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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】RXFP1アゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07C 237/24 20060101AFI20241024BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241024BHJP
   C07D 498/04 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/424 20060101ALI20241024BHJP
   C07C 275/34 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07C237/24
A61K31/167
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
C07D498/04 101
A61K31/424
C07C275/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525583
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022078836
(87)【国際公開番号】W WO2023077041
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/273,290
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ピント,ドナルド ジェイ ピー
(72)【発明者】
【氏名】スー,シュン
(72)【発明者】
【氏名】マトゥアー,アルビンド
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ,マイケル シー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジャンチン
(72)【発明者】
【氏名】パビセティ,クマール バラシャンムガ
(72)【発明者】
【氏名】ショー,スコット エイ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206GA06
4C206GA30
4C206GA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA36
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006BJ30
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM30
4H006BM71
4H006BN10
4H006BP10
4H006BU42
4H006BV24
4H006BV44
(57)【要約】
本開示は、RXFP1受容体アゴニストである、式(I)の化合物に、それらを含有する組成物に、および例えば、心不全、線維形成疾患、ならびに肺疾患(例えば、特発性肺線維症)、腎疾患(例えば、慢性腎臓病)、または肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝炎および門脈圧亢進症)などの関連疾患の治療にてそれらを用いる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中:
は、ハロ、CN、C1-7アルキル(0~3個のRで置換される)、C2-7アルケニル(0~3個のRで置換される)、C2-7アルキニル(0~3個のRで置換される)、C3-6シクロアルキル(0~3個のR14で置換される)、C3-6シクロアルケニル(0~3個のR14で置換される)、アリール(0~3個のR14で置換される)、または4ないし6員のヘテロシクリル(O、S(=O)、N、およびNR14aから選択される1~3個のヘテロ原子を含み、0~3個のR14で置換される)であり;
は、HまたはC1-3アルキルであり;
は、-NRC(=O)R、-NRC(=O)(CR1-2、または-NRC(=O)NRであり;
は、ハロ、CN、C1-4アルキル(0~5個のハロ置換基で置換される)、-OH、-OC1-4アルキル(0~5個のハロ置換基で置換される)、-S(=O)、またはアリールであり;
は、C1-8アルキル(0~4個のR11で置換される)またはC3-6シクロアルキル(0~4個のRおよび0~2個のRで置換される)であり;
は、ハロ、OH、C3-6シクロアルキル、またはアリールであり;
は、アリール(0~4個のRおよび0~2個のRで置換される)であり;
は-ORであり;
は、ハロ、CN、フェニル(0~3個のR10および0~2個のR11で置換される)、または3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、N、およびNR11aから選択される1~5個のヘテロ原子を含み、0~3個のR10および0~2個のR11で置換される)であり;
10は、ハロ、CN、またはC1-4アルキルであり;
11は、C1-3アルキル(0~1個のR12および0~1個のR13で置換される)、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRC(=O)OR、-NRC(=O)NR、-NRS(=O)、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-C(=O)NRS(=O)、-OC(=O)R、-S(=O)、-S(=O)NR、C3-10カルボシクリル(0~5個のRで置換される)、4ないし6員のヘテロシクリル(O、S(=O)、NおよびNR15から選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のRで置換される)であり;
11aは、H、またはC1-4アルキル(0~2個のRで置換される)であり;
12は、ハロ、-C(=O)OR、-C(=O)NHR、-C(=O)NHOR、またはC1-4アルキル(0~3個のハロまたはOH置換基で置換される)であり;
13は、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRC(=O)OR、-NRS(=O)、-NRS(O)NR、-OC(=O)NR、-OC(=O)NROR、-S(=O)NR、または-S(O)であり;
14は、ハロ、CN、C1-4アルキル(0~3個のハロ置換基で置換される)、-OC1-4アルキル(0~3個のハロ置換基で置換される)、-(CH0-3-NR、-(CH0-3-アリール(0~3個のRで置換される)、-O-アリール(0~3個のRで置換される)、または-(CH0-3-3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~3個のRで置換される)であり;
14aは、H、C(=O)C1-4アルキル、またはC1-3アルキル(0~2個のハロ置換基で置換される0~3個のアリール置換基で置換される)であり;
15は、H、C1-3アルキル、またはアリールであり;
16は、C1-3アルキル(0~1個のRで置換される)、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-C(=O)NRS(=O)、-OC(=O)R、-S(=O)、または-S(=O)NRであり;
は、H、C1-5アルキル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルケニル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルキニル(0~5個のRで置換される)、-(CH-C3-10カルボシクリル(0~5個のRで置換される)、または-(CH-3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のRで置換される)であるか;あるいはRとRとが、その両方が結合する窒素原子と一緒になって3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のRで置換される)を形成し;
は、H、C1-5アルキル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルケニル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルキニル(0~5個のRで置換される)、-(CH-C3-10カルボシクリル(0~5個のRで置換される)、または-(CH-3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のRで置換される)であり;
は、C1-5アルキル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルケニル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルキニル(0~5個のRで置換される)、C3-6カルボシクリル、または3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含む)であり;
は、H、-OR、またはC1-5アルキル(0~5個のRで置換される)であり;
は、ハロ、CN、=O、C1-6アルキル(0~5個のRで置換される)、C2-6アルケニル(0~5個のRで置換される)、C2-6アルキニル(0~5個のRで置換される)、-(CH-C3-10 カルボシクリル(0~5個のRで置換される)、-(CH-3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のRで置換される)、-(CHOR、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-NRC(=O)R、-S(=O)、-NRC(=O)OR、-OC(=O)NR、または-(CHNRであり;
は、H、C1-5アルキル、C3-6シクロアルキル、またはアリールであるか;あるいはRとRとが、その両方が結合する窒素原子と一緒になって3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含む)を形成し;
は、ハロ、CN、OH、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、またはアリールであり;
nは0、1、2、または3であって;
pは0、1、または2である]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
式(II):
【化2】
[式中:
は、ハロ、C1-4アルキル(0~4個のハロで置換される)、C3-6シクロアルキル、またはフェニルであり;
はHであり;
は、ハロまたはC1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)であり;
はC3-6シクロアルキル(0~1個のRで置換される)であり;
は、ハロ、CN、またはフェニル(0~1個のR10および0~1個のR11で置換される)、
【化3】
であり;
10は、ハロ、CN、またはC1-4アルキルであり;
11は、-OH、-OC1-4アルキル、または-C(=O)ORであり;
11aは、HまたはC1-3アルキルであり;
は、HまたはC1-4アルキルであって;
は、HまたはC1-4アルキルである]
で示される、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項3】
式(II):
【化4】
[式中:
は、ハロ、C1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)、C3-6シクロアルキル、またはフェニルであり;
はHであり;
は、ハロまたはC1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)であり;
はC1-7アルキル(0~1個のR11で置換される)であり;
11は、-OR、-C(=O)R、-C(=O)OR、または-C(=O)NRであり;
は、HまたはC1-4アルキルであって;
は、HまたはC1-4アルキルである]
で示される、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項4】
式(III):
【化5】
[式中:
は、ハロ、C1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)、C3-6シクロアルキル、またはフェニルであり;
はHであり;
は、ハロまたはC1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)であり;
はアリール(0~1個のRおよび0~1個のRで置換される)であり;
は-ORであり;
は、ハロ、CN、またはフェニル(0~3個のR10および0~2個のR11で置換される)であり;
10は、ハロ、CN、C1-4アルキル、-OH、または-OC1-4アルキルであり;
11は、-ORまたは-C(=O)ORであり;
は、HまたはC1-4アルキルであり;
は、H、C1-4アルキル、またはフェニルであって;
は、-OHまたは-OC1-4アルキルである]
で示される、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項5】
式(IV):
【化6】
[式中:
は、ハロ、C1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)、C3-6シクロアルキル、またはフェニルであり;
はHであり;
は、ハロまたはC1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)であり;
はアリール(0~1個のRおよび0~1個のRで置換される)であり;
は-OC1-4アルキル(0~5個のハロまたはOH置換基で置換される)であり;
は、ハロ、CN、またはフェニル(0~3個のR10および0~2個のR11で置換される)であり;
10は、ハロ、CN、C1-4アルキル、-OH、または-OC1-4アルキルであり;
11は、-ORまたは-C(=O)ORであり;
は、HまたはC1-4アルキルであって;
は、H、C1-4アルキル、またはフェニルである]
で示される、請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物、またはその医薬的に許容される塩と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項7】
リラキシンに関連する疾患を治療する方法であって、治療的に効果的な量の請求項6に記載の医薬組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項8】
疾患が、狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞、心不全、急性冠動脈疾患、急性心不全、慢性心不全、および心臓異所性損傷からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
疾患が心不全である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
疾患が線維症である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年10月29日付け出願の米国仮特許出願番号63/273,290号の利益を主張するものであり、その開示のすべてを出典明示により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本開示は、リラキシン(relaxin)ファミリーペプチド受容体1(RXFP1)アゴニストである、新規な化合物、それらを含有する組成物、およびそれらを、例えば、心不全、線維化疾患、および肺疾患(例えば、特発性肺線維症)、腎臓病(例えば、慢性腎疾患)および肝臓病(例えば、非アルコール性脂肪肝炎および門脈圧亢進症)などの関連疾患の治療にて使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトリラキシンホルモン(リラキシンまたはH2リラキシンとも称される)は、Frederick Hisawが、1926年に、ブタ黄体から由来の粗抽出物をバージンモルモットに注射した時に、線維軟骨性恥骨結合関節の弛緩が観察されたことでその活性が最初に発見された、53個のアミノ酸から構成される6kDaのペプチドである(Hisaw FL、Proc. Soc. Exp. Biol.Med., 1926, 23, 661-663)。リラキシン受容体は、以前はLgr7として知られていたが、今では正式にはリラキシンファミリーペプチド受容体1(RXFP1)と称され、2002年にリラキシンの受容体としてオーファンではなくなった(Hsu SY.ら、Science, 2002, 295, 671-674)。RXFP1はマウスとヒトとの間で85%アミノ酸同一性で合理的によく保存されており、ヒトと他の種において本質的に偏在的に発現する(Halls ML.ら、Br. J.Pharmacol., 2007, 150, 677-691)。リラキシンおよびRXFP1の細胞シグナル伝達経路は細胞型依存性であり、非常に複雑である(Halls ML.ら、Br. J.Pharmacol., 2007, 150, 677-691;Halls ML.ら、Ann. NY Acad. Sci., 2009, 1160, 108-111;Halls ML.ら、Ann. NY Acad. Sci., 2007, 1160, 117-120)。最も研究されている経路は、リラキシンがRXFP1アゴニストとして機能し、GαSカップリングおよびアデニル酸シクラーゼの活性化を促進する、cAMPの細胞レベルがリラキシン依存的に増加する経路である(Halls ML.ら、Mol. Pharmacol., 2006, 70, 214-226)。
【0004】
リラキシンを最初に発見して以来、多くの実験的研究は、リラキシンが女性の生殖生物学において果たす役割を明確にすること、および哺乳動物の妊娠中に生じる生理的変化を明らかにすることに焦点を当ててきた(Sherwood OD.、Endocr. Rev., 2004, 25, 205-234)。ヒト妊娠の間には、胎児から課せられる栄養要求を満たすために、女性の身体は全身血管抵抗(SVR)が有意に約30%低下し、それに付随して心拍出力が約50%上昇する(Jeyabalan AC.、K.P.、Reanl and Electrolyte Disorders. 2010, 462-518)、(Clapp JF & Capeless E.、Am. J. Cardio., 1997, 80, 1469-1473)。さらなる血管適応には、効果的な心室-動脈のカップリングを維持するのに重要である全身の動脈コンプライアンスが約30%増加すること、ならびに代謝性老廃物の排出に重要である腎血流量(RBF)と糸球体濾過量(GFR)の両方が約50%増加することが含まれる(Jeyabalan AC.、K.P.、Reanl and Electrolyte Disorders. 2010, 462-518)、(Poppas A.ら、Circ., 1997, 95, 2407-2415)。齧歯動物での前臨床実験ならびに種々の患者セッティングで行われる臨床実験の両方で、これらの適応的な生物学的変化を媒介するにおいて、リラキシンが少なくともある程度まで関与しているという証拠が得られている(Conrad KP.、Regul Integr. Comp. Physiol., 2011, 301, R267-275)、(Teichman SL.ら、Heart Fail. Rev., 2009, 14, 321-329)。重要なことは、これらの適応応答の多くが、過度の線維化、低い動脈コンプライアンス、および腎機能の低下のすべてが心不全の患者に共通する特性であるという点で、HF患者に利益のある可能性があるということである(Mohammed SF.ら、Circ., 2015, 131, 550-559)、(Wohlfahrt P.ら、Eur. J. Heart Fail., 2015, 17, 27-34)、(Damman K.ら、Prog. Cardiovasc. Dis., 2011, 54, 144-153)。
【0005】
心不全(HF)は、血行動態学的に「心臓ポンプ機能が損傷した結果、全身のかん流が不十分となり、人体の代謝需要を満たせない状態」として定義され、米国にて推定580万人に、世界中で2300万人より多くに普及しており、今日の健康管理システムにて莫大な負担を示す(Roger VL.ら、Circ. Res., 2013, 113, 646-659)。2030年までに米国だけでさらに300万人がHFとなり、2010年から25%増であろうと推定される。2010年にHFに関連する直接的な推定費用(2008ドル)は250億ドルであり、2030年には780億ドルに膨れ上がると推測された(Heidenreich PA.ら、Circ., 2011, 123, 933-944)。意外にも、米国では9件の死亡のうちの1件がその死亡診断書にHFと示されており(Roger VL.ら、Circ., 2012, 125, e2-220)、HFと診断された後の生存率は時代と共に改善されているが(Matsushita K.ら、Diabetes, 2010, 59, 2020-2026)、(Roger VL.ら、JAMA, 2004, 292, 344-350)、その死亡率は高いままであり、診断から5年以内にHF患者の約50%が死亡する(Roger VL.ら、Circ., 2012, 125, e2-220)、(Roger VL.ら、JAMA, 2004, 292, 344-350)。
【0006】
HFの徴候は不十分な心拍出力の結果であり、疾患の進行段階に応じてかなり衰弱し得る。HFの主たる徴候および兆候には:1)左心室から前方への流れが効果的でなく、肺毛細血管床での圧が増加することに起因する肺浮腫からもたらされる呼吸困難(苦しそうな呼吸);2)右心室が全身の静脈リターンに適合できない場合に起こる下肢浮腫;および3)心不全のため身体の代謝上の要求を満たすの十分な心拍出力(CO)を維持できないことによる疲労が含まれる(Kemp CD. & Conte JV.、Cardiovasc. Pathol., 2011, 21, 365-371)。また、徴候の重篤度に関連して、HF患者は、しばしば、「代償性」または「非代償性」と記載される。代償性心不全では、徴候は安定しており、流体貯留および肺浮腫などの多くの明らかな特徴は見られない。非代償性心不全は、肺浮腫の急性エピソード、運動耐容能の減少、および運動の際の息切れの増加として存在し得る、悪化をいう(Millane T.ら、BMJ, 2000, 320, 559-562)。
【0007】
心機能の低下により代謝要求を満たすことができなくなり得るとの単純な定義とは対照的に、極めて多くの原因疾患、多数の危険因子、および最終的に心不全に至る多くの病理学的変化が、この疾患を極めて複雑なものとしている(Jessup M. & Brozena S., N. Engli. J. Med., 2003, 348, 3007-2018)。HFの病態生理に関与すると考えられる有害な事象は、心筋梗塞などの極めて急性な事象から生涯続く高血圧などの慢性の損傷にまで及ぶ。歴史的に、HFは、主に、左心室(LV)収縮機能の低下が血液の排出を制限し、その結果として駆出率(EFは1回拍出量/拡張末期容量)の低下をもたらす「収縮期HF」として、または活動的弛緩が拡張期のLV充満を減少させ、受動的スティフネスがそれを増大させるが、全体的なEFは維持される「拡張期HF」として説明されてきた(Borlaug BA. & Paulus WJ.、Eur Heart J., 2011, 32, 670-679)。最近になって、拡張期および収縮期LVの機能不全はこれらの2つのグループに独特で特異的なものではないと理解されるようになったため、新たな用語:「駆出率が低下した心不全」(HFrEF)および「駆出率が保たれた心不全」(HFpEF)が採用された(Borlaug BA. & Paulus WJ.、Eur Heart J., 2011, 32, 670-679)。これら2つの患者の集団は極めて類似する徴候および症状を示すが、HFrEFおよびHFpEFがHFの2つの異なる形態を表すか、または共通する病態を共有する単一のスペクトルの2つの極端な形態を表すかのいずれであるかは、現在のところ、循環器社会のうちでは議論中である(Borlaug BA. & Redfield MM.、Circ., 2011, 123, 2006-2013)、(De Keulenaer GW. & Brutsaert DL.、Circ., 2011, 123, 1996-2004)。
【0008】
セレラキシン(Serelaxin)は、第1相薬物動態学的半減期が0.09時間と相対的に短いヒト組換えリラキシンペプチドの静脈内(IV)製剤であって、現在、HFを治療するために開発中にある(ノバルティス、2014)。セレラキシンを健常者のボランティア(NHV)に投与すると、RBF(Smith MC.ら、J. Am. Soc. Nephrol. 2006, 17, 3192-3197)およびGFRの推定値(Dahlke M.ら、J. Clin. Pharmacol.,2015, 55, 415-422)が増加することが証明された。RBFの増加は安定した代償性HF患者でも観察された(Voors AA.ら、Cir. Heart Fail., 2014, 7, 994-1002)。大規模な臨床試験では、セレラキシンの院内での48時間に及ぶ静脈内注入に応答して、腎機能の悪化、HFの悪化、ならびに少ない死亡において望ましい変化が急性非代償性HF(ADHF)患者にて観察された(Teerlink JR.ら、Lancet, 2013, 381, 29-39)、(Ponikowski P.ら、Eur Heart, 2014, 35, 431-441)。セレラキシンの慢性投与がHF患者に対して持続的な利益を提供し得ることを示唆するものとして、皮下ポンプを用いてセレラキシンを6カ月にわたって連続して投与した強皮症の患者にて、クレアチンの血清中レベルに基づく腎機能の改善が観察された(Teichman SL.ら、Heart Fail. Rev., 2009, 14, 321-329)。HFを治療するためのその治療剤としての可能性に加えて、リラキシンの持続皮下投与もまた、肺損傷(Unemori EN.ら、J. Clin. Invet. 1996, 98, 2739-2745)、腎損傷(Garber SL.ら、Kidney Int., 2001, 59, 876-882)、および肝損傷(Bennett RG.、Liver Int., 2014, 34, 416-426)の種々の動物実験にて効果的であることが証明されている。
【0009】
要約すれば、多くの証拠は、哺乳動物の妊娠中に起こる適応的変化を媒介するRXFP1のリラキシン依存性アゴニスト作用の役割を支持しており、リラキシンがHF患者に投与された場合に、これらの変化が好ましい生理学的効果および結果となることを支持する。肺、腎臓および肝臓の損傷の種々の疾患実験におけるさらなる前臨床動物実験から、リラキシンが、慢性的に投与された場合に、HFに加えて、複数の適応症に治療効果を提供する可能性のある証拠が提供される。より具体的には、リラキシンの慢性投与は、肺疾患(例えば、特発性肺線維症)、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)または肝臓病(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎および門脈圧亢進症)に罹患している患者に対して利益があり得る。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、RXFP1受容体アゴニストとして有用である、新規な置換ノルボルニル化合物、その立体異性体、互変異性体、医薬的に許容される塩または溶媒和物を含む、そのアナログを提供する。
本発明はまた、本発明の化合物を製造するための方法および中間体を提供する。
本発明はまた、医薬的に許容される担体、および本発明の化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容される塩または溶媒和物の少なくとも一つを含む、医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明の化合物は、例えば、心不全、線維性疾患、および肺疾患(例えば、特発性肺線維症)、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)、または肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎および門脈圧亢進症)の治療および/または予防にて使用されてもよい。
本発明の化合物は療法にて使用されてもよい。
本発明の化合物は心不全の治療および/または予防のための医薬の製造に使用されてもよい。
【0012】
本発明の化合物は、単独で、本発明の他の化合物と組み合わせて、または1または複数の、好ましくは1ないし2種の他の薬剤と組み合わせて使用され得る。
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、開示が進むにつれて、拡大された形態にて記載されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、RXFP1受容体アゴニストである、式(I)の化合物、該化合物を含有する組成物、および該化合物または組成物を使用する方法を包含する。
【0014】
第1の態様において、本発明は、とりわけ、式(I):
【化1】
[式中:
は、ハロ、CN、C1-7アルキル(0~3個のRで置換される)、C2-7アルケニル(0~3個のRで置換される)、C2-7アルキニル(0~3個のRで置換される)、C3-6シクロアルキル(0~3個のR14で置換される)、C3-6シクロアルケニル(0~3個のR14で置換される)、アリール(0~3個のR14で置換される)、または4ないし6員のヘテロシクリル(O、S(=O)、N、およびNR14aから選択される1~3個のヘテロ原子を含み、0~3個のR14で置換される)であり;
は、HまたはC1-3アルキルであり;
は、-NRC(=O)R、-NRC(=O)(CR1-2、または-NRC(=O)NRであり;
は、ハロ、CN、C1-4アルキル(0~5個のハロ置換基で置換される)、-OH、-OC1-4アルキル(0~5個のハロ置換基で置換される)、-S(=O)、またはアリールであり;
は、C1-8アルキル(0~4個のR11で置換される)またはC3-6シクロアルキル(0~4個のRおよび0~2個のRで置換される)であり;
は、ハロ、OH、C3-6シクロアルキル、またはアリールであり;
は、アリール(0~4個のRおよび0~2個のRで置換される)であり;
は-ORであり;
は、ハロ、CN、フェニル(0~3個のR10および0~2個のR11で置換される)、または3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、N、およびNR11aから選択される1~5個のヘテロ原子を含み、0~3個のR10および0~2個のR11で置換される)であり;
10は、ハロ、CN、またはC1-4アルキルであり;
11は、C1-3アルキル(0~1個のR12および0~1個のR13で置換される)、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRC(=O)OR、-NRC(=O)NR、-NRS(=O)、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-C(=O)NRS(=O)、-OC(=O)R、-S(=O)、-S(=O)NR、C3-10カルボシクリル(0~5個のRで置換される)、4ないし6員のヘテロシクリル(O、S(=O)、NおよびNR15から選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のRで置換される)であり;
11aは、H、またはC1-4アルキル(0~2個のRで置換される)であり;
12は、ハロ、-C(=O)OR、-C(=O)NHR、-C(=O)NHOR、またはC1-4アルキル(0~3個のハロまたはOH置換基で置換される)であり;
13は、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRC(=O)OR、-NRS(=O)、-NRS(O)NR、-OC(=O)NR、-OC(=O)NROR、-S(=O)NR、または-S(O)であり;
14は、ハロ、CN、C1-4アルキル(0~3個のハロ置換基で置換される)、-OC1-4アルキル(0~3個のハロ置換基で置換される)、-(CH0-3-NR、-(CH0-3-アリール(0~3個のRで置換される)、-O-アリール(0~3個のRで置換される)、または-(CH0-3-3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~3個のRで置換される)であり;
14aは、H、C(=O)C1-4アルキル、またはC1-3アルキル(0~2個のハロ置換基で置換される0~3個のアリール置換基で置換される)であり;
15は、H、C1-3アルキル、またはアリールであり;
16は、C1-3アルキル(0~1個のRで置換される)、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-C(=O)NRS(=O)、-OC(=O)R、-S(=O)、または-S(=O)NRであり;
は、H、C1-5アルキル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルケニル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルキニル(0~5個のRで置換される)、-(CH-C3-10カルボシクリル(0~5個のRで置換される)、または-(CH-3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のRで置換される)であるか;あるいはRとRとが、その両方が結合する窒素原子と一緒になって3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のRで置換される)を形成し;
は、H、C1-5アルキル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルケニル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルキニル(0~5個のRで置換される)、-(CH-C3-10カルボシクリル(0~5個のRで置換される)、または-(CH-3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のRで置換される)であり;
は、C1-5アルキル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルケニル(0~5個のRで置換される)、C2-5アルキニル(0~5個のRで置換される)、C3-6カルボシクリル、または3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含む)であり;
は、H、-OR、またはC1-5アルキル(0~5個のRで置換される)であり;
は、ハロ、CN、=O、C1-6アルキル(0~5個のRで置換される)、C2-6アルケニル(0~5個のRで置換される)、C2-6アルキニル(0~5個のRで置換される)、-(CH-C3-10カルボシクリル(0~5個のRで置換される)、-(CH-3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のRで置換される)、-(CHOR、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-NRC(=O)R、-S(=O)、-NRC(=O)OR、-OC(=O)NR、または-(CHNRであり;
は、H、C1-5アルキル、C3-6シクロアルキル、またはアリールであるか;あるいはRとRとが、その両方が結合する窒素原子と一緒になって3ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)、およびNから選択される1~4個のヘテロ原子を含む)を形成し;
は、ハロ、CN、OH、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、またはアリールであり;
nは0、1、2、または3であって;
pは0、1、または2である]
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0015】
第1の態様の範囲内にある第2の態様において、本発明は、式(II):
【化2】
[式中:
は、ハロ、C1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)、C3-6シクロアルキル、またはフェニルであり;
はHであり;
は、ハロまたはC1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)であり;
は、C3-6シクロアルキル(0~1個のRで置換される)であり;
は、ハロ、CN、またはフェニル(0~1個のR10および0~1個のR11で置換される)、
【化3】
であり;
10は、ハロ、CN、またはC1-4アルキルであり;
11は、-OH、-OC1-4アルキル、または-C(=O)ORであり;
11aは、HまたはC1-3アルキルであり;
は、HまたはC1-4アルキルであって;
は、HまたはC1-4アルキルである]
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0016】
第1ないし第2の態様の範囲内にある第3の態様において、本発明は、式(II):
【化4】
[式中:
は、ハロ、C1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)、C3-6シクロアルキル、またはフェニルであり;
はHであり;
は、ハロまたはC1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)であり;
は、C1-7アルキル(0~1個のR11で置換される)であり;
11は、-OR、-C(=O)R、-C(=O)OR、または-C(=O)NRであり;
は、HまたはC1-4アルキルであって;
は、HまたはC1-4アルキルである]
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0017】
第1の態様の範囲内にある第4の態様において、本発明は、式(III):
【化5】
[式中:
は、ハロ、C1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)、C3-6シクロアルキル、またはフェニルであり;
はHであり;
は、ハロまたはC1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)であり;
はアリール(0~1個のRおよび0~1個のRで置換される)であり;
は-ORであり;
は、ハロ、CN、またはフェニル(0~3個のR10および0~2個のR11で置換される)であり;
10は、ハロ、CN、C1-4アルキル、-OH、または-OC1-4アルキルであり;
11は、-ORまたは-C(=O)ORであり;
は、HまたはC1-4アルキルであり;
は、H、C1-4アルキル、またはフェニルであって;
は-OHまたは-OC1-4アルキルである]
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0018】
第1の態様の範囲内にある第5の態様において、本発明は、式(IV):
【化6】
[式中:
は、ハロ、C1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)、C3-6シクロアルキル、またはフェニルであり;
はHであり;
は、ハロまたはC1-4アルキル(0~4個のハロ置換基で置換される)であり;
はアリール(0~1個のRおよび0~1個のRで置換される)であり;
は-OC1-4アルキル(0~5個のハロまたはOH置換基で置換される)であり;
は、ハロ、CN、またはフェニル(0~3個のR10および0~2個のR11で置換される)であり;
10は、ハロ、CN、C1-4アルキル、-OH、または-OC1-4アルキルであり;
11は、-ORまたは-C(=O)ORであり;
は、HまたはC1-4アルキルであって;
は、H、C1-4アルキル、またはフェニルである]
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0019】
式(I)の化合物では、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R11a、R12、R13、R14、R14a、R15、R、R、R、R、R、R、およびRを含む、可変的な置換基の例としてのいずれの範囲も、可変的な置換基の他の任意の範囲とも独立して使用され得る。このように、本発明は異なる態様の組み合わせを包含する。
【0020】
特記されない限り、これらの用語は次の意味を有する。
「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを包含する。
「アルキル」または「アルキレン」は、特定された数の炭素原子を有する分岐鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を包含するものとする。例えば、「C~C10アルキル」または「C1-10アルキル」(またはアルキレン)は、C、C、C、C、C、C、C、C、C、およびC10アルキル基を包含するものとする。加えて、例えば、「C~Cアルキル」または「C-Cアルキル」は1~6個の炭素原子を有するアルキルを示す。アルキル基は、非置換とすることができ、あるいは少なくとも1つの水素がもう一つ別の化学基と置き換えられるように置換され得る。例示的なアルキル基としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)、およびペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)が挙げられるが、これらに限定されない。「Cアルキル」または「Cアルキレン」が用いられる場合、それは直接結合を示すものとする。「アルキル」はまた、CDなどの重水素アルキルも包含する。
【0021】
「アルケニル」または「アルケニレン」は、1または複数の、好ましくは1~3個の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖のいずれかの配置の炭化水素鎖を包含するものとし、その二重結合は該鎖に沿った任意の安定な点で生じてもよい。例えば、「C~Cアルケニル」または「C2-6アルケニル」(またはアルケニレン)は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルなどの、C、C、C、C、およびCアルケニル基を包含するものとする。
「アルキニル」または「アルキニレン」は、1または複数の、好ましくは1~3個の炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分岐鎖のいずれかの配置の炭化水素鎖を包含するものとし、その三重結合は該鎖に沿った任意の安定な点で生じてもよい。例えば、「C~Cアルキニル」または「C2-6アルキニル」(またはアルキニレン)は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキチニルなどの、C、C、C、C、およびCアルキニル基を包含するものとする。
【0022】
「炭素環」、「カルボシクリル」、または「炭素環式残基」は、任意の安定した3員、4員、5員、6員、7員、または8員の単環式または二環式、あるいは7員、8員、9員、10員、11員、12員、または13員の二環式または三環式炭化水素環を意味するものとし、そのいずれもが飽和、部分不飽和、不飽和または芳香族であってもよい。かかるカルボシクリルの例として、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、アダマンチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロデカン(デカリン)、[2.2.2]ビシクロオクタン、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチル、アントラセニル、およびテトラヒドロナフチル(テトラリン)が挙げられる。上記されるように、架橋環もカルボシクリル(例えば、[2.2.2]ビシクロオクタン)の定義に含まれる。架橋環は、1または複数の炭素原子が2つの隣接しない炭素原子を連結する場合に生じる。好ましい架橋は1または2個の炭素原子である。架橋は常に単環式環を三環式環に変換することに留意されたい。環が架橋される場合、環について列挙される置換基はまた、架橋上に存在してもよい。「カルボシクリル」なる語が用いられる場合、それは「アリール」、「シクロアルキル」、「スピロシクロアルキル」を包含するものとする。好ましいカルボシクリルは、特記されない限り、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、およびインダニルである。
【0023】
「シクロアルキル」は、単環式、二環式または多環式環系を含む、環化アルキル基を意味するものとする。「C~Cシクロアルキル」または「C3-7シクロアルキル」はC、C、C、C、およびCシクロアルキル基を包含するものとする。単環式シクロアルキルの非限定的な例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。多環式シクロアルキルの非限定的な例として、1-デカリニル、ノルボルニルおよびアダマンチルが挙げられる。
「スピロシクロアルキル」は、両方の環が単一の原子を介して接続されている、炭化水素二環式環系を意味するものとする。環の大きさおよび性質は異なるものとすることができ、大きさおよび性質が同じとすることもできる。例として、スピロペンタン、スピロヘキサン、スピロヘプタン、スピロオクタン、スピロノナン、またはスピロデカンが挙げられる。
【0024】
「二環式カルボシクリル」または「二環式炭素環基」は、2つの縮合環を含有し、炭素原子からなる、安定した9または10員の炭素環式環系を意味するものとする。2つの縮合環のうち、1つの環は別の環に縮合したベンゾ環であり、その別の環は、飽和、部分不飽和、または不飽和である、5または6員の炭素環である。二環式炭素環基は、安定した構造をもたらす任意の炭素原子でそのペンダント基に結合していてもよい。本明細書に記載の二環式炭素環基は、得られる化合物が安定しているならば、いずれの炭素上で置換されてもよい。二環式炭素環基の例として、限定されないが、ナフチル、1,2-ジヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、およびインダニルが挙げられる。
【0025】
「アリール」基は、例えば、フェニル、ナフチル、およびフェナントラニルを含む、単環式または多環式芳香族炭化水素をいう。アリール部分は周知であり、例えば、Lewis, R.J.編、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary, 13th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York(1997)。
「ベンジル」は、水素原子の1つがフェニル基で置換されているメチル基を意味するものであり、ここで該フェニル基は、所望により、1~5個の基、好ましくは1~3個の基で置換されてもよい。
【0026】
「ヘテロサイクル」、「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環式環」は、飽和、部分的に不飽和または完全に不飽和であって、炭素原子と、N、OおよびSからなる群より独立して選択される1、2、3または4個のヘテロ原子とを含有する、安定した3員、4員、5員、6員、または7員の単環式または二環式の、あるいは7員、8員、9員、10員、11員、12員、13員、または14員の多環式ヘテロ環式環を意味するものとし、ここで、上記したヘテロ環式環のいずれかがベンゼン環に縮合しているいずれの多環式基も含むものとする。窒素および硫黄ヘテロ原子は、所望により、酸化されてもよい(すなわち、
【化7】
およびS(O)であり、ここでpは0、1または2である)。窒素原子は置換されていても、いなくてもよい(すなわち、NまたはNRであり、ここでRは、定義するとすれば、Hまたはもう一つ別の置換基である)。ヘテロ環式環は、安定した構造をもたらす、任意のヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基と結合してもよい。本明細書に記載のヘテロ環式環は、得られる化合物が安定しているならば、炭素上または窒素原子上で置換されてもよい。ヘテロシクリルにある窒素は、所望により、四級化されてもよい。ヘテロシクリル中にあるSおよびO原子の総数が1を超える場合、その時にはこれらのヘテロ原子は互いに隣接していないことが好ましい。ヘテロシクリル中にあるSおよびO原子の総数は多くても1であることが好ましい。架橋環もヘテロシクリルの定義に含まれる。「ヘテロシクリル」なる語が使用される場合、ヘテロアリールを含むものとする。
【0027】
ヘテロシクリルの例として、限定されないが、アクリジニル、アゼチジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、イミダゾロピリジニル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソチアゾロピリジニル、イソキサゾリル、イソキサゾロピリジニル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾロピリジニル、オキサゾリジニルペルイミジニル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、フテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾロピリジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾリル、ピリドイミダゾリル、ピリドチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2-ピロリドニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チアゾロピリジニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,5-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、およびキサンテニルが挙げられる。また、上記のヘテロシクリルを含有する縮合環およびスピロ化合物も含まれる。
【0028】
「二環式ヘテロサイクル」、「二環式ヘテロシクリル」または「二環式ヘテロ環基」は、2つの縮合環を含有し、炭素原子と、N、OおよびSからなる群より独立して選択される1、2、3または4個のヘテロ原子とからなる、安定した9または10員のヘテロ環式環系を意味するものとする。2つの縮合環のうちの1つの環は、5員のヘテロアリール環、6員のヘテロアリール環またはベンゾ環からなる5員または6員の単環式芳香族環であり、各々が第2の環に縮合している。第2の環は、飽和、部分的に不飽和、不飽和であって、5員のヘテロシクリル、6員のヘテロシクリルまたはカルボシクリルからなる5員または6員の多環式環である(ただし、第2の環がカルボシクリルである場合、第1の環はベンゾ以外の環である)。
【0029】
二環式ヘテロ環基は安定した構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基に結合していてもよい。本明細書に記載の二環式ヘテロ環基は、得られる化合物が安定しているならば、炭素上または窒素原子上で置換されてもよい。ヘテロシクリル中にあるSおよびO原子の総数が1を超える場合、その時にはこれらのヘテロ原子は互いに隣接していないことが好ましい。ヘテロシクリル中にあるSおよびO原子の総数は多くても1であることが好ましい。
【0030】
二環式ヘテロ環基の例は、限定されないが、キノリニル、イソキノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、1H-インダゾリル、ベンズイミダゾリル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノリニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、クロマニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノキサリニル、および1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリニルである。
【0031】
「ヘテロアリール」は、硫黄、酸素または窒素などの少なくとも1個のヘテロ原子の環員を含む、安定した単環式および多環式の芳香族炭化水素を意味するものとする。ヘテロアリール基には、限定されないが、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、フリル、キノリル、イソキノリル、チエニル、イミダゾリル、チアゾリル、インドリル、ピロリル、オキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンズチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インダゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、イソチアゾリル、プリニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリニル、ベンゾジオキソラニル、およびベンゾジオキサンが含まれる。ヘテロアリール基は置換されているか、されていないかである。窒素原子は置換されているか、いないかである(すなわち、NまたはNRであり、ここでRは、定義するとすれば、Hまたはもう一つ別の置換基である)。窒素および硫黄ヘテロ原子は、所望により、酸化されてもよい(すなわち、
【化8】
およびS(O)であり、ここでpは0、1または2である)。
【0032】
本明細書に言及される場合、「置換される」なる語は、少なくとも1つの水素原子が水素以外の基で置換されることを意味する:ただし、正常な原子価が維持され、置換が安定した化合物をもたらすことを条件とする。置換基がケト(すなわち、=O)である場合、その時には原子上の2個の水素が置き換えられる。ケト置換基は芳香族部分には存在しない。環系(例えば、炭素環式環系またはヘテロ環式環系)がカルボニル基または二重結合で置換されていそうである場合、カルボニル基または二重結合は環の一部である(すなわち、環内にある)ものとする。本明細書にて使用される場合、環二重結合は、2個の隣接する環原子の間で形成される二重結合(例えば、C=C、C=N、またはN=N)である。
【0033】
本発明の化合物上に窒素原子(例えば、アミン)がある場合には、これらは酸化剤(例えば、mCPBAおよび/または過酸化水素)で処理することによりN-オキシドに変換し、本発明の他の化合物を得ることができる。かくして、表示かつ請求される窒素原子は、表示される窒素と、そのN-オキシド
【化9】
誘導体の両方に及ぶと考えられる。
【0034】
任意の可変基が化合物のいずれかの構成要素または式中に複数回出現する場合、各出現でのその定義は他のすべての出現でのその定義から独立している。かくして、例えば、基が0~3個のR基で置換されていると示されている場合、その時には、該基は、所望により、3個までのR基で置換されてもよく、各出現で、RはRの定義から独立して選択される。また、置換基および/または可変基の組み合わせは、かかる組み合わせが安定した化合物をもたらす場合にのみ、許容される。
【0035】
置換基との結合が環での2個の原子を連結する結合を横切って示される場合、その時にはかかる置換基は環上のいずれの原子と結合していてもよい。置換基が、かかる置換基が所定の式の化合物の残りの部分に結合している原子を示すことなく、記載されている場合、その時にはかかる置換基はそのような置換基のいずれの原子を介して結合してもよい。置換基および/または可変基の組み合わせは、かかる組み合わせが安定した化合物をもたらす場合にのみ、許容される。
【0036】
本発明は化合物のすべての医薬的に許容される塩の形態を包含する。医薬的に許容される塩は、対イオンが化合物の生理学的活性または毒性に有意に寄与せず、それ自体が薬学的均等物として作用する、塩である。これらの塩は、一般的な有機技術に従い、市販の試薬を利用して製造され得る。アニオン型塩のいくつかの形態には、アセテート、アシストレート、ベシレート、ブロミド、クロリド、シトレート、フマレート、グルコウロネート、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒドロヨーダイド、ヨーダイド、ラクテート、マレエート、メシレート、ニトレート、パモエート、ホスフェート、スクシネート、サルフェート、タートレート、トシレート。およびキシノホエートが含まれる。カチオン型塩のいくつかの形態には、アンモニウム、アルミニウム、バンザチン、ビスマス、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、リチウム、マグネシウム、メグルミン、4-フェニルシクロヘキシルアミン、ピペラジン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、および亜鉛が含まれる。
【0037】
明細書および添付した特許請求の範囲を通して、所定の化学式または化学名は、異性体が存在する場合には、そのようなすべての立体異性体および光学異性体ならびにラセミ体を包含する。特記されない限り、すべてのキラル(エナンチオマーおよびジアステレオマー)およびラセミ体は本発明の範囲内にある。エナンチオマーおよびジアステレオマーは立体異性体の例である。「エナンチオマー」なる語は、互いの鏡像であり、重なり合わせることのできない、一対の分子種の一方をいう。「ジアステレオマー」なる語は、鏡像でない、立体異性体をいう。「ラセミ体」または「ラセミ混合物」なる語は、等モル量の2種のエナンチオマー種からなる組成物をいい、ここで該組成物は光学活性を欠いている。
【0038】
本発明は、化合物の互変異性体、アトロプ異性体および回転異性体のすべてを包含する。
本発明の化合物を製造するのに使用されるすべての方法、およびその途中で製造される中間体は本発明の一部であると考えられる。
「R」および「S」なる記号は、キラル炭素原子の回りの置換基の配置を表す。異性体記述子「R」および「S」は、本明細書にて記載される場合に、コア分子に対する原子配置を示すために使用され、文献(IUPAC Recommendations 1996, Pure and Applied Chemistry, 68:2193-2222 (1996))にて定義されるように使用されるものとする。
【0039】
「キラル」なる語は、一の分子をその鏡像と重ね合わせることを不可能とする、該分子の構造的特徴をいう。「ホモキラル」なる語はエナンチオマー的に純粋である状態をいう。「光学活性」なる語は、ホモキラル分子またはキラル分子の非ラセミ混合物が偏光面を回転させる角度をいう。
【0040】
本発明は化合物中に存在する原子のすべての同位体を包含するものとする。同位体には、原子番号は同じであるが、質量数の異なる、それらの原子が含まれる。一例として、限定するものではないが、水素の同位体は重水素および三重水素を包含する。炭素の同位体は13Cおよび14Cを包含する。本発明の同位体標識された化合物は、一般に、当業者に公知の従来技術によって、または他の方法にて利用される非標識の試薬の代わりに同位体で適切に標識された試薬を用いる、本明細書に記載の方法と類似する方法によって製造され得る。かかる化合物は、例えば、生物学的活性を決定するにおいて漂体または試薬として、種々の使用の可能性があり得る。安定した同位体の場合には、かかる化合物は、生物学的、薬理学的、または薬物動態学的特性を有利に修飾する可能性があり得る。
【0041】
生物学的方法
RXFP1 環状アデノシン一リン酸(cAMP)アッセイ
ヒト胚性腎細胞293(HEK293細胞)およびヒトRXFP1を安定して発現するHEK293細胞を、10%の適格性のあるFBS、および300μg/mlのヒグロマイシン(Life Technologies)を添加したMEM培地にて培養した。細胞を解離させ、アッセイ緩衝液に懸濁させた。アッセイ緩衝液は、20mM HEPES、0.05%BSA、および0.5mM IBMXを含有するHBSS緩衝液(カルシウムとマグネシウムとを含む)であった。細胞(ヒトRXFP1を安定して発現するHEK293細胞ではウェルに付き1500個の細胞とするのを除き、ウェルに付き3000個の細胞)を384ウェルのプロキシプレート(Proxiplates)(Perkin-Elmer)に加えた。細胞をDMSO中試験化合物(2%最終)を用いて0.010nMから50μMの範囲にて最終濃度で直ちに処理した。細胞を室温で30分間にわたってインキュベートした。細胞内cAMPのレベルを、HTRF HiRange cAMPアッセイ試薬キット(Cisbio)を用い、メーカーの指示に従って、測定した。クリプテート結合抗-cAMPおよびd2蛍光標識cAMPの溶液を、供給されている溶解緩衝液で別々に製造した。反応の終了後、細胞を等容量のd2-cAMP溶液および抗-cAMP溶液で溶解させた。室温で1時間にわたってインキュベートした後、Envision(Perkin-Elmer)を用い、400nmの励起波長と、590nmおよび665nmのデュアル発光波長とで時間分解蛍光強度を測定した。検量線は、2.7μM~0.1pMの範囲にある濃度で、外部cAMP漂体を用い、665nmの発光の蛍光強度と、590nmの発光の蛍光強度との割合をcAMP濃度に対してプロットすることによって作成した。次に、cAMPレベルを化合物濃度に対してプロットして4パラメトリックロジスティック方程式に当て嵌めることにより、cAMP産生を阻害する化合物の効能と活性を測定した。
【0042】
下記に開示の実施例を、上記のヒトRXFP1(hRXFP1)HEK293 cAMPアッセイにて試験し、アゴニスト活性のあることが見出された。表1には、実施例について測定されたhRXFP1 HEK293 cAMPアッセイにおけるEC50値を列挙する。
【0043】
表1
【表1】
【0044】
医薬組成物および使用方法
式(I)の化合物はRXFP1受容体アゴニストであり、心不全(例えば、HFREFおよびHFpEF)、線維化疾患、ならびに肺疾患(例えば、特発性肺線維症または肺高血圧)、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)、または肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝炎、および門脈圧亢進症)などの関連疾患等の医学的適応症の治療にて用途を見出し得る。式(I)の化合物はまた、高血圧、腎疾患、末梢動脈疾患、頸動脈疾患および脳血管疾患(すなわち、脳卒中および認知症)、糖尿病、末端臓器損傷をもたらす微小血管疾患、冠動脈疾患、および心不全を含む、動脈スティフネス、動脈弾性の低下、動脈コンプライアンスおよび伸展性の減少の結果または原因である障害を治療するのに使用され得る。本明細書に記載の化合物はまた、子癇前症の治療にも使用され得る。
【0045】
本発明のもう一つ別の態様は、式(I)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物にある。
本発明のもう一つ別の態様は、リラキシン関連障害を治療するための式(I)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物にある。
本発明のもう一つ別の態様は、効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、リラキシンと関連する疾患を治療する方法にある。
【0046】
本発明のもう一つ別の態様は、心血管疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、心不全を治療する方法であって、それを必要とする患者に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、線維症を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
【0047】
本発明のもう一つ別の態様は、線維症に付随する疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、特発性肺線維症を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、特発性肺線維症を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
【0048】
本発明のもう一つ別の態様は、腎不全を治療または予防する方法であって、それを必要とする患者に治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、腎機能の改善、安定化または回復を必要とする患者にてその機能を改善、安定化または回復させる方法であって、治療的に効果的な量の式(I)の化合物を該患者に投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、肝疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
【0049】
本発明のもう一つ別の態様は、非アルコール性脂肪肝炎および門脈圧亢進症を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、リラキシン関連の障害を予防および/または治療するための式(I)の化合物の使用にある。
本発明のもう一つ別の態様は、リラキシン関連の障害の予防および/または治療にて用いるための式(I)の化合物にある。
【0050】
特記されない限り、以下の用語は記載の意味を有する。
「患者」または「対象」なる語は、この分野の当業者によって置換されるように、RXFP1アゴニストを用いる治療から利益を受け得る可能性のある、任意のヒトまたはヒト以外の生体をいう。例示的な対象には、心血管疾患の危険因子を有するいずれの年齢のヒトも含まれる。一般的な危険因子には、限定されないが、年齢、性別、体重、家族歴、睡眠時無呼吸、アルコールまたはタバコの使用、身体的不活動、不整脈、または黒色表皮腫、高血圧、脂質異常症、または多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などのインスリン耐性の徴候が挙げられる。
【0051】
「治療する」または「治療」は、この分野の当業者によって理解されるように、病態の治療に及び、以下:(a)病態を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること;(b)病態を緩和すること、すなわち、病態の退行を生じさせること;および/または(c)哺乳動物にて、特にかかる哺乳動物が病態に罹患する素因を有するが、まだそうだとは診断されていない時に、その疾患を発症するのを防止することを含む。
【0052】
「予防する」または「予防」は、この分野の当業者によって理解されるように、臨床的病態の発生する確率を減少させることを目的とした亜臨床的病態の予防的治療(すなわち、予防および/またはリスク軽減)に及ぶ。患者は、一般集団と比べて、臨床的病態に罹患するリスクを増大させるのが知られている因子に基づいて、予防的治療のために選択される。「予防」療法は、(a)一次予防および(b)二次予防に分けることができる。一次予防は、未だに臨床的病態を呈していない対象での治療と定義され、それに対して二次予防は、同じまたは類似する臨床的病態の二次的な発症を予防することとして定義される。「リスク軽減」または「リスクを減らす」は、臨床的病態の発症率を下げる療法に及ぶ。一次および二次予防療法は、それ自体が、リスク軽減の例である。
【0053】
「治療的に効果的な量」は、この分野の当業者によって理解されるように、障害を治療するために単独で、または他の薬剤と組み合わせて投与された場合に効果的である、本発明の化合物の量を含むものとする。組み合わせに適用される場合、該用語は、組み合わせて、連続して、または同時に投与されるいずれであっても、予防的または治療的効果をもたらす、活性成分を組み合わせた量をいう。
【0054】
「心血管系の障害」または「心血管障害」には、例えば、以下の障害:高血圧症(高い血圧)、末梢血管および心血管障害、冠状動脈性心疾患、安定および不安定狭心症、心臓発作、心筋不全、異常な心臓リズム(または不整脈)、持続的虚血性機能不全(「冬眠心筋」)、一時的虚血後機能不全(「気絶心筋」)、心不全、末梢血流の障害、急性冠状動脈症候群、心不全、心筋疾患(心筋症)、心筋梗塞および血管の病気(血管疾患)が含まれる。
【0055】
「心不全」には、心不全の急性および慢性の両方の症状、ならびに進行性心不全、急性心不全後の心臓-腎臓症候群、腎機能障害を伴う心不全、慢性心不全、駆出率が中程度の慢性心不全(HFmEF)、代償性心不全、非代償性心不全、右心不全、左心不全、グローバル不全、虚血性心筋症、拡張型心筋症、先天性心損傷に付随する心不全、心臓弁膜症、心臓弁膜症に付随する心不全、僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、三尖弁狭窄症、三尖弁閉鎖不全症、肺動脈弁狭窄症、兵動脈弁閉鎖不全症、複合型心臓弁障害に付随する心不全、心筋炎症(心筋炎)、慢性心筋炎、急性心筋炎、ウイルス性心筋炎、糖尿病性心不全、アルコール性心筋症、心臓貯蔵障害に付随する心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、急性期の悪化している心不全、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)、駆出率が保たれた慢性心不全(HFpEF)、心筋リモデリング後の狭窄症、高血圧、肺高血圧および肺動脈高血圧などのより特異的な型または関連する型の疾患が含まれる。
【0056】
「線維性障害」は、とりわけ、以下の疾患および障害:肝線維症、肝硬変、NASH、肺線維症、心筋線維症、心内膜線維症、腎症、糸球体腎炎、間質性腎線維症、糖尿病に起因する線維性障害、骨髄線維症および類似する線維性障害、強皮症モルフェア、ケロイド、肥厚性瘢痕(外科手術の後でも)、母斑、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症および結合組織の障害(例えば、サルコイドーシス)を含む、線維形成によって特徴付けられる疾患および障害を包含する。
リラキシン関連障害には、限定されないが、心臓血管系の障害および線維形成障害が含まれる。
【0057】
本発明の化合物は、任意の適切な手段、例えば、経口的には、錠剤、カプセル(その各々は、徐放性または時間放出性製剤を含む)、ピル、散剤、顆粒、エリキシル、チンキ、懸濁液(ナノ懸濁液、マイクロ懸濁液、噴霧乾燥分散液)、シロップ、およびエマルジョンなどの手段;舌下的手段;バッカル的手段;非経口的には、皮下、静脈内、筋肉内、または胸骨内注射または注入技法による(例えば、滅菌注射可能な水性または非水性溶液または懸濁液として)などの手段;経鼻的には、吸入スプレーによるなどの鼻腔膜への投与を含む手段;局所的には、クリームまたは軟膏の形態でのような手段;あるいは経直腸的には、坐剤の形態でのような手段によって投与され得る。該化合物は単独で投与され得るが、一般には、選択される投与経路および標準的な薬務を基礎として選択される医薬用担体と一緒に投与されるであろう。
【0058】
「医薬組成物」は、本発明の化合物と、少なくとも1つのさらなる医薬的に許容される担体とを組み合わせて含む、組成物を意味する。「医薬的に許容される担体」は、投与様式および剤形の特性に応じて、すなわち、希釈剤、保存剤、充填剤、流動調節剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、沈殿防止剤、甘未剤、香味剤、香料、抗菌剤、抗真菌剤、滑沢剤および分散剤などのアジュバント、賦形剤またはビヒクルを含め、生物学的に活性な薬剤を動物に、特に哺乳動物に送達するための当該分野にて一般的に許容される媒体をいう。
【0059】
医薬的に許容される担体は、当業者の視野の範囲に十分に入る多くの因子に従って処方される。これらの因子は、限定されないが、製剤化される活性剤の型および性質;薬剤含有の組成物が投与される予定の対象;組成物の投与を意図する経路;および標的とされる治療適応症を包含する。医薬的に許容される担体は、水性および非水性の両方の液体媒体、ならびに種々の固体および半固体の剤形を包含する。かかる担体は、活性剤に加えて、多くの異なる成分および添加剤を含めることができ、かかる付加的な成分は種々の理由で、例えば、当業者に周知の、活性剤、結合剤等の安定化を理由として製剤中に配合される。適切な医薬的に許容される担体、およびその選択に関与する因子の記載は、例えば、Allen, L.V.ら、Remington:The Science and Practice of Pharmacy (2 Volumes), 22nd Edition, Pharmaceutical Press (2012)などの様々な容易に入手可能な供給源に記載されている。
【0060】
本発明の化合物の投与レジメンは、もちろん、特定の薬剤の薬理学的特性、ならびにその投与様式および経路;レシピエントの種類、年齢、性別、健康状態、病状、および体重;徴候の性質および程度;同時治療の種類;治療の頻度;投与経路;患者の腎臓および肝臓の機能;および所望する効果などの既知の因子に応じて変化するであろう。
【0061】
一般的な指針によれば、各活性成分の一日当たりの経口投与量は、指示される効果を得るのに使用される場合、一日当たり約0.01~約5000mgの間の範囲に、好ましくは一日当たり約0.1~約1000mgの間の範囲に、最も好ましくは一日当たり約0.1~約250mgの間の範囲にあるであろう。静脈内投与では、最も好ましい用量は、定速点滴で約0.01~約10mg/kg/分の範囲にあるであろう。本発明の化合物は一日に1回の用量で投与されてもよく、あるいは一日の総投与量を一日2回、3回または4回の分割用量で投与されてもよい。
【0062】
化合物は、典型的には、意図する投与形態、例えば、経口用錠剤、カプセル、エリキシル、およびシロップに関して適切に選択され、従来の製薬慣行と一致する、適切な医薬用希釈剤、賦形剤、または担体(本明細書にて総称して医薬用担体と称される)と混和して投与される。
【0063】
投与に適した剤形(医薬組成物)は、投与単位当たり約1ミリグラム~約2000ミリグラムの活性成分を含有してもよい。これらの医薬組成物において、活性成分は、組成物の総重量に基づいて、通常、約0.1重量%-95重量%の量で配合されるであろう。経口投与用の典型的なカプセルは、本発明の少なくとも1つの化合物(250mg)、ラクトース(75mg)、およびステアリン酸マグネシウム(15mg)を含有する。混合物を60メッシュの篩に通し、No.1ゼラチンカプセルに充填する。典型的な注射製剤は、本発明の少なくとも1つの化合物(250mg)を無菌状態でバイアルに入れ、無菌状態で凍結乾燥させて密封することころにより製造される。使用時には、バイアルの中身を2mLの生理食塩水と混合し、注射可能な製剤を製造する。
【0064】
本発明の化合物は、抗アテローム性動脈硬化症剤、抗脂血症剤、抗糖尿病剤、抗高血糖剤、抗高インスリン血症剤、抗血栓剤、抗網膜症剤、抗神経障害剤、抗腎障害剤、抗虚血剤、抗高血圧剤、抗肥満剤、抗高脂血症剤、抗高トリグリセリド血症剤、抗高コレステロール血症剤、抗再狭窄剤、抗膵臓剤、脂質低下剤、食欲不振剤、記憶増強剤、抗認知症剤、認知促進剤、食欲抑制剤、心不全治療剤、末梢動脈疾患治療剤、悪性腫瘍治療剤、および抗炎症剤を含め、疾患または障害の治療に有用な他の適切な治療剤と組み合わせて利用され得る。
【0065】
さらなる治療剤には、ACE阻害剤、β-遮断剤、利尿剤、ミネラロコルチコイド受容体アンタゴニスト、リアノジン受容体モジュレーター、SERCA2aアクチベーター、レニン阻害剤、カルシウムチャネル遮断剤、アデノシンA1受容体アゴニスト、部分アデノシンA1受容体、ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、細胞シグナル伝達経路を選択するためにアゴニスト作用にバイアスを付したアンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、アンジオテンシンII受容体アンタゴニストとネプリライシン酵素阻害剤との組み合わせ、ネプリライシン酵素阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼ活性化剤、ミオシンATPase活性化剤、rho-キナーゼ1阻害剤、rho-キナーゼ2阻害剤、アペリン受容体アゴニスト、ニトロキシル供与性化合物、カルシウム依存性キナーゼII阻害剤、抗線維形成剤、ガレクチン-3阻害剤、バソプレシン受容体アンタゴニスト、FPR2受容体モジュレーター、ナトリウム利尿ペプチド受容体アゴニスト、一過性受容体電位バニロイド-4チャネル遮断剤、抗不整脈剤、仮の(If )「ファニー電流」チャネルs遮断剤、ニトレート、ジギタリス化合物、強心剤およびβ-受容体アゴニスト、細胞膜再封鎖剤、例えば、ポロキサマー188、抗高脂血症剤、血漿中HDL-上昇剤、抗高コレステロール血症剤、コレステロール生合成阻害剤(HMG CoA還元酵素阻害剤)、LXRアゴニスト、FXRアゴニスト、プロブコール、ラロキシフェン、ニコチン酸、ナイアシンアミド、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸封鎖剤、アニオン交換樹脂、四級アミン、コレスチルアミン、コレスチポール、低密度リポタンパク質受容体誘導剤、クロフィブラート、フェノフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、ゲムフィブリゾール、ビタミンB6、ビタミンB12、抗酸化ビタミン、抗糖尿病剤、血小板凝集阻害剤、フィブリノゲン受容体アンタゴニスト、アスピリンおよびフィブリン酸誘導体、PCSK9阻害剤、アスピリン、およびP2Y12阻害剤、例えば、クロピドグレルが含まれてもよい。
【0066】
さらなる治療剤にはまた、ニンテダニブ、ピルフェニドン、LPA1アンタゴニスト、LPA1受容体アンタゴニスト、GLP1アナログ、トラロキヌカブ(IL-13、AstraZeneca製)、ビスモデギブ(ヘッジホッグアンタゴニスト、Roche製)、PRM-151(ペントラキシン-2、TGF ベータ-1、Promedior製)、SAR-156597(二特異性Mab IL-4&IL-13、Sanofi製)、シムツズマブ((抗リシルオキシダーゼ様2(抗LOXL2)抗体、Gilead製)、CKD-942、PTL-202(PDE阻害剤/ペントキシフィリン/NAC経口用制御放出剤、Pacific Ther.製)、オミパリシブ(経口用PI3K/mTOR阻害剤、GSK製)、IW-001(経口用溶液、ウシV型コラーゲン修飾、ImmuneWorks製)、STX-100(インテグリンアルファV/ベータ-6アント、Stromedix/Biogen製)、アクチムン(IFNガンマ)、PC-SOD(ミジスマーゼ;吸入剤、LTT Bio-Pharma/CKD Pharm製)、レブリキズマブ(抗-IL-13 SC ヒト化mAb、Roche製)、AQX-1125 (SHIP1アクチベータ、Aquinox製)、CC-539(JNK阻害剤、Celgene製)、FG-3019(FibroGen製)、SAR-100842(Sanofi製)、およびオベチコール酸(OCAまたはINT-747、Intercept製)を含めることもできる。
【0067】
上記の他の治療剤は、本発明の化合物と組み合わせて利用される場合に、例えば、上記した特許にあるように、Physicians’ Desk Referenceにて示されるそれらの量で、あるいはそうでなければ当業者によって決定される量で使用されてもよい。
【0068】
特に、単一の投与単位として提供される場合、組み合わせた活性成分の間で化学的相互作用のある可能性が存在する。このために、本発明の化合物と、別の治療剤とが単一の投与単位中にて組み合わされる場合には、その活性成分は単一の投与単位にて組み合わされるのであるが、活性成分間での物理的接触が最小となる(すなわち、縮小する)ようにそれらは製剤化される。例えば、活性成分の1つを腸溶コーティングしてもよい。活性成分の1つを腸溶コーティングすることで、組み合わされた活性成分の間の接触を最小とすることができるだけでなく、これらの成分の一方が胃で放出されずに、むしろ腸で放出されるように、これらの成分の一方を消化管で放出するように調節することも可能である。また、活性成分の一方を、消化管全体を介する徐放性に影響を及ぼし、さらに組み合わされた活性成分の間の物理的接触を最小とするのに供する、材料でコーティングしてもよい。さらには、徐放性成分を、この成分の放出が腸でのみ起こるように、さらに腸溶コーティングすることもできる。さらにもう一つ別の解決方法は、活性成分をさらに分離するために、一方の成分を徐放性および/または腸溶性ポリマーでコーティングし、他方の成分も低粘度のグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)または当該分野にて公知の他の適切な材料などのポリマーでコーティングする、組み合わせの生成物に製剤化することにも関与するであろう。ポリマーコーティングは他の成分との相互作用に対してさらなる障壁を形成するのに供する。
【0069】
本発明の化合物はまた、RXFP1の関与する試験またはアッセイにおいて、漂体または対照の化合物として、例えば、品質の漂体または対照として有用である。かかる化合物は、例えば、RXFP1の関与する医薬の研究にて用いるための市販のキットにて提供されてもよい。例えば、本発明の化合物は、その既知の活性を未知の活性の化合物と比較するためにアッセイにて対照として使用され得る。これにより、該アッセイが適切に行われたことを、実験の研究者は確認でき、特に試験化合物が対照となる化合物の誘導体であった場合に、比較する根拠が提供される。新たなアッセイまたはプロトコルを開発する場合に、本発明に係る化合物を用いてその有効性を試験することができる。本発明の化合物はまた、RXFP1の関与する診断アッセイにて使用することもできる。
【0070】
本発明はまた製品をも包含する。本明細書にて使用される場合、製品はキットおよびパッケージを含むが、それらに限定されるものではない。本発明の製品は、(a)第1の容器;(b)第1の容器内に入れられた医薬組成物であって、本発明の化合物またはその医薬的に許容される塩の形態を含む第1の治療剤を含む、組成物;および(c)医薬組成物が脂質異常症およびその後遺症の治療に使用され得ることを記載する添付文書を含む。もう一つ別の実施態様において、添付文書には、医薬組成物が脂質異常症およびその後遺症の治療用の第2の治療剤と(上記されるように)組み合わせて使用され得ることが記載される。製品はさらに、(d)第2の容器であって、成分(a)および(b)を第2の容器内に入れ、成分(c)を第2の容器の内側または外側に置く、ところの第2の容器を含み得る。第1および第2の容器の内側に置かれるとは、各容器がその境界内にアイテムを保持することを意味する。
【0071】
第1の容器は医薬組成物を保持するために使用される容器である。この容器は、製造し、貯蔵し、および/または個別に/大量に販売するためとすることができる。第1の容器は、ボトル、ジャー、バイアル、フラスコ、シリンジ、(例えば、クリーム製剤用の)チューブ、あるいは医薬製品を製造、保持、貯蔵または流通させるのに使用される他の任意の容器にも及ぶものとする。
【0072】
第2の容器は、第1の容器を保持し、所望により添付文書を保持するために使用される容器である。第2の容器の例として、限定されないが、箱(例えば、段ボール箱またはプラスチック箱)、木枠、カートン、袋(例えば、紙袋またはプラスチック袋)、ポーチおよびサックが挙げられる。添付文書は、テープ、接着剤、ステープル、またはもう一つ別の取り付け手段を介して第1の容器の外側に物理的に取り付けることができ、あるいは何らかの物理的手段で第1の容器に取り付けることもなく第2の容器の内側に留めることもできる。あるいはまた、添付文書を第2の容器の外側に位置付ける。第2の容器の外側に位置付けられる場合、その添付文書はテープ、接着剤、ステープル、またはもう一つ別の取り付け手段を介して物理的に取り付けられるのが好ましい。あるいはまた、添付文書を、物理的に取り付けられることなく、第2の容器の外側に隣接させることも、外側と接触させることもできる。
【0073】
添付文書は、第1の容器の中に位置付けられる医薬組成物に関する情報を記載するラベル、タグ、マーカー等である。記載される情報は、通常、製品を販売する予定の地域を統括する規制機関(例えば、合衆国食品医薬品局)のよって決定されるであろう。添付文書には、医薬組成物が承認されている適応症を具体的に記載するのが好ましい。添付文書は任意の材料で製造されてもよく、その材料で人はその中にまたはその上に含まれる情報を読むことができる。好ましくは、添付文書は、その上に所望の情報が形成されている(例えば、印刷または塗布されている)印刷可能な材料(例えば、紙、プラスチック、段ボール、ホイール、接着剤を裏打ちした紙またはプラスチック等)である。
【0074】
化学的方法
本発明の化合物は、以下のスキームに記載の方法、および具体的な実施態様のセクションに記載の方法を含む、当該分野にて公知の種々の方法によって製造され得る。合成スキームにて示される構造物の番号および可変基の番号は、特許請求の範囲または明細書の残りの部分での構造物または可変基の番号とは異なっており、混同されるべきではない。スキーム中の可変基はいくつかの本発明の化合物をどのようにして製造するかを説明することだけを意味するものである。
【0075】
本開示は例示的な実施例に限定されるものではなく、実施例はあらゆる点で例示であって、制限的ではないとみなすべきであり、かくして、特許請求の範囲の意義およびその均等の範囲内に入るすべての変更は包含されるものとする。
【0076】
この分野における任意の合成経路を計画するにおいてもう一つ別の主として考慮すべきことは、本発明に記載の化合物にて存在する反応性官能基の保護に使用される保護基の賢明な選択であることも理解されるであろう。当業者にとって多数の選択肢を記載する権威ある著書は、Greene, T.W.ら、Protecting Groups in Organic Synthesis, 4th Edition, Wiley (2007))である。
【0077】
略語は、次のように:1回については「1x」と、2回については「2x」と、3回については「3x」と、摂氏については「℃」と、水性について「aq」と、当量については「eq」または「equiv」と、グラムについては「g」と、ミリグラムについては「mg」と、リットルについては「L」と、ミリリットルについては「mL」と、マイクロリットルについては「μL」と、規定については「N」と、モルについては「M」と、ナノモルについては「nM」と、ピコモルについては「pM」と、モルについては「mol」と、ミリモルについては「mmol」と、分については「min」と、時間については「h」と、室温については「rt」と、保持時間については「RT」と、大気については「atm」と、ポンド毎平方インチについては「psi」と、濃縮については「conc.」と、水性について「aq」と、飽和については「sat.」と、分子量については「MW」と、質量分析については「MS」または「Mass Spec」と、電子噴射イコンか質量分析については「ESI」と、液体クロマトグラフィー-質量分析については「LC-MS」と、高圧液体クロマトグラフィーについては「HPLC」と、逆相HPLCについては「RP HPLC」と、核磁気共鳴分光法については「NMR」と、超臨界流体クロマトグラフィーについては「SFC」と、プロトンについては「H」と、デルタについては「δ」と、一重項については「s」と、二重項については「d」と、三重項については「t」と、四重項については「q」と、多重項については「m」と、「広範」については「br」と、ヘルツについては「Hz」と、メガヘルツについては「MHz」と、および「α」、「β」、「R」、「S」、「E」、および「Z」は当業者に馴染みのある立体化学的呼称である。
【0078】
【表2】
【0079】
例示した実施例では、特記されない限り、以下の方法を用いた。中間体および最終生成物の精製は、順相クロマトグラフィーまたは逆相クロマトグラフィーのいずれかを介して実施された。順相クロマトグラフィーは、特記されない限り、ヘキサンと酢酸エチルの勾配、またはDCMとMeOHのいずれかの勾配で溶出する、SiOを予め充填したカートリッジを用いて実施された。逆相分取性HPLCはC18カラムを用いてUV220nmで実施するか、あるいは溶媒A(90%水、10%MeOH、0.1%TFA)および溶媒B(10%水、90%MeOH、0.1%TFA)の勾配で、または溶媒A(95%水、5%ACN、0.1%TFA)および溶媒B(5%水、95%ACN、0.1%TFA)の勾配で、または溶媒A(95%水、2%ACN、0.1%HCOOH)および溶媒B(98%ACN、2%水、0.1%HCOOH)の勾配で、または溶媒A(95%水、5%ACN、10mM NHOAc)および溶媒B(98%ACN、2%水、10mM NHOAc)の勾配で、溶媒A(98%水、2%ACN、0.1%NHOH)および溶媒B(98%ACN、2%水、0.1%NHOH)の勾配で溶出する分取性LCMS検出を行った。
【0080】
実施例の特性評価に利用したLC/MS法を以下に列挙する。
方法A:
装置:ウォーターズ・マイクロマス(Waters MICROMSS(登録商標))ZQ質量分光計と組み合わせたウォーターズ・アクイティ(Waters Acquity)
1分間にわたって2~98%Bの線状勾配に付し、98%Bで0.5分間保持する
220nmでのUV可視化
カラム:ウォーターズ(Waters)BEH C18、2.1x50mm
流速:0.8mL/分(方法A)
移動相A:0.05%TFA、100%水
移動相B:0.05%TFA、100%アセトニトリル
【0081】
方法B:
装置:島津製LCMS-2020質量分光計と組み合わせた島津製プロミネンスHPLC
3分間にわたって0~100%Bの線状勾配に付し、100%Bで0.75分間保持する
220nmでのUV可視化
カラム:ウォーターズ・エックスブリッジ(Waters Xbridge)C18、2.1x50mm、1.7μm粒子
流速:1mL/分
移動相A:10mM酢酸アンモニウム、95:5 水:アセトニトリル
移動相B:10mM酢酸アンモニウム、5:95 水:アセトニトリル
【0082】
方法C:
装置:島津製LCMS-2020質量分光計と組み合わせた島津製プロミネンスHPLC
3分間にわたって0~100%Bの線状勾配に付し、100%Bで0.75分間保持する
220nmでのUV可視化
カラム:ウォーターズ・エックスブリッジ C18、2.1x50mm、1.7μm粒子
流速:1mL/分
移動相A:0.1%TFA、95:5 水:アセトニトリル
移動相B:0.1%TFA、5:95 水:アセトニトリル
【0083】
方法D:
装置:ウォーターズ・マイクロマス(登録商標)ZQ質量分光計と組み合わせたウォーターズ・アクイティ
1分間にわたって10%B~98%Bの線状勾配に付し、98%Bで0.5分間保持する
220nmでのUV可視化
カラム:ウォーターズ・アクイティ GEN C18、2.1x50mm、1.7μm粒子
流速:1mL/分
移動相A:0.05%TFA、100%水
移動相B:0.05%TFA、100%アセトニトリル
【0084】
方法E:
装置:G6135B質量分光計を備えたアジレント(Agilent)1290インフィニティII
3分間にわたって0%B~100%Bの線状勾配に付す
220nmでのUV可視化
カラム:エックスブリッジ(Xbridge)BEH XP C18 50x2.1mm、2.5mM
流速:50℃で1.1mL/分
移動相A:水中10mM NHOAc:ACN(95:05)
移動相B:水中10mM NHOAc:ACN(05:95)
【0085】
方法F:
装置:G6135B質量分光計を備えたアジレント1290インフィニティII
3分間にわたって0%B~100%Bの線状勾配に付す
220nmでのUV可視化
カラム:エックスブリッジ BEH XP C18 50x2.1mm、2.5mM
流速:50℃で1.1mL/分
移動相A:水中0.1%TFA:ACN(95:05)
移動相B:水中0.1%TFA:ACN(05:95)
【0086】
実施例の特性評価にて利用するNMR
H NMRスペクトルは、以下の周波数:H NMR:400MHz(ブルカー(Bruker)またはJEOL(登録商標))または500MHz(ブルカーまたはJEOL(登録商標))で作動する、ブルカーまたはJEOL(登録商標)フーリエ変換スペクトロメーターを用いて得られた。スペクトルデータは、フォーマット:化学シフト(多重度、カップリング定数、水素の数)で報告される。化学シフトは、テトラメチルシランの内部漂体(δ単位、テトラメチルシラン=0ppm)のダウンフィールドppmで特定されるか、および/またはH NMRにおいて、DMSO-dでは2.51ppmで、CDODでは3.30ppmで、CDCNでは1.94ppmで、およびCDClでは7.24ppmで現れる、溶媒ピークを基準とする。
【0087】
主要なノルボルニル中間体の合成をスキームI-Vにて概説する。ノルボルニル中間体は、スキームIにて説明されるように、I-1から出発してイソプロピリデン架橋置換で製造され得る。無水マレイン酸を用いてディールズ・アルダー(Diels-Alder)環化反応で化合物I-2を得、それを還元して脱保護し、I-3を得た。トリメチルシリルエタノールの存在下、遊離酸でのDPPAを用いるクルチウス(Curtius)反応にてI-4を生成した。トリメチルシリルカルバメートをTFAで切断し、アミンをトリフルオロアセトアミドI-5として再保護した。メチルエステルを4-フルオロ-3-トリフルオロメチルアニリンおよびトリメチルアルミニウムとの処理を介してアミドに変換し、I-6を得た。そのトリフルオロアセトアミドをKCOおよびMeOHで脱保護し、アミンI-7を得た。
【0088】
スキーム1
【化10】
【0089】
中間体I-2:
0℃で、反応容器に、EtO(100mL)、5-(プロパン-2-イリデン)シクロペンタ-1,3-ジエン(10g、94ミリモル)、およびフラン-2,5-ジオン(10g、100ミリモル)を添加した。反応混合物を0℃で18時間にわたって攪拌し、減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーを介して精製し、I-2(3.74g、18.3ミリモル、収率19.0%)を得た。中間体I-2は既知の化合物である;PCT国際出願、2011163502、2011年12月29日を参照のこと。
【0090】
中間体I-3:
反応容器に、I-2(2.74g、13.4ミリモル)、EtOAc(100mL)、ピリジン(0.540mL、6.71ミリモル)、およびPd/C(70mg、0.070ミリモル)を添加した。反応混合物を1atmのH(Hバルーン)下、23℃で60分間にわたって攪拌し、セライトを介してろ過し、減圧下で濃縮した。残渣をMeOH(50mL)に溶かし、50℃で12時間にわたって加熱した。溶液を減圧下で濃縮し(トルエン 3x15mLとの共沸蒸留に付し)I-3(3.21g、13.5ミリモル、収率100%)を得、それをさらに精製することなく用いた。
【0091】
中間体I-4:
反応容器に、I-3(3.21g、13.5ミリモル)、EtN(3.38mL、24.2ミリモル)、トルエン(75mL)、およびジフェニルホスホリルアジド(4.35mL、20.2ミリモル)を添加した。反応混合物を23℃で1時間にわたって攪拌し、その後で85℃で30分間加熱した。2-(トリメチルシリル)エタノール(4.83mL、33.7ミリモル)を反応混合物に加え、85℃で66時間攪拌した後、反応混合物を23℃に冷却させ、シリカゲルクロマトグラフィーを介して精製し、ラセミ体I-4(3.71g、10.5ミリモル、収率78%)を得た。LC-MS RT=1.25分;(M+H)=354.1;方法A;ラセミ体I-4をキラルSFCを用いて個々のエナンチオマーに分離した。分取性クロマトグラフィー条件:装置:Thar 350 SFC;カラム:Whelko-RR、5x50cm、10ミクロン;移動相:13%IPA/87%CO;フロー条件:300mL/分、100Bar、35℃;検出器波長:220nm;注入の詳細:IPA中120mg/mLの59g/490mL MeOH:DCM(4:1)を3.5mLにて4回注入;分析性クロマトグラフィー条件:装置:Thar分析SFC;カラム:Whelko-RR(0.46x25cm、5ミクロン;移動相:5%IPA/95%CO;フロー条件:3mL/分、140Bar、40℃;検出器波長:200-400nm UV;RT=3.50 ピーク#1、4.42 ピーク#2;中間体I-4の生成物のピーク#1を集めて持ち越し、キラルI-5を生成した。
【0092】
中間体I-5:
中間体I-4(2.87g、8.12ミリモル)のピーク#1を10:1のDCM/TFAに溶かし、室温で72時間にわたって攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、(1R,2S,3R,4R)-メチル 3-アミノ-7-(プロパン-2-イリデン)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(1.699g、8.120ミリモル、収率100%)を生成し、それをさらに精製することなく使用した。(1R,2S,3R,4R)-メチル 3-アミノ-7-(プロパン-2-イリデン)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(1.7g、8.1ミリモル)にDCM(41mL)を加え、フラスコを氷浴を通して0℃に冷却した。TFAA(1.26mL、8.90ミリモル)およびDIEA(5.7mL、33ミリモル)を添加した。反応混合物を23℃までの加温に供し、30分間にわたって攪拌した。飽和NaHCO(50mL)を反応混合物に添加し、溶液をEtOAc(3x50mL)で抽出した。有機部分を合わせ、NaSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮してI-5(2.48g、8.12ミリモル、収率100%)を得、それをさらに精製することなく用いた。LC-MS RT=1.11分;MS(ESI) m/z=306.1(M+H);方法A
【0093】
中間体I-6:
中間体I-5(2.7g、8.8ミリモル)のトルエン(88ml)中溶液に、4-フルオロ-3(トリフルオロメチル)アニリン(29.2ミリモル)と予め混合したトリメチルアルミニウム(26.5ミリモル)をトルエン中溶液(アミン中0.275M、トリメチルアルミニウム中0.25M)として添加した。反応混合物を60℃で30分間にわたって攪拌した。室温に冷却して、反応混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、飽和ロッシェル(Rochelle)塩(100mL)を添加した。水性部分をEtOAc(3x75mL)で抽出した。有機部分を合わせ、NaSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー精製に供し、残渣を分取性逆相HPLCに付してさらに精製し、(1R,2S,3R,4R)-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-(プロパン-2-イリデン)-3-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシアミド I-6(2.5g、5.5ミリモル、収率63%)を黄色の泡沫体として得た。LC-MS RT=1.20分;MS(ESI) m/z=453.0(M+H);方法A
【0094】
中間体I-7:
中間体I-6(133mg、0.290ミリモル)を水(2.9mL)およびMeOH(2.9mL)に溶かし、次にKCO(2.03g、1.47ミリモル)を添加した。反応混合物を40℃で4時間にわたって攪拌し、次に水(5mL)との間で分配し、EtOAc(3x10mL)で抽出した。有機抽出液を合わせ、NaSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮してI-7(105mg、0.290ミリモル、収率100%)を得、それをさらに精製することなく用いた。LC-MS RT=0.82分;MS(ESI) m/z=357.1(M+H);方法A
【0095】
スキームIa
ノルボルニル中間体IIa-8はまた、スキームIaに示される一般的経路にて、フラン-2,5-ジオンおよびフェロセニウムヘキサフルオロホスフェートから製造され得る。ディールズ・アルダー縮合に、つづいてIIa-2への加水分解に、中間体のアミンへのクルチウス転位に付し、それを水素化添加条件下で還元し、その後で保護して中間体IIa-3を生成した。ベンジルエステルを切断し、NHRにクロスカップリングさせ、一般構造式:IIa-5で示される中間体を生成した。C7ヒドロキシ基をケトンに変換し、つづいてウィッティヒ(Wittig)オレフィン化に供し、主たる異性体の中間体IIa-8を生成した。主たる異性体を、クロマトグラフィーによって従たる異性体と分離し、ラセミ体をエナンチオピュア-なIIa-8(-)に分離した。
【0096】
【化11】
【0097】
スキームIIは、中間体I-6が、C-7メチリデンでのクロスカップリングを可能とする、オレフィンブロミド中間体にどのように変換されるかを示す。
スキームII
【化12】
【0098】
中間体II-1
反応容器に、中間体I-6(110mg、0.243ミリモル)およびEtOAc(2mL)を添加した。反応混合物を-78℃に冷却し、溶液が淡紫色/青色となるまで、その溶液にOを通気した。その後で該溶液にNを-78℃で通気し、過剰量のOを除去した(溶液は無色となった)。その後でジメチルスルフィド(0.43mL、4.8ミリモル)を-78℃で添加し、反応混合物を室温までの加温に供し、室温で12時間にわたって攪拌した。減圧下で濃縮した後、残渣をEtOAcに溶かし、シリカゲルを介してろ過し、溶媒を減圧下で除去した後、(1R,2S,3R,4S)-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-オキソ-3-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシアミド(II-1、101mg、0.237ミリモル、収率97.0%)を生成した。H NMR(500MHz、CDCl) δ 9.61(brd,J=6.3Hz,1H)、7.76(dd,J=5.9、2.6Hz,1H)、7.71(dt,J=8.9、3.4Hz,1H)、7.66(s,1H)、7.23(t,J=9.4Hz,1H)、4.70(dt,J=10.3、5.3Hz,1H)、3.33(dd,J=10.5、4.4Hz,1H)、2.54(t,J=4.3Hz,1H)、2.42(t,J=4.1Hz,1H)、2.20-2.10(m,1H)、2.06-1.99(m,1H)、1.96-1.81(m,2H)
【0099】
中間体II-2:
反応容器に、ブロモ(メチル)トリフェニルホスホラン(419mg、1.17ミリモル)(市販品を粉砕した微粉末)およびTHF(7mL)を添加した。反応混合物を-78℃に冷却し、KHMDS(1.2mL、1.2ミリモル)を加えた。反応混合物を-78℃で30分間にわたって激しく攪拌させ、II-1(100mg、0.24ミリモル)を-78℃で添加した。-78℃でさらに10分間にわたって攪拌した後、反応混合物を23℃までの加温に供し、さらに1.5時間攪拌した。反応混合物を-40℃に冷却し、飽和NaHCOを添加してクエンチした。得られた溶液をEtOAcで抽出した。有機部分を合わせ、NaSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーを介して精製してII-2(71mg、0.17ミリモル、収率71%)を得た。LCMS RT=1.16分;(M+H)=425.0;方法A
【0100】
中間体II-3およびII-4:
反応容器に、II-2(71mg、0.17ミリモル)、DCM(3mL)、およびBr(0.03mL、0.6ミリモル)を添加した。反応混合物を23℃で20分間にわたって攪拌し、減圧下で濃縮し、飽和Naでのトラップを利用して過剰量のBrをクエンチさせた。得られたジブロミドをTHF(3mL)に溶かした。-78℃に冷却した後、KHMDS(1.0mL、1.0ミリモル)を添加した。反応混合物を-78℃で12時間、および-40℃で2時間保持し、飽和NaHCOを-40℃で添加してクエンチさせ、得られた溶液をEtOAcで抽出した。有機相を集め、NaSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーを介して精製し、II-4(27mg、0.050ミリモル、収率32%)(ピーク2);LCMS RT=1.19分;(M+H)=504.9;方法A:および対応するE-異性体II-3(28mg、0.06ミリモル、収率33%)(ピーク1)を得た。
【0101】
ラセミII-4(4グラム)を上記のように生成し、キラルSFCを用いて個々のエナンチオマーに分離した。分取性クロマトグラフィー条件:装置:Thar 350 SFC;カラム:キラルセル(Chiralcel)OD-H、5x50cm、5ミクロン;移動相:20%MeOH/80%CO;フロー条件:340mL/分、100Bar、35℃;検出器波長:220nm;注入の詳細:MeOH中30mg/mLを3.75mLにて注入:ピーク#1 RT=7.81分、ピーク#2 RT=10.97分:II-4(1.9グラム)のピーク#1を集め、キラルII-5を生成するのに持ち越した。
【0102】
中間体II-5:
反応容器に、MeOH(3mL)およびAcCl(0.3mL、4.2ミリモル)を添加した。5分間にわたって攪拌した後、キラルピーク#1 II-4(75mg、0.15ミリモル)を添加し、反応混合物を40℃で48時間にわたって攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、II-5(67mg、0.16ミリモル、100%)を生成し、それをさらに精製することなく用いた。LC-MS RT=0.78分;(M+H)=408.9;方法A
【0103】
スキームIII
【化13】
【0104】
中間体III-1:
反応容器に、ベンジルホスホン酸ジエチル(375mg、1.64ミリモル)およびTHF(10mL)を添加した。反応混合物を-78℃に冷却し、KHMDS(1.6mL、1.6ミリモル)を添加した。この反応混合物を-78℃で10分間にわたって攪拌し、中間体II-1(140mg、0.328ミリモル)を添加した。20分後、反応混合物を室温までの加温に供し、室温で2時間にわたって攪拌した。反応混合物に飽和NaHCOを添加することでクエンチさせ、溶液をEtOAcで抽出した。有機部分を合わせ、NaSO上で乾燥させ、ろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー精製に供し、E-異性体の副生成物(111mg、0.222ミリモル、収率67.5%)および(1R,2S,3R,4R,Z)-7-ベンズイリデン-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシアミド(III-1、49mg、0.098ミリモル、収率30%)を得た。RT=1.23分;MS(ESI) m/z=501.1(M+H);方法A
【0105】
中間体III-2:
0℃(氷/水浴)に冷却したMeOH(3mL)含有のバイアルに、塩化アセチル(0.3mL、4ミリモル)を滴下して加えた。得られた溶液を室温で10分間攪拌し、次にIII-1(94mg、0.19ミリモル)に添加した。反応混合物を40℃で48時間にわたって攪拌し、減圧下で濃縮して(1R,2S,3R,4R)-3-アミノ-7-((Z)-ベンズイリデン)-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシアミド(III-2、73mg、0.18ミリモル、収率96%)を得た。RT=0.87分;MS(ESI) m/z=405.1(M+H);方法A:それをさらに精製することなく用いた。
【0106】
スキームIVは、スキームIIと同じような方法で、C7架橋の官能基、例えば、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、およびnBuを導入する、一般的な経路を示す。
【0107】
スキームIV
【化14】
【0108】
中間体IV-1a:
II-4(1.00g、1.98ミリモル)のTHF(9.9mL)中溶液を、N下にてPdCl(dppf)(0.073g、0.099ミリモル)で処理し、次にシクロプロピル亜鉛(II)ブロミド(15.9mL、7.95ミリモル)を添加し、反応混合物を60℃で2時間にわたって加熱した。冷却した反応混合物をEtOAcでブラインから抽出し、有機部分を合わせ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製し、(1R,2S,3R,4R,Z)-7-(シクロプロピルメチレン)-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシアミド(IV-1a、646mg、1.39ミリモル、収率70.0%)を得た。LC-MS RT=1.07分;MS(ESI) m/z=492.1(M+H);方法A
【0109】
中間体IV-2:
IV-1a(646mg、1.39ミリモル)のMeOH(9.3mL)中溶液をKCO(961mg、6.96ミリモル)/水(4.6mL)で処理し、反応混合物を18時間にわたって攪拌した。反応混合物をリン酸緩衝液からEtOAcで抽出した。有機層を濃縮して(1R,2S,3R,4R,Z)-3-アミノ-7-(シクロプロピルメチレン)-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシアミドを得、それをさらに精製することなく用いた(IV-2a、512mg、1.39ミリモル、収率100%)。RT=0.84分;MS(ESI) m/z=369.1(M+H);方法A
【0110】
中間体IV-1b、cおよびIV-2b、cは市販の有機亜鉛試薬から同様にして製造された。
【0111】
スキームV
【化15】
【0112】
中間体V-1:
中間体V-1はII-4から製造された。2,2-ジフルオロ-2-(フルオロスルホニル)酢酸メチル(2.5mL、20ミリモル)/無水DMF(50mL)を充填した250mLの丸底フラスコに、滴下漏斗を介して、II-4およびCuI(2.3g、12ミリモル)の無水DMF(100mL)中懸濁液およびHMPA(8.0mL、19ミリモル)を滴下して加え、反応混合物を75℃の不活性窒素雰囲気下にて16時間にわたって加熱した。反応混合物を冷却し、ろ過してシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製し、V-1(3.0g、6.1ミリモル、収率77%)を得た。H NMR(500MHz、CDCl) δ 9.38(brd,J=6.1Hz,1H)、7.77-7.69(m,2H)、7.46(s,1H)、7.24(t,J=9.1Hz,1H)、5.62(q,J=7.2Hz,1H)、4.50(dt,J=10.5、5.3Hz,1H)、3.50-3.42(m,1H)、3.13-3.04(m,1H)、2.89(t,J=4.0Hz,1H)、2.02-1.90(m,2H)、1.76-1.60(m,2H)
【0113】
中間体V-2:
中間体V-2をV-1から製造した。MeOH(1.5mL)および塩化アセチル(2.1ミリモル)を2ドラムのバイアルに充填し、23℃で5分間にわたって攪拌した。V-1を該反応バイアルに添加し、中身を40℃で24時間にわたって加熱した。窒素流で濃縮してV-2をHCl塩として得、それをさらに精製することなく用いた。LC-MS RT=0.75分;MS(ESI) m/z=397.1(M+H);方法A
【0114】
実施例2
【化16】
【0115】
中間体VI-1
【化17】
【0116】
4-メトキシベンゼンスルホノヒドラジド(595mg、2.94ミリモル)、エチル 3-オキソシクロヘキサン-1-カルボキシレート(500mg、2.94ミリモル)のジオキサン(14.7mL)中スラリーを80℃で加熱した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製し、エチル (Z)-3-(2-((4-メトキシフェニル)スルホニル)ヒドラジンイリデン)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(VI-1、904mg、2.55ミリモル、収率87%)を得、それをさらに精製することなく用いた。
【0117】
中間体VI-2
【化18】
【0118】
(3-(tert-ブトキシカルボニル)フェニル)ボロン酸(0.329g、1.48ミリモル)、中間体VI-1(0.350g、0.988ミリモル)、CsCO(0.804g、2.47ミリモル)のジオキサン(4.9mL)中スラリーを110℃で18時間にわたって加熱した。反応混合物を水とEtOAcとの間に分配した。有機層を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製し、tert-ブチル 3-(3-(エトキシカルボニル)シクロヘキシル)ベンゾエート(VI-2、192mg、0.578ミリモル、収率58.5%)を得た。MS(ESI) m/z=277(M+H-tBu)
【0119】
中間体VI-3
【化19】
【0120】
中間体VI-2(140mg、0.421ミリモル)のTHF(3.5mL)中溶液をLiOH(20mg、0.84ミリモル)/水(0.7mL)で処理した。反応混合物を希HCl(1N)を添加することでpH3に調整し、セライトを介してろ過し、減圧下で濃縮して3-(3-(tert-ブトキシカルボニル)フェニル)シクロヘキサン-1-カルボン酸(VI-3、128mg、0.421ミリモル、収率100%)を得、それをさらに精製することなく用いた。MS(ESI) m/z=249(M+H-tBu)
【0121】
中間体1-1
【化20】
【0122】
MeCN(2.8mL)に溶かした中間体VI-3(121mg、0.280ミリモル)に、ヒューニッヒ塩基(0.25mL、1.4ミリモル)、中間体V-2(128mg、0.421ミリモル)、およびHATU(128mg、0.336ミリモル)を添加し、混合物を18時間にわたって攪拌した。反応混合物をEtOAcで水から抽出した。有機層を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製し、tert-ブチル 3-(3-(((1R,2R,3S,4R,Z)-3-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)-7-(2,2,2-トリフルオロエチリデン)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)シクロヘキシル)ベンゾエート(2-1、130mg、0.190ミリモル、収率67.9%)を得た。MS(ESI) m/z=627(M+H-tBu)
【0123】
実施例1
1-1(130mg、0.190ミリモル)のDCM(0.7mL)中溶液をTFA(0.3mL)で処理した。2時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を逆相HPLCに付して精製し、3-(3-(((1R,2R,3S,4R,Z)-3-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)-7-(2,2,2-トリフルオロエチリデン)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)シクロヘキシル)安息香酸を4つの立体異性体の混合物として生成した。ジアステレオマーをSFC(キラル(Chiral)AS、30x250mm、5ミクロン、100mL/分、40℃、120Bar、85%CO/15%MeOH w/0.1%DEA(イソクラティック))によって一部分割した。
【0124】
実施例1:ピーク1(単一の異性体、RT=4.49分):3-(3-(((1R,2R,3S,4R,Z)-3-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)-7-(2,2,2-トリフルオロエチリデン)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)シクロヘキシル)安息香酸(1.1mg、1.6マイクロモル、収率0.87%);H NMR(500MHz、DMSO-d) δ 10.56(s,1H)、8.38(brd,J=7.2Hz,1H)、8.16-8.05(m,1H)、7.82-7.71(m,3H)、7.56-7.37(m,3H)、5.90(brd,J=8.1Hz,1H)、4.42-4.35(m,1H)、3.17(brdd,J=10.4、4.3Hz,1H)、3.09(brd,J=4.6Hz,1H)、2.99-2.87(m,2H)、2.69(brs,1H)、2.15-1.93(m,4H)、1.89-1.80(m,1H)、1.74-1.60(m,2H)、1.55-1.40(m,6H);LC-MS RT2.02分;MS(ESI) m/z=627.14(M+H);方法C
【0125】
実施例2:ピーク2(単一の異性体、RT=6.33分):3-(3-(((1R,2R,3S,4R,Z)-3-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)-7-(2,2,2-トリフルオロエチリデン)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)シクロヘキシル)安息香酸(7.7mg、0.012ミリモル、収率6.2%);H NMR(500MHz、DMSO-d) δ 10.47(s,1H)、8.19(brd,J=8.0Hz,1H)、8.15-8.08(m,1H)、7.81-7.67(m,3H)、7.53-7.35(m,3H)、5.85(q,J=7.6Hz,1H)、4.36(brs,1H)、3.19-3.06(m,1H)、3.01-2.86(m,2H)、2.64(brs,1H)、2.47-2.36(m,1H)、2.20-1.98(m,2H)、1.87-1.61(m,4H)、1.53-1.16(m,7H);LC-MS RT2.40分;MS(ESI) m/z=627.17(M+H);方法C
【0126】
実施例3
ピーク3(2つのジアステレオマーの混合物、RT=17.34分):3-(3-(((1R,2R,3S,4R,Z)-3-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)-7-(2,2,2-トリフルオロエチリデン)ビシクロ [2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)シクロヘキシル)安息香酸(13.6mg、0.021ミリモル、収率11.2%);H NMR(500MHz、DMSO-d) δ 10.34(brs,1H)、8.15(brs,1H)、7.99(brd,J=2.1Hz,1H)、7.79-7.57(m,3H)、7.37-7.18(m,3H)、5.88-5.79(m,1H)、4.46-4.35(m,1H)、3.08(brd,J=10.4Hz,1H)、3.01-2.93(m,1H)、2.89(brs,1H)、2.49-2.38(m,2H)、2.26-1.99(m,2H)、1.87-1.57(m,4H)、1.53-1.18(m,7H);LC-MS RT2.42分;MS(ESI) m/z=627.17(M+H);方法C
【0127】
実施例4
【化21】
【0128】
中間体V-2(10mg、0.025ミリモル)のMeCN(1mL)中溶液をヒューニッヒ塩基(5μL、0.03ミリモル)および4-クロロ-2-イソシアナト-1-メトキシベンゼン(6.0mg、0.033ミリモル)およびBOP試薬を用いて処理し、反応混合物を室温で18時間にわたって攪拌させた。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を逆相HPLCに付して精製し、(1R,2S,3R,4R,Z)-3-(3-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)ウレイド)-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-(2,2,2-トリフルオロエチリデン)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシアミド(5、5.6mg、8.7マイクロモル、収率34%)を得た。H NMR(500MHz、DMSO-d) δ 10.32(s,1H)、8.60(s,1H)、8.12(brd,J=4.6Hz,1H)、8.05(d,J=1.8Hz,1H)、7.70-7.61(m,1H)、7.52-7.35(m,2H)、6.95-6.80(m,2H)、5.87(brd,J=7.9Hz,1H)、4.52-4.39(m,1H)、3.80(s,3H)、3.21-3.10(m,1H)、3.01-2.84(m,2H)、2.37(brs,1H)、2.05(brd,J=16.8Hz,1H)、1.50(brt,J=11.9Hz,2H);LC-MS RT2.52分;MS(ESI) m/z=580.11(M+H);方法C
【0129】
実施例12
【化22】
【0130】
中間体12-1
【化23】
【0131】
(1S,3R)-3-(メトキシカルボニル)シクロヘキサン-1-カルボン酸(0.200g、1.07ミリモル)のTHF(3.6mL)中溶液をボラン・テトラヒドロフラン複合体(1.6mL、1.6ミリモル)を用いて0℃で処理した。反応混合物をNHCl溶液でクエンチさせ、EtOAcで抽出した。有機部分を減圧下で濃縮し、残渣をさらなる操作を行うことなく、メチル (1R,3S)-3-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(0.185g、1.07ミリモル、収率100%)として用いた。LC-MS(M+H)=173.1;HPLC RT=0.91分;方法A
【0132】
中間体12-2
【化24】
【0133】
1mLのDCMに溶かした塩化オキサリル(0.45mL、5.1ミリモル)の溶液をDCM(1mL)中のDMSO(0.72mL、10.ミリモル)を用いて-78℃で処理した。15分後、反応混合物を3mLのDCMに溶かした12-1(175mg、1.02ミリモル)で処理した。30分後、得られた溶液をTEA(2.1mL、15ミリモル)で処理し、室温までのゆっくりとした加温に供した。1N HClを反応混合物に加え、溶液をDCMで抽出した。有機部分を減圧下で濃縮し、残渣をさらなる操作を行うことなく、メチル (1R,3S)-3-ホルミルシクロヘキサン-1-カルボキシレート(173mg、1.02ミリモル、収率100%)として用いた。H NMR(500MHz、CDCl) δ 9.64(d,J=1.2Hz,1H)、3.71(s,3H)、2.62-2.55(m,4H)、2.06-1.94(m,4H)、1.41-1.36(m,2H)
【0134】
中間体12-3
【化25】
【0135】
DCM(1.0mL)に溶かした12-2(170mg、0.999ミリモル)の溶液をヒドロキシルアミン塩酸塩(69.4mg、0.999ミリモル)で、つづいてTEA(0.25mL、1.8ミリモル)で処理し、14時間にわたって攪拌した。次に反応混合物を水とEtOAcとの間に分配した。有機部分を減圧下で濃縮し、残渣をさらに操作を行うことなくメチル (1R,3S)-3-((E)-(ヒドロキシイミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(185mg、0.999ミリモル、収率100%)として用いた。LC-MS(M+H)=186.1;HPLC RT=0.96分;方法A
【0136】
中間体12-4
【化26】
DMF(5mL)に溶かした12-3(0.19g、1.0ミリモル)の溶液をNCS(0.133g、0.999ミリモル)で処理した。3時間後、反応混合物を水とEtOAcとの間に分配した。有機部分を減圧下で濃縮し、ついで残渣のメチル (1R,3S)-3-((Z)-クロロ(ヒドロキシイミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートをDCM(10mL)に溶かし、2,5-ジヒドロフラン(84mg、1.2ミリモル)で、つづいてTEA(2.0mL、14ミリモル)で処理し、14時間にわたって攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、ついで残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(インライン光散乱検出)に付して精製し、メチル (1R,3S)-3-(3a,4,6,6a-テトラヒドロフロ[3,4-d]イソキサゾール-3-イル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(53mg、0.21ミリモル、収率21%)を得た。LC-MS(M+H)=254.2;HPLC RT=0.96分;方法A
【0137】
中間体12-5
【化27】
【0138】
2、3滴のMeOHを含むTHF(3.4mL)に溶かした12-4(52mg、0.21ミリモル)を、水(0.7mL)に溶かしたLiOH(26mg、0.62ミリモル)で処理し、反応混合物を14時間にわたって攪拌した。1N HClを反応混合物に添加し、得られた溶液をEtOAcで抽出した。有機部分を濃縮して(1R,3S)-3-(3a,4,6,6a-テトラヒドロフロ[3,4-d]イソキサゾール-3-イル)シクロヘキサン-1-カルボン酸(49mg、0.21ミリモル、収率100%)を得た。LC-MS(M+H)=240.2;HPLC RT=0.83分;方法A
【0139】
実施例12:中間体1-1について詳細に記載される一般的な操作に従って、中間体12-5とIV-2aとから製造して4つの異性体の生成物を得、それをSFC分離で分割した:分取性クロマトグラフィー条件:カラム:キラルIC、21x250mm 5ミクロン、移動相:65%CO/35%IPA w/0.1%DEA、フロー条件:60mL/分;分析性クロマトグラフィー条件(分取前):カラム:キラルIC、4.6x150mm、5ミクロン、移動相:65%CO/35%IPA w/0.1%DEA RT(ピーク1):3.2分、ピーク1(実施例12、1.7mg、2.8マイクロモル、収率1.5%):LC-MS(M+H)=590.4、HPLC RT=2.53分;方法C;H NMR(500MHz、DMSO-d) δ 10.12(s,1H)、7.92(brd,J=7.6Hz,1H)、7.83(brd,J=4.3Hz,1H)、7.54(brdd,J=5.0、3.2Hz,1H)、7.23(brt,J=9.8Hz,1H)、4.77(dd,J=9.2、3.4Hz,1H)、4.39(d,J=9.5Hz,1H)、4.07-3.94(m,1H)、3.72(brd,J=10.7Hz,2H)、3.50(brt,J=7.6Hz,1H)、3.30-3.20(m,1H)、2.79(brdd,J=10.7、4.0Hz,1H)、2.67(brs,1H)、2.42(brs,1H)、2.31(s,1H)、2.19-1.99(m,2H)、1.73-1.59(m,3H)、1.57-1.47(m,3H)、1.31-0.97(m,6H)、0.85(q,J=12.2Hz,1H)、0.53-0.41(m,2H)数個のプロトンは溶媒抑制によって不明瞭となった
【0140】
RT(ピーク2):4.1分、実施例13(2.6mg、4.4マイクロモル、収率2.4%)、特性情報に関する表を参照のこと。
RT(ピーク3):5.0分、実施例14(2.2mg、3.7マイクロモル、収率2.0%)、特性情報に関する表を参照のこと。
RT(ピーク4):8.1分、実施例15(2.5mg、4.2マイクロモル、収率2.3%)、特性情報に関する表を参照のこと。
【0141】
本発明のさらなる化合物を表2および3に列挙する。
表2
【表3】
【表4】
【表5】
【0142】
表3
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0143】
本開示が、上記した例示としての実施例に限定されるものではなく、その本質的な属性から逸脱することなく、他の具体的な形態にて具現化され得ることは、当業者にとって明らかであろう。従って、実施例はあらゆる点で例示であって限定されるものではないと考えられ、上記した実施例よりもむしろ、添付した特許請求の範囲に言及されることが望ましく、かくして、特許請求の範囲の意義に含まれ、均等の範囲内にあるすべての変更は本発明に含まれるものとする。
【国際調査報告】