(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】GPRC5Dに結合する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241024BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241024BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241024BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241024BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P35/02
A61P35/00
A61P37/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525546
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2022129803
(87)【国際公開番号】W WO2023078382
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202111305149.7
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルー、チェンチェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ユージエ
(72)【発明者】
【氏名】ペン、シュアンリー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チェンピン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA09
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C085BB11
4C085DD62
4C085DD88
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
GPRC5Dに結合する抗体及びその使用が提供される。具体的には、抗GPRC5D抗体及びその抗原結合フラグメント、それらをコードする核酸、この核酸を含むベクター、このベクターを含む細胞、ならびにそれらを含む医薬組成物が提供され、さらに、腫瘍の減少または腫瘍細胞増殖の阻害、疾患の治療などにおけるそれらの使用が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、9、17、25または33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号2、10、18、26又は34に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号3、11、19、27または35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号4、12、20、28または36に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号5、13、21、29又は37に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号6、14、22、30または38に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と
を含む、単離された抗GPRC5D抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗GPRC5D抗体が、
(i)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、
(ii)配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、
(iii)配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、
(iv)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号30に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、または、
(v)配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号36に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号38に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と
を含む、請求項1に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号7、15、23、31または39に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8、16、24、32または40に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む、単離された抗GPRC5D抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
配列番号7に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と;配列番号15に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号16に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と;配列番号23に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号24に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と;配列番号31に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号32に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と;または、配列番号39に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号40に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項3に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記重鎖可変領域が、配列番号7、15、23、31または39に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、または/及び、
前記軽鎖可変領域が、配列番号8、16、24、32または40に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、下記の
(i)前記重鎖可変領域が、配列番号7に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;
(ii)前記重鎖可変領域が、配列番号15に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号16に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;
(iii)前記重鎖可変領域が、配列番号23に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号24に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;
(iv)前記重鎖可変領域が、配列番号31に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号32に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;または、
(v)前記重鎖可変領域が、配列番号39に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号40に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む
ことから選ばれるいずれか一項である、請求項5に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗原結合フラグメントが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)
2フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、単離されたCDR領域またはscFvであり、
選択的に、前記抗GPRC5D抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体であり、
選択的に、前記抗GPRC5D抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプである、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗GPRC5D抗体またはその抗原フラグメントがヒトGPRC5D抗原に結合し、選択的に、以下の特性のいずれか1つまたは複数も有する:
(1)サルGPRC5D抗原に結合すること;
(2)ネズミGPRC5D抗原に結合すること、または
(3)GPRC5A、GPRC5B、及びGPRC5Cのうちの1つ以上に結合しないこと、請求項1~7のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗GPRC5D抗体が単一特異性抗体または多重特異性抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、融合タンパク質。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または請求項10に記載の融合タンパク質を含み、薬学的に許容される担体をさらに含む、医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含むベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターを含む、またはゲノムに組み込まれた請求項12に記載の核酸を有する、宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法であって、前記GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸を含む宿主細胞を培養し、前記宿主細胞または宿主細胞培地から前記抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを回収することを含む、前記方法。
【請求項16】
疾患を治療する、または腫瘍を減少させる、または腫瘍細胞増殖を阻害する薬剤の調製における、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは請求項10に記載の融合タンパク質の使用であって、好ましくは、前記疾患ががんまたは自己免疫疾患であり、好ましくは、前記がんが多発性骨髄腫である、前記使用。
【請求項17】
受験者における腫瘍を減少させるもしくは腫瘍細胞増殖を阻害する、または受験者における疾患を治療する方法であって、前記方法が、治療有効量の請求項1~9のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または請求項10に記載の融合タンパク質、または請求項11に記載の医薬組成物を前記受験者に投与することを含み、好ましくは、前記疾患ががんまたは自己免疫疾患であり、好ましくは、前記がんが多発性骨髄腫である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗体、特にGPRC5Dに結合する抗体、調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫(Multiple myeloma,MM)は、形質細胞悪性腫瘍の一種であり、骨髄由来形質細胞の異常な増殖を特徴とし、これによりMM患者は骨壊死、骨髄浸潤、腎不全、及び免疫不全など多くの疾患の関連症状を経験する。現在、多発性骨髄腫の治療案には、プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬、モノクローナル抗体、及び幹細胞移植などが含まれている。
【0003】
GPRC5D(G protein-coupled receptor classC group 5 member D、Gタンパク質共役受容体ファミリーCグループ5メンバーD)は、レチノイン酸誘導性オーファンGタンパク質共役受容体(RAIG)ファミリーに属し、345個のアミノ酸残基からなる7回膜貫通タンパク質であり、その正常な生理機能は硬質ケラチンの構造に関連しているが、現在、GPRC5Dの具体的な生物学的機能やリガンドはまだ明らかにされていない。いくつかの研究では、65%の多発性骨髄腫患者の悪性骨髄由来形質細胞においてGPRC5Dの発現閾値が50%を超えており、その発現はBCMA(B細胞成熟抗原)とは無関係であることが示されているが、他の研究では、GPRC5Dの過剰発現が多発性骨髄腫患者の腫瘍負荷と予後不良に関連していることが示されている。GPRC5Dは、皮膚の毛包組織と骨髄由来形質細胞を除いて、正常組織ではまったく発現しないか、発現が非常に低いため、多発性骨髄腫患者に新しい治療法を提供する可能性があり、その臨床的価値が有意である。
【0004】
潜在的な治療標的として、GPRC5Dを標的とするいくつかの抗体はすでに開発中であるが、それらはまだ限られており、より多くの利用可能な選択肢が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、GPRC5Dに結合する抗体を提供し、また、提供される抗体をコードすることができる関連する核酸、ベクター、細胞、組成物、調製方法及び使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、前記抗GPRC5D抗体は、
配列番号1、9、17、25または33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号2、10、18、26又は34に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号3、11、19、27または35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号4、12、20、28または36に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号5、13、21、29又は37に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号6、14、22、30または38に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と
を含む。
【0007】
本開示の一実施形態では、前記抗GPRC5D抗体が、
(i)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、
(ii)配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、
(iii)配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、
(iv)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号30に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、または、
(v)配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号36に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号38に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0008】
一態様では、本開示は、配列番号7、15、23、31または39に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8、16、24、32または40に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む、単離された抗GPRC5D抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0009】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質を提供する。
【0010】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または融合タンパク質を含み、薬学的に許容される担体をさらに含む、医薬組成物を提供する。
【0011】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸を提供する。
【0012】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の核酸を含むベクターを提供する。
【0013】
一態様では、本開示は、本明細書に記載のベクターを含む、またはゲノムに組み込まれた本明細書に記載の核酸を有する、宿主細胞を提供する。
【0014】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法を提供し、この方法は、宿主細胞を培養し、前記宿主細胞または宿主細胞培地から前記抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを回収することを含む。
【0015】
一態様では、本開示は、疾患を治療する薬剤の調製における上記の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは融合タンパク質の使用を提供し、好ましくは、前記疾患ががんまたは自己免疫疾患である。
【0016】
一態様では、本開示は、受験者における腫瘍を減少させるもしくは腫瘍細胞増殖を阻害するための方法を提供し、前記方法が、治療有効量の本明細書に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは融合タンパク質または医薬組成物を前記受験者に投与することを含む。
【0017】
一態様では、本開示は、受験者における疾患を治療する方法を提供し、前記方法が、治療有効量の本明細書に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは融合タンパク質または医薬組成物を前記受験者に投与することを含み、好ましくは前記疾患ががんまたは自己免疫疾患である。
【0018】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは免疫複合体または医薬組成物を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一部のマウス抗hGPRC5D抗体とCHO-K1-hGPRC5D
hi、CHO-K1-cynoGPRC5D(CHO-K1-サルGPRC5D)、及びCHO-K1-murineGPRC5D(CHO-K1-マウスGPRC5D)の細胞のELISA測定によるOD
450を示す図である。
【
図2】
図2は、キメラ抗体とhGPRC5Dの発現が高い細胞の結合がFACSにより検出されたMFI及びEC
50を示す図である。
【
図3】
図3は、キメラ抗体とhGPRC5Dの発現が低い細胞の結合がFACSにより検出されたMFIを示す図である。
【
図4A】
図4Aは、抗GPRC5D抗体とH929細胞の結合がFACSにより検出されたMFIを示す図である。
【
図4B】
図4Bは、抗GPRC5D抗体とMM1S細胞の結合がFACSにより検出されたMFIを示す図である。
【
図5A】
図5Aは、抗GPRC5D抗体とCHO-K1-cynoGPRC5D細胞の結合がFACSにより検出されたMFIを示す図である。
【
図5B】
図5Bは、抗GPRC5D抗体とCHO-K1-murineGPRC5D細胞の結合がFACSにより検出されたMFIを示す図である。
【
図6A】
図6Aは、抗GPRC5D抗体とCHO-K1-GPRC5A細胞の結合がFACSにより検出されたMFIを示す図である。
【
図6B】
図6Bは、抗GPRC5D抗体とCHO-K1-GPRC5B細胞の結合がFACSにより検出されたMFIを示す図である。
【
図6C】
図6Cは、抗GPRC5D抗体とCHO-K1-GPRC5C細胞の結合がFACSにより検出されたMFIを示す図である。
【
図7】
図7は、抗GPRC5D抗体とCHO-K1細胞の結合がFACSにより検出されたMFIを示す図である。
【
図8】
図8は、抗GPRC5D抗体の内在化活性アッセイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書では、本開示の例示的な実施形態について説明するたが、当業者であれば、本開示の保護範囲がそれらに限定されず、本開示の精神と構想に基づいて様々な変形、修正、または変更が可能であり、これらの変形、修正、または変更後の内容は依然として本開示の範囲内に含まれることを理解するであろう。
【0021】
用語
「抗体」という用語は、その最も広い意味で使用され、様々な抗体構造をカバーし、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体など)、単鎖抗体などを含むがこれらに限られていない様々な構造の天然抗体及び人工抗体を包含する。抗原結合フラグメントとは、無傷の抗体が結合する抗原に結合する無傷の抗体の一部を含む、無傷の抗体以外の分子を指す。抗原結合フラグメントは、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab)’フラグメント、Fvフラグメント、単離されたCDR領域、単鎖Fv分子(scFv)及び当技術分野で公知の他の抗体フラグメントを含む。
【0022】
「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体のクラスを指す。一実施形態では、本明細書に開示される抗GPRC5D抗体は、IgG1またはIgG4アイソタイプのものである。本明細書における抗GPRC5D抗体及びその抗原結合フラグメントは、マウス、ラット、ウサギ、霊長類、ラマ、及びヒトを含むがこれらに限定されない任意の種に由来することができる。前記抗GPRC5D抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体であり得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗GPRC5D抗体はヒト化されている。特定の実施形態では、本明細書で提供される前記抗GPRC5D抗体はキメラである。
【0023】
「キメラ抗体」という用語は、ある種に由来する重鎖可変領域の少なくとも一部及び軽鎖可変領域の少なくとも一部、ならびに別の種に由来する定常領域の少なくとも一部を有する抗体である。例えば、いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ネズミ可変領域及びヒト定常領域を含むことができる。
【0024】
「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域及び定常領域とを含む抗体である。例えば、本明細書で提供されるGPRC5Dに結合するヒト化抗体は、1つまたは複数のネズミ抗体に由来するCDR、ならびにヒトフレームワーク及び定常領域を含み得る。
【0025】
「モノクローナル抗体」(「mAb」)という用語は、単一分子組成物の抗体分子を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示すか、二重特異性モノクローナル抗体の場合には、2つの異なるエピトープに対して二重の結合特異性を示す。mAbは単離された抗体の一例である。mAbは、当業者に知られているハイブリドーマ技術、組換え技術、トランスジェニック技術、または他の技術によって産生することができる。
【0026】
「可変ドメイン」または「可変領域」という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体のドメインを指す。例えば、天然の4本鎖抗体(例えば、ヒト、ネズミなど由来)には重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)があり、ラクダ科やサメなどの動物由来の重鎖抗体(重鎖のみからなる抗体)が単一の可変ドメインを持っている。ほとんどの場合、天然抗体の各可変ドメインは基本的に4つの「フレームワーク領域」と3つの「相補性決定領域」から構成される。4つのフレームワーク領域は、それぞれフレームワーク領域1(FR1)、フレームワーク領域2(FR2)、フレームワーク領域3(FR3)、及びフレームワーク領域4(FR4)と呼ばれ、前記フレームワーク領域は、当技術分野及び以下でそれぞれ相補性決定領域(CDR)と呼ばれるものによって分離される。したがって、可変ドメインの一般構造は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のように表すことができる。ひとつの具体例として、重鎖可変領域の一般構造は、FR1-HCDR1-FR2-HCDR2-FR3-HCDR3-FR4のように表すことができる。ひとつの具体例として、軽鎖可変領域の一般構造は、FR1-LCDR1-FR2-LCDR2-FR3-LCDR3-FR4のように表すことができる。
【0027】
「CDR」(相補性決定領域)は、「超可変領域(HVR)」とも呼ばれる。例えば、天然の4本鎖抗体には通常6つのCDRが含まれており、そのうち3つは重鎖可変領域にあり、すなわち重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、及び重鎖CDR3(HCDR3)であり、残りの3つは軽鎖可変領域にあり、それぞれ軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、及び軽鎖CDR3(LCDR3)である。重鎖抗体または単一可変ドメインには、通常3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)がある。
【0028】
現在、CDRを区分し定義する方法は数多くある。その中で、Kabatの定義は配列の可変性に基づいてCDRを区分しており、最も一般的に使用されているものである(Elvin A.Kabat,et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Edition,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。そしてChothiaの定義は構造ループの位置に基づいている(Cyrus Chothia,et al,Canonical Structures for the Hypervariable Regions of Immunoglobulins,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbMの定義は、Kabatの定義とChothiaの定義の間の折衷であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触(contact)」によるCDRの定義は、利用可能な複合体の結晶構造の分析に基づいている。ただし、異なる方法に基づいて区分し定義される同じ抗体可変領域のCDRの境界は異なる場合があり、すなわち、異なる方法で区分し定義される同じ抗体可変領域のCDR配列は異なる場合があることに留意すべきである。したがって、本開示の特定の区分定義によって定義される特定のCDR配列を使用して抗体を限定する場合、前記抗体の範囲は、他の任意の定義(IMGT、Chothia、AbMなどの定義の1つまたは複数の組み合わせなど)に変換されたCDR配列によって定義される抗体も含む。本開示で保護を求めるCDRは表S1及び表S2に示される配列に基づくが、他のCDRの定義規則に従った対応するアミノ酸配列も本開示の保護範囲内に入るべきである。例えば、別の定義によれば、キメラ抗体Chi-131の重鎖CDR1のアミノ酸配列はNYVMH(配列番号71)である。
【0029】
「フレームワーク領域」(FR)という用語は、本明細書で定義されるCDR残基以外の可変ドメインのアミノ酸残基である。
【0030】
「単離された」という用語は、自然環境から分離された目的化合物(例えば、抗体または核酸)を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「EC50」という用語は、抗体の最大反応の50%である効果濃度を指す。本明細書で使用する場合、「IC50」という用語は、抗体の最大反応の50%である阻害濃度を指す。EC50及びIC50は両方とも、ELISAまたはFACS分析、または当技術分野で知られている他の任意の方法によって測定することができる。
【0032】
本明細書で使用される「KD」という用語は、モル濃度(M)で表される平衡解離定数を指す。抗体のKD値は、当技術分野で知られている方法を使用して測定することができる。抗体のKDを測定する好ましい方法は、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)を使用することであり、より好ましくはBiacoreシステムなどのバイオセンサーシステムを使用することである。
【0033】
本明細書で使用される「受験者」という用語には、任意のヒトまたは非ヒト動物が含まれる。「非ヒト動物」という用語は、哺乳類及び非哺乳類などのすべての脊椎動物を含み、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。好ましくは、本開示による受験者はヒトである。特に明記しない限り、「患者」または「受験者」という用語は互換的に使用される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「がん」とは、通常、制御されていない細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指す。制御されていない細胞の分裂と増殖は、隣接する組織に浸潤する悪性腫瘍の形成につながる可能性があり、リンパ系や血流を介して体の離れた部分に転移する可能性もある。「がん」または「がん組織」には腫瘍が含まれる場合がある。
【0035】
「治療」という用語は、治療を受けた個体における疾患の自然な経過を変えようとする試みを指し、予防のために、または臨床病理の経過中に行われる臨床介入であってもよい。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の軽減、転移の予防、疾患の進行速度の遅延、疾患状態の改善または緩和、及び予後の後退または改善が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、受験者に治療効果をもたらすのに必要な化合物、組成物、または薬剤組み合わせの量を指す。
【0037】
「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題や合併症を起こすことなく合理的な利益/リスク比に見合った、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適している化合物、材料、組成物及び/または剤形を指す。
【0038】
「医薬組成物」とは、活性成分及び薬学的に許容される担体を含む組成物を指す。
【0039】
アミノ酸配列の「同一性パーセント(%)」とは、アラインメントされる配列を本明細書に示される特定のアミノ酸配列とアラインメントさせ、最大の配列同一性パーセントを達成するために必要に応じてギャップを導入した後、いかなる保存的置換を配列同一性の一部としない場合、アラインメントされる配列と本明細書に示される特定のアミノ酸配列のアミノ酸残基と同一であるアミノ酸残基の割合を指す。アミノ酸配列の同一性アラインメントは、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの当該技術分野の範囲内の様々な方法を使用して実行することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを得るために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメーターを決定することができる。
【0040】
「Xn」及び「Xaa」という用語は同等であり、不特定のアミノ酸(Unspecified Amino Acid)を指し、その範囲は関連する表現における後続の定義によって特定される。
【0041】
「含む」、「含有」、または「包含」という用語、及びそれらの変形は、「含むがこれらに限定されない」と理解されるべきであり、列挙された要素、成分及びステップに加えて、他の不特定の要素、成分及びステップをカバーすることを意味する。
【0042】
本明細書では、文脈で明確に別段の指示がない限り、単数形の用語は複数の指示対象を包含し、またその逆も同様である。
【0043】
すべての特許、特許出願、及びその他の特定の刊行物は、説明及び開示の目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの出版物は、その開示が本開示の出願日より前であるという理由のみで提供される。これらの文書の日付またはこれらの文書の内容に関するすべての記述は、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付またはこれらの文書の内容の正確性について何らかの認めを構成するものではない。さらに、本明細書におけるこれらの出版物へのいかなる言及は、その出版物がいずれの国においても当該技術分野における公知常識の一部を形成していることを認めるものではない。本開示の様々な態様は、以下においてさらに詳細に説明される。
【0044】
I.抗GPRC5D抗体及びその抗原結合フラグメント
本明細書で使用される場合、「ヒトGPRC5D」及び「hGPRC5D」という用語は互換的に使用され、「GPRC5Dに結合する抗体」及び「抗GPRC5D抗体」は互換的に使用される。
【0045】
本開示は、GPRC5Dに結合する新規抗体を提供する。抗GPRC5D抗体は、治療用途及び/または診断用途にとって他の多くの望ましい特性を示す。例えば、いくつかの実施形態では、前記抗GPRC5D抗体は、GPRC5Dに対して良好な特異性を有する。いくつかの実施形態では、前記抗GPRC5D抗体はサルGPRC5Dまたは/及びネズミGPRC5Dに結合することができ、それによって抗体開発中の薬理学的評価または/及び安全性評価が容易になる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗GPRC5D抗体は、GPRC5D発現が低い細胞に対するより良好な結合能力など、いくつかの既知の抗体と比較してより良好な抗原結合特性を示す。いくつかの実施形態では、前記抗GPRC5D抗体は、多発性骨髄腫細胞などの腫瘍細胞に対して良好な殺傷特性を有する。
【0046】
一態様では、本開示は、単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、前記抗GPRC5D抗体は、
配列番号1、9、17、25または33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号2、10、18、26又は34に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号3、11、19、27または35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号4、12、20、28または36に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号5、13、21、29又は37に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号6、14、22、30または38に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0047】
いくつかの実施態様では、前記抗GPRC5D抗体が、
配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0048】
いくつかの実施態様では、前記抗GPRC5D抗体が、
配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0049】
いくつかの実施態様では、前記抗GPRC5D抗体が、
配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0050】
いくつかの実施態様では、前記抗GPRC5D抗体が、
配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、 配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び 配列番号30に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0051】
いくつかの実施態様では、前記抗GPRC5D抗体が、
配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号36に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号38に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、前記抗GPRC5D抗体は、配列番号7、15、23、31または39に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8、16、24、32または40に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号7に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号8に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。特定の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号15に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号16に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号23に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号24に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号31に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号32に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号39に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号40に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、これらの特定の実施形態において、抗体のCDR領域は、kabat、Chothia、IMGT、または他の定義に従って定義されたものであり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域が、配列番号7、15、23、31または39に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域が、配列番号7、15、23、31または39に示されるアミノ酸配列を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記軽鎖可変領域が、配列番号8、16、24、32または40に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの特定の実施形態では、前記軽鎖可変領域が、配列番号8、16、24、32または40に示されるアミノ酸配列を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域が、配列番号7、15、23、31または39に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が、配列番号8、16、24、32または40に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域が、配列番号7、15、23、31または39に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が、配列番号8、16、24、32または40に示されるアミノ酸配列を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域が、配列番号7に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに、いくつかのこのような実施形態では、前記抗GPRC5D抗体がさらに、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域が、配列番号15に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号16に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに、いくつかのこのような実施形態では、前記抗GPRC5D抗体がさらに、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域が、配列番号23に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号24に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに、いくつかのこのような実施形態では、前記抗GPRC5D抗体がさらに、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域が、配列番号31に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号32に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに、いくつかのこのような実施形態では、前記抗GPRC5D抗体がさらに、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号30に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域が、配列番号39に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号40に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに、いくつかのこのような実施形態では、前記抗GPRC5D抗体がさらに、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号38に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0061】
いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む。
【0062】
いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む。
【0063】
いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号24に示されるアミノ酸配列を含む。
【0064】
いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号32に示されるアミノ酸配列を含む。
【0065】
いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号39に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗GPRC5D抗体は、本明細書に記載の対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域に加えて定常領域を含む重鎖及び軽鎖を含む。N末端からC末端まで、前記重鎖は重鎖可変領域と重鎖定常領域からなり、軽鎖は軽鎖可変領域と軽鎖定常領域からなる。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗GPRC5D抗体の軽鎖定常領域は、ヒトカッパ鎖定常領域である。いくつかの実施形態では、抗GPRC5D抗体の軽鎖定常領域はヒトラムダ鎖定常領域である。
【0068】
抗GPRC5D抗体の重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgD、IgA、及びIgEなどの任意のタイプの定常領域、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4などの任意のアイソタイプに由来することができる。いくつかの実施形態では、抗GPRC5D抗体はIgG1アイソタイプである。いくつかの実施形態では、抗GPRC5D抗体はIgG4アイソタイプである。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号69に示され、前記軽鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号70に示される。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記重鎖は、配列番号49に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖は、配列番号51に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一つの特定の実施形態では、前記抗GPRC5D抗体は、配列番号49に示されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号51に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。別の実施形態では、前記重鎖は、配列番号53に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖は、配列番号55に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一つの特定の実施形態では、前記抗GPRC5D抗体は、配列番号53に示されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号55に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。別の実施形態では、前記重鎖は、配列番号57に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖は、配列番号59に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一つの特定の実施形態では、前記抗GPRC5D抗体は、配列番号57に示されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号59に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。別の実施形態では、前記重鎖は、配列番号61に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖は、配列番号63に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一つの特定の実施形態では、前記抗GPRC5D抗体は、配列番号61に示されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号63に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。別の実施形態では、前記重鎖は、配列番号65に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖は、配列番号67に示される配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一つの特定の実施形態では、前記抗GPRC5D抗体は、配列番号65に示されるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号67に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記抗GPRC5D抗体は、サルGPRC5D抗原及び/またはネズミGPRC5D抗原と交差反応する。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記抗GPRC5D抗体またはその抗原フラグメントがヒトGPRC5D抗原に結合し、場合により、以下の特性のいずれか1つまたは複数も有する:
(1)サルGPRC5D抗原に結合する;
(2)ネズミGPRC5D抗原に結合する、または
(3)GPRC5A、GPRC5B、及びGPRC5Cのうちの1つ以上に結合しない。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗GPRC5D抗体またはその抗原フラグメントがヒトGPRC5D抗原に結合し、またサルGPRC5D抗原または/及びネズミGPRC5D抗原に結合し、さらにGPRC5A、GPRC5B、及びGPRC5Cに結合しない。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記抗GPRC5D抗体はモノクローナル抗体である。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記抗GPRC5D抗体は単一特異性抗体である。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記抗GPRC5D抗体は多重特異性抗体である。例えば、二重特異性抗体または三重特異性抗体などである。
【0077】
別の態様では、本明細書は、本明細書で提供される例示的な抗体のいずれかと同じGPRC5D上のエピトープ、例えば、Chi-131と同じエピトープ、例えば、Chi-169と同じエピトープ、例えば、Chi-89と同じエピトープに結合する抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。別の態様では、本明細書は、本明細書に提供される例示的な抗体のいずれかと競合する、例えば、GPRC5Dへの結合に関してChi-131と競合する、例えば、GPRC5Dへの結合に関してChi-131と競合する、例えば、GPRC5Dへの結合に関してChi-169と競合する、抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。GPRC5Dへの結合は、ELISA、フローサイトメトリー、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、または当技術分野で知られている他の任意の方法によって測定することができる。
【0078】
また、本明細書では、マウス抗mu-89、mu-105、mu-128、mu-131、mu-164、mu-169、及びmu-180、ならびに構築されたキメラ抗体Chi-89、Chi-105、Chi-128、Chi-131、Chi-164、Chi-169、及びChi-180を含む、GPRC5Dに結合するいくつかの例示的なモノクローナル抗体が提供される。本明細書で提供されるいくつかの例示的な抗GPRC5D抗体のHCDR(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)のアミノ酸配列は、以下の表S1に提供され、LCDR(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)のアミノ酸配列は、以下の表S2に提供され、一部の抗体可変領域のアミノ酸配列は、以下の表S3に提供される。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
II.抗体の変異体
いくつかの実施形態では、前記抗GPRC5D抗体の変異体またはその抗原結合フラグメントが提供される。抗GPRC5D抗体のアミノ酸配列変異体は、前記抗GPRC5D抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。このような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内からのアミノ酸残基の欠失、前記アミノ酸配列内へのアミノ酸残基の挿入、及び/または前記アミノ酸配列内でのアミノ酸残基の置換が挙げられる。最終的な変異体が抗原結合効果、例えば腫瘍殺傷能力などの所望の特性を有する限り、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせを生成して最終構築物を得ることができる。
【0083】
III.融合タンパク質
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質を提供する。
【0084】
IV.医薬組成物
本開示は、前記抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または前記融合タンパク質を含み、さらに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、Chi-89、Chi-105、Chi-128、Chi-131、Chi-164、Chi-169、及びChi-180抗体のいずれか1つまたは複数を、薬学的に許容される担体とともに医薬組成物に調製する。薬学的に許容される担体には、例えば、賦形剤、希釈剤、カプセル化材料、充填剤、緩衝剤、または他の薬剤が含まれる。
【0085】
V.単離された核酸
本開示は、本明細書に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸を提供する。いくつかの実施形態では、前記核酸は、抗原結合フラグメント、例えば、Chi-89、Chi-105、Chi-128、Chi-131、Chi-164、Chi-169、またはChi-180の抗原結合フラグメントをコードする。いくつかの実施形態では、前記核酸は、Chi-89、Chi-105、Chi-128、Chi-131、Chi-164、Chi-169、及びChi-180などの抗体をコードする。配列表には、いくつかの抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントの核酸配列が例示される。
【0086】
VI.ベクター
本開示は、前記単離された核酸を含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、前記ベクターはクローニングベクターであり、他の実施形態では、前記ベクターは発現ベクターである。前記発現ベクターは、場合により、本明細書に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを発現できる任意の発現ベクターであり得、具体的な例としては、発現ベクターはpcDNA3.1である。
【0087】
VII.宿主細胞
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載のベクターを含む、またはゲノムに組み込まれた前記核酸を有する宿主細胞を提供する。宿主細胞は、抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントをクローニングまたは発現するのに適した宿主細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は原核細胞である。他の実施形態では、宿主細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞、または抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメントを調製するのに適した他の細胞から選択される。哺乳動物細胞は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びCHO-S細胞である。
【0088】
VIII.抗GPRC5D抗体及びその抗原結合フラグメントを調製する方法
いくつかの実施形態において、本開示は、前記抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法を提供し、この方法は、本明細書に記載の宿主細胞を培養し、前記宿主細胞または宿主細胞培養培地から前記抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを回収することを含む。
【0089】
前記抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを産生するために、前記抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸をベクターに挿入して、宿主細胞においてさらなるクローニング及び/または発現を行う。前記核酸は、遺伝子スプライシング及び化学合成などの当技術分野で周知の様々な方法によって得ることができる。前記回収は、遠心分離やアフィニティークロマトグラフィーなどのステップを使用して行うことができる。
【0090】
IX.使用
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント、及び融合タンパク質は、がんの治療、腫瘍の減少、または腫瘍細胞増殖の阻害に使用することができる。
【0091】
本開示は、薬剤の調製における前記抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または融合タンパク質の使用を提供する。いくつかの実施形態において、その使用は、疾患を治療する薬剤の調製のためである。いくつかの実施形態において、その使用は、腫瘍を減少させるか、または腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤の調製のためである。
【0092】
本開示は、受験者における腫瘍細胞増殖を低減または阻害するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、融合タンパク質、または医薬組成物を前記受験者に投与することを含む。
【0093】
本開示は、受験者における疾患を治療する方法を提供し、この方法は、治療有効量の前記抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、前記融合タンパク質、または前記医薬組成物を前記受験者に投与することを含む。治療を必要とする受験者には、すでに疾患または状態を患っている受験者、ならびに疾患または状態を患う可能性が高く、その目的が疾患または状態を予防、遅延、または軽減することである受験者が含まれる。
【0094】
このうち、上記疾患とは、がんまたは自己免疫疾患である。いくつかの実施形態では、前記自己免疫疾患は、例えば、全身性エリテマトーデス及び/または関節リウマチである。いくつかの実施形態では、前記がんは多発性骨髄腫である。
【0095】
いくつかの実施形態では、サンプル中のGPRC5Dを検出または測定する方法が提供され、この方法は、前記サンプルを本明細書に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させて、結合複合体を検出または測定することを含む。
【0096】
X.キット
本開示は、本明細書に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、融合タンパク質、または医薬組成物を含むキットを提供する。
【0097】
本明細書には、前記抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、前記融合タンパク質、または前記医薬組成物を含むキットが記載される。前記キットは、本明細書で提供される抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、融合タンパク質、または医薬組成物の使用または他の使用を実施するために使用することができる。いくつかの実施形態では、前記キットは、本明細書に記載される抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、融合タンパク質、または医薬組成物、及び生体試料中のGPRC5Dの存在を検出するための試薬を含み得る。前記キットには使用説明書も含まれる場合がある。前記キットには、他の緩衝液、希釈剤、針、注射器など、商業的及びユーザーの観点から必要な他の材料も含まれる場合がある。
【0098】
本開示は、以下の特定の実施形態も提供するが、本開示の保護範囲はこれらに限定されない。
【0099】
実施形態1.配列番号1、9、17、25または33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号2、10、18、26又は34に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号3、11、19、27または35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号4、12、20、28または36に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号5、13、21、29又は37に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号6、14、22、30または38に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と
を含む、単離された抗GPRC5D抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0100】
実施形態2.前記抗GPRC5D抗体が、
(i)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、
(ii)配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、
(iii)配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、
(iv)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号30に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と、または、
(v)配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び
配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む重鎖可変領域と、
配列番号36に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
配列番号38に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む軽鎖可変領域と
を含む、実施形態1に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0101】
実施形態3.配列番号7、15、23、31または39に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8、16、24、32または40に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む、単離された抗GPRC5D抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0102】
実施形態4.配列番号7に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と;配列番号15に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号16に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と;配列番号23に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号24に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と;配列番号31に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号32に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と;または、配列番号39に示される可変領域配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号40に示される可変領域配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む、実施形態3に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0103】
実施形態5.前記重鎖可変領域が、配列番号7、15、23、31または39に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~4のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0104】
実施形態6.前記軽鎖可変領域が、配列番号8、16、24、32または40に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~5のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0105】
実施形態7.前記重鎖可変領域が、配列番号7、15、23、31または39に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8、16、24、32または40に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~6のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0106】
実施形態8.前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、下記の
(i)前記重鎖可変領域が、配列番号7に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;
(ii)前記重鎖可変領域が、配列番号15に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号16に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;
(iii)前記重鎖可変領域が、配列番号23に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号24に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;
(iv)前記重鎖可変領域が、配列番号31に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号32に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;または、
(v)前記重鎖可変領域が、配列番号39に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号40に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む
ことから選ばれるいずれか一項である、実施形態7に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0107】
実施形態9.前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、下記の
(i)前記重鎖可変領域が、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む;
(ii)前記重鎖可変領域が、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む;
(iii)前記重鎖可変領域が、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号24に示されるアミノ酸配列を含む;
(iv)前記重鎖可変領域が、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号32に示されるアミノ酸配列を含む;または、
(v)前記重鎖可変領域が、配列番号39に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含む
ことから選ばれるいずれか一項である、実施形態7に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0108】
実施形態10.前記抗原結合フラグメントが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、単離されたCDR領域またはscFvである、実施形態1~9のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0109】
実施形態11.前記抗GPRC5D抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である、実施形態1~10のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0110】
実施形態12.前記抗GPRC5D抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプである、実施形態1~11のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0111】
実施形態13.前記抗GPRC5D抗体またはその抗原フラグメントがヒトGPRC5D抗原に結合し、選択的に、以下の特性のいずれか1つまたは複数も有する:
(1)サルGPRC5D抗原に結合する;
(2)ネズミGPRC5D抗原に結合する、または
(3)GPRC5A、GPRC5B、及びGPRC5Cのうちの1つ以上に結合しない、実施形態1~12のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0112】
実施形態14.前記抗GPRC5D抗体が単一特異性抗体または多重特異性抗体である、実施形態1~13のいずれか一項に記載の単離された抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0113】
実施形態15.実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、融合タンパク質。
【0114】
実施形態16.実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または実施形態15に記載の免疫複合体(融合タンパク質)を含み、薬学的に許容される担体をさらに含む、医薬組成物。
【0115】
実施形態17.実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸。
【0116】
実施形態18.実施形態17に記載の核酸を含むベクター。
【0117】
実施形態19.実施形態18に記載のベクターを含む、またはゲノムに組み込まれた実施形態17に記載の核酸を有する、宿主細胞。
【0118】
実施形態20.実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法であって、実施形態19に記載の宿主細胞を培養し、前記宿主細胞または宿主細胞培地から前記抗GPRC5D抗体またはその抗原結合フラグメントを回収することを含む、前記方法。
【0119】
実施形態21.疾患の治療、または腫瘍の減少、または腫瘍細胞増殖の阻害における、実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは実施形態15に記載の融合タンパク質または実施形態16に記載の医薬組成物の使用であって、好ましくは、前記疾患ががんまたは自己免疫疾患である、前記使用。
【0120】
実施形態22.疾患を治療する、または腫瘍を減少させる、または腫瘍細胞増殖を阻害する薬剤の調製における、実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは実施形態15に記載の融合タンパク質の使用であって、好ましくは、前記疾患ががんまたは自己免疫疾患である、前記使用。
【0121】
実施形態23.受験者における腫瘍を減少させるまたは腫瘍細胞増殖を阻害する方法であって、前記方法が、治療有効量の実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または実施形態15に記載の融合タンパク質、または実施形態16に記載の医薬組成物を前記受験者に投与することを含む、前記方法。
【0122】
実施形態24.受験者における疾患を治療する方法であって、前記方法が、治療有効量の実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または実施形態15に記載の融合タンパク質、または実施形態16に記載の医薬組成物を前記受験者に投与することを含み、好ましくは、前記疾患ががんまたは自己免疫疾患である、前記方法。
【0123】
実施形態25.前記がんが多発性骨髄腫である、実施形態21、22、または24に記載の形態。
【0124】
実施形態26.実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗GPRC5D抗体もしくはその抗原結合フラグメント、実施形態15に記載の融合タンパク質、または実施形態16に記載の医薬組成物を含むキット。
実施例
【0125】
実施例1:抗原免疫
1、DNA抗原免疫
ヒトGPRC5Dタンパク質(アミノ酸配列は配列番号41に示される)をコードするcDNA配列を遺伝子合成により取得し、発現ベクターpcDNA3.1(+)にサブクローニングしてプラスミドpcDNA3.1-hGPRC5Dを構築した。大規模なプラスミドの調製は、エンドトキシンフリーマキシ抽出キット(QIAGEN、カタログ番号:12391)の取扱説明書に従って実行された。
【0126】
プラスミドpcDNA3.1-hGPRC5Dを抗原として使用して、A/Jマウス(南京大学模式動物研究所)、BALB/cマウス(上海霊暢)及びSJLマウス(北京Charles River)をそれぞれ免疫化した。まず、ヒアルロニダーゼ(Sigma、カタログ番号:H4272)を各マウスの左右の後肢筋肉に予注射して前処理し、その後、CpG(InvivoGen、カタログ番号:tlrl-1826)とプラスミドpcDNA3.1-hGPRC5Dを質量比1:1で均一に混合した。均一に混合した抗原複合体を、生体遺伝子導入装置(タイプII、Shanghai Teresa Bio-Tech Co.,Ltd.)を介して、前処理したマウスの筋肉部分に注射し、2~3週間ごとに上記と同様の免疫を一回繰り返し、合計4回の免疫を行った。免疫の完了後、各マウスから血清を収集した。
【0127】
2.マウス血清力価の評価
DNA抗原で免疫したマウス体内で産生された抗ヒトGPRC5D抗体の免疫応答を評価するために、マウス血清の抗体力価をFACSによって検出した。より高い血清力価を有するマウスを、後続の脾細胞融合前のショック免疫のために選択した。
【0128】
3.細胞性抗原免疫
リポフェクタミン3000トランスフェクション試薬(Thermo、カタログ番号:L3000015)の取扱説明書に従って、プラスミドpcDNA3.1-hGPRC5DをCHO-K1細胞にトランスフェクトし、安定かつ高発現のhGPRC5D細胞株CHO-K1-hGPRC5Dhiを得た。上記のCHO-K1-hGPRC5Dhi細胞を抗原としてマウスのショック免疫を行った。脾臓細胞融合の3~4日前に、最終細胞濃度5×107細胞/mLのCHO-K1-hGPRC5Dhi細胞懸濁液と最終濃度0.5mg/mLのCpG(InvivoGen、カタログ番号:tlrl-1826)を均一に混合した後、100μL/匹でマウスの腹腔内に注射した。
【0129】
実施例2:マウス抗ヒトGPRC5D抗体のスクリーニング
1.ハイブリドーマ細胞の調製
融合当日、マウスの脾臓を無菌的に摘出し、研磨し、赤血球溶解液(Sigma、カタログ番号:R7757)を加え、PBS溶液で細胞を洗浄した後、脾細胞を電気融合緩衝液(BTX、カタログ番号:47-0001)で再懸濁し、脾細胞とSP2/0マウス骨髄腫細胞を細胞数比2:1で均一に混合し、電気融合装置(BTX)を使用して脾細胞を融合した。1×HAT(Gibco、カタログ番号:21060-017)を含むハイブリドーマ培地(Gibco、カタログ番号:12045-076)を加えて融合細胞を希釈し、37℃、5%CO2の条件下で7~10日間培養してハイブリドーマ細胞を調製した。ハイブリドーマ細胞の培養上清を回収し、マウス抗ヒトGPRC5D抗体のスクリーニングに使用した。
【0130】
2.安定した細胞株の構築
マウス抗ヒトGPRC5D抗体の種間交差結合活性を細胞レベルで評価するために、以下の細胞株を構築した。全長サルGPRC5D(アミノ酸配列は配列番号42に示される)及びマウスGPRC5D(アミノ酸配列は配列番号43に示される)をコードするcDNAをそれぞれ遺伝子合成により取得し、ベクターpcDNA3.1(+)にサブクローニングして、pcDNA3.1-cynoGPRC5D及びpcDNA3.1-murineGPRC5D組換えプラスミドを得た。リポフェクタミン3000トランスフェクション試薬(Thermo、カタログ番号:L3000015)の取扱説明書に従って、プラスミドpcDNA3.1-cynoGPRC5D及びpcDNA3.1-murineGPRC5DをそれぞれCHO-K1細胞にトランスフェクトし、CHO-K1-cynoGPRC5D及びCHO-K1-murineGPRC5D安定細胞株を得た。
【0131】
3.細胞ELISA予備スクリーニング
対数増殖期のCHO-K1-hGPRC5Dhi細胞を回収し、10体積%FBSを含むDMEM/F-12(Gibco、カタログ番号:11320033)培地で再懸濁し、細胞濃度を1×106細胞/mLに調整し、100μL/ウェルで96ウェル平底プレートにプレーティングし、37℃、5%CO2の培養条件で一晩インキュベートした。翌日、細胞プレートをPBSで洗浄し、4%(体積パーセント)パラホルムアルデヒド(Beyotime、カタログ番号:P0099)を加えて室温で30分間固定した。PBSで洗浄後、3%(体積パーセント)BSAを含むPBS溶液を200μL/ウェルで加え、室温で2時間ブロッキングした。ブロッキング後、ハイブリドーマ細胞培養上清を100μL/ウェルで細胞プレートに添加し、室温で2時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、HRPがコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号:115-035-068)を添加し、室温で1時間インキュベートした。PBSで洗浄後、TMB反応溶液(Solarbio、カタログ番号:RP1200)を100μL/ウェルで加え、室温、暗所で5分間インキュベートし、0.5M H2SO4で反応を停止させた。Bio-rad iMarkマイクロプレートリーダーを使用してOD450吸光度値を読み取った。吸光度が1.0を超える培養上清に対応するハイブリドーマ細胞を、その後のFACSスクリーニング用の陽性クローンとして選択した。
【0132】
4.抗体のフローサイトメトリーFACSスクリーニング
96ウェルU底プレートに細胞濃度5×105細胞/mLのCHO-K1-cynoGPRC5D細胞懸濁液を100μL/ウェルでプレーティングし、陽性クローンの培養上清を100μL/ウェルで加えて均一に混合した後、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで洗浄した後、AlexaFluor488がコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号:115-545-044)を添加し、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄して再懸濁し、フローサイトメーター(Sartorius、IQue3)を使用して蛍光シグナルを検出し、抗hGPRC5D抗体とCHO-K1-cynoGPRC5D細胞との結合を、染色の平均蛍光強度(MFI)によって分析した。
【0133】
5.サブクローニングの調製
細胞ELISA及びFACSによるスクリーニング後、CHO-K1-hGPRC5Dhi及びCHO-K1-cynoGPRC5Dの両方に陽性結合するハイブリドーマ細胞ピックアップし、を拡大培養のために選択した。拡大した細胞を半固形培地D(Stemcell、カタログ番号:3810)と体積比1:10で均一に混合し、37℃、5%CO2の培養条件下で5日間培養し、モノクローナル細胞塊を4倍の顕微鏡下で吸引し、ハイブリドーマ培地(Gibco、カタログ番号:12045-076)で覆われた96ウェルプレートに移し、37℃、5%CO2の条件下で2日間培養を続けた。各ウェルからサブクローン細胞培養上清を収集し、サブクローン細胞のさらなるスクリーニングに使用した。
【0134】
6.サブクローンのスクリーニング
(1)抗hGPRC5D抗体のFACSスクリーニング
細胞濃度3×105細胞/mLのH929(即ち、NCI-H929)細胞懸濁液を96ウェルU底プレートに100μL/ウェルでプレーティングし、サブクローン細胞培養上清を100μL/ウェルまたは同等体積の培地(以下においてMediumと略称する)を加え、均一に混合した後、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄した後、AlexaFluor488がコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号:115-545-044)を加え、4℃で1時間インキュベートした。細胞を2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで洗浄して再懸濁し、フローサイトメーター(Sartorius、IQue3)を使用して蛍光シグナルを検出し、マウス抗hGPRC5D抗体とH929細胞との結合を、染色の平均蛍光強度(MFI)によって分析し、一部の結果を表1に示す。
【0135】
表1 一部のマウス抗hGPRC5D抗体とH929細胞のFACS結合アッセイ
【表4】
【0136】
(2)抗hGPRC5D抗体の細胞ELISAスクリーニング
対数増殖期のCHO-K1-hGPRC5D
hi細胞、CHO-K1-cynoGPRC5D細胞、CHO-K1-murineGPRC5D細胞、及びCHO-K1細胞をそれぞれ収集し、10%(体積パーセント)FBSを含むDMEM/F-12(Gibco、カタログ番号:11320033)培地で再懸濁し、細胞濃度を1×10
6細胞/mLに調整し、96ウェル平底プレートに100μL/ウェルでプレーティングし、37℃、5%CO
2の培養条件下で一晩インキュベートした。翌日、細胞プレートをPBSで洗浄し、4%(体積パーセント)パラホルムアルデヒド(Beyotime、カタログ番号:P0099)を添加し、室温で30分間固定した。PBSで洗浄後、3%(体積パーセント)BSAを含むPBS溶液を200μL/ウェルで添加し、室温で2時間ブロッキングした。ブロッキング後、細胞プレートにサブクローン細胞培養上清を50μL/ウェルで加え、室温で2時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、HRPがコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号:115-035-068)を加え、室温で1時間インキュベートした。PBSで洗浄後、TMB反応溶液(Solarbio、カタログ番号:RP1200)を100μL/ウェルで加え、室温、暗所で5分間インキュベートし、0.5M H
2SO
4で反応を停止させた。Bio-rad iMarkマイクロプレートリーダーを使用してOD450吸光度値を読み取った。Graphpad Prismを使用して、サブクローン吸光度値の棒グラフを作成した。
図1は、典型的なマウス抗hGPRC5D抗体(例えば、mu-89、mu-105、mu-126、mu-128、mu-131、mu-153、mu-164、mu-169、mu-180、mu-183など)を示し、CHO-K1-hGPRC5D
hi細胞、CHO-K1-cynoGPRC5D細胞及び/またはCHO-K1-murineGPRC5D細胞の吸光度値は、対照細胞CHO-K1と比較して、吸光度値に2倍以上の差がある。
【0137】
実施例3:抗hGPRC5Dキメラ抗体の調製
1.マウス抗hGPRC5D抗体をコードする可変領域の配列決定
スクリーニングされたハイブリドーマ細胞中の全RNAをRNA抽出キット(Takara、カタログ番号:9767)の取扱説明書に従って単離し、逆転写キット(Thermo、カタログ番号:K1652)を使用して第一鎖cDNAを合成した。第一鎖cDNAをテンプレートとして使用し、それぞれマウス重鎖及び軽鎖定常領域プライマーと混合し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、得られたマウス抗hGPRC5D抗体可変領域配列をクローニングして配列決定した。
【0138】
2.キメラ抗体発現ベクターの構築
化学合成法を使用して、マウス抗hGPRC5D抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のヌクレオチド配列を、ヒトIgG1重鎖定常領域及びカッパ軽鎖定常領域のヌクレオチド配列とそれぞれ連結した。pcDNA3.1(+)ベクターを用いて組換えヒト-マウスキメラ抗体発現ベクターを構築し、キメラ抗体を調製するためにトランスフェクション発現に使用した。各キメラ抗体の全長及びVH/VLのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の詳細を表2に示す。
【0139】
表2 全長キメラ抗体とVH/VLのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列
【表5】
【0140】
3.陽性参照抗体発現ベクターの構築
GC5B596を参照抗体(モノクローナル抗体、出典WO2018017786A2)として選択し、抗体VH(配列番号44)及びVL(配列番号45)のヌクレオチド配列を化学合成法を使用して取得し、ヒトIgG1重鎖定常領域とカッパ軽鎖定常領域のヌクレオチド配列にそれぞれ連結し、pcDNA3.1(+)ベクターを使用して陽性参照抗体を発現する発現ベクターを構築し、陽性参照抗体を調製するためにトランスフェクション・発現に使用した。陽性参照抗体(モノクローナル抗体)を本明細書においてBM-mAbと呼ぶ。
【0141】
4.抗hGPRC5Dキメラ抗体及び陽性参照抗体の調製
expiCHO発現システム(Gibco、カタログ番号:A29129)の操作マニュアルに従って、抗hGPRC5D抗体を一時的にトランスフェクトし、発現させ、トランスフェクション後、expiCHO細胞を37℃、8%CO2の条件下で7日間振盪培養した。細胞培養上清を回収し、清澄化した培養上清をプロテインAカラム(G.E.Healthcare、カタログ番号:17-5474)にロードし、10倍カラム容量のPBS緩衝液を加えてプロテインAカラムを洗浄し、酢酸緩衝液(300mM酢酸、pH3.6)を加えてプロテインAカラムに結合したIgG抗体を溶出及び収集し、収集したIgG抗体成分を限外濾過装置(分子量カットオフ30kDa、Millipore、カタログ番号:UFC903024)を用いてPBS緩衝液に置き換え、抗hGPRC5D抗体溶液を得た。
【0142】
実施例4:ヒトGPRC5Dを安定的に発現する細胞に対する抗hGPRC5D抗体の結合活性の測定
1.安定高発現ヒトGPRC5D細胞に対する抗hGPRC5Dキメラ抗体の結合特性
細胞濃度3×10
5細胞/mLのCHO-K1-hGPRC5D
hi(GPRC5D発現量は約2E+06-3E+06抗原/細胞)の細胞懸濁液を96ウェルU底プレートに100μL/ウェルでプレーティングし、勾配希釈(最終濃度範囲は4.1~3000ng/mL、3倍勾配希釈)した抗hGPRC5D抗体を加え、均一に混合した後、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄した後、PE標識ヤギ抗ヒトIgG Fcγ抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号:109-116-170)を加え、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄して再懸濁し、フローサイトメーター(Sartorius、IQue3)を使用して蛍光シグナルを検出し、抗hGPRC5D抗体とCHO-K1-hGPRC5D
hiとの結合を染色の平均蛍光強度(MFI)によって分析した。GraphpadPrismにより計算されたEC
50の解析結果を
図2に示す。キメラ抗体Chi-89、Chi-105、Chi-128、Chi-131、Chi-164、Chi-169、及びChi-180はすべて、hGPRC5Dを高発現する細胞に対して濃度勾配依存的な結合活性を示し、BM-mAbよりも高い最大抗原結合能を持っている。
【0143】
2.安定低発現ヒトGPRC5D細胞に対する抗hGPRC5Dキメラ抗体の結合特性
リポフェクタミン3000トランスフェクション試薬(Thermo、カタログ番号:L3000015)の取扱説明書に従って、プラスミドpcDNA3.1-hGPRC5DをCHO-K1細胞にトランスフェクトし、CHO-K1-hGPRC5D
low安定低発現細胞株(GPRC5D発現量は約2000~2500抗原/細胞)を得た。細胞濃度3×10
5細胞/mLのCHO-K1-hGPRC5D
low細胞懸濁液を96ウェルU底プレートに100μL/ウェルでプレーティングし、勾配希釈(最終濃度範囲は4.1~3000ng/mL、3倍勾配希釈)した抗hGPRC5D抗体を加え、均一に混合した後、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄した後、PE標識ヤギ抗ヒトIgG Fcγ抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号:109-116-170)を加え、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄して再懸濁し、フローサイトメーター(Sartorius、IQue3)を使用して蛍光シグナルを検出し、抗hGPRC5D抗体とCHO-K1-hGPRC5D
lowとの結合を染色の平均蛍光強度(MFI)によって分析した。
図3に示すように、hGPRC5Dの発現が低い細胞では、キメラ抗体Chi-89、Chi-105、Chi-164、及びChi-180は、BM-mAbと同等の結合レベルを示しているが、Chi-128、Chi-131、及びChi-169は、強力な標的結合能力を示している。
【0144】
実施例5:腫瘍細胞に対する抗hGPRC5D抗体の結合活性の測定
細胞濃度3×10
5細胞/mLのH929及びMM1Sヒト骨髄腫細胞懸濁液を100μL/ウェルで96ウェルU底プレートにプレーティングし、勾配希釈(最終濃度範囲は4.1~1000ng/mL、3倍勾配希釈)した抗hGPRC5D抗体を加え、均一に混合した後、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄した後、PE標識ヤギ抗ヒトIgG Fcγ抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号:109-116-170)を加え、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄して再懸濁し、フローサイトメーター(Sartorius、IQue3)を使用して蛍光シグナルを検出し、抗hGPRC5D抗体とヒト骨髄腫細胞との結合を染色の平均蛍光強度(MFI)によって分析し、GraphpadPrismを使用してプロットした。
図4A及び4Bから分かるように、キメラ抗体Chi-89、Chi-105、Chi-128、Chi-131、及びChi-169はすべて、H929細胞及びMM1S細胞に対して濃度勾配依存的な結合活性を示している。
【0145】
実施例6:抗hGPRC5D抗体の種交差活性アッセイ
細胞濃度5×10
5細胞/mLのCHO-K1-cynoGPRC5D及びCHO-K1-murineGPRC5Dの細胞懸濁液を96ウェルU底プレートに100μL/ウェルでプレーティングし、勾配希釈(最終濃度範囲は4.6~10000ng/mL、3倍勾配希釈)した抗hGPRC5D抗体を加え、均一に混合した後、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで洗浄した後、PE標識ヤギ抗ヒトIgG Fcγ抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号:109-116-170)を加え、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄して再懸濁し、フローサイトメーター(Sartorius、IQue3)を使用して蛍光シグナルを検出し、抗hGPRC5D抗体とCHO-K1-cynoGPRC5D及びCHO-K1-murineGPRC5D細胞との結合を染色の平均蛍光強度(MFI)によって分析した。
図5A及び5Bに示すように、キメラ抗体Chi-89、Chi-128、Chi-131、及びChi-169はすべて、CHO-K1-cynoGPRC5D及びCHO-K1-murineGPRC5D細胞に対して濃度勾配依存的な結合活性を示している。これは、BM-mAbと比較して、これらの抗hGPRC5D抗体がサル及びマウスGPRC5Dとの交差結合活性を有するのに対し、キメラ抗体Chi-105はサルGPRC5Dとのみ交差結合活性を有することを示している。
【0146】
実施例7:抗hGPRC5D抗体の特異性検証
1.細胞レベルでの抗hGPRC5Dキメラ抗体の同ファミリータンパク質への結合の検証
GPRC5Dに加えて、既知のGPRCファミリータンパク質には、GPRC5A(RAIG1)、GPRC5B(RAIG2)、及びGPRC5C(RAIG3)も含まれている。全長GPRC5A(配列番号46)、GPRC5B(配列番号47)、及びGPRC5C(配列番号48)をコードするcDNAを遺伝子合成によって取得し、ベクターpcDNA3.1(+)にサブクローニングして、pcDNA3.1-GPRC5A-GFP、pcDNA3.1-GPRC5B-GFP、及びpcDNA3.1-GPRC5C-GFP組換えプラスミドを得た。リポフェクタミン3000トランスフェクション試薬(Thermo、カタログ番号:L3000015)の取扱説明書に従って、上記の組換えプラスミドDNAをCHO-K1細胞にそれぞれトランスフェクトし、CHO-K1-GPRC5A、CHO-K1-GPRC5B及びCHO-K1-GPRC5Cの安定な細胞株を得た。
【0147】
細胞濃度5×10
5細胞/mLのCHO-K1-GPRC5A、CHO-K1-GPRC5B及びCHO-K1-GPRC5Cの細胞懸濁液を96ウェルU底プレートに100μL/ウェルでプレーティングし、勾配希釈(最終濃度範囲は4.1~3000ng/mL、3倍勾配希釈)した抗hGPRC5D抗体を加え、均一に混合した後、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで洗浄した後、APC標識ヤギ抗ヒトIgG Fcγ抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号:109-135-098)を加え、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄して再懸濁し、フローサイトメーター(Sartorius、IQue3)を使用して蛍光シグナルを検出し、抗hGPRC5D抗体とCHO-K1-GPRC5A、CHO-K1-GPRC5B及びCHO-K1-GPRC5C細胞との結合を染色の平均蛍光強度(MFI)によって分析した。
図6A、6B及び6Cに示すように、キメラ抗体Chi-89、Chi-105、Chi-128、Chi-131、及びChi-169はすべて、4.1~3000ng/mLの濃度範囲内でCHO-K1-GPRC5A、CHO-K1-GPRC5B及びCHO-K1-GPRC5C細胞に結合しなく、BM-mAbは、1000ng/mLを超える濃度でCHO-K1-GPRC5A細胞への非特異的結合を示している。
【0148】
2.抗hGPRC5Dキメラ抗体のCHO-K1細胞への結合の検証
まず、EZ-linkNHS-Biotinビオチン試薬(Thermo、カタログ番号:20217)の取扱説明書に従って、ビオチンがコンジュゲートされた抗hGPRC5D抗体をそれぞれ調製し、それぞれBiotin-BM-mAb、Biotin-Chi-89、Biotin-Chi-128、及びBiotin-Chi-131と名付けた。ここで、Biotinはビオチンを意味する。
【0149】
細胞濃度3×10
5細胞/mLのCHO-K1細胞懸濁液を96ウェルU底プレートに100μL/ウェルでプレーティングし、勾配希釈(3倍勾配希釈、最終濃度範囲は4.6~10000ng/mL)したビオチンがコンジュゲートされた抗hGPRC5D抗体を加え、均一に混合した後、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで洗浄した後、PE標識ストレプトアビジン(BD、カタログ番号:554061)を加え、4℃で1時間インキュベートした。2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄して再懸濁し、フローサイトメーター(Sartorius、IQue3)を使用して蛍光シグナルを検出し、染色の平均蛍光強度(MFI)を使用して、ビオチンがコンジュゲートされた後にMFIシグナルが増幅した抗hGPRC5D抗体がCHO-K1細胞に非特異的に結合するかどうかを分析した。結果は
図7に示すように、ビオチンがコンジュゲートされたキメラ抗体Chi-89、Chi-128、及びChi-131はすべて、CHO-K1細胞と非結合シグナルを生成した。
【0150】
実施例8:抗hGPRC5D抗体の内在化活性
MM1S細胞を10%(体積パーセント)FBSを含むRPMI1640培地(Gibco、カタログ番号:22400071)で再懸濁し、細胞濃度を2×10
6細胞/mLに調整し、96ウェルV底プレートに20μL/ウェルをプレーティングした。抗体内在化試薬(Sartorius、カタログ番号:90564)を抗hGPRC5D抗体BM-mAb、Chi-89、Chi-128、及びChi-131、ならびにアイソタイプ対照抗体hIgG1(Biointron、カタログ番号:B117901)にそれぞれ添加し、37℃、暗所で15分間インキュベートした。次に、10%(体積パーセント)FBSを含むRPMI1640培地(Gibco、カタログ番号:22400071)を使用して、上記の抗体の勾配希釈を実行し(最終濃度範囲は0.46~1000ng/mL、3倍勾配希釈)、20μL/ウェルをピペットで採取し、細胞懸濁液と均一に混合し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、2%(体積パーセント)FBSを含むPBSで細胞を洗浄して再懸濁し、フローサイトメーター(Sartorius、IQue3)を使用して蛍光シグナルを検出し、抗hGPRC5D抗体の内在化活性を染色の平均蛍光強度(MFI)によって分析した。結果は
図8に示すように、キメラ抗体Chi-89、Chi-128、及びChi-131によって媒介される標的GPRC5Dの内在化は、BM-mAbの場合と同等のレベルであり、弱い内在化効果のみをもたらした。
【配列表】
【国際調査報告】