(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】量子コンピューティングのために複数のエンタングルド線形キュービット・アレイを使用するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06N 10/00 20220101AFI20241024BHJP
【FI】
G06N10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525478
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 US2022047845
(87)【国際公開番号】W WO2023214996
(87)【国際公開日】2023-11-09
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523421395
【氏名又は名称】ケービーアール ワイル サービシーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクソン ピーター カール
(57)【要約】
量子コンピューティング(QC)システムは、互いに実質的に平行である長手方向軸を有する複数の実質的に線形な領域内に配置される複数のキュービットを含む。実質的に線形な領域の少なくとも一部は、2つ以上のキュービットを含み、各実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットは、少なくとも1つの他の実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットと相互作用するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子コンピューティング(QC)システムであって、
互いに実質的に平行である長手方向軸を有する複数の実質的に線形な領域内に配置される複数のキュービットであって、前記実質的に線形な領域の少なくとも一部は、2つ以上のキュービットを備え、各実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットは、少なくとも1つの他の実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットと相互作用するように構成される、複数のキュービット
を備え、
前記複数の実質的に線形な領域は、
中心長手方向軸を有する中心の実質的に線形な領域であり、前記中心長手方向軸に沿って、中心線形領域の中心キュービットが配置される、中心の実質的に線形な領域と、
対応する外側長手方向軸を有する少なくとも1つの外側の実質的に線形な領域であり、前記外側長手方向軸に沿って、前記少なくとも1つの外側の実質的に線形な領域の外側キュービットが配置される、少なくとも1つの外側の実質的に線形な領域と、
を含む、量子コンピューティング(QC)システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの外側の実質的に線形な領域は、各々が対応する外側長手方向軸を有する少なくとも2つの外側の実質的に線形な領域を含み、前記外側長手方向軸に沿って、前記外側の実質的に線形な領域の前記外側キュービットが配置され、前記中心長手方向軸は、前記外側長手方向軸の各々から離間されており、前記外側長手方向軸の各々に実質的に平行であり、前記外側長手方向軸の各々は、前記中心長手方向軸の周りで異なる方位角位置にある、請求項1に記載のQCシステム。
【請求項3】
前記少なくとも2つの外側の実質的に線形な領域は、前記中心長手方向軸の周りで異なる方位角位置にある2つの対応する外側長手方向軸を有する2つの外側の実質的に線形な領域を含み、前記外側長手方向軸は、おおよそ180度だけ互いから離れている、請求項2に記載のQCシステム。
【請求項4】
前記少なくとも2つの外側の実質的に線形な領域は、前記中心長手方向軸の周りで異なる方位角位置にある3つの対応する外側長手方向軸を有する3つの外側の実質的に線形な領域を含み、前記外側長手方向軸は、おおよそ120度だけ互いから離れている、請求項2に記載のQCシステム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの外側の実質的に線形な領域は、前記中心長手方向軸の周りで異なる方位角位置にある4つの対応する外側長手方向軸を有する4つの外側の実質的に線形な領域を含み、前記外側長手方向軸は、おおよそ90度又はおおよそ180度だけ互いから離れている、請求項2に記載のQCシステム。
【請求項6】
前記少なくとも2つの外側の実質的に線形な領域は、前記中心長手方向軸の周りで異なる方位角位置にある5つの対応する外側長手方向軸を有する5つの外側の実質的に線形な領域を含み、前記外側長手方向軸は、おおよそ72度又はおおよそ144度だけ互いから離れている、請求項2に記載のQCシステム。
【請求項7】
前記少なくとも2つの外側の実質的に線形な領域は、前記中心長手方向軸の周りで異なる方位角位置にある6つの対応する外側長手方向軸を有する6つの外側の実質的に線形な領域を含み、前記外側長手方向軸は、おおよそ60度、おおよそ120度、又はおおよそ180度だけ互いから離れている、請求項2に記載のQCシステム。
【請求項8】
第1の実質的に線形な表面トラップ及び第2の実質的に線形な表面トラップを更に備え、1つの実質的に線形な領域の前記キュービットは、前記第1の実質的に線形な表面トラップによって生成される一次電位トラップ領域、及び、前記第2の実質的に線形な表面トラップによって生成される重複する偶発的電位トラップ領域を含む1つのトラップ領域内にあり、他の前記実質的に線形な領域の前記キュービットは、前記第2の実質的に線形な表面トラップによって生成される一次電位トラップ領域、及び、前記第1の実質的に線形な表面トラップによって生成される重複する偶発的電位トラップ領域を含む別のトラップ領域内にある、請求項1に記載のQCシステム。
【請求項9】
前記複数のキュービットは、中心の実質的に線形なキュービット・チェーン及び少なくとも2つの外側の実質的に線形なキュービット・チェーンを含む、請求項1に記載のQCシステム。
【請求項10】
第1の実質的に線形な表面トラップを更に備え、前記少なくとも2つの外側の実質的に線形なキュービット・チェーンのうちの1つは、前記第1の実質的に線形な表面トラップによって生成される一次電位トラップ領域内にあり、前記中心の実質的に線形なキュービット・チェーンは、前記第1の実質的に線形な表面トラップによって少なくとも部分的に生成される偶発的電位トラップ領域内にある、請求項9に記載のQCシステム。
【請求項11】
第2の実質的に線形な表面トラップを更に備え、前記少なくとも2つの外側の実質的に線形なキュービット・チェーンのうちのもう1つは、前記第2の実質的に線形な表面トラップによって生成される一次電位トラップ領域内にあり、前記偶発的電位トラップ領域は、前記第2の実質的に線形な表面トラップによって少なくとも部分的に生成される、請求項10に記載のQCシステム。
【請求項12】
前記複数のキュービットは、少なくとも1つの実質的に線形な表面トラップによって生成される実質的に線形な電位井戸内に閉じ込められるイオンのチェーンを含む、請求項1に記載のQCシステム。
【請求項13】
前記イオンは、Ba
+、Be
+、Cd
+、Ca
+、Mg
+、Hg
+、Sr
+、Yb
+を含むが、これらに限定されない、請求項12に記載のQCシステム。
【請求項14】
互いに実質的に平行であり、前記複数のキュービットを前記複数の実質的に線形な領域内に包含するように構成される電位井戸を生成するように構成される、3つ以上の実質的に線形な表面トラップを更に備える、請求項1に記載のQCシステム。
【請求項15】
前記複数の実質的に線形な領域は、前記中心長手方向軸に沿った中心キュービット・チェーンを含む中心トラップ領域と、前記対応する外側長手方向軸に沿った対応する外側キュービット・チェーンを各々が含む少なくとも2つの外側トラップ領域とを含み、前記中心キュービット・チェーンは、互いに、及び、前記外側キュービット・チェーンのうちの少なくとも1つの、1つ又は複数のキュービットと相互作用するように構成される2つ以上のキュービットを含み、各外側キュービット・チェーンは、互いに、及び、前記中心キュービット・チェーンの1つ又は複数のキュービットと相互作用するように構成される2つ以上のキュービットを含む、請求項1に記載のQCシステム。
【請求項16】
前記少なくとも2つの外側トラップ領域は、前記中心トラップ領域に隣接し、互いに、及び、前記中心トラップ領域の前記中心長手方向軸に実質的に平行である外側長手方向軸を有する、3つ、4つ、5つ、又は6つのトラップ領域を含む、請求項15に記載のQCシステム。
【請求項17】
前記複数のキュービットは、前記中心長手方向軸に沿って配置されるC6NOTゲートを形成する、請求項15に記載のQCシステム。
【請求項18】
前記複数のキュービットは、前記中心長手方向軸に沿って配置されるC2nNOTゲートを形成し、nは、2以上の正の整数である、請求項15に記載のQCシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
[分野]
本出願は、一般に、量子コンピューティング(QC)に関し、より詳細には、2次元以上の格子配列構造を利用する量子コンピュータ・アーキテクチャに関する。
【0002】
[関連技術の説明]
スケーラブルな量子コンピューティングに向けた技術的な道筋は、多様化してきている。様々な性能指数で実証されるパフォーマンスは、各アプローチで採用される物理量子ビット(「キュービット」とも称される)のタイプによって、広く変動する。トラップ・イオン又は超伝導キュービットのいずれかに基づくアプローチは、20年超を通じて当技術分野を一貫して牽引してきた。
【0003】
[概要]
特定の実施態様において、量子コンピューティング(QC)システムが提供される。システムは、互いに実質的に平行である長手方向軸を有する複数の実質的に線形な領域内に配置される複数のキュービットを備える。実質的に線形な領域の少なくとも一部は、2つ以上のキュービットを備え、各実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットは、少なくとも1つの他の実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットと相互作用するように構成される。
【0004】
本明細書に開示される特定の実施態様は、3つ以上の論理キュービット(例えば、各論理キュービットは、1つ又は複数の物理キュービットを含む)を同時にエンタングル(もつれ)させることができる量子ゲートを実装及び相互接続するために2次元以上の格子配列構造を利用する量子コンピュータ・アーキテクチャを提供する。本明細書に開示される特定の実施態様は、一定程度の再構成可能性を有利に提供することができる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)と類似の、量子処理チップのための量子マイクロプロセッサ構成及びゲート・アレイ設計プラットフォームを提供する。本明細書に開示される特定の実施態様は、特定用途向けに有利に最適化することができ、カスタム設計の柔軟性を有利に提供することができる、特定用途向け集積回路(ASIC)と類似の、量子処理チップ又は基板(例えば、電気及び/又は光回路)のための量子マイクロプロセッサ構成及びゲート・アレイ設計プラットフォームを提供する。
【0005】
本明細書に開示される特定の実施態様は、3次元(3D)格子構造(例えば、セル)のアレイとして配置される複数の完全接続キュービットを備える格子構造を備え、幾何学的レイアウトに配列されるキュービットによって、同時マルチ・キュービット・ゲート動作が可能にされる。例えば、特定の実施態様は、互いに実質的に平行である複数の1次元(1D)(例えば、線形)キュービット・アレイ(例えば、行、列、格子、チェーン)として構成することができる。そのような例において、セルのアレイは、3D結晶構造に類比することができる、又は、3D結晶構造として参照することができる。様々な実施態様が、利用(例えば、最適化)される量子相互作用の性質を説明するためにトラップ・イオン(例えば、荷電原子)キュービット(例えば、マイクロチップ構造における)を利用するものとして本明細書に記載されるが、他の実施態様は、一般性を損なうことなく、1つ又は複数の代替的なキュービット技術(例えば、非荷電、Rydberg原子キュービット、超伝導キュービット)を使用することができる。
【0006】
本明細書に開示される特定の実施態様は、互いに実質的に平行である複数の線形アレイに実質的に配置される複数のキュービットを備える量子コンピューティング(QC)システムを提供し、線形アレイの少なくとも一部は、2つ以上のキュービットを備え、各線形アレイの1つ又は複数のキュービットは、少なくとも1つの近接する線形アレイの1つ又は複数のキュービットと直接的に相互作用する(例えば、直接的にエンタングルされる)ように構成される。例えば、QCシステムは、2つ以上の基板の間の領域内に位置する複数のマルチ・キュービット・ゲートとして配置される複数のキュービットを備えるマルチ・キュービット・ゲート・アレイを備えることができる。マルチ・キュービット・ゲート・アレイのキュービットは、上記基板のうちの少なくとも1つの表面において又はその付近にイオン(例えば、荷電原子、荷電分子)を包含するように構成される表面電極トラップを備えることができ、複数の線形アレイ内に実質的に配置することができ、少なくとも1つの線形アレイのキュービットの少なくとも一部は、少なくとも1つの他の(例えば、近接する)線形アレイのキュービットの少なくとも一部と相互作用する(例えば、量子力学的にエンタングルされる)ように構成される。
【0007】
[図面の簡単な説明]
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本明細書に記載される1つ又は複数の実施態様を示し、本明細書と共に、これらの実施態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A-1B】
図1A-1Bは、それぞれ、本明細書に記載される特定の実施態様に従う複数の実質的に線形な領域内に配置された複数のキュービットを備える例示的なQCシステムの横から見た図及び側面図を概略的に示す。
【
図1C】
図1Cは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う複数の実質的に線形な領域内に配置された複数のキュービット105’を備える別の例示的なQCシステム100’の横から見た図を概略的に示す。
【
図2A-2B】
図2A-2Bは、それぞれ、本明細書に記載される特定の実施態様に従う例示的な三角柱アレイの分解斜視図及び側面図を概略的に示す。
【
図2C-2D】
図2C-2Dは、それぞれ、本明細書に記載される特定の実施態様に従う例示的な三角柱アレイの組み立て斜視図及び側面図を概略的に示す。
【
図2E】
図2Eは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う
図2A~
図2Dの例示的な三角柱アレイの結合キュービットの4つの線形チェーンを概略的に図示する。
【
図3A-3B】
図3Aは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う例示的な立方体プリズムアレイの分解斜視図を概略的に示し、
図3Bは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う例示的な立方体プリズムアレイの組み立て斜視図を概略的に示す。
【
図3C】
図3Cは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う例示的な立方体プリズムアレイの組み立て斜視図を概略的に示す。
【
図4A-4B】
図4A-4Bは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う例示的な六角柱アレイの斜視図を概略的に示す。
【
図4C】
図4Cは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う中心線形領域内の単一の物理キュービットをそれぞれが備える複数の単一論理キュービットと、外側線形領域内の単一の物理キュービットをそれぞれが備える複数の単一論理キュービットとを有する例示的な六角柱アレイの断面図を概略的に示す。
【
図4D】
図4Dは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う中心線形領域内の6つの物理キュービットのクラスタをそれぞれが備える複数の単一論理キュービットと、外側線形領域内の単一の物理キュービットをそれぞれが備える複数の単一論理キュービットとを有する例示的な六角柱アレイの断面図を概略的に示す。
【
図5A】
図5Aは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う例示的なQC構造を有する少なくとも1つの六角柱アレイを備える例示的なシステムを概略的に図示する。
【
図5B】
図5Bは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う例示的なQC構造を有する少なくとも1つの六角柱アレイを備える例示的なシステムを概略的に図示する。
【
図5C】
図5Cは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う例示的なQC構造を有する少なくとも1つの六角柱アレイを備える例示的なシステムを概略的に図示する。
【
図5D】
図5Dは、本明細書に記載される特定の実施態様に従う例示的なQC構造を有する少なくとも1つの六角柱アレイを備える例示的なシステムを概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[概説]
本明細書に記載される量子コンピューティング(QC)システムの特定の実施態様は、有利には、最適な数のキュービットが最近接及び第二近接間で同時にエンタングルされる(もつれる)ことを可能にするための多次元アーキテクチャを提供する。特定の実施態様は、スケーラブル量子プロセッサを設計するために必要とされるようにアドレス指定、制御、検出、及び読み出しするための電気及び光アクセス・チャネルを含む。完全接続されるキュービットのアレイは、利用されるキュービットのタイプ又はそれらのレイアウトに起因して、エンタングルド(もつれ)ゲート動作が特定の対に限定される設計よりも効率的で柔軟な、ハードウェア内で量子アルゴリズムを実行するための選択肢を提供する。この改善された効率及び柔軟性は、アレイ内のキュービットの数と共に急激に増加する。一度に3つ以上のキュービットを伴うゲート動作を実施する機能を追加することによって、1キュービット・ゲート及び2キュービット・ゲートに制限される設計よりも大幅に効率利得を加速させることができ、数十個のそれらのキュービット・ゲートを1つの4キュービット・ゲートに置き換えることができる。本明細書に記載される特定の実施態様は、1次元及び2次元幾何学構成の問題(例えば、接続性の制限、ゲート間隔を大きく拡大し得る、ゲート内の各キュービットの制御に必要な電極の密集)を有利に回避するために、複数のキュービット・アレイ(例えば、複数の直接的に接続された平面アレイ及び/又は線形アレイ)を使用する。特定の実施態様において、パイロクロアなどの結晶に類似したキュービットの多次元セルが形成される。特定の実施態様において、キュービットの多次元セルは、再構成可能であり、最近接及び第二近接キュービット(例えば、1つのセル内の、複数のセルにまたがる、複数の層にまたがる)が、選択されたゲート動作のためにそれに従ってエンタングルされる様々な結晶構造に形成することができる。ゲートごとに参加するための多くのキュービットを利用することによって、回路深度、エラー補正及び干渉軽減の要件を低減することもできる。相互交換可能構成要素セルは、量子FPGA(QFPGA)及びASIC(QASIC)レイアウト(例えば、チップ)を可能にし得る。
【0010】
本明細書において記載されるQCシステムの特定の実施態様は、3次元(3D)格子構造(例えば、セル)のアレイとして配置される複数の完全接続キュービットを備える多層構造を備え、幾何学的レイアウトに配列されるキュービットによって、同時マルチ・キュービット・ゲート動作が可能にされる。例えば、複数の線形キュービット・アレイ(例えば、行、列、格子、チェーン)は、互いに実質的に平行であり得て、結晶構造に類似する、又は、結晶構造として参照することができる3Dセルのアレイを形成することができる。特定の実施態様において、キュービットは、in situ処理キュービットの他の種もしくはデータ・ビットへの損失の多い変換又は著しい時間遅延を必然的に伴う非効率的なフォトニック又は他の相互接続(例えば、キュービットのスワッピング、量子テレポーテーション)を必要とすることなく、複数のアレイ領域にまたがって、最近接キュービット、第二近接キュービットなどの間で直接的に最適なコヒーレント接続(例えば、エンタングルメント(entanglement))を可能にするために、複数の共に整列されたキュービット包含ゾーン(例えば、平行に対向する原子トラップ・アレイ)の上方及び下方(又は上及び下、左及び右など)又はその中に同等に浮遊させられ(例えば、トラップされ)得る。特定のそのような実施態様は、1キュービット・ゲート及び2キュービット・ゲートに制限される設計よりも大幅に効率利得を加速させることができる、一度に3つ以上のキュービットを伴うゲート動作を実施する機能を提供する、幾何学的に対称なセル構造を利用する。特定の多次元実施態様は、各キュービットが、2次元以上においてキュービットの少なくとも一部と直接的に相互作用することができる(例えば、量子力学的にエンタングルされ得る)(例えば、同時に2次元以上において完全接続される)ように構成される3次元(3D)アレイを形成するために、互いに実質的に平行であり、共に整列される(例えば、共通の長手方向軸の周りに配列される)複数の1次元(1D)キュービット格子配列(例えば、線形格子、列、チェーン)から構成され得る。
【0011】
トラップ・イオン(例えば、荷電原子)キュービット手法の物理特性による様々な実施形態が本明細書に記載されるが、他のキュービット手法(例えば、非荷電、Rydberg原子、超伝導キュービット)も、一般性を損なうことなく、本明細書に記載される特定の実施態様に従って使用することができる。
【0012】
本明細書に記載されるQCシステムの特定の実施態様は、各セルが、3つの次元にまたがって同時に完全接続することができる少なくとも3つのキュービットを含む、複数のマルチ・キュービット3次元(3D)ゲート・セルと、マルチ・キュービット・ゲートのうちの2つ以上のゲート動作のために構成される複数のマルチ・キュービット・セルとを備える。特定のそのような実施態様のQCシステムは、フォトニック又は他の相互接続を必要とすることなく複数のアレイ領域にまたがって最近接キュービット、第二近接キュービットなどの間で直接的に最適なコヒーレント接続又はエンタングルメントを可能にする、平行に対向するイオン・トラップ・アレイなどの、複数の共に整列されたキュービット包含ゾーンを備えることができる。マルチ・キュービット・セルは、複数の1及び2キュービット・ゲートの連結に依拠することなく、1回のゲート動作において、マルチ・キュービット・ゲートがネイティブに実行されることを可能にするために幾何学的対称性を使用して構成することができる。セル内の複数のキュービット間の等辺結合距離の対称性を活用することによって、一度に3つ以上のエンタングルされたキュービットが、そうでなければ1及び2キュービット・ゲートのみを含むより多くのキュービット・ゲート動作を必要とすることになるゲート動作を実施することが可能になる。
【0013】
本明細書において開示されるQCシステムの特定の実施態様は、互いに実質的に平行に、共に整列される複数の線形アレイに、実質的に配置される複数のキュービットを備え、線形アレイの少なくとも一部は、2つ以上のキュービットを備え、各線形アレイの1つ又は複数のキュービットは、少なくとも1つの近接する線形アレイの1つ又は複数のキュービットと直接的に相互作用するように構成される。QCシステムは、幾何学的角柱(例えば、三角柱、立方体、五角柱、六角柱、七角柱、八角柱など)の辺/稜線として共通の長手方向軸の周りに共に整列される2つ以上の1D格子配列層(例えば、線形トラップ、基板)の間の領域内に位置付けられる複数のマルチ・キュービット・ゲートとして配置される複数のキュービットを備えるマルチ・キュービット・ゲート・アレイを備えることができる。例えば、マルチ・キュービット・ゲート・アレイのキュービットは、基板又はトラップ領域の表面において又はその付近にイオンを包含するように構成される電極トラップを備えることができ(例えば、Stick, D.他「Ion Trap in a Semiconductor Chip」Nature Phys 2, 36-39 (2006)、Maunz, P.「Characterization of a High-Optical-Access surface trap optimized for quantum information processing」online charts (2015)を参照されたい)、複数のこれらの基板又はトラップ領域が、複数の線形アレイ内に実質的に配置することができ、少なくとも1つの線形アレイのキュービットの少なくとも一部は、少なくとも1つの他の(例えば、近接する)線形アレイのキュービットの少なくとも一部と相互作用する(例えば、量子力学的にエンタングルされる)ように構成される。
【0014】
本明細書において開示される特定の実施態様は、互いに実質的に平行である複数の原子トラップ領域(例えば、1Dトラップ、線形表面トラップ)内に実質的に配置される複数のキュービットを備えるQCシステムを提供し、QCシステムは、トラップ領域の間及び/又はその中の領域内に位置付けられている複数のマルチ・キュービット・ゲートとして配置される複数のキュービットを備えるマルチ・キュービット3Dゲート・アレイを更に備えることができる。例えば、マルチ・キュービット・ゲート・アレイのキュービットは、イオン(例えば、荷電原子、荷電分子)、中性原子(例えば、非荷電原子、Rydberg状態)、又は他のキュービット種を含む原子キュービットを包含するように構成される1Dトラップ・アレイを含むことができる。原子キュービットの例において、原子は、ポテンシャル井戸の中にトラップされ、ポテンシャル井戸は、トラップ領域又は格子のうちの少なくとも1つの表面において又はその付近に生成され得て、複数の実質的に平行なトラップ・アレイ領域内に実質的に配置され得て、少なくとも1つの1Dトラップ・アレイ層のキュービットの少なくとも一部は、少なくとも1つの他の(例えば、近接する)実質的に平行なトラップ・アレイ領域のキュービットの少なくとも一部と直接的に相互作用する(例えば、量子力学的にエンタングルされる)ように構成される。
【0015】
本明細書に記載されるQCシステムの実施態様の各々において、セルごとの複数のキュービットの対称又は等辺結合配置は、より複雑な量子ゲートが単一のゲート動作において実施されることを可能し得て、付加的に、回路深度、エラー補正及び干渉軽減の要件を低減し得る。相互交換可能構成要素セルは、量子FPGA(QFPGA)及びASIC(QASIC)レイアウト(例えば、チップ)を可能にし得て、高度に再構成可能とすることができる。
【0016】
本明細書に記載されるQCシステムの特定の実施態様は、有利には、1次元(1D)レイアウトを使用して提供されるよりも多くのキュービット及び/又はキュービット・ゲートが計算に使用されることを容易にする、キュービット及び/又はキュービット・ゲートの3次元(3D)レイアウトを提供する。例えば、本明細書に記載される特定の実施態様は、各キュービットのアドレス指定、操作、制御、読み出し、及び、場合によってサイドバンド冷却のための電気接続及び光学経路を容易にするための十分な間隔を提供し、見通し線アクセス角度を提供しながら、各々が複数のイオン(例えば、3つ以上の同時エンタングルド(もつれ)イオン)を含む、キュービット・ゲートの3Dレイアウトを提供する。
【0017】
キュービットの特定の配置又はセットは、任意のキュービットが、セット内の任意の他のキュービットと直接的に量子力学的にエンタングルされることを可能にし、これらのキュービットは、「完全接続」されるものとして説明することができる。さらに、1次元線形イオン・トラップ内で完全接続されるイオンを含む少数のキュービットが、対になって接続されるに過ぎない同じ数のキュービットが可能であるよりも明らかに大きい潜在的な処理能力を実証することができる(例えば、N.M. Linke他「Experimental comparison of two quantum computing architectures」PNAS, Vol. 114, no.13 (2017)参照)。
【0018】
過去20年にわたって実証される量子コンピューティング(QC)設計は、量子コンピュータが古典的コンピュータにおいてそれに対応するものよりもどれだけ早く性能を凌駕するかにおいて最も影響を与えるパラメータは、単純に、何らかの様式で共に配線されるキュービットの数に基づくものではないことを示している。これは、回路モデルQCハードウェアにより大きい関心度が寄せられていることによって例示され、これは多くの場合、単一ゲート動作を実施しない優れた量子アニーリング手法によって主張される100個よりも少ないキュービットを有する。そのようなシステムの実証される性能は、キュービットフィデリティ(例えば、システムがゲート動作を実施することができる精密さ)、キュービットが相互接続される方法、及び、キュービットが難題に対する解を計算するために協働することを可能にするために使用されるオーバーヘッドの量に行き着いている。
【0019】
1キュービット・ゲートは、単純に、キュービット自体を「0」から「1」に反転させること、又は、「0」及び「1」の特殊な量子重ね合わせを伴う。2キュービット・ゲートは、それらのキュービットのうちの一方に対して行われる一切のことが他方に影響を与えるように、量子エンタングルメントと組み合わされた重ね合わせを使用して、2つのキュービットを接続する。そのような2キュービット・ゲートにおいて、ターゲットキュービットは、状態「0」又は状態「1」から開始してもよく、「0」及び「1」の任意の重ね合わせ(例えば、「0」と「1」との中間)にあることができる。例えば、量子制御式NOT(CNOT)ゲートの機能は、制御キュービットが状態「1」にある場合にターゲットキュービットを反転させることであり、それ以外の場合は何もしない。1又は2キュービット・ゲートは、直接的に多くの異なる量子ゲートに基づくアーキテクチャに実装することができる。より複雑なゲート動作について、一度に3つ以上のキュービットをエンタングルさせることができる実施態様は、キュービットの総数、及び、それらを組み込む動作及びアルゴリズムを実行するために実施されるステップの総数に重大な影響を及ぼし得る(例えば、C. Figgatt他「Parallel entangling operations on a universal ion-trap quantum computer」Nature, Vol. 571 (2019)、Y. Lu他「Global entangling gates on arbitrary qubits」Nature, Vol. 571 (2019)参照)。事前に使用されるキュービット及びステップの数の明らかな低減は、場合によっては、成功結果を達成するためのオーバーヘッドの劇的な低減をもたらすことができる。1つの例は、時間に関してさえも、多大なエラー補正なく、付属物を少なくして、そうでなければ解決困難な問題に対する解を与えることができるプロトタイプ実証である。
【0020】
本明細書に記載される特定の実施態様は、複数の完全接続、高フィデリティキュービットを使用する。そのような特定の実施態様の利点(例えば、1及び2キュービット・ゲートの組み合わせの使用とは対照的に、特定の量子ゲート動作がどれだけはるかに効率的であり得るか)は、4つの完全接続、高フィデリティキュービットを備える例示的な量子三重制御式NOT(C3NOT)ゲートを考慮することによって例示することができる。C3NOTゲートはまた、super-Toffoliゲートとも呼ばれる。この例示的なC3NOTゲートにおいて、第4のターゲットキュービットを「1」から「0」に反転させるためには、3つの制御キュービットがすべて指定の状態(例えば、「1、1、1」)になければならない。1つ又は複数の単一キュービット・ゲート動作と組み合わせると、そのようなマルチ・キュービット量子ゲートは、量子コンピューティングのための普遍的なセットを完成させるために使用することができる。多重制御式NOTゲートは、参考文献において、一般に、1及び2キュービット・ゲート動作の拡張された系列を含むものとして説明される(例えば、M.A. Nielsen及びI.L. Chuang「Quantum Computing and Quantum Information」1st ed. (Cambridge Univ. Press, 2000)参照)。物理実施態様においてこれらの1及び2キュービット・ゲート系列が更により増大する範囲は、使用されるキュービットのタイプ、及び、互いに完全接続し、エンタングルされ得るキュービットの数に依存する。しかしながら、適切な物理レイアウトにおいて、4つの完全接続し、多重にエンタングルされたイオンを同時に使用して実装されるC3NOTゲートは、1及び2キュービット・ゲートのみを用いて実装されるC3NOTゲートにおいて使用される量子ゲート動作の数のうちのわずかな分数を用いて構成することができる。これは、より単純なC2NOT Toffoliゲートの実装について記載される方法の拡張によって開始することによって行うことができ(例えば、J.I. Cirac及びP. Zoller「Quantum Computations with Cold Trapped Ions」Phys. Rev. Lett. Vol. 74 (20) (1995)参照)、後に実証することができる(例えば、T. Monz他「Realization of the Quantum Toffoli gate with Trapped Ions」Phys. Rev. Lett. Vol. 102, 040501 (2009)参照)。3キュービットC2NOT実施態様は、たとえ、1及び2キュービット・ゲートの個々のフィデリティがはるかに高い場合であっても、ゲート誤差が集約されることに起因して、1及び2キュービット・ゲートの連結にまさる正味のフィデリティの向上をもたらしながら、ゲート動作全体を完了するのに必要な寄与ゲートの数及び時間の著しい低減をすでに呈している。この3キュービット・ゲートは、幾何学的対称性に関する強い要件なしに、単一の線形トラップにおいて実現することができる。対照的に、本明細書に記載される特定の実施態様は、本明細書に記載される設計の完全な3D対称性を利用することによって、CnNOTゲートを提供する。このように、上記で参照した改善した効率の例は、それらを実装するために必要とされる量子ゲートの付随する低減を通じて、各CnNOTゲート内の制御の数に従って大幅に拡大され得る。相回転を含む、他の多重制御式ゲート動作は、同時に3つ以上のエンタングルされたキュービットを伴う物理構成を使用して、同様の効率改善を呈することができる。これらの事前の改善は、エラー補正を大幅に低減することができる。
【0021】
最高品質のキュービットでさえも、顕著なエラー率を呈する。これは、キュービットごとに見ればわずかであり得るが、アルゴリズムを実行するために使用されるゲートの数によって拡大され得る。信頼可能な結果を与える機会が妥当な量子動作のさらに小さいセットを実施するためにエラー補正が必要である場合に、集約エラー率が閾値に達すると、アーキテクチャの効率が、エラー補正に必要とされるオーバーヘッドの量に比例して即座に低下する。
【0022】
論理演算を実施するように意図された数百個の相対的に高品質のキュービットを有する小規模な量子コンピュータについて、エラー補正キュービット+付属物のオーバーヘッドは、1桁又は概ね10倍のキュービット数の増大を表し得、比例して効率が低減する。より大規模なシステムについて、オーバーヘッドは、さらに数桁増大し得る。しかしながら、本明細書に記載される特定の実施態様において、完全接続、高品質キュービットの集約効率から受益し、マルチ・キュービット・ゲート動作(例えば、多次元幾何形状を利用することによってネイティブに実施される)を利用する量子コンピュータは、著しくより少ないステップ及び総数が著しくより少ないキュービットを使用することができる。本明細書において使用される場合、「ネイティブ」ゲート動作という用語は、幾何学的レイアウトによって、同時に3つ以上のキュービットが参加することができることを示す。本明細書に記載される特定のネイティブ・マルチ・キュービット・ゲート実施態様は、有利には、多大なエラー補正オーバーヘッドを使用することなく、アルゴリズムを実施することができる。加えて、オーバーヘッドの低減に起因する全体的な設計効率の大幅な改善は、基本量子コンピューティング・アルゴリズム又はサブルーチンを実施することと、古典的コンピューティング・システムと比較して増大した速度で実際的な有用性を示すことの両方を実施するために、数桁少ない量子リソースを使用して達成することができる。
【0023】
今まで、トラップ・イオンを使用するほとんどのQCシステムは、1次元(例えば、線形)トラップを利用し、これらはその後、電気的に又はフォトニックに相互接続することができる(例えば、米国特許第9,858,531号、Debnath他「Demonstration of a small programmable quantum computer with atomic qubits」Nature, Vol. 536, p. 63 (2016)参照)。そのような1Dトラップは、線形なキュービット・チェーンが、共通のポテンシャル井戸又はトラップ・ゾーン内で完全接続されることを可能にする。完全接続の程度は、線形チェーンの対向する端点にある又はその付近のキュービット間の結合強度が弱くなりすぎて信頼可能なマルチ・キュービット・ゲート動作に使用可能でなくなる前に共にチェーン接続することができるキュービットの数によって制限され、そのため、制限された強度の複数の線形トラップ間に相互接続を作成することが望ましい可能性がある。例えば、キュービット状態をイオンから光子に転送し、次いで、光子を別の線形トラップに送り込み、そこで、量子状態が別のイオンに転送されることによって、光相互接続を利用することができる。そのようなプロセスに一般的に使用される1つのタイプのプロトコルは、「量子テレポーテーション」と称される。そのような相互接続は、時間遅延及び変換(例えば、トラップ・イオン・キュービットから光子及び第2のトラップ・イオンへの)の潜在的な非効率性を付与する。本明細書に記載される特定の実施態様は、有利には、光相互接続を有する線形又は2D要素を使用して効率的に行うことができるよりも直接的なキュービット間相互作用を同時に最適化するための代替の構成を提供する。より多数のキュービットに拡大すると、特定のそのような実施態様は、有利には、それらの関連付けられるペナルティ(例えば、時間遅延、イオン-光子変換損失)と共に、ノード間の光相互接続の数を低減するか、又は、それに歯止めをかけることができる。
【0024】
いくつかのトラップ・イオン手法及び超伝導キュービット(SCQ)方式に対して、矩形2次元(2D)グリッド構成が以前に採用されている。しかしながら、キュービット間の相互作用は、トラップ・イオン・グリッド・レーン内で(例えば、交差部を通じてレーンの内外にキュービットを往復させることによって)行われる1及び2キュービット動作に制限される。そのような手法は、通常、アルゴリズムの実行に成功する確率を使用可能なレベルまで上昇させるために、耐障害度を追加するための著しい冗長性に依拠する。例えば、いくつかの手法は、多くのキュービットの間で単一の1又は2キュービット動作を冗長に実行し、次いで、誤差を低減するために平均化するために、グリッド内で整列された交差部の内外に往復させられる、キュービットのアンサンブルのグローバルなアドレス指定を使用する。十分なフィデリティで単一の論理演算を実行するための冗長キュービットの数に関する、そのような手法におけるオーバーヘッドは、量子コンピュータによって実施される論理演算のスケールと共に急速に増加する。逆に、本明細書に記載される特定の実施態様において、3つ以上のキュービット間のエンタングルメントは、2次元以上の次元で配置されるキュービットを、同時に作用させ、直接的に又はネイティブにマルチ・キュービット・ゲート動作を実行させることによって可能にされる。
【0025】
最近接キュービットと第二近接キュービットとの間の高い接続性(例えば、完全接続、多対多接続)を有する高フィデリティトラップ・イオン構成をスケール・アップする能力は、それらの間の相互作用物理特性によって制限される。例えば、結合強度は、イオン間距離(d)に大きく依存し、結合強度又は交換周波数Ωexは、以下の式に示すように、1/d3で低下する。
【0026】
【0027】
式中、Ωexchは交換周波数又は結合強度であり、2つ以上のイオン種が使用され得るほとんどの一般的な事例について、q1は、ここではポテンシャル井戸「1」として識別される、第1の電位井戸内のイオンの電荷であり、q2は、ここではポテンシャル井戸「2」として識別される、第2の電位井戸内のイオンの電荷であり、m1及びm2はそれぞれポテンシャル井戸1及び2内のイオンの質量であり、ω1及びω2はそれぞれポテンシャル井戸1及び2の周波数であり、dはイオン間の距離である(例えば、D.J. Wineland他、J. Res. Natl. Inst. Stand. Technol. Vol. 103, 259 (1998)参照)。2Dレイアウトにおいて、ゲート動作のためにトラップ・イオンを制御するための表面電極の密集は、有効なゲート相互作用のために十分に強い結合を依然として可能にしながら、イオン・トラップ・ゾーンをどれだけ緊密に共に配置することができるかを制限する、複数の表面電極、及び、その電位井戸内のイオンの完全制御を提供するフィード・ラインの面積に起因して上昇し得る。今までの1Dトラップにおいては、単一のポテンシャル井戸内の線形チェーン内で数マイクロメートル離間した最大約25個のイオンを、直接的に結合し、典型的には選択可能な対ごとの組み合わせにおいて、有効なゲート動作に使用することができる。より長いイオン・チェーンを実験室内で形成することができるが、キュービット間の間隔はさらに3~4マイクロメートルのみであり、以前の研究において25個を超えるトラップ・イオンの1Dチェーンの対向する端部のイオン間で有効な2キュービット・ゲート動作を実施することは、別個の線形トラップ間の光又は他のタイプの相互接続に依拠することを必要とした。別個のトラップ内のキュービット間のエンタングルメントは、一連のスワッピング動作、1つのキュービット・タイプ又は種から別のキュービット・タイプ又は種への変換(例えばイオンから光子へ、及びその逆、異なるイオン種)、及び/又は光相互接続によって実行されるが、これらは、重大な時間遅延及び非効率性を付与する。
【0028】
本明細書に記載される特定の実施態様は、有利には、ネットワーク化された又は光相互接続された1Dイオン・トラップからスケール・アップされたゲート・モデルQC構造を設計するときに急激に増加し、非常に困難で実行不可能に見える、追加のハードウェア課題に対するソリューションを容易にする。例えば、本明細書に記載される特定の実施態様は、各キュービットのアドレス指定、操作、読み出し、及び場合によってサイドバンド冷却のために、光学素子(例えば、レーザ、光ポート、ファイバ、検出器)をQC構造に組み込み、3つの次元にまたがる複数のキュービット間の同時エンタングルメントを有利に可能にする見通し線アクセス角度を提供する。
【0029】
本明細書に記載される特定の実施態様は、有利には、最適な数の近接キュービット間の同時エンタングルメントを可能にすることによって、複雑な量子アルゴリズムを直接的に「書き込み」、実行することを可能にするスケーラブルなハードウェア構成を提供する。特定の実施態様において、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などの従来のファームウェアと類似の、多次元量子ゲート実施態様を、マルチ・キュービット・ゲートの形態で直接的に書き込むことができ、柔軟に再プログラミングすることができる。
【0030】
本明細書に記載される特定の実施対応は、有利には、多重制御式量子ゲート動作が、多次元幾何形状を利用することによってネイティブに実行されることを可能にする。特定の実施態様において、量子ゲート動作は、量子ファームウェア・プラットフォーム上で、最小数のステップにおいて(例えば、多重制御式NOT動作を実行するために1及び2キュービット・ゲート動作の連結に依拠することなく)実行される。
【0031】
本明細書に記載される特定の実施態様は、有利には、普遍的な量子コンピューティングを可能にするために回路モデル・アーキテクチャにおいて各キュービットの完全制御及び読み出しのために電気及び光チャネルを組み込むことによって、量子ファームウェア・プラットフォームが必要に応じてスケール・アップされることを可能にする実現可能な工学構成を提供する。
【0032】
本明細書に記載される特定の実施態様は、有利には、最適な数のキュービットが最近接、第二近接、及び場合によってそれを超える間で同時にエンタングルされることを可能にするように構成される多層量子コンピューティング構造を提供する。特定のそのような実施態様は、スケーラブル量子プロセッサにおけるキュービットのアドレス指定、制御、及び読み出しのための電気及び光アクセス・チャネルを含む。例えば、完全接続されるキュービットのアレイは、有利には、(例えば、利用されるキュービットのタイプ又はそれらのレイアウトに起因して)エンタングルドゲート動作が特定の対に限定される他の設計が行うよりも効率的で柔軟な、ハードウェア内で量子アルゴリズムを実行するための選択肢を提供する。この改善された効率及び柔軟性は、アレイ内のキュービットの数と共に急激に増加し得る。
【0033】
本明細書に記載される特定の実施態様は、有利にはまた、一度に3つ以上のキュービットを伴うゲート動作を実施することの可能であり、以て、(例えば、数十個のそれらのゲートを1つの4キュービット・ゲートに置き換えることによって)1及び2キュービット・ゲートに制限されている以前の設計にまさる大幅な効率改善を提供する。本明細書に記載される特定の実施態様は、有利には、トラップ・イオンを使用した1及び2次元幾何形状に見出される接続の制限を克服する。例えば、キュービット・アレイ間の直接接続(例えば、エンタングルメント)によってキュービットを複数のキュービット・アレイ(例えば、複数の共に整列される線形キュービット・アレイ)に配列することによって、1Dチェーン内の数十個の制限された数のイオンからスケール・アップし続けるために、イオン・キュービットから光子キュービットへの、及び、再び逆の変換の重大な時間遅延及び非効率性の問題を解決することができる。
【0034】
本明細書に記載される特定の実施態様は、有利には、第1の表面の上方にトラップされる第1のイオン・セット及び第2の表面の下方にトラップされる第2のイオン・セットを利用し、第2の表面は、第1の表面に対向し、第1のイオン・セットの少なくともいくつかのイオンは、第2のイオン・セットの少なくともいくつかのイオンとエンタングルされる。第1のトラップ・イオン・セット及び第2のトラップ・イオン・セットを組み込み、インターリーブすることによって、及び、キュービット・ゲートの頂点にあるイオンに対してキュービット・ゲートの中心イオンのトラップ位置(例えば、高さ、長手方向又は横方向位置)を調整することによって、特定の実施態様は、有利には、複雑な3D結晶構造(例えば、パイロクロア)に類似した多次元もつれ幾何形状を提供する。加えて、特定の実施態様の第1の表面と第2の表面との間の空間は、有利には、キュービットをグローバルに又はローカルにアドレス指定するための側面から光アクセス、及び、検出器による読み出しのための光アクセスを提供する。重力は、トラップ・イオンに対する支配力ではないため、構成全体を、任意の角度に向けることができる(例えば、90度、45度の傾斜など)。他のタイプのキュービットについて、トラップ・イオンのこの一般的な方向無感受性は、同程度まで適用されない場合があり、他のタイプのキュービットは、向きの選択肢を限定する場合がある。
【0035】
[例示的な実施態様]
本明細書に記載される特定の実施態様は、3D結晶構造(例えば、パイロクロア)に類似し得る、キュービットの多次元セルを利用する。特定の実施態様において、3Dセルは、例えば、実質的に平行な1Dトラップ・ゾーン/チャネル間の3D空間内で対称に形成することができる。特定の実施態様は、ゲートごとに多くのキュービットを利用し、有利には、回路深度、エラー補正及び干渉軽減の要件を低減(例えば、最小化)する。特定の実施態様は、量子FPGA(QFPGA)及び量子ASIC(QASIC)チップを有利に可能にすることができる相互交換可能構成要素セルを利用する。
【0036】
特定の実施態様の物理構成が、高フィデリティトラップ・イオン・キュービット(例えば、エラー率が低い)を使用するものとして本明細書に記載されるが、複数の他のキュービットと同時に複数の次元においてエンタングルされ得る任意のタイプのキュービット(例えば、自然に発生する、人工的に形成される)を、本明細書に記載される特定の実施態様に従って使用することができる。本明細書に記載される特定の実施態様に適合するキュービットの例は、亜原子粒子、中性原子、イオン、中性分子、荷電分子、ボーズ・アインシュタイン凝縮体、電子、電子ホール、励起子、磁気キュービット、ダイヤモンドの窒素欠陥中心、フォノン、光子、量子ドット、Rydberg原子、シリコン中のスピン、及び、場合によっては超伝導キュービットを含むが、これらに限定されない。特定の実施態様において、キュービットは、指定の構成において3つ以上のキュービット間でゲート動作を直接的に(例えば、ネイティブに)実行するのに適している。例えば、特定の実施態様の物理アーキテクチャは、有利には、1及び2キュービット・ゲートの直列連結に依拠することなく、多重制御式NOT又は相回転などの複雑なゲート動作を直接的に提供することができる。
【0037】
本明細書に記載される特定の実施態様に利用されるトラップ・イオン・キュービットは、最適化されるべき量子相互作用の性質を示す。トラップ・イオンが呈するゲルマン性能指数は、(i)それらが所与の種の中で同一であり、したがって、多大な較正又はチューニングを有利に回避することができるという事実、(ii)非常に長寿命の安定性を有するキュービットを形成することができること、及び(iii)競合するキュービット技術と比較して、持続する実証された高フィデリティゲート動作を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載される特定の実施態様において、複数の同一の完全接続キュービットの3D幾何学レイアウトに配列されるイオンによって、同時マルチ・キュービット・ゲート動作が可能にされ得る。特定の実施態様において、完全接続キュービットの3D幾何学レイアウトは、有利には、2つ以上のキュービット・タイプを組み込むことができる(例えば、複数の制御キュービットのための1つの種のイオン、及び、ターゲットとしての第2のイオン種を利用する、近接セルに対して異なるイオン種を利用する)。
【0038】
線形(1D)表面トラップ・キュービット(例えば、イオン)は、典型的には、電極表面から数十マイクロメートルの距離に中心が置かれるように設計される電位井戸にトラップされる。電極からのキュービットの距離並びにトラップの長軸に沿った線形的な個々のキュービットの移動及び配置は、トラップ領域を含むDC及びRF電極に印加される電圧によって制御され得る(例えば、Stick 2006参照)。DC電圧、RF周波数及び/又は他の電気的設定は、キュービットの特定の特性(例えば、選択されるイオン種の質量)に従って、ノイズに起因する(例えば、加熱、RF干渉、漂遊磁場に起因する)エラーの最小化を含め、量子ゲート性能を最適化するように調整され得る。別の電位井戸又はRFヌル領域(「補助的(ancillary)」又は「偶発的(serendipitous)」と称されることがある)が、各表面(例えば、基板)から概ね2倍の距離に形成することができ(例えば、M. Mielenz他「Arrays of individually controlled ions suitable for two-dimensional quantum simulations」Nature Communications, 7:11839 (2016)参照)、ロード・ゾーン(loading zone)として使用される。特定の実施態様において、基板領域は、電気絶縁体及び/又は半導体(例えば、二酸化ケイ素、ケイ素)チップの一部分を含み、電気トレースの少なくとも一部は、電極領域の電極と電気的に通信することができる。他の電気トレースの少なくとも一部は、他の近接キュービットの部分の電極領域の電極と電気的に通信することができる。例えば、電気トレース及び電極領域内の電極は、基板領域の表面上に堆積される導電性材料(例えば、アルミニウム、銅、金)を含むことができ、導電性材料を汚染物質及び/又は腐食から密封してシールするように構成される少なくとも1つの密封コーティングを含むことができる。電極領域の電極は、平坦な基板両領域から(例えば、基板領域に実質的に垂直な方向において)離間される位置に単一のイオン又はイオンの線形チェーンを包含する(例えば、浮遊させる、トラップする)ように構成される電位井戸を生成するように構成することができる。
【0039】
図1A~
図4Dは、本明細書に記載される特定の実施態様による、1D線形トラップ領域間に形成され、電位井戸を使用して、他のトラップ・イオンとエンタングルされるイオンをトラップする例示的なマルチ・キュービット・ゲートの様々な態様を概略的に示す。垂直の向きは必要とされず、そのため、「上部」及び「下部」という用語は使用されない。本明細書に記載される特定の実施態様において、複数の線形トラップ領域が、共に整列され、結果、第1のトラップ領域からの2つ以上のキュービットが、第2の、第3の、第4の、第5の、第6の、第7の、などの、共に整列されるトラップ領域における2つ以上のキュービットと、及び/又は、他の共に整列されるトラップ領域におけるキュービットと、同時に直接的に相互作用する(例えば、エンタングルされる)ことができる。本明細書に記載される特定の実施態様において、偶発的(例えば、補助的)トラップ・ゾーンが、必要に応じて、トラップ電極からの最適な距離、角柱格子層間のキュービットのインターリーブ(例えば、三角柱格子、立方体角柱格子、五角柱格子、六角柱格子などへの)を可能にするためのトラップの長軸に沿った線形変位配置、及び、最適な運動安定性のための適切な調整を施してゲート動作のための追加の意図されるトラップ・ゾーンとして使用することができる。
【0040】
特定の実施態様において、量子コンピューティング(QC)システムは、互いに実質的に平行である長手方向軸を有する複数の実質的に線形な領域内に配置される複数のキュービットを備え、実質的に線形な領域の少なくとも一部は、2つ以上のキュービットを備え、各実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットは、少なくとも1つの他の実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットと相互作用するように構成される。例えば、複数の実質的に線形な領域は、中心長手方向軸を有する中心線形領域を備えることができ、中心長手方向軸に沿って、中心線形領域の中心キュービットが配置される。複数の実質的に線形な領域は、対応する外側長手方向軸を有する少なくとも1つの外側線形領域をさらに備えることができ、外側長手方向軸に沿って、外側線形領域の外側キュービットが配置される。
【0041】
特定の実施態様において、少なくとも1つの外側の実質的に線形な領域は、各々が対応する外側長手方向軸を有する少なくとも2つの外側の実質的に線形な領域を備え、外側長手方向軸に沿って、外側の実質的に線形な領域の外側キュービットが配置される。中心長手方向軸は、外側長手方向軸の各々から離間することができ、外側長手方向軸の各々に実質的に平行にすることができ、外側長手方向軸の各々は、中心長手方向軸を中心とした異なる方位角位置にある。外側線形領域は、対応する電極表面に最も近い電位井戸から形成することができ、中心線形領域は、外側線形領域を形成する電位井戸に対応する偶発的トラップ・ゾーン又はRFヌル領域から形成することができ、外側線形領域のアライメント及び離間は、それらの対応する偶発的トラップ・ゾーン又はRFヌル領域が重なり合う(例えば、平行な線形領域の対称アライメントの中心において)ように設計される。例えば、外側長手方向軸の各々は、共通の(例えば、重なり合う)中心長手方向軸から実質的に等距離に、平行に離間することができ、それぞれの外側長手方向軸の中心線は、2D平面又は3D幾何角柱のいずれかを形成するために、共通の中心長手方向軸を中心として(例えば、等しい方位角において)対称に配置することができる。
【0042】
例えば、2つの外側長手方向軸は、中心長手方向軸を中心とした約180度の方位角だけ互いから離れることができる(例えば、2つの外側線形領域は、中心長手方向軸の対向する両側にあり、中心長手方向軸と同一平面上にある2つの外側長手方向軸を有する)。他の例として、3つの外側長手方向軸が、中心長手方向軸を中心とした約120度の方位角だけ互いから離れることができ(例えば、3つの外側線形領域は、3つの外側長手方向軸を有する)、4つの外側長手方向軸が、中心長手方向軸を中心とした約90度又は約180度の方位角だけ互いから離れることができ(例えば、4つの外側線形領域は、4つの外側長手方向軸を有する)、5つの外側長手方向軸が、中心長手方向軸を中心とした約72度又は約144度の方位角だけ互いから離れることができ(例えば、5つの外側線形領域は、5つの外側長手方向軸を有する)、6つの外側長手方向軸が、中心長手方向軸を中心とした約60度、約120度、又は約180の方位角だけ互いから離れることができる(例えば、6つの外側線形領域は、6つの外側長手方向軸を有する)。
【0043】
図1A~
図1Bは、本明細書に記載される特定の実施態様による複数の実質的に線形な領域内に配置される複数のキュービット105を備える例示的なQCシステム100の、それぞれ横から見たサイド・アングル図及び側面図を概略的に示す。
図1Cは、本明細書に記載される特定の実施態様による複数の実質的に線形な領域内に配置される複数のキュービット105’を備える別の例示的なQCシステム100’の横から見たサイド・アングル図を概略的に示す。
【0044】
図1A~
図1Bの複数のキュービット105は、複数のグループ、すなわち、中心の実質的に線形な領域110内に配置されるキュービット112の中心グループ、第1の外側の実質的に線形な領域120内に配置されるキュービット122の第1の外側グループ、及び、第2の外側の実質的に線形な領域130内に配置されるキュービット132の第2の外側グループにグループ化される。
図1A~
図1Bに示すように、第1の外側の実質的に線形な領域120内で、キュービット122の第1の外側グループ(例えば、第1の外側キュービット・トラップ・ゾーン内の)は、第1の基板118の第1の実質的に線形な表面トラップ116の上方の実質的に線形なチェーン内に配置されており、キュービット132の第2の外側グループ(例えば、第2の外側キュービット・トラップ・ゾーン内の)は、第1の外側領域120に実質的に平行であり、第2の基板128の第2の実質的に線形な表面トラップ126の下方の実質的に線形なチェーン内に配置される。キュービット112の中心グループは、第1の外側領域120に実質的に平行であり、第1の外側領域120と第2の外側領域130との間の実質的に線形なチェーン内に配置される。中心の実質的に線形な領域110は、第1の実質的に線形な表面トラップ116及び第2の実質的に線形な表面トラップ126によって生成される偶発的トラップ・領域を含む。
【0045】
図1Cの複数のキュービット105’は、実質的に線形な領域110’内の実質的に線形なチェーン内に配置されるキュービット112’の1つのグループ、及び、実質的に線形な領域110’に実質的に平行な実質的に線形な領域120’内の実質的に線形なチェーン内に配置されるキュービット122’の別のグループにグループ化される。
図1Cに示すように、キュービット112’、キュービット122’の両方のグループは、第1の基板118’の実質的に線形な表面トラップ116’と第2の基板128’の第2の実質的に線形な表面トラップ126’との間にある。実質的に線形な領域110’は、表面トラップ126’によって生成される一次トラップ領域と、表面トラップ116’によって生成される、重複する偶発的トラップ領域とを含み、実質的に線形な領域120’は、表面トラップ116’によって生成される一次トラップ領域と、表面トラップ126’によって生成される、重複する偶発的トラップ領域とを含む。
【0046】
特定の実施態様において、複数のキュービット105、105’は、表面トラップ116、126、116’、126’の電極に印加される電圧によって生成される、対応する電位井戸内に閉じ込められる(例えば、トラップされる)イオンを含む。本明細書に記載される特定の実施態様と適合するイオンの例は、Ba+、Be+、Cd+、Ca+、Mg+、Hg+、Sr+、Yb+を含むが、これらに限定されない。特定の他の実施態様において、非荷電原子(例えば、中性原子、Rydberg状態)などの代替的なキュービット技術を使用することができる。
【0047】
図1A~
図1Bは、3つの次元にまたがる複数の同時エンタングルド(もつれ)キュービットのゲートに共に整列されており、その中に配列されており、ネイティブに、多重制御式ゲート動作を一意に可能にすることができる(例えば、幾何学的対称性を利用することによって)、線形トラップ(例えば、1Dトラップ)によって少なくとも部分的に閉じ込められているキュービット105の線形チェーンの例示的な構成を示す。
図1A~
図1Bの構成は、構築ブロックとしての2つの例示的な線形表面トラップ116、126によって開始することによって概念化することができる。
図1A~
図1Bに示すように、線形表面トラップ116、126のうちの一方を他方の上に反転させ、各線形トラップ116、126に最も近い設計された電位井戸内にイオンの線形チェーンを浮遊させることによって、各チェーン内のイオン(例えば、キュービット122、132)を、同じチェーン内の他のイオン及び隣接するチェーン内のイオンの両方と相互作用する(例えば、エンタングルされる)ように配置することができる。本明細書に記載される特定の実施態様において、共に整列される外側線形領域120、130間の距離は、有利には、線形表面トラップ116から、第1の外側(例えば、設計された)トラップ・ゾーン又はRFヌルの概ね2倍の距離に自然発生する、「偶発的」トラップ・ゾーン又はRFヌルが、線形表面トラップ126から、第2の外側(例えば、設計された)トラップ・ゾーン又はRFヌルの概ね2倍の距離に自然発生する、別の「偶発的」トラップ・ゾーン又はRFヌルと重なり合うように、調整することができる。特定の実施態様において、これらの重複する偶発的ゾーンは、第1の外側線形領域120及び第2の外側線形領域130(例えば、トラップ・ゾーン)に隣接し、それらからほぼ等距離にある中心線形領域110(例えば、中央又は中心線形トラップ領域)を形成するために利用することができる。特定の実施態様において、第1の外側線形領域120及び第2の外側線形領域130の2つの外側長手方向軸124、134は、中心線形領域110の中心長手方向軸114を中心とした180度の方位角だけ互いから分離される(例えば、第1の外側線形領域120及び第2の外側線形領域130は、中心長手方向軸114の対向する両側にあり、中心長手方向軸114と同一平面上にある2つの外側長手方向軸124、134を有する)。
【0048】
本明細書に記載される特定の実施態様において、中心線形領域110、第1の外側線形領域120、及び第2の外側線形領域130の間でキュービットに対して実施されるべきである意図される量子ゲート動作(例えば、マルチ・キュービット・ゲートのための)に応じて、追加の制御及び安定性のために、追加の電極及び/又は電圧調整を組み込むことができる。本明細書に記載される特定の実施態様において、トラップの長軸に沿って上方(及び下方)にトラップされるキュービットの線形変位配置の適切な調整は、3つ以上の次元にまたがって同時にエンタングルされる3つ以上のキュービットを伴う多重制御式量子ゲート動作をネイティブに実施することを目的として、正三角形、六角形及び他の対称最近接エンタングルメント接続が2次元又は3つ以上の次元(例えば、
図2A~
図2E、
図3A~
図3C、
図4A~
図4Dに示すように)において有利に形成されることを可能にするために、キュービットを層間で三角形格子にインターリーブすることを可能にする。例えば、
図1A~
図1Bは、平面内で接続される2つのC
6NOTゲートとして最近接接続を最適化する2つの接続された7キュービット六角形セルを一例として示す。
【0049】
本明細書に記載される特定の実施態様において、QCシステム100は、3D構成を形成するための3つ以上の線形表面トラップを備える。これらの3D構成において、3つ以上の線形表面トラップの各々に最も近い線形領域は、互いに実質的に平行であり、3つ以上の線形表面トラップの偶発的線形領域は、互いに共に整列されており(例えば、同一直線上にあり)、3つ以上の線形表面トラップ(例えば、中心線形トラップ領域の長手方向軸に対して異なる方位角位置にある長手方向軸を有する)の各々に最も近い外側線形領域に隣接する単一の中心線形トラップ領域を形成する。本明細書に記載されるように、近接する外側線形トラップ領域の長手方向軸間の方位角は、複数の線形トラップ領域のキュービットに対して実施されるべきである、意図される量子ゲート動作(例えば、マルチ・キュービット・ゲートのための)に応じて、中心線形トラップ領域(例えば、線形表面トラップの偶発的トラップ・ゾーン)の追加の制御及び安定性のために幾何角柱を形成するように調整することができる。
【0050】
図2A~
図2Bは、本明細書に記載される特定の実施態様による例示的な三角柱アレイ200の、それぞれ分解斜視図及び分解側面図を概略的に示し、
図2C~
図2Dは、それぞれ、その組み立て斜視図及び組み立て側面図を概略的に示す。例示的な三角柱アレイ200は、中心長手方向軸214を有する中心線形領域210(例えば、キュービット212の中心グループ又はチェーンを含む中心トラップ領域)を含む複数の実質的に線形な領域内の複数のキュービット205を含む。例示的な三角柱アレイ200は、互いに、及び、中心長手方向軸214に実質的に平行である外側長手方向軸224、234、244を有する3つの外側線形領域220、230、240(例えば、キュービット222、232、242の対応する外側グループ又はチェーンを各々が含む3つの外側トラップ領域、3つの外側トラップ領域は、中心線形領域210に隣接する)をさらに含む。実質的に線形な領域210、220、230、240の各々は、互いに、及び、少なくとも1つの他の実質的に線形な領域210、220、230、240の1つ又は複数のキュービット205と相互作用するように構成される2つ以上のキュービット205を備える。キュービット205は、本明細書に記載される特定の実施態様に従って、3つの線形(例えば、1D)トラップ226、236、246によって生成される電位井戸によって、線形領域210、220、230、240内に少なくとも部分的に閉じ込められる。
【0051】
図2A~
図2Dの例示的な三角柱アレイ200において、中心トラップ領域210に沿ったキュービット205の線形チェーンの追加の制御及び安定性は、3つの外側線形トラップ226、236、246の各々からの偶発的RFヌルを、3つの外側線形トラップ226、236、246の各々からほぼ等距離になるように重ね合わせることによって提供される。中心トラップ・ゾーン210を頂点とした、任意の2つの外側線形トラップ226、236、246間の内角(例えば、方位角)は、約60度に等しく、(例えば、断面において実質的に正三角形とすることができる、又は、断面において実質的に二等辺三角形とすることができる)三角柱を形成する。特定の実施態様において、三角柱アレイ200は、横方向(例えば、中心長手方向軸214に実質的に垂直)に沿った、それらを軸方向に接続してC
6NOTゲートを形成するC
3NOTゲートを可能にする。複数のそのようなゲートを形成し、中心長手方向軸214に沿って接続することができる。
【0052】
図2A~
図2Dは、特定の実施態様による、データケーブル250、光ファイバ260、光学検出器270、線形トラップ・ゾーン210、220、230、240、キュービット212、222、232、242のグループ(例えば、チェーン)、光(例えば、レーザ光)出口ポート280及び支持外側構造290を伴う、基板228、238、248及び線形表面トラップ226、236、246(例えば、RF及びDC電極を包含する)の例示的な配置を概略的に示す。加えて、
図2C~
図2Dは、レーザビーム264を放出する、選択的キュービットアドレス指定のための(例えば、図示されていない音響光学変調器から)レーザ光の複数のチューニングされた波長を運ぶ光ファイバ260の端部のアドレス指定レーザ出力ポート262、及び、C
3NOTゲートを形成するために使用される4つの結合(例えば、エンタングルド)キュービット205a、b、c、d(例えば、4つのチェーン212、222、234、242の各々からの1つのキュービット)の例示的な位置を概略的に示す。特定の実施態様において、4つの結合キュービット205a、b、c、dはまた、本明細書に記載される特定の実施態様に従って、ターゲットキュービット205a(例えば、中心にある)を共有するC
6NOTゲートを形成するために、
図2Eに概略的に示すように、三角柱アレイ200に沿った3つの追加の隣接キュービット205e、f、g(例えば、近接頂点キュービット)と直接的に結合(例えば、エンタングル)され得る。キュービットの交互の陰影(shading)は、2つのインターリーブされた(interleaved)種(例えば、2つの異なるイオン種)があり得ることを示し、1つのイオンを、レーザ冷却される近接イオンによって共同冷却することができる。共同冷却されるイオンには冷却レーザビームが衝突しないため、共同冷却されるイオンは、干渉、ノイズ、又はタイミング問題をより少なくして、ゲート動作を形成することができる。
図2Eの点線の楕円は、共有ターゲットイオンの2つの可能なC
3NOTゲートからC
6NOTゲートを作成するために共有ターゲットイオンと組み合わせることができる頂点イオンの2つのセットの横方向平面を示す。
【0053】
特定の実施態様において、3つのキュービット205b、c、dは、「制御」キュービットの三角形(例えば、正三角形)を形成し(例えば、キュービットの任意の2つの間隔は、30マイクロメートル~70マイクロメートルの範囲内とすることができる)、三角形は、線形基板領域210、220、230、240の長手方向軸214、224、234、244に実質的に垂直である。三角形の3つのキュービット205b、c、dは、本明細書に記載される特定の実施態様に従って、実質的に平坦な領域内に配置され、1つの実効的なゲート動作においてマルチ・キュービット・ゲート動作をネイティブに(例えば、幾何学的に、対称に)実施するために、互いに同時に相互作用し(例えば、エンタングルされ)、また、4つの中心(例えば、ターゲット)キュービット205aと共に又はその上で集合的に相互作用するように構成される3つのキュービットの例である。
【0054】
特定の実施態様において、
図2C~
図2Dに示すように、マルチ・キュービット・トラップ構成は、長手方向軸214、224、234、244に実質的に垂直な平面内で実質的に三角形の断面を有し、一方、特定の他の実施態様において、マルチ・キュービット・トラップ構成は、他の形状を有する(例えば、正方形、矩形、五角形、六角形、七角形、八角形など、円形、楕円形、幾何学的、非幾何学的、対称、非対称)。
【0055】
図3Aは、本明細書に記載される特定の実施態様による例示的な立方体(例えば、矩形、正方形)角柱アレイ300の分解斜視図を概略的に示し、
図3B~
図3Cは、その組み立て斜視図を概略的に示す。例示的な立方体角柱アレイ300は、中心長手方向軸314を有する中心線形領域310(例えば、キュービット312の中心グループ又はチェーンを含む中心トラップ領域)を含む複数の実質的に線形な領域内の複数のキュービット305を含む。例示的な立方体角柱アレイ300は、互いに、及び、中心長手方向軸314に実質的に平行である外側長手方向軸324、334、344、354を有する4つの外側線形領域320、330、340、350(例えば、キュービット322、332、342、352の対応する外側グループ又はチェーンを各々が含む4つの外側トラップ領域、4つの外側トラップ領域は、中心線形領域310に隣接する)をさらに含む。実質的に線形な領域310、320、330、340、350の各々は、互いに、及び、少なくとも1つの他の実質的に線形な領域310、320、330、340、350の1つ又は複数のキュービット305と相互作用するように構成される2つ以上のキュービット305を備える。キュービット305は、本明細書に記載される特定の実施態様に従って、4つの線形(例えば、1D)トラップ領域によって生成される電位井戸によって、線形領域310、320、330、340、350内に少なくとも部分的に閉じ込められる。
【0056】
図3A~
図3Cの例示的な立方体角柱アレイ300において、中心トラップ領域310に沿ったキュービット305の線形チェーンの追加の制御及び安定性(例えば、単一の偶発的RFヌルによって提供され得る制御と比較して追加の)は、4つの外側線形トラップの各々からの偶発的RFヌルを、4つの外側線形トラップの各々からほぼ等距離になるように重ね合わせることによって提供される。中心トラップ・ゾーン310を頂点とした、任意の2つの外側線形トラップ間の内角(例えば、方位角)は、約90度に等しく、断面において実質的に正方形である立方体角柱を形成する。
【0057】
図3A~
図3Cは、本明細書に記載される特定の実施態様による、データケーブル250、光ファイバ260、光学検出器270、線形領域(例えば、トラップ・ゾーン)310、320、330、340、350、キュービット312、322、332、342、352のグループ(例えば、チェーン)、光(例えば、レーザ光)出口ポート280及び支持外側構造290を伴う、基板及び線形表面トラップ(例えば、RF及びDC電極を包含する)の例示的な配置を概略的に示す。加えて、
図3B~
図3Cは、レーザビーム264を放出する、アドレス指定レーザ262、及び、C
4NOTゲートを形成するために使用される5つの結合(例えば、エンタングルされた)キュービット305a、b、c、d、e(例えば、5つのチェーン312、322、332、342、352の各々からの1つのキュービット)の例示的な位置を概略的に示す。特定の実施態様において、5つの結合キュービット305a、b、c、d、eはまた、本明細書に記載される特定の実施態様に従って、ターゲットキュービット305a(例えば、中心にある)を共有するC
8NOTゲートを形成するために、立方体角柱アレイ300に沿った4つの追加の隣接キュービット305(例えば、近接頂点キュービット)に直接的に結合(例えば、エンタングル)され得る。
【0058】
図4A~
図4Bは、本明細書に記載される特定の実施態様による例示的な六角柱アレイ400の2つの斜視図を概略的に示す。例示的な六角柱アレイ400は、中心長手方向軸を有する中心線形領域(例えば、キュービット412の中心グループ又はチェーンを含む中心トラップ領域)を含む複数の実質的に線形な領域内の複数のキュービット405を含む。例示的な六角柱アレイ400は、互いに、及び、中心長手方向軸に実質的に平行である外側長手方向軸を有する6つの外側線形領域(例えば、キュービット422、432、442、452、462、472の対応する外側グループ又はチェーンを各々が含む6つの外側トラップ領域、6つの外側トラップ領域は、中心線形領域に隣接する)をさらに含む。実質的に線形な領域の各々は、互いに、及び、少なくとも1つの他の実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービット405と相互作用するように構成される2つ以上のキュービット405を備える。キュービット405は、本明細書に記載される特定の実施態様に従って、6つの線形トラップ(例えば、1D表面トラップ)によって生成される電位井戸によって、線形領域内に少なくとも部分的に閉じ込められる。
【0059】
特定の実施態様において、六角柱アレイ400は、各々が13個以上のキュービット405を含むC
nNOTゲートを含む。例えば、
図4Aは、本明細書に記載される特定の実施態様による、(例えば、「パイロクロア」C
12NOTゲートの形成を示す)六角柱アレイ400の一端における13個のキュービット405のエンタングルメントの描写と共に、基板及び線形表面トラップ(例えば、RF及びDC電極を包含する)の例示的な配置を概略的に示す。
図4Bは、データケーブル、光ファイバ260、光学検出器270、線形トラップ・ゾーン、キュービット・グループ(例えば、チェーン)412、422、432、442、452、462、472、光(例えば、レーザ光)出口ポート、及び支持外側構造290(例えば、他の構造が十分に剛性である場合には省略することができる)を伴う、レーザビーム264を放出する、(例えば、図示されていない音響光学変調器から)レーザ光の複数のチューニングされた波長を運ぶ光ファイバ260の端部のアドレス指定レーザ出力ポート262を含む、図示される六辺角柱構造を形成するための6つの線形トラップ(例えば、1D表面トラップ)を含む例示的な六角柱アレイ400を概略的に示す。
図4A~
図4Bに概略的に示す7つのキュービット405(例えば、イオン)の例は、本明細書に記載される特定の実施態様に従って、C
12NOTゲートを形成するために六角柱アレイ400の長手方向軸に沿った実質的に平行な格子層内の6つの隣接する頂点キュービットに直接的に結合することもできるC
6NOTゲートを形成するためにエンタングルされ得て、これらのゲートは、3つ以上の層を含むC
nNOT(例えば、「スーパー・パイロクロア」ゲート・セルとして参照することができるC
18NOTなど)を形成するために六角柱アレイ400に沿った実質的に平行な格子層内の6つの他の隣接するキュービット405(例えば、頂点キュービット)に直接的に更に結合され得る。
【0060】
図4Cは、本明細書に記載される特定の実施態様による、中心線形領域内の単一の物理キュービット(例えば、単一のイオン)を各々が備える複数の単一論理キュービット412と、外側線形領域内の単一の物理キュービット(例えば、単一のイオン)を各々が備える複数の単一論理キュービット422、432、442、452、462、472とを有する例示的な六角柱アレイ400の断面図を概略的に示す。
図4Dは、本明細書に記載される特定の実施態様による、中心線形領域内の複数の物理キュービット(例えば、
図4Dに示すような、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上のイオンのクラスタ480)を各々が備える複数の単一論理キュービット412と、外側線形領域内の単一の物理キュービットを各々が備える複数の単一論理キュービットとを有する例示的な六角柱アレイ400の断面図を概略的に示す。
図4C及び
図4Dの陰影領域は、対応する表面トラップによって生成される一次トラップ領域を各々が含む6つの外側線形領域、及び、表面トラップによって生成される、重複する偶発的トラップ領域を含む中心線形領域を概略的に示す。
【0061】
図5A~
図5Dは、本明細書に記載される特定の実施態様による多層2Dキュービット格子(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2021/0142204号参照)を備える例示的な平面QC構造600を有する少なくとも1つの六角柱アレイ400(例えば、
図4Bに概略的に示すような)を備える例示的なシステム500を概略的に示す。例えば、パイロクロア・チップの隅のキュービット間の間隔、レイアウト、及び3D幾何学的関係は、例示的なシステム500にわたるパイロクロア及びスーパー・パイロクロアの間の直接結合(例えば、エンタングルメント)の拡張を可能にするために、スーパー・パイロクロア・セルの一端の近密に一致するキュービット間間隔及び3D幾何形状に整列することができる。この例において、本明細書に記載される特定の実施態様によれば、1つ又は複数のスーパー・パイロクロア・セルに対する、密接に敷き詰められた多層2Dパイロクロア・ゲート・セル(例えば、多層2D表面トラップ格子内の)構成セグメントの直接結合は、有利には、ASIC実施態様の、チップの特定のセグメントにまたがる高スループットのカスタマイズ可能な組み合わせが、チップ又は基板の特定の他のセグメント内の超高処理能力と組み合わされることを可能にする。
【0062】
[他の例示的な実施態様]
実施態様1:互いに実質的に平行である長手方向軸を有する複数の実質的に線形な領域内に配置される複数の論理キュービット(例えば、各論理キュービットは、1つ又は複数の物理キュービットを含む)を備える量子コンピューティング(QC)システムであって、実質的に線形な領域の少なくとも一部は、2つ以上の論理キュービットを備え、各実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットは、少なくとも1つの他の実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットと相互作用するように構成される、量子コンピューティング(QC)システム。量子論理ゲート動作は、少なくとも1つの物理キュービット(例えば、イオン、中性原子、Rydberg原子、電子、電子ホール、窒素欠陥、量子ドット、複数の可能な状態を有する量子粒子)を含み得る、論理キュービットを使用して実施される。例えば、論理キュービットは、論理キュービット安定性を改善し、及び/又は、キュービット・デコヒーレンス時間を低減するために、キュービットのノイズが多い量子コンピューティング・システムにおける耐障害性を改善するための手段として、冗長性のための複数の物理キュービット(例えば、イオン)を含むことができる。別の例として、論理キュービットは、(例えば、量子状態に影響を及ぼすことなく)論理キュービットを共同冷却(sympathetic cooling)するための補助物理キュービットを伴うことができる。別途指定される場合を除き、本明細書において使用されるものとしての「キュービット」という用語は、一般的に単一の物理キュービットを含む論理キュービットを指すが、特定の実施態様において、一般性を損なうことなく、(例えば、耐障害性のために、冷却のために)追加の物理キュービットを含むことができる。
【0063】
実施態様2:第1の基板及び第2の基板をさらに備え、第1の基板及び第2の基板は、互いに実質的に平行であり、複数のキュービットは、第1の基板と第2の基板との間の領域内に位置付けられている複数のマルチ・キュービット・ゲートを備えるマルチ・キュービット・ゲート・アレイとして配置され、ここで、第1の基板及び第2の基板のうちの少なくとも一方の表面にある又は上記表面の近くにあるキュービットは、複数の実質的に線形な平坦領域内に配置される、実施態様1に記載のシステム。
【0064】
実施態様3:各マルチ・キュービット・ゲートについて、各キュービットは、マルチ・キュービット・ゲートの他のキュービットのうちの少なくとも1つと量子力学的にエンタングルされるように構成される、実施態様2に記載のシステム。
【0065】
実施態様4:2つ以上のキュービット及び各実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットは、3つ以上のキュービットが同時に参加するマルチ・キュービット・ゲート動作を受けるように構成される3次元(3D)アレイを形成するために、少なくとも1つの他の実質的に線形な領域の1つ又は複数のキュービットと直接的に相互作用するように構成される、実施態様1に記載のシステム。
【0066】
実施態様5:複数のマルチ・キュービット3次元(3D)ゲート(例えば、幾何角柱3Dセル内に配置される)を備える量子コンピューティング(QC)システムであって、各3Dゲートが、3次元にまたがって互いに同時に完全接続されるように構成される少なくとも3つのキュービットを含み、複数のマルチ・キュービット3Dゲートは、マルチ・キュービット3Dゲートのうちの2つ以上のゲート動作のために構成される、量子コンピューティング(QC)システム。
【0067】
実施態様6:複数のマルチ・キュービット3Dゲートは、ゲート動作の著しい時間遅延及び正味フィデリティの損失を付与するキュービット間の非効率的なフォトニック相互接続を必要とすることなく(例えば、テレポーテーションなしに、原子及びフォトニック・キュービット間の複数の変換なしに)最近接キュービット又は第二近接キュービット間に直接的に最適なコヒーレント接続又はエンタングルメントを有するように構成されるイオン・トラップ・アレイを備える、実施態様5に記載のシステム。
【0068】
実施態様7:マルチ・キュービット3Dゲートは、複数の1及び2キュービット・ゲートの連結に依拠することなく、単一のゲート動作において、ネイティブに実行されるための実質的に幾何学的に対称な配置を有する、実施態様5に記載のシステム。
【0069】
実施態様8:複数のマルチ・キュービット3Dゲートは、少なくとも1つの量子FPGA(QFPGA)及び/又はASIC(QASIC)チップのゲートとして操作されるように構成される、実施態様5に記載のシステム。
【0070】
実施態様9:1及び2キュービット・ゲートの連結に依拠することなく、3つ以上の論理キュービットをネイティブに伴って(例えば、単一のゲート動作において、同じゲート動作において効果的に)量子論理演算を実施するために論理キュービット間の物理関係(例えば、幾何学的配置、対称幾何構造、等辺空間分離)を使用して、3次元以上の次元を含む多層格子アレイ内の量子ゲートを形成するための1Dトラップ領域の組み合わせを備える、量子コンピューティング(QC)システム。
【0071】
実施態様10:3つ以上の論理キュービットを伴う量子論理演算は、ネイティブに1つ又は複数のターゲットキュービットに作用する2つ以上の制御キュービット(例えば、多重制御式NOTゲート、Toffoliゲート、super Toffoliゲート、多重制御式位相ゲート)を含む、実施態様9に記載のシステム。
【0072】
実施態様11:3つ以上の論理キュービットを伴う量子論理演算は、ネイティブに1つ又は複数の制御キュービットによって作用される2つ以上のターゲットキュービット(例えば、単一制御式マルチNOTゲート、ファンアウト・ゲートなど)を含む、実施態様9に記載のシステム。
【0073】
実施態様12:3D結晶質構造(例えば、パイロクロア、スーパー・パイロクロア、四面体など)に類似し、多層格子ゲート構成に(例えば、幾何角柱、3Dセルに)同時に参加し、最近接キュービット、第二近接キュービット、及び場合によってはそれを超えるキュービット間の最適な数の同時エンタングルメント接続を更に可能にするために密に配列される3つ以上のキュービットの量子論理ゲート動作のトラップ、アドレス指定(例えば、初期化、ゲート動作の実施)、及び低ノイズ読み出しのための電気及び光学要素(例えば、電気トレース、光ビーム構成、検出器、光出口ポート、要素)の統合を可能にするように構成される、実施態様9に記載のシステム。
【0074】
実施態様13:対向する線形トラップ・ゾーンは、複数の線形トラップ領域が共に整列される3D構成を形成するための構築ブロックを備え、線形トラップの長軸間の角度は、複数のトラップ・ゾーン間のキュービットに対して実施されるべきである、(例えば、マルチ・キュービット・ゲートのための)意図される量子ゲート動作に応じて、重複するRFヌル又は偶発的トラップ・ゾーンの中心領域の追加の制御及び安定性のために幾何角柱を形成するように調整される、実施態様9に記載のシステム。
【0075】
実施態様14:本明細書に記載される特定の実施態様による中心トラップ・ゾーンを含む3つの1D外側線形トラップ領域を備える少なくとも1つの三角柱アレイを備える、実施態様9に記載のシステム。中心トラップ・ゾーンを頂点とした、任意の2つの外側線形トラップによって形成される内角は、約60度に等しく、断面において実質的に等辺である三角柱を形成する。三角柱は、複数のC3NOTゲートが、横方向軸に沿って形成され、軸方向に接続されてC6NOTを形成することを可能にする。
【0076】
実施態様15:本明細書に記載される特定の実施態様による中心トラップ・ゾーンを含む4つの1D外側線形トラップ領域を備える少なくとも1つの立方体角柱アレイを備える、実施態様9に記載のシステム。中心トラップ・ゾーンを頂点とした、任意の2つの外側線形トラップによって形成される内角は、約90度に等しく、断面において実質的に等辺である立方体角柱を形成する。立方体角柱は、複数のC4NOTゲートが、横方向軸に沿って形成され、軸方向に接続されてC8NOTを形成することを可能にする。
【0077】
実施態様16:本明細書に記載される特定の実施態様による中心トラップ・ゾーンを含む5つ、6つ、7つ、8つ、又はより多くの1D外側線形トラップ領域を備える少なくとも1つの五角柱、六角柱、七角柱、八角柱、又は他の多角柱アレイを備える、実施態様9に記載のシステム。中心トラップ・ゾーンを頂点とした、任意の2つの外側線形トラップによって形成される内角は、ほぼ等しい角度であり、断面において実質的に等辺である幾何角柱を形成する。n角柱は、複数のCnNOTゲートが、横方向軸に沿って形成され、軸方向に接続されてC2nNOT、C3nNOTなどを形成することを可能にする。
【0078】
実施態様17:米国特許出願公開第2021/0142204号によって開示されるような平面多層量子コンピューティング(QC)構造と、
図4Bに示すような少なくとも1つの角柱トラップ格子構造とを備える、量子コンピューティング(QC)システム。
【0079】
本発明を、いくつかの非限定的な実施態様において説明した。実施態様は、相互に排他的ではなく、1つの実施態様に関連して説明される要素が、所望の設計目的を達成するために適切であるように、他の実施態様と組み合わされてもよく、再構成されてもよく、又は他の実施態様から排除されてもよいことは理解されたい。単一の特徴又は特徴のグループは、各実施態様に対して必須ではなく、又は、必要とされるわけではない。
【0080】
本発明を要約することを目的として、本発明の特定の態様、利点及び新規の特徴が本明細書に記載される。しかしながら、必ずしもすべてのそのような利点が、任意の特定の実施形態に従って達成されるとは限らない場合があることは理解されたい。したがって、例えば、本発明は、必ずしも本明細書において教示又は示唆され得るような他の利点を達成することなく、1つ又は複数の利点を達成するように、具現化又は実行されてもよい。
【0081】
本明細書において使用される場合、「1つの実施態様」又は「いくつかの実施態様」又は「一実施態様」に対する任意の参照は、その実施態様と関連して説明される特定の要素、特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。本明細書内の様々な箇所における「1つの実施態様において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施態様を参照しているとは限らない。とりわけ、「することができる(can)」、「し得る(could)」、「し得る(might)」、「してもよい(may)」、「例えば(e.g.)」などのような、本明細書において使用される条件付きの文言は、別途具体的に記述されていない限り、又は、使用される文脈内で別様に理解されない限り、概して、特定の実施態様が、特定の特徴、要素及び/又はステップを含み、一方で、他の実施態様は含まないことを伝えるように意図される。加えて、本出願及び添付の特許請求の範囲において使用されるものとしての冠詞「a」又は「an」又は「the」は、別途指定されていない限り、「1つ又は複数」又は「少なくとも1つ」を意味するものとして解釈されるものとする。
【0082】
本明細書では、説明を容易にするために、「上方」、「下方」、「上」、「下」、「上側」、「下側」などの空間的な相対語を使用して、図面に示されるような、ある要素又は特徴の別の要素又は特徴との関係を説明している場合がある。そのような空間的な相対語は、図面に示される向きに加えて、使用又は動作時の構成要素の異なる向きを包含することを意図していることが理解されよう。例えば、図面内のデバイスが反転される場合、他の要素又は特徴の「上方」又は「上」として説明される要素は、他の要素又は特徴の「下方」又は「下」に向けられることになる。したがって、「上方」という例示的な用語は、上方及び下方の両方の向きを包含することができる。デバイスは、他の様態で方向付けられてもよく(90度又は他の向きに回転されてもよく)、本明細書において使用される空間的な相対記述は、それに従って解釈されてもよい。同様に、「上向き」、「下向き」、「垂直」、「水平」などの用語は、本明細書においては、別途具体的に指示されていない限り、例示のみを目的として使用される。
【0083】
本明細書において使用される場合、用語「おおよそ」、「約」、「概して」及び「実質的に」などの程度の文言は、依然として所望の機能を実施するか又は所望の結果を達成する、記述される値、量、又は特性に近い値、量、又は特性を表す。例えば、用語「おおよそ」、「約」、「概して」及び「実質的に」は、記述される量の±10%以内、±5%以内、±2%以内、±1%以内、又は±0.1%以内である量を指してもよい。別の例として、用語「概して平行」及び「実質的に平行」は、±10度、±5度、±2度、±1度、又は±0.1度だけ正確な平行から逸脱する値、量、又は特性を指し、用語「概して垂直」及び「実質的に垂直」は、±10度、±5度、±2度、±1度、又は±0.1度だけ正確な垂直から逸脱する値、量、又は特性を指す。本明細書において開示される範囲はまた、あらゆる重複、部分範囲、及びそれらの組み合わせも包含する。「最大~」「少なくとも~」、「~よりも大きい」、「よりも少ない」、「~の間」などのような文言は、記載される数を含む。本明細書において使用される場合、「一つ(a)」、「一つ(an)」、及び「前記(said)」の意味は、別途文脈が明確に指示していない限り、複数の参照を含む。また、本明細書において使用される場合、「中(in)」の意味は、別途文脈が明確に指示していない限り、「中に(into)」及び「上(on)」を含む。
【0084】
本明細書において使用される場合、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語又はそれらの任意の他の変化形は、制限のない用語であり、非排他的な包含をカバーするように意図される。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、製品、又は装置は必ずしも、それらの要素のみには限定されず、明示的にリストされていない、又は、そのようなプロセス、方法、製品、又は装置に内在する他の要素を含んでもよい。さらに、逆のことが明示的に述べられていない限り、「又は」は、包含的orを指し、排他的orではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)かつBが真である(又は存在する)、又は、AとBの両方が真である(又は存在する)、のうちのいずれか1つによって満たされる。本明細書において使用される場合、列挙された項目「のうちの少なくとも1つ」という語句は、単一のメンバを含め、それらの項目の任意の組み合わせを指す。一例として、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」は、A、B、C、A及びB、A及びC、B及びC、ならびにA、B、及びCに及ぶことが意図される。「X、Y及びZのうちの少なくとも1つ」などの接続の文言は、別途具体的に述べられない限り、アイテム、項目などが、X、Y、又はZのうちの少なくとも1つであり得ることを伝えるために、一般的に使用されるような文脈によって他の様態で理解されるべきである。したがって、そのような接続の文言は、概して、ある実施態様が、Xのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ、及びZのうちの少なくともが各々提示されることを要求することを暗示するようには意図されていない。
【0085】
したがって、特定の実施態様のみが本明細書において具体的に説明されるが、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、多数の修正を行うことができることは明らかであろう。さらに、頭字語は、本明細書及び特許請求の範囲の読みやすさを向上させるためにのみ使用される。なお、これらの頭字語は、使用される用語の一般性を減じるようには意図されておらず、それらは、特許請求項の範囲をそこで説明される実施態様に限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】