IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司の特許一覧 ▶ 中石化南京化工研究院有限公司の特許一覧

特表2024-540110ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用
<>
  • 特表-ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用 図1
  • 特表-ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用 図2
  • 特表-ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用 図3
  • 特表-ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用 図4
  • 特表-ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用 図5
  • 特表-ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用 図6
  • 特表-ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/333 20060101AFI20241024BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20241024BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20241024BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08G65/333
A61L31/04 100
A61L31/12 100
A61L31/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525419
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2022128226
(87)【国際公開番号】W WO2023072242
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111266177.2
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521165264
【氏名又は名称】中石化南京化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】賈鳳
(72)【発明者】
【氏名】陳▲チェン▼
(72)【発明者】
【氏名】史樂萌
(72)【発明者】
【氏名】高若梅
(72)【発明者】
【氏名】呉▲チャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】姚衛舟
【テーマコード(参考)】
4C081
4J005
【Fターム(参考)】
4C081AC05
4C081BB09
4C081CA161
4C081CD031
4C081DA01
4C081EA01
4J005AA04
4J005BB01
4J005BD05
(57)【要約】
本発明は、ポリカプロラクトン形状記憶材料の分野に関し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用を開示する。該材料は、複数本の変性ポリロタキサン高分子鎖と、異なる前記変性ポリロタキサン高分子鎖を連結する複数本の複合高分子鎖と、を含み、各前記複合高分子鎖は、少なくとも2つのポリカプロラクトン高分子鎖のセグメント、異なる前記ポリカプロラクトン高分子鎖の間の可逆的連結基、及び前記ポリカプロラクトン高分子鎖と前記変性ポリロタキサン高分子鎖が含有するシクロデキストリン由来の環状構造とを連結する連結修飾基を含み、前記可逆的連結基は、光可逆的連結基又は熱可逆的連結基である。本発明は、ポリマーのネットワークトポロジの欠陥を調整することで形状記憶材料の靭性を向上させ、形状記憶材料の複雑な形状の設計可能性及び固体状態の再成形性を実現する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の変性ポリロタキサン高分子鎖と、異なる前記変性ポリロタキサン高分子鎖を連結する複数本の複合高分子鎖と、を含み、各前記複合高分子鎖は、少なくとも2つのポリカプロラクトン高分子鎖のセグメント、異なる前記ポリカプロラクトン高分子鎖の間の可逆的連結基、及び前記ポリカプロラクトン高分子鎖と前記変性ポリロタキサン高分子鎖が含有するシクロデキストリン由来の環状構造とを連結する連結修飾基を含み、前記可逆的連結基は、光可逆的連結基又は熱可逆的連結基である、ことを特徴とするポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項2】
前記光可逆的連結基は、光可逆的基を有する化合物に由来し、好ましくは、前記化合物は、ニトロ桂皮酸系化合物及び/又は4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸から選択され、
好ましくは、前記熱可逆的連結基は、ジイソシアネートに由来し、好ましくは、前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項3】
前記連結修飾基は、ヒドロキシプロピル化用の化合物に由来し、好ましくは、構造式-CH-CH(CH)-O-で示される基である、請求項1又は2に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項4】
前記変性ポリロタキサン高分子鎖の全量に基づいて、前記ポリカプロラクトン高分子鎖の全量は、80~100wt%、好ましくは、95~99.9wt%であり、
好ましくは、前記ポリカプロラクトン高分子鎖の重量平均分子量は、5000~100000kDa、好ましくは、10000~80000kDaであり、
好ましくは、前記変性ポリロタキサン高分子鎖の重量平均分子量は、10kDa~100kDa、好ましくは、30kDa~90kDaである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項5】
前記ポリカプロラクトン形状記憶材料は、900%を超える破断伸びを有し、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料のゲル含有量は、37~78wt%であり、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料が100%のひずみ下で初始形状に回復するまでの時間は5s以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項6】
ポリロタキサン系開始剤、末端基変性剤、ε-カプロラクトン、触媒、及び架橋剤を含み、前記末端基変性剤は、ニトロ桂皮酸系化合物及び/又は4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸から選択される、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物。
【請求項7】
前記ポリロタキサン系開始剤の重量平均分子量は、10kDa~100kDa、好ましくは、30kDa~90kDaであり、
好ましくは、前記触媒は、オクタン酸第一スズ、リチウムジイソプロピルアミド、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、フォスファゼン塩基から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記架橋剤は、ジイソシアネート、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の全量に基づいて、前記ポリロタキサン系開始剤0.01~0.1wt%と、ε-カプロラクトン99.99~99wt%と、前記触媒0.5~2wt%と、前記末端基変性剤0.02~0.05wt%と、前記架橋剤0.1~1wt%と、を含有する、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
ポリロタキサンをヒドロキシプロピル化して、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを得るステップ(1)と、
触媒の存在下、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンとε-カプロラクトンを開環重合し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーを得るステップ(2)と、
前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーと末端基変性剤が有する光可逆的基とを変性反応させ、末端基の部分が光可逆的基に変性するポリマーネットワーク前駆体を得るステップ(3)と、
架橋剤の存在下、加熱及び紫外光の作用により、前記光可逆的基を反応させて前記ポリマーネットワーク前駆体を架橋し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得るステップ(4)と、を含む、ことを特徴とするポリカプロラクトン形状記憶材料の製造方法。
【請求項10】
ステップ(2)において、前記触媒は、オクタン酸第一スズ、リチウムジイソプロピルアミド、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、フォスファゼン塩基から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記触媒の使用量は、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンとε-カプロラクトンとの全質量の0.5~2wt%、好ましくは、0.8~1.2wt%であり、
好ましくは、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンがそれに有する活性水酸基数で換算されると、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンとε-カプロラクトンとのモル比が、1:50~600、好ましくは、1:50~1:200であり、
好ましくは、開環重合温度は、100~140℃、好ましくは、110~130℃であり、開環重合時間は、40~50h、好ましくは、45~50hであり、
好ましくは、前記開環重合の過程は、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン、ε-カプロラクトン、及び前記触媒の混合物を窒素保護下で重合反応させることと、得た一次生産物をテトラヒドロフランで溶解し、次に、n-ヘキサン中で沈殿を複数回行い、得た固相沈殿物を乾燥し、前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーを得ることとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(3)において、前記末端基変性剤と前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーとのモル比は、100~400:1であり、
好ましくは、前記末端基変性剤は、光可逆的基を有する化合物、好ましくは、ニトロ桂皮酸系化合物及び/又は4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸から選択され、
好ましくは、前記末端基変性反応の温度は40~60℃であり、前記末端基変性反応の時間は15~25hであり、
好ましくは、前記末端基変性反応の過程は、前記末端基変性剤と前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーを用いてそれぞれ第1有機溶媒で調製した溶液を混合し、得た混合溶液に吸水剤-I及びエステル化触媒を加えて、前記末端基変性反応を行うことと、得た一次生産物を複数回沈殿させ、得た固体沈殿物を乾燥し、前記ポリマーネットワーク前駆体を得ることと、を含み、
好ましくは、前記第1有機溶媒は、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジオキサンから選択される少なくとも1種であり、前記吸水剤-Iは、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、濃硫酸から選択される少なくとも1種であり、前記エステル化触媒は、4-ジメチルアミノピリジン、p-トルエンスルホン酸、塩化チオニルから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第1有機溶媒の使用量は、前記混合溶液の濃度を1~10g/mL、好ましくは、2~8g/mLにし、前記吸水剤-Iの使用量は、前記末端基変性剤と前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーとの全量の1~5wt%、好ましくは、1.5~4.5wt%であり、前記エステル化触媒とポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーとのモル比は、1:1.5~3.5、好ましくは、1:2~3であり、
好ましくは、前記ポリマーネットワーク前駆体は、複数本のスライド可能なポリカプロラクトン分子鎖を有し、前記ポリカプロラクトン分子鎖の一部の鎖端部に前記末端基変性剤由来の光可逆的基を含有し、好ましくは、前記光可逆的基は、クマリニル基又は桂皮酸基である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(4)において、前記架橋剤は、ジイソシアネート、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記架橋剤の使用量は、前記ポリマーネットワーク前駆体の0.1~1wt%であり、
好ましくは、前記加熱の温度は70~90℃であり、前記加熱の時間は45~60hであり、
好ましくは、前記紫外光の波長は250~380nmであり、
好ましくは、前記架橋の過程は、前記ポリマーネットワーク前駆体を第2有機溶媒に溶解し、次に、前記架橋剤及び架橋触媒の酢酸ブチル溶液を加えて、液体混合物を得ることと、前記液体混合物を加熱して乾燥し、前記紫外光で照射し、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料を得ることと、を含み、
好ましくは、前記第2有機溶媒は、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジオキサンから選択される少なくとも1種であり、前記架橋触媒は、ジブチル錫ジラウレート、有機ビスマス触媒、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第2有機溶媒の使用量は、前記液体混合物の濃度を1~10g/mL、好ましくは、2~8g/mLにし、前記架橋触媒の使用量は、前記ポリマーネットワーク前駆体の1~5wt%、好ましくは、2~4wt%である、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリロタキサンは、大立体障害化合物の存在下、α-シクロデキストリンとポリエチレングリコールジアミンを反応させることにより製造され、
好ましくは、前記大立体障害化合物は、N-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン、1-アダマンタン酢酸、フルオレセインイソチオシアネート、L-フェニルアラニンから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記ポリエチレングリコールジアミンの重量平均分子量は、5kDa~40kDa、好ましくは、10kDa~35kDaであり、
好ましくは、α-シクロデキストリンと前記ポリエチレングリコールジアミンとのモル比は、50~100:1、好ましくは、80~90:1であり、
好ましくは、前記大立体障害化合物と前記ポリエチレングリコールジアミンとのモル比は、2~10:1、好ましくは、5~8:1であり、
好ましくは、前記反応の過程は、
(i)前記ポリエチレングリコールジアミンをα-シクロデキストリンの飽和水溶液に加えて、20~35℃で20~40h撹拌し、得た白色沈殿を乾燥し、包接化合物を得ることと、
(ii)前記大立体障害化合物、アミド化触媒、吸水剤-IIを第3有機溶媒に溶解して溶液を調製し、次に、前記包接化合物を前記溶液に加えて得た懸濁液をアミド化反応させ、沈殿し、得た固相沈殿物を洗浄して乾燥し、前記ポリロタキサンを得ることと、を含み、
好ましくは、前記アミド化触媒は、カーター縮合試薬、塩化亜鉛、塩化鉄六水和物から選択される少なくとも1種であり、前記吸水剤-IIは、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミドから選択される少なくとも1種であり、前記第3有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記アミド化触媒の使用量は、前記ポリエチレングリコールジアミンとα-シクロデキストリンとの全量の1~5wt%、好ましくは、2~4wt%であり、前記吸水剤-IIの使用量は、前記ポリエチレングリコールジアミンとα-シクロデキストリンとの全量の1~5wt%、好ましくは、2~4wt%であり、前記第3有機溶媒の使用量は、前記溶液の濃度を1~10g/mL、好ましくは、2~8g/mLにし、
好ましくは、前記ポリロタキサンの重量平均分子量は、10~100kDa、好ましくは、30~90kDaである、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか1項に記載の方法により製造されるポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項15】
医療用回収可能固定材における請求項1~5及び14のいずれか1項に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料の使用であって、好ましくは、前記使用は、形状記憶医療用固定クリップを含む、使用。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2021年10月28日に提出された、中国特許出願202111266177.2の利益を主張しており、当該出願の内容は、引用により本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ポリカプロラクトン形状記憶材料の分野に関し、具体的には、ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
形状記憶材料は、一定の条件下で一定の形状(初期状態)を有するが、熱、光、電気、化学処理などの刺激が施されるなど、外部条件が変化すると、形状を変えて、この形状(一時的な形状)を維持することができ、外部環境が特定の方法とパターンで再び変化すると、元の状態に可逆的に回復できる材料である。形状記憶ポリマー材料(SMPs)は、形状記憶材料の1種であり、他の形状記憶材料(合金、セラミックス)に比べて良好な形状変化(最大1000%の変形回復可能)、低密度、低コスト、構造設計性、変形回復挙動の制御性などの利点があり、生物医学、航空宇宙産業、自動車・ロボット産業などの分野で幅広く応用されている。
【0004】
一般に、形状記憶サイクル中のポリマー分子鎖のずれによって引き起こされる記憶性能の低下を防ぐために、ポリマーを架橋してその形状を永久的に固定する必要があるが、ポリマーネットワーク前駆体の混合、末端の連結や連鎖成長反応は、ポリマーネットワークが形成されるまで継続し、これは統計的なプロセスであり、ほとんどのポリマーネットワークに欠陥を生じさせ、材料の特性を制限する。たとえば、ネットワークノードの分布が不均一であると、応力-ひずみサイクル中に材料内の応力分布が不均一になり、形状回復性能と靭性が予め設定された要件を満たさなくなる。さらに、従来のポリマーの架橋ネットワークは一般に不可逆的な共有結合であるため、形状記憶材料は一度成形されると永久的な形状を変えることができなく、再加工成形することもできないため、さまざまな分野での応用範囲が制限される。ポリカプロラクトン形状記憶材料は、生分解性や生体適合性に優れているため、生体医用材料としてよく使用されている。しかし、不均一な架橋ネットワークと再加工性の欠如により、この材料は形状回復速度が遅く、使い捨て医療用品に使用した場合の耐障害性率が低くなる。
【0005】
したがって、ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造するための改良方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来のポリカプロラクトン形状記憶材料の靭性、複雑な形状の設計可能性、及び固体状態の再成形性について存在する課題を解決するために、ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物、ポリカプロラクトン形状記憶材料、並びに、その製造方法及び使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成させるために、本発明の第1態様は、
複数本の変性ポリロタキサン高分子鎖と、異なる前記変性ポリロタキサン高分子鎖を連結する複数本の複合高分子鎖と、を含み、各前記複合高分子鎖は、少なくとも2つのポリカプロラクトン高分子鎖のセグメント、異なる前記ポリカプロラクトン高分子鎖の間の可逆的連結基、及び前記ポリカプロラクトン高分子鎖と前記変性ポリロタキサン高分子鎖が含有するシクロデキストリン由来の環状構造とを連結する連結修飾基を含み、前記可逆的連結基は、光可逆的連結基又は熱可逆的連結基である、ポリカプロラクトン形状記憶材料を提供する。
【0008】
本発明の第2態様は、
本発明のポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物であって、ポリロタキサン系開始剤、末端基変性剤、ε-カプロラクトン、触媒、及び架橋剤を含み、前記末端基変性剤は、ニトロ桂皮酸系化合物及び/又は4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸から選択される、組成物を提供する。
【0009】
本発明の第3態様は、
前記ポリロタキサンをヒドロキシプロピル化して、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを得るステップ(1)と、
触媒の存在下、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンとε-カプロラクトンを開環重合し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーを得るステップ(2)と、
前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーと末端基変性剤が有する光可逆的基とを変性反応させ、末端基の部分が光可逆的基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得るステップ(3)と、
架橋剤の存在下、加熱及び紫外光の作用により、前記光可逆的基を反応させて前記ポリマーネットワーク前駆体を架橋し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得るステップ(4)と、を含む、ポリカプロラクトン形状記憶材料の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の第4態様は、本発明の方法により製造されるポリカプロラクトン形状記憶材料を提供する。
【0011】
本発明の第5態様は、医療用回収可能固定材における本発明のポリカプロラクトン形状記憶材料の使用を提供する。
【発明の効果】
【0012】
上記の技術的解決手段によれば、本発明では、ポリロタキサン変性剤を開始剤として、開環重合により、スライド可能なポリカプロラクトン高分子鎖(PCL)を製造し、その後、PCLの末端基の一部を光可逆的基に変性してから架橋し、架橋構造を形成し、本願のポリカプロラクトン形状記憶材料を得る。該ポリカプロラクトン形状記憶材料が有する架橋ネットワークをスライド可能な構造として設計することによって、該ポリマーネットワークトポロジの欠陥を調整して、形状記憶材料の靭性を向上させる。架橋方式を可逆的な結合による連結に変更することにより、導入される動的共有結合により、形状記憶材料の複雑な形状の設計可能性及び固体状態の再成形性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1におけるポリエチレングリコールジアミン及びα-シクロデキストリン、並びに製造されたポリロタキサンの核磁気比較チャートであり、図1(a)は、α-シクロデキストリンの構造模式図及びH-NMRスペクトルであり、図1(b)は、ポリエチレングリコールジアミンの構造模式図及びH-NMRスペクトルであり、図1(c)は、実施例1で製造されたポリロタキサンの構造模式図及びH-NMRスペクトルである。
図2】実施例1におけるポリエチレングリコールジアミン及びα-シクロデキストリン、並びに製造されたポリロタキサンのGPC比較チャートである。
図3】実施例1で製造されたヒドロキシプロピル化ポリロタキサンのH-NMRチャートである。
図4】実施例1で製造されたポリロタキサン、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン、及びポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーの赤外線比較チャートである。
図5】実施例1で製造されたポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーのH-NMRチャートである。
図6】ポリカプロラクトン形状記憶材料の架橋構造ネットワークの模式図である。
図7】本発明によるポリカプロラクトン形状記憶材料の形状再形成過程のデモ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解されるべきである。数値範囲の場合、個々の範囲の端点値の間、個々の範囲の端点値と個別の点値の間、及び個別の点値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書において具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0015】
本発明の第1態様は、
複数本の変性ポリロタキサン高分子鎖と、異なる前記変性ポリロタキサン高分子鎖を連結する複数本の複合高分子鎖と、を含み、各前記複合高分子鎖は、少なくとも2つのポリカプロラクトン高分子鎖のセグメント、異なる前記ポリカプロラクトン高分子鎖の間の可逆的連結基、及び前記ポリカプロラクトン高分子鎖と前記変性ポリロタキサン高分子鎖が含有するシクロデキストリン由来の環状構造とを連結する連結修飾基を含み、前記可逆的連結基は、光可逆的連結基又は熱可逆的連結基である、ポリカプロラクトン形状記憶材料を提供する。
【0016】
本発明によるポリカプロラクトン形状記憶材料が有する構造は図6に示される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記光可逆的連結基は、光可逆的基を有する化合物に由来し、好ましくは、前記化合物は、ニトロ桂皮酸系化合物及び/又は4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸から選択される。前記ニトロ桂皮酸系化合物は、以下の式で示される化合物であってもよい。
【0018】
【化1】
【0019】
(ここで、R′は、ベンゼン環上の数字1~5が付された少なくとも1つの位置で置換する置換基を表し、R′は、以下の式で示される構造であり、
【0020】
【化2】
【0021】
ここで、R′′′′及びR′′′は、それぞれ独立して、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキルから選択され、*は、ベンゼン環との連結点を表し、R′′は、ベンゼン環上の数字1~5が付された位置のうちR′置換位置以外の少なくとも1つの位置で置換する置換基であり、R′′は、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキルである。
【0022】
好ましくは、前記ニトロ桂皮酸系化合物は、以下の式で示される化合物である。
【0023】
【化3】
【0024】
(ここで、R1#、R2#及びR3#は、それぞれ独立して、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキルから選択され、R1#の置換位置は、ベンゼン環上の数字1′~4′が付された位置のうちの少なくとも1つであり、最も好ましくは、4-ニトロ桂皮酸(R1#、R2#及びR3#はHである。)である。
【0025】
4-ニトロ桂皮酸を例にして、形成される光可逆的連結基は、下記の模式的な構造を有してもよい。
【0026】
【化4】
【0027】
光可逆的なプロセスは以下の通りであってもよい。
【0028】
【化5】
【0029】
(ここで、R及びRは、異なる変性ポリロタキサンに連結された各ポリカプロラクトン高分子鎖を表す。)
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記熱可逆的連結基は、ジイソシアネートに由来し、好ましくは、前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である。形成される可逆的連結基は、以下の模式的な構造を有してもよく、
【0030】
【化6】
【0031】
ヘキサメチレンジイソシアネートを例にして、熱可逆的なプロセスは以下の通りであってもよい。
【0032】
【化7】
【0033】
(ここで、R、R、R及びRは、異なる変性ポリロタキサンに連結された各ポリカプロラクトン高分子鎖を表し、Rは、ジイソシアネートの主基(2つのイソシアネート基以外の構造)を表す。)
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記連結修飾基は、ヒドロキシプロピル化用の化合物に由来する。例えば、ポリロタキサン高分子鎖が含有するシクロデキストリン由来の環状構造とプロピレンオキシドとのヒドロキシプロピル化反応により形成される変性基により開環重合を引き起こして形成するポリカプロラクトン高分子鎖構造であってもよい。好ましくは、構造式-CH-CH(CH)-O-で示される基である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記変性ポリロタキサン高分子鎖の全量に基づいて、前記ポリカプロラクトン高分子鎖の全量は、80~100wt%、好ましくは、95~99.9wt%である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記ポリカプロラクトン高分子鎖の重量平均分子量は、5000~100000kDa、好ましくは、10000~80000kDaである。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記変性ポリロタキサン高分子鎖の重量平均分子量は、10kDa~100kDa、好ましくは、30kDa~90kDaである。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料は、靭性を改善しており、引張変形が大きく、回復性能が良く、形状再形成が可能である。好ましくは、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料は、900%を超える破断伸びを有し、ゲル含有量が37~78wt%であり、100%のひずみ下で初期形状に回復するまでの時間が5s以下である。
【0038】
本発明において、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料の上記構造は、ラマン分光法、ゲル含有量測定、GPC、フーリエ変換赤外分光法及びH NMRを組み合わせた手段により解析することができ、あるいは該材料を合成する製造過程の反応や供給と組み合わせて決定することができ、また、可逆的連結基の可逆的変化過程も決定できる。前記ポリカプロラクトン形状記憶材料の上記の物理的及び化学的特性は、破断伸びを測定するための機械的特性試験、ゲル含有量を測定するためのソックスレー抽出、及び形状回復速度や形状回復率を測定するためのプレート加熱引張法によって測定できる。
【0039】
本発明の第2態様は、本発明のポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物を提供し、前記組成物は、ポリロタキサン系開始剤、末端基変性剤、ε-カプロラクトン、触媒、及び架橋剤を含み、前記末端基変性剤は、ニトロ桂皮酸系化合物及び/又は4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸から選択される。
【0040】
本発明による上記の組成物は、ポリロタキサンを開始剤として含有し、ε-カプロラクトンのスライド可能なポリカプロラクトン分子鎖への開環重合を開始させる。末端基変性剤は、ポリカプロラクトンの末端基の一部を光可逆的基に変性し、架橋方式を可逆的な結合による連結に変更し、従来のポリカプロラクトン形状記憶材料に存在する靭性、設計性、及び再成形性に関する問題を解決する。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記ポリロタキサン系開始剤の重量平均分子は、10kDa~100kDa、好ましくは、30kDa~90kDaである。前記ポリロタキサン系開始剤は、市販品として入手しても、自作してもよい。上記の要件を満たすものであればよい。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記触媒は、オクタン酸第一スズ、リチウムジイソプロピルアミド、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、フォスファゼン塩基(BEMP)から選択される少なくとも1種である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記架橋剤は、ジイソシアネートから選択され、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である。ε-カプロラクトンを開環重合して形成する異なるポリカプロラクトン高分子鎖を連結することができる。
【0044】
本発明では、前記光可逆的基は、桂皮酸基又はクマリニル基であってもよく、例えば、ニトロ桂皮酸系化合物は、前述構造を有する化合物であってもよく、ここでは詳しく説明しないが、桂皮酸基を提供することができ、4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸は、クマリニル基を提供することができる。4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸の構造式は以下に示される。
【0045】
【化8】
【0046】
前記光可逆的基は、ε-カプロラクトンの開環重合により形成されるポリカプロラクトン高分子鎖の一端を変性し、次に、異なるポリカプロラクトン高分子鎖が有する前記光可逆的基の間で結合が起こり、それにより形成される構造は、様々な波長の紫外光の照射により結合を破断したり結合したりすることができ、得られたポリカプロラクトン形状記憶材料には、設計性及び固体状態の再成形性が付与される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記組成物の全量に基づいて、前記組成物は、前記ポリロタキサン系開始剤0.01~0.1wt%と、ε-カプロラクトン99.99~99wt%と、前記触媒0.5~2wt%と、前記末端基変性剤0.02~0.05wt%と、前記架橋剤0.1~1wt%と、を含有する。
【0048】
本発明の第3態様は、
ポリロタキサンをヒドロキシプロピル化して、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを得るステップ(1)と、
触媒の存在下、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンとε-カプロラクトンを開環重合し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーを得るステップ(2)と、
前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーと末端基変性剤が有する光可逆的基とを変性反応させ、末端基の一部が光可逆的基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得るステップ(3)と、
架橋剤の存在下、加熱及び紫外光の作用により、前記光可逆的基を反応させて前記ポリマーネットワーク前駆体を架橋し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得るステップ(4)と、を含む、ポリカプロラクトン形状記憶材料の製造方法を提供する。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、ステップ(1)において、前記ヒドロキシプロピル化の過程は、前記ポリロタキサンをアルカリ溶液に溶解し、水酸化試薬と反応させて得た生成物を洗浄することを含む。水酸化試薬は、プロピレンオキシドであってもよい。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、ステップ(2)において、前記触媒は、オクタン酸第一スズ、リチウムジイソプロピルアミド、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、フォスファゼン塩基から選択される少なくとも1種である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記触媒の使用量は、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンとε-カプロラクトンとの全質量の0.5~2wt%、好ましくは、0.8~1.2wt%である。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンがそれに有する活性水酸基数で換算されると、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンとε-カプロラクトンとのモル比は、1:50~600、好ましくは、1:50~1:200である。活性水酸基数は、水素核磁気スペクトルの化学シフト1.1ppmにおける積分面積とシクロデキストリンの積分面積との比から決定される。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、開環重合の温度は、100~140℃、好ましくは、110~130℃であり、開環重合の時間は、40~50h、好ましくは、45~50hである。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記開環重合の過程は、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン、ε-カプロラクトン、及び前記触媒の混合物を窒素保護下で重合反応させることと、得た一次生産物をテトラヒドロフランで溶解し、次に、n-ヘキサン中で沈殿を複数回行い、得た固相沈殿物を乾燥し、前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーを得ることとを含む。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、ステップ(3)において、前記末端基変性剤と前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーとのモル比は、100~400:1である。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記末端基変性剤は、光可逆的基を有する化合物であるが、好ましくは、ニトロ桂皮酸系化合物及び/又は4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸から選択される。具体的な化合物は前記の通りである。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記末端基変性反応の温度は40~60℃、前記末端基変性反応の時間は15~25hである。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記末端基変性反応の過程は、前記末端基変性剤と前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーを用いてそれぞれ第1有機溶媒で調製した溶液を混合し、得た混合溶液に吸水剤-I及びエステル化触媒を加えて、前記末端基変性反応を行うことと、得た一次生産物を複数回沈殿させ、得た固体沈殿物を乾燥し、前記ポリマーネットワーク前駆体を得ることと、を含む。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記第1有機溶媒は、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジオキサンから選択される少なくとも1種であり、前記吸水剤-Iは、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、濃硫酸から選択される少なくとも1種であり、前記エステル化触媒は、4-ジメチルアミノピリジン、p-トルエンスルホン酸、塩化チオニルから選択される少なくとも1種である。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記第1有機溶媒の使用量は、前記混合溶液の濃度を1~10g/mL、好ましくは、2~8g/mLにする。すなわち、前記混合溶液中に含有される上記の末端基変性剤と前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーとの全含有量である。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記吸水剤-Iの使用量は、前記末端基変性剤と前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーの全量の1~5wt%、好ましくは、1.5~4.5wt%である。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記エステル化触媒とポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーとのモル比は、1:1.5~3.5、好ましくは、1:2~3である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態では、前記光可逆的基は、末端基変性剤に由来し、桂皮酸基又はクマリニル基であってもよい。好ましくは、前記ポリマーネットワーク前駆体は、複数本のスライド可能なポリカプロラクトン分子鎖を有し、前記ポリカプロラクトン分子鎖の一部の鎖端部に前記末端基変性剤に由来する光可逆的基を含有する。例えば、前記ポリカプロラクトン分子鎖の一部の鎖端部に水酸基及び桂皮酸基を含有する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、ステップ(4)において、前記架橋剤は、ジイソシアネート、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である。ステップ(3)において前記変性反応が完全に行われない場合があるので、前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマー中のポリカプロラクトン高分子鎖の末端基がすべて光可逆的基に変性されるわけではなく、すなわち、前記ポリマーネットワーク前駆体には、前記ポリカプロラクトン高分子鎖の未変性の水酸基末端基が含有される可能性があり、このため、前記架橋剤によるジイソシアネートを通じて異なるポリカプロラクトン高分子鎖を熱可逆的に連結することが可能になる。また、エステル交換を通じて再度の連結を可能にすることもでき、これは、同一ポリカプロラクトン高分子鎖に異なるポリカプロラクトン高分子鎖が交換して連結されることに相当する。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記架橋剤の使用量は、前記ポリマーネットワーク前駆体の0.1~1wt%である。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記加熱の温度は70~90℃であり、前記加熱の時間は45~60hである。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記紫外光の波長は250~380nmである。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記架橋の過程は、前記ポリマーネットワーク前駆体を第2有機溶媒に溶解し、次に、前記架橋剤及び架橋触媒の酢酸ブチル溶液を加えて、液体混合物を得ることと、前記液体混合物を加熱して乾燥し、前記紫外光で照射し、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料を得ることと、を含む。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記第2有機溶媒は、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジオキサンから選択される少なくとも1種であり、前記架橋触媒は、ジブチル錫ジラウレート、有機ビスマス触媒、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンから選択される少なくとも1種である。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記第2有機溶媒の使用量は、前記液体混合物の濃度を1~10g/mL、好ましくは、2~8g/mLにする。すなわち、前記液体混合物中の前記ポリマーネットワーク前駆体、前記架橋剤、及び架橋触媒の全含有量である。前記架橋触媒の使用量は、前記ポリマーネットワーク前駆体の1~5wt%、好ましくは、2~4wt%である。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ポリロタキサンは自作してもよい。好ましくは、前記ポリロタキサンは、大立体障害化合物の存在下、α-シクロデキストリンとポリエチレングリコールジアミンを反応させる方法によって製造される。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記大立体障害化合物は、N-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン、1-アダマンタン酢酸、フルオレセインイソチオシアネート、L-フェニルアラニンから選択される少なくとも1種である。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、ポリエチレングリコールジアミンの重量平均分子量は、5kDa~40kDa、好ましくは、10kDa~35kDaである。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、α-シクロデキストリンと前記ポリエチレングリコールジアミンとのモル比は、50~100:1、好ましくは、80~90:1である。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記大立体障害化合物と前記ポリエチレングリコールジアミンとのモル比は、2~10:1、好ましくは、5~8:1である。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記反応の過程は、
(i)前記ポリエチレングリコールジアミンをα-シクロデキストリンの飽和水溶液に加えて、20~35℃で20~40h撹拌し、得た白色沈殿を乾燥し、包接化合物を得ることと、
(ii)前記大立体障害化合物、アミド化触媒、吸水剤-IIを第3有機溶媒に溶解して溶液を調製し、次に、前記包接化合物を前記溶液に加えて得た懸濁液をアミド化反応させ、沈殿し、得た固相沈殿物を洗浄して乾燥し、前記ポリロタキサンを得ることと、を含む。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記アミド化触媒は、カーター縮合試薬、塩化亜鉛、塩化鉄六水和物から選択される少なくとも1種であり、前記吸水剤-IIは、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミドから選択される少なくとも1種であり、前記第3有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンから選択される少なくとも1種である。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記アミド化触媒の使用量は、前記ポリエチレングリコールジアミンとα-シクロデキストリンの全量の1~5wt%、好ましくは、2~4wt%であり、前記吸水剤-IIの使用量は、前記ポリエチレングリコールジアミンとα-シクロデキストリンの全量の1~5wt%、好ましくは、2~4wt%であり、前記第3有機溶媒の使用量は、前記溶液の濃度を1~10g/mL、好ましくは、2~8g/mLにする。すなわち、前記溶液中の前記前記大立体障害化合物、アミド化触媒、及び吸水剤-IIの全含有量である。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記ポリロタキサンの重量平均分子量は、10~100kDa、好ましくは、30~90kDaである。
【0080】
本発明の第4態様は、本発明の方法により製造されるポリカプロラクトン形状記憶材料を提供する。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態では、好ましくは、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料は、ポリエチレングリコール分子鎖上をスライド可能なポリカプロラクトン分子鎖を有し、5s以内に95%以上を元の形状に回復させることができ、架橋構造を有し、架橋構造のノード部分に光可逆的な動的共有結合を持ち、このため、256nmの紫外光の照射により共有結合を切断し、元の形状を再形成する能力を固体の材料に付与する。前記ポリカプロラクトン形状記憶材料の形状再形成の過程を図7に示す。前記ポリカプロラクトン形状記憶材料は、900%を超える破断伸びを有し、ゲル含有量が37~78wt%であり、100%のひずみ下で初期形状に回復するまでの時間が5s以下である。
【0082】
本発明の第5態様は、医療用回収可能固定材における本発明のポリカプロラクトン形状記憶材料の使用を提供する。
【0083】
好ましくは、使用は、形状記憶医療用固定クリップを含む。
【0084】
以下、実施例によって本発明について詳細に説明する。以下の実施例では、H-NMRスペクトルは、解像度<0.2 Hz、感度>100であるスイスのブルカー社製のBruker ARX-500により測定される。分析にはH-NMRが使用され、重水素化クロロホルム又は重水素化ジメチルスルホキシドは溶媒とし、試験は500MHzの動作周波数、7.05Tの磁場の強さ、常温で行われる。
【0085】
GPCスペクトルは、米国Waters社製のトリプル検出-サイズ排除クロマトグラフィー(TD-SEC)により測定され、35℃でポリマーの分子量及び分子量分布(PDI)を特徴付け、ポリスチレンを標準サンプル、THFを移動相、テスト流速を1.0 mL/minとする。
【0086】
フーリエ変換赤外スペクトルは、米国Nicolet社製のAvatar 370により測定され、テストには、KBrプレスサンプル、透過モードが使用され、走査範囲は500~4000cm-1、解像度は2cm-1とする。
【0087】
ゲル含有量は、クロロホルムで24時間抽出した後、抽出前後のサンプルの質量を計量することによりゲル含有量を得るソックスレー抽出法により測定される。
【0088】
形状回復速度及び形状回復率は、プレート加熱引張方法に従って、米国TA Instrument社のQ800万能試験機を用いて測定される。
【0089】
製造されたPCLサンプルを、標準の4×25カッターを使用してダンベル形状の試料に切断し、電子万能試験機を使用して、引張速度20mm/min、予圧0.5Nで機械特性試験を実施し、次いで、各サンプルの破断伸び及び引張強さを、以下の式を使用して計算する。試験前に、試料の中央部の2センチメートルにマーカーで印を付け、標準ノギスを使用して印を付けた部分の厚さを等間隔で3回測定し、平均値を計算して、サンプルの平均厚さとして記録する。
【0090】
【数1】
【0091】
ここで、Lは、サンプル破断時の長さ、Lは、サンプルの初期長さ、Fmaxは、引張過程における最大引張力、Aは、サンプルの初期断面積である。
【0092】
〔実施例1〕
再形成可能なポリカプロラクトン形状記憶材料を製造するステップは、以下の通りである。
【0093】
ステップ1:重量平均分子量が10kDaのポリエチレングリコールジアミン5.3×10-5molを計量し、α-シクロデキストリンの飽和水溶液(7.25g/50mL、再蒸留HO)に加えた。室温で24h撹拌し、白色沈殿を得た後、凍結乾燥機で48h凍結乾燥し、包接化合物を得た。
【0094】
2.6×10-3molのN-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン(Z-L-Tyr)、カーター縮合試薬(BOP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を少量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に順次溶解し、次に、包接化合物を溶液中に添加し、懸濁液を25℃で24hアミド化反応させた後、懸濁液を過剰なエチルエーテルに入れて一次生産物を沈殿させ、室温、1800rpmで20min遠心分離し、沈殿物を収集し、その後、大量のアセトン、メタノール及び水中で沈殿を3回連続して撹拌することで沈殿を洗浄し、凍結乾燥してポリロタキサン(PR)を得た。
【0095】
ポリロタキサンを適量計量して、1mol/LのNaOH溶液50mLに溶解し、氷浴の条件で適量のプロピレンオキシドを1滴ずつ滴下し、混合物を一晩撹拌した。溶液中の氷が溶けるにつれて、反応温度が徐々に室温に上がった。サンプルを脱イオン水で1週間透析して精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥サンプルをジクロロメタン100mLに添加して、一晩撹拌することで、ヒドロキシプロピル化中に分解により生成された遊離ポリエチレングリコールを濾別し、その後、大量のアセトンで洗浄し、遠心分離して沈殿を収集し、60℃で真空乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HP-PR)を得た。
【0096】
ステップ2:HP-PRと精製後のε-カプロラクトン(ε-CL)を、モル比(HP-PR上の活性水酸基数:ε-CL=1:200)で、シラン化した乾燥丸底フラスコに加えて、全質量(HP-PRとε-カプロラクトンとの総質量、下同)の1wt%のオクタン酸第一スズを加え、高純度窒素ガスを導入して置換し、混合物を120℃で48h反応させた。その後、一次生産物を少量のテトラヒドロフランで溶解し、過剰なn-ヘキサン中で3回沈殿させ、沈殿物を60℃で48h真空乾燥し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマー(PCL-g-PR)を得た。
【0097】
ステップ3:HP-PR活性水酸基数が0.5モル当量の4-ニトロ桂皮酸を計量し、50℃でDMF 25mLに溶解し、その後、PCL-g-PRのDMF溶液を4-ニトロ桂皮酸のDMF溶液に加えて、30min撹拌した。次いで、1モル当量のN,N-ジイソプロピルカルボジイミド及び0.5モル当量の4-ジメチルアミノピリジンを加え、混合物を50℃で20h反応させた。一次生産物を過剰なエチルエーテル中で沈殿させて、遠心分離して固体を収集し、固体生成物を少量のトルエンに溶解し、エチルエーテル中でさらに3回沈殿し、60℃で一晩真空乾燥し、末端基の一部が桂皮酸基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得た。
【0098】
ステップ4:ポリマーネットワーク前駆体を80℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートとジブチル錫ジラウレートの酢酸ブチル溶液を適量加えて、5min撹拌した。シリコーンゴムガスケットで隔離された2つのガラス板の間に液体混合物を加えて、80℃のオーブンに48h放置し、次いで、80℃で一晩真空乾燥し、最後に、紫外線ボックスにおいて電力5Wの365nm紫外線ランプ4本により12h照射し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得た。
【0099】
図1は、製造されたPRとPEG(ポリエチレングリコール)及びα-CDとのH-NMRスペクトルの比較チャートである。(a)では、化学シフト3.28ppmにおけるピークは、マーク2の炭素上のプロトンピークであり、化学シフト3.5~3.7ppmにおけるピークは、マーク4、5、及び6の炭素上のプロトンピークに対応し、化学シフト3.76ppmにおけるピークは、マーク3の炭素上のプロトンピークに対応し、化学シフト4.51ppmにおけるピークは、マーク6の炭素上の水酸基のプロトンピークであり、化学シフト4.80ppmにおけるピークは、マーク1の炭素上のプロトンピークであり、化学シフト5.45ppmにおけるピークは、マーク3の炭素上の水酸基のプロトンピークであり、化学シフト5.54ppmにおけるピークは、マーク2の炭素上の水酸基のプロトンピークである。(b)では、化学シフト2.04ppmにおけるピーク(マークj)は、PEG-NHの両端のアミノ基上のプロトンピークであり、化学シフト3.58ppmにおけるピーク(マークi)は、PEG-NHのメチレン上のプロトンピークである。(c)では、化学シフト3.51ppmにおけるピークは、PEGのメチレンのプロトンピークであり、化学シフト4.4~5.7ppmにおけるピークは、α-CD上のプロトンピークである。核磁気スペクトルから分かるように、合成されるPR核磁気スペクトルには、PEG 3.5ppmにおけるメチレンの特徴的ピークも、α-CD上の4.8ppmにおけるマーク1の炭素の特徴的ピークも存在し、このことから、PR分子上にはPEG及びα-CD構造単位が含まれていることが証明された。4.8ppm及び3.5ppmにおける特徴的ピークを積分したところ、∫4.8:∫3.5=1:4であり、平均して約6つのPEG構造単位上に1つのα-CD分子が存在する。
【0100】
図2は、製造されたPRとPEG-NH及びα-CDとのGPC比較チャートであり、それぞれの保留時間から分かるように、PRの分子量はPEG-NHよりも大きく、小分子成分が存在しないことが明らかになった。図1における核磁気データも参照すると、核磁気スペクトルで発見されたα-CDがPEG分子鎖上に付けられており、PRの合成が成功した。
【0101】
図3は、製造されたヒドロキシプロピル変性後のHP-PRの核磁気スペクトルであり、PRの核磁気スペクトルと比べて、2.0ppm以上の位置がほぼ同じであるが、HP-PRでは、化学シフト1.0ppm(マークk)には、メチルのプロトンピークが1つ多く、このことから、PR上のα-CDのヒドロキシプロピル変性が成功した。4.2~6.0ppm及び1.0ppmにおけるピークを積分し、4.2~6.0ppm及び1.0ppmにおけるピークの面積積分比から計算した結果、PRのヒドロキシプロピル変性率DSは6であった。
【0102】
図4は、製造されたPR、HP-PR、及びPCL-g-PRの赤外線比較チャートであり、図では、3436cm-1における吸収ピーク、及びPRやHP-PRの3400cm-1における吸収ピークは、-OH上の-O-Hと-NH-上の-N-Hの伸縮振動によるものであり、PCL-g-PRの2946cm-1における吸収ピーク、及びPRやHP-PRの2923cm-1における吸収ピークは、-CH-上の-C-Hの非対称伸縮振動によるものであり、PCL-g-PRの2866cm-1における吸収ピークは、-CH-上の-C-Hの対称伸縮振動によるものであり、PCL-g-PRの1725cm-1における吸収ピークは、ポリカプロラクトンの側鎖上のカルボニルの伸縮振動(C=O)によるものであり、PRやHP-PRの1640cm-1(C=O)における吸収ピークは、アミド結合上のカルボニルの伸縮振動によるものである。PR、HP-PRやPCL-g-PRの1300~1500cm-1は、C-H面内の曲げ振動によるものであり、1000~1300cm-1における吸収ピークは、C-C骨格振動やC-C骨格振動によるものであり、650~1000cm-1における吸収ピークはC-H面外の曲げ振動によるものである。PRやHP-PRで見つかったカルボニルピークは、アミド結合によるものであり、PCL-g-PRで見つかったカルボニルピークは周波数が明らかに高く、エステル結合に対応する。このことから、HP-PRを開始剤としてε-カプロラクトンの開環重合を開始させ、大分子エステル結合を形成したことが証明された。PR及びHP-PRの赤外線特徴的ピークは、ほぼ同様であり、ただし、HP-PRの特徴的ピークの強さはより高く、これは、PR上のα-シクロデキストリンがヒドロキシプロピル化された後、α-シクロデキストリンの間の水素結合が弱まり、原子間の振動周波数が大きくなるためであると考えられる。
【0103】
図5は、製造されたPCL-g-PRの核磁気スペクトルであり、化学シフト1.32ppm(マークd)におけるピークは、カプロラクトンセグメントの最も中央にあるメチレン上のプロトンピークに対応し、化学シフト1.58ppm(マークc)におけるピークは、カプロラクトンセグメントのうち中央炭素原子に隣接するメチレン上のプロトンピークに対応し、化学シフト2.24ppm(マークb)におけるピークは、カプロラクトンセグメントのカルボニルのオルト位にある炭素上のプロトンピークに対応し、化学シフト3.99ppm(マークa)におけるピークは、カプロラクトンセグメントの酸素原子のオルト位にある炭素上のプロトンピークに対応し、化学シフト3.58ppmでは、PEGメチレンと思われる非常に弱い特徴的ピークがあり、これは、PCL-g-PR側鎖のPCLセグメントの成長により、PEG鎖上のメチレンプロトンのピーク信号が遮蔽されているためであると考えられる。
【0104】
図6は、実施例1で得られたポリカプロラクトン形状記憶材料を例として、当該材料が有する架橋ネットワーク構造について説明する。図には、ポリエチレングリコール高分子鎖は、ドットとして示される大立体障害基(N-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシンに由来)を持ち、この基がポリカプロラクトン高分子鎖上に備えるリングとして示されるα-シクロデキストリンを貫通し、ポリエチレングリコール高分子鎖とポリカプロラクトン高分子鎖との架橋ネットワーク構造が形成され、また、α-シクロデキストリンによる環状構造により、ポリカプロラクトン高分子鎖がポリエチレングリコール高分子鎖上をスライド可能になる。ポリカプロラクトン高分子鎖には、可逆的共有結合を提供する四角で表される可逆的連結基もあり、この可逆的連結基は、末端基変性剤によって提供される光可逆的基又は架橋剤によって提供される熱可逆的基によって形成され、ポリカプロラクトン形状記憶材料に動的共有結合を導入し、可逆的な結合による連結を可能にし、形状記憶材料の複雑な形状の設計可能性及び固体状態の再成形性を実現する。
【0105】
〔実施例2〕
再形成可能なポリカプロラクトン形状記憶材料を製造するステップは、以下の通りである。
【0106】
ステップ1:重量平均分子量が15kDaのポリエチレングリコールジアミン6.4×10-5molを計量し、α-シクロデキストリンの飽和水溶液(7.25g/50mL、再蒸留HO)に加えた。30℃の温度で30h撹拌し、白色沈殿を得た後、凍結乾燥機で48h凍結乾燥し、包接化合物を得た。
【0107】
3.4×10-3molのN-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン(Z-L-Tyr)、カーター縮合試薬(BOP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を少量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に順次溶解し、次に、包接化合物を溶液中に添加し、懸濁液を25℃で26hアミド化反応させた後、懸濁液を過剰なエチルエーテルに入れて一次生産物を沈殿させ、室温、1800rpmで25min遠心分離し、沈殿物を収集した。その後、大量のアセトン、メタノール及び水中で沈殿を3回連続して撹拌することで沈殿を洗浄し、凍結乾燥してポリロタキサンを得た。
【0108】
ポリロタキサンを適量計量して、1mol/LのNaOH溶液50mLに溶解し、氷浴の条件で適量のプロピレンオキシドを1滴ずつ滴下し、混合物を一晩撹拌した。溶液中の氷が溶けるにつれて、反応温度が徐々に室温に上がった。サンプルを脱イオン水で1週間透析して精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥サンプルをジクロロメタン100mLに添加して、一晩撹拌することで、ヒドロキシプロピル化中に分解により生成された遊離ポリエチレングリコールを濾別し、その後、大量のアセトンで洗浄し、遠心分離して沈殿を収集し、55℃で真空乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HP-PR)を得た。
【0109】
ステップ2:HP-PRと精製後のε-カプロラクトンを、モル比(HP-PR上の活性水酸基数:ε-CL=1:400)で、シラン化した乾燥丸底フラスコに加えて、全質量(HP-PRとε-カプロラクトンの総質量)1wt%のオクタン酸第一スズを加え、高純度窒素ガスを導入して置換し、混合物を130℃で50h反応させた。その後、一次生産物を少量のテトラヒドロフランで溶解し、過剰なn-ヘキサン中で3回沈殿させ、沈殿を60℃で48h真空乾燥し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマー(PCL-g-PR)を得た。
【0110】
ステップ3:HP-PR活性水酸基数が0.5モル当量の4-ニトロ桂皮酸を計量し、50℃でDMF 25mLに溶解し、その後、PCL-g-PRのDMF溶液を4-ニトロ桂皮酸のDMF溶液に加えて、40min撹拌した。次いで、1モル当量のN,N-ジイソプロピルカルボジイミド及び0.5モル当量の4-ジメチルアミノピリジンを加え、混合物を55℃で22h反応させた。一次生産物を過剰なエチルエーテル中で沈殿させて、遠心分離して固体を収集し、固体生成物を少量のトルエンに溶解し、エチルエーテル中でさらに3回沈殿し、60℃で一晩真空乾燥し、末端基の一部が桂皮酸基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得た。
【0111】
ステップ4:ポリマーネットワーク前駆体を80℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートとジブチル錫ジラウレートの酢酸ブチル溶液を適量加えて、5min撹拌した。シリコーンゴムガスケットで隔離された2つのガラス板の間に液体混合物を加えて、80℃のオーブンに48h放置し、次いで、80℃で一晩真空乾燥し、最後に、紫外線ボックスにおいて電力5Wの370nm紫外線ランプ4本により14h照射し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得た。
【0112】
〔実施例3〕
再形成可能なポリカプロラクトン形状記憶材料を製造するステップは、以下の通りである。
【0113】
ステップ1:重量平均分子量が20kDaのポリエチレングリコールジアミン8.0×10-5molを計量し、α-シクロデキストリンの飽和水溶液(7.25g/50mL、再蒸留HO)に加えた。室温で24h撹拌し、白色沈殿を得た後、凍結乾燥機で48h凍結乾燥し、包接化合物を得た。
【0114】
4.2×10-3molのN-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン(Z-L-Tyr)、カーター縮合試薬(BOP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を少量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に順次溶解し、次に、包接化合物を溶液中に添加し、懸濁液を30℃で25hアミド化反応させた後、懸濁液を過剰なエチルエーテルに入れて一次生産物を沈殿させ、室温、2000rpmで15min遠心分離して沈殿物を収集した。その後、大量のアセトン、メタノール及び水中で沈殿を3回連続して撹拌することで沈殿を洗浄した後、凍結乾燥してポリロタキサンを得た。
【0115】
ポリロタキサンを適量計量して、1mol/LのNaOH溶液50mLに溶解し、氷浴の条件で適量のプロピレンオキシドを1滴ずつ滴下し、混合物を一晩撹拌した。溶液中の氷が溶けるにつれて、反応温度が徐々に室温に上がった。サンプルを脱イオン水で1週間透析して精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥サンプルをジクロロメタン100mLに添加して、一晩撹拌することで、ヒドロキシプロピル化中に分解により生成された遊離ポリエチレングリコールを濾別し、その後、大量のアセトンで洗浄し、遠心分離して沈殿を収集し、60℃で真空乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HP-PR)を得た。
【0116】
ステップ2:HP-PRと精製後のε-カプロラクトンを、モル比(HP-PR上の活性水酸基数:ε-CL=1:600)で、シラン化した乾燥丸底フラスコに加えて、全質量(HP-PRとε-カプロラクトンの総質量)の1wt%のオクタン酸第一スズを加え、高純度窒素ガスを導入して置換し、混合物を130℃で55h反応させた。その後、一次生産物を少量のテトラヒドロフランで溶解し、過剰なn-ヘキサン中で3回沈殿させ、沈殿を60℃で48h真空乾燥し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマー(PCL-g-PR)を得た。
【0117】
ステップ3:HP-PR活性水酸基数が0.5モル当量の4-ニトロ桂皮酸を計量し、50℃でDMF 25mLに溶解し、次に、PCL-g-PRのDMF溶液を4-ニトロ桂皮酸のDMF溶液に加えて、30min撹拌した。次いで、1モル当量のN,N-ジイソプロピルカルボジイミド及び0.5モル当量の4-ジメチルアミノピリジンを加え、混合物を45℃で15h反応させた。一次生産物を過剰なエチルエーテル中で沈殿させて、遠心分離して固体を収集し、固体生成物を少量のトルエンに溶解し、エチルエーテル中でさらに3回沈殿し、60℃で一晩真空乾燥し、末端基の一部が桂皮酸基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得た。
【0118】
ステップ4:ポリマーネットワーク前駆体を80℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートとジブチル錫ジラウレートの酢酸ブチル溶液を適量加えて、5min撹拌した。シリコーンゴムガスケットで隔離された2つのガラス板の間に液体混合物を加えて、80℃のオーブンに48h放置し、次いで、80℃で一晩真空乾燥し、最後に、紫外線ボックスにおいて電力5Wの380nm紫外線ランプ4本により10h照射し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得た。
【0119】
〔実施例4〕
ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造するステップは、以下の通りである。
【0120】
ステップ1:重量平均分子量が20kDaのポリエチレングリコールジアミン5.3×10-5molを計量し、α-シクロデキストリンの飽和水溶液(7.25g/50mL、再蒸留HO)に加えた。室温で24h撹拌し、白色沈殿を得た後、凍結乾燥機で48h凍結乾燥し、包接化合物を得た。
【0121】
2.6×10-3molのN-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン(Z-L-Tyr)、カーター縮合試薬(BOP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を少量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に順次溶解し、次に、包接化合物を溶液中に添加し、懸濁液を25℃で30hアミド化反応させた後、懸濁液を過剰なエチルエーテルに入れて一次生産物を沈殿させ、室温、2000rpmで25min遠心分離し、沈殿物を収集した。その後、大量のアセトン、メタノール及び水中で沈殿を3回連続して撹拌することで沈殿を洗浄し、凍結乾燥してポリロタキサンを得た。
【0122】
ポリロタキサンを適量計量して、1mol/LのNaOH溶液50mLに溶解し、氷浴の条件で適量のプロピレンオキシドを1滴ずつ滴下し、混合物を一晩撹拌した。溶液中の氷が溶けるにつれて、反応温度が徐々に室温に上がった。サンプルを脱イオン水で1週間透析して精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥サンプルをジクロロメタン100mLに添加して、一晩撹拌することで、ヒドロキシプロピル化中に分解により生成された遊離ポリエチレングリコールを濾別し、その後、大量のアセトンで洗浄し、遠心分離して沈殿を収集し、60℃で真空乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HP-PR)を得た。
【0123】
ステップ2:HP-PRと精製後のε-カプロラクトンを、モル比(HP-PR上の活性水酸基数:ε-CL=1:200)で、シラン化した乾燥丸底フラスコに加えて、全質量(HP-PRとε-カプロラクトンの総質量)の1wt%のオクタン酸第一スズを加え、高純度窒素ガスを導入して置換し、混合物を120℃で48h反応させた。その後、一次生産物を少量のテトラヒドロフランで溶解し、過剰なn-ヘキサン中で3回沈殿させ、沈殿を60℃で48h真空乾燥し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマー(PCL-g-PR)を得た。
【0124】
ステップ3:HP-PR活性水酸基数が0.5モル当量の4-ニトロ桂皮酸を計量し、50℃でDMF 25mLに溶解し、その後、PCL-g-PRのDMF溶液を4-ニトロ桂皮酸のDMF溶液に加えて、30min撹拌した。次いで、1モル当量のN,N-ジイソプロピルカルボジイミド及び0.5モル当量の4-ジメチルアミノピリジンを加え、混合物を60℃で15h反応させた。一次生産物を過剰なエチルエーテル中で沈殿させて、遠心分離して固体を収集し、固体生成物を少量のトルエンに溶解し、エチルエーテル中でさらに3回沈殿し、60℃で一晩真空乾燥し、末端基の一部が桂皮酸基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得た。
【0125】
ステップ4:ポリマーネットワーク前駆体を80℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートとジブチル錫ジラウレートの酢酸ブチル溶液を適量加えて、5min撹拌した。シリコーンゴムガスケットで隔離された2つのガラス板の間に液体混合物を加えて、80℃のオーブンに48h放置し、次いで、80℃で一晩真空乾燥し、最後に、紫外線ボックスにおいて電力5Wの375nm紫外線ランプ4本により13h照射し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得た。
【0126】
〔実施例5〕
ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造するステップは、以下の通りである。
【0127】
ステップ1:重量平均分子量が20kDaのポリエチレングリコールジアミン5.7×10-5molを計量し、α-シクロデキストリンの飽和水溶液(7.25g/50mL、再蒸留HO)に加えた。30℃で24h撹拌し、白色沈殿を得た後、凍結乾燥機で50h凍結乾燥し、包接化合物を得た。
【0128】
2.7×10-3molのN-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン(Z-L-Tyr)、カーター縮合試薬(BOP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を少量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に順次溶解し、次に、包接化合物を溶液中に添加し、懸濁液を25℃で28hアミド化反応させた後、懸濁液を過剰なエチルエーテルに入れて一次生産物を沈殿させ、室温、1800rpmで30min遠心分離し、沈殿物を収集した。その後、大量のアセトン、メタノール及び水中で沈殿を3回連続して撹拌することで沈殿を洗浄し、凍結乾燥してポリロタキサンを得た。
【0129】
ポリロタキサンを適量計量して、1mol/LのNaOH溶液50mLに溶解し、氷浴の条件で適量のプロピレンオキシドを1滴ずつ滴下し、混合物を一晩撹拌した。溶液中の氷が溶けるにつれて、反応温度が徐々に室温に上がった。サンプルを脱イオン水で1週間透析して精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥サンプルをジクロロメタン100mLに添加して、一晩撹拌することで、ヒドロキシプロピル化中に分解により生成された遊離ポリエチレングリコールを濾別し、その後、大量のアセトンで洗浄し、遠心分離して沈殿を収集し、60℃で真空乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HP-PR)を得た。
【0130】
ステップ2:HP-PRと精製後のε-カプロラクトンを、モル比(HP-PR上の活性水酸基数:ε-CL=1:400)で、シラン化した乾燥丸底フラスコに加えて、全質量の1wt%のオクタン酸第一スズを加え、高純度窒素ガスを導入して置換し、混合物を125℃で50h反応させた。その後、一次生産物を少量のテトラヒドロフランで溶解し、過剰なn-ヘキサン中で3回沈殿させ、沈殿を60℃で48h真空乾燥し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマー(PCL-g-PR)を得た。
【0131】
ステップ3:HP-PR活性水酸基数が0.5モル当量の4-ニトロ桂皮酸を計量し、50℃でDMF 25mLに溶解し、その後、PCL-g-PRのDMF溶液を4-ニトロ桂皮酸のDMF溶液に加えて、30min撹拌した。次いで、1モル当量のN,N-ジイソプロピルカルボジイミド及び0.5モル当量の4-ジメチルアミノピリジンを加え、混合物を40℃で25h反応させた。一次生産物を過剰なエチルエーテル中で沈殿させて、遠心分離して固体を収集し、固体生成物を少量のトルエンに溶解し、エチルエーテル中でさらに3回沈殿し、60℃で一晩真空乾燥し、末端基の一部が桂皮酸基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得た。
【0132】
ステップ4:ポリマーネットワーク前駆体を80℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートとジブチル錫ジラウレートの酢酸ブチル溶液を適量加えて、5分間撹拌した。シリコーンゴムガスケットで隔離された2つのガラス板の間に液体混合物を加えて、80℃のオーブンに48h放置し、次いで、80℃で一晩真空乾燥し、最後に、紫外線ボックスにおいて電力5Wの365nm紫外線ランプ4本により15h照射し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得た。
【0133】
〔実施例6〕
再形成可能なポリカプロラクトン形状記憶材料を製造するステップは、以下の通りである。
【0134】
ステップ1:重量平均分子量が30kDaのポリエチレングリコールジアミン7.4×10-5molを計量し、α-シクロデキストリンの飽和水溶液(7.25g/50mL、再蒸留HO)に加えた。室温で24h撹拌し、白色沈殿を得た後、凍結乾燥機で48h凍結乾燥し、包接化合物を得た。
【0135】
3.5×10-3molのN-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン(Z-L-Tyr)、カーター縮合試薬(BOP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を少量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に順次溶解し、次に、包接化合物を溶液中に添加し、懸濁液を25℃で24h反応させた。懸濁液を過剰なエチルエーテルに入れて一次生産物を沈殿させ、室温、1800rpmで30min遠心分離し、沈殿物を収集した。その後、大量のアセトン、メタノール及び水中で沈殿を3回連続して撹拌することで沈殿を洗浄し、凍結乾燥してポリロタキサンを得た。
【0136】
ポリロタキサンを適量計量して、1mol/LのNaOH溶液50mLに溶解し、氷浴の条件で適量のプロピレンオキシドを1滴ずつ滴下し、混合物を一晩撹拌した。溶液中の氷が溶けるにつれて、反応温度が徐々に室温に上がった。サンプルを脱イオン水で1週間透析して精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥サンプルをジクロロメタン100mLに添加して、一晩撹拌することで、ヒドロキシプロピル化中に分解により生成された遊離ポリエチレングリコールを濾別し、その後、大量のアセトンで洗浄し、遠心分離して沈殿を収集し、60℃で真空乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HP-PR)を得た。
【0137】
ステップ2:HP-PRと精製後のε-カプロラクトンを、モル比(HP-PR上の活性水酸基数:ε-CL=1:600)で、シラン化した乾燥丸底フラスコに加えて、全質量の1wt%のオクタン酸第一スズを加え、高純度窒素ガスを導入して置換し、混合物を110℃で50h反応させた。その後、一次生産物を少量のテトラヒドロフランで溶解し、過剰なn-ヘキサン中で3回沈殿させ、沈殿を60℃で48h真空乾燥し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマー(PCL-g-PR)を得た。
【0138】
ステップ3:HP-PR活性水酸基数が0.5モル当量の4-ニトロ桂皮酸を計量し、50℃でDMF 25mLに溶解し、その後、PCL-g-PRのDMF溶液を4-ニトロ桂皮酸のDMF溶液に加えて、40min撹拌した。次いで、1モル当量のN,N-ジイソプロピルカルボジイミド及び0.5モル当量の4-ジメチルアミノピリジンを加え、混合物を60℃で20h反応させた。一次生産物を過剰なエチルエーテル中で沈殿させて、遠心分離して固体を収集し、固体生成物を少量のトルエンに溶解し、エチルエーテル中でさらに3回沈殿し、60℃で一晩真空乾燥し、末端基の一部が桂皮酸基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得た。
【0139】
ステップ4:ポリマーネットワーク前駆体を80℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートとジブチル錫ジラウレートの酢酸ブチル溶液を適量加えて、10min撹拌した。シリコーンゴムガスケットで隔離された2つのガラス板の間に液体混合物を加えて、80℃のオーブンに48h放置し、次いで、80℃で一晩真空乾燥し、最後に、紫外線ボックスにおいて電力5Wの380nm紫外線ランプ4本により照射し12h、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得た。
【0140】
〔実施例7〕
ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造するステップは、以下の通りである。
【0141】
ステップ1:重量平均分子量が35kDaのポリエチレングリコールジアミン5.3×10-5molを計量し、α-CDの飽和水溶液(7.25g/50mL、再蒸留HO)に加えた。30℃の温度で26h撹拌し、白色沈殿を得た後、凍結乾燥機で48h凍結乾燥し、包接化合物を得た。
【0142】
2.6×10-3molのN-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン(Z-L-Tyr)、カーター縮合試薬(BOP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を少量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に順次溶解し、次に、包接化合物を溶液中に添加し、懸濁液を25℃で24hアミド化反応させた。懸濁液を過剰なエチルエーテルに入れて一次生産物を沈殿させ、室温、2000rpmで20min遠心分離し、沈殿物を収集した。その後、大量のアセトン、メタノール及び水中で沈殿を3回連続して撹拌することで沈殿を洗浄し、凍結乾燥してポリロタキサンを得た。
【0143】
ポリロタキサンを適量計量して、1mol/LのNaOH溶液50mLに溶解し、氷浴の条件で適量のプロピレンオキシドを1滴ずつ滴下し、混合物を一晩撹拌した。溶液中の氷が溶けるにつれて、反応温度が徐々に室温に上がった。サンプルを脱イオン水で1週間透析して精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥サンプルをジクロロメタン100mLに添加して、一晩撹拌することで、ヒドロキシプロピル化中に分解により生成された遊離ポリエチレングリコールを濾別し、その後、大量のアセトンで洗浄し、遠心分離して沈殿を収集し、60℃で真空乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HP-PR)を得た。
【0144】
ステップ2:HP-PRと精製後のε-カプロラクトンを、モル比(HP-PR上の活性水酸基数:ε-CL=1:200)で、シラン化した乾燥丸底フラスコに加えて、全質量の1wt%のオクタン酸第一スズを加え、高純度窒素ガスを導入して置換し、混合物を130℃で45h反応させた。その後、一次生産物を少量のテトラヒドロフランで溶解し、過剰なn-ヘキサン中で3回沈殿させ、沈殿を60℃で48h真空乾燥し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマー(PCL-g-PR)を得た。
【0145】
ステップ3:HP-PR活性水酸基数が0.5モル当量の4-ニトロ桂皮酸を計量し、50℃でDMF 25mLに溶解し、その後、PCL-g-PRのDMF溶液を4-ニトロ桂皮酸のDMF溶液に加えて、30min撹拌した。次いで、1モル当量のN,N-ジイソプロピルカルボジイミド及び0.5モル当量の4-ジメチルアミノピリジンを加え、混合物を50℃で20h反応させた。一次生産物を過剰なエチルエーテル中で沈殿させて、遠心分離して固体を収集し、固体生成物を少量のトルエンに溶解し、エチルエーテル中でさらに3回沈殿し、60℃で一晩真空乾燥し、末端基の一部が桂皮酸基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得た。
【0146】
ステップ4:ポリマーネットワーク前駆体を80℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートとジブチル錫ジラウレートの酢酸ブチル溶液を適量加えて、5min撹拌した。シリコーンゴムガスケットで隔離された2つのガラス板の間に液体混合物を加えて、80℃のオーブンに48h放置し、次いで、80℃で一晩真空乾燥し、最後に、紫外線ボックスにおいて電力5Wの370nm紫外線ランプ4本により15h照射し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得た。
【0147】
〔実施例8〕
ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造するステップは、以下の通りである。
【0148】
ステップ1:重量平均分子量が35kDaのポリエチレングリコールジアミン6.9×10-5molを計量し、α-CDの飽和水溶液(7.25g/50mL、再蒸留HO)に加えた。室温で24h撹拌し、白色沈殿を得た後、凍結乾燥機で48h凍結乾燥し、包接化合物を得た。
【0149】
3.5×10-3molのN-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン(Z-L-Tyr)、カーター縮合試薬(BOP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を少量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に順次溶解し、次に、包接化合物を溶液中に添加し、懸濁液を25℃で26hアミド化反応させた。懸濁液を過剰なエチルエーテルに入れて一次生産物を沈殿させ、室温、1800rpmで30min遠心分離し、沈殿物を収集した。その後、大量のアセトン、メタノール及び水中で沈殿を3回連続して撹拌することで沈殿を洗浄し、凍結乾燥してポリロタキサンを得た。
【0150】
ポリロタキサンを適量計量して、1mol/LのNaOH溶液50mLに溶解し、氷浴の条件で適量のプロピレンオキシドを1滴ずつ滴下し、混合物を一晩撹拌した。溶液中の氷が溶けるにつれて、反応温度が徐々に室温に上がった。サンプルを脱イオン水で1週間透析して精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥サンプルをジクロロメタン100mLに添加して、一晩撹拌することで、ヒドロキシプロピル化中に分解により生成された遊離ポリエチレングリコールを濾別し、その後、大量のアセトンで洗浄し、遠心分離して沈殿を収集し、60℃で真空乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HP-PR)を得た。
【0151】
ステップ2:HP-PRと精製後のε-カプロラクトンを、モル比(HP-PR上の活性水酸基数:ε-CL=1:400)で、シラン化した乾燥丸底フラスコに加えて、全質量の1wt%のオクタン酸第一スズを加え、高純度窒素ガスを導入して置換し、混合物を110℃で50h反応させた。その後、一次生産物を少量のテトラヒドロフランで溶解し、過剰なn-ヘキサン中で3回沈殿させ、沈殿を60℃で48h真空乾燥し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマー(PCL-g-PR)を得た。
【0152】
ステップ3:HP-PR活性水酸基数が0.5モル当量の4-ニトロ桂皮酸を計量し、50℃でDMF 25mLに溶解し、その後、PCL-g-PRのDMF溶液を4-ニトロ桂皮酸のDMF溶液に加えて、30min撹拌した。次いで、1モル当量のN,N-ジイソプロピルカルボジイミド及び0.5モル当量の4-ジメチルアミノピリジンを加え、混合物を60℃で20h反応させた。一次生産物を過剰なエチルエーテル中で沈殿させて、遠心分離して固体を収集し、固体生成物を少量のトルエンに溶解し、エチルエーテル中でさらに3回沈殿し、60℃で一晩真空乾燥し、末端基の一部が桂皮酸基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得た。
【0153】
ステップ4:ポリマーネットワーク前駆体を80℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートとジブチル錫ジラウレートの酢酸ブチル溶液を適量加えて、10min撹拌した。シリコーンゴムガスケットで隔離された2つのガラス板の間に液体混合物を加えて、80℃のオーブンに48h放置し、次いで、80℃で一晩真空乾燥し、最後に、紫外線ボックスにおいて電力5Wの365nm紫外線ランプ4本により15h照射し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得た。
【0154】
〔実施例9〕
ポリカプロラクトン形状記憶材料を製造するステップは、以下の通りである。
【0155】
ステップ1:重量平均分子量が35kDaのポリエチレングリコールジアミン5.8×10-5molを計量し、α-シクロデキストリンの飽和水溶液(7.25g/50mL、再蒸留HO)に加えた。室温で24h撹拌し、白色沈殿を得た後、凍結乾燥機で48h凍結乾燥し、包接化合物を得た。
【0156】
2.7×10-3molのN-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン(Z-L-Tyr)、カーター縮合試薬(BOP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を少量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に順次溶解し、次に、包接化合物を溶液中に添加し、懸濁液を20℃で30hアミド化反応させた。懸濁液を過剰なエチルエーテル中で一次生産物を沈殿し、室温、2000gで20min遠心分離し、沈殿物を収集した。その後、大量のアセトン、メタノール及び水中で沈殿を3回連続して撹拌することで沈殿を洗浄し、凍結乾燥してポリロタキサンを得た。
【0157】
ポリロタキサンを適量計量して、1mol/LのNaOH溶液50mLに溶解し、氷浴の条件で適量のプロピレンオキシドを1滴ずつ滴下し、混合物を一晩撹拌した。溶液中の氷が溶けるにつれて、反応温度が徐々に室温に上がった。サンプルを脱イオン水で1週間透析して精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥サンプルをジクロロメタン100mLに添加して、一晩撹拌することで、ヒドロキシプロピル化中に分解により生成された遊離ポリエチレングリコールを濾別し、その後、大量のアセトンで洗浄し、遠心分離して沈殿を収集し、60℃で真空乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HP-PR)を得た。
【0158】
ステップ2:HP-PRと精製後のε-カプロラクトンを、モル比(HP-PR上の活性水酸基数:ε-CL=1:600)で、シラン化した乾燥丸底フラスコに加えて,全質量の1wt%のオクタン酸第一スズを加え、高純度窒素ガスを導入して置換し、混合物を130℃で48h反応させた。その後、一次生産物を少量のテトラヒドロフランで溶解し、過剰なn-ヘキサン中で3回沈殿させ、沈殿を60℃で48h真空乾燥し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマー(PCL-g-PR)を得た。
【0159】
ステップ3:HP-PR活性水酸基数が0.5モル当量の4-ニトロ桂皮酸を計量し、50℃でDMF 25mLに溶解し、その後、PCL-g-PRのDMF溶液を4-ニトロ桂皮酸のDMF溶液に加えて、30min撹拌した。次いで、1モル当量のN,N-ジイソプロピルカルボジイミド及び0.5モル当量の4-ジメチルアミノピリジンを加え、混合物を40℃で25h反応させた。一次生産物を過剰なエチルエーテル中で沈殿させて、遠心分離して固体を収集し、固体生成物を少量のトルエンに溶解し、エチルエーテル中でさらに3回沈殿し、60℃で一晩真空乾燥し、末端基の一部が桂皮酸基に変性したポリマーネットワーク前駆体を得た。
【0160】
ステップ4:ポリマーネットワーク前駆体を80℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートとジブチル錫ジラウレートの酢酸ブチル溶液を適量加えて、10min撹拌した。シリコーンゴムガスケットで隔離された2つのガラス板の間に液体混合物を加えて、80℃のオーブンに48h放置し、次いで、80℃で一晩真空乾燥し、最後に、紫外線ボックスにおいて電力5Wの380nm紫外線ランプ4本により12h照射し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得た。
【0161】
〔比較例1〕
熱架橋ポリカプロラクトン形状記憶板材は、成分として、ポリカプロラクトン90重量部、架橋剤として過酸化ベンゾイル5重量部、溶媒としてジクロロメタン80重量部、離型剤1重量部を用いて製造した。
【0162】
上記の熱架橋ポリカプロラクトン形状記憶板材の製造方法は以下の製造ステップを含む。
【0163】
ステップ1:ポリカプロラクトン、架橋剤としての過酸化ベンゾイル、及び溶媒としてのジクロロメタンを丸底フラスコに入れて溶液ブレンドを行い、30min超音波処理した後、メカニカルミキサーに移して1h撹拌し、混合物を得た。
【0164】
ステップ2:得られた混合物から溶媒を室温で1~2h揮発し、その後、50~70℃で24h真空乾燥し、PCL/BPO固体混合物を得た。
【0165】
ステップ3:ステップ2で得られた固体混合物を、カスタマイズされた鉄型に入れ、離型剤をスプレーし、平型加硫機によって140~160℃で過酸化物を用いてポリカプロラクトンの熱架橋処理を開始させ、時間5~15min、最高圧力10MPaとし、熱架橋ポリカプロラクトン形状記憶板材を得た。
【0166】
実施例1~9及び比較例1で得られた製品について、ゲル含有量、形状回復速度、形状回復率、破断伸び、及び引張強さを測定し、その結果を表1に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
表1の結果から、本発明による方法によって得られた実施例1~9のポリカプロラクトン形状記憶材料は、比較例で製造された生成物よりも形状回復速度が速く、形状回復率が高く、5s以内に元の形状の95%以上を回復できることが明らかになった。また、実施例で得られた製品の破断伸び及び引張強さの測定結果では、比較例1と比較して、破断伸びは明らかに向上しており、例えば、実施例9では、破断伸びは1倍向上しており、このことから、形状記憶材料の靭性を改善できることが証明された。
【0169】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術構想の範囲内では、本発明の技術的解決手段に対して、各技術的特徴を他の適切な方法で組み合わせることも含め、様々な単純な変形を行うことができ、これらの単純な変形及び組み合わせも、本発明で開示された内容とみなすべきであり、いずれも本発明の保護範囲に属する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の変性ポリロタキサン高分子鎖と、異なる前記変性ポリロタキサン高分子鎖を連結する複数本の複合高分子鎖と、を含み、各前記複合高分子鎖は、少なくとも2つのポリカプロラクトン高分子鎖のセグメント、異なる前記ポリカプロラクトン高分子鎖の間の可逆的連結基、及び前記ポリカプロラクトン高分子鎖と前記変性ポリロタキサン高分子鎖が含有するシクロデキストリン由来の環状構造とを連結する連結修飾基を含み、前記可逆的連結基は、光可逆的連結基又は熱可逆的連結基である、ことを特徴とするポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項2】
前記光可逆的連結基は、光可逆的基を有する化合物に由来し、好ましくは、前記化合物は、ニトロ桂皮酸系化合物及び/又は4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸から選択され、
好ましくは、前記熱可逆的連結基は、ジイソシアネートに由来し、好ましくは、前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項3】
前記連結修飾基は、ヒドロキシプロピル化用の化合物に由来し、好ましくは、構造式-CH-CH(CH)-O-で示される基である、請求項1に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項4】
前記変性ポリロタキサン高分子鎖の全量に基づいて、前記ポリカプロラクトン高分子鎖の全量は、80~100wt%、好ましくは、95~99.9wt%であり、
好ましくは、前記ポリカプロラクトン高分子鎖の重量平均分子量は、5000~100000kDa、好ましくは、10000~80000kDaであり、
好ましくは、前記変性ポリロタキサン高分子鎖の重量平均分子量は、10kDa~100kDa、好ましくは、30kDa~90kDaである、請求項1に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項5】
前記ポリカプロラクトン形状記憶材料は、900%を超える破断伸びを有し、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料のゲル含有量は、37~78wt%であり、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料が100%のひずみ下で初始形状に回復するまでの時間は5s以下である、請求項1に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料。
【請求項6】
ポリロタキサン系開始剤、末端基変性剤、ε-カプロラクトン、触媒、及び架橋剤を含み、前記末端基変性剤は、ニトロ桂皮酸系化合物及び/又は4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸から選択される、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料を製造する組成物。
【請求項7】
前記ポリロタキサン系開始剤の重量平均分子量は、10kDa~100kDa、好ましくは、30kDa~90kDaであり、
好ましくは、前記触媒は、オクタン酸第一スズ、リチウムジイソプロピルアミド、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、フォスファゼン塩基から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記架橋剤は、ジイソシアネート、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の全量に基づいて、前記ポリロタキサン系開始剤0.01~0.1wt%と、ε-カプロラクトン99.99~99wt%と、前記触媒0.5~2wt%と、前記末端基変性剤0.02~0.05wt%と、前記架橋剤0.1~1wt%と、を含有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
ポリロタキサンをヒドロキシプロピル化して、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを得るステップ(1)と、
触媒の存在下、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンとε-カプロラクトンを開環重合し、ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーを得るステップ(2)と、
前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーと末端基変性剤が有する光可逆的基とを変性反応させ、末端基の部分が光可逆的基に変性するポリマーネットワーク前駆体を得るステップ(3)と、
架橋剤の存在下、加熱及び紫外光の作用により、前記光可逆的基を反応させて前記ポリマーネットワーク前駆体を架橋し、ポリカプロラクトン形状記憶材料を得るステップ(4)と、を含む、ことを特徴とするポリカプロラクトン形状記憶材料の製造方法。
【請求項10】
ステップ(2)において、前記触媒は、オクタン酸第一スズ、リチウムジイソプロピルアミド、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、フォスファゼン塩基から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記触媒の使用量は、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンとε-カプロラクトンとの全質量の0.5~2wt%、好ましくは、0.8~1.2wt%であり、
好ましくは、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンがそれに有する活性水酸基数で換算されると、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンとε-カプロラクトンとのモル比が、1:50~600、好ましくは、1:50~1:200であり、
好ましくは、開環重合温度は、100~140℃、好ましくは、110~130℃であり、開環重合時間は、40~50h、好ましくは、45~50hであり、
好ましくは、前記開環重合の過程は、前記ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン、ε-カプロラクトン、及び前記触媒の混合物を窒素保護下で重合反応させることと、得た一次生産物をテトラヒドロフランで溶解し、次に、n-ヘキサン中で沈殿を複数回行い、得た固相沈殿物を乾燥し、前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーを得ることとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(3)において、前記末端基変性剤と前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーとのモル比は、100~400:1であり、
好ましくは、前記末端基変性剤は、光可逆的基を有する化合物、好ましくは、ニトロ桂皮酸系化合物及び/又は4-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)酪酸から選択され、
好ましくは、前記末端基変性反応の温度は40~60℃であり、前記末端基変性反応の時間は15~25hであり、
好ましくは、前記末端基変性反応の過程は、前記末端基変性剤と前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーを用いてそれぞれ第1有機溶媒で調製した溶液を混合し、得た混合溶液に吸水剤-I及びエステル化触媒を加えて、前記末端基変性反応を行うことと、得た一次生産物を複数回沈殿させ、得た固体沈殿物を乾燥し、前記ポリマーネットワーク前駆体を得ることと、を含み、
好ましくは、前記第1有機溶媒は、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジオキサンから選択される少なくとも1種であり、前記吸水剤-Iは、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、濃硫酸から選択される少なくとも1種であり、前記エステル化触媒は、4-ジメチルアミノピリジン、p-トルエンスルホン酸、塩化チオニルから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第1有機溶媒の使用量は、前記混合溶液の濃度を1~10g/mL、好ましくは、2~8g/mLにし、前記吸水剤-Iの使用量は、前記末端基変性剤と前記ポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーとの全量の1~5wt%、好ましくは、1.5~4.5wt%であり、前記エステル化触媒とポリカプロラクトングラフトポリロタキサンコポリマーとのモル比は、1:1.5~3.5、好ましくは、1:2~3であり、
好ましくは、前記ポリマーネットワーク前駆体は、複数本のスライド可能なポリカプロラクトン分子鎖を有し、前記ポリカプロラクトン分子鎖の一部の鎖端部に前記末端基変性剤由来の光可逆的基を含有し、好ましくは、前記光可逆的基は、クマリニル基又は桂皮酸基である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(4)において、前記架橋剤は、ジイソシアネート、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記架橋剤の使用量は、前記ポリマーネットワーク前駆体の0.1~1wt%であり、
好ましくは、前記加熱の温度は70~90℃であり、前記加熱の時間は45~60hであり、
好ましくは、前記紫外光の波長は250~380nmであり、
好ましくは、前記架橋の過程は、前記ポリマーネットワーク前駆体を第2有機溶媒に溶解し、次に、前記架橋剤及び架橋触媒の酢酸ブチル溶液を加えて、液体混合物を得ることと、前記液体混合物を加熱して乾燥し、前記紫外光で照射し、前記ポリカプロラクトン形状記憶材料を得ることと、を含み、
好ましくは、前記第2有機溶媒は、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジオキサンから選択される少なくとも1種であり、前記架橋触媒は、ジブチル錫ジラウレート、有機ビスマス触媒、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第2有機溶媒の使用量は、前記液体混合物の濃度を1~10g/mL、好ましくは、2~8g/mLにし、前記架橋触媒の使用量は、前記ポリマーネットワーク前駆体の1~5wt%、好ましくは、2~4wt%である、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリロタキサンは、大立体障害化合物の存在下、α-シクロデキストリンとポリエチレングリコールジアミンを反応させることにより製造され、
好ましくは、前記大立体障害化合物は、N-ベンジルオキシカルボニル-L-チロシン、1-アダマンタン酢酸、フルオレセインイソチオシアネート、L-フェニルアラニンから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記ポリエチレングリコールジアミンの重量平均分子量は、5kDa~40kDa、好ましくは、10kDa~35kDaであり、
好ましくは、α-シクロデキストリンと前記ポリエチレングリコールジアミンとのモル比は、50~100:1、好ましくは、80~90:1であり、
好ましくは、前記大立体障害化合物と前記ポリエチレングリコールジアミンとのモル比は、2~10:1、好ましくは、5~8:1であり、
好ましくは、前記反応の過程は、
(i)前記ポリエチレングリコールジアミンをα-シクロデキストリンの飽和水溶液に加えて、20~35℃で20~40h撹拌し、得た白色沈殿を乾燥し、包接化合物を得ることと、
(ii)前記大立体障害化合物、アミド化触媒、吸水剤-IIを第3有機溶媒に溶解して溶液を調製し、次に、前記包接化合物を前記溶液に加えて得た懸濁液をアミド化反応させ、沈殿し、得た固相沈殿物を洗浄して乾燥し、前記ポリロタキサンを得ることと、を含み、
好ましくは、前記アミド化触媒は、カーター縮合試薬、塩化亜鉛、塩化鉄六水和物から選択される少なくとも1種であり、前記吸水剤-IIは、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミドから選択される少なくとも1種であり、前記第3有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記アミド化触媒の使用量は、前記ポリエチレングリコールジアミンとα-シクロデキストリンとの全量の1~5wt%、好ましくは、2~4wt%であり、前記吸水剤-IIの使用量は、前記ポリエチレングリコールジアミンとα-シクロデキストリンとの全量の1~5wt%、好ましくは、2~4wt%であり、前記第3有機溶媒の使用量は、前記溶液の濃度を1~10g/mL、好ましくは、2~8g/mLにし、
好ましくは、前記ポリロタキサンの重量平均分子量は、10~100kDa、好ましくは、30~90kDaである、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
医療用回収可能固定材における請求項1~5のいずれか1項に記載のポリカプロラクトン形状記憶材料の使用であって、好ましくは、前記使用は、形状記憶医療用固定クリップを含む、使用。
【国際調査報告】