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特表2024-540165CRISPR-CASシステムのためのエレクトロポレーションエンハンサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】CRISPR-CASシステムのためのエレクトロポレーションエンハンサー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20241024BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/87 Z ZNA
C12N15/09 100
C12N9/16 Z
C12N15/11 Z
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525602
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022079037
(87)【国際公開番号】W WO2023077149
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/274,272
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311016949
【氏名又は名称】シグマ-アルドリッチ・カンパニー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Sigma-Aldrich Co. LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】チェン,フーチアン
(72)【発明者】
【氏名】ガービー,グレイム
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シャオ
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA31
4B065CA46
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045DA89
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、トランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション)中のプログラム可能なDNA修飾タンパク質のゲノム修飾効率を改善する方法および組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノム編集効率を高めるための方法であって、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の存在下、プログラム可能なDNA修飾システムをエレクトロポレーションによって真核細胞に導入することを含む方法。
【請求項2】
ゲノム編集効率が、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の非存在下であること以外は同一の方法と比べて高められる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エレクトロポレーションが、プログラム可能なDNA修飾システム、真核細胞、およびポリアニオン性ポリマーまたはその塩をエレクトロポレーション溶液に配合すること、およびエレクトロポレーション溶液に電圧を印加し、それによって真核細胞にプログラム可能なDNA修飾システムを導入することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
プログラム可能なDNA修飾システムを真核細胞に導入する前に、真核細胞がポリアニオン性ポリマーまたはその塩と接触される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
真核細胞およびポリアニオン性ポリマーが、プログラム可能なDNA修飾システムとの配合の前および/またはエレクトロポレーション溶液への電圧の印加の前にエレクトロポレーション溶液中でインキュベートされる、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩の存在下、プログラム可能なDNA修飾システムが真核細胞に導入される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
導入が単一のエレクトロポレーション工程を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
導入が複数のエレクトロポレーション工程を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が、約5kDaより大きい、約15kDaより大きい、約25kDaより大きい、約50kDaより大きい、約75kDaより大きい、約100kDaより大きい、約150kDaより大きい、約200kDaより大きい、約250kDaより大きい、約300kDaより大きい、約350kDaより大きい、約400kDaより大きい、約450kDaより大きい、または約500kDaより大きい平均分子量を有する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が約500kDaより大きい平均分子量を有する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が多糖ポリマー、例えば硫酸化多糖ポリマーである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
(i)ポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、カラギーナン(例えば、K-、I-、および/またはL-カラギーナン)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、コンドロイチン、コラーゲン、デキストラン、フコイダン、ヘパラン、ヘパリン、グルコサミン、ラミナリン、ペントサン、ならびにそれらの組合せ、誘導体、および/もしくは塩のうちの1つもしくは複数を含むか;または
(ii)ポリアニオン性ポリマーが、反復糖単位が少なくとも1つの硫酸基を含む硫酸多糖もしくはその塩であり、デキストラン硫酸、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびそれらの塩のうちの1つもしくは複数を含む、
前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸ナトリウム塩である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
プログラム可能なDNA修飾システムが、RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(RNA-guided clustered regularly interspersed short palindromic repeats)(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)ヌクレアーゼシステム、CRISPR-Cas二重ニッカーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、または非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
プログラム可能なDNA修飾システムがCasタンパク質およびガイドRNAを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNAを含むリボ核タンパク質複合体である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
Casタンパク質が、触媒的に活性であるか、触媒的に不活性であるか、またはニッカーゼである、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
プログラム可能なDNA修飾システムが、核酸配列内の塩基を修飾するための塩基エディターである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
プログラム可能なDNA修飾システムが、I型、II型(例えば、Cas9)、III型、V型(例えば、Cpf1)、またはVI型(例えば、Cas13)Casタンパク質を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas1タンパク質、Cas2タンパク質、Cas3タンパク質、Cas4タンパク質、Cas5タンパク質、Cas6タンパク質、Cas7タンパク質、Cas8タンパク質、Cas9タンパク質、Cas10タンパク質、Cas12(Cpf1)タンパク質、またはCas13タンパク質を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
プログラム可能なDNA結合システムがCas9またはCas12(Cpf1)を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas9、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas12(Cpf1)、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
Casタンパク質が、野生型Casタンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
Casタンパク質が、野生型Cas9タンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含むCas9タンパク質である、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
Casタンパク質が、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞膜透過ドメイン、少なくとも1つのマーカードメイン、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
Casタンパク質が、1つまたは2つの核局在化シグナルをさらに含む、請求項17~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むCRISPR-Casヌクレアーゼシステムである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ガイドRNAが単一分子である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
ガイドRNAが2個の分子である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項35】
ガイドRNAが酵素的に合成される、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含み、crRNAが化学的に合成され、tracrRNAが酵素的に合成されるか、またはcrRNAおよびtracrRNAが両方とも酵素的に合成される、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
真核細胞がヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、または単細胞真核生物である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
真核細胞が哺乳動物細胞または植物細胞である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
真核細胞がヒト細胞である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記請求項のいずれかに記載の方法により調製される、真核細胞。
【請求項41】
プログラム可能なDNA修飾システム、真核細胞、および少なくとも1つのポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含むトランスフェクション組成物。
【請求項42】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が硫酸化多糖塩である、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
(i)ポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、カラギーナン(例えば、K-、I-、および/またはL-カラギーナン)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、コンドロイチン、コラーゲン、デキストラン、フコイダン、ヘパラン、ヘパリン、グルコサミン、ラミナリン、ペントサン、ならびにそれらの組合せ、誘導体、および/もしくは塩のうちの1つもしくは複数を含むか;または
(ii)ポリアニオン性ポリマーが、反復糖単位が少なくとも1つの硫酸基を含む硫酸多糖もしくはその塩であり、デキストラン硫酸、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびそれらの塩のうちの1つもしくは複数を含む、
請求項41または42に記載の組成物。
【請求項44】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸を含む、請求項41~43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む、請求項41~43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸ナトリウム塩である、請求項41~43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
プログラム可能なDNA修飾システムが、RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)ヌクレアーゼシステム、CRISPR-Cas二重ニッカーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、または非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を含む、請求項41~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
プログラム可能なDNA修飾システムがCasタンパク質およびガイドRNAを含む、請求項41~47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むリボ核タンパク質複合体である、請求項41~49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
Casタンパク質が、触媒的に活性であるか、触媒的に不活性であるか、またはニッカーゼである、請求項48~50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
プログラム可能なDNA修飾システムが、核酸配列内の塩基を修飾するための塩基エディターである、請求項41~51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項53】
プログラム可能なDNA修飾システムが、I型、II型(例えば、Cas9)、III型、V型(例えば、Cpf1)、またはVI型(例えば、Cas13)Casタンパク質を含む、請求項41~52のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項54】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas1タンパク質、Cas2タンパク質、Cas3タンパク質、Cas4タンパク質、Cas5タンパク質、Cas6タンパク質、Cas7タンパク質、Cas8タンパク質、Cas9タンパク質、Cas10タンパク質、Cas12(Cpf1)タンパク質、またはCas13タンパク質を含む、請求項41~53のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
プログラム可能なDNA結合システムがCas9またはCas12(Cpf1)を含む、請求項41~54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas9、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、請求項41~55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項57】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas12(Cpf1)、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、請求項41~55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
Casタンパク質が、野生型Casタンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む、請求項50~57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
Casタンパク質が、野生型Cas9タンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含むCas9タンパク質である、請求項50~56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項60】
Casタンパク質が、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞膜透過ドメイン、少なくとも1つのマーカードメイン、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項50~59のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
Casタンパク質が、1つまたは2つの核局在化シグナルをさらに含む、請求項50~60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むCRISPR-Casヌクレアーゼシステムである、請求項41~61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
ガイドRNAが単一分子である、請求項62または63に記載の組成物。
【請求項65】
ガイドRNAが2個の分子である、請求項62または63に記載の組成物。
【請求項66】
ガイドRNAが酵素的に合成される、請求項62~65のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項67】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含み、crRNAが化学的に合成され、tracrRNAが酵素的に合成されるか、またはcrRNAおよびtracrRNAが両方とも酵素的に合成される、請求項62~65のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項68】
真核細胞がヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、または単細胞真核生物である、請求項41~67のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項69】
真核細胞が哺乳動物細胞または植物細胞である、請求項41~68のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項70】
真核細胞がヒト細胞である、請求項41~69のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項71】
プログラム可能なDNA修飾システム、真核細胞、および2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含むトランスフェクション組成物。
【請求項72】
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩が硫酸化多糖塩である、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
(i)2つ以上のポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、カラギーナン(例えば、K-、I-、および/またはL-カラギーナン)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、コンドロイチン、コラーゲン、デキストラン、フコイダン、ヘパラン、ヘパリン、グルコサミン、ラミナリン、ペントサン、ならびにそれらの組合せ、誘導体、および/もしくは塩のうちの1つもしくは複数から選択されるか;または
(ii)2つ以上のポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、反復糖単位が少なくとも1つの硫酸基を含む硫酸多糖もしくはその塩であり、2つ以上のポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、デキストラン硫酸、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびその塩から選択される、
請求項71または72に記載の組成物。
【請求項74】
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの少なくとも1つがデキストラン硫酸を含む、請求項71~73のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項75】
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの少なくとも1つがデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む、請求項71~73のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項76】
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの1つがデキストラン硫酸ナトリウム塩であり、2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの別の1つが、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、およびデルマタン硫酸から選択される、請求項71~73のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項77】
プログラム可能なDNA修飾システムが、RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)ヌクレアーゼシステム、CRISPR-Cas二重ニッカーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、または非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を含む、請求項71~76のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項78】
プログラム可能なDNA修飾システムがCasタンパク質およびガイドRNAを含む、請求項71~77のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項79】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項78に記載の組成物。
【請求項80】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むリボ核タンパク質複合体である、請求項71~79のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項81】
Casタンパク質が、触媒的に活性であるか、触媒的に不活性であるか、またはニッカーゼである、請求項78~80のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項82】
プログラム可能なDNA修飾システムが、核酸配列内の塩基を修飾するための塩基エディターである、請求項71~81のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項83】
プログラム可能なDNA修飾システムが、I型、II型(例えば、Cas9)、III型、V型(例えば、Cpf1)、またはVI型(例えば、Cas13)Casタンパク質を含む、請求項71~82のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項84】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas1タンパク質、Cas2タンパク質、Cas3タンパク質、Cas4タンパク質、Cas5タンパク質、Cas6タンパク質、Cas7タンパク質、Cas8タンパク質、Cas9タンパク質、Cas10タンパク質、Cas12(Cpf1)タンパク質、またはCas13タンパク質を含む、請求項71~83のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項85】
プログラム可能なDNA結合システムがCas9またはCas12(Cpf1)を含む、請求項71~84のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項86】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas9、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、請求項71~85のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項87】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas12(Cpf1)、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、請求項71~85のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項88】
Casタンパク質が、野生型Casタンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む、請求項80~87のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項89】
Casタンパク質が、野生型Cas9タンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含むCas9タンパク質である、請求項80~86のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項90】
Casタンパク質が、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞膜透過ドメイン、少なくとも1つのマーカードメイン、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項80~89のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項91】
Casタンパク質が、1つまたは2つの核局在化シグナルをさらに含む、請求項80~90のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項92】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むCRISPR-Casヌクレアーゼシステムである、請求項71~91のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項93】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項92に記載の組成物。
【請求項94】
ガイドRNAが単一分子である、請求項92または93に記載の組成物。
【請求項95】
ガイドRNAが2個の分子である、請求項92または93に記載の組成物。
【請求項96】
ガイドRNAが酵素的に合成される、請求項92~95のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項97】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含み、crRNAが化学的に合成され、tracrRNAが酵素的に合成されるか、またはcrRNAおよびtracrRNAが両方とも酵素的に合成される、請求項92~95のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項98】
真核細胞がヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、または単細胞真核生物である、請求項71~97のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項99】
真核細胞が哺乳動物細胞または植物細胞である、請求項71~98のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項100】
真核細胞がヒト細胞である、請求項71~99のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項101】
Casタンパク質、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含む溶液、および1つまたは複数の緩衝溶液を含むキット。
【請求項102】
1つまたは複数の緩衝溶液が再構成溶液および希釈溶液を含む、請求項101に記載のキット。
【請求項103】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含む溶液がデキストラン硫酸を含む、請求項101または102に記載のキット。
【請求項104】
再構成溶液が50%グリセロールを含み、希釈溶液が20mM HEPES緩衝液(pH7.5)および20mM NaClを含む、請求項102または103に記載のキット。
【請求項105】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含む溶液が、1μg/μLデキストラン硫酸ナトリウム塩を2mM HEPES緩衝液(pH7.5)および20mM NaCl中に含む、請求項103または104に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月1日に出願された米国仮特許出願第63/274,272号の優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、標的ゲノム修飾、標的転写制御、および/または標的エピジェネティック修飾の効率を上げるための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
プログラム可能なエンドヌクレアーゼは、真核生物における標的ゲノム改変または修飾の重要なツールになっている。RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(RNA-guided clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(CRISPR)システムは、新世代のゲノム修飾ツールとして登場した。これらのプログラム可能なエンドヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などの前世代のヌクレアーゼと比較して前例のない簡単さおよび汎用性を提供する。
【0004】
CRISPR-CASシステムは、多様な細胞型および生物におけるゲノム修飾のためのエンドヌクレアーゼとして広く採用されてきた。より最近では、CRISPR-CASシステムの使用は、Casポリペプチドと他の機能性ドメイン、例えば、シチジンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、および逆転写酵素などとの融合による塩基編集およびプライム編集へとさらに発展している。プラスミドDNAは伝統的に、これらのゲノム修飾因子(genome modification agent)を細胞にデリバリーするための媒体として使用されてきたが、組換えCasタンパク質およびシングルガイドRNA(sgRNA)からなるリボ核タンパク質(RNP)複合体は、近年多くの遺伝子編集用途において重要なデリバリー様式になっている。RNP複合体デリバリーは、宿主ゲノムへの外因性DNA組み込みのリスクを最小化するかもしくは排除することさえでき、オフターゲット効果を低減し、プラスミドDNAに対して感受性が高いT細胞などの一部の細胞型においてトランスフェクション関連細胞傷害性を軽減することができる。
【0005】
CRISPR-Cas(例えば、Cas9、Cas12)RNP複合体をゲノム修飾に使用する上で1つの限界は、プラスミドDNAデリバリーと比較してより高い変わりやすい編集効率となり得ることである。この欠点にはいくつかの要因が寄与し得る。特に、細胞外マトリックス(ECM)におけるRNP複合体の貯留はデリバリー効率を低下させる可能性があり、細胞質へのRNP複合体の凝集は、遺伝子編集のために核に輸送される複合体の量を実質的に制限する可能性がある。Integrated DNA Technologies,Inc.(IDT)は、編集効率を改善するためにCRISPR-Cas9およびCRISPR-Cas12 RNP複合体デリバリー用のエレクトロポレーションエンハンサーとして100nt合成一本鎖DNAオリゴを開発した。しかし、これらのDNAベースのエンハンサーは宿主ゲノムへの外因性DNA組み込みのリスクをもたらし、遺伝子編集アッセイを妨げる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示の様々な態様の中に、トランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション)中のプログラム可能なDNA修飾タンパク質のゲノム修飾効率を改善する方法および組成物の提供がある。
【0007】
したがって、簡単には、本開示はゲノム編集効率を高めるための方法に関する。方法は、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の存在下、プログラム可能なDNA修飾システムをエレクトロポレーションによって真核細胞に導入することを含む。ある特定の実施形態では、プログラム可能なDNA修飾システムはRNP複合体である。ある特定の実施形態では、エレクトロポレーションエンハンサーはRNAフリーおよびDNAフリーであり、すなわち、検出可能な核酸は、エンハンサー組成物または溶液の中にほとんど存在しないかまたは存在しない。これらのおよび他の実施形態では、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩はデキストラン硫酸ナトリウム塩である。
【0008】
本開示の別の態様は、本明細書に記載される方法により調製される真核細胞に関する。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、プログラム可能なDNA修飾システム、真核細胞、およびポリアニオン性ポリマーまたはその塩(例えば、デキストラン硫酸およびその塩)を含むトランスフェクション組成物に関する。本開示の別の態様は、2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩(例えば、デキストラン硫酸およびその塩、ならびに別のポリアニオン性ポリマーまたはその塩)を含むトランスフェクション組成物に関する。
【0010】
本開示の他の態様は、エレクトロポレーション溶液およびCasタンパク質、再構成溶液、タンパク質希釈溶液、ならびに適宜、本明細書に記載の他の成分のうちの1つまたは複数を含むキットを含む。1つの特定の態様では、キットは、Casタンパク質、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含む溶液、および1つまたは複数の緩衝溶液を含む。1つの実施形態では、キットは、組換えCasタンパク質、デキストラン硫酸(例えば、ナトリウム塩)溶液、再構成溶液、希釈溶液、およびこれらをエレクトロポレーションに使用するための説明書を含む。
【0011】
他の目的および特徴は一部は明白であり、一部は以下に指摘される。
【0012】
本開示の新規の特徴は、特に添付の特許請求の範囲に記載される。本開示の特徴および利点のさらなる理解は、本開示の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、ヒトK562細胞のヌクレオフェクションで使用された種々の量のデキストラン硫酸下、ヒトRelA標的部位においてSpCas9組換えタンパク質および合成sgRNAによってもたらされる突然変異頻度を示すグラフである。
【0014】
図2図2は、ヒトK562細胞のヌクレオフェクション中にデキストラン硫酸の存在下および非存在下、ヒトCAR19、CCR5、CHI3L1、HEKSite4、POR23、およびVEGFA標的部位において、SpCas9組換えタンパク質および6つの合成sgRNAによって生成された突然変異頻度を示すグラフである。
【0015】
図3図3A~3Fは、ヒトHEK293細胞のヌクレオフェクション中にデキストラン硫酸の存在下および非存在下、ヒトCCR5(図3A)、RNF2(図3B)、HEK293_site2(図3C)、HEK293_site3(図3D)、EMX1(図3D)、およびHBB(図3F)標的部位において、SpCas9 D10AニッカーゼおよびヒトAPOBEC3Aシチジンデアミナーゼ、ならびに6つの合成sgRNAを含む組換えシトシン塩基エディター融合タンパク質によって生成されたCからTへの塩基転移編集頻度を示すグラフである。これらの図は、出現順にそれぞれ、配列番号38、および76~80を開示する(以下の実施例3も参照のこと)。
【0016】
図4図4Aは、種々の量のペントサンポリ硫酸の存在下の、ヒト線維芽細胞のHEKSite4標的部位(target side)におけるSpCas9組換えタンパク質および合成ガイドRNAによるゲノム編集効率を示すグラフである。図4Bは、種々の量のペントサンポリ硫酸の存在下の、ヒトHEK293細胞のHEKSite4標的部位におけるSpCas9組換えタンパク質および合成ガイドRNAによるゲノム編集効率を示すグラフである。
【0017】
図5図5Aは、種々の量のヘパラン硫酸の存在下の、ヒト線維芽細胞のHEKSite4標的部位におけるSpCas9組換えタンパク質および合成ガイドRNAによるゲノム編集効率を示すグラフである。図5Bは、種々の量のヘパラン硫酸の存在下の、ヒトHEK293細胞のHEKSite4標的部位におけるSpCas9組換えタンパク質および合成ガイドRNAによるゲノム編集効率を示すグラフである。
【0018】
図6図6は、ヒトHEK293細胞のHEKSite4標的部位におけるSpCas9組換えタンパク質および合成ガイドRNAによるゲノム編集効率に対する9種類の異なる化合物の効果を示すグラフである。
【0019】
図7図7は、ヒト初代T細胞のPD-1標的部位におけるSpCas9組換えタンパク質および合成ガイドRNAによるゲノム編集効率に対するデキストラン硫酸ナトリウム塩の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
CRISPR-CASシステム、例えば、組換えCasタンパク質およびガイドRNAから構築されたCRISPR-Casリボ核タンパク質(RNP)複合体は、多様な細胞型および生物におけるゲノム修飾の重要な試薬になっている。本開示は、トランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション)中のプログラム可能なDNA修飾タンパク質のゲノム修飾効率を改善するエンハンサーとして使用するための、ある特定のポリアニオン性ポリマーおよびその塩(硫酸化多糖など)を提供する。ある特定の実施形態では、プログラム可能なDNA修飾タンパク質は、例えばRNP複合体としてデリバリーされる、ヌクレアーゼ、ニッカーゼ、および塩基エディターを含むCasタンパク質である。本明細書に開示される方法は、ゲノム編集効率または関連する生物学的効果を高める他の組換えタンパク質のエレクトロポレーションデリバリーに適用されることもある。
【0021】
本開示の1つの態様は、ゲノム編集効率を改善する方法に関する。一般に、方法は、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の存在下、プログラム可能なDNA修飾システムを真核細胞に導入することを含む。典型的には、プログラム可能なDNA修飾システムは、エレクトロポレーションにより真核細胞に導入される。本明細書に記載される方法によれば、ゲノム編集効率は、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の非存在下であること以外は同一の方法と比べて高められる。本開示の他の態様は、ゲノム編集効率を高める組成物(エレクトロポレーション溶液を含む)を含む。
【0022】
エレクトロポレーションエンハンサーとしてのポリアニオン性ポリマー
本明細書に開示される方法、組成物、および使用によれば、プログラム可能なDNA修飾システムのゲノム修飾効率を改善または高めるためにポリアニオン性ポリマーが使用される。そのようなプログラム可能なDNA修飾システムには、例えば、RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)ヌクレアーゼシステム、CRISPR-Cas二重ニッカーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、および/または非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質が含まれる。1つの特定の実施形態では、プログラム可能なDNA修飾システムはCRISPR-Casヌクレアーゼシステムである。別の特定の実施形態では、プログラム可能なDNA修飾システムはCRISPR-Cas9またはCRISPR-Cas12ヌクレアーゼシステムである。さらに別の特定の実施形態では、プログラム可能なDNA修飾はCRISPR-Cas9ヌクレアーゼまたはニッカーゼシステムである。
【0023】
ポリアニオン性ポリマーは、典型的には、エレクトロポレーション方法を実施する前に従来のエレクトロポレーション溶液に添加されるか、またはそうでなければ該溶液中に存在する。様々な実施形態では、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩は、細胞がエレクトロポレーション溶液に再懸濁され、エレクトロポレーション電圧が供給される前または後のどちらかで該溶液に添加される。例えば従来のエレクトロポレーションシステムを使用する以下の例で例示されるように、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩(例えば、デキストラン硫酸ナトリウム塩)がNucleofector(商標)溶液V(Lonza)などの標準的なエレクトロポレーション溶液に添加され、次いで、エレクトロポレーション(当技術分野および本明細書ではヌクレオフェクションとも呼ばれる)の前に細胞がポリアニオン性ポリマー含有エレクトロポレーション溶液に再懸濁される。あるいは、最初に細胞がエレクトロポレーション溶液に再懸濁され、エレクトロポレーション/ヌクレオフェクションの前にポリアニオン性ポリマーが細胞懸濁液に添加されてもよい。当業者は、ゲノム修飾のためにプログラム可能なDNA修飾システムを細胞にデリバリーするのに適した多くの異なるエレクトロポレーションシステムがあり、方法、組成物、使用、およびキットを含む本開示はこれらのシステムに適用され得ることを理解するであろう。
【0024】
ポリアニオン性ポリマーは、1つまたは複数の有機ポリマーまたはその塩であってもよい。適切な有機ポリマーの例には多糖ポリマーが含まれるが、これに限定されない。1つの実施形態では、多糖ポリマーは、カラギーナン(例えば、K-、I-、および/またはL-カラギーナン)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、コンドロイチン、コラーゲン、デキストラン、フコイダン、ヘパラン、ヘパリン、グルコサミン、ラミナリン、ペントサン、ならびにそれらの誘導体および/または塩から選択される。一部の実施形態では、ポリアニオン性ポリマーは、反復糖単位が少なくとも1つの硫酸基を含む硫酸多糖またはその塩である。硫酸化多糖の例は、デキストラン硫酸、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびそれらの塩からなる群から選択され得る。特定の実施形態では、ポリアニオン性ポリマーは硫酸化多糖のナトリウム塩である。
【0025】
特定の実施形態では、ポリアニオン性ポリマーは、デキストラン硫酸またはその塩(例えば、デキストラン硫酸ナトリウム塩)などのポリ硫酸ポリマーである。一部の好ましい実施形態では、ポリアニオン性ポリマーはデキストラン硫酸またはその塩、例えばデキストラン硫酸ナトリウム塩である。
【0026】
ポリアニオン性ポリマーおよびその塩の組合せが、本開示において企図される。例えば、ポリアニオン性ポリマーおよびその塩は、デキストラン硫酸(例えば、デキストラン硫酸ナトリウム塩)ならびに別の1つまたは複数のポリアニオン性ポリマーまたは硫酸多糖、例えば、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびそれらの塩であってもよい。
【0027】
本明細書に記載のエレクトロポレーション増強溶液において使用するために選択される特定のポリアニオン性ポリマーまたは硫酸化多糖に関係なく、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の平均分子量は、典型的には約1kDa~約1,000kDaである。一般に、平均分子量は、分子の総数で割ったポリマーの総重量として定義される。例えば、デキストラン硫酸ナトリウム塩の分子量は、典型的にはゲル浸透クロマトグラフィー(参照としてデキストランを使用するサイズ排除クロマトグラフィー)によって決定される。1つの特定の実施形態では、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の平均分子量は約5kDa~約500kDaである。例えば、1つの実施形態では、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の平均分子量は、約5kDa、15kDa、25kDa、35kDa、45kDa、55kDa、65kDa、75kDa、85kDa、95kDa、105kDa、115kDa、125kDa、135kDa、145kDa、155kDa、165kDa、175kDa、185kDa、195kDa、205kDa、215kDa、225kDa、235kDa、245kDa、255kDa、265kDa、275kDa、285kDa、295kDa、305kDa、315kDa、325kDa、335kDa、345kDa、355kDa、365kDa、375kDa、385kDa、395kDa、405kDa、415kDa、425kDa、435kDa、445kDa、455kDa、465kDa、475kDa、485kDa、495kDa、または500kDaであってもよい。
【0028】
別の実施形態では、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の平均分子量は、約5kDaより大きい、約10kDaより大きい、約25kDaより大きい、約50kDaより大きい、75kDaより大きい、約100kDaより大きい、約125kDaより大きい、約150kDaより大きい、約175kDaより大きい、約200kDaより大きい、約225kDaより大きい、約250kDaより大きい、約275kDaより大きい、約300kDaより大きい、約325kDaより大きい、約350kDaより大きい、約375kDaより大きい、約400kDaより大きい、約425kDaより大きい、約450kDaより大きい、約475kDaより大きい、または約500kDaより大きい。
【0029】
別の実施形態では、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の平均分子量は、約5kDa~約500kDa、約25kDa~約250kDa、約50kDa~約200kDa、約75kDa~約175kDa、または約100kDa~約150kDaである。
【0030】
別の実施形態では、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の平均分子量は、約5kDa~約25kDa、約5kDa~約20kDa、または約5kDa~約15kDaである。
【0031】
さらなる他の実施形態では、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の平均分子量は、厳密には重要ではなない。
【0032】
ポリアニオン性ポリマーは、ナトリウム塩形態または他の塩形態で得られてもよく、典型的には、水または緩衝液(例えば、デキストラン硫酸ナトリウム塩を含む標準的なエレクトロポレーション溶液)に溶解される。各トランスフェクションで使用されるポリアニオン性ポリマーまたはその塩の量は、典型的には、エレクトロポレーション溶液に懸濁された細胞100μLあたり0.1μg~10μgに及び得る。1つの好ましい実施形態では、該量は細胞100μLあたり0.2μg~1μgに及び得る。最適な量は、使用される細胞型、エレクトロポレーションシステム、およびCRISPRシステムなどのプログラム可能なDNA修飾システムのタイプ(例えば、RNP)に応じて異なる可能性があり、異なるであろう。
【0033】
ポリアニオン性物質が硫酸化多糖またはその塩である場合、硫酸化多糖の各糖単位(すなわち、反復単位)は1~3個のアニオン性基を含み得る。例えば、硫酸化多糖がデキストラン硫酸である場合、デキストラン硫酸反復単位は3個の硫酸基を含有し得る。
【0034】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩(例えば、硫酸化多糖またはその塩)は、細胞に対して実質的に非毒性の濃度および使用期間で使用されるべきことが理解されよう。同様に、実質的に非毒性の濃度および使用期間は、細胞型、エレクトロポレーション条件、および/または他の要因に応じて異なり得ることが理解されよう。ある特定の実施形態では、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含むトランスフェクションまたはエレクトロポレーション溶液はRNAフリーおよびDNAフリーであり、すなわち、検出可能な核酸は溶液中にほとんど存在しないかまたは存在しない。
【0035】
エレクトロポレーション
一般に、エレクトロポレーションは、外来物質を生細胞に導入するのにインビトロ(in vitro)およびインビボ(in vivo)操作の両方で使用される。インビトロ適用に関しては、まず生細胞の試料が目的の薬剤と混合され、平行板などの電極の間に置かれる。次いで、電極が細胞/埋入混合物に電界を印加する。インビトロエレクトロポレーションを行うシステムの例には、Lonza Nucleofector(登録商標)システム、MaxCyte Flow Electroporation(登録商標)システム、およびThermoFisher Neon Transfectionシステムが含まれる。
【0036】
公知のエレクトロポレーション法(インビトロでもインビボでも)は、処置領域の周囲に置かれた電極に短い高電圧パルスを印加することによって機能する。電極間に生成された電界は、一時的に細胞膜を目的の薬剤の分子が細胞に侵入する孔になるようにする。公知のエレクトロポレーション適用では、この電界は約100μs時間、1000V/cmオーダーで単一矩形波パルスを含む。そのようなパルスは、例えば、当技術分野で公知の、またはエレクトロポレーション装置文献に詳述されている標準的な手法による、Lonza Nucleofector(登録商標)システム(または同様の装置)の公知の適用において生成され得る。
【0037】
電界の適用は、マルチパルス、例えば、同じ強度および電気容量のダブルパルス、あるいは様々な強度および/または電気容量の連続パルスの形態であることが多い。本明細書で使用される場合、用語「パルス」は、可変電気容量および電圧での、ならびに指数関数波形および/または矩形波形および/または変調波形/矩形波形を含む、1つまたは複数の電気パルスを含む。
【0038】
電気パルスは、典型的には指数関数波形、矩形波形、変調波形、および変調矩形波形から選択される波形としてデリバリーされる。
【0039】
好ましい実施形態は、低電圧の直流を使用する。例えば、電界は、100ミリ秒以上、好ましくは15ミリ秒以上の時間にわたり1V/cm~20V/cmの電界強度で適用されてもよい。しかし、一般に、エレクトロポレーションに関する電気よび時間パラメーターは、製造者の推奨設定および/または所与のトランスフェクション用途(例えば、細胞型、タンパク質型など)のためにインストールされたプログラムに従って選択されることが当業者に理解されよう。1つの特定の実施形態では、エレクトロポレーションは、RNP複合体を使用して哺乳動物(例えば、ヒト)細胞で行われる。
【0040】
CRISPR-CASシステム(例えば、Cas9、Cas12)などのプログラム可能なDNA修飾タンパク質のエレクトロポレーション法は、本明細書に記載されたエレクトロポレーション増強を除いて当技術分野で一般に公知である。
【0041】
プログラム可能なDNA修飾タンパク質
プログラム可能なDNA修飾タンパク質は、染色体DNA中の特定の標的配列に結合することを目的とするタンパク質であり、標的配列においてまたはその近くでDNAまたはDNAと結合するタンパク質を修飾する。故に、プログラム可能なDNA修飾タンパク質は、典型的には、プログラム可能なDNA結合ドメインおよび触媒的に活性な修飾ドメインを含み得る。
【0042】
プログラム可能なDNA修飾タンパク質のDNA結合ドメインはプログラム可能であり、これは、該ドメインが異なるDNA配列を認識し、結合するように設計または改変され得ることを意味する。一部の実施形態では、例えば、DNA結合は、DNA修飾タンパク質と標的DNAとの間の相互作用によって媒介される。故に、DNA結合ドメインは、タンパク質改変によって目的のDNA配列に結合するようにプログラムすることができる。他の実施形態では、例えば、DNA結合は、DNA修飾タンパク質および標的DNAと相互作用するガイドRNAによって媒介される。そのような場合、プログラム可能なDNA結合タンパク質は、適当なガイドRNAを設計することによって目的のDNA配列を標的にすることができる。
【0043】
様々な修飾ドメインがプログラム可能なDNA修飾タンパク質に含まれ得る。一部の実施形態では、修飾ドメインはヌクレアーゼ活性を有し、二本鎖DNA配列のうちの一方または両方の鎖を切断することができる。DNA切断は、次いで、DNA配列が少なくとも1つの塩基対の欠失、挿入、および/または置換によって修飾され得るように、非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え修復(HDR)などの細胞DNA修復プロセスによって修復され得る。ヌクレアーゼ活性を有するプログラム可能なDNA修飾タンパク質の例には、限定するものではないが、CRISPRヌクレアーゼ(またはニッカーゼ)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、およびヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインが含まれる。ヌクレアーゼ活性を有するプログラム可能なDNA修飾タンパク質は以下に詳述される。
【0044】
他の実施形態では、プログラム可能なDNA修飾タンパク質が、DNAおよび/またはDNAと結合するタンパク質の構造および/または活性を修飾するように、プログラム可能なDNA修飾タンパク質の修飾ドメインは非ヌクレアーゼ活性(例えば、エピジェネティック修飾活性または転写制御活性)を有する。故に、プログラム可能なDNA修飾タンパク質は、非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含むことができる。そのようなタンパク質は以下に詳述される。
【0045】
プログラム可能なDNA修飾タンパク質は、野生型または天然に存在するDNA結合および/または修飾ドメイン、天然に存在するDNA結合および/または修飾ドメインの修飾または改変バージョン、合成または人工のDNA結合および/または修飾ドメイン、ならびにそれらの組合せを含むことができる。
【0046】
ヌクレアーゼ活性を有するプログラム可能なDNA修飾タンパク質
【0047】
ヌクレアーゼ活性を有するプログラム可能なDNA修飾タンパク質の例は、限定するものではないが、CRISPRヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、およびヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインが含まれる。
【0048】
CRISPRヌクレアーゼ。CRISPRヌクレアーゼは、様々な細菌および古細菌に存在するI型、II型(すなわち、Cas9)、III型、V型(すなわち、Cas12/Cpf1)、またはVI型(すなわち、Cas13)CRISPRタンパク質に由来し得る。さらなる実施形態では、CRISPRヌクレアーゼは、古細菌CRISPRシステム、CRISPR/CasXシステム、またはCRISPR/CasYシステムに由来し得る[Burstein et al., Nature, 2017, 542(7640):237-241]。様々な実施形態では、CRISPRヌクレアーゼ(またはニッカーゼ、以下参照)は、連鎖球菌属種(Streptococcus sp.)[例えば、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus)、ストレプトコッカス・パスツリアヌス(S.pasteurianus)]、カンピロバクター属種(Campylobacter sp.)[例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)]、フランシセラ属種(Francisella sp.)[例えば、フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)]、アカリオクロリス属種(Acaryochloris sp.)、アセトハロビウム属種(Acetohalobium sp.)、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)、硫黄酸化菌属種(Acidithiobacillus sp.)、アリシクロバチルス属種(Alicyclobacillus sp.)、アロクロマチウム属種(Allochromatium sp.)、アンモニフェクス属種(Ammonifex sp.)、アナベナ属種(Anabaena sp.)、アルスロスピラ属種(Arthrospira sp.)、バチルス属種(Bacillus sp.)、バークホルデリア属種(Burkholderiales sp.)、カルディセルロシラプター属種(Caldicelulosiruptor sp.)、カンディダトゥス属種(Candidatus sp.)、クロストリジウム属種(Clostridium sp.)、クロコスフェラ属種(Crocosphaera sp.)、シアノセイス属種(Cyanothece sp.)、エキシグオバクテリウム属種(Exiguobacterium sp.)、フィネゴルディア属種(Finegoldia sp.)、クテドノバクター属種(Ktedonobacter sp.)、ラクノスピラ属種(Lachnospiraceae sp.)、ラクトバチルス属種(Lactobacillus sp.)、リングビア属種(Lyngbya sp.)、マリノバクター属種(Marinobacter sp.)、メタノハロビウム属種(Methanohalobium sp.)、ミクロスシラ属種(Microscilla sp.)、ミクロコレウス属種(Microcoleus sp.)、ミクロキスティス属種(Microcystis sp.)、ナトラネロビウス属種(Natranaerobius sp.)、ナイセリア属種(Neisseria sp.)、ニトロソコッカス属種(Nitrosococcus sp.)、ノカルジオプシス属種(Nocardiopsis sp.)、ノドゥラリア属種(Nodularia sp.)、ノストック属種(Nostoc sp.)、オシラトリア属種(Oscillatoria sp.)、ポラロモナス属種(Polaromonas sp.)、ペロトマクルム属種(Pelotomaculum sp.)、シュードアルテロモナス属種(Pseudoalteromonas sp.)、ペトロトガ属種(Petrotoga sp.)、プレボテラ属種(Prevotella sp.)、ブドウ球菌属種(Staphylococcus sp.)、ストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)、ストレプトスポランギウム属種(Streptosporangium sp.)、シネココッカス属種(Synechococcus sp.)、サーモシフォ属種(Thermosipho sp.)、またはベルコミクロビア属種(Verrucomicrobia sp.)由来であってもよい。
【0049】
化膿連鎖球菌、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス、アシドボラクス・アベナエ(Acidovorax avenae)、アクチノバチルス・プルロニューモニアス(Actinobacillus pleuropneumonias)、アクチノバチルス・サクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)、アクチノバチルス・スイス(Actinobacillus suis)、アクチノミセス属種(Actinomyces sp.)、シクフィルス・デニトリフィカンス(Cychphilusdenitrificans)、アミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)、バクテロイデス属種(Bacteroides sp.)、ブラストピレルラ・マリナ(Blastopirellula marina)、ブラディリゾビウム属種(Bradyrhizobium sp.)、ブレビバチルス・ラテロスポクス(Brevibacillus laterospoxus)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)、カンディダトゥス・プニセイスピリルム(Candidatus puniceispirillum)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)、コリネバクテリウム・アクコレンス(Corynebacterium accolens)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)、コリネバクテリウム・マトルコチイ(Corynebacterium matruchotii)、ディノロセオバクター・シバエ(Dinoroseobacter shibae)、ユーバクテリウム・ドリカム(Eubacterium dolichum)、ガンマプロテオバクテリア(Gammaproteobacterium)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィクス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルス・スプトム(Haemophilus sputomm)、ヘリコバクター・カナデンシス(Helicobacter canadensis)、ヘリコバクター・シネディ(Helicobacter cinaedi)、ヘリコバクター・ムステラエ(Helicobacter mustelae)、イリオバクター・ポリトロパス(Ilyobacter polytropus)、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、リステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、リステリア科細菌(Listeriaceae bacterium)、メチロシスチス属種(Methylocystis sp.)、メチロサイナス・トリコスポリウム(Methylosinus trichosporium)、モビルンカス・ムリエリス(Mobiluncus mulieris)、ナイセリア・バシリフォルミス(Neisseria bacilliformis)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)、ナイセリア・フラベセンス(Neisseria flavescens)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、髄膜炎菌、ナイセリア属種、ナイセリア・ワズワーシイ(Neisseria wadsworthii)、ニトロソモナス属種(Nitrosomonas sp.)、パルビバクラム・ラバメンティボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ファスコラルクトバクテリウム・スクシナテュテンス(Phascolarctobacterium succinatutens)、ラルストニア・シジジイ(Ralstonia syzygii)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドブラム属種(Rhodovulum sp.)、シモンシエラ・ムエレリ(Simonsiella muelleri)、スフィンゴモナス属種(Sphingomonas sp.)、スポロラクトバチルス・ビネア(Sporolactobacillus vineae)、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、連鎖球菌属種、サブドリグラヌルム属種(Subdoligranulum sp.)、ティストレラ・モビリス(Tistrella mobilis)、トレポネーマ属種(Treponema sp.)、またはベルミネフロバクター・エイセニア(Verminephrobacter eiseniae)に由来するCas分子を含む様々な種のCas分子が、本明細書に記載された方法、組成物、使用、およびキットにおいて使用され得る。
【0050】
CRISPRヌクレアーゼは、野生型または天然に存在するタンパク質であってもよい。あるいは、CRISPRヌクレアーゼは、特異性を改善させ、PAM特異性を変化させ、オフターゲット効果を減少させ、安定性を向上させるなどのために改変されてもよい。
【0051】
一部の実施形態では、Casタンパク質は天然に存在するCasタンパク質である。他の実施形態では、Casタンパク質は改変Casタンパク質である。一部の実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、C2C1、C2C3、Cpf1(本明細書ではCas12aとも呼ばれる)、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、Casl、Casl B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cash、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、およびCsf4からなる群から選択される。
【0052】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、Cas13タンパク質などのエンドリボヌクレアーゼである。一部の実施形態では、Cas13タンパク質は、Cas13a[Abudayyeh et al., Nature 550 (2017), 280-284]、Cas13b[Cox et al., Science (2017) 358:6336, 1019-1027]、Cas13c[Cox et al., Science (2017) 358:6336, 1019-1027]、またはCas13d[Zhang et al., Cell 175 (2018), 212-223]タンパク質である。
【0053】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、野生型または天然に存在するCas9タンパク質またはCas9オーソログである。野生型Cas9は、DNAの標的鎖を切断するHNHヌクレアーゼドメイン、および非標的鎖を切断するRuvC様ドメインを使用するマルチドメイン酵素である。gRNA特異性に基づくDNAへのWT Cas9の結合は、非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え修復(HDR)によって修復することができる二本鎖DNA切断をもたらす。
【0054】
一部の実施形態では、天然に存在するCas9ポリペプチドは、SpCas9、SpCas9-HF1、SpCas9-HF2、SpCas9-HF3、SpCas9-HF4、SaCas9、FnCpf、FnCas9、eSpCas9、およびNmeCas9からなる群から選択される。一部の実施形態では、Cas9タンパク質は、Chylinski et al., RNA Biology 2013 10:5, 727-737;Hou et al., PNAS Early Edition 2013, 1-6に記載されたCas9アミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0055】
一部の実施形態では、Casポリペプチドは以下の活性のうちの1つまたは複数を含む:(a)ニッカーゼ活性、すなわち、核酸分子の一本鎖、例えば、非相補鎖または相補鎖を切断する能力;(b)二本鎖ヌクレアーゼ活性、すなわち、二本鎖核酸の両方の鎖を切断し、二本鎖切断をもたらす能力(一実施形態では、2つのニッカーゼ活性の存在である);(c)エンドヌクレアーゼ活性;(d)エキソヌクレアーゼ活性;および/または(e)ヘリカーゼ活性、すなわち、二本鎖核酸のらせん構造をほどく能力。他の実施形態では、Casタンパク質は死んでいてもよく、または不活性であってもよい(例えば、dCas)。
【0056】
一部の実施形態では、Casポリペプチドは、塩基デアミナーゼ活性を有する異種ポリペプチド/タンパク質に融合される。
【0057】
一部の実施形態では、異なるCasタンパク質(すなわち、様々な種由来のCas9タンパク質)は、種々のCasタンパク質の様々な酵素特性を利用するために(例えば、種々のPAM配列優先性のために;酵素活性の増減のために;細胞傷害性のレベルの増減のために;NHEJ、相同組換え修復、一本鎖切断、二本鎖切断などの間のバランスを変化させるために)、様々な提供された方法において使用するのに有利であり得る。
【0058】
一部の実施形態では、Casタンパク質は化膿連鎖球菌に由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNGG、NAG、および/またはNGAを認識する[Mali et al, Science 2013; 339(6121): 823-826]。一部の実施形態では、Casタンパク質は、ストレプトコッカス・サーモフィルスに由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNGGNGおよび/またはNNAGAAW(W=AまたはT)を認識する[例えば、Horvath et al, Science, 201O; 327(5962): 167-170、およびDeveau et al, J Bacteriol 2008; 190(4): 1390-1400を参照]。一部の実施形態では、Casタンパク質は、ストレプトコッカス・ミュータンス(S.mutans)に由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNGGおよび/またはNAAR(R=AまたはG)を認識する[例えば、Deveau et al, J BACTERIOL 2008; 190(4): 1390-1400を参照]。一部の実施形態では、Casタンパク質は、黄色ブドウ球菌に由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNNGRR(R=AまたはG)を認識する。一部の実施形態では、Casタンパク質は、黄色ブドウ球菌に由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフN GRRT(R=AまたはG)を認識する。一部の実施形態では、Casタンパク質は、黄色ブドウ球菌に由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフN GRRV(R=AまたはG)を認識する。一部の実施形態では、Casタンパク質は、髄膜炎菌に由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフN GATTまたはN GCTT(R=AまたはG、V=A、GまたはC)を認識する(例えば、Hou et ah, PNAS 2013, 1-6を参照)。上述の実施形態では、Nは任意のヌクレオチド残基、例えば、A、G、CまたはTのいずれかであってもよい。一部の実施形態では、Casタンパク質は、レプトトリキア・シャーイイ(Leptotrichia shahii)に由来するCas13aタンパク質であり、単一3’A、U、またはCのPFS配列モチーフを認識する。
【0059】
一部の実施形態では、本明細書に記載されたCasポリペプチドは、CasポリペプチドのPAM/PFS特異性を変更するように改変することができる。一部の実施形態では、突然変異体Casポリペプチドは、親CasポリペプチドのPAM/PFS特異性とは異なるPAM/PFS特異性を有する。例えば、天然に存在するCasタンパク質は、突然変異体Casポリペプチドが認識するPAM/PFS配列を変更してオフターゲット部位を減少させ、特異性を改善し、またはPAM/PFS認識要件を取り除くように修飾されてもよい。一部の実施形態では、Casタンパク質は、PAM/PFS認識配列の長さを増加させるように修飾されてもよい。一部の実施形態では、PAM認識配列の長さは、少なくとも4、5、6、7、8、9、10または15アミノ酸長である。異なるPAM/PFS配列を認識し、および/またはオフターゲット活性が低下したCasポリペプチドは、定向進化を使用して生成することができる。Casポリペプチドの定向進化に使用することができる例示的な方法およびシステムは、例えば、Esvelt et al. Nature 2011, 472(7344): 499-503に記載されている。
【0060】
様々な実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質の野生型バージョンと比べて1つまたは複数の突然変異および/または欠失が存在するCas突然変異体であってもよい。例えば、以下のアミノ酸位置のうちの1つまたは複数が突然変異され得る(化膿連鎖球菌Cas9、SpCas9のナンバリングシステム:K526、K562、K652、R661、R691、R780、K810、K848、K855、K1003、およびK1060を参照)。例示的なCas突然変異体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際PCT公開番号WO2015/161276;国際PCT公開番号WO2021/183771;およびKonermann et al., Cell 173 (2018), 665-676に記載されている。さらなる他のCas突然変異体には、eSpCas9 1.0(K810A、K1003A、R1060A)、eSpCas9 1.1(K848A、K1003A、R1060A)、SpCas9-HF1(N497A、R661A、Q695A、Q926A)、HypaCas9(N692A、M694A、Q695A、H698A)、EvoCas9(M495V、Y515N、K526E、R661L)、Sniper Cas9(F539S、M763I、K890N)、HiFi Cas9 V3(R691A)、Opti-SpCas9(R661AおよびK1003H)、およびOptiHF-SpCas9(Q695A、K848A、E293M、T924VおよびQ926A)が含まれる(Slaymaker et al., Science 351, 84-88;Kleinstiver et al., Nature 523, 490-495;Chen et al. Nature 550, 407-410;Casini et al., Nature Biotechnology 36, 265-271;Lee et al., Nature Communications 9, 3048;Vakulskas et al., Nature Medicine 24, 1216-1224;Choi et al., Nature Methods 16, 722-730)。
【0061】
一部の実施形態では、CRISPRヌクレアーゼはII型CRISPR/Cas9タンパク質であってもよい。例えば、CRISPRヌクレアーゼは、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、ストレプトコッカス・サーモフィルスCas9(StCas9)、ストレプトコッカス・パスツリアヌス(SpaCas9)、カンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)、黄色ブドウ球菌(SaCas9)、フランシセラ・ノビシダCas9(FnCas9)、ナイセリア・シネレアCas9(NcCas9)、またはナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitis)Cas9(NmCas9)であってもよい。他の実施形態では、CRISPRヌクレアーゼは、V型CRISPR/Cas12(Cpf1)タンパク質、例えば、フランシセラ・ノビシダCas12(Cpf1)(FnCpf1)、アシダミノコッカス属種Cas12(Cpf1)(AsCpf1)、またはラクノスピラ属菌ND2006 Cas12(Cpf1)(LbCpf1)であってもよい。さらなる実施形態では、CRISPRヌクレアーゼは、VI型CRISPR/Cas13タンパク質、例えば、レプトトリキア・ワデイ(Leptotrichia wadei)Cas13a(LwaCas13a)またはレプトトリキア・シャーイイCas13a(LshCas13a)であってもよい。
【0062】
一般に、CRISPRヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ活性を有する少なくとも1つのヌクレアーゼドメインを含む。例えば、Cas9ヌクレアーゼは、ガイドRNA相補鎖を切断するHNHドメイン、および非相補鎖を切断するRuvCドメインを含み、Cpf1タンパク質はRuvCドメインおよびNUCドメインを含み、Cas13aヌクレアーゼは2つのHNEPNドメインを含む。一部の実施形態では、ヌクレアーゼドメインは両方とも活性であり、CRISPRヌクレアーゼは二本鎖切断活性を有する(すなわち、二本鎖核酸配列の両方の鎖を切断する)。他の実施形態では、ヌクレアーゼドメインのうちの1つは、1つまたは複数の突然変異および/または欠失によって不活性化され、CRISPR変異体は二本鎖核酸配列の一方の鎖を切断するニッカーゼである。例えば、Cas9タンパク質のRuvCドメイン中の1つまたは複数の突然変異(例えば、D10A、D8A、E762A、および/またはD986A)は、ガイドRNA相補鎖にニックを入れるHNHニッカーゼをもたらし、Cas9タンパク質のHNHドメイン中の1つまたは複数の突然変異(例えば、H840A、H559A、N854A、N856A、および/またはN863A)は、ガイドRNA非相補鎖にニックを入れるRuvCニッカーゼをもたらす。同等の突然変異は、Cas12/Cpf1およびCas13aヌクレアーゼをニッカーゼに変換することができる。Casニッカーゼは、Casヌクレアーゼに関して上に詳述した同じ細菌種から供給され得る。
【0063】
一部の実施形態では、CRISPRシステム(例えば、RNP)は、C GからT AまたはA TからG Cへの塩基編集デアミナーゼ酵素によって媒介される部位特異的塩基編集を作成することができる[Gaudelli et al., Programmable base editing of A T to G C in genomic DNA without DNA cleavage." Nature 551, 464-471 (2017);Nishida et al. "Targeted nucleotide editing using hybrid prokaryotic and vertebrate adaptive immune systems." Science 353 (6305) (2016);Komar et al. "Programmable editing of a target base in genomic DNA without double-stranded DNA cleavage." Nature 533, 420-424 (2016)]。シチジンデアミナーゼまたはアデニンデアミナーゼタンパク質に融合された触媒的に死んだdCas9は、DNA切断を誘導することなくDNA塩基を変更することができる特定の塩基エディターになる。塩基エディターは、C→T(または逆鎖ではG→A)に変換し、またはアデニンをイノシンに変換することになるアデニン塩基エディターは、gRNAによって指定された編集ウィンドウ内でA→G変化をもたらす。本明細書で使用される場合、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステム、ガイドポリヌクレオチド/Cas複合体、ガイドポリヌクレオチド/Casシステム、ガイドされたCasシステム、および上述の複数の形態は、本明細書において互換的に使用され、複合体を形成することができる少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドおよび少なくとも1つのCasタンパク質(すなわち、エンドヌクレアーゼ)を指す。前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、CasエンドヌクレアーゼをDNA標的部位に向けることができ、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識、結合、および適宜ニックまたは切断(一本鎖または二本鎖切断を導入)できるようにする。ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は本明細書において、I型、II型、またはIII型CRISPRシステムなどの4種類の公知のCRISPRシステム(Horvath and Barrangou, 2010, Science 327: 167-170)のうちのいずれかのCasタンパク質および適切なポリヌクレオチド成分を含み得る。Casエンドヌクレアーゼは標的配列でDNA二重鎖をほどき、Casタンパク質との複合体中にあるポリヌクレオチド(限定されるものではないが、crRNAまたはガイドRNAなどの)による標的配列の認識によって媒介されるとき、少なくとも1つのDNA鎖を適宜切断する。Casエンドヌクレアーゼによる標的配列のそのような認識およびカッティングは、典型的には、正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)がDNA標的配列の3末端もしくは5末端に、またはこれに隣接して位置する場合に生じる。あるいは、Casタンパク質は本明細書においてDNA切断活性またはニッキング活性を欠く場合があるが、適切なRNA成分と複合体化されると、依然としてDNA標的配列に特異的に結合することができる。
【0064】
一部の実施形態では、デアミナーゼドメインは、ヌクレアーゼ-不活性化Cas9ドメインのN末端に融合される。一部の実施形態では、デアミナーゼドメインは、ヌクレアーゼ-不活性化Cas9ドメインのC末端に融合される。一部の実施形態では、デアミナーゼドメインおよびヌクレアーゼ不活性化Cas9ドメインはリンカーを通じて融合される。リンカーは、二次構造またはそれより高次の構造、N末端、およびC末端の1つまたは複数のNLSを持たない非機能性アミノ酸配列であってもよい。1つを超えるNLSがある場合、各NLSは他のNLSとは独立するように選択され得る。一部の実施形態では、標的塩基編集融合タンパク質は2つのNLSを含み、例えば、2つのNLSはそれぞれN末端およびC末端に位置する。
【0065】
一部の実施形態では、標的塩基修飾は、任意のヌクレオチドC、A、T、またはGの、任意の他のヌクレオチドへの変換である。C、A、TまたはGヌクレオチドのうちのいずれか1つは、塩基エディター、または触媒的に活性なその断片によって媒介されるとき、別のヌクレオチドへ部位特異的に交換され得る。塩基編集複合体は、目的のヌクレオチドを目的の任意の他のヌクレオチドへ標的的に変換することができる任意の塩基エディター、または塩基エディタードメインもしくは触媒的に活性なその断片を含むことができる。
【0066】
本開示による塩基編集ドメインは、少なくとも1つのシチジンデアミナーゼ、または触媒的に活性なその断片を含むことができる。少なくとも1つの塩基編集複合体は、塩基エディターとしてシチジンデアミナーゼ、または触媒的に活性な断片の形態でのそのドメインを含むことができる。
【0067】
本開示によれば、本開示に関連して使用され得るシチジンデアミナーゼには、アポリポタンパク質B mRNA編集複合体(apolipoprotein B mRNA-editing complex)(APOBEC)ファミリーデアミナーゼとして知られる酵素ファミリーのメンバー、活性化誘導デアミナーゼ(AID)、またはシチジンデアミナーゼ1(CDA1)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、デアミナーゼは、APOBEC1デアミナーゼ、APOBEC2デアミナーゼ、APOBEC3Aデアミナーゼ、APOBEC3Bデアミナーゼ、APOBEC3Cデアミナーゼ、およびAPOBEC3Dデアミナーゼ、APOBEC3Eデアミナーゼ、APOBEC3Fデアミナーゼ、APOBEC3Gデアミナーゼ、APOBEC3Hデアミナーゼ、またはAPOBEC4デアミナーゼである。
【0068】
シチジンデアミナーゼは、DNA一本鎖中のシトシンを標的にすることができる。ある特定の例示実施形態では、シチジン(cytodine)デアミナーゼは、結合成分、例えば、結合されたCas9および/またはCas13の外側に存在する一本鎖上で編集してもよい。他の例示実施形態では、シチジン(cytodine)デアミナーゼは、局在化したバブル、例えば、ガイド配列以外の標的編集部位でのミスマッチによって形成される局在化バブルにおいて編集してもよい。
【0069】
一部の実施形態では、シチジンデアミナーゼタンパク質は、DNA-RNAヘテロ二重鎖の一本鎖バブル中の1つまたは複数の標的シトシン残基を認識し、ウラシル残基に変換する。一部の実施形態では、シチジンデアミナーゼタンパク質は、DNA-RNAヘテロ二重鎖の一本鎖バブル上の結合ウィンドウを認識する。一部の実施形態では、結合ウィンドウは、少なくとも1個の標的シトシン残基を含有する。一部の実施形態では、結合ウィンドウは約3bp~約100bpの範囲にある。一部の実施形態では、結合ウィンドウは約5bp~約50bpの範囲にある。一部の実施形態では、結合ウィンドウは約10bp~約30bpの範囲にある。一部の実施形態では、結合ウィンドウは約1bp、2bp、3bp、5bp、7bp、10bp、15bp、20bp、25bp、30bp、40bp、45bp、50bp、55bp、60bp、65bp、70bp、75bp、80bp、85bp、90bp、95bp、または100bpである。
【0070】
一部の実施形態では、シチジンデアミナーゼタンパク質は、1つまたは複数のデアミナーゼドメインを含む。理論に拘束されるものではないが、デアミナーゼドメインは、DNA-RNAヘテロ二重鎖の一本鎖バブルに含有される1つまたは複数の標的シトシン(C)残基を認識し、ウラシル(U)残基に変換するように機能することが企図される。一部の実施形態では、デアミナーゼドメインは活性中心を含む。一部の実施形態では、活性中心は亜鉛イオンを含む。一部の実施形態では、活性中心のまたはその近くのアミノ酸残基は、標的シトシン残基の5’側で1つまたは複数のヌクレオチドと相互作用する。一部の実施形態では、活性中心のまたはその近くのアミノ酸残基は、標的シトシン残基の3’側で1つまたは複数のヌクレオチドと相互作用する。
【0071】
一部の実施形態では、シチジンデアミナーゼは、ヒトAPOBEC1完全タンパク質(full protein)(hAPOBECl)またはそのデアミナーゼドメイン(hAPOBECl-D)もしくはそのC末端トランケートバージョン(hAPOBEC-T)を含む。一部の実施形態では、シチジンデアミナーゼは、hAPOBECl、hAPOBEC-DまたはhAPOBEC-Tに相同なAPOBECファミリーメンバーである。一部の実施形態では、シチジンデアミナーゼは、ヒトAID1完全タンパク質(hAID)またはそのデアミナーゼドメイン(hAID-D)もしくはそのC末端トランケートバージョン(hAID-T)を含む。一部の実施形態では、シチジンデアミナーゼは、hAID、hAID-DまたはhAID-Tに相同なAIDファミリーメンバーである。一部の実施形態では、hAIDTは、約20個のアミノ酸がC末端トランケートされたhAIDである。
【0072】
一部の実施形態では、シチジンデアミナーゼは、シトシンデアミナーゼの野生型アミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、シチジンデアミナーゼは、シトシンデアミナーゼの編集効率、および/または基質編集優先性が特定のニーズに従って変更されるように、シトシンデアミナーゼ配列中に1つまたは複数の突然変異を含む。
【0073】
APOBEC1およびAPOBEC3タンパク質のある特異的突然変異は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるKim et al., Nature Biotechnology (2017) 35(4):371-377およびHarris et al. Mal. Cell (2002) 10: 1247-1253、に記載されている。
【0074】
シチジンデアミナーゼの追加の実施形態は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2017/070632およびWO2018/213726に開示されている。
【0075】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ。さらなる他の実施形態では、ヌクレアーゼ活性を有するプログラム可能なDNA修飾タンパク質は、一組のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であってもよい。ZFNは、DNA結合ジンクフィンガー領域およびヌクレアーゼドメインを含む。ジンクフィンガー領域は約2~7個のジンクフィンガー、例えば、約4~6個のジンクフィンガーを含み得、各ジンクフィンガーは3個の連続する塩基対に結合する。ジンクフィンガー領域は、任意のDNA配列を認識し、結合するように改変することができる。ジンクフィンガー設計ツールまたはアルゴリズムは、インターネット上でまたは商業的供給源から入手可能である。ジンクフィンガーは、適切なリンカー配列を使用して連結し合うことができる。
【0076】
ZFNは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができるヌクレアーゼドメインも含む。ヌクレアーゼドメインが由来し得るエンドヌクレアーゼの非限定的な例には、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、ヌクレアーゼドメインは、II型S制限エンドヌクレアーゼに由来してもよい。II型Sエンドヌクレアーゼは、認識/結合部位から典型的には数塩基対離れている、それ故に分離可能な結合および切断ドメインを有する部位でDNAを切断する。これらの酵素は、一般に、一時的に会合して二量体を形成して、互い違いの位置でDNAの各鎖を切断する単量体である。適切なII型Sエンドヌクレアーゼの非限定的な例には、BfiI、BpmI、BsaI、BsgI、BsmBI、BsmI、BspMI、FokI、MboII、およびSapIが含まれる。一部の実施形態では、ヌクレアーゼドメインは、FokIヌクレアーゼドメインまたはその誘導体であってもよい。II型Sヌクレアーゼドメインは、2つの異なるヌクレアーゼドメインの二量体化を促進するように修飾することができる。例えば、FokIの切断ドメインは、ある特定のアミノ酸残基を突然変異させることによって修飾されてもよい。非限定的な例として、FokIヌクレアーゼドメインの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位、および538位のアミノ酸残基が修飾の標的である。特定の実施形態では、FokIヌクレアーゼドメインは、Q486E、I499L、および/またはN496D突然変異を含む第1のFokIハーフドメイン、ならびにE490K、I538K、および/またはH537R突然変異を含む第2のFokIハーフドメインを含んでもよい。一部の実施形態では、ZFNは二本鎖切断活性を有する。他の実施形態では、ZFNはニッカーゼ活性を有する(すなわち、ヌクレアーゼドメインのうちの1つは不活性化されている)。
【0077】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ。代替の実施形態では、ヌクレアーゼ活性を有するプログラム可能なDNA修飾タンパク質は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)であってもよい。TALENは、ヌクレアーゼドメインに連結された転写活性化因子様エフェクター(TALE)に由来する高度に保存された反復からなるDNA結合ドメインを含む。TALEは、宿主植物細胞において遺伝子の転写を変える植物病原体ザントモナス(Xanthomonas)によって分泌されるタンパク質である。TALE反復アレイは、モジュラータンパク質設計により改変されて目的の任意のDNA配列を標的にすることができる。TALENのヌクレアーゼドメインは、ZFNを説明するサブセクションに上記されている任意のヌクレアーゼドメインであってもよい。特定の実施形態では、ヌクレアーゼドメインはFokIに由来する[Sanjana et al., 2012, Nat Protoc, 7(1):171-192]。TALENは、二本鎖切断活性またはニッカーゼ活性を有することができる。
【0078】
メガヌクレアーゼまたはレアカッティング(Rare-Cutting)エンドヌクレアーゼ。さらなる他の実施形態では、ヌクレアーゼ活性を有するプログラム可能なDNA修飾タンパク質は、メガヌクレアーゼまたはその誘導体であってもよい。メガヌクレアーゼは、長い認識配列を特徴とするエンドデオキシリボヌクレアーゼである。すなわち、認識配列は一般に約12塩基対~約45塩基対にわたる。この要件の結果として、認識配列は一般に任意の所与のゲノムにおいて1回しか生じない。メガヌクレアーゼのうち、LAGLIDADG(配列番号1)という名のホーミングエンドヌクレアーゼのファミリーは、ゲノム研究およびゲノム工学の有用なツールになっている。一部の実施形態では、メガヌクレアーゼは、I-SceI、I-TevI、またはそれらの変異体であってもよい。メガヌクレアーゼは、当業者に周知の手法を使用してその認識配列を修飾することによって特定の染色体配列を標的にすることができる。代替の実施形態では、ヌクレアーゼ活性を有するプログラム可能なDNA修飾タンパク質は、レアカッティングエンドヌクレアーゼまたはその誘導体であってもよい。レアカッティングエンドヌクレアーゼは、その認識配列がゲノム中でめったに生じない、好ましくはゲノム中で1回しか生じない部位特異的エンドヌクレアーゼである。レアカッティングエンドヌクレアーゼは、7ヌクレオチド配列、8ヌクレオチド配列、またはより長い認識配列を認識し得る。レアカッティングエンドヌクレアーゼの非限定的な例には、NotI、AscI、PacI、AsiSI、SbfI、およびFseIが含まれる。
【0079】
ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメイン。さらなる追加の実施形態では、ヌクレアーゼ活性を有するプログラム可能なDNA修飾タンパク質は、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質であってもよい。ヌクレアーゼドメインは、ZFNを説明するサブセクションに上記されたもの(例えば、ヌクレアーゼドメインは、FokIヌクレアーゼドメインであってもよい)、CRISPRヌクレアーゼに由来するヌクレアーゼドメイン(例えば、Cas9のRuvCまたはHNHヌクレアーゼドメイン)、またはメガヌクレアーゼもしくはレアカッティングエンドヌクレアーゼに由来するヌクレアーゼドメインのうちのいずれかであってもよい。
【0080】
キメラタンパク質のプログラム可能なDNA結合ドメインは、例えば、ジンクフィンガータンパク質または転写活性化因子様エフェクターなどの任意のプログラム可能なDNA結合タンパク質であってもよい。あるいは、プログラム可能なDNA結合ドメインは、すべてのヌクレアーゼ活性を欠くように欠失または突然変異によって修飾された、触媒的に不活性な(死んだ)CRISPRタンパク質であってもよい。例えば、触媒的に不活性なCRISPRタンパク質は、RuvCドメインがD10A、D8A、E762A、および/またはD986A突然変異を含み、HNHドメインがH840A、H559A、N854A、N865A、および/またはN863A突然変異を含む、触媒的に不活性な(死んだ)Cas9(dCas9)であってもよい。あるいは、触媒的に不活性なCRISPRタンパク質は、ヌクレアーゼドメイン中に同等の突然変異を含む触媒的に不活性な(死んだ)Cpf1タンパク質であってもよい。さらなる他の実施形態では、プログラム可能なDNA結合ドメインは、ヌクレアーゼ活性が突然変異および/または欠失によって取り除かれた触媒的に不活性なメガヌクレアーゼであってもよく、例えば、触媒的に不活性なメガヌクレアーゼはC末端トランケーションを含み得る。
【0081】
非ヌクレアーゼ活性を有するプログラム可能なDNA修飾タンパク質
【0082】
代替の実施形態では、プログラム可能なDNA修飾タンパク質は、非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質であってもよい。プログラム可能なDNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質、転写活性化因子様エフェクター、触媒的に不活性な(死んだ)CRISPRタンパク質、または触媒的に不活性な(死んだ)メガヌクレアーゼであってもよい。例えば、触媒的に不活性なCRISPRタンパク質は、RuvCドメインがD10A、D8A、E762A、および/またはD986A突然変異を含み、HNHドメインがH840A、H559A、N854A、N865A、および/またはN863A突然変異を含む、触媒的に不活性な(死んだ)Cas9(dCas9)であってもよい。あるいは、触媒的に不活性なCRISPRタンパク質は、ヌクレアーゼドメイン中に同等の突然変異を含む触媒的に不活性な(死んだ)Cpf1タンパク質であってもよい。
【0083】
一部の実施形態では、キメラタンパク質の非ヌクレアーゼドメインは、DNAまたはクロマチン構造を変える(およびDNA配列を変えても変えなくてもよい)エピジェネティック修飾ドメインであってもよい。適切なエピジェネティック修飾ドメインの非限定的な例には、DNAメチルトランスフェラーゼ活性(例えば、シトシンメチルトランスフェラーゼ)、DNA脱メチル化酵素活性、DNA脱アミノ化(例えば、シトシンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グアニンデアミナーゼ)、DNAアミノ化、DNA酸化活性、DNAヘリカーゼ活性、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性(例えば、E1A結合タンパク質p300に由来するHATドメイン)、ヒストン脱アセチル化酵素活性、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性、ヒストン脱メチル化酵素活性、ヒストンキナーゼ活性、ヒストンホスファターゼ活性、ヒストンユビキチンリガーゼ活性、ヒストン脱ユビキチン化活性、ヒストンアデニル化活性、ヒストン脱アデニル化活性、ヒストンSUMO化活性、ヒストン脱SUMO化活性、ヒストンリボシル化活性、ヒストン脱リボシル化活性、ヒストンミリストイル化活性、ヒストン脱ミリストイル化活性、ヒストンシトルリン化活性、ヒストンアルキル化活性、ヒストン脱アルキル化活性、またはヒストン酸化活性を有するものが含まれる。特定の実施形態では、エピジェネティック修飾ドメインは、シチジンデアミナーゼ活性、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性、またはDNAメチルトランスフェラーゼ活性を含み得る。
【0084】
他の実施形態では、キメラタンパク質の非ヌクレアーゼ修飾ドメインは、転写活性化ドメインまたは転写抑制因子ドメインであってもよい。適切な転写活性化ドメインには、限定するものではないが、単純ヘルペスウイルスVP16ドメイン、VP64(VP16の四量体誘導体である)、VP160、NFκB p65活性化ドメイン、p53活性化ドメイン1および2、CREB(cAMP応答エレメント結合タンパク質)活性化ドメイン、E2A活性化ドメイン、ヒト熱ショック因子1(HSF1)由来の活性化ドメイン、またはNFAT(活性化T細胞の核内因子)活性化ドメインが含まれる。適切な転写抑制因子ドメインの非限定的な例には、誘導性cAMP初期抑制因子(ICER)ドメイン、クルッペル関連ボックス(KRAB)抑制因子ドメイン、YY1グリシンリッチ抑制因子ドメイン、Sp1様抑制因子、E(spl)抑制因子、IκB抑制因子、またはメチル-CpG結合タンパク質2(MeCP2)抑制因子が含まれる。転写活性化または転写抑制因子ドメインは、DNA結合タンパク質に遺伝的に融合させることができ、または非共有結合タンパク質-タンパク質、タンパク質-RNA、もしくはタンパク質-DNA相互作用を介して結合することができる。
【0085】
特定の実施形態では、キメラタンパク質の非ヌクレアーゼドメインは、シチジンデアミナーゼ活性、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性、転写活性化活性、または転写抑制因子活性を含むことができる。
【0086】
一部の実施形態では、非ヌクレアーゼ活性を有するキメラタンパク質は、少なくとも1つの検出可能な標識をさらに含むことができる。検出可能な標識は、フルオロフォア(例えば、FAM、TMR、Cy3、Cy5、テキサスレッド、オレゴングリーン、アレクサフルオロ、ハロタグ、または適切な蛍光色素)、検出タグ(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニンなど)、量子ドット、または金粒子であってもよい。
【0087】
適宜の核局在化シグナル、細胞膜透過ドメイン、および/またはマーカードメイン
本明細書に開示されるプログラム可能なDNA修飾タンパク質(例えば、CRISPR-Cas)は、少なくとも1つの核局在化シグナル、細胞膜透過ドメイン、および/またはマーカードメインをさらに含むことができる。
【0088】
核局在化シグナルの非限定的な例には、PKKKRKV(配列番号2)、PKKKRRV(配列番号3)、KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号4)、YGRKKRRQRRR(配列番号5)、RKKRRQRRR(配列番号6)、PAAKRVKLD(配列番号7)、RQRRNELKRSP(配列番号8)、VSRKRPRP(配列番号9)、PPKKARED(配列番号10)、PQPKKKPL(配列番号11)、SALIKKKKKMAP(配列番号12)、PKQKKRK(配列番号13)、RKLKKKIKKL(配列番号14)、REKKKFLKRR(配列番号15)、KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号16)、RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号17)、NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号18)、およびRMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号19)が含まれる。
【0089】
適切な細胞膜透過ドメインの例には、限定するものではないが、GRKKRRQRRRPPQPKKKRKV(配列番号20)、PLSSIFSRIGDPPKKKRKV(配列番号21)、GALFLGWLGAAGSTMGAPKKKRKV(配列番号22)、GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV(配列番号23)、KETWWETWWTEWSQPKKKRKV(配列番号24)、YARAAARQARA(配列番号25)、THRLPRRRRRR(配列番号26)、GGRRARRRRRR(配列番号27)、RRQRRTSKLMKR(配列番号28)、GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(配列番号29)、KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA(配列番号30)、およびRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号31)が含まれる。
【0090】
マーカードメインは、蛍光タンパク質および精製またはエピトープタグを含む。適切な蛍光タンパク質には、限定するものではないが、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、eGFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、エメラルド、アザミグリーン、単量体アザミグリーン、CopGFP、AceGFP、ZsGreen1)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、EYFP、シトリン、ビーナス、YPet、PhiYFP、ZsYellow1)、青色蛍光タンパク質(例えば、BFP、EBFP、EBFP2、アズライト、mKalama1、GFPuv、サファイア、T-サファイア)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、セルリアン、CyPet、AmCyan1、ミドリイシシアン)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mKate、mKate2、mPlum、DsRed単量体、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-単量体、HcRed-Tandem、HcRed1、AsRed2、eqFP611、mRasberry、mStrawberry、Jred)、およびオレンジ蛍光タンパク質(例えば、mオレンジ、mKO、クサビラオレンジ、単量体クサビラオレンジ、mTangerine、tdTomato)が含まれる。適切な精製またはエピトープタグの非限定的な例には、6×His(配列番号32)、FLAG(登録商標)、HA、GST、Mycなどが含まれる。
【0091】
少なくとも1つの核局在化シグナル、細胞膜透過ドメイン、および/またはマーカードメインは、融合タンパク質のN末端、C末端、および/または内部位置に位置し得る。
【0092】
特定の実施形態では、融合タンパク質のプログラム可能なDNA修飾タンパク質はCRISPRタンパク質である。例えば、CRISPRタンパク質は、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、ストレプトコッカス・サーモフィルスCas9(StCas9)、ストレプトコッカス・パスツリアヌス(SpaCas9)、カンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)、黄色ブドウ球菌(SaCas9)、フランシセラ・ノビシダCas9(FnCas9)、ナイセリア・シネレアCas9(NcCas9)、ナイセリア・メニンギティディスCas9(NmCas9)、フランシセラ・ノビシダCpf1(FnCpf1)、アシダミノコッカス属種Cpf1(AsCpf1)、またはラクノスピラ属菌ND2006 Cpf1(LbCpf1)であってもよい。
【0093】
複合体
本開示の別の態様は、少なくとも1つのCRISPRシステム(すなわち、CRISPRタンパク質およびガイドRNA)および、適宜少なくとも1つのヌクレオソーム相互作用タンパク質ドメインを含む複合体を包含する。一部の実施形態では、少なくとも1つのヌクレオソーム相互作用タンパク質ドメインがCRISPRシステムのCRISPRタンパク質に連結され得る(すなわち、上記の通り複合体はCRISPR融合タンパク質を含む)。他の実施形態では、少なくとも1つのヌクレオソーム相互作用タンパク質ドメインは、CRISPRシステムのガイドRNAに連結され得る。基本的に上記の通り、連結は直接的または間接的であってもよい。例えば、ヌクレオソーム相互作用タンパク質ドメインは、RNAアプタマー結合タンパク質に連結されてもよく、RNAアプタマー結合タンパク質のRNAアプタマー配列への結合がヌクレオソーム相互作用タンパク質ドメインをガイドRNAに連結させるように、ガイドRNAはアプタマー配列を含むことができる。
【0094】
ヌクレオソーム相互作用タンパク質ドメインはセクション(I)(a)に上記され、CRISPRタンパク質は上に詳述されている。CRISPRタンパク質は、ヌクレアーゼまたはニッカーゼ活性を有してもよい(例えば、II型CRISPR/Cas9型、V型CRISPR/Cpf1、またはVI型CRISPR/Cas13であってもよい)。例えば、複合体はCRISPRヌクレアーゼを含んでもよく、または複合体は2つのCRISPRニッカーゼを含んでもよい。あるいは、CRISPRタンパク質は、すべてのヌクレアーゼ活性を欠くように修飾され、非ヌクレアーゼドメイン(例えば、シトシンデアミナーゼ活性、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性、転写活性化活性、または転写抑制因子活性を有するドメイン)に連結されてもよい。一部の実施形態では、非ヌクレアーゼドメインはRNAアプタマー結合タンパク質に連結することもできる。
【0095】
ヌクレオソーム相互作用タンパク質ドメインの有無にかかわらず、本明細書に記載されたCRISPRシステムではガイドRNAは、(i)5末端にガイド配列を含有し、標的配列とハイブリダイズするCRISPR RNA(crRNA)、および(ii)CRISPRタンパク質と相互作用するトランス活性化crRNA(tracrRNA)配列を含む。各ガイドRNAのcrRNAガイド配列は異なる(すなわち、配列特異的である)。特定の細菌種由来のCRISPRタンパク質と複合体化するように設計されたガイドRNAでは、tracrRNA配列は一般に同じである。
【0096】
crRNAガイド配列は、二本鎖配列においてプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と隣接する標的配列とハイブリダイズするように設計される(すなわち、プロトスペーサー)。Cas9タンパク質のPAM配列には、5’-NGG、5’-NGGNG、5’-NNAGAAW、および5’-ACAYが含まれ、Cpf1のPAM配列には5’-TTNが含まれる(Nは任意のヌクレオチドとして定義され、WはAまたはTのどちらかとして定義され、YはCまたはTのどちらかとして定義される)。一般に、crRNAガイド配列と標的配列との間の相補性は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%である。特定の実施形態では、相補性は完全(すなわち、100%)である。様々な実施形態では、crRNAガイド配列の長さは約15ヌクレオチド~約25ヌクレオチドにわたり得る。例えば、crRNAガイド配列は、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長であってもよい。特定の実施形態では、crRNAは、約19、20、21、または22ヌクレオチド長であってもよい。
【0097】
crRNAおよびtracrRNAは、CRISPRタンパク質と相互作用することができる1つまたは複数の1つのステムループ構造を形成する反復配列を含む。各ループおよびステムの長さは異なり得る。例えば、1つまたは複数のループは約3~約10ヌクレオチド長にわたり得、1つまたは複数のステムは約6~約20塩基対長にわたり得る。1つまたは複数のステムは、1~約10ヌクレオチドのうちの1つまたは複数のバルジを含む場合がある。
【0098】
crRNAは、長さ約25ヌクレオチド~約100ヌクレオチドにわたり得る。様々な実施形態では、crRNAは、長さ約25~約50ヌクレオチド、約50~約75ヌクレオチド、または約75~約100ヌクレオチドにわたり得る。tracrRNAは、長さ約50ヌクレオチド~約300ヌクレオチドにわたり得る。様々な実施形態では、tracrRNAは、長さ約50~約90ヌクレオチド、約90~約110ヌクレオチド、約110~約130ヌクレオチド、約130~約150ヌクレオチド、約150~約170ヌクレオチド、約170~約200ヌクレオチド、約200~約250ヌクレオチド、または約250~約300ヌクレオチドにわたり得る。
【0099】
ガイドRNAにおけるtracrRNA配列は、一般に、目的の細菌種の野生型tracrRNAのコード配列に基づく。一部の実施形態では、野生型tracrRNA配列(またはcrRNA定常反復領域およびcrRNA定常反復領域と二重構造を形成するtracrRNAの対応する5’領域)が修飾されて、二次構造形成を促進し、二次構造安定性を高め、真核細胞での発現を促進し、編集効率を上げることなどができる。例えば、1つまたは複数のヌクレオチド変化が定常ガイドRNA配列に導入され得る。
【0100】
ガイドRNAは、crRNA配列がtracrRNA配列に連結された単一分子(すなわち、シングルガイドRNAまたはsgRNA)であってもよい。あるいは、ガイドRNAは2つの別々の分子であってもよい。第1の分子は、crRNAガイド配列を5’末端に、および第2の分子の5’末端と塩基対を形成することができる追加の配列を3’末端に含み、第2の分子は、第1の分子の3’末端と塩基対を形成することができる5’配列、および追加のtracrRNA配列を含む。一部の実施形態では、V型CRISPR/Cpf1システムのガイドRNAはcrRNAのみを含んでもよい。
【0101】
一部の実施形態では、ガイドRNAの1つまたは複数のステム-ループ領域は、1つまたは複数のアプタマー配列を含むように修飾され得る[Konermann et al., Nature, 2015, 517(7536):583-588;Zalatan et al., Cell, 2015, 160(1-2):339-50]。適切なRNAアプタマータンパク質ドメインの例には、MS2コートタンパク質(MCP)、PP7バクテリオファージコートタンパク質(PCP)、MuバクテリオファージComタンパク質、ラムダバクテリオファージN22タンパク質、ステム-ループ結合タンパク質(SLBP)、脆弱X精神遅滞症候群関連タンパク質1(FXR1)、AP205、BZ13、f1、f2、fd、fr、ID2、JP34/GA、JP501、JP34、JP500、KU1、M11、M12、MX1、NL95、PP7、φCb5、φCb8r、φCb12r、φCb23r、Qβ、R17、SP-β、TW18、TW19、およびVKなどのバクテリオファージ由来のタンパク質、それらの断片、またはそれらの誘導体が含まれる。追加のアプタマー配列の長さは、約20ヌクレオチド~約200ヌクレオチドにわたり得る。
【0102】
ガイドRNAは、標準的なリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド(例えば、シュードウリジン)、リボヌクレオチド異性体、および/またはリボヌクレオチド類似体を含むことができる。一部の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの検出可能な標識をさらに含むことができる。検出可能な標識は、フルオロフォア(例えば、FAM、TMR、Cy3、Cy5、テキサスレッド、オレゴングリーン、アレクサフルオロ、ハロタグ、または適切な蛍光色素)、検出タグ(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニンなど)、量子ドット、または金粒子であってもよい。当業者はgRNA設計および構築に精通しており、例えば、gRNA設計ツールはインターネット上でまたは商業的供給源から入手可能である。
【0103】
ガイドRNAは、化学合成、酵素合成されてもよく、またはそれらの組合せであってもよい。例えば、ガイドRNAは、標準的なホスホルアミダイトベースの固相合成方法を使用して合成することができる。あるいは、ガイドRNAは、ガイドRNAをコードするDNAを、ファージRNAポリメラーゼによって認識されるプロモーター制御配列に作動可能に連結して、インビトロで合成することができる。適切なファージプロモーター配列の例には、T7、T3、SP6プロモーター配列、またはそれらのバリエーションが含まれる。ガイドRNAが2つの別々の分子(すなわち、crRNAおよびtracrRNA)を含む実施形態では、crRNAは化学的に合成され得、tracrRNAは酵素的に合成され得る。
【0104】
一部の実施形態では、複合体は、相同組換え修復プロセス(HDR)による二本鎖切断の修復中に、ドナーポリヌクレオチド中のドナー配列が標的染色体配列で染色体配列と交換され、または染色体配列に組み込まれ得るように、標的染色体配列のどちらかの側に位置する配列に対して実質的な配列同一性を有する配列と隣接するドナー配列を含むドナーポリヌクレオチドをさらに含んでもよい。外因性配列の組み込みは、「ノックイン」と呼ばれる。
【0105】
プログラム可能なDNA修飾タンパク質がヌクレアーゼ活性を含む実施形態では、方法は、本明細書に記載のおよびエレクトロポレーションエンハンサーを利用するエレクトロポレーションにより、少なくとも1つのドナーポリヌクレオチドを細胞に導入することをさらに含むことができる。ドナーポリヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖、直鎖もしくは環状であってもよく、および/またはRNAもしくはDNAであってもよい。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドはベクター、例えば、プラスミドベクターであってもよい。
【0106】
ドナーポリヌクレオチドは、少なくとも1つのドナー配列を含む。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドのドナー配列は、内因性または天然の染色体配列の修飾バージョンであってもよい。例えば、ドナー配列は、DNA修飾タンパク質によって標的にされる配列のまたはその近くの染色体配列の一部と本質的に同一であってもよいが、少なくとも1つのヌクレオチド変化を含む。故に、組み込まれた配列または天然の配列と交換されると、標的染色体位置の配列は少なくとも1つのヌクレオチド変化を含む。例えば、該変化は、1つもしくは複数のヌクレオチドの挿入、1つもしくは複数のヌクレオチドの欠失、1つもしくは複数のヌクレオチドの置換、またはそれらの組合せであってもよい。修飾配列の「遺伝子修正」組み込みの結果、細胞は標的染色体配列から修飾遺伝子産物を産生することができる。
【0107】
他の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドのドナー配列は外因性配列であってもよい。本明細書で使用される場合、「外因性」配列とは、細胞にとって天然でない配列、またはその天然の位置が細胞のゲノム中の異なる位置にある配列を指す。例えば、外因性配列は、ゲノムに組み込むと、組み込まれた配列によってコードされるタンパク質を細胞が発現できるように、外因性プロモーター制御配列に作動可能に連結され得るタンパク質コード配列を含むことができる。あるいは、外因性配列は、その発現が内因性プロモーター制御配列によって調節されるように染色体配列に組み込むことができる。他のバージョンでは、外因性配列は、転写制御配列、別の発現制御配列、RNAコード配列などであってもよい。上述の通り、染色体配列への外因性配列の組み込みは、「ノックイン」と呼ばれる。
【0108】
当業者に理解され得るように、ドナー配列の長さは異なり得るものであり、実際に異なるであろう。例えば、ドナー配列は、数ヌクレオチドから数百ヌクレオチドから数十万ヌクレオチドの長さで異なり得る。
【0109】
典型的には、ドナーポリヌクレオチドのドナー配列は、プログラム可能なDNA修飾タンパク質によって標的にされる配列の上流および下流に位置する配列に対して実質的な配列同一性をそれぞれ有する上流配列および下流配列と隣接する。これらの配列類似性のため、ドナーポリヌクレオチドの上流および下流配列は、ドナー配列が染色体配列に組み込まれ(または染色体配列と交換され)得るようなドナーポリヌクレオチドと標的染色体配列との間の相同組換えを可能にする。
【0110】
上流配列は、本明細書で使用される場合、プログラム可能なDNA修飾タンパク質によって標的にされる配列の上流の染色体配列と実質的な配列同一性を共有する核酸配列を指す。同様に、下流配列は、プログラム可能なDNA修飾タンパク質によって標的にされる配列の下流の染色体配列と実質的な配列同一性を共有する核酸配列を指す。本明細書で使用される場合、「実質的な配列同一性」という句は、少なくとも約75%の配列同一性を有する配列を指す。故に、ドナーポリヌクレオチド中の上流および下流配列は、標的配列の上流または下流の配列と約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有し得る。例示的な実施形態では、ドナーポリヌクレオチド中の上流および下流配列は、プログラム可能なDNA修飾タンパク質によって標的にされる配列の上流または下流の染色体配列と約95%または100%の配列同一性を有し得る。
【0111】
一部の実施形態では、上流配列は、プログラム可能なDNA修飾タンパク質によって標的にされる配列のすぐ上流に位置する染色体配列と実質的な配列同一性を共有する。他の実施形態では、上流配列は、標的配列から約100ヌクレオチド以内上流に位置する染色体配列と実質的な配列同一性を共有する。故に、例えば、上流配列は、標的配列から約1~約20、約21~約40、約41~約60、約61~約80、または約81~約100ヌクレオチド上流に位置する染色体配列と実質的な配列同一性を共有し得る。一部の実施形態では、下流配列は、プログラム可能なDNA修飾タンパク質によって標的にされる配列のすぐ下流に位置する染色体配列と実質的な配列同一性を共有する。他の実施形態では、下流配列は、標的配列から約100ヌクレオチド以内下流に位置する染色体配列と実質的な配列同一性を共有する。故に、例えば、下流配列は、標的配列から約1~約20、約21~約40、約41~約60、約61~約80、または約81~約100ヌクレオチド下流に位置する染色体配列と実質的な配列同一性を共有し得る。
【0112】
各上流または下流配列は、長さ約20ヌクレオチド~約5000ヌクレオチドにわたり得る。一部の実施形態では、上流および下流配列は、約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2800、3000、3200、3400、3600、3800、4000、4200、4400、4600、4800、または5000ヌクレオチドを含み得る。特定の実施形態では、上流および下流配列は、長さ約50~約1500ヌクレオチドにわたり得る。
【0113】
細胞型
様々な細胞が、本明細書に開示される方法、組成物、および使用における使用に適している。好ましくは、細胞は、本開示によりトランスフェクトされる[すなわち、ポリアニオン性ポリマー(例えば、デキストラン硫酸)の存在下、エレクトロポレーションによりトランスフェクトされる]真核細胞である。例えば、細胞は、ヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞、または単細胞真核生物であってもよい。一部の実施形態では、細胞は1細胞期胚であることもできる。例えば、非ヒト哺乳動物胚は、ラット、ハムスター、齧歯類、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、および霊長類の胚を含む。さらなる他の実施形態では、細胞は、幹細胞、例えば胚性幹細胞、ES様幹細胞、胎児幹細胞、成体幹細胞などであってもよい。1つの実施形態では、幹細胞はヒト胚性幹細胞ではない。さらに、幹細胞は、その全体が本明細書に組み込まれるWO2003/046141、またはChung et al.(Cell Stem Cell, 2008, 2: 113-117)に開示された手法によって作成されるものを含み得る。細胞は、インビトロまたはインビボ(すなわち、生体内)であってもよい。例示的な実施形態では、細胞は哺乳動物細胞または哺乳動物細胞株である。特定の実施形態では、細胞はヒト細胞またはヒト細胞株である。他の特定の実施形態では、細胞は植物細胞または植物細胞株である。
【0114】
一部の実施形態では、本開示は、非ヒト哺乳動物細胞が、限定されるものではないが、霊長類、ウシ(bovine)、ヒツジ(ovine)、ブタ(procine)、イヌ(canine)、齧歯類、ウサギ科(Leporidae)、例えば、サル、ウシ(cow)、ヒツジ(sheep)、ブタ(pig)、イヌ(dog)、ウサギ、ラット、またはマウスの細胞を含み得る、本明細書で論じられる方法、組成物、および使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、細胞が非哺乳動物真核細胞、例えば、家禽のトリ(例えば、ニワトリ)、脊椎動物魚(例えば、サケ)または甲殻類[例えば、カキ、アサリ(claim)、ロブスター、エビ]の細胞であり得る、本明細書で論じられる方法、組成物、および使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、非ヒト真核生物細胞が植物細胞である、本明細書で論じられる方法、組成物、および使用を提供する。植物細胞は、単子葉もしくは双子葉植物、または作物もしくは穀物植物、例えば、キャッサバ、トウモロコシ、モロコシ、ダイズ、コムギ、カラスムギ、もしくはイネの植物細胞であってもよい。植物細胞はまた、藻類、樹木または生産植物、果物または野菜(例えば、樹木、例えば柑橘樹、例えば、オレンジ、グレープフルーツまたはレモン樹;モモまたはネクタリン樹;リンゴまたは西洋ナシ樹;アーモンドまたはクルミまたはピスタチオ樹などの堅果樹;ナス科植物;アブラナ属の植物;アキノノゲシ属の植物;ホウレンソウ属の植物;トウガラシ属の植物;ワタ、タバコ、アスパラガス、ニンジン、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、トマト、ナス、コショウ、レタス、ホウレンソウ、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ブドウ、コーヒー、ココアなど)の植物細胞であってもよい。
【0115】
ある特定の実施形態では、真核細胞は、非ヒト動物(細胞)、例えば、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、有蹄類、齧歯類(好ましくはマウスまたはラット)、ウサギ、イヌ(canine)、イヌ(dog)、ウシ(cow)、ウシ(bovine)、ヒツジ(sheep)、ヒツジ(ovine)、ヤギ、ブタ、鳥、家禽、ニワトリ、魚、昆虫、または節足動物、好ましくは哺乳動物、例えば齧歯類、特にマウス(の細胞または細胞集団)である。一部の実施形態では、生物また対象または細胞は、節足動物、例えば、昆虫、または線虫(に由来する細胞または細胞集団)であってもよい。本開示の一部の方法では、生物また対象または細胞は植物(細胞)である。一部の実施形態では、生物また対象または細胞は、微細藻類を含む藻類、または菌類である(または由来する)。当業者は、本明細書で言及される方法により非ヒト真核生物に移植または導入され得る真核細胞は、好ましくは、それらが移植される真核生物と同じ種に由来するかまたは起源を持つことを理解するであろう。例えば、マウス細胞はマウスに移植され得る。ある特定の実施形態では、真核細胞は免疫不全真核生物、すなわち、免疫システムが部分的にまたは完全に停止している真核生物である。例えば、免疫不全マウスが、本明細書に記載の方法、組成物、および使用に関与してもよい。免疫不全マウスの例には、ヌードマウス、RAG-/-マウス、SCID(重症複合免疫不全症)マウス、SCIDベージュマウス、NOD(非肥満糖尿病)SCIDマウス、NOGまたはNSGマウスなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
適切な哺乳動物細胞または細胞株の非限定的な例には、ヒト胎児性腎臓細胞(HEK293、HEK293T);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);ヒトU2-OS骨肉腫細胞、ヒトA549細胞、ヒトA-431細胞、およびヒトK562細胞;チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞;マウス骨髄腫NS0細胞、マウス胚性線維芽細胞3T3細胞(NIH3T3)、マウスBリンパ腫A20細胞;マウスメラノーマB16細胞;マウス筋芽細胞C2C12細胞;マウス骨髄腫SP2/0細胞;マウス胚性間葉系C3H-10T1/2細胞;マウス癌腫CT26細胞、マウス前立腺DuCuP細胞;マウス乳房EMT6細胞;マウス肝細胞癌Hepa1c1c7細胞;マウス骨髄腫J5582細胞;マウス上皮MTD-1A細胞;マウス心筋MyEnd細胞;マウス腎臓RenCa細胞;マウス膵臓RIN-5F細胞;マウスメラノーマX64細胞;マウスリンパ腫YAC-1細胞;ラット神経膠芽腫9L細胞;ラットBリンパ腫RBL細胞;ラット神経芽細胞腫B35細胞;ラット肝細胞癌細胞(HTC);バッファローラット肝臓BRL3A細胞;イヌ腎臓細胞(MDCK);イヌ乳腺(CMT)細胞;ラット骨肉腫D17細胞;ラット単球/マクロファージDH82細胞;サル腎臓SV-40形質転換線維芽細胞(COS7)細胞;サル腎臓CVI-76細胞;アフリカミドリザル腎臓(VERO-76)細胞が含まれる。適切な細胞株のさらなる他の非限定的な例には、C8161、CCRF-CEM、MOLT、mIMCD-3、NHDF、HeLa-S3、Huh1、Huh4、Huh7、HUVEC、HASMC、HEKn、HEKa、MiaPaCell、Panc1、PC-3、TF1、CTLL-2、C1R、Rat6、CV1、RPTE、A10、T24、J82、A375、ARH-77、Calu1、SW480、SW620、SKOV3、SK-UT、CaCo2、P388D1、SEM-K2、WEHI-231、HB56、TIB55、Jurkat、J45.01、LRMB、Bcl-1、BC-3、IC21、DLD2、Raw264.7、NRK、NRK-52E、MRC5、MEF、Hep G2、HeLa B、HeLa T4、COS、COS-1、COS-6、COS-M6A、BS-C-1サル腎臓上皮細胞、BALB/3T3マウス胚線維芽細胞、3T3 Swiss、3T3-L1、132-d5ヒト胎児線維芽細胞;10.1マウス線維芽細胞、293-T、3T3、721、9L、A2780、A2780ADR、A2780cis、A172、A20、A253、A431、A-549、ALC、B16、B35、BCP-1細胞、BEAS-2B、bEnd.3、BHK-21、BR 293、BxPC3、C3H-10T1/2、C6/36、Cal-27、CHO、CHO-7、CHO-IR、CHO-K1、CHO-K2、CHO-T、CHO Dhfr-/-、COR-L23、COR-L23/CPR、COR-L23/5010、COR-L23/R23、COS-7、COV-434、CML T1、CMT、CT26、D17、DH82、DU145、DuCaP、EL4、EM2、EM3、EMT6/AR1、EMT6/AR10.0、FM3、H1299、H69、HB54、HB55、HCA2、HEK-293、HeLa、Hepa1c1c7、HL-60、HMEC、HT-29、Jurkat、JY細胞、K562細胞、Ku812、KCL22、KG1、KYO1、LNCap、Ma-Mel 1-48、MC-38、MCF-7、MCF-10A、MDA-MB-231、MDA-MB-468、MDA-MB-435、MDCK II、MDCK II、MOR/0.2R、MONO-MAC 6、MTD-1A、MyEnd、NCI-H69/CPR、NCI-H69/LX10、NCI-H69/LX20、NCI-H69/LX4、NIH-3T3、NALM-1、NW-145、OPCN/OPCT細胞株、Peer、PNT-1A/PNT 2、RenCa、RIN-5F、RMA/RMAS、Saos-2細胞、Sf-9、SkBr3、T2、T-47D、T84、THP1細胞株、U373、U87、U937、VCaP、Vero細胞、WM39、WT-49、X63、YAC-1、YAR、およびそれらのトランスジェニック種が含まれるが、これらに限定されない。哺乳動物細胞株の広範なリストは、アメリカンタイプカルチャーコレクションカタログ(ATCC、Manassas、VA)に見出すことができる。
【0117】
用途
本明細書に開示される方法、組成物、使用、および/またはキットは、様々な治療的、診断的、工業的、および研究的用途において使用することができる。一部の実施形態では、本開示は、遺伝子の機能をモデル化および/もしくは研究する、目的の遺伝子状態もしくはエピジェネティック状態を研究する、または様々な疾患もしくは障害に関与する生化学的経路を研究するために、細胞、動物、または植物における目的の任意の染色体配列を修飾するのに使用することができる。例えば、疾患または障害をモデル化するトランスジェニック生物が作出されてもよく、疾患または障害と関連する1つまたは複数の核酸配列の発現が変更される。疾患モデルは、生物における突然変異の影響を研究し、疾患の発生および/または進行を研究し、疾患に対する薬学的に活性な化合物の効果を研究し、ならびに/または可能性のある遺伝子治療戦略の有効性を評価するのに使用することができる。
【0118】
他の実施形態では、方法、組成物、使用、および/またはキットは、特定の生物学的プロセスに関与する遺伝子の機能を研究し、遺伝子発現における任意の変化が生物学的プロセスにどのように影響し得るかを研究するために、または細胞表現型と組み合わせたゲノム遺伝子座の飽和もしくはディープスキャニング突然変異誘発(saturating or deep scanning mutagenesis)を行うために使用され得る、効率的で費用対効果の高い機能的ゲノムスクリーニングを行うのに使用することができる。飽和またはディープスキャニング突然変異誘発は、例えば、遺伝子発現、薬物耐性、および疾患の好転に必要な機能的要素の重要な最小限の特徴および個別の脆弱性を決定するのに使用することができる。
【0119】
さらなる実施形態では、本明細書に開示される方法、組成物、使用、および/またはキットは、疾患もしくは障害の存在を確立するための診断検査、および/または処置選択肢を決定する上での使用に使用することができる。適切な診断検査の例には、がん細胞における特異的突然変異(例えば、EGFR、HER2などにおける特異的突然変異)の検出、特定の疾患と関連する特異的突然変異(例えば、トリヌクレオチド反復、鎌状赤血球症と関連するβグロビンの突然変異、特異的SNPなど)の検出、肝炎の検出、ウイルス(例えば、ジカ)の検出などが含まれる。
【0120】
追加の実施形態では、本明細書に開示される方法、組成物、使用、および/またはキットは、特定の疾患または障害と関連する遺伝子突然変異を修正する、例えば、鎌状赤血球症もしくはサラセミアと関連するグロビン遺伝子突然変異を修正するか、重症複合免疫不全症(SCID)と関連するアデノシンデアミナーゼ遺伝子の突然変異を修正するか、ハンチントン病の病因遺伝子であるHTTの発現を低減するか、または網膜色素変性症の処置のためにロドプシン遺伝子の突然変異を修正するのに使用することができる。そのような修飾は、エクスビボ(ex vivo)で細胞でなされ得る。
【0121】
さらなる他の実施形態では、本明細書に開示される方法、組成物、使用、および/またはキットは、形質が改善した、または環境ストレスに対する耐性が向上した作物を生成するのに使用することができる。本開示は、形質が改善した家畜、または生産動物を精製するのに使用することもできる。例えば、ブタは、特に再生医学または異種移植における生物医学モデルとして魅力的なものにする多くの特徴を有する。
【0122】
キット
本開示のさらなる態様は、本明細書に記載された方法および使用において使用する1つまたは複数の成分を含むキットを提供する。
【0123】
キットは、例えば、プログラム可能なDNA修飾タンパク質、ガイドRNA、トランスフェクション試薬、細胞増殖培地、選択培地、転写試薬、核酸精製試薬、タンパク質精製試薬、緩衝液、溶液などを含むことができる。1つの特定の実施形態では、キットは、Casタンパク質およびガイドRNA(成分は別々に提供されてもよく、またはリボ核タンパク質として一緒に複合体化されてもよい)ならびに本明細書に記載のポリアニオン性ポリマー(例えば、デキストラン硫酸)を含む要素を含む。キットは、例えば、細胞、トランスフェクション試薬(例えば、エレクトロポレーション溶液またはその成分)、細胞増殖培地、選択培地、転写試薬、核酸精製試薬、タンパク質精製試薬、緩衝液、溶液などをさらにまたはあるいは含むことができる。要素は、個々にまたは組み合わせて提供されてもよく、バイアル、ボトル、またはチューブなどの任意の適切な容器で提供されてもよい。
【0124】
一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載された要素のうちの1つまたは複数を利用する方法において使用する1つまたは複数の試薬を含む。試薬は、任意の適切な容器で提供されてもよい。例えば、キットは、1つまたは複数の反応、再構成、安定化、希釈、および/または貯蔵緩衝液または溶液を提供してもよい。試薬は、特にアッセイにおいて使用可能な形態、または使用前に1つもしくは複数の他の成分の添加を必要とする形態(例えば、濃縮または凍結乾燥形態)で提供され得る。緩衝液または溶液は、限定されるものではないが、炭酸ナトリウム緩衝液、重炭酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸緩衝液、Tris緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、およびそれらの組合せを含む、バイオテクノロジー用途で一般的に使用される任意の緩衝液または溶液であってもよい。一部の実施形態では、緩衝液はアルカリ性である。一部の実施形態では、緩衝液は約7~約10のpHを有する。一部の実施形態では、キットは、ガイド配列および調節エレメントを作動可能に連結するようにベクターに挿入するガイド配列に対応する1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、キットは、相同組換え鋳型ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載されたベクターのうちの1つもしくは複数、ならびに/またはポリヌクレオチドのうちの1つもしくは複数を含む。キットは、有利には、本開示の方法および/またはシステムのすべての要素の提供を可能にし得る。
【0125】
本明細書に提供されるキットは、一般に、以下に詳述される方法を実行するための説明書を含む。キットに含まれる説明書は包装材料に添付されてもよく、または添付文書として含まれてもよい。説明書は典型的には書かれたまたは印刷された資料であるが、そのようなものに限定されない。そのような説明書を保存し、それらをエンドユーザーに伝えることができる任意の媒体が、本開示によって企図される。そのような媒体には、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ、ストレージドライブ)、光学媒体(例えば、CD ROM)などが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、用語「説明書」は、説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得る。キットは、1つまたは複数の言語、例えば1つを超える言語で説明書を含むこともできる。
【0126】
1つの態様では、本開示は、上記の方法および組成物において開示された要素のうちのいずれか1つまたは複数を含有するキットを提供する。1つの特定の実施形態では、キットは、ポリアニオン性ポリマーもしくはその塩、またはポリアニオン性ポリマーもしくはその塩の組合せを含む溶液、および1つまたは複数の緩衝液を含む。別の特定の実施形態では、キットは、Casタンパク質(例えば、Cas9もしくはCas12などの組換えCasタンパク質、または上記された別のCasタンパク質)、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩(例えば、デキストラン硫酸ナトリウム塩および/または上記された別の硫酸化多糖)を含有する溶液、再構成溶液、および希釈溶液のうちの1つまたは複数を含む。適切および例示的な再構成溶液は、例えば、50%グリセロールを含むものである。適切なおよび例示的な希釈溶液は、例えば、20mM HEPES緩衝液(pH7.5)および20mM NaClを含むものである。1つの例示的なポリアニオン性ポリマー溶液は、2mM HEPES緩衝液(pH7.5)および20mM NaClに1μg/μLデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む。
【0127】
定義
以下の定義および方法は、本開示をさらに良く定義し、本開示を実施する上で当業者を導くために提供される。特に断りのない限り、用語は当業者による従来の用法に従って理解されるべきである。
【0128】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語および化学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本開示で使用される用語のうちの多くの一般的定義を当業者に提供する:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd Ed. 1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988);The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991);およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、特に指定されない限りそれらに帰する意味を有する。
【0129】
本開示またはその好ましい実施形態を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、および「前記(said)」は、要素のうち1つまたは複数があることを意味すると意図される。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」は、包括的であり、列挙された要素以外の追加の要素があることを意味すると意図される。
【0130】
用語「約」は、例えば、数値xと関連して使用される場合、x±5%を意味する。
【0131】
本明細書で使用される場合、用語「相補的な」または「相補性」とは、特異的水素結合を通じた塩基対形成による二本鎖核酸の結合を指す。塩基対形成は、標準的なワトソン-クリック塩基対形成であってもよい(例えば、5’-A G T C-3’は相補的配列3’-T C A G-5’と対を形成する)。塩基対形成は、フーグスティーン型または逆フーグスティーン型水素結合でもあってもよい。相補性は、典型的には二重領域に関して測定され、故に、例えばオーバーハングを除外する。二重領域の2本鎖間の相補性は部分的であってもよく、塩基の一部(例えば、70%)のみが相補的な場合、パーセンテージ(例えば、70%)として表され得る。相補的でない塩基は「ミスマッチ」である。相補性はまた、二重領域の塩基すべてが相補的である場合、完全(すなわち、100%)であり得る。
【0132】
本明細書で使用される場合、用語「CRISPRシステム」とは、CRISPRタンパク質(すなわち、ヌクレアーゼ、ニッカーゼ、または触媒的に死んだタンパク質)およびガイドRNAを含む複合体を指す。
【0133】
用語「内因性」または「内因性配列」は、本明細書で使用される場合、細胞にとって天然の染色体配列を指す。
【0134】
用語「標的配列」、「標的染色体配列」、および「標的部位」は互換的に使用されて、プログラム可能なDNA修飾タンパク質が標的にする染色体DNA中の特定の配列、およびプログラム可能なDNA修飾タンパク質がDNAまたはDNAと結合するタンパク質を修飾する部位を指す。
【0135】
本明細書で使用される場合、用語「外因性」または「外因性配列」とは、細胞にとって天然ではない配列、または細胞のゲノムにおけるその天然の位置が、異なる染色体位置にある染色体配列を指す。
【0136】
「遺伝子」とは本明細書で使用される場合、遺伝子産物をコードするDNA領域(エクソンおよびイントロンを含む)、および遺伝子産物の産生を制御するすべてのDNA領域(そのような制御配列が、コード配列および/または転写された配列に隣接しているか否かにかかわらず)を指す。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位などの転写制御配列、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス結合部位、ならびに遺伝子座制御領域が含まれるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0137】
用語「異種の」とは、目的の細胞にとって内因性または天然の実体を指す。例えば、異種タンパク質とは、外因的に導入された核酸配列などの外因性供給源に由来するか、または元々由来するタンパク質を指す。一部の例では、異種タンパク質は目的の細胞によって通常は産生されない。
【0138】
用語「ニッカーゼ」とは、二本鎖核酸配列の一方の鎖を切断する(すなわち、二本鎖配列にニックを入れる)酵素を指す。例えば、二本鎖切断活性を有するヌクレアーゼが、ニッカーゼとして機能し、二本鎖配列の一方の鎖のみを切断するように突然変異および/または欠失によって修飾され得る。
【0139】
用語「ヌクレアーゼ」とは本明細書で使用される場合、二本鎖核酸配列の両方の鎖を切断する酵素を指す。
【0140】
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」とは、直鎖または環状コンフォメーションの、および一本鎖または二本鎖形態どちらかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関する限定として解釈されるべきではない。該用語は、天然のヌクレオチドの既知の類似体、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分で修飾されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格)を包含することができる。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対形成特異性を有する;すなわち、Aの類似体はTと塩基対を形成することになる。
【0141】
用語「ヌクレオチド」とは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを指す。ヌクレオチドは、標準的なヌクレオチド(すなわち、アデノシン、グアノシン、シトシン、チミジン、およびウリジン)、ヌクレオチド異性体、またはヌクレオチド類似体であってもよい。ヌクレオチド類似体とは、修飾されたプリンもしくはピリミジン塩基、または修飾されたリボース部分を有するヌクレオチを指す。ヌクレオチド類似体は、天然に存在するヌクレオチド(例えば、イノシン、シュードウリジンなど)または天然に存在しないヌクレオチドであってもよい。ヌクレオチドの糖または塩基部分における修飾の非限定的な例には、アセチル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、ヒドロキシル基、メチル基、ホスホリル基、およびチオール基の付加(または除去)、ならびに塩基の炭素および窒素原子の他の原子(例えば、7-デアザプリン)との置換が含まれる。ヌクレオチド類似体には、ジデオキシヌクレオチド、2’-O-メチルヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、およびモルホリノも含まれる。
【0142】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は互換的に使用されて、アミノ酸残基のポリマーを指す。
【0143】
本明細書で使用される場合、用語「プログラム可能なDNA修飾タンパク質」とは、染色体DNA中の特定の標的配列に結合するように改変され、該標的配列においてまたはその近くでDNAまたはDNAと結合するタンパク質を修飾するタンパク質を指す。
【0144】
用語「配列同一性」は本明細書で使用される場合、実質的に等しい長さの2つの配列間の同一性の程度の定量的尺度を示す。核酸であれアミノ酸配列であれ、2つの配列の同一性パーセントは、2つの整列された配列間の完全一致の数を短いほうの配列の長さで割り、100をかけたものである。核酸配列のおよそのアライメントは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)の局所相同性アルゴリズムによって提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff, Atlas of Protein Sequences and Structure, M. 0. Dayhoff ed., 5 suppl. 3:353-358, National Biomedical Research Foundation, Washington, D.c., USAによって開発されたスコアリングマトリックスを使用してアミノ酸配列に適用され得、Gribskov, Nucl. Acids Res. 14(6):6745-6763 (1986)によって正規化され得る。配列の同一性パーセントを決定するためのこのアルゴリズムの例示的な実装は、「BestFit」ユーティリティーアプリケーションでGenetics Computerグループ(マジソン、ウィスコンシン州)によって提供されている。配列間の同一性または類似性パーセントを算出するための他の適切なプログラムは、一般に当技術分野で公知であり、例えば、別のアライメントプログラムは、デフォルトパラメーターを用いて使用されるBLASTである。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメーターを使用して使用することができる:遺伝コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予想=10;マトリックス=BLOSUM62;説明=50配列s;ソート順=高スコア;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swissタンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、GenBankWebサイトに見出すことができる。一般に、置換は保存的アミノ酸置換であり:グループ1:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;グループ2:セリン、システイン、スレオニン、およびメチオニン;グループ3:プロリン;グループ4:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;グループ5:アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンのメンバー内での交換に限定される。
【0145】
用語「標的配列」、「標的染色体配列」、および「標的部位」は互換的に使用されて、プログラム可能なDNA修飾タンパク質が標的にする染色体DNA中の特定の配列、およびプログラム可能なDNA修飾タンパク質がDNAまたはDNAと結合するタンパク質を修飾する部位を指す。
【0146】
核酸およびアミノ酸配列同一性を決定するための手法は、当技術分野で公知である。典型的には、そのような手法は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、およびこれらの配列を第2のヌクレオチドもしくはアミノ酸配列と比較することを含む。ゲノム配列もこのようにして決定および比較することができる。
【0147】
一般に、同一性とは、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列それぞれの完全なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸対応を指す。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの同一性パーセントを決定することによって比較することができる。
【0148】
本開示の範囲を逸脱することなく上記の方法および組成物に様々な変更が行われ得るため、上記の記載および以下に示される例に含有されるすべての事項は例示的で、限定的な意味ではないと解釈されるものとする。
【0149】
本発明を詳細に記載してきたため、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を逸脱することなく変更および変形が可能であることは明らかであろう。さらに、本開示におけるすべての例は、非限定的な例として提供されることが理解されるべきである。
【実施例
【0150】
以下の非限定的な例は、本発明をさらに例示するために提供される。以下の例で開示される手法は、本発明を実施する上で十分に機能することを本発明者らが見出したアプローチであり、故に本発明の実施様式の例をなすとみなされ得ることが当業者に理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の実施形態では多くの変更を行うことができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似の結果を依然として得ることができることを理解するべきである。
【0151】
実施例1:ヒト細胞でのSpCas9エンドヌクレアーゼゲノム修飾効率に関するデキストラン硫酸用量依存的増強
SpCas9タンパク質(製品番号:CAS9PROT)およびヒトRelA遺伝子座を標的にする5’-GAGGGGGAACAGUUCUGAAA-3’(配列番号33)のスペーサー配列を含む合成シングルガイドRNA(sgRNA)をMilliporeSigmaから購入した。
【0152】
【表1】
【0153】
500kDaを超える平均分子量を有するデキストラン硫酸ナトリウム塩(製品番号:D8906)もMilliporeSigmaから購入した。デキストラン硫酸溶液は、化学物質を50μg/μLで水に溶解して調製し、0.22μmフィルターを通して濾過により滅菌した。ストック溶液を水で希釈して作業溶液を調製した。
【0154】
リボ核タンパク質(RNP)複合体は、緩衝液(20mM HEPES、100mM KCl、0.5mM DTT、0.1mM EDTA、pH7.5)、100pmol sgRNA、およびCas9タンパク質5μgを1.5mL微小遠心管に10μL総反応容量で添加して調製した。sgRNA対Cas9タンパク質モル比は約3:1である。複合体を室温で15分間インキュベートし、次いでトランスフェクションまで氷上で維持した。ヒトK562細胞は、トランスフェクションの前日に1mLあたり0.25×10細胞で播種し、トランスフェクションの時点で1mLあたり約0.5×10細胞であった。細胞をハンクス平衡塩溶液で2回洗浄し、次いでNucleofector溶液V(Lonza)に100μLあたり約0.35×10細胞で再懸濁した。ヌクレオフェクションは、最初に細胞100μLをデキストラン硫酸溶液1μLと混合し、次いで、気泡を導入することなくピペットを上下させ穏やかに混和してRNP複合体と混合した後、AmaxaプログラムT-016によるエレクトロポレーション用キュベットに移して行った。細胞を、1ウェルあたり2mL余熱培地を含有する6ウェルプレートに直ちに移し、37℃および5% COで3日間増殖させた後、ゲノム修飾アッセイのために回収した。
【0155】
トランスフェクト細胞からのゲノムDNA抽出物を、QuickExtract溶液を使用して調製した。標的ゲノム領域は、以下のサイクル条件:98℃/2分;98℃/15秒、62℃/30秒、および72℃/45秒、34サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してNGSプライマーでPCR増幅した。
【0156】
【表2】
【0157】
次いで、最初のPCR産物を、以下のサイクル条件:95℃/3分;95℃/30秒、55℃/30秒、および72℃/30秒、8サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用JumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してIlluminaインデックスプライマーで再増幅した。インデックス付与PCR産物を、Select-a-Size DNA Clean & Concentratorキット(Zymo)を用いて精製し、PicoGreen(ThermoFisher)によって定量化した。PCR産物を次いで正規化し、NGSライブラリーを作成するためにプールした。NGSは、Illumina MiSeq機器および2×300bpキットを使用して行った。ゲノム編集頻度について試料ごとにFASTQファイルを解析した。
【0158】
結果を図1に示す。結果は、細胞をデキストラン硫酸溶液で処理するとヌクレアーゼ活性が増強され、デキストラン硫酸の用量が細胞100μLあたり0.25μg~約1μgに増加するとき、増強の大きさが増加することを示している。
【0159】
実施例2:デキストラン硫酸はヒト細胞の種々の内因性標的でSpCas9ヌクレアーゼ編集効率を増強する
6つのヒトゲノム部位を標的にするSpCas9タンパク質(製品番号:CAS9PROT)および合成sgRNAを、MilliporeSigmaから購入した。各ゲノム部位を3回の生物学的反復で試験した。これらのsgRNAのスペーサー配列を表1にリストする。デキストラン硫酸ナトリウム塩溶液を実施例1に記載のように調製し、水で希釈して作業溶液を1μg/μLで調製した。RNP複合体は、実施例1に記載のようにSpCas9タンパク質5μgおよび100pmol sgRNAを使用して調製した。ヒトk562細胞は、トランスフェクションの前日に1mLあたり0.25×10細胞で播種し、トランスフェクションの時点で1mLあたり約0.5×10細胞であった。細胞をハンクス平衡塩溶液で2回洗浄し、次いで、100μLあたり1μg/μLのデキストラン硫酸1μL、または水1μL(対照)を補充したNucleofector溶液Vに100μLあたり約0.35×10細胞で再懸濁した。ヌクレオフェクションは、細胞100μLをRNP複合体に移し、気泡を導入することなくピペットを上下させ穏やかに混和して直ちに混合した後、AmaxaプログラムT-016によるエレクトロポレーション用キュベットに移して行った。細胞を、1ウェルあたり2mL余熱培地を含有する6ウェルプレートに直ちに移し、37℃および5% COで3日間増殖させた後、ゲノム修飾アッセイのために回収した。
【0160】
トランスフェクト細胞からのゲノムDNA抽出物を、QuickExtract溶液を使用して調製した。CAR19、CCR5、CHI3L1、POR23、およびVEGFAに関して、標的ゲノム領域は、以下のサイクル条件:98℃/2分;98℃/15秒、62℃/30秒、および72℃/45秒、34サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してNGSプライマーでPCR増幅した。HEKSite4に関して、標的ゲノム領域は、以下のサイクル条件:95℃/3分;98℃/20秒、68℃/30秒、および72℃/45秒、34サイクル;72℃/5分で、KAPA HiFi HotStart ReadyMix PCRキット(Roche)を使用してNGSプライマーでPCR増幅した。標的部位およびPAMを表3にリストし、NGSプライマーを表4にリストする。次いで、最初のPCR産物を、以下のサイクル条件:95℃/3分;95℃/30秒、55℃/30秒、および72℃/30秒、8サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してIlluminaインデックスプライマーで再増幅した。インデックス付与PCR産物を、Select-a-Size DNA Clean & Concentratorキット(Zymo)を用いて精製し、PicoGreen(ThermoFisher)によって定量化した。PCR産物を次いで正規化し、NGSライブラリーを作成するためにプールした。NGSは、Illumina MiSeq機器および2×300bpキットを使用して行った。ゲノム編集頻度について試料ごとにFASTQファイルを解析した。
【0161】
【表3】
【0162】
【表4-1】
【表4-2】
【0163】
結果を図2に示す。結果は、デキストラン硫酸処理が、試験したあらゆる標的部位でSpCas9の編集効率を有意に上げたことを示している。対照と比較して、エンハンサーによる改善の大きさは、標的部位に応じて約2倍~3倍に及んだ。
【0164】
実施例3:デキストラン硫酸は種々の内因性部位でシトシン塩基エディターのCからTへの編集効率を高める
シトシン塩基エディターは、ヒトAPOBEC3AをSpCas9 D10Aニッカーゼのアミノ酸末端に融合させて構築した。塩基エディターの組換えタンパク質は、大腸菌(E. coli)から90%を超える均一性まで精製した。ヒト細胞の6つの内因性部位を標的にする合成sgRNAをMilliporeSigmaから購入した。各部位を3回の生物学的反復で試験した。これらのsgRNAのスペーサー配列を表5にリストする。デキストラン硫酸ナトリウム塩溶液を実施例1に記載のように調製し、水で希釈して作業溶液を1μg/μLで調製した。リボ核タンパク質(RNP)複合体は、緩衝液(20mM HEPES、100mM KCl、0.5mM DTT、0.1mM EDTA、pH7.5)、200pmol sgRNA、およびシトシン塩基エディタータンパク質15μgを1.5mL微小遠心管に10μL総反応容量で添加して調製した。sgRNA対シトシン塩基エディタータンパク質モル比は約3:1である。複合体を室温で15分間インキュベートし、次いでトランスフェクションまで氷上で維持した。ヒトHEK293細胞は、トランスフェクションの2日前に約20%培養密度で播種し、トランスフェクションの時点で約80%培養密度であった。細胞をトリプシン溶液で剥離し、ハンクス平衡塩溶液で2回洗浄し、次いで、100μLあたり1μg/μLのデキストラン硫酸1μL、または水1μL(対照)を補充したNucleofector溶液Vに100μLあたり約0.3×10細胞で再懸濁した。ヌクレオフェクションは、細胞100μLをRNP複合体に移し、気泡を導入することなくピペットを上下させ穏やかに混和して直ちに混合した後、AmaxaプログラムQ-001によるエレクトロポレーション用キュベットに移して行った。細胞を、1ウェルあたり2mL余熱培地を含有する6ウェルプレートに直ちに移し、37℃および5% COで3日間増殖させた後、ゲノム修飾アッセイのために回収した。
【0165】
トランスフェクト細胞からのゲノムDNA抽出物を、QuickExtract溶液を使用して調製した。標的ゲノム領域は、以下のサイクル条件:98℃/2分;98℃/15秒、62℃/30秒、および72℃/45秒、34サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してNGSプライマーでPCR増幅した。NGSプライマーを表5にリストする。次いで、最初のPCR産物を、以下のサイクル条件:95℃/3分;95℃/30秒、55℃/30秒、および72℃/30秒、8サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してIlluminaインデックスプライマーで再増幅した。インデックス付与PCR産物を、Select-a-Size DNA Clean & Concentratorキット(Zymo)を用いて精製し、PicoGreen(ThermoFisher)によって定量化した。PCR産物を次いで正規化し、NGSライブラリーを作成するためにプールした。NGSは、Illumina MiSeq機器および2×300bpキットを使用して行った。CからTへの変換頻度について試料ごとにFASTQファイルを解析した。
【0166】
【表5】
【0167】
【表6-1】
【表6-2】
【0168】
結果を図3A~3Fに示す。結果は、対照と比較してデキストラン硫酸処理が、シトシン塩基エディターの編集ウィンドウ内のあらゆるCで、および試験したあらゆる標的部位でCからTへの変換効率を上げたことを示している。改善は、プロトスペーサーおよび標的部位における変換されたCの位置に応じて約2倍~3倍に及んだ。
【0169】
実施例4:Cas9ヌクレアーゼ活性に関するペントサンポリ硫酸増強
高忠実度SpCas9タンパク質(カタログ番号CAS9 Plus)、およびヒトHEKSite4遺伝子座を標的にする5’-GGCACUGCGGCUGGAGGUGG-3’のスペーサー配列(配列番号46)を含む合成シングルガイドRNA(sgRNA)をMilliporeSigmaから購入した。(CNa10の式を有するペントサンポリ硫酸ナトリウム塩をSelleckchemから購入した(カタログ番号S3500)。ペントサンポリ硫酸溶液は、該化学物質を50mg/mlで水に溶解して調製した。ポリアニオン性ポリマーの分子構造単位は、次の通りである:
【化1】
【0170】
リボ核タンパク質(RNP)複合体は、緩衝液(20mM HEPES、100mM KCl、0.5mM DTT、0.1mM EDTA、pH7.5)、100pmol sgRNA、およびCas9タンパク質5μgを1.5mL微小遠心管に10μL総反応容量で添加して調製した。sgRNA対Cas9タンパク質モル比は約3:1である。複合体を室温で15分間インキュベートし、次いでトランスフェクションまで氷上で維持した。ヒト皮膚線維芽細胞をMilliporeSigmaから購入し(製品番号:106-05A)、トランスフェクションの2日前に約20%培養密度で播種し、トランスフェクションの時点で約80%培養密度であった。ヒトHEK293細胞をATCCから購入し(カタログ番号CRL 1573)、トランスフェクションの2日前に約20%培養密度で播種し、トランスフェクションの時点で約80%培養密度であった。細胞をトリプシン処理により剥離し、ハンクス平衡塩溶液で2回洗浄し、次いで、線維芽細胞についてはNucleofector溶液 VPD-1001(Lonza)に、またはHEK293についてはNucleofector溶液V(Lonza)に100μLあたり約0.25×10細胞で再懸濁した。Nucleofector溶液は両方とも、細胞再懸濁前にペントサンポリ硫酸溶液を種々の用量で補充した。ヌクレオフェクションは、気泡を導入することなくピペットを上下させ穏やかに混和して細胞100μLをRNP複合体と混合した後、エレクトロポレーション用キュベットに移して行った。線維芽細胞およびHEK293を、それぞれAmaxaプログラムU-023およびT-016でトランスフェクトした。細胞を、1ウェルあたり2mL余熱培地を含有する6ウェルプレートに直ちに移し、37℃および5% COで3日間増殖させた後、ゲノム修飾アッセイのために回収した。線維芽細胞トランスフェクションを2回行った。
【0171】
トランスフェクト細胞からのゲノムDNA抽出物を、QuickExtract溶液を使用して調製した。標的ゲノム領域は、以下のサイクル条件:98℃/2分;98℃/15秒、62℃/30秒、および72℃/45秒、34サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してNGSプライマーでPCR増幅した。
【0172】
【表7】
【0173】
次いで、最初のPCR産物を、以下のサイクル条件:95℃/3分;95℃/30秒、55℃/30秒、および72℃/30秒、8サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してIlluminaインデックスプライマーで再増幅した。インデックス付与PCR産物を、Select-a-Size DNA Clean & Concentratorキット(Zymo)を用いて精製し、PicoGreen(ThermoFisher)によって定量化した。PCR産物を次いで正規化し、NGSライブラリーを作成するためにプールした。NGSは、Illumina MiSeq機器および2×300bpキットを使用して行った。ゲノム編集頻度について試料ごとにFASTQファイルを解析した。
【0174】
結果を図4Aおよび図4Bに示す。結果は、細胞を適当な用量のペントサンポリ硫酸で処理した場合、Cas9ヌクレアーゼ活性が増強されことを示している。
【0175】
実施例5:Cas9ヌクレアーゼ活性に関するヘパラン硫酸増強
高忠実度SpCas9タンパク質(カタログ番号CAS9 Plus)、およびヒトHEKSite4遺伝子座を標的にする5’-GGCACUGCGGCUGGAGGUGG-3’のスペーサー配列(配列番号46)を含む合成シングルガイドRNA(sgRNA)をMilliporeSigmaから購入した。ヘパラン硫酸を、Selleckchemから購入した(カタログ番号S5992)。ヘパラン硫酸溶液は、該化学物質を50mg/mlで水に溶解して調製した。ポリアニオン性ポリマーの分子構造単位は、次の通りである:
【化2】
【0176】
リボ核タンパク質(RNP)複合体は、緩衝液(20mM HEPES、100mM KCl、0.5mM DTT、0.1mM EDTA、pH7.5)、100pmol sgRNA、およびCas9タンパク質5μgを1.5mL微小遠心管に10μL総反応容量で添加して調製した。sgRNA対Cas9タンパク質モル比は約3:1である。複合体を室温で15分間インキュベートし、次いでトランスフェクションまで氷上で維持した。ヒト皮膚線維芽細胞をMilliporeSigmaから購入し(製品番号:106-05A)、トランスフェクションの2日前に約20%培養密度で播種し、トランスフェクションの時点で約80%培養密度であった。ヒトHEK293細胞をATCCから購入し(カタログ番号CRL 1573)、トランスフェクションの2日前に約20%培養密度で播種し、トランスフェクションの時点で約80%培養密度であった。細胞をトリプシン処理により剥離し、ハンクス平衡塩溶液で2回洗浄し、次いで、線維芽細胞についてはNucleofector溶液VPD-1001(Lonza)に、またはHEK293についてはNucleofector溶液V(Lonza)に100μLあたり約0.25×10細胞で再懸濁した。Nucleofector溶液は両方とも、細胞再懸濁前にヘパラン硫酸溶液を種々の用量で補充した。ヌクレオフェクションは、気泡を導入することなくピペットを上下させ穏やかに混和して細胞100μLをRNP複合体と混合した後、エレクトロポレーション用キュベットに移して行った。線維芽細胞およびHEK293を、それぞれAmaxaプログラムU-023およびT-016でトランスフェクトした。細胞を、1ウェルあたり2mL余熱培地を含有する6ウェルプレートに直ちに移し、37℃および5% COで3日間増殖させた後、ゲノム修飾アッセイのために回収した。線維芽細胞トランスフェクションを2回行った。
【0177】
トランスフェクト細胞からのゲノムDNA抽出物を、QuickExtract溶液を使用して調製した。標的ゲノム領域は、以下のサイクル条件:98℃/2分;98℃/15秒、62℃/30秒、および72℃/45秒、34サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してNGSプライマーでPCR増幅した。
【0178】
【表8】
【0179】
次いで、最初のPCR産物を、以下のサイクル条件:95℃/3分;95℃/30秒、55℃/30秒、および72℃/30秒、8サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してIlluminaインデックスプライマーで再増幅した。インデックス付与PCR産物を、Select-a-Size DNA Clean & Concentratorキット(Zymo)を用いて精製し、PicoGreen(ThermoFisher)によって定量化した。PCR産物を次いで正規化し、NGSライブラリーを作成するためにプールした。NGSは、Illumina MiSeq機器および2×300bpキットを使用して行った。ゲノム編集頻度について試料ごとにFASTQファイルを解析した。
【0180】
結果を図5Aおよび図5Bに示す。結果は、細胞を適当な用量のヘパラン硫酸で処理した場合、Cas9ヌクレアーゼ活性が増強されたことを示している。
【0181】
実施例6:細胞トランスフェクションによるCas9 RNP編集増強に関する追加の化合物の評価
すべての化合物をMilliporeSigmaから購入し、対照緩衝液(2mM HEPES、pH7.5、20mM NaCl)に溶解させた。各化合物を、表10(Table 1)に記載のように3つの用量で試験した。高忠実度SpCas9タンパク質(カタログ番号CAS9 Plus)、およびヒトHEKSite4遺伝子座を標的にする5’-GGCACUGCGGCUGGAGGUGG-3’のスペーサー配列(配列番号46)を含む合成シングルガイドRNA(sgRNA)をMilliporeSigmaから購入した。リボ核タンパク質(RNP)複合体は、緩衝液(20mM HEPES、pH7.5、20mM NaCl)、100pmol sgRNA、およびCas9タンパク質5μgを1.5mL微小遠心管に10μL総反応容量で添加して調製した。sgRNA対Cas9タンパク質モル比は約3:1である。複合体を室温で15分間インキュベートし、次いでトランスフェクションまで氷上で維持した。
【0182】
ヒトHEK293細胞をATCC(カタログ番号CRL 1573)から購入し、トランスフェクションの2日前に約20%培養密度で播種し、トランスフェクションの時点で約80%培養密度であった。細胞をトリプシン処理により剥離し、ハンクス平衡塩溶液で2回洗浄し、次いで、各化合物2μLを補充したNucleofector溶液V(Lonza)100μLあたり約0.25×10細胞で再懸濁した。各化合物は、細胞再懸濁の前にNucleofector溶液Vと混ぜ合わせた。対照緩衝液(2mM HEPES、pH7.5、20mM NaCl)もトランスフェクション1回あたり2μLで使用した。ヌクレオフェクションは、気泡を導入することなくピペットを上下させ穏やかに混和して細胞100μLをRNP複合体と混合した後、エレクトロポレーション用キュベットに移して行った。細胞を、AmaxaプログラムT-016でトランスフェクトした。細胞を、1ウェルあたり2mL余熱培地を含有する6ウェルプレートに直ちに移し、37℃および5% COで3日間増殖させた後、ゲノム修飾アッセイのために回収した。各トランスフェクション試験を2回行った。
【0183】
トランスフェクト細胞からのゲノムDNA抽出物を、QuickExtract溶液を使用して調製した。標的ゲノム領域は、以下のサイクル条件:98℃/2分;98℃/15秒、62℃/30秒、および72℃/45秒、34サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してNGSプライマーでPCR増幅した。
【0184】
【表9】
【0185】
次いで、最初のPCR産物を、以下のサイクル条件:95℃/3分;95℃/30秒、55℃/30秒、および72℃/30秒、8サイクル;72℃/5分で、定量PCRキット用のJumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(MilliporeSigma)を使用してIlluminaインデックスプライマーで再増幅した。インデックス付与PCR産物を、Select-a-Size DNA Clean & Concentratorキット(Zymo)を用いて精製し、PicoGreen(ThermoFisher)によって定量化した。PCR産物を次いで正規化し、NGSライブラリーを作成するためにプールした。NGSは、Illumina MiSeq機器および2×300bpキットを使用して行った。ゲノム編集頻度について試料ごとにFASTQファイルを解析した。結果を図6に示す。
【0186】
結果は、コンブ(Fucus vesiculosus)由来のフコイダン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ラット尾由来のコラーゲン、κ-カラギーナン、およびラミナリア・ディギタータ(laminaria digitata)由来のラミナリンが、試験した3つの用量の少なくとも1つで対照緩衝液より有意に高いレベルの編集効率をもたらしたことを示している。
【0187】
【表10】
【0188】
実施例7:ヒト初代T細胞におけるCas9ヌクレアーゼ活性に関するデキストラン硫酸増強
ヒト初代T細胞培養。CD8+ ヒト初代T細胞をStemCellから購入した。細胞を、10%ヒトAB血清(Sigma-Aldrich)、1×GlutaMAX(商標)(Gibco)、8ng/mL IL-2(Gibco)、および50μM β-メルカプトエタノール(Sigma)を補充したRPMI(Thermo)で維持した。ヌクレオフェクションの3日前に、細胞をDynabeads(商標)ヒトT-Expander CD3/CD28(Gibco)で刺激した。ヌクレオフェクション後、Dynabeads(商標)の存在下、細胞を製造者のプロトコールに従って培養した。
【0189】
Cas9 RNPアセンブリーおよびヌクレオフェクション。500kDaより大きい平均分子量を有するデキストラン硫酸ナトリウム塩(製品番号:D8906)をMilliporeSigmaから購入した。デキストラン硫酸溶液は、化学物質を1μg/μLで対照緩衝液(2mM HEPES、pH7.5、20mM NaCl)に溶解して調製し、0.22μmフィルターを通して濾過により滅菌した。高忠実度SpCas9タンパク質(カタログ番号CAS9 Plus)、およびヒトPD-1遺伝子座を標的にする5’-TCTGGTTGCTGGGGCTCATG-3’のスペーサー配列(配列番号81)を含む合成シングルガイドRNA(sgRNA)もMilliporeSigmaから購入した。リボ核タンパク質(RNP)複合体は、緩衝液(20mM HEPES、pH7.5、20mM NaCl)、100pmol sgRNA、およびCas9タンパク質5μgを1.5mL微小遠心管に10μL総反応容量で添加して調製した。sgRNA対Cas9タンパク質モル比は約3:1である。複合体を室温で15分間インキュベートし、次いでトランスフェクションまで氷上で維持した。1.5mLエッペンドルフチューブに、Lonza Nucleofector溶液を用いて1,000,000細胞を再懸濁し、次いでデキストラン硫酸の関連用量を添加した後、適当なRNP複合体を添加し、100μLの総容量を得た。4D-Nucleofector中、細胞をAmaxaプログラムDS-120でトランスフェクトした。細胞を、1ウェルあたり2mL余熱培地を含有する6ウェルプレートに直ちに移し、37℃および5% COで3日間増殖させた後、ゲノム修飾アッセイのために回収した。各トランスフェクション試験を2回行った。
【0190】
タグ付きプライマーを使用したPCR。トランスフェクト細胞からのゲノムDNA抽出物を、GenElute Mammalian Genomic DNAキット(Sigma-Aldrich)を使用して調製した。PD1のゲノム切断部位と隣接するプライマーと一緒に、JumpStart(商標)REDTaq(登録商標)ReadyMix(商標)Reaction Mix(Sigma-Aldrich)をPCR増幅に使用した。プライマーを、以下のプライマーを使用して部分的Illuminaアダプター配列でタグ付けした:
【表11】
熱サイクル条件は、95℃で5分間、その後、95℃で30秒間、67.7℃で30秒間アニーリング、および70℃で30秒間伸長を34サイクルの熱変性工程を含んだ。増幅の後に続いて、70℃で10分間の最終伸長、および4℃での冷却を行った。
【0191】
試料インデックス付与。限定サイクルPCRを実行して、増幅PCR産物にインデックスを付与した。50μLの総反応容量は、25μL JumpStart(商標)REDTaq(登録商標)ReadyMix(商標)Reaction Mix(Sigma-Aldrich)、増幅PCR産物5μL、10μL HO、ならびに5μM Nextera XT Index 1(i7)およびIndex 2(i5)オリゴ各5μLを含んだ。熱サイクル条件は、95℃で3分間の最初の熱変性、その後、95℃で30秒間、55℃で30秒間、および72℃で30秒間を8サイクルからなった。最終伸長は72℃で5分間実行し、反応を4℃に冷却した。PCR精製は、AxyPrep(商標)Mag PCRビーズ(Corning)およびインデックス付与試料25μLを0.8:1ビーズ対PCR比で使用して実行した。DNAを25μLの10mM Trisに溶出した。
【0192】
精製インデックス付与PCRの定量化およびライブラリープーリング。PicoGreen蛍光色素(Invitrogen)をインデックス付与試料の定量化に使用した。精製インデックス付与PCRを1×TEで1:100に希釈した。PicoGreenは、製造者のプロトコール(50μL PicoGree+10mL 1×TE)に従って希釈した。等容量の希釈したPicoGreenを希釈したインデックス付与PCR試料に添加し、蛍光プレートリーダーで最終1:1希釈比を得た。試料を475nmで励起し、530nmで読み取った。すべての試料を1×TEで4nMに正規化し、各正規化試料6μLを回収し、プールした。
【0193】
配列決定のためのライブラリー調製。ストック10M NaOHをHOで段階希釈して、ライブラリー調製の日に最終1:100希釈(0.1M NaOH)を得た。DNAを変性させるために、0.1M NaOH5μLおよびプールした4nMライブラリー5μLをエッペンドルフチューブで混ぜ合わせ、RTで5分間インキュベートした。冷Illumina HT1緩衝液990μLを変性DNAに添加し、20pMプール変性ライブラリーを得た。PhiX(20pM)を解凍し、30μLを新鮮なチューブに移した。20pMライブラリー570μLをPhiXに添加し、ライブラリー多様化、クラスター生成の品質管理、配列決定、およびアライメントのための5% PhiXを得た。これを混合し、96℃で2分間熱ショックを与え、次いで直ちに氷上に置いた。300サイクルv2 MiSeq試薬カートリッジを氷水槽で解凍し、反転させて混合した。MiSeq v2フローセルを水およびエタノールでよくすすぎ、キムワイプで乾燥させ、すべての液体が除去され、細胞の表面に塩が検出されないことを確かめた。p1200チップを使用して、解凍した試薬カートリッジのウェル17のホイルに穴を開けた。新しいチップを使用して、PhiX含有ライブラリー600μLをウェル17に添加した。ラン後、ゲノム編集頻度について試料ごとにFASTQファイルを解析した。結果を図7に示す。
【0194】
結果は、トランスフェクション1回あたり0.5および1.0μgの用量のデキストラン硫酸が、ヒト初代T細胞において対照緩衝液より有意に高いレベルの編集効率をもたらしたことを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2024540165000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノム編集効率を高めるための方法であって、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の存在下、プログラム可能なDNA修飾システムをエレクトロポレーションによって真核細胞に導入することを含む方法。
【請求項2】
ゲノム編集効率が、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の非存在下であること以外は同一の方法と比べて高められる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩の存在下、プログラム可能なDNA修飾システムが真核細胞に導入される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
導入が1つまたは複数のエレクトロポレーション工程を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が、約5kDaより大きい、約15kDaより大きい、約25kDaより大きい、約50kDaより大きい、約75kDaより大きい、約100kDaより大きい、約150kDaより大きい、約200kDaより大きい、約250kDaより大きい、約300kDaより大きい、約350kDaより大きい、約400kDaより大きい、約450kDaより大きい、または約500kDaより大きい平均分子量を有する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が約500kDaより大きい平均分子量を有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が多糖ポリマー、例えば硫酸化多糖ポリマーである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
(i)ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が、カラギーナン、セルロース、コンドロイチン、コラーゲン、デキストラン、フコイダン、ヘパラン、ヘパリン、グルコサミン、ラミナリン、ペントサン、ならびにそれらの組合せ、誘導体、および/もしくは塩のうちの1つもしくは複数を含むか;または
(ii)ポリアニオン性ポリマーが、反復糖単位が少なくとも1つの硫酸基を含む硫酸多糖もしくはその塩であり、デキストラン硫酸、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびそれらの塩のうちの1つもしくは複数を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸および/またはデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸ナトリウム塩である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
プログラム可能なDNA修飾システムが、RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(RNA-guided clustered regularly interspersed short palindromic repeats)(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)ヌクレアーゼシステム、CRISPR-Cas二重ニッカーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、または非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
プログラム可能なDNA修飾システムがCasタンパク質およびガイドRNAを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Casタンパク質が、触媒的に活性であるか、触媒的に不活性であるか、またはニッカーゼである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
プログラム可能なDNA修飾システムが、I型、II型(例えば、Cas9)、III型、V型(例えば、Cpf1)、またはVI型(例えば、Cas13)Casタンパク質を含む、請求項に記載の方法。
【請求項16】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas1タンパク質、Cas2タンパク質、Cas3タンパク質、Cas4タンパク質、Cas5タンパク質、Cas6タンパク質、Cas7タンパク質、Cas8タンパク質、Cas9タンパク質、Cas10タンパク質、Cas12(Cpf1)タンパク質、またはCas13タンパク質を含む、請求項に記載の方法。
【請求項17】
プログラム可能なDNA結合システムがCas9またはCas12(Cpf1)、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Casタンパク質が、野生型Casタンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
Casタンパク質が、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞膜透過ドメイン、少なくとも1つのマーカードメイン、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ガイドRNAが単一分子である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
ガイドRNAが2個の分子である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含み、crRNAが化学的に合成され、tracrRNAが酵素的に合成されるか、またはcrRNAおよびtracrRNAが両方とも酵素的に合成される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
真核細胞がヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、または単細胞真核生物である、請求項に記載の方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法により調製される、真核細胞。
【請求項26】
プログラム可能なDNA修飾システム、真核細胞、および少なくとも1つのポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含むトランスフェクション組成物。
【請求項27】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が硫酸化多糖塩である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
(i)ポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、カラギーナン(例えば、K-、I-、および/またはL-カラギーナン)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、コンドロイチン、コラーゲン、デキストラン、フコイダン、ヘパラン、ヘパリン、グルコサミン、ラミナリン、ペントサン、ならびにそれらの組合せ、誘導体、および/もしくは塩のうちの1つもしくは複数を含むか;または
(ii)ポリアニオン性ポリマーが、反復糖単位が少なくとも1つの硫酸基を含む硫酸多糖もしくはその塩であり、デキストラン硫酸、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびそれらの塩のうちの1つもしくは複数を含む、
請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸および/またはデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸ナトリウム塩である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
プログラム可能なDNA修飾システムが、RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)ヌクレアーゼシステム、CRISPR-Cas二重ニッカーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、または非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項32】
プログラム可能なDNA修飾システムがCasタンパク質およびガイドRNAを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項33】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むリボ核タンパク質複合体である、請求項26に記載の組成物。
【請求項35】
Casタンパク質が、触媒的に活性であるか、触媒的に不活性であるか、またはニッカーゼである、請求項32に記載の組成物。
【請求項36】
プログラム可能なDNA修飾システムが、核酸配列内の塩基を修飾するための塩基エディターである、請求項26に記載の組成物。
【請求項37】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas1タンパク質、Cas2タンパク質、Cas3タンパク質、Cas4タンパク質、Cas5タンパク質、Cas6タンパク質、Cas7タンパク質、Cas8タンパク質、Cas9タンパク質、Cas10タンパク質、Cas12(Cpf1)タンパク質、またはCas13タンパク質を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項38】
プログラム可能なDNA結合システムがCas9またはCas12(Cpf1)、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項39】
Casタンパク質が、野生型Casタンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項40】
Casタンパク質が、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞膜透過ドメイン、少なくとも1つのマーカードメイン、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項41】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項42】
ガイドRNAが単一分子である、請求項38に記載の組成物。
【請求項43】
ガイドRNAが2個の分子である、請求項38に記載の組成物。
【請求項44】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含み、crRNAが化学的に合成され、tracrRNAが酵素的に合成されるか、またはcrRNAおよびtracrRNAが両方とも酵素的に合成される、請求項38に記載の組成物。
【請求項45】
真核細胞がヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、または単細胞真核生物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項46】
プログラム可能なDNA修飾システム、真核細胞、および2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含むトランスフェクション組成物。
【請求項47】
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩が硫酸化多糖塩である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
(i)2つ以上のポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、カラギーナン(例えば、K-、I-、および/またはL-カラギーナン)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、コンドロイチン、コラーゲン、デキストラン、フコイダン、ヘパラン、ヘパリン、グルコサミン、ラミナリン、ペントサン、ならびにそれらの組合せ、誘導体、および/もしくは塩のうちの1つもしくは複数から選択されるか;または
(ii)2つ以上のポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、反復糖単位が少なくとも1つの硫酸基を含む硫酸多糖もしくはその塩であり、2つ以上のポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、デキストラン硫酸、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびその塩から選択される、
請求項46記載の組成物。
【請求項49】
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの少なくとも1つがデキストラン硫酸および/またはデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの1つがデキストラン硫酸ナトリウム塩であり、2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの別の1つが、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、およびデルマタン硫酸から選択される、請求項46に記載の組成物。
【請求項51】
プログラム可能なDNA修飾システムが、RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)ヌクレアーゼシステム、CRISPR-Cas二重ニッカーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、または非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項52】
プログラム可能なDNA修飾システムがCasタンパク質およびガイドRNAを含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項53】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むリボ核タンパク質複合体である、請求項46に記載の組成物。
【請求項55】
Casタンパク質が、触媒的に活性であるか、触媒的に不活性であるか、またはニッカーゼである、請求項52に記載の組成物。
【請求項56】
プログラム可能なDNA修飾システムが、核酸配列内の塩基を修飾するための塩基エディターである、請求項46に記載の組成物。
【請求項57】
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas1タンパク質、Cas2タンパク質、Cas3タンパク質、Cas4タンパク質、Cas5タンパク質、Cas6タンパク質、Cas7タンパク質、Cas8タンパク質、Cas9タンパク質、Cas10タンパク質、Cas12(Cpf1)タンパク質、またはCas13タンパク質を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項58】
プログラム可能なDNA結合システムがCas9またはCas12(Cpf1)、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項59】
Casタンパク質が、野生型Casタンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項60】
Casタンパク質が、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞膜透過ドメイン、少なくとも1つのマーカードメイン、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項61】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、請求項58に記載の組成物。
【請求項62】
ガイドRNAが単一分子である、請求項58に記載の組成物。
【請求項63】
ガイドRNAが2個の分子である、請求項58に記載の組成物。
【請求項64】
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含み、crRNAが化学的に合成され、tracrRNAが酵素的に合成されるか、またはcrRNAおよびtracrRNAが両方とも酵素的に合成される、請求項58に記載の組成物。
【請求項65】
真核細胞がヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、または単細胞真核生物である、請求項46に記載の組成物。
【請求項66】
Casタンパク質、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含む溶液、および1つまたは複数の緩衝溶液を含むキット。
【請求項67】
1つまたは複数の緩衝溶液が再構成溶液および希釈溶液を含む、請求項66に記載のキット。
【請求項68】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含む溶液がデキストラン硫酸を含む、請求項66に記載のキット。
【請求項69】
再構成溶液が50%グリセロールを含み、希釈溶液が20mM HEPES緩衝液(pH7.5)および20mM NaClを含む、請求項67に記載のキット。
【請求項70】
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含む溶液が、1μg/μLデキストラン硫酸ナトリウム塩を2mM HEPES緩衝液(pH7.5)および20mM NaCl中に含む、請求項68に記載のキット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0149
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0149】
本発明を詳細に記載してきたため、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を逸脱することなく変更および変形が可能であることは明らかであろう。さらに、本開示におけるすべての例は、非限定的な例として提供されることが理解されるべきである。
本開示は、例えば、以下に関する。
[1]
ゲノム編集効率を高めるための方法であって、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の存在下、プログラム可能なDNA修飾システムをエレクトロポレーションによって真核細胞に導入することを含む方法。
[2]
ゲノム編集効率が、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩の非存在下であること以外は同一の方法と比べて高められる、前記[1]に記載の方法。
[3]
エレクトロポレーションが、プログラム可能なDNA修飾システム、真核細胞、およびポリアニオン性ポリマーまたはその塩をエレクトロポレーション溶液に配合すること、およびエレクトロポレーション溶液に電圧を印加し、それによって真核細胞にプログラム可能なDNA修飾システムを導入することを含む、前記[2]に記載の方法。
[4]
プログラム可能なDNA修飾システムを真核細胞に導入する前に、真核細胞がポリアニオン性ポリマーまたはその塩と接触される、前記[3]に記載の方法。
[5]
真核細胞およびポリアニオン性ポリマーが、プログラム可能なDNA修飾システムとの配合の前および/またはエレクトロポレーション溶液への電圧の印加の前にエレクトロポレーション溶液中でインキュベートされる、前記[3]または[4]に記載の方法。
[6]
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩の存在下、プログラム可能なDNA修飾システムが真核細胞に導入される、前記項のいずれかに記載の方法。
[7]
導入が単一のエレクトロポレーション工程を含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[8]
導入が複数のエレクトロポレーション工程を含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[9]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が、約5kDaより大きい、約15kDaより大きい、約25kDaより大きい、約50kDaより大きい、約75kDaより大きい、約100kDaより大きい、約150kDaより大きい、約200kDaより大きい、約250kDaより大きい、約300kDaより大きい、約350kDaより大きい、約400kDaより大きい、約450kDaより大きい、または約500kDaより大きい平均分子量を有する、前記項のいずれかに記載の方法。
[10]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が約500kDaより大きい平均分子量を有する、前記項のいずれかに記載の方法。
[11]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が多糖ポリマー、例えば硫酸化多糖ポリマーである、前記項のいずれかに記載の方法。
[12]
(i)ポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、カラギーナン(例えば、K-、I-、および/またはL-カラギーナン)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、コンドロイチン、コラーゲン、デキストラン、フコイダン、ヘパラン、ヘパリン、グルコサミン、ラミナリン、ペントサン、ならびにそれらの組合せ、誘導体、および/もしくは塩のうちの1つもしくは複数を含むか;または
(ii)ポリアニオン性ポリマーが、反復糖単位が少なくとも1つの硫酸基を含む硫酸多糖もしくはその塩であり、デキストラン硫酸、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびそれらの塩のうちの1つもしくは複数を含む、
前記項のいずれかに記載の方法。
[13]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸を含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[14]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[15]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸ナトリウム塩である、前記項のいずれかに記載の方法。
[16]
プログラム可能なDNA修飾システムが、RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(RNA-guided clustered regularly interspersed short palindromic repeats)(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)ヌクレアーゼシステム、CRISPR-Cas二重ニッカーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、または非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[17]
プログラム可能なDNA修飾システムがCasタンパク質およびガイドRNAを含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[18]
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、前記[17]に記載の方法。
[19]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNAを含むリボ核タンパク質複合体である、前記項のいずれかに記載の方法。
[20]
Casタンパク質が、触媒的に活性であるか、触媒的に不活性であるか、またはニッカーゼである、前記[17]~[19]のいずれか一項に記載の方法。
[21]
プログラム可能なDNA修飾システムが、核酸配列内の塩基を修飾するための塩基エディターである、前記項のいずれかに記載の方法。
[22]
プログラム可能なDNA修飾システムが、I型、II型(例えば、Cas9)、III型、V型(例えば、Cpf1)、またはVI型(例えば、Cas13)Casタンパク質を含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[23]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas1タンパク質、Cas2タンパク質、Cas3タンパク質、Cas4タンパク質、Cas5タンパク質、Cas6タンパク質、Cas7タンパク質、Cas8タンパク質、Cas9タンパク質、Cas10タンパク質、Cas12(Cpf1)タンパク質、またはCas13タンパク質を含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[24]
プログラム可能なDNA結合システムがCas9またはCas12(Cpf1)を含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[25]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas9、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[26]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas12(Cpf1)、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、前記[1]~[24]のいずれか一項に記載の方法。
[27]
Casタンパク質が、野生型Casタンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む、前記[17]~[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28]
Casタンパク質が、野生型Cas9タンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含むCas9タンパク質である、前記[17]~[25]のいずれか一項に記載の方法。
[29]
Casタンパク質が、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞膜透過ドメイン、少なくとも1つのマーカードメイン、またはそれらの組合せをさらに含む、前記[17]~[28]のいずれか一項に記載の方法。
[30]
Casタンパク質が、1つまたは2つの核局在化シグナルをさらに含む、前記[17]~[29]のいずれか一項に記載の方法。
[31]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むCRISPR-Casヌクレアーゼシステムである、前記項のいずれかに記載の方法。
[32]
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、前記[31]に記載の方法。
[33]
ガイドRNAが単一分子である、前記[31]または[32]に記載の方法。
[34]
ガイドRNAが2個の分子である、前記[31]または[32]に記載の方法。
[35]
ガイドRNAが酵素的に合成される、前記[31]~[34]のいずれか一項に記載の方法。
[36]
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含み、crRNAが化学的に合成され、tracrRNAが酵素的に合成されるか、またはcrRNAおよびtracrRNAが両方とも酵素的に合成される、前記[31]~[34]のいずれか一項に記載の方法。
[37]
真核細胞がヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、または単細胞真核生物である、前記項のいずれかに記載の方法。
[38]
真核細胞が哺乳動物細胞または植物細胞である、前記項のいずれかに記載の方法。
[39]
真核細胞がヒト細胞である、前記項のいずれかに記載の方法。
[40]
前記項のいずれかに記載の方法により調製される、真核細胞。
[41]
プログラム可能なDNA修飾システム、真核細胞、および少なくとも1つのポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含むトランスフェクション組成物。
[42]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩が硫酸化多糖塩である、前記[41]に記載の組成物。
[43]
(i)ポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、カラギーナン(例えば、K-、I-、および/またはL-カラギーナン)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、コンドロイチン、コラーゲン、デキストラン、フコイダン、ヘパラン、ヘパリン、グルコサミン、ラミナリン、ペントサン、ならびにそれらの組合せ、誘導体、および/もしくは塩のうちの1つもしくは複数を含むか;または
(ii)ポリアニオン性ポリマーが、反復糖単位が少なくとも1つの硫酸基を含む硫酸多糖もしくはその塩であり、デキストラン硫酸、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびそれらの塩のうちの1つもしくは複数を含む、
前記[41]または[42]に記載の組成物。
[44]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸を含む、前記[41]~[43]のいずれか一項に記載の組成物。
[45]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む、前記[41]~[43]のいずれか一項に記載の組成物。
[46]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩がデキストラン硫酸ナトリウム塩である、前記[41]~[43]のいずれか一項に記載の組成物。
[47]
プログラム可能なDNA修飾システムが、RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)ヌクレアーゼシステム、CRISPR-Cas二重ニッカーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、または非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を含む、前記[41]~[46]のいずれか一項に記載の組成物。
[48]
プログラム可能なDNA修飾システムがCasタンパク質およびガイドRNAを含む、前記[41]~[47]のいずれか一項に記載の組成物。
[49]
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、前記[48]に記載の組成物。
[50]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むリボ核タンパク質複合体である、前記[41]~[49]のいずれか一項に記載の組成物。
[51]
Casタンパク質が、触媒的に活性であるか、触媒的に不活性であるか、またはニッカーゼである、前記[48]~[50]のいずれか一項に記載の組成物。
[52]
プログラム可能なDNA修飾システムが、核酸配列内の塩基を修飾するための塩基エディターである、前記[41]~[51]のいずれか一項に記載の組成物。
[53]
プログラム可能なDNA修飾システムが、I型、II型(例えば、Cas9)、III型、V型(例えば、Cpf1)、またはVI型(例えば、Cas13)Casタンパク質を含む、前記[41]~[52]のいずれか一項に記載の組成物。
[54]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas1タンパク質、Cas2タンパク質、Cas3タンパク質、Cas4タンパク質、Cas5タンパク質、Cas6タンパク質、Cas7タンパク質、Cas8タンパク質、Cas9タンパク質、Cas10タンパク質、Cas12(Cpf1)タンパク質、またはCas13タンパク質を含む、前記[41]~[53]のいずれか一項に記載の組成物。
[55]
プログラム可能なDNA結合システムがCas9またはCas12(Cpf1)を含む、前記[41]~[54]のいずれか一項に記載の組成物。
[56]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas9、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、前記[41]~[55]のいずれか一項に記載の組成物。
[57]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas12(Cpf1)、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、前記[41]~[55]のいずれか一項に記載の組成物。
[58]
Casタンパク質が、野生型Casタンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む、前記[50]~[57]のいずれか一項に記載の組成物。
[59]
Casタンパク質が、野生型Cas9タンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含むCas9タンパク質である、前記[50]~[56]のいずれか一項に記載の組成物。
[60]
Casタンパク質が、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞膜透過ドメイン、少なくとも1つのマーカードメイン、またはそれらの組合せをさらに含む、前記[50]~[59]のいずれか一項に記載の組成物。
[61]
Casタンパク質が、1つまたは2つの核局在化シグナルをさらに含む、前記[50]~[60]のいずれか一項に記載の組成物。
[62]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むCRISPR-Casヌクレアーゼシステムである、前記[41]~[61]のいずれか一項に記載の組成物。
[63]
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、前記[62]に記載の組成物。
[64]
ガイドRNAが単一分子である、前記[62]または[63]に記載の組成物。
[65]
ガイドRNAが2個の分子である、前記[62]または[63]に記載の組成物。
[66]
ガイドRNAが酵素的に合成される、前記[62]~[65]のいずれか一項に記載の組成物。
[67]
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含み、crRNAが化学的に合成され、tracrRNAが酵素的に合成されるか、またはcrRNAおよびtracrRNAが両方とも酵素的に合成される、前記[62]~[65]のいずれか一項に記載の組成物。
[68]
真核細胞がヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、または単細胞真核生物である、前記[41]~[67]のいずれか一項に記載の組成物。
[69]
真核細胞が哺乳動物細胞または植物細胞である、前記[41]~[68]のいずれか一項に記載の組成物。
[70]
真核細胞がヒト細胞である、前記[41]~[69]のいずれか一項に記載の組成物。
[71]
プログラム可能なDNA修飾システム、真核細胞、および2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含むトランスフェクション組成物。
[72]
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩が硫酸化多糖塩である、前記[71]に記載の組成物。
[73]
(i)2つ以上のポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、カラギーナン(例えば、K-、I-、および/またはL-カラギーナン)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、コンドロイチン、コラーゲン、デキストラン、フコイダン、ヘパラン、ヘパリン、グルコサミン、ラミナリン、ペントサン、ならびにそれらの組合せ、誘導体、および/もしくは塩のうちの1つもしくは複数から選択されるか;または
(ii)2つ以上のポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、反復糖単位が少なくとも1つの硫酸基を含む硫酸多糖もしくはその塩であり、2つ以上のポリアニオン性ポリマーもしくはその塩が、デキストラン硫酸、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびその塩から選択される、
前記[71]または[72]に記載の組成物。
[74]
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの少なくとも1つがデキストラン硫酸を含む、前記[71]~[73]のいずれか一項に記載の組成物。
[75]
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの少なくとも1つがデキストラン硫酸ナトリウム塩を含む、前記[71]~[73]のいずれか一項に記載の組成物。
[76]
2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの1つがデキストラン硫酸ナトリウム塩であり、2つ以上のポリアニオン性ポリマーまたはその塩のうちの別の1つが、フコイダン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、およびデルマタン硫酸から選択される、前記[71]~[73]のいずれか一項に記載の組成物。
[77]
プログラム可能なDNA修飾システムが、RNA誘導型のクラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)ヌクレアーゼシステム、CRISPR-Cas二重ニッカーゼシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、または非ヌクレアーゼドメインに連結されたプログラム可能なDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を含む、前記[71]~[76]のいずれか一項に記載の組成物。
[78]
プログラム可能なDNA修飾システムがCasタンパク質およびガイドRNAを含む、前記[71]~[77]のいずれか一項に記載の組成物。
[79]
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、前記[78]に記載の組成物。
[80]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むリボ核タンパク質複合体である、前記[71]~[79]のいずれか一項に記載の組成物。
[81]
Casタンパク質が、触媒的に活性であるか、触媒的に不活性であるか、またはニッカーゼである、前記[78]~[80]のいずれか一項に記載の組成物。
[82]
プログラム可能なDNA修飾システムが、核酸配列内の塩基を修飾するための塩基エディターである、前記[71]~[81]のいずれか一項に記載の組成物。
[83]
プログラム可能なDNA修飾システムが、I型、II型(例えば、Cas9)、III型、V型(例えば、Cpf1)、またはVI型(例えば、Cas13)Casタンパク質を含む、前記[71]~[82]のいずれか一項に記載の組成物。
[84]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas1タンパク質、Cas2タンパク質、Cas3タンパク質、Cas4タンパク質、Cas5タンパク質、Cas6タンパク質、Cas7タンパク質、Cas8タンパク質、Cas9タンパク質、Cas10タンパク質、Cas12(Cpf1)タンパク質、またはCas13タンパク質を含む、前記[71]~[83]のいずれか一項に記載の組成物。
[85]
プログラム可能なDNA結合システムがCas9またはCas12(Cpf1)を含む、前記[71]~[84]のいずれか一項に記載の組成物。
[86]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas9、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、前記[71]~[85]のいずれか一項に記載の組成物。
[87]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Cas12(Cpf1)、gRNA、および適宜ドナーポリヌクレオチドを含む、前記[71]~[85]のいずれか一項に記載の組成物。
[88]
Casタンパク質が、野生型Casタンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む、前記[80]~[87]のいずれか一項に記載の組成物。
[89]
Casタンパク質が、野生型Cas9タンパク質と比べて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含むCas9タンパク質である、前記[80]~[86]のいずれか一項に記載の組成物。
[90]
Casタンパク質が、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞膜透過ドメイン、少なくとも1つのマーカードメイン、またはそれらの組合せをさらに含む、前記[80]~[89]のいずれか一項に記載の組成物。
[91]
Casタンパク質が、1つまたは2つの核局在化シグナルをさらに含む、前記[80]~[90]のいずれか一項に記載の組成物。
[92]
プログラム可能なDNA修飾システムが、Casタンパク質およびガイドRNA、ならびに適宜ドナーポリヌクレオチドを含むCRISPR-Casヌクレアーゼシステムである、前記[71]~[91]のいずれか一項に記載の組成物。
[93]
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含む、前記[92]に記載の組成物。
[94]
ガイドRNAが単一分子である、前記[92]または[93]に記載の組成物。
[95]
ガイドRNAが2個の分子である、前記[92]または[93]に記載の組成物。
[96]
ガイドRNAが酵素的に合成される、前記[92]~[95]のいずれか一項に記載の組成物。
[97]
ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAを含み、crRNAが化学的に合成され、tracrRNAが酵素的に合成されるか、またはcrRNAおよびtracrRNAが両方とも酵素的に合成される、前記[92]~[95]のいずれか一項に記載の組成物。
[98]
真核細胞がヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、または単細胞真核生物である、前記[71]~[97]のいずれか一項に記載の組成物。
[99]
真核細胞が哺乳動物細胞または植物細胞である、前記[71]~[98]のいずれか一項に記載の組成物。
[100]
真核細胞がヒト細胞である、前記[71]~[99]のいずれか一項に記載の組成物。
[101]
Casタンパク質、ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含む溶液、および1つまたは複数の緩衝溶液を含むキット。
[102]
1つまたは複数の緩衝溶液が再構成溶液および希釈溶液を含む、前記[101]に記載のキット。
[103]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含む溶液がデキストラン硫酸を含む、前記[101]または[102]に記載のキット。
[104]
再構成溶液が50%グリセロールを含み、希釈溶液が20mM HEPES緩衝液(pH7.5)および20mM NaClを含む、前記[102]または[103]に記載のキット。
[105]
ポリアニオン性ポリマーまたはその塩を含む溶液が、1μg/μLデキストラン硫酸ナトリウム塩を2mM HEPES緩衝液(pH7.5)および20mM NaCl中に含む、前記[103]または[104]に記載のキット。

【国際調査報告】