガーシークエンシングのエレクトロフェログラム。K、棒グラフは、標的化編集部位でのAからGへの変換率の定量化を示す。D、F、G、およびKにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3;nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図6図6。sesRNAの特性。A.最適なsesRNAの長さは、約200~300ntである。READRBFP-tdT-GFPおよび標的RNAとしてtdTを使用して、可変の長さを有するsesRNAtdTを試験して、FACSアッセイにおける細胞変換比として定量化される、最適な長さを同定した。B.sesRNAと標的RNA塩基対合との間のミスマッチの効果。ミスマッチの数(上)およびsesRNAtdTとtdT標的RNAとの間の同一性パーセント(下)を、それぞれの場合について示す。C.EF1a-ChETA-tdTベクターから発現された標的RNA(例えば、異なるChETAおよびtdTコード領域)内の異なる場所および配列のsesRNAセンシングの効果;プロモーター領域を陰性対照として使用した。readrRNAの効率を示した(下)。D.ストリンジェンシーを改善するために、sesRNAtdTを、READRtdT-Lucベクター中に1~3つのSTOPコドン(X-TAG)を含有するように設計した。E~F.READRtdT-Lucのみでトランスフェクトされたか(e)、またはCAG-tdTと共トランスフェクトされた(F)、293T細胞の発光。G.EF1a-ChETA-tdTから発現されたChETA-tdT融合転写物の異なる領域を標的化するsesRNAアレイを用いる、二重および三重センサーREADRChETA/tdT-GFPベクターの概略図。H.EF1a-ChETA-tdTおよび二重または三重READRtdT-GFPベクターで共トランスフェクトされた293T細胞のFACS解析。矢印は、GFP+/RFP+集団を示す。I.(H)におけるさまざまな二重または三重READRtdT-GFPベクターの効率の定量化。J.二重センサーREADRChETA/tdT-GFPまたはREADRChETA/tdT-Lucベクターを使用する2つの標的RNA(ChETAおよびtdT)を発現する細胞の交差標的化のためのスキーム;二重センサーアレイにおけるそれぞれのsesRNAは、編集可能STOPを含有する。K.FACS解析は、READRCheta/tdT-GFPおよびCAG-ChETAまたはCAG-tdTのいずれかによる293T細胞の共トランスフェクションがGFP翻訳をほとんどもたらさず、三重トランスフェクションのみがGFP発現をもたらしたことを示した。EF1a-ChETA-tdT(ChETA-tdT融合転写物を発現する)共トランスフェクションを陽性対照として使用した。定量化を、FACS(L.)およびルシフェラーゼアッセイ(M.)を用いて示した。A~C、E~F、I、およびL~Mにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図7図7。本開示の一実施形態に従う、CellREADRを用いる内因性RNAセンシングを示すデータ。A.エクソンおよびイントロン構造(縮尺通りではない)、pre-mRNA(中央)、ならびにmRNA(下)を示す、ヒトEEF1A1遺伝子のゲノム遺伝子座の概略図。sesRNAEEF1A1(1~7)を、コード配列(CDS)を含むEEF1A1転写物にわたってサンプリングするように設計した。B.sesRNAEEF1A1(1~7)を試験するためのREADREF1A1-GFPベクターの概略図;下流のPKG-tdT発現カセットは、すべてのトランスフェクト細胞を標識する。外因性ADAR2またはClipFコード領域をスペーサーとして使用した。C.それぞれ、内因性ADARまたはADAR2過剰発現(OE)を有する293T細胞におけるsesRNAEEF1A1(1~7)のCellREADR効率の定量化。D.内因性ADARまたはADAR2過剰発現(OE)を有するいくつかの内因性細胞RNAについてのCellREADR効率の定量化。E.CellREADRが、(a)および(d)において、標的化RNAの発現レベルに影響を及ぼさなかったことを示す定量的PCR。F.CellREADRは、RNAシークエンシングによってアッセイされる細胞トランスクリプトームを変更しなかった。sesRNAEEF1A1(7)またはsesRNACtrl(上)およびsesRNAPCNAまたはsesRNACtrl(下)でトランスフェクトされた細胞間のトランスクリプトームの比較を行った。
図8図8。CellREADRを用いる内因性RNAセンシング。A.エクソンおよびイントロン構造(縮尺通りではない)、pre-mRNA(中央)、ならびにmRNA(下側)を示す、ヒトEEF1A1遺伝子のゲノム遺伝子座の概略図。sesRNAEEF1A1(1~7)を、コード配列(CDS)を含むEEF1A1転写物にわたってサンプリングするように設計した。B.sesRNAEEF1A1(1~7)を試験するためのREADREEF1A1-GFPベクターの概略図;BFP発現カセットは、すべてのトランスフェクト細胞を標識する。C.293T細胞におけるsesRNAEEF1A1(1~7)の効率の定量化。D.CellREADRの高い感度。異なる発現レベルを有するいくつかの内因性細胞RNAについてのCellREADR効率の定量化;RNAseqデータからのTPM(100万あたりの転写物)を使用して、細胞RNA発現レベルを示した。1~3つのsesRNAを、それぞれの標的について設計した。E.二重センサーREADREEF1A1/ACTB-GFPベクターを使用する2つの内因性RNA(EEF1A1およびACTB)の交差標的化のための概略図;二重センサーアレイにおけるそれぞれのsesRNAは、編集可能STOPを含有する。二重センサーREADRCtrl/Ctrl-GFP、READREEF1A1/Ctrl-GFPまたはREADRCtrl/ACTB-GFPを対照として使用した。効率の定量化は、READRChet/atdT-GFPトランスフェクションによる293T細胞のみが、有意なGFP発現をもたらしたことを示した。F.CellREADRは、RNAシークエンシングによってアッセイされる細胞トランスクリプトームを変更しなかった。sesRNAEEF1A1(7)またはsesRNACtrl(上)およびsesRNAPCNAまたはsesRNACtrl(下)でトランスフェクトされた細胞間のトランスクリプトームの比較。G.sesRNAEEF1A1またはsesRNACtrl(上)、sesRNAPCNAまたはsesRNACtrl(下)間の差次的遺伝子発現解析のボルケーノプロット。調整P値<0.01およびlog2(倍数変化)>2を有する遺伝子を、有意な差次的発現遺伝子として定義し、赤色でラベルした。1つの遺伝子OAS2が、sesRNAEEF1A群において、有意に増加した発現を伴って検出された。H.RNAシークエンシングによるAからIの編集に対するsesRNAEEF1A1(上)またはsesRNAACTB(下)の効果のトランスクリプトーム-ワイド解析。ピアソン相関係数分析を使用して、差次的RNA編集率を評価した。c~eにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図9図9図9は、本開示の一実施形態に従う、マウス大脳皮質における神経細胞型のCellREADR標的化を示すデータを示す。A~B.それぞれ、示されたsesRNAの場所を有するマウスFezf2(a)およびCtip2(b)遺伝子のゲノム構造。c~i、マウス皮質におけるニューロン型のCellREADR標的化。C.脳組織における神経細胞型を標的化するためのバイナリーAAVベクターの概略図。READRFezf2-tTAにおいて、hSynプロモーターは、ADAR2とそれに続くsesRNAFezf2、2A、およびtTA2エフェクターをコードする配列の発現を駆動する。TRE3gmRubyにおいて、TREプロモーターは、READRウイルス由来のtTAに応答して、mRuby3を駆動する。D.Fezf2-CreER;LoxpSTOPLoxp-H2bGFPマウス脳からの冠状断面の画像、[Rodrigo Munoz-Castaneda et al. Cellular anatomy of the mouse primary motor cortex Nature volume 598, pages 159-166 (2021);Creレポータートランスジェニックマウスを、「ノックイン」CreドライバーとKim, Y. et al. Brain-wide maps reveal stereotyped cell-type-based cortical architecture and subcortical sexual dimorphism. Cell 171, 456-469.e422 (2017)に以前に記載されたレポーターマウス(CAG-LoxP-STOP-LoxP-H2B-GFP)とを交雑することによって作出した]。S1体性感覚皮質におけるFezf2+錐体ニューロン(PN)の分布パターンを示す、Fezf2-CreER;LoxpSTOPLoxp-H2bGFPマウス脳からの冠状断面の画像(d1)。AAV READRFezf2-tTAおよびTREmRubyの共注射は、L5bおよびL6において、PNを特異的に標識した(d2)。CellREADR AAVおよびH2bGFPによる共標識化(d3)と、(d4)の拡大図。矢印は、共標識化細胞を示し、矢じり形は、CellREADR AAVによって標識されたが、Fezf2-H2bGFPによって標識されなかったニューロンを示す(d4)。E.READRFezf2-tTAの特異性。F.S1皮質におけるCtip2+PNの分布パターンを示す、CTIP2抗体で免疫染色されたWT脳の冠状断面(f1)。AAV READRCtip2およびTREmRubyの共注射は、L5bにおいて、PNを特異的に標識した(f2)。CellREADR AAVおよびCTIP2抗体による共標識化(f3)と、(f4)の拡大図。矢印は、共標識細胞を示し、矢じり形は、READRCtip2によって誤って標識された細胞を示した(f4)。G.READRCtip2の特異性。H.S1皮質におけるAAV READRCtip2-rTAおよびTREeYFP感染PNの軸索投射パターン。線条体、視床、中脳、脳橋および髄質に対する投射を示す代表画像。I、冠状断面の概略的な場所を右パネルに示す。
図10-1】図10。単一およびバイナリーCellREADRベクターの設計および試験。A、単一CellREADRベクターの概略図。左、PGK-tdTは、PGKプロモーターからtdTomato標的RNAを発現する。READRtdT-GFPは、CAGプロモーターによって駆動される、sesRNAtdTおよびefRNAGFPからなるREADR RNAを発現する。縦の破線は、tdT mRNAとsesRNAtdTとの間の相補的塩基対合領域を示し、編集可能STOPコドンを取り囲む配列を右に示す。編集部位で、sesRNAtdTにおける編集可能アデニン(青緑色)は、tdT mRNAにおけるシトシンとミスマッチである。TdTomatoは、2つのdTomato遺伝子のタンデムリピートであり、したがって、tdT RNAは、sesRNAtdT塩基対合のための標的配列の2つのコピーを含有する。B~D.READRtdT-G’Pベクターの検証。READRtdT-GFPおよびPGK-tdTで共トランスフェクトされた293T細胞において、B.多くは、GFP翻訳および蛍光のスイッチをオンにした(C.上側矢印)。対照空ベクターで共トランスフェクトされた細胞において、わずかな細胞が、GFP発現を示した(C.下側)。GFP発現を、ウエスタンブロットによってさらにアッセイした。D~E.CellREADRルシフェラーゼアッセイのためのバイナリーベクター設計。READRtdT-tTA2は、sesRNAtdTおよびefRNAtTA2からなるreadrRNAを発現し、TRE-ffLucは、tTA2活性化の際に、ルシフェラーゼRNAを発現する。F.ルシフェラーゼ活性は、(E)における3つのベクターでトランスフェクトされた細胞においてのみ劇的に増加した。tTA2を構成的に発現する、TRE-ffLucとCAG-tTA2の共トランスフェクションは、陽性対照としての役割を果たした。G、スペーサー配列がsesRNAtdTコード領域の前に挿入されている、概略的なREADRtdT-G’Pベクター。H、293T細胞は、それぞれ、tdT標的RNA発現なし(灰色)またはあり(ピンク色)の可変の長さのスペーサーをコードするREADRtdT-G’Pベクターでトランスフェクトされた。RFP+細胞のうちのGFP+細胞のパーセンテージとして計算された変換比の定量化。I、CellREADRアッセイのためのバイナリーベクター設計。J、(i)におけるバイナリーベクターによるGFP変換の代表画像。sesRNACtrlベクターで共トランスフェクトされた細胞において、わずかなGFP+細胞が観察された。変換パーセンテージを右に示す。fおよびhにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。fについてn=3、hについてn=2、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図10-2】図10。単一およびバイナリーCellREADRベクターの設計および試験。A、単一CellREADRベクターの概略図。左、PGK-tdTは、PGKプロモーターからtdTomato標的RNAを発現する。READRtdT-GFPは、CAGプロモーターによって駆動される、sesRNAtdTおよびefRNAGFPからなるREADR RNAを発現する。縦の破線は、tdT mRNAとsesRNAtdTとの間の相補的塩基対合領域を示し、編集可能STOPコドンを取り囲む配列を右に示す。編集部位で、sesRNAtdTにおける編集可能アデニン(青緑色)は、tdT mRNAにおけるシトシンとミスマッチである。TdTomatoは、2つのdTomato遺伝子のタンデムリピートであり、したがって、tdT RNAは、sesRNAtdT塩基対合のための標的配列の2つのコピーを含有する。B~D.READRtdT-G’Pベクターの検証。READRtdT-GFPおよびPGK-tdTで共トランスフェクトされた293T細胞において、B.多くは、GFP翻訳および蛍光のスイッチをオンにした(C.上側矢印)。対照空ベクターで共トランスフェクトされた細胞において、わずかな細胞が、GFP発現を示した(C.下側)。GFP発現を、ウエスタンブロットによってさらにアッセイした。D~E.CellREADRルシフェラーゼアッセイのためのバイナリーベクター設計。READRtdT-tTA2は、sesRNAtdTおよびefRNAtTA2からなるreadrRNAを発現し、TRE-ffLucは、tTA2活性化の際に、ルシフェラーゼRNAを発現する。F.ルシフェラーゼ活性は、(E)における3つのベクターでトランスフェクトされた細胞においてのみ劇的に増加した。tTA2を構成的に発現する、TRE-ffLucとCAG-tTA2の共トランスフェクションは、陽性対照としての役割を果たした。G、スペーサー配列がsesRNAtdTコード領域の前に挿入されている、概略的なREADRtdT-G’Pベクター。H、293T細胞は、それぞれ、tdT標的RNA発現なし(灰色)またはあり(ピンク色)の可変の長さのスペーサーをコードするREADRtdT-G’Pベクターでトランスフェクトされた。RFP+細胞のうちのGFP+細胞のパーセンテージとして計算された変換比の定量化。I、CellREADRアッセイのためのバイナリーベクター設計。J、(i)におけるバイナリーベクターによるGFP変換の代表画像。sesRNACtrlベクターで共トランスフェクトされた細胞において、わずかなGFP+細胞が観察された。変換パーセンテージを右に示す。fおよびhにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。fについてn=3、hについてn=2、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図11図11は、本開示の一実施形態に従って、readrRNAの漏出が低減されたスペーサー配列を示すデータである。A.スペーサー配列がsesRNAtdTコード領域の前に挿入されている、概略的なREADRtdT-GFPベクター。B.それぞれ、tdT標的RNA発現あり(上側)またはなし(下側)の可変の長さのスペーサーをコードするREADRtdT-GFPベクターでトランスフェクトされた293T細胞におけるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。C.(B)に示される、RFP+細胞のうちのGFP+細胞のパーセンテージとして計算された変換比の定量化。
図12図12。CellREADR効率は、標的RNAの発現レベルと相関する。A.3色CellREADRアッセイ系のベクター設計。B.293T細胞の共トランスフェクションのために使用されたCAG-tdTベクターの漸増量を用いる、READRtdT-GFP効率の定量化。C.rtTA-TRE-ChETAおよびREADRChETA-GFPベクターの概略図(図1Eも参照されたい)。D.培養培地中、テトラサイクリンの異なる濃度で処置された共トランスフェクト293T細胞の代表画像(図5E、5F、5Gも参照されたい)。E~F.(D)におけるものと比較した、GFP発現細胞(F)への最も高い変換をもたらしたChETA(e)を構成的に発現するベクターとのREADRChETA-GFPの共トランスフェクション。Bにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図13図13。CellREADRは、RNAセンシング依存性遺伝子編集および細胞剥離を可能にする。A.CellREADR媒介および標的RNA依存性遺伝子編集のためのベクター設計。READRtdT-Cas9/GFPにおいて、CAGプロモーターは、BFPとそれに続くsesRNAtdT、Cas9、およびeGFPエフェクターをコードする配列の発現を駆動する。別のベクターでは、EF1aプロモーターは、tdT発現を駆動し、U6bプロモーターは、293T細胞において、DYRK1A遺伝子を標的化するガイドRNA(gRNA)の発現を駆動する。B.tdT標的RNAありまたはなしで、RFPおよびBFPを発現する細胞のうちのGFPのパーセントとしてのREADRtdT-Cas9/GFP効率の定量化。C.U6b-gRNADYRK1A-CAG-tdTおよびREADRtdT-Cas9/GFPの両方でトランスフェクトされた細胞は、BFPおよびRFPと共局在化したロバストなGFP発現を示した(下)。READRtdT-Cas9/GFPのみでトランスフェクトされた細胞(上)は、GFP発現をほとんど示さなかった。D.SURVEYORアッセイは、ヒトDYRK1A遺伝子座におけるCas9媒介切断を示した。DNA切断が、U6b-gRNADYRK1A-CAG-tdTおよびREADRtdT-Cas9/GFPでトランスフェクトされた細胞溶解物において観察されたが、tdT標的RNAを欠くU6b-gRNADYRK1AおよびREADRtdT-Cas9/GFPでは観察されなかった。プラスミドトランスフェクションなしのCAG-Cas9とU6b-gRNADYRK1細胞溶解物および293T細胞溶解物を、それぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。矢印は、切断産物を示す。E.CellREADR媒介および標的RNA依存性細胞死誘導のためのベクター設計。READRtdT-taCasp3-TEVpにおいて、CAGプロモーターは、BFPとそれに続くエフェクターとしてのsesRNAtdTおよびtaCasp3-TEVpをコードする配列の発現を駆動して、細胞死を誘導する。F.発光によって測定された細胞アポトーシスレベルは、tdT RNAなしの細胞と比較して、READRtdT-taCasp3-TEVpおよびEF1a-tdTでトランスフェクトされた細胞において増加した。bおよびfにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図14-1】図14。ADAR1は、293T細胞において、CellREADRのために必要である。 A.CRISPR/Cas9を用いてADAR1ノックアウト細胞系を作成するための概略図。B.野生型におけるADAR1発現およびADAR1ノックアウト細胞における発現なしを示すウエスタンブロット解析。C(1).EF1a-ChETA-tdTおよびREADRtdT-GFPベクター(左)、ならびにADAR1アイソフォーム発現ベクター(右)の概略図。C(2)、それぞれ、代表画像を示した。D(1).p110およびp150 ADAR1アイソフォームはどちらも、ADAR1ノックアウト細胞において、細胞変換比によってアッセイされたCellREADR機能性をレスキューした。D(2).EF1a-Chea-tdT標的発現およびREADRtdT-GFPベクター(左)、ならびにADAR1アイソフォーム発現ベクター(右)の概略図。E.ADAR1KO 293T細胞における、ADAR1アイソフォームレスキューベクターを用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。F(1).(e)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。F(2).ウエスタンブロット解析は、インターフェロン処置後、ADAR1-p110タンパク質の増加した発現およびADAR1-p150アイソフォームの誘導を示した。G.モック(左)またはインターフェロン処置(右)を用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。H.インターフェロン処置によって増加した、(G)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。FおよびDおよびHにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図14-2】図14。ADAR1は、293T細胞において、CellREADRのために必要である。 A.CRISPR/Cas9を用いてADAR1ノックアウト細胞系を作成するための概略図。B.野生型におけるADAR1発現およびADAR1ノックアウト細胞における発現なしを示すウエスタンブロット解析。C(1).EF1a-ChETA-tdTおよびREADRtdT-GFPベクター(左)、ならびにADAR1アイソフォーム発現ベクター(右)の概略図。C(2)、それぞれ、代表画像を示した。D(1).p110およびp150 ADAR1アイソフォームはどちらも、ADAR1ノックアウト細胞において、細胞変換比によってアッセイされたCellREADR機能性をレスキューした。D(2).EF1a-Chea-tdT標的発現およびREADRtdT-GFPベクター(左)、ならびにADAR1アイソフォーム発現ベクター(右)の概略図。E.ADAR1KO 293T細胞における、ADAR1アイソフォームレスキューベクターを用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。F(1).(e)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。F(2).ウエスタンブロット解析は、インターフェロン処置後、ADAR1-p110タンパク質の増加した発現およびADAR1-p150アイソフォームの誘導を示した。G.モック(左)またはインターフェロン処置(右)を用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。H.インターフェロン処置によって増加した、(G)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。FおよびDおよびHにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図14-3】図14。ADAR1は、293T細胞において、CellREADRのために必要である。 A.CRISPR/Cas9を用いてADAR1ノックアウト細胞系を作成するための概略図。B.野生型におけるADAR1発現およびADAR1ノックアウト細胞における発現なしを示すウエスタンブロット解析。C(1).EF1a-ChETA-tdTおよびREADRtdT-GFPベクター(左)、ならびにADAR1アイソフォーム発現ベクター(右)の概略図。C(2)、それぞれ、代表画像を示した。D(1).p110およびp150 ADAR1アイソフォームはどちらも、ADAR1ノックアウト細胞において、細胞変換比によってアッセイされたCellREADR機能性をレスキューした。D(2).EF1a-Chea-tdT標的発現およびREADRtdT-GFPベクター(左)、ならびにADAR1アイソフォーム発現ベクター(右)の概略図。E.ADAR1KO 293T細胞における、ADAR1アイソフォームレスキューベクターを用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。F(1).(e)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。F(2).ウエスタンブロット解析は、インターフェロン処置後、ADAR1-p110タンパク質の増加した発現およびADAR1-p150アイソフォームの誘導を示した。G.モック(左)またはインターフェロン処置(右)を用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。H.インターフェロン処置によって増加した、(G)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。FおよびDおよびHにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図14-4】図14。ADAR1は、293T細胞において、CellREADRのために必要である。 A.CRISPR/Cas9を用いてADAR1ノックアウト細胞系を作成するための概略図。B.野生型におけるADAR1発現およびADAR1ノックアウト細胞における発現なしを示すウエスタンブロット解析。C(1).EF1a-ChETA-tdTおよびREADRtdT-GFPベクター(左)、ならびにADAR1アイソフォーム発現ベクター(右)の概略図。C(2)、それぞれ、代表画像を示した。D(1).p110およびp150 ADAR1アイソフォームはどちらも、ADAR1ノックアウト細胞において、細胞変換比によってアッセイされたCellREADR機能性をレスキューした。D(2).EF1a-Chea-tdT標的発現およびREADRtdT-GFPベクター(左)、ならびにADAR1アイソフォーム発現ベクター(右)の概略図。E.ADAR1KO 293T細胞における、ADAR1アイソフォームレスキューベクターを用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。F(1).(e)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。F(2).ウエスタンブロット解析は、インターフェロン処置後、ADAR1-p110タンパク質の増加した発現およびADAR1-p150アイソフォームの誘導を示した。G.モック(左)またはインターフェロン処置(右)を用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。H.インターフェロン処置によって増加した、(G)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。FおよびDおよびHにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図14-5】図14。ADAR1は、293T細胞において、CellREADRのために必要である。 A.CRISPR/Cas9を用いてADAR1ノックアウト細胞系を作成するための概略図。B.野生型におけるADAR1発現およびADAR1ノックアウト細胞における発現なしを示すウエスタンブロット解析。C(1).EF1a-ChETA-tdTおよびREADRtdT-GFPベクター(左)、ならびにADAR1アイソフォーム発現ベクター(右)の概略図。C(2)、それぞれ、代表画像を示した。D(1).p110およびp150 ADAR1アイソフォームはどちらも、ADAR1ノックアウト細胞において、細胞変換比によってアッセイされたCellREADR機能性をレスキューした。D(2).EF1a-Chea-tdT標的発現およびREADRtdT-GFPベクター(左)、ならびにADAR1アイソフォーム発現ベクター(右)の概略図。E.ADAR1KO 293T細胞における、ADAR1アイソフォームレスキューベクターを用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。F(1).(e)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。F(2).ウエスタンブロット解析は、インターフェロン処置後、ADAR1-p110タンパク質の増加した発現およびADAR1-p150アイソフォームの誘導を示した。G.モック(左)またはインターフェロン処置(右)を用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。H.インターフェロン処置によって増加した、(G)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。FおよびDおよびHにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図15図15は、INF-βが、本開示の一実施形態に従って、CellREADR効率およびAdar発現を増加させたことを示すデータを示す。A、EF1a-Chea-tdT標的発現およびREADRtdT-GFPベクターの概略図。B、モック(左)またはインターフェロン処置(右)を用いるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析。C、ウエスタンブロット解析は、インターフェロン処置後、ADAR1-p110タンパク質の発現が増加し、ADAR1-p150アイソフォームタンパク質が誘導されたことを示した。D、インターフェロン処置によって増加した、(b)におけるREADRtdT-GFP効率の定量化。
図16図16は、CellREADRが、本開示の一実施形態に従って、複数のヒトおよびマウス細胞系を作動させることを示すデータを示す。ヒト(Hela)およびマウス(N2a、KPC1242)由来の異なる細胞系において動作するCellREADRシステム。
図17図17。sesRNAと標的RNAとの間の異なるヌクレオチドミスマッチの効果。CellREADRベクターの概略図(上、図2bに関連する)。UAG STOPコドン内の異なる種類のミスマッチ数、インデルまたは2つのミスマッチを用いて、RFPからGFPへの変換比として測定されるCellREADR効率。エラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図18図18。CellREADR媒介RNAセンシングおよびエフェクター翻訳は、時間とともに蓄積する。293T細胞における内因性EEF1A1 mRNAのCellREADR媒介センシング、およびエフェクター翻訳は、トランスフェクション後、より長いインキュベーション時間により増加した。エラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
図19図19。標的化mRNAに対するCellREADRの効果。A.CellREADR媒介sesRNA発現が、標的化RNAの発現レベルに影響を及ぼさなかったことを示す定量的PCR。B.EEF1A1 mRNAおよびsesRNAEEF1A1-CDSの塩基対合。EEF1A1 mRNAまたはsesRNAを、それぞれ、青色および赤色で表した。EEF1A1 mRNAから翻訳されたペプチドを、茶色で強調した。EEF1A1 mRNAの標的化領域を、RNAseqによって解析した。C.それぞれのアデノシン位置でのEEF1A1 mRNAのAからGへの変化の比を定量化し、ヒートマップに示した。2つのアデノシン(A107およびA115)が、より高いAからGへの編集の割合を示した。2つの感受性アデノシンのオフターゲット編集は、潜在的なアミノ酸変化を誘導し得る(Bにおける下線)。エラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、行われた生物学的反復の数を表す。
図20図20。本開示の一実施形態に従う、差次的遺伝子発現解析を示すデータ。sesRNAEEF1A1-CDSとsesRNACtrl(A)、sesRNAPCNAとsesRNACtrl(B)との間の差次的遺伝子発現解析のボルケーノプロット。調整P値<0.01およびlog2(倍数変化)>2を有する遺伝子を、有意な差次的発現遺伝子として定義し、ボルケーノプロットにおいて、赤色で標識した。1つの遺伝子OAS2が、sesRNAEEF1A1-CDS群において、有意に増加した発現として検出された。2回の独立した実験を行った。
図21-1】図21。in vitroおよびin vivoでのFezf2およびCtip2 RNAを標的化するsesRNAの設計およびスクリーニング。A~B、示された通り、さまざまなsesRNAの場所を有する、マウスFezf2(a)およびCtip2(b)遺伝子のゲノム構造。C.sesRNAスクリーニングのために使用されたsesRNAならびにFezf2およびCtip2標的遺伝子断片の情報。D.標的RNA発現ベクターCAG-BFP-Fezf2またはCAG-BFP-Ctip2において、(A、B)におけるsesRNA領域に対応するFezf2またはCtip2遺伝子の200bp~3000bpのゲノム領域を、CAGプロモーターによって駆動されるBFPおよび2Aコード領域の下流でクローニングした。(A、B)に示されるsesRNAに対応するREADRFezf2-GFPまたはREADRCtip2-GFP発現。E~F.それぞれ、CAG-BFP-Fezf2またはCAG-BFP-Ctip2標的ベクターで共トランスフェクトされた293T細胞のFACSアッセイによるREADRFezf2-GFP(E)またはREADRCtip2-GFP(F)の効率の定量化。CAG-BFP-Cheta、sesRNAのストリンジェンシーを評価するための陰性対照としての役割を果たす、共トランスフェクション(右パネル)。 G.バイナリーREADR AAVベクターの概略図。READRベクターにおいて、hSynプロモーターは、mCherryとそれに続くsesRNACtip2、smFlagおよびtTA2エフェクターをコードする配列の発現を駆動する。レポーターベクターにおいて、TREプロモーターは、READRベクター由来のtTA2に応答して、mNeonGreenを駆動する。H.バイナリーREADRFezf2ベクターを注射されたマウス皮質の冠状断面。mNeonGは、READRFezf2標識化細胞を示した。4つのFezf2 sesRNAをスクリーニングした。I.(H)における4つのFezf2 sesRNAの特異性の定量化。Fezf2 sesRNAのin-vivoスクリーニングのために、それぞれのsesRNAの特異性を、READR AAVおよびCTIP2抗体(FEZF2抗体の欠如に起因する)による共標識化によって計算し、Ctip2は、Fezf2+細胞(示さない)のサブセットを表し、CTIP2抗体は、Fezf2 sesRNAの特異性の過小評価を与える。sesRNA1は、最も高い特異性を示した。J.バイナリーREADRCtip2ベクターを注射されたマウス皮質の冠状断面。mNeonGは、バイナリーREADR標識化細胞を示した。8つのCtip2 sesRNAをスクリーニングした。K.(J)における8つのsesRNAの特異性の定量化。それぞれのsesRNAの特異性を、バイナリーREADRCtip2 AAVおよびCTIP2抗体による共標識化によって計算した(示さない)。sesRNA3およびsesRNA8は、最も高い特異性を示した。
図21-2】図21。in vitroおよびin vivoでのFezf2およびCtip2 RNAを標的化するsesRNAの設計およびスクリーニング。A~B、示された通り、さまざまなsesRNAの場所を有する、マウスFezf2(a)およびCtip2(b)遺伝子のゲノム構造。C.sesRNAスクリーニングのために使用されたsesRNAならびにFezf2およびCtip2標的遺伝子断片の情報。D.標的RNA発現ベクターCAG-BFP-Fezf2またはCAG-BFP-Ctip2において、(A、B)におけるsesRNA領域に対応するFezf2またはCtip2遺伝子の200bp~3000bpのゲノム領域を、CAGプロモーターによって駆動されるBFPおよび2Aコード領域の下流でクローニングした。(A、B)に示されるsesRNAに対応するREADRFezf2-GFPまたはREADRCtip2-GFP発現。E~F.それぞれ、CAG-BFP-Fezf2またはCAG-BFP-Ctip2標的ベクターで共トランスフェクトされた293T細胞のFACSアッセイによるREADRFezf2-GFP(E)またはREADRCtip2-GFP(F)の効率の定量化。CAG-BFP-Cheta、sesRNAのストリンジェンシーを評価するための陰性対照としての役割を果たす、共トランスフェクション(右パネル)。 G.バイナリーREADR AAVベクターの概略図。READRベクターにおいて、hSynプロモーターは、mCherryとそれに続くsesRNACtip2、smFlagおよびtTA2エフェクターをコードする配列の発現を駆動する。レポーターベクターにおいて、TREプロモーターは、READRベクター由来のtTA2に応答して、mNeonGreenを駆動する。H.バイナリーREADRFezf2ベクターを注射されたマウス皮質の冠状断面。mNeonGは、READRFezf2標識化細胞を示した。4つのFezf2 sesRNAをスクリーニングした。I.(H)における4つのFezf2 sesRNAの特異性の定量化。Fezf2 sesRNAのin-vivoスクリーニングのために、それぞれのsesRNAの特異性を、READR AAVおよびCTIP2抗体(FEZF2抗体の欠如に起因する)による共標識化によって計算し、Ctip2は、Fezf2+細胞(示さない)のサブセットを表し、CTIP2抗体は、Fezf2 sesRNAの特異性の過小評価を与える。sesRNA1は、最も高い特異性を示した。J.バイナリーREADRCtip2ベクターを注射されたマウス皮質の冠状断面。mNeonGは、バイナリーREADR標識化細胞を示した。8つのCtip2 sesRNAをスクリーニングした。K.(J)における8つのsesRNAの特異性の定量化。それぞれのsesRNAの特異性を、バイナリーREADRCtip2 AAVおよびCTIP2抗体による共標識化によって計算した(示さない)。sesRNA3およびsesRNA8は、最も高い特異性を示した。
図22A-C】図22。再生のための境界域の心筋細胞の標的化。A.ヒトNppb遺伝子およびmRNA構造。7つのRNAセンサーの場所を示す。B.sesRNA2およびsesRNA3は、GFPレポーター発現によって示される、HEK293T細胞におけるトランスフェクトされたヒトNppb RNAを外部で検出した。C.BZ CMにおけるVEGFAのCellREADR媒介発現のためのベクター設計。VEGFAは、AAVによってDNAベクターとして、またはLNPによってRNAとして送達され得る。
図23A-C】図23。がん(A)CellREADR設計。CellREADRは、5’-センサードメイン(sesRNA)および3’-エフェクタードメイン(efRNA)からなり、T2aコード領域によって分離された、モジュラーreadrRNA分子である。sesRNAは、細胞RNAに相補的であり、efRNA翻訳を防止するSTOPコドンを含有する。sesRNAと標的RNAとの間の塩基対合は、ADARを動員し、これは、AからIの編集を媒介し、UAG STOPをUGG Trpコドンに変換し、エフェクタータンパク質の翻訳のスイッチをオンにする。(B)癌遺伝子センシング:CellREADRを使用して、HEK293T細胞においてHER2 標的RNAを検出する。2つのセンサーを設計した。(C)細胞死誘導:CellREADR媒介および標的RNA依存性細胞死誘導のためのベクター設計(上)。CAGプロモーターは、BFPとそれに続くエフェクターとしてのsesRNAtdT(tdTのためのセンサー)およびtaCasp3-TEVp(活性化カスパーゼ3)をコードする配列の発現を駆動して、細胞死を誘導する。下、発光によって測定される細胞アポトーシスレベルは、CellREADRベクターおよび標的RNAでトランスフェクトされた細胞において増加した。
図24図24。B細胞悪性腫瘍のためのin vivo CAR T療法の概略図。a.LNPは、CellREADR CD19-CAR構築物をパッキングして、CD3+細胞を標的化した。b.LNPカーゴの患者へのi.v.注入。c.CD19-CARを通して悪性B細胞を死滅させるためのT細胞のin vivoトランスフェクション。
図25A図25。クリグラー-ナジャー症候群の処置のためのUTG1A1の遺伝子編集肝細胞の限定的発現。マウス肝細胞系AML12細胞における、Apoa2、A~B、Ahsg、C~D、およびAlb、E~FについてのsesRNA設計および検証。G、ペイロード発現のための2つの戦略。
図25B-C】図25。クリグラー-ナジャー症候群の処置のためのUTG1A1の遺伝子編集肝細胞の限定的発現。マウス肝細胞系AML12細胞における、Apoa2、A~B、Ahsg、C~D、およびAlb、E~FについてのsesRNA設計および検証。G、ペイロード発現のための2つの戦略。
図25D-E】図25。クリグラー-ナジャー症候群の処置のためのUTG1A1の遺伝子編集肝細胞の限定的発現。マウス肝細胞系AML12細胞における、Apoa2、A~B、Ahsg、C~D、およびAlb、E~FについてのsesRNA設計および検証。G、ペイロード発現のための2つの戦略。
図25F-G】図25。クリグラー-ナジャー症候群の処置のためのUTG1A1の遺伝子編集肝細胞の限定的発現。マウス肝細胞系AML12細胞における、Apoa2、A~B、Ahsg、C~D、およびAlb、E~FについてのsesRNA設計および検証。G、ペイロード発現のための2つの戦略。
図26A-B】図26。COVIDスパイクmRNAを標的化するように設計された感染性疾患sesRNA。A.スクリーニングベクター。B.COVIDのスパイクmRNAを検出するCellREADRの例。
図27A図27。in vitro cellREADRシステム。A.IVT CellREADRシステムの概略図。B.標的RNAおよびそれらの対応するRNAセンサーとしてtdTomおよびchetaTomを使用する特異的エフェクター発現を示すルシフェラーゼアッセイ。C.標的RNAに対するIVT cellREADRシステムの用量応答曲線。D.IVT cellREADRシステムの時間経過。
図27B-C】図27。in vitro cellREADRシステム。A.IVT CellREADRシステムの概略図。B.標的RNAおよびそれらの対応するRNAセンサーとしてtdTomおよびchetaTomを使用する特異的エフェクター発現を示すルシフェラーゼアッセイ。C.標的RNAに対するIVT cellREADRシステムの用量応答曲線。D.IVT cellREADRシステムの時間経過。
図27D図27。in vitro cellREADRシステム。A.IVT CellREADRシステムの概略図。B.標的RNAおよびそれらの対応するRNAセンサーとしてtdTomおよびchetaTomを使用する特異的エフェクター発現を示すルシフェラーゼアッセイ。C.標的RNAに対するIVT cellREADRシステムの用量応答曲線。D.IVT cellREADRシステムの時間経過。
【発明を実施するための形態】
【0029】
説明
したがって、本開示の一態様は、(i)センサードメインを含む5’領域であって、センサードメインが、少なくとも1つのADAR編集可能STOPコドンを含む、5’領域、および(ii)センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、エフェクターRNA(efRNA)領域を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、モジュラーreadrRNA分子を提供する。
【0030】
一実施形態では、モジュラーreadrRNA分子は、センサードメインとエフェクターRNA領域との間に位置する自己切断2Aペプチドをコードする配列をさらに含む。一部の実施形態では、自己切断2Aペプチドは、T2A、P2A、E2A、F2A、およびその組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、自己切断2Aペプチドは、T2Aペプチドを含む。
【0031】
他の実施形態では、センサーRNAは、細胞RNAに相補的であるヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、センサーRNAは、mRNAに相補的であるヌクレオチド配列を含む。
【0032】
別の実施形態では、エフェクターRNA(efRNA)は、さまざまなエフェクタータンパク質をコードする。
【0033】
別の態様では、本開示は、少なくとも2つのバイナリー構成要素を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、CellREADRシステムであって、第1の構成要素が、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子を含み、第2の構成要素が、efRNAコードタンパク質に作動可能に連結されているが、必ずしも物理的に連結されていない、efRNA応答遺伝子を含む、システムを提供する。すなわち、第2の構成要素は、efRNAコードタンパク質に応答性である遺伝子を含む。
【0034】
一実施形態では、efRNAコードタンパク質は、転写活性化因子を含む。また、efRNAコード転写活性化因子に応答性である遺伝子は、RNAおよび/またはタンパク質レベルで、その発現を上方調節する。
【0035】
別の実施形態では、efRNAコードタンパク質は、DNAリコンビナーゼを含む。また、リコンビナーゼに応答性である遺伝子は、したがって、組み換えられる。
【0036】
別の実施形態では、モジュラーreadrRNA分子および/またはCellREADRシステムは、送達システム中に存在する。一部の実施形態では、送達システムは、ナノ粒子、リポソーム、ベクター、エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、SENDシステム、およびその組合せからなる群から選択される送達ビヒクルを含む。
【0037】
別の実施形態では、送達システムは、組換えウイルスベクターを含む。一部の実施形態では、組換えウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルス、およびその組合せからなる群から選択される。一実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクターを含む。
【0038】
本開示の別の態様は、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子および/もしくはCellREADRシステム、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子および/もしくはCellREADRシステムを含む送達システム、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0039】
本開示の別の態様は、提供されるモジュラーreadrRNA分子および/もしくはCellREADRシステム、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子および/もしくはCellREADRシステムを含む送達システムを含む細胞を提供する。一部の実施形態では、細胞は、真核細胞を含む。一実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞または植物細胞を含む。
【0040】
本開示の別の態様は、本明細書に提供される細胞を含む動物モデルまたは植物モデルを提供する。
【0041】
本開示の別の態様は、1つもしくは複数のエフェクタータンパク質の細胞状態を定義する細胞RNAの存在もしくは動態を検出する方法、および/またはその翻訳のスイッチをオンにする方法であって、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子および/もしくはCellREADRシステム、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子および/もしくはCellREADRシステムを含む送達システム、または本明細書に提供される医薬組成物を用いて標的エフェクターRNAを検出する/ハイブリダイズするステップであって、センサードメインが、配列特異的塩基対合を通して、特定の細胞型RNAを検出およびそれに結合し、1つまたは複数のADAR編集可能STOPコドンが、翻訳スイッチとして作用し、それによって、エフェクタータンパク質をコードするエフェクターRNAの翻訳を可能にする、ステップを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、方法を提供する。
【0042】
一部の実施形態では、エフェクタータンパク質は、細胞内にある。
【0043】
本開示は、本明細書に提供される組成物を含み、本明細書に提供される対象の方法を行うための、キットをさらに提供する。例えば、一実施形態では、対象のキットは、以下:(i)本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子、(ii)本明細書に提供されるCellREADRシステム、(iii)本明細書に提供されるモジュラーreadrRNAおよび/もしくはCellREADRシステムを含む送達システム、(iv)本明細書に提供される、モジュラーreadrRNA、ならびに/またはCellREADRシステム、ならびに/またはモジュラーreadrRNAおよび/もしくはCellREADRシステムを含む送達システムを含む細胞、ならびに/あるいは(v)本明細書に提供される医薬組成物のうちの1つまたは複数を含み得るか、それからなり得るか、またはそれから本質的になり得る。他の実施形態では、キットは、1つもしくは複数の構成要素および/または使用説明書をさらに含む。
【0044】
細胞におけるマーカー細胞RNA転写物を間接的に検出する方法であって、マーカー細胞RNAが、選択された細胞型の細胞によって優先的に発現され、(i)モジュラーreadrRNAを提供するステップであって、(a)その5’領域が、センサードメインを含み、センサードメインが、少なくとも1つのADAR編集可能停止コドンを含み、(b)3’領域がエフェクタータンパク質をコードするエフェクターRNA(efRNA)ドメインを含み、efRNAドメインが、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、ステップ、(ii)哺乳動物におけるRNA二重鎖の形成、およびADAR酵素によるADAR編集可能停止コドンの編集を可能にする条件下で、細胞をモジュラーreadrRNA分子と接触させるステップであって、モジュラーreadrRNA分子のセンサードメインが、配列特異的塩基対合を通して、選択された細胞型のマーカー細胞RNAに特異的に結合して、RNA二重鎖を形成し、ADAR編集可能STOPコドンが、翻訳スイッチとして作用し、それによって、efRNA領域の翻訳を可能にして、エフェクタータンパク質を産生させる、ステップ、ならびに(iii)エフェクタータンパク質またはその効果を検出するステップを含む、方法が本明細書に記載される。
【0045】
患者における疾患または障害を処置するための方法/システムであって、患者における疾患または障害によって影響を受ける選択細胞または細胞の群が、健康な対照患者由来の選択細胞または細胞の群と比べて、遺伝子の差次的RNA発現を含み、方法が、(i)(a)センサードメインを含む5’領域であって、センサードメインが、少なくとも1つのADAR編集可能停止コドンを含む、5’領域、および(b)エフェクタータンパク質をコードするエフェクターRNA(efRNA)領域を含む3’領域であって、efRNA領域が、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域を含む、モジュラーreadrRNAを提供するステップ、(ii)患者におけるRNA二重鎖の形成、およびADAR酵素によるADAR編集可能停止コドンの編集を可能にする条件下で、選択細胞または細胞の群をモジュラーreadrRNA分子と接触させるステップであって、モジュラーreadrRNA分子のセンサードメインが、配列特異的塩基対合を通して、選択細胞のマーカー細胞RNAに特異的に結合して、RNA二重鎖を形成し、ADAR編集可能STOPコドンが、翻訳スイッチとして作用し、それによって、efRNA領域の翻訳を可能にして、エフェクタータンパク質を産生させる、ステップを含む、方法/システムが本明細書に記載される。一実施形態では、efRNA領域は、標識および/または治療用タンパク質をコードする。別の実施形態では、efRNA領域は、トランス活性化因子をコードし、選択細胞または細胞の群は、トランス活性化因子の制御下の内因性遺伝子を含み、トランス活性化因子の制御下の内因性遺伝子は、治療剤をコードする。別の実施形態では、efRNA領域は、トランス活性化因子をコードし、患者の選択細胞または細胞の群は、トランス活性化因子の制御下の治療用遺伝子をさらに含む。別の実施形態では、細胞は、がん細胞であり、差次的発現する遺伝子は、HER2をコードする。別の実施形態では、細胞型は、転移性がん細胞である。
【0046】
処置方法の別の実施形態では、患者は、感染性疾患に感染しており、差次的発現するRNAは、感染病原体のものである。
【0047】
処置方法の別の実施形態では、患者は、体細胞の単一遺伝子における変動によって引き起こされる単一遺伝子性遺伝子障害を有し、モジュラーreadrRNA分子のセンサードメインは、遺伝子バリアントによって転写された細胞RNAに特異的に結合し、efRNA領域は、正常なmRNA/タンパク質の細胞型特異的相補体をコードする。
【0048】
処置方法の別の実施形態では、患者は、体細胞の単一遺伝子における変動によって引き起こされる単一遺伝子性遺伝子障害を有し、モジュラーreadrRNA分子のセンサードメインは、遺伝子バリアントによって転写された細胞RNAに特異的に結合し、efRNA領域は、トランス活性化因子をコードし、患者の選択細胞または細胞の群は、トランス活性化因子の制御下の正常なmRNA/タンパク質の相補体をコードする遺伝子をさらに含む。
【0049】
処置方法の別の実施形態では、患者は、心筋梗塞(myocardial infection)を有し、選択細胞または細胞の群は、心臓組織の梗塞域を取り囲む境界域(BZ)細胞であり、差次的発現する遺伝子は、NPPB、MYH7、ANKRD1、DES、UCHL1、JUN、およびFOXP1から本質的になる群から選択される。この実施形態のある態様では、エフェクター領域は、VEGFAをコードする。この実施形態の別の態様では、エフェクター領域は、トランス活性化因子をコードし、患者の選択細胞または細胞の群は、トランス活性化因子の制御下のVEGFa遺伝子をさらに含む。この実施形態の別の態様では、差次的発現する遺伝子は、NPPBである。
【0050】
処置方法の別の実施形態では、患者は、神経膠芽腫を有し、選択細胞または細胞の群は、がん性神経膠芽腫細胞であり、差次的RNA発現は、SPARCおよび/またはVIMのものである。この実施形態または本発明それ自身のある態様では、モジュラーreadrRNA分子は、2つのタンデムインフレームセンサードメインを含み、2つのタンデムインフレームセンサードメインの第1は、配列特異的塩基対合を通して、選択細胞のSPARC RNAに特異的に結合して、第1のRNA二重鎖を形成し、2つのタンデムインフレームセンサードメインの第2は、配列特異的塩基対合を通して、選択細胞のVIM RNAに特異的に結合して、第2のRNAを形成し、エフェクタータンパク質は、SPARC RNAおよびVIM RNAの両方の存在下でのみ発現される。本発明のある態様では、SPERC RNAおよびVIM RNAは、RNA転写物の任意の対であり得る。
【0051】
この実施形態および/または本発明それ自身の別の態様では、エフェクターRNA領域は、自殺遺伝子、細胞死誘導遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、および抗腫瘍免疫を増強する遺伝子から選択される。この実施形態および/または本発明それ自身の別の態様では、エフェクターRNA領域は、抗腫瘍免疫を増強し、インターフェロンβをコードする遺伝子である。この実施形態および/または本発明それ自身の別の態様では、エフェクターRNA領域は、自殺遺伝子であり、自殺遺伝子は、チミジンキナーゼおよびシトシンデアミナーゼの群からなる群から選択される1つまたは複数である。この実施形態および/または本発明それ自身の別の態様では、エフェクターRNA領域は、細胞死誘導遺伝子であり、細胞死誘導遺伝子は、カスパーゼ3、カスパーゼ9、BclおよびGSDMのうちの1つまたは複数である。この実施形態および/または本発明それ自身の別の態様では、エフェクターRNA領域は、腫瘍抑制因子であり、腫瘍抑制因子遺伝子は、RbまたはPTENである。この実施形態および/または本発明それ自身の別の態様では、細胞死誘導遺伝子は、構成的に活性である。
【0052】
処置方法の別の実施形態では、患者は、心筋梗塞を有しており、特定の細胞型は、境界域(BZ)心筋細胞であり、標的RNAは、NPPB、MYH7、ANKRD1、DES、UCHL1、JUN、およびFOXP1のうちの1つまたは複数をコードするRNAである。
【0053】
本発明のある態様では、翻訳の際に、エフェクタータンパク質は、細胞内で機能する。この発明のある態様では、エフェクタータンパク質は、細胞から分泌される。
【0054】
処置方法の別の実施形態では、細胞型は、単一遺伝子障害をもたらす単一遺伝子の突然変異を有する細胞である。この実施形態の非限定的な態様では、単一遺伝子障害は、筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、先天性難聴、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、家族性高コレステロール血症、ヘモクロマトーシス、神経線維腫症1型(NF1)、鎌状赤血球症およびテイ-サックス病から選択される。この実施形態のある態様では、エフェクター遺伝子は、単一遺伝子障害をもたらす突然変異を有する単一遺伝子の野生型バージョンをコードする。
【0055】
処置方法の別の実施形態では、患者は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(B NHL)を患っており、efRNAは、抗CD19-CARをコードし、sesRNAは、CD3Eである。この実施形態のある態様では、PCAG-sesRNACD3E-CD19-CARプラスミドまたはin vitro転写mRNAは、i.v.注射によりCD5標的化LNPによって送達されて、T細胞指向性取り込みを増強する。
【0056】
処置方法の別の実施形態では、患者は、クリグラー-ナジャー症候群(CNS)を患っており、SES標的は、Apoa2(アポリポタンパク質A-2)、AHSG(アルファ2-HS糖タンパク質)およびアルブミン(Alb)遺伝子によって転写されるRNAに対して方向付けられ、efRNAは、機能性UGT1A1遺伝子をコードする。
【0057】
本発明のある態様では、モジュラーreadrRNA分子は、DNAベクターによってコードされる。本発明のある態様では、エフェクタータンパク質は、標識である。本発明のある態様では、エフェクタータンパク質は、転写活性化因子または転写抑制因子である。
【0058】
定義
本開示の原理の理解を促進する目的のために、ここに、好ましい実施形態を参照し、特定の言語を使用して、それを記載する。それにもかかわらず、本開示の範囲の限定が、それによって意図されず、本明細書で説明される本開示のそのような変更およびさらなる改変が、本開示が関連する技術分野の当業者が通常想到するとして企図されることが理解されるであろう。
【0059】
本明細書で使用される場合、「停止コドン」という用語は、細胞中でタンパク質合成を停止するシグナルを伝達するDNAまたはメッセンジャーRNA(mRNA)における3つのヌクレオチド(トリヌクレオチド)の配列を指す。
【0060】
メッセンジャーRNAにおける「コドン」は、アミノ酸をコードするヌクレオチドトリプレットに対応する。RNA中の連続コドンは、タンパク質に翻訳可能である。本来は、停止コドンは、mRNAのコード領域の3’末端に位置し、結合放出因子による翻訳の終結をシグナル伝達し、この結合は、リボソームサブユニットを解離させ、それによって、アミノ酸鎖を放出させる。64の異なるトリヌクレオチドコドンが存在する:61の特異的アミノ酸および3つが停止コドンである(すなわち、RNAにおけるUAA、UAGおよびUGA、ならびにDNAにおけるTAA、TAGおよびTGA)。
【0061】
本明細書で使用される場合、「編集可能停止コドン」は、停止コドンから翻訳可能コドンまでの細胞によって編集可能である停止コドンを指す。そのため、RNAでは、UAA、UAGまたはUGAである編集可能停止コドンは、細胞によって、UII、UIG、またはUGIに編集可能である。編集可能停止コドンは、編集可能停止コドンの下流の任意のコドンのための翻訳スイッチとして機能する。停止コドンの編集は、内因性ADAR酵素が存在する細胞中で起こる。
【0062】
停止コドンの「編集」は、編集可能停止コドンを含有する感覚性RNAが、標的RNAとdsRNAを形成し、それによって、内因性ADAR酵素を動員する場合に起こる。ADARは、STOPコドンで作用し、AからIへの編集を行い、このようにして、例えば、UAG STOPをUIG(トリプトファン)コドンに変換し、これは、下流のコドンの翻訳を可能にする。
【0063】
「ADAR」という用語は、RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼを表す曖昧性除去である。ADAR酵素は、二本鎖RNA(dsRNA)に結合し、脱アミノ化によってアデノシンをイノシン(ヒポキサンチン)に変換する。ADARタンパク質は、転写後に作用し、RNAのヌクレオチド含有量を変化させる。RNAにおけるアデノシンからイノシン(AからI)への変換は、正常なA:U対合を破壊し、RNAを不安定化する。イノシンは、イノシンとシトシン(I:C)の結合をもたらすグアニン(G)に構造的に類似している。イノシンは、典型的には、翻訳の間に、グアノシンを模倣するが、ウラシル、シトシン、およびアデノシンにも結合することができるにもかかわらず、これは、好ましくない。
【0064】
本明細書で使用される場合、「readrRNA」は、5’領域および3’領域を有する分子であって、readrRNA分子が、(i)センサー(ses)ドメインを含む5’領域であって、センサードメインが、少なくとも1つのADAR編集可能STOPコドンを含む、5’領域、および(ii)センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、エフェクターRNA(efRNA)領域を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、分子を指す。
【0065】
readrRNAでは、ADAR編集可能停止コドンは、センサーRNA内、およびインフレームエフェクターコード領域の上流に位置する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ADAR編集可能STOPコドン」は、ADARによって細胞中で編集可能である停止コドンを指す。Schneider, M. F., Wettengel, J., Hoffmann, P. C., & Stafforst, T. (2014). Optimal guide RNAs for re-directing deaminase activity of hADAR1 and hADAR2 in trans. Nucleic acids research, 42(10), e87. https://doi.org/10.1093/nar/gku272
【0067】
本明細書で使用される場合、「センサードメイン」は、readrRNAの一部分を形成するヌクレオチドの連続セットを指し、ここで、センサードメインは、少なくとも1つの編集可能停止コドンおよび下流のエフェクタードメインも含む。センサードメインは、配列特異的塩基対合を通して、特定の細胞型のRNAに相補的である連続ヌクレオチドを含有する。センサードメインは、少なくとも10ヌクレオチド~少なくとも1000ヌクレオチド、またはそれよりも多くを含む、任意の数のヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、センサードメインは、約100~約900ヌクレオチドを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。別の実施形態では、センサードメインは、約200ヌクレオチド~約300ヌクレオチドの範囲を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。センサードメインは、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000またはそれよりも多くの連続ヌクレオチドの長さであってもよい。
【0068】
センサードメイン中の少なくとも1つの編集可能停止コドンは、readrRNAのセンサードメイン内のどこかに位置する。センサードメインは、readrRNA分子中で5’から3’の方向を有し、上流(5)’部分および下流(3)’部分を含む。編集可能停止コドンは、センサードメインの上流部分またはセンサードメインの下流部分に位置し得る。編集可能停止コドンは、センサードメインの中央に近いセンサードメインの上流部分に位置していてもよく、または編集可能停止コドンは、センサードメインの下流の末端に近いセンサードメインの下流部分に位置していてもよい。例えば、センサードメインが、600ヌクレオチドの長さであり、空間的に半分に分割される場合、第1のヌクレオチドは、センサードメインの5’末端を表し、300番目のヌクレオチドは、センサードメインの中央を表し、センサードメインの最後(600番目)のヌクレオチドは、センサードメインの3’末端を表し、編集可能停止コドンは、センサードメインの上流部分、または下流部分、または中央の近傍に位置し得る。およそ同じ長さを有するセンサードメインが4分の1に分割される場合、編集可能停止コドンは、センサードメインの第1の4分の1部分(ヌクレオチド1~250)、センサードメインの第2の4分の1部分(ヌクレオチド150~300)、センサードメインの第3の4分の1部分(ヌクレオチド300~450)、またはセンサードメインの第4の4分の1部分(ヌクレオチド450~600)に位置し得る。そのため、所与の長さのセンサードメインについて、編集可能停止コドンは、センサードメインの選択された部分に位置し得る。一般に、編集可能停止コドンは、センサードメインの下流の半分、またはセンサードメインの下流の4分の1に位置し得る。編集可能停止コドンを含有するセンサードメインの選択された部分は、センサードメインの3’末端の10~50ヌクレオチド内にあり得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、「エフェクターRNA(efRNA)」は、エフェクタータンパク質を翻訳可能であるおよびコードする、RNAである。
【0070】
「エフェクタータンパク質」は、エフェクターRNAドメインによってコードされ、それが発現される細胞に対する効果を有する、タンパク質である。エフェクタータンパク質は、細胞中で、エフェクターRNAから翻訳され、したがって、それをコードするRNAのようなエフェクタータンパク質は、同じ内因性タンパク質を含有していてもよく、含有していなくてもよい、細胞に導入される。エフェクタータンパク質は、それが翻訳される細胞に対する、または細胞から分泌された場合に、周囲の細胞に対する効果を有するタンパク質である。エフェクタータンパク質の非限定的な例としては、酵素、検出可能タンパク質、サイトカイン、毒素、ポリメラーゼ、転写もしくは翻訳因子、腫瘍抑制因子、神経活性化因子もしくは抑制因子、アポトーシス性タンパク質、または生理学的因子が挙げられる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「エフェクターRNA(efRNA)領域」は、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、エフェクターRNAを含むreadrRNAの一部分を指す。
【0072】
エフェクターRNA(efRNA)は、目的のエフェクタータンパク質をコードし得る。所望のエフェクタータンパク質の選択は、十分に当業者の技能内であり、readrRNAの所望の使用の文脈に依存する。例えば、所与の疾患を処置することが所望される場合、エフェクタータンパク質は、疾患を確立するおよび/または長引かせるために重要である細胞に対する阻害効果をそれが有することに基づいて選択されてもよい。例えば、CellREADR(efRNA)のエフェクターモジュールは、活性および機能を増強すること、活性および機能を抑制すること、欠失または突然変異タンパク質のインタクトバージョンを再導入することによって突然変異細胞の機能をレスキューすること、活性および機能を変更および編集すること、細胞のアイデンティティー、運命および機能を初期化すること、細胞型を死滅および除去すること、ある種類の細胞数の産生を増加または減少させること、ならびに細胞型特異的ゲノム編集および遺伝子調節を含む、複数の方法で、細胞を操作するように構築され得る。
【0073】
一態様では、モジュラーreadrRNAのエフェクター(efRNA)ドメインは、検出可能タンパク質もしくは検出可能タンパク質断片(標識)、および/または転写活性化因子もしくは抑制因子をコードする。
【0074】
エフェクターの非限定的な例を下記の表1にリストする。表1は、本発明に従って有用なエフェクタータンパク質(ペイロード)の非限定的なリスト、および細胞に対するそれらの効果を提供する。
【0075】
【表1】
【0076】
エフェクターRNA「ペイロード」の文脈における「ペイロード」という用語は、エフェクタータンパク質をコードするRNAによってコードされるタンパク質を意味する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「細胞型」という語句は、生物、器官、組織、細胞の集団、もしくは細胞系、またはハイブリドーマ、同種細胞集団、もしくは異種細胞集団、休止もしくは静止もしくは活性化されている細胞、または形質転換もしくは罹患もしくはストレスもしくは炎症もしくはヒートショックを受けている細胞の体細胞であるか、あるいはRNAの差次的発現を通して同定され得る、自然免疫系の一部、天然免疫系の一部、幹細胞、多能性幹細胞、腸幹細胞、幹細胞、胎児細胞、ホメオスタシスに寄与する細胞、心臓もしくは血管関連細胞、消化器系の細胞、神経系の細胞、骨格構造の細胞、器官の細胞である。
【0078】
おそらく、あらゆる細胞またはその群は、異なり、単一細胞RNA解析は、細胞の系統、その活性化状態、発達の状態、他の細胞、組織および器官との相互作用の結果としてその状態、可溶性分子、ならびに/または細胞が罹患、形質転換もしくは感染しているかに関して、この多様性の証拠が得られている。
【0079】
本明細書で使用される場合、「自己切断2Aペプチド」または「2Aペプチド」という用語は、細胞におけるタンパク質の翻訳の間にリボソームスキッピングを誘導し得る18~22アミノ酸長のペプチドのクラスを指す。これらのペプチドは、DxExNPGPのコア配列モチーフを共有し、広範囲のウイルスファミリーで見出され、リボソームがペプチド結合を作るのを失敗させることによって、ポリタンパク質の生成を助ける。2Aペプチドの好適な例としては、限定されるものではないが、T2A、P2A、E2A、F2Aなどが挙げられる(Liu, Ziqing et al. "Systematic comparison of 2A peptides for cloning multi-genes in a polycistronic vector." Scientific reports vol. 7,1 2193. 19 May. 2017, doi:10.1038/s41598-017-02460-2)。そのような自己切断2Aペプチドの1つは、T2Aペプチドを含む。
【0080】
いくつかの2Aペプチドは、ピコルナウイルス、昆虫ウイルス、およびC型ロタウイルスにおいて同定されている。本明細書で使用される場合、T2Aは、トセアアシグナウイルス2Aにおいて同定された2Aペプチドであり、P2Aは、ブタテッショウウイルス-1 2Aにおいて同定された2Aペプチドであり、E2Aは、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2Aにおいて同定された2Aペプチドであり、F2Aは、口蹄疫ウイルス(FMDV)の自己切断2Aペプチドとして同定された2Aペプチドである。以下の表は、さまざまな2AペプチドのDNAおよび対応するアミノ酸配列を提供する。下線付きの配列は、アミノ酸GSGをコードし、これは、切断効率を改善するために設計された、ネイティブ2A配列に対する必要に応じた付加の例であり、P2Aは、ブタテッショウウイルス-1 2A、T2Aは、トセアアシグナウイルス2A、E2Aは、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A、F2Aは、FMDV 2Aを示す。これは、Kim J.H.et al. (High Cleavage Efficiency of a 2A Peptide Derived from Porcine Teschovirus-1 in Human Cell Lines, Zebrafish and Mice) PLoS One. 2011; 6(4): e18556. Published online 2011 Apr 29. doi: 10.1371/journal.pone.0018556の表1が出典である。
【0081】
【表2】
【0082】
本明細書で使用される場合、「自己切断2Aペプチドをコードする配列」は、上記に記載される自己切断2Aペプチドをコードする、核酸、好ましくは、RNAである。本発明によれば、自己切断2Aペプチドをコードする配列は、典型的には、センサードメインとエフェクターRNA領域との間に位置する。
【0083】
「モジュラー」という用語は、「モジュラーreadrRNA分子」という語句の文脈で使用される場合、核酸レベル、好ましくは、RNAレベルで設計されたタンパク質ドメインをコードする核酸配列(好ましくは、RNA配列)を含む組換えreadrRNA分子を指し、ここで、異なるタンパク質ドメインは、特定の数のリピート(0を含む)で、所望の順序で、組換えreadrRNA分子において、アセンブルされ得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、「CellREADR」は、「内因性ADAR[RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ]によるRNAセンシングを通した細胞アクセス」を表し、これは、ADAR編集可能STOPコドンによるなどのすべての動物細胞に遍在性の編集メカニズムの、5’センサー-編集-スイッチ領域(sesRNA)および3’エフェクターコード領域(ef RNA)からなり、自己切断ペプチドT2Aをコードする連結配列によって分離された、単一のモジュラーReadr RNA分子として設計される。CellREADRは、細胞RNAの存在を検出するため、ならびにエフェクタータンパク質の翻訳のスイッチをオンにして、細胞型の生理、機能および/または構造をモニターおよび操作するためのメカニズムを提供する。以下の表3は、濃縮されたmRNAの指標とともに、さまざまな組織の細胞型を提供する。
【0085】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0086】
本明細書で使用される場合、「CellREADRシステム」は、以下の構成要素を含む:(i)選択された細胞RNAの一部分に相補的であるヌクレオチドの連続セットを含むセンサーRNAドメイン、(ii)エフェクタータンパク質をコードするエフェクターRNA(efRNA)ドメインであって、efRNAドメインが、センサーRNAドメインの下流にあり、それとインフレームにある、efRNAドメイン、(iii)センサーRNAドメイン内にあるか、またはセンサーとエフェクターRNAドメインとの間にあるADAR編集可能STOPコドン、ならびに(iv)第2のタンパク質コード核酸、または遺伝子制御エレメントを必要に応じて含む遺伝子であって、ここで(iv)は、センサーRNAおよびエフェクターRNAドメインに物理的に連結されていてもよく、または連結されていなくてもよい。CellREADRシステムは、readrRNAに物理的に連結されていない(例えば、別々のベクター上の)外因性遺伝子(DNAまたはRNA)を含み得る。CellREADRシステムは、readrRNA核酸を含有する細胞を含んでいてもよく、核酸は、第2のタンパク質をコードし、細胞は、多細胞の生物、植物、動物、またはヒトへの送達のために使用される。
【0087】
本明細書で使用される場合、「送達システム」は、モジュラーreadrRNA分子および/またはCellREADRシステムを投与するためのビヒクルを含むシステムを指し、ここで、ビヒクルには、限定されるものではないが、ナノ粒子、リポソーム、ベクター、エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、SENDシステム、およびその組合せが含まれる。
【0088】
「SENDシステム」は、ヒトゲノム中に存在するレトロエレメントに基づくヒト化ウイルス様粒子(VLP)を含むmRNA送達システムである(Segel M, et al. Mammalian retrovirus-like protein PEG10 packages its own mRNA and can be pseudotyped for mRNA delivery. Science. 2021;373:882-889. doi: 10.1126/science.abg6155)。そのような送達システムのベクターとしては、限定されるものではないが、組換えウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルス、およびその組合せが挙げられる。一実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクターを含む。
【0089】
本明細書で使用される場合、「翻訳スイッチ」は、ADAR編集可能STOPコドン構成要素を含むreadrRNA分子の構成要素であり、これは、標的RNAに相補的な上流のセンサーRNAに結合して、二本鎖RNA構造を形成する際に、その後のAUG停止コドンのADAR媒介編集をもたらし、エフェクタータンパク質をコードする下流RNAの翻訳をもたらす。
【0090】
本明細書で使用される場合、「細胞状態を定義する細胞RNA」は、目的の選択細胞または細胞の群に存在する1つまたは複数のRNA配列を指し、その存在が、限定されるものではないが、特定の細胞の生理、細胞の特定の発達段階、細胞の特定の形質転換、または細胞の活性化状態を含む、所与の細胞の状態を同定する。
【0091】
すなわち、細胞の特定の生理は、大部分では、RNA転写物の固有のレパートリーのその発現によって決定される。RNA転写物の固有のレパートリーは、目的の特定の細胞もしくは細胞の群を同定するか、または目的の特定の細胞もしくは細胞の群の特定の活性化状態を同定するか、または目的の特定の細胞もしくは細胞の群の特定の発達段階を同定するか、または目的の細胞もしくは特定の細胞もしくは細胞の群の多数の生理学的状態のうちのいずれか1つを同定する1つの手段である。
【0092】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、線状または分枝状であってもよく、これは、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。この用語は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作、例えば、標識化構成要素とのコンジュゲーションによって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。
【0093】
本明細書に提供されるポリペプチドおよび分子の文脈では、「融合」、「融合された」、「組み合わせ」、および「連結された」という用語は、本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲーションまたは組換え手段を含むどんな手段によっても、2つより多くのタンパク質構成要素を一緒に接続することを指す。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結された」とは、連結されているDNA配列が、連続的であり、リーディング段階またはインフレームにあることを意味する。本明細書で使用される場合、「インフレーム(in-frame)」または「インフレーム(in frame)」という用語は、元のオープンリーディングフレーム(ORF)の正しいリーディングフレームを維持する様式で、2つまたはそれよりも多くのORFを接続して、連続的なより長いORFを形成することを指す。そのため、得られた組換え分子は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つまたはそれよりも多くのセグメントを含有する単一タンパク質である(このセグメントは、通常、天然でそのように結合していない)。
【0094】
ポリペプチドの文脈では、「線状配列」または「配列」は、配列中の互いに隣接する残基が、ポリペプチドの一次構造中で連続的である、アミノ末端からカルボキシル末端への方向のポリペプチド中のアミノ酸の順序である。「部分配列」は、一方向または両方向で追加の残基を含むことが公知のポリペプチドの部分の線状配列である。
【0095】
「異種」とは、比較される実体の残部とは遺伝子型的に異なる実体に由来することを意味する。例えば、そのネイティブコード配列から除去され、ネイティブ配列以外のコード配列に作動可能に連結されたグリシンリッチ配列は、異種グリシンリッチ配列である。ポリヌクレオチド、ポリペプチドに適用される「異種」という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、比較される実体の残部のものとは遺伝子型的に異なる実体に由来することを意味する。
【0096】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は互換的に使用される。それらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそのアナログのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有していてもよく、公知または未知の任意の機能を行ってもよい。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、連鎖解析から定義される遺伝子座(複数可)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーのアセンブリーの前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後に、例えば、標識化構成要素とのコンジュゲーションによってさらに修飾されてもよい。
【0097】
「に相補的な」、「ポリヌクレオチドの相補体」という語句は、逆方向の塩基配列を有する核酸と塩基対合する、5’から3’または3’から5’の方向の塩基配列を有する相補性を有するポリヌクレオチド核酸分子を表す。本明細書で記載される場合、センサーRNAは、不可避のミスマッチコドン(好ましくは、センサーRNA中のAUG)を除いて、特定の標的RNAに相補的である。
【0098】
センサードメインの文脈における「細胞RNAに相補的である部分」という語句は、細胞RNAの対応する連続ヌクレオチドと塩基対合することが可能なセンサー核酸ドメインの連続ヌクレオチドを指す。
【0099】
センサードメインの文脈における「メッセンジャーRNA(mRNA)に相補的である部分」という語句は、mRNAの対応する連続ヌクレオチドと塩基対合することが可能なセンサー核酸ドメインの連続ヌクレオチドを指す。
【0100】
「細胞RNA」という用語は、デオキシリボヌクレオチドを含んでいてもよいが、実質的にリボヌクレオチドであるヌクレオチドから構成される細胞中の核酸を指す。細胞RNAの種類としては、限定されるものではないが、mRNA、rRNA、tRNA、およびマイクロRNAが挙げられる。細胞RNAは、ミスマッチを編集および修復するようにADARを引き付ける、ミスマッチを含有するセンサーRNAと核酸二重鎖を形成するのに十分な長さを有する。したがって、細胞RNAは、少なくとも10残基の長さであり、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000ヌクレオチドの長さ、またはそれよりも長くてもよい。
【0101】
ポリヌクレオチドに適用される「組換え」は、ポリヌクレオチドが、in vitroクローニング、制限および/またはライゲーションステップ、ならびに宿主細胞において潜在的に発現され得る構築物をもたらす他の手順のさまざまな組合せの産物であることを意味する。
【0102】
「遺伝子」または「遺伝子断片」という用語は、本明細書で互換的に使用される。それらは、転写および翻訳された後に、特定のタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。「遺伝子」という用語は、オープンリーディングフレームだけでなく、適切な転写因子の存在下でオープンリーディングフレームの転写を開始するように、オープンリーディングフレームと作動可能に会合する少なくともプロモーターを含む。遺伝子または遺伝子断片は、ポリヌクレオチドが、少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有し、これが、コード領域全体またはそのセグメントをカバーし得る限り、ゲノムまたはcDNAであり得る。「融合遺伝子」は、一緒に連結されている少なくとも2つの異種ポリヌクレオチドから構成される遺伝子である。
【0103】
「相同性」または「相同」は、2つもしくはそれよりも多くのポリヌクレオチド配列、または2つもしくはそれよりも多くのポリペプチド配列間の配列の類似性または互換性を指す。2つの異なるアミノ酸配列間の配列の同一性、類似性または相同性を決定するためにBestFitなどのプログラムを使用する場合、デフォルト設定が使用されてもよく、または適切なスコアリング行列、例えば、blosum45またはblosum80が、同一性、類似性または相同性スコアを最適化するために選択されてもよい。好ましくは、相同であるポリヌクレオチドは、本明細書に定義されるストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、その配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、95%、より好ましくは、97%、より好ましくは、98%、さらにより好ましくは、99%の配列同一性を有するものである。
【0104】
本明細書で使用される場合、「処置」、「治療」および/または「治療レジメン」は、患者によって呈されるか、または患者が感受性であり得る、疾患、障害または生理学的状態に応答して行われる臨床介入を指す。処置の目的には、症状の軽減もしくは防止、疾患、障害もしくは状態の進行もしくは悪化を遅延させることもしくは停止させること、および/または疾患、障害もしくは状態の寛解が含まれる。本明細書で使用される場合、「防止する」、「防止すること」、「防止」、「予防的処置」などの用語は、疾患、障害もしくは状態を有していないが、それを発生するリスクがあるまたはその疑いがある対象において、疾患、障害または状態の発生する確率を低減することを指す。「有効量」または「治療有効量」という用語は、有利なまたは所望の生物学的および/または臨床結果を生じるのに十分な量を指す。
【0105】
本明細書で使用される有効量は、さまざまな文脈において、疾患の症状の発生を遅延させる、疾患の症状の経過を変更する(例えば、限定されるものではないが、疾患の症状の進行を遅延させる)、または疾患の症状を反転させるのに十分な量も含む。そのため、正確な「有効量」を規定することは一般に実現可能ではない。しかしながら、任意の所与の事例について、適切な「有効量」は、ルーチン的な実験のみを使用して、当業者によって決定することができる。
【0106】
有効量、毒性、および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死の用量)およびED50(集団の50%が治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。任意の特定の投薬量の効果は、好適なバイオアッセイ、例えば、数ある中でも、腫瘍成長および/またはサイズについてのアッセイによってモニターすることができる。投薬量は、医師によって決定することができ、必要により、処置の観察された効果を満足させるために調整され得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、薬剤、例えば、治療実体を動物または細胞に「投与すること」という用語は、意図される標的に物質を分配すること、送達することまたは適用することを指すことが意図される。治療剤の観点から、「投与すること」という用語は、非経口または経口経路、筋肉内注射、皮下/皮内注射、静脈内注射、くも膜下腔内投与、頬側投与、経皮送達、外用投与、および鼻腔内または気道経路による投与のいずれかによる送達を含む、動物における所望の場所への治療剤の送達のための任意の好適な経路によって、対象に治療剤を接触させることもしくは分配すること、送達すること、または適用することを指すことが意図される。
【0108】
本明細書で使用される「生体試料」という用語には、限定されるものではないが、対象から単離された、組織、細胞、および/または体液を含有する試料が含まれる。生体試料の例としては、限定されるものではないが、組織、細胞、生検、血液、リンパ液、血清、血漿、尿、唾液、粘液、および涙液が挙げられる。生体試料は、直接対象から(例えば、血液または組織サンプリングによって)、または第三者から(例えば、ヘルスケア提供者または実験助手などの仲介者から受け取る)得てもよい。
【0109】
本明細書で使用される場合、「状態および/または疾患」という用語には、限定されるものではないが、生物の一部分に影響を及ぼす構造または機能の任意の異常な状態および/または障害が含まれる。これは、外部要因、例えば、感染性疾患によって、または、内部機能障害、例えば、がん、がん転移、遺伝性障害/突然変異(先天性および環境的の両方)などによって引き起こされ得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、遺伝子中に根本的な遺伝的突然変異を含む単一遺伝子体細胞障害は、単一遺伝子のバリアントによって引き起こされる単一遺伝子(monogenetic)障害を指す。バリアントは、染色体の対の一方または両方に存在し得る。単一遺伝子障害の非限定的な例は、嚢胞性線維症、ハンチントン病および鎌状赤血球症である。
【0111】
当技術分野で公知であるように、がんは、一般に、未制御の細胞成長と考えられる。本発明の方法を使用して、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病を含む、任意のがん、およびその任意の転移を処置することができる。そのようながんのより特定の例としては、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、結腸直腸がん、子宮頸がん、子宮内膜癌、唾液腺癌、中皮腫、腎臓がん、外陰部がん、膵臓がん、甲状腺がん、肝癌、皮膚がん、黒色腫、脳がん、神経芽細胞腫、骨髄腫、さまざまな種類の頭頸部がん、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫および末梢性神経上皮腫が挙げられる。
【0112】
例えば、「試料を接触させること」におけるような、本明細書で使用される「接触させること」は、in vitro、ex vivo、またはin vivo(すなわち、本明細書に定義される対象内)で、直接的または間接的に、試料または細胞と接触させることを指す。試料を接触させることには、化合物(例えば、本明細書に提供されるreadrRNA分子および/または本明細書に提供されるreadrRNA分子を含む送達システム)の試料への添加、または対象への投与が含まれ得る。接触させることは、溶液、細胞、組織、哺乳動物、対象、患者、またはヒトへの投与を包含する。さらに、細胞を接触させることには、薬剤を細胞培養物に添加することが含まれる。
【0113】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、ヒトおよび非ヒト動物の両方を指す。本開示の「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが含まれる。本明細書に開示される方法および組成物は、in vitroで(例えば、単離された細胞または組織)、または対象(すなわち、生体、例えば、患者)においてin vivoでのいずれかで、試料に対して使用することができる。
【0114】
「減少させる」、「低減された」、「低減」、および「阻害する」という用語はすべて、統計学的に有意な量の減少を意味するために本明細書で使用される。一部の実施形態では、「低減する」、「低減」または「減少させる」または「阻害する」とは、典型的には、参照レベル(例えば、所与の処置または薬剤の非存在)と比較して、少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれよりも高い減少を含み得る。本明細書で使用される場合、「低減」または「阻害」は、参照レベルと比較して、完全阻害または低減を包含しない。「完全阻害」は、参照レベルと比較して、100%の阻害である。減少は、好ましくは、所与の障害を有さない個体についての正常範囲内として許容されるレベルへの低下であり得る。
【0115】
「増加した」、「増加させる」、「増強する」、または「活性化する」という用語はすべて、統計学的に有意な量の増加を意味するために本明細書で使用される。一部の実施形態では、「増加した」、「増加させる」、「増強する」、または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して、少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは最大で100%の増加を含む増加、または10~100%の間の任意の増加、あるいは参照レベルと比較して、少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍、もしくはそれよりも高い任意の増加を意味し得る。マーカーまたは症状の文脈では、「増加させる」は、そのようなレベルの統計学的に有意な増加である。
【0116】
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、げっ歯類、家畜動物または狩猟動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが挙げられる。家畜動物および狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、水牛、ネコ科の種、例えば、飼い猫、イヌ科の種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類の種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、および魚類、例えば、トラウト、ナマズおよびサケが挙げられる。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。「個体」、「患者」および「対象」という用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0117】
好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、がんの動物モデルを表す対象として有利に使用され得る。対象は、雄または雌であり得る。
【0118】
対象は、処置を必要とする状態(例えば、がん)またはそのような状態に関連する1つもしくは複数の合併症を患っているまたはそれを有していると以前に診断もしくは同定されており、必要に応じて、状態または状態に関連する1つもしくは複数の合併症のための処置を既に受けているものであり得る。あるいは、対象はまた、状態または状態に関連する1つもしくは複数の合併症を有すると以前に診断されていないものであり得る。例えば、対象は、状態または状態に関連する1つもしくは複数の合併症についての1つもしくは複数のリスク因子を示すもの、またはリスク因子を示さない対象であり得る。
【0119】
特定の状態のための処置を「必要とする対象」は、その状態を有する、その状態を有すると診断された、またはその状態を発生するリスクがある、対象であり得る。
【0120】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチド(またはそのようなポリペプチドをコードする核酸)は、本明細書に記載されるアミノ酸配列のうちの1つの機能的断片であり得る。本明細書で使用される場合、「機能的断片」は、本明細書の下記に記載されるアッセイに従って、野生型参照ポリペプチドの活性の少なくとも50%を保持する、ペプチドの断片またはセグメントである。機能的断片は、本明細書に開示される配列の保存的置換を含み得る。
【0121】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、本明細書に記載される配列のバリアントであり得る。一部の実施形態では、バリアントは、保存的に修飾されたバリアントである。保存的置換バリアントは、例えば、ネイティブヌクレオチド配列の突然変異によって得ることができる。「バリアント」は、本明細書で言及される場合、ネイティブまたは参照ポリペプチドと実質的に相同であるが、1つまたは複数の欠失、挿入または置換を理由として、ネイティブまたは参照ポリペプチドのものと異なるアミノ酸配列を有する、ポリペプチドである。バリアントポリペプチドをコードするDNA配列は、ネイティブまたは参照DNA配列と比較した場合に、ヌクレオチドの1つまたは複数の付加、欠失、または置換を含むが、活性を保持するバリアントタンパク質またはその断片をコードする、配列を包含する。多種多様なPCRに基づく部位特異的突然変異誘発アプローチは、当技術分野において公知であり、当業者によって適用され得る。
【0122】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸置換または修飾を含み得る。一部の実施形態では、置換および/または修飾は、対象において、タンパク質分解を防止もしくは低減することができ、および/またはポリペプチドの半減期を延長することができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、非限定的な例の目的で、トランスフェリン(W006096515A2号)、アルブミン(Yeh et al., 1992)、成長ホルモン(US2003104578AA号)、セルロース(Levy and Shoseyov, 2002)、および/またはFc断片(Ashkenazi and Chamow, 1997)によって、それを他のポリペプチドまたはポリペプチドドメインにコンジュゲートまたは融合することによって修飾され得る。前述の段落における参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸配列」という用語は、リボ核酸、デオキシリボ核酸、またはそのアナログの組み込み単位である、任意の分子、好ましくは、ポリマー分子を指す。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。一本鎖核酸は、変性二本鎖DNAの1つの核酸鎖であり得る。あるいは、これは、任意の二本鎖DNAに由来しない一本鎖核酸であり得る。一態様では、核酸は、DNAであり得る。別の態様では、核酸は、RNAであり得る。好適なDNAには、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAが含まれ得る。好適なRNAには、例えば、mRNAが含まれ得る。
【0124】
「発現」という用語は、RNAおよびタンパク質、ならびに適切な場合、分泌タンパク質の産生に関与する細胞プロセスを指し、適用可能な場合、限定されるものではないが、例えば、転写、転写物のプロセシング、翻訳およびタンパク質フォールディング、修飾、ならびにプロセシングを含む。発現は、本発明の1つもしくは複数の核酸断片に由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積、ならびに/またはポリペプチドへのmRNAの翻訳を指し得る。
【0125】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、組織特異的である。一部の実施形態では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、網羅的である。一部の実施形態では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、全身的である。
【0126】
「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、および遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドが含まれる。「遺伝子」という用語は、適切な調節配列に作動可能に連結された場合に、in vitroまたはin vivoで、RNAに転写される核酸配列(DNA)を意味する。遺伝子は、コード領域に先行するおよびそれに続く領域、例えば、5’非翻訳(5’UTR)または「リーダー」配列、および3’UTRまたは「トレーラー」配列、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含んでいてもよく、または含んでいなくてもよい。
【0127】
「作動可能に連結された」は、そのように記載される構成要素が、それらの通常の機能を行うように構成されている、エレメントの配置を指す。そのため、コード配列に作動可能に連結された制御エレメントは、コード配列の発現を生じさせることができる。制御エレメントは、それらがその発現を方向付けるように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。そのため、例えば、介在するまだ翻訳されていないが転写された配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、プロモーター配列は、依然として、コード配列に「作動可能に連結された」と考えられる。さらに、それらは、物理的に連結されている必要はない。
【0128】
本発明の文脈における「マーカー」は、対照対象(例えば、健康な対象)から得た同等の試料と比較して、糖尿病またはがんを有する対象から得られた試料中に差次的に存在する、発現産物、例えば、核酸またはポリペプチドを指す。「バイオマーカー」という用語は、「マーカー」という用語と互換的に使用される。
【0129】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、少なくとも1つのマーカーのレベルを測定すること、検出すること、または決定することに関する。本明細書で使用される場合、「検出すること」または「測定すること」という用語は、例えば、試料中の分析物の存在を示す、プローブ、標識、または標的分子からのシグナルを観察することを指す。特定の標識部分を検出するための当技術分野において公知の任意の方法を、検出のために使用することができる。例示的な検出方法としては、限定されるものではないが、分光学的、蛍光、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的方法が挙げられる。態様のいずれかの一部の実施形態では、測定することは、定量的観察であり得る。
【0130】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、または細胞は、操作することができる。本明細書で使用される場合、「操作された」は、人の手によって操作されている態様を指す。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチド、例えば、その配列の少なくとも1つの態様が、それが天然に存在する態様と異なるように人の手によって操作されている場合、「操作されている」と考えられる。通常のプラクティスであるように、および当業者によって理解されるように、操作された細胞の子孫は、典型的には、実際の操作が以前の実体に対して行われていたとしても、依然として「操作された」と称される。
【0131】
「外因性」という用語は、そのネイティブ起源以外の細胞中に存在する物質を指す。「外因性」という用語は、本明細書で使用される場合、人の手を含むプロセスによって、生物システムに導入された、核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)またはポリペプチド、例えば、それが通常見出されない細胞または生物であり、そのような細胞または生物に核酸またはポリペプチドを導入することを望むものを指し得る。あるいは、「外因性」は、人の手を含むプロセスによって、生物システムに導入された、核酸またはポリペプチド、例えば、比較的低い量で見出され、細胞または生物における核酸またはポリペプチドの量を増加させること、例えば、異所性発現またはレベルを作出することを望むものである細胞または生物を指し得る。対照的に、「内因性」という用語は、生物システムまたは細胞に対してネイティブである物質を指す。本明細書で使用される場合、「異所性」は、普通ではない場所および/または量で見出される物質を指す。異所性物質は、所与の細胞中で通常見出されるが、非常に低い量および/または異なる時に見出されるものであり得る。異所性は、その天然環境中で所与の細胞において天然に見出されないまたは発現されない、物質、例えば、ポリペプチドまたは核酸も含む。
【0132】
本明細書に記載される態様の一部では、本明細書に記載される所与のポリペプチドをコードする核酸配列、またはその任意のモジュールは、ベクターに作動可能に連結されている。「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、宿主細胞への送達のため、または異なる宿主細胞間の移入のために設計された核酸構築物を指す。本明細書で使用される場合、ベクターは、ウイルスまたは非ウイルスであり得る。「ベクター」という用語は、適した制御エレメントと会合した場合に複製でき、遺伝子配列を細胞に移入することができる、任意の遺伝エレメントを包含する。ベクターとしては、限定されるものではないが、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、およびビリオンが挙げられ得る。
【0133】
態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、組換えであり、例えば、これは、少なくとも2つの異なる起源を起源とする配列を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、少なくとも2つの異なる種を起源とする配列を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、少なくとも2つの異なる遺伝子を起源とする配列を含み、例えば、これは、少なくとも1つの非ネイティブ(例えば、異種)遺伝子制御エレメント(例えば、プロモーター、抑制因子、活性化因子、エンハンサー、応答エレメントなど)に作動可能に連結されている、発現産物をコードする融合タンパク質または核酸を含む。
【0134】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写調節配列に連結された配列から、RNAまたはポリペプチドの発現を方向付ける、ベクターを指す。発現される配列は、必ずしもではないが、多くの場合に、細胞に対して異種である。発現ベクターは、追加のエレメントを含んでいてもよく、例えば、発現ベクターは、2つの複製システムを有していてもよく、このようにして、2つの生物、例えば、発現のためにヒト細胞において、ならびにクローニングおよび増幅のために原核宿主において、それを維持することを可能にする。
【0135】
本明細書で使用される場合、「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の少なくとも1つのエレメントを含み、ウイルスベクター粒子にパッケージングされる能力を有する、核酸ベクター構築物を指す。ウイルスベクターは、非必須ウイルス遺伝子の代わりに、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸を含有することができる。ベクターおよび/または粒子は、in vitroまたはin vivoのいずれかで、任意の核酸を細胞に移入する目的のために利用され得る。多数の形態のウイルスベクターが、当技術分野において公知である。
【0136】
本明細書に記載されるベクターが、一部の実施形態では、他の好適な組成物および治療と組み合わされ得ることが理解されるべきである。一部の実施形態では、ベクターは、エピソームである。好適なエピソームベクターの使用は、高コピー数の外部染色体DNAで、対象において、目的のヌクレオチドを維持し、それによって、染色体の組み込みの潜在的な効果を排除する手段を提供する。
【0137】
態様のいずれかの一部の実施形態では、処置の予防的方法が本明細書に記載される。本明細書で使用される場合、「予防的」は、疾患または症状に対する処置のタイミングおよび意図を指し、すなわち、処置は、疾患または症状から患者を保護するために、その特定の疾患または症状の臨床検出または診断の前に投与される。予防的処置は、疾患もしくは症状の重症度もしくはその発生のスピードの低減を包含し得るか、または疾患もしくは症状からのより早い回復に寄与し得る。したがって、本明細書に記載される方法は、転移または腫瘍形成に対して予防的であり得る。態様のいずれかの一部の実施形態では、予防的処置は、疾患のすべての症状または兆候の防止ではない。
【0138】
本明細書で使用される場合、「組合せ」は、例えば、同じ対象への投与のための、一緒に使用するための2つまたはそれよりも多くの物質の群を指す。2つまたはそれよりも多くの物質は、任意の分子的または物理的配置で、同じ製剤中に、例えば、混合剤、溶液、混合物、懸濁液、コロイド、エマルジョン中に存在し得る。製剤は、均一なまたは不均一な混合物であり得る。態様のいずれかの一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの物質の活性化合物は、同じまたは異なる超構造、例えば、ナノ粒子、リポソーム、ベクター、細胞、スキャフォールドなどに含まれ得、超構造は、溶液、混合物、混合剤、溶媒との懸濁液、担体、または2つもしくはそれよりも多くの物質の一部である。あるいは、2つまたはそれよりも多くの物質は、同じ対象に投与される、2つまたはそれよりも多くの別々の製剤中に、例えば、別々の容器中に複数の製剤を含むキットまたはパッケージ中に存在し得る。
【0139】
キットは、本明細書に記載される少なくとも1つの試薬を含む、材料または構成要素の集団である。キットに構成される構成要素の正確な特質は、その意図される目的に依存する。態様のいずれかの一部の実施形態では、キットは、使用説明書を含む。「使用説明書」は、典型的には、例えば、対象を処置するためまたは対象に投与するための、キットの構成要素を使用するのに用いられる技法を記載する目に見える表現を含む。本発明にさらに従って、「使用説明書」は、典型的には意図される目的のための、本明細書に記載される少なくとも1つの試薬の調製を記載する目に見える表現、例えば、希釈、混合、またはインキュベーションの説明などを含み得る。必要に応じて、キットは、他の有用な構成要素、例えば、測定ツール、希釈剤、緩衝液、注射器、薬学的に許容される担体、または当業者に容易に認識される他の有用な道具も含有する。
【0140】
キットに組み立てられる材料または構成要素は、それらの操作性および有用性を保つ任意の便利で好適な方法で、開業医が貯蔵するために提供され得る。例えば、構成要素は、溶解、脱水、または凍結乾燥形態であり得、それらは、室温、冷蔵温度または凍結温度で提供され得る。構成要素は、典型的には、好適なパッケージング材料に含有される。本明細書で用いられる場合、「パッケージング材料」という語句は、キットの内容物、例えば、発明組成物などを収容するために使用される1つまたは複数の物理的構造を指す。パッケージング材料は、好ましくは、無菌の、夾雑物を含まない環境を提供するために、周知の方法によって構築される。パッケージングはまた、好ましくは、光、湿度、および酸素から保護する環境を提供し得る。本明細書で使用される場合、「パッケージ」という用語は、個々のキットの構成要素を保持することができる、好適な固体マトリックスまたは材料、例えば、ガラス、プラスチック、紙、ホイル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、またはMylarなど)などを指す。そのため、例えば、パッケージは、ある体積の本明細書に記載される少なくとも1つの試薬を含有する好適な量の組成物を含有するために使用されるガラスバイアルであり得る。パッケージング材料は、一般に、キットおよび/またはその構成要素の内容物および/または目的を示す、外部ラベルを有する。
【0141】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、約1~1,000ナノメートル程度の直径または幅である粒子を指す。「ナノ粒子」という用語には、ナノスフェア、ナノロッド、ナノシェル、およびナノプリズムが含まれ、これらのナノ粒子は、ナノネットワークの一部分であってもよい。「ナノ粒子」という用語は、ナノ粒子のサイズを有するリポソームおよび脂質粒子も包含する。例示的なナノ粒子としては、脂質ナノ粒子またはフェリチンナノ粒子が挙げられる。脂質ナノ粒子は、例えば、イオン化可能脂質(MC3、DLin-MC3-DMA、ALC-0315、またはSM-102など)、ペグ化脂質(PEG2000-C-DMG、PEG2000-DMG、ALC-0159など)、リン脂質(DSPCなど)、およびコレステロールを含む、複数の構成要素を含み得る。
【0142】
例示的なリポソームは、例えば、DSPC、DPPC、DSPG、コレステロール、水素化ダイズホスファチジルコリン、ダイズホスファチジルコリン、メトキシポリエチレングリコール(mPEG-DSPE)ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジステアロイルホスファチジルコリン、およびその組合せを含み得る。
【0143】
本明細書で使用される場合、「投与すること」という用語は、所望の部位で薬剤の少なくとも部分的な送達をもたらす方法または経路による、本明細書に開示される化合物の対象への配置を指す。本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物は、対象において有効な処置をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。一部の実施形態では、投与は、物理的なヒトの活動、例えば、注射、摂取の行為、適用の行為、および/または送達デバイスもしくは機械の操作を含む。そのような活動は、例えば、医療専門家および/または処置される対象によって行われ得る。
【0144】
本明細書で使用される場合、「接触させること」は、薬剤を少なくとも1つの細胞に送達または曝露するための任意の好適な手段を指す。例示的な送達方法としては、限定されるものではないが、細胞培養培地への直接送達、灌流、注射、または当業者に周知の他の送達方法が挙げられる。一部の実施形態では、接触することは、物理的なヒトの活動、例えば、注射、分配、混合および/もしくはデカンテーションする行為、ならびに/または送達デバイスもしくは機械の操作を含む。
【0145】
「統計学的に有意な」または「有意に」という用語は、統計学的有意性を指し、一般に、2標準偏差(2SD)またはそれよりも大きい差を意味する。
【0146】
操作実施例以外に、または他に示される場合、本明細書で使用される成分または反応条件の量を表すすべての数は、すべての例において、「約」という用語によって修飾されているとして理解されるべきである。「約」という用語は、パーセンテージと併せて使用される場合、±1%を意味し得る。
【0147】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、他の要素も、提示された定義された要素に加えて存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定的ではなく、包括的を示す。
【0148】
「からなる」という用語は、実施形態のその記載に列挙されていない任意の要素が排除される、本明細書に記載される組成物、方法、およびその個々の構成要素を指す。
【0149】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態について必要な要素を指す。この用語は、本発明のその実施形態の基本的および新規のまたは機能的特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を許容する。
【0150】
本明細書で使用される場合、「特異的結合」という用語は、2つの分子、化合物、細胞および/または粒子間の化学的相互作用であって、ここで、第1の実体は第2の標的実体に、非標的である第3の実体にそれが結合するよりも高い特異性および親和性で結合する、化学的相互作用を指す。一部の実施形態では、特異的結合は、第3の非標的実体に対する親和性よりも、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、またはそれよりも高い、第2の標的実体に対する第1の実体の親和性を指し得る。所与の標的に特異的な試薬は、利用されるアッセイの条件下で、その標的に対して特異的結合を示すものである。
【0151】
本明細書に他に定義されない限り、本出願に関連して使用される科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味を有するものとする。本発明が、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール、および試薬などに限定されず、それ自体変更され得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。免疫学および分子生物学における一般的な用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 第20版, Merck Sharp & Dohme Corp.により出版, 2018 (ISBN 0911910190, 978-0911910421); Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine, Blackwell Science Ltd.により出版, 1999-2012 (ISBN 9783527600908); およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.により出版, 1995 (ISBN 1-56081-569-8); Immunology by Werner Luttmann, Elsevierにより出版, 2006; Janeway's Immunobiology, Kenneth Murphy, Allan Mowat, Casey Weaver (eds.), W. W. Norton & Company, 2016 (ISBN 0815345054, 978-0815345053); Lewin's Genes XI, Jones & Bartlett Publishersにより出版, 2014 (ISBN-1449659055); Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012) (ISBN 1936113414); Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012) (ISBN 044460149X); Laboratory Methods in Enzymology: DNA, Jon Lorsch (ed.) Elsevier, 2013 (ISBN 0124199542); Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), Frederick M. Ausubel (ed.), John Wiley and Sons, 2014 (ISBN 047150338X, 9780471503385), Current Protocols in Protein Science (CPPS), John E. Coligan (ed.), John Wiley and Sons, Inc., 2005;ならびにCurrent Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strobe, (eds.) John Wiley and Sons, Inc., 2003 (ISBN 0471142735, 9780471142737)に見ることができ、これらの内容は、それらの全体が、参照により本明細書にすべて組み込まれる。
【0152】
当業者は、使用する化学療法剤を容易に特定することができる(例えば、Physicians' Cancer Chemotherapy Drug Manual 2014, Edward Chu, Vincent T. DeVita Jr., Jones & Bartlett Learning; Principles of Cancer Therapy, Chapter 85 in Harrison's Principles of Internal Medicine, 18th edition; Therapeutic Targeting of Cancer Cells: Era of Molecularly Targeted Agents and Cancer Pharmacology, Chs. 28-29 in Abeloff's Clinical Oncology, 2013 Elsevier; and Fischer D S (ed): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 2003を参照されたい)。
【0153】
mCherryは、Discosoma sp.に由来する、2004年に公開された、塩基性(構成的に蛍光性の)赤色蛍光タンパク質である。これは、酸感受性が低く、非常に迅速に成熟するモノマーであると報告されており、ウイルスによって発現されたmCherryは、赤紫色に疑似着色される。
【0154】
SmV5は、スパゲッティモンスター(spaghetti monster)V5を指す。
smFLAGは、スパゲッティモンスターFLAG:エピトープタグFLAG-(DYKDDDDK)の10コピーを指す。
【0155】
tTA2は、テトラサイクリン依存性転写活性化因子である。
【0156】
W3SLは、切断型ウッドチャック肝炎の転写後調節エレメントおよびポリアデニル化シグナルカセットである(Choi et al., 2014)。Choi JH, Yu NK, Baek GC, Bakes J, Seo D, Nam HJ, Baek SH, Lim CS, Lee YS, Kaang BK (2014)。
【0157】
eYFPは、高感度黄色蛍光タンパク質である。
【0158】
PTエンハンサーは、CFPNのサブセットであるL5錐体路(PT)ニューロンを標識する、mscRE4エンハンサーである。
【0159】
カルシウム飽和GCaMP6sは、その親蛍光タンパク質の高感度GFP(EGFP)よりも27%明るい。
【0160】
PlxnD1(L2/3およびL5aにおける終脳内-IT PN)、Satb2(上層および下層の両方にわたるIT PN)、Rorb(L4錐体ニューロン)、およびvGAT(pan-GABA作動性ニューロン)。
【0161】
Fezf2は、FEZファミリージンクフィンガー2遺伝子である。FEZF2と関連する疾患としては、部分的胎児性アルコール症候群および胸腺形成異常が挙げられる。
【0162】
Ctip2 tip2/Bcl11bは、さまざまな組織の発達の間に、エピジェネティック調節を遺伝子転写と組み合わせる、二重作用(抑制/活性化)を有するジンクフィンガー転写因子である。転写因子COUP TF1相互作用タンパク質2(CTIP2)は、軸索伸長および大脳皮質の大脳下投射ニューロンによる経路探索の間に重要な役割を果たす(Arlotta et al., 2005)。ここで、我々は、線条体内で、Ctip2が、この重要なニューロン集団を初期有糸分裂後段階から特異的に標識する、MSNによって固有に発現されることを報告する。Ctip2機能の喪失は、MSN分化の失敗、MSNのパッチ-マトリックス組織化の破壊、およびパッチ区画の新規分子識別子を含む複数の遺伝子の発現の異なる変化をもたらす。パッチ凝集の欠陥はまた、線条体の異常なドーパミン作動性神経支配をもたらす。最後に、突然変異線条体内の細胞反発および異所形成の出現に関与する分子の発現の変更が存在し、Ctip2の喪失が、発達の間の細胞反発の正常なメカニズムを破壊することを強く示唆している。Journal of Neuroscience 16 January 2008, 28 (3) 622-632; DOI: doi.org/10.1523/JNEUROSCI.2986-07.2008。
【0163】
皮質下行性投射ニューロン(CFPN)は、PlxnD1(L2/3およびL5aにおける終脳内-IT PN)、Satb2(上層および下層の両方にわたるIT PN)、Rorb(L4錐体ニューロン)、およびvGAT(pan-GABA作動性ニューロン)を含む、皮質のアウトプットチャネルを構成する。
【0164】
hSynは、ヒトシナプシン1遺伝子プロモーターを指し、これは、成体ラット脳において、アデノウイルスベクターからの非常にニューロン特異的な長期の導入遺伝子発現を付与することが、当技術分野で認識されている。
【0165】
TRE-3Gは、真核生物誘導性プロモーターを指し、TREは、ミニマルプロモーター(通常、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)最初期プロモーターに由来するミニマルプロモーター配列)に融合されたTetオペレーター(tetO)配列コンカテマーから構成される。TcまたはDoxの非存在下で、tTAは、TREに結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。
【0166】
mNeonGreenは、Branchiostoma lanceolatumに由来する、2013年に公開された、塩基性(構成的に蛍光性の)緑色/黄色蛍光タンパク質である。
【0167】
WPREは、各種のウイルスベクターからの導入遺伝子発現を増加させるウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)であるが、正確なメカニズムは公知ではない。WPREは、導入遺伝子の下流、ポリアデニル化シグナルの近位に配置される場合、最も有効である。
【0168】
dTomato遺伝子は、dTomatoをコードする遺伝子であり、これは、Discosoma sp.に由来する、塩基性(構成的に蛍光性の)橙色蛍光タンパク質である。
【0169】
tdTomatoは、dTomato遺伝子の2つのコピーの遺伝子融合物であり、tdTomatoは、並外れて明るい赤色蛍光タンパク質である。
【0170】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。
【0171】
詳細な説明
本開示は、一部では、二重機能RNA分子(readrRNA)の発見に基づき、これは、(i)その転写プロファイルに基づく、選択された体細胞の標的化、および(ii)RNA分子によってコードされる所望のエフェクタータンパク質の選択された細胞における翻訳、RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)によって媒介されるRNA編集によって実行されるエフェクタータンパク質の翻訳を可能にする。
【0172】
ADAR媒介RNA編集
RNA編集は、すべての後生動物細胞において遍在性のDNA鋳型によってコードされるRNAの配列を変更する広範囲の転写後プロセスである。動物界にわたって、RNA編集の最も普及している形態は、哺乳動物において3つのメンバー(ADAR1、ADAR2、ADAR3)を有するADAR(RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ)ファミリーの酵素によって触媒されるアデノシンからイノシン(AからI)の変換である。次いで、編集されたイノシンは、代わりに、システインと塩基対合し、さまざまな細胞機構によって、グアノシン(G)として認識される。ADAR媒介A-I編集は、すべての後生動物細胞に遍在性である。図3を参照されたい。
【0173】
ヒトおよび動物のトランスクリプトーム中に数百万のADAR編集部位が存在し、この編集のわずかな割合のみが、コードmRNAにおいて起こり、タンパク質の特性を変更する。大部分は非コード領域にあり、RNAスプライシング、マイクロRNA、およびshRNAの機能に影響を及ぼし得る。それらの最も必須の役割は、感染の間に免疫系にウイルスdsRNAを破壊させながら、自然免疫応答から細胞を保護して、dsRNAを自己生成することである。
【0174】
readrRNA
「readrRNA」は、5’領域および3’領域を有するRNAに基づく分子であって、readrRNA分子が、(i)センサー(ses)ドメインを含む5’領域であって、センサードメインが、少なくとも1つのADAR編集可能STOPコドンを含む、5’領域、および(ii)センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、エフェクターRNA(efRNA)領域を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、分子を指す。出願人の発明の二重機能readrRNAは、選択された体細胞において発現された標的RNAとのミスマッチを有するdsRNAの形成によって、readrRNA中の特異的部位を編集するように、ADARデアミナーゼの動員を可能にする。readrRNA分子からの停止コドンのADAR媒介除去の際に、readrRNAによってコードされる下流の作動可能に連結されたエフェクタータンパク質の翻訳は、選択された体細胞において起こる。図4。選択された体細胞における標的RNAの非存在下で、readrRNAは、細胞において不活性のままである。
【0175】
readrRNAが、選択された体細胞において標的RNAを検出または「感知」するので、readrRNAは、細胞型を定義するRNAの検出を体細胞におけるエフェクタータンパク質の翻訳と組み合わせるためのADAR(RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ)によって媒介されるRNA編集を活用するプログラム可能なRNAセンシング技術である、CellREADR(内因性ADARによるRNAセンシングを通した細胞アクセス)に含まれるシステムの統合構成要素である。
【0176】
細胞型を定義するRNA
RNAは、細胞型および細胞状態の多様性の根底にある遺伝情報の中心的かつ普遍的なメディエーターであり、これは、種および寿命にわたって、組織の組織化および生物機能を一緒に形作る。RNAシークエンシングの進歩および生命科学にわたるトランスクリプトームデータセットの大規模な蓄積にもかかわらず、細胞型を観察および操作するためにRNAを活用する技術の不足は、生物学および医薬における法外なボトルネックのままである。(Zeng et al. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0177】
細胞型は、進化の産物であり、それらは、生物の基本的な機能単位である。脳および身体における細胞型のレパートリー全体は、単一の受精卵の接合子から出発する、空間的および時間的に協調した発生事象の連続的および並行的なシリーズを通して構築される。この発生プログラムは、進化を通してゲノムにおいてコードされるすべての細胞型のアイデンティティーを解明する、注目すべき実行計画を行う。転写およびエピジェネティック調節プログラムは、ゲノム配列から展開され、細胞の増殖および分化プロセスのカスケードシリーズを駆動し、多様な細胞表現型の顕在化をもたらす。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0178】
RNA発現プロファイルは、ほぼ間違いなく、細胞が特徴付けられ、細胞のワンタイムスナップショットである場合の時間または状態で、細胞のすべての表現型特徴の根底にある。区別の重要なポイントは、選択された細胞において発現されたRNAが、細胞型が異なる状態で存在し得るように、特定の細胞状態-背景に対する細胞の一過的または動的に応答する特性-または細胞型を表すかどうかである。異なる細胞状態と関連するRNA発現の細胞型特異的変化は、概日周期、変動する代謝状態、発生、老化、または挙動的、薬理学的、もしくは病的状態の間に見られ得る(Mayr et al., 2019;Morris, 2019)。(Zeng et al. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0179】
単一細胞トランスクリプトームは、唯一の細胞のワンタイムスナップショットである。しかしながら、異なる時点、または異なる挙動的、生理学的、もしくは病理学的状態から収集されたトランスクリプトームを比較することができる。細胞が、それらの状態を継続的に変化し、ある特定の重要な時点で、それらが、それらの細胞型のアイデンティティーを切り替え得るので、細胞型と細胞状態との間の区別は、特に、発生の間の課題である。しかしながら、絶対的ではないが、トランスクリプトームの変化が、細胞状態の遷移の間に、より連続的になる傾向があるが、細胞が、それらの種類を切り替える場合に、より突然または別々になる傾向があると仮定することが合理的である。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0180】
意味がある細胞型の定義のために、これは、理想的には、細胞型が行うものと関連する。そのため、その細胞型を定義するRNAに基づいて細胞型を定義することに加えて、細胞型は、そのRNA発現を、解剖学的および機能的情報に関連付けることによって定義される。今までのところ、トランスクリプトームの種類が、それらの空間分布パターンと優れた対応を有することが示されている。空間分布パターンが発生の間に定義されるので、これは、トランスクリプトームが発生プランを保持し得ることを示唆する。(Zeng et al. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0181】
系列追跡および他の表現型特徴付けと組み合わせた、高い時間分解能を有する体系的な単一細胞トランスクリプトーム、エピゲノムおよび空間的に分解されたトランスクリプトームプロファイリングは、これらの一連の事象に関与する遺伝子およびゲノム調節ネットワークの重要なセットを捕捉し、細胞型の成体段階のレパートリーをもたらす、細胞型および状態の極めて複雑な空間的および時間的遷移を解決することを開始する驚異的な可能性を保持する(Allaway et al., 2021;Bandler et al., 2022;Bhaduri et al., 2021;Cao et al., 2019b;Chen et al., 2022;Delgado et al., 2022;Di Bella et al., 2021;Klingler et al., 2021;La Manno et al., 2021;Romanov et al., 2020;Schmitz et al., 2022;Sharma et al., 2020;Shekhar et al., 2022;Tiklovaet al., 2019;Zhu et al., 2018)。(Zeng et al. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0182】
トランスクリプトーム的に定義された細胞型の段階的組織化
これらの主要な脳構造のそれぞれ内で、多くの細胞型をそれぞれ有する、複数の領域および下位領域が存在する。哺乳動物の脳の基本構造(Swanson, 2000, 2012)は、終脳、間脳、中頭(中脳)、および菱脳(後脳)から構成される。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0183】
終脳(5つの主要な脳構造(1)皮質、(2)海馬形成[HPF]、(3)嗅覚野、(4)皮質サブプレート、および(5)大脳核からなる)。終脳および間脳(視床および視床下部を含む)は、まとめて前脳と呼ばれる。中頭(中脳)は、蓋および被蓋に分けられる。菱脳(後脳)は、脳橋、髄質、および小脳に分けられる。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0184】
皮質では、分岐の第1の(最も高い)レベルは、神経細胞およびさまざまな非神経細胞のクラスの分離である(図2A)。ニューロンについて、分岐の第2のレベルは、主要な脳構造/領域によって決定され、第3のレベルは、それぞれの主要な脳構造内のさまざまな細胞サブクラスおよび細胞型を含むが、発生の間の細胞輸送に起因する脳構造間を横断するまたはそこで共有される細胞型が存在し得る。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0185】
皮質は、複数の皮質領(視覚野および運動野を含む)から構成され、感覚、運動、または連合性の機能をそれぞれ媒介する。これらの領域のそれぞれでは、それらが放出する優位な神経伝達物質に基づく2つの神経細胞クラスであるグルタミン酸作動性およびGABA作動性、ならびにいくつかの非神経細胞クラスが存在する。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0186】
グルタミン酸作動性興奮性ニューロンは、大部分が、他の皮質および/または皮質下領域への長距離軸索投射を有する。それらは、それらの層の特異性および長距離投射パターンに基づいて9つのサブクラスに分けられる:L2/3終脳内投射[IT]、L4/5 IT、L5 IT、L6 IT、Car3 IT、L5終脳外投射[ET]、L5/6近投射[NP]、L6皮質視床投射[CT]、およびL6b。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0187】
GABA作動性抑制性ニューロンは、ほとんどが、局所領域内に制限されるそれらの軸索投射を有する。それらは、標準マーカー遺伝子の後の名付けられた6つのサブクラスに分けられる:Lamp5、Sncg、Vip、Sst、Sst-Chodl、およびPvalb。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0188】
グルタミン酸作動性またはGABA作動性サブクラスのそれぞれ、ならびにそれぞれの非神経細胞クラス内で、いくつかのトランスクリプトームのクラスターまたは種類が存在し、それぞれの皮質領において合計で110のトランスクリプトーム細胞型をもたらす(Brain Initiative Cell Census Network, 2021; Tasic et al., 2018)。この組織化は、過去50年にわたって、各種の表現型モダリティにおいて広く研究されてきた皮質細胞型についての既存の知識と非常に一致し(Harris and Shepherd, 2015;Tremblay et al., 2016;Yuste et al., 2020;Zeng and Sanes, 2017)、単一細胞トランスクリプトミクスが、単独で、クラスおよびサブクラスレベルで、細胞型組織化の全体をきちんと捕捉することができることを示唆する。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0189】
しかしながら、皮質内では、皮質領域に特異的な細胞型または領域間で共有される細胞型の両方が同定されている。共有される細胞型は、多くの場合、細胞型間の別個のおよび連続的な変動が共存する領域にわたって勾配分布または勾配遺伝子発現を示す。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0190】
別個の変動は、通常、階層のより上位の分岐にある、細胞サブクラスおよび主要な細胞型内に存在する。連続的な変動は、通常、より下位の分岐、例えば、L2/3~L6の皮質の深さにわたる多くのITニューロン型で、密接に関連するトランスクリプトームのクラスターまたはサブタイプ内で見出される(図2C)。連続体の反対端の細胞は、明確に別個のトランスクリプトームプロファイルを有するが、一方の端から他方への推移は、連続体を構成する細胞内で段階的である。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0191】
空間的分解トランスクリプトーム法であるトランスクリプトミクスおよびMERFISHの統合は、マウス運動皮質細胞型の空間的組織化を明らかにする(Zhang et al., 2021a)。この研究の主要な知見は、予想されるグルタミン酸作動性ニューロンサブクラスの層分布に加えて、それぞれのサブクラス内の均一なGABA作動型が、層選択的局在化を示し、個々のグルタミン酸作動型またはGABA作動型内の連続的な変動が、皮層/深さに沿ったそれらの連続的な分布と十分に相関することである(顕著な例では、興奮性のL2/3~L6 IT型のすべてが、L2/3~L6の皮質の深さに沿って並んでいる)。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0192】
しかしながら、異なる表現型特徴によって定義された細胞型が互いに一致するのかも、どの特徴が細胞型を定義するのに正しいのかも、多くの場合、不明確である。
【0193】
特異的RNA転写物の標的化を蛍光タンパク質などのコードされるエフェクター分子の発現と関連付けることによって、cell readrRNAシステムは、転写物に基づいておよび空間的/形態学的に、細胞型およびその状態を同時にモニターするシステムを提供する。
【0194】
本明細書に記載される発明は、ワトソン-クリック塩基対合およびRNA編集に基づいており、CellREADRは、1)細胞RNAおよびRNA発現によって定義される細胞に対する固有および絶対特異性を有し、2)設計する、構築する、使用する、および広めることが容易であり(例えば、DNAベクター)、3)任意の組織において、すべてのRNAが定義する細胞型の標的化;「細胞医療設備」のライブラリーのために非常にスケーラブルであり、4)ヒトを含むほとんどの動物種に一般化可能であり、5)ほとんどの細胞型および組織に対して網羅的であり、6)動物種にわたって一般的であり、7)ヒト生物学および医薬に適用可能であり、8)2つまたはそれよりも多くのRNAによって定義される細胞の交差標的化、ならびに同じ組織におけるいくつかの細胞型の多重標的化および操作を達成するためにプログラム可能である。
【0195】
CellREADR技術
CellREADR技術のコアは、RNA配列特異的分子センサー-エフェクター分子に作動可能に連結されたスイッチである、readrRNAである。これは、5’-プライム感知-編集-スイッチドメイン(sesRNA)および3’-プライムエフェクタードメイン(efRNA)を含む単一モジュラーreadrRNAである。sesRNAの標的特異性は、標的mRNAにおける相補配列とのその相互作用に起因する。相補性の程度は、sesRNAのADAR媒介編集が存在するかどうかを決定する。標的RNAに完全に相補的であるsesRNAは、ADAR編集可能停止コドンで、sesRNAのADAR媒介編集を誘導する。
【0196】
readrRNAは、従来のDNA発現ベクターから作成することができる。これらのベクターは、プロモーター、sesRNAおよびefRNAをコードするDNAカセット、ならびに3’非翻訳領域からなり、これは、ルーチン的なDNA合成および分子クローニングによってアセンブルすることができる。一実施形態では、sesRNAコードカセットは、約200~300塩基対であってもよく、エフェクター遺伝子カセットは、約1~2キロ塩基対であってもよい。これらの発現ベクターは、さまざまなウイルス粒子に容易にパッケージングされ得る。readrRNAは、必要により、化学修飾ヌクレオチドの組み込みを用いる、直接一本鎖オリゴヌクレオチド合成によって作成することもできる。
【0197】
モジュラーreadrRNA
したがって、本開示の一態様は、(i)センサードメインを含む5’領域であって、センサードメインが、少なくとも1つのADAR編集可能STOPコドンを含む、5’領域、および(ii)センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、エフェクターRNA(efRNA)領域を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、モジュラーreadrRNA分子を提供する。「モジュラー」という用語は、「モジュラーreadrRNA分子」という語句の文脈で使用される場合、非常に少数の連結された構造単位の組合せを含む組換えreadrRNA分子を指し、ここで、それぞれの構造単位は、独立して機能するタンパク質分子をコードする。
【0198】
異なるタンパク質コードドメインがRNAレベルで設計され、特定の数のリピート設計を有する所望の順序で組換えreadrRNA分子にアセンブルされる、readrRNA分子のモジュラー設計は、多様な特性を有するreadrRNA分子の産生を可能にする。翻訳機構は、所望のreadrRNA分子が、特定のアミノ酸配列を有するように、高い忠実性も有する。
【0199】
一般に、readrRNA分子は、限定されるものではないが、生物システムにおける時空間インプット/アウトプットを生じさせることを含んで、細胞間の相互作用の促進、環境刺激のセンシング、環境刺激に対する応答を生じさせることを含む、特定の機能を付与するモジュラードメインから構成される。
【0200】
モジュラーreadrRNAのセンサードメイン
センサードメイン(sesRNA)は、特定の細胞型に存在するRNAとの配列特異的な塩基対合を通して、特定の細胞型に相補的であり、特定の細胞型を検出することができる、ヌクレオチドのセットを含む。センサードメインは、任意の数のヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、センサードメインは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも550、少なくとも600、少なくとも650、少なくとも700、少なくとも750、少なくとも800、少なくとも850、少なくとも900、少なくとも950、少なくとも1000を含む。一部の実施形態では、センサードメインは、約100~約900ヌクレオチドの範囲を含む。別の実施形態では、センサードメインは、約200ヌクレオチド~約300ヌクレオチドの範囲を含む。好ましくは、センサードメイン(sesRNA)は、塩基対合を通して、特定の細胞型RNAに相補的な、したがって、それを検出することができる、約200ヌクレオチドを含有する。
【0201】
センサードメインは、翻訳スイッチ(本明細書で感知-編集-スイッチRNA(sesRNA)と称される)として作用する1つまたは複数のADAR編集可能STOPコドンも含む。センサードメインは、このようにして、感知-編集-スイッチRNA(sesRNA)として機能する。センサーRNAは、細胞RNAに相補的であるヌクレオチド配列を含む。
【0202】
モジュラーreadrRNA分子はまた、自己切断2Aペプチドをコードする配列を含んでいてもよい。そのような実施形態では、2Aペプチドは、本明細書でさらに論じられるように、ドメイン間、好ましくは、センサードメインとエフェクターRNA領域との間および/またはreadrRNA分子またはCellREADERシステムに存在し得る追加のドメイン/領域間に位置する。
【0203】
モジュラーreadrRNAのインフレームエフェクターRNA(efRNA)コード領域
センサードメインの下流に、必要に応じて自己切断2Aペプチドをコードする配列によって分離された、インフレームエフェクターRNA(efRNA)コード領域がある。エフェクターRNA(efRNA)は、目的のエフェクタータンパク質、例えば、標識された細胞の視覚化を可能にする標識をコードしてもよい。エフェクターRNA(efRNA)は、細胞の生理機能を変化させるエフェクタータンパク質をコードしてもよい。例えば、単一遺伝子における突然変異によって引き起こされる疾患を処置する事例では、コードされるエフェクタータンパク質は、突然変異した遺伝子の補正されたコピーであり得る。生物に対して内因性または外因性であるある特定のタンパク質を提供することによって疾患を処置する事例では、タンパク質は、エフェクター領域においてコードされ得る。
【0204】
所与のefRNAの選択は、readrRNA分子のreadrRNAの所望される使用(例えば、疾患の処置、タンパク質/経路の研究など)に依存し、当業者によって容易に決定することができる。例えば、CellREADRのエフェクターモジュール(efRNA)は、活性および機能を増強すること、活性および機能を抑制すること、欠失または突然変異タンパク質のインタクトバージョンを再導入することによって突然変異細胞の機能をレスキューすること、活性および機能を変更および編集すること、細胞のアイデンティティー、運命および機能を初期化すること、細胞型を死滅および除去すること、ある種類の細胞数の産生を増加または減少させること、ならびに細胞型特異的ゲノム編集および遺伝子調節を含む、複数の方法で、細胞を操作するように構築され得る。
【0205】
標的RNAを発現する細胞では、sesRNAは、内因性ADAR酵素を動員するdsRNAを形成する。STOPコドンで、AからIへの編集は、STOPを、TI(G)Gトリプトファンコドンに変換し、efRNAの翻訳、およびエフェクタータンパク質の生成のスイッチをオンにする。N末端ペプチドT2AおよびC末端エフェクターを含む得られる融合タンパク質は、次いで、T2Aにより自己切断され、機能性エフェクタータンパク質を放出する。標的RNAを発現しない細胞では、readrRNAは不活性のままである。
【0206】
efRNAコードタンパク質は、細胞複製、遺伝子発現、および/または転写/翻訳に関与するか、またはそれに影響を及ぼし得る、任意のタンパク質を含んでいてもよい。好適な例としては、限定されるものではないが、転写活性化因子、転写阻害因子、およびDNAリコンビナーゼなどが挙げられる。
【0207】
エフェクタータンパク質としては、限定されるものではないが、
A)酵素、例えば、プロテアーゼ、ホスファターゼ、グリコシラーゼ、アセチラーゼ、またはリパーゼ、b)宿主細胞タンパク質の機能を模倣するタンパク質、c)転写因子、d)タンパク質間相互作用を促進するタンパク質パートナー、d)例えば、感染を容易にすることによって、および/または防御応答を引き起こすこと、および/または形態形成を促進することによって、宿主細胞の構造および機能を変更するタンパク質(毒性因子または毒素)が挙げられる(Cachat, E., Liu, W., Hohenstein, P. et al. A library of mammalian effector modules for synthetic morphology. J Biol Eng 8, 26 (2014). https://doi.org/10.1186/1754-1611-8-26)。
【0208】
例えば、例示的なエフェクタータンパク質を、下記の表4にリストする。
【表4】
【0209】
したがって、エフェクター機能は、ファゴサイトーシス、サイトカインの分泌、免疫細胞の輸送、または機能、遊走、生存および増殖の促進を含む、自然免疫細胞応答の活動に影響を及ぼし得る。
【0210】
したがって、コードされるエフェクター分子は、目的の遺伝子のプロモーター/増強領域に結合することによって、目的の遺伝子の発現をそれぞれ刺激または抑制し、内因性遺伝子または細胞の背後のシステムの一部分として投与される外因性遺伝子である、トランス活性化因子またはトランス抑制因子であり得る。
【0211】
転写活性化因子は、DNA(またはレトロウイルスの事例では、RNA)中の1つまたは複数の特異的調節配列に結合し、1つまたは複数の近傍の遺伝子の転写を刺激する、タンパク質または低分子である。ほとんどの活性化因子は、RNAポリメラーゼの結合(閉鎖複合体の形成)または転写の開始に必要な開放複合体への移行を増強する。ほとんどの活性化因子は、RNAポリメラーゼのサブユニットと直接相互作用する。
【0212】
転写抑制因子は、ヒストン修飾酵素を含む複数のタンパク質を含有する共役制御因子複合体を動員することによって機能すると一般に考えられる、配列特異的DNA結合タンパク質である。
【0213】
本明細書で使用される場合、「モジュレートされた」とは、活性化されたまたは阻害されたという意味で、調節されたことを意味する。
【0214】
本明細書で使用される場合、病原体は、人間において疾患を引き起こす生物を含む。病原体としては、限定されるものではないが、細菌、ウイルス、寄生生物、昆虫、藻類、プリオンおよび真菌が挙げられる。
【0215】
CellREADRシステム2のレポーター遺伝子
本開示の別の態様は、CellREADRシステムを提供し、CellREADRシステムは、少なくとも2つの構成要素を含み、第1の構成要素は、本明細書に記載されるモジュラーreadrRNA分子、および必要に応じて、readrRNA分子のefRNAコードタンパク質(例えば、転写調節因子、例えば、AP1およびSP1)に作動可能に連結された(この実施形態では、物理的に連結されていない)応答遺伝子を含む追加の構成要素を含む。これは、readrRNA分子が、物理的に別々の外部から添加された核酸分子、例えば、細胞死をもたらすカスパーゼ分子においてコードされる別のタンパク質の転写を活性化し、増加させ、減少させ、または抑制することを可能にする。
【0216】
ADARが媒介するプログラム可能性および交差標的化
センサーおよびエフェクターモジュールは、コンビナトリアルで、容易にプログラム可能であり、これは、それぞれを具体的かつ協調した方法で、複数の方法でそれぞれの細胞型を操作し、組織中の複数の細胞型を同時に操作することを可能にする。上記に提供されるように、一部の実施形態では、モジュラーreadrRNA分子は、自己切断ペプチド2Aをコードする配列の必要に応じた連結によって分離された、5’センサー-編集-スイッチ領域(sesRNA)および3’エフェクターコード領域(efRNA)を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる。一部の実施形態では、sesRNAは、塩基対合を通して、特定の細胞型RNAに相補的な、したがって、それを検出することができる、約200~約300ヌクレオチドを含有するが、翻訳スイッチとして作用し、下流に、目的のさまざまなエフェクタータンパク質を生成するインフレームのエフェクターコード領域がある、1つまたは複数のADAR編集可能STOPコドンも含む。
【0217】
標的RNAを発現する細胞では、sesRNAは、内因性ADAR酵素を動員する標的RNAを有するdsRNAを形成する。STOPコドンで、AからIへの編集は、STOPを、TI(G)Gトリプトファンコドンに変換し、efRNAの翻訳、およびエフェクタータンパク質の生成のスイッチをオンにする。N末端ペプチド2AおよびC末端エフェクターを含む得られる融合タンパク質は、次いで、2Aにより自己切断され、機能性エフェクタータンパク質を放出する。重要なことには、標的RNAを発現しない細胞では、readrRNAは不活性のままである。そのため、モジュラーreadrRNA分子は、このようにして単一RNA分子として展開され得、ADARが細胞内因性であるので、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター)に容易に適合し得る。
【0218】
一部の状況では、ADARタンパク質は、細胞において、高度に発現されないか、または一部の事例では、存在しない。そのような事例では、本開示は、モジュラーreadrRNA分子内に含められる、および/または別々のベクターを介してシステムに添加される、ADARタンパク質(例えば、ADAR2)の添加を提供する。CellREADRの最も基本的な特徴は、それが、全体的に、限定されるものではないが、(i)細胞RNAに対する固有および絶対特異性、(ii)設計、構築、使用および共有の容易さ(DNAベクター)、(iii)「細胞医療設備」の非常にスケーラブルなライブラリー、(iii)ほとんどの細胞型および組織に対して網羅的、(iv)動物種にわたって一般的、ならびに(v)ヒト生物学および医薬を含む、多数の非常に所望される特性を付与する、ワトソン-クリック塩基対合に基づいて、それにより作動するRNA配列であることである。そのため、網羅的でコンビナトリアルなCellREADRセンサー-エフェクターライブラリーを、器官系および動物種にわたって、細胞型を同定する、特徴付ける、および操作するために構築することができる。
【0219】
本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子のプログラム可能性は、追加の能力を付与する。したがって、本開示の別の実施形態は、プログラム可能なモジュラーreadrRNA分子および/または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子を使用する交差標的化を提供する。
【0220】
第1に、2つまたはそれよりも多くのRNAセンサーを、2つまたはそれよりも多くの別々の細胞RNAを検出して、2つまたはそれよりも多くの特定の細胞型の交差標的化を達成するように設計することができる。第2に、同じRNAセンサーを、異なるエフェクターに連結して、同じ細胞型を標識、記録、および操作することができる。第3に、複数のRNAセンサーのコホートを、異なるエフェクターをそれぞれ発現する同じ組織におけるいくつかの細胞型を標的化して、組織機能を協調的にモジュレートするように設計することができる。第4に、RNAセンサーを、標的RNAの異なる閾値レベルを検出して、RNAレベルによって定義される異なる細胞状態をモニターおよび操作するように設計することができる。
【0221】
一実施形態では、本開示は、2つの別々の細胞RNAを検出して、より多くの特定の細胞型の交差標的化を達成するように設計されている、2つのセンサーを提供する。一態様では、それぞれのセンサーモジュールは、STOPコドンを有し、両方が除去された場合にのみ、発現されるエフェクター分子であり得る。一実施形態では、それぞれのセンサーは、少なくとも1つのSTOPコドンを含む。別の実施形態では、同じセンサーを、異なるエフェクターを発現させて、同じ細胞型を標識、記録、および操作するために使用することができる。さらに別の実施形態では、多数のセンサーは、異なるエフェクターをそれぞれ発現する同じ組織におけるいくつかの細胞型を標的化して、それによって、組織機能のモジュールを協調させるように設計される。
【0222】
そのため、RNAセンシングドメインは、任意の細胞RNAを検出する能力、ならびにしたがって、任意のヒト組織において任意のRNAが定義する細胞型および細胞状態にアクセスする性能を有する。エフェクタードメインは、任意のタンパク質をコードする能力、ならびにしたがって、多くの細胞特性をモニター、操作、および編集する性能を有する。
【0223】
細胞型および細胞状態を標的化する一般性
RNAセンサードメインは、細胞型および細胞状態を定義するRNAマーカーを検出することができる。単一細胞RNAシークエンシングにおける最近の進展は、すべてのヒトおよび動物組織における大規模データセットを作成している1、2、3。いくつかの主要な努力は、Human Cell Atlasプロジェクト(www.humancellatlas.org)、NIH Human Biomolecular atlasプログラム(commonfund.nih.gov/hubmap)、BRAIN Initiative Cell Census Network(biccn.org/)、およびAllen Brain Cell Atlas(portal.brain-map.org/)を含んで、進歩を推進している。
【0224】
すべての単一細胞トランスクリプトームデータセットは、公にアクセス可能である。RNAマーカーは、すべてではないが、主要なヒト細胞型のほとんどについて同定されている1、2、3。さらにまた、RNAマーカーは、多くの罹患細胞状態について同定されている。これらのRNAマーカーはすべて、細胞型および細胞状態を標的化するために、CellREADRによって使用され得る。これらのマーカーの一部を、表5にリストする。
【0225】
【表5】
【0226】
参考文献
1. Regev A, Teichmann SA, Lander ES, Amit I, Benoist C, Birney E, Bodenmiller B, Campbell P, Carninci P, Clatworthy M, Clevers H, Deplancke B, Dunham I, Eberwine J, Eils R, Enard W, Farmer A, Fugger L, Goettgens B, Hacohen N, Haniffa M, Hemberg M, Kim S, Klenerman P, Kriegstein A, Lein E, Linnarsson S, Lundberg E, Lundeberg J, Majumder P, Marioni JC, Merad M, Mhlanga M, Nawijn M, Netea M, Nolan G, Pe'er D, Phillipakis A, Ponting CP, Quake S, Reik W, Rozenblatt-Rosen O, Sanes J, Satija R, Schumacher TN, Shalek A, Shapiro E, Sharma P, Shin JW, Stegle O, Stratton M, Stubbington MJT, Theis FJ, Uhlen M, van Oudenaarden A, Wagner A, Watt F, Weissman J, Wold B, Xavier R, Yosef N; Human Cell Atlas Meeting Participants. (2017) The Human Cell Atlas. Elife. 2017 Dec 5;6:e27041. doi: 10.7554/eLife.27041. PMID: 29206104
2. Osumi-Sutherland D, Xu C, Keays M, Levine AP, Kharchenko PV, Regev A, Lein E, Teichmann SA. (2021) Cell type ontologies of the Human Cell Atlas. Nat Cell Biol. 2021 Nov;23(11):1129-1135. doi: 10.1038/s41556-021-00787-7. Epub 2021 Nov 8. PMID: 34750578 Review.
3. Haniffa M, Taylor D, Linnarsson S, Aronow BJ, Bader GD, Barker RA, Camara PG, Camp JG, Chedotal A, Copp A, Etchevers HC, Giacobini P, Goettgens B, Guo G, Hupalowska A, James KR, Kirby E, Kriegstein A, Lundeberg J, Marioni JC, Meyer KB, Niakan KK, Nilsson M, Olabi B, Pe'er D, Regev A, Rood J, Rozenblatt-Rosen O, Satija R, Teichmann SA, Treutlein B, Vento-Tormo R, Webb S; Human Cell Atlas Developmental Biological Network. (2021) A roadmap for the Human Developmental Cell Atlas. Nature. 2021 Sep;597(7875):196-205. doi: 10.1038/s41586-021-03620-1. Epub 2021 Sep 8. PMID: 34497388
4. Jagadeesh KA, Dey KK, Montoro DT, Mohan R, Gazal S, Engreitz JM, Xavier RJ, Price AL, Regev A. (2022) Identifying disease-critical cell types and cellular processes by integrating single-cell RNA-sequencing and human genetics. Nat Genet. 2022 Oct;54(10):1479-1492. doi: 10.1038/s41588-022-01187-9. Epub 2022 Sep 29. PMID: 36175791
【0227】
送達
ADARが細胞内因性であるので、CellREADRを、単一RNA分子として展開することができる。また、<4.7Kbで、AAV ウイルスベクターに容易に適合させることができる。実際に、readrRNA全体は、どの特定のセンサーおよびエフェクターが分子に組み込まれるかに応じて、数キロ塩基であり、したがって、送達システムを通して、細胞に送達可能である。標的RNAを発現する細胞では、sesRNAは、標的とdsRNAを形成し、これは、ADARを動員して、編集複合体をアセンブルする。編集可能STOPコドンで、ADARは、AからIに変換し、これは、標的RNA中の反対のCと対合する。このA→G置換は、TAG STOPコドンをTI(G)Gトリプトファンコドンに変換し、efRNAの翻訳のスイッチをオンにする。インフレーム翻訳は、N末端ペプチド2A(使用される場合)およびC末端エフェクターを含む融合タンパク質を生成し、これは、次いで2Aにより自己切断され、機能性エフェクタータンパク質を放出する(例えば、図1aを参照されたい)。readrRNAは、標的RNAを発現しない細胞では、不活性のままである。
【0228】
本開示および当技術分野における知識により、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子もしくはその任意の構成要素、その核酸分子、および/またはその構成要素をコードもしくは提供する核酸分子、ならびに本明細書に提供される任意のCellREADRシステムは、さまざまな送達システムによって送達され得る。そのような送達システムの例としては、限定されるものではないが、DNAまたはRNAトランスフェクション法:化学試薬(PEI、lipofectamine、リン酸カルシウムなど)または電気穿孔が挙げられ、DNA発現ベクターは、リポソームナノ粒子にパッケージングされ得る。readrRNAは、in vitroで転写または合成され得、リポソームナノ粒子、ナノ粒子、リポソーム、組換えウイルスベクター(ウイルスベクター:アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、および水疱性口内炎ウイルスが好ましいウイルスビヒクルである)、電気穿孔エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、細胞送達のための選択的内因性封入(SEND)システム、ヒトゲノムに存在するレトロエレメントに基づくヒト化ウイルス様粒子(VLP)を含むmRNA送達システム(Segel M, et al. Mammalian retrovirus-like protein PEG10 packages its own mRNA and can be pseudotyped for mRNA delivery. Science. 2021;373:882-889. doi: 10.1126/science.abg6155)、その組合せなどにパッケージングされ得る。
【0229】
モジュラーreadrRNA分子および/またはRNA(例えば、sesRNA、efRNAなど)のいずれかおよび/または任意の付属タンパク質および/またはCellREADRシステムは、好適なベクター、例えば、プラスミドまたは組換えウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルス、および他のウイルスベクター、またはその組合せを使用して、送達することができる。タンパク質、例えば、sesRNA、efRNA、efRNA応答遺伝子、タンパク質コードまたは非コードRNA(例えば、sgRHA、shRNAなど)、Cell READRシステムなどは、1つまたは複数のベクター、例えば、プラスミドまたはウイルスベクターにパッケージングされ得る。例えば、一部の実施形態では、efRNAコードタンパク質に作動可能に連結されたefRNA応答遺伝子を含む第2の発現ベクターは、readrRNA分子および/またはCellREADRシステムと共送達され、ここで、モジュラーreadrRNA分子およびエフェクターRNAの翻訳の成功の際に、レポーター産物の成功裏の結合および活性化をもたらす。一部の実施形態では、efRNA応答遺伝子は、レポーター遺伝子(例えば、限定されるものではないが、GFP、mRuby、mCherry、ChR2、DTA、Gcamp、TK、インターフェロンなどを含むレポーター遺伝子)を含む。他の実施形態では、efRNA応答遺伝子は、第2のエフェクター遺伝子を含む。
【0230】
細菌適用のために、適用可能な場合、本明細書に記載されるモジュラーreadrRNA分子システムの構成要素のいずれかをコードする核酸は、ファージを使用して、細菌に送達することができる。例示的なファージとしては、限定されるものではないが、T4ファージ、μ、λファージ、T5ファージ、T7ファージ、T3ファージ、Φ29、M13、MS2、Qβ、およびΦX174が挙げられる。そのような実施形態では、外因性ADARの添加が必要であり得る。
【0231】
一部の実施形態では、ベクター、例えば、プラスミドまたは組換えウイルスベクターは、例えば、筋肉内注射、静脈内投与、経皮投与、鼻腔内投与、経口投与、または粘膜投与によって、目的の組織に送達される。そのような送達は、単回用量または複数回用量を介してのいずれかであり得る。当業者は、本明細書における送達される実際の投薬量が、各種の要因、例えば、ベクターの選択、標的細胞、生物、組織、処置される対象の全身状態、求められる形質転換/修飾の程度、投与経路、投与方式、求められる形質転換/修飾の種類などに応じて、大きく変わり得ることを理解する。
【0232】
一部の実施形態では、組換えウイルスベクターは、少なくとも1×10個粒子(粒子単位、puとも称される)のアデノウイルスを含有する単回用量であり得る、アデノウイルスベクターを含む。一部の実施形態では、用量は、好ましくは、少なくとも約1×10個粒子、少なくとも約1×10個粒子、少なくとも約1×10個粒子、および少なくとも約1×10個粒子のアデノウイルスである。
【0233】
一部の実施形態では、送達は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを介してである。例えば、一部の実施形態では、改変AAVベクターが、送達のために使用されてもよい。改変AAVベクターは、AAV1、AV2、AAV5、AAV6、AAV8、AAV 8.2、AAV9、AAV rhlO、改変AAVベクター(例えば、改変AAV2、改変AAV3、改変AAV6)および偽型AAV(例えば、AAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6)、AAV-PHP.eBおよびその任意のバリアント、AAV-PHP.Sおよびその任意のバリアント、AAV-PHP.V1およびその任意のバリアントなどを含む、いくつかのカプシド型のうちの1つまたは複数に基づき得る。例示的なAAVベクター、およびrAAV粒子を生成するために使用され得る技法は、当技術分野において公知である。
【0234】
一部の実施形態では、送達は、プラスミドを介してである。投薬量は、応答を誘発するのに十分な数のプラスミドであり得る。一部の事例では、プラスミド組成物におけるプラスミドDNAの好適な量は、約0.1~約2mgであり得る。プラスミドは、一般に、(i)プロモーター、(ii)プロモーター(例えば、同じプロモーターまたは異なるプロモーター)にそれぞれ作動可能に連結された、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子および/またはCellREADRシステムをコードする配列、(iii)選択マーカー、(iv)複製起点、ならびに(v)(ii)の下流にあり、それに作動可能に連結された転写ターミネーターを含む。プラスミドは、他のRNA構成要素をコードすることもできるが、これらのうちの1つまたは複数は、代わりに、異なるベクター上でコードされてもよい。投与の頻度は、医学もしくは獣医学の実務家(例えば、医師、獣医師)、または当業者の範囲内である。
【0235】
ADARタンパク質が発現されないか、または低レベルで発現される、これらの細胞/システム(例えば、細菌細胞およびある特定の植物細胞)では、プラスミド(本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子および/もしくはCellREADRシステムを単独で、またはこれらを発現するもののいずれか)は、ADAR遺伝子(例えば、Adar1、Adar2など)をコードする配列をさらに含んでいてもよい。
【0236】
外因性ADARまたは操作されたADAR(すなわち、改善された機能性を有する)は、CellREADRシステムの効率を増加させることがある。外因性ADARは、以下の方法で、動物(または植物)細胞に送達することができる。
1)ADAR1またはADAR2は、トランスフェクションまたはウイルス感染(AAV、レンチウイルスなど)によって、CMV、CAGプロモーターを有する別々の構築物/DNAベクター(Readr構築物由来)を用いて送達される。
2)ADAR1またはADAR2は、同じCellReadr構築物/DNAベクターにおいて、SesRNA配列の前に置かれ、トランスフェクションまたはウイルス感染によって、細胞に送達される。
3)ADAR1またはADAR2 mRNAは、CellReadr DNAベクターまたはRNAを有するLNPによって、細胞に送達される。
4)ADAR1またはADAR2タンパク質は、CellReadr DNAベクターまたはRNAを有するLNPまたはVLP(ウイルス様粒子)によって、細胞に送達される。
【0237】
別の実施形態では、送達は、リポソームまたはリポフェクション製剤などを介してであり、当業者に公知の方法によって調製することができる。そのような方法は、例えば、WO2016205764号、ならびに米国特許第5,593,972号、同第5,589,466号、および同第5,580,859号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0238】
一部の実施形態では、送達は、ナノ粒子またはエキソソームを介してである。例えば、エキソソームは、RNAの送達において特に有用であることが示されている。
【0239】
本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子システムの1つまたは複数の構成要素を細胞に導入するさらなる手段は、細胞透過性ペプチド(CPP)を使用することによる。一部の実施形態では、細胞透過性ペプチドは、モジュラーreadrRNA分子に連結されている。一部の実施形態では、モジュラーreadrRNA分子および/またはその任意の構成要素は、1つまたは複数のCPPと組み合わされて、細胞(例えば、植物プロトプラスト)内部でそれらを効率的に輸送する。一部の実施形態では、モジュラーreadrRNA分子および/またはその任意の構成要素は、細胞送達のために1つまたは複数のCPPと組み合わされた、1つまたは複数の環状または非環状DNA分子によってコードされる。
【0240】
CPPは、レポーター非依存性の様式で、細胞膜を横断して生体分子を輸送することができるタンパク質由来またはキメラ配列由来の35よりも少ないアミノ酸の短いペプチドである。CPPは、カチオン性ペプチド、疎水性配列を有するペプチド、両親媒性ペプチド、プロリンリッチおよび抗微生物配列を有するペプチド、ならびにキメラまたは二連ペプチドであり得る。CPPの例としては、例えば、Tat(HIV 1型によるウイルス複製に必要な核転写活性化因子タンパク質である)、ペネトラチン、カポジ線維芽細胞増殖因子(FGF)シグナルペプチド配列、インテグリン3シグナルペプチド配列、ポリアルギニンペプチドArgs配列、グアニンリッチ分子トランスポーター、およびスイートアローペプチドが挙げられる。
【0241】
本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子システムの1つまたは複数の構成要素を細胞に導入するさらに別の手段は、SENDを使用することによる(例えば、Segel, M. et al., 2021. Science 373:6557; 882-889を参照されたく、その内容は、その全体が、これにより参照により本明細書に組み込まれる)。そのような実施形態では、細胞外ウイルス様カプシドにおいて、それ自身のmRNAに直接結合し、それを分泌する、レトロウイルス様タンパク質、例えば、PEG10は、フソゲンにより偽型化されて、機能性mRNAカーゴ(すなわち、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子)を哺乳動物細胞に送達する。
【0242】
本開示の他の実施形態は、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子の修飾を提供する。そのような修飾は、任意の目的、例えば、安定性の増加、モジュラーreadrRNA分子が対象の免疫を回避する性能などのためであり得る。例えば、モジュラーreadrRNA分子が環状RNA分子を含む実例では、1つのそのような修飾は、N6-メチルアデノシン修飾を含み得る。例えば、N6-メチルアデノシン(methyadenosine)リーダーYTHDF2配列の包含は、N6-メチルアデノシン-環状RNAの隔絶を可能にし、それによって、自然免疫の抑制を可能にする(例えば、Chen, Y.G.et al., (2019) Molecular Cell (76):1; 96-109を参照されたく、その内容は、その全体が、これにより参照により本明細書に組み込まれる)。他の実施形態では、そのような修飾は、対象の免疫系の回避を助けるウリジンのシュードウリジンによる置き換えを含み得る(例えば、Dolgin, E.(2021) Nature 597; 318-324を参照されたく、その内容は、その全体が、これにより参照により本明細書に組み込まれる)。
【0243】
医薬組成物
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるモジュラーreadrRNA分子、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子(本明細書において、「分子」として単純にまたは一緒に使用される)を含む送達システムの1つまたは複数、および適切な担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物を提供する。担体、賦形剤または希釈剤の正確な特質は、組成物についての所望の使用に依存し、獣医的使用に好適であるか、もしくはそれに許容されるものから、ヒト使用に好適であるか、もしくはそれに許容されるものまでの範囲であり得る。組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の追加の化合物および/または治療剤を含んでいてもよい。
【0244】
医薬組成物は、例えば、外用、眼、経口、頬側、全身、経鼻、注射、経皮、直腸、経膣などを含む、事実上任意の投与の形式に好適な形態、または吸入もしくはガス注入による投与に好適な形態を取り得る。
【0245】
あるいは、他の医薬送達システムが用いられてもよい。リポソームおよびエマルジョンは、分子を送達するために使用され得る送達ビヒクルの周知の例である。通常、より高い毒性を犠牲にするが、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのある特定の有機溶媒も用いられてもよい。
【0246】
医薬組成物は、所望により、分子を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得る、パックまたは分注デバイスで提示されてもよい。パックは、例えば、ブリスターパックなどの、金属またはプラスチックホイルを含み得る。パックまたは分注デバイスは、投与のための説明書が付随していてもよい。
【0247】
本明細書に記載される分子、またはその医薬組成物は、一般に、意図される結果を達成するために有効な量、例えば、処置される特定の疾患を処置または防止するために有効な量で使用される。治療利益とは、患者は、患者が依然として基礎障害を患っていることがあるにもかかわらず、気分または状態が改善したと報告するような、処置される基礎障害の根絶もしくは回復、および/または基礎障害と関連する1つまたは複数の症状の根絶もしくは回復を意味する。治療利益には、一般に、改善を自覚するかどうかにかかわらず、疾患の進行の中止または遅延も含まれる。
【0248】
特定の使用および投与の方式のための分子の有効投薬量の決定は、十分に当業者の能力内である。有効投薬量は、in vitro活性および代謝アッセイから最初に推定され得る。例えば、動物における使用のための化合物の最初の投薬量は、in vitroアッセイで測定される、特定の化合物のIC50またはそれを上回る、活性化合物(例えば、efRNA産物)の代謝物の循環血液または血清濃度を達成するように処方され得る。所望の投与の経路を介した特定の化合物の生物学的利用率を考慮に入れて、そのような循環血液または血清濃度を達成するための投薬量を計算することは、十分に当業者の能力内である。化合物の最初の投薬量は、動物モデルなどのin vivoデータから推定することもできる。上記に記載されるさまざまな疾患を処置または防止するための活性代謝物の有効性を試験するために有用な動物モデルは、当技術分野において周知である。化合物の生物学的利用率および/またはその活性代謝物への代謝を試験するために好適な動物モデルも周知である。当業者は、ヒト投与に好適な特定の化合物の投薬量を決定するためのそのような情報をルーチン的に適応させることができる。
【0249】
投薬量は、他の要因の中でも、活性化合物の活性、化合物の生物学的利用率、その代謝動態および他の薬物動態学的特性、投与の方式、ならびに上記で論じたさまざまな他の要因に依存する。投薬量および間隔は、治療または予防効果を維持するのに十分である化合物および/または活性代謝化合物の血漿レベルを提供するように、個々に調整され得る。例えば、化合物は、数ある中でも、投与の方式、処置される特定の指標、および処方医師の判断に応じて、週に1回、週に数回(例えば、1日おき)、1日1回または1日に複数回投与されてもよい。局所投与または選択的取り込み、例えば、局所の外用投与の事例では、化合物および/または活性代謝化合物の有効局所濃度は、血漿濃度に関連しないことがある。当業者は、過度の実験なしで、有効投薬量を最適化することができる。
【0250】
細胞操作
目的の細胞または細胞の群の生理機能をモニターおよび/または変化させるために、目的の細胞は、readrRNAのSES構成要素を通して、細胞の1つまたは複数のRNA転写物の差次的発現に基づいて同定される。ADAR媒介編集を通して、作動可能に連結されたエフェクター分子は、翻訳され、細胞を蛍光的に標識してもよく、および/または細胞死を含む細胞の生理機能の一部の所望の変化を生じさせてもよい。
【0251】
readrRNAのコードされるエフェクターへのreadrRNAのSES構成要素の物理的連結に加えて、目的の細胞は、readrRNAのコードされるエフェクターの制御下にあり、CellREADRシステムと呼ばれるシステムを含む、第2の核酸実体をさらに含むことができる。例えば、ReadrRNAのエフェクターは、第2の核実体上でコードされるいずれかの遺伝子を活性化し得るトランス活性化因子をコードすることができ、ここで、第2の核実体は、細胞に対して内因性であるトランス活性化因子の制御下で遺伝子をコードする細胞に対して内因性であり、および/または第2の核実体は、細胞に外部から添加され、細胞に対して外因性および/または内因性であるトランス活性化因子の制御下の遺伝子をコードする。
【0252】
トランス活性化因子または抑制因子は、サイレンシングする緊密なヘアピンループ(shRNA)をコードする外因性遺伝子の発現を制御することによって、細胞において特定の内因性遺伝子の発現をサイレンシングまたは減少させることもできる。第2の核実体上に位置することの代替で、トランス活性化因子の制御下の遺伝子が、必要に応じて、readrRNA分子それ自身上に位置し得ることにも留意されたい。患者における疾患または障害を最終的に引き起こす突然変異遺伝子を含む細胞の事例では、エフェクターは、機能性遺伝子をコードすることができ、および/または機能性遺伝子をコードする核の発現を引き起こすことができる。
【0253】
したがって、細胞または組織は、モジュラーreadrRNA分子、およびそのようなモジュラーreadrRNA分子を含むシステムを発現する。それ故に、本開示の別の態様は、提供されるモジュラーreadrRNA分子、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子を含む送達システムを含む細胞を提供する。本明細書に提供されるreadrRNA分子は、原核細胞および真核細胞において発現され得る。一部の実施形態では、細胞は、真核細胞を含む。一実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞または植物細胞を含む。
【0254】
本開示の別の態様は、本明細書に提供される細胞を含む動物モデルまたは植物モデルを提供する。
【0255】
処置
本開示は、本明細書に提供されるおよび下記の実施例に提供されるreadrRNA分子を含む方法をさらに包含する。
【0256】
本開示の別の態様は、1つもしくは複数のエフェクタータンパク質の細胞状態を定義する細胞RNAの存在もしくは動態を検出する方法、および/またはその翻訳のスイッチをオンにする方法であって、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子を含む送達システム、または本明細書に提供される医薬組成物を用いて標的エフェクターRNAを検出する/ハイブリダイズするステップであって、センサードメインが、配列特異的塩基対合を通して特定の細胞型RNAを検出およびそれに結合し、1つまたは複数のADAR編集可能STOPコドンが、翻訳スイッチとして作用し、それによって、エフェクタータンパク質をコードするエフェクターRNAの翻訳を可能にする、ステップを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、方法を提供する。
【0257】
一部の実施形態では、エフェクタータンパク質は、細胞内にある。
【0258】
細胞の動的状態を検出すること/評価することは、診断のために、個体における疾患を検出するために重要である。細胞の動的状態を検出すること/評価することは、治療薬が最も効果的であり得、多面的な副作用が低減された特定の標的細胞に特異的な治療薬を提供することによる、個体における疾患の標的化処置のために重要である。しかしながら、エフェクター分子は、その後、例えば、分泌サイトカインおよびインターロイキン、ならびにT-CARの事例では、特定の細胞外で機能し得る。
【0259】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象における状態および/または疾患を処置する方法であって、状態および/または疾患が対象において処置されるように、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子を含む送達システムを対象に投与することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、方法を提供する。
【0260】
一部の実施形態では、状態および/または疾患は、がん、感染性疾患、遺伝性障害などからなる群から選択される。
【0261】
本明細書で使用される場合、状態および/または疾患を「処置すること」は、状態および/または疾患と関連する任意の状態または症状を回復させることである。同等の未処置対照と比較した場合に、そのような低減は、任意の標準技法によって測定されるように、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%、またはそれよりも高い。本明細書に記載される組成物を対象に投与するための各種の手段は、当業者に公知である。そのような方法としては、限定されるものではないが、経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、肺、皮膚、外用、注射、または腫瘍内投与が挙げられ得る。投与は、局所または全身であり得る。態様のいずれかの一部の実施形態では、投与は、皮下である。
【0262】
体細胞型特異的遺伝子治療の例としては、限定されるものではないが、筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、先天性難聴、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、家族性高コレステロール血症、ヘモクロマトーシス、神経線維腫症1型(NF1)、鎌状赤血球症およびテイ-サックス病を含む、単一遺伝子疾患における正常なmRNA/タンパク質の細胞型特異的補完が挙げられる。
【0263】
がんの処置:(例えば、固形腫瘍;白血病)は、RNAのそれらの上方調節されたおよび/または異常な形態によってがん細胞を検出するために、ならびに、限定されるものではないが、カスパーゼ、プログラム細胞死タンパク質1、カスパーゼ8、Bcl-2関連Xタンパク質、PDL-L1、カスパーゼ3、CFLAR、Bcl-xl、SMAC/Diablo、Diabloホモログ、Bcl-2ホモログアンタゴニストキラー、FADD、BECN1、Death受容体5、PDCD6、RIP1キナーゼ、RIP3キナーゼ、およびグランザイムを含む、1つまたは複数の細胞死タンパク質;または限定されるものではないが、CD16、ケモカイン受容体(CCR2、CCR5、CXCR3およびCX3CR1)およびβ2-インテグリンLFA-1を含む免疫キラー細胞を動員する受容体の発現によって、がん細胞を排除するために、readrRNAおよびcellREADRを使用することを含む。
【0264】
readrRNAおよびcellREADRは、限定されるものではないが、慢性B、C型肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む肝臓疾患(門脈を介した脂質ナノ粒子による送達の利点など)、心臓の疾患、ならびに限定されるものではないが、潜伏性ウイルス感染症(細胞内寄生生物)、および耐性感染症、例えば、エプスタインバーウイルス、ヘルペス、結核、プリオン、ジカ熱、HIVを含む、感染性疾患の処置のために使用することができる。
【0265】
readrRNAおよびcellREADRは、慢性疼痛の処置:広く広範囲にわたる影響;例えば、糖尿病性神経障害;NIDA、NINDS HEAL主導の依存性のない疼痛の処置のために使用することができる。readrRNAおよびcellREADRは、標的化局所AAVベクター注射によって、末梢神経節における特定の感覚ニューロンおよびグリア細胞型におけるイオンチャネルおよび受容体発現をモジュレートすることができる。
【0266】
readrRNAおよびcellREADRは、現在、多くの場合に、脳組織の外科的切除によって処置されるてんかんの処置のために使用することができる。てんかんは、多くの場合、ある特定の神経細胞型における異常な神経活動から生じる。すなわち、てんかんは、病理学的脳ネットワークの過剰同期化された神経活動によって特徴付けられる。脳回路は、複数の興奮性および抑制性の細胞型を含み、それぞれ、情報処理および興奮-抑制のバランスにおいて固有に寄与している。他の細胞型において、てんかんの異なる段階(開始、維持)で発作を抑制しながら、一部の細胞型における神経活動が促進される。RNAセンサー-エフェクター(例えば、新薬の開発につながるようなGPCR、イオンチャネルなど)を通して脳回路の活動の細胞型特異的モジュレーションのためにreadrRNAおよびcellREADRを使用することは、てんかんを制御するおよび処置するための有望なアプローチである。そのため、readrRNAおよびcellREADRは、神経活動の細胞型標的化モジュレーションのために使用して、てんかんを抑制および処置することができる。
【0267】
キット
本開示は、本明細書に提供される組成物を含み、本明細書に提供される対象の方法を行うための、キットをさらに提供する。例えば、一実施形態では、対象のキットは、以下:(i)本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子、(ii)本明細書に提供されるCellREADRシステム、(iii)本明細書に提供されるモジュラーreadrRNAおよび/もしくはCellREADRシステムを含む送達システム、(iv)本明細書に提供される、モジュラーreadrRNA、ならびに/またはCellREADRシステム、ならびに/またはモジュラーreadrRNAおよび/もしくはCellREADRシステムを含む送達システムを含む細胞、ならびに/あるいは(v)本明細書に提供される医薬組成物のうちの1つまたは複数を含み得るか、それからなり得るか、またはそれから本質的になり得る。
【0268】
他の実施形態では、キットは、他の構成要素をさらに含んでいてもよい。そのような構成要素は、個々にまたは組合せで提供されてもよく、任意の好適な容器、例えば、バイアル、ボトル、または管で提供されてもよい。そのような構成要素の例としては、限定されるものではないが、(i)1つまたは複数の追加の試薬、例えば、1つまたは複数の希釈緩衝液、1つまたは複数の再構成溶液、1つまたは複数の洗浄緩衝液、1つまたは複数の貯蔵緩衝液、1つまたは複数の対照試薬など、(ii)1つまたは複数の対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド、(iii)本明細書に提供される分子、細胞、送達システムなどのin vitro産生および/または維持のための1つまたは複数の試薬などが挙げられる。構成要素(例えば、試薬)はまた、特定のアッセイにおいて使用可能な形態、または使用前に1つもしくは複数の他の構成要素の添加を必要とする形態(例えば、濃縮または凍結乾燥形態)で提供されてもよい。好適な緩衝液としては、限定されるものではないが、リン酸緩衝生理食塩水、炭酸ナトリウム緩衝液、重炭酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸緩衝液、Tris緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、およびその組合せが挙げられる。キットの構成要素は、個々にまたは組合せで提供されてもよく、任意の好適な容器、例えば、バイアル、ボトル、または管で提供されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に開示されるキットは、本明細書に開示される実施形態における使用のための1つまたは複数の試薬を含む。
【0269】
上記で述べた構成要素に加えて、対象のキットは、対象の方法を実施するために、キットの構成要素を使用するための説明書をさらに含むことができる。対象の方法を実施するための説明書は、一般に、好適な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、基材、例えば、紙またはプラスチックなどに印刷されていてもよい。そのため、説明書は、キットまたはその構成要素の容器のラベル(すなわち、パッケージングまたはサブパッケージングに関連する)などにおいて、添付文書としてキット中で提示されていてもよい。他の実施形態では、説明書は、好適なコンピューター可読ストレージ媒体、例えば、CD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどに存在する電子ストレージデータファイルとして提示される。さらに他の実施形態では、実際の説明書は、キット中に存在しないが、例えば、インターネットを介して、リモートソースから説明書を入手するための手段が提供される。この実施形態の例は、説明書を見ることができるおよび/または説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を得るためのこの手段は、好適な基材に記録される。
【0270】
本開示の別の態様は、本明細書に記載され、説明されるものをすべて提供する。以下の実施例は、実例の目的で提供され、限定する目的で提供されるものではない。
【実施例
【0271】
下記の作業実施例に共通する一般的方法
プラスミド:すべての構築物は、標準的な分子クローニング手順を使用して作成した。ベクター骨格を、制限酵素消化を使用して線状化し、DNA断片インサートを、PCRまたはgBlock合成(IDT)を使用して作成した。すべてのプラスミドについての情報は、表6に含まれる。すべてのsesRNAインサートは、gBlock合成(IDT)によって作成し、sesRNA配列は、表7に含まれる。
【0272】
細胞培養およびトランスフェクション:HeLa細胞系を、A.Krainer laboratory(Cold Spring Harbor Laboratory)から入手した。マウス神経芽細胞腫Neuro-2a(N2a)細胞を、Millipore-Sigma(Sigma、カタログ89121404)から購入した。HEK293TおよびKPC1242細胞系を、D.Fearon laboratory(Cold Spring Harbor Laboratory)から入手した。HEK293T、HelaおよびN2a細胞系を、5%のCO2下、37℃で、10%のウシ胎仔血清(FBS)(Gibco、カタログ16000036)を有するダルベッコ改変イーグル培地(Corning、10-013-CV)中で培養した。1%のペニシリン-ストレプトマイシンを、培地に補充した。細胞を、製造業者の説明書に従って、Lipofectamine2000(Invitrogen、カタログ11668019)DNAトランスフェクション試薬でトランスフェクトした。インターフェロン処置のために、1nMの組換えマウスIFN-β(R&D、カタログ8234-MB)を含有する培地を使用し、トランスフェクションプロセスの間、24時間ごとに交換した。テトラサイクリン処置のために、示されたテトラサイクリン濃度を含有する培地を、トランスフェクション24時間後に使用して、分析前に48時間、テトラサイクリンを含まない培地に置き換えた。
【0273】
動物:野生型マウスは、Jackson Laboratoryから購入した(C57BL/6J、000664)。Fezf2-CreERおよびRosa26-LoxpSSTOLoxp-H2bGFPマウスは、以前に記載された。Fezf2+皮質錐体ニューロンを標識するために、200mg/kg用量のタモキシフェン(T56648、Sigma)を、AAV注射の2日前に、腹腔内注射によって投与した。
【0274】
ADAR1ノックアウト細胞系構築:ADAR1ノックアウト細胞系を、CRISPR-Cas9ゲノム編集を介して作成した。gRNAを、pSpCas9(BB)-2A-puro(pX459)(Addgene、カタログ62988)にクローニングした。gRNA配列は、5’GGATACTATTCAAGTCATCTGGG 3’(gRNA1)および5’GTTATTTGAGGCATTTGATG 3’(gRNA2)であった。
【0275】
簡潔には、ADAR1ノックアウト細胞を、ADAR1-p110およびADAR1-p150アイソフォームの両方によって共有される、2つのgRNA標的化エクソン2を用いて作成した。HEK293T細胞を、6ウェルプレートに播種し、Lipofectamine 2000(Thermo Fisher Scientific、カタログ11668019)を使用して、1ugのpX459-gRNA1およびpX459-gRNA2のプラスミド混合物でトランスフェクトした。翌日、トランスフェクション試薬を含有するすべての培地を除去し、ピューロマイシン(最終濃度2ug/ml)が補充された新鮮な培地で置き換えた。ピューロマイシンを有する新鮮な培地を、2日ごとに3回、古い培地で置き換えた。ピューロマイシン選択後の残った細胞を、TrypLE(Gibco、カタログ12605036)を用いて回収し、それぞれのウェルに1~2個細胞で、96ウェルプレートに分配した。増えた単一クローンを、ウエスタンブロットによってADAR1欠損をスクリーニングし、ADAR1ゲノム遺伝子座の崩壊を、サンガーシークエンシングによって確認した。
【0276】
外因性または内因性転写物についてのCellREADR効率:蛍光レポーター遺伝子を用いてCellREADR効率をアッセイするために、HEK293T細胞またはHEK293T ADAR1ノックアウト細胞を、最初に、24ウェルプレートに播種した。24時間後、細胞を、合計で1.5μgのプラスミドで共トランスフェクトした。トランスフェクション後48時間で、細胞を、収集し、FACS解析のために調製した。CellREADR有効性を、FACSデータから、GFP+のGFP++XFP+に対する比として計算した。いくつかの対照(CAG-tdTなしで、tdTomato標的RNAを作成、したがってRFP+細胞なし)について、CellREADR効率を、すべてのカウントされた細胞内のGFP+細胞のパーセントとして計算した。
【0277】
sesRNA設計:以下の手順を、sesRNA設計のために使用する:1)sesRNAは、特定の細胞のコードまたは非コードRNA配列に対して相補的、すなわち、アンチセンスである、2)sesRNAの最適な長さは、200~300ヌクレオチドである、3)readrRNAは、連続する翻訳リーディングフレームに配置されたsesRNAおよびefRNAからなる、4)1つまたは複数のSTOPコドン(TAG)を、sesRNAの中央近傍に置く(5’末端から約80~220ヌクレオチドの間の範囲)、5)sesRNA中の5’-TGG-3’配列に相補的である、標的RNA中の5’-CCA-3’配列を見出し、次いで、5’-TGG-3’を5’-TAG-3’で置き換え、その結果、A-Cミスマッチが、sesRNAが標的RNAと塩基対合する場合に、導入される、6)他のSTOPコドンがsesRNAに存在しないことを確実にするために、sesRNA中のすべての他のTAG、TAA、TGA配列を、それぞれ、GAG、GAA、GGAに変換し、好ましくは、変換されたSTOPコドンは、ステップ5で定義されたTAGの近傍にない(すなわち、それから10bp超)、7)意図しない翻訳開始の可能性を排除するために、ステップ5で定義されたTAGの後にATG(開始コドン)があってはならない、8)sesRNAは、エクソン、イントロン、UTR領域、またはスプライシング後の成熟mRNAを含む細胞転写物の任意の領域に方向付けられ得る、9)複雑な二次構造を有するsesRNAを回避する。
【0278】
CellREADRによるAからIの編集率:AからIの編集率を評価するために、HEK293T細胞を、12ウェルプレートに播種した。トランスフェクション48時間後、細胞を収集し、RNAを抽出した。RNAを、RNeasy Miniキット(Qiagen カタログ74106)を用いて精製し、PrimeScript(商標)RT試薬キット(Takara、RR037A)を使用して、cDNAに変換した。全sesRNA領域をカバーするPCR産物を、CloneAmp HiFi PCR Premix(Takara、カタログ番号639298)で作成し、サンガーシークエンシングのために、NucleoSpin Gel and PCR Clean-upキット(Takara、カタログ番号74061)を用いて精製した。編集効率を、サンガーピーク高さの比G/(A+G)として計算した。
【0279】
トランスクリプトーム-ワイドRNAシークエンシング解析:赤色蛍光タンパク質(tdTomato)発現カセットを有するreadrRNACtrlまたはreadrRNAPCNA、readrRNAEEF1A1-CDS発現プラスミドを、HEK293T細胞にトランスフェクトした。RFP+細胞を、トランスフェクションの48時間後に、FACS選別によって濃縮し、RNAを、RNeasy Miniキット(Qiagen カタログ74106)を用いて精製した。ライブラリーを調製するために、RNA試料を、TrueSeq Stranded mRNA library Prepキット(Illumina、20020594)およびTrueSeq RNA Single Indexes(Illumina、20020492)で処理した。ディープシークエンシング解析を、Cold Spring Harbor Laboratory NGS Bioinformatics Centerで、Illumina NextSeq500プラットフォームにおいて行った。FastQCを、RNA-seqデータに適用して、シークエンシング品質をチェックした。品質チェックを通過したすべての試料を、参照ゲノム(GRCh38-hg38)に対してマッピングした。STAR(バージョン2.7.2)およびRSEM(バージョン1.3.2)44 43 42 41を使用して、遺伝子をアノテートした。TPM値を、RSEMから計算した。ゼロを上回るリードのライブラリーのうちの少なくとも1つを有するすべての遺伝子について、生物学的反復にわたる平均発現値を、DESeq232313131を使用して、差次的発現する遺伝子を検出するために、試料間で比較した。調整p値<0.01および倍数変化>2または<0.5を有する遺伝子を、有意に差次的発現したとして同定した。
【0280】
ウエスタンブロット:ADAR1に対する一次抗体(Santa Cruz、sc-271854、1:500)、GFP抗体(mAb カタログ2956、1:10000)、β-アクチン抗体(β-アクチン(8H10D10)mAb カタログ3700、1:10000)をこの研究で使用した。標準的なウエスタンブロットプロトコールを用いる。簡潔には、約2×106個細胞を溶解し、等量のそれぞれの溶解物を、SDS-PAGEのためにロードした。次いで、試料タンパク質を、二フッ化ポリビニリデン膜(Bio-Rad Laboratories)に移し、ADAR1またはGFPに対する一次抗体を用いて免疫ブロットし、それに続いて二次抗体インキュベーション(1:10,000)および曝露を行った。
【0281】
ルシフェラーゼ相補アッセイ:トランスフェクションの48時間後、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現するHEK293T細胞を、PBS中で洗浄し、粉砕によって収集し、96ウェルプレートに移した。Promegaルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、E1500)を使用した。ホタル発光を、SpectraMax Multi-Modeマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して測定した。
【0282】
フローサイトメトリー分析:トランスフェクションの2日後、細胞を、TrypLE(Gibco、カタログ12605036)を用いて回収し、96ウェル丸底プレートに分配し、500rpmで、4℃で1分間遠心分離した。上清を除去し、細胞を、1%のPFA緩衝液で再懸濁し、4℃で終夜またはより長い時間、インキュベートした。次いで、細胞を、LSR Fortessa(BD Biosciences)を使用する分析の前に、200ulのフローサイトメトリー染色緩衝液(Invitrogen、カタログ00-4222-26)で再懸濁した。Fortessaを、FACSDIVA(BD Biosciences)ソフトウェアによって作動させた。データ解析を、FlowJo 10(FlowJo、LLC)を用いて行った。選別するために、細胞を、1%のPFA処置なしであるが、フローサイトメトリー分析に関して同じ手順に供し、BD FACSAria(BD Biosciences)を使用して処理した。
【0283】
qRT-PCR:RNAを、抽出し、RNeasy Miniキット(Qiagen カタログ74106)を用いて精製した。RNAを、PrimeScript(商標)RT試薬キット(Takara、RR037A)を使用して、cDNAに変換した。qRT-PCRを、QuantStudio 6 FlexリアルタイムPCRシステムにおいて、Taqmanプローブを用いて行った。ハウスキーピング遺伝子TBPを、正規化のために使用した。遺伝子プローブを、Thermo Fisher Scientific.(Thermo Fisher Scientific EEF1A1:Hs01591985、PCNA:Hs00427214、XIST:Hs00300535、ACTB:Hs03023943)から購入した。ハウスキーピング遺伝子TBP(Thermo Fisher Scientific TBP:Hs00427620)を、正規化のために使用した。
【0284】
免疫組織化学的検査:4週~10週齢のマウスを、麻酔し(アバチンを使用)、生理食塩水、続いて、0.1MのPBS緩衝液中の4%のパラホルムアルデヒド(PFA)で心臓内に灌流した。4℃での終夜の固定後、脳を、3回すすぎ、Leica 1000sビブラトームを用いて、50μmの厚さに切片化した。切片を、PBS1X中の10%の正常ヤギ血清(NGS)および0.1%のTriton(登録商標)-X100を含有するブロッキング溶液中に1時間入れ、次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体とともに4℃で終夜インキュベートした。抗GFP(1:1000、Aves、GFP-1020)、抗CTIP2(1:250、Abcam 18465)を使用した。切片を、PBS中で3回すすぎ、対応する二次抗体(1:500、Life Technologies)とともに室温で1時間インキュベートした。切片を、Fluoromount(Sigma、F4680)マウンティング培地を使用して、スライド上にドライマウントした。
【0285】
定位ウイルス注射:成体マウスを、一定の空気の流れ(0.4L/分)で送達される2%のイソフルランの吸入によって麻酔した。ケトプロフェン(5mg/kg)およびデキサメタゾン(0.5mg/kg)を、それぞれ、先制鎮痛として、脳浮腫を防止するために、皮下投与し、手術の前に、リドカイン(2~4mg/kg)を適用した。マウスを、定位ヘッドフレーム(Kopf Instruments、940シリーズまたはLeica Biosystems、Angle Two)にマウントした。定位座標を特定した。切開術を、頭皮に対して行い、頭蓋に小さな穿頭孔を開け、脳の表面を露出させた。ウイルス懸濁液を含有する20~30μmの引きガラスピペットチップを、脳まで下げ、500nl体積の単一または混合ウイルスを、Picospritzer(General Valve Corp)を使用して、30nl/分の速度で送達し、ピペットを、引き戻す前に逆流を防止するために10分間所定の位置に留め、その後、切開部を、ナイロン縫合糸(Ethilon Nylon Suture、Ethicon Inc.Germany)またはTissueglue(3M Vetbond)で閉じ、動物を、完全に回復するまで、加温パッド上で温めたままにした。
【0286】
ウイルス生成:すべてのアデノ随伴ウイルス(AAV)を、市販のベクター企業のVigene Inc.によってパッケージングした。hSyn-Adar2-sesRNAFezf2-tTA2、TRE3g-mRuby3、TRE3g-eGFPを、AAV-DJ血清型としてパッケージングした。hSyn-Adar2-sesRNACtip2-tTA2を、PHP.eb血清型としてパッケージングした。
【0287】
顕微鏡法および画像解析:組織培養における細胞イメージングを、ZEISS Axio Observer(CSHL St.Giles Advanced Microscopy Center)において行った。連続的にマウントされた脳切片からのイメージングを、胎児組織について63倍および5倍、ならびに成体組織について20倍の対物レンズを使用して、Zeiss LSM 780または710共焦点顕微鏡(CSHL St.Giles Advanced Microscopy Center)およびNikon Eclipse 90i蛍光顕微鏡において、ならびにMBF Neurolucidaソフトウェア(MBF)を備えたZeiss Axioimager M2システムにおいて5倍で、行った。定量化および画像解析を、Image J/FIJIソフトウェアを使用して行った。グラフの統計学およびプロットを、GraphPad Prism 9を使用して行った。
【0288】
統計学:独立両側スチューデントのt検定を、群比較のために使用した。統計分析を、Prism 9(GraphPad Software,Inc.)で行った。DESeq2を使用して、トランスクリプトーム-ワイドRNA-seqデータの統計学的有意性を分析した。
【0289】
本明細書で参照されるすべての参考文献、刊行物、オンラインリソース、特許および/または非特許文献は、その全体が、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0290】
プログラム可能RNAセンシングによる細胞型アクセスの概要
多細胞生物における多様な細胞型は、そのゲノムを構築し、生物の表現型を組織化する、必須の中間体である。この生物学的情報フローおよび疾患におけるその変更の組織論理を解読することは、多様な種にわたる細胞型の特異的で網羅的な分析を可能にする方法を必要とする。以下の例は、CellREADR(内因性ADARによるRNAセンシングを通した細胞アクセス)を記載し、これは、RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)によって媒介されるRNA編集を通して実行される、所望のエフェクタータンパク質の翻訳に体細胞型を定義するRNAの検出を組み合わせる。以下の例は、CellREADRが、ヒトおよびマウス細胞系において、およびウイルスベクターによって送達される場合に、マウス大脳皮質の異なるニューロン型において、レポータータンパク質を翻訳する特定のRNA配列を感知することを実証する。このRNAプログラム可能技術は、生物学、医学、およびバイオテクノロジーにおいて広範な適用を有する、器官系および種にわたって、特異的で、単純で、多目的の、一般的な方法で、動物細胞型を発見し、モニターし、および編集する可能性を強調する。
【0291】
(実施例I)
CellREADR設計および哺乳動物細胞における検証
RNA編集は、再コード化、スプライシング、マイクロRNA標的化、ならびに他のRNAプロセシングおよび細胞プロセスに関わる後生動物遺伝子の調節ツールキットに必須の、広く、ロバストな転写後メカニズムである[20,21]。RNA編集の最も普及している形態は、ADARによって触媒されるアデノシンからイノシン(A→I)変換であり、イノシンは、細胞機構によってグアノシン(G)として認識される[21]。ADARは、塩基対合二本鎖(ds)RNAの区間を認識し、それによって動員され[20]、このようにして、配列がガイドする塩基編集マシンとして作動することができ、トランスクリプトーム編集のために利用されている[22~26]。ADARは、動物細胞において遍在性であるので[27]、CellREADRは、単一およびモジュラーreadrRNA分子として適応可能である(図5a)。readrRNAの5’領域は、約300ヌクレオチドのセンサードメインを含有し、これは、配列特異的塩基対合を通して、特定の細胞型RNAに相補的であり、このようにして、それを検出する。このセンサードメインは、翻訳スイッチとして作用する1つまたは複数のADAR編集可能STOPコドンを含有し、この領域は、感知-編集-スイッチRNA(sesRNA)と呼ばれる。sesRNAの下流およびSTOPのインフレームには、自己切断ペプチド2Aをコードする配列があり、インフレームで、さまざまなエフェクタータンパク質をコードするエフェクターRNA(efRNA)領域が続く。readrRNA全体は、特異的センサーおよびエフェクターに応じて、数キロ塩基であり、このようにして、ウイルスベクターまたはリポソームナノ粒子を通して細胞に送達可能である。標的RNAを発現する細胞では、sesRNAは、標的とdsRNAを形成し、これは、ADARを動員して、編集複合体をアセンブルする。編集可能STOPコドンで、ADARは、AからIに変換し、これは、標的RNA中の反対のCと対合する。このA→G置換は、TAG STOPコドンをTI(G)Gトリプトファンコドンに変換し、efRNAの翻訳のスイッチをオンにする。インフレーム翻訳は、N末端ペプチド2AおよびC末端エフェクターを含む融合タンパク質を生成し、これは、次いで2Aにより自己切断され、機能性エフェクタータンパク質を放出する(図5a)。readrRNAは、標的RNAを発現しない細胞では、不活性のままであると予想される。
【0292】
(実施例2)
ヒト細胞における操作性
CellREADRの原理証明バージョンを構築し、ヒト293T細胞系において、それを試験した。発現ベクター(PGK-tdT)を使用して、外因性標的RNAとしてtdTomato遺伝子を発現させ、トランスフェクト細胞を標識した。次に、5’センサー領域からTAG STOPコドンが埋め込まれたtdT配列(sesRNAtdT)、2Aコード配列、および緑色蛍光(GFP)のための3’コードカセットからなる、readrRNAを発現するREADRベクター(READRtdT-GFP)を設計した(図10a、b)。READRtdT-GFPとPGK-tdTの共トランスフェクションは、tdT+細胞のサブセットにおけるGFP発現をもたらした(図10c、d)。この結果を立証するために、READRベクターのGFPコード領域を、テトラサイクリン応答エレメント(TRE)プロモーターからホタルルシフェラーゼ遺伝子(Luc)の発現を駆動するテトラサイクリン誘導性転写活性化因子(tTA2)のものと置き換えた(図10e)。READRtdT-tTA2およびTRE LucとPGK-tdTの共トランスフェクションは、空ベクター対照と比較して、発光の劇的な誘導をもたらした(図10f)。それぞれ、わずかなおよび弱いGFPまたはルシフェラーゼ発現は、READRtdT-GFP単独または空PGKベクターと共トランスフェクトされた場合のREADRtdT-tTA2/TRE Lucから観察され(図10b~f)、これは、sesRNAにおけるSTOPコドンの偶然のリードスルーから生じ得た[28]。
【0293】
(実施例3)
スペーサー
図11は、本開示の一実施形態に従って、readrRNAの漏出が低減されたスペーサー配列を示すデータである。sesRNAの前のおよそ600bpのインフレームスペーサー領域の包含は、残ったGFP翻訳を実質的に排除した。図11の拡張データは、スペーサー配列がsesRNAtdTコード領域の前に挿入されている、概略的なREADRtdT-G’Pベクターである。図11bは、それぞれ、tdT標的RNA発現あり(上側)またはなし(下側)の可変の長さのスペーサーをコードするREADRtdT-G’Pベクターでトランスフェクトされた293T細胞におけるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析である。(図11a、b)より長いスペーサーは、tdT標的RNAの存在下で、readrRNAの有効性を減少させ(図11c)、図11bに示されるRFP+細胞内のGFP+細胞のパーセンテージとして計算された変換比の定量化を示す。
【0294】
(実施例4)
定量化
CellREADR効率をより定量的に特徴付けるために、BFPコードカセットを、READRtdT-GFPにおいて、sesRNAtdT領域の上流に挿入し、これは、スペーサーとして機能するだけでなく、CAG-tdTトランスフェクト細胞と一緒にすべてのREADRtdT-GFPトランスフェクト細胞を標識した(図5b、c)。CellREADR効率を、FACS解析において、BFP+細胞においてゲーティングされたRFP+細胞内のGFP+細胞の比として計算した。tdT標的RNAの非存在下で、READRtdT-GFPは、漏出性のGFP発現を示さなかった。tdT RNAの存在下で、READRtdT-GFPの効率は、15.2%であったが(図5c、d)、STOPコドンを含有するスクランブルコード配列によりsesRNACtrlを発現する対照READRベクターは、GFP翻訳を示さなかった。
【0295】
(実施例5)
CellREADR効率は標的RNAレベルと相関する
次に、CellREADR効率が、標的RNAレベルと相関するかどうかを調べた。READRtdT-GFPの効率は、293T細胞トランスフェクションにおいて、CAG-tdTベクターの量の増加とともに増加した(図12a、b)。ChETA(光ゲート型チャネルロドプシン-2のバリアント)コード配列が青色蛍光タンパク質(BFP)に融合され、TREによって駆動される、テトラサイクリン誘導性発現ベクターをさらに設計し、このようにして、BFP蛍光レベルは、培養培地中のテトラサイクリン濃度と相関したCheta転写レベルを示した(図5e)。テトラサイクリン濃度およびBFP発現レベルの増加は、Cheta RNA依存性の様式で、READRCheta-GFP効率を増加させた(図5gおよび図12c、d)。BFP-Cheta発現を駆動する構成的プロモーターにより、READRCheta-GFP効率は、41.5%の高さに達した(図5gおよび図12e、f)。これらの結果は、CellREADRの標的RNAレベル依存性およびロバスト性を示した。
【0296】
(実施例6)
CellREADR機能におけるADARタンパク質の役割
CellREADR機能におけるADARタンパク質の役割を調べるために、ADAR1遺伝子ノックアウト(KO)293T細胞系を、CRISPRを使用して作成した(図14a、b)。293T細胞において、ADAR1が高度に発現される一方で、ADAR2が辛うじて発現されるので、ADAR1KO 293Tは、本質的に、ADARヌル細胞系を表した。ADAR1の除去は、主に、READRtdT-GFP機能性を排除し(図5h、i、図14c)、これは、p110またはp150 ADAR1アイソフォーム(図14d~f)のいずれか、およびADAR2タンパク質(図5h、i)の外因性発現によってレスキューされた。野生型細胞におけるADAR2の過剰発現は、READRtdT-GFP効率を約25~30%増加させた(図5h、i)。サンガーシークエンシングは、TAG STOPコドンをTGGトリプトファンコドンに変換した、意図した部位でのAからI/Gの編集を確認した(図5j、k)。ADAR発現が、インターフェロン刺激によって誘導され得るので[32、33]、ADAR1-p110およびADAR1-p150 ADARが、野生型293T細胞において、インターフェロン刺激によって誘導されたことをさらに確認し、したがって、READRtdT-GFP効率が増加したことを実証した(図15)。
【0297】
(実施例7)
広範囲の細胞におけるCellREADR機能
293T細胞に加えて、CellREADR機能性を、ヒトHeLa、マウスN2a、およびマウスKPC1242細胞系を含む、異なる組織または種が起源のいくつかの他の細胞系において実証した(図16の拡張データ)。集合的に、これらの結果は、細胞-内因性ADARを活用することによって、CellREADRが、特異的で、有効で、ロバストな方法で、細胞RNAの検出をエフェクタータンパク質の翻訳と組み合わせることができることを実証する。
【0298】
(実施例8)
sesRNAの特性はCellREADRプログラム可能性を付与する
sesRNAは、CellREADRの重要な構成要素であるので、sesRNAのいくつかの特性を、ロバストアッセイとして、ADAR2過剰発現READRAdar2-tdT-GFPベクターを使用して用いることができる(図6a)。100ヌクレオチド未満のsesRNAが、ほとんどが無効であった一方で、長さが増加したsesRNAが、200~250ntの最適な長さで、CellREADR効率と正に相関したことを見出した(図6a)。
【0299】
(実施例9)
プログラム可能性におけるミスマッチの役割
標的RNAとの配列ミスマッチの観点から、約200ntのsesRNAは、最大で10のミスマッチ(配列の長さの5%の)またはREADRAdar2-tdT-GFP効率の大きな減少なしのインフレームのインデルを許容し(図6bおよび図17)、この特性は、sesRNA設計に対する柔軟性を付与する(方法を参照されたい)。
【0300】
しかしながら、編集部位の近傍のミスマッチは、CellREADR効率を有意に低減した(図17)。sesRNA設計における標的転写物に沿って場所の効果を検討するために、EF1a-Cheta-tdT発現ベクターを使用し、それぞれ、プロモーター、異なるコード領域、および3’UTRを標的化する5つのsesRNAを試験した。転写領域を標的化する4つのsesRNAはすべて、プロモーターを標的化するものを除いて、ロバストな効率を示した(図6c)。最後に、より多くのSTOPコドンの包含が、sesRNAのストリンジェンシーをさらに増加させ得るかどうか(すなわち、標的RNAの非存在下で、基礎的な翻訳を低減する、図5d)を調べた。読み飛ばしの翻訳の感知指標としてルシフェラーゼを使用して(図6d)、2つのSTOPコドンを有するsesRNAは、1つのSTOPコドンを有するものと比較して、同等の効率で漏出性の低減を示したが(図6e)、3つのSTOPコドンは、効率を有意に低減した(図6f)。同時に、これらの結果は、CellREADRのストリンジェンシー、効率、および柔軟性を増強する戦略を示唆する。
【0301】
(実施例10)
CellREADRは本質的にプログラム可能である
ワトソン-クリック塩基対合において構築された、CellREADRは、本質的にプログラム可能であり、より特定の細胞型の定義のために2つまたはそれよりも多くの細胞RNAを交差標的化するための可能性を付与する。この特性を検討するために、同じ転写物の異なる領域を標的化する二重または三重sesRNAアレイを設計した(図6g)。試験されたsesRNAアレイはすべて、単一sesRNAのものと同等の、ロバストなCellREADR有効性を示した(図6h、i)。
【0302】
2つの標的RNAの交差標的化のための可能性を調べるために、タンデムに配置されたsesRNAtdTおよびsesRNACheta(sesRNAtdT/Cheta)からなるsesRNAアレイを使用する(図6j)。単一の標的RNA、tdTomatoまたはChetaは、readrRNAtdT/ChetaによるGFPまたはLuc発現の誘導に失敗したが、tdTomatoおよびChetaベクターの両方がトランスフェクトされた場合に、それぞれ、有意なGFP発現または発光の増加が観察された(図6k~m)。この結果は、CellREADRのプログラム可能性に基づく交差細胞型標的化の可能性を実証した。
【0303】
(実施例11)
CellREADRによる内因性RNAセンシング
外因性RNAを発現する合成遺伝子と比較して、内因性遺伝子は、多くの場合、多数のエクソン、イントロン、および調節エレメントを含む、より複雑なゲノム構造を有し、転写された内因性RNAは、成熟mRNAとしてプロセシングされる前に、複数の精巧な転写後ステップ、例えば、スプライシングおよび化学修飾を受ける。細胞内因性RNAを標的化するためのCellREADRの能力を調べるために、293T細胞において高度に発現されるEEF1A1ハウスキーピング遺伝子を、最初に選択し、そのさまざまなエクソン、イントロン、5’および3’UTR、ならびにmRNAを標的化するsesRNAのセットを体系的に設計した(図7a、b)。これらのsesRNAは、すべての意図されるEEF1A1領域を感知して、efRNA翻訳のスイッチをオンにするのに有効であり、エクソンは、UTRおよびイントロンよりも良好な標的であった。とりわけ、2つのエクソンから接続されたmRNA領域に相補性的なsesRNAは、エクソン内に含有されたものと同等の有効性を達成し、CellREADRが、mRNAおよびpre-mRNAにおいて作用したことを示した(図7c)。EEF1A1 RNAに対するCellREADR有効性は、細胞トランスフェクション後のインキュベーション時間とともに増加した(図18)。高度に発現されるACTB、中程度に発現されるPCNA、および長鎖非コードRNA XISTを含む、いくつかの他の内因性RNAを、293T細胞においてさらに試験した。これらのRNAすべてについてのロバストなCellREADR有効性(図7d)が観察された。外因性ADAR2過剰発現は、むしろ、約30%のCellREADR有効性の中程度の増加をもたらした(図7c、d)。同時に、これらの結果は、細胞内因性ADARが、細胞内因性RNAに対する有効でロバストなCellREADR機能性を可能にすることを示唆する。
【0304】
(実施例12)
標的化転写物のレベルに対するCellREADRの効果
CellREADRは、定量的PCR(qPCR)によってアッセイされる標的化転写物のレベルを変更せず(図7e)、この結果は、readrRNAによって誘導されるRNA干渉の可能な効果も除外した。RNAシークエンシング解析をさらに行って、sesRNAEEF1AまたはsesRNAPCNAを発現する293T細胞のトランスクリプトームプロファイルを、スクランブル化sesRNACtrlを発現するものと比較することによって、CellREADRのトランスクリプトームの効果を評価した。相関分析は、sesRNAEEF1AまたはsesRNAPCNA発現が、全体的なトランスクリプトームに対する有意な影響を有さなかったことを示し(図7f)、DESeq2分析は、sesRNAEEF1AまたはsesRNAPCNAとsesRNACtrl群との間の有意な差次的遺伝子発現がないことを明らかにし(図20)、CellREADRが、細胞トランスクリプトームに対する有意な効果を有さないことを実証した。
【0305】
(実施例13)
CellREADRによるさらなる内因性RNAセンシング
外因性RNAを発現する合成遺伝子と比較して、内因性遺伝子は、多くの場合、多数のエクソン、イントロン、および調節エレメントを含む、より複雑なゲノム構造を有し、転写された内因性RNAは、成熟mRNAs34としてプロセシングされる前に、複数の精巧な転写後ステップ、例えば、スプライシングおよび化学修飾を受ける。細胞内因性RNAを検出するためのCellREADRの能力を調べるために、当業者は、293T細胞において高度に発現されるハウスキーピング遺伝子のEEF1A1を選択し、そのさまざまなエクソン、イントロン、5’および3’UTR、ならびにmRNAを標的化するsesRNAのセットを体系的に設計し得る(図7a、b)。これらのsesRNAは、すべての意図されるEEF1A1領域を感知して、efRNA翻訳のスイッチをオンにするのに有効であり、エクソンは、イントロンよりも良好な標的であると思われた(図7c)。とりわけ、2つのスプライスされたエクソンから接続されたmRNA領域に相補的なsesRNAは、エクソン内に含有されたものと同等の効率を達成し、sesRNAを、pre-mRNAおよびmRNA配列の両方を標的化するように設計することができることを示した。EEF1A1 RNAに対するCellREADR有効性は、細胞トランスフェクション後のインキュベーション時間とともに増加した(図18)。
【0306】
(実施例14)
感度
標的RNAレベルに対するCellREADRの感度を調べるために、高度に発現されるACTB、中程度に発現されるPCNA、および長鎖非コードRNA XISTを含む、いくつかの他の内因性RNAを、293T細胞においてさらに試験した。当業者は、高いレベル(ACTB、PCNA)から、中程度のレベル(TP53、XIST)、低いレベル(HER2、ARC)までの範囲の発現を有するいくつかの内因性RNAを選択し得る。これらのRNAすべてについてのロバストなCellREADR有効性(図7d)が観察された。外因性ADAR2過剰発現は、むしろ、約30%のCellREADR有効性の中程度の増加をもたらした(図7c、d)。CellREADRは、はるかに低い効率であったが、低レベルのARC RNAでさえ確実に検出することが可能であった。同時に、これらの結果は、細胞内因性ADARが、細胞内因性RNAに対する有効でロバストなCellREADR機能性を可能にすることを示唆する。
【0307】
実施例1~14の要約
CellREADRを、ヒト293T細胞におけるレポーターRNA編集アッセイを構築することによって、ヒトおよびマウス細胞系において試験し、ここで、標的RNAは、RFP発現ベクターから作製され、センサーRNAは、RFP標的に対してアンチセンスであり、次いで、第3のベクターにおいてGFP発現を活性化および増幅するtTA転写活性化因子に続く。細胞にトランスフェクトされたら、センサーRNAは、RFP RNAと対合し、ADARが動員されて、STOPコドンを編集し、GFPを活性化するtTAの翻訳のスイッチをオンにし、それによって、細胞を赤色から緑色にする。編集は、蛍光標識細胞分取[FACS]アッセイによって定量化することもでき、ここで、右上象限は、RFP/GFP陽性細胞である。
【0308】
この変換は、それがADAR1ノックアウト細胞系において起こらなかったので、ADAR媒介であり、これは、次いで、Adar2の発現によってレスキューされ得る。サンガーシークエンシングは、これが、実際に、STOPコドンを解除した意図したA-I(G)変換に起因することを証明した。
【0309】
このシステムはまた、ヒトHela細胞、ならびにマウスN2a細胞および細胞内因性RNAにおいて作動する。Ef1a遺伝子およびpre-mRNAの異なる領域が標的として使用された場合に、エクソンおよびコード領域が、イントロンおよび非翻訳領域よりも良好なセンシング標的であることが見出された。加えて、これは、非コードRNAを含む5つの他の細胞RNAについて作動した。
【0310】
(実施例15)
心筋梗塞を処置するための境界域心筋細胞の標的化
疾患および臨床背景
心筋梗塞(MI)は、死亡の主な原因の1つである[1]。エピジェネティック状態は、マウスの梗塞後の境界域心筋細胞において基礎代謝スイッチを変化させる。酸素および代謝物供給の急激な休止は、劇的な低酸素応答および代謝変化を引き起こす。酸素不足は、酸化的脂肪酸(FA)代謝を抑制し、無酸素性解糖を活性化して、限定的な酸素の摂取を低減する。この急性期は、虚血領域における代わりがない心筋細胞および他の細胞の死、免疫応答、ならびに瘢痕形成に続く。梗塞域(IZ)は、壊死組織、浸潤性線維芽細胞および免疫細胞からなり、その後、線維組織が生じる。梗塞域から遠位の遠隔心筋(RM)は、虚血によってあまり影響を受けない。重要なことには、IZの周囲の境界域(BZ)の心筋細胞は、依然として生存しているが、隣接する梗塞域の虚血、浸潤性免疫細胞および線維芽細胞によって強く影響を受ける[1]。BZは、電気生理学的に再構築され、心室頻拍の起源になり得、これは、BZが起源のMI後の患者における突然の心停止の一般的な原因である。さらにまた、BZは、追加の虚血エピソードに対してより感受性である[1]。したがって、BZは、MIのための非常に戦略的で有効な治療標的を提示し得る。しかしながら、現在の治療は、BZを特異的に標的化することができない。
【0311】
標的細胞
BZは、内皮細胞、増加した数の線維芽細胞、浸潤性免疫細胞、および少数の心筋細胞を含む、いくつかの異なる細胞型から構成される[1]。これらの細胞型はすべて、損傷応答遺伝子プログラムを誘導または抑制することによって、損傷に応答する。BZ心筋細胞は、脱分化プロセスを受けると思われ、それらの筋節を分解し、それらの筋小胞体を破壊し、グリコーゲンを蓄積し、それらは、肥大し、隣接する心筋細胞および細胞外マトリックスとの接続性および相互作用の減少を示す[1、2]。重要なことには、BZ心筋細胞は、損傷後の心臓の再生に特異的に関わり、BZにおいて活性化される細胞プロセスは、心筋梗塞後の回復のために必要である[1、2]。したがって、BZ心筋細胞は、MIにおける重要な罹患細胞型を提示し、非常に有効な治療標的の可能性がある。しかしながら、現在の治療アプローチは、罹患BZ心筋細胞の特異性を達成することができない。
【0312】
標的遺伝子
虚血により損傷した心室壁のBZは、RMとは異なる転写的に異なる区画である[1、2]。単一細胞トランスクリプトームおよびエピゲノム解析は、MI後のBZ心筋細胞における遺伝子発現プロファイルおよびプログラムの実質的な変更を実証した。これらの変更は、AP-1駆動損傷誘導遺伝子発現プログラムに特異的なMEF2駆動ホメオスタシス系列からの切り替えから生じる。このプログラムは、マウスとヒトとの間で保存されている[1、2]。BZ心筋細胞における下方調節された遺伝子には、脂肪酸代謝、酸化的リン酸化およびミトコンドリア機能に関与するものが含まれる[1、2]。とりわけ、BZ心筋細胞は、sparc、MYH7、ANKRD1、DES、UCHL1、JUN、およびFOXP1を含む、マウスとヒトとの間で保存されたマーカー遺伝子のセットによって同定することができる[2]。これらの十分に特徴付けられたマーカーおよび遺伝子発現の変化は、BZ心筋細胞を標的化することによるMIの処置のための細胞型特異的アプローチとして、CellREADR技術を活用するための基礎を提供する。NPPB、MYH7を、BZ心筋細胞を標的化するためのマーカーとして選択した。図22aは、ヒトNPPB RNAのエクソンおよびイントロンのための7つのRNAセンサーの我々の設計を図示する。これらのうち、3つのセンサーが、ヒトNPPB RNAを発現する発現ベクターでトランスフェクトされたヒトHEK297細胞において、有意な特異性および効率を示した(図22b)。これらのセンサーは、iPS由来ヒト心筋細胞において試験され、これは、発達中の心臓におけるように、上昇したNPPB発現を示す。
【0313】
エフェクター発現
心臓再生は、心筋梗塞に対する妥当な治療アプローチであり、心筋細胞(CM)の機能を有効にするために複数の細胞型を必要とする[3、4]。発達中の心臓では、心臓内皮細胞(CEC)およびCMは、筋血管成長ニッチ内で時空間的に連結され、ここで、循環CECは、誘導性微小環境を確立して、CM増殖を促進する。この連結された筋血管拡張は、VEGF-VEGFR2シグナル伝達に依存し、ここで、CM由来VEGFAは、局所的な血管拡張を刺激し、次に、アンジオクライン(例えば、Igf2、リーリン)によるCM増殖をガイドする[4]。MI後、適した筋血管成長ニッチは破壊され、CEC循環は、境界域における循環CMの周囲で濃縮されない。筋血管連結を回復させることで、再生能力を増強することができる。マスターアンジオカインVegfαの外因性過剰発現を通してCEC密度を増加させることで、CM増殖を増強し、MI後の瘢痕化を低減し、これはどちらも増強の兆候である[3、4]。
【0314】
そのため、VEGFの正確な部位は、心臓再生および治療薬にとって重要である可能性がある。いくつかの臨床試験は、修飾RNA、新たな世代のウイルスベクター、およびより効率的なプラスミド送達システムなどのより新しい送達方法を使用することを含んで、ヒト心血管疾患を処置するために外因性VEGFAを使用する(NCT03409627、NCT03370887およびNCT04125732)[5]。しかしながら、VEGFAの広い過剰発現および異所性発現は、実際には、再生を損ない、心臓の成長は、損傷の部位から離れて起こる[3]。対照的に、境界域におけるVEGFAの標的化過剰発現は、新生仔マウスにおいて再生を改善する[4]。修飾VEGFA mRNAは、損傷部位に向けて直接注射され得るが[5]、手順は、開胸バイパス手術を必要とし、そのため、多くの患者で許容できない。
【0315】
CellREADRは、非侵襲性のまたは侵襲性が低いアプローチを使用して、BZのCMにおいて特異的なVEGFA過剰発現を可能にする。VEGFAタンパク質の翻訳が、BZの心筋細胞におけるNppb mRNAの検出を条件とする、CellREADRベクターが作成される(図22C)。このベクターでは、遍在性プロモーターであるPCAG-sesRNANppb-VEGFA(PCAG)は、5’Nppb mRNAセンサー(sesRNANppb)およびVEGFAのための3’コード領域からなるモジュラーRNAを転写する。VEGFA翻訳は、sesRNANppbが、BZ心筋細胞において、細胞Nppb mRNAとハイブリダイズする場合にのみ開始される。
【0316】
1つのアプローチでは、このベクターは、心臓組織に対する強い指向性を示すアデノ随伴ウイルスAAV9血清型にパッケージングされる[6](しかしBZ CMではない)。AAV9-PCAG-sesRNANppb-VEGFAは、静脈内注射によって送達され、これは、心臓組織に優先的に感染するが、IZ、RZ、およびBZ心筋細胞に無差別に感染する。しかしながら、Nppb mRNAを発現するBZ心筋細胞のみが、VEGFAタンパク質の翻訳を引き起こすことができる。
【0317】
別のアプローチでは、sesRNANppb-VEGFA RNAは、in vitro転写によって作成され、適切な脂質ナノ粒子(LNP)またはウイルス様粒子(VLP)にパッケージングされる。これらのLNPまたはVLPは、静脈内注射によって送達され、心臓組織細胞に広く進入する。しかしながら、上記に記載されたように、BZ心筋細胞のみが、VEGFAタンパク質の翻訳を引き起こすことができる。
【0318】
BZ心筋細胞におけるVEGFAの特異的過剰発現は、CECおよび適切な筋血管成長ニッチへの局所的な連結を回復し、それによって、心筋細胞の機能的再生を刺激して、MIを修復する。
【0319】
心臓の参考文献
1.M Guenthel M, van Duijvenboden K, de Bakker DEM, Hooijkaas IB, Bakkers J, Barnett P, Christoffels VM. J (2021) Epigenetic State Changes Underlie Metabolic Switch in Mouse Post-Infarction Border Zone Cardiomyocytes. Cardiovasc Dev Dis. 2021 Oct 22;8(11):134. doi: 10.3390/jcdd8110134. PMID: 34821687
2.M van Duijvenboden K, de Bakker DEM, Man JCK, Janssen R, Guenthel M, Hill MC, Hooijkaas IB, van der Made I, van der Kraak PH, Vink A, Creemers EE, Martin JF, Barnett P, Bakkers J, Christoffels VM. (2019) Conserved NPPB+ Border Zone Switches From MEF2- to AP-1-Driven Gene Program. Circulation. 2019 Sep 9;140(10):864-879. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.118.038944. Epub 2019 Jul 1. PMID: 31259610
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【0320】
(実施例16)
がんにおけるCellREADR療法
(実施例16(a))
神経膠芽腫固形腫瘍におけるCellREADR療法
神経膠芽腫(GBM)は、成人における最も一般的かつ悪性の脳腫瘍である[1]。数十年間、GBMのための治療モダリティは、化学療法および放射線療法の組合せを必要としており、これは、時折、腫瘍成長を遅延させることを助けるが、疾患は、ほぼ常に、再発し、死に至る。数十年にわたって、GBMと診断された患者の生存は、顕著に改善されておらず、神経膠芽腫患者の約5%のみが、5年生存率を有する[2]。残念ながら、手術における神経膠芽腫の再発率は、非常に高い。従来の処置を超えて、いくつかの新たに出現した治療は、見込みがあると思われる。1つのアプローチは、ウイルス(例えば、AAV)または非ウイルス送達(例えば、脂質ナノ粒子(LNP))のいずれかを用いて、治療用分子を標的細胞に送達して、特異的な抗腫瘍効果を成立させる、遺伝子治療を使用することである。別のアプローチは、がん細胞特異的ウイルス複製に起因して腫瘍細胞を死滅させる腫瘍溶解性ウイルスを使用するウイルス-免疫療法の実行である。神経膠腫のための開発中の有効な治療における最も困難な態様の1つは、正常細胞に対する最小限の効果で、GBM細胞を正確に標的化する治療剤の性能である[3~5]。
【0321】
近年、GBMの単一細胞RNAシークエンシング研究が、この悪名高い疾患の我々の知識を大いに進展させている。RNAバイオマーカー、体細胞突然変異、および転写プロファイルが、同定および特徴付けられ、これは、分子および細胞の分解能で、GBMの前例にない正確かつ網羅的なポートレイトを与える[6~10]。しかしながら、これらのRNAシグネチャーは、通常、特定のサブタイプを分類するまたは処置の結果を予測するために、診断および予後バイオマーカーとしてのみ使用されている。潜在的に新しく、より有効な治療戦略を開発するために、これらの価値あるデータセット、特に、RNAバイオマーカーを活用することが必要不可欠である。
【0322】
GBMのためのCellREADRに基づく治療は、正確なGBMの標的化およびアブレーションのために、sesRNAをefRNAと連結する。sesRNAは、GBM腫瘍細胞において特異的におよび/または高度に発現されるRNAに対するその相補性に基づいて選択される。CellREADRが力を与える治療アプローチは、高度に発現しているまたは細胞特異的なRNAバイオマーカーを検出して、次いで、がん細胞を死滅させるか、または細胞死を誘導するタンパク質をコードするefRNAの翻訳を引き起こすことによって、GBM細胞を特異的に認識するRNAセンサーを実行する。
【0323】
GBM細胞を標的化するRNAセンサー。GBM腫瘍細胞において高度に発現されるRNAは、当技術分野において公知であり[参考文献6~15]、その例としては、SPARC遺伝子から発現されるRNAおよびVIM遺伝子から発現されるRNA[12]が挙げられる。GBM細胞に特異的なRNAセンサーは、以下を含む:CCAサブ配列を含有するSPARC遺伝子から発現されるRNAに相補的な約200ヌクレオチド、またはCCAサブ配列を含有するVIM遺伝子から発現されるRNAに相補的な約200ヌクレオチド。
【0324】
癌遺伝子センシングおよび細胞死の誘導
CellREADRを使用して、HEK293T細胞においてHER2標的RNAを検出する。2つのセンサーを設計した。
【0325】
(C)CellREADR媒介および標的RNA依存性細胞死誘導のためのベクター設計(上)。CAGプロモーターは、BFPとそれに続くエフェクターとしてのsesRNAtdT(tdTのためのセンサー)およびtaCasp3-TEVp(活性化カスパーゼ3)をコードする配列の発現を駆動して、細胞死を誘導する。下、発光によって測定される細胞アポトーシスレベルは、CellREADRベクターおよび標的RNAでトランスフェクトされた細胞において増加した。データは、ある例として、293T細胞においてHER2癌遺伝子を標的化するセンサーRNAを示す(図23B)。CellREADRのプログラム可能性の利点を取って、当業者は、2つのRNAマーカーの交差標的化のためのセンサーも使用して、より高い特異性を達成し得ることを容易に認識するであろう[16]。とりわけ、センサーはまた、特定の細胞型の存在を同定するか、または動物モデルにおけるGBMの進行をモニターする、診断目的のために使用され得る。
【0326】
efRNAは、腫瘍排除に有効なタンパク質、例えば、1)「自殺」タンパク質、例えば、チミジンキナーゼまたはシトシンデアミナーゼ、(2)細胞死を誘導するタンパク質、例えば、カスパーゼ3、カスパーゼ9、Bcl、またはGSDM[17、18]、(3)腫瘍抑制タンパク質、例えば、Rb、PTEN、および(4)抗腫瘍免疫を増加させるタンパク質、例えば、インターフェロンβ[19]をコードすることができる。我々のデータは、原理上は、構成的に活性なカスパーゼ3(ta-Casp3)が、SESが標的化され、構成的に活性なカスパーゼ3が、標的RNAが存在する場所に作動可能に連結されている(図23CにおいてtdTom RNAとして例示)、がん特異的RNAの存在下で、24時間以内に、効率よく細胞死を誘導することができることを示す。
【0327】
CellREADRは、DNAまたはRNAベクターを使用して送達される[20]。データは、げっ歯類、サルおよびヒトにおけるAAVで形質導入された効率的な神経系を実証した(ヒト試料について図23D)。加えて、送達は、ウイルスベクター(アデノウイルス、AAV、レンチウイルス、またはカプシド操作されたAAV由来)、LNP、およびVLP(ウイルス様粒子)を使用して達成され得る。
【0328】
GLの参考文献
1GL Louis, D. N. et al. The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary. Neuro-oncology 23, 1231-1251, doi:10.1093/NEUONC/NOAB106 (2021).
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【0329】
(実施例16(b))
膵臓がん固形腫瘍におけるCellREADR療法
疾患および臨床背景
膵管腺癌(PDAC)は、一般に、膵臓がんとして公知であり、西欧諸国におけるがん関連死の4番目の原因にランクされている。PDACの5年相対生存率は、わずか11%である。PDACの発生は、年々、上昇傾向を示しているが、死亡率は、診断の遅れ、早期転移、および化学療法または放射線療法に対する限定的な反応を理由として大きく減少していない。過去10年で、免疫チェックポイント遮断(ICB)療法が、有望ながん処置になっているが、PDACは、ICB療法(例えば、抗PD-1遮断)単独に対する客観的応答を有していない。ICBに対するPDACの抵抗性の重要な構成要素は、その獲得された免疫特権であり、これは、免疫抑制微小環境、低いT細胞浸潤、および低い突然変異負荷によって駆動される。PDACのための免疫療法を含む新しい処置の開発は、緊急の必要性がある。
【0330】
標的細胞
膵管がん細胞が、我々の標的細胞である。
【0331】
標的遺伝子
この実施例では、膵管がん細胞においてRNAの蔓延を生じる遺伝子の2つのセットが同定される。第1のセットの遺伝子は、正常な管細胞と比較して、がん細胞において上方調節される(例えば、AGR2およびGCNT3)。AGR2(前方勾配2、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼファミリーメンバー)は、タンパク質フォールディングおよびチオール-ジスルフィド交換反応を触媒する小胞体(ER)タンパク質のジスルフィドイソメラーゼ(PDI)ファミリーのメンバーをコードする遺伝子である。コードされるタンパク質は、N末端ERシグナル配列、触媒的に活性なチオレドキシンドメイン、およびC末端ER保持配列を有する。このタンパク質は、細胞遊走、細胞形質転換および転移において役割を果たし、p53阻害剤のようである。ER局在化分子シャペロンとして、これは、システインリッチ膜貫通受容体およびシステインリッチ腸糖タンパク質ムチンのフォールディング、輸送、およびアセンブリーにおいて役割を果たす。この遺伝子は、炎症性腸疾患およびがんの進行に関わっている。GCNT3(グルコサミニル(N-アセチル)トランスフェラーゼ3、ムチン型)は、タンパク質コード遺伝子である。コードされるタンパク質は、ムチン型糖タンパク質上のコア2およびコア4のO-グリカンの形成を触媒するベータ-6-N-アセチルグルコサミン-トランスフェラーゼである。この遺伝子のセットは、正常な管細胞から、悪性膵管細胞を区別することができるが、それらの一部は、わずかな他の正常組織におけるある特定の細胞型においても発現される。
【0332】
遺伝子の第2のセットは、一般に、管細胞によって特異的に発現される(例えば、PDX1、CFTR、およびAQP1)。PDX1遺伝子(膵臓および十二指腸ホメオボックス1)によってコードされるタンパク質は、インスリン、ソマトスタチン、グルコキナーゼ、膵島アミロイドポリペプチド、およびグルコーストランスポーター2型を含む、いくつかの遺伝子の転写活性化因子である。コードされる核タンパク質は、膵臓の初期発生に関与し、インスリン遺伝子発現のグルコース依存性調節において主要な役割を果たす。CFTR遺伝子(CF膜コンダクタンス調節因子)は、ATP結合カセット(ABC)トランスポータースーパーファミリーのメンバーをコードする。コードされるタンパク質は、塩素チャネルとして機能し、このタンパク質ファミリーのメンバーの中でそれを独特のものにし、上皮組織におけるイオンおよび水の分泌および吸収を制御する。AQP1遺伝子(アクアポリン1(Colton血液型))は、水チャネルタンパク質として機能する6つの二層に及ぶドメインを有する小型内在性膜タンパク質をコードする。このタンパク質は、浸透圧勾配に沿って、水の受動輸送を可能にする。この遺伝子は、眼液の移動の不均衡を含む障害のための可能性がある候補である。遺伝子PDX1、CFTR、およびAQP1のセットは、膵管細胞に非常に特異的であるが、悪性および正常管細胞の両方によって発現される。
【0333】
したがって、sesRNAは、より高い特異性を達成するために用いられ得るそれぞれのセットから、2つの標的RNAを交差標的化するために用いられる(参考文献6~8)。それぞれの遺伝子によってコードされるmRNAに相補的なsesRNAは、PDAC細胞系(例えば、KPC1242、PANC-1)において試験される。他のsesRNAも、所与の患者の腫瘍転写プロファイルを使用して、その患者の腫瘍において発現されるがん細胞特異的RNAを標的化するために使用され得る。
【0334】
PDACのCellREADR efRNA
この実施例では、2つの異なる戦略を、CellREADRシステムを使用してPDACを処置するために示す。
【0335】
戦略1)がん細胞死またはがん細胞増殖の抑制の直接誘導。この目的のために、efRNAは、1つまたは複数の細胞死誘導遺伝子(例えば、CASP3、DFNA5、GZMB、GZMA)および腫瘍抑制遺伝子(例えば、TP53およびCDKN2A)に基づく。カスパーゼ3(CASP3)遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞アポトーシスの実行段階において中心的な役割を果たす、システイン-アスパラギン酸プロテアーゼである。常染色体優性難聴5(DFNA5)遺伝子によってコードされるタンパク質は、新規のアポトーシス誘導タンパク質である。アポトーシスの間のカスパーゼ-3によるDFNA5の切断は、二次的な壊死性/パイロトーシス性細胞死への進行を媒介する。グランザイムB(GZMB)遺伝子によってコードされるタンパク質は、セリンプロテアーゼのペプチダーゼS1ファミリーの一部であるタンパク質のグランザイムサブファミリーのメンバーである。コードされるプレプロタンパク質は、ナチュラルキラー(NK)細胞および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって分泌され、タンパク質分解的にプロセシングされて、標的細胞のアポトーシスを誘導する活性プロテアーゼを生じる。グランザイムA(GZMA)遺伝子によってコードされるタンパク質は、ガスダーミン-B(GSDMB)の切断を触媒すること、GSDMBの孔形成部分を放出し、それによって、パイロトーシスおよび標的細胞死を引き起こすことによって、免疫学的シナプスを通して標的細胞に送達される場合に、カスパーゼ非依存性パイロトーシスを活性化する、細胞傷害性T細胞およびNK細胞のサイトゾル顆粒における豊富なプロテアーゼである。腫瘍タンパク質P53(TP53)遺伝子によってコードされるタンパク質は、転写活性化、DNA結合、およびオリゴマー化ドメインを含有する腫瘍抑制タンパク質である。コードされるタンパク質は、多様な細胞ストレスに応答して、標的遺伝子の発現を調節し、それによって、細胞周期停止、アポトーシス、老化、DNA修復、または代謝の変化を誘導する
https://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=TP53&keywords=TP53
https://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=TP53
【0336】
二重センサーアレイにおけるそれぞれのsesRNAが編集可能STOPおよびエフェクターRNAを含有する二重センサーREADR PDX1/PANC-1-CASP3を使用する、2つの標的RNA(例えば、PDX1およびPANC-1)を発現する細胞の交差標的化のためのスキームは、細胞死誘導遺伝子である。両方の標的RNAの存在下でのみ、両方の停止コドンが、編集で削除され、細胞死誘導遺伝子が発現され得る。
【0337】
とりわけ、細胞死誘導遺伝子のsesRNAセンサーおよび発現レベルの効率によって制限されて、これは、すぐにすべてのがん細胞を死滅させることが困難である可能性がある。さらにまた、腫瘍内の不均一性を理由として5、6、がん細胞の下位集団は、選択され、したがって、死滅を回避し得る、標的遺伝子を発現しないことがある。最終的に、回避したがん細胞は、大きくなり、がんの再発に至る。この限界を克服するために、免疫系も、第2の戦略において、PDACを処置するために使用され得る。
【0338】
戦略2)免疫療法を開放するための腫瘍微小環境の改変。この目的のために、プロ免疫遺伝子(例えば、IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15、CD40L)およびケモカイン遺伝子(例えば、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL16)が、efRNAとして使用される。この戦略では、標的化されたがん細胞は、直接死滅されないが、サイトカインおよびケモカインを発現および分泌して、免疫抑制微小環境を免疫促進微小環境に変化させる。ケモカインは、抗腫瘍免疫細胞(例えば、T細胞、DC、iNKT細胞)を引き付けて、腫瘍ニッチに浸潤させ、サイトカインは、浸潤した免疫細胞の抗腫瘍応答を増強する。浸潤したT細胞は、CellREADR標的化がん細胞だけでなく、非標的化がん細胞も死滅させて、直接死滅の前述の限界を克服する。加えて、免疫チェックポイント阻害剤(ICB)の薬物(例えば、抗PD1、抗CTLA4)は、組み合わせて使用して、抗腫瘍応答を増大させることができる。
【0339】
当業者は、両方の戦略が、抗腫瘍有効性をさらに増大させるために用いられ得ることを認識するであろう。
【0340】
CellREADR試薬は、本明細書の他の場所に記載されるようにして、DNAまたはRNAベクターを用いて送達することができる。
【0341】
当業者は、所与のがんの型において優先的または固有に発現されるRNAを同定することによって、CellREADRが、所与の固形腫瘍型に適用され得ることを容易に認識するであろう。
【0342】
参考文献:
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【0343】
(実施例16(c))
B細胞慢性リンパ球性白血病におけるCellREADR療法
疾患および臨床背景
B細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)は、西欧諸国で最も一般的な白血病の原因であり、毎年の白血病の新規症例の3分の1を占める。
【0344】
標的細胞
B細胞慢性リンパ球性白血病細胞が、標的細胞である。
【0345】
標的遺伝子
RRAS2 mRNAは、分析されたヒトCLL試料において、その野生型形態が過剰発現されていることが見出され、これは、CellREADRを用いて標的化することができる[1~2]。
【0346】
CLLのCellREADR efRNA
この実施例では、2つの異なる戦略を、本明細書の他の場所に記載されるCellREADRシステムを使用して、B細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)を処置するために示す。
【0347】
簡潔には、戦略1)がん細胞死またはがん細胞増殖の抑制の直接誘導。この目的のために、efRNAは、readrRNA分子のSESに直接連結されているか、またはreadrRNAによってコードされるトランス活性化因子エフェクターによってreadrRNA分子のSESに作動可能に連結されている、1つまたは複数の細胞死誘導遺伝子(例えば、CASP3、DFNA5、GZMB、GZMA、GSDM)および腫瘍抑制遺伝子(例えば、TP53およびCDKN2A)に基づく。
【0348】
戦略2)免疫療法を開放するための腫瘍微小環境の改変。この目的のために、プロ免疫遺伝子(例えば、IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15、CD40L)およびケモカイン遺伝子(例えば、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL16)が、efRNAとして使用される。加えて、免疫チェックポイント阻害剤(ICB)の薬物(例えば、抗PD1、抗CTLA4)は、組み合わせて使用して、抗腫瘍応答を増大させることができる。
【0349】
当業者は、両方の戦略が、抗腫瘍有効性をさらに増大させるために用いられ得ることを認識するであろう。
【0350】
CellREADR試薬は、本明細書の他の場所に記載されるようにして、DNAまたはRNAベクターを用いて送達することができる。
【0351】
参考文献:
1. Hortal, Alejandro M., et al. "Overexpression of wild type RRAS2, without oncogenic mutations, drives chronic lymphocytic leukemia." Molecular cancer 21.1 (2022): 1-24.
【0352】
(実施例16(d))
腎細胞癌におけるCellREADR療法
疾患および臨床背景
腎細胞癌(RCC)は、原尿を輸送する腎臓の非常に小さな管の一部分である、近位尿細管の内層が起源の腎臓がんである。RCCは、症例のおよそ90~95%の原因となる、成人における最も一般的な腎臓がんの型である。RCCの発生は、1.5:1の比で、女性よりも男性の優勢を示している。RCCは、通常、人生の60~70年目に最も多く起こる。
【0353】
標的細胞
腎細胞癌細胞が、標的細胞である。
【0354】
標的遺伝子
SLC6A3 mRNAは、分析されたヒト腎細胞癌試料において、その野生型形態が過剰発現されていることが見出され、これは、本明細書の他の場所に記載されるように、CellREADRシステムを用いて標的化することができる[1]。
【0355】
CLLのCellREADR efRNA
この実施例では、2つの異なる戦略を、本明細書の他の場所に記載されるCellREADRシステムを使用して、腎細胞癌を処置するために示す。
【0356】
簡潔には、戦略1)がん細胞死またはがん細胞増殖の抑制の直接誘導。この目的のために、efRNAは、readrRNA分子のSESに直接連結されているか、またはreadrRNAによってコードされるトランス活性化因子エフェクターによってreadrRNA分子のSESに作動可能に連結されている、1つまたは複数の細胞死誘導遺伝子(例えば、CASP3、DFNA5、GZMB、GZMA、GSDM)および腫瘍抑制遺伝子(例えば、TP53およびCDKN2A)に基づく。
【0357】
戦略2)免疫療法を開放するための腫瘍微小環境の改変。この目的のために、プロ免疫遺伝子(例えば、IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15、CD40L)およびケモカイン遺伝子(例えば、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL16)が、efRNAとして使用される。加えて、免疫チェックポイント阻害剤(ICB)の薬物(例えば、抗PD1、抗CTLA4)は、組み合わせて使用して、抗腫瘍応答を増大させることができる。
【0358】
当業者は、両方の戦略が、抗腫瘍有効性をさらに増大させるために用いられ得ることを認識するであろう。
【0359】
CellREADR試薬は、本明細書の他の場所に記載されるようにして、DNAまたはRNAベクターを用いて送達することができる。
【0360】
参考文献:
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【0361】
(実施例16(e))
卵巣がんにおけるCellREADR療法
疾患背景
卵巣がんは、米国単独で、2014年に、21,290人の推定新規症例および14,180人の推定死亡で、女性における最も致死性の婦人科悪性腫瘍である。
【0362】
標的細胞
卵巣がん細胞が、標的細胞である。
【0363】
標的遺伝子
CLDN3、CLDN4、またはHER2 mRNAは、分析されたヒト卵巣がんにおいて過剰発現されていることが見出され、これは、CellREADRを用いて標的化することができる[1]。
【0364】
CLLのCellREADR efRNA
この実施例では、2つの異なる戦略を、本明細書の他の場所に記載されるCellREADRシステムを使用して、卵巣がんを処置するために示す。
【0365】
簡潔には、戦略1)がん細胞死またはがん細胞増殖の抑制の直接誘導。この目的のために、efRNAは、readrRNA分子のSESに直接連結されているか、またはreadrRNAによってコードされるトランス活性化因子エフェクターによってreadrRNA分子のSESに作動可能に連結されている、1つまたは複数の細胞死誘導遺伝子(例えば、CASP3、DFNA5、GZMB、GZMA、GSDM)および腫瘍抑制遺伝子(例えば、TP53およびCDKN2A)に基づく。
【0366】
戦略2)免疫療法を開放するための腫瘍微小環境の改変。この目的のために、プロ免疫遺伝子(例えば、IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15、CD40L)およびケモカイン遺伝子(例えば、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL16)が、efRNAとして使用される。加えて、免疫チェックポイント阻害剤(ICB)の薬物(例えば、抗PD1、抗CTLA4)は、組み合わせて使用して、抗腫瘍応答を増大させることができる。
【0367】
当業者は、両方の戦略が、抗腫瘍有効性をさらに増大させるために用いられ得ることを認識するであろう。
【0368】
CellREADR試薬は、本明細書の他の場所に記載されるようにして、DNAまたはRNAベクターを用いて送達することができる。
【0369】
参考文献:
1. Honda, Hiroshi, et al. "Regulation of the CLDN3 gene in ovarian cancer cells." Cancer biology & therapy 6.11 (2007): 1733-1742.
【0370】
(実施例16(f))
小細胞肺がんにおけるCellREADR療法
疾患および臨床背景
小細胞肺がん(SCLC)は、迅速な細胞成長、早期の転移拡散、および標的に基づく療法の完全な欠如と関連する。その結果として、化学療法、放射線療法、および手術によるSCLCの現在の処置は、6%の悲惨な5年生存率と関連する。SCLC腫瘍の網羅的なゲノムシークエンシングは、この疾患における高い突然変異量を明らかにし、ほとんどの腫瘍は、腫瘍抑制因子RB1およびTP53の不活化突然変異または欠失を持つが、実用的な癌遺伝子標的はほとんどない。
【0371】
標的細胞
SCLCがん細胞が、標的細胞である。
【0372】
標的遺伝子
この実施例では、ほとんどのSCLC腫瘍は、POU2F3、ASCL1、またはNEUROD1の発現に基づいて、3つの系列のうちの1つに分類され得る。POU2F3、ASCL1、またはNEUROD1は、患者の疾患遺伝子型に従って、標的遺伝子として使用される[1~2]。
【0373】
SCLCのCellREADR efRNA
この実施例では、2つの異なる戦略を、本明細書の他の場所に記載されるCellREADRシステムを使用して、SCLCを処置するために示す。
【0374】
簡潔には、戦略1)がん細胞死またはがん細胞増殖の抑制の直接誘導。この目的のために、efRNAは、readrRNA分子のSESに直接連結されているか、またはreadrRNAによってコードされるトランス活性化因子エフェクターによってreadrRNA分子のSESに作動可能に連結されている、1つまたは複数の細胞死誘導遺伝子(例えば、CASP3、DFNA5、GZMB、GZMA)および腫瘍抑制遺伝子(例えば、TP53およびCDKN2A)に基づく。
【0375】
戦略2)免疫療法を開放するための腫瘍微小環境の改変。この目的のために、プロ免疫遺伝子(例えば、IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15、CD40L)およびケモカイン遺伝子(例えば、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL16)が、efRNAとして使用される。加えて、免疫チェックポイント阻害剤(ICB)の薬物(例えば、抗PD1、抗CTLA4)は、組み合わせて使用して、抗腫瘍応答を増大させることができる。
【0376】
当業者は、両方の戦略が、抗腫瘍有効性をさらに増大させるために用いられ得ることを認識するであろう。
【0377】
CellREADR試薬は、本明細書の他の場所に記載されるようにして、DNAまたはRNAベクターを用いて送達することができる。
【0378】
参考文献
1. George J, Lim JS, Jang SJ, Cun Y, Ozretic L, Kong G, Leenders F, Lu X, Fernandez-Cuesta L, Bosco G, et al. 2015. Comprehensive genomic profiles of small cell lung cancer. Nature 524: 47-53.
2. Huang, Y.-H. et al. POU2F3 is a master regulator of a tuft cell-like variant of small cell lung cancer. Genes Dev. 32, 915-928 (2018).
【0379】
(実施例16(g))
乳がんにおけるCellREADR療法
疾患および臨床背景
乳がんは、乳房の細胞が制御不能に成長する疾患である。異なる種類の乳がんが存在する。女性ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンおよびヒト上皮増殖因子に対する受容体は、多くの場合に、乳がんにおいて過剰発現している。
【0380】
標的細胞
乳がん細胞が、標的細胞である。
【0381】
標的遺伝子
この実施例では、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)およびヒト上皮増殖因子(HER2)は、がん型に応じて、乳がん細胞のための標的遺伝子である[1]。
【0382】
SCLCのCellREADR efRNA
この実施例では、2つの異なる戦略を、本明細書の他の場所に記載されるCellREADRシステムを使用して、SCLCを処置するために示す。
【0383】
簡潔には、戦略1)がん細胞死またはがん細胞増殖の抑制の直接誘導。この目的のために、efRNAは、readrRNA分子のSESに直接連結されているか、またはreadrRNAによってコードされるトランス活性化因子エフェクターによってreadrRNA分子のSESに作動可能に連結されている、1つまたは複数の細胞死誘導遺伝子(例えば、CASP3、DFNA5、GZMB、GZMA)および腫瘍抑制遺伝子(例えば、TP53およびCDKN2A)に基づく。
【0384】
戦略2)免疫療法を開放するための腫瘍微小環境の改変。この目的のために、プロ免疫遺伝子(例えば、IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15、CD40L)およびケモカイン遺伝子(例えば、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL16)が、efRNAとして使用される。加えて、免疫チェックポイント阻害剤(ICB)の薬物(例えば、抗PD1、抗CTLA4)は、組み合わせて使用して、抗腫瘍応答を増大させることができる。
【0385】
当業者は、両方の戦略が、抗腫瘍有効性をさらに増大させるために用いられ得ることを認識するであろう。
【0386】
CellREADR試薬は、本明細書の他の場所に記載されるようにして、DNAまたはRNAベクターを用いて送達することができる。
【0387】
参考文献
1. Iqbal, Nida, and Naveed Iqbal. "Human epidermal growth factor receptor 2 (HER2) in cancers: overexpression and therapeutic implications." Molecular biology international 2014 (2014).
【0388】
(実施例16(h))
肝臓がんにおけるCellREADR療法
疾患および臨床背景
75%~85%の肝細胞癌(HCC)の症例を含む肝臓がんは、2018年に、世界中で、最も一般に、がんと診断されるものの6番目であり、がん関連死の4番目であると予測されている。
【0389】
標的細胞
肝臓がん細胞が、標的細胞である。
【0390】
標的遺伝子
この実施例では、グリピカン-3(GPC3)およびグラニュリン-エピテリン前駆体(GEP)が、がん型に応じて、肝臓がん細胞についての標的遺伝子である[1]。
【0391】
CellREADR efRNA
この実施例では、2つの異なる戦略を、本明細書の他の場所に記載されるCellREADRシステムを使用して、肝臓がんを処置するために示す。
【0392】
簡潔には、戦略1)がん細胞死またはがん細胞増殖の抑制の直接誘導。この目的のために、efRNAは、readrRNA分子のSESに直接連結されているか、またはreadrRNAによってコードされるトランス活性化因子エフェクターによってreadrRNA分子のSESに作動可能に連結されている、1つまたは複数の細胞死誘導遺伝子(例えば、CASP3、DFNA5、GZMB、GZMA)および腫瘍抑制遺伝子(例えば、TP53およびCDKN2A)に基づく。
【0393】
戦略2)免疫療法を開放するための腫瘍微小環境の改変。この目的のために、プロ免疫遺伝子(例えば、IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15、CD40L)およびケモカイン遺伝子(例えば、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL16)が、efRNAとして使用される。加えて、免疫チェックポイント阻害剤(ICB)の薬物(例えば、抗PD1、抗CTLA4)は、組み合わせて使用して、抗腫瘍応答を増大させることができる。
【0394】
当業者は、両方の戦略が、抗腫瘍有効性をさらに増大させるために用いられ得ることを認識するであろう。
【0395】
CellREADR試薬は、本明細書の他の場所に記載されるようにして、DNAまたはRNAベクターを用いて送達することができる。
【0396】
参考文献
1. Yip, Chi Wai, et al. "Granulin-epithelin precursor interacts with heparan sulfate on liver cancer cells." Carcinogenesis 35.11 (2014): 2485-2494.
【0397】
(実施例17)
B細胞悪性腫瘍のためのin vivo CAR T療法
疾患および臨床背景
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、ある特定の血液がんを有する患者のための強力な治療アプローチとして出現し、複数のCAR T細胞製品が、現在、再発性および/または難治性B細胞悪性腫瘍を有する患者のために、FDAによって承認されている(1)。しかしながら、所望のレベルの有効性を達成するために、患者は、タイムリーなやり方で、CAR T細胞注入を首尾よく受ける必要がある。このプロセスは、患者のT細胞のアフェレーシスとそれに続くex vivoのCAR T細胞製造を必要とする。注入を待つ間、ほとんどの患者は、pre-CAR T細胞のリンパ枯渇のコースも受け、これは、耐久性の応答を可能にするのに重要な要因として浮上している(1)。実験室のCAR T調製手順は、費用および患者に対するリスクを増加させる。
【0398】
ドナー由来の同種CAR T細胞の使用は、自家アプローチよりも多くの潜在的な利点、例えば、患者処置のための凍結保存バッチの即時利用可能性、CAR T細胞製品の標準化の可能性、複数の細胞改変のための時間、異なる標的に対するCAR T細胞の再投薬または組合せ、および工業化されたプロセスを使用するコストの減少を有する(2)。しかしながら、同種CAR T細胞は、生命を脅かす移植片対宿主病を引き起こすことがあり、宿主免疫系によって迅速に排除され得る(2)。
【0399】
ex vivo CAR T細胞産生の不利な点を克服するために、脂質ナノ粒子(LNP)に基づく送達システムが、in vivoで産生するCAR T細胞について試験され、少なくとも、前臨床心臓損傷モデルにおいて、有望な進展を示しており、ここで、T細胞指向性トランスフェクションは、抗CD5抗体を有するLNP(CD5標的化LNP)を装飾することによって媒介および増強された(3)。しかしながら、CD5は、CD3+T細胞によって単独で発現されず、LNPが、肝臓において天然で蓄積され、CD3-細胞における望ましくないCAR発現が観察され(3)、これは、治療有効性を低減し、副作用を生じさせ得る。
【0400】
CellREADRシステムはまた、CD3-イプシロン遺伝子から発現されるRNAを標的化するsesRNAを使用して、CD3+ T細胞特異的in vivo CAR発現に適用可能である。
【0401】
標的細胞
この実施例では、T細胞は、CELLREADRを使用するin vivo CAR T作成のために調製される。
【0402】
標的遺伝子
CD3は、T細胞特異的マーカーである。これは、T細胞受容体(TCR)と会合して、細胞傷害性T細胞(CD8+ T細胞)およびヘルパーT細胞(CD4+ T細胞)の両方を含むTリンパ球において活性化シグナルを生じる。抗体によるCD3の結合は、正常なT細胞の活性化を妨げるので、これは、抗体媒介LNP送達のための実現可能な標的ではない。CellREADRシステムのRNAセンシングの利点により、CD3+ T細胞特異的in vivo CAR発現は、CD3E RNAを標的化する(それに相補的な)sesRNAを使用することおよびCD3タンパク質を適したT細胞活性化のために変更しないままにすることによって達成される。sesRNAセンサーは、以下のヒトCD3イプシロンRNA(sesRNACD3E)を含み得る[ここで、T細胞受容体複合体(CD3E)のCD3E Homo sapiens CD3イプシロンサブユニット、mRNA遺伝子座NCBI参照がNM_000733であり、GRCh38由来の染色体11:118,304,730~118,316,175フォワード鎖と協調し、転写物IDがENST00000528600.1である]。
【0403】
T細胞のうちのヒトJurkat T細胞系においてのみ、それぞれのsesRNAセンサーがCAR発現を制限する性能が決定される。同じ様式で、CD8AまたはCD4 RNAのためのRNAセンサーは、したがって、細胞傷害性T細胞(CD8+ T細胞)またはヘルパーT細胞(CD4+ T細胞)においてCAR発現を制限するそれらの性能について評価される。
【0404】
CAR T efRNA
現在、4つのCAR T細胞製品(チサゲンレクルユーセル、アキシカブタゲンシロロイセル、リソカブタゲンマラルユーセル、ブレクスカブタジェンアウトルーセル)は、B-NHLを有する患者のために、FDAによって承認されており、これらはすべて、CD19に対するものである。この実施例では、4つの抗CD19-CAR構築物を記載する。選択されたsesRNACD3Eを使用して、PCAG-sesRNACD3E-(CD19-CAR)構築物を作成することによって、CD3+細胞における抗CD19-CAR発現が制限される。PCAG-sesRNACD3E-CD19-CARプラスミドまたはin vitro転写mRNAは、i.v.注射によりCD5標的化LNPによって送達されて、T細胞指向性取り込みを増強する。LNPによってトランスフェクトされたT細胞は、抗CD19-CARを発現し、次いで、悪性B細胞を死滅させて、患者の生存を延長することができる。このin vivo CAR T療法は、より短いタイムライン、減少したコスト、市販品(異なる患者のために個々のまたは同種CAR T細胞をカスタマイズする必要がない)および移植片対宿主のリスクがない、より安全でより有効な処置である。加えて、このシステムは、したがって、CAR構成要素を変化させることによって、他の疾患を処置するために、任意のin vivo CAR T細胞生成に容易に適合させることができる。図24は、B細胞悪性腫瘍のためのin vivo CAR T療法の概略図を図示する。a.LNPは、CellREADR CD19-CAR構築物をパッキングして、CD3細胞を標的化した。b.LNPカーゴの患者へのi.v.注入。c.CD19-CARにより悪性B細胞を死滅させるためのT細胞のin vivoトランスフェクション。
【0405】
参考文献
1. Amini, L., Silbert, S.K., Maude, S.L. et al. Preparing for CAR T cell therapy: patient selection, bridging therapies and lymphodepletion. Nat Rev Clin Oncol 19, 342-355 (2022).
2. Depil, S., Duchateau, P., Grupp, S.A. et al. ‘Off-the-shelf’ allogeneic CAR T cells: development and challenges. Nat Rev Drug Discov 19, 185-199 (2020).
3. Rurik J.G., Tombacz, I., Amir Yadegari, A. et al. CAR T cells produced in vivo to treat cardiac injury. Science 375, 91-96 (2022).
【0406】
(実施例18)
クリグラー-ナジャー症候群の処置のためのUTG1A1の肝細胞制限的発現
疾患および臨床背景
クリグラー-ナジャー症候群(CNS)は、肝臓によって処理されたビリルビンが、その水溶性形態(コンジュゲート化ビリルビン)に変化できない、小児において見出される稀な遺伝性疾患である。これは、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT1A1)(配列番号149、肝臓におけるコンジュゲートされていないビリルビンのグルクロン酸抱合のために必要であり、身体によって排泄され得る物質にビリルビンを形質転換する原因となる酵素)の非存在またはその活性の減少によって引き起こされる。UGT1A1欠損は、著しい神経損傷、および時間内に処置されなかった場合は死亡をもたらし得る、1。2つの形態のクリグラー-ナジャー症候群がある。1型疾患は、永続的な神経学的続発症をもたらし得るビリルビン脳症に起因する、重度の黄疸および神経機能障害と関連する。2型疾患は、より低い血清ビリルビン濃度と関連し、神経機能障害なしで、成人期までの患者の生存に影響を及ぼす。光線療法(ビリルビンおよびその神経毒性作用を制御する)、同所肝臓移植、肝臓細胞移植は、CNSのための伝統的な処置である。小型動物モデルにおける遺伝子治療の有望な報告により、遺伝子治療アプローチは、CNSの安全で有効な処置を開発するための前臨床研究が継続されると予想される、2、3。組換えウイルス、例えば、アデノウイルスを使用する遺伝子移入ベクターは、CNSのGunnラットモデルの肝臓へのUGT1A1遺伝子の移入に成功裏に適用されている。クリグラー-ナジャー症候群のための機能性UGT1A1の遺伝子移入のための臨床試験(例えば、NCT0322319、NCT03466463)も、新しい処置としての可能性を示した。しかしながら、現在の遺伝子治療はすべて、特定の組織または肝細胞に発現される治療剤(UGT1A1機能性遺伝子)を制限する課題に直面しており、これは、治療有効性を増加させ、同様に副作用を低減するはずである。
【0407】
標的細胞および遺伝子
肝細胞(HC)、肝星細胞(HSC)、クッパー細胞(KC)、および肝臓類洞内皮細胞(LSEC)は、時空間的に協調して、肝臓機能を形作り、維持する。肝臓における主要な実質細胞である肝細胞は、代謝、解毒、およびタンパク質合成において極めて重要な役割を果たす。肝細胞は、UGT1A1遺伝子を発現する主な細胞型であり、遺伝子治療の標的細胞である(4)。肝細胞は、Apoa2(アポリポタンパク質A-2)、AHSG(アルファ2-HS糖タンパク質)、アルブミン(Alb)を含む、マウスとヒトとの間で保存されたいくつかの特異的RNAマーカーを有する。これらの特異的マーカーは、肝細胞を特異的に標的化し、機能性UGT1A1を発現させることによって、およびクリグラー-ナジャー症候群を処置するための細胞型特異的アプローチとしてCellREADR技術を活用する基礎を提供する、6、7および10。sesRNAを、マウス肝臓細胞系のAML12において、それぞれ、マウスApoa2、AhsgおよびAlb RNAのために選択した。この様式で、3つの遺伝子すべてについて、AML細胞において有意な特異性および効率を示す、センサーを同定した(図25A~25F)。特異的センサーを含有するCellREADRは、肝細胞において、制限されたペイロード発現を達成する。
【0408】
efRNAおよびベクター
約800bpである機能性UGT1A1遺伝子は、CellREADRベクターに組み込まれる。他の遺伝子治療法として、ウイルスベクター(例えば、AAV、アデノウイルス、レンチウイルス)、脂質ナノ粒子(LNP)またはウイルス様粒子(VLP)を、静脈内注射により、送達ベクターとして使用する。2つの戦略を、efRNAとして機能性UGT1A1遺伝子を発現させるために使用する(図25G)。戦略Iは、特異CellREADRベクターからUGT1A1遺伝子を直接発現させることである。戦略IIは、UGT1A1遺伝子発現の増幅を提供するために、バイナリーtTA2/TRE3gベクターを使用することである。AAV、アデノウイルスおよびレンチウイルスを含むウイルスベクター、脂質ナノ粒子(LNP)またはウイルス様粒子(VLP)を、静脈内注射によって、送達ベクターとして使用する。
【0409】
とりわけ、多くの単一遺伝子疾患において、遺伝的突然変異は、特定の器官における特定の体細胞型を破壊することによって、ヒトの健康に影響を及ぼす。ここで、クリグラー-ナジャー症候群の処置のためにCellREADRを使用する例を、正常なmRNAおよびタンパク質を肝細胞に提供すること、すなわち、細胞特異的遺伝的補完によって図示するが、当業者は、同様の戦略が、遺伝的突然変異が特定の体細胞型に影響を及ぼす他の単一遺伝子疾患を処置するために適用され得ることを認識するであろう。
【0410】
参考文献
1 Ebrahimi, A. & Rahim, F. Crigler-Najjar Syndrome: Current Perspectives and the Application of Clinical Genetics. Endocr Metab Immune Disord Drug Targets 18, 201-211, doi:10.2174/1871530318666171213153130 (2018).
2 Chaubal, A. N. et al. Management of pregnancy in Crigler Najjar syndrome type 2. World J Hepatol 8, 530-532, doi:10.4254/wjh.v8.i11.530 (2016).
3 Tcaciuc, E., Podurean, M. & Tcaciuc, A. Management of Crigler-Najjar syndrome. Med Pharm Rep 94, S64-S67, doi:10.15386/mpr-2234 (2021).
4 Ding, C. et al. A Cell-type-resolved Liver Proteome. Mol Cell Proteomics 15, 3190-3202, doi:10.1074/mcp.M116.060145 (2016).
【0411】
(実施例19(a))
AIDSの感染性疾患細胞型標的化処置
疾患および臨床背景
後天性免疫不全症候群(AIDS)は、免疫系の進行性不全が、生命を脅かす日和見感染症およびがんを栄えさせる、状態である。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)がAIDSを引き起こす。HIVは、CD4T細胞、マクロファージ、およびミクログリア細胞などの各種の免疫細胞に感染し得る。指向性に基づいて、HIVウイルスは、CCR5-指向性(R5)、CXCR4-指向性(X4)、または二重指向性(R5/X4)株として分類される。R5ウイルスは、単球-マクロファージにおいて複製が可能であり(別名M指向性)、X4株は、T細胞において優先的に複製する(別名T指向性)
【0412】
現在のHIV処置は、インテグラーゼ阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤のいずれかの第3の薬物と組み合わされた2つのヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害剤からなる、3剤の経口の毎日の抗レトロウイルスレジメンからなる。現在の処置レジメンにより、患者は、治癒できないが、患者が処置を続ければ、通常の平均余命を有すると予想される。しかしながら、薬物疲労は、現在の処置の実行のための課題の1つである
【0413】
標的細胞
HIV感染CD4T細胞およびマクロファージが、ウイルスRNAを感知することによって、CellREADRシステムによって標的化される。
【0414】
標的遺伝子
HIV RNAゲノムは、10遺伝子(gag、pol、env、tat、rev、nef、vif、vpr、aspおよびvpu(HIV-1)、またはvpx(HIV-2))を含有する。それらのうち、envは、細胞プロテアーゼによって2つに切断されて、gp120およびgp41を形成する、糖タンパク質(gp)160と呼ばれるタンパク質をコードする。gp120およびgp41は、ウイルスが標的細胞に付着し、ウイルスエンベロープが標的細胞の膜と融合するのを可能にする、HIVスパイクを形成する。envは、HIV感染細胞を同定するための我々の初期の標的遺伝子である。8~10のRNAセンサーは、env遺伝子でトランスフェクトされたHEK293T細胞における特異性および効率のために最適化される。残りの9つのHIV遺伝子/RNAのためのRNAセンサーも、env遺伝子でトランスフェクトされたHEK293T細胞における特異性および効率のために最適化される。
【0415】
efRNA遺伝子
現在のHIV処置と同様に、HIVウイルス複製に参加する逆転写酵素、インテグラーゼまたはプロテアーゼは、小型の操作された抗体誘導体である、中和ナノボディを発現することによって阻害される。しかしながら、阻害は、RNAセンサーsesRNAenvを使用して、HIV感染細胞に特異的に方向付けられる。身体のすべての細胞に影響を及ぼす現在の処置における広く非特異的な阻害と比較して、CellREADRがガイドするナノボディ発現は、低い毒性および副作用を示す一方で、感染細胞におけるHIV複製をより有効に抑制する。遺伝子治療の耐久性の観点から、CellREADRがガイドするナノボディAIDS処置は、現在の薬物処置の錠剤疲労を克服する。
【0416】
前臨床モデルが、抗CD5抗体を固定化した脂質ナノ粒子(CD5標的化LNP)がT細胞指向性トランスフェクションを増強することができることを示したので、CD5標的化LNPを使用して、CellREADRがガイドするナノボディ製品(mRNAまたはDNAプラスミド)が標的T細胞に送達される。同様に、CD68(単球および組織マクロファージによって高度に発現される)抗体を固定化したLNPを使用して、CellREADRがガイドするナノボディのマクロファージ送達が方向付けられ、増強される。
【0417】
広い意味で、HIVのCellREADR処置は、唯一の例であり、同様の戦略を、多くの潜伏感染(例えば、エプスタインバーウイルス感染、ヘルペス、ジカ熱、COVID19、エボラ)の処置に適用することができる。一般的なアプローチは、感染細胞を検出し、次いで、1)プログラム細胞死を引き起こし、2)免疫キラー細胞のために細胞表面を標識化するタンパク質を発現させることによって、これらの細胞を除去することができる、RNAセンサーを開発することである。
【0418】
潜伏感染を処置するための別の例として、CellREADRは、スパイクmRNAのためのセンサーを使用して、COVID19の処置のために使用される、15。sesRNAは、スパイクmRNAの標的化を提供し、HEK細胞において試験され、15のうち3つのsesRNAが、スパイクmRNA発現に応答した有望な結果を示した(図26)。
【0419】
参考文献:
1. Daniel C. Douek, Mario Roederer, and Richard A. Koup. Emerging Concepts in the Immunopathogenesis of AIDS. Annu. Rev. Med. 2009. 60:471-84. doi: 10.1146/annurev.med.60.041807.123549.
2. Poveda, Eva, Briz, Veronica, Quinones-Mateu, Miguel, and Soriano, Vincent. HIV tropism: diagnostic tools and implications for disease progression and treatment with entry inhibitors. AIDS: June 26, 2006 - Volume 20 - Issue 10 - p 1359-1367. doi: 10.1097/01.aids.0000233569.74769.69.
3. Nittaya Phanuphak, and Roy M Gulick. HIV treatment and prevention 2019: current standards of care. Curr Opin HIV AIDS 2020 Jan;15(1):4-12. doi: 10.1097/COH.0000000000000588.
4. Eisinger RW, Fauci AS. Ending the HIV/AIDS Pandemic. Emerg Infect Dis. 2018 Mar;24(3):413-416. doi: 10.3201/eid2403.171797.
5. Foley, Brian Thomas, Korber, Bette Tina Marie, Leitner, Thomas Kenneth, Apetrei, Cristian, Hahn, Beatrice, Mizrachi, Ilene, Mullins, James, Rambaut, Andrew, and Wolinsky, Steven. HIV Sequence Compendium 2018. United States: N. p., 2018. Web. doi:10.2172/1458915.
6. David C. Chan, Deborah Fass, James M. Berger, and Peter S. Kim. Core Structure of gp41 from the HIV Envelope Glycoprotein. Cell, Vol. 89, 263-273, April 18, 1997. doi: 10.1016/S0092-8674(00)80205-6.
7. Rurik J.G., Tombacz, I., Amir Yadegari, A. et al. CAR T cells produced in vivo to treat cardiac injury. Science 375, 91-96 (2022).
8. Holness C.L., and Simmons D.L. Molecular cloning of CD68, a human macrophage marker related to lysosomal glycoproteins. Blood (1993) 81 (6): 1607-1613. doi: 10.1182/blood.V81.6.1607.1607.
【0420】
(実施例19(b))
C型肝炎の感染性疾患-細胞型標的化処置
疾患および臨床背景
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)によって引き起こされる肝臓の感染症である。C型肝炎は、感染した人からの血液との接触を通して広がる。一部の人々について、C型肝炎は、短期間の疾病であるが、C型肝炎ウイルスに感染した人の半分よりも多くは、長期間の慢性感染症になる。慢性C型肝炎は、肝硬変および肝臓がんのような重篤な、さらに生命を脅かす健康上の問題をもたらし得る。C型肝炎のためのワクチンは存在しない
【0421】
標的細胞
HCVに感染した肝細胞は、ウイルスRNAを感知することによって、CellREADRシステムによって標的化される。
【0422】
標的遺伝子
HCVは、フラビウイルス科に属し、そのゲノムは、約9.6キロ塩基のプラス鎖RNA分子からなり、大型ポリタンパク質前駆体(約3000アミノ酸)をコードする。この前駆タンパク質は、宿主およびウイルスプロテイナーゼによって切断されて、少なくとも10のタンパク質:コア(C)、エンベロープ1(E1)、E2、p7、非構造(NS)2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5Bが生じる。2、3
【0423】
コアタンパク質(c)のCDSは、HCV感染細胞を同定するための我々の初期の標的遺伝子である。8~10のRNAセンサーは、HCV c遺伝子でトランスフェクトされたHEK293T細胞における特異性および効率のために最適化される。ポリタンパク質前駆体のための残りのCDSのためのRNAセンサーも、個々のCDSでトランスフェクトされたHEK293T細胞において、特異性および効率について最適化される。
【0424】
efRNA遺伝子
C、E1およびE2は、HCVウイルス粒子パッケージングのために重要であるので2、3、C、E1またはE2に対する中和ナノボディは、HCVパッケージングを遮断すると予想され、RNAセンサーsesRNA後にロードされるefRNAとして使用される。身体のすべての細胞に影響を及ぼす広く非特異的な抗ウイルス処置と比較して、CellREADRがガイドするナノボディ発現は、低い毒性および副作用を示す一方で、感染細胞におけるHCV複製をより有効に抑制する。
【0425】
脂質ナノ粒子(LNP)は、肝臓において自発的に濃縮するので、LNPは、肝細胞へのCellREADRがガイドするナノボディの送達のために理想的である。同様に、肝臓指向性AAVを使用して、CellREADRがガイドするナノボディを肝細胞に送達することができる
【0426】
参考文献:
1. https://www.cdc.gov/hepatitis/hcv/index.htm
2. De Francesco R (1999). "Molecular virology of the hepatitis C virus". J Hepatol. 31 (Suppl 1): 47-53.
3. Kato N (2000). "Genome of human hepatitis C virus (HCV): gene organization, sequence diversity, and variation". Microb. Comp. Genom. 5 (3): 129-51.
4. Marti C, Renina N, Erhua Z, et. al. (2022), “Novel human liver-tropic AAV variants define transferable domains that markedly enhance the human tropism of AAV7 and AAV8”. Molecular Therapy: Methods & Clinical Development. 24: 88-101.
【0427】
(実施例19(c))
B型肝炎の感染性疾患-細胞型標的化処置
疾患および臨床背景
B型肝炎ウイルス(HBV)は、オルトヘパドナウイルス属の種である部分的二本鎖DNAウイルスであり、ウイルスのヘパドナウイルス科のメンバーである。このウイルスは、B型肝炎疾患を引き起こす。B型肝炎を防止するワクチンが存在しているにもかかわらず、HBVは、世界的な健康上の問題のままである。B型肝炎は、急性で、その後慢性になり、他の疾患および健康状態をもたらし得る。肝炎の原因であることに加えて、HBVによる感染は、肝硬変および肝細胞癌をもたらし得る。これが膵臓がんのリスクを増加させ得ることも示唆されている。
【0428】
標的細胞
HBV感染細胞は、ウイルスRNAを感知することによって、CellREADRシステムによって標的化される。
【0429】
標的遺伝子
C、P、S、およびXと呼ばれるゲノムによってコードされる4つの公知の遺伝子が存在する。コアタンパク質は、遺伝子C(HBcAg)によってコードされ、その開始コドンは、pre-コアタンパク質が産生される上流のインフレームAUG開始コドンに先行する。HBeAgは、pre-コアタンパク質のタンパク質分解プロセシングによって産生される。DNAポリメラーゼは、遺伝子Pによってコードされる。遺伝子Sは、表面抗原(HBsAg)をコードする遺伝子である。HBsAg遺伝子は、遺伝子をpre-S1、pre-S2、およびSの3つのセクションに分ける、3つのインフレーム「開始」(ATG)コドンを含有するが、1つの長いオープンリーディングフレームである。複数の開始コドンを理由として、大、中、および小(pre-S1+pre-S2+S、pre-S2+S、またはS)と呼ばれる3つの異なるサイズのポリペプチドが産生される。遺伝子HBV-C、HBV-P、HBV-S、HBV-Xが、CellREADRによる標的遺伝子である。
【0430】
efRNA遺伝子
HBV-C、HBV-P、HBV-S、HBV-Xに対する中和ナノボディは、HCVパッケージングを遮断すると予想され、RNAセンサーsesRNA後にロードされるefRNAとして使用される。身体のすべての細胞に影響を及ぼす広く非特異的な抗ウイルス処置と比較して、CellREADRがガイドするナノボディ発現は、低い毒性および副作用を示す一方で、感染細胞におけるHBV複製をより有効に抑制する。CellREADR試薬は、本明細書の他の場所に記載されるようにして、DNAまたはRNAベクターを用いて送達することができる。
【0431】
(実施例19(d))
コロナウイルス疾患2019の感染性疾患-細胞型標的化処置
疾患および臨床背景
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)は、ウイルスによって引き起こされる伝染病の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である。疾患は、世界中に急速に広がり、COVID-19パンデミックをもたらした。
【0432】
標的細胞
SARS-CoV-2感染細胞は、ウイルスRNAを感知することによって、CellREADRシステムによって標的化される。
【0433】
標的遺伝子
SARS-CoV-2のオープンリーディングフレーム1a(ORF1a)、オープンリーディングフレーム1b(ORF1a)およびスパイク遺伝子が、CellREADRシステムのための標的遺伝子である。
【0434】
efRNA遺伝子
スパイクタンパク質に対する中和ナノボディは、SARS-CoV-2パッケージングを遮断すると予想され、RNAセンサーsesRNA後にロードされるefRNAとして使用される。RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)に対する中和ナノボディは、SARS-CoV-2複製を遮断すると予想される。これらのナノボディは、CellREADRシステムのefRNA遺伝子である。CellREADR試薬は、本明細書の他の場所に記載されるようにして、DNAまたはRNAベクターを用いて送達することができる。
【0435】
(実施例20)
RNAに基づく診断法としてのCellREADR
臨床背景
標的RNAの検出の際のエフェクタータンパク質の産生と組み合わされるRNAセンサーとして、CellREADRは、組織および体液から疾患状態またはウイルス感染を示すRNAを検出する固有の性能を有しており、これは、次いで、診断法の視覚化可能および定量化可能なシグナル(蛍光、化学反応生成物)を生じる、酵素または他のエフェクタータンパク質の翻訳を引き起こす。したがって、CellREADRは、RNAマーカーに基づく診断法の非常に広い適用を有する。
【0436】
例えば、現在、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスのための2つの主な種類の診断検査が存在する:核酸増幅検査(NAAT)および抗原検査。NAAT、例えば、PCRに基づく検査は、検査室において、最も頻繁に行われている。それらは、典型的には、症状があるか、またはない人々のための最も確実な検査である。抗原検査は、15~30分で結果を生じる迅速な検査である。それらは、特に、症状を有していない人々にとって、NAATよりも確実さが低い。自己検査、または家庭での検査は、通常、特定の検査場所に行く必要なく、どこでも行うことができる抗原検査である
【0437】
SARS-CoV-2はRNAウイルスであるので、PCRに基づく検査は、鋳型としてcDNAを使用して、ウイルス核酸を増幅しなければならず、これは、cDNAを調製するための逆転写ステップを1つ追加する。さらにまた、PCRは、検査室において、サーモサイクラーで行われなければならない。これらの不利な点は、新規核酸検査技術の開発を要求する。CellREADRは、RNA配列を直接認識するので、cDNAを調製する必要性がなく、これは、時間を節約し、より簡単な検査として行われ得る。この実現可能性を実証するために、我々は、RNA検出および診断法のために、in vitro転写/翻訳(IVT)CellREADRシステムを開発した(図27)。
【0438】
試料
ウイルス感染/夾雑試料(例えば、細胞溶解物、組織生検、体液)。
【0439】
標的遺伝子
CellREADRは、RNA配列を直接認識するので、RNAウイルスゲノム全体が、可能性のある標的(例えば、SARS-CoV-2ゲノムRNA、C型肝炎ウイルスゲノムRNA、インフルエンザウイルスゲノムRNA)である。DNAウイルスについて、mRNAに転写されるウイルス遺伝子は、同様に、可能性のある標的である(例えば、パピローマウイルスのE1、E2、E4、E5、E6、およびE7)。
【0440】
ペイロードレポーター遺伝子および予測される結果
ホタルルシフェラーゼは、試験管中で、IVT cellREADRシステムにおけるエフェクター標識として検査され(図27)、原理証明としての標的RNAのためのロバストで特異的なリードアウトを示した。追加のエフェクター標識には、他の種類のルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が含まれる。センサー-エフェクター遺伝子の5’UTRは、in vitro翻訳効率を増強するように改変される(例えば、RNA G-四重鎖(RG4)構造)。アッセイは、30℃のインキュベーションの1ステップとして行われる。あるいは、インキュベーションは、室温で行われる。
【0441】
要約すれば、IVT cellREADR技術は、感染性疾患ならびに罹患した細胞および組織のための迅速で簡単な核酸検査を作成する。重要なことには、これは、家庭でさえ行われる可能性を有する。さらにまた、このアッセイは、スケーラブルであり、96または384ウェルプレートなどの、並行して多くの試料について行うことができる。
【0442】
参考文献
1. CDC Guideline; COVID-19 Testing: What You Need to Know, Updated Sept. 28, 2022 https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/symptoms-testing/testing.html
2. Varshney, D., Spiegel, J., Zyner, K. et al. The regulation and functions of DNA and RNA G-quadruplexes. Nat Rev Mol Cell Biol 21, 459-474 (2020). https://doi.org/10.1038/s41580-020-0236-x
【0443】
【表6】
エフェクターとしてのUGT1A1遺伝子
ATGGCTCGCACAGGGTGGACCAGCCCCATTCCCCTATGTGTTTCTCTGCTGCTGACCTGTGGCTTTGCTGAGGCAGGGAAGCTGCTGGTAGTGCCCATGGATGGGAGTCACTGGTTCACCATGCAGTCGGTGGTGGAGAAACTTATCCTCAGGGGGCATGAGGTGGTTGTAGTCATGCCAGAGGTGAGTTGGCAACTGGGAAAATCACTGAATTGCACAGTGAAGACTTACTCAACCTCATACACTCTGGAGGATCTGGACCGGGAATTCATGGATTTCGCCGATGCTCAATGGAAAGCACAAGTACGAAGTTTGTTTTCTCTATTTCTGAGTTCATCCAATGGTTTTTTTAACTTATTTTTTTCGCATTGCAGGAGTTTGTTTAATGACCGAAAATTAGTAGAATACTTAAAGGAGAGTTCTTTTGATGCGGTGTTTCTTGATCCTTTTGATGCCTGTGGCTTAATTGTTGCCAAATATTTCTCCCTCCCCTCTGTGGTCTTCGCCAGGGGAATAGCTTGCCACTATCTTGAAGAAGGTGCACAGTGCCCTGCTCCTCTTTCCTATGTCCCCAGAATTCTCTTAGGGTTCTCAGATGCCATGACTTTCAAGGAGAGAGTACGGAACCACATCATGCACTTGGAGGAACATTTATTTTGCCAGTATTTTTCCAAAAATGCCCTAGAAATAGCCTCTGAAATTCTCCAAACACCTGTCACAGCATATGATCTCTACAGCCACACATCAATTTGGTTGTTGCGAACAGACTTTGTTTTGGACTATCCCAAACCCGTGATGCCCAATATGATCTTCATTGGTGGTATCAACTGCCATCAGGGAAAGCCATTGCCTATGGAATTTGAAGCCTACATTAATGCTTCTGGAGAACATGGAATTGTGGTTTTCTCTTTGGGATCAATGGTCTCAGAAATTCCAGAGAAGAAAGCTATGGCAATTGCTGATGCTTTGGGCAAAATCCCTCAGACAGTCCTGTGGCGGTACACTGGAACCCGACCATCGAATCTTGCGAACAACACGATACTTGTTAAGTGGCTACCCCAAAACGATCTGCTTGGTCACCCGATGACCCGTGCCTTTATCACCCATGCTGGTTCCCATGGTGTTTATGAAAGCATATGCAATGGCGTTCCCATGGTGATGATGCCCTTGTTTGGTGATCAGATGGACAATGCAAAGCGCATGGAGACTAAGGGAGCTGGAGTGACCCTGAATGTTCTGGAAATGACTTCTGAAGATTTAGAAAATGCTCTAAAAGCAGTCATCAATGACAAAAGTTACAAGGAGAACATCATGCGCCTCTCCAGCCTTCACAAGGACCGCCCGGTGGAGCCGCTGGACCTGGCCGTGTTCTGGGTGGAGTTTGTGATGAGGCACAAGGGCGCGCCACACCTGCGCCCCGCAGCCCACGACCTCACCTGGTACCAGTACCATTCCTTGGACGTGATTGGTTTCCTCTTGGCCGTCGTGCTGACAGTGGCCTTCATCACCTTTAAATGTTGTGCTTATGGCTACCGGAAATGCTTGGGGAAAAAAGGGCGAGTTAAGAAAGCCCACAAATCCAAGACCCATTGA(配列番号148)
【0444】
エフェクターとしてのVEGFAコード配列
ATGGCGGCTTCTCAGGCGGTGGAGGAAATGCGGAGCCGCGTGGTTCTGGGGGAGTTTGGGGTTCGCAATGTCCATACTACTGACTTTCCCGGTAACTATTCCGGTTATGATGATGCCTGGGACCAGGACCGCTTCGAGAAGAATTTCCGTGTGGATGTAGTACACATGGATGAAAACTCACTGGAGTTTGACATGGTGGGAATTGACGCAGCCATTGCCAATGCTTTTCGACGAATTCTGCTAGCTGAGGTGCCAACTATGGCTGTGGAGAAGGTCCTGGTGTACAATAATACATCCATTGTTCAGGATGAGATTCTTGCTCACCGTCTGGGGCTCATTCCCATTCATGCTGATCCCCGTCTTTTTGAGTATCGGAACCAAGGAGATGAAGAAGGCACAGAGATAGATACTCTACAGTTTCGTCTCCAGGTCAGATGCACTCGGAACCCCCATGCTGCTAAAGATTCCTCTGACCCCAACGAACTGTACGTGAACCACAAAGTGTATACCAGGCATATGACATGGATCCCCCTGGGGAACCAGGCTGATCTCTTTCCAGAGGGCACTATCCGACCAGTGCATGATGATATCCTCATCGCTCAGCTGCGGCCTGGCCAAGAAATTGACCTGCTCATGCACTGTGTCAAGGGCATTGGCAAAGATCATGCCAAGTTTTCACCAGTGGCAACAGCCAGTTACAGGCTCCTGCCAGACATCACCCTGCTTGAGCCCGTGGAAGGGGAGGCAGCTGAGGAGTTGAGCAGGTGCTTCTCACCTGGTGTTATTGAGGTGCAGGAAGTCCAAGGTAAAAAGGTGGCCAGAGTTGCCAACCCCCGGCTGGATACCTTCAGCAGAGAAATCTTCCGGAATGAGAAGCTAAAGAAGGTTGTGAGGCTTGCCCGGGTTCGAGATCATTATATCTGTAAGAAAGATTTGCTGGCTGCGGTGGCTCACACCTGTAATCCCAGCACTTTGGGAGGCTGAGGCGGGTGGATCACGAGGTCAGGAGATCGAGACCATCCTGGCTAA(配列番号149)
【0445】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【表7-9】
【表7-10】
【表7-11】
【表7-12】
【表7-13】
【表7-14】
【表7-15】
【表7-16】
【表7-17】
【表7-18】
【表7-19】
【表7-20】
【表7-21】
【表7-22】
【0446】
【表5-2】
【0447】
【表8】
【0448】
他の実施形態
当業者は、本開示が、目的を行い、述べられた目標および利点、ならびにそれに固有のものを得るために十分に適合されることを容易に理解するであろう。本明細書に記載される本開示は、現在の代表的な好ましい実施形態であり、例示的なものであり、本開示の範囲に対する限定として意図するものではない。特許請求の範囲によって定義される本開示の精神内に包含されるそれらにおける変更および他の使用は、当業者が想到するであろう。
【0449】
本明細書に引用される任意の非特許文献または特許文献を含む、任意の参考文献が、先行技術を構成するという自白を行うものではない。参考文献の任意の議論は、それらの著者の主張が何かを述べるものであり、本出願人は、本明細書に引用される文献のいずれかの正確性および妥当性について異議を述べる権利を留保する。本明細書に引用されるすべての参考文献は、他が明確に示されない限り、参照によって完全に組込まれる。引用された参考文献に見出される任意の定義および/または説明の間に任意の相違がある場合に、本開示が支配するものとする。
【0450】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図14-4】
図14-5】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21-1】
図21-2】
図22A-C】
図23A-C】
図24
図25A
図25B-C】
図25D-E】
図25F-G】
図26A-B】
図27A
図27B-C】
図27D
【配列表】
2024540081000001.xml
【国際調査報告】