(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】蛇形ビーム素子を有するアゴニスト-アンタゴニストチューブ型操縦可能器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20241024BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20241024BHJP
A61B 1/005 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61B17/94
A61M25/00 534
A61M25/00 552
A61M25/00 620
A61B1/005 520
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525556
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 US2022048408
(87)【国際公開番号】W WO2023076667
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501271033
【氏名又は名称】バンダービルト・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】ガフォード,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ラッカー,ダニエル,シー
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,パトリック, エル
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター,スコット,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター,ロバート,ジェームス
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
4C267
【Fターム(参考)】
4C160NN02
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF32
4C161JJ06
4C267AA01
4C267AA77
4C267BB02
4C267BB06
4C267BB07
4C267BB11
4C267BB13
4C267BB15
4C267BB31
4C267BB38
4C267HH03
4C267HH04
(57)【要約】
【課題】本発明は、操縦可能器具を備える手術システムを提供する。
【解決手段】前記操縦可能器具は、第1チューブと第2チューブを有し、前記第1チューブは、その管状側壁に形成される第1蛇形ビームを含み、前記第2チューブは、その管状側壁に形成される第2蛇形ビームを含む。前記第1チューブと第2チューブは、同心的に嵌合され、且つ前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとが少なくとも部分的に軸方向において互いに位置合わせされ且つ径方向において異なる角度を向くように、位置決めされ、前記第1チューブと第2チューブは、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとの遠位側において互いに接続される。前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとは、湾曲セグメントを画定し、前記湾曲セグメントは、前記第1チューブと第2チューブとに加えられた異なる軸方向力に応答して前記嵌合されたチューブ構造に湾曲部を形成するように、作動可能である。
【選択図】
図21A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術システムであって、
操縦可能器具を備え、
前記操縦可能器具は、第1チューブと、第2チューブとを有し、
前記第1チューブは、その管状側壁に形成される第1蛇形ビームを含み、
前記第2チューブは、その管状側壁に形成される第2蛇形ビームを含み、
前記第1チューブと第2チューブは、同心的に嵌合され、前記第1チューブと第2チューブは、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとが少なくとも部分的に軸方向において互いに位置合わせされ且つ径方向において異なる角度を向くように、位置決めされ、
前記第1チューブと第2チューブは、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとの遠位側において互いに接続され、
前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとは、湾曲セグメントを画定し、前記湾曲セグメントは、前記第1チューブと第2チューブとに加えられた異なる軸方向力に応答して前記嵌合されたチューブ構造に湾曲部を形成するように、作動可能である、手術システム。
【請求項2】
前記第1チューブは、複数の平行な第1スロットを含み、前記第1スロットは、前記第1チューブの中心軸線に垂直となるように前記第1チューブの前記側壁を通過して延在し、前記第1スロットは、前後に角度をなすようにずれており、前記第1スロットは、前記第1蛇形ビームを画定し、
前記第2チューブは、複数の平行な第2スロットを含み、前記第2スロットは、前記第2チューブの中心軸線に垂直となるように前記第2チューブの前記側壁を通過して延在し、前記第2スロットは、前後に角度をなすようにずれており、前記第2スロットは、前記第2蛇形ビームを画定する、請求項1に記載の手術システム。
【請求項3】
前記第1蛇形ビームは、前記第1スロットの対向側において互いに平行に延在する横ビーム部分と、前記横ビーム部分の隣接する端部同士を互いに連結する縦ビーム部分とを含み、
前記第2蛇形ビームは、前記第2スロットの対向側において互いに平行に延在する横ビーム部分と、前記横ビーム部分の隣接する端部同士を交互に連結する縦ビーム部分とを含む、請求項2に記載の手術システム。
【請求項4】
前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームは、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとにおける隣接する横ビーム部分が、前記横ビーム部分を接続し且つ対向する縦ビーム部分に位置する接触点において互いに接合されるように構成され、前記接触点は、前記湾曲セグメントの偏向を制限する、請求項3に記載の手術システム。
【請求項5】
前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームは、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとにおける隣接する横ビーム部分が、前記湾曲セグメントの偏向を制限する接触点において互いに接合されるように構成される、請求項1に記載の手術システム。
【請求項6】
前記接触点は、前記湾曲セグメントの完全偏向状態を規定するように構成される、請求項5に記載の手術システム。
【請求項7】
前記湾曲セグメントは、前記第1チューブと第2チューブとに加えられた前記異なる軸方向力によって前記接触点を互いに当接させることで前記湾曲セグメントの前記完全偏向状態での剛性を高めるように構成される、請求項6に記載の手術システム。
【請求項8】
前記第1チューブは、前記湾曲セグメントの長さに沿って互いに平行に延在する複数の第1蛇形ビームを含み、且つ前記第2チューブは、前記湾曲セグメントの長さに沿って互いに平行に延在する複数の第2蛇形ビームを含む、請求項1に記載の手術システム。
【請求項9】
前記第1チューブは、複数の平行な第1スロットを含み、前記複数の平行な第1スロットは、前記第1チューブの中心軸線に垂直となるように前記第1チューブの前記側壁を通過して延在し、前記第1スロットは、径方向において互いに間隔を空けた複数行の複数のスロットとして配置され、各行の第1スロットは、隣接行に対して角度をなすようにずれており、前記第1スロットは、前記複数の第1蛇形ビームを画定し、
前記第2チューブは、複数の平行な第2スロットを含み、前記複数の平行な第2スロットは、前記第2チューブの中心軸線に垂直となるように前記第2チューブの前記側壁を通過して延在し、前記第2スロットは、径方向において互いに間隔を空けた複数行の複数のスロットとして配置され、各行の第2スロットは、隣接行に対して角度をなすようにずれており、前記第2スロットは、前記複数の第2蛇形ビームを画定する、請求項8に記載の手術システム。
【請求項10】
各行における前記第1スロットの長さは、等しく、且つ各行における前記第2スロットの長さは、等しい、請求項9に記載の手術システム。
【請求項11】
各行における前記第1スロットは、2つの異なる長さを有するように交互に配置され、且つ各行における前記第2スロットは、2つの異なる長さを有するように交互に配置されている、請求項9に記載の手術システム。
【請求項12】
前記操縦可能器具は、前記操縦可能器具の前記長さに沿って軸方向において間隔を空けた複数の湾曲セグメントを含み、複数の湾曲セグメントは、第1湾曲セグメントと第2湾曲セグメントを含み、前記第1湾曲セグメントと第2湾曲セグメントは、それぞれ、前記第1チューブの側壁に形成された第1蛇形ビームと、前記第2チューブの側壁に形成された第2蛇形ビームとによって形成され、当該第1蛇形ビームと当該第2蛇形ビームは、軸方向において位置合わせされている、請求項1に記載の手術システム。
【請求項13】
前記第1湾曲セグメントと第2湾曲セグメントは、作動時に異なる方向に偏向するように構成される、請求項12に記載の手術システム。
【請求項14】
前記第1湾曲セグメントと第2湾曲セグメントは、前記第1チューブと第2チューブとの遷移領域によって仕切られ、前記遷移領域では、チューブの側壁にスロットがない、請求項12に記載の手術システム。
【請求項15】
前記第1湾曲セグメントと前記第2湾曲セグメントは、作動時に互いに反対する方向に偏向することで前記操縦可能器具をS字状を呈させるように構成される、請求項12に記載の手術システム。
【請求項16】
前記第1スロットと前記第2スロットとの角度位置は、前記湾曲セグメントが作動時に螺旋状に平面から湾曲するように、前記中心軸線周りに徐々に調節される、請求項2に記載の手術システム。
【請求項17】
前記第1スロットと第2スロットは、前記湾曲セグメントの互いに反対する湾曲方向における湾曲運動を制限する接触補助具を含む、請求項2に記載の手術システム。
【請求項18】
各接触補助具は、横ビーム部材から突出する凸状部材を含み、前記凸状部材は、隣接する横ビーム部材上の対応する形状の凹状レシーバ内に位置決めされている、請求項17に記載の手術システム。
【請求項19】
各接触補助具は、ダブテール構造を有し、前記凸状部材は、ダブテールピンを含み、前記凹状レシーバは、ダブテール尾部を含む、請求項17に記載の手術システム。
【請求項20】
前記第1スロット及び前記第2スロットの少なくとも一部は、その端部に応力除去切り欠きを有する、請求項2に記載の手術システム。
【請求項21】
前記操縦可能器具は、前記第1蛇形ビームから近位側に延在する第1挿入軸と、前記第2蛇形ビームから近位側に延在する第2挿入軸とを含み、
前記第1挿入軸と第2挿入軸は、曲がりくねった経路に適応できるように、曲げコンプライアンスを持つように構成され、
前記第1挿入軸と第2挿入軸は、負荷方向に関わらず、同じ曲げ剛性を示し、且つ、力及びトルクが前記挿入軸の近位端から操縦可能器具の遠位端に位置する湾曲セグメントに十分に伝達されるような、軸方向剛性とねじり剛性とを示す全方向コンプライアンスを持つように構成される、請求項1に記載の手術システム。
【請求項22】
前記第1挿入軸は、前記第1チューブに近接するように位置決めされ且つ前記第1チューブに接続されるポリマー可撓チューブと、前記可撓チューブを被覆し又は前記可撓チューブに嵌め込まれた編組線補強層と、前記編組線を被覆し、且つ前記編組線の前記可撓チューブへの固定を支援するポリマージャケットとを含み、
前記第2挿入軸は、前記第2チューブに近接するように位置決めされ且つ前記第2チューブに接続されるポリマー可撓チューブと、前記可撓チューブを被覆し又は前記可撓チューブに嵌め込まれた編組線補強層と、前記編組線を被覆し、且つ前記編組線の前記可撓チューブへの固定を支援するポリマージャケットとを含む、請求項21に記載の手術システム。
【請求項23】
前記編組線の編組密度は、前記挿入軸のその長さに沿う可撓性、軸方向剛性及びねじり剛性が調節されるように、前記第1挿入軸と第2挿入軸とのうちの少なくとも一方の長さに沿って変更される、請求項22に記載の手術システム。
【請求項24】
前記可撓チューブは、前記チューブを前記可撓チューブ材に嵌め込むことと、接着剤で前記可撓チューブをアウターチューブに接続することと、前記可撓チューブを前記アウターチューブに接着される薄壁ジャケットとして形成することと、のうちの一方により、対応する第2チューブに固定される、請求項21に記載の手術システム。
【請求項25】
前記第1挿入軸と第2挿入軸は、前記第1チューブと第2チューブとの対応する部分を含み、前記第1チューブと前記第2チューブは、それぞれの蛇形ビームの近位側に延在し、それぞれのチューブ側壁に複数のスロットを有し、前記スロットは、前記第1チューブと第2チューブとの前記中心軸線に垂直に延在し且つ行として配置され、
前記行は、前記中心軸線周りに径方向に沿って延在し、
前記行の配置により、
前記第1挿入軸と第2挿入軸は、曲がりくねった経路に適応できるように、曲げコンプライアンスを持つように構成され、
前記第1挿入軸と第2挿入軸は、負荷方向に関わらず、力及びトルクが前記挿入軸の近位端から操縦可能器具の遠位端に位置する湾曲セグメントに伝達されるように、軸方向剛性、ねじり剛性、及び同じ曲げ剛性を示す全方向コンプライアンスを持つように構成される、請求項21に記載の手術システム。
【請求項26】
前記第1挿入軸と第2挿入軸とに沿って配置された前記スロットのピッチは、前記第1挿入軸と第2挿入軸との長さに沿って変更されることにより、それらの長さに沿って前記第1挿入軸と第2挿入軸との可撓性、軸方向剛性及びねじり剛性を調節する、請求項25に記載の手術システム。
【請求項27】
前記操縦可能器具は、ポリマージャケットを更に含み、前記ポリマージャケットは、前記湾曲セグメントを被覆し、且つ組織の前記スロットへの進入を防止する、請求項2に記載の手術システム。
【請求項28】
前記スロットは、組織が前記スロットに進入できないように狭く構成されている、請求項2に記載の手術システム。
【請求項29】
前記操縦可能器具は、複合操縦可能器具を含み、前記複合操縦可能器具は、第1操縦可能器具と第2操縦可能器具とを含み、前記第2操縦可能器具は、前記第1操縦可能器具の内腔を通過して延在するように構成される、請求項1に記載の手術システム。
【請求項30】
挿入され且つ操作されることで手術部位に位置決めされるように構成される送達デバイスを更に備え、
前記操縦可能器具は、進行されて前記送達デバイスを通過し、且つ前記湾曲セグメントを前記送達デバイスの外部に位置決めするように構成され、前記操縦可能器具の残りの部分は、前記送達デバイス内に位置決めされ且つ前記送達デバイスによって支持される、請求項1に記載の手術システム。
【請求項31】
前記送達デバイスは、内視鏡と、可撓性内視鏡と、別の操縦可能器具とのうちの一種を含む、請求項30に記載の手術システム。
【請求項32】
前記送達デバイスは、前記送達デバイスによって支持される操縦可能器具が、前記手術部位での組織操作のための、嵌合されたチューブ構造の前記内腔を通過して延在する手術器具を支持可能であるように構成され、前記湾曲セグメントは、前記送達デバイスの外部に位置決めされる、請求項30に記載の手術システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年10月29日に出願された、米国仮特許出願第63/273,679号に対して優先権を主張し、その全ての内容があらゆる目的で引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府出資)
本発明は、政府の支援の下、米国国立衛生研究院から授与された許可番号R44DK126606、R44DC019894及びR44EB031741の助成の下で行われた。政府は、この発明に対して一定の権利を持っている。
【技術分野】
【0003】
本発明は、手術過程を実行するように構成される操縦可能医療装置に関する。より具体的に、本発明は、蛇形ビーム素子を有するアゴニスト-アンタゴニストチューブ型操縦可能器具の構造を実現する操縦可能医療装置に関する。
【背景技術】
【0004】
可撓性内視鏡検査では、可撓性内視鏡の末端に柔軟性を持つ操縦可能な手術具ツールが切望されている。内視鏡によって手術部位を転向させることにより、これらのツールは、柔軟性を必要とする駆動タスク、例えば、結腸直腸内視鏡検査における組織後退及び切除又はアクセス性駆動タスク、例えば、曲がり角の周囲に到達して可撓性尿管検査において到達しにくい腎臓結石を取り出すことにおいて特に重要である。これらの内視鏡ツールは、手動又はロボットによって制御することができ、それらの内視鏡ツールにより、医師がタスクを実行することができ、そうでなければ、これらのタスクは、単独の内視鏡のネイティブ機能にとって非常に困難又は不可能である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、操縦可能器具を備える手術システムを提供する。一態様によると、前記操縦可能器具は、第1チューブと、第2チューブとを有し、前記第1チューブは、その管状側壁に形成される第1蛇形ビームを含み、前記第2チューブは、その管状側壁に形成される第2蛇形ビームを含み、前記第1チューブと第2チューブは、同心的に嵌合され、前記第1チューブと第2チューブは、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとが少なくとも部分的に軸方向において互いに位置合わせされ且つ径方向において異なる角度を向くように、位置決めされ、前記第1チューブと第2チューブは、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとの遠位側において互いに接続され、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとは、湾曲セグメントを画定し、前記湾曲セグメントは、前記第1チューブと第2チューブとに加えられた異なる軸方向力に応答して前記嵌合されたチューブ構造に湾曲部を形成するように、作動可能である。
【0006】
別の態様によると、前記第1チューブは、複数の平行な第1スロットを含み、前記第1スロットは、前記第1チューブの中心軸線に垂直となるように前記第1チューブの前記側壁を通過して延在し、前記第1スロットは、前後に角度をなすようにずれており、前記第1スロットは、前記第1蛇形ビームを画定し、前記第2チューブは、複数の平行な第2スロットを含み、前記第2スロットは、前記第2チューブの中心軸線に垂直となるように前記第2チューブの前記側壁を通過して延在し、前記第2スロットは、前後に角度をなすようにずれており、前記第2スロットは、前記第2蛇形ビームを画定する。
【0007】
別の態様によると、前記第1蛇形ビームは、前記第1スロットの対向側において互いに平行に延在する横ビーム部分と、前記横ビーム部分の隣接する端部同士を互いに連結する縦ビーム部分とを含み、前記第2蛇形ビームは、前記第2スロットの対向側において互いに平行に延在する横ビーム部分と、前記横ビーム部分の隣接する端部同士を交互に連結する縦ビーム部分とを含む。
【0008】
別の態様によると、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームは、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとにおける隣接する横ビーム部分が、前記横ビーム部分を接続し且つ対向する縦ビーム部分に位置する接触点において互いに接合されるように構成され、前記接触点は、前記湾曲セグメントの偏向を制限する。
【0009】
別の態様によると、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームは、前記第1蛇形ビームと第2蛇形ビームとにおける隣接する横ビーム部分が、前記湾曲セグメントの偏向を制限する接触点において互いに接合されるように構成される。
別の態様によると、前記接触点は、前記湾曲セグメントの完全偏向状態を規定するように構成される。
【0010】
別の態様によると、前記湾曲セグメントは、前記第1チューブと第2チューブとに加えられた前記異なる軸方向力によって前記接触点を互いに当接させることで前記湾曲セグメントの前記完全偏向状態での剛性を高めるように構成される。
【0011】
別の態様によると、前記第1チューブは、前記湾曲セグメントの長さに沿って互いに平行に延在する複数の第1蛇形ビームを含み、且つ前記第2チューブは、前記湾曲セグメントの長さに沿って互いに平行に延在する複数の第2蛇形ビームを含む。
【0012】
別の態様によると、前記第1チューブは、複数の平行な第1スロットを含み、前記複数の平行な第1スロットは、前記第1チューブの中心軸線に垂直となるように前記第1チューブの前記側壁を通過して延在し、前記第1スロットは、径方向において互いに間隔を空けた複数行の複数のスロットとして配置され、各行の第1スロットは、隣接行に対して角度をなすようにずれており、前記第1スロットは、前記複数の第1蛇形ビームを画定し、
前記第2チューブは、複数の平行な第2スロットを含み、前記複数の平行な第2スロットは、前記第2チューブの中心軸線に垂直となるように前記第2チューブの前記側壁を通過して延在し、前記第2スロットは、径方向において互いに間隔を空けた複数行の複数のスロットとして配置され、各行の第2スロットは、隣接行に対して角度をなすようにずれており、前記第2スロットは、前記複数の第2蛇形ビームを画定する。
【0013】
別の態様によると、各行における前記第1スロットの長さは、等しく、且つ各行における前記第2スロットの長さは、等しい。
【0014】
別の態様によると、各行における前記第1スロットは、2つの異なる長さを有するように交互に配置され、且つ各行における前記第2スロットは、2つの異なる長さを有するように交互に配置されている。
【0015】
別の態様によると、前記操縦可能器具は、前記操縦可能器具の前記長さに沿って軸方向において間隔を空けた複数の湾曲セグメントを含み、複数の湾曲セグメントは、第1湾曲セグメントと第2湾曲セグメントを含み、前記第1湾曲セグメントと第2湾曲セグメントは、それぞれ、前記第1チューブの側壁に形成された第1蛇形ビームと、前記第2チューブの側壁に形成された第2蛇形ビームとによって形成され、当該第1蛇形ビームと当該第2蛇形ビームは、軸方向において位置合わせされている。
【0016】
別の態様によると、前記第1湾曲セグメントと第2湾曲セグメントは、作動時に異なる方向に偏向するように構成される。
【0017】
別の態様によると、前記第1湾曲セグメントと第2湾曲セグメントは、前記第1チューブと第2チューブとの遷移領域によって仕切られ、前記遷移領域では、チューブの側壁にスロットがない。
【0018】
別の態様によると、前記第1湾曲セグメントと前記第2湾曲セグメントは、作動時に互いに反対する方向に偏向することで前記操縦可能器具をS字状を呈させるように構成される。
【0019】
別の態様によると、前記第1スロットと前記第2スロットとの角度位置は、前記湾曲セグメントが作動時に螺旋状に平面から湾曲するように、前記中心軸線周りに徐々に調節される。
【0020】
別の態様によると、前記第1スロットと第2スロットは、前記湾曲セグメントの互いに反対する湾曲方向における湾曲運動を制限する接触補助具を含む。
【0021】
別の態様によると、各接触補助具は、横ビーム部材から突出する凸状部材を含み、前記凸状部材は、隣接する横ビーム部材上の対応する形状の凹状レシーバ内に位置決めされている。
【0022】
別の態様によると、各接触補助具は、ダブテール構造を有し、前記凸状部材は、ダブテールピンを含み、前記凹状レシーバは、ダブテール尾部を含む。
【0023】
別の態様によると、前記第1スロット及び前記第2スロットの少なくとも一部は、その端部に応力除去切り欠きを有する。
【0024】
別の態様によると、前記操縦可能器具は、前記第1蛇形ビームから近位側に延在する第1挿入軸と、前記第2蛇形ビームから近位側に延在する第2挿入軸とを含み、
前記第1挿入軸と第2挿入軸は、曲がりくねった経路に適応できるように、曲げコンプライアンスを持つように構成され、
前記第1挿入軸と第2挿入軸は、負荷方向に関わらず、同じ曲げ剛性を示し、且つ、力及びトルクが前記挿入軸の近位端から操縦可能器具の遠位端に位置する湾曲セグメントに十分に伝達されるような、軸方向剛性とねじり剛性とを示す全方向コンプライアンスを持つように構成される。
【0025】
別の態様によると、前記第1挿入軸は、前記第1チューブに近接するように位置決めされ且つ前記第1チューブに接続されるポリマー可撓チューブと、前記可撓チューブを被覆し又は前記可撓チューブに嵌め込まれた編組線補強層と、前記編組線を被覆し、且つ前記編組線の前記可撓チューブへの固定を支援するポリマージャケットとを含む。前記第2挿入軸は、前記第2チューブに近接するように位置決めされ且つ前記第2チューブに接続されるポリマー可撓チューブと、前記可撓チューブを被覆し又は前記可撓チューブに嵌め込まれた編組線補強層と、前記編組線を被覆し、且つ前記編組線の前記可撓チューブへの固定を支援するポリマージャケットとを含む。
【0026】
別の態様によると、前記編組線の編組密度は、前記挿入軸のその長さに沿う可撓性、軸方向剛性及びねじり剛性が調節されるように、前記第1挿入軸と第2挿入軸とのうちの少なくとも一方の長さに沿って変更される。
【0027】
別の態様によると、前記可撓チューブは、前記チューブを前記可撓チューブ材に嵌め込むことと、接着剤で前記可撓チューブを前記アウターチューブに接続することと、前記可撓チューブを前記アウターチューブに接着される薄壁ジャケットとして形成することと、のうちの一方により、対応する第2チューブに固定される。
【0028】
別の態様によると、前記第1挿入軸と第2挿入軸は、前記第1チューブと第2チューブとの対応する部分を含み、前記第1チューブと前記第2チューブは、それぞれの蛇形ビームの近位側に延在し、それぞれのチューブ側壁に複数のスロットを有し、前記スロットは、前記第1チューブと第2チューブとの前記中心軸線に垂直に延在し且つ行として配置され、前記行は、前記中心軸線周りに径方向に沿って延在し、前記行の配置により、前記第1挿入軸と第2挿入軸は、曲がりくねった経路に適応できるように、曲げコンプライアンスを持つように構成され、前記第1挿入軸と第2挿入軸は、負荷方向に関わらず、力及びトルクが前記挿入軸の近位端から操縦可能器具の遠位端に位置する湾曲セグメントに伝達されるように、軸方向剛性、ねじり剛性、及び同じ曲げ剛性を示す全方向コンプライアンスを持つように構成される。
【0029】
別の態様によると、前記第1挿入軸と第2挿入軸とに沿って配置された前記スロットのピッチは、前記第1挿入軸と第2挿入軸との長さに沿って変更されることにより、それらの長さに沿って前記第1挿入軸と第2挿入軸との可撓性、軸方向剛性及びねじり剛性を調節する。
【0030】
別の態様によると、前記操縦可能器具は、ポリマージャケットを更に含み、前記ポリマージャケットは、前記湾曲セグメントを被覆し、且つ組織の前記スロットへの進入を防止する。
【0031】
別の態様によると、前記スロットは、組織が前記スロットに進入できないように狭く構成されている。
【0032】
別の態様によると、前記操縦可能器具は、複合操縦可能器具を含み、前記複合操縦可能器具は、第1操縦可能器具と第2操縦可能器具とを含み、前記第2操縦可能器具は、前記第1操縦可能器具の内腔を通過して延在するように構成される。
【0033】
別の態様によると、前記手術システムは、挿入され且つ操作されることで手術部位に位置決めされるように構成される送達デバイスを更に備える。前記操縦可能器具は、進行されて前記送達デバイスを通過し、且つ前記湾曲セグメントを前記送達デバイスの外部に位置決めするように構成され、前記操縦可能器具の残りの部分は、前記送達デバイス内に位置決めされ且つ前記送達デバイスによって支持される。
【0034】
別の態様によると、前記送達デバイスは、内視鏡と、可撓性内視鏡と、別の操縦可能器具とのうちの一種を含む。
【0035】
別の態様によると、前記送達デバイスは、前記送達デバイスによって支持される操縦可能器具が、前記手術部位での組織操作のための、嵌合されたチューブ構造の前記内腔を通過して延在する手術器具を支持可能であるように構成され、前記湾曲セグメントは、前記送達デバイスの外部に位置決めされる。
【0036】
本発明の前記並びにその他の特徴及び利点は、図面を参照して本発明の以下の説明を考慮した上で、本発明に係る当業者にとって明らかになるであろう。別途に説明しない限り、同じ符号は、全ての図面において同一の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】操縦可能器具の性能を説明するための参照の平面蛇形ビーム素子を示す斜視図である。
【
図2A】手術システムにおいて実施可能な操縦可能器具を形成するように配置された蛇形ビーム素子を有する1対のチューブを示す斜視図である。
【
図2B】同心的に嵌合されることで形成された操縦可能器具の
図2Aのチューブを示す斜視図であり、異なる偏向状態の操縦可能器具を示す。
【
図2C】同心的に嵌合されることで形成された操縦可能器具の
図2Aのチューブを示す斜視図であり、異なる偏向状態の操縦可能器具を示す。
【
図3A】操縦可能器具において実現される蛇形ビームパターンのパラメータを示す図である。
【
図3B】操縦可能器具において実現される蛇形ビームパターンのパラメータを示す図である。
【
図4A】嵌合されたチューブの蛇形ビーム素子からなる操縦可能器具の湾曲セグメントの側面図及び正面図/上面図であり、非作動状態の湾曲セグメントを示す。
【
図4B】嵌合されたチューブの蛇形ビーム素子からなる操縦可能器具の湾曲セグメントの側面図及び正面図/上面図であり、非作動状態の湾曲セグメントを示す。
【
図4C】
図4Aや
図4Bの湾曲セグメントの側面図及び正面図及び上面図であり、作動状態の湾曲セグメントを示す。
【
図4D】
図4Aや
図4Bの湾曲セグメントの側面図及び正面図及び上面図であり、作動状態の湾曲セグメントを示す。
【
図5A】操縦可能器具を形成するためのチューブに単一の蛇形ビーム素子パターンを形成するためのカットパターンを示す平面図である。
【
図5B】チューブの上面図であり、チューブは、
図5Aのカットパターンから形成された単一の蛇形ビーム素子パターンを含む。
【
図5C】チューブの側面図であり、チューブは、
図5Aのカットパターンから形成された単一の蛇形ビーム素子パターンを含む。
【
図5D】チューブの底面図であり、チューブは、
図5Aのカットパターンから形成された単一の蛇形ビーム素子パターンを含む。
【
図6A】操縦可能器具を形成するためのチューブに2重蛇形ビーム素子パターンを形成するためのカットパターンを示す平坦/平面図である。
【
図6B】
図6Aのカットパターンから形成された2重蛇形ビーム素子を有するチューブの上面図である。
【
図6C】
図6Aのカットパターンから形成された2重蛇形ビーム素子を有するチューブの側面図である。
【
図6D】
図6Aのカットパターンから形成された2重蛇形ビーム素子を有するチューブの底面図である。
【
図7A】操縦可能器具を形成するためのチューブに3重蛇形ビーム素子パターンを形成するためのカットパターンを示す平坦/平面図である。
【
図7B】チューブの上面図であり、チューブは、
図7Aのカットパターンから得られた3重蛇形ビーム素子を有する。
【
図7C】チューブの側面図であり、チューブは、
図7Aのカットパターンから得られた3重蛇形ビーム素子を有する。
【
図7D】チューブの底面図であり、チューブは、
図7Aのカットパターンから得られた3重蛇形ビーム素子を有する。
【
図8A】操縦可能器具を形成するためのチューブに4重蛇形ビーム素子パターンを形成するためのカットパターンを示す平坦/平面図である。
【
図8B】
図8Aのカットパターンから形成された4重蛇形ビーム素子を有するチューブの上面図である。
【
図8C】
図8Aのカットパターンから形成された4重蛇形ビーム素子を有するチューブの側面図である。
【
図8D】
図8Aのカットパターンから形成された4重蛇形ビーム素子を有するチューブの底面図である。
【
図9A】操縦可能器具を形成するためのチューブに線形ピッチを有するn重蛇形ビーム素子パターンを形成するためのカットパターンを示す平坦/平面図である。
【
図9B】
図9Aのカットパターンから形成されたn重蛇形ビーム素子を有するチューブの上面図である。
【
図9C】
図9Aのカットパターンから形成されたn重蛇形ビーム素子を有するチューブの側面図である。
【
図9D】
図9Aのカットパターンから形成されたn重蛇形ビーム素子を有するチューブの底面図である。
【
図10A】操縦可能器具を形成するためのチューブに角度ピッチを有するn重蛇形ビーム素子パターンを形成するためのカットパターンを示す平坦/平面図である。
【
図10B】n重蛇形ビーム素子パターンを有する管の上面図であり、n重蛇形ビーム素子パターンは、
図10Aのカットパターンから形成された角度間隔を有する。
【
図10C】n重蛇形ビーム素子パターンを有する管の側面図であり、n重蛇形ビーム素子パターンは、
図10Aのカットパターンから形成された角度間隔を有する。
【
図10D】n重蛇形ビーム素子パターンを有する管の底面図であり、n重蛇形ビーム素子パターンは、
図10Aのカットパターンから形成された角度間隔を有する。
【
図11A】蛇形ビーム素子パターンを形成するためのカットパターンを示す平坦/平面図であり、操縦可能器具を形成するためのチューブの線形間隔は、漸減する。
【
図11B】蛇形ビーム素子パターンを有するチューブの上面図であり、蛇形ビーム素子パターンは、
図11Aのカットパターンによる漸減の線形ピッチを有する。
【
図11C】蛇形ビーム素子パターンを有するチューブの側面図あり、蛇形ビーム素子パターンは、
図11Aのカットパターンによる漸減の線形ピッチを有する。
【
図11D】蛇形ビーム素子パターンを有するチューブの底面図であり、蛇形ビーム素子パターンは、
図11Aのカットパターンによる漸減の線形ピッチを有する。
【
図12A】蛇形ビーム素子パターンを形成するためのカットパターンを示す平坦/平面図であり、操縦可能器具を形成するためのチューブにおいてカットフラクションとスロット重複角が増加している。
【
図12B】蛇形ビーム素子パターンを有するチューブの上面図であり、蛇形ビーム素子パターンは、
図12Aのカットパターンによって増加したカットフラクションおよびスロット重複角を有する。
【
図12C】蛇形ビーム素子パターンを有するチューブの側面図であり、蛇形ビーム素子パターンは、
図12Aのカットパターンによって増加したカットフラクションおよびスロット重複角を有する。
【
図12D】蛇形ビーム素子パターンを有するチューブの底面図であり、蛇形ビーム素子パターンは、
図12Aのカットパターンによって増加したカットフラクションおよびスロット重複角を有する。
【
図13A】互いに嵌合されることで操縦可能器具を形成する1対のチューブを示す斜視図であり、チューブは、角度が徐々にずれている単一の蛇形ビーム素子パターンを有するように構成される。
【
図13B】同心的に嵌合されることで操縦可能器具を形成する
図13Aのチューブを示す斜視図であり、異なる偏向状態であるアクチュエータを示し、蛇形ビーム素子パターンによる面外曲げ輪郭を示す。
【
図13C】同心的に嵌合されることで操縦可能器具を形成する
図13Aのチューブを示す斜視図であり、異なる偏向状態であるアクチュエータを示し、蛇形ビーム素子パターンによる面外曲げ輪郭を示す。
【
図14A】互いに嵌合されることで操縦可能器具を形成する1対のチューブを示す斜視図であり、チューブは、その長さ方向の間隔位置に2つの分散した蛇形ビーム素子パターンを有するように構成される。
【
図14B】同心的に嵌合されることで操縦可能器具を形成する
図14Aのチューブを示す斜視図であり、異なる偏向状態であるアクチュエータを示し、線形的に離間した離散の蛇形ビーム素子パターンが偏向時にS字状に湾曲することを示す。
【
図14C】同心的に嵌合されることで操縦可能器具を形成する
図14Aのチューブを示す斜視図であり、異なる偏向状態であるアクチュエータを示し、線形的に離間した離散の蛇形ビーム素子パターンが偏向時にS字状に湾曲することを示す。
【
図15】
図14A及び
図14Bの操縦可能器具の作動の漸進段階を示し、S字状の湾曲がどのように変化するかを示す。
【
図16A】蛇形ビーム素子パターンを形成するためのカットパターンを示す平面/平面図であり、チューブは、ねじり剛性を高め、且つ操縦可能器具を形成するためのチューブにおける過延伸を防止するための接触補助具を含むように構成される。
【
図16B】チューブの上面図であり、チューブは、
図16Aのカットパターンから形成された単一の蛇形ビーム素子パターンを含む。
【
図16C】チューブの側面図であり、チューブは、
図16Aのカットパターンから形成された単一の蛇形ビーム素子パターンを含む。
【
図16D】チューブの底面図であり、チューブは、
図16Aのカットパターンから形成された単一の蛇形ビーム素子パターンを含む。
【
図17】1つの例示的な構成に係る挿入軸を含む操縦可能器具の異なるセクションの構造を示す。
【
図18】蛇形ビーム素子とレーザパターニング用挿入軸とを有するチューブ構造の一例を示す図である。
【
図19】スロットピッチ変化による可変剛性を有する挿入軸の例示的な構造を示す図である。
【
図20A】同心的に嵌合されることで多自由度の操縦可能器具システムを形成する2つの操縦可能器具の例示的な構造を示す。
【
図20B】同心的に嵌合されることで多自由度の操縦可能器具システムを形成する2つの操縦可能器具の例示的な構造を示す。
【
図21A】同心的に嵌合された2つの操縦可能器具が形成された多自由度の操縦可能器具システムの例示的な構造を示し、嵌合された操縦可能器具のうちの1つは、その遠位端に手術具を載置する。
【
図21B】2つの操縦可能器具が形成された多自由度の操縦可能器具システムの例示的な構造を示し、2つの操縦可能器具は、第3操縦可能器具の管腔内に並べて載置される。
【
図21C】多自由度の操縦可能器具システムの例示的な構造を示し、多自由度の操縦可能器具システムは、2つの操縦可能器具が形成され、2つの操縦可能器具は、外部の操作可能な構造としての可撓性作動可能内視鏡内に並べて載置され、内部の操縦可能器具は、その遠位端に手術具を載置する。
【
図22】蛇形ビーム素子の例示的な構造を示す平坦/平面図であり、蛇形ビーム素子を画定するスロットは、その端部に応力低減切り欠きを含む。
【
図23】可撓性内視鏡によって載置された2つの多自由度の操縦可能器具を含む両手内視鏡システムの例示的な配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
蛇形ビーム素子を有する操縦可能器具
本発明は、内視鏡手術のための操縦可能器具を用いた手術システムに関する。手術システムは、手動的に操作されてもよく、操縦可能器具の操作は、手動制御によって実行される。前記手術システムは、ロボットであってもよく、前記操縦可能器具の操作は、手術医師によって制御され、又は、プレプログラミングを介して特定のルーチンを実行するロボットによって実行される。手術システムは、手動操作とロボットとの組み合わせであってもよい。
【0039】
本発明において、前記操縦可能器具は、1つのチューブをもう1つのチューブに同心的に嵌合した1対のチューブの構造のアゴニスト―アンタゴニスト操縦可能器具である。前記チューブは、スロットを含み、スロットは、その対応する側壁を通過してカットすることで縦方向に延びる1つ又は複数の蛇形ビーム素子を形成する。前記蛇形ビーム素子は、各チューブの中立軸線を幾何学的軸線からずらす。前記操縦可能器具を組み立てる場合、前記ビーム素子は、軸方向において位置合わせされるとともに、径方向において異なる角度を向くように位置決めされ、例えば、前記ビーム素子が互いに180度をなすように径方向において対向する方式で湾曲セグメントを画定する。前記チューブは、前記湾曲セグメントの遠位側において互いに接続され、前記湾曲セグメントは、前記チューブに軸方向の差動押す力/引張力を印加することによりアゴニスト―アンタゴニストとして作動することができる。作動は、軸方向の押圧力が加えられる方向に基づいて、湾曲セグメントを対向方向に湾曲させる。このような構成によれば、円柱状の形状係数における蛇形ビーム素子の屈曲特性を利用して、湾曲セグメントを形成することができる。
【0040】
使用中に、前記湾曲セグメントは、前記チューブに載置された手術具を用いて前記チューブ及び/又は組織を操作することができる。本明細書において、前記組み立てられた同心チューブ構造は、操縦可能器具として示され、記述され、前記湾曲セグメントは、前記器具を制御または「操縦」する。前記湾曲セグメントは、通常、必ずしも器具の遠位末端に位置するとは限らない。
【0041】
前記湾曲セグメントの「操縦」機能は、多くの目的、例えば、手術具の送達及び使用、患者の解剖学的構造に到達しにくい位置へのアクセス及び他のツール/器具の手術の実行を案内又は指導することに用いられる。処置具の送達及び使用のための具体的な実施に関しては、湾曲セグメント分は、ツールを介して組織を操作するために使用され得る。他の実施形態において、前記チューブは、中空であり、流体/薬物の輸送及び/又は吸引に用いることができる。器具が手術位置への通路を提供する実施形態について、前記チューブの中空構造は、ライン(例えば、レーザーアブレーション用)、制御ケーブル(例えば、機械的ツール作動用)及びツール自体(例えば、手術プローブ、バスケットカニューレ)の導入を許容することができる。作動可能な操縦可能器具は、他の操縦可能器具を載置及び案内するように構成されてもよい。ここで、「操縦可能器具」という用語は、蛇形ビーム素子を利用して形成された湾曲セグメントを有する操縦可能な同心チューブ構造を含むことを意図し、前記湾曲セグメントは、これらの機能のうちの任意の機能を任意の組み合わせで実現するように構成される。
【0042】
微小電子機械システム(MEMS)では、一般的に蛇形ビームを用いて、複数の所定の軸に対して正確なゼロクリアランス歪みを生じさせることが可能な湾曲素子を作製している。
図1に示すように、蛇形ビーム素子10は、固定端12において機械的に接地された単一の材料ビームを含み、前記単一の材料ビームは、往復曲げて案内端又は作動端14に至る。前記ビーム素子10の前後構造は、湾曲の有効長さを増加させて、平面内及び面外方向のいずれにも可撓性を有する。
【0043】
このような蛇形ビーム素子10は、幅w及び厚さtと有効長さlとで規定される同一断面積を有する単一(直状)のビームよりもずっと高い軸方向及び曲げコンプライアンスを表すことができる。この蛇形輪郭、すなわち、
図1におけるパラメータビーム幅(L
a)、ビームピッチ(L
b)、ビーム基本サイズ(L
c)を注意深く設計することにより、さらにコンプライアンスを「調整」することができる。MEMS空間において、蛇形ビームは、一般的に慣性計測ユニットやナノインデンターにおける軸受として用いられており、より一般的な軸受部材(例えば、ボールベアリング、ブッシュ、歯車等)を用いた他の用途では、小サイズの規模での使用が禁止されている。
本明細書に記載されているように、医療機器は、全体型蛇形ビーム素子の曲げ特性を利用して、ミリメートル級管において優先的な曲げを実施し、これらの特性を有する2つ以上のチューブを組み合わせて複数の方向に優先的な曲げを発生させる。手術システムは、手動制御、ロボット制御、手動およびロボット制御の組み合わせによって、操縦可能器具を実現することができる。以下の段落には、手術システムにおいて実現可能なこれらの操縦可能器具の幾つかの例示的な構造が開示されており、第1構造は、
図2A―
図2Cに示されている。
【0044】
図2Aにおいて、操縦可能器具20は、
図2Aに破線で示すように、互いに嵌合されたインナーチューブ22とアウターチューブ24とを含む。チューブ22及びチューブ24のそれぞれは、蛇形ビーム素子30、蛇形ビーム素子32をそれぞれ形成する1つ又は複数のスロット26及びスロット28を含む。チューブ22及びチューブ24に形成された蛇形ビーム素子30及び蛇形ビーム素子32は、一般的にMEMSに用いられている従来の平面蛇形ビーム素子と異なり、円柱状に巻回されているため屈曲している。前記ビーム素子30、32は、前記チューブ22、24の側壁にマイクロマシニングの前記スロット26、28を形成することにより形成されている。
図2A―
図2Cにおいて、各チューブ22、24は、一連のスロット26、28によって形成された単一の蛇形ビーム素子30、32を含み、前記スロットは、前記チューブの中心軸線に垂直な方向に前記チューブ側壁の径方向部分を通過して延在する。従って、前記蛇形ビーム素子30、32は、横ビーム部分と縦ビーム部分とを含み、前記横ビーム部分は、前記チューブ側壁に沿って隣接する平行なスロット26、28の間で径方向に延在し、前記縦ビーム部分は、前記チューブ側壁の軸方向に沿って延在し且つ隣接する横ビーム部分の端部を交互に接続する(
図3A参照)。
【0045】
スロット26に関し、スロット26は、チューブの縦方向に互いに間隔をあけて配置され、角度をなしてずれており、即ち、それぞれのビーム30及びビーム32の蛇形ビームパターンが形成されるように、互いに回動する。前記スロット26、28及び前記ビーム素子30、32は、例えば、大きさ、ピッチ、数量、サイズなど、構造的に変化してもよい。チューブ22及びチューブ24の側壁に形成された円筒状の蛇形ビーム素子30、円筒状の蛇形ビーム素子32は、その内部に形成されたチューブの側面における曲げ剛性を部分的に小さくしている。これにより、チューブの中立曲げ軸線が幾何学的軸線から外れて、チューブ22、24のビーム30、32の領域での優先的な曲げが促進される。
【0046】
操縦可能器具20の組立状態において、前記インナーチューブ22が前記アウターチューブ24内に挿入されて前進することにより、ビーム素子30とビーム素子32とが軸方向において互いに位置合わせされて回転することにより、前記蛇形ビーム素子30、蛇形ビーム素子32が角度を成して異なる方向を向いて互いに対向し、例えば
図2Aから
図2Cに示す径方向において対向する方向を向く。前記インナーチューブ22が前記アウターチューブ24に装着されると、それらのビーム素子30とビーム素子32とが軸方向に揃えられるとともに径方向において互いに対向し、前記チューブが前記ビーム素子の遠位側で互いに接続又は締結される。接続又は締結は、例えば、器具20の遠位端34に設けられてもよい。
【0047】
前記操縦可能器具20の組立状態において、前記ビーム素子30、ビーム素子32は偏向可能部分又は前記湾曲セグメント40を画定し、前記偏向可能部分又は湾曲セグメント40は、その長さに沿って湾曲形成させることができる。湾曲セグメント40の作動は、入れ子チューブ22と入れ子チューブ24との間に押す/引っ張る方式の相対的軸方向運動によって実現される。前記チューブに押す力を加えることは、前記インナーチューブ22を前記アウターチューブ24に押し付け、前記アウターチューブとの接続に向けることである。
図2A―
図2Cの例示的な構造において、前記インナーチューブ22における押す力は、それを前記操縦可能器具20の前記遠位端34に押し付ける。前記チューブに引張力が印加され、前記インナーチューブ22が前記アウターチューブ24から引き出され、前記アウターチューブとの接続から離れる。
図2A―
図2Cの例示的な構造において、前記インナーチューブ22における引張力は、それを前記遠位端34から離れる。
【0048】
無論、前記軸方向の押す力/引張力の付与は、前記インナーチューブ22に個別に加えられるものに限定されない。前記押す力/引張力は、前記インナーチューブ22、アウターチューブ24、又は前記インナーチューブと前記アウターチューブの両方に加えることができる。例えば、
図2Bに示すように、チューブ22及び24(f
インナー、f
アウター)に対して、正味対向方向に異なる軸方向力を作用させることで押す力を設定することができる。他の例として、
図2Cに示すように、チューブ22及び24(f
インナー、f
アウター)に対して、正味対向方向に異なる軸方向力を作用させることにより引張力を形成してもよい。
【0049】
図2B及び
図2Cに示すように、前記湾曲セグメント40は、前記湾曲セグメントを第1方向に沿って偏向及び湾曲させるように作動させるとともに、前記湾曲セグメントを逆方向に偏向及び湾曲させるように作動させる双方向作動可能に構成される。これは、前記チューブ22と、チューブ24と、前記蛇形ビーム素子30と、蛇形ビーム素子32とが嵌め込まれており、前記蛇形ビーム素子30、32は、軸方向が揃っているとともに、径方向が反対方向に揃っており(径方向において対向する)、各チューブの中立軸線の直径が対向しているためである。チューブ22及びチューブ24が操縦可能器具20の遠位端34に固定されている場合、湾曲セグメント40は、湾曲セグメントの近位側に加えられた異なる軸方向力(f
インナー、f
アウター)に応じて湾曲する。前記湾曲は、前記チューブ22、チューブ24の組み合わせの中立軸線の周りに発生する。
図2B及び
図2Cに示すように、近位端に作用する異なる軸方向力の向きを反転させるだけで、曲げ方向は可逆的である。
【0050】
図2A―
図2Cの例示的な構成において、本明細書に記載の他の例示的な構成において、前記インナーチューブと前記アウターチューブの前記蛇形ビーム素子は、互いに完全に重なるように軸方向を揃えて径方向において互いに対向するように回転する。前記蛇形ビーム素子によって形成された前記湾曲セグメントの構成は、前記配置から外れていてもよい。例えば、前記蛇形ビーム素子の軸方向の位置合わせは、部分的に重なるように配置されてもよく、及び/又は、前記ビーム素子の向きが必ずしも反対とは言えない異なる径方向を向くように配置されてもよく、即ち、互いに180度である。これは、湾曲セグメントが非平面方向に偏向することが期待できる実施形態において有利である。このような非180度実施形態において、前記湾曲部分は、作動時に湾曲及びねじれの組み合わせが生じ、非平面螺旋湾曲を発生させることができる。
【0051】
チューブ材料であるニチノール(Nitinol)
本明細書に記載の操縦可能器具を構築するためのチューブは、ニチノール、ニッケル及びチタンの超弾性金属合金によって構成されてもよい。一般的な建設資材で構成された任意のチューブ内で蛇形ビーム輪郭を利用することができるが、ここに開示される組織を操作して手術具を操作することができるように構成された操縦可能器具は、多くの通常の材料をニチノールのような所望の幾つかの特性に組み合わせる必要がない。ニチノール以外の材料、例えばステンレス鋼は、操縦可能器具の形成に適していることが証明されているが、ニチノールが最適であることは、証明されている。これは、例えばステンレス鋼やプラスチックなどの他の材料が適しないと言うのではなく、ただニチノールが性能面で理想的である。
【0052】
通常の金属、例えば、鋼、チタン又はアルミニウムは、ヤング率が高い(それぞれ200GPa、100GPa及び70GPa)が、降伏歪みが非常に低く(0.1―0.2%)、これらの材料から発生した管の永久塑性変形及び失効前に発生し得る偏向量が制限されている。従って、これらの金属は、強度、リジッド及び剛性を必要とする手術器械/ツール、例えば、カッター、治具、プローブ等の実施形態にとって理想的なものであるが、可撓性及び弾性を必要とするものにはあまり適していない。
【0053】
逆に、一般に、可撓性医療用チューブや他の器具(例えば、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)系材料、ナイロン系材料、ポリイミド系材料)を構成する医療レベルプラスチックの多くは、ずっと高い降伏歪み(10―100%)を有しているが、ヤング率が低く(0.1―2.0GPa)、これらの材料によるチューブの実現可能な剛性が厳しく制限されている。従って、これらのプラスチックは、強度、可撓性及び弾性を必要とする実施形態に対して好適であるが、リジッド及び剛性を要求される実施形態にはあまり適していない。
【0054】
ニチノールは、これら通常の金属とプラスチック材料の最も有利な特性を結合している。ニチノールは、高い曲げ剛性(ヤング率40―80GPa)と、塑性変形前に大きな歪みを受ける能力(降伏歪み>8%)とに優れた性能を提供することができる。これらの特性は、補助医療用具及び患者組織を操作するための大きな遠位端における力を発生させることが可能な操縦可能器具にとって必要とされるとともに、柔軟性が高く、作業空間を大きく確保するための大きな変位を生じさせる。このような物性の組み合わせにより、ニチノールは、本明細書に記載された操縦可能器具を構築する理想的な材料となる。
【0055】
操縦可能器具が医療用具を送達するように構成され、流体流又は吸引・洗浄と同時に、それ自体が可撓性送達プラットフォーム(例えば、可撓性内視鏡又は他の操縦可能器具)によって送達される用途において、非常に薄い壁を保持することは、前記操縦可能器具の内部の利用可能な空間を最大化し、前記利用可能な空間を通じてツール、流体又は吸引を送達することが非常に重要である。薄肉化には、ねじりや軸方向の剛性、及び、耐キンク性に関する課題がある。理想的な材料は、ヤング率が高く、ずり弾性率が高く、降伏歪みが大きい。ニチノールは、これら全ての性能を有している。
ニチノールの超弾性特性(1%と8%のひずみの間の低剛性挙動を示す領域)は、類似する金属と比較して、固定遠側への偏向に必要な作動力を低減し、人からの機械的入力を必要として偏向装置の末端を発生させるために必要な近位側フォースを発生させるハンドアクチュエータにおける材料の使用が極めて促進される。
【0056】
ビーム断面汎用性
前記蛇形カットパターンは、前記チューブの一方の面にアンカット材のスパイン(spine)が生じ、反対側に蛇形ビームパターンが生じている。蛇形カットパターンの各種のパラメータを変更して、チューブの曲げ特性を変更してもよい。
図3Aと3Bに示すこれらのパラメータは、以下の内容を含む。
【0057】
ピッチ:後続蛇形素子間の縦間隔(h)。全ての他のパラメータが一定のままであると、ピッチが高くなり(間隔が短くなり)、ねじり剛性が低下する。
スロット重複角:角度(roβ)で表される、チューブ周長に正規化された蛇形に曲げた「幅」。前記重複角は、隣り合うスロットの間にある。全ての他のパラメータが一定に維持されると、大きな重複角では、曲げコンプライアンスを増加させる。
カットフラクション:スロットのスキャンした合計角度(roα)。全ての他のパラメータが一定に維持される場合には、大きいカットフラクションでは、曲げコンプライアンスを増加させる。
平行蛇形の数:蛇形素子の数。大きな数の平行蛇形では、曲げコンプライアンスを減少させ、ねじり剛性を増加させる。
スロット幅:各単独なスロットの幅(λ)。全ての他のパラメータが一定に維持される場合には、大きなスロット幅では、操縦可能器具へ高い曲げ角度を生じさせる。
【0058】
純動力学の観点から、上に列挙した設計変数を与えた場合、単一の蛇形チューブ素子の最大曲げ角度を算出することができる。パターンの全幅は、角度パラメータαで与えられ、チューブ周長は領域φ=2π―αではカットされておらず、中実主鎖が残る。チューブの寸法に対するバックボーン寸法は、その剛性に影響を与え、そして、作動に対してチューブが硬くなりすぎないように選択しなければならないが、強固である。バックボーン寸法は、中心線に対する中立軸の位置をさらに決定し、距離γは、以下の関係によって見つけることができる。
【0059】
【0060】
γo、γi、Ao、Aiは、それぞれアンカット領域の外半径と内半径からなる円形セクタの中立軸位置と面積である。
【0061】
【0062】
ここで、ro及びriは、それぞれ、チューブの外半径及び内半径である。
【0063】
スロット重複角βは、スロットがチューブの中心線からどれだけ離れているかを決定し、これはチューブの湾曲の物理的限界である。中心線からの距離は、以下の式で与えられる。
【0064】
【0065】
図3Bに示す。次に、スロット閉鎖とデバイス長の変化との関係を求める必要がある。ここで、シースの全長の長さ変化は、スロット群の長さ変化に比例するものとする。言い換えれば、スロットピッチh毎に、チューブのセグメントの長さの最大変化は、スロットλの高さである。したがって、次の式は、得られる。
【0066】
【0067】
ここで、
は、シース中立軸の長さ(この長さは、変更されず、且つ設計入力である)である。
図3Bの右半分に見られるように、長さのパラメータは、3つ存在する。それらは、同じ偏向角θ、
によって関連付けられ、
は、装置の中心線の長さであり、装置の蛇形ビームパターンの閉鎖点での長さである。したがって、次の式は、得られる。
【0068】
【0069】
これらの長さは、共通の曲げ角度を用いて関連付けられる。
【0070】
【0071】
ここで、
と
は、それぞれ中立軸、中心線及び蛇形閉鎖点の曲率である。チューブの幾何学形状を用いて曲率の関係を定義する。
【0072】
【0073】
を満たす。γは、式(1)および式(2)を用いて求めた中心線から中立軸までの距離である。前記曲率関係及び式(5)を用いて、チューブの最大曲げ角度を算出可能である。例えば、蛇形スロットの閉鎖及び自己接触によって示される。
【0074】
【0075】
この導出した関係を用いて、パターニングされたチューブの最大曲げ角度を算出することができる。あるいは、所望の曲げ角度や曲率を設定すれば、他の任意のパラメータを求めることができる。したがって、前記操縦可能器具の前記湾曲セグメントは、その所望の特定の手術に適合することができる。
【0076】
図4A―
図4Dは、上記蛇形ビームパラメータが如何に操縦可能器具50の湾曲輪郭を規定するかを示す。蛇形ビーム素子54によって形成された湾曲セグメント52は、チューブ側壁をカットして貫通する一連のスロット56によって画定される。
図4Aと
図4Bは、非作動状態の操縦可能器具50の正面図及び側面図を示し、湾曲セグメント52は偏向されておらず、チューブの隣接部と同軸の直線状を呈している。この場合、蛇形ビーム素子54は、偏向せず、スロット56の配置/間隔は、湾曲セグメント52の全体にわたって均一である。
図4Bに最も良く示されているように、蛇形ビーム素子54は、隣接するスロット56の間において、チューブ側壁の径方向に沿って延在する横ビーム部分54aと、チューブ側壁の軸方向に沿って延在し、且つ隣接する横ビーム部分の端部を交互に接続する縦ビーム部分54bとを含む。
【0077】
図4C及び
図4Dは、作動状態の操縦可能器具50の正面図及び側面図を示し、湾曲セグメント52は偏向されて湾曲構造を呈する。この湾曲セグメント52の作動状態において、前記蛇形ビーム素子54は、縦ビーム部54aにおいて偏向され、隣接する前記横ビーム状部材54a同士は、前記偏向点に対向する端部の接触点58で互いに接合される。これにより、前記チューブのパラメータ、例えば、ピッチλ及びスロット幅hが如何に前記湾曲セグメント52の最大曲率を規定するかが分かる。
【0078】
接触点58の係合は、湾曲セグメント52の完全偏向状態を規定する。前記湾曲セグメント52が完全偏向状態にある場合、前記チューブに加えられる異なる軸方向力は、前記湾曲セグメントを完全偏向状態に維持する。前記チューブに加えられる異なる軸方向力が、完全に偏向されるのに必要な異なる軸方向力を超えるまで増加しても、それ以上の偏向が生じない。接合接触点52は、このような事態の発生を防止するからである。しかしながら、異なる軸方向力を増加させることは、湾曲セグメント52のリジッドまたは剛性を高めることに有利である。これは、操縦可能器具50が組織操縦に用いられる場合に特に有利である。この場合、送達デバイスによって支持されたリジッド・剛性の湾曲セグメント52は、組織の反力による自身の偏向がなく、組織を操縦することができる。
【0079】
操縦可能器具50又は本明細書に開示された各種の操縦可能器具のいずれかが通過する送達デバイスは、変更可能である。例えば、操縦可能器具50は、剛性内視鏡又は可撓性内視鏡により送達されてもよい。別の代替案として、操縦可能器具50は、本発明の1つ又は複数の例示的な構造の別の操縦可能器具によって配信されてもよい。更に別の代替案として、蛇形ビームの湾曲セグメント52は、送達デバイス(例えば、可撓性内視鏡)の内蔵部品として実現されてもよい。この場合、前記湾曲セグメントの内腔を介して手術具等を送達するために、前記湾曲セグメントがより大きく形成される。これにより、例えば、カメラや他の装置の配送が可能となる。
【0080】
異なる蛇形構造
図5A―
図12Dは、湾曲セグメントを形成するための種々の蛇形ビーム素子構成を、操縦可能器具のチューブに施したものである。
図5A―
図12Dは、1つのチューブにおけるこれらの各種の蛇形ビームパターンを示す。理解すべきことは、前記パターンは、2つのチューブにおいて実現され、前記2つのチューブは、上記のように組み立てられて、操縦可能器具及びその湾曲セグメントを形成する。前記蛇形ビーム素子の構造の変化は、それらが形成する前記湾曲セグメントの湾曲特性を決める。これらの例示的な構造において、湾曲セグメントは、チューブの遠位端部に位置するように示されている。しかし、湾曲セグメントの位置は限定されない。
図5A―
図12Dに開示されたいずれかの前記湾曲セグメント構造は、前記操縦可能器具の長さに沿った任意の位置に適用することができる。
【0081】
単一蛇形
図5A―
図5Dは、単一の蛇形ビームパターンからなる湾曲セグメント62を有するチューブ60を示す。
図5Aは、図示しない他方の入れ子チューブに接続するためのチューブの遠位部の平坦/平面図である。しかしながら、湾曲セグメント62は、チューブ60に沿う任意の位置に配置されてもよい。
【0082】
図5Aにおいて、前記チューブ60は、前記チューブ60が前記スプライン68に沿って縦方向に沿ってカットされ(
図5D参照)、平らになり、蛇形ビーム64と前記ビームを画定する前記スロット66の可視化に寄与する。チューブ60の上面図、側面図及び底面図をそれぞれ
図5B―
図5Dに示す。単一の蛇形ビーム素子64は、スプライン68に対向するチューブ60の低剛性側で縦方向に延びている。
図5A―
図5Dの単一の蛇形ビームパターンは、最も高い曲げコンプライアンス能力(最も長い蛇形を有する単一の蛇形ビーム)と最低のねじり剛性を提供する。このパターンは、低捩りのペイロードに要求される小さな(<1.5mmチューブ直径)医療装置において最も適切であり、例えば、エネルギーツール(レーザ繊維)や軸方向力のみが必要なツール(ニチノールバスケット)の操縦の適用が必要である医療装置において適切である。
【0083】
単一蛇形チューブ60を設計する際に従う幾つかの一般的な設計ルールは、以下の通りである。
スロット重複角(roβ):単一の蛇形設計の重複角は10度―180度にあるべきである。
カットフラクション(roα):カットフラクションは190―320度の間にあるべきである。度数が少なくなると、チューブの剛性が大きくなりすぎて(全体的な偏向が制限される)、より多くの度数がアンカットの「スプライン」を脆くしてしまう。
スロット幅(λ):25μm―200μm。下端には、一般に25μmの蛇形ビーム素子を製造するためのレーザー光の切り欠き(またはスポットサイズ)の制限がある。また、製造方法の改良により、ローサイドの値を変更してもよい。例えば、上記チューブよりも大きいチューブを採用したり、より大きな隙間/増加が必要な隙間毎に曲げたりする他の場合には、ハイサイドの値が増加してもよい。
【0084】
2重蛇形
図6A―
図6Dには、2重蛇形ビームパターンからなる湾曲セグメント82を有するチューブ80が示されている。
図6Aは、図示しない他方の入れ子チューブに接続するためのチューブの末端の平坦/平面図を示す。しかしながら、湾曲セグメント82は、チューブ80の任意の位置に配置されてもよい。
【0085】
図6Aは、チューブ80がスプライン92に沿って縦方向にカットされ(
図6D参照)、蛇形ビーム84とビームを画定するスロット86との可視化に寄与する平坦/平面図である。チューブ80の上面図、側面図及び底面図をそれぞれ
図6B―
図6Dに示す。
図6A―
図6Dに示す2重蛇形ビームパターンは、長さが等しい2つのスロット86によって形成され、その後は、先の2つのスロットと回転偏向する単一のスロット88であり、平行に延びる2つの蛇形ビーム素子84が効率よく形成される(チューブ中心線に関して鏡像となる)。2重蛇形ビームパターンの各蛇形ビームは、
図6Aにおいて84A及び84Bと識別される。2重蛇形ビーム構造は、良好な曲げコンプライアンス及び中程度のねじり剛性を有し、中孔用途(1.5―3mmチューブ直径)に最適であり、組織との相互作用力は、高いねじり剛性を必要とする。
【0086】
3重蛇形
図7A―
図7Dには、3重蛇形ビームパターンからなる湾曲セグメント102を有するチューブ100が示されている。
図7Aは、一方の入れ子チューブ(図示せず)に接続するためのチューブの末端部の平面図である。しかしながら、湾曲セグメント102は、チューブ100の任意の位置に配置されてもよい。
【0087】
図7Aは、前記チューブ100が前記スプライン110に沿って縦方向にカットされ(
図7D参照)、平らになり、蛇形ビーム104と前記ビームを画定する前記スロット106との可視化に寄与する平坦/平面図を示す。チューブ100の上面図、側面図及び底面図をそれぞれ
図7B―
図7Dに示す。
図7A―Dに示す3重蛇形ビームパターンは、チューブの低剛性側に平行に延びる3つの蛇形ビーム104を有している。これは、縦方向に交錯する長さが等しくない2つの切り欠き106、108によって生じ、平行に延びる3つの蛇形ビーム104を効果的に発生させる。3重蛇形ビームパターンにおける各蛇形ビーム104は、
図7において104A、104B、104Cと識別される。
【0088】
前記チューブ100の3つの蛇形ビームの輪郭は、中曲げコンプライアンス及び高捩り剛性を提供するとともに、大孔用途(2―3mmチューブ直径)において最も適切であり、組織操縦に大きな分離軸負荷が発生する可能性があり、高いねじれ力を発生させる。3つの蛇形ビーム104は、チューブの周りに100度刻みで配置されている。前記中実スプライン110に対向する前記ビーム104Bは、通常、2つの前記「側」ビーム104A及び104Cよりも大きな重複角を有する。
【0089】
4重蛇形
図8A―
図8Dには、4重蛇形ビームパターンからなる湾曲セグメント122を有するチューブ120が示されている。
図8Aは、一方の入れ子チューブ(図示せず)に接続するためのチューブの末端の平坦/平面図であり、末端134は、丸で示される。しかしながら、湾曲セグメント62は、チューブ120の任意の位置に配置されてもよい。
【0090】
図8Aは、前記チューブ120が前記スプライン130に沿って縦方向にカットされ(
図8D参照)て平らになり、蛇形ビーム124と前記ビームを画定する前記スロット126との可視化に寄与する平坦/平面図を示す。チューブ120の上面図、側面図及び底面図をそれぞれ
図8B―
図8Dに示す。
図8A―
図8Dに示す4つの蛇形ビームパターンは、スプライン120に対向する低剛性側に平行に延びる3つの蛇形ビーム124を有している。これは、縦方向に交錯する長さが等しい2つの切り欠き126によって生じ、平行に延びる3つの蛇形ビーム124を効果的に発生させる。上記4重蛇形ビームパターンにおける3つの蛇形ビーム124は、
図8Aにおいて、124A、124B及び124Cと識別される。
図8Dに示すように、第4蛇形ビームパターン124Dは、スプライン130に沿って延在する。
【0091】
図8A―
図8Dに示す4重蛇形ビームパターンは、
図5―
図7の前パターンと比較して、前記中実スプラインがスプライン130に置き換えられ、前記スプライン130が、前記他の3つの蛇形ビーム124A、124B、124Cよりも曲げ剛性の高い他の蛇形ビーム132として形成されている点が異なる。スプライン130に沿った曲げ剛性は、スプラインに沿ったスロット126の重複角が小さい。
【0092】
チューブ120の4重蛇形パタンは、高ねじり剛性且つ中程度の曲げコンプライアンスを表し、より硬いツールを載せて大きなねじり荷重を発生させる組織を操作するのに必要な大きな(2―3.5mmの直径)操縦可能器具に最も適切である。4つのビームは、3重蛇形ビームパターンと同様に、チューブの4つの「側面」のそれぞれに1つの蛇形ビームが存在するように、90度刻みでチューブ周りに間隔を空けて配置されている。それぞれ最低と最高の重複角で発生された最高曲げコンプライアンス(ビーム132)と最低曲げ剛性(ビーム114B)を有する2つのビームは、チューブ120のスプラインおよび頂部において互いに対向配置されている一方、2つのサイドビーム(ビーム114A、114C)は、同じ曲げ剛性を有して上記方向において曲げ高度を均一化させる。
【0093】
前記4重蛇形構造の付加的な利点として、前記チューブ120の曲げ剛性は、2つの垂直平面―作動平面と作動平面/チューブ横断面に垂直な平面とで独立して制御することができるとともに、中立軸線を横断面の一方側にシフトさせる。例えば、単一のチューブについて、これらの双方向曲げ剛性を等しくしてもよい。これは、寄生的な捩れ変形を低減するのに有用である。このようなチューブの非均一な剛性や非整列に起因して、寄生的な捩れ変形が生じ得る。また、本明細書に記載のマルチチューブ操縦可能器具のモデリング及び制御を簡素化することができる。
【0094】
n重蛇形
平行蛇形素子の数は、理論上無限に増加することができる。同様に、蛇形ビームパターンは、チューブの周囲の任意の角度位置に配置することができる。平行蛇形素子の数は、最終的に前記チューブ周長と製造規制の制限を受ける。n個の蛇形ビーム素子の湾曲セグメント142、162を有するチューブ140、160の例を
図9A―
図9D及び
図10A―
図10Dに示す。
【0095】
図9A―
図10Dは、蛇形ビームを画定するスロットの可視化に寄与するように、前記チューブ140、160の対応するリッジ150、170に沿って縦方向にカットして平らになる平坦/平面図である。
図9及び
図10は、前記チューブの遠位端の平坦/平面図を示し、前記チューブの末端148、168は円形で示され、前記チューブは別の入れ子チューブ(図示せず)に接続するように配置される。しかしながら、湾曲セグメント142、162は、チューブ140、160の任意の位置に配置されてもよい。
【0096】
図9Aから
図9Dにおいて、スロット146は、チューブ140の周方向に沿って直線状に整列され、チューブの周方向に等しい長さ及び間隔を有する3つの切り欠きの組に配置されている。これらの組は、隣り合う組同士が回転ずれするように管軸線回りに交互に、つまり互いに回転する。これをスロット146またはスロット群の角度ピッチと呼ぶことができる。一組の前記スロット146の角度間隔に蛇形ビーム144が配置され、前記蛇形ビーム144は前記チューブ140の長さ方向に沿って互いに平行に延びている。
【0097】
同様に、
図10A―
図10Dにおいて、前記スロット166は、前記チューブ160の円周に沿って直線的に整列するとともに前記チューブ円周の周りに等しい長さ及び間隔を有する3つの切欠きの組に配置される。これらの組は、隣り合う組同士が回転ずれするようにチューブ軸線回りに交互に、つまり互いに回転する。これをスロット166またはスロット群の角度ピッチと呼ぶことができる。1群の前記スロット166の角度間隔に蛇形ビーム164が配置され、前記蛇形ビーム164は前記チューブ160の長さ方向に沿って互いに平行に延びている。
【0098】
図9A―
図10Dにおける前記蛇形ビーム144、164の構造は、前記スロット142、162の角度ピッチの違いによる。スロット142、162とスロットとの間のピッチまたは間隔は同じである。スロット142、162の群間の角度ピッチは、
図9A―
図9D及び
図10A―
図10Dのチューブ140、160の間で異なる。
図9A―
図9Dにおいて、各組のスロット142の間の空間は、隣接するスロットを中心としている。
図10A―
図10Dにおいて、各組のスロット162の間の空間は、隣接するスロットの端部付近である。その結果、
図9A―
図9Dのビーム144は、構造上において
図10A―
図10Dのビーム164と異なる。
【0099】
曲率可変方法
図5A―
図10Dのチューブについて、前記蛇形ビーム素子の構造は、前記スロットカットパターンによって規定される。各群における前記スロットの長さ及び間隔、即ち、前記湾曲セグメント/チューブの長さに沿った軸方向位置毎及び軸方向位置毎の前記スロット/空間の相対角位置の変化は、前記湾曲セグメントの長さに沿って均一に湾曲した前記蛇形ビームを得るのに役立つ。
図5―
図10に開示された全てのカットパターンを修正して前記湾曲セグメントの曲率を増加又は減少させることができ、例えば、前記湾曲セグメントの長さを増加又は減少させることにより、前記蛇形ビームパターンにおける湾曲の数を増加又は減少させることにより、前記蛇形ビームパターンのピッチを増加又は減少させ、又はこれらの修正の組み合わせを採用することができる。
【0100】
図11A―
図12Dに、可変湾曲セグメントの曲率を生じさせる湾曲セグメントの例示的な構造を示す。例えば、2つの入れ子チューブの間の摩擦累積を好適な末端が優先的に湾曲又は補正するように可変湾曲セグメントの曲率を実施してもよい。可変曲率は、ピッチ、カットフラクション、スロット重複角の変化、またはこれらの組み合わせの変化によって起こりうる。
【0101】
例えば、
図11において、単一蛇形ビーム素子の湾曲セグメント182を有するチューブ180における可変曲率は、ピッチの線形的な縮小により実現される。前記例示において、全ての前記スロット186は、長さ、幅及び回転間隔において均一であり、前記スロット間のピッチは、前記湾曲セグメントに沿って近位側から遠位側に向かって徐々に減少する。したがって、蛇形ビーム素子184の幅は、近位側から遠位側に向かって徐々に減少する。湾曲セグメント182の遠位端がチューブ180の遠位端と重なるように配置されている場合、これは、湾曲セグメント分の遠位端における蛇形ビーム素子186の曲げ剛性が最も低く、近位方向に増加する「末端優先」湾曲をもたらす。
【0102】
別の例として、
図12において、単一蛇形ビーム素子チューブ200における可変曲率湾曲セグメント202は均一なピッチで実現され、前記スロット206の長さと隣接するスロットとの重なりは、前記湾曲セグメントに沿って近位側から遠位側に向かって増加する。したがって、蛇形ビーム素子204は、近位端から遠位端までのピッチ間隔の線形減少を有する。これにより、湾曲セグメントの末端における蛇形ビーム素子の曲げ剛性が最も低く、近位方向に徐々に増加するため、「末端優先」が湾曲する。
【0103】
面外曲げ誘導方法
幾つかの応用では、操作可能器具の「ねじれ」を平面外にすることにより、器具が大きな振れ角で自身に衝突することを防止することが期待される。
図13A―
図13Cの操縦可能器具の例示的な構造を示す。
図13A―
図13Cを参照すると、操縦可能器具220は、湾曲セグメント222を有する。
図13A―
図13Cにおいて、湾曲セグメント222は、操縦可能器具220の遠位端224に位置する。しかしながら、湾曲セグメント222は、チューブ220の長さ方向に沿って任意の位置に配置されてもよい。
【0104】
操縦可能器具220は、インナーチューブ230とアウターチューブ240とを含む。前記インナーチューブ230は、湾曲セグメント232を有し、前記湾曲セグメント232は、前記管の側壁を通過する一連のスロット236によって画定される蛇形ビーム素子234を含む。アウターチューブ240は、湾曲セグメント242を有し、湾曲セグメント242は、チューブ側壁の一連のスロット246によって画定される蛇形ビーム素子244を含む。各チューブ230、240において、スロット236及び246は、対応する湾曲セグメント232、242の長さに対して角度を成して徐々にシフトする。
図13B及び
図13Cに示す前記操縦可能器具220の組立状態において、前記インナーチューブ230は、前記アウターチューブ240内に位置決めされ、それぞれの湾曲セグメント232、242は、軸方向において位置合わせされ且つ180度回転して径方向とは反対する方向を向く。
【0105】
前記操縦可能器具220は、
図13B及び
図13Cに示すように、前記湾曲セグメント222が対向方向に沿って偏向するように、前記チューブ230、240に軸方向プッシュプルの力を加えることにより作動できるように構成される。
図13Bにおいて、前記湾曲セグメント222は押す力を介して作動し、前記インナーチューブ230は前記アウターチューブ240に押し込まれ、
図13B中の符号は「押す」の矢印で示す。
図13Cにおいて、前記湾曲セグメント222は引張力を介して作動し、前記インナーチューブ230は前記アウターチューブ240から引き出され、
図13Cに「引っ張る」と標記された矢印で示す。
【0106】
プッシュプル作動により、前記操縦可能器具220は、互いに反対する方向に作動して、前記チューブに加えられるプッシュプル力を制御することができる。
図13B及び
図13Cに示すように、前記スロット236、246とビーム234、244との間の角度がずれることにより、各チューブ230、240の中立軸が螺旋状にチューブの幾何学的軸線周りにねじれる。その結果、湾曲セグメント222が作動すると、図示するように、螺旋状に面外に湾曲する。
図13B及び
図13Cに示すように、前記チューブ230、240が湾曲セグメント232、242が同様に構成されたスロット236、246及びビーム234、244を有する場合、前記湾曲セグメント222は、螺旋方式で面外に同じように作動するが、前記操縦可能器具220に加えられるプッシュプル力に応じて対向方向に作動する。
【0107】
面外曲げの大きさは、後続のスロット236、246の間の角度オフセットによって決定される。このような能力は、高偏向(>180度)に有利であり、前記操縦可能器具220の遠位端と近位端との自己衝突を回避することができ、または、カメラの視野と前記湾曲セグメント222自体の近位端部分とをぼけにさせないように内視鏡カメラを送達するための装置として構成される。
【0108】
曲げ方向を局所的に修正する方法
幾つかの用途では、操縦可能器具の操作可能なセグメントは、湾曲方向に合わせて反転することが有利である。これは、2つの操縦可能器具が両手で可撓性内視鏡によって送達される用途において重要である。上記構成において、前記操作可能器具は、例えば、僅かに曲げてカメラビューから離れた後でビューに戻され、三角測量を実現してもよい。
【0109】
図14A―
図14Cには、複数の湾曲セグメント242、244を有する操縦可能器具240が示されている。一方の湾曲セグメント242は、操縦可能器具240の遠位側に位置し、他方の湾曲セグメント244は、近位側に位置する。操縦可能器具240は、アウターチューブ260内に取り付けられたインナーチューブ250を含み、チューブは、操縦可能器具の遠位端または末端246において互いに接続される。前記インナーチューブ250は、2つの蛇形ビーム素子252、254を含み、前記2つの蛇形ビーム素子252、254は、それぞれ、前記チューブの側壁のスロット256、258を通過する2つの分散部分によって画定され、ここに開示される方式のいずれかと一致するように配置され、例えば、
図2Aから
図2Cに開示される方式である。前記アウターチューブ260は、2つの蛇形ビーム素子262、264を含み、前記2つの蛇形ビーム素子262、264は、それぞれ、前記管の側壁のスロット266、268を通過する2つの分散部分によって規定され、ここに開示される方式のいずれかと一致するように配置され、同様に、例えば、
図2Aから
図2Cに開示された方式である。操縦可能器具240を組み立てた場合、ビーム素子252とビーム素子262とを位置合わせして湾曲セグメント242を形成し、ビーム素子254とビーム素子264とを位置合わせして湾曲セグメント244を形成する。
【0110】
湾曲セグメント242、244は、
図14A―
図14Cに示すように、互いに角度を成して回転し、遷移領域248を画定するチューブの中実部分から分離されてもよい。代替的に、前記湾曲セグメントは、遷移領域において出会うことができ、前記湾曲セグメント242の一連のスロット254、264は、近位方向に端点まで徐々に減少し(例えば、
図11Aから
図11Dに開示される方式)、前記湾曲セグメント244を画定する一連のスロット256、266は、端点から近位方向に相対的に徐々に増加する。
図14A―
図14Cの例では、湾曲セグメント242、244が互いに180度回転することにより、湾曲セグメントが作動したときに、操縦可能器具240がS字状に構成される。
【0111】
図15は、前記操縦可能器具240の前記湾曲セグメント242、244の増分作動を示す。
図15に示すように、前記湾曲セグメント242、244は、中実遷移領域248から離間する対向方向の湾曲を生じさせるように配置される。この湾曲セグメント242、244が作動することにより、最終フレームにおいて完全に偏向するまで、それらの曲率が大きくなる。このことから分かるように、前記操縦可能器具240の範囲は、予期の応用に用いられることができる。
【0112】
接触補助具による剛性向上
操縦可能器具は、接触補助具及び自己衝突によって、所望の湾曲又はねじり角度を超える湾曲又はねじり剛性の突然且つ急激な変化を示すように構成されてもよい。これは、操縦可能器具の過度の伸長を防止したり、操縦可能器具を通過する他のツールや装置に安定した高剛性のプラットフォームを生成したりすることが望ましい。これは、例えば、前記操縦可能器具の前記端末が手術部位に誘導された場合に、前記操縦可能器具の前記内腔を通るツールが、可能な限り剛性支持を必要とする手術過程を実行するために用いられ、例えば、組織を切除するために用いられる。この場合、内視鏡(剛性又は可撓性)等の送達デバイスは、手術部位の大まかな領域に操縦可能器具を送達することができ、操縦可能器具は、手術部位の正確な位置にナビゲートすることができる。無論、内視鏡は、必要程度の剛性支持を提供することができることは言うまでもないが、操縦可能器具が無理である場合には、それは、あまり意味ない可能性がある。したがって、操縦可能器具は、作動時における操縦可能器具の曲率を維持する剛性を向上させる接触補助具の形態の特徴部と組み合わせることができる。
【0113】
その例を
図16A―16Dに示す。
図16Aは、チューブ280の遠位端の平坦/平面図を示し、前記チューブ280は、前記チューブの遠位端290に位置する湾曲セグメント282を含み、前記湾曲セグメント282は、円形で示され、前記チューブは、他方の入れ子チューブ(図示せず)に接続するように配置される。しかしながら、湾曲セグメント282は、チューブ280の任意の位置に配置されてもよい。平坦/平面図は、前記チューブ280が前記スプライン292に沿って縦方向に沿ってカットされて(
図16D参照)平らになり、蛇形ビーム284とビームを画定する前記スロット286との可視化に寄与する。チューブ280の上面図、側面図及び底面図をそれぞれ
図16B―
図16Dに示す。
【0114】
スロット286は、蛇形ビーム284を画定し、蛇形ビーム284は、本明細書に記載されるように、前後に延びる複数のビーム素子294を含む。
図16Aに最も良く示されるように、前記スロット286は、前記スロットが無限に開くことを防止し、所定の曲げ角度で前記操縦可能器具の剛性を増加させるダブテールの特徴形式の接触補助具を有するように配置される。
図16A―
図16Dの構成において、スロット286は、各ビーム素子294の一方側のピン296と、このピンに対向する尾部298とを画定する。これにより、ビーム素子294のピン296は、直接隣接するビーム素子294の尾部298に位置決めされる。
【0115】
ピン296及び尾部298は、ピン296及び尾部298を形成するスロット286の幅により、ピン296をピン296を受容する尾部から離間させる略台形状の構成を有する。ピン296と尾部298の台形状の構成は、2つの曲げ方向において干渉し、閉鎖用のハードストッパを提供するだけでなく、湾曲セグメント282を開くこともできる。したがって、例えば、上記のようなダブテールの特徴を同心チューブに有する操縦可能器具によって手術部位の手術具に送達されると、湾曲セグメント282の曲率を開く力をもたらすツールの動作が、ピン296と尾部298との相互作用によって阻害される。
【0116】
付加的な特徴として、ピン296および尾部298は、蛇形ビーム素子294同士の相対的なねじれを制限することによってねじり剛性を増加させるようにさらに構成される。このため、例えば操作具を介して手術部位に送達された手術具を用いて湾曲セグメント282に捻り力が作用すると、ビーム素子294の互いの回転に対して、ピン296と尾部298との相互作用が阻害される。
【0117】
理解すべきことは、接触補助具は、
図16A―
図16Dに示すダブテールの特徴に限定されないことを理解されたい。例えば、ビーム素子から突出し、隣接するビーム素子に位置するキーホール形状に対応するレシーバにおけるキーホール形状の特徴を規定するスロットを介して、同様の結果を実現することができる。実際には、隣接するビーム素子に位置する対応する形状の凹状レシーバにおける、ビーム素子から突出した凸状の部材を介して、同様の結果が得られる。また、前記スロットは、各ビーム素子に複数の接触補助具、例えば2つ以上のダブテールの特徴を発生させるように配置されてもよく、これにより、前記湾曲セグメントの剛性と使用期間における作動力に対する回転抵抗をさらに改善することができる。
【0118】
可撓性内視鏡による送達方法
ここに開示される操縦可能器具は、もう1つの可撓性送達機構によって送達される場合、例えば、もう1つの可撓性ジャケット、可撓性内視鏡又は蛇形ビーム湾曲セグメントを内蔵する内視鏡を有し、前記蛇形ビーム素子を含む前記湾曲セグメントが位置する前記操作可能な装置の遠位側の作動端は、前記操作可能な装置の近位側作動端からかなりの距離、例えば70cm―2000cm離れている。また、前記操縦可能器具の近位作動端と遠位端作動端との間の部分は、通常、曲線経路に従う。異なる力及びコモンモードトルクを近位作動端から曲線輪郭を介して操縦側遠位端に伝達することができるように、前記操縦可能器具は、優先的な湾曲、軸方向及び捩り特性を提供する挿入軸を介して送達することができる。前記挿入軸は、前記操縦可能器具の前記アウターチューブの近位側部分に代えて、前記湾曲セグメント分を含む前記アウターチューブの遠位端が前記挿入シャフトに接続されるニチノールノウとして保持されてもよい。
【0119】
例えば、可撓性内視鏡等の他のフレキシブルな送達システムによって送達される場合、挿入軸は、送達システムの曲線輪郭によって強化されたジグザグ形状を採用するために適切な程度の曲げコンプライアンスを示すことが重要である。また、前記挿入軸の曲げ剛性は、前記操縦可能器具が好ましい(最低剛性)構造に安定するのを防止するために、全方向コンプライアンス(即ち、負荷方向にかかわらず同じ曲げ剛性を表さなければならない)でなければならず、これにより、ねじれ不感帯が生じ、以下のような「スナップフィット」効果が生じる。最後に、前記挿入軸は、近側作動システムから前記操縦可能器具の遠位端作動端に力及びトルクを十分に伝達するために、適切な軸方向剛性及びねじり剛性を示す必要がある。
【0120】
チューブを曲線経路内に拘束しながら回転させると、一方の低エネルギー(低剛性)状態から他方の低エネルギー状態に急激に移行する際にエネルギーの急激な放出が起こるため、ねじれの「スナップフィット」が発生する。このような事態が発生した場合、前記操作可能な末端は、前記チューブが一種の低エネルギー状態から速やかに二つの角度の間で、いきなり且つ制御不能に他の低エネルギー状態に回転することが観察される。前記挿入軸が全方向コンプライアンスに配置されていれば(すなわち、付勢方向にかかわらず、曲げ剛性が同じであれば)、スナップフィットを回避することができる。
【0121】
曲線経路規制部材とチューブとの界面における摩擦により、捩りのコンプライアンスが高いチューブにおいても、スナップフィットが発生し得る。チューブが近位端で回転すると、チューブとパス界面との間に摩擦が生じ、前記摩擦はチューブの曲げ剛性の関数(チューブが硬いほど摩擦が高い)である。前記チューブがさらに低捩り剛性を有していると、捩りエネルギーが前記チューブ内に累積(捩り巻き)され、一定の臨界回転角度に達すると、このときに蓄えられた捩りエネルギーが界面摩擦に打ち勝って急激に解放され、遠位端において制御されない回転により迅速に展開される。これは、曲げ剛性が低く且つねじり剛性が高いチューブを形成することで回避され得る。
【0122】
可撓性ポリマーチューブに固定される挿入軸
図17を参照すると、操縦可能器具300は、同心となるインナーチューブ304とアウターチューブ306とによってそれぞれ形成された湾曲セグメント302を備え、その中、蛇形ビーム素子308が形成されている。湾曲セグメントを形成するための湾曲セグメント302及びビーム素子308は、本明細書に記載の任意の構成を有することができる。操縦可能器具300が本文に記載の他の構造と異なる場合、各インナーチューブ304及びアウターチューブ306は、器具の遠位セクション330のみを占め、当該操縦可能器具302の長さを近位側端310から遠位端312まで延ばすのではない。逆に、各湾曲セグメント302のインナーチューブ304及びアウターチューブ306は、挿入軸302に接続され、挿入軸302は、チューブ/遠位セクション330から近位端310まで延在する。
【0123】
前記挿入軸320自体は、構造的には管状であり、互いに入れ子に配置されるとともに、本明細書において他の操縦可能器具構造に関して説明したのと同様に、前記湾曲セグメント302を送達及び制御する操作に機能を提供する。無論、これらの構造と材料構造が異なる。
図17に示す挿入軸320は、湾曲セグメント302に連結されたアウターチューブ306の挿入軸であるが、いずれの場合も挿入軸の構成は同じであるため、チューブ―外部又は内部の識別子は問わない。したがって、前記挿入軸320の説明は、前記アウターチューブ306の前記挿入軸と前記インナーチューブ304の前記挿入軸とを記述した。
【0124】
挿入軸320は、軸間摩擦、チューブ剛性(軸方向及びねじれ)及び可撓性などの所望の性能特性を提供するように、異なる材料及び/又は部品を使用する様々な構造を有してもよい。
図17の例示的な構造において、前記挿入軸320は、前記チューブ306に接続された可撓性ポリマーチューブ332と、前記可撓性チューブ外に巻き付けられて補強用の編組線352と、前記編組線を被覆するポリマージャケット354とを含む。挿入軸320は、その構造に沿って構成的に変化することで剛性特性が可変となるように構成されていてもよい。これは、編組線の密度を徐々に増減させたり、縦の編組部材を組み合わせたりすることにより、連続的に実現することができる。これは、異なる剛性を有する異なるジャケット材料をチューブの異なる位置に用いて分散させることによっても実現可能である。一般に、全ての他の特性が一定に保たれている場合には、編組密度が高い挿入軸は、高い曲げコンプライアンス、ねじり剛性及び耐キンク性を示し、かつ、編組密度が低い挿入軸は、高い軸方向剛性を示す。
【0125】
図17に示すように、前記操縦可能器具300は、3つの部分を含み、各部分は、前の部分で述べた構造及び機能特性を提供するように配置され、前記操縦可能器具302は、本明細書に記載のように機能することができる。具体的には、前記器具300は、遠位セクション330を含み、前記遠位セクションは、湾曲セグメント302、遷移セクション340及び近位セクション350を含む。挿入軸320(可撓性チューブ332、編組線352及びジャケット354)の部品は、操縦可能器具300の3つのセクション330、340、350を全て占める部分を有してもよい。
【0126】
前述したように、本文に記載のいずれかの例示的な構造によれば、前記湾曲セグメント分304は、前記チューブ304、306における1つ又は複数の蛇形ビーム素子によって形成される。前記湾曲セグメント302を形成する前記同心チューブ304、306は、前記器具の遠位端312において互いに接続される。遠位側端末306は、結像中に可視化するための不透過線マーカー314をさらに含んでもよい。
【0127】
遠位セクション330において、可撓性デバイス300は、接着剤を介して又は嵌め込みにより可撓性ポリマーチューブ332に接続される。可撓性チューブ332は、単一の医療レベルポリマー材料(例えば、ナイロン12、PEBA又はポリイミド)、又は複数の種類の、又は前記編組線352を有さない補強層と異なる材料からなる複合材料であってもよい。前記可撓性チューブ332は、所望の材料特性―高全方向曲げコンプライアンス、高軸方向剛性、高捩り剛性―通過材料選択結合及び構造の前記編組補強層を呈するように配置されてもよい。遠位セクション330の詳細に示されるように、操縦可能器具300の湾曲セグメント302は、チューブ332自体のポリマー材料または異なるポリマー材料に埋め込まれてもよい。いずれの場合においても、前記湾曲セグメント304に嵌め込まれる材料は、前記湾曲セグメントの柔軟性又は作動に影響を与えないように、薄いジャケット334とすることができる。したがって、操縦可能器具300の遠位セクション330において、挿入シャフト320は、湾曲セグメント302を覆う薄肉のジャケット334のみを含んでもよい。
【0128】
操縦可能器具300の近位セクション350において、挿入シャフト320は、可撓性チューブ332と、チューブ332を補強するための編組線352とを含む。近位セクション350において、前記編組線352は、粗に編まれ(即ち、低編組密度)、高い軸方向剛性を発生させることができ、前記湾曲セグメント302の押し引き作動のための力伝達に有利である。前記ポリマージャケット354は、前記編組線352及び前記可撓性チューブ332を被覆する。前記ジャケット354は、前記挿入軸と係合するように配置された隣接する構造の材料と係合する材料で構成されていてもよい。前記アウターチューブ306に固定された前記挿入軸320に対して、前記ジャケット354は、それに当接する送達機構、例えば、可撓性内視鏡を接合して低摩擦を促進し、前記操縦可能器具300を自由に移動させることができる。前記インナーチューブ304に固定された前記挿入シャフトに対して、前記アウターチューブ306の前記挿入シャフトの前記可撓性チューブ332に前記ジャケット354を接合固定することにより、低摩擦を促進し、前記インナー挿入シャフトを前記アウター挿入シャフトに自由に移動させることができ、これにより、捩り巻きとバックルの回避に役立つ。
【0129】
前記遷移区域340において、前記挿入軸320は、前記近位セクション350と同様の基本構成を有し、即ち、前記可撓管332、編組線352及び前記ポリマージャケット354を含む。前記近位セクション350と前記遷移セクション340との間の1つの差異は、前記近位セクションの編組線352と比較して、前記移行セクションの前記編組線352がより細かく編成され(即ち、高い編成密度で)、より高い曲げコンプライアンス、ねじり剛性及び耐キンク性を発生させることができる。
【0130】
前記遷移セクション340において、前記挿入軸320は、比較的低い可撓性剛性を有することができ、所望のチューブの前記セクションが送達デバイス、例えば、操作可能な内視鏡の能動湾曲セグメント内に滞留し、前記能動湾曲セグメントを介して前記挿入軸を送達することができるため、前記挿入軸の他の部分よりも小さい曲率半径を経る必要がある。これは、高密度の編組補強材352(図示のように)や、低硬度ジャケット層354の材料を用いることにより実現できる。
【0131】
可撓性と軸方向/ねじり剛性との間には逆の相関関係が存在するため、近位端から遠位端に向けて軸方向力及びねじれ力を伝達できるように、近位セクション350は軸方向及びねじり剛性であることが有利である。前記特性を実現するために、前記近位セクション350は、前記内視鏡の受動セクション内に設置されるチューブの長さがより長くなるように配置される長さにおいて、高い軸方向とねじり剛性と低い曲げコンプライアンスを有するように配置されてもよい。これは、より低密度の編組補強材352及び/又は硬い(高い硬度)ジャケット層354材を用いることで実現できる。
【0132】
操縦可能器具300の挿入軸320を構成する部材の材質は変更可能である。挿入軸320の具体的な1つの構成において、可撓性チューブ332は、PTFE材料から構成されてもよく、編組線352は、ステンレス鋼であってもよく、ポリマージャケット354は、ポリアミド材料から構成されてもよく、ジャケット334は、例えば、接着剤を介してPTFEチューブに接続されたPTFEチューブ材料またはPEBA材料の薄層であってもよい。
【0133】
固定方法
前記操作具300の1つの例示的な構成において、前記湾曲セグメント302の前記インナーチューブ304及びアウターチューブ306は、それらの対応する挿入軸302、即ち、それらに対応する可撓チューブ332に重ねられた接着剤湾曲セグメントによって取り付けられ、前記可撓管は、前記インナーチューブ/アウターチューブの端部に嵌合され、且つ生体適合性接着剤で固定されるように配置される。密着性に優れているため、付着したポリマー表面を微細構造レベル(例えば、プラズマエッチング等)で処理して表面活性化(特にPTFE等のフッ素含有ポリマーからなる材料)を処理し、表面汚染物質を除去して粗面化することができる。
【0134】
重複湾曲セグメントは、チューブ全体の壁厚を暗黙的に増加させるので、接着される前にポリマー被覆層354を選択的にレーザアブレーションすることができ、それにより、重複位置における挿入軸332の外径を減少させ、総重複湾曲セグメントの厚さを減少させることができる。編組線352を有する挿入軸332に対して、前記ジャケット層354を遠位に延在して編織点/ライナー終点(カテーテル接続と呼ばれる二次製造過程)を経て、前記湾曲セグメント302を部分的又は完全に内包することもできる。ここでは、タイトル「パッケージ」についてさらに説明する。
【0135】
レーザパターニングされたニチノール挿入軸
前記湾曲セグメントを形成する前記チューブは、前記操縦可能器具の全長にわたって延在しており、前記挿入軸は、その側壁に形成されたレーザーカットスロットパターンによって形成されており、別部品を有する挿入軸―可撓性ポリマーチューブ、編組線及びジャケットを形成するものではない。前記湾曲セグメントを形成する前記蛇形ビーム素子の前記スロットと異なり、前記挿入軸部を形成する前記配置は、可撓性送達デバイス(例えば、可撓性内視鏡)による送達に必要な全方向曲げコンプライアンス特性を示すように配置される。
【0136】
図18は、チューブ362に形成された挿入軸部360を示し、チューブ362は、操縦可能器具の一部を構成している。チューブ362は、本明細書に開示される湾曲セグメント構造を有する操縦可能器具のアウターチューブまたはインナーチューブであってもよい。
図18では、挿入軸360部分のみを示す。理解すべきことは、前記挿入軸部分360は、前記チューブの1つのセクションのみであり、操縦可能器具において実施され、湾曲セクションは、前記挿入軸部分の遠位側に位置し、即ち、
図18において、前記挿入軸部分の左側に位置する。
【0137】
前記挿入軸部360は、前記挿入軸の長さに沿って交互に回転するスロット368の繰り返しパターンを介して形成されている。挿入軸部360の遠位部364は、小ピッチで配置されたスロット368を有し、部分的に可撓性を有する。スロットピッチは近位セクション366に向かって増加し、近位セクションは減少する可撓性を有する。前記挿入軸部366のレーザーカットスロットパターンは、前記チューブの剛性を低減するとともに、前記チューブの幾何中心において中立軸を保持する周方向煉瓦パターンであり、前記チューブは、単一の好ましい方向がなく、全方向に湾曲するように配置される。また、断続螺旋、セルパターン、インターロックパターン、パズルなどの代替パターンを実施してもよい。
【0138】
軸方向ねじれ除去カップリング
レーザパターニングされたニチノールノウ軸上に置かれた純引張りまたは圧縮荷重が軸にねじれを起こすと、軸方向―ねじれ結合が生じる。これは、一般に、前記チューブが「間欠螺旋」パターンを有するようにパターニングされた場合に発生し、前記チューブは、前記チューブの周りに巻き付けられた回転方向性で螺旋状にカットされ、または、繰り返しのスロットパターンが前記チューブを取り囲んで「ねじれる」ように、他の方式でパターニングされる。前記挿入軸における高軸方向ねじりカプラーは、前記湾曲セグメントを形成する前記入れ子式蛇形ビームチューブの全体の機能に対して有害である。この蛇形ビームパターン管の高剛性突条は、作用を正確に作用させるために、径が逆である必要があり、異なる力が加わった際に前記挿入軸に起因する相対的な捩れによって骨格が外れることがある。
【0139】
このような事態を回避するために、前記挿入軸の設計に用いられるカットパターンは、如何なる軸方向・ねじれ連結を無くすべきである。これにより、垂直な切り欠きを有するパターンのみを選択することで、回転方向性を除去することができる。これは、インナーチューブとアウターチューブとを形成する挿入軸のカイラル性質を非常に細かく整合させることによって、2つのチューブの間の相対的なねじれを互いに等価かつ逆の軸方向・ねじれ連結によって相殺するように、ハンドパターンを注意深く設計することによってなされてもよい。すなわち、挿入軸を含む2本のチューブを、同じ量で同じ量だけ捻ることができるように構成すれば、ねじり連結効果が無効となり、蛇形部のスプラインが位置合わせされて偏向が許容される。
【0140】
可変挿入軸剛性
前記挿入軸部を構成するレーザーカットパターンは、前記チューブが可変剛性特性を示すように、前記チューブの長さに沿って変化するように配置されていてもよい。
図19には、挿入軸を規定する3つのセグメントのスロットパターンを有するチューブ370の平坦/平面図が示されている。チューブ370は、本明細書に開示される湾曲セグメント構造を有する操縦可能器具のアウターチューブまたはインナーチューブであってもよい。
図19は、チューブのスロットパターンが明確になるように、チューブ370を長手方向にカットして平坦化したものである。
図19に示すように、前記チューブ370は、前記挿入軸の可撓性セクション372と、遷移セクション374と、剛性セクション376とを含み、全ての前記セクションは、レーザカットによって前記チューブ側壁のスロット378によって画定される。
【0141】
可撓性セクション372は、軸方向及びねじり剛性を発揮するように構成され、軸方向及びねじれ力を湾曲セグメント(図示せず)に伝達する。可撓性セクション372は、可撓性内視鏡の能動湾曲セグメントなどの送達デバイスに容易に適合できるように、曲げコンプライアンスを呈するようにさらに構成される。
【0142】
チューブ370の剛性セクション376は、可撓性セクション372および遷移セクション374よりも格段に長く、送達デバイスの受動部を貫通するように挿入シャフトの大部分を形成する。可撓性と軸方向・ねじり剛性との間には逆の相関関係があるため、軸方向の力とトルクを近位端から遠位端に伝達できるように、挿入軸の大部分(剛性セクション376)の大部分を可能な限り軸方向とねじり剛性とに軸方向及びねじり剛性が伝達され、異なる作動力の付与によるチューブ伸び量が制限されることが好ましい。
【0143】
遷移セクション374は、可撓セクション372から剛性セクション346への徐々に移行するように構成され、その逆も同様である。前記過渡セグメント374の部分は、前記送達デバイスの前記能動湾曲セグメント内に滞留してもよいため、幾つかの曲げコンプライアンスは有益であることを証明できる。
【0144】
セクション372、374、376の特性は、チューブ370内のスロット378のパターンによって構成される。
図19に示す構成では、スロット378は、挿入軸の全長にわたって同一の垂直ユニットパターンとして構成されている。チューブの剛性は、スロット間のピッチ間隔によって決まる。可撓性セクション372は、スロット378のピッチが小さく、スロットが均等に密に配置される。剛性セクション376は、スロット378のピッチが大きく、スロットがさらに均等に離間している。遷移セクション374では、ピッチが変化し、可撓セクション372から剛性セクション376にかけて徐々に増加する。しかし、スロット幅、スロット総数、またはこれらパラメータの組み合わせの変化によっても同様の効果が得られる。
【0145】
多自由度曲げを実現する方法
蛇形ビームの湾曲セグメントを有するn個の同心チューブ対を1群有する任意の操縦可能器具において、操作可能な自由度の総数は3nであり、各操縦可能器具は個別に挿脱可能であるため、回転と双方向の偏向が可能である。一方の操縦可能器具をもう1つの内にネストすることで、自由度が2倍、すなわちn=2であるため、3n=6自由度となる。これにより、さらに自由度(DoF)を高めることができる。
【0146】
例えば、
図20A―
図20Bには、6―DoF機器400が示されている。
図20A―
図20Bにおいて、第1操縦可能器具410は、第2操縦可能器具420に取り付けられている。第1操縦可能器具410は、第1操縦可能器具の遠位端に固定された嵌合されたインナーチューブ412及びアウターチューブ414を含む。本明細書に示される例示的な構成によれば、第1操縦可能器具の湾曲セグメント416は、蛇形ビーム素子を形成する。湾曲セグメント416は、インナチューブ412及びアウタチューブ414に作用するプッシュプルによって作動する。第2操縦可能器具420は、第2操縦可能器具の遠位端に固定されて嵌合されたインナーチューブ422及びアウターチューブ424を含む。第2操縦可能器具420の湾曲セグメント426には、本明細書に示される実施例に係る蛇形ビーム素子が形成されている。湾曲セグメント426は、インナチューブ422及びアウタチューブ424に作用するプッシュプルによって作動する。ここで、第1操縦可能器具410及び/又は第2操縦可能器具420は、
図18及び
図19を参照して上述したスロット特徴を含む対応する挿入軸418及び428を備えることができる。
【0147】
各第1操縦可能器具410及び第2操縦可能器具420は、対応する3―DoF方式で作動することができ、即ち、挿入/収縮、回転及び偏向・湾曲が可能である。
図20Bに示すように、外部の第2操縦可能器具420を「親」アクチュエータとし、内部の第1操縦可能器具410を「子部品」とする。これは、子操縦可能器具410の動きが親操縦可能器具420の動きに固有に結合しているが、親姿勢によって決定された慣性枠を中心として、子部品が独立して動くことができるからである。
図20Bに示すように、前記親操縦可能器具420の前記湾曲セグメント426は、子操縦可能器具410が追従する湾曲を発生させるように作動され、前記湾曲制御子は、装置が親部品から離れるときの配向を制御する。子操縦可能器具410の離脱方向は、親操縦可能器具420の他の2つの自由度によって制御されてもよい。これにより、サブ操縦可能器具410は、出口方向から3自由度で制御することができる。したがって、前記機器400は、6―DoF機能を享受する。
【0148】
子操縦可能器具410の設計において、前記挿入軸418は、親操縦可能器具420の前記湾曲セグメント426の完全な所望の湾曲範囲を実現するとともに、十分な剛性を有し、十分な可撓性であり、前記子湾曲セグメント416の遠位端に回転及び力を伝達するのに十分な剛性を有することが重要である。また、前記子挿入軸418は、いかなる機械的オフセット又は優先的な湾曲軸を除去するために、全方向コンプライアンスである必要もあり、これによっても、親操縦可能器具420の湾曲範囲を制限する可能性もある。これは、例えば、
図18及び
図19を参照して説明した構成により、副挿入軸418を構成することにより実現できる。
図20A―
図20Bの例示的な構成において、操縦可能器具410、420は、レーザカットされたニチノールの挿入軸418、428を有し、ニチノールの挿入軸418、428は、全方向のコンプライアンスを生成するレンガ素子を有する。同じロジックは、多自由度システムを形成するために、互いに同心的に嵌合された任意の数の操縦可能器具を含む機器に拡張することができる。
【0149】
図20A―
図20Bの親/子機器400は、種々の形態で実現することができる。例えば、
図21Aを参照すると、前記6―DoF器具400は、子ジャケット、即ち、前記アウターチューブ414自体が手術具、例えばレーザー繊維430を載置できるように配置されてもよい。
【0150】
同様に、単一の親操縦可能器具420に複数の子操縦可能器具410をネストしてマルチアームシステムを作成することができ、各子部品が6自由度を享受することができ、そのうちの3つの自由度が同じであるため、それらは同一の親部品内に収容される。この場合、親操縦可能器具420は、他の操縦可能器具(
図21B参照)または可撓性内視鏡であってもよい(
図21C参照)。これらの例示的な構造において、各子操縦可能器具410は、図示のように手術具432を載置可能に構成されていてもよい。
【0151】
応力集中を低減する方法
材料応力が集中し、材料中の急激な又は急激な不連続性の増加が知られている。正確に考慮しなければ、これらの応力集中は材料の失効を引き起こす可能性がある。
図22は、チューブ450の一部を示し、湾曲セグメント452の一部を形成するように配置され、蛇形ビーム素子454は、チューブ側壁の複数のスロット456によって画定される。各スロット456の端部又は根元部に生じる応力集中を緩和するために、各スロットの根元部には、チューブ450の中心軸の方向に根元部を軸方向に延長する応力除去用切欠き458が設けられていてもよい。
図22の例示的な構造では、切り欠き458は略T字状に形成されている。円形や楕円形等の他の形状であってもよい。スロット456の根元部分を軸方向に延在させた場合、曲げ応力の表面積が増加し、スロット根元で応力集中が緩和され、そうでなければ、上述したように応力集中が発生しやすくなる。
【0152】
パッケージ
本明細書に記載された操縦可能器具を構築するためのニチノールチューブのパッケージ、例えば、前記器具は、挿入軸を含む機器の一部を形成し(
図17参照)、様々な形態で実現することができる。例えば、本文に記載の前記操縦可能器具を形成する前記ニチノール管は、他の低硬度生体適合性材料(例えば、PEBAX 35D(登録商標)、一種の低硬度PEBA材料、Arkema,Inc.から購入)内に設置されて、前記スロットを防水するとともに、組織が正常動作中に前記スロット内に「クランプ」されることを防止する。前記パッケージング層は、ニチノールの末端を電気絶縁させる目的にも使用でき、これは、電気手術過程を使用する必要がある臨床応用において重要である。前記パッケージング層は、医学イメージングにおける前記操縦可能な末端の視認性を改善するために、不透過線の特徴を有してもよい。封止材は、曲げ剛性が前記操縦可能器具の曲げ能力を著しく低下させないように注意深く選択する必要がある。
【0153】
別の代替案として、前記スロット幅を小さく/狭くすることで、組織が空間に入らないようにして「クランプ」を防止することができる。実際には、液体でも通過できないほどスロットの幅を小さくすることができる。従って、このようなスロット幅の湾曲セグメント構造は、組織の締付を防止するとともに、前記湾曲セグメントを防水するために使用することができる。
【0154】
類似的に、ライニング材は、潤滑性を高め、ツールの通過を促進させるために、操縦可能チューブの内径に設けられてもよい。先に説明したように、操縦可能チューブの偏向を阻害しないように、ライニング材を注意深く選択する必要がある。
【0155】
応用例:可撓性内視鏡検査用両手操縦可能器具
本明細書に記載された複数の例示的な構成を組み合わせる例示的な応用において、様々な蛇形式ビームステアリング装置の組み合わせは、デュアルチャネル可撓性内視鏡462を介して配信される照明LED464とカメラ466を有する両手のスマート操作システム460を生成するように構成されてもよい。これを
図23に示す。
図23に示すように、可撓性内視鏡462は、1対の6DoF操縦可能器具470、480を備えている。前記第1操縦可能器具470は、子操縦可能器具472を含み、前記子操縦可能器具472は、親操縦可能器具474内にネストされ、手術具476を載置する。前記第2操縦可能器具480は、さらに、親操縦可能器具484に外嵌され、手術器具486を載置する子回転可能器具482を含む。可撓性且つ作動可能な前記内視鏡460は、前記システム460、即ち、各操縦可能器具470、480に別の3つの自由度を提供する。
【0156】
図23に示すように、前記親操縦可能器具474、484は2重蛇形ビーム湾曲セグメントを含み、例えば、本文において
図14A―
図14Cを参照して説明したとおりである。作動されると、親操縦可能器具474、484は、S字状を採用し、スロットの自己衝突(
図4参照)は、それらの剛性を増加させ、安定したプラットフォームを提供する。子操縦可能器具472、482は、それぞれ独立して作動可能な3―DoF操作可能な器具(転がり、挿入/後退、偏向・湾曲)である。子操縦可能器具472および482は、図示するように、クランプおよび電気手術プローブなどの組織と相互作用するためのツール476を送達する。
図23の前記システム/プラットフォーム460は、様々な手術に用いることができ、例えば、内視鏡粘膜下の解剖(ESD)内視鏡手術、例えば、同時に組織を収縮及びカットする必要がある。
【0157】
以上が例示的な構成である。無論、すべての可能な構造を説明する目的で、部材または方法の各考えられる組み合わせを記述することはできないが、当業者であれば、更なる組み合わせおよび配列が可能であることを認識すべきである。今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【国際調査報告】