(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】抗CTLA-4抗体投与レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241024BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/04
C07K16/30 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525557
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022078875
(87)【国際公開番号】W WO2023077069
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521449809
【氏名又は名称】オンコシーフォー、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、パン
(72)【発明者】
【氏名】デヴェンポート、マーティン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、がん治療における使用を含めた抗CTLA-4抗体投与レジメンに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CTLA-4抗体を投与する方法であって、1回又は複数回の用量の抗CTLA-4抗体を対象に投与することを含み、ここで各回用量は独立して、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約6mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、又は約20mg/kgである、方法。
【請求項2】
前記抗CTLA-4抗体を約1週間ごと、約2週間ごと、約3週間ごと、約4週間ごと、約5週間ごと、又は約6週間ごとに1回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗CTLA-4抗体を約3週間ごとに1回投与する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗CTLA-4抗体の各回用量が約6mg/kgである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗CTLA-4抗体の各回用量が約10mg/kgである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
約10mg/kgである1回目の用量、約10mg/kgである2回目の用量、及びその後の約1~6mg/kgの1回又は複数回の用量を投与することを含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
その後の各回用量が約6mg/kgである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
その後の各回用量が約3mg/kgである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記抗CTLA-4抗体を投与して約200~300μg/mLのピーク濃度(C
max)を維持する、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
維持されるC
maxが約225~250μg/mLである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(a)前記対象から得た血液試料中の前記抗CTLA-4抗体のC
max濃度が300μg/mLを超える場合、(b)前記対象に制限毒性が認められる場合、又は(c)前記対象ががんの治療を受けており、前記抗CTLA-4抗体による治療について、固形腫瘍効果判定基準(RECIST)1.1の基準による部分奏効又は完全奏効を達成する場合に、前記対象に投与する前記抗CTLA-4抗体の用量が、直前の用量に比して減量される、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗CTLA-4抗体が静脈内に投与される、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗CTLA-4抗体が、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1と、配列番号2~配列番号4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR3とを含む、軽鎖可変領域、及び
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7~配列番号9のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むCDR3とを含むことを含む、重鎖可変領域
を含む、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗CTLA-4抗体が、配列番号3に示される配列を含むCDR2を含む、軽鎖可変領域と、配列番号9に示される配列を含むCDR2を含む、重鎖可変領域と、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗CTLA-4抗体が、配列番号12に示される配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号16に示される配列を含む重鎖可変領域と、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗CTLA-4抗体が、配列番号23に示される配列を含む軽鎖と、配列番号21に示される配列を含む重鎖と、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記対象ががんを有する、請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが固形腫瘍である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、進行性又は転移性である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、以前に前記がんの標準治療が奏効しなかったか、又は前記がんの標準治療に不耐性を示した者である、請求項17~請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記がんが、抗PD-1/PD-L1治療に対して抵抗性又は耐性である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記がんが、黒色腫、転移性黒色腫、PD(L)-1抵抗性黒色腫、非小細胞肺腺がん、転移性NSCLC、ドライバー変異を有するNSCLC(例えば、EGFR/ALK変異又は他の標的化可能な変異)、PD-1抵抗性NSCLC、頭頸部がん、腺様嚢胞がん(R/Mであり得る)、扁平上皮がん、トリプルネガティブ(基底細胞型)乳がん、膵臓がん、腎細胞がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、結腸がん、肝細胞がん、他の固形腫瘍、及び転移性結腸直腸がん(マイクロサテライト不安定性を有し得る)からなる群より選択される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
がんの治療を必要とする対象のがんを治療する方法であって、前記対象に1回又は複数回の用量の抗CTLA-4抗体を投与することを含み、各回用量は独立して、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約6mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、又は約20mg/kgである、方法。
【請求項24】
前記抗CTLA-4抗体を約1週間ごとに1回、約2週間ごとに1回、約3週間ごとに1回、約4週間ごとに1回、約5週間ごとに1回、又は約6週間ごとに1回投与する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗CTLA-4抗体を約3週間ごとに1回投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗CTLA-4抗体の各回用量が約6mg/kgである、請求項23~請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗CTLA-4抗体の各回用量が約10mg/kgである、請求項23~請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
約10mg/kgである1回目の用量、約10mg/kgである2回目の用量、及びそれに続く約1~6mg/kgの1回又は複数回の用量を投与することを含む、請求項23~請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
その後の各回用量が約6mg/kgである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
その後の各回用量が約3mg/kgである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記抗CTLA-4抗体を投与して約200~300μg/mLのピーク濃度(C
max)を維持する、請求項23~請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
維持されるC
maxが約225~300μg/mLである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
(a)前記対象から得た血液試料中の前記抗CTLA-4抗体のC
max濃度が300μg/mLを超える場合、(b)前記対象に制限毒性が認められる場合、又は(c)前記対象が、前記抗CTLA-4抗体による治療について、固形腫瘍効果判定基準(RECIST)1.1の基準による部分奏効又は完全奏効を達成する場合に、前記対象に投与する前記抗CTLA-4抗体の用量が、直前の用量に比して減量される、請求項31又は請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗CTLA-4抗体が静脈内に投与される、請求項23~請求項33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記抗CTLA-4抗体が、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1と、配列番号2~配列番号4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR3とを含む、軽鎖可変領域、及び
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7~配列番号9のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むCDR3とを含むことを含む、重鎖可変領域
を含む、請求項23~請求項34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記抗CTLA-4抗体が、配列番号3に示される配列を含むCDR2を含む、軽鎖可変領域と、配列番号9に示される配列を含むCDR2を含む、重鎖可変領域と、を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗CTLA-4抗体が、配列番号12に示される配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号16に示される配列を含む重鎖可変領域と、を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗CTLA-4抗体が、配列番号23に示される配列を含む軽鎖と、配列番号21に示される配列を含む重鎖と、を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記がんが固形腫瘍である、請求項23~請求項38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記がんが、進行性又は転移性である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、以前に前記がんの標準治療が奏効しなかったか、又は前記がんの標準治療に不耐性を示した者である、請求項23~請求項40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記がんが、抗PD-1/PD-L1治療に対して抵抗性又は耐性である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記がんが、黒色腫、転移性黒色腫、PD(L)-1抵抗性黒色腫、非小細胞肺腺がん、転移性NSCLC、ドライバー変異を有するNSCLC(例えば、EGFR/ALK変異又は他の標的化可能な変異)、PD-1抵抗性NSCLC、頭頸部がん、腺様嚢胞がん(R/Mであり得る)、扁平上皮がん、トリプルネガティブ(基底細胞型)乳がん、膵臓がん、腎細胞がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、結腸がん、肝細胞がん、他の固形腫瘍、及び転移性結腸直腸がん(マイクロサテライト不安定性を有し得る)からなる群より選択される、請求項23~請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の支援を受けた研究開発に関する記載
本発明は、NIHの国立がん研究所によって授与された助成金番号R44CA250824の下で政府の支援を一部受けてなされたものである。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、がん治療を含めた抗CTLA-4抗体の投与レジメンに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)は、CD152(分化クラスター152)としても知られ、B7-1(CD80)及びB7-2(CD86)と相互作用して制御性T細胞が適切に機能するようにし、自己炎症性疾患から宿主を保護する細胞表面タンパク質受容体である。承認された抗体、イピリムマブ(ブリストルマイヤーズスクイブ社からヤーボイ(登録商標)として市販されている)などの抗CTLA-4モノクローナル抗体(mAb)は、様々な前臨床モデルにおいて強力で広範ながん免疫療法効果(CITE)が示されており、単剤療法としても、ニボルマブ(ブリストルマイヤーズスクイブ社からオプジーボ(登録商標)として市販されている抗PD-1)との併用療法の一部としても臨床的に使用されている。しかし、CTLA-4単剤療法は、抗PD-1/PD-L1療法よりも免疫療法関連有害作用(irAE)が多い。さらに、イピリムマブとニボルマブとの併用療法を受けている黒色腫患者では、重篤なirAE(グレード3及びグレード4)の割合が55%に達した。この強いirAEは、がん患者が耐えられる投与回数をさらに制限している。それでも、抗PD-1との併用療法は、複数類のがんにおいて奏効率及び患者生存率の有意な改善をもたらした。さらに、抗CTLA-4抗体は、がん患者に長期間持続する免疫を誘導する。したがって、CTLA-4は依然として重要な免疫療法の標的となっているが、抗CTLA-4mAbの安全性と有効性の両方の改善には大きな課題が残されている。
【0004】
ONC-392は、CTLA-4に対する高度に選択的なヒト化モノクローナルIgG1カッパアイソタイプ抗体である。最近、ONC-392が低pH下でCTLA-4から解離して、リソソーム分解を逃れ細胞表面へ再循環することが可能であることが示された。ONC-392などのpH感受性抗体は、pH非感受性であるイピリムマブよりも、安全性だけでなく、Treg枯渇及び腫瘍拒絶の効果も高いとする見解を裏付ける証拠がいくつかある。まず、細胞表面上のCTLA-4を維持することによって、ONC-392の方が、リガンド密度がより高い状態に保たれ、より良好なADCCがもたらされる。次に、ONC-392の方が、腫瘍微小環境中でのTreg枯渇において効率的である。次に、ONC-392の方が、大きな腫瘍の拒絶を誘導する効力が有意に高い。それでも、ONC-392を用いて安全かつ効果的な治療を提供するのに適切な投与スケジュールが当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
抗CTLA-4抗体を投与する方法であって、1回又は複数回の用量の抗CTLA-4抗体を対象に投与することを含み得る、方法が、本明細書で提供される。前記対象は、がんを有し得る。また、がんの治療を必要とする対象のがんを治療する方法であって、前記対象に1回又は複数回の用量の抗CTLA-4抗体を投与することを含み得る、方法が、本明細書で提供される。さらに、がん治療に使用するための抗CTLA-4抗体、がん治療のための抗CTLA-4抗体を含む組成物及びがん治療のための医薬の製造への抗CTLA-4抗体の使用が提供される。前記抗CTLA-4抗体を第2の抗がん剤と併用してもよく、この第2の抗がん剤は、ペンブロリズマブであり得る。
【0006】
前記対象に投与する前記抗CTLA-4抗体の各回用量は独立して、約0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、10mg/kg、15mg/kg又は20mg/kgであり得る。前記抗CTLA-4抗体を約1週間ごとに1回、約2週間ごとに1回、約3週間ごとに1回、約4週間ごとに1回、約5週間ごとに1回又は約6週間ごとに1回、具体的には約3週間ごとに1回投与し得る。抗CTLA-4抗体の各回用量は、約3mg/kg、約6mg/kg又は約10mg/kgであり得る。前記対象に約10mg/kgである1回目の用量、約10mg/kgである2回目の用量、及び約1~6mg/kgの1又は複数のその後の用量を投与し得る。その後の各回用量は、約6mg/kg又は約3mg/kgであり得る。
【0007】
前記抗CTLA-4抗体を投与して、前記抗体のピーク濃度(C-max)を約200~300μg/mL、具体的には約225~250μg/mL、より具体的には225μg/mL又は250μg/mLに維持し得る。(a)前記対象から得た血液試料中の前記抗CTLA-4抗体のCmaxが225μg/mL、250μg/mL又は300μg/mLを超える場合、(b)前記対象に制限毒性が認められる場合、又は(c)前記対象ががんの治療を受けており、前記抗CTLA-4抗体による治療について、固形腫瘍効果判定基準(RECIST)1.1の基準による部分奏効若しくは完全奏効を達成する場合に、前記対象に投与する前記抗CTLA-4抗体の用量を、直前の用量に比して減量し得る。前記抗CTLA-4抗体は静脈内に投与されてもよく、又は前記組成物若しくは前記医薬を静脈内投与を目的とするものとしてもよい。
【0008】
前記抗CTLA-4抗体は、(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1と、配列番号2~配列番号4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR3とを含む、軽鎖可変領域及び(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7~配列番号9のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むCDR3とを含むことを含む、重鎖可変領域を、含み得る。前記抗CTLA-4抗体は、配列番号3に示される配列を含むCDR2を含む、軽鎖可変領域と、配列番号9に示される配列を含むCDR2を含む、重鎖可変領域と、を含み得る。前記抗CTLA-4抗体は、配列番号12に示される配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号16に示される配列を含む重鎖可変領域と、を含み得る。前記抗CTLA-4抗体は、配列番号23に示される配列を含む軽鎖と、配列番号21に示される配列を含む重鎖と、を含み得る。前記抗CTLA-4抗体は、ONC-392であり得る。
【0009】
前記がんは、固形腫瘍であり得る。前記がんは、進行性又は転移性であり得る。前記対象は、以前に前記がんの標準治療が奏効しなかったか、又は前記がんの標準治療に不耐性を示した者であり得る。前記がんは、抗PD-1/PD-L1治療に対して抵抗性又は耐性であり得る。前記がんは、黒色腫、転移性黒色腫、PD(L)-1抵抗性黒色腫、非小細胞肺腺がん、転移性NSCLC、ドライバー変異を有するNSCLC(例えば、EGFR/ALK変異又は他の標的化可能な変異)、PD-1抵抗性NSCLC、頭頸部がん、腺様嚢胞がん(R/Mであり得る)、扁平上皮がん、トリプルネガティブ(基底細胞型)乳がん、膵臓がん、腎細胞がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、結腸がん、肝細胞がん、他の固形腫瘍、又は転移性結腸直腸がん(マイクロサテライト不安定性を有し得る)であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、ONC-392単剤療法に関する臨床試験のパートA第IA相の流れを示した図である。DLT=用量制限毒性、Gr=グレード、Q3W=3週間ごと、RECIST=固形腫瘍効果判定基準、RP2D-M=単剤療法としてのONC-392の推奨第II相用量、TEAE=治療下で発現した有害事象。
【0011】
【
図2】
図2は、ONC-392とペンブロリズマブとの併用に関する臨床試験のパートB第IA相の流れを示した図である。DLT=用量制限毒性、NSCLC=非小細胞肺がん、PD-(L)1=プログラム細胞死タンパク質1又はそのリガンド、Q3W=3週間ごと、RECIST=固形腫瘍効果判定基準、RP2D-C=併用療法(ONC-392+ペンブロリズマブ)のためのONC-392の推奨第II相用量。
【0012】
【
図3】
図3は、単剤療法(上)又はペンブロリズマブとの併用(下)でのONC-392に関する試験のパートC第IB相拡大の流れを示した図である。ALK=未分化リンパ腫キナーゼ、ECOG=米国東海岸がん臨床試験グループ、EGFR=上皮成長因子受容体、IO=免疫療法、IV=静脈内、Mel=黒色腫、mu=変異、NSCLC=非小細胞肺がん、TNBC=トリプルネガティブ乳がん、Q3W=3週間ごと、RECIST v1.1=固形腫瘍効果判定基準1.1版。
【0013】
【
図4】
図4は、臨床試験のパートA第IA相におけるONC-392単剤療法に対する最良総合効果を示した図である。
【0014】
【
図5】
図5は、ONC-392単剤療法に関する臨床試験のパートAで治療した患者の腫瘍組織バイオマーカー解析の結果を示した図である。上側のパネルは、3mg/kgのONC-392を7サイクル投与したNSCLC患者の結果を示しており、CD8(赤色)、CD4(緑色)、Foxp3(紫色)及び腫瘍細胞(青色)が標識されている。左下のパネルは、卵巣がん患者の治療前の結果を示しており、右下のパネルは、10mg/kgのONC-392で4サイクル治療した卵巣がん患者の結果を示しており、CD8(赤色)、CD4(緑色)Foxp3(紫色)及び腫瘍細胞(青色)が標識されている。
【0015】
【
図6】
図6は、最終モデルの適合度を示した図である。
【0016】
【
図7】
図7は、視覚的事後予測性能評価(VPC)の結果を示した図である。
【0017】
【
図8】
図8は、様々な投与レジメン、すなわち、レジメン番号1:6mg/kg Q3W、レジメン番号2:10mg/kg Q3W、レジメン番号3:10mg/kg Q4W、レジメン番号4初回負荷量10mg/kgで2回+維持量6mg/kg Q3WでシミュレートしたPKプロファイルを示した図である。
図8Aは対数目盛を示し、
図8Bは通常目盛を示している。実線は、pkプロファイルの中央値である。斜線領域は90%予測区間を表す。
【0018】
【
図9A】
図9A~
図9Bは、ONC-392単剤療法を受けている患者に最大用量を用いたONC-392定常状態曝露量に対するORRのモデル予測確率を示した図である。
【0019】
【
図10A】
図10A~
図10Bは、ONC-392単剤療法を受けている患者におけるONC-392の定常状態でのC
min(
図10A、上)、C
max(
図10A、下)及びAUC(
図10B)に対するグレード3又はグレード4のTRAEのモデル予測確率を示した図である。
【0020】
【
図11A】
図11A~
図11Bは、
図11A~
図11Bは、NSCLC患者(単剤療法)に最大用量を用いたONC-392の定常状態曝露量(steady-state exposure)に対するORRのモデル予測確率を示した図である。
【0021】
【
図12A】
図12A~
図12Bは、NSCLC患者におけるONC-392定常状態曝露量に対するORR及びグレード3以上のTRAEのモデル予測確率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、本明細書に記載の抗CTLA-4抗体投与レジメンが、イピリムマブと比較して、固有の低い毒性及び高い有効性をもたらすことを発見した。安全性が改善されたことから、本発明者らはさらに、これらのレジメンに関する臨床データが、ステージIVの固形腫瘍を有する患者を含めたがん患者における長期間の投与及び臨床活性を支持するものであることを明らかにした。具体的には、本明細書に開示される投与レジメンで使用することができる抗CTLA-4抗体は、CTLA-4の再利用を保持し、リソソーム分解を回避する、ONC-392などのpH感受性型のものである。
【0023】
1.定義
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈から明らかにそうでない限り、複数の指示対象を含む。
【0024】
本明細書における数値範囲の列挙には、その間に介在する同じ精度の数字がそれぞれ明示的に企図される。例えば、6~9の範囲では、6及び9に加えて数字7及び8が企図され、6.0~7.0の範囲では、数字6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6、9及び7.0が明示的に企図される。
【0025】
2.抗CTLA-4抗体投与レジメン
本明細書では、CTLA-4に対してpH感受性結合を示しリソソーム分解を回避する抗CTLA-4抗体に適し得る、抗CTLA-4抗体投与レジメンが提供される。具体的には、使用され得る前記抗CTLA-4抗体には、米国特許第10,618,960号に記載されているpH感受性抗CTLA-4抗体が含まれ、上記特許の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
a.抗CTLA-4抗体
前記抗CTLA-4抗体は、アミノ酸配列RASENIYSNLA(配列番号1)を含む相補性決定領域(CDR)1と、アミノ酸配列AATNLQS(配列番号2)(LC1)、AATNLQD(配列番号3)(LC2)又はAATSLQS(配列番号4)(LC3)を含むCDR2と、アミノ酸配列QHLWGTPYT(配列番号5)含むCDR3とを、含む、軽鎖可変領域を含み得る。
【0027】
LC1~LC3を含む前記軽鎖可変領域はそれぞれ、以下の配列のうちの1つも含み得る。
【0028】
LC1
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASENIYSNLAWYQQKPGKAPKLLLYAATNLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHLWGTPYTFGGGTKLEIK(配列番号11)
【0029】
LC2
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASENIYSNLAWYQQKQGKAPKLLLYAATNLQDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQHLWGTPYTFGQGTKLEIK(配列番号12)
【0030】
LC3
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASENIYSNLAWYQQKPGKAPKLLIYAATSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHLWGTPYTFGGGTKVEIK(配列番号13)
【0031】
より具体的には、LC1~LC3を含む軽鎖はそれぞれ、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含み得る。
【0032】
LC1
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASENIYSNLAWYQQKPGKAPKLLLYAATNLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHLWGTPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC*(配列番号22)
【0033】
LC2
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASENIYSNLAWYQQKQGKAPKLLLYAATNLQDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQHLWGTPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC*(配列番号23)
【0034】
LC3
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASENIYSNLAWYQQKPGKAPKLLIYAATSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHLWGTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC*(配列番号24)
【0035】
前記抗CTLA-4抗体は、アミノ酸配列GFSLTSYGLS(配列番号6)を含むCDR1と、アミノ酸配列YIWYDGNTNFHPSLKSR(配列番号7)(HC1)、YIWYDGNTNFHSSLKSR(配列番号8)(HC2)又はYIWYDGNTNFHSPLKSR(配列番号9)(HC3)を含むCDR2と、アミノ酸配列TEGHYYGSNYGYYALDY(配列番号10)を含むCDR3とを、含む、重鎖可変領域を含み得る。
【0036】
HC1~HC3を含む前記重鎖可変領域はそれぞれ、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含み得る。
【0037】
HC1
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLTSYGLSWIRQPPGKGLEWIGYIWYDGNTNFHPSLKSRVTISKDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAKTEGHYYGSNYGYYALDYWGQGTSVTVSS(配列番号14)
【0038】
HC2
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLTSYGLSWIRQPPGKGLEWIGYIWYDGNTNFHSSLKSRVTISKDTSKSQVSLKLSSVTAADTAVYYCAKTEGHYYGSNYGYYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号15)
【0039】
HC3
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLTSYGLSWIRQPPGKGLEWIGYIWYDGNTNFHSPLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAKTEGHYYGSNYGYYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号16)
【0040】
前記抗CTLA-4抗体は、アミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号17)
を含む重鎖定常領域を含み得る。
【0041】
前記重鎖定常領域は、1又は複数の突然変異を含み得る。前記1又は複数の変異は、配列番号17に示される配列と比較して、M135Y、S137T、T139E、S181A、E216A及びK217A並びにそれらの組み合わせから選択され得る。1つの例では、前記抗体の前記重鎖定常領域は、6つの変異をすべて含む。変異重鎖定常領域は、アミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号18)
を含み得る。
【0042】
さらにより具体的には、重鎖可変領域HC1~HC3を含む、前記抗CTLA-4抗体の前記重鎖はそれぞれ、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含み得る。
【0043】
HC1
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLTSYGLSWIRQPPGKGLEWIGYIWYDGNTNFHPSLKSRVTISKDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAKTEGHYYGSNYGYYALDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG**(配列番号19)
【0044】
HC2
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLTSYGLSWIRQPPGKGLEWIGYIWYDGNTNFHSSLKSRVTISKDTSKSQVSLKLSSVTAADTAVYYCAKTEGHYYGSNYGYYALDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG**(配列番号20)
【0045】
HC3
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLTSYGLSWIRQPPGKGLEWIGYIWYDGNTNFHSPLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAKTEGHYYGSNYGYYALDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG**(配列番号21)
【0046】
配列番号19~配列番号21に記載される重鎖のアミノ酸配列には、C末端リジン(K)がさらに含まれてもよく、これにより、発現レベルが増大し得る。前記末端リジンは、抗CTLA-4抗体の産生過程又は抗体投与時に自然に切断され得る。
【0047】
PP4637(LC2/HC3):1つの例では、前記抗CTLA-4抗体は、配列番号1に示される配列を含むCDR1と、配列番号3に示される配列を含むCDR2と、配列番号5に示される配列を含むCDR3とを含む、軽鎖可変領域を含む。前記重鎖可変領域は、配列番号6に示される配列を含むCDR1と、配列番号9に示される配列を含むCDR2と、配列番号10に示される配列を含むCDR3とを、含む。具体的には、前記軽鎖可変領域は、配列番号12に示される配列を含んでもよく、前記重鎖可変領域は、配列番号16に示される配列を含んでもよい。より具体的には、前記軽鎖は、配列番号23に示される配列を含んでもよく、前記重鎖は、配列番号21に示される配列を含んでもよい。この抗体は、ONC-392と称され得る。
【0048】
PP4631(LC2/HC1):別の例では、前記抗CTLA-4抗体は、配列番号1に示される配列を含むCDR1と、配列番号3に示される配列を含むCDR2と、配列番号5に示される配列を含むCDR3とを含む、軽鎖可変領域を含む。前記重鎖可変領域は、配列番号6に示される配列を含むCDR1と、配列番号7に示される配列を含むCDR2と、配列番号10に示される配列を含むCDR3とを、含む。具体的には、前記軽鎖可変領域は、配列番号13に示される配列を含んでもよく、前記重鎖可変領域は、配列番号14に示される配列を含んでもよい。より具体的には、前記軽鎖は、配列番号23に示される配列を含んでもよく、前記重鎖は、配列番号19に示される配列を含んでもよい。
【0049】
PP4638(LC3/HC3):さらなる例では、前記抗CTLA-4抗体は、配列番号1に示される配列を含むCDR1と、配列番号4に示される配列を含むCDR2と、配列番号5に示される配列を含むCDR3とを含む、軽鎖可変領域を含む。前記重鎖可変領域は、配列番号6に示される配列を含むCDR1と、配列番号9に示される配列を含むCDR2と、配列番号10に示される配列を含むCDR3とを、含む。具体的には、前記軽鎖可変領域は、配列番号12に示される配列を含んでもよく、前記重鎖可変領域は、配列番号16に示される配列を含んでもよい。より具体的には、前記軽鎖は、配列番号24に示される配列を含んでもよく、前記重鎖は、配列番号21に示される配列を含んでもよい。
【0050】
b.投与レジメン
前記抗CTLA-4抗体を対象に投与することができ、この対象はヒトでありうる。投与は、本明細書中にさらに記載されるように、がんを治療するためのものであり得る。前記抗CTLA-4抗体を全身に投与してもよく、この投与は、注射又は静脈内投与を介するものであってもよい。前記抗体を単剤療法として、又は併用療法として投与し得る。投与レジメンは、1回又は複数回の用量の前記抗CTLA-4抗体を投与することを含み得る。各回用量は独立して、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約5、mg/kg、約6mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約50mg/kg若しくは約100mg/kg、又は上記のうちの2つ量の範囲内の量であり得る。前記投与レジメンは、上記の用量のうちの1つを対象に投与する、定期的な投与を含み得る。投与の各サイクルでは、前記用量が以前の用量とは異なり得る。前記投与は、用量漸増を含み得る。1つの例では、前記抗CTLA-4抗体を約1週間ごと、約2週間ごと、約3週間ごと、約4週間ごと、約5週間ごと又は約6週間ごとに投与する。具体的には、前記抗体を約3週間ごとに投与する。投与サイクルの期間について記載するとき、「約」は、±1日、±2日又は±3日を意味し得る。
【0051】
具体的には、前記抗CTLA-4抗体の用量は、約1mg/kg、約3mg/kg、約6mg/kg若しくは約10mg/kg、又は上記のうちの2つの量の範囲内の量であり得る。前記投与レジメンは、10mg/kgで2回の投与、次いで1~6mg/kgの延長投与(すなわち、その後の各回用量が1~6mg/kgである)を含み得る。前記延長投与は、3mg/kg又は6mg/kgの用量を投与することを含み得る。1つの例では、各投与は約3週間ごとに1回である。前記投与を3週間、6週間、9週間、12週間、15週間、18週間、21週間、24週間、27週間、30週間、33週間、36週間、39週間、42週間、45週間、48週間又は51週間の期間にわたって実施し得る。1つの例では、前記抗CTLA-4抗体を単剤療法として使用し、前記用量は、4週間ごとに投与する10mg/kgである。さらなる例では、前記抗CTLA-4抗体をペンブロリズマブと併用し、前記抗CTLA-4抗体の用量は3週間ごとに投与する3mg/kg又は6mg/kgであり、これはペンブロリズマブの投与スケジュールと一致し得る。
【0052】
別の例では、前記抗CTLA-4抗体の薬物動態を監視し、前記投与を適応的に調整して、約200~300μg/mLのC-maxを維持する。前記Cmaxは、6~52週間維持され得る。濃度は対象の血液試料から測定してもよく、血液試料は血清試料又は血漿試料であってもよい。1つの例では、前記投与を適応的に調整して、約200~300μg/mL、約225~250μg/mL、約225μg/mL又は約250μg/mLのCmaxを維持する。前記投与を調整して、過度に高いCmaxを回避してもよく、この過度に高いCmaxは、200μg/mL、225μg/mL、250μg/mL又は300μg/mL、具体的には250μg/mL又は300μg/mLであり得る。1つの例では、Cmaxが過度に高い場合、前記対象に1若しくは複数の制限毒性が認められる場合、又は前記対象ががんを有しており、前記対象が固形腫瘍効果判定基準(RECIST)1.1基準による部分奏効若しくは完全奏効を達成する場合、用量レベルを漸減して前記対象に投与する。
【0053】
前記抗CTLA-4抗体を第2の治療剤と別個に、又はこれと混合して、併用投与し得る。治療剤は、抗がん剤であり得る。1つのでは、前記抗がん剤を前記抗CTLA-4抗体と同じ日に投与する。具体的には、前記抗がん剤は、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体であり得る。具体的な例では、前記抗がん剤はペンブロリズマブ(キイトルーダ)である。1つの例では、ペンブロリズマブを200mg/サイクルで21日(3週間)ごとに投与する。さらなる例では、前記第2の治療剤を前記抗CTLA-4抗体と同じ日に投与する。
【0054】
c.製剤
前記抗CTLA-4抗体を本明細書に記載の用量で製剤化し得る。1つの例では、製剤は、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、50mg/mL若しくは100mg/mL又はそれらの範囲内の量の前記抗CTLA-4抗体を含む。1つの例では、前記量は5mg/mLである。前記製剤は、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM若しくは40mM又は上記のうちの2つの量の範囲内の量のヒスチジン緩衝液を含み得る。1つの例では、前記量は20mMである。前記製剤はまた、7.0%(w/v)、7.1%(w/v)、7.2%(w/v)、7.3%(w/v)、7.4%(w/v)、7.5%(w/v)、7.6%(w/v)、7.7%(w/v)、7.8%(w/v)、7.9%(w/v)、8.0%(w/v)、8.1%(w/v)、8.2%(w/v)、8.3%(w/v)、8.4%(w/v)、8.5%(w/v)、8.6%(w/v)、8.7%(w/v)、8.8%(w/v)、8.9%(w/v)、9.0%(w/v)、9.1%(w/v)、9.2%(w/v)、9.3%(w/v)、9.4%(w/v)、9.5%(w/v)、9.6%(w/v)、9.7%(w/v)、9.8%(w/v)、9.9%(w/v)若しくは10.0%(w/v)又は上記のうちの2つの量の範囲内の量のα、α-トレハロース二水和物を含み得る。1つの例では、前記量は8.8%である。前記製剤は、0.01(w/v)、0.02(w/v)、0.03(w/v)、0.04(w/v)、0.05(w/v)、0.06(w/v)、0.07(w/v)、0.08(w/v)、0.09(w/v)若しくは0.10(w/v)又は上記のうちの2つの量の範囲内の量のポリソルベート80を含み得る。1つの例では、前記量は0.06%である。前記製剤は、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4若しくは6.5のpH又はその範囲内のpHであり得る。抗体を製剤化するためのヒスチジン緩衝液、α、α-トレハロース二水和物及びポリソルベート80と同等の成分が当技術分野で公知であり、それらも代替物として使用し得る。
【0055】
3.がん治療
前記組成物及びそのための投与レジメンを用いて、がんを治療し得る。がんの治療を必要とする対象のがんを治療する方法であって、前記対象に本明細書に記載の抗CTLA-4抗体を投与することを含み得る、方法が、本明細書で提供される。また、がん治療に使用するための前記抗CTLA-4抗体及びがん治療のための医薬の製造への前記抗CTLA-4抗体の使用も本明細書で提供される。前記方法、前記使用又は前記医薬は、本明細書に記載の投与レジメンを用いて前記抗CTLA-4抗体又は前記医薬を投与することを含み得る。
【0056】
前記がんは、固形腫瘍であり得る。前記がんは、進行性の局所進行性がん及び転移性がんのうちの1つであり得る。前記がんは、ステージIVのがんであり得る。前記対象は、標準治療ガイドラインが奏効しないか、又は標準治療ガイドラインに不耐性を示す者であってもよく、この標準治療は全米総合がん情報ネットワーク腫瘍学臨床診療ガイドライン(NCCNガイドライン)であり得る。前記がんは、抗PD-1/PD-L1治療に対して抵抗性又は耐性であり得る。前記耐性は、免疫療法後に疾患進行がみられる一次耐性又は獲得耐性であり得る。一次PD-1耐性は、抗PD-(L)1療法の開始から24週間以内の疾患進行と定義され得る。獲得PD-1耐性は、抗PD-(L)1療法の開始後24週間以上の病勢制御(CR、PR又はSD)と定義することができ、その後24週間後に進行している。前記がんは、免疫療法未治療であってもよく、例えばPD-L1腫瘍比率スコアが1%以上であることなどによって、PD-L1陽性であり得る。前記がんは、非小細胞肺がんであり得る。別の例では、前記がんは、卵巣がん、子宮頸がん、胃食道がん、肺がん又は卵巣がんである。
【0057】
前記対象は、18歳以上であり得る。前記対象は、局所療法に適していない転移性疾患又は局所進行性疾患を有し得る。前記対象はまた、確立された標準抗がん治療が奏効しなかったか、又はそのような治療に不耐性を示した者であってもよく、確立された標準がん治療は、所与の腫瘍タイプに対するペンブロリズマブ以外のものであり得る。前記対象は、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータスが2以下であり得る。
【0058】
前記がんは、異常で制御不能な細胞増殖に起因する新生物又は腫瘍であり得る。前記がんは、白血病又はリンパ腫であり得る。前記がんはまた、遠位部位に転移する可能性のある細胞を含み得る。
【0059】
前記がんは、がん腫、例えば膀胱がん、乳がん、結腸がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、胃がん、子宮頸がん、甲状腺がん若しくは皮膚がんなど;扁平上皮がん;リンパ系の造血器腫瘍、例えば白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫若しくはバーキットリンパ腫など;骨髄系の造血器腫瘍、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病若しくは前骨髄球性白血病など;線維肉腫若しくは横紋筋肉腫などの間葉起源の腫瘍;黒色腫、セミノーマ、奇形腫、神経芽細胞腫若しくは神経膠腫などの腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫若しくはシュワン細胞腫などの中枢神経系及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫若しくは骨肉腫などの間葉起源の腫瘍;又は黒色腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、セミノーマ、甲状腺濾胞がん若しくは奇形腫などの腫瘍、のうちの1つであり得る。
【0060】
がんを有する前記対象は、組織学的又は細胞学的に固形腫瘍及び進行性の局所進行性疾患又は転移性疾患の診断が確定されている者であってもよく、確立された標準抗がん治療が奏効しなかったか、又は不耐性を示した者であってもよく、確立された標準治療ガイドラインはNCCNガイドラインであり得る。前記腫瘍は、ペンブロリズマブが標準治療として承認されているタイプの腫瘍であり得る。前記がんを有する対象は、進行性がん又は転移性がんを有していてもよく、以前の全身がん治療後に疾患進行が認められてもよい。1つの例では、前記がんは、膵臓がん、トリプルネガティブ乳がん、上皮成長因子変異又は他の標的化可能な変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)、PD-1抵抗性NSCLC、頭頸部がん及び卵巣がんである。
【0061】
前記がんを有する対象は、進行性がん/転移性がんを有していてもよく、治療未経験、免疫療法(IO)未経験、又は抗プログラム細胞死タンパク質1若しくはそのリガンド(抗PD-(L)1)に対する抵抗性/抵抗性(R/R)であってもよい。前記がんは、IO未治療のNSCLC、腫瘍比率スコア(TPS)が1%以上のPD-L1陽性、IO R/RのNSCLC、IO未治療の黒色腫又はIO R/Rの黒色腫であり得る。前記がんは、再発性及び/又は転移性(R/M)腺様嚢胞がんであってもよく、このがんは、根治目的の外科手術にも放射線照射にも適さないものであり得る。
【0062】
前記がんは、黒色腫、転移性黒色腫、PD(L)-1抵抗性黒色腫、非小細胞肺腺がん、転移性NSCLC、ドライバー変異を有するNSCLC(例えば、EGFR/ALK変異又は他の標的化可能な変異)、PD-1抵抗性NSCLC、頭頸部がん、腺様嚢胞がん(R/Mであり得る)、扁平上皮がん、トリプルネガティブ(基底細胞型)乳がん、膵臓がん、腎細胞がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、結腸がん、肝細胞がん、他の固形腫瘍又は転移性結腸直腸がん(マイクロサテライト不安定性を有し得る)であり得る。
【0063】
前記がんは、アポトーシスの異常を原因とするものであり得る。前記がんは、濾胞性リンパ腫、1若しくは複数のp53変異を有するがん腫、乳房、前立腺若しくは卵巣のホルモン依存性腫瘍、家族性腺腫性ポリポーシスなどの前がん性病変又は骨髄異形成症候群であり得る。前記がんは、悪性若しくは増殖異常性(dysproliferative)の変化(化生若しくは異形成など)又は過剰増殖性の障害であってもよく、卵巣、膀胱、乳房、結腸、肺、皮膚、膵臓又は子宮に存在し得る。具体的には、前記がんは、肉腫、黒色腫又は白血病であり得る。
【0064】
本発明は、以下の非限定的な例によって示される複数の態様を有する。
【実施例】
【0065】
実施例1
抗CTLA-4抗体治療の安全性及び有効性
この実施例では、がんの治療、特に進行性固形腫瘍及び非小細胞肺がん(NSCLC)の治療に対する抗CTLA-4抗体ONC-392の安全性及び有効性を示す。
【0066】
適応症
パートA第IA相ONC-392単剤療法用量設定コホートには、進行性の局所進行性疾患又は転移性疾患のある患者であって、組織学的又は細胞学的に固形腫瘍の診断が確定されており、NCCNガイドラインなどの標準治療ガイドラインに従う確立された標準抗がん治療が奏効しなかったか、又は同治療に不耐性を示した患者を登録する。
【0067】
パートB第IA相併用用量設定コホートには、進行性の局所進行性疾患又は転移性疾患のある患者であって、組織学的又は細胞学的に固形腫瘍の診断が確定されており、腫瘍タイプはペムブロリズマブが標準治療として承認されているがんである、患者を登録する。治療未経験又はチェックポイント阻害剤免疫療法未経験若しくはチェックポイント阻害剤免疫療法抵抗性/耐性の患者を登録することができる。
【0068】
パートC第IB相ONC-392単剤療法コホートには、進行性がん/転移性がんがあり、以前の全身治療の後に疾患進行がみられる患者を、以下の単剤療法群、すなわち、膵臓がん(A群)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)(B群)、EGFR(上皮成長因子受容体)変異又は他の標的化可能な変異のある非小細胞肺がん(NSCLC)(C群)、PD-1抵抗性NSCLC(I群)、頭頸部がん(K群)、卵巣がん(L群)、A群、B群、C群、I群、K群及びL群で指定される腫瘍に適格ではない固形腫瘍又は同腫瘍以外の腫瘍タイプ(M群)に、登録する。
【0069】
パートC第IB相併用療法コホートには、進行性がん/転移性がんがあり、治療未経験又は免疫療法(IO)未経験又は抗プログラム細胞死タンパク質1治療若しくはそのリガンド(抗PD-(L)1)治療に抵抗性/耐性(R/R)の患者を、以下の併用療法群、すなわち、NSCLCIO未経験、PD-L1陽性で、PD-L1腫瘍比率スコア(TPS、Tumor Proportion Score)≧1%(D群)、NSCLC IO R/R(E群、PD-L1の状態を問わない)、黒色腫(Mel)IO未経験(F群)及びMel IO R/R(G群)に、登録する。
【0070】
試験デザインの概要
この試験は、以下の関連する3つのパートからなる。
【0071】
パートA(
図1)は、様々な組織構造の進行性固形腫瘍のある患者を対象とする、ONC-392単剤に関する用量設定急速用量漸増(rapid titration study)試験である。この試験の目的は、ONC-392単剤療法の推奨第II相用量(RP2D-M)を定めることである。
【0072】
パートB(
図2)は、ペムブロリズマブが標準治療(SOC)として承認されている様々な組織構造の進行性固形腫瘍を有する患者を対象とする、ペムブロリズマブと併用したONC392の推奨第II相用量(RP2D-C)を定めるための標準用量200mgのペムブロリズマブと併用したONC-392の用量設定試験である。
【0073】
パートC(
図3)安全性及び初期有効性を判定するための、単剤療法及びペンブロリズマブとの併用療法におけるONC-392の第IB相拡大コホート。その後のプロトコル修正に追加の治療群を含めてもよい。A群、B群、C群、I群、K群、L群、M群の単剤療法拡大コホートは、RP2D-Mが決定された後に開始することができる。併用療法を用いるD~G群の拡大コホートは、RP2D-Cが決定された後に開始することができる。
【0074】
A群:膵臓がんコホート、ONC-392単剤療法には、一次及び二次全身治療後に病勢進行が認められる、膨大部がんを含めた進行性膵臓がん/転移性膵臓がん患者を登録する。
【0075】
B群:TNBCコホート、ONC-392単剤療法には、チェックポイント阻害剤による免疫療法を含めた以前の全身治療後に病勢進行が認められる、進行性TNBC/転移性TNBC患者を登録する。
【0076】
C群:NSCLC単独コホート1、ONC-392単剤療法には、標的療法又はチェックポイント阻害剤を含めた以前の全身治療後に病勢進行が認められ、EGFR変異若しくはALK変異又は他の標的化可能な変異を有する、進行性NSCLC/転移性NSCLC患者を登録する。
【0077】
D群:NSCLCIO未経験コホート、ONC-392/ペムブロリズマブ併用療法には、治療未経験又は抗PD(L)1免疫療法未経験であり、PD-L1陽性である(PDL1 TPS≧1%)、進行性NSCLC/転移性NSCLCがん患者を登録する。
【0078】
E群:NSCLC IO R/Rコホート、ONC-392/ペムブロリズマブ併用療法には、PD-L1の状態を問わず、以前の抗PD-(L)1免疫療法に対してR/Rである、進行性NSCLC/転移性NSCLCがん患者を登録する。
【0079】
F群:黒色腫IO未経験コホート、ONC-392/ペムブロリズマブ併用療法には、治療未経験又はチェックポイント阻害剤免疫療法未経験である、進行性黒色腫/転移性黒色腫患者を登録する。以前の全身化学療法又は標的療法が許容される。
【0080】
G群:黒色腫IO R/Rコホート、ONC-392/ペムブロリズマブ併用療法には、抗PD-(L)1免疫療法に対してR/Rである、進行性黒色腫/転移性黒色腫患者を登録する。
【0081】
I群:NSCLC単独コホート2、ONC-392単剤療法には、化学療法又はチェックポイント阻害剤を含めた以前の全身治療後に病勢進行が認められ、EGFR変異もALK変異も他の標的化可能な変異も有さない、進行性NSCLC/転移性NSCLC患者を登録する。患者は、登録前の最後の治療として、抗PD-(L)1治療を単剤療法又は併用療法で受けていなければならない。以前に抗CTLA-4治療を受けていてもよい。
【0082】
K群:頭頸部がん、ONC-392単剤療法には、化学療法若しくはチェックポイント阻害剤又は免疫療法を含めた以前の全身治療後に病勢進行が認められ、HPV陽性であるかどうかを問わない、進行性扁平上皮がん(HNSCC)/転移性扁平上皮がん(HNSCC)及び腺様嚢胞がん以外の他の組織構造タイプを登録する。
【0083】
L群:卵巣がん、ONC-392単剤療法には、化学療法、標的療法又はチェックポイント阻害剤を含めた以前の全身治療後に病勢進行が認められる、原発性腹膜がん及び卵管がんを含めた進行性卵巣がん/転移性卵巣がんの患者を登録する。
【0084】
M群:固形腫瘍、ONC-392単剤療法には、上記の単剤療法群に適格ではなく、化学療法、標的療法又はチェックポイント阻害剤を含めた以前の全身治療後に病勢進行が認められる、進行性固形腫瘍/転移性固形腫瘍の患者を登録する。
【0085】
目的及び評価項目
【0086】
【0087】
【0088】
主要試験適格基準
この試験に適格であるためには、患者は18歳以上であり、転移性疾患又は局所療法に適さない局所進行性疾患を有し、所与の腫瘍タイプに対して、ペンブロリズマブ以外の確立された標準抗がん治療が奏効しなかったか、又はそのような治療法に耐容性を示さなかったか、又は治験担当医師の見解で、医学的な理由から特定の形態の標準的治療には不適格であると考えられた者でなければならないとものとした。患者は、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータスが2以下であった者でなければならない。以下の表に試験適格基準を示す。
【0089】
【0090】
投与量/投与形態、経路及び投与レジメン
単剤療法での用量漸増では、ONC-392の5種類の用量レベル、すなわち、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg及び10mg/kgを評価する。ONC-392は、0.1mg/kg、0.3mg/kg及び1.0mg/kgの用量レベルでは最小30分間、3.0mg/kgの用量レベルでは最小60分間にわたって静脈内注入の形で投与する。10mg/kgの用量レベルでは、初回投与には最小90分、その後の投与には最低60分の投与時間が必要である。ONC-392の投与間隔は21日間(3週間ごと[Q3W])とする。最大3mg/kgまでの患者内用量漸増を許容する。
【0091】
ONC-392とペンブロリズマブとの併用では、10mg/kgのONC-392の初回投与を最低90分間にわたって投与することを除いて、最初にONC-392を最低60分間にわたって静脈内注入の形で投与する。6.0mg/kgのONC-392用量レベルでは、静脈内注入を60分間にわたって実施する。次いで、ペンブロリズマブを1回当たり200mgに固定して最低30分間にわたって静脈内に投与する。ONC-392注入終了とペンブロリズマブ注入開始との間に少なくとも30分の間隔を設ける。投与時にONC-392とペンブロリズマブが混合してはいけない。ONC-392及びペンブロリズマブをともにQ3Wで投与する。
【0092】
患者が治療に耐容性を示す場合、免疫療法の固形腫瘍効果判定基準(immune Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(iRECIST)に基づいて患者に病勢進行(PD)が確認された後、試験治療(単剤療法及び併用療法の両方)をさらに4サイクル継続してもよい(任意)。
【0093】
試験治療(単剤療法及び併用療法の両方)は、許容できない毒性、患者による自発的な離脱又は1年(13サイクル又は17サイクル)経過のいずれかが最初に起きた時点で中止する(1年後の選択肢については5.7節を参照されたい)。
【0094】
パートA及びパートBでは、ONC-392の投与には、単剤でも、ペンブロリズマブとの併用でも、表3に示すバイタルサイン及び心電図(ECG)の監視が必要となる。
【0095】
パートA:ONC-392、Q3Wでの静脈内注入による5種類の用量レベル(0.1mg/kg、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg、10.0mg/kg)。3.0mg/kgまで許容する患者内用量漸増。RP2D-Mまでの用量設定。12か月で最大計17回の投与。
【0096】
パートB:Q3Wでの静脈内注入による200mg/投与のONC-392+ペンブロリズマブ。RP2D-Cまでの用量設定。12か月で最大計17サイクル。
【0097】
パートC:A群~C群及びI群、K群、L群、M群。以下の投与スケジュールに従う静脈内注入によるRP2D-MでのONC-392。治療期間を最大1年とする。
【0098】
パートC:D群~G群。パートB:Q3Wでの静脈内注入によるRP2D-CのONC-392+200mgのペンブロリズマブ。12か月で最大計17サイクル。ONC-392のRP2D-Cは6mg/kgに決定されている。
【0099】
計画された患者数
【0100】
パートA:RP2D-Mを特定するために、最小10例、最大30例の患者をONC-392単剤療法に登録する。
【0101】
パートB:RP2D-Cを特定するために、最小6例、最大36例の患者をONC-392とペンブロリズマブの併用療法に登録する。1mg/kgで患者6例のうち3例以上に用量制限毒性がみられる場合、用量漸減を中止する。
【0102】
パートC:拡大コホート試験をアダプティブ試験デザイン(adaptive trial design)で実施する。各コホートに対して無益中止の規則を適用する。最大30例の有効性評価が可能な患者を登録するA群を除く各拡大群に最小15例、最大30例の患者を登録する。
【0103】
パートA:ONC-392単剤
パートA第IA相試験は、21日ごと(Q3W)の静脈内注入による単剤療法の形で、ONC-392の5つの所定の用量レベル、すなわち、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg及び10mg/kgまで実施した。試験には、加速用量漸増(accelerated titration)デザインを用いた。0.1mg/kg、0.3mg/kg、1.0mg/kgを投与してAEがみられなかった第1の患者には、患者内用量漸増を試験した。この患者は、3.0mg/kgに増量し、この用量で3サイクル投与して、AEがみられなかった。第2の患者は、0.3mg/kgで開始してAEがみられなかった。次いで、以下のプロトコルにおいて、登録を3.0mg/kg及び10.0mg/kgのレベルの3+3デザインに切り替えた。
【0104】
パートB:NSCLCを対象とするONC-392とペンブロリズマブの併用
パートBは、NSCLC患者の2つのコホートを対象とする、ONC-392とペンブロリズマブとの併用に関する第IA相用量漸増/漸減試験とそれに続くRP2D-Cでの第IB相拡大部分としてデザインした。
【0105】
ペンブロリズマブの用量は、200mg/サイクルで21日ごと(Q3W)の投与に固定した。
【0106】
パートB第IA相試験
第IA相試験は、RP2D-Mよりも一段階低い用量のONC-392及びペンブロリズマブ200mgで開始し、最初に患者6例を登録するものとした。ONC-392の用量は、以下のシナリオに従って調整するものとした:
【0107】
(1)患者6例中1例に用量制限毒性(DLT)が発現した場合、RP2D-Mよりも一段階低い用量をRP2D-Cとするものとした。
又は、
(2)患者6例中0例にDLTが発現した場合、追加の患者6例をONC-392の用量レベルRP2D-Mに登録するものとした。追加の患者6例中1例以下にDLTが発現した場合、RP2D-MをPR2D-Cとするものとした。
又は、
(3)患者6例を登録する前にDLTが2例に発現したとき、その用量で治療した患者6例のうちDLTが発現する患者が1例以下になるまで、ONC-392の用量を次の用量レベルに漸減するものとした。この用量レベルをRP2D-Cと定めた。用量レベル1(0.1mg/kg)が上記の規則を用いた際に毒性が強すぎることになった場合、薬物の併用をそれ以上探索することを中止するものとした。
【0108】
パートB第IB相試験
パートB第IB相拡大コホートはともに、進行性NSCLCの患者を対象にデザインされ、免疫療法未経験コホート及び抵抗性/耐性コホートを含むものであった。パートB第IA相においてRP2D-Cで治療した患者6例は、有効性について評価可能であった。拡大コホートの目的の1つは、RP2D-CのONC-392とペンブロリズマブとの併用に関するより包括的な安全性プロファイルに到達することであった。2つの拡大コホートに登録した患者の安全性を確保するために、ポコック型の境界を用いて、任意の時点で過剰な毒性を理由に早期に中止できるようにした。DLTの発生率がθ=20%よりも有意に高い場合にはいかなる時点でも試験を中止するものとした。
【0109】
抗PD(L)1免疫療法未経験集団では、PD-L1陽性(PD-L1 TPS≧1%又はペンブロリズマブについて別途示されるもの)の進行性NSCLC患者を試験に含めるものとした。被験者18例を第IB相拡大コホートに登録するものとした。
【0110】
抗PD(L)1抵抗性/耐性集団では、疾患進行が認められた、又は4サイクル以上後に抗PD(L)1を含む(単剤療法若しくは併用療法、又は化学療法と組み合わせた免疫療法を含めた)治療に耐容性を示さなかった、進行性NSCLCの患者をこの試験に含めるものとした。以前に抗CTLA-4治療を受けていてもよいものとした。irAEの既往歴はあるが回復していた者でもよいものとした。被験者18例を第IB相拡大コホートに登録するものとした。
【0111】
PD-(L)1治療未経験コホートと抵抗性/耐性コホートの奏効率は、最初の治療から6か月後に別個に求めるものとした。
【0112】
パートAの安全性に関する結果
ONC-392試験のパートAで評価した患者の人口統計を以下の表に示す。
【0113】
【0114】
以下の表に、治療下で発現した有害事象(TEAE)のまとめを示す。
【0115】
【0116】
これらの結果は、両用量のONC-392が全般的に耐容性に優れていたことを示している。グレード3の膵炎及び大腸炎のirAEは管理可能であり、可逆的なものであった。単剤療法のPR2Dは10mg/kg Q3Wであった。ONC-392単剤療法の最良の効果を
図4に示す。
図5は、腫瘍組織バイオマーカー分析の結果を示す。上側のパネルは、3mg/kgのONC-392を7サイクル投与したNSCLC患者の結果を示し、CD8、CD4、Foxp3及び腫瘍細胞がそれぞれ、赤色、緑色、赤紫色及び青緑色で示されている。左下のパネルは、卵巣がん患者の治療前の結果を示しており、右下のパネルは、10mg/kgのONC-392で4サイクル治療した卵巣がん患者の結果を示しており、CD8、CD4、Foxp3及び腫瘍細胞がそれぞれ、赤色、緑色、赤紫色及び青緑色で示されている。
【0117】
これらの結果は、ONC-392が耐容性に優れていたことを示している。最長の投与は、3mg/kgで11サイクルに及んだ。DLT観察期間中、いずれの用量でもDLT及びグレード3/4のAEはみられなかった。最大耐量に達することはなかった。単剤療法の推奨第2相用量は10mg/kgであると決定された。以下のグレード3/4のAE、すなわち大腸炎/低カリウム血症(2)及び膵炎(1)は、10mg/kgのONC-392で3サイクル又は4サイクルの治療後に3例の患者にみられた。これら3例の患者のうち、2例に未確定の完全奏効が認められ、1例に腫瘍量の縮小を伴う病勢安定が認められた。その他の薬物関連AEはグレード1/2であり、3例以上の患者にみられたAEには、注入に関連する諸反応、掻痒、疲労及びTSH増大が含まれていた。
【0118】
臨床結果
さらに、患者10例中6例に有益な活性が観察された。10mg/kgのONC-392で治療した患者6例のうち2例に完全奏効が認められ、10mg/kgのONC-392で治療した患者6例のうち2例に腫瘍量の有意な減少又は腫瘍中のT細胞活性の増強を示すバイオマーカーを伴う病勢安定が認められ、3mg/kgで治療した患者4例のうち2例に7か月を超えた時点で病勢安定(SD)が認められた。最初の腫瘍評価では、患者10例中7例に病勢安定が観察され、患者10例中1例に部分奏効が観察された。さらに、NSCLCを有するPD-(L)1抵抗性/耐性患者3例に臨床的改善が観察された(完全奏効が認められた患者1例、24週を超えた時点で病勢制御が認められ、手術に適格となった患者1例及び8週間の時点で病勢安定が認められ、治療を継続している患者1例)。
【0119】
安全性及び有効性に関する結論
ONC-392は全般的に安全で耐容性に優れていた。治療関連AEは管理することが可能であった。用量10mg/kgで最大耐量に達することはなかった。ONC-392は治療的抗腫瘍活性を示した。ONC-392は、CTLA-4の再利用を維持し、リソソーム分解を回避する最初のpH感受性モノクローナル抗体として、有効性の改善及び毒性の低下をもたらすことにより、CTLA-4標的化のリスク/利益比を根本的に変化させ得る。
【0120】
実施例2
様々な用量で投与した抗CTLA-4抗体の臨床的安全性及び有効性に関する結果
この実施例では、10mg/kg Q3Wで2サイクル投与した後、6mg/kg Q3Wで最大12か月間投与したONC-392の安全性及び有効性を示す。このレジメンは、進行中のONC-392試験の有効性及び安全性に関する情報、PK並びに曝露-応答解析に基づいて選択されるものである。
【0121】
ONC-392単剤療法の臨床的安全性及び有効性に関する結果
ONC-392単剤療法の以下の4つの投与レジメンを試験した。
1)黒色腫コホート(J群)には6mg/kg Q3W、
2)膵臓がんコホート及びHNSCCコホート(A群及びK群)には10mg/kg Q3W、
3)進行性固形腫瘍コホート(M群)には10mg/kg Q4W、
4)PD-1/PD-L1耐性NSCLCコホート及び卵巣がんコホート(I群及びL群)には、10mg/kg Q3W×2、次いで、6mg/kg Q3W。
【0122】
試験した異なる治療レジメンでONC-392単剤療法を実施した患者153例全例の安全性に関するデータは、安全であり、全般的に耐容性があるように思われた。表5に、ONC-392単剤療法を受けたNSCLC患者における安全性及びORRのまとめを示す。レジメン番号3(10mg/kg Q4W)の患者8例は、PD-1/PD-L1阻害剤療法とそれに続く化学療法を受けたことのあるNSCLC患者であった。同患者らには、試験に登録する前に、化学療法で疾患進行が認められた。そのうち2例が治療を継続しており、この患者群では腫瘍応答は認められなかった。提示された治療投与レジメンであるレジメン番号4でONC-392を受けている患者34例は、2つの群の患者、すなわち、C群のドライバー変異を有する患者12例及びI群のPD-1/PD-L1耐性NSCLCを有する患者22例であった。PD-1/PD-L1耐性NSCLC患者で腫瘍応答の有効性が認められた。
【0123】
NSCLC患者でのレジメン番号2とレジメン番号3とレジメン番号4の安全性データを比較した表5に示すように、レジメン番号4(10mg/kg Q3W×2、次いで、6mg/kg Q3W)は、グレード3以上のTRAE(12%)、治療関連SAE(12%)及び試験治療中止に至るTRAE(6%)の発生率が最も低かった。
【0124】
【0125】
重篤なTRAE及び臨床活性の割合が低いことから、提示された適応症に対してはレジメン番号4が支持される。この用量選択は、以下に概説するさらなる臨床薬理学的解析によってさらに支持される。
【0126】
母集団の薬物動態に関する結果
ONC-392の単剤療法を受けている患者57例及びペンブロリズマブとの併用療法を受けている患者13例を含む患者70例から得た420の測定可能なPK観察結果から母集団PKモデルを構築した。
【0127】
方法
母集団PK
データソース
2022年7月8日をカットオフ日とするONC-392のPKデータは、静脈内(IV)経路により投与した0.1~10mg/kgの範囲の用量をカバーするものであった。データセットには、様々ながんのタイプの患者71例から得た446例のPK試料が含まれる。26例のPK試料については、1)外れ値である、2)初回投与からの経過時間が負である投与前試料(pre-dose samples with negative time since first dose)、3)サンプリング時間の記録若しくは投与に関する情報が欠落しているか又はそれらが誤っている可能性がある、という理由のうちの1つにより、解析から除外した(サブジェクト001~130)。ONC-392の単剤療法を受けている患者57例及びペンブロリズマブとの併用療法を受けている患者13例を含む患者70例から得た420の測定可能なPK観察結果から母集団PKモデルを構築した。
【0128】
ソフトウェア及び方法
非線形混合効果分析のためのソフトウェアパッケージである非線形混合効果モデリングソフトウェア(NONMEM(登録商標)バージョン7.4;、アイコン社、米国メリーランド州ハノーバー)を母集団PKモデリング及びシミュレーションに用いて、その後のE-R解析のための曝露量測定基準を導出した。R(バージョン4.0.1)を診断プロット及び全プロットの視覚的確認に用いた。
【0129】
非線形混合効果モデルを、用量、時間及び他の被験者-レベル共変量の関数として、ONC-392の濃度-時間データに適合させた。1つ又は2つのコンパートメント構造モデル、すなわち、線形的又は経験的標的媒介性薬物消失(target mediated drug disposition)(TMDD)モデルを検証した。
【0130】
母集団PKモデルにおいて、最初に共変量-パラメータ関係をグラフで評価し、次いで潜在的な共変量を直接検証した。モデル進化は、適合度(GOF)プロット、目的関数値(OFV)、PKパラメータ推定の精度及び妥当性、並びに視覚的事後予測性能評価(VPC)に基づくものとした。
【0131】
ベースライン共変量のまとめ
ベースライン連続共変量及びカテゴリー共変量のまとめを表6及び表7に示す。
【0132】
【0133】
【0134】
母集団PKに関する結果
ONC-392のPKは、一次消失を伴う2コンパートメントモデルによって最もよく表される。ONC-392の全身クリアランス(CL)は182mL/日と推定され(表8)、最終t1/2は25.7日と推定された。ベースラインのアルブミンはCLの有意な共変量として特定され、アルブミンレベルの増大とCLの減少との間に相関がみられる。体重は、中心容積(V1)及び末梢容積(V2)を含む容積項の有意な共変量として特定され、体重の増加とV1及びV2の増加との間に相関がみられる。年齢、性別、人種、AST、ビリルビン、クレアチニンクリアランス及びがんのタイプがONC-392のPKに及ぼす影響は検出されなかった。これらの共変量はいずれも、臨床的に有意な意義があるとは考えられなかった。注目すべきことに、PD-1との同時化学療法は有意なPK共変量ではなかった。
【0135】
【0136】
この臨床試験のパートCコホート拡大では、4種類の治療レジメンのうちの1つを受けている患者で、およそのピーク及びトラフ時間に少数回のPKサンプリングを実施した。
【0137】
最終モデルの適合度(GOF)は、モデルフィッティングが妥当であり、観察された予測とモデル予測との間に十分な一致がみられた。残差プロットは、モデルの誤設計(mis-specification)を示さなかった(
図6)。視覚的事後予測性能評価(VPC)の結果は、最終モデルの適切な予測可能性を示した(
図7)。
【0138】
様々な用量レベルのONC-392で観察されたPKプロファイルから、提案された10mg/kg Q3W×2+6mg/kg Q3Wの投与レジメンによって、全身濃度が2回目の投与後に定常状態レベルに達し、投与期間を通して高いトラフレベルが維持される(
図8)ことがわかり、この値は、ONC-392のKd(1.95μg/mL、ヒトCTLA-4へのインビトロ結合に基づく)よりもはるかに高く、腫瘍環境中での適切なONC-392曝露量を確保してONC-392の抗腫瘍活性を最大にするものである。
【0139】
曝露-応答(E-R)解析
曝露量測定基準の導出
ONC-392の最終母集団PKモデルを用いて、事後ベイズ推定値に基づいて濃度-時間プロファイルを予測した。モデルでシミュレートした定常状態曝露量をPK測定基準として用いて、曝露量と有効性/安全性の転帰との間の予備的関係を評価した。試験ONC-392-001の予備的結果から得られたPK(N=70)を有する患者のデータを有効性及び安全性の解析に用いる。曝露データを有する患者70例のうち、57例がONC-392の単剤療法を受け、そのうち17例がNSCLC患者であった。
【0140】
曝露-応答(E-R)解析に用いたデータを表9にまとめる。
【0141】
【0142】
患者数が限られているため、この予備的ER解析の結果は慎重に解釈する必要がある。
【0143】
ONC-392単剤療法の患者における曝露-応答関係
腫瘍評価のデータは、単剤療法を受け、PKデータを有していた患者36例で得られるものである。これらの患者のうち8例に臨床効果(PR又はCR)が認められた。ORRの確率は、曝露量の増大とともに高くなるように見える(C
min,ss、C
max,ss及びAUC
ss)(
図9A~
図9B)。腫瘍環境中で制御性T細胞をより効率的に排除するには、ONC-392のCmaxを高める必要があるとする見解の通り、このような相関がC
max,ssに最も重要なものであった。
【0144】
曝露と安全性との関係も検討した。安全性データは、ONC-392単剤療法を受け、PKデータを有していた患者57例で得られるものである。検証した曝露量パラメータ(C
min,ss、C
max,ss又はAUC
ss)に関係なく、薬物関連TEAEの頻度又は重症度と定常状態曝露量との明確な相関は観察されず(
図10A~
図10B)、検討した曝露量範囲内では曝露量が重篤なTRAEの決定因子とはならないことが示唆されている。
【0145】
NSCLC患者における曝露-応答関係
腫瘍評価のデータは、単剤療法を受け、PKデータを有していたNSCLC患者12例で得られるものである。曝露-応答解析では、統計的に有意な関係はみられなかったが、統計的に有意ではないものの、曝露量(C
max,ss)の増大とともにORRの確率が高くなる傾向が示唆された(
図11A~
図11B)。AUCssについてはあまり明確でない傾向がみられ、C
min、ssについては何ら関係が観察されなかった。
【0146】
しかし、NSCLC患者(N=17)では、定常状態曝露量の高い患者ほど、グレード3以上のTRAEが認められる確率が高くなる傾向がある(
図12A~
図12B)。10mg/kg Q3W×2、次いで6mg/kg Q3Wという同じONC-392レジメンを受けたI群(PD(L)1抵抗性NSCLC)及びL群(卵巣がん)の患者から得た安全性データを比較したところ、NSCLC患者は卵巣がんコホート(グレード3が40%、グレード4が3.3%、グレード5が0%、2022年8月31日をカットオフ日とする)と比較して、グレード3以上のTRAEの発生率が低かった(グレード3が13.0%、グレード4~グレード5が0%)。NSCLCから得たデータ(
図12A~
図12B)と、様々な腫瘍タイプを有するプールされた患者57例から得たデータ(
図10A~
図10B)との間の差は、同様に曝露量の低いNSCLC患者と比較したとき、プールされたデータセット(例えば、他のタイプのがんの患者)においてC
max,ssが300μg/mL未満の患者の中ではTRAEの割合が高いことに起因する。NSCLC患者はより低い曝露量で重篤なTRAEが発現しにくいという事実は、この集団にTRAEが発現するには、より高い曝露量が必要であるとする見解と一致する。
【0147】
概要
この臨床試験のパートCコホート拡大では、4種類の治療レジメンのうちの1つを受けている患者で、およそのピーク及びトラフ時間に少数回のPKサンプリングを実施した。様々な用量レベルのONC-392で観察されたPKプロファイルから、提案された10mg/kg Q3W×2+6mg/kg Q3Wの投与レジメンによって、全身濃度が2回目の投与後に定常状態レベルに達し、ONCC-392のKd(1.95μg/mL、ヒトCTLA-4へのインビトロ結合に基づく)のほぼ40倍のトラフレベル中央値が維持されることがわかった。
【0148】
特に、10mg/kg Q3W又は初回負荷量10mg/kg+維持量6mg/kg Q3Wのいずれかの患者での予備的有効性データが有望である。奏効例はいずれも、1回目又は2回目の腫瘍評価の際にPR又はCRが認められ、大部分の奏効例が1回目の腫瘍評価で特定された。このことは、初期の曝露量がONC-392による抗がん治療に重要な役割を果たしている可能性があることを示唆するものである。したがって、初期の治療サイクルで腫瘍中に適切なONC-392曝露量を確保してONC-392の抗腫瘍活性を最大にするために、10mg/kg Q3W×2という高い初回負荷量を選択した。同時に、維持量6mg/kg Q3Wは、長期間の使用にONC-392の有効性を維持し、毒性を最小限に抑えるのに役立つ。
【0149】
Cmaxが約225μg/mlに達するまでORRの確率の有意な増加は観察されず、このレベルは、レジメン番号2~レジメン番号4によっては直ちに達成可能であるが、用量拡大で用いたレジメン番号1によってはかろうじて達成可能であり、用量漸増で用いた3mg/kgによっては達成不可能であることは注目に値する。
【0150】
安全性データ及びPKデータの両方を有するNSCLC患者(N=17)では、より高い定常状態曝露量(C
max、ss)を示す患者は、グレード3以上のTRAEを有する確率も高い(
図8A~
図8B、下側パネル)。NSCLC患者には曝露量が低いほど重篤なTRAEが発現しにくいという事実は、維持量のより低いレジメン番号4が長期間にわたってより優れた患者安全性を可能にし得ることを示唆している。
【0151】
この臨床試験の用量漸増パート及び用量拡大パートでは、ONC-392単剤療法の安全性及び有効性を、曝露量レベルを増大させる5種類の異なる用量/投与レジメン、すなわち、3mg/kgQ3W、6mg/kg Q3W、10mg/kg Q3W、10mg/kg Q4W及び10mg/kg×2、次いで6mg/kg Q3Wで約130例の患者で評価した。曝露-応答モデリングの結果を含めた臨床結果及び薬理学データに基づいて、10mg/kg×2、次いで6mg/kgQ3Wを至適用量であるとみなし、患者を対象とする第3相開発段階のために選択した。投与レジメンの理論的根拠を以下に要約する。
【0152】
曝露/用量応答は、ORRの確率がCmaxと最もよく相関すること、Cmax-ORR間の関係を示す曲線の変曲点に基づいて、Cmaxが約225μg/mlに達した後にORRの確立が急速に増大する勾配が生じたことを示唆している。表10に示されるように、この閾値は、開始用量が10mg/kgである場合には直ちに達成可能であるが、3mg/kg Q3Wでは決して達成できない。実際、3mg/kgでは、最大9サイクルの長期投与及び最良の安全性プロファイルにもかかわらず、4例の患者には臨床効果が観察されなかった。6mg/kg Q3Wでは、このレベルに達するのに6サイクルかかる。全身免疫療法が奏効しなかった患者は予後不良であったため、潜在的に有効な用量を達成するのにほぼ4か月遅れるレジメンが意義のある臨床的有益性をもたらす可能性は低い。
【0153】
【0154】
治療活性をもたらすことが予想されるレジメン番号2~レジメン番号4のうち、レジメン番号4を選択したのは、臨床データ及びPKに基づいている。曝露量が最も高くなる10mg/kg Q3Wのレジメン2は、臨床活性を示したが、他の用量/レジメンとの比較で最も高い毒性も示した。このため、10mg/kg Q3Wを受けた患者のうち、この試験のパートA(用量漸増)の患者の50%(6例中3例)及びパートC用量拡大の患者の39%(41例中16例)にグレード3又はグレード4のTRAEが発現した。このレジメンで治療したPD(L)1抵抗性NSCLC患者2例中2例にグレード3のTRAEが発現した。このため、安全性への懸念からレジメンを選択しなかった。
【0155】
10mg/kgで開始する他の2種類のレジメン、すなわちレジメン番号3(10mg/kg Q4W)及びレジメン番号4(初回負荷量10mg/kg Q3W×2、次いで維持量6mg/kg Q3W)のうち、早く、より高いCmaxが達成されるのはレジメン番号4の方だが、より持続的な曝露量がもたらされるのはレジメン3による方である。両レジメンとも、全タイプのがんで同等の臨床活性(ORR13~14%)がみられた。レジメン4では、PD(L)-1抵抗性NSCLC患者での1回目及び2回目の腫瘍評価で、評価可能な患者10人にORR30%及びDCR70%が得られたことは注目に値する。これらのデータは、10mg/kg Q3W×2とそれに続く6mg/kgという用量が、意義のある臨床的有益性をもたらす可能性があることを示唆している。この臨床試験から得た予備的結果によれば、腫瘍応答は主に2サイクル又は3サイクル後の最初の腫瘍評価で認められ、10mg/kgの最初の2回の投与が重要であり、応答を得るために必要であり得ることが示唆される。
【0156】
さらに重要なのは、提案された適応症に対するレジメン番号4の安全性は、グレード3のTRAEが発現したNSCLC患者が34例中わずか4例(11.8%)であり、グレード4又はグレード5のTRAEが発現した患者が皆無であった(表6)ことから、きわめて好ましいように思われる。NSCLCでのC
maxと重篤なTRAEのリスクとの間の相関(
図8A~
図8B)によれば、レジメン番号3のもたらす持続的な高い曝露量が、長期的にみて安全面のリスクを増大させ得る。
【0157】
結論すると、予備的曝露応答解析の結果並びに臨床的な安全性及び有効性に関する所見は、10mg/kg Q3W×2とそれに続く6mg/kg Q3Wの投与レジメンが最良のリスク/利益比をもたらす可能性が高いことを示唆している。
【配列表】
【国際調査報告】