(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】硫黄含有メタンガスの水蒸気改質触媒製造方法、及びそれを用いた水素製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/83 20060101AFI20241024BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20241024BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241024BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20241024BHJP
C01B 3/34 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B01J23/83 M
B01J37/02 101D
B01J37/08
B01J37/18
C01B3/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525400
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2022017817
(87)【国際公開番号】W WO2023090776
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158993
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514079170
【氏名又は名称】ヒソン カタリスツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ホ ドン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ドン グン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン シク
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ヨン サン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジョン ミン
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB23
4G140EC02
4G140EC04
4G140EC05
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA15
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC13A
4G169BC13B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CB81
4G169CC25
4G169DA06
4G169EC22X
4G169FB19
4G169FB24
4G169FB30
4G169FB44
4G169FB57
4G169FC07
(57)【要約】
異種の結晶相が混合されたアルミナ担体を用いてニッケル-補助金属形態の複合金属触媒を製造する方法、及びそれを用いて硫黄含有メタンガスの水蒸気改質反応による水素の製造方法に関するものであり、熱処理を介して酸点が除去された混成アルミナ担体に加圧噴射方式でニッケル及び補助金属を複合的及び順次的に含ませて製造され、アルミナ担体は、α-アルミナ/θ-アルミナの比率が10以上であり、比表面積は5~20m
2/g、平均気孔分布は10~50nmの範囲にして製造して使用し、触媒内ニッケルの担持量は5~15重量%、ニッケルの分散度は2~15%、ニッケル/補助金属の重量比は5~10の範囲にして補助金属を担持することを特徴とする、ニッケル-遷移金属/混成アルミナ触媒及びその製造に関するものであり、前記触媒を用いて硫黄含有メタンガスの水蒸気改質反応によって水素を製造する方法に関するものである。本発明によって製造された触媒を用いることにより、触媒内の巨大気孔により反応物と触媒との通気性を極大化して反応速度を高めたうえ、ニッケル触媒の問題点である炭素沈積および高温での粒子焼結現象をセリウムとの結合によって抑制させ、バリウムを追加して硫黄被毒に対する抵抗性を高めることで、触媒耐久性がより向上して長時間安定的な水素製造が可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄含有メタンガスの水蒸気改質触媒製造方法であって、
a)γ-アルミナを1100~1150℃で熱処理して、α-アルミナ/θ-アルミナの比が10以上の混成アルミナ担体を製造する段階と、
b)製造された混成アルミナ担体に、ニッケル前駆体及びセリウム前駆体が溶媒に混合されて溶解された合金溶液を担持する段階と、
c)担持を乾燥および焼成して製造されたニッケル-セリウム/混成アルミナにバリウム前駆体が溶解された溶液を担持する段階と、
d)担体を乾燥および焼成して製造されたニッケル-セリウム-バリウム/混成アルミナ触媒を550~700℃の範囲内で急速還元する段階と、を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
混合アルミナは、α-アルミナが91重量%以上であり、θ-アルミナが9重量%以下である
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
b)及びc)の担持段階は常温で加圧噴射方式によって行われる
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
c)段階の乾燥および焼成は、空気雰囲気中で100~120℃で乾燥させ、700~850℃で焼成する
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
d)段階の乾燥および焼成は、空気雰囲気中で100~120℃で乾燥させ、500~600℃で焼成する
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
急速還元は水素ガスを用いて行われる
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
触媒が導入される反応器で硫黄硫酸メタンガスの水蒸気改質反応によって水素を製造する方法であって、
700~850℃の反応温度で水蒸気/メタンガスの体積比2.5~3.5の範囲で混合されたガスを気体空間速度500~30,000h
-1の条件で気相反応させ、
前記触媒は、請求項1に記載の方法によって製造される
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記反応器は、触媒が充填された形態である固定床触媒反応器(Fixed-bed catalytic reactor)である
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒反応器は、断熱(adiabatic)が維持される
請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスの主成分であるメタンから水素を生産する水蒸気改質工程に使用されるニッケル系アルミナ触媒製法に係り、具体的には、巨大気孔型ニッケル-補助金属/アルミナ触媒の製造方法、及びそれを用いて硫黄含有メタンガスの水蒸気改質反応によって水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、産業の発展と人口の増加により全世界的にエネルギー需要が増加しているが、エネルギー源として使用している化石原料は次第に枯渇している傾向にあり、また、温室効果ガスにより発生する地球温暖化に備えるために、各国では化石原料を代替することが可能な清浄エネルギー源に関する研究を持続している。その中でも、環境親和型エネルギー源として最も盛んに研究されている物質は、水素である。水素は、既存のエネルギーの使用量を殆ど代替することができるとされており、二酸化炭素の主な物質である炭素を持っておらず清浄エネルギー源として脚光を浴びている。
【0003】
また、水素は、新再生エネルギーの一つに分類された燃料電池の原料として使用されており、今後、その需要は爆発的に増えると予想される。このような水素の生産方法は、伝統的な方式である化石燃料の改質及び再生エネルギーを利用した水の電気分解が代表的である。電気分解方式は、現在使用される総水素所要量の約5~10%水準で水素を生産しているが、経済性が低いため、2030年または2040年以後に本格的な量産が可能であると予想されている。したがって、現在までは、天然ガスまたはグリセロール(Glycerol)、ソルビトール(Sorbitol)、キシリトール(Xylitol)などのポリオール(Polyol)系およびバイオマス(Biomass)で水素を生産する方式が最も広く使われており、多くの研究者らは、この過程で水素生産の効率を高め且つ費用を削減することに集中している。代表的な天然ガスを用いた水素製造法としては、自己熱改質(Auto-thermal reforming)[非特許文献1:Jeongdong Kim et al., Ind. Eng. Chem. Res. 2021, 60, 19. 7257-7274]、部分酸化(Partial oxidation)[非特許文献2:Anis Fakeeha et al., Processes 2020, 8, 499]、二酸化炭素改質(Carbon dioxide reforming)[非特許文献3:Mun-Sing Fan et al., Int J Hydrogen Energy, 36, 8, 2011, 4875-4886]、水蒸気改質(Steam reforming)[非特許文献4:Kantilal Chouhan et al., Int J Hydrogen Energy, 46, 53, 2021, 2609-26824]などがあり、その中でも、水蒸気改質工程は、二酸化炭素の分離、貯蔵を考慮していない状態では最も経済的な水素製造工程であり、他の反応に比べて反応後の生成物が単純であり、水素の選択性が高いため商業的に最も多く用いられる工程である。
【0004】
一般的に、天然ガス(主成分はメタン)から水素への転換は、吸熱反応であるから、反応温度を維持するために高温で行われ、反応中のコークス(coke)生成率を減らすために過量の蒸気が注入される。
【0005】
したがって、現在商用化されているメタンの水蒸気改質工程(反応式-1)は、改質可能な触媒下で水蒸気とメタンの比率を2.0~3.0水準にして注入しながら800℃~1000℃の運転温度で水素と一酸化炭素の合成ガスを製造する。また、水蒸気改質後に製造される一酸化炭素は、水性ガス転換反応(反応式-2)を用いてさらに水素を生成させて水素収率を高める。上述した天然ガスから水素への理論的な転換反応式は、次の通りである。
【0006】
反応式-1(メタン水蒸気改質反応):CH4+H2O→CO+3H2
反応式-2(一酸化炭素水性ガス転換反応):CO+H2O→CO2+H2
全体(反応式-1+反応式-2)反応式:CH4+H2O→CO2+4H2
【0007】
一方、天然ガスから水素を生産するための水蒸気改質反応用触媒は、高い反応活性、一定期間の寿命、高い熱伝達、低い圧力低下、高い熱的耐久性及び機械的強度を有しなければならない。このために、強度の高い酸化物形態の支持体を用いて活性金属を含ませて触媒を製造するが、現在まで開発された触媒としては、貴金属触媒(白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムなど)または非貴金属触媒(ニッケル、銅など)または貴金属-非貴金属、非貴金属-非貴金属の混合された触媒(白金-ニッケル、ロジウム-ニッケル、ルテニウム-ニッケル、ニッケル-銅、ニッケル-亜鉛、ニッケル-錫など)が報告されている(非特許文献5:Eugenio Meloni et al, Catalysts 2020, 10, 352)。貴金属触媒の場合、非貴金属触媒に比べて反応中のコークス(coke)生成率が低いため、水素生成率が高いという利点があるが、世界的に持続されている貴金属価格上昇により商用工程で使用するには経済性が確保されないという欠点がある。非貴金属触媒の場合は、代表的にニッケル含有触媒が改質能力を有し且つ価格が安いため、現在大部分の改質工程に使用されている。
【0008】
しかし、ニッケル触媒は、貴金属触媒に比べて硫黄による被毒(天然ガス内には、チオフェン類及びメルカプタン類などの硫黄化合物が存在しており、改質反応前に吸着剤を用いて除去するが、改質方式によっては、0.1~5ppm水準の硫黄は脱硫後のガスに残存しており、改質反応時に残留硫黄が触媒に吸着されて活性低下を誘発)、及び表1にまとめられたように高温で多様な形態のコークス(whisker type cokeまたはpyrolytic coke)の生成が盛んに起こり、金属及び触媒の表面での沈積及び触媒内への継続的な蓄積により結果として触媒自体が破壊される現象が発生するようになり、長期間の使用において不利であり得る(非特許文献6:Qimin Ming et al., Catalysis Today, Vol. 77, Issues 1×2, 2002, Pages 51-64)。
【0009】
【0010】
また、熱耐久性が低いため、高温反応時に触媒内のニッケル金属が徐々に凝集し、焼結されて粒子サイズが大きくなりながら時間経過に伴って次第に非活性化速度が速くなるという欠点がある。このような技術的事項は、非特許文献7:J.R.Rostrup-Nielsen等(Advances in Catalysis 2002, 47:65-139)がニッケル粒子サイズによるコークス生成速度に関する研究を行い、ニッケルの粒子サイズが大きいほどコークス形成初期段階が急激に速くなることを確認したことがある。
【0011】
このような理由で、非貴金属触媒でありながら高温でのコークス抵抗性、耐硫黄性及び長期耐久性を高めることができる触媒の製造方法を探すために、多くの研究者は、研究を行っており、その過程での大部分の研究は、触媒の支持体の種類を多様化するか或いは金属と支持体の相互作用(metal-support interaction)を調節した後、触媒活性を高める研究に焦点を合わせている。また、触媒活性金属としてニッケル単独の他に複合金属を用いて活性を高めようとする研究が長期間持続してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】大韓民国特許第10-0781503号
【特許文献2】大韓民国特許第10-0962584号
【特許文献3】大韓民国特許第10-0980591号
【特許文献4】大韓民国特許第10-0394076号
【特許文献5】大韓民国特許第10-1625537号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Jeongdong Kim et al., Ind. Eng. Chem. Res. 2021, 60, 19. 7257-7274
【非特許文献2】Anis Fakeeha et al., Processes 2020, 8, 499
【非特許文献3】Mun-Sing Fan et al., Int J Hydrogen Energy, 36, 8, 2011, 4875-4886
【非特許文献4】Kantilal Chouhan et al., Int J Hydrogen Energy, 46, 53, 2021, 2609-26824
【非特許文献5】Eugenio Meloni et al, Catalysts 2020, 10, 352
【非特許文献6】Qimin Ming et al., Catalysis Today, Vol. 77, Issues 1×2, 2002, Pages 51-64
【非特許文献7】J.R.Rostrup-Nielsen等(Advances in Catalysis 2002, 47:65-139)
【非特許文献8】Ignacio Iglesias et al., Int J Hydrogen Energy, Vol. 44. Issue 16, 2019, Pages 8121-8132
【非特許文献9】Haotian Zhang et al., Renewable and Sustainable Energy Reviews, 149, 2021, 111330
【非特許文献10】Juliana da S. Lisboa et al.(Catalysis Today 101、2005、15~21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ニッケル触媒に対して支持体の種類を変化させて製造し、コークス沈積抑制及び活性増進を模索した方法として、シリカ-ジルコニア複合酸化物担体上にニッケルを担持した触媒(特許文献1:韓国特許第10-0781503号)、陰イオン界面活性剤及びゾル-ゲル(sol-gel)、鋳型法(templating method)を用いた中型気孔性ニッケル-アルミナ混成触媒(特許文献2-3:韓国特許第10-0962584号;韓国特許第10-0980591号)、セリウム-ジルコニア担体上にニッケルを担持した触媒(特許文献4:韓国特許第10-0394076号;非特許文献8:Ignacio Iglesias et al., Int J Hydrogen Energy, Vol. 44. Issue 16, 2019, Pages 8121-8132)、テンプレート法を用いたLa1-xCexNiO3ペロブスカイト構造の触媒(特許文献5:韓国特許第10-1625537号)などがある。これらの担体を用いた触媒は、触媒耐久性を向上させることができるという利点があるが、商業的に使用されるアルミナ担体に比べて製造過程が複雑で製造コストが高いため価格的に競争力が低下するという限界がある。
【0015】
また、アルミナ担体にニッケル単独の他に、助触媒として異種金属を結合させて活性を高める方法として、Ni/Mg-Al2O3、Ni/Si-Al2O3、Ni/La-Al2O3、Ni/Ce-Al2O3などのように担体の性質を変化させる方法、または補助金属としてRu、Au、Ce、Ir、Nb、Pt、Co、Agなどを入れて活性を高めるための方法を使用したりもした(非特許文献9:Haotian Zhang et al., Renewable and Sustainable Energy Reviews, 149, 2021, 111330)。非特許文献10:Juliana da S. Lisboa et al.(Catalysis Today 101、2005、15~21)などは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属系金属をニッケル触媒に添加してニッケル粒子の凝集現象を抑制する効果を示したが、メタン転換率が低くなって全体反応活性が低くなるという欠点を示した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述したように、現在まで開発されたニッケル触媒は、多様な方法によって活性及び耐久性を改善してきた。このような製造方法の一環として、本発明では、気孔特性が調節されたアルミナ担体にニッケルの他に異種の補助金属を添加して三重金属触媒を製造し、これを硫黄含有メタンガスの水蒸気改質反応に適用して長時間安定的な触媒活性を示そうとした。
【0017】
従って、本発明が解決しようとする技術的目的は、天然ガスをシミュレートした硫黄含有メタンガスの水蒸気改質反応を用いて水素を製造するのに使用される触媒に対して、反応物内に残存している微量の硫黄成分に対する被毒抵抗性、高温反応で発生するコークス(coke)による沈積を最小限に抑え且つニッケル金属の焼結現象を抑制して長時間安定的な反応活性を有することができる触媒の製造方法を提供することにある。
【0018】
また、本発明の技術的目的は、上述したように製造された触媒を用いて硫黄含有メタンガスの水蒸気改質反応によって水素を安定的に製造する方法を提供することにある。
【0019】
本発明者らは、上記技術的目的を達成するために、価格競争力の高いアルミナ担体に対して気孔分布を変化させて、反応物である天然ガスが触媒内で拡散し且つ生成物が速やかに触媒外に移動することができるように製造し、製造された担体に主活性点であるニッケルの分散度を高めることができるセリウム(Cerium)、及び硫黄に対する被毒を抑制させることができるバリウム(Barium)を三重金属(tri-metallic)形態に位置させて金属ごとの固有の特性を発現するように触媒を製造した。
【0020】
本発明において用いられるアルミナ担体は、熱処理によって強度を高めて改質反応中に高い温度に耐えられるようにし、10wt%以上のニッケル及び補助金属が担持できるように担体熱処理温度を調節して表面積が5~20m2/g、平均気孔分布が10~50nmの範囲に維持されるように製造した。担体の結晶相は、初期γ-アルミナで1100~1150℃で焼成した後、α-アルミナとθ-アルミナの混合結晶相からなるように製造した。
【0021】
本発明において、触媒は、アルミナ担体80~90wt%、ニッケル金属10~15wt%、ニッケル/セリウムの重量比は5~10、ニッケル/バリウムの重量比は15~100にして製造し、前記ニッケル金属は、前記担体に0.5~1.5wt%/m2/g(重量%/担体の比表面積10~20m2/g基準)の活性金属密度で均一に存在することができ、補助金属であるセリウムは、前記担体に0.05~0.2wt%/m2/g、別の補助金属であるバリウムは、前記担体に0.005~0.03wt%/m2/gの活性金属密度で均一に存在するように製造した。
【0022】
また、本発明は、a)球状のγ-アルミナを1100~1150℃で熱処理して、α-アルミナ/θ-アルミナの重量比が10以上(アルファ91%-シータ9%)乃至(アルファ100%-シータ0%)の担体を製造する段階と、b)製造された混成アルミナ担体に、ニッケルとセリウム前駆体が溶媒に混合されて溶解された合金溶液を常温で加圧噴射方式で担持する段階と、c)担持後、空気雰囲気中で100~120℃で乾燥させ、700~850℃で焼成する段階と、d)製造されたニッケル-セリウム/混成アルミナ物質に、バリウム前駆体が溶解された溶液を常温で加圧噴射方式によって担持する段階と、e)担持後、空気雰囲気中で100~120℃で乾燥させ、500~600℃で焼成する段階と、f)前記製造されたニッケル-セリウム-バリウム/混成アルミナ酸化触媒を550~700℃の範囲内で水素ガスを用いて急速還元して最終触媒を製造する段階と、を含む、水蒸気改質用触媒の製造方法を提供する。
【0023】
本発明において製造された触媒の存在下で液化天然ガスをシミュレートした硫黄含有メタンガスの水蒸気改質反応に使用され、700~850℃の反応温度で水蒸気/メタンガスの体積比2.5~3.5の範囲で混合されたガスを気体空間速度(GHSV:Gas Hourly Space Velocity)500~30,000h-1の条件で反応させることを特徴とする、水素製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によって製造された気孔サイズ及び表面積が調節されたニッケル-セリウム-バリウム/アルミナ三重触媒、及びそれを用いた水素製造方法は、硫黄含有メタンガスの水蒸気改質反応に適用され、高温反応条件下でも、触媒非活性化の原因となる硫黄被毒、触媒焼結現象、コークス沈積に対して抵抗性が発現させようとした。その結果、ニッケル金属同士の凝集現象を抑制して、非活性化される速度を著しく減らしたうえ、ニッケル金属のコークス及び硫黄に対する被毒が起こらなくなり、水蒸気改質反応時に長期間安定的に水素への転換率及び選択度が高く維持された。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例1の製造方法の段階を例示したフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例1で製造した触媒の電子顕微鏡(ビデオ顕微鏡(Video microscopy))および電子電極微細分析(EPMA、Electron probe X-ray microanalyzer)写真である。
【
図3】実施例1および比較例4、5、6で製造した触媒を用いた長期改質反応の結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、硫黄含有メタンガスの水蒸気改質反応に用いられる触媒の製造方法に関し、酸点及び気孔サイズを調節した担体を製造し、活性金属としてニッケルを使用し、耐硫黄性及び耐コークス性を高めるために補助金属としてセリウム及びバリウムを担持して触媒を製造することを特徴とする。
【0027】
本発明の結晶相及び気孔特性が調節されたアルミナ担体にニッケル-補助金属が担持された形態の複合金属触媒は、
a)球状のγ-アルミナを1100~1150℃で熱処理して、α-アルミナ/θ-アルミナの重量比が10以上、好ましくは、α-アルミナは91重量%以上、θ-アルミナは9重量%以下である担体を製造する段階と、
b)製造された混成アルミナ担体に、ニッケルとセリウム前駆体が溶媒に混合されて溶解された合金溶液を常温で加圧噴射方式によって担持する段階と、
c)担持後、空気雰囲気中で100~120℃で乾燥させ、700~850℃で焼成する段階と、
d)製造されたニッケル-セリウム/混成アルミナに、バリウム前駆体が溶媒に溶解された溶液を常温で加圧噴射方式によって担持する段階と、
e)担持後、空気雰囲気中で100~120℃で乾燥させ、500~600℃で焼成する段階と、
f)前記製造されたニッケル-セリウム-バリウム/混成アルミナ酸化触媒を550~700℃の範囲内で水素ガスを利用して高温で急速還元して触媒を製造する段階と、を含む方法で製造できる。
【0028】
各段階を具体的に説明する。本明細書において表記された温度単位は、摂氏である。
【0029】
前記a)段階で、アルミナ担体は、ベーマイト、シュードベーマイトまたはγ-アルミナを出発物質として使用することができ、担体の酸点を除去し且つ気孔サイズを調節するために、熱処理炉で1100~1150℃の温度で1~5時間熱処理して、θ-アルミナが1~10wt%含まれたα-アルミナで結晶相を変化させることにより製造できる。熱処理温度は、担体の結晶相、気孔構造と密接な関連があるが、熱処理温度が1100℃未満である場合には、アルミナの結晶相は、θ-アルミナ相及びγ-アルミナ相が混在した状態であってもよく、依然として担体内に酸点が存在することができ、担体の気孔サイズが小さいため、反応物の担体内での拡散速度が低くなることができ、熱処理温度が1150℃を超える場合には、気孔サイズは大きくなり、アルミナの結晶相はアルファ相であって単一結晶相として存在するようになり、担体内の酸点が全て除去できるが、比表面積が3m2/g以下と著しく低くなり、10wt%以上の活性金属を担持する過程で金属粒子の凝集が起こって分散度が低くなるという欠点がある。前記製造されたアルミナ担体は、平均気孔分布が20~50nmの範囲であり、α-アルミナ/θ-アルミナの比率が10以上であり、比表面積は5~20m2/gであり得る。担体の形状は、球状(sphere)、シリンダー状、ペレット状、チューブ状の形状であってもよく、これらの形状は、オイル-ドロップ(oil-drop)、圧縮成形(Tablet)、押出成形(Extrusion)の方法で製造されることができる。
【0030】
前記b)段階において、ニッケル前駆体としては、硝酸ニッケル(Nickel nitrate)水和物、塩化ニッケル(Nickel chloride)水和物、酢酸ニッケル(Nickel acetate)水和物、および硫酸ニッケル(Nickel sulfate)水和物のうちのいずれか一つを使用することができ、セリウム前駆体としては、硝酸セリウム(Cerium nitrate)水和物、塩化セリウム(Cerium chloride)水和物、酢酸セリウム(Cerium acetate)水和物、硫酸セリウム(Cerium sulfate)水和物、及びシュウ酸セリウム(Cerium oxalate)水和物のうちのいずれか一つを使用することができる。好ましくは、同一の陰イオン形態を有する化合物を順次担持または混合して担持溶液として製造して使用することができる。前記活性金属前駆体を担体の気孔体積分のイオン水または2価アルコール(エタノール、エチレングリコールなど)の溶媒に溶解して加圧噴射方式を用いて担体に担持する方法で製造できる。
【0031】
ニッケル前駆体は、最終触媒を基準として10~15wt%担持されることができる。10wt%以下担持する場合には、触媒性能を実現し難く、15wt%以上担持する場合には、ニッケル前駆体が担体内に引き込まれず、担体の表面に蓄積されて低いニッケル分散性を示すことができ、これにより耐久性が低下する。セリウム前駆体は、ニッケル/セリウムの重量比を基準として5~10水準に担持されることができ、好ましくは、ニッケル/セリウムの重量比を基準として5~7水準に製造することができる。
【0032】
前記c)段階では、b)段階で製造されたニッケル-セリウム/混成アルミナ前駆体において金属前駆体由来の水分及び陰イオンを除去するために、乾燥後、700~800℃の範囲で熱処理する段階を含んで製造できる。熱処理温度は、通常の知識であって、適切な範囲とすることができるので、それ以上詳細な説明は省略する。ただし、水蒸気改質反応中に触媒内の金属の変形が進まないように改質反応温度以上で熱処理を施すことが好ましい。
【0033】
前記d)段階で、バリウム前駆体としては、硝酸バリウム(Barium nitrate)水和物、塩化バリウム(Barium chloride)水和物、酢酸バリウム(Barium acetate)水和物、および水酸化バリウム(Barium hydroxide)水和物のうちのいずれか一つを使用することができ、前記活性金属前駆体を担体の気孔体積分のイオン水または2価アルコール(エタノール、エチレングリコール等)の溶媒に溶解して加圧噴射方式を用いて担体に担持する方法で製造できる。バリウム前駆体は、ニッケル/バリウムの重量比を基準として15~100水準に担持されることができ、好ましくは、ニッケル/バリウムの重量比を基準として80~100水準に製造することができる。重量比を基準に、15以下である場合には、バリウムが触媒内に過量担持されて反応転換率が低くなり、100以上である場合には、バリウムの耐硫黄性効果が示されないおそれがある。
【0034】
前記e)段階では、d)段階で製造されたニッケル-セリウム-バリウム/混成アルミナ前駆体において、金属前駆体由来の水分及び陰イオンを除去するために、乾燥後、空気雰囲気中で500~600℃の範囲で熱処理する段階を含んで製造できる。熱処理温度は、通常の知識であって適切な範囲とすることができるので、それ以上詳細な説明は省略する。
【0035】
前記f)段階では、e)段階で製造されたニッケル-セリウム-バリウム/混成アルミナ酸化物で触媒活性を発現させるために、550~700℃の範囲内で水素ガスを用いて急速還元過程を行うことにより最終触媒を得る。前記還元過程で還元温度が400℃以下である場合、金属酸化種が完全に還元されないおそれがあり、また、還元温度が700℃より高い場合、金属粒子の凝集及び焼結現象が発生し、これにより活性点の減少が発生するおそれがある。還元過程では、ステップ方式によって600℃まで窒素雰囲気中で昇温させた後、次いで水素ガスを流しながら製造した。触媒内の活性金属種が2種以上含まれている場合、前記還元方式のように高温で直ちに水素ガスに露出させると、活性金属種が瞬間的に合金形態に製造されることができるが、常温から水素雰囲気で徐々に昇温させて還元する場合には、金属固有の酸素脱着温度に合わせてそれぞれ還元されて合金形態になり難い。
【0036】
また、本発明において製造された触媒は、反応器に導入した後、硫黄含有メタンガスの水蒸気改質反応に使用されることができ、700~850℃の反応温度で水蒸気/メタンガスの体積比2.5~3.5の範囲で混合されたガスを気体空間速度(GHSV:Gas Hourly Velocity)500~30,000h-1の条件で気相反応させて水素を製造することができる。気体空間速度は高いほど、水素生成量は比例的に増加するので、反応器の体積と触媒量に合わせて任意に最適値を調節することができるので、範囲内で特定値に限定しない。
【0037】
前記改質反応によって水素を生成させる反応器は、特に限定されるものではないが、反応器内に触媒が充填された形態である固定床触媒反応器(Fixed-bed catalytic reactor)を使用することができる。また、脱水素化反応は、吸熱反応であるため、触媒反応器が常に断熱(adiabatic)を維持することが重要である。本発明の改質反応工程は、反応条件である反応温度、圧力、気体空間速度を適切な範囲に維持させた状態で行うことが重要である。反応温度が700℃未満であれば、十分な改質反応が進まず、非常に低い量の水素を得、反応温度が850℃以上であれば、反応器に導入された触媒の活性金属の凝集、焼結現象及びコークス生成、クラッキング反応などの副反応が発生して触媒の耐久性に問題が発生するおそれがある。
【0038】
以下、図面及び実施例、比較例で本発明の技術的構成について詳細に説明する。
【0039】
<実施例1>
実施例1で使用される担体は、γ-アルミナ担体(ドイツBASF製、比表面積:210m2/g)を1100℃で5時間焼成して相転移させた後に使用した。相転移した担体は、θ-アルミナ結晶相とα-アルミナ結晶相が1:9の比率で混合される構造であり、比表面積19m2/g、気孔サイズ32nmの物理的性質を有する。一次に金属を担持するために、ニッケルは、前駆体として硝酸ニッケル(Ni(NO3)2・6H2O)を使用し、補助金属として使用されたセリウムは、前駆体として硝酸セリウム(Ce(NO3)3・6H2O)を使用した。ニッケルとセリウム前駆体を水に溶解して噴霧担持法を用いて、相転移したシータ-アルファ混成アルミナ担体に含浸した。含浸後、約1時間熟成(aging)過程を経て、金属溶液が十分に担体の内部まで分布するようにし、120℃で12時間乾燥させて触媒内の水分を完全に除去した後、空気雰囲気中で700℃にて6時間熱処理過程を経て金属を固定化した。その後、再び二次に金属を担持するために、酢酸バリウム(Ba(C2H3O2)2をやはり噴霧担持法で、ニッケルとセリウムが含有されたアルミナの内部気孔に担持し、金属の担持された組成物を空気雰囲気中で550℃にて4時間熱処理して金属担持触媒を製造した。熱処理された触媒を600℃まで空気雰囲気中で昇温させた後、窒素で5分間パージし、その後、水素ガスを流しながら急速還元を施して触媒を製造した。実施例1で製造した触媒は、ニッケル10.0重量%、セリウム1.5重量%及びバリウム0.12重量%を含有していることを確認した。また、ニッケル-セリウム-バリウムは、担体の内部に均一に分布された。
【0040】
<実施例2>
実施例2は、最終触媒の金属としてニッケル5.0重量%、セリウム0.75重量%及びバリウム0.06重量%を含有するようにした以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。
【0041】
<実施例3>
実施例3は、最終触媒の金属としてニッケル15.0重量%、セリウム2.25重量%、バリウム0.18重量%を含有するようにした以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。
【0042】
<比較例1>
比較例1は、実施例1で使用される担体を担剤の製造時に900℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。当該触媒の担体結晶相は、γ相とθ相が混合されている形態であり、比表面積は121m2/g、気孔サイズは10nmであった。
【0043】
<比較例2>
比較例2は、実施例1で使用される担体を担剤の製造時に1000℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。当該触媒の担体結晶相は、γ相とθ相が混合されている形態であり、比表面積は84m2/g、気孔サイズは14nmであった。
【0044】
<比較例3>
比較例3は、実施例1で使用される担体を担剤の製造時に1200℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。当該触媒の担体結晶相はアルファ相であり、比表面積は3m2/gであり、気孔サイズは45nmであった。
【0045】
<比較例4>
比較例4は、金属としてニッケルのみを使用した以外は、実施例1と同様にして製造し、最終触媒の金属としてはニッケル10.0重量%のみを含有した。
【0046】
<比較例5>
比較例5は、金属としてニッケルとセリウムのみを使用した以外は、実施例1と同様にして製造し、最終触媒の金属としてはニッケル10.0重量%、セリウム1.5重量%を含有した。
【0047】
<比較例6>
比較例6は、金属としてニッケルとバリウムのみ使用した以外は、実施例1と同様にして製造し、最終触媒の金属としてはニッケル10.0重量%、バリウム0.12重量%を含有した。
【0048】
<比較例7>
比較例7は、還元触媒の製造温度を650℃にした以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0049】
<比較例8>
比較例8は、還元触媒の製造温度を700℃にした以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0050】
<比較例9>
比較例9は、還元触媒の製造時に昇温を水素雰囲気で行った以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0051】
<比較例10>
比較例10は、ニッケルとセリウム、バリウム担持をそれぞれ分離して製造した以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0052】
<比較例11>
比較例11は、比較例10と同様にして製造し、還元触媒の製造時に昇温を水素雰囲気中で行って製造した。
【0053】
<反応例>
実施例及び比較例のように製造された触媒に対して、次のように性能を評価した。触媒活性を測定するために、メタンと水素の混合ガスを用いて改質反応を実施した。反応器は、固定床反応システムを用いて評価した。触媒は、管型反応器に1.57gを充填し、反応を行う前に触媒表面の酸素種を除去するために、水素ガスを30cc/分で一定に流して800℃で1時間触媒の還元を行った。次いで、反応器の温度を反応温度800℃に一定に維持させた後、反応に使用される原料であるメタンガスと水素との混合気体を1:1の体積比率で一定に反応器に連続的に供給し、気体空間速度は2000h-1と一定に固定した。また、触媒反応時に発生するコークスを抑制するために、スチーム-カーボンの比率を0.85:1にして一緒に注入した。反応圧力は、1.0気圧と一定に圧力調節器を用いて維持した。反応後に生成される物質は、熱線が巻かれている注入ラインを介してGC(Gas Chromatography;気体クロマトグラフィー)へ移動し、FID(Flame Ionization Detector;火炎イオン化検出器)及びTCD(Thermal Conductivity Detector;熱伝導性検出器)を介して定量分析を行った。
【0054】
耐硫黄性実験の場合、天然ガス内に存在する硫黄成分をシミュレートして硫化水素を分当り5~15ppmで連続的にメタン/水素混合ガスと共に注入して活性を比較した。
【0055】
反応物に対してメタンの転換率は次の基準によって計算することにより、前記触媒の活性を比較した。
【0056】
メタンの転換率(%)=[反応前のメタンモル数-反応後のメタンモル数]/[反応前のメタンモル数]×100
【0057】
表2には、実施例及び比較例の製造方法をまとめて示し、表3には、硫黄が注入されていない状態で実施例及び比較例によって製造された触媒に対する活性評価結果を示す。
【0058】
【0059】
【0060】
<評価>
実施例1を基準に実施例2、3および比較例1~11を比較した。ニッケル分散度及び粒子サイズは、一酸化炭素化学吸着法(CO Chemisorption)で分析したとともに、硫黄を注入しない状態でメタン改質反応をして転換率及びコークスを分析した。
【0061】
実施例1~3は、ニッケル、セリウム、バリウムの比率は同一であるが、触媒内の金属の総含有量比を調節して触媒を製造した内容であり、実施例2は、ニッケルの含有量が低いためメタン転換率が顕著に低くなることを示し、実施例3は、ニッケル及びセリウムが触媒内に過量含有されることによりニッケル分散度が低くなり、性能は、ニッケルが15重量であるにも拘らず、実施例1に比べて低い値を示しており、結果として、メタン改質反応には適切な活性金属担持量が存在していることを示す。
【0062】
実施例1及び比較例1~3は、担体焼成温度を異にして触媒を製造した内容であり、比較例1、2で焼成温度が1000℃以下の場合には、焼成前にγ-アルミナ結晶相とθ-アルミナ結晶相とが混在しており、比表面積が100m2/g以上であって担体の内部に微細気孔が相当量存在しており、高いニッケル分散度を持っている。メタン改質反応の結果、γ-アルミナ結晶相が存在する比較例1、2の場合は、高いコークス発生量を示し、これは、γ-アルミナの表面の酸点によって改質反応の際に多量のコークスを発生させるものと見られる。これに対し、比較例3の焼成温度が1200℃の場合には、純粋なα-アルミナ結晶相を示しており、低い比表面積によりニッケル分散度が非常に低くなることが分かった。α-アルミナ単独結晶相として存在する場合、改質反応の際にコークス発生量は少ないが、低いメタン転換率を示している。これは、α-アルミナの低い比表面積によりニッケル金属が凝集して低い比表面積とこれによる低い活性を示すことが分かる。これにより、改質反応前にθ-アルミナ以上の結晶相に転移させなければならないことが分かり、担体内の表面積が適切な量で存在していなければならないことを示す。
【0063】
実施例1及び比較例4~6は、触媒内の活性金属を個別担持して触媒を製造して比較した内容であり、セリウムが担持されていない触媒である比較例4、6は、実施例1に比べてニッケル分散度が小幅に低く分析され、反応後のコークスの量も比較例4、6が高かった。これは、実施例1におけるセリウム担持効果があることが分かり、比較例5の場合は、実施例1と類似した値を示しており、バリウムは活性及びコークス生成には関与しないことを示す。
【0064】
実施例1及び比較例7、8は、製造された触媒の金属活性化段階である水素還元の温度を調節して触媒を製造した内容であり、比較例7、8は、高い還元温度によりニッケル分散度が低くなる現象を示し、これにより改質反応の際にメタン転換率が低くなることが分かった。
【0065】
実施例1及び比較例9は、製造された触媒の金属活性化段階である水素還元時の還元方法の差による触媒を製造した内容であり、比較例9の場合、還元温度である600℃まで水素雰囲気で昇温し、その結果、ニッケルの分散度及びメタン転換率は、ニッケル単独担持触媒である比較例4と類似した結果を得た。これにより、昇温しながら還元する場合、セリウムとの合金化が行われず、セリウム添加効果を発現していないことを示す。
【0066】
実施例1及び比較例10、11は、活性金属担持の際に、順次的金属担持効果及び順次的金属担持後の昇温還元による効果を比較し、比較例10、11はいずれも、比較例4と同一のニッケル分散度を示しており、反応性は、実施例1と比較して低い結果を得た。これは、セリウムとバリウムがニッケルと合金を形成しておらず、むしろ触媒内のニッケル金属の表面及び担体内の表面積を塞いで活性低下を誘発したものと見られる。
【0067】
これにより、実施例1のように、担体の結晶相はθ-アルミナ/α-アルミナ混成、担体の比表面積は約20m2/g、ニッケルの含有量は約10wt%、ニッケル/セリウムは重量比で6.7、ニッケル/バリウムは重量比で83、金属担持は一次ニッケル-セリウム、バリウムの順に行い、還元段階は急速還元によって600℃で処理することにより、高いメタン転換率及び低いコークス生成を示す触媒を製造することができた。
【0068】
一方、表4及び
図3は、実施例1、比較例4~6で製造された触媒に対して硫黄の含有量に対する触媒反応後の非活性化度及び長期耐久性評価結果を示す。
【0069】
【0070】
<評価>
表4及び
図3では、実施例1及び比較例4~6に対して硫黄が含有されたメタンガスの改質反応を行った。
【0071】
表3より、実施例1及び比較例4~6の触媒はいずれも、硫黄の含有量が増加するほど、反応開始24時間後に非活性化が明らかに起こることが分かる。しかし、同じ硫黄注入量での非活性化度は、実施例1の触媒が最も低い値を示しており、バリウムが含有されていない比較例4と比較例5で高い非活性化度を示しており、バリウムが触媒非活性化の抑制に役立てていることが分かる。メタン転換率においては、ニッケル分散性を増進させるセリウムが担持された実施例1と比較例5が、セリウムが担持されていない触媒に比べて高い値を示していた。
【0072】
次は、実施例1及び比較例4~6に対して同じ硫黄注入量での長期活性評価を実施し、その結果は
図4に示した。
【0073】
実施例1および比較例4~6はいずれも、反応初期24時間に急激な非活性化が進行するが、それ以降は緩やかに活性が低くなっており、特に実施例1では、24時間後から100時間まで約7%程度の性能低下を示したが、比較例4~6の触媒は、約10%程度の性能低下率を示した。
【0074】
これにより、ニッケル分散度を高めるセリウム、及び耐硫黄性を高めるバリウムが含まれた実施例1で、最も高い活性と最も低い非活性化度だけでなく、長期評価においても高い耐久性を示した。
【国際調査報告】