(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】(ポリ)カーボネートを加水分解する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 37/055 20060101AFI20241024BHJP
C07C 39/16 20060101ALI20241024BHJP
C08G 64/42 20060101ALI20241024BHJP
B01J 31/36 20060101ALI20241024BHJP
B01J 31/34 20060101ALI20241024BHJP
B01J 31/26 20060101ALI20241024BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C07C37/055
C07C39/16
C08G64/42
B01J31/36 Z
B01J31/34 Z
B01J31/26 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525574
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2022079205
(87)【国際公開番号】W WO2023072723
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レヴェン マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ノラ
(72)【発明者】
【氏名】ランガンケ イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ハイネマン トルステン
(72)【発明者】
【氏名】レーマーホルト カイ
(72)【発明者】
【氏名】タバーク マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ナルバントグル トゥグルル
(72)【発明者】
【氏名】ライトナー ヴァルター
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4J029
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA32A
4G169BA49
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BB16A
4G169BB16B
4G169BB20A
4G169BB20B
4G169BC01A
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC04B
4G169BC05B
4G169BC06B
4G169BC08A
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE17A
4G169BE17B
4G169BE28A
4G169BE28B
4G169BE37A
4G169BE46A
4G169BE46B
4G169CB35
4G169CB70
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA02
4H006BA03
4H006BA04
4H006BA30
4H006BA32
4H006BA33
4H006BA35
4H006BA65
4H006BB14
4H006BC10
4H006BE60
4H006FC52
4H006FE13
4H039CA60
4H039CE20
4H039CL30
4J029AA09
4J029AB07
4J029KD02
4J029KD15
4J029KE05
4J029KE11
4J029KE13
4J029KG02
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の相間移動触媒の存在下で、カーボネート、特にポリカーボネートを加水分解する方法に関する。本発明による方法は、工業的規模で製造されたカーボネート、より具体的にはポリカーボネートから、これらがその本来の使用目的を果たした後に、貴重な原料を回収することを可能にし、ひいては焼却又は埋め立てによって廃棄される場合に起こるような、この種の原料の損失を回避する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボネートを加水分解する方法であって、
(i)カーボネートと、少なくとも1種の加水分解触媒と、水とを準備する工程であって、前記少なくとも1種の加水分解触媒が、元素周期表の第5族、第6族、第14族又は第15族の元素のオキソ酸の塩を含み、前記塩のアニオンのpK
B値が0.1~7.0の範囲である、工程と、
(ii)工程(i)からの成分を接触させることにより前記加水分解を行って、少なくとも1種の加水分解生成物と二酸化炭素とを得る工程と、
を含み、
工程(ii)において、少なくとも1種の相間移動触媒が存在し、ここで、前記少なくとも1種の相間移動触媒が荷電有機分子を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程(ii)で得られた前記加水分解生成物が少なくとも1個のヒドロキシル基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の工程(iii):
(iii)前記少なくとも1種の加水分解生成物を、少なくとも前記加水分解触媒及び前記相間移動触媒から分離する工程、
を更に含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
プロセス工程(ii)が、50℃~180℃の温度で、任意に還流しながら、又は閉鎖系で行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
プロセス工程(ii)の前記加水分解において、少なくとも1種のアルコールが存在することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
プロセス工程(ii)に存在する前記水の質量の多くとも15%が有機溶媒であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の加水分解触媒に含まれる前記塩のアニオンが、WO
4
2-、VO
4
3-、CO
3
2-、HPO
4
2-、MoO
4
2-、HSiO
4
3-、RSiO
3
3-を含み、ここで、Rは、1個~10個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、又はPO
4
3-を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の加水分解触媒に含まれる前記塩のカチオンが、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンから選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記塩がナトリウム塩又はカリウム塩であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の相間移動触媒がカチオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の相間移動触媒が、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロリド及びメチルトリオクチルホスホニウムクロリドからなる群より選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記オキソ酸の塩が、カーボネート、特にポリカーボネートの質量の0.10%~20%、好ましくは1.0%~15%、特に好ましくは5.0%~10%の質量で用いられることを特徴とする、請求項5~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記カーボネートがポリカーボネートであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリカーボネートが芳香族であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(ia)請求項13又は14に記載のポリカーボネートを加水分解する方法を行って、少なくとも加水分解生成物としてジヒドロキシ化合物を得る工程と、
(iia)工程(ia)からの加水分解生成物としての前記ジヒドロキシ化合物を、少なくとも前記加水分解触媒及び前記相間移動触媒から分離する工程と、
(iiia)工程(iia)の分離された加水分解生成物としての前記ジヒドロキシ化合物を、相界面プロセスにおいてホスゲンと反応させる工程、又は、
(iiib)工程(iia)の分離された加水分解生成物としての前記ジヒドロキシ化合物を、溶融エステル交換反応プロセスにおいてジアリールカーボネートと反応させる工程と、
を含む、ポリカーボネートを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の相間移動触媒の存在下で、カーボネート、特にポリカーボネートを加水分解する方法に関する。本発明による方法は、工業的に製造されたカーボネート、特にポリカーボネートから、これらがその本来の使用目的を果たした後に、貴重な原料を回収することを可能にする。したがって、例えば焼却又は埋め立てによる廃棄の場合に生じるような、そのような原料の損失が回避される。
【背景技術】
【0002】
カーボネートは多目的な製品である。特にポリカーボネートは、産業界及び日常生活において様々な用途に使用されている。それらは、機械的特性及び光学的特性、耐熱性及び耐候安定性に優れた特性プロファイルを有することで知られている。この特性プロファイルにより、ポリカーボネートは内装及び外装の非常に幅広い用途に使用されている。この幅広い用途とそれに伴う経済的成功とにより、ポリカーボネート廃棄物も大量に発生している(例えば、古い住宅、ランプカバー、コンパクトディスク等)。そのようなポリカーボネート廃棄物は、適切な用途に回さなければならない。技術的に最も実行しやすい用途は、焼却して放出された燃焼熱を他のプロセス、例えば工業プロセスに利用することである。しかしながら、これでは原料循環を閉じることはできない。もう一つの用途としては、ポリカーボネート廃棄物を機械的に粉砕し、新しい製品の製造に使用する、いわゆる「物理的リサイクル」もある。この種類のリサイクルには当然ながら限界があり、そのためポリカーボネート結合の逆開裂によってポリカーボネート製造の基本原料を回収する試み(いわゆる「ケミカルリサイクル」)が十分行われてきた。回収される原料は、一般に、ビスフェノール類、特にビスフェノールAを含む。ケミカルリサイクルの種類によっては、カーボネート含有化合物、例えばジフェニルカーボネート又はジメチルカーボネートの他にCO2も回収され得る。
【0003】
本発明は、カーボネート、特にポリカーボネートの加水分解に関する。これにより一般に、(開裂される出発化合物の種類に応じて)アルコール又はジオールとCO2とが得られる。加水分解という用語は当業者に既知である。本発明によれば、「加水分解」という用語は特に、水によるカーボネート基の開裂を表すものと理解される。「ポリカーボネートの加水分解」では一般に、ポリマー鎖中の複数のカーボネート基、好ましくは実質的にすべてのカーボネート基が水によって開裂される。これは一般に、加水分解中に更なる溶媒、例えばアルコールが存在することを妨げるものではない。この場合、最初に少なくとも1種のアルコールが存在することで、中間として少なくとも部分的にエステルが形成されることも可能である(場合によっては、カーボネート基が水によって直接開裂される)。しかしながら、これらのエステルは、本発明による条件下では、水によって再開裂されることになる。したがって、この場合も水による(カーボネート基の直接ではなく、むしろ中間として形成されたエステル基の)開裂が効果的に行われる。この中間エステル基の開裂も、好ましくは同様に「加水分解」という用語に包含される。別の実施形態において、中間エステル基のこの開裂は、本発明による「加水分解」という用語に包含されない。本発明に従って有利には、少なくとも1種の有機溶媒が加水分解に存在していてもよい。上記溶媒は、加水分解の水と同時に、及び/又は加水分解の水に続いて供給することができる。この少なくとも1種の有機溶媒が、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、安息香酸メチル、シクロプロピレンカーボネート、シクロエチレンカーボネート、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエーテル、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジブチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、塩化メチレン、N-メチル-2-ピロリドン、ニトロメタン、フェノール、スルホラン、テトラヒドロフラン、トルエン及び少なくとも1種のアルコールからなる群より選択される場合に好ましい。また、任意の所望の混合物を使用することも可能である。同様に、加水分解中にこれらの有機溶媒が存在しない場合も好ましい。特に好ましいのは、加水分解中に少なくとも1種のアルコールが存在する場合である。上記アルコールは、加水分解生成物とは異なることが理解されるであろう。この場合、少なくとも1種のアルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロパン-1,3-ジオール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ブタン-1,4-ジオール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、イソアミルアルコール、2-メチル-2-ブタノール、ネオペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、ペンタエリスリトール、シクロペンタノール、ヘキサン-1-オール、ヘキサン-2-オール、ヘキサン-3-オール、2-メチルペンタン-1-オール、2-メチルペンタン-2-オール、2-メチルペンタン-3-オール、4-メチルペンタン-1-オール、4-メチルペンタン-2-オール、3-メチルペンタン-1-オール、3-メチルペンタン-2-オール、3-メチルペンタン-3-オール、2,2-ジメチルブタン-1-オール、3,3-ジメチルブタン-1-オール、3,3-ジメチルブタン-2-オール、2,3-ジメチルブタン-1-オール、2,3-ジメチルブタン-2-オール、2-エチルブタン-1-オール、4-メチルペンタン-2-オール、シクロヘキサノール、フェノール及び2-エチルヘキサノールからなる群より選択される場合に更に好ましい。これらのアルコールの任意の混合物を使用してもよい。本発明によるプロセス工程(ii)の加水分解において、少なくとも1種のアルコールに加えて、更なる有機溶媒、特に上述のとおり好ましいと示される有機溶媒のいずれも存在しないことが非常に特に好ましい。したがって、プロセス工程(ii)に存在する唯一の有機溶媒は、少なくとも1種のアルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロパン-1,3-ジオール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ブタン-1,4-ジオール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、イソアミルアルコール、2-メチル-2-ブタノール、ネオペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、ペンタエリスリトール、シクロペンタノール、ヘキサン-1-オール、ヘキサン-2-オール、ヘキサン-3-オール、2-メチルペンタン-1-オール、2-メチルペンタン-2-オール、2-メチルペンタン-3-オール、4-メチルペンタン-1-オール、4-メチルペンタン-2-オール、3-メチルペンタン-1-オール、3-メチルペンタン-2-オール、3-メチルペンタン-3-オール、2,2-ジメチルブタン-1-オール、3,3-ジメチルブタン-1-オール、3,3-ジメチルブタン-2-オール、2,3-ジメチルブタン-1-オール、2,3-ジメチルブタン-2-オール、2-エチルブタン-1-オール、4-メチルペンタン-2-オール、シクロヘキサノール、フェノール及び2-エチルヘキサノールからなる群より選択される少なくとも1種のアルコールである。当業者であれば認識するように、プロセス工程(ii)の反応物を介して導入された痕跡量の有機溶媒が存在し得ることは言うまでもない。
【0004】
少なくとも1種の有機溶媒、特に少なくとも1種のアルコールの使用量が、水に対して過度に多くない場合に特に好ましい。特に好ましいのは、少なくとも1種の有機溶媒、特に少なくとも1種のアルコールの質量が、水の質量の多くとも15%、特に好ましくは0%~10%、特に好ましくは1%~7%、非常に特に好ましくは0%~4%である場合である。上記の有機溶媒、特にアルコールが使用される場合に特に好ましい。特に好ましい実施形態では、加水分解中の有機溶媒、特にアルコールの総質量は、水の質量の多くとも4%、特に好ましくは多くとも3%、より好ましくは多くとも2%、非常に特に好ましくは多くとも1%である。
【0005】
非特許文献1には、特に、メタノールと水と触媒としてのNaOHとの混合物を用いたポリカーボネート廃棄物のアルコール分解(一部は本発明の好ましい用語による加水分解とも理解される)が記載されている。純粋なメタノールの使用と比較して、混合物は選択性が減少し、収率が低下し、同時に副生成物としてジメチルカーボネートが失われるため、水の併用は不利であると述べられている。さらに、使用される水の量が多いほど、必要な反応時間が長くなることが観察された。
【0006】
非特許文献2には、炭酸ナトリウムを触媒として使用するポリカーボネートの糖分解が記載されている。得られたビスヒドロキシアルキルエーテルは、ポリウレタンの製造のための新たな出発生成物として使用することができる。しかしながら、それらは一般にポリカーボネートを新たに製造するための出発生成物ではない。
【0007】
非特許文献3には、水熱条件下でCeO2を触媒として用いたポリカーボネートの完全加水分解が記載されている。ポリカーボネートは、200℃の圧力管内で水だけを使用して開裂することはできなかった。解重合は、触媒を加えて初めて達成された。しかしながら、ここで説明した条件は非常に過酷である。これは生態学的及び経済的に不利である。
【0008】
特許文献1の実施例7には、水とテトラヒドロフランと触媒としてのKOHとの混合物を用いて、オートクレーブ内で120℃にてポリカーボネートを解重合することが記載されている。ここでも、カーボネート基の開裂のための記載された条件は、生態学的及び経済的に最適化可能である。
【0009】
非特許文献4内で、Tsintzou et al.は、マイクロ波照射下での相間移動触媒作用によりBPA系ポリカーボネートをアルカリ加水分解する方法について記載している。そこに記載されているプロセス条件は比較的過酷である。例えば160℃の温度が記載されている。大規模な工業規模のプロセスでは、そのような過酷な条件は生態学的及び経済的にもむしろ望ましくない。この文献はまた、超化学量論的量のアルカリ金属水酸化物溶液の使用について教示している。これにより、大量の汚染されたアルカリ金属塩が形成され、これはプロセスの対応する工業的背景において廃棄が必要となる。
【0010】
特許文献2には、ポリカーボネートを加水分解する方法が記載されており、炭酸ナトリウムが加水分解触媒として用いられている。この文献にも、高い解重合収率を得るために120℃の温度が記載されている。
【0011】
非特許文献5内で、Iannone et al.は、ポリカーボネートの解重合用の触媒としてイオン液体とZnOナノ粒子とを使用することについて記載している。とりわけ、Bu4NClは金属ナノ粒子を安定化させかつ凝集を防ぐために使用され、これは触媒寿命を延ばすと言われている。
【0012】
文献から知られているケミカルリサイクルのプロセスのうち、現在大規模な工業規模で操業されているものはごくわずかである。これは主に反応条件が、リサイクルされていない新しい出発生成物を使用する場合と比較して、経済性の点で劣っているためである。一般に環境への意識が高まり、工業プロセスを可能な限り持続可能なものに構成しようとする努力が高まっていることを考慮して、どちらも基本的にはケミカルリサイクルを支持しているが、このことは、カーボネート、特にポリカーボネート製品のケミカルリサイクルが、依然として技術的及び経済的観点からは決して成熟していないことを示しているように思われる。例えば、触媒によるカーボネート開裂の効率には課題が存在する。高温を必要とする従来のプロセスアプローチには、変色、副生成物の形成等のリスクが常につきまとう。これは同様に、回収された原料の再利用が著しく妨げられたり、不経済になったりするという結果にもつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】中国特許出願公開第101407450号
【特許文献2】国際公開第2020/257237号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Green Chem., 2005, 7, 380-387
【非特許文献2】Green Chem 2007, 9, 38 - 43
【非特許文献3】Catalysis Communications 84 (2016) 93-97
【非特許文献4】Journal of Hazardous Materials vol. 241-242, 2021-09-23, pages 137-145
【非特許文献5】Journal of Molecular Catalysis A: Chemical vol. 426, pages 107-116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、カーボネート、特にポリカーボネート及び/又はポリカーボネート製品のケミカルリサイクルの分野において、更なる改良が必要とされている。特に、加水分解が効率的に触媒作用を受け、したがって好ましくは比較的低温で行われ得るプロセスを提供することが望ましい。したがって、大規模な工業的規模で、カーボネート、特にポリカーボネートの開裂を可能にする方法、特に加水分解を提供する必要もあった。反応生成物の後処理は、好ましくは単純であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
引用した課題のうちの少なくとも1つ、好ましくはこれらすべての課題は、本発明によって達成された。驚くべきことに、少なくとも1種の相間移動触媒の存在により、比較的温和な条件下で、カーボネート、特にポリカーボネートの加水分解において高い転化率が得られることが見出された。これは特に、加水分解における少なくとも1種の相間移動触媒の存在が、加水分解生成物の高い収率をもたらすことを意味すると理解される。このことは、比較的温和な条件を採用することを可能にし、その結果、本発明による方法は、大規模な工業規模の方法に特に適している。したがって、本発明による方法は、生態学的及び/又は経済的に有利な方法である。同様に、加水分解生成物は特に容易に後処理できることも見出された。このことは、系内の有機溶媒の量が制限されている場合に特に当てはまる。
【0017】
本発明は、カーボネート、好ましくはポリカーボネートを加水分解する方法であって、
(i)カーボネートと、少なくとも1種の加水分解触媒と、水とを準備する工程であって、少なくとも1種の加水分解触媒が、元素周期表の第5族、第6族、第14族又は第15族の元素のオキソ酸の塩を含み、塩のアニオンのpKB値が0.1~7.0の範囲である、工程と、
(ii)工程(i)からの成分を接触させることにより加水分解を行って、少なくとも1種の加水分解生成物と二酸化炭素とを得る工程と、
を含み、
ここで、本発明による方法は、工程(ii)において、少なくとも1種の相間移動触媒が存在し、ここで、少なくとも1種の相間移動触媒が荷電有機分子を含むことを特徴とする、方法を提供する。
【0018】
本発明の文脈における「カーボネート」という用語は、1個、少なくとも1個以上のカーボネート基を含む化合物を表す。カーボネート基は、官能基R-O-(C=O)-O-Rを意味すると理解され、ここで、2個のラジカルRは、それぞれの場合において、同一であっても異なっていてもよい。この用語は、特に好ましくは、少なくとも1個のカーボネート基を含む化合物を表す。しかしながら、異なる反応生成物を説明するために、しばしばカーボネートとポリカーボネートとの区別がなされるが、本発明によれば、カーボネートは容易にポリカーボネートでもあり得る。カーボネートは、非常に特に好ましくは、1個のカーボネート基のみを含む。
【0019】
本発明の文脈における「ポリカーボネート」という用語は、複数のカーボネート基を有するポリマーを指す。カーボネート基はポリマー骨格中に存在する。これは、ポリカーボネートが好ましくは...-(R-O-(C=O)-O-)-...の種類の繰り返し単位を含むことを意味すると理解される。ポリカーボネートという用語は、ホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの両方を意味するものと理解される。ポリカーボネートは、よく知られているように線状又は分枝状であってもよい。当業者は、特にポリカーボネート製品には異なるポリカーボネートの混合物が使用されることも同様に認識している。したがって、ポリカーボネートという用語は、そのようなポリカーボネートの任意の所望の混合物も包含する。ポリカーボネートには特に、いわゆる使用済みのポリカーボネートも含まれていてもよい。この用語は当業者にはよく知られている。使用済みのポリカーボネートは特に、ポリカーボネート組成物でできた成形ポリカーボネート部品に関するものであり、既に意図された目的のために使用されており、これから廃棄に回されるものである。ポリカーボネート組成物は、対応する関連添加剤及びブレンドパートナーを含んでいてもよい。本発明による方法を行う前に、既知の方法によって、これらを実際のポリカーボネートから分離することが必要な場合がある。
【0020】
工程(i)で用いられる「水」は、好ましくは超化学量論的量で用いられる。これは、水が(ポリ)カーボネートのカーボネート結合のすべてを加水分解して、二酸化炭素が遊離した加水分解生成物を得るのに理論的に十分な量で用いられることを意味すると理解される。水から、好ましくは不活性ガス飽和(例えば、窒素、アルゴン及び/又はヘリウム)によって酸素を除去する。使用される水は、原則的に、任意の光学的に透明な水、例えば、ろ過した河川水又は井戸水であり得る。脱塩水を使用することが好ましい。一般に、使用される脱塩水は20μS/cm未満、好ましくは12μS/cm未満の導電率を示し、これはDIN 50930-6とともにDIN EN 27888に従って決定される。
【0021】
「加水分解触媒」という用語は、当業者に既知である。そのような加水分解触媒は、特に、(触媒活性化合物を追加しない場合のカーボネートの加水分解の活性化エネルギーと比較して)カーボネート、特にポリカーボネートの加水分解の活性化エネルギーを減少させることができる。したがって、加水分解触媒は、好ましくは、炭酸エステルのカルボニル官能基に水を付加することができる。場合によっては、加水分解触媒は、本発明による相間移動触媒と同一であってもよい。本発明は、加水分解活性に加えて、加水分解触媒が相間移動触媒としての一定の活性も有する実施形態も包含する。活性/活性の大きさは、加水分解の活性化エネルギーを減少させる絶対量を介して決定可能である。相間移動触媒としての活性が付加されている場合、加水分解触媒は更に、相界面そのものをより容易に克服する能力を有する(相界面触媒の活性の大きさについては以下を参照のこと)。しかしながら、この場合、触媒の主な活性は加水分解触媒にあるため、この触媒は加水分解触媒という用語に包含されることが好ましい。同様に、異なる加水分解触媒の混合物を用いることも可能である。この混合物からの触媒のいくつか又は1つだけが、更に、より劣った又は同等に良好な相間移動触媒特性を有することができる。しかしながら、本発明による方法は、好ましくは、少なくとも1種の加水分解触媒と、同時に少なくとも1種の相間移動触媒とを用いる。しかしながら、少なくとも1種の触媒は、他の触媒として一定の活性を有することもできる。
【0022】
「相間移動触媒」という用語は当業者に既知である。相間移動触媒は、特に、化学反応が起こる相に、2つの混和しない相の界面を通して、反応物を化学反応に通すことを可能にする物質である。特に、相間移動触媒がない状況と比較して溶解度が変化すること、濃度が上昇すること、及び他の反応物(複数の場合もある)により大きく近接することを理由として、移動した反応物は、意図した反応に対して上昇した反応性を示す。そのような相間移動触媒がないと、たとえあったとしても意図した反応は一般にゆっくりとしか起こらない。このことは、相間移動触媒の活性の大きさを測定することも可能にする。相間移動触媒の活性及び/又は活性の大きさは、特に好ましくは、相間移動触媒を用いた場合と用いない場合とで、同一時間及び同一温度における反応で得られた収率を比較することによって決定することができる。当業者は一般に、ここで対応する相プリズムを用いる。本発明によれば、相間移動触媒は特に、一般に水に不溶性であるカーボネート、特にポリカーボネートへの水の通過を仲介する。相間移動触媒は同時に、得られた加水分解生成物(アルコール又はジオール)の周囲の水への通過を仲介する。
【0023】
本発明によれば、加水分解触媒は塩であり、相間移動触媒は荷電有機分子である。驚くべきことに、荷電触媒を使用することにより、特に温和なプロセス条件下にて高収率で加水分解を実施できることが見出された。特定の理論に縛られることを望むものではないが、イオン対形成(塩メタセシス等)が相間移動触媒反応を特に効率的にし、加水分解触媒反応をますます効率的にすると考えられている。これは特に、本発明によれば、加水分解触媒が相間移動触媒に少なくとも部分的に化学結合しており、したがって反応混合物の異なる相において特に良好な溶解性が達成されるという事実に起因する。
【0024】
本発明によるプロセス工程(i)は、カーボネート、好ましくはポリカーボネートと、少なくとも1種の加水分解触媒と、水とを準備することを含む。これは、プロセス工程(i)における他の化学物質の存在を排除するものではない。プロセス工程(i)は特に、少なくとも1種の有機溶媒、特に少なくとも1種のアルコールを準備することを含んでいてもよい。同様に、プロセス工程(ii)の加水分解において、少なくとも1種の有機溶媒、特に好ましくは少なくとも1種のアルコールが存在することも好ましい。有機溶媒が、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、安息香酸メチル、シクロプロピレンカーボネート、シクロエチレンカーボネート、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエーテル、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジブチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、塩化メチレン、N-メチル-2-ピロリドン、ニトロメタン、フェノール、スルホラン、テトラヒドロフラン、トルエン及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒である場合に非常に特に好ましい。アルコールが存在する場合、このアルコールは好ましくは水溶性である。少なくとも1種のアルコールが、本発明による「加水分解」という用語の定義に記載されたアルコールの群からのアルコールである場合に非常に特に好ましい。同様に、少なくとも1種の有機溶媒、特に少なくとも1種のアルコールが、そこに記載された量で使用される場合にも好ましい。上述したように、プロセス工程(ii)に存在する水の質量の多くとも15%、特に好ましくは0%~10%、非常に特に好ましくは1%~7%、同様に好ましくは0%~4%が有機溶媒である場合に本発明に従って好ましい。一実施形態において、「有機溶媒」は、好ましくは、この文脈においてアルコールを含まない。別の実施形態において、「有機溶媒」は、アルコール、特に好ましくは上述のアルコールを含む。有機溶媒が、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、安息香酸メチル、シクロプロピレンカーボネート、シクロエチレンカーボネート、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエーテル、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジブチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、塩化メチレン、N-メチル-2-ピロリドン、ニトロメタン、フェノール、スルホラン、テトラヒドロフラン、トルエン及び少なくとも1種のアルコールからなる群より選択される場合に非常に特に好ましい。同様に、有機溶媒が、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、安息香酸メチル、シクロプロピレンカーボネート、シクロエチレンカーボネート、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエーテル、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジブチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、塩化メチレン、N-メチル-2-ピロリドン、ニトロメタン、フェノール、スルホラン、テトラヒドロフラン及びトルエンからなる群より選択される場合も好ましい。プロセス工程(ii)に存在する水の質量の多くとも15%が有機溶媒であるが、プロセス工程(ii)の加水分解において少なくとも1種のアルコールが存在する場合に好ましい。これは、好ましくは、加水分解がアルコールの存在下、任意に更なる有機溶媒の存在下でも実施されてもよいが、このアルコール及び/又は有機溶媒の総質量は、プロセス工程(ii)に存在する水の質量の多くとも15%、特に好ましくは0%~10%、非常に特に好ましくは1%~7%、同様に好ましくは0%~4%に制限されることを意味すると理解される。本発明によるプロセス工程(ii)における有機溶媒の量を制限することにより、得られた生成物の後処理が容易になることが見出された。相間移動触媒も、工程(i)において既に準備されていてもよい。
【0025】
特にカーボネートがポリカーボネートである場合、このポリカーボネートを予め粉砕、好ましくは機械的に粉砕しておくことが有利であると証明された。当業者には既知のように、これにより固体の表面積、ひいては行われる加水分解の活性が増大する。これは特に、使用済みポリカーボネートが関係する場合にも有用である。粉砕は、圧力粉砕、打撃粉砕、摩擦粉砕、切断粉砕及び衝撃粉砕等の一般的に使用される方法で行ってもよい。カーボネート/ポリカーボネートは、特にミル粉砕に供することができる。ミル粉砕は、特にクライオミルを使用して行うこともできる。ポリカーボネートが、1mm未満、好ましくは0.5mm未満、特に好ましくは50μm未満、非常に特に好ましくは10μm未満の平均粒径を有するように粉砕される場合に好ましい。
【0026】
プロセス工程(ii)では、工程(i)からの成分を、工程(i)でまだ供給されていなければ、少なくとも1種の相間移動触媒を添加しながら任意に接触させる。これにより、実際の加水分解反応が可能になり、ひいては行われる。本発明によれば、プロセス工程(i)及び(ii)は、任意に、互いに明確に切り離されなくてもよい。逆に、プロセス工程(i)及び(ii)は、異なる場所で行ってもよい。したがって、例えば、特にカーボネート、特に好ましくは粉砕されたポリカーボネートが、プロセス工程(ii)への更なる輸送のために、適切な輸送車両、例えばサイロ車両に充填されることが考えられる。加水分解の現場(プロセス工程(ii))で、カーボネートは加水分解用に意図された反応装置に充填される。
【0027】
工程(i)からの成分の接触は、好ましくは、混合エネルギーの導入とともに行われる。これは当業者に既知の方法で実施することができる。表面再生を増加させることが加水分解速度に影響することが知られている。
【0028】
加水分解は、専門分野でそのような目的のために知られている任意の反応器で行うことができる。加水分解反応器としては、オートクレーブ、撹拌タンク(撹拌反応器)及び管状反応器が特に適している。
【0029】
加水分解は、好ましくは酸素の非存在下で行われる。すなわち、反応は不活性ガス雰囲気(特に窒素、アルゴン又はヘリウム雰囲気)中で行われる。また、用いられる水から不活性ガス飽和によって酸素が除去される場合に特に有利である。
【0030】
本発明による方法は、好ましくは、プロセス工程(ii)が、50℃~180℃、特に好ましくは70℃~130℃、非常に特に好ましくは80℃~115℃の温度で、任意に還流しながら、又は閉鎖系で行われることを特徴とする。本発明による方法は特に、加水分解のための低温、特に従来技術よりも低い温度を実現することを可能にする。これには、生態学的及び経済的な利点がある。これはまた、副生成物の形成がより少ないという結果にもつながる。特定の選択物のために、反応中にどのような最適条件を選択すべきかは、当業者には明らかである:水は蒸発するべきではない。逆に、閉鎖系、例えばオートクレーブで方法が操作される場合、より高い温度を達成することも可能である。しかしながら、この反応にはいかなる特別な圧力要件もない。同様に、それは周囲圧力又はわずかに減圧した圧力(特に下限圧力が200mbar(絶対)、好ましくは900mbar(絶対))で行うこともでき、これにより、形成された二酸化炭素の除去が容易になる。同様に、特に最大1.8bar(絶対)のわずかな昇圧も可能である。
【0031】
加水分解は一般に、1.0時間~48時間、好ましくは1.5時間~24時間、特に好ましくは2.0時間~20時間、非常に特に好ましくは2.5時間~19.0時間、例外的に好ましくは3.0時間~18.0時間の期間内に終了し、すなわち、この期間内の反応時間の後では、更に反応が起こったとしてもごくわずかである。
【0032】
本発明による方法は、同様に、少なくとも1種の加水分解触媒が、元素周期表の第5族、第6族、第14族又は第15族の元素のオキソ酸の塩を含み、該塩のアニオンのpKB値が0.1~11.0、好ましくは0.25~10.80、特に好ましくは0.50~10.60の範囲であることも特徴とする。本発明による方法は、同様に好ましくは、少なくとも1種の加水分解触媒が、元素周期表の第5族、第6族、第14族又は第15族の元素のオキソ酸の塩を含み、塩のアニオンのpKB値が0.1~7.0、好ましくは0.25~6.95、特に好ましくは0.50~6.85の範囲であることを特徴とする。極めて驚くべきことに、カーボネート結合の加水分解が、低~中程度のpKB値を有する記載されたアニオン性化合物を使用して、それを化学量論的に使用しなくても、触媒スケールでさえ可能であることが見出された。既に上述したように、加水分解触媒は、炭酸エステルのカルボニル官能基上に水を付加させることができる。加水分解触媒は、少なくとも1種のアニオンと少なくとも1種のカチオンとからなる。
【0033】
元素周期表の第5族、第6族、第14族又は第15族の元素のオキソ酸の塩(以下、略してオキソ酸の塩)に関しては、本発明の目的上、オキソ酸自体が安定で単離可能な化合物である必要はない。したがって、例えば炭酸塩は、形式的には「炭酸、「H2CO3」」から誘導可能であり、これが純粋な形で単離可能でないという事実はこれを妨げるものではなく、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0034】
本発明の文脈におけるpKB値は、「理想的に希薄な」水溶液におけるpKB値、すなわち、23℃~25℃の温度範囲において、オキソ酸の塩のカチオンとアニオンとの間の相互作用が無視できる場合のpKB値を意味すると理解される。ここでは、対応する酸塩基対について知られている次の式が十分な精度で適用可能である:pKA+pKB=14.00。その結果、例えば、(対イオンに関係なく)すべての水酸化物のpKB値は、本発明の目的上、0.00に等しく、したがって0.1~7.0の本発明の範囲内ではない。多数のオキソ酸のpKA値、ひいてはそれらの塩のpKB値(pKA+pKB=14.00を介する)も文献から知られている。特に、標準的なテキストである「Holleman, Arnold F.; Wiberg, Egon; Wiberg, Nils: Lehrbuch der anorganischen Chemie, 101st edition, De Gruyter」が参照され、そこでは、対応する元素の章でオキソ酸の多くのpKA値が明記されている:例えば、オルトリン酸、第3の解離段階のpKA=12.3(第771頁);オルトケイ酸、第2の解離段階のpKA=11.7(第923頁)、「炭酸」、第2の解離段階のpKA=10.3(第862頁)。
【0035】
文献値を使用できない場合、pKB値は、酸塩基滴定によって本発明の文脈で決定される。これは、オキソ酸のアニオンの塩基定数(KB)を分析的に決定し、pKB値を計算することによって行われる。このような酸塩基滴定の手順は当業者に既知である。関連する専門文献「Gerhart Jander, Karl Friedrich Jahr, Gerhard Schulze, Juergen Simon (Ed.): Massanalyse. Theorie und Praxis der Titrationen mit chemischen und physikalischen Indikationen, 16th edition, Walter de Gruyter, Berlin 2003, page 67 to 128」を参照のこと。塩基定数KBは、「Sehr schwache Saeuren und Basen」の章(第86頁及び第87頁)で記載されている水酸化物イオン濃度の式を使用して計算される。この式をKBについて解くと、次のようになる:
KB=[c2(OH-)-KW]/c0(B) (I)
式中、c(OH-)は、酸との滴定によって決定された水酸化物イオンの濃度であり、KWは、水のイオン積(10-14mol2/l2)であり、c0(B)は、塩基(=オキソ酸のアニオン)の開始濃度、すなわち開始重量から計算された濃度である。多くの場合、特に0.10~6.00の本発明によるpKB範囲の低い領域では、水の自動プロトン分解の影響は非常に小さく、そのため簡略化した式:
KB=c2(OH-)/c0(B) (II)
を使用して計算を行うことも可能であり、疑念がある場合は、正確な式(I)が、本発明の目的上、重要である。本発明の目的上、フェノールフタレインを使用して0.1N塩酸で滴定を行う。
【0036】
本発明によれば、少なくとも1種の加水分解触媒は、元素周期表の第5族、第6族、第14族又は第15族の元素のオキソ酸の塩を含む。加水分解触媒のアニオンは、3個以上の酸素原子が配位する少なくとも1つの中心金属、遷移金属又は非金属原子を含み、好ましくは、それらからなり、そのうちの少なくとも1つは負の形式電荷を有する。中心金属、遷移金属又は非金属原子は、好ましくは炭素、ケイ素、リン、バナジウム、モリブデン又はタングステンである。アニオンが、炭酸塩、ケイ酸塩、シラノール酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩及びタングステン酸塩の形である場合に特に好ましい。オキソ酸の塩が、以下から選択されるアニオンである場合に特に好ましい:
- オルトバナジン酸塩(VO4
3-)、
- 炭酸塩(CO3
2-)、
- オルトリン酸塩(PO4
3-)、
- 二リン酸塩(P2O7
4-)、
- 三リン酸塩(P3O9
5-)、
- 四リン酸塩(P4O11
6-)、
- メタリン酸塩([(PO3)-]n)、
- アルキルリン酸塩(RPO3
2-;ここで、Rは、1個~18個の炭素原子、好ましくは1個~10個の炭素原子を有するアルキルラジカルである)、
- 亜リン酸塩(HPO4
2-)、
- アリールホスホン酸塩(ArPO3
2-;式中、Arは、アリールラジカル、特にフェニルである)、
- オルトケイ酸水素塩(HSiO4
3-)、
- メタケイ酸塩([SiO3
2-]n)、
- メタケイ酸水素塩([HSiO3
-]n)、
- オルトケイ酸二水素塩(H2SiO4
2-)、
- オルトケイ酸三水素塩(H3SiO4
-)、
- アルキルシラノール酸塩(RxSiO4-x
(4-x)-;ここで、Rは、1個~18個の炭素原子、好ましくは1個~10個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、xは、1、2又は3、好ましくは1又は2、特に好ましくは1である)、又は、
- アリールシラノール酸塩(ArxSiO4-x
(4-x)-;式中、Arは、アリールラジカル、特にフェニルを表し、xは、1、2又は3、好ましくは1又は2、特に好ましくは1である)、
- タングステン酸塩(WO4
2-)、
- ポリタングステン酸塩(W4O16
8-;W7O24
6-;W10O32
4-;H2W12O40
6-;H2W12O42
10-)、
- モリブデン酸塩(MoO4
2-)、
- ポリモリブデン酸塩(Mo2O7
2-;Mo7O24
6-;Mo8O26
4-;Mo36O112(H2O)16
8-)。
【0037】
上述の中で特に好ましいアニオンは、WO4
2-、VO4
3-、CO3
2-、HPO4
2-、MoO4
2-、HSiO4
3-、RSiO3
3-であり、ここで、Rは、1個~10個の炭素原子を有するアルキルラジカル、又はPO4
3-である。特に好ましいアニオンはPO4
3-である。
【0038】
同様に、触媒として、混合物ではなく、オキソ酸の塩を1つだけ用いることも好ましい。この反応では、上記に記載されていない別の加水分解触媒を用いない場合に更に好ましい。オキソ酸の塩は、その質量が、反応されるカーボネート、特にポリカーボネートの質量の0.10%~20%、好ましくは1.0%~15%、特に好ましくは5.0%~10%となるような量で用いるのが有利であることが証明された。
【0039】
本発明によれば、塩のカチオンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及び第四級アンモニウムイオンから選択される場合に好ましい。塩がナトリウム塩若しくはカリウム塩又は第四級アンモニウムイオンである場合に特に好ましく、特に好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩である。この選択物は、加水分解触媒が上述の好ましいアニオンを含む場合に特に当てはまる。
【0040】
本発明によれば、少なくとも1種の相間移動触媒は荷電有機分子を含む。少なくとも1種の相間移動触媒がカチオン性界面活性剤である場合に特に好ましい。少なくともこの場合、加水分解触媒と相間移動触媒とは、その化学構造によって明確に区別される。
【0041】
相間移動触媒が、有機ラジカル及び対イオンを含む第四級アンモニウム塩又は第四級ホスホニウム塩から選択される場合に特に好ましい。特に好ましいのは、有機ラジカル及び対イオンを有する第四級アンモニウム塩である。有機ラジカルは、好ましくはメチル、ベンジル、ブチル、オクチル、ヘキサデシル又はステアリルである。対イオンは、好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、塩素酸イオン又はトリフラート(triflate)イオンである。少なくとも1種の相間移動触媒は、特に好ましくは、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロリド及びメチルトリオクチルホスホニウムクロリドからなる群より選択され、非常に特に好ましくはテトラブチルアンモニウムクロリドである。
【0042】
相間移動触媒は加水分解触媒として一定の活性を有することもあることが理解されるであろう(上記を参照のこと)。1つの触媒/複数の触媒はin situで形成することもできる。一例として、次の反応により相間移動触媒が形成され得て、しかしながら、これは次いでアニオンとして同時に元素周期表の第5族、第6族、第14族又は第15族の元素のオキソ酸の塩を含み、ひいては加水分解活性を示す:
H3PO4+3R4NOH→PO4(R4N)3+3H2O
【0043】
そのような実施形態は、好ましくは本発明に包含される。別の実施形態では、触媒のin situ形成は包含されない。
【0044】
同様に、混合物ではなく、相間移動触媒を1つだけ用いることも好ましい。この反応では、上記に記載されていない別の相間移動触媒を用いない場合に更に好ましい。
【0045】
本発明による方法が、相間移動触媒が加水分解触媒に対して0.5~1.5:1、特に好ましくは0.75~1.25:1、非常に特に好ましくは1.1~1.3:1のモル比で用いられることを特徴とする場合に好ましい。オキソ酸の塩が、反応されるカーボネート、特にポリカーボネートの質量の0.10%~20%、好ましくは1.0%~15%、特に好ましくは5.0%~10%の質量で用いられる場合に特に好ましい。
【0046】
同様に、加水分解触媒及び/又は相間移動触媒が、カーボネート1モル当量に対して0.005モル当量~0.15モル当量で用いられる場合も好ましい。
【0047】
カーボネート、特にポリカーボネートに対する(全体で用いられる)水の質量比を0.05:1.00~30.00:1.00、特に好ましくは0.10:1.00~25.00:1.00で用いることが特に好ましい。
【0048】
本発明による方法は、好ましくは、工程(ii)で得られる加水分解生成物が少なくとも1個のヒドロキシル基を含むことを特徴とする。反応条件に応じて、加水分解は他の生成物を形成することもある。しかしながら、加水分解生成物が少なくとも1個のヒドロキシル基を含むことが好ましい。本発明によれば、これは副生成物が依然として形成され続ける可能性があることを意味すると理解される。しかしながら、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する加水分解生成物が主生成物である。当業者は、この主生成物の収率及び/又は純度が最大になるように、本発明による方法の反応条件を最適化することができる。しかしながら、この場合、加水分解生成物は、依然として少量の副生成物を含有し得る。同様に、カーボネート、ビスカーボネート等、又はポリカーボネートが加水分解されるかに応じて、加水分解生成物は、2個以上のヒドロキシル基、特に2個のヒドロキシル基を含んでいてもよいことが理解されるであろう。
【0049】
本発明による方法は、好ましくは、以下の工程(iii)を更に含む:
(iii)少なくとも1種の加水分解生成物を、少なくとも加水分解触媒及び相間移動触媒から分離する工程。
【0050】
この工程(iii)は、特に、得られた加水分解生成物を分離及び/又は精製することを意図している。次いで、これにより、特に新しいポリカーボネート等の利用を意図した新しい材料の合成のために、加水分解生成物を更なる化学反応に送ることができる。加水分解生成物は、工程(iii)で任意の残留水から分離することもできる。プロセス工程(ii)における有機溶媒の量が制限されている場合には有利であることが証明されている(上記を参照のこと)。この場合、プロセス工程(iii)を特に効率的に行うことができる。これにより特に、相間移動触媒及び加水分解触媒を有する水相と加水分解生成物とのより良好な分離が可能になる。プロセス工程(iii)は、好ましくは水の添加によって実施される。これは、この水が能動的に添加されることを意味すると理解される。したがって、好ましくはプロセス工程(i)で供給される水とは異なる。相間移動触媒と電解触媒とが水に溶解している場合に好ましい(触媒が同一の場合は一方の触媒のみ)。加水分解生成物は水に不溶である。これにより、当業者に既知のように、より純度の高い加水分解生成物を得ることができる。加水分解生成物は、更に精製工程に供することができる。
【0051】
しかしながら、プロセス工程(iii)で抽出を行うことも同様に可能である。加水分解生成物は、少なくとも1種の有機溶媒で抽出される。適切な有機溶媒は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン置換脂肪族炭化水素、ハロゲン置換脂環式炭化水素、ハロゲン置換芳香族炭化水素、及び上述の有機溶媒の2種以上の混合物である。
【0052】
少なくとも加水分解触媒及び相間移動触媒からの加水分解生成物の分離は、すべての加水分解生成物がすべての加水分解触媒及び/又はすべての相間移動触媒から分離されるという意味で、必ずしも完全に進行する必要はないことが当業者には理解されるであろう。
【0053】
上述したように、本発明による方法で用いられるカーボネートは、特に好ましくはポリカーボネートである。ポリカーボネートは、脂肪族ポリカーボネート又は芳香族ポリカーボネートであってもよい。好ましくは、ポリカーボネートは芳香族ポリカーボネートである。特に好ましくは、ビスフェノールに基づいて製造されたポリカーボネートである。更に好ましくは、式(4)のモノマー単位を1つ以上含むポリカーボネートである:
【化1】
式中、
R
7及びR
8は、互いに独立して、H、C
1~C
18-アルキル、C
1~C
18-アルコキシ、Cl若しくはBr等のハロゲン、又はそれぞれ任意に置換されたアリール若しくはアラルキルであり、好ましくはH又はC
1~C
12アルキルであり、特に好ましくはH又はC
1~C
8-アルキルであり、非常に特に好ましくはH又はメチルであり、
Yは、単結合、-SO
2-、-CO-、-O-、-S-、C
1~C
6-アルキレン若しくはC
2-C
5-アルキリデン、又は任意に更なるヘテロ原子含有芳香族環に縮合していてもよいC
6~C
12-アリーレンである。
【0054】
一般式(4)のモノマー単位(複数の場合もある)は、当業者に既知のように、一般式(4a)の1つ以上の対応するジフェノールを介してポリカーボネート又はコポリカーボネートに導入される:
【化2】
式中、R
7、R
8及びYは、各々、式(4)に関連して既に定義したとおりである。
【0055】
式(4a)のジフェノールの例としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン及びそれらの環アルキル化化合物及びまた環ハロゲン化化合物、並びにα,ω-ビス(ヒドロキシフェニル)ポリシロキサンが挙げられる。
【0056】
一般式(4b)の化合物を用いることが非常に特に好ましい:
【化3】
式中、R
11は、H、線状又は分枝状のC
1~C
10-アルキル、好ましくは線状又は分枝状のC
1~C
6-アルキル、特に好ましくは線状又は分枝状のC
1~C
4-アルキル、非常に特に好ましくはH又はC
1-アルキル(メチル)であり、
式中、R
12は、線状又は分枝状のC
1~C
10-アルキル、好ましくは線状又は分枝状のC
1~C
6-アルキル、特に好ましくは線状又は分枝状のC
1~C
4-アルキル、非常に特に好ましくはC
1-アルキル(メチル)である。
【0057】
この場合、特にジフェノール(4c)が非常に特に好ましい。
【化4】
【0058】
一般式(4a)のジフェノール類は、単独で又は互いに混合して使用することができる。ジフェノール類は、文献から既知であるか、又は文献のプロセスによって製造可能である(例えば、H. J. Buysch et al., Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, New York 1991, 5th ed., vol. 19, p. 348を参照のこと)。
【0059】
ポリカーボネートがコポリカーボネートである場合、このコポリカーボネートが式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)の少なくとも1つの単位、又は式(1a)、式(1b)、式(1c)及び式(1d)の任意の所望の混合物を含む場合に特に好ましい:
【化5】
式中、
R
1は、水素又はC
1-~C
4-アルキルラジカル、好ましくは水素であり、
R
2は、C
1-~C
4-アルキルラジカル、好ましくはメチルラジカルであり、
nは、0、1、2又は3、好ましくは3であり、
R
3は、C
1-~C
4-アルキルラジカル、アラルキルラジカル又はアリールラジカル、好ましくはメチルラジカル又はフェニルラジカル、最も好ましくはメチルラジカルである。
【0060】
コポリカーボネートが、更に上述の式(4)の単位を含む場合に特に好ましい。
【0061】
コポリカーボネートの場合、R1が水素又はC1-~C4-アルキルラジカル、好ましくは水素を表し、R2がC1-~C4-アルキルラジカル、好ましくはメチルラジカルであり、nが0、1、2又は3、好ましくは3である式(1a)の少なくとも1個の単位を含む場合に特に好ましい。コポリカーボネートが、R1が水素であり、R2がメチルであり、nが3である式(1a)の単位を含む場合に特に好ましい。そのような単位(1a)は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)から誘導される。コポリカーボネートを製造するために用いられる式(1a)のジフェノールのいくつかは、文献(独国特許出願公開第3918406号)で知られている。
【0062】
本発明により得られる加水分解生成物は、上述のジヒドロキシ化合物、特にビスフェノール類を含んでいてもよいことは当業者に明らかである。本発明に従って得られる加水分解生成物は、好ましくは、式(4a)、式(4b)及び式(4c)で表される。同様に、加水分解生成物が式(1a)、式(1b)、式(1c)又は式(1d)の対応するジヒドロキシ化合物によって表されることも考えられる。コポリカーボネートが関係する場合、異なる加水分解生成物も相応して得られ得ることが当業者には明らかである。
【0063】
本発明の更なる態様は、
(ia)任意に好ましい形態又は選択物の組み合わせ(カーボネートがポリカーボネートであるという制限を伴う)で、本発明による上記のプロセスによりポリカーボネートを加水分解する方法を行って、少なくとも加水分解生成物としてジヒドロキシ化合物を得る工程と、
(iia)工程(ia)からの加水分解生成物としてのジヒドロキシ化合物を、少なくとも加水分解触媒及び相間移動触媒から分離する工程と、
(iiia)工程(iia)の分離された加水分解生成物としてのジヒドロキシ化合物を、相界面プロセスにおいてホスゲンと反応させる工程、又は、
(iiib)工程(iia)の分離された加水分解生成物としてのジヒドロキシ化合物を、溶融エステル交換反応プロセスにおいてジアリールカーボネートと反応させる工程と、
を含む、ポリカーボネートを製造する方法を提供する。
【0064】
このプロセスにより、使用済みポリカーボネート等の特に既に利用されているポリカーボネートを最初にその構成要素に戻し、次いで得られた加水分解生成物を使用して新しいポリカーボネートを製造することが可能になる。
【0065】
この場合、プロセス工程(iia)は、上記の好ましい実施形態において既に詳細に説明したプロセス工程(iii)を行う好ましい形態である。
【0066】
特に、得られた加水分解生成物の更なる後処理を、プロセス工程(iia)の後に行ってもよい。この後処理は、プロセス工程(iiia)又は(iiib)においてこれを使用できるようにするために、加水分解生成物の精製をもたらすものとする。特に、例えば当業者に既知の方法で加水分解生成物の再結晶化が可能である。
【0067】
プロセス工程(iiia)の実行は当業者に既知である。例えば、相界面プロセスにおいて、例えばビスフェノール類等の加水分解生成物と、任意の分岐剤とをアルカリ水溶液に溶解し、アルカリ水溶液、有機溶媒及び触媒、好ましくはアミン化合物の二相混合物中で、任意に溶媒に溶解したホスゲンと反応させることができる。反応は多段階モードで実施することもできる。ポリカーボネートを製造するそのようなプロセスは、原則的に、二相界面プロセスとして知られており、例えば、H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, vol. 9, Interscience Publishers, New York 1964 p. 33 ff.及びPolymer Reviews, vol. 10, "Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods", Paul W. Morgan, Interscience Publishers, New York 1965, chapter VIII, p. 325に記載されており、したがって、必須条件は当業者によく知られている。
【0068】
代替的に、プロセス工程(iiib)も同様に当業者に既知である。溶融エステル交換プロセスは、例えば、Encyclopedia of Polymer Science, vol. 10 (1969), Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, H. Schnell, vol. 9, John Wiley and Sons, Inc. (1964)、及び独国特許第1031512号に記載されている。溶融エステル交換プロセスにおいて、例えばビスフェノール類等の加水分解生成物は、適切な触媒及び任意の他の添加剤を使用して、ジアリールカーボネートと溶融物中でエステル交換される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0069】
ポリカーボネート(PC)を加水分解してビスフェノールA(BPA)を得る
51mgの凍結粉砕されたポリカーボネート(PC、0.19mmol、46500g/molのMnを有する(GPC、BHT);当初3mmの顆粒、1.00当量)又は0.19mmolのDiCPCを、9mlの容積を有する圧力管に初期装入した。続いて、表に記載される加水分解触媒(0.1当量)と、任意に相間移動触媒としてのテトラブチルアンモニウムクロリド(Bu4NCl*H2O)(0.1当量)とを添加した。最後に1mlの蒸留水を混合物に添加した。容器を密閉し、撹拌しながら17時間加熱した。混合物を数ミリリットルのテトラヒドロフラン(THF)と混合し、反応生成物を溶解した。得られた転化物を、ジメチルスルホキシド-d6を溶媒とするプロトン磁気共鳴分光法(1H-NMR)によって測定した。PCの7.31ppm~7.22ppmのシグナル群を、転化をモニタリングするための基準として積分した。
【0070】
1H-NMR(400 MHz, DMSO-d6): δ 6.99 - 6.88(m, 4 H, BPA), 6.66 - 6.57(m, 4 H, BPA), 3.59(tq, J= 5.9, 1.7 Hz, THF), 3.54(s, H2O), 2.50(p, DMSO), 1.75(td, J = 5.9, 5.0, 2.5 Hz, THF), 1.50(s, 6 H, BPA)。
【0071】
結果は表1にまとめられている:
【0072】
【0073】
表から明らかなように、DiCPC及びまたポリカーボネートの加水分解は、相間移動触媒の存在なしには成功しない。
【国際調査報告】