(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】サルベコウイルスに対するモノクローナル抗体の中和
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20241024BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241024BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241024BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241024BHJP
C12N 5/12 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241024BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241024BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20241024BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07K16/10 ZNA
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N5/10
C12N1/19
C12N1/21
C12N1/15
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N5/12
C12N15/13
A61K39/395 S
A61P31/14
G01N33/569 L
G01N33/531 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525544
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 IB2022056706
(87)【国際公開番号】W WO2023073441
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514194370
【氏名又は名称】オスペダーレ サン ラファエレ エス.アール.エル
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンチーニ、ニカシオ
(72)【発明者】
【氏名】クレメンティ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】クレメンティ、マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】クリスクオロ、エレナ
(72)【発明者】
【氏名】システィ、ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】リベラ、マルティーナ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
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4C085BB36
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4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA53
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、重症急性呼吸器症候群-コロナウイルス-2(SARS-CoV-1又はCOVID-19などのSARS-CoV-2)などのサルベコウイルスのスパイクタンパク質を標的とする中和モノクローナル抗体を提供する。本発明のモノクローナル抗体は、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2活性を阻害又は中和することができ、好都合には、SARS-CoV-2変異株間のそれらの有意な交差反応性のために、ヒトにおけるCOVID-19感染を治療、予防又は診断するために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルベコウイルス(Sarbecovirus)のスパイクタンパク質の保存領域に結合する抗体又は抗体断片であって、
a)
i)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号93からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、
ii)配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号94からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR2、
iii)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号95からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3、
を含む重鎖可変配列、
及び/又は
b)
i)配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16及び配列番号96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、
ii)GAS、AAS及びDASからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR2、
iii)配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24及び配列番号97からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3、
を含む軽鎖可変配列、
を含む抗原結合部位を特徴とする、抗体又は抗体断片。
【請求項2】
前記重鎖可変配列が、
1)配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28及び配列番号98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR1)、
2)配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号99からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR2)、
3)配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36及び配列番号100からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR3)、
4)配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40及び配列番号101からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR4)、
をさらに含む、及び/又は
前記軽鎖可変配列が、
5)配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR1)、
6)配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50及び配列番号103からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR2)、
7)配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55及び配列番号104からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR3)、
8)配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59及び配列番号105からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR4)、
をさらに含む、
請求項1に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項3】
前記重鎖可変配列及び/又は軽鎖配列が以下:
a)重鎖可変配列については、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又は配列番号1のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むか又は配列番号5のアミノ酸配列からなるCDR2、配列番号9のアミノ酸配列を含むか又は配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR3、軽鎖可変配列については、配列番号13のアミノ酸配列を含むか又は配列番号13のアミノ酸配列からなるCDR1、アミノ酸配列GASを含むか又はGASからなるCDR2、配列番号20のアミノ酸配列を含むか又は配列番号20のアミノ酸配列からなるCDR3、
b)重鎖可変配列については配列番号1のアミノ酸配列を含むか又は配列番号1のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むか又は配列番号5のアミノ酸配列からなるCDR2、配列番号9のアミノ酸配列を含むか又は配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR3、軽鎖可変配列については、配列番号13のアミノ酸配列を含むか又は配列番号13のアミノ酸配列からなるCDR1、アミノ酸配列GASを含むか又はGASからなるCDR2、配列番号21のアミノ酸配列を含むか又は配列番号21のアミノ酸配列からなるCDR3、
c)重鎖可変配列については、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又は配列番号2のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むか又は配列番号6のアミノ酸配列からなるCDR2、配列番号10のアミノ酸配列を含むか又は配列番号10のアミノ酸配列からなるCDR3、軽鎖可変配列については、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1、アミノ酸配列AASを含むCDR2、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR3、
d)重鎖可変配列については、配列番号3のアミノ酸配列を含むか又は配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むか又は配列番号7のアミノ酸配列からなるCDR2、配列番号11のアミノ酸配列を含むか又は配列番号11のアミノ酸配列からなるCDR3、軽鎖可変配列については、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又は配列番号15のアミノ酸配列からなるCDR1、アミノ酸配列AASを含むか又はそれからなるCDR2、配列番号23のアミノ酸配列を含むか又は配列番号23のアミノ酸配列からなるCDR3、
e)重鎖可変配列については、配列番号4のアミノ酸配列を含むか又は配列番号4のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸配列を含むか又は配列番号8のアミノ酸配列からなるCDR2、配列番号12のアミノ酸配列を含むか又は配列番号12のアミノ酸配列からなるCDR3、軽鎖可変配列については、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又は配列番号16のアミノ酸配列からなるCDR1、アミノ酸配列DASを含むか又はDASからなるCDR2、配列番号24のアミノ酸配列を含むか又は配列番号24のアミノ酸配列からなるCDR3、
f)重鎖可変配列については、配列番号93のアミノ酸配列を含むか又は配列番号93のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号94のアミノ酸配列を含むか又は配列番号94のアミノ酸配列からなるCDR2、配列番号95のアミノ酸配列を含むか又は配列番号95のアミノ酸配列からなるCDR3、軽鎖可変配列については、配列番号96のアミノ酸配列を含むか又は配列番号96のアミノ酸配列からなるCDR1、アミノ酸配列AASを含むか又はAASからなるCDR2、配列番号97のアミノ酸配列を含むか又は配列番号97のアミノ酸配列からなるCDR3、
のCDRの組合せを含む、請求項1又は請求項2に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項4】
前記重鎖可変配列及び/又は前記軽鎖可変配列が、以下:
a)重鎖可変配列については、配列番号25を含むか又は配列番号25からなるFR1、配列番号29を含むか又は配列番号29からなるFR2、配列番号33を含むか又は配列番号33からなるFR3、及び配列番号37を含むか又は配列番号37からなるFR4、軽鎖可変配列については、配列番号41を含むか又は配列番号41からなるFR1、配列番号46を含むか又は配列番号46からなるFR2、配列番号51を含むか又は配列番号51からなるFR3、及び配列番号56を含むか又は配列番号56からなるフレームワーク領域FR4、
b)重鎖可変配列については、配列番号25を含むか又は配列番号25からなるFR1、配列番号29を含むか又は配列番号29からなるFR2、配列番号33を含むか又は配列番号33からなるFR3、及び配列番号38を含むか又は配列番号38からなるFR4、軽鎖可変配列については、配列番号42を含むか又は配列番号42からなるFR1、配列番号47を含むか又は配列番号47からなるFR2、配列番号52を含むか又は配列番号52からなるFR3、及び配列番号57を含むか又は配列番号57からなるFR4、
c)重鎖可変配列については、配列番号26を含むか又は配列番号26からなるFR1、配列番号30を含むか又は配列番号30からなるFR2、配列番号34を含むか又は配列番号34からなるFR3、及び配列番号39を含むか又は配列番号39からなるFR4、軽鎖可変配列については、配列番号43を含むか又は配列番号43からなるFR1、配列番号48を含むか又は配列番号48からなるFR2、配列番号53を含むか又は配列番号53からなるFR3、及び配列番号58を含むか又は列番号58からなるFR4、
d)重鎖可変配列については、配列番号27を含むか又は配列番号27からなるFR1、配列番号31を含むか又は配列番号31からなるFR2、配列番号35を含むか又は配列番号35からなるFR3、及び配列番号40を含むか又は配列番号40からなるFR4、軽鎖可変配列については、配列番号44を含むか又は配列番号44からなるFR1、配列番号49を含むか又は配列番号49からなるFR2、配列番号54を含むか又は配列番号54からなるFR3、及び配列番号56を含むか又は配列番号56からなるFR4、
e)重鎖可変配列については、配列番号28を含むか又は配列番号28からなるFR1、配列番号32を含むか又は配列番号32からなるFR2、配列番号36を含むか又は配列番号36からなるFR3、配列番号39を含むか又は配列番号39からなるFR4、軽鎖可変配列については、配列番号45を含むか又は配列番号45からなるFR1、配列番号50を含むか又は配列番号50からなるFR2、配列番号55を含むか又は配列番号55からなるFR3、及び配列番号59を含むか又は配列番号59からなるFR4、
f)重鎖可変配列については、配列番号98を含むか又はそれ配列番号98からなるFR1、配列番号99を含むか又は配列番号99からなるFR2、配列番号100を含むか又は配列番号100からなるFR3、配列番号101を含むか又は配列番号101からなるFR4、軽鎖可変配列については、配列番号102を含むか又は配列番号102からなるFR1、配列番号103を含むか又は配列番号103からなるFR2、配列番号104を含むか又は配列番号104からなるFR3、及び配列番号105を含むか又は配列番号105からなるFR4、
のFRの組合せをさらに含む、請求項3に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片であって、
a)配列番号60のアミノ酸配列を含むか又は配列番号60のアミノ酸配列からなる重鎖可変配列、及び/又は、配列番号61のアミノ酸配列を含むか又は配列番号61のアミノ酸配列からなる軽鎖可変配列、
又は
b)配列番号62のアミノ酸配列を含むか又は配列番号62のアミノ酸配列からなる重鎖可変配列、及び/又は、配列番号63のアミノ酸配列を含むか又は配列番号63のアミノ酸配列からなる軽鎖可変配列、
c)配列番号64のアミノ酸配列を含むか又は配列番号64のアミノ酸配列からなる重鎖可変配列、及び/又は、配列番号65のアミノ酸配列を含むか又は配列番号65のアミノ酸配列からなる軽鎖可変配列、
d)配列番号66のアミノ酸配列を含むか又は配列番号66のアミノ酸配列からなる重鎖可変配列、及び/又は、配列番号67のアミノ酸配列を含むか又は配列番号67のアミノ酸配列からなる軽鎖可変配列、
e)配列番号68のアミノ酸配列を含むか又は配列番号68のアミノ酸配列からなる重鎖可変配列、及び/又は、配列番号69のアミノ酸配列を含むか又は配列番号69のアミノ酸配列からなる軽鎖可変配列、
f)配列番号70のアミノ酸配列を含むか又は配列番号70のアミノ酸配列からなる重鎖可変配列、及び/又は、配列番号71のアミノ酸配列を含むか又は配列番号71のアミノ酸配列からなる軽鎖可変配列、
を含むか又はそれらからなる抗体又は抗体断片。
【請求項6】
モノクローナル抗体、好ましくはヒトモノクローナル抗体である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項7】
IgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択されるIgG、Fab断片、一本鎖抗体(scFv)、二重特異性抗体であり、任意に(optionally)薬物又は標識とコンジュゲートしている、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列。
【請求項9】
請求項8に記載のヌクレオチド配列を少なくとも1つ含む発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片を産生するための、請求項8に記載のヌクレオチド配列を少なくとも1つ含むハイブリドーマ。
【請求項12】
請求項8又は請求項9に記載のヌクレオチド配列又は発現ベクターの少なくとも1つを、1又は複数の医薬的に許容される製剤添加剤(excipient)及び/又はアジュバントと共に含む、分子/ベクターに基づく受動免疫予防のための製剤。
【請求項13】
対象におけるサルベコウイルス媒介性疾患、特にSARS CoV-1又はSARS-CoV-2及びそれらの懸念される変異株(variants of concern)によって媒介される重症急性呼吸器症候群の治療及び/又は予防のための医療分野における使用のための、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項14】
前記懸念される変異株が、SARS-CoV-2のアルファ(B.1.1.7)、ベータ(B.1.351)、ガンマ(P.1)、デルタ(B.1.617.2)、D614 G(パヴィア大学)、オミクロン(B.1.1.529)変異株を含む群から選択される、請求項13に記載の使用のための抗体又は抗体断片。
【請求項15】
治療される対象が、免疫不全患者、心血管疾患及び/又は呼吸器疾患の病歴を有する患者、高齢患者又はワクチンを忌避する対象である、請求項13又は請求項14に記載の使用のための抗体又は抗体断片。
【請求項16】
第1の抗体又は抗体断片が単独で、又はスパイクタンパク質の異なる保存領域に対する第2の抗体又は抗体断片と組み合わせて使用される、請求項13~請求項15のいずれか一項に記載の使用のための抗体又は抗体断片。
【請求項17】
本発明の抗体又は抗体断片の少なくとも1つを有効成分として、1又は複数の医薬的に許容される製剤添加剤(excipient)及び/又はアジュバントと共に含む医薬組成物。
【請求項18】
静脈内、筋肉内又は皮下投与に適している、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質中の標的とする保存領域に結合する第1の抗体又は抗体断片、及びSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質中の第1の抗体とは異なる標的とする保存領域に結合する第2の抗体又は抗体断片を含む、サルベコウイルス媒介性疾患、特にSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2によって媒介される重症急性呼吸器症候群に罹患している対象における同時、個別又は逐次投与のための、組成物、又はパーツからなるキット。
【請求項20】
生物学的試料中のサルベコウイルス、好ましくはSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2の存在を検出するための、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コロナウイルス科ファミリーは、さらに4つの属に分類される多数のウイルス種を含む。
【背景技術】
【0002】
7つの種がヒトに注目されており、適応、病原性及び拡散に関して高度に多様である。実際、4つの種は風土性であり、ヒトに高度に適応しており(HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43及びHCoV-HKU1)、2つは流行性であり(MERS-CoV及び絶滅したSARS-CoV)、1つは汎流行性であり、最近出現し、現在流行しているSARS-CoV及びSARS-CoV-2は、同じ属(ベータコロナウイルス)及び亜属(サルベコウイルス)に属するが、系統発生的に異なり、感染性及び臨床徴候に関して著しく異なる特徴を有する。これらの態様は、効果的な監視プログラムを実施するために必要なコロナウイルス科ファミリー全体を完全にサンプリングすることの困難性を実証し、したがってCoVに対して広範な活性を有する治療戦略を有する必要性を強調する。
【0003】
一般に、ウイルス複製を阻害するための理想的な標的は、細胞感染を防止するので、侵入を媒介するタンパク質によって表される。したがって、侵入阻害剤は、有効な治療薬として、及び長い半減期を有するかどうかにかかわらず、予防に使用することができる。ウイルス侵入を阻害することの関連性は、自然感染又はワクチン接種によって誘発されるほとんどの中和抗体が、侵入に関与するウイルスタンパク質の基本領域を認識するという事実によって実証される。
【0004】
また、モノクローナル抗体(mAb)は半減期が長いため、予防におけるそれらの使用が可能になる。免疫化は、SARS-CoV-2を制限し、場合によっては根絶するための最も効果的なアプローチであるが、中和mAb(nAb)の同定は、遅延応答、非応答者の割合、及び免疫不全の個体にワクチン接種することができないことに関するワクチン固有の制限に対処するために不可欠である。また、SARS-CoV-2に対する長期持続性体液性免疫、及び長期的にはワクチン接種の有効性を部分的に妨害する可能性がある、継続的に出現する変異株の効果に関するいくつかの未解決の問題がある。まとめると、SARS-CoV-2に対する中和mAbは、基本的な治療的及び予防的ツールであり、今後そうなるであろうし、多様なmAbのパネルの利用可能性は、新たな変異株の出現に対処するのに役立つであろう。さらには、少数のmAbが自然にSARS-CoV及びSARS-CoV-2を交差中和し、最近、いくつかのサルベコウイルスを中和するインビトロの成熟mAb(ADG-2と呼ばれる)が記載されているので、交差反応性mAbを同定する可能性がある。
【0005】
全てのCoVの宿主細胞への侵入プロセス全体は、ウイルスエンベロープから突出する大きな膜貫通糖タンパク質であるスパイク(S)によって媒介される。スパイクは、各モノマーが、宿主プロテアーゼによってS1及びS2サブユニットに切断される単一のタンパク質(S0)として産生されるホモ三量体である。S1は頂端に位置し、受容体結合ドメイン(RBD)を含有するため、宿主タンパク質と相互作用することによって付着相を媒介する。S2は、融合ペプチド、膜貫通ドメイン、及びヘプタッドリピート(HR1及びHR2)を含むスパイクストークを形成し、これらは全て、ウイルスエンベロープを宿主膜に融合させるのに必要である。
【0006】
CoV侵入は、各スパイク三量体中における3つ全てのRBDの受容体結合、少なくとも1つの特異的スパイク部位のタンパク質分解的切断、及びその後の融合を含む多段階プロセスである。
【0007】
SARS-CoV-2は、SARS-CoV及びいくつかの動物CoVと同様に、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に特異的に結合する。SARS-CoV-2 Sは、ウイルス侵入部位も特異的に決定する宿主プロテアーゼによって処理される必要があるので、結合事象は侵入を媒介するのに必要であるが、十分ではない。実際、スパイクがフーリン及びTMPRSS2によって切断される場合、SARS-CoV-2融合は原形質膜で起こり、逆に、スパイクはエンドソーム区画から入り、そこでカテプシンによって切断される。スパイクが完全に結合して切断されると、S1はS2から解離し、融合ペプチドの露出と宿主膜への挿入を可能にする。融合をもたらす最終的な分子事象は、サブユニット全体を含むS2の劇的な立体配座変化であり、HR1及びHR2のリフォールディングによって駆動される。注目すべきことに、結合から融合までの全ての事象は、有意な構造再編成を必要とするため、潜在的に中和nAbの標的であり得る。
【0008】
CoVのスパイクタンパク質は、ビリオン表面に露出した最も顕著なタンパク質であり、体液性応答の主な標的である。
【0009】
SARS-CoV-2感染個体からの血清の特徴付けにより、その機能に不可欠なドメインと重複するか、又は付着及び融合を媒介するのに必要な立体配座変化を間接的に阻害するスパイクタンパク質上に位置するいくつかの中和エピトープが同定されている。
【0010】
これまでに同定された中和エピトープの大部分は立体配座であって、RBDに位置しており、それに結合する全てのnAbは、異なる作用様式を特徴とする4つのクラスに分類することができる。クラス1及びクラス2抗体は、RBD中の同じサブドメイン、いわゆる受容体結合モチーフ(RBM)を認識することによって、ACE2とスパイクとの間の相互作用を直接的に妨害し、クラス3及び4は、正しいRBM露出又は融合に必要な下流の立体配座変化を間接的に遮断する潜在性エピトープに結合する。
【0011】
広域中和mAbであるADG-2は、固有の結合様式を有するにもかかわらず、クラス1 nAbと部分的に共有されるエピトープを認識し、関与する残基及びアプローチ角に関して、わずかな違いであってもnAbの生物学的活性に劇的に影響し得ることを強調している。より低い頻度では、他のエピトープを認識するnAbも同様に同定されている。実際、侵入に直接関与しないS1の領域(N末端ドメイン-NTD)に結合するmAbに対する強力な中和が報告されている。
【0012】
また、RBDの下流に位置するか、又は融合ペプチドと重複する線状エピトープを認識する中和抗体が患者血清中に存在することが同定されている。SARS-CoV-2に対する代表的なヒト中和モノクローナル抗体(nAb)及び相対的な標的抗原(すなわち、RBD、NTDなど)を要約した、Lanying Duら、2021[1]の表1を参照のこと。
【0013】
全体として、患者血清における中和応答はRBDに特異的な抗体によって支配されるが、いくつかの他のスパイクドメインを効果的に標的化することができる。言及する価値があるものとして、RBD及びS1は、一般に、SARS-CoV-2変異株が継続的に出現していること、同じ亜属に属するCoVの間で出現していることの両方を考慮すると、スパイクの最も可変的なドメインである。
【0014】
したがって、保存されたスパイクタンパク質ドメインを標的とするnAbは、より広いスペクトルの中和可能な単離物/種を合理的に有するので、緊急に必要とされており、非常に興味深い。
【0015】
COVID-19治療のための治療用mAbは加速的に開発されており、そのペースはいかなる疾患についても前例のないものである。
【0016】
現在、8つのSARS-CoV-2 RBD特異的な強力なnAbが、重症疾患のリスクが高い入院していないCOVID-19患者を治療するために、緊急使用許可(EUA)の下で米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。
【0017】
以下のCOVID-19 mAbが臨床使用されている:バムラニビマブ(LY-CoV555)[2]、Eli Lilly社のバムラニビマブ(LY-CoV555)とエテセビマブ(LY-CoV016又はJS016)との組合せ[3]、Regeneron社のカシリビマブ(REGN10933)とイムデビマブ(REGN10987)との組合せ[4](REGEN-COV)、AstraZeneca社のシルガビマブ(COV2-2130又はAZD1061)とチキサゲビマブ(COV2-2196又はAZD8955)との組合せ[5]、GSK社及びVir Biotechnology社の単剤療法ベースのnAbであるソトロビマブ(VIR-7831)[6]、及びCelltrion社のレグダンビマブ(CT-P59)[7]。Nabベースの別の単剤療法及び併用療法のセットが第III相試験中である:AbbVie社の2B04[8]及び47D11[9]、Brii Biosciences社のBRII-196及びBRII-198[10]、Tychan社のTY027も第III相試験中である[10]。
【0018】
現在、第I相、第II相、及び第III相試験中であり、かつ臨床中であるnAbの包括的なリストは、Kumar Sら、2021[11]の
図2Aに要約されており、参照として本明細書に含まれている。
【0019】
いくつかのSARS-CoV-2変異株が、世界の異なる地域から報告されている。世界保健機関(WHO)によれば、新たな変異の獲得によってウイルス伝播が増加し、死亡率が増加し、治療及びワクチンの有効性が有意に低下する場合、認識された変異は「懸念される変異株(variants of concern)」(VOC)に格上げされる。「注目すべき変異株(variants of interest)」(VOI)は、疾患重症度、伝播性、免疫回避及び診断回避に影響を及ぼす可能性のある新たな変異を有する変異株である。
【0020】
現在の懸念される変異株は、アルファ(B.1.1.7、英国で同定)[12]、ベータ(B.1.351、南アフリカで同定)[13]、ガンマ(P.1、ブラジルで同定)[14]、デルタ(B.1.617.2、インドで同定)[15]、及びオミクロンの亜系統及び子孫系統(オミクロン(B.1.1.529)[16]、オミクロンBA.2(B.1.1.529+BA.2)オミクロンBA.4(B.1.1.529+BA.4)及びオミクロンBA.5.2(B.1.1.529+BA.5))である。現在の注目すべき変異株は、イータ(B.1.525、英国/ナイジェリアで同定)、イオタ(B.1.526、米国で同定)[17]、カッパ(B.1.617.1、インドで同定)[15]、及びラムダ(C.37、ペルーで同定)[18]である。参照については、現在のSARS-Cov-2 VOC及びVOIに存在する変異の網羅的なリストを提供するKumar Sら、2021[11]の
図2Bを参照されたい。
【0021】
理想的には、有効な抗ウイルス治療戦略は、既存の複数のウイルス株/変異株に対する幅を同時に維持しながら、新たな変異株による感染/疾患を予防する能力を有するべきである。最近の研究では、多くのNTD特異的NAbは、全ての新生変異株に対して比較的有効性が低いが、RBD特異的NAbは、新生変異株及びVOCに対して可変的に有効であることが報告されている。単剤療法としての強力な治療用nAbの大部分は、E484K/Q又はL452R変異を含有するSARS-CoV-2新生変異株に対して、中和活性の完全な抑止又は低減を示した。
【0022】
例えば、バムラニビマブ(LY-CoV555)は、全てのVOCに対して無効であったため、EUAについてもはや考慮されなかった。
【0023】
現在、RBD上の異なる非重複エピトープを標的とするnAbのカクテルを含む併用療法は、SARS-CoV-2及びその変異株に対する防御の非常に優れた効力及び有望な相関を実証している。参考文献を参照のこと。さらに、単剤療法として新たに同定されたRBDコア結合nAbであるSARS2-38及びLY-CoV1404は、SARS-CoV-2の全ての懸念される変異株を強力に中和する。
【0024】
本発明の著者らは、現在までに知られている全てのVOC及びVOIにおいてSARS-CoV-2によって引き起こされる疾患負荷に取り組むために単独で又は組み合わせて使用される有望で魅力的な治療候補として、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の保存領域を標的とする中和抗体を同定した。
【発明の概要】
【0025】
したがって、本発明の目的は、以下:
a)
i)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号93からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、
ii)配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号94からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR2、
iii)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号95からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3、を含む重鎖可変配列、
及び/又は
b)
i)配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16及び配列番号96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、
ii)GAS、AAS及びDASからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR2、
iii)配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24及び配列番号97からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3、を含む軽鎖可変配列、
を含む抗原結合部位を特徴とする、サルベコウイルスのスパイクタンパク質の保存領域に結合する単離された抗体又は抗体断片である。
【0026】
本発明の単離された抗体又は抗体断片の配列を特徴付ける重鎖領域及び定常領域の可変ドメインの相補性決定領域(CDR;CDR1-CDR3)並びにフレームワーク領域(FR;FR1-FR4)は、IMGT命名法に従って決定されている。
【0027】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体又は抗体断片の重鎖可変配列は、さらに以下:
a)配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28及び配列番号98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR1)、
b)配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号99からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR2)、
c)配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36及び配列番号100からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR3)、
d)配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40及び配列番号101からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR4)、を含み、
及び/又は
軽鎖可変配列は、さらに以下:
a)配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45及び配列番号102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR1)、
b)配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50及び配列番号103からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR2)、
c)配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55及び配列番号104からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR3)、
d)配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59及び配列番号105からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域(FR4)、を含む。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、抗体又は抗体断片は、以下:
a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR3、を含む重鎖可変配列、
及び/又は
配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、GASのアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3、を含む軽鎖可変配列、を含む、抗原結合部位を特徴とする。別の好ましい実施形態によれば、前記重鎖可変配列は、配列番号25を含むフレームワーク領域FR1、配列番号29を含むフレームワーク領域FR2、配列番号33を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号37を含むフレームワーク領域FR4をさらに含んでよく、前記軽鎖可変配列は、配列番号41を含むフレームワーク領域FR1、配列番号46を含むフレームワーク領域FR2、配列番号51を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号56を含むフレームワーク領域FR4、をさらに含んでよく、
b)重鎖可変配列は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、
及び/又は
軽鎖可変配列は、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、GASのアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。別の好ましい実施形態によれば、前記重鎖可変配列は、配列番号25を含むフレームワーク領域FR1、配列番号29を含むフレームワーク領域FR2、配列番号33を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号38を含むフレームワーク領域FR4をさらに含んでよく、前記軽鎖可変配列は、配列番号42を含むフレームワーク領域FR1、配列番号47を含むフレームワーク領域FR2、配列番号52を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号57を含むフレームワーク領域FR4をさらに含んでよく、
c)重鎖可変配列は、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、
及び/又は
軽鎖可変配列は、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1、AASのアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。別の好ましい実施形態によれば、前記重鎖可変配列は、配列番号26からなるフレームワーク領域FR1、配列番号30からなるフレームワーク領域FR2、配列番号34を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号39を含むフレームワーク領域FR4をさらに含んでよく、前記軽鎖可変配列は、配列番号43を含むフレームワーク領域FR1、配列番号48を含むフレームワーク領域FR2、配列番号53を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号58を含むフレームワーク領域FR4をさらに含んでよく、
d)重鎖可変配列は、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、
及び/又は
軽鎖可変配列は、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR1、AASのアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。別の好ましい実施形態によれば、前記重鎖可変配列は、配列番号27を含むフレームワーク領域FR1、配列番号31を含むフレームワーク領域FR2、配列番号35を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号40からなるフレームワーク領域FR4をさらに含んでよく、前記軽鎖可変配列は、配列番号44を含むフレームワーク領域FR1、配列番号49を含むフレームワーク領域FR2、配列番号54を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号56を含むフレームワーク領域FR4をさらに含んでよく、
e)重鎖可変配列は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、
及び/又は
軽鎖可変配列は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、DASのアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。別の好ましい実施形態によれば、前記重鎖可変配列は、配列番号28を含むフレームワーク領域FR1、配列番号32を含むフレームワーク領域FR2、配列番号36を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号39を含むフレームワーク領域FR4をさらに含んでよく、前記軽鎖可変配列は、配列番号45を含むフレームワーク領域FR1、配列番号50を含むフレームワーク領域FR2、配列番号55を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号59を含むフレームワーク領域FR4をさらに含んでよく、
f)重鎖可変配列は、配列番号93のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号94のアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号95のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、
及び/又は
軽鎖可変配列は、配列番号96のアミノ酸配列を含むCDR1、AASのアミノ酸配列を含むCDR2、配列番号97のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。別の好ましい実施形態によれば、前記重鎖可変配列は、配列番号98を含むフレームワーク領域FR1、配列番号99を含むフレームワーク領域FR2、配列番号100を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号101を含むフレームワーク領域FR4をさらに含んでよく、前記軽鎖可変配列は、配列番号102を含むフレームワーク領域FR1、配列番号103を含むフレームワーク領域FR2、配列番号104を含むフレームワーク領域FR3、及び配列番号105を含むフレームワーク領域FR4をさらに含んでよい。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体又は抗体断片(クローンFab 5#)は、
LESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFNFNTYTMNWVRQAPGKGLEWVSSISSSSSYIDNADSVKGRFTIYRDNAKKSLYLRMIGLRVEDSGVYYCTRVNPQAKGSDWLDPPINQYYGMDVWGQGTTVTVSS(配列番号60)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変配列、及び/又は
ELTLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK(配列番号61)
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変配列、を含む。
【0030】
別の好ましい実施形態では、本発明の抗体又は抗体断片(クローンFab BU.2)は、
LESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFNFNTYTMNWVRQAPGKGLEWVSSISSSSSYIDNADSVKGRFTIYRDNAKKSLYLRMIGLRVEDSGVYYCTRVNPQAKGSDWLDPPINQYYGMDVWGQRDHGHRSP(配列番号62)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変配列、及び/又は
ELTLTQSPATLSLSPGDRATLSCRASQSVSSSYLAWYQHKPGQPPRLLIYGASSRAAGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYVTFGPGTKVDIK★(配列番号63)
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変配列、を含む。
【0031】
本発明の別の好ましい代替実施形態によれば、本発明の単離された抗体又は抗体断片(クローンFab BU.7)は、
LEWGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSINYYWVWIRQPPGKGLEWIGNINYSGTTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARQTYYYDRRGYYRPEPIEHWGQGTLVTVSS(配列番号64)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変配列、及び/又は
ELVMTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQDVRSFLHWYQQRPGKAPKLLIYAASMVSSEVPSRFSGSGSETDFTLTIDGLQPEDVATYFCQQTYDTPLTFGGGTAVDIK(配列番号65)
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変配列、を含む。
【0032】
本発明の別の実施形態では、本発明の単離された抗体又は抗体断片(クローンFab BU.11)は、
LESGPGLLKPSQSLSLTCAISGDSVSRRSVAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWFSEYGVSVRGRITISPDTTKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCRKSKGRQQLAESTSSVWTWGQGTTVIVYS(配列番号66)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変配列、及び/又は
ELVMTQSPSSLSAFVGDRVTLTCRASQGIRNDLNWYQQKPGQPPKLLIYAASALQSGVPSRFSGSGFGTDFTLTISSLQPEDIATYYCLQDYNFPRTFGQGTKVEIK(配列番号67)
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変配列、を含む。
【0033】
本発明のさらに別の代替的な好ましい実施形態では、本発明の単離された抗体又は抗体断片ト(クローンFab BU.54)は、
LEWGPGLVKASQTLSLTCTVSGGSISSRNFYWSWIRQPGGKGLEWIGRIYTSGSTNYNPSLKSRVTISLDTSKSQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGTFYYDRSGNGRLDPLDYWGQGTLVTVS(配列番号68)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変配列、及び/又は
ELVMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGFGTHFTLTISSLQPEDFATYYCQQHDNLVTFGGGTKVEIK(配列番号69)
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変配列、を含む。
【0034】
本発明の最後の好ましい代替実施形態によれば、本発明の単離された抗体又は抗体断片(クローンFab BS.70)は、
LESGGGVVQPGTSLRLSCAASGFTFNNFGMHWVRQAPGKGLEWVAMISYEGSKDFYADSVKGRFTISKDHARNTVYLQMNSLRAEDTAEYYCAKDKAIFMISAGRTLDFWGQGTLVTVSS(配列番号70)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変配列、及び/又は
ELVMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQNIGIYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQNGVPSRFSGSGSGTDFTLTISTLQPEDFATYWCQQGYSTPLTFGGGTKVEIR(配列番号71)
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変配列、を含む。
【0035】
本発明のさらなる目的は、上に列挙した本発明の抗体又は抗体断片の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明のヌクレオチド配列は、以下からなる群から選択される:
【0037】
重鎖(クローンFab#5):
ctcgagtctgggggaggcctggtcaagcctggggggtccctgagactctcctgtgcagcctctggattcaacttcaatacctataccatgaactgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggtctcatccattagtagtagtagtagttacatagacaacgcagactcagtgaagggccgattcaccatctacagagacaacgccaagaagtcactgtatctgcgaatgatcggcctgagagtcgaggactccggtgtgtattactgtacgcgagtgaacccccaggccaaagggtcggactggttggatccccccatcaaccaatactacggtatggacgtctggggccaagggaccacggtcaccgtctcctca(配列番号72)
【0038】
軽鎖(Fab#5):
gagctcacactcacgcagtctccaggcaccctgtctttgtctccaggggaaagagccaccctctcctgcagggccagtcagagtgttagcagcagctatttagcctggtaccagcagaaacctggccaggctcccaggctcctcatctatggtgcatccagcagggccactggcatcccagacaggttcagtggcagtgggtctgggacagacttcactctcaccatcagcagactggagcctgaagattttgcagtgtattactgtcagcagtatggtagctcaccgtggacgttcggccaagggaccaaggttgaaatcaaa(配列番号73)
【0039】
重鎖(Fab BU.2)
ctcgagtctgggggaggcctggtcaagcctggggggtccctgagactctcctgtgcagcctctggattcaacttcaatacctataccatgaactgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggtctcatccattagtagtagtagtagttacatagacaacgcagactcagtgaagggccgattcaccatctacagagacaacgccaagaagtcactgtatctgcgaatgatcggcctgagagtcgaggactccggtgtgtattactgtacgcgagtgaacccccaggccaaagggtcggactggttggatccccccatcaaccaatactacggtatggacgtctggggccaaagggaccacggtcaccggtctcct
(配列番号74)
【0040】
軽鎖(Fab BU.2)
gagctcacactcacgcagtctccagccaccctgtctttgtctccaggggatagagccaccctctcctgcagggccagtcagagtgttagcagcagttacttagcctggtaccagcacaaacctggccagccccccaggctcctcatctatggtgcatccagcagggccgccggcatcccagacaggttcagtggcagtgggtctgggacagacttcactctcaccatcagcagactggagcctgaagattttgcagtgtattactgtcagcagtacgtcactttcggccctgggaccaaagtggatatcaaa(配列番号75)
【0041】
重鎖(Fab BU.7)
ctcgagtggggcccaggactggtgaagccttcggagaccctgtccctcacctgcactgtctctggtggctccatcagcagcataaattactactgggtctggattcgccagcccccagggaaggggctggagtggattgggaatatcaattacagtgggaccaccaactacaacccgtccctcaagagtcgagtcaccatatccgtggacacgtccaagaaccagttctccctgaagctgagctctgtgaccgccgcagacacggctgtctattactgtgcgagacaaacgtattactatgataggcgtggttattaccgcccggagcccattgagcactggggccagggaaccctggtcaccgtctcctca(配列番号76)
【0042】
軽鎖(Fab BU.7)
gagctcgtgatgacacagtctccatccttcctgtctgcatctgtaggagacagagtcaccatcacttgccgggcaagtcaagatgttagaagttttttacattggtatcaacaaagaccagggaaagcccctaagttgttgatctatgctgcatccatggtgtcgagtgaggtcccgtcaaggttcagtggcagtggatctgagacagatttcactctcaccatcgacggtctgcaacctgaagatgttgcaacttacttctgtcaacagacttacgacacgccgctcaccttcggcggcgggaccgcggttgacatcaaa(配列番号77)
【0043】
重鎖(Fab BU.11)
ctcgagtcaggtccaggactgctgaagccctcgcagagcctctcactcacctgtgccatctccggagacagtgtctctaggagaagtgttgcttggaactggatcagacagtccccatcgagaggccttgagtggctgggaaggacatactacaggtccaagtggttttctgagtatggcgtatctgtgagaggtcgaataaccatcagtccagacacaaccaagaaccagttctccctgcagctgaactccgtgactcccgaggacacggctgtctattactgtcgaaagtcgaaagggaggcagcagttggcagagtctacgagttcggtatggacgtggggccaagggaccacggtcatcgtctactca(配列番号78)
【0044】
軽鎖(Fab BU.11)
gagctcgtgatgacacagtctccatcctccctgtctgcatttgtgggagatagagtcaccctcacttgccgggcaagtcagggcattagaaatgatttaaactggtatcagcagaaaccagggcaaccccctaaactcctgatctatgctgcatccgctttacaaagtggcgtcccatcaaggttcagcggcagtgggtttggcacagatttcactctcaccatcagcagcctgcagcctgaagatattgcaacttattactgtctacaagattacaatttccctcggacgttcggccaagggaccaaggtggaaatcaaa
(配列番号79)
【0045】
重鎖(Fab BU.54)
ctcgagtggggcccaggactggtgaaggcttcacagaccctgtccctcacctgcactgtctctggtggctccatcagcagtaggaatttctattggagttggatccggcagcccggcgggaagggactggagtggattgggcgtatctatacaagtgggagcaccaattacaatccctccctcaagagtcgagtcactatatcattagacacgtccaagagtcagttctccctgaagctgagctctgtgaccgccgcagacacggccgtgtattattgtgcgagagggacgttttattatgataggagtggtaatggtcgattagatccgcttgactactggggccagggaaccctggtcaccgtctcctca(配列番号80)
【0046】
軽鎖(Fab BU.54)
gagctcgtgatgacacagtctccatcctccctgtctgcatctgtaggagacagagtcaccatcacttgccaggcgagtcaggacattagcaactatttaaattggtatcagcagaaaccagggaaagcccctaagctcctgatctacgatgcatccaatttggaaacaggggtcccatcaaggttcagtggaagtggatttgggacacattttacgttaaccatcagcagcctgcagcctgaagattttgcaacatattactgtcaacagcatgataatctcgtcactttcggcggagggaccaaggtggagatcaaa(配列番号81)
【0047】
重鎖(BS.70):
ctcgagtctgggggaggcgtggtccagcctgggacgtccctgagactctcctgtgcggcctctggattcaccttcaataattttgggatgcactgggtccgccaggctccaggcaagggtctggagtgggtggcaatgatctcatatgaaggaagtaaggatttctatgcagactccgtgaagggccgattcaccatctccaaagaccatgccaggaatacggtctatctgcaaatgaacagcctgagagctgaggacacggcagaatattactgtgcgaaagataaggctatatttatgatttctgccggacggactttggacttctggggccagggaaccctggtcaccgtctcctcag(配列番号82)
【0048】
軽鎖(Fab BS.70):
gagctcgtgatgacacagtctccatcctccctgtctgcatctgtaggagacagagtcaccattacttgccgggcaagtcagaacattggcatctatttgaattggtatcagcagaaacctgggaaagccccaaagctcctgatctatgctgcatccagtttgcaaaatggggtcccatcgaggttcagtggcagtggatctgggacagacttcactctcaccatcagcactctgcaacctgaagattttgcaacttactggtgtcaacagggttacagtaccccactcactttcggcggagggaccaaggtagagatcagac(配列番号83)
【0049】
さらに、本発明は、本発明の抗体又は抗体断片の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を少なくとも1つ含む発現ベクターに関する。
【0050】
本発明のさらなる目的は、上に概説したベクターを含む宿主細胞を企図する。
【0051】
本発明の別の目的は、本発明の抗体又は抗体断片の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を少なくとも1つ含むハイブリドーマである。
【0052】
さらに、本発明は、本発明のヌクレオチド配列又は発現ベクターの少なくとも1つを、1又は複数の医薬的に許容される製剤添加剤(excipient)及び/又はアジュバントと共に含む分子/ベクターに基づく受動免疫予防のための製剤を企図する。ワクチン製剤は、対象におけるサルベコウイルス媒介性疾患、特にSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2によって媒介される重症急性呼吸器症候群の予防において有利に使用され得る。
【0053】
好ましくは、本発明の抗体又は抗体断片はモノクローナル抗体である。別の好ましい実施形態では、抗体断片はFab断片である。
【0054】
さらにより好ましくは、本発明の抗体又は抗体断片はヒト抗体である。
【0055】
好ましくは、抗体又は抗体断片は、ヒトIgG又はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択されるIgG断片、若しくはそれらの結合活性及び中和活性又は全てのFc媒介性免疫機能を改善するために変異したFc部分を含む組換えIgGである。
【0056】
代替実施形態では、本発明の抗体又は抗体断片は、それらの薬物動態及び/又はそれらの送達に影響を及ぼす薬物及び/又は分子とコンジュゲートした一本鎖抗体(scFv)、ナノボディ、二重特異性抗体、モノクローナル抗体を含む群の中から選択される形式である。
【0057】
さらなる実施形態によれば、本発明の抗体又は抗体断片は、マーカーで標識されるか、又は薬物とコンジュゲートされる。
【0058】
一例として、抗腫瘍活性は、抗体結合及び内在化後に細胞死を達成する異なるエフェクター分子と抗体とをコンジュゲートすることによって達成される。そのようなエフェクター分子としては、細胞傷害剤[19、20]、細菌タンパク質毒素又は植物タンパク質毒素(免疫毒素)[21、22]、及び放射性医薬品[23]が挙げられる。
【0059】
本発明のさらなる目的は、生物学的試料中のサルベコウイルス、好ましくはSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2の存在を検出するための本発明の抗体又は抗体断片の使用である。
【0060】
本発明はさらに、対象におけるサルベコウイルス媒介性疾患、特にSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2によって媒介される重症急性呼吸器症候群の治療及び/又は予防のための医療分野における使用のための本発明の抗体又は抗体断片を企図する。
【0061】
「SARS-Cov-2」という用語は、これまでに知られている懸念される変異株(variants of concern)(VOC)であるアルファ(B.1.1.7)、ベータ(B.1.351)、ガンマ(P.1)、デルタ(B.1.617.2)、D614 G(パヴィア大学)及びオミクロン(B.1.1.529)、又は注目すべき変異株(variants of interest)(VOI)であるイータ(B.1.525)、イオタ(B.1.526)、カッパ(B.1.617.1)及びラムダ(C.37)のいずれかを包含する。
【0062】
本発明の抗体又は抗体断片は、単独で、又はスパイクタンパク質の異なる保存領域に対する別の抗体又は抗体断片と組み合わせて使用することができる。本発明の抗体又は抗体断片の併用は、SARS-CoV-2の異なるVOCに対する治療的処置の交差反応性を高める。第2の抗体はまた、特許請求される抗体とは異なる抗体であってもよい。異なるエピトープを標的とする抗体の組合せは、治療効果の向上、すなわち、既に承認された分子の薬物関連副作用の克服、又は可能性のある新規循環変異株の薬物耐性の排除につながり得る。
【0063】
好ましい実施形態によれば、対象は、免疫不全患者又は心血管疾患及び/又は呼吸器疾患の病歴を有する患者である。あるいは、患者は、高齢患者(70歳を超える)又はワクチンを忌避する対象であり得る。
【0064】
本発明による抗体又は抗体断片は、組合せ抗体カクテル中でもヒトにおいて有利に治療的に投与され得る。
【0065】
好ましくは、本発明の抗体又は抗体断片は、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2感染の発生から5~10日後に投与される。
【0066】
本発明の目的は、本発明の抗体又は抗体断片の少なくとも1つを有効成分として、1又は複数の医薬的に許容される製剤添加剤(excpient)及び/又はアジュバントと共に含む医薬組成物である。好ましい実施形態において、抗体又は抗体断片は、静脈内経路による全身投与に適合される。あるいは、本発明は、筋肉内又は皮下の投与経路を企図する。
【0067】
本発明はさらに、対象におけるサルベコウイルス媒介性疾患、特にSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2によって媒介される重症急性呼吸器症候群の治療又は予防において使用するための本発明の抗体又は抗体断片の少なくとも1つを含む医薬組成物に関する。
【0068】
本発明のさらなる目的は、本発明のSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質中の標的とする保存領域に結合する第1の抗体又は抗体断片、及びSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質中の第1の抗体とは異なる標的とする保存領域に結合する第2の抗体又は抗体断片を含む、サルベコウイルス媒介性疾患、特にSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2によって媒介される重症急性呼吸器症候群に罹患している対象における同時、個別又は逐次投与のための、組成物、又はパーツからなるキットである。好ましくは、第1の抗体又は抗体断片、及び第2の抗体又は抗体断片は、別々の容器に入っている。
【0069】
ここで、本発明を、非限定的な例示目的で、その好ましい実施形態に従って、添付の図を特に参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】ナイーブ組換え抗体ライブラリーの調製及び選択のための一般的スキームを示す図である。この図は、ファージディスプレイライブラリーからの組換え抗体の構築及び選択に関与する一般的な工程を示す。Bリンパ球は、最初にドナーの血液から単離される。単離されたリンパ球細胞から全mRNAが抽出され、相補的DNA(cDNA)に逆転写される。可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)抗体遺伝子は、遺伝子特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって増幅され、ファージディスプレイベクターにクローニングする前にアセンブルされる。得られたファージは、その表面に抗体断片を提示する。選択中、繊維状ファージディスプレイライブラリーは、固相上に固定化された抗原と共にインキュベートされる。抗原結合ファージは抗原に結合したままであるが、未結合のファージは洗い流される。次いで、結合したファージは溶出し、細菌細胞による感染によって増幅する。発現宿主を非サプレッサー細菌株に変更することにより、可溶性抗体断片を発現させ、培地に分泌させることができる。
【
図2A】フレームワーク領域FR1~FR4及び相補性決定領域CDR1~CDR3の両方を特定する、各クローンにおける重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の全アミノ酸(パネルA)及びヌクレオチド配列(パネルB)を示す図である。
【
図2B】フレームワーク領域FR1~FR4及び相補性決定領域CDR1~CDR3の両方を特定する、各クローンにおける重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の全アミノ酸(パネルA)及びヌクレオチド配列(パネルB)を示す図である。
【
図2C】フレームワーク領域FR1~FR4及び相補性決定領域CDR1~CDR3の両方を特定する、各クローンにおける重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の全アミノ酸(パネルA)及びヌクレオチド配列(パネルB)を示す図である。
【
図3-1】選択されたクローン(#5、BU.2、BU.7、BU.11、BU.54、BS.70)の結合活性を、ELISAアッセイによって評価されたFab及びIgG1フォーマットの両方として示す図である。選択されたFab及びIgGを、異なるVOCの組換えタンパク質へのそれらの結合について試験した。
【
図3-2】選択されたクローン(#5、BU.2、BU.7、BU.11、BU.54、BS.70)の結合活性を、ELISAアッセイによって評価されたFab及びIgG1フォーマットの両方として示す図である。選択されたFab及びIgGを、異なるVOCの組換えタンパク質へのそれらの結合について試験した。
【
図3-3】選択されたクローン(#5、BU.2、BU.7、BU.11、BU.54、BS.70)の結合活性を、ELISAアッセイによって評価されたFab及びIgG1フォーマットの両方として示す図である。選択されたFab及びIgGを、異なるVOCの組換えタンパク質へのそれらの結合について試験した。
【
図3-4】選択されたクローン(#5、BU.2、BU.7、BU.11、BU.54、BS.70)の結合活性を、ELISAアッセイによって評価されたFab及びIgG1フォーマットの両方として示す図である。選択されたFab及びIgGを、異なるVOCの組換えタンパク質へのそれらの結合について試験した。
【
図4-1】選択されたクローンの結合活性の免疫蛍光分析の結果を、Fab及びIgG1フォーマットの両方として示す図である。選択されたFabは、D614G、アルファ_B.1.1.7、ベータ_B.1.135、ガンマ P.1、デルタ_B.1.617.1、オミクロン_B.1.529(BA.1)、オミクロン_B.1.529(BA.2)、オミクロン_B.1.529(BA.4)及びOmicron_B.1.529(BA.5)ウイルス変異株に感染したVeroE6細胞を検出することができる。
【
図4-2】選択されたクローンの結合活性の免疫蛍光分析の結果を、Fab及びIgG1フォーマットの両方として示す図である。選択されたFabは、D614G、アルファ_B.1.1.7、ベータ_B.1.135、ガンマ P.1、デルタ_B.1.617.1、オミクロン_B.1.529(BA.1)、オミクロン_B.1.529(BA.2)、オミクロン_B.1.529(BA.4)及びOmicron_B.1.529(BA.5)ウイルス変異株に感染したVeroE6細胞を検出することができる。
【
図4-3】選択されたクローンの結合活性の免疫蛍光分析の結果を、Fab及びIgG1フォーマットの両方として示す図である。選択されたFabは、D614G、アルファ_B.1.1.7、ベータ_B.1.135、ガンマ P.1、デルタ_B.1.617.1、オミクロン_B.1.529(BA.1)、オミクロン_B.1.529(BA.2)、オミクロン_B.1.529(BA.4)及びOmicron_B.1.529(BA.5)ウイルス変異株に感染したVeroE6細胞を検出することができる。
【
図4-4】選択されたクローンの結合活性の免疫蛍光分析の結果を、Fab及びIgG1フォーマットの両方として示す図である。選択されたFabは、D614G、アルファ_B.1.1.7、ベータ_B.1.135、ガンマ P.1、デルタ_B.1.617.1、オミクロン_B.1.529(BA.1)、オミクロン_B.1.529(BA.2)、オミクロン_B.1.529(BA.4)及びOmicron_B.1.529(BA.5)ウイルス変異株に感染したVeroE6細胞を検出することができる。
【
図5A】試験したVOC(D614G、B.1.1.7、P.1及びB.1.135)に対するFab及びIgG1フォーマットの両方としてのクローンFab#5の中和活性(パネルA)、並びに試験したVOC(D614G、アルファ_B.1.1.7、ベータ_B.1.135、デルタ B.1.617.1、ガンマ_P.1、オミクロン B.1.1.529(BA.1)、オミクロン B.1.1.529(BA.2))に対するFab及びIgG1フォーマットの両方としてのクローンFab BU.2、BU.7、BU.11、BU.54及びBS.70の中和活性(パネルB)を示す図である。
【
図5B-1】試験したVOC(D614G、B.1.1.7、P.1及びB.1.135)に対するFab及びIgG1フォーマットの両方としてのクローンFab#5の中和活性(パネルA)、並びに試験したVOC(D614G、アルファ_B.1.1.7、ベータ_B.1.135、デルタ B.1.617.1、ガンマ_P.1、オミクロン B.1.1.529(BA.1)、オミクロン B.1.1.529(BA.2))に対するFab及びIgG1フォーマットの両方としてのクローンFab BU.2、BU.7、BU.11、BU.54及びBS.70の中和活性(パネルB)を示す図である。
【
図5B-2】試験したVOC(D614G、B.1.1.7、P.1及びB.1.135)に対するFab及びIgG1フォーマットの両方としてのクローンFab#5の中和活性(パネルA)、並びに試験したVOC(D614G、アルファ_B.1.1.7、ベータ_B.1.135、デルタ B.1.617.1、ガンマ_P.1、オミクロン B.1.1.529(BA.1)、オミクロン B.1.1.529(BA.2))に対するFab及びIgG1フォーマットの両方としてのクローンFab BU.2、BU.7、BU.11、BU.54及びBS.70の中和活性(パネルB)を示す図である。
【
図5B-3】試験したVOC(D614G、B.1.1.7、P.1及びB.1.135)に対するFab及びIgG1フォーマットの両方としてのクローンFab#5の中和活性(パネルA)、並びに試験したVOC(D614G、アルファ_B.1.1.7、ベータ_B.1.135、デルタ B.1.617.1、ガンマ_P.1、オミクロン B.1.1.529(BA.1)、オミクロン B.1.1.529(BA.2))に対するFab及びIgG1フォーマットの両方としてのクローンFab BU.2、BU.7、BU.11、BU.54及びBS.70の中和活性(パネルB)を示す図である。
【
図5B-4】試験したVOC(D614G、B.1.1.7、P.1及びB.1.135)に対するFab及びIgG1フォーマットの両方としてのクローンFab#5の中和活性(パネルA)、並びに試験したVOC(D614G、アルファ_B.1.1.7、ベータ_B.1.135、デルタ B.1.617.1、ガンマ_P.1、オミクロン B.1.1.529(BA.1)、オミクロン B.1.1.529(BA.2))に対するFab及びIgG1フォーマットの両方としてのクローンFab BU.2、BU.7、BU.11、BU.54及びBS.70の中和活性(パネルB)を示す図である。
【
図6】SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2のオミクロンVOCに対するクローンFab BU.7及びBU.54の疑似ウイルスを使用した中和活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明をよりよく説明する目的で、以下の実施例がここで提供されるが、これらはその例示的かつ非限定的な実施例と見なされるべきである。本発明の中和nAbは、以下の実施例に記載されるように、SARS-CoV1及びSARS-CoV-2スパイク又は特異的ドメインに対する結合親和性に基づいて同定され、中和活性及びエピトープ特異性に関して特徴付けられている。これらの態様は、最も有望なnAbを、これまでに知られているか又は将来出現するSARS-Cov-2の全てのVOI及びVOIcに対して有効な潜在的な交差反応性処置を決定する主なパラメータである、最も高い効力をもたらすもの及び/又は保存されたスパイクエピトープを認識するものとして選択するための基礎である。
【0072】
(実施例1):新たなヒト抗体ファージディスプレイライブラリーの作製、及びバイオパニング手順によるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に高親和性で結合することができる抗体の選択
【0073】
材料及び方法
ファージディスプレイ技術
この技術は、ペプチド又は抗体変異株のライブラリーの構築に焦点を当てており、それらは次いで、ファージ-コートタンパク質に融合されているので、目的の標的に対するそれらの親和性について選択される(参照として
図1を参照のこと)。
【0074】
バクテリオファージの全ての表面タンパク質は、ディスプレイのために操作され得るが、最も使用されるのは、M13繊維状ファージ由来のpVIII及びpIIIである。各ビリオンは、その質量のほぼ87%に相当する前者のタンパク質の約2700コピーを含有し、それらは環境に半分露出しており、したがって、ビリオン構造に起因して短い配列のペプチドのみの効率的なディスプレイが可能となる。一方、pIIIは、抗体の「機能的部分」などのより大きなペプチドに使用することができ、少数の場合において感染性のわずかな損失のみを生じる。各ライブラリーは、目的のペプチドに融合されたファージコートタンパク質の配列のみを含むファージミドベクターによって構成されるため、感染性でありかつ改変されたコーティングタンパク質によって構成されるファージの集団を得るためには、パッケージング効率が低下したヘルパーファージが必要とされる。次いで、バイオパニング手順を行い、目的の抗原に結合する能力についてファージを選択する。ファージ上に露出した分子のライブラリーの可変性、標的立体配座、親和性、及びアビディティなど、多くの因子を考慮しなければならない。述べられたように、ファージディスプレイは、病原体、特にmAbに対する新規の治療薬を見出すために広く使用されている。
【0075】
これは、膜受容体(Sタンパク質)などの特異的分子標的を使用するか、又は全ウイルス若しくは感染細胞を使用するという2つの異なるバイオパニング戦略によって可能となった。しかしながら、表面抗原は、多くの場合、非中和mAbを誘発し、宿主免疫応答を回避することができるモチーフを提示するため、バイオパニングの結果のスクリーニング手順は、目的の抗原を選択的に標的化することができる少数の有効な分子のみを同定するために適切に行われなければならない。
【0076】
新たなヒト抗体ファージディスプレイライブラリーの作製
末梢(Fab#5の場合)及び骨髄(Fab BU.2、BU.7、BU.11、BU.54の場合)の血液試料を、以前にSARS-CoV-2に感染し、その後COVID-19ワクチン(Pfizer社のコミナティ2回分)を接種した対象から採取し、それぞれPBMC及びB細胞前駆体の採取に使用した。
【0077】
PBMCの抽出は、Histopaque(登録商標)-1077(SIGMA-ALDRICH社)のプロトコルに従って実施した。手順の最後に、Trizol Reagent(SIGMA-ALDRICH社)を使用して106個の細胞を溶解し、その後RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を使用して細胞RNAを抽出した。抗体ファージミドIgGライブラリーを、SuperScript(商標)IV逆転写酵素(Thermo Fisher Scientific社)を使用してcDNAへのB細胞-mRNA逆転写によって生成した。得られたcDNAからPFU Native Polymerase酵素(Agilent社)及び下記表に記載のプライマー対を使用して、重鎖と軽鎖を増幅した。
【0078】
【表1】
次いで、重可変抗体鎖及び軽可変抗体鎖の両方をファージミドベクターpComb3XSS(PVT10572、DBA社)にクローニングした。
【0079】
次いで、ファージミドライブラリーを、性線毛を発現するエレクトロコンピテントグラム陰性細胞(XL1-Blue、Agilent社)を形質転換し、それらをヘルパーファージ(M13K07、NEB社)で重複感染させることによって、ファージライブラリーに変換した。
【0080】
Fabフォーマットにおける交差反応性抗体(より多くのSARS-CoV-2臨床分離株を認識する抗体)の選択を最大化する目的で、異なるバイオパニング手順を使用することによって新たなライブラリーをスクリーニングした。
【0081】
異なるSARS-CoV-2変異株の組換えスパイク(S)タンパク質を使用した:Fab#5においてはD614G(パヴィア大学)、及びFab BU.2、BU.7、BU.11、BU.54においてはB.1.1.7(40589-V08B6、Sino Biological社)、P.1(40589-V08B10、Sino Biological社)又はB.1.135(40589-V08B7、Sino Biological社)。
【0082】
ファージディスプレイ抗体ライブラリーの5ラウンドのバイオパニングを、それらの全長フォーマットで発現された組換えスパイクタンパク質について行った。異なる抗原の逐次使用に基づく交差選択戦略を実施した。
【0083】
バイオパニングによって選択されたモノクローナル抗体(Fab断片として発現される)をそのカプシド上に担持するバクテリオファージを使用して、その表面上に発現される抗体をコードするDNAを得た。
【0084】
ファージ表面に存在する可変抗体領域をコードするDNAを配列決定し、大腸菌発現系(XL1-Blue、Agilent社)及び免疫アフィニティークロマトグラフィー(HiTrap(登録商標)Protein L、Merck社)を使用するタンパク質精製に使用した。Fab#5(IgG#5)のIgG1フォーマットは、ハイスループット抗体産生サービス(GenScript社)を通じてGenscript社から入手した。
【0085】
結果
5つの異なるクローンである、Fab#5及びFab BU.2、BU.7、BU.11、BU.54を同定した。
【0086】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列は以下の通りである。
【0087】
1.Fab#5
Hc:
LESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFNFNTYTMNWVRQAPGKGLEWVSSISSSSSYIDNADSVKGRFTIYRDNAKKSLYLRMIGLRVEDSGVYYCTRVNPQAKGSDWLDPPINQYYGMDVWGQGTTVTVSS(配列番号60)
【0088】
Lc:
ELTLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK(配列番号61)
【0089】
2.Fab BU.2
Hc:
LESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFNFNTYTMNWVRQAPGKGLEWVSSISSSSSYIDNADSVKGRFTIYRDNAKKSLYLRMIGLRVEDSGVYYCTRVNPQAKGSDWLDPPINQYYGMDVWGQRDHGHRSP(配列番号62)
【0090】
Lc:
ELTLTQSPATLSLSPGDRATLSCRASQSVSSSYLAWYQHKPGQPPRLLIYGASSRAAGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYVTFGPGTKVDIK(配列番号63)
【0091】
3.Fab BU.7
Hc:
LEWGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSINYYWVWIRQPPGKGLEWIGNINYSGTTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARQTYYYDRRGYYRPEPIEHWGQGTLVTVSS(配列番号64)
【0092】
Lc:
ELVMTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQDVRSFLHWYQQRPGKAPKLLIYAASMVSSEVPSRFSGSGSETDFTLTIDGLQPEDVATYFCQQTYDTPLTFGGGTAVDIK(配列番号65)
【0093】
4.Fab BU.11
Hc:
LESGPGLLKPSQSLSLTCAISGDSVSRRSVAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWFSEYGVSVRGRITISPDTTKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCRKSKGRQQLAESTSSVWTWGQGTTVIVYS(配列番号66)
【0094】
Lc:
ELVMTQSPSSLSAFVGDRVTLTCRASQGIRNDLNWYQQKPGQPPKLLIYAASALQSGVPSRFSGSGFGTDFTLTISSLQPEDIATYYCLQDYNFPRTFGQGTKVEIK(配列番号67)
【0095】
5.Fab BU.54
Hc:
LEWGPGLVKASQTLSLTCTVSGGSISSRNFYWSWIRQPGGKGLEWIGRIYTSGSTNYNPSLKSRVTISLDTSKSQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGTFYYDRSGNGRLDPLDYWGQGTLVTVSS(配列番号68)
【0096】
Lc:
ELVMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGFGTHFTLTISSLQPEDFATYYCQQHDNLVTFGGGTKVEIK(配列番号69)
【0097】
6.Fab BS.70
Hc:
LESGGGVVQPGTSLRLSCAASGFTFNNFGMHWVRQAPGKGLEWVAMISYEGSKDFYADSVKGRFTISKDHARNTVYLQMNSLRAEDTAEYYCAKDKAIFMISAGRTLDFWGQGTLVTVSS(配列番号70)
【0098】
Lc:
ELVMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQNIGIYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQNGVPSRFSGSGSGTDFTLTISTLQPEDFATYWCQQGYSTPLTFGGGTKVEIR(配列番号71)
【0099】
これをコードするヌクレオチド配列は以下の通りである。
【0100】
1.Fab#5
Hc:
ctcgagtctgggggaggcctggtcaagcctggggggtccctgagactctcctgtgcagcctctggattcaacttcaatacctataccatgaactgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggtctcatccattagtagtagtagtagttacatagacaacgcagactcagtgaagggccgattcaccatctacagagacaacgccaagaagtcactgtatctgcgaatgatcggcctgagagtcgaggactccggtgtgtattactgtacgcgagtgaacccccaggccaaagggtcggactggttggatccccccatcaaccaatactacggtatggacgtctggggccaagggaccacggtcaccgtctcctca
(配列番号72)
【0101】
Lc:
gagctcacactcacgcagtctccaggcaccctgtctttgtctccaggggaaagagccaccctctcctgcagggccagtcagagtgttagcagcagctatttagcctggtaccagcagaaacctggccaggctcccaggctcctcatctatggtgcatccagcagggccactggcatcccagacaggttcagtggcagtgggtctgggacagacttcactctcaccatcagcagactggagcctgaagattttgcagtgtattactgtcagcagtatggtagctcaccgtggacgttcggccaagggaccaaggttgaaatcaaa(配列番号73)
【0102】
2.Fab BU.2
Hc:
ctcgagtctgggggaggcctggtcaagcctggggggtccctgagactctcctgtgcagcctctggattcaacttcaatacctataccatgaactgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggtctcatccattagtagtagtagtagttacatagacaacgcagactcagtgaagggccgattcaccatctacagagacaacgccaagaagtcactgtatctgcgaatgatcggcctgagagtcgaggactccggtgtgtattactgtacgcgagtgaacccccaggccaaagggtcggactggttggatccccccatcaaccaatactacggtatggacgtctggggccaaagggaccacggtcaccggtctcct
(配列番号74)
【0103】
Lc:
gagctcacactcacgcagtctccagccaccctgtctttgtctccaggggatagagccaccctctcctgcagggccagtcagagtgttagcagcagttacttagcctggtaccagcacaaacctggccagccccccaggctcctcatctatggtgcatccagcagggccgccggcatcccagacaggttcagtggcagtgggtctgggacagacttcactctcaccatcagcagactggagcctgaagattttgcagtgtattactgtcagcagtacgtcactttcggccctgggaccaaagtggatatcaaa
(配列番号75)
【0104】
3.Fab BU.7
Hc:
ctcgagtggggcccaggactggtgaagccttcggagaccctgtccctcacctgcactgtctctggtggctccatcagcagcataaattactactgggtctggattcgccagcccccagggaaggggctggagtggattgggaatatcaattacagtgggaccaccaactacaacccgtccctcaagagtcgagtcaccatatccgtggacacgtccaagaaccagttctccctgaagctgagctctgtgaccgccgcagacacggctgtctattactgtgcgagacaaacgtattactatgataggcgtggttattaccgcccggagcccattgagcactggggccagggaaccctggtcaccgtctcctca(配列番号76)
【0105】
Lc:
gagctcgtgatgacacagtctccatccttcctgtctgcatctgtaggagacagagtcaccatcacttgccgggcaagtcaagatgttagaagttttttacattggtatcaacaaagaccagggaaagcccctaagttgttgatctatgctgcatccatggtgtcgagtgaggtcccgtcaaggttcagtggcagtggatctgagacagatttcactctcaccatcgacggtctgcaacctgaagatgttgcaacttacttctgtcaacagacttacgacacgccgctcaccttcggcggcgggaccgcggttgacatcaaa(配列番号77)
【0106】
4.Fab BU.11
Hc:
ctcgagtcaggtccaggactgctgaagccctcgcagagcctctcactcacctgtgccatctccggagacagtgtctctaggagaagtgttgcttggaactggatcagacagtccccatcgagaggccttgagtggctgggaaggacatactacaggtccaagtggttttctgagtatggcgtatctgtgagaggtcgaataaccatcagtccagacacaaccaagaaccagttctccctgcagctgaactccgtgactcccgaggacacggctgtctattactgtcgaaagtcgaaagggaggcagcagttggcagagtctacgagttcggtatggacgtggggccaagggaccacggtcatcgtctactca(配列番号78)
【0107】
Lc:
gagctcgtgatgacacagtctccatcctccctgtctgcatttgtgggagatagagtcaccctcacttgccgggcaagtcagggcattagaaatgatttaaactggtatcagcagaaaccagggcaaccccctaaactcctgatctatgctgcatccgctttacaaagtggcgtcccatcaaggttcagcggcagtgggtttggcacagatttcactctcaccatcagcagcctgcagcctgaagatattgcaacttattactgtctacaagattacaatttccctcggacgttcggccaagggaccaaggtggaaatcaaa(配列番号79)
【0108】
5.Fab BU.54
Hc:
ctcgagtggggcccaggactggtgaaggcttcacagaccctgtccctcacctgcactgtctctggtggctccatcagcagtaggaatttctattggagttggatccggcagcccggcgggaagggactggagtggattgggcgtatctatacaagtgggagcaccaattacaatccctccctcaagagtcgagtcactatatcattagacacgtccaagagtcagttctccctgaagctgagctctgtgaccgccgcagacacggccgtgtattattgtgcgagagggacgttttattatgataggagtggtaatggtcgattagatccgcttgactactggggccagggaaccctggtcaccgtctcctca(配列番号80)
【0109】
Lc:
gagctcgtgatgacacagtctccatcctccctgtctgcatctgtaggagacagagtcaccatcacttgccaggcgagtcaggacattagcaactatttaaattggtatcagcagaaaccagggaaagcccctaagctcctgatctacgatgcatccaatttggaaacaggggtcccatcaaggttcagtggaagtggatttgggacacattttacgttaaccatcagcagcctgcagcctgaagattttgcaacatattactgtcaacagcatgataatctcgtcactttcggcggagggaccaaggtggagatcaaa(配列番号81)
【0110】
6.Fab BS.70
【0111】
Hc:
ctcgagtctgggggaggcgtggtccagcctgggacgtccctgagactctcctgtgcggcctctggattcaccttcaataattttgggatgcactgggtccgccaggctccaggcaagggtctggagtgggtggcaatgatctcatatgaaggaagtaaggatttctatgcagactccgtgaagggccgattcaccatctccaaagaccatgccaggaatacggtctatctgcaaatgaacagcctgagagctgaggacacggcagaatattactgtgcgaaagataaggctatatttatgatttctgccggacggactttggacttctggggccagggaaccctggtcaccgtctcctcag(配列番号82)
【0112】
Lc:
gagctcgtgatgacacagtctccatcctccctgtctgcatctgtaggagacagagtcaccattacttgccgggcaagtcagaacattggcatctatttgaattggtatcagcagaaacctgggaaagccccaaagctcctgatctatgctgcatccagtttgcaaaatggggtcccatcgaggttcagtggcagtggatctgggacagacttcactctcaccatcagcactctgcaacctgaagattttgcaacttactggtgtcaacagggttacagtaccccactcactttcggcggagggaccaaggtagagatcagac(配列番号83)
【0113】
図2は、フレームワーク領域FR1~FR4及び相補性決定領域CDR1~CDR3の両方を特定する、各クローンにおける重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の全アミノ酸及びヌクレオチド配列を示す。
【0114】
(実施例2):本発明の中和mAbの結合活性に関する研究
Fabの結合評価
a)酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
ELISAアッセイを使用して、Fabの結合効率を試験した。
【0115】
100ngの組換えスパイクタンパク質D614G(パヴィア大学)、B.1.1.7(40589-V08B6、Sino Biological社)、P.1(40589-V08B10、Sino Biological社)、又はB.1.135(40589-V08B7、Sino Biological社)をELISAプレート(CLS3690-100EA、Merck社)にコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。PBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma-Aldrich社)溶液を非特異的反応性対照として添加した。翌日、プレートをPBS中の1%BSA溶液でブロッキングしてウェルへの非特異的結合を防止し、異なる希釈のFabを抗原と共に37℃で1時間インキュベートした。PBS溶液中の0.1%Tween20(Sigma-Aldrich社)で洗浄した後、ヤギ抗ヒトIgG(Fab特異的)-ペルオキシダーゼ抗体(A0293、Sigma-Aldrich社)、コーティング対照として抗His6-ペルオキシダーゼ抗体(11 2416001、Sigma-Aldrich社)を有するHis標識タンパク質、及びPierce TMB基質キット(ThermoFisher Scientific社)を使用して、Fabを検出した。Multiskan GO(ThermoFisher Scientific社)を使用して、OD450を測定した。
【0116】
結果
・Fab#5は、アルファ、ガンマ及びオミクロンのSタンパク質に結合する
・IgG#5は、D614G、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン、及びSARS-CoV-1のSタンパク質に結合する
・Fab BU.2は、アルファのSタンパク質に結合する
・Fab BU.7は、アルファ、SARS-CoV-1のSタンパク質と結合するが、ガンマ、オミクロンはあまり結合しない
・IgG BU.7は、オミクロンのSタンパク質にほとんど結合しない
・Fab BU.11は、アルファのSタンパク質に結合する
・IgG BU.54は、アルファ、デルタ、オミクロン、及びSARS-CoV-1のSタンパク質に結合する
・Fab BS.70は、アルファ、デルタ、オミクロン、及びSARS-CoV-1のSタンパク質に結合する
【0117】
結果を
図3に示す。データは、Fab#5が低濃度で使用された場合でもB.1.1.7組換えタンパク質を認識することができるが、高濃度で使用された場合にはP.1スパイクも認識することができることを示した。IgG#5は、試験した全てのSARS-CoV-2変異株(D614G、B.1.1.7、B.1.351、P.1、B.1.1.529、B.1.617.1)の組換えスパイクによく結合する。BU.7は、P.1タンパク質に結合し、B.1.1.7スパイクタンパク質にさらによく結合する。そのIgGフォーマットは、B.1.617.1及びB.1.1.529タンパク質に対しても弱い結合活性を示す。さらに、B.1.1.7スパイクは、BU.11及びBU.2 Fabによってもよく認識されており、IgG BU.54は、B.11.7、B.1.617.1、P.1、B.1.1.529及びSARS-CoV-1組換えタンパク質をよく認識する。Fab BS.70は、低濃度のB.1.1.7、B.1.617.1、B.1.1.529タンパク質にも結合する。最後に、SARS-CoV-1スパイクタンパク質は、Fab及びIgGフォーマットの両方で、IgG#5、BU.7、IgG BU.54、及びFab BS.70によって非常によく認識されている。
【0118】
b)免疫蛍光分析
ウイルス及び細胞
Vero E6(Vero C1008、クローンE6-CRL-1586、ATCC社)細胞を、非必須アミノ酸(NEAA)、ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)、Hepes緩衝液、及び10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。SARS-CoV-2の4つの臨床分離株を得て、Vero E6細胞で増殖させた:D614G(hCoV-19/イタリア/UniSR1/2020、GISAIDアクセッションID:EPI_ISL_413489)、B.1.1.7(アルファ)(19/イタリア/LOM-UniSR7/2021、GSAIDアクセッションID:EPI_ISL_1924880)、C.36_3(hCoV-19/イタリア/LOM-UnINSU/2021、GISAIDアクセッションID:EPI_ISL_1509923)、B.1.351(ベータ)(hCoV-19/イタリア/LOM-UniSR6/2021、GISAIDアクセッションID:EPI_ISL_1599180)、P.1(ガンマ)(hCoV-19/イタリア/LOM-UniSR8/2021、GISAIDアクセッションID:EPI_ISL_1925323)デルタ(hCoV-19/イタリア/LOM-UniSR12/2021、GSAIDアクセッションID:EPI_ISL_4198505)、オミクロンBA.1(hCoV-19/イタリア/LOM-UniSR14/2021、GSAIDアクセッションID:EPI_ISL_12188061)、オミクロンBA.2(hCoV-19/イタリア/LOM-UniSR15/2022.GISAIDアクセッションID:EPI_ISL_13285445)、オミクロンBA.4(hCoV-19/イタリア/LOM-UniSR17/2022.GISAIDアクセッションID:EPI_ISL_13878328)、及びオミクロンBA.5.2(hCoV-19/イタリア/LOM-UniSR16/2022.GISAIDアクセッションID:EPI_ISL_13878326)。
【0119】
ウイルス滴定
プラーク減少アッセイ(PRA、PFU/ml)及びエンドポイント希釈アッセイ(EDA、TCID50/ml)の両方を使用してウイルスストックを滴定した。PRAにおいて、Vero E6細胞のコンフルエントな単層を、ウイルスストックの8つの10倍希釈物に感染させた。37℃で1時間吸着させた後、セルフリーウイルスを除去した。次いで、細胞を、2%FBS及び0.5%アガロースを含有するDMEM中で48時間インキュベートした。細胞を固定し、染色し、ウイルスプラークを計数した。EDAでは、Vero E6細胞を96ウェルプレートに播種し、95%の細胞占有面積率で、ウイルスストックのベース10希釈物で感染させた。37℃で1時間吸着させた後、セルフリーウイルスを除去し、細胞をPBSで1回洗浄し、完全培地を細胞に添加した。48時間後、細胞を観察して細胞変性効果(CPE)の存在を評価した。次いで、TCID50/mlのウイルスストックを、Reed-Muench式を適用することによって決定した。
【0120】
免疫蛍光アッセイ
Vero E6細胞を96ウェルプレートに播種し、各ウェルについて95%の細胞占有面積率で実験を行う24時間前に、0.01の感染多重度(MOI)でSARS-CoV-2に37℃で1時間感染させた。次いで、細胞をPBSで1回洗浄し、セルフリーウイルス粒子及びウイルス含有混合物を除去し、対照を2%FBSを補充した完全DMEMと交換した。プレートをCO2の存在下、37℃で72時間インキュベートした。次いで、PBSで1回洗浄し、MeOH:Ac(1:1)で15分間固定し、-20℃で保存した。細胞をPBS(1回洗浄)で2回すすいだ後、選択されたFab(1:200希釈)を一次抗体として細胞に適用した。抗スパイク抗体(0150-R007、Sino Biological社)を対照として添加した。PBSで1回洗浄した後、ヤギ抗ウサギIgG(H+L)交差吸着二次抗体Alexa Fluor 488(A-11008、Thermo Scientifc社)を用いてFabを検出した。Hoechst 33258(Sigma-Aldrich社)を核染色に使用した。
【0121】
結果
選択された全てのFabが感染細胞を検出し、試験したVOC間でわずかな差があった(
図4)。
【0122】
・Fab#5は、D614G、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン(BA.1)、及びオミクロン(BA.2)に感染した細胞に結合する
・IgG#5は、D614G、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン(BA.1)、オミクロン(BA.2)、オミクロン(BA.5)に感染した細胞に結合するが、オミクロン(BA.4)にはあまり結合しない
・Fab BU.2は、D614G、アルファ、ガンマ、デルタ、オミクロン(BA.2)に感染した細胞に結合するが、ベータにはあまり結合せず、オミクロン(BA.1)には結合しない
・Fab BU.7は、D614G、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン(BA.1)、及びオミクロン(BA.2)に感染した細胞に結合する
・IgG BU.7は、D614G、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン(BA.1)、オミクロン(BA.2)、オミクロン(BA.5)、及びオミクロン(BA.4)に感染した細胞に結合する
・Fab BU.11は、D614G、アルファ、ガンマ、デルタ、ベータに感染した細胞に結合するが、オミクロン(BA.2)にはあまり結合せず、オミクロン(BA.1)には結合しない
・IgG BU.54は、D614G、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン(BA.1)、オミクロン(BA.2)、オミクロン(BA.5)に感染した細胞に結合するが、オミクロン(BA.4)にはあまり結合しない
・Fab BS.70は、D614G、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン(BA.1)、及びオミクロン(BA.2)、(BA.4)に感染した細胞に結合するが、(BA.5)にはあまり結合しない
【0123】
B.1.1.7変異株は、Fab#5、BU.2、BU.11及びIgG BU.54によってより良好に認識されるが、BS.70及びBU.7 Fabによってあまり認識されない。しかしながら、BU.7のIgGフォーマットは、この変異株に対して改善された結合活性を示す。B.1.135変異株は、Fab及びIgGフォーマットの両方、IgG BU.7、IgG BU.54、及びFab BS.70のクローン#5によってのみよく認識されるが、他のFabを使用するとわずかな緑色のシグナルのみが観察される。P.1変異株への結合は、試験した全てのFabでよく観察されるが、Fab#5シグナルの強度が最も低かった。デルタ変異株は、試験した全てのFab及びIgGによってよく認識されるが、オミクロン(BA.1)は、BU.2及びBU.11 Fabによってのみでは認識されない。最後に、Fab BU.11以外の全てによって、BA.1よりも弱いシグナルではあるが、オミクロン(BA.2)が認識される。Fab BS.70は、試験した全ての変異株に対して最も強い結合シグナルを示すクローンであり、IgG#5、IgG BU.7、IgG BU.54がこれに続く。オミクロンBA.4及びBA.5の両方は、感染細胞上のIgGBU.7によってよく認識される。IgG#5及びIgG BU.54は、オミクロンBA.5サブ系統を強く認識し、より低い結合シグナルでBA.4を認識する。
【0124】
(実施例3):中和活性評価
微量中和実験
Vero E6細胞を、各ウェルについて95%の細胞占有面積率で実験を行う24時間前に96ウェルプレートに播種した。選択されたクローンの2倍段階希釈物を、37℃で1時間、0.01のMOIでSARS-CoV-2と共にインキュベートした。細胞をPBSで1回洗浄した後、ウイルス-血清混合物及び陽性感染対照をVero E6単層に適用し、ウイルス吸着を37℃で1時間実施した。次いで、細胞をPBSで1回洗浄し、セルフリーウイルス粒子及びウイルス含有混合物を除去し、対照を2%FBSを補充した完全DMEMと交換した。プレートをCO2の存在下、37℃で72時間インキュベートした。実験は3回行った。ウイルス-血清混合物の存在下で検出された細胞変性効果(CPE)の存在を陽性感染対照と比較することによって、中和活性を評価した。
【0125】
結果
クローン#5は、Fabフォーマット及びIgG1の両方として、D614G変異株に対して重要な中和活性を示した。しかしながら、IgG1は、B.1.135変異株を除いて、Fab断片と比較して、他の試験したVOCに対して増強された活性を示した(
図5A)。全ての試験したBUクローンは効率的にD614Gを阻害することができるが、BU.7のみが全ての試験したVOCに対してその活性を保持する。Fab BU.2は他の2つよりも良好にB.1.1.7変異株を中和することができるが、BU.11はP.1に対して有意な活性を示した(
図5B)。
【0126】
詳細には、
・Fab#5はD614Gを中和し、より少ない程度でアルファ及びガンマを中和する
・IgG#5はD614G、アルファ、ガンマを中和し、より少なくベータを中和する
・Fab BU.2はD614G、アルファ、デルタを中和し、より少なくガンマ及びベータを中和する
・Fab BU.7は、D614G、アルファ、ガンマ、ベータ、デルタを中和し、より少なくオミクロンを中和する
・IgG BU.7は、D614G、アルファ、ガンマ、ベータ、デルタ、オミクロン、及びオミクロン(BA.2)を中和する
・Fab BU.11はD614Gを中和し、より少なくアルファ及びガンマを中和する
・IgG BU.54は、D614G、アルファ、ガンマ、ベータ、デルタ、オミクロン、及びオミクロン(BA.2)を中和する
・Fab BS.70はガンマを中和し、より少なくオミクロンを中和する
【0127】
以下の表2-3-4は、SARS-CoV-2の異なるVOCに対する、選択されたクローンFab#5、IgG#5、Fab BU.2、Fab BU.7、Fab BU.11、Fab BS.70、IgG BU.7、IgG BU.54によって示されるIC50μg/mlとして表される中和活性を要約している。
【0128】
【0129】
(実施例4):疑似ウイルスを使用する中和アッセイ
方法
SERS-CoV-2-疑似型粒子を作製し、滴定した。
【0130】
簡潔に言えば、HEK293 Tを、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2 オミクロンのいずれか由来のSプラスミド、HIV gag-pol及びLuc-レポータープラスミドで同時トランスフェクトした。
【0131】
トランスフェクションの72時間後に上清を回収し、清澄化し、濾過した。ウイルス力価を、HEK293T ACE2-TMPRSS2細胞上で、2倍段階希釈物の疑似ウイルスストックを用いて評価した。48時間後(5%CO2の存在下、37℃)、ルシフェラーゼ発現を定量化した。力価をRLU/mlとして計算した。
【0132】
代理中和アッセイ
1ウェル当たり104個のHEK 293T-ACE2-TMPRSS2細胞の中和混合物を添加する前に、疑似ウイルス(106 RLU)をモノクローナル抗体のエンドポイント2倍段階希釈物と共に1時間インキュベートする(5%CO2の存在下で37℃)ことによって、中和アッセイを行った。感染の72時間後(37℃)、ルシフェラーゼ活性を定量化した。
【0133】
結果
この代替戦略による中和アッセイは、本発明のモノクローナル抗体IgG BU.7及びIgG BU.54がSARS-CoV-1及びSARS CoV-2のオミクロン変異株を中和することを示す。
図6は、疑似ウイルスを使用した中和アッセイの結果を示す。
【0134】
以下の表5は、選択されたクローンIgG BU.7及びIgG BU.54によって示されるIC50μg/mlとして表される、SARS-CoV-1及びSARS CoV-2のオミクロン変異株に対する中和活性をまとめたものである。
【0135】
【0136】
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