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特表2024-540157高輝度レーザ生成プラズマ源,ならびに放射生成および収集方法
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  • 特表-高輝度レーザ生成プラズマ源,ならびに放射生成および収集方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】高輝度レーザ生成プラズマ源,ならびに放射生成および収集方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G03F7/20 503
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525571
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2022080752
(87)【国際公開番号】W WO2023079042
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】2021132150
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(31)【優先権主張番号】2021136734
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(31)【優先権主張番号】17/569,737
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521466910
【氏名又は名称】アイエスティーイーキュー ビー.ヴィー.
(71)【出願人】
【識別番号】323002842
【氏名又は名称】アイエスティーイーキュー グループ ホールディング ビー. ヴィー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】エルウィー・サミル
(72)【発明者】
【氏名】グルシュコフ・ヂェニース・アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】イワノフ・ウラジミール・ヴィタリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフォロヴ・オレーグ・ボリーソヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】コシェレブ・コンスタンチン・ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クリヴコリトフ・ミハイル・セルゲーヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クリフツン・ヴラジミル・ミハイロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ラシ・アレクサンドル・アンドレーエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】メドヴェージェフ・ヴャチェスラフ・ヴァレリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィノクードフ・アレクサンドル・ユリエヴィチ
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197FA01
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA20
2H197GA24
(57)【要約】
レーザ生成プラズマ光源は,真空チャンバ(1),集光レーザビーム(5)と一緒に相互作用ゾーン(4)にターゲット(3)を供給する回転ターゲットアセンブリ(2)を備えている。上記ターゲットはターゲットアセンブリの環状溝の表面上の溶融金属層である。短波長放射の出力ビーム(7)が相互作用ゾーンを出てデブリ軽減手段を経て光コレクタ(8)に向かう。ターゲットの線速度は好ましくは100m/s以上であり,相互作用ゾーンのターゲットの線速度のベクトルが相互作用ゾーンおよび回転軸(6)を通る平面(18)の片側に向けられ,集光レーザビームおよび出力ビームは上記平面の他方側に位置決めされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心力の作用の下,回転ターゲットアセンブリの回転軸に面するターゲット表面を備える回転ターゲットアセンブリに設けられる環状溝の表面上にターゲットを溶融金属層として形成し,デブリ軽減手段を通過する集光レーザビームによって所定のパルス繰返し率で上記ターゲットを照射し,上記集光レーザビームと上記ターゲットの間の相互作用ゾーンにレーザ生成プラズマを生成し,短波長放射の出力ビームを出射してデブリ軽減手段を通じて光コレクタに向かわせる,放射を生成しかつ収集する方法であって,
上記ターゲットが十分に高い線速度で回転され,これによって上記相互作用ゾーンから放出されるデブリ粒子の液滴部分の大部分と上記相互作用ゾーンのターゲットの線速度のベクトル( )が上記相互作用ゾーンおよび上記回転軸を通る平面の片側に向けられ,上記ターゲットの照射およびレーザ生成プラズマからの放射の収集が上記集光レーザビームおよび出力ビームが上記平面の他方の片側に位置するように提供される,
方法。
【請求項2】
上記相互作用ゾーンからのデブリ排出率の空間分布が推定され,上記集光レーザビームおよび上記短波長放射ビームの両方の通過方向が,上記デブリ排出率が残りの空間領域よりも低い空間領域に選択される,
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記線速度が100m/s以上の高い線速度である,請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記集光レーザビームおよび上記短波長放射ビームの両方が通過する空間領域が,上記空間領域におけるデブリ粒子の液滴部分の排出率が上記デブリ粒子の液滴部分の最大排出率の少なくとも10倍未満となるように選択される,
請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
上記短波長放射が縦続に配置された2つの楕円状ミラーユニットから構成される光コレクタによって収集され,上記光コレクタは,発光プラズマ領域のイメージを第2の楕円状ミラーユニットの第2の焦点に伝送するものであり,上記第1の楕円状ミラーユニットの第2の焦点が上記第2の楕円状ミラーユニットの第1の焦点に位置している,
請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
上記光コレクタが上記発光プラズマ領域のイメージを歪みなしに伝送するものであり,および/または上記イメージのスケールファクタが上記2つの楕円状ミラーユニットの設計によって決定されるものである,
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記デブリ軽減が上記光コレクタへの上記短波長放射の全経路に沿って提供される,
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
上記デブリ軽減が,保護ガス流,磁気軽減,フォイルトラップ,デブリシールド,60%以上の透過度を持つ短波長放射の大部分を透過する膜,からなるグループから選択される一または複数のデブリ軽減技術によって提供される,
請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
上記ターゲットが3000g以上の遠心加速度で回転され,上記gは重力加速度であり,上記ターゲット表面が上記回転軸に平行である,
請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
真空チャンバ,ターゲットを相互作用ゾーンに供給するように構成される回転ターゲットアセンブリであって,上記ターゲットが上記回転ターゲットアセンブリの回転軸に面するターゲット表面を備える上記回転ターゲットアセンブリに設けられる環状溝の表面上の溶融金属層である,回転ターゲットアセンブリ,光コレクタ,およびデブリ軽減手段を備え,上記デブリ軽減手段が上記ターゲット上に集光されるパルスレーザビームを通過させ,かつ集光レーザビームとターゲットとの間の相互作用ゾーンを出る短波長放射の出力ビームを光学コレクタに通過させるように構成される,レーザ生成プラズマ光源であって,
上記回転ターゲットアセンブリが上記ターゲットを所定の線速度で回転させるように構成され,上記相互作用ゾーンのターゲットの線速度のベクトル( )が上記相互作用ゾーンおよび上記回転軸を通る平面の片側に向けられ,上記集光レーザビームおよび上記出力ビームが上記平面の他方側に位置決めされている,
光源。
【請求項11】
上記ターゲットの速度が100m/s以上である,請求項10に記載の光源。
【請求項12】
上記回転ターゲットアセンブリが少なくとも3000gの遠心加速度で,上記ターゲットの表面が上記回転軸に平行であるように上記ターゲットを形成するように構成されている,
請求項10または11に記載の光源。
【請求項13】
上記光源が,上記出力ビームの経路に沿って縦続に配置された2つの楕円状ミラーユニットを備える光コレクタをさらに備え,および/または上記デブリ軽減手段が上記光コレクタへの短波長放射の全経路に沿って配置されている,
請求項10から12のいずれかに記載の光源。
【請求項14】
上記相互作用ゾーンが上記第1の楕円状ミラーユニットの第1の焦点に配置され,第2の楕円状ミラーユニットの第1の焦点が上記第1の楕円状ミラーユニットの第2の焦点に配置されている,
請求項13に記載の光源。
【請求項15】
上記第2の楕円状ミラーユニットが上記第1の楕円状ミラーユニットよりも数倍,2から15倍小さく,上記光コレクタが0.8から1.2の間,好ましくは1に近い倍率を持つ,
請求項13または14に記載の光源。
【請求項16】
上記コレクタミラーの表面の材料がMo,Ru,Rh,Pd,U,Ni,W,Fe,Nb,Al,Si,CoおよびBNからなるグループから選択される,
請求項13から15のいずれかに記載の光源。
【請求項17】
上記デブリ軽減手段が上記楕円状ミラーユニット間の保護ガス流を含む,
請求項13から16のいずれかに記載の光源。
【請求項18】
楕円状ミラーユニットのそれぞれが少なくとも2つの楕円状ミラーの入れ子セットを備えている,
請求項13から17のいずれかに記載の光源。
【請求項19】
上記デブリ軽減手段が,集光角の外側において上記光コレクタの軸上に配置されたデブリシールドを含む,
請求項10から18のいずれかに記載の光源。
【請求項20】
上記デブリ軽減手段が,保護ガス流,磁気軽減,フォイルトラップ,ならびにカーボンナノチューブ,Ti,Si,Zr,Si,およびBNから構成されるグループに属する材料製の膜,から構成される一または複数の技術によって提供され,上記膜が好ましくは上記短波長放射に対して透過性を持つ,
請求項10から19のいずれかに記載の光源。
【請求項21】
上記膜が保護ガス流をもたらす異なる圧力を有する容積を分離するガスロックを提供するように構成されている,
請求項20に記載の光源。
【請求項22】
上記光コレクタが,微小角入射ミラー,好ましくは2つの微小角入射楕円状ミラーユニットを備えている,
請求項10から21のいずれかに記載の光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は2020年11月19日出願の米国特許出願No.16/952,587の一部継続出願であり,この出願は2020年1月27日出願の米国特許出願No.16/773,240の一部継続出願であり,この出願は2019年8月8日出願の米国特許出願No.16/535,404の一部継続出願であり,この出願は2017年11月24日出願のロシア特許出願RU2017141042の優先権を伴う2018年8月14日出願の米国特許出願16/103,243の一部継続出願であり,本願はまた2021年11月4日出願のロシア特許出願RU2021132150の優先権を主張するものであり,これらのすべてについて参照によってその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
この発明は,約0.4~200nmの波長における軟X線(soft X-ray),極紫外線(extreme ultraviolet)(EUV)および真空紫外線(vacuum ultraviolet)(VUV)放射を生成するように設計され,高効率デブリ軽減(highly effective debris mitigation)を提供して光源およびその統合機器の長期動作を保証する,高輝度レーザ生成プラズマ光源(high brightness laser-produced plasma (LPP) light sources),ならびに光コレクタの遠隔焦点への収差のない発光プラズマ領域のイメージ(像)の透過を伴う大きな立体角の放射発生および収集方法(methods for generating and collecting radiation in a large solid angle with transmission of the image of emitting plasma region without aberrations into the remote focus of an optical collector)に関する。
【背景技術】
【0003】
顕微鏡,材料科学,生物および医療診断,材料試験,結晶およびナノ構造解析,原子物理学,リソグラフィなど多くの分野において,X線,EUV,VUVを含む短波長放射(短波長光)を生成(発生)する高輝度光源が使用されている。このような光源は,現代のハイテク生産における分析基盤の基礎であり,それらをベースとした新素材や新製品の開発における主要ツールのひとつである。
【0004】
これらのスペクトル領域における光生成ではレーザ生成プラズマの使用が最も効果的である。光生成中,デブリ粒子が副産物として発生し,これが光源近傍に配置される一または複数枚のミラーを備える光コレクタの表面を劣化させることがある。上記デブリは,高エネルギーイオン,中性原子,ターゲット物質のクラスターといった形態をとる。上記コレクタミラー上の液滴や微粒子の付着はその反射を低下させるが,高速粒子(high-velocity particles)は上記コレクタミラーや,場合によってはコレクタミラーの下流に位置する光学系の他の部分を損傷させることがある。このことがデブリ軽減効果の高い高輝度短波長光源を開発することの妥当性を決定づけている。
【0005】
2018年10月22日公開のRU2670273,2019年4月26日公開のRU2709183,および2021年2月20日公開のRU2743572には,高速回転する液体金属ターゲットに基づく高輝度短波長LPP光源の開発についての新しいアプローチが提案されており,そこでは,デブリ粒子の液滴部分(droplet fraction of debris particles)を光コレクタおよびレーザビーム入力窓から遠ざけることによって高効率のデブリ低減を実現する。
【0006】
このようなLPP光源では,多層垂直入射ミラー(multilayer normal incidence mirrors)に基づく光コレクタが用いられている。しかしながら,このようなミラーは,ミラーの反射の波長依存性によって規定される比較的狭いスペクトル帯域における短波長の放射線を収集することができる。たとえば,錫または錫含有合金がターゲット材料として使用されていると,プラズマは約13.5 nmのスペクトル帯域において最も効率的に放射され,プラズマ放射の全スペクトル帯域は約6~7nmであるのに対し,ミラーの反射帯域はわずか0.54nmである。垂直入射ミラーに基づく光コレクタのもう一つの欠点は,大きな集光角の要件および高効率のデブリ軽減を組み合わせることの複雑さに起因する。集光角度が大きい場合,デブリ軽減のための手段が配置される領域の寸法が制限され,その効率に悪影響を及ぼす。さらに,中間焦点において放出プラズマのサイズに近いサイズを持つ光源のイメージ(像)を得る必要がある場合,製造が非常に複雑で高価な非球面ミラーを垂直入射コレクタミラーとして使用しなければならず,その製造の複雑さと価格が,ミラーサイズが大きくなるにつれて不釣り合いに大きくなる。
【0007】
これらの欠点は,2003年5月20日に発行された米国特許6,566,668号から知られる,放電生成プラズマ(discharge-produced plasma)(DPP)EUV光源に使用される,縦続(タンデム)に配置された2つの楕円状ミラーユニットを備える光コレクタにおいて克服されている。
【0008】
この光源は,保護ガスの対向流(以下,保護ガス流と呼ぶ)のみに基づくデブリ軽減手段を使用しており,光源電極の侵食によって形成されるデブリ粒子に対して光コレクタを保護するという観点においては効率が悪い。さらには,電極侵食はDPP光源の寿命を劇的に低下させる。DPP光源のもう一つの欠点はパルス繰り返し周波数が比較的低い(数キロヘルツ)ことであり,これはこのような光源の応用分野を大幅に制限する。また,DPP光源の重大な欠点は,放射プラズマ領域のサイズが比較的大きい(200μm以上)ことである。第一に,これは光源の高輝度化を妨げ,第二に,特にX線顕微鏡やEUV顕微鏡などの用途に受け入れがたいものである。
【発明の開示】
【0009】
したがって,上述した欠点を解消するニーズがある。特に,コンパクトで,高効率,好ましくはほぼ完全なデブリ軽減を提供する,比較的単純な設計の広帯域大収集角光コレクタ(a wideband large collection angle optical collector of relatively simple design)を用いた,軟X線,EUVおよびVUV放射の改良されたLPP源が必要とされている。
【0010】
このニーズは独立請求項の特徴によって満たされる。従属請求項にはこの発明の実施形態が記載されている。
【0011】
この発明の一実施態様では,放射(radiation)を生成しかつ収集する方法が提供され,この方法は,回転軸に面するターゲット表面を備える回転ターゲットアセンブリにおいて行われる,遠心力の作用下,環状溝の表面上の溶融金属層としてのターゲットを形成する工程と,パルス繰り返し速度(特には高パルス繰り返し速度,たとえば1kHzまたは10kHzよりも高い)でデブリ軽減手段を通過する集光レーザビームによってターゲットを照射する工程と,相互作用領域においてレーザ生成プラズマを発生させ,上記デブリ軽減手段を通じて短波長放射の出力ビームを光学コレクタに出射する工程と,を含む方法が提供される。
【0012】
一実施態様では,上記ターゲットは,好ましくは,所定の線速度(たとえば,100m/s以上の高い線速度)で回転され,これにより放出されるデブリ粒子の大部分(most),特にデブリ粒子の液滴部分(droplet fraction)の大部分,および上記相互作用ゾーンにおけるターゲットの線速度のベクトルが相互作用ゾーンおよび回転軸を通過する平面の片側に向かい,ターゲットの照射およびレーザ生成プラズマからの放射の収集は,集光レーザビームおよび出力ビームが上記平面の他方の(別の)片側に位置するように提供される。「大部分」(most)という用語は,たとえばデブリ粒子の液滴部分の50%以上,70%以上,90%以上,または99%以上もしくは99.9%以上を指すことができる。
【0013】
好ましい実施態様では,上記相互作用ゾーンからのデブリ排出率(放出率)(a debris ejection rate)の空間分布が推定され,たとえば計算され,集光レーザビームおよび出力ビームの両方の通過方向(directions of a passage)が,デブリ排出率が低い空間領域に選択される(selected in spatial regions with low debris ejection rates)。これらの領域はデブリ排出率が残りの空間領域よりも低い領域とすることができる。
【0014】
この発明の好ましい実施態様では,集光レーザビームおよび出力ビームの両方が通過する空間領域は,上記空間領域におけるデブリ粒子の液滴部分の排出率がデブリ粒子の液滴部分の最大排出率(a maximum ejection rate)よりも少なくとも10倍小さくなるように選択される。
【0015】
この発明の好ましい実施態様では,上記短波長放射は,縦続(タンデム)に配置された2つの楕円状ミラーユニットを備える光コレクタによって収集され,光コレクタは,第1の楕円状ミラーユニットの第2の焦点が第2の楕円状ミラーユニットの第1の焦点に位置する状態で,放射プラズマ領域のイメージ(an image of the emitting plasma region)を,好ましくは歪みなしに,上記ユニット(units)の設計によって決定されるスケールで,第2の楕円状ミラーユニットの第2の焦点に伝送(通過)する(transmits)。
【0016】
一実施態様では,上記デブリ軽減(緩和)が上記光コレクタへの上記短波長放射の全経路(the entire path)に沿って提供される。
【0017】
この発明の好ましい実施態様では,上記デブリ軽減は一または複数のデブリ軽減技術によって提供され,これには,保護ガス流,磁気軽減(緩和)(a magnetic mitigation),フォイルトラップ,デブリシールド,短波長放射(たとえば200nmまたは120nmよりも短い波長)の大部分が透過する,60%以上の透過度(a transparency of more than 60 %)を持つ膜,の少なくとも一つが含まれる。
【0018】
この発明の好ましい実施態様では,ターゲットは3000g以上の遠心加速度で回転される。ここでgは重力加速度であり,上記ターゲット表面は上記回転軸に平行である。
【0019】
他の観点では,この発明は,真空チャンバ,およびターゲットを相互作用ゾーンに供給する回転ターゲットアセンブリを備えるレーザ生成プラズマ光源を提供する。パルスレーザビームが,ターゲットアセンブリの回転軸に面するターゲット表面を備える回転ターゲットアセンブリに実装される環状溝の表面上の溶融金属層であるターゲット上に集光される(focused onto)。上記レーザ生成プラズマ光源はさらに光コレクタおよびデブリ軽減手段を備えている。上記デブリ軽減手段は,上記ターゲット上に集光されたパルスレーザビームを通過させ,かつ上記集光レーザビームおよび上記ターゲットの間の相互作用ゾーンを出る(exiting)短波長放射の出力ビームを上記光コレクタに通過させるように構成される。
【0020】
上記光源,および特に上記回転ターゲットアセンブリは,上記相互作用ゾーンのターゲットの線速度のベクトルが上記相互作用ゾーンおよび上記回転軸を通る平面の片側(一方側)に向けられる線速度で上記ターゲットを回転させ,上記集光レーザビームおよび上記出力ビームが上記平面の他方側に位置する(located)ように構成することができる。上記線速度は,上記相互作用ゾーンから排出されるデブリ粒子の液滴部分の大部分が上記線速度のベクトルが向けられる上記平面の同じ側に向かうように十分に高いものとすることができる。上記線速度は好ましくは100m/s以上である。
【0021】
この発明の好ましい実施態様では,上記ターゲットは少なくとも3000gの遠心加速度で形成され,上記ターゲットの表面が上記回転軸に平行である。
【0022】
この発明の好ましい実施態様では,上記光コレクタが,上記出力ビームの経路に沿って縦続に配置された2つの楕円状ミラーユニットを備えている。上記デブリ軽減手段は,上記光コレクタへの上記短波長放射の全経路に沿って配置することができる。
【0023】
この発明の好ましい実施態様では,上記相互作用ゾーンが第1の楕円状ミラーユニットの第1の焦点に位置し,第2の楕円状ミラーユニットの第1の焦点が上記第1の楕円状ミラーユニットの第2の焦点に位置する。
【0024】
この発明の一実施態様では,上記第2の楕円状ミラーユニットが,数倍,2~15倍,上記第1の楕円状ミラーユニットよりも小さく,上記光コレクタが好ましくは1に近い倍率(magnification),たとえば0.8~1.2の範囲の倍率を持つ。
【0025】
特に,上記コレクタミラー(the collector mirrors)の表面の材料が,Mo,Ru,Rh,Pd,U,Ni,W,Fe,Nb,Al,Si,CoおよびBNを含むグループから選択される。
【0026】
一実施態様では,上記デブリ軽減手段は楕円状ミラーユニット(ellipsoidal mirror units)間の保護ガス流を含む。
【0027】
一実施態様では,上記楕円状ミラーユニットのそれぞれが少なくとも2つの楕円状ミラーの入れ子セット(a nested set)を備えている。
【0028】
一実施態様では,上記デブリ軽減手段が集光角の外側の光コレクタの軸上に配置されたデブリシールド(a debris shield located on an axis of the optical collector outside a collection angle)を含む。
【0029】
この発明の好ましい実施態様では,上記デブリ軽減手段は,保護ガス流,磁気軽減(緩和),フォイルトラップ,およびカーボンナノチューブ,Ti,Al,Si,Zr,Si,BNからなるグループに属する材料で作られた膜,のうちの一または複数の技術によって提供される。上記膜は,上記短波長放射に対して大部分が透過する(たとえば,70%超,80%超または90%超)ように構成することができる。
【0030】
一実施態様では,上記膜は,保護ガス流を提供するために異なる圧力を有する容積(volumes with different pressures)を分離するガスロック(a gas lock)として構成することができる。
【0031】
この発明の技術的結果は,軟X線,EUVおよびVUV放射のコンパクトな高輝度高安定光源の平均出力(パワー),収集放射のスペクトル範囲,デブリ軽減の効率,および寿命を大幅に増加させることを含む。
【0032】
この発明の好ましい特徴とそれによって達成される技術的結果との間には,以下の因果関係が存在し得る。
【0033】
高速に回転する液体金属ターゲットを有するLPP光源において,2つの楕円状ミラーユニットを有する光コレクタを使用することによって,(垂直入射の多層ミラーを使用するのとは対照的に)第1に,短波長放射の収集の立体角(収集角)を著しく増大することができ,第2に,上記収集される放射のスペクトル範囲を著しく拡大(expand)することができ,第3に,上記プラズマ光源のイメージ(像)を収差なしで中間焦点または遠隔焦点に移す(transfer)ことができる。
【0034】
光コレクタの収集角およびスペクトル範囲の拡大は,LPP光源の出力の大幅な(数倍の)増大をもたらす。また,光コレクタに微小角入射ミラー(斜入射ミラー)(grazing incidence mirrors)を用いることによって,出力ビームの経路にデブリ軽減手段を配置する領域を増やすことができ,これによって光コレクタの寿命を延ばすことができる。
【0035】
さらに,光コレクタに微小角入射ミラーを用いることによって,出力ビームの伝播経路に沿うデブリ軽減手段の配置の領域を増やすことが可能になり,これによって光コレクタの寿命を延ばすことができる。
【0036】
上述のすべては,実質的にすべての用途において,高輝度LPP光源の動作効率の改善を提供する。
【0037】
この発明の実施態様は,レーザプラズマに基づく光源の利点と微小角入射ミラーに基づく光コレクタを備える高速回転ターゲットの利点を組み合わせたものである。実際,発明者は,様々なタイプのLPP光源におけるコレクタ光学系の汚染における重要な役割(role)は,比較的遅い速度で相互作用ゾーンから排出(放出)されるデブリ粒子の液滴部分に属することを見つけ,これが,この発明の実施態様にしたがって,液滴のほとんどの部分(the overwhelming part)を光コレクタおよびレーザビームの入射窓(input window)から横方向に(sideways)リダイレクトする高速ターゲット回転(100m/sを超える線速度で数百Hz)によって効果的に軽減される。同時に,微小角入射ミラーに基づく光コレクタは,広い立体角(数十分の1ラジアンまでのステレオラジアン)と広いスペクトル範囲(数十ナノメートルまで)の短波長放射の非常に効率的な収集を提供し,あらゆるタイプのデブリ粒子に対してミラーを非常に効果的に保護することができる。
【0038】
この発明の利点および特徴は,添付図面を参照して例示される,以下の非限定的な実施例の記載からさらに明らかになろう。
【0039】
この発明の例示的な実施態様が図面によって示される。
【0040】
図面において装置の一致する要素には同一符号が付されている。
【0041】
これらの図面は,この技術的解決手段を実施するためのオプションの全範囲をカバーするものではなく,さらに限定するものでもなく,その実装の特定のケースを例示するにすぎないものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】一実施例による,2つの楕円状の微小角入射ミラーユニットを備える光コレクタを有する高輝度LPP光源の概略図である。
図2】一実施例による,高輝度LPP光源の簡略図である。
図3】相互作用領域からのデブリ排出の空間分布の計算結果を示す図であり,レーザビームおよび短波長放射ビームの伝播のための空間領域の選択をさらに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1に示すこの発明の例示的な実施例では,短波長放射の高輝度源は回転ターゲットアセンブリ2を備える真空チャンバ1を含み,回転ターゲットアセンブリ2はターゲット3を相互作用ゾーン4に供給し,そこで上記ターゲット3は集光レーザビーム5と相互作用する。上記回転ターゲットアセンブリ2の一部は回転シャフトに固定されたディスク(円盤)の形状をなす。上記ディスクは上記回転軸6に面する環状溝を備える環状バリアの形態の周辺部分を持つ。上記ターゲット3は上記回転ターゲットアセンブリ2の環状溝の表面上に遠心力によって形成される溶融金属の層である。
【0044】
上記環状溝の構成は,上記ターゲット材料の体積が上記溝の体積を超えないときに,半径方向および回転軸6に沿う両方向に上記ターゲット3の材料が外に出されることを防止する。
【0045】
ターゲット表面とLPP光源の出力パラメータの両方の高い安定性を確保するために,3000g以上の遠心加速度での高速回転スピード(速度)が採用され,遠心力の影響によって,液体金属ターゲット3の表面が回転軸6に平行になる,すなわち本質的に,軸が上記回転軸と一致する,円形の円筒面(a circular cylindrical surface)になる。
【0046】
相互作用ゾーン4では,集光レーザビーム5の作用の下,ターゲット材料のパルス高温プラズマが生成される。このプラズマは,VUV,EUV,および軟X線を含む一または複数のスペクトル範囲の短波長放射を生成する。短波長放射は発散出力ビーム(a diverging output beam)7の形態で光コレクタ8に向かう。
【0047】
この発明によると,短波長放射の収集(collection)が2つの楕円状ミラーのユニット9,10を含む光コレクタ8によって実行される。楕円状ミラーユニット9,10は,一の共通の光軸11上に配置され,好ましくは出力ビーム7の伝播経路に沿って縦続(タンデム)に配置される。上記相互作用ゾーン4は第1の楕円状ミラーユニット9の第1の焦点に配置され,第1のユニット9の第2の焦点は第2の楕円状ミラーユニット10の第1の焦点と一致する。この場合,相互作用ゾーン4の発光プラズマ領域のイメージ(像)が実質的に歪みなく第2の楕円状ミラーユニット10の第2の焦点17のゾーンに投影される。
【0048】
上記光コレクタ8の光軸11に沿う出力ビーム7の経路上に,以下の一または複数の技術によって提供されるデブリ軽減手段12,13,14,15,16が設けられている。
【0049】
集光レーザビーム5の集光角度の外側および円錐(outside the collection angle and cone)に配置されるデブリシールド14,15
【0050】
デブリの蒸気部分(vapor fraction)を抑制するための,上記光コレクタ8の光軸11に沿うおよび/または光軸11に垂直な方向への保護ガスの流れ
【0051】
プラズマ放射に対して非常に透過性があり(highly transparent),本質的にはプラズマに対して半径方向に配向されたプレートのシステム(a system of plates)であって,液体金属ターゲット材料の中性原子およびクラスターを十分効果的に捕捉(trapping)するフォイルトラップ
【0052】
好ましくは永久磁石によって生成され,デブリ粒子の荷電部分を軽減する磁場
【0053】
短波長放射について本質的に透過性があり,デブリおよびガスに対して不透過性(impermeable)である,好ましくは交換可能である膜16
【0054】
デブリ軽減のための同様の手段が上記集光レーザビーム5の伝搬経路に配置される。
【0055】
相互作用ゾーンと光コレクタとの間の領域の大部分が短波長放射の反射ビームの伝搬ゾーンによって占有される垂直入射ミラーに基づく光コレクタを使用するLPP光源として比較して,この発明の実施態様では重要な利点が達成される。すなわち,このような光源ではデブリ軽減手段の配置領域が非常に制限されることになる。この発明によると,本質的には上記相互作用ゾーン4と光コレクタ8の間の全体領域にデブリ軽減手段12,14が配置される。この手段は,レーザおよび短波長放射のビーム5,7を取り囲むケーシングの内側および外側に部分的に配置される。これらによって非常に効果的なデブリ軽減(緩和)が提供される。
【0056】
上記相互作用ゾーン4と上記回転ターゲットを取り囲んで堅固に取付けられるデブリシールド14は,スリットギャップによって上記回転ターゲットアセンブリ2から分離されている。上記デブリシールド14は2つの小さい開口部(集光レーザビーム入射用および短波長放射ビーム出射用)だけを持ち,これらを通じてデブリ粒子はターゲットアセンブリから外に出ることができる。この発明の好ましい実施態様では,これらの開口部は保護ガスの流れを上記相互作用ゾーン4に向けるためにも用いられる。
【0057】
デブリ軽減手段12のセクションを通過した出力ビーム7は上記第1のユニット9のコレクタミラーに当たる。このコレクタミラーは焦点が一致するいくつかの埋込同軸楕円状ミラー(a few embedded coaxial ellipsoid mirrors so that their focuses coincide)を備えることができる。第1の楕円状ミラーユニットおよび第2の楕円状ミラーユニットの間のゾーンには,上記光軸周りに設置されたノズル列によって,保護ガス,好ましくはアルゴンを供給するために用いられるデブリ軽減手段13の第2のセクションがある。これによって,このゾーンは加圧ゾーンとなり,上記第2の楕円状ミラーユニット10およびLPP光源と一体化された設備へのデブリ伝播の経路中の追加のガスシールドとして機能する。このガスは環状分岐管(図示略)を通じて排出され,これもこのゾーンに配置される。さらに,ここは膜16を配置することができ,これは一方では汚染粒子の流れを追加的に制限し,他方においては異なる圧力の保護ガスのゾーンを分離する。上記膜は,好ましくは,カーボンナノチューブ(carbon nanotubes)(CNT),Ti,Al,Si,ZrSi,BNを含むグループに属する材料から作られる。
【0058】
第1のユニット9のミラー(複数)によって反射された後,上記短波長放射は第1のユニット9の第2の焦点スポットに集光され,第2のユニット10のミラーに当たり,そこで上記短波長放射は上記第2の楕円状ミラーユニット10の第2の焦点17に向けて反射される。
【0059】
デブリ粒子の液滴部分の軽減効果を増大するために,上記出力ビーム7は,図2に示すように,相互作用ゾーン4内のターゲットの線速度のベクトル (原文では上付の右向矢印を下線で示す。以下同じ)から上記相互作用ゾーン4および上記ターゲットアセンブリの回転軸6を通る平面18の反対側に向けられる。レーザビーム5および出力ビーム7の両方は上記平面18の片側に位置する。したがって,上記ベクトル と,短波長およびレーザ放射のビーム7,5は上記平面18の異なる側(different sides)に位置する。
【0060】
このポジティブな効果は,高密度高温プラズマの放射流体力学の分野における応用のために作成されたRZLINEコードを用いて実行される,相互作用ゾーン4からのデブリ排出の空間分布の計算モデリングの結果によって確認される。上記コードはたとえば,K. Koshelev, V. Ivanov, V. Medvedevその外による,「極端紫外線レーザー生成プラズマ光源用分布錫ターゲットのゼロ復帰ラインコードモデリング」(Return-to-zero line code modeling of distributed tin targets for laser- produced plasma sources of extreme ultraviolet radiation),マイクロ/ナノリソグラフィ,MEMSおよびMOEMSジャーナル(Journal of Micro / Nanolithography, MEMS, and MOEMS) Vol. 11, Issue 2 (2012年5月)から知られるように,長年の実験的かつ理論的研究に基づく数学的モデルを使用している。このコードによって,レーザ放射とガスの相互作用,液体および固体表面とその後のプラズマ生成の相互作用,プラズマ自体の相互作用をモデル化することができる。
【0061】
図3は,実験座標におけるデブリ粒子(すべての速度のすべての部分の粒子が考慮されている)の排出率(ejection rates)の空間分布図を示し,θは上記回転軸に対する角度を,φは図の平面に横たわる方位角(the azimuthal angle lying in the plane of the figure)である。座標の原点は上記相互作用ゾーン内にある。上記相互作用ゾーンにおける典型的な方向は以下のとおりである。
【0062】
I 回転軸に平行:θ=0,φは任意(any)
【0063】
II ターゲット速度に沿う:θ=90°,φ=0°
【0064】
III ターゲット表面に垂直(normal to the target surface):θ=90°,φ=90°
【0065】
IV ターゲット速度と反対(against):θ=90°,φ=180°
【0066】
図3に示すように,デブリ排出率の空間分布は,単位レーザ出力あたりの,上記相互作用ゾーンから40cmの距離に位置する露光試料表面上の堆積デブリ粒子の膜厚の特定の成長率(a specific growth rate of the film thickness of deposited debris particles on a surface of the exposed sample located at a distance of 40 cm from the interaction zone per unit of laser power)として,nm/(month・W)において計算される。ターゲットの高速回転以外にはデブリ軽減技術は用いなかった。
【0067】
この分布は典型的な値の光源パラメータについて得られたものであり,ターゲット材料は錫(tin),レーザ放射波長は~1-2μm,レーザパルスエネルギーは数nsのパルス持続時間で数mJ,焦点スポット直径は数十μm,ターゲット線速度は200m/sとして得られたものである。
【0068】
図3に示すように,デブリ粒子の質量は,0°-80°の方位角(azimuth angles)φおよび0°-90°の極角(polar angles)θによって制限されるターゲット速度の方向に沿うセクタ内に主に集中する。ターゲットの回転方向に沿う最大デブリ排出率(maximum debris ejection rate)は107nm/(month・W)である。図3では,楕円を用いてレーザ35と出力ビーム37の円錐が位置する空間方向を示しており,これによって推定されるレーザ円錐35におけるデブリ排出率は0.2nm/month・W未満であり,他方,短波長放射円錐37では1nm/month・W未満である(図示する円錐はほぼ0.3srの立体角に対応する)。上記データは,レーザ放射出力(パワー)が1Wであり,光源が24時間365日(24/7)用いられることを仮定して提供されている。図3において,符号31はターゲットの速度(200m/sの速度)の方向を示しており,最大デブリ排出率は107nm/(month・W)である。符号32はnm/(month・W)において与えられるSnデブリ排出率のレベル(the level of the Sn-debris ejection rate)の線を示している。符号35はレーザビームの円錐におけるデブリ排出を示しており,0.2nm/(month・W)未満である。符号37は集光角の円錐におけるデブリ排出を示しており,1nm/(month・W)未満である。
【0069】
高輝度レーザ生成プラズマ光源は,以下に説明し,かつ図1図2および図3に示すように動作する。
【0070】
オイルフリー真空ポンプシステムを用いて真空チャンバ1が10-5...10-11mbar以下の圧力まで排気される。同時に,ターゲット材料と相互作用してコレクタミラーを汚染する可能性のある窒素,酸素,炭素などのガス成分が除去される。
【0071】
Sn,Li,In,Ga,Pb,Bi,Znおよびこれらの合金を含む無毒の可溶性金属のグループに属するターゲット材料が,誘導加熱を採用可能な固定加熱システムを用いて溶融状態とされ,所定の最適温度範囲に維持される。
【0072】
上記回転ターゲットアセンブリ2が回転駆動ユニット,たとえば磁気カップリングを備える電気モータを用いて作動され,これによって上記真空チャンバ1が清潔に保たれる。遠心力の作用の下,上記ターゲット3は上記回転軸6に面する環状溝の表面上に溶融金属層を形成する。少なくとも3000gの遠心加速度では上記ターゲット表面は実質的に回転軸と平行である。
【0073】
上記ターゲット3は,1kHzから5MHの範囲とすることができる高パルス繰返し率(速度)の集光レーザビーム5に露光される。上記ターゲット材料をプラズマ形成温度まで加熱する集光レーザビーム5によって短波長放射が生成される。上記レーザ生成プラズマは0.4から120nmの波長を含む短波長領域の光を放出する。集光スポットにおけるレーザ放出パワー密度およびターゲット材料に応じて,主に軟X線(0.4-10nm),および/またはEUV(10-20nm),および/またはVUV(20-120nm)範囲の短波長放射が生成される。
【0074】
ターゲットからの熱移送が,~1mbarの圧力でガスが吹き付けられる上記回転ターゲットアセンブリ2と上記固定水冷式熱交換器(図示略)の間の狭い隙間を通じて確保される。ガス伝導率および接触面積は,このタイプの冷却については最大1.5kWの熱パワーを除去するのに十分である。同時に他の冷却方法を上記回転ターゲットアセンブリ2に用いてもよい。
【0075】
相互作用ゾーン4内に形成される高密度高温レーザ生成プラズマは短波長放射を放出する。高温プラズマからの出力ビーム7が,デブリ軽減手段12,13,14,15,16を通って2つの同軸楕円状ミラーユニット9,10に基づく光コレクタに出射される。高速ターゲット回転により,相互作用ゾーンから放出されるデブリ粒子の液滴部分は直線ターゲット速度に匹敵する有意な接線速度成分を獲得する(図2)。したがって,結果的に,相互作用ゾーン内のターゲットの線速度 とビーム5,7が,相互作用ゾーン4および回転軸6を通る平面18の異なる側に位置するので,液滴速度のベクトルはレーザビーム5および出力ビーム7の円錐から大きく方向転換される。
【0076】
上記第1の楕円状ミラーユニット9は,第1の楕円状ミラーの第1の焦点に位置する上記相互作用ゾーンからの発光プラズマ領域のイメージ(像)を第2の焦点に伝送する(通過させる)(transmits)。楕円状ミラーの異なる部分の異なる利得係数に起因して,結果として生じる発光プラズマのイメージは2つのミラーユニット9,10の間の中間焦点において強く歪む。これに関して,第2の楕円状ミラーユニット10は,その第1の焦点が第1の楕円状ミラーユニット9の第2の焦点と一致しており,これによって上記イメージ歪みを除去することができる。すなわち,第2の楕円状ミラーユニットの第2の焦点において,プラズマイメージは,歪みなく,第1および第2の楕円状ミラーユニット9,10の設計によって規定されるスケールファクタで投影される。
【0077】
この発明の実施態様では,光コレクタ8は1に近いまたは等しい,0.8~1.2の範囲の倍率(magnification)を持つ。好ましい実施態様では,上記第2の楕円状ミラーユニット10が第1の楕円状ミラーユニット9よりも数倍,2~15倍小さい。これは,集光角度が同じであるにもかかわらず,デブリ軽減手段のために第2のミラーの前に多くのスペースを確保する必要がないためである。この構成によって,光コレクタアセンブリをよりコンパクトにかつより安価にすることができる。第2ミラーユニット10および下流の光学系を保護するために使用することができるデブリ軽減手段は,以下のように構成することができる。
【0078】
集光角(collection angle)の外側に配置されるデブリシールド15
【0079】
交換可能な半透過膜16
【0080】
第1のミラーユニット9の第2の焦点の前に,好ましくは光軸11に対して円周上に配置されるノズルおよびガス排出用の環状分岐パイプを通じて供給される保護ガス流。ガスカーテンが第1のミラーユニットの第2の焦点の前のゾーンに形成される。
【0081】
光コレクタの統合増幅率(integral amplification)が1に近い場合,光コレクタの第2のユニットの第2の焦点17に同じサイズを持つプラズマ源の歪みのないイメージが得られる。
【0082】
波長の動作範囲に応じて,比較的高い微小角入射(斜入射)反射率(high grazing incidence reflectivity)を持つ,Mo,Ru,Rh,Pd,U,Ni,W,Fe,Nb,Al,Si,CoおよびBNのうちの一つを,楕円状ミラーの表面の反射材料として選択することができる。
【0083】
波長の動作範囲に応じて,Sn,Li,In,Ga,Pb,Bi,Znおよびこれらの合金のうちの一つを,光源の作動媒体(the working medium of the source)として選択することができる。
【0084】
レーザ生成プラズマ放射の生成および収集の方法は,以下に説明するように,かつ図1図2および図3に示すように,実行される。
【0085】
遠心力の作用の下,回転ターゲットアセンブリ2の環状溝の表面上に溶融金属層の形態でターゲットが形成され,その表面が上記回転軸に面する。ターゲットにパルス集光レーザビーム5が照射され,その結果として相互作用ゾーン4にプラズマが形成される。出力ビームが生成され,デブリ軽減手段12,13,14,15,16を通って光コレクタ8に入射する。短波長放射は,本質的に歪みのない,2つの同軸楕円状ミラーユニット9および10を備える光コレクタ8を用いて収集され,放射プラズマ領域のイメージが第2の楕円状ミラーユニット17の第2の焦点に伝送(通過)される。第2の楕円状ミラーユニット17は,第1の楕円状ミラーユニットの第2の焦点が第2の楕円状ミラーユニットの第1の焦点と一致するように設けられる。
【0086】
ターゲットのパルス照射は,相互作用ゾーンのターゲット線速度のベクトル とレーザおよび短波長放射のビーム5,7が,相互作用ゾーン4および回転軸6を通る平面18の異なる側(different sides)に位置するように行われ,ここでターゲットの線速度は100m/s超と十分に速く,デブリ粒子の液滴部分の大部分が光コレクタ8および集光レーザビーム5の円錐に向けられるのを防止する。
【0087】
相互作用ゾーン4からのデブリ排出率の空間分布が計算され,集光レーザビーム5および短波長放射の出力ビーム7の両方の通過方向が,デブリ排出率の低い空間領域内に選択される。
【0088】
集光レーザビーム5および出力ビーム7の両方が通過する空間領域は,当該空間領域のデブリ排出率が,最大デブリ排出率よりも少なくとも10倍,好ましくは10倍小さくなるように選択される。
【0089】
オプションとして,保護ガス流,磁石,フォイルトラップ,短波長放射について透過性の大きい膜16,およびデブリシールド14,15を含む追加のデブリ軽減手段を用いることができる。
【0090】
このように,この発明は,高平均出力(パワー),高輝度の短波長放射,長寿命,使いやすさを特徴とする,軟X線,EUVおよびVUV放射のLPP光源の形成を提供する。
【産業上の利用分野】
【0091】
提案する装置は,顕微鏡検査,材料科学,材料のX線診断,生物医学および医療診断,ナノおよびマイクロ構造の検査,リソグラフィEUVマスクのアクチニック制御を含むリソグラフィなど,多くの用途を意図している。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心力の作用の下,回転ターゲットアセンブリの回転軸に面するターゲット表面を備える回転ターゲットアセンブリに設けられる環状溝の表面上にターゲットを溶融金属層として形成し,デブリ軽減手段を通過する集光レーザビームによって所定のパルス繰返し率で上記ターゲットを照射し,上記集光レーザビームと上記ターゲットの間の相互作用ゾーンにレーザ生成プラズマを生成し,短波長放射の出力ビームを出射してデブリ軽減手段を通じて光コレクタに向かわせる,放射を生成しかつ収集する方法であって,
上記ターゲットが十分に高い線速度で回転され,これによって上記相互作用ゾーンから放出されるデブリ粒子の液滴部分の大部分と上記相互作用ゾーンのターゲットの線速度のベクトル( )が上記相互作用ゾーンおよび上記回転軸を通る平面の片側に向けられ,上記ターゲットの照射およびレーザ生成プラズマからの放射の収集が上記集光レーザビームおよび出力ビームが上記平面の他方の片側に位置するように提供される,
方法。
【請求項2】
上記相互作用ゾーンからのデブリ排出率の空間分布が推定され,上記集光レーザビームおよび上記短波長放射ビームの両方の通過方向が,上記デブリ排出率が残りの空間領域よりも低い空間領域に選択される,
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記線速度が100m/s以上の高い線速度である,請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記集光レーザビームおよび上記短波長放射ビームの両方が通過する空間領域が,上記空間領域におけるデブリ粒子の液滴部分の排出率が上記デブリ粒子の液滴部分の最大排出率の少なくとも10倍未満となるように選択される,
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記短波長放射が縦続に配置された2つの楕円状ミラーユニットから構成される光コレクタによって収集され,上記光コレクタは,発光プラズマ領域のイメージを第2の楕円状ミラーユニットの第2の焦点に伝送するものであり,上記第1の楕円状ミラーユニットの第2の焦点が上記第2の楕円状ミラーユニットの第1の焦点に位置している,
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記光コレクタが上記発光プラズマ領域のイメージを歪みなしに伝送するものであり,および/または上記イメージのスケールファクタが上記2つの楕円状ミラーユニットの設計によって決定されるものである,
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記デブリ軽減が上記光コレクタへの上記短波長放射の全経路に沿って提供される,
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記デブリ軽減が,保護ガス流,磁気軽減,フォイルトラップ,デブリシールド,60%以上の透過度を持つ短波長放射の大部分を透過する膜,からなるグループから選択される一または複数のデブリ軽減技術によって提供される,
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記ターゲットが3000g以上の遠心加速度で回転され,上記gは重力加速度であり,上記ターゲット表面が上記回転軸に平行である,
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
真空チャンバ,ターゲットを相互作用ゾーンに供給するように構成される回転ターゲットアセンブリであって,上記ターゲットが上記回転ターゲットアセンブリの回転軸に面するターゲット表面を備える上記回転ターゲットアセンブリに設けられる環状溝の表面上の溶融金属層である,回転ターゲットアセンブリ,光コレクタ,およびデブリ軽減手段を備え,上記デブリ軽減手段が上記ターゲット上に集光されるパルスレーザビームを通過させ,かつ集光レーザビームとターゲットとの間の相互作用ゾーンを出る短波長放射の出力ビームを光学コレクタに通過させるように構成される,レーザ生成プラズマ光源であって,
上記回転ターゲットアセンブリが上記ターゲットを所定の線速度で回転させるように構成され,上記相互作用ゾーンのターゲットの線速度のベクトル( )が上記相互作用ゾーンおよび上記回転軸を通る平面の片側に向けられ,上記集光レーザビームおよび上記出力ビームが上記平面の他方側に位置決めされている,
光源。
【請求項11】
上記ターゲットの速度が100m/s以上である,請求項10に記載の光源。
【請求項12】
上記回転ターゲットアセンブリが少なくとも3000gの遠心加速度で,上記ターゲットの表面が上記回転軸に平行であるように上記ターゲットを形成するように構成されている,
請求項10または11に記載の光源。
【請求項13】
上記光源が,上記出力ビームの経路に沿って縦続に配置された2つの楕円状ミラーユニットを備える光コレクタをさらに備え,および/または上記デブリ軽減手段が上記光コレクタへの短波長放射の全経路に沿って配置されている,
請求項10に記載の光源。
【請求項14】
上記相互作用ゾーンが上記第1の楕円状ミラーユニットの第1の焦点に配置され,第2の楕円状ミラーユニットの第1の焦点が上記第1の楕円状ミラーユニットの第2の焦点に配置されている,
請求項13に記載の光源。
【請求項15】
上記第2の楕円状ミラーユニットが上記第1の楕円状ミラーユニットよりも数倍,2から15倍小さく,上記光コレクタが0.8から1.2の間,好ましくは1に近い倍率を持つ,
請求項13または14に記載の光源。
【請求項16】
上記コレクタミラーの表面の材料がMo,Ru,Rh,Pd,U,Ni,W,Fe,Nb,Al,Si,CoおよびBNからなるグループから選択される,
請求項13に記載の光源。
【請求項17】
上記デブリ軽減手段が上記楕円状ミラーユニット間の保護ガス流を含む,
請求項13に記載の光源。
【請求項18】
楕円状ミラーユニットのそれぞれが少なくとも2つの楕円状ミラーの入れ子セットを備えている,
請求項13に記載の光源。
【請求項19】
上記デブリ軽減手段が,集光角の外側において上記光コレクタの軸上に配置されたデブリシールドを含む,
請求項10に記載の光源。
【請求項20】
上記デブリ軽減手段が,保護ガス流,磁気軽減,フォイルトラップ,ならびにカーボンナノチューブ,Ti,Si,ZrSi,およびBNから構成されるグループに属する材料製の膜,から構成される一または複数の技術によって提供され,上記膜が好ましくは上記短波長放射に対して透過性を持つ,
請求項10に記載の光源。
【請求項21】
上記膜が保護ガス流をもたらす異なる圧力を有する容積を分離するガスロックを提供するように構成されている,
請求項20に記載の光源。
【請求項22】
上記光コレクタが,微小角入射ミラー,好ましくは2つの微小角入射楕円状ミラーユニットを備えている,
請求項10に記載の光源。
【国際調査報告】