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特表2024-540133正極材、これを含む正極およびリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】正極材、これを含む正極およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241024BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241024BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 D
H01M4/505
H01M4/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525491
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2022016732
(87)【国際公開番号】W WO2023075515
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0146643
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヘ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウク・ホ
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・オー
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA08
(57)【要約】
本発明は、大粒径正極活物質および小粒径正極活物質を含むバイモーダル正極材に関し、本発明による正極材において、前記大粒径正極活物質は、1個のノジュールからなる単粒子であり、前記小粒径正極活物質は、2個~30個のノジュールの凝集体である疑似-単粒子である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大粒径正極活物質および小粒径正極活物質を含むバイモーダル正極材であり、
前記大粒径正極活物質は、1個のノジュールからなる単粒子であり、
前記小粒径正極活物質は、2個~30個のノジュールの凝集体である疑似-単粒子である、正極材。
【請求項2】
前記小粒径正極活物質の粒子断面でのノジュールの平均凝集数をr’としたときに、1/r’が0.5以下である、請求項1に記載の正極材。
【請求項3】
前記1/r’が0.1~0.5である、請求項2に記載の正極材。
【請求項4】
前記大粒径正極活物質は、平均粒径D50が10μm~20μmであり、
前記小粒径正極活物質は、平均粒径D50が1μm~8μmである、請求項1に記載の正極材。
【請求項5】
前記大粒径正極活物質および小粒径正極活物質は、それぞれ独立して、下記[化学式1]で表されるリチウムニッケル系酸化物を含む、請求項1に記載の正極材:
[化学式1]
LiNiCo
前記化学式1中、Mは、Mn、Alまたはこれらの組み合わせであり、Mは、Zr、W、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、TaおよびNbからなる群から選択される1種以上であり、0.8≦a≦1.2、0.83≦b<1、0<c<0.17、0<d<0.17、0≦e≦0.1である。
【請求項6】
前記大粒径正極活物質の粒子強度が前記小粒径正極活物質の粒子強度の2倍以上である、請求項1に記載の正極材。
【請求項7】
前記大粒径正極活物質の粒子強度が150MPa~300MPaであり、
前記小粒径正極活物質の粒子強度が75MPa~150MPaである、請求項1に記載の正極材。
【請求項8】
前記正極材は、大粒径正極活物質と小粒径正極活物質を60:40~90:10の重量比で含む、請求項1に記載の正極材。
【請求項9】
前記正極材を2000kgfでプレスして測定したプレス密度が3.0g/cc~4.0g/ccである、請求項1に記載の正極材。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の正極材を含む、正極。
【請求項11】
請求項10に記載の正極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月29日付けの韓国特許出願第10-2021-0146643号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、正極材、これを含む正極およびリチウム二次電池に関し、より詳細には、特定の形状の大粒径粒子と小粒径粒子を適用して、優れた寿命特性および抵抗特性を実現することができるバイモーダル正極材と、これを含む正極およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、一般的に、正極、負極、セパレータおよび電解質からなり、前記正極および負極は、リチウムイオンの挿入(intercalation)および脱離(deintercalation)が可能な活物質を含む。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMnOまたはLiMnOなど)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO)などが使用されてきた。このうち、リチウムコバルト酸化物は、作動電圧が高く、容量特性に優れるという利点があるが、原料になるコバルトの値段が高く、供給が不安定で大容量電池への商業的な適用が困難である。リチウムニッケル酸化物は、構造安定性が劣り十分な寿命特性を実現することが難しい。一方、リチウムマンガン酸化物は、安定性には優れるが、容量特性が劣る問題がある。したがって、Ni、CoまたはMnを単独で含むリチウム遷移金属酸化物の問題点を補完するために、2種以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物が開発されており、中でも、Ni、Co、およびMnを含むリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物が広く使用されている。
【0005】
従来のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物は、数十~数百個の一次粒子が凝集した球状の二次粒子形態であることが一般的であった。しかし、このように多くの一次粒子が凝集した二次粒子形態のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の場合、正極の製造時に、圧延工程で一次粒子が離脱する粒子割れが発生しやすく、充放電過程で粒子の内部にクラックが発生する問題がある。正極活物質の粒子割れやクラックが発生する場合、電解液との接触面積が増加して、電解液との副反応によるガスの発生および活物質の劣化が増加し、そのため、寿命特性が低下する問題がある。
【0006】
このような問題点を解決するために、単粒子形態のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物が開発されている。単粒子形態のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物は、1個の粒子からなるものであり、正極活物質用前駆体とリチウムソースを混合した後、焼成する時に、焼成温度を高めて過焼成する方法により製造されることができる。このような単粒子形態の正極活物質は、二次粒子形態の正極活物質に比べて高い粒子強度を有することから、電極圧延時に粒子割れを防止することができる。しかし、単粒子正極活物質は、二次粒子形態の正極活物質に比べてリチウム移動性が著しく劣るため、単粒子正極活物質を単独で使用する場合、抵抗が高すぎて十分な容量および出力特性を確保することができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためのものであり、粒子形状が制御された大粒径正極活物質と小粒径正極活物質を含むことで、電極圧延時の粒子割れが少なく、サイクル充放電時の抵抗増加が最小化された正極材を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、上記のような正極材を適用することで、寿命特性および抵抗特性が改善した正極およびリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によると、本発明は、大粒径正極活物質および小粒径正極活物質を含むバイモーダル正極材であり、前記大粒径正極活物質は、1個のノジュールからなる単粒子であり、前記小粒径正極活物質は、2個~30個のノジュールの凝集体である疑似-単粒子である正極材を提供する。
【0010】
他の実施形態によると、本発明は、前記本発明による正極材を含む正極および前記正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による正極材は、大粒径正極活物質として、1個のノジュールからなる単粒子を使用し、小粒径正極活物質として、2個~30個のノジュールの凝集体である疑似-単粒子を使用することで、電極の圧延時に粒子割れが少なく、充放電時の抵抗増加が抑制されるようにした。これにより、本発明の正極材を適用すると、寿命特性および抵抗特性に優れた二次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】製造例1によって製造された大粒径正極活物質Aの粒子形状を示す走査型電子顕微鏡イメージである。
図2】製造例2によって製造された大粒径正極活物質Bの粒子形状を示す走査型電子顕微鏡イメージである。
図3】製造例3によって製造された大粒径正極活物質Cの粒子形状を示す走査型電子顕微鏡イメージである。
図4】製造例4によって製造された小粒径正極活物質Dの粒子形状を示す走査型電子顕微鏡イメージである。
図5】製造例5によって製造された小粒径正極活物質Eの粒子形状を示す走査型電子顕微鏡イメージである。
図6】実施例1~2および比較例1~4の正極材粉末のプレス密度を示す図である。
図7】実施例1~2および比較例1~4の正極材を適用したリチウム二次電池の高温寿命特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0015】
本発明において、「単粒子」は、1個の単一ノジュール(nodule)からなる粒子である。本発明において、「疑似-単粒子」は、30個以下のノジュールで形成された複合体である粒子を意味する。
【0016】
本発明において、「ノジュール(nodule)」は、単粒子および疑似-単粒子を構成する粒子単位体(particle unit body)を意味し、前記ノジュールは、結晶粒界(crystalline grain boundary)が欠如した単結晶であるか、または走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)や後方散乱電子回折パターン分析装置(Electron Backscatter Diffraction、EBSD)を用いて、5000倍~20000倍の視野で観察した時に、外観上粒界(grain boundary)が存在しない多結晶であることができる。前記ノジュールの平均粒径は、SEMまたはEBSDを介して観察されるノジュールの粒径を測定した後、計算されたこれらの算術平均値を意味する。
【0017】
本発明において、「二次粒子」は、数十~数百個の複数の一次粒子が凝集して形成された粒子を意味する。さらに具体的には、二次粒子は、40個以上の一次粒子の凝集体である。
【0018】
本発明で使用される「粒子」という表現は、単粒子、疑似-単粒子、一次粒子、ノジュール、および二次粒子のいずれか一つまたはこれらのすべてを含むことができる。本発明において、「平均粒径D50」は、正極活物質粉末の体積累積粒度分布の50%基準での粒子径を意味し、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定されることができる。例えば、正極活物質粉末を分散媒の中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入して、約28kHzの超音波を出力60Wで照射してから、体積累積粒度分布グラフを得た後、体積累積量の50%に該当する粒子径を求めることで測定されることができる。
【0019】
本発明において、「粒子強度」は、正極材粉末を粒子強度測定装置(モデル:MCT-510)に入れ、顕微鏡で測定しようとする正極活物質粒子形状を確認した後、チップ(Tip)で当該正極活物質粒子に力(Force)を加えて当該粒子が割れる時の力(Force)を測定する。粒子間偏差を考慮して、30回以上測定した値をマッピング(mapping)し、平均値を粒子強度値として使用する。
【0020】
本発明において、「プレス密度(Press density)」は、HPRM-1000を用いて測定した。具体的には、正極材粉末5gを断面径が1.2cmである円柱状のモールドに投入した後、2000kgfの力で正極材が入っているモールドを加圧した。次に、加圧されたモールドの高さをバーニャキャリパーで測定し、プレス密度を求めた。
【0021】
本発明において、正極活物質の粒子断面でのノジュールの平均凝集数は、以下のような方法で測定されることができる。正極材を用いて製造された正極をイオンミリング法で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、前記切断した正極の厚さ方向断面イメージを得た後、前記イメージ内で大粒径正極活物質粒子と小粒径正極活物質粒子のそれぞれに対して、最低30個以上の粒子を選択し、SEMイメージ分析により、それぞれの正極活物質粒子断面でのノジュールの個数を測定した。その後、測定されたノジュールの個数の算術平均値を計算し、その値を粒子断面でのノジュールの平均凝集数として評価する。
【0022】
正極材
本発明による正極材は、平均粒径(D50)が相違する2種の正極活物質、すなわち、相対的に粒径が大きい大粒径正極活物質と相対的に粒径が小さい小粒径正極活物質を含むバイモーダル正極材である。
【0023】
バイモーダル正極材は、電極の圧延時に、小粒径正極活物質が大粒径正極活物質の空隙に充填されて電極密度が増加し、これにより、高いエネルギー密度を実現できるという利点がある。しかし、従来の二次粒子形態の正極活物質を用いたバイモーダル正極材の場合、大粒径正極活物質と小粒径正極活物質の粒子強度が互いに異なり、大粒径正極活物質の粒子割れがひどくなるという問題があった。本発明は、前記のような問題点を解決するために、大粒径正極活物質および小粒径正極活物質に粒子強度が高い単粒子および疑似-単粒子を適用した。具体的には、本発明は、バイモーダル正極材の大粒径正極活物質として単粒子を適用し、小粒径正極活物質として疑似-単粒子を適用する。ここで、単粒子は、1個のノジュールからなる粒子を意味し、前記疑似-単粒子は、2個~30個、好ましくは2個~25個、より好ましくは2個~20個のノジュールの凝集体を意味する。
【0024】
単粒子または疑似-単粒子形態の正極活物質は、数十~数百個の一次粒子が凝集している既存の二次粒子形態の正極活物質に比べて粒子強度が高いことから、圧延時の粒子割れが少なく、充放電時に、体積膨張、収縮による変化が少なく、粒子内部のクラックの発生も著しく減少する。したがって、本発明のように、大粒径粒子として単粒子、小粒径粒子として疑似-単粒子を適用する場合、ガスの発生および正極活物質の内部のクラックによる電池性能の劣化を最小化することができ、寿命特性、特に高温寿命特性に優れたリチウム二次電池を製造することができる。
【0025】
ただし、正極活物質として、単粒子または疑似-単粒子を使用する場合、従来の二次粒子形態の正極活物質に比べてリチウム移動性が劣り抵抗が増加し、容量特性および出力特性が低下するという問題がある。本発明者らは、寿命特性に優れ、且つ抵抗増加が少ない正極材を開発するために鋭意研究を重ねた結果、大粒径正極活物質と小粒径正極活物質を構成する粒子の形態が特定の条件を満たす時に、すなわち、大粒径正極活物質が単粒子形態であり、小粒径正極活物質が疑似-単粒子形態であることを満たす時に、抵抗増加を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
電極の圧延時に正極活物質粒子を構成するサブ粒子(すなわち、一次粒子やノジュール)の間の界面に沿ってクラックが発生し得るが、活物質の内部にクラックが発生すると、クラック部分に電解液が浸透し、抵抗が増加する。一方、大粒径正極活物質にクラックが発生する場合、小粒径正極活物質に比べて、クラックによって電解液と接触する面積がより広いため、抵抗の増加がよりひどくなる。したがって、本発明では、大粒径正極活物質として1個のノジュールからなる単粒子を使用することで、大粒径正極活物質のクラックの発生を最小化して、抵抗の増加を抑制するようにした。
【0027】
一方、前記小粒径正極活物質を構成するノジュールの個数は、2個~30個、好ましくは2個~25個、より好ましくは2個~20個、さらに好ましくは2個~10個であることができる。
【0028】
小粒径正極活物質を構成するノジュールの個数が30個を超える場合には、電極圧延時に、粒子割れが発生して寿命特性が低下し得、小粒径正極活物質が単粒子形態である場合には、電極圧延性が低下し、これによって電極密度が低くなり、容量特性が低下し得る。
【0029】
好ましくは、前記小粒径正極活物質の粒子断面でのノジュールの平均凝集数をr’としたときに、1/r’が0.5以下、好ましくは0.1~0.5であることができる。本発明者らの研究によると、1/r’が前記範囲を満たす時に、より優れた寿命特性および抵抗特性の改善効果が示される。
【0030】
一方、前記大粒径正極活物質と小粒径正極活物質を構成するノジュールの個数は、焼成条件を制御することで調節することができる。一般的に、正極活物質は、遷移金属水酸化物である前駆体とリチウムソースを混合した後、焼成して製造されるが、焼成温度が高く、焼成時間が長くなるほど、正極活物質粒子を構成するノジュールの個数が減少する。したがって、正極活物質の製造時に、焼成温度および/または焼成時間を調節することで、正極活物質粒子を構成するノジュールの個数を調節することができる。例えば、大粒径正極活物質と小粒径正極活物質の組成が同一である場合に、大粒径正極活物質の焼成温度を小粒径正極活物質の焼成温度より20℃以上、好ましくは20℃~80℃程度高くすることで、1/r’が0.5以下になるようにすることができる。
【0031】
一方、本発明において、前記大粒径正極活物質は、平均粒径D50が10μm~20μm、好ましくは10μm~18μm、より好ましくは10μm~15μmであることができる。また、前記小粒径正極活物質は、平均粒径D50が1μm~8μm、好ましくは3μm~8μm、さらに好ましくは3μm~7μmであることができる。大粒径正極活物質と小粒径正極活物質の平均粒径D50が前記範囲を満たす時に、正極材のプレス密度(press density)が増加し、これにより、電極の製造時に、電極密度が改善し、優れたエネルギー密度を実現することができる。
【0032】
一方、本発明において、前記大粒径正極活物質および小粒径正極活物質は、それぞれ独立して、リチウムニッケル系酸化物を含むことができる。
【0033】
具体的には、前記大粒径正極活物質および小粒径正極活物質は、それぞれ独立して、下記[化学式1]で表されるリチウムニッケル系酸化物を含むことができる。
【0034】
[化学式1]
LiNiCo
【0035】
前記化学式1中、Mは、Mn、Alまたはこれらの組み合わせであることができ、好ましくは、MnまたはMnおよびAlであることができる。
【0036】
前記Mは、Zr、W、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、TaおよびNbからなる群から選択される1種以上であり、好ましくは、Zr、Y、Mg、およびTiからなる群から選択される1種以上であることができ、さらに好ましくは、Zr、Yまたはこれらの組み合わせであることができる。M元素は、必ずしも含まれるものではないが、適切な量で含まれる場合、焼成時の粒成長を促進したり、結晶構造安定性を向上させる役割を果たすことができる。
【0037】
前記aは、リチウムニッケル系酸化物内のリチウムモル比を示し、0.8≦a≦1.3、0.9≦a≦1.3、または1.0≦a≦1.2であることができる。リチウムのモル比が前記範囲を満たす時に、リチウムニッケル系酸化物の結晶構造が安定的に形成されることができる。
【0038】
前記bは、リチウムニッケル系酸化物内のリチウム以外の全体の金属のうちニッケルのモル比を示し、0.8≦b<1、0.82≦b<1、0.83≦b<1、0.85≦b<1または0.87≦b<1であることができる。ニッケルのモル比が前記範囲を満たす時に、高いエネルギー密度を示して高容量の実現が可能である。
【0039】
前記cは、リチウムニッケル系酸化物内のリチウム以外の全体の金属のうちコバルトのモル比を示し、0<c<0.2、0<c<0.18、または0.01≦c≦0.17であることができる。コバルトのモル比が前記範囲を満たす時に、良好な抵抗特性および出力特性を実現することができる。
【0040】
前記dは、リチウムニッケル系酸化物内のリチウム以外の全体の金属のうちM元素のモル比を示し、0<d<0.2、0<d<0.18、または0.01≦d≦0.17であることができる。M元素のモル比が前記範囲を満たす時に、正極活物質の構造安定性に優れる。
【0041】
前記eは、リチウムニッケル系酸化物内のリチウム以外の全体の金属のうちM元素のモル比を示し、0≦e≦0.1、または0≦e≦0.05であることができる。
【0042】
一方、本発明による大粒径正極活物質および小粒径正極活物質は、必要に応じて、前記リチウムニッケル系酸化物粒子の表面にコーティング層をさらに含むことができる。ここで、前記コーティング層は、例えば、Al、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mn、Sr、Sb、Bi、SiおよびSからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含むことができる。リチウムニッケル系酸化物の表面にコーティング層が存在する場合、前記コーティング層によって電解質とリチウムニッケル系酸化物の接触が減少し、これにより、電解質との副反応による遷移金属の溶出やガスの発生が減少する効果を得ることができる。好ましくは、前記コーティング層は、B、Co、Alまたはこれらの組み合わせを含むことができ、さらに好ましくはCoを含むことができる。コーティング層にCoが含まれる場合、電解液との副反応の抑制効果とともに出力の改善および抵抗の減少効果を得ることができる。
【0043】
前記大粒径正極活物質と小粒径正極活物質は、その組成が同一であるか、または相違することができる。例えば、大粒径正極活物質のNiモル比が小粒径正極活物質のNiモル比よりも高くてもよい。大粒径正極活物質は、単粒子形態であるため、疑似-単粒子形態である小粒径正極活物質より構造安定性に優れ、これにより、Niを高含量で含んでも熱や充放電の繰り返しによる構造劣化が少ない。したがって、大粒径正極活物質として相対的にNiをより高含量で含むリチウムニッケル系酸化物を適用する場合、高容量であるとともに寿命特性に優れた二次電池を実現することができる。具体的には、前記大粒径正極活物質は、ニッケルを85モル%以上、好ましくは87モル%以上含むリチウムニッケル系酸化物を含むことができ、前記小粒径正極活物質は、ニッケルを80モル%以上87モル%未満、好ましくは80モル%~86モル%、さらに好ましくは83モル%~86モル%含むリチウムニッケル系酸化物を含むことができる。
【0044】
一方、前記大粒径正極活物質の粒子強度が前記小粒径正極活物質の粒子強度より高いことが好ましい。具体的には、大粒径正極活物質の粒子強度が小粒径正極活物質の粒子強度の2倍以上、好ましくは2倍~4倍、より好ましくは2倍~3倍であることができる。大粒径正極活物質の粒子強度が小粒径正極活物質粒子強度の2倍以上である時に、大粒径正極活物質の粒子割れが最小化し、優れた抵抗増加の抑制効果を得ることができる。
【0045】
具体的には、前記大粒径正極活物質の粒子強度は、150MPa~300MPa、好ましくは180MPa~220MPaであり、前記小粒径正極活物質の粒子強度は75MPa~150MPa、好ましくは90MPa~110MPaであることができる。大粒径正極活物質および小粒径正極活物質の粒子強度が前記範囲を満たす時に、電極圧延時の粒子割れが最小化し、正極の活物質層の空隙率および電極密度を適切に形成することができる。
【0046】
一方、前記正極材は、大粒径正極活物質と小粒径正極活物質とを60:40~90:10、好ましくは70:30~80:20の重量比で含むことができる。大粒径正極活物質と小粒径正極活物質との重量比が前記範囲を満たす時に、優れた容量特性および寿命特性を実現することができる。
【0047】
一方、前記正極材は、前記正極材粉末を2000kgfでプレスして測定したプレス密度が3.0g/cc~4.0g/cc、好ましくは3.0g/cc~3.8g/cc、より好ましくは3.0g/cc~3.6g/ccであることができる。正極材のプレス密度が前記範囲を満たす時に、エネルギー密度に優れた二次電池を製造することができる。
【0048】
正極
次に、本発明による正極について説明する。
【0049】
本発明による正極は、上述の本発明の正極材を含む。具体的には、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質層とを含み、前記正極活物質層は、本発明による正極材を含む。
【0050】
正極材については上述したため、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0051】
前記正極集電体は、導電性が高い金属を含むことができ、正極活物質層が容易に接着し、且つ電池の電圧範囲で反応性がないものであれば、特に制限されるものではない。前記正極集電体は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えばフィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用されることができる。
【0052】
前記正極活物質層は、前記正極材とともに、必要に応じて、選択的に導電材、およびバインダーを含むことができる。
【0053】
ここで、前記正極材は、正極活物質層の全重量に対して、80重量%~99重量%、より具体的には85重量%~98.5重量%の含量で含まれることができる。上述の含量範囲で含まれる時に、優れた容量特性を示すことができる。
【0054】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;カーボンナノチューブなどの導電性チューブ;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、正極活物質層の全重量に対して、0.1重量%~10重量%含まれることができる。
【0055】
前記バインダーは、正極材粒子の間の付着および正極材と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethymethaxrylate)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)およびこれらの水素をLi、NaまたはCaで置換した高分子、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、正極活物質層の全重量に対して、0.1重量%~15重量%含まれることができる。
【0056】
前記正極は、上述の正極材を用いる以外は、通常の正極の製造方法により製造されることができる。具体的には、上述の正極材、および必要に応じて、選択的に、バインダー、導電材、および分散剤を溶媒の中に溶解または分散させて製造した正極合材を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造するか、または前記正極合材を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネーションすることで製造することができる。
【0057】
前記溶媒は、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であることができ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材、バインダー、および分散剤を溶解または分散させ、その後、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0058】
リチウム二次電池
次に、本発明によるリチウム二次電池について説明する。
【0059】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含み、前記正極は、前述のとおりであるため、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0060】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0061】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体および前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0062】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などに表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用されることができる。
【0063】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的に、バインダーおよび導電材を含む。
【0064】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションの可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合体などが挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されることもできる。前記負極活物質は、負極活物質層の全重量に対して80重量%~99重量%含まれることができる。
【0065】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体の間の結合を容易にする成分として、通常、負極活物質層の全重量に対して0.1重量%~10重量%添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0066】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分として、負極活物質層の全重量に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下で添加されることができる。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0067】
前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した負極合材を塗布し、乾燥することで製造されるか、または前記負極合材を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることで製造されることができる。
【0068】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、且つ電解液含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されることもでき、選択的に、単層または多層構造で使用されることができる。
【0069】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0070】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0071】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。
【0072】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩のアニオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCNおよび(CFCFSOからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができ、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~4.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有することから、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0073】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエチルアルコールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエチルアルコールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。ここで、前記添加剤は、電解質の全重量に対して0.1重量%~5重量%含まれることができる。
【0074】
前記のように本発明によるバイモーダル正極材を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0075】
これにより、本発明の他の一実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。
【0076】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として用いられることができる。
【0077】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであることができる。
【0078】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用されるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールにおいて単位電池としても好ましく使用されることができる。
【0079】
前記中大型デバイスの例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグ-インハイブリッド電気自動車および電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
以下、具体的な実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【0081】
製造例1-大粒径正極活物質Aの製造(単粒子)
平均粒径D50が12μmであるNi0.88Co0.08Mn0.04(OH)とLiOHを遷移金属(Ni+Co+Mn):Liのモル比が1:1.03になるように混合し、850℃で12時間焼成して大粒径正極活物質A(LiNi0.88Co0.08Mn0.04)を製造した。製造された正極活物質Aの粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して粒子形態を確認した。図1に、前記方法により製造された正極活物質AのSEMイメージが図示されている。図1に図示されているように、正極活物質Aは、1個のノジュールからなる単粒子形態であった。
【0082】
製造例2-大粒径正極活物質Bの製造(二次粒子)
焼成を800℃で10時間実施した点以外は、製造例1と同じ方法で大粒径正極活物質B(LiNi0.88Co0.08Mn0.04О)を製造した。製造された正極活物質Bの粉末を走査型電子顕微鏡で観察して粒子形態を確認した。図2に、前記方法により製造された正極活物質BのSEMイメージが図示されている。図2に図示されているように、正極活物質Bは、一次粒子が1個以上凝集した二次粒子形態であった。
【0083】
製造例3-大粒径正極活物質Cの製造(疑似-単粒子)
焼成を830℃で10時間実施した以外は、製造例1と同じ方法で大粒径正極活物質C(LiNi0.88Co0.08Mn0.04)を製造した。製造された正極活物質Cの粉末を走査型電子顕微鏡で観察して粒子形態を確認した。図3に、前記方法により製造された正極活物質CのSEMイメージが図示されている。図3に図示されているように、正極活物質Cは、10個~20個のノジュールが凝集した疑似-単粒子形態であった。
【0084】
製造例4-小粒径正極活物質Dの製造(疑似-単粒子)
平均粒径D50が3.7μmであるNi0.86Co0.08Mn0.06(OH)とLiOHを遷移金属(Ni+Co+Mn):Liのモル比が1:1.05になるように混合し、800℃で12時間焼成して小粒径正極活物質D(LiNi0.86Co0.08Mn0.06)を製造した。製造された正極活物質Dの粉末を走査型電子顕微鏡で観察して粒子形態を確認した。図4に、前記方法により製造された正極活物質DのSEMイメージが図示されている。図4に図示されているように、前記方法により製造された正極活物質Dは、10個~20個のノジュールが凝集した疑似-単粒子形態であった。
【0085】
製造例5-小粒径正極活物質Eの製造(二次粒子)
焼成を780℃で10時間実施した以外は、製造例4と同じ方法で素粒子正極活物質E(LiNi0.86Co0.08Mn0.06)を製造した。製造された正極活物質Eの粉末を走査型電子顕微鏡で観察して粒子形態を確認した。図5に、前記方法により製造された正極活物質EのSEMイメージが図示されている。図5に図示されているように、正極活物質Eは、一次粒子が数十個以上凝集した二次粒子形態であった。
【0086】
実施例1
製造例1で製造された大粒径正極活物質Aと製造例4で製造された小粒径正極活物質Dを80:20の重量比で混合して正極材を製造した。
【0087】
実施例2
製造例1で製造された大粒径正極活物質Aと製造例4で製造された小粒径正極活物質Dを70:30の重量比で混合して正極材を製造した。
【0088】
比較例1
製造例2で製造された大粒径正極活物質Bと製造例5で製造された小粒径正極活物質Eを80:20の重量比で混合して正極材を製造した。
【0089】
比較例2
製造例2で製造された大粒径正極活物質Bと製造例4で製造された小粒径正極活物質Dを80:20の重量比で混合して正極材を製造した。
【0090】
比較例3
製造例4で製造された小粒径正極活物質Dを単独で使用して正極材を製造した。
【0091】
比較例4
製造例3で製造された大粒径正極活物質Cと製造例4で製造された小粒径正極活物質Dを80:20の重量比で混合して正極材を製造した。
【0092】
実験例1:プレス密度
実施例1~実施例2および比較例1~比較例4の正極材粉末5gを断面径が1.2cmである円柱状のモールドに投入した後、400kgf、800kgf、1200kgf、1600kgf、2000kgfの荷重で正極材が入っているモールドを加圧した。次に、加圧されたモールドの高さをバーニャキャリパーで測定してプレス密度を求めた。測定結果は、下記図6に示した。図6を参照して、実施例1~実施例2の正極材が、比較例1~比較例4の正極材に比べて高いプレス密度を示すことを確認することができる。
【0093】
実験例2:粒子断面でのサブ粒子凝集個数の測定
実施例1~実施例2および比較例1~比較例4で製造されたそれぞれの正極材、導電材(カーボンナノチューブ、LB-CNT)およびPVdFバインダーを97.2:1.2:1.6の重量比でN-メチルピロリドンの中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の片面に塗布した後、乾燥し、圧延して、正極を製造した。
【0094】
製造された正極をイオンミリング法で切断して厚さ方向断面イメージを得た後、イメージ分析により大粒径正極活物質と小粒径正極活物質のそれぞれに対して、30個の粒子を選択し、それぞれの粒子断面でのノジュールまたは一次粒子の個数を測定した。大粒径正極活物質粒子30個で測定された粒子断面でのノジュールまたは一次粒子の個数の算術平均値を大粒径正極活物質の粒子断面でのノジュールまたは一次粒子の平均凝集数r、小粒径正極活物質粒子30個で測定された粒子断面でのノジュールまたは一次粒子の個数の算術平均値を小粒径正極活物質の粒子断面での一次粒子の平均凝集数r’とした。測定結果は下記表1に示した。
【0095】
【表1】
【0096】
実験例3:寿命特性の評価
<二次電池の製造>
実施例1~実施例2および比較例1~比較例4で製造されたそれぞれの正極材、導電材(カーボンナノチューブ、LB-CNT)およびPVdFバインダーを97.2:1.2:1.6の重量比でN-メチルピロリドンの中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の片面に塗布した後、乾燥し、圧延して正極を製造した。
【0097】
負極活物質(SiОとグラファイト混合物、グラファイト:Siの重量比=94.5:3.3)、導電材としてSuper C65と単層CNTを98:2の重量比で混合した混合導電材およびSBRバインダー(M37、LG化学)を95.57:1:3.43の重量比で水の中で混合して負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを銅集電体の片面に塗布した後、乾燥し、圧延して、負極を製造した。
【0098】
前記正極と負極との間にセパレータを配置した後、電池ケースに挿入し、電解質を注入して、リチウム二次電池を製造した。
【0099】
前記のように製造されたリチウム二次電池に対して、45℃、0.5Cで4.25Vまで充電し、1Cで2.5Vまで放電することを1サイクルとして、50サイクル充放電を実施しながら抵抗増加率(DCIR increase)および容量維持率(Capacity Retention)を測定した。測定結果は、図7および下記表2に示した。
【0100】
ここで、抵抗増加率および容量維持率は、下記式1および式2により計算した。
【0101】
式1:抵抗増加率(%)={(50サイクル後の抵抗/1サイクル後の抵抗)×100}-100
【0102】
式2:容量維持率(%)=(50サイクル後の放電容量/1サイクル後の放電容量)×100
【0103】
【表2】
【0104】
前記表2および図7に図示されているように、実施例1~実施例2の正極材を使用したリチウム二次電池が、比較例1~比較例4の正極材を使用したリチウム二次電池に比べて、容量維持率および抵抗増加率の面で優れた効果を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
【表1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大粒径正極活物質および小粒径正極活物質を含むバイモーダル正極材であり、
前記大粒径正極活物質は、1個のノジュールからなる単粒子であり、
前記小粒径正極活物質は、2個~30個のノジュールの凝集体である疑似-単粒子である、正極材。
【請求項2】
前記小粒径正極活物質の粒子断面でのノジュールの平均凝集数をr’としたときに、1/r’が0.5以下である、請求項1に記載の正極材。
【請求項3】
前記1/r’が0.1~0.5である、請求項2に記載の正極材。
【請求項4】
前記大粒径正極活物質は、平均粒径D50が10μm~20μmであり、
前記小粒径正極活物質は、平均粒径D50が1μm~8μmである、請求項1に記載の正極材。
【請求項5】
前記大粒径正極活物質および小粒径正極活物質は、それぞれ独立して、下記[化学式1]で表されるリチウムニッケル系酸化物を含む、請求項1に記載の正極材:
[化学式1]
LiNiCo
前記化学式1中、Mは、Mn、Alまたはこれらの組み合わせであり、Mは、Zr、W、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、TaおよびNbからなる群から選択される1種以上であり、0.8≦a≦1.、0.8≦b<1、0<c<0.、0<d<0.、0≦e≦0.1である。
【請求項6】
前記大粒径正極活物質の粒子強度が前記小粒径正極活物質の粒子強度の2倍以上である、請求項1に記載の正極材。
【請求項7】
前記大粒径正極活物質の粒子強度が150MPa~300MPaであり、
前記小粒径正極活物質の粒子強度が75MPa~150MPaである、請求項1に記載の正極材。
【請求項8】
前記正極材は、大粒径正極活物質と小粒径正極活物質を60:40~90:10の重量比で含む、請求項1に記載の正極材。
【請求項9】
前記正極材を2000kgfでプレスして測定したプレス密度が3.0g/cc~4.0g/ccである、請求項1に記載の正極材。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の正極材を含む、正極。
【請求項11】
請求項10に記載の正極を含む、リチウム二次電池。
【国際調査報告】