IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケイシー・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特表2024-540105炭酸カルシウムを高含有量で含む生分解性樹脂組成物
<>
  • 特表-炭酸カルシウムを高含有量で含む生分解性樹脂組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】炭酸カルシウムを高含有量で含む生分解性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20241024BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20241024BHJP
   C08G 63/06 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20241024BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C08L67/04
C08K3/26 ZBP
C08G63/06
C08K5/053
C08K5/13
C08K5/49
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525405
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2022016055
(87)【国際公開番号】W WO2023080496
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0149234
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu Suwon-si Gyeonggi-do 16338 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ハン、クォンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、クァンホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソクイン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ドクヨン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J002CF181
4J002DE236
4J002EC057
4J002EJ028
4J002EJ038
4J002EJ048
4J002EW068
4J002FD016
4J002FD027
4J002FD078
4J002GC00
4J002GK01
4J029AA02
4J029AB01
4J029AD10
4J029AE01
4J029AE03
4J029EH03
4J200AA04
4J200AA06
4J200BA14
4J200BA18
4J200CA01
4J200DA17
4J200EA11
(57)【要約】
実現例は、炭酸カルシウムを高含有量で含む生分解性樹脂組成物、生分解性ポリエステルフィルム、生分解性ポリエステルシート、およびその製造方法に関するものであって、炭酸カルシウムを高含有量で含みながら、優れた引張強度および伸び率を維持するとともに、優れた生分解性、土壌の酸性化防止効果および生産コストの節減が可能な生分解性樹脂組成物、生分解性ポリエステルフィルム、生分解性ポリエステルシート、およびその製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含み、
下記式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である、生分解性樹脂組成物:
[式1]結晶ピークの減少率=(R-C)/R
前記式1において、
は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した後、10℃/分の速度で-50℃まで冷却する過程で測定された70℃~90℃温度区間における前記生分解性ポリエステル樹脂の結晶融解熱(J/g)であり、
は、前記と同じ条件で測定された前記生分解性樹脂組成物の結晶融解熱(J/g)である。
【請求項2】
前記炭酸カルシウム(CaCO)を生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、30重量%~80重量%含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭酸カルシウム(CaCO)を生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、40重量%~75重量%含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項4】
前記生分解性樹脂組成物が、可塑剤および酸化防止剤を含み、
前記可塑剤が、グリセロール、アクリレート、グリセリン、グリセロールモノステアレート、およびソルビトールからなる群より選択される1種以上を含み、
前記酸化防止剤は、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびペンタエリトリトール系酸化防止剤からなる群より選択される2種以上を含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項5】
前記生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、
前記可塑剤を1重量%~3重量%で含み、
前記酸化防止剤を0.01重量%~4重量%で含む、請求項4に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項6】
前記酸化防止剤が、前記リン系酸化防止剤および前記フェノール系酸化防止剤を含み、
前記リン系酸化防止剤と前記フェノール系酸化防止剤との重量比が1:10~10:1である、請求項4に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項7】
前記生分解性ポリエステル樹脂が、ナノセルロースを前記生分解性ポリエステル樹脂の総重量を基準に、0.01重量%~3重量%で含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項8】
前記生分解性樹脂組成物が、鎖延長剤をさらに含み、
前記生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、前記鎖延長剤を0.01重量%~1重量%含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項9】
前記生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、およびポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選択される1種以上の分散剤をさらに含み、
前記分散剤を前記生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、1重量%~20重量%で含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項10】
前記生分解性樹脂組成物を210℃等温にて1時間維持する際、等温重量損失が5%以下である、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項11】
前記生分解性樹脂組成物を20℃/1分の速度で加熱する際、600℃にて前記炭酸カルシウムの含有量変動性が5%以下である、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項12】
生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含む生分解性樹脂組成物を含み、
前記生分解性樹脂組成物は、下記式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である、生分解性ポリエステルフィルム:
[式1]結晶ピークの減少率=(R-C)/R
前記式1において、
は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した後、10℃/分の速度で-50℃まで冷却する過程で測定された70℃~90℃温度区間における前記生分解性ポリエステル樹脂の結晶融解熱(J/g)であり、
は、前記と同じ条件で測定された前記生分解性樹脂組成物の結晶融解熱(J/g)である。
【請求項13】
引張強度が5MPa以上であり、
伸び率が85%以上であり、
引裂強度が75N/mm以上である、請求項12に記載の生分解性ポリエステルフィルム。
【請求項14】
生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含む生分解性樹脂組成物を含み、
前記生分解性樹脂組成物は、下記式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である、生分解性ポリエステルシート:
[式1]結晶ピークの減少率=(R-C)/R
前記式1において、
は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した後、10℃/分の速度で-50℃まで冷却する過程で測定された70℃~90℃温度区間における前記生分解性ポリエステル樹脂の結晶融解熱(J/g)であり、
は、前記と同じ条件で測定された前記生分解性樹脂組成物の結晶融解熱(J/g)である。
【請求項15】
引張強度が5MPa以上であり、
伸び率が10%以上である、請求項14に記載の生分解性ポリエステルシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、炭酸カルシウムを高含有量で含む生分解性樹脂組成物、生分解性ポリエステルフィルム、生分解性ポリエステルシート、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への懸念が増加するにつれ、様々な生活用品、特に使い捨て製品の処理問題に対する解決策が求められている。具体的に、高分子材料は、安価ながらも加工性などの特性に優れるので、フィルム、繊維、包装材、ボトル、容器などと、様々な製品を製造するのに広く利用されているが、使用済み製品が寿命となって焼却処理する際には、有害な物質が排出され、自然に完全分解されるためには、種類によっては数百年もかかるという欠点を有している。
【0003】
このような高分子の限界を克服するために、相対的に短時間内で分解される生分解性高分子に関する研究が盛んに進められている。生分解性高分子として、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(polybutyleneadipate terephthalate、PBAT)、ポリブチレンサクシネート(polybutylene succinate、PBS)などが代替導入されている。
【0004】
しかしながら、脂肪族ポリエステルであるポリ乳酸は、機械的特性は良好であるが、固有の結晶構造により柔軟性に足りず、芳香族脂肪族ポリエステルであるポリブチレンアジペートテレフタレートは、強度などの機械的物性が良くないため、その使用用途が制限的であった。
【0005】
このような問題を改善するために、特許文献1は、PBAT、PBSet、PBAzt、PBSTなどを含む組成物に炭酸カルシウムを低含有量で混合して引裂伝播(tear propagation)特性を改善した生分解性ポリエステルホイル(foil)を開示しているが、このような生分解性ポリエステルホイルは、炭酸カルシウムの含有量を増加させると物性が弱化し、ポリエステルホイルの製造過程で高いエネルギー消費を要するため、製造コストが増加し製造効率が低下する限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国登録特許第9096758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、実現例は、炭酸カルシウムを高含有量で含むとともに、優れた引張強度および伸び率を維持するだけでなく、優れた生分解性、土壌の酸性化防止効果、および生産コストの節減が可能な生分解性樹脂組成物、生分解性ポリエステルフィルム、生分解性ポリエステルシート、およびその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実現例による生分解性樹脂組成物は、生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含み、下記式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である。
【0009】
他の実現例による生分解性ポリエステルフィルムは、生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含む生分解性樹脂組成物を含み、前記生分解性樹脂組成物は、下記式1で表される結晶ピークの減少率が、50%以上である。
【0010】
また他の実現例による生分解性ポリエステルシートは、生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含む生分解性樹脂組成物を含み、前記生分解性樹脂組成物は、下記式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である。
[式1]結晶ピークの減少率=(R-C)/R
前記式1において、
は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した後、10℃/分の速度で-50℃まで冷却する過程で測定された70℃~90℃温度区間における前記生分解性ポリエステル樹脂の結晶融解熱(J/g)であり、
は、前記と同じ条件で測定された前記生分解性樹脂組成物の結晶融解熱(J/g)である。
【発明の効果】
【0011】
一実現例による生分解性樹脂組成物は、炭酸カルシウムを特定の含有量で含むことにより、低価の炭酸カルシウムを高含有量で使用することにより製品の原価を低下させ生産コストの節減が可能であり、生分解開始点(biodegradation starting point)の増加および化学的分解反応の促進により、生分解性をより改善することができる。
【0012】
また、生分解性樹脂組成物を用いた製品の分解時に発生する酸成分を中和して土壌の酸性化を防止することができる。
【0013】
一実現例による生分解性樹脂組成物は、高含有量の炭酸カルシウムを含んで高分子の流動特性を変化させ、前記生分解性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)および結晶ピークを調整することができる。
【0014】
一実現例による生分解性樹脂組成物は、炭酸カルシウムを高含有量で含むにもかかわらず、等温重量損失率を低いレベルで維持することができ、高温加工の際にも炭酸カルシウムを高含有量で維持することができる。
【0015】
他の実現例による生分解性樹脂組成物から製造された成形品、特に生分解性ポリエステルフィルムは、生分解性ポリエステル樹脂を低含有量で含むにもかかわらず、引張強度、伸び率および引裂強度を一定レベル以上で維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実現例および参考例の生分解性樹脂組成物の示差走査熱量分析の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実現例により発明を詳細に説明する。実現例は、以下に開示の内容に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限り、様々な形態に変形することができる。
【0018】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
また、本明細書に記載された構成成分の物性値、寸法等を表すすべての数値範囲は、特別な記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0020】
本明細書において、第1、第2、1次、2次などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素として区別するためにのみ用いられる。
【0021】
[生分解性樹脂組成物]
一実現例による生分解性樹脂組成物は、生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含み、下記式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である。
[式1]結晶ピークの減少率=(R-C)/R
前記式1において、
は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した後、10℃/分の速度で-50℃まで冷却する過程で測定された70℃~90℃温度区間における前記生分解性ポリエステル樹脂の結晶融解熱(J/g)であり、
は、前記と同じ条件で測定された前記生分解性樹脂組成物の結晶融解熱(J/g)である。
【0022】
[生分解性ポリエステル樹脂]
生分解性ポリエステル樹脂は、第1繰り返し単位および第2繰り返し単位を含み、前記第1繰り返し単位は、ジオール成分および芳香族ジカルボン酸成分を含み、前記第2繰り返し単位は、ジオール成分および脂肪族ジカルボン酸成分を含む。
【0023】
-ジオール成分-
ジオール成分は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含む。
【0024】
具体的に、前記ジオール成分は、ジオール成分の総モル数を基準に、95モル%以上、97モル%以上、98モル%以上、99モル%以上、または100モル%の1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含み得る。
【0025】
前記ジオール成分が1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むことにより、生分解性、柔軟性および強度を向上させることができ、特に、前記ジオール成分が1,4-ブタンジオールのみからなると、生分解性および強度の向上効果を最大化し得る。
【0026】
必要に応じて、前記ジオール成分は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体である第1ジオールとは異なる第2ジオールをさらに含み得る。
【0027】
前記第2ジオールは、プロパンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、またはエチレングリコールからなる群より選択された1種以上であり得る。具体的に、前記第2ジオールは、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,6-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、またはエチレングリコールからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0028】
また、前記ジオール成分は、ジオール成分の総モル数を基準に、5モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、または1モル%以下の第2ジオールをさらに含み得る。
【0029】
-ジカルボン酸成分-
本発明のジカルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸成分および芳香族ジカルボン酸成分を含む。
【0030】
前記芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸およびその誘導体からなる群より選択された1種以上である。
【0031】
前記脂肪族ジカルボン酸成分は、アジピン酸、コハク酸、およびその誘導体からなる群より選択された1種以上である。
【0032】
具体的に、前記芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸であり、前記脂肪族ジカルボン酸成分は、アジピン酸、コハク酸であり得る。
【0033】
前記ジカルボン酸成分は、ジカルボン酸成分の総モル数を基準に、前記芳香族ジカルボン酸成分を、15モル%以上、30モル%以上、45モル%以上、50モル%以上、75モル%以上で含み、30モル%~90モル%、35モル%~80モル%、40モル%~75モル%、45モル%~65モル%、または45モル%~55モル%で含み得る。
【0034】
また、前記ジカルボン酸成分は、ジカルボン酸成分の総モル数を基準に、前記脂肪族ジカルボン酸成分を、15モル%以上、30モル%以上、45モル%以上、50モル%以上、または75モル%で含み、30モル%~90モル%、35モル%~80モル%、40モル%~75モル%、45モル%~65モル%、または45モル%~55モル%で含み得る。
【0035】
前記芳香族ジカルボン酸成分および前記脂肪族ジカルボン酸成分のモル比は、0.5~1.5:1、0.7~1.3:1、または0.8~1.2:1であり得る。芳香族ジカルボン酸成分および脂肪族ジカルボン酸成分のモル比が前記範囲を満足することにより、生分解性および加工性を向上させ得る。
【0036】
また、前記ジオール成分および前記ジカルボン酸成分のモル比は、0.5~2:1であり得る。例えば、前記ジオール成分および前記ジカルボン酸成分のモル比は、0.5~1.8:1、0.7~1.5:1、0.9~1.2:1であり得る。ジオール成分およびジカルボン酸成分のモル比が前記範囲を満足することにより、黄変のような変色もなく生分解性、強度および加工性をいずれも向上させ得る。
【0037】
-ナノセルロース-
本発明の生分解性ポリエステル樹脂は、ナノセルロースをさらに含み得る。
【0038】
前記ナノセルロースは、ゲルまたは乾燥粉末状の天然物質のナノセルロースであり、前記ナノセルロースを含む生分解性ポリエステル樹脂の分散安定性、強度および加工性をいずれも向上させ得る。
【0039】
前記生分解性ポリエステル樹脂は、ナノセルロースを前記生分解性ポリエステル樹脂の総重量を基準に、0.01重量%~3重量%で含み得る。例えば、前記ナノセルロースの含有量は、生分解性ポリエステル樹脂の総重量を基準に、0.01重量%~2.5重量%、0.05重量%~2重量%、0.07重量%~1.8重量%、0.1重量%~1.2重量%、0.1重量%~1重量%、または、0.15~0.7重量%であり得る。ナノセルロースの含有量が前記範囲を満足することにより、生分解性および強度をより向上させ得る。
【0040】
前記ナノセルロースは、1μm~50μmの粒径で凝集した2次粒子を有する乾燥粉末(dry powder)またはゲル(gel)状であり得る。例えば、前記ナノセルロースは、単一粒子ではなく凝集した2次粒子を有する乾燥粉末またはゲル状であり、前記2次粒子の大きさは、2μm~45μmまたは5μm~50μmであり得る。また、前記ナノセルロースは、保管および輸送が容易となるよう、体積を減らすために凍結乾燥された粉末状であり得る。
【0041】
前記ナノセルロースの直径は、1nm~100nmであり得る。例えば、前記ナノセルロースの直径は、1nm~95nm、5nm~90nm、10nm~80nm、5nm~60nm、または15nm~60nmであり得る。
【0042】
また、前記ナノセルロースの長さは、5nm~10μmであり得る。例えば、前記ナノセルロースの長さは、5nm~5μm、5nm~1μm、10nm~700nm、20nm~500nm、60nm~300nm、80nm~200nm、100nm~250nmであり得る。
【0043】
前記ナノセルロースの直径および長さが前記範囲を満足することにより、強度、特に引裂強度をより向上させ得る。
【0044】
また、前記ナノセルロースは、結晶核剤の機能を果たして、生分解性樹脂組成物の結晶化速度を向上させることができ、生分解性樹脂組成物の結晶化温度を増加させ得る。
【0045】
前記ナノセルロースは、セルロースナノクリスタル、セルロースナノファイバーおよびマイクロフィブリル化セルロースからなる群より選択される1種以上であり、セルロースナノクリスタルまたはセルロースナノファイバーが、強度および熱特性の観点から好ましい。前記ナノセルロースが生分解性ポリエステル樹脂に含まれると、生分解性、強度および熱特性をより向上させ得る。
【0046】
前記ナノセルロースを含む生分解性樹脂組成物は、適切な耐UV特性、生分解速度および加水分解速度を有し得る。
【0047】
より具体的に、前記ナノセルロースは、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロース、およびシクロヘキシルセルロースからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0048】
実現例によるナノセルロースの平均粒度は200nm以下であり、粒度偏差は20%以下であり得る。具体的に、水分散されたナノセルロースの平均粒度は190nm以下または185nm以下であり、粒度偏差は18%以下または16%以下であり得る。ナノセルロースの平均粒度および粒度偏差が前記範囲を満足することにより、前記ナノセルロースの分散性および耐久性のいずれも優れる。
【0049】
他の実現例によると、前記ナノセルロースは、ビーズミル前処理または超音波前処理されたものであり得る。具体的に、前記ナノセルロースは、水分散されたナノセルロースがビーズミル前処理または超音波前処理されたものであり得る。
【0050】
例えば、前記ナノセルロースは、1μm~50μmの粒径を有する乾燥粉末またはゲル状のセルロースナノクリスタルを水分散させた後、これをビーズミル前処理または超音波前処理したものであり得る。
【0051】
前記ナノセルロース、具体的に水分散されたナノセルロースがビーズミル前処理または超音波前処理された場合、ナノセルロース粒子の数がより多くなり、分散性を最大化し得る。
【0052】
また、前記ナノセルロースは、前記ナノセルロースの総重量を基準に、0.01重量%~10重量%のシランカップリング剤で前処理され得る。例えば、前記ナノセルロースは、前記ナノセルロースの総重量を基準に、0.05重量%~8重量%、0.1重量%~8重量%、0.5重量%~6重量%、または0.7重量%~6重量%のシランカップリング剤で前処理され得る。
【0053】
シランカップリング剤の含有量が前記範囲を満足することにより、界面接着力、分散性および相溶性を最大化し得るので、これを含む生分解性ポリエステル樹脂の機械的物性や耐久性、特に、耐加水分解性をより向上させ得る。
【0054】
-炭酸カルシウム(CaCO)-
一実現例による生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、炭酸カルシウムを30重量%~80重量%含む。
【0055】
例えば、生分解性樹脂組成物は、前記炭酸カルシウム(CaCO)を生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、30.5重量%以上、35重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、または75重量%以上含み、30重量%~70重量%、40重量%~75重量%、45重量%~70重量%、30重量%~45重量%、45重量%~55重量%、45重量%~49重量%、55重量%~65重量%、60重量%~75重量%、65重量%~72重量%、60重量%~70重量%、または65重量%~70重量%で含み得る。
【0056】
前記生分解性樹脂組成物が炭酸カルシウムを前記範囲で含むと、原料の需給が容易で低価の炭酸カルシウムを高含有量で使用することにより製品の原価を低下させ、生産コストの削減が可能であり、生分解開始点を上げて生分解性をより改善することができ、炭酸カルシウムを高含有量で含むにもかかわらず、分散性を向上させ製品の物性低下を防止し得る。
【0057】
また、生分解性樹脂組成物で製造された成形品の分解時に酸成分が発生することとなる。前記酸成分と炭酸カルシウムが反応して、二酸化炭素ガスと水を発生させ得るので、分子単位での生分解速度がより向上され、下記反応式1のように、炭酸カルシウムが前記酸成分を中和して環境負荷を減少させ、土壌の酸性化を防ぐことができる。
[反応式1]
CaCO(s)+2H(aq)→CO(g)+HO(l)+Ca2+(aq)
【0058】
前記炭酸カルシウムは、石灰石、チョーク、大理石、貝殻、サンゴ等のCaCOを主成分とする天然炭酸カルシウムを機械的に粉砕または分級して得られる天然炭酸カルシウムであってよく、化学的沈殿反応等により調製される合成炭酸カルシウムであってもよく、天然炭酸カルシウムが生分解性粒子と炭酸カルシウムとの間の表面積を増加させ、生分解性の効率を高めるという点から好ましい。
【0059】
また、炭酸カルシウムの分散性または反応性を高めるために、炭酸カルシウムの表面を物理的処理または化学的処理により表面を改質し得る。例えば、物理的表面改質法としては、プラズマ処理、コロナ処理などの物理的な方法や、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤などのカップリング剤、界面活性剤で表面を化学的に処理するものであり得る。
【0060】
前記炭酸カルシウムの粒子の大きさは、比表面積測定装置を用いて空気透過法による比表面積の測定結果から算出しており、平均粒径が0.1μm~10.0μmであり、具体的に0.5μm~5.0μmまたは1.0μm~3.0μmであり得る。
【0061】
炭酸カルシウムの粒径が前記範囲内であると、生分解性ポリエステル樹脂と炭酸カルシウムとを混練する際の粘度を一定範囲で維持可能であり、粒子の大きさの均一性が増加して、成形品の製造が容易になり得る。
【0062】
前記炭酸カルシウムの比表面積は、窒素ガス吸着法により比表面積を測定し、比表面積は0.1m/g~10.0m/g、具体的に0.2m/g~5.0m/gまたは1.0m/g~3.0m/gであり得る。
【0063】
炭酸カルシウムの比表面積が前記範囲内であると、生分解性樹脂組成物から製造される成形品において、生分解性ポリエステル樹脂の生分解反応表面積が広くなり、自然環境下における生分解性が良好に促進される一方、炭酸カルシウムを配合することによる生分解性樹脂組成物の加工性の低下を減少させ得る。
【0064】
前記炭酸カルシウムの不定形性は、炭酸カルシウムの球形度を基準に表し、炭酸カルシウムの球形度が、0.30~0.95、0.50~0.93または0.60~0.90であり得る。
【0065】
炭酸カルシウムの球形度が前記範囲内であると、生分解性ポリエステル樹脂と炭酸カルシウムとの界面にいて、非常に弱い接着または未接着により発生する微細な空隙を多数含んで、自然環境下における生分解性を高めることができ、製品としての強度や成形加工性が低下しない。
【0066】
-添加剤-
必要に応じて、本発明の生分解性樹脂組成物に、補助剤として添加剤を配合することも可能である。
【0067】
添加剤としては、例えば、炭酸カルシウムの外に、充填剤、滑剤、可塑剤、色剤、酸化防止剤、難燃剤または発泡剤、鎖延長剤等を配合することもでき、例えば、カップリング剤、流動性改良剤、分散剤、紫外線吸収剤、安定剤、帯電防止剤などのポリエステル生分解性樹脂組成物に一般的に添加され得るいずれもの添加剤を含み得る。これらの添加剤は、単独または2種以上を併用し得る。好ましくは、前記生分解性樹脂組成物が、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、鎖延長剤、および分散剤からなる群より選択される1種以上をさらに含み得る。
【0068】
例えば、前記生分解性樹脂組成物は、可塑剤および酸化防止剤を含む。
添加剤は、混練工程で配合してもよく、混練工程の前に生分解性樹脂組成物に配合してもよい。
【0069】
本発明の生分解性樹脂組成物において、これらその他の添加剤の添加量は、本発明の効果を達成し得る範囲内であれば特に限定されるものではないが、その他の添加剤は、それぞれ生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、0.01重量%~5重量%であり、その他の添加剤の総重量が生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、10重量%以下であることが好ましい。
【0070】
炭酸カルシウム以外の充填剤は、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、白砂、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、または黒鉛などが挙げられる。
【0071】
前記滑剤は、ステアリン酸を含む脂肪酸系滑剤、脂肪族アルコール系滑剤、ステアロアミドを含む脂肪族アミド系滑剤、ステアリン酸-n-ブチル、ヒドロキシステアリン酸メチル、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックス等の脂肪族エステル系滑剤、脂肪酸金属石けん系滑剤等が挙げられる。
【0072】
前記滑剤は、ステアリン酸系滑剤であってよく、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ブチルからなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0073】
前記ステアリン酸系滑剤は、原料混合、溶融、加工時の摩擦による熱発生を減少させ、価格に対して生分解性ポリエステル樹脂に対する分散効果に優れ、潤滑効果に優れるため、製造効率を改善させ得る。
【0074】
前記滑剤の含有量は、生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、5重量%以下、1重量%以下、1重量%未満、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、または0.1重量%以下であり得る。
【0075】
前記滑剤は、生分解性樹脂組成物の総重量を基準に0.1重量%~1重量%で含んでよく、具体的に0.1重量%~0.5重量%または0.2重量%~0.3重量%で含み得る。
【0076】
前記滑剤の含有量が前記範囲内であると、前記生分解性樹脂組成物の物性を低下させないとともに、前記生分解性樹脂組成物の製造効率を向上させ得る。
【0077】
可塑剤は、加工性や得られる成形品の柔軟性を付与するために添加され、グリセロール、アクリレート、グリセリン、グリセロールモノステアレート(GMS)、ソルビトール、またはそれらの混合物などであり得る。
【0078】
本発明の生分解性樹脂組成物において、これらの可塑剤の含有量は、本発明の効果を達成し得る範囲内であれば特に限定されるものではないが、可塑剤は、生分解性樹脂組成物の総重量を基準に0~15重量%であり、具体的に、0~13重量%、0.1重量%~3重量%、4重量%~11重量%、8重量%~11重量%、4重量%~8重量%、2重量%~4重量%、1重量%~3重量%、または1重量%~2重量%であり得る。
【0079】
前記可塑剤の含有量が前記範囲内であると、生分解性樹脂組成物から形成された成形品の伸び率を向上させることができ、引裂性を向上させ得る。
【0080】
色剤は、有機顔料または無機顔料もしくは染料をいずれも利用し得る。具体的に、アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、デオキサジン系、ペリノン系、キノフタロン系、ペリレン系顔料などの有機顔料や、群青、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄、酸化クロム、酸化亜鉛、またはカーボンブラックなどの無機顔料が挙げられる。
【0081】
酸化防止剤は、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤またはペンタエリトリトール系酸化防止剤からなる群より選択され、それぞれの酸化防止剤が単独または2種以上混合して使用され得る。酸化防止剤を2種以上含む際、好ましくは、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤を混合使用して、多様な温度範囲による作用効果が得られ得る。
【0082】
前記リン系酸化防止剤は、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、または2-エチルフェニルジフェニルホスフェートなどである。
【0083】
前記フェノール系の酸化防止剤は、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナフィルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2-ビス({[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]オキシ}メチル)プロパン-1,3-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert)-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロパノエート、ペンタエリトリトールテトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、またはテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等である。
【0084】
また、前記酸化防止剤として、BHT、アスコルビン酸、カテキン、ケルセチン、ドデシルガレート、TBHQ、ラロックス(Ralox、登録商標)、イルガノックス(Irganox、登録商標)1135、イルガノックス1076、ノルジヒドログアイアレチン酸、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテイン、プロピルガレート、2,3,5-トリヒドロキシブチロフェノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、α-トコフェロール、レスベラトロール、ルチン、アスタサチン、リコペン、ベータカロチン、またはメラトニンからなる群より選択される1つ以上酸化防止剤を使用し得る。
【0085】
前記酸化防止剤は、生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下であり、0~5重量%、0.01重量%~4重量%、0.1重量%~3重量%、1重量%~3重量%、1重量%~2重量%、0.01重量%~0.3重量%、または0.05重量%~0.3重量%であり得る。
【0086】
前記酸化防止剤が、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤のいずれも含む場合、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の重量比は、1:10~10:1、1:5~5:1、1:1~5:1、2:1~4:1、2.5:1~3.5:1、1:5~1:1、1:2~1:4、または1:2.5~1:3.5であり得る。
【0087】
リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤を前記範囲で混合使用すると、様々な温度範囲で所望の作用効果が得られ得る。
【0088】
難燃剤は、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、または金属水和物などの非リン系ハロゲン系難燃剤を利用し得る。
【0089】
ハロゲン系難燃剤は、例えば、ハロゲン化ビスフェニルアルカン、ハロゲン化ビスフェニルエーテル、ハロゲン化ビスフェニルチオエーテル、ハロゲン化ビスフェニルスルホン等のハロゲン化ビスフェノール系化合物、臭素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールS、塩素化ビスフェノールA、または塩素化ビスフェノールS等のビスフェノール-ビス(アルキルエーテル)系化合物などである。
【0090】
リン系難燃剤は、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、リン酸トリアリールイソプロピル化物、クレシルジ2,6-キシレニルホスフェート、または芳香族縮合リン酸エステルなどである。
【0091】
金属水和物は、例えば、アルミニウム三水和物、二水酸化マグネシウム、またはこれらの組み合わせ等である。
【0092】
難燃効果を向上させるための難燃助剤として、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等を難燃助剤として併用することも可能である。
【0093】
発泡剤は、溶融状態の生分解性樹脂組成物に混合してまたは圧力を加えて注入し、固体から気体、液体から気体に相変化するもの、または気体そのものであり、発泡シートの発泡倍率(発泡密度)を制御するために使用される。
【0094】
発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタン等のハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、窒素、空気などの無機ガス;水などが挙げられる。
【0095】
分散剤は、溶媒および溶質の分散性を高めるためのものであり、前記分散剤は脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸(poly(lactic acid)、以下PLA)、ポリグリコール酸(poly(glycolic acid)、以下PGA)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、以下PCL)、およびポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxyalkanoate、以下PHA)からなる群より選択される1種以上であり得るが、これらに制限されるものではない。
【0096】
本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、およびポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選択される1種以上の分散剤をさらに含む。
【0097】
前記分散剤の含有量は、本発明の効果を達成し得る範囲内であれば特に限定されるものではないが、前記分散剤を生分解性樹脂組成物の総重量を基準に1重量%~20重量%で含み、具体的に、前記分散剤を1重量%~15重量%、1重量%~13重量%、1重量%~11重量%、2重量%~10重量%、5重量%~15重量%、7重量%~12重量%、2重量%~8重量%、5重量%~8重量%、または2重量%~5重量%で含み得る。
【0098】
鎖延長剤は、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート、ビスオキサゾリン、カルボン酸無水物、またはエポキシドである。
【0099】
前記芳香族ジイソシアネートは、トリレン2,4-ジイソシアネート、トリレン2,6-ジイソシアネート、2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、またはキシリレンジイソシアネートを含む。そのうち、2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、および4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0100】
前記脂肪族ジイソシアネートは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、またはメチレンビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)を指す。特に好ましい脂肪族ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、特に1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0101】
前記イソシアヌレートは、イソホロンジイソシアネートまたはメチレンビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)を含む。
【0102】
前記ビスオキサゾリンは、2,2'-ビス(2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニル)メタン、1,2-ビス(2-オキサゾリニル)エタン、1,3-ビス(2-オキサゾリニル)プロパン、または1,4-ビス(2-オキサゾリニル)ブタン、特に、1,4-ビス(2-オキサゾリニル)ベンゼン、1,2-ビス(2-オキサゾリニル)ベンゼン、または1,3-ビス(2-オキサゾリニル)ベンゼンである。
【0103】
前記エポキシドは、スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとするエポキシ含有共重合体のことを意味するものであり、グリシジル(メタ)アクリレートを有する共重合体含有量が、20重量%超、30重量%超、または50重量%超である共重合体が好ましく、エポキシ当量(EEW)は、150g/Eq~3000g/Eqまたは200g/Eq~500g/Eqである。重量平均分子量(Mw)は、2000~25000または3000~8000の範囲であり、数平均分子量(Mn)は400~6000または1000~4000であり、多分散度(Q)は一般に1.5~5である。前記エポキシドは、BASF Resins B.V.社のJoncryl(登録商標)ADRから入手可能である。
【0104】
前記鎖延長剤は、生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、1.5重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下であり、0~1.5重量%、0.01重量%~1重量%、0.1重量%~1重量%、0.01重量%~0.5重量%、0.01重量%~0.3重量%、または0.1重量%~0.5重量%であり得る。
【0105】
前記生分解性ポリエステル樹脂のCOOH末端基は、10~50eq/10gr、15~40eq/10gr、または20~30eq/10grであり得る。
【0106】
示差走査熱容量分析法(Differential Scanning Calorimeter;DSC)は、示差走査熱量計を用いて、試料の熱転移(thermal transitions)に関連する熱の流れを測定することにより、ピークの位置、形状、数などから定性的な情報を得て、ピークの面積から熱量変化の定量的な情報(ガラス転移温度(Tg)、冷結晶化温度(Tcc)、結晶化温度(Tmc)、溶融温度(Tm)など)を得ることができる。
【0107】
前記生分解性ポリエステル樹脂を、示差走査熱容量分析法によりDSC昇温測定する際、ガラス転移温度が約-20℃で測定され、70℃~90℃の温度区間でブタンジオールによる結晶ピーク(結晶融解熱が1~5J/gまたは1~3J/g)が現れ、100℃~150℃の温度区間で生分解性ポリエステル樹脂(PBAT)自体による結晶ピーク(結晶融解熱が5~20J/gまたは13~17J/g)が検出される結晶融解温度曲線を示す。
【0108】
本発明の生分解性樹脂組成物の場合、示差走査熱容量分析法によりDSC昇温測定の際、70℃~90℃の温度区間で式1による結晶ピークの減少率が50%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上、または100%である。これは、生分解性樹脂組成物のDSC昇温測定において、ブタンジオールによる結晶ピークが著しく減少することを意味する。これは、過量の炭酸カルシウムを含む生分解性樹脂組成物の場合、無機物である炭酸カルシウムによって、ブタンジオールによる自己結晶生成が防止され、結晶挙動の変化があることを示す。
【0109】
本発明の生分解性樹脂組成物のDSC昇温測定において、100℃~150℃の温度区間で式1Aによる結晶ピークの減少率が、15%以上、24%以上、30%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、または90%以上であり、例えば、45%~98%、45%~96%、または50%~90%であり得る。
【0110】
[式1A]結晶ピークの減少率=(Rp1-Cp1)/Rp1
前記式1Aにおいて、
p1は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した後、10℃/分の速度で-50℃まで冷却する過程で測定された100℃~150℃の温度区間における前記生分解性ポリエステル樹脂の結晶融解熱(J/g)であり、
p1は、前記と同じ条件で測定された前記生分解性樹脂組成物の結晶融解熱(J/g)である。
【0111】
これは、生分解性樹脂組成物のDSC昇温測定において、生分解性ポリエステル樹脂(PBAT)自体による結晶ピークが著しく減少することを意味し、過量の炭酸カルシウムを含む生分解性樹脂組成物の場合、無機物である炭酸カルシウムによって一定単位体積内の高分子の流動が抑制され、生分解性ポリエステル樹脂による自己結晶生成を妨げ、結晶挙動を変化させ得ることを示す。
【0112】
前記生分解性樹脂組成物を示差走査熱容量分析法により分析する際、ガラス転移温度(Tg)が、-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上、-20℃以上、-10℃以上であり、30℃以下、20℃以下、10℃以下であり得る。これは、過量の炭酸カルシウムを含む生分解性樹脂組成物の場合、無機物である炭酸カルシウムによって高分子鎖の間で立体障害(steric hindrance)が発生して高分子鎖の流動性が抑制され、ガラス転移温度(Tg)が高くなる傾向を示す。
【0113】
前記生分解性樹脂組成物の溶融温度(Tm)が、60℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上であり、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下であり得る。
【0114】
前記生分解性樹脂組成物の結晶化温度(Tmc)が、-10℃以上、-5℃以上、0℃以上であり、80℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下であり得る。
【0115】
図1は、毎分20℃の速度で加熱測定を2回行った際の示差走査熱量分析結果を示し、参考例A1の100%の生分解性ポリエステル樹脂(PBAT樹脂)では、ガラス転移温度(Tg)が-24.2℃、溶融温度(Tm)が113.9℃、結晶化温度(Tmc)が33℃と測定され、冷結晶化温度(Tcc)は別途測定されない。また、ブタンジオールピークによる結晶融解熱が1J/gであり、生分解性ポリエステル樹脂(PBAT)自体ピークによる結晶融解熱が15J/gである。
【0116】
図1において、炭酸カルシウム65%とPBAT樹脂35%を含む実施例A2の生分解性樹脂組成物では、ガラス転移温度(Tg)が-23.1℃と測定され、ブタンジオールピークによる結晶融解熱が0.02J/gであり、生分解性ポリエステル樹脂(PBAT)自体ピークによる結晶融解熱が2.5J/gである。
【0117】
熱重量分析法(TGA)は、一定条件下で温度を上昇させながら、試料の重量を時間または温度の関数で連続的に測定する分析法である。
【0118】
TGA分析により、前記生分解性樹脂組成物を210℃等温で1時間維持したとき、前記生分解性樹脂組成物の等温重量損失が5%以下であり得る。
【0119】
具体的に、前記等温重量損失が、4%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、または0.5%以下であり、0%以上または0.1%以上であり得る。
【0120】
等温重量損失は、(W-W)/W×100で計算し、初期ペレットの重量(W)と、ペレットを210℃等温条件で1時間放置した後のペレットの重量変化(W)である。
【0121】
等温重量損失が前記範囲であるとき、生分解性樹脂組成物の耐熱性が確保され、押出時の熱による蒸気(vapor)発生、分子量減少などを防止することができ、機械的物性を一定レベル以上で維持し得る。
【0122】
TGA分析により、前記生分解性樹脂組成物を20℃/1分の速度で加熱する際、600℃にて前記生分解性樹脂組成物の炭酸カルシウムの含有量変動性が5%以下であり得る。
【0123】
具体的に、前記炭酸カルシウムの含有量変動性が、4%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、または0.8%以下であり、0%以上または0.1%以上であり得る。
【0124】
炭酸カルシウムの含有量変動性は、(Wc0-Wc1)/Wc0×100で計算し、生分解性樹脂組成物のペレットの初期炭酸カルシウムの重量(Wc0)と、前記生分解性樹脂組成物のペレットを20℃/1分の速度で加熱する際、600℃にて生分解性樹脂組成物の炭酸カルシウムの重量(Wc1)である。
【0125】
TGA分析における前記炭酸カルシウムの含有量変動性が前記範囲であるとき、高温の加工過程後にも、生分解性樹脂組成物が炭酸カルシウム(CaCO)を高含有量で維持することができる。
【0126】
[成形品]
実現例により、前記生分解性樹脂組成物から製造された成形品を提供することができる。
【0127】
具体的に、前記成形品は、前記生分解性樹脂組成物を押出、射出など、当業界に公知の方法で成形して製造され、前記成形品は、射出成形品、押出成形品、薄膜成形品、またはブロー(blower)成形品であり得るが、これに限定されるものではない。
【0128】
例えば、前記成形品は、農業用マルチング(mulching)フィルム、使い捨て手袋、食品包装材、ゴミ袋などとして利用され得るフィルムまたはシート状であってよく、織物、編物、不織布、ロープなどとして利用され得る繊維状であってもよく、弁当などのような食品包装用容器として利用され得る容器状であり得る。
【0129】
特に、前記成形品は、強度および加工性はもちろん、耐久性を向上させ得る前記生分解性樹脂組成物から形成され得るので、低温で保管および輸送される製品の包装材、または優れた耐久性および伸び率を要するゴミ袋、マルチングフィルムまたは使い捨て製品に適用する際、優れた特性を発揮し得る。
【0130】
前記生分解性樹脂組成物またはこれにより製造した成形品は、自然状態で45日~180日以内に60%~100%生分解され、20℃~60℃の一定温度および30%~90%の一定湿度条件で堆肥化し得る。
【0131】
-生分解性ポリエステルフィルム-
前記成形品の一実現例である生分解性ポリエステルフィルムは、前記生分解性樹脂組成物を含む。
【0132】
前記生分解性ポリエステルフィルムは、生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含む生分解性樹脂組成物を含み、前記生分解性樹脂組成物は、式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である。
【0133】
前記生分解性ポリエステルフィルムの厚さは、5μm~200μmであり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムの厚さは、5μm~180μm、5μm~160μm、10μm~150μm、15μm~130μm、20μm~100μm、25μm~80μm、10μm~50μm、10μm~30μm、または25μm~60μmであり得る。
【0134】
また、前記生分解性ポリエステルフィルムの引張強度は5MPa以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムの引張強度は、7MPa以上、9MPa以上、10MPa以上、11MPa以上であり、30MPa以下、27MPa以下、25MPa以下、23MPa以下、または21MPa以下であり得る。
【0135】
生分解性ポリエステルフィルムの引張強度が前記範囲内であると、炭酸カルシウムを高含有量で含みながら一定範囲で引張ることができ、優れた機械的物性を有していることにより多様な活用が可能であり、生分解が始まった後は生分解速度をより向上させ得る。
【0136】
また、前記生分解性ポリエステルフィルムの引裂強度は75N/mm以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムの引裂強度は、75N/mm以上、80N/mm以上、85N/mm以上、または90N/mm以上であり、200N/mm以下、180N/mm以下、150N/mm以下、または135N/mm以下であり得る。
【0137】
生分解性ポリエステルフィルムの引裂強度が前記範囲内であると、炭酸カルシウムを高含有量で含みながらも一定方向に引き裂かれ難い優れた機械的物性を有していることにより多様な活用が可能であり、生分解が始まった後は生分解速度をより向上させ得る。
【0138】
前記生分解性ポリエステルフィルムの伸び率は85%以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムの伸び率は、90%以上または95%以上、700%以下、650%以下、600%以下、または550%以下であり得る。
【0139】
生分解性ポリエステルフィルムの伸び率が前記範囲内であると、一定部分よく伸び、製品包装の際に伸縮性を確保できるので、一定荷重を耐えることができる。
【0140】
また、前記生分解性ポリエステルフィルムのシール強度は、500gf以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムのシール強度は、600gf以上、700gf以上、または800gf以上であり得る。
【0141】
-生分解性ポリエステルシート-
前記成形品の一実現例である生分解性ポリエステルシートは、前記生分解性樹脂組成物を含む。
【0142】
前記生分解性ポリエステルシートは、生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含む生分解性樹脂組成物を含み、前記生分解性樹脂組成物は、式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である。
【0143】
前記生分解性ポリエステルシートの厚さは、5μm~180μm、5μm~160μm、10μm~150μm、15μm~130μm、20μm~100μm、25μm~80μm、10μm~50μm、10μm~30μmであり得る。
【0144】
また、前記生分解性ポリエステルシートの引張強度は、5MPa以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルシートの引張強度は、6MPa以上、9MPa以上、10MPa以上、11MPa以上、12MPa以上であり、40MPa以下、35MPa以下、30MPa以下、27MPa以下、25MPa以下、23MPa以下、または21MPa以下であり得る。
【0145】
生分解性ポリエステルシートの引張強度が前記範囲内であると、炭酸カルシウムを高含有量で含みながら一定範囲で引張ることができ、優れた機械的物性を有していることにより多様な活用が可能であり、生分解が始まった後は生分解速度をより向上させ得る。
【0146】
また、前記生分解性ポリエステルシートのモジュラスは110Mpa~350Mpaであり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルシートのモジュラスは、120Mpa~340Mpa、150Mpa~330Mpa、または200Mpa~330Mpaであり得る。
【0147】
前記生分解性ポリエステルシートの伸び率は10%以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルシートの伸び率は、15%以上、20%以上、50%以上、または70%以上であり、700%以下、650%以下、550%以下、500%以下、または450%以下であり得る。
【0148】
生分解性ポリエステルシートの伸び率が前記範囲内であると、一定部分よく伸び、製品包装の際に伸縮性を確保できるので、一定荷重を耐えることができる。
【0149】
[生分解性ポリエステルフィルムまたは生分解性ポリエステルシートの製造方法]
実現例による生分解性ポリエステルフィルムまたは生分解性ポリエステルシートの製造方法は、ジオール成分とジカルボン酸成分とをエステル化反応して、プレポリマーを調製する段階と、前記プレポリマーを重縮合反応して生分解性ポリエステル樹脂(重合体)を調製する段階と、前記生分解性ポリエステル樹脂と炭酸カルシウムとを混合して、生分解性樹脂組成物を調製する段階と、前記生分解性樹脂組成物からペレットを製造する段階と、前記ペレットを乾燥および溶融圧出する段階と、を含む。
【0150】
まず、ジオール成分とジカルボン酸成分とをエステル化反応して、プレポリマーを調製する。
【0151】
前記生分解性樹脂組成物は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、およびそれらの誘導体からなる群より選択される1種以上のジカルボン酸成分を含む組成物であり、これをエステル化反応してプレポリマーを調製する。
【0152】
前記ジオール成分、前記芳香族ジカルボン酸成分および前記脂肪族ジカルボン酸成分に関する説明は、前述の通りである。
【0153】
前記プレポリマーを調製する段階は、前記ジオール成分、前記芳香族ジカルボン酸成分、前記脂肪族ジカルボン酸成分、および選択的に前記ナノセルロースを含む組成物を1段階エステル化反応によって調製することもでき、1次エステル化反応および2次エステル化反応による2段階エステル化反応によっても調製し得る。
【0154】
前記2段階エステル化反応は、(1)前記ジオール成分と前記芳香族ジカルボン酸成分とを1次エステル化反応させる段階と、(2)前記段階(1)の反応生成物に前記ジオール成分と前記脂肪族ジカルボン酸成分とを投入して、2次エステル化反応させる段階とを含み得る。
【0155】
本発明の生分解性ポリエステル樹脂が前記ナノセルロースを含む場合、前記2段階エステル化反応によりプレポリマーを調製する際、前記ナノセルロースを2次エステル化反応段階で投入することにより、ナノセルロースの結合力を向上させ得る。具体的に、2次エステル化反応段階において、前記ナノセルロース、すなわち、水分散されたナノセルロースを投入することが、耐久性をより向上させ得る。
【0156】
また、前記ナノセルロースは、100℃~160℃、好ましくは110℃~140℃の温度条件で投入することが、耐加水分解性を向上させ得る点から好ましい。
【0157】
さらには、前記ナノセルロースは、2kg/分~10kg/分、2.5kg/分~9.5kg/分、または3kg/分~8kg/分の速度で投入することが、凝集を防止しながら耐加水分解性をより向上させることができ、適切な工程速度を維持し得る。投入速度が前記範囲内であると、追加工程が不要で、工程効率を向上させることができ、ナノセルロースの再凝集を防止し得る。
【0158】
より具体的に、2段階エステル化反応は、(1)前記ジオール成分と前記第1のジカルボン酸成分とを1次エステル化反応させる段階と、(2)前記段階(1)の反応生成物に、前記ジオール成分および前記第2ジカルボン酸成分と前記ナノセルロースとを投入して、2次エステル化反応させる段階とを含み得る。
【0159】
前記エステル化反応の前に、前記チタン系触媒、ゲルマニウム系触媒、アンチモニ系触媒、添加剤、および安定剤を前記組成物に投入し得る。前記触媒、前記添加剤および前記安定剤に関する説明は、前術の通りである。
【0160】
前記エステル化反応は、それぞれ250℃以下にて0.5時間~5時間行われ得る。具体的に、前記エステル化反応は、240℃以下、235℃以下、180℃~250℃、185℃~240℃、または200℃~240℃にて、副産物である水とメタノールとが理論的に90%に到達するまで常圧にて行われ得る。例えば、前記エステル化反応は、0.5時間~4.5時間、0.5時間~3.5時間、または1時間~3時間行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0161】
前記プレポリマーの数平均分子量は、500~10000であり得る。例えば、前記プレポリマーの数平均分子量は、500~8500、500~7000、1000~6000、または2500~5500であり得る。プレポリマーの数平均分子量が前記範囲を満足することにより、重縮合反応において重合体の分子量を効率的に増加させ得るので、強度特性をより向上させ得る。
【0162】
前記数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し得る。具体的に、ゲル透過クロマトグラフィーによって出たデータは、Mn、Mw、Mpなど、様々の項目があるが、そのうち数平均分子量(Mn)を基準にして分子量を測定し得る。
【0163】
その後、前記プレポリマーを重縮合反応して、生分解性ポリエステル樹脂(重合体)を調製する。
【0164】
前記重縮合反応は、180℃~280℃および1.0Torr以下にて1時間~6時間行われ得る。例えば、前記重縮合反応は、190℃~270℃、210℃~260℃、または230℃~255℃にて行われ、0.9Torr以下、0.7Torr以下、0.2Torr~1.0Torr、0.3Torr~0.9Torr、または0.5Torr~0.9Torrで行われ、1.5時間~5.5時間、2時間~5時間、または3.5時間~4.5時間行われ得る。
【0165】
前記生分解性ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.05dL/gr~10dL/grであり得る。
【0166】
前記生分解性ポリエステル樹脂の溶融粘度を、100s-1条件でRDS(rheometrics dynamic spectrometer)により測定したとき、1000~30000ポアズ(poise)であり得る。
【0167】
前記生分解性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は40000以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、43000以上、45000以上、または40000~70000であり得る。
【0168】
前記生分解性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は60000以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、65000以上、75000以上、80000以上、または85000~100000であり得る。
【0169】
前記生分解性ポリエステル樹脂の多分散指数(PDI)は1.2~2.0であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂の多分散指数は、1.5~1.9または1.6~1.8であり得る。
【0170】
前記生分解性ポリエステル樹脂の数平均分子量、重量平均分子量または多分散指数が前記範囲を満足することにより、強度および加工性をより向上させ得る。
【0171】
また、前記生分解性ポリエステル樹脂の酸価は1.8mgKOH/g以下であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂の酸価は、1.5mgKOH/g以下、1.3mgKOH/g以下、または1.25mgKOH/g以下であり得る。生分解性ポリエステル樹脂の酸価が前記範囲を満足することにより、耐加水分解性の向上を最大化し得る。
【0172】
その後、前記生分解性ポリエステル樹脂と炭酸カルシウムとを混合して、生分解性樹脂組成物を調製する。
【0173】
前記生分解性ポリエステル樹脂と炭酸カルシウムとの混合は、成形方法(押出成形、射出成形、真空成形等)に応じて適宜設定することができ、例えば、ホッパーから成形機に投入する前に、生分解性ポリエステル樹脂と炭酸カルシウムとを混練溶融することもでき、成形機と一体で成形と同時に生分解性ポリエステル樹脂と炭酸カルシウムとを混練溶融することもできる。溶融混練は、生分解性ポリエステル樹脂に炭酸カルシウムを均一に分散させるとともに、高い剪断応力を作用させて混練することが好ましく、例えば、ニーダー(kneader)反応器、単一スクリューを備えている押出成形機、または二軸混練機で混練することが好ましい。
【0174】
また、前記混合段階において、前記可塑剤または前記添加剤のうちの1種以上をさらに投入し得る。
前記混合段階は、1段以上の混合段階で構成される。
【0175】
一実現例として、1段階混合段階の場合、生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、炭酸カルシウムを61重量%~80重量%または65重量%~72重量%含む生分解性樹脂組成物を調製する単一混合段階で構成され得る。
【0176】
他の実現例として、2段混合段階の場合、生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、炭酸カルシウムを61重量%~80重量%または65重量%~72重量%含む生分解性樹脂組成物を調製する予備混合段階と、生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、炭酸カルシウムを30重量%~60重量%、40重量%~60重量%、または45重量%~55重量%含む生分解性樹脂組成物を調製する2次混合段階とで構成され得る。
【0177】
前記1段以上の混合段階は、タンデム(tandem)連続工程であり得る。
【0178】
前記混合段階の温度は、150℃~190℃、150℃~180℃、または160℃~180℃であり得る。混合段階の温度が前記範囲内であると、混合時の必要トルクを減少させ、混合された生分解性樹脂組成物の熱分解を防止することができる。
【0179】
その後、前記生分解性樹脂組成物からペレットを製造する。
前記生分解性樹脂組成物を、単一スクリューを備えている押出成形機または二軸スクリューを備えている押出成形機に投入して150℃~180℃の温度にて押出し、ホットカット方式のペレットカッターでカット、および50℃以下、40℃以下、30℃以下、25℃以下、5℃~50℃、10℃~30℃、15℃~25℃、または20℃~25℃に冷却して、ペレットを製造し得る。
【0180】
前記カット段階は、当業界で使用されるペレットのカッターであれば制限なく使用して行われ、ペレットは様々な形状を有し得る。
【0181】
最後に、前記ペレットを乾燥および溶融圧出する。
前記ペレットを乾燥および溶融押出して、生分解性ポリエステルフィルムまたは生分解性ポリエステルシートを製造する。
【0182】
前記乾燥は、60℃~100℃にて2時間~12時間行われ得る。具体的に、前記乾燥は、65℃~95℃、70℃~90℃、または75℃~85℃にて、3時間~12時間または4時間~10時間行われ得る。ペレットの乾燥工程条件が前記範囲を満足することにより、製造される生分解性ポリエステルフィルムの品質をより向上させ得る。
【0183】
前記溶融押出は、270℃以下で行われ得る。例えば、前記溶融押出は、265℃以下、260℃以下、255℃以下、130℃~270℃、130℃~250℃、140℃~230℃、150℃~200℃、または150℃~180℃にて行われ得る。前記溶融押出は、ブローンフィルム(blown film)工程またはプレス工程により行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0184】
前記溶融押出時のトルクは、100Nm~300Nmまたは150Nm~250Nmであり得る。
【0185】
前記の内容を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、実施例の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【0186】
(実験例)
(実験例1:等温重量損失(Isothermal Weight Loss))
実施例および参考例の生分解性樹脂組成物により製造したペレットについて、初期ペレットの重量(W)と、フィルムを210℃の等温条件で1時間放置した後、ペレットの重量変化(W)とを測定して、(W-W)/W×100%の計算式を用いて等温重量損失を計算した。
【0187】
(実験例2:炭酸カルシウムの含有量変動性)
実施例および参考例の生分解性樹脂組成物試料について、TAインスツルメンツ社のTGA装置のQ500モデルを用いて、毎分20℃の昇温速度で600℃まで昇温(Dynamic mode)した後、Caの残量を確認し、Caの残量を炭酸カルシウム(CaCO)に換算することにより、ペレット中の炭酸カルシウムの含有量を計算した。
【0188】
(実験例3:ガラス転移温度(Tg))
実施例および参考例の生分解性樹脂組成物試料を、DSC装置を用いて毎分20℃の速度で2回の加熱測定を行ったとき、試料の示差走査熱量分析結果によりTgを計算する。
【0189】
(実験例4:結晶化温度(Tc)および結晶融解熱(△Hmc))
実施例および参考例の生分解性樹脂組成物試料を、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した後、5分間等温(isothermal)して1次熱履歴除去過程を行い、10℃/分の速度で180℃から-50℃まで冷却し、5分間等温して2次冷却過程を行った。
【0190】
2次冷却過程において、温度による熱流量グラフを作成して、結晶化温度(℃)、結晶ピークおよび結晶融解熱(J/g)を確認した。
【0191】
(実験例5:引張強度)
実施例、比較例および参考例の生分解性ポリエステルフィルムまたはシートを、長さ100mmおよび幅15mmに切断した後、ASTM D 882に基づいて、INSTRON社の万能試験機(4206-001、UTM)を用いて、チャック間間隔が50mmとなるように装着し、引張速度500mm/分の速度で実験した後、装置に内蔵されているプログラムで引張強度を測定した。
【0192】
(実験例6:伸び率)
実施例、比較例および参考例の生分解性ポリエステルフィルムまたはシートを、長さ100mmおよび幅15mmに切断し、INSTRON社の万能試験機(4206-001、UTM)を用いて、500mm/分の速度で破断直前の最大変形量を測定した後、最初の長さに対する最大変形量の比で計算した。
【0193】
(実験例7:引裂強度)
実施例および参考例の生分解性ポリエステルフィルムを、KPS M 1001-0806に基づいて切断し、500mm/分の一定速度を加えて、フィルムが切断されるまでにかかる最大荷重を測定して、下記式2により引裂強度を計算した。
[式2]
引裂強度(N/cm)=切断されるまでの最大荷重(N)/試験片の厚さ(cm)
【0194】
(実験例8:モジュラス)
実施例および比較例の生分解性ポリエステルシートを、長さ100mmおよび幅15mmに切断した後、ASTM D 882に基づいてインストロン社の万能試験機(4206-001、UTM)を用いてモジュラスを測定した。
【0195】
(実施例)
[生分解性ポリエステル樹脂の製造]
(製造例1)
1,4-ブタンジオール50モル%およびジメチルテレフタル酸50モル%を混合し、該混合物にチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社製)200ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の1次エステル化反応を行った。
【0196】
前記反応生成物に、1,4-ブタンジオール50モル%、アジピン酸50モル%、前処理済のナノセルロース0.1重量%、およびチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社製)150ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の2次エステル化反応を行い、5000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0197】
前記プレポリマーに重縮合触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社製)200ppmを添加し、240℃に昇温した後、0.5torrにて4時間の重縮合反応を行い、50000の数平均分子量を有する生分解性ポリエステル樹脂を調製した。
【0198】
(製造例2)
前処理済のナノセルロースを投入しないことを除いて、製造例1と同様にして製造例2の生分解性ポリエステル樹脂を調製した。
【0199】
または、製造例2に代えて、ナノセルロースを含まない同一組成のPBAT樹脂として、キングファ(Kingfa)社のA400を用い得る。
【0200】
本発明の製造例1および2の生分解性ポリエステル樹脂の機械的、熱的物性は表1の通りである。
【0201】
【表1】
【0202】
[生分解性樹脂組成物の製造]
(実施例A1~A8)
下記表2および表3に基づいて組成物の構成成分を異ならせたことを除く製造例1または製造例2の重合体に、炭酸カルシウム(WS-2200)、および可塑剤(アセチル化モノグリセリド、Biocizer(登録商標))、添加剤1(ポリカプロラクトン;PCL)、添加剤2(ポリ乳酸;PLA)、酸化防止剤1(フェノール系酸化防止剤、AO-60)または酸化防止剤2(リン系酸化防止剤、2112(AO)からなる群より選択される1つ以上を添加したものを、ニーダー反応器に投入して175℃の温度にて混練し、これを単一スクリューが備えられている押出成形機で押出し、ホットカット方式のペレットカッターでカットおよび冷却して、ペレット状の生分解性樹脂組成物を製造した。
【0203】
(実施例A9およびA10)
ニーダー反応器にて混練した実施例A7または実施例A8の組成物を、二軸スクリューを備えている押出成形機に投入した後、製造例1または製造例2の重合体をさらに添加して、下記表3の組成物構成成分の含有量を調整する。これを単一スクリューが備えられている押出成形機で押出し、ホットカット方式のペレットカッターでカットおよび冷却して、ペレット状の生分解性樹脂組成物を製造した。
【0204】
(実施例A11~A13)
下記表4に基づいて組成物の構成成分を異ならせたことを除く製造例1または製造例2の重合体に、PLA、炭酸カルシウム(WS-2200)、可塑剤(アセチル化モノグリセリド)、安定剤(tris-2,4-teiary buthyl phenyl phosphate、2112 RG grade),鎖延長剤(Joncryl)を含む添加剤を添加したものを、ニーダー反応器に投入して175℃の温度にて混練し、これを単一スクリューが備えられている押出成形機で押出して、ホットカット方式のペレットカッターでカットおよび冷却して、ペレット状の生分解性樹脂組成物を製造した。
【0205】
(参考例A1およびA2)
製造例1(参考例A1)または製造例2(参考例A2)の重合体100重量%をニーダー反応器に投入して175℃の温度にて混練し、これを単一スクリューが備えられている押出成形機で押出し、ホットカット方式のペレットカッターでカットおよび冷却して、ペレット状の生分解性樹脂組成物を製造した。
【0206】
【表2】
【0207】
【表3】
【0208】
【表4】
【0209】
本発明の生分解性樹脂組成物の熱的物性に対する測定結果は、表5の通りである。
【0210】
【表5】
【0211】
実施例A1~A10の生分解性樹脂組成物は、製造例1または2の樹脂を100重量%で含む参考例A1およびA2の生分解性樹脂組成物に比べて、高含有量の炭酸カルシウムを含むにもかかわらず、高温(210℃)にて低い重量損失率を示し、特に、実施例A1、A2、A4、およびA9の場合は、1%以下の重量損失率を示す。炭酸カルシウムの含有量変動性実験において、実施例A1~A10の生分解性樹脂組成物は、いずれも炭酸カルシウム含有量の変化量が2.5%以下であるので、高温の加工過程後でもCaCOを高含有量で維持し得ることが分かった。
【0212】
また、実施例A1~A10の生分解性樹脂組成物は、製造例1または2の樹脂を100重量%で含む参考例A1およびA2の生分解性樹脂組成物と比較すると、ガラス転移温度(Tg)が減少する効果を示す。
【0213】
参考例A1を基準に、実施例A1、A3、A4、A7、およびA9の生分解性樹脂組成物は、70℃~90℃にて結晶融解熱が70%~100%減少しており、100℃~150℃にて結晶融解熱が32%~90%減少した。
【0214】
参考例A2を基準に、実施例A2、A5、A6、A8、およびA10の生分解性樹脂組成物は、70℃~90℃にて結晶融解熱が50%~100%減少しており、100℃~150℃にて結晶融解熱が24.7%~96%減少した。
【0215】
[生分解性ポリエステルフィルムの製造]
(実施例B1~B4および参考例B1)
前記表3および表4の実施例A9~A13の生分解性樹脂組成物から製造したペレットを80℃にて5時間乾燥した後、ブローンフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、ユジンエンジニアリング社製)を用いて160℃にて溶融押出して、厚さ15μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0216】
本発明の生分解性ポリエステルフィルムの機械的物性に対する測定結果は、表6の通りである。
【0217】
【表6】
【0218】
実施例B1およびB2の炭酸カルシウムを高含有量で含む生分解性ポリエステルフィルムの場合、引張強度および伸び率に優れ、引裂強度も優れたレベルで維持することを確認した。実施例B3およびB4の炭酸カルシウムを高含有量で含む生分解性ポリエステルフィルムの場合、PLAの添加によって実施例B1およびB2に比べて引張強度、伸び率および引裂強度が減少するが、製品化のために必要とするレベル以上で維持することを確認した。
【0219】
[生分解性ポリエステルシートの製造]
(シート1~4)
それぞれ製造例1、製造例2(Kingfa社、A400)、樹脂A(JINHUI社、Ecoworld)、樹脂B(TUNHE社、TH80IT)または樹脂C(BASF社、Ecoflex(登録商標)C1200)から製造されたペレットを、80℃にて5時間乾燥した後、表7および表8の鋳型条件で溶融押出して、厚さ20μmの生分解性ポリエステルシートを製造した。
【0220】
(実施例C1、比較例C1およびC2)
下記表7に基づいて組成物の構成成分を異ならせたことを除いて、製造例1または樹脂A(JINHUI社、Ecoworld)、樹脂B(TUNHE社、TH80IT)に炭酸カルシウムを添加した生分解性樹脂組成物を実施例A1と同様の製造方法により製造した後、シート1と同様の製造方法により、生分解性ポリエステルシートを製造した。
【0221】
(実施例C2~C13)
下記表8に基づいて組成物の構成成分を異ならせたことを除いて、製造例1または製造例2の生分解性ポリエステル樹脂に、炭酸カルシウム(WS-2200)、可塑剤(アセチル化モノグリセリド、Biocizer)、ポリカプロラクトン(PCL)、またはポリ乳酸(PLA)からなる群より選択される1つ以上を添加した生分解性樹脂組成物を、実施例A1と同様の製造方法により製造した後、シート1と同様の製造方法により生分解性ポリエステルシートを製造した。
【0222】
【表7】
【0223】
従来の炭酸カルシウムを高含量で含む生分解性ポリエステルシート(比較例C1およびC2)の場合、製造に要される鋳型条件において高いトルクを要して、エネルギーおよびコストの面で短所があり、シート3および4に比べて引張強度または伸び率の減少率が非常に大きいため、成形品の製造には適していない。一方、本発明の生分解性ポリエステルシート(実施例C1)は、鋳型に際して必要とされるエネルギーおよびコストを減少することができた。また、本発明の生分解性ポリエステルフィルムは、炭酸カルシウムを高含有量で含み、原材料費を減少させる効果を示すとともに、ポリエステルフィルムの生分解性を強化し、分解物の酸性度を調整することができた。
【0224】
【表8】
【0225】
従来の炭酸カルシウムを高含有量で含む生分解性ポリエステルシートの場合、引張強度または伸び率が非常に減少して(表7の比較例C1およびC2)、成形品製造には適していないが、本発明の生分解性ポリエステルシート(表8の実施例C2~C13)は、シート1またはシート2に比べると、引張強度および伸び率を一定レベル以上に維持することができた。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含み、
下記式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である、生分解性樹脂組成物:
[式1]結晶ピークの減少率=(R-C)/R
前記式1において、
は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した後、10℃/分の速度で-50℃まで冷却する過程で測定された70℃~90℃温度区間における前記生分解性ポリエステル樹脂の結晶融解熱(J/g)であり、
は、前記と同じ条件で測定された前記生分解性樹脂組成物の結晶融解熱(J/g)である。
【請求項2】
前記炭酸カルシウム(CaCO)を生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、30重量%~80重量%含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項3】
前記生分解性樹脂組成物が、可塑剤および酸化防止剤を含み、
前記可塑剤が、グリセロール、アクリレート、グリセリン、グリセロールモノステアレート、およびソルビトールからなる群より選択される1種以上を含み、
前記酸化防止剤は、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびペンタエリトリトール系酸化防止剤からなる群より選択される2種以上を含み、
前記生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、前記可塑剤を1重量%~3重量%で含み、前記酸化防止剤を0.01重量%~4重量%で含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、前記リン系酸化防止剤および前記フェノール系酸化防止剤を含み、
前記リン系酸化防止剤と前記フェノール系酸化防止剤との重量比が1:10~10:1である、請求項3に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項5】
前記生分解性ポリエステル樹脂が、ナノセルロースを前記生分解性ポリエステル樹脂の総重量を基準に、0.01重量%~3重量%で含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項6】
前記生分解性樹脂組成物が、鎖延長剤をさらに含み、
前記生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、前記鎖延長剤を0.01重量%~1重量%含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項7】
前記生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、およびポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選択される1種以上の分散剤をさらに含み、
前記分散剤を前記生分解性樹脂組成物の総重量を基準に、1重量%~20重量%で含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項8】
前記生分解性樹脂組成物を210℃等温にて1時間維持する際、等温重量損失が5%以下であり、
前記生分解性樹脂組成物を20℃/1分の速度で加熱する際、600℃にて前記炭酸カルシウムの含有量変動性が5%以下である、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項9】
生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含む生分解性樹脂組成物を含み、
前記生分解性樹脂組成物は、下記式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である、生分解性ポリエステルフィルム:
[式1]結晶ピークの減少率=(R-C)/R
前記式1において、
は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した後、10℃/分の速度で-50℃まで冷却する過程で測定された70℃~90℃温度区間における前記生分解性ポリエステル樹脂の結晶融解熱(J/g)であり、
は、前記と同じ条件で測定された前記生分解性樹脂組成物の結晶融解熱(J/g)である。
【請求項10】
生分解性ポリエステル樹脂および炭酸カルシウム(CaCO)を含む生分解性樹脂組成物を含み、
前記生分解性樹脂組成物は、下記式1で表される結晶ピークの減少率が50%以上である、生分解性ポリエステルシート:
[式1]結晶ピークの減少率=(R-C)/R
前記式1において、
は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した後、10℃/分の速度で-50℃まで冷却する過程で測定された70℃~90℃温度区間における前記生分解性ポリエステル樹脂の結晶融解熱(J/g)であり、
は、前記と同じ条件で測定された前記生分解性樹脂組成物の結晶融解熱(J/g)である。
【国際調査報告】