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▶ バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータの特許一覧

特表2024-540149シリカ系触媒を使用したプラスチックの解重合
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】シリカ系触媒を使用したプラスチックの解重合
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20241024BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20241024BHJP
   B01J 27/19 20060101ALI20241024BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C10G1/10
C08J11/12 ZAB
B01J27/19 M
B01J23/30 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525548
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022081882
(87)【国際公開番号】W WO2023088861
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/280,241
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21209510.3
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ブリタ,ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】グイドッティ,シモナ
(72)【発明者】
【氏名】リゴリ,ダリオ
(72)【発明者】
【氏名】メニケッリ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ナギ,サンドール
(72)【発明者】
【氏名】ハリナン,ノエル シー.
【テーマコード(参考)】
4F401
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA27
4F401BA02
4F401CA58
4F401CA70
4F401CB01
4F401CB14
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA07B
4G169BB07A
4G169BB07B
4G169BC27A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169CA04
4G169CA10
4G169EA01Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB14
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB04
4H129BC14
4H129KC03X
4H129KC04X
4H129KC05X
4H129KD15X
4H129KD16X
4H129NA26
4H129NA27
4H129NA37
(57)【要約】
【解決手段】 本明細書では、担持ヘテロポリ酸触媒を使用してプラスチック廃棄物を解重合する方法について説明している。方法は、クラッカー原料として使用可能な高品質の液体解重合生成物を高効率で提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを解重合するプロセスであって、
a)少なくともリサイクルポリプロピレンおよびポリエチレンを含む溶融プラスチック廃棄物原料を提供する工程と、
b)(a)で得られた溶融生成物を280°C~600°Cの範囲の温度にさらして、解重合生成物を得る工程と、を含み、
前記プロセスは、前記溶融生成物および前記解重合生成物のいずれかまたは両方を、遷移金属部分がW、MoおよびVからなる群から選択される遷移金属を含み、非金属部分がSi、PおよびAsから選択される非金属元素を含む担持ヘテロポリ酸を含む触媒と接触させることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
触媒の量は、プラスチック廃棄物原料と触媒との総重量に対して、0.1~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、特に0.1~5重量%の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記プラスチック廃棄物原料は、重量比が85:15~15:85、より好ましくは80:20~20:80であるポリエチレンとポリプロピレンとの混合物を含む、請求項1~2のいずれか一項以上に記載のプロセス。
【請求項4】
前記担体は、無機酸化物から選択され、より好ましくはAl、SiOおよびTiOから選択される、請求項1~3のいずれか一項以上に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ヘテロポリ酸は、好ましくは、遷移金属化合物がWまたはMo、特にWであるものから選択される、請求項1~4のいずれか一項以上に記載のプロセス。
【請求項6】
追加の遷移金属化合物(ATMC)は、WまたはMoとATMCとのモル比が0.5~100の範囲となる量で存在する、請求項6に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ヘテロポリ酸は、前記非金属元素がSiまたはPであるものから選択される、請求項1~6のいずれか一項以上に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ヘテロポリ酸は、前記非金属元素がSiであるものから選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
遷移金属の量は、担持触媒の総量に対して1~20重量%の範囲である、請求項1~8のいずれか一項以上に記載のプロセス。
【請求項10】
前記触媒は、担持タングストケイ酸(TSA)を含む、請求項1~9のいずれか一項以上に記載のプロセス。
【請求項11】
前記触媒は、シリカ担持タングストケイ酸(TSA)を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項12】
Wの量は、担持触媒の総量に基づいて1~15重量%の範囲である、請求項9~10のいずれか一項以上に記載のプロセス。
【請求項13】
液体解重合生成物の量は、最初に供給されたプラスチック廃棄物原料の60重量%を超える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記液体解重合生成物中のC28より高い画分の量は、液体解重合生成物の総量に対して4%以下である、請求項1~13のいずれか一項以上に記載のプロセス。
【請求項15】
前記液体解重合生成物の内部オレフィン指数(I.O.I)は、1重量%以下である、請求項1~14のいずれか一項以上に記載のプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラスチック原料を解重合するための触媒方法、および解重合のための特定の触媒に関する。より具体的には、担持ヘテロポリ酸触媒の存在下でプラスチック原料を解重合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは安価で耐久性がある材料であり、広範囲の用途において使用が見出されるさまざまな製品を製造するために使用できるため、過去数十年にわたってプラスチックの生産が劇的に増加している。プラスチックの生産に用いられるポリマーの耐久性のため、世界中でますます多くのプラスチックが埋立地を埋め尽くし、自然生息地を占有し、環境問題を引き起こしている。分解性プラスチックおよび生分解性プラスチックであっても、紫外線の照射レベル、温度、適切な微生物の存在などの地域の環境要因によっては、何十年も残り続ける場合がある。
【0003】
現在、プラスチックのリサイクルとして、主に機械的リサイクルおよび化学的リサイクルが挙げられる。世界的に見て、機械的リサイクルはプラスチックの新たな用途に最も多く利用されている方法であり、この方法により、プラスチックは化学構造を変えずに機械的に変換され、新しい材料の生産に利用できるようになる。一般的な機械的リサイクルの工程は、プラスチック廃棄物を回収することと、プラスチック廃棄物をさまざまな種類のプラスチックおよび色に分類することと、プラスチックをプレスまたは粉砕することによってプラスチックを梱包することと、プラスチックを洗浄し、乾燥させることと、プラスチックを凝集、押し出し、および冷却することによってペレットに再加工することと、最後にリサイクルされた原材料を得ることと、を含む。これは、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンに最も広く使用されている技術である。
【0004】
一方、化学的リサイクルでは、プラスチックを再加工し、その構造を変更し、さまざまな産業の原材料として、または新しいプラスチック製品を製造するための基本的な材料または原料として使用されることができる。化学的リサイクルには通常、プラスチックを収集し、その後、ポリマーが小さなフラグメントに分解される温度までプラスチックを加熱する工程を含む。解重合とも呼ばれるこのプロセスは、酸素がない状態で熱分解(クラッキング)によってプラスチック廃棄物材料を液体燃料に変換する基本的なプロセスである。プラスチック廃棄物は、通常、窒素などの不活性パージガスの下でステンレス鋼チャンバ内で最初に溶融される。次に、このチャンバは溶融材料をガス状態に加熱し、これを吸引して1つ以上の凝縮器で凝縮し、直鎖および分岐鎖脂肪族、環状脂肪族、芳香族炭化水素を含む炭化水素留分を生成する。得られた混合物は、燃料として使用したり、またはプラスチック製造サイクルに再導入できるモノマーなどの精製化学物質を得るために、さらなる熱触媒プロセスの原料として使用したりできる。
【0005】
溶融プラスチック塊体をガス流に変換する工程は、原理的には熱の作用によってのみ生じる(熱解重合)。しかし、この段階で触媒が存在すると、より低い温度で、より効率的に解重合が起こることが証明されている。
この目的のために、バージンポリマーまたは実質的に単一のポリマーで構成される正確に事前分類されたリサイクルプラスチックに対して実行される解重合テストに基づいて、さまざまな触媒がたびたび提案されてきた。これらの「非現実的な」条件下では、触媒は熱による解重合に関してのみ、いくらか高い解重合活性を示す場合がある。しかし、これらのテストでは、実際の条件下で触媒がどのように機能することができるかについての情報は一切提供されておらず、特に、実際のプラスチック廃棄物の成分から生じる触媒毒効果によって触媒が影響を受けるかどうか、またどの程度影響を受けるかについての情報は一切提供されていない。
【0006】
例えば、ゼオライトベースの触媒は、未使用のプラスチックまたは選別されたリサイクルプラスチックに対しては良好な解重合活性を示すが、より複雑なプラスチック廃棄物原料と共に使用される場合、触媒活性が著しく低下する。実際のところ、複雑なプラスチック廃棄物原料の解重合における触媒のパフォーマンスは予測不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、特定の担持ヘテロポリ酸が、クラッカー原料として使用される、品質が向上した高効率の熱分解生成物を生成できることを発見した。
【0008】
したがって、本開示の一態様は、プラスチックを解重合するためのプロセスであって、当該プロセスは、
a)少なくともリサイクルポリプロピレンおよびポリエチレンを含む溶融プラスチック廃棄物原料を提供する工程と、
b)(a)で得られた溶融生成物を280°C~600°Cの範囲の温度にさらして、解重合生成物を得る工程と、を含み、
当該プロセスは、溶融生成物および解重合生成物のいずれかまたは両方を、遷移金属部分がW、MoおよびVからなる群から選択される遷移金属を含み、非金属部分がSi、PおよびAsから選択される非金属元素を含む担持ヘテロポリ酸を含む触媒と接触させることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、使用される触媒の量は、プラスチック廃棄物原料と触媒との総重量に対して、0.1~20重量%、より好ましくは0.1~10重量%、特に0.1~5重量%の範囲である。
好ましくは、プラスチック廃棄物原料は、重量比が85:15~15:85、より好ましくは80:20~20:80であるポリエチレンとポリプロピレンとの混合物を含む。ポリエチレンは、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)、低密度ポリエチレン(low-density polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)のうちの1つ以上であり得る。ポリプロピレン(PP)は、プロピレンホモポリマー、またはエチレンおよび/もしくはブテンの量が少ないプロピレンコポリマーのいずれかであり得る。さらに、原料にはポリブテンのような他のポリオレフィンが含まれ得る。特定の実施形態では、原料は、ポリスチレン(polystyrene、PS)、エチルビニルアセテート共重合体(ethyl-vinyl acetate copolymer、EVA)、エチルビニルアルコール共重合体(ethyl-vinyl alcohol copolymer、EVOH)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、またはこれらの混合物などの他の材料を組み込んだポリマー混合物も含まれ得る。好ましい実施形態では、原料は、80重量%超のポリエチレンとポリプロピレンとの混合物で構成され、その混合物において、ポリプロピレンは、ポリプロピレン/ポリエチレン混合物の50重量%超を占める。
【0010】
解重合プロセスを実行する場合、解重合システム内に酸素を含む雰囲気が導入されないように注意する必要がある。潜在的に酸素を含む雰囲気に対するバリアは、窒素ブランケットおよび押出機のバレルに接続された真空システムなどの一連の手段によって得ることができる。
【0011】
より具体的には、プラスチック原料混合物は、ホッパー、または並列の2つ以上のホッパーによって解重合反応器の供給システムに投入されることができ、プラスチック廃棄物材料の雰囲気中に存在する酸素は、(複数の)ホッパー内で実質的に除去される。
小規模テストでは、プラスチック原料を解重合反応器に直接供給することができる。より大規模な場合には、プラスチック原料が供給される押出機によって解重合反応器に供給することが好ましい。
好ましくは、プラスチックスクラップは、実質的に全ての塊体が溶融する温度にまで加熱され、その後、解重合反応器に注入される。押出機は、細かく切断されたプラスチックスクラップを供給ホッパーにおいて受け取り、溶融セクションにスクラップ流を運び、混合エネルギーとバレルヒーターによって供給される熱の複合作用によってポリマーを加熱する。通常、融点は、250°C~350°Cの範囲である。
【0012】
プラスチックスクラップの腐食性を低減するか、または解重合効率を向上させることを目的として、必要に応じて添加物を溶融物に組み込むことができる。
【0013】
押出し時に、生成物中に存在する残留湿気を除去するために、1つ以上の脱気工程を想定してもよい。
【0014】
溶融流は、反応器に供給される前に、プラスチック廃棄物に存在する固形不純物を除去するために濾過され得る。
【0015】
一軸押出機、二軸押出機、ギアポンプ付き二軸押出機、またはこれらの組み合わせなどの任意の押出システムを使用できる。
【0016】
プラスチック廃棄物原料と触媒との混合は、解重合反応器内で直接行ってもよいか、または反応器外で事前に行ってもよい。解重合反応器内で混合が行われる場合、いくつかの選択肢に従って触媒を供給することができる。好ましくは小規模システムで使用される最も簡易な方法は、窒素雰囲気下で固形触媒を反応器に直接注ぐことである。別の選択肢によれば、粉末触媒は、専用の装置を使用して、液体炭化水素スラリーまたは半固形ペーストの形体で反応器に供給されてもよい。
【0017】
代替として、混合は、解重合反応器の外部で行われてもよい。この場合も、いくつかの選択肢が可能である。選択肢のうちの1つによれば、触媒は、ホモジナイザー装置でプラスチックスクラップと混合され、その後、混合物は、ペレット化される。他の添加剤も含み得るこのようにして得られたペレットは、その後、重合反応器に供給するために使用される押出機ホッパーに投入される。プラスチックスクラップと触媒を別々にホッパーに投入することも可能である。この場合、プラスチックスクラップが溶融しているときに押出機内で混合が行われることができ、その後、解重合反応器に供給される。
【0018】
解重合反応器は、好ましくは、プラスチック原料および触媒の入口と、ガス状解重合生成物の出口とを備え、300°C~550°C、より好ましくは350°C~500°C、特に350°C~450°Cの温度範囲で動作する撹拌容器である。
【0019】
実際、解重合プロセスの結果として、ガス流が生成され、ガス流が完全にまたは部分的に液化される凝縮ユニットに送られる。
【0020】
凝縮セクションは、解重合反応器からの排出ガスを受け取り、排出ガスを炭化水素で実質的に構成される油状の解重合生成物に部分的に凝縮する。凝縮できないガスの一部を回収し、別々に保管することができる。凝縮セクションは、結果として形成される化合物の揮発性に応じて最大量の生成物を回収するために、圧力をかけて、またはかけずに、異なる温度で動作する1つ以上の段で構成できる。温度範囲は、当然、動作圧力に応じて変化し得る。
【0021】
好ましくは、凝縮セクションは、好ましくは下降温度で動作する少なくとも2つの凝縮段を有する。例えば、小規模な装置では、第1の凝縮段は100~120°Cの温度範囲で動作し、第2の凝縮段は2°C~-20°Cの温度範囲で動作する。
【0022】
凝縮段から得られる解重合生成物を、すでに説明した担持ヘテロポリ酸の存在下で行われる第2の解重合段にかけることも可能である。第2の解重合段は、前の解重合段について説明した条件と同様の条件下で実行することができる。このセットアップが支給される場合、触媒および液体または半液体の塊体の一部を、固形残留物が排出される第1の解重合反応器にリサイクルすることも好ましい。第1の解重合工程と同様に、ガス状排出物は、その後の凝縮段で凝縮することができる。
【0023】
プロセスの終了時には、プラスチック原料の好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは90重量%が液体または気体の解重合生成物に変換されている。
【0024】
上述のように、本開示による解重合生成物の主な用途は、クラッカー原料としてであり得る。これに関連して、解重合プロセスから高収率の液体解重合生成物を生成することが好ましいと考えられる。好ましい実施形態では、液体解重合生成物の量は、プラスチック廃棄物原料の60重量%より高く、より好ましくは65~85重量%である。
【0025】
さらに、液状解重合生成物は、クラッカー原料として可能な限り適した組成を有することもまた好ましいと考えられる。これには、C28以上の画分が非常に少ないか、またはまったく存在しないことが含まれる。好ましくは、液体解重合生成物中のC28より高い画分の量は、液体解重合生成物の総量に対して4%以下、好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満である。
【0026】
また、実際のプラスチック廃棄物から得られた解重合油のC6-C8芳香族化合物および内部オレフィン指数(I.O.I.)の値が低い場合、クラッカー原料の品質は高くなる。後者は、特性評価のセクションで説明されているように決定される、鎖末端位置(αオレフィン)の二重結合に対する内部二重結合間のモル比として定義される。好ましくは、液体解重合生成物中のI.O.I.は、1重量%未満であり、より好ましくは0.5重量%未満である。
【0027】
本明細書において使用される際、「C6-C8芳香族化合物」とは、シグマ結合および非局在化したパイ電子が炭素原子間に環を形成し、合計6~8個の炭素原子が存在する炭化水素を指す。
【0028】
すでに述べたように、触媒は、担体上に堆積されたヘテロポリ酸を含む。
【0029】
ヘテロポリ酸は、2つ以上の異なる無機酸から、当該酸の2つ以上の分子から水が除去されることによって形式的に誘導される複雑な酸素含有酸の化合物のクラスに属すると考えられ得る。言い換えると、酸の1つは、遷移金属の酸無水物(例えば、三酸化モリブデンまたは三酸化タングステン)のいくつかの分子の組み合わせによって形成されると見なすことができ、もう1つの酸は、非金属(例えば、リンまたはケイ素)の酸無水物から誘導されると考えられる。
【0030】
好ましくは、本開示に関わる触媒において、担体は、無機酸化物から選択され、より好ましくは、Al、SiOおよびTiOから選択される。好ましくは、担体は、AlまたはSiOである。ヘテロポリ酸は、 式H[XM1240]を有し、式中、Xは、Si、P、およびAsから選択されるヘテロ原子であり、Mは、W、Mo、およびVから選択される遷移金属であり、nは、酸素原子の残りの負の原子価をバランスさせる数である。
【0031】
好ましくは、遷移金属化合物は、WまたはMo、特にWである。WまたはMoと追加の遷移金属化合物(additional transition metal compound、ATMC)とのモル比が0.5~100、より好ましくは5~100、特に20~100の範囲となるような量のATMCが存在することが好ましい実施形態である。追加の遷移金属化合物(ATMC)が存在しないことが特に好ましい実施形態である。好ましくは、ヘテロポリ酸は、非金属元素がSiまたはP、特にSiであるものから選択される。特に、担持タングストケイ酸(tungstosilicic acid、TSA)が特に好ましい。シリカ担持TSAが特に好ましい。
【0032】
遷移金属の量で表される担体上のヘテロポリ酸の量は、担持触媒の総量に対して0.5~20重量%、好ましくは1~15重量%、さらに好ましくは1.5~10重量%の範囲である。ヘテロポリ酸錯体の重量を考慮すると、担持触媒の総重量に基づくその量は、1~26重量%、好ましくは1.5~20重量%、さらに好ましくは2~15重量%の範囲となり得る。
【0033】
高パフォーマンスを提供し、同時に触媒の全重量に基づいて1~15重量%、好ましくは2~12%、特に2~7重量%の遷移金属含有量を有する触媒が特に好ましい。
【0034】
好ましい実施形態によれば、触媒とともに触媒毒抑制剤を使用することができる。好ましくは、触媒毒抑制剤は、Ca(OH)、Mg(OH)、Ba(OH)、Sr(OH)2、CaO、フィロケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、およびZr(HPOからなる群から選択される。これらのうち、Zr(HPO、Ca(OH)、フィロケイ酸塩の使用が好ましい。フィロケイ酸塩の中ではベントナイトの使用が好ましい。
【0035】
本開示で報告されたデータは、本開示によるプロセスにより、バージン樹脂、さらには複雑なプラスチック廃棄物をクラッカー原料として使用するのに適した高収率および組成で得られる液体解重合生成物に変換できることを示している。
【0036】
特徴評価
特性は以下の方法に従って決定される。
【0037】
分析方法
液体生成物の特性評価:2つのトラップからの液体生成物は、ガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography、GC)とプロトンNMR(1H NMR)によって特性評価された。
【0038】
各実験の液体生成物のGC分析は、標準の非極性カラムと炎イオン化検出器を備えたAgilent7890GC(Agilent Technologies、カリフォルニア州サンタクララ)を使用して実行された。GCデータについては、x<nC7(沸点<98°C、LF1という)、nC7<x<nC11(沸点98°C<BP<203°C、LF2という)、nC12<x<nC28(沸点203°C<BP<434°C、LF3という)、x>C28(沸点>434°C、LF4という)の重量パーセントを使用して、液体生成物の特性評価を行った。
【0039】
NMRデータを使用して、液体生成物中の芳香族プロトン、パラフィンプロトン、およびオレフィンプロトンの割合を特性評価した。実施例は、CDCl3(0.6gの解重合ポリマー/金属酸化物混合物と0.4gのCDCl3)を加えて分析された。データは、5mm Prodigyプローブを使用して、25°CでBruker AV500MHz NMR分光計(Bruker Corporation、マサチューセッツ州ビレリカ)で収集された。1次元1H NMRデータは、指数型ラインブロードニング窓関数を備えたTOPSPIN(登録商標)ソフトウェア(Bruker)を使用して処理された。正確な積分を容易にするために、15秒の緩和遅延、30°のフリップ角パルス、および32回のスキャンで定量測定が実行された。芳香族オレフィンおよびパラフィンプロトンのスペクトル積分が得られ、これらのプロトンの相対比を定量化するために使用された。
【0040】
二酸化ケイ素SiO(白砂)、酸化アルミニウム(III)Al、ならびに二酸化チタンTiOの市販試料は、Sigma Aldrichから市販されており、CBV400 HY ゼオライトは、Zeolyst Internationalから市販されている。
【0041】
さまざまな例で使用されているヘテロポリ酸は、Merk、Alfa Aesar、ABCRなどの一般的なサプライヤーから市販されている。
【0042】
Al、Tiの決定
固形触媒成分中のAl、Ti含有量の決定は、「I.C.P分光計 ARL Accuris」を用いた誘導結合プラズマ発光分光法によって実施された。試料は、「Fluxy」白金るつぼで、0.1~0.3グラムの触媒と2グラムのメタホウ酸リチウム/テトラホウ酸リチウム1/1混合物を分析的に秤量することによって調製された。KI溶液を数滴加えた後、るつぼを特別な装置「Claisse Fluxy」に挿入して完全燃焼させる。残留物は、5%v/vのHNO溶液で回収され、ICPで次の波長で分析される:アルミニウム、394.40nm、チタン、368.52nm。
【0043】
Si、Wの決定
固形触媒成分中のSi、W含有量の決定は、「I.C.P分光計Icap7000」の誘導結合プラズマ発光分光法によって実施された。試料は、プラスチック製の100mLメスフラスコに0.01~0.10グラムの触媒を分析的に秤量して調製した。20mLのフッ化水素酸(48%)を脱塩水で10パーセントに希釈し、フラスコに加えた。続いて、50mLの脱塩水に溶解した1.5gのホウ酸(純度>99.5%)の冷溶液も加えた。最後に、フラスコの内容物を脱塩水でマークまで満たし、混合する。続いて、得られた溶液は、ICPによって次の波長で直接分析された:タングステン、224.875nm、ケイ素、212.412nm。
【実施例
【0044】
一般的な解重合手順
500mLの丸底ガラス反応器での解重合試験の一般的な手順
30gのポリマープラスチックを、熱電対と窒素入口を備えた500mLの三つ口丸底ガラス反応器に入れた。ポリマープラスチックは、ポリオレフィン生産工場から直接得られたバージン樹脂(実施例1~7および比較例1~3)と、事前に分類された自治体の収集からの実際のプラスチック廃棄物(rpw)の試料(実施例8~および比較例)の両方である可能性があった。
【0045】
実施例で使用した実際のプラスチック廃棄物を分析したところ、約97重量%のポリオレフィン(PP/PE比は約30/70)で構成されており、残留物には痕跡量の他の一般的なポリマー(PET、PS、PA、PU)と無機夾雑物が含まれていることが判明した。
【0046】
次に、固形触媒(プラスチックに対して2.5重量%)を適切な量でガラス反応器に導入する。触媒を伴わないブランクテストもまた実行してもよい。2つのガラスコンデンサーが直列に接続され、オイルバス(Cryostat Julabo)を使用してそれぞれ110°Cと-8°Cに保たれる。反応器を電気加熱システム(マントルバス)内に配置し、所望の電力を設定すると、温度は450°Cまで上昇した。熱分解プロセスが発生し、次の実験パラメータが記録される。
【0047】
L%、110°Cで凝縮可能な液体の収量と-8°Cで凝縮可能な液体の収量の合計(投入されたポリマーに対して)
S%、反応器内の固体/ワックス状残留物の収率、触媒を除く(投入されたポリマーに対して)
両方のコンデンサーにおいて凝縮可能ではないガス状生成物の収率G%(投入されたポリマーに対して)
結果は表1と表2に報告されている。
【0048】
比較例1
解重合原料としてバージンポリプロピレンを使用し、解重合触媒を使用せずに、上記で開示した一般的な解重合手順に従って解重合実験を実施した。結果は表1に報告されている。
【0049】
比較例2
解重合原料としてバージンポリプロピレンを使用し、解重合触媒としてSiOを使用して、上記で開示した一般的な解重合手順に従って解重合実験を実施した。結果は表1に報告されている。
【0050】
比較例3
解重合原料としてバージンポリプロピレンを使用し、解重合触媒としてCBV400 HYゼオライトを使用して、上記で開示した一般的な解重合手順に従って解重合実験を実施した。結果は表1に報告されている。
【0051】
実施例1
リンモリブデン酸で改質したシリカ(32重量%)(SiPMo-A)の調製
磁気撹拌器を備えた250mL丸底フラスコに、室温で4.6gのリンモリブデン酸水和物H[P(Mo10]xHO[MW=1825.25g/mol(無水基準)]を入れ、最小量の脱塩水(20mL)に溶解した。室温で15分間撹拌した後、10.0gの二酸化ケイ素SiOを加えた。湿った均質なスラリーを得るために、追加の水をゆっくりと加え(総量150mL)、室温で30分間撹拌を続けた。後者は回転式蒸発器を用いて室温で1時間撹拌された。続いて、回転式蒸発器を用いて撹拌しながら、温度を100°Cまで上げ、真空(約50mmHg)を適用して、固形物を最初に乾燥させた。最後に、固形物をオーブン内で真空下、105°Cで2時間乾燥させた。13.8gの流動性粉末が得られた。このようにして得られた触媒は、バージンポリプロピレンを解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表1に報告されている。
【0052】
実施例2
タングストケイ酸で改質したアルミナ(50重量%)(AlWSi-A)の調製
磁気撹拌器を備えた100mL丸底フラスコに、室温で4.5gのタングストケイ酸水和物H[Si(W10]xHO[MW=2878.17g/mol(無水基準)]を入れ、最小量の脱塩水(20mL)に溶解した。室温で15分間撹拌した後、4.5gの酸化アルミニウム(III)Alを加えた。湿った均質なスラリーを得るために、追加の水をゆっくりと加え(総量60mL)、室温で30分間撹拌を続けた。次いで、後者を室温で1時間撹拌し、G5フリットで濾過した。その後、固形物を真空下105°Cで8時間乾燥させた。6.2gの流動性粉末が得られた:Al=39.6重量%。このようにして得られた触媒は、バージンポリプロピレンを解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表1に報告されている。
【0053】
実施例3
タングストケイ酸で改質したアルミナ(50重量%)(AlWSi-A)の調製
磁気撹拌器を備えた100mL丸底フラスコに、室温で4.6gのリンタングステン酸水和物H[P(Mo10]xHO[MW=2880.05g/mol(無水基準)]を加え、最小量の脱塩水(20mL)に溶解した。室温で15分間撹拌した後、4.5gの酸化アルミニウム(III)Alを加えた。湿った均質なスラリーを得るために、追加の水をゆっくりと加え(総量60mL)、室温で30分間撹拌を続けた。次いで、後者を室温で1時間撹拌し、G5フリットで濾過した。その後、固形物を真空下105°Cで8時間乾燥させた。6.2gの流動性粉末が得られた:Al=39.6重量%。このようにして得られた触媒は、バージンポリプロピレンを解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表1に報告されている。
【0054】
実施例4
タングストケイ酸で改質したゼオライトβ(50重量%)(BetaWSi-A)の調製
磁気撹拌器を備えた250mL丸底フラスコに、室温で4.5gのタングストケイ酸水和物H[Si(W10]xHO[MW=2878.17g/mol(無水基準)]を加え、最小量の脱塩水(20mL)に溶解した。室温で15分間撹拌した後、4.5gのZEOLITE H-BETA POWDERを添加した。湿った均質なスラリーを得るために、追加の水をゆっくりと加え(総量150mL)、室温で30分間撹拌を続けた。後者は回転式蒸発器を用いて室温で1時間撹拌された。続いて、回転式蒸発器を用いて撹拌しながら、温度を100°Cまで上げ、真空(約50mmHg)を適用して、固形物を最初に乾燥させた。最後に、固形物をオーブン内で真空下、105°Cで2時間乾燥させた。7.9gの流動性粉末が得られた。Si=19.4重量%、Al=0.6重量%。このようにして得られた触媒は、バージンポリプロピレンを解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表1に報告されている。
【0055】
実施例5
タングストケイ酸で改質したシリカ(50重量%)(SiWSi-A)の調製
9.0gのタングストケイ酸水和物H[Si(W10]xHO[MW=2878.17g/mol(無水基準)]を室温で数mLの脱塩水に溶解した。この溶液を、機械式撹拌機を備えた250mL丸底フラスコにあらかじめ調製した40mLの脱塩水中のPQ社によって市販されているSilica ES70Y(9.0g)のスラリーに室温で滴下して添加した。湿った均質なスラリーを得るために、反応混合物を室温で1時間撹拌した。続いて、回転式蒸発器を使用して撹拌しながら、温度を100°Cまで上げ、徐々に真空(約5mmHgまで)を適用することによって水を除去した。最後に、固形物をオーブン内で真空下、105°Cで2時間乾燥させた。12.0gの流動性粉末が得られた。このようにして得られた触媒は、バージンポリプロピレンを解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表1に報告されている。
【0056】
実施例6
リンタングステン酸で改質したシリカ(33重量%)(SiPW-A)の調製
4.91gのリンタングステン酸水和物H[P(W10]xHO[MW=2880.05g/mol(無水基準)]を室温で10mLの脱塩水に溶解した。この溶液を、機械式撹拌機を備えた250mL丸底フラスコにあらかじめ調製した120mLの脱塩水中のPQ社によって市販されているSilica ES70Y(10.05g)のスラリーに室温で滴下して添加した。湿った均質なスラリーを得るために、反応混合物を室温で1時間撹拌した。続いて、回転式蒸発器を使用して撹拌しながら、温度を100°Cまで上げ、徐々に真空(約5mmHgまで)を適用することによって水を除去した。最後に、固形物をオーブン内で真空下、105°Cで2時間乾燥させた。14.7gの流動性粉末が得られた:Si=31.2重量%、W=20.8重量%。このようにして得られた触媒は、バージンポリプロピレンを解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表1に報告されている。
【0057】
実施例7
タングストケイ酸で改質したシリカ(18重量%)(SiWSi-A)の調製
機械式撹拌機を備えた1L丸底フラスコに、11.25gのタングストケイ酸水和物H[Si(W10]xHO[MW=2878.17g/mol(無水基準)]を入れ、20mLの脱塩水に溶解した。この溶液を室温で15分間撹拌し、次にPQ社によって市販されているシリカES70Y(50.0g)を加えた。湿った均質なスラリーを得るために、脱塩水(120mL)を加え、得られた反応混合物を室温で2時間撹拌した。続いて、回転式蒸発器を使用して撹拌しながら、温度を75°Cまで上げ、徐々に真空(約5mmHg)を適用することによって水を除去した。最後に、固形物をオーブン内で真空下、105°Cで2時間乾燥させた。50.5gの流動性粉末が得られた:Si=36.7重量%、W=12.5重量%。このようにして得られた触媒は、バージンポリプロピレンを解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表1に報告されている。
【0058】
比較例4
解重合実験は、上記で開示した一般的な解重合手順に従って行われたが、解重合原料として実際のプラスチック廃棄物を使用し、解重合触媒は使用しなかった。結果は表2に報告されている。
【0059】
実施例8
タングストケイ酸を有する二酸化チタン(TiWSi-A)の調製
チタン(IV)イソプロポキシド(Sigma Aldrich、28.0mL、d=0.955g/mL)を、窒素雰囲気下、室温で、機械式撹拌機を備えた500mL丸底フラスコに入れ、均一な溶液を得るために、エタノール(Silcompa、240mL、d=0.789g/mL)と10分間混合した。次に、0.28M HCl水溶液(0.33mL)をゆっくりと加え、白色のスラリーを得た。機械式撹拌機を備えた第2の250mL丸底フラスコに、室温で尿素(Merck、17.2g)、エタノール(Silcompa 109mL)および脱イオン水(17.2mL)を投入し、無色の溶液を得た。この尿素アルコール水溶液(総量約144mL)をチタンの最初の加水分解溶液(総量約268mL)に加え、得られた混合物を窒素雰囲気下、室温で数時間撹拌した。この混合物のアリコート(205mL)を取り、22.5mLのエタノール中の2.25gのタングストケイ酸水和物H[Si(W10]xHOの溶液を加えた(最終物質中のタングストケイ酸の30重量%)。最終試料を乾燥するまでビーカーに保存し、その後、連続撹拌システムで2日間、蒸留水で抽出して尿素を除去した。その後、固形物をオーブン内で真空下100°Cで20時間乾燥させた。6.0gの流動性粉末が得られた:Ti=41.5重量%。このようにして得られた触媒は、実際のプラスチック廃棄物を解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。果は表2に報告されている。
【0060】
実施例9
タングストケイ酸で改質したシリカ(20重量%)(SiWSi-A)の調製
タングストケイ酸水和物H[Si(W10]xHO[62.5g、0.0217mol、MW=2878.17g/mol(無水基準)]を室温で120mLの脱イオン水に溶解し、無色の溶液を得た。後者は室温で30分間撹拌された。PQ社によって市販されているシリカES70Y(250.8g)を、機械式撹拌機を備えた2L丸底フラスコ内の1Lの脱イオン水に室温で懸濁した。水中のタングストケイ酸溶液を水中のシリカのスラリーにゆっくりと加え、得られた混合物を室温で12時間撹拌した。最終スラリーをG4フリットで濾過し、白色固形物を脱イオン水で洗浄し、その後、真空下、105°C/24時間で乾燥させた。最終化合物は流動性白色粉末(275.6g)である:Si=35.9重量%、W=5.2重量%。このようにして得られた触媒は、実際のプラスチック廃棄物を解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表2に報告されている。
【0061】
実施例10
リンタングステン酸で改質したシリカ(20重量%)(SiPW-A)の調製
7.85gのリンタングステン酸水和物H[P(W10]xHO[MW=2880.05g/mol(無水基準)]を室温で20mLの脱塩水に溶解した。この溶液を、機械式撹拌機を備えた250mL丸底フラスコにあらかじめ調製した100mLの脱塩水中のPQ社によって市販されているSilica ES70Y(39.25g)のスラリーに室温で滴下して添加した。湿った均質なスラリーを得るために、反応混合物を室温で2時間撹拌した。続いて、回転式蒸発器を使用して撹拌しながら、温度を75°Cまで上げ、徐々に真空(約5mmHg)を適用することによって水を除去した。最後に、固形物をオーブン内で真空下、105°Cで2時間乾燥させた。43.4gの流動性粉末が得られた:Si=39.5重量%、W=9.5重量%。このようにして得られた触媒は、実際のプラスチック廃棄物を解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表2に報告されている。
【0062】
実施例11
タングストケイ酸で改質したシリカ(18重量%)(SiWSi-A)の調製
2.25gのタングストケイ酸水和物H[Si(W10]xHO[MW=2878.17g/mol(無水基準)]を室温で数mLの脱塩水に溶解した。この溶液を、機械式撹拌機を備えた250mL丸底フラスコにあらかじめ調製した40mLの脱塩水中のPQ社によって市販されているSilica ES70Y(10.0g)のスラリーに室温で滴下して添加した。湿った均質なスラリーを得るために、反応混合物を室温で1時間撹拌した。続いて、回転式蒸発器を使用して撹拌しながら、温度を100°Cまで上げ、徐々に真空(約5mmHgまで)を適用することによって水を除去した。最後に、固形物をオーブン内で真空下、105°Cで2時間乾燥させた。16.5gの流動性粉末が得られた:Si=46.0重量%、W=11.2重量%。このようにして得られた触媒は、実際のプラスチック廃棄物を解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表2に報告されている。
【0063】
実施例12
タングストケイ酸(SiWSi-A)と二塩化銅(10重量%)で改質したシリカ(20重量%)の調製
機械式撹拌機を備えた250mL丸底フラスコに、実施例6で説明したように調製したタングストケイ酸水和物で改質したシリカ(20重量%)12.00gを室温で投入した。均一なスラリーを得るために、添加終了時、温度を80°Cまで上げ、得られた反応混合物をこの温度で1時間撹拌した。後者をG4フリットで濾過し、固形物を脱イオン水で洗浄し、その後オーブンで真空下、120°C/1時間で乾燥させた。最後に、空気中で550°C/3.5時間で焼成工程を実施した。最終化合物は流動性白色粉末(7.65g)である:Si=42.4重量%、W<0.1重量%、Cu=0.5重量%、Cl=85ppm。このようにして得られた触媒は、実際のプラスチック廃棄物を解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表2に報告されている。
【0064】
実施例13
タングストケイ酸(SiWSi-A)と二塩化亜鉛(10重量%)で改質したシリカ(20重量%)の調製
機械式撹拌機を備えた250mL丸底フラスコに、実施例6で説明したように調製した、タングストケイ酸水和物で改質したシリカ(20重量%)12.00gを室温で投入した。続いて、湿った均質なスラリーを得るために、さらに30mLの脱塩水を加え、温度を80°Cまで上げ、得られた反応混合物をこの温度で1時間撹拌した。次に、撹拌しながら徐々に真空を適用して水を除去し、固形物をオーブン内で真空下120°C/1時間で乾燥させた。最後に、空気中で550°C/3.5時間で焼成工程を実施した。最終化合物は流動性白色粉末(10.20g)である:Si=39.0重量%、W=4.5重量%、Zn=5.05重量%、Cl=1300ppm。このようにして得られた触媒は、実際のプラスチック廃棄物を解重合原料として使用し、上記で開示した一般的な解重合手順に従って実施される解重合実験に使用された。結果は表2に報告されている。
【0065】
実施例14
解重合は、機械的に撹拌される(加熱用のジャケット付き)反応器からなる解重合反応器を含む、より大規模な解重合装置で行われ、この反応器には、押出機からのプラスチック廃棄物の入口、解重合触媒の入口、および発生したガスの出口が設けられている。反応器から抜き出されたガスを凝縮ユニットに送り、そこから、非凝縮ガスと熱分解油とを得た。温度を監視及び記録するために、熱電対を反応器内に位置付けている。
【0066】
プラスチック廃棄物原料を事前に分析して、他の一般的な重合体(PET、PS、PA、PU)および無機夾雑物を微量に含む残留物を有するポリオレフィン含有量(97重量%)を調べた。
【0067】
原料をホッパーに充填する前に、原料を均質化して造粒した。ホッパーは、290°Cの温度で作動し、4kg/hで連続的に解重合反応器に排出される押出機に供給する必要がある。解重合反応器は、圧力4barg、約410°Cの温度で動作された。
実施例9の手順に従って調製した触媒を、シリンジシステムを用いて白色のオイル中の懸濁液の形態で反応器に連続的に注入した。固形触媒と反応相との間の質量比は3.5重量%であった。総解重合時間は約3時間であった。最後に、反応器は冷却され、清掃のために開放された。
【0068】
反応器の気相は、25°Cで作動する冷却/スクラバーカラムによって形成された凝縮ユニットに送られ、凝縮ユニットから液体流とガス流が得られた。結果として生じたガス流は排気口に送られ、凝縮された液体流はGC-FIDによって分析された。化合物の数は非常に多いので、特定の炭化水素を内部保持時間基準とし、得られた化合物を保持時間に従ってグループ化することによって、分析結果を報告した。結果は表3に示されている。
【0069】
残留含有量は、使用された実際のプラスチック廃棄物に元々含まれていた触媒と無機成分の量を除いた上で算出された。
【0070】
比較例5
熱解重合実験
実施例14に記載されたプロセス設定および条件を使用して、触媒を供給しないということが唯一の違いである解重合実験を実施した。
生成物における有用性(原料に対する)の結果は、生成されたオイルの試料について作成されたGC-FID分析レポートとともに表3に報告されている。
【0071】
比較例6
実施例14に記載されたプロセス設定および条件を使用して、解重合触媒としてCBV400 HYゼオライトを使用した点のみ異なる解重合実験を実施した。
生成物における有用性(原料に対する)の結果は、生成されたオイルの試料について作成されたGC-FID分析レポートとともに表3に報告されている。
【0072】
【表1】
表1に示す結果は、ヘテロポリ酸触媒、特に、担持タングストケイ酸(略してTSA)を伴うヘテロポリ酸触媒により実施した例では、非触媒解重合実験に比べて液体画分の量が多くなることを示している。
【0073】
【表2】
実際のプラスチック廃棄物の解重合に使用すると、ヘテロポリ酸触媒は、熱解重合のみで得られるものよりも良好な解重合生成物を生成する。
【0074】
【表3】
実際のプラスチック廃棄物の解重合に使用すると、ヘテロポリ酸触媒は、ゼオライトHY触媒よりも良好な解重合活性(固形残留物が少ない)と生成物の品質との組み合わせを示す。
【0075】
実施例15
実施例9に従って調製された触媒は、上記で開示された一般的な解重合手順に従って実施された解重合実験において使用され、解重合原料として、PP/PE比が約30/70であるポリオレフィン約94重量%から構成され、残留物には他の一般的なポリマー(PET、PS、PA、PU)の痕跡と無機夾雑物が含まれていた実際のプラスチック廃棄物(RPW)試料が使用された。さらに、触媒毒抑制フィロケイ酸塩として、Fulcat435(BYK Chemie GmbHから市販)をRPWの量に基づいて2.5重量%使用した。結果は表4に報告されている。
【0076】
実施例16
解重合は、実施例15と同じ触媒および条件に従って行われたが、触媒毒抑制剤として、Fulcat435の代わりにZrH(PO)(Merck-Sigma Aldrichから市販されている)が使用された点が異なっていた。結果は表4に報告されている。
【0077】
実施例17
解重合は実施例15と同じ条件に従って行われ、使用した触媒は実施例2で説明したように調製したが、触媒担体として酸処理したAlを使用した点が異なっていた。結果は表4に報告されている。
【0078】
比較例7
解重合は、触媒および触媒毒抑制剤を使用しなかったことを除いて、実施例15と同じ条件に従って行われた。結果は表4に報告されている。
【0079】
【表4】
PSA=触媒毒抑制剤
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを解重合するプロセスであって、
a)少なくともリサイクルポリプロピレンおよびポリエチレンを含む溶融プラスチック廃棄物原料を提供する工程と、
b)(a)で得られた溶融生成物を280°C~600°Cの範囲の温度にさらして、解重合生成物を得る工程と、を含み、
前記プロセスは、前記溶融生成物および前記解重合生成物のいずれかまたは両方を、遷移金属部分が、W、MoおよびVからなる群から選択される遷移金属を含み、非金属部分が、Si、PおよびAsから選択される非金属元素を含む担持ヘテロポリ酸を含む触媒と接触させることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
触媒の量は、プラスチック廃棄物原料と触媒との総重量に対して、0.1~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、特に0.1~5重量%の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記プラスチック廃棄物原料は、重量比が85:15~15:85であるポリエチレンとポリプロピレンとの混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記担体は、無機酸化物から選択され、より好ましくはAl、SiOおよびTiOから選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ヘテロポリ酸は、遷移金属化合物がWまたはMoであるものから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
遷移金属の量は、担持触媒の総量に対して1~20重量%の範囲である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒は、担持タングストケイ酸(TSA)を含む、請求項5に記載のプロセス。


【国際調査報告】